約 545,811 件
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/1261.html
そのゆっくり霊夢は、生まれてから一度たりとも、ゆっくりしたことがなかった。 「ゆっくりするって……何?」 何度繰り返した言葉であろうか。 懐古にも似た感傷を抱きながら、ゆっくり霊夢はひとりごちた。 外界には、言葉を話せるような存在は人間さんだけで、私たちのような、ゆっくりとか言う生物はいないらしい。 いつか会った、神社の巫女からきいた、戯言にも似た噂話。 でも、ここは幻想卿。 人間はおろか、妖怪や、あろうことか神様までいる。そしてゆっくりもだ。 でも、それらはみな役割がある。人間は日々彼らの暮らしを営み、妖怪は人間を恐れさせる。神様は言わずもがな。 ならば、ゆっくりは? 道行く人妖に聞けば、みな、こう答えるのだった。 「ゆっくりはゆっくりするためにいるんじゃないか」と。 でも、ゆっくりするって……何? ゆっくり霊夢の見るところ、仲間のゆっくりは、可能な限り、思い思いに「ゆっくり」していた。 もちろん、野生育ちの運命か、過酷な生でもあった。 動物による捕食をかいくぐり、一年に一度は必ずやってくる冬に備えて食料を溜め込む。もちろん、ねぐらの確保も忘れてはいけない。 それでも、ゆっくりたちは、暇を見つけては、仲間や、子供たちとともに「ゆっくり」していたのだ。 ぱちゅりーはどこからか見つけてきた本の上で。まりさは、帽子を船に見立てて川で遊んだりもした。 また、大多数のゆっくりは、文字通り太陽の光にあたって、リラックスすることでゆっくりとしていたのだった。 だが、この霊夢は違った。 母親のれいむや父親のゆかりん、姉妹たちと並んで日向ぼっこをし、ゆっくりしようとはするのだが、どうしても、 「なぜ、私は生まれてきたの? 今、この時間をすごしている私は何?」と、滝のように疑問が頭の中をぐるぐると回って、 どうしても、両親や姉妹のようにゆっくりできないのだ。 なんでだろう? 母親にきいても、父親に聞いても、霊夢の悩みは晴れることはなかった。どちらとも、霊夢の悩み自体を理解できなかったのだ。 群れ一番賢いとみなされている、ぱちゅりーに聞いたときも、 「むきゅー。わたしたちはゆっくりするためにうまれてきたのよ」と、答えてはくれるのだが、霊夢は納得がいかなかった。 何度、自分も何も考えずに、仲間とともにゆっくりできたらどんなに楽だろうか、と考えたことか。 でも、霊夢はどうしても、考える、という作業をとめられなかったのだ。 たとえば、群れの中に多数いるれいむは、皆リボンをつけている。それがないと、どのれいむもゆっくりできないのだという。 どういうことだろうか? 霊夢のみるところ、リボンがなくったって身体的には不利にならないのだ。どう考えてみても。 そう考えて、ある日、ためしに自分のリボンを取ってすごしてみた。 結果は、群れの皆から、 「おりぼんのないれいむはゆっくりじゃないよ! そんなのおかしいよ!」と、責められる結果となった。 そのうえ、母親のれいむがパニックになってしまったのであった。 「あああ! れいむの、れいむちゃんのおりぼんがないよ! これじゃゆっくりできないよぉぉぉぉ!!!」 まるで我が事のように心配してくれたのは霊夢としてもちょっぴりうれしかったが、やはり霊夢の疑問は尽きることがなかった。 「リボンのない霊夢はゆっくりできないの?」 よくわからない。ゆっくりれいむたちは、リボンがないとゆっくりできないのか? リボンがないと、たとえゆっくりしていても、ゆっくりではなくなるのか? そこまで考えると、何だか頭の奥がズキズキとしてきて、考えがまとまらなくなってしまうのだった。 大人になった霊夢は、群れの中では一番狩りが得意だった。 他の皆がえさの虫に向かって一直線に飛び出すのに対し、霊夢は、あらかじめ虫が逃げ出しそうな経路を予想し、 それをふさぐように行動していたからだ。 はじめのうちは、群れの中で重宝がられた。霊夢はいつだってたくさんの獲物をとってきたからだった。 でも、それは最初のうち。 ゆっくりの生きる目的はみんなで「ゆっくりすること」。それなのに、霊夢はゆっくりできないのだ。 ゆっくりは、他のゆっくりとゆっくりするのが大好きである。 言い換えれば、他のゆっくりがゆっくりしていないと、自分もゆっくりできない。 「あのれいむ、へんだよ。なんだかゆっくりできないよ!」 「ゆっくりできないこはあっちいってね!」 それでも家族は霊夢を一生懸命かばったが、霊夢は群れのなかから孤立していった。 「ゆっくりできないゆっくりはゆっくりじゃない……」 「じゃあ、私は何?」 「いったい何のために生きているの……?」 霊夢がついに群れから追放されたときに発した独り言である。 群れから離れた霊夢は絶対的に孤独であったが、生活の手段は心得ていた。 ゆっくりできないということは、生きることには何の障害にもならなかったのだ。 だが、それが霊夢の苦悩を強くする。 「ゆっくりするって……何? 生きるって……何?」 霊夢はいろんなところに行ってみた。その答えを探すかのように。 途中で、人間の里へ降りてもみた。半妖の先生に教えを受けて見たりもした。 字は書けるようになったが、さすがの先生も、 「生きるとは何、か……わからんな」と、匙を投げてしまうのであった。 旅をするうちに、霊夢は野生のゆっくりの生態を外れるようになった。 狩りをするよりも、人間や妖怪の手伝いをして路銀を稼ぎ、その代金で食料を買ったほうが、 効率よく、しかも質の高いえさを手に入れることができる、と気がついたのだ。 霊夢は積極的に人里や妖怪の元へ通った。 人里で人間の手の届かないところを掃除したり。夜雀の屋台でサクラになったり。 竹林で、ウサギが掘る落とし穴の囮役にもなったりした。 苛められる事や、戯れに命を奪われそうになったことも何度もあったが、霊夢はそのたびに効率のよい回避法を編み出していった。 そして、雇われるたびに、雇い主に疑問をぶつけるのだった。「生きてるって、何」と。 とある姫は「死なないことね」と。 高名な薬士は「責任を全うすることよ」と。 人形遣いは「探求すること」と。 陽気な鬼は「楽しむことさ」と。 誰の答えも、霊夢の疑問を氷解するには至らなかった。 あるとき、とある大妖のまくらになったことがあった。 目覚めた妖怪に、ゆっくりは聞いた。「生きてるって、何ですか」 美しい金髪の妖怪は、ひとつ微笑み、 「さあ、何でだと思う?」と聞き返す。 「わからない。私はゆっくりできない子だから。私は何のために生きてるかわからないんです」 「ゆっくりはゆっくりするために生きる。それはひとつの真理ともいえるわね。でもね、あなたはゆっくりできないけれども、 あなたはゆっくりとして生まれた。それは否定できないでしょう?」 「でも、ゆっくりできないゆっくりなんて、聞いたことがないです」 「あら、生まれてきたことを後悔する? あなたの両親は、あなたのことをなんと思っていたの?」 「ゆっくりできない子だけど、とてもしあわせーにしてくれる、子、だと……」 思わず、両親のことを思い出してしまった。涙が嗚咽とともに出てくるのを霊夢は止められなかった。 「ならばあなたはまぎれもないゆっくりだわ」 妖怪は微笑む。 「そしてあなたはこの私、八雲紫の前にいる。それはあなただけの歴史。事実」 「は゛い゛……」 「あなたはあなたよ。それは私にすら変えられない事実。いえ、変えちゃいけない境界」 「私は、私……?」 「あなたの質問。生きること、を説明するのは、きっと誰にでもできるし、誰にでもできないものなのだわ」 「そうなのですか……?」 「でもね。みんなそうだから、生きてるのよ」 「正直、よくわかりません」 「ふふふ。私もよ」 そういって、妖怪は姿を消し去ったのだった。 あのときは、答えを見つけそうだったのになあ。 霊夢は自分を笑った。霊夢は、あれから普通のゆっくりの何倍も生きた。 それでもゆっくりとは何か、答えは出ない。 霊夢が最後に働いていた、紅魔館。 そこでゆっくりは最期のときを迎えようとしていた。 「あら、だいぶ弱っているようね」 「お嬢様……」 霊夢の部屋を訪れたのは、紅魔館の主、レミリア・スカーレットである。 「これ以上お役に立てなくて申し訳ありません」 「そう、残念ね。あなたはゆっくりにしては異常に役に立ったから」 「褒め言葉と受け取っておきます。ありがとうございます」 やや沈黙が降りた後。当主は言った。 「あなた、私の眷属になる気はない? 特別よ、ゆっくりなんかを誘うのは」 正直、惹かれなかったといえば、嘘になる。 「そうすれば、このままのたれ死ぬこともなくなる。ゆっくりとは何か、の続きを探求することだってできるわ」 「……せっかくですが、お断りします」 「あら、何故?」 「吸血ゆっくりになると、私が、今までの私でなくなるような気がするんです」 そう、と当主は静かに頷いた。 「私は、私ですから」 「そうね。あなたがゆっくりとして歩んできた、有限の歴史の積み重ね。それを侮辱する権利は誰にもないわね」 その瞬間、ゆっくりの中に光が舞い降りた。そう、それこそが、私というゆっくりなのだ。 「ええ、私は、ゆっくりできませんでしたが、誇りを持って、自分のことをゆっくりだといえます」 「そう、おめでとう。そしてさよなら、ゆっくり霊夢」 「さようなら、お嬢様」 霊夢は目を閉じ、逝った。 閻魔の裁判を待っているゆっくり霊夢がいる。 船頭死神との話は楽しかった。 「ゆっくりにしては話は楽しいし、三途の川もやたら短い距離だったよ」と、名残惜しそうにしてくれた。 すべての思い出が寸刻のうちに繰り返される。 「次、ゆっくり霊夢!」 呼び出された。 四季映姫と名乗る閻魔が、宣告を下す。 「ただいまから審判を開始する。まず、名前と種族名を言いなさい」 霊夢は、自信をもって答えた。 「私はゆっくり霊夢。種族はゆっくりです」 万年初心者 素晴らしい。 -- ぽけわん (2009-05-29 20 25 00) 素晴らしいです。 -- ゆっけのひと (2009-06-03 20 44 33) こりゃすばらしいわ・・・ -- 名無しさん (2009-06-08 21 57 33) まさかゆっくりに感動させられるとは・・・ -- 名無しさん (2009-08-22 15 12 48) 素晴らしいです。 感動しました。 -- くるくるくるる (2010-03-17 23 55 53) 生きるとは何か・・・か。まだその答えは見つからない。 はっきりした答えは無いだろう。だが、自分なりの答えは持ちたい物だ。 -- 名無しさん (2011-02-02 19 17 17) 現実的によく考えさせられるお話でした -- ばんちょー (2014-03-13 01 04 57) 偶然凄い物語を見つけてしまった -- 名無しさん (2014-03-21 18 50 49) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1321.html
ゆっくりの飾りの話に興味をもったので書きました。 最近、面白い話を聞いた。 ゆっくりは、死んだゆっくりの飾りを身につけると他のゆっくりに殺されるらしい。 何度かゆっくりたちに家や畑を荒らされてた俺は、それを聞いてその話に興味が湧いた。 どうすればゆっくりを苦しませて殺せるか、ずっとそれを模索していたからだ。 あいつらは絶対に自分が間違ったと思わない。 仮に間違ったと言っても、それは中身を伴わない単なる命乞いだ。 こっちの怒りが少しでも収まると分かると、手のひらを返したように、 「せっかくだから、ゆるしてあげるよ!!!」 「ほんとーはれーむとまりさのおうちだけど、そこまでゆーならすんでもいーよ!!!」 と言う。もちろん、そんなことをいった奴らは踏み潰した。あいつらは反省しない、 というより反省するのに必要な記憶力も思考力もない。なら、どうやって自分たちの罪の重さを分からせるか? 答えは簡単だ。苦しませればいい。 死んだゆっくりの飾りを身につけると、他のゆっくりに殺される。自分が仲間だと思ってきた連中にいきなり攻撃され、 ショックを受けるゆっくりたちを想像すると、いてもたってもいられず森の中に入っていった。 森に住むゆっくりの飾りを手に入れるためだ。 森に入って10分ぐらい経つと、目の前にゆっくり霊夢が現れた。 ゆっくり霊夢は赤いリボンを着けている。 俺はそれを見た瞬間、「これだ!」と思った。 帽子と違って、リボンなら結びつければ外れない。 ただし今は殺さない。話によれば、死んだゆっくりの飾りを盗ったものは呪われるらしい。おお、こわいこわい。 だから、リボンが必要になるまでは生かしておこう。 こうして何匹かゆっくり霊夢を捕まえた俺は、籠に詰めるとさっそく家に向かった。 帰る途中で、 「おにーさん、どこにゆっくりたちをつれていくの?」 「ここ狭いよ!ゆっくりできないよ!」 「はやくれーむ達を出してね!」 とか聞こえてきたが全て無視した。 家に着くと、俺はゆっくりたちを木製の箱に詰めた。最初は 「おにーさん、ここ狭いよ!出してよー!ゆっくり出来ないよー!」 と叫んでいたゆっくりたちだったが、詰められた後に餌を与えられるとすぐに懐いてきた。 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせー!」 本当に単純な思考回路を持ってるな。 あとは、畑か家がゆっくりに襲われるのを待つだけだ。 それにしても、復習する為にわざ襲われるとは、本末転倒だな... それから5日が経った。家の近くにある茂みに隠れていると、 「おっ、来た来た。」 何も知らないゆっくりの家族が俺の畑にやってきた。 親霊夢と親魔理沙の2匹に加え、4匹ほどの子ゆっくりたちがいた。 子ゆっくりの内訳は、霊夢が3匹、魔理沙が1匹だった。 俺はこの日のために罠をしかけておいた。 ゆっくりたちに分かるように、畑の一箇所にいくつかクズ野菜の塊を放置していた。 無論、被害が出ないように育てていた野菜は収穫し、家の中も散らかりそうなものは全てしまって鍵をかけておいた。 クズ野菜の塊に気づいたゆっくり達は、さっそく餌にありつく。 しかしその瞬間、ボソッと餌ごとゆっくり達の姿が消える。 落とし穴にかかったのだ。 「かかったな、阿呆めが!」 そう言って、俺は茂みから飛び出し、落とし穴に近づいた。 「重いよー!れーむたちをゆっくり助けてー!」「おかーさん!この野菜臭いよー!汚いよー!」「何があったんだぜ!ゆっくり教えるんだぜー!」 そこで俺はこう言った。 「大丈夫かい?ゆっくり助けてあげるよ!」 「おにーさん、れーむたちを助けてー!」 「いーよ、でもちょっと待っててねー!」 そう言って、俺は家に向かった。家の押入れには俺があらかじめ捕まえたゆっくり霊夢たちが入っていた。 餌は十分に与えていたし、そこそこ大きい箱だったので、殺し合いはしていないようだ。 「明るいよー!おにーさん、ゆっくりしよー!」 「れーむ達の家でゆっくりしていってね!」 「暗かったよー!やっとゆっくりできるね!」 ゆっくり霊夢達が、それぞれ思い思いの感想を口に出しているところを、俺はいきなり握りつぶし始めた。 「痛いよー!ゆっくり出来ないよー!離しtt!!!」 「おにーさん何するのー!ゆっくり出来ないならさっさとdd!!!」 必死に叫ぶ霊夢たちを全て握りつぶすと手を洗い、早速その箱と紐が括り付けられた桶を持って落とし穴に向かった。 続く... Part.2?へ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1191.html
前 ~ゆっくりレティの生涯(後編)~ -冬- 冬、それは一年でもっとも気温が下がり、様々な生物が活動を休止する季節である。 ゆっくりは冬眠することができないので、巣穴の中でゆっくりとした時間を過ごしている。 『ゆぅゆぅ・・・z z z z z 。』 エネルギー消費を抑える為、ゆっくりレティは気持ちよさそうに眠っている。 巣穴の中はゆっくりレティが移動できる程広いため、通常種達は飛び跳ね遊びまわっているが、閉ざされた巣穴の中 で出来る事など限られているため、すぐに飽きてしかたなく落ち葉の上に戻り眠りにつく。 しかし、ゆっくりパチュリーを除けば所詮皆餡子脳、一晩眠れば深く印象に残っていない昨日遊んだ事など忘れてし まう。 窮屈な巣穴の中でも毎日楽しく過ごすことができるのは、ある意味ゆっくりの特権である。 ゆっくりパチュリーによる食糧の配分も順調であり、群れのゆっくりは皆春を迎えたら何をしようか思いを馳せなが らゆっくりと過ごしていた。 しかし、越冬を開始して1ヶ月半が経とうとする日、事件が起こった。 「むっきゅー!これはどういうこと!?まりさせつめいして!」 「ゆ!・・・・・ゆぅ。」 問い詰められているゆっくり魔理沙の横では、通常の2倍近くに膨れ上がったゆっくり霊夢が涙を流していた。 ゆっくり霊夢は「にんっしん」していた。 2匹はまたしても理性に負け「すっきり」してしまったのだ。 ただ、以前と違うのは胎内妊娠型で「にんっしん」しているという事である。 そして、ゆっくり霊夢は夏起こった出来事が記憶に深く刻み込まれているため、これから起こる事に恐怖し涙を流し ている。 身動きのできないゆっくり霊夢は通常種に押され、ゆっくりレティの前に運ばれた。 『ゆっくりー!』 群れの掟をまたしても破った2匹に対し、ゆっくりレティはご立腹である。 「むきゅ、おおきなあかちゃんがうまれたらしょくりょうがたりなくなるわ! ここからでていくにしてもそとはさむくてでていったらしんじゃうわよ。 かわいそうだけどしにたくないならみんなでれいむにのってなかのこどもをつぶすしかないわよ!」 ゆっくりパチュリーの宣告を聞き、ゆっくり霊夢の顔はみるみる青ざめていく。 「い、いやあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !もうあかちゃんはしなせなくないよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 「むきゅぅ・・・、れいむはいやみたいだけどまりさはどうするの?」 我を失って泣き叫んでいるゆっくり霊夢には正常な判断ができないと判断したゆっくりパチュリーは、事の決定を父 親役であるゆっくり魔理沙に委ねる事にした。 「ゆ・・・・・。」 ゆっくり魔理沙は押し黙り、その貧弱な餡子脳で必死にどうしたらいいのか考える。 1分考えた後、ある結論に達した・・・。 「あかちゃんはまたつくればいいよ!れいむがしなないようにあかちゃんをつぶすよ!」 「どおじでぞんなごどいうのお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!」 ゆっくり魔理沙の導き出した答えを聞き、ゆっくり霊夢は泣き叫びながら抵抗しようとその重い体を必死に動かそう とする。 しかし、「にんっしん」しているゆっくりが抵抗できる筈もなく、ゆっくり霊夢はゆっくりレティの舌に巻きつけら れ、まったく身動きが取れなくなってしまった。 「むきゅ、みんな!れいむのためよ。」 ゆっくりパチュリーが先陣を切り、ゆっくりレティの舌をうまく伝ってゆっくり霊夢の上に飛び乗る。 その後を無言でゆっくり魔理沙、ちぇん、みょんが続いていく。 「いやだあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!れいむの、でいぶのあがぢゃんがあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」 「むきゅ!みんないっせいにとぶのよ!おもいっきりとぶことがれいむのためよ!」 一瞬の沈黙の後・・・。 「いくわよ、せーの!」 「ごめね ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !れいむう ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ !」 「ゆるしてねー!ゆるしてねー!」 「すまないみょ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ん!」 「やめでえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 ぶちゅっ! ゆっくり霊夢の胎内から何かが潰れた音がし、産道と思われる場所からは潰れた皮と餡子混じり流れ出ていた。 「あ、あ、あかちゃんが・・・れ、れいむ・あか・ん・・・・・。」 ショックのあまりゆっくり霊夢は気を失ってしまった。 「むきゅ~・・・。みんな、れいむをべっどにはこぶわよ。」 体が縮んだゆっくり霊夢を4匹の通常種達が協力し寝床まで運び、ゆっくり魔理沙を残し皆無言でその場から離れた。 次の日、ゆっくり霊夢は目を覚ましたが、呆然としたまま丸一日が過ぎてしまった。 そして一週間後、ゆっくり魔理沙の懸命な看病のおかげでゆっくり霊夢はなんとか元気を取り戻すことができた。 「れいむごめんね・・・まりさきめたよ!はるになったらここをはなれていっしょにくらそうね!」 「ま、まりさ!こんどはたくさんあかちゃんといっしょにゆっくりしようね!」 子供を潰され苦しんだ元凶はゆっくり魔理沙であるが、その懸命な看病を餡子脳で都合の良い方向に理解したゆっく り霊夢は、ゆっくり魔理沙の申し出をあっさり受け入れた。。 2匹は幸せな生活を想像しながら春になるのを今か今かと待つのであった。 -晩冬- いよいよ冬も大詰め、一年で最も雪が降る季節。 順調に越冬を迎えたゆっくり達もこの時期になると所々の巣で騒がしくなる。 とある仲の良い一家の巣では・・・。 「ぴぎゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !やめちぇおかあしゃあ ぁ ぁぁ ぁ ぁ ん!」 「いちゃいよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !おとおしゃんやめちぇえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 巣穴の中はまさに地獄絵図、越冬中に子育てをしようとしたゆっくり霊夢と魔理沙であったが、食糧が足りなくなり 自分の生んだ子供達を次々と貪っていた。 「ごめんね、ごめんね。いきておちびちゃんたちのぶんもゆっくりするよ。」 「うっめ、めっちゃうっめ♪」 泣きながらプチ達を食べるお母さん霊夢に対し、お父さん魔理沙は食事を楽しむようにプチ達を貪っていた。 プチ達を食べたところでまだまだ続く冬を乗り切れる筈もない。 子供を食べようと考えた時点でこの一家の運命は既に決まっていた。 春を迎える頃、この巣穴には1匹の餓死したゆっくり魔理沙の死体が転がっているのであった。 一方ゆっくりレティの群れでは・・・。 ※ NatureEND(人間の介入無し)→★ AQNEND (某着物の少女が登場)→☆ ★ NatureEND 「ゆゆ?ぱちゅりーなんだかへんなおとがするよ?」 「まりさ、こわいよぉ。」 「いりぐちのほうからへんなおとがするみょん。みてくるみょん。」 「ひとりじゃきけんだよー、ちぇんもいくよー。」 「むきゅ、たしかにへんなおとが・・・。」 パラパラパラ・・・ドサ・・・ズザザザザザザザザザザ!!! 「てぃむぽー!」 「わからないよー!」 突如巣穴が崩落し、様子を見に行ったゆっくりちぇんとみょんは巻き込まれて下敷きになってしまった。 「「「ちぇーん!みょーん!」」」 崩落は止まることなく残った3匹目掛けて迫ってくる。 「むきゅ!れてぃのところまでにげるわよ!」 「「ゆっくりしないでりかいしたよ!」」 3匹は必死に飛び跳ね、ゆっくりレティのいる奥の部屋へ向かう。 しかし、崩落はどんどん迫り・・・。 「むっきゅう ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ !」 体が弱く、体力の少ないゆっくりパチュリーがついに土砂の下敷きになってしまった。 ゆっくりパチュリーの悲鳴は2匹にも届いていたが、今足を止めると自分達もゆっくりできなくなると貧弱な餡子脳 でもさすがに理解していたため、ひたすら前へ進み続けた。 そして一番頑丈に作ったゆっくりレティの部屋に入った時、ようやく崩落が止まった。 「「ゆぅ、ゆぅ、ゆぅ、やっとゆっくりできるよ。」」 この冬、幻想郷には大寒波が到来し、例年以上の雪をもたらした。 通常種達には到底作ることができない程頑丈な巣穴を作ったが、所詮はゆっくりの作るもの、雪の重みでついに巣穴 が崩落してしまったのだ。 ちなみに、ゆっくりレティの群れの巣穴が崩落する数日前には周辺の巣穴のほとんどは既に崩落し、中のゆっくりは あの世へ旅立っている。 「れてぃ、みんなゆっくりできなくなっちゃたよぉ・・・。」 「れてぃ、これからどうしよう?」 いつも寝てばかりいるゆっくりレティもさすがにこの緊急事態に直面し、膨大な餡子脳をフル回転して助かる方法を 考えている。 そしてある結論にたどり着いたゆっくりレティは、静かに2匹に背を向け壁を掘り始めた。 「ゆゆ?れてぃ、でぐちはそっちじゃないよ!」 「れてぃ、まりさのいうとおりだよ!」 2匹を無視してゆっくりレティは必死に壁を掘り続ける。 ゆっくりレティの導き出した結論はこうだ。 崩落した場所は土が軟らかくなっているため、掘り進んでも再び崩落の危険がある。 当然天井を掘るなど自殺行為で、唯一希望があるのは崩落の反対側を掘り進むというものだ。 崩落から三日が経った。 ゆっくり霊夢と魔理沙は空腹で元気が無く、ゆっくりレティも体を動かしているため体力の消耗が激しく、頬に貯め た食糧の消費ペースが上がり、ついに底を尽いてしまっていた。 「おなかへったよぉまりさぁ。」 「まりさもおなかぺこぺこだよれいむぅ。」 2匹がぼやいているとゆっくりレティは動きをピタっと止め、2匹の方へ擦り寄って行く。 「ゆゆ?どうしたのれてぃ?」 「たべものくれるの?」 『ゆっくりくろまく~!』 「「どどどどど!どうじでえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!」」 素早く(ゆっくり比)舌を巻きつけられた2匹はそのまま口の中へ消えていった。 「いだいよお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!でいぶをだべないでえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!」 「まりざはおいじぐないよお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!でいぶをだべでえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!」 3分後、ゆっくりレティは何事も無かったかのように壁を掘り続けていた。 ゆっくりレティは分類上は捕食種に位置し、群れを作るのは食糧を集めさせて自分自身がゆっくりするためである。 しかし、群れを作るもう1つの理由があった。・・・それは非常食である。 そう、食べられた2匹はまさに非常食として今日まで生かされていたのだ。 さらに3日が経過した。 ゆっくりレティの体力は既に限界であり、その頭の良さからもう助からないのではないかと脳裏によぎるようになっ ていた。 しかしその時! パラッ・・・ はがれ落ちた壁の小さな穴からは一筋の月明かりが差し込んでいた。 『ゆゆ!?』 嬉しさのあまりゆっくりレティ体当たりで壁を壊して月明かりの中へ飛び込んだ。 『ゆ!ゆっくりいぃぃぃぃぃ・・・い?』 ゆっくりレティは確かに外へ出ることに成功した。 ただその場所は・・・・・。 『ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!』 ゆっくりレティはものすごい勢いで自由落下を開始した。 壁を掘って貫通した先は崖の中腹であり、当然足場など無かった。 「う~♪きょうはたいりょうだどぉ~♪」 1匹のゆっくりれみりゃ希少種(体付き)が月夜の空を食べかけのゆっくり魔理沙を持って飛んでいた。 春になり浮かれて巣穴を開けっ放しにしたまま寝ていたゆっくり一家を一網打尽にした帰りである。 『ゅぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!』 「う~?なんのおとだどぉ~?」 突然訳のわからない音が聞こえたゆっくりれみりゃは空中で静止し、辺りを見回した。 「なにもないどぉ~?」 しかし音はだんだん大きくなっていき、上からだと気づき見上げた時だった。 『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!』 「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 気づいた時には既に手遅れ、ものすごい勢いでゆっくりれみりゃを巻き込みゆっくりレティは落ちていった。 ブッチャッーン! ゆっくりれみりゃは物言わぬ肉まんに、ゆっくりレティも物言わぬ巨大な饅頭となった。 こうして捕食種ゆっくりレティの生涯は閉じたのであった。 ☆ AQNEND 「むきゅ~♪このままならぶじはるをむかえられそうよ♪」 ゆっくりパチュリーの発言を聞き、通常種達は歓喜する。 「みょーん・・・でもはるになったられいむとまりさとはおわかれみょん・・・。」 「わかるよーさみしいんだねー。」 「むきゅぅ、しかたないわ、ふたりのきめたことだもの。そうべつかいはせいだいにやりましょうね!」 ゆっくり霊夢と魔理沙は春になったら群れから出て行くことを皆に伝えており、ゆっくりレティの承諾も受けていた。 「さみしいけどたくさんあかちゃをうんでゆっくりしようってきめたんだよ!」 「ゆぅ、れいむといっしょにさいこうのゆっくりぷれいすをみつけてゆっくりするよ!」 通常種達は長い時間を過ごした仲間との別れは寂しいが、ゆっくりできる春を待つのであった。 -春- 「むきゅ~♪そろそろそとにでてもいいころよ。れてぃをよびにいきましょう♪」 「「「「「ゆ~ゆっゆっゆ~♪」」」」」 5匹は歌を口ずさみながらゆっくりレティの部屋へ向かった。 『ゆっくり~♪』 ゆっくりレティは足早に入り口に向かい、舌を使って器用に塞いだ入り口を掘っていく。 ビューーー 通常種が通れる程の穴が開き、春の心地よい風が吹き込んできた。 「むきゅー♪みんな、れいむとまりさのそうべつかいのためのおいしいたべものをさがしにいきましょう♪」 先陣を切ったのは意外にもゆっくり霊夢であった。 越冬中に亡くした子供達への思いが強く残り、ゆっくり一倍この春の待ち望んでいたのだ。 ゆっくり霊夢は光の中へ飛び込んだ。 「ゆっく・・・。」 「春一ゆっくりみーつけた!」 グチャッ! 希望に胸を膨らませて巣穴から飛び出したゆっくり霊夢はほんの数秒で物言わぬ饅頭と化した。 ゆっくり霊夢のすぐ後ろについていたゆっくり魔理沙は目の前で起こった出来事が理解できずに呆然としていた。 「いいわ~その顔!希望に満ち溢れ巣穴から飛び出したゆっくりを潰す快感!たまらない!たまらないわ~!」 「れいむ?なにねてるの?いっぱいゆっくりしようってやくそくしたよ!ねぇおきてよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢の亡骸の傍で必死に叫び続けていた。 「あらあら、つがいだったのね。大丈夫よ、あなたもすぐに同じ場所へ行くのだから。」 ゆっくり霊夢を潰した少女の右手には玄翁(げんのう)が握られていた。 「よくも、よくもれいむをころしたなあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !ゆっくりしねえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 ゆっくり魔理沙はゆっくりらしからぬ物凄い剣幕で少女に飛び掛った。 「あぁ、その我を忘れて飛び掛ってくる顔もいいわ~。・・・潰しがいがあってね!!!」 グチャッ! 飛び掛るゆっくり魔理沙を少女は玄翁で横から思い切り殴った。 ゆっくり魔理沙は物凄い勢いで木に激突し、少女の宣言通りゆっくり霊夢と同じ様に物言わぬ饅頭と化した。 ゆっくり魔理沙に続いて巣穴から飛び出した3匹の通常種達は・・・。 「わからない!わからないよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 ゆっくりちぇんはもう何が起こったのか理解できず、泣きわめいている。 「みょ、みょみょみょみょみょ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ん!」 ゆっくりみょんは体力も有り、力の強い(ゆっくり比)ゆっくり魔理沙が一瞬にして潰されてしまったのを見て動揺 している。 「むきゅ!むきゅきゅきゅきゅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ん!・・・・おぇぇぇ。」 ゆっくりパチュリーは、目の前で起こった惨劇に絶えられず嘔吐してしまっている。 「あらあら、春先からこんなにたくさんのゆっくりを見つけられるなんて、あぁ!し・あ・わ・せ!」 玄翁を握る少女の手に力が込められた次の瞬間! グチャッ!グチャッ!・・・ブチャッ! 断末魔さえ残す事さえ許さず3匹は物言わぬ饅頭と化した。 「うふ、うふふふふふふふふふふ!はぁ・・・はぁ・・・たまらないわ~!饅頭を潰すこの快感!1匹潰すたびに快感 が私の体を駆け巡るわ~。」 少女は全身はあま~い匂いで覆われ、饅頭を潰した快感に酔いしれっていた。 『ゆ!ゆっくり!?』 巣穴の入り口を開け終ったゆっくりレティが巣穴から出ると、目の前には惨状が広がり、その中心には1人の少女が 立っていた。 「まあ!巣穴が大きいからひょっとしたらと思っていたけど、まさか初めて見るこんな大きなゆっくりがいるなんて! あぁ、この幸運に感謝するわ。」 ただならぬ少女の気配を感じ取ったゆっくりレティは、この惨劇の主犯がこの少女であると確信する。 そして、見るからにひ弱そうな少女になら勝てると結論を出した。 『ゆっくりくろくお・・・お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 ゆっくりレティは今だ嘗てない大声で悲鳴を上げた。 少女の動きを封じようと伸ばした舌が巨大な杭で地面に固定されていた。 杭を打ち込んだのは当然少女であり、その激痛は今まで痛みという痛みを感じたことがないゆっくりレティにとって すさまじいものであった。 「ふふふ、普通のゆっくりと違って潰しがいがありそうね♪」 少女はにっこりと笑い、ゆっくりとゆっくりレティに近づいていく。 ゆっくりレティは初めて恐怖というものを味わっていた。 そして、この少女には敵わないと判断し、舌を無理やり引き千切ってでも逃げようと結論を出した。 『ゆっぐりー!』 杭を引き抜くためにゆっくりレティは力いっぱい上へ飛んだ。 「に・が・さ・な・い・わ・よ!!!」 シュン! 一瞬風を切る音がしたと思った次の瞬間! 『うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 とてもふとましい悲鳴を上げ、ゆっくりレティは杭を引き抜くことができず地面へ落下した。 しかし、まだ体力の残っているゆっくりレティは再び杭を引き抜こうと飛・・・べなかった。 『ゆ゛!ゆっくり!?』 「まさか、護身用の折りたたみ式薙刀がこんなところで役に立つとは思わなかったわ。」 少女の両手には薙刀が握られ、近くには大きな饅頭の皮が落ちていた。 先ほどの風を切る音、それは体が空中に浮かんだ一瞬のうちにゆっくいレティの「足」が切り落とされた音であった。 舌も固定され、「足」も切り落とされたゆっくりレティにはもはや抵抗手段は残されていなかった。 「うふふふふふ、あなたは初めて見るゆっくりだから特別にゆっくりと殺してあげるわ。」 『やめでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!』 その後はまさに地獄絵図であった。 髪を剃られ、帽子は八つ裂きにされ、片目に薙刀を突き刺され、全身の皮はゆっくりと剃り落とされていった。 30分後、そこには薄皮を残した巨大な饅頭が片目から黒い涙を流している姿があった。 「ウフフフフ、気に入ってもらえたかしら?私がこんなにもゆっくりとゆっくりを痛めつける事は滅多にないのだから 光栄に思いなさい。」 『も・ゆる・て・・・・・。』 「あらあら、私に攻撃しようとした時の威勢はどこにいったのかしら?まぁいいわ、そろそろ他のゆっくりも潰したい し。」 少女は薙刀をしまい、玄翁に持ち替えた。 「楽しませたくれたし特別に教えてあげるわ、私の名前は稗田阿求。さようなら。」 グチャッ! 薄皮一枚で繋がっている体の頬の部分に阿求は玄翁で力いっぱい殴りつけ、体内の餡子を支えていた力のバランスが 崩れたゆっくりレティは一瞬でその形を崩し、物言わぬ巨大な饅頭と化した。 こうして捕食種ゆっくりレティの生涯は閉じたのであった。 ※補足 Q:ゆっくりレティはあまり通常種と食べていないようですがどうして? A:通常種ばかり食べていると当然群れの通常種も良く思いません、自然とゆっくりレティに近づく通常種が減って しまい、結果的に食糧をすべて自分で集めなくてはならなくなってしまうからです。 End 作成者:ロウ 後書き 最後まで読んでくださった方々にまずはお礼を申し上げます。 ゆっくり達の生涯シリーズ第10弾『ゆっくりレティの生涯』はいかがだったでしょうか? ゆっくりの一年という設定や漫画が投下され、これは面白いと思いゆっくりレティを中心とした1年のSSを書かせ ていただきました。 また、突如雨が降り出してゆっくり魔理沙がプチ魔理沙を帽子の下に避難させ、最終的には溶けてしまうという漫画 を参考に、一部SSに組み込ませていただきました。 私の設定ではゆっくりレティの群れにいれば、通常種達は安全である(一部例外あり)という設定だったので、赤ち ゃんを簡単に見放したゆっくり霊夢と魔理沙に苛立った方もいたと思うのですが、なかなか潰すことができませんで した。 また、ゆっくりレティの群れのみのSSではゆっくり虐めが少なくなってしまうため、季節ごとに他の通常種との比 較を行い、いかにゆっくりレティの群れが安全であるかというSSにさせていただきました。 ゆっくりレティの虐めが最後のAQNENDだけになってしまって申し訳ありません。 あの巨体を自然の中で虐めるのは私には無理でした・・・orz 次回のSSは、たぶんまだ語られていないゆっくりれみりゃが希少種へ進化するSSを書きたいと思っています。 しかし、忙しいとはいえこのSSを書くスピードは遅すぎるよね・・・。 おまけ(という名のゆっくりの考察報告書2) ※注意 考察という名のもとに私の中での設定を書きまくっています。 ○○年○○月○○日 2ちゃんねる ゆっくり虐待スレ 虐待お兄さん 様 2ちゃんねる ゆっくり虐待スレ ロウ ゆっくりレティの考察(報告) なかなか姿を見せない保捕食種ゆっくりレティですが、この度ある程度の研究報告が上がったので、まとめ報告書を 作製いたしました。 1.特徴 (1)大きさ 生まれたばかりの赤ちゃんでも通常種の成体ほどの大きさであり、成体になると2m近くにまで成長する。 体が大きく動くスピードは遅いが、一歩が大きいため通常種よりも早く移動できる。 (2)舌 自分の身長の2倍近くまで伸びると言われ、そのしなやかさを利用し、食料確保から巣穴の作製まで幅広く使われる。 (3)ふとましい声 他のゆっくりとは異なり声がとてもふとましい。SSでは『』が使われる。 他の生物(ゆっくり含む)に攻撃する時のみ『ゆっくりくろまく』という言葉を発する。 (4)主食 ゆっくりを主食とするゆっくりれみりゃやフランとは違い、非常に雑食性が強い種である。 (5)中身 スタンダードな粒餡 2.習性 (1)群れの作成 捕食種に位置するゆっくりでは非常に珍しく、群れを作って生活する。 群れには必ずゆっくりパチュリーがおり、あまり話すのが得意ではないゆっくりレティに代わり群れを取り仕切る。 群れを作るのは安全を保障する代わりに食糧を集めさせるためであり、ドスと呼ばれる種と違い通常種を利用して いるに過ぎない。 そのため、群れでは手間のかかる子供を生むことを禁止させられ、ひどく規律を乱すものは容赦なく食べられてし まう。 ゆっくりがゆっくりを殺すことを禁忌としているがそれは通常種だけであり、ゆっくりレティが他の通常種を食べ ても咎めるものは現れない。 ただし、利用しているとはいえ貴重な食糧供給源であるため、危険が迫った時は口の中へ避難させたりして全力で 通常種達を守る。 例外として、何らかの原因で食糧事情が厳しくなった際は群れの一員でも容赦なく食べられてしまう。 通常種達は非常食としての役割も担っている。 一見群れの一員となってもゆっくりできないように思われるが、群れの周囲に住むゆっくりはゆっくりレティを恐 れ、新たなゆっくりプレイスを探しに旅立つことが多い。 そのため、自然と群れの周囲からは他のゆっくりが消え、辺りの食糧を実質独占した事になり、ゆっくりレティに 食糧を渡しても十分に自分が満足できる量の食糧を得ることができるのである。 ゆっくりパチュリーを群れに迎え入れた後は群れの内政をほぼ任せるため、群れの一員の選定も任せる事になる。 そのため、ゆっくりパチュリーと仲の良かったものが群れに入る事が多い。 自分の口に避難させられるだけのゆっくりしか群れに迎え入れないため、ドス種とは違い大規模な群れになること はない。 また、通常種達は反抗すれば当然食べられてしまうため、群れ内で反乱が起きることはない。 ちなみに、成長に合わせて年に1、2回群れへ通常種を迎え入れる。 (2)普段の生活 基本的に体を動かすことを嫌い、舌で出来る事はすべて舌で行おうとする。 よっぽどの事がない限り眠っており、通常種達の持ってくる食糧を食べて生活している。 分厚い皮は耐水性が高く、多少の雨では皮が溶け出すことはなく、雨の中呑気に眠っている事さえある。 逆に暑さに弱く、夏場は極端に動くことを嫌う。 越冬前になると準備のためそれなりに活動するようになる。 (3)食糧の確保 空腹時には他のゆっくりを襲うものの、基本的には木の実や草花を食べて過ごしている。 長い舌を使う事により、通常種達では取ることのできない位置にある新鮮な食糧を得ることができる。 余った食糧は頬に蓄える習性を持ち、頬に蓄えられた食糧は長期の保存が効くようになり、越冬前には頬に大量の 食糧を蓄える。 3.繁殖方法 繁殖方法は、他の通常種、捕食種とは大きく異なっている。 レティ種はレティ種同士でしか「すっきり」せず(したくても他の種が小さすぎて押し潰してしまうのではと考え られている)、胎内妊娠型で1度に1匹しか子供を産まない。 子供を産むのは決まって越冬の直前であり、自分の巣穴とは別の出産用の巣穴を用意し、大量の食糧を蓄えた後に 出産する。 ここで驚きなのが、子供が生まれるとすぐに子供を巣に残して入り口を塞ぎ、自分は越冬用の巣穴に戻ってしまう という事、つまり親が子供の世話をまったくしないのである。 あまりに無謀と思うかも知れないが、きちんと考えた上での行動である事が明らかとなっている。 胎内妊娠型で1匹しか生まないため生まれてくる子供は親から多くの餡子を受け継ぎ、大きさも通常種の成体程で 生まれる。 そのため、生まれた直後からかなりの知識を持っており、親が食糧の準備を怠らなければ無事春を迎えることがで きるのである。 また、成体サイズでは他の外敵に襲われてしまう恐れがあるが、越冬中に体調1m程まで成長するため、生まれた 子供の生存率は極めた高い。 1年に1回しか出産せず、さらには1匹しか生まないというのが、ゆっくりレティの数が少ない原因であると考え られている。 4.今後の方針 多くの職人様によりさまざまなゆっくりの研究(虐め、虐待)が行われる事に期待していきたいと思います。 おまけの後書き 以上のおまけがゆっくりレティについて私が考えている設定です。 これらの設定を基に今回のSSを書かせていただきました。 あくまで私の考えている設定であるため、他の職人様に押し付けようなどという気は毛頭ありません。 SS職人様の何かの参考になれば幸いです。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/188.html
人里から少し離れた山の奥にある廃屋。その中にはゆっくり霊夢の一家が住んでいた。母ゆっくり霊夢と子ゆっくり霊夢5匹の6匹家族である。 小屋の中は走り回って遊べるほど広く、食料もたくさん溜め込んでおける。正に理想の住処であった。 一家の朝は遅い。お昼近くになってからもぞもぞと動き出すのが通例である。 しかし、この日は違った。早朝だというのに急に床がぎしぎしと音を立てたかと思うと騒々しい音が鳴り始めたのだ。 音に驚いたゆっくりたちが目を覚ますと小屋の中で一人の男が音に合わせて体を動かしている。 「お、おじさんだれ?」 母ゆっくりが尋ねるが返事は返ってこない。ただただ男の横に置かれた機械が騒音を流すだけである。 「ここはれいむたちのおうちだよ!!!」「ゆっくりできないならでていってね!!!」 子ゆっくりたちも口々に非難の声を上げるが、この騒音の中では男に聞こえているのか疑わしい。 騒音はしばらく鳴り続けた。自分たちの住処が奪われることを恐れた母ゆっくり霊夢は小屋を離れようとはしない。 子ゆっくりも母の元からは離れなかった。何匹かは騒音と恐怖に耐え切れず泣き始めてしまっている。 音が静まったのを受けて再び母ゆっくり霊夢が文句を言い始めた。 「おじさん、音がうるさくて寝れなかったよ!!!謝って早く出ていってね!!!」 男は涼しい顔をして言った。 「いや~、ラジオ体操をしていたんだよ 音は大きかったかもしれないけど大丈夫、この辺は誰も住んでないから」 「れいむたちが住んでるの~!!!」 「あぁ~気持ちのいい朝だぁ~ よっこいっしょっと!」 男に詰め寄り抗議する母ゆっくりだったが、まるで相手にされず椅子代わりに腰掛けられてしまった。 「おぉ、こりゃあ座り心地抜群だなぁ!」 「おも゛い゛ぃ゛ぃぃ~!!!ずわらな゛い゛でぇぇ~!!!」 「おかあさんからはなれてね!!!」「おじさんはやくでてってね!!!」 ゆっくりたちを完全無視した男が次に目をつけたのは、小屋のあちこちに置かれた食べ物である。 色々な果物や野菜はゆっくりたちが野山を駆け回り、時には人里へ降りて調達してきた大切な食料だ。 「どれ小腹がすいたし、一つもらおうかね」 ちょうど手に届く場所にあったりんごを手に取った。途端にまた騒ぎ出すゆっくりたち。 「それはれいむたちが集めたごはんなのぉ~!!!」「がっでに食べな゛い゛でぇぇ~!!!」「も゛う゛ででっでぇぇ~!!!」 「まぁまぁ、たくさんあるんだからいいじゃない。それじゃあゆっくりいただきま~す」 泣きじゃくるものもいれば体当たりを仕掛けるゆっくりもいた。しかし、当然男はびくともしない。 「う~ん、いまいちだな」 一口かじったりんごを投げ捨てると男はポケットからガムを取り出して食べた。 りんごを粗末に扱われて喚くゆっくりたちだったが、男がくちゃくちゃと音を立てて食べているガムが次第に気になり始めた様子。 「おじさん、それおいしいの?」 「れいむたちにもちょ~だい!!!」 「りんご食べたんだからちょ~だい!!!」 「・・・ん~、しょうがないなぁ。もうちょっと待ってな、ちゃんとあげるから」 はじめてまともな返事がもらえたことに喜ぶ子ゆっくりたち。ちなみに母ゆっくりは先ほどから一言も話さずに涙を浮かべて男の重みに耐えている。 しかし、子ゆっくりたちからは母ゆっくりの背面しか見えていない。 ガムがもらえるとはしゃぐ子ゆっくりは、わざわざ母ゆっくりの苦渋に満ちた表情を見るために正面に回ろうなどとは考えなかった。 「ほ~ら、口開けて一列に並べ~」 子ゆっくりは言われるままに男の前に横一列に並ぶと口を開けてガムを催促する。男は口からガムを吐き出すとそれを細長く伸ばして5匹の上に乗せた。 それも口ではなく、髪の上に垂らされたのでゆっくりたちもたまらない。 「剥がれないよぉぉ~!!!」 「いやだぁ~きもちわるいよ~!!!」 お互いに髪についたガムを舐め取ろうとするのだが、そう簡単には剥がれない。 男はそ知らぬ顔で今度は煙草を吹かしていた。吹いた煙は容赦なくゆっくりたちに降りかかる。 「おじさんやめて!すっごく煙いよ!!!」 「げほっげほっ!ゆ゛っぐりでぎな゛い゛よ゛ぉぉ~」 と、そのとき「ぶぅ~」と、間抜けな音が響いた。騒いでいた子ゆっくりたちも何事かと静まり返る。 「いやぁ~、ごめんごめん」 男が照れくさそうに謝ると下にいる母ゆっくりが震える声で喚いた。 「く、臭い゛よ゛ぉぉぉ~!!!はやぐどい゛でぇぇ~!!!」 「おならしちゃったよ~」 特に悪びれる様子もなくへらへらする男と泣き叫ぶ母ゆっくりを見て、子ゆっくりの不満が爆発した。 「おかあさんからはなれてね!!!」 「はやくでていってね!!!」 「おじさんとはゆっくりできないよっ!!!」 鬼気迫る表情で男に詰め寄る子ゆっくりたちだったが、おならの匂いを嗅ぐとあっさり勢いが衰えてしまった。 「く、くさいよ!はやくどっかいってね!!!」 匂いから逃げるように小屋の隅に固まって抗議を続ける子ゆっくりたち。 しばらくして男はやっと腰を上げた。母ゆっくりはのそのそと這いずると小屋の奥で呻き声を上げてぐたっりとしている。 「おかーさんだいじょうぶ?」 「おじさんはやくでていってね!!!」 「まぁまぁ、そう邪険にしないでよ。僕は君たちとゆっくりしたいんだよ」 相変わらずの穏やかな口調だが、それが逆にゆっくりたちを苛立たせた。 子ゆっくりたちは男を取り囲んで決死の覚悟で体当たりを浴びせる。勿論効果はない。 「ダメじゃないか君たち、さっきから全然ゆっくりできてないよ。どうしちゃったのかなぁ?」 「おじさんのせいだよ!!!」 「おじさんがいるからゆっくりできないの!!!」 「ゆっくりしね!!!」 聞く耳持たずなのは承知の上だが、それでも子ゆっくりの罵詈雑言は止まらない。 「仕方がないなぁ、おじさんが手本を見せてあげるよ」 「ゆっ?」 男は子ゆっくりたちを見回すと大きく飛び跳ねた。 「ゆっくりしていってね!!!」 大声でゆっくりのお決まりの台詞を叫びながら跳ね回る様は気が狂っているのかと疑いたくなるが、この男、大真面目である。 着地の度に小屋全体がガタガタと音を立てて振動する。母ゆっくりは小屋の隅で涙ながらに訴えた。 「おねがい゛だがら゛も゛う゛や゛め゛でぇぇ~!!! 」 「ほら、どうだい楽しくなってきただろう?」 小屋の中をあちこち飛び跳ねてまわる男から必死に逃げ回る子ゆっくりたち。もし踏み潰されれば間違いなく即死だろう。 「も゛う゛い゛や゛だぁぁ~!!!」 逃げ回る力もなくなり、荒い息をして動かなくなったゆっくりたちを見ると男は満足げに小屋から出て行った。 「よーし、これで僕達は友達だね!また遊びに来るよ!!!」 その日、このゆっくり霊夢一家が涙ながらに引越しをしたのは言うまでもない。 おわり
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1588.html
~ゆっくりレティの生涯(前編)~ 前書き あまり登場しないゆっくりレティが登場するため、SS中の所々に生態の説明などを書きました。 より詳しい生態はおまけで述べるので、途中「?」と思うところがあるかもしれませんがご安心下さい。 -春- 春、それは冬の寒さが和らぎ様々な動植物が活動を始める季節である。 長い冬を乗り越えることができたゆっくり達も巣穴から続々と顔を見せ始める。 『ゆ~っ~く~り~!』 ふとましい声を上げて1匹の大きなゆっくりが地中から顔を出す。 このゆっくりはゆっくりレティ、捕食種の中でも上位に君臨するゆっくりである。 特徴は何と言ってもその巨体、このゆっくりレティの体長は1m程あるが、これでも成体でないというのだから驚き である。 『ま~ぶ~し~。』 初めて見る眩しすぎる太陽の光にゆっくりレティは目を瞑った。 巣穴から出たゆっくり達がまず初めにやる事は食糧の調達であり、ゆっくりレティも同様である。 鈍重ではあるが跳ねて食料を探しにいく。 『む~しゃ~む~しゃ~・・・しあわせ~♪』 ゆっくりレティは特徴である長い舌を使い、この春芽吹いたばかりの柔らかい新芽を器用ににちぎって口に運ぶ。 ゆっくりレティは捕食種ではあるが、ゆっくりを主食とするゆっくりれみりゃ、フランとは違い雑食性が強い種であ る。 ゆっくりの中身は基本甘味であり栄養価も高い。 春先で空腹なゆっくりレティが通常種を見つけたら当然捕食する。 「「ゆ ゆ ゆ ゆ ゆ!!!」」 食糧を探していたゆっくり霊夢と魔理沙が不運にもゆっくりレティに遭遇してしまったようだ。 ゆっくりレティは声のする方へ体を向けると目線の先では2匹がガタガタと震えていた。 『ゆっくりくろまく~。』 独特の声を上げて2匹目掛けて舌を伸ばす。 「いやあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」 ゆっくり霊夢が震えながら悲鳴を上げ恐怖のあまりその場から動けずにいる。 その時、突如ゆっくり霊夢の体に衝撃が走った。 ゆっくり霊夢の体はゆっくりレティ目掛けて一直線に転がっていく。 「まりさがゆっくりするためにれいむがみがわりになってね!バイバイ!」 ゆっくり霊夢は転がりながら相方の突然の裏切りに言葉を失った。 ゆっくりレティは転がるゆっくり霊夢を器用に舌に巻きつけるとそのまま口に運ぶ。 「ゆっぎりでぎない ぃ ぃ ぃ ぃ ぃ !」 ゆっくり霊夢の悲痛の叫びが木霊した。 一方、自分が助かるためにあっさり相方を裏切ったゆっくり魔理沙は必死に逃げていた。 「のろまなれいむがいたおかげでたすかったよ!・・・ゆ?」 ずん!ずん!ZUN! 突如地響きが響き渡った。 ゆっくり魔理沙が何事かと周りを見渡すと後方からゆっくりレティがものすごい勢い(ゆっくり比)で迫っていた。 「ゆ ゆ ゆ ゆ ゆ あ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !」 あまりの迫力にゆっくり魔理沙は発狂してしまった。 ゆっくりレティはその巨体に似合わず通常種と同様に跳ねて移動することが出来る。 また、鈍重ではあるが体が大きい分一回の跳躍で進む距離が長いため、通常種が必死に逃げたとしても簡単に追いつ く事が出来る。 『ゆっくりくろまく~。』 ゆっくり魔理沙に追いついたゆっくりレティはすかさず舌を伸ばす。 涙を流しながらガクガク震えるゆっくり魔理沙にはもはや逃げ延びる術は残されていなかった。 「ゆるじでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 舌を巻きつけられたゆっくり魔理沙は、相方と同様に悲痛の叫びを上げながらゆっくりレティの口の中へ消えていっ た。 ゆっくりレティはリスのように食べきれない分を頬に貯蔵して蓄える習性を持っているが、今は空腹であるため2匹 はあっという間に噛み潰され消化された。 もし、ゆっくりレティが空腹ではなかったら2匹は長期間頬の中でゆっくり出来ない時間を過ごす事になっただろう。 一瞬で噛み潰された2匹は、ある意味運が良かったのかも知れない。 『ゆ~ゆ~ゆ~♪』 新芽と2匹のゆっくりでお腹がいっぱいになり、ゆっくりレティはご機嫌である。 ゆっくりレティは狩りのほとんどを舌を使って行い、体はあまり動かさないので非常に燃費が良い。 そのため、通常種よりは食べるものの、大きな体の割にはあまり食べないのだ。 ゆっくりレティは何かを探すように辺りを飛び回り、通常種が住んでいそうな洞や穴を見つけると舌を伸ばして中に 入れていた。 「ゆゆ?」 「おかしゃんこれにゃに?」 「こっちにこないでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 「みょーん!」 「わからないよー!」 様々な巣穴に舌を入れるが、不思議な事に巣穴の中から響き渡る声を聞くと捕まえずにそのまま舌を口に戻している。 しかしある穴に舌を入れた時、ゆっくりレティの対応が変わった。 「むきゅー!こないでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 巣穴の中から独特の鳴き声が聞こえると、ゆっくりレティはすかさずその声を出した饅頭に舌を巻きつけ巣穴から引 きずり出す。 巣穴から引きずり出されたのはゆっくりパチュリー、体は弱いが通常種中一番の頭の良さを持つゆっくりである。 「むきゅぅ~。」 ゆっくりレティは舌に絡めたゆっくりパチュリーを自分の前に置き、舌を口に戻す。 そしてずりずりと体を地面につけたままゆっくりパチュリーに近づいていく。 「むっきゅー!むきゅきゅーん!」 あまりの巨体を目の当たりにしたゆっくりパチュリーは動揺して鳴き声を上げることしかできない。 ゆっくりパチュリーはもう押しつぶされてしまうと観念したのか目を瞑っていた。 しかし、ゆっくりパチュリーには予想外の事態が待っていた。 『ゆっくりしていってね~!』 ゆっくりレティはゆっくりパチュリーを潰してしまわないように注意しながら頬ずりをしていた。 頬ずり、それはゆっくり達の間では友好を示す行為である。 「ゆっくりしていってね・・・むきゅぅ・・・。」 張り詰めた糸がプチン!っと切れてしまい、ゆっくりパチュリーは気絶してしまった。 -晩春- ゆっくりレティの頭の上にはゆっくりパチュリーが乗り、その周りには4匹のゆっくりが集まっていた。 『ゆっくりしていってね~。』 「むきゅー、今日もみんなでご飯を集めるのよ。」 そう、ゆっくりレティは小規模な群れのリーダーになっていた。 春先、巣穴に舌を入れて探していたのは相方となるゆっくりパチュリーを探していたのだ。 「れてぃがいればこわいものはないね!」 「まりさたちはあんぜんだね!」 「わかるよー、りーだーがまもってくれるんだねー。」 「こころづよいみょん!」 ゆっくりレティの群れの一員はすべて通常種であり、ゆっくり霊夢、魔理沙、パチュリー、ちぇん、みょんが1匹ず つである。 「むきゅ!れてぃはあまりうごくのがすきじゃないからよぶんにしょくりょうがとれたられてぃにわたしてね!」 「「「「ゆっくりりかいしたよ!(よー!)(みょん!)」」」」 頭の上から降ろされたゆっくりパチュリーも4匹に混ざり食糧を探しにいく。 ゆっくりレティはお気に入りである大きな木の木陰で眠る体勢に入っていた。 ゆっくりパチュリーを相方に迎え、小規模ながら群れを作ったのはゆっくりレティ自身がゆっくりするためである。 ゆっくりレティが群れのリーダーであれば、よほどの事が起きない限り群れの一員は安全が保障される。 そして安全を保障してもらう代わりに通常種はリーダーに食糧を提供するのである。 『ゆぅ~・・・z z z z z 。』 気持ちよさそうに食糧が集まるのを寝て待つゆっくりレティであった。 梅雨、春から夏への季節の変わり目である。 この季節は雨の苦手なゆっくりにとって様々な脅威が襲い掛かる季節である。 とある巣では・・・。 「「「ぴぎゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !おみじゅこわいよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」」」 「いそいでおかあさんのおくちのなかにはいってね!」 立地条件の事など考えもせずに偶然見つけた木の洞を巣にしていたゆっくり霊夢の一家に災難が降りかかっていた。 周囲よりも少し窪んだ場所に洞があったため、連日の雨で巣に水が流れ込んできていた。 「いやあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !からだがとけちゃうよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 「「「おかあしゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ん!」」」 一方、ゆっくりレティの群れでは・・・。 雨が降る中、ゆっくりレティはいつもと変わらずお気に入りの大きな木の根元でスヤスヤと眠っていた。 ただ、いつもと違うのは口の中に群れの通常種が避難しているという事である。 「むきゅ~、れてぃはみずにつよいからあんしんよ!」 「れてぃはすごいね!」 「さすがまりさたちのりーだーだね!」 「わかるよー、ここならとけないんだねー!。」 「あんしんみょん!」 冬眠に使っていた巣穴をそのまま巣にしているゆっくりレティ達であったが、連日の雨で水没とまではいかないまで も水が入り込み、ゆっくりできない状況に陥ってしまっていた。 いくらゆっくりレティが皮が厚く、水に強いといっても長時間水に浸っていたらさすがに皮が溶け出してしまう。 そこでゆっくりレティは群れの通常種達を口に避難させ、比較的雨の当たる量が少ないお気に入りの場所へ避難した のだ。 『ゆ ぅ ぅ ぅ ・・・z z z z z 。』 ゆっくりレティは呑気に眠りながら雨が止むのを待つのであった。 翌日、久しぶりに雲の中から太陽が顔を覗かせた。 ゆっくり霊夢一家の巣穴には黒色に染まった水にデロデロニなった皮が浮かんでいた。 ゆっくりレティの群れでは全員が無事生き延び、久しぶりに晴れた森の中を通常種達は食糧を探し跳び回っていた。 -夏- 夏、それは一年で最も気温が上がり、ゆっくりの食糧となる虫や草花が活気に満ち溢れる季節である。 『ゆぅゆぅ・・・z z z z z 。』 雨や寒さに強いゆっくりレティではあるが、体が大きい分熱がこもりやすいため暑いのは苦手である。 体温が上がるのを嫌うゆっくりレティは、今日も木陰で涼みながら気持ちよさそうに眠っている。 通常種達は豊富な食糧を集めに森中を駆け巡っている。 「まりさ、このおはなさんとってもおいしいよ!」 「れいむ、こっちのむしさんもとってもおいしいよ!」 ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙は互いに見つけた食糧を交換し合い、笑顔で頬張っている。 「「む~しゃむ~しゃ、しあわせ~♪」」 普段から仲の良い2匹は、お腹がいっぱいになったところで頬ずりをし合い信頼を確かめ合う。 しかし、今日の2匹の様子はいつもとは違った。 「れいむ~なんだがあたまがほわ~ってしてきたよ~。」 「まりさ~、れいむもなんだかあたまがほわほわしてきたよ~。」 2匹は無意識のまま頬ずりを続け、相手に振動を与え続けている。 そして振動は次第に強くなっていく。・・・・・そして。 「「ゆ ゆ ゆ ゆ ゆ!んほお お お お お!」」 「「すっきりー!」」 初めに意識がはっきりしたのはゆっくり魔理沙であった。 「ゆ?とってもからだがすっきりしてるよ!ねぇれい・・・ゆ!」 ゆっくり魔理沙はゆっくり霊夢のあたまを見てびっくりした。 緑色の蔓が生え、枝分かれした先端にはプチ霊夢とプチ魔理沙が実っていた。 「ゆゆ!まりさとれいむのあかちゃんだね!みんな、ゆっくりしていってね!」 ゆっくり魔理沙の「ゆっくりしていってね!」に反応し、次々とプチ達が地面へ落ちていく。 「「「「「ゆっくりちていってね!」」」」」 プチ霊夢5匹、プチ魔理沙5匹の総勢10匹の饅頭がこの世に誕生した。 すべてのプチゆっくりが切り離されるとゆっくり霊夢の意識が戻り、同時に頭の蔓が抜け落ちる。 「れいむ!このこたちはまりさとれいむのこどもだよ!」 「ゆゆ!?・・・れいむのこども?」 蔓に栄養をとられている最中、お母さんゆっくりは気絶してしまうことがある。 このゆっくり霊夢も同じで、突如目の前に赤ちゃんが現れ困惑していた。 「おか~しゃんおなかしゅいたよ。」 1匹のプチ霊夢の「おか~しゃん」と言う言葉を聞くと、ゆっくり霊夢の困惑も吹き飛んだ。 「みんな、このみどりいろのものをたべてね!」 お母さんゆっくりは本能か、記憶の奥底に眠っている初めてのご飯の事を思い出すのか、皆同じように抜け落ちた蔓 をプチゆっくりの初めてのご飯として与える。 「「「「「む~しゃむ~しゃ、ちあわせ~♪」」」」」 プチ達が蔓を食べ終わると、ゆっくり魔理沙が口を開いた。 「れいむ!あかちゃんをりーだーにしょうかいするよ!」 「ゆゆ!そうだね、かわいいあかちゃんをみたられてぃもきっとゆっくりできるね!」 2匹は赤ちゃん達を連れてリーダーのもとへ向かった。 『ゆっくりくろまく~』 「「「「「たちゅけて ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」」」」」 先ほどこの世に生を受けたばかりの10匹のプチゆっくり達にはゆっくりレティの舌が巻きつけられていた。 「なんでこんなことするのお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 「れいむの、でいぶのこどもがえじでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 2匹は今にも食べられそうな我が子を見て泣き叫んでいた。 「むきゅぅ・・・、ふたりともわすれたの?れてぃのむれにはいるときのやくそくを。」 「「やくそく?・・・ゆゆゆ!」」 突如何かを思い出したのか2匹は凍りついた。 ゆっくりレティが群れを作るのはあくまで自分がゆっくりするためである。 プチゆっくりは成長するために見た目以上の食糧を食べる。 親は我が子のために必死で食糧を集めるため、当然ゆっくりレティに差し出される食糧は減ってしまう。 ゆっくりレティにとってプチゆっくりは「ゆっくりできなくなるもの」以外の何ものでもないのだ。 「むきゅぅ、おもいだしたみたいね。あかちゃんができたらここからでていくか、れてぃにあかちゃんをさしだすかの どちらかしかせんたくしはないのよ。・・・ふたりともどうするの?」 悲しそうな顔でゆっくりパチュリーはゆっくりレティの意思を伝える。 2匹にとってこの場所は最高のゆっくりプレイスであり、ずっとここに住みたいと思っている。 しかし、自分達の赤ちゃん達とゆっくりしたいとも思っている。 この二つを天秤にかけ2匹は答えを導き出した。 それは・・・。 「「れいむ(まりさ)たちはここでゆっくりするよ!」」 2匹は自らがゆっくりする事を選んだ、そしてそれは同時にプチ達への死の宣告でもあった。 「「「「「ぴぎゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !れいみゅ(まりしゃ)たちをすてにゃいでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」」」」」 泣き叫ぶプチ達はゆっくりレティの口の中へ消えていき、口が閉ざされると泣き声は聞こえなくなった。 「ごめんね、ごめんね、れいむ(まりさ)がすっきりしたせいで・・・。」 2匹は泣きながら食べられた赤ちゃん達にひたすら謝り続けるのであった。 -晩夏- 夏の暑さも和らぎ、ゆっくり達にとって過ごしやすくなる季節。 しかし、この季節は時としてゆっくり達に悲劇をもたらす事もある。 とあるゆっくり魔理沙の一家では・・・。 「ゆゆ!?あめがふってきたよ!いそいでおかあさんのぼうしのしたにかくれてね!」 「おかーしゃん、あめさんはいつやむの?」 「これぇじゃゆっくりできにゃいよ・・・。」 急な夕立で辺りに雨をしのげそうな場所がなかったため、お母さん魔理沙は仕方なく自分の帽子の下に子供達を避 難させる。 「ゆぅぅぅぅぅ・・・なかなかやまないね・・・。」 「あめしゃんゆっきゅりしすぎだよ!」 「ゆっきゅりしないではやくやんじぇね!」 なかなかやまない雨に子供達はストレスが溜まり、ゆっくりできなくなっていた。 そして、お母さん魔理沙の体に変化がおとずれる。 「ゆゆ!?うごけないよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !まりさのからだがあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !」 「おかーしゃんたちゅけち ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 「とけちゃうよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 いくら川を渡るのに使えるほどの耐水性の帽子でも体を雨から完全に守る事はできない。 ゆっくり魔理沙の一家は強い雨に打たれどんどん溶けていく。 「も・とゆ・・り・・かっ・・・・・。」 一方ゆっくりレティの群れでは・・・。 この時期突然の雨が降りやすい事をゆっくりパチュリーは知っていた。 そのため、曇ってきたらすぐにゆっくりレティの下へ戻るように指示されており、通常主達は皆無事にゆっくりレテ ィの口の中へ避難していた。 「むきゅーみんなからだはだいじょうぶ?」 「ぱちゅりーとれてぃのおかげでたすかったよ!」 「まりさのからだはだいじょうぶだよ!」 「わかるよーからだがとけてないかしんぱいしてくれてるんだねー!」 「すこしからだがやわらかくなったけどだいじょうぶみょん!」 突然の夕立など気にもしないゆっくりレティは雨がやむのを寝て待っていた。 30分後、先ほどの雨が嘘であったかのように太陽が光り輝いていた。 ゆっくり魔理沙一家のいた場所には3つの帽子とデロデロになった皮が黒く濁った水溜りに浮いていた。 ゆっくりレティの群れでは通常種達が再び食糧を探すためにゆっくりレティの口から勢いよく飛び出していった。 夕立以外にもこの時期はゆっくり達にある脅威が襲い掛かる。 「ゆゆ!おひさまがゆっくりしてないよ!」 ゆっくり魔理沙はいつものように食糧を集めゆっくり過ごしていた。 この季節、日が沈む速度は日に日に早くなっているため、夜になる前に巣に戻ることが出来ないゆっくりが現れだす。 天気が良かったため遠出していたゆっくり魔理沙はもうすぐ日が沈むと言うのに群れからだいぶ離れた位置にいた。 「いそがないとゆっくりできなくなっちゃうよ!」 ゆっくり魔理沙は急いで群れの所まで戻ろうとするが、元いた場所から半分の距離も進まない場所で日が完全に沈ん でしまった。 「いやあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!くらいのはいやだあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」 辺りが暗闇に包まれると、ゆっくり魔理沙は恐怖に耐えられずに発狂しだしてしまった。 しかしそれがいけなかった・・・。 バッサ、バッサ、バッサ 「がおー!たべちゃうぞー!」 ゆっくり魔理沙の悲鳴が捕食種ゆっくりれみりゃを呼び寄せてしまったのだ。 暗闇の中でも遠くが見通せるゆっくりれみりゃはすぐに見つけたゆっくり魔理沙目掛けて襲い掛かる。 そして、ゆっくりれみりゃがかなり接近したところでようやくゆっくり魔理沙は自らに迫る危機に気づいた。 「れ、れみりゃ!」 時既に遅し、ゆっくり魔理沙の運命は既に決まったように見えた。 しかし・・・! 『ゆっくりくろまく~』 「うあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !」 牙がゆっくり魔理沙の頬に突き刺さる直前、ゆっくりれみりゃにゆっくりレティの舌が巻きつけられた。 そして悲鳴を上げながらゆっくりれみりゃはゆっくりレティの口の中へ消えていった。 そしてゆっくりレティの口の中からは群れの通常種たちが続々と飛び出してゆっくり魔理沙を取り囲む。 「むきゅー!まりさだいじょうぶ?」 「まりさ!しっかりして!」 「わかるよーこわかったんだねー。」 「もうだいじょうぶみょん!」 あまりの出来事に放心状態のゆっくり魔理沙であったが、次第に状況を理解し・・・。 「うわあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ん!ごわがっだよお ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ !」 張り詰めていた精神の糸が緩んだゆっくり魔理沙は安心感から泣き出してしまった。 「ありがとう、まりさはもうだいじょうぶだよ。」 ゆっくり魔理沙は落ち着きを取り戻していた。 「むきゅ、れてぃにもおれいをいいなさいよ、わたしたちをくちにいれてまりさをさがしにきてくれたんだから。」 「ゆ!?そうだったのれてぃありがとう!」 『ゆっくり~♪』 ゆっくりレティは滅多に食べられない肉まんを食べる事ができ、とてもご機嫌であった。 -秋- 秋、それは様々な花が咲き、果実が生じ、多年生の生物は冬を越す準備を始める実りの季節である。 その寿命が極端に短い(様々な要因で潰されるため)ゆっくり達も越冬のために巣に食糧の貯蔵を始めだす。 『ゆっ!ゆっ!ゆっ~!』 ゆっくりレティは食糧の貯蔵場所の拡張のため、舌で巣穴の拡張工事を行っていた。 通常種による越冬のための巣穴の作製は数週間かかるが、ゆっくりレティはもともと自分の生まれた巣穴が越冬用で あり、さらにその巨体のおかげで拡張工事は数日のうちに終わった。 『ゆっくり~!』 「むっきゅー!すごいわれてぃ!」 「うわぁ、すごくひろいね!」 「まりさたちのりーだーはやっぱりすごいね!」 「わかるよーゆっくりできるいえなんだねー!」 「すごいみょん!すごいみょん!」 群れの通常種達はゆっくりレティを褒め称えた。 そして越冬の食糧確保のため、本格的に活動を始める。 「ねぇまりさ、このきのこはたべられるの?」 「だめだよれいむ!そのきのこをたべるとゆっくりできなくなっちゃうよ!」 「みょんたちはおちばをあつめるみょん!」 「わかるよーべっどにするんだねー!」 「むきゅー、ちょうきかんほぞんできるしょくりょうはこっち、いたみやすいしょくりょうはこっちよ。」 『ゆ~!』 この季節になると普段寝てばかりいるゆっくりレティも越冬のための食糧の貯蔵作業に加わる。 長い舌を使って通常種達では届かない位置に実っている木の実を次々と頬に貯め込んでいく。 ゆっくりレティの群れは順調に越冬の準備を進めていった。 -晩秋- 少しずつ寒さが増し、豊富だった食糧も少なくなり、木枯らしが吹き荒れる季節。 この季節になると外で活動するゆっくりの数が減少を始める。 そして、越冬に向けての準備もいよいよ大詰めとなる。 とあるゆっくり霊夢の一家では・・・。 「みんな、あしたすのいりぐちをふさぐからきょうはおそとでおもいっきりあそぼうね!」 「「「おしょとであしょぶよ!」」」 このゆっくり霊夢の一家には片親となるゆっくりがいない。 仲の良かったゆっくり魔理沙と越冬の準備をしている最中(さなか)、豊富に食糧を蓄える事ができた安心感から成 体でもないのに「すっきり」してしまったのだ。 ゆっくり霊夢が我に返った時には時既に遅し、目の前でゆっくり魔理沙が黒く朽ち果て、3つの実を実らせていた。 自らの犯した過ちを後悔したが、ゆっくり魔理沙の忘れ形見であるプチ魔理沙達に心の傷は癒されていった。 食糧も「すっきり」する前に十分に集めていたため、無事に越冬の準備を終わらす事ができた。 「みんなあんまりとおくにいっちゃだめだよ!」 「「「わかったよおかーしゃん。」」」 プチ魔理沙達は無邪気にはしゃいで追いかけっこをして遊んでいる。 その姿を見てお母さん霊夢は越冬中の巣の中での幸せな生活を思い描いていた。 しかし知識のなかったお母さん霊夢に悲劇が襲い掛かる。 びゅー!びゅーー! 突如冷たくとても強い風が吹き荒れた。・・・木枯らしである。 成体ではないがそれなりに体が大きいお母さん霊夢は、その場で体勢を崩してしまった。 「ゆ!?れいむのあかちゃんたちは!」 お母さん霊夢でさえ、体勢を崩すほどの木枯らしである。 当然子供達は・・・。 「うわぁ~♪おそらをとんでるよ~♪」 「おか~しゃ~ん♪」 「まりしゃたちおそらをとんでるよ~♪」 プチ達は風で飛ばされ、自分達がその後どうなるかも知らずに無邪気にはしゃいでいた。 「あ、あ゛、あ゛がぢ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ん!!!」 お母さん霊夢は顔を青ざめて絶叫した。 「ど~したのおか~びぎゅ!」 1匹は木に勢いよく激突して潰れた。 「ぴぎゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ びゅ!」 1匹は先に潰れたプチ魔理沙を見て絶叫しながら木の枝に突き刺さりあの世へ旅立った。 「おかあしゃあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ん、たしゅげ!」 1匹はそのまま地面へ激突し、物言わぬ潰れた饅頭となった。 「・・・・・。」 辺りには木枯らしの吹き荒れる音だけが響き渡っていた。 一度にすべての子供を失ってしまったお母さん霊夢はその現実を認めたくないのか呆然としていた。 しかし、一度潰れた饅頭が帰ってくる事はなく、次第に現実を理解し始め・・・。 「・・・あ、あ、あ゛、あ゛がぢぁんがあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !ゆぴべぴゅびゃあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」 大好きだったゆっくり魔理沙の死、そしてそのすべての子供の死。 餡子脳で受け止められるキャパシティを超えてしまったお母さん霊夢の精神はボロボロになってしまった。 お母さん霊夢の目からは光が消え、辺りが暗くなっても笑い続けていた。 「ゆふふふふふふふふふふ!ゆはははははははははは・・・・・!」 「うー!ゆっくりしね!」 次の日の朝、お母さん霊夢のいた場所には赤いリボンがぽつんと落ちていた。 一方ゆっくりレティの群れでは・・・。 『あしたからゆっくりするよ~。』 「むきゅー、しょくりょうあつめはきょうがさいごよ。ゆうがたにはすのいりぐちをふすぐわよ!」 「「「「ゆっくりりかいしたよ!(よー!)(みょん!)」」」」 この時期食糧はとなる木の実や草花はほとんど無くなってしまっている為、通常種達は自らが冬の間ベッドにする落 ち葉を集め巣穴に持ち帰った。 食糧が取れないとわかっているゆっくりレティは巣穴の奥でスヤスヤと眠っている。 未の刻から申の刻へ移り変わる頃、帽子いっぱいに落ち葉を入れたゆっくり魔理沙が巣穴に戻り、群れの一員がすべ てそろった。 「むきゅ、いまからおくにいるれてぃをよんですのいりぐちをふさいでもらうわよ!」 「「「「ゆっくりり・・・。」」」 「「「あら、なかなかとかいてきなすあなね。」」」 突如3匹のゆっくりアリスが巣穴に入り込んできた。 3匹は落ち葉を集めるゆっくり魔理沙を偶然発見し、こっそりと跡をつけていたのだ。 「ゆ!ここはまりさたちのおうちだよ!ありすはでていってね!」 ゆっくり魔理沙は体を膨らませて3匹の侵入者を威嚇する。 ゆっくり霊夢、ちぇん、みょんも警戒態勢を取る。 「あら、まりさったらはずかしがっちゃってかわいいんだから。」 「なかなかひろいはうすね、とかいはのありすたちがふゆのあいだつかってあげるわ。」 「どうしてもっていうならあなたたちをるーむめいとにしてあげてもいいわよ。」 この巣穴の主が誰なのかも知らず傍若無人に振舞う3匹であった。 しかし、当然その行為を後悔することになる。 「「「ふくれたまりさもかわいいわ!すっき・・・あ゛っ!あ゛っ!あ゛っ!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」」」 奥から現れたゆっくりレティの姿を見て3匹は悲鳴を上げ硬直した。 「れてぃ、あのありすがしんにゅうしゃよ!」 3匹が進入してすぐゆっくりパチュリーはゆっくりレティに助けを求めに行っていたのだ。 「「「あ、ありすがわるかったわ!す、すぐにここからでていき・・・。」」」 『ゆっくりくろまく~!』 逃げようとする3匹にゆっくりレティは容赦なく舌を巻きつける。 「おねがいじまず!だずげでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 「いやあ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ !ごべんなざい ぃ ぃ ぃ ぃ ぃ !」 「ありずはいながものなんでず!ゆるじでえ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ !」 必死に助けを請う3匹であったが、聞き入れられるはずもなくゆっくりレティの口の中へ消えていった。 空腹でないゆっくりレティに捕まったこの3匹は、長期間頬に蓄えられ地獄の苦しみを味わうことになるのであった。 「「「「「れてぃ、たすけてくれてありがとう!(とー!、とうみょん!)」」」」」 『ゆっくり~♪』 お礼を言われた当のゆっくりレティは、越冬を前に栄養豊富な3匹のカスタード饅頭を得ることができ、ご機嫌であ った。 その後、ゆっくりレティによって通常種の巣穴と比べ類を見ないほど頑丈に入り口が塞がれ、本格的な越冬が始まっ た。 後編に続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1551.html
ちくたく ちくたく ちくたく ちくたく ちくたく ちくたく 時計の音が薄暗い部屋に静かに漂っている。 休んでも咎めるものはいないのに、それでも時計はちくたくちくたく時間を刻む。 誰も見ていないときにも動いているから、いつ見られても役に立つ。 そう言っているかのような音。 どこか寂しげなその音は、この家の主の枕元から聞こえてくる。 時刻はもうすぐ午前6時に指しかかろうとしている。すると、時計の音が変わった。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆぅ~ん! かわいいれーむがゆっくり6じをおしらせするよ!!」 文字盤の上に見える顔らしきところから、声が出た。 丸く、ふてぶてしい顔つき。黒と赤の装飾。 ゆっくり霊夢型の時計のようだ。 その時報で、布団がもぞもぞと動きだした。夢の中の住人が身じろぎしているのだ。 「う~んむ」 ちくたく ちくたく ちくたく ちくたく 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆぅ~ん! ゆっくりおきてね! れーむとおしゃべりしてね!!」 「れーむとあそんでね! ゆっくりおきてね! れーむとあそんでね! ゆっくりおきてね!」 時計が続々と言葉をつむぎ出す。目覚し機能のようだ。 本物のゆっくり霊夢と同じ声色、同じ口調でせっついてくる。 「ゆっくりしないでれーむとあそんでびゅぅうんっ!?」 時計が叩かれる。家主が起きたのだ。 むっくりと起き上がると、声を上げて伸びをする。 寝巻きにしている浴衣は乱れており、はだけた胸元から垣間見える肌は透けるようだ。 寝癖でぼさぼさの頭をぽりぽりとかき、寝ぼけ眼をそのままにべちべちと時計を叩いていく。 叩かれるままぶにぶにと柔らかく形を変えるソレは、 「ゆ゛っ! ゆ゛っ! ゆ゛っ! ゆ゛っぐ!? ゆっぐりやべでねっ! ゆっぐりでぎなぃいい!!!」 というように一撃ごとに悲鳴をあげた。 「目は覚めたから、黙ンなさいな」 「ゆ! ゆっぐりわがっだよ!!」 ああ、生きてゐる。 それは本物のゆっくり霊夢だった。 ゆっくり霊夢を生きたまま加工し、時計にしてしまったのだ。なんという恐るべき所業。 時計れいむは涙ぐみ、嗚咽をこらえながらも「ちくたく ちくたく」言いはじめる。 やがて主は出かけてしまい、それを聞くものはもう誰もいなくなった。 しんとした部屋に、時計れいむの声は染み渡るように響いていた。 人里からほど近い場所にその施設はある。 いつもは里の喧騒とは無関係に閑散としているそこは、いまや祭りもかくやと言う程の賑わいを見せていた。 里の子供達だ。10人くらいだろうか、その子供達が思い思いに騒いでいるのだ。 「こら、静かにしないか」 子供達をつれている女性、上白沢慧音は眉をしかめて注意した。 それで一旦は静かになったが、すぐにまた元通りになるだろう。 ほどなくして、柔和な顔つきをした男性が近づいてくる。 「こんにちわ。 お待たせしてすみません。 里の寺子屋から社会科見学の皆さんですね」 「はい。 本日はよろしくお願いします」 「こんにちわ~」 「おねがいしま~っす!!」 慧音の挨拶に、子供達が元気良く続いた。 「はい、こんにちわ。 みんな元気一杯だね! それではこちらへ」 案内の男性に続いて奥へと入っていく。 白い床に白い壁、天井まで真っ白で、清潔だがどこか無機質な感じのする廊下を歩く一同。 見れば壁にはさまざまな写真が掲げられている。 その写真には、ゆっくりたちと人間が仲睦まじく並んでいた。 「さて、ここは育児室です」 男が指す方にはガラスで仕切りのされた部屋があった。そこは見下ろすようにできており、地下に 埋設されているようだ。 外から見えていたのは一階部分で、どうやらこの施設の重要な場所は地下に設置されているのだろう。 「育児室?」 慧音が訝しげにたずねる。 「ええ。 子ゆっくり達をここでゆっくりできるように育てるのです。 素体は健康なほど長持ちしますからね」 「ああ、なるほど。 しかし見たところ成体と言えるようなゆっくりがいませんが?」 「ええ、この部屋はあれらが発情期になるまで育成する部屋ですから、成体は一匹もいません。 発情期になって、つがいを作り、身ごもったらすぐに別の育成室へと移すのです」 「だから育児室という名前なのですね」 慧音は納得した。 育児室の中の大きめのゆっくりたちは、頬をすり合わせてはいるが、それが交尾に繋がっていない。 発情期ではないからだ。 しかし他にも疑問があった。 「どうしてゆっくり霊夢しかいないのです?」 そう。その部屋にはゆっくり霊夢だけがゆっくりしているのだ。 子供達は、思い思いに「まりさはいないの?」「ありすは~?」などと言っている。 「ここはゆっくり霊夢専用の育児室なのですよ。 他にもそれぞれ専用の育児室が用意してあります」 「ほう、専用ですか」 その二十畳ほどの部屋で、多くのゆっくり霊夢がそれぞれ飛び跳ね、歌い、かけっこをし、自由に ゆっくりを満喫していた。リボンの色のみならず、その張りと艶もよく、健康状態は良好であることを 如実に表していた。 肌はぴちぴちとしており、かつ、もちもちとした弾力がある様が見て取れる。競売にかければ、高値 がつくに違いない。 慧音は子供達の声を聞きながら、目を皿のようにしてそれを観察した。 「ゆっくりは他の野生動物と違い、環境の激変でストレスを感じると言うことがありません」 男は育児室に見入る慧音を横目に説明を続ける。 「あれらのストレス要因とは、ずばりゆっくりできないことです。 ゆっくりできさえすれば、他の瑣末な ことにはあまり頓着しないのです」 「……なるほど。 この部屋はあれらにとって、十分にゆっくりできる環境が整えられていると言うことですか」 「もちろんです。 私達人間には聞こえませんが、部屋にはゆっくりが安らげる音楽が常時流されています」 「犬笛みたいなものですか」 「ははっ、わかりやすく言えばそうですね」 「気になっているのですが、どうして部屋には巣にできるようなものがないのですか?」 そう、育児室は床と壁と天井がむき出しなのだ。これで本当にゆっくりできるのだろうか? 「当然の疑問ですね。 ここからでは解かりませんが、部屋の内装は全てゆっくり霊夢の皮で出来ています」 「!」 「ゆっくりしすぎて死んだゆっくり霊夢の皮を剥がし、なめし、繋げて貼り付けてあるのです。 そうですね、洋菓子のミルフィーユをご存知ですか? あの皮のように何層も重ねられていて、一枚一枚の 間に適度な隙間も設けているので、弾力性や保温性は優れていますよ」 「そ、それはまた、手間のかかることですね」 「さらに、先ほども申し上げましたとおり、あれらのストレス要因とはゆっくりできないこと」 「ええ」 「巣というのは、あらゆる外的刺激から身を守るために作るものです。 天候や外敵などですね。 しかし、この部屋は室温や湿度も完璧に制御されており、かつ外敵は存在しません。 水や食事も規則正しく 配給しているので、あれらはむき出しでもゆっくりしているのです。 巣を作るという発想自体、ゆっくり できない環境という証明にほかなりません。 もちろん、子供同士のいさかいなどはありますが、それは じゃれあいなので問題にもなりません。 そして、部屋はゆっくり霊夢の皮で敷き詰められています。 あれらにとって、非常に慣れ親しんだ感触。 夢見心地でゆっくりしていることでしょう」 「……なるほど。 この部屋そのものが巨大な巣、コロニーの役割を果たしていると言うことですね」 「そうですね、その通りです」 納得する慧音。しかし、今自分達がゆっくりしている場所が、同族の死体の皮で出来ていると知ったら ゆっくり霊夢たちはどうなるだろう。慧音の胸がかすかに疼いた。 「そういえば、餌の配給とはどんなものなのです?」 「ゆっくりの死骸です。 それをわからないように潰して混ぜているので、想像すらしていないでしょう」 「ははあ」 慧音はやはりと思った。おそらくは、その餌も全て死んだゆっくり霊夢のものなのだろう。 「他にもゆっくり魔理沙の部屋、ゆっくりアリスの部屋などがありますが、ご覧になりますか? この部屋とあまり大差ありませんが、どうします?」 「いえ、次をお願いします」 「わかりました。 それではみなさん、どうぞこちらへ」 ゆっくり魔理沙は幸せだった。 生まれたときから、とてもゆっくりした仲間と育ち、何不自由なくゆっくりできたからだ。 日がな一日、友と遊び、思うままにゆっくりする。 毎日毎日腹が減る頃には丁度良くご飯を食べることが出来た。 暗くなれば眠り、目を覚ます頃には明るくなっている。 最初は、ご飯を持ってくる「にんげん」というのがよくわからなかった。 その「にんげん」は時折自分の体をくすぐったりしたが、それも心地よかったから気にしなかった。 「にんげん」は、苦痛を訴えればすぐさま原因を取り除き、自分をゆっくりできるようにした。 「にんげん」は、自分に空腹を感じさせないように、いつもご飯を持ってくる。 「にんげん」は、自分の体が汚れたと感じたら、その旨を伝えれば、丁寧に綺麗にした。 やがて、ゆっくり魔理沙にとって、「にんげん」とは自分の言うことを聞くものだという認識に至った。 そうして育ち、立派なゆっくりになった頃、恋をした。 発情期というものだったが、ゆっくり魔理沙にとっては衝撃的な恋であった。 相手は同じゆっくり魔理沙。 二匹は目と目が逢った瞬間、すぐさま恋に落ち、頬と頬とが触れ合った瞬間に運命だと感じた。 やがて、どちらからともなく交尾をし始め、二匹は共に子を宿す事が出来た。 体のなかに現れた異物感。 しかし不快ではなく、むしろ天上の至福を感じることが出来た。 それが愛しい相手との、無二の実りだと確信していたからだ。 以前よりも動き回ることが出来なくなっていたが、二匹は幸福の絶頂にいた。 その後、一度お引越しをしたが、自分達がゆっくりできたので、気にもならなかった。 むしろ、子供が出来たことを理解できない幼子たちに注意を向けないでいられる分、この場所のほうが ゆっくりできると思った。 それに、ご飯を運んでくる「にんげん」も、祝いの言葉をかけてくれたし、より一層ゆっくりできるご飯を 自分達のために用意した。その行為を当然だと思っていたが、感謝もしていた。 お引越しをする前に、仲間たちが祝福してくれたが、同種以外に自分達の子供を祝福してくれる存在は、 純粋に嬉しかったのだ。 可愛い子供が生まれたら、あの「にんげん」にも見せてやろう。きっと一緒に喜んでくれる。 自分達の可愛い子供達に、美味しいご飯を用意してくれるはずだ。 事実、「にんげん」は身重になった自分達に、今までよりも丁重に自分達に接していたのだから。 いつもよりゆっくりできる美味しいご飯。ゆっくりできるお風呂、ゆっくりできる匂い。 そうして、臨月を間近に控えたある日。 ゆっくり魔理沙は目を覚ました。 どこかいつもと違う感触がするので、あたりを見回した。 そこはゆっくり魔理沙が眠る前にいた場所ではなかった。 無機質な光、匂い、音。さらに自分の体がうまく動かせないことに気づいた。なにかががっちりと ゆっくり魔理沙の体を捕えている。冷たくも温かくも無いそれに、ゆっくり魔理沙はぞわりとした。 「ゆ? ここどこ? おねーさんだれ?」 ゆっくり魔理沙の目の前には「にんげん」がいた。 いつも、ゆっくり魔理沙に従っている「にんげん」とは違う「にんげん」だ。 「ゆっくりはなしてね! まりさおこるよ?」 でっぷりとした体を揺らそうとするが、びくともしない。 女はそれを意に介さず、チョークのようなもので、ゆっくり魔理沙の口の下に線を引いた。 「ゆっふふふっふ! くすぐったいよ! やめてね!」 多少歪んでいるが、見事な円形をしたそれにそって、メスでゆっくり魔理沙を裂いた。 「ゆ゛あ゛っ!?」 ざくり。 という歯切れのいい音と共に、鋭い痛みがゆっくり魔理沙を貫いた。その痛みは熱さを伴っており 徐々に激痛がゆっくり魔理沙の体に広がっていく。 「ゆ゛ぎゅぅっ! ゆ゛っう゛う゛うぅ゛ぅ~~~~っ!!?」 女は濁った悲鳴を聞いても、微塵も揺るがずに作業を続けた。 べろりとめくれた皮をそのままに、鉗子で穴を広げて固定する。 「やっ! や゛べろ゛ぉお゛お゛ぉぉお゛~~~!! ま゛り゛ざをはな゛ぜぇえ゛ぇっ!」 みちみちと単発的に弾けるような鋭い痛みと、じぃんじぃんと染み渡るような鈍い痛み。 ゆっくり魔理沙の血走った目からはだくだくと涙が流れている。口からは涎がとめどなく溢れているし、 体は切り裂かれたときから震えているばかりだ。 どおして? なんで魔理沙がこんなことをされているのっ!? これは何かの間違いだよ!! 魔理沙がこんなことをされるわけがないんだもん! そうだッ! これは夢だよ! ゆっくりできない夢に違いないんだよ!! 早く起きろ! 早く起きろ!! 早く起きろ!!! ゆっくりしないで目を覚ませぇっ! 「い゛や゛ぁあ゛ぁぁ!! あ゛り゛ずの゛あ゛がぢゃんがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 必死に念じていたゆっくり魔理沙の身に、悲痛な声が届いた。 はっとしたゆっくり魔理沙は、周りにも自分と同じ状況のゆっくりがいることに気づいた。 自分以外にもこんなことをされている仲間がいるかと思うと、怒りが湧いてきた。 文句を言おうと口を開くが、 「ゆ゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」 という悲鳴しか上がらなかった。 自身に何かが刺し込まれる激痛。その痛みの場所に目をやると女が手を入れていた。 「い゛っだい゛、な゛に゛を゛じでる゛の゛ぉお゛お゛お゛お゛お゛っ!?」 胎内の何かをつかまれ、引っ張られる感触。 うああ! やめろ! やめろぉ! やめろぉっ!! そこはっ! そこには愛しのまりさとの子供が……っ!! もうすぐ産まれる魔理沙の可愛い可愛い子供がいっ……!!! 中身がくちょくちょと乱される感触。大事なものがいなくなる喪失感。こすれる音と千切れる音。 目の前に引きずり出される、自分に良く似た形。 どこか柔らかさを感じさせるそれ。思わず守ってあげたくなるようなたたずまい。 拘束されたゆっくり魔理沙の意識が揺れる。 そう、それは── 「ゆ゛ぐう゛う゛ぅぅぅう゛う゛ぅぅっ!! ま゛り゛ざの゛あ゛がぢゃぁあ゛あ゛ぁあぁん゛!!!」 女は取り出した赤子を、無造作に横にある金属製のバットに置く。 自身の異常事態に気づいていないのか、赤子はゆぅゆぅと寝息をたてていた。それだけで女が 熟練の腕だと判断することが出来る。 「どおじでぞんなびどいごどずるのぉおおぉぉっ!? がえじでっ! まりざのごどもだよぉおぉぉっ!!!」 「うん。 どこも欠損はないわね。 じゃ、それは持って行って」 「わかりました。 それにしても、いつみても見事な手際ですね」 「そう? ま、切った数が違うからかもね」 女は赤子に異常部位がないことを確認すると、脇に控えていた男に渡した。 「ま゛っでえ゛ぇええぇぇっ!! ま゛り゛ざのあ゛がぢゃんがえ゛じでえ゛え゛え゛ぇぇっ!!!」 赤子はこの後、ナンバリングを施されて育児室へ入れられる。 親が育ったのと同じ、ゆっくり魔理沙だけのコミュニティで、発情期まで何不自由なくゆっくりと育つのだ。 残されたゆっくり魔理沙は、燃えるような眼差しで、女を射抜くように見据えていた。 「ゆ゛っぎゅう゛ぅう゛ぅう゛ぅぅっ!! ゆ゛るざない゛! ぜったい゛! ゆ゛るざないよ゛ぉっ!!!」 怨嗟に燃えるゆっくり魔理沙の慟哭。 だが、女は今までと同じように、黙してただ行動しただけだった。 スプーンでゆっくりと中身をかき出していく。 「ゆ゛ぐっ! ゆ゛ぐっ! ゆ゛ぐっ! ゆ゛ぐっ! ぶぎゅゆっ!!?」 少しずつ減っていく中身。 それに伴い、ゆっくり魔理沙の表情は憤怒から蕩けそうなものへと変貌していく。 さらに、その中からさまざまなものが無くなっていく。 ひび割れそうな意識と、砕けそうな記憶。溶けて流れてしまう感情。 痛い! 痛いよ!! すっごくゆっくりできない!! 魔理沙にこんな事するなんて、絶対に許さない! 絶対に! だよ! 人間なんて酷いことをする奴はゆっくりできなくしてやる!! どうしよう。 まりさとの子供がいなくなっちゃったよぉおお。 人間に持っていかれちゃったの。 すっごく寂しいよ、寒いの! まりさにはなんて言えば良いんだろう? どう説めいすればいいンだろう? せツめい? ……なにヲ? あれぇ? おっかしいな~。 さっきまでそこにミえてたまりさがすっごくとおいよ? あ、まって。 まってよ。 おいていカないで! マりさもいくよ! まりサといっしょにいくよ!! ユっくりしてイってね!!! やだヨ! まってね! ゆっくりまってね! そこでほほえんでるまりさはだぁれ? なにかとってもたいせつだったまりさなきがするよ? アれ? まりさってなにたいせつってどおゆうことよくわかんないや あいなくなっちゃったもっとゆっくりしていってね ……ゆくり? ゆっくり魔理沙は静かになった。 一見すると死んだように思えるが、女はしっかりと限界を見極めていた。 しっかり呼吸もしてるし、ゆるくではあるが震えてもいる。 女が掬い取った中身は、生き物でいう羊水に当たる部分と、感情、記憶を司る部位を少々。 生命活動には問題がない程度だ。 これらの餡子は処理されて、ゆっくり魔理沙の育児室へ餌として送られる。 「ふう」 それでもやはり集中力が必要なのだろう。疲れの色が見えている。 しかし女は手を休めなかった。次々と道具を取り出してテーブルの上に置く。 大小さまざまな歯車と、何本かの針のようなものが見える。 それらをひとつひとつ、ゆっくりと、かつ丁寧にゆっくり魔理沙の体内に配置していく。それらが かみ合うように配置するたびに、中身に引っかかるのが刺激になっているのか 「ゆ゛ふっ! ゆ゛ふっ! ゆ゛ふっ!」 と奇妙なうめき声が、ゆっくり魔理沙の口から涎と共に、断続的に漏れていた。 おおよそ15分後、全ての歯車を配置し終えると、次は文字盤を取り出した。 1から12までの数字が刻印されているそれをかぶせると、仕上げに時針、分針、秒針と繋げていき、 最後に特殊なコーティングを施した蓋をする。 これで「まりさ時計」の体裁が整った。 あとは調律室で時計としての心構えを叩き込めば完成だ。 「これは、なかなか凄いですね」 慧音はごくりと喉を鳴らした。10畳ほどの広さの部屋で、数多くのゆっくりたちが体を開かれ、 子を引きずり出されて、体内に異物を接続され、徐々に時計に仕立て上げられていく。 そのあまりの異様さに戦慄しているのか、利発な美貌はわずかに翳っていた。 「ああ、刺激が強すぎましたか?」 男が慧音や周りの子供たちを心配げに見渡した。 「この加工室には防音措置が施されていますが、人によってはあれらの表情にやられてしまうのですよ」 「いえ、私は大丈夫です」 慧音は気を取り直したように言った。 子供達は、皆一様に目をきらきらさせて、 「すっげー」 「時計ってああやってできてるんだァー」 「うふふ」 「うちの時計はありすなんだぜ!」 などと興奮を隠し切れずにいた。 「……ははは」 慧音の乾いた笑い声。子供達の無邪気な残酷さは、こんなとき大人の思惑をたやすく超えてしまう。 「ねー、おじさーん。 ここぱちゅりーとかいないよー」 「ほんとだー。 れみりゃもいなぁい。 なんでー?」 「こぉら。 どうしてですか?だろう」 「ははは。 かまいませんよ、子供は元気が良すぎるくらいでないとね」 そう言って、男は子供達の頭を軽く撫でる。 「ゆっくりぱちゅりーは虚弱ですからね、あのような大々的な加工をすると容易く死んでしまうのです」 「すると、ここではゆっくりぱちゅりーは扱っていないのですか?」 「あぁ、いえいえ。 そんなことはありませんよ。 ただ、今は研究の段階でしてね」 困ったように頭をかく男。 「今までとは違った形にしたいと言っているので、出回るのはまだ少し先になるでしょうねぇ」 「へ~、ざんねーん。 れみりゃはー?」 「ゆっくりれみりゃはこちらです」 (下)に続く このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/811.html
最近つくられたその施設は、甘い香りで満たされていた。 「ようこそ、おいでくださりました」 年配の男が一人、立ち上がって少女を迎え入れる。 その出迎えに、少女は恐縮気味にぺこりと頭を下げた。 「すいません、ご多忙の折に無理をいってしましまして」 「いえいえ、構いませんよ」 営業用の笑顔が男の唇に浮かぶ。 「では早速ですが、先日のお約束どおり、今日はうちの施設についてご案内いたしますね」 「お願いします」 簡潔な了承を得て、男は施設の奥へと少女を伴って歩き出した。 ついていこうとする少女。 ふと、真鍮のプレートが視界に入る。 『ゆっくり加工所』 そこが、少女の目的の場所だった。 「ここが、捕獲した『ゆっくり』の貯蔵庫です」 男が背の高い柵を指差していた。 柵の隙間には、押し付けられて膨らんだ顔が並ぶ。 「ゆゆゆ……」 少女が上から覗くと、中にひしめき合う「ゆっくり霊夢」と「ゆっくり魔理沙」の一群。三十匹はいるだろうか。 これは、最近幻想郷で見かけるようになった奇矯な生き物たち。 発生源や種のあらましもまったく不明だが、よく似た顔の実在人物とは関係がないことと、中身が餡子などでできていることだけは知られていた。 幻想郷の甘いものが好きな庶民にとっては、甘味を手の届きやすい値段に押し下げた恩人たちといっていい。 そのゆっくりたちは押し込められ、柔らかい体をひしゃげながら、視線の定まらない瞳で虚空を眺めていた。 「ゆっくり?」 が、その瞳に少女の姿が映し出されるなり、一斉に騒ぎ出す。 「おねーさん、ここからだして! おなかすいたよ! おうちかえる!」 ぽろぽろと涙をこぼしながら、柵をぎしぎしと揺らすゆっくりたち。 「ここにいるのは、全て捕獲したものですか?」 「ええ、お客さんの中には天然ものがいいという方もいるので」 少女と男の会話に、ゆっくりの必死の言葉を意に介した様子はない。 「私なんぞは味にうといものですから、繁殖したものと天然ものの違いなんてわからないのですがね」 ハハハと乾いた笑い声を上げる男。 少女も、お愛想の微笑で応じる。 男は冗談が通じたことに一応の満足。 「では、次はその繁殖場面へご案内します」 「はい」 二人、ゆっくりに背を向ける。 「ゆ! ゆっくりしていってよー!!!」 柵をびりびりと震わす声も、扉を閉めるとかすれて消えていった。 「繁殖の成功と効率化は、この事業が成り立つための最大の課題でした」 しみじみと男は呟く。 男と少女の二人が並んで立つのは、背の低い柵の前。 その中には、ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙が一匹づつ紐で結ばれて転がっている。 「最初に繁殖に成功したのは、この組み合わせです。ですが、問題がありまして」 言うなり、男は無造作に柵に手をつっこむ。 「ゆっ!?」 そのまま、二匹をわしづかみにするなり、手首をぶるぶると小刻みに振るわせ始める。 「ゆー!!! ゆー!!!」 揺すられるがまま、甲高い声を上げ始める二匹。 「ゆー、ゆー、ゆーっ!」 やがて、声がとろんと艶をはらんでいく。 男の手首がさらに激しく蠢動を重ねると、ゆっくりの口がだらしなく開かれ、赤みが濃い色彩を帯び始めた。 「ゆゆゆゆゆゆゆ」 目つきが熱を帯びたところで、男は手を止めた。 「ゆ? ……ゆっくりしていってー!!!」 切なげな声が男の手を追いかけるが、すでに男は少女と向き合っていた。 「こうやって発情させた後、二匹だけにして暗がりに放置しないと繁殖を始めないので、手間がかかる上、数を増やせないという欠点がありました」 「なるほど」 「ですが、ここで繁殖力旺盛なゆっくりアリスという新種を発見したのが事業の転機となりました。今日、ちょうどその繁殖予定日となっています」 男が部屋の奥に視線を投げると、その視線を受けた従業員らしき男が両手にゆっくりを二匹抱えて近づいてくる。 ゆっくり魔理沙より短めの金髪で、赤いヘアバンドが目を引く、珍しいゆっくりだった。 従業員は、柵の中へゆっくりアリスを放り投げる。 「ゆっくりしていってね!!!」 本能なのだろうか。 突如あらわれた同類を見るなり、ゆっくり魔理沙は大きな声でご挨拶。 だが、次の瞬間、表情が固まる。 「まっまっまっ、まりさ!!!」 弾けるように、二匹のゆっくりアリスは魔理沙の元へ。 「ゆ゛っく!?」 定番の台詞も、密着したアリスの頬に邪魔されて満足に動かない。 「ゆ゛っ……ゆ゛っゆゆっ!!!」 それでも懸命に台詞を口にしようと足掻くゆっくり魔理沙の上に、もう一匹のゆっくりアリスが容赦なくのしかかる。 もはや聞こえてくるのは、ゆっくりアリスの荒い息遣いのみ。 ほほをすりあわせて、よだれをこぼしていたアリスも、ぐいぐいと魔理沙を壁際に押さえつけて動けなくする。 壁に押し当てられた魔理沙は、苦しいのかようやく涙がぽろりとこぼれ、間近でその様子を見るはめになったゆっくり霊夢は柵の隅でガタガタと震えだす。 「い゛、い゛や゛あああ」 ゆっくりしていられない、ゆっくり魔理沙の悲鳴。 それも、アリスの声でかき消されていた。 「ゆっくりイってね!!!」 紅潮した声でそろって叫ぶアリスたち。 途端に、ぶるぶると小刻みに震えだした。 「あ、ちょうど繁殖がはじまりましたね」 こともなげに解説をはじめる男。 「もうすぐ、押さえつけられている方が白目を見開いて、裂けそうなほど口を開いた驚愕の表情で固まってしまいます。 そうなると、この個体は徐々に黒ずんで朽ちるのみですが、その頭から蔓のようなものがのび、その先に複数の同種が実ります。ゆっくりアリスの素晴らしい点は、そうなるとすぐに次にゆっくり霊夢で生殖行動を続行することですね」 手馴れた口調で説明を重ねるが、一向に少女の反応はない。 「あ、お嬢さんにはちょっと嫌な光景でしたか。申し訳ありません」 少女の肩が心持ち震えていることに気づいて、男は慌てて謝罪する。 気丈に、少女は微笑んだ。 「いえ、そのことではありません。それに、お願いしたのはこちらですから、お気遣いなく」 男は頭をかきつつ、少女の気遣いに痛み入る。その間にも「ゆっゆっ」と気ぜわしい声が聞こえていた。 「では、こちらはここで切り上げましょう。次は繁殖に成功して増産したゆっくりを使った飼育事業についてご案内します」 異存はない。 「んほおおおおおおおおおおおおお!」 切なげな絶叫が響く部屋を後にする二人だった。 男に案内されたのは、屋外の小屋だった。 いや、二階建ての家屋に等しい大きさでは小屋と言い難い。むき出し木の骨組みと、壁の代わりに金網で覆っただけの粗末なつくりは、小屋そのものではあったが。 男は、ここを厩舎と呼んだ。 「今日は曇り空なので何も覆っていませんが、この生き物は日差しに弱いので、晴天時は上にシートをかぶせています」 そんな説明を聞き流しながら少女が厩舎に近づくと、中から獣のうなり声が聞こえてきた。 「うー! うー!」 奇怪かつ陽気な声に近づいてみれば、ゆっくりの顔の両脇に蝙蝠の翼を生やした、謎の生き物がふわふわと飛んでいる。 「肉まん種の、ゆっくりれみりゃです。ご覧の通りある程度飛べるので、この厩舎は全体を金網で覆っているのですよ」 「ずいぶんと機嫌がよさそうですね」 少女の言葉のとおり、れみりゃは鼻歌が出そうなニコニコ顔で飛び回っている。 「さっき、餌のゆっくり霊夢を与えたからでしょう」 「ゆっくりを?」 「ええ、出荷間近なのでゆっくり霊夢を餌に与えています。味がよくなるとのことで。れみりゃは高級食材などで引く手あまたですから、十分元がとれるといわけです」 なるほど、少女はれみりゃの毛並みの良さの理由がなんとなくわかった。 「大切に育てられているのですね」 「ええ、肉の質を高めるために運動も欠かさずやっています」 男の言葉が合図だったかのように、突然れみりゃが動きを止めた。 れみりゃの視線の先には、れみりゃよりも一回り小さな金髪のゆっくりが一匹。異様さでは類を見ないゆっくりだった。 翼らしきものはあったが、宝石を並べたような代物。瞳は見開いた真紅。 「ゆっくりフランです。」 男にその名を紹介された異種は、れみりゃの周りを満面の笑みで飛び回る。 れみりゃもあどけない笑顔で向き合ってはしゃぎまわっていた。 傍目には、仲睦まじい姉妹かナニカのように見えるのだが。 しかし、それは突然だった。 「ゆっくりしね!!!」 フランの口から拳のようなものが伸び、れみりゃの顔面中央に突きささる。 その拳に顔面をへこまされたれみりゃは呆然と身動き一つしない。 拳がフランの口に戻ってから、ようやくぽろぽろぽろと、とめどなく流れる涙。 「……! ……!!」 口は嗚咽にゆがんで、動転を言葉にする術を知らぬよう。 「うー! うー!」 ただ一匹、フランのみが楽しげに笑っていた。 フランは、再びれみりゃの正面に向きなおる。 「うあー! うあー!」 泣きながら逃げ回るしかないれみりゃ。 「ご覧の通り、なぜかフラン種の方が強いので、フランにはれみりゃを追っかけ回す役をさせています。他にもれみりゃの誘導など、とても助かる存在ですよ」 「牧羊犬みたいなものですか」 少女の言葉に、我が意を得たりといいたげな男の微笑み。 「さて、お次は最後。ゆっくり霊夢、魔理沙からの餡子の回収方法です」 ついにその時がきた。 少女は腕に抱えるそれをぎゅうと抱きしめる。 遠めにもわかる、巨大なゆっくりが部屋の中央の檻に鎮座していた。 その体躯は、高さだけでも少女の背を越していた。 横幅も広く、その重量は計り知れない。 「あれが、巨大種。ゆっくりレティです」 ぷっくりと膨らんだその生物を、男は指差す。 「雑食性ではゆっくりユユコに及びませんが、許容量ではゆっくり一でしょう」 この巨体を前に、男の声は説得力に満ち溢れている。頷くしかない少女。 ゆっくりレティは眠っているのか、目を閉じてくうくうと静かな呼吸音を奏でていた。 遠目には可愛らしいのだが、巨体の異様さは拭いがたい。 「今、先ほどの食料を消化中なのでしょう。そろそろ、お腹が空いて起きる頃です。ちょっとお待ちください」 その言葉を残して、男が部屋から姿を消す。 しばらくして、男はゆっくり霊夢を一匹抱えて戻ってきた。 「おじさん、今日もゆっくりしようね!!!」 その言葉と、黙って抱えられている様子に、ゆっくり霊夢の男への信頼が伺える。 恐らく、その無垢な信頼感は繁殖から育てたゆえだろう。 推察を重ねる少女へ、男は静かに語りかけてきた。 「では始めますよ」 少女の頷きを確認するなり、レティの檻に放り投げられるゆっくり霊夢。 「ゆっ、ゆっくり!?」 遠ざかっていく、ゆっくり霊夢の驚愕の表情。 レティの体躯にあたり、ぽよんとはねて転がる。 同時にのっそりと動き出すレティ。 「ゆゆゆゆゆゆっくりしていってね!!!」 一目散に檻の入り口へ。 しかし。 「早く扉を開けてね!!! 」 すでに男によってロックされた後だった。 地面が揺れる。 ゆっくりレティが飛び跳ねながら近づいてきていた。 「おじさん! ここから出して! もっと、ゆっぐりじだい゛いいいい!!!」 「レティ種は鈍重なので扱いやすいのが利点となります」 扉越しの哀願も、男の穏やかな眼差しを動かすことはできない。 やがて、ゆっくり霊夢の上に差す巨大な影。 レティが、真後ろにいた。 ゆっくり霊夢の顔がくしゃくしゃに歪むのと同時に、開けっ放しのレティの口から分厚い舌がのびる。 霊夢は瞬時に舌に巻き取られた。 「ゆっくりした結果がこれだよ!!!」 悲しげな絶叫を残して、ぺろんとレティの口の中へ。 少女は見た。 飲み込もうとしたレティの口の中にうごめく、何匹ものゆっくりたちを。 レティのベロに抑えられて身動きもできず、滂沱の涙を流して視線を男に向けている。 「レティ種は、リスのように食べきれない分を頬に貯蔵して蓄える癖があるんです。最長で二週間は保存されていますね」 ゆっくりたちの視線に、男は興味を示さない。少女に自らの事業を説明することの方に傾注している。 「餡子の回収は、レティが熟睡した後に、後ろに穴をあけて搾り出します。定量を絞ったら、塞いでまたゆっくりを与えるのです。秘伝のタレを継ぎ足し、継ぎ足し使っている焼き鳥屋を思い浮かべてください」 言われてみれば、寝床に戻るレティの後頭部に隆起部分が。 「ちなみに、一度レティ種に消化させることで、甘味がまろやかになって質がよくなることと、混ざり合うことでの品質の均一化が図れます。生産者にとって大切なことは、量産性と高品質、そしてその維持です。このシステム構築は、私の ゆっくり業者としての矜持なのですよ」 誇らしげな男の言葉が少女の印象に強く残っていた。 職業人魂。 男の言葉を、少女は強く理解できる。 なぜなら、自分も人形という分野で職人的な魂に触れているからかもしらない。 そう。少女は、アリスだった。 可憐な彼女には場違いなその加工所を後にしたアリスは、夕焼けの空に時間の経過を知る。 「今日はずいぶんと大人しかったわね」 一息ついて、見学の間中、両手に抱えていたソレに今日初めて話しかける。 「それにしても、いいお話が聞けたわ、魔理沙」 アリスの腕の中でぶるぶる震えているその生き物は、正確には魔理沙ではない。 数ヶ月前、魔法の森で捕まえたゆっくり魔理沙だった。 「でも、今から震えてどうするの? 魔理沙をあそこに預けるのは、明日よ」 アリスの真顔に、冗談のニュアンスは欠片もない。 「い゛や゛あ……」 ゆっくり魔理沙からこぼれる弱弱しい悲鳴を聞きつけて、アリスは嬉しげな顔を紅潮させる。 「だって、私があんなに優しくしてあげているのに、あなたは逃げ出そうとするんですもの」 言いながら、息も荒くなる。 「だったら、あそこでゆっくりしていってもらうだけよ」 「い゛や゛だあああ! ゆ゛っぐり、じだくない、じだぐないよおおおお!」 「あらあら、ゆっくりにあるまじき言葉ね」 涙やらなにやらで醜く濁ったゆっくりの言葉を、恍惚の表情でまぜかえすアリス。 「どうしても嫌だというのなら、仕方ないわね。その代わり、わかっているかしら?」 「うん! つねったり、踏んだり、……しても、いいから!」 しゃくりあげながらのゆっくり魔理沙を、アリスは一転して慈母の笑みで見つめる。 ぎゅうと、愛情をこめて抱きしめつつ話しかける。 「そこは『いいんだぜ』にしなさい」 「わっ、わかったぜ!!!」 「ああ、本当に可愛い、魔理沙!」 宵闇が迫る夕べを背景に、一つに重なる影。 何やら、それなりに幸せそうな一人と一匹であった。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1320.html
前編 「ゆ~……ゆ~…………ゆっ?」 ある朝、ゆっくり魔理沙が目を覚ますと、見知らぬ場所に居た。いつもの家ではない。 白い壁に覆われて、真ん中に一本の柱が立っているだけの無味乾燥な部屋だ。 不安になって周囲を見ると、おにいさんが座っていた。そして、近寄っていつもの言葉を言う。 「いぬみたいにいうこときくから、ゆっくりさせてね!」 この一言から、ゆっくり魔理沙の一日は始まる。しかし、いつもなら来るはずのおにいさんの返事がなかった。 「ゆっ? おにいさん、どうしたの? だいじょうぶ!?」 もう一度呼びかけてから、身体を揺すると、ようやくおにいさんは反応を示した。 「……魔理沙か」 「まりさだよ! ゆっくりいうこときくね!」 こう言うと、直ぐに何々をしろ、と言われるはずなのに、またしても様子がおかしいままだった。 「魔理沙、俺はもう、駄目だ……」 「ゆゆ!?」 見ると、おにいさんの身体からは赤い水のようなものが流れている。 「どうしたの、なにかでてるよ!?」 「これは、お前たちでいうところの餡子だ」 「ゆぅぅ!? あんこがでちゃだめだよ! はやくもどして!」 諦めたように笑うおにいさん。 「俺は、もう駄目だ。血……いや餡子が多く出すぎた。もう長くない」 神妙な面持ちで話を聞くゆっくり魔理沙。 「だから……あそこを見ろ」 「ゆっ?」 おにいさんが指差したほうを見ると、二つの扉が開け放たれている。 「左に行くと、俺を助けられる人がいる。右に行くと……外に出られる」 「ゆ、おそと……!」 そと、それは甘美な響きであった。良いゆっくりになろうとしたのも、ひとえに外に出たいがためだった。 「魔理沙、お前が選べ。俺を助けるか、外に出るか。どうやったら、良いゆっくりになれるのか」 「でも、くびわが……」 身体にくいこんだままの『首輪』を気にする。これがある限り、いつ死んでもおかしくないのだ。 「大丈夫だ。どっちを選んでも『首輪』は簡単に外れる」 「れ、れいむは? れいむはどこにいったの?」 「それは分からない。どこかに連れて行かれたのかもしれないし、助けを呼びに行ってるのかもしれない」 「ゆゆゆ……」 ゆっくり魔理沙は悩んだ。今まで一緒だったれいむのことも気になったし、おにいさんが死んでしまいそうなことも気になった。 どうすればいいのか分からない。おにいさんに聞いてみても「お前が選べ」としか言わない。 そこで、ゆっくり魔理沙は閃いた。もう、おにいさんは死んでしまう寸前なのだ、と。だから「命令」も出せないのだ。 だったら、助けを呼んでもその間に死んでしまうだろう。それよりも早くれいむを見つけてあげたい。 もしかしたら泣いているかもしれないし、死んでしまっているかもしれないのだ。 やがて、ゆっくり魔理沙は決めた。もう『首輪』は大丈夫であり、おにいさんは駄目だ。なられいむを探しに行こうと。 「おにいさん、ごめ~んね! まりさは、れいむをさがしにいくよ! ゆっくりしんでいってね!」 おにいさんに最後の言葉を投げつけて、思い切り走り出す。 ゆっくり魔理沙は思う。まずはれいむを探すのだ。れいむを見つけて、その後はゆっくりできるおうちも探す。 食べ物もいっぱい集めて、ふたりの子供もたくさん欲しい。たくさん、たくさんゆっくりするのだ。 高鳴る思いのまま、右側の扉へ向かって駆ける。扉からは緑色が見えてくる。そして、外の景色が――― がちゃん!! 白い壁が続く通路にゆっくり魔理沙はぐちゃり、という汚らしい音を立てて叩きつけられた。 『首輪』も遅れて通路に落ちていった。 「ふぅ……今回は一匹だけか」 座った状態から立ち上がり、軽く背伸びをする。座っているのもそれなりに疲れるのだ。 歩いてゆっくり魔理沙の所へと向かう。『首輪』に引っ張られたことで中身が飛び散っている。 「おい、生きてるか」 「ゆ、っぐりぃ! どぼじでぇ!どぼじでぇぇえぇ!」 生きているようだ。ずいぶんとしぶとい。後頭部の辺りから餡子を撒き散らしていてもまだ喋れるらしい。 「何が、どうしたんだ」 「お゛ぞどぉ゛! ぐびわ゛ぁ゛!」 涙なのか、苦痛なのか分からない叫び声をあげている。 疑問に一つ一つ答えてやることにやろう。どうせ、死ぬ身だ。閻魔様への土産は必要だろうから。 「右の扉は外に続いているが、本当の出口はもっと奥だ。ここはガラスがあるから、外の景色が見えているだけだ」 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆぅ!」 ショックのためか、餡子を出しすぎているためか、ゆっくり魔理沙は痙攣し始めている。まずいな、早く説明してやらねば。 「左の扉に行けば、俺が操作して『首輪』を外した。だが、お前は右に行ったから『首輪』を外さなかった」 「ゆっ……」 「お前が本当に『良い』ゆっくりがどうかを試したんだ。そして、お前は『良い』ゆっくりにはなれなかった」 俺を助けに行っていればこんなことにはならなかったのにな、と付け加える。 その時、ゆっくり魔理沙の頭の中はぐるぐると渦巻いていた。 どうして、どうして、こんな風になったのか。れいむはどこにいったのか。 自分はどんな風になっているのか。いたいいたいいたいしんでしまう。 だれかたすけてれいむたすけておにいさんたすけて。 良いゆっくりになるから良いゆっくりでいさせてゆっくりさせて。 なりたくないあれにはなりたくないあれになったら死んでしまう。 いやだいやだいやだいやだくびわやだあれになるのはいや。 「魔理沙、お前は『悪い』ゆっくりになったんだよ。だから―――ゆっくり死ね」 「い゛や゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 わるいゆっくりには、なりたくなかった。 俺は血糊を吹いて、部屋から出た。 「おつかれっす」 「どうも。今回は一匹だけですいません」 加工場の馴染みの職員と挨拶を交わす。 「いや、今回のヤツはアクが強いってんで、一匹も無理じゃないかって皆で賭けてたんっすよ」 「ほほう、それで?」 「オレの一人勝ちっす! ま、賭けてた商品がゆっくりなんで、あんまありがたくないっすけど」 「それは確かにありがたくないですね。おっと、少し失礼」 職員との話を切って、ゆっくり霊夢の所に向かう。最後までちゃんと調教しなくてはいけない。 ゆっくり霊夢は部屋で起きていたことを全て見ていた。今も友人の死体を見て呆然としている。 魔理沙側からは見えないが、霊夢側からは見えるという、マジックミラーというものだ。 「良かったな霊夢。これでようやく『良い』ゆっくりになれるぞ」 「な゛ん゛でぇ゛」 嬉しくないのだろうか、あれだけなりたがっていたのに。まあ、無理もないが。 「どう゛じでぇ゛! ま゛り゛ざじん゛ぢゃ゛っだよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉっ!」 「魔理沙は最後の最後で『良い』ゆっくりになれなかった。だから、餡子をぶちまけて、死んだ」 ゆっくりにも分かるように、噛んで含めるように言う。これはこれで最後となるだろう。 「どぼじでぇ!? ま゛り゛ざば」 「人間の言うことを聞かない『悪い』ゆっくりになった。俺を助けなかったというのは、そういうことだ」 あれこそが最終試験。調教要件は「如何なる場合でも言うこときくゆっくり」であったからだ。 ゆっくり霊夢は『悪いゆっくり』という単語に身を震わせる。ほとんど条件反射のようなものだ。 「霊夢、お前は犬のように人間の言うことをきく『良い』ゆっくりだ。言うことを聞いていれば」 ゆっくり魔理沙の残骸を見せつける。 「あんな風には、ならない」 「れ゛い゛む゛は゛い゛い゛ゆ゛っぐり゛でず! な゛ん゛でも゛、い゛ぬ゛み゛だい゛に゛い゛う゛ごどぎぎま゛ずぅ!」 これにて、調教完了である。俺の仕事もようやく終わった。 職員にゆっくり霊夢を引き渡し、いくつかの諸注意を与える。 言うことを聞かせたら、たまに食事を与えること。 「犬みたいに」という言葉を使えば、大概のことはする。 そして、 「時々、あれをいじっておいてください。大丈夫だと思いますが、念のため」 「はあ……しかし、あんな棒切れで本当に大丈夫なんすか?」 ゆっくり霊夢は『首輪』が既に外されており、代わりに『首輪』で空いた穴へ棒が突っ込んであった。 「体内に異物が入ってる限りは言うことをきかねばならない、という条件付けしてあるので、大丈夫ですよ」 異物といっても、そこそこ大きさがあればなんでも良い。ゆっくり霊夢が錯覚さえすればそれでいいのだ。 一応、他のゆっくりに不審がられないようにあまり長くないものを差し込んである。表面から少し出てる程度の長さだ。 職員の手に持たれたまま、ゆっくり霊夢はまだ泣いている。 「じゃあな。加工所で『良い』ゆっくりとして頑張っていけ」 「な゛ん゛で、ごんなどごにお゛い゛でぐの゛ぉ!?」 加工所は危ない、『悪い』ゆっくりは加工所で殺される、と徹底的に調教したためか、加工所にはいたくないらしい。 「なんか、泣いてますけど?」 「調教し終わったゆっくりが何を言おうが知ったことではないですよ」 無視して、歩いていく。報酬は後で請求しておかなければいけない。 「ごごい゛や゛ぁあ゛あ゛ぁぁ! い゛ぬ゛みだいに、い゛う゛ごど、ぎぎま゛ずからぁ! づれ゛でっでぐだざいぃぃぃぃっ!!」 ……いい加減、うっとおしい。今度こそ本当に最後の言葉を伝えてやらねばなるまい。 「黙っとけ。俺は犬よりも猫の方が好きなんだ」 俺の言葉で「ゆ゛っ!」と一度鳴いた後、黙り込むゆっくり霊夢。 調教したゆっくりが実験や牧羊犬、または繁殖用に使われようが、どうでもよかった。 背中にゆっくりの恨みがましい視線を浴びながら、帰りの途につく。 いつか猫でも飼ってみるか、などと俺は益体もないことをなんとなく考えていたのであった。 どうでもいい後書き 前編と後編に分けてみたけれど、分量が違ってしまったのが残念。もう少し均等にしたかった。 調教っぷりが足りてないなぁ、と切に感じるね。 あんな風に書いるけど、犬は嫌いじゃないよ。猫も嫌いじゃないけど。 あと、ゆっくりも好き。むしろ好きでなければこんな話書けるわけがない。 好きだから、つい殺っちゃうんだ♪ ってな具合。 「首輪」なる代物を出してみたけれど、こんなの誰でも考えつきそうなので勝手に使って構いません。 爆弾型の首輪を使ったSSがあったら、むしろ見てみたい。誰か書いて。 「~こわい」でシリーズ化してみようかとも思ったけど、書き続けられる自信がないのでやらない。やれない。 眠いせいか、支離滅裂で脊髄反射的な後書きですいません。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/312.html
俺とゆっくりへ 「なになに、『ゆっくり雛にも厄を集める効果あり!? 現在数匹のゆっくり雛が鍵山雛氏の下で修行中』……しばらく見てないと思ったらそんなことしてたのか、雛さん」 早朝。 炒れたばかりの緑茶を啜りながら、俺は日頃から購読している『文々。新聞』をまったりと読んでいた。 季節は夏。太陽が昇る時間が早くなるにつれ、こちらの起床時間も早くなる。 だが仕事の開始時間は変わらない。だからこそ、こうして優雅な一時を過ごせるのだが。 この新聞を配達してくれた知り合いの天狗は、夏の暑さなどものともせずに何処かへと飛んでいった。あの余りある元気を少し分けて欲しい。 「お前も何か役に立つ能力があればいいのになぁ」 「ゆ?」 俺の足元でぴょんぴょん飛び跳ねて遊んでいるゆっくり霊夢に話しかけると、ゆっくり霊夢はよく分からない、といった風に首を傾げた(ように見えた)。 日頃、害獣として畑を荒らしまわったり、おやつとして店頭に並んだりするゆっくりという種族をペットにする人間は多いとはいわないが、決して少ないわけではない。 俺もその一人であり、このゆっくり霊夢を溺愛して毎日を共に暮らしている。 二ヶ月前、ちょっとしたことでこいつに『お仕置き』をする機会があったが、それ以来こいつは元々聞き分けの良かった性格がもっと改善され、今でも良好な関係が続いている。 ……というか、あのお仕置きで酷い目に合ったのはこいつよりも俺のような気がしてならない。 豪華な食事を振舞ったせいで一ヶ月間極貧生活を送る羽目になり、この前の誕生日に贈ってくれたプレゼントが破壊されてしまったと、頭を下げに行かなければならなかったからだ。 特に幽香さんは酷かった。このままでは俺もしくはゆっくり霊夢が殺されかねない勢いだった。なんとか足を舐める勢いで土下座して許してもらった。 あーやだやだ、あの人絶対Sだよ。あんな性癖にはなりたくないねぇ。 とかそんなことを考えているうちに、いつの間にか出勤の時間となっていた。 「じゃあ、俺は行くぞ。お昼はテーブルの上な。夕方には帰るから」 「ゆっくり頑張ってね!」 俺が立ち上がって玄関まで行くと、後を付いて来たゆっくり霊夢はそう言って激励を送ってくれる。 うわ、かわええ。 俺は思わず振り返り、ゆっくり霊夢を抱き上げると頬ずりした。 「ゆ!? くすぐったいよ!」 「おぉ、すまん」 少し嫌がる声がしたので、慌てて下ろす。 野生のゆっくりは勝手に人の家に住み着き占有権を主張するような輩が多いが、最初からペット用に飼育されてきたゆっくりは野生のものより寿命が短い代わりに知能が高い。 だがこうして激励までしてくれるゆっくりはそうそういないだろう。俺とゆっくり霊夢の信頼関係がなせる技だ。 「じゃあ行って……む」 がたがた、扉がうまく開かない。 「立て付けが悪くなってるなぁ……あとで修理しないと」 ケチがついてしまった。 俺は力を込めて扉を開き、同じように力を込めて扉を閉めると、いつものように仕事場へ向かった。 いきなり疲れちまったよ、畜生。 何か嫌な予感がするなぁ。 何事もなければいいけど。 だが俺の心配は杞憂だったようで、特に事件があったりすることもなく夕方になった。 春先ならば景色が赤く染まっている時刻だが今は夏、未だに晴天の中で黄色い太陽が燦々と輝き続けている。 慧音さんの寺子屋から帰る途中らしい子供たちとすれ違いながらあぜ道を歩いていると、前方に人だかりが出来ているのを発見した。 あそこは村一番の大きい野菜を作ることで有名なおじさんの畑だが、何かあったのだろうか? 俺は集団に駆け寄り、一番後ろで腕組みをしているおっちゃんに尋ねてみた。 「すみません、何かあったのですか?」 「おぉ、ニイちゃんか。いや、実はゆっくりどもが現れやがったんだ」 「ゆっくりが?」 背伸びして覗いてみると、畑は無残なことになっていた。 青々と育っていた野菜はほとんどが原型を失うほどに食い散らかされ、無事なものを数えたほうが早いくらいになっている。 おじさんは放心した様子で畑に尻餅を付いていた。あの人は何故かゆっくり相手に反撃をしない無抵抗主義として、別の意味で有名でもある。 そして、畑の真ん中。 七匹のゆっくりたちが、身を寄せ合って震えていた。 ゆっくり霊夢が四匹に、ゆっくり魔理沙が二匹、ゆっくりパチュリーが一匹。 他にも餡子や皮などが畑中に散乱しているところを見ると、本来はもっとたくさんの集団だったようだ。 「これは……酷いですね」 惨状に、ごくりと唾を飲み込んだ。 このようにゆっくりたちが徒党を組んで畑を荒らしにことは珍しくない。 だが、ゆっくりたちの集団と実際に遭遇したのは初めてのことだった。 大抵は事が終わったあとであり、被害の跡しか見たことがなかった俺は少し興奮してゆっくりたちの様子を観察する。 ゆっくりたちは殺された仲間たちの死体と、自分たちを囲む鍬や鋤などの武器を持った人間たちに怯えながら、ぎゃあぎゃあ喚きたてているようだった。 「ゆ、ゆっくりしてってね!」 「わたしたち悪くないよ! これはわたしたちが見つけた食べ物なんだよ!」 「ゆっくり出来ないならあっち行ってね!」 だが、その発言が皆の怒りに触れたらしい。 一人の男が前に出ると、何の躊躇もなく鍬を振り下ろした。 「ゆ゛っ゛!?」 哀れ、男に一番近かったゆっくり霊夢が餡子を飛び散らかして、その生涯を終えた。 「れ゛い゛む゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅ゛っ!!!」 ゆっくり魔理沙の悲痛な泣き声。 それがきっかけだったかのように、固まっていたゆっくりたちは各自ばらばらの方向に散開した。 「この、足元をちょろちょろするんじゃねぇ!」 年かさの男が、股の間をすり抜けようとしたゆっくり霊夢を踏み潰す。 ぶぎゅっ、と醜い音を立ててゆっくり霊夢は動かなくなった。 「お前のせいで、美味しい野菜が食べられなくなったじゃんか!」 「む゛ぎゅ゛ー!!!」 足が遅いせいで一匹逃げ送れたゆっくりパチュリーは、数人の子供たちにサッカーボールのようにぼこぼこに蹴られ、絶命した。 他にも捕まって引き千切られたもの、棒でメッタ打ちにされたもの、ゆっくりたちは様々な死に方でその生に幕を閉じる。 「だ、た゛ずけ゛て゛ぇ゛ぇ゛ぇ!!!」 と、最後の一匹。 ゆっくり魔理沙が俺の足元に絡みつき、必死の形相で助けを請う。 「……むぅ」 俺はそいつを抱き上げた。 うちのゆっくり霊夢と同じくらいの大きさだろうか。バレーボール大のゆっくり魔理沙は震えながら、何度も何度も命乞いの言葉を口にしている。 ……何故だろう。 その表情は、その……俺の心の内の何処かを、くすぐる。 「おぉ、捕まえたか!」 そうこうしてるうちに、逃げたゆっくりたちを全て殺しつくした村人たちが、俺の周りに集まってきた。 「まったく、ゆっくりたちにも困ったものだなぁ。ニイちゃんとこのみたいに大人しければ、まだ可愛げがあるってもんだが」 「あの……こいつ、俺が貰っていいですか?」 「あん?」 怪訝そうな村人たち。 俺だって、自分が無意識に言った言葉が不思議だった。 「別に構わねぇが……どうする気だい? ニイちゃんはゆっくり饅頭とか食わねぇ主義なんだろ?」 「まぁ……その辺りは後で考えますよ」 ゆっくり魔理沙が俺を見上げる。俺はそいつに視線を向けず、怪訝そうな村人たちに礼を言って足早にその場を立ち去った。 「ゆ! お兄さん、ありがとう!」 家に戻る途中、腕の中の黒大福が俺に謝辞を述べる。 先程仲間たちが大勢死んだというのに、その顔は能天気さを取り戻したようだった。 「別に……」 俺はそっけない返事をする。 ただ、こいつの泣き顔を見た瞬間……なんとなく、このまま村人に引き渡すのは惜しいと、そう考えただけだ。 まぁ、ゆっくり霊夢も俺が仕事に行ってる間暇だろうし、話相手になってもらうのもいいかもしれない。 ……畑を荒らしたことについては、きちんと注意する必要があるだろうが。 野生のゆっくりを、ちゃんと躾けられるかどうか。 「どこに向かってるの?」 「俺の家だ。お前と同じゆっくりもいるぞ」 「本当!? ゆっくりしていくね!」 ああ、なんか駄目っぽいなぁ…… 「「ゆっくりしていってね!」」 ゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙はすぐに仲良くなった。 今まで不平を洩らしたことはなかったが、やはり一人家で待つ時間は寂しかったのだろう。ゆっくり霊夢は本当に嬉しそうにぱたぱた飛び回っていた。 二人が頬を寄せ合って、押し合い圧し合いゆっくり遊んでいる様子は……やべぇ、超和む。 可愛い。マジ可愛い。このまま食べちゃいたいくらい可愛い。 勿論、食べないけどさ。 丁度良い時間なので夕飯を作る。 「うっめ!!! メッチャうっめこれ!!!」 ゆっくり魔理沙は今まで草花や虫しか食べてこなかったからか、俺の料理を大層美味しそうに平らげていた。 あまりにがっつきすぎて、カスがボロボロ零れ落ちている。 ……下品だ。うちのゆっくり霊夢に変な影響が出たら困るな。 それに俺のいない間に、勝手に繁殖されても困る。 ゆっくり霊夢はまだ成長期の途中だ。子供を生もうと思えば生めるが、黒ずんで朽ちてしまう。 そんな事態、まっぴらごめんだ。 勢いで連れ帰ってしまったが、こいつにはやっぱり野生に帰ってもらおう。 一瞬、加工所に送ろうかとも考えたが……関わってしまった以上、少しだけ忍びない。 「ゆっくり魔理沙」 「ゆ?」 ゆっくり霊夢と一緒になって部屋中をぴょんぴょん飛び回っていたゆっくり魔理沙は、俺の言葉に足を止めた。 「今ゆっくりしてる最中だよ、邪魔しないで!」 「……」 な、なんて自己中心的な奴…… 反射的に殺意が湧き上がるが、俺が何かするより早く、 「だめだよ! お兄さんの話をちゃんと聞かなくちゃ!」 ゆっくり霊夢がたしなめるようにゆっくり魔理沙を叱る。 おぉ、流石我が愛しのペット。ちゃんと常識というものを弁えているな。 ゆっくり魔理沙は不満げに、だがちゃんと俺の方に駆け寄ってきた。 「なに?」 「ここに来る前、他のゆっくりたちと畑に忍び込んだだろう。どうしてだ?」 「あそこはまりさの新しいおうちだよ!」 「違う。あそこはお前の家じゃない」 「うそはいけないよ! あそこはまりさが見つけたんだもん! だからまりさのおうちだよ!」 「……」 こ、これが野生のゆっくりというやつか……成程、確かに腹が立つな…… この村はゆっくり対策用の罠が張り巡らされている(鼠返しならぬ、ゆっくり返しみたいな)から、ゆっくりはあまり見かけないんだよな…… しかしこいつ、仲間たちが皆あんな目にあったのに全然懲りてないのな。 仕方無い。 「お前を家に帰してやる」 「ほんとう!?」 ゆっくり魔理沙の顔がぱっと輝き、そして何かに気付いたように震わせた。 「やっぱりいいよ!」 「は? じゃあどうするんだ?」 「ここをまりさのおうちにする! れいむといっしょに暮らす! お兄さんはゆっくりまりさとれいむにごはん作ってね!」 …… ………… ……………… 「お、お兄さん!?」 「はっ!?」 い、いかん、俺の怒気にゆっくり霊夢が怯えてしまった。 しかし、ここまで人を怒らせることが可能なのか、野生のゆっくりというやつは…… 放っておいたら何されるか分からないな、とっとと野に放してしまおう。 俺は手を伸ばし、ゆっくり魔理沙の身体を抱き上げた。 「ほら、外行くぞ」 「やだ! ここでゆっくりする! ゆっくりできないお兄さんは出ていってよね!!」 「ここは俺の家だ!」 心配顔のゆっくり霊夢を残し、俺は立て付けの悪い家の扉を強引に閉じると、太陽が沈んで月の浮かんだ夜空の中に出た。 さて。 もうゆっくり霊夢は見てないな。 こいつ、どうしてくれようか。 「おろしてよ、お兄さん!」 梟や蛙の鳴き声が響き渡る、夜の森の奥深く。 月明かり以外に光源のないこの場所は、慣れ親しんだものでないとすぐに道に迷ってしまうであろう。 俺はその森の中で、ぴたりと足を止めた。 「これが最後だ、ゆっくり魔理沙。あの家は誰の家だ?」 静かに、ゆっくり魔理沙に問いかける。 ゆっくり魔理沙はさも当然だ、と言わんばかりに頬を膨らませて、 「まりさのおうちだよ! はやくかえしてよね!」 と、傲慢に自らの主張を繰り返した。 ぷちん。 あ、やべ。 「そうか」 俺はそいつを足元に下ろすと、思いっきり足の裏で力任せに踏みつけた。 「ゆ゛ぐっ゛!!?」 汚い悲鳴をあげ、ゆっくり魔理沙の左側三分の一が潰され、餡子が飛び散った。 人間の顔のようなものが弾け飛ぶ光景に、少し顔を顰める。 こういった肉体的な攻撃は、あまり好きではない。 しかしこいつの場合、こうでもしなくては分かりもしないだろう。 「い゛だい゛よ゛ぉお゛お゛おおぉ゛ぉ゛ぉぉ、な゛ん゛でこ゛んなこ゛と゛す゛るの゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ゛ぉ゛!!?」 残った片目からボロボロ涙を零し、金切り声を上げるゆっくり魔理沙。 その悲鳴。 背中がゾクゾクする。 なんだか、楽しい。 「物分りの悪い子には、おしおきが必要だろう?」 俺はゆっくり魔理沙の身体をもう一度持ち上げた。餡子が無くなると死んでしまうらしいので、傷口は上にする。 ゆっくり魔理沙は嫌がるように身体を震わせるが、その度に激痛が走るのだろう。「ゆ゛っ゛!」「ゆ゛っ゛!」と小さく洩らしながら痙攣している。 「もう一度だけ聞いてやろう。あの家は誰の家だ?」 「も゛うや゛めでぇ゛ぇ゛ぇぇぇ゛!!! ま゛り゛ざのお゛う゛ち゛にがえ゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇ!!!」 「おお、そうかそうか。まだ言うなら仕方ないな」 俺はゆっくり魔理沙の身体を振りかぶると、近くの湖にぽーんと投げ入れた。 ばしゃん、と小気味のいい音を立ててゆっくり魔理沙の身体が湖に沈む。 「ゆ゛ぶっゆ゛ぶぶぶふ゛ふ゛っ!!?」 お、浮かんできたぞ。結構やるな、あいつ。 だが傷口から餡子がどんどん漏れ出し、ぼとぼと海中へと落下している。 「お゛、お゛兄ざん゛、だずげでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 「えー、なんでー?」 自分でも白々しいほど爽やかな口調で問い返す俺。気付けば唇の端が凄い勢いでひん曲がっている。 こういう涙流して凄い必死な表情のゆっくりを見るのは、なんというか、こう……凄い快感だ。 基本的にゆっくりは水に弱い。身体を洗うために水に浸かる習性は知っているが、長時間水に浸かり過ぎると皮が伸びて戻らなくなってしまうのだ。 あ、そうだ、言い忘れてた。 「その湖、魚が住んでるんだ。お前みたいなのは大好物だろうな」 「ゆゆゆっ!!?」 ゆっくり魔理沙が溺れながら目を見開く。 しかし無情にも、何匹かの魚たちが久しぶりのご馳走が縄張りに入り込んできたことに気付き、ゆっくり魔理沙の周囲に集まりだしてきた。 狙いは傷口から漏れ出る餡子。食いついては離れ、食いついては離れるという野生ならではのヒットアンドアウェイ。 だがゆっくり魔理沙からすると、じわじわ嬲り殺しにされているような恐怖だろう。 逃げ出そうにも、ゆっくりはあの体系では泳ぐことが出来ない。精々沈まないように浮かぶのが関の山だ。 残された手段は、俺に庇護を求めることだけ。 「お゛兄ざん゛、ま゛り゛ざをだずげでぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 「ははは、お魚さんと遊べて楽しそうだなぁ」 「だの゛じぐな゛い゛よぉ!!! ゆ゛っぐり゛だずげでぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 「わかった、ゆっくり助けるぞ!」 そう言って、のそのそ歩く俺。 当然だが、湖に浮かぶゆっくり魔理沙に辿り着くことには既に跡形も無く食い散らかされてしまうほどの牛歩だ。 「も゛っど、も゛っどい゛ぞい゛でぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇ!!!」 既に意識が朦朧としているのだろう、目の焦点がぼやけ始めたゆっくり魔理沙が顔をぐちゃぐちゃにしながら泣き叫ぶ。 ……そろそろいいかな? 俺は草履を脱いで湖に入ると、ゆっくり魔理沙を湖から引き上げた。 息も絶え絶えなゆっくり魔理沙は、助かった安堵からかしゃくりあげて泣き始める。 「な゛、な゛ん゛でごん゛な゛ごどずる゛の゛ぉぉぉ!?」 「なんで? 分からないのか?」 俺は自分でも吃驚なくらい、優しい声色で尋ねた。 「あの家は、誰の家だ?」 「ま゛、ま゛り゛ざの゛」 言葉の途中で、俺はゆっくり魔理沙をもう一度湖に落とした。 途端、離れて恨めしげに俺を見上げていた魚たちが再び集ってくる。 「ご、ごめ゛ん゛な゛ざい゛ぃぃぃ!!! お゛兄ざん゛の゛お゛う゛ぢでずぅ゛ぅ゛ぅぅぅ!!!」 もう一度引き上げる。 ゆっくり魔理沙の命は、ほとんど失われかけていた。 「おかしいなぁ、あそこはゆっくり魔理沙の家って何度も言ってたじゃないか?」 「う゛、う゛ぞでず、う゛ぞづいでま゛じだ!!! ま゛り゛ざがわるがっだでずぅ!!!」 生き残るために必死なのだろう、ゆっくり魔理沙は俺を怒らせないよう必死だ。 ……どこまで本気でしゃべってるのかねぇ? 「そういえば、俺に『ここはまりさの家だから出て行け』みたいなこと言ってたよなぁ」 「ごめ゛ん゛な゛ざいぃ! いい゛まぜん、も゛う゛いいまぜんがら゛っ゛!!!」 「そして湖から引き上げてもらったお礼もなし、と」 「あ゛り゛がどうござい゛ま゛ずっ! あり゛がどう゛ございま゛ずぅぅぅ!!!」 あのふてぶてしかったゆっくり魔理沙が、俺に必死に感謝の言葉を叫んでいる。 湖に落としたのは俺だというのに、俺に対してお礼を言っている! くはぁ、たまらねぇ…… 満足した俺は湖から出て、ゆっくり魔理沙を下ろしてやった。 近くに生えている葉っぱをもぎ取り、傷口に添えてやる。 これで、これ以上餡子が流れ出る心配はなくなっただろう。 『死』は、与えてはならない。 殺してしまっては、それまでだからだ。 後に残るのは、壊してはいけない玩具を壊してしまったかのような喪失感と、先程まで動いていた命を奪ってしまったという生理的な罪悪感だけだ。 だが、生きているのなら。 何度だって悲鳴は聞けるし、絶望を与えてやることも出来る。 そして、その度に俺は満たされることが可能なのだ。 死んだらそれまで、生きているなら生き続けている限り永遠に。 だから俺は、『遊び相手』と決めたゆっくりは殺さない。 ゆっくり魔理沙は衰弱しながら、何度も何度も俺にお礼を言っていた。 「いいか、お前の仲間たちが全員殺されたあの畑も、人間のものなんだ。人間のものに手を出すと、こういう目に合うんだ。覚えておけ」 「わ゛がり゛ま゛じだ……」 「じゃあ、尋ねよう。お前はなんでこんな目に合ったと思う?」 「ま゛りざがまりざのじゃないたべものをかっでにだべだがらでず……お兄ざんのおうちをまりざのおうちっていっだがらでず……」 「よぅし、よく出来たな」 ゆっくり魔理沙の頭を撫でてやる。 これでもう、こいつは人里に現れようとも思うまい。 俺は立ち上がると、ゆっくり魔理沙に背を向けた。 「じゃあ、俺は帰るからな……ああ、そうそう」 今気付いたかのように振り向いて、 「そういえば、この辺りは野良犬やゆっくりれみりゃたちがたくさん住んでるんだってな」 「ゆっ!!?」 信じられない、といったゆっくり魔理沙の表情。 そそる。 「あと、ゆっくりアリスもこの時期発情期なんだってな。まぁ関係ないけどな」 ちなみに全部口から出任せだったりするわけだが。 無論そんなことが分かるはずもなく、ゆっくり魔理沙はぶるぶる震えて怯え始めた。 ここは自分が元々住んでいたわけじゃない森の中。 そんな土地勘のない場所で、天敵たちが自分を付けねらっている。 その恐怖を妄想したのだろう。 庇護を求めるかのごとく、もう力の出ない身体をずりずり引き摺って俺に近付こうとする。 「ま、まって……」 「じゃあな、達者で暮らせよ!」 俺は気付かなかったフリをして、そのまま歩き出した。 「ゆ……」 背後から声。 「ゆっくりしていってよーーー!!!」 振り返る直前に見たゆっくり魔理沙の表情。 それは先程まで味わっていた怒りを全て吹き飛ばしてしまうほど、素晴らしいものだった。 だが、それからしばらく経ったある日。 ゆっくり魔理沙への対処が甘かったことを、俺は後悔することになる―― 続く。 中編?へ
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1411.html
ゆっくり輪廻転生していってね! 「ううん、いい陽気だねえ」 そう言いながらお日様に向かって伸びをする少女が一人。けしからん物体が揺れる。 彼女の名は小町。三途の川の渡しを生業としている。 平和な幻想郷では人死にもないのか、えらくのんびり出来る…嘘、のんびりしているのは彼女がサボっているからだ。 他の渡しは忙しそうに働いている。 普段はこんなにも忙しくはない。だが、最近「ゆっくり」と呼ばれる謎の生き物が現れてから、三途の川は大混雑だ。 普通なら閻魔の裁きを受けることはないはずなのだが、このゆっくりというドマンジュウ、畜生の分際で魂があるらしく、三途の川を渡れるのだ。 もちろん渡し賃も持っていない。だが、こういった手合いを追い返すはずの奪衣婆は、今、ぎっくり腰で寝込んでいる。一匹一匹対処するには、数が多すぎたようだ。 「皆が働いている時に休むのは格別…ん?」 彼女の上司あたりが聞いたら激怒しそうな台詞を吐きながらゴロン、と横になる。またしてもけしからん物体が揺れる。 そんな小町の目に、あるものが飛び込んできた。 ゆっくりの家族だ。9匹ほどいる。 もちろん既に死んでいるので、足?というか顔の下のところががない。ふよふよ浮いている。 「家族連れで三途の川、かい」 よっこいしょ、と身を起こし、そちらを眺めやる。けしからんも(ry 暇つぶしに読んだ文々。新聞に書いてあったことを思い出す。 ドマンジュウの顔が嗜虐心を煽るとかで、面白半分に殺すものが増えている。子供の教育によくないのではないか、とハクタクが語っていたような気がする。 「あんな見た目とはいえ命は命、弄ぶのは感心しないな」とブンヤに語った覚えがある。 本音は「仕事増やすな」だったのだが。どうせ仕事なんて滅多にしないのに。 そこら辺に転がっていたカマに掴まって立ち上がると、もっぺん伸びをする。 「そろそろ仕事に取り掛からないと、またぞろ四季様に怒られる、と」 そういうと目の前のゆっくり、多分母親と思われるもの、の尻尾を掴んだ。 「ゆ゛?!」 急な出来事に目を白黒させるゆっくり。 後ろに続いていた子ゆっくりたちも、突然現れた人影に驚きあわてている。 「おねえさんだれ?」「おかあさんをはなして!」「ゆっくりできるひと?」と騒がしい。 「ゆっくり出来る人だよ」と子ゆっくり達に微笑みかけておいて、お母さんゆっくりに話しかける。 博麗の巫女に似ているから「ゆっくり霊夢」と呼ばれている種類のようだ。 「おねえさん、ゆっくりできるひと?」 とお母さん霊夢が尻尾を掴まれたまま聞いてくる。 「そうだよ、あたいは小野塚小町、三途の川の渡しさ」 一応答えてやる。が、もちろん理解できるとは期待していない。これも規則で決まっているのだ。 「さんずの…かわ?なにそれ?ゆっくりできるとこ?」 ほら、理解できてない。後ろのちっこいのも同じようなことをステレオで喚いてくる。 「そうさね、分かりやすく言えば、あんたたちは死んだのさ」 直球ストレートに投げ込んでみる。 「しぬ?それってどういうこと?」 だめか。この頭にプリンのかわりに餡子が入っているようなのに理解できるように… 「もうゆっくりできないってこと」 これならわかるだろう、と噛み砕いて言ってやる。 こうかはばつぐんだ! 「い゛や゛だあああああ!ゆ゛っく゛り゛でぎな゛い゛な゛ん゛でい゛や゛だあああああ!」 お母さんゆっくりが泣き出したことで、子ゆっくりにも伝染する。 「「「「「「「「ゆ゛っぐり゛じだい゛い゛い゛い゛い゛い゛い!!!!!」」」」」」」 とりあえず耳を塞いでみた。あまりこうかはないようだ。 「あー、大丈夫、これからもしかしたらゆっくりできるかも…」 聞いちゃいない。汚らしく鼻水や涙を撒き散らしながら転げまわる。 普通の魂にはこんな器用な芸当はできないはずなのだが。 生命の神秘に思いを馳せようとした小町だが、とりあえずうるさかったので、黙らせることにした。 「えい」 鎌の柄で殴った。ひたすら殴った。 渡し仲間が言っていた。「うるさいから殴って気絶させて運べ」と。 生きているゆっくりならとっくに餡子を撒き散らしているはずの打撃をうけても、まだ泣き叫んでいる。 「しぶといな…」 腕がそろそろ上がらなくなるかな、というところで最後の子ゆっくり霊夢が黙った。 魂のくせに気絶するなんて器用な奴、とぼんやり考えながら、渡し舟に放り込む。 普段なら魂たちの話を聞きながらのんびり(あえてゆっくりとは言わずにおいた)三途の川を渡るが、今回は別。 距離を操って、さっさと対岸につけた。また騒ぎ出されても面倒だ。 「はーい、ごとうちゃーく」 『四季映姫法廷』と名札のついた法廷に放り込んで、さっさと退散しようとする。 だがその試みは失敗に終わった。法廷の床がやたらと滑ったからだ。 「きゃん!」 油断していた小町は滑って転んで思いっきり腰を打った。腰をさすりさすり立ち上がり、もう一度逃げ出そうと試みる。 「小町、お待ちなさい」 ダメだったようだ。恐る恐る振り返ると、もう裁判長席には彼女の上司が腰を下ろしていた。 四季映姫・ヤマザナドゥ。楽園の閻魔。 「後で話があります。そこの傍聴席に座ってなさい」 ちびっ子閻魔は、やつれた表情で言った。 それもそのはず、普段は二交代制のはずが、ゆっくりが現れてからはろくに休みも取れていないのだ。 おいたわしや…、と思いながら「あ、あたいは仕事が…」と逃げ出そうとする。 「小町、嘘はいけません。舌を抜かれたいのであれば止めませんが?」 目が笑ってない笑顔でそうおっしゃった。 小町はとぼとぼと傍聴席に座る。四季映姫の本気を感じ取ったからだ。もうひとつ、ゆっくりに対する裁判がどういうものか気になったのもあったが。 小町は傍聴席につくと同時に部屋を包み込む甘いにおいと、その発生源に気がつく。滑った原因もそれで分かった。 「餡子…」 さっきおもいっきりぶん殴ったときはでなかったのに、餡子を出す特殊な方法でもあるのかな、と考え始めた時、四季映姫の声が響いた。 「被告人、母ゆっくり霊夢!」 カーン!と木槌を打ち付ける。その音でゆっくり達が目が覚めたようだ。そのとたんに騒ぎ出す。 「ここどこー?」「ゆっくりしたーい」「おなかすいたー」「おうちかえるー」 だが、映姫は慣れたもの。手にした木槌でぶん殴った。黙るまで、ひたすらぶん殴った。 その顔にどことなーく笑みが浮かんでいるのを小町は見たが、「四季さまも疲れていらっしゃるんだ」と思い、心の奥底に封印しといた。 敬愛する上司のそんな顔なんぞ覚えていても得がない。 「ゆっくり霊夢、あなたは幻想郷の人里、彦太郎の家屋に侵入、家の中にあった食料を子ゆっくり達と食べつくし、さらには丹精込めて育てられた畑を荒らしました。違いますか?」 「ちがうよ!あそこはれいむたちのおうちだもん!ゆっくりおやさいたべただけだもん!」 なんでさっきのあたいの説明がわからなかった脳みそ餡子が今のを理解できたんだろう?と小町は頭を捻った。 そして答えが出るわけがないのに気がついて、傍聴に集中することにする。とりあえず映姫さますごい、ということにしておいた。 「いいえ、あそこは先祖代々彦太郎の家です」 「ちがうもん!だれもいなかったもん!さいしょにゆっくりできるとこみつけたのはれいむだもん!」 議論は平行線を辿った。他にも様々な罪状(大体盗み食いとか)が上げられた。 だが、ゆっくりれいむの答えはすべて「ゆっくりできることみつけたのはれいむだもん!」だった。 子ゆっくり達にも一匹一匹同じ罪状認否を繰り返したが答えは決まって「おかあさんたちとゆっくりした!」だった。 (こりゃ映姫さまもやつれるわ…)と小町は心底同情した。 ゆっくりには罪の意識のカケラもないのだ。そんなのを悔い改めさせようとしても無理がある。 そんな無為な裁判が始まって、2時間が過ぎた。四季映姫が木槌を打ち鳴らす。 「以上の罪状に母ゆっくり霊夢以下ゆっくり家族9名は畜生道行きを命じ渡す!幻想郷に輪廻なさい!」 そう言って母ゆっくり霊夢を悔悟の棒で叩く。力の限り。 すると中の餡子が噴出し、母ゆっくり霊夢は子ゆっくり霊夢と同じ大きさになる。 「ただし、母の愛情深きを考慮し、一堂、同じ家族に生まれることをさし許す!」 そして側にぶら下がっていた紐をひくと、床に大穴が開く。 「「「「「「「「「ゆ゛うううううううう?!」」」」」」」」」 まったく同じ悲鳴を残して消えていく。後に残ったのは、餡子だけ。 小町は、ぐったりしている四季映姫に駆け寄った。 「四季さま、なぜ畜生道に?奈落に落としてしまえばよいものを」 そんな小町の問いかけに四季映姫はため息を一つ吐いた後答えた。 「私もたまに落としてしまいたいと思うこともありますが、それはしてはならないことです。小町、畜生とは?」 「は、『苦しみ多くして楽少なく、性質無智にして、ただ食・淫・眠の情のみが強情で、父母兄弟の区別なく互いに残害する人間以外の生類』……ゆっくりそのままですね。」 四季映姫はもう一つ深々とため息をついた。 「でしょう。ですから、畜生道に落とす以外はないのです。しかもゆっくりの魂は特殊らしく、ほかの動物に転生させることもままなりません…」 小町は、普段渡している魂とゆっくりの魂を想像の中で比べてみた。比べるまでもなく異常だ。長いこと渡しをしているが、あんな変なの見たことない。 「ゆっくりはゆっくりにするしかない、はあ、だからこんなに忙しいのですね…」 そう小町が言った瞬間。四季映姫の肩がぴくりと反応した。 (あ、地雷ふんだ…) そう直感した小町は「それでは四季さま、あたい、仕事に戻らせt」などと白々しい嘘を吐きながら逃げようとした。 むろん逃げられるものではなかった。がっちり肩をつかまれて、正座させられる。 説教は二時間にも及んだ。 説教をおえて、なんだかつやつやした顔の四季映姫の元から解放された小町は、三途の川の此岸側に来ていた。 げっそりした顔で「仕事しよ…」と呟く。 そんな小町の目にまたゆっくりの姿が見える。生まれたばかりで死んだばかりの赤ちゃんゆっくり霊夢9匹。 数の符号に嫌な予感を感じながらも、声を掛ける。 「あー、あんたたち、兄弟かい?」 「「「「「「「「「うん!おねえさん、ゆっくりできるひと?」」」」」」」」」 その息の合い方に間違いなく兄弟だと感じながらも、とりあえず小町は鎌の柄でぶん殴った。うるさかったからというのもあった。 そして、こいつらのせいで二時間説教される羽目になった、という恨みもこめた。 今日も三途の川の渡しは忙しい。ゆっくりが現れた結果がこれだよ! え、虐待というより虐待の裏側をぬるく書いてみました。期待はずれだった方、ごめんなさい。 『』内はwikiより引用。