約 632,109 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1382.html
ゆっくりゃの台詞を考えてると頭がフットーしそうだよぉ! あるゆっくりれみりあの飼育風景 「う~、たべちゅうぞ~☆」 「えい♪」 ドゴッ!という効果音とともに俺のつま先がゆっくりゃの金的に突き刺さる。 「ぶあ”ぁぁぁぁ!!な”にずるのぉ!!」 男なら見ただけ気絶、女でも顔をしかめそうな威力で蹴り上げたため、ゆっくりゃ はその胸糞悪い笑顔をさらに胸糞悪い泣き顔に変える。 さてこのれみりゃ、こんなむかつく顔で希少種である。それをなぜ俺が持っている かというと、紅魔館から譲り受けてきたのだ。といっても、紅魔館の主から直接譲っ てもらったのではない。どうやら紅魔館の門番は、メイド長から隠れて、そのメイド 長が溺愛するゆっくりゃ達をネチョネチョにしたりグチョグチョにしたりしている らしい。俺はその門番さんにいくらかの食料もって1体譲ってくれないか?と交渉した ところ快く承諾してくれたのだ。 「う”ぅ”、ざぐや”-!ごいづをや”っづけで!!!ざぐや”-!!」 どれだけ甘やかされてきたのかわからないが、涙を流しながら必死で紅魔館のメイド 長らしき人物の名前を叫ぶゆっくりゃ。しかし、そんなことは無駄である。今、俺とゆっ くりゃがいるこの部屋は、俺が!ゆっくりで!ゆっくりするために作られた!窓なし完全防音 の部屋なのだ!! 「はーっはっはっは!そんな大声を上げても無駄なのだ!!それ♪」 今度は回し蹴りをゆっくりゃのどたまにぶち込んでやる。ぶぎゃっ!とかいって吹き飛ぶ姿 はいつ見ても笑える。 「まぁまぁ、そう怖がらずに、引っ越し祝いにこれをくれてやる。」 そういって俺は無様にも床に突っ伏しているゆっくりゃの目の前にぷっでぃん(笑)を置いてやる。 「う”~!れみりゃのだいずぎなぶっでぃんだど~☆」 ぷっでぃんを見つけた瞬間、先ほどまで痛みを忘れたかのように笑顔になるゆっくりゃ。うん、ゆっ くりゃはこれぐらい単純じゃないとな。 「ほら、早くお食べ。」 「う~、いただきますだどー☆・・・・・・・うー?う~?」 まさかゆっくりゃがいただきますをいえると思わなかった。意外に教育してるんだなあのメイド長。 しかし、ゆっくりゃはプリンのカップを眺めたり、ふたに向かってスプーンを突き刺しているだけだ。 まさかとは思うがこいつ・・・、 「う”~!どおじでぶっでぃんがだべられないのぉ~!?れみりゃのぶっでぃんー!」 そのまさかだった。こいつ、市販のカッププリンの食い方をしらねぇ。まぁ、紅魔館ほどの屋敷に なったら料理どころかデザートも自前だろうな。特にこいつはメイド長の寵愛を受けているから当然だろう。 「まぁ、そうあせらずゆっくり食べればいいと思うよ?それに、そのぷっでぃんはもう君のものだから 僕は手伝ってあげられないよ。」 もっともらしいようでらしくない理屈を述べながら俺は部屋を出る。ゆっくりゃの方は俺の言葉が聞こえたのか 聞こえてないのか、必死にプリンのカップと格闘している。別に俺が開けておいても良かったのだが、俺はあれを 開けたくない理由がある。あのプリンはすでに賞味期限は1ヶ月以上たっているのだ。中身のプリンは買った当初よ りも、微妙に体積が減り、代わりに上澄みがたまり、ビニール製の蓋はかすかに膨らんでいる。俺にはわかる!あの 中は確実に混沌が存在していると! それからそれから。 「おっはよー!ぼくのれみりあちゅわぁーん・・・って、あまっ!くさっ!」 軽快に部屋の戸開けて入る俺だが、立ち込める異臭に戸惑う。 まずはじめに感じるのは甘そうな香り。その直後、それを猛スピードで追い抜いてくるこの腐敗臭。まさに硫化水素! 「ほう、ということはプリンの開封に成功したわけですね?それはっ!おめでたいっ!」 見ると、あほ面でぐぴーぐぴーと寝息を立てているゆっくりゃのそばには、空になったプリンのカップと散乱したプリン の残骸がある。ゆっくりゃの成長に感動しながら俺は祝福の言葉と共に鮮やかなキックをゆっくりゃのどてっ腹に決め込ん でやる。 「うぎゃぉ!?」 きれいな放物線を描いて、壁に激突するゆっくりゃ。あっ、中身がちょっと漏れやがった。油汚れは落とすの大変なんだぞぉ、 ぷんぷん! 「いだい!いだいよ”ぉー!ざぐやー!あいづやっづげでぐぼへぇ!!」 また来るはずもない人物に助けを求めるゆっくりゃの鳩尾に、俺は華麗なトゥキックをお見舞いする。 「ほーら、朝ごはんだぞ!たっぷりお食べ!」 ゆっくりゃが黙ったところで俺は今日の朝ごはんをゆっくりゃの目の前に置く。今日のメニューはお野菜の山だ。今日どころ か明日も明後日も明々後日もだがな。 「うー・・・おやざい・・・いだだぎまずぅ・・・。」 痛みから回復したゆっくりゃがそのまま野菜に口をつけたので、俺は驚いた。普通のゆっくりゃなら野菜という時点で食べる ことを拒否するのに・・・。随分しっかしとしたお子でございますこと。 「う”っ!?ごのおやざいにがずぎるの!ぽいっずるの!」 野菜を口に運んだ瞬間、ゆっくりゃは不細工な顔をさらに歪めて、野菜を吐き出す。まぁ、ゆっくりじゃなくても吐き出すだ ろうな。俺がゆっくりゃにあげた野菜は科学農薬がたっぷりと振り掛けられている。しかも出来が小さいため農薬の濃縮率も高 めらしい。こんな野菜、人間どころか家畜だってくわねぇ、というのは八百屋の主人の言葉だ。だからといって食べ物を粗末に するのは良くない。ここは幻想郷だ、リアルに稲田姫に叱られるからな。俺ってなんてエコロジスト(笑) 「だめだめ!しっかし食べないと元気がでないぞ!」 俺は、好き嫌いをする子供を叱る母親のように腰に両手を当てて、叱り付ける。 「やーなのぉ!ごんだのいらないの”!ざぐやのはもっどおいぢかっだのぉ!!」 メイド長はゆっくりゃの嫌いな野菜さえもゆっくりゃが納得して食べられるほどおいしく調理していたようだ。もう、メイドな んてやめて保母さんになっちゃえよ。 「そんなこといってもなぁ・・・。仕方ない、ぼくがたべさせてあげるよー。」 食べさせるという言葉に野菜を無理やり口に入れられると思ったゆっくりゃは、固く口を閉ざそうとする。しかし、そんなの徒労 だと、ゆっくりゃは胸から腹にかけて走る激痛に気づく。 「ほぅら、たんとお食べ♪」 俺は取り出したナイフでゆっくりゃの腹を二つに割ってやると、その中に野菜を詰め込み始めてあげた。 「う”あ”ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!い”だい”ぃぃぃぃぃぃぃ!!!だずげでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 男の、予想の斜め上をいく行動と激痛から今までで一番の悲鳴を上げるゆっくりゃ。 「うんしょったら、よっこらしょ。こんな感じでいいか。」 野菜を半分ほどゆっくりゃの体内に埋めこんだあと、傷口を小麦粉ペーストで塞いでいく男。ゆっくりゃ種本来の再生力で、あっと いうまに傷口は跡形もなく消える。 「うぎぎぎ、ぢね!ゆっぐりぢねぇ!」 痛みから回復したゆっくりゃ、今度は助けを請うことはせず、怨嗟の目でこちらを睨んでくる。 「なんでそんなに怒ってるのかなぁ?もしかして、まだ食べたりないの?」 そういって男は再びナイフを握る。それを見た瞬間ゆっくりゃの体がビクッ、と、跳ね上がる。 「じゃあ、もう一回僕が手伝ってあげるお☆」 そういって男がナイフを振り上げると、 「う”あぁぁぁぁぁぁ!たべまず!おやざい、たべまずぅ~!!!」 ゆっくりゃは慌てて野菜かごまで這いずると、一心不乱に野菜を掻き込み始めた。 「うんうん、よきかなよきかな。」 その様子を見て男は、納得したように頷きながらゆっくりゃの食事風景を眺める。 朝食後、男は涙目になっているゆっくりゃをなだめるように一緒に遊んでやる。 高い高いをした状態で走り回ったりするうちに、ゆっくりゃの顔に笑顔が戻ってきた。それを確認した男は、すかさずゆっくりゃ にパイルドライバーを決める。その痛みで泣き叫ぶゆっくりゃを再び高い高いする。そして、笑顔が戻るとまたパイルドライバー。 そんなことを昼食をはさんで繰り返すうち、時刻はあっという間に晩飯時になった。 「う~☆う~☆おなかずいたどぉ~☆」 まるで某飛行機乗りの豚が活躍する映画の決闘シーン終盤のようなボコボコ顔で、空腹を訴えるゆっくりゃ。 「よ~し、晩御飯はお肉だぞう!」 「う~☆う~☆れみりゃ、おにぐだいずき~!」 肉と聞いて両手をあげて小躍りし始めるゆっくりゃ。 「ほい♪」 ぶちぃ! 男の軽い掛け声とともに何かが千切れる音。 「う?・・・・・・・・・ぅぅ、う”ぁぁぁぁぁ!れみりゃのぶりぢぃなおででがぁ~!」 何の音かと疑問の顔していたゆっくりゃの顔が、プルプルと震え、徐々に歪んでいきついには大きな泣き声をあげた。 今晩のゆっくりゃのご飯、それは自分の腕。 「ほら、これが今日の晩御飯。」 ドチャッという音と共に、床に投げ出されるゆっくりゃの腕。 「どうぢでごんなごとずるのぉぉぉ!れみりあはごまがんのあるじだどおぉぉぉぉ!!」 「んなこと知らん!言っておくが、それ、食い残してる間は次の飯はないからな。おやつもないし。遊んでもやらん。 とういわけで、俺は今から晩飯を食いにいってくるぜ!」 ゆっくりゃの質問を一蹴し、残酷な掟を伝えて男は部屋を去る。男が部屋をでるまでゆっくりゃは泣き叫び続けたが、男が部屋の 戸を閉めるとその声は完全に聞こえなくなった。 翌朝。 「おっはよー、れみりあちゃーん!」 前日同様、かなりのハイテンションでゆっくり部屋に入ってくる男。 「!!!???」 その声を聞いた瞬間、ゆっくりゃは慌てて体の後ろに何かを隠すようにして立ち上がり、男に向かってにぱ~☆とほほえむ。 その動作を男は見逃さない。そして、小さくニヤッと笑う。 「どうかな、れみりあ?昨日のご飯は全部食べられたかな?」 「う~☆う~☆とうぜんだどぅ~!こうまかんのあるじとしてでなーをぜんぶたべりゅのはどうぜんだどぉー☆」 したり顔でそんなこと言っているが、残された片腕が背中になにか隠していることはものがったている。 「ふむふむ、そうかそうか。せい♪」 男はニコニコしながら、ゆっくりゃに足払いをかける。 ゆっくりゃは見事に前方へ倒れ、ゆぎゃっ!というをあげた。そして、倒れて丸見えになった背中にはしっかりと昨夜の晩御飯 が残っていた。 「あーあ、何が全部食べただよ、全然たべてねーじゃねーか。というわけで、朝食とおやつのぷっでぃんは抜き!」 「う”あぁぁぁ!やだぁ!ぷっでぃんちょうらいー!!」 「うるさい!嘘つきなんかにやるぷっでぃんはねぇ!」 鉄の掟を守ることもせず、浅ましくもプリンを求めて男の足にすがりつくゆっくりゃを蹴り飛ばし、男は朝食とおやつを持ったま ま退出する。 昼時 「さて、どうかな?」 昼食時、一応ゆっくりゃの昼食をもって様子見に来る男。 「れ”みりあ”、ごごまでがんばってたべたの”!だがら、ぷっでぃんぢょうらいー!」 男が部屋に入ってくる、ゆっくりゃが涙声で駆け寄り、肘から手までとなった自分の片腕を見せる。その目は、真っ赤に泣き腫らし、 口元は涎や鼻水でぐちゃぐちゃだ。おそらく、ここまでがんばったのだからもういいだろう、と思っているのかプリンを要求してくる。 あぁ、浅ましい、なんて浅ましい奴なんだ。 「ダメだね。」 ゆっくりゃの提案は即却下。 「どうぢで!どうぢで、れみりあにいぢわるずるnぶぐぅ!?」 ゆっくりゃの抗議の声は、男が頬を思いっきり手で挟んだことでとまる。ゆっくりゃの口はまるでアヒルのようだ。 「どうしてだって?それはルールを守らない君が悪いんだよ?わかる?」 男はやさしく、笑顔でそうゆっくりゃに諭すが、その顔は笑顔の反面、ほのかに怒気をふくんでいる。その気迫に、ゆっくりゃは涙目 でコクコクと頷くだけだった。 「わかればよろしい。」 ゆっくりゃが納得したのを確認して、男は再び退出する。 夜 「やぁやぁ、れみりあくんめがっさ元気にしてるかな?」 晩飯時になって三度ゆっくり部屋を訪れた男。 「はい”ぃ!れみりあはじっがりごはんをだべまじだぁ!」 男の質問とは微妙に食い違った答えを返すゆっくりゃだが、確かにその手にはご飯は握られていない。 「ほんとかなぁ?確かめてみよう。」 そういって男はゆっくりゃのボディチェックをはじめる。帽子の中に隠してはいないか?服の中に隠していないか?などを手探りで確認 していく。もちろん、ドロワーズの中も例外ではない。ドロワーズの中を探っているとき、ゆっくりゃが赤い顔をして気の抜けた声を上げ たのは余談だ。 「ふむ。本当に完食したみたいだな。おめでとう、これはおやつのぷっでぃんだ!」 ゆっくりゃのボディチェックを終え、部屋の周囲にも隠した痕跡が見つからないのを確認した男は、ゆっくりゃに祝福の言葉をかけ、頭 をなでながらプリンを差し出す。 「うー!!ぷっでぃーん!!!」 苦痛から解放されたこと、褒められたこと、ぷっでぃんが貰えたことで、ゆっくりゃのぐしゃぐしゃだった顔はぱぁっと笑顔になる。 「うーうーうまっうまっ☆」 うれしそうにプリンを口に運び、あっというまに平らげてしまった。 「うー☆もっとぷっでぃんほじぃどー!」 どうやらまだ食べたりないようだ。 「もう、おやつって時間じゃないから晩御飯にするぞ。」 「うー☆わがっだー、れみりあごあんたべるどー☆」 プリンで回復したゆっくりゃは素直に男に従う。 「てゐ♪」 ぶちぃ! 再び聞こえる悪夢の音。 「う”あぁぁぁ!れみりあのおででぇぇぇぇ!!!」 昨夜とほぼ同じリアクションのゆっくりゃ。男は。残っていたもう片方の腕を引きちぎったのだ。 「はい、これが今日の晩御飯。いっとくけど、残したらダメだぞ♪」 ポイッ、とゆっくりゃの腕を投げ捨てると男は部屋を出て行った。 残されたゆっくりゃは、激痛と再開された悪夢にただ泣くことしかできなかった。そして、両腕を奪われたことで他のゆっくり種のように 口だけで食事しなければいけないことに惨めさを感じていた。 男はこのような行為を数週間続けて行った。両腕が再生しきらないときは足をもぎ、食い残しがあれば全て食べ終わるまで食事も遊びも抜い てやった。そんなこんなをしているうち、ゆっくりゃはついに、その日のうちに食べ終えることができるようになった。そのお祝いに、バケツ 一杯の特製プリンを与え、男は手足をもぎ取ることから切り取ることに変更してやった。 さらに数日たっての夜。 男は計画を最終段階に進めることにした。 ここ数日、男はゆっくりゃの晩御飯を普通の食事を与えている。ゆっくりゃの体が完全に再生するのを待っていたのだ。 「れみりあ~晩御飯にするぞー。」 「う!?・・・うー☆わかったどぉー!」 一瞬、体を強張らせるゆっくりゃだが、ここ最近の男の優しい態度とおいしい食事を思い出し、すぐに男へ駆け寄る。 「う?れみりあのごはんはどこだぉ?」 男に駆け寄ったゆっくりゃだが、男の手は何も持っておらずあたりをきょろきょろと見渡す。 そんなゆっくりゃをニコニコ見つめながら男は、ゆっくりゃの片腕をつかむ。 「う?う?」 ますます不思議がるゆっくりゃ。そして、 かぽっ 「???」 ゆっくりゃの二の腕がゆっくりゃの口にはめ込まれる。突然のことに目を白黒させるゆっくりゃに男が一言だけつげる。 「食え。」 「ぅぅ・・・!?」 のどの奥でくぐもった声を上げるゆっくりゃ。ずっと疑問を浮かべた顔のままでなにもしないゆっくりゃに男は、 「ほら、なにをしている。こうやって食うんだよ。」 ガッとゆっくりゃの下あごを膝で蹴り上げる。その衝撃でゆっくりゃは自らの腕を、自らの口で噛み千切ってしまった。 「!!!???うg・・・」 「おっと、吐くなよ。吐いたら明日の食事は一切抜きだ。」 痛みと嫌悪感から咄嗟に吐き出そうとしたゆっくりゃに、釘を刺す男。その言葉で咄嗟に口をつむぐゆっくりゃ。 「う”-!う”-!」 口を閉ざしながらも、涙目で必死に首を横に振り、なにかを訴えるゆっくりゃ。 「ほら、どうした?なにをそんなに嫌がる?その肉はいつもお前が食べてたじゃないか?」 いやいやをするゆっくりゃを抱きしめ、耳元でささやく男。その言葉はまるで呪詛のようにゆっくりゃを侵蝕していく。 これがきょうのれみりあのごはんなの? いたいいたいいたいいたいたいたいたいたい なんでいつものおいしいごはんじゃないの? いたいたいたいたいたいたいたいたいたいた でも、そのごはんのまえはれみりあはなにたべてたっけ? いたいいたいたいたいたいたいたいたい たしか、こんなおにくだったような? いたいいたいいた じゃあ、れみりあのおててはたべられるの? いたいいた れみりあはたべものなの? いた れみりあはたべもの。 モグ・・・ ゆっくりゃの頬が動く。それを見て男はニヤリと笑う。 モグ・・・モグ・・・ 段々とゆっくりゃの租借のペースがあがる。 モグモグモグ モグモグモグモグ・・・・・ごっくん! ついにれみりゃはその肉を飲み込んだ。それを見た男は満面の笑みで、 「おめでとう、れみりあ!これで今日からいつでもご飯が食べられるぞ!!」 と祝福の声を上げる。 「う”-!れみりあ”のごばん、おいじがっだでづぅ~!!!」 ゆっくりゃの涙ながらに今日の食事の感想を述べる。 ただ、この涙が食事のうまさから来るものなのか、自分が食べられる存在だと気づいた恐怖からきたものなのかゆっくりゃ 自身もわかっていない。 糸冬 あとがき的な はいどうも、文章をシンプルにまとめられない作者です。 やばいよ今日は!書きたいことがわらわらとでてくるよ!でも、1つ書き上げるのに時間がかかるから なかなか連続で上げれないジレンマ。 ピタゴラゆっくりのオチがどうも思いつきません。やりたいことは大体やってしまったし・・・。 後日、後始末編でもあげるかもしれません。あまり期待せずお待ちください。 あと某美鈴を勝手に登場させちゃったのでこの場でお詫び申し上げます。 名も泣き作者 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4011.html
対戦型ゆっくりゲーム by 十京院 典明 対戦型ゆっくりゲームというのを買ってきた。最近流行っているらしい。 「おーい、れいむー」 俺は家飼いのれいむを部屋に呼びつけ、PCを起動する。 やがてぺたんぺたんと階段を上る音がして、れいむが俺の部屋のドアを開ける。 「ゆゆっおにーさんゆっくりしていってね!」 「あーはいはいゆっくりゆっくり。ゲーム買ってきたんだが、やるだろ?」 「げーむさん!れいむげーむさんするよ!」 このれいむには時々ゲームの相手をさせているので、ゲームパッドぐらいなら操ることができる。 ピコリーン \ゆっくりしていってね/ 「ゆゆ!ぱそこんさんのなかにもれいむがいるよ!ゆっくりしていってね!」 * * * * 俺はキャラセレ画面で固まった。 「……」 画面には10匹のゆっくりが馬鹿面を晒している。それはいいのだが、 左上から、れいむ、れいむ、れいむ、まりさ、まりさ、ありす、ちぇん、みょん、れみりゃ(胴なし)、れみりゃ(胴あり)。 「おにーさんどうしたの?」 「……れいむ三匹とまりさ二匹の見分けが付かないんだけど」 「ゆゆ!こんなのもわからないなんておにーさんはばかだね! れいむとれいむとれいむとまりさとまりさだよ!」 「仕方ない、マニュアルでも見るか」 俺はマニュアルを広げた。 = = = = マニュアル お買い上げいただきありがとうございます。 本ゲームは、従来の対戦型格闘ゲームとはびみょんに異なったシステムを採用した新感覚ゆっくりゲームです。 勝利条件は自キャラのゆっくりゲージを100%まで溜めることか相手のゆっくりゲージを-100%まで下げることです。 基本動作 A=隙の少ない、ゆっくりする行動をします。 B=隙の少ない、相手をゆっくりさせない攻撃を繰り出します。 C=効果の大きい、ゆっくりする行動をします。 D=効果の大きい、相手をゆっくりさせない攻撃を繰り出します。 ←←=バックステップです。後ろにゆっくり跳ねます。 →→=ダッシュです。前にゆっくり急ぎます。 (コマンド)=さまざまな効果を持つゆっくりむーぶを発動します。いわゆる必殺技です。 特殊なルールを紹介します。 通常種ルール 通常種のゲージは自動で微量ずつ99%まで増加します。 通常種には当たり判定が無く、各種通常技およびゆっくりむーぶ中のみ当たり判定が発生します。 従来の格闘ゲームのように相手を攻め殺すよりは、自キャラをゆっくりさせつつ、 相手をゆっくりさせない戦い方が基本です。 うーぱっく 試合中、うーぱっくが通りかかり様々なアイテムを投下することがあります。 プリンやキノコ、干し草といったゆっくりゲージ増加アイテムから玄翁、ガラス箱といった危険なブツまで種類はさまざま。 なお、ゲームの性質上ゆっくりのリアルスペックとの乖離が見られる場合があります。 あらかじめご了承ください。 キャラ紹介 およびゆっくりむーぶコマンド表 れいむ(れいむA) ゆっくりしていってね! A or C連打 ゆっくりはねるよ! ←→←B or D ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ! ↓溜め↑A or C 『ゆっくりしていってね!』は全ゆっくり中最高のゲージ溜め性能があり、とくにC版は高効率。 移動の遅いれいむ(れいむC)やれみりゃざうるすと距離が離れたなら、 『ゆっくりはねるよ!』→『ゆっくりしていってね!』でゆっくりゲージを溜め切ってしまうこともあるほど。 『ゆっくりはねるよ!』は移動技。Bは後ろ、Dは前へと移動する。れみりゃ(胴無し)から逃げるほど速くはない。 うーぱっくからのアイテム回収や、ゆっくりしていってね!の布石に。 『ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ!』は、わずかながら無敵判定の存在する攻撃技。ダメージもなかなかで、ゲージ上昇有り。 攻撃重視型のみょん、れみりゃ(胴無し)などへの切り返しやカウンターを狙おう。 れいむ(れいむB) ゆっくりしていってね! A or C連打 ゆ~♪ゆ~♪ ←/↓\→A or C ゆゆ~♪ 相手の近くで↑\←↓\→B or D 歌の上手なれいむ。『ゆっくりしていってね!』はれいむAの同技に比べてゲージ上昇が少ないものの、二種類の歌技がそれを補う。 『ゆ~♪ゆ~♪』Aは低く、Cは高く飛ぶ飛び道具で、相手に当たると動きを止める。画面端に消える際にもゲージ上昇有り。 『ゆゆ~♪』はいわゆる一回転投げ。歌で相手の動きを止め、相手をゆっくりさせる(わずかに相手のゲージも上昇)とともに 自らのゲージを大幅に上昇させる大技。当たり判定のない状態の通常種をも吸い込むため、常に近接状態で立ち回り 相手をゆっくりさせないことが重要。 れいむ(れいむC) ゆっくりしていってね! A or C連打 ゆっくりうまれるよ! ↓溜め↓ おちびちゃんゆっくりしていってね! ←/↓\→B or D ゆっきゅちちていってにぇ! →←↑ B or D 植物型にんっしん中のれいむ。移動が遅く、特定のキャラには大幅不利ながらもスペックは低くない。 おちびちゃんゲージ(初期値1)の数だけ使える『ゆっくりうまれるよ!』でおちびちゃんを増やしながらゆっくりしよう。 おちびちゃん4匹以上の『ゆっくりしていってね!』には攻撃判定が付属する。 『おちびちゃんゆっくりしていってね!』は赤ゆゲージを溜める技。隙が少ないので暇を見てゲージを補充せよ。 『ゆっきゅちちていってにぇ!』は『ゆっくりしていってね!』の硬直を減少させる専用技。 攻撃判定のあるゆっくりむーぶも移動技も持たないため、攻められると脆く距離を離されても相手に一方的にゆっくりされ終了、 という危険性をも孕む(にんっしん中だけに)テクキャラ。通常技での立ち回りと間合い取りを研究しよう。 まりさ(まりさA) ゆっくりしていってね! A or C連打 むーしゃ、むーしゃ、しあわせー! →\↓/← B or D ここはまりさのゆっくりぷれいすだよ! ↓溜め↑A or C れいむと同じスタンダードタイプのゆっくり。『むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!』はうーぱっくから食べ物ゲット時にのみ 使えるゲージ大幅上昇技。移動速度が速く食べ物をゲットしやすいため、狙いどころは多い。 まりさ(まりさB) ゆっくりしていってね! A or C連打 ゆっくりしていってね! ↓\→A or C ゆっくりはねるよ! ←→←B or D まりさAよりもさらに移動速度が速いスピード特化型ゆっくり。 二種類の『ゆっくりしていってね!』を持ち、コマンド版は飛び道具。 ワギャ〇イザー、あるいはエコ〇ズAct2風の書き文字が攻撃判定を伴って飛ぶ。発生、速度にすぐれるD版は 相手のゆっくりむーぶを阻止するのに適する。 ありす ゆっくりしていってね! A or C連打 しゃんはーい →↓\A or C ほーらい ←↓/A or C 『しゃんはーい』はカチューシャから人形を生み出し前方に配置。相手を押し返す効果がある。最大8つまで配置可能。 『ほーらい』は高速で跳ねる飛び道具。6/1とらんぷる。 通常種の近くにいるとゲージの自動上昇率が高まるキャラ特性を持つ。しかし近接不得手のシューティングキャラ…… おお、つんでれつんでれ。 ちぇん わかるよー A or C連打 わからないよー 被ダメージ中に←→↓\B or D らんしゃまぁぁぁぁぁ!! ←/↓\→B or D 『わかるよー』はその場でゆっくりする、ゆっくりしていってねタイプのゲージ上昇技。 上昇率は低いものの、ゆっくりしていってねに比べ当たり判定が小さいため特定の飛び道具をかわしつつゆっくりし続けられる。 『わからないよー』は被ダメージモーションをキャンセルして高速離脱する。 『らんしゃまぁぁぁぁぁ!!』はゆっくりらんを召喚。らん存在時は通常技が変化しゲージ上昇率が上がったり性能が変化したりする。 長いコンボをことごとく封殺する『わからないよー』は伝家の宝刀。 しかしながら自身のゲージ溜め能力も高くは無いため過信は禁物。 硬直の大きい『らんしゃまぁぁぁぁぁ!!』を余裕を持って発動する位置取りが重要。 みょん ゆっくりしていってみょん! A or C連打 ちーんぽ! ↓溜め↑A or C でぃーっく! ↓溜め↑B or D 『ちーんぽ!』は黒くてたくましいもの(餡子製の刀)で相手を突き上げる攻撃判定技。ヒット時は黒くてたくましいもので さらに相手を突き上げる追加攻撃が2回まで出せる。 『でぃーっく!』は黒くてたくましいものを振り回す攻撃判定技。当たり判定も大きいので被カウンター注意。 通常技も主に、黒くてたくましいもので行う。 れみりゃ(胴無し) うーうー! A or C連打 たーべちゃーうぞー! 相手の近くで↑\←↓\→A or C ぐんぐにる ↓\→B or D 『たーべちゃーうぞー!』は相手ゆっくりゲージの80%を消し去る大ダメージ技で、当たり判定のない 状態の通常種も捕まえられるが、間合いが狭く発生も遅い。確定状況を作れるかどうかが勝負の分かれ目。 『ぐんぐにる』は槍状の飛び道具。 通常技も弾幕攻撃なので、なぶり殺しと一撃必殺の二段構えで相手をゆっくりさせないよう飛び回れ。 れみりゃ(胴有り) うー! A or C連打 うっうー! ↓\→A or C うあうあ♪ ←→←B or D れみりあうー☆ ←/↓\→A or C たーべちゃーうどー! 相手の近くで↑\←↓\→A or C ざうるす進化 ↓溜め↓ 捕食種ながら、こちらはゲージ上昇重視タイプのゆっくり。 『うっうー!』、『うあうあ♪』、『れみりあうー☆』は連続入力可能。『うあうあ♪』と『れみりあうー☆』には 攻撃判定があり、ゲージを溜めつつ攻撃できる。 『たーべちゃーうどー!』は『たーべちゃーうぞー!』と代わり映えの無い性能だが、各種ゆっくりむーぶでゲージを溜めつつ、 100%阻止に近づいてきた相手に狙えないこともない。 『ざうるす進化』は、文字通りれみりゃざうるすになる。ざうるす時はゲージ上昇速度が飛躍的に上昇するが移動速度が激減。 対れいむCなどに。同一コマンドで元に戻ることもできる。 = = = = 「なるほどねー。 ……それにしてもれいむまりさの顔の違いがわからん……」 れいむはれいむAを、俺はれみりゃ(胴無し)を選んでゲーム開始。 「どぼじででびりゃえらぶのぉぉぉぉぉぉ!!!???」 「このお兄さん、たとえ貴様がゆっくりといえども容赦せん。 それにもともと、ペットショップ使いなもんでね」 * * * * かくしてゲームスタート。 \れでぃぃぃ……ゆっくりしていってね/ 「語呂悪!」 「ゆゆゆ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 開幕からゆっくりしていってね連呼のれいむ。 ……ああなるほど。 ゆっくりや⑨でもプレイできるように全キャラ連打コマンド持ってるわけね。 「ってやべえ!」 予想以上にゲージの上昇が速い。慌てて弾幕攻撃をするが、すでにれいむのゲージはかなり溜まっている。 少しずつゲージを削るが、通常種ルールの当たり判定消滅とゲージ自動上昇によって開いた差はなかなか縮まらない。 「ゆっぐりじでいっでねっでいっでるでじょぉぉぉどぼじでゆっぐりじないのぉぉぉぉ!!!」 俺は一向に当たる気配のない弾幕攻撃を諦め、れみりゃ持ち前の素早い飛行でれいむに近づく。 「てめーこそ喰らって死ねぇぇぇぇぇぇ!!!『たーべちゃーうぞー!』」 「『ゆっくりはねるよ!』」 すかり。 起死回生の一発は(たぶん暴発した)移動技にかわされ―― 「っ―――!?」 \うぃなー いず れいむ/ 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 俺は、ゆっくりに負けた男となった。 * * * * 俺はこのゲームを舐めていた。それは認めよう。 俺はれいむの餌を七日分用意して、俺自身の身支度を整えた。 玄関に出た俺をれいむが呼び止める。 「ゆゆゆ!おにーさんどこいくの!?」 「旅に出る。 一週間後に、貴様との再戦を申し込む。それまでこの家には帰らん」 「どぼじでぞんなこというのぉぉぉぉ!!??おにーさんならとくべつにゆっくりしていっていいよぉぉぉ!?」 「もともと俺の家なんだが。 まあそれはいい。PCは置いていくから、せいぜい腕を……腕はないか。 せいぜいあんよを磨いておけ」 「いやだよ!!おにーざんといっじょにいだいよぉぉぉぉ!!!」 「俺も一週間後にもっと強くなって帰って来る。その時まで首を……首はないか。 あんよを洗って待っていろ」 「ゆゆぅぅぅーーーん!!」 * * * * それから、格ゲー仲間の友人に電話をかけ、メシを作ってやるかわりに一週間の格ゲー強化合宿を取り付けた。 言うまでもないが、飼いれいむに対戦で負けた話をしたらたっぷり三十分ほど笑われた。 こうして、友人との対戦に明け暮れる日々が幕を開けた。 「これぶっちゃけ、無しれみ弱いぞ……詰んでるマッチアップが多すぎる」 友人の指摘はもっともだった。 当初は気にも留めていなかった通常種ルールが、実は馬鹿にならない強さで設定されている。 あの日の初プレイでれいむが見せた、れいむAの高火力な開幕『ゆっくりしていってね!』が ゲームエンドに直結するほどにだ。一度奪われたリードはそうそう奪い返せない。 「うーむ……」 「胴れみはどうよ。俺も使ってないけど」 「そういや試してなかったな」 俺はれみりゃ(胴有り)を選び、友人はれいむA。 \れでぃぃぃ……ゆっくりしていってね/ 「語呂悪ぃ……」 「やっぱそう思うよな」 「うっうー!」 「うあうあ♪」 「れみりあうー☆」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 開幕『ゆっくりしていってね!に対して、『うあうあ♪』の先端に発生する攻撃判定がぎりぎり届かない。 単発の『うあうあ♪』も試したが、そもそもリーチが短く届かない。 そしてやはり逃げ切られる。 「なぁ……れいむAって強キャラじゃね?」 「まごうことなき強キャラだな……むしろ厨キャラまであるな。んで捕食種弱い」 「このサークル、れみりゃになんか恨みでもあるのか……?」 「マイルド調整の結果じゃねーの……それにしてもれみりゃ弱い」 「だけどさぁ、れいむA使う気ないんだろ?お前の性格からして」 「わかってんじゃねーか」 下手の横好きといわれても、俺は勝つためにキャラ換えしたことは一度も無い。 それは誇れることなんかじゃなく、くだらないこだわりに過ぎないのだがどうしてかキャラ換えできない。 それはきっと、俺そのものと強く癒着してしまっているのだ。 たとえば、ゆっくりがゆっくりを求めずにはいられないのと同じようにそれは当たり前のことなのだ。 「……次、行こうか」 「ああ」 俺はれみりゃを選び、再び対戦を始めた―― そして、またたく間に一週間が過ぎる。 俺は友人に礼を言って、帰途に就く。 「じゃあ、行ってくるぜ」 「頑張れよ」 * * * * 「ゆゆゆ!おにーさんまってたよ!ゆっくりしていってね!」 「だから俺の家だと言うに…… まあいい、勝負だ!れいむ!」 「ゆふふ……れいむはかなりあんよをあげたよ。せいぜいゆっくりしていってね」 「あんよ……?ああ、腕を上げたって事な。 俺だってそうさ。一週間前までのみじめな俺には二度と戻らない」 れいむはれいむA、俺はれみりゃ(胴付き)を選んだ。 \れでぃぃぃ……ゆっくりしていってね/ 0.60- 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 れいむは開幕ゆっくりしていってねを放つ。単純だが効果的な戦法だ。対して俺も手を打つ。 ボワン 「ゆゆ?」 ざうるす進化だ。これにより、俺のれみりゃはれいむに負けないゲージ上昇率を得る。 友人との合宿で、れいむAの火力に対抗するべく俺が考え出した、たった一つのソリューション―― 俺達は発想を転換しなければならなかった。 相手を倒すことより、自分がゆっくりすること。 それがこのゲームシステムにおいて、もっとも効率よく勝利条件を満たす手段なのだ。 格闘ゲームの常識に捕らわれていた俺と友人が、使えない技として無意識に除外していたざうるす進化。 それこそが勝利への鍵だったのだ。 4.42- 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!……」 「うーうー!ぎゃおー!うっうー!」 Cゆっくりしていってねの連打よりも、ざうるすれみりゃと化したれみりゃの技の方がわずかにゲージ上昇率が高い。 その微細な積み重なりは、やがて目に見える値となってゲージに表れる。現在れいむ57%、れみりゃ65%だ。 5.21- 「ゆゆっれみりゃはゆっくりしないでね!ゆっくりするのはれいむだよ!」 ついにれいむが痺れを切らせた。 「『ゆっくりはねるよ!』」 ――予想通りだ。 「『うーうー!もとにもどるどぉ~』」 ボワン こちらへ素早く跳ねてくるれいむのモーションに辛うじて反応し、れみりゃを通常形態へと戻すことに成功する。 ジャンプからのぼでぃぷれすをガードし、続く通常技を頭を抱えてやり過ごす。 「ぷんぷん!もうおこったよ! 『ここはれいむの……」 微妙な状況だ。 ――発生前に潰せるか(↓Aでカウンターを狙える) ――ガード(削られる/ゲージ2%減) ――喰らえば仕切り直し(ゲージ増減れいむ+7%れみりゃ-5%/それより距離が離れるのはまずい/Cゆっくりしていってねで死ぬ) 「……ゆっくりぷれいすだよ!』」 読み違えれば ――潰せる(無理だ) 負ける。 高速で流れる思考とは裏腹に、反射的に指が動いていた。 「――っ!」 俺の親指はAボタンを外してパッドを掴み、れいむのふくれっ面攻撃をガードする。 ――まだ行ける(ゲージはまだリード/進化or↓AB踊りコンボor投げ) 7.33- れいむが小さく一歩退がった。一瞬間が空く。 「うー!うー!」 それは俺のれみりゃのボイスではない。 画面の左上部から飛来する小さな影。その位置はれみりゃよりれいむに近い―― 「うーぱっく!れいむにあまあまちょうだいね!」 その瞬間、なにもかもがスローモーションに見えた。 俺は指を滑らせ←Cを繰り出す。 ←Cは攻撃判定は無く、前方に踏み出しながらゲージを溜める踊り技だ。 もしもれいむが攻撃を繰り出したらカウンターとなってしまう。 しかし俺には確信があった。 ――次に貴様は『ゆっくりはねるよ』と言う れいむは一生懸命にあんよで十字キーを操作している。 間違いない。れいむにとっては複雑な技コマンドを出すために、常時よりも丁寧にあんよを動かしている。 「『ゆっくり……」 ――逃がさん(投げ)(投げ)(投げ) すでに←Cの硬直を利用しコマンドは完成している。 「……はねるよ!』」 ――ここからなら ←Cで踏み出したこの位置からなら、ぎりぎり届く。 しゅばっ 「うー!」 れみりゃの手が伸びて、今まさに後方へと移動しようとしたれいむを捉える。 「ゆゆぅぅぅぅぅーーー!!??」 「つかまえたどぉ~。『たーべちゃーうどぉー!』」 画面がブラックアウトし、れいむの絶叫が響き渡った。 * * * * \うぃなー いず れみりゃー/ 「うっうー!」 「ゆゆん……さすがはおにーさんだよ!」 「いやーれいむこそなかなかだったぞ。レバガチャかと思ったら意外にコマンド正確だったしな」 だからこそキャラ差を読みでカバーすることができたわけでもあるのだが。 「もういっかい!もういっかいだよ!」 「よーし、やろうか」 俺は快く承諾する。 「さぁーて、”リベンジも果たしたことだし”俺もれいむA使っちゃおうかな~」 俺は勝つためにキャラ換えはしないが、その他の理由でキャラ換えすることは結構あるのだ。 「ゆゆっ!まけないよ!れいむがいちばんうまくれいむをつかえるんだよ!」 「俺だって負けないぞー。何せ、六日間もゆっくり練習してきたからな」 俺はこの時のために練習してきたれいむAで、れいむを完膚なきまでに叩きのめした。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりはねる(キャンセル)ぷくー! ゆっくりしていってね!ぷくー!ここはれいむのゆっくりぷれ(キャンセル)ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!ゆっくりしていっ(キャンセル)ばかなの?ゆっくりしていってね!ばかなの?しぬの? ゆっくりしていってね!ばかなの?ばかなの?ばかなの?しぬの?ゆっくりしていってね!」 「ゆあああああああ!!!!!おにーざんばっがりずるいよ゛ぉぉぉぉぉぉぉ!!!! でいぶもゆっぐじじだい゛よ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 俺は軽快にコンボを継続し、れいむを空中に浮かせ続けながら言ってやった。 「おそらをとんでるみたいだろ?れいむ、ゆっくりしていってね!」 「ゆぐぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!!!!!!」 END ■ □ ■ □ ちなみにこの二ヶ月後、れいむA、れいむC、ちぇん、みょんに10割コンボが発見され―― 世界は、核の炎に包まれた。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/2169.html
『べじたりあん』 里山の茂みの中を進む、生きる大福。 金髪に黒いトンガリ帽子がトレードマークのゆっくり、ゆっくりまりさだ。 「そろ~り、そろ~り」 まりさは外敵に見つからないように、細心の注意を払って茂みを這っていく。 このあたりには人間や獣も多いことを、まりさは知っていた。 だが、それは裏を返せば、生き物にとってすごしやすい土地だということだ。 故にまりさは、多少の危険を冒してでも、この地に住んで、今日も狩りを行っていた。 「ゆゆっ! おやさいさんだよ! とってもゆっくりしているね!」 茂みの切れ目まで来たまりさの眼前には、 整地された柔らかい土と、そこからはえる青々とした野菜が広がっていた。 まりさは目を輝かせ、その青い葉の前へピョンピョン跳ねていく。 「ゆぅ~ん、すこしちいさいけど、とってもゆっくりできそうだよ」 野菜は、まだまだ小ぶりで、成長途中であることが見てとれたが、 お腹をすかせたまりさにとって、そんなこと関係ない。 「おやさいさん、かってにはえてきてくれてありがとうね!」 まりさは目を輝かせて、あ~んと大きな口を開いく。 そして、パクと口を閉じるまりさ。 けれど、むーしゃむーしゃしようにも、まりさの口の中には何も入っていない。 それを不思議に思って、下ぶくれた顎を傾けるまりさ。 「ゆぅ~? おやさいさん、どこいくの?」 目の前の野菜が、まりさから離れていく。 いや、正しくは、まりさが野菜から遠ざかっていたのだが、まりさはそれに気付かない。 「ゆゆゆ? おやさいさん、ゆっくりまりさにたべられてね!」 じたばた暴れて野菜を食べようとするまりさ。 しかし、野菜に飛びつこうにも、まりさの体は何者かに持ち上げられて動くことが出来ないでいた。 その時になって、まりさは初めて気付いた。 自分が、何者かに持ち上げられていることに。 「ゆ、ゆゆ?」 おそるおそる、後ろに視線を送るまりさ。 そこには、ぬぼぉーっと大きな下ぶくれ顔に、満面の笑みを浮かべる存在がいた。 「ぎゃおー♪ たーべちゃうぞぉー♪」 「れ、れ、れ、れみりゃだぁーー!」 まりさを掴んでいた者、それは胴体有りのゆっくりれみりゃだった。 ゆっくりを捕食する天敵の登場に、まりさは顔面蒼白になって、暴れ回る。 「やめてね、こっちこないでね! れみりゃはゆっくりできないよ!」 「うー!」 暴れた甲斐あってか、れみりゃの手が離れ、まりさの体はそのままポヨンポヨンと地面に着地する。 何とか自由を得たまりさだったが、その危機は変わらない。 ゆっくりれみりゃを見上げたまま、ガタガタ震えるしかなかった。 一方、れみりゃはといえば、最初こそ「ぎゃおー♪」とお馴染みの声を上げたが、 それ以降、まりさを捕まえようとも、食べようともしなかった。 それどころか、まりさにとって実に以外な声をあげるのだった。 「うーうー♪ いっしょにゆっぐりー♪ ゆっぐりしよぉー♪」 「ゆ、ゆぅ? ゆっくり、していってね?」 「うーうー♪ ゆっぐりゆっぐりー♪」 "ゆっくりしていってね"と言われ、"ゆっくりしていってね"と返すのは、 ゆっくりにとて本能に近いものであり、同時にそれは親愛の情を示すものでもある。 れみりゃからの思わぬ"ゆっくりしていってね"コールに、まりさは混乱した。 そんなまりさとれみりゃの前に、1匹のゆっくりれいむが現れた。 「れみりゃ、どうしたの?」 「うー♪ れーむー♪」 まりさは驚いた。 れいむ自体は珍しくなかったが、このれいむは目の前でれみりゃと仲良く話をしているではないか。 「れーむ♪ れみりゃのはたけにおきゃくさーん♪」 「ゆ? れみりゃのはたけさん?」 まりさは、れみりゃの言葉にピクと体を揺らした。 「うっうー♪ れみりゃってば、おやさいさんそだてるのもおじょーずなのー♪」 どうやられみりゃは、目の前の野菜は全て自分のものであり、ここは自分の畑だと言っているようだった。 畑、それは人間が"勝手にはえてくれるお野菜さんを独り占めしている場所"それがまりさにとっての認識だった。 まりさにとって、人間の言う「畑」は何ともゆっくり出来ず、理不尽に感じられるものだった。 それを、捕食種とはいえ同じゆっくりであるれみりゃが主張しているのは、我慢ならなかった。 「ち、ちがうよ! このおやさいさんは、まりさがみつけたんだよ!」 「う~?」 れみりゃに向かって、唾を吐くまりさ。 恐怖よりも、今は目の前の野菜への情念が勝っていた。 「おやさいさんは、まりさにむーしゃむーしゃされるために、ゆっくりかってにはえてきてくれたんだよ! おばかなれみりゃは、ゆっくりりかいしてね!」 まりさは、れみりゃへ背を向け、野菜へ跳ねる。 そして、今度こそそれを口に入れようとして……。 「う~~! だめぇ~~!」 「ゆべぇ!」 まりさが口を閉じるより早く、どたどただばだばれみりゃがやってきて、まりさを蹴り飛ばした。 ゴロゴロ転がり、もちもちした肌を擦り傷だらけにするまりさ。 自慢の金髪も帽子も、畑の柔らかい土で、すっかり汚れてしまう。 れみりゃは、そんなまりさに向かって立ち、短くふくよかな手を広げて、野菜を守ろうと立ちはだかった。 「うー! ここはれみりゃのはたけなのぉー!」 よろよろ起きあがる、まりさ。 そのまりさの前で、べそをかきながらも野菜を守ろうとするれみりゃ。 まりさは、何とかれみりゃを倒して野菜を手に入れたかったが、力の差は今の攻防で既に明らかだった。 どうすることも出来ぬまま、やがてまりさは頬をふくらませ、そのままわんわん泣き出してしまう。 「ゆぁ~~ん! まりさはおやさいさんたべたいだけなのにぃ~~! どうしてまりさにひどいことするのぉ~~!?」 「う~~~~~っ」 にらみあったまま、膠着するまりさとれみりゃ。 すると、れいむがぴょんぴょん跳ねてきて、まりさの土と涙でぐちゃぐちゃになった頬を舐めてあげた。 「ぺろ~り、ぺろ~り」 「れ、れいむ?」 れいむはまりさを泣きやませて落ち着かせると、笑顔で提案する。 「だったら、まりさもいっしょにれみりゃのおてつだいしようよ?」 「……ゆぅ?」 目を丸くする、まりさ。 一方でれみりゃは、れいむの提案にご満悦で、"うぁうぁ"喜びのリズムを体で刻みだす。 「う~♪ れーむ、あたまいい~♪」 「で、でもれみりゃといっしょなんて……」 チラリとれみりゃに視線を送る、まりさ。 れみりゃは、満面の下ぶくれスマイルでまりさに応えた。 「れみりゃは"べじたりあん"さんだから、おまんじゅうなんてたべないもぉーん♪」 「そうだよ、れみりゃは"おしゃまなおぜうさま"なんだって!」 れみりゃとれいむの言葉に、まりさは考え込んだ。 よくよく聞くと、元々この場所でれみりゃが畑を作っており、 れいむも以前野菜を食べようとした際に、れみりゃから一緒に野菜を作ろうと誘われたのだという。 「ゆぅ~~」 畑の概念は気にくわなかったまりさだが、そんな細かいことを抜きにしても、野菜はやはり魅力だった。 それにとってもゆっくりしているれいむとは仲良くなりたかったし、強いれみりゃと一緒にいれば安全だろうとも考えた。 「ゆっくりきめたよ! まりさも、れーむとれみりゃとゆっくりするよ!」 まりさの決意を聞いて、れみりゃとれいむはパァーと顔を光らせた。 れみりゃは、腕をぐるぐる振り回し、大きな尻を左右にぷりぷり揺らす。 れみりゃ特有の感情表現、のうさつ☆だんすだ。 「うっうー☆うぁうぁー♪ れみ☆りゃ☆うー♪」 この時、れみりゃは思った。 お野菜を作って良かった。 お野菜を作っていたから、こんなにもゆっくりできるお友達が出来たんだと。 これならきっと、ゆっくりできるに違いない。お野菜、大好きと。 * * * 里の外れ、独り身で農業を営む男の下を、 大きな下ぶくれ顔と小さな羽を持った幼児体型のゆっくりが訪れていた。 「う~~♪ ゆっぐり~~♪」 「ん? なんだおまえか、久しぶりだな」 男の下を訪れたのは、ゆっくりれみりゃだった。 男は鍬を地面に置き、れみりゃを招いて縁側へ腰かける。 男は、熱い緑茶を煎れ、お茶請けに羊羹を用意する。 れみりゃは羊羹を頬張り、両手で頬をおさえて咀嚼する。 口の中いっぱいに広がる甘みに、れみりゃは顔をほころばせた。 「う~~♪ ぷっでぃ~~ん♪」 「はいはい……それで、今日はどうしたんだ?」 男とれみりゃは、顔見知りであった。 数ヶ月前、男は道で倒れていたこのれみりゃを拾い、介抱した。 その折に、男はその奇妙な嗜好に気付いた。 男は、ゆっくりれみりゃは野菜を嫌うと聞いていたが、このれみりゃは違っていた。 それどころか、農作業をする男に興味を持ち、 体力が回復してからは積極的に男を手伝い、野菜の作り方を学ぼうとしだしたのだ。 そして、とうとうれみりゃは独り立ちし、野菜畑を作ると言いだした。 男は、それをおもしろく思い、一定の収穫量を代価に、 自分の土地の一部と、れみりゃが特に気に入った野菜の種をわけて与えた。 それから数ヶ月。 音沙汰も無く、男が忘れかけた頃に、そのれみりゃがこうしてやってきたのだった。 「れみりゃのはたけー♪ とってもゆっぐりしてるのぉー♪ みてみてぇ~♪」 羊羹を食べ終わったれみりゃは、男を自分の畑へと導いた。 そこで青々と生い茂った野菜を見て、男は素直に感心する。 「へぇ、こりゃたいしたもんだ……」 「うっうー☆れみりゃゆっぐりがんばりましたぁー♪」 嬉しそうに胸を張る、れみりゃ。 よく見れば、あちこちに擦り傷ができており、服も体も土だらけである。 その様子から、男はれみりゃが真面目に農作業に取り込み、ここまでの成果を得たのだと思いを馳せた。 「たいしたもんだ。流石はお嬢様だな」 「う~☆なでなでぇ~♪ いいこいいこ~だいしゅきぃ~♪」 男に頭を撫でてもらい、れみりゃはご満悦だ。 そうして、笑顔を浮かべたまま紅い瞳を開いて、男に問いかける。 「う~♪ れみりゃいいこにしてたら、しゃくやおむかえにきてくれるぅ~?」 「ああ、きっとな」 れみりゃの問に、曖昧に応えて微笑む男。 男は、農作業に関する質問には真摯に答えてきたが、 れみりゃが時折口にする"しゃくや"に関する質問だけはよく意味がわからずにいた。 「じゃあ、俺は後で収穫に来るから。これからも頑張れよ、お嬢様?」 「おっまかせぇー♪ こーまかんのおぜうさまには、ゆっぐりしてるおともだちがたくさんいるのぉー♪」 とんと胸を叩いて、自慢するれみりゃ。 男はそんなれみりゃに一瞥をくれてから、収穫の準備をすべく畑を後にした。 れみりゃは、男を見送った後、どすんと座り込み、青空を流れる雲を眺めた。 ゆったりと流れる雲と、心地よいそよ風がれみりゃの心を落ち着かせていく。 「ゆっぐり~ゆっぐり~♪」 れみりゃは、とてもゆっくりしていた。 そこへ、わいわいがやがやとゆっくり達がやって来た。 れいむ、まりさ、ぱちゅりー、ありす、ちぇん、さらにはふらんまで。 そこに集まったゆっくり達は、みなれみりゃの畑で働くゆっくり達だ。 「ゆ? れみりゃどーしたの? いまにんげんさんがいたみたいだけど……」 「ゆっくりりかいしたよ! きっとまりさたちのはたけをよこどりしようとしたんだね!」 「むっきゅーん! それをれみりゃがおいかえしたのね!」 「さすが、れみりゃね! とってもとかいてきこういだわ!」 「わかるよぉー! れみりゃはつよいゆっくりなんだよぉー」 「うー☆おねーさますごい☆」 みな一様に笑顔でれみりゃを称えるゆっくり達。 れみりゃは、立ち上がり、ゆっくり達を出迎える。 今日は、いよいよ育てた野菜を収穫する日だ。 「うっうー♪」 れみりゃは笑顔で野菜を収穫していく。 育てていた野菜は2種類。一つは緑色の葉を元気に伸ばし、一つは地面に大きな実をつけている。 れみりゃはその2つの野菜を引き抜き、両手に持って喜びを爆発させる。 「う~う~♪ れみりゃのおやさぁ~い♪」 「ゆ、ゆゆ、すごいよ! おやさいさん、とってもたくさんゆっくりしてるよ!」 ゆっくり達も、れみりゃの姿を見て感激の声をあげる。 それは、苦労の末に豊穣を得られる、農における収穫の喜びでもあった。 小さいとはいえ、畑の野菜は多い。 ゆっくり達は、とりあえず今食べるぶんだけを引き抜き、それぞれに分配した。 ゆっくり達は野菜を目の前にして、ゴクリと生唾を飲み込んだ。 今か今かとソワソワする、ゆっくり達。 そして、ついに。 れみりゃの声を合図に、野菜の味と喜びを噛みしめる時がやって来た。 「ぎゃおー♪ たーべちゃうぞぉー♪」 「「「「「いっただっきまぁ~~す!!!」」」」」 もしゃもしゃ。 ばくばく、むしゃむしゃ。 「うぁーうぁー♪」 れみりゃは、むしゃぶりつくように野菜を食べていく。 その野菜は、れみりゃが農業を教わった人間の家で食べて、やみつきになったものだった。 だが、自分で苦労して育てたぶん、愛情を注いで育てたぶん、今日の方が何倍にも美味しく感じられた。 「うっうー♪ とってもでりしゃすぅ~♪ しゃくやにもたべさせてあげよぉ~っと♪」 れみりゃは、止まらない。 むーしゃむーしゃと野菜を食べ続けていく。 これならきっとみんなもゆっくりしてくれているはず。 これからもみんなと一緒にゆっくり野菜を育てて、ゆっくりしよう。 れみりゃはそう思いを新たにしながら、 今日まで苦労をともにしてきた、れいむやまりさの様子を窺った。 「……うー? みんなどぉーしたのぉー?」 野菜を食べる手を止め、れみりゃは首を傾げた。 見ると、ゆっくり達は少ししか野菜に口をつけておらず、みなプルプルと体を揺らしていた。 「……れみりゃ、なに、これ?」 「うー? れーむー♪ むーしゃむーしゃゆっぐりー♪」 れみりゃは、ゆっくり達が初めて見る野菜の食べ方を知らないで困っているのだと思った。 故に、ゆっくり達の前で、美味しそうに野菜を食べる様を見せたのだが……。 「こんなの、ゆっくりできるわけないよ!」 「う、うー?」 れいむ達から、れみりゃの期待した"ゆっくり"は返って来なかった。 それどころか、せっかく育てた野菜を憎々しげに踏みつぶし、れみりゃに敵意を向けている。 「ひどいよ、れみりゃ! れみりゃはれいむたちをだましたんだね!」 「うぇ~~ん! まりさのおやさい~~! こんなのおやさいさんじゃない~~!」 「むっきゅー! これはくささんやおはなさんいかよ! きっとどくそうなのよ!」 「こんなのちっともとかいはじゃないわ! れみりゃのうそつき!」 「わかるよぉー! きっとれみりゃはちぇんたちをつかれさせてたべちゃうつもりなんだよ!」 「うー、おねーさま、やっぱりだめりゃだった……」 れみりゃは、わけがわからなかった。 れみりゃに、ゆっくり達を騙すような意図は無かった。 確かに、他のゆっくり達に、農業を教えてくれた人間との取り決めは言っていない。 そもそも"何故自分が畑をやろうと思ったのか"の理由を話したこともない。 だが、目の前のゆっくり達の不満は、明らかにそれとは別種のものだ。 "野菜がまずい""こんなものは野菜じゃない""こんなものじゃゆっくりできない" 言い回しは違っても、ゆっくり達の罵りはそういったものだ。 けれど、それがれみりゃには理解できない。 こんなに美味しい野菜なのに、どうしてゆっくりできないというのか。 「う~~! ゆっぐり~~! ゆっぐりじだいよぉ~~~!」 大好きな友達からの非難と罵詈雑言に、れみりゃの胸の中では、どんどん悲しい気持ちが溢れていく。 あんなに美味しいと思った野菜も、もはや何の味もしなかった。 れみりゃは、思いも寄らなかっただろう。 その野菜は、れみりゃだからこそ、中身が「肉まん」のゆっくりだったからこそ、美味しいと感じたのだということを。 中身が甘いもので出来ているゆっくり達にとって、その野菜の味や風味や臭いは、実にゆっくり出来ないものだということを。 その野菜、「ニラ」と「ニンニク」という野菜の特性を。 「ゆぅ~! れみりゃだけゆっくりしようなんてひどいよ!」 「さいしょっからまりさたちをゆっくりさせないつもりだったの!?」 ゆっくり達の敵意は、やがて実力行使へと移っていく。 怒りはうねりとなり、もはやれみりゃの言葉はゆっくり達に届くことはない。 「う、うー! ちがうー! ちがうのぉー! れみりゃは……」 「「「「ゆっくりできないれみりゃは、ゆっくりしね!」」」」 ゆっくり達は、一斉にれみりゃとれみりゃの畑へと襲いかかっていく。 れみりゃには、ただ叫ぶことしかできなかった。 「う、うぁぁぁーーー! しゃぐやぁぁーーーたすげでぇぇーーーー!!」 * * * れみりゃは、泣いていた。 全身を傷だらけ、泥だらけにしながら、泣いていた。 自慢の柔肌も、だいじだいじなおべべも、もうボロボロだった。 「うっぐ、ひっぐ……」 泣いて、泣いて、泣き続けて。 やがて泣き疲れたれみりゃは、ぐずりながらも顔を上げ、その惨状を見てまた泣き出すのだった。 「う、うあーー! れみりゃのはたげがぁーーー!!」 れみりゃの前には、かつて畑だった光景があった。 だが、ゆっくり達が怒りに任せて暴れたおかげで、畑は見るも無惨なものになっていた。 何ヶ月も苦労した結果が、目の前の光景などと、到底受け入れられるものではなかった。 「……おいおい、どうしたんだよこれ」 「うぁ?」 れみりゃが振り向くと、そこには収穫用の道具を取りに戻った、男が立っていた。 「おにぃーさーん! はたげがぁー! れみりゃのゆっぐりぶれいずがぁーー!」 れみりゃは、男の足にすがりつき、泣きわめく。 男は、れみりゃの涙と体についた泥で汚れるのに嫌悪を感じつつ、呟いた。 「ったく、やっぱりだめだったか。野菜好きの捕食種なんて珍しいから、躾けりゃ役に立つかと思ったのに……」 「おにぃーさーん! しゃぐやぁーー! しゃぐやぁをよんでぎでぇーー!!」 なまじ期待してしまったが故に、すっかり脱力する男と、 ただ永延と"しゃぐや"の名前を連呼するれみりゃ。 「まぁ、しょーがないか」 男は、風が冷たくなってきているのを感じ、ぐしぐしとれみりゃの頭を撫でてやった。 結果的に失敗だたとはいえ、あと一歩のところまでは出来たのだ。 むしろ農業初心者のゆっくりれみりゃがここまで出来ただけでも褒められるべき奇跡。 目の前で泣くれみりゃを家に連れ帰って、ゆっくりさせてやろうと、男は考えた。 「ほらほら、うちで甘いものやるから泣きやめよ」 「やだぁー! ぷっでぃーんだけじゃやだぁー! ごーまがんで、しゃぐやのおさらだたべるのぉーー!!」 普通のれみりゃなら飛びつく"あまあま"の一言でさえ、今のれみりゃには効果が薄かった。 「……あのな、誰かは知らないけど、そんな人は」 「しゃぐやー! れみりゃおやざいだいしゅきになったのぉー! もぉーぽいしないのぉー!!」 れみりゃは泣いた。 泣いて反省して、その場にいない"しゃぐや"に許しを求めていた。 そして、また一緒にゆっくりしたいと、必死に"しゃぐや"を探し求めた。 かつて自分に無償の愛を注いでゆっくりさせてくれた者の名を。 かつて自分がワガママを言って傷つけてしまっただろう者の名を。 「れみりゃはしゃぐやにゆるしてもらうのぉー! れみりゃのおやざいさんいっじょにたべでゆっぐりずるのぉーー!!」 れみりゃの"しゃぐや"を呼ぶ声は、いつまでも続いた。 そして次の日、毎日朝早くかられみりゃが水をまいていた場所には、土地の主である男の姿だけがあった。 * * * 数日後。 野菜の無人販売を前に一人のメイドが立っていた。 「……あら?」 素性のわからぬ野菜など、主人やその賓客達に食べさせるわけにはいかないが、 野菜に添えられた一文が、そのメイドの興味をひいた。 誰かが捨てただろうぐしゃぐしゃの紙に、クレヨンで描かれた汚い平仮名。 そこにはこう書かれていた……。 "れみりゃががんばっでつぐっだおやざいざんでず。どっでもおいじいからたべでぐだざい" ぼろぼろのニラとニンニクに添えられた一文を見て、メイドは溜息をついた。 その脳裏には、かつて愛情の限りを注いだ下ぶくれ顔がよぎって、消えた。 「……変わったれみりゃ様もいるのね。……もし本当にそんなれみりゃ様がいるなら、会ってみたいわ」 おしまい。 ============================ ……風邪ひきました。 最後の台詞をどう解釈されるかはお任せします。 ただ、私自身は(この場所で言うのも変なのですが)ハッピーエンド至上主義者だったりします。 by ティガれみりゃの人? ============================
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/1916.html
『おはなしのくに』 紅魔館の瀟洒なメイド長・十六夜咲夜は、 その日、博麗神社を訪れていた。 ふわりと境内に降りて、神社の建物の中へ向かう咲夜。 すると、中から聞き知った叫び声が響いてきた。 "うぁぁーーん! しゃぐやぁーー! ごあいひとがぁーーー!" 泣きながら自分に助けを求める幼い声。 その声に、咲夜はハッとして駆け出し、部屋に上がる。 「れ、れみりゃ様? どうなさったんですか?」 障子を開け放ち、幼き声の主を確認する咲夜。 赤白の巫女がお茶をすすったまま咲夜を見て唖然とするさらに奥、 そこにピンク色のスカートを着た太ましく可愛らしいお尻が見えた。 「うぁ!? しゃくやぁ~~♪」 咲夜の声に、踞って震えていた大きなお尻がくるりと回って、泣きじゃくった顔を向ける。 その尻の主・ゆっくりれみりゃは、咲夜を見るや否や、トテトテだばだば咲夜へ駆け寄っていった。 「う~~! おねぇーしゃんが、れみぃーにいじわるするのぉーー!」 ばふっと抱きつくれみりゃを、優しく受け止める咲夜。 咲夜は畳の上に座り、その膝の上にれみりゃを座らせてあげる。 咲夜に優しく抱かれて、れみりゃは"うー♪"と涙を忘れて微笑んだ。 「ずいぶんな言われようね……」 お茶請けの乗った卓袱台の前に座りながら、霊夢が暢気な溜息をついた。 一方、咲夜はれみりゃの頭を撫でながら、鋭い視線を霊夢へ向けて突き刺した。 「……どういうつもりかしら?」 「どうもこうも、こいつに頼まれて本を読んであげただけよ?」 霊夢が指差す先へ視線を移す咲夜。 そこには、畳の上に何冊もの絵本が散らばっていた。 「これ、外の世界の絵本よね?」 「早苗がゆっくり達に……って持ってきたのよ。よくわかんない奴よね」 守矢の風祝の話題が出ると、以前会ったことがあるれみりゃが、ニコニコ笑みをこぼした。 「うー♪ あのおねぇーしゃんは、とってもゆっくりできるひとだったどぉー♪」 「へぇー、わたしはゆっくりできないわけ?」 「う、うぁ!」 霊夢に意地悪げな笑みを向けられて、 れみりゃは怒られると思って反射的に頭を押さえる。 俯き両手で頭を抱えて、"う~~! う~~!"と怯えた声を漏らすれみりゃ。 咲夜が良し良しとなだめると、れみりゃは咲夜の腕にギューと抱きついた。 こんなに怯えるということは、やはり何かされたのか? 咲夜はそう考えて、霊夢を問い詰める。 「……本当に本を読んだだけなの?」 「本当よ! まずはこれを読んであげたわ……そしたらこいつ」 霊夢が手を伸ばし1冊の本を手にとって、咲夜に見せる。 その本の表紙には、『シンデレラ』というタイトルが描かれていた。 * * * 「……というわけで、めでたしめでたし」 パタンと絵本を閉じる霊夢。 だが、霊夢に絵本を読むようせがんだ"こーまかんのおぜうさま"は、 霊夢の傍らで両足を前に投げ出して座ったまま、ぷくぅーと両頬をふくらませていた。 「どうしたのよ?」 「うーー! あねよりすぐれたいもうとなんていないんだどぉーー!」 れみりゃは畳の上で、どんどんだばだば、両足と両手を上下させる。 どうやら、姉が悪役で妹が主役のシンデラレを読み聞かされて、姉として納得いかないところがあったらしい。 頭の中で、意地悪な姉を自分に、シンデレラをゆっくりれみりゃの妹・ゆっくりフランに置きかえているのだろう。 そこで霊夢は、れみりゃへ向かって常々思っていたことを聞いてみた。 「でも、あんたより、ゆっくりフランの方が強いじゃない?」 「そんなことないどぉー! れみぃーはかりしゅまなんだどぉー! だんここうぎするどぉー!」 霊夢は、紅魔館を訪れた際に、 目の前のれみりゃが妹のフランに虐められているところを、何度と無く目にしていた。 その度に、れみりゃは泣き叫び、咲夜に助けを求めていたのだが……。 しかし、それはそれ。 妹のフランの方が強かったり、賢かったりする部分があるのは、 やはり姉たるれみりゃにとって決して認めたくない痛い部分だった。 だどだど! だばだば! うーうー! れみりゃは怒りながら、目にうっすら涙を浮かべて悔しがる。 そんなれみりゃの様子を眺めながら、霊夢はふと意地悪を口にしてみたくなった。 「……妹の方が紅魔館の主になったりしてね」 「うぁぁーー!! なんでそんなごどいうんだどぉーーー!?」 ぎゃー!と目と口を大きく見開いて、れみりゃは絶叫した。 * * * 「うーー! しゃぐやぁー! ほんとにふらんがおぜうさまになっちゃうどぉー?」 咲夜の腕の中、うっぐえっぐと嗚咽まじりになりがら、不安げな表情を浮かべるれみりゃ。 ぬぅーと咲夜を見上げる曇った下膨れ顔に、咲夜は太陽のような笑顔を輝かせた。 「大丈夫ですよ。れみりゃ様も妹様も、私の大事なお嬢様です」 そう言って、咲夜は指でれみりゃの涙を拭う。 「う~~♪ しゃくやぁ~~だいしゅきぃ~~♪」 れみりゃの顔が、徐々にぐずり顔からいつものニコニコ顔へ戻っていく。 "うーうー♪"と御機嫌になるまでに、さして時間はかからなかった。 「……あんたも、微妙に明言避けてるじゃない」 「……なにか言った?」 霊夢の冷淡な突っ込みを、それ以上の氷の微少で受け流す咲夜。 "おお、こわいこわい"と肩をすくめて視線をそらす霊夢。 かわりに霊夢は、別の絵本をとって咲夜へ説明を続けることにする。 「……で、そいつが不機嫌になっちゃったから、今度はそっちの本を読んであげたの」 霊夢が持つ本にはこう描かれていた。 『アリとキリギリス』と。 * * * 「……というわけで、めでたしめでたし」 「うーーっ! なっどぐいかないどぉーー!」 パタンと絵本を閉じる霊夢に、 れみりゃはまたしても食ってかかった。 やれやれと溜息をつく霊夢の肩を、 立ち上がったれみりゃがゆっさゆっさと揺すろうとする。 信じられないくらい柔らかくて、力の無い揺さぶりに逆に驚きつつ、 霊夢は何が気に食わないのかとれみりゃに聞いてみる。 すると、れみりゃは実にゆっくりらしい抗議を始めた。 「きりぎりすさんは、ゆっくりしてただけだどぉー! なんでゆっくりしちゃいけないんだどぉー!」 なるほど、そう考えるわけか。 ポンと心の中で膝を叩く霊夢。 この寓話の教訓は、確かに"ゆっくりすること"を否定しているともいえる。 ゆっくりからすれば、ゆっくりしていたキリギスが死に、ゆっくりしていないアリ達が生き残るのは到底認められないだろう。 それを認めてしまえば、ゆっくりという存在自体を否定しかねない。 ……ゆっくりれみりゃがそこまで考えてだだをこねているとは思えなかったが、 少なくともそれに近い何かを本能的に察したのだと霊夢は考えた。 「ゆっぐりすると、ゆっぐりできないんで、ひどいどぉー! あんまりだどぉー!」 れみりゃは泣き出しながら、霊夢の肩を全く痛くない掌でバシバシ叩き出す。 ぶつけようのない気持ちに、れみりゃは涙が止まらなくなっていた。 「ゆっぐりするどぉー! ゆっぐりしたいどぉーー! うぁぁーーゆっぐりぃーーー!!」 * * * 「しゃくやぁ~~! れみぃーはゆっくりしたいどぉーー!! さむいおそといやぁーー!!」 咲夜の膝の上で、いやいやとかぶりを振る、れみりゃ。 そんなれみりゃを、咲夜は温かくギュッと抱きしめる。 「大丈夫ですよ。れみりゃ様は、ゆっくりするのがお勤めですから」 咲夜の言葉に、れみりゃはホッと胸を撫で下ろす。 安心したれみりゃは、咲夜の顔に親愛の"すりすり"をする。 「う~しゅりしゅり~♪ しゃくやもいっしょにゆっくりするがいいどぉ~~♪」 互いにほっぺたを"すりすり"しあう、れみりゃと咲夜。 その様子に呆れながら、霊夢は一応話を続けることにする。 「……で、そいつがぐずりだしたから、この本を読んであげたの」 霊夢の声に、顔を上げる咲夜。 霊夢が持っている本の表紙には、お菓子で出来た家が描かれていた。 「ほら、表紙からしてそいつの好きそうなものばっかりだし」 その本の名前は、『ヘンゼルとグレーテル』といった。 * * * 「うぁーうぁー♪ しゅってきだどぉー♪ れみぃーもおかしのこーまかんほしいどぉー♪」 満面の笑顔で、下膨れた頬をこぼれ落ちそうにさせる、れみりゃ。 先ほどまでの涙はどこへやら、畳のに座って、口角にヨダレをためている。 仲の良い兄妹が、森の奥でお菓子で出来た家を発見する物語……。 どうやらこの本は正解だったらしいと、霊夢は肩で息を吐く。 れみりゃはと言えば、両手で頬を支えながら、"うーうー♪"と楽しげに頭を左右に揺らしている。 その頭の中では、(自分を虐めることもない)可愛いフランと一緒にお菓子の家を食べているのだろう。 泣いたり笑ったりコロコロ表情を変えるれみりゃに、 霊夢は面倒くさいと思いながらも、興味を覚えだしていた。 今はこんなに御機嫌でも、きっとまたすぐぐずるんだろうなぁ……と。 そんな霊夢の予感が的中するのに、そう時間はかからなかった。 物語の中盤、お菓子の家が実は子供を食べようとする魔女の罠だと判明した瞬間、 見ている方がおもしろいほど、れみりゃの表情は見る見る顔面蒼白に染まっていった。 「ぷっぎゃぁー! まじょさんごぁいーー!!」 れみりゃは泣き出し、絵本の挿絵の魔女から逃げるように、畳部屋の隅へ駆けだしていく。 前を見る余裕も無いれみりゃは、部屋の隅で壁にゴツンと頭をぶつけて、そのまま倒れ込んでしまう。 "う~~~!"とヒリヒリ痛む頭をさすりながらも、れみりゃの恐怖はおさまらない。 ずりずり這うように部屋の奥へ奥へと逃げていき、そこで霊夢と絵本の魔女に背を向けるようにして、 頭を抱えこんでガタガタ震えだす。 「れみぃーはおかしのいえなんてしらないどぉー! ぷっでぃーんこぁいどぉーー!!」 大好きなはずのお菓子まで、魔女を連想させるものとして怯えだすれみりゃ。 そんなれみりゃを見ているうちに、霊夢の中でフツフツとイタズラ心が湧き出てきた。 「ほらほら、あんたも我が侭言ってプリンばっかり食べてると……」 霊夢は、魔女の挿絵が描かれたページを開いたまま、れみりゃへ近づいていく。 「やだぁーー! れみぃーたべちゃだめぇーー!!」 れみりゃは帽子をずらして顔を覆い、丸々大きな尻を両手で隠そうとする。 ニヤニヤと笑みがこぼれてしまうのを、霊夢は止められない。 霊夢は、普段我が侭に振り回されているぶん、もう少し怖がらせてやろうと思った。 「あ、あそこに魔女が」 「うぁぁーーん! しゃぐやぁーー! ごあいひとがぁーーー!」 * * * 「……ってわけよ」 咲夜の視線に時折殺気がこもるのを感じながら、手早く事の顛末を説明しきる霊夢。 幸い、咲夜が直接霊夢に手を上げることは無かった。 咲夜は霊夢に構う暇など無いとばかりに、れみりゃにベッタリだった。 「しゃくやぁ~~、れみぃーぷっでぃ~んたべてもいいどぉー?」 「もちろんですよ。魔女だろうが巫女だろうが、私がナマス斬りにしちゃいますから」 自分を無償の愛で包み込む存在の温かさと力強さに、 れみりゃは難しい考えなど抜きにして胸の中がホカホカするのを感じた。 その嬉しいホカホカに促されて、れみりゃはバンサーイと両手を大きく広げるのだった。 「うっうー♪ しゃくやはおつよいどぉー♪ れみぃーをこあがらせたまじょさんはしゃくやにいぢめてもらうどぉー♪」 万華鏡のように変わるれみりゃの喜怒哀楽に、霊夢はお茶を一口流し込んで溜息をついた。 「……ったく、早苗も余計なものよこすんじゃないわよ」 「あら? それは読む人の問題じゃないですか?」 咲夜のものとも違う声に、反射的に顔を向ける一同。 見ると、咲夜が来て以降空いたままになっていた障子の向こう、 年季の入った板張りの縁側に、バスケットを持った緑色の髪の少女が佇んでいた。 「さ、早苗?」 「う~☆ゆっくりできるおねぇーしゃんだどぉー♪」 霊夢に社交辞令の一礼をした後、その巫女の少女は部屋に入って来て畳に座る。 そして、霊夢に向けたのとは全く違う、心のこもった微笑みをれみりゃと咲夜に向け、 はしゃぐれみりゃへ向かって手を振った。 「うっうー♪ れみぃーもおててふるどぉー♪ おひめちゃまみたいだどぉー♪」 れみりゃは、まるで王族や皇族が庶民にするように、ゆっくり手を振り返す。 想像の中で、れみりゃは咲夜や早苗に良くしてもらっているお姫様になっていた。 「……うぁ?」 ふと何かに気づいて、ぴたっと手を振るのを止める、れみりゃ。 「……う~~くんくん」 れみりゃは咲夜の膝の上から立ち上がると、 くんかくんかと鼻を鳴らしながら早苗の下まではいはいして近づいていく。 やがて、早苗が横に置いたバスケットへ、ぬうーと下膨れスマイルを寄せる、れみりゃ。 「ああ、これ? 食べるかなーと思って作ってみたの」 その様子を見て、早苗はバスケットを開いて中身をれみりゃに見せる。 そこには、美味しそうなクッキーが詰まっていた。 「オーブントースターが使えなかったからちょっと手間取っちゃたけど……」 「うぁーうぁー☆しゅっごいどぉー♪ こ、これたべていいどぉー?」 クッキーにくっつくほど寄せられたれみりゃの顔は、期待に満ちたヨダレで溢れている。 早苗が頷くや否や、目の中に星を輝かせたれみりゃは、がつがつむしゃむしゃクッキーを頬ぼっていく。 「うっうー♪ あまあま☆でりしゃすぅー♪」 口の周りや畳の上をクッキーの欠片まみれにしながら、れみりゃは幸せを全身で表現する。 その屈託の無い様に、早苗の顔も自然とほころんだ。 「ふふ、よかった♪ 隠し味にミラクルフルーツを使ってみたの」 引き続きクッキーを漁っていくれみりゃ。 それを、ニコニコ眺める早苗。 そんな2人をよそに、咲夜は目で合図をして霊夢と部屋の外に出るのだった。 その時の、少し寂しそうな咲夜の顔を、れみりゃが見ることはなかった……。 「う~~♪ おなかいっぱい☆ゆめいっぱぁーい♪」 バスケットの中のクッキーを全てたいらげて、れみりゃはポンポンと腹鼓みを打った。 「しゃくやぁ~♪ こんどこーまかんでもこれつくってねぇ~~ん♪」 くるりと振り向く、れみりゃ。 だが、そこには咲夜も霊夢の姿も無い。 「う~~? しゃくやぁ~~?」 キョトンと頭上に大きな「?」マークを浮かべる、れみりゃ。 早苗は、れみりゃの注意を自分に向けようと、畳の上に散らかっていた1冊の絵本をたぐりよせる。 「そ、そうだ、それよりこの本読んであげるね?」 「う、うびぃ!?」 絵本を見せられて、れみりゃはビクッと体をすくませる。 「……うぅ~~それこぁくないどぉ~~?」 「だいじょぶよ、とってもゆっくりした人のお話だから」 早苗が手に取った本、それは『三年寝太郎』という物語だった。 最初は訝しんでいたれみりゃだったが、 ゆっくり寝続けた人間が成功する話に、パタパタ羽を動かして御機嫌になっていく。 「うぁーい♪ やっぱりゆっくりするのはいいことなんだどぉーー♪」 めでたしめでたしと早苗が本を閉じると同時に、 れみりゃは立ち上がり、早苗に背を向けて"のうさつ☆だんす"を踊り出した。 「れみぃーのかぁ?わいい?おしりにゆっくりするがいいどぉ~♪ う~う~☆ふ~りふりぃ~♪」 その踊りは、ゆっくりした気持を表現する手段であると同時に、 自分をゆっくりさせてくれた早苗への、れみりゃなりの精一杯の感謝だった。 "今日はとっても御機嫌だから、優しい自分は特別サービスをしてあげよう" れみりゃはそう心の中で呟いて、早苗の眼前に太ましいお尻を突き出して、小刻みにふりふり揺らしだす。 「うっふ~ん☆おさわりしてもいいのよぉ~ん♪」 「え、えと……」 微笑みながらも、流石に戸惑う早苗。 「えんりょすることないどぉ♪ れみぃーからのぷれぜんとだど……」 そこまで言って、れみりゃは"うっうー♪"と畳の上でとび跳ねた。 そして、くるりと振り向いて、早苗の手を握って興奮を露わにする。 「うぁ♪ おあたま☆ぴっかーんだどぉ♪ そういえば、もうすぐかっりすますぅだどぉー♪ いっしょにこーまかんでぱーてぇーするどぉ♪ ぷっでぃ~んいっぱいで、とぉ~ってもゆっくりできるんだどぉ~♪」 クリスマス。 御馳走を食べて、サンタさんからプレゼントを貰う、とってもゆっくりできる日。 去年の冬を紅魔館で過ごしたれみりゃは、楽しかった思い出を反芻しては、幸せを噛み締めた。 今年もゆっくりしよう。 咲夜とフランと、それにこのお姉さんと、それにちょっと恐いけどあの赤白のお姉さんも呼んで、みんなでゆっくりしよう。 れみりゃはその楽しい夜を想像しては、踊り出さずにはいられなかった。 「うっうー☆うぁうぁー♪ くっりすますぅーはーかっりすますぅー♪」 うーうー☆だどだど♪ うぁうぁ☆ぷっでぃーん♪ 幸せそうに踊るれみりゃを見て、早苗は思った。 このれみりゃの天真爛漫な笑顔をいつまでも見ていたいなと……。 * * * 一方、その頃。 寒風吹く境内で向き合う、霊夢と咲夜。 咲夜は、手に持った包みを霊夢に渡した。 「……はい、これ今月のぶん」 それを受け取り、中身を一瞥する霊夢。 中には、"れみりゃの養育費"という名目のものが入っている。 「ったく、あんたも面倒なことするわね」 「仕方ないじゃない……」 今、神社の中で早苗が相手をしているれみりゃ、 彼女に戻るべき紅魔館は既になかった。 あまりにもゆっくりした日々を謳歌してしまったがために、 れみりゃは館の真の主を怒らせ、追い出されてしまったのだ。 しかし、れみりゃを溺愛する咲夜は、森へ放り出すことも出来ず、 こうして博麗神社へ預けることを選んだ。……いつか、館の主が許してくれることを願って。 もっとも、当のれみりゃはそんな事情など知らず、 少し長いバカンス旅行をしているつもりらしいが……。 「ま、居候は他にもいるし、あいつが1匹増えたところで構わないけどね」 「悪いわね……。ここなら妖怪に襲われることもないだろうし……れみりゃ様のことよろしく頼んだわよ」 "はいはい"と生返事を返す霊夢。 守矢神社の周辺に妖怪がいなければ、押し付けてやれるのに……。 そんなことを呟いて、霊夢は咲夜を見送ってから、神社の中へ戻っていく。 ゆっくりれみりゃも楽じゃない。 せめて、おはなしの国の中だけでも、もう少しゆっくりさせてやるかと思いながら……。 おしまい。 サンタクロースに、ゆっくりれみりゃをプレゼントしてもらいたい。 そんな二十何回目かのクリスマス(/Д`)・゜・。 by ティガれみりゃの人
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1362.html
一方、森の中。 四匹は楽しげに魔理沙の家へ向かっていた。 蓬莱人形に案内されながら森を進んでいく。 「おねえさんのおうちにいったらゆっくりできるね!!!」 「むきゅー! みんなでゆっくりしようね!」 自分達の所へ来て、おいしいご飯を作ってくれた優しい魔理沙。 程なくして魔理沙の家へ到着した一行。 「ここがまりさおねえさんのおうちだね!!!」 「いきなりきたからびっくりするかな?」 「ゆっくりするする!!」 「う~♪」 四匹は玄関へ向かう。 どうやら呼び鈴を鳴らそうとしたらしいがたどり着けなかった。 「ゆ!?」 「いだい!」 家に近寄ったとたん、見えない壁でもあるかのように跳ね飛ばされたのだ。 これは魔理沙が仕掛けておいた泥棒除けのトラップだが、元々人間以上用にしてある為に三匹は数十メートルも飛ばされた挙句、木にぶつかってようやく止まった。 「ゆ! いたかったよ!! ぱちゅりーだいじょうぶ?」 「むきゅー、だいじょうぶ。ゆっくりできるよ」 改めて玄関を見る。 見た限りでは何も変哲のない、ただの玄関がそこにはあった。 「う~♪ とびたいとびたい!!!」 知らない人の家の為、出遅れていたれみりゃが玄関に駆け出す。 どうやら飛んでいったのが面白そうだったようだ。 自分も跳ねたくて勢いよく玄関に直進する。 「!? うーーー!!!」 しかし、物言わぬ玄関が突きつけたのは弾幕。 トレードマークの星型の弾幕だった。 段々とパワーが上がるのであろうそれは、妖怪や並以上の人間にとっては何て事のないものだ。 「うー! っえぐ、いだい。ぱじゅりー、こぁくまー、ざぐやー!!!」 人間では無いがそれ以上に弱い、ゆっくりれみりゃには大分威力があったらしい。 傷こそ付いていないが、きぐるみから出ていた顔面に弾幕が当り、鼻の上が真っ赤に腫れていた。 その泣き声を聞いて駆け寄ってくる三匹。 「だいじょうぶ? ゆっくりできる?」 「むきゅー? ぱちゅりーはここだよ!!」 「うー! ちがうちがう!! ぱちゅりーちがう!!! おせえさんのぱじゅりーなの!!!」 「まりさおねえさーん!!! れいむたちだよ!! わるいひとじゃないからおうちにいれてよ!!!」 ゆっくり霊夢がそう叫ぶ。 この時に一歩近づいたのがいけなかったのか、またトラップが発動してしまう。 今度のトラップはアリスから盗んだ五寸釘。 それがどんどんばら撒かれる。 「むっきゅーー!!!」 「ゆっぐりでぎないよーー!!!」 最初に声をあげたのは魔理沙とパチェリー、あの日五寸釘を打たれた二匹のトラウマが再発した。 「やめてね! まりさたちがゆっくりできないよ!!!」 「うー! やだー! おうじがえる!!!」 次に混濁した意識の中でそれを見ていた霊夢、釘が当って打ち付けられた木を見て威力を理解したれみりゃが続いた。 「ゆっぐりできないよ! まりさおねえさんのおうちはゆっぐりでぎないよ!!!」 「ゆっくりはやくかえろうね! でないとゆっくりできなくなるよ!!!」 「むきゅー! むきゅー! ゆっぐりざぜでー!!!」 「うあー! ざぐやー! ぱじゅりー! こぁぐまー!!!」 未だ放たれ続ける釘を避けながら、必死にアリスノ家まで森を逆戻りする四匹。 ゆっくり達の遥か上を釘は飛んでいたのだが、それには気付かなかったようだ。 息も絶え絶えに逃げ帰った。 家に帰ると、真っ先に厳寒に駆け寄っていった。 しかし、まだアリスは戻っていないようで、鍵がかかった玄関は見た目通りの重量感を醸し出していた。 「カギカカーテルヨ! アリスガカエーテクルマデ、オソトデマーテテネ!」 「お姉さん、まだまちからかえってきてないね」 「おねーさんのおにわならゆっくりできるね」 「ゆっぐりじだい! むきゅ~」 「うっ、ぐす。うぅ、うー」 何時もの木下で休む。 健康な霊夢と魔理沙も未だに息が乱れている、大分疲れたらしい。 「なんで。なんでおねえさん、ゆっくりさせてくれなかったんだろう」 「いつもおいしいたべものつくってくれたのに……」 しかし、ゆっくりがいくら話し合っても答えが出るわけも無く、無意味なおしゃべりはアリスが帰ってくるまで続いた。 「ただいま、さぁ鍵は開けたわよ。中に入りましょう」 「「「おねえさんおかえりなさい、ゆっくりはいるよ」」」 「う~。はやくはいる!はいる!」 ゆっくり達がアリスを出迎える。 街で何か良い事があったのだろう、その顔はとても嬉々としていた。 「はいお土産のおかしよ」 そういって袋を床に置く、立ち込める食欲をそそる香り。 「ゆ!こんなにいっぱい! おねえさんおかねだいじょうぶなの?」 「大丈夫よ、遠慮しないでたべなさい」 「むしゃ……! これめっちゃうめぇ!」 「むしゃむしゃ。まりさ、ぱちゅりー、おいしいね」 「ごはん!ごはん!」 「う~?」 お土産のお菓子はたこ焼き。 勿論、朝食の時同様、お腹は減っていたがれみりゃは食べはしなかった。 「あらあら、あなた達。れみりゃは食べなくってもいいみたいよ。代わりに食べていいわよ」 「うっめ!いただきます」 「これまじうめぇ。おねえさんありがとう」 「めし!めし!」 「うー! れみりゃのごはんは! おかしじゃなきゃやだー!!!」 目の前で美味しそうに食べる三匹を、終いには泣きながら眺めるれみりゃ。 早く自分のおやつが食べたいのだろう。 昨日はきちんと、小悪魔がれみりゃ用の甘いおやつを出してくれ、朝もきちんとパチュリーがプリンを作っていって帰っていったのだ。 れみりゃがそう思うもの無理は無かったが、実際は出てこない。 食べ物の匂いが立ち込める中、三匹の意地汚い食いっぷりが更にれみりゃの涙腺を刺激する。 「うーー!うーー! おがじー! おがじぐれないとたーべちゃうぞー!」 それを濁った目で見るアリス。 思いつきで始めた元手0円の副業。 思いの他上手くいったが、利益をれみりゃに還元する気は更々ないらしい。 「れみりゃが早く遊びたがっているから、食べたら遊んであげてね」 「「「ゆっくりたべたらいっしょにあそぶよ!!!」」」 「そう……。食事は楽しく食べないとね」 仲良くおしゃべりしながら食べる三匹、この調子だと三十分はかかりそうだ。 「ゆっ! おねえさん。まりさおねえさんのおうちにいったけど、ゆっくりできなかったよ」 「あら? どうして、いままでお世話になってたんでしょ?」 「おうちのまえまでいったのに、いれてくれなかったの」 「あらあら、本当に?」 「むきゅー! はじきとばされたり、ぱちゅりーのあたまをさしたぼうで、またさそうとしてきたの!」 「……、そう。やっぱりね」 肩を落としながら答えるアリス。 これは勿論演技だが、ゆっくり達には見抜けないだろう。 「どうしたの? おねえさんだいじょうぶ?」 ゆっくり魔理沙が心配そうに駆け寄ってくる。 圧倒的な身長差の為に魔理沙の方は下から見上げる形になる。 「えぇ、大丈夫よ。だからそんなに心配しないで」 そう答えるアリスの顔は満足そうだ。 顔だけでも、魔理沙に心配してもらっている、計り知れない充実感がアリスの体に満ちていく。 「実は魔理沙は悪い魔法使いでね、あなた達に人形を使って釘を打ち付けたのも、あなたの餡子を取り出して食べたのも魔理沙の魔法の力なのよ」 「「「ゆ!!」」」 信じられない、と言った表情の三匹。 だって魔理沙お姉さんは何時もゆっくり達に食べ物を作ってゆっくりさせてくれたのに……。 「それはね、一杯食べらせて太らせるためなのよ……」 どうやら声に出していたらしい。 アリスからの返答にさらに困惑する三匹。 どうもゆっくりの頭では、理解するのに数分かかってしまうらしい。 「魔理沙お姉さん、ゆっくり達のこと騙してたんだね!!!」 「ゆっくりさせて食べちゃうつもりだったんだね!!」 「むきゅー! はじりだぐない! はじりだぐないよー!!」 三者三様の反応。 しかし、三匹とも魔理沙に対しての評価がガラッと変わったのは事実。 「おーいアリスいるかぁ?」 確かめるチャンスが来た。 「はいはい。いるわよ、紅魔館に行ったんじゃなかったの?」 アリスは平然を装って対応する、片目で三匹を見ながら。 「それがさぁ、いざ始めようとした時に八卦炉忘れたのに気付いてな。昨日色々いじってそのままにしてきちまったんだよ」 「ふーん、あんたらしいわね」 「それで戻る時にお菓子を頂戴してきたんだ、ゆっくり達に食わせてやろうと思ってな」 「っ!」 今はゆっくりガ主役だと分かってはいても、自分の為にではなくゆっくりに為に家に来た魔理沙。 ゆっくりの分際で魔理沙に馴れ馴れしくする上に、お菓子まで強請るなんて……。 声に出しそうになった口を必死に閉じる。 もうすぐそれも終わるのだから。 「はらゆっくりども、魔理沙様が紅魔館から頂いてきたケーキだぜ!」 そういってゆっくり達の前にケーキを並べる、どれも色とりどりで美味しそうだ。 「う~♪ け~き! け~きた~べちゃうぞ~♪」 れみりゃがケーキに駆け寄る。 なにせ紅魔館のけーきだ、散々目の前で三匹が美味しそうに食べているのを見せられたれみりゃは勢いよくケーキへ向かっていく。 が、すでにケーキは潰れていた。 「魔理沙お姉さんの食べ物なんか要らないよ! ゆっくりできないならでていってね!!」 「いっぱい食べさせて霊夢を食べるつもりだったんだね!!」 「むきゅー!! あやまってね!!! あやまってね!!!」 ドンドンと、音を立てながらケーキを踏みつけていく。 あっという間に床のしみに成り果てるケーキ。 「おっおい! いったいどうしたんだよ……」 「出て行ってね! おねえさんのお家から出て行ってね!!」 「うわっ、わかった! わかったよ!」 勢いに押されれ逃げるように玄関から出て行く魔理沙。 訳が分からず玄関先で固まっていた魔理沙にアリスが声をかける。 「ごめんなさい。あの子達なにか勘違いしてるみたいなの、後できちんと話しておくから」 「そうか。よろしくたのむぜ、アリス。」 元気が出た魔理沙は、アリスの肩を軽く叩いて、箒にまたがって紅魔館へと飛び立った。 「おねーさん! 魔理沙おねーさん帰った?」 「れいむ、魔理沙お姉さんとはもうゆっくりしないよ!!!」 「パチュリーも!!! おねーさんとゆっくりするよ!!!」 アリスの顔から笑みがこぼれる。 「三匹とも、魔理沙には私からよく言っておくから。その時はまたゆっくりしてあげてねくれる?」 驚きとも、困惑ともつかない表情の三匹。 やっぱり、自分たちに酷いことをしてきた人を許す事は、ゆっくりでも出来ないんだろうか? そんな考えがアリスの頭を過ぎった時だった。 「……。良いよ!! おねーさんが許すんだったら魔理沙もゆるすよ!!!」 「おねーさんは優しいから!! 霊夢も許してあげる!!」 「むっきゅー!! ぱちゅりーもぱちゅりーも!!!」 「そう……。ありがとう。……良かったわ」 コイツラはやっぱり馬鹿だ、馬鹿正直に自分の演技に掛かってくれている。 アリスの本音はゆっくり達が思っているものとは違う。 しかし、ゆっくり達の本音はアリスも理解している。 だから面白い、楽しい、快感なのだ。 「それじゃあ、夕飯まで遊んでいらっしゃい。日が暮れたら帰ってくるのよ」 「」 「うん、ゆっくり帰ってくるよ!!」 「「お姉さんいってきまーす!!!」」 「行ってらっしゃい」 笑顔のまま三匹を見送る。 そのまま家の中に入る、が今度は異質の笑顔を向けていた。 「うーー!! れみりゃのけーきがぁ!! けーきがぁ!!!」 そう言いながら、地面に落ちたケーキを見て泣き叫ぶれみりゃ。 かつてのレミリアの面影は全く無いが、アリスにはそんな事関係ない。 レミリアが無様に泣き叫んでいる、そう思うと不思議のアリスの心も満たされていく。 「う~!! れみりゃのけーぎ!! ……う~♪」 あろう事か、床に落ち潰れたケーキを食べようとするれみりゃ。 「う~♪ げーぎ♪ げーぎ♪」 うつ伏せになり、顔を近づけ、正にれみりゃの舌がケーキに触れよとしたとき。 「うぇぶ!! え゛ーー!! ぎ゛ょ゛ーーーーー!!!!」 アリスの人形がれみりゃの舌を打ち付けた。 しっかりと打ち付けられた舌の所為で上手く話すことも、動くことも出来ない。 少しでも動くと舌が抜けそうな程の激痛が走る。 今まで紅魔館でぬくぬくと暮らしていたれみりゃが感じた本当の痛み。 「うがーーーー!!! じゃぐあーーー!!! じゃくがーーー!!!」 肉汁を口から溢して、必死に叫び声をあげるれみりゃ。 「だめじゃないれみりゃ、あなたは紅魔館のお嬢様なんでしょ? そんな汚いの食べちゃいけないわ」 アリスが口調は優しく語りかける。 「う~!! いだいーーー!! ざぐやー!! ぱじゃりーー!! ごぁぐまーー!!!」 何度目かも分からない助けを求める声。 生憎と呼んだ人物の中にゆっくり愛玩者は無く、ただ煩いだけの叫び声と成り果てる。 「ふふ。無様ね、れみりゃ。でも安心して、貴方と違って私はとっても慈悲深いから助けてあげるわ」 「うわーーー!!! うっ? う~~~♪」 首根っこを掴んで持ち上げる。 猫を持つような格好だが、持っているのは猫ではなく元紅魔館のお嬢様。 「う~♪ たかいたがーーい♪」 そのまま、二階まで上がり一番日当たりの良い部屋まで連れて行く。 「う~!!! もっと~~~♪ もっとたかいたか~い♪」 床に降ろされたれみりゃは、よほどさっきのが楽しかったのかしきりにもっともっととおねだりをして来る。 「……」 それを無視して、アリスはあの大きな透明な箱の中にれみりゃを入れる。 「う~? だしてーーー!!! だしてーーーー!!!!!」 防音になっているのか、その声を無視してアリスは下に降りてしまった。 「うーーー!!! あーーーーー!!!!!」 残されたれみりゃは、必死にそこから出ようともがくがそれも叶わない。 それどころか、事態は段々と悪い方向へ転がっていく。 「う!! いだいーー!!! いだーい!!!!!!」 突如れみりゃの体に激痛が走る。 「ああーーー!!!! いだーーーい!!!!」 それに驚き、飛び跳ねるとまた激痛が。 「あがが!!! しゃくやーーー!!! ぱじゅりーーー!!! こぁくまーーー!!!!」 「ぎゃーーーー!!!!」 知能の低いれみりゃに動かない、と言う選択ができるはずもなく延々と苦しみを味わい続ける。 朝、裸で外に出された事、そしてその上からきぐるみを着せられた事。 その二つが、今回もれみりゃの体中をかぶれさせた原因だった。 「あぎゃーーー!!! うぎゃーーー!!! いだいーーー!!!!」 夜中も相変わらず叫び続けるれみりゃ。 既に、アリスも他のゆっくり達も夢の中に旅立っているが、痛さで寝るどころではない。 「うーーー!!! うーーー!!!」 それでも、ずっと泣き叫んでいる事で疲労が溜まっているのだろう。 「うーー!!! ……いだい……」 徐々に、そのれみりゃも夢の中に落ちていった。 翌朝。 「う~♪ おながすいたぞ~♪」 れみりゃは空腹で目が覚めた。 「う!! いだい!!! いだい!!!」 しかし、直ぐに体中に痛みが襲ってくる。 「あが!! ううう!!! うーーー!!!」 「あら、起きたの? れみりゃ」 部屋に入ってきたアリスの腕には、美味しそうな料理が載せられていた。 「うああーー!! いだいーー!! おながへっだーーー!!!!」 「はいはい。ちょっとまってね」 箱からだし、きぐるみを脱がせる。 それで、痛みが幾分和らいだれみりゃの興味は、今度は食事の方へと向いた。 「うーー!! ごはんたべりゅーー!!!」 「ええ。どうぞ」 「うっう~~♪」 思えば、昨日の朝から食事をしていなかったれみりゃは、目の前に出された食事にがっついた。 「う!! まずいーー!! これいらない!!! おがしちょーーだい!!!」 飛び散る食事。 どうやら、この状態になっても、お菓子以外は食べたくないらしい。 「はーーやーーぐーーーおーーーーがーーじーー!!!!」 「……」 「おーーーーがーーじーーーー!!!!」 「だまれ」 「おーーー!! むぐぐ!!」 飛び散った食事を、無理矢理れみりゃの口の中に押し込んでいく。 「まったく、何時から紅魔館のお嬢様はこんなに我侭になったのかしら? ダメじゃない好き嫌いしちゃ?」 「ううーー!!! うーーー!!! まずーー!!」 「だまれっていってるのよ!!!」 「!!! ぎゃーーー!!! いだいーーー!!!! もご!!」 アリスは、れみりゃの傷だらけの肌を思い切り掻き毟る。 悲鳴を上げたくても、口には大量の食べ物がドンド運び込まれる。 「ほら、ドンドン食べてね。折角作ったんだから」 「うーー!! ぎゃーーー!!!!」 吐き出そうとすると体に激痛が走る。 そんな事を繰り返しているうちに、少しずつ喉の奥に運び込んでいくようになった。 「うーー!! ごくん!! うーーー!!!!!」 「そうそう。偉いわ」 「うーーー!!! ぜんぶたべだーーー!!!!」 死に物狂いで、全ての料理を平らげたれみりゃはその泣き顔でじっとアリスを凝視した。 「ええ。今度から食事はきちんと食べるのよ」 「うーーー!!!」 口答えする気も起きないらしく、ただただアリスの言う事に頷く。 「そうだ、体痛いでしょ?」 「う? うーー!! いだいーー!!!」 どうやら、今まで忘れていたらしい。 思い出した今は、しきりにイタイイタイとアリスに叫ぶ。 「これがいけないのよ? こっちを着なさい」 「あああーーー!! きぐるみがーー!!! どーじでーーー!!!」 目の前で着ぐるみを完全に灰にしたアリス。 そして出されたのは、れみりゃの服だった。 「う~~♪ きぜで~~~♪ びぎゃ!!!」 「自分で着れるでしょ?」 「うーーー!!!」 痛い体に鞭を打って、必死に服を着ていくれみりゃ。 「うっぎゃ!!」 「そこはそうじゃないでしょ?」 「う? う? うっぎゃーーー!!! いだいーー!! いだいーー!!!!」 「ほら、きちんと着なさい」 「うーー!!! うーーー!!!」 この痛みから逃れるためには、はやく服を着てしまうしかない。 この服を着る時も痛みがあるだろうが、アリスに蹴られるよりは痛くはない。 何度も蹴られながら、それでも必死に、そうして何とかきちんと服を着ることができた。 「そう。やればできるじゃない」 「う……、う~~~♪」 「じゃあまたそこに入っていなさい」 「うーーーー!!!!!! だじでーーー!!! だじでーーー!!!!」 またしても、アリスはれみりゃの叫びを無視して行ってしまった。 それから一週間、れみりゃは毎日同じ生活を続けた。 食事は一日三回、お菓子などは一切出てこない。 服は朝、一度脱がされる、そして着替えさせられる。 一度だけ、そのまま過ごしていたことが有ったが、その時は体中に唐辛子を塗りつけられた。 一方の三匹は、その一週間をゆっくりと過ごしていた。 朝は可愛らしい人形に起こされ、朝食を取り森に出かける。 そしてお昼に帰ってきて昼食を取り、今度は家の庭で遊ぶ。 夕食後は、庭か自分達のベッドで遊ぶ。 ゆっくりとした一週間。 三匹が気になった事といえば、今まで遊んでいたお友達がめっきり来なくなってしまった事だけだった。 ―― そして一週間後。 その日の朝は、何時も通り始まった。 「ホーライ!!」 「ゆゆ!! おにんぎょ~さんおはよう!!」 「今日も霊夢たちはゆっくりするよ!!」 「むきゅむきゅ!! きょうも元気にすごすよ!!!」 人形に連れられ、家の中に入る三匹。 三匹は気付いていたのだろうか。 家の人形達は、全て修理を終えていた事に……。 「「「おねーーさん!! おはよう!!」」」 「おはよう。さぁ朝ごはんよ」 何時も通りの朝の挨拶。 そう言ってアリスが食事を出してくれる事も何時も通りだった。 「いっただきま~す!!」 「むっきゅ~~!! おいし~~~!!!」 「むっしゃ!! うめぇ!! めっちゃうめ~~!!」 ガツガツ!! ムシャムシャ!! 辺りには、モノを咀嚼する音だけが響く。 そして、ニコニコと美味しそうに食べる三匹を眺めるアリスの姿。 「むっぐもぐ……? ……?」 最初に、異変に気付いたのはゆっくり魔理沙だった。 「……おねーさん。このあんこどーしたの?」 「ゆゆ?」 「むきゅ?」 他の二匹も、食べる口を留めて魔理沙のほうを向く。 「どういしたの魔理沙? ゆっくりおいしーよ」 「そうだよ!! おいしーよ!!」 「だって!! だってこのあんこおかしいよ!!!」 小刻みに、魔理沙の体が震え出す。 自分は、以前にもこの味を食べたことがあった。 「美味しいでしょ? いままで遊んでいたお友達の餡子よ?」 「ゆ? なにを言ってるのおねーさん? 霊夢にも分かるようにせつめいしてね!!」 「むっきゅ~~~?」 「今まで仲良く遊んでいたお友達は、皆加工場に連れて行って餡子になっちゃったのよ」 クリクリした瞳を向けて尋ねてくる二匹に、アリスは端的に言い放った。 「!!! やっぱりおねーーさんがやったんだね!!」 ゆっくり魔理沙が、アリスの下に駆け寄ってくる。 「ゆ!!!」 しかし、多くの人形達にそれは阻まれてしまう。 「ええ。貴方達が加工場の中で楽しくゆっくりしていた時に、全部捕まえてあげたのよ」 「ゆー!! おねえさん!! どうしてそんなことするの!!」 「むっきゅーー!!!」 「どうしてって、あんた達が私の家をメチャクチャにしたからでしょ。折角魔理沙一緒に暮らすために、一緒に魔法の研究をしようと綺麗にしていたお家を……」 押し黙るアリス。 ボソボソと、魔法使い特有の早い口調で言葉を続ける。 「でもね、あなたたちはころさないであげたのよ。せっかく魔理沙が気に入ってたしね。魔理沙は優しいのね。でもね!!!」 「「「!!!!」」」 「でも、あんた達三匹は折角魔理沙が持ってきたお菓子を台無しにしただけじゃなくて、魔理沙を悲しませる事を行ったりして。それが許せなかったのよ!!!」 アリスの独白が終わると、家中の人形が三匹を取り囲んだ。 「ゆゆ!! おねーさん!! おねーさんが魔理沙おねーさんはゆっくりできないっていったんだよ!!!」 「私がそんなこと言うわけないじゃない!!! 魔理沙は、魔理沙は一緒に居るだけでゆっくりできるのに!!!!!」 「ゆゆーーーー!!!!!!」 「れいむーーーー!!!!!!!!」 一体の人形が、霊夢の頭に釘を突き刺す。 深く、深く突き刺さった釘が、霊夢の体に痛みを伝える。 「ゆーー!! いだいよーー!! ゆっくりさせてよーーー!!!」 「やめて!! やめておねーーさん!!」 「むっきゅーー!! やめてあげてね!!! やめてあげてね!!!!」 「……忘れたのかしら?」 「!!! ぶげっ!!!!」 魔理沙の顔面にアリスのつま先がめり込む、余りの痛みに、ヨタヨタと転がりまわる魔理沙。 「返事は、だぜ! っておしえた筈よ?」 「ゆ!! ゆるしてほしいんだぜ!! ありす!!!」 「そう。それで良いのよ。魔理沙」 「ゆ!! ゆぐぐ!! ゆーーー!!」 魔理沙は泣いていた。 今までの一年間は夢だったのだろうか。 三匹が仲直りして眠りについて見た夢だったのだろうか。 「ゆぶ!!」 霊夢を掴みあげ、釘を引き抜く。 「ゆぎーーー!!!!」 そのまま、頭の後ろに大きな穴を開ける。 「貴方は、毎朝美味しい餡子を出すのよ。だから今まで通りゆっくり過ごしてね。もし不味くなったら、お友達が困った事になるかもしれないわよ?」 「ゆゆ!! ゆっくりすごす、……ぜ? ぶげら!!!」 「何を言っているのか分からないんだけど、貴方ってそんな喋り方だったかしら?」 「ごめんなぜい!!! ありすおねーーざん!!!!!」 「うん。それじゃあ毎朝よろしくね」 「はい!! はい!!!」 霊夢を床に降ろし、パチュリーの元へと近づいていく。 「むきゅ? むきゅーーー!!! ごめんなざいーー!!!!」 「なんで謝るのかしら、貴方は何か悪いことしたの?」 「むきゅ!! まりざおねーざんに、わるいごといいまじた!!!!」 パチュリーが、自分に出せる精一杯の声でアリスに話す。 「そうだったわね、でも正直に言ったから許してあげる」 「むきゅ~♪」 「でも、貴方も体が弱いのに、家のゆっくり魔理沙と遊ぼうとしてたわよね? おかげで、魔理沙はゆっくり出来なかったのよ」 「むぎゅ!!!」 パチュリーは魔理沙のほうを見るが、そこには必死に顔を横に振っている魔理沙が居るだけだ。 「でも安心して、これからも、魔理沙と遊んで良いわよ。ただし」 「むきゅ?」 「毎朝、きちんと走って体を鍛えてね。人形を一体付けてあげるから」 「むぎゅーー!!!! むぎゅーーーー!!!!!」 「ふふ。それじゃーね。……さて」 「!!!!!」 再び、魔理沙の前に立ったアリス。 その顔は笑ってはいるが、これは本当の笑いではないと、魔理沙の眠っていた記憶が教えている。 「貴方、私の首を思いっきり突き飛ばしたわよね?」 「ゆ!!!」 「その前に、自分で自分は幸せですって言ったわよね?」 「ゆー!!!」 「それなのに、どうしてそんな事したのかしら?」 「ゆゆゆ!!!!……」 「どうなの?」 「ゆ……ゆーー!!!」 「答えられないの? だったらそこのお友達も加工場に連れて行かないとね」 「!!! まっで!! 魔理沙が悪かったです!!! おねーさんからにげようとしまじた!!!」 「それで?」 「ごめんなざいーー!! もうぜっだいにじまぜんからーー!! ぱじゅりーーとまりざをゆるじでーーー!!!!!」 「私が聞いているのは、そんな事じゃないの」 「ゆ?」 「今、幸せかどうか聞いているの」 「!! はい!! 魔理沙はいまどっでもしあわせです!! だいずきなアリスとくらぜてしあわせd……だっぜ!!!!」 「嬉しい!! やっぱり魔理沙はゆっくりでも魔理沙ね!!!」 「ゆーー!! 好きだぜアリズ!! アリズーーー!!!」 やっぱりあれは夢だった。 笑顔で頬を寄せ合う一人の魔法使いと一匹のゆっくり。 そして、二匹のお友達。 四匹の幸せな日々は、何時までもゆっくりと続く事だろう。 ~koumakan part~ 「うーー!! さぐやーー!!! ぱちゅいーーーー!! こあぐまーーー!!!」 既に一週間の殆どを箱の中で過ごしていたれみりゃは、今まで自分を大事にしてくれた紅魔館の人のことを考えていた。 「うーー!! ぱじゅりーーー!!! こあぐまーーーーー!!!!」 「呼んだかしら? レミィ」 「!!!!! ぱじゅりーーー!!!! ぱじゅりーーーー!!!!!!」 そこには、嘗て自分を大事にしてくれたパチュリーの姿があった。 「はいはい、どうしたの?」 箱かられみりゃを出してやり、胸に抱き寄せ優しく尋ねる。 「うーー!!! ごごいやだーーー!!!! おうじかえるーー!!!!」 「そう。おうちにかえりたいの?」 「うんーーーー!!! かえりたいーーー!!!」 余程辛かったのだろう、滝のように涙を流し続けるれみりゃ。 「それなら、帰りましょうか?」 「う!! いーのーー!!!」 「ええ、でもね」 「う?」 「帰っても、貴方は前のように生活できないわよ? お菓子も出ないわよ?」 「ぞれでもいーーー!!! おねがいーーーー!!! がえらぜてーーー!!!!!」 この一週間、普通の食事をしていたれみりゃにとってそれはもう苦労でもなんでもなかった。 「そう。それじゃあ帰りましょう。そうそう、お友達を連れてきたわ」 「う? おともだち?」 「これですよ」 隣に立っていた、小悪魔の後ろから顔を出したモノ。 姿形は、れみりゃに良く似ているが、服と羽が大きく違っている。 「うーーー!! ゆっくりしねーー!!!」 それは、紛れもなく、あの怖かったお姉さんそっくりのゆっくりだった。 「うーー!! ゆっくりs!!! いだいーーー!! いだいーー!!!」 そして、このゆっくりも体中に湿疹や汗疹の痕が有った。 「この子も、今日加工場から引き取ってきたの」 幾ら今まで風評が良かったとしても、ゆっくりになっては意味がない。 「さて、帰りましょうね。帰ったら、二人とも仲良くお風呂に入りましょう」 「うーーー!!! うーーー!!!!」 「うーーー!!! うーーー!!!!」 今までは、折り合いが悪かった姉妹だったが、これからは仲良くメイド達のイジメに絶えながら生活できる事だろう。 紅魔館。 現在はスカーレット血縁者が途絶えたため、前当主・前々当主の友人であるパチュリー・ノーレッジが党首の座についている。 「小悪魔。さっさと帰るわ。これをお風呂に入れないとね」 「はい。パチュリー様。そうだろうと思って出かける前にメイドさんに言っておきましたよ」 しかし、殆ど図書館に篭りっきりの当主に代わって従者でも有る司書が屋敷を纏めているらしい。 The end このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4340.html
かんばんむすめ 書いた人 超伝導ありす このSSは以下の要素を含みます。苦手な方は読むのをお控えください。 ゆっくりを食べるシーンがあります ゆっくりを愛でるシーンがあります 死なないゆっくりがいます 罪のないゆっくりがひどい目に遭います ぬるいじめ 「いらっしゃいませ、なんだどお~♪」 ここは郊外の喫茶店。 門前には、一匹の胴付きゆっくりれみりゃが立っていた。 頭でっかちで、背丈は80cmほど。 首からは『かんばんむすめ』と下手な字が書かれたプレートを下げている。 「ゆっくりカフェでいやされていくんだどう~」 にぱにぱ~。と笑顔を振りまき、お客さんが興味を示すと、れみりゃ必殺の『のうさつだんす』を披露する。 「れみ☆りあ☆うー」 微妙な腰つきとめちゃくちゃな腕の振り。 正直、見ていて感心できるような踊りではないのだが、愛でお兄さんたちには概ね好評だった。 「やきたてコーヒーとパンがじまんのゆっくりゃカフェなんだどお~!」 「じゃ、今日も焼きたてコーヒーをいただいてから仕事に行くよ」 常連の愛でお兄さんが、れみりゃの帽子を撫でてから店に入った。 「いちめいさま、ごあんない~」 客が店に入ると、そこにはエプロンを付けた胴付きのふらん、そして胴付きのぱちゅりーが出迎えた。 「むきゅう~。ぱちゅりぃのとしょかんでゆっくりしてくといいわぁぁ」 「う~。ふらん、ねむいけどがんばる~」 もちろん、カウンターの奥には人間のオーナーがいる。 極低脳で勘違いだらけのぱちゅりーや、情緒不安定でひきこもりがちなふらん、踊ってばかりのれみりゃ。 もしオーナーがないければ、この店でまともなブレックファーストを望むのはムリだっただろう。 しかし、この店はこの三馬鹿トリオを売りにした、ゆっくりカフェの一つなのである。 猫喫茶などと同じノリだ。 「むきゅう?ごちゅうもんはうぃんなーだったかしら?」 「がおー。さーしちゃうぞ~!」 カフェは今日も愛でお兄さんたちの足が途絶えることはなかった。 その日も、カフェは概ね平和だった。 「う~。う~。に、にぱ~」 今日もお外で看板娘をつとめる、れみりゃ。 しかし、今日はれみりゃにとっては不運が重なった。 一つは、オーナーが朝寝坊をしてしまったこと。 一つは、昨日の夜、ぱちゅりーが体調を崩し、代わりに外に出なければならなかったことだ。 このカフェは、遅めの出社をするお兄さんたちに朝食も提供している。 そのため、ちょっとでもオーナーが寝坊をしてしまうと、朝ご飯は後回しになってしまうのだった。 「れみりゃのカフェなんだどう~。おいしいコーヒーたべていってほしいどお!」 それでもれみりゃは頑張っていた。 飼い主であるオーナーの料理の腕は確かであると、巷では評判だった。 看板娘を抜きにしても、少なくともゆっくりが極端に嫌いでなければ、料理を食べに来る客も居る。 「はやく、ごはんたべたいんだどお~。がんばるんだどお~」 毎日の食事は、そのオーナーが愛情を込めて作るのだから、おいしくないはずがない。 寝坊をした時の朝食は、お詫びを込めてスペシャル料理が振る舞われる。 お客さんにちやほやされ、ダンスを披露しては拍手喝采。 暖かい寝床と最高の食事、優しくしてくれる飼い主。 そんな『ごーまかん』を持ったれみりゃは幸せだった。 …昨日までは。 ふと、れみりゃの目の前を、とあるお姉さんが通り過ぎた。 「うあ~!?めちゃくちゃおいしそうなにおいなんだどお!?」 急いでいるのだろう、小走りで通り過ぎたお姉さんが持っていたのは、ほかほかの大判焼き。 その大判焼きは、れみりゃの本能を刺激する匂いを発していたのだ。 それはカフェの近くにある、老舗菓子屋の名物だった。 老舗の大判焼きの餡子には、ゆっくりと苦しめたれいむ種の餡子が使われている。 もちろん、虐待したゆっくりの餡子が使われているというのは企業秘密だ。 ごくごく一般的にはゆっくりの虐待なんてものはイメージが悪い。 それを『昔ながらの味』として売っているのだから、よくある食品偽装である。 「まつんだどお~。それをすこしだけわけでほしいんだどお~」 ともかく、お腹の空いたれみりゃは、匂いに釣られて持ち場を離れてしまった。 いつもなら、「こんなまいずものいらない!」と一蹴してしまうはずの、大判焼き。 しかし、お腹がぺこぺこなれみりゃが、食欲に勝てるはずもない。 しかも間の悪いことに、お姉さんは騒音カット式のイヤホンで音楽を聴いていて、れみりゃには気がつかなかった。 よい子のみんな!危ないから通行中はノイズキャンセリングをオフにしてね! 「まってほしいんだどお。あまあまたべたいんだどおお」 相手は小走り。こちらは腹ぺこでへなへなのれみりゃ。 追いつけるはずもなく、れみりゃは気がつかずに、店からずっと離れてしまっていた。 「う?う~?ここはどこなんだどお?」 気がつけば、見知らぬ住宅地の中。 お姉さんはとっくの昔に視界から消え去っている。 「おなかぺこぺこなんだどお。はやくかえってごはんをたべるんだどお♪」 ごはんの事を考えると、頬のゆるむれみりゃ。 しかし。 「う?うあ?ご~まかんはどこなんだどお!?」 今になって自分の置かれている状況に気がつく。 ここはれみりゃの知らない場所。どちらを向いても同じような家しかない。 それもそのはず、れみりゃは生まれてこのかた、『ごーまかん』たるカフェから離れたことはなかった。 知っているのは、カフェの中と、隣にあるお庭だけ。 「れ、れみりゃはまいごなんかじゃないどお!れでぃはとりみだしたりしたないんだどお!」 自分を言い聞かせるかのように強がり、あっちをウロウロ、こっちをウロウロ。 状況はまったく好転しなかった。 「お。れみりゃじゃねーか」 「うあー。ごーまかんがわからないどお!」 それを見つけたのは、住宅街に住むお兄さんだった。 すでに何人かの人間とすれ違っていたのだが、関わらない方がいいとすべてスルーされてきたのだ。 「ちっ、なんだ。飼いゆっくりのマークがついてやがる…」 お兄さんは忌々しげに舌打ちした。 れみりゃの帽子に燦然と輝く金色の星形バッジ。 これは、そのゆっくりが飼いゆっくりであることを証明するものだ。 現代では害虫扱いのゆっくりでも、飼いゆっくりとなると勝手が違う。 お兄さんは虐待お兄さんだった。 虐待しようと思ったれみりゃが野良ではなかったことに、ひどく落胆する。 (そういや…胴付きのゆっくりカフェがあっちにあるんだっけか…) 「おい、れみりゃ。おまえのごーまかんは、あっちだぞ!」 そう言って、虐待お兄さんが指さしたのは、れみりゃのカフェとは正反対の方角だった。 「うっうっうあうあ。ありがとうなんだどお」 れみりゃは何の疑いもなく、その方向へと体を向けた。 ふらふらと危なげなく飛んでいくその背中を、お兄さんは満足げに眺めていた。 これは虐待ではない。 もっとも、れみりゃの運命は見えたようなものだったが。 れみりゃはしばらく飛んでいたが、住宅街の空き地があるのを見かけると、翼を休めた。 今時珍しいが、その空き地には子供が入れそうな土管が積まれている。 「もうげんかいなんだどお…。あそこでやすむんだどお」 太陽は、もうてっぺんまで登っていた。 このまま日差しに照らされていたら、パサパサのまんじゅうになってしまう。 土管の影で休もうと考えたのだ。 とはいえ、ゆっくりが考えることは同じだった。 土管の中には先客がいたのだ。 中に居たのは、野良のれいむ一家。 親れいむ一匹に子れいむが二匹。 今日は餌にありつけたのだろうか、満ち足りた表情で昼寝をしていた。 「う?あ、あまあまがいるんだどお!!」 野良のれいむ一家の身なりは薄汚れていた。 ゆっくりは本来、きれい好きなナマモノである。 野生のゆっくりであれば、水辺で体を洗ったり仲間同士で嘗め合ったりと、身繕いに余念がない。 しかし、一度都会に出て生活し始めると、そうはいかなくなる。 食事はゴミ漁り。 人間や先住民たちの迫害をくぐり抜けるため、生きていくのに直接関係ない時間は省かねばならなくなる。 おまけに都会の川は広かったり汚れていたり。 いつものれみりゃだったら、こんな汚いものは「ぽい!」している。 が、もはや空腹は今までに感じたことのないレベルに達していた。 「がお~!!た~べ~ちゃ~うぞ~~~!!」 「ゆゆっ!?」 危険なフレーズを聴いた気がして、親れいむは慌てて目を覚ました。 野良生活では危険が付きものだ。 親れいむの反応は早かった。 だが。 「おきゃーしゃあああん…!!」 「おちびちゃん!?」 「うーあまあま!」 その時すでに、れみりゃは子れいむを一匹、むんずと両手で捕まえていて、ちょうど。 「ゆぎゃああああ!!」 捕まえた子ゆっくりの横っ腹を食い破るところだった。 「おぢびじゃんがあああ!!!」 「れいむのいもうどがあああ!!」 「このあまあまはとってもおいしいんだどお!!」 今のれみりゃにお上品なんて言葉はない。 飼いゆっくりとして、食事はこぼさないようにと躾けられてはいたが、今は餡子を盛大にこぼして食べている。 「もっちょ…ゆっぎゅり…し…」 子れいむの口が、れみりゃの口の中に収まっていった。 「これじゃあたりないんだどお!」 両手を餡子で汚しながら、れみりゃは震えていた親子に視線を向けた。 尊い犠牲が、まったくの無駄になってしまうのが、ゆっくりがゆっくりたる所以。 「おちびちゃんにげてええ!!」 「ごわいよおお!!」 思わず身を翻した親れいむの後ろに、子れいむは続かなかった。 いや、続けなかった。 修羅場を抜けた場数の違いか、子れいむは恐怖にすくみ、動くことができなかったのだ。 「まっでね!おぢびじゃんはたべでもおいじぐないよお!?」 「ゆああああ!!」 自らが作った涙の池から、子れいむの体が離れた。 「やっぱりあまあまさんはおいしいんだどおお!!」 子れいむの餡子の味は、れみりゃの五臓六腑(ないけど)に染み渡る。 今のれみりゃは、今までに食べたどんなに豪華な食事よりも餡子の味を堪能していた。 本能が、これこそが本来の食べ物だと、告げていたのだ。 「あ…あ…」 親れいむは、れみりゃから少し離れた場所から惨劇を眺めていた。 涙がとめどなく流れる。 れいむは都会生まれのゆっくりである。 生まれた時からゆっくり出来ない環境に晒され、それでも自分なりにゆっくりを探求してきた。 そして見つけた、自分だけのゆっくり。 ごはん集めがとっても得意で素敵なまりさと出会い、蜜月を経て得た、何物にも代え難い子供たち。 まりさは途中で潰されてしまったが、まりさの遺した子供たちだけは何としても育ててみせる…。 この子たちにも、自分のゆっくりを見つけてほしい…。 母親の切なる願いは、こんな簡単にも霧消してしまった。 「ごべんね!ごべんね、おぢびじゃんだぢ!!」 親れいむは走り始めていた。 自分一匹では、どう足掻いてもれみりゃには勝てない。 今は生き延びよう。 生き延びて、また可愛い赤ちゃんを産むことだけが、食べられた子ゆっくりに対して唯一できる償いだった。 「う~。おなかいっぱいになったんだどお」 一方、れみりゃは子れいむ二匹で十分に満足していた。 土管はほどよく涼しく、眠気を誘うには十分だった。 食べたら寝る。 野生では基本のスタイルである。 しかし、れみりゃは気づくべきだった。 自分は野生のれみりゃではない。 飼いれみりゃであることに。 「あの土管に、最近れいむが住み着いてるんだ」 時刻は小学生の下校時間になっていた。 すぐ近くに隣同士で住んでいる小学生二人が、空き地に入ってくる。 カバンを背負ったままの、学校帰り。 ダイちゃんとシゲちゃん。 二人は幼なじみで、いつも一緒に行動していた。 その二人が、れみりゃの寝ている土管を覗き込んだ。 「あれ。なんだ、れみりゃじゃないか」 「おっかしーな。昨日まではれいむの親子だったんだけど…。ああ!」 ダイちゃんが手を叩く。 「このれみりゃが食べちゃったんだよ。ほら、餡子の後もあるし」 「せっかく久しぶりにゆっくりサッカーができると思ったんだけどなあ」 「いいじゃん。こいつで遊ぼうぜ」 シゲちゃんは「そうだな」と、ニカッと笑い、れみりゃの体を土管から引きずり出した。 「う~?うあ~?なんなんだどお!?」 足を引っ張られ、太陽の光を浴びて、れみりゃは即座に目を覚ました。 れみりゃは人間と同じサイクルで生活しているが、本来れみりゃ種は夜行性なのである。 いつもは鈍感なれみりゃだが、太陽に対する反応はそれなりに早かった。 「うっう~。にぱ~☆」 れみりゃは子供たちに気がついて、あおむけのまま愛想を振り向いた。 「うわ、気持ち悪いな」 「あれ、なんか書いてあるよ?」 子供たちは七文字のミミズ文字を解読しようとする。 「れみりゃは、かんばんむすめなんだどお」 「って、オイ!」 シゲちゃんがれみりゃの腰をけりつける。 「うぎゃああ!なにするんだどお!?」 れみりゃは驚いて立ち上がろうとした。 ダイちゃんは、そのれみりゃの足を引っかけて転倒させる。 今度はうつぶせの状態で倒れた。 「せっかく読もうとしてたのに、答えをバラすんじゃねえよ!」 シゲちゃんはれみりゃの尻を何度も踏みつけた。 最後に靴の先端を背中にたたき込むと、れみりゃのババくさい服にじわりとシミが広がった。 背中の皮が破け、肉汁が漏れだしたのだ。 「いだいんだどお!やめでほしいんだどお!!」 「蹴り飛ばして遊ぶもんだから、看板は!」 れみりゃは何がなんだか分からなかった。 それもそのはず、れみりゃはずっとカフェの看板娘だった。 ごーまかんの中で思う存分ゆっくりして、人間には頭を撫でられるのが普通。 このような謂われのない暴力、しかも、怪我をするような仕打ちを受けたことはなかったのだ。 「れみりゃはかわいいんだどお!ごーまがんのあるじなんだどお!かんばんむすめなんだどお!」 「ほら立ってごらん、にくまん。遊んであげるよ~」 「れみりゃはにくまんじゃないどお!?」 背中の傷口はとっくに塞がっていた。 れみりゃは解放されると起きあがり、二人に向き直って抗議しようとした。 「はい、ここにございますのは墨汁~!!」 「と、筆!」 いつの間にかシゲちゃんは墨汁をしみこませた筆を用意していた。 「はい、すわる!」 「う?」 れみりゃはダイちゃんに上から圧力をかけられて思わず正座した。 「う~?ふきふきしてるれるのお~?」 「そうだったらいいよねえ」 「ま、看板だったら時々書き換えてやらないとな!!」 シゲちゃんは筆でれみりゃの顔に落書きした。 ○とか×を顔に書き込み…。 「意外とコレ、面白くないな」 「本来は罰ゲームとして笑い会うシーンだしね」 ダイちゃんはれみりゃの翼を、おもむろに引きちぎった。 「うぎゃあおおおお!?」 「さっきから声が大きいって!」 「ぶぎゃっ!?」 シゲちゃんは教科書のカドで、れみりゃの口を横から叩いた。 教科書のカドは勢い余ってれみりゃの口元を横一文字に切り裂いてしまう。 「おお、口裂けれみりゃだ」 「気持ち悪いなあ。やっぱりれみりゃは遊ぶのに向かないね。れいむだったら餡子が吹き出るだけだけど」 「中身が肉まんだと、変な感じだよな」 二人はれみりゃに興味を失いつつあった。 そもそもは、ここにいたれいむをボールの代わりに蹴飛ばして遊ぶ予定だったのだ。 胴付きのれみりゃでは、そういうわけにもいかない。 かといって、首をねじり切ってしまえる程、二人は救いようのない悪ガキでもなかった。 「ほ~ら、残ったぼくじゅー!」 シゲちゃんは墨汁をれみりゃに振りかける。 「うぎゃおー!れみりゃのえれがんとなおべべが!おべべが!」 「おべべ、だって(笑)」 「帰ってゲームでもしようぜ」 「だな。ま、このままじゃつまらないから…」 シゲちゃんが取り出したのは、縄跳び。 「な、なにするんだどおお!?れみりゃにそんなしゅみはないんだどお!」 「ここをこーしてこーするの!」 二人は連携プレイで縄跳びをれみりゃの体に巻き付け、キュッと縛り上げた。 「うあー。ほどくんだどお!かえれないんだどお!」 れみりゃは見事に全身を縛り上げられていた。 足と腕を背中へと折り曲げ、ぐるぐる巻いただけ、という荒っぽいものだったが。 おお、しばりしばり。 「さて、帰るか」 二人は荷物をまとめる。 「うあー!だすげで!だずげて!」 「さくやー。かな?」 『…おにいざん!!』 「え?」 思わず振り返った。 二人がれみりゃをいじめたのはこれが初めてはない。 そして同時に、ピンチになれば共生関係にあるゆっくりさくやを呼ぼうとすることも知っていた。 だが、このれみりゃが呼んだのは、お兄さん、だった。 「うっわ!やべ!」 「こいつ、飼いゆっくりだったのか!」 ダイちゃんとシゲちゃんは、今になってれみりゃの帽子に付いているバッジに気がついた。 飼いゆっくりをいじめていけない事は、二人だって知っている。 でもまさか、飼いゆっくりが一人で土管で寝ているとは思わなかったのだ。 元々、れいむをいじめるつもりで、ここへやってきた、という先入観もある。 「ど、どどどどどうしようダイちゃん?」 「と、とにかく落ち着こう、し、しんこきゅー!」 「あ、そうだ!」 シゲちゃんは、れみりゃの帽子を素早く奪い取ると。 「れみりゃのおぼうし~!」 バッジが付いている部分を破り取り、丸めてポッケにしまうシゲちゃん。 そして、帽子を返す。 うつぶせのままのれみりゃは、自分の帽子がどうなったのかは分からない。 もっとも、それどころではなかったが。 「うごけないんだどお!ほどくんだどお!」 「それ、にげろ~!」 二人はそのまま逃走した。 「う~。うあうあ☆にぱ~」 日差しが赤みを帯び始めていた。 しばらく騒いでいたれみりゃだったが、話しかける相手がいないことに気がつき、今度は愛想を振りまき始める。 地面に向かって。 れみりゃは本気で信じていた。 笑っていれば、誰かが助けてくれる。 飼い主が探し出してくれる。 いつものように、頭を撫でてもらえる…。 自分は看板娘なのだ、と。 顔が地面に向きっぱなしである、という事実はすっぽ抜けていたが。 「見つけたよ!」 ふと、聞き覚えのある声が聞こえた。 「う~?」 れみりゃがうつぶせのまま、右へと顔を傾けた。 肉まん脳にインプットされる風景は、90度傾いていて、れみりゃはよく状況がつかめなかった。 れみりゃに近づいてきたのは、先ほど子供を食べられた親れいむを先頭にして、近辺に住む野良ゆっくりが十数匹。 いつもは餌を奪い合う仲だが、共通の敵がいれば手を組むこともある。 しかも相手は手負いのれみりゃ。 無力化出来れば、再生し放題の餌がたくさん食べられる。 そうぱちゅりーに教えられて来た者もいる。 「う~。ゆっくりしていってね~」 「ゆっくりしね!」 返って来た答えは、とてもゆっくりできるものではなかった。 れみりゃはすでに、暴行を受けたことで自分の犯した罪など、とうの昔に忘れていた。 お腹もいっぱいで、睡眠もほどほどに取った。 ここにいるのは、争いを知らない、かんばんむすめだった。 「う?なかよくするんだどお。うっうっ、にぱー!」 「おぢびじゃんのかたきぃぃぃ!」 「うんぎゃおおおおおお!!?」 空き地にゆっくりたちの怒声と、れみりゃの肉汁が吹き荒れた。 「う…うあ…」 見知らぬ道を、一人歩くれみりゃ。 「れみ、りゃ…かんば…ん…」 長かった夜が明けようとしていた。 れみりゃにはもう、翼はない。 一生懸命書いた、かんばんむすめのプレートもない。 えれがんとなおべべは、見る影もなく、体中は傷だらけだった。 中途半端に塞がった傷口からは、肉汁がにじみ、点滴のようにポタポタと、れみりゃの足跡を残していく。 回復力を超えるダメージに、体中が痛んだ。 それでも、れみりゃは『ごーまかん』に帰りたかった。 なぜなら、れみりゃはごーまかんのあるじだから。 優しい飼い主がまっているから。 楽しい仲間がいるから。 そして、もう一つ…。 奇跡的にも、れみりゃの足は、カフェへと向いていて。 一晩歩き通して、ようやく視界に建物の影が見え始めていた。 れみりゃは無我夢中だった。 どうやって、縄をほどいたかも、包囲を脱したかも覚えてはいない。 でも、もうすぐ。 もうすぐ、れみりゃは帰れる。 ごーまかんに帰れるんだ。 「かえったどお。あるじがかえったどおお…!」 と。 「れみりゃはかんばんむしゅめだじょー!」 「ふりゃんはかわいいんだどお!」 れみりゃの声を、そのまま甲高くしたような声。 かんばんむすめが立つべきその場所には、身長30cmほどの、赤ちゃんれみりゃと、赤ちゃんふらんが立っていたのだ。 小さな台の上に立ち、手を取り合って母親の代役を務めている。 「あがじゃん…。れみりゃの…あがじゃん…!」 れみりゃの瞳に涙が浮かんだ。 苦しみではない、喜びの涙。 れみりゃがごーまかんに帰らなくてはならない、もう一つの理由は、我が子が待っているからだった。 さくや種と同様に、れみりゃ種と共生関係にある、ふらん種。 凶悪な胴無しのふらんと違い、胴付きのふらんは、他の胴付き種と同様、かなりの低脳だったが。 それでも最愛のふらんとともに生み出した子供たちを残して死ぬわけにはいかなかったのだ。 「あがじゃん!まんまがかえってきたどお!さみしいおもいをさせたんだどお!」 「「う~?まんまぁ?」」 れみりゃはようやく、声が届く距離にまでたどり着いた。 今すぐ抱きしめてあげたい。 すりすりしてあげたい。 声を聞き、れみりゃを見上げた赤れみりゃと赤ふらんは、そこで恐ろしいものを見た。 「うあ~!くるんじゃないじょぅ!きちゃないおばけなんだじょう!」 「う~!まんまぁ?まんまはどこぉ?きたにゃいおばちゃんがいるどお!」 「う?」 愛しの我が子たちが、悲鳴を上げて背を向ける。 れみりゃは最初、自分の後ろに何物かがいるのかと思った。 しかし、振り向いても誰もいない。 「まんまだどお!れみりゃはまんまだどお!」 再び我が子に目を戻すと、赤れみりゃと赤ふらんは、台の影で怯えていた。 みれりゃは気がつかなかった。 自分の帽子が、すでになくなっているということに。 帽子を失ったゆっくりは、同属として扱われることはない。 れみりゃがれみりゃで有り続けたとしても、周囲の目はそうはならなかった。 「れみりゃのぼうしが!あがじゃん!しんじるんだどお!れみりゃはまんまなんだどおおおお!!!」 ここまで来たのに。 赤ちゃんのために帰ってきたのに! れみりゃのショックは大きかった。 そして、慟哭した。 思わず心の底からわき起こる情動に、大声で叫んでいた。 「うるさいぞ!」 騒ぎを聞きつけてドアを開けて出てきたのは、カフェのオーナーだった。 「うあ~。れみりゃは~!」 れみりゃの心に光明が差す。 優しい飼い主に救いを求めたれみりゃは。 しかし。 ドゴスっ!! 言葉を言い切れないうちに、顔面にオーナーの本気パンチがめり込んでいた。 「よーし、こわかっただろうね」 顔面が陥没し、倒れたままぴくぴくと痙攣するれみりゃを脇目に、オーナーは赤れみりゃと赤ふらんをすくい上げる。 「おっかないお化けは僕が退治したよ。さあさあ。泣くならふらんおかーさんのところでね」 「「まんまぁ~」」 二匹は泣きながら、ゆっくりの専用出入り口へと飛んでいく。 オーナーはそれを見届けると、ふたたびれみりゃに向き直った。 「悪かったなあ、れみりゃ」 そう言いつつも、オーナーはニヤリと笑い。 「看板は定期的に交換しないといけないんだよ……。そうしないとお客さんが飽きるからね」 オーナーはいまだ痙攣を続けるれみりゃの肉汁を指差に付け、味見した。 「フフッ。これは久しぶりにスーパーデラックスなディナーが出来るかもしれないな」 オーナーは周囲に人がいないのを確認すると、れみりゃを引きずって裏口へと入っていくのだった。 一ヶ月後の朝。 「むきゅ、ここはぱちゅりぃのだいとしょかんよ!へいせつされたカフェでゆっくりしていきなさい!」 そこには、看板娘である胴付きぱちゅりーが立っていた。 「ふう…おなかがすいたわ…。おにいさん、どうしてきょうはねぼうしたのかしら…」 ここは胴付きゆっくりをウリにした、ゆっくりカフェ。 愛でお兄さんに朝食も提供する、癒しの空間。 お腹ペコペコの彼女の目の前を、大きなハンバーガーを片手にした青年が通り過ぎて行く。 この日、ぱちゅりーに降りかかったいくつかの不幸。 それが、お友達のれみりゃが失踪した理由と良く似ていることに、ぱちゅりーが気づくことはない…。 あとがき 最近SS書く時間が無いんです!ってほどでもないですが。 最初から最後までゆっくりをいじめ倒すSSに挑戦して、モチベーション続かないなあ…みたいな状況です。 ちなみに作中でふらん種が共生関係とありますが、あくまで胴付きだけの話です。 れみりゃとぱちゅりーが胴付きになると劣化する設定なんだから、ふらんもそうしないとなあ…。 と、ふと思った次第です。 もしよろしければ、感想をお願いします。 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yume-m/pages/37.html
吸血鬼の住むお屋敷・紅魔館 初雪の降る夜、門番はそれを見上げてため息を一つ 「雪かぁ、そりゃ寒いわけですね」」 「こんな日は咲夜さんのホットココアが飲みたいなぁ」 愚痴をこぼしつつも初雪の中、門番の夜は更けてゆく 「うー☆ おそとがきれいだどぉー☆」 「どうしました? れみりゃ様」 初雪から一夜明けた紅魔館 妖精メイドたちが忙しく館内を走り回っている 暖炉に火を入れる者、少し積もっている雪を掻く者等、様々である そんなメイド達の忙しさとは対照的な空間が一つ 自称『紅魔館のおぜうさま』ゆっくりれみりゃの部屋である 「うー♪ おそとがきれいだからあそびにいきたいどぉ~♪」 「外は寒いですし、雪だって降ってますよ? それはだめです」 「うー・・・しゃくやのけちー」 「そんな事言っても駄目ですよ、あぶないですし」 「うー・・・わかったどぉ~、れみぃおとなしくしてるどぉ~♪」 「良い子にしていれば『サンタさん』がプレゼントをくれますよ!!」 「う~♪ ぷれぜんと~♪ いいこにしてるどぉ~☆」 初雪がとても気になるれみりゃ しかし、大好きな咲夜に駄目と言われては逆らう事はできない そしてなにより『サンタさん』なる人が『プレゼント』をくれるとあっては破るわけには行かなかった それに勝手に遊びに行ったのが見付かってしまうと夕食後のぷっでぃんが無くなってしまうのだ 前に一度だけお預けを食らったときのひもじさは忘れるまいと心に誓っていた 「それでは、夜のお食事の時間にはお迎えにあがりますね」 「うっうー☆ おしごとがんばってね~♪」 そこでれみりゃは考えた 『ばれなければ良い』と この作戦は彼女にしてみれば完璧だった ぷっでぃんも貰えて、外でも遊べる これ以上ない大作戦の始まりである 時刻は昼を少し回ったくらい気温も上がり、雪もやんでいた 「しゃくやはだめっていってたけど、やっぱりあそびにいきたいどぉ~」 「よるの『でなー』までにもどってくれば、きっとばれないんだどぉ~♪」 「そうときまればしゅっぱつだどぉ~♪ うあうあ~♪」 早速いつも出かけるときに使っている怪獣の頭を模したリュックに、いそいそと物をつめていく キャンディ、クッキー、グミ等、殆どがお菓子であった それを背負って準備完了、あとは外に出かけるだけである ゆっくりと、しかし雄雄しくも歩を進め堂々と正門から表へ出た おぜうさまらしく門番への労いの一言も忘れない 「めーりんもおしごとがんばるんだどぉ~♪」 「んあ? れみりゃ嬢、どこかへ出かけるんですか?」 「めーりん♪ しゅべすたしてると、しゃくやにおこられるどぉ~♪」 「しゅべすたじゃないです! シエスタですよ!! それより寒くないんですか?」 「うー? べつにへいきだどぉ~♪ れみぃはつよいこだどぉ~♪」 「それなら別にいいですけど・・・怪我には気をつけてくださいね」 一面の雪、何の跡もついていない新雪の中をトコトコと歩いていく 別に目的があるわけではない、目に映るものすべてが新鮮だった そんな中、一番最初に手をつけたのは『氷柱』である 「う~♪ ぜんぶまっしろだどぉ~♪」 「う~? これなんだどぉ~?」 「うー☆ かっこいいどぉ~♪ ぐんぐにるだどぉ~♪」 「うー☆ うー☆ かりすまだどぉ~♪」 木の枝に出来ていた氷柱の中でも一際大きいのを一つ手に取る どこで覚えたかは分からないが『ぐんぐにる』と名付た それを手に持ち颯爽と雪の中を歩く 気分はまさに『お嬢様』といったところだ 「つぎはおぜうさまのこーまかんをつくるどぉ~♪」 「うー☆ うー☆ りっぱなおやしきをつくるどぉ~♪」 「うっ♪ うっ♪ うあうあ~♪」 次に目をつけたのは木の下に出来ていた雪の山 どうやら気に入ったようで、その山に雪を盛って大きくしている 本人は『こーまかん』と呼んでいるが、所謂『かまくら』と呼ばれるものを作るようだ 「うー☆ これくらいおっきければじゅうぶんだどぉ~♪」 「いりぐちをつくるどぉ~♪ まずここが『もん』だどぉ~♪」 「ここがれみぃのおへやで~♪ こっちがしゃくやの~・・・・!?」 突然れみりゃの手が止まる しきりに手をこすり合わせて息を吹きかけている 「う~・・・おててがかゆいどぉ~・・・」 「かゆいどぉーー!! さくやーー!!」 「うっ・・・うっ・・・おみみもつめたくなってきたどぉ・・・」 「うっ!? またふってきたんだどぉ!?」 吹雪、大人しくしていた雪が容赦なく吹き付ける れみりゃはあらかた完成していた『こーまかん』の中に篭り丸くなっている 「う~♪ このなかならあんしんだどぉ♪」 「でもまだおててがかゆいどぉ・・・」 「さくやぁ・・・さみしいんだどぉ・・・」 外の吹き荒れる吹雪の音におびえながら来る筈の無い助けを呼び続ける 『こーまかん』の中に居る限り吹雪に打たれはしないが、帰れない寂しさが募っていった 「・・・・くり・・ってね」 「う?」 「ゆ・・りし・・」 「う~・・こあいどぉ・・・こえがきこえるどぉ・・」 「ゆっぐじじでいっでね!!! さぶいがらなかにいれでね!!!」 突然の来客に驚くれみりゃ この吹雪の中、一匹のゆっくりが『こーまかん』に飛び込んできた 飛び込んできたのはゆっくりれいむが一匹 どこから来たのか雪にまみれ鼻水が凍っていた 「どこからきたんだどぉ? そとはさむいんだどぉ?」 「あそんでたらまよっちゃって、ここについたよ!!」 「それはたいへんだったんだどぉ・・・もうだいじょうぶだどぉ♪」 「ゆゆ? どうして?」 「ここはおぜうさまのこーまかんだからだどぉ♪ さむくなんかないんだどぉ♪」 「ゆゆー!!すごいんだね!! ゆきがやむまでゆっくりしていくね!!!」 それから二人はゆっくり雪がやむのを待っていた れみりゃが持ってきていたお菓子を食べながら喋ってすごした お互いの家の事、主人の事、時間も忘れて話した それからしばらく話し込んでからのこと 「う?」 「ゆ?」 気がつくと雪の音がやんでいた 「ゆっくりさせてくれてありがとう!!! またあおうね!!!」 とだけ告げてれいむは外に飛び出していってしまった 名残惜しくはあったが『雪がやむまで』と約束したので仕方が無かった 自分もそろそろ帰ろう、もたもたしてるとまた降り出してしまう。そう思ったときだった 「れみりゃ様、お待たせいたしました」 聞きなれた声、自分を包んでくれる暖かな声 振り返るとそこに咲夜が立っていた 雪も、風も、全てが止まった空間 吹雪はやんだのではなく咲夜によって止められていた 空に浮かぶ無数の降ってこない雪が幻想的な光景だ 「お食事の準備が整いましたのでお迎えにあがりましたよ」 「うー・・・さくやー!! ごめんなさいだどぉー!!」 「お怪我はありませんか? ご無事で何よりです」 「けがはしてないどぉ・・・でもおててがかゆいどぉ・・・」 「あらあら、これは霜焼けですね。お屋敷に帰ったらお風呂にしましょう」 それから二人は歩いて帰った 何も動かない空間、動けるのは二人だけ 咲夜の腕の中でれみりゃは考えた 私のサンタさんは咲夜なんだ、と
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/25.html
【六十年目のゆっくり裁判】 そこには、今まさに命の灯火が消えようとしているゆっくりれいむがいた。 「ゆ…っゆ…っ。」 ゆっくりれみりゃに捕食されながら、そのゆっくりれいむは虚ろな目で虚空を見つめていた。 既に体の三分の一以上が喰われ、中身の餡子が飛び出している。 体が重い…。 湖のほとりで、蝶々さんと遊んでいただけなのに…どうして…? ゆっくりれいむは自分の不幸を怨めしく思った。 「うー!うー!」 既に、ゆっくりれみりゃの鳴き声も、ゆっくりれいむには聞こえていなかった。 「(もっとゆっくりしたかったよ!)」 そんなことを思いながら… ゆっくりれいむは死んだ。 「ゆっ!?」 ふと、ゆっくりれいむの目が覚めた。 そこは、赤い花が一面に広がっていた。 「ゆっくり!?」 そして、先程までの自分との状況の変化に気付いた。体が軽い、どこも痛くない。 「ゆっくりー!!」 おまけに体がスイスイと動く。 先程までの苦痛が嘘のようだ。 「ゆっくりできるよ!!!」 ゆっくりれいむは幸せいっぱいに、赤い花畑を飛び回った。 しかし、自身の体の外見の変化には気付いてはいなかった。 額に白い三角の布をつけ、体の底がたなびいているその姿に…。 そう、ゆっくりれいむは死に、魂となってこの彼岸に来たのである。 「お、またゆっくりかい。」 「ゆっ?」 楽しそうにしているゆっくりれいむに、ガタイの良い、肩に大きな鎌を担いだ女性が近づいてきた。 「最近多いんだよね~。ゆっくりの魂が。」 その女性は、ヤレヤレといった表情だ。 「おねえさんだれ?」 「あたいは小野塚小町。死神さ。」 「しにがみ?おねえさんもゆっくりしていってね!!!」 「クスッ、ゆっくりはみんな同じことを言うねぇ。でも生憎、あたいはゆっくりしてられないんだ。あんたを この川の向こう岸に連れていかなきゃならないんでね。」 「むこうぎし?そこはゆっくりできるの!?」 小町に問いかけるゆっくりれいむ。 「ああ、ゆっくりできるさ。お前のお友達もみーんなゆっくりしてるよ。」 「わぁい!れいむもゆっくりしたい!!」 「そんじゃ、そこの舟に乗った乗った!お代はいらないよ、ゆっくりだしね。」 そう言うと、小町はゆっくりれいむを舟に乗せ、舟を対岸へと向かわせた。 胸にゆっくりが二匹入っているんじゃないかと言いたくなるような豊満なバストを揺らして、小町は舟を漕い でゆっくりを対岸へ運んでゆく。 「…でね!…だから、ゆっくりしたんだよ!!」 「ほお~そうかいそうかい。」 途中、小町はゆっくりの自慢話のような話に付き合ってやる。もうゆっくりの自慢話は聞き飽きたよと言わん ばかりの顔で。 …そうこうしている内に、舟は対岸へと到着した。 「ほら、着いたよ。後はあんた一人で行けるだろ?あのでっかいお屋敷の中がゆっくりできる場所だよ。」 「ありがとうおねえさん!ゆっくりしていくよ!」 そう挨拶すると、ゆっくりれいむはピョンピョンと屋敷へ向かっていた。 小町は、去ってゆくゆっくりれいむの後ろ姿を眺めながら、ポツリ。 「ま、あんたがゆっくりできるかどうかは映輝さま次第だけどね。」 屋敷の門に辿り着いたゆっくりれいむ。 「ゆっくり?」 門をくぐり抜けると、ゆっくりれいむの目の前に、大きな扉が立ちはだかる。 「ゆっくりさせてね!」 と、ゆっくりれいむが、少し怒りぎみで声をあげると、大きな扉はギギギ…と、音を立てながら開いていった。 扉の奥へと入るゆっくりれいむ。そこにゆっくりできる場所がある。ゆっくりれいむは期待に胸を膨らませた。 だが、扉の向こうは特に面白みのない無機質な広い部屋だった。正面には5mほど台があり、その上の机には、 立派な装飾の施された帽子を被った緑髪の女性が座っていた。 「ゆっ?おねえさんだれ?」 また知らない女性がゆっくりれいむの前に現れた。 「私の名は、四季映輝・ヤマザナドゥ。幻想郷の閻魔です。」 「し…え…やまだなどう?」 映輝の肩書き付きの長い名前を復唱できないゆっくりれいむ。しかし、 「おねえさんもゆっくりしようね!」 気にも止めずに、いつもの台詞だ。 「残念ですが、ゆっくりしているヒマはありません。」 「ゆっ?」 「これから裁判を始めます。」 映輝がそう言うと、ゆっくりれいむの背後の扉がギギギと閉じてゆく。同時に、ゆっくりれいむの立っている 場所がせり上がってゆく。 「ゆゆゆっ!?」 3m程持ち上げられたところで、ゆっくりれいむを乗せた台は止まった。 「ゆっくりれいむよ、よくお聞きなさい。私はこれから貴方の生まれてから死ぬまでの行いを、この浄瑠璃の 鏡で見渡します。貴方の行いによって、私は貴方の今後の行き先を決定します。」 「おねえさん!ゆっくりできないよ!はやくおろして!」 まるで聞いてないゆっくりれいむ。 「ゆっくりれいむよ、今一度言います。これは貴方がゆっくりできるかどうか大切なことなのですよ?」 「ゆっくりできるの!?」 ゆっくりという言葉に反応するゆっくりれいむ。 映輝はゆっくりれいむが聞く耳を持ったことを確認すると、説明を続けた。 「生きている間の貴方の行いによって、あなたはこれから二つの道のどちらかを行かねばなりません。」 そう言って映輝が右手の手の平をバスガイドが案内するかのように上げると、楽しげな極楽の様子が写し出さ れた。 そこは、お日様いっぱいの花畑。ゆっくりゆゆこやゆっくりレティ、ゆっくりフランがニコニコと楽しそうに 遊んでいる。正にゆっくり天国だ。 「わあっ!たのしそう!!れいむもそこでゆっくりしたい!!!」 次に、映輝は左手を上げる。そこには…。暗くてよくわからない。しかし、とにかくあまり楽しそうではない ことは確かのようだ。 「いかがですか?ゆっくりれいむよ。」 「そっちでゆっくりしたい!」 ゆっくりれいむは天国の様子が写し出されたほうを向いてピョンピョンとその場を飛び跳ねる。 「そうですか、ゆっくりれいむよ。しかし、私は今、あなたの人生をすべて拝見しました。…判決を下します。」 キラキラとした目で映輝を見つめるゆっくりれいむ。その顔は、自分がゆっくりできそうな場所へ行けると信 じきっている顔だ。 「あなたには、地獄へ落ちてもらいます。それも、最も過酷な“ゆっくり無限焦熱大大地獄”です。」 「ゆっくり!?」 映輝が何を言っているのかよく分からないゆっくりれいむだが、自分がゆっくりできなさそうな場所へ連れて いかれることは、何となく理解した。 「貴方は生前、たくさんの虫を殺して食べました。たくさんの田畑を荒らしました。そして何より、『ゆっく りしていってね!!!』と大声で叫び、人々を不愉快にさせてきました。………そう、貴方は少しウザすぎる。 地獄に落ちて、終わることの無い様々な苦痛を永遠に受けること。これが今の貴方が積める善行よ。」 映輝がそう言うと、ゆっくりれいむの足元の床に穴が出現した。 「ゆうーーーっ!」 そのまま落下するゆっくりれいむ。 文字通り、ゆっくりれいむは地獄へと落ちていった。 六十年目のゆっくり裁判・下へ続く。
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/3558.html
『れみりゃと煙突』 11KB いじめ 観察 不運 自業自得 お家宣言 ゲス 捕食種 現代 独自設定 れみりゃいじめですのでお気を付けください。 俺設定あり。 れみりゃいじめですので苦手な方はご遠慮下さい。 展開がちょっとおかしいかもしれません。 天然あき 「うーれみりゃう~♪」 森の中を羽根をパタパタとして飛ぶ胴付きれみりゃ。 ゆっくりの捕食種としては最も数が多い種だ。 しかし数が多い分他の捕食種ゆっくりに食われる事も多く、時には獲物であるゆっくり相手にすら返り討ちされる事もある。 意味もなくプライドが高く自らをおぜうさまと称する。 ゆっくりにしては珍しく中身が肉を用いられている為肉食動物にも狙われている。そんな存在である。 「う~、きょうもおぜうさまはえれがんとなんだど~♪」 そんな喋る肉まんが空中をふよふよ浮いている。 このれみりゃは今まで自らに害となるものと遭遇した事もなく、森の中に住むゆっくりを食べて日々を過ごしていた。 その為どんどん肥えていき、今まで住んでた巣が狭くなった為に引越に来たのだ。 森と言っても小規模なもので、飛んでいればいずれ森から出る。人家とかをれみりゃが見付けたのも別段おかしくはなかった。。 だかられみりゃが人の住む家を見付けても何もおかしくなかった。 「う~!!?とってもえれがんとなこ~まがんなんだど~!!」 森の自然物しか見てこなかったれみりゃにはどうやら人家が魅力的に見えたようだ。 その家は珍しく煙突があり、ログハウスのような外観であった。 「う~、おぜうさまにふさわしいこうまかんだど~♪」 れみりゃはここに住む事に決め、中に入ろうとする。 しかし、 「あかないんだど~!!?どうしてはいれないんだど~!!?」 ドアや窓を何度押したり叩いたりしても開く気配はない。 どうやら家主はちゃんと戸締まりをして行ったようだ。 「う~どうしてはいれないんだど~!!?おぜうさまがつかってやるからかんしゃするのがとうぜんなんだど~!!!」 地団駄を踏みながら叫ぶれみりゃ。 ここで諦めておけばよかったのだがれみりゃは悪い方向に閃いてしまった。 「う~あそこがあいてるんだど~!!すごいはっけんだど~♪きっとみつけられるのはおぜうさまだけだど~♪」 そう叫ぶと煙突に向けて飛び立った。 実は煙突の屋根部分に綻びがあり、ギリギリ通れない程度の穴が開いているのだ。 そこをれみりゃは偶然見付けてしまったのだ。 「う゛ぎゅう゛う゛…おぜうざまをいれるんだど…」 ギリギリ通れない隙間に無理矢理頭から身体をねじこむ。れみりゃにとってこの家はそれだけ魅力的だったのだろう。 すると、 「う゛…う゛ごげないんだどお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?」 羽根の部分で引っ掛かり、抜けなくなってしまった。 人間で言うなら腋の下辺りである。 押しても引いても抜ける気配のない見事なジャストフィットっぷり。 「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛だずげでざぐや゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 耐え切れなくなって泣き叫ぶれみりゃ。 無駄に手足をブンブン振り回して体力の浪費に努めている。勿論動く肉まんを助ける奴はいない。 「う゛~…」 その結果無駄に足掻いて疲れ果て、れみりゃは眠ってしまったのだった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「う?」 何やら熱気を感じて目を覚ますれみりゃ。 すると、 「ゲホ!!?ゴホ!!?」 煙を吸ってしまい咳込んでしまう。 それだけではなく、 「あぢゅ…ぴぃ!!?」 耐え難い熱気がれみりゃに襲い掛かる。 熱気で悲鳴を上げれば煙で咳込み、何もしなくても煙で燻される。 「ぐびぃ!!?」 れみりゃはまともに声を上げる事も出来ずに脱出しようと暴れるが何の効果もない。 ただ苦しむだけだ。 そしてそれに気付く者はいない。 家主もまさかれみりゃが煙突に挟まってるなんて思いもせずにいつものように暖をとる為に暖炉に火を点けた。 れみりゃが煙で声を上げられなくなっているので気付く様子もなく読書をしていた。 「ゲフ!?…ざぎゅやぁ…」 れみりゃは苦しみながらもさくやに助けを求める。 それは自分の空想したヒーローに助けを求める類の無意味な行為だがそれに気付く様子もない。 「う゛ぎ!?…ゲハァ!!?」 両手で何とか煙をどけようと足掻くが意味はない。ただ両手が燻され、黒くなっていくだけだ。 「いじゃあ…う゛あ゛あ゛ゲホ!!?ゴホ!!?」 燻される痛みに悲鳴を上げようとして咳込み、まともに声も上げられない。 涙を流しても、雀の涙程度の効果も期待出来ない。ただ苦しむしか出来ない。 『どうじで!!?どうじべえれがんどなおぜうざまがごんなべにい゛い゛い゛い゛い゛!!?』 訳がわからない。れみりゃはおぜうさまにふさわしいこ~まかんを見付けた筈なのにどうしてこうなったのかまったくわからない。 どうしてえれがんとなおぜうさまがこんな目に遭わなければならないのかわからなかった。 だがわかろうとわかるまいと目の前の苦痛をれみりゃが逃れる事は不可能だ。 「ひぎ…ケヒ…!!?」 再生能力の高いれみりゃは中々死ぬ事が出来ない。 野生では利点である再生能力の高さもここでは悪い方向にしか作用しない。 『だれが…たずげ…!!?』 助けを乞い、苦しみからの解放を訴えるれみりゃ。 だが古今東西、信じるだけでは神は誰も救ってくれない。 救いを訴えるだけでは誰も手を差し延べてはくれない。そして今れみりゃの存在に気付くものはいなかった。 神はどうやられみりゃを救うつもりはなさそうだ。いやむしろ事態はより悪い方向へ向かっていく。 「んびゅう!!?」 突然れみりゃの足に冷たい感触がする。れみりゃは知る由もないが雨が降り出したのだ。 ゆっくりにとって雨は天敵である。そしてれみりゃも例外ではなかった。 「…ん…ぁあ゛!!?」 冷たい感触が外に晒し放しになっているれみりゃに容赦なく襲い掛かる。 『づめぢゃい゛い゛い゛い゛!!?』 そしてそんな中でも容赦なく熱気はれみりゃを襲う。 『あぢゅい゛んだどお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?』 熱さと冷たさの双方の攻撃を受けるれみりゃ。 上は大火事、下は洪水これなんだ? 答え、今のれみりゃ。と言っても過言ではない位れみりゃは双方の苦しみを同時に味わう稀有な経験をしていた。 助け等来る訳がない。唯一来る助けと言えば死のみであるが、中々それの歩みは遅いようだった…。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「ぐひッ…ゲフ…」 夜もふけ、家主が暖炉を火を消して就寝した頃、れみりゃが嗚咽を漏らす。 顔と手はいい感じに燻され、煤で真っ黒だ。 「いじゃい゛ぃ…」 れみりゃは痛みに喘ぐ。 生まれてから一度も味わう事のなかった激痛を存分に堪能したのだ。 間違いなくゆん生最悪の日だろう。 「ぼうやじゃ…おう゛ぢがえど…」 れみりゃは一刻も早く前に住んでいたこーまかんに戻りたかった。 だが嵌まった身体はびくともせず、外に出ている身体は雨水を吸ってブヨブヨだ。 雨水はれみりゃの身体を破壊する事は叶わなかったが機能を停止させる事は叶ったようだ。 「う゛ー!!!ざぐやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 れみりゃは泣き叫びながら何とか抜け出そうと足掻く。 「う゛ぎぃ!!!」 手を壁に付けて中に抜け出そうと足掻く。 だがここで考えてほしい。 れみりゃの身体はブヨブヨで機能を停止している。 そんな状態で身体を擦ればどうなるか…、 「んぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 当然脆くなった皮は裂ける。 「いじゃい゛い゛い゛い゛い゛い゛!!?」 泣き叫ぶれみりゃ。だが誰も助けない。 家主ですら眠りが深いようで気付かない。 「ぐひ…はふぅ…」 身体に激痛が走る。顔と腕を燻された痛みとブヨブヨになった身体が壊れる痛み。 その二つの激痛が今度はれみりゃを気絶させる事も許さない。 「ぎひィ…グヒィ…」 顔を涙でグシャグシャにしながられみりゃはどうして自分がこんな目に遭うのかわからなかった。 何かしても痛い。何もしなくても痛い。 「だずげでぇ…ざぎゅやぁ゛…」 何度目になるかわからない懇願。無駄でしかない行為。 れみりゃは新たな痛みを呼ぶのを恐怖し、それ以上何も出来なかった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― れみりゃは気付けば朝を迎えていた。 「う゛…う゛ぁ…」 昨日から何も食べず、まともに睡眠もとっていないれみりゃは苦しそうに嗚咽を漏らす。 「う゛、う゛う゛う゛……」 何度目になるかもわからない涙。 端から見れば偉く滑稽な姿なのだがれみりゃは大真面目だった。 誰か助けて…それしか考える事は出来ない。 だが救いの手は差し延べられない。 むしろ…、 「う~さぶさぶ…」 家主が再び暖炉に槙を焼べて火をつけた。 そうなれば勿論、 「おごおぉぉ…!!?」 耐え難い熱気が再びれみりゃに牙をむく。ジタバタと暴れても一向に楽にならない。 ただ死の一歩手前の苦痛がれみりゃに襲い掛かるだけだ。 「ぎひィ!?…ケハ…ッ!!」 煙が目にかかり、何度目となるかわからない落涙。その涙は誰にも届かず煙の中に消えていった…。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「う゛…う゛う゛…」 れみりゃは暖炉から抜け出そうと足掻く。 壁に手を当て、胴体を引っ張り上げようとする。脆くなった身体はたやすく裂けてれみりゃに激痛をプレゼントする。 「うぎィ…!!?」 れみりゃが激痛の悲鳴を上げる。だが今度は止まらない。 痛みに耐えてこの袋小路から抜け出そうとする。 「ぎひいい゛い゛い゛い゛!!?」 あまりの激痛に悲鳴を上げるれみりゃ。 どうやら家主は外出中でその声に気付いた者はいない。 「ゼヒィ…!!…ハヒィ!!」 れみりゃは痛みに耐え切れず手を止めてしまう。 だがしばらくして痛みが引いたら再び動き出す。 「ゼハァ…グヒィ…!?」 裂けゆく身体に苦しみの嗚咽を漏らすれみりゃ。痛みに弱いのはどのゆっくりも同じだ。 いや身体が裂ければ痛いのは人間も同じだ。その苦しみに何度も手を止め、そしてまた動き出す。 ブチ、ブチブチと破滅の音が鳴る。だがれみりゃは一刻も早くこの場から脱出する事と苦痛からの解放しか考えられなかった。 れみりゃは気付かなかった。れみりゃのその二つの望みが叶う時はれみりゃの命が潰える時なのだという事に…。 そして何度も度重なる激痛の末遂にその時は来た。 ブチブチブチ!と一際大きくちぎれる音と、 「ぷぎょあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 れみりゃの絶叫が響き渡る。そしてその直後暖炉の灰の山に何かが落下して来た。 ボフン、と灰煙が舞い散る。 「ぐ…びゅ…」 身体を二分されたダメージで今にも死にそうなれみりゃ。 ここまで来て死ねないのはむしろ不幸でしかない。 「で…びりゃ…ごう…ま…」 灰まみれになったれみりゃは灰の中に埋もれ抜け出す事も出来ない。 ようやく念願の新しいこうまかんに辿り着いたにも関わらずれみりゃの命運も尽きかけてたいた。 どうしてこんな事になったのかれみりゃには全くわからない。 ただ痛いのに楽になれない苦しみと気持ち悪い灰のなかで身動きもとれずただ死んでいく。 「ど…じべ…」 訳も分からず痛みに喘ぎながられみりゃの意識は闇に落ちて行った。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― そしてそれは突然起きた。 意識を失い、そのまま二度と目覚めぬ筈だったれみりゃに猛烈な熱さが襲い掛かった。 「う゛ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」 「うお!!何だぁ!!?」 れみりゃの絶叫に驚く家主。 灰まみれとなったれみりゃに気付かず暖をとる為に火をつけ、それが瀕死のれみりゃに燃え移ったのだ。 「あぢゅ、あ゛ぢゅい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!?」 身体が焼かれていくれみりゃ。それは煙で燻されるのとは全く違う激痛。 皮肉にもその激痛がれみりゃの意識を覚醒させ、与えずともよかった激痛をれみりゃに味あわせるゆん生が終わりかけたれみりゃに襲い掛かる火という名の悪魔。 「だじゅ…びぃ…!!?」 助けを求めようにも熱せられた空気がれみりゃの口内を燃やし、まともに呼吸も出来なくなる。 動けず、さりとて助けも求められずただただ火達磨となるれみりゃ。火は全身に燃え移り、もはやれみりゃではなく火の塊となっている。 『いじゃい゛たずげででびりゃはおぜうざまあづいいだいごべんなざいゆるじでたぶべでさぶやあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?』 焼かれていく中れみりゃは必死にさくやに助けを求める。しかし救いの手は差し延べられない。 もし、ほんの少しだけ家主が暖をとろうとしなければれみりゃはあのまま死に、死体が焼かれるだけでここまで苦しむ事はなかったのだろう。 だが結果的にれみりゃは焼かれる苦しみを存分に味わい朽ちていった…。 『だ…ぶべ…へ…』 こうして、林の王者であったれみりゃは度重なる偶然の結果様々な激痛を味わい暖炉の中で息絶えたのだった。 「何なんだよ…」 ただ一人呆然とする家主を残して…。 END あとがき 久し振りのれみりゃいじめですがいかがだったでしょうか? それと前作の「あみゃあみゃはあみゃあみゃだよこのきゅじゅ!!」に沢山の意見ありがとうございます。 天然お兄さん等のオリキャラが前面に出過ぎという意見に対して不快にさせてしまい大変申し訳ありませんでした。 天然あき的にはあくまでゆ虐のほんのおまけ程度のつもりでしたが不快に感じてしまった方にはこの場を借りて謝罪させていただきます。 この度は不快に感じさせてしまい大変申し訳ありませんでした。 それでは、今回このSSを読んで頂き誠にありがとうございました。 天然あきの感想掲示板 http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1274852877/l50
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1871.html
前 「それじゃさっそくレッスンを始めましょう!」 「うー! それよりゆっくりするどぉー! れみりゃはつかれたんだどぉーー!」 私は家にれみりゃを連れ込み、地下室へと案内する。 そこは、ブリーダー時代に作ったゆっくり用の生活ルームだ。 6畳ほどの部屋に、ゆっくりが生きるために必要なものは一通り揃えてある。 「なにしてるんだどぉー! さっさとぷっでぃんもってくるんだどぉー!」 れみりゃは、部屋に入るなり、私に悪態をつきだした。 移動に疲れたことで、機嫌が悪くなっているのだ。 もっとも、実際たいして疲れているはずはない。 森からここまで、私が抱っこしてきてあげたのだから。 「いいの? そんなワガママばかり言っていると"おぜうさまこうほ"になれないわよ?」 「だぁーめぇー! れみりゃはおぜうさまこうほになるのぉー! ぷっでぃんもたべるのぉー!」 「……それじゃ、レッスンが終わったらプリンを食べさせてあげるわ」 「う~! おねーしゃんケチケチだどぉ! それにおぶぁかさんだどぉ~♪ プリンじゃなくてぷっでぃ~んだどぉ♪」 「ふふふ、ぷっでぃ~んね……覚えておくわ」 どんなに悪態をつかれようが、ゆっくりに馬鹿にされようが、私の気分が害されることはない。 何しろ、これでようやく押さえ込んでいて暗い欲望を解放できるのだから。 私の胸は、怒りどころか、幸福感と興奮で満たされていた。 「……う~? なにしてるんだどぉ?」 れみりゃは、ふと私の行動に疑問を覚えたようだ。 その時、私は手にローションを塗っていた。 "互いの"肌が荒れないようにするための処置だ。 「これは、レッスンの準備よ。これをやらないと、ゆっくりできないの」 「う~~、れみりゃはゆっくりしたいどぉ……」 "ゆっくりできない"という言葉に過剰反応するれみりゃ。 れみりゃ種といえど、やはりゆっくりに違いはないのだ。 (もっとも、この場合"ゆっくり"することが幸せとはかぎらないでしょうけど) 準備を整え、私はれみりゃを抱え上げて、地下室の備え付けのベッドへつれていく。 「それじゃ、レッスンを始めるわよ」 「う~♪ れっすん~れっすん~♪」 私はベッドに腰掛け、その膝の上にれみりゃを座らせる。 そして、片腕をれみりゃの胴に回してしっかり抱きしめる。 まるで、少女がクマのヌイグルミを抱きしめるように。 (……少女、というのは我ながら無理があるか) 私は苦笑して、もう片方の手をじっと見つめる。 一度はこの"手癖"を、"病気"を呪ったこともあった。 (だけど、もういい。もう押さえつけはしない) 私は、自分の手にそう念を送ってから、すぅーと息を吸い込む。 そして、己の衝動を解放した。 「いくわよ、れみりゃ」 私は、れみりゃの下ぶくれた顔の下側、頬から下あごにかけてのラインに手のひらをあてる。 そして、押すように引っ張るように、撫でるようにスリスリするように、手のひらを動かし、 極上の料理を舌の上で転がすように、れみりゃの下ぶくれを手のひらで転がしはじめる。 それは、人間が太った人の下あごの脂肪をからかう時によくやる動作に似ている。 "たぷたぷ" まさにそんな擬音が相応しい行動。 私は、リズムを刻みながら、れみりゃの下ぶくれを"たぷたぷ"し続ける。 「うー?」 たぷたぷ。 「おねーしゃん、なにしてるんだどぉ?」 たぷたぷ。 「くしゅぐったいどぉー♪」 たぷたぷ。 「我慢してね、このレッスンに耐えられないようじゃおぜうさまこうほにはなれないわよ」 「う~~~♪ れみりゃおぜうさまこうほになっちゃうどぉ~~~♪」 笑顔で応じるれみりゃ。 私がたぶたぷと手を動かすのにあわせて、れみりゃも「たぁ~ぷたぁ~ぷ♪」と楽しそうに口ずさむ。 (さて、その余裕がいつまでもつかしら?) ゆっくりが私の"たぷたぷ"を嫌がる理由の一つ。 それは、私が"たぷたぷ"する場所が、主に頬から下あごにかけての部位にあたるからだ。 種族ごとの差はあるが、そのあたりにはゆっくりにとっての生殖器官や出産口、 胴無しゆっくりの場合はさらに跳ねるための運動器官や排泄器官までもが集まっている。 言わば、ゆっくりにとって、もっとも大事で敏感でデリケートな部分なのだ。 そこに刺激を与え続けられては、ゆっくり達も堪らない。 殴られるのとも撫でられるのともスッキリとも違う、 極めて異常な感覚を、ゆっくり達は感じるらしい。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「うーうー♪」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「たぷたぷだどぉー♪」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「う、うー♪」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「う、うぅー、たぁーぷ、たぷ」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「うぅ~~~~っ」 れみりゃの顔に、徐々に戸惑いとも嫌悪ともとれる色が浮かび始める。 だが、私は構わず"たぷたぷ"を繰り返す。 「う~~~、お、おねーしゃん」 「ん、なに?」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「れ、れみりゃ、そろそろゆっくりしたいどぉー♪」 額にうっすら汗を浮かべながら、こちらに微笑みかけるれみりゃ。 だが、私はそれを軽くいなす。 「う~~~、なんでむしするんだどぉ!」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 (ああ、やっぱりいい……) たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「う~~~! はやくやめるんだどぉ~~~!」 徐々にれみりゃの顔から笑みが消え、抵抗が増していく。 しかし、抑圧された衝動を解放した私に、その叫びが届くことはない。 (すばらしい! とまらない! とめられない!) たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「いうこときかないと、た~べちゃうぞぉ~~っ!」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「う、うそじゃないどぉー! ほんとにほんとにたべちゃうぞぉーーっ!?」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「ぎゃお~~~っ! ぎゃお~~~~っ!!」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「ううう~~~っ! さ、さくやぁ~~~~!」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「うぁぁぁーーー! やめるどぉぉぉーっ!!」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「はなすんだどぉーー! もう、おうちかえるぅーーーっ!!」 とうとう、れみりゃは泣き叫びだし、私から逃れようとジタバタ暴れ出す。 しかし、ガッチリと抱いた私の手から逃げることはできない。 「あら、おぜうさまこうほになりたくないの?」 「いやぁぁぁーーっ! れみりゃはおぜうさまこうほになるのぉーーーっ!」 「それじゃ、この程度の"たぷたぷ"で音を上げちゃダメよ?」 「やだやだやぁ~~~! たぷたぷはいやだどぉ~~~っ!」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「ぷぎゃぁぁぁ! もうやめてぇぇぇーーっ!! たぷたぷやぁだぁ~~~~っ!!」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「やめろぉぉーー! やめるんだどぉーーー!」 「だめよそんな言葉、はしたない」 「はしたなくないどぉーー! れみりゃはえれがんとでぷりてぃーなれみりゃだどぉーーー!」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「……ふふふふ、いいわよれみりゃ。……とってもいい!」 「あばばばばばばばっ!」 体をピクピクさせ、口角から肉汁の泡を吐き出して苦しむ、れみりゃ。 しかし、私は自分の顔がニヤけるのを止められない。 そして、"たぷたぷ"する手もまた、止まらない。 「うあ、うあ、うあぁ……」 やがて、れみりゃは暴れ疲れて静かになる。 かわりに、目尻に大粒の涙を浮かべながら、顔を真っ赤にして苦悶しだした。 「うぅ~~~れみりゃへんになっちゃうどぉ~~~はしたないどぉ~~~~」 どうやら、"たぷたぷ"され続けたことで、 専門用語でいうところの「スッキリ」をしているのに近い感覚を覚えだしているようだ。 「おかしぃどぉ……れみりゃのおからだがへんになっちゃうどぉ……」 不快感と悦楽。 タブーを犯すが如く背徳感と、未知の行為への恐怖と期待。 それらの感情がないまぜとなって溢れだし、れみりゃの体を支配していく。 「うぁ~~うぁ~~~! ぞくぞくだどぉ~~~! ぞくぞくがきちゃうどぉ~~~!」 「ふふふ、いいのよれみりゃ、その感覚に身をまかせなさい」 れみりゃの様子を楽しむが如く、私は"たぷたぷ"するリズムを上げていく。 自分の襲う未知の感覚に翻弄される、れみりゃ。 「うぁぁぁ! こあいぃーーー! こあいどぉーーっ!」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「ぎゃぁぁおぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!」 突如、奇声ををあげるれみりゃ。 そして、それを境に気を失ってしまう。 「……はぁ、はぁ、はぁ」 気付くと、私の息はずいぶんとあがっていた。 ずっと"たぷたぷ"しどおしの手は赤くなり、痙攣している。 けれど、その痛み苦しみ以上に、 私の胸はマグマのように熱い快楽で満たされていた。 (いまわしい手癖……いまわしい病気……でもそんなことどうだっていい……) だって。 それ以上の幸福感が、私の体を貫いているから。 「ふふふ、れみりゃ……これからも私を楽しませてね」 私は、優しくれみりゃの髪を撫でてやった。 * * * それから、私とれみりゃの"たぷたぷ"生活は朝も夜も関係なく続いた。 そして何日目かの朝、私はれみりゃの異変を目にすることになる。 「ど、ど、ど、どういうことなんだどぉ~~~!?」 れみりゃは困惑し、オロオロと慌てふためいている。 私はというと、そんなれみりゃを、ただ静かに眺めていた。 その"異常"は確かに珍しいケースだったが、決して有り得ないことではない。 故に、私はいつも通りれみりゃに接することにする。 たとえ、れみりゃの下ぶくれ顔が昨晩までの"倍以上"になっていようと。 「どぉーしてれみりゃが、にんっしんしてるんだどぉ~~~っ!?」 そう、れみりゃの肥大した下ぶくれ顔は、 まさしく胴体付きゆっくりれみりゃの妊娠した姿そのものだった。 「おめでとう、れみりゃ」 私は、心ない祝福を贈る。 しかし、当のれみりゃはそれどころではないようだ。 「な、なんでだどぉー、れみりゃ、すっぎりしでないどぉー……」 れみりゃは、肥大化した下ぶくれ顔を、重たそうにして苦しんでいる。 自分の体がどうなってしまったのか、この重たい下ぶくれをどうすればいいのか、わからないでいるのだろう。 「こ、こあいどぉ……れみりゃのおからだ……どうなっちゃったんだどぉ……」 よく見ると、れみりゃは小刻みに震えていた。 "すっきり"もしていないのに妊娠してしまうのは、確かに常軌を逸した事態だろう。 もし同じような状況に陥れば、人間だって困惑し、まともではいられないかもしれない。 けれど、私は知っている。 人間ならまだしも、ゆっくりならばこういうことも起こり得ることを。 詳しいことはまだ研究中らしいが、 ゆっくりの妊娠というのは性行為をともわなくとも起こることらしい。 私が以前読んだレポートによると、 人間の手で半日ほど振動を与え続けられたゆっくりが、子供を宿したこともあるという。 故に、私が"たぷたぷ"を長時間続ければ、もしかすると妊娠することもあるのではないか? それは、私がブリーダーをやっていたころから、頭の片隅で思っていたことだった。 そして、その仮定はどうやら正しかったようだ。 「大丈夫よ、れみりゃ。私に任せておけば元気な赤ちゃんを産めるわ」 「……う、うぅ~~? あ、あがぢゃん~~~?」 不思議そうな顔をするれみりゃ。 どうやら、妊娠のショックと、肥大化した下ぶくれ顔の重みが苦しくて、 "赤ちゃんが産まれる"という肝心な部分を失念していたらしい。 「れみりゃ~、もしかしてまんまぁになるどぉ~?」 「そうよ、あなたは親になるんだからしっかりしなきゃね」 "赤ちゃんが産まれる" "自分が子供達のママになる" れみりゃは、それをゆっくり理解し、落ち着きを取り戻していく。 「うっう~♪ れみりゃあかちゃんうんじゃうどぉ~♪ れみりゃそっくりでかぁ~いいいどぉ~♪」 「私も協力は惜しまないわ。がんばりましょう!」 私はフレンドリーにれみりゃに近寄った……つもりだった。 が、私の申し出に対し、れみりゃはむすぅ~と頬を膨らませる。 「だぁ~めぇ~! おねーしゃんはゆっくりできないひとだどぉ!」 「そんなことないわ。私はゆっくりできる人よ?」 「しんじないどぉー! こーなったのもぜんぶおねーしゃんがれみりゃをゆっくりさせないせいだどぉ!」 どうやら、ここ数日間の"蜜月のたっぷり生活"で、私はすっかり信用を無くしてしまったらしい。 「おねーしゃんはれみりゃのいうこときいてればいいんだどぉー!」 「だから言ってるじゃない、協力は惜しまないって」 「だったらぁー! さっさとれみりゃとあかちゃんのためにぃ、ぷっでぃ~んもってこいだどぉ!」 「いいわよ、赤ちゃんが生まれたら持ってきてあげる」 「うー! れみりゃはいまたべたいんだどぉー! さっさともってくるんだどぉ!」 「そうね……それじゃ、今は"ぷっでぃ~ん"よりもっと良いものをあげるわ」 「う~? なんだどぉ?」 「それはね……」 私は両手を広げ、れみりゃの退路を塞ぎながら近寄っていく。 「そ、そこでとまるどぉ! こっちきちゃダメだどぉ!」 私を警戒し、壁際へ逃げ去るれみりゃ。 私は口角を歪ませながら、れみりゃを追い詰めていく。 「く、くるなぁ~~っ! くるんじゃないどぉ~~~っ!」 れみりゃは、口では抵抗しつつも、私の雰囲気に気圧されてペタンと地面に座り込んでしまう。 「あっちいけぇーー! あっちいくんだどぉーーっ!!」 両手をグルグル振り回す、れみりゃ。 私は、舌なめずりをしてから、れみりゃを捕まえて抱き上げる。 「うああああっ! はなせぇーーっ! れみりゃのぷりてぃぼでぃーはなすんだどぉーーっ!!」 「だめよ……これから妊娠祝いに良い物をあげるんだから」 私はベッドの上に腰掛けて、れみりゃを膝の上に座らせて抱きしめる。 そこまでくれば、れみりゃもこれから何をされるのかわかったのだろう。 より一層、抵抗を強めていく。 「いいものいらなぁーい! そんなのぽーいぽーい! おねーしゃんもぽーいするのぉ! ぽぉーい!」 「遠慮しなくていいのよ、れみりゃ」 「えんりょしてないどぉー! おねーちゃんのぶぁーかぶぁーーか!」 私は、腋ではさむようにれみりゃの肩を押さえ込むと 左右両方の手を、肥大化した妊娠れみりゃの下ぶくれ顔にあてがう。 「や、やめるんだどぉ~~~! いやぁ~いやぁ~~~!」 「さぁ、妊娠祝いの特別サービス! 両手たぷたぷよ!」 「たぷたぷやだぁぁぁ~~~~っ!」 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 「うわ、あ、うあ、うああああっ!」 妊娠して肥大化したれみりゃの下ぶくれを、 揉みしだくように、こねまわすように、さするように、私は両手で"たぷたぷ"していく。 いつも以上の激しい"たぷたぷ"に、ガクガク体を震わせ息もたえだえで苦悶する、れみりゃ。 「いいわ! 妊娠していっそう"たぷたぷ"しがいが増したわ!」 「や、やめてぇ~~~! あがぢゃんがゆっぐりでぎないどぉ~~~っ!」 「大丈夫よ! 赤ちゃんはきっとゆっくりしているわ! ううん、それ以上に"たっぷり"しているはずよ!」 「ちがうどぉぉー! そんなのぜんぜんえれがんとじゃないどぉーーー!!」 "赤ちゃんがたっぷりしているはず"という私の言葉に、 れみりゃは強い拒否反応を示す。 「おねがいあがぢゃん~~! ゆっぐりうまれでぇ~~~!」 れみりゃは、涙を流しながら体内の赤ん坊に話しかける。 「ゆっくりよりこっちのが気持いいわよね~♪ ほぉーらたぷたぷたぷたぷ~♪」 「うぎぃぃぃ! やべどぉぉっ! あがぢゃんだまじじゃだべぇぇぇ!」 「ねぇー赤ちゃん♪ こんなおぜうさまのなりそこないはほっといて一緒に"たっぷり"しようねぇ~♪」 「ぎゃぼぉぉーーー! でびりゃばぁ、でぃっばなぼでうじゃまだどぉーーーっ!!」 激しい"たぷたぷ"と、嗚咽混じりで、れみりゃの言葉は既にまともな発音を得ていない。 私は、そんなれみりゃの様子を楽しみながら"たぷたぷ"振動を加えつつ、体内の赤ん坊をあやしてからかう。 「ほぉ~ら、たぷたぷ~♪ たぷたぷぅ~♪」 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 日が沈んで、月が昇って。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 月が沈んで、日が昇って。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 雨が降って、風が吹いて。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 さんさん太陽が照りつけて。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 それからまた、日が沈んで月が昇って。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 それからまた、月が沈んで、日が昇って。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 そうして月日が経った頃。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 「う、うぎぃぃーーー! うまれるぅぅぅ! うまれちゃうどぉぉーー!?」 私に抱かれながら"たぷたぷ"され続けていた、れみりゃが突如叫び声をあげた。 近頃はすっかりぐったりして、「…ぅー、ぅー」としか言わなかったのに。 「あ、あがじゃんがぁーー! でびりゃのあがじゃんがぁーーーー!」 どうやら、れみりゃは産気づいたらしい。 極限まで肥大化した下ぶくれの底部が、ピクピクと脈打ち始めている。 「いだい~~! いだいどぉ~~っ! あがじゃんゆっぐりじないでででぎでぇ~~~!」 私は出産経験が無いのでわからないが、人間にとってもゆっくりにとっても、 体内から新たな生命を産み落とすというのは、相当な苦痛を伴うものらしい。 れみりゃは、いきみながら、必死に赤ん坊を産みだそうとしている。 「そうよ! お母さんのためにもゆっくりしないで、"たっぷり"でてきてね!」 「ぎゃぼぉぉぉぉ~~~っ! よげいなごどいうなどぉぉ~~~っ!」 私の応援は、どうやられみりゃのお気に召さなかったらしい。 仕方ないので、私は"たぷたぷ"を繰り返すことで、出産を励ますことにある。 「た、たぶたぶじゃべぇぇぇぇーーー!!」 「ほらほら、がんばりなさいれみりゃ!」 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 「うあ、うぁ、うぁぁ、ぁぁ、うぅぁ」 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 「うっ!? ううううーーっ!?」 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 たぷたぷ。たぷたぷ。 「う、うううううううーーーーーーーっ!!!」 ビクン! れみりゃの体が大きく揺れ、 叫び声と同時に下ぶくれの底辺から赤ん坊が飛び出した。 赤ん坊は、クッションの効いた床に落ち、ころころ転がっていく。 やがて、よちよちと四つんばいの姿勢をとり、ゆっくりと目を開いていく。 「……う~?」 不安と期待と希望を込めて、あたりをみまわす赤ん坊。 ピンク色のベビー服のようなもので身を包んだそれは、 まごうことなきゆっくりれみりゃの赤ん坊・通称べびりゃだった。 「うぁーー……、うぁーー……、うぁーーー……」 親となったれみりゃは、いきみ続けた反動で息を荒げ、口からは肉汁の泡をこぼしている。 が、少しずつ平静を取り戻していき、自分が産んだ赤ん坊を見ると、目尻に涙を浮かべて喜びの笑みを浮かべた。 「うううう~~~♪ やったどぉ~~~れみりゃのあかちゃんだどぉ~~♪ か~わいいどぉ~~~♪」 感動の声を上げるれみりゃ。 その声に反応して、べびりゃがれみりゃを見上げ……首を傾げた。 「みゃんみゃぁ~?」 「う~~♪ そうだどぉ~~ママだどぉ~~♪」 「う~~♪ みゃんみゃぁ~ぶちゃいくなおかおだどぉ~~♪」 「……う?」 れみりゃは、べびりゃが何を言っているのか理解できいようだ。 一方、べびりゃは親の戸惑いなど知らず、キャッキャとはしゃいでいる。 「う、うー? あ、あかちゃ~ん、ママはおぜうさまこうほになるんだどぉ~、ぶちゃいくなんかじゃないどぉ~?」 「みゃんみゃぁへんなおかおだどぉ~♪ ちわちわぶちゃいくだどぉ~♪」 「ううーっ!?」 聞き間違いではなく、我が子が自分をブサイクだと言っていることを知ったれみりゃ。 その顔は途端に暗澹としていく。 「……そうね、確かにブサイクね」 「お、おねーしゃんまでなにをいいだすんだどぉー!?」 私は、れみりゃを抱き上げて立ち上がり、鏡の前まで連れて行く。 れみりゃは、鏡で自分の姿を見ると、バカにしたように笑い出した。 「う~~~♪ ひんどぉいおかおだどぉ~~♪ こんなぶちゃいくなれみりゃみたことないどぉ~~♪」 鏡に映ったれみりゃは、顔の下側から気持ち悪いほどダランと皮が垂れ下がっている。 そして、顔自体もしわくちゃで、醜く変形してしまっていた。 れみりゃは、それが自分の姿だとは認識できないようだ。 だから、私は事実をありのままに、ゆっくり教えてあげることにする。 「それ、あなたよ」 「……う?」 「ね? あなたブサイクでしょ?」 「……う、うそだどぉ」 「う~~♪ みゃんみゃぁ~のおかお~みれたもんじゃにゃいどぉ~~♪」 「うがぁーーーーーん!」 れみりゃは、鏡に映ったブサイクなれみりゃが自分だと知り、呆然と立ち尽くす。 肉汁の泡をブクブク吹き出しながら、何かをブツブツ呟くれみりゃ。 「……"たぷたぷ"の後遺症ね。肥大化した皮や内組織が変形して、戻らなくなってしまったのね」 私の呟きも、今のれみりゃの耳には届いていなかったようだ。 一方、べびりゃの方は、私が発したとあるキーワードに耳ざとく反応した。 「うっうー♪ たぷたぷぅ~たぷたぷぅ~♪」 「あら? あなたは"たぷたぷ"してほしいの?」 「う~~♪ たぷたぷしゅきしゅきぃ~♪」 "たぷたぷ"その忌まわしき言葉を聞いた親れみりゃが、反射的に叫んだ。 「だべぇぇぇ! だぶだぶはだべだどぉーーー!」 「うるちゃいどぉ~! ぶちゃいくなみゃんみゃぁはだまってるどぉ♪」 「あ、あがじゃんひどぃぃぃぃ! ぞんなごといっちゃだべぇだどぉぉーーー!」 (あのれみりゃ、もう限界か……) 気が狂ったように叫ぶれみりゃを見て、私は"たぷたぷ"する対象を切り替えることに決める。 優しくべびりゃを抱きかかえ、ベッドの上にこしかける。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「う~~♪ きもちぃぃどぉー♪」 きゃっきゃとはしゃいで喜ぶ、べびりゃ。 (どうやら、私の狙いは成功したようね) 胎内にいたころから"たぷたぷ"し続けたことによって、 このべびりゃは"たぷたぷ"に抵抗を感じなくなっているのだ。 そう、このべびりゃこそ、私が私の悪癖のために生み出した、世界で1匹のれみりゃに他ならない。 「やべでぇぇぇ! あがじゃんだぶだぶじじゃだべぇぇぇ!!」 「う~~! ぶちゃいくはしぃーなの! れみりゃはおねーしゃんにたぷたぷしてもらうどぉ~♪」 「うぁぁぁぁっ! あがじゃんだばざれるなどぉぉぉーーっ!!」 たぷたぷ。 たぷたぷ。 たぷたぷ。 「うふふ、あなたは最早ただのれみりゃじゃないわね」 「うー?」 「そう、あなたは"たっぷりれみりゃ"・・・・・・すなわち"たっぷりゃ"よ!」 「う~~~♪ えれがんとぉーなひびきだどぉー♪」 私の命名に喜ぶ赤ん坊。 べびりゃ改めたっぷりゃは、私に微笑みかけてこう言った。 「たっぷりしていってねぇ~ん♪ ……だどぉ♪」 おしまい。 ======================== ≪あとがき≫ すみません、こんなに長くなるとは…。 これ書いている間、異様に眠かったので、誤字脱字等結構あるやもしれません。 「モ○ダーあなた疲れているのよ…」とどこからか声が聞こえた気がします。 何卒、ご容赦下さい。 by ティガれみりゃの人 ======================== このSSに感想を付ける