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ここは、広大なゆっくり平原。 ゆっくり名所である池や、川、森、山など、ゆっくりたちが思う存分絶頂にゆっくりできる場所。 そんなゆっくり平原の辺境の森で、ゆっくり霊夢は空を飛んでいた。 もちろん自力ではない。 自力で飛べるゆっくりなど、捕食種であるゆっくりれみりゃとゆっくりふらんだけだったのだ。 ゆえにゆっくり霊夢は夢見心地だった。まさか空を飛べる日が来るだなんて。 頬が風を切って進む感覚。 ぐんぐんと流れていく景色。 徐々に、だが確実に遠くなっていく地面。 視界は広がり、遥か彼方まで見渡せる。 生まれてから死ぬまでに見ることなど、絶対に叶わない素敵な光景。 ゆっくり霊夢の小さな胸は感動でいっぱいだ。 それもこれも、みんなこの「うーぱっく」のおかげだった。 「わぁい!おそらをとんでるみたい!」 「ばかだぜれいむ!まりさたちはおそらをとんでるんだぜ!」 「うー!」 「とんでる!とんでるよ!!うわぁ~♪とりさんよりはやいや!」 「う~♪」 ゆっくり霊夢はご満悦の表情で、自分とゆっくり魔理沙を乗せて飛んでいる二匹のゆっくり種を 見ながらついさっきのことに思いを馳せた。 うーぱっく。 外見はゆっくりれみりゃを直方体にしたものだが、性質はそこまで強暴ではない。 なぜなら、出会い頭に襲撃してこなかったから。 いや、たしかに急に近づいてきたから、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙の二匹は思わず死を覚悟した。 自分たちも、今までにいた他の仲間と同じようにゆっくりれみりゃに食われるのだと思った。 だが、目を瞑り震えながら身を固めていた二匹に聞こえたのは「うーうー!」という人懐っこい声だった。 恐る恐る目を開くと目前にぱたぱたと浮遊しているそれ。 「ゆぎぃっ!」 恐怖の声をあげる二匹。 しかし覚悟した苦痛はいつまでもやってこない。 よく見るとそれは一つの動作を繰り返している。しかもにこにこ笑顔で、だ。 顎を上げるようにしているそれをゆっくり霊夢はこう解釈した。 「ゆぅ……?なぁに?の、のせてくれるの?」 「うー♪」 いかにも!と言うように返答する。 「だっ、だめだぜれいむ!あぶないぜ!それはれみりゃだぜ!!」 ゆっくり魔理沙が警告する。多少見た目が違い、少し人懐っこいからといってそれはゆっくりれみりゃに 違いないのだ。どんなに懐いていたとしても、それが猛獣だと忘れてしまったら危険な事故が起こる。 自分たちより圧倒的に強い相手には、警戒はいくらしてもしすぎると言うことは無い。 だが、ゆっくり霊夢はそれの誘いに乗った。 すでに死んだ身だという気持ちだったからだろうか? 「ゆっくりはいるよ!」 言って飛び跳ねると、ゆっくり霊夢の体はそれの頭頂部に開いている窪みに収まった。 「ゆ?ゆ、ゆ、ゆゆゆ?」 徐々に浮かび上がってくる。飛んでいるのだ。 目線が高くなる恐怖にいくらか震えていたが、ゆっくり霊夢はすぐに慣れてしまった。 それがゆっくりと静かに飛翔していることも関係しているだろう。 「まりさー!すごいよ!おそらをとんでるみたい!」 「れいむ、うらやましいんだぜ!はやくかわるんだぜ!!まりさによこすんだぜ!!」 ゆっくり魔理沙は、それに乗ってくるくると飛んでいるゆっくり霊夢を見て顔をゆがめていた。 「ねぇねぇ、れいむはいいからまりさをのせてあげて!ゆっくりおねがい!」 しかしそれはゆっくり霊夢の言うことに反応しない。ただ「うー」と鳴くだけだった。 もどかしげに身を震わせ、声を張り上げる。 「ねぇ!ゆっくりきいてるの?まりさとかわってあげてよ!ゆっくりしていってね!」 「うーうー!!」 それをかき消すかのような大きな声でそれは鳴いた。 「ゆっ!?」 するとどこからともなく同じような泣き声が聞こえてくるではないか!やがて、いくらもしないうちに もう一匹のそれが姿を現した。 「うーうー」 「うー」 「うっうー」 「うぅ~」 何らかの意思の疎通。そして後から現れたそれはすぐにゆっくり魔理沙へと降下していった。 「ゆぅ?のせてくれるのか?だぜ」 「う~♪」 「ゆゆゆぅ~~~!」 感極まったような高めの声で慌てて飛び乗るゆっくり魔理沙。 どっしりと座ったようなそのおさまり具合は、まるでそれが自分のために存在しているかのような 錯覚をゆっくり魔理沙に与えた。 素晴らしい一体感。 これを覚えてしまえばゆっくりアリスの強制すっきりなど物の数ではない。 「すごいぜ!ゆっくりとんでるんだぜぇ!!」 「まりさ!まりさぁああぁ!!」 「れいむぅううぅぅううぅぅぅ!」 二匹はランデブーするかのようにお互いの周りを旋回し、揃って空を飛ぶ幸運を堪能し始めた。 並んで飛行し、川を越え、枝を飛び越えて流れるように飛んでいく。 地面を飛び跳ねているだけでは、決して味わえない愉悦。ゆっくり霊夢たちは今、幸せの絶頂にいると 思った。自分たちはなんて幸せなんだろう!そして、この出会いに感謝したくなった。 「ゆ?そうだ!おなまえをゆっくりおしえてね!」 「うー?」 「おなまえだよ、お・な・ま・え。れいむはゆっくりれいむっていうんだよ!れいむってよんでね!」 「うー……ぱっく……」 とまどいがちに伝えるそれ。 うーぱっく。 ゆっくり霊夢はそれを聞くと目を輝かせて 「うーぱっくっていうんだね!ゆっくりしようね!うーぱっく!」 と頬を紅潮させて言った。 「まりさも!ゆっくりするぜ!ゆっくりまりさっていうんだぜ!」 二匹のうーぱっくはゆっくり霊夢たちを乗せて何処までもいつまでも飛んでいた。 木に成っている実を貪り食べていた二匹は、いつのまにか日が傾いていることに気づいた。 空は茜色に染まっていて、吹く風も冷ややかになり、鴉の鳴き声がどこか哀愁を誘う。 沈む夕日を今までに無い高みから望んで、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙は思わず涙ぐんだ。 圧倒的な情景。 空を翔る鳥たちは、いつもこんなものを見ているのか。 髪を撫でて耳を抜けて過ぎ去る風は、こんなにも冷たく、もの悲しいものだったか。 二匹に去来する思い。 それがなんなのか理解できないし、言葉にもできない。だが、ただ「そこにある」と感じることは出来た。 二匹はなんだか無性におうちに帰りたくなっていた。 「ねぇうーぱっく!ゆっくりかえりたいよ!ゆっくりかえしてね!」 「う、うー!」 うーぱっくは一声鳴くと、もと来た空を引き返し始めた。 ゆったりとしたその飛行は、余計に「帰る」ということを意識させ、二匹の心は逸っていく。 大地が近づき、森の深緑に包まれる。 木と土の匂い。慣れ親しんだそれが二匹の鼻孔をつくと、言い知れぬ安心感がにじんだ。 ゆっくり霊夢はおうちに帰ったら家族に今日のことを言って聞かせてあげようと考えていた。 うーぱっくとの出会い、初めて大地から離れたこと。 風を切って飛ぶ感覚。 大空の青。流れ往く雲の白。夕焼けの茜色。 お日様が沈んでいくと、風が寂しく聞こえること。 きっと妹たちは羨ましがるに違いない。母はそれは凄い体験だったね!とまるで我が事のように 喜んでくれるだろう。そうだ、明日は妹達も誘ってうーぱっくとも遊ぼう!ゆっくりしたいい考えだね! ゆっくり霊夢は自然と表情が緩んでいった。 「れいむ!れいむ!!」 「ゆ?」 そんな物思いに耽っていたゆっくり霊夢を、親友のゆっくり魔理沙は緊張したような声で必死に呼びかけていた。 「どうしたの、まりさ」 見ればゆっくり魔理沙はどこか緊張した面持ちで、やや汗ばんで見える。 「かおいろがわるいよ、まりさ。ぽんぽんとらぶる?」 「ちがうよぅ!まえをみるんだぜ!!」 「?」 ゆっくり魔理沙の必死の訴えに、きょろきょろと見回すゆっくり霊夢。 「ゆゆっ!?」 そこは見たことのない場所だった。 森の中でも他に類を見ないほどに木々が鬱蒼と茂っており、空のように広がっている木の葉のせいか どこか音が遠くにあるもののように聞こえてくる。 夕暮れではあるが、ここは特に暮色が濃い。夕闇の彼方から何か得体の知れないものがひっそりと 這いずり出てきてもおかしくないと思えるほどだった。 「ここどこぉおぉおお~~~っ!?」 「うー!うー!」 「ゆっくりかえしてほしんだぜ!おうちにかえすんだぜ!」 「うっう~~!」 ゆっくり霊夢たちの叫びに声を返すうーぱっく。しかしそこに意思の疎通は皆無だ。 「うー!うー~~~!!」 誰かに呼びかけるような嘶き。 するとどうだろう、周りの森林から唱和するように同じ泣き声が聞こえてくるではないか! そしてがさがさと枝葉を揺らして現れるのは五匹のゆっくりれみりゃだ。 「ひぃっ!!」 五匹は悲鳴をあげたゆっくり魔理沙を、そのにこにことした笑顔の目のままでねめつけると 二匹のうーぱっくを取り囲むようにして羽ばたき、進み始めた。 その先には洞穴があった。 そこは巣だ。 ゆっくりれみりゃの巣窟なのだ。 「うーうー!」 「ぎゃおーーーー」 わずかに漏れ出てくる泣き声が、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙を心胆寒からしめた。 二匹は恭しく運ばれる供物のような態で奥へ奥へと連れて行かれる。お互いを見詰め合うが どちらも涙目で震えていて歯の根があっていない。 うっすらと月光のような冷たく柔らかな光を皓々と発する岩々が過ぎ去り、湿った空気が まるでからみつくように流れている。しっとりとした天井の岩肌からは、時折水滴が落下しており 水の弾ける音がこだましている。 平常であれば、涼しくて水滴の音も耳に心地よいこの洞穴は、とてもゆっくり出来る場所であろうが すでにゆっくりれみりゃの巣になっており、それ以上に二匹はうーぱっくに連れられゆっくりれみりゃに 囲まれているのが現状だ。とてもゆっくりする暇などない。 唯一できることは、ゆっくりと死の覚悟をすることだけだろう。 どれほど進んだろうか?先にはまばゆく光るものがある。 巣の広間なのだろう、今までになく明るいそこにはたくさんのゆっくりれみりゃがいた。 体のないやつ、あるやつ、小さいやつ、大きいやつ、うーぱっく。 さまざまだ。 さまざまだが、それぞれが思う存分ゆっくりしていた。 ゆっくりと、していた。 左に目をやれば、そのゆっくりれみりゃはうーぱっくと五匹ほどで小さなゆっくりぱちゅりーを空中で キャッチボールのようにして遊んでいる。地面には親と思しきゆっくりぱちゅりーが声を上げて、弱い体を なんとか飛び跳ねさせているが、空中のそれらには決して届くことはない。 「むっぎゅぅ~~!むっぎゅぅうううぅぅ!!」 「……むきゅっ!……みきゅぅうぅ!!」 弄ばれている子ゆっくりぱちゅりーは生来の脆弱さもあいまって、すでに半分以上死に体だ。 投げ飛ばされ受け止められているので、ゆっくりれみりゃの牙で帽子はずたずたになり髪もぼろぼろ、 肌に至っては蒼白を通り越して蝋のように白くなっている。見れば右目が飛び出てぶら下がっている のがわかるだろう。 しかしそのゆっくりれみりゃたちは気にしない。玩具だからだ。下で必死に取り返そうと飛び跳ねている 親ゆっくりぱちゅりーが、とうとう口から紫色をしたクリーム状のものを吐き出していても相も変わらず にこにこ笑顔で放り投げ、受け止めて別のゆっくりれみりゃに放り投げていた。 右を見れば、そこには大きなゆっくり魔理沙がいた。 本当に大きい。1メートルくらいはあるだろうか。それに3匹のゆっくりれみりゃが群がっていた。 それらは胴体が生えていて、ぷにぷにとした手足もしっかりと動いていた。 「いいこえでなくんだどぉ~!」 「もっとだどぉ~~~!」 「そんなんじゃまんぞくできないんだっどぉ~♪」 一言ごとに平手や拳、蹴りを叩き込んでいる。その一撃ごとに大きなゆっくり魔理沙は 「ゆぐっふ!ぶぎゅぎゅっ!だべっ!やべでよぉおっ!やべっでゅんだぜ!!ぶめぎゃっ!?」 と声を上げていた。見れば皮は裂け、目は片方が飛び出しており、ところどころに餡子が滲み出ている。 「へたくそなんだぞぉ~」 「いぎゃっ!」 一匹が口に手を差し込み、歯をへし折ったのだ。これでゆっくり魔理沙の口の中には歯がなくなってしまった。 「まりゅしゃしゃみゃに……きょんなこちょしちぇ、ひぃ、たぢゃでしゅむとおみょうにゃ!だじぇ!!」 怒りと復讐心を湛えた燃えるような目。それに見つめられても三匹はにこにこ笑顔を崩さなかった。 むしろ、嘲笑の色が混じっていた。 「う~♪おまえのむれはもうないんだっどぉ~~」 「わすれたのか?どぅー」 「みんなみんな、れみりゃたちでくってやったんだどぉ~~~♪」 「なかなかうんまかったんだどぉ~☆」 「ほめてやるんだどぉ~~」 「ゆっ!?」 そうだ。そうだった。 大きなゆっくり魔理沙の脳裏にあの光景がよみがえる。 このゆっくり魔理沙は運が良いゆっくりだった。幼い頃、家族が獣に襲われたときもそれに跳ね飛ばされて すぐ側の茂みに転がり込んだことで一匹だけ助かった。その後、仲間と狩りをしていて二手に分かれたバッタ を追いかけたときも、相棒のゆっくり霊夢が追いかけた先には蜂の巣があって死んだのだった。 それから大きくなり、自分が支配する群れを持ったときまでその運の良さは発揮されていた。さらに言えば 体が大きくなったことで、自身を脅かすものが比較的少なくなっていたことも災いした。 脅威を、自分たちゆっくりは弱い立場であり、それを脅かすものが存在するということを、失念していたのだった。 それが致命的だった。 夜に、ゆっくりれみりゃの襲撃があったのだ。 自分を頂点に、おおよそ50匹はいた群れ。そのほとんど全てがたった3匹の、今目の前にいるゆっくり れみりゃによって屠られてしまった。群れには自分に及ばないまでもそれなりに大きなゆっくりもいたというのに、 まるで手も足も出なかった。 虐殺と蹂躙の限りを尽くした3匹は自分を含めた何匹かのゆっくりをこの場所に運び入れて、 自身の群れの餌や玩具としてゆっくり魔理沙たちを扱った。 それから続いた地獄の毎日がその恐るべき夜の記憶を薄めたのだった。 「これをみるがいいどぉ~~~」 一匹が飛び上がり、もたもたと上昇してゆっくり魔理沙の帽子をひっぺがした。 「ゆ゛っ!」 帽子を剥がされるという、今まで感じたことのない刺激に、思わず声を上げてしまう。 頭頂部は露出し、うっすらと餡子が滲み出て甘い匂いが漂い始めた。 すると、あたりのゆっくりれみりゃたちの目がこちらに向く。だが、その3匹はそれらを無視して 剥がしたものをゆっくり魔理沙の眼前で広げたのだ。 「ゆげぇえぇえぇえぇぇぇんっ!?!?」 帽子から、剥がれた髪の毛が垂れているが、問題はそれではない。 そこには苦悶の表情を浮かべたゆっくりたちの顔の皮がいくつも貼り付けられていたのだ。 どれもこれも苦痛と怨讐に満ちており、まるで見ているゆっくり魔理沙を恨みぬいているようであった。 自分は今までこんなものを頭にくっつけていたのか!? 「こっちはおまえのこどもなんだどぉ~~!さいごまでおとーさんおとーさんやかましかったんだどぉ~~~」 「これはれいむだどぉ~」 ゆっくりれみりゃは憤怒の形相で歪んでいる顔の皮を指す。 「こいつはぁ、こどもをまもろうとしてとびかかってきたから、ひっぱたいたらすぐしんだんだどぉ~」 「あれはもろかったんだどぉ~!わらえたんだどぉ~~~☆」 「こどものさけびが、すっごくたのしかったんだどぉ~☆」 「なかみがよじれてしぬかとおもったんだどぉ~~♪」 「ゆっぐっぐぐぐ!!!」 ゆっくり魔理沙は目の前に広げられた家族のデスマスクに悲しみの嗚咽を上げていた。 やがてその様子に飽きたのか、三匹のゆっくりれみりゃはそれを放り投げると、周りで様子を伺っていたほかの ゆっくりれみりゃたちに向かって 「こいつはもういらないんだどぉ~☆」 「すきにするんだどぅ~~♪」 「ちゃんととどめはさすんだどお~~~」 と言い放った。 「ゆっ!?ゆっぎゅりだずげでね!?」 「おまえはもうあきたんだどぉ~~」 「もっとおもしろいこといえ!」 「うっうー!うあうあ♪」 「いやあぁあぁあああぁぁぁ!!」 たくさんの爛々と輝く瞳。それらが一斉に大きなゆっくり魔理沙に向かって飛び掛っていった。 楽しそうな声に混じり、痛みをうったえ命乞いをする声が聞こえ、さらに大きいゆっくり魔理沙の皮を引き裂き 肉をかき混ぜ、引きちぎり、咀嚼する音によって覆い隠されてしまった。 また別のほうを見れば、そこにはうーぱっくやゆっくりれみりゃに餌をやっている胴体付きのゆっくりれみりゃがいた。 子ゆっくり霊夢を思い切り放り投げて、それを口で咥えて捕るというゲームじみたものだった。 「やめちぇぇええぇっ!!たちゅけちぇぇえぇぇえええぇぇ!」 「いじわりゅしにゃいでゅぇぇえええぇぇ!」 「おかあちゃあぁあぁあああぁぁぁん!!」 「うるさいんだっどぉ~、おかあちゃんならあれだどぅ~☆」 ゆっくりれみりゃの指差す先には、ただの肉塊があるだけだった。あたりに餡子を撒き散らし、わずかに見える リボンの赤が、それをゆっくり霊夢だと理解させるただひとつのものだった。 おそらく頬を左右に引っ張ったのだろう、顎下あたりから無残に二つに裂けている。 「おかぁちゃぁああぁああぁぁぁん!!!」 「いっぱいたべるんだどぉ~、たっくさんあるんだっどぉ~~♪」 「うー!うー!」 「うっう~~!」 「うぁー!うあー!」 何処もかしこもそんな様相だ。 これがゆっくりれみりゃの食事なのだった。 ゆっくりれみりゃにとって、ゆっくり霊夢やゆっくり魔理沙などのゆっくりは、餌であり玩具なのだった。 だから軽々しく弄び、蹂躙する。壊れてしまうなんて構いやしない。 壊れてしまえば捨てればいいのだ。 玩具はそこらじゅうにたくさんあるのだから。 「それはなんだどぅ~?」 大きなゆっくり魔理沙を虐めていたゆっくりれみりゃが一匹、うーぱっくのほうへとやってきた。 そのふわふわとした浮遊は、とても飛んでいるといえる速度ではなかったが、それでも囚われたゆっくり霊夢と ゆっくり魔理沙の二匹にとって脅威であることに変わりはなかった。 「うー!うあ~!」 「うあー♪うっうあ~♪」 うーぱっくが何を言っているかはわからない。しかしひょっとしたら自分たちは食べられないかもしれない。 ゆっくり霊夢たちはそんな淡い希望めいたものを抱いた。 「まりさをたすけてほしいんだぜ!!はやくはなすんだぜ!!」 ゆっくり魔理沙も身をよじりながら必死に訴えかけている。だがゆっくりれみりゃはそれらを無視して うーぱっくの言葉に耳を傾けている。 「ごはんをじぶんでとるなんて、えっらいんだっどぉ~~☆」 「うあ~~☆」 「どおじでぞんなごどい゙ゔの゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ぉぉぉっ!!!」 「たべちゃだべだんだぜええぇぇっっ!!おいじくないんだぜえええええ!!!」 「う~?」 「おどもだぢっ!ぜっがぐれいぶだぢど、おどもだぢになれだどおぼっだのにぃいぃいぃぃぃっ」 「あじだはがぞぐどいっぢょにもっどゆっぎゅりじだがっだのにぃぃいいいい!!」 「なんでだばじだの?どおじで!?どおじでぇえええええぇぇぇぇっ!!??」 涙をだくだくと流しながら絶叫するゆっくり霊夢。 しかしうーぱっくは意に介さず、ただ一言 「うー!」 とだけ鳴いた。 「あっぁつぁつっ!!へんだよぉっ!!れいむぅっ!!へんなんだぜぇ!」 ゆっくり魔理沙が声を上げる。今までにない声色に、ゆっくり霊夢は嗚咽を上げながらも振り向いた。 「どうしたの、まりさ」 「なんかからだがへんなんだぜ!おかしいんだぜ!!」 ゆっくり魔理沙は、自身に襲い掛かりつつある異変に気づいた。体が崩れ始めているのだ。 「と、とけてるううぅうううぅぅぅ!!!まりざのかりゃだがどげでりゅんだじぇぇえええぇぇぇ!!!」 左右に体を暴れさせるゆっくり魔理沙。しかしその体はにちゃにちゃとした粘液が付着し、とろとろの 液状になり流れ始めていた。 これがうーぱっくの最大の特徴だ。 うーぱっくはゆっくりれみりゃの変種である。つまり捕食種なのだ。しかしうーぱっくは成長すると 経口摂食をしないようになり、このようにゆっくりを自身に乗せてじょじょに溶かしていってしまうのだ。 何故かはわからない。 しかし自然界にも似たような生き物が存在するのだから、それほど不思議なことでもなかった。 「うわあああぁあぁああぁぁっっ!!まりゅいざをだじゅげでぇええぇぇっ!!おねがいいぃい!!」 「うー?」 「ああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」 よくわからないと言うように唸るうーぱっくに、ゆっくり魔理沙の絶叫は続く。 「まりざああああぁぁぁっ!!ま゛ぁり゛ざあああああぁぁぁぁっ!!!!」 さらにゆっくり霊夢の絶叫も重なる。思わず聞きほれたくなるほど甘美なる合唱。 そこにゆっくりれみりゃが声をかけた。 「すのばしょをいえばたすけてやるんだどぅ~」 「ゆっ!?」 「さっきかぞくっていったんだど~~~♪」 「えらぶんだどぉ~~~★」 「いっ、いやだよ!!かぞくはだいじだもん!」 「どっちでもいいんだっどぅ~~☆」 いつのまにか、うーぱっくの周りにはあの三匹のゆっくりれみりゃが集まっていた。 「おねぇしゃんおしょいね?」 ちっちゃなゆっくり霊夢は巣の中で不安そうに母ゆっくり霊夢に話しかけた。 「だいじょうぶだよ!まりさといっしょだったし、きっとまりさのすでゆっくりしてるんだよ!」 「ゆっ!きっとしょうだにぇ!うりゃやましいよ!」 母ゆっくり霊夢の言うことを素直に聞き、よそのおうちにお泊りをする姉を羨ましがる妹。 よくある家族像だった。 このゆっくり霊夢の家族は母ゆっくり霊夢に、ゆっくり霊夢、妹ゆっくり霊夢の三匹だった。 出産環境が劣悪だったせいか、母体になったつがいのゆっくり霊夢から生えた蔦には未熟な実がいくつか 成ったが、しっかりと生れ落ちたのは二匹だけだったのだ。それでも片方は未熟児だったが。 しかし朽ちたゆっくり霊夢の黒ずんだ死骸は二匹の子の最初の栄養となり、その血肉のなかに脈打っている。 母ゆっくり霊夢は、つがいのゆっくり霊夢の、文字通り化身とも言える二匹の姉妹をとてもゆっくりと大事に 育て上げていた。ゆっくり霊夢は健康そのもので、すくすくと育ち元気に野原を駆け巡り、今では母と一緒に 十分な餌をとれるほどになった。 もしかすると巣を出るなどと言い出すかもしれないが、それもまたひとつの生き方だ。そのときは祝福して しっかりと送り出してやろうと、母ゆっくり霊夢は考えていた。 思えば自分も若い頃は親の庇護から飛び出し、この平原で将来つがいになるゆっくり霊夢と出会ったのだ。 愛し子であるゆっくり霊夢にゆっくりした未来がありますように。 そうして母ゆっくり霊夢は、もうひとつの愛し子、目の前でゆぅゆぅとしている妹ゆっくり霊夢を見る。 生まれたのはゆっくり霊夢と一緒だったが、こちらは未熟児ゆえに発育が悪いのだ。もうしばらくゆっくりと 母ゆっくり霊夢が育てる必要があった。 外は夜の帳も落ち、そろそろゆっくり眠る時間だ。妹ゆっくり霊夢を巣穴の入り口から守るように身を寄せる。 お互い肌をすり合わせて、眠気を誘う心地よい震えが全身をゆっくりと包み始めた。 「ゆぅ~~、ゆぅぅ~~~」 妹ゆっくり霊夢はすでに半分眠っていた。母ゆっくり霊夢はそのゆっくりとした様子を微笑みながら優しい眼差し で見つめ続けて、体を揺らしていた。 やがて母ゆっくり霊夢にも眠気がやってきた頃に、それは来た。 「う~、おまえのすのばしょはまりさがはいたんだどぅ~♪」 「!?」 ゆっくり霊夢はじめじめとした狭い場所に押し込められていた。ここはゆっくりれみりゃの食料庫で 岩肌にあいた穴にそれぞれさまざまなゆっくりたちが無理やり押し込められていた。 ゆっくり霊夢、ゆっくり魔理沙、ゆっくりぱちゅりー、ゆっくりさくや、ゆっくりめーりん。他にも ゆっくりみょんや、ゆっくりちぇんと、種類も大きさもまちまちなゆっくりたちが穴に納まっている。 特筆すべきは、そのどれもが生きているということ。 ゆっくりれみりゃは、食事と遊戯を一緒に行う傾向があるのだ。さんざん弄び、傷つけ、恐怖を植えつけ、 自身の暴力を味わわせた後に、ゆっくりとそれらを食す。 餌を壊す感触と、耳を振るわせる悲鳴と嗚咽、傷つく皮とそこから噴出す餡子が目を楽しませ、ゆっくり れみりゃの食事をより一層味わい深いものにするのだった。 「ど、どおいうごどぉおおおおぉぉぉっ!!!」 「たすけてやるかわりにいわせたんだっどぉ~~」 このゆっくり霊夢はうーぱっくに食べられる運命にあった。 だがしかし、絶叫と共に飛び出た「家族」という言葉がそれを変えた。ゆっくりれみりゃがその家族ごと 食べてやろうと考えたのだ。 しかし一向に巣の場所を言おうとしないので、この場所に安置しておいたのだ。 「あのまりさはとけるより、おまえをうるほうをえらんだっどぅ~~~♪」 「ゆぅううぅぅ」 「ばかなやづだっどぉぉお☆」 「ゆあぁあぁあぁああぁぁぁっ!!!」 「いまごろまりさはかぞくとゆっくりしてるんだどぉ~~」 「ゆぎゅううううう」 「おまえはかぞくとここでくわれるんだど~~~☆」 「ゆぐぁああぁああぁあ!!まりざあああぁああああああ!!!」 「かぞくがそろったら、いっしょにくってやるんだどぅ~~♪」 そう言うと、ゆっくりれみりゃは近くの窪みにはまっているゆっくりみょんを掴み取った。 「ち、ちんぽ~~~」 「こうやってくってやるんだど~~」 「きょせいっ!?」 そのままがぶりとやった。ゆっくりみょんは白眼を剥いて痙攣している。それを二口で食べてしまった。 「ああ、あああ、あああああ!!!」 「おもしろいかおなんだどぅ~!ゆかいだどぉ~~~♪うっう~、うあ♪うあぁ♪」 やがて、家族がそろったのかゆっくり霊夢はゆっくりれみりゃに引き摺られてあの広間へと来ていた。 「ゆっくりはなしてね!」 「ゆっきゅりはなちちぇにぇ!!」 そこには案の定、ゆっくり霊夢の家族がいた。 羽ばたいているゆっくりれみりゃに咥えられていて、うかつに暴れようものなら地面へと落下してしまう。 二匹には抵抗のしようがなかった。 だがそれだけではなかった。 その場所には他にもゆっくり魔理沙の家族もいたのだ。 「ゆっくりおろしてほしいんだぜ!まりさはおいしくないんだぜ!!!」 「ゆっきゅりおろしゅんだじぇ!」 「ゆぅううぅぅっ!?どうじでなんだぜ!?どおじでまりさのすをおしえたんだぜ!れいむううぅぅぅぅっ!」 その叫びはゆっくり霊夢のお友達のゆっくり魔理沙のものだ。 「まりさがさいしょにうらぎったんでしょ!!れいむはしってるんだよ!れいむのすをおしえたって!!!」 ゆっくり魔理沙の言葉に、怒りをあらわにしてゆっくり霊夢は声を荒げた。 「まりさなんかとけちゃえばよかったんだよ!!どおじでれいむのすをしゃべったの!?」 「し、しらないんだぜ!まりさはなにもいってないんだぜ!!」 「じゃぁどおじでれいむのかぞくがこんなどごろにいるのおぉぉおっ!!!」 「れいむがまりざのずをしゃべるからだぜえええぇええぅ!!!」 ゆっくり霊夢の追求に、ゆっくり魔理沙の絶叫が重なる。 「ぞんなのまでぃざがれいびゅのじゅをじゃべるがらでじょおおおおおお!!じがえじだよっ!!」 「だからじららいっでいっでるんだぜえええええっ!!!ひどいんだぜぇぇ!!」 泣きながら言い争う二匹を、周りのゆっくりれみりゃたちはにやにやと笑いながら眺めていた。 ゆっくりれみりゃはこの二匹をはめたのだった。 お互いがお互いを裏切ったと思い、復讐に お互いの巣の位置を喋ったのは、ゆっくりれみりゃたちにとって愉快の種だった。 「じゃぁどおじでれいびゅのかじょくがごごにいりゅのぉおおっ!?」 「れみりゃが、れいみゅがまでぃじゃのじゅのばじょをいっだっでいっだんだぜ!!」 「まりしゃがれいびゅのしゅをおしえたっでぎいだよぉお!!」 「うーうー!」 そんな言い争う二匹をよそに、うーぱっくがゆっくりれみりゃになにかをうったえた。 「う~!そろそろでなーだどー!」 「うーうー!うあうあ~~~♪」 「うーぱっくはれいむとまりさをたべるといいどぉ~」 「れみりゃはちっちゃいまりさをいただくんだっどーー☆」 「じゃぁれみりゃはおっきなれいむをたべちゃうぞ~~~♪」 「やめちぇね!おいちくないちょ!!やめてっていっちぇるにょにぃ!!」 「こっちはおいちくないいだじぇ!まりしゃはどくなんだじぇ!!ちんじゃうんだじぇ!!」 「やべでええぇえぇっ!!そのこがなにじだっていうのぉおおぉぉっぉっ!!」 妹ゆっくり霊夢はゆっくりれみりゃに握り締められて、中身を漏らした。ゆっくりれみりゃはそこから ゆっくりと中身を吸い上げていく。じゅるじゅると音を立てて萎んでいく妹ゆっくり霊夢。 中身と一緒に元気を吸い取られているようだった。 母ゆっくり霊夢は叩かれ殴られ、千切られて止むことのない悲鳴をあげ続けて食われた。少しでも声を 上げることをやめると苦痛を与えられるのだ、最期には口の下あたりが自然と裂けていた。 ゆっくり魔理沙の家族たちも体中を弄ばれて、痛めつけられながら食べられている。 「れいむのばがああぁぁぁつ!!おまえがうーぱっくなんがにのるがら゛っ!!」 「ぶぎゃっ!までぃざだってのっだでっじょっ!?!?」 うーぱっくに乗せられてもなお、罵声を浴びせあっている二匹。 その体はぐずぐずに蕩けていてもう満足に動くことは出来やしない。 もはや眼と口を動かしてその意識を失うまで緩慢な痛みに身を委ねるしかない状態になってしまった。 二匹にとって幸いなのは、傷みがほとんどないことだろう。 きっといつ自分が死んだのかもわからないほどゆっくりと食べられるに違いなかった。 ここは、広大なゆっくり平原。 森に行けば優しい風が木々を揺らし、耳ざわりの良い音楽を葉が奏でるゆっくり名所のひとつだ。 そんな心地よい音に混じって声が聞こえてくる。 どこか畏れを含んだような、何かを知りたがっているような、そんな声。 「うー♪」 「ゆゆ?……乗せて、くれりゅの?」 「うぅ~~♪」 「ふわっ!しゅごいしゅご~~~い!!おしょりゃをとんでゅぇりゅにょぉおおお~~♪」 終わり。 後半失速してしまった。 狩りの時、うーぱっくは体付きのゆっくりゃを乗せて自由に空を駆けます。 ガンダムのドダイやゲターみたいな感じなのですw 飛行速度:ゆっくりふらん≧ゆっくりれみりゃ>うーぱっく>ゆっくりれみりゃ(体つき) 著:Hey!胡乱 このSSに感想を付ける
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夕闇が迫っていた。 傾いた日差しがアリスの影を伸ばす。 影の先には、「ゆっくり魔理沙」が一匹。震えながらアリスに向かい合っている。 「日暮れ前に帰ると言っていたのに、こんな時間まで何をしていたのかしら?」 穏やかに問いかけるアリス。 逆光となり、その表情はうかがい知ることはできない。 ゆっくり魔理沙の頬に流れる動揺の汗。 「ゆっ、ゆっくりしていたよ!!!」 取り繕うようにピョンピョンと飛び跳ねて、精一杯の笑顔を浮かべてみせるも。 「へぇ」 ごく短い応答にその動きも凍りつく。 「私とあなたとの約束は、そんなことで破られたの」 呟きながら、歩み寄ってくるアリス。 「魔理沙って名前のつくものは皆そうね。今日だって一緒に過ごす約束だったのに、欲しい本を思い出したなんて 勝手な理由でパチュリーの所へ……!」 不満を吐き出しながら、うつむき加減に近づいてくる。 ぷるぷると魔理沙の丸い体が震える。 本当は逃げ出したい。 だが、逃げだした際の末路は、この少女に拾われてからの数ヶ月間で嫌というほど思い知らされていた。 ゆっくり魔理沙は口をゆがめ、いやいやと全身を震わせる。 「ゆっくりした魔理沙がわるかったです!!! ごめんなさいいいいいい!!!」 おいおいと嗚咽をこぼしながらの哀願に、アリスは屈みこんでゆっくり魔理沙と視線を合わせる。 「みっともなく泣かないで。別に怒ってないわよ」 涙でぼやかえた魔理沙の視界には、子供をなだめるようなアリスの笑顔。 頭を優しく撫でるアリスの手に、ゆっくり魔理沙の表情もとろんと落ち着く。 「ほんとう?」 「ええ、怒ってないわ、あなたに何かあったのかと心配しただけ。さあ、早く帰りましょう」 アリスの細い腕に抱き上げられるゆっくり魔理沙。 柔らかな膨らみと穏やかな心音。 少しだけ残っていた魔理沙の緊張も心地よさに解けていくのだった。 翌日、ゆっくり魔理沙は機嫌よく野へ遊びに行く。 昨日の埋め合わせでやってくる魔理沙を迎えるため、今日も外に放りだされたゆっくり魔理沙。 「ゆっくりー!!!」 いつもは家に押し込められているだけに、開放感に勢いよく体も弾む。 このまま、ずっとゆっくりできたらどんなに幸せなことだろう。 だが、どんなに逃げてもなぜか必ず捕まった。 そして、「おしおき」を受けることになる。 前回の脱走では、深い森の奥、枯れた木のウロに逃げ込んで眠っていた。だけど、目が覚めると窮屈で透明な箱の中。 「ゆー?」 境遇を理解できないまま、とりあえず抜け出そうとする。 だが、上下左右、みっちりと詰め込まれてどうすることもできない。 その強制的な「ゆっくり」が、アリスによるものだと気づくのに時間はかからなかった。 横を向くことも許されない固定された視界の端っこに、背を向けて紅茶を口にするアリスの姿。 「おねえさん!!!」 呼びかけてみるも、反応はない。 「おねえさん、ここからだして!!!」 重ねた呼びかけも無視される。 「苦しいよ!!! だして、お願い!!!」 口調に懇願がこもりはじめても、アリスは振り向きもしない。 空しい呼びかけも、応える声がないまま過ぎていく時間。 三時間、何の変化もなく過ぎた頃、席から立ち上がって食事の支度を始めるアリス。 いつも美味しい食べ物を用意してくれた記憶に、ゆっくり魔理沙は「もうそろそろ出してくれるかな」と淡い希望が 芽生え始める。 「おねえさん、おなかすいたよー!!!」 表情の変化すら困難な箱の中、かろうじて愛らしい笑顔を形作るゆっくり魔理沙。 しかし、アリスが作った料理は一人分。淡々と食事を済ませると、魔理沙の視界から消えて、そのまま戻ってくる ことはなかった。 ようやく、ゆっくり魔理沙はアリスの怒りの深さを思い知る。 「ごめんなさい!!! もう逃げたりじまぜんがらっ、だじでぐだざい!!!」 箱を震わしての必死の謝罪。 だが、許されるどころか、もはや省みられることもなかった。 しまい込んで忘れ去ったオモチャのように、ゆっくり魔理沙から完全に興味を失ったアリス。 アリスの家において、ゆっくり魔理沙はもはやオブジェ以外の何物でもない。 そのまま、一日、二日、三日……そして、一週間。 放置されたゆっくりの体は、声を上げる力も失い、少しずつ干乾びていく。 ゆっくり魔理沙は、全身がひび割れそうな、びりびりとした猛烈な痒みに悶えるものの、身動き一つできない。 癒されることのない痒みと痛み。あと、どれだけ苛み続けられれば許されるのか、あるいは死ねるのか、ひたすらに 残された時間が狂おしい。 それだけに、アリスが近づいてきたその時は、ゆっくり魔理沙の期待が燃え上がった。 「おねえさん、いい子になるから!!! だから、だしてください!!! おねがい!!!」 媚を売るように笑顔で呼びかけるも、アリスの手はその箱の近くに置いていた人形を手にとり、そっけなく引き上げていく。 「い゛がな゛い゛でええええ!!! だじでよおおおおおお!!!!」 追いすがる、絞り上げるような声がアリスに届くことはなかった。 放置は続く。 霞んでいく、ゆっくり魔理沙の表情。 一ヶ月後、ようやく箱から出されたゆっくり魔理沙。しかし、しばらくの間、虚ろに壁をながめるだけの生物と化す こととなる。 そういうわけで、「箱」以来、ゆっくり魔理沙は脱走を試みることすらしなくなっていた。 それに、最近はアリスも優しく接してくれるようになってもいるのだし。 昨日のアリスの抱擁を思い浮かべて、魔理沙は嬉しげに森の奥へと飛び跳ねていくのだった。 森の奥、うっそうとした木々の向こうに、陽光の差し込む野原が開けていた。 陽だまりを受けて鮮やかに輝く草むらに、ゆっくり魔理沙は身をおどらせた。 「ゆっくりしていってね!!!」 跳ねながらいつもの言葉を口にする。 すると、にわかに木立が揺れる騒々しい音。 「今日もゆっくりしようね!!!」 言葉とともに姿をあらわしたのは、二匹のゆっくりたち。 一匹はよく見かける「ゆっくり霊夢」で、丸い顔に気色を浮かべて勢いよく近づく。もう一匹は「ゆっくりパチュリー」で、 あまり外にでないことと、病弱ですぐ死ぬために希少種とされていた。 ゆっくりパチュリーは他の二匹に比べ、どこか青白い顔。それでも、ゆっくり魔理沙に向けて懸命ににじり寄っていく。 待ち受ける、ゆっくり魔理沙の表情に浮かぶ心配げな眼差し。 「ゆっくりきてね!!!」 「むきゅーん!!!」 魔理沙に応じるその鳴き声も、この種特有のものとされている。 ゆっくりパチュリーは飛び跳ねることができないのか、じりじりと這いよって、ゆっくり魔理沙の元へぴったりと寄り添った。 「みんなで、ゆっくりしようね!!!」 魔理沙の真上に飛び乗るゆっくり霊夢。 三匹、押し合いへし合い、頬をすりよせている。 アリスに捕まる前からの友達との邂逅に、ゆっくり魔理沙も満ち足りた笑顔だった。 そんな三匹の前を、白い蝶がふわふわと通り過ぎる。 「待って、ちょうちょさん! ゆっくりしていってね!!!」 風に吹かれるがまま漂う蝶々を、思い思いに追いかけていく三匹。 やがて、白い蝶々は蜜を求めて野の花に止まった。 戦闘を駆けるゆっくり霊夢が、勢いよく飛び込んでいく。 「ゆっくりいただきます!!!」 ぱっくり開いた口で、蝶々をまるごと飲み込んで、花ごともぐもぐと咀嚼する。 「霊夢だけ、ずるい!!!」 ゆっくり二名が飛び上がって抗議すると、ゆっくり霊夢は魔理沙の元へ。 いきなり、ぺったりと唇を合わせる。 そのまま、口の中のものを、ぺっ、と渡した。 獲物を受け取った魔理沙は、頷いて最後尾を息を切らしてついてきたゆっくりパチュリーに向き合う。 パチュリーは、荒い息のまま、そっと目を閉じた。 「魔理沙、ゆっくりシてね……」 そんな仕草に、なぜか戸惑った様子でゆっくり魔理沙が口付け。 「む、むきゅうー!!!」 「……!!!」 途端に吸い上げられ、身動きのとれなくなるゆっくり魔理沙。 やがて、ぴくぴくと震えて、色合いが若干紫がかってくる。 「ゆっくり離してね!!!」 ゆっくり霊夢が魔理沙の帽子を噛んで、懸命に引っ張る。 ちゅーっぽんっと、小気味いい音がしてばらばらに弾む二匹。 「……ぷはあ」 満足げなゆっくりパチュリーと、白目をむくゆっくり魔理沙。 ゆっくりたちの繰り広げる楽しげな一幕。 しかし騒動の最中のため、三匹とも聞き逃していた声がある。 無機質な響きを持つ、不思議な声。 「シャンハーイ」 それは、上空から見下ろす、一体の人形の呟きだった。 まだ、日暮れまでは時間があったが、アリスを怒らせないため、名残り惜しそうな友達に別れを告げるゆっくり魔理沙。 懸命に転がってかけていき、一息にアリスの家へ。 アリスは家の外、ゆっくり魔理沙に背を向けて立ち尽くしていた。 「ゆっくりしないできたよ!!!」 慌てて、する必要のない言い訳を口にするゆっくり魔理沙。 「おかえり」 簡潔なアリスの答えだが、返ってくるまで時間を要した。 やがて、アリスの肩がかすかに震え始める。 どうやら、声もなく笑っているらしい。 「ゆー?」 アリスの様子に小首……いや、全身を傾げて疑問を呈するゆっくり魔理沙。 「あのね……魔理沙がうちにきたんだけど、予定を取りやめて霊夢のところの宴会に参加しようぜって、言い出して」 うふふうふふふと、笑いはかすれた声になって、ひそやかにゆっくり魔理沙のもとへ届く。 「なんで、私と二人っきりでいる時に霊夢が出てくるのよ?」 そんなことを聞かれても、ゆっくりは答えられない。 ただ、異様な主の様子を見守るだけだった。 「なんで、私と話すよりもパチュリーの、あの喘息女の図書を漁る方を選ぶのかしら」 アリスの言葉は誰の返事を期待しない罵りと化す。 「そして! 何で、あなたはあの憎たらしい奴と同じ顔をしているのよ!」 「ゆ、ゆっくり、ゆっくりしていってね!!!」 ようやく振り向いたアリスの怒気こみ上げる表情に、ゆっくりはすくみあがっていた。 つかつかと歩み寄り、その顔面そのものを両手で掴まれても逃げる素振りもできない。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ! ゆっくりしてえええ!!!」 ぎゅうううううっと、細腕とは思えないアリスの力で締め上げられるゆっくり魔理沙。 変形して、もはや人の顔の面影もない。 「ねえ、魔理沙。こんな思い、私だけがするのは不公平だと思わない?」 頷かなければ、ぶちまけられる。 ゆっくり魔理沙は同意を涙目で訴えて、ようやくその万力から開放された。 「そう。なら、あなたにもしなければならないことがあるわ」 面白いことを考え付いちゃった。そんな素振りで手を組み合わせて、はにかんだようなアリスの微笑。 そっと、ゆっくり魔理沙の耳元に口をよせて、何事かささやく。 魔理沙の表情は、囁かれる度に火箸を押し当てられたかのように、苦痛の色合いの濃くなる表情。 反対に、囁き続けるアリスの表情は恍惚にとろけそう。 「ねえ、魔理沙。やらなければどうなるか、わかっているわね? あなたと、あなたのお友達が、ね」 いつにも増して可憐な笑顔で念を押す主を、ゆっくり魔理沙は心の奥底から恐怖した。 翌日、いつもの遊び場となる野原にゆっくり魔理沙がやってくると、茂みから顔を覗かせるゆっくり霊夢と パチュリーの二匹。 だが、二匹は魔理沙の後をついてきた人間に、不審げな視線を向ける。 「あの人も、ゆっくりできる人?」 ゆっくり霊夢の視線の先にいる人物とは、アリスだった。 上海人形を肩にのせ、無表情でゆっくりたちを眺めている。 だが、ゆっくり魔理沙は仲間たちの疑問に取り合わない。 「霊夢とパチュリー、よく聞いてね!!!」 強張った顔で告げるゆっくり魔理沙の言葉に、きょとんとして魔理沙を注視する二匹。 そのため、アリスが口の端をゆがめるように笑ったのを、二匹を見逃す。 「パチュリーは病弱で足手まといの癖に、べったりしてきて気持ち悪いよ!!!」 思いがけない魔理沙の言葉に、目を見開いて衝撃をありままに体現するパチュリー。 「目障りなので、家で永遠に寝こんでいればいいと思うよ!!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!」 「パチュリーはゆっくりしね!!!」 魔理沙の追撃に、ガクガク揺れながら、一歩、二歩、ゆっくりパチュリーが遠ざかっていく。 その様子を微笑みで見つめているのはアリス。 学芸会で主役となった子供を見守るように、ゆっくり魔理沙を見つめていた。 「そんなひどい魔理沙とはゆっくりできないよ!!! 謝って!!!」 一方、ゆっくり霊夢は体を激しく弾ませて魔理沙に詰め寄る。 ゆっくり魔理沙はしばらく詰め寄られるがままに後ろに転がっていく。 が、アリスが視界に入って踏みとどまり、叫んだ。 「霊夢なんかと、ゆっくりしたくない!!! 霊夢は餡子が腐ったみたいな匂いがするもん!!!」 「!!!」 今度は霊夢が白目をむく番だった。 「臭いのは大嫌いだよ!!! 大嫌いな霊夢とゆっくりしたくない!!! 目の前から消えてなくなってね!!!」 あれだけ躍動的に弾んでいたゆっくり霊夢の体が、もはや微動だにしない。 しかし、時間の経過と共に震えだす。凍りついた表情の双眸からは、ぽろぽろと零れ落ちる涙。 「ま゙り゙ざびどい゙! びどい゙! びどい゙いいいい!」 ぷるるると、全身を震わせる霊夢。 受け止める魔理沙は身じろぎ一つできな。 「魔理沙なんが、も゛う゛、じら゛な゛い゛!!!」 一際高く弾んで、枝をへし折りながら茂みの奥へと消えていくゆっくり霊夢。 よろよろと、その後に続くパチュリー。何度か振り向きつつ、森の奥へ。 後には無言のゆっくり魔理沙と、アリスだけが残された。 「よく、できました」 アリスが音を立てない拍手をゆっくり魔理沙にささげる。 その言葉に振り向く魔理沙。 「ゆっ、ゆっ、ひっく……!!!」 堪えていた涙が、友達が消えた後はとめどなく流れている。 「よしよし」 アリスは、アリスの教えたとおりの言葉を友達に伝えて一人ぼっちになった、ゆっくり魔理沙の頭を撫でてあげた。 至福の笑み。 「うふふふ、魔理沙も同じ目にあわせてられれば、私が慰めてあげられるのにね」 先ほどの光景に、どんな想いを重ねているのだろう。 アリスが一人ごちた、その時だった。 「おー、アリスじゃないかー!」 頭上から降り注ぐ、気楽な声。 アリスは弾かれたように虚空を見あげる。 「ま、魔理沙! なんでこんなところに!」 アリスの狼狽の向かう先は、箒に跨った本物の魔理沙の姿。 「いやな、茸狩りにいそしんでいたわけだが、ゆっくりどもが勢いよく走っているのを見かけて、興味本位でよってみた」 縁を感じる遭遇だが、アリスは喜びよりも背を伝う冷や汗を感じる。 もう少し遅れていれば、自分の醜い部分を魔理沙にさらけ出すはめになっていた。 胸を撫で下ろしながら、アリスは取り繕いをはじめる。 「ええ、この子がお友達と喧嘩したみたいで、慰めていたのよ」 言いながら、ゆっくり魔理沙の頭をごしごしと撫でつけ、押さえつけるアリス。 地に下りた魔理沙は、アリスの手の下で縮こまり、涙をこぼすゆっくり魔理沙に向けてかがみこんだ。 「この、ゆっくり私バージョンが、か? それは私としても気になるな。早く仲直りしろよ」 自分と同じような格好の生き物が相手なのだから気味悪がればいいのだが、魔理沙は気のいい笑顔でゆっくり魔理沙を 慰めに入る。 魔理沙の視界の外で、苛立ちを浮かべるアリス。 今だけは早く帰ってほしい。まずはそれが第一だが、同時になぜ魔理沙は自分以外にこんな優しさをほのめかす のだろうという不満にもつながる。 「ええと、魔理沙。この子のことは任せて、茸狩りを続けて……」 離れ欲しいと促すアリスの言葉だが、生憎、不意に目の前に現れた乱入者によって阻まれる。 「ゆっくり考えてきたよ!!!」 茂みから飛び出してきた、ゆっくり霊夢とゆっくりパチュリーだった。 よく見れば、二匹とも涙の跡が乾いていない。 それなのに、ゆっくり霊夢たちがゆっくり魔理沙を見つめる視線は、この上なく優しげだった。 「魔理沙の気持ちを知らなくて、ごめんなさい」 ぺこりと、沈み込むように霊夢のお辞儀。 「もう嫌な思いをさせないよう、遠くに引っ越すから、安心してね!!!」 その言葉に、ゆっくり魔理沙の眉が悲しみにゆがむ。 だが、頭の上にのせられたアリスの手の冷たさを思い出して、何とか堪えていた。 一方、霊夢とパチュリーの目は潤みだし、唇は嗚咽がこぼれないよう、真一文字に結ばれていた。 「……っ!!!」 けれど、想いを伝えるために霊夢は口を開かなくてはならない。 「……まりさ!!! もう……会えなくなるけどっ……!!!」 一度あふれた滂沱の涙を、霊夢もパチュリーも止めることができない。 涙声を絞り出す。 「これからも……わ、わだじだぢのぶんま゛で、ゆ゛っぐり゛じでい゛っでね゛!!!」 後には、二匹の押し殺した嗚咽が低く響き渡っていた。 ……アリスの手のひらを、ゆっくり魔理沙の深いあえぎが伝わってくる。 心を押さえつけるその限界に、もはや余裕はない。 「おい、このままでいいのか、ゆっくり私! 違うだろ、このままでいいわけがないぜ!」 なのに、人間魔理沙が一人、熱く語りだす。 いつもはそこが大好きな部分なのに、たまらなくウザく感じるアリス。 魔理沙の言葉と、アリスの刺すような視線。 そのベクトルの異なる力に押し出されて、ゆっくり魔理沙は前に踏み出す。 「霊夢、パチュリー、もう一度よく聞いてね!!!」 こいつ、ばらす気か!? 言葉の強さに、思わず息を呑むアリス。 一際、その手の圧力を強めて睨みつける。 ゆっくり魔理沙は、体を震わせて叫んだ。 「これで、新しい友達とゆっくりできるよ!!! さようなら、大嫌いな霊夢とパチュリー!!!」 勝った! 緩みそうになる口元を必死に抑えるアリス。 「お前!」 「魔理沙、仕方ないわよ。この子の意思ですもの」 声を荒げる魔理沙を、アリスは完璧に沈痛な面持ちで制止した。 寂しげな笑顔だけを残して、後ろを向く二匹のゆっくり。 静かに遠ざかるその背中に、アリスが気を緩めたそのときだった。 「でも゛!!!」 隙をついて、アリスの手から逃れたゆっくり魔理沙が二匹の下へ転がって走っていく。 その声に振り向きかけた霊夢とパチュリーに、呼びかけるゆっくり魔理沙の顔は、堪えに堪えた涙でくしゃくしゃだった。 「だいぎらいな二人でも、い゛っじょに、ゆっぐり゛じだいです! だがら、い゛がな゛い゛でええええ!!!」 「……ま゛り゛ざああああああ」 暖かい涙をこぼして、ゆっくり魔理沙を迎え入れる霊夢とパチュリー。 再び三匹となった一群は、そのまま森の奥へ走り出す。 「ま、待ちなさい!」 「行かせてやれ、アリス」 追いかけようとしたアリスの前を塞ぐ、魔理沙の腕。 「アリスは、あいつの仲直りの口上が気に食わないかもしれないが、あいつも私に似て素直になれない奴なんだぜ」 いや、そんなことじゃねーよと、張っ倒したいアリス。 だが、魔理沙の次の言葉に追う気が粉砕された。 「ところで、アリス。私たちは親友だよな」 「え、えええ!? なに、なんなの、突然!」 一瞬で、ゆっくりのことが吹き飛ぶアリス。 湯気が噴出しそうな顔を手のひら抑えながら、魔理沙を見つめた。 「そ、そうね、親友かもしれないわね。見る人によっては!」 一緒にお風呂に入る、同じ布団で寝る、後ろからそっと抱きしめる。親友としてできそうなこと、あれこれ 妄想するアリスだった。 一方、魔理沙はぽりぽりと頭をかきだす。 「それじゃあ、許してくれるよな」 「へ?」 アリスが間抜けに呟く。 なにやら雲行きが怪しくなってきた。 「いや、明日あたりアリスに丸一日付き合うつもりだったけど、フランの奴がどうしても弾幕遊びがしたいって、 紅魔館から呼ばれていてさ。ほら、あいつ手加減できないから、私も丸一日付き合わないといけなくなる。悪いが、 丸一日付き合うという話自体、なかったという方向で」 「え、えええ!?」 「そういうことで、じゃあなー」 驚愕に硬直するアリスを置いて、自分勝手に青空へと飛び出していく魔理沙。 一人佇むアリスの頬を、冷たい風が草むらを震わせて流れていく。 「……一人に、なっちゃった」 寂しげな呟きも、風の音にまぎれて消えていった。 三匹のゆっくりは、ゆっくり霊夢の寝床に身を寄せ合っていた。 うっそうとした藪の奥の、風の穏やかな洞。 すでに日は没し、暗がりに包まれてはいたが、アリスの家のように閉じ込められる寒々とした暗闇ではない。 傍にいる仲間の温もりが嬉しい、心地よい闇。 一息ついた三匹は目線を交わし、深く身を屈め、揃って一気に飛び上がる。 「ゆっくりしていってね!!!」 ゆっくり魔理沙の暴言も、仲睦まじい合唱に、しこりを残した気配もない。 これで完全に仲直り。 そして、あの魔女にさらわれる前の楽しかった日々に戻ったのだ。 こみ上げる幸福感に、ゆっくり魔理沙の頬を伝う幸せの涙。 「みんなと……ゆっぐりでぎで嬉じいい」 その涙は、ゆっくり霊夢とゆっくりパチュリーが舐めとった。 三匹は、かつてのように身を寄せ合い、そのまま眠りにつく。 夢に見たのは、野原を転げまわり、バッタを追っかけ、日向ぼっこでゆっくりと時を過ごす、幸せな明日の光景だろうか。 眠りこける三匹の元へ届くのは、月の光と梟の鳴き声。 だからだろうか、梟の鳴き声に似たその声を、聞きつけるものはいなかった。 それはどこかで聞いた、無機質な声。 「ホーラーイ」 夜陰に潜む、人形の呟き。 翌朝。 藁をしきつめた寝床で眠ったはずなのに、横たわるゆっくり魔理沙の体は、冷たさと固さを感じていた。 「ゆー?」 寝ぼけ眼が、次第に鮮明になっていく。 品の良い調度品、暖かな暖炉、そして棚を埋め尽くす人形の軍団。 「ゆっくり!?」 なぜ、アリスの家に。 飛び上がろうとする魔理沙。だが、天井を押さえつける透明なガラスの板に、飛び上がることもできない。 「ゆっ!」 悪夢がよみがえるゆっくり魔理沙。 ただ、依然と若干違うのは箱の構成。 横幅と高さはぴっちりとしているが、前後に細長くスペースがあって、少しだが動き回ることができた。 「あら、起きたの」 頭上からの声に見上げると、そこには穏やかな微笑を向けるアリスの姿。 ゆっくり魔理沙の体の色が、血の気を失って土気色。食欲をあまりそそらない色になる。 「ご、ごごごごごめんさい!!! もうしないから、ここから出してね!!!」 許されないことがわかっていながらも、必死に弁明を口にした。 だが、次のアリスの行動は予想外のものだった。 「出たいのね?」 アリスが蓋の留め金をいじると、苦もなく開くガラス箱。 箱の中に手が差し込まれて、ゆっくり魔理沙はアリスの手で引き上げられる。 「これは昨日、人間用につくったものなの。だからそれなりに余裕はあったでしょう」 こくんと頷くゆっくり魔理沙。誰のためにつくったのかは、怖くて聞けない。 そのまま、椅子に腰掛けるアリスの膝にのせられて、髪を櫛でとかされるゆっくり魔理沙。 昨日のことは夢だったのだろうかと思い始めた頃だった。 「あんな野原で寝るから、髪がぼさぼさになるのよ」 アリスの呟きに現実のことと知る。 そして、沸きあがる不安は、隣で眠っていた仲間たちのこと。 「ゆっくりしてたみんなは!!!」 「大丈夫よ」 アリスは親切に、ゆっくり魔理沙を抱えて窓辺へ。 そこには野外を元気に走り回るゆっくりパチュリーの姿が。 アリスの人形を一体頭にのせて、かつてない元気のよさで飛び跳ねていた。 それにしてもこのパチュリー、ノリノリである。 「霊夢はまだ眠っているみたいね」 アリスの言葉が示す通り、室内に向けられたゆっくり魔理沙の視界の端に、ソファーの影に隠れ気味にゆっくり霊夢の 頬が見える。 全員の姿を確認して一息つくゆっくり魔理沙を、アリスはくるりと向きを変えて真正面から見つめていた。 「それでお願いがあるのだけど、みんな、揃ってうちにきてもらえないかしら? その、私一人じゃ寂しいからね。 全員一緒にいたいなら、皆、面倒を見てあげるわ」 その提案に、魔理沙に広がる驚きの表情。 「もちろん、自由に遊びに行ったりしてもいいのよ」 それは、すごく嬉しいことかもしれない。 住人を除けば、暖かな寝床と美味しいご飯。素晴らしい環境なのだから。 それに、今のアリスはまるで憑き物が落ちたのかのよう。 微笑に陰りがなかった。 「うん!!! アリスも、みんなとゆっくりしようね!!!」 「まあ、嬉しい。ところで、昨日から何も食べてないからお腹が減ったでしょう。今、用意するわ」 言われて、ようやく空腹に気づくゆっくり魔理沙。 恐らく、緊張感が解けて感覚が戻ってきたのだろう。 「ゆっくり支度してね!!!」 「大丈夫よ、準備していたから」 魔理沙の気遣いに笑顔を返したアリスは、布をかけてあった皿を掴みあげる。 「私の知り合いに中国という方がいて、この前、料理を教えてもらったの」 魔理沙の前に差し出されるお皿。 「餃子っていう食べ物よ」 布が払いのけられて、アリスの言う餃子が姿をあらわした。 ふわりと漂う香ばしさと、こんがりと狐色の焦げ目が、ゆっくり魔理沙の食欲をそそる。 「わぁ、美味しそう!!! おねえさん、これ本当に食べていいの!!!」 「あなたに食べさせるためにつくったのよ」 アリスの笑顔に後押しされ、その餃子にむしゃぶりつく。 ほっくほくの皮。そして中の具から染み出す旨みにと甘さが、ゆっくり魔理沙の口に広がっていく。 「うっめ!!! メッチャうっめこれ!!!」 「ふふふ」 素直な反応が嬉しいのか、満足げに魔理沙の髪を撫でるアリス。 だが、皿をも嘗め尽くす勢いで餃子を貪っていた魔理沙が、ふと動きを止める。 「おねえさん……」 その声は震えていた。 「この餃子……なんかおかしいよ……シュっご……く……」 ぷるぷると身を震わして、半開きの口からだらしなく流れるよだれ。目じりにたまる涙。 「どうして? 慣れている味だと思うのだけど」 アリスは、その魔理沙をテーブルにのせて、静かに立ちあがる。 向かう先には、ソファー。そして、その影には未だ眠り続けていると聞くゆっくり霊夢の姿があった。 「だって、ほら」 ソファーの影から、けりだされるゆっくり霊夢。 いや、霊夢だろうか。 そのゆっくりは、額から上を切り取られていたため、アリスには見分けがつかない。 それでも、魔理沙にはわかったようだ。 「れ゛い゛む゛ううううう!!!」 ゆっくり魔理沙の声が聞こえたのか、ぶるんと震えるゆっくり霊夢の体。 「ゆっゆっゆっゆ」 しかし、目をひんむいた霊夢が壊れたうめきをあげるだけ。 アリスはその霊夢を、真上から覗き込んだ。 「大分減ったわね」 まるで、米びつを覗き込んで嘆息する主婦のよう。 少なくとも、生き物に向ける口調ではなかった。 「おねえさん、霊夢を、霊夢の中身をどうしたのおおお!!!」 「あらあら、知っているくせに」 わき上がる、ケラケラと抑えの利かないアリスの笑い。 「今は、あなたの口の中よ」 一瞬の沈黙。 「ぱぴぷぺぽっ!!! ぱぴぷぺぽおおおお!!!」 絶叫と共に、やみくもに壁にぶち当たろうとするゆっくり魔理沙。 「ゆっ!?」 だが、アリスが目配せすると、それまで棚を飾っていた人形たちが一斉に魔理沙に襲い掛かる。そのうち一匹の手には、 細く鋭い釘。 「ひぎい!」 ゆっくり魔理沙は床に縫いとめられていた。 「あらあら、お友達とお揃いになったわね」 アリスは視線を魔理沙から外し、窓の外で。 そこでは、相変わらずゆっくりパチュリーが走り回っていた。 青白い顔で、息も絶え絶え、涙とよだれを垂れ流しながら。激しく咳き込んでは、びくりと跳ね起きてなおも走り続ける。 そのゆっくりパチュリーの頭の上には、無表情の上海人形。手には五寸釘の根元を握る。その先は、ほとんどの部分が ゆっくりパチュリーに埋め込まれていた。 かろうじて走り続けていたパチュリー。だが、息を切らせてとうとうへたりこんだ。 「あああああ!!!」 途端に、ぐりぐりとひねりこまれる五寸釘。 のけぞって、いやいやと首をふるゆっくりパチュリー。 「や゛め゛で、や゛め゛で! 走りますう!!!」 のたうちながら、よたよたと動き出す。 べしょべしょの顔を濡らしながら感動のフル24時間マラソンはいつまでも続いて行くようだ。 けれども、パチュリーの体力と持病はそれを許さない。 「げほっ、がはっ……!!! ゆっぐり、じだいいいい!!!」 咳き込んで、のたうつパチュリー。 上海人形はアリスの指示通り、無表情のまま五寸釘でえぐる。 「む゛ぎゅーーーん!!! ゆっぐりでぎないよおお!!!」 パチュリーが泣き叫ぶ先には、窓辺に腰掛けるアリスの姿。 だが、アリスは背をむけていて、もはやその姿を見てもいない。 「……本を餌に魔理沙を釣る女と、同じ格好をしているのが悪いのよ」 死刑宣告に等しい言葉を吐き捨てながら、アリスは床に這うゆっくり魔理沙へと、かがみこむ。 「ところで魔理沙。あなたの一番好きな子を教えて。誰にも言ったりしないから」 なぜか、年頃の女の子のようなことを聞く。 だが、ゆっくり魔理沙にはわかっていた。 ここでアリスの名前以外を挙げれば、その相手は死ぬ。 「アリスが、アリスが一番大好きだよ……ぶぎゃっ!!!」 魔理沙の懸命な言葉は、口にねじ込まれたアリスの靴先に遮られた。 ゆっくりと靴を引き抜くアリス。 「だぜ、よ」 修正点を手短に伝えた。 「うん! 魔理沙は、アリスのことが誰よりも大好きだぜ!!!」 「……もう一度」 「アリスが大好きだぜ!!!」 その言葉にぷるぷると震えるアリス。 「ああもう、嬉しいわ!」 言うなり、渾身の力でゆっくり魔理沙を抱き上げるアリス。 締め上げられながら、魔理沙は一言も声をあげない。 ゆっくり魔理沙は、諦めていた。 ここにいることしか、もう自分は許されないのだと。 誰かに助けを求めると、その誰かが不幸になってしまう。 「アリス、ずっと一緒にいるぜ」 呟きながら、ゆっくり魔理沙は思う。 零れ落ちる涙も枯れてしまえばいいのに。 涙で滲んでぼやける視界。 その中で、幸福そうに微笑むアリスだった。 こうして、アリスとゆっくり魔理沙の幸せな毎日はまだまだ続いていく。 めでたし、めでたし。
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試験中だったので学校が早く終わり、家に帰る。 今日は父さんと母さんが遅くまで帰らない。 だから家の中でのんびりとゲームをして過ごそうと考えていた。 ところが家の中に入り、リビングに辿り着くと異変に気づいた。窓ガラスが割られている。 泥棒だろうかと思って身構えていたら、相手はそんなにたいそうなものではなかった。 「あ?なんだこの糞餓鬼?こっちは今飯を食うのに忙しいんだよ。ここはウチらのシマになったからさっさと出てけや」 「あら?人間じゃない。坊や、いい子だからオシッコちびっちゃう前に出ていきな。あたし達は優しいんだよ」 「あ~」 ゆっくりだ。それも三匹。ゆっくり霊夢、ゆっくり魔理沙。そして赤ゆっくり。スタンダードな組み合わせだ。 リビングを荒らして胸を張るその様子は、まさに自分達がその家の家主になったかのようだ。 おうち宣言。ゆっくり特有の人の家を乗っ取る行為。 「あ~、うめえ。おい糞餓鬼、なかなかいいもん食ってるじゃねぇか。この柏餅なんか最高だぜ」 ゆっくり魔理沙が母さんが僕へのおやつにおいてくれたであろう柏餅を食べてふんぞり返っている。 「よしよし、いい子ね~。ほら、こうやって私達のお家を作るのよ」 「あ~」 ゆっくり霊夢が赤ゆっくりをあやしている。まさに親馬鹿。馬鹿面をさらしている。 僕はそんなゆっくり達の横を通り過ぎて台所に向かう。 「おい!てめぇ何勝手に俺らの家に入ってるんだよ。ぶっ殺すぞ!」 「魔理沙、あの子頭が足りないからきっとわからないんだよ」 「っつってもよ~。いくらあのガキが馬鹿だからといってもちゃんとわからせないと駄目だろ。まったく親の顔が見てみたいもんだぜ」 「それもそうよね~。あんな間抜け面した坊や、どんな親から生まれたんだか」 ゲラゲラと笑うゆっくり霊夢と魔理沙。それに反応して赤ゆっくりがあうあうと声をあげる。 「あぁ、まったくウチのチビは俺達に似てよかったよ。あんな頭の足りないガキみたいにならなくってよかったな~」 「何言ってるのよ。私と魔理沙の子じゃん。そんなことあるわけないじゃん~」 またゲラゲラと笑う。僕はそれを無視して台所から包丁を持ってくる。 「あ? 何だそれ? ハッ、そんなもんでどうしようってんだ? まさかそんなチャチな道具で俺に刃向かおうってのか?」 魔理沙は馬鹿笑いをしながら僕に向かって飛び跳ねてくる。 「おい、俺は今機嫌がいいから見逃してやってもいいぜ。ほら、土下座して謝ったら許してやるよ」 「魔理沙優しい~」 またゲラゲラ笑う。 僕は無言で魔理沙の頭を掴む。 「上等だよ。鳴いて喚いても許してやらねぇからな。オラッ」 魔理沙が僕の体に体当たりを仕掛けてくる。当然きかない。 魔理沙は信じられないような顔をしている。 「おかしいな~。ちょっと調子が悪いのか?」 そんな調子で何回も体当たりを仕掛けてくる。僕にはまったくダメージが無い。 僕はめんどくさくなったので包丁で魔理沙の腹を切り裂いた。 「いでぇぇぇぇぇ!!」 餡子を流出しながら転がりまわる魔理沙。霊夢は狂ったように泣き叫んだ。 「腹が!腹がァ!!」 「魔理沙ぁ!!この糞坊主!こっちが優しくしてあげたら付け上がりやがって」 霊夢は僕に向かって突進してくる。さすがゆっくり。体当たりしか能が無い。 僕は霊夢の頭を掴んで台所に向かう。フライパンの上に乗せてガスコンロの火をつける。 「あづぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! お願いやめて! うぎゃあああああああああああああ!!」 五月蝿い悲鳴を上げて暴れるので、頭を押さえて無理矢理フライパンの上に乗せる。 一分もすればあっという間に霊夢の足が黒焦げになった。もう歩くことも出来ないだろう。 「私の足・・・・・。私の足がぁ・・・・・」 霊夢は呆然としている。それもそうだろう。ゆっくりにとって大事な足を黒焦げになるまで焼かれたのだ。もう一生歩くことは出来ない。 魔理沙はもうびくんびくんと痙攣している。腹の辺りをきられたあと餡子が流出しまくったせいだ。 こんなによわい生き物なのに人間に刃向かおうとは笑わせる。 死んでしまっては元も子もないので魔理沙に軽くオレンジジュースを被せてみた。 オレンジジュースはゆっくりの傷を回復させる効果がある。 僕は赤ゆっくりを掴んだ。 「おいお前達。お前達は自分達の命とこの赤ゆっくりどっちが大事だ?」 魔理沙と霊夢は顔を見合わせた。 「なに馬鹿なこと言ってんだよ。その汚い手を離せ!」 魔理沙はこの後に及んで減らず口を叩くので黙らせる。思いっきり蹴飛ばした。 魔理沙は歯を飛び散らせながら壁まで飛んでいった。もう物をかむことは出来ないだろう。 ムカついたので赤ゆっくりをガブリと囓った。 「てめええええええええええええ!!よくもおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 「もうやだあああああああああああ!!何するのよもうやめてよおおおおおおお!私達が何したって言うのよおおおおおおおお!!」 五月蝿い。僕は包丁で魔理沙の目を突き刺し、抉り、バラバラに切り刻む。 「ぎゃあああああああああああああ!!!」 どろりと餡子が流れ出る。気持ち悪い。 霊夢は魔理沙がやられるショックで気絶してしまったようだ。つまらない。 僕は足を上げて、霊夢を思いっきり踏み潰した。 ブチッ ようやく終わった。ゆっくり達はゴミ箱に入れておいた。 それよりも大変なのが家の中の片づけだ。ゆっくり達ときたら荒らすだけ荒らしやがった。 せっかくゲームをしようと思っていたのに無駄な時間を費やすのはうんざりだった。 あとがき 初ssです。ゆっくり虐待ssを読んでいるうちに、ゆっくりが普通の言葉を喋ってもいいんじゃないかと思って書いて見ました。 BY ゆっくり潰し このSSに感想をつける
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「あ”ー、暑い」 買い物行くなら夕方に行けばよかった。 真夏の昼間は日差しが強く、しかもまとわりつくような暑さだ。 (家に帰ってアイスでも食べよう) そんなことを考えながら家路に就く。 我が家はアパートの二階の一室なのだが、アパートの階段を上ろうとしたときに ゆっくり霊夢が階段の脇、影になっている所にいるのを見つけた。 ゆっくりは俺と目が合うと 「ゆっくりしていってね!」と小さく叫んだ。 この暑さのせいだろう。あまり元気がない。 「やあ、そんなところで何をしてるの?」 声をかける。 ゆっくりは話しかけられたことが嬉しかったのか、目を輝かせて答える。 「お日さまがあつくてゆっくりできないからここにいるんだよ!!」 さらにゆっくりは言葉を続ける。 「ここはれいむひとりでいっぱいだよ!!」 や、別に取ろうとしてないし。 まぁそんなことはどうでもいい。このゆっくりは家に持ち帰ろう。 自分でも変な感性かも思うが、ゆっくりって可愛いよな。 ぜひともペットに欲しかった。そして・・・いや語るまい。 ともかくだ。 ゆっくりを持ち帰るのは簡単だ。甘い言葉で釣ればいい。 「そんなところより涼しくてゆっくり出来る場所があるよ。俺の家だ。来る?」 ゆっくりはその言葉にすぐ食いつく。 「ゆっくりしたいよ! おにいさんのおうちに連れて行って!!」 嬉しいこと言ってくれるじゃないの。 こうしてゆっくり霊夢は我が家へ来ることとなった。 「さぁ、ここがゆっくり霊夢の部屋だよ」 「わーい、おにいさんありがとう! ゆっくりするね!!」 俺は物置と化していた一室を掃除して、ゆっくり専用の部屋を作った。 余っていた段ボールを床に敷き詰め、壁も段ボールを張り付けた。 ゆっくりが壁を傷つけないためと、食事が汚いこと・・・早い話掃除がしやすいからな。 ゆっくりの部屋も出来たことだし一緒にアイスを食べることにした。 「ちべたい!! でもとってもおいしいよ!!」 「それはよかった」 しかし汚いな。口のまわりも床もアイスでべったべただ。ダンボールを敷いて正解だった。 アイスを食べた後はお風呂でゆっくりを洗ってあげた。 「すっきりー!」 見てるこっちもすっきりするいい笑顔だ。 夕飯も一緒に食べる。といっても段ボールの柵越しだけど。 「うっめ! これめっちゃうっめ!!」 はふはふと肉野菜炒めと食パンを食べるゆっくりの顔は完全に緩んでいる。 野生ではこんな料理は食べられなかったのだろう。 ずっとうっめうっめと言いながら食べていた。 食事が終ってしばらくゆっくりしてると、ゆっくり霊夢は眠そうにしていたので寝させてあげた。 「明日もゆっくりしようね・・zzZ」 「ああ、おやすみ」 ゆっくりが寝たことを確認すると、俺はゆっくりと準備を始めた。 ~翌朝~ 「ゆっくりしていってね!!」 ゆっくりの声で目が覚める。 まだ6時だってのに早起きだなこいつは。 ゆっくりの部屋の襖を開けるとこっちをゆっくり霊夢が 「おにいさんゆっくりしていってね!! お腹がゆっくりすいたよ!!」 と、挨拶をくれる。 「おはようゆっくり。今朝食を用意するな」 「ゆっくりまってるね!!」 この完全にこっちを信頼している感じがたまらない。 本当はもっとゆっくり懐かせてからにしたかったが、ゆっくり出来ない俺はゆっくりを可愛がることにした。 可愛がるといっても抱っこしてなでなでしたり、高い高いする方じゃないぞ。 俺は昨日用意したたくさんの氷を風呂場の桶に移す。 そしてそれをゆっくりの元へと持っていく。 「おにいさん! そのとうめいなのはなに? ゆっくりできる??」 「ああ、ゆっくり出来るとも」 「ゆっ! ゆっくりしたい!! はやくゆっくりさせてね!!」 ぴょんぴょんと飛び跳ねるゆっくり。その顔は期待に満ちていた。 ああ・・・なんてかわいさだ。そんな顔されたらもう我慢で き な い。 「ゆ”っ!?」 俺はゆっくりを掴むと、用意しておいた空のバケツにゆっくりを突っ込む。 「こわかったよ!! ゆっくりしてね!!」 「ああ、ごめんごめん。これからたっぷりとゆっくりさせてやるよ」 「じゃあゆるしてあげるね!!」 俺はゆっくりの言葉を最後まで聞かずに桶の氷をゆっくりの入っているバケツへ流し込む。 「ゆっゆっゆっ」 コツコツと氷がぶつかるたびに小さく声を上げる。 そしてすぐにゆっくりは氷に埋もれた。 「つめたくて気持ちいいよ!!」 まあ最初はそうだろうな。 しかし一分もしないうちに 「つっつめたいよ!! さむいよおにいさん!! ゆっくりだしてね!!」 ゆっくりは氷の海から抜け出そうとぴょんぴょん跳ねようとするが、それはできなかった。 バケツの入口は透明なビニールシートで閉じていたのだから。 「そこならゆっくり涼めるだろ?」 「ゆ”っくりでぎないよ!! づめだいよ”!!」 知ってるとも。 しばらくは「早く出して」だとか「なんでこんなことするの」だとか訴えかけてきたが どんどんその声は小さくなっていく。 そろそろ限界かなと思いつつ、俺は何か物足りなかった。 正直氷にゆっくりを埋めていても楽しくはなかった。 やはり表情が見れないのは間違いだな。 なのでバケツを逆さにしてゆっくりを解放する。 顔は蒼白で、声も「ゆっ」とか「ぅ」とか言葉は出せないほど弱っていた。 俺は風呂場からお湯を持ってくる。しかしすぐにはかけてあげない。 ただただゆっくりをゆっくりと観察していた。 数分経つと徐々に元気を取り戻していくゆっくり。 動けるようになったゆっくりはおびえた表情で俺を見ながら俺とは逆方向の壁へと後ずさりした。 「どうした? ゆっくりできなかったか?」 「できるわけないよ!! おにいさんとはゆっくりできないよ!!」 おお、こわいこわい。 「そうか、ごめん俺が悪かったよ。ほら、暖めてあげるからこっちにゆっくりおいで」 手でおいでおいでする。 ゆっくりは最初はどうするか迷っていたが、俺のことをまだ信じているのかゆっくりと近づいてきた。 「ゆっ、ゆっくりしようね!」 控え目にお決まりの挨拶をするゆっくり。 「ああ、ゆっくり暖めてやるよ」 ゆっくりをお湯に浸からせてあげる。ゆっくりにはちょうどいいぬるま湯だ。 「ゆっくり気持ちいいよ!!」 「だろう? さっきのはこのための準備だったんだよ」 適当なことを言ったが、単純なゆっくりはそれで納得したらしい。 「うたがってごめんねおにいさん!! れいむはしんじてたよ!!」 嘘つけ。 まあ機嫌がすぐ戻ってよかった。 この先もゆっくりと色んな遊びをするつもりだからな。 嫌なことはすぐに忘れるゆっくりの特性はありがたかった。 さて、今回の氷で凍えさせるのはいまいちだったな。次はどうしようか。 次は生かさず殺さずの状態でのゆっくりを観察するためにご飯抜くかな。 しかしそれはやりすぎかな。 それとも釣り竿でゆっくりフィッシングでもやろうかな。 「おそらをとんでるみたい」って言葉を生で聞いてみたいし。 まあ、焦ることはない。 まだまだ俺とゆっくりのワンダフルライフは始まったばかりなのだ。 終 選択肢 投票 しあわせー! (1) それなりー (0) つぎにきたいするよ! (5) 名前 コメント すべてのコメントを見る
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ここは、ゆっくり達が住む森の更に奥。 そんな森の中に、ゆっくり一家が住んでいた。 そして、森の奥深くに住んでいたので、人間については話に聞くだけだった。 「ゆ~っくりしようね!!」 「ゆっくりおさんぽするよ!! しっかりついてきてね!!!」 日課のお散歩。 今日は天気が良いので、少し遠くまで出かけるようだ。 「ゆっくり!!」 「ゆっゆ!!」 「ゆ~~♪」 この一家は特に仲良し。 それは、この母親がはじめての子育てだからだ。 交尾相手のゆっくり魔理沙は交尾が終わると干からびて死んでしまった。 残された魔理沙の子供と自分の子供、合わせて十数匹を育てる母親霊夢。 根が純粋なので、一家もどこかのほほんと育った。 「ゆっゆ♪」 お母さん霊夢の周りを、未だ飾りが生えていない赤ちゃんゆっくり達が踊るように飛び跳ねる。 珍しく、誰も離れないので、何時もより長い距離を散歩できた。 「ゆゆ!!!」 そしてたどり着いた人里。 大きな家々はこの一家には高い洞窟のように見えるかもしれない。 その中の一軒、新しく建てたのであろうその家に一家は心を奪われた。 「ゆ~!! すっご~~い!!」 「かっこいいど~くつ~♪」 「おか~さんはいってみようよ!!!!」 「「「「ゆっゆゆゆ~♪」」」」 家に目を奪われながら、ゾロゾロと庭まで入ってゆく一家。 しかし、厳重に施錠がしてある家に、進入手段を見つけられない。 「ゆ~……。ゆゆ!! ここからなかがみえる!!!!!」 「すごい!! ここからはいれるよ!!!」 一枚のガラス越しに、中を見ていた一匹の赤ちゃん霊夢が叫んだ。 即座に、ガラスに向かって体当たりするお母さん霊夢。 「ゆゆ!! まくがあるよ!! !!! ゆーーーーーくり!!!!!」 思い切り助走をつけ、ガラスに当ってゆく。 その衝撃に、ガラスはゆっくりが通れる程の穴を作った。 「ゆ~♪ ひろいどーくつ~♪」 「すご~~い!!!」 入った先はリビングだった。 物珍しそうに辺りを伺うゆっくり一家は、この後探検を始めた。 ―― 男が家に帰ると、リビングの明かりが点いている事に気付いた。 消し忘れか、と思い急いで玄関を開けると、中からは楽しそうな話し声が聞こえてくるではないか。 その言葉の中には、ゆっくり、という単語も含まれていた。 全てを悟った男は、勢いよくリビングのドアを開け放つ。 「ゆ~っくりくり♪ ゆっゆゆ~♪」 一番初めに目に付いたのは、壊されたテレビの近くて歌を歌っていたゆっくり霊夢の赤ちゃん。 次は、買い置きしていた瓶の中身を床にばら撒き美味しそうにのんでいる赤ちゃん魔理沙。 壊れた窓、中の綿が飛び出しているソファー。 そこで追いかけっこをしている沢山の赤ちゃんゆっくり。 「ゆっくりしていってね!!!!!」 声の下方向へ向き直ると、そこにはソファーの中身を集めている一匹のゆっくり霊夢。 どうやらこれが親らしい。 男は確信した。 「ゆっくりしていってね!!!!」 言葉に反応を示さなかったのが気になったのか、お母さん霊夢は今一度男に呼びかける。 「おにーさんもここをみつけたの? れーむたちもここをみつけたんだよ!!! いまね、あかちゃんたちにゆっくりできるべっどをつくってあげてるの!!」 今まで、話でしか人間を知らなかったお母さん霊夢が、ピュアな瞳で話を続ける。 「おにーさんもこのどうくつでゆっくりする? ここにはゆっくりできるものがいっぱいあるよ!!!」 「ゆゆ~~♪」 「ゆっくり~~♪」 赤ちゃんゆっくり達も、男の近くに集まり出してきた。 そのどれもが、ピュアな瞳を男に向けて言葉を発している。 「ここは、俺の家だよ」 その視線に呆気に取られていた男だが、何とかそれだけを口に出した。 「ゆゆ!! そうなの!!!!」 心底ビックリしたようにお母さん霊夢は呟いた。 もしも、これで引いてくれるなら、まだ考えてやっても良かっただろう。 「だったらおにーさんもいっしょにゆっくりしよう!!!」 ニパー、っと、満面の笑みを浮かべて男に提案するゆっくり霊夢。 更に、彼女の話は続く。 「みんなでゆっくりするのはたのしいよ!!!」 「「「「「ゆっくりしていってね!!!!」」」」」 最後は、子供達も声を合わせての大合唱。 それが終わると、この話は終わったようで、子供達は男の周りでキャッキャと飛び回る。 「おかーしゃん、おなかへっちゃ~!!」 そんな中、一匹のゆっくり魔理沙が母親に食事を催促する。 「ゆゆ!! そうだね!!!」 催促された母親は、男の方を向き、先ほどの笑顔で言い放つ。 「おにーさん!! はやくごはんたべようね!!! れーむはあかちゃんたちのめんどうをみてるから、おにーさんはごはんをじゅんびしてね!!!!」 夫に話しかけるように、フレンドリーに男に食事の用意を言い放ったお母さん霊夢。 男が怒りで震えている事は、気が付かないようだ。 しかし、男はこの場は一旦引いた。 そして、リビングのドアから奥へと消えていった。 ―― 「おい。ごはんを持って来たぞ。お母さん霊夢、は何処だ?」 暫くしてリビングへ戻ってきた男。 その手には、確かに何か持っている。 「ゆゆ!!! いまいくよ!!! ゆっゆゆゆ~♪ ゆっくり~していってね~♪」 一塊の、音痴な合唱をしていた集団から声が上がる。 呼び出された母親だ。 元気よく男の下へ駆け寄っていく。 瞬間。 ズボ! 「ゆ!! ゆゆゆ!!!!!!」 霊夢の頭に何かが刺さった。 「ゆーーー!!! いだいよーーーー!!!! ゆぐりさせでーーー!!!!!」 それは、筒の先に注ぎ口が付いた様なもの。 こちらの世界で例えるなら、ボトル容器のポンプ部分。 男はそれをお母さん霊夢の頭に突き刺したのだ。 「ゆーーーー!!!!! おうじがえらせでーーー!!!!」 「おかーーさーーーん!!!!」 「ゆっくりさせてあげてーーーー!!!!!」 やがて、お母さん霊夢の周りに子供達が駆け寄ってくる。 全員がそろった事を確認すると、男は数回ポンプを押した。 ベチョ! ベチョ! 母親の目の前に集まっていた赤ちゃんゆっくりの前に、餡子が次々に落ちてゆく。 「いだいよ!!! ゆっくりさせでーー!! おうじかえるーー!!!!」 「ゆっくりさせてあげてね!!!」 「ゆっくりさせてあげてね!!!」 半透明なチューブ部分、そこを黒い物体が移動するのを見て、何かが母親の体から抜けている事は分かるのだろう。 赤ちゃんゆっくり達は、必死に声をあげてゆっくりさせてあげて、と男に良い続ける。 「ほら、ごはんだよ。ゆっくりたべていってね!!」 「ゆーーーー!!!」 既に大粒の涙をこぼしている母親の前で、赤ちゃんゆっくり達を急かす。 赤ちゃん達も、それが母親の所から出た事はなんとなく理解しているが、何となくなので意識では理解していない。 「ゆ? ゆゆ?」 一匹の赤ちゃん霊夢が、ソロソロと餡子の山に近づいていく。 パク! 一口食べる。 「!!!!! おいちい!! あまくておいちい!!!!」 直ぐに、驚いた顔を浮かべ更に一口・二口と食べ進めてゆく。 「ゆゆ!! ほんとうだ!!!!」 「れーみゅもたべるーー!!!」 「まりしゃもーーー!!!!」 次々と、餡子の山に赤ちゃん達が群がってゆく。 「ゆっゆゆゆ~♪」 「ゆゆゆ~♪」 「ゆ~~~~~!!!! ゆ~~~~~~!!!!!」 その様子を見て、更に涙を流すお母さん霊夢。 それは自分から出たもの、それを美味しそうに食べる赤ちゃん達。 どうして良いのか分からずに泣いているのだ。 「おい!!! 自分の母親の餡子を食べるとは何て奴だ!!!」 「ゆぶ!!!」 ここに来て、漸く男がお母さん霊夢の心労を軽減させた。 餡子を食べるのはお仕置き、という手段で。 真上から殴られたゆっくり霊夢は、一番最初に駆け寄ってきたゆっくりだった。 今は、体から大量の餡子を流しながら、必死に他の赤ちゃんの元へ近づいてゆく。 「ゆ! ゆっぐり……しようね!……」 餡子の後を残し、その赤ちゃんは、他の赤ちゃんの目の前で命を落とした。 「ほら、お前もだ!」 「ゆぐひゃ!!!」 その近くに居た赤ちゃん魔理沙へも鉄槌を下す。 今度は、力が入りすぎたのか一瞬で絶命した。 「まだまだ終わってないぞ!!」 「ゆっくりしゃせてね!!」 「にげよーーね!!」 「おうちかえるね!!!」 「ゆ……!! ぐえ!!!」 騒然と逃げ惑う中の一匹に的を絞り、後ろからBBQ用の串を放つ。 見事、後ろから口に向かって貫通したそれを、カセットコンロにかけ焼き饅頭に仕上げていく。 「あじゅいよーー!!! たずけでーーーー!!!!」 「れーみゅをはなしてね!!!」 断末魔の叫びを上げながら焼かれている赤ちゃん霊夢の元へ、一匹の赤ちゃん魔理沙が駆け寄ってきた。 「あずいーー!! おかわにはいろーー!! おがーーさーーーん!!!」 無謀にも、男に攻撃しようとしているのだ。 「れー!! むびゃら!!!!」 スリッパで簡単に潰されてしまった魔理沙。 時を同じくして、喋らなくなった焼き饅頭も完成した。 「!! むひゃ!!!」 「あぎゃああ!!!!」 「こっこぁ!!!!」 「うぎゃーーーーー!!!!」 焼き饅頭片手に、男は次々とゆっくりを駆逐していく。 「やめてあげてね!!! あかちゃんがゆっくりできないよ!!!!」 「やめてあげてね!! れーむたちはもとのどーくつにかえるから、こどもたちをおこしてね!!!」 痛みは引いたが、頭にポンプを差し込まれ目の前の光景を見せられているお母さん霊夢は、ただただ男に語りかけるしかない。 「やめ!! ゆゆゆ!!!」 それも、終わりを迎えた。 全ての赤ちゃんゆっくりを処分した男は、煩いお母さん霊夢のポンプを更に数回押したのだ。 あれほど煩かったお母さんゆっくりは黙り、代わりに大量の涙を流す。 「それじゃあ行こうか?」 「ゆーー……。どごへ?」 男に抱きかかえられながら、何とかそれだけ言葉をひねり出す。 「加工場だよ。これが製品化されれば、一攫千金だからね!」 「いいいやだーーー!!! おうじ!! おうじにかえらせでーーーーー!!!!!!」 加工場の事を知っているのか、はたまた自分の運命を感じ取ったのか。 闇夜に浮かぶ加工場の看板を見ながら、男はそんな事を考えていた。 このSSに感想を付ける
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ある里の近くで、ゆっくり霊夢の一家が住んでいました。 一家は皆キチンとしており、人間の畑も荒らさずにゆっくりと暮らしていました。 「おかーさん、おそびにいええくるよ!!!」 「ゆっくりあそんできてね!! くらくなるまえにもどってきてね!!!」 「おねーしゃんいってらっちゃい!!!!」 「いってきます!! ゆっくりしてくるね!!!」 勢いよくお家から飛び出すゆっくり霊夢。 今日は魔理沙たちと遊ぶ約束を強いています。 こちらの魔理沙一家もキチンとしていて、他の魔理沙のように他人の家に上がりこむことはしません。 二人でくたくたになるまで遊んだ後、霊夢は暗くなる前に魔理沙とさよならして、お家に向かいました。 ……。 「ゆゆ!! おにーさん!! それなぁに?」 俺が近くの永遠亭から一本の竹を貰って帰る途中、一匹のゆっくり霊夢が飛び出してきた。 「これかい? これは七夕に使う竹だよ」 「ゆ? たなばた? それってゆっくりできるの?」 「あぁ、この笹に願い事を書いて吊るすと願いが叶うって言われてるんだ」 「ゆゆ!! おにーさん!! れいむもおねがいしたい!! れいむもおねがいしたい」 「ちょうどいいな、……よし一緒においで!!」 「ゆ♪」 ゆっくり霊夢と連れ立って家路を急ぐ、なんたって今日は七夕だからな。 「ほら、ここが俺の家だ」 「はいっていいの?」 「ああ。遠慮するなよ!」 「ゆ! ゆっくりおじゃまするね!!!」 まぁ、普通のゆっくりよりは礼儀正しいみたいだ。 「おじさんありがとうね!! れいむはゆっくりおねがいしたよ!!」 そうだった、こいつは何かお願いしたいことがあってここまで来たんだっけ。 「それじゃあ、今から飾りつけするから手伝ってくれるかい?」 「ゆゆ!! おてつだいするよ!! だかられいむもおねがいさせてね!!!」 「ああ。いいとも」 何て純粋なゆっくりなんだろうか。 これが並大抵のゆっくりだったら、早く飾り付けしてね!!、って叫ぶ所だと言うのに。 「それじゃあ、これを引っ掛けてくれるかな?」 渡したのは七夕飾り、器用に口にくわえ、俺に抱っこされて笹にかけていく。 「ゆゆ!! おにーさんかけおわったよ!!」 「よし、こっちもお願いね」 「うん♪」 暫く一人と一匹で仲良く飾り付けをしていった、一人でするより大分賑やかだ。 ……うん、なかなか良い出来だ。 「それじゃあ、短冊を書こうか」 「ゆ~? たんざくってなぁに?」 短冊が分からない霊夢に一枚の短冊を見せて説明する。 「これの事さ。ここにお願いを書いて竹に飾るんだよ。さて、文字は分からないだろうから代わりに書いてあげようか?」 筆を持ち直しゆっくりの方へ向き直る。 が、霊夢はなんだか不満そうだ。 「ゆゆ!!! おにーさん!! れいむもじぶんでかきたいよ!!」 「自分で書けるか?」 「うん!! おにーさんそれかしてちょーだい!!」 意気揚々と俺から筆を受け取ったゆっくり霊夢は口にくわえてブッ格好な丸を沢山書きだした。 「何だこの丸? まんじゅうか?」 「ちがうよーー!! れいむのかぞくだよ!! この大きいのがお母さんだよ!!」 別にどっちでも変わらん気がするが、見れば確かに目や口のようなものと髪の毛にリボンが書かれている。 「ふーん。で、これはどういうお願いなんだ?」 「ゆ? !! れーむとおかあさんと、おねーちゃんといもうとたちがずっとゆっくりできますようにっておねがいしたんだよ!!」 ほー家族ね。コイツラらしい。 「あっ! そうだ!! おにーさん!! たんざくもういちまいもらっていい?」 遠慮がちに聞いてくる、別にこんなもん何枚でもくれてやるが。 「良いけど、今度は何をお願いするんだ?」 「おともだちのまりさのかぞくもゆっくりできますようにってだよ!!」 くーー!! 泣かせるじゃねーか! 「家族や友達思いの良いゆっくりだな!! よし、後でおにーさんが食べ物を持って言ってやろう。両方のお家の場所は分かるか?」 「うん、ここから…………」 ほうほう、結構近くだな。 「よし! 分かった。それと、きちんとお願いが叶うようにおにーさんが文字でそのお願いを書いてやるよ」 「ゆゆ!! おにーさんありがとーー!! これでれいむたちはゆっくりできるね!!」 「そうだな、良い子にしてたらきっと叶うぞ」 「ゆゆ!! れーみたちもまりさたちもかってににんげんのおうちにははいらないよ!! はたけのおやさいだって、かってにたべないよ!!!」 どうやら、自分たちがそういう事をしてると思われたと思ったんだろうな。 それにしても、なかなか真面目なゆっくりだな。 「分かってるよ! ……っと、よしかけた。それじゃあ、飾りにいこうか」 「ゆゆ!!」 無邪気に笑う霊夢を抱えて再び庭へ。 霊夢に自分の短冊を下げさせた後、俺も自分の短冊を上の方へ下げた。 「ゆゆ!! おにーさんはどんなおねがいしたの?」 下げる前に、霊夢がそんな事を聞いてきたので短冊を見せてやったら喜んでた。 文字は読めないのにな。 「これでよし。全部終わりだ」 「ゆ! おじさんのおねがいもれーむのおねがいもちゃんとかなうといいね!!」 「そうだな。お前はこれからどうする? なんなら夕飯でも食っていくか?」 「んーん。おかーさんがしんぱいするといけないから、おうちにかえってゆっくりするよ!!!」 そうか。 それじゃあ俺も夕飯の準備に取り掛かろう。 「ゆ!! おにーさんどうしたの!!」 ゆっくり霊夢を抱きかかえる。 既に帰ろうと背を向けていた霊夢は少し驚いたようだ。 「んー? これから夕飯にしようと思ってな」 「? れーむはおうちにかえるよ? おにーさんのごはんのじゃまはしないからゆっくりたべてね!!」 「そぉい!!」 「ゆぶっちゃら!!!!」 真横に図太い荒縄を通して竹へ吊るす。 「ゆゆ!!! れーむのおながにぃ!! おにーざん!! はやぐどってぇーー!!!!」 このために、わざわざ永遠亭まで言って綺麗なウサギさんと一緒に丁度良い竹を探し回ったんだ。 あぁ、今度は怪我をして行ってみようかな……。 「ゆ!! いだいよ!!! おにーさん!! ゆっくりおろしてね!!! ゆっくりおろじてねーー!!!」 痛みに苦しみながら、こっちを見つめる霊夢。 残念だけど、俺はこれから夕食の準備をしないといけないんだ。 「それじゃあ、そこでゆっくりしていってね!!!」 「ゆっぐりーーー!!!!!!」 さてと、ビールビール!! ……。 「うっう~♪ あうあう♪」 暫くビール片手に家の中で待っていると、漸くゆっくりれみりゃがやって来た。 「う~? ぷっでぃ~んどごぉ~? ぷっでぃ~ん!!!」 もちろん唯のれみりゃじゃない、紅魔館にすんでいる最高級れみりゃだ。 「ゆ!! おにーさん!!! れみりゃだよ!! ゆっくりできないよ!!!」 そんなに大きな声で呼ばなくたって分かってるよ、コイツをおびき出すためにお前を吊るしてたんだから。 「うっう~た~べちゃうぞ~♪」 「ゆ!! ゆーーっぐりたすげでね!!! れーむはおいしくないよ!!!」 馬鹿かお前? 大馬鹿な紅魔館れみりゃにそんなこと分かるはずないだろ? 「う~♪ がぶっ♪ !!!……うー!! ぷっでぃ~んじゃないー!!!」 やっぱコイツ馬鹿だ。 「うーーー!! ぽいっ、するのぽい!!!」 勢いに任せて、霊夢をズタズタに千切っていくれみりゃ。 そろそろ頃合か? 「おい肉まん! こっちにぷっでぃ~んがあるぞ!!」 「う!! ぷっでぃ~んだべどぅ~♪」 「そうか、食べるか。ぷっでぃーんはこっちだよ!!」 「うーー!! ぷっでぃーんじゃないの!! ぷっでぃ~んなの!!」 テコテコと座敷に上がってくるれみりゃ。 ニコニコしながら俺の前に近づいて両手を差し出してきた。 「う~♪ はやぐぷっでぃ~んくれないと、さぐやにいいつげるどぉ~♪」 はいはい、ぷっでぃ~んね。 「こぁ!!」 「うー? !!! いだい!! いだいどぉーーーーー!!!!!」 そりゃ、柱に磔にされたら痛いわな。 「うーーー!!! ざぁぐやーー!!! ぷっでぃーんはどごーー!!!!」 ……、おい! 「ぷっでぃーんじゃなくて、ぷっでぃ~んだろ?」 まずは、この羽からいってみよう。 「!!! いだいどぉーー!!!! う゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーー!!!!!!」 うん、これはビールに合うな! 「そればれみりゃのーー!!! れみりゃはだべものじゃないどぉーーー!!!!!」 そういえば黒ビールも有ったな、今度はそれで食べてみるか。 「うあーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」 ……。 ふー、食った食った。 そういえば、あの霊夢はまだ生きてるのかな? 「おーい霊夢! 生きてるか?」 「ゆー。 !! おにーさん!! れいむはゆっくりできるよ!! れみりゃをおいはらってくれてありがとうね!!!」 おお! 生きてた、すげーな!! 「でもこの縄を早く外してね!! そうしたら、こんなことしたのをゆるしてあげるよ!!!」 へいへい。 「ほら、外してやるよ。別に悪気があった訳じゃないんだ。ただ自分を吊るすと願いが叶い易くなるんだよ」 霊夢の縄を抜いて地面に降ろしてやる。 縄の抜けた体を満足そうに見た後、目を輝かせて俺に尋ねてきた。 「ゆゆ!! ほんとう!! だったられーむたちのかぞくとまりさのかぞくは、ぜったいにゆっくりできるね!!!」 「U☆SO☆DA☆YO☆ そぉい!!!」 「ふんじゃられったりーーー!!!!!!」 死なない程度に踏みつけて籠に入れておく、明日の朝には元気になってるだろう。 「じゃあな。明日は家族仲良く加工場に行こうな。願い通り、死ぬまでゆっくりできるぞ!!」 「!! かごうじょーーはやだーーー!! ゆっぐりできないよーーー!!!!」 ……。 「れいむ、きのかえってこなかったね」 「きっとまりさといっしょにゆっくりしてたんだよ!!」 「やぁ、君達が霊夢の家族かな?」 「!! おじさん!! れーむをしってるの?」 「れーむはどこにいるの!!」 「うん、霊夢は君の家族と魔理沙の家族がゆっくりできるようにってお祈りしてたんだよ。俺は、それに感動して君らもゆっくりさせてあげようと思ってね。魔理沙の家族は、今一緒にいるから君達もおにーさんのお家へおいでよ!!」 「れーむもおにーさんのおうちにおじゃましようよ!!!」 「!! うん、みんなでゆっくりできるね!! おにーさん!! どうもありがとーー!!」 「いいよいいよ! 俺も願いが叶って嬉しいから……」 翌日、親子共々籠に入れて、願いどおり加工場でゆっくりしてもらうことにした。 専用の安全な檻に入れられた両方の一家が、嬉しそうに涙を流して喜んでいたのが印象的だった。 俺の願い? 高級なゆっくりれみりゃを食べたい事と、纏まった金が欲しい事さ。 ……。 昨夜、紅魔館。 「れみりゃさまーー!! 食後のプディングをお持ちしましたよ!! ……またお出かけかしら?」 「あ、咲夜さん。れみりゃさんなら、さっきお散歩に行きましたよ♪」 「そう。 ……このプリン食べる?」 「良いんですか? 頂きます♪」 「涎垂らしながら見つめてたでしょ。それより、貴方も短冊に何か書いたの?」 「おいしーです♪ ……あっ、はい! 嫌いな食べ物を見なくて済みますようにって書きました♪」
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夏の日差しも強くなってきたある日、俺の家の縁の下に2匹のゆっくりが住み着いた。 ゆっくり。 低い知能と生首のような体が特徴の生きる饅頭。 畑荒らしから騒音被害まで、幅広く手がける害獣だ。 そんなゆっくりであるが、住み着いたゆっくりは他に比べて知能があるようで、俺のテリトリーを犯すことはなかった。 「おにいさん!れいむ達をゆっくりさせてね!」 「おにいさんのおうちをちょっとだけ貸してね!!めいわくはかけないよ!!」 初日には、玄関の前で待っていたゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙が丁寧に挨拶をしにきた。 エサは自分で取るから、子供を産むまでの間すこしだけ家を貸して欲しいという。 猛暑が続く中、この若いカップルは手ごろな巣を見つけられなかったのだという。 「うるさくしないなら、縁の下でゆっくりしてていいよ」 その答えに納得し、2匹のゆっくりは生活を始めた。 約束を守っているのだろう、普段から何も騒音は聞こえてこなかった。 朝日が昇ったときの「ゆっくりしていってね!!!」という一言、ニワトリのような習性が気になったくらいだ。 また、交尾はうるさいだろうと覚悟してはいたが全く問題は無かった。 後で聞いた話だが、2匹は近所の森で交尾をしていたらしい。 ゆっくりプレイスである縁の下を離れ、いつ外敵に襲われるのかもわからないところで青姦とは、健気なゆっくり達である。 そんな生活も1週間が経った今日、ゆっくり霊夢は妊娠をした。 縁の下をたまたま覗くと、そこには頭に茎を生やしたゆっくり霊夢が昼寝をしていたのだ。 昨日までは2匹でエサを取りに行ったり、外を遊んだりしていたので、昨日のうちに受精(受粉?)したのだろう。 「お、れいむ。赤ちゃんができたんだね」 声を掛けるとぴくっと反応し、目を覚ました。 すぐさま身を引き、警戒態勢を見せる。 「ゆっ・・・!おにいさん、れいむたちは静かにしてるよ!」 そういいつつ周囲を見渡す。 身軽なゆっくり魔理沙はエサでも集めに行っているのだろう、そこにはゆっくり霊夢しかいない。 「安心してよ。おにいさんはれいむをいじめないよ」 そう、俺はゆっくりを虐待などしない。 生き物を暴行したり、ましてや殺害するなど俺の趣味ではない。 「ゆ、おにいさん。れいむは赤ちゃんがいるからあまり動きたくないよ」 ヘタに動くと茎が上部にぶつかって折れてしまうかもしれない。 それに赤ちゃんが実った大事な時期だ。力の強い人間にはあまり関わりたくないこともあるだろう。 「そうだね。そこでゆっくりしててね。それと、赤ちゃんが生まれても少しの間ならゆっくりしててもいいから安心してね」 「ゆっ!」 「騒がないなら、ずっとゆっくりしててもいいからね」 「ゆゆ!おにいさんありがとう!」 「どういたしまして」 「でも、森におうちを作ったから、もうすぐしたら出て行くね。赤ちゃんは元気にゆっくりさせてあげたいよ!」 エサ集めだけでなく、ちゃんと巣も作っていたようだ。 目先のことだけでなく、後のこともしっかり考えているあたり知能の高さが伺える。 「そうか。じゃあお兄さんは家に戻るよ。もし敵が来たら騒いで教えてね。お兄さんが助けてあげるよ」 「ありがとうおにいさん!おにいさんのおかげでゆっくりした赤ちゃんになりそうだよ!」 茎に気をつけながら顔を地面に近づけるゆっくり霊夢。 一瞬、何をしているのかと思ったが、お辞儀をしているのだと理解した。 もともとは飼いゆっくりだったのかもな、と思ったがどうでもよいことだった。 夕方、エサ取りから戻ってきたゆっくり魔理沙が丁寧にお礼を言いに来た。 感謝の気持ちということでエサのムカデを置いていこうとしたが、俺はそんなものを食べないので遠慮しておいた。 そんな賢いゆっくりに感動し、俺はお菓子を恵んであげた。 「れいむとゆっくり食べるよ!」 ゆっくり魔理沙は喜んで持ち帰ってくれた。 瞬く間に1週間が経った。 ゆっくり霊夢の茎に実った赤ちゃんれいむはプチトマトほどのサイズになり、いまにも生れ落ちそうである。 「ゆ~♪ゆっくり~♪」 「ゆっくりした赤ちゃん~♪ゆ♪ゆ♪ゆ♪ゆっくりした子になってね~♪」 庭に出た2匹が燃えるような炎天下の中、楽しそうに歌を歌っていた。 一晩で実り落ちることもあると話には聞いていたのに、1週間もかかるとは。 歌詞の通り、ゆっくりした赤ちゃんだ。 目もまだ開いていないが、親ゆっくり達の声が聞こえるのか、にこやかな笑顔をしている。 「ゆっ!!!?」 突然、歌うのをやめるゆっくり霊夢。 それと同時に2匹は茎の上の赤ちゃんを見上げる。 ゆらゆらと動き始める赤ちゃんゆっくり。それは霊夢種であった。 ついに出産(?)の時が来たようだ。 俺は縁側でその様子をのんびりと眺める。 ゆらゆらと動いていた赤ちゃんれいむは、どんどんとゆれを強くし、ついに地面にぽとりと落下した。 ぴっちりと閉ざされていた目がゆっくりと開いていく。 親ゆっくり達は赤れいむに真剣な顔をにじり寄せ、一言も喋らない。 赤れいむは親の姿をゆっくりと確認すると 「ゆっくちちていってね!!!」 と第一声をあげた。 ぱあっと笑顔になる2匹の親れいむ。 「「ゆっくりしていってね!!!」」 お決まりの文句を返しながら、赤れいむと頬と頬をすり合わせる。 幸せそうな光景だ。 「ゆっくりしようね!!!ずっとゆっくりしようね!!!」 「れいむに似てすごくゆっくりした赤ちゃんだね!!!」 ぽろぽろと涙を流す親れいむに顔を摺り寄せる親まりさ。 1匹が生れ落ちると、その後は早かった。 次々に生れ落ち始め、10分もすると茎には赤ちゃんがほとんど無くなった。 そして今、ついに最後の一匹が揺れ動いている。 ゆっくり魔理沙だ。 「最後までゆっくりした赤ちゃんが落ちそうだよ!まりさ!」 「ゆっくりうまれていいんだよ!」 親まりさの言うことなどお構い無しに、早く生まれたいという欲求を感じる揺れ動き方であった。 すぐに生れ落ち、他の姉妹のようにお決まりのフレーズの第一声をあげた。 「ゆゆうう!!!れいむの可愛い赤ちゃん、すごくゆっくりしてるよ!!」 「こっちの子はまりさにそっくりでとってもゆっくりした子だよ!」 互いに子供をパートナーに似て可愛いと言うあたり、人間の出産後のようだ。 生まれたのは計10匹。赤れいむが6匹と赤まりさが4匹。 「ゆっくち!おかあさんおなかすいたよ!ゆっくちしたいよ!」 「まりさもゆっくち!」 「ゆっくちさせて!」 お腹を空かせた赤ゆっくりに気がついた親れいむ。 縁の下のエサでも取りに行くのかと思ったら、いきなり親まりさが親れいむの頭に乗りかかった。 もう交尾をするのかと思っていると、親まりさは親れいむの茎を根本から噛み切った。 ばさりと音を立てて倒れる茎に困惑する赤ゆっくり。 「それが最初のごはんだよ!!みんなでゆっくり食べようね!!」 親れいむの茎はどうなるのかと思ったが、ちゃんと再利用されるようだ。 案外おいしいようで、赤ゆっくり達は必死で貪り始める。 「ゆ!おいちいよ!!」 「ゆっくちできるう!」 そんな様子を眺めていると、親まりさが俺の方に跳ねてきた。 「おにいさん、お話があるんだよ!」 「ん、なんだい?」 「まだ赤ちゃん達が小さいから、もう少し大きくなるまでここでゆっくりさせてほしいよ!」 詳しく話しを聞くと、森の中の巣はかなり奥のほうにあるらしく、そこまで赤ゆっくりを連れて行くのは大変だと判断したとのこと。 「すこしうるさくなっちゃうかもしれないけど、ゆっくりさせてほしいよ!」 「れいむもおねがいするよ!!できる限り静かにさせるよ!!」 いつの間にか親まりさに寄ってきていた親れいむまで懇願する。 そして2匹が顔を地面に近づけた。これは土下座の意味かもしれない。 「うるさくしないんだったらいいよ。でも早いうちに出て行ってね」 赤ゆっくりは相当うるさいので、きっとムリだろう。 だが俺は赤ゆっくりを可愛がりたいとも思っていたので丁度よかった。 「ゆ!できるかぎりがんばるよ!!!おにいさんありがとう!!」 「お兄さんはゆっくりできるいい人だね!!ありがとう!!」 親ゆっくりが喜んでいることに、赤ゆっくり達も意味は分からないが嬉しいようだ。 きゃっきゃとはしゃいで俺に寄ってきた。 夕方、玄関のところでフラフラしている親まりさに会った。 なんでも、出産の後、体力回復のために親れいむに全ての備蓄を食べさせてあげたとかでエサがないという。 今からエサを取りにいっては、生後、茎しか食べていない赤ゆっくりには酷であろう。 俺は出産祝いということで、お菓子を親まりさに譲ってあげた。 その日の夜。 なにやら騒がしいので外に出ると、縁の下をゆっくりレミリアが襲撃していた。 「ゆ!おにいさん助けて!まりさが死んじゃうよ!!」 跳ね寄ってきたのは親れいむと赤ゆっくり10匹。 どうやら親まりさが囮になって、俺に助けを求めにきたようだ。 急いで縁の下を覗くと、半分くらいになった親まりさが俺を見つめていた。 胴体つきのゆっくりレミリアは縁の下に入りにくいようで、中々食べられないでいる。 「こら、人の家で何をしているんだ」 ゆっくりレミリアの足を掴み、思い切り地面に叩き付けた。 「うあ!!ぶびっ!!!」 顔面から突撃したゆっくりレミリアが妙な声を上げ、気絶した。 ゆっくり霊夢達にとっては凶悪な捕食者であっても、人間から見ればゆっくり霊夢と対して変わらない。 「ま゛りざあああ!!!」 ゆっくりレミリアが気絶しているのを確認すると、親れいむが物凄い勢いで縁の下に飛び込んだ。 しかしそこにいたのは半分に千切れた親まりさ。 「まりざああ!!!ゆっくりしようよ!!!!赤ちゃんとずっとゆっくりするんだよ!!!」 親れいむが引きずり出してきた親まりさを見ると、息も絶え絶えでいつ死んでもおかしくない様子だった。 「れいむ・・・まりさはもうだめだよ・・・ぶぴっ!」 ごぽりと餡子を吐き出す親まりさ。 その姿にぷるぷると震える赤ゆっくり。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛!!!ゆ゛っぐりして、ま゛りさ!!!まりさが死んじゃゆっくりできないよ!!!」 「ゆっ・・・れいむには赤ちゃんがいっぱいいるよ・・・ゆっくりできるよ・・」 「やだよ!!まりさがいないとゆっくりできない!!まりざああああ!!!」 必死で頬をすり合わせるが、反応を示さない親まりさ。 もう死が間近に迫っているのだろう。 「れいむと一緒でまりさはゆっくりできたよ・・・ありがとうれいむ・・・」 「ゆっ!!!??やだよ!!もっとゆっくりしたいよ!!!!」 親れいむが傷口を舐めても、もはや餡子は止まらない。 「あかちゃんと、まりさのぶんも・・ゆっくりしていってねぇ・・・」 そういうとまぶたをゆっくりと閉じ、もう親まりさは目を覚ますことはなかった。 「ゆうううううう!!!!!」 生まれたばかりの赤ゆっくり達も、親れいむの様子から何かを察したのだろう。 ぽろぽろと涙を流している。 空気が重かった。 俺はゆっくりレミリアを縄で厳重に縛ると部屋に戻った。 次の日、玄関で待っていたのは目を真っ赤にした親れいむであった。 「おにいさん、まりさがいなくなったけど、れいむは頑張るよ。きのうは助けてくれてありがとう」 いつものような元気が無かったが、赤ちゃんのために頑張らなければならない。 そんな気迫を感じた。 それにあの赤ゆっくりは親まりさが遺した唯一のものだ。 なんとしても育てなければならないのだろう。 「またレミリアが襲ってきたら、すぐに助けを求めてきていいんだからな」 「ゆっくり理解したよ。れいむは今からご飯を取りにいくから、もし何かあったら助けてね」 熱い日差しの中、燃えるような地面を親れいむは跳ねていった。 ゆっくりの巣の前にくると、縄とゆっくりレミリアの服が落ちていた。 特に気にもせずに、赤ゆっくりを呼ぶ。 「ゆっくち!?」 「おにさんはゆっくちできる!?」 ぞろぞろと縁の下から湧いて出てくる赤ゆっくり。 昨日、ゆっくりレミリアを撃退したのを見ていたからだろう、まるで警戒などしていない。 親が食われたというのに、昨日よりぷっくりとしている。 縁の下を見ると、アイスの棒が突き刺さったお墓が見えた。 親れいむが作ったお墓だろう。小さなたんぽぽが供えられ、綺麗なつくりをしている。 「おにいさん!まりさおなかすいたよ!!」 「まりさ!そんなこといっちゃだめだよ!!」 まだ赤ちゃんだというのに、妙に行儀が良い。 親の教育が良いからだろうか。 きっともう、この家の主が俺だと教えたのだろう。 「れいむは頭がいいね、ご褒美にお兄さんがおいしいものをあげるね!」 俺は用意していたホールのショートケーキを赤れいむ達の前に置いた。 「ゆ!?いいにおいだよ!!」 「ゆっくちできそう!!」 「おにいさん、ほんとうにたべてもいいの!?」 すぐに飛びつくかと思ったら、全然飛びつかない。 何度も俺に食べていいか確認してくる。 「いんだよ。これはまりさやれいむ達のために用意したんだよ」 もしかしたら、親れいむに人間からエサを貰うことを禁止されているのかもしれない。 里の人間の中には、ゆっくり虐待が趣味の人間が多数存在する。 彼らは大抵、おいしいお菓子や、ゆっくりプレイスの提供でゆっくりを連れて行き虐待する。 あの賢い親れいむはそれを知っていて、人間は恐ろしいものだと教えたのかもしれない。 「お母さんれいむには内緒にしておいてあげるよ!だからみんなも秘密にしようね!!」 内緒ならいいだろう。 赤ちゃんゆっくりはお菓子が大好きなのは知っている。 俺はいじめたりなんかしないし、親れいむの教育はしっかりしているから大丈夫なはずだ。 ただ、親れいむが怒るかもしれないので釘は刺しておく。 「みんな、絶対にお母さんれいむには内緒だよ!それと、他の人間から食べ物を貰っちゃダメだよ! それが分かったら、ゆっくり食べてね!!」 そう言ってもしばらくそわそわとしていたが、赤まりさがかぶりついたのをきっかけに、一斉にケーキを食べ始めた。 「ゆっくち!!!おいちい!!!」 「うっめ!!めっちゃうめ!!!」 「ハムッ!!ハフハフ!!ハフッ!!」 「ゆっくちぃー!!!」 「ゆっ♪ゆっ♪ゆっ♪」 赤ゆっくりの食欲は恐ろしいもので、あっというまに巨大なケーキを食べつくしてしまった。 俺は近所でお菓子を買ってきて、お腹がいっぱいになるまで食べさせてあげた。 「みんな、約束は覚えてるかい?」 満腹でゆっくりしていた赤ゆっくりに質問する 「ゆっ!おかあさんにはないしょだよ!!」 「ぜったいにいわないよ!!」 「だからおにいさん、もっとゆっくりしようね!!!」 「いわないよー!!!」 さすが、あの親れいむと親まりさの子供だ。 ちゃんと覚えていた。 俺はその答えに満足すると、部屋へと戻った。 もう日も暮れ始めている。 そろそろ親れいむも戻ってくるはずだろう。 親れいむはエサを確保し、帰路についていた。 昨晩はゆっくりレミリアに最愛のパートナーを食べられてしまい、気分はどん底であった。 しかし、自分には最愛の赤ちゃん達が残っていた。 それだけが親れいむの希望だった。 その赤ちゃん達のためなら、どんな気分でもエサを取りにいける。 口には大量のご馳走が入っている。 これを見た赤ちゃん達の喜ぶ声が楽しみだ。 歌いだしたいのをこらえ、里の真ん中を通って帰る。 家を出るときに、あの優しい人間がリボンにバッヂをつけてくれた。 飼いゆっくりにつけられるバッヂで、これがあれば人間はイジワルをしてこない。 安心してエサを取ってきなさい、人間は優しく撫でてくれた。 外敵の心配のない人の作った道を堂々と通れることは、親れいむにとって幸せなことだった。 片親であの大所帯を養えるか不安であったが、しばらくは何とかなりそうだ。 「ゆっくり帰ったよ!!ゆっくりしてた!?」 「ゆ!おかあさんだ!!」 「ゆっくちおかえりなさい!!」 縁の下に入ると、帰りを待ちわびていた赤ゆっくり達が寄ってきた。 嬉しくて涙が出そうになるのを必死でこらえる。 子育ては初めてだが、あの賢いパートナーとの子なのだ。 自分の知識を全て教え、賢くゆっくりできる子にしてみせる。 昨晩は、「人間は危険だから絶対に油断してはならない」ということだけを教えてあげた。 ゆっくりレミリアを一撃でしとめたあの人間を見て、人間の強さはすぐに理解してくれた。 「みんな!おいしいご飯だよ!ゆっくり食べようね!!!」 「ゆっ!ごはん♪ごはん♪」 「ゆっくちたべたい!」 寄ってきた赤ゆっくりの前に、口の中からエサを吐き出した。 ムカデ、ダンゴムシ、たんぽぽの葉にモンシロチョウ。 ご馳走の山だ。 「ゆっ・・・!?」 「ゆ!なにこれ!?」 「ゆっくち!?」 そのご馳走を見た赤ゆっくり達が、困った顔をしてこちらを見ている。 ゆっくり種が日ごろ食べるものを食べるのは、今日が始めてなのだ。 これまでの食事は、茎と、親まりさが持ってきたお菓子だ。 親まりさは特に何も言わなかったが、あれはきっとあの優しい人間が分けてくれたのだろう。 それに昨晩は、おいしい肉まんもあった。 「これがれいむ達のいつものご飯だよ!おいしく食べていってね!!」 食べそうにない赤ゆっくり達に食事を促す。 そして、一匹の赤まりさがダンゴムシに口をつけた。が、 「ゆ!おいちくない!こんなの食べられないよ!!」 ぺっ、とダンゴムシを吐き出す赤まりさ。 他の赤ゆっくりも違うものに手を出すが、結果は同じであった。 「まじゅい!!ゆっくちできない!!」 「こんなのいらないよ!!!」 「ぜんぜんごちそうじゃないよ!!」 次々にご馳走を吐き出す赤ゆっくり達。 「そんなことないよ!!!おいしいよ!!ゆっくり食べてね!!」 お手本を見せようと、ムカデを食べてみせる。 「ゆ!そんなきもちわるいのいらない!」 「おかあさんだけたべていってね!!」 ぷいっと奥に行ってしまう赤ゆっくり。 「ゆ!ちょっと待ってね!!ご飯を食べないとゆっくりできないよ!!」 そんな声も無視され、ぽつんと1匹、親れいむは取り残された。 孤独感が襲ってくる。 「ゆっ・・・。せっかくご馳走を用意したのに・・・」 ダンゴムシはこんなにおいしいのに。ムカデはあまり手に入らない御馳走なのに。 たんぽぽの葉は自己流の調理をした自信作なのに。 目の前に刺さったアイスの棒を前に、ひっそりと親れいむは涙をこぼした。 次の日、俺が縁の下を覗くと赤ゆっくり達が跳ねて来た。 「ゆ!おにいさん!まってたよ!!」 「おにいさんれいむおなかすいたよ!!」 「きのうのをまたたべたいよ!!」 親れいむはエサでも取りに行っているのだろう。出てくる気配はなかった。 「みんな、お母さんれいむには内緒にしてくれたかな?」 「ゆ!ちゃんとれいむないしょにしたよ!!」 「まりさちゃんとだまってたよ!ゆっくちできるよ!」 ちゃんと約束を守っている。やはり親に似ているんだな。 「よーし、お兄さんは今日はもっとおいしいものを用意してあげるよ!」 ゆー!と歓声が上がった。 俺は用意していた完熟マンゴーを取りに部屋へと戻った。 夕方、傷だらけの親れいむはエサ取りを終え、家に向かっていた。 昨日はいきなり虫や草を用意してしまったからビックリしたのだろう。 今日はちゃんと食べられるよう、危険を冒しながらも木苺を取りにいった。 なんとか木苺を取ったものの、帰る途中に野良犬に襲われあと一歩で食べられてしまうところだった。 生き残れたのは子供を守らなければという強い母性があったからだ。 遠出をしても大丈夫なよう、おうちには昨日のムカデやダンゴムシを置いてきた。 空腹に我慢できなくなったら食べてくれるはずだ。 口内の木苺を飲み込まないよう注意して跳ねながら、喜ぶ赤ちゃんの顔を思い浮かべた。 「すっぱい!こんなのいらないよ!」 そう言ったのは赤れいむであった。 それを皮切りに、他の赤ゆっくりも続ける。 「こんなの食べられない!もっと甘いのを用意してね!!」 「おかあさんもっとゆっくちさせてね!!」 次々に木苺を吐き出す。 あまりのショックに、傷だらけの体が痛んだ。 「どうじでぞんなごと言うのおお!!おがあざんががんばっでどっでぎだんだよ!!!」 自分のしつけが悪いのだろうか。 地面に吐き出された木苺を見ていると、胸が締め付けられる想いだ。 「いっしょうけんめいとってきてもおいちくないよ!!」 「そうだよ!ゆっくちできない!」 心まで傷つけられる親れいむ。 自分は何のために頑張って木苺を取ってきたのだろう。 ふと、昨日のご飯を置いた場所を見ると、何もなくなっていた。 「ゆ!みんな、昨日のご飯を食べたんだね!だからお腹いっぱいなんだよね!!」 そうであって欲しい。 切なる願いだった。 しかし、そんなことを知らない赤ゆっくりはこともなげに答える。 「ゆ?あんなきもちわるいのすてちゃったよ!!」 「あんなのがここにあるとゆっくちできないよ!!」 「おかあさんはゆっくちできない!!!」 あれほど必死になって集めた御馳走が捨てられた。 無意識に涙がこぼれた。 パートナーをなくしてから、いったい自分はどれだけ涙を流せばいいのだろう。 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛・・・・」 それに、あの優しい人間との約束だ。大きな声で泣くこともできない。 そんな親れいむの姿を疎ましく思ったのか、赤ゆっくり達は奥へと姿を消した。 また1匹になった親れいむは、丁寧に木苺を集めて昨日と同じ場所に置いておいた。 もし自分がいないときにお腹を空かせては、ゆっくりした親まりさに申し訳が立たない。 アイスの棒の前で今日も一人、親れいむは眠りについた。 それから1週間、赤ゆっくり達は親れいむのエサに一切手をつけることはなかった。 それなのに日々、どんどんと成長し、今ではソフトボールほどになり子ゆっくりといえるほどになった。 なぜお腹が空かないのかと尋ねたが、 「ゆっくちできないおかあさんにはおしえない!」 と一蹴された。 しかし、どんな形であれ子供が大きくなることは嬉しいこと。 親まりさもきっと喜んでくれるはずだ。 毎日、きっと今日こそはご飯を食べてくれる、と信じてエサを取り、全て捨てられた。 最近では見ただけで口もつけてくれなくなったが、それでも親れいむは懸命にエサを運び続けた。 今日のエサはハチミツとハチノコだ。 全身を毒針で刺されながら確保した。 甘いハチミツならきっと口をつけてくれる。そう信じたから頑張ることができた。 しかし、夕方に散々、メイプルシロップたっぷりのホットケーキを食べた子ゆっくり達はハチミツだけで我慢ができるワケがなかった。 ハチノコを地面に吐き捨てながら、言う。 「ハチミツしかおいしくないよ!!!」 「もっとハチミツをとってきてね!」 ぴくぴくと動くハチノコを見ながら、親れいむはまた胸が締め付けられる。 ハチノコにハチミツをかけたものは、親まりさの大好物だった。 いままでに2回しか食べたことがない。 飼いゆっくりであった親れいむと、同じく飼いゆっくりであった親まりさが出会ったのは、蜂の巣を狩ろうと木の下で作戦を練っていたときだ。 2匹で協力して蜂に刺されまくりながらもなんとか確保したとき、親愛の情が芽生えた。 子供を作ろうと誓い合ったあの日も、蜂の巣を狩り、2匹で祝いあった。 いわば、これは親ゆっくりの絆の食べ物なのだ。 それなのに、子ゆっくりは食べてくれない。 「ゆ!おかあさんのもってくるものは、ぜんぜんゆっくりできない!」 「しんじゃったおかあさんのほうが、おいしいものもってきてくれた!」 出産後、初めてエサとして食べたものは親まりさが持ってきた、人間から貰ったであろうお菓子。 子ゆっくりの中では親まりさは狩りの達人という位置づけになっていた。 「おかあさんがたべられればよかったのに!!!」 「ゆっくちできないおかあさんより、しんじゃったおかあさんのほうが、まりさたちはゆっくりできたよ!!」 ぼろぼろとこぼれる涙。 どうして自分はここまで嫌われてしまったのだろう。 一生懸命エサを運んだのに。 ただ、子供達を喜ばせたかっただけなのに。 「まりさ・・・」 もういないパートナーを呼ぶ。 しかしそれに答える声はない。 また始まったよ、とばかりに子ゆっくり達は離れていった。 それからさらに1週間が過ぎた。 さすがにゆっくりも大きくなり、うるさくなってきたので親れいむを呼んだ。 「なあ、れいむ。もうそろそろ森の巣に移動してくれないか?子供達も大きくなったろう」 しばらく見ない内に、妙に親れいむはやつれていた。 「ゆ・・・、分かったよ。すぐに移動するね」 そういうと、縁の下に跳ねていった。 「みんな、ここからお引越しをするよ!」 縁の下から親れいむの気丈な声が聞こえる。 そして子ゆっくり達のブーイングも聞こえた。 「やだよ!」 「ここはれいむたちのゆっくりプレイスだよ!おにいさんはやさしいからここにおいてくれるんだよ!」 「おにいさんとはなれたくないよ!!」 もはや、親れいむよりも人間に懐いてしまっている。 「引越し先はここよりもゆっくりできるよ!」 「うそだよ!おかあさんはいままでいっかいもゆっくりさせてくれなかったよ!」 「しんじないよ!」 「ここがゆっくりできるよ!!」 随分しつけがなっていないようだ。 俺と遊んでいるときはちゃんとしているのに。 なめられっぱなしだ。 「みんなお母さんの言うことはちゃんと聞こうね!森の巣は死んじゃった魔理沙が作った巣だよ!ゆっくりできるよ!」 俺は助け舟を出した。 少し、親れいむが可哀想すぎる。 しつけはできているのに、なぜなめられているのだろう。立派な親ゆっくりだというのに。 「ゆ!?しんじゃったおかあさんがつくったの!?」 「それならゆっくりできるね!」 「ゆっくりできそうだね!」 子ゆっくりの中では、親まりさは狩りの達人だ。 そんな達人が作った巣ならここよりもゆっくりできるのではないか、単純な考えであった。 それに前に子ゆっくりは聞いたことがある。 この場所は親れいむが最初に見つけたのだと。 子ゆっくりは思う。 無能な親が見つけた巣と、有能な親が作った巣。どちらがゆっくりできるかといえば後者だろう。 「みんな、早く引越しの準備をしてね!」 苦い顔をする親れいむを尻目に、そそくさと引越しの準備を始める子ゆっくり達。 もともと持っていくものなどたかが知れている。10分もしないうちに引越しの準備は終わった。 「じゃあみんな、お兄さんにさよならの挨拶をしてね!」 「ゆ!おにいさんいままでありがとう!!」 「またゆっくりしにきてもいい?」 「おにいさんだいすきだよ!」 「おにいさんはゆっくりできるひとだったよ!」 決して自分には向けられない笑顔を見て、親れいむの胸が苦しくなる。 しかし、この人間は優しい。 それを一番知っているのはきっと自分だろうと親れいむは思う。 「お兄さん、いままでありがとう。これからは森でゆっくりするね」 「おう、また何かあったらいつでも来てくれてかまわないからな」 そして、親れいむと子ゆっくり達は森の中へと消えていった。 森を進むのは困難を極めた。 ゆっくりと平和に育った子ゆっくり達は足場の悪い森の道に、不満を爆発させた。 それを必死でなだめ、ゆっくりできるから、と道なき道を進んだ。 移動途中、どんなにエサを持っていっても決して食べてはくれなかった。 長い道のりだから体力が必要だというのに。 子ゆっくり達は思っていた。 親まりさの巣には、いままで以上の御馳走が用意されていると。 だから、こんな親れいむが取ってくるような虫などとても食えたものではない、と。 親まりさが作った巣についたのはそれから2日も経ってからであった。 苔がこびりついた洞窟を見た瞬間、子ゆっくり達はかつてないほどの不満を爆発させた。 「ゆ!なにこのきたないところは!?ゆっくりできないよ!!」 「ぜんぜんゆっくりプレイスじゃないよ!!!」 「おかあさんのうそつき!!!」 最愛のパートナーが作った愛の巣。 ボロボロになりながらも、ようやく他のゆっくりが住んでいない洞窟を見つけ、2匹で頑張って綺麗にした。 やわらかい苔を泥だらけにながら集め、子供達のベッドを作った。 当然、人間の家と比べれば汚いし、みすぼらしい。 しかし、言葉では言い表せないほどの思い出がつまった巣だ。 それをゴミのように罵倒する子ゆっくり達に、親れいむは我慢がならない。 「ゆ!なにこのきたないの!!すてちゃえ!!!」 先に洞窟に入った子れいむが、小さい木のカケラを投げ捨てた。 「ゆっ・・・!」 それは親れいむと親まりさが生涯を誓い合ったとき、記念に作った木の人形であった。 不恰好だが、2匹にとっては愛の証拠であったのだ。 それがメチャメチャに破壊され、子れいむに捨てられた。 「ゆゆっ!なにこれ!こんなのいらないからおいしいごはんをよういしてね!」 「きたないごみだね!はやくすてようね!」 その瞬間、親れいむの母性は、怒りに押しつぶされた。 どうして、なぜ、自分はここまでゆっくりできなくなったのか。 全てこいつらのせいではないのか。 まりさがいてくれれば幸せだったのだ。 今にして思えば、こいつらが騒いだからゆっくりレミリアが声をききつけて襲ってきたのかもしれない。 許せない。 もう許す必要なんてない。 こんなゆっくりできない子は自分の子供ではない。 「ゆ?なにをしてるの?はやくごはんをよういしてね!」 「ごはんがあるなら、きたないとこでもがまんしてあげるよ!」 怒りを爆発させ、信じられないほどの跳躍をみせる親れいむ。 落下すると、ぶちゅりと餡子をはじける子まりさがいた。 「お゛ね゛え゛ぢゃん゛があああああ!!!」 「ゆ・・・!?なにをするの!?ゆっくりあやまってね!」 「ゆ゛っくり死ね!もうれいむの子供じゃないよ゛!!!死ね゛え゛え゛え゛!!」 かつて、誕生を喜んだ子供達に襲い掛かる親れいむ。 その目に浮かんだ涙は、誰のためのものなのか。 最愛のパートナーとの繋がりは、親れいむにとって許せないものへと成長してしまった。 許せないのは子供達なのか、満足に育てることができなかった自分なのか。 そんな問いを全て押しつぶし、子供を次々と押しつぶす。 つらい思い出を全て押しつぶしたい、親れいむは止まらない。 「ゆ!おねえちゃん!にげるよ!!」 「わかったよ!みんなまりさについてきてね!!!」 必死で逃げ始める子ゆっくり達。 この森で満足に虫も食べられないゆっくりがどう生きていくのか。 ふふふ、とゆっくりらしからぬ笑い声を上げる親れいむ。 もう追いかける気もしない。 死んでしまえ。 自分達の愚かさを呪いながらゆっくりと死ね。 静寂な森に、いつまでも親れいむの笑い声が響いた。 逃げ切った子ゆっくりは5匹であった。 子れいむ2匹と子まりさ3匹。10匹姉妹は半分になってしまったが、希望はまだ捨てていない。 「あんなバカなおやは、ゆっくりしねばいいのにね!」 「そうだよ!ゆっくりしね!」 見えなくなった親れいむへの怒りをあらわにする子ゆっくり達。 「はやくおにいさんのところにもどってゆっくりしようね!」 「そうだね!だいすきなおにいさんにはやくあいたいね!」 「おなかすいたよ!はやくあいにいこうね!」 子ゆっくりだけで抜け出せるほど、自然の森は易しくない。 同じところをぐるぐると回っていることに気がつくものは、1匹もいなかった。 雨が降っていた。 どんどん、と何かを叩く音が聞こえ、俺は扉を開けた。 そこにいたのは1匹のゆっくり霊夢であった。 「ん?お前、こないだのれいむか?」 ゆっくり一家が出て行ってから、1ヶ月が過ぎていた。 目の前にいるのはあの時の親れいむだろうか。酷くやつれて、皮は傷だらけだ。 雨に濡れたせいか、全体的にぶよぶよとしている。 「大丈夫か?いまご飯を食べさせてあげるから、ゆっくりあげれ!」 何も返事をしないゆっくり霊夢を部屋にあげ、あまいお菓子を用意した。 「どうしたんだ?子供たちは?」 ふるふると体を左右に揺らす。それ以上は答えない。 きっと外敵にでも襲われて逃げてきたのだろう、俺はそう結論付けた。 そっと頭を撫でてやると、ぶわっと涙を出した。 「つらかったな。ゆっくりしていっていいんだよ」 「ゆ゛う゛う゛う゛!!!れいむ、もういやだよお゛お゛お゛!!!ま゛りざあ゛あ゛あ゛!!!!」 泣き出したゆっくり霊夢を抱きしめ、傷口に水で溶かした小麦粉を塗る。 餡子もあまり漏れていないし、しばらくすれば元気になるはずだ。 「れいむ、お前さえよければここでずっとゆっくりしていっていんだよ。まりさもここに眠ってる」 子供達を失った悲しさを少しでも和らげてあげたい。俺は純粋にそう思った。 「ゆっ・・・ゆっ・・・」 顔を俺に向ける。 その顔は涙が溢れているものの、明るい笑顔だ。 「お前の笑顔、なんだか久しぶりだなあ」 そういえば、出産の時以来久しく見なかった。 なぜだろう。 あんなに可愛い赤ちゃんゆっくりがいたのに。 まあ、きっと晩御飯のときや寝るときは親子仲良くゆっくりしていたのだろうから、偶然だろうな。 「ゆっくりしていくね!!」 雨が屋根を叩く中、ゆっくり霊夢の声が部屋に響いた。 作:アルコールランプ このSSに感想を付ける
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僕はゆっくりを二匹飼っている。ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙だ。 意味もなくいじめたり、愛でたりしている。 そんな僕に二匹はとても懐いていて、殴る蹴るなどの暴行を加えても、バカみたいな薄ら笑いをやめないで 「ゆっくりしていってね!」 などと言う。 二匹は数ある家具の中でも姿見にもっとも興味を示していた。 最初など、おきまりの文句を言って、頭突きをかまして泣いたくらいだ。 「かがみ?」 「かがみってなぁに?」 そういう二匹の後ろに屈んで、鏡のほうを向けさせる。 「あっ、おにーさん!」 「ちがうよれーむ。おにーさんのそっくりさんだよ!」 「そっか」 「そっくりさんもゆっくりしていってね!」 微笑ましくそう言う二匹の頭をぐりぐりとなでる。 「鏡っていうのは、自分の姿を反対に映すんだ」 「はんたいー?」 「うつす?」 「そう。だから、こっちのリボンをつけた醜い下膨れがれーむ」 「ゆっ!?」 「んで、こっちの帽子をかぶったつぶれあんぱんがまりさ」 「ゆ゛!」 二匹は異を唱えるように暴れた。 「れーむ、しもぶくれじゃないもん!」 「まりさだってあんぱんじゃなくてまんじゅーだもん!!」 え、そっち? 「で、右と左が逆になるの。やってみ」 「ゆ~~?」 「ゆゆっ!ぎゃくだ!はんたいだ!!」 僕の言葉に右頬を伸ばすと、鏡の中の二匹は左頬を伸ばす。 実際は左右だけが逆になってるわけではないらしいが、説明しても時間の無駄だから、一番わかりやすく言ってやった。 「ゆっゆっ!おもしろーい!かがみおもしろいおもしろい!!」 「ふしぎ!」 ぴょんぴょん跳ねて鏡がすっかりお気に入りになった二匹。 しばらくは毎日鏡の前でなにかしらの遊びをしていた。 そんなことを思い浮かべながら、二匹のほうに目をやる。 二匹は煮込まれている真っ最中だった。 囲炉裏にかけられた鍋の中で、ぐつぐつと音を立てる熱湯と一緒にあっぷあっぷともがいている。 「あづいよぉおぉおぉ!」 「ゆっぐりでぎないのぉおお!」 無言でそれをかき回す。 「うぶぶぶぶぶぶ」 「ゆぅううぅぅぅう」 二匹の顔はうつろになっていき、皮はぶよぶよだ。それを見てにんまりと笑う。 ほどなくして二匹は意識を失った。この程度では死なないと経験でわかっているから、あわてずに二匹を引き上げる。 熱くなっているそれを、氷水にひたして冷ましつつ、ゆっくり霊夢の顔を左右に引っ張る。 なんとなく、ゆで卵の殻をむくときに近いものを感じる。 音を立てずに背中側の皮がぴりりと裂けた。髪の毛で見えにくいが、餡子までは露出していない。 成功だ。 そのまま手を刺しこんでいき、ゆっくりと皮をはがしていく。 気絶していても痛みを感じるのか、ときおりびくりと痙攣し、激しくあぶくが浮かんでくる。 そんな反応を無視して、撫でるようにはがれた部分を広げていく。 苦労するのは目の部分をはがす時だ。下手をすると千切れてしまう。この部分が上手くいかずに今まで何匹無駄にしたことか。 しかし今回は上手くいった。思わずほくそ笑む。 じんわりと熱を持った中身を、炉辺に敷いてある「お化け笹」の大きな葉に乗せておく。朝には乾いているだろう。 同じ手順でゆっくり魔理沙の皮もはがした。 翌朝。 「ゆっぐぅぅううぅぅ……っ!?」 「ゆああああああっ!!!」 無様な泣き声で目を覚ました。声のほうに目をやるとそこには白い物体がふたつ。 饅頭の薄皮をはがしたことがあるだろうか? あのもそもそとした表面をさらしたゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙だ。 ものすごく身悶えしている。 無理もない。人間でいえば、皮膚を綺麗にはがされて、筋肉をむき出しにしている状態なのだ。痛いに決まっている。 「おにぃぃぃいいざぁあぁぁん!!いだいよぅいだいよぅ!!」 「だずげでぇ!おがぢい!ゆっぐりでぎない!」 「よーしよーし、だいじょーぶだ。すぐに良くなる。だから動かないでゆっくりしてろ。動くから痛いんだ」 嗚咽をあげながらがんばってゆっくりしはじめる二匹。 しゃくりあげながらも多少は落ち着いたのか、目の前にあるものに興味を示した。 長い板状のものに、暗幕をかけたものがおいてあった。 「おっ、にぃざん。これゎなにぃい?」 「ゆっゆっぐり」 「ああ、これか。鏡だよ」 「か、かがみ!」 「かがみッかがみ!!」 とたんに喜色ばむ二匹。 「見たい?」 「みたいみたい!」 「ゆっくりみしてね!」 「よし!」 思い切りよく暗幕を取り払った。 とたんに悲鳴が響き渡る。 「ゆ゛う゛ぅう゛っゆゆ゛ぅ゛う゛ううっ!?」 「なにごれぇどおいうごどおおおお!?」 二匹の目に映るのは、無残に皮をはがされた自身の姿。おもいきり涙を流しながら絶叫する。 「うあ゛っうあ゛っうお゛うっうお゛うっうぽうっ」 「う゛ひゅーいひゅーう゛びゅーいひゅー」 体中に走る痛みと目の前の現実。二匹はお互いの体を見合わせ、絶望に身を震わせ、再び鏡を見る。 そこには先ほどとなんら変わらぬ二匹の姿が。 「かっかわがーーーー!かわがーーーーーっ!!」 「おにーーーざーーーーんっ!!かわがなぐなっでるよぉーーーぅ!!」 「ほんとだ、どこに行っちゃったんだろうねぇ?不思議!」 「うあ゛ーーーどこ~~!れーむのだいじなかわ゛ーー!」 「がえじでーーーまりざのがわをがえじでよ゛ぉーーーっ」 「病気かなんかじゃないか?皮が溶けたとか」 「っちがうよ゛ぅちがうよ゛ぅ!れーむびょーきなんがじゃな゛いやぃっ」 「ままままりざだっでちがんもんっ!けんこーゆーりょーぢ、だ、もんっ!!」 「だれかがとっでい゛ったん゛だよぉ~!」 「だでかのばがぁあぁあぁあっっ!」 二匹はぐりんぐりんと体をゆする。 そこで鏡をどける。 「ゆ゛っ!」 「ゆ゛ぅ!」 二匹の目の前には、しっかりと皮のついたゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙がいた。 「「ゆ゛っぐり゛ぢでい゛っでね!」」 本能にでも刻まれているのか、条件反射のように絶叫する。しかし皮のついたほうはなにも言わない。 「ゆぅううー?ゆっぐりぢでいでっでね!」 「ゆっぎりじよーね!」 無反応だ。痛みと衝撃で涙をだくだくと流しながら首をかしげる二匹。 「おにーーざん!へん゛だよ、ごの、この゛ふだりぃ!」 「あいあいあい゛さづじでぐでなぃいぃい」 こちらを見てさけぶ二匹。たしかに正面のゆっくりたちは何の反応もしていない。 その目はまるで穴が開いてるかのように光がない。顔も無表情だ。 「ひょっとしたら、おまえらのこと餌だと思ってるのかもな。ほら、今のおまえらこんなだし」 そのまま鏡を引き倒して、二匹を映してやる。 皮のない自分の姿をまた見せられた二匹は、これ以上ないほど口を広げて震えていた。 「ぶん゛ま゛ぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!」 「ゆ゛に゛ばあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」 「な?どうみても仲間になんて見えないって。お前らだって、こんなのがあったら食うだろ?」 鏡をよそにやって、また皮のあるゆっくりたちを見せる。 「いやっいやっいやっ、れ゛ーむをだべないでぇえええっ!」 「まりざはおいじぐないよぅ!おいじぐないよぅ!!」 皮のある二匹を手で押していく。悲鳴はまた大きくなった。 もはや「ぴぎゃああ」としか聞こえない。 パンッ と破裂音がすると、叫んでいた二匹は思わず黙ってしまった。 そこには無残にもつぶれた皮のある二匹の姿がある。 ものすごく震えながら、それを見る皮のない二匹のゆっくり。 「うん。じつはこれおまえらの皮なんだ」 手でもちあげて広げてみせる。後頭部の裂け目からは割れた風船がはみ出していた。 「ほれ、びよ~~ん」 「ああああれーむのがわーーーっ!!」 「なんでー!まりざのがわがあああああ!!」 さて、本番はこれからだ。 「返して欲しい?」 「がえじでーーれーむのがわがえじでー」 「まりざのがわだよーはやぐがえぢでねッ!」 「いいよ」 「うわぁい」 「おにーざんだいづぎー」 にっこりと笑ってそういってやると、喜びをあらわにする二匹。 「んじゃまずまりさから」 「ゆ゛っ!」 「んまぁあぁあぁあっ!どぢでまりざがら!?れーむをざぎにじでよー!」 「いや、意味はない」 「れーむはそごでゆっぐりみででね!」 「痛いかもしれないけど、我慢しろよー」 「ゆっ!ゆっぐりなおじでね!」 「ゆっぐぐぐぐぅ」 嗚咽をあげるゆっくり霊夢を尻目に、にかわを引き寄せ「ゆっくり霊夢」の皮の内側に塗りたくる。 「ゆっ?そではれーむのがわだよ!まりざのは、あっぢ!あっぢのがまりざのっ!」 「れーむをざぎにぢでぐれるのー?」 そのままゆっくり魔理沙の表面にもにかわをぬりたくる。 「ゆっゆっゆっゆっ!?」 「はやくっ!はやく、れーむにかえして!」 混乱しながらもくすぐったそうにするゆっくり魔理沙と、必死に訴えるゆっくり霊夢。 そのまま「ゆっくり霊夢」の皮をゆっくり魔理沙にかぶした。 「!」 「!?」 ぺたぺたとそのまま貼り付ける僕。 「うばああああああっ!ぞれはっ!ぞれはれーむの!れーむのがわーーーー」 「ゆぅ?ゆっ!?ゆゆゆゆゆっ!?まりざのっ!まりざのがわは!!!」 「れーむのがわなのにっ!れーむのなのにぃいい!まりざっ!まりざのばがーーーー!!」 「ゆっ!?れーむのかわ!?まりざのは!?まりざのかわはっ!?」 「まりさのはれーむに被せるんだよ、何言ってるんだ」 「ゆっびゅぅう~~~~ん!?」 「やだーーーーまりざのがわ、やだーーーーー!!!」 ゆっくり魔理沙に空気が入ってないことを確かめてから竹籠に安置する。 それはゆっくりの大きさぴったりに編んだ竹籠だ。蓋を閉めると、みつしりと過不足なく満たされている。 ゆっくり魔理沙が暴れても開かないように、蔓で硬く結ぶ。これで皮が癒着するまでは出られない。 「れーむのがわーー!れ~むのがわぁあぁ~~~!」 「まっまっまっまりざのかわはーーー~~~!?」 「だからまりさの皮はれーむにかぶせるんだって」 「う゛~あ゛う゛あ゛う~~あ゛う゛あう゛ぅ~???」 「やべでっやべでっ!ゆっぐりざぜでっ!れーむはれーむのかわでゆっぐりぢだいのぉっ!!」 「まーいーじゃん。まりさとは友達だろ」 「どもだちじゃないっ!ともだぢじゃないがら、れーむのかわでゆっぐりちでいっでね!」 「ッッ!?ひどいぃいぃぃぃいい!れーむひどぃよぅぅううう!おどもだぢ!はぢめでのおどもだちッ!!」 いやいやと体をねじりながら泣きじゃくる二匹。 見かねた僕はもそもそしたゆっくり霊夢の顔にでこぴんをする。 「ゆ゛っ!」 「駄目だよ、友達にそんなこと言っちゃ、めっ!」 「ゆ゛う゛ぅう゛う゛ぅう゛う゛!がわー!れーぶのかわがーー!」 同じ手順でゆっくり霊夢に「ゆっくり魔理沙」の皮をかぶせて竹籠に入れてやった。 二匹が竹籠から開放されたのは三日後の夜だった。 完全に癒着したようで、思い切り投げつけても微塵もずれなかった。 これではゆっくりの力では絶対にとれないだろう。 それから一週間ほど経った。 二匹はあいも変わらずゆっくりしている。 れーむ!と呼ぶとまりさが来て、まりさ!と呼ぶとれーむが来るというのは、とても面白かったがすでに飽きた。 しかし、また皮をひっぺがして着せ替えるのも面倒くさいので、そのままでいさせようと思う。 実際、さして問題があるわけでもなし。 ただ、今までと同じようにゆっくりしている二匹が、時折ぴりぴりとした空気を発している事がある。 きっと相手が着ている自分の皮を取り替えそうと思っているに違いない。 しかし皮をはがそうとすれば、相手を傷つけることになる。そしてそのときに傷が付くのはお互いに自分の皮なのだ。 だから実行できない。 ぴりぴりとした後で、すぐに無力感に打ちひしがれて悶える様は見てて楽しい。 ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙では力の差がなく、無傷で皮をはがすことなど夢のまた夢。 だから、この二匹は今まで以上に僕になついている。いや、媚を売っているのに近い。 意味のない行動だが、夢を見るのはこいつらの勝手だ。僕は絶対に直してやらない。 くつくつと笑う。 この入れ替えた二匹を同種の群れに入れたらどうなるだろう?こうもりの御伽噺のようになるかもしれない。 また、ゆっくりアリスやゆっくりパチュリーをけしかけたらどうなるだろう?とても楽しそうだ。 僕は座りながら上を向き、右手で顔の皮をはがすように持ち上げながらつぶやいた。 「フェイス……オフ……」 終わり。 発想の流れ。 永江衣玖 → サタデー・ナイト・フィーバー → ジョン・トラボルタ → フェイス/オフ 著:Hey!胡乱
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東方地霊殿の新キャラが登場します。 未プレイでネタバレがいやな人はゆっくりもどっていってね! ここは、広大なゆっくり平原。 あらゆるゆっくりが思い思いにゆっくりできる平原。 他にも虫や鳥、さらにリスなどの小さな哺乳類や蛇などの爬虫類も暮らしているとはいえ、ここ以上にゆっくりできる場所はこの世には無い。 今日はとあるゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙の話をしよう。 その二匹がいる場所は、池に並んでゆっくり名所とされている林だ。 かなりの年数を生きた木々が鬱蒼と茂っているので、適度に湿気ており、苔むした土は餌にもなる。 背の高い木が持つ多くの葉に選りすぐられて大地に降り注ぐ陽光はとても幻想的だ。 さらには死んだ木があれば、その洞に巣を作ることも出来る。 木の実もとれるので、餌に困ることは一年を通してほとんどない。 そんな場所で、二匹は今日も健やかに遊んでいた。 「あ、うさぎさんだ!」 「ほんとうだ!」 ゆっくり魔理沙の視線の先には一匹の兎がいた。 するとそれを追いかけだす二匹。 脱兎! 「う~さ~ぎ~おーいし」 「か~のーやーま~~~」 よくわからないことを言いながら追いかける。しかし兎は早い!ぐんぐん引き離されていく。 「まって!もっとゆっくりして!」 「ゆっくりしていこうよ!」 だが、兎はゆっくりしない。 そろそろつかれてきたから、ゆっくりしようかな。と二匹が思ったとたん、浮遊感が襲う。 落とし穴だ。 いや、意図して作られたものじゃない。ここに人間はいないのだ。 ただ単に穴ぼこがあるのを見つけられなかっただけ。 とはいえ、それは落ちた二匹にはなんの慰めにもならなかった。 うさぎをおいかけてあなにおちるなんて、アリスのやくめだよっ! と二匹が思ったかどうかは分からないが、二匹ともころころと穴を落ちていった。 「ぶぎゅっ!」「ぶげっ!」「いだいっ!」「いたいよ!やめてね!」「ゆっくりさせて!」「わかんないよー!!」 石や硬い土にぶつかりながらもころころと転がり落ちていく。 「めがまわるよー」「う、うげぇっ!」「ままままりさっ?」「えれえれえれえれっ」「きちゃないきちゃないきちゃない!」 阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されているようだが、暗いからよく見えない。 いったいどれほど転がり落ちただろうか、もはや二匹からは何の反応もない。 ただ物言わぬ塊となって穴を転がっている。その姿はまるで幼児の泥遊びでこしらえられる泥団子のようだ。 やがて、その転落劇も終わりに近づいてきたのか、明かりが差し込んできている。 だが、二匹は気を失っていて何の反応も無い。 そして── ゆっくり霊夢は体中をこすられている感触で目を覚ました。 夢から覚めるように目を開くと、しばし視界がぼやけていた。幾たびか瞬きをする。 「あら、目が覚めたの?」 「ゆぅ~~」 その金髪の少女は濡れた手ぬぐいでゆっくり霊夢の体を丁寧に拭いている。その美しさに思わず見惚れるゆっくり霊夢。 視線に気づいたのか、話しかける美少女。 「どうしたの?」 「ゆっ!ゆ~~、そうだっ!おねえさん、もうひとりみなかった?くろくてまぁるいれーむのおともだち!」 「黒くて丸い」で、少女は近くに住んでいる土蜘蛛の末裔を思い浮かべたが、ゆっくり霊夢の隣を指差す。 「まりさ!」 「まだ寝ているわ。起こさないように静かになさい」 隣にはゆっくり魔理沙がゆっくりと寝ていた。こちらもゆっくり霊夢と同様に綺麗にされている。じつにゆっくりと寝息をたてていた。 道中で中身を盛大に吐き出したので、若干頬がこけていたが、この程度ならば安静にしていればよくなる。 「おねいさんがたすけてくれたの?」 「ええ、貴方たちが突然穴から落ちてきたから驚いたわ」 「ゆ!ありがとう!まりさもたすけてくれてありがとう!」 「そう、随分と仲が良いのね。……嫉ましいわ」 彼女の緑色をした綺麗な瞳が昏く光った気がした。 「そうだ!れーむは、ゆっくりれいむ。れーむってよんでね!」 「れーむって言うの。私は水橋パルスィ」 その金髪の少女は「地殻の下の嫉妬心」とまで呼ばれる橋姫だった。 忌み嫌われた妖怪の一種で、地下に追いやられたと言うことはゆっくりたちは知る由もない。 ただ、自分たちを助けてくれた親切で綺麗なお姉さんとしか認識できなかった。 しばらく談笑するパルスィとゆっくり霊夢。 「それでねっ!きれいなちょうちょはすごいおいしいの!」 「そうなの。私は蝶々は食べないけど、知り合いの子が食べるだろうから教えておくわ」 「うん!それでねっ!れーむのおうちはすっごくゆっくりできてね!まりさとすんでるの!」 「……貴方たちは恋人なのかしら?」 「ゆ?こいびと?なに?」 「ああ、つがいなのか?ってことよ」 「ゆっゆゆゆゆっ!ゆっくりぃ~」 瞬時に顔を真っ赤に染め上げて体を揺するゆっくり霊夢。その反応だけで火を見るより明らかだ。 翡翠の瞳が妖しく煌く。 「ゆ。れいむ~?」 「ゆゆっ!まりさ!おきた?だいじょーぶ?」 「ここどこ?ゆっくりできる?」 「ゆっくりできるよ!」 ゆっくり魔理沙が目を覚ました。あたりを見回し、パルスィが目に入ると、やや警戒する。 「ゆ?おねえさんはだれ?ゆっくりできるおねえさん?」 「まりさ!おねえさんはれーむたちをたすけてくれたんだよ!ゆっくりできるひとだよ!」 「ゆゆゆ!おねいさんありがと!ゆっくりしていってね!」 朗らかに言うゆっくり魔理沙。だが、やはり消耗しているのか、いつもよりも精彩を欠いている。 「おねえさん!まりさになにかたべものをあげて!おねがい!」 「……いいけど、上に戻れなくてもいいの?」 「? そんなことよりもまりさをげんきにするのがさきだよ!ゆっくりしないで!」 「……もう一度聞くけど、食べ物を持ってきてもいいのね?」 「ゆっくりしないで、はやくもってきてよ!」 上に戻れないだなんて、何を言ってるのだろう?とにかく今はまりさを治さなければいけない。 ゆっくり霊夢はゆっくり魔理沙の、かさかさになっている肌を潤すようになめる。 やがてパルスィが戻ってくると、すぐさままりさに食べさせた。 噛むのがつらいと見るや、れいむが食べ物を噛み砕いて口移しで食べさせた。お互いの頬が赤いのはご愛嬌か。 パルスィはそんな一見心温まる様子を、痛ましげに見つめていた。 それから三日ほどゆっくりすると、ゆっくり魔理沙もすっかり元気になっていた。 その間、食料を持ってくるのはパルスィだった。 ゆっくり魔理沙は安静にしていなければならず、ゆっくり霊夢はその看病にかかりきり。 だが、パルスィは別にそんなことはどうという事でもないという風に食料を集めていた。 ゆっくり魔理沙のげっそりとこけていた頬も今ではみつしりとしており、ぷりぷりと中身が詰まっている様子がよくわかる。 「おねえさん!ありがとう!ゆっくりできたから、げんきになったよ!」 「たべものをくれてありがとうね!おねえさん!」 「別にお礼を言われることじゃないわ。それでどうするの?」 「ゆゆっ?」 「まりさたちはおうちにもどるよ!いままでありがとうね!」 「やっぱり知らなかったのね……」 困ったように目を閉じ、ため息をつくパルスィ。再び目を開いたとき、その緑には憐憫の色が混じっていた。 ゆっくりたちと目を合わせるように屈むと、噛んで含めるように言い聞かせた。 「いい?よく聞いて。この黄泉比良坂にある食べ物を食べた地上の生き物は、どう足掻いても二度と地上には戻れないの」 「うゆぅ?」 「なにいってるかわかんないよ!もっとゆっくりいってね!」 「ふぅ。つまり、おうちには帰れないってことよ」 「!」 「!?」 衝撃を受ける二匹。目を思い切り見開き、さらに徐々に口も大きく開いていく。 そのままわなわなと震えながら息を吸い込むと声と共に吐き出した。 「うそだっ!うそだよ!おうちでゆっくりできないなんて、どうしてひどいこというの?」 「ゆっくりできないよ!おねえさんはほんとはゆっくりできないひとだったの!?」 「私はきちんと言ったわ。戻れなくなるけどいいの?って」 「!」 「?」 二匹の文句を意に介さずに言うパルスィ。 ゆっくり霊夢はその時のやりとりを覚えていたのか、硬直した。 「どうしたの?れーむ。おなかいたいの?」 「れ、れーむのせい?れーむのせいなの?」 「?」 「まりさがしにそうだったがら、ごはんたべざぜだれーむのぜい!?ゆぅうぅうぅうぅぅぅ」 「なにいってるの?れーむ、ゆっくりして!ゆっくりしてよぉっぅ!!」 大粒の涙を撒き散らしながら泣き喚くゆっくり霊夢を、抑えつけようとするゆっくり魔理沙。 暴れるゆっくり霊夢に弾かれて、傷だらけになりつつもゆっくり霊夢を落ち着かせる。 「うぅうぅ、ごめんね!まりざぁ。ごべんねぇ!れーむが。れーむがぁあぁぁぁ」 「れーむのせいじゃないよ!ぐあいがわるくなったまりさがわるいんだよ!」 「うっ、ゆっ、ゆぅうぅえぇぇぇぇえぇぇぇぇぇっ!!」 「なかないで、れいむ。おうちにもどれなくても、ふたりでいればゆっくりできるよ!」 「うっうっうっ、おごってない?ひっぐえっぐ。ゆぅぇぇえぇぇ」 「おこらないよ!れーむはおともだちでしょ!」 「うぅうぅっ!ま、まりさぁ!まりさぁあぁぁあ!」 「れいむぅ!れいむぅ!」 二人で抱き合って泣いている。確かな友情がここにあった。 微笑みながらそれを見ているパルスィ。だがその笑みには剣呑なものが含まれていることに気づくのは誰もいない。 緑色の目はきらきらと輝いている。 「あらあら、仲が良いのね。ふふふ。ああ、嫉ましいわ」 しばらくすると、泣き止んだのか、二匹そろってパルスィの足元によってくる。 ゆっくり魔理沙がパルスィに向かって声をあげる。 「おねえさん!まりさたちはここでゆっくりすることにきめたよ!」 「そう。ただし気をつけて。ここは地上ほど優しくないわよ」 「だいじょーぶだよ!れいむといればどこでだってゆっくりできるもん!」 「……そう。じゃぁ私はもう行くわ」 「ゆっ?おねえさん、もうかえるの?」 「ええ。貴方たちもこれからが大変でしょうしね。がんばって」 「ゆ!ゆっくりがんばるよ!」 「うん!おねえさんも、ゆっくりあそびにきてね!」 パルスィが振り返ると、二匹は友愛の証である頬擦りをしていた。 四日後。 パルスィが二匹のもとを訪れるとそこには六匹の小さなゆっくりたちがいた。 地下に落ちてから一週間で友人からつがいへと発展したらしい。 「あ、おねえさん!いらっしゃい!ゆっくりしていってね!」 「ゆ?おかーさん、ゆっくりできるひと?」 「そうだよ!このおねえさんはゆっくりできるひとだよ!」 「ゆ!ゆっくりちていてね!」 「ゆっくり~」 小さなゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙が三匹ずついる。まだ幼いからか言葉遣いもたどたどしい。 あたりを見回してもゆっくり魔理沙の姿が見えない。 「まりさはどうしたのかしら?」 「ゆ!まりさはたべものをとりにいってるよ!れーむはおかーさんだから、こどもたちをみてるの!」 「そう。しっかりしてるのね」 「ちがうよ!ゆっくりしてるんだよ!」 その返答に思わずくすりと笑ってしまうパルスィ。和やかな空気で満たされている。 しばらく小さいゆっくりたちで遊んでいると、ゆっくり魔理沙が帰ってきた。 「ゆ!おねえさん!いらっしゃい、ゆっくりしていってね!」 「おかえりまりさ!」 「まりさおかーさん、おかえりー!」 「ゆっくりちていてね!」 「ごはんー!おながずいだよー」 「たくさんあるから、ゆっくりたべてね!」 なかなかどうして仲睦まじい家族愛を見せ付けてくれるじゃあないか。 ふつふつと湧き上がるどろどろとした感情。 宇治の橋姫は夫に裏切られたから、鬼と化したのだ。 和気藹々としたゆっくりたちの様子は、パルスィの翡翠の瞳を深く鮮やかに輝かせるのに十分過ぎるほどだった。 水橋パルスィは、嫉妬と言う名の緑色の目をした怪物。 これ以上ここにいてはいけない。 我慢できなくなる。 「ゆ?おねえさん、かえるの?もっとゆっくりしていってよ!」 「…………」 「? ゆっくりかえってね!」 その夜。 ゆっくり霊夢たちの巣だ。もう子供たちはぐっすりと眠っているのか、規則正しい寝息が聞こえてくる。 親である二匹は何をしているだろう? 二匹は子供たちからあまり離れていない場所にこしらえた自分たちの寝床で体中をこすり合わせていた。 顔が上気し、目は蕩けたように薄目になっていて、熱い息を荒くしている。 よく見ると熱を持っているのかじっとりと汗ばんでいるのがわかる。 「はぁ、れいむ。れいむぅ!」 「んっ。ふぅん、まりさっ!ああ、まりさぁっ」 お互いの名前を呼びながら口を啄ばみ、桃色の舌でお互いの顔中によだれを塗りたくっている。 それは汗と交じり合って、すぐにねとねとした粘液になった。さらにそのまま体中をこすり合わせ続ける。 しゅるしゅると音がたっていく。こすり合わせている音が早まっていくにつれて、二匹の声はだんだんと意味を成さなくなっていく。 「ゆっ!ゆふん!ふぅ~!っくり!ゆん!」 「ゆんゆんっ。ゆひゅっ!ゆぅうぅ~~ん!ぅん」 「ゆ~~~~ゆ~~~~」 「ゆゆゆゆゆ」 「ゆっ!?」 ぱっと離れるゆっくり霊夢。荒くなった息をゆっくりと整えていくにつれて、赤い頬もいつもの色に戻っていく。 たまらないのは中断されたゆっくり魔理沙だ。 いまにも泣きそうな顔で信じられないというように驚愕している。 「どうしたの?もっとゆっくりしようよ!」 「だめだよ!ゆっくりできない!」 「どうしてそんなこというの?まだまだいけるよ!もっとゆっくりしようよ!」 「だめだってば!こどもたちがいるし、もうゆっくりねようね!」 「ゆ、ゆっくりぃ……」 か細く鳴くゆっくり魔理沙はどこか寂しげだった。 次の日。子供たちの世話はゆっくり霊夢に任せて、ゆっくり魔理沙は餌をとりに出かけていた。 ここには地上のゆっくり平原では見られないものがたくさんあり、ゆっくり魔理沙は好奇心のままに飛び跳ねていた。 だがその跳躍はどこか心ここに在らずといった感じだ。 「あ、おねーさん!」 「あら。こんなところで奇遇ね、どうしたの?」 パルスィだ。手には籠のようなものを持っている。彼女も食料調達だろうか? 「まりさ、ごはんをあつめてるんだよ!」 「そう、家族のために偉いわね、ふふっ」 「……うん」 「元気がないのね。いったいどうしたのかしら?」 「…………」 ゆっくり魔理沙は意を決したようにパルスィに目をあわす。 そこには、出会ったときから変わらぬとても綺麗な緑色の宝石があった。 「あのね」 ゆっくり魔理沙は語った。 大好きなゆっくり霊夢と子供が出来たけど、子供にばかりかかずらって自分にあまりかまってくれなくなったこと。 昨晩の行為もこれからというところで、一方的に中断されたこと。 ほかにも以前とは変わってしまったことを口にした。 涙ぐみながら話す様子を、酷く艶っぽい微笑みで見守る緑色の目の怪物。 ゆっくり魔理沙は自覚していなかったが、パルスィには滲み出る感情がはっきりと理解できていた。 「嫉ましいのね?」 「ね、たましい?なに?わからないよ。ゆっくりおしえてね!」 「そのうちに捨てられてしまうかもしれないわね」 「ゆっ!?そんなことないよ!れーむはそんなことしないよ!」 「子供たちだけを見て、もう貴方のことなど見てもくれない」 「いやだよっ!まりさもみでほじぃよぉっ!!」 涙ぐむゆっくり魔理沙。パルスィはそれを見てか見ざるか続ける。 「やがて声をかけても返事をくれるどころか、振り返りもしなくなるわ」 「いやだぁっ!いやだよぅ!!れーむとおはなししたいよぅ!」 「貴方はただただ餌を運ぶだけの都合のいいものになるのね」 「ゆっぎゅりぃいぃっ!!!」 いやいやと体を左右に振り乱しているゆっくり魔理沙を両手ではさむと、パルスィは顔の高さまで持ち上げて目を合わせる。 ゆっくり魔理沙は、パルスィの目が見たこともないくらいに鮮やかな緑色になっていることに気づいた。 地下に落ちてからずっと、パルスィに会うたびにその綺麗な目を見ているが、その中でも極めつけに美しかった。 「……どうすればいいのか、貴方ならもうわかっているはずよ……」 「わ、わからないよ。ゆっくりおしえてね!」 「いいえ、分かっているわ。……貴方は、ただ、認めたくないだけ」 「ゆ、ゆっくり……」 「まぁいいわ。もうお帰りなさい。貴方の家族が帰りを待ってるわよ。ご飯を持っていってあげないといけないのでしょう?ご飯を、ね」 「ゆ、ゆぅ……。おねえさん。まりさはゆっくりかえるね。さよなら」 「ええ。御機嫌よう」 とぼとぼと去るゆっくり魔理沙を、パルスィはゆっくりと見送っていた。 夜。 ゆっくり魔理沙の集めてきた食べ物を食べて、毛繕いも終えた六匹の子ゆっくり達はすでに夢の花園へと入り込んだ。 その様子をゆっくりと慈愛に満ちた表情で見つめているゆっくり霊夢。 もはや母の貫禄を身につけつつある。 そんなゆっくり霊夢にもじもじとにじり寄るゆっくり魔理沙。 「れ、れいむ」 「なぁに?まりさ」 「ゆっくりしようね!」 「? ゆっくりしてるよ?」 そのまま頬擦りし始めるゆっくり魔理沙。 ゆっくり霊夢もとくに拒むことはしないで、同じように頬擦りをする。 すりすり。すりすり。 やがて二匹ともじっくりと体をこすり合わせるようになり、息も短く荒くなっていく。 お互いの体が汗ばむころにはゆっくり魔理沙は出来上がっていた。 「ゆっ!ゆっくりしちゃいけないよ!」 「ゆゆゆっ!?」 昨晩のように拒絶されるゆっくり魔理沙。何かを我慢するような顔のゆっくり霊夢。 対してゆっくり魔理沙は何かを悟ったような表情だ。その目に幽かな翡翠の閃きが垣間見えたのは気のせいだろうか? 「ま、まりさ。ごめんね。でも、こどもたちがおっきくなったらゆっくりできるよ!」 「きにしないでねっ!こどもたちががおっきくなるのがたのしみだね♪」 「そうだね!たのしみだね♪」 「ゆっくりおやすみなさい」 翌朝、ゆっくり魔理沙はいつもより早起きした。 眠る前に聞いた、ゆっくり霊夢の「子供達が大きくなれば」という言葉を思い出す。 うん。今自分がすることはたくさんの食べ物を集めること! ゆっくり魔理沙は自分のやるべきことをやるために動き出した。 しばらくしてゆっくり霊夢が目を覚ます。 隣を見ると、いつも自分が起こすまで眠っているゆっくり魔理沙の姿が見えない。 どこに行ったのだろうと思い、いつもより急いで外に出る。 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢にとってかけがえの無い存在だ。もしかすると一番大事かもしれない。 そんなゆっくり魔理沙が目を覚ますといなくなっていた。ゆっくり霊夢は不安を覚えた。 だから、いつもよりも少し急いで巣から出た。ゆっくり出ようとは思いもしなかった。 「まりさっ!?どこ?」 「ゆっ?おきた?おはよう、れーむ」 そこにはいつもと変わらぬゆっくり魔理沙の姿があった。一安心するゆっくり霊夢。 ゆっくりと近づいていくと、何か良い匂いが漂っていた。 「いなくなってたからびっくりしたよ!はやおきなんてめずらしいね♪」 「ごめんね。れーむにごはんをつくってあげようとおもったの」 「ゆっ、ごはん?ほんとに?ほんとにめずらしいよ」 「れーむのことだいすきだからねっ!がんばったよ」 「ゆっ、ほんと!うれしい!うれしいよ!れーむもまりさだいすき!!」 二匹で満面の笑み。お互いがどれだけ嬉しいのか、見ているだけでも伝わってくるような笑顔だ。 朝一番の太陽のような笑顔。 地下では太陽は見えないけれど、知らない人にはこの笑顔を見せれば想像できるかもしれない。 「そうだ!こどもたちは?いなかったよ?」 「みんなははやおきしてあそびにいったよ!」 「ゆっ!どうしておこしてくれなかったの?れーむもあそぶ!」 むくれるように言うゆっくり霊夢。ぷくぅっと膨れているのがとても可愛い。 「ごめんね。でもつかれてたみたいだから、ゆっくりしてほしかったの」 「ゆっくり!ならしかたないね♪」 「さ、たべて。れいむのためにつくったから、ゆっくりあじわってね!」 「ゆっくりいただきます♪」 ゆっくり霊夢は並べられた六つのごはんにむしゃぶりついた。白くて黒くてひらべったくて、見たことが無いけど美味しそうだった。 その様子を微笑ましそうに見つめるゆっくり魔理沙もすぐに自分の分を食べ始める。 「うわぁ、おいしい!あまいよっ!うんっ!うめぇ!!めちゃくちゃうんめぇ!はぐはぐっ」 「ほんと?うれしいよ♪てれりこてれりこ」 ゆっくり霊夢に褒められて照れたのか、頬を桜色に染めるゆっくり魔理沙。 そのままがつがつと食事を進める二匹。 「えふっえふっ!けぷっ」 あまりの美味しさに慌てたせいでむせるゆっくり霊夢。 咳き込むと餌がばらばらと散らばる。 「びっくりしちゃったよ!ゆっ!?」 「どうしたの?れいむ。たべないの?」 裏返しになったそれは、れいむとまりさの子供だった。 まりさが食べているのも、よく見ると自分達の子供だった。 その表情はいつもの顔と変わりない。だがそれがくるくると変化することはもう無いということは、ゆっくり霊夢にも瞬時に理解できた。 「ま、まりさ!それこどもだぢだよっ!!れいむとまりざのっ!」 「そうだね♪おいしいね!」 「なっ、まま、ま、まりさ!なにいっでるのぅ!!わだじだぢのがわっ、がわ゛いいごどもなんだよ!?」 「むーしゃむーしゃ、しあわせ~♪」 「うっ、うわっ!うあッ!!」 ぺろりと平らげるゆっくり魔理沙。その口元は二匹の愛し子の血肉で汚れていた。にっこりと微笑む片親。 「う゛あ゛あ゛ぁあ゛ぁぁぁあ゛ぁぁぁぁぁッ!!」 「これでふたりっきりだね!れいむ♪」 終わり。 O, beware, my lord, of jealousy ! It is the green-ey d monster which doth mock The meat it feeds on; お気をつけ下さい、将軍、嫉妬というものに。 それは緑色の目をした怪物で、ひとの心をなぶりものにして、餌食にするのです。 (『オセロ』第3幕第3場) 東方地霊殿では、作中で舞台が「根の国」であるとは言われていません。 ゆえに、パルスィがいた場所が黄泉比良坂というのは、この作品だけの設定です。あしからず。 食べ物を食べたから戻れないという展開のためにつけただけですね。 かわいいよ、パルスィ!かわいいよ! 水橋パルスィ:地殻の下の嫉妬心:嫉妬心を操る程度の能力 著:Hey!胡乱
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「ゆん、ゆん、ゆん、はちがとぶ~・・・ゆ?」 その日ゆっくり霊夢が小包抱えて歩いていると、橋の下でチンピラが男を囲んでいたそうな 「ようニーチャン、誰に断ってここに住んどるんか?」 「払うもんは払わんといかんじゃろが!」 「今なら5パー割引にしといたるで」 どうやらホームレスにみかじめ料をたかっているようだ 見るに見かねてゆっくり霊夢は人垣に割り込んだ 「やめてね!ゆっくりやめてあげてね!いぢめはダメ、ゼッタイ!」 「なんだこいつ?」 「いっしょにボコっちまうか?」 饅頭を追い払おうとする拳は寸前で避けられた 「・・・ほう、れいむとやるき?」 言うや否や小包を空高く放り投げる とあるガイジンから情報をせしめた鯛焼き屋で買ったのだが、 目当ての品自体は販売期間が終わってたので気が立っていたのだ 「きょうのれいむはまっちょでむ~ちょなきぶんなんだよ!」 ゆっくり霊夢の体が数十倍にも膨れ上がる 「あ~んぱ~んち!」 「倍倍筋ー!」 小包を再びキャッチする頃にはチンピラどもは影も形も見えなくなっていた 「ゆー、すっきりー!」 ゆっくり霊夢は爽やかな顔で振り向きホームレスに話を聞いた それによるとこの男はつい最近会社をリストラされマンションを追い出されたのだという 橋の下に辿り着きうたた寝していたところを先ほどの連中に絡まれたのだ 「ゆっ、なるほど。ぞくにいうはけんぎりだね!ゆっくりわかったよ!」 事情を察したつぶらな瞳の饅頭は包みからそっとタイ焼きを差し出した 「・・・というわけなんだよ!おしごとちょうだいね!」 「むう」 葉加瀬博士はゆっくり霊夢に懇願されて呻いた 「む~ちょな霊夢君か。見たかったのう」 「ウチで雇う余裕はありまセンねえ」 「何せワシらでさえお給金出るのか怪しいところじゃからのう」 「HAHAHA!」 「だめもとできいたけっかがこれだよ!」 ところ変わってゆっくり研究所 葉加瀬博士や助手のジョシュ君が勤めるおヒマな研究所だ 「とはいえ手がないわけではないぞい」 「れいむにはまだてがないよ!」 「いつか生えるんかい」 博士は後ろをガサゴソ探るといつぞや見たような鉄板を取り出した 「ゆう!それはあの!」 「この前勢い余って営業許可証を取ってしまってのう。ちょうど勿体無かった所じゃ」 「いきおいでとるなよ」 「まぁ鯛焼きで申請しておるから、これはこの前作ったアレとは違うちゃんとした鯛焼きの型じゃがの」 「こんどこそほんとうにたいやきやさんができるんだね!!」 「うむ」 その後行数にして1万を超えるほどのなんやかんやが多分あって、ついに研究所発の鯛焼き屋がオープンした! _,r‐!7´ー-v―-、 _..._ _,, r'「>-'、-─'-<こ`ヽ,_..,,ノ"///ヾ、 _,."彡i ,r'ア´ ´ `ヽ|/`y'、ソ、)、ソ、yY',, 彡",ヽ, く7 / / ,! ,! /! ノ`ノ Yy'サ ' )'y )ソ、),,彡'彡| 瀟洒 ヨコハマタイヤキ | ,' | /、ハ /レ'__,!イ , y'ヨ、ソ、)、ク、y、ヤ、)',, 彡",ヽ, ノイ ハ/─ ∨ ,riiニヽ/| \三)Yy'ソ ' )'y )、ソ、),,彡'彡| :コンゴトモヨロシク・・・ '´ | /! ,riiニヽ "" |/|` ヨ )/i y )、) 'y k彡,,"」 レ'│"" _,,.. -‐' !メ|),ハ/彡f ヽ ;Y 、、,-'" 八!ヘ. ノメハ/=ー"ニ=ー~"`^ 〈rヘメソゝ ー----- [ンく_]' 「な、なんだかゴムみたいに歯ごたえのある鯛焼きだぞい」 「ぷっでぃ~んあじだね!」 物珍しさも手伝って、お上品な味のソレはそこそこ繁盛したそうな 霊夢のやさしさに私が泣いたw 葉加瀬博士とジョシュ君シリーズはほのぼのしてて とてもゆっくりできます^^ -- ゆっくり好きな新参者 (2009-04-20 22 46 17) まさかのヨコハマサクヤwww -- 名無しさん (2009-04-21 16 49 12) オチがヨコハマサクヤとはwwwあんぱんちと言って十倍に膨らんで・・・で、どうやってパンチするんだ腕無いのに -- 名無しさん (2009-04-21 20 45 55) 名前 コメント