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対戦型ゆっくりゲーム by 十京院 典明 対戦型ゆっくりゲームというのを買ってきた。最近流行っているらしい。 「おーい、れいむー」 俺は家飼いのれいむを部屋に呼びつけ、PCを起動する。 やがてぺたんぺたんと階段を上る音がして、れいむが俺の部屋のドアを開ける。 「ゆゆっおにーさんゆっくりしていってね!」 「あーはいはいゆっくりゆっくり。ゲーム買ってきたんだが、やるだろ?」 「げーむさん!れいむげーむさんするよ!」 このれいむには時々ゲームの相手をさせているので、ゲームパッドぐらいなら操ることができる。 ピコリーン \ゆっくりしていってね/ 「ゆゆ!ぱそこんさんのなかにもれいむがいるよ!ゆっくりしていってね!」 * * * * 俺はキャラセレ画面で固まった。 「……」 画面には10匹のゆっくりが馬鹿面を晒している。それはいいのだが、 左上から、れいむ、れいむ、れいむ、まりさ、まりさ、ありす、ちぇん、みょん、れみりゃ(胴なし)、れみりゃ(胴あり)。 「おにーさんどうしたの?」 「……れいむ三匹とまりさ二匹の見分けが付かないんだけど」 「ゆゆ!こんなのもわからないなんておにーさんはばかだね! れいむとれいむとれいむとまりさとまりさだよ!」 「仕方ない、マニュアルでも見るか」 俺はマニュアルを広げた。 = = = = マニュアル お買い上げいただきありがとうございます。 本ゲームは、従来の対戦型格闘ゲームとはびみょんに異なったシステムを採用した新感覚ゆっくりゲームです。 勝利条件は自キャラのゆっくりゲージを100%まで溜めることか相手のゆっくりゲージを-100%まで下げることです。 基本動作 A=隙の少ない、ゆっくりする行動をします。 B=隙の少ない、相手をゆっくりさせない攻撃を繰り出します。 C=効果の大きい、ゆっくりする行動をします。 D=効果の大きい、相手をゆっくりさせない攻撃を繰り出します。 ←←=バックステップです。後ろにゆっくり跳ねます。 →→=ダッシュです。前にゆっくり急ぎます。 (コマンド)=さまざまな効果を持つゆっくりむーぶを発動します。いわゆる必殺技です。 特殊なルールを紹介します。 通常種ルール 通常種のゲージは自動で微量ずつ99%まで増加します。 通常種には当たり判定が無く、各種通常技およびゆっくりむーぶ中のみ当たり判定が発生します。 従来の格闘ゲームのように相手を攻め殺すよりは、自キャラをゆっくりさせつつ、 相手をゆっくりさせない戦い方が基本です。 うーぱっく 試合中、うーぱっくが通りかかり様々なアイテムを投下することがあります。 プリンやキノコ、干し草といったゆっくりゲージ増加アイテムから玄翁、ガラス箱といった危険なブツまで種類はさまざま。 なお、ゲームの性質上ゆっくりのリアルスペックとの乖離が見られる場合があります。 あらかじめご了承ください。 キャラ紹介 およびゆっくりむーぶコマンド表 れいむ(れいむA) ゆっくりしていってね! A or C連打 ゆっくりはねるよ! ←→←B or D ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ! ↓溜め↑A or C 『ゆっくりしていってね!』は全ゆっくり中最高のゲージ溜め性能があり、とくにC版は高効率。 移動の遅いれいむ(れいむC)やれみりゃざうるすと距離が離れたなら、 『ゆっくりはねるよ!』→『ゆっくりしていってね!』でゆっくりゲージを溜め切ってしまうこともあるほど。 『ゆっくりはねるよ!』は移動技。Bは後ろ、Dは前へと移動する。れみりゃ(胴無し)から逃げるほど速くはない。 うーぱっくからのアイテム回収や、ゆっくりしていってね!の布石に。 『ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ!』は、わずかながら無敵判定の存在する攻撃技。ダメージもなかなかで、ゲージ上昇有り。 攻撃重視型のみょん、れみりゃ(胴無し)などへの切り返しやカウンターを狙おう。 れいむ(れいむB) ゆっくりしていってね! A or C連打 ゆ~♪ゆ~♪ ←/↓\→A or C ゆゆ~♪ 相手の近くで↑\←↓\→B or D 歌の上手なれいむ。『ゆっくりしていってね!』はれいむAの同技に比べてゲージ上昇が少ないものの、二種類の歌技がそれを補う。 『ゆ~♪ゆ~♪』Aは低く、Cは高く飛ぶ飛び道具で、相手に当たると動きを止める。画面端に消える際にもゲージ上昇有り。 『ゆゆ~♪』はいわゆる一回転投げ。歌で相手の動きを止め、相手をゆっくりさせる(わずかに相手のゲージも上昇)とともに 自らのゲージを大幅に上昇させる大技。当たり判定のない状態の通常種をも吸い込むため、常に近接状態で立ち回り 相手をゆっくりさせないことが重要。 れいむ(れいむC) ゆっくりしていってね! A or C連打 ゆっくりうまれるよ! ↓溜め↓ おちびちゃんゆっくりしていってね! ←/↓\→B or D ゆっきゅちちていってにぇ! →←↑ B or D 植物型にんっしん中のれいむ。移動が遅く、特定のキャラには大幅不利ながらもスペックは低くない。 おちびちゃんゲージ(初期値1)の数だけ使える『ゆっくりうまれるよ!』でおちびちゃんを増やしながらゆっくりしよう。 おちびちゃん4匹以上の『ゆっくりしていってね!』には攻撃判定が付属する。 『おちびちゃんゆっくりしていってね!』は赤ゆゲージを溜める技。隙が少ないので暇を見てゲージを補充せよ。 『ゆっきゅちちていってにぇ!』は『ゆっくりしていってね!』の硬直を減少させる専用技。 攻撃判定のあるゆっくりむーぶも移動技も持たないため、攻められると脆く距離を離されても相手に一方的にゆっくりされ終了、 という危険性をも孕む(にんっしん中だけに)テクキャラ。通常技での立ち回りと間合い取りを研究しよう。 まりさ(まりさA) ゆっくりしていってね! A or C連打 むーしゃ、むーしゃ、しあわせー! →\↓/← B or D ここはまりさのゆっくりぷれいすだよ! ↓溜め↑A or C れいむと同じスタンダードタイプのゆっくり。『むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!』はうーぱっくから食べ物ゲット時にのみ 使えるゲージ大幅上昇技。移動速度が速く食べ物をゲットしやすいため、狙いどころは多い。 まりさ(まりさB) ゆっくりしていってね! A or C連打 ゆっくりしていってね! ↓\→A or C ゆっくりはねるよ! ←→←B or D まりさAよりもさらに移動速度が速いスピード特化型ゆっくり。 二種類の『ゆっくりしていってね!』を持ち、コマンド版は飛び道具。 ワギャ〇イザー、あるいはエコ〇ズAct2風の書き文字が攻撃判定を伴って飛ぶ。発生、速度にすぐれるD版は 相手のゆっくりむーぶを阻止するのに適する。 ありす ゆっくりしていってね! A or C連打 しゃんはーい →↓\A or C ほーらい ←↓/A or C 『しゃんはーい』はカチューシャから人形を生み出し前方に配置。相手を押し返す効果がある。最大8つまで配置可能。 『ほーらい』は高速で跳ねる飛び道具。6/1とらんぷる。 通常種の近くにいるとゲージの自動上昇率が高まるキャラ特性を持つ。しかし近接不得手のシューティングキャラ…… おお、つんでれつんでれ。 ちぇん わかるよー A or C連打 わからないよー 被ダメージ中に←→↓\B or D らんしゃまぁぁぁぁぁ!! ←/↓\→B or D 『わかるよー』はその場でゆっくりする、ゆっくりしていってねタイプのゲージ上昇技。 上昇率は低いものの、ゆっくりしていってねに比べ当たり判定が小さいため特定の飛び道具をかわしつつゆっくりし続けられる。 『わからないよー』は被ダメージモーションをキャンセルして高速離脱する。 『らんしゃまぁぁぁぁぁ!!』はゆっくりらんを召喚。らん存在時は通常技が変化しゲージ上昇率が上がったり性能が変化したりする。 長いコンボをことごとく封殺する『わからないよー』は伝家の宝刀。 しかしながら自身のゲージ溜め能力も高くは無いため過信は禁物。 硬直の大きい『らんしゃまぁぁぁぁぁ!!』を余裕を持って発動する位置取りが重要。 みょん ゆっくりしていってみょん! A or C連打 ちーんぽ! ↓溜め↑A or C でぃーっく! ↓溜め↑B or D 『ちーんぽ!』は黒くてたくましいもの(餡子製の刀)で相手を突き上げる攻撃判定技。ヒット時は黒くてたくましいもので さらに相手を突き上げる追加攻撃が2回まで出せる。 『でぃーっく!』は黒くてたくましいものを振り回す攻撃判定技。当たり判定も大きいので被カウンター注意。 通常技も主に、黒くてたくましいもので行う。 れみりゃ(胴無し) うーうー! A or C連打 たーべちゃーうぞー! 相手の近くで↑\←↓\→A or C ぐんぐにる ↓\→B or D 『たーべちゃーうぞー!』は相手ゆっくりゲージの80%を消し去る大ダメージ技で、当たり判定のない 状態の通常種も捕まえられるが、間合いが狭く発生も遅い。確定状況を作れるかどうかが勝負の分かれ目。 『ぐんぐにる』は槍状の飛び道具。 通常技も弾幕攻撃なので、なぶり殺しと一撃必殺の二段構えで相手をゆっくりさせないよう飛び回れ。 れみりゃ(胴有り) うー! A or C連打 うっうー! ↓\→A or C うあうあ♪ ←→←B or D れみりあうー☆ ←/↓\→A or C たーべちゃーうどー! 相手の近くで↑\←↓\→A or C ざうるす進化 ↓溜め↓ 捕食種ながら、こちらはゲージ上昇重視タイプのゆっくり。 『うっうー!』、『うあうあ♪』、『れみりあうー☆』は連続入力可能。『うあうあ♪』と『れみりあうー☆』には 攻撃判定があり、ゲージを溜めつつ攻撃できる。 『たーべちゃーうどー!』は『たーべちゃーうぞー!』と代わり映えの無い性能だが、各種ゆっくりむーぶでゲージを溜めつつ、 100%阻止に近づいてきた相手に狙えないこともない。 『ざうるす進化』は、文字通りれみりゃざうるすになる。ざうるす時はゲージ上昇速度が飛躍的に上昇するが移動速度が激減。 対れいむCなどに。同一コマンドで元に戻ることもできる。 = = = = 「なるほどねー。 ……それにしてもれいむまりさの顔の違いがわからん……」 れいむはれいむAを、俺はれみりゃ(胴無し)を選んでゲーム開始。 「どぼじででびりゃえらぶのぉぉぉぉぉぉ!!!???」 「このお兄さん、たとえ貴様がゆっくりといえども容赦せん。 それにもともと、ペットショップ使いなもんでね」 * * * * かくしてゲームスタート。 \れでぃぃぃ……ゆっくりしていってね/ 「語呂悪!」 「ゆゆゆ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 開幕からゆっくりしていってね連呼のれいむ。 ……ああなるほど。 ゆっくりや⑨でもプレイできるように全キャラ連打コマンド持ってるわけね。 「ってやべえ!」 予想以上にゲージの上昇が速い。慌てて弾幕攻撃をするが、すでにれいむのゲージはかなり溜まっている。 少しずつゲージを削るが、通常種ルールの当たり判定消滅とゲージ自動上昇によって開いた差はなかなか縮まらない。 「ゆっぐりじでいっでねっでいっでるでじょぉぉぉどぼじでゆっぐりじないのぉぉぉぉ!!!」 俺は一向に当たる気配のない弾幕攻撃を諦め、れみりゃ持ち前の素早い飛行でれいむに近づく。 「てめーこそ喰らって死ねぇぇぇぇぇぇ!!!『たーべちゃーうぞー!』」 「『ゆっくりはねるよ!』」 すかり。 起死回生の一発は(たぶん暴発した)移動技にかわされ―― 「っ―――!?」 \うぃなー いず れいむ/ 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 俺は、ゆっくりに負けた男となった。 * * * * 俺はこのゲームを舐めていた。それは認めよう。 俺はれいむの餌を七日分用意して、俺自身の身支度を整えた。 玄関に出た俺をれいむが呼び止める。 「ゆゆゆ!おにーさんどこいくの!?」 「旅に出る。 一週間後に、貴様との再戦を申し込む。それまでこの家には帰らん」 「どぼじでぞんなこというのぉぉぉぉ!!??おにーさんならとくべつにゆっくりしていっていいよぉぉぉ!?」 「もともと俺の家なんだが。 まあそれはいい。PCは置いていくから、せいぜい腕を……腕はないか。 せいぜいあんよを磨いておけ」 「いやだよ!!おにーざんといっじょにいだいよぉぉぉぉ!!!」 「俺も一週間後にもっと強くなって帰って来る。その時まで首を……首はないか。 あんよを洗って待っていろ」 「ゆゆぅぅぅーーーん!!」 * * * * それから、格ゲー仲間の友人に電話をかけ、メシを作ってやるかわりに一週間の格ゲー強化合宿を取り付けた。 言うまでもないが、飼いれいむに対戦で負けた話をしたらたっぷり三十分ほど笑われた。 こうして、友人との対戦に明け暮れる日々が幕を開けた。 「これぶっちゃけ、無しれみ弱いぞ……詰んでるマッチアップが多すぎる」 友人の指摘はもっともだった。 当初は気にも留めていなかった通常種ルールが、実は馬鹿にならない強さで設定されている。 あの日の初プレイでれいむが見せた、れいむAの高火力な開幕『ゆっくりしていってね!』が ゲームエンドに直結するほどにだ。一度奪われたリードはそうそう奪い返せない。 「うーむ……」 「胴れみはどうよ。俺も使ってないけど」 「そういや試してなかったな」 俺はれみりゃ(胴有り)を選び、友人はれいむA。 \れでぃぃぃ……ゆっくりしていってね/ 「語呂悪ぃ……」 「やっぱそう思うよな」 「うっうー!」 「うあうあ♪」 「れみりあうー☆」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 開幕『ゆっくりしていってね!に対して、『うあうあ♪』の先端に発生する攻撃判定がぎりぎり届かない。 単発の『うあうあ♪』も試したが、そもそもリーチが短く届かない。 そしてやはり逃げ切られる。 「なぁ……れいむAって強キャラじゃね?」 「まごうことなき強キャラだな……むしろ厨キャラまであるな。んで捕食種弱い」 「このサークル、れみりゃになんか恨みでもあるのか……?」 「マイルド調整の結果じゃねーの……それにしてもれみりゃ弱い」 「だけどさぁ、れいむA使う気ないんだろ?お前の性格からして」 「わかってんじゃねーか」 下手の横好きといわれても、俺は勝つためにキャラ換えしたことは一度も無い。 それは誇れることなんかじゃなく、くだらないこだわりに過ぎないのだがどうしてかキャラ換えできない。 それはきっと、俺そのものと強く癒着してしまっているのだ。 たとえば、ゆっくりがゆっくりを求めずにはいられないのと同じようにそれは当たり前のことなのだ。 「……次、行こうか」 「ああ」 俺はれみりゃを選び、再び対戦を始めた―― そして、またたく間に一週間が過ぎる。 俺は友人に礼を言って、帰途に就く。 「じゃあ、行ってくるぜ」 「頑張れよ」 * * * * 「ゆゆゆ!おにーさんまってたよ!ゆっくりしていってね!」 「だから俺の家だと言うに…… まあいい、勝負だ!れいむ!」 「ゆふふ……れいむはかなりあんよをあげたよ。せいぜいゆっくりしていってね」 「あんよ……?ああ、腕を上げたって事な。 俺だってそうさ。一週間前までのみじめな俺には二度と戻らない」 れいむはれいむA、俺はれみりゃ(胴付き)を選んだ。 \れでぃぃぃ……ゆっくりしていってね/ 0.60- 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 れいむは開幕ゆっくりしていってねを放つ。単純だが効果的な戦法だ。対して俺も手を打つ。 ボワン 「ゆゆ?」 ざうるす進化だ。これにより、俺のれみりゃはれいむに負けないゲージ上昇率を得る。 友人との合宿で、れいむAの火力に対抗するべく俺が考え出した、たった一つのソリューション―― 俺達は発想を転換しなければならなかった。 相手を倒すことより、自分がゆっくりすること。 それがこのゲームシステムにおいて、もっとも効率よく勝利条件を満たす手段なのだ。 格闘ゲームの常識に捕らわれていた俺と友人が、使えない技として無意識に除外していたざうるす進化。 それこそが勝利への鍵だったのだ。 4.42- 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!……」 「うーうー!ぎゃおー!うっうー!」 Cゆっくりしていってねの連打よりも、ざうるすれみりゃと化したれみりゃの技の方がわずかにゲージ上昇率が高い。 その微細な積み重なりは、やがて目に見える値となってゲージに表れる。現在れいむ57%、れみりゃ65%だ。 5.21- 「ゆゆっれみりゃはゆっくりしないでね!ゆっくりするのはれいむだよ!」 ついにれいむが痺れを切らせた。 「『ゆっくりはねるよ!』」 ――予想通りだ。 「『うーうー!もとにもどるどぉ~』」 ボワン こちらへ素早く跳ねてくるれいむのモーションに辛うじて反応し、れみりゃを通常形態へと戻すことに成功する。 ジャンプからのぼでぃぷれすをガードし、続く通常技を頭を抱えてやり過ごす。 「ぷんぷん!もうおこったよ! 『ここはれいむの……」 微妙な状況だ。 ――発生前に潰せるか(↓Aでカウンターを狙える) ――ガード(削られる/ゲージ2%減) ――喰らえば仕切り直し(ゲージ増減れいむ+7%れみりゃ-5%/それより距離が離れるのはまずい/Cゆっくりしていってねで死ぬ) 「……ゆっくりぷれいすだよ!』」 読み違えれば ――潰せる(無理だ) 負ける。 高速で流れる思考とは裏腹に、反射的に指が動いていた。 「――っ!」 俺の親指はAボタンを外してパッドを掴み、れいむのふくれっ面攻撃をガードする。 ――まだ行ける(ゲージはまだリード/進化or↓AB踊りコンボor投げ) 7.33- れいむが小さく一歩退がった。一瞬間が空く。 「うー!うー!」 それは俺のれみりゃのボイスではない。 画面の左上部から飛来する小さな影。その位置はれみりゃよりれいむに近い―― 「うーぱっく!れいむにあまあまちょうだいね!」 その瞬間、なにもかもがスローモーションに見えた。 俺は指を滑らせ←Cを繰り出す。 ←Cは攻撃判定は無く、前方に踏み出しながらゲージを溜める踊り技だ。 もしもれいむが攻撃を繰り出したらカウンターとなってしまう。 しかし俺には確信があった。 ――次に貴様は『ゆっくりはねるよ』と言う れいむは一生懸命にあんよで十字キーを操作している。 間違いない。れいむにとっては複雑な技コマンドを出すために、常時よりも丁寧にあんよを動かしている。 「『ゆっくり……」 ――逃がさん(投げ)(投げ)(投げ) すでに←Cの硬直を利用しコマンドは完成している。 「……はねるよ!』」 ――ここからなら ←Cで踏み出したこの位置からなら、ぎりぎり届く。 しゅばっ 「うー!」 れみりゃの手が伸びて、今まさに後方へと移動しようとしたれいむを捉える。 「ゆゆぅぅぅぅぅーーー!!??」 「つかまえたどぉ~。『たーべちゃーうどぉー!』」 画面がブラックアウトし、れいむの絶叫が響き渡った。 * * * * \うぃなー いず れみりゃー/ 「うっうー!」 「ゆゆん……さすがはおにーさんだよ!」 「いやーれいむこそなかなかだったぞ。レバガチャかと思ったら意外にコマンド正確だったしな」 だからこそキャラ差を読みでカバーすることができたわけでもあるのだが。 「もういっかい!もういっかいだよ!」 「よーし、やろうか」 俺は快く承諾する。 「さぁーて、”リベンジも果たしたことだし”俺もれいむA使っちゃおうかな~」 俺は勝つためにキャラ換えはしないが、その他の理由でキャラ換えすることは結構あるのだ。 「ゆゆっ!まけないよ!れいむがいちばんうまくれいむをつかえるんだよ!」 「俺だって負けないぞー。何せ、六日間もゆっくり練習してきたからな」 俺はこの時のために練習してきたれいむAで、れいむを完膚なきまでに叩きのめした。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりはねる(キャンセル)ぷくー! ゆっくりしていってね!ぷくー!ここはれいむのゆっくりぷれ(キャンセル)ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!ゆっくりしていっ(キャンセル)ばかなの?ゆっくりしていってね!ばかなの?しぬの? ゆっくりしていってね!ばかなの?ばかなの?ばかなの?しぬの?ゆっくりしていってね!」 「ゆあああああああ!!!!!おにーざんばっがりずるいよ゛ぉぉぉぉぉぉぉ!!!! でいぶもゆっぐじじだい゛よ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 俺は軽快にコンボを継続し、れいむを空中に浮かせ続けながら言ってやった。 「おそらをとんでるみたいだろ?れいむ、ゆっくりしていってね!」 「ゆぐぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!!!!!!」 END ■ □ ■ □ ちなみにこの二ヶ月後、れいむA、れいむC、ちぇん、みょんに10割コンボが発見され―― 世界は、核の炎に包まれた。
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引っ越し その1 - のどかな草原をゆっくり霊夢の大家族が行進していた。 二組のゆっくり家族が行動を共にしていて母ゆっくりは二匹いた。 他は中くらいのゆっくりが8匹、小さいゆっくりが10匹とかなりの大所帯だ。 これだけゆっくりがいれば食料の確保が大変だ。 今まで暮らしていたゆっくりポイントの周囲は雑草すら無くなり荒地と化してしまったのだ。 なのでゆっくり大家族は食料のために次のゆっくりポイントを探しに移動していた。 これだけゆっくりが多いと、その行進はとても賑やかなものになる。 「ゆっゆっゆっ」 と先頭を行く母ゆっくり。雑草を踏みつぶして道を作りながら他のゆっくりを導く。 「そっちにいったらゆっくりできないよ! 戻ってきてね!!」 これは中ゆっくり。お姉さんらしく隊列を離れようとする小ゆっくりを引き戻す。 「虫さんゆっくり待ってね!!」「お母さんお腹すいたよ!!」「疲れたから乗っけてね!!」 他にも思い思いに行動する小ゆっくり達を隊列中央の母ゆっくりと中ゆっくりが相手しながらゆっくり行進していた。 傍目に見てもとても微笑ましい光景で、実際ゆっくり達はとっても幸せだった。 しばらく進んだところで先頭の母ゆっくりが大木の幹にぽっかりと穴があいているのを見つけた。 「ゆっ! 様子を見てくるね!!」 母ゆっくりは他のゆっくりに待機を促すと大木へと向かっていく。 中を見るとゆっくり魔理沙とゆっくりパチェリー、そしてたくさんの食料が蓄えられていた。 「ゆっくりしていってね!」 「むきゅ、ゆっくりしていってね」 母ゆっくりを確認すると二匹は反射的に挨拶してきた。 「ゆっくりしていくね!!」 母ゆっくりも挨拶を返す。しかしこれはただの挨拶ではない。 少し離れたところでゆっくりしていた他の家族を呼ぶ言葉でもあった。 「ここが次のゆっくりできる場所?」「うわぁ、食べ物いっぱいあるよ!!」「ゆっくり入るね!!」 ゆっくり霊夢の群れがゾロゾロと大木の穴へ、ゆっくり魔理沙とゆっくりパチュリーの家へと入っていく。 ここにきてゆっくり魔理沙が食料の危機を感じた。 こんなたくさんのゆっくり達とゆっくりしたら三日もせずに食料が尽きてゆっくり出来なくなってしまう。 「悪いけどゆっくり出てってね! こんなにいっぱいじゃゆっくり出来ないよ!」 「むきゅー出てって!」 特にゆっくりパチュリーは本気で嫌がっていた。ついさっきまで大好きなゆっくり魔理沙と二人でゆっくりしていたのに邪魔されたのだから。 しかしゆっくり霊夢の群れは、 「ゆっ、他のゆっくりがいるよ!!」「いっしょにゆっくりする?」「ここはれいむたちのおうちだよ!! いいでしょ!!」 ようやく元々住んでいた二匹に気づくゆっくり霊夢たち。 それだけでも失礼だというのに、あろうことか自分たちのおうちだと主張し始める。 「ここはもともと魔理沙のおうちだよ!! ゆっくり出て行ってね!!」 ゆっくり魔理沙も負けじと主張し返す。 「ゆゆっ! ちがうよゆっくりれいむたちのおうちだよ!!」「ゆっくり出来ないゆっくりは仲間に入れてあげないよ!!」「はやく出ていってね!!」 数の暴力(言葉Ver)だ。複数のゆっくり霊夢が一度にゆっくり魔理沙を言葉攻めにする。 ゆっくり魔理沙は気圧されて思わず涙汲んでしまう。 とっても怖かったがせっかく見つけたゆっくり出来る場所を譲るわけにはいかなかった。 貯蔵した食料だって体の弱いゆっくりパチュリーの分までがんばって集めたのだ。 「だめなのぉぉ!! でてってったらでてって~~!!」「むぎゅむぎゅ~~ん!!」 ゆっくり魔理沙は泣き喚きながらゆっくり霊夢の群れに体当たりする。 動きの鈍いゆっくりパチュリーも魔理沙に続いて体当たりする。 だが、その全力の体当たりも母ゆっくりによって逆に弾かれてしまった。 二匹は弾かれた勢いで壁にぶつかってしまう。 「ゆっくり出来ない二匹にはおしおきだね!!」「やっちゃえお母さん!!」 壁にぶつかってフラフラする二匹に母ゆっくりが迫る。 「や、やめてね!! ゆっくりやめてね!!」「む・・・きゅ・・・」 母ゆっくりはその大きな体で二匹を壁に押し付ける。 「むぎゅ・・・ぐるじぃぃぃぃ」 体の弱いゆっくりパチュリーは早くもやばそうだ。 「や”め”で~~~!!! ゆ”っぐりじでただけなのに~~!!」 ゆっくり魔理沙も苦しそうだ。 「「ゆっくり潰れてね!!!」」 母ゆっくりたちはさらに強く二匹を押し付ける。 その圧力にゆっくりパチュリーは潰されてしまう。 「むぎゅ~!!」 ぱちゅんと勢いよく餡子が壁と床に飛び散る。 「あ”あ”あ”~~!!? おあちゅりーー!!」 隣で親友のゆっくりパチュリーが潰されて叫ぶゆっくり魔理沙。しかし悪夢はまだ続いた。 潰されたゆっくりパチュリーが、つぶした母ゆっくりに食べられていた。目の前で。 他の子ゆっくりたちも一緒にゆっくりパチュリーを食べ始めた。 「うっめ! めっちゃうっめ!!」 他のゆっくりを食べるのに慣れているのだろう。 なんの躊躇もなくゆっくりパチュリーだったものを食べていく。 ゆっくり魔理沙はもう見たくなかった。体の力を抜いてつぶされようと思った。 「おかあさん、はやく潰してね!!」 その言葉を聞いた直後ゆっくり魔理沙は餡子と化した。 結局、ゆっくり魔理沙とゆっくりパチュリーのおうちはゆっくり霊夢たちのおうちになった。 しかしそれも長く続かなかった。 「おかあさんお腹すいたよ!!」「次のおうち探そうよ!!」 ゆっくり大家族はものの一週間でおうちにあった食料も、周囲の草花も食べつくしてしまっていた。 こうなればここもすでにゆっくり出来ない場所だ。 「今度はもっと広くて食べ物がいっぱいあるところにいこうね!!」 母ゆっくりはそう言うと先頭に立って歩き始めた。 こうしてゆっくり大家族は再び引っ越しを始めた。 引っ越し その2 - ゆっくり大家族が次に見つけたのは大きな洞窟だった。 四角い形をしていて、入口も四角い穴だった。 いつものように先頭を行く母ゆっくりが洞窟の様子を見る。 中は思ったとおり広く、さらに嬉しいことに以前のゆっくりポイントよりずっとたくさんの食料がそこにはあった。 「ゆゆゆっくりできるよ!!!」 興奮気味な母ゆっくりの声を聞くと待機していたゆっくりはぞろぞろと洞窟へ入っていく。 そこはまさに楽園だった。 果物や野菜といった豪華な食料が洞窟の至る所に並べてあったのだ。 「すごいね!!」「いっぱいゆっくりできるよ!!「ゆっくり~~!」 ゆっくり達はぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを表現する。 その中の一匹が野菜の山に飛び込んで食事を始めると、ゆっくり達の大宴会が始まった。 引っ越しの旅でお腹を空かせたゆっくり達は「うっめ!!めっちゃうっめ!!」と感激しながら食事を行う。 そしてお腹いっぱいになるとそのまま眠りについた。 明日起きたらあっちの食べ物を食べよう。その後はゆっくり皆と遊ぼう。 まさに幸せの限りであった。 翌朝 洞窟の入口から漏れる朝の光で目が覚めるとそこは野菜の上だった。 やっぱり昨日のは夢じゃなかったんだ。 「ゆっくりしていってね!!!」 朝の挨拶を済ますと目の前の野菜にかぶりつく。 おいしかった。 「ゆっくりしていってね!」「ゆっくりねむってたよ!!!」 他のゆっくりたちも徐々に起きだす。 「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」 全員起きたところでみんなで挨拶だ。いつもより気持ちのいい挨拶だ。 その時だった。 突然洞窟の入口から漏れる朝の光が遮られた。 何匹かのゆっくりが洞窟の入口に目を向けると見知らぬ生き物がいた。 少なくともゆっくりではないようだ。 「ゆっ?? だれ?ゆっくり出来る人??」 「ゆっくりしていってね!!」 ゆっくり達は特に警戒するでもなくその生き物に挨拶する。 しかしその生き物は答えない。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりあいさつしてね!!」 「ゆっくりできないなら出ていってね!!」 挨拶を返さないことが不満なのか言葉に棘が混じる。 ここでその生き物が声を発した。 「なんだよ・・・これは・・・」 「ゆっ?」 ゆっくり達は訳が分からない。 その生き物は言葉を続ける。 「なんてことをするんだお前たちは。ここは村の食料庫なんだぞ」 口調は冷静だが声は震えていた。 それは怒りだったが鈍感なゆっくり達は気付かない。 むしろその生き物が自分たちのおうちを自分のもののように言ったことに反応した。 「ここはれいむたちのおうちだよ!!」 「勝手にとっちゃだめだよ!!」 「はやく出ていってね!!」 その生き物は少し考えるとその場から去って行った。 ゆっくり達はその様子を見て勝ち誇った。 「もう二度と来ないでね!!」 そして邪魔ものがいなくなったので朝ごはんの続きを食べ始めた。 「むーしゃ」 「むーしゃ」 「「「しあわせー」」」 ご満悦である。 朝ごはんを終えてそろそろ洞窟の外で遊ぼうと思っていた時だった。 ゆっくり達のおうちに何かが飛び込んできた。 それと同時に洞窟の入口が閉じる。 「ゆっ?」「ゆゆゆ??」 ほとんどのゆっくりは何が起きたのか把握できない。せいぜい暗くなったということだ。 ただ、二匹の母ゆっくりだけが閉じ込められたということを理解していた。 出口に向かうと扉に向かって体当たり。しかしビクともしない。 「ゆっくりやめてね!!」 「ゆっくり開けていってね!!」 母ゆっくりたちは外に向かって声を上げる。 しかし反応がない。 代わりに後方、子ゆっくり達のいた方から声が聞こえた。 「ゆ”・・」「う”べべば」 苦しそうな声。 母ゆっくりたちが振り返るとそこには苦しそうにする子供たちの姿があった。 中ゆっくりたちはまだ大丈夫そうだが小ゆっくりたちは泡を吹き白目を向いていた。 「お、があざんん・・・ゆ”っぐりできないよ”・・・どうじで~!!」 中ゆっくりが母ゆっくりに向けて疑問をぶつける。 しかし母ゆっくりも訳が分からなかった。 原因は洞窟が閉じられる前に投げ入れられた物だ。 ゆっくり達は気付いていないが無煙無臭の毒物がそこから噴出していた。 ゆっくり達は徐々に毒に侵されていく。 小ゆっくりはピクピクと動くばかりで声すら出せないようだ。 「ゆっくりなおってね!!」 「いっぱい食べて元気になってね!」 などと言いながら食料を口移ししようとするが、反応はない。 それでも母ゆっくりは食料を与えれば治ると思っているのかそれを続ける。 中ゆっくりはと言うと他のゆっくりに構う余裕はなく、それぞれ苦しんでいた。 毒ガスの発生源から近いゆっくりほど早く泡を吹き、白目を向いて倒れていく。 毒の効果なのだろう。断末魔のうるさいことで定評のあるゆっくり達は静かに死んでいく。 母ゆっくりも大きな体のおかげでしばらく子ゆっくりを看病できたがとうとう倒れて泡を吹き始めた。 「あばばばばば」 「ゆぐっりぶあぁ」 泡を吹き、声らしい声も出ない状態で母ゆっくりは考えた。 なんでこんな目にあったのだろう。 今まで怖い目に逢うこともなくゆっくりと生きてこれたのに。 子ゆっくりが生まれてからはゆっくり出来ないこともあったけど騒がしくて楽しかった。 他のゆっくり家族と行動を共にしてからはもっと楽しかった。 色んな場所へ旅に出たし、色んなゆっくりポイントを見つけた。 そしてこの洞窟は最良の場所だった。ここなら長く住んでも食料は持っただろう。 ああ、これは夢だ。きっと目が覚めたらゆっくりできるだろう。 そう思ったのを最後に母ゆっくりの意識は途絶えた。 一時間が過ぎた。 「そろそろか?」 「あの兎が言うにはそろそろのはずだ」 たくさんのゆっくり霊夢に村の貯蔵庫に荒らされた。 村の一人の青年が今朝そう報告してきた。 棒やら包丁やら武器を用意していたところ一羽の兎が現れた。 「これを使うといいウサ」 そして、 扉を開けるとそこにはゆっくり達が泡を吹いて死んでいた。 貯蔵庫の中央にいたゆっくりも、部屋の隅でうずくまっていたものも・・・すべてだ。 「すごいな・・・」 「さすがえーりん様の薬だ」 「まったくいい気味だべ」 えーりん印の殺ゆっくり剤。ゆっくりだけを静かに殺す毒ガスだった。 さらに優秀なことにこの毒で死んだゆっくりは食しても無害なのだ。 一方この殺ゆっくり剤を村人に渡した兎はというと、貯蔵庫の様子を見に行って 人のいなくなった家から好物のニンジンを集めていた。 彼女は嘘つき兎として有名な因幡てゐ。 今日も人を騙そうとこの村へ寄ったのだがちょうどこの事件が起きていた。 そこでたまたま永遠亭から無断で持ち出していた殺ゆっくり剤を渡したのだ。 「んー、いいことをしたわ」 盗んだニンジンにかじり付きながらそう言う。 本当はゆっくりをいじめて楽しむつもりために持ち出した毒だったのだが、 大量のニンジンを手にすることが出来たのだ。 (そうだ。ニンジンが無くなったことに人間が気づいたらゆっくりのせいにしてやろう) 悪戯兎としてはゆっくりが増えた方が何かと都合よかった。 いじめられるうえに食に関するいたずらは全部ゆっくりのせいにできるからだ。 今度はゆっくり家族を騙して村の食料を食べさせよう。 そしてそれを人間に教えて、ゆっくりをどう処理するのかを観察して楽しむのだ。そしておこぼれをもらう。 ゆっくりは…最高のおもちゃだ。 終
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「まずみんなでタイトル案を出し合い、それを使って「冬」テーマの作品を作る。 」 との事でしたので、皆さんが出してくださったタイトルを 盛大に無駄使いして 作ってみました。 よろしければご覧ください。けっこう滅茶苦茶です。 「てんこ大家族」 「誕生日がクリスマスとか俺の両親絶対忍者だろ……」 「劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記」 「聖夜だ!メリクリ!カップ麺!!」 「生首村のホワイトクリスマス] 「百合炬燵」 「赤と緑の茸が家に来た日」 「冬休み子ども劇場『黒谷スパイダーマッ 逆襲のグリーンアイドゴブリン』」 「サンタクロースが死んだ朝に」 「間に会うかもしれないパチェさん」 「博麗VS守屋ドキドキゆっくり雪合戦!~雪を固めりゃ氷となる~」 「どうする? おまえの相手は世界一強い饅頭だぞ」 「俺の右腕がああアアアアアアアアアアアア」 「ゆっくりと星のアルペジオ」 「年をッ!越すまでッ!震えるのをやめないッ!」 「ゆっくりふるでいず」 熱くなっていく身体、火照っていく顔。私は全身の力をゆっくりと抜いていき、その心地よい感覚に身を委ねる。 衣類を何一つ身につけていない裸体がどんどん熱を帯びていく。 目元はとろけ、頬は紅く染まり、口からは熱い吐息がこぼれる。 手を、足を、心臓を、脳を、ひとつの感覚が包み込む。 (気持ちいい……) 視線を下ろし、自分の身体を見る。しかし、細い身体とは不釣合いに大きな胸が遮り 「嘘だッッッッッッッッッッ!!!!!」 声に反応し、視線を横に向ける。そこにはすごい形相でこちらを睨んでいる茶色い髪の一頭身…ゆっくりりりかがいた。 ああそうさ、私の胸はお世辞にも大きいとは言えないよ。でも言わなきゃわからないんだからちょっとくらい見栄張ったっていいじゃない! 「っていうか顔怖い」 「うおっぷ!」 りりかが乗っていた桶をひっくり返し、彼女を湯船の中に沈めた。せっかくの温泉でお湯に浸からないなんてもったいないしね。 私ってえらいね~。 『嘘だッ!って言う時はああいう表情をしろってけーねが言ってた』 「言ってない」 違う方から声がしたので振り向くと、ゆっくりけーねがいた。 「いたんですか」 「ああ、ずっと」 それだけ言葉を交わすと、再び湯船に身を任せてゆっくりする。 「あー気持ちいい…やっぱ来て正解だったわ」 『年末年始、慌しかったからね…』 テンションの下がる声が聞こえる。めるらんに連れられていろんな湯を見に行っていたるなさが戻ってきたようだ。 …ちなみにりりかもるなさも一頭身なので湯船に浸かると当然全身沈んでしまう。そうなると当然声を発することなどできないのだが、 こいつらの場合楽器を水面に出してそこから音を出して声を作っている。器用な連中だ。というか楽器が傷んだりしないのか。 「めるらんは?」 『あっちにうたせ湯があったから…』 「あぁ、打たれてるんだ」 『いや、上に登ってお湯と一緒に落下してを繰り返して遊んでる』 「…大丈夫なの?それ」 『たぶん…』 『姉さんならそのうちテンション上がってきて、落ちてくるお湯の中を泳いで昇ったりしそうだし』 うたせ湯を笑いながら泳いで昇っていくゆっくりめるらん。 (年末年始か…) そんな光景を想像したら気が狂いそうになったので、私はさっきのるなさ(というかバイオリン)の言葉にもあった 『慌しかった年末年始』の事を思い出していた。 12月24日 クリスマスイヴ 知り合いのてんこが遊びに来た。 「てんこ」 「てんこ」 「てんこ」 「てんこ」 「てんこ」 「大」 「家族」 一家総出で。 「帰れ」 「いいじゃないの、どうせクリスマスを一緒に過ごす人とかもいないんでしょ?」 「だからと言って、こんなてんこの集団と戯れ…ってあんたら何人いるの?」 「27人」 「多すぎだろ!ますます帰れ!」 怒鳴ってはみるものの相手は30人近く。押し切られてしまった。数の暴力だ。 あがってきたてんこ集団にりりかは圧倒され、めるらんは何故か爆笑した。 「え?なに?晩御飯カップ麺なの?」 「いいじゃん別に…カップ麺おいしいじゃん」 「いろいろ持ってきて正解だったね!」 見るとてんこ達は各々手に何かを持っている。食料は持参したようだ。まぁ、そりゃあ持参しないと足りなくなるよね。 「明日はちょうどうちのてんこが誕生日だから、てんことてんことてんこがケーキ作ってきたんだよ!」 「誕生日がクリスマスとか俺の両親絶対忍者だろ……」 「忍者じゃなくててんこだけど?」 「てんこー、てんこの前のポテトとって」 「てんこ!てんこのから揚げにレモンかけないでって言ってるでしょ!」 「てんこー、てんこがてんこのPizzaとったー。てんこ見てたよ」 頭がおかしくなりそうだ。 「あんたら、あれでよくわかるわね…1~3人称が全部同じじゃないの」 「それはほら、同じ種類の動物の顔ってどれも一緒に見えたりするけど、飼育員とかは見分けられるでしょ?」 「うん」 「それと同じよ」 「絶対違うと思う」 「ただいま…うわっ」 わいわいがやがややっていると、出かけていたるなさが帰ってきた。 「お帰り」 「何これ………えっ?何これ…」 「えーっと、てんこ27」 いちいち説明するのも面倒だ。るなさも説明されるのが面倒だと察したのか、それ以上の追求は無かった。 「……ふーん。あ、そうだ。雪降ってたよ」 「マジで!?」×29 私とるなさを除く全員が窓に殺到した。隙間無く積み重なってゆっくりの壁を形成している。後ろから見るともの凄く不気味だ。 しかし前から見ると29の顔面が並んでいるわけで、後ろからよりもよりいっそう…さぞや恐ろしい光景になっていることだろう。 「ホワイトクリスマスだね!」 「私たちの故郷も今頃、雪が降ってるのかな…」 こいつらの故郷… 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 雪が降る中飛び跳ねる生首たちを想像してしまった。なんだこれ、この世の終わり? 「変なこと言わないでよ…変なもん想像しちゃったじゃない。故郷ってどのへん?」 「沖縄から東に50キロほど離れた小島に村が…」 「雪降らねーよ」 ずどどどど、という音が聞こえた。ゆっくりウォールが崩れたようだ。飽きたのか。 「BD見るよ!」 「ブルーディスティニーなら無いわよ」 「違うよ!買ってきたんだよ!」 てんこが袋を差し出してきた。あぁ、ブルーレイディスクか、紛らわしい。BDって言ったら普通ブルーディスティニーでしょうが。 やっぱり1号機よね。2号機は変態の手に渡っちゃったしガンダム顔だし。蒼くて強いジムってところがなんか特別な感じがして いいんじゃない。白い3号機は論外。それはそうと戦場の絆で「EXAM SYSTEM STANDBY」の音声が鳴らないのはいったいどういう了見… 「プレーヤーが無いよ」 「ええっ、いまどき!?」 …おいこら、かわいそうなものを見るような目で私を見るんじゃあないッ! 「見たかったのに…「劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記」 」 「あぁ、それなら私見たことあるよ」 「どんなのだった!?」 「えーっとね…」 駐車場でいくさんが放電している。 「SPARKING!」 それはエレクトリック。 みすてぃあが歌っている。 「がんばれ地球♪がんばれ地球♪ぼく~は限界だ~♪」 それはエキセントリック。 すわこが何かを一生懸命こすっている。それはエレクト・ロリ…って何言わせるんですかいやらしい。 「みんな何やってるのぜ!まりさが本当のエレクトル…エラクトロ…エラレ…エレ…エなんとかを見せてやるぜ!」 「ひどい映画だったよ」 「ふん!」(バキン!) ひでえ。真っ二つに割りやがった。 その後も数に任せてぎゃんぎゃん騒ぐだけ騒いで、ぞろぞろと帰って行った。 「よかったわね~。さびしいクリスマスにならなくて」 あれだけやかましいのもどうかと思いますが。 「でも、意外だね。片づけまでして帰ってくれるなんて」 「さすがに一級天人は格が違った」 るなさの言うとおり、奴らは帰る前にきちんと後片付けをしていった。残されたのは、お土産とか言って置いていった 炬燵の上の百合の花だけ。 「じゃあ私たちはそろそろ寝ようか」 「そうね~♪早く寝ないとサンタクロースさん来ないかもしれないし」 「それは困るね!絶対プレゼントもらわないとね!」 ゆっくり3姉妹はおやすみと言って寝室に向かった。 そして翌日 「サンタは死んだ!もういない!」 「だけど私の背中に、この胸に♪」 「…一つになって生き続ける」 3姉妹の叫びで目が覚めた。 「どうしたのよいったい…」 眠い眼をこすりつつ、そして「胸とか背中とかいったいどこよ」と思いつつ何があったのか尋ねる。 3人曰く、お願いしていたのと全然違うプレゼントが届いたのだという。 「そんなの毎度の事じゃない…」 この町内では大人のゆっくりが毎年交代でサンタ役を演じ、各家庭のゆっくりにプレゼントを配っている…のだが、ゆっくりなので 思い通りのプレゼントが届かない事がしょっちゅうある。実際去年も微妙に違うのが届いた。 「今年のはひどすぎるんだよ!」 「どれどれ…」 私は3人がサンタへのプレゼントのお願いを書いた紙を取り、読んでみた。 『サンタさんへ チューバをお願いします るなさ』 嫌がらせか。 「で、何が届いたの?」 「これ…」 るなさが取り出したのは、赤い茸と緑の茸。 「ひどいよ!全然違うよ!」(ピローン) (あ、1アップした) 「楽器ですらないよ!」(モコモコモコ) (あ、でっかくなった) 続いてめるらん。 『サンタさんへ プレゼントはパイプオルガンがいいです めるらん』 無茶言うな。 「それで、届いたのがこれよ~」 差し出したのはDVD「冬休み子ども劇場『黒谷スパイダーマッ 逆襲のグリーンアイドゴブリン』」 。 「まったく、今年で30周年を迎えるスパイダーマッシリーズの劇場版第4作、グリーンアイドゴブリンが結成したネオ・ 地霊殿が火山を次々と噴火させて地上をゆっくりできない世界にしようとするのをライバルであるスパイダーマッが腑抜けた地上の 連中に嫌気が差しながらもゆっくりの英知を信じてそれを阻止する、テレビシリーズの初代から続いてきたスパイダーマッと グリーンアイドゴブリンの最終決戦になる作品のDVDをよこすなんて…」 「詳しいじゃない」 満更でもないんじゃ? で、最後りりか。 『サンタさんへ 現ナマよろしく りりか』 こんな子供嫌だ。 「結果がこれだよ!」 10円だ。あ、よく見るとギザ10だ。 「…一応現金じゃない」 「桁が少なすぎるんだよ!6つくらい!」 いっせんまん欲しいってか。業突く張りめ。 「そんなわけで、もうサンタなんか信じないんだよ!私の中でサンタは死んだんだよ!」 無茶なお願いに斜め上の切り返しをされただけで(脳内で)殺されてもたまったもんじゃないと思う。 「これからはロックに生きるわ!」 あんたはもうかなりロックに生きてると思う。 「私、そろそろ出かけるんで…」 こいつ一人だけ妙にクールだ。さすが長女。 それにしても、ここまで違うプレゼント持ってくるとは…誰だろ?今年のサンタ役。 -前日、某所 「「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー」」 ぱちゅりーとこあくまがケーキをパクついている。 「そういえばぱちゅりー様、今年はまりさ来ませんでしたね。毎年クリスマスプレゼントとか言って何かしら持っていくのに」 「ああ、そりゃムリよ。だって今年あの子サンタ役だもの」 「あぁ…道理で最近会ってないわけですね」 「まぁ、クリスマスも終わった事だし、今からお正月の間に会うかもしれないけどね」 12月31日 大晦日 雪がだいぶ積もった。そうなればやる事は一つ。 「第一回 ゆっくりの使いやあらへんで!チキチキ 博麗VS守屋ドキドキゆっくり雪合戦!~雪を固めりゃ氷となる~」 だ、そうです。 「博麗チーム集合!作戦立てるよ!」 博麗チームのリーダーであるゆっくりれいむが号令をかけると、紅白の鉢巻を巻いたゆっくりたちが集まっていく。 「じゃあお姉さん、行ってくるわ~」 「戦禍を期待しててね!」 「その『せんか』は期待したくないなぁ…まぁ、がんばっといで」 うちのめるらんとりりかも博麗チームだ。れいむのところにぴょいぴょいと跳ねていく。 ちなみにこの雪合戦はゆっくりたちによるものなので私は付き添い。このクソ寒い中雪玉のぶつけ合いなんかやってられるか。 「守屋集合」 向こうのチームも集まって作戦を…あれ? 「さなえじゃないんだ」 あちらのリーダーはさなえではなく、りぐるだった。 「守『屋』ですから」 「はぁ…」 隣にいたお兄さんに指摘されてようやく気付いた。確かによく見ると『矢』ではない。でも普通にさなえも混じってるし、 あれ間違えただけなんじゃないの? 「さなえは犠牲になったのだ…モリヤから変換される誤字、その犠牲にな」 でもなんか楽しそうだから別にいいんじゃないかと思う。やっぱり楽しめるのが一番だよ、うん。 私はやんないけど。 しばらくして両陣営とも作戦会議が終わったようで、それぞれが配置についた…が。 「んなッ!?」 「ふふふ…」 なんと、守屋の陣営にとんでもなくでかいゆっくりがいた。 「全長500センチメートル、巨大ゆっくりすいか。さぁどうする?おまえの相手は世界一強い饅頭だぞ」 隣のお兄さんがこちらに向かって自信満々に説明する。なるほど、この人んトコのゆっくりか。だけど… (私が相手するわけじゃないんですけど…!) 圧倒的スケールと存在感で威圧するすいか。しかし博麗チームは少しもひるむ様子はない。何か対抗策があるのだろうか… 「スタート!」 そして、戦いの火蓋は切って落とされた! 「すいか、アウトー」 んで、すいか速攻で落ちた! 「バカなァ!」 「やたらでかいから狙いやすいったらないぜ」 「くっ…とんだ誤算だ!」 アホだコイツ。 「大丈夫かすいか!」 「うう…」 退場となったすいかにさっきのお兄さんが近づいていく。大丈夫かも何も雪玉ぶつけられただけじゃん。すいかもなに呻いてんだ。 「すいか、酒だ!ほら!」 「さけ…?」 何故か朦朧としている巨大すいかは、『酒』という言葉に反応し………酒瓶をもつお兄さんの右腕ごとくわえ込んだ! 「俺の右腕がああアアアアアアアアアアアア」 「あ、ごめん」 退場したのに騒がしい人たちだ…うわっ、酒くさっ! 「ふふふ、すいかは年がら年中酒を飲んでいるせいで、口の中は常に酒だらけなのですよ」 すいかの口から右腕を抜いたお兄さんが何故か得意げに説明しながら戻ってきた。というか戻ってくるなよ、酒くさいし。 後ろのすいかのプレッシャーもすさまじいし。 すいかのインパクトが強すぎてつい見逃していたが 「雪合戦に勝ったよ!」 「やったね姉さん!」 勝ったらしい。どうもすいかが退場した事により浮き足立った守屋を試しに総攻撃したら一気に陥落したそうな。 特に賞品とかは無かったので、その後まっすぐ家に帰ってきた。寒いし。 「年の最後を勝ちで締めくくれるなんて、良かったわね~♪」 「騒霊学会大勝利!だね!」 「おいやめろ」 なんかやばい気がする。 「ただいま…」 きゃっきゃとはしゃぐ二人をハラハラしながら眺めていると、るなさが帰ってきた。 「お帰りー…そういえば、先月あたりからちょくちょく出かけてるみたいだけどどこ行ってるの?」 「うん、星ちゃんのところにギター教えに…」 「へー…そんな事してたんだ。どんな感じなの?」 「えーっと、今日はアルペジオを教えたんだけど…」 「じゃ、今日はここまでで…」 「先生!私、星(スター)になれるかな」 「えーっと…星(しょう)なんだしバイストンウェルに行って聖(ひじり)戦士になったらいいんじゃないかな」 「まさかのザマ!?」 「↑こんな感じだった」 この子もけっこうヒドいこと言うな。 「ところで…なんでめるらんとりりかはこの寒い中外にいるの?」 「除夜の鐘を聞くんだよ!」 「震えてるじゃない。いい加減中入りなよ」 「年をッ!越すまでッ!震えるのをやめないッ!」 「…どこにいようが、この町では除夜の鐘なんて聞こえないよ」 「「うそっ!?」」 「去年もそうだったじゃない…」 るなさがじとっとした目でこちらを見た。ごめん、なんか面白かったから黙ってた。 『あの後結局食あたり起こしたんだよねー』 『寒さ全ッ然関係なかったね!』 「っていうかお腹壊したのるなさだし」 『ホント、なんでだろ…』 なんかちょっと頭がぽーっとするな…と思ったが、それもそのはず。いつのまにかめるらんも加わった年末の思い出話に花が咲いて まったく気が付かなかったが、もう随分と長風呂していたようだ。けーねなんかはとっくの昔にあがっている。 『あー…のぼせちゃったね』 「…今更だけど、そんな長時間水中にいて大丈夫なの?」 『ゆっくりしてれば大丈夫よ~♪』 心配…というか、考えるだけ無駄な気がしてきた。本人達が大丈夫って言ってるんだから大丈夫なんだろう。 『あ…雪が降ってきたよ!』 視線を外に移すと、確かに空からゆっくりと何かが降ってきている。 …待てよ、あれは…本当に雪か?色と形状に疑問を抱き、よーく目を凝らしてみる。 「…いや、違う…」 『ゆっくりと』降ってきてるんじゃない。これは… 「『ゆっくりが』降ってきてる!?」 それは確かに雪なんかではなく、ゆっくりだった。ゆっくりが雪のように、ゆっくりと空から降ってきている!(ややこしい!) 『オーゥ、ワンダフォー』 「これは一体…」 「なんや姉さん、知らんのかいな」 驚いているところに声がかかった。振り向くと、最初けーねがいたところに、代わりにきもんげが浸かっている。 「何か知ってるの?」 「ここ伊豆では毎年この時期になると雪の代わりにゆっくりが降ってきよんねん。名物の一つやね。 まぁそう頻繁に降るもんでもないねんけどな。姉さんら運がええで」 何がなんだかわからない。いや、元から何がなんだかわからないのがこいつらだけど、今回は輪をかけてわかんない。 私聞いてない。 「え?え?えーと…つまり、どういうこと?」 「平たく言うとやな…」 混乱し続ける私に、きもんげは「はーっ…」と、呆れているのか温泉を堪能しているのかわからないため息をついて答えた。 「ゆっくり降るで、伊豆」 -おしまい- 書いた人:えーきさまはヤマカワイイ ※このお話はフィクションです。実際に登場する人物、団体、出来事その他もろもろとは一切関係ありません。もちろん、 伊豆でゆっくりが降ったりもしないので苦情とか言われても困っちゃう。 一応解説 「てんこ大家族」 →クリスマスイヴに遊びに来たてんこ一家総勢27人 「誕生日がクリスマスとか俺の両親絶対忍者だろ……」 →てんこですが 「劇場版ゆっくりしていってね!!! エレクトロニックとはこの俺だぜ! まりさのマーヴェラスパーキングエリア漂流記」 →てんこ一家が買ってきてブチ割ったBD(ブルーレイディスク)のタイトル 「聖夜だ!メリクリ!カップ麺!!」 →てんこ達が来なければカップ麺の予定でした 「生首村のホワイトクリスマス] →お姉さんが想像した地獄絵図 「百合炬燵」 →てんこが炬燵の上に百合の花置いていった 「赤と緑の茸が家に来た日」 →るなさのプレゼント。スーパーキノコと1UPキノコ 「冬休み子ども劇場『黒谷スパイダーマッ 逆襲のグリーンアイドゴブリン』」 →メルランのプレゼント。30周年で逆襲の 「サンタクロースが死んだ朝に」 →あばよ、ダチ公 「間に会うかもしれないパチェさん」 →あいだにあう 「博麗VS守屋ドキドキゆっくり雪合戦!~雪を固めりゃ氷となる~」 →そういうイベント 「どうする? おまえの相手は世界一強い饅頭だぞ」 →5メートルだし、相撲とかやりゃあ世界一強いんじゃないんですかね 「俺の右腕がああアアアアアアアアアアアア」 →ぱっくんちょ。べっとべと 「ゆっくりと星のアルペジオ」 →星(しょう)がアルペジオを習ったそうです。ところでアルペジオって何? 「年をッ!越すまでッ!震えるのをやめないッ!」 →こんな季節に深夜まで外にいたら風邪ひきますよ。ひきませんでしたが 「ゆっくりふるでいず」 →ひどいオチだったね >>アルペジオって何? ググるといいよ -- 名無しさん (2010-01-15 17 22 19) 名前 コメント
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仕事終わって家に帰って玄関を開けたら 「ゆっ!」 って自分が帰宅したことに気づいたゆっくりが急いで玄関までやってきて 「ゆっくりしていってね!!」 なんて円満の笑みで言われてみたいです。 んで抱っこしてあげると、 「だっこ! ゆっくりだっこしていってね!!」 なんて言うからもう辛抱たまらん訳で。 ま、悲しい妄想なんです。 名前 コメント
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『ゆっくりゲスになってね!』 30KB 愛で ギャグ 日常模様 飼いゆ 失礼します ※ 人間さんがちょっと餡子脳です。 ※ バッジ関係で独自設定が多めです。 チートあきです。 しとしとと降る雨。 「ゆぅ……ゆっ……」 一匹の子まりさが涙を流しながら、灰色の空を見上げていた。あちこちが泥で汚れ、何 かにぶつけたのか所々アザになっている。目元からこぼれる涙は雨に混じっていた。全 身も薄く溶けかけている。頭にあるはずの帽子は無い。 アスファルトの上で死にかけている一匹の子まりさ。 ある意味どこにでもあるような光景である。 「お?」 そこに、傘を差した男が通りかかった。 目を開けると白い壁が目に入る。 まりさは霞む意識の中、周囲を眺めた。ゆっくりした場所である。先ほどまで身体を蝕ん でいた苦しさはない。白いふわふわの上に、まりさは置かれていた。 「ここは……どこなのじぇ?」 「おう。起きたかまりさ」 視界に入った大きな影。人間の男だった。普段なら人間は恐怖の対象だが、今のまり さには恐怖を感じる余力も残っていない。ただぼんやりと人間を認識する。 男はスプーンですくった冷めたお粥をまりさの前に差し出した。 「とりあえずこれ食え」 「むーしゃむーしゃ……」 言われるままに、まりさはお粥を口にした。 「ありがとうございますのじぇ」 無事回復し、男にお礼を言った。 「いやいや、いいってことよ」 ぱたぱたと手を振りながら、男が脳天気に笑う。 アパートの一室、まりさは卓袱台に乗せられていた。事故で両親を失い、帽子を失い、 他の野良ゆっくりにお家も奪われ、行くところもなく餌も取れず雨に打たれて死にかけて いたまりさ。それをこの男が助けたのだ。 「ところで、おにーしゃん、だれなのじぇ。なんでまりしゃをたすけれくれのじぇ?」 「俺はいわゆる虐待お兄さんでな」 まりさの問いに男はこれまたあっさりと頷いた。 「ゆっ……!?」 その単語に、まりさが固まる。 虐待お兄さん。ゆっくりを虐めるのが大好きなゆっくりできない人間。餡子に刻まれた知 識からその情報が引き出される。その虐待お兄さんが目の前にいる。 「大事に育てた飼いゆっくりがゲス化して、それを制裁っての一度やってみたいと思って てなー。うん。そしたら丁度いいところによさげなまりしゃが落ちててたから拾ったってわ けだ。ゆっくりは勝手に生えてくるって本当なんだなー」 男は頷きながらにこにこと話している。何を言っているのかはよくわからないが、とんで もない人間に捕まってしまったと、まりさは理解する。 ビシッとまりさを指差し、男が口端を持ち上げた 「とゆーわけで、これからお前は俺の飼いゆっくりだ。ちゃんと世話してやるから、しっかり 育って虐待しがいのある立派なゲスになってくれよ?」 「ゆんやああぁぁ!」 まりさは悲鳴を上げた。 「ここがお前のお家だ」 男の手の上の中でまりさは震えている。 男の部屋の片隅に、その場所は作られていた。畳半畳ほどの緑色のシート。飼いゆっく り用の疑似芝生シートである。室内飼いでも外の気分が味わえるというものだ。 「ベッドはここな。トイレはこっちだ」 折り畳まれたゆっくり用布団Sサイズ。飼いゆっくり用トイレを順番に示す。 男はまりさを芝生シートの上に下ろした。 「帽子はそのうち作ってやるから、しばらく帽子無しで我慢しろ」 「ゆぅぅ」 まりさは一筋の涙を流した。 「むーしゃ、むーしゃ。しあわしぇー……」 夕方。男に出されたゆっくりフードを口に入れ、まりさは喜びの声を上げていた。無茶苦 茶美味しい。今まで主食にしていた草などとは比べものにならない美味しさである。 そして、まりさはもう草などの野良ゆっくりの食事は取れないと確信していた。 「どうだまりさ、美味いだろ? これはそれなり味より一ランク上の、しあわせ味だからな。 しっかり舌肥やしてくれよ。ゲスになったあかつきには、げろまずフード毎日食わせてやる からな。楽しみに待ってろよ」 ラーメンをすすりながら、男は笑顔で言ってくる。 めちゃうま味、しあわせ味、それなり味、いまいち味、げろまず味。用途から五段階に分 けられる、標準ゆっくりフード。しあわせ味は主に高級飼いゆっくり用である。 「おいしいのじぇ……」 涙を流しながら、まりさはゆっくりフードを噛み締めていた。 「おそらをとんでるみちゃい!」 お下げを動かしながら、まりさは元気に声を上げた。 ゆっくりを手に乗せて頭より高く持ち上げる。おそらをとんでるみたいごっこ。道具も不要 でお手軽にゆっくりした気分になれる遊びだった。 男は持ち上げていた手を下ろす。 「結構面白いだろ?」 「ゆー」 力無くまりさは頷いた。 男が再び手を持ち上げる。 「おそらをとんでるみちゃい!」 「ゆぅ。まりしゃはこれから……どうしたらいいのじぇ……?」 ぼんやりと窓の外を眺めながら、まりさは目蓋を下ろした。これからの事を考えると憂鬱 になる。あの日雨に打たれたまま死んでいた方が楽だったかもしれない。 「このままじゃ、すっごくっゆっくりできないことなっちゃうのじぇ……でも、おそとにでられ ても、まりしゃだけじゃ……いきていけないのじぇ……」 このままではいずれ虐待されて苦しんで死ぬのだろう。かといって逃げ出しても帽子の 無い子まりさが生きていけるとも思えない。いずれ野垂れ死ぬだろう。どちらに転んでも まりさの未来には悲惨な末路が待っている。 何とか無事に生きる方法はないか。そう考えて。 「ゆ?」 ふと気付く。 ゲスにならなければ普通に飼いゆっくりとして過ごせるのではないか。 まりさはそう思いついた。 「おにーしゃん」 のーびのーびしつつ、まりさは男に声をかけた。 「何だ、まりさ?」 「たすけてもらったおれいに、まりしゃはおにーしゃんのおてつだいがしたいのじぇ。おへ やのおそーじのやりかたをおしえてほしいのじぇ」 男が仕事に行っている間、まりさは部屋で待っている。何もする事がない。その間に何 かして男の役に立てばゲスとは判断されない。まりさはそう考えた。そして思いついたの が掃除である。きれいなことはゆっくりできる。 「ふむ、なかなか殊勝なヤツだな。ちょっと待ってろ」 男は頷いた。 目の前に置かれた皿とゆっくりフード。 「いただきますのじぇ」 まりさはそう言ってフードに頭を下げた。 それからゆっくりと食べ始める。 「むーしゃむーしゃ、ごっくん。しあわしぇー」 きちっと噛んで呑み込んでから、しあわせーを口にする。子ゆっくりであるため礼儀作法 の知識は無いに等しい。それでも餡子の記憶から食事のマナーの知識を引っ張り出し、 丁寧に食べていた。 「ごちそうさまでしたのじぇ」 食べ終わったら、きちっとお礼を言う。 このまりさは、かなり優秀な個体だった。 まりさが男の元で暮らすようになってからしばらくして。 「ようし、まりさ。お帽子作るぞ!」 「おぼうし?」 まりさは男を見上げた。 ゆっくりのお飾りは一度無くしたら二度と復活しない。そうなっては他ゆのお飾りを奪うし か方法が無い。奪うにしてもお飾りを失ったゆっくりは弱っていることが多く、成功確率は 非情に低い。まりさも帽子の事は半分以上諦めていた。 「子ゆっくり用の生帽子は高いからな。だからこれで作る」 男が取り出したのは白い布だった。透明な袋に入ったA4サイズのフェルトのような布で ある。それが三枚。そして、絵の具と糊のようなもの。それらにはデフォルメされたゆっくり の顔が印刷してある。 「おにーしゃん、それなんなのじぇ?」 「お飾り生地一枚三百円。そして、お飾り用絵の具&糊。これを使って俺オリジナルの素 敵なお帽子を作ってやるぜ! 期待して待っててくれよ」 男が得意げに答える。 加工所で作られる量産型のお飾り。その材料は綿のようなお飾りの素である。それを 加工所独自の技術で増殖させ、布状に加工し、型を取ったり着色したりして、生お飾りと 呼ばれるものが作られる。 基本種成体用のお飾りはひとつ五千円。子ゆっくり用のお飾りは八千円前後である。 この生地はお飾りの素を布状に加工したものだ。それに着色用の絵の具、接着用の糊。 主に破損したお飾りの補修、追加の装飾などに使われる。しかし、その気になればお飾り の自作もできる。 「ゆわ~」 まりさは目を輝かせて男を見上げた。 男はエンピツと定規、コンパス、ハサミを用意し、座布団に腰を下ろす。生地を袋から取 り出し、工作を始めた。 「ベースはまずこれだよな。三角錐の本体」 生地にコンパスで円弧を書き、中心から線を二本引き、扇形を作る。ハサミでその扇形 を切り出してから、両端に糊を塗り、丸めて三角錐を作った。 「ちょっと捻って四角形のツバにしてみるか」 三角錐の円部分の直径を測ってから、それと同じ大きさの円をもう一枚の生地に書く。 それを囲むように正方形を書いた。ハサミでその形を切り出し、糊で円錐にくっつける。 「んで黒く着色、と」 絵の具の黒を水に混ぜ、それを布に塗っていった。 薄い黒色に染まった帽子が、徐々に色を濃くしていく。水に解いてお飾りに付けると、そ の部分の色を変える絵の具である。元々色のある部分に塗ってもその部分の色が絵の 具意の色になってしまうので注意が必要だ。また髪や肌に付いてもその部分の色が変 わってしまうので、絶対に付けないで下さい。絶対だぞ。 「リボンは端を赤く塗ってちょっとお洒落に」 生地の残った部分を細長く切り、両端を赤く塗った。 作ったリボンを帽子に巻き付け、蝶結びにする。 「星の飾りでも付けてみるか」 同じく生地の余りを星形に切り抜き、薄い灰色の絵の具を塗った。 それを帽子の横に貼り付ける。 「中のふりふりと」 三枚目の生地から円錐を作る。外側の帽子よりも一回り小さく。続いて、やや大きめの 扇形を切り出してから、細かく折り目を付けて両端をつなげる。シャンプーハットのような 形だ。それを白い円錐に貼り付け、さらに黒い帽子の内側に貼り付ける。 「どうだ、まりさ?」 男は出来上がった帽子をまりさの前に置いた。 「我ながら会心の出来だと思うぞ。このままだと三角コーンみたいだけど、そのうち馴染ん で良い具合にへなってくるだろ」 「ゆわー。ありがとうなのじぇー! すごくかっこいいのじぇー!」 ぱたぱたとお下げを動かしながら、まりさは瞳を輝かせた。男が作った帽子は標準形と は異なるが、かなりカッコいい形だった。 男は作った帽子をまりさの頭に乗せ、 「お前がゲスになった暁にはビリビリに破いてやるからなー。楽しみにしてろよー」 「………」 まりさは一筋の汗を流した。 およそ二ヶ月が経ち。 「おにーさん、おかえりなさいなのぜ」 帰ってきた男にまりさが挨拶をする。 まりさは成体ゆっくりとなっていた。帽子はまりさと共に成長し、先端も良い具合にへな っている。今ではまりさ自慢の帽子だった。 「ただいま。良い子にしてたかー?」 「いいこにしてたのぜ」 きりっと眉を傾け、まりさは答える。 留守中にはきっちりと部屋の掃除を行っていた。普段から礼儀正しく何事にも真面目に 取り組む、お手本のような善良なゆっくり。ゲスになったら虐待するという男の言葉に、ま りさはゲスとは真逆の方向に成長していた。 「よしよし。じゃ、この調子で立派なゲスになるんだぞー」 男がまりさに笑いかける。 「わかってるのぜ。まりさはりっぱなゲスになるのぜー」 まりさはのーびのーびしながら答えた。 もっとも、何度も言われたせいで、男と言葉を一種の挨拶としてしか認識しなくなってい る。男がゆっくりを虐める姿を見たことが無いことも、そう考える理由のひとつだ。 「まりさ、バッジ取るぞ!」 男はいきなりそう言った。 「バッジさん?」 瞬きして、まりさは男を見上げる。 バッジ。ゆっくりのレベルを示すものである。地域ゆっくりバッジ、社員ゆっくりバッジなど もあるが、普通は金銀銅の飼いゆっくりバッジを意味する。 もっとも完全室内飼いの場合はバッジを付けないことが多い。飼いゆっくりではバッジを 持たないゆっくりがほぼ半数である。 半野良ゆっくりや、外飼い、時々外に出す場合は銅バッジを付けることが多い。 「まずは銀バッジを取る!」 男が手を持ち上げる。 銀バッジはマナーのしっかり躾けられたゆっくりを意味する。飼い主以外の人間と接す る機会が多いなら、銀バッジは習得しておいた方がいいと言われる。 「次に目指すは金バッジ!」 窓の外の空を勢いよく指差し、男は宣言した。 金バッジ。優秀なゆっくりを意味するバッジである。その習得は非常に難しい。普通の飼 いゆっくりが金バッジを取る利点は薄いが、お店でマスコットとして接客を行ったり、庭や 花壇のしっかりとした管理をするなど、何かしらの仕事をするゆっくりなら取得しておいた方 がよいと言われている。 「そして最終目標はみんなの憧れ、金ゲスっ!」 ぐっと拳を握る。 ゲス化した金バッジゆっくりを金ゲスと呼ぶが、かなり希少価値が高い。ゲス化するよう なゆっくりでは金バッジが取れないからだ。また飼いゆっくりをゲス化させるような飼い主 も金バッジゆっくりは飼えない。 それでも最高級の虐待素材として、虐待お兄さんお姉さんの憧れの的である。 「わかったのぜ、おにーさん。まりさがんばるのぜ」 まりさは大きく頷いた。 市役所の一室。 机の上に乗せられたまりさ。その正面にバインダーを持った女が立っている。長い黒髪 の、どこか人形のような雰囲気を持つ女だった。管理課の職員である。 現在まりさは銀バッジ試験の真っ最中である。銀バッジ試験はゆっくりショップや役所の ゆっくり管理課で受けられる。試験料は一回五千円。 まりさの前には四枚のカードが裏向きに置かれている。 「ひだりから、さんかく、しかく、まる、ほしがたのじゅんばんなのぜ」 女がカードをめくると、まりさの言った図形が書かれていた。 三枚から六枚のカードの絵柄を記憶する記憶試験である。 何事においても記憶力は重要なことだ。大体四枚のカードを間違わずに記憶できること が、銀バッジゆっくりの最低水準である。 「4+2は?」 「6なのぜ」 「7-3は?」 「ゆ……。4なのぜ」 続いて簡単な足し算引き算。数字を理解し、その増減を理解する。一桁のものの数をた くさんで一括りにしてはいけない。 また数字は頭を回転力を見るために最適の問題である。 まりさの様子を、女がバインダーの記録用紙に書き込んでいく。 「おはようございます」 「いってらっしゃい」 「おやすみなさい」 カードに書かれた文字を読み上げるまりさ。 いただきます おかえりなさい こんにちは 鉛筆を咥え、紙に文字を書くまりさ、 平仮名の読み書きができることも、銀バッジゆっくりにとっては必要なことである。何の 訓練も受けていないゆっくりでも平仮名は不思議と読めることがある。だが、訓練無しで 平仮名を書けるゆっくりは少ない。 まりさの前に置かれた時計の模型。 女がその針を動かす。 「この時間は何時でしょうか?」 「6じ50ぷんなのぜ」 まりさは答えた。 時計の時間を読む試験である。 女の問いにしばらく考えてから、まりさは答えた。 「では、この一時間後は何時?」 「ゆー……ぅー……。7じ50ぷんなのぜ!」 時間の計算問題。時計の示す時間から何時間経つと何時になるのか。人間の元で生 活するには、時間を理解することが必要となる。足し算の感覚に時間の感覚も加わるの で、意外と難易度は高い。分まで計算できる能力はこの時点では求められない。 「では、このスペースを掃除してみてください」 部屋の一角に千切った紙が撒かれ、積み木が転がっている。 「わかったのぜ」 まりさは頷いた。 そして。 「きれいになったのぜ!」 紙は一枚残らず一ヶ所に集められ、積み木も一ヶ所に四角く詰まれている。 散らかったものを片付けることも人間の元で暮らすには必要なことだ。ここで視られる のは、千切った紙の集め残しが無いことと、積み木をある程度積めること。また途中で片 付けを止めない真面目さが試される。 「ではこのあまあまを食べてみて下さい」 目の前に置かれた小皿と、三枚のビスケット。甘さ控えめのあまあまである。 「いただきますのぜ」 一礼してから、まりさはビスケットを口に入れた。 女は黒い瞳をまりさに向けていた。記録用紙にシャーペンを走らせている。 「むーしゃ……むーしゃ……。ごくん。しあわせー」 急がずにゆっくりと食べる。 「ごちそうさまでしたのぜ」 食べ終わってから一礼。 食事の礼儀作法。いただきますを言え、散らかさずに食べ、ごちそうさまを言える。この 時、がっついたり散らかしたりすると不合格である。 「やったのぜー! まりさ、ぎんばっじなのぜ!」 まりさの帽子に付けられた銀色のバッジ。 無事銀バッジ試験を合格し、まりさには銀バッジの許可証が発行された。それをゆっくり ショップに持って行くと、IDが記された銀バッジを売って貰える。 ぱちぱちと男が拍手をする。 「おめでとうまりさ、これで金バッジに一歩近付いたな」 「ちかづいたのぜー」 まりさが男の元に来てから、半年が経つ。 『ゆっくり金バッジ試験飼い主用テキスト』 男はそう書かれた本を読んでいた。 部屋の壁には、額縁に入れられた銀バッチ証明書が飾られている。 「何でゆっくりに金バッジ取らせるのに、飼い主の方も試験受けなきゃならんのだ……。 法律とか医術とか難しい事書かれてるし。金ゲスの道は遠いぜ……」 シャーペンの頭を囓りながら呻く。 金バッジ試験は各地の公餡支部で行われる。書類による一次選考が行われ、二次選 考試験ではゆっくりと飼い主の試験と面接が行われる。書類選考は無料だが、試験は有 料であり、試験料金は一万二千円とかなり高い。さらに最終合格率は二割程度と低いた め受ける者は多くない。 まりさはゆっくり用座布団に座ってテレビを見ていた。 テレビに映る飼いゆっくり専用のゆーちゃんねる。 『あなたの街のプラチナさん』 全国のプラチナバッジ持ちのゆっくりを紹介する番組である。放送されるのは不定期だ が、毎回個性豊かなプラチナバッジゆっくりが登場する。 「ぷらちななのぜ。すごいのぜ……」 まりさは食い入るように画面を見つめた。 プラチナバッジ。金バッジのさらに上のランクのバッジである。バッジを持つゆっくりなら 誰でも一度は夢見るものだ。その試験は相当に難しいものであるらしい。 参考書を持ったまま、男もテレビの画面に目を向ける。 「またせたのぜ、やろうども……! オレがまりさサマなのぜ……!」 登場したのは胴付きのオレまりさだった。箒を背負い、首に赤いマフラーを巻いている。 目付きが鋭く表情も獰猛だった。両腕には包帯が巻かれ、帽子の縁や上着の袖口、スカ ートの裾はボロボロになってる。それらは獣のような風貌を作り出していた。 腕を組み、仁王立ちしているまりさ。 おもむろに背中の箒を取り、真上に放り投げる。 「いくのぜ、だちこう!」 そして自分も跳び上がった。 数メートル高々と跳んでから、空中で箒を掴み身を翻して跨る。さらに凄まじい勢いで空 へと飛んでいく。箒型すぃーを駆るまりさだ。 「す、すごいのぜ……。まりさもがんばれば、ぷらちなさんとれるのぜ?」 テレビを見つめながら、まりさは男に尋ねた。 参考書を眺めながら、男はやる気無く答える。 「あー。無理だろ……さすがに。お前は普通の元野良ゆっくりだし。プラチナ取るのは努力 でどうこうできる領域じゃないし」 プラチナバッジの取得方法はいまいちはっきりしない。プラチナバッジはその取得方法を 見つけ出す部分から試験は始まっているとも言われる。ゆっくりの努力と才能は無論、飼 い主の才能と努力も必要となってくる。 「それに、俺プラチナって嫌いなんだよな……。もうあのレベルまで行くとゆっくりじゃねー だろ。妖怪か怪物だろ。まあ前に見た盲動れいむってのは可愛いかったけど」 テレビ画面では、箒型すぃーに乗ったまりさが機関銃型のミニはっけろで、空中に鮮や かな弾幕を描いている。現在プラチナバッジ持ちは三百匹ほどいると言われている。この まりさのような規格外のゆっくりは多いらしい。 男はシャーペンで参考書に線を引きながら、 「あと、プラチナの半分以上胴付だし。胴付ってのもなー……」 「おにいさんは、どうつきがきらいなのぜ?」 胴が生えて人間の少女のような形になったゆっくり。稀に動物のような身体や鳥のよう な身体を持つこともあるらしい。 男は大袈裟にため息を付いてみせた。 「胴付って何と言うか、ゆっくりじゃないもん。それに、胴付きって大抵オツムが高性能化 するから、ゲス化もしないし……虐めてるのバレたら動物愛護法違反でとっ捕まるし。意 外と出費が増えるらしいし、俺にとっちゃ胴付きはゆっくりできないゆっくりだ」 胴が生えると運動能力と知能が一気に上昇する。また、扱いも普通のゆっくりと異なっ てくる。普通のゆっくりを虐待しても犯罪にならないが、胴付きを虐待していると捕まる可 能性がある。胴付きを虐待した場合、次に人間に手を出す危険性が出てくるからだ。 また、飼うための費用も増えるため、胴付きにならない事を望む飼い主も多い。 「だから間違っても胴生やすなよ」 「ゆっくりわかったのぜ」 男との言葉に、まりさは頷いた。 公餡委員会支部。 「きんちょうするのぜ……」 待合い室にて、二十人の人間と二十匹のゆっくりが試験開始を待っていた。今日の受 験者である二十組。まりさは書類選考で受かり、筆記面接を受けるために公餡支部へと やってきていた。 「大丈夫だ、まりさ。お前ならできる。俺は信じてるぞ」 「わかったのぜ……!」 金バッジ試験を受けるゆっくりは、希少種が多い。しかし、れいむやぱちゅりー、みょん などの基本種も普通にいる。そして胴付きのちぇんが一匹、窓辺で深呼吸をしていた。皆 緊張した面持ちを見せている。 「ではゆっくりの筆記試験を始めます。飼い主の片はゆっくりを連れて、こちらの教室に移 動して下さい」 職員がそう言った。 まりさたちは机の上に乗せられていた。三方にはカンニング防止の白いついたてが作ら れている。正面には台と答案用紙、エンピツが用意してある。試験を受けるゆっくりはエン ピツを咥え、文字を書かなければならない。 文字の書けないゆっくりはそこで脱落となる。 まりさは答案用紙に書かれた文字を読んでいく。 「以下の漢字の読みを書きなさい」 「市内」 「客人」 「苦楽」 「以下のひらがなを漢字で書きなさい」 「だいしょう」 「とうざいなんぼく」 「あたらしい」 「以下の数式の答えを書きなさい」 「46+43」 「4×7」 「18÷6」 おおむね小学二、三年生レベルの国語算数の問題だった。人間基準では簡単な問題 だが、ゆっくり基準ではかなりの難題である。それでもこの問題を解くために、まりさは今 まで頑張ってきた。 まりさはエンピツを咥え、その先端を答案用紙に走らせる。 実技試験。 まりさの前には、小さな入り口があった。室内に作られた簡単な迷路である。この迷路 を抜けることが実技試験だ。 「では、ゴールまで行って下さい」 「わかったのぜ!」 まりさは答えて、迷路に入っていった。 それなりに複雑な迷路である。金バッジ試験に来るゆっくりならおよそ十分弱で抜けら れるが、普通のゆっくりなら一時間近くかかるだろう。それくらいの難易度だ。まりさは何 度も行き止まりにぶつかり、方向転換をする。しかし、迷路はどこも同じ壁であり、自分が どこにいるのか分からなくなってくる。 「むずかしいのぜ……。でも、あきらめないのぜ……!」 しかし、まりさは挫けず迷路を走っていた。 ゆっくりが迷路を抜けるためにどう動いたか、どのように感情を変化させるか。それらは カメラできっちりと撮影されていた。迷路を抜ける記憶力や知力だけでなく、迷路の中でど のような表情や動きをしているかも評価の材料となる。 これは苦難に対する姿勢のテストだった。 試験室に戻って、筆記試験。 「以下の言葉から好きな言葉を選び丸を付けなさい」 「ぷりん、ケーキ、おだんご、ようかん、ぱん」 「ねこ、いぬ、きつね、ヤマアラシ、モモンガ」 「?」 疑問符を浮かべながら、まりさは文字に丸を付けていく。これは一種の心理テストで、 潜在的なゲスを調べるものらしい。 一方飼い主たちも教室で机に向かっていた。 「あなたの飼っているゆっくりが他者に損害を与えた場合の処置を書きなさい」 「あなたの飼っているゆっくりが他者から損害を与えられた場合の処置を書きなさい」 「ゆっくりが怪我をした時の処置を書きなさい」 「ゆっくりを飼うにあたって、してはいけない事を五つ書きなさい」 そのような問題が並んでいる。 こちらは金バッジのゆっくりを飼うに相応しい飼い主かどうかの試験だ。いくらゆっくりが 優秀でも飼い主が駄目だと途端にゆっくりは堕落してしまう。いわゆる金ゲス化だ。金ゲ スが頻発すれば、金バッジの価値が大きく下げてしまう。それを避けるために金バッジ試 験では飼い主の適正が強く試されるのだ。 「難しいなぁ……」 男は苦笑いをしながら、シャーペンを解答用紙に走らせた。 「以下の言葉から好きな言葉を選びなさい」 「カラス、スズメ、コンドル、トビ、白鳥」 「ミルク、砂糖、蜂蜜、トースト、卵」 「むぅ」 飼い主も同じように心理テストを受けている。 「よろしくお願いします」 「おねがいしますのぜ」 椅子に座った男とまりさ。正面では試験官が三人机に向かっていた。 試験の最終問題である面接。直接飼い主と飼いゆっくりと話をし、そのゆっくりが金バッ ジに相応しいか、また飼い主が金バッジを飼うに相応しいか、調べるのだ。 左の試験官が用意してあった用紙を眺めた。一次選考用の書類である。 それから、男に訝しげな視線を向ける。 「では早速質問ですが……この金バッジ志望理由の『金ゲスを虐待したいので、金バッジ を取らせます』って……どういうこと?」 ピシリ。 と、まりさはひび割れた。 目を見開き男を見る。 「……お、おにいさん?」 「そのままの意味です。金ゲスを虐待するのは昔からの夢でしたから」 爽やかな笑顔で、男が答える。何もおかしい事は言っていない。そんな自信たっぷりの 態度だった。金ゲスが欲しくても、普通なら別の建前を書くだろう。しかし、男は真正直に 志望理由を書いていた。 「ゆぅ。おわったのぜ……」 まりさは一筋の涙をこぼす。 試験は落ちた。そう確信する。 当たり前だが、金ゲスを虐待したいから金バッジを取らせる。そんな理由が受け入れら れるはずがない。合格することは、万にひとつもないだろう。 そもそも書類選考に受かったのも、男に試験を受けさせ、面接という形で直接その性格 や考え方を見るためだろう。志望理由に金ゲスを虐待するためと書く人間は普通いない。 それでも、まりさは無駄な抵抗を試みる。 「そ、そういうじょうだんはやめるのぜ、おにいさん。ここはまじめなばしょなんだから、い つものノリじゃだめなんだぜ」 冷や汗をだらだら流しながら愛想笑いとともに、男に声を掛ける。 それから試験官たちに向き直り、 「う、うちのおにいさんは、じょ、じょうだんがすきなひとなんですのぜ……」 だが、まりさの努力が身を結ぶ事はなかった。 「そちらのまりさくんとはどこで出会いました」 「一年くらい前に雨の中で死にかけているのを発見して、ああこの子は立派なゲスになる なーと直感的に閃いて拾ったんです」 試験官の問いに、男が楽しそうに話していた。 面接はかなり長く続いている。金ゲスにするために金バッジ試験を受けた男がどのよう な人物なのか、質問や会話から情報を得るためだろう。 「………」 まりさに向けられる試験官三人の視線。 椅子の上で身を捩り、まりさは涙を流していた。 (いたいのぜ……。おじさんたちのしせんが、ものすっごくいたいのぜ。その『あんこのうな かいぬしもってあんたもたいへんね』ってしせんはやめるのぜぇぇ……。こころがえぐられ るよーにいたいのぜええぇ……) 「何故落ちた? 何がマズかったんだ?」 不合格通知を見つめ、男は首を傾げていた。 不合格という文字と次頑張って下さい云々と定型句が書かれた書類。どの部分が問題 で落ちたのかは書かれていない。 「あれのどこに、うかるようそがあるんだぜええ!?」 まりさは全力で叫ぶ。まりさを金ゲスにするために、金バッジを取らせる。それは半分以 上冗談だと思っていた。だが、本気だったしい。 「うーん。ちょっとフランク過ぎたか?」 まりさは目を伏せ、呻く。 「たぶん、おにいさんのなまえは、ブラックリストさんにのっちゃったんだぜ」 「ブラックリスト? なんか聞いたことがあるような……無いような」 首を捻る男。 金バッジの情報を集めていると、時々見たり聞いたりするブラックリストという言葉。 「なにがあってもきんバッジしけんでごうかくさせないひとのリストなのぜ。としでんせつと かいわれてるけど、かなりじつざいするっぽいんだぜ」 まりさはそう説明した。 金バッジゆっくりを飼う資格が全く無いと判断された場合、ブラックリストに名前を加えら れ、今後試験でどれほど優秀な成績を出しても不合格にされるという。 ある意味当然の結果とも言えた。 「……つまりどういう事だってばよ?」 「おにいさんは、いっしょうきんゲスはかえないのぜ」 いまいち状況の呑み込めない男に、まりさは素っ気なく答える。 金バッジは飼い主と飼いゆっくりが揃って意味を持つ。たとえ金バッジゆっくりを手に入 れても、飼い主に金バッジ資格が無ければ、金バッジは没収されてしまう。その場合は改 めて金バッジ資格を取ればいいのだが、ブラックリストに乗ってしまっては金バッジ資格は 絶対に手にはいらない。 つまり、男は今後金バッジゆっくりは飼えず、金ゲスも飼えない。 「なん……だ、と……!?」 状況をようやく理解し、男は愕然と固まった。 それはある休日のことだった。 男がコンビニに出掛けている最中、ふらふらと一匹のれいむが庭にやってきた。ぼろぼ ろに汚れて窶れたれいむである。まだ若く、亞成体くらいの大きさだ。庭を横切ろうとした ところで、ぱたりとうつ伏せに倒れた。 「ゆ……ぅ……」 苦しげな声とともに、れいむが震えた。 「れ、れいむしっかりするのぜ!?」 本来飼いゆっくりは野良ゆっくりに関わってはいけないと教えられている。しかし、まりさ はほとんど迷わず窓を開け、れいむに駆け寄った。行き倒れかけたれいむに、幼い頃の 自分を重ねたのである。 れいむは力無く顔を上げ、光の消えた眼をまりさに向ける。 「たすけて……」 「ちょっとまってるのぜ!?」 まりさは大急ぎで部屋に戻って行った。 まりさが持ってきた体力回復用のパックオレンジジュースを飲み、おやつのお菓子を食 べれいむはとりあえず復活した。 「おとーさんもおかーさんも、おねーちゃんもいもーともみんなしんじゃって……れいむひと りぼっちだよ。れいむあんまりかりうまくないから、ごはんさんもとれないし。ぜんぜんゆっ くりできないよ……」 涙を流しながら、れいむがまりさに身の上話をしている。 「それはつらいのぜ。まりさもむかしそんなんだったのぜ……」 真面目な面持ちでれいむの話を聞いているまりさ。 まりさは西の方向をお下げで示した。 「このさきにあるこうえんにいくのぜ」 「こうえんはあぶないよ……」 顔を伏せ、れいむが不安がる。野良ゆっくりが下手に公園に乗り込むと、そこにいる地 域ゆっくりによって拘束され、そのまま駆除されてしまう。今の野良ゆっくりにとって公園 は危険地帯と認識されている。 まりさは説明を続けた。 「ちいきゆっくりになりたっていえば、はなしはきいてもらえるのぜ。ちいきゆっくりになっ て、まじめにおしごとすれば、おうちもごはんももらえるのぜ」 「ゆ……?」 れいむが顔を上げる。 「じゃ、れいむがんばるよ!」 もみあげを振り、れいむが庭から出て行く。公園に行き地域ゆっくりになりたいと頼むの だろう。地域ゆっくりは基本的に真面目であればどんなゆっくりでもなれる。 「がんばるのぜ!」 お下げを振りながら、まりさはれいむを見送った。 じー。 「……」 視線を感じて振り向くと、窓辺から男がまりさを凝視していた。全身に黒いオーラを纏い つつ。いつからそうしていたのかは分からない。コンビニに行くと言っていたので、帰って きてから様子を見ていたのだろう。 「窓開けたり、知らん野良におやつやったりした事はどうでもいい」 あっさりと言う。 冷や汗を流しつつ、まりさは黙って男を見上げていた。 「これが噂に聞く――野良を部屋に招き入れてつがいになってすっきりーしておちびちゃ ん作って飼い主を奴隷呼ばわりする、黄金パターンだと思ってわくわくしてたのに……」 右手をきつく握り締め、下唇を噛みながら、身体を震わせている。目元からこぼれる一 筋の涙。無念さと悔しさが全身からにじみ出ていた。 きっと鋭い視線をまりさに向け、 「何でれいむ相手にゆん生相談しちゃってるわけええ!? しかも何であのれいむも真面 目に前向きに生きようとしてるわけええ!? あのれいむも、まりさ誘惑するくらいの気概 見せてねええ! 野良でしょ、野良ゆっくりなんでしょおお!?」 「ご、ごめんなさいなのぜ……」 泣きながら叫ぶ男に、まりさはただ謝ることしかできなかった。 れいむは地域ゆっくりとなって真面目に働いているらしい。 「ふふ……へへ……」 布団の中で男が笑っている。 夜、まりさがふと目を覚ましたら、男の寝言が聞こえてきた。 「まり……さ……。あんよ焼き……しようねー」 夢の中でゲスになったまりさを虐待しているらしい。 大事に育てた飼いゆっくりがゲス化して、それを制裁する。その目的はいまだに健在だ った。しかし、男の予想以上にまりさは優秀なゆっくりだった。今のところゲス化の兆しは 無く、今後も無いだろう。 男を眺めながら、まりさは呟いた。 「たのしそうなねごとなのぜ……」 男に拾われておよそ一年が経つ。命を助けてもらい、格好いい帽子も作ってもらい、快 適な生活も保障されている。その恩はきちんと返さないといけないと、まりさは常々考え ていた。 「おいじじい! ここはまりささまのおうちなんだぜ! いますぐごくじょうのあまあまもって くるんだぜ! いますぐでいいのぜ! はやくするんだぜ!」 仕事から帰ってきた男に、卓袱台にふんぞり返ったまりさは大声でそう告げた。 今まで大事にしてもらった恩を返すために、まりさはゲスになることを決めた。これから 虐待されて死ぬだろうが、それは仕方ないと受け入れた。 「この馬鹿がああっ!」 男の平手打ちがまりさを吹っ飛ばす。 一回転して床に落ちるまりさに、男が大声で叫んだ。 「ゲスの振りしたゆっくり虐待するほど俺は落ちぶれちゃいねえええ!」 「あっさりばれたのぜ!」 まりさは身体を跳ねさせる。まりさの計画はあっさりと頓挫した。 男は床に正座をし、正面を指差した。 「まりさ、そこに座れ」 「ゆん?」 言われた通りに、まりさは男の正面に座る。 神妙な面持ちで男は静かに語り始めた。 「まず飼いゲス虐待ってのは、大事に飼っていたゆっくりが飼い主を裏切る。その悲しみ と怒りをぶつけるからこそいいんだ。この裏切りって部分が重要なんだ。たとえばどこの 馬の骨ともつかん野良ゆっくりに一目惚れとか、日々の扱いに不満を持ってとか、そうい う裏切りの理由が大事なんだ」 「ゆぅぅ……」 いきなり始まった話に、まりさは顔を引きつらせた。 あとがき 余談ですが、まりさと飼い主は金バッジの筆記試験は合格しています。 まりさの銀バッジ試験を担当したのは「anko4338 超伝道をもげ!」に登場した針お姉さ んです。 「anko4373 ものもらい」のイラストありがとうございます。 過去SS anko4377 勝手に生えてくる anko4373 ものもらい anko4360 ゆっくりさせてね anko4350 Cancer anko4341 予防接種 anko4338 超伝道をもげ! 以下省略 挿絵:
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ゆっくり魔法図書館 図書館-短編区画 短編集64 星熊勇儀さんと一緒にきめぇ丸を育てるスレ 初出 ゆっくりしていってね!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!◆67 ,. -‐ , ァ. / / / ヽ -―- / ./ / ', , '"´ ` ..、 // / ,ィ /!、_,.イ i , ' '., <_/ / / .!/ | .ハ ', / '; ',. ∠ ,,..イ!'イ (ヒ_] レ |/ヽ、! ! ;イ ハ ;ィ l ! / |,イ ,.,. ヒ_ン)! 、 ヽ、| (ヒ_] |/ | ハ ; ; / < ト、 丶 __ ,.,. ,(ヽ ,,、 / 7 ,.,. ヒ_ン)|/ ; 〈 7 ∠_r'>..,, _/⌒ ノ、 // ヽ, 〈 !、 、_ ,.,., / / 〉 / ./ ヘヽ、__,.〔 〕「 ,..└'"´ ̄  ̄ `.ヽ 、 〉 ;ィ>..,,_ /; イ ィ 〈 / / ` ー ' | ̄ i | ,. '´ 、 、 ヽ ヽ ´ rァ 7 !_,/ /`''< ノ ノ ,' 〈ヽ、 .i l l ! ノ , lヽ N/ヘ、ヽト、_,,', //;.;.!'1_jヽ、/.;.;.;.;/ ヽ / ヽ.V ヽ! ! .l r'´ r'"イ、ノ\| レ' r=ァVl ( ) / /.;.;.;.lノ !| /.;.;.;.;.;l \. 〈 `ヽ ヽ.,, ヘ、_丿 { !、 l rr=- /// / `'''l. ‐ 、 / ,!.;.;.;く、_,j! ,'.;.;.;.;.;.;ヽ_ '., レヽ.,トl /// ー=‐' / li、,_,,ノ '"´ 〉 ━━━━━━━━━━━━━ ,,、 // ヽ, ,..└'"´ ̄  ̄ `.ヽ 、 …… 〉 ;ィ>..,,_ /; イ ィ 〈 ,. 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'.," ,___, . ! ,riiニヽ "" .l 人ル'レ' 'i、_ ))) ((( \ \ '; ';、 ヽ _ン 人 "" _,,.. -‐' 人 、_ ( " ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 命蓮寺のコタツ 初出 ゆっくりしていってね!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!◆67 ,,、 // ヽ, ,..└'"´ ̄  ̄ `.ヽ 、 ,. '´ 、 、 ヽ ヽ ノ , lヽ N/ヘ、ヽト、_,,', r'´ r'"イ、ノ\| レ' r=ァVl ( ) { !、 l rr=- / `'''l. ‐ 、 おお、お風呂、お風呂 レヽ.,トl ー=‐' / li、,_,,ノ ( ,}' ', レヘ, /レ' ,/ . ‐、 .7'´ レ1 ヽ 人ル'レ' .i、 _ノ , ‐'、 レ~i`ヽ 、 _ __ --、 l !、_ノ | ヽ,-' ̄ '´ ノ / ! 〈 / / ∧ >ヘ- イ r7 / ヽ ヽ、 〈ムィ_l l } / | / ーr¬ァ一┘ / `^ 'ーー‐┘ ____________ /|:: ┌──────┐ ::| /. |:: | U | ::| |.... |:: | ⌒ ,___, ⌒ | ::| |.... |:: |/// ///| ::| ………。 |.... |:: └──────┘ ::| \_| ┌────┐ .|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ⌒ , …とてもいいお湯です。 ( ) , あなたも入りませんか? ,,、 ⌒ // ヽ, ( ⌒ ,.. ,..└'"´ ̄  ̄ `.ヽ 、 、 ) _ ,. '´ 、 、 ヽ ヽ ( ノ ' ノ , lヽ N/ヘ、ヽト、_,,', ___ r'´ r'"イ、ノ\| レ' r=ァVl / `ヽ__ /`ヽ l\ ( `)ノノ ) i rr=- /u/ ', \ / ',. }\\ '' ノノi |'/// ,___, ///'{ } ̄ ̄` く ! / \\ )/'人u ヽ _ン u , ', >'´ 、 ヽ l / * \\ ノ>.、____ ,.イヽ/7´/ '. , ノ'´ * \\ . . . .~. ~ i l i |´\\ * \\ ( ̄) . |ハ/ . . . . . . `ヽ \ ヽ、 * \\_____ { i. . . . . . . ハノ__\ \ * \_____ 乂ハ、__ト、__\i イイ.____| `''-、 * / * `γ . . . . . ヾ´ { ヽ、* ,/ * ,' . . . . ', * | \ /* * . ,;!ヒ_ン . . . . . ! * ! \/ * *ノ___, '´ . . . . . ,' * ! `"''ー--一''"''´ ヽ、ン_.; . . . . ノ`'ー一'""'''-! うちのコタツをみんなで変な使い方して…困るね! 本当だのぅ。 ____ . -- . -- 、__ ____ __ , 。 v' ヽ 'v ヽ ,.-、 ,.ィ´_`ヽノ ,.-、 / ;;;; . ''''' (;;;;;;;o;;;;;;'。、 / \ >'´ ``っ_ノ ` </ } .ノ゚ . (=-- ハ ヽ;;;;;;。;;;;;;;;o ,,、 { / ヽ/ '' '' '' '), ( ノ\ハ, ノヽノノ/ヽ ' 、-''゚ '''''```` ∨ ,.ィ 、 }、 i } i ハ ._ノ_ノ.|',__. .__. ,)人 ' ヽ イ / ノ__,.)ノ ヾノノ、__,ト、 i } ' _ノ i' xxx xxxx'( ヽ \ ,-〉、 ムイ ( ヒ_] o-o ヒ_ン) l i ノリ (''' (\ へ / ̄) ハ ) /_/ /、'" ,___, "'iイ 〈 ____)r-'、| ``ー――‐''| ヽ(/ヽy , '/ イi i 〈 ハ ヽ _ン 人i }`'"ヾ , |Z| ̄ ゝ ノ  ̄ ̄ ̄ヽ ノ  ̄ ̄ ̄ ̄ /l /´/ 八 l ハ >,、 _____ , r─┐ヘノ 爻、 |Z| ノ⌒`'"~"'ヾ ,、 / /丶 | // `V / 丶 ヽ{ .茶 }ヽ `、彡ミ |Z| ⌒ 爻、`'"~')、.,_,..、 / / ∧ |/ / ̄ ̄`Y .| ヽ、__)一(_丿 _爻爻ミ_|Z| .,_,.)'^` 、彡ミ, / / ∧ ゙、{ / ̄ ゝ| ./_____爻彡ミミ|Z|______爻爻ミ_ノ'__/ / \{ /´ /| 〕________|Z|__________〔/ \ { { 、 / |Z| ∨  ̄ ̄ `ー-- / |Z| ∨ / |Z| ∨ / __|Z|__ _/ ヽ _ / / ○ ヽ カラカラカラ / / ○ i i 〃 {ハ_ハ_,!V ハ レ'、i l │ i| i iソル rr=-, r=;ァ 从|i i コタツは正しく使うべきだよな i i  ̄  ̄ ソ i i ヽ、 'ー=-' ハ / /ヽルイ≧.、.,_____,,...ィ´ ハ_ハ\ ,イ / { ヽ ノ } ヽゝ . . | 〃|、 { ヽ ゝく / } lヾ , {{ ト.ヽ 、 、 `´ `¨´ , / l、 }} V l ヽヽV ,-- 、 __// イヾリ l l`{_{ {`}二ニ二{´} } }ノl´ l ! l ` `l l` ´´ l l ! l l l l l l l rr=-,l l r=;ァ l ! l l l l l / | l l 'ー=-' l l / \ l l l l/ `' l l '´───ーー────ー-"───ー-─’──ー──ーー─────ーー─... ... .. ............. . . . . ... .. ............. . . . . .. . . ... .... .... ..... . . . . .. ... . . . . ..... . . . . ... ... .. ............. . . . . ... .. ............. . . . . .. . . ... .... .... ザザーン ..... . . . . ..... . ..... . . . . ..... . . . . . . . ..... . . . . ... ... .. ........... .. . . . . ... .. ............. . . . . .. . . ... .... .... .. ............. . . . . . . .. ............. . . . . ; . . . . . . ひまわりの種泥棒 初出 ゆっくりしていってね!!!のガイドライン ★206 ./^l、.,r''^゙.i′ l゙ r i i′ .| i^¨''iノー-i (_.vv,、 i.、/ ゙彳_ > _,ノ i .('`,.ヽ ( 、 | .i;i;i i .'^゙'< r,==─-- 、 , -ー==ィュ '' .! .ii;i.| .i‐ ,フ'' くト, __ゝrェォュィ__ ,イi .< i .ii;i;| .,「=( ィγ ゝ'"´ ` く ノァ `ー |,. i;i; /.\^' 、 Y ,r'==─- -== ,r(r ./゙,r| ,i゙.'!'=;^′ ,イ'く i i i i i l i i i ゙i Y .) ,/ソ, ,l'_ .). r /1 i イィ-lーイ人レーl-ル ノ ゙'レ'´i''!゙ー/'(゙゙ | .| //i ;r'レリイ (ヒ_] ヒ_ンレイ!、 | ._,i'!(冫.;i .| ,ッ ,i; (_F=! ,___, F=! ヾ, .. |. | `'、r! ト、 ヒ=l. /`l ノヒ=l.ィン .! .i ._,,,‐''^^'''''> ', ト|| |> ,、/ ''y,. イ!|| |ヽr' 、....,,,,..,,_ ! .;! .,/'゙`,_ .,ノ ゝ !'ルノl/\.| ノノゝノルレ \ .⌒\ │ .|!.,,iミ/ ._,,,./′ ソル-/ 、_./\ム_,ハ'ァ i '^'''‐、..゙'hノ| .|厂 . ̄′ / {/ ∨ | ` } .ヽ_ ゙メリ| .| ./\ / (⌒)  ̄ ̄ |. | ./^l、.,r''^゙.i′ l゙ r i i′ .| i^¨''iノー-i (_.vv,、 i.、/ ゙彳_ > _,ノ i ('`,.ヽ ( 、 | i;i;i i .'^゙'< r,==─-- 、 , -ー==ィュ '' .! .ii;i.| i‐ ,フ'' くト, __ゝrェォュィ__ ,イi .< i ii;i;| ,「=( ィγ ゝ'"´ ` く ノァ `ー | i;i /.\^' 、 Y ,r'==─- -== ,r(r ./゙,r| ,i゙.'!'=;^′ ,イ'く i i i i i l i i i ゙i Y .) ,/ソ, l'_ .). r /1 i イィ-lーイ人レーl-ル ノ ゙'レ'´i''!゙ー/'(゙゙ | .| //i ;r'レリイ (ヒ_] ヒ_ンレイ!、 | ._,i'!(冫.;i .| ,ッ ,i; (_F=!xxx xxヽ=! .. |. | `'、r! ト、 ヒ=l --=つ ノ=l.ン .! .i ._,,,‐''^^'''''> ', ト|| |> ,、/⌒lィ'⌒l イ!|| |r' 、....,,,,..,,_ ! .;! .,/'゙`,_ .,ノ ゝ !'ルノl/\.| | | |(,ルレ \ .⌒\ │ .|!.,,iミ/ ._,,,./′ ソル-/ 、_./\ノ ゝ.ノ},'ァ i '^'''‐、..゙'hノ| .|厂 . ̄′ / {/ ∨ | | }ヾ .ヽ_ ゙メリ| .| ./^l、.,r''^゙.i′ l゙ r i i′ .| i^¨''iノー-i (_.vv,、 i.、/━━━゙彳_ > _,ノ i━━━━('`,.ヽ ( 、 |━i;i;i━━ i .'^゙'< r,==─-- 、 , -ー==ィュ '' .!━.ii;i.|━━ i‐ ,フ'' くト, __ゝrェォュィ__ ,イi .< i ━ii;i;|━━,「=( ィγ ゝ'"´ ` く ノァ `ー | ━i;i━━/.\^' 、 Y ,r'==─- -== ,r(r ./゙,r|━━━,i゙.'!'=;^′ ,イ'く i i i i i l i i i ゙i Y .) ,/ソ,━━l'_ .). r /1 i イィ-lーイ人レーl-ル ノ ゙'レ'´i''!゙ー/'(゙゙ | .| //i ;r'レリイ (ヒ_] ヒ_ンレイ!、 | ._,i'!(冫.;i .| ,ッ ,i; (_F=! F=! ヾ., .. |. | `'、r! ト、 ヒ=l. ー=彡" ノヒ=l.ィン. ┃ .! .i ._,,,‐''^^'''''> ', ト|| |>、.,__ _,,.. イ!|| |ヽr' .| |、....,,,,..,,_ ! .;! .,/'゙`,_ .,ノ ゝ !'ルノ⌒メ、ハ_ハノヽノルレ | | \ .⌒\ │ .|!.,,iミ/ ._,,,./′ ソル'. iム/!ヽ!ヽ _ァ ィ'⌒l i '^'''‐、..゙'hノ| .|厂 . ̄′ / '---" }. . ',}, 人__丿 .ヽ_ ゙メリ| .| / / | \/ /  ̄ ̄ |. | ./^l、.,r''^゙.i′ l゙ r i i′ .| i^¨''iノー-i (_.vv,、 i.、/━━━゙彳_ > _,ノ i━━━━('`,.ヽ :__,,.. -─- 、.,_: ( 、 |━i;i;i━━ i .'^゙'< :, '´ `ヽ、__: '' .!━.ii;i.|━━ i‐ ,フ'' :,.'´ __;ニ- 、 -‐- 、 `く: .< i ━ii;i;|━━,「=( :/ ァ'´ ; i 、`ヽ: `ー | ━i;i━━/.\^' 、 :i / / , -ノ‐;ハ ハ i i ',: ./゙,r|━━━,i゙.'!'=;^′ :,' ノ .i ;ァ'_!_,. i /、!__ヽ! 〈 i: .) ,/ソ,━━l'_ .). r :イ 〈 ノ!;イ (ヒ_] レ' ヒ_ンハイ ; 〈: ゙'レ'´i''!゙ー/'(゙゙ | .| :〈 ノへ;ハ U ,___, U ',!ノ ;ハノ.: | ._,i'!(冫.;i .| :〉 ノ レヘ ヽ _ン i; i' ;( 〉: .. |. | :ノ i ; i' ハ、 _ ,.イ/ ト、〉: .! .i ._,,,‐''^^'''''> :ヽハ/ i ハ iン/ノ(`y<´iノヽ!;ノ: 、....,,,,..,,_ ! .;! .,/'゙`,_ .,ノ :ノへ ノル(,.ヘ.| ⌒ ノヽノヽ. ヽ.: \ .⌒\ │ .|!.,,iミ/ ._,,,./′ :., -イ´;/\ムi 7} i#;ハ冫: i '^'''‐、..゙'hノ| .|厂 . ̄′ :/ ∨ |;| / ハ .l;#;i. ヽ: .ヽ_ ゙メリ| .| r,==─-- 、 , -ー==ィュ くト, __ゝrェYュィ__ ,イi ィγ ゝ'"´ ` く ノァ Y ,r'==─- -== ,r(r ,イ'く i i i i i l i i i ゙i Y /1 i イィ-lーイ人レーl-ル ノ //i ;r'レリイ > < レイ!、 ,ッ ,i; (_F=! xxx xxxiF=! ヾ, `'、r! ト、 ヒ=l. [++ィ'⌒l ノヒ=l.ィン ', ト|| |>、.,__ ト-‐(!|| |ヽr' ゝ !'ルノl~フメ、ハ_ハ〈 ',},レ ソル'-人__丿/!iヽ`-‐/ / ' l }. . l Y r,==─-- 、 ┃ , -ー==ィュ くト, __ゝrェ┃ュィ__ ,イi ィγ ゝ'"´ ` く ノァ Y ,r'==─- -== ,r(r ,イ'く i i i i i l i i i ゙i Y /1 i イィ-lーイ人レーl-ル ノ //i ;r'レリイ (ヒ_] ヒ_ン イ!.、 ,ッ ,i; (_F=! /// ,___, ///F=! ヾ., `'、r! ト、 ヒ=l. ヽ _ン ノヒ=l.ィン ', ト|| |>、.,__ _,,.. イ!|| |ヽr' ) ) ) ゝ !'ルノ⌒メ、ハ_ハノヽノルレ ソル'. iム/!ヽ!ヽ _ァ ィ'⌒l / '---" }. . ',}, 人__丿 / / | \/ / i '^'''‐、..゙'h'゙`,_ .,ノ .ヽ_ ゙メ/ ._,,,./′ .! . ̄′ ! .! │ | r,==─-- 、 | | , -ー==ィュ __,,.. -─- 、.,_ くト,_ __ゝr| | ュィ__ ._,, ,イi , '´ `ヽ ゝ'"´ ` く ,/ ´ , '´ `ヽ Y ,r'==─- -== ,r(r ,' ヽ ,イ'く i i i i i l i i i ゙i Y / / /、__; ィ ハ 、_; ! i ハ 〈 /1 i イィ-lーイ人レーl-ル ノ i / ハ_ニ;、,レ レ、_;、ゝ | Y //i ;r'レリイ (ヒ_] ヒ_ン イ!.、 ハ レヘ i'ィ=ミ ィ=ミハソ ハ ,ッ ,i; (_F=! ,___, F=! ヾ., | ノ l |xxx ,___, xxl | ノ `'、r! ト、 ヒ=l. ヽ _ン ノヒ=l.ィン ノ ハヽ、 ヽ _ン ノ i ( ', ト|| |>、.,__ _,,.. イ!|| |ヽr' イ / / イヽ>, -r=i' ´イ ハノ ) ) ) ゝ !'ルノ⌒メ、ハ_ハノヽノルレ 【本を棚に戻す】
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ゆっくりは甘いものが好きらしい、とよく言われ逆に辛いものが嫌いだという。 ならば甘辛いものはどうなのだろうか。 と言うわけでカボチャの甘辛いためを食べさせてみんとす。 さぁお食べ。 「いただきます!!」 まりさは料理を食べ始めた。 しばらくお待ちください。 「し、しあわせだけどからぁぁぁあい!!」 ど、どっちなんだよ!? 「あ、あまいんだけどからいんだよぉぉぉ!」 お口直しに水を飲んでもらう。 「ゆぅ……ゆぅ…」 幸せなんだか不幸せなんだかよくわからん顔をしていた……。 謎が深まるばかりだったので後で違う甘辛料理で確かめようと思う。 名前 コメント
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C子「Y岡さん、ここは…?」 Y岡「ゆっくり加工場さ」 「KYし…もとい文々○新聞の方ですね、お待ちしておりました。ゆっくり製菓加工工場長です」 Y岡「やあ、今日はよろしくお願いします」 工場の中に案内される2人。奥に進むにつれ、何かざわめくような音がする。 C子「この音は一体…?」 …………っ゙………………゙ι゙ぃ…………ぃ゙ゃ……………………………ペ…… Y岡「ゆっくりの鳴き声さ」 工場長「ここが当社の人気製品『揚げゆっくり一口』の加工現場です」 通された大部屋の中にはさらに、シャワールームのように仕切られた小さな部屋が並んでいる。 その一つの前で立ち止まる。耐熱ガラス製のドア越しに、その中にいる加工員が会釈する。 「や゙め゙ぢぇ゙ぇ゙ぇぇ」「ゆ゙っぎゅ゙りざぜぢぇ゙ぇ゛ぇぇぇ」「だぢゅげでぇぇぇ」「じに゙だぐだにぃ゙ー」 その部屋の床にはコンロと油鍋が置かれている。鍋の上には滑車があり、そこから一本のロープが伸びている。 さらにそのロープの先には5匹ほどのちびゆっくりがまとめて錘のようにくくりつけられており、油の輻射熱と 目前に迫った未来に喘いでいる。 「ゆ゙ーっ、ゆ゙ーーっっ゙!!ゆっぐぐぅっゔゔぅ」 親まりさが鍋の横で、滑車に掛かったロープの端をくわえ必死にちびゆっくりを支えている。口を離せば子はドボン。 あまりにもテンプレート通りだが、それだけに精度の高い“加工”法の一つだ。 「ゅっぐ、ι゛ヵ゛ぅ゙、ぇぇ゙」 油は普通の揚げ物を作る温度としては低すぎる温度に保たれている為、“加工”の触媒として先に放り込んで おいた一匹のちびれいむは未だに絶命せず、油の中でうめき声を挙げている。 C子「おや? 滑車が鍋の上だけでなく、鍋の真横にもありますね」 工場長「ええ、いいところに気が付いてくれました。ロープを鍋の真横の滑車を経由させることで、ロープを 引っ張るために動くと、自身が火元に近づくことになります。つまり引き上げられず落とさずの状態が 続くことになります。以前のタイプではこの状態を適当に長引かせるのが難しかったのですが―」 構造がいま一つ想像しがたいという方は、三角定規を思い浮かべてください。直角の部分が鍋の底・火元です。 残りの角が滑車です。ちびゆっくり達は高さ部分にぶら下げられています。そして親まりさが底辺でロープを 引っ張っているわけです。 しばらく経ち、進むも引くも適わないことをようやく理解した親まりさは、動くのをやめてロープを支える ことに専念するようになった。 Y岡「膠着状態ですね…、こういう場合はどうするんですか?」 工場長「ええ、ですがこれも“加工”のうちの一過程です。このような状態になったら…ホラ!」 部屋の中の加工員が何かのリモコンをいじくると、壁に埋め込まれたブラウン管が起動した。 それに映し出されるは棚の上辺の端から紐でぶら下げられたちびゆっくり達。そして親まりさが それを見つけ、紐を口で巧みに手繰り寄せ、ちびゆっくりたちを棚の上に救出した。 加工員は明るい声で親まりさに呼びかける。 工員「おやぁ?まりさなら簡単に子供たちを引き上げられるみたいだね。さぁ、ゆっくりがんばってね!!」 ちびゆっくりにも映像とそれによって引き出された記憶、それと工員の言葉を組み合わせて理解できるほどの 知能は持ち合わせていた。しかしそこまでがゆっくりブレインの限界である。 「おかーしゃん、はやくゆっくりさしぇてね!!」「はやくーはやくー」「わかるよーかんたんだよー」 親まりさはふひゅるぶふゅると抗議のような息を漏らすが、ロープを咥えた状態で喋ることなどかなわないし たとえ喋れたとしても反論など思いつきようもないだろう。 「お゙がーじゃん、ゆっぐり゙はやぐだずげでね!」「どじでひぎあげでぐれないのぉ゙?」「わがらないよぉ!!」 一向に動かない、いや動けない親に、鍋からの輻射熱に耐えかねたちびゆっくりたちが抗議の声を投げつけ始める。 C子「すごいわ!こうやって親に子を、子に親を“加工”させるのね!」 そしてダメ押しとばかりに工員がさらなる“加工”を促す。 工員「そっかー、まりさゆっくりできてないね、こんなに息切らしちゃって。重いもんね、きみの赤ちゃん」 親まりさとちびゆっくりのゆっくりブレインに工員の言葉が染み渡ってゆく。 工員「まりさがゆっくりする邪魔にしかなってないね。こいつらのせいでゆっくりできないね」 親まりさはロープを噛み締めた歯の間から息を必死に吐き出す。否定の意を表そうとしているのだろう。 工員「でも、ロープをゆっくりすぐにはなせばすぐにゆっくりできるよね。どうしてそうしないのかなぁ?」 一度持ち上げて叩き落す、これぞ基本であり王道である。 工員「そうか! まりさをゆっくりさせないやつにはゆっくりしんでもらうんだね! すぐにおとしたら ゆっくりしなないもんね! ゆっくり熱であぶってゆっくりくるしんでからゆっくりしんでもらうんだ!」 一瞬の静寂のち、湧き上がるちびゆっくりたちの怒号と罵声と、 「こんなおがーちゃんじゃゆ゙っぎゅりでぎなぃよぼお゙ぉぉぉ」「゙おがーじゃんな゙んがい゙や゙あ゙ぁぁぁあ゙ぁぁ゙ぁ゙」 「わ゙がっだよー、おがーじゃんはおがーじゃんじゃないよぉぉぉぉ」「ゆ゙っ゙ぐりじだぃい゙ぃぃ゙ぃ」 親れいむは必死に、息だけでなく体を震わせ小さく跳ねて抗議するが、子供に伝わるはずもなし。 「お゙じじゃんだずげでぇぇぇえ゙え゙ぇぇえ゙ぇ゙ぇ゙」「わがるよーだずげでも゙らぅ゙んだよー゙」 「れ゙い゙むだじをゆっぐりざぜでぇぇ゙え゙ぇぇぇ゙えぇ」「ゆ゙っ゙ぐりぃい゙いい゙いぃぃ゙ぃぃいい゙ぃ゙ぃいぃいいいい゙ぃ」 唯一すがることができそうな相手を見つけ、哀願する声が響く。 工員「いやーでも、きみたちはこいつの赤ちゃんだしねぇー」 愛し守る対象の変心と罵声、肉体の限界、無力感と絶望、終わりの予感、もはや時間の問題であろう。 C子「鮮やか!これぞ熟練の職人技ね!」 Y岡「いやー実に見事だったね。――ところでさっきから気になっていたんですが、あの上の方の滑車、なんか 皿のようなものがぶらさがっていますね。あれは何の意味があるんですか?」 工場長「ああ、それはですね―」 突如チリンチリンと、ベルのような音が響く。右手を見やると、なにやら別室のドア上の緑色のランプが点灯している。 工場長「おや、向こうの部屋で加工が終わったようですね。行ってみましょう」 促されるままにその部屋の前へ移動する。中を見やると、同じような滑車の仕掛けはあるが、そこに掛かって いるはずのロープ、そしてそれにぶら下がっているちびゆっくり達が見当たらない。ただ、小気味よく油の 中で水分がはじける音と 「いぃ゙い゙い゙や゙あ゙あ゙あ゙ぁぁ゙ぁ゙ぁがぁ゙ぁうぅ゙あ゙あああうぶぐでいぶどあ゙がぢゃぁあ゙あ゙あぁぁん゙んんんんぐぶぇ゙え゙ええ゙え゙ぇぇ」 この部屋の“親”と思しき大きなゆっくりれいむの絶叫、 「ぶぐぎゃばぁあおげぇうっ゙ぶぁあ゙あああ゙ぁ゙ぁ゙ぁ」「ぶぅおぐぁあ゙ぢゃぶぁあ゙あ゙んんじゅぶうぁあ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ」 「ぢーっ、でぃーっ、でぃ゙んぼー、ぉー、ぉ゙おー」「どぶぇらでぶぐふぅぅ゙ぅぅぐ」「ぐひぃ゙ーびひぃ゙ぅ゙ぐぶゔ」 低温でじっくりと揚げられているちびゆっくりたちの長い長い断末魔 工場長「さあ、ここからが腕の見せ所です。お静かに」 Y岡「へぇ、こりゃ見ものだ」 「おじざん、どぼじでだずげでぐれながっだのれ゙いむ゙のあがぢゃあ゙ぁぁ゙ぁぁんんん」 工員「えーだって、れいむがその気になればゆっくりすぐにたすけられたじゃないか」 「でぎないよぼぉおお」「どうして?」「だっで、だっで、ひがぁあぁ」「火が?」 「ひがれーむ゙のまえ゙にあっだがらぁ゙あ゙あ゙」「あるとどうなるの?」「れいむ゙がやげじゃうぅ゙ぅゔ」 「つまりれいむは、自分が火で焼けるのが嫌だったから、代わりに赤ちゃんを揚げ饅頭にしちゃったんだね?」 静かにはなったが、鍋の中の断末魔は小さいながらもまだ響いている。息のあるやつらにはおそらく聴覚が まだ残っているだろう。 「ぢがぶぅづゔぅうう」「何が?」「だっ゙で、れ゙ーむや゙げじゃっだら、ぴも゙、ばなじ゙ぢゃゔぅゔ」 「我慢すればいいじゃない」「ぞんな、ぞんな゙、でぎない゙ぃ゙いい゙じんじゃゔぅ゙」 「じゃあ、何が悪かったのかな?」「びもが、びもがながずぎだぜい!!ながずぎで、あがじゃんをゔえにびっぱれなかっだぜい!」 いかにもわざとらしく、仕方ないなぁといった風情で工員は床に落ちたロープを手繰り寄せ、再度滑車に引っ掛け、 揚げ饅頭から鋏で切って離す。念には念を入れて、鋏は体で隠し親れいむに見られないようにする。 工員「じゃあ、試してみようか? 本当にひもが長すぎたかどうか」 「ゆ゙!?」 親れいむが暴れだすより早くその体をふん捕まえ、ロープの一方を髪と髪飾りに結わえ、部屋の隅に 備え付けてあった油まみれの透明の箱の中に投げ入れる。 ここで揚げ饅頭を仕上げる。鍋の火力を一気に強め、ザルですくってバットに置く。 工員「さあ、れいむの赤ちゃんにも本当かどうか見てもらおうか?」 火力最高の鍋の上に親れいむをぶらさげる。バットの饅頭は顔がすべて部屋中央にぶら下げられたれいむに 向くよう置いてあるご丁寧っぷりである。 「い゙やぁああ゙あ゙ぁぁぁ゙あずぃびぶぃいいぐぇえええぇ゙」 親れいむは沸騰した油の霧に焼かれ絶叫する。 工員「熱いよねぇ。そんなところにれいむの赤ちゃんたちはゆーーーーーーーっくりぶらさげられてたんだねぇ」 聞こえているのか聞こえていないのか、親れいむは痙攣でその言葉に答える。 工員「じゃあゆっくり長さをはかってみようね!」 「あげぶぁ゙ああ゙あ゙あ゙!!!!!」 工員は手元に手繰り寄せていたロープを放す。親れいむは一気に鍋の近く10cmほどの高さに落とされ、 激増した熱さに反応しひときわ高い鳴き声を上げる。 工員「ゆっくり確かめてね!!!」 工員はゆっくりと、ロープを鍋の横側にある滑車に掛け、改めてすこしずつ手元に手繰り寄せていく。 親れいむはロープに引き上げられ、少しずつ熱源から遠ざかり、やがて、吊り下げられている感覚が無くなった。 C子「あ、あれは山岡さんが気にした皿!」 親れいむは件の滑車にくくりつけられた皿に乗っかったのだ。 工員は、ロープの片端を、親れいむに見えるようしっかり握っている。 工員「紐が短ければ、れいむは引っ張って赤ちゃんを持ち上げられて、この皿に乗せられたんだよね?」 「そ、そうだよ!わるいのはこのひもだよ!」 最後の希望を見つけたかのように、勝ち誇ったような顔で叫ぶ。 工員は皿から親れいむを一度下ろし、また少し下に下ろす。 「あづ、あづいよ゙ぉおお゙」 親れいむは再び油の蒸気に焼かれ空中でのたうち回る。 すると工員は突如親れいむの髪をひっつかみ一気に引きちぎった。このときに髪飾りを完全に引きちぎって しまうと繁殖に回すのが難しくなってしまうので、ギリギリ取れそうで取れない程度に止める。職人の技である。 「ぎゃぶらぁ゙ばら゙ぁ゙!!!」 工員「見ろ」 取れそうな髪飾りをつかみながら、苛立ちも怒りも嫌悪感も何も無い、本当に無感情な声で命令する。 「わ゙、わがりま゙じだぁ、み゙ま゙ずぅ」 この期に及んでもなお、髪飾りは命より子供より大事らしい。 親れいむは今度は一気に引き上げられ、再び皿の上に載る。 工員「つまり、れいむがひもをここまで引っ張れれば赤ちゃんは助かったんだよね?」 工員の声が、猫なで声に戻った。 熱さからの開放と声色の変化で安堵した親れいむは自慢げに答える。 「そーだよ!ながすぎでひっぱれなかったんだよ!そこまでひっぱれれれば」 工員「ここまで?」 工員の片手はロープの端を掴んでいる。そしてその手は滑車と火元とのちょうど中間くらいにある。 工員「そっかー、ここまで引っ張れれば助けられたんだ」 親れいむが固まる。すかさず工員は親れいむを抱き上げる。 工員「ゆっくり見てみようか?」 工員は親れいむを、自分の片手を置いてあった場所に降ろす。 工員「そっかー、ここまで引っ張れれば助けられたんだ」 火は、遠い。親れいむは気付いているか分からないが、火力は最低に下げられている。 この箇所には何の危険も無い。その意味を理解するのには、ゆっくりと、ゆっくりとする必要があった。 工員「そんなに火が怖かったんだね。赤ちゃんを揚げ饅頭にしちゃうほど」 ぐいと引っつかみ、バットの中身を見せ付ける。苦しそうな、恨めしそうな顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔 顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔 顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔顔 「ぱぴぷぺぽろぐぉぉ!!!??」 全てを理解した親れいむは餡を吐き出しショックで絶命しようとするが、工員は人にあるまじき速さで 巨大なステープラーを掴み、親れいむの口蓋を封印する。 工員「今回の赤ちゃんは揚げ饅頭になっちゃったけど」 親れいむは白目をむき、なんとも付かない粘液物を垂れ流している。 工員「また、ゆっくり赤ちゃんを産んできてね!!!」 部屋の外の緑ランプは消え、代わりに青のランプが点灯した。 工員はこれといった感情が無いが、無感情でもないごく普通の表情を浮かべてドアを開ける。 「「お疲れ様でーす」」 工場長と工員は同時に帽子を取り、挨拶を唱和させる。 工員はワゴンに手際よく、失神したゆっくりをワゴンに備え付けの透明な箱に放り込み、バットの中身を より大きなバットに移す。 工員「おや、見学ですか?」 C子「ええ、そんなところです…ってY岡さん!!」 Y岡の目はワゴンに乗せられたブツに釘付けである。 これには工員と工場長は大笑い。 工員「はっはっは、あれだけ美味しそうな鳴き声を聞いていれば無理も無い。私だって…」 と慌てて口を塞ぐ。 Y岡「アヒャー、ところでこの大きなほうのゆっくり、“加工”は終わったようですが、どういう製品になるんですか?」 工場長「通常なら繁殖に回すところですが…、こいつの味に興味がありますか?」Y岡「ええそりゃもうもろちん!」 C子「Y岡さん!んもぉ~」 C子も、恥ずかしさと呆れと興味が三分の一づつのようだ。 Y岡「うんめこりゃうんめ!」 食堂のテーブルの上には、件のゆっくりが透明な箱に入れられている。ただ、今度の箱には直径5cmほどの穴が 開いている。ここからゆっくりのこめかみに穴を開け、餡を取り出すのだ。 C子「すごいわ…このお汁粉。成熟したゆっくりの餡はだらしない甘さって聞いてたけど、これはただ甘いだけ じゃなくてとても深いお味。コクがあって舌触りが滑らかで、シャッキリポンと(ry 工場長「どうです、美味しいでしょう」 Y岡「うん美味しい美味しい!」 C子「Y岡さんったらもう…」 工場長「でも成熟ゆっくりの餡には独特のクセがありますからね、やはり市場ではちびゆっくりのほうが 喜ばれるんですよ。甘みが弱いのが逆に製菓材料として尊ばれまして…」 びくりびくりとゆっくりが痙攣するが、それに注目するものはいない。 餡はその中の一割ほどしか取り出していないので、命に関わることはありえないからだ。 C子「驚いたわ…ゆっくりの加工場なんて聞いたからもっと無機質で冷たい印象を抱いていたけれど、 あそこはとてもゆっくりらしい温もりに満ちていたわ」 Y岡「あそこにはゆっくりの生と死、喜びと悲しみとゆっくり、すべてがあるのさ。 それを美味しくいただくのが、俺たち人間がゆっくりに送れる最大の賛辞なのさ」
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前のページから/最初のページから 可燐は大きく弧を描くように平手を振り下ろすが二人は何とか躱し、先ほど二人がいた場所が地面ごと大きく抉れる。 その圧倒的パワー見て、絶望的だな、とりぐるは思った。 「いくわよ!!まずその1!あえてこちらの戦力を削ぐつもりで!!」 ディケイネは銃を取り出し可燐に照準を合わせるが一瞬のうちにその銃は可燐によって弾かれて宙を舞った。 「無駄、無駄、無駄だぁァァァッッ!!!!あの分身体の時のように思うな!!!」 「くっ!!!」 これで通常弾幕を有効に放つ手段はなくなってしまった。普通のりぐるの拡散弾幕だと絶対弾かれるか躱されるかのどちらかしか思えない。 ここでラストスペルライドを放つか?いや、先ほどりぐるが言ってたようにまだこの次があるかどうかも分からない。 それに一昨日の場合は分身体になっていたからボムバリアが剥がれたのだ。剥がれるという確証も一切無い。 「オラオラオラオラッ!!!」 「ドラララララァァ!!!」 ディケイネの拳と可燐の拳が互いにぶつかり合い火花が舞う。 だがパワーそのものが違うのですぐにディケイネは押し負けて大きく後ろに吹き飛んでいった。 「その2、小競り合いは負けろ!」 「はあああああああああああ!!!!」 そして可燐はディケイネに向かって大きく蹴りをかます。それを腕で何とかガードしたはいいけれど勢いは止まらずそのまままた吹き飛んでいった。 「その3………避けるな、ダメージを受けろ…………」 「必殺技その892!!シェルスター!!」 193までじゃなかったのかよ。可燐は体を丸めて一直線にディケイネに突進していった。 「それらの策を用いて!敵を油断させて懐に入るのよ!!」 『いえっさー!!!』 ディケイネはその単直な攻撃を躱し可燐は木にぶつかる。 そしてその直後ディケイネは可燐に向かって突撃していった。 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 「とりゃあああああああああああああああああああ!!!!!」 ディケイネは、可燐の拳を、左手で受け流し、そして右手を拳の形にし、可燐の腹に向かって突き立てた!! 「!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「……………………………き、効かねぇって言ってんだろ………」 だがディケイネは左手も可燐の腹に押しつける。 この時を待っていた、と言わんばかりに顔をにやつかせディケイネはこう言った。 「この距離、バリアの射程内よね」 「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 『スペルライドゥ!蛍符「地上の彗星」!!!』 ディケイネは何回も何回もボムバリアの射程距離がどの位であるのか測り続けていた。 スペルが放たれる瞬間、可燐はこのディケイネが百戦錬磨の強者という事を思い知らされた!!!!!!! 「が、ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 零距離弾幕を体に万遍なく喰らい可燐の体は吹き飛ぶ。そして追撃を掛けるようにディケイネは 可燐が吹き飛ぶよりも速く跳び、また可燐の懐に入った。 『スペルライドゥ!蛍符「地上の流星」!!!!』 「いっけえええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」 そして二発も零距離でスペカを喰らった可燐の体は木々を薙ぎ払っていく。 そして何本か木を折り倒した後、可燐の体はようやく止まりそして力なく地面に伏した。 立ち上がる様子はない。この様子でもってディケイネは自分達の勝利を確信した。 「…………………………………………………い、い、いやったああああああああああああああああ!!!!!!」 『勝ったの!勝ったんだね!!!!』 最後の最後でディケイネは反撃の一糸をつかみ取り!ようやく勝利した!! ディケイネは自分も倒れそうになったがそこを何とか抑え地面に倒れている可燐を見た。 思えば辛い戦いで、少し悲しい戦いであった。 「おーーーーーーーーい、大丈夫ーーー!?」 と、遠くの方から伝子の声が聞こえてきてディケイネはそちらの方を向く。 「ゆっ!蜂が倒れてるぜ!と言うことはおねーさん倒したんだ!!」 「え、ええ。ちょっと辛かったけどね………でんこ帰りおぶってくれない?実は言うと立ってるのもきついのよ」 「立ってるのはりぐるちゃんでしょうが」 誰かが笑い。そしてそれにつられるように皆が笑い出した。 この果てしない達成感。今の今まで得られる物でなかったからこそ清々しかった。 「ゆっはっはっはっは……………………え」 まりさがいきなり笑うのを止め顔を強張らせている。 嫌な予感がし、ディケイネは後ろを振り向いた。 「は、は、は、は、ははははははははははははははははははははははははははははははははははは」 可燐が立っていた。血反吐を吐きながらもその2本の足で立ち不敵に笑い続けている。 「最初に笑い始めたのって………まさかコイツ?」 『そう言う問題じゃないよ』 血を何回も吐きながらも可燐は憎しみの詰まった目つきでディケイネを睨みつけ口を開く。 「ご苦労でした……………と言いたいところだけど………よくも私をここまで痛めつけてくれたな」「あんたのせいで 私の体もプライドもめちゃくちゃ、これから先あたしは全ての防御の力を攻撃に回しあんた達を処刑する」「圧倒的暴力の前に あんた達はなすすべもなく無残に死んでいくのよ」「さぁ地上最強軍団の蜂の真の実力、見せてやる」「退くことは許さない、では」 「死ぬがよい」「そしてさようなら」 可燐はそのまま空を飛び空中を漂う。 呼吸はもはや虫並みでしかないが目つきは悪意に満ちている。 そして可燐は羽を大きく天使のように展開した。 「でんこ。まりさを連れて逃げて!」 「そうだぜ!!というか逃がしてほしいんだぜ!!!」 「……………あ、うん。死なないでよ」 「誰が死ぬか」 そう言って二人は互いに頷く。伝子とまりさを見送ってディケイネも空を飛び可燐と向かい合った。 「………………これがほんとの最後の最後よ、命掛けなさい」 『言われなくても、わかるよ』 そして可燐とディケイネは互いに向き合って構えた。 可燐は札を、ディケイネはメダルを持って。 …………………………………………………………………………………………………… 『 緋 蜂 』 『ラストスペルライドゥ!!りりりりりりりりりりりぐる!!!!』 「季節外れのバタフライストーム」 ほぼ同時、いや、可燐の方が少し速く弾幕の嵐を放った。 二人が放った弾幕の嵐は互いにせめぎ合い、当たることの無かった弾幕は辺りを破壊し尽くしていく。 「はあああああああああああああああああああ!!!!!」 「このおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 恐らく、一発でも相殺しきれなかったら一発の弾でもどちらかの体を抉るだろう。 それは周りの様子を見れば自ずと理解できる。 「くあああああああああああ!!!!!!!!!!!」 可燐の弾幕のほうが勢いが強くディケイネは次第に押されていく。 しかし完全に押し負けてるわけでもなく何とかその場で喰い留めることだけはできた。 「負けるか負けるかああアアアアア!!!!!!!!!!こんな所で死にたかねええんだよおおおおおおおおおおお!!!」 「それはこっちだっておなじよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」 これほど命をかけた戦いには楽しみも悲しみも感情という物は殆ど全て排除されていく。 残るのは生きたいという想いと、殺したいという悪意のみだけである。 「そらっっっ!!そらっっっっ!!!!そらあああああああああああああああああああ!!!!!!!!」 「ぐううう!!!!」 そしてその想いは可燐の方が何倍も強い。GストーンとかZメタルとかじゃないけれど想いの強さは弾幕に反映されていく。 「ま、まけ、ないわよ!!!!!!!!!!!」 互いの思いがせめぎ合い、時間が経つうちに二人の弾幕は次第に弱まっていく。 もう二人とも体力の限界を既に超えているのだ。だが二人とも相手の体力切れを期待していない。 コイツだけは絶対にこの弾幕で仕留める。その思いだけがあった。 「ヒィーヒィー………この…………やろう」 可燐の口から血が溢れ出す。ダメージは確実に可燐の方が大きい。でも可燐には元々のポテンシャルがある。 そんな状態になりながらも可燐の弾幕はディケイネの弾幕を押し続けていた。 「虫を、なめるなあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 可燐は咆哮と共に最後の力を振り絞り弾幕を放った。 その弾幕の嵐は完全にディケイネの弾幕を上回り、そして一気にディケイネの弾幕を吹き飛ばした!!! 「…………………が、がはっっっっ」 だが可燐は一斉に血を吐いて意識が朦朧とし、視界も朧気となる。 しかし相手の弾幕を吹き飛ばしたという事で弾幕はディケイネに向かったはずだ。可燐は勝利を確信し、弾幕を撃つ手を止めた。 「いい?先人達の技を使うときに大事な物は尊敬(リスペクト)よ。忘れないで」 可燐の耳にあのディケイネの声が聞こえる。 まさか、あの弾幕の波を躱しきったというのか。 「貴方の蹴りは強い。紅き月の吸血鬼だって、桜の下の幽霊だって、境界を操る妖怪でさえも一撃で倒す!」 『わかったよ!!!』 五感が麻痺して上手く位置を掴めない。景色がめまぐるしく歪み、そして血を吐いた。 ディケイネが生きているというのであれば早く始末しないとこっちが殺される。それだけを考え可燐は辺りを見回した。 「これで終わりにするのよ、最後の力を込めて今!!!」 ようやく五感がまともになり可燐は声のする上の方を振り向きディケイネの姿を見つけた。 そうか、私が弾幕を吹き飛ばしたときにはもう上の方に逃げていたのか。 可燐は残り全ての力を全て弾幕としてそのディケイネのいる方向に放つ!!! 「ライダァァァァァァァァ!!!リグル!!!キィィィィィッッッッック!!!」 そしてディケイネは足を可燐に向けて一気に跳び蹴りを放った!! 偶然か奇跡か、ディケイネは可燐の放った弾幕のスキマを上手く切り抜け可燐へ向け一直線に突撃していく。 全ての防御を攻撃に回した可燐に、これに耐えるだけの余裕は既に無かった。 「い、いや」 「うらああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」 ディケイネのその単純きわまりないただの跳び蹴りは可燐の腹に直撃し、その体勢で速度を保ったまま二人は地面に激突する。 そしてその衝撃で土埃が舞い上がり二人の姿を隠した。 荒れ果てた森の戦場で一人だけが立ち尽くしていた。 可燐は地面に倒れ、泡と共に血を吐きながら白目をむいている。ディケイネはそれを見おろしてただ静かに黙っていた。 「……………………………………本当に、勝った」 『……………………………………………………………………』 それだけ言ってディケイネは振り返る。遠くに伝子とまりさがいたのを見つけ大きく手を振った。 「はっ!」 「れ、れいむさん、体の方は………」 「大丈夫だよ!それよりもいまれいむは感じたよ!おねーさん達やったんだね!!二人が帰ってくるよッ!!」 「やっぱりジョジョネタかよ」 もうすっかり日も暮れて辺りはしんと静まる。 戦い終わってすっかり草臥れた紅里とりぐるは稗榎さんの家ですやすやと眠っていた。 「「むーしゃむーしゃ!ココナッツうめぇ!」」 「それはよかったです!」 すっかり元気になったれいむはまりさと共にカブト虫の形をしたココナッツを食べている。 喉もと過ぎれば何とやら、あの時の真剣な顔つきはすっかり太々しいいつもの表情に戻っていった。 「………ねぇ十紘先生」 「あー、えのちゃんでいいですよ。とは言って元々これは姉のあだ名ですけどね」 「……………その腕、と言うか傷大丈夫なの?」 伝子はそのあだ名で呼ぶことなく稗榎さんの腕を指差す。 稗榎さんの腕には万遍なく包帯が巻かれていて、机の周りにも血の跡がほんのり残っていた。 「大丈夫ですよ、そんな麻痺してないし動かなくなったら口で書きますから」 「麻痺、しちゃってるんですか……………」 世界を修正するためには大きな代償が必要である。 あの原稿用紙をたった1文字修正しただけでこの有様、しかしその修正がディケイネに勝利をもたらしたのだ。 「………………………これでいいんですよね」 机の近くのゴミ箱には紙くずが目一杯に詰め込まれている。 稗榎さんはそれを一瞥した後紅里とりぐるの方を向いた。 「そう言えば、何で上半身下着なんですか?」 「…………………知らない、とりあえず上着持ってきてあるけど」 かっこつけるためにボスの真似して上着を脱いだため、今紅里は上半身下着の状態のままで寝ている。 れいむとまりさ、そして伝子は『もしこの場にカメラがあれば……』とまで考える程の痴態であった。 「それじゃ貸して下さい、これじゃ寒そうですよ」 「え、でも腕は………」 「そんな麻痺してませんって」 とりあえず伝子はその作務衣の上を稗榎さんに差し出し、それを受け取る。 そして寝っ転がっている紅里に着せようとしたが手が上手く動かずつい紅里の肌に触ってしまった。 「あ、柔らかい………」 「柔軟剤使ってるんだぜ!!」 「きっと漂白剤に混ざってるんだよ!」 そのまま稗榎さんは紅里の肌に次々触れていく。 いままで人と離れて暮らしていた稗榎さんにとって人肌の暖かさは懐かしい物であった。 まぁ端から見ればセクハラの現場なのだが昨日紅里も稗榎さんにセクハラを行ったのでどっちもどっちである。 程良くその肌を堪能した後稗榎さんはちゃっちゃと紅里に作務衣を着せた。 「ふつうにきせちゃったよ!?」 「まぁ手先は器用ですから、動かない手を上手く使うのがポイントですね」 「…………………ん。」 そんな事をやっていたせいで紅里、ではなくりぐるの方が起きてしまった。紅里はというとあれだけセクハラされたのにまだ眠りこけている。 「あ、起こしちゃった………?」 「………………………………えのちゃん、その腕」 「え、ああ、大丈夫大丈夫。それよりもりぐるの方が心配だよ」 可燐から散々打撃を受けまくったのでりぐるの体には痣が沢山残っている。 それでも痛がる様子もなくりぐるはのろのろと稗榎さんの膝の上に乗った。 「…………………………………………この事件は全てりぐるのせい。 えのちゃんも村のゆっくり達もあの蜂さんもおねーさん達もりぐるが傷つけたようなものだよ………」 「…………………………でも一番傷ついたのはりぐる………………なんじゃない?」 稗榎さんはりぐるの頭をゆっくりと撫でる。 確かに稗榎さんの言うとおりりぐるは今回の異変で罪悪感による地獄のような苦しみを味わった。 しかしりぐるはその言葉を否定するかのように首をブンブンと振り、目元に涙を溜めながらも泣くのを堪えた。 「…………そんなことないよ………やっぱりりぐるは嫌われ者になる宿命なんだよ!」 「……………………………………でもさ、ほら、外」 そう言って稗榎さんはのれんの外を指差す。 「ゆっゆっ」 風が吹いているわけでもないのにのれんがもそもそと動き外から多くのゆっくり達がなだれ込んできた。 「「ゆっくりしていってね!!ココナッツはいかが?」」 「「「「「「「「「「「「「「「「「「ゆっくりするよ!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」 「え!!ゆっくりちゃんがいるの!?どこどこ!?」 伝子は自分の第六感をフルに作動させ、なんとゆっくり達がいるところに正確に突っ込んでいく。 だがいくら感知したといっても触れられないことに変わりはないので、伝子はその勢いのまま再び家の外へと飛び出していった。 「………………………あ、あの」 「みんなげんきだよ!!それもこれもディケイネのおねーさんとりぐるのおかげだね! だからこうしてお礼を言いに来たよ!!」 「どういたしましてだぜ!!」 「…………………………」 それほど関係ないまりさは反応したが当のりぐるはずっと押し黙っている。 それを見かねた稗榎さんはりぐるを持ち上げゆっくり達の前に置いた。 「………………ごめんなざい……………りぐるのぜいでみんなが………」 「それほど気にしてないよ!」 「最初はマジでうざかったけどね!!」 「でも二人のおかげでこうしてみんなゆっくりできるよ!!!」 そしてゆっくり達はらんしゃまを一番前にして整列し、りぐると紅里に向かって大きくこうべを垂れた。 「「「「「「「「「「「「「「「どうもありがとう!!!!」」」」」」」」」」」」」 りぐるの目から大きな涙の粒が雨のように溢れ出す。今まで溜めていた苦しみ、悲しみを全て吐き出し、 りぐるは何の迷いもなく目の前のゆっくり達に抱きついていった。 そしてもう一人の当人である紅里はこれほど騒がしいというのにまだ寝ていた。 「紅里さん…………完全に寝ちゃってますね」 「ねぼすけさん!」 とはいってもあれだけの死闘を切り抜けてきたのだ。ゆっくり寝させてあげるくらいの権利は当然あっていいだろう。 稗榎さんは奥の部屋から掛け布団を持ってきて紅里の体に掛けてあげた。 「ふふ、相変わらず年下には健気ね」 「うわっびっくりした」 紅里と布団のスキマから再びD4Cの如くゆかりんが現れた。 ゆかりんは乱れた布団をしっかり直すと稗榎さんの目の前に鎮座する。 「ええと、貴方は『覇王色の少女臭』湯月火村の村長のゆかりんですよね」 「ご名答。まぁ当然よね、貴方は私たちの生みの親なんだから」 胡散臭く微笑みながら少女臭を発するゆかりん。 けれど稗榎さんは少し表情に影を落としてゆかりんを抱えた。 「…………………………私を恨んでないですよね」 「なんで?貴方を恨むのならともかくまずあのりぐるを恨んだ方が話が通るわ、恨んでないけど。」 「いや、この異変はやっぱ私のせい、だと思うんです。あんな物語を作り具現化させて貴方たちを苦しめ………」 稗榎さんが言葉を言い終わる前にゆかりんは扇子で稗榎さんの頬を軽く叩いた。 「貴方に想像を具現化させる力なんて無いでしょうに、責任を感じる必要なんてないのよ」 「……………」 「ほら、そんなしかめっつらしない。それに私たちはむしろ感謝してるのよ、私たちの命を与えてくれたことに対してね」 「命だなんて…………」 「いえ、貴方は私たち全員にやたら緻密な設定と歴史、人格、性癖とありとあらゆる物を与えてくれたわ。 ほんのちょっと小さい悪意で変なことになっちゃったけど今はとてもゆっくりしてる。ありがと」 そう言い残してゆかりんは稗榎さんの指のスキマから何処かに消え去ってしまった。 少し自分の世界が空虚になって稗榎さんは天井を向いて考えた。 そしてほんの少し言い様のない寂しさを覚えた。 「えのちゃん……………」 「?どうしたの?りぐる」 「…………………………………りぐる、もっと強くなるよ!バカにされても挫けないくらいずっとずっと! だから………………………りぐるは旅に出るよ!!」 稗榎さんはそれほど驚いたような顔を見せず、寧ろ笑顔でりぐるを見つめる。そしてりぐるを持ち上げその頬に軽い接吻をした。 「がんばって、私りぐるのこと応援してるから」 「……それじゃ、行ってくるよ!!」 とても誇らしい顔つきでりぐるはそのままゆっくり達をかぎ分けて外に出た。 のれんのスキマからは触角と垂れ下がったポニーテールが垣間見える。そして耳障りな羽音と共にりぐるは森の闇の中へ旅立っていった。 「…………………………これからの物語、頑張ってね」 稗榎さんは机の中に仕舞ってあった原稿用紙を取り出す。 そう、それは悪意に染まってない2話目の原稿用紙。主役が師匠と共に修行のたびに出かけるお話だ。 稗榎さんはそれを一枚だけ残し一気に破り捨て近くのゴミ箱に突っ込んだ。 これからの物語に筋道は必要ない。彼女らは二人だけの新しい物語を歩んでいくのだ。 「元はこんなのだったんだ……………」 翌日の朝、私こと床次紅里は家の外の光景をみて呆れるような感嘆するような思いを抱いた。 あれだけ賑やかだった村も今はただの空き地。あの柵も、家も、賑やかなゆっくり達も今はもういない。 「そう言えばりぐるとでんこは何処行ったの?」 「りぐるは旅だったんだぜ!」 「伝子さんは早朝に出発しちゃいました。なんとも『りぐるちゃんがいなくなっちゃったから帰る』だそうですよ」 まぁでんこらしいっちゃでんこらしい。でもなんとなくあの森をちゃんと抜けられるのか少し気に掛かった、お互い様だが。 「……………………で、稗榎さんはどうするんですか」 「えと、とりあえずここに住むことにします。出口も分からないし」 ここは本当に孤独の世界となるわけか。少し心配になる。 孤独な戦いが辛いのなら、孤独な生活はどれほど辛くなるか予想も出来ない。 「おねーさん!今出ないとメビウスが終わっちゃうよ!」 「あーはいはい。それじゃ稗榎さん。またいつか」 「ええ、それでは」 私は稗榎さんに手を振りれいむとまりさを連れて森の中に入っていった。 ある程度進んでいった時、私たちの目の前を小さい虫が二つ飛び回ってるのが見えた。 「うわっ蜂だ」 「そ、それに、あ、あ、あれも!いるぜ」 いや、一つは確かに蜂だがもう一つは決してアレなんかじゃない。 蛍だ。 「昼間に蛍だなんて珍しい………………」 そしてその虫たちは私たちに付いてこいと言わんばかりにそのまま進んでいく。 私たちは何の考えもなかったけど、その虫たちに妙な確信がありただただその方向へ向かっていった。 「…………………?ひと?」 遠くに人がいるのが見えた。女性と思しきその人は身長は高く髪は紅かった。そして多くのゆっくり達を引き連れている。 あの姿には見覚えがある。稗榎さんが持っていた写真に映っている女性そっくりだ。 「………………………孤独ってものは続かないもんよね」 人は一人では生きていけない。そんな当たり前な事を考えながら私は騒がしい同居人達と一緒に足を進めていった。 【きょうのでんこ】 朝早々と出たのは良いけれどやはり道が分からず伝子は結局迷ってしまった。 歩いてもう三時間、空はこんなに蒼いのに、太陽はこんなに眩しいのに未だに自分が何処にいるかも分からない状況だ。 「も、もう迷うの嫌よ!!…………………そうだ」 『ユックライドゥ!ディエイキ!!』 『ユックライドゥ!りぐるぅ!!』 何か思いついたのか伝子は変身してすぐにりぐるを召喚する。 「さありぐるちゃん!道案内をお願い!」 森なら虫であるりぐるがよく承知してるはずだ。 そう考えて召喚し、そのお願い通りりぐるは辺りを見回す。 「?どうしたの?」 「むしさん来てね!!」 りぐるがそう言うと辺りの草木から何かが蠢いたような気がした。 伝子のこめかみに冷や汗が一筋流れる。 「ま、まさか、虫って」 草が動く音は次第に大きくなっていく。そして草、気、地面からありとあらゆる虫が這い出てきた。 「あ、あ、あ、あ、あああああああああああああああああ!!!!」 伝子は生理的嫌悪感から一目散に逃げようとしたが、既に遅く多種多様の虫に囲まれてしまった。ホラー。 だが伝子は通常なら怯え、立ち尽くすところを!あえてりぐるに突っ込んだ! 「ど、どうせ逃げられないのなら!!最後はゆっくりの胸の中で死ぬぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!」 その雄叫びを最後に、森の中は静かになった。幻惑の森は平和である。 ゆっくらいだーディケイネ18話 ~ゆっくりEND~ NEXT 第19話 ゆっくらいだーディロリス!?(脚本→→かに) ギャレン「この距離なら、バリアははれないな‼」 ライダーネタ多くて楽しかったwww -- 名無しさん (2009-10-10 00 04 56) 名前 コメント
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※注意 捕食種としての表現が少しだけあります。 またスレ内解釈、自分解釈がごっちゃで 存在するのでご了承の上でどうぞ。 目安ジャンルマーク 大筋:シ 内容:家 人物:解説以外ゆっくりオンリー 舞台: 『不思議な絆』 元気よく跳ねる、赤いリボンと髪飾りのゆっくり。 「ぴょんぴょんしながら、きょうもゆっくりすごすよ!!」 このれいむはまだ若いゆっくりだった。 ちび言葉から脱出し、ようやく巣穴堀りや狩りが一人でも行える様になった。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!」 大好物のお花を食べてしあわせ一杯。 飛んだり跳ねたり、蝶を追い、空を眺めて目一杯ゆっくりしていた。 そして大きな木に寄りかかってゆっくりお昼寝。 (もうひとりでもゆっくりできるよ!!!) そんな慢心からだろう。親に何度も日が落ちる前には家に帰ってくるか、 身を隠せる巣穴を掘っておきなさい。そう言われていたにもかかわらずそれを怠ってしまった。 そんなれいむに降り注いだ恐怖。 「ゆっ・・・ぐすん・・・くらいよ!こわいよ!!」 もう日はすっかり落ち、世界は暗黒に包まれていた。 お花を食べてぐっすりお昼寝した結果がこれだった。 本来ならば家族で過ごしていた、このれいむにとってはもう眠りの時間。 いつも皆で寝ている途中に目が覚めたのであれば、暗闇に恐怖することはあっても、 周りの家族の柔らかな感触と温もりが安心をくれる。 だが今は、薄暗い月明かりが僅かに差す森の中でただ一人。 それは相当な恐怖だった。 「こわい!!やだ!!おうちどこ?!!!おうちかえるぅ~!!!」 パニック状態に陥るれいむ。 そして後ろから目を光らせ密かに忍び寄る影。 耳の近くについたコウモリのような羽根に、丸いシルエットが月明かりに浮かぶ。 「う~♪」 それが声とも擬音とも取れる“音”を発してれいむの後姿に襲い掛かった!!! 「ゆぎゅ!!!やだ、やだ!!はなして!!!」 激しく身体を振ってみるも、全然離れる気配は無い。 そんな中で、つい思い出してしまった。 最近こっちに越してきた、ゆっくり達の言うことには 「うー」と喋るれみりゃは夜に他のゆっくりを「たべちゃうぞ~♪」してしまうらしい。 (れみりゃだ!!!やだ、やだ、こんなのにたべられたくない!!! どうせだったらすきなゆっくりか、しんせつなにんげんにたべられたいのに!!!) このままどこかに連れて行かれて食べられるのだろうか? そんな恐怖に、瞳孔を開き、歯をむき出しにして震えるれいむ。 そして、月明かりに微かに映る洞窟の前に 「ゆぎゅ!!」 落された。 そして、 震えるれいむに最も恐れていたことが起きた。 「かぷ♪」 ゆっくりと少しづつ、だが確実に牙がれいむの中まで突き刺ささっていく。 「もっと・・・ゆっくりしたかったよ・・・。」 れいむは痛みと恐怖に怯えながら、きつく目を閉じる。 「ちゅー・・・。うーうーうまうま♪」 少し中身が引っ張られる感触がした後、牙がそっと抜かれた。 (なに?まだこわいことするの?) ただひたすらに怯えるだけしか出来ないれいむ。 ・・・? だが、れいむが思っていたことにはならなかった。 何かは解らず急いで身体を起こす。 多少、餡子が吸われた所為でふら付くが、致命的ではない。 「う~♪う~!!」 にこにこ、と笑っているれみりゃから、 「ゆっっっゆゆゆ!!!」 ズササッ!! と急いで離れ、れみりゃを恐る恐る見るれいむ。 そんな外の慌しさに気付き、パタン、と洞窟の戸を開けて現れるゆっくり達。 「「ゆっ!!!」」 「ゆぅうう!おとーさんっ、おかーさんだっ!!!」 なんという偶然か、そこは両親の巣穴だった。 「ゆ゛ううううう!!!おとーさん、おかーさん!!ごわがっだよう!!!」 れみりゃから逃げ出し駆け寄るれいむを両親が抱きとめつつ、 「あれほどゆっくりしすぎちゃだめっていったでしょ!!!」 と父まりさが怒鳴る。 「よしよし、こわかったね。でもゆっくりはんせいしてね!」 母れいむも、優しげだが、言葉尻に怒りがあった。 なぜ怖い思いをしたのに怒られたのか。れいむは泣きながら?を浮かべるのみだ。 「ゆっ!!!!あぶないよ!!!はやくはなれてね!!」 れみりゃに近づき、れみりゃと見つめ合う両親。 子れいむは両親の行動に涙目で警告するが、 両親、れみりゃ共になんとも緊張感がない。 不思議に思いつつも怯えながらその光景を恐る恐る見守っていた。 「「ゆっくりしていってね!!!」」 「うー♪ゆっくりしていってね!!!」 お決まりの挨拶を交わし子れいむの前、笑顔で頬を擦り合う両親とれみりゃ なんで?子れいむは三者を信じられないと、驚く。 「おぜうさま!!ありがとー!!」 「あとはゆっくりれいむからすってね!!」 「ゆゆ!!それはもんだいはつげん!!まりさのれいむをとっちゃらめぇだよ!!」 「うーうー、ぽんぽんたりないから、もうちょっとちょうだい♪れいむー♪」 とても仲良さげに話している。 あまりにも「わからないよー」な光景にもう涙も止まり、口をポカンと開けたまま?を浮かべていた。 そんな子れいむに気付いた母れいむが優しく話しかける。 「れみりゃはね。れいむちゃんをここにつれてきてくれたんだよ!!」 ?? 「おぜうさまたちはおひさまがしずんだら、すぐにこのあたりをとぶんだよ!」 「そうだよ!!このちかくのれみりゃとふらんは、みんなとゆっくりできるんだよ!!」 「うー♪このうちのこってしってた!!だからたすけた!!うーうー!!れみりゃえらい!!」 「だからおれいにちょっとだけ、さあ、おたべなさい!!」 子れいむは恐怖と先程の吸引で疲労がつのり、もう混乱しかできない。 実は両親は子れいむに話していないことがあった。 もちろん、もう少し成長し、ひとり立ちする時までには話すつもりでは有ったが。 両親が言うことはこうだ。 この近くのれみりゃ種とふらん種は夕方、日が落ちたころからこの辺りを飛ぶ。 その二種は友好的であり他のゆっくりと交友を結んだ。 それで、この子れいむがこの家の子供であることを知っていた為、ここに送りとどけた。 そして代わりに中身をほんの少しだけ吸った。 「「ゆっくりりかいしてね!!」」「うー!!、りかい♪りかい♪」 訳がわからず、混乱していた子れいむがプクっと膨れて腹を立てた。 「ぷくううううううううう!!ぷんぷん!!!どーしてれいむにさきにおしえてくれなかったの!!しってたらこわくなかったのに!!!」 よくはまだ理解してはいなかった子れいむだが、どちらにしろそのことを先に教えてくれてたら 怖い思いはしなくて良かっただろう、と怒り出した。 丁度、時期が時期。多感な時期の子供の思考と理屈である。 「それはね・・・。」 父まりさが目を閉じ厳しい顔で語り始めた。 ~まりさの昔のお話~ この付近のれみりゃ、ふらんは確かに仲が良く、ゆっくりできる存在として共存しているが、 他の地域では違うことの方が多い。それは父まりさが子供の頃から良く知っていることだった。 「ゆっくりしないではやくにげてね!!!」 「うー!!がおー!!たべちゃーうぞー!!」「ちゃーべちゃうじょー!!」「うー!!」 「ゆぎゅ!!!」 「ゆっーーーーーー!!!ちぇん、ちぇえええええええん!!」 「うーうー♪うまい~!!」「「うあうま~!!」」 「わか・・るよ?・・・」 「らんしゃま!!ちぇんはもうだめ!!はやくにげてね!!!」 「ゆ゛っ!」 「きゃははははは!うーうー!!ゆっくりしね!!」「「うー!ゆっくりちね!」」 「むきゅ!!ふらんだよ!!まりさにげてね!!」 「ぱちゅりぃ、ぱちゅりぃぃぃぃぃぃー!!」 「ゆっくりしね!!ゆっくりしね!!!ゆっくりしねっ!!!!ゆ っ く り し ね ッ !!!!!」 ・・・。 こうして追い回され、れみりゃとふらんに自分の友達も食べられたことが有ったからだ。 だが、それは今にして思えば子れいむと同じで、慢心していたのだろう。 夜でも集団でなら怖くない。そうやって皆で夜までゆっくりしていた結果がこれだった。 過去、このような記憶から、昔の父まりさにとって、れみりゃ、ふらん=ゆっくりできない。 ゆえに、この地方に来て、始めの頃は暴言を吐き逃げていた。 「「「ゆっくりしていってね!!!」」」 「「うー♪ゆっくりしていってね♪」」 夕方、日がもう完全に落ちようとする頃。日が暮れてきたとはいえ、 こんな早くにれみりゃとふらんに会うとは思っていなかったためまりさは驚いた。 しかも飛ばずに森の中をふわ、ふわっと浮くように飛び跳ねながら、やって来る。 いや、れみりゃ達にだけじゃない。ここに来て初めてのゆっくりグループ。 ゆっくりありす達がれみりゃ達と仲良く挨拶していることについても、驚きだった。 「ゆっくりしないでね!!みんな!!れみりゃとふらんはゆっくりできないよ!!」 「ゆっくりあやまってね!!ここのれみりゃとふらんはとかいはよ!!!」 「うー・・・。ゆっくりできるもん・・・。」 「おねーたまぁ・・・ふらんわるいことしてないのに・・・。」 「れみりゃとふらんなんてゆっくりしね!!」 ただ、恐ろしい存在だと思っていたから。だから紛らわす為にそんな態度を取り、 後ろでなにかを叫ぶゆっくり達を無視して、逃げた。 それからも夕暮れ時にれみりゃ、ふらんと会う度に同じことを繰り返した。 そしてそれが若き日の父まりさの孤独を招いたのだ。 「あのまりさは、ゆっくりできないまりさだね!!!」 逆に、あのまりさはゆっくり出来ないのだと。 昼間に狩りをしていた時に、そう、れみりゃやふらんでは無い 別のゆっくり達のお喋りが耳に入ってしまった。 「ゆっくりできないのはそっちだよ!!ゆっくりしね!!!」 ・・・皆の前で一人でそんな事をいうことも出来ず、ただ一人頬を膨らまし涙する。 ゆっくりすることも狩りをすることも一人で出来る。 だから皆とゆっくりすることなんて無い。 そう強がった・・・。いや、誤魔化し続けたのだ。 皆がゆっくりし終えて我が家へ帰る黄昏時。 みんなに人気の場所、今日はもう沈んでしまった夕日が良く栄える丘の上。 皆が帰ったことを確認してからようやく一人でゆっくりする若き父まりさ。 「ゆぐっ・・・う゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛えええええええ・・・。 ゆっくり・・・。していってね・・・。ゆっくりしていってね!!!」 誰も居ない、暗がりの丘の上、泣きながら叫ぶ。 「うん!!ゆっくりしていってね!!!」 しかし、その叫びに答えたものが居た。 こうして、心優しく周りの人気者だった母れいむと知り合い なんとか皆との仲を取り持ってもらうことで、ようやくこの地方に馴染み始め れいむに連れられるままに、夜の逢瀬に加わることとなったのだ。 「だいじょうぶ!!れみりゃもふらんもこわくないよ!!!」 「で、でもやっぱりこわいよ・・・。」 れいむに押されながら、皆が集まる夜の川辺へとやって来た。 「ぶーん」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「さあ、ゆっかりんのかれいなうたをきけぇー!!」 「ずっといっしょにゆっくりしようね・・・。」「うん・・・。」 月が輝き、りぐるたちが飛び回る、その後頭部から放つ明かりが、浅い小川に煌く。 暗闇に覆われる森の中で際立つ幻想的な光景。 皆が楽しそうに談笑し、ゆっくりと遊戯し歌い踊る中、恋人達が頬を寄せ合う。ゆっくり達の大人の時間。 「ほら!!ゆっくりおはなししてね!!!」 そこでゆっくりしているれみりゃの元に、れいむが後から体当たりして押した。 「ゆぎゅぎゅ、いたいよれいむ!!・・・ゆっ!!!」 「うー!!ゆっくりしていってね!!!」 「ゆうう!!!!・・・こわいよ!!!やだ、おうちかえる!!!」 「ゆゆ!!まりさ!!れいむといっしょに、れみりゃとゆっくりしようね!!!」 始めのうちは何度もこんな感じでれいむに後押ししてもらっていた。 そしてそれを幾度と無く、繰り返すうちにようやく理解した。 ここのれみりゃ達はとってもゆっくりしていると。 さらには、れみりゃ達との子供を成すゆっくり達がいるのだと。・・・ 「そんなのどうでもいいよ!!」 子れいむの怒鳴り声が夜の森に響く。 「ぷんぷん!!わからないよー!!だね!!ごちゃごちゃいってないではやくおしえてね!!!」 機嫌の悪い顔で吐き捨てる、子れいむ。 話の途中で腰を折られ、父まりさが困った顔で改めて子れいむに言う。 「もし、れみりゃがゆっくりできないれみりゃだったら、おこさまなれいむはもうゆっくりできなくなってたよ!!」 「そんなことないよ!!!ゆっくりしないでさっさとにげるよ!!!」 ぷんぷんと頬を張り、意地を張り続ける。 そんな子れいむを後ろかられみりゃが、がしっ、と掴んで耳元で一言 「う~♪たーべちゃうぞー♪」 「ゆっ!!!!!!!!!」 捕まった時の恐怖を思い出し震える子れいむ。 「それに、きこえるよ。おおかみさんがわおーんってなくのが。 こんなおそくまでゆっくりしてたこと、もっとゆっくりはんせいしてね。」 そこに母れいむが一押し。 ワオーン・・・。確かに気付けば時折、狼の鳴き声が聞こえてくる。 「ゆぅぅ・・・。」 すっかり震え上がって萎縮してしまう子れいむ。 狼さんは捕まればゆっくり出来なくされるこわいこわい動物。 これは小さい頃からしっかり聞かされていたし、 明け方にお家の近くで狼さんに引き裂かれたゆっくりの姿を何度か見たこともあった。 それになにより、あの遠吠えが単純に怖い。 すっかり震え上がり、縮こまった子れいむとれみりゃに両親が言う。 「「れみりゃもいっしょにうちにはいってゆっくりしてね!!!」」 戸を開け、皆で巣穴の中へ。 まだ小さなちびゆっくりたちの眠る部屋の隣、親のゆっくりルームへ戸を開けて入っていった。 「ぐすん・・・!!」 「「こわくない。こわくない。」」 親子は、相変わらず怖がって震える子れいむをなだめ、 また溢れて来た涙を母れいむがそっと舌で拭いながらゆっくりと部屋に入る。 後に続いたれみりゃは、ちびが寝てることを父に諭されながら部屋に入った。 「うーうーおなかすいたー」 部屋に入るや否や、そんなれみりゃの一言に母れいむは近づいて。 「それじゃおかーさんからすこしだけ、さあ、おたべなさい!!」 「う~!いただきまーす♪かぷちゅー♪」 そうやって、母れいむは威張った態度のまま少し頬をそめ、れみりゃに吸われていた。 「うう~♪うまうま~♪」 吸い終え喜ぶれみりゃに微笑みかける母れいむ。 その光景の横で怯える子れいむに、頬を寄せ身体を密着させる父まりさ。 震え、冷えた子れいむの身体を温めながら、再び父まりさの説明が始まった。 「おぜうさまたちは、ほんとはまりさたちをたべなくてもいいんだよ。 あまあまでうまうまだったら、しあわせ~だって。」 そう語る父の前で少しションボリしながられみりゃが言う。 「うー、ほんとはぷでぃんたべたいぃ・・・。」 「ぷでぃんがわからないよ・・・。ごめんね。」 母とれみりゃが、そういうやり取りをする横で父は先を続ける。 「おそらのくもがいっぱいでくらいときや、よるになると、たかいところにあるきのみをとってためるんだって おとーさん、おかーさんも、おとしてもらったのをむしゃむしゃしたことがあるけど、とってもあまあま。」 「うー、おいかけっこしてたべちゃうぞーするより、らくにうまうまうー♪ ぽんぽんいっぱいになったらう~う~うあうあ♪だぞー!」 「れみりゃとふらんはからだがなくても、おどるのとってもじょうず!またみんなでうたっておどろうね!!」 思い出して少し興奮したのか笑顔で少し大きな声を出してしまった、母れいむ。 父れいむが「あかちゃんがおきちゃうからしずかにしてね。」と静かに言うと赤くなってうつむいてしまった。 れみりゃが話を続ける。 「うー、みんなれみりゃのことこわいっていうけど、よるのおそらはもっとこわいんだぞー」 少しプンプン顔になりながら言うれみりゃ。そんな仕草も怖かったのかまた子れいむが涙を貯める。 「よしよし、なかないでね。」 涙をまた舌で拭いながられみりゃに先を促す父。 「ううっー・・・。とりさんこわい。だずげでほじぐでも゛・・・うぇえええええええええ!!」 今度はれみりゃが泣き出し、母れいむが優しく頬で頬を撫でる。 泣きながら喋るれみりゃの言うことは、こういうことだった。 夜の空は危険。 とくにゆっくりを探してあんまり長く空を飛んでいると、空飛ぶゆっくりにとって天敵になるフクロウ等に逆に狩られる事が少なくない。 れみりゃ、ふらんは下降時の瞬間速度では負けないが、のんびり地面を見ながら獲物を探している時に、夜目の効く鳥にでも見つかれば終りだ。 とくに、れみりゃは中がひき肉だから天敵の鳥に会うと再生力も強いため、それはもう、悲惨だった。 「うっうっ・・・。だがら、ううん、ほんどはまえっがら、ざぐやとぶらんいがいどもながよぐじだがっだ・・・。」 「だいじょうぶ、いまはみんなでゆっくりできるよ!」 母れいむが抱きつくように、れみりゃに擦り寄る。 父まりさはその姿に少し、ぱるすぃが言うところの“嫉妬り”をしていた。 子れいむはれみりゃのそんな姿を意外そうに見ているのみだ。 母れいむの行為に安心したのかれみりゃは更に続けて言う。 「・・・れみりゃも、たべちゃうぞ~よりゆっくりしたい。むかーしにみんなでいっぱいはなしあったんだぞ~。 ふらんにいっぱいしねされてうーだったこともあったけど、いまはふらんもみんなとゆっくりするのがたのしいっていってた。」 だけど、やっぱりみんなのゆっくりをたべちゃうぞ~っしたいってこもでてきた。それで・・・。」 「よるやおうちのちかくでこまってるゆっくりをさがして、そのおれいにすこしだけなかみをちゅ~するの」 そこまでれみりゃが言うと後は両親も加わって語りだした。 ~昔の話~ 長い間、この地方に移り住んだれみりゃとふらんは当然のように、他のゆっくり達を襲い食料にしてきた。 (れみりゃはふらんに襲われることも有ったし、集団のゆっくりに少数で向かって返り討ちになったことも有ったが) しかし、ここには天敵となる鳥の種が多く、格好のカモにされ勢力を伸ばせないでいたのだ。 さらに何より深刻だったのは、身体付、頭のみ関わらずさくや種が近くに居ないことによるコミュニケーションの不足だった。 なんと時には成体で身体が付いたにも関わらず、うーとしかいえないものが出て来てしまった。 それに危機感を覚えた。・・・いや。それ以上に純粋に寂しかったのだろう。 れみりゃ達は地に降り立ち、自分達に敵意が無いことを示したのだが、迫害を受けた。 当たり前といえば当たり前。子供を食べられた親もいたし、つがいを食べられた者だって居たのだ。 こうして滅んでいくかに見えたれみりゃ達だったが、高い木になる実が自分たちにあった甘いものだったのが幸いした。 受け入れられず、鳥の餌に成り果て、同じく滅びかけたふらん達に八つ当たりされながらも、それでも実を食し生きながらえた。 そんなある時。ある満月の綺麗な夜。 あるれみりゃが、瀕死で道端にいた子ゆっくりを助けてあの川辺に運んだ。そう、父の話に出た逢瀬の川辺だ。 はじめは、助けたれみりゃがやったのだろうと疑われた。何事かと集まったゆっくり達皆に責められるれみりゃ。 森の中で他のゆっくりと仲良くしたいと思って川辺を隠れ見ていた大勢のふらん、れみりゃ達も何事かとそれを覗いていた。 それからすぐに治療の為、薬草で包まれた子ゆっくりがなんとか意識を取り戻し、言った言葉に、長年この地方を治めていた老ぱちゅりーが 何より戦慄して、川辺にいた、または近くに住んでいた皆を集め発した。 狼だ、狼が来る。そしたら、皆ゆっくりできぬ。 まだ狼が少なく、れみりゃとふらんに勝利したという自覚から夜を無防備に出ていたゆっくり達に衝撃が走った。 そう、知らず間に居なくなったゆっくり達が、れみりゃ達ではなく、狼達に格好の餌とされていたと言う事だ。 当然、狼を知らぬものは多かったが、この地方は色々な場所から来たゆっくり達が居たため、その恐怖は伝えられた。 いや、伝わった時にはもう遅かった。れみりゃ達が隠れている森から、川辺を挟んで反対側の森。 つまり他のゆっくりたちが住む方から、怪しく輝く複数の目。狼の群れが一斉に飛び掛って来た。 今宵は満月。宴の日。 それはもう凄惨な光景だった。飛び掛ってくる幾千幾万は居ようかと感じる狼達。 逃げる間もなく大勢のゆっくり達が食われ、口に合わないゆっくりは動き悲鳴を上げるもの、つまり敵対者として引き裂かれたという。 だが、そんな中、れみりゃ達とふらん達は必死に皆を木の上に上げた。特に赤ちゃんは最優先で助ける。 組み敷かれ、歯を入れられたゆっくりも救おうとはしたが、大抵返り討ちにされた。 木に体当たりし、振り落とそうとする狼もいる。だが必死で皆、木に歯を立て食らい付き耐え、その夜を木の上で過ごしたのだ。 朝、ようやく静まった頃。 何とか生き延びた皆を、騒ぎで亡くなった老ぱちゅりーの子である、時期リーダー候補だった若ぱちゅりーがまとめて言った。 これからは協力して皆でゆっくりしようではないか。皆を救った最大の貢献者たるれみりゃ、ふらん達と共に。 誰も異論は無かった。なにより、全滅を免れることができたのはこの二種のお陰だと、皆が口々に言う。 皆で木陰が濃いれみりゃ達の森へとお礼の果実や、蜜を持っていった。そして、交流が始まったのだ。 だがやはり、文化の違い、いや、性質の違いが有った為、長い時間をかけて話し合うこととなった。 中身は吸いたい。いや、それでは死んでしまう。皆と一緒に居なければれみりゃもふらんも滅びる。 それもあるし何より皆とゆっくりしたい。だけど流石に命はあげられない。 長々とその話し合いが続く内に、あの時の、狼達が来た時の出来事を思いだしたゆっくりの内の誰かが言った。 じゃあ困ったことがあったり、遠くに連れて行ってもらうとき、手を貸してくれるなら、交換で少しだけならお食べなさい。 もともとれみりゃ、ふらん共に少食だ。少し無理して相手が動けなくなるまで自分で吸う、 そして一緒に狩りに来た集団で分け合ったり、持っていった先で家族等、グループ皆で分け合う。それが、この二種の狩りだった。 それより何より此処に来て、木になる甘い実を取ることが安全と気付いた、今のれみりゃ達、ふらん達にとっては 本当に一部の者達の我侭でしかなかったのだ。 他のゆっくり達も、皆を助け、ゆっくりできるれみりゃとふらんならば食べられても良い。 そう言い出した。 後は、特に異論が出ないで、何かれみりゃ達に頼めんだり、助けてもらうことがあれば、その代わりに少し吸う。その関係が出来た。 それからは他のゆっくり達によく、木の実を取ってきて、とせがまれる事となったのでおやつとして吸うには多いぐらいだった。 こうして特定の夜。れみりゃ、ふらん達とあの川辺を中心にして遊び、ともにゆっくりし、 何か困ったことがあれば夜、もしくはれみりゃ達側の森の中の木陰の濃い場所ならば日中でも 飛行能力を生かして助ける。と言った、今の関係ができたのだ。 だが、この関係に慢心した若いゆっくり達の世代が回って来た。 狼が現れてもれみりゃ達が助けてくれる、だから夜もゆっくりする。 助けられないなら、れみりゃ達が悪い。責任転嫁をして毎日夜もゆっくりする者が出て来てしまった。 一時期、決められた夜以外に外に出ないようにし、戸締りを厳重にすることで、 狼達の目を背けていたにもかかわらずその行為によって、また狼達がやって来る事となってしまったのだ。 それから考えられたのは、本当に苦肉の策だった。 赤ちゃんや小さい子ゆっくりと居る時は絶対に夕方までに家に連れ帰り、日が暮れたらすぐに寝付かせる。 ある程度大きくなった子には時期が来るまで絶対に夜は家に帰ってくるか、外でも自分用の巣穴を用意しなさい。 とだけ言い、れみりゃ達との関係をばらさない様にしたのだ。 なにより、噂で子ゆっくり達に日が落ちるとれみりゃ達はゆっくりをたべちゃうぞする。 それを言えば狼の名を出すより、ここは色々な地方から集まってくるだけに一番恐怖が伝わりやすかった。 ゆえにれみりゃの住む川辺の向こうの森に行こうとする子ゆっくりや夕方過ぎまで ゆっくりする子ゆっくりは徐々に少なくなったのだ。 そう、全ては皆がゆっくりする為。だから、子れいむには今まで話さなかったのだ。 ようやく話し終えた両親とれみりゃを見て 「ゆっくりわかったよ・・・ごめんなさい。」 子れいむは素直に謝った。 「でも、たすけられたこどもやわるいゆっくりがみんなにおはなししたらどうなるの?」 答える両親。 「おぜうさまのこと、こわかったよね?」 「うん。こわかったよ・・・。」 「たすけたときにすわれるから、みんなびっくりしてぶるぶる。」 「もし、れみりゃたちがよる、こどもにちかづいてもみんなさきにこわがって、にげちゃう。うー・・・。」 そういうれみりゃの表情はどこか悲しげだった。 「じゃあ、なんでれいむにはおはなししてくれたの?」 話し疲れたのか、いや、子が夜になっても帰ってこなかったことに対する心労もあったのだろう。 眠そうにうつらうつらとしながら父まりさ、母れいむが答える。 「「もうすぐ、おとなのゆっくりだからだよ。」」 れみりゃが連れてくるまで両親は帰りの遅い子れいむを待ちかね、入り口前でうろうろしながら待っていた。 洞窟の前に落されたことに気付いてなお、両親が出て行ったのは話す気があったからだ。 そう、もうすぐ一人前のゆっくりだから。 今日に限らず一日経って、もし、ちゃんとれみりゃ達にも狼にも見つからずにうまくゆっくりしていたのなら ふと、子が我が巣穴に戻ってきた時に一人前のゆっくりとして夜の川辺に連れて行き、そして一人立ちさせても良い。 そう思っていた。もちろん心配はあるがそういうのも親の役目、と両親は微笑んだ。 母れいむが、優しく言う。 「でも、みつかっちゃったからとうぶんまだこどもだね。」 「ゆぅ・・・。」 うつむく子れいむ 「でもだいじょーぶ、こんどのよるいっしょにいこうね。」 父まりさも優しく楽しげに言う。 「うー!こどもれいむもこれからおともだち♪うーっうー!!」 れみりゃは新しい友達が出来たと喜んだ。 抱きつくれみりゃは子れいむにはまだちょっと怖くはあったものの、先程までとは違い確かな暖かさを感じ そして同時にうつむいた顔を上げて、先程とは違う涙を、しあわせ顔でながすのだった。 親は子に伝え、子がまた、それを伝えていく。れみりゃ達にとっては優しくも少し残酷な絆のお話。 親はすっかり眠ってしまい、夢中で子れいむがれみりゃと話続ける内に、覗き穴から見える光景が明るくなったことに気付いて、慌ててれみりゃは帰っていった。 「もうちょっとゆっくりしていけばいいのに。でもあかちゃんのためでもあるんだね。これからおおきくなるあかちゃんのためでも。」 朝焼けの中。子れいむはれみりゃと昔作られた絆をゆっくりと理解し、同時に、まだまだ色々知ってよりゆっくりしたい、ゆっくりさせたい。そう心から思うのだった。 完 ※言い訳という名のあとがき ここまで読んでくださり、どうもありがとうございます。 えーと、ゆっくり書いた結果がこれだよ!! この文の初めの方はスレ6の初めの方でれみりゃの話が出たときに考えた即興文でした。 本来、このお話はれみりゃがれいむを助けて餡子を吸うのを解説するパターンの文だったんですが、 話がいろいろ膨らんでしまい、長文になり、こんなに時間がかかることに・・・。 あと、~昔の話~。 この部分結局ああいう形にしてしまったんですが。 実はこの話しを考えていく内に、一つのお話にしてしまいたいと思い、目下派生した一つのお話として考えてます。 それでは、今回も読者様方のイメージの手助けになれば幸いです。 即興の人 ちょっと切ない感じがいいなぁ -- 名無しさん (2008-10-06 20 05 05) 名前 コメント