約 632,061 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/290.html
『その1 ホームラン』 「ゆっくりしていってね!!!」 「うわ、なにコイツ!?」 「ゆっくりしていってね!!!」 「ちょっと、掃除の邪魔だからあっちに行きなさい」 「ゆっくりしていってね!!!」 「だから、邪魔だってば」 「ゆっくりしていってね!!!」 「だからぁ……はぁ……人の話は聞かないのね」 「ゆっくりしていってね!!!」 「はいはい、ゆっくりゆっくり」 「む゛っ!」 「……なによ」 「ゆっくりしていってね!!! ゆっくりしていってね!!!」 「はいはい、おもしろいおもしろい」 「ちゃんとゆっくりしていってよー!!! もっとゆっくりしていってよー!!!」 「ああもう、いい加減鬱陶しいわよ」 「もっとゆっくりしてね!!! しっかりゆっくり゛ゆ゛ぶっ!??」 「たーまやー、と。あら、よく飛ぶわ」 『その2 ファイナルマスパ』 本日の幻想卿は晴天なり。 カランカラン……。 少々古臭い印象のある、古道具屋――香霖堂の扉が開く。 「香霖、じゃまするぞー」 言って店の敷居を跨ぐのは、白黒のエプロンドレスに魔女帽子という衣装をした魔法使いの少女だった。 活発そうな雰囲気を放つ彼女は何時もの如く勝手知ったるなんとやら、とばかりに店内に足を踏み入れたのだが、しかし、出迎えた声は彼女が聞きなれた店主の声ではなかった。 「ゆっくりしていってね!!!」 「うを!?」 突然上がった大声に一瞬身体を硬直させる。 思わず少女の顔に怪訝な表情が浮かび、声の発生源は何処だとおもむろに辺りを見回すと、店の奥に店主の姿が見て取れた。 いつもの定位置にて、彼女の来訪に気付いた店主は、苦笑を浮べながら少女に挨拶を寄こした。 「はは、魔理沙、良く来たね」 先ほどの大声があった為か、少しばかり構えた態度で魔理沙と呼ばれた少女は店主に視線を向けた。 見ると、その傍らになにやら奇妙な物体があるのが目に映る。 「ゆっくりしていってね!!!」 大きな、一抱えほどもある丸い物体。 「……………………」 魔理沙はおもむろにそれに近付き、ずっしりと重みを感じるソレを持ち上げる。 「ゆっくりしていってね!!!」 「……なんだこりゃ。新手のまんじゅう妖怪か?」 じろじろと観察してみる。 一言で言えば、巨大な饅頭に顔がついているような印象だった。 金の頭髪に、黒の魔女帽子。 ――鏡を見れば視界に映りそうな見てくれだった。 両手で持ち上げられたソレは、輝くような笑顔を浮かべ口を開く。 「ゆっくりしていってね!!!」 思わず溜息を吐き、店主に視線を移した。 「いつから香霖堂はこんな珍妙すぎる妖怪を飼うようになったんだ?」 「飼うようになったというか、気が付いたら居たのさ」 今朝早く、倉庫の品物の整理をしている内に、いつのまにか店内に居座っていたらしい。 それなりの大きさで、外に出すにも一苦労をし、追い出そうとしても勝手に戻ってくるので放置していたそうだ。 「あまり実害は無いみたいだしね」 「ゆっくりしていってね!!!」 妙な生き物だ、と魔理沙は微妙な表情を作り、再び溜息を吐いた。 「はいはい、勝手にゆっくりしていくさ」 同じ言葉を只管に連呼する物体を床に下ろし、戸棚に歩み寄る。 なぜか足元に纏わり着く物体が少々煩わしかったが、それ以上気にする事も無く戸に手を伸ばし、横に滑らせる。 その棚自体は古い物のように見受けられたが、店主の手入れが良くされている為か、戸はすんなりと溝を滑っていった。 中を確認する。 「ん?」 何も見当たらない。 次いでその奥へと手を伸ばしてみるが、望んだ感触は得られなかったらしく首をかしげて店主を振り向いた。 「香霖、茶筒が無いぞ」 「あー魔理沙、お茶かな?」 「それと煎餅だ」 私のお気に入りだったのにと、憮然とした表情を浮べる魔理沙に対して、香霖と呼ばれた店主はどうしたものかと視線を彷徨わせる。 次いで頬を人差し指で掻く仕草をし、おもむろに脇でにこにこと妙な笑顔を振りまく物体に視線を落とした。 その意味が分からず、仕方ないとばかりに今度は別の引き戸を開けて湯飲みをとりだそうとする魔理沙。 茶葉も煎餅も、別に切らしているわけではない。 魔理沙が自分用にと取っておいた分が無くなっていただけで、この古道具屋にはまだあった筈だった。 そう思って魔理沙は愛用の湯飲みを取ろうと引き戸を開けるが、 「あれ?」 開けた戸の中は、またも空だった。 これには益々表情を険しくし、少々拗ねたような口調で店主へと口を開いた。 「湯飲みも無いぞ」 その台詞を受けて、店主は再び傍らの物体へと視線を向けた。 「魔理沙、すまないんだが実は――」 と、店主が口を開いたのと被せるようなタイミングで、 「おいしかったー!!」 物体はにっこりと笑顔で、事実を口にした。 「……………………」 「……………………」 「とってもおいしかったよ! また食べたいな!」 妙な沈黙に包まれる二人、対して物体は上機嫌で笑顔を飛ばしている。 「……湯飲みもか?」 「……………………」 「ごめーん! ゆるして!」 無言で傍らの物体を指差す店主。 物体は特に悪びれた様子も無く、笑顔を魔理沙に向けている。 自分の行動に悪意を感じていないのか、責任があると思っていないのか、魔理沙の心情を慮ることもせずに物体は彼女に擦り寄ってくる。 魔理沙は本日何度目かになる溜息を吐いた。 「ちゃんと喋るんだな、こいつ――って違う。実害、あるじゃないか……私に対して」 実害が無いのは香霖、お前に対してか。と胡乱な瞳を向けられ、しかし店主は苦笑を返しただけだった。 「少し見ていると気付くと思うけど、その妖怪は見た目どおりに魔理沙の真似をしたがるんだよ」 店主は呆れたような表情で説明をする。 その妖怪は、魔理沙の使用品に興味を示し、なんでもかんでも使って見せようとしていたらしい。 見れば、店主の隣にあったのは魔理沙がいつも敷いている座布団だ。 そこにあったということは、先ほどまで目の前の物体がそこに座っていたという事だった。 その他にも、その座布団の周囲には色々と見覚えのある物品が散らかっていた。 思わず、魔理沙の額に青筋が浮かぶ。 「――湯飲みを割ったのは、お茶を飲もうとしてだろうね。ただ、手が無いからどうにかこうにか湯飲みを取り出した後に、小突いて割ってしまったんだ」 手が無いから湯のみが持てず、工夫しようとしているうちに体当たりで砕いてしまったそうだ。 煎餅はそのまま食べて、茶葉もそのまま食べたらしい。 どうやら雑食のようだ、と、店主は語った。 「あー、あー、あー……と。じゃあ、何か。このままこいつを放置しておけば、引き続き似たような目に私が遭うってことか」 魔理沙は妙な気迫の篭もった胡乱げな瞳を店主から物体へと移した。 対する物体は、やはり魔理沙に邪気のない瞳を向けている。 じっと物体を見つめた後、まあ害意が無いのは見れば判るがな、と口にして魔理沙は物体に背中を向けた。 「香霖、少し外で運動してくる。まんじゅう、お前もついて来い。遊んでやるぞ」 言って魔理沙は歩き出す。 言われた物体は嬉々として魔理沙の後を追って飛び跳ねていった。 「ゆっくりあそんでね! いっぱいあそんでね!」 「ああ、いってらっしゃい」 店主はぱたぱたと手を振って二者を見送る。 分かりきっている結果を予想して特に止めようとしないあたり、彼も少しは迷惑だと思っていた様子が見て取れた。 カランカラン……。 一人と一匹は店の扉を開けて外へと出て行った。 ………… 「じゃあ、遊んでやるから、そこにいろ。いいか、動くなよ」 「なにしてあそぶの? はやくあそぼうよ!」 「ああ、分かった分かった。だから動くな」 「うん! ゆっくりあそぼうね! いっぱいあそぼうね!」 「ん? なんだあれ」 「どうしたの? なにかあったの?」 「なんだろうな? ほらアレを見てみろ」 「どこ? どこどこ? なにがあるの?」 「後ろだ。お前の後ろ。ほら、後ろ向いてみろ」 「んー? なんなのー? なにがあるのー?」 「魔砲――」 「みえなーい! どこにあるのー?」 「――ファイナルマスタースパーク!!!」 ――じゅっ ………… カランカラン……。 「やっぱり妖怪は退治するに限るぜ」 肩を回して店内へと足を踏み入れるのは魔理沙一人。 本日の幻想卿は晴天なり。 『その3 見てみろ妹紅』 「ほら、見てみろ妹紅」 「ゆっくりしていってね!!!」 「なんだそれは」 「うむ。最近人里で悪さをしているという妖怪らしい何かだ」 「何かか」 「ああ、実のところ妖怪か如何かすら分からん」 「そうか」 「中身は餡子だ」 「そうか」 「つぶあんだ」 「どうでもいいな」 「そうだろうか」 「それで、こいつを如何するんだ」 「燃やしてくれ」 「分かった」 「あつーい!!!」 「ほら、こっちも見てみろ」 「ゆっくりしていってね!!!」 「おまえに似てるな」 「ほら」 「しゃきーん!!!」 「角が生えたな」 「ほら」 「しゅーん!!!」 「角が引っ込んだな」 「どう思う」 「むかつく笑顔だ」 「そうだろうか」 「ああ」 「どうする?」 「燃やす」 「あつーい!!!」 『その4 たぶんおそらく兎の話』 先ず喰い荒らされたのは、竹林に青く芽吹く竹の子だった。 次に喰い散らかされたのは、兎達が丹精込めて育てた人参畑だった。 更に喰い潰されたのは、薬師が手間隙を掛けて管理していた薬草畑だった。 果てに喰い捨てられたのは、姫が趣味で植えていた盆栽だった。 永遠亭、被害甚大。 「あー居ますね、また」 そう言って目の前の進む先を指差すのは、兎の少女。 竹篭を背負い包みを両手で抱えた彼女は、傍らに並んで歩く薬師へと声を掛ける。 「なんか、物凄い笑顔で竹の子食べてますね」 「生のまま食べて美味しいのかしら」 首を傾げながら薬師は呟いた。 ………… 「むーしゃ♪ むーしゃ♪」 巨大な饅頭のような体躯に、どこぞの紅白巫女や黒い魔法使いの格好をした物体が数匹、採り頃まで育った竹の子へと群がっていた。 「一、二、三、四……と、五匹ですか」 指で差して数を数えながら、二人は物体達へと近付いていく。 と、物体達も自らへと向かってくる人影に気付いたのか、その内の一匹が竹の子から口を離し、二人の方へと向き直る。 「おねいさんたちだれ! これはわたしたちがみつけたんだよ!」 言って、齧りかけの竹の子を庇うように前へと進み出る物体。 二人がこの竹の子を狙ってやってきたと思ったのだろう。 顔に警戒を浮べて威嚇を試みる物体。 そんな様子を眺め、薬師はくすくすと笑みを漏らしながら口を開く。 「あら、そんなものよりもっと美味しいものがここにあるわよ」 薬師が物体に差し出されたのは、丸い餡子玉。 つい先ほど、此処に来る前に作った代物だった。 一瞬、差し出された餡子玉をじっと見つめていた物体だったが、薬師がそれを置いて一歩下がると、釣られるように餡子玉へと近付き、それを口に含む。 「むぐむぐ」 浮かんだ表情は、喜色。 「しあわせー!」 至福の色を瞳に宿し、声高らかに幸福を叫ぶ。 竹の子よりも甘いそれは、目の前の物体達の嗜好に大変合う様子で、恍惚の表情を浮べた物体を見て、周りの物体達もそれを羨ましがる。 先ほどまで齧りついていた竹の子を放り出し、薬師へと向かって飛び跳ねて向かってくる。 「あ! わたしもたべたい!」 「おねいさん! ちょうだい!」 「ゆっくりたべさせてね!」 「いっぱいたべるよ!」 「はいはい、それじゃあこっち来て下さいねー」 手を打ち鳴らしながら言って、兎の少女は両手で抱えていた包みを物体達の前へと下ろす。 その包みの結び目を解き圧布を広げると、中からは一抱えほどもある餡子の塊が姿を現した。 物体達の瞳が輝く。 「わあい!」 「おねいさんありがとう!」 「おいしくたべるよ! ゆっくりたべるよ!」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪」 「あまあまー!」 目の前に餡子が現れた瞬間に飛び掛り、一心不乱にそれを頬張り口を動かす物体達。 頬を餡子で汚しながら、ただ只管に貪り食らう。 そんな様子を、どこか呆れた表情で眺め続ける二人。 やがて、場に盛られた大量の餡子が無くなった頃、物体達は薬師と兎の少女に向かって口々にお礼を述べ始めた。 「げふー!」 「おいしかったね!」 「とってもおいしかったね!」 「ありがとうおねいさん!」 「ごちそうさま!」 心底満足したという物体達の様子に、どのような意味でか薬師の表情に笑みが浮かぶ。 一回りほどその身を膨らませ、色艶も良くなった物体達を前にして、さらに魅惑の言葉を投げかける。 「ねえ、貴方達、もっと沢山食べたいと思わないかしら」 その言葉に物体達は益々表情を明るくし、喜びを全身で表現するべく上下に飛び跳ね始める。 「もっとたべるよ!」 「おいしくたべるよ!」 「いっぱいたべさせてね!」 「たくさんたべてあげるよ!」 「ゆっくりたべてあげるね!」 と肯定の言葉を聞き、浮べていた笑みを深くする薬師。 兎の少女が背負っていた竹篭を指差し、言葉を続ける。 「それじゃあ、あの籠の中に入って頂戴ね」 薬師がそう言うと、兎の少女が物体達にとって入りやすいようにと竹篭を降ろして横に倒す。 覗き込めば、妙に奥へと深い竹篭だった。 「はいはいどうぞどうぞー」 「うん! ゆっくりはいるね!」 そんな竹篭の様子を疑問に思う事も無く、兎の少女に案内されるまま、先ずは一匹が返事を返し竹篭の中へと飛び込んでいく。 そのまま二匹目、三匹目と物体達が続き、やがて全員が竹篭の中へと収まった。 兎の少女は五匹目が中へと入っていくのを見届けると、その竹篭に手を掛け、縦に引き起こす。 竹篭の中で物体達がごろごろと転がる振動を兎の少女は感じていたが、特に気にする様子も無くその縁に手を置き、頷く。 「はい、捕獲完了です、と」 ………… 「それにしても手間が掛かって面倒ですね」 兎の少女は先ほど物体を収めたばかりの竹篭に両手を入れ、その中から一匹の物体を取り出す。 「ゆ?」 物体は、入ったばかりですぐさま取り出されるという状況に、首を傾げるように身を傾けて疑問符を浮べている。 それを両手で抱え、薬師へと差し渡す。 「逃げ出そうとするのを捕まえる事だって、それなりに手間はかかるのよ」 だからこうやって自分から捕まりに来るように仕向けないと、と薬師は言う。 そのまま、兎の少女から手渡された物体を、餡子が無くなったままに広げられていた圧布の上へ据え置いた。 「ゆ?」 依然その頭の上には疑問符が浮かんでいる。 「うー、他の皆も協力してくれると助かるんですけどねー」 傍らに置いた竹篭を眺めながら、どこか疲れた様子で呟く兎の少女。 「てゐが嫌うのよ、こういうのを」 「あー」 会話を続けながら、薬師は何処に持っていたのか鋭く磨かれた円刃刀を取り出し、物体へと宛がって見せた。 「ゆ?」 「あの兎は、他の兎がこういう事に加担させられるのを快く思わないから」 相手は、その自らに突きつけられた刃の意味も分からずに、身体を斜めに傾げながら刃と薬師とを見比べている。 「なにをしてるのおねいさん? おいしいものはどこ?」 身に添えられた刃の感触を疑問に思うことも無く、ただ沢山の餡子を待ち望み薬師へと瞳を向ける。 次いで、先の甘くて美味しい食べ物はどこにあるのだろう、と周囲に向けて視線を動かし、期待に胸踊るといった印象で瞳を輝かせていた。 薬師はにっこりと微笑みながら、言葉を返す。 「ええ、すぐに取り出してあげるから、少し待ってなさいね」 「うん!」 薬師は笑顔をそのままに、相手へと宛がった刃を深く沈み込ませる。 「ゆ゛……!!??」 瞬間、苦悶の表情を浮かぶまもなく身体を二つに断たれ、先ずは顔面が着いた方へと薬師は手を伸ばす。 黒く湿った中身を指を使ってごっそりと掻き出し、広げられた圧布の上へと手際よく盛り付けていく。 「!!? い゛だ――――――――」 叫び声を上げようとするも既に時遅く、中身を抜かれた後の瞳はすぐに力を失い、苦悶に歪んだままの表情が残される。 それを傍らに置き、次いでもう片方へと手を掛ける。 「あの嘘吐き兎が好きなのは、飽くまでも悪戯までなのよ」 後頭部の中身を片割れと同じように掻き出しながら、先の言葉の続きを言う。 「兎達を使ってコレを追い払ったり捕まえたりするのは良いみたいだけど、こういう光景を見せるのは駄目だ、って」 目を見開き、歯茎を剥き出し、泣き叫ぶ寸前で固まったままの表情は、見るものに不快感を与えるような気持ち悪さを漂わせていた。 饅頭の生地を肉厚にしたような肌触りのそれを手に取り、兎の少女へとぷらぷらと振って見せる。 「うわぁ……私も凄い駄目ですよ」 目の前で揺れる死に面を眺めながら、微妙そうな表情で言ってみせる兎の少女。 対して、くすくすと笑みを浮べる薬師。 「ウドンゲ、あなたは私の弟子でしょう?」 「そうでしたね、師匠」 どこか苦笑いの表情で兎の少女は答えた。 薬師は手に持ったソレを適当に後ろへと放り捨てる。 これは見せしめのようなものだ。 竹林へと足を踏み入れればこのような姿になるという警告。 これがどの程度の効果を上げるのかは分からないが、まあ、この次は捕まえた相手で色々と実験を試してみようかなどと薬師は考えていた。 「はい、それじゃあ次を寄こして頂戴」 そう薬師は手を差し出して、二人は暫し作業を続けた。 『その5 ビビる⑨』 「ここは、わたしがみつけたおうちだよ! はやくでていってね!」 「うわ、な、なによあんた」 「でていってね! さっさとでていってね!」 「え、あ、なに? まんじゅう?」 「ちがうよ! ぜんぜんちがうよ! だからでていってね!」 「なにさ、別にいいじゃないのよ」 「ゆっくりしていってね! あっちでゆっくりしていってね!」 「むむむ、ここはあたいがいつも遊んでる場所なのよー!」 「そんなのしらなーい! むこうでゆっくりしていってね!」 「邪魔なのはそっち! ほら、さっさとあっち行って!」 「そんなのしらなーい! ここはわたしのおうちなの!」 「だーかーらー出て行けー!」 「これからおひるねするの! うるさいからでていってね!」 「むかちん!」 「おお、こわいこわい」 「むっかー!」 「おお、こわいこわい」 「きー!!」 「おお、こわいこわい」 「しゃー!!!」 「おお、こわいこわい」 「チルノ、どうしたの?」 「あ、レティ」 「なにかしら、これ。大福妖怪?」 「はなしてね! ゆっくりおろしてね!」 「レティ、貸して」 「はい」 「なにするの!? やめようね! ゆっくりおろそうね!」 「てりゃっ!」 「あら投げた」 「たかーい! おそらをとんでるみたい!!」 「よく飛ぶのね。なんなのかしら、あれ」 「むかつくやつ」 「そうなの?」 「うん、そう」 「って、あら」 「あ」 「わあい! たかいたか――――つぶっ!?」 「池に落ちたわ」 「ふふん!」 「ゆっくりたすけてね! はやくたすけてね!」 「あらあら」 「ざまみろー!」 「すぐにたすけてね! さっさとたすけてね!」 「? なんだか段々と膨らんできてないかしら」 「ばーか! ばーか!」 「ゆっくりのびるよ! だんだんのびるよ!」 「すごくぶよぶよしてるわ、よ……」 「ばーか! ばーか! ばーか、ぁ……うわー」 「ゆ゛ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ」 「……き、気持ち悪いわね、チルノ」 「……う、うん」 「……あっちで遊びましょうか」 「……うん」 「ぶくぶくぶくぶくぶく…………」 『その6 投げっぱなし唐突百合エンド』 がしゃがしゃと鉄籠を揺らすのは、先日捕獲したよくわからない物体達だった。 紅魔館の門番長である紅美鈴が館の門前でウロウロとしている物体たちを捕獲してきたらしい。 「だってパチュリー様、こいつら追い払っても追い払っても近付いてくるんですよ。だったら昇天させるか捕まえるかぐらいしかないじゃないですか」 と言って門番は捕獲の方をえらんだ様子だった。 「それで、なんでそれがここにあるのでしょうか?」 傍らに控えた小悪魔が問う。 「そんなの、面白そうだからに決まっているでしょ」 見なさい、と差し出された二匹の生き物。 一方は大きな赤いリボン。 もう一方は黒い魔女帽子。 「何処かで見たことの在る格好ですね」 「でしょう?」 視線を合わせ、パチュリーはその物体へと声を掛けてみた。 「ねえあなた達、名前はあるのかしら?」 少女の問いには間髪いれずに答えが返ってきた。 「わたしのなまえはゆっくりれいむ!」 「わたしのなまえはゆっくりまりさ!」 「ゆっくりさせてあげるよ!!!」 「ゆっくりかわいがってね!!!」 「うわー」 と子悪魔。 「な、なんだかむかつくわね」 とパチュリー。 しかし直に気を取り直し、興味深げに二匹へと視線を這わせた。 「なんで紅白と黒いのの格好なのかしら?」 「いっぱいいますしね」 後ろを振り向く小悪魔。 紅魔館にある巨大図書館の一室であるこの部屋の隅には鉄の下りがいくつか積み重なっており、その中身はこの二匹。 ゆっくりれいむとゆっくりまりさがみっちりと収められていた。 ゆっくり達は各々に口を開く。 「だしてー! ねぇだして!」 「ゆっくりしようね! ここからだしてね!」 「おなかすいたよー! おうちかえしてー!」 「……中国もたくさん捕まえたものね」 呆れた様子のパチュリー。 ふと思いついた様子で小悪魔は問いかける。 「出してみましょうか」 「酷い事になるわよ」 溜息を吐いて止めておきなさい、と主に言われ特に落胆した様子も見せずに子悪魔は引き下がる。 「まあ、最近暇だったし、色々と観察してみましょうか」 ゆっくりまりさを持ち上げ、パチュリーは言う。 「たかーい! いいけしきー!!」 「わたしも! わたしも!」 ゆっくりれいむもその様子をみてパチュリーへと擦り寄っていく。 「あーはいはい」 言ってパチュリーは気だるそうに子悪魔へと視線を向けた。 その意を汲んだのか、小悪魔はゆっくりれいむを手に取り、高々と持ち上げて見せた。 「すごーい! いいけしきー!」 「こんなので喜ぶなんて、お手軽な脳味噌してるのね」 呆れたように呟くパチュリーに対して、ゆっくり二匹は笑顔を振りまいて楽しげな表情を見せていた。 ………… 「すっぱーい!」 「酢は大丈夫、と」 「からーい!」 「唐辛子も大丈夫」 「しょっぱーい!」 「醤油も平気ね」 「あまーい! おいしーい!」 「砂糖も食べる、と」 「もっとたべたい! ちょうだい! ねえちょうだい!」 「はいはい」 パチュリーの指示を受けて小悪魔がざらざらと砂糖袋から砂糖を皿へと盛る。 それを二匹のゆっくりは二人並んでぺろぺろと舐め始める。 なぜか色艶がよくなっている気がする。 やはり醤油や酢などよりも、砂糖の方が食えた物であるためか。 「ゆっくりー!」 「ゆっくりー!」 二匹は二人そろって仲良く叫んでいた。 「まずーい!」 「一応、草とかも食べるのね」 「おいしくなーい!」 「カブトムシも、有り」 「むぐむぐ、んぐんぐ」 「生肉も平気、と」 「おいしーい! すごくおいしいー!」 「お菓子は良く食べる、と」 「もっとちょうだい! もっとたべたい!」 「もう無いわよ、後は私たちの分」 目の前に紅茶と共にあるのは、紅魔館のメイド長が手掛けた焼き菓子が数枚。 持ってきた分の半分をゆっくり達へと与えたから、残りはパチュリーとその傍らに控える小悪魔の分だった。 「むーっ!」 「むーっ!」 なんでもっとくれないの、と足元でむくれる二匹のゆっくりを見て、やれやれとシュガーポットへと手を伸ばす。 蓋を開け角砂糖を二つほど取り出すと、ゆっくりの頭上へ向けて落として見せた。 「?」 「?」 頭の上の弾んだ感触に上を向き、目の前に転がってきた白い立方体をしげしげと眺め、やがて口に含む。 そして、その表情に喜色が浮かんだ。 「あまーい!」 「ありがとーパチュリー!」 「安い自尊心ね」 くすくすとパチュリーが苦笑を浮べるすぐ下で、二匹のゆっくりはパチュリーに擦り寄るように笑顔で騒いでいた。 ………… 今日一日観察してみて、分かったことを口にしてみる二人。 「雑食ね」 「雑食すぎますね」 あの後も様々な食べ物を与えてみて、生魚や芋虫、ついでに血液や人肉ケーキなども与えてみたが、美味い不味いの反応はあったものの、二匹のゆっくり生物はすべからく胃袋に収めてしまっていた。 食の観察をしてみれば、雑食この上ないという結果だった。 次は何をしようかしら、とパチュリー。 ああそういえば、と思い付きを口にする子悪魔。 「共食いとか、するんでしょうか?」 ちらりとパチュリーの足元に視線を向ける。 ゆっくりれいむとゆっくりまりさがそれぞれ寝息を立てて横に転がっていた。 それは、この雑食すぎる二匹のゆっくり生物に対して沸いた只の疑問であって、特に本心から思ったものでは無かった。 しかしパチュリーはどことなく冷やかな視線を足元に向け、口を開いた。 「試してみる?」 「え、宜しいのですか」 「宜しいのですかって何がかしら」 「万一にも共食いをしたら、どちらかが居なくなってしまいますよ」 「別に、私はペットを飼う心算は無いわよ。ティータイムのクッキーが減るのも、嫌」 咲夜の作ったお菓子は美味しいもの、と特にどうでもよさそうな事を呟いてパチュリーは指を振って何言かを唱えた。 二匹のゆっくりはふわふわと揺れるように浮かび上がり、パチュリーが着いている丸テーブルの上へと案内された。 未だ夢見心地の二匹を眺め、口を開く。 「まぁこの程度で情なんてモノが沸いていたら、百年も魔女なんてやっていないわよ」 つん、と指先でゆっくりの頬を優しくつつき、冷淡な微笑みを湛えて見せた。 ………… 1日目 「せまいよ! もっとひろいところがいい!」 「おなかすいたよ! あまいのたべたい!」 「えーと、特に異常無しですね」 2日目 「ゆっくりしようよ!!」 「なんでゆっくりさせてくれないの!?」 「ゆっくりしてますよー、私はー」 3日目 「おねいさん! だしてよ!」 「もっとゆっくりしようよ! ねえ!」 「それにしてもこの時間は暇ですねー、パチュリー様に習って本でも借りてきましょうか」 4日目 「だして! ここからだして!」 「ひどいやつ! パチュリーにいいつけてやる!」 「そうですねー、パチュリー様はお優しいですからー、知ったらきっと出してくださると思いますよー」 5日目 「パチュリー! たすけて!」 「わるいやつがここにいるの!」 「んー、しぶといと言うべきでしょうか、本日も異常無し」 6日目 「だずげでえええ! バヂュリ゛ー!」 「お゛な゛がずい゛だよ゛おおおお」 「さて、次はどの本を読みましょうか」 7日目 「い゛や゛だあああ! ゆ゛っぐり、じだいいいい」 「も゛う゛い゛や゛あああ! ゆ゛っぐりざぜでえええ」 「異常無しですか。んー、これはもしかすると――」 ………… 「すっきりー!」 「すっきりー!」 「すっきりー!」 「……………………なにしてるんですか、パチュリー様」 「あら、戻ってたのね」 なにやら高速で振動している三匹のゆっくり。 良く見なくても、パチュリーの魔法の仕業であることが分かる。 妙に頬を高潮させているゆっくり。 そして何故かその周囲には飛沫が舞っていた。 「ほら、こうすると発情するのよ」 高速で振動していたそれが、さらにその運動を激しくさせる。 「ゆっ……! ゆっ……! ゆっ……! ゆーー!!」 がくがくと震え初め、その丸い物体の下部から液体が飛び散り始める。 「す、すっきりー!」 「ほらね、これで、えーと……八回目かしら?」 うわぁ……と微妙そうな表情を見せる小悪魔にたいして、その主は笑顔を浮べ、言う。 「面白いでしょう?」 「……………………」 「……冗談よ。それで、今日の様子も変わり無いのかしら」 そう拗ねた様子で言って見せたパチュリーに対して、小悪魔は別室に隔離したゆっくりれいむとゆっくりまりさの様子を伝える。 といっても、七日目である今日の様子はといえば、ただ只管に泣き叫ぶだけだった。 「まあ、共食いといっても別に期待していたわけではないから、そういう生き物だったってだけよね」 そろそろ出してあげるのも良いかしら、と口にするパチュリー。 傍らで振動を続ける三匹のゆっくり達は、二人の会話中もそのままだった為か、白目を剥いて泡を吹き始めていた。 「これを掃除するのは、私なんでしょうか」 小悪魔の目の前には、色々な液体で水浸しになった一面の床と、その上で失神中の三匹のゆっくり達。 思わず溜息が零れた。 ………… がちゃり、と扉が開かれ、その奥から気だるげな印象を備えた少女が姿を表した。 「バヂュリ゛イイイイ!!!」 「バヂュリ゛イイイイ!!!」 「ひさしぶりね、貴方達。随分と痩せてしまったみたいだけど、大丈夫だったかしら?」 パチュリーの姿を目にした途端、跳ね起きるようにして鉄の格子に身体を押し付け、泣き叫ぶようにして助けを求めるゆっくり。 「だずげでバヂュリ゛ー!!!」 「わ゛る゛い゛や゛づがい゛る゛の゛おおお!!!」 「あらあら、まだまだ元気いっぱいね」 困ったような笑顔を浮べたパチュリーは二匹のゆっくりが収められている鉄籠に近付き、その扉に掛けられた錠前を魔法で切断してみせた。 籠の扉はその上部についており、そこから中を覗き込むとゆっくりが笑顔を浮べて此方を見上げているのが見て取れた。 「ゆっ! ゆっ!」 「ゆ……っ! ゆ……っ!」 二匹のゆっくりが、真上に開かれた出口から飛び出そうと一生懸命飛び跳ねて見せるが、あと少しという所で届かない。 「ほら、そんなに慌てなくても、手伝ってあげるわよ」 言うが早いか、ゆっくりれいむの体がふわりと浮き上がり、出口を潜ってパチェリーの胸元へと導かれる。 やさしく抱きとめられるゆくりれいむ。 「バ、バヂュリ゛ー!」 涙と鼻水でずるずるになったその表情をパチュリーの胸板へと押し付け、ゆっくりれいむは嗚咽を我慢せずに泣き始める。 思わず溜息を零し、パチュリーはその視線を期待に溢れた表情を浮べているゆっくりまりさへと向けた。 「はぁ……まりさは少しまっててね。れいむを置いてくるから」 「うん! まりさまってるよ! いいこだから! でも、はやくもどってきてね!」 「ええ、すくに戻ってくるわよ」 笑顔を浮べてゆっくりまりさに答えると、パチュリーはゆっくりれいむを抱えて部屋の入口へと向かっていった。 入ってくる際に開け放しのままにしておいた引き戸を潜り、廊下へと足を進める。 こつこつこつ、と暫し進む。 と、パチュリーの直傍らに佇む影が現れる。 「どうでしたか?」 「あっ!!」 小悪魔が声を掛けるのと、ゆっくりれいむがその姿に気付くのは同時だった。 パチュリーが小悪魔に言葉を返そうと口を開こうとするが、それを遮ってゆっくりれいむが大声で叫ぶ。 「パチュリー! こいつだよ! わるいやつ! やっつけて!」 敵意を剥きだしにして子悪魔を威嚇するゆっくりだったが、その様子を気にも留めずに小悪魔はパチュリーの衣装を気遣う。 「ああ、パチュリー様の御召し物をこんなに汚してしまって、駄目ですよ」 「パチュリー! はやく! こいつがれいむをいじめたの!」 「ほら、そのまま持っていてはさらに汚れてしまいます」 そう言ってパチュリーに向かって両手を差し出してみせる小悪魔。 ゆっくりれいむはその動作に一瞬身体を震わせ、その身をさらにパチュリーへと押し付けた。 口を開き、叫びを吐く。 「なにしてるの!? たすけてパチュリー!! こいつをやっつけて! はやく!!!」 一生懸命にパチュリーに懇願するゆっくりと、その様子をどうとも思っていない子悪魔。 やれやれ、とパチュリーは首を振り、至極あっさりとゆっくりれいむを手渡した。 「はい」 「――ゆ?」 何が起こったのか、はて? と首を傾げるゆっくりれいむ。 「……?? ……????」 辺りを見回し、パチュリーの顔を眺め、上を向いて子悪魔の顔を視界に納める。 「パチュリー様、御着替えでしたらあちらに咲夜様が居られますので」 「わかったわ」 パチュリーが小悪魔とすれ違い、離れていく。 「????」 何が起こったのか、全く理解できていないのだろう。 疑問符を浮べたまま、去っていくパチュリーの後姿を眺め続けるゆっくりれいむ。 「さて、台所を借りましょうか」 小悪魔は、直傍を通り過ぎたメイドの一人へと声を掛け、その足を厨房へと進めた。 ………… 「ごはんですよー」 「あっ! わるいやつ!」 パチュリーがゆっくりれいむを抱えて去っていった室内。 静かにパチュリーが戻ってくるのを待っていたゆっくりまりさの前に姿を現したのは、望んだパチュリーではなく悪い奴である子悪魔だった。 「パチュリー! はやくきて! わるいやつがここにいるよ!」 パチュリーに知らせる為であろうか、大きく音を立てるようにと鉄籠を揺らすべく上下に運動を繰り返すゆっくりまりさに対して、小悪魔は片手に持ったトレイから一枚の大皿を取り上げて見せる。 「そんな事は無いですよ、ほら」 言ってゆっくりまりさに差し出された大皿の上に載せられていたのは、輪になった生地に大量の餡子が詰められた、しいて言えば巨大な饅頭を輪切りにしたような何かだった。 「むっ」 ゆっくりまりさは格子を挟んだ向かい側、小悪魔が置いた食べ物らしき物体を凝視する。 空腹の為か、暫しソレを見つめ続け、次いで小悪魔へとその視線を移す。 これは何なのか? どのような意味なのか? といった視線だった。 「これはパチュリー様からですよ」 まるで花が咲いた様に笑いかける小悪魔。 「パチュリーから!?」 「私もあなたに意地悪したことを怒られてしまいましたし」 「おこられたの!?」 「ええ、はい。それはもう」 「パチュリー! ありがとー!」 思わず飛び跳ね、勝ち誇った笑みを小悪魔に向けるゆっくりまりさ。 「おもいしったか!!」 あらあら、と小悪魔はその笑みを益々深くする。 「それじゃあ出しますよ」 小悪魔の両手にて持ち上げられるゆっくりまりさ。 大皿の直傍に降ろされ、差し出された輪切り饅頭に齧り付く。 「むーしゃ♪ むーしゃ♪」 その表情に喜色が宿る。 「どうですか?」 「あまーい! おいしーい!」 ゆっくりまりさの胴回りと同じくらいのそれは食べ物としては巨大だったが、ゆっくりまりさにとっては久しぶりの甘味である為か瞬く間にその量が減っていく。 「まだまだありますよ」 巨大な何かを食べきった際に、さらに差し出される同じ形のソレ。 「ぜんぶまりさのー! むーしゃ♪ むーしゃ♪」 笑顔を浮べ、その量をさらに消化していく。 三つ、四つと食べきっていき、やがて差し出された大皿の中には最後のひとつが残されていた。 輪切りにされた何かの端。 げふー、と喉を鳴らしてそれに齧りつこうとするゆっくりまりさに向かって、小悪魔は口を開く。 「おいしかったですか?」 どこか、確認を求めるような声色だった。 「おいしかったー!」 「ソレも食べますか?」 「たべるの! ぜんぶまりさの!」 「そうですかー」 言って相変わらずの笑顔を貼り付けたままの小悪魔。 「でも、これ、裏返しですね」 「?」 「ほら、こちらが表です」 最後の一切れを、裏返す。 「……………………え?」 そこに何を見たのか、ゆっくりまりさの動作が止まる。 「……? ……??」 首を傾げ、首を振り、目を瞑り、目を開き、今まで食べたものを思い起こす。 「……??? ……????」 次いでカタカタと小刻みに震え始め、言葉にならない音がその口から漏れ始めた。 「れ……れ?」 「れ――なんですか」 「れ、れれ、れい、れい、む?」 「はい。正解です」 そこには、まるでこの世の全てに絶望しきったような愕然とした表情を貼り付けた、ゆっくりれいむの顔面部分があった。 薄く切り取られたその表情は、どこか虚空を見つめたまま、動くことは無い。 「……!? ……!?」 たまらず魚の如く口を開閉させるゆっくりまりさの様子を気にも留めず、小悪魔は大皿にのせられたゆっくりれいむ表情を相手へと進めてみせる。 「どうしましたか? これもあなたのものですよ? ほら、食べないと」 「……!! ……!!」 「これで最後ですよ、ほら、あーん」 「っ……!! ……パ」 「パ?」 「パチュリイイイ!!! わるいやつが!!! わるいやつが!!! れいむを!!! れいむがああああ!!!」 目を剥いて子悪魔を威嚇し、ゆっくりれいむの切れ端の直傍にて上下に飛び跳ねるゆっくりまりさ。 そんな突然の態度の豹変を受けても、小悪魔はにこやかな姿勢を崩さない。 にこにこと笑顔を浮べ、しかしその手段は強行だった。 「はやくきて!!! パチュリイイイ!!! はやくきて!!! こいつをやっつけて!!! パチュムグッ!??」 「はい、どうぞ♪」 小悪魔は片手をゆっくりまりさの口内に突っ込みこじ開け、もう片方の手でゆっくりれいむの切れ端を掴み、丸め、その開いた口内へと無理矢理押し込んだ。 「んぐ……っ!? むぐ……っ!! むー……っ!!!」 ゆっくりまりさは押し込まれるソレを舌で押し返そうと一生懸命抵抗するが、それも虚しく、小悪魔は強引にソレを押し込んでいく。 やがて口いっぱいに押し込まれていったソレは、ごくり、と嚥下されていった。 小悪魔が唾液の滴った手をゆっくりまりさの口から引き抜く。 「ごちそうさまでした♪」 両手を合わせ、首を傾げてゆっくりまりさに微笑みかける小悪魔。 ゆっくりまりさは目の前の空になった大皿を呆然と眺め続け、動かない。 さてそれでは、と子悪魔がゆっくりまりさを抱えあげるも反応はなく、そのまま室内を出ようとした所でようやくゆっくりまりさが呼び続けた人物が現れた。 「あら、パチュリー様、どうかなさいましたか?」 「……パチュリー?」 子悪魔に呼ばれたその名前に反応し、顔を上げるゆっくり。 はたしてそこには、ゆっくりまりさが待ち望んだ人影があった。 「パチュリー!!!」 「あっ」 予想外の勢いで小悪魔の懐から抜け出したゆっくりまりさは、一目散にとパチュリーへと飛び跳ねていった。 「パチュリー! たすけてパチュリー! わるいやつが! ひどいやつが! もうぜんぜんゆっくりできなーい!!!」 扉を抜けてパチュリーへと縋りつくべく精一杯の速度で飛び跳ねるゆっくりまりさ。 目の前のパチュリーまであと少し。 傍らに見知らぬ人影が二人分あったが、そんなのは思考の外であった。 しかし、次に聞こえてきた声にその身は震わされた。 「うー! うー!」 ゆっくり生物の共食い種。 ゆっくりれみりゃの登場である。 何処に居るのか、とゆっくりまりさが冷や汗を流しながら辺りを見回すと、パチュリーの直傍。 見知らぬ人影の内、片方、桃色の衣装を纏った少女の足元に、ゆっくりれみりゃは存在していた。 「レミリア様も御一緒だったんですね」 「ええ、私も、おもしろいものを見つけて、ね」 小悪魔の問いに対してレミリアと呼ばれた少女は、今現在ゆっくりまりさをおいかけまわしている何かに向かって視線を向けていた。 「うー! うー!」 「だずげでバヂュリ゛ー!!」 上機嫌に追い掛け回すゆっくりれみりゃと、パチュリーに助けを求めるべく当人に飛びつこうとするゆっくりまりさ。 「あら貧血」 パチュリーの胸板へと飛び込んできたゆっくりまりさを、ふらりとよろめく姿勢でパチュリーは回避する。 パチュリーはレミリアの傍らに控えていた銀髪のメイドに抱きとめられ、迎えられることの無かったゆっくりまりさの身体は空中を浮かぶ。 「ゆ゛!?」 べしょ、と床に顔面から墜落するゆっくりまりさ。 思わずレミリアから失笑が零れる。 「ふふふ、やっぱり、あの白黒とは似ても似つかないわね」 「うー! うー!」 追いついてきたゆっくりれみりゃに食いつかれ、悶絶し、暴れだすゆっくりまりさ。 「い゛、いだい!! やめ゙てやめでね゙…!!!」 「うー! うー!」 「…や゙め゙…!!……ばな゙じ…!!…ゆ゙…ゆ゙…ゆ゙!!!」 「うー! うー!」 「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛……!!!」 ぶちっ、と身体を引き千切ってその身の安全と確保するゆっくりまりさ。 おもわず前のめりに躓くゆっくりれみりゃを放置して、そのままの勢いで駆け出していく。 「あら、やるものね」 「でも、そろそろ飽きたわ」 指を伸ばし、言霊を紡ぐパチュリー。 皆に背を見せてゆっくりれみりゃから一目散に逃げ出そうとしているゆっくりまりさの身体がふわりと持ち上がる。 「な゛、な゛に゛!?」 空を切った感触に一瞬思考に隙間が出来るが、くるりとその身体を反転させられ、目の前に現れたその姿にゆっくりまりさの心に希望の火が灯った。 「パ、パチュリー!! たすけてね! ゆっくりたすけてね!」 ゆらゆらと波間を漂うように揺れながら、ゆっくりまりさとパチュリーの距離が縮まり、もう少しで届くかという所で、その真下から一人と一匹の触れ合いを妨害する声が上がった。 「うー! うー!」 思わず冷や汗を垂らして強張った表情を貼り付けたゆっくりまりさが、恐る恐る自らの下へと視線を向ける。 ゆっくりまりさの傷口から溢れ出た餡子を直下で待ち構え、零れ落ちて来たそれを頬張っているゆっくりれみりゃ。 慌ててパチュリーに向き直り、唾を飛ばしながら必死な形相で懇願をし始めるパチュリー。 「た、たすけてパチュリー! あいつがまりさをいじめるの!! あいつをやっつけて!!!」 そう言ってパチュリーに助けを求めるが、パチュリーは笑みを浮べたまま動こうとはしない。 そればかりか、先ほどからゆっくりまりさとパチュリーとの距離は縮んでいない様に感じられた。 「なにしてるの!? はやく!! はやくたすけてパチュリー!!」 既に完全に恐慌状態に陥っているゆっくりまりさに対して、パチュリーはようやく口を引く。 笑顔から一転、呆れたような表情を見せて、一言。 「あなたの相手をするのは凄く疲れるわ」 向けられた視線は冷やかだった。 「パ、パチュリー? ……?」 「自分勝手で我侭なのは別に構わないわ。食いしん坊な所も馬鹿な所も、ね。でも、一々人に頼るのは止めて頂戴。凄く疲れるから」 「……? ……?? ……??? ……????」 ぱくぱくと声にならない音を漏らし、その表情に何を浮べるべきか定まらないゆっくりまりさ。 何を言っているのか、何を言われたのか。 理解できない、理解したくない。 愕然とした表情のまま、ゆっくりまりさの精神が停滞する。 「あなたは興味深い生き物だったけど、もうおしまい。ほら、あの子に食べられれば寂しくないわよ」 あなた以外の子は、みんなあの子が食べちゃったんだから、と。 「うー! うー!」 ゆっくりれみりゃの声が聞こえる。 くるりとパチュリーが指先一つでゆっくりまりさを反転させると、その三寸先に、ゆっくりれみりゃの顔が浮かんでいた。 「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ……!??」 「うー! うー!」 ぱたぱたとその背中の羽を動かして、ゆっくりまりさと同じ高さに浮かんだゆっくりれみりゃは邪気の無い表情を相手へと向けている。 おいしい食べ物を目の前にして、その機嫌は上々の様子だった。 何を思ってか、ゆっくりまりさのその表情が酷く歪む。 「ゆ゛っ゛ぐり゛……!!」 ゆっくりれみりゃが大きく口を開く。 何か、黒い塊を吐き出すように、まるで原型を留めていない表情でゆっくりまりさは吼えた。 「ゆ゛っ゛ぐり゛ざぜでえええええええ――――づぶ」 暗転。 「さすがにこれは酷いですねー」 「お嬢様……」 「な、何よ二人共、散らかしたのはこの子よ」 「うー?」 そういってゆっくりれみりゃを抱えあげるレミリア。 ここは紅魔館の一室。 パチュリーが捕まえられたゆっくり達を観察していた、ゆっくり観察部屋だった。 部屋の彼方此方に散乱しているのは中身の無い鉄籠。 中身は空である。 しかし、注目すべきは其処では無い。 部屋の全体に向かってぶちまけられる様に散乱した、大量の餡子。 見れば、赤いリボンや黒い魔女帽子の残骸も部屋の彼方此方に見て取れた。 このような有様になったのはつい先ほど。 パチュリーがゆっくりれいむの涙と涎でずるずるになった衣服を着替え、この部屋へとやってきた際、レミリアが一匹のゆっくりを連れてこの部屋を訪れた。 そのゆっくりがゆっくりれみりゃである。 どうやらパチュリーがゆっくり達を構っているのを見て、自分でも一匹ほど飼ってみたくなったらしい。 中国にお願いして一匹捕獲してもらい、それがゆっくりれみりゃであったそうだ。 「――それで、ほかのゆっくり達と遊ばせようと思って籠を開けたら、片っ端から食べられてしまった、と」 まさに、阿鼻叫喚の地獄絵図だったらしい。 逃げるゆっくり達。 追いかけるゆっくりれみりゃ。 種類の差だろうか、立ち向かうという思考すら浮かばないらしく、パチュリーやレミリアの陰に隠れ必死に懇願を繰り返すゆっくり達。 もりもりと上機嫌でゆっくり達を喰い散らかしていくゆっくりれみりゃ。 泣き叫ぶゆっくり。 逃げ惑うゆっくり。 飛び散るゆっくり。 喰いまくるゆっくりれみりゃ。 物凄い光景だったらしい。 「――ああ、それではあの部屋の前を通りかかったのは」 「咲夜を呼びに言った帰りね」 部屋の掃除のために、と主人。 「はぁ……」 とは従者の呆れである。 「それにしても、紅白巫女や白黒魔法使いの他に、レミィのゆっくりも居るなんてね」 「うー?」 わたしに似たゆっくりも居るのかしら? と言ってレミリアの腕の中に納まっているゆっくりれみりゃへと腕を伸ばすパチュリー。 と、 「うまうま!」 むーしゃ♪ むーしゃ♪ とゆっくりれみりゃ。 「あ」 と子悪魔。 「あら」 とは腕を丸齧りされているパチュリー。 「パチェ!!」 ばん、と大きな破裂音を残して、ゆっくりれみりゃの姿が掻き消える。 部屋の壁一面に盛大な染みが生まれ、飛び散る肉汁。 腕を振りぬいた姿勢のレミリア。 その顔は青い。 「あ、あぁ、なんて事……だ、大丈夫? ねえパチェ」 「このくらい何とも無いわよ、レミィ」 「こんなに血が出て、なんて痛ましいのかしら」 「やさしいのね、レミィ」 「あぁ、パチェ……」 「レミィ……」 見詰め合う二人。 触れ合う両手。 近付く唇。 ………… 「……さっさと片付けましょうか」 「……そうですねー」 紅魔館は今日も平和だ。 『その7 一人芸』 「シャンハーイ」 「え、何? この生き物は何かって」 「ホラーイ」 「うん。今朝魔法の森で見つけたのよ」 「シャンハーイ」 「何で黒焦げなのかって? さあ、拾った時にはそうだったから、そこまでは私にも判らないわ」 「ホラーイ」 「如何するのかって? ふふふ、ねえ見て、この生き物、何かに似てると思わない?」 「シャンハーイ」 「うーん、判らないかしら」 「ホラーイ」 「あら、正解よ」 「シャンハーイ」 「ふふふふ、ね? ほら、魔理沙に似ていると思わない?」 「ホラーイ」 「くすくすくすくすくす……さあ? どうしてくれようかしら」 「……………………ゆ…………ゆゆ」 「ん? あら」 「ゆっ……ゆっ……」 「目が覚めるのかしら」 「ゆっ……?」 「あら、おはよう」 「ゆっくりー……?」 「ゆっくり?」 「こ……」 「こ?」 「ここ……」 「ここ?」 「ここはどこなの? おねいさんはだれ? おうちかえして!」 「そんな一遍に言われても答えられないわよ」 「…………」 「?」 「おねいさんのばーか!」 「うわ」 「おなかすいた! おうちかえる!」 「ふーん」 「ゆっくりしたいの! おうちかえる!」 「へぇ」 「ゆっくりするからね! おうちかえる!」 「あら、こんな所にショートケーキが」 「ゆっ!? それちょうだいね! おいしくたべるよ!」 「シャンハーイ」 「あー、人形に持っていかれちゃったわ」 「む゛っ!」 「あら、あんな所にモンブランケーキが」 「ちょうだい! それちょうだい! おねいさんあれとって!」 「ホラーイ」 「あー、人形が取って行っちゃったわ」 「む゛ーっ!」 「あら、そんな所にシュークリームが」 「ゆっくりー!!!」 「味はまあまあね」 「あー!!!」 「ん? どうしたの? 何をそんなに騒いでいるの?」 「わたしの! それわたしのシュークリーム!! なんでかってにたべちゃうの!!!」 「…………は?」 「ひどーい! おねいさんひどい!!」 「うーん……始めて見た時から予想してたけど、想像以上の自分勝手ぶりね。さすがは魔理沙モドキといった所かしら」 「む゛む゛む゛!」 「やれやれ……」 「シャンハーイ」 「ゆ?」 「ホラーイ」 「ゆゆ!!」 「まあ、お人形さんがあなたにケーキをあげるって。よかったわねぇ」 「わーい!」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「ふふん! おねいさんにはあげない! これはわたしの! いいでしょ!!」 「そうね、羨ましいわ」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪」 「酷い食べっぷりね」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪」 「なんて不細工なのかしら」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪」 「まるで人面饅頭ね」 「むーしゃ♪ むーしゃぶぶっ……!?」 「……? どうしたの?」 「か、かかかか」 「かかか?」 「からーい!!! おみず!! おみずはどこ!!」 「あらまあ」 「おみず!! おみず!! はやくしてね!! さっさとしてね!!」 「水、ね。何処にあったかしら」 「くちのなかがひりひりするの!! はやく! おねいさんはやく!」 「ごめんなさい。お姉さんちょっと物忘れが激しくて」 「どこ!!? おみずはどこ!! はやくおもいだしてね!! すぐにおもいだしてね!!」 「はぁ……全然思い出せないわ」 「ばーか!! おねいさんのばーか!!! ばかばかばーか!!!!」 「…………」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「へえ、お人形さんがトマトジュースでよければあるよって。よかったわねぇ」 「わあい!」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「ふふん! おねいさんのばーか!!」 「はいはい。さっさと飲みなさい」 「ゆっくりのむよ! おいしくのむよ! ありがとうおにんぎょさんたち!!」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「ゆっくりー! …………ごくごくごくごくごぶぶぶっ!!!??」 「ふふふっ、どうしたのかしら? ねえ?」 「~~~~~~~!????」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「あら、お人形さんがごめんなさいって。トマトジュースじゃなくてタバスコだったって」 「……!!! ……!!?? ……!????」 「うーん、何言ってるのか全然分からないわ」 「∂∫∬¥$¢£Å‰ξ……!!!」 「うわ、瞳孔開いてるわよ」 「シャンハーイ」 「よっぽど辛いものが苦手なのかしらね」 「ホラーイ」 「泡まで吹き始めたわ……って、流石にこれは気持ち悪いわ。どうしようかしら」 「シャンハーイ」 「え? 何処かに捨ててきましょうかって? ……そうね、このままガタガタゴトゴト五月蝿いのも煩わしい事だし――」 「ホラーイ」 「――折角だから、使わなかった辛子団子と山葵饅頭も押し込んで放り出しましょうか」 「シャンハーイ」 「はい、ありがとう。ほら、そこの魔理沙モドキ口を開きなさい」 「……ゆ゛? ……ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛????」 「はい、そこで捻じ込んで」 「ホラーイ」 「……!!!??? ……!!!!!!!」 「ごちそうさま、と。じゃあ口を開かない様にぐるぐる巻きにして、そこら辺の藪の中にでも転がしておこうかしら」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「ぐるぐるぐる、と」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「行ってらっしゃい、なるべく物騒そうな所に捨ててくるのよー」 「シャンハーイ」 「ホラーイ」 「…………ふー。んー、なんだか久しぶりにすっきりした気がするわー!」 『おわれ』 駄文製作者:ななな
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1393.html
美鈴のゆっくりお昼ご飯 「みーんみーん」 蝉の声が響き渡る。夏、真っ盛り。 ここ、幻想郷にも夏が来た。氷精がどっかで溶けてたりしそうなくらい熱い夏。 タライに水張って足を突っ込みながら将棋、としゃれ込みたいほどうだる暑さの中、門番は立っていた。 「暑い…」 流れる汗を手で拭う、人民服に紅い髪のスリットグラマー、その名はちゅうg「紅 美鈴!!!」 もとい。華人小娘、紅 美鈴である。紅魔館の門番にして武術の達人。 その名は、強さと親しみやすさから幻想郷の人間と妖怪に知れ渡っていた。中国として。 「なんだか失礼なことを言われたような気が…」 呟きながら、もう一度汗を拭う。ただいま時刻は午後二時。最も暑い時間帯である。 そんな時間に日影はないわ湖の照り返しがきっついわ館の紅が目に悪いわするところにいたら汗もかく。 「暑い暑い暑い暑い……」 武術の達人は汗を流れる量をコントロールできると言う。暑さ寒さもへっちゃらだともいう。 しかし、美鈴は武術の達人ではあっても、今はむっちゃだれていた。 ぶっちゃけていうとやる気があんまりなかった。 理由は二つ。暑くてシエスタもできないから。お腹すいたから。 普段住み暮らしているめーりんハウス(真紅のテント)は、この時間だと中は地獄のような暑さになっているだろう。 昼寝なんてしたらメイド長に刺し殺されるか、妖怪に寝首を掻かれる前に干からびる。 そこいらで寝るのもダメだった。一度夏に横になって寝たら、身体の右側だけに日焼けの後がばっちりついて恥ずかしい思いをしたからだ。 日焼け跡は、秋になるまで消えなかった。 そして、もう二時を回ろうか、と言うのに、お昼ごはんを食べていない。 普段はメイド長がじきじきに持ってきてくださる。シエスタしていないかの監視の意味も含めて。 しかし、今日はメイド長はいない。ここ紅魔館の主、レミリアのお供をして博麗神社に行っているのだ。 そういうことはよくある。そして、メイド長がいない時は妖精メイドが美鈴の食事の用意をしてくれるはずなのだが…。 気まぐれで、美鈴以上にやる気のない妖精メイドにそんなもの期待しても無駄、というものだ。 咲夜がいないときは、美鈴は常にすきっ腹を抱えることになる。 「おなかすいたー…」 何度目かの虚しい呟きを繰り返す。気を紛らわそうにも、一人○×も一人しりとりも、もう飽き飽きしていた。 暇つぶしに大図書館の本を借り出そうとしたこともあったが 「夏は本が日焼けするからダメ」 という、図書館の主の一言によってあっさり拒絶された。 太極拳もお腹がすいた時にはやりたくない。 そう、美鈴は暇だった。 「だれか襲撃でもこないかなー…黒いのでもいいから…」 しかし、美鈴の物騒な希望はかなえられない。黒いのこと普通の魔法使いは客として既に図書館にいりびたっているからだ。 風もまったく吹かない、じめっとした幻想郷の夏の午後。 暇なときは、門番はひたすら暇だった。 見飽きた光景をなんか面白いものないかな、と半ば諦めの境地で見やったとき、珍しいものを見かけた。 「ゆっ!ゆっ!」 ゆっくり霊夢の家族だ。 ここ紅魔館の周りにはゆっくりれみりゃやゆっくりフランなど、ゆっくりの捕食者たちが数多く生息している。 普通の、よわっちいゆっくりはとっくに食い尽くされたものだと思っていたのだが… 「珍しいこともあったもんだ」 と、ぼそりと呟くと、先頭のゆっくり霊夢がその声を聞きつけたらしい。 「ゆっくりしていってね!!」 お決まりの台詞を叫ぶ。 「はいはい、ゆっくりしてますよー」 よい暇つぶしが出来た、と笑顔で近づく美鈴。その答えを聞いて、ゆっくり霊夢たちが嬉しそうに叫び返す。 「「「おねえさん、ゆっくりしてるひと?!」」」 「そうだよ、ゆっくりしてるよ。」 こいつら、もっと静かにしゃべれないのかなー、とか考えながら答えてやる。 「じゃあ、いっしょにゆっくりしよう!」「あのおうちはれいむたちのおうちなの!」「ゆっくりできるよ!!」 超☆喜んでいる。単純なもんだ。ぴょんぴょん飛び跳ねている…ん?おのおうち? 「ねえ、あなたたち。お家ってどこにあるの?」 「そこだよ!」 と一番ちいさなゆっくりが紅魔館を見ながら飛び跳ねる。 ああ、やっぱり。 こんなのが襲撃者か…と内心ため息を吐きながら説得を試みる。 「あのね、あなたたち…」 「おねえさんはゆっくりできるひと!!」「いっしょにゆっくりさせてあげるよ!!」「れいむたちのおうちでゆっくりしよう!!」 「だから、あそこはレミリアさm」 「きっとたくさんおいしいものがあるよ!!」「ゆっくりできるよ!!」「ゆっくりさてやるからありがたくおもってね!!」 「あそこはあなたたちのいえじゃないと…」 「「「ゆっくりできるよーーーー!!!」」」 美鈴の言葉はゆっくりたちの叫びの前に完全にかき消された。 「ゆっくり!!」「ゆっくりぽいんとだー!!」「れいむがいちばんゆっくりできんだーーー!!」 などと口々に勝手なことをほざきながら紅魔館に向かって行進し始める。 その瞬間、美鈴の怒りは簡単に有頂天に達した。暑くて空腹で堪忍袋の緒はゆるゆるだったのだ。 丹田に気を込め、一気に発声!! 「やかましいっっっっっっ!!!!!」 この一声でゆくっりたちはすべて目を回した。夜雀を声だけで叩き落した美鈴の複式発声法、伊達ではない。 「はあ、結局暇つぶしにもならなかった…」 スカートの前側を持ち上げて、そこにゆっくりを乗せていく。素晴らしき哉、脚線美。 「大声だしたから余計お腹が…」 そこではたと気付く。こいつら食えるじゃん、と。美鈴は、さっきと打って変わった軽い足取りでめーりんハウスへと向かった。 「フンフン♪」 地獄のように熱く真紅に染まっためーりんハウスの中で、なにやらごそごそ探している。 「どこかの巫女じゃないけど、やっぱり饅頭にはお茶がないと…」 どうやらここでお茶を入れたりもしているようだ。不憫。 外に出て、お茶が沸くまで正座で待つことしばし。 ちょっと補強したみかん箱の上にゆっくりをならべ、いただきます。 ゆっくりどもはまだ気絶している。気絶したまま食われたほうが幸せなのかも知れないが。 美鈴は行儀悪く、どれから食べようか迷ったあと、一番小さなゆっくりを掴んで、一口で食べた。 口の中でかすかな悲鳴が聞こえたような気もする。 「うーん、甘くておいしい…」 あまり甘いものが好きではないが、空腹は最高のスパイスだ。そして久々の甘味。おいしくないほうがどうかしている。 次のちびドマンジュウも一口。口の中に広がる甘さ、出涸らしの番茶とあいまって、美鈴を至福の時への誘った。 そしてもう一つ。一口で食べるには大きかったので、かじる。 「ゆ゛っ?!」 あ、起きた。寝てたほうが幸せなのに、と思ったが、構わず食べ続ける。 「いだいいいいいい?!!」 「あ、こら、手の中であばれるんじゃない…あ。」 ぽとり。あんまり暴れるので手からこぼれて地面に落ちる食いかけのゆっくり。 露出していた餡子が衝撃ですべて飛び出る。それがトドメになったらしく「ぎっ?!」と叫んで動きが止まる。 「あーあ、もったいない…」 さすがに落ちたものを食べる気にはなれない。蟻に寄付しようと思い直して次に取り掛かる。 どいつもこいつも、一口食われた瞬間に目覚めていきなり叫びだす。 「妹様なら断末魔もお喜びになるんだろけど、私にはそんな趣味はなー…」 ぼやきながらも次々に平らげていく。同族が食われて悲鳴を上げているというのに、他のゆっくりどもは目を回したままだ。 薄情なのか美鈴の声がそれほどすごかったのか、どちらなのか。 そしてちびゆっくりをすべて食べ終えたとき、美鈴はぽつりと呟いた。 「…飽きた…」 いくら久しぶりの甘味とはいえ、饅頭を腹いっぱい食べれるものではない。基本的に美鈴は辛党なのだ。 しかし空腹はまだ収まらない。さりとてこれ以上ドマンジュウを食べる気にはならない。 のこったれいむをどうしたものか、と思案していると、 「うー!うー!」 よたよたとこちらに寄ってくる影が一つ。 紅魔館の主、レミリア…にそっくりなゆっくりだ。 顔だけのときは日光で死んでしまうが、胴体が生えると日光の中でも活動できるようになる。 というより胴体の生える種類はゆっくりれみりゃとゆっくりフランしかいない。生命の神秘である。 だが美鈴の頭の中にあったのは、生命の神秘への遥かなる探究心ではなかった。 「こいち、確か中身肉まんだったよね?」 という食欲100パーセントな考えだった。 甘ったるいドマンジュウの口直しにはちょうど良い。確か家の中に醤があったはずだ。それで味付けして食べてしまおう。 そう考えるとよだれが出そうだった。 「うー!うー!」 どうやら美鈴が捕まえたゆっくりれいむ目当てに出てきたらしい。 調理道具を持ち出す時間稼ぎのため、母ゆっくりれいむを投げつけてやる。 「ゆ?」 その衝撃で意識を取り戻すれいむ。目の前にはれみりゃがいた。 「ゆぎゃあああああああ?!」 目を血走らせ歯茎をむき出しにした顔で叫ぶれいむ。必死で命乞いをする。 「れいむをたべてもおいしくないよ!!ゆっくりできなくなるよ!!」 捕食主のれみりゃがそんなもの聞くわけがない。 「うー!うー!」 右手で髪を掴み持ち上げ、空いた左手で頬を思いっきり引っ張る。 「ゆーーー?!い゛や゛だぁぁぁぁぁぁ!?いだいいいいいい?!」 痛みに泣き叫ぶれいむと、その反応を楽しむように徐々に力を込めるれみりゃ。 ぶち。 「ゆ゛ーーーー?!」 引きちぎった皮を食べ、露出した餡子に喰らいつき、餡子をゆっくりと吸い出していく。 「うま^^!うま^^!」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ!?」 餡子を吸い出され、痙攣する。生きながら脳を吸い取られるようなものだ。 れいむの目がぐりんと白目を向く。 餡子を2割程―れいむが死なないギリギリのラインだ―吸い取ったところで、今度は一気にかぶりつく。 「ゆぐぎゃああああっ?!」 痛みに意識を無理やり引き戻される。 「うー!うー!」 れみりゃはれいむの反応を楽しんでいるようだ。なるべく残酷に、なるべく苦しむように捕食している。 「うはー、レミリアさまと同じでどSなんだな、ゆっくりも…」 中華鍋を火にかけ、準備完了した美鈴があきれたように呟く。ちなみに火は気を掌に集中、発熱させて木を燃やして起こした。 「ゆ゛………っぐ…り゛……」 れいむはからだの半分ほどを食べられたところで息絶えた。 「うーーー!!」 死んだことに気がついたれみりゃは、子供が飽きたおもちゃを捨てるように投げ捨て、 「ぎゃおーーーー!たべちゃうぞーーー!!」 残ったゆっくりれいむのほうによたよた歩み寄ってきた。 「食べ残すなんてゆっくりの分際でぜいたくな…」 自分がれいむを食べ残したことを棚に上げて憤る、が気を取り直して、 「れみりゃー?れいむりおいしくてゆっくり出来る食べ物があるんだけど?」 慣れない猫なで声で呼び寄せる。 「うーー?おかし?くっきーー?!」 妖精メイドたちが甘やかしてお菓子で餌付けしたりするもんだから、口が肥えている。生意気、と美鈴はさらに苛立つ。 「もっとおいしいものよ?」 私にとってはね、と口の中で付け足す。美鈴が手に持っているものは醤。豆板醤の瓶だ。 「おかしーーーーー!うー!うー!」 みょうちきりんな踊りを踊りながらもたもた近づいてくる。 残っていた何匹かのゆっくりれいむは既に逃げ出していたが、美鈴もれみりゃも気にしていなかった。もっとおいしそうなものが目の前にあるのだから。 「おかしーーーー…?」 美鈴の持った瓶を見たれみりゃの顔が曇る。当然ながらクッキーやケーキには見えない。 「うーーー!!」 美鈴の手から瓶を叩き落とす。 「やだやだやだやだ!!!くっきーじゃなきゃだめーーー!!くっきーたべうーー!うー!」 地面に寝そべって駄々をこね始める。この甘えた根性は妖精メイドたちが甘やかしたせいらしい。 美鈴は慌てず騒がず瓶を拾い上げ、れみりゃの顎を掴み、瓶の中身を口の中に流し込んだ。 「う゛ゆ゛ーーーーー?!」 れみりゃは顔を真っ赤にして暴れる…暴れようとするが美鈴ががっちり顎と間接をホールドしているので、身動きすらも出来ない。 「うー?!う゛ーーーー?!」 「はいはい、おとなしくしてねー」 抑えるのも面倒になったので、浸透剄を叩き込んで無理やり黙らせる。 もう一発。さらにもう一発。とどめにもう一発。これで醤と肉まんがうまく混ざり合ったはず。 「さ、本日のメインディッシュと参りましょうか!!」 中華鍋が充分熱されているのを確認する。それから、逃げられないように羽、手足を引きちぎる。 気絶したれみりゃの身体が痛みに反応して痙攣するが目は覚まさない。 ちぎった羽と手足はもちろん捨てたりはしない。これは後から素材そのままの味でいただくのだ。 「えいっ!」 手足と羽をもがれて達磨みたくなったれみりゃを鍋に放り込む。油がはねる。熱さに起きた達磨がのた打ち回る。 「うーーー!!ううーーーー!!あづーーーい!!」 「まずは表皮をこんがりと…!!」 悲鳴を無視して料理に集中する。半年振りの肉なのだ。気合が入るのも当然と言えよう。 れみりゃは必死で身体を動かして鍋から逃げ出そうとする。しかし油ですべってうまく動けないうえに、端に来たと思ったら鍋を振られて中央に戻されてしまう。 さっきまでおいしいれいむを食べていたのに、何故こんな目に遭うのか分からなかった。 身体の外が熱い。身体の中が熱い。身体の中をかき回されたように痛い、生えてくるはずの手足が生えてこない。 「うーーー!!うーーーー!!ゆ゛っぐり゛じだいいいいいいい!!」 もう、ゆっくりできないのだろう。何が起こったかはわからなかったが、それだけは分かった。 れみりゃは、絶望のなかで焼け死んだ。 そんなれみりゃの絶望なんか知ったこっちゃない美鈴は、久々の中華の火力にハイになっていた。 「料理は愛情、中華は火力!!まだまだ火力がたりなぁい!!」 手に気を集中、鍋にダイレクトに熱を伝える。一気に火力が上がる。肉がはぜる音が激しくなっていく。 「燃えてる燃えてるハラショーー!!アイヤーー!!」 テンションが上がりすぎてお国言葉が出だした。 吹き出る汗、張り付くチャイナ。大変艶かしい。 最後の仕上げとばかりにもう一振り醤を加え、馴染ませるために鍋を思いっきり振る。 「あれ?」 突然手が軽くなる。赤熱して引きちぎれた鍋の取っ手しか手元にはない。 何が起こったか瞬時に理解する。が、どうしようもない。 「あ、ああああ?!」 美鈴のくびきから逃れた鍋は慣性の法則に則り、放物線を描いて…紅魔館の少ない窓の一つにジャストミートした。 その日の夜。もちろん美鈴は晩ご飯抜きだった。れみりゃの残りすらも取り上げられ、すきっ腹で門番を続けている。 ゆっくりを食べようとした結果がこれだよ!!
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/707.html
※現代日本にゆっくりがいる設定です。 東京も西部の都下ともなれば、まだまだ自然は残っている。 そこには、開発中のマンションや分譲住宅に隣接して、かつてのままの里山や丘陵が広がっていた。 そんな丘陵地帯の一画、小さな洞窟の中で、すやすや寝息をたてている者がいる。 ずんぐりむっくりした幼女体型に、ふくよかな手足。 大きな下ぶくれ顔と、背中に生えた小さな羽。 ピンク色のおべべを纏い、ぼろぼろの毛布にくるまっているその存在は、 いわゆる胴体有りのゆっくりれみりゃ、通称"ゆっくりゃ"だった。 「うー……ぽかぽかだどぉ……しゃくやぁー♪」 そう寝言を呟いたれみりゃは、身長1mほど。 毛布の下では、寄り添うように50cmほどのれみりゃが2匹眠っている。 洞窟の入り口は枝や落ち葉や、人間が捨てただろうビニールシートで塞がれており、 外敵からの発見と、雨風の侵入を防いでいた。 季節は2月上旬。 このれみりゃ達は、冬眠中の親子だった。 「……う~?」 ふと、一番体の大きい、親にあたるれみりゃが、むっくりと上半身を起こした。 眠そうな目をしばしばさせて、丸みを帯びた柔らかい手でごしごし擦る、れみりゃ。 「うぁ?」 れみりゃは、首をひねってあたりを見回す。 巣の中の様子は、眠りにつく前のまま、異常は無い。 けれど、れみりゃは確かに変化を感じていた。 それは、気温の変化だった。 れみりゃは立ち上がり、6畳間ほどある空間を一周した後、リズムを刻むように体を左右に揺らす。 体に異常は無い、活動するのに問題は無い。れみりゃは、一つの結論を導きだした。 「うっうー♪ はるがきたどぉー♪」 暖かな春の到来を喜び、歓声をあげるれみりゃ。 その声に反応して、毛布の中にいた2匹の子れみりゃ達も目を覚ます。 「う~? まんまぁー、もうおきてもいいどぉー?」 「まんまぁー♪ おはようさんだどぉー♪」 起きあがり、親れみりゃの下へ集まる子ども達。 親れみりゃは、そんな子ども達の頭を撫でながら、顔をほころばせた。 「う~~♪ れみりゃのあがじゃん、あいかわらずかわいいどぉ~♪」 無事冬を越え、こうして温もりにつつまれる幸せ。 れみりゃ達は、その幸福感を胸いっぱいに感じ、久方ぶりのダンスを踊り出す。 「「「うっう~☆うぁうぁ~♪ れみ☆りゃ☆う~~♪」」」 にっぱぁー♪ そんな擬音が洞窟の中では確かに響いていた。 「うーうー♪ れみりゃだぢのかわいいさに、はるさんもめ・ろ・め・ろになるんだどぉー♪」 大きなお尻を左右に振るれみりゃ達。 やがて、ダンスが一段落すると、れみりゃ達は身支度を始めた。 暖かな春を満喫し、ぐるぐるきゅーきゅーなお腹を満たしに行こうと。 「う~♪ ぷっでぃ~ん♪」 「「ぷっでぃ~ん♪ ぷっでぃ~ん♪」」 れみりゃ達は、大事にしまっておいた子ども用の傘をそれぞれ手に持ち、 親れみりゃのみ、幼稚園で支給されるような幼児用ポシェットを肩からかけた。 「じゅんびおっけぇーだどぉー♪」 「まんまぁー、おしゃれさんだどぉー♪ とぉーってもえれがんとだどぉー♪」 日傘も、ポシェットも、冬を越えるために身をくるんでいた毛布も、 全ては人間の街で苦労して集めたものであり、とってもゆっくりできる自慢の品々だった。 「うー☆いっくどぉー♪」 「「うっうー☆」」 れみりゃ達は入り口を塞いでいたバリゲードを解き放ち、 親れみりゃを先頭に外へと躍り出る。 かわいいかわいい自分たち。えれがんとでかりしゅまな自分たち。 こんなにゆっくりできる自分たちを、世界はきっと祝福してくれるに違いないと信じて。 だが。 * * * 「う~~~! ざむいどぉ~~~! どごにもごぁんがないどぉ~~~!」 寒風吹きすさむ林の中、れみりゃ達は三者三様に寒空に叫びをあげていた。 「まんまぁーはうそづぎだどぉー! ぢっどもぽかぽかじゃないどぉー!」 「う~~! れみぃはぽんぽんがきゅーきゅーなんだっどぉー! まんまぁーなんどがじでだどぉー!」 「う~~! あがじゃん、ごめんだどぉー! ごめんごめんだどぉーー!!」 林の木々の間を、パタパタ小さな羽を動かして飛んでいくれみりゃ達。 その顔は、涙と鼻水らしきものでぐしゃぐしゃになっている。 「どぉーじでだどぉー! うぁーーん! さくやぁー! さくやぁーどこぉーー!?」 寒さと空腹と、子ども達から責められる状況に、 とうとう親れみりゃはぺたんと地面に座り込み、泣き出してしまった。 そんな親の姿を見て、失望したのは子ども達だ。 「う~、まんまぁー、やくたたずだどぉー……」 「まんまぁーはだめりゃだったんだどぉ……れみぃたちはこうなっちゃだめなんだどぉー……」 親れみりゃの情けない姿を見た子れみりゃ達は、怒りと落胆を露わにして、その場を後にする。 「う、うぁ? ま、まつんだどぉ~~! れみりゃのあがじゃぁ~~ん!!」 親れみりゃは叫ぶが、子ども達は振り向くこともなくパタパタ飛んでいってしまう。 「あがじゃぁ~~ん! れみりゃのあがじゃんがぁ~~~! うぁぁぁ~~~~!!」 何とかしなければ。後を追わなければ。 親れみりゃはそう思って体を動かそうと思うが、どうしても立ち上がることができない。 どうしようもない悲しみや疲労感が全身を支配してしまい、 結局その場でだだっ子のように四肢をジタバタさせることしかできなかった。 「うっぐ、ひっぐ……どぉーじてだどぉー……まんまぁーうそつきさんじゃないどぉー……」 そう、確かにれみりゃは気温の上昇を感じていた。 事実、巣の中は温かかったし、巣を出てすぐは寒い風も吹いていなかった。 れみりゃが知る由も無いが、原因は温暖化に端を発した都市部の異常気象にあった。 れみりゃ達が目を覚ました日、確かに気温は20度近くの春先の気温になっていた。 けれど、それはあくまでイレギュラー。季節は2月であり、一晩も経てば寒の戻りはすぐにやってきた。 熊などの本来冬眠する動物が、冬半ばにも関わらず目を覚ましてしまうのと同様のことが、 このれみりゃ達にも起こっていたのだ。 「れみりゃ、もうおうぢにがえりたいどぉー……」 れみりゃはクタクタになった体を起こして、とぼとぼ地面を歩いていく。 口ではなんと言おうとも、やはり子ども達のことは気になる。 れみりゃは、子ども達が去っていた方へ向かって足を進めた。 やがてれみりゃは、丘陵の切れ目、人間の街の前まで来てしまう。 「う~~、こっからさきはこぁいひとがいっぱいなんだどぉ~~……」 木の陰に隠れながら、人間とその街を眺めて、尻ごむれみりゃ。 れみりゃは以前、遊び盛りの人間の子ども達に"いじめられた"ことがあった。 それ以降も街へ食べ物や道具を探しに行くことはあったが、 そこを行き交う人間達は忙しなく、ちっともゆっくりしていない。 それに、自動車に電車に、野良犬にと、命をおびやかしかねない危険も後をたたない。 故に、れみりゃは人間の街へは出来るだけ行きたくなかった。 しかし、そんな経験の少ない子れみりゃ達は、 恐れることなく人間の街へ行ってしまったのかもしれない。 れみりゃは意を決して、街へ行くことにする。 「うぁ! おあたま☆ぴっかぁ~んだどぉ!」 街への潜入計画を思いつき、れみりゃは喜びを声に出す。 れみりゃのすぐ目の前に、段ボール箱が積み重ねられていたのだ。 これの中に隠れながら行けば、きっと安全だとれみりゃは考えた。 「れみりゃってば、やっぱりてんさいだどぉー♪」 がさごぞと、段ボール箱の中に入るれみりゃ。 段ボール箱は大きく、少し窮屈ではあったが、すっぽりれみりゃが隠れることができた。 「うぁ? なんだかいいにおいがするどぉー?」 くんかくんかと、鼻をならすれみりゃ。 積み重なった他の段ボールから、甘くて美味しそうな臭いがしてくる。 「う~♪ あまあまのにおいだどぉ~♪」 お腹をならしながら、ひととき幸せに包まれるれみりゃ。 早く子ども達を見つけて、一緒に美味しいぷっでぃんを食べたいなぁーと、れみりゃは口角からヨダレを垂らした。 しかし、そんな夢想をしていたが故に、れみりゃは気づけなかった。 いつの間にか、自分が入っている段ボールが、積み重なった段ボールが、地面ごと動き出していることに。 れみりゃが隠れた段ボール、それは、トラックの荷台の幌の中に積まれた段ボールだったのだ。 「う~? どぉーしてじめんがぐらぐらだどぉ~?」 トラックは、れみりゃを荷台に載せていることになど気づきもせず、 またれみりゃ自身も自分の置かれた状況に気づきもせず、とある店へと運ばれていった……。 * * * 数十分後。 うたた寝から目を覚ましたれみりゃは、ようやく異常に気付いた。 「う、う~~? ここどこぉ~~!?」 段ボール箱の中から、うんしょうんしょと這い出てきたれみりゃは、周囲の風景を見て目を丸くした。 そこは見知った林の中でも、先ほどまで眺めていた人間の街並みでもなかった。 たくさんの段ボールに囲まれたそこは、お菓子工場に隣接している倉庫だった。 うっすら甘い匂いの立ちこめる中、れみりゃは他の段ボールを開けてみた。 もしかすると、自分と同じように子れみりゃ達もいるかもしれない。 そんな楽観的な思いからでた行動だったが、段ボールの中には予想外のものが入っていた。 「うー♪ あまあまだどぉー♪」 箱の中には、包装されたチョコレートが入っていた。 れみりゃは顔を笑顔満面にして、次々に段ボールを開けていく。 すると、中にはキャンディーにケーキにクッキーにと、次々お菓子が出てきた。 「これもぉー♪ これもぉー♪ うぁーうぁー☆しゅっごいどぉー♪」 お菓子の山に囲まれて、興奮するれみりゃ。 ぐぅ~☆というお腹の音に促されて、れみりゃはビリビリ包装を破り捨てて、さっそくそれにかぶりつく。 「うっう~☆いっただきまぁ~す♪」 むしゃむしゃ。 ばくばく、もしゃもしゃ。 次々にお菓子を口へと運ぶれみりゃ。 しかし、べとべとに汚れていく口の周りとは対照に、れみりゃの笑顔は徐々にくもっていた。 「……う~~?」 そして、とうとう手に持っていたお菓子を床に置き、れみりゃは首を傾げてしまう。 「う~~! このあまあま、おいしくないどぉ~~!」 そう、チョコレートもケーキもクッキーも、どれもこれみれみりゃの舌を満足させるものではなかった。 お腹はすいているはずなのに、大好きで、滅多に食べられないごちそうのはずなのに、 そこにあるお菓子はどれもイマイチの味で、れみりゃにはちっとも美味しく感じられなかった。 「う~! これだからにんげんってやくにたたないんだどぉ~!」 立ち上がり、ぷんぷん頬を膨らませる、れみりゃ。 れみりゃは、自分の立場を忘れて、お菓子を作った人間に文句を言ってやろうと工場をパタパタ飛んでいく。 「しょーがないどぉー♪ れみりゃが、とくべつに"あまあま"のなんたるかをおしえてあげるどぉ~♪」 きょろきょろ工場内を見て回るれみりゃ。 だが、工場内に人の姿は無く、誰に会うこともなく、いつのまにか厨房のようなところに出てしまう。 「おかしぃーどぉー? なんでだれもいないんだどぉー?」 れみりゃは、パタパタと机の上にのぼり、そこに座りこむ。 「うー! こーまかんのおぜうさまがおよびだどぉー! さっさとだれかくるんだどぉー!」 どたどた、だばだば。 れみりゃは、手足を振り回すが、その呼びかけに応じる者はいなかった。 「うぁ? ちょこれぇーとだどぉ♪」 代わりに、れみりゃはキッチンの片隅に置かれた大量のチョコレートに気付き、そこへ近寄っていく。 チョコレートはそれぞれ皿に載せてあり、それぞれABCD……と書かれたカードがそえられていた。 「うっびぃ~~! これ、どれもにがにがだっどぉ~~!」 チョコレートはどれも独特の形や色合いをしていたが、 そのどれもが、苦かったり、舌触りがじゃりじゃりしたりするものばかりだった。 「まじゅいのぽぉーい♪ にがいのもぽぉーい♪ ぽいするの、ぽぉーーい♪」 れみりゃは、一口食べては、"まずくて苦い"チョコレートをポイぽい投げて床に捨てていく。 そこに置かれていたチョコレートは、お菓子工場の新製品候補の試作品だった。 けれど、どれもこれも今ひとつの出来だったため、そのまま放置されてしまっていたものだ。 このお菓子工場は、以前は小さいながらも街で有名な洋菓子屋だったが、 近年の不況と大手メーカーの台頭で、売り上げは落ち、社員は減り、すっかり寂れてしまっていたのだ。 現に、れみりゃが運ばれてきた段ボール箱や、倉庫に積まれていたお菓子も、 売れ残ったりクレームがついたりして戻されたものだった。 このお菓子工場は、まさに閉店寸前だった。 「うぁ☆そうだっどぉー☆」 れみりゃは顔をパァーと輝かせて、肩にかけているポシェットを開けた。 そしてれみりゃは中から使いかけのクレヨンと、お絵かき帳を取り出した。 「うーうー♪ こぉーしてぇー☆こぉーしてぇー♪」 れみりゃはクレヨンをグーで握り、 お絵かき帳の白いページに、お菓子の絵と、慣れない平仮名を書いていく。 「う~~♪ おいしそうだどぉ~♪ れみりゃは、てんさいこっくさんなんだっどぉ~♪」 それは、れみりゃが思い描いたお菓子と、それの作り方だった。 もちろん、それは文字通り絵に描いた餅であったし、作り方も"あまあまをいっぱい~"等の要領を得ないものだ。 けれど、れみりゃはそんなこと気にせず、一生懸命お菓子の絵と、作り方を書いていく。 それは、"特別におぜうさまがお菓子作りを教えてあげる"という、れみりゃなりの親切心であった。 「う~♪ かんぺきだっどぉ~♪」 れみりゃは、そこらじゅうにクレヨンで描いたお菓子の絵を散乱させ、満足そうにそれらを眺めた。 "うぁうぁ☆うーうー"とダンスを踊り出し、喜びを表現する、れみりゃ。 が、しばらくすると踊りをやめて、しょぼんと肩を落としてしまう。 その脳裏には、お菓子を一緒に食べるべき可愛い子ども達の姿があった。 「うー……ぷっでぃ~ん、あがじゃんといっしょに、たべたいどぉー……」 れみりゃは蹲り、やがて前のめりになって自らのふくよかな腕に顔を埋める。 腕の奥、隠された顔からは時折嗚咽が聞こえてきた。 そのままれみりゃが眠ってしまうのに、さして時間はかからなかった……。 * * * 「……ったく」 お菓子工場の主は、不機嫌だった。 作る新製品は不評続きの返品続き。 クリスマスの際に勝負に出るも失敗して、今も銀行に融資を断られたがかりだ。 直に迫ったバレンタインデーで持ち直せなければ、倒産も止むを得ない。 ……だというのに、バレンタイン用の新製品の開発は、難航していた。 アイディアは枯渇し、焦燥と貧困が、負のループへと男を誘う。 「どうにか……どうにかしないとな……」 男は、ブツブツ呟いては、ひとり毒づく。 そんな男の腕には、子供のゆっくりれみりゃが抱えられていた。 「「まんまぁー!!」」 帰り道、お菓子の匂いの染み付いた作業着に誘われたのか、 男の前に現れて"あまあま"を要求してきたのだ。 「う~! やめるんだどぉ~! れみぃたちをはなすんだどぉ~!」 「まんまぁー! ごぁいひどがいるどぉー! れみぃたぢをたずけてぇー!!」 男はジタバタ暴れる子れみりゃ達を抱えたまま、 足で扉を開けて、工場の中へ入っていく。 「ほら、しばらくここで待ってろ」 男は工場の事務所へ行き、ソファの上に子れみりゃ達を放り投げる。 「うぁ!」 「ぷんぎゃ!」 子れみりゃは、それぞれ顔とお尻からソファの上に落ちて、叫びをあげる。 そして"う~~っ"と涙声をあげて、互いの震える体を抱き合った。 「いま何か食うもん持ってきてやるよ……甘いものなら嫌ってほど余ってるからな」 男は怯える子れみりゃ達に背を向けて、自嘲する。 男は子れみりゃに余ったお菓子をあげるつもりでいた。 相手が誰であれ、お菓子を売る者が"あまあま"を要求されたのだ。 どうせ返品されて捨てるものがあるのだから、それを渡さない理由も無い。 男はそう考え、子れみりゃ達を連れてきたのだった。 「……うん?」 男は倉庫に入って、首をひねった。 返品されたダンボールが開けられ、あたりにお菓子が散らばっているではないか。 「悪ガキどもでも入ったか?」 男は、倉庫の奥に作られた、新製品開発用の厨房の扉が開いていることに気付き、そこへ足を進めていく。 捨てる物とはいえ勝手に倉庫に入って荒らされてはかなわない。 男は、その犯人をしかりつけてやるつもりだった。 しかし、男は厨房に入った瞬間、呆然とした。 「なんだこりゃ……」 厨房の中には、お菓子の絵とその説明の書かれた画用紙が散乱していた。 その子供の落書きのようなものを手に取った瞬間、男は体内で電流が走った気がした。 落書きにしか思えないお菓子の絵。 しかし、そこには一切の既成概念が無く、アイディアに行き詰っていた男には、衝撃的なものであった。 「これは……!」 画用紙を拾う度に、インスピレーションの雷が男の脳裏に走る。 男は、興奮を隠せない。そして……。 「……こいつが、これを描いたのか?」 画用紙を持ったまま、目の前で寝ているソレを眺める男。 そこでは、すやすやと寝息をたてている親れみりゃがいた。 「……う~♪ あがじゃ~ん、ぷっでぃ~んだどぉ~♪」 * * * 東京都下、街外れの丘陵の一角。 そこにある小さな洞窟の中では、寒さに負けず今日も愉快な声が響いている。 「「「うっう~☆うぁうぁ~♪ れみ☆りゃ☆う~~♪」」」 洞窟の中で、ふくよかな腕をぐるぐる回し、大きなお尻をぷりぷり左右に振る3つの影。 それは、ゆっくりれみりゃの親子だった。 「にっぱぁ~♪ かわいいあがじゃんに~☆まんまぁからぷれぜんとだどぉ~♪」 親れみりゃは、包装紙とリボンでラッピングされた長方形の箱を子れみりゃ達に渡す。 子れみりゃ達はそれを受け取り、箱を掲げてはしゃぎまわった。 「まんまぁーありがとうだどぉー♪」 「やっぱりまんまぁーはかりしゅまおぜうさまだどぉー♪」 「う~~♪ それは、ばれんたいんでぇーのちょこれぇーとなんだっどぉーぅ♪」 親れみりゃは、子れみりゃの頭を優しく撫でて髪をとかしてやる。 「う~☆なでなでぇ~きもちいいどぉ~♪」 「いいこいいこ~、だ~いしゅきぃ~♪」 親子の抱擁と、団欒のひと時。 しばらくすると、親れみりゃは外出の用意を始めた。 「うっうー☆まんまぁーはおでかけしてくるどぉー♪」 「「いってらっしゃいだどぉー♪」」 挨拶を済まし、洞窟から出る親れみりゃ。 れみりゃは、小さな黒い羽をパタパタ動かして、ゆっくり低空を飛んでいく。 手には子供用の傘を、肩には幼稚園児用のポシェットをかけて。 そして、だいじだいじなピンク色のお帽子には、新たにバッジが付けられていた。 バッジには、最近街で話題の洋菓子店のマークと住所、 そして"新商品開発担当れみりゃ"という役職が書かれていた。 「うぁうぁ☆うっうー♪ れみりゃは、おかしやさんのおぜうさまだどぉー♪」 おしまい。 ============================ どうも、お久しぶりです。 タイトルは「アナトール工場へ行く」のオマージュだったりします。 本当はもう少し練りたかった部分もあったのですが、 時事ネタなのでバレンタインデーに投下させていただきます。 ……はぁ、朝起きたらラッピングされたれみりゃが部屋に居て、 「う~♪ぷれぜんとだどぉ~♪」と言ってくれたいなと思いつつ。 by ティガれみりゃの人 ============================ 途中雲行きが怪しくなりましたが…偶然とは恐ろしい。 俺もこのれみりゃみたいに仕事で何か当ててやりたいですよ。 -- 名無しさん (2009-02-16 02 02 10) 普通に読んでも楽しめるうえ、温暖化による生き物への影響についても考え させられる良いSSだと思います。 あと、この作者のれみりゃ種を可愛く書く仕事ぶりには脱帽。 -- 名無しさん (2009-02-16 18 07 42) アナトール…めちゃくちゃ懐かし過ぎるわ…。教科書で読んだ記憶が…。 -- 名無し (2009-02-19 21 58 37) この文章の巧みさは、やはり経験の差か…… なんであなたの書くれみりゃはかわいいんだ! -- 名無しさん (2009-02-19 22 16 26) アナトール!一瞬で思い出したww 小だか中学校の国語教科書に載ってたましたな…。 『ねずみのアナトールが夜な夜なチーズ工場に行き、チーズの批評をして感想を書き置き それを参考においしいチーズを作れて立て直す』そんな感じでしたっけか。 しかしこの菓子職人お兄さん(w)もなかなかの才能を持ってますなぁ スキ間の裏: 「工場」もあい余って「アナハイム」に聞こえたのは俺だけでいいorz -- 名無しさん (2009-02-25 16 44 26) イイですねぇ、、、、 私の好きなれみりゃが社会になじんで役に立ってます。 これほどうれしいことはない!! -- 特定の種だけゆっくり愛でな人 (2009-02-28 16 31 07) いやいや、いくらなんでも肉まん風情にこれは・・・ -- 名無しさん (2009-04-29 22 02 46) とりあえず楽しい作品でした。 かわいいなぁ…… -- 名無しさん (2009-04-29 22 47 57) れみりぁを初めてかわいく思った -- 名無しさん (2010-06-13 20 04 50) さすがかりすまおぜうさまだな。すばらしい。 -- 名無しさん (2010-11-28 03 05 29) 私にも仕事を・・・・orz -- 名無しさん (2011-04-14 06 01 37) おぜうさまが好きになった -- ゆっくり好きのただのオタク (2012-10-23 01 11 50) このレミリャはないわ~!親に歯向かい過ぎ! 違う工場やったら駆除対象間違いなしなレベル! 善良なお兄さんで良かったね♪ もっと愛でるなら愛で切ろうぜ! -- 聡明なら歓迎 (2013-02-23 04 43 27) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3872.html
『通りすがりの人間だ』 ※どうしようも無いネタ系エピソードです。 ※パロディ要素を多分に含みます。 「う~♪ あまあま☆でりしゃすぅー♪」 「おいしぃーね☆おねぇーさま♪」 立ち入り禁止の立て札虚しく、 公園の芝生の上で、よたよただばだばステップを踏む2匹のゆっくりがいた。 ふとましい体にとびきりの下膨れスマイル、ピンク色のおべべを纏ったゆっくりれみりゃと、 そのれみりゃの妹で、宝石のような羽とルビー色の瞳を持った、ゆっくりフランだ。 2匹は、愉快にダンスを踊りながら、文字通り"ゆっくり"を踊り食いしていた。 その周囲では、彼女達の"でぃなー"として捕らえられたゆっくり達が、懸命に叫んでいる。 「ゆっくり! ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしようよー! ゆっくりぃー!」 れみりゃとフランに掴まれながらジタバタ抵抗する、ゆっくりれいむとゆっくりまりさ。 しかし、抵抗は実らず、間もなく「ゆっくりした結果がこれだよ!」というハミングだけが公園に残った。 「きちゃない☆リボンはぽいするのぉー♪ ぽぉーっい♪」 「おぼうしびりびりにするの~☆びりびり~♪」 食べ残しのリボンや帽子で遊びながら、 れみりゃとフランは次なる獲物に手を伸ばす。 次にれみりゃが手にしたゆっくりれいむは、既に正気を失っていた。 「ぱ、ぱぴぷぺっ、ぱぴぷぺぽぉ!」 「う~♪ こいつこわれちゃったんだどぉ~♪ おもしろいんだどぉ~♪」 食べるのを止め、れみりゃはれいむで鞠つきを始める。 フランもそれを真似して、ゆっくりをボールにして遊びだした。 「おねぇーさま☆げげるしよー♪ げげるー♪」 「うっうー♪ ゆっくり"ぼぞぎでじゃす"するんだどぉー♪」 れみりゃとフランは、この近隣で最強のゆっくりだった。 その力は強く、ゆっくりも妖精も人間も、彼女らには逆らえないでいた。 彼女らにとって他のゆっくりや人間など、 ゲームの対象であり、エサであり、支配するものだった。 ……そう、少なくともこの日までは。 「うぁ?」 「ぷぅー?」 ゆっくりで遊ぶのを止め、れみりゃとフランは首を傾げた。 見ると、いつの間にかすぐそばに長身の男が立っていた。 「「うー? おにぃーさん、だぇーれぇー?」」 声を揃えて口にする、れみりゃとフラン。 長身の男はカメラを構え、そんな2匹へ向かってシャッターを切って呟いた。 「……どうやら、ここも俺の世界じゃないらしい」 溜息をつき、れみりゃ達への興味を失う男。 一方、れみりゃはワケのわからぬ男に対し、徐々に不機嫌になっていく。 「う~♪ ここはおぜうさまのこーまかんだどぉー♪ にんげんさんはかってにはいってきちゃ、だめ☆だめ☆なんだどぉ~♪」 よったよったのったのった。 れみりゃは男の下まで歩いて行き、両手を大の字に広げた。 「ぎゃおー♪ ぷっでぃ~ん☆みつがないと、たーべちゃうぞぉー♪」 れみりゃは、男がひれ伏すことを確信していた。 なんと言っても、自分は最強のかりすま☆おぜうさまなのだから、と。 だから、次の瞬間大きな下膨れ顔に男の拳がめり込んだことも、 その勢いのままふっとばされたことも、すぐには理解できなかった。 「だっどぉーー!?」 吹っ飛ばされたれみりゃはムクリと起きあがり、そのままぼぉーと男を眺める。 そして、徐々に顔に走る痛みに気づいて、泣き散らしながら何が起こったかを理解した。 「うぁぁぁー! おぜうさまのえれがんとなおかおがぁぁぁーー!!」 うっびぃ~!と叫びを上げながら、顔を押さえて芝生の上をゴロゴロ転がる、れみりゃ。 一方、フランもまた、姉が攻撃されたのを理解して、男への攻撃を開始した。 「うー! こいつぶれぇーもの! おねぇーさまのかたきとる!」 んがんぐと、口の中から黒い金属の棒を取り出し、フランはそれで男に殴りかかろうとする。 フラン自慢の必殺武器・れーばてぃんだ。 「うー! くりゃえー!」 ぶんぶんと棒を振り回しながら、男へ接近するフラン。 「ふん、蝙蝠には蝙蝠だな」 男は慌てず騒がず、1本のスティック状のものを取り出し、 それでフランのれーばてぃんを受け止める。 「うー!?」 今まで誰にも破られたことのない必殺の一撃を軽々と受け止められ、フランは目を見開く。 その隙を逃さず、男は棒状のものでフランを払いのけた。 思わぬ反撃に受け身もとれず、フランは芝生の上に尻餅をつく。 と、同時に、男の持っていた棒状のものもボキリと折れてしまう。 ……男が持っていたもの、それはどこにでもある蝙蝠傘だった。 「ま、安物にしてはじゅうぶんだな。化けて出るなよ」 ぽいっと折れた蝙蝠傘を投げ捨てて、男は未だ悶絶中のれみりゃへ近づいていく。 「うー! ゆっくりしね! おねぇーさまからはなれろ!」 フランは立ち上がり、男を呼び止める。 すると、見る間にフランの体が4つに分身していった。 フランの奥の手トリックベント……ではなく、フォーオブアカインドだ。 「しね! ゆっくりしね!」 フランは息巻いて、男へ迫っていく。 しかし、男は慌てない。 至って冷静なまま、フランをからかうようにチッチと指先を動かした。 「そういうの、こっちにもあるぜ」 「……うー?」 男はそう言うや否や、泣きべそをかくれみりゃの両脇をつかんで立ち上がらせる。 「うー♪ つかまっちゃったどぉー♪ いっやぁ~ん☆おぜうさまはずかしぃ~☆だっどぉ~♪」 れみりゃは、何を勘違いしたか、顔を赤らめてふとましい体をモジモジさせる。 そんなれみりゃの言動を無視して、男はれみりゃを前のめりに押し倒した。 「ちょっとくすぐったいぞ」 「やめるんだどぉ~♪ う~、えっっちぃ~なおにぃさんだどぉ~♪」 ブチブチ! れみりゃの背中から渇いた音が鳴る。 男がれみりゃの背中についた小さな黒い羽を引き抜いたのだ。 「う、うぁぁーー! れみりゃのパタパタがぁぁーー!?」 痛みで泣き叫び、四つんばいの姿勢のまま、男から逃げようとするれみりゃ。 しかし、男はれみりゃを逃がさないよう押さえつけ、その上に馬乗りになった。 『ファイナルフォームライドゥ! れれれれ、れみりゃーー!!』 「う、うぁ!?」 男の声とは違う声を、れみりゃは確かに耳にした。 そして、その次の瞬間。 れみりゃの体は羽を失ったにも関わらず、フワリを浮き上がり、 男を背中に乗せたまま、フランへ向かって突進を開始するのだった。 「う、うぁぁーー! れみりゃのおからだがかってにぃぃー!?」 「う、うー! おねぇーさま、ゆっくりとまれー!」 * * * 「うっぐ、ひっぐ……しゃくやぁー……」 「う、うー……めぇーりぃーん……」 芝生の上で大の字になって、2匹のゆっくりがのびていた。 黒い羽を失い、ボロボロになったピンク色のおべべを纏ったゆっくりれみりゃと、 ぽっきり折れたれーばてぃんを後生大事に抱えるフランだ。 泣きながら、自分達を庇護してくれる存在の名を呼ぶ、れみりゃとフラン。 完全に戦意を失った2匹を見下ろしてから、男はゆっくりと踵を返した。 「お、おにぃーさんは、いったいだれなんだどぉー…… なんでおぜうさまにこんなひどいことするんだどぉー……」 搾り出された、れみりゃの問いに、 男はふと足を止め、口を開いた……。 「俺は通りすがりの……」 おしまい。 ============================ これは、ひどい……。 我ながらひどすぎる……。 by ティガれみりゃの人 ============================
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1062.html
抜けるような秋晴れの朝だった。 人里の外れにある、広めの平地。遮蔽物の少ない野原。 そこに突如湧きあがるゆっくりの大群。それらの目はおそろしく真剣で。 「「「うらー!!!」」」 まさしく兵士のそれであった。 ススメススメ、目指すは豊の大地。恵みに満ちた新しい領土。 荒れ果て(ゆっくり達が食い荒らしたから)、恵みに乏しく(ゆっくり達が(ry、冷たい風が吹き荒れる(ゆっくり達が木の根っこまで食い荒らしたから) 死んだ大地(下手人、ゆっくり達)を捨てて、豊穣の大地はもう目の前だ。 「ゆっくりすすめ!」 団体を指揮するのは1体のゆっくりまりさ。それの指揮に従ってゆっくり達は新天地を目指す。 あともう少しというところまで来た。ゆっくりれいむは傍らのゆっくりまりさにウキウキと話しかける。 「もうちょっとでゆっくりできるね!」 しかし、すぐ隣にいるはずのまりさからの返事はない。あれ、と思って振り返ると、まりさが尻餅(?)をついているのが見えた。 バカだなあ、と呆れつつまりさの所まで戻るが、どうも様子がおかしい。 ゆっくりまりさの表情が動かない。デフォルトの半笑いの状態でひっくり返っている。 よく見ると顔の中心にポツリと穴が開いている。そして、顔の反対側には大穴があいており、そこからはアンコがジクジクと漏れていた。 これは……弾がまりさを殺した! 「てきしゅー!」 途端に群れ全体に緊張が走る。ピョコピョコ気楽に跳ねていたゆっくり達は姿勢を低くし(ほぼ球体のゆっくりではあるが)、 匍匐前進に切り替える(ほぼ(ry。 耳を澄ませば、自分のすぐ横を風切り音を立てて弾が飛んでいるのがわかる。なんてこった、誘い込まれたか。 時折運の悪いゆっくりが弾に当たってアンコを飛び散らせながら絶命するが、群れ全体としては目標にわずかずつではあるが近づきつつあった。 そんな中、数体で固まって動いていたゆっくりの集団が宙に舞った。地雷を踏んだか。 まず1体のゆっくりれいむが悲鳴を上げる間もなく絶命する。 じめんにたたき付けられた残りのゆっくり達の中にも無事なゆっくりはいない。 「め゛があ゛い゛た゛い゛よ゛ーぉぉぉぉっぉお゛」 爆発で目を潰されたゆっくりがパニックを起こし、傍らのゆっくりを突き飛ばす。 直後にその目が潰れたゆっくりは蜂の巣にされた。 「ぎゃ」 まず1発。ゆっくりの動きが止まる。 「や゛め゛て゛え゛え」 2発、3発。弾が来た方向の反対側に逃げようとする。 潰れた目からアンコをこぼしながら、地面を必死に這う。 「あ……ああん」 4発目で力尽き、後は饅頭の解体作業に移行した。 時折うめき声を上げるが、1発当たるごとに原型は失われ、10発あたる頃には肉の壁にも使えない代物が出来上がった。 一方、突き飛ばされたゆっくりは体の左半分が失われており、既に意識はない。 転がっていった先で別のゆっくりと睨めっこ。デスマスクVSゆっくりれいむ。 「ひゃああああああああああ!!!」 恐慌に陥ったれいむが逃げ出す。 だが、指揮官のゆっくりまりさが行く手を遮る。 「ゆー!ゆー! どいてよ!」 「ゆっくりしね!!!」 どんという音とともに逃げようとしたゆっくりれいむが粉々になる。 ゆっくりまりさ必殺の尻アタックである。れいむの破片が、行進中の(先発隊が匍匐前進に切り替えているのに)ゆっくり達に飛び散る。 ピタリと動きを止めるゆっくり達。指揮官まりさは当然不平を漏らす。 「はいぼくしゅぎしゃはしゅくせいだー! はやくすすめ! ゆっくりしね!」 お前意味分かってるんか? だが、動きを止めたゆっくり達は声に応じない。 全てうつむいたまま何やらぶつぶつとつぶやいている。 「「なんで…」」 「ゆ?」 「「な゛ん゛で゛こ゛ん゛な゛こ゛と゛す゛る゛のおおおお゛おおおおおおおお!!!!」」 一生懸命新しいすみかを手に入れようと、ゆっくり頑張っていたのに、なんで仲間を殺すんだ。 なんで、なんでなんで。壊れた機械みたいに繰り返すゆっくり達が、指揮官まりさにかじりつく。 「いたいよー! やめギョ」 顎が食いちぎられた。さらに1体のゆっくりれいむが指揮官まりさにのしかかる。 ブルブルと痙攣を始めるれいむ。交尾の始まりだ。 なんでと叫ぶのは、今度は指揮官まりさの番だ。なんだってこんな時に。 「りゃめ゛てどおおお! なんでこんなごどずるのほおおおお!!!」 うまくしゃべれない口で必死に叫ぶ指揮官まりさ。だが、交尾は止まらない。 「らめえええ! こしがとまらないおおおおお!!!」 れいむは既に、まりさを襲った理由など頭にないようだ。発情した赤くてトロンとした表情のまま、ピストン運動を続ける。 共食いに遭いながら強姦される指揮官まりさは白目をむき、口から泡を吹きながられいむの動きに合わせて揺れる。 「あ、あああ、あああん!! いっちゃビシャッ! 交尾が最高潮に達し、れいむが果てるその瞬間、れいむの後頭部に弾が命中する。 弾は脳天をかすめるように当たり、ゆっくりれいむの時間は絶頂の瞬間で停止する。 悶絶する指揮官まりさの上で硬直する、恍惚の表情のれいむの死体。 時を同じくして、落ち着きを取り戻した他のゆっくり達が指揮官まりさから伸び始めた茎に気づく。 「あかちゃん?」 「あかちゃんだ! ゆっくりできるよ!!!」 見る間に大きくなる、茎の赤ちゃんゆっくり。それらが目を開く。 「ゆ?」 「おめめをひらいたよ! こんにちは! あかちゃん!」 ちなみに2体の死体はそのままである。 ついさっきまでの惨状の名残を囲んで、喜びに沸くゆっくり達。 「ままー?」 「ままたちだよ! はやくゆっくりしようね!!!」 砲撃、着弾。 その頃、最前線の集団は敵が掘った塹壕にたどり着いていた。 命拾いした、とばかりに塹壕に飛び込んでいく。飛び込んだ勢いで潰れるゆっくり、少数発生。 ふーふーと呼吸を整えるのは1対のゆっくりまりさとゆっくりアリス。 「けがはない? まりさ」 「だいじょうぶだよ! げんきだよ!」 よかったー、とアリス。そんなアリスにまりさが少々照れた様子で声を掛ける。 「このたたかいがおわったら、アリスとかぞくをつくりたいんだ!」 「ほんとう!? ……べ、べつにうれしくなんかないんだからね!!!」 直後に砲弾が直撃。山なりに飛んできたものがアリスを粉々にする。 巻き上げられた土と一緒にまりさに降る、アリスの残骸。 一瞬呆然としたまりさが、憤然と塹壕を飛び出す。 「よくもアリスを!!!」 だが、塹壕を出かかった所で塹壕に引き戻される。 まりさを引き戻したのは、アリスと仲が良かったゆっくり上海と蓬莱。 「ゆー! なにするの!」 「ホライホーライ!」「シャンハーイ!」 まりさを怒鳴りつける2体の様子を、まりさはこう解釈する。 「おちつかないとあぶないもんね! ありがとう!」 だが、上海と蓬莱が振り上げたのは、ギラリと鋭く光るカミソリ。 ……の、刃を持つ安全カミソリ。 「ホーラーイ! (よくもアリスにいらない死亡フラグを立てたな!)」 「シャーンハーイ! (生かしておくべきか、この泥棒猫!)」 上海と蓬莱がまりさをカミソリで殴り始める。 2体は小柄な種であるため、殴られても大して痛くはないのだが、時々カミソリの刃がまりさの皮を削いでいく。 「なんでこんなことするの! ゆっくりできないよ!!」 それでもさほどダメージはないので、まりさは冷静さを失わないでいられた。 冷静に抗議を続けたことがそのまりさの命を奪う。さっさと体格に任せて上海と蓬莱を黙らせれば良かったのだ。 よく開くまりさの口に安全カミソリの頭が突っ込まれる。 「ふぐ!?」 そして掲げられるまりさ。魔女を断罪する十字架のように、カミソリは天高く持ち上げられる。 まりさは磔にされた罪人であると同時に、動かない的であった。 敵陣まで大分近づいていたため、弾の命中率は大分高い。 容赦なくまりさを殺していく弾。 口がふさがっているまりさは「なんで」と目で問いかけるだけ。涙と涎で上海と蓬莱を濡らしながら絶命した。 「シャンハーイ」 満足げにため息を吐いた2体のゆっくりは、何気なく、まったく不用心に塹壕を飛び出す。 当然、10秒と持たずにバラバラになる。だが2体は穏やかな表情で逝った。あの世で大好きなアリスとゆっくりできる、とでもいいたげに。 だが残されたゆっくり達はそんなこと知ったことではない。3体も無駄に死んだ、このままでは自分達もゆっくりできなくなる。 ではどうしよう。本人達が気づかない間にだいぶ混乱していたゆっくり達は、各々勝手にゆっくりし始める。 眠り始める個体。眠ってる個体に交尾を試みる個体。その個体を食べ始める個体。無意味に飛び跳ねて蜂の巣になる個体。 塹壕に時折飛び込んでくる砲弾で吹き飛ぶ仲間達には目もくれない。 硬直する戦況を打開すべく、最後方にゆっくりパチュリー達とそれらが作った武器がお目見えする。 でかいパチンコである。玉入れの方ではない、スリングショットの方だ。 装填された弾はゆっくりみょん。頭に槍のつもりだろうか、木の枝をくくりつけている。 これなら敵陣に直接攻撃が可能である。 「おおおおおちつこうよ、やめてー」 やめてくれと懇願するみょん。だがパチェの耳には届かない。彼女(?)の灰色の白あんがはじき出す答えはただ一つ。 ゆっくりみょんは半分霊体だから軽い。遠くまで届きそうだ。 みょーんと発射される第一波。だが、ゴムの引きが甘く、発射されたみょんは眼前のパチェに突き刺さる。 「むきゅーん」 「ちちちっちんっぽー!」 スコンと気の抜ける音を立てて枝がパチェに突き刺さり、急所に当たった訳でもないのに昇天するパチェ。 やっちまったと震えるみょん。そのみょんを他のゆっくり達がもう一度パチンコに装填する。 同じ失敗を何度か繰り返した後、ようやく最前線にみょんが飛来する。 そう、最前線に。最前線の塹壕の中に。 塹壕の中でゆっくり子育てを始めていたゆっくりは串刺しになり、弾に使われたみょんはえらいことになったと泣き出す。 「むきゅむきゅーん、こうりょくしゃかくにん、つづけー! ゲッホゴッホ!」 興奮のしすぎで発作を起こしたパチェが吐血ならぬ吐餡をして気絶する。 次から次へと塹壕に飛来するみょん。終いには衝撃で塹壕の壁が崩れ始める。 「ゆー!? ゆー!?」 「わからないよね! ゆっくりしたいよね!」 「おか゛あ゛ああさ゛ああ゛んん゛……」 生き埋めになるゆっくり達。 どうも様子がおかしいと後方が気づいたのは、みょんを全部発射した後だった。 戦局打開の第ニ策目は戦車の投入である。 ゆっくりさくやに緑色をした怪獣の着ぐるみのような装甲【ぱーふぇくとめいど】を装備させたゆっくり戦車。 主砲には0.1口径20mmナイフ砲【さつじんどーる】、さらに対ゆっくり散弾砲【えたーなるみーく】を採用した、 ゆっくりさくや-III式戦車、通称『さくやさん』である。 ノソノソと登場したさくやさんは敵弾をものともせず前進を開始する。当然、下敷きになった味方もものともしない。 自分の下で断末魔の悲鳴は聞こえるが、さくやさんは急には止まれない。 ぶちまけられた餡子が邪魔だが、さくやさんはこの程度では止まらない。 「おーるはいる、おぜうさまー!」 「「「おーるはいる、おぜうさまー!!!」」」 さらに航空戦力も投入される。 ゆっくりれみりゃの大群が、高々度からの爆撃を開始する。爆撃範囲は味方最後方から中盤にかけて。 「はやくやめグシャ 「むギュー 爆撃成功、爆撃成功。岩石投下による被害は甚大。味方勢力のさらなる減少を確認……あれ? そもそもの作戦内容を思い出せないれみりゃは、頭から?マークを生やしたまま敵陣上空に到達する。 途端に、対空散弾による迎撃が開始される。翼にダメージを負い、1体また1体と撃墜され、地面と激突するれみりゃ。 だが、運の良いれみりゃ、いち早く逃げ始めたれみりゃが他のゆっくりの上に軟着陸する。下で悲鳴が聞こえたが、気にしない。 餡子で滑って転んだれみりゃが泣き始める。 「びええええ! さ゛く゛やああぁぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛!!!」 「おぜうさま! おぜうさま!」 泣き声を聞きつけたさくやさんがノソノソと駆けつける。だが言ったはずだ、さくやさんは急には止まれない。 ぶちっ。 足の先から順に、さくやさんに挽き潰されていくれみりゃ。 「ぎゃああああああ!!! いだいよー! やめてさ゛くやあ゛あ゛あああ゛あああ!!!」 飛び散る肉餡。れみりゃは必死にさくやさんから逃げようとするが、下敷きになった胴体が邪魔で全然動けない。 手がむなしく地面を引っ掻く。 「ああ、おぜうさま! ああ、おぜうさま!」 ノソノソとミンチが出来上がっていく。胴体が潰され切る頃にはれみりゃには悲鳴を上げる余力もなく、 ただ、ぜーはーと荒い息をするしか無かった。そして、頭部も下敷きになる。 「さ……ぐ……や……ぁぁぁ」 ゴリ。 「お゛ぜう゛さ゛ま゛あ゛あああ゛ああ!!! なぜか「止まらなかった」さくやさんが慟哭を上げる。上げて、上げて、上げながら【えたーなるみーく】の散弾をばらまきj始める。 混迷極める戦局を打開する最終手段として、空挺戦車ちぇん式、通称『ちぇんしゃ』の投入が決定した。 輸送はゆっくりフラン4体で1体のちぇんしゃを運ぶ形式になる。 勿論、落下傘などない。 「わかるよねー? むちゃだよねー!?」 「「「「ゆっくりおちろ!!!」」」」 ちぇんしゃの残骸と巻き込まれたゆっくりの死体だけが量産されていく。 えらいめにあった、なんてこった。 その日ののうかりんは間違いなく厄日だった。 いつもどおり畑にきた。収穫間際の作物が野良ゆっくりに荒らされないように柵の点検をしようと思っていた。 そんなのうかりんが目にしたのは、雲霞のごとき野良ゆっくりの大群。 追い払おうと足下の土を掴んで思いっきり投げつけたが、まるで怯まない。 ちなみに、のうかりんは名称の元となった風見幽香に比類する膂力を持っていることを併記しておく。 怯まないどころか、畑の脇にある用水路の中にまで入り込まれた。 驚いて飛び出すかと思って石を投げ込んでみたが、あまり効果はなかった。 それどころか、なんか道具のようなものを持ち出したりもし始めた。 厄日って騒ぎではない。天災だ、これは。 「ああ、ゆっくりれみりゃまできたず! どうすっか!」 とりあえず土を投げてみる。おお、落とせる、落とせる。 しかしなんて数だ。休耕中の畑がゆっくりの残骸で一杯になっているではないか。 ……肥料になるかな。 上空から惨劇の様子を眺める人影2つ。 「……何がしたかったんですか? パチュリー様」 「ゆっくりの大量錬成法の実施検討と、……ゆっくりの統制可能性の検討」 「失敗、ですよね?」 「……大量錬成法の実施検討は成功。……ゆっくりがある程度道具を使えることも分かった」 「はあ、そうなんですか。ところで、その大量錬成法の名前ってあるんですか?」 「……ゆ、……。……ゆっくりコンフリクト」
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2737.html
実りの秋も終わり、寒く長い冬が近付いて来ているある日の事、ある飼いゆっくりれいむはのんびりと散歩をしていた。 飼い主に買ってもらった『スィー』という乗り物で、もうじき寒くて出歩けなくなる外を見て回っていたのだ。 しかしその帰り道、ちょっと余所見をしていた間に道を歩いていた人間に追突してしまった。 「おいこらぁ! 降りろ! お前免許持ってんのか!?」 いきなり追突されそれなりに痛い思いをさせられた男は、ぶつかった衝撃で混乱しているれいむを怒鳴りつけた。 「ゆ、ゆゆ!? どうなってるの!? ゆっくりせつめいしてね!!」 「おいこら免許見せろ! 早くしろよ!!」 そう、ゆっくりがスィーに乗るには免許が必要なのである。 無免許でスィーを乗っているゆっくりは、それが飼いゆっくりならば飼い主が安くない罰金を支払う事になり、 野良ゆっくりならば殺処分される事になっている。 このれいむは飼いゆっくりなので、当然免許も持っている。 「め、めんきょだね!! ちゃんともってるよ!! だからころさないでね!!」 常々飼い主に言われていた通り、持っていた免許証を掲示する。 それなりに躾は行き届いているようだ。 男はれいむの口から免許証をひったくりじろじろと確認する。 そして何を思ったのか、 「おうお前俺に着いて来い!」 と言い、早足で何処かへ歩いて行き、れいむは慌ててその後をスィーで追いかけて行く。 男は彼の仕事場らしき建物に入り、椅子にどっかりと座った。 必死で着いてきたれいむは、スィーに乗ったまま脅えた表情で男を見上げる。 男はじっと黙り込んでいる。沈黙に耐えられなくなったのか、れいむは震える声で頼んだ。 「め、めんきょをかえしてね!」 「やだよ」 一瞬で断られた。だが諦めずに食い下がるれいむ。 「おねがいしますぅ!!」 男はれいむをジロリと睨み付けると、 「……お前それでも謝ってんのかよコノヤロウ」 「おねがいします! めんきょしょう……」 「やだっつってんだろ。とりあえず土下座しろよコノヤロウ」 「ゆ、ゆうぅ……」 「早くしろよ」 ゆっくりにも土下座は存在する。 地面に額を擦り付けた状態というのはゆっくりにとって最も無防備な状態であり、それ故最大限の服従の表現となるのだ。 れいむは飼い主に買って貰ったスィーをずっと乗り続ける為、その要求にも従った。 地面を舐めるように土下座するれいむに、男は言う。 「お前誰にぶつかったと思ってんだよンノヤロウ」 「ごめんなさい!」 「どう落とし前付けんだよ」 落とし前、等と言われてもゆっくりに過ぎないれいむにそんな事が出きる訳も無い。 「……ごめんなさい! すみませんでした!!」 ただ必死で謝る事しかできない。 「コレ返して欲しいのかよ?」 「はい!」 「じゃあお前とりあえずなぁ、豚の真似しろよ」 「ゆ!?」 「豚だよ。ゆっくりれみりゃになるんだよコノヤロウ。早くしろよおぅ返さねえぞ!」 「やればかえしてくれるんですか!?」 「おぅ考えてやるよ。早くしろよ」 「ゆ、ゆぅ……」 豚―――ゆっくりれみりゃの真似をするという事は、ゆっくりにとって最もゆっくり出来ない相手になりきるという事だ。 人間に飼われていて躾の行き届いたれみりゃも居ない訳ではないが、豚などと呼ばれるのは普通は野良のれみりゃ、 つまり鼻が詰まったような声で、通常のゆっくりにすら劣る知性を持ち傲慢に振舞うあのれみりゃの事を指す。 それはちゃんと躾けられているれいむにとっては土下座以上の屈辱と言ってもよかった。 だがこの場合れいむが全面的に悪く、男はあくまで被害者であるとれいむは認識していたので、 その要求にも黙って従う事にした。 とりあえず通常のゆっくり以上に間が抜けた笑顔を浮かべ、れみりゃの真似をしようとしたが、 「おぅお前何豚のクセにバッジ付けてんだコノヤロウ」 「ゆ、ゆゆ!?」 「お前それ取れよ」 「は、はい!」 れいむは器用に髪飾りに付けられているバッジを外し、床に置いた。 そして今度こそれみりゃの真似をしようとして、 「飾りも取るんだよ。早くしろよ。馬鹿じゃねえの?」 髪飾りも外し、今度という今度こそれみりゃの顔を真似た。 あまりにも間抜けな顔を見て男はニヤニヤ笑いながら、 「おい『だとぉ~』とか鳴いてみろよコノヤロウ」 「れ、れみりゃはごうまがんのおぜうざまだどぉ~♪」 意外と似ている物真似に男はゲラゲラと笑い、れいむは屈辱と羞恥で顔を真っ赤に染めている。 「おぅ次はダンスだよダンス、おら踊るんだよ。早くしろよ返さねえぞ」 「れみ、りゃ、う~♪にっぱ~♪」 生首タイプの通常種でありながら、中々上手くれみりゃのダンスを再現するれいむ。 もたもたとした愚鈍さまでも忠実に再現している。 男は面白そうに、 「もう一回鳴いてみろよ」 「えれがんとなおぜうざまにぷっでぃ~んもってくるんだどぉ~♪」 「よぉし」 やっと免許証を返して貰えるか、とれいむは安堵した。だが男は、 「なんか豚っぽくねぇなあ? なぁ、何か足んねぇよなぁ?」 まだ続けるつもりらしい。れいむは涙が出るのを必死でこらえて男の命令を待つ。 「お前ババ帽子被ってもらおうか。おぅお前これ被れよ。頭出せコノヤロウ。早くしろよ」 男は机の引き出しかられみりゃの帽子を取り出すと、れいむの頭に被せた。 そして再びれみりゃの物真似をさせようとした時、部屋の扉が開いた。 「おぅお前何やってんだゴルルァ!!」 「おにいさん!!」 部屋に入ってきたのは頬に傷のある、何処からどう見ても頭にヤの付く自由業をやっている人間だった。 先程までれいむを苛めていた男は、顔を青くして立ち上がり壁際まで後すさった。 「おぅお前何人のゆっくりいたぶってんだよゴルルァ」 「え、と、その……」 「まあいいや。とりあえずお前免許出せよ」 れいむの飼い主は男から免許証をひったくって確認すると、れいむを抱き上げて男を部屋の外に引っ張り出し、 「おぅお前クルルァに着いて来い!!」 男を建物の外に停めてあった自動車の中に押し込み、発車した。 この後男は他人の飼いゆっくりを虐待した事を攻め立てられ、 肉体・精神・経済全ての面において少なくない賠償を支払う事になるのであったアッー! 作者名当てシリーズだよ!ゆっくりあてていってね!! このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2473.html
この作品に出てくる体つきれみりゃは~だどぉ♪訛りはありません。そんなに我がままじゃありません。 舞台は幻想郷です。 この作品に出てくる人サイドの主役は虐待でも愛ででもありません。 ジャンルはその他。虐待はしていません。 十五夜の月見が近いため団子を作り軒先に置いていたときの事。変な声が聞こえて空を見れば 「う~う~うあうあぁ♪」 体つきのれみりゃがヨタヨタと飛んできていた。ほんとよく歌うよなオイ。 「あまあま、どこぉ?」 団子の臭いに惹かれて飛んできたのか。なんか面白い。れみりゃは畑を荒らす普通のゆっくりを食べてくれる。 だけど勝手に人の家に入り込み、こーまかん宣言をしてしまう厄介な性質も併せ持つ害獣にも益獣にもなるヤツだ。 ホントは餌付けは駄目なんだがな……。今日は気分がイイからまあいいか。 「おい、団子食うか?」 「うぁ?それ、あまあま?」 「あぁ、甘いぞ」 「ありがとぉ、いただきまぁす。あまあまぁ♪」 「と、みせかけて芥子入り」 「ぶふぅぅぅぅぅ!?」 「じょ、冗談だ冗談!うわ、汚いなもう……」 し、しかし、こいつ今お礼言ったよな。体つきは傲慢が体を付けて歩いたようなもんじゃなかったのか? なんかこのれみりゃオカシイな………聞いてみるか。 「そういえば、お前等ってだどぉ~♪って訛りが無かったか?」 「う~……、そんなへんなしゃべりかたはれでぃらしくない、ってぱぁぱが……」 ぱーぱって……なんのゆっくりなんだ? 「おまえ、母親以外に父親(役)のほうもいたのか?」 「うん、さくやってまぁまがいってた」 ………さ く や ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 「ちょっと待て、お前さくやとれみりゃの子供か!?」 「う、うんそーだよ」 さくや種とれみりゃ種の交配を行うとさくや種は大抵母体となって餡子の塊になってしまう。 長い間暗黙の了解として知られていたことだ。加工所で実験してもそうだったのにまさか反証例を野生種で見るとは………!! 「でもなんでそんなこと言ったんだ?」 「ぱーぱはいろんなれみりゃについていったことがあるんだって。 だけどみんなにんげんさんに『だどぉだどぉってへんななまりでうぜぇんだよ!』ってころされちゃったりつかまったり……」 虐待お兄さんの多い地域に住んでたんだろうなぁそのさくや………。 「それで、だどぉ~♪ってのはきっとれでぃらしくないんだ、っておもったらしくて」 「じゃあ、お礼とかそういったものもさくやが教えたのか?」 「うん、ついていったれみりゃはにんげんさんにあれもやれこれもやれってやってころされちゃったからって」 相当頭のいいさくやだな……。 「そのさくやは元気なのか?」 「うぅん、もうしんじゃったよ。そしたられみりゃいがいみんなまただどぉ~♪ってつけるようになっちゃった」 「おまえはなんで戻さなかったんだ?」 「だって、ぱぁぱがいったことだから……まもればあんぜんにせいかつできるならそれのほうがいいよ」 ……やっぱりゆっくりって面白っ! 「また、夜の暇なときに来いよ。大体この時間ならいるから。だけど家のものを荒らすのは勘弁な?」 「うん、わかった!ありがとぉ、おにいさん」 「お兄さん言うな、あたしはおねぇさんだ。あ、これをやろう」 「これはなぁに?」 「これを土笛って言ってなぁ……」 れみりゃはへっぽこな音しか鳴らせなかった。 まぁ、そんなこんなでしばらく遊んでいたわけだがある日、いつもの時間に待っていたのだがれみりゃが来ない。 おかしいな、と思いれみりゃが住んでいると言っていた西の森に向かってみた。 案の定、だった。森は大量のありす、レイパータイプか?に覆われていた。 「すすすすすすすっきりしましょぉぉぉぉぉぉ!!」 「とかいはとかいはぁぁぁぁ!」 たまに大発生するがこれほどまでの大群とは……。ふと遠くを見ると割れた土笛とだっさい帽子が見える。 やっぱり大群じゃ無理だったか。 「ゆゆゆ!?にんげんがいるわ!」 「とかいはのありすたちにおかしをよういしてね!」 うるさい。 持ってきた八意印・戦術神風型を開く。ホントは瞬殺無音型のほうが欲しかったんだが売り切れていた。 「ゆ?な、なんかいきぐるしくなってきたわ?」 「ゆげぇ……」 「いぎがでぎなぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 「ぜ、ぜめでもういじどずっぎりじだがっだ……」 数分で全てのレイパーが動きを止めた。 「悪は去った………」 いや、悪かどうかは知らんが。だが、コイツラを倒してもれみりゃは…… 「う~♪おねぇさん?」 「れ、れみりゃ!?おま、ありすにやられたんじゃ!」 「ちがうよぉ、たくさんへんなありすがぞろぞろでてきたからはなれてたんだよぉ、おぼうしとかもらったものをおとしちゃってたいへんだったんだよ!!」 「ま、ま、ま、ま……」 「ま?」 あまりにあまりなオチにあたしは 「まぎらわしぃぃぃぃんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 スパァァァァァァァァァァァン!! 「ゆべし!?」 自分が試作したゆっくり用はりせんでれみりゃの頭を思いっきりしばいた。 後書き 全く苛めてませんねこれ。むしろ、こぉいつぅレベルですね。 ありす(レイパータイプ)無駄死にかよ!? このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/406.html
※「ゆっくり研究者のある1日 」の続きです。1部設定がぶっ飛んでいるので、前作を知らない人はご注意を ※1部虐待されないゆっくりを含みます。 ※勧善懲悪もの(?)です 俺はゆっくり種の研究をしている。 一応個人的な研究になるのだろうが、「ゆっくり加工場」という施設で研究結果を高値で買い取ってくれるために最近では設備も整ってきた。 今日は、その加工所からの召喚を受けている。 "ゆっくり加工所商品研究課"という部門での定期発表会議に参加してほしいというものだ。 商品の発表に俺のような総合的研究者の意見など必要か?という疑問があるが・・・ しかし、その後"ゆっくり捕獲研究科"を見せてもらえることになっているため期待は大きい。 ゆっくりをうまく調教し、ほかのゆっくりたちを誘導させ、労せず捕獲する方法を確立したらしく、見せてもらうのがとても楽しみだ。 うちの助手は今回あまり役には立ちそうもないので、久しぶりに休暇をやることにする。 外出させるに当たり、研究所のマークがついた腕章を両腕に止め、守るべき事項を1つ1つ伝える。 「・・・・・後は、夕方までに必ず戻ること。理解できたか?」 こくりと頷く。 まぁ6割程度は理解できたはずだ。 各部屋を回り、異常がないことを確かめて俺は加工場へと向かった。 久しぶりに一人で外に出る。 はかせは加工場に1日中いるらしいから、今日はあそび放題だ。 どこにいこうかな。 何を食べようかな。 そんなことを考えながら庭から外へ飛ぼうとしたとき、視界の隅に動くものが目に入った。 「ゆ?おねーさんどこいくの?」 1匹のプチゆっくりがこっちに向かってはねてくる。 どこから出てきたんだろう? 食べようかな そう思いながら摘み上げてみると、見かけよりずいぶん重い。 あ、これ、いっぱいしゃべるゆっくりだ。 研究所内では知能向上の研究をするとき増量剤を注入してあんこ密度を上げるため、見た目よりずいぶんと重いゆっくりが出来上がる。 ゆっくりフランはそのことをすべて理解しているわけではないが、重い=語彙が豊富だということは分かっている。 このプチゆっくりにとっては幸いなことに、フランは朝ごはんを食べた直後だった。 今はおなかいっぱい。 おなかがすいたら食べよう そう決定し、摘んだプチを腕章にくくりつけておく。(普通なら尖ったものに刺しておくのだが、近くに無かった。羽に刺すと飛びづらくなる) 庭の真ん中でくつろいでいたゆっくりゆゆこを踏み台にし、颯爽と飛び上がるフラン。 「ゆー!!」いきなり踏みつけられたゆゆこが怒っているが、知ったことではない。 「たかーい!おねえさんすごーい!!」 腕にくくりつけられているにもかかわらず、空を飛んでいることに感動しているだけのプチ。 知能向上の実験体のはずなのだが、やはりプチはプチということなのだろうか。 山道 しばらくわさわさと飛んでいると、眼下に複数のゆっくりを発見した。 おもしろそう もちろん見逃すはずも無く、獲物を虐殺するために急降下していく。 ゆっくりまりさは耐えていた。 こすり付けられるゆっくりアリスの振動に。 「とかいはのありすのあいがすこしはわかったようね!!」 「ッ!・・ッ!う゛う゛う゛ぅッ!」 勝手なことを言いながら交尾を続けるゆっくりアリス。 「おわったらはやくかわってね!!」 そして眼前にもう1匹、自分のかわいい赤ちゃんたちを押さえつけているゆっくりアリス。 自分達の絶対的優位を確信し、勝ち誇った顔をしている 「まりさがいやなら、このあかちゃんまりさでもいいんだからね!」 この母まりさにとって不幸だったのは、赤ちゃんたちから少しだけ目を離したこと。 そしてゆっくりアリスが連携を覚えていたことだった。 一瞬の隙を突き、赤ちゃん達を人質に取り、交尾を強要して来るゆっくりアリス。 姉まりさ達は助けに行こうとしたところを一喝し、逃がしてある。 「んほおおおおおおぉぉぉっ!!」 「うぐううう゛ぅっ!」 母まりさは耐えるしかない。 かわいい赤ちゃんのため。 このままでは自分が死ぬだろう事を、うすうす感付いていたとしても。 特に必要の無い解説だが、ゆっくりフランには人間のような偽善心は無い。 このときターゲットにした2匹は、(発情していたため)普通よりつやつやしていてはりがあり、元気そうにうごめいていたもの。 対する残りの1匹は、色がくすんで萎れ気味、いかにもマズそうかつ反応も鈍そうであったため、捕食にも遊戯にも向かないと判断し、視界から早々に排除していたのだ。 思惑はどうあれ、そこには然るべき結果が残る。 フッと自分にのしかかっていた重みが消えるのを感じる母まりさ。 まだ絶頂していないはずなのにどいたアリスに疑問を覚え周りを見回し、違和感を覚える。 今まで自分と交尾をしていたアリスは、どこへ行った? ふと見ると、赤ちゃん達を抑えているアリスが驚愕の表情で固まっている。 ? ・・・!? (ゆっくりにとっては)目にも止まらぬ速さで空中につかみ上げられるアリス。 一番の優先順位である赤ちゃん達を見ると、ぐったりはしているが何とか生きているようだ。 「なにするの!?もうすこしでい・・・!!!!」 上方で、さっきまで自分と交尾をしていた方が抗議の声を上げかけ、なぜか途中で言葉を止める。 母まりさは、つかみ上げられる=人間という思考結果にたどり着き、上を見上げお礼を言おうとした。 そこには、自分達の最も恐ろしい天敵であるゆっくりフランがいた。 しかも体つきで、さらに普通よりもずいぶん大きい。 驚愕の表情で固まるまりさ。 いきなりすぐ隣まで来た"死"に、声も出せずに固まり続けるまりさ。 結果として、それがまりさの命を救った。 フランは捕まえた2匹をどうするか考えるのに夢中で、まりさ親子の存在など視界からも記憶からも完全に排除していたのだ。 最後までまりさ親子の存在に気づかないまま、獲物を両手にわしづかみにしたフランは意気揚々と歩いていった。 いきのいいのが2匹もとれた どうやって遊ぼうかな 上機嫌で両手の獲物を振り回しながら歩き続けるゆっくりフラン。 すぐに殺されなかったため、このゆっくりフランが自分を殺す気は無いと(何故か)判断し、信じられないことにフランに迫ってくるゆっくリアリス 「ふ、ふ、フラン!フランでもいいよ!ゆっくりしよ!」 発情した顔でフランの顔の方に向かってこようとするゆっくりアリス。 あきれて声も出なかったが、こんなのに貼り付かれたくは無いので掴む力を強めるフラン。 ビリッ! 結果、頬の少し後ろあたりが破れ、クリームがはみ出してきた。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!い゛だい゛い゛い゛い゛ぃぃぃぃ!!」 ああ、もったいない いっぱい遊ぶつもりだったのに 「・・・ゆっくり死ね」 仕方ないので破れたところに牙を立て、中身を吸い出す。 「い゛い゛い゛ぎい゛い゛い゛ぃぃぃ!!な゛ん゛でえ゛でえ゛え゛え゛ぇぇぇえ゛ぇ!!」 チューペットのように口に咥えながら、ふと思いつきもう1匹の頭の皮を力任せにひっぺがす。 「ぎい゛い゛ぃあ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!な゛に゛ずる゛の゛お゛お゛お゛ぉぉぉ!!」 暴れまわるのを押さえつけ、腕にくくり付けてあったプチゆっくりを破れた頭からのぞくクリームの上に置く。 プチは少しの間悩んでいたが、食べろという仕草に気づき、少しづつクリームをなめていく。(同族喰いにはあまり抵抗がないようだ) 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁあ゛ぁ!!だべな゛い゛でえ゛え゛え゛ぇぇぇ!!!」 やはり中身は敏感らしい。 少しずつ舐め取られていく感覚に元の形が分からないほど歪むアリスの表情。 うん。やっぱりこっちのほうがおもしろい。 つぶすとすぐ終わっちゃってつまんない しばらく2匹の奇妙な食事が続いていたが、ふと思い出したようにプチが話しかけてくる。 「おねえさんまりさをたすけてあげたんだね!えらいんだね!」 ・・・まりさ? そんなのいたの? それも持って来ればよかったかなぁ。 2匹とももう終わっちゃいそうなんだもん 次からは見たものをその場で知らせてもらえるように、プチを肩に乗っけるフラン。 「ゆー!たかいね!いろんなものがみえるね!」 もちろんプチはそんな意図など気付くはずも無く、ただはしゃぐだけだったが。 ちなみに、プチの食べ残した方のアリスは頭の皮を縁って餅巾着のようにし、そこらにあった木の枝に刺してぶら下げておいた。 「お゛ろ゛じでえ゛え゛え゛ぇぇえ゛!!あ゛り゛ずはどがい゛はな゛の゛に゛い゛い゛い゛ぃぃいい!!」 あ゛り゛ず=アリス、どがい゛は=とかいは=理解不能 ・・・どうでもいいや ゆっくりアリスに興味が失せたゆっくりフランは、プチゆっくりを乗せ、また目的の無いままわさわさと飛び始めた。 人里 ゆっくり達は人々の生活に浸透し、もはや当たり前のような存在になっている。 ゆっくりをつれて歩いている人。 道端で固まってしゃべっているゆっくり達。 店にちょっかいをかけ叩き潰されているゆっくり・・・ ゆっくりフランはよくお使いに来る店の前に降り立った。 「お、助手さん!今日もなんか買ってってくれんのかい?」 最近は顔も覚えられ、"ゆっくり"ではなく"助手さん"で通っている。 首を横に振るフランに、店主のおじさんは 「遊びに来てくれたのかい? 待ってな。今お菓子を・・・」 そこに聞こえてくる騒音と怒号。 「チッ・・・またかよ・・・!」 心底うんざりといった表情で騒音の方へ向かっていく店主のおじさん。 騒ぎの中心は魚屋だった。 1匹のゆっくりれみりゃが魚を片っ端から投げ捨てているのだ。 「う~♪これはくしゃいからぽーい♪ これもぽーい♪」 にこにこしながらさも当然といわんばかりに投げ捨てていく。 「う~♪いっぱいぽーいしたからおなかすいたどぅ~♪ぷでぃんもってきて~♪ぷっでぃ~ん♪」 ふらふらと意味不明な踊りを踊りながらとんでもない要求をするゆっくりゃ。 菓子屋の主人がものすごい青筋を浮かべながら、精一杯の愛想笑いでプリンを持ってくる。 「ほーら、プリンだよー。あっちで食べようねー」 しかし、れみりゃはそのプリンを弾き飛ばす。 「これじゃないの!しゃくやのぷでぃんたべうの!しゃくやのぷっでぃんもってきて~!!」 群衆の中の一人がとっさに機転を利かせて 「さ、咲夜さんのプリンなら村の外れまで咲夜さんが持ってきてくれてるよ!村の外れまで一緒に行こうか!」 しかし、 「や~!ここでたべうの!しゃくやのぷっでぃ~んもってきで~!!はやくしないとしゃくやにいいつけちゃうぞ~!!」 そこかしこからため息が聞こえる中、フランの肩に乗っているプチがおじさんに声をかける。 「ゆっ! なんでみんなみてるの!? おこらないとだめだよ! おさかなさんがゆっくりできないよ!」 「あいつは紅魔館で飼われてるやつなんだ。そんなことして紅魔館のやつらに告げ口されたら今度はこんなもんじゃすまなくなるんだよ・・・」 おじさんは諦め半分でいう。 しかし、その答えはプチゆっくりには納得のできないものだったらしい。 「ゆーっ!ひとのものをかってになげたらだめなんだよ!ひとにめいわくかけたらだめなんだよ!」 あろうことかゆっくりれみりゃ本人(?)に直接文句を言ったのである。 「う~?」 その大声にこっちを向くゆっくりれみりゃ。 しかし、肩の上のプチには気付かなかったらしく、それを乗せているフランに突っかかってきた。 「ぎゃお~!たーべちゃうぞ~♪」 いつもこれをすればみんなこうさんする。 これをしたじぶんはさいきょうなんだ! 絶対の自信を胸に、偉い自分に向かって大声を上げたやつをやっつけようとよたよた向かっていく。 一方、フランはこの騒ぎにはあまり関心が無く、そろそろどこかに移動しようかと思い始めていた。 しかし、自分に向かってくるゆっくりれみりゃをみてふと思い出す。 そういえば、にくまんは食べたことあるけど、生きてるゆっくりれみりゃは食べたことないな どんな味なんだろう。 おいしいかな。 まずいかな。 ・・・食べてみよっと 「ゆっくり死ね♪」 ゆっくりれみりゃが前に突き出していた腕を掴んで引き寄せ、そのまま露出の多い顔にかじりつく。 「うっぎゃーーーー!!!!い゛だい゛い゛い゛ぃーー!!ざぐやあ゛ぁーーー~!!」 あ・・・おいしい ふつうの肉まんよりずっとおいしい 「い゛ぎゃあ゛あ゛ぁぁぁ!!れ゛み゛り゛ゃはだべも゛の゛じゃな゛い゛い゛い゛ぃぃ!!!」 「ざぐや゛あ゛あ゛あ゛ぁぁ!!わ゛る゛い゛びどがい゛どぅう゛う゛う゛ぅぅ!!ざぐや゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁあ゛!!!」 「うぎゃあああぁぁぁ!!いだいいいいぃぃぃ!!うっぎゃああああーーー!!!」 生まれて初めての反撃と激痛に、混乱して泣き喚くしかないゆっくりれみりゃ。 一方、想像以上の美味に、夢中でそこかしこを齧っていくフラン。 弄って楽しむことも忘れている。 そしてちゃっかりご相伴に預かっているプチゆっくり。 「お、おい!だめだ!そんなことしたら・・・」 「も、もう遅いんじゃ・・・?こんなこと紅魔館に知れたら・・・」 「助手さんよ!なんて事してくれたんだあんた!」 「所詮こいつもゆっくりかよ!」 そう言いながらこっちに敵意を向けてくる群集。 しかし、フランだって今までの会話を全く理解していなかったわけではない。 ちゃんと考えての行動なのだ。 (前提)告げ口されたら駄目 齧ってそのまま帰す→告げ口される=駄目 全部食べつくす→告げ口できない=良し(結論) 「うー・・・ぜんぶ食べる」 自分の少ない語彙から、何とか自分の意思を伝えようとする。 「ゆ? そうだよ! ぜんぶたべちゃえばわからなくなるよ!しにんにくちなしだよ!」 なんとプチがフランの言いたいことを代弁してくれた。さすがは知能強化型! 「あ・・・そ、そうだよな・・・完全に殺しちまえば分かんねぇんだよな・・・」 「見なかったって事にしときゃいいんだもんな・・・」 「あ、あれ? ここにゆっくりゃなんているか?」 「そ、そういえばいねぇな。そんなん見た事もねぇ」 「そうだよな・・・いねぇんだから何やったっていいんだよな・・・」 日ごろの鬱憤が爆発し、さらに群集効果でみんなトランス状態に陥っている。 いったん堰が切れれば後はもう流れるままだった。 「うらああああぁあぁ!!何もいねええええ!!」 一人が、ゆっくりゃの再生しかかっていた顔を思い切り殴りつける。 「おらああああ!いねえもんに何やったってかまやしねえええぇ!!」 一人が、大きく跳び上がり、ゆっくりゃの右腹部からおしりあたりを踏み潰す。 「うりゃっ!うりゃっ!うりゃぁっ!日ごろの恨み、晴らさせてもらうぜえええぁぁ!!!」 一人が、何かの串をゆっくりゃの体中に突き刺していく。 「ぶぎゅあ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁぁぁあ゛あ゛!!いだいいだいいだい゛い゛い゛ぃぃぃ!!うっぎゃあ゛あ゛ぁぁぁーーーー!!!」 「ごべん゛な゛ざい゛い゛い゛い゛い゛ぃぃぃ!!ゆ゛る゛じでぐだざい゛い゛い゛い゛ぃぃい゛い゛!!」 「ざぐやーーーーー!!!ざぐぼふぁああああぁぁぁぁ!!あーーー!!あ゛ーーーーー!!!!」 日常で少しずつ溜まっていくストレスを、この場で一気に発散させる人々。 おそらく本人達も何をやっているのか自分自身で把握しきれていないだろう。 これが群集効果の恐ろしさである。 一方暴動の最初の方ではじき出された2匹。 人々の様子とゆっくりれみりゃの状態から、もうここにはいないほうがいいと判断する。 ちぎれて飛んできたゆっくりれみりゃの腕を齧りつつ、フランはまたあてどなくわさわさと飛び立った。 時刻は正午を少し過ぎていた。 帰路 日が強いので、そろそろ家に帰ろうかとわさわさ飛んでいると、とある畑にゆっくりが群がっているのが見えた。 「ここのひとはいつもおひるはいないんだよ!」 「ゆっくりできるよ!ゆっくりたべてね!」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせー!」 「むっちゃ♪ むっちゃ♪ おいちー♪」 どうやら家族連ればかりらしい。 子供達に、いい餌場を紹介しているところだろうか。 畑は・・・ 普通に掘れず、あたりに土を撒き散らす上に、少し食べてはほかの物に移るためものすごい惨状となっている。 「これはまんなかいがいはおいしくないからほかのをたべようね!」 「こっちはあきたからそっちのをたべるよ!」 もちろん、こんな都合のいい獲物をゆっくりフランが見逃すはずも無い。 赤ちゃんゆっくりは身がやわらかくていっとう美味しいのだから。 「ゆー?おねえさんはゆっくりできるひと?」 「ゆっくりできないならさっさとでていってね!ここはれいむたちのおしょくじばだよ!」 パニックに陥らないところを見ると、捕食種の存在を知らないらしい。 ゆっくり達の言葉など耳にも入れず、近くにいたちびゆっくりをつまみ上げる。 ・・・一回やってみたかった 「ゆー?」 いきなりつまみ上げられ、疑問の声を上げるちびゆっくり。 「ゆっ! おねーさんなにするの? れいむのあかちゃんをかえしてね!」 母ゆっくりは抗議の声を上げている。 つまんでいるちびゆっくりに牙で小さな穴を開け、そこから中身を吸い出していく。 「!! ゆ゛ぅーー・・・」 当然皮だけのぺらぺらになるちびゆっくり。 「れいむのあがぢゃんになにずるのおおおぉぉ!!」 ここで、皮だけになったちびゆっくりに息を吹き込んで元の大きさくらいまで膨らませ、皮を縁って潰して穴をふさぐ。 一見元通りになったちびゆっくり(の皮風船)を母ゆっくりの元へ戻してやる。 「ゆ? なんともないよ? おねーさんうたがってごめんね!」 ちょっとした違和感はあるものの、ちゃんと赤ちゃんが戻ってきたことに安心し、謝罪までしてくる母ゆっくり。 すでにフランは次のを摘み上げ、同じことをしているのだが、実害が無いと判断したゆっくり達はあまり反応しない。 「たかーい!おねえさんたか・・・ゆ゛ぅーー・・・」 ぷぅーっ・・・ 「キャッキャッ♪ おね・・・ゆ゛ぅー・・・」 ぷぅーっ・・・・・・・ 母れいむの子供、5匹全員を風船にして次へ向かうゆっくりフラン。 「ゆ。こっちのおやさいもおいしいよ!みんなたべてね!」 当然子供達からの反応は無い。 半笑いのような表情で、ただゆらゆらと転がっているだけである。 「ゆー? はやくこっちにきてね! ぜんぶたべちゃうよ!」 それでも反応しない子供達に業を煮やし、手近な子供の1匹にのしかかってみる母れいむ。 ぷしゅん 間の抜けた音を立ててぺらぺらになる自分のかわいい赤ちゃん。 「・・・・・・ゆ?」 あまりに理解不能な事態に反応もできず、とりあえずほかの赤ちゃんを起こそうとする母れいむ。 ぷしゅん ・・・ぷしゅん ・・・ぷしゅん ・・・ぷしゅん 「あ・・・ああああ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁあ゛あ゛ぁぁ!!!れ゛い゛む゛の゛あ゛がぢゃん゛があ゛あ゛あ゛ぁぁああ!!!!」 なんで!? ついさっきまで普通に飛び跳ねていたのに! ついさっきまで自分にかわいい笑顔を見せてくれていたのに!!! 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛ぁぁあ゛あ゛!!あ゛がぢゃん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!!」 自分の子供のむごたらしい死骸を前に、ただ泣き喚くしかない母れいむ。 友人のれいむの叫び声を聞きつけ、何事かともう1匹の母れいむと母まりさがそちらを向いた瞬間、フランは両方の子供達を両手に握りこんでいた。 そして先に後ろの気配に気付いて振り向いた母まりさの口に、れいむの子供達を1匹を残して全て放り込み、口が開かないように足で踏みつける。 「ん!?んーーーっ!!んーーーーっ!!!!」 続いて振り向いた母れいむの口にも同じようにまりさの子供達を放り込み、2匹の親ゆっくりが向かい合うように踏みつける。 「ゆー!くらくてせまいよ!ここからだちて!」 「くらいよー!こわいよー!」 「ゆー!ゆー!」 子供達の不安げな声を堪能した後、2匹の頭を上から強めに殴りつける。 「ゆっ!」ゴクッ、「ゆぐっ!」ごっくん、 反射的に口の中のものを飲み込んでしまう2匹の親。 程なくしてそれが何を意味するかを理解し、混乱に陥る2匹。 「ゆげええぇえぇっ!ま、まりざ!はやくれいむのあかちゃんはきだしてね!!」 「ゆぐうううぅぅっ!そっちこそ、はやくまりさのあかちゃんをはきだしてね!!」 何とかして相手の子供を吐き出そうとしながら、相手に吐き出させようととっ組み合う2匹。 その2匹を掴み、獣用の柵に向かい合うように突き通す。 「ゆぎゅうううぅぅうっ! いだいいいいいぃぃいぃい!!」 「ゆぎゃああああぁああぁっ!! やめでえええぇええぇ!!」 もだえ苦しむ2匹にさらに追い討ちをかけるように、残った子供1匹ずつを自分の子供が見えるように上から突き通す。 「ゆぐっ!」 「ゆぶっ!」 小さい体には太すぎる柵に貫かれ、親と違い即死するちびゆっくり2匹。 「あ・・・あああ゛ああ゛あ゛ぁぁぁあ゛あ゛ぁ!!」 「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あああ゛ぁぁあぁあぁ!!!」 自分の子供の死骸と、自分の子供を食べた相手を見せ付けられ、もう言葉を発することも無く、血走った目と口を限界まで開いて叫び続ける2匹。 以前食べた串団子を思い出し、野菜保管庫で震えていた中ゆっくり達をごぼうに刺して団子3姉妹を作っていくフラン。 「ゆ゛い゛い゛い゛ぃぃっ!!」「いあだあ゛ああ゛ぁぁっ!」「いだいい゛いい゛いぃぃ!!」「や゛め゛でええ゛ぇぇえ!!」「あっ・・・これはこれで・・・ッ!!」 それぞれの悲鳴を楽しみながら、全て地面に立て、1本だけ持って飛び上がる。 ふと肩が静かなのを疑問に思い目を向けると、なんとプチゆっくりはこの騒ぎの中でグースカと熟睡していた。 「ゅー・・!!」 「ゅぁー・・・!!」 「ゆぅー・・・!!」 畑から聞こえてくるかすかな叫び声に満足しながら、かなり大きめの串団子を手に、ゆっくりフランは家への道をわさわさと飛んで行った。 程なくして帰ってきた畑の持ち主であるおじさんは、畑が荒らされているのを見て、またゆっくりかと思い憤慨しながら畑に入り絶句した。 そこには、畑の真ん中で何か野菜くずのようなものを前に叫び続けているゆっくり1匹。 柵の方に顔を向ければ、柵に貫かれ向かい合って相手の方を見ながら叫び合っているゆっくり2匹。 野菜保管所の前には、何の儀式なのかゆっくりを3匹ずつ通したごぼうが規則的に並んでいて、ゆっくりたちが見事なハ-モニーを奏でていた。 「なんっ・・・だ・・!?・・・こりゃあ・・・」 わけが分からないままに、とりあえず加工所の職員を呼び、その奇妙かつ不気味なゆっくりたちを引き取ってもらう。 何がどうなってあんなことになったのか、おじさんはこのあと1週間ほど考え続けることになるのだった。 加工所の新製品は面白いものが多かった。 商品化されたら助手にも1度体験させてやりたいものだ。 ゆっくりの捕獲方法は、手持ちの知能向上実験の実験体で十分できる内容だったから、今度いくつか出して試してみよう。 そんなことを考えながら家に帰り着く。 「ただいま。」 リビングでは、うちの助手がなにやら美味そうに食べている。 テーブルの上では、どこから抜け出したのかプチゆっくりが1匹、あんこをなめている。 助手には研究所内のゆっくりは食べないように言ってあるが、ほかのゆっくりに自分の食べ物まで分けているという行動に少し驚く。 「今日はどこに行った?楽しかったか?」 ほぼ食べ終わったそれを舐めながらうなずく。 ・・・しかしなんだありゃ? 長めのごぼうにみえるが・・・ と、 「おねーさんはいいひとだよ!ひとだすけもしたんだよ!」 プチゆっくりがいきなり喋り出した。 何だ、こいつも一緒に行ったのか・・・ん? それはどういう状況だ? こいつが自主的にゆっくりをお供に連れて行く姿なんぞ想像もできんが・・・ 「そ・・・そうか。それはいいことをしたな。偉いぞ」 とにかく人助けをしたことを褒めておく。 何をしたかは後でゆっくり聞かせてもらいたいものだが。 「んー・・・ゆ。」 舐め終わったものをこっちに差し出す助手。 ああ、やっぱりごぼうだ・・・人助けとやらのお礼にでももらったのか? これにゆっくりを突き刺して食べていたのか・・・何で? 「あ・・・ああ、ありがとうな」 何をしていたか全く分からないが、とりあえず礼を言ってごぼうをしまう。 まぁ洗えば食えないことも無いだろう。 さて・・・ 「俺は少し疲れたから部屋に戻る。見回りをしておいてくれ。」 そういって自室に戻る。 しかしやはり自由な時間は楽しかったのだろう、とても充足した顔をしていた。 定期的に何かで発散させてやれば、作業効率も上がるかも知れんな・・・ しかしどうやって暴れさせれば・・・・・・あ。 俺はゴミ箱から"Y-1グランプリ"の出場依頼を探し出し、内容を読む。 うん、これならかなり発散できるんじゃないか? まぁ死にそうになったら退場覚悟で引き摺り下ろせばいいんだしな。 俺は"出場"の項目に丸をつけ、送信物専用箱に入れてから研究冊子をつけ始めた。 終わり 自重できませんでしたOTL 最初はゆっくりの視点&心情でゆっくりを虐待していくという話だったんですが、難しいですね。1回寝てから書き直し始めたらストーリーも設定もひん曲がりました 前作の感想をくれた方、ありがとうございました。 少し前に議論されていたようですが、個人的には批評批判はためになるのでどんどん書いてほしい方です。 またいろいろな人の設定を無断拝借しました。 申し訳ありません 精神的な虐待や、ゆっくりの心情がよく出ている作品を書いてる人をとても尊敬していて、自分もいつかこういうのを書きたいなぁと思っています。 次に自重できない虫が湧いたら、精神的虐待か↑のゆっくりフランの調教などを書こうかなぁと・・・やっぱり自重します このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/758.html
ティガれみりゃ ======================== ≪はじめに≫ 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。 ややパロディネタが多めかもしれません。 自分設定有りです。 虐め……というのとは少し違うかもしれません。 続きものです。 以上、何卒ご理解・ご容赦ください。 ======================== 1、絶対強者 「うーうー!」 小高い山を越え、うーぱっくの群れが空を飛ぶ。 その数は30を越え、それぞれ背中にゆっくり達を載せている。 自慢のダンボールは、パンパンに膨れあがっており、 うーぱっくは、汗らしきものを浮かべて、「うぅーうぅー」と肩(?)で息をしている。 ダンボールの中には、人間達から盗んだ大量の野菜や、お菓子がつめられていた。 「ゆゆっ! しかっりしてよね、うーぱっく!」 「そうだぜ! はやくしないと、まりさ達がドスに怒られちゃうんだぜ!」 自分達は何もせず、うーぱっくに注文を出す、ゆっくりれいむとゆっくりまりさ。 人間から盗みを働いた首謀者達だ。 「う~っ!」 力を振り絞り、岩山を越えていくうーぱっく。 すると、岩山の向こうには、直径500mほどの窪地が広がり、 無数のゆっくり達が、ゆっくりしていた。 「う~♪」 すごい! うーぱっく達は感心した。 これだけの数のゆっくりが、ゆっくりできる場所は、そうそう無い。 岩山の中の窪地は、緑こそ少ないものの、 適度に草花がはえ、岩の隙間からは清水が湧き出ている。 また、岩と岩の間には無数の洞窟があり、そこに入れば雨風も防げそうだ。 なにより、山間のこの窪地は、教えて貰わなければちょっと発見できそうにない。 他の捕食種とよばれるゆっくりや、野生の動物からも容易に身を隠せるだろう。 「うっうー♪」 れいむを背中に乗せ、先頭を飛ぶうーぱっくが、 後ろを飛ぶうーぱっく達にかけ声を飛ばす。 目的地が見え、「うーっ♪」と応えてテンションを上げる、うーぱっく達 これだけの群れに、これだけの量の食料を運ぶのは、 うーぱっく達にとっても初めてのことだった。 "頼まれ物を運んで、お礼をもらう" この習性を、自分達にしかできない大事な仕事だと考えるうーぱっく達にとって、 今回の依頼は、大変きわまりなかいものだが、それでも充実感を覚えていた。 「ゆっ! ドスまりさだ!」 嬉しそうに叫ぶれいむ。 うーぱっくが下を見ると、巨大なゆっくりまりさと、 その傍らにベッタリよりそっている、これまた巨大なゆっくりアリスがいた。 まりさは全長3メートルほど、 アリスもまりさほどではないが、ゆっくりとしては破格の2メートル級の体を持っていた。 俗に言う、"ドス種"。 ドスまりさと、クィーンアリスだ。 「おいっ、うーぱっく! ぐずぐずしないで早く下りるんだぜ!」 ドスまりさの所へ下りるよう催促する、まりさ。 余談だが、このまりさはまりさ種の中でも、タチが悪いとされている"ダゼまりさ"だった。 しかし、心優しいうーぱっく達は、まりさの横柄を気にとめず、 ドスまりさの前に、ゆっくりと着陸する。 『ゆゆっ! おかえり~! 食べ物は集まったの?』 巨大なドスまりさが口を開く。 「もちろんだよ、ドスまりさ!」 「そうだぜ! まりさ達の華麗な仕事っぷりを見せてやりたかったぜ!」 うーぱっくの背中からピョンと飛び降り、ドスの前で胸(?)を張る、れいむとまりさ。 実際、いちばん苦労したのはうーぱっく達なのだが、 このれいむ達にとって、そんなことは関係無い。 「もう! なにしてるの、うーぱっく! はやくれいむ達のご飯を、ドスに見せてね」 「うー!」 うーぱっく達は、ガサゴソとダンボールの蓋を開き、 中に押し込められていた大量の食べ物を地面に下ろしていく。 『ゆぅ~っ! すごぉ~い!』 『それでこそ、とかいはのアリスとまりさの子供達よ!』 感嘆の声を上げるドスまりさと、クィーンアリス。 ちなみに、れいむもまりさもクィーンアリスの子供ではないのだが、 どうやらアリスの中では、愛しのドスまりさとの間にできた子供…という設定が完成しているらしい。 勝手な思いこみに違いなかったが、ドスまりさ自身、クィーンアリスには好意を持っていたし、 他のゆっくり達にとっても、強大なクィーンアリスに愛されることは、損ではなかった。 「さっそくみんなで食べようよ、ドスまりさ!」 れいむがピョンピョン跳ねて、ドスまりさを急かす。 そこに、体付きのゆっくりぱちゅりーが現れ、ワガママなれいむを戒めた。 「むきゅ! だめよれいむ。これは冬を越えるための大事な食料なんだから」 このぱちゅりーと、ドスまりさ、クィーンアリスは、子供の頃からの付き合いで、 3人で協力してこの場所をみつけ、この一大ゆっくりコロニーを築きあげたのだった。 ぱちゅりーは体が弱く、ドスまりさやクィーンアリスのように力は無かったが、 そのぶん知恵がまわり、この群れの参謀役を務めていた。 「ったく、ぱちゅりーはいつもケチケチだぜ!」 悪態をつく、まりさ。 『まぁまぁ、れいむやまりさも疲れているだろうし、一口だけ食べようよ? それで残りは冬支度に回す……ぱちゅりーもそれでいいよね?』 「……むきゅー。ドスまりさがそう言うなら」 「わーい! だからドスまりさ大好きぃー!」 喜ぶ、れいむとまりさ。 「なになに~ごちそう?」 「わかるよー。みんなで食べるよぉー」 「ちぃーんぽ!」 すると、いつの間にかこの窪地に住む他のゆっくり達も集まりだしていた。 皆、この御馳走のご相伴にあずかろうという腹づもりだ。 「むきゅ!そんなに食べたら……」 『も~しょうがないなぁ。みんな一口だけだよ?』 止めようとするぱちゅりーを遮り、 群れのリーダーであるドスまりさが、許可を出してしまう。 「「「「いっただきまぁ~す!」」」」 言うや否や、何十匹ものゆっくりが、いっせいに食べ物にむしゃぶりつく。 「むーしゃむーしゃ♪」 「なにこれ、めっちゃうめぇ!」 「しあわせぇ~♪」 ゆっくり達は、人間達から盗んできた御馳走を貪り食っていく。 既に"一口だけ"の約束が忘れ去られてしまっていることに、気を揉むぱちゅりー。 そして、気を揉む存在がこちらにも。 「「「うーうー!」」」 うーぱっく達だ。 食事に夢中なゆっくり達を囲み、催促するように鳴き声をあげる。 うーぱっく達は、頼まれた物を頼まれた場所に届け、 その御礼として食べ物を分けて貰うことで生態を成り立たせている。 これだけの量の食べ物を運んだのだから、相応の御礼を貰わなければつりあわない。 「ゆっ?」 「なんだぜ、うーぱっく! せっかくまりさ達が御馳走を食べてるのに!」 面倒くさそうに食べるを止め、小うるさそうにうーぱっく達を見る、れいむとまりさ。 「うーっ!うーっ!」 うーぱっくは、羽をパタパタと動かし、ゆっくり達が食べる御馳走を指差す。 うーぱっく達にもわけて~というアピールだ。 だが、そんなうーぱっく達に対し、れいむとまりさはバカにしたように目を細める 「見ろよれいむ、たかだか運び屋のぶんざいで、まりさ達の御馳走をねだってやがるぜ」 「おお、あさましいあさましい」 そう言うと、れいむとまりさは人間の家から盗みだしたお菓子をくわえ、 うーぱっく達の目の前で「むーしゃむーしゃ」と食べ始めた。 「「「うー!?」」」 驚くうーぱっく達。 目こそいつものニコニコ目だが、互いの顔を見合わせ少なからず動揺を露わにする。 そして、ゆっくりの中では、かなり頭の良い部類に入るうーぱっく達は、一つの結論を導き出す。 すなわち、このゆっくり達は、最初から自分達をいいように利用して騙すつもりだったのだと。 「「「うーっ!」」」 一同、抗議の声を上げるうーぱっく達。 温厚なうーぱっく達だが、契約不履行の不届き者には、相応の態度を見せる。 羽を動かし、ペチペチとれいむとまりさの頬を叩き、驚いた隙に食べ物を奪い去る。 「ゆゆっ! なにするの!」 「やめるんだぜ! それはまりさ達のものだぜ!」 「「「うーうー!」」」 構わず、同じようにペチペチとゆっくり達の頬を叩いては、食べ物を奪っていくうーぱっく。 ニコニコと笑ったままのその顔が、逆に恐ろしい。 「ゆっくりやめてね!」 「それはとかいはのアリスのものよ! いなかもの!」 「わからないよー!」 「ゆっくりできないうーぱっくは、ゆっくりいなくなってね!」 うーぱっく達の正当な抗議に、不満を叫び出すゆっくり達。 だが、空を飛び、しかも団体行動になれているうーぱっく達の連携に、 食べ物は次々奪われていく。 「「「ゆぅぅ~~! ドスまりさぁ~~!!」」」 たまらずドスまりさを呼ぶ、ゆっくり達。 そのドスまりさといえば、クィーンアリスとともに自分の食事をするのに夢中であった。 『……ゆぅ~~~? どうしたのみんなぁ?』 言われるまで気づかないというのが、いかにもゆっくりらしい。 ドスまりさは、しばらく間を置いてから、ようやくゆっくり達に呼ばれていることに気が付いた。 『ゆゆぅぅぅっ! なにしてるのうーぱっく!!』 その光景を見て、驚くドスまりさ。 自分の群れのゆっくり達が、うーぱっくに虐められ、 苦労して集めた御馳走を横取りされているではないか! ……と、ドスまりさのゆっくり脳は瞬時に都合良く解釈した。 しかし、いかなゆっくり脳の持ち主とはいえ、 くさっても巨体と長寿を誇るドスまりさ。 こうなると群れを率いるリーダーとして、都合良く燃え出すのであった。 『ゆぅぅぅっっ!』 「う~?……うぎゃ!」 ドスまりさは、ぐにょんと体を下に押し込めたかと思うと、反動をつけて前方にとび跳ねる。 そして、目の前にいたうーぱっくに体当たりをしかけ、窪地の周囲の岩壁に叩きつけた。 「「うーっ!?」」 驚いたのは、うーぱっく達。 通常、ドスまりさは巨体に見合った経験と知識も併せ持っており、 今回の件の非がどちらにあるかは、自ずとわかってもらえると期待していたのだ。 『うーぱっく! まりさの仲間を一方的にいじめるなんて、絶対にゆるさないよ!』 「「ううーーー!??」」 全然、期待通りにはいかなかった。 戸惑い、慌てるうーぱっく達。 「むきゅ! まりさ、うーぱっく達は……」 『ぱちゅりーは黙っていてね! まりさはみんなを守るよ!』 うーぱっく達の抗議の理由を知るぱちゅりーが、ドスまりさを止めようとするが、 変な使命感のスイッチが入ってしまったドスまりさは止まらない。 このドスまりさは、確かに長い時間を生き、ドスの名にふさわしい巨体と力を得ていた。 だが、本来一人で生きて得るはずの知識や思慮を幼なじみのぱちゅりーの頼りっぱなしにしてきたため、 どうにも考えの足りないドスまりさになってしまっていた。 「「うーっ!」」 だが、うーぱっく達は、そんなことは知らない。 羽を動かし、自分達が運んできた食料を指す、うーぱっく。 なんとか自分達の誤解をといて、わかってもらおうとする。 『……わかったよ、うーぱっく』 「「うー♪」」 『うーぱっく達は、まりさ達を騙して食べ物を横取りするつもりだったんだね!』 「「うううーっ!???」」 全然わかってなぁーい! うーぱっく達は、全員が同時に心の中でツッコミの声をあげる。 『まりさ達をゆっくりさせないうーぱっくは、ゆっぐりじねぇぇぇぇぇっっ!』 ドスまりは天高く舞い上がり、その巨体を地面に叩きつける。 何匹かのうーぱっくが、その巨体の犠牲となる。 「「ううーっ!」」 これ以上ここにいてはいけない! うーぱっく達は身の危険を感じ、一目散に空高くへ舞い上がる。 「「うわぁぁーん! ドスまりさなんてきらいぃぃー!」」 自分達の誇り高い仕事が失敗に終わったこと、 つらい時も楽しい時も一緒だった、大事な仲間を失ったこと、 うーぱっく達は、目から涙を流して飛び去っていく。 だが。 『逃がさないよ!うーぱっく!……ひぃぃ~~~~っさつ!』 ドスまりさは、大きな口を思い切り開く。 すると口の中から淡い光がもれはじめ、瞬く間にまぶしい程の輝きを放ち始める。 「ゆゆっ!出るよ、ドスまりさの必殺技!」 「やっちゃうんだぜドスまりさ! バカなうーぱっくどもに身の程わからせてやるんだぜ!」 『すてきよぉぉまりさぁぁぁ!』 「む、むきゅう~!だ、だめよぉ、まりさぁ!」 事情を理解しているぱちゅりーを除いて、俄然もりあがるゆっくり達。 クィーンアリスに至っては、ドスまりさの勇姿に目をトロ~ンとさせている。 『ひっさつ!ドスパァァァーク!!』 「う、ううぅぅぅぅぅーーーっ!」 叫ぶと同時にドスまりさの口からレーザーが発射される。 そのレーザーは空を切り裂き、泣きながら逃げ去るうーぱっく達を直撃した。 超高温のレーザーは、ダンボールでできたうーぱっくの体を一瞬で焼き尽くし、 そらからは燃えかすとなったうーぱっく達がボトボトと地面に落ちていく。 「「「ゆぅぅぅ! すごぉぉぉーい!」」」 その圧倒的な威力に、群れ全体から感嘆の声があがる。 ドスまりさは群れのゆっくり達にむき直り、誇らしげに胸(?)をはった。 『みんなのことはまりさが守るよ! だから安心してゆっくりしてね!』 「「「ゆっくりぃぃ~~~♪」」」 喜びの声をあげるゆっくり達。 ただ一人、ぱちゅりーだけが浮かない顔して、岩の隙間の洞窟へと入っていく。 「むきゅう……」 今回の件の非は、あきらかにこちらにある。 なにか悪いことが起きなければよいけれど……。 その不安からか、ぱちゅりーは体に疲れを覚え、洞窟の奥で眠りについた。 けれど、このぱちゅりーの予感は、すぐに当たることになってしまう。 数時間後。 空には満月が登り、本来ならばゆっくり達も眠りにつく頃。 だが、山間の窪地では、いまなお多くのゆっくり達が食べや歌えやで大騒ぎをしている。 「ゆっゆっゆっ~~♪」 「だぜだぜだぜぇ~~♪」 『すごぉーい! みんなお歌が上手だねぇ!』 『さすがとかいはのアリスの子! 良いセンスをしてるわぁ!』 昼間の一件で、すっかりテンションの上がってしまったドスまりさの群れは、 あれからずぅ~と宴会を開いていた。 もはや、ぱちゅりーとの"冬の支度のために食べ物をとっておく"という約束は、頭の中になかった。 ゆっくり食べてはゆっくり踊り、ゆっくり食べてはゆっくり歌う。 「ゆゆゆ~~ゆゆゆ~~♪」 「だぜだぜ~~だぜだぜ~~♪」 「……ティ~ガティガティガ♪」 『ゆっ?』 ドスまりさは疑問に思った。 今、群れのれいむ達の歌に混じって、何か聞こえたような? 「ゆゆゆゆ~ゆゆゆゆ~ゆっゆっゆっ~~~♪」 「だぜぜ~だぜぜ~だっぜっぜぇ~~~♪」 「……ティ~ガティガティガ♪」 『ゆゆっ!?』 「「「ゆゆゆっ!?」」」 やはりだ。 気のせいじゃない。 今度はドスまりさだけじゃなく、他のゆっくり達にも聞こえたようだ。 ゆっくり達は、ひとまずバカさわぎを止め、あたりを見回す。 だが、本来夜の間は寝るのが"殆どの"ゆっくり達の生態のため、 ゆっくりの中で夜目が効く者はほとんどいない。 が、それにも関わらず。 ソレの存在はゆっくり達にもハッキリ視認できた。 『あれは、ゆっくりゃザウルス!!』 一番最初にみつけたクィーンアリスが叫び、それに呼応して他のゆっくり達もそちらを見る。 ゆっくり達の視線の先。数百メートルは離れた位置。 そこには、よたよたドタドタ踊るようにステップを踏み、ゆっくり達に近づいてくる不思議な生物がいた。 長生きをしていたクィーンアリスと、ドスまりさは、己の経験に基づきその生物をこう認定した。 あれは、ゆっくりゃザウルスだと。 ゆっくりゃザウルス。 それは、代表的な捕食種・ゆっくりれみりゃの亜種である。 亜種という意味では、昼間ドスパークの餌食になったうーぱっく達もそうだが、 近年比較的多く見かけるようになったうーぱっく達と異なり、 ゆっくりゃザウルスは、非常に見かけるのが希な亜種……即ち希少種であった。 その姿は、人間からみれば愛らしくも映る。 体つきのゆっくりれみりゃが、ダボダボくたくたの恐竜の着ぐるみを纏ったような姿。 それが、ゆっくりゃザウルスの特徴だった。 ずいぶんとディフォルメされた緑色の恐竜の、大きく開かれた口から、 れみりゃ種特有の「うーうー♪」という下ぶくれ気味の笑顔が覗いている。 体は筋肉質とは程遠く、まるでクッションかヌイグルミのような柔らかさで、 お腹のあたりに、有袋類…といえば聞こえが良いが、どう見ても縫いつけたような大きなポケットがある。 「ゆゆゆゆ~!大変だよ!れみりゃだよ!」 あれが、自分達を食べる捕食種の一種だと知り、慌てるれいむ。 「ま、まりさはおいしくないぜ! たべるなられいむの方がおいしいんだぜ!」 「どぉじでぞんなごどいうのぉぉぉーーっ!?」 にわかに群れに広がるパニック。 だが、ドスまりさがそれを鎮める。 『大丈夫! 安心してよみんな!』 「ゆゆっ?」 「わかるよ~! こっちにはドスまりさがいるんだよ~!」 『まりさとアリスにとって、ゆっくりゃザウルスなんて敵じゃないよ!』 そう言って笑顔を向けるドスまりさ。 「なんて頼もしいんだ!」群れのゆっくり達は、ドスの笑顔に安心して落ち着きを取り戻す。 『まりさとアリスは、もっと小さき時に……それこそみんなと同じくらいの時に、 ゆっくりゃザウルスを倒したことがあるんだよ♪』 「「「すっごぉ~~~い!」」」 再びあがる感嘆の声。 それを誇らしげに受け止めるドスまりさ。 ドスまりさの言ったことは確かに事実であった。 ……もっとも、ゆっくりゃザウルスのことを良く知るものが聞けば、 それが大した自慢にならないこともわかるのだが。 ゆっくりゃザウルスは、確かに希少種だ。 だが、希少なのには理由がある。 すなわち、ゆっくりゃザウルスは、れみりゃ種の中でも"最も弱い"種類だからだ。 亜種の多い、ゆっくりれみりゃだが、一応それぞれに進化と思われる特徴を持っている。 体が無く、耳のあたりに羽をつけているタイプは、れみりゃ種の中でも最もバランスが良い。 飛行能力も高く、蝙蝠やイルカにも似たエコーロケーション能力を持っており、 暗い場所でも自由自在に動くことができる。 うーぱっくは、敏捷性や攻撃能力では上記のれみりゃに劣るものの、 そのぶん他の物(者)を上に載せて飛ぶ能力にすぐれている。 また、協調性に優れ、ゆっくり達の運送屋さんとしての地位を確立することで、 自然界の中で主立った敵を作らず、共生関係を築き上げていた。 胴体と四肢のついたれみりゃは、紅魔館のすぐそばでよく見かけられる。 重たい体がついたのが逆効果となり、飛行能力・運動能力は明らかに低くなっているが、 それでも(極めて不器用ではあるが)手足が使えるメリットは大きいし、 なにより紅魔館の主の姿と似ているために、館のメイド達から寵愛を受けられるという面もある。 ……では、ゆっくりゃザウルスはどうか? 悲しいかな、これといって優れた点が無いのだ。 背中から羽は失われ、空を飛ぶことはできない。 手足や指先は恐竜のヌイグルミ状になっているため、細かい作業も全くできない。 ずんぐりむっくりした体は重たく、生きる上で極めて燃費効率が悪く、すぐ疲れてしまう。 おまけに、なまじ体が重くなったぶん、本人は強くなったと勘違いし、無駄に気が大きくなる傾向がある。 では、なぜそんなにも不都合だらけのゆっくりゃザウルスへと姿を変える必要があるのか。 それは、ゆっくりの研究者達の間でもまだ解明されていない。 いずれにせよ、そんなゆっくりゃザウルスであるが故に、 本来獲物であるはずのゆっくり達に、逆に返り討ちにあってしまうこともままあるのだ。 まして、ドスまりさとクィーンアリスからみれば、 逆に向こうから美味しい肉まんがやって来たようなものだ。 「ティ~ガティガティガ♪」 歌いながら、えっちらおっちら満面の笑顔で歩いていくるゆっくりゃザウルス。 その声が、徐々にはっきり聞こえてくる。 『ゆぅ~♪ みんな、今日はおいしい肉まんがたべられるよ♪』 「「「わぁ~~い♪」」」 余裕のゆっくり達。 しかし、その余裕がゆっくり達に、本来気付くべき疑念を忘れさせてしまっていた。 なぜ、数100メートルも先のゆっくりゃザウルスを、夜目の効かないゆっくり達が見えているか。 なぜ、まだまだ遠くにいるはずのゆっくりゃザウルスの歌が、こんなにもハッキリ聞こえるのか。 そして、なぜゆっくりゃザウルスが近づいてくるたびに、地面がドシンドシンと揺れるのか。 数秒後、ゆっくり達は嫌がおうにも、その理由をわからされることになる。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』 「「「『ゆげぇっ! お、おおきぃぃぃぃっっっ!!??』」」」 目の前まで来て足を止めたソレを見上げ、一同に驚愕の叫びをあげるゆっくり達。 ドスまりさとクィーンアリスさえ、呆気にとられてソレを見上げている。 身長はゆうに10メートルを越え、尻尾の部分をあわせた全長は20メートルにも届かんほどだ。 『ティガ☆れみ☆りゃ☆う~~~♪』 ソレは、自らがれみりゃ種であることを示すように、自らの存在を知らしめるように、 両手を顔の横に上げ、れみりゃ種特有の"れみりゃダンス"を行った。 「「「ゆゆゆゆっ!」」」 ソレがダンスのステップを踏む度、地響きが起こり、小さなゆっくり達を震えさせる。 『や、やめてよね!ゆっくりゃザウルスのくせに、まりさ達をおどかさないでね!』 ぷく~と頬を膨らませ、見上げるソイツに告げるまりさ。 一方、そのれみりゃは不思議そうに、首をひねった。 『う~? ゆっくりゃザウルス?』 『そうだよ! おまえのことだよ! 自分のこともわからないなんて、ゆっくりゃザウルスは本当にバカなんだね!』 『うーうー! れみりゃはぁー、ゆっくりゃザウルスじゃないどぉー♪』 『え?』 『れみりゃはぁ~♪』 にぱぁ~☆と満面の笑顔を浮かぶ。 『ティガれみりゃだどぉー♪』 そう、この巨大なれみりゃは、ゆっくりゃザウルスではなかった。 圧倒的な巨体と力を持つ、ドス種を越える超巨大・突然変異ゆっくり、ティガれみりゃだったのだ! 『……ティ、ティガれみりゃだなんて知らないよ! バカなれみりゃはおとなしくまりさ達に食べられてね!』 巨体にプレッシャーを感じつつ、あくまで虚勢を張るドスまりさ。 他のゆっくり達も、ドスまりさなら負けるハズないと、徐々に落ち着きを取り戻していく。 「そうだよ! ばかなれみりゃはゆっくり死んでね!」 「ドスが、おまえなんかに負けるわけないんだぜ!」 ゆっくり達が、わーわーと騒ぎ立てる。 それ見回してニコニコするティガれみりゃ。 『うー♪ おいしそうなおまんじゅうがいっぱいだどぉー♪』 そう言うと、ティガれみりゃはクィーンアリスを片手で掴み上げ、口の前へと運ぶ。 『ゆぅ!?』 「クィーンアリスが!」 「おとなしくアリスを離すんだぜ!」 あっさりつかまってしまった群れのナンバー2に、ざわめくドスまりさとゆっくり達。 当のクィーンアリスは、頬を膨らませて、ティガれみりゃを罵っている。 『これだからマナーを知らないいなかものは! とかいはのアリスにこんなことしてただですむと思わないでね!』 そんなアリスをじぃ~っと見つめて観察するティガれみりゃ。 『うぅ~♪ よくみるとぶさいくなおまんじゅうだどぉ』 『ゆぎぎぎぃぃぃぃぃっ! とかいはのアリスに向かってよくもぉぉぉっ!』 逆上するクィーンアリス。 対するティガれみりゃは…… 『うー♪ うるさいおまんじゅうだどぉ♪』 と言ってから、そのまま「あ~~ん」と大口を開け、クィーンアリスにかぶりついた。 『ゆげぇぇぇぇぇえ!』 『あ、アリスゥゥゥッッッ!!』 たまらず断末魔を上げるクィーンアリスと、ドスまりさ。 クィーンアリスの体はたった一口で半分がえぐりとられ、その生命活動を停止させた。 『う~♪ がじがじ~♪』 そのまま美味しそうにクィーンアリスの残骸を食べ続けるティガれみりゃ。 2メートルあった、クィーンアリスの体も、数秒で消滅してしまった。 『うっうー♪ おいしかったどぉー♪』 舌をペロリと回し、口の周りについたクリームを舐めとるティガれみりゃ。 その光景を見ていたドスまりさの怒りは、既に限界を遙かに超えていた。 『ゆぎぎぎぎぎぎぎ……ゆ、ゆるさないっ、ぜぇったいにゆるさないぃぃぃぃっ!!!!!』 『う~?』 『ゆっぐりじないでじねぇぇぇぇぇぇ!!!!!』 「で、でるぜ! ドスの必殺技!」 『ドスパァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーク!!!!!!!』 ドスまりさは口を開け、高温のレーザーを放つ。 怒りにまかせて全ての力を結集したそれは、昼間うーぱっくを仕留めたのとは比較にならない程の出力となる。 夜の闇を、貫くドスパークの光。 これを受けて無事なゆっくりなどいるはずがない。 いや、人間はおろか妖精や妖怪とてただでは済むまい。 『……うぅぅぅぅぅ! アリスぅぅぅぅ、かたきはとったよぉぉぉぉぉ!』 嗚咽混じりで天に吠えるドスまりさ。 誰よりキレイだったクィーンアリス、彼女はお空のお星様になってしまったんだ。 ドスまりさとゆっくり達はそう思い、ドスパークの衝撃で巻き起こった土煙の先、 クィーンアリスのお星様を見ようと、夜空を見上げようとする。が。 『う~? なんかあったかいどぉ~…なんだか汗かいちゃったどぉ~♪』 「「「『ゆ、ゆげぇぇ!?』」」」 見えるハズのお星様が見えず、 見上げた先には、変わらずティガれみりゃが立っていた。 その体には傷一つなく、下ぶくれの笑顔に少し汗をかいているだけだった。 『どぉじでぇぇ! なんでドスパークがぎがないのぉぉぉぉぉっ!!??』 『う~、汗かいたら、またおなかすいちゃったどぉ~♪』 ティガれみりゃは、おなかのあたりをおさえ、少し頬を紅潮させた。 "こーまかんのれでぃーである"という自負からなのか、 食べてすぐ、またおなかをすかせることが恥ずかしいようだ。 とはいえ、そこはゆっくり。 恥じらいよりも、まずは欲求に従う。 そこはティガれみりゃといえど、変わらなかった。 『ぎゃぉー♪ いっただきまぁーす♪』 『ゆべぇ!!?? 、は、はなじてぇぇぇぇ!!!』 「「「どどどど、ドス!?」」」 足下ではねまわるドスまりさを難なく掴み上げると、口の前に運ぶティガれみりゃ。 『がじ、がじ、がじぃ~♪』 『ゆべっ!うげぇ!ゆぶぁ!!』 みるみるドスまりさの体は小さくなっていき、 10秒もたたずに、全てティガれみりゃの口の中に消えていった。 『う~、おいしぃ~♪』 「「「…………」」」 あまりにも信じられないことが起きた時、人は一切の思考が働かなくなる。 それは、ゆっくり達にもあてはまるらしい。 なすすべ無く食べられるドスまりさを目の当たりにした無数のゆっくり達は、 ただ無言のまま固まってしまっていた。 一方、ティガれみりゃはというと、お腹についたポケットの中に手をつっこみ、 何かをゴソゴソと取り出した。 『うっう~! すぴあ☆ざ☆ぐんぐにる~♪』 まるで、22世紀の猫型ロボットが便利道具を取り出すように、 ティガれみりゃはポケットから、引き抜かれた立ち枯れの木を取り出し、天に掲げた。 「「「ゆゆゆゆ!?」」」 誇らしげなティガれみりゃの様子に、本能的に身の危険を感じるゆっくり達。 金縛りをといて、それぞれ四方八方に逃げだそうとする。 『ぎゃおー♪ たーべちゃうぞぉー♪』 「「「ゆ、ゆぎゃぁぁぁぁっっっ!」」」 ゆっくりプレイスだったハズの山間の窪地は、あっという間に阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。 『れみりゃのおだんごぉー♪ とぉーってもおいしぃーどぉー♪』 ティガれみりゃは口ずさみながら、比較的大きめのゆっくりを摘むと、それを次々枯れ木に刺していく。 「「「ゆげぇ」」」 鳴りやまないゆっくり達の悲鳴。 あるゆっくりは岩陰や洞窟に逃げ込もうとするが、 ティガれみりゃは「うー、岩いらなーい!ぽいぽいぽぉーーい♪」と、 岩そのものを持ち上げどけて、隠れていたゆっくり達をつまみだした。 『うー、すごいどぉー! れみりゃは狩りの天才だどぉー♪』 やがて、そこそこ育って美味しそうなゆっくりを全て枯れ木に刺して、 ゆっくりだんごを完成させたれみりゃは、満足そうに自分を讃えた。 自分達は助かったのか? そう思った残りのゆっくり達は、おそるおそる隠れていた場所から外へでる。 『う~~~う~~~♪』 しかし、ティガれみりゃがリズムを刻みだしたのを見て、ゆっくり達は己の軽率さを憎み、 そして、短いゆっくり人生の終わりを実感するのだった。 『うっうーうぁうぁー♪ うっうーうぁうぁー♪』 どっすんどっすんと、喜びのダンスを踊るティガれみりゃ。 なんとかゆっくりだんごを逃れたゆっくり達も、あるものは踊るティガれみりゃの足や尻尾に潰され、 あるものは、ティガれみりゃのステップの影響で岩や土が崩落し、その餌食となった。 ゆっくり達の理想郷は、こうして壊滅した。 ……そう、一人の目撃者を除いて。 翌日。 ティガれみりゃの襲来をやりすごした目撃者。 その生き残りは、ティガれみりゃへの恐怖と、震えたまま動けなかった自分を呪い、 洞窟の奥から出ることが出来ずにいた。 「む、むきゅぅぅぅ……」 その生き残りの正体は、洞窟の最奥、もっとも地盤の安定した箇所に隠れていたぱちゅりーだった。 群れの全滅を嘆き、幼なじみのドスまりさとクィーンアリスの死を悲しみ、泣き続けるぱちゅりー。 昨夜、先に寝ていたぱちゅりーは、外が騒がしいのに気付き、一度は目を覚ました。 だが、外へ出ようとしたその刹那、ドスまりさがティガれみりゃに食べられるのを目撃してしまったのだ。 どうするべきか全くわからなくなってしまったぱちゅりーは、唯一残された生物としての本能、 すなわち"生き残る"という目的にのみ従って、こうして群れが全滅してティガれみりゃが去るまでの間、 隠れ続けていたのだ。 「むきゅぅぅぅぅ! むきゅうううううう!」 思い出しては、こみ上げる感情に逆らえず泣き崩れるぱちゅりー。 それから、また一日がすぎた。 朝日が山間の窪地を照らす中、ぱちゅりーは外へ出た。 その目に決意の炎を宿して。 二日近く考え抜いたぱちゅりー。 彼女は、ドスまりさ達の死を無駄にしてはいけないと考えた。 そして、生き残った自分だからこそ出来ることがあるはずだと結論づけた。 そう、他の群れにティガれみりゃという脅威を報せ、 ともに戦わなければならないと。 一方その頃、どこかの森で。 今日もティガれみりゃの歌が聞こえていた。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~♪』 to be continued 次回予告 『ティガれみりゃ2・異常震域』 ============================ (あとがき) 休日出社中、上司の机に『モンハン』のティガレックスのフィギュアが置いてありまして、 気付いたらこんなものを書き始めていました。……二次設定のSS書くの何年ぶりだろう(汗 「ゆっくり好き」+「れみりゃ好き」+「怪獣好き」+「モンハン好き」 そんな作者の妄執が具現化したようなSSですが、もし楽しんでいただけましたら幸いです。 ちなみに、言う必要も無いかもですが、ティガれみりゃの歌はアノ映画の歌が原型ですw ============================ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/slowlove/pages/1453.html
今日はゆっくりの中でも非常に希少な、ゆっくりさくやの生態について言及したい。 概要 ゆっくりさくやは、特定のゆっくりの世話をする 共生型と呼ばれる種類のゆっくりである(共生型には他に、 ゆっくりらんしゃまや、ゆっくりえーりんなどがいる)。 ゆっくりさくやの殆どは体付きであり、 主に ゆっくりれみりゃ、ゆっくりふらん、ゆっくりぱちゅりーと共生する習性を持つ。 性格 基本的に大人しく、礼儀正しい性格だが、共生するゆっくりに危害を与える存在には容赦せず、 ゆっくりめーりんに対しては、シエスタを邪魔するなどの攻撃的な面もある。 中身 ゆっくりさくやの中身は、液体状のプリンの元である。 れみりゃが言う「ぷでぃん」は、厳密にはさくやのものを差している。 特長的な行動1 中身がプリンの元であるさくやは、度々それを共生するゆっくりに分け与える。 さくやの手に当たる部位には極細かつ開閉可能な孔があり、そこからプリンの元を出す。 プリンの元は上から固まっていき、さくやが量を調整することであの逆カップ型になる。 その行動は非常に早く、ゆっくりしていない。 そのため、一見すると一瞬でプリンを出しているかのように見える。 ちなみに、孔を通さないと何故かプリンの元は固まらず、ドロドロとした液体状になる。 特長的な行動2 さくやは急所を守る為、胸の部分に緩衝材になるモノを詰める習性がある。 これを「ぱっど」という。 命に関わる事なので、さくやはぱっどを取られるのを非常に嫌がる。 特長的な行動3 さくやはれみりゃに対して非常に好意的である。 共生相手としても、ふらんやぱちゅりーよりれみりゃを優先する傾向にあり、 他の2種と共生している場合でも、優先して、れみりゃにプリンを渡すことがある。 知能 ゆっくりとしては非常に賢く、餌を食べやすく加工することが出来る。 棲息場所 基本的にはれみりゃが棲息している森に住んでいる。 共生相手の巣に転がり込み、器用に巣を拡張して居座ることが多い。 以上がゆっくりさくやの生態の一部である。 希少種ということもあり、まだまだその生態には謎に包まれた部分が多いが、 多くのゆっくり研究家が日々、その解明に努めている。 その全貌が明らかになる日も近いだろう。 ―― by.ゆっくり怪談の人 PAD長・・・ -- 名無しさん (2010-12-08 02 27 36) めーりんは敵なの?共生相手じゃないのか? あと胸なんてあるのか?(いろんな意味で) -- 名無しさん (2013-07-28 11 19 06) 名前 コメント