約 495,216 件
https://w.atwiki.jp/macrossf-eparo/pages/46.html
695 名無しさん@ピンキー sage 2008/05/29(木) 19 14 10 ID /Wov335R こちらラビット1、爆撃開始。 600と-616をまとめて加筆修正した完全版。 内容アルシェリ。 696 ヴァージン・クィーン1 sage 2008/05/29(木) 19 17 03 ID /Wov335R SMS。マクロスフロンティア船団の防衛の要である彼らは、アイランド1に接続された戦闘艦、マクロスクォーターで生活しているが、 学生でありSMS隊員でもある者は学業を優先するとされ、緊急時以外の出動ローテーションからは外され、 非番も週末に合わされており、ほぼ普通の一般市民と変わらない生活を送っている。 「午前中はシミュレータ訓練しようと思ってる」SMSの制服を着ながら、アルトは言った。 「またか?お前、ヒマさえあればシミュレータだな。もっと人生を楽しめよ」ミハエルが寝台に寝ころびながら茶化すと、アルトは彼にビシッと指を突きつけて宣言した。 「いーや。格納庫をグルグル回るのはもうゴメンだ!今日こそ完了してやる、あのシミュレータ」 ドアを開けたアルトが突風のように出ていくと、ミハエルは真面目な顔になった。 (・・知らないってのは、怖いね) 今、アルトが挑戦している戦闘シミュレータのレベルはA-3++。 彼ほど短期間でこのレベルに挑戦できるパイロットは希だと、カナリア中尉もクランも、オズマ隊長ですら言っていた。 (俺もうかうかしてられない・・かな) ライバルとも言えるアルトのパイロットとしての技量が、 自分のすぐ背後に迫っているのはひしひしと感じてはいる。が (休むときは、休むのも仕事のうち・・と) ミハエルは誰かヒマなガールフレンドを見つけようと、 コミュニケータ端末を取り出した。 部屋を後にしてシミュレータルームにズンズン歩いていくアルトのコミュニケータ端末が、 メールの受信を告げて電子音を鳴らした。 (ランカか・・?) 受信フォルダを開いて、アルトはギクッとした。 "FROM Sheryl Nome TITLE 今日、休みでしょ?" 「お前っ!どうして俺のアドレス知ってんだ!」30分後、彼は涼しい顔をしたシェリルに詰め寄っていた。 「おまけに俺が今日休みだって、何で知ってる!」 「そんなに怒らなくたっていいじゃなーい」サングラスを外して振り向きながらシェリルは悪戯っぽく微笑む。 「アドレスは、ちょこっとし・ら・べ・た・の。グレースに頼んで、フロンティアのメインフレームに・・」 「・・それって犯罪じゃないのかよ・・」ガックリうなだれて、アルトはもう降参のポーズを取った。 「休みのことは、ルカ君から聞いてたから」 「わかったよ。で?」 「買い物、一緒に行ってもらおうと思って。いいでしょ?アルト」 「荷物持ちならそのマネージャに頼めばいいだろ!」 「友達と行きたいの・・私、本当に友達って言えるヒト、アルトしかいないから」 (ああ、ダメだ)アルトは一瞬で観念した。この前の出撃の前と同じだ。この寂しそうな顔をするシェリルに、アルトは手も足も出ない。 「前にも言ったでしょ。アルトは私を"シェリル・ノーム"扱いしないから・・居心地がいいの」 「・・わかった。付き合ってやるよ」しょうがない。シミュレータは明日までお預けだ。 「ホント?じゃあアルト、ゴハンもお願いね。デートなんだから。SMSからお給料も出たんでしょ?」 「どこまでハッキングしてんだよ・・お前のマネージャ・・」 不意に近寄ってきたシェリルが、頭を抱えたアルトの耳元に唇を寄せて囁いた。 「アルトのことは・・何でも知りたいのよ。私」 彼はなんとも言えない渋い顔で、シェリルを見返した。 #another1 ヴァージン・クイーン にぎやかなゼントラモールの中で、軽やかに鼻歌を歌いながらアルトの前を歩いてゆくシェリル。 今日の彼女は、周りに気付かれないように、前回来たときより念入りに変装している。 今日は絶対、だれかに気付かれて邪魔はされたくない。 「・・あのなあ」 あきれ果てた口調で、アルトがシェリルの背後から言った。 「なぁに?アルト」あちこちのセレクトショップで買い込んだ服が入った袋を、 両手に持ち、肩から首からぶら下げている彼に笑顔を向けるシェリル。 「いったいどれだけ買えば気が済むんだよ!何軒回ったと思ってんだ!」 「アルト。女の子の買い物はとびきり重大なの。そんなこともわかんないようじゃ、モテないわよ」 あたし以外の女の子にはね。 最後の言葉は言わずに置いて、シェリルはまた歩き出す。 「くっ・・まったくお前って・・」かわいいんだか、かわいくないんだか。 「まったく、何よ」 「何でもねえ!俺はちょっとここで休む!」アルトはそばにあったベンチにドサッと座り込んだ。 「しょうがないわね。そしたら・・あっ!」周りの店をチェックしていたシェリルが、声を上げた。 「?」顔を上げたアルトの目の前に"ランジェリー・ザ・ファッシネイト"の看板があった。 「ここで待ってて。そのあと、ゴハン食べに行きましょ。それとも、一緒に来たい?アルト」 「いっ?バカお前、ここは・・」 「フフッ、冗談よ。楽しいなあー、アルトは」 店の中に入っていったシェリルを見送って、アルトはベンチにもたれて雲の浮いた空を見上げた。 疲れを感じるが、悪くない気分で、ベンチを埋めている買い物袋を見回す。 量が多すぎて、動力を切ったEXギアと同じぐらいの重さを感じるほどだ。 (結局、格納庫を回ってるのと変わんねえか・・・) そう思うと笑えてきた。気分がいいせいか、いつもは高度2000しかないとわかっている空も、いまは妙に高く見える。 (ならきょうはとことん、あいつに付き合ってやるかな) アルトがすぐ目の前にやってきたドリンクの自動販売ロボットに声をかけ、コーラを飲んで休んでいると、 なぜか買い物袋を下げていないシェリルが店から出てきた。 「なんだよ。欲しいもの、なかったのか?」 「ねえアルト?」これからあなたをビックリさせます。とでも言いたそうな、いたずら心タップリの笑みだ。 「何だよ・・」 「こっちとこっち、どっちが好み?」シェリルはアルトの目の前に、ブラジャーを2つ出して見せた。 1つはゴージャスな深紅のシルク。もう1つは黒のハーフカップで、レースが大胆なデザイン。 ブホォッ!一瞬で耳まで赤くなったアルトの口からコーラが噴き出した。 シェリルの笑い声と、いい加減にしろぉーーーッというアルトの叫びが、昼時のゼントラモールに響き渡った。 「ああもう、すっごいおかしかった。さっきのアルトの顔」 「ホンットに信じらんねえ女だな。お前。かわいげってものがないのかよ」 ムスッとした顔でシーザーサラダをつついているアルト。 「だって、店員さんが、彼氏の好みでどっちか返品してもいいって言うんだもーん」 「彼氏じゃねえっ!」 「そんなに怒ると、ゴハンがまずくなるわよ。ホントアルトって、私を特別扱いしない男よね。ある意味ショックなぐらいよ」 運ばれてきた牛肉のカルパッチョを食べて、シェリルは歓声を上げた。 「おいしい!これが天然の牛肉の味ね?感動的だわ」 喜んで食べているシェリルを見ながら、アルトはコミュニケータ端末を取り出して、いまやっている映画をチェックしてみた。 オレは何をやってんだろうな・・。 ワガママ女に振り回されて、面倒を見て、それでも・・それでも別にイヤじゃないのは・・ シェリルを好きになりかけているせいかもしれない。 アルトが周りに張りつめている壁のような気持ちを、ハデにぶちこわして接近してきたシェリルが、 イヤリングをお守りに持っていってと彼に告げたあの時から、 だんだんと大きな存在になりつつあるのは、もう認めなければいけない。 こういう事で、人は自分の心をいつまでもだましておけないのだ。 「ねえアルト、そのチーズ、ちょっと食べさせてよ」 少し考えこんでいた彼の前にあるカプレーゼの皿から、シェリルがあっという間にモツァレラを持っていった。 「ああもう、今日はほんとに楽しかった」シェリルは草の上に寝ころんだ。湖が見える丘の上で、草の匂いのする風が気持ちいい。 「満足したか?もうフロンティアで、お前の見てないところは残ってないぐらいだぞ」 「ありがとう。やっぱりアルトといると居心地がいいわ。気張らなくてすむから」 「だからってブラジャーで驚かすのはどうなんだよ?」 アルトは木にもたれかかって腕を組み、表情だけ怒った顔で言った。 「やだもう!また笑っちゃうじゃない。やめてよアルト」 ひとしきりコロコロと笑って起きあがったシェリルはヒザを抱いて座り、一日の終わりを告げる夕日を眺めた。 「そろそろ帰ろうぜ。帰ってきませんでしたって事になったら、お前のマネージャに何をされるやらだ」 シェリルの顔からとつぜん明るさが失われた。視線を地面に落としたシェリルは、ぼそっと言った。 「・・いいの」 「えっ?」 「グレースは、私がアルトと一緒だって、知ってるわ。 言ってきたの。私は今夜、帰らないって。私の居場所をスキャンしないでって」 「なに言ってんだ・・お前」 「私、夜がきらい・・夜が来ると、一日がいくら楽しくても、ひとりぼっちに戻っちゃう」 「・・・」アルトは何も言えず、ただ足元でうずくまるシェリルを見つめる。 「いまの私は、宙ぶらりん。帰る場所も行くあてもない。夜が来ると、ギャラクシーはもうないって考えちゃうの。 壊されてバラバラになって、真っ暗な宇宙に散らばってるだけ。私の知ってる人たちはみんなみんな死んで、誰も残ってない。 それを思うと眠れないから、薬で脳活性を下げて、ムリヤリ眠るの」 下を向いて話すシェリルは、座り込んでヒザをきつく抱きしめることで、どんどん小さくなっていくようだった。 「毎晩毎晩、不安で悲しくて、寂しくても、誰にも話せない。私はいつも前向きな“全速前進のシェリル・ノーム”でなきゃいけないから」 木の幹にもたれてシェリルの言葉を聞いていたアルトがそこに見たのは、 いつもの勝ち気な、自信たっぷりな態度の下にゆっくり潜み続けていた悲しみと、絶望に潰されそうな、ひとりのか弱い女性だった。 「ここにいるより他の船団に行ったらどうかってグレースは言うけど、私はこれ以上ギャラクシーから遠い所に行くのは耐えられない。 私一人だけ生き残って歌いまくって踊りまくって、まわりから持ち上げられても、そんなの、ただのピエロ。私はシャロン・アップルじゃない。 悲しいこともあるし、つらさも感じる人間なの。だから私は」 冷たくなり始めた風の中にちぎれ飛び続ける言葉が、ふいに途切れた。 シェリルの後ろに座り込んだアルトが、彼女の体を抱きしめていた。人の体の暖かみと、女のように細いこの男の体が秘めた、たくましく強い力。 「もう・・それ以上言うな」アルトはもっと、つよく抱いた。 いま彼は、自分が何のために、戦う組織に身を投じたのかを理解した。 それは守るため。宇宙をさまよう、寄る辺ない放浪者であるフロンティア船団を守るため。 そして、シェリルと同じ悲しみを背負うものを、増やさぬため。 「・・あなたが必要なの・・ここにいたいの。帰る所も行く所もないけど、 いま私がいたい場所は、ここよ。アルトがいる、フロンティア・・」 アルトの肩にもたれ、シェリルは彼の方を向いて瞳を閉じた。求められるままに、アルトはシェリルの唇を奪う。 それは長い、長い、シェリルの悲しみ、さびしさを全部引き受けよう、吸い出してしまおうとするような、優しいキスだった。 強い風が吹いて、シェリルがかぶっていた帽子が飛ばされ、丘の上へ消えていっても、二人のシルエットは重なっていた。 アイランド1には、雨が降っていた。シェリルはアルトに借りた男物のシャツを着て、部屋の窓から外を眺めていた。 そこは彼がSMSに入るまで住んでいた部屋で、フロンティアでは成人とされる17歳になった者が希望すれば、 独立のために小さな居住スペースが割り当てられるのだという。 シャワールームが開いて、Tシャツと短パン姿のアルトが現れた。シェリルの心臓はもう胸を突き破りそうに跳ねている。 これほど胸が高鳴ったのは、いつ以来だろう。 最初のオーディションを受けたとき?それとも、初めてライブステージに立ったとき以来? 「聞いて、アルト」 「・・なんだよ?」 「絶対笑わないでね。私・・初めてなの・・。男の人と、こういうの」今度はシェリルが耳まで赤くなる番だった。 「そうか。意外と言えば意外かな・・でも別に」アルトはベッドに座り込み、タオルをイスの背に投げた。 「怖かったら、しなくたっていいんだぞ?」 「もう!私がこんなに恥ずかしい告白してるのに、なんで余裕たっぷりなのよ!アルトのくせに!」 「お前はそうやってプリプリしてる方が」アルトが言った。「似合ってるよ」 そして彼は、窓際のシェリルに向かって手をさしのべる。 その手を見たとき、彼女の心に歌の歌詞が浮かんだ。もうずっとずっと昔から歌われてきたあの歌詞が。 いまあなたの声が聞こえる ここへおいでと さびしさに負けそうな私に (ああ・・この歌のハート。今ならわかる) そしてシェリルは、アルトの手を握って、彼の横に座った。 「おかしいでしょ?歌ってる歌はいろいろ挑発的なのに、私はまだ・・したことがないなんて。 ヴァージン・クイーンってとこね。これ、次の曲のタイトルにするわ」 「クイーンね・・そう言うとこ、やっぱりお前らしいな」 言うと、アルトはシェリルの頬に触れた。少し冷たい指。 恥ずかしさにアルトの顔を見ていられなくて、目を閉じたシェリルの体がピクッと反応する。 豊かなストロベリーブロンドをかき上げると、イヤリングのない、彼女の左の耳が現れた。 アルトの指はその耳たぶに優しく触れ、つまみ、首筋を、唇を愛撫してゆく。 彼の指が触れた所から全身へ、絶え間なく波が伝わるようで、彼女の体はそれにいちいち反応してしまう。 (すごい・・これが「感じる」ということなのね) 指で触れられるだけで、心もからだも溶けていってしまう事に、ぼうっとしていくシェリルの意識は驚きを覚える。 「お前のイヤリング・・なくしちまってゴメンな」 「何よ・・こんな時に・・ずるい・・んっ」 キスで唇を塞がれ、彼女の心はたちまち流れ去った。イヤリングは失われ、アルトは帰ってきた。 それでいい。これから始まる心と体の繋がりが、これから彼を戦場で生き残らせ、彼女を悲しみから救う絆になると思いたい。 シェリルはキスに応えようとあごをコクンと上に向け・・そして理性は体の外に叩き出されて、何光年も遠くに飛んでいった。 アルトのキスは控えめな、あの丘の上でのキスとはちがっていた。 彼の舌がシェリルのそれを求めてうねり、絡むたびに、彼女はくぐもった声を鼻から漏らし、息をする瞬間だけ唇を放した。 それだけでどうにかなってしまうほど、長いキスだった。 その間にもアルトの指が、宇宙で最高のエステティシャンたちにケアされたつややかな背中をなぞり、愛撫し、 もう片方の手は髪をなで、かき上げ、うなじに触れてくる。 「あんっ・・っはあ・・だめアルト、こんなの・・私、変になる・・」 「それでいいんだ・・「もっとよくしてあげる」って、お前も歌ってるだろ」 そのキスの間にシェリルはいつの間にかシャツを脱がされてしまっていた。 背中を支えられながらベッドに寝かされる途中、 昼間に買ってそのまま身につけた黒のブラも、気付かぬうちにホックを外された。 男の指がこれほど器用に動くのが、シェリルには驚きだった。 「やっ、恥ずかしい・・見られちゃう。あっ、やだっ」 今まで、この宇宙の誰も触れた事のない、シェリルの固く尖った先端にアルトの唇が触れた瞬間、 彼女の体がビクンッと跳ね、高オクターブが口から漏れた。 「ああっんっ!」信じられない快感だった。キスよりも、指よりも感じてしまう。 処女の固さをほぐすためにアルトはあらゆるテクニックを駆使してシェリルを愛撫している。 それがもたらす体の反応が、死んでしまうかと思うほど恥ずかしい。 そう思えばそれだけ、彼女の体は最初よりもっと敏感になってゆくのだ。 唇に甘くはさみ込まれた先端が舌先で転がされ、もう片方も指で、 何かのスイッチのように優しくひねられている。 もうシェリルには、自分の体のどこが感じているのかわからなくなっていた。 アルトの触れるすべての場所が、快感で喜んでいる。 「ああっ・・あっ・・だめ・・だめ・・んっ、んんっ・・」 脚の間がもう耐えられないほど熱く、おしっこが漏れたかと思うほど濡れているのがわかる。 無意識のうちに彼女の腕が、上になったアルトのシャツの下にもぐり込み、それを脱がせる。 「大丈夫か?シェリル」 シェリルの体の反応が強烈すぎるかと、気遣ったアルトが声をかけると、彼女の瞳がスッと開いた。 「んっ・・はあ・・いま・・なんて言ったの?」 「大丈夫かって・・」キョトンとしたアルトは素直に答えた。 「ちがう。そのあとよ」 「シェリルって・・名前を呼んだだけだろ?」 シェリルは彼の首に両手を回して引き寄せると、自分からキスをした。 どれだけ、アルトに”お前”ではなく名前で呼んで欲しかったか。どれだけ、彼を求めていたのか。シェリルは今わかった。 唇を離した彼女はアルトが一瞬クラッとするほどの艶めかしさで、彼の耳元にささやいた。 「だいじょうぶ・・だから、最後までして。アルト」 うなずいたアルトは、手を回してシェリルの腰を少し浮かせると、するりと最後に残ったランジェリーを抜き取った。 優しく脚が開かれ、その間にアルトの体が割り込んでくる。 シェリルが見つめるその顔は真剣で、何だか難しい顔をしているのが不思議だった。 どうして男はこれほど冷静な顔で、女の体をこれほど燃え上がらせる事ができるのだろう。 「あんっ・・そう、そこ」入り口にアルト自身が当たると、彼女はせつなく反応した。 「行くぞ。シェリル」 「きて・・アルト。ああんっ、んあっ・・んんうっ!」 アルトの体が動くのを感じたとたん、シェリルの唇はキスで塞がれ、彼女は夢中でアルトの背中に両手でしがみつく。 「あっ、いたっ・・アルトお願い・・もっと、やさしくして」シェリルはこの世の男を一人残らず腰抜けにしそうな甘え声でささやくと、 アルトの耳を噛み、首筋に力いっぱいしがみついた。 「うっ・・もうちょっと、力抜け・・シェリル。もう少しだから」 「ああんぁっ!」 痛みの最高の部分はもう過ぎていたが、生まれて初めての痛みで、意識が全部そこに飛んでいるせいで、 ちゃんとこの体がアルトを受け入れているのか、シェリルにはわからないし、 そこを見て確認するようなことは、まだとてもできない。 「はあっ・・は・・動くぞ。シェリル・・」アルトが、荒い息の混じった声でささやいた。 「動くって、ちょっと待ってアルト、あたしっまだ・・あっ・・ああっダメえっ」 それまでに感じたものとはケタ違いの快感が爆発する反応弾のように広がると、 残っていた痛みを体から押し流し、シェリルはまた、アルトに必死でしがみつくしかなくなった。 その背中はうっすら汗をかいていて、彼もまた感じているのだと、シェリルに伝えてくる。 「アルト・・私、ダメっ・・こんなの・・おかしくっ・・なりそう」 「くそっ!シェリル、締めつけすぎだぞ・・お前っ」 耳元で途切れなく感じる吐息と切れ切れの声。 アルトの耳たぶを噛み、夢中でしゃぶりつくシェリルをきつく抱きしめながら、彼は限界が近づいてくるのがわかった。 「シェリル・・俺もう・・ダメだ。イッちまう・・抜かないと」 「あっ・・いいの。そのままで・・いいの。私を、アルトのものにして・・」 この言葉で、持続させるために残っていたアルトの理性のカケラもぜんぶ、吹っ飛んだ。 彼はシェリルの上半身をベッドから抱き上げると、対面座位で最後の突き上げをかける。 「くっあっ・・シェリル・・」 「やっ、これ・・さっきより、深いの・・ア・・ルト・・あんっ!」 シェリルがアルトの唇をふさいだ瞬間、彼は彼女の中で爆発し、二人は手を握ってベッドに倒れ、そこから何もわからなくなった。 バスルームで熱い湯をたっぷり浴びて汗を落としながら,アルトは考えていた。 今日から彼女になったとはいえ、シェリルは銀河ヒットチャート1位のアイドル。普通の女とはワケがちがうのだ。 正直、これからどういう風に付き合っていけばいいかなんてわからない。でもきっと、想像もつかない毎日になるだろう。 そんなことを考えていると、バスルームの扉がバーンと開き、シェリルが堂々と入ってきた。 「何よアルト、お風呂に入るんだったら起こして欲しかったな」 「いっ!?何やってんだよお前!寝てたんじゃないのか?」あわてて前を隠そうとするアルト。 「お風呂ぐらい一緒に入りたいじゃない?アルトは私の彼氏なんだし。ところで、何で隠してるの?」 「恥ずかしいからだよ!お前も少しは隠せ!」横を向いてそう言うと、シェリルの顔がみるみる笑顔になった。 その顔はそう(これからあなたをビックリさせます)の顔だ。 「ふうん・・恥ずかしいんだ。そう言えば・・」 「そう言えば何だよ」 「私、さっきアルトのをちゃんと見てないのよね。 アルトだけ私のこのボディをじっくり見といて、ずるいわよ!今度は私にソレを見せなさい!」 「やめろおっ!ベッドの上と風呂は別もんなんだよ!」必死で抵抗するアルトにシェリルは言った。 「おとなしくしなさい!じっくり見れば、きっといい曲が浮かぶわ!」 「ウソつけ、どんな曲だソレ!やっぱりお前、かわいく・・んむ」 シェリルが不意にアルトにキスをして、けっきょく彼はその言葉を最後まで出せなかった。 唇を離したシェリルが、ポカンとしたアルトに宇宙最高の微笑みで言った。 「大好きよ。アルト」 いつのまにか雨の上がったアイランド1の空が、宇宙の星空を映している。 そこにバルキリー隊の流星のような光が飛んで、消えていった。 了 ※続きは2-6
https://w.atwiki.jp/macrossf-eparo/pages/118.html
89 名無しさん@ピンキー 2008/08/04(月) 23 55 56 ID TZ81m9KI カプはアルト×シェリル 夢で見た記念にそのまま書き上げて初投下します。 バレスレ(19話放映時点)の内容がかなり影響しているので、嫌な方はスルーしてください。 90:甘き棘を抜くは誰そ:2008/08/04(月) 23 57 13 ID TZ81m9KI (7) 辺りは夕闇に包まれていた。つい先ほどまで耳障りに感じていた人々の喧騒も かき消されたように無くなり、欲していたはずの静けさが逆にシェリルの不安を 大きなものにしていく。 視線を巡らせても待ち人の姿を見つけることが出来ず、だるい身体を折りたたむように 俯いてふっとため息をついた。 「約束、したわけじゃないのにね……」 自分の居場所を言って、一方的に切った電話。疑問と苛立ちが入り混じった制止の声が 途切れた。彼はきっと怒っているだろう。 「こんな時にまで、なんで素直になれないんだろ?」 抱きしめて欲しい、なんて言うのは簡単なはずなのに、言葉にできない。 それでも受け止めてもらえなければ身も心もバラバラに砕けそうで、シェリルは 震える手で自分の身体を抱きしめた。 「私、もうダメかも……」 唐突にケータイから聞こえてきた、普段の彼女からは想像もつかないようなか細い声に アルトは混乱した。 「はぁ? お前、何言ってるんだ?」 つまらない冗談は止せ、といつもの悪戯として片付けたかったのだが、流れる沈黙の中に 押し殺した感情が感じ取れて彼は急ぎ言葉を続ける。 「何かあったのか? 今どこにいる?」 しばらく間を置いてから、ポツリと答えるシェリルの声は震えていた。 泣いているのだろうか? 「とにかくそこで待ってろ、すぐ――」 耳にはツー、ツー、と通話が途切れたことを示す電子音が聞こえ、アルトは舌打ちする。 「クソッ! なんだってんだ、いったい!! 」 悪態をつきながら、しかし彼は素早く上着を引っつかむと足早に部屋を後にした。 ふと見上げると、そこには無数の星が煌いていた。さっきまでのプログラムされた空では なく、本物の宇宙。シェリルは手を伸ばしてその一つを掴む真似をする。 「小さい頃も、よくやってたっけ」 孤児の自分に向けられる冷ややかな視線。けれどもうなだれまいと必死に上を向いて いつか掴んでやるのだと宇宙に向けて手を広げていた。 そして、努力して努力して努力して、自分の力で一番輝く宝石を掴み取った。 人々は幸運と呼んだけど、実力で勝ち取ったのだと誇らしく思っていた。 そう信じていた。けれど……。 手の中にあったのは、他人が用意したイミテーションだった。 眩しいくらいに輝いていたそれは、もはや色を失い、地に落ちる。 「会いたい……」 消え入りそうなシェリルのつぶやきに被さるようにして、彼女の名を呼ぶ声が 聞こえた。 ようやく探し人の姿を見つけて、アルトは声を掛けようと前に進み出た。 が、その足が止まる。 空に手を伸ばす彼女は、泣いてなどいなかった。 しかし、このまま闇に紛れて消えてしまうのではと思えるほどに儚げで、 彼の心は少なからず波打った。それを静めようと一つ大きく息を吐く。 「シェリル!」 いつものように少し苛立ったぶっきらぼうな調子で名を呼ぶと、彼女はこちらを向いた。 「遅いわよ、アルト」 弱弱しい作り笑顔だったが、いつもの高飛車なその物言いにアルトはほっとした。 このままいつもの軽口を叩き合うものだと思っていた。 だから、彼女の口から出た次の言葉は、アルトをひどく動揺させた。 「私、もう歌うのやめる。……歌わないわ」 意味を理解できないでいるままに、シェリルは彼の胸に飛び込んでくる。 言葉を見つけられず、震える彼女を抱きとめてやるしかできなかった。 「もう、歌わないの」アルトの腕の中で、シェリルはか細い声で繰り返した。 歌わない、と告げた時の、彼の表情が棘となってシェリルの心に刺さる。 そう、私だって自分の言葉に驚いてる。私が歌わないなんて。 だからお互いの顔が見えないように、シェリルは彼の胸にしがみついた。 「お前……。『歌わずにはいられない』って、言ってたじゃないか」 そうね、私の身体からはいつだって歌があふれていた。 歌うことが全てだった。歌うことで私は、シェリル・ノームでいられた。 その私から歌を取り上げたら、そしたら私は――。 「私は、何なのかしら?」 グレイスの“あなたはもう用済みなの、元銀河の妖精さん”という言葉が 耳の奥でこだまする。 頬を伝う涙に押されて、様々な感情が堰を切ったように流れ出しシェリルは叫んだ。 「私は、何なの!!」 不意に背中に回された腕の力が強まって、シェリルは顔をあげる。 そこには優しくまっすぐな瞳で自分を見つめるアルトの顔があった。 「お前は、お前だろ? シェリル」 何があったのか、とは聞けなかった。 それほどまでに、初めて見る彼女の泣く姿は衝撃的だった。 普段の気丈な彼女からは想像もできなかった、消え入りそうな声と震える肩。 搾り出すような「私は何?」という言葉に、アルトは胸の内から湧き上がる感情を そのままに、シェリルを抱く腕に力を込めた。 「お前は、お前だろ? シェリル」 涙を湛えたまま見上げる瞳に優しく笑いかけながらアルトは続ける。 「自信家で、プライドが高くて、世間知らずで、わがままで――」 「なっ?」 「けど、プロ意識は尊敬する程で、稀にではあるが真理をついたことを言う」 「……稀に、は余計じゃない?」 「出会ってからそんなに長い時間は経ってないが、オレの観察眼はいいトコついてる と思うぜ」 頭にポンと手を乗せると、シェリルは安心したように少しだけ笑った。 「それがオレの見てきたシェリルで、そしてオレは――」 そうだ、オレはずっとそんなお前のことを……。 次の言葉を告げようとしたアルトの腕の中が、ふと軽くなった。 「って、おい! シェリル!!」 気を失ったシェリルを、アルトは苦心してSMSに運び込んだ。 ミシェルに第2の“女を連れ込む裏技”とやらを無理やり聞かされて迷惑していたが 覚えておいて本当によかったと思う。ふと思い出して、ドアにハンカチを挟んだ。 ベッドを覗き込むと、熱が上がったのか額に汗が粒となって浮かんでいる。 濡れたタオルで拭いてやると、アルトはふうと息をついて壁にもたれかかった。 ――体調は回復していない。そして先程の尋常じゃない様子は……。何が起こっている? ギャラクシー、そしてフォールドクォーツ。シェリルにも何か……。 「……んっ」 ベッドから掠れた声と身じろぎする音が聞こえて、アルトは思考を中断しガードに手を掛けた。 「気がついたか?」 「ここ、は……?」 未だ朦朧とした様子で、シェリルは尋ねる。身を起こそうとするのを制止したが 大丈夫だと聞かないので、アルトはその背中に手を添えた。 「オレの部屋だ。ったく、これで2度目だぞ」 「そっか。前にも、こんなことあったわね」 「前にも、って。あのなぁ、あれからまだ数日しか経ってないんだぜ」 呆れ顔のアルトに、ゴメンとシェリルは胸の前で手を合わせた。 「運び込むのにどれだけ苦労したか……。しかも大事なこと言う寸前に倒れられるし」 「大事なこと?」 お前はお前だ、と笑顔を向けてくれたアルトに安心して、張り詰めてた心が緩んで。 その後、何か言ってくれたような気がする。とても聞きたかった、言葉。 はっとした表情のシェリルに、拗ねた顔をしながら、まぁ今更誤魔化すのもカッコ悪いし とアルトは照れたように視線を逸らす。 「前に、『心配するのはどうして?』って、お前聞いたよな?」 「……うん」 “当然だろ?”という言葉が嬉しかった。そんなこと、初めて言われたから。 「あの時は、どう答えていいのか分からなかったけど、今は……」 だから、もっと欲しかった。答えを聞きたかった。だけど。 「はっきり自覚した。オレは、お前のこと――」 「言わないで」 シェリルは人差し指をアルトの唇に押し当て、頭を振った。 「っなん!?」 「嬉しい。ほんとはすごく聞きたい。でもダメ。今聞いたらフェアじゃない」 告白を2度も遮られ、怒りがフツフツと込み上げたアルトだったが、シェリルの言葉に 思わず苦笑いをした。 「お前って、ほんっっっとうに意地っ張りだな」 「そうね。自分でも呆れるくらい。だけど、これも“私”なのよね」 二人はしばらくお互いを睨むように見つめていたが、やがてクスクスと笑い出した。 「ありがと、アルト。……わがままついでに一つお願いがあるんだけど」 「なんだよ?」 シェリルはすっと真顔に戻り、アルトの首に腕を絡める。 「抱いて」 驚きのあまり硬直するアルトに口付けし、シェリルはそのままベッドに引き倒した。 過去の触れるだけのものとは違う、舌を差し入れ絡ませる濃密なキスに アルトは狼狽し、呼吸するのを忘れていた。しばらくされるがままになっていたが 息苦しさで我に返り、慌てて力任せに身体を引き剥がす。 「お、おまっ!! 何考えて――」 抗議の声を止めたのは、困惑の色が滲んだシェリルの懇願する瞳だった。 ――こうなることを望んでいないわけじゃない。欲望だって、人並みにある。 けれど、今こうするのは、まるで弱みに付け込んでいるようで……。 行動を決めかねているアルトを見透かしたように、シェリルは彼の胸に手を添えて コクリと頷いた。そして静かに瞼を閉じる。 彼女は本当は、もっと別のものを求めているんだろう、とアルトは理解した。 けれどそれが何かは本人にも分かっていないし、恐らく自分にも与えられるものじゃない。 代価行為に縋ろうとしている自分たちをもどかしく思いつつも、こんな未熟さだって 必要なことなのかもしれない、と思った。 額にかかるピンクがかったブロンドの髪を掻きあげると、シェリルは瞼を薄く開いて 不安そうに揺れる瞳を覗かせた。彼女を安心させようと、アルトは自然にゆっくりと 唇を重ねていた。 はじめは啄ばむように、けれども次第に深く熱を帯びてくる。挑発的に絡む舌の動きに 煽られて、アルトはワンピースの裾がかかる膝あたりに右手を差し入れ、身体のラインに 沿って捲り上げた。露になった太ももの感触を愛でつつ、合わさった唇を離して のけぞった白い首を吸うと、シェリルは「……ぁ」と息を漏らす。 左手で背中のファスナーを下げ、ホックを外し、一気に脱がすと、滑らかな象牙色の肌が 目に眩しく映った。その美しさに見惚れていると、シェリルの腕が隠すように胸元の上で クロスした。 「あんまり、ジロジロ見ないでよ」 頬を赤く染めながら、シェリルは恥ずかしそうに視線を逸らす。この部屋の照明はONか OFFしかなく、彼女の身体は煌々と光に照らされていた。 いまさら、と笑いながらアルトはシャツを器用に脱いで、肌を合わせる。 「人の肌って、すごく……気持ちがいいのね」 身体のあちこちに触れる唇や細く長い指に敏感に反応しながら、シェリルは囁くように 言った。時々沸き起こる眩暈にも似た快感に身を震わせつつ、彼女は己の欲を解放する。 ――もっと、もっと感じたい。グチャグチャに貪りあって、ドロドロに溶けて……。 アルトが入ってくる痛みをも歓喜に変えて、シェリルは背中に回した手に力を込めた。 ――そうして、また生まれたい。あなたの腕の中で、新しい私に。 身体を揺らすリズムに合わせて彼女は高らかに声をあげた。 「っあ、は……、アル…ト、もっとギュって、抱きしめて」 シェリルの言葉にアルトは優しくキスを落として、隙間がなくなるようにお互いの身体を 密着させる。そしてそのまま二人は上りつめて、やがて絶頂を迎えた。 恍惚に浸りながらも事後の気恥ずかしさを覚えて、シェリルはシーツを手繰り寄せ 反対側に身体の向きを変える。 アルトはまだ荒い息を整えつつ、そんな彼女を背後から包み込んだ。 すると、アルト、とシェリルはクルリと向き直って声を掛ける。そして彼の胸に 顔を埋めて頬を摺り寄せた。 「私、納得できないステージには上がらないわ。だから、もう歌わない」 何も言わずに待ってくれるアルトに微笑んで、だけど、と言葉を続ける。 「いつか、もう一度、歌おうと思えたら……。うん、きっと思えるから、その時は」 あなたに聴いてもらいたい。一番に。あなただけに、届けたい。 「そしたら、聞かせてね。今日聞けなかったあなたの言葉」 ねだるような上目遣いの視線に赤面するも、アルトはすぐさま意地悪そうに片方の唇の 端を持ち上げて目を細めた。 「さあ、どーだかな。それまでに心変わりしないという保障はないね」 「それはないわね。だって私はシェリルだもの」 そう断言すると、シェリルは優雅に笑って目の前のしかめっ面にキスをした。 〈了〉 以上です。 自分が19話を見ている夢を見たわけですが。そのまま文章にするのって 難しいですね。 それでは、失礼しました。
https://w.atwiki.jp/fairy-waterfall/pages/26.html
944 名前:fusianasan 投稿日:2009/01/06(火) 00 26 05 寸止め編 「雪露、そろそろ帰った方が・・・」 「私、今夜は帰らない」 シェリルがアルトを見据えたが、アルトは、目をそらした。 「お前、意味分かって言ってんのかよ。からかうのはよせ」 シェリルはアルトの肩に、頬をすりよせて問う。 「だとしたら、有人はどうするの」 「ダメだ」シェリルの両肩をつかみ距離をとるアルト。 「どうして!私のこと、もういらなくなっ・・・」 シェリルの空の瞳から涙があふれ出し、アルトはあわてて抱きしめ、涙を吸った。 「そんなの、あるわけ、ないだろ・・・。俺のけじめの問題だ・・・」 シェリルの涙が乾くまで抱きしめていた。 「落ち着いたか?」 シェリルを胡坐の間にすわらせ、後ろ抱きにして、あやすことにした。 着物は肌の感触が分かりにくいのがありがたかった。 「うん・・・。ごめん。アルト」 「お前、急にどうしたんだよ」 「別に、急ってわけじゃないわ。昔、アルトと初めてした時に責任取れるようになったら、 ってずっと思ってたから。別に、今はしても、(薬飲んでるから)デキないけど、けじめとしてね。」 「はぁぁぁ、雪露。俺はまだ責任取れるご身分になってないんだが・・・。」 「大丈夫!・・・私が責任取ってあげるから。ね」 振り向きそう囁くと、シェリルは身八ツ口へとアルトの手を誘い入れた。 薄布越しにやわらかな乳房がふれ、思わず握ってしまう。 ふよふよと柔らかい。 ふよふよふよふよ。 突起らしきものも、手に触れ、くりくりといじってみた。 「ん・・・」 いつの間にか鼻息の荒いアルトに、シェリルも背を預け、声を洩らす。 目の前には、真っ赤な唇。 それを吸う幸福をアルトは覚えていた。 誘われるように、かぶりついた。 アルトの舌をするりとシェリルは迎え入れ、絡ませあう。 アルトに乳房を揉みしだかれ、上ずったような息になったシェリルは 交換して飲みきれなかった唾液を口の端から漏れさせていた。 シェリルの肌に触りたい。 もっと、感じたい。 シェリルをそのまま、畳に押し倒した、が 目の前に黒い帳が落ち、アルトは我にかえった。 「「・・・あ」」 シェリルが勢いあまってアルトの髪紐をほどいてしまったのだった。 「・・・雪露。これ以上はダメだ」 「え?自分だってヤル気だったくせに!」 「お前のこと大事だから、こんだけ我慢してるんだ!察しろよ!」 「有人の、わけの分からない、意地なんて!」 「~~~んもう!私だって、こんな事までするのが精いっぱいなの察して! 今回は、有人に譲るわ!」 シェリルはぎゅうーっとアルトに固く抱きつくき、サラサラの髪の毛を堪能した。 「もう、迫ったりしないから、また、遊びに来てイイ?」 「いいけど、なるべく、露出の少ない恰好で来いよ。俺だって大変なんだから」
https://w.atwiki.jp/fairy-waterfall/pages/95.html
659 名前:fusianasan[sage] 投稿日:2010/04/19(月) 15 05 50 すみません、流れが変わっているのに、アクセス規制のおかげでKYな 623です 一応書きあがったので流してみます… 注意書き付きなので、そこも見てから進んでください 何分初書きなのでお見苦しいところは脳内補充でお願いします ※注意 母乳ネタがあります 苦手な方は読み飛ばしてください ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ それは唐突なお願いから始まった。 「アルト、今手、空いてる?」 「手か?」 何をするでもなく、携帯を触っていた手を、アルトは自分の顔の隣に挙げた。 寝る前の少しだけ間伸びた時間。先ほどまで行っていた作業は終了し、アルトにバトンタッチをしてシャワーを大急ぎで浴びてきたシェリルは、部屋の中の様子を見て何かを判断したらしかった。 「うん。…ちょっとね」 「なんだよ」 「うーん」 何か言いにくいことなのだろうか。まだ少しだけ上気している顔を、困ったように歪めて見せる。 「あのね、マッサージしてほしいの」 「は?」 「マッサージ。ちょっとはっちゃって…」 「あー…」 納得したのか、どうなのか。どっちつかずな声を返すと、アルトはそっとシェリルによった。 風呂上がりのほてった体に上気した頬。シャンプーの香りにほのかにシェリル自身の香りが混じる。 年相応な艶やかさと、少女のような無防備な表情を包み込むように、アルトの両手がシェリルの頬を包み込んだ。 「まぁ、休みなしだったしな」 「当たり前なんだけどね」 肩をすくめて見せるシェリルをそっと引き寄せる。 まだ湿り気の残る髪を撫でれば、ポツリと落ちた声がアルトの肩ではねた。 「だって、私はママなんだから」 そっと肩越しに部屋の奥に視線をやれば、小さな小さなベッドと、その中ですやすやと眠る冗談のように小さな姿がある。 まだおぼろげにしか生えそろっていない髪の色は、今シェリルの目の前にある髪の色と同じだ。 しかし、2人とも知っている。 今は夢を見つめている瞼の奥のひとみは、シェリルと同じ空の色だということを。 二人の愛の結晶であるソラは、先ほどアルトにおしめを変えてもらってから、吸い込まれるように眠りについたのだ。 「そうだな、だけど」 アルトもそっと後ろを振り返る。 「母親である前に、一人の人間だろう」 「まぁね」 だから頼んだのよ。そう少し照れたようにしてシェリルははにかんだ。 どうやら母親として頑張ると決めた手前、体調不良すら訴えにくかったらしい。 そういう姿もシェリルらしいと思う反面、身体のことは心配になる。 「ソラも寝たことだし、マッサージくらいしてやるよ」 「そうね…あと2時間位は寝てくれそうだし」 「昼間に親父たちが来てたからな」 「なぜか矢三郎さんが抱っこしたら大泣きだったものね」 「…」 首をかしげるシェリルをもう一度引き寄せ、アルトは自分にもたれかけさせる。 「ベッドでするか」 「寝ちゃわない?」 「夕方に昼寝したからな、大丈夫だ」 「そうね。まったく同じ寝相だったから笑っちゃった」 くすくすと笑いながら、シェリルはベッドへと腰を下ろした。 いつもならば、その場で恋人のころに戻ったような時間を過ごすはずだった。 ひとまず、シェリルはそのつもりだったのだ。 ただ、このときのシェリルは知らなかったのだ。 冷静ではなかったというべきか、それとも疲れがたまっていたというべきか。 もっとも全てが終わって銀河の妖精が言った言葉は。 「油断したわ…私としたことが…一生の不覚よ」 という、とても大恋愛の果てに結ばれた夫相手に言うようなセリフではなかったのだが。 「じゃ、そこに座って」 「はいはーい」 広いダブルベットの中央に座る。 カーテンに遮られた薄い闇に、ベッドサイドのオレンジの明かりがシェリルを映し出す。 背中を向けているために顔はわからないが、その声ひどくはしゃいでいるのがわかった。 いつまでたっても少女めいた反応に、口元を綻ばせながら、アルトもベッドに上がる。 「優しくしなさいよ」 「ああ」 鼻歌が聞こえてこないのが不思議なくらいに、嬉しそうな背中を抱きしめたい衝動を押し殺し、両腕を伸ばす。 「慣れてないからな…痛かったら言えよ」 「もちろんよ」 とはいっても、基本的には器用アルトなので、シェリルもリラックスし、身体の力を抜いたのだが。 「?!」 すぐに抜いた力が、身体に戻る。 恐る恐ると、信じられない思いをそのままに、ゆっくりと視線を下ろした。 というより、信じたくないという気持ちのほうが大きかったのだが。その気持ちはきれいに裏切られることになる。 「確かに張ってるな」 「は?」 「実は、結構きつかったのか?」 「…えっと」 アルトの両手の中にあるのは、シェリルの両胸だ。 そして、シェリルがマッサージを頼んだのは、肩のつもりだったのだが。 どこで間違ったのだろう。軽く首をかしげて見ても、よくわからない。 ただ、互いに疲れていた状態で、最後の段階になるまで見解の相違に気づかなかったのは、ある意味しょうがないのかもしれないが。 「んっ」 シェリルの唇から甘い声が上がる。 アルトの指が動き始めたのだ。 労わりの動きも、場所が場所なだけに別の意味合いをもつようになる。 「あぅ」 「痛いか?」 「ち、ちが…て、こんなのどこで…」 「お前の持ってた雑誌だけど。おまえが読んどけって言ったから…」 「あっ…確かに言ったけど…」 そういう意味では…。 必死に言葉を紡ごうとしたシェリルの口から飛び出したのは、明らかな嬌声だった。 両手で揉みし抱かれたり、寄せられたり、撫でられたり。 確かにアルトが読んだというのは、それはシェリルも勉強した、母乳がよく出るようになるというマッサージだ。 そういうものがあるとすら知らなかったシェリルからすれば、かなりのカルチャーショックではあった。 人工保育がほぼ当たり前だった故郷とは違い、母乳で育てるという行為は、アルトからすれば自然で、シェリルからすれば不自然に近いもので。 アルトがせっせと作ってくれる栄養満点の料理も支えてくれた生活も、知らない知恵があふれていて、毎度感心させられたのだが。 父親の心構えも一緒に乗っていたので読書を進めたのだが…まさかこうなるとはといった感じである。 だが、あっけにとられてしまっていては、流れに流され、かなりまずい状況になりつつある。 一児の母になったとはいえ、まだ身体は若く、刺激に弱い。 しかもそのマッサージは、どこかアルトから教え込まれた愛撫と似ている。 揉んだり撫でたりするだけならばまだしも、先端の一番敏感な部分までも刺激を与えるようになっている。 ジワリジワリと体の熱が高まり、甘い息が隠しきれずに口から洩れる。 練炭に火がつくように、爆発的ではない確実な火が理性を焼くのだ。 このまま流されるのはまずいと、シェリルはアルトの手を押さえた。 「ま、まってアルト」 「ん?やっぱり痛かったか?」 怪訝な声と一緒に、肩にアルトの顎が乗る。 後ろから抱きすくめられるような状態にさらに熱が上がりかける。 「違うけど」 「なんだよ」 少々不満げに手を止めたアルトにホッとしつつ、シェリルは体の熱を納めることに集中する。 が。 「でも、こうやって触るとやっぱりでかいな…」 「あぁっ!」 先端をこねられ、背中がそった。しかし、腕の中で固定された状態では、まともに動くことすらままならない。 肩のほうから、アルトの視線が自分の胸に集まっているのもわかるのだ。 「なんだよ、気持ちがいいのか?」 からかうような声色にむっとしつつも、アルトの指先はいたずらにシェリルの熱を追い上げる。 「そういえばさっきから、ここ、ずいぶん硬くなってるみたいだな」 「んぅ…あ…」 「マッサージ、なんだろ?」 「そ、そうよ…だけど…」 明らかに確信犯の行動を取られ、唇をかむ。これ以上理性をとろけさせるわけにはいかない。 しかし。 「あ…アゥ…んぅっ」 アルトの両手は徐々にマッサージとか違う動きで、シェリルを追い詰める。 アルト自身に仕込まれた身体は、容易に火がつき、燃え上がり始める。 だが。熱をあげてる張本人は、顔を見なくてもわかるほどに人の悪い笑みを浮かべているのだ。 「サイズ、いくつになったんだ」 「し、知らないわよっ!!あっ!」 「ふーん」 意味深な相槌が聞こえた瞬間。 ちゅくり。 耳朶に粘着音を立ててざらりと舌を立てられた。 「んっ!」 「気持ち悪いのか?」 「悪く…はないけど…」 「うん?」 意地悪だと、シェリルはうつむいて首を振った。 付き合い始めて結婚して。 ソラが宿ったとわかった後は、たがいにそういう状況を避けてきた。 しかしだ。若い二人では約1年近く、肌を重ねないことなど今までなかった。 互いを求めているのはアルトも同じはずなのに、なぜ自分の口からのみ言わせようとするのだろう。 恥ずかしいことは分かっているはずなのだ。むしろわかってて行っているからなおさら腹が立つ。 促されるように優しく耳朶を舐めしゃぶられる。 そこも快感を感じる場所だと、教えたのもアルトなのだ。 もう後戻りはできないほどに身体はほてり、強い刺激を求めている。 このまま流されてもいいのだろうかと思った瞬間。 「うぁ」 「え?」 ずっと胸をいじっていたアルトが短く声をあげた。 何だろうと思えば、アルトの指が止まっている。つまんでいるのは、ガウン越しのシェリルの果実だ。 その先端が、ジワリと湿っている。 「あ」 「出るのか…これって」 「し、知らないわよ」 アルトが素早く動く。ほぼ同時にシェリルも動いたが、動揺したシェリルのほうが、一歩遅かった。 「きゃっ」 強く抱きすくめられ、首筋を舐められる。 背後からできる、あらゆる手を使って、アルトはシェリルを責め始めたのだ。 強い刺激が加わるたびに、シェリルの息は乱れ、甘い息は隠しようがなくなっていく。 「シェリル…気持ちいい?」 「し、知らな…っ」 否定しようとしても、刺激を受けたせいか、アルトがあふれさせた雫が、シルクのガウンの胸元を色濃く変えていく。 身体を引きはがそうともがいて、やっと膝立ちになれたが、アルトは体をすべて使って快感を与えてくる。 逃げ場すらない状況で、シェリルは徐々に高められていった。 最後の理性が、アルトへの降伏を進める。意地を張りすぎた結果を、シェリルは身にしみているのだ。 「あ、アルトォ…」 「ちょ…その顔…」 が。 この時ばかりは、幸福という名の懇願が、別の方向へと向いたらしい。 アルトの顔がゆがみ、片腕が手早くシェリルのガウンの裾をまくりあげる。 胸元から動かない手は、胸をはだけさせ、もはや隠しているのは下半身の前だけという状態になってしまった。 抵抗する間もない、手早い動きにあっけにとられる暇すら与えられず。 「あんっ」 「うわ…洪水…」 後ろから差し入れられた手は、シェリルのショーツ越しに、一番隠すべき秘部をひと撫でした。 「あっ、ダメっそこは…ひゃんっ!」 「だめ?こんなになってるのに?」 ぐちゅりと、先ほど耳を舐められていたような水音が、膝立ちになっているせいで見えない部分から響いてくる。 耳を塞ぎたくても両腕ごと拘束されている状態では、それすらもかなわない。 シェリル自身も気づかないうちに、アルトを求めた体はショーツを絞れるほどに蜜をにじませていたのだ。 「上が洪水、下も洪水…か。なぞなぞにもならないな」 「…はぁ?」 妙に場違いなことを言われた気がしたのだが。 シェリルが聞き咎める前に、ショーツ越しに熱い熱が押し当てられた。 敏感な部分に刺激を与えるそれを何かと聞くことは、この場では愚問でしかないだろう。 押し当てているのはアルトで、シェリルの身体はその熱を恐ろしく覚えこんでいるのだから。 「はぅ!」 「ごめん…ちょっと我慢できそうに…ない…」 アルトの熱い息が首筋を打つ。それすら快感を感じることに軽くあきれるが。 「ああっあ…あっ…ある…と…ダメぇ…」 一枚の布越しとはいえ、激しくアルト自身で陰部を擦りたてられれば、快感に熟れた身体にはたまらない。 甘い疼きと少しだけの切なさを伴いながら、強烈な快感が脊髄を駆け上がり、脳に直接焼きこまれる。 時に陰核を、花弁を刺激しながら、熱が何度も往復していく。 「シェリル…シェリル…どうしよう…挿れたい」 アルト自身も快感を感じている時特有の、かすれた声がシェリルの耳を打つ。 合いの手のように、派手な水音が混じる。 荒れた息と艶めいたセリフにもシェリルは体を震わせたが、はたと我に返る。 「い、入れたら…ダメ…!今日は」 周期的に、今日は危険なのだ。今は眠っているソラはまだ幼いとすらいえない状態で。 弟か妹がいてもいいとは思いつつ、今はと思いとどまっていたのだが。 「無理だ…お前がほしい」 「その台詞ずるい…」 あっけなくその思いは崩れてしまった。 はぁと吐かれた息ともに、シェリルの力が抜ける。 アルトに持たれると、優しく額に張り付いた髪をかきあげられた。 「大丈夫だ。おまえたち全員をちゃんと守って見せる」 「約束よ?」 少し振り向けば、闇の中でもわかる琥珀色が、弓なりに細くなる。 「ああ」 ひときわ強く抱きしめられ、吸い寄せられるように唇を重ね合った。 何度も何度も浅く深く口付けをし、互いの舌をからめる。 やっと離した時には2人とも息が上がっていた。 「まったく、なんて顔してんだよ」 「知らないわよ」 そっと愛おしむように頬をなでるアルトにシェリルがそう言って見せると、額に口付けが下りてくる。 「すごく、きれいだよ」 「え?」 囁くように言われ、急には理解できなかったシェリルだが。 「ああああぅっ!」 急に穿たれた灼熱に意識を持ってかれた。 「ちょ…ちょっとまっ」 穿たれたと認識するが早いか、激しい律動に突き動かされる。 思わず休止を願うが、聞き届けられない。 「悪い…無理だ…お前が散々あおるから」 「あおってなんか…ってきゃあ!」 前後を反転され、ベッドに押し倒される。 改めて見上げたアルトは、初めて体をつなげた時のように、余裕がなく。 それほどまでに自分を求めながらも、必死に我慢しようとしてくれていたのかと、シェリルの胸に温かいものが広がる。 「アルト…」 そっと両手を伸ばせば、身体をかがめてくれる。 ゆっくりと近づいてきたその唇にそっとキスをし、シェリルは少しだけ笑った。 「本当に、幸せにしないと許さないんだから」 「もちろん」 眼の前で汗にぬれた顔がにやりと笑う。 シェリルも次に来る快感に合わせて、身体の力を抜いた。 「あん、あっあっ」 がくがくと腰が浮くほどに深く貫かれ、まるで焼印を押すかのように奥へ奥へと熱を叩きこまれる。 「アルトっ…アルトォッ…激しい…」 「いやか?」 「いや…じゃないわよ…」 「ならいいだろ」 この会話も、最後にしたのはいつだろう。すぐに思い出せないくらい前のことであることは確かだ。 快感に塗りつぶされていても、アルトのことを考えている自分がいることに気づいて、シェリルはおかしくなる。 だが、身体は快感に支配されているので、笑うことはかなわなかった。 「すげ…シェリル…まだ出てくるんだな」 「アルトが…変なことするからでしょ」 アルトの上半身が汗だくだと思ったのは、少々勘違いだったらしい。 確かに動いているという汗もあるはずなのだが。 「あっ、ダメ、それぇ…っ」 いたずらにアルトが吸ったり引いたりと、胸に刺激を与えるので、時折母乳が2人を濡らしているのだ。 もともと出が良かったところに、アルトが研究を重ねた料理をふるまうおかげで、良すぎるくらいだと思っていたのだが。 それはどうやら間違いではなかったらしい。 シェリルが変なことを感心していると、アルトの舌が形をたどるように双丘をたどっていく。 「…舐めてもあんまりおいしくはないな」 正直な感想なのだろう。シェリルも勉強の過程で牛乳などとは違うものだということは知っている。 だが。 思わず飛び出たのは、今のシェリルならではの言葉だった。 「ちょっ、舐めちゃだめよっ!!ソラのなんだから…!」 「は?」 「だって…ソラのご飯よ…それ」 「…」 一瞬、二人の間に沈黙が下りる。うつむいてしまってアルトの表情はわからない。 間違ったことは言っていないはずで、なぜ沈黙が下りたかもシェリルにはよくわからない。 どうしたのだろうと、髪をかきあげようとした瞬間だった。 「ああっ!」 ギリギリまで引き抜かれ、最奥まで一気に付きいれられたのだ。 「は…はぅ…あっ…な…」 「ちょっとムカついた」 「え…?」 「お前は俺のだ。今は…それだけだ」 「えっ…ちょっとそれ…あっ」 抗議も質問も受け付けないと言わんばかりの律動に、シェリルはただ言葉にならない喘ぎを漏らすばかりだ。 アルトは眼の前で揺れる二つの豊かな果実にかじりつく。 独特の感触と今は蜜までしたたらせているあたり、本当に果実のようだ。 だが、その果実からシェリルに快感が伝わる。弱い部分を全て何度も何度も追い立てられ、絶頂はもう近い。 シーツを握りしめた指先が真っ白になる。逃がせない熱が、涙となり頬を伝った。 「アルト…もうダメ…」 「俺も…ちょっともう…」 そう言って、アルトがひときわ深く強く、シェリルを突き上げた。 空に放り出されるかと思うような衝撃が、意識を叩き、一瞬だけ気を失う。 しかし。 「あっ…」 体内に感じる懐かしい熱い流れを感じ、そっと口角をあげた。 そんな妻に、アルトも顔を近付ける。 2人の顔が近づき、甘いピロートークが始まるかと思った瞬間。 「アアーン!」 脊髄反射を促すような声が、思い切り響いた。 「大変!ソラが!」 「え、あ、おい!」 先ほどまでの甘い空間はどこへやら。 アルトを突き飛ばさん勢いでシェリルはガウンをはおりなおすと、急いで部屋を出て行ってしまった。 「…おい…」 後に残されたアルトはといえば。 怒るわけにも、拗ねるわけにもいかず。 ましてや邪魔をするわけにもいかず。 「しょうがないか…」 と、無理やり自分をなだめベッドに横になった。 後1時間もしないでまた戻ってくるシェリルを、眠りにつくくらいまで抱きしめるのは、自分だけの特権だと言い聞かせながら。 FIN
https://w.atwiki.jp/fairy-waterfall/pages/157.html
5 名前:fusianasan[sage] 投稿日:2012/04/03(火) 19 50 47.25 新スレおめでとうございます♪…という訳で小ネタ投下です。 取り敢えずタイトルにイツワリありですが気にしない方向でお願いします。 アルトさんは一見臆病なshyboyだけど振り切れると色んな箍が外れちゃうと思うのです。 「あっ…やだアルト、やだ、やめて…!」 「―――シェリル…」 甘い吐息を含んだ抗いの声が耳朶を擽る。その声さえ他人に触れさせるのが惜しくて 俺は柔らかな唇を自分の唇で塞いだ。そのまま角度を変えて深く深く… しっとりと温かい口腔内を舌先で蹂躙して行く。 「ん…ふ、やぁ…んっ」 「…はぁ……。こんなに濡れてるのに…イヤか?」 「っ、いやぁっ…!―――あ、んふ…」 そうして重なった唇を思うままに味わいながらも、指先はその動きを止める事なく しとどに濡れた彼女の内側をかき混ぜ続けた。2本の指に絡みつく愛液が、 抗いの言葉に反する様に、シェリルが俺を求めてくれている事を伝えて来てくれる。 ―――挿れたい…もう我慢出来ない。彼女の奥の一番大事な部分を 自分の猛った肉体で突き上げて、かき回して、めちゃくちゃにしてしまいたい… 獰猛な雄の衝動に突き動かされるまま、俺は自分の体でシェリルの膝を割った。 「あ…お、お願いアルト……あたし…は、初めてなの。だから…」 「―――知ってるよ」 「え……」 「だから……俺のモノにするんだ」 「あっ!い、いやぁぁぁっ!!」 そのまま…何に隔てられる事も無いまま、ボトムから取り出されたソレが 精一杯の抵抗を見せるシェリルの中へと強引に押入れられて行く。 「ぁ…はぁ…っ、んぁ…いやぁ……」 「シェリル…少し、力抜けよ…」 「やっ…お、お願い、許して…離して、これ以上…は…あぁぁぁぁぁんっ」 「そんなの…無理だ……っ、許してやれない…!」 「っ…あぁ……」 淡い抵抗を試みていた薄い純潔の証を引き裂いて、これ以上ないほどに深く シェリルと一つに繋がると、その腰から脳まで駆け巡るずくんと痺れる様な甘い悦びに体が震えた。 「動くぞ…シェリル…」 「あ……やぁ…アルト……あっあぁ…あっ…」 痛いくらいにキツク締め付けてくる襞をほぐす様にゆっくりと 腰を動かすと、シェリルの唇からは吐息交じりの悲しげな声がもれた。 今も必死に俺の胸板を押し返そうとする腕をシーツに縫い付けて 苦しげな息を吐き出す唇に自分の唇を重ねる。 「んっ…ん、ふぅ…あぁっ…あぁ、いや…イヤ…」 「―――シェリル…」 「ゆるして…はぁ…っ、お願いアルト、もう…もう許してぇ…」 「っ…嫌だ…このまま…!このまま最後まで…」 「いや、いやぁぁっ!」 とろとろに溶け合った唾液の橋が離れた二つの唇を繋ぐ。 きゅうきゅうと繋がったままの腰が、今より深くて気持ち良い 部分を求めて自然とゆらゆらと動き出すのが分かった。 それでも尚、その行為を拒もうとするシェリルの体を押さえ込み 組み伏せる様にしながら…俺は彼女を貪欲に貪り続けた。 初めてのシェリルのナカは熱くて狭くて痛い位にキツク俺を締め付けてくる。 その誰にも触れられたことの無い場所に、自分の形を覚えこませる様にして 何度も出し入れを繰り返し、根元まで埋めた状態で捏ねる様にかき回した。 「あぁ…っ!あっあっ…や…だ、め…アルト!アルトぉ…!」 「シェリル…っく…イイ…っ!」 「いやぁっ…!やめて、放して…!あ、あたし…こんなのダメ…ぇ」 「良いから…お前も素直に…俺のを感じてろよ…」 「―――あ…だめ…だめ…あっ!?」 次第にこみ上げてくる甘い感覚に翻弄されながらも、腕の中のシェリルは 必死に身をよじり、覚え始めた快感から逃れようともがく。 そんな彼女の奥を自身で穿ちながら、俺は左手の指先で 充血して硬くなったシェリルの陰核をきゅっと摘んだ。 「やぁっ、そこ…っ!ダメ、あたし、あたしもう…っ!!」 「ああ…俺も……!このまま出すぞ、シェリル…!」 「え…?だ、ダメ!お願いアルト、あっダメ…あ、いや――…あぁぁぁぁんっ!!」 「シェリル…っ!」 そのまま、びくびくと震える温かな襞に包み込まれたまま… 一気に上り詰めた体はシェリルの中で大きく跳ね上がり、 彼女のナカへと穢れた欲望の雫をどくどくと注ぎ込み続けた。 「あ…あぁ…アルト…アルト…」 「これでもう…俺のモノだ…」 「や………ぁ…」 溜まり続けた欲の塊を彼女の中へ吐き出しながら、 唇が自然と満足げな笑みを浮かべるのが分かった。 もう離さない…誰にも渡さない。こみ上げる想いのままに 悲しげな吐息を吐き出すシェリルの唇を何度も啄ばむ。 そうしている間に、まだ彼女の中に包み込まれたままだった体が もう一度熱を帯び始めるのが分かった。そのまま…ゆっくりと腰を揺すり始める。 「っ…はぁ…あ、ある…と…?」 「シェリル、もう一度……」 「あっ!?あ、いや…っ、もうイヤ、いやぁぁぁっ!!」 「シェリル…シェリル!!」 「…なんて事にならない様に気をつけろよ?」 「―――オイ…」 此方が完全にだんまりを決め込んだ事を逆手に取って 滔滔と語るだけ語り尽くした後に、隣の男はにやりと笑みを浮かべた。 もちろん俺にだけ聞こえる耳元で、それこそ囁く様に続けられた妄想は ようやく一段落をしたらしい。途中で何度か「この眼鏡割ってやろうか」と 思ったこともあったが…それを結局最後まで聞いてしまったのは 俺の心のどこかに「そうなれたら」と言う気持ちがあったからなのかもしれない。 「…とにかく、俺はそんな事はしない。そりゃそうなりたくないって言えば 嘘になるが…アイツにそんな無理強いをするなんて事は絶対にしない」 「本当かな?…お前みたいにギリギリまで我慢しちゃうタイプが 振り切れちゃった時に暴走してタチが悪いんだぜ?」 「俺はそんな事はしない。大体な、アイツがそんな風に好き放題されてるタイプかよ?」 「あー…そりゃあ、そうかもなぁ…」 じろりと睨み付けた俺の視線を、ミシェルが苦笑いと共に受け流す。 「ったく…。お前な、タチの悪い冗談も大概にしろよ」 「そうかな?告白してそのままの勢いで押し倒しちゃったりなんて事は…」 「そんな事はない!断じてない!!」 「―――そっかぁ?」 どこか胡乱気な視線を投げかけて来るミシェルをもう一度睨み付けてから 俺はハンガーにかけてあったジャケットを羽織った。毎日の日課になっている事。 SMSの勤務が終わってから面会時間終了までの短い時間に、それでも 少しでも顔を見たくて、俺は毎日シェリルの病室へと向かう事にしている。 そう…ただ会いたい。一目でも、一瞬でも良いから元気そうな姿が見たい。 そこで俺の顔を見て彼女が嬉しそうに笑ってくれれば…もう、この上ない位に幸せで。 ただその一瞬の喜びの為だけに、疲れている筈の体を駆り立てられる様にして 俺は毎日―――シェリルのいる病室へ向かう事にしていた。 「今日はオレ達は夜勤で顔を出せないんだ。シェリルによろしくな」 「ああ。じゃあ行ってくる」 「…病室でオオカミになるなよ?」 「ばっ……誰がなるかっ!」 ウインクをして気障な仕草で指を振るミシェルに怒鳴り声を返しながらも、 心の片隅に小さな感謝の気持ちを抱えて、俺はSMSのロッカールームを後にする。 バジュラクィーンに守られていたお陰でこれと言った外傷もなく帰還した 自分とは、矢張り違うのだろう。ランカのお陰で命を繋ぎとめていた シェリルの体は、少しずつ介抱に向かってはいるものの、まだ完全に復調とは行かない。 出来るだけ彼女のそばにいてやりたい気持ちもあったが…今もまだ混乱の続く フロンティアを放り出して置く事も出来ないのが現状だった。 その俺の不在の間にも、ランカはもちろんミシェルやクラン、ルカやナナセ それにオズマ隊長達までが度々彼女の所を訪れてくれている。 色んな人たちがシェリルの体と心を案じてくれている―――… それは俺にとっては、やはり有難く、そして嬉しい事でもあった。 「…シェリル、起きてるか?」 「あると?」 最上階にある彼女の病室を訪れると、すぐに嬉しそうな笑顔が出迎えてくれた。 俺がシェリルの顔を見て喜びを感じているのと同じ様に、シェリルの方もまた 俺の姿を見て幸せを感じてくれているのだろうか…と。そう思うと、それだけで 体に残る勤務の疲れが消えていってしまう様に感じるのは、随分と現金な事だなと苦笑する。 「どうかしたの?なんだかニヤニヤしちゃって…ちょっと気持ち悪いわよ?」 「お前な…せっかく様子を見に来てやったのに、いきなり気持ち悪いはないだろ。気持ち悪いは」 「だって本当にニヤニヤしてるんだもの。何よ、何かエッチな事でも思い出したの?」 「ぶっ…!」 誰がそんな事!と口にしかけた瞬間、ミシェルに言われた話が脳裏に蘇った。 そのまま吐き出そうとした言葉を飲み込んで、ベッドサイドのイスに腰を下ろす。 ふわりと流れる空気に揺れるストロベリーブロンド。真っ直ぐに覗き込んでくる空色の瞳。 透き通る様に白い肌が、俺の姿を認めて少しだけ薄紅色に染まっていた。 その姿を見る度に、以前…彼女との間の距離を感じながらも、護衛として傍にいた 以前とはまた異なる思いに胸がきゅっと締め付けられるのが分かる。 そう―――…。今この胸にある想いは、自分の心を自覚出来ていなかったあの頃とは違う。 伸ばしても伸ばしてもこの腕が届かないと思っていた頃と違って…… 手が届くからこそ、どこか甘さと痛みを含んだ気持ちに胸がざわめくのが分かった。 「…アルト?」 「あ…いや、何でもない」 どうしたの?と怪訝そうな表情を浮かべるシェリルへ、俺は曖昧な笑みを返した。 思わず手を伸ばして触れたくなる衝動を押さえ込んで、持参した紙袋の中から今日の土産を取り出す。 そして袋から取り出された物を目にした瞬間、シェリルが子供の様にはしゃぐのが分かった。 「きゃあ!?何コレ何コレ!」 「見れば分かるだろ?シュークリームだよ。お前、甘いのが食べたいって言ってたじゃないか」 「いや~~~~ん!嬉しい、すっごく嬉しいわ。有難うアルト!」 「…ったく、現金なやつだな」 サイドボードから取り出した小皿にシュークリームを乗せて差し出すと いただきま~すとすぐにがぶりと勢い良くかぶりつく姿。 そんなシェリルの姿が可愛らしいと、そう素直に思う。 「や~ん、美味しいぃぃぃ~~」 幸せ一杯に笑う姿を見てるとこっちまで幸せな気持ちになれてしまう。 ああ多分これが惚れた弱みってヤツなんだな…なんて、そんな事を考えていると 自然と口元に笑みが浮かんでくるのを俺は自覚した。その間に、一つ目の シュークリームを食べたシェリルが、ほう…と粉砂糖の残る唇から満足気な息を漏らした。 「ね、でもこれ少し普通のとは違うのね。なんだか甘酸っぱいリンゴの風味がするわ」 「ああ。偶然リンゴの蒸留酒を見つけたからな、風味付けに少し使ってみた」 「使って…?」 「それと同じ酒を使って煮込んだリンゴを砕いたのもクリームに混ぜ込んである」 「混ぜ込んで…って、まさかコレアルトが作ったの!?」 「ん?ああ。…もしかして口に合わなかったか?」 「ち、違うわよ!―――すっごく美味しくてビックリしただけ」 不意に投げかけられた疑問に答えを返すと、途端にシェリルの瞳が まんまるになって驚きに小さな瞬きを繰り返した。それから「はぁ…」と、今度は 小さな諦めを含んだ溜息を漏らしながら言葉を続ける。 「本当に……どれだけ器用なのよ、アンタ…」 「なんだよ、別にいいだろ。誰かさんみたいにリンゴ剥く度に指を切るよりは、な」 「なっ…!?」 俺の言葉にかぁっと顔を朱に染めたシェリルがきゃんきゃんと口を開く前に、 手にした二つ目のシュークリームを口へと押し込んだ。思わずがぶりと噛み付いておきながら すぐにシェリルは不満げにむっと凛々しい眉をひそめて見せる。 「もう…あんまり食べると太っちゃうじゃない…」 「良いんだよ、今はまだ病人なんだから。前より痩せてるくらいなんだし」 「太って今までの服が着れなくなったらアルトのせいなんだからね。責任取りなさいよ!」 「あのバカ高そうな服なんて俺に責任取れるか。そしたら今度はダイエット食でも作ってやるよ」 「む~…それはそれで少し楽しみかも……」 ぶつぶつ言いながらも結局は嬉しそうに、シェリルはリンゴのシュークリームにかぶりついている。 「……お前って本当にリンゴが好きだよな」 「え?」 「だって、リンゴ剥いてやった時もすごく嬉しそうに食べてるし」 その姿の微笑ましさに、不意に唇からもれた言葉。けれど俺のその言葉を 聞いた瞬間に、シェリルは耳まで真っ赤になって視線を逸らしてしまった。 「シェリル?」 「っ…!アルトのバカ…そうじゃないわよ…」 「え?」 「だから…っ!アルトが剥いてくれたリンゴだから…だから嬉しいんじゃない…」 ぼそぼそと小さな声で呟きながら、リンゴの様に赤くなった顔を 俯けてしまったシェリルに――…何かがぶつりと切れる音を、確かに聞いた。 「口元…」 「え?」 「粉砂糖が、ついてる…」 「え…?あ、アルト…?」 自分でも意識しないまま言葉を発し、指を伸ばして顔を上向かせると、 そのままシェリルの柔らかな唇に舌を這わせた。ぺろりと這わされた舌先に 彼女が小さな肩をびくんと震わせるのが分かる。分かるが…止められない。 甘い砂糖を舐め取ってから、もっと甘い…わずかにリンゴとカスタードの 風味の残るシェリルの口内へと俺の舌先が滑り込んで行く。 「ん………」 「っ…あ…あぁ……」 舌と舌が絡み合い、口付けが深まる間に漏れるシェリルの切ない声… 何処か誘っているかの様なその声に、ぞくりと背筋が甘く震える。 このままベッドに組み敷いてしまいたい衝動が込み上げてくるのを自覚しながら、 俺はふわふわと逆上せた脳裏でミシェルに云われた言葉を思い出していた。 『本当かな?…お前みたいにギリギリまで我慢しちゃうタイプが 振り切れちゃった時に暴走してタチが悪いんだぜ?』 ―――ああ、そうだよ。全く、本当にその通りだ。 本当はもうずっと以前から、そうした気持ちをシェリルに抱いていた。 シェリルを抱きたい。その白い肌の至る所に自分の物だと刻みたい。 彼女の内側に自分を埋めて思うままに彼女の存在の全てを貪りたい…… 自分の気持ちを自覚するずっと前から…心の何処かで、そんな邪な気持ちを抱いていた。 自分が何者なのか分からない。男なのか女なのか、 早乙女アルトなんて何処にもいないんじゃないか…なんて。 そんな悩みを抱いていたのが遠い昔の事の様に、今ならはっきりと分かる。 自分が「早乙女アルト」と言う一人の男で―――…… 目の前にいるこの女に、どうし様もなく惹かれているんだと。 そうやってシェリルに出逢って、彼女に惹かれている自分を自覚して―――… 自覚するよりも前に思い知らされたのは『そういう事』だった。 自分が思っていたよりもずっと『男』だったのだと言う事。 好きな女の子の温かさや柔らかさを意識せずにはいられない…… 初めて彼女に抱いた欲を自覚したあの時から今も、ずっと。 (今もずっと…シェリルの存在を感じて、全てを自分の物にしたいと思っている……) 触れ合った唇から伝わる温かさや柔らかさに名残惜しさを感じながらも 唇を離すと二つの唇の間を透明な橋が繋いだ。 気恥ずかしさで頭に血が上るのを自覚しながら手の甲で唾液を拭う。 このまま抱きしめて押し倒してしまいたい―――素直にそう思う。 けれど例えベッドがあったとしてもここは病室なのだ。 流石に無茶は出来ないし、それをシェリルに強いる訳にもいかない。 「お前…早く元気になれよな…」 「え?そりゃ、その為に色々と我慢してるんじゃない」 「…だよな」 不思議そうに首を傾げるシェリルの表情を見ながら、自分の言った事に思わず苦笑する。 本当に―――…男ってヤツはどうし様もない生き物なんだと思った。 「なによ…どうかした?またニヤニヤして。なんだか今日のアルト、少し変よ?」 「ん?いや…まぁ、そうかもな」 「……何かあったの?」 ふっと零した言葉と自嘲気な笑みが気になったのだろう。 シェリルの瞳に一瞬だけ不安そうな光が揺れる。そんなシェリルを安心させる 為に「なんでもない」と軽い答えを返しながら…俺はもう一度、柔らかな彼女の 唇を優しく啄ばんだ。シェリルが元気になってこの病室を二人で出ることが出来たなら… その時には、きっと。彼女の全てを自分だけの物にしてやろうと。 ―――その事を、密かに胸に誓いながら。 以上です。微妙に他作とネタが被ってたりいきなりタイトル入れ忘れたりorz 幾つか投下したいSSも抱えてますので規制と折り合いを付けながらまったり投下したいと思います。 新スレもアルシェリ愛で一杯になります様に。 後は私信ですが…毎回読んでくれてる方、困ってる時に支援くださる方、 wiki保管をしてくれてる方に…。改めて、いつも本当に有難うございます。
https://w.atwiki.jp/macrossf-eparo/pages/247.html
829 :*Interval act* グレシェリ 多分百合:2009/01/02(金) 17 51 20 ID S/BdSoai …すみません、百合スレはラブラブっぽいので異端に感じたのでこちらに投下。 所詮インターバルなんでお触り程度のエロさです。よろしければどうぞ。 「見て、ほぼリアルタイムよ」 グレイスがネックレスの先端に仕込んであるホログラムモニターから 何処かで繰り広げられているギャラクシー救出の為の戦闘が投影された。 どの視点からなのか解らなく、ミサイルが飛交い命のやり取りが為されている。 シェリルは心配していたギャラクシーの安否よりも、先程から解る筈が無いのに あれほど大事にしていた形見のイヤリングを渡した人物を必死に探している。 「ふふ」 身を乗り出して見るシェリルにグレイスは満足げに微笑みを浮かべた。 シェリルの柔らかなストロベリーブロンドの間からは淡いピンクの先端が覗いていた。 真白き雪の様に、誰にも散らされた事のない、手間暇を掛けた美しい大輪の華 見せつけるが、己を棘で守り、手折る者を選ぶ気高さを備える美しい華 幼き頃からそんな風に育ててきた分、グレイスが僅かな庇護欲と共に感じるのは 自らの手で真っ白なその肌を、穢して嬲って虐めてみたいという嗜虐欲。 「見たいのなら、じっとしてなさい」 汗ばんだ肌に張り付いた髪を払い、弾力のある柔らかな乳房を掌で包み込む。 このツアーに進出してから、少しずつ、焦らしてじわじわ教え込み出した。 知識だけであった性の感覚を、美しい染め物を染める様にじっくりゆっくりと この若く、造形に恵まれたこの美しい生身の軀に吸収させてきた。 揉みしだくと片手では到底足りない柔らかな感覚がデータとして感じられた。 「っ、別に今じゃなくてもいいじゃない」 指先で先端のまだやわらかな蕾を挟み込み、揉まれたのに反応しシェリルは 映像越しに、恨む様に睨みつけてくる。グレイスはその表情に満足げに微笑んだ。 意思の強い宝石の様な瞳が潤み、従順に快楽に溶けて行く様を観察する。 乳房に込める力加減を少し強めると、柔らかな乳房は指の隙間から溢れた。 「駄目よ。あなたも興奮してるでしょう? 大人しくしていたら 違う回線にも侵入して、もっと近くの映像を見せてあげる」 一瞬怯んだシェリルの動揺を好機と取り、乳房を弄んでいた指を滑らし、 形のいい臍の周りでグルリと一周した後、脱ぎかけのホットパンツへと降下する。 指を掛けると脱ぎかけのそれは簡単に滑り落ちた。 肌触りの良いシルクの下着の間から指を差し入れ、隠された綻びへ侵入させた。 体温が上がっている所為か、そこは酷く熱く、幾度か前後にスライドさせると 涌き上がってきた蜜が指の滑りを助け、グレイスの動きを増長させる。 「…っ」 快感をこらえ、ホログラムに集中するシェリルは逆にグレイスの征服心を 煽り、差し入れる指の動きが更に淫らにシェリルへと襲いかかる。 「ふふ、まだ次まで時間はあるわ。存分に感じなさい」 段々息が上がってくるシェリルの開きかけた入り口の周りを酷く優しく撫で 狭いそこへと、勢い良く指を差し込んだ。 「んぅっ!」 美しく設計された女の細く長い指が繊細に出来た内部を制圧してゆく。 締めつけるざらつく内部を探ると、部分的に強い反応が返ってくる。 「ふふ。ここがいいのね」 グレイスはシェリルが息を詰めた場所へ留まり、重点的に攻める事にした。 「んっ…ぁ!」 「ほら、もっと開放的になって感じて。ほら、見つけたわ。あのパイロット君」 軽くうち震えたシェリルに満足げに見下ろし、入ってきたデータを映し出した。 ホログラムに映っていた視点が代わり、一機の機体が中心の映像へと変わる。 数機が形態を変え、その場に居るバジュラを撃ち落として行く。 「ふふ、興奮してるのね。凄く指を締めつけてるわ」 止めた指をその内側で蠢かせ、勿体振りながら攻める。 滑らかに動く細い長めの指は奥まで届き、シェリルを苛んだ。 「いや、グレイス!」 内側から何かが駆け上がってくるのかシェリルの呼吸が荒くなる。 「教えてあげる、戦場で男は凄く興奮するの」 差し込んでいた指を二本に増やしグレイスはワントーン落とした声で 喘ぐシェリルの瞳を覗き込みながら、恍惚の表情を浮かべた。 「そそり立った男のそれはとっても熱くて固いのよ」 「…んぅ…ああ!」 「想像してみて、ココいっぱいにそれを銜え込んだらどうなるのかしら?」 掻き回していたのを止め、ゆっくりとピストンを繰り返す。 「いや!」 「いや? そんなのは嘘。ここは蠢いてもっとて強請っているもの」 歪むシェリルの表情に心酔しながらグレイスは速度を早めた。 「んっ、あっ、ああ!」 早めながら要所要所でシェリルが弱い部分を攻めグレイスは微笑む。 「逞しいモノに貫かれる様を想像して、イッてしまいなさい」 攻めている方とは逆の手で、グレイスはシェリルの頬を優しげに撫で そのまま降下させると、主張をする乳房の桃色の先端を抓った。 「ーーーーっつ!」 勢い良く背が反ると、シェリルは空気を求める様に口を動かした。 「気持ちよかった?」 ぐったりと長椅子に身を任せるシェリルに着替えのタオルと下着を渡し グレイスは未だ戦闘が繰り広げられる戦場をホログラムに投影する。 「……」 答えないシェリルだが、グレイスは気怠げなその表情に満足した。 その後、暫く見入っていたシェリルだが、そろそろ再開の時間だ。 グレイスはシェリルの高いプライドを煽った。 「あなたのお気に入りのパイロット君も、がんばってるみたいね。」 「誤解しないで!私が心配してるのはギャラクシーよ! それにパイロットの仕事が戦うことなら、私の仕事は歌うことよ!」 隠してる様に見えるが、端から見ればバレバレだ。 それでも気高くステージに戻るシェリルの背中を見送った。 次はいつ、どの様に虐めて楽しむかを思い浮かべながら。 fin お粗末様でした。 初百合。....だけど、グレイスさんの場合は百合なのか謎…と思う。異端??
https://w.atwiki.jp/macross-lily/pages/43.html
ランカ受、シェリル攻 「……」 「……シェリルさん、私の顔に何か付いてます?」 「可愛い……」 「えっ?」 「ランカちゃんって本当に可愛い」 「えっ!?い、いきなり何言ってるんですか!?」 「不思議ね。今あなたを見てると、そんな言葉しか思い浮かばないの」 「私、ぜんぜん可愛くないです……シェリルさんの方がずっとキレイだし」 「そうね。あたしはキレイで、あなたは”可愛い”のよ」 「(じ、自分で言った……って、私から言ったんだけど)」 「こんな顔をずっと見ていられるなんて、幸せだわ」 「ちょ、ちょっとシェリルさん顔が近……あ、あ、それ以上はっ……」 --- ランカ攻、シェリル受 「たまには二人でお風呂ってのもいいわね」 「そうですね……」 「ん?もしかして、”コレ”が気になるの?」 「(うう、バレてる) は、はい、大きくて羨ましいなぁって」 「ランカちゃんだって、かわいいおっぱいしてるじゃない」 「かわいいって、それ褒めてませんよぅ……」 「ふふっ、なんなら触ってみる?」 「いいんですかっ!!?」 「…え?あ、ええ……(そこは赤くなって拒否するところじゃないかしら……)」 「いいんですね!?触りますよ!」 「ま、待って、待って!ランカちゃん……もう、触ってる……」 「すごい……私のと違う。弾力があってあったかくて……」 「あっ!ラ、ランカ、ちゃん……!?」(暗転) --- 受っぽいランカと受っぽいシェリル (女の子同士の他愛ない、良い意味でどうでもいいw戯れだと思ってください) 「シェリルさん!」 「なぁに?ランカちゃん」 「うーん…なんでもないです」 「んもう、なぁに?」 「……呼んでみただけです」 「ランカちゃん」 「なんですか?シェリルさん」 「呼んでみただけよ」 「もぉ、シェリルさんったら」 「ふふふっ」 --- ランカ攻、シェリル攻 「シェリルさんの手を煩わせるわけにはいきません」 「先輩の言うことは聞くものよ、ランカちゃん」 「先輩だからこそです!」 「いいから早く目を閉じて?いい子だから」 「シェリルさんこそ、早くかかんでください!」 「だめ。キスをするのは私から」 「ぜーったい!私から、です!」 「もう!そんなに私とキスしたくないの?」 「したいですけど、シェリルさんの方が背が高いから届かないんです!」 「ふふ、素直ね。じゃあ、せーので一緒にしましょうか」 「……じゃあ……はい」 「せーの。」 ---- 皆さんの作品に触発されて、勢いで書いてしまいました。 お粗末様でした。
https://w.atwiki.jp/fairy-waterfall/pages/163.html
327 名前:ダイアモンドクレバス[sage] 投稿日:2012/11/23(金) 21 07 56.68 シェリルお誕生日おめでとう!!!…と言う訳で賑やかしのSS投下です。 劇場版その後のお初のSS。その微妙な後日談が一応、『ピュアなフリしてギラギラサマー♪』になります。 ―――神様に恋をしてた頃はこんな別れが来るとは思ってなかったよ ―――もう二度と触れられないなら せめて最後にもう一度抱きしめて欲しかったよ ―――It s long long good-bye... 不意に届いた歌声。その声に導かれる様にして隣室の扉をくぐると、 囁く程の儚い声で自身の曲を口ずさむシェリルがいた。 …彼女が目覚めて俺が戻ったあの時から、それでも時間は留まる事無く流れ続け… 気付けばもう三月を刻もうとしていた。無事に退院を許されたシェリルはまだ 全力で歌う事までは許されていない物の日常には何の支障も無く、 今はフロンティア政府の方から提示されたアパルトメントで一人暮らしを始めている。 ―――いや、この表現には多少の語弊があるだろう。正しくは…日常生活には 支障があるものの、何とかアパルトメントで一人暮らしを始めている。 ある男…つまり俺の献身的な協力の下に。こう表現した方が、 恐らく正しいんだろうな…と、そんな事を思って小さな苦笑いを浮かべた。 本来はSMSの宿舎を出て、自分で部屋を借りて…其処でシェリルと共に新しい生活を 始めようと俺は考えていた。あの戦いの後…絶対的な庇護者を失ったシェリルは、 一人ぼっちになってしまったから。そんなシェリルに寂しい想いをさせたくない と言う気持ちもあれば『母』を失った彼女の生活能力が壊滅的だったと言う リアルな事情もある。それより何より…俺自身が。何度も口にした言葉の通り、 シェリルを一人ぼっちにしたくなかった。 だが、戦時に命を掛けて歌ったと云うものの…何事も全てが単純に回らないのが 政の難しい所なのだろう。一時期とは言えスパイ疑惑を掛けられ更には死刑宣告、 その後のアルカトラズ脱走まで『仕出かした』シェリルは、今もフロンティア政府に 半分身柄を預けられている状況だった。その一環が今のこの状況…政府が指定した アパルトメントでの一人暮らし、と云う事になる。とは言え、彼女の功績自体は 政府側も認めざるを得ないのだろう。与えられた新生活の場は、 環境的には決して悪い物でも無かった。 そしてそんな環境に甘える様にして――…一応部屋自体はSMS宿舎に残しているものの、 俺は毎日の様に献身的に彼女の部屋に通って、色々と世話を焼いているのだった。 「通い妻」少しだけ古めかしい言葉が、以前シェリルが口にした 「良い嫁になるわよ」と云う言葉と同時に一瞬だけ脳裏を過ぎる。 そんな自分にまた苦笑しながら、俺は彼女に声をかけた。 「…哀しい曲だな」 「だって、別れの曲ですもの」 俺の気配は既に感じていたのだろう。背後から掛けられた声に驚いた素振りも見せずに、 シェリルは小さく微笑んで見せた。今も半渇きのままの髪の毛を軽くいつもの場所で 結い上げながら、シェリルの傍へと歩み寄って行く。そして静かに…両手の中に 華奢な体を包み込んだ。背後から伝わる温もりにシェリルの唇からも ほぅ…っと小さな溜息が漏れる。 「何よ急に…どうしたの?何か不安になる事でもあった?」 「ああ。あったよ…お前が、泣いてるんじゃないかと思った」 「バカね。今までだって何度この曲を歌ってきたと思ってるのよ …今更、こんなフレーズで泣いたりなんかしないわ」 「そうか……」 けれど、続いてその唇から出てきた言葉は相変わらずの強がりな言葉で。 そんな彼女の調子に合わせながら、俺はもう一度抱きしめる腕に力を込めた。 俺だって彼女の全てを聞かせてもらっている訳じゃあない。だけど…彼女が この曲に込めた想いは、漠然とだが理解しているつもりだった。 失ってきた大切な人たちに向けて――写真でしか知らないという祖母や…。 記憶に殆ど残っていない両親や…。今はもういない彼女の『母』に向けての想いが、 恐らくこの曲には込められているんだろう。だからなのかもしれない。 さっき、ダイアモンドクレバスを口ずさんでいたシェリルは、 行く場を失って途方にくれた小さな子供の様に見えた。 「グレイスの事をね…少しだけ思い出していたの」 「―――ああ…」 そして、俺が『察している』事をシェリルもまた察したのだろう。 少しだけ口調に躊躇いを含んだまま、それでもゆっくりと言葉を続けた。 普段は他人には決して見せないだろうその弱さを、躊躇いながらでも 伝えて来てくれる事が…今の俺にはたまらなく嬉しい。 だからこそ、そんなシェリルの弱さを受け止められる自分でありたいと…そう思った。 「グレイスが傍にいてくれるのは…あたしとの契約だからと思ったの…。 ランカちゃん…風の導き手が見つかるまでの代わりになるって契約をしたから、 だからグレイスはあたしの傍にいるんだって…ずっとそう思ってた」 「そうか…」 敢えて余計な事は口にせず、ただ静かにシェリルの言葉を受け止める。 次第に震えを帯びていくその言葉が胸に痛い。それはシェリルが抱えた痛みの ほんの一部に過ぎない筈なのに…それでも彼女の口から漏れる言葉は、 きりきりと俺の胸を切なさで締め付ける。 「あたしね…その事が、きっとずっと寂しかったわ。でも違う…違ったの。 グレイスはあたしに歌わなくて良い…って言ったの。これ以上歌えば あたしの体はもうもたない、だからもう歌わなくて良いって …そう、グレイスは言ったのよ」 「それが…お前の声帯除去、か」 「そうよ…。提案を出された時にはランカちゃんが見つかったからなんだって そう思ってた…でも違ったの。グレイスは多分… 本当にあたしの事を心配して―――っ…!」 (グレイスはあたしをこんなに愛してくれていたのに。あたしを最後まで ちゃんと愛して、大事にしてくれていたのに。なのに、それがずっと分からなかった。 失ってしまう最期の最期まで「有難う」も「愛してる」も伝えられなかった…!) …其処から先は言葉にはならなかった。込み上げてくる嗚咽を 必死に噛み殺して震える華奢な肩。一度両腕の力を抜いて彼女を促すと、 正面から向き合う様にシェリルの体を抱きしめる。 細い体を受け止める指先から押し殺した彼女の気持ちが伝わって来る気がするのは、 今もお互いが身に着けているあの石のせいなのかもしれない。 「シェリル…」 「っ、アルト……」 「大丈夫だ、シェリル……」 じわりと染み込んで来る熱い雫の感触。きりきりと胸を締め付ける痛みごと 受け止める様に、俺はシェリルの体をその腕に抱きしめ続けていた。 シェリルが母と慕う人のことを、正直俺は良く知らない。 俺が彼女に接していたのは、シェリルの護衛として共に過ごした ほんの短い時間だけだった。だが、それでも―――シェリルと彼女の間に 確かに存在している『絆』の様な物は、俺にも感じることが出来たと…そう思う。 だから、きっと―――… 「言葉にするべき時には、しっかりと言葉にする必要はある。 難しい気持ちを相手に伝えたいって言う時には特にな。 だけど…それが全てじゃないだろ?言葉にしなくても 相手に伝わる気持ちって言うのはあるんじゃないかと俺は思う…」 「アルト…?」 「だから、きっと…はっきりと言葉にしなくても。 お前の気持ちはあの人には伝わっていたよ。 だからこそ、こんなにも深く…お前の事を愛してくれたんだ」 「―――っ…。な、何よ…そんな事言って、アルトだって…」 「うん?」 抱きしめた腕の中のシェリルの体がぶるりと小さく震えるのが分かった。 それまで噛み殺していた泣き声の代わりに…少しだけ寂しげな色を乗せて 言葉の続きが紡ぎだされる。 「アルトだって…アルトだって何時あたしを置いて行ってしまうか分からない」 「―――不吉な事言うなよ」 …お前が口にすると本当になりそうで怖い。苦笑しながら茶化す様に口にすると、 それに応えたのは今も悲しみを称えたままのシェリルの微笑みだった。 俺の腕の中で顔をあげたシェリルは小首を小さく傾げ、 その青い空色の瞳を僅かに翳らせたまま言葉を続ける。 「だって…アルトだって、前科モノ、でしょ?」 「くっ…ま、まぁそりゃあ…。でも俺はちゃんと戻って来ただろ?」 そして、彼女の赤い唇からは今も二人の間に横たわる別離の記憶が綴られる。 あの、今も鮮やかに蘇る『舞台』の記憶…。 あの時、シェリルは命を削ってでも歌い続ける事を選んだ。だからこそ、 そのシェリルの歌を届ける為に、本物の空で最期まで舞う事を俺もまた選んだのだ。 『貴方の舞台が本物の空だとしたらもう一度舞って見せて!早乙女アルトの真実の舞を!』 そうして俺を飛ばせてくれたシェリルの言葉は、今も鮮明に記憶の中に蘇る。 そうして最期までお互いに『己の舞台』に全てを注ぎ尽くした事。 最期まで自分達が果たすべきお役を遣り遂げた事。 その事への悔いは…俺の中にも、恐らくシェリルの中にも無いのだろう。 俺はそんなシェリルを愛したし…シェリルの方も、そんな俺だからこそ 好きになってくれたんじゃないか…と。そうした自負も俺にはあった。 だが、それとは別に…矢張り思い出す度に胸に走る痛みはどうする事も出来ないのだ。 目の前に迫る無数の光の矢をただ静かに見つめながら…そして 『もうすぐ自分は此処から去るのだ』と云う漠然とした予感を感じながら、 お互いの想いを伝え合ったあの瞬間。お互いにするべき事を成した満足感とは別に 込み上げてきた…あの時の心も体も引き裂かれる様な痛みは、 今もはっきりと胸の中に残っていた。 ―――シェリル、少し遅いかもしれないけど… ―――俺はお前を愛してるから。 その続き。恐らくは伝えきれないだろうその言葉に…何を続けたかったのかは、 今となってはもう自分でも分からない。愛しているからお前は生きてくれ。 愛しているから幸せになってくれ。愛しているから…俺は必ず帰って来る…と。 どの気持ちも半分は正しくてどの気持ちも半分は間違えている気がした。 あの時はただ…胸を満たしているシェリルを愛しいと思う気持ちだけを、 ただただ伝えたかったのかもしれない。 「シェリル……」 そうして今、震える肩をぎゅっと抱きしめながら俺は改めて言葉の続きを捜して、 けれどその答を見つけ出せない自分に苦笑した。 (そうだ…。あの時と、今は違う―――) あの時はただ「愛してる」と云う自分の気持ちを伝える事だけで満足していた。 でも今は違う…。今はその気持ちだけじゃ足りない。愛してるからこそ 伝えたい自分の素直な気持ちを、俺は躊躇いながらそっと唇に乗せた。 「シェリル…。俺はずっと傍にいる。…もう二度とお前を一人にはしない」 「アルト…?」 「確かに前科者ですぐには信用なんて出来ないかもしれないよな。 でも――約束したいんだ。俺はお前から離れない。そしてお前の事も 離してなんかやらないから、だから…だから、ずっと一緒にいよう…」 「――ずっと一緒?」 「ああ、イヤか?」 「ふふ……。そんな訳ないじゃない。アルトのご飯は美味しいし、 炊事だけじゃなく掃除洗濯も万能だし?」 「って、俺は家政婦かよ!」 人生二度目の一代決心をした俺の言葉に、シェリルは何処か茶化す様な答を返した。 伝えた言葉の扱いの酷さに小さくショックは受けた物の、それでも彼女の表情に 浮かんでいた寂しさが、楽しげな笑顔に変わった事が素直に嬉しい。 そんな遣り取りも何処か懐かしくて思わず笑いを零してしまった俺の頬を、 シェリルの小さな二つの掌が挟み込んだ。綺麗に澄んだ青い瞳には、 何処か戸惑った表情を浮かべる俺の顔が映っている……。 「シェリル?」 「本当に…ずっとあたしの傍にいてくれるの…?」 「―――…ああ」 「じゃあ、それを信じさせて…。アルトがもう何処にも行かないって証を… その約束をあたしに頂戴…」 彼女のその言葉が合図だった。引き寄せられる様にして…俺はシェリルの しっとりと濡れた唇に自分の唇を重ねる。温かな感触を伝えてくる唇…。 啄ばむ様にして何度も其処を吸うと、痺れる様な甘さが全身を包み込んだ。 じっくりと味わうシェリルの唇は何処までも柔らかくて気持ち良い。 唇が触れ合う度に毀れる甘い吐息……。 その吐息さえ自分だけの物にしたくて、舌先でそっと口内に押し入った。 「んっ…ふ、あ…ると…んぅ…っ」 「っ…はぁ、ん、ふ……」 戸惑いがちに入り込んだシェリルの口内を探ると…すぐに奥で怯えた様に 縮こまっている彼女の舌を探り当てた。僅かに開いた唇の隙間から、 その動きを制する様にシェリルが俺の名前を呼ぶ。 (だけど…もう逃さない……) 僅かに身動ぎする華奢な体を抱きしめる両腕に力を込め、右手でシェリルの 小さな肩を、左手でシェリルの細い腰を引き寄せる。ぐ…っと改めて唇を押し付けて 舌に舌を絡めると、観念した様に彼女の細い両腕が背中へと回されて来た。 「あ…はぁ…ん、んふ…」 鼻にかかった吐息が漏れる度に、煽られている自分自身を自覚する。 舌でシェリルの舌を絡め、甘い口内を堪能する様に探る。息苦しさに唇を離しては、 また相手を貪る様に重ね合わせる。その度に漏れるくちゅりと言うリップ音が 酷く淫らに俺の鼓膜を内側から震わせた。鼻から息を吸い込むたびに鼻腔を満たす シェリルの甘い匂い…。シェリルから伝わる全てが俺の体の熱を上げて行くのが分かった。 「あ…。はぁ…はぁ、あると……」 「―――シェリル…」 そうして満足するまでお互いを貪りあってから、二つの唇がゆっくりと離れた。 それでもお互いを繋ぐ透明な唾液の糸が残ったのが見えて、 かぁっと頬が熱くなるのが分かる。充分に彼女の甘い唇を味わったからこそ… より満足出来ない、渇望して留められない衝動が込み上げて来る。 だからその衝動のままに…俺は今も小刻みに震えるシェリルの体を抱き上げていた。 「なっ―――!あ、アルト?」 「…じっとしてろ」 「じっと、って…や、きゃぁっ!?」 そのまま隣の寝室に移動し、彼女の体に負担を掛けない様に寝台の上へゆっくりと シェリルの体を下ろす。ふわりと白いシーツに広がるストロベリーブロンド。 …場所こそ違えど、何時か見た夢の中と同じ光景。見開かれた蒼い瞳が 僅かに潤んでいるのに気付いて、俺はそっとその瞼に唇を落とした。 「シェリル…」 「や…っ、あん…」 瞼の次は僅かに朱に染まった耳朶へ。それからもう一度…ぷるりと濡れた小さな唇へ。 寝台の上で細い体を組み敷く様にして、シェリルの唇を舌先で割った。 今日二度目の熱を宿した口付けにシェリルの息遣いが乱れ始めるのが分かる。 ちゅ、ちゅとお互いの舌先を吸いあう音が響く度に、腕の中のシェリルの体が 小刻みに震える。ほっそりとした腕が弱弱しく胸板を押し返すが、 それさえも俺の中の熱を煽ってしまう…… はぁ…っと。散々睦みあった後に離れた唇から、溜息の様な吐息が漏れた。 息苦しかったのか、シェリルは少しだけ頬を上気させている。 目尻に滲んだ涙があんまりに綺麗で、それを舐め取る為に もう一度顔を近付けようとして―――その顔を、ぐんとシェリルに押し返された。 「ちょっ?…あ、あ、アルト!なななな何すんのよ!?」 「―――ん?」 途端に取り乱すシェリルの姿に、釈然としない物を感じながら首を傾げる。 何って…そりゃあ、なぁ。此処まで来れば何をしようとしているかなんて決まっている。 その事を伝えようとした俺を制する様に、シェリルの口からはまた予想外の言葉が飛び出た。 「あ、あたしをこんな所に連れて来て、あんたまさか変な事するつもりなんじゃ…」 「変なこと、って言われても…って、ちょっと待てよ。 そもそもお前の方だろうが!あたしに証を頂戴って言って来たのは!」 「言ったわよ!言ったから…その、キスしたんじゃない…」 違うの?と言外に含ませてこちらを見つめるシェリルに、思わず全身からズルズルと 力が抜けてしまうのが分かった。脱力したまま折り重なってくる俺に、 シェリルの唇から困惑の声が漏れる。 「アルト?や…ね、どうしたのアルト…?」 「どうしたのって…お前な」 「な、何よ…?」 「いや―――うん、いや、何でもない…」 普通女が男に「証を頂戴。勇気を頂戴、約束を頂戴」と言ったらそう云う事だろう? この昂ぶった心と身体をどうしてくれる!?……殆ど喉まで出かかった言葉を 何とか呑み込んで、代わりに唇からはぁぁ…と深い溜息を吐き出すと、 彼女のふわふわとした髪に顔を埋めた。鼻腔を一杯に満たすシェリルの甘い匂いが 今は…色々と苦しい。それでも何とか自分を制して体を離そうとした 俺の動きを止めたのは、もう一度紡がれた彼女の言葉だった。 「あ、あの、アルト…?やだ、もしかしてその気になっちゃった?」 「っ……!その気に…って言うなよ」 ピンポイントに的を付いた言葉に顔を傾けると、すぐ傍らにばつの悪そうな シェリルの顔があった。何となく気まずい沈黙。その間も腕の中には柔らかな シェリルの体があって……そこからは確かな彼女の温もりが伝わって来る。 とくとくと普段よりもずっと早鐘を打つ二人の鼓動が重なり合うのが分かった。 「―――シェリル」 「な、ななな何よ!」 「…嫌か?」 「なっ!?」 改めてその瞳を覗き込んで…俺は彼女に許しを請うた。そんな俺の言葉の意図を 察して、シェリルは耳まで真っ赤になって分かり易く取り乱した姿を見せた。 ぶるぶると言葉を失った唇が震えている。 離れて過ごしている間、ずっと…こうしてシェリルに触れたいと思っていた。 どうしてもっと早くに気付かなかったのか。どうしてこんな風に 逢えなくなってしまう前に分からなかったのか。 もっと早くに…心の何処かでは俺は分かっていた筈なのに。 彼女をずっと求めているのだと…彼女の全てを自分の物にしたいんだと。 時に自分の気持ちが分からなくて彼女を傷付けてしまったり… 暴走して自己嫌悪に陥る事になったり……その位にずっと、 ずっと前から―――…俺は彼女を欲していたのに。 シェリルに触れたい。シェリルの笑顔を見たい。誰よりも近い場所で シェリルの温もりを感じていたい…。その事をずっと思い続けて来た。 その事をずっとずっと…この気持ちが恋だと自覚する前から願い続けて来た。 「…シェリル……」 「あ…アルト」 戻ってからも、ずっと…折に触れてシェリルの温もりを感じる度に、込み上げて来る 衝動を押し殺して来た。もう俺達は離れ離れにはならない。だから、焦る必要は 何も無いんだと。そう自分を自制して来たのは、シェリルの意に沿わない事を したくは無かったからだ。だから…その時が来るまで待ち続けていた。心も体も、 叶わぬ恋に焦がれる様に…シェリルが俺を受け入れてくれる時を、ただ待ち続けて来た。 「嫌か…?シェリル…。お前が嫌なら、このまま止める」 すっかりうろたえてしまっているシェリルを安心させる様に、口元に笑みを 浮かべてみせる。辛くないと言えばそれは嘘になる。そして今も昂ぶったままの 心身が『今日がその時じゃないのか?』と俺に囁きかけている事にも気付いている。 だが、それでも―――… 「俺は…俺は、お前が嫌がる事はしたくないから。…だからお前が本当に嫌ならこのまま止めるよ」 「っ……」 漸くこうして…共に過ごせる事が出来る様になった彼女に、無理を強いて 悲しませる様な事はしたくなかった。自分自身がこうした色事に長けているとは 到底思えない。それに目の前の彼女に関しても…恐らく、世間が抱いている イメージには反して…こうした事に不慣れなんだろうな、と云う事は薄々気付いていた。 どうせお互いに不慣れな者同士なのだ。だから全てが、あの眼鏡の相棒みたいに 上手く出来るとは思えなくても…せめてお互いに求め合った末の行為であって欲しいと思った。 俺の下ですっかり口を噤んでしまったシェリルからの応えは無い。そんな彼女の様子に、 心の中で小さな苦笑いを浮かべながら、俺はそっと自分の体を浮かせようとした。 だが、その瞬間小さく囁かれた声に…ぴくりと体の動きを止める。 「…じゃ、無いわよ…」 「え?」 「い、イヤなんかじゃないって言ってるのよ!アルトのバカ!えっち! 言っておくけどこんなサービス滅多にしないんだから!アルトにしかしないんだからね!」 「ば、バカ!当たり前だろ。他の奴らにホイホイされてたまるか!」 耳まで真っ赤になったまま、ほっそりとした腕が離れようとした俺の体を引き戻した。 弱弱しく、何処か躊躇う様に首筋に回された両腕。照れ隠しの為かぽんぽん飛び出す シェリルの言葉に触発されて、俺も思わず言い返してしまう。彼女と同じ様に… 自分の顔が真っ赤になっているのが分かった。 「……ふふ。なんだか…」 「ああ。流石に、様にならないよな?」 中々甘い雰囲気になれない自分達の姿が可笑しかったのか、シェリルが小さな 笑みを零した。それに応じて俺の顔にも自然と笑みが浮かぶ。そんな俺の頬を 白い二つの掌が包み込んで…ちゅっと啄ばむ様に、柔らかな唇が押し当てられてきた。 触れ合った部分から、胸をじわりと熱くする幸福が込み上げて来て心を満たして行くのが分かる。 「シェリル…。愛してる」 「何よ…そんなサービス、二度としないんじゃなかったの?」 「普段は、な。今は特別だ」 そして、込み上げる想いに促されるまま…俺はもう一度、僅かに濡れた シェリルの唇を奪った。噛み付く様に貪り、吸い合わせ、舐めて啄ばむ。 口内に押し入った舌先でシェリルの舌を絡め取ると、彼女の喉は 少しだけくぐもった甘い泣き声を上げた。 「ん、ふぅ…んぅ、あ…あぁ…ん、んふ…っ」 「ん……っ」 その声さえも自分だけの物にしてしまいたくて…何度も何度も甘い唇を味わう。 痺れる様なシェリルの温もり。上体を支えていた右腕を動かし、掌を滑らせる様にして ふっくらとした胸元へと這わせて行く。薄いブラウスに包まれたそこは、 布地越しにでもその柔らかさを伝えて来てくれた。ふにゅり…と 指先に力を込める度に、俺の手の中で形を変えて行く。 「はぁ…っ。すげぇ…柔らかい」 「っ、もうっ、バカっ!」 その感触を楽しみながら耳元へ囁くと、解放されたばかりの唇からは拗ねた声が漏れた。 さっきまでシェリルの甘い唾液を味わっていた唇で、そっと朱に染まった耳朶を啄ばむ。 「―――ぁ…っ…」 途端にびくりと体を固くする彼女の反応が嬉しくて、俺は唇と舌先でシェリルの肌を ゆっくりとなぞって行った。恥ずかしさに染まった耳から、華奢なラインを 描く首筋へ、そして僅かに汗が滲んだ細い鎖骨へ。 その間も右手は飽きる事無くシェリルの膨らみを玩び続けていた。掌の中で、 少しずつ少しずつ…その先端部分が立ち上がり始めている事に気付く。軽く摘むと 指先を押し返してくる確かな弾力が心地よくて、益々俺の熱を煽った。 「あ…やぁ…っ、あ、アルト…」 「シェリル…」 「な、何……?」 「直に触れても良いか…?」 「っ、いちいち聞かないでよ、バカっ…!」 俺の動きに反応してくれるシェリルの体を直接見たい……。 胸元に優しく唇を落としながら彼女の合意を求めると、涙目になった蒼い瞳が じろりと此方を睨んで来た。それをOKの合図と取って…指先をブラウスの端へと 移動させる。幸いシェリルの私服は、ライブ衣装とは異なってシンプルな作りを していた。普段から愛用しているライムグリーンのブラウス。その端を 持ち上げる様にして剥ぎ取ると、下も脱がせて下着姿にしてしまう。 真っ白い肌を覆うピンク色の下着は繊細なレースで彩られている。 恥ずかしさにほんのりと上気した肌が艶かしい…… 思わず息を呑んだ俺の視線を感じて、シェリルが僅かにその身を捩じらせる。 ほっそりとした腕が胸元を隠し、肉感的な白い太股が下着を隠す様に擦り合わされた。 「あんまり見ないでよ、アルトのえっち…」 「し、仕方ないだろ。お前が…!」 「あたしが?」 「―――っ!な、何でもない…っ」 『あんまり綺麗だったから』なんて、本人を前にして言える筈もない。 きょとんとした瞳で此方を覗き込んでくるシェリルの無邪気な表情に、 かぁっと頬に朱が昇るのが分かる。その顔を見られたくなくて視線を逸らすと、 それが面白くなかったのだろうか。腕の中で震えていた筈のシェリルは 思わぬ『反撃』に出た。小さな掌が胸元を滑り落ちたかと思うと 俺の服の裾を持ち上げ、お返しとばかりに脱がしに掛かる。 「―――ばっ、バカ!女がなんて事するんだ!?」 「だって悔しいじゃない、あたしばっかりが一方的にされるままなんて」 「こんな所で対抗心を燃やさなくて良い!!」 慌てた俺の顔を不満げに見上げながら、シェリルが僅かに頬を膨らませる。 俺にベッドに腰かける様に命じると、その間に自分の身をおいて 小さな掌でせっせと俺の衣服を剥ぎ取って行った。 あの小さな天使か妖精みたいだった女の子。俺をキラキラした憧れの瞳で 見上げて『素敵でした』と言ってくれたあの内気そうな女の子が… どこをどう間違って、こんな負けず嫌いに育ったのやら。 (いや―――……) だが、良く良く思い出してみれば、彼女が別れ際に叫んだ台詞も 『あたしも銀河を震わせて見せるから!』だった。と云う事は結局は… 「負けず嫌いなのは、昔からって事か…」 「何よ、いきなり?」 「いや………なんでもない」 ぎこちない手つきで必死に俺の衣服と格闘しているシェリルに 俺は苦笑交じりの曖昧な笑みを返す。結局は俺は、そんな負けず嫌いな 部分も含めて、目の前の彼女に心を奪われてしまっている…って言う事なんだろう。 多少の悔しさを感じながら視線を向けると、既に俺を半裸にまで「剥いた」シェリルが 必死に腰のベルト相手に奮戦している所だった。 「……アルトの…もうこんなになっちゃってる…」 「そんなにまじまじと見るな」 「だ、だって…こんなに大きくなるなんて。こんなのが本当に入るのかしら?」 強いられた苦戦の末に何とか勝利したらしいシェリルがカーゴパンツの ジッパーを下げると、固くなった俺の物が其処から姿を見せた。 初めて見るだろう男のソレを、シェリルは驚いた様な表情で眺めている。 恥ずかしがりながらも臆する事無く視線を送ってくるのが シェリルらしいと言えばシェリルらしいのかもしれない。 だが、見られている俺の方は、込み上げて来る恥ずかしさや 気まずさで何とも居た堪れない気持ちになってしまう。 それに…こうして一方的に眺められるという事に対して 今度は俺の方が逆に悔しさを感じてしまうのも確かだった。 「じゃあ―――しっかり入る様に、お前の方も準備しておかないとな」 「えっ…!?あっ、ちょ…だ、だめ…ぇっ!!」 彼女の華奢な肩を軽く押した俺は、覆いかぶさる様にして もう一度シェリルをベッドへと組み敷いた。背中に指先を這わせて 何とかホックを外すと、戸惑いの声には耳を貸さずにベッドの下へと放り投げる。 隠すものが無くなったそこには、本人曰く夢と希望が詰まった膨らみが存在していた。 白く透き通る様な肌がうっすらと上気して汗ばんでいる。その頂点で怯えた様に… 小刻みに震えている桜色の果実。つんと尖り始めた其処に宥める様に そっと唇を寄せると…俺はそのまま、桜色の果実にむしゃぶり着いた。 「あっ…あ、アルト…、だめ…やぁ…っ」 「ん……はぁ…。イヤなんかじゃないんだろ…?」 「そ、れは…あ、あぁ…っ!」 夢にまで見たしなやかなシェリルの体。けれど其処からは、確かな、 生きているシェリルの存在感が伝わって来て、益々俺を煽り立てる。 掌でもう二つの膨らみを出来るだけ優しく揉みしだきながら、舌で舐めたり突付いたり、 唇で軽く吸ったり、口付けたり…甘く歯を立ててみたり。思いつく限りの方法で 何とか彼女を感じさせようと俺は動き続ける。右へ…左へ…交互に二つの蕾を 啄ばみ、唾液をまぶしながら、時折その谷間に顔を埋めて赤い痕を残した。 「あ…ぁ、あぁ…。あると…だ、め…あたし…っ」 「っく…はぁ…本当に全部…柔らかいな…すごく…」 「当たり前…で、しょ…っ!」 「なのに、ここはどんどん固くなって来てる…」 「や…!バカっ…!」 シェリルの白い肌が、俺に触れられる度にその悦びに上気して薄紅色に染まる。 甘い感覚を押し殺した可愛い声が耳朶を擽る。啄ばむ度に硬さを増していく 胸の先端を子供みたいに吸い解すと、濡れた彼女の唇からは困った様な泣き声が漏れた。 「もっと沢山…跡、着けて良いか…?」 「えっ…あぁっ、ちょ、ちょっと…だめ…っ!?」 一度左の蕾を強く吸い上げてから…俺は唇をその膨らみの汗ばんだ肌へと移動させた。 そのまま噛み付く様にして俺の物なんだと言う所有の証を残す。左の膨らみの上… 確かな脈を打つ彼女の心臓のその上に。この胸が脈打ち続けている限り――… お前は俺の物なんだと云う思いを込めて、幾つも赤い証を残して行く…。 「…もうっ…!意外と独占欲が強いんだから…」 「―――そうか?このくらい普通だろ?」 ほんの少しの呆れを含んだシェリルの声に、顔を上げて蒼い瞳を覗き込む。涙の滲んだ瞳…。 何処か陶然とした光を宿したその瞳が、「困った男ね」とでも言うかの様に苦笑交じりに 俺の方を覗き込んでいた。もう一度上体を上げて、今度は唇でその目尻に滲んだ涙を拭う。 くすぐったそうに震えるシェリルの瞳を吸った唇は、そのまま彼女の赤い唇に重ねられた。 「シェリル……」 「アルト…んっ…あ、あぁ…ぅ…」 内側へと滑り込んだ舌先を、シェリルがそっと受け入れてくれる。 二つの舌を二つの口内で何度となく絡め合う間も、俺の掌は彼女の膨らみを包み込んだまま ……さっきよりも少し乱暴な動きで、その感触を楽しむ様に揉みしだき続けた。 掌を押し返して来る尖りを指先で転がすと、組み敷いた体がびくりと跳ね上がる。 俺に触れられる事であがるくぐもった声さえも貪る様に、 彼女の甘い唇を自分の唇で塞ぎ、噛み付く様な口付けを繰り返した。 「はぁ…はぁ…アルト……」 存分に混ざり合った唾液が離れた唇の間を繋ぐ光景は、何とも言えずに艶かしい。 俺とシェリル、二人分の唾液が彼女のぷっくりとした魅力的な唇を濡らしている。 その唇を軽く舌でなぞってから…俺はもう一度唇を滑らせて、 赤い印をほっそりとしたシェリルの首筋に残して行った。一つだけじゃ足りずに 何度も何度も薄い皮膚を吸い上げて、恥ずかしさに染まった肌の上に赤い花弁を散らす。 「あんっ……やっぱり…独占欲、強いじゃない…」 「あ…そ、そうか…?」 「そうよ。でも良いわ…そっちの方があたしも嬉しいもの。…ね、アルト」 「うん?―――うわっ!?」 少しだけ膨れた様な声色に顔を上げると、涙目になったシェリルが こちらを拗ねた様な表情で睨んでいた。そんな表情を見た途端に、がっついている 自分が気恥ずかしくなって、なんだか居た堪れない気持ちになってしまう。 だが、僅かに彼女から体を離した次の瞬間―――…ぐい、と細い両手に 体を引き寄せられて、そのまま俺の体はベッドの上で反転していた。 「なっ―――!?」 視界に映る天井と…俺の上に覆いかぶさってくるシェリルの姿。 驚きに思わず声を上げてしまった次の瞬間には、柔らかな彼女の唇が 俺の胸元へと落ちて来ていた。ちゅ…っと小さな音が俺の耳朶を擽る。 吹き掛けられる甘やかなシェリルの吐息。押し付けられてくる柔らかな感触… 観念して彼女のしたいままに任せていると、唇が離れたそこには、 しっかりと所有の証である口付けの赤い跡が残っていた。 「ばっ…!バカっ!急に何するんだよ!」 「バカって何よ、アルトだってあたしに着けたくせに」 それもこんな所に…と、シェリルは俺が着けたのと同じ場所…胸の間に 唇を落とすと、そのまま次々と口付けの後を残していく。 「…っんのやろ」 「きゃぁっ!?ちょっ…アルト!もう、やだってば!」 そんな彼女の体を引き寄せて、もう一度軽くひっくり返すと 自身の体で組み伏せながら…その胸元へと、俺はまた唇を寄せる。 何度も何度も…その白い肌に、自分自身の証を刻む様にして。 汗ばんだ肌を吸い上げて赤い花を散らし、その痕を確かめる様に ゆっくりと舌先でなぞり、また軽く口付けた。 「ぁ…っ、アルト…く、くすぐったい…」 「―――くすぐったいだけか?」 「っ、バカ…っ!」 ふるふると震える肌からそっと唇を離して顔を上げると、与えられる感覚に耐える様にして シーツをきゅっと掴んだまま顔を赤くしているシェリルの姿があった。 その朱に染まった頬から首筋を経てふっくらと盛り上がった胸元まで… 俺の残した口付けの痕がしっかりと刻まれている、その光景に 背筋がぞくりとする様な興奮と高揚感を感じてしまう。 ごくりと鳴りそうな喉をくっと引き締めた俺は、するすると掌を滑らせて 軽く彼女のなだらかな腹部を撫でた。汗ばんだ肌に触れる度に蕩ける様な 滑らかな感触が伝わって来て、無意識に煽られている自分と強く自覚する。 「やっ…?あ、アルト…っ!?」 「良いから…。そのままじっとしてろよ…」 自分の皮膚の上をするりと蠢いた指先の感触に、シェリルが戸惑いの声を上げる。 だが、そこに含まれた微かな怯えには気付かぬ振りをして……。 俺は掌をするすると伝い下ろし、そのま汗ばんだま肌と下着の隙間へと滑り込ませた。 「や…っ!」 「シェリル……」 様子を伺う様に忍び込んできた指先を感じたシェリルが、僅かに体を強張らせながら 細い抗いの声を漏らすのが分かった。そんな彼女を宥める様に、震える唇に 軽く触れ合わせるだけの口付けを落とした俺は……じわりと濡れ始めた部分へと。 彼女同様初めての行為に微かに震える指先を…探る様に触れ合わせていく……。 「や、イヤ…っ、アルト…!」 「シェリル……濡れてる…」 「っ!言わないでよ、バカぁ…っ」 「―――あ…。わ、悪い」 指先が閉じた割れ目を往復する度に、じわりとした蜜が滲み出して来るのが分かった。 ―――本当にこうやって濡れるものなんだ、と妙な事に感動しながら、ようやく 解れ始めた入り口を割って……右手の中指をシェリルの内へとそっと押し入れてみる。 「っ!?…ぁ、やぁ…ッ!」 「っく…キツイ、な…」 「あ…ぁ、ぁ…」 そうして入り込んで来た俺の指先を、痛い位に強くシェリルの体が締め付けて来た。 恐らくは初めて感じるだろう自分以外の侵入者を排除しようとして、 彼女の胎内がきゅうっと頑なに収縮するのが分かる。 「―――シェリル……」 「あ、ると…ん、んふ……」 「ん…ぅ……」 怖がる彼女の怯えを取り除く様にして…そして戸惑う自分自身を落ち着かせる様にして。 俺はもう一度、シェリルの柔らかな唇に自分の唇を重ねた。 そっと差し入れた舌先でシェリルの舌を宥める様に絡め取りながら 肉襞に締め付けられたままの指先をゆるゆると蠢かせ始める。 シーツを握り締めていた指先が気付けば俺の頬を包み込んで、 そのままきゅっと、恥ずかしさと怯えに耐える様に首筋へとしがみ付いて来る。 そんなシェリルの温もりや…唇から漏れる可愛い声や、堪えきれずに 零れ落ちた吐息や、次第に大きくなってくる水音を感じながら、 俺は探る様に何度も何度も彼女の内側を入り込んだ指先で摺り上げた。 「っ…はぁ…あ、あぁん…アル…と…っ」 「…痛くないか?」 「へ、平気…よっ、はぁ、あぁ…」 ぬるぬると指先に絡み付いて来る温かな雫の感触を感じながら、 重ね合わせていたシェリルの唇を解放する。 俺の唾液に濡れた唇から漏れる甘い泣き声と切ない息遣い……。 どうすればシェリルの負担が軽くなるのか…。正直、それが分からない。 だから、ただ少しでもシェリルが安心出来る様に、彼女の体中にキスの雨を降らせた。 「ぁ…アルト…くすぐったい……」 「―――イヤか?」 「ばか……」 さっきと同じ様に白い肌へのキスを繰り返す俺の耳朶へと、少し拗ねた声が聞こえて来る。 そんな彼女の言葉に苦笑しながら胸の先端へ何度目かの口付けを落とすと 首筋に絡んでいた指先が、結い上げた俺の髪の毛を軽く引っ張った。 敏感になった体を好き放題にされている事へのささやかな抵抗。 そんな仕草も可愛くて、込み上げる笑いを噛み殺しながら、 またゆっくりと尖りを帯びた先端を舌で転がし、ぷっくりと膨らんだ 薄紅色の輪をなぞる。その間も指先はゆるゆると動き続け、蕩け始めた シェリルの内側を少しずつ少しずつ拓いて行った。 「ぁ…あ、ぁっ…アル…ト…っ!」 「ああ…。またちょっとずつ…濡れ始めてる…な…?」 「っ、知らないわよ、バカ…っ!」 くちゅりと云う水音を立てながら次第に解されていく内側の感触…。 次第に馴染んで来た襞の収縮に誘われる様にして、俺は口付けの位置を 綺麗な二つの膨らみから、なだらかな腹部を通って更に下へと移動させて行く。 「え……?あ…あると……?」 「ん…」 「や…う、ウソ…っ、ちょ、待って…や、ダメ、ダメ…っ!」 「―――ダメって云うなよ…」 軽く膝裏を持ち上げる様にして彼女の足を開くと、とろとろと蕩け始めていた そこから指先を抜いて…代わりにそっと唇を寄せる。 ふぅっと吹きかけられた息遣いを感じたシェリルが、慌てた様に上体を起こして 戸惑いの声を上げるのが分かった。だが…もう止まらない。指先で彼女の体の 入り口を開くと、ひくついたそこがとろりと溢れた蜜を毀れさせる姿が視界に映る。 ひくひくと物欲しげに蠢くピンク色の襞まで…シェリルの全てを、 この目に焼き付けてしまいたい。指先で触れて、唇で口付けて…… 誰も知ることの無い全てを、自分だけの物にしてしまいたい………。 そんな思いに背中を押される様にして、舌がゆっくりと彼女の体の入り口を割る。 ぬるり…とさっきまでの指先の代わりに、入り込んでいく舌で彼女の内側を軽くかき回した。 「…あぁ、いや…アルト……だめ…だめ…」 「―――シェリル…」 そうして入り込んできた舌先の感触を感じて、シェリルの唇から切なげな抗いの声が漏れる。 何時か何処かで耳にした抗いの言葉――…。あの時と同じ、甘く意識を 蕩けさせる濃厚な女の匂い。ふるふると毀れる抗いの声。 込み上げる不安に一度顔を上げて、シェリルの様子を伺うと 彼女の方も蒼い瞳に一杯の涙を湛えて、こちらを覗き込んでいた。 「嫌か…?シェリル…」 「あ……アルト…」 「最初に言っただろ?お前が嫌がることはしたくないから… だから本当にお前が嫌なら止める…って。だけど、許してくれるのなら… ―――ここも全部、俺だけのものにしてしまいたい…」 「あっ…やぁっ…!」 その反応を伺いながら、くちゅりと水音を立ててもう一度舌先を忍ばせて行く 入り込んだ舌先で襞をかき回すと、組み敷いた体がびくりと跳ね上がった。 弱い抵抗を示すかの様に、滑々とした感触の太ももが俺の頭を挟み込む。 黒髪に埋められる細い指の感触……。何時か見た夢と同じ様に、 初めての行為に怯えるシェリルの心が伝わって来る。だが…… 「へ…い、き…だから…っ」 「シェリル…」 「こ、声が出ちゃうだけで…っ、はぁ…あ、アルトになら…良いわ…」 胸に込み上げてきているだろう怯えを隠して、精一杯強がりながら。 荒い息遣いの合間を縫う様に、シェリルは懸命に想いを言葉にして伝えて来てくれた。 「俺になら」と云うその言葉を素直に嬉しく思う。とくんと高鳴る胸と、 込み上げて来る衝動に駆られながら、俺は溢れた雫を夢中で啜り続けた。 「ん…はぁ…ん、ぅ…」 「あっ…あ、あぁっ…!アルト、アルト…っ」 これまで誰の目にも晒された事の無いだろう彼女の大切な場所を、 昂ぶる肉体に先んじた指先と唇と舌先でゆっくりと犯して行く。 とろりと新しく生まれては毀れる雫を更に促す様に…より深い シェリルの奥の、更に奥の方まで。指先で入り口を押し開いて舌を差し入れると びくりと体を跳ね上がらせたシェリルの声にも、次第に甘いものが混ざり始めた。 舌先で奥を探りながら、指先で入り口の上にある花芽を軽く弄る。 可哀想な位に赤く染まって小刻みに震えていたそこをきゅっと親指で押しつぶすと、 組み敷かれた状態のシェリルの体が弓なりに反り返るのが分った。 「やっ、イヤ…!アルト、イヤ…いやぁっ…!」 「イヤじゃないだろ…?っ、はぁ…こんなに、俺に…反応してくれてる」 「―――あぁっ!?」 じわじわと滲む様に溢れて来た雫をまた舌で舐め取る。啜っても啜っても足りない… シェリルを渇望し続けた間の渇きを潤わせる様に、俺は何度もそこに唇を寄せた。 彼女の方も同じなのかもしれない。俺が拭っても拭っても追いつかない位に、 組み敷いた華奢な体の奥からは快感の証である雫が次々に溢れ出て来ている。 その雫を舌でまた舐め取ろうとした所で、とうとうシェリルが泣き出しそうな声を上げた。 「アルト…おね…がい、待って…止めて…」 「シェリル…。イヤ、だったか…?」 「ちが…うの…。あっ…やっ…。お、お願い…ちゃんと…っ」 「シェリル…?」 「ちゃんと…アルトと一つにして…。あ、あたし…こんなのイヤ…! もっとちゃんと…アルトと一つに…ひとつになりたいの…だから…」 「っ…シェリル…ッ!」 半分泣きながら求めて来てくれるシェリルに、俺の方ももう…限界だった。 ―――そうだ。俺だってこの時をずっとずっと待ち望んでいた。 シェリルに触れたいと。シェリルと一つに繋がりたいと。 その事をどうしても諦めきれずに……何度も夢に見る位に、 強く強く…彼女と一つになれるこの時を、渇望して待ち焦がれていたのだ。 「―――シェリル」 「あ…ると…?」 「良いか…?」 濡れそぼった部分から顔を上げた俺は、手の甲で軽く口元を拭ってから シェリルの耳元へと唇を寄せた。逸る気持ちを押し殺して 出来るだけ優しい声で促すと、その言葉を耳にしたシェリルの表情に ふわりとした柔らかな微笑みが広がる。 そうして幸せそうな笑みを浮かべたまま、つ…と細い指先が伸びて来て 俺の胸元をゆっくりと探った。しゃらんと小さな音を立てる銀のチェーン。 その先には―――…あの戦いでシェリルから貰った大切なイヤリングの片割れが揺れている。 「これ…。まだちゃんと…持ってくれてるのね…?」 「バカ、当たり前だろ」 小さな笑みを含んだ声に応える様に、俺の方も赤く染まった 耳朶の先で揺れている番のイヤリングにそっと唇を寄せる。 シェリルから貰ったフォールドクォーツのイヤリング。けれど、数ヶ月前の バジュラクィーンのフォールドと共に、この石は休眠状態に入ってしまっていた。 世にあるフォールドクォーツには、今はもう以前にあった様な力は無い。 ギャラクシーが、そしてフロンティア政府が利用しようとしていた その力は無に帰してしまったし、クォーツの力を利用する事で作られた YF-29…『デュランダル』も結局は幻の機体になってしまった。 でも―――今はもうそんな力は、恐らく誰にも必要は無いのだと思う。 少なくとも俺達は、もうそんな力が無くても、お互いの気持ちを分り合う事が出来る。 離れずにずっと…自分達の言葉と声で、想いを伝え合う事が出来る。 それでも互いがこの石を持っているのは、俺の髪にある組紐と同じ。 この二つの石が、俺とシェリルの二人を繋ぐ絆の一つだからなんだろう。 だから例え石がその力を失っていたとしても…この番のイヤリングを通じて シェリルの気持ちを、言葉にならない想いを、感じる事が出来るのかもしれない。 「なぁ…。このイヤリングは『二つで一つ』なんだろ?」 「アルト…」 「ずっと大事にするに決まってるだろ。――お前がもう片方を持ってるんだから」 「うん…っ」 イヤリングを弄っていた胸元から這い上がる様にして、シェリルの指先が俺の唇に触れる。 緊張に少しだけ震える冷たい指先を、柔らかく食むとくすぐったそうな笑いが漏れた。 「―――約束よ。もうずっと何処にも行かないで…傍にいなさい」 「なんでこの期に及んで命令口調なんだ、お前は」 こんな時にさえ彼女の唇から漏れる強気な言葉に、自然と此方にも苦笑が浮かぶ。 けれど結局は…シェリルのこうした負けず嫌いな所に、俺は参ってしまっているのかもしれない。 そんな自分の気持ちにまた一つ苦笑いを浮かべながら、憎まれ口を叩く唇を軽く啄ばんだ。 「ったく…仕方ないな。お前が歌うなら…いや何時かお前が 歌わなくなる時が来ても。俺がずっと…その最後の瞬間まで、お前の傍にいてやるよ」 …もっとも、生きている限り。命が続いている限り。コイツは歌い続けるのかもしれない。 それはそれで良いのだと思う。俺は多分…美星のライブでこいつのステージを見た時から シェリルの歌が本物だと感じて、その歌声にも魅了されていたんだから。 「―――好きよ、アルト…」 「そりゃあ…こっちの台詞だな」 そんな俺の言葉に返されて来た彼女の言葉ごと飲み込む様にして、 俺はもう一度…シェリルの唇に自分の唇を押し重ねた。誘う様に開いた 僅かな隙間に舌先を滑り込ませると、すぐにシェリルの舌が絡み付いて来る。 胸板の下で柔らかく形を変える二つの膨らみの弾力…触れ合う悦びに 形を尖らせた二人の先端が擦れ合う度に、痺れる様な感覚が俺の理性を焼いた。 「あ…はぁ、あ…あると…っ」 「シェリル…挿れるぞ…?」 「ん…。ぁ…良い、から…来て、アルト…っ!あたしの中に…」 「―――シェリル…!」 そのまま彼女の膝を割る様に自分の体を押し進めて…… 自分でも信じられない位に固くなった肉体で、とろりと蕩けた シェリルの入り口の部分を探る。ついさっきまで指先と舌先で解していた 其処は今もひくひくとヒクつきながら…俺を受け入れる時を待ってくれている……。 今にも離れて行きそうな理性を手繰り寄せながら、彼女の反応を見て 慎重に腰を進めて行く。ぬるりと絡み付く雫の熱さ。耳元を擽るシェリルの 甘い吐息と、泣き出しそうな切ない声…。その全てを全身に刻みながら 少しずつ肉体を進めて行くと、やがてその動きを押し返す『何か』の 存在を先端が感じた。奥深い大切な部分への異物の進入を拒もうとする『何か』… それが何なのかを噛みしめながら、俺はそのまま一気に腰を押し進めた。 「っ、あ―――…ああぁぁぁぁぁッ…!」 「く…ぅ…っ」 戦慄く唇から漏れた痛々しい声に、確認するまでも無くシェリルが『初めて』だったの だと云う事が分る。こうなる以前から…そうなのだろうと云う確信はあった。 だが、その事をこうして自分の体で実感すると…改めて 彼女の初めての男になれたんだと言う喜びが込み上げて来る。 腕の中で小刻みに震えるシェリルに、痛いか?と思わず唇から毀れかけた 無粋な言葉を呑み込んで、代わりにほぅ…っと一つだけ大きな息を吐き出した。 そう。初めて男を受け入れたそこは、聞くまでも無く痛いに決まっている。 だからと云って「ごめんな」等と口にするのも…やはり無粋なのだろう。 繋がった部分から感じる彼女の存在に陶然とする一方で、 そんな事を考えていると―――不意に耳元をくすくすと云う可笑しそうな 笑い声が擽った。少しだけ上体を浮かせてシェリルの顔を覗き込むと ほっそりとした指先がツンと俺の額の辺りを突付く。 「…なんだよ?」 「アルト…眉間にしわ。もう…何であんたの方が…そんな顔してるのよ…」 「う……」 表情に浮かんだ苦しげな色を隠す様に、シェリルはまたくすくすと小さな笑い声を上げた。 指摘されて改めて気付いた自分の余裕の無さに、俺の方も自然と苦い笑いを漏らす。 そしてそのまま…額に当てられていた指をとって、己の口内へと含み入れた。 「あ…っ!?………やぁ…んっ!」 口に含んだ指先に舌を絡ませる様にして俺が食むと、その度に不慣れな彼女の襞も 痛い位にきつく咥え込んだ肉体をきゅっと締め付けてくる。ぞくりと背筋を駆ける 痛い様な切ない様な心地良さ。一瞬だけ弾けそうになった体を慌てて制すると しゃぶっていた指先を解放した唇で、漸く探し当てた言葉を紡いだ。 「シェリル…有難うな…」 「え?」 「俺の事を受け入れてくれて…嬉しいよ、有難う」 「あ―――…もう…っ、バカ……」 恥ずかしさに真っ赤になったシェリルの頬は、痛みからなのだろうか。 自然と溢れる涙で濡れている。その涙を舌で舐め取る様に唇を寄せると、 組み敷いた体がぴくりと小さく震えるのが分った。そのまま頬から瞳へ、そしてまた唇へと、 痛みを必死に隠そうとしている彼女を宥める様にして何度も口付けを繰り返す。 そっと舌先で濡れた唇を舐めると、今度は甘える様にして シェリルの舌が俺の口内へと忍び込んで来る。たどたどしく求めてくれる その動きが嬉しくて、小さな舌を吸い上げながら…俺は大きく腰を前後させると、 入りきらずに残っていた部分も全部、シェリルの中へと押し入れて行った。 「あぁ…っ!?アルト…っ!」 「―――シェリル…」 自身の体を全て彼女の中に埋めて…これ以上ない程に深く、シェリルと繋がっている。 その事への喜びを噛みしめながら、一度離れた彼女の唇に今度は出来るだけ優しく 自分の唇を重ね合わせて行った。そのままお互いの温もりを確かめる様に、 相手の体に自分の体を馴染ませる様に、じっと動きを止めて抱き合ったまま シェリルの呼吸が落ち着く時を待つ……。 「あ…あぁ…アルト…」 「ん……」 二つの心臓がバクバクと信じられないくらいに忙しなく早鐘を打っているのが分る。 息が苦しくて、胸が切なくて、それなのに込み上げる幸福感に満たされて、 心も体も全てがこの上無く気持ち良い。じっと身を動かさずに流れる 穏やかな時間の間にも、一つになれたのだと言う喜びがじわりと胸を満たして行った。 『あなたの歌舞伎素敵でした。まるで天女が本当に空を飛んでいるみたいで』 ふっと一瞬脳裏に甦る懐かしい言葉……。あの言葉をくれた小さな女の子の事を 確とは覚えていなくても、それでもその言葉だけはずっとこの胸に残っていた。 稽古の厳しさや寂しさから逃げ出したいと思った時に、何度となくこの時の言葉を思い出した。 脳裏に微かに残るあのキラキラした憧れに満ちた瞳に支えられていた。 それは、歌舞伎と云うステージを降りて空を新しい舞台に選んだ後になっても同じ事で… 今思えば、あれが俺にとっては幼い初恋だったのかもしれない。 そうと気付かずに…あの女の子だと気付けぬままに、成長した『彼女』に出逢って。 そして―――俺は多分、初めて知ったのだ。 人を本当に好きになると云う事を。男が女を愛しく思うと云う事を。 全身を焦がす様な愛しさや切なさや独占欲。他の誰かを泣かせる事になっても、 お互いに苦しむ事になったとしても…それでも、ずっと傍にいたいと云う想い。 そうした気持ちが人と人との間には在るのだと云う事を…シェリルに会って俺は初めて知ったのだ。 「シェリル……」 「あ…なぁに……?」 そっと耳元に囁くと、掛かった吐息がくすぐったかったのか腕の中の体が ぴくりと小さく震えた。涙に滲んだ空色の蒼い瞳が俺を真っ直ぐに見詰めている。 荒い息を吐き出しながらも懸命に受け入れてくれているその姿に、胸がきゅっと締め付けられた。 「シェリル…分かるか…?」 「え…な、に…?」 「全部繋がってさ…ほら、一つになってるだろ」 「っ…バカっ…!」 からかう様に言葉を続けると、耳まで真っ赤にしてシェリルが拗ねる。…こんな姿も 本当に本当に可愛いと思ってしまう。今すぐにでも動き出したいと逸る肉体に反して、 込み上げる愛しさに自然に頬が緩むのが分かった。 もう一度優しく唇を吸い上げると、漸く落ち着いてきたらしいシェリルのナカが きゅんっと俺を締め上げて来た。込み上げる本能的な欲望を、息を止めて遣り過ごす。 「バカっ…!力抜いて…、あんまり絞めるな…っ」 「そんな事言ったって…ッ!そんなの、自分で出来る訳ないでしょ…っ!」 「っく…。本当に壊れちまいそうだな…」 「…はぁ…へ…平気よ。それに…良いの…。アルトになら…こ、壊してほしい、わ……」 「そう言う事言うなよ…」 健気な姿に、益々強く今すぐにでも動き出してしまいたい衝動に駆られてしまう。 その気配を察してかシェリルの掌がそっと俺の頬を包んだ。くすり、と泣き出しそうな 表情の上に小さな微笑を浮かべながら、シェリルが言葉の続きを紡ぐ…。 「ね…言ったでしょ?良いの…って。…ぁ、はぁ…ちゃんと、アルトにも… ……気持ちよくなって……欲しいんだから…」 「―――良いのか、そんな事言って…今更びびんなよ?妖精さん」 「…そっちこそ、空バカのパイロットさん」 「空バカは今は関係ないだろ」 「ふふ…」 続けられた言葉と優しい微笑みに、俺はもう一度その唇を自分の唇で塞いだ。 そのまま何度も何度も…もう今夜だけでも数え切れない程の回数になった口付けを交わす。 唇をついばむ様に、赤く染まった頬を撫でる様に、涙の滲んだ瞳を拭う様に、汗を 浮かべた額を宥める様に、熱を帯びた耳朶を吸う様に…そしてもう一度柔らかな唇を貪る様に。 「ぁ…あると…」 「―――大事にする」 「うんっ…!」 繰り返されるキスにうっとりと頬を染めたシェリルを怯えさせない為にも 意識して出来るだけ優しい声で囁きながら…俺はそのまま彼女の中で動き始めた。 背中へ回されてきた腕と腰へと絡み付いて来る足から、彼女もそれを望んでくれて いるのだと云う事が伝わって来る。上下に、前後に、繋がった腰を揺する度に生まれる 強烈な快感と、じわじわと背筋を這い上がる幸福感を感じる。 ―――そうだ、俺はずっとシェリルとこうしたかった。離れている間も、ずっと彼女の 温もりを求め続けていた。…いや違う、そうじゃない。もっと前から、俺は彼女を求めていた。 自分の腕の中で震えながら与えられる感覚に溺れている彼女を何度も夢に見た。 夢の中で、何度も何度もシェリルを抱き続けた…現実でも抱きたいと願い続けていた…。 ずっとずっと…離れてしまう前からずっとシェリルの全てが欲しいと、そう願っていたんだ…。 「シェリル…ずっと…っ、こうしたかった…」 「ぁ…あ、アルト…っ」 「っく…こうしてお前を…俺のものに…俺のものにしたかったんだ…!」 「あ、あたしも―――あたしも、ずっと…」 「シェリル…」 「アルトに抱かれて…一つになりたかったの…!」 …そうだ、以前にも夢に見た事がある。彼女の柔らかな体を組み伏せて、 自分の思うままにする夢を。だが…夢と現実は違う。触れ合う肌の温もりも。 柔らかく俺を押し返す膨らみも。甘く耳元で囁かれる言葉も。繋がった部分から 生まれては全身をめぐる蕩けてしまいそうな熱さも……。現実に腕の中にいる シェリルは、夢なんかよりももっと温かくて柔らかくて…この上無く心地良かった。 彼女から伝わる全てが愛しくて溜まらない。そして…そのシェリルもまた俺と 同じ様に、俺の全てを求めてくれていると云う事が溜まらなく嬉しかった。 「あっ、あ…っ!あぁ、アルト…っ」 「シェリル…っ、く…イイ…っ!すげぇ…気持ち良い…」 「―――っ、バカ…っ!」 二人がお互いを求め合う度に、擦れ合う粘膜とぶつかり合う体が淫らしい水音を立てる。 生まれる甘い感覚に素直な言葉が零れ落ちると、シェリルはまた耳朶まで真っ赤にさせて せめてもの抵抗とばかりに、細い指先で結い上げた黒髪を引っ張った。 そんな彼女を宥める様に唇を重ねると、触れ合わせただけだったそれは すぐに熱を孕んだ深い口付けへと代わる。二つの唇が吐息と共に生み出した 唾液の絡まる水音が、今度は体の交わる水音に重なって寝室を満たして行った。 そうしてシェリルと深く繋がる度に、次第に近付く絶頂を感じる。 その限界の予感と込み上げる熱塊の感覚に、腰がぶるぶると震えるのが分った。 腕の中のシェリルもそろそろ限界が近いのかもしれない。与えられる悦びに 溺れながら、柔らかな体はその悦びから逃れようと身を捩る様に身悶えていた。 …そして、その時になって漸く俺は思い至った。ミシェルから渡されていた筈の 『ソレ』の存在なんてすっかり忘れ去ったまま、なだれ込む様にしてシェリルを 求めてしまった事に。そんな自分自身の性急さに気付いても…もうどうする事も出来ない。 「っ…シェリル、悪い……っ!」 「え…?あ、あぁっ…、あ、あぁっ、アルト…っ!?」 「ごめん…っく、でももう…止められない…っ!」 「あっ!?あ、アルト…っ、あぁぁっ、あぁぁぁんっ!」 ―――そうだ。気付いても、もう止めることなんて出来ない。 シェリルから伝わる全てにすっかり溺れてしまってもう自分を止められない。 ただ腕の中で甘い鳴き声をあげる存在を、愛しい人を全身で感じ続けていたい… どれだけ余裕が無かったのかと性急な自分自身に軽く苦笑しながら、 それでも求める気持ちと体を止める事が出来ず、最後の坂を二人して上り詰めていく。 もう止められない。止められるヤツなんてこの世にいない。 伝わる熱と伝わる想い。繋がる体と繋がる体。全てが…シェリルの全てが欲しかった。 彼女の全てを自分の物にしてしまいたかったし、自分の全ても 彼女の物にして欲しかった。嫌なら止めるなんて、もう言えない。 そんな風に自分を制することなんて出来る筈が無い。 一度この幸福を知ってしまえば―――…… 腕の中にいる愛しい人と一つに解け合う悦びを知ってしまえば、 知らなかった頃に戻れる筈なんてなかった。 「やっ…!アルト、だめ…っ!は、激し…あ、あぁぁっ!?」 「っ……く、はぁ…、シェリ…ル…っ!」 「あっ―――…あ、あぁぁぁんっ!」 ぞくりと背筋を這い上がってくる衝動。腰に篭る熱が全身を駆け回り その吐け口を求めては「早く早く」と俺を突き動かす。 その時が来る気配を察して腰を引くべきかと、一瞬だけ生まれた躊躇いを 察した様に、シェリルがぐっと身体を引き寄せて俺にしがみ付いて来た。 「シェリル…?」 「っ、はぁ…良い…から、アルト…このまま…っ!」 「―――…ああ」 そして、その思いもかけない強い力と、耳元に囁かれた言葉に促される様に、 自分の体を彼女の一番深い部分まで押し入れた俺は、そのまま奥へと突き動かす。 …良いのか、とは敢えて聞かなかった。俺も本当は彼女の中に 自分の物だという証を残してしまいたかったのかもしれない。 溶け合う体がぐちゃぐちゃに混ざり合いながら一つになって行く。 意識が可笑しくなってしまいそうな圧倒的な快感が全身を包み込んで 何時までもこの波に溺れていたいと言っている。 それなのに、心の中はただ「愛しい」と。…ただ愛しいと云うシェリルへの気持ちだけが 次次と溢れては内側を塞いで、俺の動きをどんどんと急かして行った。 「あっ、あぁっ!アルト…っ、や、ふ、深い…っ!」 「っ…シェリル…っ!」 「アルト…っ、あると…あ、あぁっ…あたし、あたしもう…ッ」 「―――シェリル…、俺も、もう…出る…っ」 「あ―――…あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 そして…ひたすらに俺を呼ぶシェリルの声に、どんなに我慢しても 遣り過ごす事の出来ない限界が訪れたのが分かった。 ぬめぬめと熱く絡み付いて来るシェリルの中に包まれたまま びくんと大きく自分の腰が甘く跳ね上がる。生まれて始めて体験する解放感。 大きく跳ね上がった腰は、びくびくと震えながら今まで溜まっていた 白濁した欲望を吐き出して、その全てを彼女の中へと注ぎ込んで行った。 「あ…ると、アルト…アルト…」 「―――シェリル」 ぶるりと腰が震える度に、初めてのシェリルの中を初めての俺のモノが満たしていく。 初冬に降り積もった淡雪の上に足跡を残す様に、俺も彼女の中に 自分のものだと言う証を残し、刻み付けたかったのかもしれない。 意外な自分の独占欲に驚きながらゆっくりと息を吐き出すと、 満足感と充実感が言い難い幸福を伴って全身に込み上げて来た。 「シェリル……平気か…?」 「…アル……ト……うん…。ふふ…幸せ」 「そっか…」 そっと唇で、蒼い瞳の目尻に滲んだ涙を拭うと、擽ったそうに 腕の中でシェリルが細い体を捩った。今も乱れたままの息遣いを、 二人で折り重なったまま…お互いの温もりを感じながら整える。 重くないだろうか、と。不意にこみ上げて来た不安に少しだけ体をずらすと、 体の中だけじゃなく、真っ白な肌の上にも俺が残した赤い痕が幾つも散っていた。 「―――っ、あ…。わ、悪い」 「え……?」 まだ夢の中にいるかの様なシェリルが、少し小首を傾げながら曖昧な返事を返す。 「いや…体の上に……その、痕が…」 「もう…アルトのえっち…」 「あ―――…まぁ、返す言葉も無いな」 俺の言葉に、さっきの自分達がお互いの体へと繰り返した行動を思い出したのだろう。 くすくすとおかしそうに笑うシェリルの姿に、此方にも自然と笑顔が浮かんだ。 幸せそうだ…と、そう思った。そして自分もこうして彼女を抱けた事を幸せだと思う。 もう一度腕の中のシェリルをきゅっと抱きしめると、彼女もふわりと 細い腕を回して、俺の背中を抱きしめ返して来てくれた。伝わる温もりと違いへの愛しさ。 その幸福感が、今まで胸に残ったままだったしこりをじわりと溶かして行ってくれる。 「嫌なんかじゃ…無かったよな…?」 「え?」 「あ、いや…何でもない」 「っ…バカ…。嫌なんて、そんな筈ないじゃない…」 そうだよなぁ…と、今更ながら自分の言葉に苦笑する。 ……だが、それも仕方が無いのかもしれない。 『いや…いや、許して…お願い、許してアルト……』 ―――今日。幸せな気持ちで彼女を抱きしめている間にも何度か脳裏を過ぎった記憶があった。 苦い記憶の中に蘇るシェリルの泣き声と、今も嫌悪して止まない身勝手な自分の行為。 あれは…何時の頃だっただろうか。自分の気持ちを自覚するよりもずっと前。 シェリルの気持ちが分からなくて、その一挙一同に振り回されていた頃の夢の記憶… 「お前には前に一度拒まれてるからな…」 「―――は!?な、何よそれ…あたしには記憶が無いわよ?」 「あっ…な、無くて良いんだよ。まぁ余り……き、気にするな…」 そして言葉にするつもりの無かった言葉が、自分でも気付かぬ内に 唇から零れ落ちてしまっていたのだろう。思わず届いたその言葉に シェリルがぱちぱちと綺麗なまつげを瞬かせる。少しだけ慌てた様子を見せる 姿に益々焦りながら、俺は此方を覗き込んでくる綺麗な瞳から視線を逸らした。 「ふぅん、そうなんだ。酷いわ、あたしの大事な初めてを奪っておいて アルトにはまだあたしに隠さないといけない事があるのね」 「あ…い、いや…あの…それが」 「バカバカぁ。酷いひどーい。あたしの恥ずかしい所をあんな所まで 全部見ておいて、自分の事は隠そうとするだなんて」 「ばっ…!いや、違うんだってば!だから、夢の…中で……」 「え?」 腕の中でわざとらしく左右に首を振って泣き真似をするシェリルに、 観念した様に口を開くと、込み上げる気恥ずかしさを噛み殺しながら 俺は半ば自棄になって言葉の続きを吐き出した。 「夢の中で、お前を抱こうとして死ぬほど抵抗されたんだよっ! もうずっと前の事だったけど…な。その……それを思い出したんだ」 「え…あ、あら、やだ……」 そして俺の言葉を受けたシェリルの顔が、見る間に赤く染まっていく。 恐らく今の俺の顔も、彼女に負けず劣らず…それこそ完熟したトマトの様に 赤く染まっているのだろう。込み上げて来る照れ臭さを誤魔化す為に、 はぁ…っと苦笑交じりの溜息を吐き出すと、俺は軽くシェリルを睨んで見せた。 「ったく…。お前には絶対に言うもんかって思ってたんだぞ…」 「ふふ。そうね、アルトにそんな事があったなんて…少し意外かも」 「―――…軽蔑するか?」 「そんな筈ないじゃない…アルトのバカ…」 そのまま俺の頬をほっそりとした指先で挟んで、ちゅっと可愛い口付けが降りて来る。 一度離れたシェリルの唇を追いかける様にして、今度は俺から深い口付けを送った。 絡まりあう舌先と唾液が睦みあう甘い水音が、また室内を満たして行く。 「―――あたしも…同じよ…」 「シェリル?」 「あたしだって…夢に見るくらいアルトに抱かれたかった……。 アルトに愛して貰えるなんて思っていなかった頃からずっと、 こうしてアルトの腕に抱かれたかった…アルトと一つになって 全部全部、アルトだけの物にして欲しかったわ。―――軽蔑する?」 「そんな筈ないだろ、バカ」 そうしてお互いに顔を見合わせて、俺とシェリルはくすくすと笑い合った。 今までも、時折脳裏を掠めては胸の中に燻り続けていた…遠い日に見た夢への罪悪感。 その痛みさえも、こうして二人で過ごす甘い時間の中で、すぅっと溶けて消えていく気がする。 「神様に…恋をしてた頃は…か」 「シェリル?」 「何でも無いわ。ただ……」 そしてそんな甘やかな余韻に酔いしれる中で…シェリルがぽつりと小さな呟きを漏らした。 暫く、言葉の続きを捜す様に小首を傾げてから、ゆっくりともう一度口を開く。 「―――神様に感謝しないと…って思ったのよ」 「……なんだ、そんな事。それなら、俺はもうとっくに神様に感謝してる」 「とっくに?」 「ああ……」 アイランドワンで再びシェリルの歌声を耳にした時に。オズマ隊長と二人 その無事な姿を自分の目で確認出来た時に。…もう一度、こうしてフロンティアに 戻って来ることが出来た時に…。そして何よりも、シェリルの目が覚めて、 この蒼い瞳に映る自分の姿を目にする事が出来た時に―――… 何度も何度も、それまでの自分を申し訳なく思う位に繰り返し、 この世にいるのかどうかさえ分からない神様に感謝をした。 そして今も―――こうして、シェリルと結ばれて、誰よりも近くで 彼女の存在を感じていられる事に…何よりも深く感謝をしている。 「―――シェリル…」 「なぁに?…って、やだっ!もうっ…アルト…んっ…」 「ん…っ、はぁ…ん、んぅ…」 込み上げる喜びや愛しさ、感謝の気持ちに促される様にして もう一度シェリルの唇に強く自分の唇を重ね合わせる。僅かに開いた 隙間から舌を忍び込ませると、一瞬だけ淡い抵抗を見せたものの すぐに俺に応える様に、細い両腕が首筋へと絡みついて来る。 そのままたっぷりと舌先を絡み合わせた後で、細い唾液の糸をかけながら 二つの唇が名残惜しそうに離れると、シェリルは綺麗な空色の瞳に 薄っすらと涙を浮かべて俺を上目遣いで睨んで来た。 「…もう…バカ……」 「バカはお互い様だろ?」 「ん、もうっ…」 その表情さえ可愛くて、もう一度軽く唇を重ねるとくすくすと二人して笑いあう。 俺の背中に回されていたままのシェリルの腕。その白い腕がすいと動いて、 髪の毛を縛ったままの赤い組紐へと回された。そのまま、 しゅるり…と云う音を立てて彼女が俺の髪の紐を解く。 「シェリル?何を……?」 「ふふ…綺麗ね、まるで本当にお姫様みたい…」 「この期に及んでお姫様扱いは止めろよな…」 「じゃあ、天女様?」 「もう天女も卒業した。今お前の前にいるのはただの男…だろ?」 口では文句を言いながらも、楽しそうなシェリルの表情に、俺の顔にも自然と笑みが浮かんだ。 そのままもう一度シェリルの顔を覗き込み、ゆっくりと顔を近づけると…俺の意図を 察した彼女も瞳を閉じて唇を寄せて来てくれた。ふわふわとした夢の中にいるかの様な幸福感。 もう何度目かも分からない口付けなのに、唇を重ねる度にどうしてこんなにも 幸せな気持ちになってしまうのか。分からないままにシェリルの柔らかな唇を吸い上げる。 そうして何度となく唇を重ね合わせた後で、シェリルが手にした髪紐を柔らかな仕草で 俺の掌へと戻して来た。浮かんだ表情は何処か愛しげな色を浮かべている。 「随分長く、大切に使ってるのね…」 「分かるか?」 「ええ。何度も古びては手直しされた後があるもの」 「……その紐は、俺が子供の時に母さんに貰った物なんだ」 そうして一度シェリルの手から受け取った紐を、今度は彼女の左手の小指に結び付けてみる。 ふっと頭を過ぎった子供の戯れの様な考え。俺の行動の意図を図りかねたんだろう。 シェリルは小首を傾げながら、赤い紐の結わえられた自分の指をしげしげと眺めた。 「…なぁに、コレ?」 「さぁ。なんだろうな」 きょとんとした表情が子供みたいで、思わず笑いが漏れてしまう。 だがそんな俺の態度が気に入らなかったのだろう、むぅっと眉を寄せたシェリルが 桃色の頬を不機嫌そうに膨らませるのが分かった。 「もう、何笑ってるのよ」 「ああ、悪い。その組紐は親父が昔母さんにあげた物らしいんだ。 この間家に戻った時に、そう兄さんが教えてくれた」 「…兄さん?アルトにお兄さんなんていたかしら…?」 「お前も一度逢ってる筈だぞ。昔、羽衣公演の時に一緒にいた人だよ」 「ああ……」 俺の説明に合点が行ったらしいシェリルは、一度小さく頷くと また頬をぷぅっと小さく膨れさせて見せた。 「よ~く覚えてるわよっ。あたしの前からアルトを連れて行っちゃった人でしょ?」 「ああ。…良く覚えてたな」 「当たり前でしょ。なんて意地悪な人なんだろうって思ったんだから!」 「お前、それ…兄さんの前では絶対に言うなよ…」 …例え何が起ころうとあの人にだけは逆らっちゃいけない。 それが早乙女一座の暗黙の了解なのだ。そんな俺の言葉に益々混乱したらしい シェリルが「なんで?」と不思議そうに小首を傾げている。 「まぁ……その内分かる様になるよ」 ―――嫌って言うほどな、と。苦い笑いを返しながら言葉を続ける。 「大事な思い出の組紐だったのに、母さんがまだ小さい頃に俺にくれたんだ。 だから、何度も直しながら今も使わせて貰ってる。まぁ…流石に草臥れて来てるんだけどな」 「素敵ね。…アルトとお母様、二人分の思い出がこの紐には詰まってるのね」 「―――そうだな」 柔らかな口調で紡がれる言葉は優しさに満ちている…。その事が嬉しくて、 寝台に背中を預ける様にしてそっとシェリルを抱き寄せれば、彼女の方も 抗う事無く素直に俺にその身を委ねて来てくれた。ふわふわと揺れる ストロベリーブロンドから香る甘い匂いが鼻腔を擽る。…まるで別の女性なのに それは何処か、遠い昔にかいだ母さんの匂いにも似ている気がした。 「それで?なぁに、コレ?」 「…赤い糸の伝説、って知ってるか?」 「ナニソレ。少なくともギャラクシーじゃ聞いた事無いわね」 「出展が何処かは諸説があるんだけどな…。半世紀以上前の地球にあった伝承だよ。 何時か出逢うべき運命の相手とは、小指と小指が赤い糸で繋がってるんだ…って話」 「…だから赤い紐?」 「ああ。糸じゃなくて組紐って言うのが微妙にずれてる上に妙に実用的な 親父らしいけどな。そう云う意味を込めて…結婚して間もない頃に、 父さんが母さんに贈った物らしい…」 「そう…ロマンティックでステキね…」 溜息の様な口調で呟きながら、自分の小指に巻きつけられた組紐に 陶然とした眼差しを向けていたシェリルが、不意にむぅっと眉根を寄せる。 「でも…ね、アルト。一つだけ聞いても良い?」 「うん?」 「なんでその話をあの人が知ってるの…?そもそも幾つなのよ、あの人…」 「そりゃあまぁ…そこは兄さんだからな…」 「そんな理由なの!?」 「そんな理由なんだ」 だから云っただろ、その内分かる様になるって…と。そう続けた言葉に シェリルが小さく表情を曇らせる。まぁ、この辺りは…当人に会ってみれば分かる事だ。 「…な、なんだかアンタの実家に行くのがますます怖くなって来たわ」 「なんだ、銀河の妖精にも怖いモンがあったのか」 「あら、やだ。普段は銀河の妖精でも…今アルトの前にいるのはただの女の子よ」 そして僅かに膨れた表情のまま、空色の瞳が此方を見上げてくる。 ついさっき何処かで聞いたばかりの言葉に思わず口元から笑いが漏れた。 くすくすと同じ様に笑うシェリルの唇をそのままそっと自分の唇で塞ぐ。 腕の中に大切な人を抱きしめたまま体を反転させて体を白い波へと埋める。 僅かに開いた隙間から舌先を忍び込ませると、シェリルも自然とそれに応えてくれた。 小さな掌を自分の掌で包み込み、指先を絡み合わせると…シェリルが腕の中に いるのだという幸せが、改めて胸へと込み上げて来た。 組み合わせた指に触れるのは、さらさらとした自分の赤い髪紐の感触。 運命なんてものがあるとは思わない。でも、俺とシェリルをを繋ぐ 赤い糸の存在が…今なら信じられる気もした。 それは恐らく、俺達が自分の意思でお互いを運命の相手なんだと。 たった一人の大切な相手なんだと…そう願っているからなんだろう。 例えこの先何が起こったとしても。徒な運命に何度引き裂かれる事になったとしても。 こんな赤い糸なんて無くても…。シェリル。俺は必ずお前を見つけ出してみせる。 お前が何年も掛けて俺を探し出してくれた様に…このフロンティアでまた出逢えた様に。 俺は何度でも、この銀河に―――シェリル、お前を見つけ出して見せる。 こうしてお互いを求め合う気持ちが、俺とシェリルの間の『赤い糸』なのかもしれない。 「あ…あ、はぁ…っ。あ、あると……」 「シェリル、もっと」 「んっ…も、ばか……っ」 重ねた唇を溶け合わせる動きは、次第に激しいものへと変化して行った。 それに伴って、一度は鎮めた熱が体内に戻って来るのが分かる。何となく離れ難くて 繋がったままだった部分に、また少しずつ熱が戻り始めたのに気付いて、俺は苦笑した。 自分の欲深さに半ば呆れ似も似た感情が沸きあがって来る。けれど、それを自分でも どうする事も出来ない。真綿の様に包んでシェリルを大切にしたい気持ちも… 衝動のままにかき抱いてシェリルを壊してしまいたい気持ちも。 恐らくはそのどちらもが、誤魔化す事の出来ない自分の素直な気持ちなのだと分かるから。 ずっと焦がれていたシェリルの温もり。それは一度触れてしまえばもう 忘れる事の出来ない、禁断の媚薬の様なものなのかもしれない。 …と、そこまで及んだ自身の馬鹿馬鹿しい考えにまた一つ苦笑を零すと 不意に脳裏に甦る艶やかな歌声があった。琥惑的に聞く者の心をかき乱す歌声。 その一節を思い出して…力を取り戻し始めた肉体で、シェリルの内側をかき回す。 「やっ…あっ、やぁぁんっ!ちょ、ちょっとアルト…っ?」 いきなり何するのよ!と紡がれかけた言葉を、唇を合わせるだけのキスでそっと封じこめる。 「…お前、歌ってたじゃないか」 「え…?」 「あなたの遺伝子をあたしの中で混ぜて……ってさ」 「―――もうっ!バカ!」 顔を耳まで真っ赤にしながら、涙目になってこちらを見上げて来る姿が愛しかった。 喉元まで込み上げて来る笑いを噛み殺しながらそっと掌を伸べて 出来るだけ優しい動きで、頬に張り付いた髪の毛を梳ってやる。 「言っておくけどな、バカなのはお互い様だからな」 「え…?」 「お互いに、歌バカと空バカ…だろ?」 「ふふ…。もう、本当にバカなんだから」 そうしてくすくすと笑い声を零す唇に、触れ合わせるだけの口付けを送った。 それだけで一度離れた唇を追いかける様に、今度はシェリルの唇が 小鳥の様に俺の唇を啄ばむ。ちゅっと触れ合う音を立てながら 交わされていた戯れの様なキスが…また少しずつ深い物へと変わって行く…。 「あ…?ちょ、ちょっとアルト…」 「―――うん?」 「どうしてまた…こんなに大きくなるのよ、バカ…ッ!」 「だから、あんまりバカバカ言うなよ、バカ」 そんな風にお互いに繰り返し口にする「馬鹿」と云う言葉に、小さな微笑を交わしながら、 唇を重ね合わせて今日だけで何度になるのか分からない口付けを繰り返す。 触れ合った相手の身体を強く抱きしめ合うと、一度は冷めた熱を取り戻して 二つの肉体が…また深く繋がりたいと互いを求め合うのが分かった。 (これからはずっと俺が傍にいる。どんな事があってもお前はもう一人ぼっちなんかじゃない。 …これからはずっとずっと―――俺がお前の傍にいるから) だから、もう一人で泣かないで欲しい。一人で痛みを抱え込んで、 眠れない夜を過ごさないで欲しい。悲しい過去を振り返って孤独に 溺れそうな夜には…何度だって俺の名前を呼んで欲しい…。 「……俺がいてやる」 「アルト…?」 「これからはずっと、俺がお前の傍にいる。…シェリル、もう二度とお前を一人にはしない」 「…ふふ。仕方ないから信じてあげるわ。だから…アルト…」 「―――ああ…」 もっとずっとあたしを愛して、と。続く言葉を飲み込む様にして触れ合う唇。 お互いに苦笑を浮かべながら交わす優しい口付け。肌から伝わるお互いの温かさ…。 そうしてシェリルの存在を全身で感じながら、俺は彼女が与えてくれる幸福に溺れて行ったのだった。 ―――もう二度と離さないで捕まえていて。一人じゃないとささやいて欲しい…Planets …と言う訳で22話と対になって『ユニバーサル・バニー』の流れを汲む 劇場版後のアルシェリお初のお話でした。毎回GJや支援くださる方、滝つぼ保管して下さる方 本当に本当に有難うございます。規制まみれの長いSSですけど最後までお付き合い下さった方にも感謝です。 この後にどんなに甘くて長い初夜を過ごしてもその後は『ピュアなフリしてギラギラサマー♪』に繋がりますw アルシェリとアルシェリストがいつまでも幸せであります様に…!
https://w.atwiki.jp/macrossf-eparo/pages/49.html
750 一日艦隊司令 sage 2008/05/30(金) 17 48 53 ID qAAi8cSC 美星学園の図書室で航宙科パイロットコースの四人組が試験勉強に余念がなかった。 「これ覚えるの大変。グレイスみたいなインプラントとか外部記憶が欲しくなるわ」 シェリルはモールス信号の一覧表を前にため息をついた。 「大丈夫ですよ、音感やリズム感がすばらしいんですから覚えられますって」 ルカが励ました。 「これトンとツーだけでしょ。せめて音階があれば、もうちょっと馴染みやすいのだけど」 「音階はちょっと……でも単純な音の組み合わせだから、非常時には宇宙船の外殻を叩いて船内と外で通信できるんですよ」 「そうね」 「そんなシェリルさんのために、作ってきたんです」 ルカは愛用のノートパソコンを取り出した。自作のゲームを起動する。 「ルカ君はプログラムもできるの?」 シェリルは目を丸くした。 説明しながら、ルカは照れて鼻の頭をかいた。 「出てくる文章をモールスに置き換えたり、耳で信号を聞いて平文をタッチタイプしたりするんです。初心者向けヒント付きモードもありますから、最初はこっちを使ってください」 「わぁ、面白そうね」 シェリルの言葉はお世辞ではない。 ゲーム画面にはアルトやミシェル、ルカ、ランカ、ナナセのキャラクターが動き回って、応援のメッセージをふきだしの形で表示していた。 「携帯にもインストールできますから、空き時間にでも遊んでください。携帯端末貸してもらえます?」 「お願いするわ」 一方、アルトとミシェルは図書館に充満した異様な空気に気がついた。 「なぁミシェル、俺たち他のヤツから睨まれているんじゃないか?」 「ああ、そうだな。シェリルのファンから嫉妬と羨望の視線で睨まれてるな」 「そういうもんか? あっちの女の子たちはシェリルを睨んでいるようだが、あれもファンか?」 「ああ、あれはアンチ・シェリルだな。パイロットコースの学年一位と二位を侍らせているからだろ」 「有名人も大変だな」 「お前な、他人事みたいに言うなよ。当事者の癖に」 「俺は関係ないだろ」 ミシェルはため息をついた。 「あんだけ派手なことやらかして、関係ないなんてあり得ないだろ。まったく試験のヤマは当てるくせに、どうしてこーゆー方面は鈍いのかね、お姫さまは」 衆人環視の中、二度もシェリルを抱いて飛んでいるのに。ミシェルは首を横に振った。 シェリルが来る以前から、アルトは学園の中で目立つ存在だった。 ナナセからの情報によれば、文芸部の女子生徒たちがアルトを題材にエロパロを執筆して回し読みしたり、映像部の学生が隠し撮りしたアルトの着替えショットや、レスリングの授業でホールドされるアルトの苦悶の表情を捉えた写真が出回っているそうだ。 シェリルが学園にやってきてから、コアなアルト・ファンは、硬派なアルトを懐かしむ派閥と、シェリルとアルトの女王様・奴隷プレイを妄想する派閥に分かれて、激しい闘争を繰り広げているとの噂もある。 「姫とか言うな」 横目でミシェルを睨むアルト。 「さーて、そろそろ集中力も切れてきたし、軽く運動なんかどうだい?」 アルトを軽く無視すると、ミシェルは一同に向かって提案した。 「運動って、何するんですか?」 シェリルに携帯を返したルカが尋ねた。 「そうだな……“気をつけゲーム”なんか、どうだろう?」 美星学園航宙科棟にある極低重力室は、内壁・天井・床にクッションが張られていて、口の悪い学生からは拘禁室と呼ばれていた。 体育用のスーツに着替えた四人組が、0.005G以下という弱い重力の室内でフワフワと浮いている。 「じゃあ、まずアルトに手本を見せてもらおうか」 団体行動の時は、自然とミシェルが仕切るようになっている。 アルトはルカに合図を送った。 「よーし、いいぞ。ルカ、回せ」 壁に足を固定したルカが、空中で“気をつけ”をしているアルトの足をつかんで回した。次は手をつかんで別軸の回転を加える。アルトの体は、体操選手でもてこずりそうな三軸回転運動の状態になった。 「いくぞー、止まれ!」 ミシェルの合図で、アルトは体の捻りだけでピタリと静止してみせた。 「なるほど、無重力の宇宙空間では一度動き出すと、静止するのが難しいのね?」 「そういうこと」 ミシェルがうなずいた。 今度はアルトが足を壁に固定して、シェリルが回転する役になった。 「初めてなのよ、優しくてね」 「人に聞かれたら誤解を招くような台詞は止めろ。お前はオヤジか」 憮然としたアルトは、それでもシェリルの足をつかんで、ゆっくり単純な一軸回転の動きを与えた。 「3・2・1…止まれ」 ミシェルの合図で止まろうとするシェリル。しかし、慣性を打ち消しきれずに、わずかに回転が残る。 「アウト!」 ルカがダメ出しした。 「もう……もう一回よ!」 負けず嫌いのシェリルは、再度チャレンジする。 ルカは買ってきた紅茶の缶をシェリルに渡した。 「やっぱりシェリルさん、運動神経がいいんですね。初心者で二軸回転までクリアする人は居ませんよ」 軽く汗をかいてから、シャワーで汗を流した四人組はロビーで飲み物をとっていた。 「次は、アルト並みの回転に挑戦するわ」 シェリルは頬が健康的に紅潮していた。 「素人には無理だって」 アルトは肩をすくめた。 「もう、どうしてそういう言い方するのよ」 アルトにつっこみながらも、シェリルはささやかな幸せを感じていた。 (私、今、すっごく普通の学生してる) 芸能界の仕事を選んだのは決して後悔していないが、そのために捨ててきたものへの感傷はある。思いがけない状況の変化からフロンティアにとどまる事になったが、ギャラクシーでは無理だった普通の生活を取り戻している。 「そろそろ時間だ」 ミシェルが携帯で時刻を確かめる。SMSに所属する三人は、それぞれカバンを肩にかけた。 「仕事なの?」 「ああ、航路哨戒だ。またな」 アルトはそっけなくシェリルに背を向けて、エントランスへ向かった。 ミシェルとルカは、手を振ってアルトに続く。 「気をつけて……アルト! この次は試験のヤマ、教えなさいよね!」 おどけてみたものの、三人の後姿に、シェリルは胸を締め付けられるような寂しさを感じていた。 しかし、すぐにあのいたずらっぽい笑みが唇に浮かぶ。 「でも、後でまた会えるんだけど」 SMSマクロス・クォーターの格納庫。 「ぶっ」 アルトは軍用通信回線の画像を見て噴いた。 「グラス大統領閣下に一日艦隊司令を命じられましたシェリル・ノームです」 画像のシェリルは新統合軍将官の制服を着用していた。階級章は准将。マクロスが所属する任務群の司令ということらしい。 「ここまでやるのか」 VF-25のコクピットでアルトは呆れて呟いた。 一方で、シェリルに感心してもいる。 ギャラクシー救援活動のために、軍の広報活動に協力しているのだろう。 任務群旗艦アグライアのCIC(戦闘指揮所)では、シェリルが全艦隊へスピーチを行っていた。 「先の救援艦隊の派遣に、ギャラクシー市民を代表してお礼申し上げます。 皆様の活躍を間近で見る機会を与えられて感激しています。どうか気をつけて無事任務を達成なさってください」 最後にピシリと敬礼を決める。 CIC要員が拍手をする。 「素晴らしいスピーチありがとう、ノーム司令。どうぞこちらへ」 軍を代表して労ったのは本来の艦隊指令サンダバット少将だった。浅黒い肌の中年男性だ。司令官の席へシェリルを導く。 「どういたしまして」 シェリルは優雅に会釈すると、シートに座った。目の前には艦隊の状況や、周囲の宙域の情報が表示されている。 予定では、航路哨戒の様子を視察、艦載機チームによる展示飛行、その後フロンティアへ帰還という手はずになっていた。 「本艦は予定航路を進行中。現在のところ異常なし」 そう報告があった直後、警報が鳴った。 「ピケット艦パラスより入電。コードVictor。数は12!」 任務群の反応はすばやかった。直ちに戦闘態勢へ移行。母艦機能を持つ艦からは、艦載機が飛びたつ。 「いきなりこれか……シェリルさん、すぐに退艦の準備を」 サンダバット少将が連絡機の手配をしようとしたところ、シェリルは押しとどめた。 「少将、お願いがあります。一日艦隊司令の権限を少しだけ、少しだけ濫用させて下さい」 「なんですと?」 「私のために連絡機を出すより、艦載機の発艦を優先なさってください。フロンティアの人々を守るために」 「しかし……今のタイミングを逃しますと、連絡機は出せませんぞ」 「かまいません。私に人手を割くより、今は戦いを」 サンダバット少将は少しばかり沈黙した。おもむろに口を開く。 「よろしいでしょう。では、軍艦に乗っている以上、戦力になっていただきましょうか。副官、シェリルさんをスタジオへご案内しなさい」 任務群の通信系にサンダバット少将からのメッセージが流された。 「任務群司令より全艦に達す。 一日艦隊司令シェリル・ノームさんは本艦から脱出する代わりに、艦載機の発艦を優先するように希望された。私は承諾した。 銀河の妖精は諸君とともにある」 そこで画面が切り替わった。 旗艦アグライアを外部から映した映像に切り替わる。艦首には巨大なシェリルの立体映像が投影されていた。 ミンメイ・アタック・システム。かつて第一次星間戦争で用いられた立派な兵装だ。 新統合軍は旧統合軍時代からの伝統に則り、艦隊指揮機能を持った軍艦にこのシステムを搭載していた。 これまで、はぐれゼントラーディーとの遭遇戦で有効活用されている。 「シェリル・ノームです」 立体映像は艦内スタジオで撮影されたシェリルの姿だ。 「本当は、事前に色々とスピーチも用意してきたのですけど、今の警報で全部吹き飛んでしまいました」 小さく口元がほころんだ。 「あなたがどんな気持ちで戦場に居るのか、私には想像することしかできません。そんな、あなたにどんな言葉をかけたらいいのか、思いつきもしません」 シェリルは顔を上げた。 「だから、私にできることをします。次のライブの最初の曲は、あなたに捧げます。 必ず生還してください。会場で聴いてください。 私のように故郷に戻れない人を作らないでください……以上です。 指揮官の権限をサンダバット少将にお返しします」 映像が消える一瞬、目元にキラリと輝くものが見えたかもしれない。 「こちら、サンダバット少将。権限をお受けする。 全艦、いつもどおりの手はずだ。艦載機による迎撃で敵を漸減。統制砲撃で各個撃破を狙う。 ただし、バジュラのフォールド航法は人類のものとは違う。思いがけない方位にデフォールドする可能性もあるので咄嗟(とっさ)砲雷戦の準備を怠るな」 「言われなくたって。試験のヤマを教えないといけないもんな……おちおち死んでもいられない」 アルトは操縦桿を握り直した。 所属するスカル小隊は、艦隊の最先鋒に位置する。 「いくぞ!」 オズマの合図とともに、高機動ミサイルの一斉発射。 空間に火球の花が咲く。 <終> 764 ルカ・アンジェローニの三分間ソーシャル・クラッキング sage 2008/05/31(土) 13 29 54 ID wPoWwklG 》750でシェリルが自分の携帯をルカに渡した時、実は何が起こっていたのか… ====================================================================================== (ふふ、シェリルさんの携帯ゲーット) ルカはノートパソコンと携帯端末を接続しながらほくそ笑んだ。 つぶらな瞳に邪悪な光が宿る。 (ゲームをインストールするついでに、着信と発信履歴のぞいちゃおーっと) 案の定シェリルの携帯はプロテクトが甘く、痕跡を残さずに簡単に突破できた。 (おーっとアルト先輩、けっこうコールしてますね。やるなぁ) ====================================================================================== ソーシャル・エンジニアリングとは、人間の心理的な隙や、行動のミスにつけ込んで個人が持つ秘密情報を入手する方法のこと。 ソーシャル・ワークとも呼称される。 (中略) コンピュータ用語で、コンピュータウイルスやスパイウェアなどを用いない(つまりコンピュータ本体に被害を加えない方法)で、パスワードを入手し不正に侵入(クラッキング)するのが目的。 この意味で使用される場合はソーシャルハッキング、ソーシャルクラッキングとも言う。 (Wikiより) <終>
https://w.atwiki.jp/unlight_sc/pages/31.html
シェリ 暗殺者の夜 スーサイダル・T ビックブラック レッツナイフ リンク コメント シェリ (立ち絵) タイプ 隷属 アクションカード 暗殺者の夜スーサイダル・Tビックブラックレッツナイフ 入手 ダークルーム(曙光の時代) + キャラクター総合評価 キャラクター総合評価 評価 純粋にドロー能力に特化したキャラクター。手札保持もできデッキ回転能力に優れるが、手札破棄と攻撃は苦手なのでその辺は他のキャラに任せよう。チュートリアルで貰える初期デッキの購買タイプとバランスタイプに入っているのでこれから始めてシェリが欲しい人はどちらかにするといいかもしれない。ブラウザ版ではCV釘宮。 暗殺者の夜 カード名 暗殺者の夜 キャラクター 入手 シェリ ダークルーム(曙光の時代) タイプ コスト デッキ限界数 レアリティ 隷属 3 2枚 ☆☆☆ 効果 購買力 1, 追加ドロー 2,次ターン「ナイフ」を得る + 評価 評価 3という低コストで自身も1の購買力を持ち後述するスーサイダル・Tと違いノーリスクで2枚ドローできる便利なカード、までは良いのだが次のターン獲得するナイフが曲者。使いすぎるとナイフでデッキが溢れ、せっかく買ったアクションカードが流れてこなくなる…ということを避けるためにマルグリッドのムーンシャインやグリュンワルドの血の恵みなどで手札破棄する準備もあるとGOOD。 スーサイダル・T カード名 スーサイダル・T キャラクター 入手 シェリ ダークルーム(曙光の時代) タイプ コスト デッキ限界数 レアリティ 隷属 4 2枚 ☆☆☆☆☆ 効果 購買力 1, 自身にダメージ 1, 追加ドロー 2 + 評価 評価 暗殺者の夜とほとんど同じ効果を持ち、こちらはナイフを得る代わりに1ダメージを受ける。コストはこちらの方が1高いがコスト4は序盤でも十分引けるコストなのでシェリをデッキに入れるなら最初の2枚はこれにしたい。序盤のデッキ構築に大きく貢献してくれるだろう。ただし、たった1ダメージだがHP管理には注意すること。 ビックブラック カード名 ビックブラック キャラクター 入手 シェリ ダークルーム(曙光の時代) タイプ コスト デッキ限界数 レアリティ 隷属 5 2枚 ☆☆☆☆☆☆ 効果 購買力 3, 手札保持 2 + 評価 評価 2枚のカードを手札保持できる。手札保持の効果は任意のカードを次のターンに持ち越せる、といったものである。これだけ書くと大したことないように思えるかもしれないが実はかなり便利なカードである。例えば本来場に出ているアーティファクトカードに余ったクリスタルを2つ投げて一時購買力1カードを得るところをクリスタル2枚持ち越せるのである。他にもデッキの総数にも依るが、ドローカードで山札のカードを全部引ききれるときに余ったドローカードを手札保持することにより次のターンも安定してドローする、といった使い方もできる。やれることが多くてここには書ききれないので色々試してみて欲しい。 レッツナイフ カード名 レッツナイフ キャラクター 入手 シェリ ダークルーム(曙光の時代) タイプ コスト デッキ限界数 レアリティ 隷属 5 2枚 ☆☆☆☆☆☆☆ 効果 攻撃力 1, 追加ドロー 3,[戦闘時]同じ相手にドロップしたナイフの攻撃を二倍 + 評価 評価 ブラウザ版Unlightでもシェリの代名詞ともなった技、それがレッツナイフである(少なくとも筆者にはそう思えた)。まず目を引くのは追加ドロー3、これはマルグリッドのラプチュアに次ぐドロー数である。手札破棄をしっかりしたデッキでレッツナイフを購入できていれば山札のほとんどを引ける状態になっているだろう。そして同じ相手にドロップしたナイフの攻撃力を2倍にするという効果、これが実に面白い。なんとこの効果、重複できるのである。マルセウスの深紅の月というカードを使って3枚用意できると8倍になるのである。ナイフを7本続けて提出できればそれだけで59ダメージ、ほぼ1ユボスである。ただ気をつけるとするならば、レッツナイフはシェリのアクションカード唯一の攻撃カードである。なので提出する相手や順番によっては手痛い反撃を貰うことにもなりかねない。場合によっては使わないという選択肢も視野に入れよう。 リンク 公式サイト紹介ページ 公式Twitter紹介ツイート コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る