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二匹のゆっくりが、だいぶ山奥の、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを云いながら、あるいておりました。 「このやまはゆっくりできないね。ちょうちょもありさんも、ぜんぜんいないね。」 「はやくつかまえてゆっくりしたいね。ゆっくりしようね。」 それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門の鴉天狗も、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。 「ゆっくり寒くなってきたね。」 「ゆぅ、ゆっくりもどろうね。」 ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに見当がつかなくなっていました。 風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。 「お゙な゙がずい゙だよ゙ぉぉ。な゙に゙がだべだい゙よ゙ぉ。」 「れいむ、やまを下りたらお花をいっぱい食べようね。」 「あ゙る゙ぎだぐな゙い゙よ゙。何がだべだい゙よ゙ぉ。」 「ゆぅ、まりさも何か食べたいんだよ」 二匹のゆっくりは、ざわざわ鳴るすすきの中で、こんなことを云いました。 その時ふとうしろを見ますと、立派な一軒の西洋造りの家がありました。 そして玄関には RESTAURANT 西洋料理店 SLOWLY HOUSE 低速亭 という札がでていました。 「れいむ、おうちだよ」 「れいむたちが見つけたんだかられいむたちのおうちだよ」 「ゆ!いいにおいがするよ」 「たべもののにおいだよ、ゆっくりしようね!!!」 二匹は玄関に立ちました。玄関は白い瀬戸の煉瓦で組んで、実に立派なもんです。 そして硝子の開き戸がたって、そこに金文字でこう書いてありました。 「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」 二匹は字が読めないので中に入りました。 「あたたかいね、ゆっくりできるよ」 「うん、あたたかいね。もっと奥があるよ」 「いってみよう」 そこには扉が一つありました。そしてそのわきに鏡がかかって、その下には長い柄のついたブラシが置いてあったのです。 扉には赤い字で、 「お客さまがた、ここで髪をきちんとして、それからはきものの泥を落してください。」 と書いてありました。 「ゆ、れいむがむこうにもいるよ」 「それはカガミっていうんだよ。とかいはのゆっくりアリスがもってたよ」 二匹は字が読めないので、そのまま扉をがたんと開けて、次の室へ入って行きました。 早く何か暖いものでもたべて、元気をつけて置かないと、ゆっくりできなくなってしまうと、二匹とも思ったのでした。 扉の内側に、また変なことが書いてありました。 「鉄砲と弾丸をここへ置いてください。」 見るとすぐ横に黒い台がありました。 「ゆ、また扉があるよ」 「ゆっくり開けてね」 二匹は字が読めないので中に入ると、また黒い扉がありました。 「どうか帽子と外套と靴をおとり下さい。」 しかし二匹は字が読めないので気にせず中に入りました。 扉の裏側には、 「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、その他金物類、 ことに尖ったものは、みんなここに置いてください」 と書いてあり。扉のすぐ横には黒塗りの立派な金庫も、ちゃんと口を開けて置いてありました。鍵まで添えてあったのです。が。 二匹は気づかずにそのまま飛び跳ねていきました。 「おっきなおうちだね」 「これだけおっきいといっぱいゆっくりできるね」 すこし行きますとまた扉があって、その前に硝子の壺(つぼ)が一つありました。扉にはこう書いてありました。 「壺のなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください。」 みるとたしかに壺のなかのものは牛乳のクリームでした。 「うっめ、これめっちゃうっめ」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 それから大急ぎで扉をあけますと、その裏側には、 「クリームをよく塗りましたか、耳にもよく塗りましたか、」 と書いてあって、ちいさなクリームの壺がここにも置いてありました。 「ゆー、おいしくてゆっくりできるね!!!」 「きっと、おくにはもっとゆっくりできるものがあるよ!!!」 するとすぐその前に次の戸がありました。 「料理はもうすぐできます。 十五分とお待たせはいたしません。 すぐたべられます。 早くあなたの頭に瓶の中の香水をよく振りかけてください。」 そして戸の前には金ピカの香水の瓶が置いてありました。 二人はその香水を、頭へぱちゃぱちゃ振りかけました。 ところがその香水は、どうも酢のような匂いがするのでした。 「すっぺ、これめっちゃすっぺ」 「すっぱいけどおいしい!!ふしぎ!!」 二人は扉をあけて中にはいりました。 扉の裏側には、大きな字で斯う書いてありました。 「いろいろ注文が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。 もうこれだけです。どうかからだ中に、壺の中の塩をたくさん よくもみ込んでください。」 なるほど立派な青い瀬戸の塩壺は置いてありましたが。 「おしおはたべれないね」 「のどがかわいてゆっくりできなくなるね」 奥の方にはまだ一枚扉があって、大きなかぎ穴が二つつき、銀いろのホークとナイフの形が切りだしてあって、 「いや、わざわざご苦労です。大へん結構にできました。さあさあおなかにおはいりください。」 と書いてありました。おまけにかぎ穴からはきょろきょろ二つの青い眼玉がこっちをのぞいています。 二人は扉をあけて中にはいりました。 ばたん ゆっくりたちの入ってきた扉が勢いよく閉まり、ゆっくりたちが何をしても開きません。 ゆっくりたちの目の前に、胸の平らなメイド服の女の人が立っていました。 「おねえさん、ここはまりさたちのおうちだよ!!!」 「ゆっくりできないならでていってね!!!」 女の人はゆっくりたちを掴むと、さらに奥の部屋へと進んでいきました 「「いたいよ!!やめてよ!!ゆっくり放してね!!!」」 女の人は部屋の中にゆっくりを投げ入れると、外から鍵を閉めました。 「いたいよ!!ゆっくりやめてね!!」 「まりさ、ここはゆっくりできそうだよ!!」 部屋にはふかふかなベッドを始め、高級そうな調度品が並んでいました。 二匹はベッドに飛び乗り、ポンポン飛び跳ねます。 「ゆっくりできるね♪おねえさんはゆっくりおいしいものをもってきてね♪」 「ここがまりさたちの新しいおうちだよ♪ゆっくりしていってね♪」 「うっう~♪」 _,,....,,_ _人人人人人人人人人人人人人人人_-''" `> !!!!!!!!!!!!! <ヽ  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄ | ;ノ´ ̄\ \_,. -‐ァ :__ _____ ______ | ノ ヽ、ヽr-r'"´ (.__ _,, '-´ ̄ ̄`-ゝ 、_ イ、:_,.!イ_ _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7´ .. .、ン、: rー''7コ-‐'"´ ; ', `ヽ/≧- -─==', i :r-'ァ'"´/ /! ハ ハ ! Σiヾ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i | :!イ´ ,' | /__,.!/ V 、!__ハ ,' i (◯), 、(◯) | .|、i .|| :`! !/レi' (◯), 、(◯)Σ'i !て ,rェェェ、 ". 「 !ノ i | :,' ノ !'" ,rェェェ、 "' i .レ',.く |,r-r-| . L」 ノ| | : ( ,ハ |,r-r-| 人! :||ヽ、 `ニニ´ . ,イ| ||イ| / :,.ヘ,)、 )>,、_`ニニ´_,.イΣハ ル` ー--─ ´ルレ レ´: このSSに感想を付ける
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ここはゆっくり牧場。 のどかにゆっくりと暮らすゆっくり達。 「ゆっくりおいしくなるよ!」 「いっぱいゆっくりしてもちもちになるよ!」 みんな、饅頭としての誇りにあふれている。 少しでも美味しくなって、消費者に届きたい。 そんな願いを持っていた。 だが、牧場出身のゆっくりから大量の危険物質が発見されてしまう。 被害を抑えるため、同時期に出荷されたゆっくり達はすべて廃棄処分に。 「どぼじでええええ?!れいむおいじいのにいぃぃ!!ぢゃんどだべでよぉおお!!!」 「まりざ、きけんじゃないのにい!ちゃんとおいじぐなっだんだよぉおお!?」 「おねがいだがらだべでよぉおおっ!!」 牧場に返品されてきたゆっくり達は、みなプライドをズタズタにされていた。 せっかく美味しくなったのに。 せっかく一生懸命育ったのに。 「おねがいだよぉおお!!のござないでだべでええええ!!!」 とある家では、オヤツにゆっくりを食べている最中にニュースで事件を知った。 半分だけ食べられ放置されたれいむ。 その半分の眼には涙があふれていた。 痛いけど嬉しかった。 ちゃんと人間に美味しく食べてもらえていたのに。 自分の体のことは自分が一番よく知っている。 「れいむにはめらにんはいっでないのにぃいいい・・・」 「うるさい汚染饅頭!死んだらどうすんだボケクソ!」 あまい、と笑顔でいっぱいだった顔はそこにはない。 その目はまるでウンコでも見ているよう。 半分になったれいむは声をあげずにないた。 なんのために生まれたのだろう。 なんのために痛い思いをしたのだろう。 れいむは足りない餡子で答えを探したが、結局それは見つからなかった -- 2008-10-07 18 30 30
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『ゆっくりつり』 今日、俺は近くの神社の祭りに来ていた。 休日で仕事も無く、たまには祭りでも行くかと思い来たのだ。 焼きそば、ラムネ、チョコバナナなど俺が祭りを堪能しているとあるものが目に入った。 「お!ゆっつりじゃねーか!」 目の前には大きな看板にカラフルな文字で「ゆっくりつり」と描いてあった。 「小さい頃、俺もハマって、2千円も使ってかーちゃんに怒られたっけ・・・。 懐かしいな、いっちょやっか!おっちゃん大人一人!。」 「あいよ。」 おっちゃんは座っている椅子の横から、餌付きの糸を取り出し、男に渡した。 「あー!ちっくしょう!」 そんな声が隣から聞こえた。どうやら小学生ぐらいの子が失敗してしまったようだ。 それもそのはず。ゆっくりつりはかなり難しいのだ。 ゆっくりつりのゆっくりは大きなプラスチックの桶に入っている。 そのゆっくりを小さい針の付いた竿で釣るのだ。 ちなみに餌は甘い匂いのする謎の練り餌である。 これは、男が少年の頃から変わっていない。 ゆっくりつりは、かなり簡単そうに思えるが、やってみると凄く難しいのである。 「うーん、やっぱまりさかな。簡単だし。」 まりさ種は好奇心が強いため餌に食いつきやすいのだ。 男は餌をまりさに近づける。 釣りのルアーのように美味しそうな動きをさせながら。 まりさは餌をジィーっと見つめている。そして・・・ 「・・・あまあまさんはまりさにたべられてね!!」 食いついた。 「来たっ!」 ここからが勝負である。 体力があるまま、上に引き上げると糸が切れてしまうため。 下でゆっくりを弱らせないといけないのである。 男は竿を縦に動かし、まず口に針を引っ掛けた。 「むーしゃ むーし…!? ぴぎぃ!! いじゃいぃぃぃ!!!」 男は引っ掛かったことを声で確認すると竿を横に動かし始めた。 「やめぢぇえええ!! いちゃいよおおおおおおおお!!」 ちなみに桶にはオレンジジュースが少しだけ浸してある。 弱らすときに、ゆっくりの皮が裂けるのを伏せぐ為や 針から抜け出したゆっくりの傷口を早く再生させるためである。 もちろん、栄養剤としての効果も含まれている。 「ぴぃいいいいいいいいいい!!! やめてにぇえええええええええええ!! ぢんじゃうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 赤まりさの周りのゆっくりは赤まりさを哀れな目で見ている。 赤まりさもこのように学んだのに、それを活かせないのは餡子脳の故か。 赤まりさは床を滑らされ体力を消耗してきた。 死んだゆっくりを持ち帰っても意味がないので、 そろそろ男は釣り上げる事にした。 男の得意技『壁当て』だ。 方法は簡単、勢いをつけて壁にぶつけるだけだ。 「ゆあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!! ぶちゅがりゅう゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!」 ペチョンッ!! そんなよわよわしい音だが赤まりさには大ダメージだった。 「ち゛・・ぬ゛っ・・・! ち゛んじゃ・・・う゛っ・・・・!」 まりさはそんな事を言いながら男に釣り上げられた。 まりさの針を外し、オレンジジュースが浸ってあるお皿に入れた。 隣の小学生たちが 「すげぇー!!」 と言っている。少し気持ちいい。 おっちゃんが1匹釣り上げたので、もう一個餌を貰った。 持ち帰りは1人、2匹までらしい。 釣れなくても1匹貰えるらしい。 ちなみに、俺の地元では取れたら取れただけ貰える。 取れなかったら貰えない。 地元ルールがあるんだな・・・・・。 2匹目の獲物はどいつにするかはすぐ決まった。 あの、大きなありすだ。 明らかに大きいありすは、あのおっちゃんの罠だという事は分った。 しかし、男には分っていても挑まなければいけない時がある・・・! 「大きなありす」といってもテニスボールぐらいのサイズだ。 だが、さっきのピンポン玉赤まりさに比べれば凄く大きい。 男はありすの前に餌を落とした。 しかし、先ほどのまりさのように餌を動かすが反応はない。 口に穴の痕が多数有る事から、『餌は危険だ』 と言う事が頭に焼き付いているのだろう。 駄目か・・・、と思ったとき。 「あみゃあみゃな においがちゅるわ!! とかいはにゃ ありちゅに ぴったちでゃわ!!」 なんと、あの大きなありすの後ろに居た赤ありすが餌に向かって飛び出してきたのであった。 そして、赤ありすが餌に食い付こうとした時。 「ちびちゃんだめぇええええええええええええええ!!!」 「ゆ゛ッ!」 大きなありすが赤ありすに体当たりしたのであった。 その隙を見逃さず、男は大きなありすの口の中に餌を振り入れた。 「ゆっ!! ぴぃい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 浅く針を掛けるとハズれてしまうため、男は糸が切れるギリギリまで糸を張った。 どうやら、声からしてガッチリ、ハマったようだ。 それにしても、結果はともあれ。 貴重な餌を奪おうとした赤ありすに男は苛立ちを覚えた。 「・・・このチビが・・・・・・・・・・・・!!・・・・・・。 ・・・・・・・良い事思いついちまった・・・・・・・・・!・・・。」 この大きいありすは子どもな為、親と言う事は無い。 それに、この性格からしてレイパーと言うこともないだろう。 そのため、同じありす種という事で仲良くなったのではないか。 大きなありすは良い個体だが、 赤ありすはさっきの行動と言え、ゲスの素質があるのではないだろうか。 「さっきのチビ助、捕まった大きなありすから逃げてやがる・・・・・。 やっぱりとんだゲスだな・・・・・。 まあいい、最高のお仕置きをしてやるよ。」 男は竿を横に動かした。 オレンジジュースのおかげもあってか、重い体でもぬるぬると動く。 「よし、滑るな。」 そう言って、男はありすが滑る事を確認すると、 赤まりさの時と同じように動かし始めた。 「い゛じゃい゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! お゛に゛い゛さ゛ん゛や゛め゛て゛く゛ださ゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 体重のある分痛みも強いのだろう。 大きなありすは、赤まりさの時よりよく叫んでいる。 しかし、そんなのは関係ない。 男の目的は『大きいありすを釣り上げる』から 『ゲスチビをぶち殺す』に変わったからである。 大きいありすを滑らし続けながらもさっきのゲスチビを男は捜した。 「・・・・・・・・・・居た! あの野朗、角でやり過ごそうとしてやがる。」 男は大きいありすをその角目掛けて移動し始めた。 まわりのゆっくりはピー ピーいいながらありすを避けている。 「ゆ゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! ゆ゛っく゛り゛でき゛ない゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」 大きいありすは竿に身を任せ、どんどん加速していく。 目標になっている赤ありすは、なにかが自分に迫ってきて恐怖に怯えている。 「く゛る゛に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! ばでぃずは゛と゛か゛い゛は゛に゛ゃん゛だじょお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!! ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ ぴぃッ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 そして・・・ 2匹は激突した。 ぐちゃり…と音を立てて。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゆう?」 赤ありすは潰されなかった。 なぜか?、答は簡単 『角に居たから』 だ。 恐る恐る目を開けた赤ありすの前には 「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!」 体中からカスタードをはみ出させた大きなありすが居た。 「・・・・ゆ・・・・・・っ゛・・・・・・・ぐり゛・・・・じね゛っ・・・・・・! ・・・・ゲ・・・・ス゛・・・・・め゛っ・・・・・・!」 弱りきった大きなありすは男に釣り上げられた。 そして・・・・・赤ありすの上に落とされた。 「ゆぴゃッ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 赤ありすは死んだ。恐怖に怯えながら。 「あ~ ごめん、おっちゃん。1匹、関係ないの潰しちゃったわ。」 「ああ、別にいいよ。いっぱいいるしな。」 それだけの命であった。 それから、2匹のゆっくりを手に入れた男は神社を後にした。 そして、帰り道。 「あー、すっきりした。あのゲスチビの最後の表情最高だったぜ。」 「・・・・・ん?」 男の持つ、ビニール袋の中でなにかがもぞもぞしている。 男はビニール袋に目線まで持ち上げてみると 最初に釣り上げたまりさが動き始めたのだ。 人間で言う全身打撲だというのに、 約30分である程度まで動けるとは驚きの生命力である。 「・・・・・ゆ・・・・ゆう・・・?・・・・こょこょ・・・どきょ・・・・?・・・・・・・・」 「すげーなー ゆっくりって、まあいいや。」 男はビニール袋の結びを取ると、中からまりさを取り出し手のひらに置いた。 まりさは初対面の男に対して緊張しているのか、怯えているのかプルプルしている。 「ゆっ・・・ゆっくりしてい「 い た だ き ま す ! 」 まりさは口の中に放り込まれた。 「くちょくちょ・・・・うん! ゆっくりの踊り食いは最高だな!」 お わ り 補足(※ありすはスタッフがおいしくいただきました) あとがき 初投稿SSです。 批判お待ちしております。 きよ
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虐待分薄め。ぬるいじめ多め ぶっちゃけ前編 現代が舞台 チチチ……チュンチュン…… まどろむ意識の中で小鳥の声が聞こえる。僅かに射しこむ光が眩しい。 まどろんだ意識で感じる爽やかさと布団のぬくもりがたまらない。 うーん、もう少しだけ……あと5分…… ぺったん、ぺったん、ぺったん、ぼみゅん。 ぼいん!ぼいん!ぼいん!ぼいん! 「おにいさん、おなかすいたよ!!ゆっくりはやくおきてね!!」 粘着質な音を立てながら我が家のれいむ様のご登場だ。ああ、さよなら俺の爽やかな朝…… もはや我が家の風物詩になった光景、だがこのイラだちは何度体験しても慣れるもんじゃない。 ガシッ 俺は片手で腹の上で跳ねている饅頭を掴むと 「お前は何遍言ったらわかるんだ」 「ゆぐぅ!!」 うにょーん 両手でおもいっきり頬を引っ張ってから 「俺が起きるまでは絶対に」 「ぼにいざん、いだいよやべでええ!!」 ブンッ、ビタァン!!………ぼとり 前方の壁に全力投球した。 「この部屋に入るなっつったろーが!!」 「ゆびゅ!!……びえ゛え゛え゛え゛!!!」 寝起きの俺の前に広がる光景は、あまりに投げすぎて茶色い染みが付いた壁と 顔を真っ赤に腫らして泣き叫ぶゆっくりれいむだった。 俺がれいむと暮らし始めて早くも一ヶ月。れいむは毎日毎日、俺をぼいんぼいんと叩き起こしては思いっきり壁に投げられている。 最初の頃は力加減を誤って思いっきり餡子を吐いていた時もあったが(あの時は必死で近所のコンビニまで餡子を買いに行ったっけ) 今では限界ギリギリの力で投げれるようになった。まぁ、たまにはちょっと吐餡させる事もあるが。 元を返せば、こうなったのも全ては大家さんとの約束のせいだ。 「ここに入居するなら一つだけ条件を守ってもらいます」 「どんなゆっくりでもいいから、一匹以上と一緒に生活する事」 「つまりゆっくりを飼えって事だね。あとは定期的に話をしてくれれば問題ないよ」 実際、このアパートの家賃は格安でゆっくりの世話代を概算しても十分すぎるほどの値段だった。 それに俺も始めての一人暮らしで少し寂しくなるか不安だったし、最近話題になったゆっくりにも興味があったんだ。 だから俺はこの条件を受け入れ、ここに住むことにした。その結果待っている様々な苦労を知らないまま。 何はともあれ、そういう約束をしてしまったからにはゆっくりを手に入れなければならない。 近所のコンビニで立ち読みしたゆっくり解説書によると 野生のゆっくりは罠を仕掛ける事で簡単に捕まえられますが、気性に難がある場合があります。 また、飼育する場合は各種予防接種や避妊処理の必要もある為、初心者はゆっくりショップでの購入をオススメします。 最初に飼うなら素直で癖の無いれいむ種がよいでしょう。また、ちぇん種も人懐っこく扱いやすいです。 との事らしい。俺は読み賃代わりに缶コーヒーを一本買って、その足でゆっくりショップに行く事にした。 「ゆっくりしていってね!!かわいいれいむをペットにえらんでね!!」 「おにいさん!!はやくまりさをかうんだぜ!!まりさのぼうしはいちばんかわいいんだぜ!!」 「むきゅ!!いちばんかしこいのはぱちゅりーなのよ!!かうならぱちゅりーがおすすめだわ!!」 「と、とかいはのありすがあなたのかいゆっくりになってあげてもいいわよ!!」 「おにいさん、しっぽのきれいなちぇんをかいたいんだね?わかるよー!!ちぇんのことだよー!!」 ゆっくりショップの存在は知っていたが、実際に行ってみるとそこはなんというか……監獄の死刑囚。この一言に尽きる。 どこのペットショップでも、飼われなかった動物の末路は悲惨な物だ。こいつらはそれを知っているんだろう。 もちろん、それを直接アピールしたり泣き喚くような奴は最初からペットとして扱われるはずがない。 こいつらは全てを知り、助かる為に "自分が出来る唯一の方法で" こちらにアピールしているんだ。 これがもし、意味の通じない動物の鳴き声やしぐさならここまで心に感じる物はなかっただろう。 だが、これが言葉ならどうか。意図の通じる言葉なら、直接言われなくても人間は真意を理解する事が出来る。出来てしまう。 それは自己アピールという名の命乞いだった。 正直、俺は入って1分もしないうちに、かなり消耗していた。早く選んで帰りたい。 最初から買うのはれいむ種にしようと決めてある。他の連中を見ても辛くなるだけだ。 俺がまっすぐにれいむ種のコーナーに行くと色めき立つれいむ種たち。意気消沈する他のゆっくり達。 「おにいさん!!れいむがいちばんかわいいかたちのリボンだよ!!ゆっくりみてね!!」 「れいむのほっぺがいちばんぷにぷにだよ!!さわってもいいのよ!!」 「れいむがいちばんきれいないろのリボンなんだよ!!とてもゆっくりできるよ!!」 「れいむのおうたはとってもひょうばんだよ!!ゆぅ~ゆゆぅ♪ゆぅ~ゆゆぅ~♪」 誰も彼もが満面の笑みで柵に体を擦り付けながら全力のアピールを行っている。 きっと、彼らが主張する内容は全て事実なんだろう。意見が被るゆっくりは居ないし誰も他のゆっくりを否定しない。 だからこそ、俺はその一丸となった命乞いを直視する事が出来なかった。 逸らした俺の視線の先には、一匹のゆっくりが居た。 そいつだけは他の皆のようにアピールをしない。遠慮がちに柵の中から「ゆっくりしていってね」と言うだけだ。 俺の勘が正しければ……こいつは…… 「すいません、あいつと話させてもらっていいですか?」 「いいですよー、ちゃんと話をしてパートナーを決めてあげてくださいね」 そう、笑顔で話をする。これだけがここで許された命乞いのルール。 そして選ばれなかったゆっくりは助からない。なのに。 柵の中に入った店員がそいつを連れ出す時に他の連中はまったく動じていなかった。 こいつだけは絶対に選ばれない。という確信が、貼り付いた笑顔の上からでも透けて判るようだった。 「はい、戻す時はゆっくり入れてあげてくださいねー」 店員から渡されたそいつは、戸惑いながらも「ゆっくりしていってね!!」と言った。今度はしっかりと。 俺はそいつを片手で抱えながら柵の中のゆっくりに聞いた。 「なぁ、こいつはどうしてアピールしないんだ?」 その瞬間、腕の中でビクッと震えるゆっくり。柵の中のゆっくり達も笑ったまま何も言わない。 きっと禁じられているんだろう。他のゆっくりを馬鹿にする事は。 ただ、その笑みの中に嘲るような印象を感じた。そして、それは最高にいやらしい笑みだった。 「お前、もしかしてアピール出来る事が無いのか?」 疑問は確信に変わった。そいつは何も言えず、ただ俺の腕の中で震えるだけだ。 笑みこそ崩さないもののその瞳は震え、悲しみと絶望がありありと写し出されていた。 その笑みは俺がここで見た全てのゆっくりの中で一番魅力的で、そして俺の心に暗い炎を灯す笑みだった。 「すいません、こいつ貰えますか~」 また腕の中でそいつはビクッと震えた。最初との違いを挙げるとするなら、柵の中のれいむ種全ても同じ反応をした事だが。 「おにいさんみるめがないね!!そいつはここでいちばんののうなしだよ!!そんなクズをえらぶなんて…」 俺の選んだ選択があまりにも想定外だったのか、一匹のれいむが俺に対して文句を言ってきた。 同じような気配を発していた周りのゆっくり達もその言葉を聴いたとたんに表情が変わる。ああ、本当にタブーなんだな……これ。 失言から間もなく横に居た店員が飛びかかり、口を捻って口封じをした。 「ゆびゅあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「お客さん、ちょっと待ってくださいね~」 手馴れた物だ。即座に店の裏に連れて行く。失言一つで人生終了だなぁ……あのれいむ。 「うっかりくちがすべったんだよ!!ゆっくりゆるして……」と叫ぶ声が聞こえなくなってしばらくすると店員が戻ってきた。 「申し訳ありません、うちのゆっくりが粗相を……その分お値段をサービスさせて貰いますので……」 思いの他サービスしてくれた。ありがとう失言れいむ、君の事は忘れない。たぶん。しばらくは。 他にも飼うのに必要な道具を買って、俺は店を出た。 店から帰る途中、ケージの中のそいつは脱力しきっていた。本来ならはしゃいでもおかしくは無い状況だけど、 あそこでの絶望的な立場を考えればそんな余裕は無かった事くらいはわかる。 「ゆぅ……ゆぅ……zzz」 まぁ、俺が必死にこいつの荷物を抱えてるのに寝られるのはさすがにムカつくのでちょっと派手にケージを振ってやった。 「ゆぐ!!ゆぁ!!ゆう゛ぅ……いだいよぅ……」 おお、起きた起きた。こんだけ振ってもこっちには文句を言わない辺り、さぞ存分に教育されていたんだろう。あそこのゆっくりは。 そんなゆっくりの反応を見ながら、俺はときたまケージを振りつつアパートに帰る事にした。 大家さんに軽くゆっくりの顔をみせてから(「なるほど……君らしいね」と一目見ただけで言われた。あの人やっぱり只者じゃない。) アパートの一室に戻った俺は、ケージから出したこいつと向き合いながら悩んでいた。 ……何から話せばいいんだ?つい暗い衝動にまかせて買ったはいいが、どう接すればいいんだろうか。 戸惑っているのはこいつも同じらしく、きょろきょろとあたりを見回しては俺の視線に気付き 「ゆっくりしていってね!!」 「ああ、ゆっくりしていいぞ」 と一言交わしたらまたお見合いが開始する始末だ。こりゃだめだ。俺から話振らないと絶対先に進まないぞ。 「えーっと、だな。今日から君はここで飼われる事になりました」 「ゆ!ゆっくりりかいしたよ!!」 「でだ、まず君の事を知る為に自己紹介をして欲しいんだが」 「ゆっ……れいむはしょうかいできることがないよ……」 ああ、こいつに単に自己紹介をしろといってもあそこの二の舞になるだけか……。 これは一つ一つ誘導してく方法じゃないとダメだな。 「それじゃれいむ、まず名前を言ってごらん」 「れいむはれいむだよ!!」 「よくできました。じゃあ、次はどこで生まれたのかな?」 「れいむはきがついたらあそこにいたよ!!」 「ふーん、じゃああそこのゆっくり達には兄弟もいたのかな?」 「そうだよ!!まりさおねーちゃんたちとれいむおねーちゃんたち、かわいいいもうともいたよ!!」 「なるほど。じゃあその子達も一緒に飼った方がよかったかな?」 「ゆぐっ!!……れいむのきょうだいは……みんなさきにうれちゃったのぉ……」 「そっか、つまりれいむは売れ残りだったんだね!!なんでかな?」 「それは……れいむは……れいむには…………」 「あ!!わかったよ!!れいむには長所が無いんだもんね!!れいむは長所無しの役立たずだもんね!!」 「ゆぎゃっ!!!……………………………」 あー駄目だ。やっちまった。また顔引き攣らせてフリーズしてるよ、かわいいなぁ。 しかし、こいつと話してるとどうしてもこいつが嫌がる展開に話振りたくなるな…いかんいかん。 ぺちぺち、ぺちぺち 「おーい、だいじょうぶかー?」 駄目だな。起きない。もうちょい強めにいくか。 パン!パン!パン!パン!スパンキング!! 「おーい、だいじょうぶかー?」 「………………ゆっ!だ、だいじょうぶだよ!!」 頬を真っ赤に腫らして言う台詞じゃないだろそれ… とりあえず晩飯も作らないとな。解説書には確か野菜クズや余った食事でいいって書いてたな。 ただし辛い物は厳禁、凄い嫌がります、だっけか……。 ここはあえて、反応を見る為に俺と同じくカレー食わせてみるか。 「おーい、れいむー。ばんごはんだぞー」 「ゆっ!ゆっくりたべるよ!!」 テーブルの上には大盛りのカレーが二皿。一つは俺用、もう一つはこいつの。 流石に犬食いで火傷すると面倒なので、こいつはあぐらの上に置いてスプーンで食べさせてやる。 「ほーら、よくふーふーして食べろよー」 「ゆっくりふーふーするね!!ふうー、ふうー。」 「よーしいいぞー、ほら、あーん」 ぱくっ 「ゆぅーん、むーしゃ!むーしゃ……ゆっべええ!!」 「どうした~?おいしくなかったかな?」 「ゆぎゅ!!と、とってもおいしいよ!!しあわせー!!」 「そうか~、もっとあるから遠慮しないで食べていいぞ」 「ゆびゅぅ!!……………………………」 「あー…なるほどなぁ。」 負荷が一定超えるとトんじゃうみたいだ。多分、普通のゆっくりだと泣くか怒るかってところのラインなんだろう。 本当によく教育されてるよ、こいつは……。 確かに、あの店のゆっくりは良く躾けられている。能無し呼ばわりされてたこいつでも。 でもこれはゆっくりなんだろうか……。ゆっくりと言えるのだろうか。 俺の見た本の中に居たゆっくりはもっと感情豊かで傍若無人だった。 そして、俺が魅力に感じたのもそうした喜怒哀楽を過剰に表現するゆっくりだったんだ……。 まず、こいつのフリーズ癖を治そう。これはこれで可愛いのは事実だがこのままじゃラチがあかん。 こいつが思考停止するのは「自信の無さ」と「笑う以外の感情表現を許されていない」環境だったせいだ。 だから笑ったまま固まる。そうしなければ死ぬ事になるから。 この躾はある意味では完璧だろう。決して泣き喚かず怒りに暴れる事も無い完璧なゆっくり。 でもそれじゃ俺は息苦しい。あいつが苦しんでるのはわかっているからこそ、尚。 それにこれじゃまるで「ゆっくりロボット」じゃないか。 こいつを一人前の「ゆっくりれいむ」にしてやろう。そしてたっぷりと泣き、怒る様を見てやろう。 そう決意して俺はその日は眠りに付いた。慣れない寝床で震えるれいむにタオルをかけて。 つづく。 このSSに感想を付ける
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書きたかった事 本スレ90の 316さんの書き込み 『「おまんじゅうさん」とか呼び続けたら物言わぬ饅頭になるかも知れん』 からインスパイアされて 言葉責めとかやってみたかった 作者 チェンマガツ その男には日頃から疑問に思う事があった。 最近現れたゆっくりと呼ばれる奇妙な不思議生物は本当に生物と呼んでいいのだろうか。 詰まるところあいつらは饅頭なわけで、饅頭を生物とするのは明らかに間違っていると思っていたのだ。 誰かに聞いても答えられるはずのない疑問であることは承知しているのでそこはやはり本人達に聞いてみるのが早いのだろう。 そう思い立ち男は早速行動に起こした。 人間の集落の周りにある森に出かければすぐにでもゆっくりは見つかった。 日の当たる広場に二匹の成体ゆっくりが寄り添って仲良く昼寝をしていた。 ゆっくりまりさとゆっくりれいむだ。どうやらカップルらしい二匹を起こすように男は挨拶をする。 「ゆっくりしていってね」 「「ゆっくりしていってね!!」」 さっきまで寝ていたのに脊髄反射のように挨拶を返してきた。 「ゆゆっ、ゆっくりねていたのにおこさないでね」 「ここはまりさたちのゆっくりぷれいすだからゆっくりでていってね!!」 「少し君たちに聞きたい事があるんだけどいいかな?」 ふくれていたれいむに出て行けと怒鳴るまりさを完全に無視して男は質問する。 「君たちは何だい?」 「ゆゆっ、れいむはれいむだよ」 「まりさはまりさだよ」 「いや、そう言う事ではないんだよ」 やはりかと男は思った。ゆっくりと初めからまともな会話ができるわけはないのだ。 「お兄さんは人間だ。なら君たちは何だ?」 「れいむはれいむだよ!!」 「まりさはまりさだよ!! なんかいもいわさないでね!!」 あまりの会話の成りたたなさに男は頭を抱える。 どうしてもこいつらから質問に対する答えを聞きたいのだが、どうやら誘導質問をせざるをえないようだ。 「そしたられいむ。れいむはゆっくりだよね?」 「うん、れいむはゆっくりしているよ」 「そうじゃないんだ……、もういい。まりさ、君はゆっくりだな」 「ゆゆぅ、そうだよ!! まりさはゆっくりだよ」どうやらまりさは男の質問の意味が分かったようだ。 「まりさは賢くて助かる」 「それにまりさはかりもじょうずでかっこいいんだよ!!」 「ゆっへん」まりさはお腹を突き出して偉そうな表情をした。 男がしまったと思ってももう遅い。 誉めるとすぐこうなるのだから言葉を選んで会話をせねばならないと思い直す。 「それじゃあまりさ、お兄さんは人間だ。人間は動物だ。わかるな?」 「ゆっくりりかいしたよ!!」 「それなら、まりさはゆっくりだ。するとゆっくりはなんだ?」 これでようやく疑問が解決すると男は思った。しかしそううまくいくわけがない。 「おにいさんしらないの? ゆっくりはゆっくりだよ!! ゆっくりりかいしてね」 「……」 男は改めてこう思うのだ、やはりまともな会話ができるわけはないのだと。 それなら仕方ないと誘導質問に切り替える。 「お兄さんから見ればゆっくりは饅頭に見えるんだが?」 男の質問は実に簡単なものだ。結局のところお前らは饅頭だろということだ。 しばし時間が止まったように二匹のゆっくりが固まった。 男の言葉をゆっくりと頭の中で反芻し、ゆっくりとその言葉の真意を読み取った。 そして突然二匹は怒り出した。 「どおじでぞんなごどいうの!! れいむはおまんじゅうじゃないよ!!」 「まりさはまりさだよ!! おまんじゅうさんはあまあまでしょおおお!? そんなこともわからないの? ばかなの? しぬの?」 二匹は大激怒である。二匹は目をつり上げ、涎を飛ばしてきながら今にも襲いかからんとばかりに跳ねながら叫んできた。 まりさの言葉にカチンとくる部分があったがそれくらいで潰してしまうほど男の沸点は低くない。 「だってどう見てもそうじゃないか……。いや、まてよ……」 ふと男は面白そうな事が思い浮かんだ。 自分達が何であるかを分からせる必要がありそうだ。 「お前達うちに来てくれないか。うちにくれば饅頭を食わしてやる」 「ゆゆっ!! おまんじゅうちょうだい!!」 「ほんとうにくれるんだぜ!?」 「ああ、食わしてやるから。ちょっとの間付き合ってくれよ」 「れいむをゆっくりつれていってね!! それでおまんじゅうちょうだいね!!」 「まりさもいくんだぜ!!」 「そしたら早速行こう。気が変わらないうちにな」 男が家でちょっとした実験をするために二匹を連れて帰る事にした。 両脇に二匹を抱えてやると随分ご満悦そうにゆっくりしだした。 普段見慣れない風景とか地面から解き離れた感覚とかそういった部分にゆっくりは惹かれるのだろうか。 男は二匹を連れて家に帰ってきたのはいいものの、実験の準備はまったくしていない。 この実験には腕の立つ菓子職人が必要だったがそれには思い当たる節があった。 自身がゆっくりをとてもよく観察して、人間に友好的なドスまりさを作り上げたと評判になっている和菓子屋の店主だ。 ひとまず二匹をあまり物を置いてない寝室に招待し、適当なご飯を置いてその主人の元へと出かける事にした。 「ふむ、その実験は実に興味深いな」 「そこで実験に必要なものを旦那に作って欲しいんですよ」 「そういうことなら喜んで協力しましょう。なんなら場所も提供しますがどうですか? 家の奧にあるゆっくり用の部屋が空いてるんでそこを使っていいよ」 「いいんですか。家ではそんな部屋が無いんで願ったり叶ったりです。喜んで使わせてもらいますよ」 「ついでに私も観察させてもらうけど問題はないよな」 「ええどうぞどうぞ。それじゃあ約束のものはいつできますか? 出来上がればすぐにでも実験を始めますけど」 「実験結果が面白そうだから今から作り始めて明日の午後までには作っておくようにするよ」 「それは有難い。そしたら明日の晩にまた尋ねることにしますね」 「そしたら明日の晩にお待ちしてます」 この実験に使われる物の費用に関してはそれほどかからない上、商品開発のヒントに繋がったと喜んでタダにして貰えたのも助かった。 明日になればゆっくりが何であるかの答えが出るやもわからない。 そして次の日。男はもう二度とゆっくりは飼うまいと心に刻んでいた。 わずか一日を一緒に過ごしただけだがあれほどにまで騒がしい生物とは思わなかった。 もちろん野良のゆっくりだというのもそうなのだろうが、いちいち大声で叫ばれたのではかなわないのだ。 どうせ耳がないから互いに大声でないと聞こえないとかそんなことなんだろう。 体罰を与えて機嫌を損なわせて実験に支障がでても困ると思ったが、 よく考えればそのときは別のゆっくりを捕まえてくればいいだけだった気付き愕然とした。 約束の時間通りに男は二匹を連れて和菓子屋に到着した。 「ゆゆっ、おいしそうなにおい!!」 「あまあまのにおいだぜ!!」 二匹は店内に充満した美味しそうなお菓子の匂いに反応していたが、今日はあとでたらふく食わせてやると伝えてあるのでねだってくる事はなかった。 「二匹を連れてきました。例のものはできてますか?」 「ああ、完成してるよ。それと少し色をつけといたからきっと実験結果がもっと面白くなるよ。それじゃあ部屋に案内するよ」 「それは楽しみだ。それじゃあお前らもいこうか」 「あまあまたのしみだね!!」 「はやくちょうだいね!!」 「ああ、協力してくれたらいくらでもくわしてやるよ」 そう言って二人と二匹は和菓子屋の横に併設された家の奧に設けられたゆっくり用の部屋へと入っていった。 床が掘り下げられたその部屋の中にはいくつか台が用意されていた。 「手前の台の上に二匹を置くと良い。その高さからなら飛んで逃げやしないだろう」 「わかりました」 指示された台は男の腹の位置くらいまである台で、ゆっくり二匹が並んで乗るとそれ以上身動きは取れそうにない台座であった。 「ゆっ、ちょっとたかいね……」 「おにいさんゆっくりおろしてね」 「今降りると饅頭を食わせるわけにはいかないんだが?」 「ゆ゛ゆ゛っ!!」 「ゆっくりがまんするね!!」 「是非そうしてくれ」 測られたようにゆっくりが飛び降りようとしない高さであるようだ。さすがゆっくりをよく観察しているだけのことはある。 そして別の台にはいくつか皿が乗せてあり、皿に載せたものが分からないよう布で覆ってある。 皿の枚数は六枚ある。それぞれに要望通りの物が収まっているのだろう。 「ちなみに左の皿から順番通りに並べてあるから。あとそれと……」 店主はゆっくりに聞こえぬよう男に耳打ちをしてきた。 その内容を聞き男は笑顔のままで身震いする。男が思いもしてなかった内容にさすがとしか言いようがない。 「確かに面白くなりそうですね」 「だろ? あとは好きなようにやってくれ」 そう言うと店主は男とゆっくりを置いて部屋を出て行った。 話によると隣の部屋から実験の様子を観察するらしい。 男はゆっくりに振り返ると不安そうな表情をするゆっくり達が見返してきた。 「さて、それじゃあ昨日の質問の続きをしようか」 男は六枚の皿が置かれた台を挟んでゆっくり達と対峙した。 この位置に立てば右から順に皿の上の物をゆっくり達に見せていけばいいということらしい。 そっと自分だけが見えるように布をめくるとそこには一般的な大きさの饅頭が二個鎮座していた。 「では、もう一度聞こうか。お前達は饅頭ではないのか?」 「ぷくぅぅぅ。ちがうよ!!」 「おにいさんまりさおこるよ!!」 「はいはい分かった分かった。じゃあこれを見てくれ」 そう言いながら男は最初の皿の中身を見せた。そこにあるのもを見てれいむとまりさは色めき立つ。 「おまんじゅうさん!!」 「まりさにはやくちょうだいね!!」 「そうかこれは饅頭だよな」 男は並べられた二つの饅頭を皿ごと二匹の目の前まで持ってきて見せた。 「二つとも饅頭だな」 「そうだよ!! はやくれいむにちょうだい!!」 「二つとも饅頭なら問題ない」 男は持っていた皿を台に戻して次の皿の布をめくる。 ゆっくり達は饅頭を食べたいとうるさく叫んでやまない。 「静かにしてないと饅頭はやらないぞ」その一言でゆっくりはあっさり静かになった。 次の皿の上にはゆっくり側から見れば先程のもの変わらないものが乗っていた。 「またおまんじゅうさん!!」 「静かにしてろ。これならどうだ?」 そういって皿の上の物を二つとも180度回転させる。 するとそこには饅頭にあるものがくっついていた。 実に良くできているその代物はどうやら寒天か何かで作られているようで近くで見ても本物となんら損傷はない。 「ゆゆっ、さっきよりおいしそうなおまんじゅうだぜ」 「そうか、やはりお饅頭か」 男が聞く前にまりさが答えたが二つめの皿に乗せられたものも饅頭であると答えた。 しかし先程のまっさらな饅頭とは異なる点がそこにはある。ゆっくりの目玉のようなものがくっついているのだ。 プルプルと震えるその眼球は饅頭に加えられたアクセントくらいにしか思わないらしい。ケーキに乗せられた苺くらいの感覚なのだろう。 「それなら次の皿はどうだ」 ここまでの反応は概ね予想していた通りだ。三皿目の反応もそう変わらないだろうが見せてみることにする。 布を外せばそこには饅頭にゆっくりの閉じた口のような皺が入っている。 これもやはり本物と変わらない出来だ。店主の観察眼と造形技術に舌を巻くしかない。 「おにいさんはやくれいむにちょうだい!!」 「これは饅頭か?」 「「そうだよ!! おまんじゅうだよ!!」」 さて問題はここからである。この先からのゆっくり達の反応が重要となってくる。 男がおもむろに四皿目の布を外すとそこにあった饅頭は二種類の構図が見て取れた。 一方は歯を食いしばり固まっているもの、もう一方が口を開けて固まっている物だった。 口を開いた方をよく見れば歯はどうやら飴細工らしい。本物と比べれば少し透明感と艶が目立つがそれでもよく見ないと分からないほどだ。 どちらにも眼がついており、もはや禿ゆっくりの標本のようだ。 「れいむ、これは何だ?」 「おまんじゅうだよ!!」 「そうか。まりさはどう思う」 「ゆゆぅ……」まりさは返答に困った様子を見せた。 「どうしたまりさ。これは何だい?」 「さっきよりもおいしそうなおまんじゅうだよ!!」 「そうか、わかった」 ここにきてようやく二匹に違いが現れた。まりさの方が違和感を覚え始めたようだった。 たしかに目の前にあるものは饅頭だが、何かおかしいと思っているのだろうか。 少し表情が曇ったまりさを余所に男は淡々と次の皿に向かう。 五皿目の布を外すとそこにはもはやゆっくりと呼べそうなものが並んでいた。 れいむ種を元に造形されたそれは子ゆっくりサイズで、目は開かれ口は笑顔のゆっくりした表情の饅頭に、これもまた飴細工であろう髪の毛が被せられている。 隣り合う二つの饅頭に差は見て取れない。両方とも本物と違う点はれいむ種の紅白飾りが無く動かないという点だ。 「れいむ、これも饅頭か?」 ここでさすがのれいむも返答が止まった。 「これは……、おまんじゅう? ゆっくりできてないれいむ?」 「さっきの饅頭と比べるとどうだ」 「ゆゆっ!! このおまんじゅうはれいむのまねをしてるだけだよ!!」 「ということはこれも饅頭だな」 「そうだよ。ゆっへん」 れいむは見事に饅頭である事を看破してやったと言わんばかりに威張る。 「ではまりさ、これは何だと思う?」 「まりさもおまんじゅうだとおもうよ!!」 「そうかならこうするとどうだ」 男は饅頭を一つ持ち上げるとゆっくりの声真似をした。 「ゆっくりしていってね!!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「これは饅頭か?」 二匹は挨拶を返したままの表情で固まってしまっている。 「どうした? これは饅頭じゃないのか?」 「れいむはゆっくりびっくりしたよ」 「……」まりさは黙り込んでしまった。 「饅頭が喋るだけでまるでゆっくりみたいだよな?」 「ゆゆゆゆっ!!」 「おまんじゅうといっしょにしないでね!! ゆっくりあやまってね!!」 「そうか? お前達もさっき普通に挨拶返しただろ。ならこうしてみるか」 男は手に持ったままの饅頭を真上に放り投げた。ゆっくり達の視線は自然とそちらに向かう。 「やめてね!! ゆっくりおろしてね!!」男の声真似だが二匹は完全に饅頭から発せられたものと誤解した。 「どぼじでなげたの゛おおおお」 「ゆっくりやめてね!!」 「何言ってるんだ。饅頭だよ饅頭」手に戻ってきた饅頭を二匹に見せて男は笑う。 「やっぱり饅頭はゆっくりなのか?」 男の問いに二匹は答えなくなってしまった。二匹のなかで何かが変わろうとしているようだ。 これは最後の皿でどうなることやら、男はそっと残されていた皿に手を伸ばして布をはずす。 その皿を見てれいむとまりさは凍り付いた。 最初から見せてもおそらくこの反応が見えるであろうその饅頭の出来には男も驚くしかない。 完全にゆっくりを再現した饅頭がそこにはあった。 五皿目のものに飾りを付け加えるだけでやはり見栄えが違う。 店主の饅頭の出来に感心して見入っているとれいむがついに動いた。 「ゆ、ゆっくりしていってね」 「れいむどうしたのあれはおまんじゅうだよ?」 「まりさこそどうしたのあれはれいむだよ?」 ついにきた!男は心の中でガッツポーズをする。おそらく隣の部屋の店主もほくそ笑んでいるだろう。 れいむの行動も仕方ないほどの饅頭の造形の良さということだろう。 それと同時にれいむの中では心と行動の差が生まれている証拠である。 心ではこれが饅頭だとわかっている。しかし体はゆっくりであると認識して挨拶をしてしまった。 「どうしたれいむ」 「おにいさん、そこにいるのはれいむだよね!!」 「確かめてみるか?」 男はれいむを持ち上げ最後の皿に近づけてやる。 すぐさま食べる様子をみせてないところを見るとれいむはこれを饅頭とはみていないようだ。 「ゆっくりしていってね!!」 再びれいむが挨拶をしてもその声が虚しく部屋に響くのみだ。もちろん饅頭からの返答はない。 「どうだれいむ、さっきのは饅頭でこいつはれいむか」 「ゆゆゆゆっ」 穴が空きそうなほど饅頭を凝視するれいむに男は追い打ちを掛ける。 「やっぱり饅頭はゆっくりでゆっくりは饅頭じゃないか?」 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ!! でいぶはちがうよ゛!! ぞれはおまんじゅうだよ゛!!」 れいむは自身は饅頭である事否定したが、混乱している頭で考え続けていた。 目の前のあれはなんだ。饅頭なのかゆっくりなのか。 今にも動きそうな饅頭を片手に持ちれいむの目の前で男はつぶやく。 「実はこいつはなとてもゆっくりしているゆっくりなんだよ。本当にゆっくりできるゆっくりは動かずに一言も喋らずに笑顔でいるゆっくりのことをいうんだ。」 その言葉に二匹は息を呑む。 「それに比べたらお前達はゆっくりできてないなあ。大声で叫ぶし、忙しく跳ね回る。ゆっくりしていってねというだけなら人間でもできるぞ」 その言葉はゆっくりにとって最大の屈辱である。 ゆっくりできていない人間に自分も同じだと言われてしまったのだ。 そして皿の方を見てみれば自分よりも幼い子ゆっくりの全く動く事のない真のゆっくりを見せつけられている。 自分達はゆっくりなのにゆっくりできてない。 本当にゆっくりするっていうのはああいうことなのか。 今までの自分達の行動を振り返ればなんとゆっくりできていなかったことか。 そのショックにより二匹は動けなくなった。 いや、動かなくなった。これならゆっくりできる。これがゆっくりするということだ。 れいむは男の腕の中で、まりさは台の上で完全に固まってしまった。 片手の物を何度も空中に放っても反応を示さない。 「本当は饅頭なのになあ」 二匹は一度動かないと決めたらテコでも動くつもりはないようだった。 「お疲れ様でした」 「なかなか面白い結果になりましたね」 「二匹とも即座に動かなくなるのは少し予想外だったかな。もう少し抵抗というか反抗してくれると思ったけど 「これも饅頭の出来があまりにも良かったからですよ」 「そう言って貰うと嬉しいね。作った甲斐があったよ。大量生産は難しいけどいつかは商品として店に置く事にするよ」 「そのときは買いに来る事にしますね」 「味の方も確認してみてください。改良点があれば直しておくんで」 「ではさっそくいただきますね」 男は店主の薦めもあり一皿目から順に一個ずつ食べていく。 「本体の饅頭はやはり美味しいですね」 「ありがとうございます」 男が美味しそうに饅頭を頬張るにもかかわらず二匹のゆっくりは固まっている。視線もどこか中空を見たままでまったく動かさない。 「れいむとまりさはゆっくりしてますね」 「他のゆっくりもいつもこうだといいんけどねぇ」 二皿目、三皿目、四皿目と続けて食べる。 「目の部分は饅頭と違う食感がたまりませんね」 「季節によっては梅味にしようかなんて考えてます」 「そりゃ良さそうだ」 「歯の部分はサーッと溶けるようにするのが苦労したなぁ、饅頭の中に硬い物があったらびっくりしちゃうからね」 「確かに。さわやかな甘みもいいですね」 男が美味しそうに饅頭を食べても二匹は相変わらず動かない。 五皿目、六皿目は髪と髪飾りの飴細工についての苦労を聞かされた。 髪の毛のように細い飴を作るのに、棒状にした飴を折りたたんでは延ばし、さらに折りたたんでは延ばしを一時間は繰り返したそうだ。 「そうすることでようやく髪の細さに飴が仕上がるというわけだ。面倒だから色は直接塗ったけどね」 「なるほど美味しいお饅頭ありがとうございました」 「いえいえ、それじゃあ残りの奴らはどうしましょうか?」 「まあ二匹にはゆっくりと見てて貰いましょうか。その前に味見だけしておきます」 そういって改めて台に乗せられていたれいむとまりさを残った饅頭のほうに向ける。 いくら触られても何の反応も示さない。 「もうまるで饅頭だな」男が呟くのも無理はないほどに饅頭だった。 「まあこれで動き出しても饅頭よりゆっくりできてないわけだけどね」 これが決定的だった。もはや二匹は動く事はない。 自分達が饅頭以下であるはずがないとでも言わんばかりだ。 そして男は残された饅頭の目や口といった装飾の無い部分だけを一囓りする。 「うん饅頭だ。それじゃあ、そろそろ正体を明かしてやってください」 「わかりました」 男の合図で店主が残りの饅頭達に手を伸ばす。 一つの皿にまとめられた饅頭達は一つ一つピンセットとナイフで拘束が解かれていった。目にはめられていたセロファンを外すと一様に涙を流し、唇や歯の癒着を切り離してやると声を出し始めた。 「「「「ゆっくりしていってね!! ゆっくりしていってね!!」」」」 滝のように涙を流しながら必死に叫ぶ子ゆっくり達がそこにいた。 自分達は饅頭じゃない。気が付いてくれ。痛いから助けてくれ。 心で呼びかけても気が付かなかった目の前の二匹にきちんと聞こえるように叫んだ。 ここにいるのはあるものは飾りを奪われ、またあるものは髪を剃られ、口を閉じられ、目も奪われ、すべてを奪われた子ゆっくり達である。 するとどうだれいむとまりさは微かに動きを見せた。 二匹の心の動揺が手に取るように分かる。 饅頭が動き出した。男が美味しそうに食べた饅頭が急に動き出したのだ。 じゃあさっきお兄さんが食べたのは饅頭だったのかゆっくりだったのか。 あれは饅頭が喋っているだけだ。 でもゆっくりではないのだろうか。一番右の饅頭はどうみてもれいむだ。 しかしあんなに叫んでいるようではゆっくりできていないゆっくりだ。 あれ? やっぱりゆっくりななのか? いやいやあれは饅頭のはずだ。 それとも……。 「饅頭はゆっくりでゆっくりは饅頭だよ」 そうかそれならりかいができる。あれはまんじゅうでありゆっくりなんだ。 ということはじぶんたちもまんじゅうでありゆっくりなんだ。 そうか。じぶんたちはまんじゅうなのか。 れいむとまりさは考えるのを止めた。 あとがき わからなかったら人に聞く!ということでゆっくりを問いただしてみた。 ゆっくりが饅頭だと決めつけてかかってるから条件が平等ではないけどそこは華麗にスルーしてください。 あと同じようなネタがあるそうなので目新しさはないかもしれないです。 和菓子屋さんは自分のSSに出てきた人を再登場させてみたり。飴細工もできるようにしちゃった(ノ∀`) プロットなしの走り書きだからおかしいところもスルーしてください
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その日は縁日だった、何気なく立ち寄ったゆっくり屋で、私は子ゆっくりを買うことにした 子ゆっくりはテニスボールくらいの大きさで、みんな元気に跳ね回っていた 私は隅っこにいた、ゆっくりれいむを一匹買うことにしたのだが 「いやだよ!まりさとはなれたくないよ!」 「そうだよ!まりさはれいむといっしょにいたいよ!」 などと、野良ゆっくりだった頃の友達だろうか?れいむを連れて行こうとする私にまりさが抗議をする 怒ったテキ屋の兄ちゃんが、ゆっくり棒で軽く殴るが連れて行かせまいと、れいむの前に立って体を膨らませて威嚇している ゆっくりの美しき友情に心底感動した私は、当初の予定を変更して、この仲の良いゆっくり達を全て買い取ることにした 「一匹飼うのも二匹飼うのもそう変わりません、仲の良い友達同士、離れ離れにするのは酷なことですからね、二匹とも買い取りましょう」 「そうか、いやぁ~すみませんね、お兄さん」 仲間と離れ離れにならず、みんなで一緒にいられると聞くとゆっくり達はとても喜んでくれた 「ゆゆ~!ありがとうおにーさん!」 「まりさたちをゆっくりかわいがってね!」 君達を可愛がる?そんな事をする気は毛頭無い こうして二匹のゆっくりを購入した後、途中で射的をしたり、綿飴やりんご飴を買ったりして家路についた 道中、ゆっくり達は歌を歌ったり、仲間と一緒にとび跳ねたりして楽しそうにしていた 見ていると本当に心がなごむ、愛らしい姿なんだろう、最も私には不快にしか映らないが お腹がすいたというので千切った綿飴を少しあげると、喜んで食べてくれた 「おにいさんはゆっくりできるひとだね!れいむとってもゆっくりできるよ!」 「おいしいおかしだね!とってもおいしいよ!」 普通のゆっくり達ならお菓子を奪い合ったり、喧嘩をするが、このゆっくり達は平等に綿飴を分け合って食べている ゆっくり達の顔はどれも名前の通り、安心しきった、ゆっくりとした表情をしていた あぁ、早くこの顔を絶望に歪ませたい 家に着くと、ゆっくり達はさそっくお家宣言を始めるゆっくり達 「おっきなおうちだね!れいむたちのゆっくりプレイスにするよ!」 「まりさたちにぴったりのおうちだね!」 家に入るとすぐに自分たちのお家宣言をする、これはゆっくりの悪い癖だ、このセリフのせいで虐待されたゆっくりはどれだけ居るのだろうか? ともかく玄関先で騒がれては近所迷惑になってしまう、私はゆっくり虐待用の部屋にゆっくり達を連れていき、籠から出してやる ゆっくり達は無邪気に飛び跳ねながら楽しそうにしている虐待し甲斐のあるゆっくり達だ 「おにいさん!おなかへったよ!」 「ごはんをもってきたらまりさたちのおうちでゆっくりしてもいいよ!」 何がおなか減っただ、身の程をわきまえないとひどい目にあうということを教え込んでやる 楽しそうに飛び跳ねているれいむの髪を掴んで、乱暴に持ち上げる 「いっ!いたいよおにいさんゆっくりおろしてね!」 痛みに顔をしかめながら、れいむは私をぷくーと膨れて睨みつけてくる お友達が痛い目に逢っているのを見るなり、まりさもぷくーと膨れて怒っている 「おにいさん!れいむのかみをつかむのやめてあげて!」 友達が痛い目にあうと、自分のことのように怒る、良い子だな本当に、だからこそ痛めつける 「ははは、すまないね僕は良いゆっくりにも、悪いゆっくりにもとても厳しいお兄さんなんだ 特にこのれいむは心の汚れた悪いゆっくりだから、特別痛めつけてやるんだよ」 私の滅茶苦茶な説明を聞くなり、れいむは涙声で反論する 「ひどいよ!ひどいよ!れいむはいいゆっくりだよ!」 うるさいゆっくりだ、お仕置きが必要だな、私は素早くポケットから縫い針を取り出すとれいむの後頭部に軽く突き刺す もちろん、これで殺すわけではないあくまで浅く突き刺す、しかしれいむにはとても痛かったようだ 「ゆ゛っ゛!いだぁい!」 れいむの声がうるさいので、泣きわめくれいむにゆっくり用の猿轡をつけると、加工所のベストセラー商品、透明な箱に入れる ちなみに、この透明な箱の底には薄く水が張っておいた、少しでもゆっくりに不快な気分になってもらうための一工夫だ 中でれいむはふごふご言っているが無視 まりさはれいむを傷つけた私に向って怒鳴り始めた 「ひどいよおにいさん!まりさたちのおうちからでていってね!」 馬鹿なゆっくりだな、ここは先祖代代受け継いできた家だ、貴様らの家だと笑わせるな 「ここが君のうち?馬鹿言わないでくれ、先祖代代受け継いできた家なんだぜ 君みたいな身の程知らずの馬鹿には死ぬまで苦しんでもらうよ」 私はまりさの帽子を取り上げると、まりさの頭を針で何度も突き刺す 「ゆゆっ!いだいおにーさんやめて!やめて!」 まりさは針から逃げようと右往左往逃げ回る、愉快な奴だ 軽く蹴り飛ばすと「グッびゅ!」と鳴きながら転がっていく 箱の中でれいむがまたふごふご言いだした、大事なお友達が痛めつけられるのをよく見とけ、ボケが 痛みで動けないまりさをれいむと同じ様に、透明な箱に入れる そして、箱の中に河童印の唐辛子スプレーを吹きかける 「ゆぎゅっ゛つ゛!い゛だぁ!」 体中に焼けるような痛みを感じて、鼻水と涙を流しながらまりさは悶え苦しむまりさ 苦し紛れに飛び跳ねているから、透明な箱中に鼻水や涙が飛び散っている、汚いゆっくりだ さて、少し運動もしたし腹が減った夕食にでもしよう 私は虐待部屋から出るとすぐ、食事を始めた 炊き立てのご飯に昨日のカレーの残りと温泉卵を乗っける、独り身だと夕食なんたこんなもんだ 食べ終わるとすぐに私はゆっくり虐待部屋に向かう 食事の間中も頭の中はゆっくりを痛めつけることで一杯だった、こんな私は巷で話題のゆっくり虐待脳なのだろうか? 私は虐待部屋に戻ると、透明な箱に入っていたれいむとまりさを乱暴に引きづり出した れいむは箱から出るなり私に体当たりをしようとする、しかし、長い間底部が水に浸かっていたせいか、ふやけてうまく跳ねれない かといって、罵詈雑言を吐こうにも猿轡を噛んでいてはそれも叶わない、結局膨らむだけにしたようだ 一方まりさはさっきのスプレーでのどを痛めたのか、しきりに咳をしている ざまぁみろゴミ虫め 「君達も疲れているだろう、このダンボールの中で寝なさい」 出来るだけ優しく言ってやったが 「ん~!んんむんむ~!」 「おにいさんのいうことなんかきかないよ!とっとときえてね!」 だそうだ、人の好意も素直に受け取れない糞ゆっくりは…こうだ! 二匹の髪を掴むと、ダンボールの中に手加減して叩きつける 「ゆ゛っ!ひどいよおにーさん!」 「ん゛ん゛んぅ!ん゛~む゛ぅん!」 「ゆっくりできてないよ!れいむだいじょうぶ!れいむ!」 まりさは体が少しへこむ程度で済んだが、れいむは違った 水を吸ってふやけていた底部が破けて、餡子が滲み出できている 痛みに身をよじって体を揺らしている、おおきもい、きもい こんなに痛がるなら猿轡を外してからやればよかった、そうすればれいむの苦しむ声をたっぷり聴くことができたのに 少し軽はずみな行為をしてしまった事を恥じながら、れいむの猿轡を外す 「ゆ゛ぅえ゛っぐ…ひ゛っぐれ~むのあしが!」 「おちついて!ゆっくりなおるからおちついてね!」 「ゆっぐ…ひっ…ぐ…ゆっゆ」 「おちついて!だいじょうぶだよれいむ!」 ゆっくりにとっての足の部分が破けたショックで、過呼吸気味のれいむを落ち着かせようと、まりさが頬擦りを始めた 頬擦りはゆっくり達の友愛の証でこれをする方もされる方もゆっくりできるらしい しかし、私に貴様らをゆっくりさせる気は全く無い ゆっくり共の入ったダンボールを持ち上げると、上下左右に素早く小刻みに揺らす 中のゆっくり達はピンポン玉のように、あっちに飛んだりこっちに飛んだりして、ダンボールにぶつかる度に悲鳴を上げているいる これなら、ゆっくりピンボールとか作ったら売れそうだな 「じしんだよ!こわいよいやだよ!」 「いだいよ!いだっひぅあしがいっだいよぉ!」 まりさは地震と勘違いしてしまったようだ、眼を固くつぶって震えながら転がっている、馬鹿な奴だな れいむの方は揺れて転がることで傷口がどんどん広がっている、漏れ出す餡子の量も多くなってきている ここで殺すのもありだが、もう少し生かしてやることにした ダンボールから二匹を出すと、まりさが私に泣きついてきた 「おにーさん!このままじゃれいむがしんじゃうよ!いままでのことゆるしてあげるかられいむをなおして!」 「まりさだけでもにげて!このままじゃまりさがゆっくりできなくなるよ!」 「れいむはだまっててね!まりさはれいむといっしょじゃなきゃゆっくりできないよ!」 この言葉には普通の人なら感動するだろうが、私には骨の髄までゆっくり虐待の血が流れている どんな感動的なことをしたとしても、それがゆっくりなら虐待するまでだ 「なるほど、まりさはれいむのことを治してあげたいんだね?」 「そうだよ!ゆっくりしないでれいむをなおしてね!」 「しょうがないな、私なりのやり方で治してあげるよ!」 私は素早くれいむを仰向けにすると、濡れてふやけた底部の皮をむりやり剥ぎ取る 「ゆっ!いだい!いだぁい!いだい!」 「れ…れいむになにするのー!しね!しね!」 まりさは顔を真っ赤にして私に突撃してくる、それこそ私を殺すつもりの体当たりだったのだろう しかし、しょせんはゆっくり、痛くもかゆくもない、むしろぷにっとして気持ちいい だが、ゆっくり風情が人間様に楯突くとはどういうつもりだ 私は力の差を教えるためにも、まりさを捕まえると、右目の部分に噛み付き、引きちぎった 口の中が程よい甘さでいっぱいになる、しかし私は辛党だ、ゆっくりなど食べても不快な気分にしかならない 嫌々、何度か咀嚼してすぐに吐き捨てる、左目は縫い針で何度も突く、突き刺すたびに目からは餡子とは違った、透明な液が噴出する 言葉にならない叫びを発するまりさを思い切り殴りつける、後頭部がへこんで口からボトボトと餡子をおう吐し始めた ふぅ…すっきりした、たまにはこんな風にワイルドに痛めつけるのも悪くない 第一、れいむに関しては本当に直してやるつもりだったんだ、それを死ね、などと言われたら少しくらい怒ってもしかたないではないか 「こないでぇ!いじめるのはまりさにして!こないで!」 「ぎぃ!う!うっぷうっ…おぇ~」 さて、れいむはというと、さっきまりさにやった折檻がよほど恐ろしかったようだ 足のない身で、必死に私から離れようとしている まりさの方は、噛みちぎられた右目のあった場所と口から、命の源の餡子を垂れ流している 左目はどんより濁って、なにも映してはいないようだ しかし、れいむの「いじめるならまりさにして」発言は良く聞こえたようだ 「びどぉい!でいむびどいよ!」 と、餡子を口から飛ばしながら叫んでいる、それから一分とかからずまりさは息を引き取った まりさが死んだことを確認すると、私はまりさの底部をれいむのように剥ぎ取った 私は、逃げようとするれいむに近付くと、出来るだけ穏やかな表情を作って話しかける 「れいむ、今から私は君の体の治療をする、痛くするつもりは毛頭無い けど、もし逃げようとしたり、泣いたり、私を不快にするようなことをしたら、ただではすまないよ」 「わわかったよ!にげないしなかないよ!」 それなら良い、私はまりさから剥ぎ取った底部をれいむの底部に張り付ける、ぴったりとはいかなかったが ゆっくりは単純でいい加減な生物だ、すぐに癒着するだろう 「これで大丈夫、しばらく動かなければきちんと歩けるようになるよ」 「ゆっ!それじゃあうごかなふぎゅ!」 すかさずれいむを踏みつける 「何かしてもらったら、普通はありがとうございましたって言わないかな?」 「ゆぐ…ありぎゃとうごじゃいまちた!」 痛みに耐えてれいむはお礼を言った、この男に逆らえば絶対にゆっくりできない、というのがゆっくりブレインにもよく分かった それからしばらくすると、れいむの皮とまりさの皮はきっちり癒着して、普通の状態に戻っていた 「良し、治ったね、それじゃあちょっとジャンプしてくれ」 「ゆっ!わかったよ!ぽよーん!」 なるほど、きちんと癒着しているようだジャンプ力も問題ない れいむが不快な擬音を口にして飛び上った瞬間、私はれいむの底部をけり上げた 「ゆぎゅ!」 移植したばかりだった、れいむの底部は簡単に破れた 痛みに悶絶するれいむを無視して、まりさの死骸から口を削ぎ落とす そして底部の破れた場所に、無理やり押しあてる 「ぎゅぅ!!!いふぁい!いだいぢだい!」 「黙れ、殺されたいか」 「ぎゅ!っつ…ん…む」 私のことを本当に恐れているのだろう、れいむはすぐに静かになった それから五分後、れいむは底部に口を持つ、世にも珍しい二つの口を持つゆっくりになっていた その結果に満足した私は、れいむを小さな透明な箱に入れると、今日一日の疲れを癒すべく寝室に向かった 一方れいむは、男への怒りで体中が爆発しそうだった 透明な箱はれいむのサイズより一回り小さかったが、男に無理やり押し込められた、身動き一つ取れない なんで可愛いれいむがこんな目に会わなきゃいけないの? 腹立たしげにれいむは呟いた 「「ゆっくりできないよ!」」 れいむは驚愕した、自分の体から死んだはずのまりさの声がしたのだ 「「まっまりさ!いきてたの?」」 しかも、不気味な事に自分の言うことを真似してくる これは、まりさの霊がれいむを祟りに来たんではないか そう思うと、体中から冷や汗が出てくる 「「れっれいむはわるくないよ!」」 「「しんでるくせにふざけないでね!」」 「「まねしないでよ!」」 「「ねぇ!やめてよ!」」 「「れいむはわるくない!ほんとだよ!」」 「「おねがいだから!まねしないでね!」」 「「やめてやめてれいむはわるくないよ!」」 れいむは朝まで自分の発した声に怯えていた 私は朝起きると、朝食をしっかり取ってから虐待部屋に直行した 中ではれいむが何やらぶつぶつ言っている、そして同時に死んだはずのまりさの声も聞こえてくる、どうやら成功したようだ 「おはようれいむ、昨日はよく眠れたかい?」 「「おにーさん!たすけて!まりさがどこかにいるよ!れーむのまねをするよ!」」 私は塩水をたっぷりれいむにかけてやった 「「ぎゅぅ!からいよ!くるしいよ!」」 「朝のあいさつはおはようございますだろ、言ってみなさい」 「「おはようございます!」」 「よろしい」 れいむは辛い辛いと騒いでいたが、いきなり真っ青になって私に体の異変を訴えてきた 「「ゆ゛っ!へんだよ!すっごくへんだよ!」」 「何が変なんだい、言ってごらん、れいむ」 「「れいむのあしがあじがわかるんだよ!へんだよ!おかしいよ!」」 私は苦笑してれいむの疑問に答えてやった 「それはね、君にまりさの口を移植してやったからさ、君の足にはまりさの口があるんだよ」 「「そそんなはずないよ!いやだよおくちはひとつでいいよ!」」 真実を教えてやったのに、そこまで言うなら仕方ない、れいむを透明な箱から取り出すと床に落とす ゆっくりの底部は頑丈で弾力がある、普通のゆっくりならこれ位痛くもかゆくもない しかし、れいむは違った 「「いだぁい!いだぁいよなんで!」」 れいむの底部には、まりさの口が付いていた ゆっくりの口はそう頑丈じゃない、裏返してみると何本か歯がへし折れていた 騒ぐれいむを無視して、私は一メートル四方の超巨大透明な箱を持ち出す 中にたっぷり塩を入れると、その中にれいむを放り込む れいむは底部を塩の床につけるなり、辛い辛いと騒ぎだした 騒げば騒ぐほど、底部の口から塩がれいむの体内に入っていく あと数分もすれば、このれいむは大嫌いな塩でお腹いっぱいになれるだろう 「ゆっくり味わって食べなよれいむ、塩はたくさんあるんだから」 「「いや!たすけて!ゆっくりできないよ!からいよ!くるしいよ!たすけて!」」 二つの声で何かに助けを求めるれいむ ゆっくりにとって、塩は大量に摂取すれば死の危険性もある食糧だ、帰ってくる頃には苦悶の表情で死んでいるだろう 朝から愉快なものが見れた私は、虐待部屋から出た後すぐにゆっくり加工所に向かった そう、私はゆっくり加工所で働いているのだ、家に帰っても虐待、職場でも虐待 私はこの世で最も幸せな男なのではないだろうか、といつも思う 自分の本当に好きなことを職業にできたのだから 作:ゆっくりな人 以前書いた虐待 ゆっくりカーニバル 臭い付きゆっくり(上) 臭い付きゆっくり(下) このSSに感想を付ける
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現代もの ゲス、レイパー、ドス バッジ設定あり 俺設定 虐待分薄め? 「ゆっくりの失踪事件、ですか?」 渡された資料に目を通しながら、俺は編集長に言った。 都内にある、とある出版社の編集部。俺はここでゆっくりの総合雑誌である『月刊ゆっく り』の作成に携わっている。 ゆっくりの生態から飼い方、取引価格の相場に法改正の動き、愛でに虐待と何でもござれ の雑誌だ。愛でと虐待のページがそれぞれを好む読者への配慮として閉じられているため、 全体の半分が袋とじという妙な外見となっている。 五十代も半ばを過ぎた上司は、かけた眼鏡を押し上げてから俺の言葉に頷いた。 「ペットの盗難事件じゃ……ないようですね」 最初に考えたのはそれだ。 希少種や有名なブリーダーのしつけを受けたゆっくりは高値で取引される。それを狙った 犯行がかつて流行ったが、労力の割りに合わなかったのか、すぐに下火になった。 現在起こっているゆっくりの盗難は極端な虐待派か、極端な愛で派のどちらかというのが 実際のところだ。 今回もそんなところだろうと思ったが、資料によると被害を受けているのは―― 「失踪しているのは野良が大半だ。飼いゆっくりのケースもあるが、報告は少ない。 加工所の野良対策部からの情報が23件、飼い主からの情報が5件だ」 「……これ記事にする価値、あるんですか?」 俺はそう言わずにはいられなかった。ゆっくりが、特に野良がいなくなることなど珍しく も何ともない。 現代日本に突如として現れた謎の動く饅頭、ゆっくり。奴らは生物として、種として、異 常と言えるほどに弱い。 他の動物に食料にされ、池や川に落ち、車に轢かれ、辛味を食して中身を吐き、人間に潰 される。 今回もどうせ人目につかないところで死んだのだろう。 しかし編集長は、そんな俺の考えを見通したかのように言った。 「ただ死んだのならば無いだろう。だが死んだのではなく『いなくなった』のだ。 仲間であるゆっくりの目の前で、忽然と消えたらしい。 飼いゆっくりの方は、飼い主が直接目にしたケースが無いから何とも言えないが……」 言うなれば、ゆっくりの神隠しか。俺はこの件に興味を持った。 どこから来たのか解らず、言葉を話し、中身は餡子。そんな不思議ナマモノに、新たな不 思議が加わるかもしれない。 子供のような好奇心に感情を揺らされ、俺は笑みを浮かべていた。 「分かりました、締め切りはいつですか?」 「雲をつかむ様な話だからな、そもそも記事にならないかもしれん。 取りあえず二週間後としておくが、形にならなくても報告はしてくれ」 他の仕事も有るが、終わる目処は付いている。差し当たっての問題は無いだろう。 俺は編集長に頭を下げ、自分のデスクに戻った。 タバコを咥え、火をつけようとすると隣のデスクの同僚から「禁煙です」と言われた。 そんなことは分かってるよ、癖だちくしょうめ。ちょっと前から喫煙所以外では吸えなく なった。世間での流行りらしい。 俺はタバコを箱に戻すと、混沌としたデスクの上を整理し始めた。 結局その日は、資料を読むのと、事件に遭った飼い主に取材のアポを取るので終わってし まった。 ――ゆっくり失踪事件―― 「八雲出版『月刊ゆっくり』のものですが」 2日後、静かな住宅街にある一軒の家の前で、俺はインターホンに向かっていた。 取材に応じてくれた飼い主の一人の家だ。かなり大きな庭付き一戸建てである。裕福な家 庭なのだろう。 ここの夫人はゆっくりれいむを一匹飼っていたが、一月ほど前に失踪したらしい。 機械越しに二、三言葉を交わした後で、飼い主である夫人の案内でリビングに通された。 金をかけている。家の中に入っての第一印象はそれだった。家具はどれも気品漂うものだ。 茶を淹れると言って席を離れようとした夫人に、飼っていたゆっくりの写真は無いか、と 尋ねた。 「それでしたらアルバムが有りますので、持って参ります」 「いえ、一枚だけで結構ですので、なるべく新しいものをお願いします」 あら残念、とばかりに夫人は肩を竦め、リビングから出て行った。 危ないところだった。電話での態度からすると、夫人はれいむを溺愛していたようだった。 アルバムを見ながらの解説付きゆっくり自慢なんてのは堪らない。 「これが、私の飼っていたれいむです」 戻ってきた夫人から差し出された写真には、しつけ度最低を表す銅色のバッジをリボンに 付けた、バスケットボール程のでっぷりと肥え太ったゆっくりれいむが写っていた。 下膨れの身体に、にやけた口元。垂れた目尻に、つり上がった目元。そして撮影者を見下 すような視線。 栄養状態が良かったからか肌のツヤ、髪質は申し分ないものの、間違いないだろう。素人 の金持ちがゆっくりを飼うと、甘やかしてしまって大概はこうなる。こいつはゲスれいむ ――『でいぶ』と呼ばれる存在だ。 出された紅茶を一口飲んでから、俺は本題を切り出した。 「それで、失踪していたゆっくりの話ですが……」 それからが大変だった。よくもここまで舌が回るものだと感心するほど、夫人は飼ってい たれいむについて語り始めた。 自分がどれほどゆっくりを可愛がっていたか。 どれほど可愛かったか。 失踪したことでどれほど自分が悲しんだか。 それらを延々と語った。 「食事は毎日最高級のゆっくりフードを三回、おやつには有名なパティシェ監修のケーキ を与えていましたわ。 それでもグルメなんでしょうね。より美味しい食べ物をねだって来て、その時の眼差し が愛らしくて……」 こちとらコンビニ弁当が主食だというのに、いい身分だ。挙句にそれにさえも満足できな いとか、甘やかすにもほどがある。 「れいむに食べさせるために、評判のお菓子屋を回るのが趣味になってしまいました。 でも可愛いれいむのためですもの、苦労も喜びのうちですわ」 飼い主は嬉々としてやっているし。親バカならぬ飼い主バカだ。仕事柄この手の人間には よく会うが、何度目でもうんざりする。 「部屋はすぐに庭に出れる日当たりの良い二十畳ほどの部屋を与えてあげましたし、庭の 外にも出たいと言うので塀にれいむ用の出入り口を作ってあげました。 とってもきれい好きで、少しでも部屋が汚れるとちゃんと掃除の必要があると伝えて来 ますのよ」 俺の部屋なんてボロアパートの6畳1R……やめよう、これ以上は自分が惨めになる。 それときれい好きなら自分で掃除ぐらいしろと。 「自尊心も強くて、おもちゃで遊んであげようとすると、それは自分のものだと主張して、 小さな身体で必死にじゃれついてきて、本当に可愛らしかったものです。 他にも……」 じゃれてるんじゃなくて、攻撃していたんだろう。れいむが飼い主と自分の立場を理解し ていたとも思えないし。あ、遠い目してる。これは止まらないな。 だが聞きたいのは失踪の瞬間の状況だ。これ以上このマシンガントークに付き合ってはい られない。夫人に目をやると、涙を流して悲しみに嘆いている。俺は気づかれないよう溜 め息をついて、気合を入れるように紅茶を飲み干した。既に冷めてしまっている。 それから何とか夫人を宥め、失踪当時の状況を尋ねたものの、大した情報は得られなかっ た。 その日れいむは昼食を食べるといつものように(午後の日課らしい)家の外に出かけてい ったが、夕食の時間になっても帰らない。飼いゆっくりの証であるバッジには発信機が付 いているため、それを頼りに探したが見つかったのはバッジだけだった。近所の公園に落 ちていたバッジは無理やり外された様子も無く、周囲には何の痕跡も無かった。 そこで夫人は公園に住んでいる野良のゆっくりに尋ねてみたという。 野良ゆっくりたちは、確かにバッジを付けたれいむが来ていたこと。 そのれいむは「自分をゆっくりさせろ」と繰り返し、非常にゆっくりできなかったこと。 現れてしばらくしてから、れいむは突然消えたこと。 以上のようなことを久しぶりの「あまあま」に舌鼓を打っていた野良たちは、食事の邪魔 をされたことに気分を害しながらも餡子まみれの口で答えたらしい。 その野良を命の危険があるところまで叩きながら聞いたというので、間違いは無いだろう。 最初は野良が食べている「あまあま」が、自分の飼いれいむだと思ったらしい(結局ただ の饅頭だったとか。ゆっくり好きの人間が与えたのだろう)。 愛で一辺倒の飼い主かと思ったが、飼いれいむを食われたと勘違いして怒り心頭だったと はいえ、中々ワイルドなことをするものだ。 自身もゆっくりを飼っているのに野良にはそんなことができるのか、とそれとなく言って みたが 「ウチのれいむと薄汚い野良ふぜいを一緒にしないで下さい!」 と烈火のごとく怒られてしまった。藪蛇だったか。 収穫はそれだけだった。結局何も分かっていないに等しい。 その後も何日かけて被害に有った飼い主のうち、アポの取れた人に話を聞いたが、有力な 情報は無かった。 共通点といえば、飼い主は揃って飼いゆっくりを甘やかしていたことぐらいだ。 そして必然的に、その全てが筋金入りのゲスゆっくりだった。ゆっくりに筋も金も無いが。 ある飼い主を訪問したときは、そんなゆっくりのホームビデオを延々と見せられて辟易し たものだ。 食事、部屋、飼い主の対応。ありとあらゆる環境に対して文句を言い、飼い主を罵倒する。 無能だ。この奴隷が。じじい。ばばあ。 貧弱な語彙であらん限りのい悪態をつく。 こんなゲスをよく可愛がれますね、とリニア長野ルートばりの限りなく迂遠な言い方で尋 ねてみたが 「いやあ、この素直じゃないところが可愛くてね。ツンデレっていうやつ? 内心では感謝しているのに口を開けば憎まれ口が出てくるのが良いんだよ」 と根本から理解していないようだった。ダメだこいつ、もうどうにもならない。 「仕方ない……野良をあたるか」 最後に尋ねた飼い主の家を出た後、タバコに火を点けながら俺は呟いた。 報告件数こそ多いものの、野良よりも飼いゆっくりへの調査を優先させてきた。 飼いゆっくりならば話を聞く相手が人間だから、まともな情報が期待できると踏んだのだ が、あてが外れた。 ゆっくりが直接の情報源となると信頼性に欠けるが、連中は失踪の瞬間を目の当たりにし ているのだ。 ペット自慢ばかりで肝心の目撃証言の出ない飼い主を相手にするよりは幾分マシだろう。 取材を始めた時とは正反対の思いを持って、一番近い現場に足を向けた。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「はいはいゆっくり」 俺の目の前には赤リボン饅頭と黒帽子大福。ゆっくりれいむとまりさの番だ。 お決まりの挨拶に、本日5本目となるタバコの煙を吐きながら適当に返した。 ここは団地の中にある公園。ちょっとした林があるため、野生動物が数多く棲む中々良い 場所だ。 目の前の饅頭が大量に住み着いてなければ、だが。 「おじさんはゆっくりできるひと? れいむといっしょにゆっくりしていってね!」 都会に住む野良には珍しく、中々純粋な個体のようだ。 俺は仕事柄相手にする機会が多いが、基本的にゆっくりは好きではない。 生意気だったり、媚びたりする態度が気に入らないし、仕事も当初は政治部を希望してい たのだ。 だがこのれいむを見ていると、少しは考えを改めてもいいかもな、と思う。 「にんげんさんはあまあまをもってきてね! そうしたらまりさがいっしょにゆっくりし てあげるよ!」 前言撤回。やはりゆっくりは嫌いだ。 「ちょっと聞きたいんだが、この辺りで最近突然いなくなったゆっくりっているか?」 ゆっくりでも取材の相手だ。一応の礼儀として、まずは平和的に尋ねる。周囲の目もある し、それで情報が得られれば、それに越したことは無い。 だが短い目で見れば、ゆっくりは暴力で従えた方が良い。どうせこの十数分、一度きりの 関係である。信頼させて情報を引き出すなど非効率的だ。 「じょうほうりょうとしてあまあまをもってきたらおしえてやらないこともないよ!」 人が優しく聞いているのに、いきなり見返りの要求か。やはり饅頭相手に礼など意味のな いものだ。この仕事を始めてからそう思うのは何度目か。それでも一度目は礼儀なんても のを考える俺は、律儀なのか馬鹿なのか。多分、後者だろう。 「はやくしてね! さっさとしてね……ゆぐぐ!?」 「質問に答えろ」 たわ言を抜かしたまりさを踏みつけ、俺は再度尋ねた。相手が無礼を望むならこちらも相 応のやり方をするまでだ。 足もとにれいむが体当たりを仕掛けてきたが、持ち上げて八つ当たり気味に地面に叩きつ けた。 ぴくぴくと痙攣しているし口から餡子が漏れているが、死にはしないだろう。あと30分 ぐらいは。 足もとのまりさがれいむ、れいむと騒がしくなったので踏む力を強めた。 「騒ぐな叫ぶな喚くな。れいむのようになりたくなかったら、聞かれた事に答えろ」 「わがりまじだぁぁぁ! なんでもごだえまずぅぅう!」 だから静かにしろって言ってるだろうが。二度とここを訪れる事は無いだろが、周囲の人 間に白い目で見られるのはやるせない。 一部興奮するような目で見ているもの、同調するような視線を送ってくる者もいるが。 違う。あくまで取材の手段だ。俺に虐待趣味は無い。 「この辺りで、最近突然いなくなったゆっくりはいるか? 事故で死んだとか何処かに行って帰って来なくなったとかじゃなく、他のゆっくりが見 ている前で消えたやつだ」 靴の裏でぐりぐりとまりさをえぐる様にして聞くと、恐怖に導かれてぽつぽつと喋り始め た。 「い、いなくなったのはありすだよ! とってもびじんで、とってもゆっくりしてたよ! みんながありすのことがだいすきで、ごはんやたからものをあげていたよ!」 美ゆっくりなのを利用して、他の野良に貢がせていたのか。中々ゲスなようだ。 「まりさもいつかありすとすっきりして、ゆっくりした赤ちゃんがほしかったよ! ありすはいつも「ゆっくりさせてね」っていっていたから、まりさとの赤ちゃんがいれ ばゆっくりできたはずだよ!」 お前れいむと番じゃなかったのか。浮気か、ありすが失踪したかられいむに乗り換えたの か。どちらにしろ碌な個体じゃないな。 「でもある日いきなりいなくなっちゃったんだよ!」 ありすのおうちにあったごはんやたからものは、みんなでわけたよ! あまあまおいし かったよ! のうこうなかすたーどだったよ!」 野良のくせに甘いものなんて蓄えていたのか。 それもどうせ貢がせたものだろう。 「これだけおしえてあげたんだから、まりさをはなしてね! さっさとはなしてね! お わびにあまあまちょうだいね!」 これ以上はこいつから聞ける情報は無いだろう。そう判断した俺は、目玉にタバコを押し 付けて火を消し、悲鳴をあげるまりさを踏み潰した。 しまったな。殺すつもりまではなかったのだが、ついイラっとしてやってしまった。 周囲には数匹のゆっくりが怯えた表情でこちらを見ている。自分達を害する存在を目の当 たりにして逃げるなり隠れるなりしないのは愚かとしか言いようが無い。 だが、更に情報が欲しい俺には好都合だ。とりあえず友好を示そうと、俺は微笑みながら ゆっくり達に向かって歩いていった。 その後近くに住む他のゆっくりを何匹か尋問してみたが、似たようなことしか聞けなかっ た。 ありすが消える瞬間を見たやつもいたが、まるで役に立たなかった。 目の前で突然消えた、ということを拙い語彙で言うだけだったのだ。 それにしても無礼な饅頭たちだった。人の笑顔を見て、引きつった表情で逃げ出すのだか ら。その結果、公園に餡子の山が出来てしまった。 残ったゆっくりは甘いものが食べられるのだから、感謝してほしいものだ。 そんな事を考えながら、俺は次の現場に向かった。 そうして10余りを回ったところで一旦職場に戻った俺は、頭を抱えていた。 進展は無い。幾つかあった目撃証言も、消えるようにいなくなったという意味のものばか りだ。ゆっくりの言語能力では詳しい説明など無理だったのだ。 俺はデスクで取材のメモを読み返しながら、何か発見はないか、と考えていた。 一匹目。飼い。ゲスれいむ。目撃者は野良。失踪当時、その野良は饅頭を食していた。 二匹目。飼い。れみりゃ。目撃者野良さくや。「じゅーしーなでぃなー」を野良れみりゃ と食していた。 三匹目。飼い。ゲスまりさ。目撃者無し。現場に残ったバッジに餡子が付着していた。 「……ん?」 ふと思い立って、更に読み進める。 四匹目。野良。ありす。貢がせ。目撃者野良れいむ。巣にカスタードの蓄え。 五匹目。野良。ゲスまりさ。目撃者無し。巣に甘味。 六匹目。野良。ゲスまりさ。目撃者野良まりさ。周辺のゲスの憧れ。 「何だこれは……どういうことだ」 七匹目。野良。ドスまりさ。群れを奴隷のように扱う。目撃者群れの多数。巣に大量の甘 味。 八匹目。野良。レイパーありす。目撃者被害者の野良まりさ。 九匹目…………。 …………。 異常だった。失踪したゆっくりのほぼ全てがゲス。それはまだいい。 問題なのは、その現場のほとんどには甘味が関係していること。飼いゆっくりならまだし も、目撃者となった野良にとって甘味は縁遠いものだ。 野良ゆっくりが甘味を手に入れる手段は少ない。最もありえるのは人間から貰うことだが、 事件のほぼ全ての場合で、関係したゆっくりが、しかも愛想の良くない都会の野良が甘味 を受け取っていたなどという偶然があるだろうか。 次に考えられるのは同族食いだが、これはゆっくりの間で禁忌とされている。可能性とし ては低い。 嫌われもののゆっくりが制裁されて食われたということは考えられるが、周囲のゆっくり に好まれていた貢がせありすやゲスの憧れ的存在だったまりさ、他のゆっくりに襲われて も撃退可能なドスなどの場合には可能性は薄くなる。 何か有るのかも知れない。俺は席を立った。 次の現場ではれいむが失踪していたが、やはりゲスで、失踪後発見した甘味を周囲の仲間 で食べたという。それはいなくなったれいむだったんじゃないか、と直接の目撃者のゆっ くりを含め、身体に聞いたが否定された。 その後さらに幾つかの現場で同じ事をしたが、結果は変わらなかった。 それに、最初に訪問した飼い主は、自分の目で、目撃した野良がゆっくりではない只の饅 頭を食していたことを確かめている。 やはり同族食いではないと考えるべきだろう。 俺はもう一度メモに目を通した。 れいむの場合は饅頭。おそらく中身は餡子だろう。 れみりゃは「じゅーしーなでぃなー」。おそらく調理された肉。 まりさは餡子。 ありすはカスタード。 現場に残っていた、目撃者である野良が食べていたものは、どれも『失踪したゆっくりの 中身』だ。ほぼ間違いなく、失踪ゆっくりは目撃ゆっくりに食われてしまったのだろう。 しかし目撃ゆっくりは同族を食べていない。いや、『食べたと思っていない』。彼らが食 べたのは『ただの饅頭』、もしくはその中身だ。 目撃ゆっくりは失踪ゆっくりを食べた。 しかし同族食いを認識していない。 目撃ゆっくりが食べたのは失踪ゆっくりの中身もしくは饅頭。 失踪ゆっくりは消えるようにいなくなった。 つまり―― 「ゆっくりがただの饅頭になった……?」 ゆっくりは飾りで互いを識別する。親子でもなければ、目の前で飾りが外されても、それ が誰だか分からなくなってしまう。 もっとも識別が出来ないだけで、「ゆっくりできないゆっくり」とは認識できるのだが。 もしも別のゆっくりが飾りのない、目も口も髪も無い「ただの饅頭」に突如変化してしま ったら、その瞬間を実際に見ていたとしても、ゆっくりが消えて饅頭が残ったように見え ないだろうか……? 「馬鹿馬鹿しい」 とは思いつつも、俺はその考えを捨てきれないでいた。普通ならありえない。だが相手は 普通の存在ではない。ゆっくりだ。もともとが動く不思議饅頭なのだから、普通の饅頭に なってしまうことだってあるかもしれない。 だが何故ゲスゆっくりばかりなのか? 俺は加工所の研究部へと電話をかけた。ゆっくりに関することなら、やはりあそこが一番 だ。 何と言ったらいいものか悩んだが、ストレートに 「ゲスゆっくりが普通の饅頭に変化する事例について知らないか」 と聞いてみた。これだけ聞いたら、正気を疑われるかもしれない。相手も戸惑っていたが、 思い当たる節があったのか、一人の研究者を紹介してくれた。 三日後、俺は都内のある大学の研究室を訪ねていた。部屋の入り口でノックをし、いらえ を聞いてからドアを開ける。 「いらっしゃい。待っていましたよ」 迎えてくれたのは、見たところウチの編集長よりも若い男だった。それで教授だというの だから大したものだ。互いに名刺を出して挨拶をする。 勧められた革張りの応接用ソファに腰かけ、ぐるりと部屋の中を見渡す。 普通の部屋だ。正直、拍子抜けした。 ゆっくりの研究者と言うから、その研究室たるや、ありとあらゆるゆっくりグッズで埋め 尽くされ、壁一面が水槽に改造されていて、各種のゆっくりが飼育されている。そんな光 景を想像していた。 それがどうだ。ドアノブに子ゆっくりのカバーなんて掛かっていないし、ゴミ箱はホーム センターで売っているプラスチック製のものだ。掛け時計は振り子にゆっくりが使われて いないし、観葉植物に刺してある栄養剤も普通。本棚は流石にゆっくり関係の本で埋め尽 くされているが、ゆっくりの入った水槽なんてものも無い。 出された茶菓子は饅頭だったが、まさかこれが……? 「ゆっくりではありませんよ」 はっとして顔を上げた。目の前にはまだ若い教授がにこにこと笑って座っている。 「ここに初めて来た人は、みんな同じことをする。部屋にあるものが、ゆっくり製じゃな いかって部屋を見渡すんです。だがそんなものは見当たらない。そこでお茶菓子には饅頭 を置いておく。するとお客さんはこう思うんです。ひょっとしたらこれがゆっくりじゃな いか、ってね」 どうやらこの教授の悪戯に、ものの見事に引っかかってしまったようだ。俺は苦笑するし かなかった。 「そりゃあ実験室では大量のゆっくりを保管していますがね、ここには赤ゆっくり一匹い ませんよ。自分の研究対象を無碍に扱うことはしませんし、虐待趣味は僕にはありません。 大体、誰よりもゆっくりの不可解さを知っている僕に言わせれば、あれを食べるなんて 蛮勇もいいところだ」 二人で一しきり笑いあったところで本題を切り出すと、教授は表情を引き締めて一つのビ デオを取り出し口を開いた。 「ゆっくりが単なる饅頭に変化する事例についての話、ということでしたね。一般の雑誌 の方からそう言われたので、些か驚きました。口で説明する前に、実際に実験の様子を見 てもらった方が早いでしょう。これは先日学会で発表したばかりのもので、研究誌以外の 記者さんに見せるのは初めてなんですよ」 そう言って再生されたビデオは一匹のまりさを飼育した実験経過を収めたものだったが、 その内容は凄まじいの一言に尽きた。 与える食事は最高級、部屋は広く快適で、飼育員はまりさの望みは何でも聞き、奴隷とし てまりさに扱われ、そして自身もそう振舞っていた。 数日前にれみりゃを甘やかして育てていた飼い主を訪れた際に、れみりゃのホームビデオ を見せられたのを思い出した。その飼い主はお嬢様に仕える下僕と言った態度でれみりゃ を飼っていたが、このビデオのまりさに対する飼育員の態度はそれを遥かに超えている。 ブラウン管を叩き割りたい衝動を抑えきれなくなった頃、『それ』は起こった。その時画 面の中ではまりさと飼育員が会話をしていた。 「どれいはさっさとごはんをもってくるんだぜ! まりさをさっさとゆっくりさせるんだ ぜ!」 「分かりました、まりさ様。まりさ様がゆっくりすると私もゆっくり出来ますので」 この「まりさがゆっくりすると自分もゆっくり出来る」というのが、ビデオの中で飼育員 が事あるごとに言っていた言葉だった。それに対してまりさは「かんだいなたいど」で笑 いながら許可してやる、というのが毎度のパターンだった。 「どれいのくせにゆっくりするなんてなまいきだぜ!」 だが今回は違った。飼育員はまりさをゆっくりさせようとしているにも関わらず、まりさ はそれに異を唱えたのだ。 「しかしまりさ様、まりさ様をゆっくりさせるのが私の役目です」 「うるさいんだぜ! まりさがゆっくりするのはとうぜんなんだぜ! なんでそれでどれいをゆっくりさせてやらなきゃいけないんだぜ! どれいのゆっくりなんかどうでもいいんだぜ! まりささえゆっくりできればいいんだぜ! わかったらどれいはゆっくりせずに、まりさをゆっくりさせるんだぜ! このよでただひとりゆっくりできる、えらいまりささまをゆっくりさせ…………」 まりさが意味のある言葉を喋れたのはそこまでだった。いや、言葉に限らず、何か意図の ある行動を一切取れなくなった。電源の落ちたロボットのように、全ての活動が止まって しまったのだ。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ」 数秒後、突如としてまりさが痙攣し始めた。目の光は消え、口は半開きになり、「ゆ」の一文字だけを壊れたテープレコーダーのように繰り返している。 精神崩壊でも起こしたのか、と俺は思ったが、事態はそんな単純なものではなかった。 まりさの壊れた声が続く中、まりさの帽子が無くなってしまった。輪郭がぼやけたかと思 ったら、空気に溶けるようにして消えてしまったのだ。 それだけでも自分の目を疑う光景だったが、まりさの変化はまだ終わらない。 帽子に続くように髪の毛が消え、目玉と口が周囲の皮に包まれるように消えた。 「開始から12日と5時間37分。実験成功」 飼育員の声がしたかと思うと、カメラがまりさにズームアップする。飼育員はまりさを回 転させて全方向を見せ、最後にまりさをナイフで切り、切断面をカメラに向けた。 そこには皮に包まれた黒い餡子だけが有った。もうまりさには帽子は無い。髪の毛も目も 口も無い。小麦粉の皮で餡子を包んだだけの存在、ただの饅頭になった。 「いかがでしたか?」 教授がビデオを止め、穏やかな声で尋ねてくる。俺は先ほどまで見ていたものに呆然とし、 どういうことか、と返すので精一杯だった。自分の喉から出たのを疑問に感じるほどに震 えた声だった。 俺とは対照的に平静な教授は、少し考えてから更に問いを重ねた。 「あなたは、ゆっくりは何故ゆっくりなのだと思いますか?」 質問の意図が分からない。俺は口を閉ざしているしかなかった。何しろビデオの内容だけ で、思考回路は糸口が見えないほど絡まってしまった。復旧には時間がかかる。 「聞き方が悪かったですね。ゆっくりをゆっくりたらしめている本質は何だと思います か? 刃物ならよく切れること。馬なら早く長い距離を走れること。人間なら二本の足で 歩くことと発達した知能でしょう。ではゆっくりでは?」 教授の落ち着いた声を聞いているうちに、ようやく少し冷静さを取り戻してきた。俺は考 え、口を開いた。 「……飾りを着けていること?」 「それは特徴的なことですね。ですがゆうか種のように飾りを持たない種もいますし、人 間も飾りを着けることはあります」 「饅頭であること」 「確かに大部分のゆっくりは饅頭ですが、ただの饅頭を見て、これはゆっくりだ、とは思 いません。本質とは言えないでしょう」 「人の言葉を喋ること」 「中々良いところを突いてきましたね。ですがそれは人間が喋ることが前提ですから、ゆ っくり自身には関係の無いことです」 そうして思いつくままに答えてみたが、どれも正解ではないようだった。俺は諦めて、投 げやり気味に言った。 「…………分かりませんね、降参です。そもそもゆっくりなんていう人間と饅頭を混ぜた ようなものに、本質なんてものあるのですか? 何を言っても人間か饅頭、どちらかの本 質になりそうな気がしますが。ゆっくりはゆっくりっていう生き物だからゆっくりなんで しょう」 教授は俺の言葉を聞いて、にこりと笑った。 「正解です」 「はい?」 「今あなたが言った通りですよ。『ゆっくりはゆっくりという生き物だからゆっくり』。 ナゾナゾのようですが、これに尽きます。その名にあるように、ゆっくりと言う言葉がゆ っくりの全てです。正確には『他者をゆっくりさせる』というのがゆっくりの本質と言え るでしょう」 俺はなるほど、と頷いた。ゆっくりは他者に出会うと、挨拶として「ゆっくりしていって ね」と言う。ゆっくりさせてね、ではなく、ゆっくりしてね、でもない。他者をもてなす ための言葉である「ゆっくりしていってね」。それはどんな種のゆっくりでも、赤ゆっく りでもゲスでも変わらない。 「れみりゃ種は相手が人間でも、自分に仕えることを要求します。それは本人の言うとこ ろの『えれがんとなおぜうさま』に仕えることが、相手にとってゆっくりできることだと 考えているからです。ゲスもそうです。自分をゆっくりさせることで相手がゆっくりでき ると信じているのです」 全ては相手をゆっくりさせるため。それこそがゆっくりの存在意義。かつて『ゆっくりは 棚に仕舞われたまま忘れられた饅頭が変化したものだ』と言われたことがあった。人をも てなすために作られた饅頭が存在を忘れられ、その無念の思いからゆっくりになるのだと いう。何を馬鹿な、とその時は一笑に付したが、今ではそんな話を信じてもいい気持ちに なる。 「ゆっくりが初めてこの世に現れた時、現在のように脆弱でもありませんでした。感情の 起伏は乏しく、表情の変化も皆無でした。 しかし人はそのようなゆっくりを望まなかった。異物であるゆっくりを排除する理由を 正当化するために、または保護欲を満たすために脆弱なゆっくりを求めた。嗜虐心をくす ぐるような、あるいは与えた愛情に反応するような変化のある感情と表情を求めた。その 結果、ゆっくりは人の望む存在へと進化しました。全ては人をゆっくりさせるために。 ゆっくりは自身の性質がどんなに変化しても、他者のゆっくりを望むものなのです。 しかしビデオのまりさは違います。他者ではなく、自分がゆっくりすることだけを考え てしまった。そしてそれを当然のことと考えてしまった。そうなってしまったゆっくりは、 最早ゆっくりであることの本質を失ってしまった。だからゆっくりではなくなってしまっ たのです」 そう述べた教授は、どこか寂しい目をしていた。 単なる実験材料に向ける、無機質な目ではない。この人はこの人なりに、ゆっくりに思い 入れがあるのだろう。 記事が出来たら雑誌を一冊届けると約束をして、研究室を辞した。 帰りがけに教授は実験論文のコピーを渡してくれたが、ひどく難解な内容だった。日本語 で書かれているのが救いだが、読むのに四苦八苦だった。取材やデスクで記事を書いてい た時間よりも、これを読むのに費やしたほうが長かった。おかげで出来上がりは締め切り ギリギリになってしまった。 そんな苦労に関わらず、出来た記事はオカルト色の強いものになってしまった。論文は学 術的な格調高い文章だったが、大衆読者を意識して書くと、どうしてもそうなってしまう のだ。 もっとも、ゆっくりの存在自体がオカルトとも言えるので、問題は無かった。「そんなも んだ」で全てがすむ。それがゆっくりというものだ。深く考えないほうが、あの不可思議 な存在を楽しめる。 都内にある、とある出版社。俺は今日もここでゆっくりについての記事を書く。配属され た当初は早く別の部門に行きたいと考えていたが、最近では好奇心を刺激してくれる良い 職場だと思えるようになった。 タバコが吸えないのが難点だが。 相も変わらず散らかったデスクで、いつもと変わらず原稿に向かう。今書いている記事は 虐待派と愛で派の討論企画についてだが、見事なまでに平行線の論議で、まとめるのが大 変そうだ。どちらも自分の主張こそ正しいと言っているが、きっとゆっくりはどちらの扱 いをされても満足なのだろう。 ゆっくりは他者をゆっくりさせることが望み。虐待派はゆっくりを虐待することでゆっく りできるし、愛で派は愛でることでゆっくりできる。究極的には根本は同じ。どちらも自 分がゆっくりすることを考えている。 人間なのだからそれで良いと俺は思う。自分の人生を、自分のために生きられないなんて 真っ平だ。比べて、そう生きた結果饅頭になるだなんて、ゆっくりはなんて不自由な生き 物なのだろう。 そんなことを考えてると、向かいのデスクの同僚が壁に貼られた「禁煙」の紙を指で叩い て示してきた。どうやら無意識のうちにタバコを咥えていたらしい。 俺は箱にタバコを戻すと、軽く溜め息をついて仕事を再開した。 このSSに感想をつける
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俺とゆっくりの話 2の続きです 善良なゆっくりがいます 注意 「ふふふ…れいむ、いままりさがすっきりさせてあげるからね…」 「Zzz…Zzz…」 ゆっくりとれいむに忍び寄るまりさ しかしもう少しというところで後ろの戸が開いた 「ゆゆっ!?」 「なんだおまえ、まだ起きてたのか?」 あのおじさんだった、なんで寝てないんだよこの腐れほもさぴえんすが 「すこしねむれなかっただけだよ!!おじさんはまりさとれいむをあんみんさせてね!!」 「眠れないんだろ?俺も仕事がひと段落したんだが眠れなかったんだ、少し話でもしようぜ」 「…いいよ、でもたのしくなかったらすぐねるからね」 その人間は何個か飲み物とお菓子のようなものを持って来てまりさに進めた まりさはもしかしたら毒が入っているかも…と考えたが自分はこの家で一番偉いれいむと夫婦の関係だ、その自分を殺すことはないだろう… その時のお話の殆どはこの人間の仕事の愚痴とかだった 正直そんな話をまりさが聞いても面白くない、だが出されたお菓子は美味しかったので黙って聞いた 「そんなにいやならしごとなんてやめればいいんだよ…」 すこし眠くなってきたまりさが言う 「そうもいかん、仕事をしないと俺もれいむもお前もゆっくりできなくなるからな」 ゆっくりするためにゆっくりできない「仕事」をする?まりさにはますます理解できない だがさいごに人間の言った言葉だけは理解できた気がした 「お前は俺が嫌いだと思う、俺もお前は嫌いだ、でも俺はお前に死んでほしくない、だから早く人間のルールを覚えてほしい、俺のためでもお前のためでもない、れいむのためにな」 結局人間より先に寝てしまいれいむとすっきりできなかった 次の日、人間は仕事に行った 今がれいむとすっきりするチャンスだ だがれいむにさそわれて散歩に出かけている今、すっきりすることはできない、さすがに草すらない路上ですっきりするのはためらわれた 「れいむぅ!たすけて!!たすけてね!!」 その時一匹のちぇんが飛び出してきた、しかも帽子がない まりさはとっさにれいむをかばい、ちぇんを攻撃した 「だめだよ!!かざりのないゆっくりできないちぇんはゆっくりどっかいっt「だめだよ!!まりさ!!」」 なぜだれいむは止める?自分は飾りのないゆっくりできない奴を追い出そうとしただけなのに? 「どうしたのちぇん!!これじゃあどのちぇんかわからないよ!!」 「わからないちぇんはゆっくりでていっt…「うるさいよ!!!!」」 しかも怒鳴られた、こんなに怒鳴られたのは初めてだ 「やせいのちぇんのかぞくにぼうしをとられたんだよ、よくわからないよ…」 このちぇんはシルバーバッチを持つちぇんだ、飾りをなくしたら人間かゴールドバッチを持つゆっくりの所に行けばいいことは知っている 「ごめんねちぇん、ちょっとおしりみせてね!!」 ちぇんのおしりにはバーコードのような模様が焼き付けられていた、れいむはこの模様が本物だと理解した 「じゃあちぇんはゆっくりついてきてね!!いっしょにかこうじょにいこうね!!」 「かかかかこうじょーはだめだよ!!ゆっくりできないよぉ!!」 「だいじょーぶだよ!ゆっくりできないのはわるいゆっくりだけだよ!!」 まりさはいきたくなかったがれいむはみょんを連れて加工場まで向かってしまった 仕方なくまりさもついて行くことになった 加工場まで来たれいむはゆっくり専用入り口で係員を大声で呼ぶ、係員は一瞬怪訝そうな顔をしたがれいむがゴールドバッチをつけているのを見るとすぐに笑顔になった 「どうしたんだい?」 「このちぇんが帽子を取られちゃったみたいなの!!」 「おにいさん!ちぇんのぼうしをつくってほしいよ!わかってねー!」 「はいはい、わかったよ、10分程まっててね!」 そう言って係員はちぇんを抱えて奥の部屋へと消えていった このときまりさは理解した、れいむは帽子のないゆっくりを助けてあげると言って加工所に引き渡したのだ 加工所に子供を売る(もしくは自らを売る)ことでお菓子をもらって飢えをしのいだという話もある、さすがれいむだ、自分の妻になるだけあって頭もいい 「さすがだね!れいむ!!ちぇんをうっておかしにするなんてれいむはあたまがいいね!!」 「なにいってるの!?まりさ!!だいじななかまをうったりはしないよ!!」 「ゆ?」 しばらくたってさっきのちぇんが帽子をつけて出てきた 「ゆっくびっくりぃ!??!?!?!???!ぱぴぷぺぽろろっか!?!?!?!?」 このとき、まりさの餡子脳は完全に破壊された 加工場がゆっくりを助けた、れいむは帽子のないゆっくりを攻撃しようとしなかった 何もかも理解できない ちぇんがれいむと加工所の職員にお礼を言っている、そんなのはどうでもいい ここは加工所だ、それは間違いない、なのになぜあの人間はれいむに優しく微笑み、ちぇんの帽子を作ったのか? ありえない アリエナイ ソウカ、ヤットワカッタ、アイツラハユックリジャナインダ… 「ゆゆゆゆゆうふふふのうかりんにかっちゃったぁ!」 まりさが体内のぺにぺにを戦闘準備させ、れいむにおそいかかる 「やめてね!!まりさ!!どうしたの!?」 だがまりさは止まらない、あわててれいむは加工所の職員の後ろに隠れた 「うふふふふふぎゃあ!!」 職員の足にぺにぺにを突き刺さん勢いで突撃するまりさ まりさのぺにぺには真っ二つになった 「ふんじゃらhf8うえghvsばvsじゃヴぁjhvばhscぺにぺにますたーすぱーくっC言語!!!」 そんな言葉を残し、ぺにぺにから精餡子を噴き出しながらまりさは絶命した 俺が仕事から帰ってすぐ、加工所の職員がれいむを連れてやってきた れいむはふさぎこんで一言もしゃべらなかったが加工所の職員から大体話は聞いた、そしてその理由も 最近分かったことでまだ市販の飼育書にもほとんど乗っていないことだが野生のゆっくり(特に一番生意気な亜成体)がゴールドメダルをもつ飼いゆっくりと一緒にいると壊れることがあるらしい 詳しい話だと野生ゆっくりの常識では考えられない行動を飼いゆっくりがとり続けるため餡子が一時的に麻痺し、気絶してしまう そのご何らかの結論を出すことができれば復活するが多くは精神的に壊れてしまうらしい しかし壊れてもれいむとすっきりしようとするとは…やつは真剣にれいむを愛していたんだろうな… そのご、れいむは三日間、何も食べようとはしなかった。まりさは自分が殺したという罪悪感が募っていたのだろう 日に日に痩せて行くれいむが心配になった俺は今日も食べようとしないなら無理やりにでも口に入れてやろうとした だがその日れいむに助けてもらったというちぇんがお礼を言いにやってきた、帽子に金色のバッチを付けて ちぇんに励まされ、何とかれいむは持ち直すことができた いまではれいむとちぇんは夫婦として仲良く暮らしている、とはいってもお互い飼い主がいるから毎日一緒に遊んだりお泊りしたりする程度だが… ちなみに野生ゆっくりまりさの間に「かこうじょにいくとむりやりぺにぺにからすっきりさせられてころされてしまう」といううわさが流れ加工所をより一層怖がるようになったのはただの余談である あとがき なんか最後、いろいろ狂ってる内容になった やっぱ自分は戦争もの書いている方がいいのだろうか? 8月19日 2209 セイン このSSに感想を付ける
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ある昼下がり。 川沿いを歩きながら妹紅は暇を潰していた。 いつもならば、こういう時はバ輝夜との殺し合いか慧音と会うか家事に勤しんで過ごしている。 しかし今日に限って輝夜はなんの動きもなく、慧音も忙しくて会えない。家事も終わってすることもなく、じっとしているのも退屈だった妹紅は外へ散歩に出ていた。 竹林から少し離れた所に川がある。自然のあふれるこの光景も、長い年月の果てに緑が育ち、枯れ果て、川が荒れ、水が引いて、様々な形で変化している。 妹紅は昔の風景を一つ一つ噛みしめるように思い出しながら歩いていた。 「ゆっ!」 「ゆゆっ!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくり! ゆっくり!」 「ゆっくりしてだって」 「おお、めでたいめでたい」 「……」 台無しだった。 川辺で水でも飲んでいるのか、妹紅の目の前ではゆっくりれいむの家族達がしきりに騒いでいる。情緒もへったくれもないその光景に思わず妹紅はため息をついた。 「お姉さんどうしたの?」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっ! ゆっ!」 妹紅に気づいたゆっくりが妹紅の側へ寄ってくる。 頭を抱える妹紅。しかし嫌がってるわけではない。別に暇とはいえゆっくりと過ごす気なんてなかった妹紅としては微妙な状況だが、他にやることもなく、ちょっとはゆっくりしていくのも有りかと思っていた。 「ゆっ!」 「ゆゆっ! ゆっくりっ!」 「ゆっくりちていってね!」 「……」 なんだか、やたらと声が多いな……。 疑問に思った妹紅は、あらためて妹紅はゆっくり達の数を数え始める。 普通のゆっくりれいむが1匹、お母さんゆっくりが1匹、なんかうざいのが2匹。 そして今、草をかけ分けながら妹紅の側へ来ようとしているちびゆっくり達が。 「……うおっ」 草が邪魔で数え間違えているかもしれないが、適当に数えても20匹以上いた。産んだばかりなのだろうか、もしそこにいるお母さんれいむだけで産んだなら随分珍しい出産数だろう。 そのちびゆっくりの多さに驚きながら、妹紅の頭の中にふとある考えが浮かんだ。 ……これだけ数がいるなら楽しめそうだ。 「あんたら、まだここにいるの?」 「ここはれいむ達のあそびばだよ!」 「あそびばだよ! あそびば!」 妹紅の言葉にぴょんぴょん飛び跳ねるれいむ達。この川辺は自分たちのものだと主張しているらしい。 「別にここを奪ったりはしないよ。私はこれから行くところがあるけど、その後で一緒にゆっくりしてもいいか?」 「いいよ! れいむ達しばらくいるよ!」 「お姉さん一緒にゆっくりしようね!」 「ああ」と返事をして立ち去っていく妹紅。 まずは準備のために、自分の家へと戻っていった。 妹紅が用意したのは、まずその辺でゆっくりしすぎた結果がこれだよ!と倒れているゆっくりちるの。ゆっくりちるのは、たとえ倒れていても体温は冷たいので上手く炎を調節し、ちるのが溶けないように、手が凍結しないようにして運んでいく。 次に用意したのが細身の竹。太い竹ならいくらでも生えているが、脆すぎず、固すぎない竹を探すのは意外に手間がかかった。 最後に家から小刀などを持ち出すと、妹紅は元の場所まで戻ってきた。 「あ! お姉さん!」 「ゆっくりしていってくれるの!」 「たくさんゆっくりしていってね!」 約束通り現れた妹紅に飛び跳ねながら喜びをあらわにするゆっくり達。まだ飛び跳ねられないちびゆっくりは、体をぷるぷる震わせながら喜んでいた。 妹紅は持ってきたゆっくりちるのを地面に置く。 「お姉さん! この子とはゆっくりできないよ!」 「冷たいよ! 凍えるよ!」 さらに持ってきた風呂敷を広げ、ちびゆっくりたちを集めていく。 「ゆっ! ゆゆっ!」 「お、お姉さん!」 「早く離してね! すぐに離してね!」 しかし妹紅は手を止めず、そのまま20匹いたゆっくり達は風呂敷に包まれてしまった。 「ゆゆっ!」 「くるぢひよ! ゆっくりできないよ!」 「早く離してね! すぐに離してね!」 残された普通のれいむが足下にまとわりついて離れないが、妹紅は気にした様子もなく、そのままうざいゆっくり達の側へいく。 「ゆっくり離してだって」 「おお、こわいこわい」 何か言っていたが気にすることもなく、うざいそれを蹴り飛ばした。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆっ!」 「おおおぉおぉおおおぉおぉっ!」 地面に当たって二度三度跳ねながら、川へと落ちていった。 何か叫んでいるようだが、川の底で叫んでも聞こえない。水を含んで体が膨張していく。 「酷いよ! お姉さんとはゆっくりできないよ! 早くどこかへ行ってね!」 妹紅の足に体当たりをするれいむ。さすがに歩いている最中に体当たりされて転けかけるも、踏ん張る妹紅。 このまま体当たりを続けられたら敵わないと、妹紅はゆっくりを踏みつけておいた。 「ゆ゛っ!」 体が少し潰れ、痙攣するゆっくり。すぐに動く事はできないだろう。 妹紅はそのままお母さんゆっくりへと近づいていく。一瞬の出来事でどんどんいなくなる子供達にお母さんゆっくりは状況が理解できず、川辺で固まったままだった。 「よっと」 お母さんゆっくりを持ち上げて、そのまま運んでいく。途中で「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁあ゛あ゛ぁあ゛っ!」「がえ゛じでぇえ゛え゛ぇえ゛え゛ぇえ゛ぇっ!」と暴れ始めるが、妹紅の手が緩む事はなかった。 ゆっくりちるのの側まで戻ると、妹紅はお母さんゆっくりをその上に乗せる。 「ひ゛ぃぃい゛い゛ぃあ゛あ゛あ゛あ゛ぁあ゛ぁあ゛ぁぁぁあ゛ぁっ!」 徐々に冷たくなっていくお母さんゆっくり。ほどよい冷たさになったところで持ってきていた小刀を取り出すと、妹紅はお母さんゆっくりの頭の上の部分を横に切り取り、あんこを露出させた。 「あ゛あ゛ぁあ゛ぁあ゛っ! あ゛だま゛! あ゛だま゛がぁあ゛あ゛がぁあ゛あ゛っ!」 「よし、準備できたっと」 満足げに呟く。先ほど踏みつぶしておいたゆっくりが、また妹紅の足下にやってきた。 「お、お゛があ゛ざんっ、お゛があ゛ざん、がえじでぇええぇぇえっ!」 「ああ、ちょうど良いところに来た」 そう言うと、先ほどよりも強めに力を込めて踏みつける! 「ゆ゛っ!」 地面にゆっくりが軽くめり込んだのを確認すると、妹紅はその上に腰を下ろした。 「ゆゆうい゛い゛い゛ぢあ゛ぁあ゛ぁおあ゛あ゛あ゛ぁっ!」 椅子にされたゆっくりの絶叫が響く中、持ってきた竹の先に糸を括り始める。 括り終わると、結んだ風呂敷に手をいれ、ちびゆっくりを取り出した。 窮屈さから解放され、顔に花を咲かせるちびゆっくり。 「おねえさんありが──」 ぶすりと、釣り針を刺した。 「いだい゛ぃい゛い゛ぃい゛い゛っ!!」 「さて、なにが釣れるかな」 竹をしならせ、餌のちびゆっくりを川へ投げ込む。 穏やかな気候の中、妹紅の釣りが始まった。 「ゆっぐり゛り゛ぃい゛い゛いぃいい゛ぃいっ!」 竿を通じて当たりが来る。なかなか強い引きが大物を予感させる。 「よっし来たっ!」 竿を引っ張り上げる。釣り糸の先には、ちびゆっくりとその餌に噛みついて離れない魚の姿があった。 「う゛う゛う゛う゛ぅう゛う゛う゛っ!」 水を含んで脆くなった体に、食いついた魚の重さで引き千切られそうになるちびゆっくり。 妹紅としてみればちびゆっくりを丸呑みできるような大物に期待しているのだが、さすがになかなか食べてはくれず、釣れては半端に欠けるちびゆっくり達をさらに川へ戻して釣りを続けている。 しかし今のちびゆっくりほど脆くなったらもう無理だろうと思ったのか、魚を外すと、そのままちびゆっくりを針から外して川へ放り投げた。 「あ゛ぁぁぁあ゛あ゛ぁぁぁっ!」 川に落ち、分解していくちびゆっくり。巻き餌代わりにはなるだろう。 最初に落としたうざい奴らは、もう全部食べられてしまったのか、川を見てもそれらしい跡は見あたらなかった。 釣った魚を手に持ち、お母さんゆっくりの元へ行く。 「ゆ゛っぐり゛……ゆ゛っぐり゛ぃいいぃい……」 何匹か投げ飛ばされていったちびゆっくり達の末路に悲しむお母さんゆっくり。そのゆっくりの頭に魚をのせ、あんこを穿っていく。 「ゆ゛っ! ゆ゛っぐり゛っ!」 冷たくなったあんこが妹紅の手を急激に冷やすが気にせず、開いた穴に魚を入れ、そのまま埋めていった。 「あ゛あ゛あ゛ぁあ゛ぁぁぁあ゛あ゛ぁぁ……っ」 瞳孔が開き、僅かに痙攣するお母さんゆっくり。 そんなお母さんゆっくりの横に、もはや絶命して動かなくなったちびゆっくりの姿がある。風呂敷から取り出し、先ほどちるのの上に置いておいたちびゆっくりだ。 妹紅はしっかり冷やされたちびゆっくりを手にすると、また釣りを再開するために戻っていく。 れいむに腰を下ろすと、そのままちるのの冷気で冷やされたちびゆっくりを口にいれる。 しゃりっとした感触とちびゆっくりのあんこの甘みが、妹紅を笑顔にした。 「そろそろ、もうちょっと大きめの大物が釣りたいな~」 風呂敷から新たなちびゆっくりを取り出す。外に出されたらどうなるか既に理解しているちびゆっくりは、既に震えながら泣き叫んでいた。 変わらずちびゆっくりに釣り針を刺し、そのまま川へと放り投げる。 しかし今回はいつもと違っていた。 「えっ?」 水音がしない。妹紅の竿にも、ちびゆっくりが落ちた感触がなかった。 「うー♪ うー♪」 「ゆ゛っく゛り゛ぃい゛いい゛ぃいいぃっ!」 「……」 どこからともかくやって来たゆっくりれみりゃに、空中で受け止められ、そのまま齧られていた。 思いもしなかった獲物に言葉を失う妹紅。 「……まぁ、大物かな?」 「うまうま♪」 すぐにちびゆっくりを平らげるゆっくりゃ。その口には釣り針が引っかかっているが、場所が良かったのか痛みに耐える様子はない。 妹紅は側に寄せようと、釣り竿を大きく引っ張る。 ゆっくりゃの体が大きく横に伸びた。 「うっ! う゛ぁあ゛あ゛あっ!」 激しい痛みと力に、羽ばたいて抵抗するが、ゆっくりゃの力は人に逆らえるほどはない。 ほどなくゆっくりゃは釣り上げられ、妹紅の手の中に収まった。 「うー……!」 引っかかった針が痛むのだろう、涙を浮かべたまま妹紅に怒りを向けるゆっくりゃ。肉まんなその頬が膨れている。 しかし妹紅は気にすることなく羽をもぎ取る。 「い゛ぎぃあ゛あ゛ぁぁあぁぁっ!!」 邪魔なものがなくなったとばかりに、そのままゆっくりゃに齧りついた。 「ごめ゛んな゛ざいいいいいいい!!」 謝られても、美味しいし。妹紅に止める気はまるでない。 ものの5分もしない内に、ゆっくりゃは妹紅のお腹の中に収まった。 残った羽は、一端燃やし、ほどよく火が通ったところで齧る。 噛めば噛むほど味が出てくる、魚の干物のようなそれは酒のつまみに持ってこいで、妹紅もお気に入りの一品だ。 羽を咥えたまま、新たに餌をつけ、釣りを再開する妹紅。思わぬところでつまみも手に入り、魚も入れ食いで気分は上々だ。ゆっくりに散歩を邪魔された時はどうなるかと思っていたが、これはこれでいい暇つぶしになっていた。 竿にまた当たりが出る。先ほどよりも強い引きに、妹紅の期待は高まった。 「よぃ……しょっと!」 両手に力を込めて引き上げる。 「ケロケロ! ケロケロ!」 「カッパ! キュウリ!」 「……」 釣れたのは、外道だった。 「……」 「ケロケロ!」 「にとりー!」 ちびゆっくりに食いついて離れないゆっくりケロちゃんとにとり。 もうお腹いっぱいになっていた妹紅に食欲はなく、ちびゆっくりから針を外すと、そのまま3匹とも地面へ落とし、燃やしていった。 「ゲロゲロゲロ!」 「み゛、み゛どり゛ぃぃい゛いっ!」 「……ゆっ、ゆ゛っく゛り゛……」 ゆっくりの臭いに、焼ける蛙の臭いを思い出す妹紅だった。 妹紅が腰を上げる。気づけば日は夕暮れ。そろそろ用事も終わり、慧音が訪ねてくるかもしれない。バ輝夜は居留守で充分だけど、慧音に無駄足を踏ませるのは可愛そうだ。せっかく大漁だったのだから、慧音にも分けてあげよう。 釣り自体気まぐれであり、普段もしているわけではない妹紅に取って釣り竿はただ荷物になるだけだ。竿を真ん中でおり、糸を外して置いていく。 座られ続けたれいむは数時間前からピクリとも動かない。体は完全に硬直し、今やただのオブジェと化していた。 ゆっくりちるのの上に乗せていたお母さんれいむを、炎で解凍していく妹紅。氷が溶けきり、どうにかちるのから外れそうだ。 両手で抱え、そのまま膝を使って持ち上げた。 「……うっ……ゆっ……」 かすかに聞こえてきた声に、思わず妹紅は抱えているものの顔を見た。 「……ゆっ……」 「まだ生きていたんだ」 子供の多さからタフそうだと思っていたが、それにしてもその生命力の高さは妹紅を随分驚かせた。 元来た道を戻っていく妹紅。その間にも、お母さんれいむは希に声を上げる。生きてはいるものの、あんこを魚に陵辱され、ちるのの冷気で冷凍されている、このまま放っておけば死んでしまうだろう。 妹紅はずっと考えていた。 こんな生命力のあるゆっくりでデザートを作れば、バ輝夜はとても喜んでくれるだろう。 いつか輝夜に食べさせるため、魚臭いあんこでなんのデザート作るか考える妹紅だった。 End 妹紅 → もこたん釣りしたお! お母さんゆっくり → クーラーボックス ふつうのゆっくり → 椅子 うざいの → 撒き餌 ちびゆっくり → デザート 兼 餌 ゆっくりゃ → 昼ご飯とつまみ チルノフ → ゆっくりした結果がこれだよ! ■話を書く前の気持ち 実際ゆっくり餌にしたら何が釣れるだろうな ↓ ゆっくりゃが釣れるんじゃね? ↓ それじゃゆっくり餌にゆっくりゃ釣って虐待しようぜ! ■書き終わった後 もうれいむでいいや……。 by 762 このSSに感想を付ける
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※今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 神徳はゆっくりのために 真社会性ゆっくり ありすを洗浄してみた。 ゆっくり石切 ありすとまりさの仲直り 赤ゆっくりとらっぴんぐ ゆねくどーと ※今現在進行中のもの ゆっくりをのぞむということ1~ ※注意事項 まず、上掲の作成物リストを見てください。 見渡す限り地雷原ですね。 なので、必然的にこのSSも地雷です。 では、地雷原に踏み込んで謙虚ゲージを溜めたい人のみこの先へどうぞ。 _______________________________________________ 弥生、三月。 朗らかな陽射しが大地にあまねく生命を祝福する、緑の季節がまた巡り来た。 「春ですよー!」 高らかに歌声を響かせる春告精が誘うのは、西からの柔らかい風と、その風が伝える優しく力強い春の息吹。 野山を鎖す白い雪は足早にどこかへと消え去って、大地はモノトーンから草花の鮮やかな彩へとその装いを変えている。 その多様な彩の合間に目を配れば、冬の厳しい環境を潜り抜けて春の恵みにありつくことが出来た多くの命の歓喜の様子と、 余裕を得た彼らが新たに生み出した真新しい命を見つけることもできただろう。 「むーしゃむーしゃ!」 「むーしゃむーしゃ!」 遠く妖怪の山にまで連なる広大な山地の一角、杉林の斜面。 ここにも一組、生まれて始めての冬をなんとかやり過ごした一組の生命が早速がつがつと集めてきた昆虫や草花を頬張っていた。 草木は枯れ果て、昆虫も姿を消す冬場はゆっくりにとって忍耐に次ぐ忍耐の季節だ。備蓄食料の在庫管理を怠って、敢え無く おうちの中での餓死を迎える家族の存在もそう珍しいことではない。 だから、そうした食事制限の一切から解放される春の訪れはとても幸せであるもののはずだった。 「むーしゃむーしゃ、へっくちょん!」 「むーしゃむーしゃ、はっくちょん!」 だが、斜面に掘り抜かれたおうちの奥底で備蓄の残余を食い尽くす勢いで食料に向かう二匹には何か、ゆっくりがゆっくりで あるために重要不可欠なものが足りない。 足りないだけでなく、語尾に余分なものがついていた。 「ゆゆっ。おかしいよれいむ! しあわせー!なごはんさんなのに、おあじがぜんぜんしないよ! へっくちょん!」 「ゆゆっ!? おかしいねまりさ! しあわせー!なごはんさんなのに、れいむもおあじがしないよ! はっくちょん!」 口に含んだご飯のかけらを飛ばしながら、ぎゃあぎゃあ騒々しく言い交わす二匹。実にゆっくりできていない。 そう、二匹に足りないのは「しあわせー!」だ。 腹いっぱい、おいしいごはんを食べているはずなのに、何故かしあわせー!を感じない。 むーしゃむーしゃをいくらしても、しあわせー!の代わりに出てくるのはゆっくりできないくしゃみばかりなのだ。 「「これじゃむーしゃむーしゃしあわせー!できないよ! ぷんぷん、ぷく……へっくちょん!!」」 誰が悪いのか、なんでくしゃみが止まらないのか。 ここにいるのはれいむとまりさの二匹だけなのだから、向ける相手は勿論どこにもいない。 とにかくやり場のないゆっくりできない気持ちを表現しようと二匹は「ぷんぷん、ぷくー!」としてみようとしたが、 頬を揃ってぷっくり膨らませたところでくしゃみが止まるわけでもなく。 吸い込んだ空気を残らず吐き出し、二匹は少し困った顔をお互い相手に向け合った。 「れいむ! まりさはかぜさんかもしれないよ! へっくちょん!」 「まりさ! れいむもかぜさんかもしれないね! はっくちょん!」 馬鹿は風邪を引かないというけれど、ゆっくりだって風邪を引くものらしい。 そういえば、あんまり気にしていなかったけれどどちらも少し涙っぽい目をしているようだ。 実にゆっくりとした感覚でようやく自分と相手の身体の異常を感知し、二匹は「ゆんっ!」と揃って頷いた。 「「おねつをたしかめようね! すーり、すーり!」」 わざわざそう宣言して、二匹はお互いぴったりすりすりと身体を寄せ合う。 といっても、親愛の表現や繁殖行為と違って、すり合わせるのはおでことおでこ。 難しい顔をつき合わせて「ゆゆゆ……」と唸り、額を突きあわせること数秒間。 「おねつはないみたいだね! へっくちょん!」 「じゃあかぜさんじゃないね! はっくちょん!」 すっと身を離した二匹は一瞬ぱぁっと笑顔を咲かせ、でも流石に直後のくしゃみに何にも問題が解決していないことに気付いたらしい。 すぐに顔を曇らせて、「ゆぅぅん」と慰めあうように身をすり合わせた。 『はーりゅでーしゅよー♪』 本当なら嬉しいはずの、春の訪れを告げるそんな声も今日のところはちっとも心が躍らない。 ごはんはおあじがしなくて、だからいっぱいたべてもおいしくなくて、おなかがいっぱいになるだけではあんまりゆっくりできなくて。 風邪なら、おなかいっぱい食べていたらその内治ってしまうけれど、風邪でないなら治し方だってわからない。 さっきの呼び声も、なんだかちょっとゆっくりできない感じがした。 空を飛んでいるはるさんは一人だけのはずなのに変に重なって聞こえたし……おみみも少し、おかしくなっているのかもしれない。 おうちの外に見える世界はとーっても蒼く晴れ渡っているけれど、二匹の心の中はどんより分厚い雲で覆われて、しあわせのおひさま なんてほんの少しだって目にすることはできなさそうだった。 というかそろそろ、二匹の心の雨雲からおめめを抜けて大粒の雨が降り出しそうな。 「ゆう、こういうときは……」 涙目まりさはどうしたらいいか考える。 これが何なのか、どうしたらいいか、まりさとれいむにはわからない。でも、物知りのぱちゅりーなら知っているかもしれない。 そうだ、物知りのぱちゅりーは色々まりさやれいむが知らないことを知っている。この間だって言っていた。 はるさんはとってもゆっくりできるけど、ゆっくりできないこともあるって。 『はーりゅでーしゅよー♪』 ゆっくりできなくなったのは、春さんが来てからすぐじゃなくて、このお声が重なって聞こえるようになってからのことで…… あ、ちょっと待て。このお話はなにか関係あるような気がしてきた。 ……ええと、それはなんだっけ? 「……そうだ! ぱちゅりーが、はるさんのあいだはかふんしょうさんになることがあるかもしれないっていってたよ!」 「ゆゆっ。かふんしょうさん?」 思い出した! まりさが狭いおうちの中でぴょこんと飛び上がって喜ぶと、れいむがびっくりした顔でずるずるっと反対側の壁までずり下がった。 まりさはぱちゅりーのお話を知っていて、れいむはそのお話を全然知らない。 何故って、冬篭りを終えて無事春を迎えた群れのみんなが初めて広場に集まった時、年長さんのぱちゅりーがまりさたちみたいな 初めて春を迎えるゆっくりたちに色々春の過ごし方を教えてくれたのに、れいむは陽気に中てられてゆぅゆぅ寝息を立てていたもの。 「ゆゆっ。そっか! れいむあのときすーやすーやしてたもんね! へっくちょん!」 「あのときっていつかわからないよ。ゆっくりせつめいしてね! はっくちょん!」 少し、得意げな顔でふんぞり返ったまりさにれいむは気分を害したらしい。 ぷくー、と膨れる番の姿にまりさは楽しそうにくすくすと笑って、でもそれ以上は意地悪せずに素直に教えてあげることにした。 「ぱちゅりーはおはなさんがとってもゆっくりできているときに、かふんさんがいっぱいとびだすと、ゆっくりかふんしょうになるって いってたよ!」 花粉症になると、匂いがわからなくなったり、味がわからなくなったり、くしゃみが出たり、涙が出たりするらしい。 それって風邪さんとどう違うの?って質問も当然出たけれど、そこはぱちゅりーも上手く説明はしきらない様子で。 『むきゅ、それはほんとうにかふんしょうさんになっちゃったらわかるわ。とにかく――しちゃだめよ』 なんて誤魔化していたのも、まりさはついでに思い出した。 「……ゆぅ。そういえば、ほかのせつめいもそんなかんじでおわっちゃったようなきがするよ……っくちゅん!」 ぱちゅりーは確かに物知りだけど、あまりその知識は役に立たないような。 そんなことに思い至って、まりさは小さめの溜息を吐いた。うん、ぱちゅりーを頼りにするのは少しだけ考え直したほうがよさそうだ。 もっとも、その場にいたけど全く話を聞いてなかったれいむは全く違う感想を抱いたらしい。 「じゃあ、いまはおはなさんはゆっくりできてるんだね! それはとってもゆっくりしてるよ!」 ゆっくりしているのは、いいことだ。 それがおはなさんだって、まりさやれいむに食べられるむしさんだって、ゆっくりしている時は邪魔しちゃいけない。 それでまりさやれいむたちが少しゆっくりを我慢しなくちゃいけないとしても、他人のゆっくりを台無しにするのはとっても ゆっくりできないことだった。 そんな純粋なれいむの喜びには、まりさとしても少しも異論はない。 ――とてもたいせつな何かを忘れてしまっているような気が、ほんの少しだけしたけれど。 でも、そんなの、思い出せないならどうでもいいことなんじゃないだろうか。 「「おはなさん、かふんさん、はるさん、ゆっくりしていってね……へっくちょん!」」 だから、まりさはそれ以上考えなかった。れいむはもとより知らないのだから、何かを思うこともなかった。 とにかく自分のゆっくりは、後回しだ。かふんさんが思う存分ゆっくりしたら、自分もその後でゆっくりできるはずだから。 『はーりゅでーしゅよー♪』 まりさとれいむが春と野山の草花に向けて投げかけた心からの祝福に応えるように、またおうちの外からそんな声がやっぱり 幾重にも重なりあって聞こえた。 二匹はそれを春からの返事なのだろうと、漠然と信じた。 もちろん春という季節が、なにがしかの言葉を紡ぐことなんてありえないのだけれど。 「れいむ。はるさん、とってもゆっくりしてるよ!」 「まりさ。はるさんにもういっかいごあいさつしようね!」 しかし、信じたれいむとまりさは何とかして春の顔を見たくなった。 見て、きちんと笑顔で挨拶に答えてあげたくなった。 だからいそいそとおうちの玄関まで這い出して、もう一度、お花さんにも負けない満面の笑みを咲かせてお決まりの挨拶を投げ返す。 「「ゆっくりしていって……ゆげぇ!?」」 ……投げ返す、つもりだったのだけど。 その挨拶半ばにして、お外を眺め渡した二匹の顔が奇妙な声と共に歪んだ。それはもう、傍から見ていてこっけいなほどに。 どう見てもゆっくりできていない顔立ちを見せて、二匹はその場で凍り付いてしまった。 『ゆーっきゅり、しちぇいっちぇねーー!』 おうちをぐるりと取り巻く『春』は、愕然としたままのれいむとまりさに向けて確かに言葉を返した。 驚愕に揺れる二匹の目にもそれらは確かにとってもゆっくりとした笑顔で咲き乱れていた。 ……ただ、その『春』たちが咲き乱れている場所が、失望だったり絶望だったり諦観だったり逃避だったり、とかくゆっくりには 程遠い顔をした群れのゆっくりたちの頭に生えた茎の上だったりするのだが。 『はーりゅでーしゅよー!』 みんなの頭に鈴生りに生る『春』は、眼下の親の悲歎なんか気付きもしない様子で愛らしい声を揃えて春を謳う。 その頭に被るのは、一様におそろいの三角帽子。親の種類なんてまるで関係ない。 それは形も違えば色も違う。赤ちゃんたちのお帽子は、つばのない白い三角帽子に大きな赤いリボンが付いている。 (『かふんしょうさんにかかったら、はるですよー、っておこえがきこえてるあいだはおうちをとじまりしておそとにでちゃだめよ』) ……そういえば。 目にしたものの衝撃から立ち直らないままのまりさは、ようやくのことであの日ぱちぇりーが教えてくれたことの続きがどんなもの だったかを思い出していた。 (『そうしないと、からだにたまったかふんさんのせいではるさんのあかちゃんができちゃうから、きをつけてね』) そうだ。ぱちゅりーは『はるさんのあかちゃん』ができるといっていたんだ。 教えをぼんやりと思い出すうちに、頭頂部のむずむずとした痒みと、身体からどんどん餡子が抜けていく感覚が同時にまりさを襲った。 ここまで来たらさすがに、まりさの頭でも深く考えなくたって分かる。 「どおじでごんなごどになっでるの……?」 それでも自分の頭を確認するのが怖くて、ほんのわずかばかりの期待を込めてまりさは隣のれいむの方をちらりと見た。 「「……ゆげげっ」」 ちらりと見て、やっぱりこっちを縋るような目で見ているれいむと視線が衝突して、そのままお互いの頭の上へと視界を移動させて、 それから同時に小さな悲鳴と少量の餡子を口から吐き出した。 二匹の期待も空しく、真っ白な雲が漂うお空を背景にしてすらりと伸びた緑の茎。 そこに鈴生りに生るのはれいむともまりさとも形も違えば色も違う小さな赤ちゃん、三匹ずつ。 未だ目覚めぬその小さな赤ちゃんたちのお帽子は、つばのない白い三角帽子に大きな赤いリボンが付いている。 つまり、群れのみんなが浮かない表情で見上げている赤ちゃんたちと全く同じ種類の、ゆっくりの赤ちゃん。 極めつけは、この子達の背に生えた昆虫のような羽だ。こんなもの、この群れのゆっくりには一匹だって生えていないのに。 どうしてこんな事にと聞いても応えてくれそうな相手はいない。 よく見ると、今のこのことお外に出ていたのは自分と同じで春を迎えたのは生まれて始めての若いゆっくりしかいないようだったから。 つまり、大人のいうことをきちんと聞いていなかったお子様ばかりだったということで――まりさはこれからはきちんと、年を取った ゆっくりの言うことは聞いておこうと心に決めた。 ……それは今この場の問題を解決するには遅すぎる決意だったけれど、これからのゆん生にはとても大切なことではあるはずだ。 特に、そう。たとえば望まずして出来てしまった子の育児とかのために。 「ゅっ……」 「……ゅきゅっ……」 せっかくの陽気だというのに、『これから』を想像してげっそり疲れきってしまったまりさとれいむが見上げる先。 普通のにんっしんっならありえない速さでゆっくりとしての形を成してゆく赤ちゃんたちが、早くもごにょごにょと意味を成さない 音の羅列を口から漏らし始めている。 実際に茎から生れ落ちるのはまだ先のことだろうけど、この分なら目を見開き元気な挨拶を『両親』に向けて放つのは遠くない。 「……れいむ。ふゆごもりようのごはん、まだのこってたっけ」 「うん、まだのこってるよ……」 感情の篭らないぼそぼそとしたまりさの問いかけに、応えるれいむの声も似たようなもの。 それを耳にしたまりさは「そう、よかった」と呟いて、別に今更残っていなくても大丈夫かと思いなおした。 かふんしょうさんで赤ちゃんが出来てしまった以上は、今更お外に出る制限なんてないのだから。 お外にさえ出てよいのなら、ごはんは幾らでも集められる。季節はもう、寒くて野山にごはんの乏しい冬ではないのだし。 「「「「「「ゅきゅ……ゅきゅっ。ゆゆっ!?」」」」」」 そう。それはとても忌々しいことではあるのだけれど。 陰鬱な想いを消せないままに、まりさは頭上にその声を聞いた。 「「「「「「おきゃーしゃん? おきゃーしゃん、ゆっきゅりしちぇいってにぇ!」」」」」」 そう。忌々しいことに、春はまだ、目覚めたばっかりなのだ。 * * * 「おお、子宝子宝。おつむの中身同様、春めいたことで実に結構な騒ぎですね」 春だというのに暗雲たちこめるゆっくりプレイスを見下ろす木の枝で、一匹のきめぇ丸が嘲笑とも苦笑ともつかない笑いを 右往左往するゆっくり達に向けている。 いや、ひょっとするとそれは憐憫、もしくは共感に類する笑みだったのだろうか。 覇気のない笑顔を浮かべるきめぇ丸の頭の上には、ごたぶんにもれず白い帽子を被った赤ちゃんを実らせた茎が伸びていたのだから。 「「「ゆーゆゆー♪」」」 きめぇ丸は知っている。 今頭の上で楽しげに歌声を合わせているこの子達は、春の終わりには前触れもなく風に誘われるようにしていなくなってしまうことを。 人里や多くのゆっくりの間では、初春に突然大量発生し、初夏までにいっせいにどこかに姿を消してしまうと思われている準希少種、 ゆっくりりりー。 それがこの赤ちゃんたちの名前だった。 彼女たちは背中に生えた透き通った翅に五月の風をいっぱいに受けて、どこか根付くべき土地を求めて旅立ってしまうのだ。 そしていつかどこかの大地にたどり着き、そこに根を下ろし、雨にも溶けず鳥獣や昆虫にも食われずに済んだ一握りの子供だけが、 ゆ木となって森を作るという。 そうしてゆ木となったりりーほわいとたちは、歌うことなく、しゃべることすらなく春までひたすらに静かに過ごす。 実は付けないがゆっくりの好む味の葉を多く大地に落とす森として、多くのゆっくりを惹きつける。 「おお……おろかおろか」 「「「ゆっ♪ ゆっ♪」」」 やはりこの年に成体になったばかりの若いゆっくりとして、うかつにもその罠に引っかかってしまったきめぇ丸は頭上のわが子を リズミカルに揺らしながら、今度ははっきりとした自嘲の笑いを口元に浮かべた。 そう、あまあまな落ち葉こそがりりーのゆ木が集まるこの森の罠だ。 春に枝いっぱいの白百合に似た花を咲かせ、多くの花粉を飛ばし――落ち葉の味に惹かれてやってきたゆっくり達に、わが子を 数多宿らせるための。 きめぇ丸は同族に教わった知識をなぞって軽いため息をつき、湿度の高い視線を背後に聳える木の幹へと向けた。 上空から見れば枝葉にすっぽり覆い隠されたその部分の樹皮に、顔のような凹凸が隠されていることにどうしていま少しばかり 早く気づくことができなかったのだろう 「はーるでーすよー♪ ゆっくり、していってね♪」 「おお、拒絶拒絶。子供を育てるということまで含めて、悉く拒絶させていただきます」 その顔のような凹凸――ゆ木となったりりーの成体の歌声に、きめぇ丸は酷く嫌そうな口ぶりで応じた。 そして、なんの躊躇もなく茎を赤ちゃんごと幹、りりーの顔のある部分のすぐ傍へと叩き付ける。 声もなく弾ける、三匹の赤ちゃんゆっくり。飛散した微量の餡子が、りりーの顔をわずかに汚した。 りりーはわが子の無残な末路に一瞬不満そうに目を細めて――しかしすぐに、何事もなかったかのように花のような笑みを咲かす。 「はーるでーすよー♪」 「おお、非情非情。まああれだけ実が生っていれば十分なのでしょうかね……」 不本意に生まれた子だ。育てず、異物として排除するゆっくりはこのきめぇ丸に限ったことではない。 だからこそ、膨大な花粉を飛ばし、数多の子供を作らせる。 別に気にする必要も感じないのだろう、無邪気なゆ木りりーの歌声にきめぇ丸こそ呆れた、いささか非難を含む目を声の主へと向けた。 地上から聞こえるのは、多くの嘆きと幾らかの怒り、そしてたくさんの幼過ぎる歌声と、末期の言葉。 理不尽な子宝を得て育てようと決意するもの、間引くことに決したもの、つがいや姉妹間で意見が纏まらず争いとなったもの、 春から若ゆっくりの間に――多くはこの森に対する無知、油断による――不幸が齎されたゆっくりプレイスはいつも以上に賑やかだ。 そんなゆっくりプレイスの喧騒と、ゆ木りりーの歌声とを聞きながら、きめぇ丸はふわりと空へと飛び上がる。 花粉の季節そのものは、もうじき一応の収まりを見せるはずだ。収まったら、またここに来よう。 きっとその頃には、ある程度育った子供とその若い親を中心にもっと素敵で、悲劇的な光景が幾つも繰り広げられているだろうから。 地上を一瞥したきめぇ丸は、最後に心底からの笑いを見せた。 春が、赤ちゃんが、通常のゆっくりが言うようにひたすらゆっくりできる存在だというならば。 「おお、祝福祝福。赤ちゃんといっしょに、ゆっくりしていってね!」 地上で失意に打ちのめされる若いゆっくりたちに、それができないはずがないのだから。