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魔法少女リリカルなのはA s -NOCTURNE- クロス元:真・女神転生Ⅲ -NOCTURNE- プロローグ 第1話『かくて、少女は狩人と出会う。(前編)』 TOPページへ このページの先頭へ
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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~次元を越えたニュータイプ~ クロス元:機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 最終更新:08/07/27 プロローグ 第01話 第02話 第03話 第04話 第05話 拍手感想 TOPページへ このページの先頭へ
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魔法少女リリカルなのはStrikers×ジョジョの奇妙な冒険part4 ストライカーは諦めない クロス元:ジョジョの奇妙な冒険 最終更新:08/02/19 第一話 第二話 TOPページへ このページの先頭へ
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タカタカタ、タカタカター♪ 家族の帰りを心配するはやての為に、コンビニに行くついでに探してくると慣れない優しさで 外出した黒龍。 だが、その途中怪しい気配を放つ結界を見つけた。シグナム達の気配を感じ取りその結界に 突入するがその途中妖しい集団が襲ってくる。一瞬で打ち倒しビルに駆け上がった瞬間彼の目に 武器を突きつけられたシャマルの姿が在った。 そのシャマルの窮地に、自らの心を抑えきれなくなった黒龍は拳を振るいクロノを吹き飛ばす。 そしてクロノに向かい、龍の怒号の如き怒りの宣告をする黒龍であった。 戦いの場に黒き龍が舞い戻った瞬間であった。 情に目覚めし黒き龍第3話「聖衣装着、復活の暗黒聖闘士」 「こ……黒龍?」 呆然と、黒龍に向かって私は呟いた。 ありえない場所で、ありえない事が起きている。 管理局の執務官に後ろを捕らえられた私を救ったのは、ここに居てはいけないはずの黒竜。 彼は一体何をしたの? 魔力を持たない彼が、誰にも気づかれる事無くこの場に居るなんて不可能なのに。 その思いが表情に出たのだろうか、黒龍が振り向いた。 「シャマル、今は何も聞かない。その前にやらなければいけない事があるからな」 そう言うと彼は、何も無い空間に視線を合わせた。 何時の間にか拳が横にかざされている。そして、凄まじい音と共に何かが弾き飛ばされて壁に激突した。 「こそこそと隠れてる羽虫が。気配を隠そうとするのなら、完全に闇と同化するぐらいしてみせろ」 激突音がする方を見ると、そこには仮面をつけた男が壁にめり込んでいた。 私が……、サポートを得意とする私が全く気がつかなかった相手を見つけ出すなんて、本当に黒龍に魔力は無いのだろうか。 私が心の中で考えてる間に、仮面の男は早々と転移していく。私達が抜け出せない結界内で転移するほどの相手に 有無を言わさない一撃、黒龍は一体どういう存在なの? 「シャマル避けろ!」 更なる思考の淵に沈もうとする私に、黒龍が警告を告げる。 慌てて横に飛ぶと、立っていた場所を通りすぎる砲撃魔法。 危なかった、全くの無防備状態であのクラスの砲撃に当たっていたらそれでアウトだった。 危うく回避した私の前に、守るように立つ黒龍。振り向きもせず、私に言葉をかける。 「シャマル……、確かアイスは抹茶が好みだったな」 そうそう、私はあの抹茶の渋味が良いのよねって、この緊迫した雰囲気の中突然言われてしまい思わず乗りかけて しまう。 「アイスを買いに行くという名目で出て来たのでな、一応確認という事だ」 そう言った瞬間私は気づかないうちに黒龍に抱きかかえられ、隣のビルの屋上に移動していた。 「シャマル、この小僧は私が相手をしよう、下がっていてくれ」 「無茶言わないの、空を飛ぶ相手にどう戦うの? さっきみたいに行かないわよ」 そうだ、黒龍は肉体的には凄いのかもしれないが魔法は全く使えない。上空から遠距離攻撃されれば それだけで終わってしまうのだ。 だが、そんな私の不安を吹き飛ばすように黒龍は優しく微笑んだのだ。 「何、私にはシャマル達のような魔力はないが、それを補う物がある」 そう言うと、先ほどの執務官の方を向き戦意を張り巡らせ告げるのであった。 「小僧、お前は知るだろう。人に知られずに存在した伝説の存在を」 同時刻、八神家 「はぁ~、黒龍はもうすぐ帰ってくると思うけど……一人はいややなぁ」 はやては一人になってしまったリビングで頬杖をつきながら帰りを待っていた。 「うぅ、アカン少し冷えてしまったわ、トイレ、トイレ」 体が冷えたのか、トイレに向かおうと黒竜の部屋を通りすぎようとしたとき、扉の隙間から漏れる黒い光。 「なんや? ひょっとして泥棒なんか」 心配になったはやてが、意を決して扉を開け覗きこんだ瞬間黒い閃光がはやての目を眩ませた。 「ちょ、ちょう何が起こったんや!」 驚いたはやてが眩しさから立ち直り、目にしたのは触っても開ける所がなかった黒龍の箱が開かれていたのと 粉々になっている窓ガラスであった。 「あ、……ちょい漏れてもうた」 どうやら、刺激が少々強かったらしい。 結界内に満ちる強烈な何か、その何かを感じ取り戦っていたシグナム達も一斉に黒龍が立っているビルに目を向ける そこには一切の星が無い、闇空を塗り固めたような光沢が無い漆黒の竜のオブジェが浮んでいた。 黒龍はコートを脱ぎ捨てると、驚いているシャマルに投げ渡す。 慌てて受け取るシャマルに苦笑いすると、真面目な表情に戻り告げた。 「直ぐに片がつく、少しの間持っていてくれ」 意を決し、黒龍は天に届けとばかりに叫ぶ。 「聖衣(クロス)よ!」 黒龍が叫ぶと同時に、無数のパーツに分解し変形展開され聖衣は黒龍に降り注ぐ。 レフトニー! ライトニー! 動きを重視するように、両膝のみをガードする膝当て。 バックル! 模様と彫刻が施されたバックル。 レフトアーム! ライトアーム! 台座が縮小し盾となり装着された左腕と、シンプルな手甲の左右非対称の両腕。 チェスト! ブレスト! ショルダー! 重厚な厚みを感じさせる両肩と、それに飾られる龍の腕。 ヘッドギア! 首が二つに分かれバンドが伸び、分かれた首が耳当てに変化する。 次々と装着されていくのを誰も彼もが、ただ黙ってみている事しか出来なかった。 一つ、一つ装着されていく度に、高まる何かに心が恐れを抱いたのだ。 「此処にドラゴンの暗黒聖衣(ブラッククロス)装着完了」 漆黒の長髪が、体から発せられる小宇宙(コスモ)によってうねり荒れ狂う。 「時間がない、さっさと片付けさせてもらおうか」 構えを取ると、クロノに向かって不敵に微笑み、そして黒龍はクロノに突撃した。 次の瞬間、周りの人間が見たものは間合いを零にした黒龍の拳とクロノが張ったシールドが火花を散らす 光景であった。 「ほう、この程度のスピードには対応できるか、先ほどの集団とは少しは違うようだな」 「お前か、武装隊を倒したというのか!」 余裕の表情で僅かばかりの賛辞を告げる黒龍と違い、クロノは搾り出すような声で答える。 (早い、フェイト以上の速度で動いてくるなんて反則も良い所だ) 次の対応を考えるために、シールドをバーストさせる用意をしていたクロノの考えを読んだかのように黒龍は反動を利用して 屋上に着地する。 この行動に、一つの疑問を感じたクロノは念話を使いアースラと連絡を取る。 (エイミィ、あの男から魔力は感じられたか?) その問いに、エイミィは信じられないという風に声を震わせながら答えた。 (……冗談じゃないから真面目に聞いてね、一切の魔力を感じないのよあの動きにもあの鎧にも) この返事に、疑問は確信に変わる。 (どうやら向こうは魔力を持たないか、もしくは著しく低く空を飛べないようだ。どんなに早くてもそれならやり方なんて幾らでもある!) 急上昇し、間合いを広げるクロノ、そして屋上にいる黒龍に向かって己の最大の攻撃を叩きつけた。 「いくぞ! スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!!」 無数の光り輝く剣が、黒竜に唸りを上げ豪雨の如く降り注ぐ。 「黒龍!」 シャマルの悲痛な叫びが上がるなか、シグナム達も動こうとするがそれはなのは達によって阻まれていた。 その衝撃による粉塵が舞う中、クロノは構えを解かなかった。 (あの男のスピードならある程度は回避されたはず、だがかなりのダメージは確実に与えたはずだ) 煙の向こうにいるはずの黒龍の姿を捕らえんと、目を凝らし意識を集中する。 (煙が晴れて向こうの姿が見えた瞬間、ブレイズキャノンで王手だ) しかし、クロノの予想は大いに外れる事になる、なぜならば 「威力は高いが、悲しいかな遅すぎる」 黒龍は既に、クロノの遥か頭上に跳躍していたのだ! 「バカな、あの一瞬に頭上に移動だなんて」 驚愕するクロノに対し、黒龍は空気を蹴り急速落下の勢いのまま踵を振り下ろした。 「おまえ達の常識で、聖闘士(セイント)を測かろうとするのが間違っているのだ!」 重い一撃がクロノを打ち据える、凄まじい衝撃がBJを貫いて脳を勢い良くゆらす。 勢い良く揺らされた為に、意識を失いかけ地面に落下しかけるがあわやという瞬間に辛うじて意識を取り戻し 急制動かける、そして踵落としの勢いのままこちらを追撃する黒龍に反撃のスティンガースナイプを打ち放ち自 らもS2Uを構え急上昇を開始した。 「オォオオオオオ!」 らしくない雄たけびをあげ全速力で突撃するクロノ、それに対し黒龍は、左手の盾でスティンガースナイプを打ち払うと 人を指差すような奇妙な構えを取って迎え撃つ。 (くそ、魔力を感じないからって甘く見すぎた、遠距離がダメなら近づいて直接魔法を叩き込む!) 唸りを上げて黒龍の指とクロノのS2Uが激突する、クロノはこの瞬間に己の全てを篭めたブレイクインパルスを 発動させた。 空中で静止する両者、周りが固唾を飲み決着を見守るそして…… 黒龍の指とぶつかり合っていたS2Uが、澄んだ音を発て砕け散り全身から血を噴出しながらクロノは崩れ落ちた。 地面に顔面から落下するクロノ、ビクビクと体が痙攣し、地面には血溜まりを作り上げる。 その状況に、悲鳴を上げ近づこうとするなのは達であったが、それを止めるかのように着地した黒龍がクロノの 頭に足を添える。その行動に動きを止めるなのは達、動きが止ったことを確認すると黒龍はこの場にいる全員に聞こえる ように残酷な言葉を放つ。 「この結界を解いてもらおうか、解かないというのならばこの小僧の頭を砕く」 それを証明するかのように、冷たい眼差しをクロノに向け黒龍は足に僅かに力を篭めた。 [[戻る 情に目覚めし黒き龍2話]] [[目次へ 情に目覚めし黒き龍氏]] [[次へ 情に目覚めし黒き龍4話]]
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魔法少女リリカルなのはBR Stage02 心の力を極めし者 ◆19OIuwPQTE /04「オーバードライブ・ブラスター」 迫り来る一撃を寸でのところで回避し、即座にゼロ距離から砲撃を撃ちこむ。 ダメージの確認をする間もなく即座に離脱する。 直後、先ほどまでいた空間を剣が切り裂く。 そこに再び砲撃を撃ちこむが、今度は盾に防がれてしまう。 「しつこいなあ、さっさと死んでよ」 「ッ――――!」 土煙の中から振るわれた一撃を上体を逸らして躱し、 そこに撃ちこんだ砲撃の慣性で距離を取る。 息が上がる。 背中は冷や汗でぐっしょりだ。 体力よりも精神の消耗が激しい。 レイジングハートを持つ力が覚束なくなる。 対するキングは、まだ疲れた様子も見せていなかった。 間違いなくダメージはある。 だが、それ以上に相手の回復力が高いのだ。 「レイジングハート、まだ行ける?」 『もちろんです。ですが切りがありません』 「そうだね。生物である以上、頭か心臓を潰せば倒せるはずだけど。 相手もそれは理解しているからね。そこだけは絶対に守ってる」 状況は非常に厳しい。 何度か直撃させた砲撃は、確かにキングにダメージを与えている。 だがそれ以上にキングの再生が速い。 再生にもいつか限界が来るはずだが、このままではこちらの限界が先に来る。 「どうにかして盾を破壊するしか、無いかな」 『ですが、それは容易ではありません。 あの盾の破壊には、おそらくスターライトブレイカー級の威力が必要でしょ う。ですが』 「そんな余裕。簡単には与えてくれないよね」 先ほどの交戦でもそうだった。 あの盾は複数同時に出現する事も可能らしく、シューターによる同時攻撃も防 がれていた。 それではブラスターユニットによる支援は期待できない。 さらにどれ程強固にバインドを掛けても、キングはそれをすぐに破ってしまう。 制限から解放されたカテゴリーキングが相手では、せいぜい数秒程度の拘束し か出来ない。 通常のバスターでもぎりぎりなのだ。 その程度の時間では、キングを相手にスターライトブレイカーを使う暇はない。 「けど、このままじゃどうしようも―――」 「考え事は終わった?」 「――ッ! しまった!!」 突如飛来したエネルギー弾を回避する。 少し考えに没頭しすぎた。 そしてその隙は致命的だった。 こちらの行動を先読みしたのだろう。 回避した先にキングが現れる。 (回避……だめ! 間に合わな―――!!) 「バイバイ、最強の魔導師さん」 振り下ろされた剣が地面を砕き、その衝撃で土煙が舞う。 この一撃には、どんな相手だって耐えられないだろう。 ましてやなのはは防御すら出来なかったのだ。 生きている筈がない。 だというのに。 「………………。 つまんないなあ、また邪魔が入ったよ」 土煙が晴れる。 そこには、ある筈の高町なのはの死体は無かった。 「なのはは僕が守る。絶対に死なせない!」 「ユーノくん?」 声のした方向を向けば、そこに高町なのははいた。 ユーノ・スクライアに抱かれるような形で。 「ユーノさん……なのはママ、苦しい」 「あ、ごめんねヴィヴィオ」 「ごめんヴィヴィオ。もう少しだけ我慢して」 間にヴィヴィオを挟んでいたが。 「邪魔しないでくれるかなあ」 「そんな訳にはいかないよ。 なのはは絶対に殺させない」 そんなことはお構いなしに、キングは苛立ちを見せ始める。 対するユーノも、堂々とキングに言い返す。 「もうウザいんだってば!」 その事に更なる苛立ちを募らせたキングが、ユーノに向かってエネルギー弾を 放つ。 だが、それがユーノに届くころには、ユーノ達は姿を消していた。 「ああもう! イライラする!!」 その事に切れたキングは、なのは達を探すついでに周囲に当たり散らし始めた。 そこから僅かに離れた位置で、ユーノはなのは達を下ろすと座り込んだ。 「大丈夫? ユーノ君」 「少し、無茶をし過ぎたかな」 『ご苦労様です』 その手にはバルディッシュが握られ、ヴィヴィオが見つけた足にはマッハキャ リバーが装備されていた。 あの一瞬ユーノは、マッハキャリバーによる加速と、バルディッシュのソニッ クムーブを併用する事によって、辛うじてなのはを助ける事に成功したのだ。 だが、元より戦闘向きでないユーノが人二人を抱えて行うには、大きな負担と なったのだ。 「でも、ありがとうユーノ君。おかげで助かったよ」 「どういたしまして。 でもそれよりなのは、伝えなきゃならない事がある」 感謝もそこそこに、なのははユーノの真剣な表情に気を引き締める。 「キングと金居が手を組んだ」 「……ッ! ユーノ君たちは大丈夫だったの?」 「なんとかね。でも、おかげで魔法陣の場所がわかった」 なのははその事に、僅かに安堵する。 会場の振動はどんどん強まっている。 この分では、いつ崩壊が始まるか判った物ではない。 「それでなのは。君はこれからどうする。 敵はキングと金居だけじゃない。まだスカリエッティ達が残っている筈だ。 それに残り時間も少ない。 生き残る事を優先するなら、今すぐ魔法陣へ向かった方がいい。 それだけは言っておくよ」 その言葉に、なのはは少し思案する。 強大な敵。見つかった脱出への糸口。 自分のするべき事。護りたいモノ。 そして。 「ここで……。ここでキング達を倒す」 それがなのはの出した答えだった。 「今ここで脱出しても、キング達は会場の崩落と一緒に死ぬかもしれない。 けど、もし何らかの形で助かったとしたら、きっとまた同じことを繰り返す。 そんな事、私は絶対許せないから」 「……わかった。それなら、出来る限り僕もなのはを手伝うよ。 まず、今わかってるキングの情報を、出来るだけ詳しく教えて」 それを聞いたユーノは頷き、キングの情報を求めた。 それに応じてなのはも、自分が知る限りの情報を伝える。 「ユーノ君、何か思いついた?」 「……二つ、思いついたよ。 でも、一つはほとんど確証がなくて、もう一つはとても危険な手段だ。 ハッキリ言って、命にかかわる」 そう言うとユーノはなのはの顔を見つめる。 そしてふうと、諦めたように溜息をついた。 「でも、なのははやるんだろ?」 「さすがユーノ君。私の事、良く知ってるね。」 「そうだね。だからこれだけは言っておくよ。 やるなら全力全開、手加減なしで。 そして、絶対に生きて戻ってきて」 その言葉に、なのはは笑顔で頷いて言った。 「当然!」 『まったくです』 その頃キングは八つ当たりにも飽き、そろそろ本格的になのは達を探そうとし 始めていた。 その時だった。 突如として足元に出現した魔法陣から、緑色に光る鎖が無数に出現し、次々と キングを拘束したのだ。 「鬱陶しいなあ」 だがそんなモノ、彼にはさしたる意味はなく、キングは鎖を次々と引き千切ら れていく。 だが全ての鎖が千切れる寸前、再び何重にも鎖が絡みついてきた。 「このっ!」 キングは全身に力をいれ、鎖と引き千切っていくが、その度に新たな鎖が絡み つく。 その鎖はユーノが作りだしたモノだった。 彼はシルバーケープで姿を隠し、物陰からチェーンバインドを行使しているの だ。 「絶対に、離さない!」 どれだけ引き千切ろうとも出現し、何度も彼を拘束しようとする鎖に、流石の キングも身動きが取れなかった。 そこにはユーノの決意があった。 決してキングを逃がすまいとする意志が。 そのころ、キングからは百メートル程離れた場所になのははいた。 彼女は現在、レイジングハートとマッハキャリバーの二機を装備している。 更には近くにヴィヴィオが控え、彼女もケリュケイオンを装備している。 ユーノの考えた二つの策。 その内の一つ目は、キングの剣を奪い、それを使って攻撃するという事。 キングの剣による攻撃の時に盾のオートガードがないのは、攻撃の邪魔になる からか、自分の攻撃によって盾を壊しかねないからではないか、という考えか らだ。 この策の欠点は三つ。 一つ。 ガードがない理由が前者だった場合、剣では盾を破壊できない可能性がある。 二つ。 たとえ後者が理由だったとしても、キングが剣をいくつでも作り出せるのなら、 なのはは慣れない剣での戦いを強いられてしまう。 三つ。 キングの破壊力が剣ではなく、キング自身の力によるものだった場合、そもそ もこの策は成立しないという事だ。 これらの不安材料から、なのははもう一つの策を選択した。 即ち、限界まで強化・加速させた、直接攻撃による盾の破壊だ。 なのはの攻撃でキングの盾を破壊できない最大の理由は、砲撃魔法は基本、面 での攻撃であり、威力が拡散しやすい事にある。 故にその逆。力を一点に集束させた、ストライクフレームによる攻撃ならば、 もしかしたら通るのではと考えたのだ。 かつてなのはが、闇の書の意志の障壁を貫いた時の様に。 「みんな、準備はいい?」 『いつでもいけます』 『どうぞご命令を』 「お仕事がんばりまーす」 返ってきた返答にくすりと笑い、すぐに顔を引き締める。 ここから先は決死行。僅かなミスで、即死に繋がる。 だがその顔に、躊躇いはない。 「レイジングハート、マッハキャリバー」 『All right, Strike Flame.』 『Gear Exelion, Drive ignition.』 「ヴィヴィオ、お願い」 「りょーかい!」 カートリッジウィリードし、レイジングハートとマッハキャリバーが、魔力翼 を展開する。 そこにヴィヴィオが、それぞれの手に握られたカートリッジ二つを燃料に、ケ リュケイオンによるブーストを掛ける。 「我が乞うは、疾風の翼。星光の砲撃主に、駆け抜ける力を」 『Boost Up. Acceleration.』 「猛きその身に、力を与える祈りの光を」 『Boost Up. Strike Power.』 ブーストによって強化され、ストライクフレームがまるで大剣の様な刃になる。 それを確認すると、なのはの瞳は彼方の標的を捉える。 「ウィング、ロード!」 『Wing Road.』 マッハキャリバーで走るのに、もっとも最適な道を作りだす。 これでいつでも引き金を引ける。 撃ち出される弾丸はなのは自身。その威力は想定不能。 なのははそこに、最後の強化を行おうとする。 「…………なのはママ」 その時、後ろから心配そうな声が聞こえた。 振り返れば、ヴィヴィオが心配そうな表情をしている。 なのははそんなヴィヴィオを安心させるように言葉を紡ぐ。 「大丈夫だよ、ヴィヴィオ。ちゃんと帰ってくるから」 「…………うん。 ママ、行ってらっしゃい」 その一言に、どんなに思いが込められているか。 それは想像に難くない。 だからなのはも、一言だけ返した。 「行ってきます、ヴィヴィオ」 “ただいま”と言うために。 “お帰りなさい”を聞くために。 この道の先にいる敵を、打ち倒す! 「いくよ、レイジングハート、マッハキャリバー。 ブラスター2、リリース!」 『『A.C.S. Standby!』』 “最後の切り札”の二枚目を切り、更に限界を超えた強化を行う。 マッハキャリバーのホイールが唸りを上げる。 キングはユーノ君が足止めしてくれてる。 彼我の距離は百メートルほど。 阻む物は、何も無い!! 「A.C.S.ドライバー、オーバーブースト! フルドライブ!!」 『『Charge!!』』 瞬間、衝撃をともなって桜色の閃光が解き放たれた。 通る端から崩壊していく翼の道。 二つのA.C.Sによる超加速は、周囲に圧倒的な破壊力をまき散らし、なお加速 していく。 速度は音速にまで達し、ともすれば音の壁を突き破りかねないほど。 その事実は、それだけで高町なのはの肉体に、異常なまでの負担を強いる。 だがそれさえも一瞬。 辛くも間にあったキングの盾が、高町なのはに更なる急制動を強要する。 最大150tもの衝撃にも耐えられるソリッドシールドは、亀裂が入りはしても 容易には砕けず、激突と音速からの急停止による衝撃が大地を粉砕する。 それによりなのはには、常人ならば耐えられぬ程の負荷がかかる。 全身の骨は軋み、内臓は重圧に潰され、毛細血管が破裂する。 レイジングハートを握る手は、今にも指が千切れ飛びそう。 視界は激しく明滅し、まともに前を見る事さえ叶わない。 だがその全てを、高町なのはは歯を噛み砕く程食いしばって耐えきった。 唇からは大量の血が零れ、全身いたる所に裂傷が奔り、その手は真っ赤に染ま っている。 されどその瞳は、真っ直ぐにキングを捉えていた。 「まさかここまでやるとはね。 僕の盾に亀裂が入るなんて、そうそうある事じゃないよ。 もしかしてさっきまでの鬱陶しい鎖は、この為の足止めかい?」 流石のキングにも、声に余裕がない。 しかしその複眼に、自らの勝利に対する確信は残ったままだ。 されど、なのはの瞳にもまだ、勝利への決意が宿っていた。 「けどここまでだよ。 君の攻撃は、絶対に通らない!」 「通す!! レイジングハートが! マッハキャリバーが! みんなが私に力をくれてる! 命と心を賭けて、答えてくれてる! あなたみたいな人を、絶対に倒すんだって!!」 両者の力は拮抗し、お互いに譲り合う事を良しとしない。 なのはのレイジングハートにも、キングの盾と同様亀裂が入っている。 それは即ち、レイジングハートが砕けた時点でなのはの敗北を意味する。 されど、ここでそれを案じて躊躇うのならば、そもそもこんな作戦は行わない。 故に―――― 「ブラスター3!!!」 「なっ! まだ先があるって言うのか!」 “最後の切り札”の最後の一枚を切る。 跳ね上がる魔力出力。次々とロードされるカートリッジ。 ソリッドシールド、レイジングハートの双方に、さらなる亀裂が奔る。 それに構う事なく、限界以上に魔力を流し込む。 「嘘だ。 こんな事、認めない! 最強は、この僕なんだ―――ッッッ!」 「ブチ抜けええぇぇぇッッッッ!!!!!!!!」 砕け散る最強の盾。 桜色の穂先は、違う事なくキングの胸元へと吸い込まれ、その心臓を貫いた。 視界が白く染まっていく。 全身から力が抜け、穏やかな感覚に包まれていく。 どうしてかな。 帰る場所があるのに。 まだやるべき事があるのに。 どうしようもなく、眠い―――――― /05「覚悟の証明」 その光景を、ユーノ・スクライアは確かに見た。 辺り一面を照らす桜色の光。大地さえ打ち砕く神速の衝撃。 死をも恐れぬ限界を超えた一撃を以って、高町なのははキングを倒したのだ。 だが――――その代償は計り知れない。 確かにこの策を提案したのはユーノ自身だ。 しかし、この決戦は想像の範疇を遥かに超えていた。 なのはが通った道は深く抉られている。 キングと激突した場所は深く陥没し、まるでクレーターの様。 そこから何十メートルか離れた場所になのははいた。 「なのは!」 「なのはママ!」 駆けつけたヴィヴィオと共に、倒れ伏すなのはに駆け寄る。 なのはの状態は、一目見て判るほど凄惨だ。 全身傷のない所など無く。出血のせいか、顔色も酷く悪い。 更に両手は真っ赤に染まり、レイジングハートの柄も、その大半が血に濡れて いる。 五体満足でいること自体が奇跡のようだった。 「なのは! 起きて、なのは!!」 「なのはママ! 目を覚まして、なのはママ!!」 二人の声に反応してか、なのはは小さくせき込み、薄く眼を開けた。 そして二人の顔を見つめると、小さく微笑みを浮かべた。 「ただいま、ヴィヴィオ」 「お帰りなさい、なのはママ!」 なのはとヴィヴィオは、お互いを抱きしめ合う。 こうして二人の親子は、小さな約束を果たしたのだった。 「でもよく無事だったね」 「レイジングハートとマッハキャリバーが、護ってくれたんだ」 それはキングの盾を砕き、その身体を貫いた直後の事だった。 レイジングハートとマッハキャリバーはA.C.Sを停止させ、 同時にプロテクションを張ったのだ。 その二重の障壁により、なのはは慣性による瓦礫への激突と、それによる致命 傷を免れたのだ。 「何はともあれ、本当に良かった」 大きく息を吐き、胸を撫で下ろす。 その時ふと視界の隅に影が映り込む。 直後、背筋に激しい悪寒が奔った。 即座にバルディッシュを背後へと振り上げる。 響く金属音。 背後からの襲撃者が持っていた、赤いレイピアが弾き飛ばされる。 そして襲撃者――アンデッドへと変身した金居は、悔しそうに舌打ちをした。 「やはりヘルターとスケルターを使うべきだったか」 「…………ッ! 何もこのタイミングで……、いや、このタイミングだから か!」 金居が襲撃してきたタイミングの悪さを嘆こうとして、 それが意図的なものであると悟った。 金居はいつの間にか自分たちの近くへと接近していたのだ。 元より、あれだけ派手な戦闘をしていて、気付かない方がおかしい。 今まで襲撃しなかったのは、確実に自分達を殺せるタイミングを待っていたの だろう。 「まあさしたる問題ではないな。 キングがやられた事は予想外だが、そこの女は瀕死、残る二人も戦力外とな れば、結末は自ずと見える」 「――――ッ!」 なのはがレイジングハートを支えに立ち上がろうとするが、すぐに膝をついて しまう。無理だ。そんな状態で戦える訳がない。 ヴィヴィオにしたって、魔力はカートリッジで代用しても、戦闘経験がほとん どない。金居相手にそれでは無謀でしかない。 つまり、現状戦えるのは僕一人だけという事だ。 だからと言って逃げる事も難しい。 僕一人では金居を相手にしながら、二人を抱えて逃げ切る事は出来ない。 キングの時は不意を突いたから上手くいったのだ。 今の金居には前回のような油断はない。半端な奇襲は、もう通じないだろう。 それでも何もしない訳にはいかない。 金居の両手に黒と金の二色の双剣が現れる。 「さあ、さっさと死ね。 すぐに後ろの女も後を追わせてやる」 「そんな事は絶対にさせない!! バルディッシュ!!」 『Sonic Move.』 バルディッシュの支援とシルバーケープによるステルスで金居の背後に回り 込み、力の限りバルディッシュを振り被り、一撃する。 だが。 「無駄だ」 「なっ!」 その一撃は、あまりにも容易く避けられた。 返す一刀を辛うじてバルディッシュで受ける。 だがその威力に勢いよく飛ばされ、なのは達のところへと転がり落ちる。 「確かに姿が見えず、高速で動く敵は厄介だ。 だが、所詮は素人。行動は読みやすく、一撃も軽い。 以前の様に完全な不意を突いたのならともかく、正面から相対している以上、 お前に勝てる要素は皆無だ」 そんな事はとっくに理解している。 だが、それでもなのは達を殺させる訳にはいかない! 「たとえ……たとえどんなに可能性がなくても、そんな事は関係ない。 どんなに無茶でも。どんなに危険でも。僕たちはみんなで脱出すると誓った。 だから! お前には負けない! なのは達は、僕が守ってみせる!!」 「そうか。ならば証明して見せろ!!」 金居が双剣を構える。 あちらから攻めないのは余裕の表れか、それとも後の先を狙うタイプだからな のか。 どちらにせよ、今は助かる。 「妙なる響き、光となれ、癒しの円のその内に、鋼の守りを与えたまえ。 ラウンドガーダー・エクステンド」 なのはを中心に防御と肉体・魔力の回復を同時に行う結界を形成する。 これで僕が死なない限りは、なのはの治癒が行われる。 「ヴィヴィオ、なのはをお願い。 僕はあいつを倒す」 「ユ-ノさん」 「行くよ、バルディッシュ」 『Yes, sir.』 金居を正面に見据え、バルディッシュを構える。 あいつを倒す、なんて大それたことを言ったけど、 僕自身に有効な手立てがある訳ではない。 だからと言って、死ぬつもりはない。 僕に出来るのは時間稼ぎくらいだけど、それだけでも状況が好転する事もある。 バルディッシュのサポート。シルバーケープによるステルス。 そして、僕が考えうる限りの機略を以って、金居に決死の一撃を叩きこむ! /06「なのはとヴィヴィオ 約束」 そうして、ユーノ・スクライアは無謀な死闘へと挑んでいった。 ステルスによって姿を消したユーノと、それに対応できる金居は、徐々に戦闘 領域を移し、ついには今いる場所からは見えなくなってしまった。 その光景を、私は見ている事しか出来なかった。 ユーノさん達が消えさった方向を、ただ見つめている。 それを見て何を思ったのか、なのはママが問いかけてきた。 「ねえ、ヴィヴィオ。 悔しい? それとも、怖い?」 「――――――ッ!!」 そしてそれは、私の心を的確に捉えていた。 悔しいという思いも。怖いという感情も。きっと両方正しい。 何が悔しくて、何が怖いのかも、なのはママはきっと気付いてる。 「どうして、分かったの?」 「だって私は、ヴィヴィオのママだから。 まだほんの少ししか一緒に過ごしてないけど、それでも本当のママになれる ように努力してきたんだよ」 わかってる。 あの戦いの中でなのはママはそう言った。 だからきっと、私が思う以上に頑張ってるんだ。 「ヴィヴィオは、ヴィヴィオの思った通りにして良いよ。 失敗したって大丈夫。私達がついてるから。 言ったよね? 助けるって。いつだって、どんな時だって」 覚えてる。 もう自分の意志では止まれなかった私を、なのはママは傷だらけになりながら も助けてくれた。 「だから、ちゃんと自分の心を信じてあげて。 何のためにその力があるのか。 その手の力で何ができるのか。 それはきっと、自分の心で決める事だから」 「うん……!」 涙声で頷く。 それはきっとなのはママが通って来た道。 その先で見つけた確かな答えなのだろう。 悔しかったのは、何も出来ない自分。 自分に力がなかったから、大切な人たちが目の前で死んでしまった。 怖かったのは、制御できない自分。 哀しみや憎しみを抑える事ができなくて、力を手に入れても壊す事しか出来な かった。 けど、今は違う。 私を信じてくれる人がいる。 私を助けてくれる人がいる。 だから、もう大丈夫。 「ありがとう、ママ。 私はもう大丈夫だよ。 ちゃんと一人で立てるよ。 強くなるって、約束したから」 抱えていたデイバックから、赤い宝石を取り出す。 私にとって罪の象徴ともいえる、レリック。 これを受け入れる事は、今までの自分を全部受け入れる事なんだと思う。 きっと、とても辛くて、とても悲しくて、とても怖い。 それでも私は、みんなを守りたい。 「だからなるよ。 なのはママみたいに強く。フェイトママみたいに優しくなってみせるよ」 「……うん、きっとなれるよ。 ヴィヴィオがそうなりたいって思って、そうなろうって頑張れば、 なれないものなんて、きっとないから」 だから大丈夫。 なのはママが、私を信じてくれるから。 私が、誰かを守りたいって願っているから。 ―――だからきっと大丈夫。私はもう、自分には負けない。 『――――わたしを、ヴィヴィオの元に』 「マッハキャリバー?」 『わたしはこのデスゲームにおいてヴィヴィオが聖王となった際に、彼女とレ リック、そして“ゆりかご”とのバイパスとして使用されました。 その為、わたしはヴィヴィオの個体情報を獲得しています。レリックと融合 する際の助けになれるでしょう』 マッハキャリバーが自分から待機形態へと移行する。 それは私に受け取ってくれ、という意思表示なのだろう。 『お願いします。 わたしはまだ動けます。まだ戦う事が出来ます。 わたしはまだ、あなた達の助けになりたいのです』 「……わかった。手伝って、マッハキャリバー」 『ありがとうございます』 なのはママからマッハキャリバーを受け取る。 するとなのはママが、私の手を強く握った。 「今度は私の番だね。 ヴィヴィオ、行ってらっしゃい」 「――――!」 その言葉に驚き、それ以上にうれしくなる。 握られた手を、強く握り返す。 「うん。行ってきます、なのはママ」 名残惜しげに手を離す。 けど、今は惜しむ暇はない。 ユーノさんが今も戦っている。 マッハキャリバーを片手に、レリックを胸に抱く。 赤い魔力の結晶が体内に溶け込み、体に再び魔力が満ちていく。 それと同時に、私は虹色の光に包まれた。 虹色の光が治まる。 そこには金色の髪をサイトアップに結い纏め、黒と白の騎士甲冑を纏う、17歳 前後の少女――聖王ヴィヴィオの姿があった。 聖王となったヴィヴィオは、僅かに振り向いてなのはを見つめる。 その緑と赤の双眸に宿すのは、かつての様な怒りや憎しみではなく、 母と同じ優しい光。 「本当にもう、大丈夫だね」 小さく頷き、視線を前へと戻す。 約束を胸に、清らかなる戦士はこのデスゲームを終わらせる為の戦いへと赴く。 「頑張ってね、ヴィヴィオ」 『御武運を』 その後ろ姿を見つめ、なのは達はそう言った。 そこには絶対の信頼と、母親特有の優しさがあった。 Back 魔法少女リリカルなのはBR Stage01 ファイナルゲーム 時系列順で読む Next 魔法少女リリカルなのはBR Stage03 紡がれる絆 投下順で読む 高町なのは(StS) ユーノ・スクライア ヴィヴィオ キング 金居
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最終更新日:13/10/22 シャリテクロワール お知らせ 年内でページを閉鎖することにしました。このページに載せている文章はすべて削除しますので、ご了承ください。 尚、ロクゼロクロスは以下のサイトからDL出来ますので、読みたい方はそちらでどうぞ。 赤き閃光の英雄 上巻 赤き閃光の英雄 下巻 逆襲の救世主 上巻 逆襲の救世主 下巻 ロックマンゼロ2-逆襲の救世主- クロス元:ロックマンゼロ 予告「-なのは-サイド」 予告「-ゼロ-サイド」 予告「-イレギュラー-サイド」 ロックマンゼロ-赤き閃光の英雄- クロス元:ロックマンゼロ 最終更新:08/10/24日完結 第1話「英雄の降臨」 第2話「ゼロと呼ばれる者」 第3話「思惑と策謀」 第4話「輸送列車を破壊せよ」 第5話「機械の少女」 第6話「ジェイル・スカリエッティ」 第7話「ドクターのゲーム」 第8話「光禍の嵐」 第9話「壊れていた心」 第10話「出会い」 第11話「あなたを超えたくて」 第12話「守りたかったもの」 第13話「罰ゲーム」 第14話「夢物語の終幕」ab 第15話「悪夢を映す鏡」 第16話「血塗られた記憶」 第17話「ノーヴェの悲劇」 第18話「ナンバーズ分裂」ab 第19話「聖王のゆりかご」ab 第20話「愚か者の矜持」ab 第21話「無限の欲望」ab 第22話「爆炎の剣聖」ab 第23話「聖王ヴィヴィオ」ab 第24話「強さの意味を、知りたくて」 第25話「赤き閃光の英雄」ab 最終話「ゼロからはじまる物語」ab ロックマンゼロ>コメントログ TOPページへ このページの先頭へ
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女神異聞録リリカルなのは クロス元:ペルソナシリーズ 最終更新 08/10/07 00 The changing world 01 Time of darkness 02 Montage 03 Burn My Dread 拍手感想レス TOPページへ このページの先頭へ
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リリカル遊戯王GX 第一話「異世界デュエル!? ハーピィ・レディVS機動六課!」 「ふう……」 フェイトは深い溜息を吐く。 ジェイル=スカリエッティ事件が終わりを告げてから数年、 六課にいた時よりもきつい激務の毎日でさすがの彼女もかなり疲労していた。 何より、なのはやエリオ達ともまともに連絡が取れていないのもかなりのストレスになっている。 「フェイトさん、大丈夫ですか?」 「あ、ティアナ……ごめんね、平気だよ」 いつの間に居たのか、ティアナにフェイトは笑顔を無理矢理作る。 自分の補佐である彼女にあまり情けない姿を見せたくない、兄であるクロノのように常に冷静な人物でありたかった。 ティアナはまだ何か言いたそうだったが、少し思案して仕方ないといった様子で口を紡ぐ。 頭のいい彼女の事だ、自分の作り笑顔など見抜かれているだろう、 それでも深く言ってこないのは、この数年の間でどれだけ自分が頑固なのか悟っているからであろう。 「フェイトさん、無理だけはしないでください。スバルから聞いたんですけど、なのはさんも心配してるそうです」 「……うん、わかってる」 なのはの名前を出されると弱い、 無理をしすぎて危うく死にかけた親友と、今の自分は似ているところがあるのだ。 だからといって執務官の仕事を放っておくこともできない、ティアナもその辺りは承知しているのだろう、 これ以上何も言う気はないようだ。 『フェイトさん、ティアナさん、八神捜査官がお呼びです』 「え、はやて?」 「八神部隊ちょ……捜査官が?」 はやてとはなのは達以上にやりとりがなくなっていた、 フェイトと同じか、それ以上に忙しい立場についているのだからそれも当然かもしれない。 そんな彼女がいったい何の用なのか? 突然のシャーリーからの連絡に二人は戸惑いながらも指定場所へと向かう。 「あ、来た来た。お久し振りや、フェイトちゃん、ティアナ」 「にゃはは、フェイトちゃん久しぶり」 「フェイトさん、お久しぶりです!」 「え……は、はやて、これ、どういう……?」 「わー、ティア、直接会うの久しぶりだねー!」 「スバル!? それになのはさんにライトニング隊まで……!?」 部屋に入った二人は面食らう。 中にはヴォルケンリッターを除いた元機動六課のメンバーが勢揃いしていたのだ。 困惑するフェイトにはやては笑顔で説明を始めた。 「ある次元世界でかなり大きな反応をキャッチしたんや、それが何かはさっぱりわからへんけど、 レリックにも匹敵するほどの魔力反応を放っておくこともできへん」 「その調査と、危険な物だとしたら回収するのが今回の任務ですー」 「ま、リミッターもはずされてるみんなには簡単な任務やな」 「そ、それはわかったけど、どうしてなのは達も? みんな部署は別々なのに……」 「最近フェイトちゃんちょお疲れとったやろ? それで不謹慎ではあるけど、 同窓会っぽくして気分転換させたろかなーってな」 聞きたいのはそこじゃない、フェイトの視線の意味に気づき、はやては笑みを深くする。 「フェイトちゃんが聞きたいのは方法やな? リンディさんやレティ提督直伝の――」 「ごめんはやて、私が悪かったから聞かせないで」 聞いたらやばい、最初の二人の人物の名前を聞いた瞬間その場の全員が同じことを思ったという。 はやては少しつまらなそうにしながら、本題へと入る。 「この次元世界、どうにも実態が掴めへんのやけど……魔物らしき生物が大量にいることは確認されとる。 ウチも行けたらいいんやけど、シグナム達が別の任務で苦戦してるみたいでそっちに行かなあかん」 「こちらとコンタクトが取れそうな生物がいたら接触してみてください、これを機会に管理世界になるかもしれないです」 全員が頷いたのを見て、はやては立ち上がり真剣な表情で全員の顔を見渡す。 「機動六課が解散してからもう何年もたった、みんなあの時よりも成長してると思うし、心配はいらないと思う。 けど、絶対に無理はせんように、全員無事で帰ってくることを優先してほしい」 そこで一つ咳ばらいをし、はやては右手を突き出し数年ぶりの命令を出す。 「元やけど……機動六課、出撃!」 『了解!』 その次元世界は一面砂で満たされていた。 砂漠であるのは間違いないが、一般的な砂漠――例えば昔にフェイトとシグナムが一騎打ちをしたような――と比べると暗い雰囲気をだしている。 そんな砂の世界で、明らかに場違いな建造物が一つ立っていた。 ――デュエルアカデミア―― デュエルモンスターズというカードゲーム専門の学校である。 カードゲームの学校? と思う人も少なからずいるだろうが、甘く見てはいけない、 このデュエルアカデミアがあった世界では、このカードゲームによって莫大な金を得た人間や、莫大な金を使う人間などが大勢いるのだ。 そんなアカデミアの正門にあたる部分、そこに二人の人間が歩いていた。 「いったいここはどこなノーネ……?」 「さっぱりわからないのであ~る。一面砂ばかりなのであ~る」 「なんだか太陽も三つに見える気がするノーネ」 デュエルアカデミアの教諭、クロノスとナポレオン。 この二人の会話からも察しできる通り、このアカデミアは元々この世界の物ではない。 元の世界で起きたある事件によって、この世界へと飛ばされてしまったのだ。 「とにかく、救助を呼ぶのであ~る」 「わかってるノーネ。警察は110番、消防は119番と……」 クロノスが携帯を操作して耳に当てるが、すぐに表情をしかめてしまう。 「おかしいノーネ、どこにも繋がらないノーネ」 「それでは救助が呼べないのであ~る! ……ん? あれは何であるか?」 ナポレオンが空を見上げて何かを発見する。 三つある太陽の影になってよくわからないが、飛行機のようなシルエットに見えなくもない。 「おお! きっと上空からの救助部隊なノーネ!」 「助かったのであ~る!」 連絡が取れなかったのにこんなにも早く救助部隊が来るわけがない。 そんな当たり前の事にも気付かないのがこの二人の欠点であり憎めない点でもある。 その飛行機に似たシルエットは二人に近づいていき、だんだんとその姿が見え――二人は悲鳴を上げて逃げ出した。 「い、いったい何なのであ~る!?」 「し、知らないノーネ!」 その姿に二人は見覚えがあった、 ―ハーピィ・レディ― 攻撃力1200 防御力800 通常モンスター 美しい女性の姿をした、腕に翼が生えているデュエルモンスターズに出てくるモンスターの一匹である。 滑空してくるハーピィ・レディをその場に伏せてやり過ごそうとするが、そのかぎ爪にクロノスは捕まってしまう。 「つ、捕まったノーネ! 助けてほしいノーネ!」 「く、クロノス教諭!」 持ち上げられていくクロノスの足に咄嗟にナポレオンが飛びつくが、 ハーピィ・レディは気にもせずに――いや、獲物が増えたと喜んでいるか?――飛び立とうとする。 「痛いノーネ、離れてなノーネ!」 「は、放していいであるか?」 「あ、やっぱりダメなノーネ!」 こんな状況下でもどこか緊迫感のない二人に、数人の高校生ぐらいの人間達、アカディミアの生徒が近づいてきた。 「あれはハーピィ・レディ!?」 「まずい、クロノス先生達が!」 生徒たちが困惑する中、青髪の青年、ヨハンに何者かが語りかけてくる。 『ヨハン、ディスクを使って私を実体化させてくれ!』 「サファイヤ・ペガサス!? よし……!」 ヨハンが声に従い左腕に装着された機械、デュエルディスクへとカードをセットする。 次の瞬間、神話に出てくるペガサスのような生物がヨハンの側に現れる。 ―宝石獣サファイヤ・ペガサス― 攻撃力1800 防御力1200 効果モンスター 「頼むぞ、サファイヤ・ペガサス!」 「任せろ、ヨハン!」 ヨハンに応え、サファイヤ・ペガサスが飛び去ろうとしているハーピィ・レディへと飛び立っていく。 人間二人という重りを持っているハーピィとの距離はあっという間につまり、ペガサスはその翼をハーピィへと向ける。 「サファイア・トルネード!」 ペガサスがハーピィに向け、羽ばたいて竜巻を起こす。 狙いたがわず竜巻はハーピィの背中に直撃し、その衝撃でクロノスを掴んでいたかぎ爪を放してよろめきながら飛び去っていった。 「た、助かったノーネ?」 「いったいどうなってるザウルス!?」 「これはソリッドヴィジョンじゃないよね……?」 語尾が特徴的な青年剣山と、黄色の服を着た小学生と間違えそうな小さい青年翔が実体化しているサファイヤ・ペガサスを見て呟く。 デュエルモンスターズはソリッドヴィジョンシステムという、ホログラフィを使って行われるのが一般的である。 本当にそこにモンスターが実在するかのような映像で、デュエルを一層盛り上がらせるのだ。 しかし、今ヨハンが呼び出したこのサファイヤ・ペガサスは映像ではなく、実体があった。 「ハネクリボー? お前も実体があるのか?」 赤い服を着た青年、遊城 十代の目の前に翼が生えた毛むくじゃらの小さく愛らしいモンスターが現れる。 ―ハネクリボー― 攻撃力300 防御力200 効果モンスター 十代の問いかけに「クリクリ~♪」と鳴いて答え、はしゃぐように十代の周りを飛び回っている。 「ここは、カードの精霊が住む世界なのか……?」 「カードの精霊? 兄貴、何言ってるドン?」 「ヘイ、ダイノボーイ、どうやらそいつを信じなけりゃ話は進まなそうだぜ」 カウボーイハットを被り、何故か背中にワニ(しかも生きている)を背負った男、ジムが空を見上げながら言い、 剣山がその視線を辿ると先ほどのハーピィ・レディが上空を飛びながらこちらを狙っていた。 「危険なのであ~る! 早く逃げるのであ~る!」 「待って、いったい何人この世界に飛ばされたのか確かめないと……」 「体育館に生徒を集めてください、現状の確認を」 パニックに陥るクロノス達と対照的に、ヨハンやきつめの印象の女性、明日香は冷静に次にするべきことを考える。 だが肝心の二人はただ自分の身を守るのに精いっぱいのようだった。 「ダメだな、ここは僕らでなんとかしよう」 「時間をかけるほど危険性が増す、放送か何か使えればいいが……」 知的な男、アモンとこのメンバーで唯一の黒人、オブライアンはあっさりと二人に頼ることを諦める。 確かにこれでは何もできそうにない「こういう時って、大人は対応できないものなのよね」と明日香が冷たく言い放っていた。 「フェイトちゃん、行くよ!」 「うん!」 「ディバイン……バスター!」 フェイトがその場を離れた瞬間、その空間を高密度、高範囲の魔力砲撃が貫いていく。 フェイトを狙ってそこに集まっていた無数の機械仕掛けの蜘蛛達が一瞬で破壊される。 ―カラクリ蜘蛛― 攻撃力400 防御力500 効果モンスター 二人が大量の雑魚を息の合ったコンビプレイで倒していっている間、他の四人は一匹の大型のモンスターと戦っていた。 「キャロ、お願い!」 「はい! ケリュケイオン、スラッシュ&ストライク!」 キャロの補助魔法を受け、エリオは目の前の巨大な亀のようなモンスターに狙いをつけ、一気に貫こうと突撃する――が、 「固っ……!?」 「エリオ君!」 「そんな、キャロのブースト付きでも貫けないの!?」 ―3万年の白亀― 攻撃力1250 防御力2100 通常モンスター ストラーダの刃は甲羅をわずかに傷つけただけで、そのままエリオは弾かれてしまう。 だが、エリオの目は「それ」を捕えていた。 「サンダー、レイジー!!」 弾かれながらも、亀に向かって雷撃を放つ。 いかに甲羅が強固であっても雷までは防げず、その巨体をよじって雷撃の主を弾き飛ばそうとする。 「スバルさん!」 「おぉぉぉぉぉぉ!!」 魔力で作りだされた道、ウィングロードが亀の甲羅の頂点へと伸びる。 スバルは魔力を高めながらその道を疾走していく。 それを見た瞬間、ティアナは自らの周りにいくつもの魔力球を生み出した。 「スバル、クロスシフトD、行くわよ!」 「OK!」 機動六課にいるころは結局見せることのなかった新しいクロスシフト、 数年前に練習しただけだが、二人の目に失敗するかもしれないという怖れはまったくなかった。 「クロスファイア……シュート!」 「いくよ、マッハキャリバー!」 『All right buddy』 ティアナの魔力球がスバルの目の前、そしてターゲットの間近で収束し、大きく膨れ上がる。 魔力球同士がぶつかりあってはじけ飛ぶ瞬間、スバルはリボルバーナックルでその巨大な魔力球を雷に苦しんでいる甲羅へ叩きつける! 「一撃、必倒!」 甲羅が砕け、スバルは甲羅の内部で魔力球を解放する。 「クロスファイア……バスター!!」 「いいね、しばらく会ってなかったのに、チームワークとか凄くよくなってる」 「ありがとうございます!」 この世界にやってきた途端に無数の魔物に襲いかかられ、なのは達は止む無く戦闘に突入する事になっていた。 それを粗方片付けた後、なのはに褒められてスバルは嬉しそうに笑顔で返す。 「それはいいけど、あのクロスファイアバスターって何よ?」 「えへへ~、ティアのクロスファイアを、私のディバインバスターみたいに相手に叩きつけるからクロスファイアバスター、言い名前でしょ!」 「……あんたのネーミングセンスの無さはよくわかったわ」 「あ、あの、いつまでもここに留まっているとまずいのでは……」 「またモンスターが襲ってくるかもしれないですし……」 「うん、二人の言う通りだね。なのは、どうする?」 言いながらフェイトはある方向へ視線を向ける。 そこにはこの世界に不似合いな建造物――デュエルアカデミアがあった。 外にいてはいつモンスターに襲われるかわからない、だが、あからさまに怪しいあの建物は本当に安全なのだろうか? 思考を巡らしていると、近くから男の悲鳴が聞こえてきた。 「今のは!?」 「あそこ! 誰か襲われてる!」 戦闘機人ならではの視力でスバルが悲鳴の主を見つけ、ウィングロードで先行する。 なのは達もすぐにそれを追い、段々と男を襲っている正体が見えてくる。 「でっかい亀と機械クモの次は鳥人間!?」 「空中戦……私とフェイトちゃんで行くよ、みんなはあの人を!」 『了解!』 簡単に打ち合わせをし、先行していたスバルがウィングロードを男とモンスター……ハーピィ・レディの間に走らせ注意を向ける。 ハーピィはそのままスバルを狙おうとするが、フェイトがハーケンフォームのバルディッシュでかぎ爪を受け止めた。 「このぐらいの攻撃なら、私でも止められる……!」 自分の攻撃が効かないと気づいた瞬間その場から離れ、更にフェイトの横に並んだなのはを見て顔を顰める、 だが、次の瞬間その表情は笑みに変わり、次の瞬間ハーピィの背後が万華鏡のように輝き出す。 ――そして次の瞬間、二人はハーピィを見て驚愕することとなる。 「嘘……?」 「増えた……!?」 一瞬の間にハーピィが髪型だけを変えた三人に増え、更に金属質なボンテージを着こんでいた。 それを地上から見ていた襲われていた男は、なのは達に向かって叫ぶ。 「気をつけろ! 万華鏡―華麗なる分身―とサイバー・ボンテージを使ったんだ!」 ―ハーピィ・レディ三姉妹― 攻撃力1950 守備力2100 効果モンスター(サイバー・ボンテージの効果で攻撃力500アップ) 三匹のハーピィは息の合った動きで二人をかく乱していく、先ほどとはまったく違う動きに戸惑いながら、フェイトはなんとか反撃しようとする。 「プラズマランサー、ファイア!」 雷撃を纏った魔力球がハーピィの内一匹を襲うが、直線的なその攻撃は回避されてしまう、 だが、ハーピィが避けた先には桜色の魔力球が設置されていた。 「――!?」 「アクセルシューター!」 なのはの攻撃がまともに当たるが、ハーピィは多少ダメージを受けた様子を見せただけで倒れてはいなかった。 「そんな、なのはさんの魔力球を喰らって無事なの!?」 「は、ハーピィ・レディ三姉妹にサイバー・ボンテージを装備したら攻撃力2450……並大抵の攻撃じゃ、太刀打ちできない……」 「だから、さっきから攻撃力とか何なのー!?」 「……もしかして、あの魔物達って三匹で一匹、みたいな存在なんですか?」 男の言葉に違和感を感じたキャロが問いかける。 男は苦しそうにしながらも、それに頷いて肯定した。 「キャロ、どうするの?」 「三匹で一匹……なら、一匹だけでも切り離せれば! 連結召喚、アルケミックチェーン!」 キャロが鎖を召喚し、フェイトの背後から襲いかかろうとしていたハーピィを拘束する。 鎖をはずそうとハーピィがもがくたび、キャロの鎖はきしんでいく。 「なんて、力……なのはさん、フェイトさん、今です!」 「キャロ……ありがとう! バルディッシュ、サードフォーム!」 「いくよ、レイジングハート!」 捕らえられたハーピィへ二人は狙いをつけ、その隙を狙おうとした二匹のハーピィの目の前を魔力球が通り過ぎる。 「こっちの事も忘れてもらっちゃ困るのよ!」 ティアナに気を取られている間に、なのはとフェイトは準備を完了する。 「ジェットザンバー!」 「ディバイーン、バスター!!」 雷を纏った巨大な剣と魔力砲撃、二人の同時攻撃を受けてさすがのハーピィも倒れ伏す。 その姿を見て、残る二匹のハーピィも慌ててその場から飛び去っていった。 「やった! さすがなのはさんとフェイトさん!」 「……君たちは、いったい何者なんだ? デュエルモンスターズのキャラではないみたいだが」 「デュエ……? 私たちは時空管理局所属の魔道士です、私たちについて詳しい事は後でお話しますが、今はどこか落ち着ける場所に行きたいのですが」 こんな場所で話していてはまた何かに襲われかねない、だからといって安全な場所があるかどうかもわからないが、 わずかな期待を胸に問いかけると、男は「本当に安全か保障はできないが……」と呟いてある場所を指す。 その先には、デュエルアカデミアがあった。 続く 翔「変な世界には来ちゃうし、魔法使いなんて出てくるし、僕たちどうなっちゃうんだろう……」 十代「魔法かぁ、面白そうだよな! 俺も使ってみたいぜー!」 翔「兄貴は単純で羨ましいっす……」 次回 リリカル遊戯王GX 第二話 魔法とデュエルと謎の敵なの! 十代「ヒーローにも魔法使いとかいないのかなぁ!」 翔「素直に魔法使い族を入れるべきっす……」 十代「さあ、今週の最強カードは……って、なんかいつもと雰囲気が違うぞ!?」 なのは「今週の最強カードはこれだよ!」 サンダーレイジ 魔法カード 相手フィールドの全ての水属性か機械族のモンスターの攻撃力・防御力を半分にする。 なのは「それじゃあ、次回もよろしくね♪」 十代「あ、あんた誰だよ!?」 目次へ 次へ
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「そう、良かった。今どこ?」 デュークがグレンダイザーを受け取ったのと同じ頃。 ハラオウン家にいるエイミィは、なのはの受けたダメージが完全回復したという知らせを受けていた。 その顔には嬉しそうな笑みを浮かべ、ユーノからの通信を受け取っている。 「二番目の中継ポートです。あと10分くらいでそちらに戻れますから」 「そう、じゃあ戻ったら、レイジングハートとバルディッシュについての説明を……あっ!?」 ユーノからの答えに対し、エイミィも上機嫌。 そのまま帰ったらデバイスの新機能について説明すると言おうとしたが……中断された。 大音量のアラートが響き、モニターには「CAUTION」の文字。どう考えても緊急事態である。 急ぎ端末を操作し、そのエマージェンシーの発生源を捜索。 そして、すぐに発見。海鳴市の上空に、ヴィータとザフィーラの姿があった。 「ああっ、こりゃまずい! 至近距離にて、緊急事態!」 エイミィの報告の直後、リビングにいたリンディは局員からの報告を受けていた。 『都市部上空にて、捜索指定の対象二名を捕捉しました! 現在、強装結界内部で対峙中です!』 報告によると、どうやら堅い結界を張り、それによって閉じ込めている最中らしい。さて、どう動くか…… 相手は闇の書の守護騎士。おそらく相当の腕利きでなければ対抗はできまい。 ほんの一瞬だけ考え、そして今動かせる「腕利き」がいる事に思い至った。 そこから素早く次の指示を出す。 「相手は強敵よ! 交戦は避けて、外部から結界の強化と維持を! 現場には、執務官と甲児さんを向かわせます!」 そう言うと、同じように後ろで聞いていた甲児へと目を向ける。なるほど、リンディの選択は確かに適切だ。 まずはクロノ。今回のメンバーの中でも最大戦力の一角である彼ならば対処も可能だろう。 そして甲児。元の世界での戦闘経験と、マジンカイザーの性能があれば、守護騎士にも引けをとらずに戦えるはず。 ……だが、今甲児の手元にはカイザーは無い。異世界の物品がデバイスに変化するという事例は珍しいらしく、現在はそのサンプルとして本局で解析の真っ最中である。 ならば必然的にクロノが先行し、甲児がマジンカイザーを受け取ってから向かうという形になる。そう考えながら、甲児へと言った。 「甲児さん、聞いての通りよ。マジンカイザーは今、本局でマリーが解析しているわ」 「マリー……ってぇと、あの人か」 そう言われ、甲児の頭に浮かぶのは本局メンテナンススタッフのマリーの顔。彼女とはマジンカイザーを渡す時に面識がある。 その後すぐにリンディの言わんとしている事を理解し、確認のためにそれを聞き返す。 「それじゃあ、本局でカイザーを受け取ってから、あの守護騎士の所に行けばいいんだよな?」 「ええ。急いで!」 第五話『新たなる力、起動!』 数分後、海鳴市上空ではヴィータとザフィーラが局員に囲まれていた。 その数、およそ十。数では局員の側が遥かに有利だ。 小さく舌打ちし、ザフィーラがぼやく。 「管理局か……!」 「でも、チャラいよこいつら。返り討ちだ!」 そのぼやきに対し、ヴィータが返答する。 数は多いが、それでも一人一人は大した相手ではない。というより、むしろ多くの魔力を得る好機。 そう考えたヴィータは、まとめて倒すべくグラーフアイゼンを構える。 だが、戦端は開かれなかった。局員たちがすぐにその場を離脱したのだ。 「え……?」 「上だ!」 その意味が分からず、呆けた声を出してしまうヴィータ。捕らえに来たのなら、何故離れる? その答えは、ザフィーラによってすぐに明かされた。上に何かがいるという事実に。 上を見ると、遥か上空にクロノがいた。愛用のデバイス『S2U』を振り上げ、周囲には無数の剣を出して。 「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!」 その咆哮とともに、S2Uを振り下ろす。 動作に連動し、周囲に浮かぶ無数の剣を流星のように降らせて。 無数の剣で滅多刺しにする魔法。処刑(エクスキューション)とはよく言ったものだ。 ザフィーラがすぐに防御魔法を展開し、受け止める。攻撃範囲が広いので、展開するサイズは必然的に大きくなる。 そして着弾と同時に一斉に起爆。その煙がクロノの視界から二人を隠した。 「ハァ、ハァ……少しは通ったか?」 それを上空から見ているクロノ。あれだけやったのだから、疲労だって当然ある。 だが、それだけの効果はあったはずだ。その疲労に見合うだけの威力は確かにあるのだから。 煙が晴れた所には、無傷のヴィータと剣が三本ほど刺さったザフィーラ。 しかし、その刺さった剣もどうやら浅いらしく、大したダメージは無いようだ。 「ザフィーラ!」 「案ずるな。この程度でどうにかなる程……ヤワではない!」 そう言うとザフィーラは腕に力を込め、刺さった剣を落とす。 対するヴィータも、ニヤリと笑って答えた。 「……上等!」 そう言うと、ヴィータは敵意を全開にしてクロノを睨み付けた。 その頃、時空管理局本局。 転移を終えた甲児が、本局の廊下を全力疾走している。 時たま「廊下で走るな!」という怒号が聞こえたが、今はそれを聞き入れている場合ではない。 だが、ある程度走った所でふと気付く。彼はどこにマジンカイザーがあるか知らないのだ。 解析しているという事は技術部だろうが、その場所が分からない。全くのタイムロスである。 戻って見取り図を探そうと、反転。すると、そこにマリーがいた。よく見ると、息が上がっている。 「甲児さん、マジンカイザーの解析終わりました! いつでも使えます!」 そう言って、マリーがスタンバイモードのマジンカイザーを渡す。どうやら届けに来てくれたらしい。 わざわざ届けにきた事といい、おそらく事情は聞いているのだろう。 これは甲児にとっては嬉しい誤算。わざわざ見取り図を探す手間が省けた。 「サンキュー、マリーさん!」 甲児は笑顔で礼を言い、マジンカイザーを受け取って転送ポートへと駆け出す。 その後姿を見送るマリー。だが、今の彼女には疑問……というか、気がかりな事があった。 「でも、いくら別の次元世界のロボットが変化したからって、あんな高性能すぎるデバイスになるものなの……?」 それは、マジンカイザーの異質さである。 そもそも、全身に纏うデバイス自体が珍しく、その上にかなりの高性能。 おそらくストレージデバイスとしては、現在開発中の『デュランダル』にも匹敵するだろう。 まあ、この高性能はベースとなったマジンカイザーが凄まじい性能を誇っていたと考えれば納得がいくが。 ……それだけならまだしも、マジンカイザーには二つのブラックボックスが存在している。 一つは例の暴走スイッチだとしても、もう一つは一体何なのだろうか…… 『武装局員、配置終了! オッケー、クロノ君!』 「了解!」 エイミィの通信を受け、了解の意を返すクロノ。その顔には、ヴィータが今浮かべているもの……敵意が浮かんでいた。 だが、相手は今の所二人。それに対し、こちらはクロノ一人。状況は不利だ。 『それから今、現場に助っ人を転送したよ!』 その台詞に、クロノの顔から敵意の色が薄れる。 来たのは一体何者か。そう思って周りを見ると、なのはとフェイトの姿があった。その近くにはユーノとアルフの姿も。 そしてなのはとフェイトは、甦った自身のデバイスを掲げ、叫んだ。 「レイジングハート!」 「バルディッシュ!」 『セェーット、アーップ!』 声に反応し、レイジングハートとバルディッシュが光を放つ。ここまでは前と同じ。 だが、ここから先は前のものとは違う。光の帯がなのはとフェイトの周りを螺旋状に走り、それに呼応するかのようにレイジングハートとバルディッシュが喋り出す。 「え? こ、これって……」 「今までと……違う?」 その差異は、少なからずなのはとフェイトを驚かせる。 これは一体何事だろうかと思っていると、エイミィからの通信が入った。 『二人とも、落ち着いて聞いてね。レイジングハートもバルディッシュも、新しいシステムを積んでるの』 「新しい……システム?」 『その子たちが望んだの。自分の意思で、自分の思いで!』 そう、レイジングハートもバルディッシュも、先日の戦いで主を守りきれなかったことを悔やんでいた。 その悔しさは、本来インテリジェントデバイスに組み込むようなものではないシステムを組み込むよう、管理局へと要請する程。 そして、その結果は……今のように、新たなる力を得たという事である。 『呼んであげて……その子たちの、新しい名前を!』 その強化の結果、デバイスの名も変化している。まるで力を得たという証のように。 その名は…… 「レイジングハート・エクセリオン!」 「バルディッシュ・アサルト!」 『Drive ignition.』 一方、結界の外。 騎士甲冑を纏ったシグナムが、空から結界を見据えている。 その手に握る剣はレヴァンティン。そのデバイスとともに、今の状況を察した。 「強装型の捕獲結界……ヴィータ達は閉じ込められたか」 『行動の選択を』 シグナムはレヴァンティンにそう言われるが、最初から取る手段は決まっている。 彼女の中には、ここで引くなどという選択肢は無い。そうなれば、必然的にこの選択となるだろう。 「レヴァンティン、お前の主は、ここで引くような騎士だったか?」 『否』 「そうだレヴァンティン。私は、今までもずっとそうしてきた」 そう言いながら、レヴァンティンを構える。 レヴァンティンからはカートリッジが排出され、それがシグナムの魔力と合わさって炎と化す。 シグナムの選択、それは結界をぶち抜いて突入するというものだった。 「紫電一閃!」 咆哮とともに、結界へと突撃。そのまま渾身の力で炎を纏った斬撃『紫電一閃』を見舞う。 だが、堅い。全力での紫電一閃を叩き込んでも破れない。 やむを得ず一度離れ、もう一撃叩き込もうとするが……それは突然の声に中断させられた。 「シグナムさん!」 彼女にとってあまりにも聞き覚えのある声。 何故今その声がするのかと疑問に思い、声の方へと振り向く。 すると、そこには一体の人型の何かがいた。 これは一体何者だという念がすぐに浮かぶが、先程の声とあいまってすぐに正体を察した。 「その声……まさか、デュークか?」 視点は再び結界の中へと移る。 なのはとフェイトがセットアップを終え、ビルの屋上へと着地する。進化したデバイスには、カートリッジシステムが搭載されていた。 彼女ら曰く、戦いに来たのではなく、闇の書を完成させようとする理由を聞きたいだけらしい。 それに相対するヴィータは、腕を組んだままこう返した。 「あのさ……ベルカの諺にこんなのがあんだよ。『和平の使者なら槍は持たない』」 急に言われたベルカの諺に、意味が分からず困惑するなのは。 フェイトの方を向いて「意味、分かる?」と目で聞くが、どうやらフェイトにも分からなかったらしく、首を横に振る。 そしてヴィータが武器を向け、その真意を告げた。 「話し合いをしようってのに武器を持ってやって来る奴がいるかバカって意味だよ。バーカ」 「いきなり有無を言わさずに襲いかかって来た子がそれを言う!?」 両者ともごもっとも。 「それにそれは諺ではなく、小話の落ちだ」 「うっせぇ! いいんだよ細かい事は」 敵味方双方からのつっこみを受け、逆ギレするヴィータ。間違いを指摘されて逆ギレとは、どうやら気が短いようだ。 というか、諺と小話の落ちとの違いは細かいことではないと思うが…… と、その時である。 ズッガァァァァン! 轟音。それとともに、上空から二筋の光が降ってくる。 光は同じような轟音を立てて近くのビルに着地。それとともに巻き上げられた埃がその光の正体を隠す。 そして埃が晴れた時、そこにはシグナムともう一人の姿があった。 本人とシグナム以外は、そのもう一人……デュークの存在を疑問視する。こいつは一体何者だろうかと。 そしてその直後、なのは達の近くのビルに転移魔法陣が現れる。そこから現れたのは甲児だ。 「遅かったな、甲児」 「悪ぃ悪ぃ、あっちでちょっと手間取っちまってな」 甲児とクロノがちょっとした軽口を叩く。 その「手間」とは無論、マジンカイザーを探して走り回ったあの時の事である。 と、甲児の目にデュークの姿が映った。いや、正確にはデュークの纏っているグレンダイザーが。 (ありゃあ……まさか、俺のカイザーと同じだってのか?) 前へ 目次へ 次へ
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――程良く整備された林道を、その一行は歩いていた。 賑やかに、にぎやかに。 それはそれは、賑やかなものです。 先頭を行くのは赤と緑の瞳を持つ女の子。「あっるっこー、あっるっこー♪」 その右側には、黒い猫の耳と尻尾を持つ女の子。 「わたっしはぁ、げぇんきー♪」 その左側には、白い猫の耳と尻尾を持つ女の子。 「あっるくのー、だいっすきー♪」 それはもう元気よく、 「「「どぉんどぉん、ゆーこーおー♪♪♪」」」 声高らかに、歌います。 この歌は、先頭を行くヴィヴィオが、ニジュクとサンジュに教えたもの。 今やすっかり仲良しさんな三人は、遊び疲れも何のその、双子もすっかりお気に入りとなりましたこの歌を、 気持ちよく元気よく、合唱しながら、脇目もふらず行進します。 「ねぇ、ヴィヴィちゃ?」 「なに、ニジュク?」 「このおうた、たのしいね」 「でしょ、楽しいでしょ♪」 「ねぇ、ヴィヴィちゃん?」 「なに、サンジュ?」 「あるくの、たのしいね」 「このお歌歌うと、歩くの楽しくなっちゃうよね」 ヴィヴィオの言葉に、うんうんと頷く、ニジュクとサンジュです。 「このおうた、なのさんに、おそわたの?」 元気よく腕を振りつつ、ニジュクが尋ねます。 「そだよ、これは、なのはママに教わったの」 やっぱり腕を振りつつ、ヴィヴィオは答えました。 「ほかにも、いろんなおうた、しってるの?」 瞳をキラキラさせて、サンジュが尋ねます。 「うん。あと、フェイトママとか、はやてお姉ちゃんとか、色んな人から教わったよ」 コロコロと笑いながら、ヴィヴィオは答えました。 「ふぇいと、まま?」 「はやて、おねえちゃ?」 双子が首をかしげます。 「ヴィヴィオのもう一人のママと、ママ達の友だち。やっぱりとっても優しくて色んな事知ってるの。二人にもあとで会わせたげるね」 「やさしいの? ほんとに?」 「もちろん」 「もっとおうた、おしえてくれる?」 「だぁいじょうぶ♪」 ヴィヴィオはウインクして答えました。 「たのしみぃ♪」 「たのしみたのしみ♪」 双子の腕が、よりいっそう元気よく振られます。 「あっるっこー、あっるっこー♪」 「わたっしはぁ、げぇんきー♪」 「あっるくのー、だいっすきー♪」 「「「どぉんどぉん、ゆーこーおー♪♪♪」」」 三人の子供達の元気な歌声が、公園出口に続く林道に、それは元気よく響き渡ります。 その子供達の背中を見つめながら、林道を歩く大人二人。その周りを小さな影が飛び回っている。 「やれやれ。でも、本当に、聴いてて元気の湧いてくる歌ですね」 いかにも重そうな棺桶を、特に苦も無さそうに背負う、黒ずくめの旅人が、 その大きな帽子の鍔をつまみ上げて言った。その表情は、控えめに、苦笑。 「ええ」 そんな黒い旅人――クロの様子に、本当に何故か可愛いな、と思いつつ、 管理局の白いエース――高町なのはは答えた。その表情は、対照的に、晴れやかな笑顔。 「心が挫けそうな時に歌うと、本当に元気になっちゃうんですよ、あの歌」 「まっ、おかげであの二匹、まぁた無駄に元気になっちまったけどな」 その二人につかず離れずパタパタと飛び回る、小さな黒い影――コウモリのセンが、半ば呆れたように言った。 「もっとも、疲れてへたり込んでる二匹見るよか、全然良いかもな」 二人の顔を見つめて、言った。 「何より、見ていると、なぁんかこっちまで無駄に元気になってくる。無駄に気持ち良く、な」 「無駄に無駄に、って言うのは、ちょっと余計じゃないかな、センさん?」 なのはがセンに、些か眉をつり上げて迫る。 しかし、すぐに相好を崩し、 「でも、つられちゃいますよね」 そして、そんななのはの言葉に、 「元気は、無いより、あった方が良い」 クロはこくりと頷いた。 「そうでなくては、少なくとも私達は旅を続けられませんから。なのはさんや、ヴィヴィオちゃんも、ね」 そして、なのはに穏やかな笑顔を向ける。 「ええ、みんな、元気でいるのが一番です、にゃはは」 なのはは、はつらつとした笑顔で答えた。 「はぁ~あ、仲良きことは良きことかな、あっちもこっちも、仲良しこよしでございー、っと」 そんな二人の様子に、大仰に溜息をついてセンは空中でくるりと一回転をして見せた。 だが、特に拗ねてる風も無し。 しいて言えば、……いや、敢えて言うまい。 きっと、セン自身が知られたくはないだろうから。 「――そう、言えば」 不意に、なのはは何かに思い当たったようだ。 「クロさん達って、そもそもどのくらい旅をしているんですか?」 傍らのクロに、そう尋ねた。 「……もう、どのくらいになる、かな」 クロは、自分に言い聞かせるように、言った。 「ねぇ、セン、覚えてる? 私達が故郷を離れて、どのくらいになるのかを」 「さぁてね、もう年月を数えるのも面倒になっちまったしなぁ」 クロの棺桶で羽を休めつつ、センはあごに手(?)をやって瞑目。 そして、あごをさすりつつ、 「ただ、お前が十歳に近くなった頃に、旅を始めたってのは覚えてる。よくびーびー泣いてたのもな、へへ」 片目を開けて、にやりと笑った。 「……それは、忘れてくれる方が良い」 帽子の鍔で、クロは表情を隠す。 「はぁ~、そんな頃から、旅を」 きっと自分は今、驚くやら、呆れるやらと言った、複雑な顔をしているだろうなと、なのはは思った。正直、言葉に詰まった。 「そうなると、とても大変だったんじゃないですか? むしろ、それ以前に何でそんな」 「『そんな小さな頃から旅をしているのか』……そうですよね」 クロは、なのはに顔を向ける。 「普通、そんな歳で何時終わるとも知れない旅に出る、なんて信じられないですよね」 呟いて、顔を背けて、鍔でクロは顔を隠す。 なのはは、何かを言いかけて、しかし、押し黙った。かける言葉が見つからなかった。 「――なんか、むつかしいかお、してるね」 「どうしたのかな、クロちゃんになのさん?」 「ママ、クロさん……」 後ろの様子に、子供達の顔も些か曇り気味です。 ちょっと先を行き過ぎて二人の声は聞こえませんが、様子がおかしいことくらいは解りますから。 「……仕方ないですよ、旅に出るしかなかったのだから」 やがて、クロが口を開く。努めて、明るく振る舞う声だった。 「私達が、私達を取り戻すために」 「ああ、そうするしかなかった」 センが、続く。 「『あいつ』の後を追いかける。そして捕まえる」 さっきまでとは違う、神妙な面持ちのセン。 「『あいつ』にかけられた魔法を解くには、それが近道だからな」 なのは、絶句。 そして、クロにであった時に漏らした言葉を思い出す。 『あなたの体は、もしかして本当は――』 あなたの本当の体では、ないのではありませんか、と。 (そう、私はクロさんに出会って、不意にそんな気がして、思わず口にしちゃったんだけど……) その勘は、正しかったのだ。 あの時はうやむやにされたが、成る程。 「でも、……だからって、だからって」 何で、そんなの平気だって顔を、無理矢理作ろうとするの。絶対、辛い旅路だったはずなのに――。 なのはの足が、止まる。 「……なのはさん?」 そのことに気付き、クロも足を止め、ふり向いた。 「――センさんの言う『あいつ』って、どういう存在なんですか、クロさん」 クロに顔を向けず、なのはは尋ねた。 「……申し訳ありません」 「教えて、くれないんですか?」 「……すみません」 「もしかしたら、何か力になってあげられるかも知れないのに?」 「……そこまで、甘えさせてもらうわけには、いきませんよ」 涼しい表情で、クロはそう言った。 なのはは、バスケットを持つ手に力がこもっている自分に気付いた。肩も、小刻みにふるえているかも知れない。 「私、クロさんに、とって、一体……」 「――ああ、ところでなのはさん、ヴィヴィオちゃんの言っていた、フェイトさんやはやてさん、て」 唐突に、クロは話題を変えようとした。 努めて、明るく振る舞って。 なのはの中で、何かが弾けた。 「クロさんッ! はぐらかさな――」 唐突に、クロの指が、激昂寸前のなのはの唇に、柔らかく押し当てられる。 問答無用で、なのはは沈黙させられた。 「子供達が見ています。あの子達に、いらぬ心配をかけさせられない」 「……」 「申し訳、ありません……。私達を気遣ってくださって、心から気遣ってくださって、……ありがとう、ございます」 「……」 「だから、時が来れば、全てをお話しします。お約束、します」 クロの顔は、穏やかに笑っていた。 その口調は、穏やかに、努めて明るく。 しかし、喋る言葉は、途切れ途切れで。 そして、大きな丸ぶち眼鏡の奥の瞳は、心持ち潤んでいるように見えた。 「本当に、あなたは優しい人だ……。だから」 クロは、ゆっくりと指を離した。 「きっと、その約束は果たされるでしょう」 心の何かを堪えるように、棺桶のバンドを握る手に力がこもっているようだった。 そんなクロを見て、なのはは何かを言いかけ、――口をつぐんで頭を振った。 そして、大きく深呼吸。何かを吐き出すように、大きく、息を吐き出した。 「……解りました。でも、約束ですよ?」 そう言って、ウインクをした。肩の力は、いつの間にか抜けていた。 「はい」 笑顔で答える、クロ。その笑顔は、今日見たものの中でも、とびきりのものの様に、なのはには思えた。 そんな時でした。 「ママぁ~、クロさぁ~ん」 ヴィヴィオの声が近づいてきます。 「クロちゃぁ~ん」 「なのさぁ~ん」 ニジュクとサンジュも、近づいてきます。 「おーおー、今にもこけそうな勢いだな」 ニヤニヤと、センが見つめる。 「おいおい」 クロはセンに呆れて、 「うーん、ホント、心配かけちゃったか」 なのはは苦笑してぽりぽりと頬を掻いた。 そして、ぽてぽて駆けてきた子供達は、 「ママぁ、おそぉい」 「クロちゃ、おそぉい」 「クロちゃん、はやくぅ」 なのはとクロの胸に、それぞれ勢いよく飛び込みました。 「ごめん、ヴィヴィオ。よしよし」 「二人とも、済まない。さあ、急ごう」 二人は子供達の頭を、やさしく撫でた。 「うん、急ごー♪」 「いそごー♪」 「いそごーいそごー♪」 子供達は、無邪気にはしゃぎます。 でも、 「なのはママ、クロさんとけんか、良くないよ?」 「……ごめんなさい」 釘を刺すことを忘れない、ヴィヴィオでした。子供だって解りますよね。 さて、今回の旅話。 何やら、色々とありそうな予感です――。 「フェイトちゃんとはやてちゃんは、私の同級生で、やっぱり時空管理局の魔導師なんです」 先程のクロの問いかけに、なのはは答えた。 もちろん、歩きながら。 幼なじみの、同僚のことを。 「ふむ」 「出会いは突然で、ぶつかり合ったこともあったけど」 にっこりと笑って、なのはは言った。 「かけがえのない、大切なお友達です」 「そうでしたか……」 クロは笑顔でそう言った。少し寂しそうで、羨ましそうな笑顔で。 「ついこの間まで、一緒にお仕事してたよね、ママ?」 なのはママと手を繋いで歩いていたヴィヴィオは、弾むような言葉で言いました。 「いっしょに?」 「おしごと?」 クロと手を繋いでいたニジュクとサンジュは、首をかしげます。 「ああ、機動六課、とか言いましたっけ?」 思い出したように、クロは言った。 「ええ。色々大変だったけど、あの二人や、四人の教え子達、その他にも色々な人に支えられて、……楽しかったなぁ」 「へぇー、楽しかったねぇ」 センは、何か含みのある様子で、ニヤニヤと薄く笑って呟いた。 「ええ、楽しかったですよ?」 眉を微かにつり上げるなのは。 「うーむ、自信ありげにそう言われると、……解った、俺が悪かった、なのはちゃん」 セン、両手を挙げる。 「解れば、よろしい」 「ふふ、なのはさんの迫力には、皮肉の一つも言えないかい、セン?」 「俺のコウモリとしての本能が、余計なことをこれ以上言わせようとしないのさ♪」 「何となく、懸命な判断のような気がするよ、私も」 「あー、クロさんまでぇ」 「ふふ、すみません♪」 クロ、顔を鍔でまた隠す。きっと、いたずら小僧な笑みを浮かべているに違いない。 「ねえねえ、なのさん?」 「ん、どうしたのかな、サンジュちゃん?」 「その、ヴィヴィちゃんのゆう、ふぇいと、まま?や、はやて、おねぇちゃん?には、いつ、あえるのかな?」 真顔でサンジュが尋ねます。 「うーん、そうだね」 「ママ、はやてお姉ちゃんは、ヴォルケンリッターのみんなと一緒に、今日はお休みだったよね?」 「おやすみ?」 ニジュクが首をかしげます。 「うん、そうだった。だから、はやてちゃん達だったら、帰ったら紹介できるかもね」 「あえるの?」 「おうた、おしえてもらえる?」 「大丈夫だと思うよ。でも、あっちも久しぶりの休日だし、家族で出かけてるかも」 「なのはさんや、ヴィヴィオちゃんみたいに?」 「ですね。あの二人も、色々忙しくて……」 少し寂びそうな顔の、なのは。 「本当に、仲がよろしいんですね」 「ええ。だから、クロさん達にも本当に紹介したくて」 声が、弾む。 「きっと、仲良くなれると思うから」 クロは、こっくりと頷いて、 「とても、楽しみです」 しみじみと言って、笑顔を見せた。 そうこうするうちに、公園出口の駐車場に近づきました。 「あっ、クロちゃ、あそこ」 「どうしたの、ニジュク」 「あそこにひとがいるよ」 「あっ、ほんとだ」 白い双子が、指を指します。 その先には、家族と覚しき一団がいました。 「あー、噂をすればで、もしかしてはやてちゃん達だったりして、なんてね」 なのはは冗談めかした。流石に、そんな偶然はないだろうと思って。 「ママ、あの人達、はやてお姉ちゃん達だけど」 「――へっ?」 なのはは、軽く混乱している。 そんななのはを横目にするように、 「おーーーいッ、なのはちゃぁぁぁぁぁんッ♪」 一団の一人が大声で名前を呼んで、大きく手を振っていた。 京都風の関西訛りで、なのはを呼んでいた。 なのはは、それが誰なのか知っている。 ただ、そんな、まさか、ねぇ……。 「えっと、なのはさん。お知り合いですよ、ね?」 クロが、ぼやっとしているなのはに尋ねた。 「……はい、お知り合いです」 ぼやっとしつつ、何とか答える。 「今、手を振ってる彼女が、……幼なじみの、八神はやてちゃん、です」 「あー、あの方が」 クロは、眼鏡をかけ直しつつ、頷いた。 それにしても、 「あれっ?」 本日は偶然の出会いの多い、一日である。 「改めて紹介します。こちらは、私の幼なじみで、時空管理局の」 程なく合流して、なのはがまずクロ達に紹介したのは、 「特別捜査官をしております、八神はやて言います。宜しゅう、お見知りおきを」 はやてであった。はやては黒い旅人達に対し、ラフに敬礼をして笑顔を見せる。 クロ達は、取り敢えず軽く会釈した。 「で、その隣の――」 「ああ、なのはちゃん、あとは私が」 続けて紹介しようとするなのはを制し、はやては、ヴォルケンリッター、――すなわち、「自分の家族のことくらい、自分で紹介せんと、な」 そう言って、『自分の家族』に振り向く。 「ではまず、私のすぐ隣から、シグナム」 「初めまして、シグナムと言います」 ピンクのポニーテールをなびかせて、その女性は、一介の剣士のように礼をした。何者をも威圧するかのように、 キリッと引き締まった瞳の奥に、実はそこはかとない優しさがあるように、クロには思えた。 「次が、ヴィータ」 「ヴィータです、よろしく」 大きなおさげの赤髪の女の子が、素っ気なく軽くお辞儀をした。 そんな、ちょっとぶっきらぼうに挨拶したヴィータでしたが、ニジュクはそんな彼女に興味を持った様子です。 「それから、シャマル」 「どうぞ、よろ、し、く……」 ある方向を気にしつつ、金髪の女性が会釈する。顔は、引きつり気味だった。 シャマルは先程から、自分をネットリジットリと見つめる小さな黒い影が、とても気になって仕方がないようである。 「それで、トリは、リインフォースⅡに、アギト」 一見すると羽のない妖精のような、薄い青紫の髪の小さな女の子と、コウモリのような羽を持つ、赤い髪を持つやはり小さな女の子が、はやての視線の先で宙に浮いていた。 「初めましてですぅ。私のことは、リインと呼んで下さいね」 「えーと、アギト、です。よろしく……」 明るく笑顔を振りまいて挨拶したリインと、対照的にもじもじと恥ずかしそうに挨拶したアギトに、サンジュは眼をキラキラ輝かせています。 そしてはやては、クロ達に、 「これが私の、自慢の家族、です」 と言った。満面の笑顔だった。 なのははふと、傍らのクロの顔を見た。クロさん、何とはなしに羨ましそうな顔をしているなと、なのはは思った。 「あと、ザフィーラも紹介したかったんやけど……」 「別のお仕事なの、ザフィーラ」 「ああ。考えようでは、重大な、とも言えるかもな」 シグナムが、意味ありげな笑みを浮かべ、なのはに答えた。 「えー、ザフィーラの背中、二人に乗ってもらいたかったのにー」 ヴィヴィオは、とても残念そうです。 「なんで、ヴィヴィちゃ?」 「ザフィーラって、とぉっても大きな犬さんで」 「狼だっていってやんねーと、また怒られるぜ?」 ヴィータが腕を組み、苦く笑って、呟く。 「ヴィヴィオが『お馬さんして』って言うと、背中に乗せてくれてお馬さんしてくれるんだよぉ」 「おー、おうまさん」 「あたしも、のせてくれるかな?」 「あー、あたしもあたしも」 「優しいモン。大丈夫だよ。ね、はやてお姉ちゃん」 「そやな。あのザフィーラも、ヴィヴィオにはえらく甘いからなー。ヴィヴィオのお願いなら、きっと聞いてくれる思うよ」 「ほんと?」 サンジュが怪訝そうな顔で尋ねます。 「うん、ほんまや、……ええっと、あんたは」 「サンジュっ!」 「サンジュちゃん、やね」 「で、あっちがニジュク」 「サンジュっ、そゆことは、おねえちゃのあたしが、するのっ!」 自分のことを、(一応)妹のサンジュに紹介されて、(一応)お姉さんのニジュクはちょっとご立腹です。 「えー、でも」「でも、じゃないの」「だって」「だって、じゃないの」 「えーと、二人とも……」 「はい、二人ともケンカはそこまでねー」 二人に挟まれおろおろするヴィヴィオに、シャマルがやんわりとフォローを入れる。 「二人がケンカしちゃうと、ヴィヴィオ、困っちゃうから、ね」 言われて、双子はヴィヴィオを見ました。 確かに、困った顔をしています。 「あっ……」「ヴィヴィちゃ……」 「それに、紹介の順番よりも、紹介すること自体が大事なことで、してもらう方はあまり気にしないものなのよ」 「……」 「だから仲直り、ね」 双子にシャマルは、微笑みかけます。 「……うん。ごめんね、サンジュ」「……うん、ニジュク」 お互いの頭をなで回す、ニジュクとサンジュです。そんな双子に、ヴィヴィオもほっとした顔をしました。 「あっ、じゃあ」 「どしたの、ニジュク?」 「まだクロちゃのしょうかい、してないよ」 「おー、そうだね」 と言うことで。 「こっちの、まっくろくろいひとが」「たびびとのクロちゃんですっ」 双子はクロの手を引っ張って、声高らかに紹介しました。 「……どうも、ただ今、この二人のご紹介にあずかりました、しがない旅人のクロです」 いつものように慇懃に頭を下げる。ただし、両腕を引っ張られつつ。 しかし、いつものこととは言え、幼子の思考や言動、そして行動というのは、どうしてこうも唐突且つ、突拍子もないものなのか……。 「えっと、色々、苦労をされているようで」 「まぁ、慣れてますから」 少し心配げに声をかけてきたシグナムに、クロは少し苦く笑って答えた。 「なあ、二人とも」 「えっ、なあに、ヴィーちゃ?」 「はッ?」 「ヴィーちゃんはヴィーちゃんじゃないの?」 「……あー、そう言うことか」 まあ、取り敢えず。 「あたしの呼び方はそれでいーや、お前達の好きなように呼べばいい。それより」 「「なに?」」 「あのコウモリのこと、紹介してくんねーかな? 旅の連れなんだろ、お前らの?」 腰に手を当て、親指でセンを指さす、ヴィータ。 「おー、そだった」「わすれてた」 「ッて、マジッスかッ!?」 思わず双子にふり向くコウモリ。 しかし、それまでシャマルにネットリと視線を送っていたことを、忘れてはならないと思う。色々な意味で。 そして、双子はコウモリを指さして、 「で、あれがセン」「おわりー」 紹介終了。「ッて、説明短ッ!」 「……なあ、そんなんで良いのか?」 呆れ顔で、アギトは双子に尋ねる。ヴィータは何も言わず、苦笑い。 「うん、いいよー」 「良いわけねーだろッ、そこの二匹ッッ!!」 喚くセン。しかし双子、無視。 「センはセンだもん、アギちゃん」 サンジュは、何気なく言いました。 「アギ、ちゃん」 しかし、アギト、絶句。 「良いじゃないですかぁ、アギト。可愛いと思うですよぉ」 そう言うリインの顔は、吹き出しそうになるのを堪える表情、であった。 「うっせぇ、バッテンチビッ!」 「あー、だからその呼び方は禁止ですよぉ、アギト」 「うっせぇ、ばーか。あたしがアギちゃんなら、お前なんか」 「何ですかッ!」 「もー、ケンカは止めてぇっ! ニジュクとサンジュの目の前だよぉッッ!!」 リインとアギトに割って入ったのは、ヴィヴィオでした。 「シャマル先生が、二人にケンカいけないって言ったばっかりなのに、そんなことしちゃ、ダメーッ!」 すごい剣幕です。いつものヴィヴィオからすると、想像がつきません。 そんなヴィヴィオに、 「えっ、あっ、ああ」 「ごっ、ごめんなさいです……」 二人は押されてしまった。 「そぉだよ、アギちゃん」 「そぉそぉ、リイちゃ」 ニジュクは、もちろん何気なく言いました。 「リ、リイちゃ、ですか……」 そんな訳で、今度は、リインが絶句した。 「あっはは、リイちゃんかよ、人のこと笑えねぇなぁ、あーっはっはっ」 アギトは腹を抱えて、思いきり大笑い。 「もーう、笑うなですぅッ!」 リイン、両腕を振り上げて抗議。 「うっせぇ、リイちゃん♪ あーっはっはっ」 「だから笑うなですぅッ!」 リイン、アギトに腕を振り回して突撃。 アギトは笑いながら、右に左に、ひらひらとリインの攻撃をかわす。 「もーう、避けるなぁ、ですぅッ!」 「うっせぇ、あっかんべー」 「だから二人ともぉ」「けんかしちゃ」「だめなのぉっ!」 子供達は、そんな二人を大声でたしなめます。 しかし、アギトは逃げる、リインは追う。 そんな二人を、子供達は追いかけ。 何時の間にやら、大人達から離れていきます。 一連の様子を見ていたクロは、 「そちらも、気苦労が多いみたいですね」 はやてに呆れ顔で言った。 はやて、軽く肩をすくめて、 「せやけど、楽しいことも結構ありまして」 まだ続くケンカを、むしろ微笑ましそうな顔をして見つめつつ、 「むしろ、毎日が楽しゅうて、仕方ないんですわ、ふふ」 「そう、ですか」 クロ、目を丸くして眼鏡をかけ直す。 「あの、毎日、ですか?」 たどたどしく、尋ねる。 「はい、毎日です」 きっぱりと、返答された。 「……」 何も言わず、また眼鏡をかけ直す。 この人は、まだ若いのに、器がかなり大きいようだ、――色々な意味で、と思いながら。 「そう言えばさ、はやてちゃん?」 やはりケンカを眺めつつ、なのはが尋ねた。 「ン? 何やの?」 「はやてちゃん達がここにいるって事は、やっぱり?」 「ヤン提督からの、お願いや」 「ヤンさんから、ですか?」 「そうです、クロさん」 はやては笑みを絶やさず、しかし、口調を少し改めて、クロに向かって話し始めた。 「あなた方が、別の世界から何らかの原因で、突然、時空転移したことを、ヤン提督より伺いました」 コホンと、咳を一つ。 「ほんで、しばらくの間、なのはちゃんに身を寄せることも」 クロは、なのはを見やって、すぐにはやてに視線を戻す。 「せやけど、なのはちゃんは基本的に、そう言った人を保護できるような立場やない。当然、権限はない」 「つまり、いくらヤンさん、……提督の指示で、と言っても、あまり好ましくないことである、と」 「その通り」 クロの言葉に、はやては頷いた。 「この場合は、やっぱり専門の保護観察官の人なんかに頼むべきやろけど、完全に見も知らん、 へんてこな世界に放り出されて不安が一杯や、ゆうような人に、 今の管理局の人間が十分なケア等が行えるか、そんな不安があることも確かですわ、恥ずかしながら」 「何か半年ぐらい前、えらく大きな事件があったってのは、なのはちゃんから聞いたぜ。それが、そんな考えになっちまう理由の一つかい?」 センが腕を組みつつ、話に割って入る。 「お前、コウモリのくせに妙に生意気だな」 ヴィータ、露骨に顔をしかめた。 「やめてヴィータちゃん。センさん、こう見えて私より年上らしいから」 「ふーん。でも、コウモリだぜ、なのは?」 「そこは、クロさんのお連れさんだって言うことを考慮して、て言うか」 「ふーん、……ま、お前がそう言うなら、いいさ」 ヴィータの沈黙を見計らって、はやてが話を続ける。 「まあ、そのセンさんのご指摘の通りや。確かに、まだ、その事件からのダメージから、管理局は十分に回復できてへん」 はやての顔に、薄く影がさす。しかし、何とか笑顔を取り繕おうとしているのが、クロには見て取れた。 「正直、私としても、そんな人達に今の管理局が十分なケアをしてあげられるかゆうたら、……難しいって言いたいわ」 「まさか、そこまで、あの人は考えて」 クロは改めて、心の中でヤンに感謝した。 「で、私らにも白羽の矢を、提督は立てはった、て言うことですわ」 はにかんで、はやては言葉を続ける。 「えッ、でも、はやて、……ちゃん達って」 「なら、そういうこと出来るのか、って言いたいんだろ、コウモリさんよ?」 「ヴィータちゃん、ちょっと」 「良いんだよ~、僕は別に気にしてないから~、シャマルさぁ~ン♪」 「あっ、そっ、そうです、か……」 センのラブラブ視線を受け、シャマルはたじろぐ。 「あはは……」 なのは、苦笑い。 「まあ、センさんの懸念ももっともやけど、うちにはシャマルがおるしな」 「一応、管理局の医務官やってますので、クロさん達のメンタルケアなんかも、それなりにですけどして差し上げられるかと」 シャマルは物腰柔らかに話した。 「そうなんです、か」 「せやから、ヤン提督が、クロさん達が本当に安心して、管理局に身を預けられる体制が整ったと判断されはるまでは、 なのはちゃんと私達が、クロさん達のお世話をさせていただきますよって」 「本当に、よろしいのですか?」 「何か、こう、……夢みたいな話ってのか」 「セン殿、現実だ」 シグナムが、涼しくも、優しい眼差しを向けて、頷いた。 「大体、なのはちゃんもクロさんのこと仕事ということ以上に気にかけとるようやし」 「ちょっと、はやてちゃん」 なのはの顔が、些か紅潮する。 「それに、あのニジュクちゃんやサンジュちゃんのこと、聞いた限りでも、簡単に管理局保護下に置くゆうのも、何か危険な気がする」 子供達の声のする方を向く。ケンカはまだ続いていた。 「それ以上に、あの二人の猫耳と尻尾、かわいいし。何や、もふもふしたいしなぁ~~♪」 はやての顔が、だらしなく弛緩した。 「主はやて、そう言った性癖は、もう少し自重なされるのが宜しいかと……」 シグナムは、げんなりとした顔ではやてを諫める。 嗚呼、こう言ったところがなければ、まこと誇れる主と為られるだろうに……。 クロも、心持ちその発言を受けて引いていたが、気を取り直して、 「重ね重ね、皆さんには、何と言って感謝を申し上げれば良いのか、と」 はやて、頭を振る。 「こっちは、やりたくてやらせてもらう、そうゆうとるんですよ? せやから、あまり肩肘張らんと、ね」 「……本当に、ありがとうございます」 クロは、静かに頭を垂れた。 それしか、今の彼女には出来なかった。が、それで十分な気も、不思議としていた。 「さて、立ち話も何や、そろそろ移動しよか?」 「うん、そうだね」 はやての言葉に、なのはが頷いた。 「ちゅうことで、シャマル。申し訳ないんやけど……」 「子供達を呼んできて、ですね。承知しました、はやてちゃん」 シャマルはにっこりと頷いて、まだケンカの続いている子供達の元へ向かった。 子供達に向かうシャマルを眺めつつ、 「はぁ~~」 ヴィータを大きく溜息をついた。 「何だヴィータ、まだあのことを根に持っているのか?」 シグナムは半ば呆れ顔で言った。 「……だってよ、あたしがちょーどアイスに口を付けようってぇ時に、ヤン提督からのあの電話だぜ? せっかく送ってもらった、久々の○ーゲ○・ダッ○のストロベリー・パイント、ゆっくり味わいたかったのに」 「それは、本当にすみません、私達のために」 「あー、別にあんた達の所為じゃないから」 ヴィータはクロに手を振って見せる。 「仕方ないさ。あの提督のお願いだもんな、貴重な休日潰すことになってもな、……はぁ」 とは言ってみるものの、至福の時を邪魔された思いは、相当に強そうである。 「おいおい、あのオッさん、もしかして俺達が考えてる以上に、すごい人物なのかよ?」 「あの方に対し、オッさんとは、失礼な物言いだ。――まあ、少なくとも、外見とは裏腹の、一角の人物であるのは間違いないな、セン殿」 「そうだね。しいて言えば、……『英雄』かな?」 「えいゆう、ですか?」 なのはの言葉に、クロは大きく目を見開いた。 「大げさな物言いやない。あの事件かて、その後の管理世界間の政治情勢なんかも考えれば、 あたしらの思いもよらん方向に下手したら向かうところを、何とか軌道修正して、 取り敢えず現状維持に近い形まで、まあ、結果的にやけど世界秩序を持って行きはった」 「もちろん、あの人だけの力じゃないんだけど、そう言う方向に人の心を持って行ったりとかした功績って、計り知れないと思う」 「ま、そんな人をあたしら機動六課の特別管理官に、かなり強引に納めさせた誰かさんも相当なもんだと、あたしは思うけどなー」 「……その誰かさんて、誰のことやー、ヴィータぁ?」 ヴィータは何も言わず、「へヘッ」といたずらっぽく笑って鼻を擦った。 「はあ……」 クロ、開いた口がふさがらない。 「俺達、そんなすげぇ人物と話したのか……」 センは、ただ呆然としていた。 「センなんか、あの人のこと、押しつぶしてしまったしね」 「……」 コウモリはその時のことを思い出し、その小さな体を震わせた。 「つっても、そんなことを一々根に持つような人じゃねーから、まー、安心しな」 「まあな、普段は昼行灯を決め込んでおられる方だしな、ふふッ」 「休日のほとんどは、無限書庫で各世界の歴史書読みあさってらっしゃるし、ね」 「もう、ホンマ、歴史オタクやもんなぁ」 「はあ……」 クロは、普段の姿と功績の重さのギャップに、眼を白黒させて、ただ戸惑うばかり。 「成る程、そんな人の頼みなら、無碍には出来ないですね」 そして、頷く。 「つっても、あれから結構時間経ってるし。きっと今頃、あらかたクロさん関係の仕事片付けて、 地上本部の執務室で紅茶してるんだぜ。――あーッ、もう、あたしのストロベリー・パイント、返せーッ!」 ヴィータは、ミッドチルダ地上本部のある方角に向けて、力の限り叫んだ。 「はぁ、っくしゅんっ!」 おさまりの悪い髪の男がクシャミをしたのは、今まさにティーカップを手にしようとする直前。 ここは、地上本部の一室。 彼、――ヤン・ウェンリーは戻る車内と戻った本部内で一仕事を終え、ひとまず落ち着いて紅茶を嗜もうとしているところだった。 「おお、危なかった」 そう言って、執務机の側で、改めてカップを手に取り、口を付けようとして、 「……そうだな」 やおら机の引き出しを開け、ガラスの小瓶を取り出す。 そして、机の上にどっかりと胡座をかいて座り、小瓶の液体を少量、カップにたらした。 紅茶とはまた別の、芳醇な香りが鼻孔をつく。その香りを、しばし楽しむ。 「やはり、ブランデー入りが最高だ」 そう呟いて、口を付けた。 琥珀色の液体が、喉を伝い、体と心の渇きを、潤していった。 「……やはり、ユリアンの淹れてくれたのが、一番、かな」 そんな、叶わぬ贅沢を、寂しく呟いて、もう一口。 さて、飲み終わったら、もう一仕事だ。 「そんなに待ってたの、はやてちゃん?」 「まあ、一時間近く?」 「っ! ごめんね、お待たせしちゃって」 「本当に、申し訳ありません」 「しゃーないです。たぶんあの子らが云々ってとこやろけど、子供って、みんな大体そんなもんですやん♪」 はやてはカラカラと笑っていた。 ところで、ケンカはまだ続いているようだ。 シャマルが意外と手間取っている。 「仕方ねぇ。あたしも行ってくる」 「あまり、乱暴にはするなよ?」 「解ってらぁ。少なくとも、あたしはあいつらよりは大人だ」 手をひらひらさせてシグナムにそう言うと、ヴィータはケンカ会場に向かった。 「ところでなのはちゃん」 「何?」 「ジャックさんも来とったの、解った?」 「あっ、やっぱり来てたの?」 「ああ。ここに着いてすぐに、少佐にお会いした」 「提督のこと、連れ出したみたいだね」 「FAF絡みやから、きっと『あれ』のことや、思うねんけど……」 「やっぱり、そうなのかな……」 はやてとなのはの顔が、微かに曇る。 「……申し訳、ありませんが」 「あのよ、話見えてこねぇんだけど」 クロとセンは、置いてけぼりをくらった子供のような顔だった。 「ああ、ごめんなさい」 「ジャックさん言う人は、私らの知り合いの」 「管理局の外部協力軍事組織『フェアリィ空軍』のジェイムズ・ブッカー少佐のことだ」 「軍人さん、ですか?」 「はい。まあ、私らも似たようなもん、なんですけど」 「へぇ……。ま、申し訳ないけど、今は自分達のことは横に置いといてくれる?」 「もちろん。で、ジャックって言うのは、ブッカーさんの愛称なの」 「FAFの部隊の一つ、特殊戦という、主に偵察行動を主任務にしている戦闘機部隊を纏めておられる」 「――で、変人ばっかの特殊戦の中で、唯一人の常識人、それなりに話せて、面倒見も良い、ってところかな」 別の声が、割り込んできた。 「おっ、ヴィータお帰り。シャマルもお疲れさんやな」 「うんっ、ただいま」 「はあ、疲れましたぁ……」 そこには、まだ余裕のありそうなヴィータと、少々疲れた様子のシャマル、そして、げんなりとして浮遊するリインにアギト、更に、 「ヴィータふくたいちょー、やっぱりすごいね」 「ヴィーちゃ、すごいね」 「ヴィーちゃん、つよいね」 口々にそう言って、ヴィータにまとわりついたり、服の裾を引っ張ったりする子供達が、いた。 「はうう、はやてちゃぁん……」 「ヴィータの奴に、ゲンコツくらった……」 「当たり前だ、ばーか」 げんなりと文句を言うリインとアギトに、ヴィータは、 「大体、ガキ共の目の前で、魔法まで使おうとするなっての。つか、そこまで熱くなるか、普通?」 と、軽く睨みつけて叱った。 「うわ、それはあかんわ」 「氷と炎がぶつかり合ったら……」 「ただの爆発ではすまない、な」 「ごめんなさいです……」 「面目次第もねぇ……」 リインとアギトは、謝罪の言葉しか口にできなかった。 「あの、そんなに凄いことになんの?」 「センさん、少なくとも、あの子達が軽く吹き飛ばされちゃいます」 シャマルが、センに凄むように答えた。 「ああ、……さいですか」 気圧される、セン。 そんな皆の様子に、クロは、 「それは、本当に、大変なことで……」 目を見張りつつ、ヴィータに言った。 「まあ、あいつ等のあしらいには慣れてるし。それに」 「それに?」 「今頃、変人共の相手で四苦八苦してるはずのジャックさんの苦労に比べりゃ、大したこた無いって」 ひらひらと手を振ってみせる、ヴィータ。 「そう、なんですか?」 「あっ、むしろ今は、あの特に変人な親友の側で、ブーメランでも削ってるかも知れねぇな。あの二人、よくつるんでるからな」 いたずらっぽく笑って、ヴィータは空を見上げた。 クロには、いまいち理解できなかった。 「ふぁッ、くしょいッ!」 一瞬、頬に傷のある男の手が止まった。 「豪快なクシャミだな、ジャック。風邪か?」 細面の男が、自分の下にいるの親友に声をかけた。キーボードを打つ手を、止めずに。 ここは、クラナガン郊外にある、FAF特殊戦専用の飛行場。否、小規模とは言え、 それなりの設備の整った航空基地、その、地下格納庫である。 その一角に、本日のフライトを終えた戦術戦闘電子偵察機が一機、その翼を休めていた。 その、前進翼を持つ黒色の機体の名称は『メイヴ』、パーソナルネーム『雪風』。 今、そのコクピット内では専任のパイロットである細面の男――深井零が、専用端末でシステムのチェックを行っていた。 「フルオープンの車を乗り回すから、風邪なんかひくんだ。自分の歳も考えたらどうだ」 手は休めない。下も覗かない。しかし、この男は、意地悪く笑っていることだろうと、 雪風に取り付けられたタラップに腰掛けてブーメランを削っている、頬に傷のある男――ジェイムズ・ブッカーは思った。 「バカ言うな、ジープはああだから良いんだ。それに、今の時期、風邪なんかひくものか」 「フム、じゃあ、何だと言うんだ?」 からかうような声が、頭上から降りてくる。 「決まってる。誰かがおれの噂をしたのさ。それも、水もしたたるとびきりの美人が、な」 「……あまり、らしくない冗談は、お控えになった方が良いと思いますよ、少佐」 零の呆れるような声が、今度は降りてきた。 「フムン、肝に銘じておこう」 苦笑して肩をすくめ、、ブッカーは言った。 「しかし、そんなにおれらしくないか、零?」 「おれだけじゃなく、誰でもそう思うぞ、ジャック」 そして、「フム」とブッカーはあまり納得のいかない表情で頷いて、二人は黙々とそれぞれの作業に勤しむ。ただ、黙々と。 二人には、それも日常風景の一コマだった。 「ふーん、ヴィータちゃんもすっかりお姉さんだね、よしよし。……あれ?」 いつものようにヴィータの頭を撫でて、なのははしかし、違和感を覚えた。 「いたた、……だからやたらと頭を撫で回すの止めろ、なのはッ!」 「ヴィータちゃん、頭、たんこぶ有るの?」 「主に、少佐をからかったことを咎められてな。頭に、一発だ」 「シグナムッ!」 顔を些か紅潮させて、ヴィータは怒鳴る。 「事実だしな、仕方がない」 シグナムは涼しい顔だった。 「ジャックさんのこととなると、何かムキになるよね」 「顔あわせるたんびに、まあ、何やちょっかい出さずにおられんようやしなー」 「な、何だよ、はやてまで……」 ヴィータ、たじたじである。 「もう、そんな話はどうでも良いだろッ! ほら、さっさと帰るぞッッ!!」 踵を返し、ヴィータはさっさと歩き出した。 「あー、ヴィーちゃん、まってー」 「ヴィーちゃ、みんなまだいるよー」 「ふくたいちょー、どうしたのー」 子供達はぽてぽてと後をついて行きます。 「えーっと、ヴィータさんの、あの態度、って?」 「まっ、つまりはそう言うことなんだろ? それ以上踏み込もうなんざ、野暮ってもんだ」 「まあ、センさんのゆうとおりや。クロさん、それ以上の詮索、止めといたって」 クロ、何となく察しがついて、 「解りました。あなたがそう仰るのなら」 はやてに同意した。まあ、そう言うことなら、センの言うとおり野暮かもしれない。 「それで、はやてちゃん、帰りは?」 「ン? 車なら無いよ? 急いで飛んできたし、私ら」 「じゃあ、一緒に電車だね」 「でんしゃ、って、あの、電車、ですか?」 クロは、眼鏡をかけ直した。 「? そうですけど?」 訝しむ、なのは。 「いや、当たり前になのはさん達が口に出されるものですから、ちょっと驚いてしまって」 「へえ~、この世界って、電車当たり前なのかぁ。いや、俺達の世界って、 先日、ようやく一部の大都市で電車が動くぞ、ってな記事が新聞に出るくらいだから」 しみじみと話す、セン。 「まあ、この世界よりはまだ普及が進んでないんですよ、私達の世界は」 「へえ、そうなんですか」 クロに相づちを打って、そう言えばと、なのはは気付いた。 クロや、ニジュク、サンジュの服装は、確かに地球の時代に当てはめれば、 一九世紀後半から二〇世紀初頭辺りによく見られるデザインみたいだ、と。つまり、クロ達の世界の文明や文化のレベルは―― 「なのはちゃん、考え事や質問は、歩きながらでもいけるやろ。さ、行こ♪」 はやてはにっこり笑ってなのはを促すと、前を行くヴィータと子供達の後を追った。 「うん、そうだね。じゃあ、クロさん」 「はい。行きましょうか」 なのははクロを促し、クロは棺桶を担ぎなおし、二人も歩き始める。 その後に、ヴィータを除くヴォルケンリッターが続いた。 前へ 目次へ 次へ