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第3話 ゆっくりたちの、実にゆっくりとした一週間 一日目 天高い秋晴れの空が広がっていた。 小春日和の朗らかな日差しを受けて、二匹のゆっくりたちは今日も元気に跳ねまわる。 ゆっくり魔理沙に誘われて、ゆっくり霊夢は追うように魔法の森へ。 今は二匹連なって仲間睦まじく秋空を飛ぶトンボを、わき目もふらず追いかけっこ。 しっとりと濡れた露草の藪を踏み越えて、たどり着いたのは森の奥の開けた野原だった。 流れ込む肌寒い秋風は、トンボの細い体を宙へ高く吹き上げる。 「ゆー! ゆっくりしていってね!」 ゆっくり二匹の願いもむなしく、トンボは風をとらえて青く高く秋の空へ。 ぴょんぴょんと口を開いて飛び上がる二匹。だが届くわけもない。 トンボを見送るゆっくり魔理沙はしょげ返った表情。 口寂しいのか、茂みのクコの実をむしゃむしゃとほおばる。 そして、ぷくうと膨れ面。 「おなか空いたよ、おうちかえる!」 ゆっくり魔理沙の見つめる東の空は深く青みがかり、黄昏の近さを思い出させる。そろそろ暖かなねぐらに替える頃。 けれど、ゆっくり霊夢は承知しない。 「まだちょっと早いから、ゆっくりしていこうね!」 遊び足りないと飛び跳ねながら訴ってくる。 魔理沙の傍へすりよって、その帽子のあたりにすりすりとほっぺをすりつけた。 この上ない友愛の仕草に、とろんと赤みがかる魔理沙の表情。 「ゆ……ゆっくりする……」 たやすく屈する魔理沙だった。 こうして始まった、今日最後の遊び場は生い茂るススキの野原。 人の姿も隠れそうなその場所で遊ぶ種目は決まっていた。 そう、かくれんぼ。 「ゆっくり30秒数えてね!」 目をぎゅっと瞑る魔理沙に声をかけて、ススキに身を沈めこむゆっくり霊夢だが。 「みつけた!!!」 あっさりと見つけ出すゆっくり魔理沙。 「?」 きょとんとした表情で不思議を表現する霊夢に魔理沙はフと不適な笑い。 隠れる一帯のススキが押し倒されて道となっていることを、魔理沙は教えようとはしなかった。 鬼が交代となり、今度は霊夢が探し回る番。 しかし、霊夢の失敗を目のあたりにしたためか、魔理沙は中々見つからない。 ススキの下、藪の中、木陰。目に入るところを探し回ってもどこにも見当たらなかった。 「魔理沙、どこー?」 太陽が山々に姿を隠し、暗がりが降り始めて、急に心細さに襲われるゆっくり霊夢。 日が完全に沈めば、野犬の群れに出くわしかねない。 「ゆっくりしないで、でてきてね!」 ほとんど涙目で森を走り回る。 「霊夢、こうさん?」 すると、意外なところから魔理沙の声が聞こえてきた。 そこは荒れ果てた家屋。魔法の森に暮らす数人のモノ者好きがいるらしいが、この廃屋は誰かのかつての住処なのだろうか。 廃屋の庭は伸び放題の藪になっており、その草むらから石積みブロックで囲った建造物がにょっきり顔を覗かせていた。 幅は1メートルぐらいだろうか。人が建てたらしい、しっかりとした枠組み。その傍らに一本の柱がのびて、吊り下げられていたのは錆びた滑車。だが、繋がれていただろう綱はすでに朽ち果てて残骸が絡みつくのみだった。近くに底の抜けた大きな桶が転がっているのが目に入るが、ゆっくりたちには木っ端にしか見えない。 そんな残骸よりもゆっくり霊夢の興味を占めていたのは、建造物の上で得意げにふんぞり返るゆっくり魔理沙。 建造物の上に渡された粗末な板の上から、魔理沙はニヤと不敵な表情で笑いかけてくる。 「ここを知っているのは、わたしたちだけだよ!」 その言葉に、霊夢は素敵な遊び場を見つけ出したことに気づいた。 朽ちた廃屋を恐る恐る探る二匹。ソファの一つでも残っていたら、その上でとびはねて埃を払い、新たなゆっくりスペースにできるかもしれない。 そこはきっと優雅なゆっくりの一時。自分たちだけのゆっくり城。 「うっとりー!」 あらぬ方向へ躍りだした夢に、ゆっくり霊夢の表情も緩みがち。 「霊夢! 明日から、ここを探検しようね!」 魔理沙の言葉を、喜色満面で受け止める。 「うん、やくそくだよ!」 胸躍らせるわくわくに、いてもたってもいられない。 明日からの大冒険に弾む心のまま、霊夢は魔理沙へと弾み寄る。 大きくジャンプ。魔理沙の元へと飛びのった。 魔理沙も身を摺り寄せて親友に応える。 「ゆゆゆ……」 「ゆっゆっゆ!」 とろけそうな嬌声で、二匹は芯からの喜びを訴えあう。でも、まだ足りない。この嬉しさをあらわすには、アレしかなかった。 ゆっくり二匹は狭い板の上で、身をかがめる。 引き伸ばされたゴムがはじけるように、この日一番の見事な跳躍。 「ゆっくりしていってね!」 その頂点で放たれたのは、黄昏の秋空に響き渡るゆっくり二匹の美しい唱和だった。 陶酔の表情のまま、二匹は同時に板の上へ落下していく。 どすんと、景気のいい音をたてて板で弾むゆっくりの全身。 途端に体の下で鳴った、くぐもった音。 なんだろう。顔を見合わようとするゆっくり二匹。 だが、視線が合う間もあらばこそ、お互いの顔が大きくぶれだした。 「ゆっ!?」 めきという乾いた音が、へし折られる木の音だと気づいたときにはもう遅い。 二匹は板の下に急激に落ちこんでいく。 ぞわりと総毛立つ感覚。 次の瞬間、慣性に捕らわれた二匹の体は真っさかさまに下へ。 一瞬、見下ろした二匹の目の前には、どこまでも広がる何も無い暗闇。 魔理沙がのっていた建築物は、塞がれることなく板一枚で封印されていた古井戸だった。 二匹が弾んでへしおったのは、まさにその封印の板。 突き破った二匹の落下を受け止めるものはなにもない。 「ゆ、ゆっくりー!」 遠ざかる絶叫も井戸に吸い込まれて、すぐに何も聞こえなくなる。 後に残されたのは静寂。 やがて太陽はすでに山間に没して、秋の寒々とした夜気が漂いだす。 一斉に鳴き始めるコオロギの声。 何事も無かったかのように深まり行く秋の夕暮れだった。 二日目 「ゆっくり! ゆっくりしていってね!」 必死の呼びかけが、何度もゆっくり霊夢を揺さぶった。 ゆっくり魔理沙のやけに近くからの呼び声。 ようやく目を覚ましつつある、寝ぼけ眼の霊夢。でも、まだ夜中なんだから眠らせて欲しい。 ここは見渡す限りの暗がり。 もっとゆっくりすればいいのに。 「ゆ……? ゆゆゆっ!?」 そんな思いを魔理沙に伝えようとして、ようやく自分の片頬を圧迫する固い感覚に気づいた。 もう片方の頬に押し付けられていたのは柔らかい感覚。 耳の近くで魔理沙の息遣いがして、その感触が魔理沙であることを確信する。 お互いのほっぺたがぴったりくっついてその体温の暖かさが心地いいのだけど、この暗がりはじめじめと蒸していて、べっとりとはりつく感触。ちょっとだけ離れたい。 でも、できなかった。前にも後ろにも動けなかい。跳び上がることも、押し付けられた魔理沙の圧力に遮られてしまう。 「ゆっくり離れてね!」 ゆっくり霊夢のお願いに、ゆっくり魔理沙の体がわずかに震えた。 「動けない……!」 震えて、泣きそうな声。 どうしたのだろう。悲しそうな魔理沙を慰めたい。 でも、自分も身動き一つできず、ただ視線だけを走らせる。 霊夢の周囲は相変わらずの暗闇だったが、闇に目が慣れてきたのか暗がりにぼうと浮き上がる魔理沙らしき輪郭。だが、自分を押さえつける石の感触の正体がつかめない。 ようやく視界に変化があったのは、視線を真上に向けたとき。 くっきりと、丸く切り取られた青空がはるか遠くに見えた。 太陽はまだ低いのか光が差し込むことはなく、ただ入り口付近の朧に眩しい。 霊夢は、自分がどんなところにいるのかようやく悟った。 井戸という知識はゆっくりにはない。深い穴の途中にひっかかって身動きできない状況を、絶望という言葉で理解できただけだ。同じ方向を見て、ほっぺたをあわせている自分と魔理沙。その両側はがっしりとした石積みが押さえ込んで身動きできない。 いや、それは幸運なことだろう。壁につっかえなければ、井戸の底へまっさかさまに落ちていくだけだ。 けれど、石積みの壁は古びているのか、ゆっくりたちが身じろぐとぽろぽろと壁面がこすれて下に落ちていく。 わずかな間に続いて、真下から響いてくる水の音。 「ゆゆゆゆ!」 ゆっくり二匹を恐怖に至らしめたのは、穴のさらなる深さよりも水で満たされているだろう、その奥底だった。 水溜りや少しの雨なら、はしゃいで遊びまわることもできるゆっくり。 だが、長時間全身が水につかれば、皮がぶよぶよにふやけて、やがては中身を水中に吐き散らすはめになる。 だから、雨の日は巣穴で家族とゆっくり過ごすのがゆっくりたちの常識だった。 今は二匹がぴったりと穴につっかえているからいいが、もし外れて水中に落ちた場合、待っているのは緩慢な死、腐敗。 「ゆーっ!」 一際高いゆっくり霊夢の泣き声。 だが、果たしてこの井戸から外に届いたかどうか。 井戸の中は雫の落ちるほどが響き渡るほどの、閉ざされた静寂。望みは薄かった。 霊夢の絶望が恐怖に変わる。 「いや! いやいやいやいや!」 「おちついて、ゆっくりしてね!」 取り乱した霊夢に、ゆっくり魔理沙の声が届かない。 「ゆっくりしないと落ちるううう!」 とうとう、魔理沙も涙声。 その切羽詰った叫びとともに、霊夢の壁に面した頬が、ずりと壁面を擦った。 ほんのわずかながらも、強烈に肌がざわつく落下の感覚。 「ゆ!」 もはや、身じろぎもできない霊夢。 「ね゛っ。ゆ゛っぐり゛じよう!」 魔理沙の懇願混じりの声に頷くこともできなかった。 穴の中央付近でひっかかっているこの均衡が、容易く壊れることをようやく理解する。 二匹は、ほぼ平行につっかえているが、実感魔理沙の方が下がり気味だった。 ただ、壊れかけた石壁が一箇所飛び出して、ゆっくり魔理沙の顎にぎっちりくいこんでいる。 そこをとっかりに二匹は横からの圧力で落下を免れていた。ごくわずかな幸運。 それでも、ほんの一時だけ死に猶予を与えているだけにしか思えなくて、ゆっくり霊夢の喉を悲しみが突き上げる。 「ゆっ、ゆっ……!」 ゆっくり魔理沙も泣いていた。しゃくりあげることすら許されない、この絶望に。 どれほど悲嘆に暮れていただろう。 霊夢は周囲が明るく照らし出されていることに気がついた。 日差しが高くなり、井戸の上空から一直線に差し込む光。 湿って凍えたゆっくり二匹をぽっかぽかに包み込む。 「暖かいね」 「うん」 霊夢の呟きに、短い魔理沙の返事。 「気持ちいいね」 「うん」 相変わらずの魔理沙の短い返事。でもゆっくりと言葉を交わせたことが霊夢は嬉しかった。 ほかほかの日向にほっこりと表情を和らげる二匹。太陽が隠れるまで半刻を要さないだろうが、一時のゆっくりを存分に味わう。 光に照らし出されて周囲の様子が明らかになり、二匹は少しだけ落ち着きを取り戻していた。 概ね、予想通りの井戸の光景。忘れ去られた井戸の中で、ほっぺをひしゃげてよりそう二匹の姿はひどくユーモラス。二匹がへばりつく石積みの壁には、ところどころ穴があいて、広がる光の領域に慌てて逃げこむ蟻やムカデ、イモリの姿があった。 霊夢がその壁に向けて精一杯舌をのばす。舌に張り付く数匹の蟻んこたち。 ぺろっと飲み込んで、むーしゃむーしゃと咀嚼する。あんまり幸せな味ではなかったが、食べることができたという事実が霊夢にわずかな希望を与えた。 このまま、しのいで張り付いていれば誰か井戸を覗き込む人が現れるかもしれない。そうだ、森に行こうと誘ったのは魔理沙。誰かに行き先を教えていれば、家族のゆっくりや仲間が探しにきてくれるかもしれない。言っていなくても、魔理沙の行動範囲に魔法の森は必ず含まれる。探す目的地の一つとなるだろう。 見つけてもらえば、また存分に太陽の下でゆっくりできる! 「魔理沙、あのね!」 その思い付きがもたらした希望、喜びを、ほかならぬ魔理沙と分け合いたかった。 だが、魔理沙は先ほどまでの日向ぼっこの表情が一変し、またじんわりと涙を流していた。唇をかみ締め、ひっくひっくとえづく。 「魔理沙、どうしたの?」 「ゆっ、ゆっぐり゛痛ぐなっでぎだ!」 二匹の重みを受ける石壁のでっぱり。そこに接した魔理沙の顎にうっすらと走る一筋の線。石壁に擦ってできたわずかな切り傷。 魔理沙の顔の影になって見えない霊夢に、にわかに募る不安。 「だいじょうぶ!」 「……うん、ゆっくりしていれば治る」 実際、日向でのんびりしていれば、一日で薄皮がはって消えるだけの傷。 魔理沙は気丈な言葉で霊夢を安心させてくれる。 それでも、自分たちを助けるために負ったその傷を、なめて労わってあげられないのが霊夢には悔しい。 だから、せめて心を労わりたい。 「ここを知っている誰かがきっときてくれるよ、ゆっくり頑張ろうね!」 きっと、森に遊びに言ったことを知った誰かが気づいてくれるよ! そんな、言葉にするのももどかしい想いを口にする。 魔理沙はどんな表情をしたのだろう。 霊夢と同じく希望の取り戻した笑顔を浮かべたのだろうか。 だが、わからない。 ほとんど次の瞬間、井戸は暗闇に沈んでしまっていた。 目蓋に残った光の斑点は、井戸から引き上げていった陽光の残滓。 あまりにも短い日差しの終わりに、わかっていながらも霊夢は打ちのめされる。 黙り込んでしまったゆっくり二匹。 「ここを見つけたせいで……ごめんね」 沈黙を破ったのは闇のなかからの、か細い魔理沙の声。 泣きすがる、哀れみを乞う響き。 霊夢は、親友のそんな声を聞きたくなかった。 心が滅入って、ついつい尻馬にのって相手を責めたくなる気持ちを跳ね除けるように叫んでいた。 「違うよ! 霊夢がもっと遊ぼうといわなければよかったんだよ!」 だが、空元気も、傷を舐めあうことも二人に救いをもたらさない。 それ以上何を言えばいいのかわからず、上を見上げた。 いつか現れるかもしれない仲間の姿を見逃さないよう、ひたすらに空を見ていた。 日暮れの早まる秋の空。 色合いが朱に染まる夕焼け、数刻もしないうちに夜が訪れる。 井戸の中は、すでに光一つない宵闇。 もう、ゆっくりたちが出歩ける時間ではない。 どこから落ちる水滴の音と、カサカサとはいまわる虫たちの音だけが異様に響きわたる。 「ここから出して」 「おうちかえる」 ぽつりと時折こぼれる二匹の呟き。 だが、やがてそのささやかな願いを飲み込むのは圧倒的な暗闇。 嗚咽すらも押しつぶすような静寂に二匹の存在は沈み込む。 三日目 ゆっくり霊夢は家族の夢を見ていた。 藪の奥の横穴にひっそりとある暖かな我が家。 姉妹霊夢たちと押し合いへし合いして遊んでいると、お母さん霊夢が登場。下膨れたした顔で、「ゆっ! ゆっ!」と娘たちを叱る。 渋々寝床に入るゆっくり霊夢たち。でも、少しでお母さん霊夢の傍に近寄れるように動き出して、再び始まる大騒動。 結局、お母さん霊夢にぴったりと全員がよりそって、ぽかぽかの体温を感じながらゆっくりと眠りについた。 ゆっくりお母さんはぷっくり膨らんだほっぺを娘たちに押し当てたまま「ゆー! ゆ-!」といつもの子守唄。娘たちを優しく眠りに導いてくれる。 絶対的な安堵を与えてくれる母親の懐。ゆっくり霊夢はただ幸せな夢を見ていればいい。よだれをたらしつつ、存分にまどろみを貪る。 これ以上ゆっくりしようがないほどにゆったりとした心。 幸福に包まれて、霊夢は気ままに明日を思う。 明日、目が覚めたら何をして遊ぼうかな。 最近、ゆっくり魔理沙とばっかり遊んでいたからたまには他の皆も入れて一日中ゆっくりするのもいいかもしれない。 あれこれ考えながら眠りへと落ちていく霊夢。 さあ、次に目を覚ませばいつもの楽しい毎日の始まりだ…… 期待に心を弾ませて目を覚まそうとするゆっくり霊夢。 だが、霊夢が感じたのは、ほっぺたをぽつりと濡らす雫だった。 「冷たいよ!」 姉妹か誰かの悪戯かと、寝ぼけ眼で不満を口にした。 だが、顔全体に降り続く雫が急速にゆっくり霊夢の眠気を奪い去っていく。 それは、芯まで凍えそうな秋雨だった。 現実を思い知らされる井戸の暗闇。 上を見上げれば、丸く切り取られた空はうんざりするほどに暗い雲の色。 もっとゆっくり夢をみていたかった。恨めしげに天を睨むが、霊夢の髪やほっぺを叩くような雨足は弱まることはなかった。石壁からはひっきりなしに伝い落ちる雨だれ。 いつ止むとも知れないどんよりとした空模様だった。 そんな天気を眺めていた霊夢は、ふと感じた違和感に小首を傾げる。 井戸の出口まで、少し遠くなったような? 「起きたなら、ふんばってね!」 必死な魔理沙の声に、違和感の正体に気づく。 濡れてグズグズに緩んだ頬。壁面との抵抗が極端に弱まっていた。 わずかながら、ずり落ちつつある二匹のゆっくり。 「ゆ、ゆっくり!」 青ざめてぎゅっと頬をよせると落下は一端停止する。まだ、さしたる力を込めずともふんばることはできそうだ。 だが、力を完全に抜くとすぐさま底へ落ち込みそう。 数秒足りとも力を緩められない。24時間中続く、無慈悲な義務がここに生まれた。 もはや、さきほどまでのように無防備に寝入ることはできない。 「ああああ! ゆっくりでぎないよお!!!」 ゆっくり魔理沙の叫びは、今の霊夢の悲嘆そのものだった。 二匹、力が弱まらないようにぎゅっと口結んでふんばって、それでもぽろぽろと涙があふれてくる。 だが、これはいつまでも続く地獄ではないと、霊夢は信じたい。 昨日から抱いている希望、探しにきてくれる友人や家族のことが霊夢の脳裏に浮かぶ。 「魔理沙、がんばろうね!」 今頃、お母さん霊夢や他のゆっくり魔理沙たちがこの雨の中を探し回っているのだろう。 この井戸のあるあばら家は魔法の森のほど近く。 うまくいけば一日もたたず探索範囲に入る。 問題は、それまでの数日を耐えられるかどうか。 「だから、もう少しがんばろうね!」 魔理沙を落ち着かせるための笑顔向けて、霊夢の健気な呼びかけ。 だが、魔理沙の表情はますますクシャクシャの泣き顔になっていく。 「ひっく……っ、がんばっても……どうせ、誰もきてくれないよおおお!」 突然の嗚咽交じりの絶叫に、びくんと震える霊夢の全身。 単なる弱音ではなく、確信をもった魔理沙の口調に霊夢の顔から笑顔が引けていく。 変わって霊夢の顔に張り付いたのは不審。 「どうして、そんなことをいうの?」 「だって……」 応える魔理沙の顔は、もう雨と涙でどろどろだった。 「だって、皆には霧の湖で遊ぶと言ったんだもん!!!」 「ゆ?」 霊夢の脳みそは魔理沙の言葉を理解しきれず、硬直する。 わかっっていたのは、霧の湖はこことはまるで反対側にあることだけ。 その意味がじんわりと霊夢に染み入ってくる。 ガクガク震えだす全身。 どんどん強くなっていく。 止まらない。 体を震わしながらこみ上げてくるのは、得体の知れないふつふつとした感情。怒りか悲しみかもはや形をもたないままに沸点を超えた。 「まっ!! ま゛り゛ざあああ、なんでなの! なんでえええ!!!」 困惑、怒り、やるせなさ、感情のにごりが煮えたぎる霊夢の狂乱だった。 「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめ゛んな゛ざいいいいいいい!」 わんわんと声をあげて、しゃくりあげながら謝罪を繰り返す魔理沙。 昨日までの霊夢なら、親友のそんな様子を見ればそっとよりそって泣き止むのを待っていただろう。 だが、もはや霊夢は容赦しない。 「はやく説明してね!!!」 激しい詰問に、ひぃと息を飲むゆっくり魔理沙。 「ゆっくりパチュリーやゆっくりアリスたちに邪魔されずに、霊夢と一緒に遊びたかったのおお!!!」 その言葉に、霊夢はいっつも魔理沙にくっついて離れない二匹のことを思い出す。 魔理沙と遊んでいると、ゆっくりパチュリーがどこからともなく這い出して、二人の後をゆっくりとついてくる。そうなれば、弾むように力一杯遊ぶことはできない。パチュリーを中心にして静かに過ごすゆっくり。 ゆっくりアリスはもっと扱いが難しい種。普段は遊びに誘っても嫌がって一緒に遊びにはいかない。だけど、諦めて他のゆっくりと遊んでいると木陰からじっとりと見つめてきて、もう一度誘わない限り一日中続くのだ。結局、お願いして一緒に遊んでもらうことになる。 だが、霊夢と魔理沙は知らなかった。ゆっくりアリスが本当に問題行動を起こす発情期のことを。 発情期を迎えたゆっくりアリスは、無理やりゆっくり魔理沙と交尾しようと森や平原などいたるところを徘徊し、見つけるなり集団で襲い掛かってくる。お母さん霊夢のように成熟しきった個体同士なら普通に交配する限り、時間はかかるが何度でも子を生める。だが、まだ青いゆっくり魔理沙にとって、無理やりの交尾は極めて危険だった。ある程度の子供が生えるものの、母体のゆっくり魔理沙はショックのあまりに白目をむいてそのまま朽ち果ててしまう。 凄惨を極めたのが、ゆっくりアリスの群れ全体が発情した三年前。ゆっくり魔理沙の集落がいくつも全滅して、やがて一斉に生まれてきた子供たちがゆっくり魔理沙の生息数大爆発を招くことになる。野草や昆虫たちを手当たり次第に 食い尽くすゆっくり魔理沙たち。ゆっくり魔理沙と交配しやすい種であるゆっくり霊夢も数を増やして、生態系の破壊は広がっていった。その処理策として設立されたのが、ゆっくり加工所だった。 もちろん、ゆっくりたちはそんな事実は知る由も無いが、ゆっくりアリスのどこかただならぬ雰囲気は薄々と察してはいた。 結局、なぜかウマの合うゆっくり魔理沙とゆっくり霊夢で遊ぶのが一番楽しいのだ。 でも、だからといって親友のついた取り返しのつかない嘘を許せすことができない。 大きく膨らんだ希望が、そのまま絶望の重みとなった憤り。 その熱い塊をぶつける対象を目前に見つけて、怒りが爆ぜた。 「嘘つき魔理沙なんて大っ嫌い!」 憤怒が、井戸の中でぐわんぐわんと鮮烈に反響していた。 「ごめ゛んな゛ざい、ごめ゛んな゛ざい、ごめ゛んな゛ざい……」 念仏のように繰り返す魔理沙の態度。だが、その惨めさがますます霊夢の熱を吹き上げさせる。 後どれだけの時間をここですごせばいいのか。 いや、もはや助けられることすら望み薄だろう。このまま家族にも知られることなく、干乾びて朽ち果てていくゆっくりたち。げっそりと痩せて、やがては水の中へすべり落ちる。 そうなれば運命は決まっていた。ゆっくりたちの皮は水に弱い。ぐにゃぐにゃに膨らんで、皮はいずれ破れるだろう。 まず、中身が水や外気にさらされる。やがてはじまるのは腐敗。自分の体が耐え難い異臭を放ち、中から朽ち果てていく長い長い悪夢。早く意識が途絶えることをひたすらに願いながら、ゆらゆらと汚水を漂う。 おぞましい想像に、霊夢の体がぞわりと悪寒に震えた。 霊夢はそんな未来など、井戸に落下してから一度たりとも考えたことはなかった。 探し回ってこの家をみつける仲間のゆっくりたち。近づくとかすかなゆっくりの声が聞こえてきて、覗き込んだ先にあったのは仲間の窮地。慌てて集まる沢山のゆっくりたち。探し出されてきた長いロープが井戸にたらされ、中の二匹が ロープを噛みしめるなり一気にひっぱりだされる。外に出られたら、すぐにうち帰ってお母さん霊夢を安心させよう。 それが、数分前まで霊夢が夢想していた未来。もう、消え失せてしまった未来絵図。 それもこれも、この魔理沙のせいだ。こいつが馬鹿なことを言ったばかりに全部終わってしまった。 こいつのせいで……死ぬ。 「い゛や゛だあっ! ま゛り゛ざのぜいで、じにだぐないいい!」 もう霊夢は止まらない。 「ま゛り゛ざの、ばがああっ! ま゛り゛ざだげ、じね!」 「ゆっ! ゆ゛う゛う゛うううううっ!!!」 断末魔のような悲鳴を上げる魔理沙を黙らせようとするかのように、霊夢はぐいぐいと魔理沙を壁に押し付ける。 「泣いてないで、落ちないようにしてね!」 霊夢の棘のこもった言葉に従って、律儀に押し返す魔理沙。 もう、何も喋らない二匹。 ゆっくりと、もう泣きたくなるぐらいにゆっくりと時間は過ぎていく。 井戸の中を、妖怪の山から吹き降りてきた風が入り込み、濡れた体をぞくりと振るわせた。 寒い。 隣の魔理沙の体温がなければ、野宿すら耐えられない季節になりつつあった。 鼻をすすりながら、懸命に押してくる魔理沙の暖かな全身。 それだけが霊夢に温もりを与えてくれた。 だが、耳朶に届くのは嗚咽交じりの侘び。 「ごめ゛んな゛ざあああい……」 泣きすがり、許しを乞う陰鬱な声。 井戸の底とで命を預けあう魔理沙が繰り返す哀願に、すううと冷えていく霊夢の心。 まるで、自分のほうが取り返しのつかないことをしてしまったような痛みが胸を刺す。 今は魔理沙だけが頼りなのに。 自分と同じ苦しみを背負う相手を一方的に責めて、自分は何がしたかったのだろう。 もう何もかも嫌になる。 「だれかぁ……はやくたすけてえ……」 見上げる井戸の上。 黒ずんだ雨雲に占められた、あいかわらずの代わり映えのない空とその向こうにいるかも知れない神様に、ゆっくり霊夢はひたすら祈っていた。 だが、畜生に神はいない。 井戸を覗き込む人影どころか、厚い雲に隠れたまま太陽すら姿を見せないまま、いつしか空は夜の色に沈む。 救いは、ようやく雨足を弱めつつある丸一日降り続いていた雨。 打ちつける雨の粒も、今は優しく降りしきる霧雨だった。 だが、代わって二匹を苛むのは夜半の冷え込みの厳しさ。もはや冬の始まりと大差がない。 「ゆゆゆ……」 霊夢の舌の根も凍えて言葉を吐き出せない。 もうじき初霜がおりてもおかしくない秋の日暮れだった。 凍えた体は力が上手く入らない。希望なき奮闘にも関わらず、二匹は少しずつ、井戸の底へと近づいていく。 その都度、腐ったような水の匂いが濃くなって、霊夢の喉にまとわりつく。 ぶわあんと、反響するカトンボの羽音がひどく耳障り。 水際に近寄るほど濃厚に漂いはじめる死の気配。 「……い」 霊夢の耳が魔理沙の呟きを拾う。 また「ごめんなさい」だろうか。 朦朧とした口ぶりで繰り返すその言葉に、霊夢に湧き上がるのは逆に罪悪感。 「もういいから、謝らないでね!」 精一杯の優しさをこめて呼びかける。 だが、反応は予想外のものだった。 「違うのおお」 それは、半泣きの魔理沙のうめき。 「かゆいの、かゆいの、すっごくかゆいの……」 しみこんだ水分を枯れ果てるまで流すかのように、だらだらとこぼれ落ちる涙。 余程の痒み襲われているのか、ぶるぶると痙攣のように震えだした。 「傷が、顎のあたりが痒いいい! ジクジク、かゆいいいいい!!!」 みっともなく、幼子のように泣き叫ぶ魔理沙。 恐らく、患部は最初に井戸を落下したときにおった顎付近の傷。 霊夢からは魔理沙の顔越しの位置になって、傷の様子はわからない。闇の中、懸命に舌を伸ばしている様子の魔理沙も、患部にまで舌がのびずもどかしい模様。よほど痒いのだろう、なおも舌を伸ばして時折えづく。 「き、きっと傷がカサブタになろうとしているんだよ。痒いけど、我慢だよ!」 少しでも前向きな言葉を口にして、魔理沙の気を紛らわそうとする。 けれども、魔理沙を襲う痒みは尋常ではないようだ。 「痒いよう、痒いよう……」 繰り返す魔理沙の嗚咽を聞きながら、三日目の夜はふけていく。 眠って底に滑落しないよう、唇をぎゅっとかみ締めるだけの夜は、ひたすらに長い。 中編 選択肢 投票 しあわせー! (11) それなりー (0) つぎにきたいするよ! (0) 名前 コメント すべてのコメントを見る
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「じけんはかいぎしつでおきてるんじゃない!げんばでおきてるんだよ!」 テーブルの上でゆっくり霊夢は啖呵を切った 傍らの皿には温もりが残っている つい先ほどまで鯛焼きがあったのだ ほかほかでふわふわでほくほくの鯛焼き・・・ 盗 ま れ た 「ゆ・・・ゆるぜん・・・!」 怒りがふつふつ滾る 「む?なんの騒ぎじゃ?」 「鯛焼きが盗まれたそうデース」 「それは物騒ですね」 容疑者はこの部屋にいる3人 ゆっくり霊夢の、孤独な取調べが始まった 容疑者1:珍妙な研究者 「え?わし容疑者なの?」 こいつは葉加瀬博士。今いる研究所の所長でもある自称ゆっくり研究の権威だ 「自称じゃないもん!本当に権威がある設定だったんだもん!」 「そんなのどうでもいいよ!ここのせきゅりてぃについておしえてね!」 「うう、そんなのって・・・せきゅりちー?それってゆっくりできる?」 「だみだこりゃ」 容疑者2:優しいガイジン 「ガイジンさん!ゆっくりおはなしきかせてね!」 研究所で助手をしているジョシュ君 何が優しいかって鯛焼きを買ってきたのはこの人なのだ 「オーユックリサン何が聞きたいのデスか?私のアリバイですカ?」 「アリババなんてきょーみないよ!れいむがききたいのはたいやきをかったばしょについてだよ!」 「買った場所?I駅のデパ地下デース」 「めもめも」 容疑者3:普通のサラリーマン 「普通のサラリーマンですが何か?」 最後は銀縁めがねにダークカラーのパリッとしたスーツを着こなす極普通のサラリーマンだ 「ふつーすぎてなにもきくことがないよ!ゆっくりしていってね!」 「・・・」 3人を取り調べ終わるとゆっくり霊夢は重々しく口を開いた 「・・・じけんのしんそうがわかったよ・・・」 「本当かね霊夢君!」 「ゆん。ことのはじまりは、たいやきだったんだよ・・・!」 ここからはモノローグでゆっくり話すよ! パソコン・・・ デスクワーク・・・ 課長の陰気な顔・・・ コンクリートジャングルでストレスに揉みくちゃにされた現代人は無意識に緑を追い求めるようになるんだよ! 今日も眼精疲労しきっていた犯人は偶然にもこの研究所の前を通りかかり、れいむの鯛焼きをみてしまった! I駅でジョシュ君が買った鯛焼き・・・それは季節限定の桜餡バージョンだったんだよ! ピンク色の餡に抹茶の生地でふわふわのほくほくだよ! この抹茶の生地が最大のポイントであり、悲劇の始まりだったんだよ! 「抹茶・・・つまり緑ですネ!」 「ざっつらいとだよ!はんにんはたいやきのかもすエメラルドのかがやきに、あはれにもひきよせられてしまったんだよ!」 「犯人は誰なんじゃ!」 「はんにんは・・・そこのにんげんさんだよ!」 ゆっくり霊夢はサラリーマンを示した 「まあバリバリ怪しいですヨネ!」 「というよりこの人誰じゃ?」 「せきゅりてぃのあまあまをついたてぎわはあっぱれだよ!でもあいてがわるかったね!」 「ふふふ・・・」 サラリーマン風のサラリーマンは眼鏡をずり上げて笑った 「たいやきさんをゆっくりだしてね!もしたいやきさんをたべちゃったら、つつみがみがのこっているはずだよ!」 「おとなしく観念するのぢゃ」 「流石は音に聞くゆっくり霊夢・・・だが私は自供したりしないぞ!」 「ビシッ!黙秘権を発動する!」 「不味いぞ霊夢君!ここで黙秘で時間稼ぎされたら、鯛焼きが冷めてしまうぞい!」 ほかほかでふわふわでほくほくの鯛焼き・・・ その温もりが今にも奪われようとしている・・・ 「ゆ・・・ゆるぜない・・・!」 怒りが再び滾り始め、ゆっくり霊夢の体が膨らんだ そのサイズは大人1人のサイズをゆうに圧倒する 「にんげんさんゆっくりはいてね!はかないと・・・」 _人人人人人人人人人人人_ > 増えちゃうぞ!!! <  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄ __ _____ ______ __ _____ ______ ,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、 ,´ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、 'r ´ ヽ、ン、 'r ´ ヽ、ン、 ,'==─- -─==', i ,'==─- -─==', i i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i | i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i | レリイi (ヒ_] ヒ_ン ).| .|、i .|| レリイi (ヒ_] ヒ_ン ).| .|、i .|| !Y!"" ,___, "" 「 !ノ i | !Y!"" ,___, "" 「 !ノ i | L.',. ヽ _ン L」 ノ| .| L.',. ヽ _ン L」 ノ| .| | ||ヽ、 ,イ| ||イ| / | ||ヽ、 ,イ| ||イ| / レ ル` ー--─ ´ルレ レ´ レ ル` ー--─ ´ルレ レ´ 「なぬ!?」 そうしてゆっくり霊夢はそいつの体を両側から挟み・・・ 「いや助かったよゆっくりくん!」 数分後 ゆっくりの体による全身マッサージで明らかに顔色の良くなった男がそこにいた あれ程悩んでいた眼精疲労もばっちりだ 「ゆっくりしてよかったね!」 ちなみにゆっくり霊夢はいつのまにか元に戻っている 「これはどういうことデスか?」 「つまりこの人は目の疲れを癒すために盗っていたわけなのじゃから、その悩みを解消するためにマッサージしたんじゃろ。羨ましいのう」 「どろぼうははんざいだよ!ゆっくりはんせいしてね!」 「はい。そうそうこれは不要になったのでお返しします」 「と、いうわけじゃ」 「なるほど」 サラリーマン風のサラリーマンは懐から取り出した2つの鯛焼きをゆっくり霊夢の口に入れた 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!」 「では失礼します」 ゆっくりは満腹し、サラリーマンは満足そうに帰っていった 「ワレワレも仕事にもどりまショウ」 「うむ。・・・あれ?いま鯛焼き2つなかった?」 博士は首をひねった 「そ、そういえばわし食ってないぞ・・・ゆ・・・ゆるぜん・・・!」 「はいはい」 名前 コメント
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ゆっくり魔理沙はご満悦だった。 今までお友達のゆっくり霊夢たちと思う存分ゆっくりしていたからだ。 日があるうちはぽかぽかとしたお日様の下で草原を走り回り、蝶々を追いかけばったと一緒に飛び跳ねる。 お腹が空いたら蝶々やばったを食べたり花の蜜を吸ったりした。 夜はゆっくり霊夢たちの巣で、夜通しゆっくりとおしゃべりに興じたり、星を眺めて眠ったりした。 この数日間は、ゆっくり魔理沙にとって本当に幸せな日々だった。 もっとゆっくりできるといいなと思いながら、ゆっくり魔理沙は自分の巣に戻ることにした。 お友達のゆっくり霊夢たちは、もっとゆっくりしてほしそうだったが、たまには別のゆっくりをしたくなるのだ。 「ゆっくりしていってね!」 おおよそ四日ぶりに巣に戻るゆっくり魔理沙。 その巣は落雷で死んだ木の洞だ。 ゆっくり魔理沙一匹には広すぎるが、自分が気に入ったものを並べたりできるから、そこはまさに楽園だった。 巣の周りには緑鮮やかな木々が立ち並んでおり、草も豊富で色とりどりの花々が思い思いに咲き誇っている。 そばには川も流れていて、そこで暮らしている限りゆっくり出来ないことなどないと思える。 大勢でゆっくりするのもいいが、一人でゆっくりするのもまたいい。 ゆっくり魔理沙は久しぶりにするそれに、期待で目をぎらぎらさせながら飛び跳ねていた。 鼻息も荒く、興奮で頬ははちきれんばかりにふくらみ、いつも以上に赤らんでいる。 焼け焦げが目立つ折れた木が見えてきた。 そこには四匹のゆっくり魔理沙たちがいた。群れのようだ。みな微笑みながらゆっくりしている。じつに楽しそうだ。 同種のゆっくり同士には、基本的に縄張りの意識はない。 だから帰ってきたゆっくり魔理沙は元気よくその群れに飛び込み一声あげた。いつもどおりの鳴き声だ。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 次々と聞こえるそれはやまびこのようだった。 帰ってきたゆっくり魔理沙は手近なところにいた中くらいの、と言っても帰ってきたゆっくり魔理沙と同じくらいのゆっくり魔理沙にほお擦りをした。 「ゆぅ~」 「ゆゆゆ」 気持ちよさそうな声をあげて親愛の情を返す中ゆっくり魔理沙。 その様子を微笑ましそうに見ている群れの長だろう大ゆっくり魔理沙。これは帰ってきたゆっくり魔理沙よりも一回り大きい。 明らかに繁殖経験ゆっくりだ。きっと群れの仲間はこれの子供たちなのだろう。 しばらく五匹でゆっくりしていたが、小さな声が聞こえてきた。 「おかーさーん、ゆっくりしようね!」 「しよーしよー!」 「ゆーゆー!」 大きな木の洞から小さなゆっくり魔理沙が三匹でてきた。中ゆっくり魔理沙よりも一回り小さいそれらは、今まで眠っていたのか大きなあくびをしている。 「ゆゆっ!?」 帰ってきたゆっくり魔理沙は戸惑いの声をあげた。 今、小ゆっくり魔理沙たちが出てきた見覚えのある洞は、自分の巣ではないか? そんな疑問を抱いたゆっくり魔理沙をよそに、小ゆっくり魔理沙たちは大ゆっくり魔理沙に頬をこすられて気持ちよさそうにしている。 「ゆゆゆゆっ!?」 いぶかしげな顔をしながら、ゆっくりと巣に近づいて、中の様子を探るゆっくり魔理沙。 「ゆ゛っ!?」 中は酷い有様だった。ゆっくり魔理沙が集めた宝物の鳥の頭蓋骨は粉々に砕かれていてもはや白い残骸だ。 布団代わりに敷き詰めた草は半分以上がむさぼられていたし、後で食べようととっておいた桃はどこにもなく、代わりに食べかけのカボチャがでんと置かれていた。 なかでも一番嫌だったのが、巣の中から自分の臭いがまったくしないのに、それとは違うゆっくりの臭いがしていることだった。 急にゆっくり魔理沙の頭に餡子が上る。 その視線の先には飛び跳ねている小ゆっくり魔理沙の姿があった。 「ゆぅううーーーっ!」 跳躍し、小ゆっくり魔理沙の一匹に体当たりする。 「ゆぎゃっ!!」 吹っ飛ばされ転がる小ゆっくり魔理沙。 続いて他の小ゆっくり魔理沙を弾き飛ばそうとするが、それは出来なかった。中ゆっくり魔理沙が思い切り体当たりしてきたのだ。 「なにするのー!」 「ゆぐっ!」 家族を攻撃されて、こちらも頭に餡子が上った中ゆっくり魔理沙。威嚇なのか「ぷんぷん!」といいながら帽子のリボンをひときわ大きく広げている。 他の中ゆっくり魔理沙も無言でにじりよってくる。 弾かれた小ゆっくり魔理沙は、ほかの小ゆっくり魔理沙たちと一緒に、大ゆっくり魔理沙にすりよって慰められていた。 体勢を立て直したゆっくり魔理沙は、その場で勢いよく飛び跳ねて声高に訴える。 「ゆっゆっ!わるいのはそいつらだよっ!」 「わるくないよっ!まりさたちはいいものだよっ!!」 すぐさま言い返す中ゆっくり魔理沙。リボンはまだ大きい。 言い合いは続く。他の中ゆっくり魔理沙もそれに混じる。 「ゆぅ~、ここはまりさのおうちなのっ!ゆっくりしないでね!」 「なにいってるの?ここはまりさたちのおうちだよ!!!」 「ちーがーうーの~!まりさのおうちなの~~!いいからさっさとでてってね!!」 「いやだよ!ここはまりさたちがゆっくりするおうちだよ!!」 「ちがうもん!ちがうもん!!はやくでてけっ!」 地団太を踏むように小刻みに跳ね続け、顔を真っ赤に染めてゆっくりしないで叫ぶゆっくり魔理沙。 中ゆっくり魔理沙たちは、そんな様子を餡子が腐ったようなものを見る目でみつめている。 「ここはまりさたちがみつけたんだよ!」 「まりさたちのおうちだもん!ゆっくりしないでさっさとどっかいってね!!」 「はやくきえてね!まりさたちはゆっくりするから!」 「「「ばーかばーか!うそつきー!どっかいけ!!かえれー!!!」」」 ゆっくり魔理沙は三匹に立て続けに言われてとうとう怒ったのか思い切り飛び掛った。 「いいからさっさとでてくのーーー!」 体当たりされて転がる中ゆっくり魔理沙。それを見て勝ち誇るように鼻で笑うゆっくり魔理沙。 「なにするのーッ!!!」 「ゆ゛ッ」 同時に重い音とともに潰されるゆっくり魔理沙。大ゆっくり魔理沙が飛び乗ったのだ。 すぐさま中ゆっくり魔理沙のもとへと跳ねよる大ゆっくり魔理沙。だが中ゆっくり魔理沙は大丈夫だと言うように跳ねている。 そのままゆっくり魔理沙へと向かう。 「ゆ~~」 体を起こすと、ゆっくり魔理沙は中ゆっくり魔理沙に囲まれていた。いや中ゆっくり魔理沙だけではない、六匹の群れが全員でゆっくり魔理沙を取り囲んでいるのだ。 ゆっくり見渡したところ、逃げられるような余裕はなかった。とたんにきょろきょろと慌てるゆっくり魔理沙。 「ゆっゆっゆっ?」 なぜ囲まれているのかゆっくり魔理沙には理解できない。自分はただ、自分の巣でゆっくりしたかっただけなのだ。 「ゆー!」 べよん。 小ゆっくり魔理沙が体当たりする。少し痛かったが、すぐにしかえそうとするゆっくり魔理沙。 しかし逆側からも体当たりされる。 「ゆぅっ!!」 そちらを向く。 すると背中に衝撃が。 「ゆぐっ!?」 ほどなくゆっくりリンチが始まった。 大ゆっくり魔理沙がのっかり攻撃し思い切り飛び跳ねる。 まわりで中ゆっくり魔理沙は三方向から勢いよく体当たりをする。 その隙間からは小ゆっくり魔理沙が噛み付いているのが見える。 みんな思い思いの方法で、ゆっくり魔理沙に暴行を加えている。 ゆっくり魔理沙は最初こそ反抗的だったが、ものの数秒もしないうちに号泣し、命乞いの声をあげていた。 しかし群れの攻撃はやむどころか弱まる気配すらない。ぼこぼこぼこぼこといい音がしている。 それに混じる悲鳴や泣き声。なにかが飛び出る音。 「ゆっゆ゛っゆっゆ゛っゆっゆ゛っ!!!」 「いや゛っ!いや゛っ!よじでっ!びゅっ!」 「ぐるぢいよ!だぢでっ!やべでぇっ!!だぢでよおおお!!!」 「どお゛じでごん゛な゛ごどずる゛の゛ぉ゛お゛ぉ゛!?」 「い゛や゛ぁあ゛ぁぁぁ゛ぁ゛ぁあ゛ぁ゛ぁぁぁ」 「も゛う゛や゛め゛て゛ね゛っ゛!」 「い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛」 「ゆ゛っぐり゛じだい゛よ゛ぅ」 「ゆ゛……っぐり゛……ざぜ……でぇ……ぜっぜっ」 「……ッ!……ぅっ!!…………っ」 ぴくぴくと動くゆっくり魔理沙のようなもの。 それは涙と鼻水、よだれや泥で汚れきっており、餡子まみれで帽子もこれ以上ないほどによれて、ところどころに噛み跡が見える。 もはや虫の息でゆっくりとしているゆっくり魔理沙。 「ゆっ!」 仕上げとばかりに大ゆっくり魔理沙はそれに思い切り体当たりをする。 餡子を撒き散らしながら声もなく転げていくそれを追いかける三匹の中ゆっくり魔理沙たち。 それは近くの川岸でゆっくりと止まった。 その様子に明らかに不満顔で膨れていく三匹。顔を見合わせると、何かを決めたように頷く。 「「「ゆぅ~う~うぅ~っ!!!」」」 声を合わせて、三匹は汚れたゆっくり魔理沙を川に投げ入れてやった。 「「「ゆっくりしんでね!」」」 汚れたゆっくり魔理沙が川をゆっくりと流れていく様子を、げらげらげらげらという笑い声が見送っていた。 ぶくぶくと泡をだしながらゆっくりと薄れていく意識の中でゆっくり魔理沙は思った。 こんなことならゆっくり霊夢たちの巣でもっとゆっくりしてればよかった……と。 おわり。 著:Hey!胡乱
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ここは、広大なゆっくり平原。 ゆっくり名所である池や、川、森、山など、ゆっくりたちが思う存分絶頂にゆっくりできる場所。 そんなゆっくり平原の辺境の森で、ゆっくり霊夢は空を飛んでいた。 もちろん自力ではない。 自力で飛べるゆっくりなど、捕食種であるゆっくりれみりゃとゆっくりふらんだけだったのだ。 ゆえにゆっくり霊夢は夢見心地だった。まさか空を飛べる日が来るだなんて。 頬が風を切って進む感覚。 ぐんぐんと流れていく景色。 徐々に、だが確実に遠くなっていく地面。 視界は広がり、遥か彼方まで見渡せる。 生まれてから死ぬまでに見ることなど、絶対に叶わない素敵な光景。 ゆっくり霊夢の小さな胸は感動でいっぱいだ。 それもこれも、みんなこの「うーぱっく」のおかげだった。 「わぁい!おそらをとんでるみたい!」 「ばかだぜれいむ!まりさたちはおそらをとんでるんだぜ!」 「うー!」 「とんでる!とんでるよ!!うわぁ~♪とりさんよりはやいや!」 「う~♪」 ゆっくり霊夢はご満悦の表情で、自分とゆっくり魔理沙を乗せて飛んでいる二匹のゆっくり種を 見ながらついさっきのことに思いを馳せた。 うーぱっく。 外見はゆっくりれみりゃを直方体にしたものだが、性質はそこまで強暴ではない。 なぜなら、出会い頭に襲撃してこなかったから。 いや、たしかに急に近づいてきたから、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙の二匹は思わず死を覚悟した。 自分たちも、今までにいた他の仲間と同じようにゆっくりれみりゃに食われるのだと思った。 だが、目を瞑り震えながら身を固めていた二匹に聞こえたのは「うーうー!」という人懐っこい声だった。 恐る恐る目を開くと目前にぱたぱたと浮遊しているそれ。 「ゆぎぃっ!」 恐怖の声をあげる二匹。 しかし覚悟した苦痛はいつまでもやってこない。 よく見るとそれは一つの動作を繰り返している。しかもにこにこ笑顔で、だ。 顎を上げるようにしているそれをゆっくり霊夢はこう解釈した。 「ゆぅ……?なぁに?の、のせてくれるの?」 「うー♪」 いかにも!と言うように返答する。 「だっ、だめだぜれいむ!あぶないぜ!それはれみりゃだぜ!!」 ゆっくり魔理沙が警告する。多少見た目が違い、少し人懐っこいからといってそれはゆっくりれみりゃに 違いないのだ。どんなに懐いていたとしても、それが猛獣だと忘れてしまったら危険な事故が起こる。 自分たちより圧倒的に強い相手には、警戒はいくらしてもしすぎると言うことは無い。 だが、ゆっくり霊夢はそれの誘いに乗った。 すでに死んだ身だという気持ちだったからだろうか? 「ゆっくりはいるよ!」 言って飛び跳ねると、ゆっくり霊夢の体はそれの頭頂部に開いている窪みに収まった。 「ゆ?ゆ、ゆ、ゆゆゆ?」 徐々に浮かび上がってくる。飛んでいるのだ。 目線が高くなる恐怖にいくらか震えていたが、ゆっくり霊夢はすぐに慣れてしまった。 それがゆっくりと静かに飛翔していることも関係しているだろう。 「まりさー!すごいよ!おそらをとんでるみたい!」 「れいむ、うらやましいんだぜ!はやくかわるんだぜ!!まりさによこすんだぜ!!」 ゆっくり魔理沙は、それに乗ってくるくると飛んでいるゆっくり霊夢を見て顔をゆがめていた。 「ねぇねぇ、れいむはいいからまりさをのせてあげて!ゆっくりおねがい!」 しかしそれはゆっくり霊夢の言うことに反応しない。ただ「うー」と鳴くだけだった。 もどかしげに身を震わせ、声を張り上げる。 「ねぇ!ゆっくりきいてるの?まりさとかわってあげてよ!ゆっくりしていってね!」 「うーうー!!」 それをかき消すかのような大きな声でそれは鳴いた。 「ゆっ!?」 するとどこからともなく同じような泣き声が聞こえてくるではないか!やがて、いくらもしないうちに もう一匹のそれが姿を現した。 「うーうー」 「うー」 「うっうー」 「うぅ~」 何らかの意思の疎通。そして後から現れたそれはすぐにゆっくり魔理沙へと降下していった。 「ゆぅ?のせてくれるのか?だぜ」 「う~♪」 「ゆゆゆぅ~~~!」 感極まったような高めの声で慌てて飛び乗るゆっくり魔理沙。 どっしりと座ったようなそのおさまり具合は、まるでそれが自分のために存在しているかのような 錯覚をゆっくり魔理沙に与えた。 素晴らしい一体感。 これを覚えてしまえばゆっくりアリスの強制すっきりなど物の数ではない。 「すごいぜ!ゆっくりとんでるんだぜぇ!!」 「まりさ!まりさぁああぁ!!」 「れいむぅううぅぅううぅぅぅ!」 二匹はランデブーするかのようにお互いの周りを旋回し、揃って空を飛ぶ幸運を堪能し始めた。 並んで飛行し、川を越え、枝を飛び越えて流れるように飛んでいく。 地面を飛び跳ねているだけでは、決して味わえない愉悦。ゆっくり霊夢たちは今、幸せの絶頂にいると 思った。自分たちはなんて幸せなんだろう!そして、この出会いに感謝したくなった。 「ゆ?そうだ!おなまえをゆっくりおしえてね!」 「うー?」 「おなまえだよ、お・な・ま・え。れいむはゆっくりれいむっていうんだよ!れいむってよんでね!」 「うー……ぱっく……」 とまどいがちに伝えるそれ。 うーぱっく。 ゆっくり霊夢はそれを聞くと目を輝かせて 「うーぱっくっていうんだね!ゆっくりしようね!うーぱっく!」 と頬を紅潮させて言った。 「まりさも!ゆっくりするぜ!ゆっくりまりさっていうんだぜ!」 二匹のうーぱっくはゆっくり霊夢たちを乗せて何処までもいつまでも飛んでいた。 木に成っている実を貪り食べていた二匹は、いつのまにか日が傾いていることに気づいた。 空は茜色に染まっていて、吹く風も冷ややかになり、鴉の鳴き声がどこか哀愁を誘う。 沈む夕日を今までに無い高みから望んで、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙は思わず涙ぐんだ。 圧倒的な情景。 空を翔る鳥たちは、いつもこんなものを見ているのか。 髪を撫でて耳を抜けて過ぎ去る風は、こんなにも冷たく、もの悲しいものだったか。 二匹に去来する思い。 それがなんなのか理解できないし、言葉にもできない。だが、ただ「そこにある」と感じることは出来た。 二匹はなんだか無性におうちに帰りたくなっていた。 「ねぇうーぱっく!ゆっくりかえりたいよ!ゆっくりかえしてね!」 「う、うー!」 うーぱっくは一声鳴くと、もと来た空を引き返し始めた。 ゆったりとしたその飛行は、余計に「帰る」ということを意識させ、二匹の心は逸っていく。 大地が近づき、森の深緑に包まれる。 木と土の匂い。慣れ親しんだそれが二匹の鼻孔をつくと、言い知れぬ安心感がにじんだ。 ゆっくり霊夢はおうちに帰ったら家族に今日のことを言って聞かせてあげようと考えていた。 うーぱっくとの出会い、初めて大地から離れたこと。 風を切って飛ぶ感覚。 大空の青。流れ往く雲の白。夕焼けの茜色。 お日様が沈んでいくと、風が寂しく聞こえること。 きっと妹たちは羨ましがるに違いない。母はそれは凄い体験だったね!とまるで我が事のように 喜んでくれるだろう。そうだ、明日は妹達も誘ってうーぱっくとも遊ぼう!ゆっくりしたいい考えだね! ゆっくり霊夢は自然と表情が緩んでいった。 「れいむ!れいむ!!」 「ゆ?」 そんな物思いに耽っていたゆっくり霊夢を、親友のゆっくり魔理沙は緊張したような声で必死に呼びかけていた。 「どうしたの、まりさ」 見ればゆっくり魔理沙はどこか緊張した面持ちで、やや汗ばんで見える。 「かおいろがわるいよ、まりさ。ぽんぽんとらぶる?」 「ちがうよぅ!まえをみるんだぜ!!」 「?」 ゆっくり魔理沙の必死の訴えに、きょろきょろと見回すゆっくり霊夢。 「ゆゆっ!?」 そこは見たことのない場所だった。 森の中でも他に類を見ないほどに木々が鬱蒼と茂っており、空のように広がっている木の葉のせいか どこか音が遠くにあるもののように聞こえてくる。 夕暮れではあるが、ここは特に暮色が濃い。夕闇の彼方から何か得体の知れないものがひっそりと 這いずり出てきてもおかしくないと思えるほどだった。 「ここどこぉおぉおお~~~っ!?」 「うー!うー!」 「ゆっくりかえしてほしんだぜ!おうちにかえすんだぜ!」 「うっう~~!」 ゆっくり霊夢たちの叫びに声を返すうーぱっく。しかしそこに意思の疎通は皆無だ。 「うー!うー~~~!!」 誰かに呼びかけるような嘶き。 するとどうだろう、周りの森林から唱和するように同じ泣き声が聞こえてくるではないか! そしてがさがさと枝葉を揺らして現れるのは五匹のゆっくりれみりゃだ。 「ひぃっ!!」 五匹は悲鳴をあげたゆっくり魔理沙を、そのにこにことした笑顔の目のままでねめつけると 二匹のうーぱっくを取り囲むようにして羽ばたき、進み始めた。 その先には洞穴があった。 そこは巣だ。 ゆっくりれみりゃの巣窟なのだ。 「うーうー!」 「ぎゃおーーーー」 わずかに漏れ出てくる泣き声が、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙を心胆寒からしめた。 二匹は恭しく運ばれる供物のような態で奥へ奥へと連れて行かれる。お互いを見詰め合うが どちらも涙目で震えていて歯の根があっていない。 うっすらと月光のような冷たく柔らかな光を皓々と発する岩々が過ぎ去り、湿った空気が まるでからみつくように流れている。しっとりとした天井の岩肌からは、時折水滴が落下しており 水の弾ける音がこだましている。 平常であれば、涼しくて水滴の音も耳に心地よいこの洞穴は、とてもゆっくり出来る場所であろうが すでにゆっくりれみりゃの巣になっており、それ以上に二匹はうーぱっくに連れられゆっくりれみりゃに 囲まれているのが現状だ。とてもゆっくりする暇などない。 唯一できることは、ゆっくりと死の覚悟をすることだけだろう。 どれほど進んだろうか?先にはまばゆく光るものがある。 巣の広間なのだろう、今までになく明るいそこにはたくさんのゆっくりれみりゃがいた。 体のないやつ、あるやつ、小さいやつ、大きいやつ、うーぱっく。 さまざまだ。 さまざまだが、それぞれが思う存分ゆっくりしていた。 ゆっくりと、していた。 左に目をやれば、そのゆっくりれみりゃはうーぱっくと五匹ほどで小さなゆっくりぱちゅりーを空中で キャッチボールのようにして遊んでいる。地面には親と思しきゆっくりぱちゅりーが声を上げて、弱い体を なんとか飛び跳ねさせているが、空中のそれらには決して届くことはない。 「むっぎゅぅ~~!むっぎゅぅうううぅぅ!!」 「……むきゅっ!……みきゅぅうぅ!!」 弄ばれている子ゆっくりぱちゅりーは生来の脆弱さもあいまって、すでに半分以上死に体だ。 投げ飛ばされ受け止められているので、ゆっくりれみりゃの牙で帽子はずたずたになり髪もぼろぼろ、 肌に至っては蒼白を通り越して蝋のように白くなっている。見れば右目が飛び出てぶら下がっている のがわかるだろう。 しかしそのゆっくりれみりゃたちは気にしない。玩具だからだ。下で必死に取り返そうと飛び跳ねている 親ゆっくりぱちゅりーが、とうとう口から紫色をしたクリーム状のものを吐き出していても相も変わらず にこにこ笑顔で放り投げ、受け止めて別のゆっくりれみりゃに放り投げていた。 右を見れば、そこには大きなゆっくり魔理沙がいた。 本当に大きい。1メートルくらいはあるだろうか。それに3匹のゆっくりれみりゃが群がっていた。 それらは胴体が生えていて、ぷにぷにとした手足もしっかりと動いていた。 「いいこえでなくんだどぉ~!」 「もっとだどぉ~~~!」 「そんなんじゃまんぞくできないんだっどぉ~♪」 一言ごとに平手や拳、蹴りを叩き込んでいる。その一撃ごとに大きなゆっくり魔理沙は 「ゆぐっふ!ぶぎゅぎゅっ!だべっ!やべでよぉおっ!やべっでゅんだぜ!!ぶめぎゃっ!?」 と声を上げていた。見れば皮は裂け、目は片方が飛び出しており、ところどころに餡子が滲み出ている。 「へたくそなんだぞぉ~」 「いぎゃっ!」 一匹が口に手を差し込み、歯をへし折ったのだ。これでゆっくり魔理沙の口の中には歯がなくなってしまった。 「まりゅしゃしゃみゃに……きょんなこちょしちぇ、ひぃ、たぢゃでしゅむとおみょうにゃ!だじぇ!!」 怒りと復讐心を湛えた燃えるような目。それに見つめられても三匹はにこにこ笑顔を崩さなかった。 むしろ、嘲笑の色が混じっていた。 「う~♪おまえのむれはもうないんだっどぉ~~」 「わすれたのか?どぅー」 「みんなみんな、れみりゃたちでくってやったんだどぉ~~~♪」 「なかなかうんまかったんだどぉ~☆」 「ほめてやるんだどぉ~~」 「ゆっ!?」 そうだ。そうだった。 大きなゆっくり魔理沙の脳裏にあの光景がよみがえる。 このゆっくり魔理沙は運が良いゆっくりだった。幼い頃、家族が獣に襲われたときもそれに跳ね飛ばされて すぐ側の茂みに転がり込んだことで一匹だけ助かった。その後、仲間と狩りをしていて二手に分かれたバッタ を追いかけたときも、相棒のゆっくり霊夢が追いかけた先には蜂の巣があって死んだのだった。 それから大きくなり、自分が支配する群れを持ったときまでその運の良さは発揮されていた。さらに言えば 体が大きくなったことで、自身を脅かすものが比較的少なくなっていたことも災いした。 脅威を、自分たちゆっくりは弱い立場であり、それを脅かすものが存在するということを、失念していたのだった。 それが致命的だった。 夜に、ゆっくりれみりゃの襲撃があったのだ。 自分を頂点に、おおよそ50匹はいた群れ。そのほとんど全てがたった3匹の、今目の前にいるゆっくり れみりゃによって屠られてしまった。群れには自分に及ばないまでもそれなりに大きなゆっくりもいたというのに、 まるで手も足も出なかった。 虐殺と蹂躙の限りを尽くした3匹は自分を含めた何匹かのゆっくりをこの場所に運び入れて、 自身の群れの餌や玩具としてゆっくり魔理沙たちを扱った。 それから続いた地獄の毎日がその恐るべき夜の記憶を薄めたのだった。 「これをみるがいいどぉ~~~」 一匹が飛び上がり、もたもたと上昇してゆっくり魔理沙の帽子をひっぺがした。 「ゆ゛っ!」 帽子を剥がされるという、今まで感じたことのない刺激に、思わず声を上げてしまう。 頭頂部は露出し、うっすらと餡子が滲み出て甘い匂いが漂い始めた。 すると、あたりのゆっくりれみりゃたちの目がこちらに向く。だが、その3匹はそれらを無視して 剥がしたものをゆっくり魔理沙の眼前で広げたのだ。 「ゆげぇえぇえぇえぇぇぇんっ!?!?」 帽子から、剥がれた髪の毛が垂れているが、問題はそれではない。 そこには苦悶の表情を浮かべたゆっくりたちの顔の皮がいくつも貼り付けられていたのだ。 どれもこれも苦痛と怨讐に満ちており、まるで見ているゆっくり魔理沙を恨みぬいているようであった。 自分は今までこんなものを頭にくっつけていたのか!? 「こっちはおまえのこどもなんだどぉ~~!さいごまでおとーさんおとーさんやかましかったんだどぉ~~~」 「これはれいむだどぉ~」 ゆっくりれみりゃは憤怒の形相で歪んでいる顔の皮を指す。 「こいつはぁ、こどもをまもろうとしてとびかかってきたから、ひっぱたいたらすぐしんだんだどぉ~」 「あれはもろかったんだどぉ~!わらえたんだどぉ~~~☆」 「こどものさけびが、すっごくたのしかったんだどぉ~☆」 「なかみがよじれてしぬかとおもったんだどぉ~~♪」 「ゆっぐっぐぐぐ!!!」 ゆっくり魔理沙は目の前に広げられた家族のデスマスクに悲しみの嗚咽を上げていた。 やがてその様子に飽きたのか、三匹のゆっくりれみりゃはそれを放り投げると、周りで様子を伺っていたほかの ゆっくりれみりゃたちに向かって 「こいつはもういらないんだどぉ~☆」 「すきにするんだどぅ~~♪」 「ちゃんととどめはさすんだどお~~~」 と言い放った。 「ゆっ!?ゆっぎゅりだずげでね!?」 「おまえはもうあきたんだどぉ~~」 「もっとおもしろいこといえ!」 「うっうー!うあうあ♪」 「いやあぁあぁあああぁぁぁ!!」 たくさんの爛々と輝く瞳。それらが一斉に大きなゆっくり魔理沙に向かって飛び掛っていった。 楽しそうな声に混じり、痛みをうったえ命乞いをする声が聞こえ、さらに大きいゆっくり魔理沙の皮を引き裂き 肉をかき混ぜ、引きちぎり、咀嚼する音によって覆い隠されてしまった。 また別のほうを見れば、そこにはうーぱっくやゆっくりれみりゃに餌をやっている胴体付きのゆっくりれみりゃがいた。 子ゆっくり霊夢を思い切り放り投げて、それを口で咥えて捕るというゲームじみたものだった。 「やめちぇぇええぇっ!!たちゅけちぇぇえぇぇえええぇぇ!」 「いじわりゅしにゃいでゅぇぇえええぇぇ!」 「おかあちゃあぁあぁあああぁぁぁん!!」 「うるさいんだっどぉ~、おかあちゃんならあれだどぅ~☆」 ゆっくりれみりゃの指差す先には、ただの肉塊があるだけだった。あたりに餡子を撒き散らし、わずかに見える リボンの赤が、それをゆっくり霊夢だと理解させるただひとつのものだった。 おそらく頬を左右に引っ張ったのだろう、顎下あたりから無残に二つに裂けている。 「おかぁちゃぁああぁああぁぁぁん!!!」 「いっぱいたべるんだどぉ~、たっくさんあるんだっどぉ~~♪」 「うー!うー!」 「うっう~~!」 「うぁー!うあー!」 何処もかしこもそんな様相だ。 これがゆっくりれみりゃの食事なのだった。 ゆっくりれみりゃにとって、ゆっくり霊夢やゆっくり魔理沙などのゆっくりは、餌であり玩具なのだった。 だから軽々しく弄び、蹂躙する。壊れてしまうなんて構いやしない。 壊れてしまえば捨てればいいのだ。 玩具はそこらじゅうにたくさんあるのだから。 「それはなんだどぅ~?」 大きなゆっくり魔理沙を虐めていたゆっくりれみりゃが一匹、うーぱっくのほうへとやってきた。 そのふわふわとした浮遊は、とても飛んでいるといえる速度ではなかったが、それでも囚われたゆっくり霊夢と ゆっくり魔理沙の二匹にとって脅威であることに変わりはなかった。 「うー!うあ~!」 「うあー♪うっうあ~♪」 うーぱっくが何を言っているかはわからない。しかしひょっとしたら自分たちは食べられないかもしれない。 ゆっくり霊夢たちはそんな淡い希望めいたものを抱いた。 「まりさをたすけてほしいんだぜ!!はやくはなすんだぜ!!」 ゆっくり魔理沙も身をよじりながら必死に訴えかけている。だがゆっくりれみりゃはそれらを無視して うーぱっくの言葉に耳を傾けている。 「ごはんをじぶんでとるなんて、えっらいんだっどぉ~~☆」 「うあ~~☆」 「どおじでぞんなごどい゙ゔの゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ぉぉぉっ!!!」 「たべちゃだべだんだぜええぇぇっっ!!おいじくないんだぜえええええ!!!」 「う~?」 「おどもだぢっ!ぜっがぐれいぶだぢど、おどもだぢになれだどおぼっだのにぃいぃいぃぃぃっ」 「あじだはがぞぐどいっぢょにもっどゆっぎゅりじだがっだのにぃぃいいいい!!」 「なんでだばじだの?どおじで!?どおじでぇえええええぇぇぇぇっ!!??」 涙をだくだくと流しながら絶叫するゆっくり霊夢。 しかしうーぱっくは意に介さず、ただ一言 「うー!」 とだけ鳴いた。 「あっぁつぁつっ!!へんだよぉっ!!れいむぅっ!!へんなんだぜぇ!」 ゆっくり魔理沙が声を上げる。今までにない声色に、ゆっくり霊夢は嗚咽を上げながらも振り向いた。 「どうしたの、まりさ」 「なんかからだがへんなんだぜ!おかしいんだぜ!!」 ゆっくり魔理沙は、自身に襲い掛かりつつある異変に気づいた。体が崩れ始めているのだ。 「と、とけてるううぅうううぅぅぅ!!!まりざのかりゃだがどげでりゅんだじぇぇえええぇぇぇ!!!」 左右に体を暴れさせるゆっくり魔理沙。しかしその体はにちゃにちゃとした粘液が付着し、とろとろの 液状になり流れ始めていた。 これがうーぱっくの最大の特徴だ。 うーぱっくはゆっくりれみりゃの変種である。つまり捕食種なのだ。しかしうーぱっくは成長すると 経口摂食をしないようになり、このようにゆっくりを自身に乗せてじょじょに溶かしていってしまうのだ。 何故かはわからない。 しかし自然界にも似たような生き物が存在するのだから、それほど不思議なことでもなかった。 「うわあああぁあぁああぁぁっっ!!まりゅいざをだじゅげでぇええぇぇっ!!おねがいいぃい!!」 「うー?」 「ああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」 よくわからないと言うように唸るうーぱっくに、ゆっくり魔理沙の絶叫は続く。 「まりざああああぁぁぁっ!!ま゛ぁり゛ざあああああぁぁぁぁっ!!!!」 さらにゆっくり霊夢の絶叫も重なる。思わず聞きほれたくなるほど甘美なる合唱。 そこにゆっくりれみりゃが声をかけた。 「すのばしょをいえばたすけてやるんだどぅ~」 「ゆっ!?」 「さっきかぞくっていったんだど~~~♪」 「えらぶんだどぉ~~~★」 「いっ、いやだよ!!かぞくはだいじだもん!」 「どっちでもいいんだっどぅ~~☆」 いつのまにか、うーぱっくの周りにはあの三匹のゆっくりれみりゃが集まっていた。 「おねぇしゃんおしょいね?」 ちっちゃなゆっくり霊夢は巣の中で不安そうに母ゆっくり霊夢に話しかけた。 「だいじょうぶだよ!まりさといっしょだったし、きっとまりさのすでゆっくりしてるんだよ!」 「ゆっ!きっとしょうだにぇ!うりゃやましいよ!」 母ゆっくり霊夢の言うことを素直に聞き、よそのおうちにお泊りをする姉を羨ましがる妹。 よくある家族像だった。 このゆっくり霊夢の家族は母ゆっくり霊夢に、ゆっくり霊夢、妹ゆっくり霊夢の三匹だった。 出産環境が劣悪だったせいか、母体になったつがいのゆっくり霊夢から生えた蔦には未熟な実がいくつか 成ったが、しっかりと生れ落ちたのは二匹だけだったのだ。それでも片方は未熟児だったが。 しかし朽ちたゆっくり霊夢の黒ずんだ死骸は二匹の子の最初の栄養となり、その血肉のなかに脈打っている。 母ゆっくり霊夢は、つがいのゆっくり霊夢の、文字通り化身とも言える二匹の姉妹をとてもゆっくりと大事に 育て上げていた。ゆっくり霊夢は健康そのもので、すくすくと育ち元気に野原を駆け巡り、今では母と一緒に 十分な餌をとれるほどになった。 もしかすると巣を出るなどと言い出すかもしれないが、それもまたひとつの生き方だ。そのときは祝福して しっかりと送り出してやろうと、母ゆっくり霊夢は考えていた。 思えば自分も若い頃は親の庇護から飛び出し、この平原で将来つがいになるゆっくり霊夢と出会ったのだ。 愛し子であるゆっくり霊夢にゆっくりした未来がありますように。 そうして母ゆっくり霊夢は、もうひとつの愛し子、目の前でゆぅゆぅとしている妹ゆっくり霊夢を見る。 生まれたのはゆっくり霊夢と一緒だったが、こちらは未熟児ゆえに発育が悪いのだ。もうしばらくゆっくりと 母ゆっくり霊夢が育てる必要があった。 外は夜の帳も落ち、そろそろゆっくり眠る時間だ。妹ゆっくり霊夢を巣穴の入り口から守るように身を寄せる。 お互い肌をすり合わせて、眠気を誘う心地よい震えが全身をゆっくりと包み始めた。 「ゆぅ~~、ゆぅぅ~~~」 妹ゆっくり霊夢はすでに半分眠っていた。母ゆっくり霊夢はそのゆっくりとした様子を微笑みながら優しい眼差し で見つめ続けて、体を揺らしていた。 やがて母ゆっくり霊夢にも眠気がやってきた頃に、それは来た。 「う~、おまえのすのばしょはまりさがはいたんだどぅ~♪」 「!?」 ゆっくり霊夢はじめじめとした狭い場所に押し込められていた。ここはゆっくりれみりゃの食料庫で 岩肌にあいた穴にそれぞれさまざまなゆっくりたちが無理やり押し込められていた。 ゆっくり霊夢、ゆっくり魔理沙、ゆっくりぱちゅりー、ゆっくりさくや、ゆっくりめーりん。他にも ゆっくりみょんや、ゆっくりちぇんと、種類も大きさもまちまちなゆっくりたちが穴に納まっている。 特筆すべきは、そのどれもが生きているということ。 ゆっくりれみりゃは、食事と遊戯を一緒に行う傾向があるのだ。さんざん弄び、傷つけ、恐怖を植えつけ、 自身の暴力を味わわせた後に、ゆっくりとそれらを食す。 餌を壊す感触と、耳を振るわせる悲鳴と嗚咽、傷つく皮とそこから噴出す餡子が目を楽しませ、ゆっくり れみりゃの食事をより一層味わい深いものにするのだった。 「ど、どおいうごどぉおおおおぉぉぉっ!!!」 「たすけてやるかわりにいわせたんだっどぉ~~」 このゆっくり霊夢はうーぱっくに食べられる運命にあった。 だがしかし、絶叫と共に飛び出た「家族」という言葉がそれを変えた。ゆっくりれみりゃがその家族ごと 食べてやろうと考えたのだ。 しかし一向に巣の場所を言おうとしないので、この場所に安置しておいたのだ。 「あのまりさはとけるより、おまえをうるほうをえらんだっどぅ~~~♪」 「ゆぅううぅぅ」 「ばかなやづだっどぉぉお☆」 「ゆあぁあぁあぁああぁぁぁっ!!!」 「いまごろまりさはかぞくとゆっくりしてるんだどぉ~~」 「ゆぎゅううううう」 「おまえはかぞくとここでくわれるんだど~~~☆」 「ゆぐぁああぁああぁあ!!まりざあああぁああああああ!!!」 「かぞくがそろったら、いっしょにくってやるんだどぅ~~♪」 そう言うと、ゆっくりれみりゃは近くの窪みにはまっているゆっくりみょんを掴み取った。 「ち、ちんぽ~~~」 「こうやってくってやるんだど~~」 「きょせいっ!?」 そのままがぶりとやった。ゆっくりみょんは白眼を剥いて痙攣している。それを二口で食べてしまった。 「ああ、あああ、あああああ!!!」 「おもしろいかおなんだどぅ~!ゆかいだどぉ~~~♪うっう~、うあ♪うあぁ♪」 やがて、家族がそろったのかゆっくり霊夢はゆっくりれみりゃに引き摺られてあの広間へと来ていた。 「ゆっくりはなしてね!」 「ゆっきゅりはなちちぇにぇ!!」 そこには案の定、ゆっくり霊夢の家族がいた。 羽ばたいているゆっくりれみりゃに咥えられていて、うかつに暴れようものなら地面へと落下してしまう。 二匹には抵抗のしようがなかった。 だがそれだけではなかった。 その場所には他にもゆっくり魔理沙の家族もいたのだ。 「ゆっくりおろしてほしいんだぜ!まりさはおいしくないんだぜ!!!」 「ゆっきゅりおろしゅんだじぇ!」 「ゆぅううぅぅっ!?どうじでなんだぜ!?どおじでまりさのすをおしえたんだぜ!れいむううぅぅぅぅっ!」 その叫びはゆっくり霊夢のお友達のゆっくり魔理沙のものだ。 「まりさがさいしょにうらぎったんでしょ!!れいむはしってるんだよ!れいむのすをおしえたって!!!」 ゆっくり魔理沙の言葉に、怒りをあらわにしてゆっくり霊夢は声を荒げた。 「まりさなんかとけちゃえばよかったんだよ!!どおじでれいむのすをしゃべったの!?」 「し、しらないんだぜ!まりさはなにもいってないんだぜ!!」 「じゃぁどおじでれいむのかぞくがこんなどごろにいるのおぉぉおっ!!!」 「れいむがまりざのずをしゃべるからだぜえええぇええぅ!!!」 ゆっくり霊夢の追求に、ゆっくり魔理沙の絶叫が重なる。 「ぞんなのまでぃざがれいびゅのじゅをじゃべるがらでじょおおおおおお!!じがえじだよっ!!」 「だからじららいっでいっでるんだぜえええええっ!!!ひどいんだぜぇぇ!!」 泣きながら言い争う二匹を、周りのゆっくりれみりゃたちはにやにやと笑いながら眺めていた。 ゆっくりれみりゃはこの二匹をはめたのだった。 お互いがお互いを裏切ったと思い、復讐に お互いの巣の位置を喋ったのは、ゆっくりれみりゃたちにとって愉快の種だった。 「じゃぁどおじでれいびゅのかじょくがごごにいりゅのぉおおっ!?」 「れみりゃが、れいみゅがまでぃじゃのじゅのばじょをいっだっでいっだんだぜ!!」 「まりしゃがれいびゅのしゅをおしえたっでぎいだよぉお!!」 「うーうー!」 そんな言い争う二匹をよそに、うーぱっくがゆっくりれみりゃになにかをうったえた。 「う~!そろそろでなーだどー!」 「うーうー!うあうあ~~~♪」 「うーぱっくはれいむとまりさをたべるといいどぉ~」 「れみりゃはちっちゃいまりさをいただくんだっどーー☆」 「じゃぁれみりゃはおっきなれいむをたべちゃうぞ~~~♪」 「やめちぇね!おいちくないちょ!!やめてっていっちぇるにょにぃ!!」 「こっちはおいちくないいだじぇ!まりしゃはどくなんだじぇ!!ちんじゃうんだじぇ!!」 「やべでええぇえぇっ!!そのこがなにじだっていうのぉおおぉぉっぉっ!!」 妹ゆっくり霊夢はゆっくりれみりゃに握り締められて、中身を漏らした。ゆっくりれみりゃはそこから ゆっくりと中身を吸い上げていく。じゅるじゅると音を立てて萎んでいく妹ゆっくり霊夢。 中身と一緒に元気を吸い取られているようだった。 母ゆっくり霊夢は叩かれ殴られ、千切られて止むことのない悲鳴をあげ続けて食われた。少しでも声を 上げることをやめると苦痛を与えられるのだ、最期には口の下あたりが自然と裂けていた。 ゆっくり魔理沙の家族たちも体中を弄ばれて、痛めつけられながら食べられている。 「れいむのばがああぁぁぁつ!!おまえがうーぱっくなんがにのるがら゛っ!!」 「ぶぎゃっ!までぃざだってのっだでっじょっ!?!?」 うーぱっくに乗せられてもなお、罵声を浴びせあっている二匹。 その体はぐずぐずに蕩けていてもう満足に動くことは出来やしない。 もはや眼と口を動かしてその意識を失うまで緩慢な痛みに身を委ねるしかない状態になってしまった。 二匹にとって幸いなのは、傷みがほとんどないことだろう。 きっといつ自分が死んだのかもわからないほどゆっくりと食べられるに違いなかった。 ここは、広大なゆっくり平原。 森に行けば優しい風が木々を揺らし、耳ざわりの良い音楽を葉が奏でるゆっくり名所のひとつだ。 そんな心地よい音に混じって声が聞こえてくる。 どこか畏れを含んだような、何かを知りたがっているような、そんな声。 「うー♪」 「ゆゆ?……乗せて、くれりゅの?」 「うぅ~~♪」 「ふわっ!しゅごいしゅご~~~い!!おしょりゃをとんでゅぇりゅにょぉおおお~~♪」 終わり。 後半失速してしまった。 狩りの時、うーぱっくは体付きのゆっくりゃを乗せて自由に空を駆けます。 ガンダムのドダイやゲターみたいな感じなのですw 飛行速度:ゆっくりふらん≧ゆっくりれみりゃ>うーぱっく>ゆっくりれみりゃ(体つき) 著:Hey!胡乱 このSSに感想を付ける
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夕闇が迫っていた。 傾いた日差しがアリスの影を伸ばす。 影の先には、「ゆっくり魔理沙」が一匹。震えながらアリスに向かい合っている。 「日暮れ前に帰ると言っていたのに、こんな時間まで何をしていたのかしら?」 穏やかに問いかけるアリス。 逆光となり、その表情はうかがい知ることはできない。 ゆっくり魔理沙の頬に流れる動揺の汗。 「ゆっ、ゆっくりしていたよ!!!」 取り繕うようにピョンピョンと飛び跳ねて、精一杯の笑顔を浮かべてみせるも。 「へぇ」 ごく短い応答にその動きも凍りつく。 「私とあなたとの約束は、そんなことで破られたの」 呟きながら、歩み寄ってくるアリス。 「魔理沙って名前のつくものは皆そうね。今日だって一緒に過ごす約束だったのに、欲しい本を思い出したなんて 勝手な理由でパチュリーの所へ……!」 不満を吐き出しながら、うつむき加減に近づいてくる。 ぷるぷると魔理沙の丸い体が震える。 本当は逃げ出したい。 だが、逃げだした際の末路は、この少女に拾われてからの数ヶ月間で嫌というほど思い知らされていた。 ゆっくり魔理沙は口をゆがめ、いやいやと全身を震わせる。 「ゆっくりした魔理沙がわるかったです!!! ごめんなさいいいいいい!!!」 おいおいと嗚咽をこぼしながらの哀願に、アリスは屈みこんでゆっくり魔理沙と視線を合わせる。 「みっともなく泣かないで。別に怒ってないわよ」 涙でぼやかえた魔理沙の視界には、子供をなだめるようなアリスの笑顔。 頭を優しく撫でるアリスの手に、ゆっくり魔理沙の表情もとろんと落ち着く。 「ほんとう?」 「ええ、怒ってないわ、あなたに何かあったのかと心配しただけ。さあ、早く帰りましょう」 アリスの細い腕に抱き上げられるゆっくり魔理沙。 柔らかな膨らみと穏やかな心音。 少しだけ残っていた魔理沙の緊張も心地よさに解けていくのだった。 翌日、ゆっくり魔理沙は機嫌よく野へ遊びに行く。 昨日の埋め合わせでやってくる魔理沙を迎えるため、今日も外に放りだされたゆっくり魔理沙。 「ゆっくりー!!!」 いつもは家に押し込められているだけに、開放感に勢いよく体も弾む。 このまま、ずっとゆっくりできたらどんなに幸せなことだろう。 だが、どんなに逃げてもなぜか必ず捕まった。 そして、「おしおき」を受けることになる。 前回の脱走では、深い森の奥、枯れた木のウロに逃げ込んで眠っていた。だけど、目が覚めると窮屈で透明な箱の中。 「ゆー?」 境遇を理解できないまま、とりあえず抜け出そうとする。 だが、上下左右、みっちりと詰め込まれてどうすることもできない。 その強制的な「ゆっくり」が、アリスによるものだと気づくのに時間はかからなかった。 横を向くことも許されない固定された視界の端っこに、背を向けて紅茶を口にするアリスの姿。 「おねえさん!!!」 呼びかけてみるも、反応はない。 「おねえさん、ここからだして!!!」 重ねた呼びかけも無視される。 「苦しいよ!!! だして、お願い!!!」 口調に懇願がこもりはじめても、アリスは振り向きもしない。 空しい呼びかけも、応える声がないまま過ぎていく時間。 三時間、何の変化もなく過ぎた頃、席から立ち上がって食事の支度を始めるアリス。 いつも美味しい食べ物を用意してくれた記憶に、ゆっくり魔理沙は「もうそろそろ出してくれるかな」と淡い希望が 芽生え始める。 「おねえさん、おなかすいたよー!!!」 表情の変化すら困難な箱の中、かろうじて愛らしい笑顔を形作るゆっくり魔理沙。 しかし、アリスが作った料理は一人分。淡々と食事を済ませると、魔理沙の視界から消えて、そのまま戻ってくる ことはなかった。 ようやく、ゆっくり魔理沙はアリスの怒りの深さを思い知る。 「ごめんなさい!!! もう逃げたりじまぜんがらっ、だじでぐだざい!!!」 箱を震わしての必死の謝罪。 だが、許されるどころか、もはや省みられることもなかった。 しまい込んで忘れ去ったオモチャのように、ゆっくり魔理沙から完全に興味を失ったアリス。 アリスの家において、ゆっくり魔理沙はもはやオブジェ以外の何物でもない。 そのまま、一日、二日、三日……そして、一週間。 放置されたゆっくりの体は、声を上げる力も失い、少しずつ干乾びていく。 ゆっくり魔理沙は、全身がひび割れそうな、びりびりとした猛烈な痒みに悶えるものの、身動き一つできない。 癒されることのない痒みと痛み。あと、どれだけ苛み続けられれば許されるのか、あるいは死ねるのか、ひたすらに 残された時間が狂おしい。 それだけに、アリスが近づいてきたその時は、ゆっくり魔理沙の期待が燃え上がった。 「おねえさん、いい子になるから!!! だから、だしてください!!! おねがい!!!」 媚を売るように笑顔で呼びかけるも、アリスの手はその箱の近くに置いていた人形を手にとり、そっけなく引き上げていく。 「い゛がな゛い゛でええええ!!! だじでよおおおおおお!!!!」 追いすがる、絞り上げるような声がアリスに届くことはなかった。 放置は続く。 霞んでいく、ゆっくり魔理沙の表情。 一ヶ月後、ようやく箱から出されたゆっくり魔理沙。しかし、しばらくの間、虚ろに壁をながめるだけの生物と化す こととなる。 そういうわけで、「箱」以来、ゆっくり魔理沙は脱走を試みることすらしなくなっていた。 それに、最近はアリスも優しく接してくれるようになってもいるのだし。 昨日のアリスの抱擁を思い浮かべて、魔理沙は嬉しげに森の奥へと飛び跳ねていくのだった。 森の奥、うっそうとした木々の向こうに、陽光の差し込む野原が開けていた。 陽だまりを受けて鮮やかに輝く草むらに、ゆっくり魔理沙は身をおどらせた。 「ゆっくりしていってね!!!」 跳ねながらいつもの言葉を口にする。 すると、にわかに木立が揺れる騒々しい音。 「今日もゆっくりしようね!!!」 言葉とともに姿をあらわしたのは、二匹のゆっくりたち。 一匹はよく見かける「ゆっくり霊夢」で、丸い顔に気色を浮かべて勢いよく近づく。もう一匹は「ゆっくりパチュリー」で、 あまり外にでないことと、病弱ですぐ死ぬために希少種とされていた。 ゆっくりパチュリーは他の二匹に比べ、どこか青白い顔。それでも、ゆっくり魔理沙に向けて懸命ににじり寄っていく。 待ち受ける、ゆっくり魔理沙の表情に浮かぶ心配げな眼差し。 「ゆっくりきてね!!!」 「むきゅーん!!!」 魔理沙に応じるその鳴き声も、この種特有のものとされている。 ゆっくりパチュリーは飛び跳ねることができないのか、じりじりと這いよって、ゆっくり魔理沙の元へぴったりと寄り添った。 「みんなで、ゆっくりしようね!!!」 魔理沙の真上に飛び乗るゆっくり霊夢。 三匹、押し合いへし合い、頬をすりよせている。 アリスに捕まる前からの友達との邂逅に、ゆっくり魔理沙も満ち足りた笑顔だった。 そんな三匹の前を、白い蝶がふわふわと通り過ぎる。 「待って、ちょうちょさん! ゆっくりしていってね!!!」 風に吹かれるがまま漂う蝶々を、思い思いに追いかけていく三匹。 やがて、白い蝶々は蜜を求めて野の花に止まった。 戦闘を駆けるゆっくり霊夢が、勢いよく飛び込んでいく。 「ゆっくりいただきます!!!」 ぱっくり開いた口で、蝶々をまるごと飲み込んで、花ごともぐもぐと咀嚼する。 「霊夢だけ、ずるい!!!」 ゆっくり二名が飛び上がって抗議すると、ゆっくり霊夢は魔理沙の元へ。 いきなり、ぺったりと唇を合わせる。 そのまま、口の中のものを、ぺっ、と渡した。 獲物を受け取った魔理沙は、頷いて最後尾を息を切らしてついてきたゆっくりパチュリーに向き合う。 パチュリーは、荒い息のまま、そっと目を閉じた。 「魔理沙、ゆっくりシてね……」 そんな仕草に、なぜか戸惑った様子でゆっくり魔理沙が口付け。 「む、むきゅうー!!!」 「……!!!」 途端に吸い上げられ、身動きのとれなくなるゆっくり魔理沙。 やがて、ぴくぴくと震えて、色合いが若干紫がかってくる。 「ゆっくり離してね!!!」 ゆっくり霊夢が魔理沙の帽子を噛んで、懸命に引っ張る。 ちゅーっぽんっと、小気味いい音がしてばらばらに弾む二匹。 「……ぷはあ」 満足げなゆっくりパチュリーと、白目をむくゆっくり魔理沙。 ゆっくりたちの繰り広げる楽しげな一幕。 しかし騒動の最中のため、三匹とも聞き逃していた声がある。 無機質な響きを持つ、不思議な声。 「シャンハーイ」 それは、上空から見下ろす、一体の人形の呟きだった。 まだ、日暮れまでは時間があったが、アリスを怒らせないため、名残り惜しそうな友達に別れを告げるゆっくり魔理沙。 懸命に転がってかけていき、一息にアリスの家へ。 アリスは家の外、ゆっくり魔理沙に背を向けて立ち尽くしていた。 「ゆっくりしないできたよ!!!」 慌てて、する必要のない言い訳を口にするゆっくり魔理沙。 「おかえり」 簡潔なアリスの答えだが、返ってくるまで時間を要した。 やがて、アリスの肩がかすかに震え始める。 どうやら、声もなく笑っているらしい。 「ゆー?」 アリスの様子に小首……いや、全身を傾げて疑問を呈するゆっくり魔理沙。 「あのね……魔理沙がうちにきたんだけど、予定を取りやめて霊夢のところの宴会に参加しようぜって、言い出して」 うふふうふふふと、笑いはかすれた声になって、ひそやかにゆっくり魔理沙のもとへ届く。 「なんで、私と二人っきりでいる時に霊夢が出てくるのよ?」 そんなことを聞かれても、ゆっくりは答えられない。 ただ、異様な主の様子を見守るだけだった。 「なんで、私と話すよりもパチュリーの、あの喘息女の図書を漁る方を選ぶのかしら」 アリスの言葉は誰の返事を期待しない罵りと化す。 「そして! 何で、あなたはあの憎たらしい奴と同じ顔をしているのよ!」 「ゆ、ゆっくり、ゆっくりしていってね!!!」 ようやく振り向いたアリスの怒気こみ上げる表情に、ゆっくりはすくみあがっていた。 つかつかと歩み寄り、その顔面そのものを両手で掴まれても逃げる素振りもできない。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ! ゆっくりしてえええ!!!」 ぎゅうううううっと、細腕とは思えないアリスの力で締め上げられるゆっくり魔理沙。 変形して、もはや人の顔の面影もない。 「ねえ、魔理沙。こんな思い、私だけがするのは不公平だと思わない?」 頷かなければ、ぶちまけられる。 ゆっくり魔理沙は同意を涙目で訴えて、ようやくその万力から開放された。 「そう。なら、あなたにもしなければならないことがあるわ」 面白いことを考え付いちゃった。そんな素振りで手を組み合わせて、はにかんだようなアリスの微笑。 そっと、ゆっくり魔理沙の耳元に口をよせて、何事かささやく。 魔理沙の表情は、囁かれる度に火箸を押し当てられたかのように、苦痛の色合いの濃くなる表情。 反対に、囁き続けるアリスの表情は恍惚にとろけそう。 「ねえ、魔理沙。やらなければどうなるか、わかっているわね? あなたと、あなたのお友達が、ね」 いつにも増して可憐な笑顔で念を押す主を、ゆっくり魔理沙は心の奥底から恐怖した。 翌日、いつもの遊び場となる野原にゆっくり魔理沙がやってくると、茂みから顔を覗かせるゆっくり霊夢と パチュリーの二匹。 だが、二匹は魔理沙の後をついてきた人間に、不審げな視線を向ける。 「あの人も、ゆっくりできる人?」 ゆっくり霊夢の視線の先にいる人物とは、アリスだった。 上海人形を肩にのせ、無表情でゆっくりたちを眺めている。 だが、ゆっくり魔理沙は仲間たちの疑問に取り合わない。 「霊夢とパチュリー、よく聞いてね!!!」 強張った顔で告げるゆっくり魔理沙の言葉に、きょとんとして魔理沙を注視する二匹。 そのため、アリスが口の端をゆがめるように笑ったのを、二匹を見逃す。 「パチュリーは病弱で足手まといの癖に、べったりしてきて気持ち悪いよ!!!」 思いがけない魔理沙の言葉に、目を見開いて衝撃をありままに体現するパチュリー。 「目障りなので、家で永遠に寝こんでいればいいと思うよ!!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!」 「パチュリーはゆっくりしね!!!」 魔理沙の追撃に、ガクガク揺れながら、一歩、二歩、ゆっくりパチュリーが遠ざかっていく。 その様子を微笑みで見つめているのはアリス。 学芸会で主役となった子供を見守るように、ゆっくり魔理沙を見つめていた。 「そんなひどい魔理沙とはゆっくりできないよ!!! 謝って!!!」 一方、ゆっくり霊夢は体を激しく弾ませて魔理沙に詰め寄る。 ゆっくり魔理沙はしばらく詰め寄られるがままに後ろに転がっていく。 が、アリスが視界に入って踏みとどまり、叫んだ。 「霊夢なんかと、ゆっくりしたくない!!! 霊夢は餡子が腐ったみたいな匂いがするもん!!!」 「!!!」 今度は霊夢が白目をむく番だった。 「臭いのは大嫌いだよ!!! 大嫌いな霊夢とゆっくりしたくない!!! 目の前から消えてなくなってね!!!」 あれだけ躍動的に弾んでいたゆっくり霊夢の体が、もはや微動だにしない。 しかし、時間の経過と共に震えだす。凍りついた表情の双眸からは、ぽろぽろと零れ落ちる涙。 「ま゙り゙ざびどい゙! びどい゙! びどい゙いいいい!」 ぷるるると、全身を震わせる霊夢。 受け止める魔理沙は身じろぎ一つできな。 「魔理沙なんが、も゛う゛、じら゛な゛い゛!!!」 一際高く弾んで、枝をへし折りながら茂みの奥へと消えていくゆっくり霊夢。 よろよろと、その後に続くパチュリー。何度か振り向きつつ、森の奥へ。 後には無言のゆっくり魔理沙と、アリスだけが残された。 「よく、できました」 アリスが音を立てない拍手をゆっくり魔理沙にささげる。 その言葉に振り向く魔理沙。 「ゆっ、ゆっ、ひっく……!!!」 堪えていた涙が、友達が消えた後はとめどなく流れている。 「よしよし」 アリスは、アリスの教えたとおりの言葉を友達に伝えて一人ぼっちになった、ゆっくり魔理沙の頭を撫でてあげた。 至福の笑み。 「うふふふ、魔理沙も同じ目にあわせてられれば、私が慰めてあげられるのにね」 先ほどの光景に、どんな想いを重ねているのだろう。 アリスが一人ごちた、その時だった。 「おー、アリスじゃないかー!」 頭上から降り注ぐ、気楽な声。 アリスは弾かれたように虚空を見あげる。 「ま、魔理沙! なんでこんなところに!」 アリスの狼狽の向かう先は、箒に跨った本物の魔理沙の姿。 「いやな、茸狩りにいそしんでいたわけだが、ゆっくりどもが勢いよく走っているのを見かけて、興味本位でよってみた」 縁を感じる遭遇だが、アリスは喜びよりも背を伝う冷や汗を感じる。 もう少し遅れていれば、自分の醜い部分を魔理沙にさらけ出すはめになっていた。 胸を撫で下ろしながら、アリスは取り繕いをはじめる。 「ええ、この子がお友達と喧嘩したみたいで、慰めていたのよ」 言いながら、ゆっくり魔理沙の頭をごしごしと撫でつけ、押さえつけるアリス。 地に下りた魔理沙は、アリスの手の下で縮こまり、涙をこぼすゆっくり魔理沙に向けてかがみこんだ。 「この、ゆっくり私バージョンが、か? それは私としても気になるな。早く仲直りしろよ」 自分と同じような格好の生き物が相手なのだから気味悪がればいいのだが、魔理沙は気のいい笑顔でゆっくり魔理沙を 慰めに入る。 魔理沙の視界の外で、苛立ちを浮かべるアリス。 今だけは早く帰ってほしい。まずはそれが第一だが、同時になぜ魔理沙は自分以外にこんな優しさをほのめかす のだろうという不満にもつながる。 「ええと、魔理沙。この子のことは任せて、茸狩りを続けて……」 離れ欲しいと促すアリスの言葉だが、生憎、不意に目の前に現れた乱入者によって阻まれる。 「ゆっくり考えてきたよ!!!」 茂みから飛び出してきた、ゆっくり霊夢とゆっくりパチュリーだった。 よく見れば、二匹とも涙の跡が乾いていない。 それなのに、ゆっくり霊夢たちがゆっくり魔理沙を見つめる視線は、この上なく優しげだった。 「魔理沙の気持ちを知らなくて、ごめんなさい」 ぺこりと、沈み込むように霊夢のお辞儀。 「もう嫌な思いをさせないよう、遠くに引っ越すから、安心してね!!!」 その言葉に、ゆっくり魔理沙の眉が悲しみにゆがむ。 だが、頭の上にのせられたアリスの手の冷たさを思い出して、何とか堪えていた。 一方、霊夢とパチュリーの目は潤みだし、唇は嗚咽がこぼれないよう、真一文字に結ばれていた。 「……っ!!!」 けれど、想いを伝えるために霊夢は口を開かなくてはならない。 「……まりさ!!! もう……会えなくなるけどっ……!!!」 一度あふれた滂沱の涙を、霊夢もパチュリーも止めることができない。 涙声を絞り出す。 「これからも……わ、わだじだぢのぶんま゛で、ゆ゛っぐり゛じでい゛っでね゛!!!」 後には、二匹の押し殺した嗚咽が低く響き渡っていた。 ……アリスの手のひらを、ゆっくり魔理沙の深いあえぎが伝わってくる。 心を押さえつけるその限界に、もはや余裕はない。 「おい、このままでいいのか、ゆっくり私! 違うだろ、このままでいいわけがないぜ!」 なのに、人間魔理沙が一人、熱く語りだす。 いつもはそこが大好きな部分なのに、たまらなくウザく感じるアリス。 魔理沙の言葉と、アリスの刺すような視線。 そのベクトルの異なる力に押し出されて、ゆっくり魔理沙は前に踏み出す。 「霊夢、パチュリー、もう一度よく聞いてね!!!」 こいつ、ばらす気か!? 言葉の強さに、思わず息を呑むアリス。 一際、その手の圧力を強めて睨みつける。 ゆっくり魔理沙は、体を震わせて叫んだ。 「これで、新しい友達とゆっくりできるよ!!! さようなら、大嫌いな霊夢とパチュリー!!!」 勝った! 緩みそうになる口元を必死に抑えるアリス。 「お前!」 「魔理沙、仕方ないわよ。この子の意思ですもの」 声を荒げる魔理沙を、アリスは完璧に沈痛な面持ちで制止した。 寂しげな笑顔だけを残して、後ろを向く二匹のゆっくり。 静かに遠ざかるその背中に、アリスが気を緩めたそのときだった。 「でも゛!!!」 隙をついて、アリスの手から逃れたゆっくり魔理沙が二匹の下へ転がって走っていく。 その声に振り向きかけた霊夢とパチュリーに、呼びかけるゆっくり魔理沙の顔は、堪えに堪えた涙でくしゃくしゃだった。 「だいぎらいな二人でも、い゛っじょに、ゆっぐり゛じだいです! だがら、い゛がな゛い゛でええええ!!!」 「……ま゛り゛ざああああああ」 暖かい涙をこぼして、ゆっくり魔理沙を迎え入れる霊夢とパチュリー。 再び三匹となった一群は、そのまま森の奥へ走り出す。 「ま、待ちなさい!」 「行かせてやれ、アリス」 追いかけようとしたアリスの前を塞ぐ、魔理沙の腕。 「アリスは、あいつの仲直りの口上が気に食わないかもしれないが、あいつも私に似て素直になれない奴なんだぜ」 いや、そんなことじゃねーよと、張っ倒したいアリス。 だが、魔理沙の次の言葉に追う気が粉砕された。 「ところで、アリス。私たちは親友だよな」 「え、えええ!? なに、なんなの、突然!」 一瞬で、ゆっくりのことが吹き飛ぶアリス。 湯気が噴出しそうな顔を手のひら抑えながら、魔理沙を見つめた。 「そ、そうね、親友かもしれないわね。見る人によっては!」 一緒にお風呂に入る、同じ布団で寝る、後ろからそっと抱きしめる。親友としてできそうなこと、あれこれ 妄想するアリスだった。 一方、魔理沙はぽりぽりと頭をかきだす。 「それじゃあ、許してくれるよな」 「へ?」 アリスが間抜けに呟く。 なにやら雲行きが怪しくなってきた。 「いや、明日あたりアリスに丸一日付き合うつもりだったけど、フランの奴がどうしても弾幕遊びがしたいって、 紅魔館から呼ばれていてさ。ほら、あいつ手加減できないから、私も丸一日付き合わないといけなくなる。悪いが、 丸一日付き合うという話自体、なかったという方向で」 「え、えええ!?」 「そういうことで、じゃあなー」 驚愕に硬直するアリスを置いて、自分勝手に青空へと飛び出していく魔理沙。 一人佇むアリスの頬を、冷たい風が草むらを震わせて流れていく。 「……一人に、なっちゃった」 寂しげな呟きも、風の音にまぎれて消えていった。 三匹のゆっくりは、ゆっくり霊夢の寝床に身を寄せ合っていた。 うっそうとした藪の奥の、風の穏やかな洞。 すでに日は没し、暗がりに包まれてはいたが、アリスの家のように閉じ込められる寒々とした暗闇ではない。 傍にいる仲間の温もりが嬉しい、心地よい闇。 一息ついた三匹は目線を交わし、深く身を屈め、揃って一気に飛び上がる。 「ゆっくりしていってね!!!」 ゆっくり魔理沙の暴言も、仲睦まじい合唱に、しこりを残した気配もない。 これで完全に仲直り。 そして、あの魔女にさらわれる前の楽しかった日々に戻ったのだ。 こみ上げる幸福感に、ゆっくり魔理沙の頬を伝う幸せの涙。 「みんなと……ゆっぐりでぎで嬉じいい」 その涙は、ゆっくり霊夢とゆっくりパチュリーが舐めとった。 三匹は、かつてのように身を寄せ合い、そのまま眠りにつく。 夢に見たのは、野原を転げまわり、バッタを追っかけ、日向ぼっこでゆっくりと時を過ごす、幸せな明日の光景だろうか。 眠りこける三匹の元へ届くのは、月の光と梟の鳴き声。 だからだろうか、梟の鳴き声に似たその声を、聞きつけるものはいなかった。 それはどこかで聞いた、無機質な声。 「ホーラーイ」 夜陰に潜む、人形の呟き。 翌朝。 藁をしきつめた寝床で眠ったはずなのに、横たわるゆっくり魔理沙の体は、冷たさと固さを感じていた。 「ゆー?」 寝ぼけ眼が、次第に鮮明になっていく。 品の良い調度品、暖かな暖炉、そして棚を埋め尽くす人形の軍団。 「ゆっくり!?」 なぜ、アリスの家に。 飛び上がろうとする魔理沙。だが、天井を押さえつける透明なガラスの板に、飛び上がることもできない。 「ゆっ!」 悪夢がよみがえるゆっくり魔理沙。 ただ、依然と若干違うのは箱の構成。 横幅と高さはぴっちりとしているが、前後に細長くスペースがあって、少しだが動き回ることができた。 「あら、起きたの」 頭上からの声に見上げると、そこには穏やかな微笑を向けるアリスの姿。 ゆっくり魔理沙の体の色が、血の気を失って土気色。食欲をあまりそそらない色になる。 「ご、ごごごごごめんさい!!! もうしないから、ここから出してね!!!」 許されないことがわかっていながらも、必死に弁明を口にした。 だが、次のアリスの行動は予想外のものだった。 「出たいのね?」 アリスが蓋の留め金をいじると、苦もなく開くガラス箱。 箱の中に手が差し込まれて、ゆっくり魔理沙はアリスの手で引き上げられる。 「これは昨日、人間用につくったものなの。だからそれなりに余裕はあったでしょう」 こくんと頷くゆっくり魔理沙。誰のためにつくったのかは、怖くて聞けない。 そのまま、椅子に腰掛けるアリスの膝にのせられて、髪を櫛でとかされるゆっくり魔理沙。 昨日のことは夢だったのだろうかと思い始めた頃だった。 「あんな野原で寝るから、髪がぼさぼさになるのよ」 アリスの呟きに現実のことと知る。 そして、沸きあがる不安は、隣で眠っていた仲間たちのこと。 「ゆっくりしてたみんなは!!!」 「大丈夫よ」 アリスは親切に、ゆっくり魔理沙を抱えて窓辺へ。 そこには野外を元気に走り回るゆっくりパチュリーの姿が。 アリスの人形を一体頭にのせて、かつてない元気のよさで飛び跳ねていた。 それにしてもこのパチュリー、ノリノリである。 「霊夢はまだ眠っているみたいね」 アリスの言葉が示す通り、室内に向けられたゆっくり魔理沙の視界の端に、ソファーの影に隠れ気味にゆっくり霊夢の 頬が見える。 全員の姿を確認して一息つくゆっくり魔理沙を、アリスはくるりと向きを変えて真正面から見つめていた。 「それでお願いがあるのだけど、みんな、揃ってうちにきてもらえないかしら? その、私一人じゃ寂しいからね。 全員一緒にいたいなら、皆、面倒を見てあげるわ」 その提案に、魔理沙に広がる驚きの表情。 「もちろん、自由に遊びに行ったりしてもいいのよ」 それは、すごく嬉しいことかもしれない。 住人を除けば、暖かな寝床と美味しいご飯。素晴らしい環境なのだから。 それに、今のアリスはまるで憑き物が落ちたのかのよう。 微笑に陰りがなかった。 「うん!!! アリスも、みんなとゆっくりしようね!!!」 「まあ、嬉しい。ところで、昨日から何も食べてないからお腹が減ったでしょう。今、用意するわ」 言われて、ようやく空腹に気づくゆっくり魔理沙。 恐らく、緊張感が解けて感覚が戻ってきたのだろう。 「ゆっくり支度してね!!!」 「大丈夫よ、準備していたから」 魔理沙の気遣いに笑顔を返したアリスは、布をかけてあった皿を掴みあげる。 「私の知り合いに中国という方がいて、この前、料理を教えてもらったの」 魔理沙の前に差し出されるお皿。 「餃子っていう食べ物よ」 布が払いのけられて、アリスの言う餃子が姿をあらわした。 ふわりと漂う香ばしさと、こんがりと狐色の焦げ目が、ゆっくり魔理沙の食欲をそそる。 「わぁ、美味しそう!!! おねえさん、これ本当に食べていいの!!!」 「あなたに食べさせるためにつくったのよ」 アリスの笑顔に後押しされ、その餃子にむしゃぶりつく。 ほっくほくの皮。そして中の具から染み出す旨みにと甘さが、ゆっくり魔理沙の口に広がっていく。 「うっめ!!! メッチャうっめこれ!!!」 「ふふふ」 素直な反応が嬉しいのか、満足げに魔理沙の髪を撫でるアリス。 だが、皿をも嘗め尽くす勢いで餃子を貪っていた魔理沙が、ふと動きを止める。 「おねえさん……」 その声は震えていた。 「この餃子……なんかおかしいよ……シュっご……く……」 ぷるぷると身を震わして、半開きの口からだらしなく流れるよだれ。目じりにたまる涙。 「どうして? 慣れている味だと思うのだけど」 アリスは、その魔理沙をテーブルにのせて、静かに立ちあがる。 向かう先には、ソファー。そして、その影には未だ眠り続けていると聞くゆっくり霊夢の姿があった。 「だって、ほら」 ソファーの影から、けりだされるゆっくり霊夢。 いや、霊夢だろうか。 そのゆっくりは、額から上を切り取られていたため、アリスには見分けがつかない。 それでも、魔理沙にはわかったようだ。 「れ゛い゛む゛ううううう!!!」 ゆっくり魔理沙の声が聞こえたのか、ぶるんと震えるゆっくり霊夢の体。 「ゆっゆっゆっゆ」 しかし、目をひんむいた霊夢が壊れたうめきをあげるだけ。 アリスはその霊夢を、真上から覗き込んだ。 「大分減ったわね」 まるで、米びつを覗き込んで嘆息する主婦のよう。 少なくとも、生き物に向ける口調ではなかった。 「おねえさん、霊夢を、霊夢の中身をどうしたのおおお!!!」 「あらあら、知っているくせに」 わき上がる、ケラケラと抑えの利かないアリスの笑い。 「今は、あなたの口の中よ」 一瞬の沈黙。 「ぱぴぷぺぽっ!!! ぱぴぷぺぽおおおお!!!」 絶叫と共に、やみくもに壁にぶち当たろうとするゆっくり魔理沙。 「ゆっ!?」 だが、アリスが目配せすると、それまで棚を飾っていた人形たちが一斉に魔理沙に襲い掛かる。そのうち一匹の手には、 細く鋭い釘。 「ひぎい!」 ゆっくり魔理沙は床に縫いとめられていた。 「あらあら、お友達とお揃いになったわね」 アリスは視線を魔理沙から外し、窓の外で。 そこでは、相変わらずゆっくりパチュリーが走り回っていた。 青白い顔で、息も絶え絶え、涙とよだれを垂れ流しながら。激しく咳き込んでは、びくりと跳ね起きてなおも走り続ける。 そのゆっくりパチュリーの頭の上には、無表情の上海人形。手には五寸釘の根元を握る。その先は、ほとんどの部分が ゆっくりパチュリーに埋め込まれていた。 かろうじて走り続けていたパチュリー。だが、息を切らせてとうとうへたりこんだ。 「あああああ!!!」 途端に、ぐりぐりとひねりこまれる五寸釘。 のけぞって、いやいやと首をふるゆっくりパチュリー。 「や゛め゛で、や゛め゛で! 走りますう!!!」 のたうちながら、よたよたと動き出す。 べしょべしょの顔を濡らしながら感動のフル24時間マラソンはいつまでも続いて行くようだ。 けれども、パチュリーの体力と持病はそれを許さない。 「げほっ、がはっ……!!! ゆっぐり、じだいいいい!!!」 咳き込んで、のたうつパチュリー。 上海人形はアリスの指示通り、無表情のまま五寸釘でえぐる。 「む゛ぎゅーーーん!!! ゆっぐりでぎないよおお!!!」 パチュリーが泣き叫ぶ先には、窓辺に腰掛けるアリスの姿。 だが、アリスは背をむけていて、もはやその姿を見てもいない。 「……本を餌に魔理沙を釣る女と、同じ格好をしているのが悪いのよ」 死刑宣告に等しい言葉を吐き捨てながら、アリスは床に這うゆっくり魔理沙へと、かがみこむ。 「ところで魔理沙。あなたの一番好きな子を教えて。誰にも言ったりしないから」 なぜか、年頃の女の子のようなことを聞く。 だが、ゆっくり魔理沙にはわかっていた。 ここでアリスの名前以外を挙げれば、その相手は死ぬ。 「アリスが、アリスが一番大好きだよ……ぶぎゃっ!!!」 魔理沙の懸命な言葉は、口にねじ込まれたアリスの靴先に遮られた。 ゆっくりと靴を引き抜くアリス。 「だぜ、よ」 修正点を手短に伝えた。 「うん! 魔理沙は、アリスのことが誰よりも大好きだぜ!!!」 「……もう一度」 「アリスが大好きだぜ!!!」 その言葉にぷるぷると震えるアリス。 「ああもう、嬉しいわ!」 言うなり、渾身の力でゆっくり魔理沙を抱き上げるアリス。 締め上げられながら、魔理沙は一言も声をあげない。 ゆっくり魔理沙は、諦めていた。 ここにいることしか、もう自分は許されないのだと。 誰かに助けを求めると、その誰かが不幸になってしまう。 「アリス、ずっと一緒にいるぜ」 呟きながら、ゆっくり魔理沙は思う。 零れ落ちる涙も枯れてしまえばいいのに。 涙で滲んでぼやける視界。 その中で、幸福そうに微笑むアリスだった。 こうして、アリスとゆっくり魔理沙の幸せな毎日はまだまだ続いていく。 めでたし、めでたし。
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「あ”ー、暑い」 買い物行くなら夕方に行けばよかった。 真夏の昼間は日差しが強く、しかもまとわりつくような暑さだ。 (家に帰ってアイスでも食べよう) そんなことを考えながら家路に就く。 我が家はアパートの二階の一室なのだが、アパートの階段を上ろうとしたときに ゆっくり霊夢が階段の脇、影になっている所にいるのを見つけた。 ゆっくりは俺と目が合うと 「ゆっくりしていってね!」と小さく叫んだ。 この暑さのせいだろう。あまり元気がない。 「やあ、そんなところで何をしてるの?」 声をかける。 ゆっくりは話しかけられたことが嬉しかったのか、目を輝かせて答える。 「お日さまがあつくてゆっくりできないからここにいるんだよ!!」 さらにゆっくりは言葉を続ける。 「ここはれいむひとりでいっぱいだよ!!」 や、別に取ろうとしてないし。 まぁそんなことはどうでもいい。このゆっくりは家に持ち帰ろう。 自分でも変な感性かも思うが、ゆっくりって可愛いよな。 ぜひともペットに欲しかった。そして・・・いや語るまい。 ともかくだ。 ゆっくりを持ち帰るのは簡単だ。甘い言葉で釣ればいい。 「そんなところより涼しくてゆっくり出来る場所があるよ。俺の家だ。来る?」 ゆっくりはその言葉にすぐ食いつく。 「ゆっくりしたいよ! おにいさんのおうちに連れて行って!!」 嬉しいこと言ってくれるじゃないの。 こうしてゆっくり霊夢は我が家へ来ることとなった。 「さぁ、ここがゆっくり霊夢の部屋だよ」 「わーい、おにいさんありがとう! ゆっくりするね!!」 俺は物置と化していた一室を掃除して、ゆっくり専用の部屋を作った。 余っていた段ボールを床に敷き詰め、壁も段ボールを張り付けた。 ゆっくりが壁を傷つけないためと、食事が汚いこと・・・早い話掃除がしやすいからな。 ゆっくりの部屋も出来たことだし一緒にアイスを食べることにした。 「ちべたい!! でもとってもおいしいよ!!」 「それはよかった」 しかし汚いな。口のまわりも床もアイスでべったべただ。ダンボールを敷いて正解だった。 アイスを食べた後はお風呂でゆっくりを洗ってあげた。 「すっきりー!」 見てるこっちもすっきりするいい笑顔だ。 夕飯も一緒に食べる。といっても段ボールの柵越しだけど。 「うっめ! これめっちゃうっめ!!」 はふはふと肉野菜炒めと食パンを食べるゆっくりの顔は完全に緩んでいる。 野生ではこんな料理は食べられなかったのだろう。 ずっとうっめうっめと言いながら食べていた。 食事が終ってしばらくゆっくりしてると、ゆっくり霊夢は眠そうにしていたので寝させてあげた。 「明日もゆっくりしようね・・zzZ」 「ああ、おやすみ」 ゆっくりが寝たことを確認すると、俺はゆっくりと準備を始めた。 ~翌朝~ 「ゆっくりしていってね!!」 ゆっくりの声で目が覚める。 まだ6時だってのに早起きだなこいつは。 ゆっくりの部屋の襖を開けるとこっちをゆっくり霊夢が 「おにいさんゆっくりしていってね!! お腹がゆっくりすいたよ!!」 と、挨拶をくれる。 「おはようゆっくり。今朝食を用意するな」 「ゆっくりまってるね!!」 この完全にこっちを信頼している感じがたまらない。 本当はもっとゆっくり懐かせてからにしたかったが、ゆっくり出来ない俺はゆっくりを可愛がることにした。 可愛がるといっても抱っこしてなでなでしたり、高い高いする方じゃないぞ。 俺は昨日用意したたくさんの氷を風呂場の桶に移す。 そしてそれをゆっくりの元へと持っていく。 「おにいさん! そのとうめいなのはなに? ゆっくりできる??」 「ああ、ゆっくり出来るとも」 「ゆっ! ゆっくりしたい!! はやくゆっくりさせてね!!」 ぴょんぴょんと飛び跳ねるゆっくり。その顔は期待に満ちていた。 ああ・・・なんてかわいさだ。そんな顔されたらもう我慢で き な い。 「ゆ”っ!?」 俺はゆっくりを掴むと、用意しておいた空のバケツにゆっくりを突っ込む。 「こわかったよ!! ゆっくりしてね!!」 「ああ、ごめんごめん。これからたっぷりとゆっくりさせてやるよ」 「じゃあゆるしてあげるね!!」 俺はゆっくりの言葉を最後まで聞かずに桶の氷をゆっくりの入っているバケツへ流し込む。 「ゆっゆっゆっ」 コツコツと氷がぶつかるたびに小さく声を上げる。 そしてすぐにゆっくりは氷に埋もれた。 「つめたくて気持ちいいよ!!」 まあ最初はそうだろうな。 しかし一分もしないうちに 「つっつめたいよ!! さむいよおにいさん!! ゆっくりだしてね!!」 ゆっくりは氷の海から抜け出そうとぴょんぴょん跳ねようとするが、それはできなかった。 バケツの入口は透明なビニールシートで閉じていたのだから。 「そこならゆっくり涼めるだろ?」 「ゆ”っくりでぎないよ!! づめだいよ”!!」 知ってるとも。 しばらくは「早く出して」だとか「なんでこんなことするの」だとか訴えかけてきたが どんどんその声は小さくなっていく。 そろそろ限界かなと思いつつ、俺は何か物足りなかった。 正直氷にゆっくりを埋めていても楽しくはなかった。 やはり表情が見れないのは間違いだな。 なのでバケツを逆さにしてゆっくりを解放する。 顔は蒼白で、声も「ゆっ」とか「ぅ」とか言葉は出せないほど弱っていた。 俺は風呂場からお湯を持ってくる。しかしすぐにはかけてあげない。 ただただゆっくりをゆっくりと観察していた。 数分経つと徐々に元気を取り戻していくゆっくり。 動けるようになったゆっくりはおびえた表情で俺を見ながら俺とは逆方向の壁へと後ずさりした。 「どうした? ゆっくりできなかったか?」 「できるわけないよ!! おにいさんとはゆっくりできないよ!!」 おお、こわいこわい。 「そうか、ごめん俺が悪かったよ。ほら、暖めてあげるからこっちにゆっくりおいで」 手でおいでおいでする。 ゆっくりは最初はどうするか迷っていたが、俺のことをまだ信じているのかゆっくりと近づいてきた。 「ゆっ、ゆっくりしようね!」 控え目にお決まりの挨拶をするゆっくり。 「ああ、ゆっくり暖めてやるよ」 ゆっくりをお湯に浸からせてあげる。ゆっくりにはちょうどいいぬるま湯だ。 「ゆっくり気持ちいいよ!!」 「だろう? さっきのはこのための準備だったんだよ」 適当なことを言ったが、単純なゆっくりはそれで納得したらしい。 「うたがってごめんねおにいさん!! れいむはしんじてたよ!!」 嘘つけ。 まあ機嫌がすぐ戻ってよかった。 この先もゆっくりと色んな遊びをするつもりだからな。 嫌なことはすぐに忘れるゆっくりの特性はありがたかった。 さて、今回の氷で凍えさせるのはいまいちだったな。次はどうしようか。 次は生かさず殺さずの状態でのゆっくりを観察するためにご飯抜くかな。 しかしそれはやりすぎかな。 それとも釣り竿でゆっくりフィッシングでもやろうかな。 「おそらをとんでるみたい」って言葉を生で聞いてみたいし。 まあ、焦ることはない。 まだまだ俺とゆっくりのワンダフルライフは始まったばかりなのだ。 終
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幻想郷に最近出来た娯楽施設が有る。 幻想総合電動遊戯場、所謂ゲームセンターである。 それまで娯楽といえば宴会くらいしかなかった人々にとって、まさに衝撃的だったその施設は、瞬く間に幻想郷に浸透していった。 その中でも、人気の高い筐体があった。 ~Story starts from the Forest~ ここは、大きな森の中。 大地に根を走らせた巨木の下に、あるゆっくり霊夢の巣があった。 大きな根とたまたま下にあった空洞が絡み合い、大きくてコケがふかふかの素敵な巣だった。 「ゆっくりおきてね!」 朝。 他のゆっくりを起こしたのはお母さんゆっくり、その声に反応して子供達も起き出した。 「ゆっくりねむってたよ!」 「きょうもゆっくりしようね!」 「おかあさん、おなかすいたよ!」 静かだった巣の中が、とたんに騒がしくなる。 総勢20人は居るだろうか? それだけ居ても、余りあるほどこのこの巣は広かった。 「ゆっくたべてね!!!」 「「ゆっくりいただきまーす!!!」」 子供達の大合唱をスタートサインに朝食が始まる。 「うめぇ!これめっちゃうめぇ!」 「ゆっくりたべていいからね」 「ゆっくりたべさせるよ」 「むしゃ、おねえちゃんありがとー」 「あまーい!!」 大きい霊夢が小さい霊夢にエサを与える。 上手く食べれない赤ちゃんには口移しで食べさせてあげる。 今日の朝ごはんは、柿だった。 昨日、みんなでお散歩した途中で見つけて一本分、丸ごともいできたのだ。 まだまだ数が十分にあるそれは、ただ眺めているだけでもうっとりとするものだった。 「きょうもいっぱいゆっくりしようね!!!」 子供達といっしょに巣の外に出る 今日も日課のお散歩だ。 「ゆっ♪ ゆっ♪」 「あんまりはなれないでね」 「いいてんきだね」 「ゆっくりできるね!」 仲良く固まって移動する。 木々の間を抜け、途中の沢で水を飲み、家族で蝶を追いかける。 気が付けば、人里まで足を伸ばしていた。 「ずいぶんとおくまできたね」 「きょうはゆっくりさんぽしようね!」 「ゆゆっ! あそこなんだろう?」 「すごい! 人が一杯居るよ!!!」 「みんなゆっくりしてるのかな?」 興味をそそられて、その場へ向かうゆっくり一家。 「! すごいおと!」 「すごい、絵が動いてるよ!!」 中はとても賑やかだった、人々は各々ゲームに熱中しており、迷い込んできたゆっくり達を気に止める者はいない。 「あっちに、もっとひとがいっぱいいるよ! 一匹のゆっくりが見つめる方向、そこには大きな箱の周りを沢山の人が埋め尽くしていた。 「なんだろう」 「なんだろう」 甘いものに吸い寄せられる蟻のように向かっていくゆっくり達。 箱の周りまで来たのだが、それ以上は人ごみのため近づくことが出来なかった。 ガラスで出来ているのだろうか? 透明な大きな壁をした大きな箱だった。 「はこのなか、みたいねー」 「ねー」 「お譲ちゃん達、どうしたのかな?」 声をかけたのは、ゲームセンターの店員だった。 何処でどう間違ったのか、このゲームセンターの店員は皆、タキシードを着ていた。 「おにいさんだれ? れいむたち、あのはこのなかみたいの」 お母さん霊夢が男に尋ねる、子供達霊夢も後に続く。 「みたいの」 「おにーさんだれ?」 「お兄さんは、ここの店員だよ。あの箱にはゆっくり達が入ってるんだよ」 ニッコリ、と微笑みながらゆっくり達に説明する。 おそらくマニュアルでもあるのだろうが、ゆっくりには随分と優しそうに映ったようだ。 「あのなかにゆっくりがいるの?」 「ゆっくりできるの?」 「うん、人はみんな、ゆっくり達と遊んでるんだよ」 「! おじさん、れいむたちもあそびたい! ゆっくりしたいよ!」 「ゆっくりさせてよ!」 お母さん霊夢とお姉さん霊夢が訴える、次第に赤ちゃん霊夢にまでそれは伝染する。 「いいよいいよ。けど、今はゆっくり魔理沙の家族が入ってるから後にしたほうがいいね。 最初に見つけたとき、ここは魔理沙達のお家だよって他のゆっくり魔理沙に乱暴していたから」 こっちで待ってるといいよ、そう言って店員は裏方に霊夢達を案内する。 沢山の景品が並んだ倉庫、中でも大きなダンボールが沢山並んでいた箇所にゆっくり達は連れて行かれた。 「もう直ぐ終わるから、ちょっと待っててね」 「「「うん! ゆっくりまってるよ!!!」」」 何処で教育されたのか、ホスト張りの笑顔を残して去っていく店員。 「やさしそうなひとだね!」 「かっこいいね」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛、ゆ゛っく゛り゛ー」 「おかあさんどうしたの?」 「だいじょうぶ? ふるえてるよ!」 「うううううっ! すっきりー!!」 次に店員が戻ってきた時は、それから一時間ほど後だった。 「やあ、お待たせ。じゃあこれから案内するね」 その前にこれに入ってね。 そういわれて、一匹ずつ箱に入れられる。 底以外が、一部透明になった変わったデザインの箱だ。 「ゆ! なにこれ!」 「ちょっとせまいよ」 「ゆっくりだしてね!」 体の大きさごとに箱のサイズが多々あるが、総じてどれもゆっくりの体ギリギリに作られていた。 その所為で、箱に入れられると、文句を言い出すゆっくり達。 暫く文句を言っていたが、互いに箱詰めされた姿を見ると一転する。 「みんなかっこいいね!」 「すごいね!」 箱は全体の八割ほどが、星型、ハート型、四角丸、など様々な形にカットされている。 その周りは原色が惜しみなく使われた、とても華やかな箱。 「かっこいいだろ! そのままみんなに見せるんだよ!」 店員が話しながら、箱にお菓子を入れて蓋を閉じる。 初め不満を言っていたゆっくり達は、その頃にはもうご機嫌だ。 はやくつれていってね、の大コールまで起こっている。 「それじゃあ、運んでいって」 店員の指示で運び出されるゆっくり達、程なくして目的の大きな箱の前に到着する。 バッと道を開ける人々、ゆっくり達はなんだか偉くなった様な優越感に浸っていた。 「みんな、ゆっくりしていってね!!!」 ニコニコと人々に話しかける、対して人々もゆっくり達を見てニコニコしている。 箱の中に全員が入れられる。 数が多いので、一部は二段重ねになってしまっているが、箱の大部分が透明なおかげで、下のゆっくりも辺りを見渡すことができた。 「うっわー!」 「すごーい!」 そこから見る景色は、今まで見てきたものと大きく違っていた。 自分達が見ることの出来ない高さからの眺め、それを見ているゆっくり達。 全員、その光景に息を飲んでいた。 「ゆ?」 一人の男が、周囲の人ごみの中から自分たちに近づいてきた。 「おじさんもゆっくりするの?」 「「「ゆっくりしていってね」」」 十数匹の笑顔を一斉に浴びる男、対する男の表情は真剣そのものだ。 おかねを入れレバーを動かす、連動して動くクレーン部分。 ゆっくり達も、それに気が付いたようだ。 「ゆっ♪ すごい、すごい」 「おじさん、こっちにもうごかしてね♪」 突然、縦横無尽に動いていたそれが止まる。 気になったゆっくり達が再度男を見ると、違うボタンを押していた。 それによって、今度は下に下がってくる。 「ゆゆっ! よくみえるよ! おじさんありがとう♪」 「いいなーいいなー。おじさん!つぎはれいむにもよくみせてね♪」 「よくみえるよ! っゆ?」 パコン、と音がしてキャッチャー部分と箱がぶつかった。 「おじさん! ゆっごいよくみえるよ!!」 箱の横に迫ってくる二本のアームに気付かずに、興奮しているゆっくり霊夢。 「!?」 気付いた時には箱ごと宙に浮いていた。 「ゆ! すごい! ういてる」 「すごーい!」 「れいむもしてほしいよ!」 感激する一同を尻目に、クレーンは箱を落とすことなく始発地点まで戻っていく。 「わぁい! おそらをとんでるみたい♪」 無事、始発地点まで戻ってきた。 上手くいった様だ。 「ゆ!」 一瞬の間の後、底に空いた穴に落とされる。 緩やかなカーブを描き、二・三度の衝撃の後に静止した箱。 「ゆ? ゆ?」 突然、何もない場所に移ったゆっくり霊夢は、辺りを伺っていたが、直ぐに箱を持ち上げられる。 目の前には先ほどまで機械を操作していた男の姿。 「おじさん? ゆっくりしようね! いっしょにあそぼうね」 「……」 だが、男はそのまま箱を持ってその場を後にしようとする。 「おっおじさん! おかあさんたちはあっちだよ! あっちでゆっくりしようね!」 そのまま、騒いでいるゆっくり霊夢に耳を貸さずに出て行ってしまった。 ゆっくり達が居る台からも、その様子はよく見えた。 「今のはなかなか生きが良さそうだったなぁ」 「あぁ、上手そうだった」 周りの人の声。 そこまで聞いて、ようやくゆっくり達も理解したようだ。 微笑ましかった内部から、聞こえ始める叫び声。 「もどっできでよー!」 「ゆっぐりじでいっでよー!」 「だして! だしてよ!!」 「おうじがえるー!!」 既に他の人がクレーンを操作しているが、パニックになっているゆっくり達は一匹たりとも気付いていない。 そうこうしている内に、また一つの箱が宙に浮いた。 「ゆ゛っ! やだ! はなして! はなしでよ!」 その必死の懇願が効いたのか、途中で落下する箱。 「ゆっ! ゆっくりできるよ゛!」 「よがっだね! よがっだね!」 「ゆっくりしてね」 家族に安堵感が伝わった。 その直後。 「!? ……ゆっぐりじだけっががごれだよ!!!」 再び動き始めたクレーン、再度アームに捕らえられた箱。 「ゆ゙ーーー!!!」 今度は無事、落とさずに運ばれた。 景品物から取り出されたゆっくり霊夢。 狭い箱の中で無理矢理体の向きを変え、頬を押し付けられながら家族の方へ向き直る。 「もっど、みんなどゆっぐりじだかっだよ!」 そう言いながら段々と離れていく、家族の叫び声ももう聞こえなくない。 その後、七人がやって四人がゆっくりを取っていった。 スプリング自体は割と強力なので、箱にギュウギュウに詰まったゆっくり達が暴れても落ちることはない。 一方、既に五匹も取られていったゆっくり家族は大混乱だ。 絶叫をあげて泣き出す子供達。 だれかれかまわず助けてと懇願するお母さんゆっくり。 無理矢理にでも、箱から出ようとするモノもいた。 「ん! んしょ! あかない! どこもあがないよ゛ー!」 箱を閉める時に、プラスチックを溶かし完全に密封された箱。 空気穴はあいてはいたが、針の穴ほどの大きさでは食いちぎることも出来ない。 ケースの中は、阿鼻叫喚と化していた。 そんな中、とうとうお母さんゆっくりの箱が浮き出した。 「ゆゆゆっ!」 「「おがーざーん。う゛わ゛ーーーーん゛゛!!!」」 機械を操っているのは、長い髪の小柄な少女。 綺麗な青い髪が印象的な少女は、いとも簡単に大きなお母さんゆっくりの箱を取ってしまう。 おおー、言う周囲の人の声も気にせず、箱を抱え軽く会釈をして帰っていく少女。 残された子ゆっくり達に、一瞥の暗い冷たい視線を残して。 母親が居なくなってしまったゆっくり達。 支えが居なくなった家族は、ただ泣き叫ぶだけだ。 一匹、また一匹と取られる度に大きくなる声。 取られた方も、残った方も大声で叫びあう。 最後の一匹が取られるまで延々とその光景が繰り返された。 増えすぎ、畑・室内に勝手に出没して荒らしていく物体。 その物体、ゆっくりを使った、人気ゲームの一つ、『ゆっくりきゃっちゃー』。 今日も幻想郷のゲームセンターは賑やかだ。 ~In the Forest Again~ その頃。 「うっめぇ! これめっちゃうめぇ!」 あのゆっくり霊夢家族の巣の中で、蓄えていた柿を食べているゆっくり魔理沙一家。 「うめぇ! おかあさん、ここまりさたちのおうちにしよう」 「まえのおうちよりおおきいし」 「かきもいっぱいあるよ!!!」 「だれもいないのがいけないんだよ!!!」 「「「ねー!」」」 どうやら引越し先が決まったらしい。 「あれ、報告じゃ霊夢種だったんだが……。まぁいいか。おい!」 「「はーい!」」 引越し先はガラス張りの綺麗な箱になりそうだ。 To be next
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ある里の近くで、ゆっくり霊夢の一家が住んでいました。 一家は皆キチンとしており、人間の畑も荒らさずにゆっくりと暮らしていました。 「おかーさん、おそびにいええくるよ!!!」 「ゆっくりあそんできてね!! くらくなるまえにもどってきてね!!!」 「おねーしゃんいってらっちゃい!!!!」 「いってきます!! ゆっくりしてくるね!!!」 勢いよくお家から飛び出すゆっくり霊夢。 今日は魔理沙たちと遊ぶ約束を強いています。 こちらの魔理沙一家もキチンとしていて、他の魔理沙のように他人の家に上がりこむことはしません。 二人でくたくたになるまで遊んだ後、霊夢は暗くなる前に魔理沙とさよならして、お家に向かいました。 ……。 「ゆゆ!! おにーさん!! それなぁに?」 俺が近くの永遠亭から一本の竹を貰って帰る途中、一匹のゆっくり霊夢が飛び出してきた。 「これかい? これは七夕に使う竹だよ」 「ゆ? たなばた? それってゆっくりできるの?」 「あぁ、この笹に願い事を書いて吊るすと願いが叶うって言われてるんだ」 「ゆゆ!! おにーさん!! れいむもおねがいしたい!! れいむもおねがいしたい」 「ちょうどいいな、……よし一緒においで!!」 「ゆ♪」 ゆっくり霊夢と連れ立って家路を急ぐ、なんたって今日は七夕だからな。 「ほら、ここが俺の家だ」 「はいっていいの?」 「ああ。遠慮するなよ!」 「ゆ! ゆっくりおじゃまするね!!!」 まぁ、普通のゆっくりよりは礼儀正しいみたいだ。 「おじさんありがとうね!! れいむはゆっくりおねがいしたよ!!」 そうだった、こいつは何かお願いしたいことがあってここまで来たんだっけ。 「それじゃあ、今から飾りつけするから手伝ってくれるかい?」 「ゆゆ!! おてつだいするよ!! だかられいむもおねがいさせてね!!!」 「ああ。いいとも」 何て純粋なゆっくりなんだろうか。 これが並大抵のゆっくりだったら、早く飾り付けしてね!!、って叫ぶ所だと言うのに。 「それじゃあ、これを引っ掛けてくれるかな?」 渡したのは七夕飾り、器用に口にくわえ、俺に抱っこされて笹にかけていく。 「ゆゆ!! おにーさんかけおわったよ!!」 「よし、こっちもお願いね」 「うん♪」 暫く一人と一匹で仲良く飾り付けをしていった、一人でするより大分賑やかだ。 ……うん、なかなか良い出来だ。 「それじゃあ、短冊を書こうか」 「ゆ~? たんざくってなぁに?」 短冊が分からない霊夢に一枚の短冊を見せて説明する。 「これの事さ。ここにお願いを書いて竹に飾るんだよ。さて、文字は分からないだろうから代わりに書いてあげようか?」 筆を持ち直しゆっくりの方へ向き直る。 が、霊夢はなんだか不満そうだ。 「ゆゆ!!! おにーさん!! れいむもじぶんでかきたいよ!!」 「自分で書けるか?」 「うん!! おにーさんそれかしてちょーだい!!」 意気揚々と俺から筆を受け取ったゆっくり霊夢は口にくわえてブッ格好な丸を沢山書きだした。 「何だこの丸? まんじゅうか?」 「ちがうよーー!! れいむのかぞくだよ!! この大きいのがお母さんだよ!!」 別にどっちでも変わらん気がするが、見れば確かに目や口のようなものと髪の毛にリボンが書かれている。 「ふーん。で、これはどういうお願いなんだ?」 「ゆ? !! れーむとおかあさんと、おねーちゃんといもうとたちがずっとゆっくりできますようにっておねがいしたんだよ!!」 ほー家族ね。コイツラらしい。 「あっ! そうだ!! おにーさん!! たんざくもういちまいもらっていい?」 遠慮がちに聞いてくる、別にこんなもん何枚でもくれてやるが。 「良いけど、今度は何をお願いするんだ?」 「おともだちのまりさのかぞくもゆっくりできますようにってだよ!!」 くーー!! 泣かせるじゃねーか! 「家族や友達思いの良いゆっくりだな!! よし、後でおにーさんが食べ物を持って言ってやろう。両方のお家の場所は分かるか?」 「うん、ここから…………」 ほうほう、結構近くだな。 「よし! 分かった。それと、きちんとお願いが叶うようにおにーさんが文字でそのお願いを書いてやるよ」 「ゆゆ!! おにーさんありがとーー!! これでれいむたちはゆっくりできるね!!」 「そうだな、良い子にしてたらきっと叶うぞ」 「ゆゆ!! れーみたちもまりさたちもかってににんげんのおうちにははいらないよ!! はたけのおやさいだって、かってにたべないよ!!!」 どうやら、自分たちがそういう事をしてると思われたと思ったんだろうな。 それにしても、なかなか真面目なゆっくりだな。 「分かってるよ! ……っと、よしかけた。それじゃあ、飾りにいこうか」 「ゆゆ!!」 無邪気に笑う霊夢を抱えて再び庭へ。 霊夢に自分の短冊を下げさせた後、俺も自分の短冊を上の方へ下げた。 「ゆゆ!! おにーさんはどんなおねがいしたの?」 下げる前に、霊夢がそんな事を聞いてきたので短冊を見せてやったら喜んでた。 文字は読めないのにな。 「これでよし。全部終わりだ」 「ゆ! おじさんのおねがいもれーむのおねがいもちゃんとかなうといいね!!」 「そうだな。お前はこれからどうする? なんなら夕飯でも食っていくか?」 「んーん。おかーさんがしんぱいするといけないから、おうちにかえってゆっくりするよ!!!」 そうか。 それじゃあ俺も夕飯の準備に取り掛かろう。 「ゆ!! おにーさんどうしたの!!」 ゆっくり霊夢を抱きかかえる。 既に帰ろうと背を向けていた霊夢は少し驚いたようだ。 「んー? これから夕飯にしようと思ってな」 「? れーむはおうちにかえるよ? おにーさんのごはんのじゃまはしないからゆっくりたべてね!!」 「そぉい!!」 「ゆぶっちゃら!!!!」 真横に図太い荒縄を通して竹へ吊るす。 「ゆゆ!!! れーむのおながにぃ!! おにーざん!! はやぐどってぇーー!!!!」 このために、わざわざ永遠亭まで言って綺麗なウサギさんと一緒に丁度良い竹を探し回ったんだ。 あぁ、今度は怪我をして行ってみようかな……。 「ゆ!! いだいよ!!! おにーさん!! ゆっくりおろしてね!!! ゆっくりおろじてねーー!!!」 痛みに苦しみながら、こっちを見つめる霊夢。 残念だけど、俺はこれから夕食の準備をしないといけないんだ。 「それじゃあ、そこでゆっくりしていってね!!!」 「ゆっぐりーーー!!!!!!」 さてと、ビールビール!! ……。 「うっう~♪ あうあう♪」 暫くビール片手に家の中で待っていると、漸くゆっくりれみりゃがやって来た。 「う~? ぷっでぃ~んどごぉ~? ぷっでぃ~ん!!!」 もちろん唯のれみりゃじゃない、紅魔館にすんでいる最高級れみりゃだ。 「ゆ!! おにーさん!!! れみりゃだよ!! ゆっくりできないよ!!!」 そんなに大きな声で呼ばなくたって分かってるよ、コイツをおびき出すためにお前を吊るしてたんだから。 「うっう~た~べちゃうぞ~♪」 「ゆ!! ゆーーっぐりたすげでね!!! れーむはおいしくないよ!!!」 馬鹿かお前? 大馬鹿な紅魔館れみりゃにそんなこと分かるはずないだろ? 「う~♪ がぶっ♪ !!!……うー!! ぷっでぃ~んじゃないー!!!」 やっぱコイツ馬鹿だ。 「うーーー!! ぽいっ、するのぽい!!!」 勢いに任せて、霊夢をズタズタに千切っていくれみりゃ。 そろそろ頃合か? 「おい肉まん! こっちにぷっでぃ~んがあるぞ!!」 「う!! ぷっでぃ~んだべどぅ~♪」 「そうか、食べるか。ぷっでぃーんはこっちだよ!!」 「うーー!! ぷっでぃーんじゃないの!! ぷっでぃ~んなの!!」 テコテコと座敷に上がってくるれみりゃ。 ニコニコしながら俺の前に近づいて両手を差し出してきた。 「う~♪ はやぐぷっでぃ~んくれないと、さぐやにいいつげるどぉ~♪」 はいはい、ぷっでぃ~んね。 「こぁ!!」 「うー? !!! いだい!! いだいどぉーーーーー!!!!!」 そりゃ、柱に磔にされたら痛いわな。 「うーーー!!! ざぁぐやーー!!! ぷっでぃーんはどごーー!!!!」 ……、おい! 「ぷっでぃーんじゃなくて、ぷっでぃ~んだろ?」 まずは、この羽からいってみよう。 「!!! いだいどぉーー!!!! う゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーー!!!!!!」 うん、これはビールに合うな! 「そればれみりゃのーー!!! れみりゃはだべものじゃないどぉーーー!!!!!」 そういえば黒ビールも有ったな、今度はそれで食べてみるか。 「うあーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」 ……。 ふー、食った食った。 そういえば、あの霊夢はまだ生きてるのかな? 「おーい霊夢! 生きてるか?」 「ゆー。 !! おにーさん!! れいむはゆっくりできるよ!! れみりゃをおいはらってくれてありがとうね!!!」 おお! 生きてた、すげーな!! 「でもこの縄を早く外してね!! そうしたら、こんなことしたのをゆるしてあげるよ!!!」 へいへい。 「ほら、外してやるよ。別に悪気があった訳じゃないんだ。ただ自分を吊るすと願いが叶い易くなるんだよ」 霊夢の縄を抜いて地面に降ろしてやる。 縄の抜けた体を満足そうに見た後、目を輝かせて俺に尋ねてきた。 「ゆゆ!! ほんとう!! だったられーむたちのかぞくとまりさのかぞくは、ぜったいにゆっくりできるね!!!」 「U☆SO☆DA☆YO☆ そぉい!!!」 「ふんじゃられったりーーー!!!!!!」 死なない程度に踏みつけて籠に入れておく、明日の朝には元気になってるだろう。 「じゃあな。明日は家族仲良く加工場に行こうな。願い通り、死ぬまでゆっくりできるぞ!!」 「!! かごうじょーーはやだーーー!! ゆっぐりできないよーーー!!!!」 ……。 「れいむ、きのかえってこなかったね」 「きっとまりさといっしょにゆっくりしてたんだよ!!」 「やぁ、君達が霊夢の家族かな?」 「!! おじさん!! れーむをしってるの?」 「れーむはどこにいるの!!」 「うん、霊夢は君の家族と魔理沙の家族がゆっくりできるようにってお祈りしてたんだよ。俺は、それに感動して君らもゆっくりさせてあげようと思ってね。魔理沙の家族は、今一緒にいるから君達もおにーさんのお家へおいでよ!!」 「れーむもおにーさんのおうちにおじゃましようよ!!!」 「!! うん、みんなでゆっくりできるね!! おにーさん!! どうもありがとーー!!」 「いいよいいよ! 俺も願いが叶って嬉しいから……」 翌日、親子共々籠に入れて、願いどおり加工場でゆっくりしてもらうことにした。 専用の安全な檻に入れられた両方の一家が、嬉しそうに涙を流して喜んでいたのが印象的だった。 俺の願い? 高級なゆっくりれみりゃを食べたい事と、纏まった金が欲しい事さ。 ……。 昨夜、紅魔館。 「れみりゃさまーー!! 食後のプディングをお持ちしましたよ!! ……またお出かけかしら?」 「あ、咲夜さん。れみりゃさんなら、さっきお散歩に行きましたよ♪」 「そう。 ……このプリン食べる?」 「良いんですか? 頂きます♪」 「涎垂らしながら見つめてたでしょ。それより、貴方も短冊に何か書いたの?」 「おいしーです♪ ……あっ、はい! 嫌いな食べ物を見なくて済みますようにって書きました♪」
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~ゆっくりレティの生涯(前編)~ 前書き あまり登場しないゆっくりレティが登場するため、SS中の所々に生態の説明などを書きました。 より詳しい生態はおまけで述べるので、途中「?」と思うところがあるかもしれませんがご安心下さい。 -春- 春、それは冬の寒さが和らぎ様々な動植物が活動を始める季節である。 長い冬を乗り越えることができたゆっくり達も巣穴から続々と顔を見せ始める。 『ゆ~っ~く~り~!』 ふとましい声を上げて1匹の大きなゆっくりが地中から顔を出す。 このゆっくりはゆっくりレティ、捕食種の中でも上位に君臨するゆっくりである。 特徴は何と言ってもその巨体、このゆっくりレティの体長は1m程あるが、これでも成体でないというのだから驚き である。 『ま~ぶ~し~。』 初めて見る眩しすぎる太陽の光にゆっくりレティは目を瞑った。 巣穴から出たゆっくり達がまず初めにやる事は食糧の調達であり、ゆっくりレティも同様である。 鈍重ではあるが跳ねて食料を探しにいく。 『む~しゃ~む~しゃ~・・・しあわせ~♪』 ゆっくりレティは特徴である長い舌を使い、この春芽吹いたばかりの柔らかい新芽を器用ににちぎって口に運ぶ。 ゆっくりレティは捕食種ではあるが、ゆっくりを主食とするゆっくりれみりゃ、フランとは違い雑食性が強い種であ る。 ゆっくりの中身は基本甘味であり栄養価も高い。 春先で空腹なゆっくりレティが通常種を見つけたら当然捕食する。 「「ゆ ゆ ゆ ゆ ゆ!!!」」 食糧を探していたゆっくり霊夢と魔理沙が不運にもゆっくりレティに遭遇してしまったようだ。 ゆっくりレティは声のする方へ体を向けると目線の先では2匹がガタガタと震えていた。 『ゆっくりくろまく~。』 独特の声を上げて2匹目掛けて舌を伸ばす。 「いやあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」 ゆっくり霊夢が震えながら悲鳴を上げ恐怖のあまりその場から動けずにいる。 その時、突如ゆっくり霊夢の体に衝撃が走った。 ゆっくり霊夢の体はゆっくりレティ目掛けて一直線に転がっていく。 「まりさがゆっくりするためにれいむがみがわりになってね!バイバイ!」 ゆっくり霊夢は転がりながら相方の突然の裏切りに言葉を失った。 ゆっくりレティは転がるゆっくり霊夢を器用に舌に巻きつけるとそのまま口に運ぶ。 「ゆっぎりでぎない ぃ ぃ ぃ ぃ ぃ !」 ゆっくり霊夢の悲痛の叫びが木霊した。 一方、自分が助かるためにあっさり相方を裏切ったゆっくり魔理沙は必死に逃げていた。 「のろまなれいむがいたおかげでたすかったよ!・・・ゆ?」 ずん!ずん!ZUN! 突如地響きが響き渡った。 ゆっくり魔理沙が何事かと周りを見渡すと後方からゆっくりレティがものすごい勢い(ゆっくり比)で迫っていた。 「ゆ ゆ ゆ ゆ ゆ あ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !」 あまりの迫力にゆっくり魔理沙は発狂してしまった。 ゆっくりレティはその巨体に似合わず通常種と同様に跳ねて移動することが出来る。 また、鈍重ではあるが体が大きい分一回の跳躍で進む距離が長いため、通常種が必死に逃げたとしても簡単に追いつ く事が出来る。 『ゆっくりくろまく~。』 ゆっくり魔理沙に追いついたゆっくりレティはすかさず舌を伸ばす。 涙を流しながらガクガク震えるゆっくり魔理沙にはもはや逃げ延びる術は残されていなかった。 「ゆるじでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 舌を巻きつけられたゆっくり魔理沙は、相方と同様に悲痛の叫びを上げながらゆっくりレティの口の中へ消えていっ た。 ゆっくりレティはリスのように食べきれない分を頬に貯蔵して蓄える習性を持っているが、今は空腹であるため2匹 はあっという間に噛み潰され消化された。 もし、ゆっくりレティが空腹ではなかったら2匹は長期間頬の中でゆっくり出来ない時間を過ごす事になっただろう。 一瞬で噛み潰された2匹は、ある意味運が良かったのかも知れない。 『ゆ~ゆ~ゆ~♪』 新芽と2匹のゆっくりでお腹がいっぱいになり、ゆっくりレティはご機嫌である。 ゆっくりレティは狩りのほとんどを舌を使って行い、体はあまり動かさないので非常に燃費が良い。 そのため、通常種よりは食べるものの、大きな体の割にはあまり食べないのだ。 ゆっくりレティは何かを探すように辺りを飛び回り、通常種が住んでいそうな洞や穴を見つけると舌を伸ばして中に 入れていた。 「ゆゆ?」 「おかしゃんこれにゃに?」 「こっちにこないでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 「みょーん!」 「わからないよー!」 様々な巣穴に舌を入れるが、不思議な事に巣穴の中から響き渡る声を聞くと捕まえずにそのまま舌を口に戻している。 しかしある穴に舌を入れた時、ゆっくりレティの対応が変わった。 「むきゅー!こないでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 巣穴の中から独特の鳴き声が聞こえると、ゆっくりレティはすかさずその声を出した饅頭に舌を巻きつけ巣穴から引 きずり出す。 巣穴から引きずり出されたのはゆっくりパチュリー、体は弱いが通常種中一番の頭の良さを持つゆっくりである。 「むきゅぅ~。」 ゆっくりレティは舌に絡めたゆっくりパチュリーを自分の前に置き、舌を口に戻す。 そしてずりずりと体を地面につけたままゆっくりパチュリーに近づいていく。 「むっきゅー!むきゅきゅーん!」 あまりの巨体を目の当たりにしたゆっくりパチュリーは動揺して鳴き声を上げることしかできない。 ゆっくりパチュリーはもう押しつぶされてしまうと観念したのか目を瞑っていた。 しかし、ゆっくりパチュリーには予想外の事態が待っていた。 『ゆっくりしていってね~!』 ゆっくりレティはゆっくりパチュリーを潰してしまわないように注意しながら頬ずりをしていた。 頬ずり、それはゆっくり達の間では友好を示す行為である。 「ゆっくりしていってね・・・むきゅぅ・・・。」 張り詰めた糸がプチン!っと切れてしまい、ゆっくりパチュリーは気絶してしまった。 -晩春- ゆっくりレティの頭の上にはゆっくりパチュリーが乗り、その周りには4匹のゆっくりが集まっていた。 『ゆっくりしていってね~。』 「むきゅー、今日もみんなでご飯を集めるのよ。」 そう、ゆっくりレティは小規模な群れのリーダーになっていた。 春先、巣穴に舌を入れて探していたのは相方となるゆっくりパチュリーを探していたのだ。 「れてぃがいればこわいものはないね!」 「まりさたちはあんぜんだね!」 「わかるよー、りーだーがまもってくれるんだねー。」 「こころづよいみょん!」 ゆっくりレティの群れの一員はすべて通常種であり、ゆっくり霊夢、魔理沙、パチュリー、ちぇん、みょんが1匹ず つである。 「むきゅ!れてぃはあまりうごくのがすきじゃないからよぶんにしょくりょうがとれたられてぃにわたしてね!」 「「「「ゆっくりりかいしたよ!(よー!)(みょん!)」」」」 頭の上から降ろされたゆっくりパチュリーも4匹に混ざり食糧を探しにいく。 ゆっくりレティはお気に入りである大きな木の木陰で眠る体勢に入っていた。 ゆっくりパチュリーを相方に迎え、小規模ながら群れを作ったのはゆっくりレティ自身がゆっくりするためである。 ゆっくりレティが群れのリーダーであれば、よほどの事が起きない限り群れの一員は安全が保障される。 そして安全を保障してもらう代わりに通常種はリーダーに食糧を提供するのである。 『ゆぅ~・・・z z z z z 。』 気持ちよさそうに食糧が集まるのを寝て待つゆっくりレティであった。 梅雨、春から夏への季節の変わり目である。 この季節は雨の苦手なゆっくりにとって様々な脅威が襲い掛かる季節である。 とある巣では・・・。 「「「ぴぎゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !おみじゅこわいよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」」」 「いそいでおかあさんのおくちのなかにはいってね!」 立地条件の事など考えもせずに偶然見つけた木の洞を巣にしていたゆっくり霊夢の一家に災難が降りかかっていた。 周囲よりも少し窪んだ場所に洞があったため、連日の雨で巣に水が流れ込んできていた。 「いやあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !からだがとけちゃうよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 「「「おかあしゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ん!」」」 一方、ゆっくりレティの群れでは・・・。 雨が降る中、ゆっくりレティはいつもと変わらずお気に入りの大きな木の根元でスヤスヤと眠っていた。 ただ、いつもと違うのは口の中に群れの通常種が避難しているという事である。 「むきゅ~、れてぃはみずにつよいからあんしんよ!」 「れてぃはすごいね!」 「さすがまりさたちのりーだーだね!」 「わかるよー、ここならとけないんだねー!。」 「あんしんみょん!」 冬眠に使っていた巣穴をそのまま巣にしているゆっくりレティ達であったが、連日の雨で水没とまではいかないまで も水が入り込み、ゆっくりできない状況に陥ってしまっていた。 いくらゆっくりレティが皮が厚く、水に強いといっても長時間水に浸っていたらさすがに皮が溶け出してしまう。 そこでゆっくりレティは群れの通常種達を口に避難させ、比較的雨の当たる量が少ないお気に入りの場所へ避難した のだ。 『ゆ ぅ ぅ ぅ ・・・z z z z z 。』 ゆっくりレティは呑気に眠りながら雨が止むのを待つのであった。 翌日、久しぶりに雲の中から太陽が顔を覗かせた。 ゆっくり霊夢一家の巣穴には黒色に染まった水にデロデロニなった皮が浮かんでいた。 ゆっくりレティの群れでは全員が無事生き延び、久しぶりに晴れた森の中を通常種達は食糧を探し跳び回っていた。 -夏- 夏、それは一年で最も気温が上がり、ゆっくりの食糧となる虫や草花が活気に満ち溢れる季節である。 『ゆぅゆぅ・・・z z z z z 。』 雨や寒さに強いゆっくりレティではあるが、体が大きい分熱がこもりやすいため暑いのは苦手である。 体温が上がるのを嫌うゆっくりレティは、今日も木陰で涼みながら気持ちよさそうに眠っている。 通常種達は豊富な食糧を集めに森中を駆け巡っている。 「まりさ、このおはなさんとってもおいしいよ!」 「れいむ、こっちのむしさんもとってもおいしいよ!」 ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙は互いに見つけた食糧を交換し合い、笑顔で頬張っている。 「「む~しゃむ~しゃ、しあわせ~♪」」 普段から仲の良い2匹は、お腹がいっぱいになったところで頬ずりをし合い信頼を確かめ合う。 しかし、今日の2匹の様子はいつもとは違った。 「れいむ~なんだがあたまがほわ~ってしてきたよ~。」 「まりさ~、れいむもなんだかあたまがほわほわしてきたよ~。」 2匹は無意識のまま頬ずりを続け、相手に振動を与え続けている。 そして振動は次第に強くなっていく。・・・・・そして。 「「ゆ ゆ ゆ ゆ ゆ!んほお お お お お!」」 「「すっきりー!」」 初めに意識がはっきりしたのはゆっくり魔理沙であった。 「ゆ?とってもからだがすっきりしてるよ!ねぇれい・・・ゆ!」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢のあたまを見てびっくりした。 緑色の蔓が生え、枝分かれした先端にはプチ霊夢とプチ魔理沙が実っていた。 「ゆゆ!まりさとれいむのあかちゃんだね!みんな、ゆっくりしていってね!」 ゆっくり魔理沙の「ゆっくりしていってね!」に反応し、次々とプチ達が地面へ落ちていく。 「「「「「ゆっくりちていってね!」」」」」 プチ霊夢5匹、プチ魔理沙5匹の総勢10匹の饅頭がこの世に誕生した。 すべてのプチゆっくりが切り離されるとゆっくり霊夢の意識が戻り、同時に頭の蔓が抜け落ちる。 「れいむ!このこたちはまりさとれいむのこどもだよ!」 「ゆゆ!?・・・れいむのこども?」 蔓に栄養をとられている最中、お母さんゆっくりは気絶してしまうことがある。 このゆっくり霊夢も同じで、突如目の前に赤ちゃんが現れ困惑していた。 「おか~しゃんおなかしゅいたよ。」 1匹のプチ霊夢の「おか~しゃん」と言う言葉を聞くと、ゆっくり霊夢の困惑も吹き飛んだ。 「みんな、このみどりいろのものをたべてね!」 お母さんゆっくりは本能か、記憶の奥底に眠っている初めてのご飯の事を思い出すのか、皆同じように抜け落ちた蔓 をプチゆっくりの初めてのご飯として与える。 「「「「「む~しゃむ~しゃ、ちあわせ~♪」」」」」 プチ達が蔓を食べ終わると、ゆっくり魔理沙が口を開いた。 「れいむ!あかちゃんをりーだーにしょうかいするよ!」 「ゆゆ!そうだね、かわいいあかちゃんをみたられてぃもきっとゆっくりできるね!」 2匹は赤ちゃん達を連れてリーダーのもとへ向かった。 『ゆっくりくろまく~』 「「「「「たちゅけて ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」」」」」 先ほどこの世に生を受けたばかりの10匹のプチゆっくり達にはゆっくりレティの舌が巻きつけられていた。 「なんでこんなことするのお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 「れいむの、でいぶのこどもがえじでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 2匹は今にも食べられそうな我が子を見て泣き叫んでいた。 「むきゅぅ・・・、ふたりともわすれたの?れてぃのむれにはいるときのやくそくを。」 「「やくそく?・・・ゆゆゆ!」」 突如何かを思い出したのか2匹は凍りついた。 ゆっくりレティが群れを作るのはあくまで自分がゆっくりするためである。 プチゆっくりは成長するために見た目以上の食糧を食べる。 親は我が子のために必死で食糧を集めるため、当然ゆっくりレティに差し出される食糧は減ってしまう。 ゆっくりレティにとってプチゆっくりは「ゆっくりできなくなるもの」以外の何ものでもないのだ。 「むきゅぅ、おもいだしたみたいね。あかちゃんができたらここからでていくか、れてぃにあかちゃんをさしだすかの どちらかしかせんたくしはないのよ。・・・ふたりともどうするの?」 悲しそうな顔でゆっくりパチュリーはゆっくりレティの意思を伝える。 2匹にとってこの場所は最高のゆっくりプレイスであり、ずっとここに住みたいと思っている。 しかし、自分達の赤ちゃん達とゆっくりしたいとも思っている。 この二つを天秤にかけ2匹は答えを導き出した。 それは・・・。 「「れいむ(まりさ)たちはここでゆっくりするよ!」」 2匹は自らがゆっくりする事を選んだ、そしてそれは同時にプチ達への死の宣告でもあった。 「「「「「ぴぎゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !れいみゅ(まりしゃ)たちをすてにゃいでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」」」」」 泣き叫ぶプチ達はゆっくりレティの口の中へ消えていき、口が閉ざされると泣き声は聞こえなくなった。 「ごめんね、ごめんね、れいむ(まりさ)がすっきりしたせいで・・・。」 2匹は泣きながら食べられた赤ちゃん達にひたすら謝り続けるのであった。 -晩夏- 夏の暑さも和らぎ、ゆっくり達にとって過ごしやすくなる季節。 しかし、この季節は時としてゆっくり達に悲劇をもたらす事もある。 とあるゆっくり魔理沙の一家では・・・。 「ゆゆ!?あめがふってきたよ!いそいでおかあさんのぼうしのしたにかくれてね!」 「おかーしゃん、あめさんはいつやむの?」 「これぇじゃゆっくりできにゃいよ・・・。」 急な夕立で辺りに雨をしのげそうな場所がなかったため、お母さん魔理沙は仕方なく自分の帽子の下に子供達を避 難させる。 「ゆぅぅぅぅぅ・・・なかなかやまないね・・・。」 「あめしゃんゆっきゅりしすぎだよ!」 「ゆっきゅりしないではやくやんじぇね!」 なかなかやまない雨に子供達はストレスが溜まり、ゆっくりできなくなっていた。 そして、お母さん魔理沙の体に変化がおとずれる。 「ゆゆ!?うごけないよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !まりさのからだがあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !」 「おかーしゃんたちゅけち ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 「とけちゃうよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 いくら川を渡るのに使えるほどの耐水性の帽子でも体を雨から完全に守る事はできない。 ゆっくり魔理沙の一家は強い雨に打たれどんどん溶けていく。 「も・とゆ・・り・・かっ・・・・・。」 一方ゆっくりレティの群れでは・・・。 この時期突然の雨が降りやすい事をゆっくりパチュリーは知っていた。 そのため、曇ってきたらすぐにゆっくりレティの下へ戻るように指示されており、通常主達は皆無事にゆっくりレテ ィの口の中へ避難していた。 「むきゅーみんなからだはだいじょうぶ?」 「ぱちゅりーとれてぃのおかげでたすかったよ!」 「まりさのからだはだいじょうぶだよ!」 「わかるよーからだがとけてないかしんぱいしてくれてるんだねー!」 「すこしからだがやわらかくなったけどだいじょうぶみょん!」 突然の夕立など気にもしないゆっくりレティは雨がやむのを寝て待っていた。 30分後、先ほどの雨が嘘であったかのように太陽が光り輝いていた。 ゆっくり魔理沙一家のいた場所には3つの帽子とデロデロになった皮が黒く濁った水溜りに浮いていた。 ゆっくりレティの群れでは通常種達が再び食糧を探すためにゆっくりレティの口から勢いよく飛び出していった。 夕立以外にもこの時期はゆっくり達にある脅威が襲い掛かる。 「ゆゆ!おひさまがゆっくりしてないよ!」 ゆっくり魔理沙はいつものように食糧を集めゆっくり過ごしていた。 この季節、日が沈む速度は日に日に早くなっているため、夜になる前に巣に戻ることが出来ないゆっくりが現れだす。 天気が良かったため遠出していたゆっくり魔理沙はもうすぐ日が沈むと言うのに群れからだいぶ離れた位置にいた。 「いそがないとゆっくりできなくなっちゃうよ!」 ゆっくり魔理沙は急いで群れの所まで戻ろうとするが、元いた場所から半分の距離も進まない場所で日が完全に沈ん でしまった。 「いやあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!くらいのはいやだあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」 辺りが暗闇に包まれると、ゆっくり魔理沙は恐怖に耐えられずに発狂しだしてしまった。 しかしそれがいけなかった・・・。 バッサ、バッサ、バッサ 「がおー!たべちゃうぞー!」 ゆっくり魔理沙の悲鳴が捕食種ゆっくりれみりゃを呼び寄せてしまったのだ。 暗闇の中でも遠くが見通せるゆっくりれみりゃはすぐに見つけたゆっくり魔理沙目掛けて襲い掛かる。 そして、ゆっくりれみりゃがかなり接近したところでようやくゆっくり魔理沙は自らに迫る危機に気づいた。 「れ、れみりゃ!」 時既に遅し、ゆっくり魔理沙の運命は既に決まったように見えた。 しかし・・・! 『ゆっくりくろまく~』 「うあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !」 牙がゆっくり魔理沙の頬に突き刺さる直前、ゆっくりれみりゃにゆっくりレティの舌が巻きつけられた。 そして悲鳴を上げながらゆっくりれみりゃはゆっくりレティの口の中へ消えていった。 そしてゆっくりレティの口の中からは群れの通常種たちが続々と飛び出してゆっくり魔理沙を取り囲む。 「むきゅー!まりさだいじょうぶ?」 「まりさ!しっかりして!」 「わかるよーこわかったんだねー。」 「もうだいじょうぶみょん!」 あまりの出来事に放心状態のゆっくり魔理沙であったが、次第に状況を理解し・・・。 「うわあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ん!ごわがっだよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 張り詰めていた精神の糸が緩んだゆっくり魔理沙は安心感から泣き出してしまった。 「ありがとう、まりさはもうだいじょうぶだよ。」 ゆっくり魔理沙は落ち着きを取り戻していた。 「むきゅ、れてぃにもおれいをいいなさいよ、わたしたちをくちにいれてまりさをさがしにきてくれたんだから。」 「ゆ!?そうだったのれてぃありがとう!」 『ゆっくり~♪』 ゆっくりレティは滅多に食べられない肉まんを食べる事ができ、とてもご機嫌であった。 -秋- 秋、それは様々な花が咲き、果実が生じ、多年生の生物は冬を越す準備を始める実りの季節である。 その寿命が極端に短い(様々な要因で潰されるため)ゆっくり達も越冬のために巣に食糧の貯蔵を始めだす。 『ゆっ!ゆっ!ゆっ~!』 ゆっくりレティは食糧の貯蔵場所の拡張のため、舌で巣穴の拡張工事を行っていた。 通常種による越冬のための巣穴の作製は数週間かかるが、ゆっくりレティはもともと自分の生まれた巣穴が越冬用で あり、さらにその巨体のおかげで拡張工事は数日のうちに終わった。 『ゆっくり~!』 「むっきゅー!すごいわれてぃ!」 「うわぁ、すごくひろいね!」 「まりさたちのりーだーはやっぱりすごいね!」 「わかるよーゆっくりできるいえなんだねー!」 「すごいみょん!すごいみょん!」 群れの通常種達はゆっくりレティを褒め称えた。 そして越冬の食糧確保のため、本格的に活動を始める。 「ねぇまりさ、このきのこはたべられるの?」 「だめだよれいむ!そのきのこをたべるとゆっくりできなくなっちゃうよ!」 「みょんたちはおちばをあつめるみょん!」 「わかるよーべっどにするんだねー!」 「むきゅー、ちょうきかんほぞんできるしょくりょうはこっち、いたみやすいしょくりょうはこっちよ。」 『ゆ~!』 この季節になると普段寝てばかりいるゆっくりレティも越冬のための食糧の貯蔵作業に加わる。 長い舌を使って通常種達では届かない位置に実っている木の実を次々と頬に貯め込んでいく。 ゆっくりレティの群れは順調に越冬の準備を進めていった。 -晩秋- 少しずつ寒さが増し、豊富だった食糧も少なくなり、木枯らしが吹き荒れる季節。 この季節になると外で活動するゆっくりの数が減少を始める。 そして、越冬に向けての準備もいよいよ大詰めとなる。 とあるゆっくり霊夢の一家では・・・。 「みんな、あしたすのいりぐちをふさぐからきょうはおそとでおもいっきりあそぼうね!」 「「「おしょとであしょぶよ!」」」 このゆっくり霊夢の一家には片親となるゆっくりがいない。 仲の良かったゆっくり魔理沙と越冬の準備をしている最中(さなか)、豊富に食糧を蓄える事ができた安心感から成 体でもないのに「すっきり」してしまったのだ。 ゆっくり霊夢が我に返った時には時既に遅し、目の前でゆっくり魔理沙が黒く朽ち果て、3つの実を実らせていた。 自らの犯した過ちを後悔したが、ゆっくり魔理沙の忘れ形見であるプチ魔理沙達に心の傷は癒されていった。 食糧も「すっきり」する前に十分に集めていたため、無事に越冬の準備を終わらす事ができた。 「みんなあんまりとおくにいっちゃだめだよ!」 「「「わかったよおかーしゃん。」」」 プチ魔理沙達は無邪気にはしゃいで追いかけっこをして遊んでいる。 その姿を見てお母さん霊夢は越冬中の巣の中での幸せな生活を思い描いていた。 しかし知識のなかったお母さん霊夢に悲劇が襲い掛かる。 びゅー!びゅーー! 突如冷たくとても強い風が吹き荒れた。・・・木枯らしである。 成体ではないがそれなりに体が大きいお母さん霊夢は、その場で体勢を崩してしまった。 「ゆ!?れいむのあかちゃんたちは!」 お母さん霊夢でさえ、体勢を崩すほどの木枯らしである。 当然子供達は・・・。 「うわぁ~♪おそらをとんでるよ~♪」 「おか~しゃ~ん♪」 「まりしゃたちおそらをとんでるよ~♪」 プチ達は風で飛ばされ、自分達がその後どうなるかも知らずに無邪気にはしゃいでいた。 「あ、あ゛、あ゛がぢ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ん!!!」 お母さん霊夢は顔を青ざめて絶叫した。 「ど~したのおか~びぎゅ!」 1匹は木に勢いよく激突して潰れた。 「ぴぎゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ びゅ!」 1匹は先に潰れたプチ魔理沙を見て絶叫しながら木の枝に突き刺さりあの世へ旅立った。 「おかあしゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ん、たしゅげ!」 1匹はそのまま地面へ激突し、物言わぬ潰れた饅頭となった。 「・・・・・。」 辺りには木枯らしの吹き荒れる音だけが響き渡っていた。 一度にすべての子供を失ってしまったお母さん霊夢はその現実を認めたくないのか呆然としていた。 しかし、一度潰れた饅頭が帰ってくる事はなく、次第に現実を理解し始め・・・。 「・・・あ、あ、あ゛、あ゛がぢぁんがあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !ゆぴべぴゅびゃあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」 大好きだったゆっくり魔理沙の死、そしてそのすべての子供の死。 餡子脳で受け止められるキャパシティを超えてしまったお母さん霊夢の精神はボロボロになってしまった。 お母さん霊夢の目からは光が消え、辺りが暗くなっても笑い続けていた。 「ゆふふふふふふふふふふ!ゆはははははははははは・・・・・!」 「うー!ゆっくりしね!」 次の日の朝、お母さん霊夢のいた場所には赤いリボンがぽつんと落ちていた。 一方ゆっくりレティの群れでは・・・。 『あしたからゆっくりするよ~。』 「むきゅー、しょくりょうあつめはきょうがさいごよ。ゆうがたにはすのいりぐちをふすぐわよ!」 「「「「ゆっくりりかいしたよ!(よー!)(みょん!)」」」」 この時期食糧はとなる木の実や草花はほとんど無くなってしまっている為、通常種達は自らが冬の間ベッドにする落 ち葉を集め巣穴に持ち帰った。 食糧が取れないとわかっているゆっくりレティは巣穴の奥でスヤスヤと眠っている。 未の刻から申の刻へ移り変わる頃、帽子いっぱいに落ち葉を入れたゆっくり魔理沙が巣穴に戻り、群れの一員がすべ てそろった。 「むきゅ、いまからおくにいるれてぃをよんですのいりぐちをふさいでもらうわよ!」 「「「「ゆっくりり・・・。」」」 「「「あら、なかなかとかいてきなすあなね。」」」 突如3匹のゆっくりアリスが巣穴に入り込んできた。 3匹は落ち葉を集めるゆっくり魔理沙を偶然発見し、こっそりと跡をつけていたのだ。 「ゆ!ここはまりさたちのおうちだよ!ありすはでていってね!」 ゆっくり魔理沙は体を膨らませて3匹の侵入者を威嚇する。 ゆっくり霊夢、ちぇん、みょんも警戒態勢を取る。 「あら、まりさったらはずかしがっちゃってかわいいんだから。」 「なかなかひろいはうすね、とかいはのありすたちがふゆのあいだつかってあげるわ。」 「どうしてもっていうならあなたたちをるーむめいとにしてあげてもいいわよ。」 この巣穴の主が誰なのかも知らず傍若無人に振舞う3匹であった。 しかし、当然その行為を後悔することになる。 「「「ふくれたまりさもかわいいわ!すっき・・・あ゛っ!あ゛っ!あ゛っ!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」」」 奥から現れたゆっくりレティの姿を見て3匹は悲鳴を上げ硬直した。 「れてぃ、あのありすがしんにゅうしゃよ!」 3匹が進入してすぐゆっくりパチュリーはゆっくりレティに助けを求めに行っていたのだ。 「「「あ、ありすがわるかったわ!す、すぐにここからでていき・・・。」」」 『ゆっくりくろまく~!』 逃げようとする3匹にゆっくりレティは容赦なく舌を巻きつける。 「おねがいじまず!だずげでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 「いやあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !ごべんなざい ぃ ぃ ぃ ぃ ぃ !」 「ありずはいながものなんでず!ゆるじでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 必死に助けを請う3匹であったが、聞き入れられるはずもなくゆっくりレティの口の中へ消えていった。 空腹でないゆっくりレティに捕まったこの3匹は、長期間頬に蓄えられ地獄の苦しみを味わうことになるのであった。 「「「「「れてぃ、たすけてくれてありがとう!(とー!、とうみょん!)」」」」」 『ゆっくり~♪』 お礼を言われた当のゆっくりレティは、越冬を前に栄養豊富な3匹のカスタード饅頭を得ることができ、ご機嫌であ った。 その後、ゆっくりレティによって通常種の巣穴と比べ類を見ないほど頑丈に入り口が塞がれ、本格的な越冬が始まっ た。 後編に続く? このSSに感想を付ける
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