約 312,777 件
https://w.atwiki.jp/idol8/pages/4240.html
割鞘じゅりをお気に入りに追加 割鞘じゅりとは 割鞘じゅりの25%は波動で出来ています。割鞘じゅりの24%は欲望で出来ています。割鞘じゅりの22%は食塩で出来ています。割鞘じゅりの14%は雪の結晶で出来ています。割鞘じゅりの11%は記憶で出来ています。割鞘じゅりの2%はかわいさで出来ています。割鞘じゅりの1%は元気玉で出来ています。割鞘じゅりの1%は血で出来ています。 割鞘じゅり@ウィキペディア 割鞘じゅり 割鞘じゅりの報道 gnewプラグインエラー「割鞘じゅり」は見つからないか、接続エラーです。 割鞘じゅりをキャッシュ サイト名 URL 割鞘じゅりの掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る 割鞘じゅりのリンク #blogsearch2 ページ先頭へ 割鞘じゅり このページについて このページは割鞘じゅりのインターネット上の情報を時系列に網羅したリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新される割鞘じゅりに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2251.html
前編より 「美味しいね!すっごくゆっくり出来るよ!」 「ゆっくり!ゆっくり!」 「オイオイ…何だよこりゃあ…」 場面は変わり村の畑の中。 仲良く農作物を齧る3匹のゆっくりの前に男が立ち尽くしていた。 男は人の言葉を解するこの生物の事を他所の村人から聞いてはいたものの 見るのは初めてな事もあって、どうしたものかと頭を抱えていた。 「「む~しゃ!む~しゃ!しあわせ~♪」」 そうとも知らずに食事を続けるゆっくり達。 いい加減止めない事には始まらないと考えた男は 三匹のゆっくり達の近くにしゃがみ込んでまず食事を止めさせた。 「オイ、お前等な」 「ゆ?人間さん?」 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 それを聞いて『話に聞いた通りだ』と眉を顰める男。 ゆっくりー中身は餡子だが、基本的に草食で畑に姿を見せる事もあり、 何かに遭遇すると大きな声で『ゆっくりしていってね!』と叫ぶこの生き物。 どうして森の餌にならないでここに来れたのか、実に不思議だ。 だが、その辺の説明は賢い人が上手い事見つけ出せば良い。 俺の仕事は野菜を育てる事とそれを守る事なのだからな。 男は困った様な表情で 人の言葉を解すると言うゆっくりに説明する事にした。 これはお前等の食っていいものではないと。 「どうしたのオジさん!ゆっくりしていってね!」 「あのなぁお前等、これは…」  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「やっぱ死んでるんじゃねーかな?」 「いいや、息してるよ」 「ゆぅ…ゆぅ…」 場面は変わり、4匹のゆっくり達がいるのはある小さな廃屋の中。 元々は誰かの倉庫だった様だが、少年達が産まれた頃から誰も使っておらず 今では少年達の秘密基地として活用されている。 廃屋とは言え綺麗好きな少年達の手によって掃除が行き届いている為 中は綺麗なものである。 ぱちゅりー達は秘密基地に行く途中の この少年達に見つかって気絶し、連れて来られたのだった。 「ゆっくりって何食うんだろ?」 「そんなの知るワケないだろ… りんごでも食わせ…オイ、起きたぞ!」 「………?」 横たわっているぱちゅりーは気絶から目覚めた時、 何か暖かいものの上に自分の体があるのを背中に感じた。 何だかゆっくり出来るもの、いつかの母の頬の様な暖かいもの。 ふと視線を動かすと他の3匹も寝ているのが見えた。 柔らかい毛布の上でゆーゆーと寝息を立てて寝ている。 「急に動かなくなったから死んだかと思ったな」 「っていうか今でも動いてない」 その視線が少し上を向いた時、ぱちゅりーは恐怖に凍りついた。 見下ろしているのは数人の人間。 自分達を殺そうとした人間達よりもかなり小型だが、同じ姿をした生き物。 ぱちゅりーは余りの恐怖から声も出なくなった。 「…………!!」 「何で動かないんだろ?つまんねぇな」 「やっぱコレ、怪我だったんだろうな」 そう言ってぱちゅりーを持ち上げてひっくり返す少年。 凍りついたまま動けないぱちゅりー。 ぱちゅりーの底部には包帯が巻いてあった。 顔まで覆わない様にと、下膨れの部分に不器用に何重にも巻いてあるそれは ぱちゅりー達を持ち運ぶ際に一人の少年がぱちゅりーの怪我を見つけ、 治療のつもりで巻いたものだった。 「○○、もういい加減暗くなるから帰ろうぜ おれ薪割り手伝わなきゃいけねーんだ」 「おお」 「コイツ等どうするの?」 「……放っておくか、持って帰るわけにもいかないし」 そう言って二人の少年達はぱちゅりー達を一瞥すると 鞄を肩にかけると廃屋から出て行き、民家の方へと夕暮れの道を歩いて行った。 「…………」 ぱちゅりーは最後まで口を開く事が出来ず 震えながら少年達の背中を見送る事しか出来なかった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ぱちゅりーが少年達に出会った次の日。 4匹のゆっくり達はまだ廃屋の中に居た。 廃屋の扉は開かれていた。 昨日の少年達がゆっくりが出て行ける様にと開けておいたからだ。 しかし4匹が出て行かなかったのは、ぱちゅりーがまだ動けないからだった。 「ゆっくり食べていってね!」 「早く良くなってね!」 「むきゅ…れいむ、ありがとう…ごめんね」 動けないぱちゅりーにご飯を用意する3匹。 ぱちゅりーは巻かれた包帯のせいで 今までの様にまりさの帽子の上に乗せられても、直ぐに滑り落ちてしまう。 それが包帯のせいだと中々気付けない4匹は、 やはりぱちゅりーを見捨てられず、人間の巣の中で過ごす事を余儀なくされた。 「…!? オイ!○○!昨日のゆっくりまだいるぞ」 その日の夕方近くになってから、また昨日の少年達は姿を現した。 少年達が驚いたのは、この4匹のゆっくりが きっと一晩の内に何処かに行ってしまうだろうと考えていたからだ。 (当然の事ながら少年がぱちゅりーに包帯を巻いたのは 不器用ながら善意からのものだった、 少年はそのせいでゆっくりが廃屋から出られなくなるとは想像していなかったのだ) 「「「「……………」」」」 そんな事も知らない4匹にとっては絶体絶命の状態。 何しろ違う個体とは言え、 自分達の群れを滅ぼそうとしたのと同じ生物が5人も集まったのだ。 当然4匹は恐怖で震える筈であった。 だが、ぱちゅりーは昨日の件から今まで何も考えずに過ごして来たわけではない。 人間達が昨日、何故自分達に対して何もしなかったのか。 それを考えていたのだ。 一晩掛けて考えたその結果、 ぱちゅりーは『何も喋らなかったから人間は自分達に危害を加えなかった』 そう解釈するに至った。 思い返してみればあの日、群れが滅ぼされた日に人間に向かって 色々話しかけてから急に人間は暴れ始めたのだ。 食い扶持を減らされた事もあったのだろうが もしかしたら人間は自分達ゆっくりの喋り方が嫌いなのかもしれない、と。 ぱちゅりーは他の3匹のゆっくりにも 人間が来たら決して口を開かない様にと釘を刺しておいた。 口を結んで少年達を見上げる4匹のゆっくりの前で 話に聞いているゆっくりとは随分違うな、と首を傾げる少年達。 実際の所、これは身動きの取れなくなるという窮地に立たされたぱちゅりー達が、 殆ど自分を安心させる為に考え出した無茶苦茶な作戦であった。 「やっぱ紫のだけじゃなくて他のも喋んないね…」 「おかしいよな…ゆっくりって喋るんじゃないのかよ?」 「「「「…………………」」」」 だが、この的外れな思い込みこそが 後にぱちゅりー達を救う事になる。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「帰れ!この饅頭もどき!!」 「「「ゆわーーー!!!」」」 男がゆっくりに農耕について説明してから20分後、 そこには畑から放り出されて宙を舞うゆっくりの姿があった。 比較的我慢強いところのあるこの男も ゆっくりに農耕を概念を説明する事を諦めたのだ。 べたべたっ、と音を立てて土の上に落ちるゆっくり達。 「ゆっぐり”でぎないぃぃいぃ!!」 「ゆ”ぐうぅうぅ!! オジさんもゆっくり出来ない人なんだね!大っ嫌いだよ!」 「帰れ帰れ!二度と来るな!バカ饅頭!」 「ゆん!ありす!まりさ!もう行こ!」 そう吐き捨ててプンプンと山の方へと跳ねて行く三匹のゆっくり達。 全くゆっくりしていない。 結果的にこの様な形になってしまったが、 短い時間の中で男は畑のものは自分達が育てた物だと言う事を ゆっくりに懸命に教え込もうとした。 種を野菜の赤ちゃんと例え、 土の中で太陽の光と、自分達の与える水と栄養を食べて成長する事も。 そして自分が母親代わりとなって何ヶ月も世話をする事で ようやくこの様な姿になって、自分達の食べ物になってくれるのだと。 そこまで育てた自分達にこそ食べる権利があり、 だからこそゆっくり達はこれを食べてはならないと。 『オジさんは赤ちゃんを食べるの?』 『そんな事よりゆっくりしていってね!』 『このご飯は勝手に生えてくるんだよ!!』 『おじさん!嘘はゆっくり出来ないよ!』 『む~しゃ!む~しゃ!しあわ』 ゆっくりに野菜の事を教える事は、実に難しい。 だがあんな目に遭わせてやったんだからもう来ないだろう。 去って行くゆっくり達を青筋を浮かべて見送りながら、男はそう願った。 「おぉーい!!○○!今のゆっくりだろ!?」 そこに男の友人が訪ねて来た。 それは男と同じく畑を耕す者。 「おお○○3日ぶり、聞いてくれよ 初めてゆっくりを見たんだが キャベツ齧られたんで今追い出したところなんだ」 「途中から遠くで見てたよ 災難だったな、お前も」 「でも、痛い目に遭わせてやったんだから もう来ないだろ……『お前も』?」 「…あのゆっくり達、今お前がやったみたいに 一昨日俺が痛めつけてやった奴等と同じなんだ…」 「え?」 「一昨日は俺のところに来たんだよ あいつら、そんなに頭は良くないんだってさ …○○サンなんてとうとう畑で見つけ次第殺すようになったぞ」  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 結果から言うとぱちゅりーの立てた作戦は成功した。 少年達は喋らないぱちゅりー達に対して暴力を持って干渉する事は当然無く、 それどころか少年達がオヤツにと家から持って来た煎餅やキュウリまで与えてくれた。 それに対して、4匹のゆっくりは警戒心から中々口をつけなかったが 少年の中の一人が自分の分の煎餅に口をつけると 4匹は安心して目の前でいい匂いを放つ煎餅に口をつけ始めた。 (細かく砕かれた煎餅はカケラも残さず美味しく食べたが 過去のトラウマから、野菜であるキュウリだけは決して手をつけなかった) 少年達は自分達で塩を付けながらキュウリを食べると、 廃屋の中でドタバタとチャンバラ遊びを二時間程してから また昨日の様に、扉を閉めずに家へと帰っていった。 初めは内心恐怖でどうにかなりそうだったぱちゅりーも、 ありすも、れいむもまりさも勝ち誇った顔つきで確信していた。 自分達が喋らなければ人間はゆっくりしてると。 何故なら少年達が無口な自分達に対して危害を加えない事に加えて 少年達の中の一人が連れて来ていた、4匹のゆっくりと同じ様に口を利かない子犬が 少年達に大切そうに扱われているのを見たのだ。 それを見た4匹のゆっくりは最早、間違いない、 喋らなければ自分達は怖い人間達ともゆっくり出来る、そう確信した。 だが、少年の中の一人が帰り際に言ったこの台詞。 「じゃーなゆっくり!ゆっくりしてけよ!」 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 4匹はそれを言った瞬間死を覚悟した。 しかし『やっぱそれだけは言うんだな』と笑って廃屋から出て行く少年達を見て ぱちゅりー達は『ゆっくりしていってねだけは言っても大丈夫』と認識した。 この廃屋に少年達以外の、 あの日ぱちゅりー達の群れを滅ぼした人間と 同じサイズの人間が来るのはこの次の日の事だった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「どうじでごんな”ごどずるのぉおぉぉお!!?」 場面は移り、いつかゆっくりを放り投げた男の畑の中。 男の目の前には頬を蹴られて泣くゆっくりありすとゆっくりまりさ。 そしてそれぞれの口から吐き出されたキャベツのカケラ。 この二匹のゆっくり、かつて男に放り投げられたゆっくり達と同個体である。 その顔を真っ赤に染めて男は次の様に言った。 「お前等!二度とここに来るなと言っただろうが!」 「どぼじでえぇえぇ!? ばでぃざもあでぃずもゆっぐりじだがっただけなのにいいぃぃ!!」 「…………」 それを聞いた男は少し頭を冷ました様で、泣きわめく2匹のゆっくりに対して また1から、野菜は自分の育てたものでゆっくりのご飯では無い事を、 そしてここに来るのはお互いの為に良くないと説明しようとした。 「…いいかお前等、この前も言った事だがな ここにある野菜…いや、ご飯は俺が作ったものでな」 「…ゆ!まりさぁ!こっちだよ!」 「まりさ!こっちに来て加勢して頂戴!」 話を聞けと怒ろうとした瞬間、男は 二匹の視線の先に随分大きなゆっくりまりさが跳ねているのを見た。 そのゆっくりまりさは二匹の声に気付くと 怒った様にこちらに向かって急いで跳ねて来た。 それを見て畑の主である男は嫌な予感しかしなかった。 大きなゆっくりまりさが2匹の元に辿り着くと 男をまるで敵の様に睨んでから叫ぶ様に言った。 「ゆ”!人間さんがまたご飯を独り占めしてるんだね! いい加減ゆっくりさせてね! ご飯を守るよみんな!」 「「「えいえいゆー!!」」」 そう言って男を囲んで攻撃して来る3匹に増えたゆっくり。 2匹の体当たりは大した事は無いが、 大きなゆっくりまりさの体当たりは当ったところが少し痛むくらいの衝撃がある。 「オイお前等!やめろ!!」 急な展開に驚き、ゆっくり達から少し距離を取った男は 後ずさりながらなんとか冷静さを取り戻し、 こちらに向かって跳ねて来るゆっくり達を見ながら 前々から考えていた事を頭の中で纏めようとしていた。 「ゆっくり!ゆっくり!」 「…………」 そうする事は悪い事なのだろうか? 目の前のゆっくりを殺す事は悪い事なのだろうか? 山に住むゆっくりは人間と違って山の中のルールに従う野生動物と同じだ。 俺が稀に殺す機会のあるその野生動物と目の前のゆっくりを区別している理由は何だろう? 同じ言葉を使う?それは何の意味があるだろうか? 数瞬の内に生まれた疑問に対して、男は ゆっくりまりさからのふくらぎへの噛み付きの痛みの御陰で 強引ながらも答えを出せた。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 男の視線の先にあるのは広がった餡子やカスタードに段々と集っていく、蟻の行列。 そして痙攣する大きなゆっくりまりさ。 激情にかられてやってしまったと少し嫌な気分になったが それも大したものでは無かった。 「ゆ”っ……ゆ”っ……ゆ”っ」 「………………」 痙攣している大きなゆっくりまりさはまだ生きている。 いっそのこと楽になって貰おうかと男は思ったが、 かつて他所の村から来た男に聞いた話を思い出して止めた。 『近くの山の中のどっかに群れがあるんだよ どこかって?見つけるのは簡単だ 捕まえた一匹を群れまで道案内させりゃいいんだからな』 その言葉を思い出してから男は一つ後悔した。 それは小さな方のゆっくりを殺さずに残しておけば良かったと言う事。 コイツでは大き過ぎて持ち運びに苦労する。 そんな事を考えていた男がふと、廃屋のある方向に目を向けると このゆっくりよりも小さそうなゆっくりが廃屋の周りで跳ねているのが見えた。 縛る事で動けなくなるのかどうかは疑問だったが、 男は縄を用いてボロボロのゆっくりまりさを縛って倉庫に置くと ゆっくりと廃屋の方向へと歩いていった。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「ゆっくり!ゆっくり!」 「ゆっくりしていってね!」 廃屋の前の野原で追いかけっこをして遊ぶゆっくりありすとゆっくりれいむ。 口を開かないというのもゆっくり出来ないと感じる4匹のゆっくりは 許された只一つの言葉『ゆっくりしていってね』だけは喋る様になっていた。 それは不思議な感覚だった。 まるでそれが元々の自分達の言語だったかの様に、 最近ではその言葉だけで4匹の間では大体の意思疎通が出来る様になっていたのだ。 「ゆっ?」 「「ゆゆ?」」 二匹はその体に影がかかった事に気付き、その視線を上げた。 その先に居たものは知らない人間。 それも成体の人間、先程の男である。 「「ゆ”ゆ”ーーーー!!」」 「あっ!おい、待て!」 ゆっくりれいむとゆっくりありすは今度は恐怖から 男が驚く程の叫び声を上げると廃屋の玄関へと跳ねていった。 4匹のゆっくり達が今まで少年達に対して、それ程怖がらずに相手出来ていたのは かつて群れを滅ぼした人間よりもずっと小さかったから。 そういう所もあったのだ。 あの群れの崩壊の日から、久しぶりに成体の人間を見た2匹は 男から何かゆっくり出来ないモノを敏感に感じ取り、 ぱちゅりーとまりさが昼寝している廃屋の中へと、 そして少年達のいる廃屋の中へと入っていく。 それを追って男も廃屋に入っていった。 「……? こんなトコで何やってんだお前…」 「ちゃ…チャンバラごっこ… 父ちゃんこそ何やってんの?」 「「………………」」 「ゆっ…ゆっ…」 父親に秘密基地とチャンバラごっこを見られた少年と ゆっくりを追って子供達の秘密基地に入って来た、その父親との気まずい空気の中 ゆっくりれいむとゆっくりありすの泣き声だけが静かに響いていた。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「コイツ等はそんなのと絶対そんなのと違うって 野菜も食わないし、それに人間の言葉だって喋んないじゃん」 「つってもなぁ…」 「ほら見て、野菜食べない 最初からこうだったんだって、そうだろ皆!」 差し出されたキュウリから逃げる様に顔を背けるゆっくりれいむ。 そして少年の言葉に頷く周りの少年達。 この時、既に4匹のゆっくりは少年達の秘密基地のマスコット的存在となっており、 少年達は自分達の秘密基地であるこの廃屋に住み着いた (と言ってもぱちゅりーが動けないだけだが)4匹のゆっくり達と 『秘密を共有している』という意識から仲間意識を持つ様になっていた。 男がこのゆっくりを捕らえようとしていると知ったその息子は 4匹のゆっくりを守る様に父親を説得し始めたのだ。 「ホントだ…ゆっくりってのも色々あるのかね?」 「でしょ?」 先程のゆっくりだったら迷わずキュウリを口に含んだ事だろう。 それに廃屋の玄関で会った時から今に至るまで 4匹のゆっくり達は怯えた視線を男に送るばかりで何も喋らない。 目の前でゆっくりはまるで先程のものとは別生物の様だ。 そう思った男は 何もこんなにゆっくりを保護しようとしている息子から 無理にゆっくりを捕らえる事も無いと考え、 先程の2匹のゆっくりに向かってごめんなと謝ると 今度は唯一他のゆっくりと姿の異なるぱちゅりーが気になって目を向けた。 「………」 「ゆっくりしていってね…?」 無言でこちらを見つめる男に怯えながら 取り敢えずの挨拶を済ませたぱちゅりーは、 返事をしない男に対する恐怖でまたその身を強張らせた。 「何だよアレ?包帯? お前等、あんなのをゆっくりに巻いてたら動けなくなるんじゃねぇの?」 「あぁ、それは怪我してたみたいで… でももう治ってるかも ちょっと解いてみようぜ」 少年の手がぱちゅりーを素早く持ち上げて包帯を解き始めた。 何重にも巻かれた包帯が床に落ちてとぐろを巻いていく。 「む…きゅ?」 「怪我、もう治ってるみたいだな」 そう言って少年はぱちゅりーを床に置いた。 数日ぶりに露になったぱちゅりーの口から下の体。 包帯から解放されたぱちゅりーは開放感と共に、 その裂けかけていた底部が既に治っている事を実感した。 「ゆ…ゆ…」 「ん?」 「ゆっくりしていってね!」 久しぶりに言った本心からの『ゆっくりしていってね』 この少年がぱちゅりーの怪我を治したわけでは無かったが、ぱちゅりーは 目の前の少年がいつからか自分を縛る様になった鎖を解いてくれた様な気がしたのだ。 その喜びからぱちゅりーは少年に言いたくなったのだった。 ありがとうという意味の『ゆっくりしていってね』を。 その意味を理解したのか、していないのだろうが 少年は頭を掻くと父親に耳を引っ張られながら 畑仕事を手伝いの為に廃屋から連れ出された。 そしてその後ろを子犬がトコトコと付いていった。 この日を境にぱちゅりー達は少年達にだけは信頼を置く様になり、 夕方に来る彼らに対して『ゆっくりしていってね』と歓迎する事さえする様になった。 結局4匹のゆっくりは、ぱちゅりーの底部が治る事で いつか見つけたゆっくりプレイスに戻れる事も出来る様になったが それはせずに廃屋の中で暮らす様になった。 廃屋に来る人間はゆっくりしてるし、この廃屋も雨風も通さず、 ご飯も周りにあり、4匹全員で住める立派なゆっくりプレイスだと分かったからだ。 4匹は少年達以外の、成体の人間に対しても、 いくつかの事件を通じて段々と心を開く様になっていくが、それは別の話である。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ それから数日後の山の中。 村の男達は数人で山道を歩いており、 その中の一人が縄で縛られた大きなゆっくりまりさの縄を掴んで乱暴に揺すっていた。 「ゆぎいいぃいぃぃ!!だずげで!! ゆるじでえぇえぇ!!」 「うるさいな全く… ホレ、次はどっちだ?」 「ごご!ごごの広場に皆がいる”よ”!!」 「おぉ、アレか? 本当だ居た居た オイ皆!こっちだこっち!」 「ゆ?皆!人間さんが来たよ! ゆっくり挨拶してね!」 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 「…………」 男達は冷めた目つきで挨拶をするゆっくり達を見渡した。 ぱちゅ達の抜けた時点ではまだ20数匹は居た群れの ゆっくり達の数は既に10匹ちょっとまで減っていた。 『狩り』に行った際に段々と始末されていったからだ。 「オイ、お前等全員これを見ろ」 そう言った男が手の中で暴れるゆっくりまりさを 集まっているゆっくり達に向かって放り投げる。 「「「ゆ…?」」」 ズザーッと音を立てて着陸する大きなゆっくりまりさ。 実はこのゆっくりまりさ、この群れのリーダー的存在だった個体だ。 「「「まりざああぁあぁ!!?」」」 「「どうじでええええぇえぇえぇ!!?」」 ゆっくり達の悲鳴に眉を顰めた男は 今度は背負った籠から齧られたキャベツを取り出す。 かつてゆっくりに齧られたキャベツだ。 「ゆ!人間さん!それをれいむにゆっくり頂戴ね! そうしたらおじさんの事ゆっくり許してあげるよ!」 そのキャベツを見てポンポン跳ねて男に近づいて来るゆっくり達。 そのゆっくり達に教え込むように男は説得を始めた。 「…いいか、そこのゆっくりまりさはこの野菜を食べたからこうなった これから俺等人間の元に来てこの野菜を食べる奴は」 「ゆぴ」 男の説得が終わるまで待たずに 一人の男が集まって来たゆっくりを一匹踏み潰した。 説明を始めようとしていた男は驚いた風も無く ゆっくりを踏みつぶした男に顔を向けた。 「ゆ”ゆ”!?」 「もういいだろそんなマネは とっとと終わらせて戻ろうぜ」 「れいむぅぅぅうぅぅうぅ!!?」 「この前2匹も殺しておいてなんだが 丁寧に長い時間かけて恐怖を絡めながら教えれば きっといつかは聞く様になると思うんだがね…」 「どぼじでごんなごとずるのぉぉおおぉおおぉお!!?」 「来る前に決めていた事だろ? …それにそんな時間掛けても俺等には何の得も無い」 「ゆっぐりでぎない人間はゆっぐりしねえぇぇえ!!」 「全部踏みつぶせば解決する事なんだからな」 この群れのゆっくり達にとって、それは気付きようも無い事だった。 人の言葉を理解出来なければゆっくりまりさは 人間に群れの場所や情報を教える事も無かった事に。 人と同じ言葉を話さなければ人を怒らせる事も無かった事も。 この日群れは壊滅し、以来この村は 畑を荒らす他のゆっくりの群れに対しても 他所の村がそうする様に群れ単位で責任を取らせるようになった。 ゆぎゃああぁあぁぁあぁ!!! 「ゆっくりー! ゆっくりしていってね?」 『れいむ、今何か聞こえなかった?』 「ゆっくり!ゆっくりしていってね!」 『分かんないよ!ゆっくりしていってね!』 その頃4匹のゆっくりは廃屋の中で、どこまでもゆっくりしていた。 いつしか4匹の喋る言葉は『ゆっくりしていってね』の中の10文字だけとなり、 それだけで会話をする様になっていた。 不思議な事に、かつて使っていた言葉を使って話す事はもう出来なくなってしまったが、 そんなものはもう4匹のゆっくりにとってどうでも良い事だった。 日が昇ってからゆっくりと廃屋の外に出て、 その辺りに生えている雑草をついばみ、たまに『お煎餅』を貰う。 たまにあの少年やおじさん達がくれる『お煎餅』は凄くゆっくり出来る。 お腹が膨れたら4匹揃って横になってお昼寝をする。 そしてお昼過ぎに起きては皆で遊んで、 夕方になったら廃屋の中で少年達と遊んで、帰っていくのを見送ってから また巣で食べる為のご飯を口の中や帽子の中に詰めて廃屋の中へ持ち帰るのだ。 どこまでも争いの無い平和な廃屋の中。 4匹のゆっくりは皆、幸せ一杯に暮らし、 どんな時でもゆっくり出来るようになった。 ー完ー ーーーーーーーーーーー後書きーーーーーーーーーーーーーー 前作がゆっくりボールマンさんの作品と余りに被ってて恥ずかしかった… ボールマンさんすいませんでした。 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4076.html
『チョコレートをください』 29KB いたづら 不運 誤解 都会 現代 独自設定 うんしー バレンタインデーとは関係ありません かすがあきです。 注意 「」はゆっくりの発言です。 『』は人間の発言です。 うんうん 注意。 一部、独自設定があります。 チョコレートをください ゆっくり専用のゴミ箱に、ゆ虐で潰したゴミ共を捨てる。 さて、今度はどんな ゆ虐を楽しもうか?などと考えながら、俺は街を歩く。 ショッピングモールに入り、買い物をし、昼食をとる。 途中、ペットショップ(とは名ばかりで ゆっくりと、ゆ虐グッズの専門店)により、消耗品を補充する。 「おねがいじばず!!ばりざに ぢょこれーどざんを ぐださいぃぃぃいい!! ばりざの、おちびちゃんが びょーきざん なんでずぅぅうう!!! ちょこれーどさんが ないと、えいえんに ゆっぐりじじゃうんでず!! とっでも、とっでも ゆっぐりじた いいこ なんでずぅうう!! おねがいじばず! にんげんざん!!ばりざじゃ ちょこれーどざんを みづげらればぜん!! ばりざは だめな おどーざん なんでず!! おねがじばず!!ばりざに ちょごれーどざんを くだざいぃいいい!!!」 自宅に帰る途中、 必死にチョコレートを強請る まりさを見つけた。 このまりさ、野良にしては綺麗な体をしており、言葉の内容(自分をダメな父親と言うところ)から、 なかなか賢い ゆっくりだということが分かる。 『まりさ、どうしたんだい?』 できるだけ優しい声をつくり、まりさに話し掛ける。 「に!にんげんさん!!ありがどうございばず! ばりざの はなじを ぎいでぐだざい!!おねがいじばず!! ばりざに、まりざに、ちょこれーどざんを くだざい!!! おちびちゃんが、びょーきざん なんでずぅぅううう!!!!!」 恐らく初めて人間に声をかけられたのだろう、まりさは笑顔で土下座をし、礼を言う。 そして、その姿勢のまま要求を言う。 『チョコレート?病気の子供がいるなら、チョコレートよりもオレンジジュースじゃないのか?』 甘い物はゆっくりにとって薬になる。 普通、あまあまをくださいというか、万能薬であるオレンジジュースをくださいというものだが、 このまりさはチョコレートを指定しているので、不思議に思い尋ねてみた。 まりさは土下座をしたまま応える。 「おちびちゃんの びょーきさんは、げりざん なんでずぅぅううう!! げりさんは おれんいゆーすさんじゃ なおらないっで、 ちょごれーどざん じゃないど なおらないっで ぱちゅりーが いってばじだぁぁあ!!」 なる程、ゆ下痢か。 ゆっくりは水分を大量に摂取すると、尿として排泄をする。 しかし、尿だけでは排泄しきれない程の水分を摂取した場合、下痢になる。 ゆっくりの下痢、ゆ下痢は、液化した餡子で最終的に中枢餡まで排泄してしまい、死んでしまう。 生物が下痢になった場合、水分補給が対処療法だが、不思議生物(なまもの)のゆっくりは違う。 体内の水分を排泄しようとする症状のため、水分を取れば、取った以上に排泄してしまうのだ。 そのため、万能薬として名高いオレンジジュースだが ゆ下痢に対してだけは効果がない。 むしろ悪化させてしまうのだ。 ゆ下痢を直すには、水分が少なく油分が多い甘味を食べさせるのが最も良いとされている。 これらの点をみたしているチョコレートは、ゆ下痢の特効薬となるのだ。 これらのことを理解しているあたり、この まりさに助言した ぱちゅりーは なかなか賢いと思われる。 もっとも、ちぇんの中身や排泄物はチョコレートなのだから、ちぇんを殺すか、排泄物を貰えば済むのだが、 そういう考えがないあたり、やはり残念な餡子脳のようだが。 『幸い、俺はチョコレートをもっている。俺を案内してくれたら、チョコレートをあげてもいいぜ。』 チョコレートが好きな俺は、さきほどの買い物で大量に購入していた。 「ほ!ほんとうでずがぁああ!!??」 まりさが涙で汚い顔を俺に見せ尋ねてきた。おいおい、礼を言う前に疑うのって失礼じゃない? 『イヤなのか?イヤなら俺はこれで……』 「いやじゃありばぜんん!!!ありがどうございばずぅうう!!!」 『ほら、さっさと案内しろ。』 「はいぃい!!ありがとうございばず!ご、ごっぢでず!!」 まりさは俺に背を向け、跳ねだす。 その顔には安堵の色が見え、微かに笑顔になっている。 俺はゆっくりとした足取りで、まりさと同じで微笑みながら歩く。 移動しながら、まりさは勝手に自分の身の上を語りだした。 かつて飼いゆっくりだったこと。ぱちゅりーと番になったこと。 2匹は金バッチだったこと。 言いつけを守っていたのに、何故か捨てられたこと。 2匹で必死で野良として生きてきたこと。 野良生活の中で子供を2匹つくり、1匹(ぱちゅりー種)はすでに死んだこと。 最後の子供(まりさ種)が病気(ゆ下痢)になり、死にそうだということ。 所々 だぜ言葉がでるが、俺に対して敬語で話すあたり、 まりさの話とおり、優秀で善良なゆっくりなのかもしれない。 恐らく、飼い主の身勝手な理由で野良になったのだろう。 正直腹立たしい。 ゆっくりを野良にするなんて!捨てるなら殺してゴミ箱にいれるべきだ! まぁ、そのお陰で俺が楽しめるから、元飼い主に少しだけ感謝もしているが。 そんなことを考えていると、まりさは汚いビニールシートが被された、ダンボールの前に止まった。 まりさの家は汚い路地裏の中にある、小さな小さな空き地にあった。 ここなら人間に見つかる可能性も低い。なかなかのゆっくりプレイスだ。 ビニールシートをあけ、中を確認する。 中には、苦しそうな子まりさと、それを慰めようと ぺーろぺーろしている ぱちゅりーがいた。 子まりさの下には、ビニール袋と餡子まみれのボロクズのようなタオルが敷いてあり、 排泄物の汚れが家に着かないようにしているようだ。 「ぱちゅりー!おちびは!!??」 「むきゅ、まりさ!とっても きけんな じょうきょうさんよ!そっちの にんげんさんは?」 「あんっしんするのぜ!ぱちゅりー!この にんげんさんは、おちびを たすけてくれるのぜ!!」 「むきゅ!ほんとうに!?にんげんさん、ありがとうございます!」 ぱちゅりーは土下座をして礼を言う。 『ほら、お前らが欲しいのは、これだろ?』 チョコレートを取り出し、見せつける。 「そう!その ちょこれーとさんを はやく おちびちゃんに!」 ぱちゅりーは笑顔で言う。子供が助かると信じきっている顔だ。 『今、包装をほどくからな……』 俺はゆっくりとチョコレートの包装をほどく。 「ゆっくり いそいでね!おちび、もうすこしの しんぼうなのぜ!」 「ゆひゅぅ……ゆひゅぅ………ゆ、ゆっぐり、りがいじだよ……ゆひゅぅ… っゆ!!ゆやぁぁああああ!!おにゃきゃがいざいぃいいいいい!!!!! ぼ、ぼぅ、うんうんじだぐないぃいいい!!!」 子まりさは苦しそうに言うと同時に、液状のうんうんを排泄する。 「おちびぃぃいいいい!!!じっがりずる のぜぇぇえええええ!!!」 「むっきゅぅぅうう!!もうすこしの しんぼうさんよぉおおお!!!」 汚いゴミが汚いゴミを汚い音と共に産み、汚いゴミたちが絶叫をあげる。 最悪の気分だ。 「ゆひゅぅ……ゆひゅぅ………た、たずげで……ゆひゅぅ…」 下痢うんうんの排泄がおさまり、子まりさが焦点のあっていない目で命乞いをする。 「もうすこしなのぜ、おちび!いま にんげんさんが ちょこれーとさんを くれるのぜ!!」 「ゆっぐり、りかいじだよ……ゆひゅう……」 子まりさは まりさの言葉を聞き、ゆっくりと笑顔になり、 その笑顔を見て、まりさと ぱちゅりーも笑顔になる。 そんな笑顔の3匹に、俺は笑顔で宣言する。 『ああ、そうそう。悪いけど、タダじゃないよ。』 「ゆ!!??」×2 まりさとぱちゅりーが目を丸くして俺をみつめる。 暫くして、 「どぼじでぞんなごどいうのぉおおおおおおおお!!!!」×2 と声をそろえてあげる。流石夫婦だ。息がピッタリで面白い。 「ゆ゛っ!!ゆがわぁぁぁぁあああああああ!!!!!」 子まりさは大きな声をだし、再度 下痢うんうんを排泄する。 餡子が減っている為、既に楕円形に縮んでおり、残り僅かな命だということが分かる。 「むきゅ!おちびちゃん!!にんげんさん、ぱちゅたちは きゃっしゅさんを もってないわ! でも、ぱちゅたちに できることなら なんでもする から、おねがい!ちょこれーとさんを!!!」 ぱちゅりーが土下座をして頼み込む。 『さすがぱちゅりー。よくわかっているね。 それじゃぁ、チョコレートの代価として、俺をゆっくりさせてね!すぐでいいよ!』 俺の言葉に、まりさと ぱちゅりーは互いの顔を確認する。 「にんげんさん!おねがいします!まりさたちに、 どうしたら にんげんさんが ゆっくりできるかを、おしえてください!」 まりさが土下座をして頼んできた。 『うん!さすが元金バッチだな。 もしここで歌や踊り、計算や うんうんを見せ付けてきたらすぐに立ち去るつもりだったよ。』 「………」×2 俺の言葉を黙って聞く2匹だが、額から汗が流れ出ている。 もしかしてやろうとしていたのか? 『いいか、まずはお前ら2匹で、そのチビが出したうんうんを舐め取れ。』 「ゆ?」×2 2匹が口をあけ固まる。 『だ~か~ら~、その汚いタオルについている うんうんを舐めろって言ったの。』 「ゆがぁぁぁああああ!!??ど、どぼじでっぇええええ!! うんうんは きたいででしょうがぁぁああああああ!!!!!!」×2 『あ、イヤなの?じゃぁ、この話はなかったことで。それじゃぁな。』 俺は立ち上がり、立ち去ろうとする。 「むきゅ!ま、まって にんげんさん!ぱちゅは なめるわ!」 「ぱちゅりー!?………に、にんげんさん、まりさも なめるよ!」 2匹は俺にまつように頼んできた。 『そうか。それじゃぁ、舐めるところをしっかり見させてもらうよ。 先に言っておくけど、吐き出したりしたらダメだからな。もし吐き出したら、俺はすぐに帰るぞ。』 「ゆっくりりかいしました……」×2 2匹は子まりさの尻を挟んで向かい合う。 「ぺーろぺーろ……むっぎゅ!!………ぺーろぺーろ……むんっぎゅ!! ゆはぁ……ゆはぁ……さ、さぁ……ま、まりさも……ぺーろぺーろ……」 ぱちゅりーが先にうんうんを舐めだす。 「ぱちゅりー……わかったのぜ……ぺーろぺーろ……んっぐ!! ……ぺーろぺーろぺーろぺーろ……んんっぐぐぅう!!ゆがぁ……ゆばぁ……」 2匹は嗚咽感と戦いながらうんうんを舐める。 暫くゴミがゴミを舐めているのを見ていると、ゴミ製造機が悲鳴をあげだした。 「ゆひゅぅ……ゆひゅぅ……ゆひゅぅ… っゆ!!ゆやぁぁああああ!!おにゃきゃがぁぁぁぁああああああい!!!!! で、でりゅぅぅぅうう!!うんうんぎゃぁぁぁああ!!」 『まりさ!ぱちゅりー!動くな!!動いたら俺は帰るぞ!!』 俺は2匹が声をあげる前に命令をする。 「お、おちび!が、がまんするのぜ!おねがいなのぜ!!」 「おちびちゃん!ゆっくりがまんするのよ!おねがい!!」 2匹はうんうんを我慢するように懇願するが、当然無理だ。 「ゆ゛!!ゆがっわぁぁあああ!!ご、ごめんなのぜ・……!!!う!うんうんでちゃうのぜ!!」 子まりさから汚い音と共に、下痢うんうんが飛び出る。 「ゆっぎゃぁぁあああ!!く、くさいぃぃいいいい!!!!」×2 2匹が悲鳴をあげる。顔と帽子が うんうんで汚れていく。 『ははは!!うんうん まみれになったな!!』 震えながらも屈辱に耐えている2匹を見ていると、より愉快な気分になる。 『よし、だいぶゆっくりしてきたぞ。お前ら、もう舐めなくていいぞ。』 「ゆ!」×2 2匹の顔が笑顔になる。 『さて、次だ。ぱちゅりー、まりさを妊娠させろ。』 「ゆ!?」×2 2匹の顔が引きつる。 『安心しろ、スッキリ死しないように、薬をやるよ。ほら。』 俺は濃縮オレンジジュースを2匹に注射する。 「ぱちゅりー、まりさに きにすることなく、すっきりするのぜ!はやく!」 まりさが尻を ぱちゅりーにむける。 その顔は涙まみれだが、子まりさを助けるという決意が見られる。 「むきゅぅ……ごめんなさい、まりさ……」 ぱちゅりーは まりさにあやまり、ぺにぺにを勃てる。 「ゆ!!ゆぅぅうぅうううう!!!!ば、ばりざのばーじんざんがぁぁああ!!」 まりさ種は父親役を務めることが多い。男性的であることに誇りすらもっていることも多い。 そのため、破瓜の精神的苦しみは他の種よりも強いと言われている。 子供のためとはいえ、やはりバージンを失った悲しみは深いのだろう。 まりさの目から涙があふれ出ている。 「ごべんなざぃ!まりざぁぁああ!!!」 そんな まりさを気づかって、ぱちゅりーが謝る。 『ほらほら、はやくスッキリしないと、おちびちゃんが死ぬよ。さっさとしてね!』 俺の言葉に反応してぱちゅりーの動きが速くなる。 『おい、ちび、見えるか?お前の母親が、お前の父親を犯しているぞ。』 「ゆはぁ……ゆはぁ……お、おとーしゃん……」 子まりさの顔色がより一層悪くなった。 「み!みちゃ だめなのぜ!おちび!!!」 『ダメだ。しっかりと見ろ!見て感想を言え。さもなくば、このチョコレートは俺が食べるぞ。』 「むっきゅぅ……おちびちゃん……ここは すなおに したがって………」 ぱちゅりーが涙を流しながら言う。 『ほら、早く感想を言えよ。』 「ゆはぁ……ゆはぁ……さ、さいきょーの……お、おとーしゃんが……… や、やべでぼじぃのぜ……ぼ、ぼう ばりざの だめに…ゆはぁ……ゆはぁ…… ぞ、ぞんごど……や、やべで………」 子まりさが涙を流す。 どうやら、善良な両親の元に生まれ、育っただけあって、善良なようだ。 面白くない。もっとこう、両親を罵倒する言葉が聞きたかったのに、少し残念だ。 「ゆ!ゆぅうううう!!!」 「むっきゅぅわぁあぁあああ!!ま、まりざぁぁああ!! ぱちゅは、も、もうぅぅううう!!!」 「ぱちゅりぃいい!!ま、まりざもっっぉおおおお!!」 どうやらスッキリが終わりそうだ。 「っすっすすっっすっきりいぃぃいいいいい!!!!!」×2 汚い嬌声をあげ、スッキリを終わらせる2匹。 「ゆはぁ……ゆはぁ……ゆはぁ……ゆ!く、くきさんがぁ……」 まりさの額から茎が伸びる。無事妊娠したようだ。 「あぁああ…まりさの…まりさのおちびなのぜぇ……とってもゆっくりしてるのぜぇ…… まりさのおちびちゃん……」 まりさの目が柔らかくなる。妊娠したことで、母性に目覚めたようだ。 「ゆぴ!?」 そんな まりさに成長促進剤を注射する。 「むきゅ!おちびちゃんたちが、どんどんおおきくなっていくわ!」 あっというまに大きくなる4匹の実ゆっくり。あと数時間もすれば生れ落ちるだろう。 『よし、まりさ。それじゃぁ、間引きをしよう。』 「ゆ?だ、だめだよ!ゆっくりした おちびちゃんだよ!まびいちゃ だめだよ!」 母性に目覚めた まりさが間引きを拒否する。 『だったら選べ。あの下痢で苦しんでいる子まりさと、この実ゆっくり、どっちの命をとる?』 「ゆ?ゆがぁぁああああああああ!!!!ぞ、ぞんなぁぁああああ!! ど、どっちも だいじなぁ だいじなぁぁあああぁああああああ!!!!!!!!!!!!!」 まりさは大きく目を見開き、汗をダラダラ流しながら葛藤をする。 「むきゅ!まりさ、よくきいて。 こんなに たくさんの おちびちゃんは ぱちぇたちには そだてられないわ。 あかちゃんを そだてるのは とってもたいへんよ。きっと みんな しんじゃうわ! だから、ここは かくじつに たすかる びょうきの おちびちゃんを たすけるべきよ!」 ぱちゅりーは子まりさを助けるべきだと言う。 赤ゆっくりの死亡率は確かに高い。 野良で4匹も育てることはまず無理で、なかなか冷静な判断だ。 もっとも、自分で腹(?)を痛めた子供を優先しているだけかもしれないが。 「ぱちゅりー……で、でぼぉおおお…… この おちびちゃんたちは、まりざの はじめでのぉぉおおおおお……」 『ほらほら、どっちにするんだ?はやく決めろ。』 「まりさ、おねがい!」 ぱちゅりーが夫である まりさに懇願する。 「ゆひゅぅ……ゆひゅぅ……ゆひゅぅ… お、おとーしゃん………た、たちゅけ……て……ゆっぅぅぅううう!!う、うんうんがっぁあああ!!」 子まりさが父である まりさに懇願する。 懇願しながらも下痢うんうんを排泄する姿はどこか滑稽で俺を愉快にさせる。 「ゆ……ゆぅううううううううう………」 まりさは目を強く閉じ、歯を強く噛み締め、涙を流す。 「ゆぅううぅうううううう……… ま、まびいで……ぐだざぃ…………」 まりさは苦渋の決断をした。 母であるよりも、父であることを選んだ まりさ。 やはり、まりさ種は父性のほうが強いのだろうか? それとも、ぱちゅりーの説得が効いたのだろうか? どちらかは分からない。まぁ、どっちでもいいことだが。 『よし、少し痛いけど、我慢しろよ。』 俺はまりさの茎を手で折る。 みるみるうちに黒くなる実ゆっくりたち。 『ほら、まりさ、ぱちゅりー。こいつらを喰え。全部喰ったら、チョコレートをやる。でも、絶対に吐くなよ。』 「むきゅ……ほんとうに?」 『ああ、約束する。』 「まりさ、つらいでしょうけど、おちびちゃんの ためよ。がまんして たべましょ。」 「……ゆっくりりかいしたのぜ……」 2匹は震える舌で実ゆっくりをもぎり取り、口へと運ぶ。 「むーしゃむーしゃ……むーしゃむーしゃ……」×2 『おい、しあわせーはしないのか?』 何も言わずに咀嚼する2匹に聞く。 「むーしゃ……し、しあわせー……ゆぅ……ご、ごべんね、おちびちゃん……」 まりさが泣きながら言う。 「むーしゃむーしゃ……し……しあわせー…… まりさ、しかたのないことよ、おちびちゃんも ゆるしてくれるわ、きっと。」 ぱちゅりーも元気なく【しわせー】と言い、まりさを慰める。 『ほら、あと2つあるよ。ゆっくりしてないで、さっさと食べてね!』 「………むーしゃむーしゃ……しあわせー」×2 2匹は不幸せそうな顔で幸せと言う。 「ゆっぐ……ゆっぐ……お、おちびじゃん……ご、ごべんね‥……」 まりさは今にも泣き崩れそうだ。 「ゆぅ……ゆっぷ……むきゅ……がまんするのよ……」 ぱちゅりーは嗚咽感を必死で我慢してる。 『ははは。まったく、自分たちの子供を食べるなんて、とんだゲスたちだね。そこまでしてチョコレートが欲しかったのかい?』 「ゆぐぐ……」 まりさは俺を睨みつけてくる。その目は俺を愉快にさせ、とても ゆっくりできる。 『なんだい、その顔は?本当のことだろ?』 「まりさ、やめて。にんげんさん、ぱちゅたちは いわれた とおり おちびちゃんを たべたわ。 やくそくさんは まもって くれるわね?」 俺はチョコレートを折り、一欠片を見せながら、 『もちろんさ。ほら、おちびちゃんが飲み込みやすいように、チョコレートを小さくしたぞ。』 と言い、苦しんでいる子まりさの口の上にもっていく。 『俺が手を離せば、このチョコレートがおちびちゃんの口にはいるぜ。』 「ゆひゅぅ……ゆひゅぅ……ゆひゅぅ… っゆ!!ゆやぁぁああああ!! で、でりゅぅぅぅうう!!うんうんがぁぁぁああ!!いじゃぃぃいいいいいい!!!」 子まりさが再び下痢うんうんを排泄する。 「にんげんさん、ゆっくりしないでぇええええ!!はやくしてぇぇぇぇ!!! とっても きけんな じょうたいさん なのよぉおおおお!!」 「おちびぃぃぃぃいいいいいいい!!!!!!!」 『はいはい。それじゃぁ、おちびちゃん、チョコレートだよ。噛まずに、すぐに飲み込めよ。』 「ゆひゅぅ……ゆ、ゆっくり…り、かい……したよ……」 指の力を抜き、チョコレートを落とす。 チョコレートはゆっくりと、子まりさの口の中に落ちた。 まりさとぱちゅりーの顔は笑顔だ。 これで子まりさが助かる。イヤな思いを沢山したが、その苦労も報われる。 そんなことを考えているのだろう。 「ゆひゅぅ……ゆ!ごっくん………」 子まりさは俺に言われた通り、チョコーレトを噛むことなく飲み込んだ。 「……ゆ!!っゆっがぐがぁ!!こ!!こり!!どぐはいっでりゅぅぅうううううう!!!! ゆがぼがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 子まりさは絶叫をあげ、口から餡子を盛大に吐き出した。 どこにこれだけの元気があったのかが不思議なぐらい、 激しくのた打ち回り、汗と涙と涎、尿、そして下痢うんうんが止まることなく、勢いよくあふれ出る。 「ゆごぼげぼがああああああああああ!!!ごろじでええええええええ!」 子まりさは、もはや助けとは言わなかった。 恐らく、死こそがこの苦しみから開放される唯一の救済であることを理解したのだろう。 「………」×2 まりさと ぱちゅりーは口を開けて、その光景を眺めていた。 「ごぉお!!ごろじっでぇぇえええ!!!!!んっがぁぁあああ!!! がばっぐっびゃぁぁぁあああああああああああ!!!!!???? っごっびゃがぁぁぁぁぁああ!!!??ゆべぇぎゃぁぁぁあああ!!!???」 嘔吐物の勢いにまけ、全ての歯が抜ける。 「ぎゃばばぁぁぁあああああ!あんござぁあんがぁぁぁぁあああああああ! うんうんがぁぁぁああああ!!!!!!!ああああああんござんががぁぁぁああ!!! あああんごあんごうんうんがぁぁああ!!!あんござっんんん! ゆっぎゃぁぁああああああああああぁぁぁぁあああああああああ!! じねぇぇえええ!!おばえら゛みんな!!じねぇぇぇええええ!!!!!………………………………」 嘔吐と下痢の流出がピタリと止まり、静かになる。 ほぼ全ての餡子を出したようで、子まりさの汚い皮だけが地面に残っている。 その顔は世界の全てを呪っているように見える。 「………お…おちび?」 まりさが呟く。餡子脳では状況が理解できないようだ。 「…………む!っぎゅぅぅうう!!」 「ゆ!!??ぱちゅりー!?どうしたのぜ!!??」 「ゆっげぼぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!」 ぱちゅりーの口から生クリームが噴射される。 渾名がゲロ袋のぱちゅりーにしては、これまでよく我慢したほうだ。 しかし、助かると確信した我が子が死んだことに、ぱちゅりーはついに耐えらきれなかったのだ。 「ぱちゅりー!!だめなのぜ!くりーむさんを はいたら だめなのぜぇぇぇえ!!!」 まりさがぱちゅりーの頬を舐めるが、何の効果もなく、ぱちゅりーは生き絶えた。 ゲロ袋の渾名に相応しい死様に頬の筋肉が緩んだ。 「…………ぱちゅりー? …………おちび?………… ど、どうしたのぜ?どうして ふたりとも ぺしゃんこさん なのぜ? へんじを するのぜ!まりさに はなしかけて ほしいのぜ!! おちびは ちょこれーとさんで げんきになる はず なのぜ!!? おちび へんじを するのぜ!! いったい どういうこと なのぜ!おしえてほしいのぜ!ぱちゅりー!!」 死骸を問いただす愉快な まりさに、俺は声をかける。 『まりさ、ぱちゅりーも、おちびちゃんも、もう死んでるよ。』 「ゆ!?に、にんげんさん……… ど、どぼじでぇぇえええええ!!!! どぼじで、ぱちゅりーがぁぁあああ!!!?? どぼじで、おちびがぁぁああああああああ!!!?? ばりざは がんばっだ のぜぇえぇええ!!! ぐっざい うんうんを たべで、だいじな おちびちゃんを たべでぇぇえぇえ!! ぜんぶ おちびの だめにぃぃいいい!!ゆっぐり できないごどを だえだのぜぇぇええ!!! なのに、どぼじでぇぇえええ!!!どぼじでぇぇええええええええええええ!!!?? どぼじでぇ、おちびと、ぱちゅりぃがぁぁあああ!!!??」 まりさが泣き喚く。 「ゆ!!!!!!!! くっそにんげんがぁぁあああ!!!!」 まりさが突然、俺に怒りを表し、体当りを仕掛けてきた。 当たっても痛くも痒くもないが、ズボンを汚したくないので、回避する。 「ゆべぇ!?」 地面に激突する まりさ。しかし、泣くこともなく、俺のほうを向き、叫びだす。 「おばえのせいだぁあぁああ!!! くそ にんげんがぁああぁ、ちょごれーどざんをよござながっだがらぁぁぁぁああああ!!!」 『はぁ?何を言ってるんだ、お前は? ほら、ここに書いてあるだろ?チョコレートって。金バッチだったら、カタカナなら読めるだろ?』 俺はチョコレートの包み紙を見せる。 「ゆ!!?ち…ょ…こ…れー…と……ちょこれーとさん なのぜ…… だ、だったら、どうじっゆべぇぇええええ!!!!!!!????」 まりさが疑問の言葉を全て言う前に、俺はまりさを蹴る。 綺麗な放物線を描き、まりさが地面に落ちる。 「ゆべぇぇぇえ!!!!な、なにを?」 『何をって、まったく、人が親切でチョコレートをあげたのに、 おちびちゃんが死んだ理由を俺のせいにしたゲスを制裁しただけだよ。 ゆっくり理解してね!』 「ゆ?ゆっくりわるかったのぜ……で、でぼ、だったらどうじでおちびが!?」 素直に謝るあたり、善良なやつだと思う。 ただ、敬語を使う余裕がなくなったのだろう、だぜ言葉で俺に話し掛けてきている。 『さぁな?とりあえず、残ったチョコレートを食べるか?』 まりさの前にチョコレートの欠片を置く。 「ゆぅ……ありがとうなのぜ……ちょこれーとさんをたべて、すこしだけ ゆっくりするのぜ……」 まりさが汚い舌を伸ばし、チョコレートを掴み、口内へと入れる。 番と子供が死んだというのに、食欲には負けるあたり、善良とはいえ、所詮ゆっくりだ。 「むーしゃむーしゃ…!!こ、こりどくがはいってりゅー!!」 まりさは折角口内に収めたチョコレートを吐き出した。もったいないな。 『おいおい、折角のチョコレートだぞ。吐くなよ。』 「な、なにを いっているのぜ!これは どく なのぜ!ちょこれーとさんじゃないのぜ!!!」 『はぁ?これは正真正銘のチョコレートだよ。さっき包装紙読んで確認しただろ?』 「うそは よく ないのぜ!こんな にがいのは ちょこーれとさんじゃ ないのぜ!!」 『おい、これは苦いチョコレートなんだよ。』 「ゆ?」 『このチョコレートはな、砂糖が一切入っていない、カカオだけの苦いチョコレートなんだよ。 だいたい、チョコレートは本来苦いものだ。甘いのは砂糖を入れているからだぞ。そんなことも知らないのか?』 「はぁぁあああああああああ!!!??? なにを いっているのぜぇぇぇぇぇえええええええ!!! ちょこれーとさんは とっても あまあまな ものと きまっているのぜぇぇぇええええ!!!! あまあま じゃなければ、くすりさんに ならないのぜぇぇえええええええええええええ!!!」 『あ、な~んだ、甘いチョコレートが欲しかったのか。だったら最初からそう言えよ。 ああ、そうか。だからおちびちゃんは死んだのか。 甘くないチョコレートを食べて死んだのか。で、そのおちびちゃんの死を見て、ぱちゅりーも死んだと。 まったく、お前が ちゃんと甘いチョコレートをくださいって言わないからだぞ。 お前の言葉が足りないからおちびちゃんと ぱちゅりーが死んだんだぞ。ゆっくり反省してね!!!』 俺の白々しい言葉にまりさの顔がどんどん歪んでいく。 「………ふっ……ふっざっげっるっなぁぁぁあああああ!!! このげすがぁぁぁぁあっぁあぁああああああああああ!!!!! せいっさいしてやるのぜぇぇぇぇえぇぇぇぇええええええ!!!! じねぇぇぇえ!!げすな くそ にんげんは さっさと じねぇぇぇぇえぇえ!!!」 まりさが叫び、俺に攻撃をしかける。 「じねぇぇぇえぇええ!!!ぐべぇぇぇええ!!!!」 が、まりさの攻撃は当然俺にあたることはない。 まりさの体当たりが当たる前に、まりさを頭から足で押さえつける。 『バッカだな、お前らみたいなゴミを助ける人間なんているはずないだろ?』 「ば、ばりざだぢは…ごびじゃない……」 『ゴミだよ。捨てられたんだろ?』 「ちがうのぜ!!まりさたちはすてられたけど、ごみじゃないのぜ!!」 『人間から捨てられた存在をゴミって言うの。ゆっくり理解してね!ゴミ。』 「ゆっがぁぁぁああああ!!ごみって いうなぁぁぁあ!! あやばれぇぇええ!!かえぜぇぇえええ!!おちびと ぱちゅりーを がえぜぇぇえええ!!!」 『はいはい。わるかったよ。ほら、これいいか?』 「ぞんなあやまりかたっじゃ、ばりざのいかりはおっさまっらん???っぐべぇぇぇえええ!!!つ、つぶれりゅぅぅぅうううう!!!!」 踏みつけている足の力を強くする。 『やめてほしいか?助けてほしいか?』 「だ、だずげでぇぇぐだざぃ………」 ずびばぜんでじだぁぁああ!!ば、ばりざがわるがっだでずぅううう…… ばりざだぢはごびでじだ、ちょーじにのっでずびばぜんでじだ…… だ、だがら……だ、だずげで……」 力の差を再認識できたようで、まりさはすぐに謝る。 『謝る相手が違うだろ?』 俺は足に込める力を少し緩める。 「ゆ?ゆゆ???」 『お前が謝る相手は、あそこで死んでいるお前の子供のまりさと番のぱちゅりーだろ?』 「………ゆ?」 『お前がちゃんと正しく砂糖入りのチョコレートをもってこれれば、2匹とも死ななかったんだよ。 あいつらが死んだのは、お前のせいだ。だから、謝るならあの2匹に謝れ!』 「……………………ず、ずびばぜんでじだぁぁぁああ!! ばりざがばがでじだぁあぁぁああ!!!おちびとぱちゅりーがじんだのは、ばりざのぜいでずぅううう!! ずびばぜん!!!!ゆ、ゆるじでぐだざいぃいいい!!!!おちび、ぱちゅりー、ばがなばりざをゆるじでぐだざいぃいいい!!!」 まりさは涙を流しながら許しをこう。 悔しいのだろう、俺、人間のせいで死んだ妻子に対し、自分のせいで死んだと嘘を言い、許しをこう自分の姿が情けないことだろう。 他のゆっくりならば、助かる為に平気で嘘の謝罪をするだろうが、 なまじ賢く、善良なため、自分の言葉の意味を理解している まりさにとって、この謝罪は苦痛でしかない。 『そうか、お前のせいで、子まりさとぱちゅりーは死んだんだな?俺のせいではないんだな?』 「はぃいいい!!ぞうでずぅううう!!ばりざのぜいでずぅうう!!!にんげんざんはわるぐありばぜんん!!!」 命の為とはいえ、家族の命を奪った人間ではなく、自分が悪いという まりさ。 その屈辱に震える目を見ると、とても ゆっくりした気分になる。 『なるほど。よし、そんなゲスなまりさを制裁してあげるよ!感謝してね!』 「ゆ?ど、どぼじでぇぇええええええ!!ちゃんどあやばっだのにぃいいいい!!!」 俺はまりさを蹴る。 「ゆっべぇぇ!!??だ、だずげ……っゆっべぇぇええ!!!」 俺は まりさを何度も蹴った。 しばらくすると、まりさのお飾りと、お下げと、右目と歯がなくなった。 「ぼ、ぼぅ……ゆるじ…ゆばぁ………ゆ……るじで…………」 『ふぅ、いい汗かいた。そうだな、これぐらいで許してやるよ。お礼は?』 「…あ、ありがどぅ……ござ……ばず……ゆばぁ……ゆはぁ……」 『これにこりたら、これからはちゃんと砂糖いりのチョコレートを強請るんだぞ。わかったな?』 「ゆはぁ……ゆはぁ……ば、ばぃ……ゆっぐり……りがぃじばじだ………」 『本当かな?ここで練習してみろよ。ほら、俺にチョコレートを強請ってみろよ。』 「………ゆはぁ……ゆはぁ……に、にんげんざん、ば、ばりざに…… おざどうざんが……ばいっだ、ちょ……ごれーどざんを……くだざぃ……」 『よく言えたな。よし、ご褒美にチョコレートをあげよう。ほら、口をあけて。』 「…………」 まりさは口をあけない。 俺を見つめる濁った左目からは不信の感情が読み取れる。 おそらく、先ほどのカカオ100%を警戒しているのだろう。本当に賢いやつだ。 『まりさ、これからあげるチョコレートは俺がよく食べるやつで、砂糖入りだ。 だから、安心しろ。疑うなら、俺が先に食べてやるよ。………うん。うまい。ほら、平気だろ?』 チョコレートを食べる俺を、見つめるまりさ。 不信に満ちた、濁った目が、期待の目に変る。 「……ちょ…ちょこれーどさん……」 まりさが口をゆっくりとあける。どうやら信じてくれたようだ。 「く、くだざい……おざどうざんが……はいっだ……ちょごれーどざん………」 『欲しいんだな?チョコレートが。どうしてだ?』 食べる気になった まりさに尋ねる。 「ちょ……ちょご……れど…さんが、あれば、げん…きに、なる……からなの……ぜ ばりざは……ま、まだ、じに……だくな……いのぜ。だがら、だがら…… ちょごれーどざんを……おざどう…ざんが…はいっだ、ちょこ…れーどさんをぉ……くだざいぃぃいいいい!!」 まりさは、チョコレートを必死になって強請る。 今日、始めて見た時の まりさと同じだ。但し、今度は子供ではなく、自分のためだが。 『砂糖入りのチョコレートだ。ゆっくりと食べるんだな。』 俺はまりさの口にチョコレートをいれる。 まりさの顔は笑顔だ。 これで助かると信じているのだろう。 「………むーしゃ、むーしゃ!!!!ご、ごりどく!!ばいっでっるぅぅううううう!!!!」 っゆげっぼぉぉぉぉおおおおおおおおおおぉぉおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! うぞっづっぎぃいいいい!!く、ぐぞ にんげんがあぁぁぁああああ!!!!」 餡子を吐き出しながらも、俺を嘘つきと器用に叫ぶ まりさ。 『おいおい、カカオ80%で、ちゃんと砂糖が入っているチョコレートだぞ。嘘つきとは失礼な。 苦いもの好きな俺の好物のチョコーレートだ。苦味の中に、微かに甘味があるだろ?』 通常のチョコレートはカカオ30%ぐらいで、甘すぎるため、あまり好きではない。 チョコレートはカカオ含有量が多い、苦いやつのほうが好きだ。 「っぞんなぁぁぁああ!!っゆっげっぼぉぉおおおお!!!! ど、どぼじでぇぇぇぇぇぇえぇえええええ!!!???ば、ばりざはぁぁぁあああああ!!! っゆっげっぼぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 嘔吐を続けるまりさに俺は声をかける。 『まりさ、ゆ下痢になった子まりさなんて、さっさと諦めればよかったのにな。 そうすれば、お前と ぱちゅりーは死ななかったよ。 人間を信じるからこうなるんだよ。これに懲りたら、もう人間の前にはでるな。 わかったな?ゴミ。』 「っゆっげぼぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」 嘔吐を続ける まりさの目からは後悔の念が感じ取れる。 人間を信じたことを後悔しているか、チョコレートを強請ったことを後悔しているのか、 それとも、ゆっくりとして生まれてきたことを後悔しているのかは分からない。 そして、後悔の目をしたまま、まりさは絶命した。 俺は3匹の死骸をゴミ袋にいれ、空き地から立ち去り、公園に設置されている、ゆっくり専用ゴミ箱に捨てる。 ゆっくりに苦いチョコレートを与えるというのは始めての経験で中々楽しかった。 今度はどんな ゆ虐を楽しもうか?もっと激しいほうがいいだろうか? ベンチに座り、そんなことを考えながら、チョコレートを頬張る。 「にんげんさん!れいむは しんぐるまざー なんだよ!かわいそうなんだよ! だから、その ちょこれーとさんを ちょーだいね!すぐでいいよ!!」 足元で 汚い赤れいむを連れた、汚い成体れいむが叫ぶ。 俺は れいむたちのほうを見て、笑顔になった。 あとがき ゆ下痢の治療法はたぶん、独自設定です。 気分を害された方、申し訳ありませんでした。 過去作品 anko3893 穏やかな日常、或いは嵐の前の静けさ anko3901 穏やかな日常、少し増えた賑やかさ 前編 anko3902 穏やかな日常、少し増えた賑やかさ 後編 anko3903 孤独なぱちゅーが共に過ごすもの anko3904 名物 anko3907 こなさん anko3913 006受け入れた anko3917 ゆっくりによる経済 anko3928 音楽隊 anko3939 赤いリボンのサンタさん anko3951 新しいゆっくりプレイス anko3957 お空のゆっくりプレイス anko3963 安住の地 anko3967 おちびちゃんが欲しい 前編 anko3968 おちびちゃんが欲しい 後編 anko4004 初詣の帰りに anko4013 ゴミ箱の中のゴミ
https://w.atwiki.jp/shitsu-kote/pages/371.html
コテ名 おできち ◆wW1ZwOwwBE 通称 機種 SH07F 活動時期 2015年~ 出現頻度 生年月日 21歳(2015年現在) 性別 女 住み 職業 アルバイター 趣味 特筆事項 好きなコテは温水くん コンサートは見ないけどジャニオタ 名付け親はたこ焼き兄ちゃんW HP 画像 なし 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/naporeon/pages/1217.html
ゴマきち ≪成績≫不明 総対戦数 戦 勝利数 勝 勝率 % 累計BP pt 最大連勝数 0 最大RP 1500 総合 戦績 戦 勝 敗 勝率 % ナポ 戦績 戦 勝 敗 勝率 % 副官 戦績 戦 勝 敗 勝率 % 連合 戦績 戦 勝 敗 勝率 % ≪ギルド≫ よろめき温泉 ≪コメント欄≫ ≪受賞歴≫ ≪所有アカウント≫ 名前 ギルド 備考 ≪活動期間≫ ?~現在 ≪ログイン曜日/時間帯≫ ≪イクサーネーム由来≫ ≪サイト≫ ≪記事≫
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1625.html
・ゆ虐度数はC-(ぬるめ)です。 バケツまりさ 「昨日は雨さんが沢山降ってきたけど 今日はご飯さんが沢山降ってこないかな」 雨上がりの朝、町で過ごすゆっくりまりさは餌を探していた。 水溜りを避けるため道路を右往左往しながら。 目的は餌場でありその場所を目指してはいたのだが 場所の当ては何もなくたださまよっているに等しかった。 雑草のひとつでも生えていれば口にでも突っ込むのだが 町で住むゆっくりにとって雑草はお気軽な食料で 見付けられる様な場所にある場合すぐ食べられてしまうし 人間さんが作った道路の近くではそれすらもあまり生えてこない。 はぁ~と、ため息をついてるとまりさの全身に衝撃が走った。 「ゆがっ!!」 まりさはぼいんぼいんと鞠のように弾みながら吹っ飛ばされる。 一旦飛ばされると、途中で踏ん張る等の防御方法はまったく取れない。 まりさは吹っ飛んだ後もそのままごろごろと転がっていき 奥にあったゴミ捨て場に突っ込むことでようやく止まった。 「んあ、ゆっくりか。 蹴っちまったな、わりーわりー」 携帯電話を片手に持った人間がうっかりした表情で まりさの方に話しかける。 「ぐーるぐーる」 「おーい、ゆっくり大丈夫かー?」 目が回っているまりさには、それを聞き理解するのは困難だ。 人間はまりさを見てふき出し、携帯電話のカメラでまりさを撮った。 ぴろりろりん。 「ぷはwwwコリャ傑作だわ」 人間は先ほど撮った携帯電話の画像を見て もう一度まりさを見ると笑いながらその場を去っていった。 「ぐーるりぐーるり」 人間の持つ携帯電話には目を回したまりさの画像が映っていた。 そのまりさの頭の上部にはいつもある黒い帽子ではなく 緑色をしたプラスチックのバケツがズッポリはまっていた。 そして、まりさはしばらく起きることが出来なかった。 我に返ったまりさは自分の住みかに戻ってくることが出来た。 口には戦利品がくわえられている。 そしてバケツはまだ頭に被った状態のままであった。 まりさがたどり着いたそこはまりさのゆっくりプレイスであり 空き地にコンクリート製の土管が3本積み重ねて置いてある。 生まれたすぐ後からこれまでずっとその上で生活を行ってきた。 土管の中は空洞になっていたので、中でよく雨風をしのいだものだ。 「やれやれ、今朝はなんだかひどい目に遭ったよ う~ん。まだ調子悪いのかな。肩さんがとても重いよ でも、そのおかげか、ご飯さんが降ってきたから運がいいね」 まりさはありもしない肩がさもあるかのように首を左右にかしげる。 まりさがご飯さんと呼ぶ戦利品のコンビニ弁当だが 先ほどまりさが突っ込んだゴミ捨て場にて見付けたものだ。 半透明のゴミ袋の中から丸見えだったため簡単に探すことが出来た。 久しぶりにありついた豪勢な食事を一生懸命口にする。 満足な食事をしながら、頭上に広がる澄み切った青空を満喫していた。 「今日はなんだかいつもよりお空さんが沢山見えるよ きっと雨さんが晴れたからお空さんもゆっくりしているんだね まりさもとってもゆっくりしているよ」 まりさは空を見上げたままゆっくりと眠りについた。 「むきゅーーーーーん たじゅけてーーーーーー」 昼寝をしていたまりさはゆっくり出来ない声で目が覚めた。 「おがあじゃん、目をさましてーーーー!!」 まりさは声の方向へ走る。 なにかしらの影が見えたので、まりさは飛び込んでいった。 「まりさのなわばりでゆっくり出来ないことは許さないよ!」 飛び出したまりさはそこでの散々な有り様に目を疑った。 潰れたゆっくりが1体。ぱっと見て助からないことがわかる。 ゆっくりの中身である餡子が止め処なく流れ出していた。 そして追いかけるものから走り逃げるゆっくりが1人。 逃げているゆっくりはピンクの帽子をかぶったぱちゅりーであった。 その逃げるぱちゅりーを追いかけている、片手に棒を持った人間が1人。 人間さんの大きさで比較すると小さい方に見えるが それでもバスケットボールぐらいのゆっくりの5倍はある。 「ひゃはー、ぎゃくたいー!」 「むきゅきゅーーーー 誰かだじゅけてーーーーーーー」 まりさは一度こういう場面を遠くから見たことがあった。 だから潰れたゆっくりは人間がやったことだとすぐわかった。 人間にはゆっくり出来ないそんな悪い人間がいる。 そして、とてもゆっくりしているゆっくりが妬ましいのか襲い掛かる。 まりさは普段から腕っ節が良いほうで 子供ゆっくりにすっきりをしようとしたレイパーや 縄張りを荒らすゆっくりを幾度も追い払ったことがあった。 人間がゆっくりを潰そうとしたときも まりさはその悪い行為を制裁するため駆けつけたのだが 人間は事が終わると煙の様にその場から消え去っていったため 人間にやられ事切れ残されたゆっくりしか見たことは無かった。 だからこそ、まりさはまだ生き残っているゆっくりを見て駆けつけた。 これ以上の被害は出してはいけないと。 人間が手持ちの棒で逃げるゆっくりに殴りかかる。 「あぶない!」 まりさは走るが、まだ遠い。 このままでは棒がぱちゅりーに当たる。 ブン!! 人間が棒を振り下ろしたがそれは当たらず 逃げるぱちゅりーのピンクの帽子を吹き飛ばすだけで済んだ。 ほっとしたのも一瞬、キッと目を細めるまりさ。 「これは勝機だよ!」 まりさは空振りしたことによりたたらを踏んでいる人間に 真横から思いっきり体当たりをした。 バランスを崩していた所を横から押されたため簡単に転ぶ人間。 まりさはあっけなく倒れた人間を見て相手の力量を悟った。 「よし、もう一度体当たりをすればヤレル!」 まりさは力を入れるため思いっきりためを作る。 人間は、転んだままくるっとまりさの方を向いて棒を握りなおした。 「むきゃ! 油断はきんもつよ!」 逃げていたと思ったぱちゅりーがまりさに向かって叫んでいた。 その声を聞いたまりさはフッと笑った。 「ゆっくり見てるんだぜ、ぱちゅりー まりさはこれまで悪いゆっくりを9体もたおしてきたんだぜ 今、目の前にいる悪い人間さんも制裁してやるのぜ ぱちゅりーは悪党10体制裁の祝いをどうするか心配するのぜ」 ためた力を一気に開放し人間へ跳躍するまりさ。 人間は転んだ体制のまま棒を使ってまりさに殴りかかった。 ガイィーーーン!!! 「ゆげ!!」 「うわぁ!」 ゆっくりと人間の声が重なった。 頭から一刀の元にやられた!! まりさは考えていなかったその結果自身に絶望した。 人間の動きは早く、まりさの頭天辺へ棒の一撃が綺麗に決まったのだ。 まりさはそのまま死を覚悟した。 くちおしや、まりさも今まで人間にやられて来た中の1人になるなんて。 ぼいん。 衝撃はあったものの地面にまっすぐ落ち、まりさは驚いた。 さほど痛くない。 殴られたらしき頭は無事のようだ。 やはりこの人間は強くない。勝てる。まりさに負ける要素が無い。 「なんだこいつ!! バケツなんかかぶりやがって!!」 人間もまたまりさのタフさに対して驚いているようだ。 しかも、今のまりさの一撃で人間は持っていた棒を落としたようだ。 「なんだかチャンスなんだよ まりさが人間さんなんかに遅れをとるわけないでしょ?」 「むきゅ!!すごい!人間さんが悲鳴を上げたわ! このまま人間さんなんてやっつけるのよー!!」 人間は起き上がったが、まりさがその足へ体当たりを仕掛けた。 「いったーーー! 脛に当たるなんて卑怯だぞ!!」 「戦いにひきょうもひほうもないんだぜ!」 まりさは人間へそう言い切った。 「そのバケツをとってやる!!」 人間が突然ジャンプし、上から全身でまりさに覆いかぶさった。 まりさはその重みで潰れるかと思った。 「うぶっ、体だけは大きいなんて人間さんは本当に汚いね こらー、まりさを離してね!離してねー!!」 人間はまりさへのしかかっていた体重をあっさり引き離す。 それと一緒に、まりさが被っていた帽子は人間に引き剥がされた。 美まりさの象徴である大切な帽子を。 それをこんなよわっちい人間なんかに! 「やめてーーー まりさの帽子を取らないでねーーー! すぐ返してねーーーー!!!」 まりさは今にも泣きそうな目で人間に訴える。 だが、まりさが人間の手に取ったバケツを見て驚いた。 「バケツさん?」 なんだ、まりさの帽子は取られてないじゃないか。 「ぷふ、人間さん、今頃新しい武器を出しても遅いよ 最強のまりさにびびりまくってるのが一目瞭然だね」 「何言ってんだ、これはお前のものだろ」 人間はまりさにバケツを投げつける。 「あだっ まりさの頭に傷がついたらどうするの!! ・・・って、あれ?? 帽子さんがないよ???」 まりさは気がついた。 素の頭に衝撃があったことで気がついた。 やっぱり、まりさの帽子がない。 「人間さん!!! まりさの帽子さんをどこにやったの!!!」 「ばーか、そこに転がってるだろ」 そう言って、転がったバケツを指差す人間。 「これはバケツさんでしょーー!!」 まりさはきょろきょろして帽子を見つけた。 慌てて駆け寄ったが、色が違う。 先ほど逃げていたぱちゅりーが飛ばされたものだった。 「まりさの帽子さん、こんなところにあったよ! って、違うよ!! こんなド派手なピンクの帽子さんじゃないよ! しかもちょっと小さいし!」 「これはぱちゅりーのお帽子さんよ!! ゆっくりかえしてね!」 まりさを見て近くによってきたぱちゅりーがその帽子を拾い そのまま被ると帽子はぱちゅりーにぴったりとフィットする。 それを見てまりさは自分の帽子がないことを再認識する。 「まりさの帽子さんは?? まりさの帽子さんは??? どこいったの?まりさの」 「うるさいな! 返せばいいんだろ! お前の帽子また被せてやんよ!」 人間はバケツを両手で掴むや、まりさの頭にずぽっと被せた。 「ゆんやぁーーー!! こんなのゆっくりできないーーー!!!」 その時、遠くから別の人間の声がした。 「こらーー! 糞ガキーー!!」 目の前にいる人間の倍の大きさはあるだろうか。 それほど大きさに違いがある人間がもの凄い勢いでやってきた。 「やば、カミナリオヤジ来た!」 まりさにバケツを被せた人間はビクッと立ち上がった。 「むきゅきゅきゅきゅきゅきゅ! 人間さんが仲間を呼んだわ! あ、あれは大人の人間だわ!! もうだめだわーー!! 捕まって殺されるーーー! えれえれ・・・」 周りが騒がしくなってきていたが バケツを被ったまりさは直接は見えない頭上のバケツを見ようと 目玉がひっくり返るぐらい上向きになっていた。 「帽子さん帽子さん まりさの帽子さん? そういえば、つばがないよ?? バケツさんがまりさの帽子さんなの?? まりさの帽子さんがバケツさんなの???」 呪文の様に呟くまりさにしがみ付くため ぱちゅりーは自分で流れ出した中身をじゅじゅじゅと吸う。 「むきゅきゅ・・・じゅる・・・! ぱちゅりーとまりさ、人間さんに挟み撃ちになっちゃったわ? まりさどうじゅるる?? さすがの・・じゅる・・・けんじゃにもわからないわーー!!」 人間がもう1人近づいているにも関わらず まりさ達はそれに対処できず、その場にいることしか出来なかった。 「バケツのお前、覚えたからな!」 そう言うと子供の方の人間はくるっとまりさに背を向けると走っていく。 「こらーーー!! 道路にゆっくりを撒きちらかすんじゃないぞーー!! 掃除していかんかーーー!!!!」 「むきゃーーーー!! 潰されるわーーーーーー!!」 大人の人間はまりさ達は眼中になく子供の方を真っ直ぐ見ていたため まりさ達の存在を意識していなかった。 「そうだ、帽子さんをゆっくり脱いで確認するよ・・・」 まりさは帽子であるバケツをはずしてみる。 そのとき丁度まりさの顔面ぎりぎりを、大人の人間の足がかすめる。 大人の人間はまりさがはずしたバケツに足を突っ込む形になった。 「ゆ゛??ゆ゛??ゆ゛??」 踏み込んだ足はそのままバケツによって後ろの方へ大きく滑り込む。 「ぐもぉぉぉぉぉぉおおおおおお」 大人の人間は思わぬ事態に対応できず派手にその場に倒れこんだ。 大人の人間は咳き込みながら立ち上がる。 子供の人間も咳き込んでいた。笑いすぎたらしい。 「やーい!ばーーかぶぁーーーか! ゆっくりで転んでんなよ!! だっせーんだよ!!超うける!」 「このガキャーーーー!!!」 転んだ理由はまりさだったのだが、大人は怒り沸騰子供しか見ていない。 そのまま子供の人間を追いかける形で大人の人間は走っていった。 二人の人間はあっという間にその場からいなくなった。 「む、むきゅーー!!すごいわ!! まりさはすごすぎるわーーーー!! 人間さんを2人ともやっつけちゃったわ!!」 あまり元気のないまりさの隣では 中身を完全に食べなおしたぱちゅりーがはしゃいでいたが とても一緒に喜ぶ気にはなれなかった。 まりさは人間に踏まれて飛んでいったバケツを拾いなおす。 「ゆう・・・」 まりさはバケツを脱いだり被ったりしながらその感触を確かめていた。 「ぴったりくるし、しっくりくるよ 産まれたころから被っているからこそわかるよ このバケツさんこそまりさの帽子さんなんだよ まりさの帽子さんはバケツさんになっちゃったよ」 落ち着きを取り戻したぱちゅりーがまりさに近づいてくる。 ぱちゅりーはバケツを取ったまりさをゆっくり見たことで まりさがまりさ種であることにやっと気づいた様だ。 もっとゆっくり見たならばまりさの頭上部の形がバケツの形に 変形していたことがわかったのだろうが、そこまでにはいたらなかった。 「まりさはまりさだったのね 帽子さんがそんなんだからわからなかったわ でも、とってもゆっくりしているわね」 「ゆ?」 「まりさは人間さんも倒しちゃうし 何も出来ないぱちゅりーと違って とってもゆっくりしたゆっくりなのだわ」 「ゆ?そうかな?」 「そうだわ! 帽子さんも硬くて強そうだわ! いいえ、それはけんじゃのちしきだと兜だとおもうわ えらばれしゆっくりだけが手に入る兜なのだわ」 「このバケツさんはかぶとなの? まりさはえらばれしまりさなの?」 「そうよ、まりさは伝説のえらばれしゆっくりなのだわ!! 大人の人間さんもなぎ倒すなんて普通は出来ないわ! 伝説のゆっくりがいるなんてけんじゃですらわからなかったわ」 「ゆっへん!! ぱちゅりーは実に幸運だよ! 伝説のまりさがたまたま通ったことにね!」 「ほんとだわ!! ぱちゅりーは町のみんなに 伝説のゆっくりが現れたこの出来事を伝えていくわ」 「てれるぜ・・・ほどほどにしてくれよな」 その後、ぱちゅりーの母親であるゆっくりの亡がらへ黙とうすると まりさとぱちゅりーはそれぞれの住処へと分かれた。 「どこでまりさは選ばれたんだろう・・・」 夕方、まりさは1日の行動を振り返ってみた。 昨日はもう、雨のことしか覚えていなかったけど おとといはまだバケツが帽子だった様な気がしたからだ。 今はすごい強いかぶととして頭の上に乗っかっているとはいえ まりさはまりさを象徴するお飾りである黒い帽子に未練があった。 「まず ご飯さんを食べたいなーと思っていたんだ」 そう考えながらまりさは町の中をぶらつく。 朝は溜まっていた水溜りもすっかり無くなったようだ。 「ひそひそひそ・・・」 「くすくすくす・・・」 「ふふふふふ・・・・」 ふと、すれ違う人間がまりさを見てにこやかな顔になっていた。 まりさはなんだろうと考えた。 今日は悪い人間さんもやっつけてとてもゆっくりしたんだ。 そうだ、ゆっくりしたまりさを見ると人間もゆっくりするんだ。 伝説のまりさを見て、人間がまりさにびびりまくっているのも それはそれで気持ち良いものだとは思ったが まりさはゆっくりした人間を見るのも悪くないと思った。 「途中にまりさの帽子さんは落ちてなかったな・・・」 どこをどう歩いてるか、自分でもわからなくなってきたころ 既にゴミが回収されていたゴミ捨て場にたどり着いた。 「それから・・・ えっと? 気づいたらここでご飯さんが降ってきたんだ」 まりさは頭のバケツを脱いでその場に置くと すぐさま上に乗っかり周りを見渡した。 バケツに乗って上から見下ろせば 普段ゆっくりに見えないものも見つけられるはずだ。 だが、ゴミが捨ててあった場所やその周りには何もない。 まりさはバケツの上でため息をつく。 後は何をしただろうか。 「そして、おうちでご飯さんを食べたら眠くなって・・・」 あれ??? その後は悪い人間からぱちゅりーを助けて そこでバケツを被ってることに気づいたんだよ! 「選ばれるってのは突然なのかな・・・ もしかして・・・帽子さんが突然へんけいしたのかな このバケツさんはまりさが産まれたころから ずーと被っている帽子さんなんだよね」 無理矢理自分を納得させたまりさは さっき助けたぱちゅりーを思い出した。 「ゆ! こんなことで落ち込んでいられないよ まりさは最強のかぶとさんからえらばれたゆっくりだからね! 悪い人間さんがいても追い払えるんだからね」 その時まりさは「お巡りさん」と呼ばれる人間が通っていくのを見て 悪い人間を捕まえる「お巡りさん」がいることは聞いて知ってはいたが ゆっくり殺しをした人間を捕まえなかった話を聞いていたので なんて役に立たない人間なんだろうとまりさは思っていた。 まりさは「そうだ」と言うと、バケツの上からぴょんと飛び降りた。 「まりさはパトロールをするよ! 伝説のまりさが治安管理をすれば この町はゆっくりも人間さんもみんなゆっくり出来るよ! これはえらばれしまりさにしか出来ないことだね!」 そう言うと、まりさはバケツを被り直し夕焼けを背に歩き出した。 ところで、まりさが最後にいたゴミ捨て場だが そのゴミ捨て場の金網で出来たフェンスの上の方に コンビニ袋に入ったある黒いものと紙切れが挟んで置いてあった。 紙切れにはこう書いてある。 「帽子が落ちてました 雨に濡れないように袋に入れてあります」 だが、その中身を取りに来るものは一向に現れなかった。 今日も緑色のバケツを被ったゆっくりが 町中をぽよんぽよんと元気に巡回している。 おわり あとがき 4作目っす。前回は書き足りないSSですいませんでした。(作品は消してます) 今回は反省して書けるだけ書いてみましたが、いたらなかったらすいません。
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/1779.html
※独自解釈だらけです。 ※虐待成分は頑張ってみましたが、もしかしたら薄目かも? ※馬鹿みたいに長いです。 ※前作『ふたば系ゆっくりいじめ 277 騙されゆっくり』と前々作『ふたば系ゆっくりいじめ 274 嘘つきゆっくり』をお読みいただいてからお読みください。 先代の長ぱちゅりーは、通常のぱちゅりー種と比べても非凡な才をもって群れに貢献して来た。 だが、どんなに頑張っても、母の偉業を超えたとは思えなかった。 危険な生物が居ない安全なゆっくりプレイスを発見して群れを作り、 見晴らしの良い場所に分散して巣を作らせる事で、お互いの巣を見張り、危険をいち早く察知する。 狩りの担当を分担する事で食糧の確保を容易にした上で、人口統制の為に『すっきりー!ははるだけにすること』と制限を設け、 生まれた赤ゆっくりがある程度育ったら『がっこう』に預ける事で子育ての負担を減らし、群れに教育を施して事故死を防ぎ、社会性を学ばせる。 物々交換の概念を持ち込み、狩りの成果を働きに応じて配分することで原始的な貨幣制度の先駆けを作り、 『おうた』や『おいしゃさん』のようなサービス業が成り立つように社会制度を整える。 お薬になる草の種を丘に蒔き、大量に生えさせておく事でいつでもお薬が使えるようにしておいたり、 悪い事をしたゆっくりを丘の上でお仕置きする事で、『なにがわるいことなのか』を群れに理解させたりする。 これらは全て、元飼いゆっくりだったという先々代の功績である。 年老いた飼い主さんが永遠にゆっくりしてしまった事で身寄りを無くした先々代は、 巷に溢れる野生のゆっくり達が全然ゆっくりしていない姿に一念発起し、ゆっくりを導く事を志したのだと言っていた。 多大な変革をゆっくり達にもたらした偉大な先々代は、自分の娘にもその志を継いで欲しいと願って非情に徹し、厳しく教育した。 生まれたときから長になるべく、帝王教育を受け続けた娘はその期待に見事応えてみせたのだった。 しかし幾ら非凡であったとしても、天才と秀才を比べれば前者に目が向くのが世の常である。 まして子供の頃からその天才を目の当たりにしていれば、いかに秀才とはいえ生まれる感情がある。 それは『劣等感』。 確かにこのぱちゅりーは優秀であった。否、優秀すぎた。 只でさえ人間の教育を受けたゆっくりでありながら、学者であった飼い主から様々な英知を授かり、 それでいてぱちゅりー種にありがちな、知性を鼻にかけた思い上がりの片鱗すら見せなかった。 完璧すぎる母に追い付こうとがむしゃらに突っ走った。 母の功績に縋るのではなく、それを超える何かを常に追い求めた。 気が付けば番を迎える事も無く、孫の姿を見せる事さえ出来ないまま、 偉大なる母は永遠にゆっくりしてしまった。 偉大なる先々代の死を悼み、涙に暮れる群れの嗚咽を背後にして、 母の死に顔を見ながら先代の長ぱちゅりーは思った。 ゆっくりなのに、ゆっくりする事を忘れて頑張った。 それなのに結局母には勝てなかった。 必死に頑張った日々は、徒労に終わってしまった。 ならば。 いつか生まれてくるであろう自分のおちびちゃんは、絶対ゆっくりさせてやろう。 後悔する事のない、幸せなゆん生を送らせてやろう、と。 こうして長ぱちゅりー親子の『勘違い』が始まってしまったのだ。 『勘違いゆっくり』 「……むきゅ………むきゅ……………」 山の裾野に広がる森の中心、ぽっかり開いた場所にある小高い丘を目指して一匹のぱちゅりーが這いずっていた。 何かに酷くぶつけたような打撲傷が顔中に広がる姿は痛々しい物であったが、その顔に浮かべた形相が哀れみを根こそぎ奪っていた。 (むっきゅうぅぅぅぅぅぅ!ぱちぇをゆっくりさせないむのうなむれはゆっくりしね!) 般若もかくやと言わさんばかりの憤怒の相。最も般若は嫉妬の怒りだが、このぱちゅりーが抱いていたのはもっと醜いもの。 『逆恨み』であった。 (あんなみえみえのわなにかかったむのうなまりさのせいで、ぱちぇがこんなおおけがをおったのよ! おかげでおかあさんがひとりじめしていたまりさからとりかえしたすぃーまでこわれちゃったじゃない!) 酷い責任転嫁もあったものだが、ぱちゅりー視点ではこれが事実であり、真実である。 そもそもあのスィーは、それを欲しがった娘の我侭を聞き入れた先代の長が群れの皆にある事無い事吹き込んで、 持ち主のまりさを無理矢理悪者に仕立て上げ、強引に追放する事で取り上げた物だ。 いかに長の言葉とはいえ、本来なら疑うゆっくりも現れておかしくない行為だが、この群れにおいては事情が異なる。 長の言う通りにしていれば、必ずゆっくり出来る。 先々代の優秀さが、群れのゆっくりから『長を疑う』事を忘れさせてしまったのだ。 如何に先々代が優秀であっても、その子孫まで優秀であるとは限らないのに。 (じぶんのてでしけいにできなかったのはくやしいけど、にんげんさんがかわりにまりさをおしおきしてくれるわ! にんげんさんなんかそれくらいしかやくにたたないんだから、しっかりまりさをころしておきなさい!むきゅ!) この半年間、ぱちゅりーの逆鱗に触れて殺されたゆっくりの数は両手の指に余る。 月に三人以上殺している計算だが、実際に悪事を働いたゆっくりはいない。 苛烈な恐怖政治が、皮肉にも秩序を保つ要因になったのだ。 その事が逆に長の権限を高め、更なる虐殺を呼んでしまった訳だが。 鬱蒼と茂っていた森の木々が途切れ、目の前が急に開ける。 群れが根城にしていた丘の天辺で、周囲を見張っていた子まりさが長の帰還に気付き、急いで駆け寄る。 「ゆっくりおかえりなさい、おさ!……そのけがはどうしたの!?……それに、おかーさんたちは……?」 ぱちゅりーの怪我を見て、何事かあった事を悟ったらしい。顔色を変え、詰め寄る子まりさ。 群れを見捨てた事がバレたらまずい、そう考えた長ぱちゅりーは咄嗟にひと芝居打つ事にした。 「むきゅっ!おちびちゃんたちをみんなあつめなさい!いますぐよ!」 「わ、わかったよ!ゆっくりしないで、みんなをあつめるよ!」 ぱちゅりーの血相に気圧されたのだろう、慌てて『がっこう』のある方角へ駆け去る子まりさを見送り、 ぱちゅりーは自身の身の安全を図る為の筋書きを検討し始めた。 しばらくして、丘の天辺に陣取ったぱちゅりーを囲むように沢山の赤ゆっくりと、子供達が集まっていた。 皆の不安そうな視線を浴びながら、ぱちゅりーは精一杯無念そうな表情を作り、告げた。 「……おちついて、よくきいてねみんな。……ぱちぇたちは、にんげんさんのひきょうなわなにつかまっちゃったの。 そして、…………みんな、にんげんさんにころされちゃったわ………」 長の言葉にぴたっと静まる子供達。 だが、泣き出すゆっくりはいない。余りに衝撃的な内容に、理解が追い付いていないのだ。 「……ま、まって!それじゃ、まりさのおかーさんや、おとーさんは……?」 恐る恐る長に問いかけるのは、見張りをしていた子まりさであった。 ぱちゅりーは子まりさを見やり、沈痛な面持ちで頷いた。 「……おちびちゃんたちの、おかーさんたちはね……ぱちぇだけでもにげてって…… のこされたおちびちゃんたちをおねがいって、ぱちぇをたすけてくれたの………」 その答えを聞き、血の気が引く子まりさ。 やがて長の言葉を理解したのだろう、子供達からざわめきが漏れ始め、それは段々と大きくなっていく。 「……うそだ。うそだうそだうそだ、うそだぁぁぁぁあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」 「ゆ゛ぎゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!お゛ぎゃ゛あ゛じゃ゛ん゛がじん゛じゃ゛っ゛だぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」 「どぼぢでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛え゛ぇ゛ぇ゛!!がな゛ら゛ずがえ゛っ゛でくでるっ゛でい゛っ゛でだの゛に゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」 「みゃみゃぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!ありちゅいいこになりゅがら゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!み゛ょ゛どっ゛でぎでぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛え゛ぇ゛ぇ゛!!!!」 「ぱちぇの、ぱちぇのぴゃぴゃとみゃみゃがぁぁぁぁ!!げほっ、ごほっ……ゆげぇっ!!!」 現実をひたすら否定するもの、戻ってこない父や母を呼び続けるもの、ショックの余り餡子を吐き出すもの……。 森を揺るがす子供達の慟哭はその日の夕刻まで続いたと言う。 しかしぱちゅりーは気付かなかった。 彼女の言葉を聞き号泣する子供達の中に、凍えるような冷たい視線を向けるグループが混じっていた事に。 季節は巡り、春。 うららかな陽気に降り積もった雪が融け、丘の周りに分散する巣が姿を現す。 結局、大人の居ない群れの中で冬籠りを成功させたゆっくりは三分の二にも満たず、そこかしこで犠牲になったゆっくりを偲ぶすすり泣きが聞こえる中、 ぱちゅりーは再び長の地位に就く事になった。 この群れで唯一の大人であり、父や母から自分達の養育を任されたと主張した事もあるが、 涙に暮れる子供達に行った演説が決定打となったのである。 『かなしいのはわかるわ、ぱちぇもくやしいもの。 ……だったらつよくなりなさい!つよくなって、ふくしゅうしなさい!そのためのほうほうはおしえてあげるわ! おかあさんたちのかたきをとりたかったら、ぱちぇについてきなさい!!』 ぱちゅりーのこの言葉で、子供達の親を慕う悲哀はどす黒い復讐の念に変わった。 だがこの演説の本当の狙いはぱちゅりーの手足となる強力な兵隊を作り、自らの屈辱を果たすこと。 あくまでもぱちゅりーにとって都合のいい群れを作る為に、人間と言う敵を利用したのだ。 こうしてぱちゅりーの指導と言う名の独裁と、子供達の特訓と言う名の地獄は始まってしまった。 「むきゅ!にんげんさんははちさんよりつよいのよ!だからはちさんのおうちをもってこれるなら、にんげんさんにかてるわ!」 「そのあまあまはぱちぇのおかげでとれたのよ!だからぱちぇのものだわ!」 「……これはみんなががんばってとってきたんだよ。おさはなにもしてないよね」 「うるさい!ぱちぇのいうとおりにしてればつよくなれるのよ!これもしゅぎょうなのよ! くちごたえはゆるさないわ!こんどなまいきなくちをきいたら『おしおき』よ!」 「…………」 「むきゅう!にんげんさんはかずがおおいわ!だからどんどんすっきりー!してこどもをふやしましょう!」 「……むれにいるのはこどもだけだよ。すっきりー!したらしんじゃうよ?」 「だったらしなないようににんっしんっすればいいのよ!」 「……どうやって?」 「むきゅぅぅぅっ!!それくらいじぶんでかんがえなさい!!」 「「…………」」 「むきゅう、ごはんがすくないわね!かりにでるにんずうをふやしましょう!」 「……かりにでられるこはみんなでてるよ。あとはがっこうのこどもたちぐらいしかいないよ?」 「なら、そのこたちもかりにだしましょう!じゅぎょうのいっかんとしてこどもたちをかりばにだすのよ!」 「……こどもたちだけじゃ、かりはできないよ?どうするの?」 「まりさたちがめんどうみればいいじゃない!もちろん、かりののるまはまもりなさい!」 「「「…………」」」 「むっきゅ!おくすりがたりないわね!まったく、そんなにけがするなんて、なんてむのうなのかしら!!」 「……それは、おさがおくすりになるおはなをたべちゃったからだよね?みんなのけがも、おさのめいれいのせいだよね?」 「おかのおはなは、ぱちぇのおかあさんのおかあさんがあつめてきたのよ!だったらぱちぇのものでしょう!!」 「……とにかく、おくすりあつめてくるね。こんどはたべないでね?」 「そうよ、そうやってどんどんぱちぇにみつぎなさい!そうすればみんなゆっくりできるわ!!」 「「「「…………」」」」 やがて季節は一巡する。 山の裾野に広がる森の中心、ぽっかり開いた場所にある小高い丘が、再び冬枯れの木々に囲まれる。 群れの大部分を占めていた赤ちゃんがバレーボール大からバスケットボール程に成長した頃。 一年前と同じ早暁の空を背景に、長は再び人間の里を襲撃しようとしていた。 「みんな、ぱちぇはにんげんさんがきらいよ! れいむを、まりさを、ありすを、ぱちぇを、ちぇんを、みょんを! あらゆるゆっくりをごみのようにころすにんげんさんが、だいっきらいよ! みんな、ぱちぇはふくしゅうをのぞんでいるわ! ぱちぇのむれのみんな、みんなはどう!? にんげんさんにふくしゅうしたい? にんげんさんがひとりじめするおやさいをとりかえし、にんげんさんをぼっこぼっこにして、 にんげんさんをどれいにしてつぐなわせる、なさけようしゃないふくしゅうをしたい!?」 「「「「「「「「「「ふくしゅう!ふくしゅう!ふくしゅう!ふくしゅう!」」」」」」」」」」 「そうよ、ならばふくしゅうよ! ぱちぇたちのむれはいちどにんげんさんにやぶれたわ。いまやかつてのいきおいもない。 でも!にんずうこそすくないけれど、みんなはいっきとうせんのふるつわものよ! だったらみんなとぱちぇで、……ええと、たくさんのぐんしゅうだんになるわ!! ぱちぇたちをわすれようとするにんげんさんたちにおもいださせましょう! かみをくわえてひきずりたおし、おめめをあけさせておもいださせましょう! おひさまとじめんさんのあいだには、にんげんさんがおもいもよらないゆっくりがあることをおもいださせましょう! ごじゅうにんのゆっくりのぐんだんで、にんげんさんのゆっくりぷれいすをうばいつくしましょう! と、いうわけで、おひさまがのぼるまえにそうこうげきをかけるわ!! こんどこそにんげんさんをやっつけて、みんなのかたきをとりましょう!!」 「「「「「「「「「「えいえいゆーっ!!!」」」」」」」」」」 ぱちゅりーの演説に鬨の声で応える群れ。 当初の半分以下、五十をいくらか下回る程度にまで減ってしまったが、その分質は以前の群れを大きく上回る。 なにしろ一対一なられみりゃとさえ戦える個体がごろごろ居るのだ。 今度こそ勝てるに違いない!! ぱちゅりーはそう確信していた。 勝てるも何も実際には畑泥棒でしかないのだが、復讐に燃える悲劇のヒロイン気取りで自己陶酔しているぱちゅりーには気付かない。 「まりさ、まりさ!」 「……ここにいるよ、おさ」 ぱちゅりーの呼び掛けに応えたのは、あの見張り役の子まりさだった。 バスケットボール大にまで成長した子まりさは、機転が効く上に群れのゆっくり達に慕われており、 それを買ったぱちゅりーに抜擢され、補佐としてその烈腕を振るっていた。 ぱちゅりーにとっても自分の言うことに従順なまりさは非常に有用であった為、今回の遠征では重要な役目をさせるつもりであった、 「まりさ、あなたにとくべつにんむをあたえるわ! せんけんたいになって、わながあるかどうかたしかめるの! でも、わながなくてもそのままとつげきしちゃだめよ! ぱちぇたちがおいつくまで、しゅういのあんぜんをかくほするのよ! ……できるわね!?」 「……わかったよ。おさがおいつくまで、まってるよ」 勿論ぱちゅりーがまりさを押さえたのは、まりさの身を思ってのことではない。 自分より先に美味しいお野菜を独り占めさせないように、抜け駆けを防ぐ為である。 「それでいいわ。……じゃあまりさ、これをわたしておくわね」 そう言って取り出したのは、先を削って鋭く尖らせた木の枝。 口で銜えるしか物を持つことが出来ないゆっくり達が使う、標準的な武器であった。 「これはぱちぇがつくったぶきよ。ふいをうてばにんげんさんにもこうかはあるわ。 これをもっていきなさい。もしもにんげんさんにみつかったら、なかまをよばれるまえにこれでやっつけるのよ!」 「……うん、ありがとう、おさ」 素直に礼を言って受け取るまりさに満足したぱちゅりーは、群れを率いるべく身を翻した。 まりさの目の前に、ぱちゅりーの背中が現れる。 「……これで、ふくしゅうができるよ」 「…………ゆ゛っ゛!?」 一瞬、ぱちゅりーには何が起こったのか理解できなかった。 体を貫く衝撃、一拍遅れて届く激痛。 「ゆ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」 ぱちゅりーの背中に枝が生えていた。 それは先程、ぱちゅりー自身がまりさに与えた武器。 ぱちゅりーが無防備な背中を晒した瞬間、まりさが渾身の力を込めて突き立てたのである。 「いぢゃい!いぢゃいぃぃぃぃ!!なんでごどじゅるのぉぉぉぉ!!ばりざぁぁぁぁぁ!!」 「だまれ」 「ゆ゛っ゛!?」 普段の従順な態度を一変させ、ぱちゅりーを汚物でも見るかのように見下すまりさに気圧され、ぱちゅりーは思わず黙り込む。 「なにがおかあさんのかたきだ!むれのみんながにんげんさんにころされたのは、みんなおまえのせいじゃないか! おまえがついたうそにだまされたせいで、みんなゆっくりできなくされたんじゃないか! そのうえまりさたちにまでうそをついて、にんげんさんとたたかわせようとするなんて、どこまでみさげはてたげすなんだ! おまえはもうおさじゃない!おまえが!おまえこそがまりさたちのおかあさんたちのかたきだ! みんな!もうこいつのいうことなんてきかなくていいよ!みんなでこいつにふくしゅうするよ!」 そう言われて気付く。全てのゆっくりが、ぱちゅりーに憎悪を込めた視線を向けていた事に。 そして口々に鋭い枝や固そうな石をくわえ、ぱちゅりーににじり寄っていた事に。 蒼白になったぱちゅりーに、まりさの無慈悲な宣告が届いた。 「さあみんな!すぐにはころさないように、でもけっしてゆっくりできないように! いちねんぶんのうらみをこめて!おとうさんとおかあさんのうけたくるしみをなんばいにもして! ゆっくりできないぱちゅりーにぶつけてあげようね!」 「「「「「「「「「「ゆっくりできないぱちゅりーはゆっくりしね!!!!!」」」」」」」」」」 「ゆ゛ん゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」 ぱちぇりーは気付いていなかったのだ。 自分がこの群れの為にした事など何も無い事を。 群れのゆっくり達が従っていたのは、このまりさだという事を。 そして…… 今やこの群れの全てのゆっくり達が、ぱちゅりーを仇と恨み、敵を討とうと思っている事を。 必要とあらば仲間の命はおろか、自らの命さえ投げ出す覚悟を決めていた事を。 表面上はにこやかな表情の下で、仇敵に従う屈辱に心の中で血涙を流しながら、それを受け入れていた事を。 そして一年もの長い年月を掛け、用意周到に準備された復讐が、今まさに果たされようとしている事を。 自分の命令に従順な群れに満足し、堕落しきったが故に勘が鈍ったぱちゅりーには気付けなかったのだ。 話は去年の晩秋、群れが人里を目指して総出撃した朝まで遡る。 「おちびちゃんたちはここでまっててね!おやさいさんとりかえしたら、いっぱいむーしゃむーしゃしようね!」 「あかちゃんたちをよろしくなんだぜ!すぐもどってくるから、いいこにしてるんだぜ!」 「……ゆっくりわかったよ!あかちゃんたちはまりさたちがまもるよ!」 群れ全員での総攻撃を狙っていた長ぱちゅりーだが、副将のまりさから『あかちゃんたちはまだ、たくさんあるけないんだぜ!』 と進言され、赤ちゃんの同行を諦めざるを得なかった。 そうするとまた別の問題が浮上する。 赤ちゃんは基本的に手がかかるものだ。それこそ朝から晩まで親が面倒を見なければならないくらいに。 だが、赤ちゃんがいる親だけを残して行く事は出来ない。そんな事を認めたら群れの半数が脱落してしまう。 いくら長ぱちゅりーに秘策ありとはいえ、それだけの戦力を遊ばせておく訳にはいかない。 どうすれば、と頭を悩ませる長に、再び副将のまりさから進言があった。 『なら、せめてこどもたちだけはおいていくんだぜ!』と。 『がっこう』を卒業したゆっくりは親の監督の元で群れの仕事を覚えて行く。 要は半人前の扱いなのだが、今回の出征において全員動員されることが決定している。 現在『がっこう』に在籍しているゆっくりは現在六十人前後。 その内、半年間の義務教育を経て卒業寸前のゆっくりは九人いる。 片手で数えられる程度とはいえ、それだけいれば赤ちゃんの面倒くらいは見ていられるだろう。 まりさの進言にそう結論付けた長は、百人近い群れの赤ちゃんと『がっこう』の生徒達をおいて行く事を決定したのだ。 早暁の空に鬨の声を響かせながら出陣して行く親達を見送る子まりさ。 後に群れの帰還を最初に発見する事になる彼女は、明日『がっこう』を卒業する予定であった。 最年長であった為に子供達のまとめ役として抜擢され、出陣直前まで大人達からレクチャーを受けていたのだ。 遠ざかる大人と成人一歩手前の先輩達の姿を見届け、子まりさは踵を返して『がっこう』へ向かった。 『がっこう』への道すがら、思い返すのはまだ赤ちゃんだった頃に見た、丘の上で必死になって長を説得していたれいむの事。 母はれいむのことを「げす」呼ばわりしたが、子まりさにはそうは思えない。 ゲスとは、自分の為に他人をゆっくりさせない、自分本位なゆっくりの事である。 本当にゲスであるなら、あの時吐いた嘘で何の利益がれいむにあったと言うのだろう? いつも上手なお歌を聞かせてくれたれいむが、涙を浮かべて教えてくれた『おにーさん』のお話は、 まだ赤ちゃんだった子まりさにも解る程に説得力があった。 そしてれいむがぼろぼろの姿で組み敷かれ、群れの皆にゆっくりできなくされていた時、 全てを諦めたようなれいむの目に、寂しそうな、悲しそうな、そして何より悔しそうな無念の表情に、 そして最後の一瞬、痛みとは違う何かに流された涙に。 その死に様を嘲笑う姉妹達の中でただ一人、子まりさだけはれいむが正しいと直感した。 だからそれを嘘と断じ、あまつさえあんなに残酷な『おしおき』を実行した長ぱちゅりーを、子まりさは信じられなかった。 その後に繰り返された『おしおき』を目撃する度、子まりさの疑念は膨らんで行った。 食糧不足で赤ちゃんに食べさせる事が出来ず、やむなく食料庫から盗み出したれいむは殺される程悪かっただろうか? そのれいむの子供であり、親の復讐に燃えて長に襲いかかったちぇんは果たして反逆者の汚名に相応しかったのだろうか? 群れ中の狩りの名人を総動員しても捕る事が難しい蜂の巣を、たった一人で捕るように命じられたみょんは本当に臆病者だっただろうか? それらを指摘して、長を諌めようとして『おしおき』されたまりさ達はどうだろうか? そして今、群れの大人達を率いて人間の畑を襲いに行くぱちゅりーは、本当に正しいのだろうか? 先々代はおろか、先代の治世すら知らぬ子まりさには大人達が持つ長への盲信が無い。 そしてれいむの事件で群れの有り様に疑問を持った子まりさは、ゆっくりらしからぬ深い洞察力を獲得するに至ったのである。 「……やっぱり、おさのいうことはおかしいよ…………みんな、だいじょうぶかなぁ……」 とは言え、子まりさはまだ『がっこう』も卒業していない、半人前とも認められていない子供だ。 親の庇護を受け、授業以外では狩りにも同行できない子まりさが疑問を呈しても 「おちびちゃんにはまだむずかしいことだよ!それよりおへやのおかたづけしなさいね!」 「おちびがそんなむずかしいことかんがえてちゃだめだぜ!それよりみんなとあそんでくるんだぜ!」 などと返され、子まりさの疑問は大人に憧れる子供の背伸び程度にしか受け取られない。 子まりさが幾ら疑問を持ったとしても、子まりさに出来ることは無かった。 精々こうして群れの行く末を憂いることしか出来ないのである。 「……ゆっ!とにかくまわりをみはって、あかちゃんたちをまもらなきゃ!まりさ、がんばるよ!」 子まりさは気分を切り替え、丘の周囲を見回ってまわる。 この季節、越冬の準備をするのはゆっくりだけではない。 熊や猪、蛇などの森に棲息する生物も越冬のために食糧を集めているのだ。 そしてゆっくり達の中身は栄養価の高い餡子。 当然狙われる確率も高く、何時襲われるか解らないのでこうして見張りを立て、警戒しているのである。 そして半分程廻った時、子まりさは見慣れぬゆっくりが丘を見上げて佇んでいる事に気付いた。 「ゆっ!そこにいるのは、だれ!?」 「!?」 そこに居たのは黒いお帽子を被ったまりさであった。 しかし、子まりさには見覚えが無い。 群れの中のまりさのお帽子は皆ピンっと立っている。 あんなに縒れ縒れで、所々破けているようなお帽子を被っているまりさはいない。 髪の毛もあんなにボサボサで、くすんだ金髪をしたまりさもいない。 お肌もボロボロで、細かい傷だらけのまりさもいない。 大きさからすればもう大人なのだろう、この群れでこの大きさのゆっくりなら出征に参加していない筈が無い。 かなり不審ではあったが、とりあえずご挨拶しようと近付く子まりさに、見慣れぬまりさはゆっくりと振り向いた。 「ゆっ!?」 そのまりさには、片目が無かった。 左目の上からあんよに掛けて、大きく抉ったような傷跡があったのだ。 子まりさはその傷の事を知っている。 ゆっくり殺しなど、重罪を犯した罪ゆっくりに対してのみ行われていた刑罰。 『おめめえぐりのけい』。 片目を抉り、群れから永久追放する刑の痕であった。 子まりさも、実際に『おめめえぐりのけい』の受刑者に会うのは初めての事だ。 『がっこう』での授業でも教わったし、度々「わるいこはおめめをとられちゃうんだよ!」と親から叱られた事もあり、 その傷が悪いゆっくりの証である事は理解していたが、粛清の嵐が吹き荒れる今の群れではあまり意味が無い。 先代の長の頃は、この『おめめえぐりのけい』が最も重い処罰であった。 それは先々代が『たとえあいてがゆっくりごろしでも、ゆっくりがゆっくりをころしてはならない』と定めた為であったのだが、 今代の長はあっさりとその禁を破り、長を侮辱したれいむを皮切りに死に至る程過激な『おしおき』を何回も強行した。 反発もあったが、長は『ゆっくりできないゆっくりをおいだしたら、ほかのむれにめいわくがかかる』と反対派を丸め込み、 それでも反対するゆっくりを『こいつらはゆっくりできない』と無実の罪を着せ、『おしおき』で殺していったのだ。 最近生まれた赤ゆっくり達はその恐ろしい『おしおき』しか知らない。 今の群れにとって、悪いゆっくりとは死んだゆっくりの事である。 いくら知識として知っていても、経験の無い子供達にとっては実感の無い、遠い過去の出来事だ。 だから子まりさも、その傷を持ったまりさに平然と挨拶できたのだ。 「ゆっ!まりさおねーさん、ゆっくりしていってね!」 「ゆ゛っ゛!?……ゆっ、ゆっくじして……い゛っ゛……で…………ゆ゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛ん゛!!! ばりざぁ!!ゆ゛っ゛ぐじじでい゛っ゛でね゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ゛!!!!!」 子まりさの無邪気な挨拶に、傷まりさは感極まったように号泣しながら挨拶を返す。 「ゆっ!?」と驚く子まりさだが、それ程この傷まりさにとっては驚天動地の出来事だった。 この『おめめえぐりのけい』の事は、この辺り一帯の群れに広く知れ渡っている。 「かたほうのおめめのないゆっくりは、とてもゆっくりできないゆっくりだよ」 どんな小さな群れであっても、この話は必ず伝えられており、それ故にどの群れも傷まりさを受け入れる事は無かった。 『おめめえぐりのけい』の受刑者の末路は、孤独な野垂れ死にが定番だったのである。 そんな受刑者の中にあって、この傷まりさは二年もの間生き延びて来た希有な例であった。 元々狩りが得意だった事に加え、皮肉にも野山の危険物を見分ける群れでの教育が功を奏した結果である。 追放されたゆっくりが群れに近づき、それが発覚したら群れ総出でゆっくり出来なくされてしまう。 これまでにも何度か試し、その度に追い払われて来たから傷まりさにはそれがよく解っていた。 それが今日、世も明けない内に総出撃していく群れの姿を目にした時、押さえていた思いが爆発した。 (あのおかに、かえりたい!) ゆっくり出来なくされた身であっても、やはり故郷は恋しいもの。 あんなに大勢でどこへ行くのかは知らないが、今ならあの丘を一目見る事くらいは出来るだろう。 それでもう心残りは無い。後はこの苦しいゆん生に、いつ幕が下りても悔いなく逝ける筈だ。 そんな決意を胸に、傷まりさは丘を目指して近付き、子まりさに発見されたのだ。 (……ああ、みつかっちゃった。せめて、さいごにちょっとだけでも、おかでかけっこしたかったなぁ……) 傷まりさの脳裏を諦めが支配する。 覚悟を決めた傷まりさの耳に、子まりさのご挨拶が飛び込んで来たのはそんな時だった。 予想外の優しい言葉に感極まり、号泣する傷まりさが泣き止んだのは、朝日が半分程昇りかけた頃であった。 嗚咽の合間合間に、断片的に挟まれる壮絶なゆん生を聞かされた子まりさは、もらい泣きしながら傷まりさを慰めていたが、 どうしても気になったそれを尋ねずにはいられなかった。 「……ねぇ、おねーさん。おねーさんはどうしておめめをとられちゃったの?」 そう、片目が無いゆっくりは大悪人の証である以上、どんなに善良そうに見えても仲良くは出来ない。 仲良くする振りをして近付き、隙を見てご飯や宝物を奪い取ったり、無理矢理すっきりー!したりするのが目的かも知れない。 今のまりさの双肩には百匹以上の子供達の命が懸かっている。どんな小さな異常でも見逃すわけにはいかなかった。 だが、それを聞いた傷まりさが再び目を潤ませた。 何かを耐えるように唇を噛み締めて涙を堪え、ぽつりぽつりと語り出す。 「……おさがまりさをわるものにしたんだよ…………まりさが……すぃーをひとりじめしてるって………、 あのすぃーは……おかーさんのかたみだったのに…………だいじなだいじな……まりさのたからものだったのに……、 ………ゆっ、ゆえぇぇぇえぇぇん!!!」 そこまで語った所で堰を切ったように泣き崩れる傷まりさの姿に、子まりさは確信した。 (やっぱり、あのおさはうそつきなんだ!れいむおねーちゃんをいじめたのも、おかーさんたちをつれてったのも! みんなうそなんだ!……おさはけんじゃなんかじゃない!おさのほうが、くずだったんだ!) 子まりさと傷まりさの出会いは、双方にとって幸運であった。 子まりさにとって傷まりさは漠然でしかない長への疑いを証明する生きた証拠であり、 傷まりさにとって子まりさは自分の言葉が嘘偽り無い事を信じてくれた恩人である。 子まりさの不信感がピークに達していたこと、傷まりさのホームシックが再燃していたこと。 まさに奇跡の確率で絶好の機会がかち合った、幸運な出会いであったのだ。 子まりさは傷まりさを連れ、赤ちゃんと子供達が集められている『がっこう』に向かった。 そこは入り口を倒木で塞がれた洞窟で、子ゆっくりサイズなら通り抜けられる狭い隙間が倒木の端に開いており、 いざと言うときは、そこを塞いで外敵の侵入を防げるようになっている。 教師役の大人ゆっくりは倒木を乗り越えなければならないが、逆に言えばそうしなければ入れない安全な場所である。 「ゆっくりただいま!」 「……あいことばをいってね!……むしさんがいないなら、あまあまをたべればいいじゃない!」 「あまあまがないなら、むしさんをさがせばいいじゃない!」 「ゆっ!せいかいだよ!……おかえり、まりさ!」 入り口を封鎖している倒木の枝が動き、そこから一人の子れいむが出てきた。 見張りの交代要員である。本来あまり運動の得意でないれいむに任せるような仕事ではないが、 卒業を目前に控えた九人の子ゆっくりは子まりさを除き子れいむと子ありす、そして子ぱちゅりーで占められていた。 ひと月遅れて入学したちぇんやみょんはまだ一人で出すには不安だったし、何より赤ちゃんの面倒を見なければならない。 百匹近い赤ちゃんの世話をしながら危険な見回りなぞできない。 仕方なく、年長組が見張りを持ち回り、残りの生徒達と年長組の子ぱちゅりーが赤ちゃんのお世話をすることにしたのだ。 そして外から聞こえて来た合い言葉に、まりさと交代する為に出て来た子れいむが見たものは、見慣れた子まりさの顔と、 「ゆ゛っ゛!?……まりさ、そのおねーさんはだれなの?」 面識の無い、片目を無くしたまりさの顔であった。 「……れいむ、よくきいて。もしかしたら、いつもまりさがいってることがほんとうかもしれないよ」 「……どういうこと?まりさ、おさのことでなにかあったの?」 「それをせつめいするんだよ。みんなのところでおはなしするから、みはりはすこしまっててね」 そして子まりさは年長組の仲間達に自分の推理を打ち明けた。 それを聞いた子れいむ達の反応は様々であった 「そんなはずないわ!おさはいつでもただしいのよ!」と長の正当性を主張するありす、 「むきゅ!かためをなくしたゆっくりのおはなしなんて、しんじられるわけないでしょう!」と授業で得た知識を元に否定するぱちゅりー、 「でも、さいきんのおさがおかしいのはほんとうだよ?ゆっくりしてなかったよ?」と長への不信感を漏らすれいむ。 喧々諤々と続いた話し合いを収めたのは、子まりさの発言であった。 「おさがただしいのか、まりさがただしいのか、みんながかえってきたらたしかめてみようよ。 まりさおねーさんはもりにかくれていて。みんなにみつからないようにちゅういしてね」 そうしてしばし時が過ぎ。 二百匹を超えた大集団は、ぱちゅりーただ一人の生還を持って全滅したのである。 長ぱちゅりーから群れの顛末を聞かされ、森を揺るがす慟哭に泣き疲れた赤ちゃんと子供達を寝かしつけ、 年長組は再び長の正当性を議論し始めた。 ありすの論調は変わらず長の擁護、最も半数の二人程は半信半疑と言った所。 逆に意見を翻したのはぱちゅりー。こちらは一人が慎重派、もう一人が完全に疑い始めた様子。 れいむは長の涙に同情したのか、片方が長を擁護し始め、片方が長への不信感を露にするも、勢いは無い。 平行線を辿りつつある議論に、まりさはある提案をする。 「じゃあ、とりあえずおさのゆうとおりにしようよ。 おさがただしいならゆっくりできるはずだし、おさがまちがってるならゆっくりできなくなるから、 これからのおさがどういうふうにむれをゆっくりさせるのか、みとどけてからはんだんしよう」 この提案を年長組は全員受け入れた。 実際、幾ら考えても解決しないのならこれからの動向で判断するしかない。 ほぼ博打のような提案ではあったが、現時点ではそれ以外に方法は無かった。 そして彼女達は、いきなりその答えを突きつけられた。 今までの群れでの冬籠りは、それぞれの家庭ごとに行っていた。 しかし今回は話が違う。 何しろ大人が全滅している上、群れの殆どはまだ赤ちゃんなのである。 ならば一カ所に食べ物と群れを集め、全員で冬籠りすべきだと言う意見に、ぱちゅりーはこう返したのである。 「いままでどおりでいいでしょ!かえるひつようはないわ!むきゅ!」 この言葉に唖然となったのは年長組だけではない。 後輩のちぇんやみょんを含む『がっこう』の生徒達の大半が、長の台詞に度肝を抜かれた。 長ぱちゅりーにしてみれば、一カ所に集まるなど言語道断である。 何かの弾みで口を滑らせ、群れを見捨てたことがバレでもしたら、即座に殺されてしまう。 そうでなくても、暗殺の危険性を考えれば皆と一緒にいるより、一人でおうちに籠っている方が安全なのだ。 しかし子供達にとってこれは死刑宣告にも同等の命令である。 長の言葉である以上は従う義務が発生する。だが、素直に従えば待っているのは、死。 年長組においても意見は分かれ、結果ありす二人とぱちゅりーとれいむが一人ずつ年長組を離脱。 群れの三分の一を率いてそれぞれの巣に別れ、冬籠りを開始した。 残されたグループはおうちの貯蔵食糧を持ち寄り、『がっこう』にて共同生活を行うことにした。 そして、春。 分散して冬籠りをしていたゆっくりは物の見事に全滅した。 初めての越冬と、赤ちゃんの食欲を考えに入れず、食糧の計算を間違えて餓死したれいむのグループ。 黒ずんだ何かが大量に茎を生やし、あたかも小さな森のような様相を醸していたありすのグループ。 強度の足りない巣が大崩落を起こし、全員生き埋めとなったぱちゅりーのクループ。 その他にも赤ちゃんだけで越冬しようとして失敗したり、食糧不足の果てに凄惨な殺し合いが起きた巣もあった。 まりさ達、共同生活グループは多少の犠牲者を出したものの、初めての越冬を成功させた。 それはまりさ達だけではなく、あの傷まりさの協力あってのものであり、傷まりさへの偏見は大幅に薄れていた。 また共同生活を提案し、そのリーターシップをとったまりさに対する信頼も大きくなり、 実質まりさは生き残ったグループの長といっても過言ではない立場に就いていた。 同時にそれは、まりさが持っていた現状の長であるぱちゅりーへの不信感を、群れが共有することを意味していた。 しかしまりさはそれを表に出すことを硬く禁じた。 「おさがどんなにあやしくても、おさはまだおさなんだよ。いま、おさにきづかれたら『おしおき』されちゃうかもしれないよ」 こう説得して廻り、はっきり長ぱちゅりーを疑っているゆっくりにも、未だ半信半疑のゆっくりにも、 とりあえず長の命令に従うよう頼み込んでいたのである。 そして長の就任演説を経て、一年間に及ぶ独裁政治が始まり。 長ぱちゅりーは己の態度で持って、まりさ達の不信感を確信に変えてしまったのである。 そして舞台は再び現在に戻る。 ぱちゅりーは今、自分が育てた屈強な兵士達に暴行されていた。 「これでもくらえ!」 「ぴぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 硬い小石を四方八方から吹き付けられ、 「に゛ゃ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「……また、つまらないものをきってしまったみょん」 尖った枝で何度も何度も斬りつけられ。 「こんなやつにおかざりなんてもったいないんだねー!!わかるよー!!」 「や゛べて゛え゛え゛え゛え゛え゛!お゛がじゃ゛り゛や゛ぶがな゛びでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!」 お飾りを目の前で細切れにされ、 「こんないなかもののあかちゃんなんて、ぜったいうまれないようにしましょう!」 「ゆ゛ぎゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!ぼう゛ゆ゛る゛ぢでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!!」 ぺにぺにを切り取られ、それを押し込んだ上で棒切れを突き込んでまむまむを潰し、 「こんなやつがぱちぇのどうるいだなんて、なのれないようにするわ!」 「ばぢぇ゛の゛ずでぎな゛がみ゛の゛げがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! 少しずつ髪を力づくで引き抜かれて、禿げ饅頭にされ、 「ぱちゅりーのきたないおかおをきれいにするね!」 「q゛あ゛w゛せ゛d゛r゛f゛t゛g゛y゛ぶじごl゛p゛!!!!!!」 砂を撒いた木の皮に顔を押し付け、そのままおろし金のように動かしてぱちゅりーの皮を削る。 おおよそ考えつく全ての苦痛を、ぱちゅりーは味わっていた。 たまに「ゆげぇっ!!」と生クリームを吐いても「まだまだおわらないよ!」と強引に押し戻されて、死ぬことも叶わない。 最初に宣言された通り、死なないギリギリを見極めた絶妙な手加減を加えられた生き地獄が延々と続けられていた。 その様子を離れた場所で窺うゆっくりがいた。 傷まりさである。 便利な道具でしかなかった自らの群れに、ゆっくりできなくされているぱちゅりーを無表情で見つめ続ける傷まりさの元に、 クーデターに成功し、今やこの群れの長になったまりさが歩み寄る。 「……まりさおねーさんはやらないの?」 長まりさの疑問に、無表情を崩して苦笑を浮かべて答える。 「まりさのぶんはもうおわってるよ。あのすぃーが、まりさのぶんまでぱちゅりーにしかえししたんだよ。 だからまりさはもういいんだよ。いま、あいつがうけるべきはまりさたちのふくしゅう、なんだからね」 母の形見であったスィーごと罠に掛かった顛末はすでに聞いていた。 傷まりさにはそれがスィーの意志であったように思えたのだ。 ならばその意志を汚す真似はすまい。傷まりさは自然にそう思えたのである。 「……うん、わかった。じゃあ、そろそろしあげにはいるね」 その言葉に感じ入るものがあったのだろう。 一つ頷き、踵を返した長まりさは未だ醜い悲鳴を上げ続けるぱちゅりーの元へ向かう。 「みんな!いっぺんやめてね!まりさとおはなしさせてね!」 その言葉に群れが静まる。先程までの喧噪が嘘のような静寂の中、 「……ゆ゛っ゛……ゆ゛っ゛……」と痙攣するぱちゅりーの耳元へ長まりさが囁く。 「……なんでこんなめにあっているのか、わかってる?ぱちゅりー?」 その言葉に反応したのか、白目を剥いていたぱちゅりーの口から断末魔以外の言葉が漏れる。 「……ぱ……ちぇを……ゆっ………く……り………させ………な……い……げすは………し……ね………」 反省の色の欠片も無い、醜い性根を表したかのような呪詛を聞き、まりさは落胆した。 こいつは、自分が何故こんな目に遭っているのか理解できていない。 これでは、自分達の復讐が成ったとは言い難い。 自分のせいで、自分が無能だったせいで殺されることを自覚させて、より深い絶望にたたき落とさねば、 死んで行った親兄弟達に申し訳が立たないだろう。 しかし長まりさにはこれ以上のアイデアは無かった。 こいつに自分の罪を認めさせる方法が、この拷問以外に思い付かなかったのである。 (……しかたないね。そろそろれみりゃがおきるころだし、ざんねんだけど、とどめをさそう) 心の中でため息をつき、ほぼ一日中続いた拷問を終わらせる決意を固める。 「みんな、このぱちゅりーをもりのそとにたたきだすよ!」 「「「「「「「「「「わかったよ、おさ!」」」」」」」」」」 群れはもうまりさを長と認めていた。 あの過酷な一年の間、このまりさに従っていれば生き残ることが出来た。 それだけでなく、優れた洞察力からくる統率力、計画性、全てにおいて突出していたまりさは群れの憧れでもあった。 その長の言うことをどうして疑うことが出来るだろう? 「それじゃあ、ぱちゅりーをもりのそとまではこぶよ!ゆっくりてつだってね!」 「「「「「「「「「「まかせてよ、おさ!」」」」」」」」」」 虫の息のぱちゅりーを長まりさが跳ね飛ばす。 「ゆ゛っ゛!?」と転がって行く先にいたちぇんが勢いをつけて蹴り上げる。 「ゆ゛ぎっ゛!?」と跳ね飛ばされた先にいたみょんが銜えていた枝で打ち返す。 「ゆ゛びぃ゛っ゛!?」と飛んで行く先にいたれいむがぷくーっ!して跳ね返す。 「ゆ゛がぁ゛っ゛!?」とパウンドする先にあったぱちゅりー達が作った壁にぶつかり、転げ回る。 「ゆ゛ぶっ゛!?」と蹲ったぱちゅりーを、走り寄ったありすが跳ね飛ばした。 ピンボールの玉よろしく、森の木々の合間を跳ね回ったぱちゅりーが森と人里を分ける平原に放り出されたのは、すっかり夜も更けた頃であった。 ……ふああ。あー、さむっ。 また急に冷え込んできやがったな。 いくら夜明け前だっていっても、まだ秋の範疇だろうに。 これは今年の冬も厳しくなりそうだな……。 ……ん?なんだありゃ。 饅頭?……いや、ゆっくりか? あんな飾りも髪も無いゆっくりなんて見たこと無いぞ。 ……うわ、なんだこりゃ? こんなに全身ボロボロになるなんて、何があったんだ一体? ……お、意識はあるようだな。 ってか、この様で生きてるって、ゆっくりってのは随分頑丈に出来てんだな。 前に燃やした奴らはあんなにあっさり死んじまったのに。 ……『ぱちぇの群れを知ってるの?』? お前ぱちゅりーだったのか?いや、あの群れに居たって事は…… ……そうか、お前さんあの時逃げ出したぱちゅりーだな? せっかく逃げ出したってのに、何でそんな重傷負ってんだよ? ……『ゲスなまりさに追い出された』だって? いや、お前さん確か長だったんじゃないのか? ……『ゲスまりさに騙されたゲス達に乗っ取られた』ぁ? よく解らんが、世代交代でもあったのか……? しかしよく無事だったな、この辺りはれみりゃの縄張りだぞ? ……『ぱちぇの群れは、れみりゃを倒せるくらいに強いのよ』って…… なあ、それって強いのは群れであって、お前さんじゃないよな? なのに何でお前さんがれみりゃに襲われない理由になるんだよ。 ……『ぱちぇのお陰で強くなれたんだから、ぱちぇが強いに決まってるでしょう』? おいおい、何なんだそりゃ。三段論法にもなってないぞ。 ……ああ、わかった。 お前、群れでいつもそんなこと言ってたんだろ? そりゃ追い出されるわな。 あのまりさが言ってた通りだわ。とんでもない無能だな、お前。 ……『ぱちぇは長なのよ!何でも知ってる森の賢者なのよ!』って言われてもな。 実際長としては無能だぞ?お前。 そもそも長に必要なのは『古い知識を生かして、新しい何かを創り出す程度の能力』なんだよ。 知ってるだけじゃ役に立たないのさ。 古い掟の問題点を見つけてそれを改善した掟を決めたり、今までの狩りで餌が獲れないなら原因を探って狩り方を見直す。 それが出来るから、長ってのは慕われるんだよ。 何を勘違いしているんだか知らないが、お前が長の器じゃないってのはそのゆっくり達にも解ってたんだろうな。 ……なあ、ぱちゅりー。 お前は、群れの為に何か新しいことをしたのか? ……暴れんなよ。全然痛くないけどな。 ああもう、生クリームが飛び散って汚れちまったじゃねえか。 ……ああ、鬱陶しい! おらよ!どこにでも飛んで行きやがれ! ……結構飛んだな。 ……おや、三軒隣の御仁井さん。こんな所でどうされました? ……れみりゃの調達ですか。そりゃご苦労様です。 ……いえ、ちょっとね…… 無能なぱちゅりーに絡まれて、野良着を汚されちまったもんで。 あんまりムカついたんで、森の方へ思いっきりぶん投げてやったんです。 ……ははは、止してくださいよ。 俺に虐待は向いてませんって。 ……それよりも例の研究は進んでるんですか? 確か、ゆっくりを使った画期的な農法だとか何とか…… 山の裾野に広がる森の中、人間に捕まって投げ飛ばされたぱちゅりーは、奇跡的に生きていた。 しかしその姿は到底無事とは言えなかった。 お飾りも髪も無くし、所々薄くなった皮からはじくじくと生クリームが滲み出している。 それでも尚、残された目には執念の炎が燃えていた。 「……ぱちぇは……おさなのよ………いだいな……もりのけんじゃなのよ………… ……ぱちぇをゆっくりさせるのは…………すべてのゆっくりの……………ぎむなのに……………」 ぱちゅりーに帰る場所なぞどこにもない。 あの丘に向かうのは論外だ。 忌々しいゲスまりさに騙された無能な群れが襲いかかってくる。 人間の里に留まれば今度こそ殺されるだろう。 他の群れに匿ってもらおうにも、お飾りはおろか、髪さえ無くした自分を迎え入れてくれる筈が無い。 行きずりのぱちゅりーを襲ってお飾りを奪おうにも、満身創痍のこの身では到底実行できまい。 まさに八方塞がりの状況。 先程から妙に体がだるい。 悪寒は治まるどころかどんどん悪化してゆく。 あんよの感覚が殆ど無い。 (……そういえば、さっきからぜんぜんいたくないわね……?) 嫌な予感が彼女の脳裏をよぎる。 強ばってなかなか言う事を聞かない体を無理矢理動かして、後ろを振り返ったぱちゅりーの目に、 「……む゛ぎゅ゛う゛ぅ゛う゛う゛ぅ゛う゛う゛っ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛っ゛!?!?!?!?!?」 見えては行けない筈の光景が見えてしまった。 ぱちゅりーが這いずった後を追うように、白いナニカが線を描いている。 それは、ぱちゅりーの生クリーム。 彼薄皮一枚を残して剥ぎ取られた皮から滲み出した生クリームが、少しずつ、少しずつ、 ぱちゅりーのあんよと言う絵筆によって、冬の森というキャンバスを汚していたのだ。 痛みが治まったのではなかった。最早痛みすら感じない程に、感覚が鈍り切っていたのである。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!じに゛だぐな゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!! だれ゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!だれ゛がだずげろ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 一体どこにそれだけの底力があったのか。 誰もいない森の中に、ぱちゅりーの叫び声が谺する。 そしてその谺は、届いてはいけないものに届いてしまった。 突然響き渡る羽音に、ぱちゅりーがピタっと黙る。 恐る恐る目を向けた先にいたのは、 「う~☆あまあまみつけたど~☆」 「どぼじであ゛がる゛い゛の゛に゛れ゛み゛り゛ゃ゛がい゛る゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!!」 そう、昼間は眠っている筈のれみりゃであった。 このれみりゃが特別だった訳ではない。 森の奥地は木々が密集しており、昼間であっても尚薄暗い。 木漏れ日に気をつけさえすれば、昼間でもれみりゃが活動するには充分な暗さがある場所なのだ。 その為、ここに足を踏み入れるゆっくりは相当訳ありでもなければ存在しない。 こうしてたまに迷い込んでくるゆっくりは、れみりゃ達にとって最大のご馳走であった。 「う~☆つかまえるど~☆ふゆのでなーにするんだど~☆」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!ばな゛ぜえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!お゛う゛ぢがえ゛る゛う゛う゛う゛う゛う゛!!」 帰るべきお家なぞ何処にも無いことを忘れ、ぱちゅりーは泣き叫ぶ。 「うるさいんだど~☆しゃべれないようにするんだど~☆えいっ☆」 「ゆ゛ぶっ゛…………!!!!」 舌を引っこ抜かれ、お口に石を詰められて、ぱちゅりーは喋れなくなる。 ぱちゅりーが静かになったのを確認すると、れみりゃは満足そうに巣のある老木へ飛んで行った。 それからおよそひと月。 ぱちゅりーはまだ生きていた。 老木のうろを利用したれみりゃの巣には、同じように捕まったゆっくり達が沢山並んでいた。 れみりゃはその日の気分で啜る餡子を変えているようで、様々な種類のゆっくりが用意されている。 しかもこのれみりゃは、死ぬまで餡子を啜ろうとはしない。 死にそうなギリギリまで吸い上げ、痙攣を始める直前で止める。 その加減はまさに職人技と言えよう。 そして餡子を吸い上げたゆっくりの口に、うろに自生していたキノコを詰め込むのだ。 そんな怪しげなキノコなぞ食べたくもないが、それ以外に食糧は無いし、どのみち食べても食べなくてもれみりゃに詰め込まれる事に変わりはない。 どうやら毒キノコの一種らしいそれは、口に含んだ途端に気分が悪くなり、悪寒や幻聴が聞こえ始める。 そして酷い時には幻覚を見るようになる。それも、自分が最もトラウマにしている幻覚をだ。 (だまれえええええええ!!ぱちぇはむのうじゃないいいいい!!) ぱちゅりーを襲う幻覚、それはあのまりさでも罠に掛かったことでもない。 あの人間に言われた一言、それがいつまでもリフレインするのだ。 ………お前は、群れの為に何か新しいことをしたのか?……… (なんで……なんでぱちぇが……もりのけんじゃがこんなめに……) 本当にそうだったか? 本当に自分は森の賢者として相応しかっただろうか? 母の死は本当に母が無能だった所為なのだろうか? あの時、冬籠りの食糧が尽き、実の母を無茶苦茶になじったあの時。 『ごはんもまんぞくにあつめられない、むのうなおかーさんはゆっくりしないでしね!』 『……ごめんなさい、むのうなおかーさんで。せめておかーさんをたべてゆっくりしていってね! …………さぁ、おたべなさい!』 目の前でもの言わぬ饅頭になってしまった母を見て、自分は何を思っていただろうか? 『むのうなおかーさんは、ぱちぇのごはんぐらいにしかやくにたたないわね!』 そんなことしか思ってなかった気がする。 あの時、本当に賢者と呼ばれる程賢かったのなら、食糧を得る手段を思い付けたのではないか? いや、そもそも食糧不足に陥ること自体無かったに違いない。 (……そんな……そんなはずないわ…………ぱちぇはわるくない………わるいのはみんなげすのせいにちがいないわ……) あのまりさ達は本当にゲスだったろうか? むしろ自分より有能だったのではないだろうか? (……ちがう……ぱちぇは…………いだいな……もりのけんじゃなのよ…………) 疑問が浮かぶ度に脳裏で必死に否定するぱちゅりーに、またあの声が聞こえてくる。 ………お前は、群れの為に何か新しいことをしたのか?……… (うるさい!うるさい!うるさい!うるさぁああああいいいい゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!) 春はまだ遠い。 れみりゃが冬籠りを終えて、ぱちゅりーを全部食べ尽くすまで。 幻聴は毎日、ぱちゅりーを責め立て続けた。 ぱちゅりーは最後まで気付けなかった。 自分が賢者でも長でもなく、只の無能なゲスでしかない事を。 ……それを心のどこかで認めてしまっていた事を。 ※気付けば連休中盤だよ!時間懸かり過ぎだろコノヤロー!! お待ちいただいた方々には大変お待たせいたしました! 前作に感想を付けてくださった皆様のご期待に、 「(ハードルを上げるのは)もうやめて!作者の(チキンハートな)ライフはもうゼロよ!!」 状態で悶えながら書いては直し、書いては直し。 気付けば前作を遥かに超える長文になっておりました。 皆様のご期待に応えるべく、作者の筆力の限界まで絞り出しました、 本当にこれで応えられているか不安でいっぱいですが、これ以上お待たせできないだろうとうp決行。 ……どうか皆様のご期待に応えられてますように。 ※まりさについて(補足) 前作『騙されゆっくり』のまりさについて、感想にてさんざん指摘されておりました通り、 あれはまりさの脳内補完によるものです。 実際にれいむを襲っていたときはんなこと一切考えておりません。 何も知らずに死ぬよりも、罪を自覚してから死んだ方がより絶望感は凄いだろうと思い、最後に反省させる描写を入れましたが、 良い奴で終わらせるのは許すまじ!と前々作のまりさの行動を脳内補完させたのですが、 思ったより解りづらかったみたいで、反省しております。 本来作者が作品に解説を入れるのは反則だと思っているのですが、今回は作者の筆力不足によるものですので、 急遽解説を入れさせていただきました。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3793.html
※fuku4998 ゆっくりになった男 の続きです ※前作読んでないと意味分からないぞ~ ※虐待要素皆無 「う~あまあまはおぜうさまのれみりゃにたべられるんだどぅ~」 「ゆっくりしね!」 「ままままりざ~~~~!!」 「ああああありすはまままりさがままもるよよよよ!!」 人里から少し遠い森の中で、番とおもわれるまりさとありすの二人組みが 捕食種であるれみりゃとふらんに今にも襲われようとしていた。 捕食被捕食の関係にあるわけだから運命は逃れられないのだが (ありすをまもれなくてゆっくりできるわけないよ) このまりさは一応勇敢にも二対の捕食種相手に立ち向かおうとしていた。 じりじりと近づく捕食種、後ずさるまりさとありす。 「ゆぐりじねええええええええ!!!」「うあ”っ!?」 戦端を開いたのはまりさだった。 予期せぬまりさの攻撃に怯むれみりゃ。 ちょうどれみりゃの目の辺りにへばりついたまりさを剥がそうともがくれみりゃ。 あっけに取られてたふらんが姉のピンチにようやく気づいた。 「ゆっくり、し「飯だあああああああああああ!!!」ね”!?」 突然空間を裂くような叫びが響き渡った。 ふらんがこの声の主がこの場にいるものの声でないと気づいたときには、 すでにふらんは縦に真っ二つになっていた。 「ゆぎゃああああ!!!」 「う~とれたど~・・・?あ”あ”あ”あ”あ”でびらのぷりじーな”いぼーとがああああああ!!」 ようやくまりさを引き剥がしたれみりゃが見たものは真っ二つになってぴくぴくしている 愛する妹の姿だった。 「でれがぶらんをごんあごどりにいいいいいいい!!ぎゃびっ!?」 怒りに震えていたれみりゃの首が落ちる。 残った頭のない身体からは肉汁が噴水の如く噴出した。 あっけにとられるぱちゅりー。 まりさが立ち向かったとおもったら 目の前の恐ろしい捕食種が次々と解体されていく というかつてないシュールな光景もあったが何より彼女の目は、 れみりゃ上に立つ番のではない小太刀を持ったまりさに釘付けとなっていた。 ゆっくりになった男2 「俺とドスとゆっくりと」 ※主人公※ 元々人里で木こりをして生きていたが 妖怪にい襲われ瀕死に。 気絶から目覚めるとゆっくりまりさになっていた。 人間時に護身用に持っていた小太刀で戦う。 一年間生き残ると人間に戻れるらしい。 生きる目的を見つけた俺は、あの後あてのない旅を始めた。 道中誰かゆっくりに逢うだろうと踏んでいたから食料も少量しか持って行かなかった。 その結果が三日間の断食生活であった。 元人間である俺はそこらの草なんか食べることはプライドが許さない。 食えるものといやあまともな果実とかゆっくりや捕食種の死骸とかだ。 何故か旅立ってから三日間の間ゆっくりっ子一人と逢わなかったのだ。 見つかったとしてもれいぱーありすあたりに襲われたのか、 萎びて黒ずんだ死骸のみだった。 こんな曰く付きのは食えない。 空腹で衰弱した俺の身体は見る見るうちに小さくなっていった。 そんな時だった、あの声を聞いたのは。 「う~あまあまはおぜうさまのれみりゃにたべられるんだどぅ~」 「ゆっくりしね!」 紛れもない食い物(捕食種)の声。 「ままままりざ~~~~!!」 「ああああありすはまままりさがままもるよよよよ!!」 どうやらゆっくりが襲われているようだがそんなことはどうでもいい。 俺は獲物を見つけた豹の如くゆっくりと死闘を演じている捕食種に 隙を見て素早く兜割りを叩き込み真っ二つにした。 「飯だあああああああああああ!!!」と叫びながら。 というわけなんだ。 驚かせてゴメン。マジで腹が減ってたんだよ君達ならわかるだろう餓死寸前の絶望感を? まりさとありすは俺におびえているようだ。 そりゃいくら捕食種といえど同属の派手なスプラッタショーをいきなり目の前で 見せ付けられたらいくら流石に俺でもびびる。 それにこんなこと言いながら俺はさっき解体したれみりゃとふらんを食べている。 行儀云々の前に死にそうだからしょうがない。 背に腹は変えられぬ。 ゆっくりに背も腹も無い気もするが気にしない。 「「むーしゃむーしゃしあわせ~」」 残った死骸を二人に分け与えたところさっきのことは忘れたのか話をしてくれた。 「まりさとありすはどすのむれのまりさだよ!」 この近くにドスまりさの群れがあるのか。 ドスの群れならよっぽどのことがない限り安心して過ごせるだろう。 「ゆぅ・・・」 ドスのところに案内してくれと言おうと思ったらなんだか二人の表情が暗くなった。 どうしたんだ? 「ゆ~・・・じつはね・・・」 ありすが説明を始めた。 その群れのドスはまだ若い部類らしく、 他のドスに比べて知識が少ないため、いざというときにドスは何もできなかった。 多くの被害を出しつつも運良く越冬はできたものの その後どうすればいいのかわからずにドスは頼りなくおろおろしているばかりだったという。 そんなときに一匹のぱちゅりー種が群れにやってきた。 彼女は有り余る多くの知識で群れを支え直し、二・三日後には群れの首脳となった。 しかしそれからだった。 首脳となったぱちゅりーは何を考えたのか 今まで狩を行っていた平和な平原ではなく捕食種の多い森へと狩場を移すと言い出した。 ぱちゅりー曰くその方が少数で多くの食料が集まるからだという。 もちろん皆は反対した。 しかし、ぱちゅりーの「だれのおかげでこのむれはよくなったのかしら?」の一言で黙り込んでしまった。 そうして駆り出されたのがこの二匹というそうだ。 「しかもさいきんはにんげんさんのたべものをぬすもうとかいいだしたんだよ~~~・・・・」 「なにがけんじゃよ!おうぼうなどくさいしゃじゃないの!」 人里が近いとなると若干・・・いやかなり厄介だな。 いくら賢いとはいえそのぱちゅりーは野良だろう。 迂闊に人間に手を出して報復ENDはゆっくりの群れではよくある話だ。 放っておいたら人間ゆっくり双方に被害が出る危険性がある。 放っておくわけにはいかない。 適当に理由をつけて二人にドスの下に案内するように頼んだ。 「でもまたしんじゃうかもしれないよ?」 まりさが言う。 前にも俺のような流れ者が何人かが話を聞き群を訪れ、 ぱちゅりーの政策に口を出そうとしたが、 そういった奴はみんな何者かに襲われ死んでいったという。 捕食種さえ倒せる俺なら大丈夫だろうと言い、 俺たちは群に向けて跳ね出した。 道中で二人から妙な噂話を聞いた。 なんでも、ゆっくりと人間のハーフ、ゆっくり人間なるものが存在するという噂だ。 水に弱い、甘味を好む、ゆっっくりしていってねに反応する等、ゆっくりの特徴が強く出ているにも関わらず、 人間の体と思考を持っているという。 ハーフ故に親の片方が人間、片方がゆっくりという特異な条件で生まれるらしいが そんな、外界のおとぎ話みたいなことあるわけないじゃないか。 つーかゆっくりのような人間がゆっくり人間なら人間の脳のゆっくりの俺は人間ゆっくりなのかねぇ? 人猿と猿人の違いみたいなもんだろう。 こんな身の上の俺としちゃあ、もし実在するとしたら一度会ってみたいという気もしなくもないがね。 そんなわけで目的のドスの群に到着したわけだが、 「むきゅ!?だれよそのゆっくりは!」 いきなりぱちゅりーに絡まれた。 「これいじょうむれのにんずうをふやせるほどのよゆうはないっていっているでしょう!?」 俺を連れてきたまりさとありすを叱り飛ばすぱちゅりー。 どうやらこいつが話に出てきたぱちゅりーらしい。 まりさとありすの二人が助けてほしそうにこちらに横目を送っている。 まあ俺のせいだし話を付けてやるか。 俺はこの二人が捕食種に襲われてたから助けただけだ。 「むきゅ?それはよけいなこt・・・ゲフンゲフンむれのなかまをたすけてくれてありがとう。で、このむれになんのようかしら?」 絶対今よけいなことをしてくれたわねみたいなことを言おうとしたなこいつ。 ムカつく奴だ。初めは人間とのトラブルを避けるようにと来たが、たとえこいつが俺に協力を申し出ても絶対してやらねーし絶対今の座から失脚させてやる。 とりあえず群に入る口実を作らねば・・・。 そうだな、これがいい。 俺は流れ者の旅ゆっくりでね、宿を貸してくれないか? 食料は自分で面倒みるからいらねーぞ。 もとよりゆっくりが普段食べてる物なんぞ口に入れるつもりは毛頭ないがな。 「むきゅ~・・・まあいいわ。どすにきょかをもらいましょ。ついてきなさい」 ぽよんぽよんとぱちゅりーが跳ね出すので後をついていく。 後ろから刺したい衝動に駆られるが我慢我慢。決着は頭脳戦で決めてやるさ。 「まりさがむれのゆっくりをたすけてくれたんだね!ドスはまりさをかんげいするよ!」 ついていった先の洞窟の中で、2メートルほどの大きさのドスまりさに事情を説明するとそういわれた。 家はぱちゅりー曰くちょうど空いてた(おそらくあの森での狩りの最中に捕食種に襲われた奴のだろう) 小さな洞穴に住むことになった。 内装はちょうどひょうたんのような部屋構造になっており、 奥の方は貯蔵庫として使えそうだ。 翌日から俺はまずは群での発言権を得るために例の捕食種の森に潜って小太刀でれみりゃやふらんを狩り、家の中でよくわからない肉団子に加工して群に振る舞う。 ゆっくりの群で上位に立つには群での知名度と評判を上げるが一番である。 他にも狩りを手伝ったりトラブルの解決など、群のためになることを頑張ったと俺は、三日も立つ頃には重要会議に出席できるまでになった。 「だからのんげんのもっているしょくりょうをとってくればむれはゆたかになのよ!」 人間の里に行くのはリスクが大きすぎる。犠牲者を出してまでやることか? 「ぎせいしゃがでないようにわたしがかんぺきなさくせんをかんがえたっていってるでしょう!?」 たとえそうだったとしてもゆっくりの仕業だと言うことはすぐにばれる 危険視されて山狩りをされたらどうするつもりだ? 群は全滅だぞ? 「そのときはどすがにんげんをころせばいいのよ!」 集団で来られたらいくらドスでも勝ち目がないぞ。 「むぎぎぎぎぎぎぎぎ!」 これまではぱちゅりーがドスに政策の許可(といってもドスがほぼ言われるままなのであまり意味がないが)を求めるだけだった会議の場に、 俺とぱちゅりーの怒声が響きわたる。 俺が発言権を得るために奮闘していたときこのぱちゅりーは人里襲撃作戦をかなり進めていたらしい。 だが、襲撃のリスク、完璧(笑)な作戦、その後の対処等 痛いところを突いていくと徐々にぱちゅりーは反論できなくなっていった。 ぱちゅりー種はゆっくりの中でも頭がいいと言われているが、 人間にしてみれば寺子屋で学ぶ子供レベルである。 一応人間の大人だった俺に勝つことはできないだろう。 俺は勝利を確信していた。 「もうおひさまもしずんじゃったよ!きょうはここまでにしよう!」 完全に空気になっていたドスがそう叫んだので、この議題は明日に持ち越して 今日はいったん解散することになった。 明日には襲撃作戦を完全に止めることができそうだ。 夜になり俺は森へと向かう。 真っ昼間には捕食種が少なく狩れる量も少ないので 夜中に足りない分を狩ると言うわけだ。 羽音がするのでれみりゃかと思い顔を上げると そこにはうーぱっくに乗ったぱちゅりーがいた。 何のようだ? 「まりさはぱちゅりーのじゃまをしないで!あすにはでてってちょうだい!さもないと・・・」 さもないと? 「きえてもらうわ!」 そう叫んだ途端周囲に異常な気配を感じた俺はあわてて周囲を見回してみると、 大量の発情ありすが俺の周りを囲んでいた。 こいつらを使ってぱちゅりーに刃向かう奴らを消していったんだろう。 何とも醜い暗殺部隊だ。 「むっきゅー!いきなさい!」 「「「「「「「「「むっほおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」」」」」 一斉に襲いかかってくるありすの集団。 恐らくこいつらが俺が通ってきた道の上のゆっくりを全滅させた元凶だろう。 おおかたあのぱちゅりーがすてきなゆっくりとすっきりできるとかたらし込んで操っているのだろう。 確かに普通のゆっくりならいくら強くても大量のありす相手にはかなわないだろう。 そう、"普通”ならね。 俺は小太刀を引き抜くと正面に横向きに構え、体ごと高速回転を始めた。 「「「「ゆぎゃあああああああ!!!」」」」 無闇に突っ込んで来るありすがまとめてなぎ払われる。 だが発情したありす達はそんなことお構いなしに突っ込んで来る。 そしてまたなぎ払われる。 来る。なぎ払われる。 来る。なぎ払われる。 来る。なぎ払われる。 来る。なぎ払われる。 来る。なぎ払われる。 来る。なぎ払われる。 来る。なぎ払われる。 来る。なぎ払われる。 来る。なぎ払われる。 「そぉれくらぁーいでぇ俺をたおせるとぉ~エレエレエレ」 ありすを全滅させ、決め台詞を言おうとしたら回りすぎで酔って吐いてしまう。 せっかくのシチュエーションが台無しだ。 ぱちゅりーを見ると若干焦っているような表情を見せたが、すぐにニヤニヤしだした。きめぇ。 「むっほおおおおおおおおおおおお!!!!」 地面が揺れるような大声に振り向くとぱちゅりーがニヤニヤし始めた理由がわかった。 俺の後方には巨大な影ークイーンありすがいた。 どっから沸いてきたんだよと突っ込みたいが、 そんなことをしてる間にぺにぺにを突っ込まれそうなのでやめておいた。 体に見合った大きさの極太のぺにぺにをむき出しにして一直線に突進してくるクイーンありす。 「ありすのとかいはなあいをわけてあげるわあああああああああああ!!!!!」とか叫んでる。 俺は全く恐怖はしなかった。 というかクイーンありすの大半はただでかくなっただけのありすであると、 人間だった頃にゆっくりを虐めて遊ぶ友人に聞かされたことがある。 まれに特殊能力を持った奴が出ても、そういう奴は絶対山奥にこもり、ゆっくりを襲うような下劣な行為はしないとか。 つまり・・・。 スパーン ドシャァッ 「ありずのべにべにがあああああああああ!!!!」 大木が倒れるような音がしてぺにぺにがありすから離れる。 叫んでいるありすを尻目に切り落としたぺにぺにを見る。 ほんの少し前、ゆっくり三代珍味としてうんうん、しーしー、ぺにぺにが大量に狩られたことがあったが 至近距離で見るととてもそんないい物には見えないな。 中身のカスタードだって一舐めしたら糖尿病になりそうな色をしている。 ここにあっても邪魔なので滅茶苦茶に切り刻んで潰す。 「あり・・・・・べに・・・・・ああ・・・・」 その声でありすの存在を思い出したが、見ると下腹部に空いた大穴から自重でカスタードがあふれだし、死に欠けていた。 「もっとすっきりっしtゆびゃ」 不快な辞世の句を述べようとしたのでとどめを刺す。 「ああああありえないわああああああ!」 ぱちゅりーが叫ぶ。 「どうして!?どうしてかてないの!?なんてたっていられるのこわがらないの!?なんで!?なんで!?」 何でといわれても。 「あんたはゆっくりじゃない!かいぶつよ!ゆっくりのかわをかぶったかいぶつよ!いつかぜったいころしてやるわ!おぼえておきなさいよ!」 うーぱっくが飛び去ろうとする。 俺は小太刀に十分な回転をつけ、上に投げ上げた。 「どうして!?どうして!?」 ぱちゅりーは思った。 自分は賢い。自分は賢者だ。なのにあのまりさにすべて論破される。何故だ。あり得ない。ありえn 貫くような痛みを感じる。 右半身と左半身がずれる。 なんで・・・・どうして・・・・・。 投げ上げられた小太刀は回転ノコギリのごとくうーぱっくごとぱちゅりーを真っ二つにした。 ぱちゅりーよ。 確かに俺はゆっくりじゃない。 そして怪物でもない。 小太刀が地面に刺さる。 人間だ。 べシャッという音とともにぱちゅりーだった物が地面に白い花を咲かせた。 翌日。群から姿を消したぱちゅりーが森で大量のありすの死骸に囲まれて死んでいたのが見つかり、村はざわめいた。 が、捕食種の多くいる森ということもありそこで死んでても不思議ではなかったのですぐに忘れられれた。 俺はあえて真実を伝えないでおくことにした。 群の首脳ゆっくりが反論者を消していたという事実はいらぬ騒ぎを起こすだけだと思ったからだ。 俺はしばらくドスの側近としてドスに群の指導の仕方を自分なりに教えた。 その間にこんなことも起こった。 「まりさぁー!たいへんだよぉー!」 俺を群に案内してくれたまりさが俺にそういった。 俺がそいつの巣を見ると、にんっしんしたありすがいた。 頭にツタを生やし、7匹ほどの赤ゆっくりが実っていた。 問題は、実っている7つのうち一つがぱちゅりー種であることだった。 話を聞くと、昨晩すっきりーすると一匹だけぱちゅりー種だったという。 これは取り替え子だな。 取り替え子。 ゆっくりは普通、親からもらった遺伝子のうち片方の親のが覚醒するため、親のうち片方の種になる。 しかし、覚醒しなかった方の遺伝子は無くなったわけではなく、 眠っているだけなので、低確率だが子に遺伝し覚醒することがある。 これが取り替え子だ。 そして取り替え子は育てた者に幸福を呼ぶという。 という友人が言っていたことをそのまま説明すると、 群は色めき立ち、この取り替え子のぱちゅりーを、将来ドスの側近にするとありすが言った。 このぱちゅりーが大きくなれば、この群も安泰だろう。 俺は群を出ることに決めた。 もう俺の役目は終わったと思ったからだ。 皆名残惜しそうな感じではあったが、最後は笑顔で送ってくれた。 そして俺はまたあてもない旅を始めた。 そして群を出て二日くらいたった頃であろうか。 「見つけたぜ・・・まりさ種か。まあいい。」 そういう声を聞いて、 ボカッ 後ろから殴られたような気がして。 そこで俺の記憶は途絶えている。 to be contenued ~後書き~ どうもアサシンの人です。 げすぱちゅりーを書きたかったのにだいぶズレた気がする。 虐待とは無関係だなこの文章。 のんびり続きを書く予定b
https://w.atwiki.jp/ankoss/pages/4292.html
『だいりしゅっさん 中編』 75KB 制裁 不運 妊娠 同族殺し 群れ ゲス 希少種 自然界 人間なし ナナシ作 前回のあらすじ 長候補であり狩りの名人でもある優秀なゆっくりであるまりさ。 しかしそのまりさの番であるありすは、子供の生むことのできない不能ゆっくりであった。 おちびちゃんができずに悩む日々。 そこでまりさは、れいむに代わりに子供を産んでもらうという代理出産という方法を思いつく。 この提案をもちかけたれいむは、報酬の食料につられ、これをよろこんで承諾。 あとはおちびちゃんがうまれるのを待つのみとなった。 そして出産当日。 生まれてきたたおちびちゃんに心を奪われたれいむは、まりさとの約束を反故。 群れの広場にて、まりさにレイプされ、おちびちゃんを売と迫られたと嘘の主張をする。 タイミングの悪さから、その話を信じた群れのゆっくりによって捕まってしまうまりさ。 さてこの先まりさの運命は? そしてこの事件を機に暗躍する群れのゆっくりたちの運命はいかに。 ここはとあるゆっくりの群れ。 今、この群れのゆっくりたちの間では、ある事件の話題で持ちきりだった。 「ゆゆ!あのはなしきいた?」 「まりさとありすのつがいのことでしょ!きいたきいた!」 「ゆー!あのまりさたちがあんなことするなんて、ちょっとしんじられないよ!」 「そうかしら?ありすは、いつかなにかしでかすんじゃないかとおもってたわ! だいたい、あのありすはむかつくのよ!むれいちばんのびゆっくりとかいって、おたかくとまっちゃってさ!」 「そうなのぜ!まりさにしたって、ちょっとかりがうまいからって、りーだーかぜふかしすぎだったのぜ! あのていどのこと、このまりささまがほんきになれば、かんたんにできることなのぜ! まあ、しょせんは、げすのばけのかわがはがれったってことなのぜ!ゆっへっへっへっへ!」 わいわいと賑わうゆっくりたち。 ゆっくりたちが話題にしている事件とは、もちろんまりさとれいむのおちびちゃん買収問題のことである。 昨日の広場での騒動から一夜明けて今日。 群れ内では、まりさとありすの番がおちびちゃんを奴隷売買しようとしていた! という衝撃的ニュースは、またたくまに群れ中に広まっていたのだ。 そして、その詳しい内容とは以下のようなものである。 昨日の夕方ごろ、群れの広場にて、乱闘騒ぎがあった。 一匹のゲスまりさがれいむに襲い掛かったのである。 幸いそのゲスまりさはその場にて取り押さえられ、被害者のれいむにはけがはなかった。 さて、これだけ聞けばただの暴行事件であるが、実はこの事件の裏には衝撃の事実が隠されていたのだというから驚きだ。 まず犯人であるが、これがなんと群れ一番の狩りの名人として知られ、次期長候補としても有力だったあのまりさなのである。 これだけでも十分驚きに値する内容であるが、まだまだこんなものは序の口にすぎない。 実はこのまりさ容疑者は、ここ最近より不審な行動をが目立ち、群れのみんなを怯えさせていた。 ある日突然まったく狩りをしなくなったと思ったら、これまたある日突然すさまじい勢いで狩りを再開しだすという、まったくゆっくりできない奇行を繰り返していた。 理由を尋ねても、答えは意味不明なものばかり。 異常行動ここに極まりである。 そして、まりさの異常行動はエスカレートしていき、ついには一線を越えてしまうときがきた。 一体何をトチ狂ったのか、この群れに住んでいる何の罪もないれいむ無理やりレイプし、にんっしんさせたのだ。 これだけでも許しがたい行為だというのに、まりさ容疑者のゲス行為はこの程度では終わらない。 まりさ容疑者はなんと、そのにんっしんさせたおちびちゃんを食料により買収し、奴隷にしようと画策していたのだ。 これはこの群れ始まって以来未曾有の大犯罪である。 しかしこの世に悪は栄えないもの、ましてやこの群れは善良なゆっくりたちが住む正義の群れ。 この悪意に満ちたまりさ容疑者の企みは、被害者であるれいむの勇気ある告白により、白日の下にさらされることになる。 れいむはなんと、広場のゆっくりたちの前で今までのまりさの悪行を盛大に暴露したのだ。 これにはまりさ容疑者もまいったのか、実力行使でれいむを止めようと襲い掛かった。 だがここで颯爽と登場したのが群れ一番の勇者幹部みょんだ。 幹部みょんの活躍により、まりさ容疑者はあっさりと撃退される。 しかし往生際が悪いまりさ容疑者は、ここで被害者のれいむが嘘をついている、などとふざけたことを言い出した。 本来ならば被害者であるれいむを加害者に仕立て上げようとするという、とんでもないゲスな行為に出たのだ。 だがこのゲス特有の悪あがきも、群れ一番の知恵者である幹部ちぇんによってあっさりと封じられることとなる。 幹部ちぇんの鋭い指摘により進退窮まった容疑者まりさは、みじめにも逃亡をはかろうとしたが、幹部みょんのダメ押しの体当たりによりあっさり御用となった。 なお、この騒動の後に、二匹の幹部主体によって、容疑者まりさのおうちの家宅捜索が行われた。 それによって、おうちに潜伏していた容疑者まりさの番である容疑者ありすを拘束。 さらに徹底的な捜査により、おうち内に隠された大量の食料を発見、押収した。 越冬次期でもない今現在で、これだけの量が貯蓄されているのは明らかに異常であり、これはおちびちゃんの奴隷売買のための食料であることはほぼ間違いないと思われる。 この動かぬ証拠によりまりさ容疑者の容疑はほぼ確定し、貯蓄されていた食料の量から、今回の件が明らかにならなければ第二第三の犠牲者が出ていたのは間違いないと推測される。 さらに、今までのまりさ容疑者の様子についても、むれの一部のゆっくりたちは、 実は以前自分もレイプされそうになった、自分のおちびちゃんが誘拐されそうになった、野獣の目線で見られていた。 などなど、その犯行を裏付ける有力な証言が続々と上がっており、 こんな危険なゆっくりを今まで放置していたのは、長ぱちゅりーの怠慢ではないか?という意見もあり、早期退陣を求める声も上がっている。 また、この事件を告発した勇気ある被害者のれいむを群れの幹部に、さらには解決へと導いた幹部みょん、幹部ちぇんのどちらかを次期長にという声が群れ内で強まっているようだ。 以上、群れの噂より抜粋。 所変わってここは長ぱちゅりーのおうち。 「……むっきゅー!まいったわねー!」 長ぱちゅりーは、おうちで疲れようなたため息をついていた。 まったくめんどうなことになった、とでも言いたげな様子である。 「だいりしゅっさんだなんて、まさかこんなことになるとは……。 まったくどうしたものかしらねぇ……」 唸る長ぱちゅりー。 長ぱちゅりーが頭を悩ませている原因。 それはもちろん、昨日の事件のことである。 長ぱちゅりーがこの事件のことを初めて知ったのは昨日の夜のことである。 その夜、長ぱちゅりーのところに、例の容疑者まりさが、幹部みょん幹部ちぇんによって連行されてきたのだ。 ただならぬ様子で突然やってきたこの三匹に、長ぱちゅりーは驚きを隠せなかった。 「むっ、むきゅ!いったいどうしたの!これはなんのさわぎなの!」 「おさあああああああああああああああ!ちがうんだよおおおおおおおおおおおおおおお! まりさは!まりさはああああああああああああああああ!ただおちびちゃんがほしくてえええええええええええ!」 「うるさい!だまってるみょん!」 ドン! 「ゆびぃ!」 長ぱちゅりーに向かって、必死に何かを訴えようとするまりさを小突き、幹部みょんは黙らせる。 「なっ、ちょっとやめなさい!いったいこれはどういうことなの!せつめいなさい!」 幹部みょんの有無を言わせぬ暴力行為に、強い口調で言う長ぱちゅりー。 いったいこれはどうしたというのだ。 「わかるよー!こいつらはげすゆっくりで、ざいにんなんだよー!このぐらいとうぜんなんだよー!」 隣にいる幹部ちぇんが面倒くさそうに答えた。 「ざいにん?まりさたちがなにかしたというの!」 「みょん!あきれたもんだみょん! おさのくせに、そんなこともしらないのかみょん! こいつらは、おちびちゃんをどれいにしようとした、ごくあくゆっくりだみょん!」 「わかるよー!でもこのじけんは、おさがのんきに、ゆっくりしているあいだに、ちぇんがかいけつしちゃったんだねー!」 「みょん!なにいってるみょん!このじけんをかいけつしたのは、みょんだみょん!かんちがいしないでほしいみょん!」 「「ゆぐぐぐぐぐぐ!」」 いがみ合う幹部みょんと幹部ちぇん。 まーた始まったな、と長ぱちゅりーは思った。 この二匹はいつもこうなのだ、ことあるごとに争って、どちらが次の長にふさわしいかの口論を始める。 しかし、今はそんなことはどうでもいいのだ。 大事なのは、まりさの件だ。 おちびちゃんを奴隷にしたとかなんとか、一体どういうことだ? 「まりさ、ほんとうなの? おちびちゃんをどれいにしようとしたなんて……」 「ちっ、ちがうんだよおおおおおおおおおおおおおおおお! まりさ、おちびちゃんがほしかっただけだよおおおおおおおおお! それでれいむにおねがいしたんだよおおおおおおおおお! それなのに、れいむが!れいむがあああああああああああああああああああ!」 「???」 まりさの発言はいまいち要領を得なかった。 よって、あたりまえだが広場での事情をしらない長ぱちゅりーには何のことかさっぱりである。 「みょん!まだいうかみょん!」 「わかるよー!いいかげんあきらめるんだねー!」 ビタン! 「ゆべし!」 さっきまでいがみ合っていたはずの幹部みょんと幹部ちぇんが、挟み込むようにしてまりさをおし潰し、黙らさせる。 普段は仲が悪いのに、こういう時だけは妙に息があっている。多分それは彼らの底に潜む本質が同じものだからだろう。 本人たちは決して認めないだろうが。 「ちょっと!だからぼうりょくはやめなさいっていってるでしょ! まだぱちぇがはなしているとちゅうなのよ!」 先ほどからの幹部みょんたちの度重なる横やりに、やや不機嫌な声を上げる長ぱちゅりー。 「みょん!おさにはなすひつようなんてないみょん! このじけんは、みょんがとりしきるみょん!」 「なんですって!」 「わかるよー!おさは、ちぇんのてがらをよこどりしようったってそうはいかないよー! いちおうおさだから、ほうこくはするけど、くちだしはさせないよー! これから、まりさのおうちに、しょうこあつめにいくんだから、じゃましないでねー!」 「ちょっと、あなたたち!まちなさい!」 言いたいことだけ言うと、まりさをつれてさっさとおうちを出ていく幹部みょんと幹部ちぇん。 どうやら、まりさのおうちへと向かうようである。 慌ててその後を追う長ぱちゅりー。 しかしこの群れでは事件がおきればその判断は基本的に長にゆだねられるというのに、この幹部ちぇんと幹部みょんの態度はどうだ。 まるで長などいらない、自分たちがそのかわりであるといわんばかりである。 いや、実際そうなのかもしれない。 今までもこの幹部二匹は、ことあるごとに長の地位を狙って行動を起こしてきた。 今回のこの事件でも、自ら主体になって事件を解決することにより、次期長としての地位を確立させようとしているのかもしれない。 そのためにあえて長ぱちゅりーを積極的に事件に介入させまいとしているのではないか? 移動中長ぱちゅりーはそう邪推せずにはいられないかった。 長ぱちゅりーたちがまりさのおうちへついてからは、事件は予定調和のようにトントン拍子で話が進んだ。 まりさのおうちの周りは、すでに幹部みょんと幹部ちぇんの子飼の部下たちによって包囲されている状態であり、長ぱちゅりーたちの到着と同時に捜査が開始された。 まず、おうち内で一体これは何事かと怯えていたありすが引っ張り出されてきた。 そして次に、おうちの倉庫に入れてあったすべての食料が運び出された。 「わっかるよー!げんじゅうにかくしてあったしょくりょうをみつけたよー! これはうごかぬしょうこなんだねー!」 「みょん!はんにんのいちいんで、おうちにせんぷくしていたありすを、とうとうつかまえたみょん! これでじけんはかいけつだみょん!」 これらを前にして、幹部二匹は鬼の首でもとったように勝ち誇った声を上げていた。 別に食料は隠されておらず、ただ単におうちの奥の食料庫に入っていただけだし、ありすにしても、ただ単におうち内にいたというだけの話なのだが、 幹部二匹にしてみれば、食料は厳重に隠されていたし、ありすは捜査の目を逃れるためにおうち内にひそかに潜伏していたということらしい。 「なっ、なに?これはいったいどういうことなの!おさ!いったいこれはどうなってるの!」 わけがわからないのはありすだ。 いつものように狩りを終え、おうちに帰ってしばらくすると、おうちの周りを数匹のゆっくりたちによって完全に包囲されてしまったのだ。 いつになってもまりさは帰ってこないし、周りを囲んでいるゆっくりのせいで、出るに出られぬ状況の中、 ついには突然やってきた幹部たちにより外に連れ出され、さらにおうちの食料まで持ち出されてしまったのだ。 外に出たら出たで、番のまりさは捕まってるし、なぜか自分は犯罪者扱いだ。 まったく何がなんだかわからない。 まりさのそばにいた長に必死になって説明を求めるありす。 「しらじらしいえんぎはやめるみょん!このげすが!」 「わかるよー!このちぇんのめはごまかせないんだねー!」 「はぁ?いったいあんたたちなにいってるの!わけがわからないわ!」 突然ゲス呼ばわりされて激昂するありす。 彼女ににしてみれば、この事態はまるで身に覚えのないものだからそれも当然だろう。 だがこのありすの態度は、幹部みょんの癇に障ったようだ。 「みょん!したてにでてれば、いいきになって! げすはせいっさいだみょん!」 「やめなさい!みょん!」 幹部みょんがありすにも暴力を振るおうとしたが、それはさすがに長ぱちゅりーがキツく制止させた。 群れの長としても、これ以上のやりたい放題を許すわけにはいかなかった。 「みょんもちぇんもいいかげんにしなさい!さっきからなんなの、このごういんなそうさは!まりさたちのはなしもろくにきかないで! これよりさき、このじけんは、むれのおさのなにおいて、このぱちぇがあずかるわ!いいわね!」 「ちっ、わかったみょん!」 「ふん、しょうちしたよーっだ!」 幹部たちは不満そうだったが、一応長ぱちゅりーの指示にしたがった。 流石に今の段階で、おおっぴらに長に逆らうのはまずいと判断したのかもしれない。 とにかくこれで事件の指揮権は、幹部たちから長ぱちゅりーへと移ったわけである。 長ぱちゅりーはまず、まりさとありすの二匹に、とりあえず今日のところはおとなしく群れの独房へと移動してくれないかと提案した。 なにしろ突然のことで、自分もまだ事件の全容を完全に理解してはいないのだが、どうやらまりさが広場でれいむに襲い掛かったということが事実な以上、 このまま放免というわけにはいかない。 よって暫定的な処置として、一時的な拘束はやむを得ないというわけだ。 この提案には仕方なしということで、まりさとありすの二匹とも頷き、了承した。 また押収した大量の食料についても、このまま主のいないおうちに残しておくのも危険というこてで、一時的に群れの共有倉庫へと移されることになった。 こうして事件はひと段落し、その日は解散ということになったのであった。 ……というのが昨日の夜の出来事。 そして一夜明けて今日。 「……むっきゅー!まいったわねー!」 長ぱちゅりーは事件のことについて、すっかり頭を悩ましていたのだった。 正直これはかなりやっかいかつデリケートな問題であり、複雑な要素が絡み合っているのだ。 とにもかくにも、まずやらなければならないことは、事件の全貌を正確に把握することである。 長ぱちゅりーは昨日あれからまりさとありすから詳しい話を聞いていたので、おおよその事件のあらましは理解できていた。 それと幹部みょんたちの報告や、れいむの主張などを合わせて考えると大体こんな感じになるのではないだろうか。 まず、れいむとありすは、おちびちゃんができない苦しみから代理出産という方法を思いつき、その母体にれいむを選んだ。 そしてまりさはれいむと交渉へと望む。 ここまではいいだろう。だが、ここからは先はまりさとれいむの双方の主張が大きく食い違うことになる。 まりさの主張では、双方の合意があり、食料はれいむに対する報酬であったとしているのに対して、れいむの主張ではれいむは無理やりレイプされ、 さらに食料はおちびちゃんを奴隷として買い取るものであると言っているのだ。 いまのところ群れの動向としては、れいむの主張を真実だという説が有力でり、まりさを犯罪者扱する傾向にあるようだ。 やはり昨日の広場での騒ぎの要因が大きいのだろう。 とくに、幹部みょんと幹部ちぇんは、それが真実であることを前提として行動しており、強引におうちを捜査するなどかなりの無茶をしている。 だが長ぱちゅりーは、恐らくれいむの主張であるレイプされたことや、おちびちゃんを奴隷にするという話はでっち上げではないかと予想している。 というのもいくつか理屈に合わない点があるからだ。 今ここで仮にまりさがれいむをレイプしたと仮定しよう。 と、するとその目的はなんだろうか? れいむに欲情して?いいや違う、れいむは別段美ゆっくりでもなんでもない。 その理由は考えるまでもなく、おちびちゃん欲しさのためだ。 つまりレイプという行為が目的ではなく、その先にあるおちびちゃんが目的だったと推察されるわけだ。 そしてその後、生まれたおちびちゃんを食料で買い取って奴隷に……というのがれいむの主張なのだが、おかしいと思わないだろうか。 ゆっくりを無理やりレイプし、おちびちゃんを奴隷にするようなゲスゆっくりが、わざわざ食料の報酬を支払うだろうか? そんな外道なゆっくりなら、おちびちゃんは無理やり奪っていくのではないだろか? 最悪母体であるれいむは用済みにあったら殺してしまってもいい。 いやむしろ、殺した方が後々騒がれなくて断然楽なはずなのである。 理由はもう一つある。 それは生まれてきたおちびちゃんの大きさだ。 長ぱちゅりーは直接目にしてないが、れいむが広場に連れてきというおちびちゃんは赤ゆっくりサイズではなく子ゆっくりサイズだったという。 さらにはその場にいたのは一匹だけだったそうだ。 生まれた直後で既に子ゆっくりサイズかつ、数も少ないということは、れいむのにんっしん方法は間違いなく胎生にんっしんだったはずだ。 とするとこれもおかしい。 おちびちゃん目当てでレイプしたならば、なぜわざわざ植物にんっしんでなく、胎生にんっしんにしたのか? よく考えるまでもなく、おちびちゃん目当てなら植物にんっしんのほうが効率がいい。 たくさん、しかもすぐに生まれるからだ。 よってまりさがゲスならば、れいむをレイプしたとき間違いなく植物にんっしんさせたはずなのだ。 だが実際にはれいむは胎生にんっしんだった。これは数少ない確定している事実だ。 胎生にんっしんの場合は、生まれるまで時間がかかるし、なによりにんっしん中は母体が全く動くことができない。 つまりレイプされてから出産するまでの間、れいむは一切狩りには出かけられなかったはずなのだ。 その間、れいむの世話はいったい誰がしていたのか? もちろんそれはまりさであろう。 つまりまりさは、ゆっくりを無理やりレイプし、おちびちゃんを奴隷にするようなゲスゆっくりでありながら、胎生にんっしんしたれいむの世話をきっちりし、 さらには大量の食料という報酬もきちんと支払うようなゆっくりだったということになる。 これは一般的なゲスの思考からは、ずいぶんとかけ離れたところにあると言えるだろう。 どうにも行動がちぐはぐなのだ。 一方ではれいむを脅し、しかしもう一方では甲斐甲斐しく世話を焼く姿を想像すると、滑稽ですらある。 以上のことより、長ぱちゅりーはレイプ行為や奴隷の話は実際にはなかったのではないかと予想していた。 つまりこの話はまりさが強引に押し通したのではなく、かなり高い確率でまりさとれいむの間には一定の合意があったはずなのだ。 まりさは、れいむにおちびちゃんを生んでもらうように頼み、そしてその頼みをれいむは承諾した。 そういう話なら報酬の食料も、胎生にんっしん中の世話についても、不思議でもなんでもない。 初めからそういう約束だったのだから、辻褄が合うというものだ。 だが恐らくおちびちゃんが生まれた直後、れいむはまりさを裏切った。 何か心変わりがあったのか、それとも初めからまりさをはめる腹積もりだったのかはわからないが、とにかくれいむは最高のタイミングでの裏切りを決行した、 というのが昨日の事件の真相というわけだ。 無論今までの話はすべて長ぱちゅりーの推察に過ぎず、具体的な証拠はなにもない。 れいむの話の方が真実であり、まりさは通常ではあり得ないタイプのゲスだったという可能性ももちろんある。 が、長ぱちゅりーは九割方これが真実ではないかと睨んでいた。 「むきゅ!とはいったものの……。 こまったわねぇ……」 こうして真相はある程度推測することができたのだが、事態はまるで解決していない。 いやむしろ複雑化してしまったとすら言える。 問題なのはむしろこれからなのだ。 とりあえずの大問題としてまりさたちの処遇をどうするかという問題があるが、これが容易くはない。 そもそも群れの掟ではまりさたちがとった方法、つまり代理出産を禁止する法は存在しないのだ。 というか代理出産という概念が既にゆっくりには存在しない、つまり完全に想定外の事態というわけだ。 基本的に群れのゆっくりは、掟で禁止されていること以外ならば何をしても罪に問われることはない。 無論今回の代理出産もその例にもれることはない(だからこそまりさたちはこの方法を実行したのであろうが)。 つまり代理出産ということに関してなら、まりさたちは無罪放免ということになるのだ。 だが一方で、奴隷の所持、およびその取引を固く禁じるという掟は存在しており、これを破ったゆっくりはせいっさいの対象となる。 つまりれいむが主張しているように、奴隷売買の容疑としてならまりさたちを裁くことが可能なのである。 よってこの問題の最大の争点は、まりさの行為は代理出産なのか奴隷売買なのか、 もっと言うと、まりさの主張が正しいのかれいむの主張が正しいのかという争いになるわけだ。 一見するとこれはそれほど悩むような大した問題ではないように思える。 というのは、長ぱちゅりーはこの事件はれいむが虚偽の主張をしているということをほぼ見抜いており、 まりさたちに奴隷売買の意思がなかったであろうことは、ある程度の推測がついているからだ。 それらの説明を順を追って群れの皆にしたうえで、矛盾点についてれいむに直接問いただせば、れいむがボロを出す可能性は高い。 そしてれいむが嘘をついていることを群れの皆が知れば、状況は一転するだろう。 れいむの評価は事件を告発した勇気あるゆっくりではなく、約束を破りさらには嘘をついて、まりさをハメようとしたゲスゆっくりへと転落する。 まりさたちへの誤解は解け無罪放免、おちびちゃんも戻りめでたしめでたし……。 と、いうふうにはならないのがこの問題の難しいところなのである。 何度も言うが、事はそう単純ではないのだ。 まずまりさの罪についてだが、これは代理出産で無罪か奴隷売買で有罪かの二択ではない。 第三の選択肢である代理出産でも有罪というパターンが存在する。 これはどういうことかというと、代理出産という行為=奴隷売買ではないかという考え方だ。 まりさたちの真意がどであろうと、また事前にれいむとの合意があろうがなかろうが、 まりさたちの行った、れいむに食料を渡し、そのかわりおちびちゃんを得るというのは奴隷売買に他ならないという理屈である。 もしこの解釈が適応されれば、まりさの言い分が正しいか、れいむの言い分が正しいかということはどうでもよくなる。 まりさの行った奴隷売買という大罪に比べれば、れいむがついた嘘などは、ちっぽけなものとして無視されることだろう。 これは多くのことを頭で同時に処理できないという、ゆっくり特有の理屈だ。 もはや真実はどうでもよいものとなってしまうのである。 結果として一応は何も罪を犯していないはずのまりさたちが制裁され、まりさを裏切り、また群れのみんなに嘘をついたれいむがお咎めなしという、 ゲス大勝利展開という悲劇が起こり得るのである。 さらに立ちはだかる障害がもう一つある。 それは、まりさたちが、代理出産を行うにいたった経緯の問題だ。 真相を究明しようとして、長ぱちゅりーが群れの皆に自分の考えを聞かせる場合、 前提として、ありすが不能ゆっくりであり、それゆえおちびちゃんがどうしても欲しかったという背景を説明しなければならない。 それを説明しないことには、まりさの不審な行動を皆に合理的に説明することは不可能だからだ。 しかしそれを説明するということは、当然不能ゆっくりの原因が、人間によって引き起こされたということまで話が及ぶわけである。 これは長ぱちゅりーが最も恐れていた事態に相当する展開であることは言うまでもない。 いやむしろ、初期よりもずっと事態は悪化している。 なぜなら、この事件は今では群れのすべてのゆっくりたちにとっての一大関心ごとに発展しているからだ。 群れの誰もがこの事件の一挙一動に注目している。 そんな今の状況にあって『群れ始まって以来の一大事件、だがその裏には人間の影があった』なんてことになれば、反人間思想はあっという間に群れを覆うだろう。 最悪に程があるというものだ。 おまけに頭が痛い問題として幹部みょん幹部ちぇんの存在もある。 事件が起こってから一日しか経っていないのにもかかわらず、群れのすべてのゆっくりが当然のように事件のことを知っているのはいくらなんでも異常だと思っていたら、 どうやら昨日の夜から今日にかけて、幹部みょんと、幹部ちぇんが、子飼のゆっくりたちを動員し、この事件を自分たちの手柄として宣伝しまくっているらしいのだ。 どうりで、群れを伝わってる噂がやたら幹部みょんや幹部ちぇんを称える内容のはずである。 しかもどさくさに紛れて、さりげなく自分の長退陣の煽りまで入っている。 まったくいちいちやることがせこいというものだ。 だが、これで合点がいったこともある。 いちいち言うまでもなく幹部みょんと幹部ちぇんの目的は長になることであろう。 事件に対する過剰なまでの自己アピール、長である自分をないがしろにするかのうような捜査の数々、 さらには一時期は群れの長候補として名が上がっていたまりさを、証言もろくに聞かず徹底的に犯人扱い。 これらすべての行動が、それを裏付けている。 おそらく昨日の事件の際、偶然その場に居合わせた幹部みょん幹部ちぇんは、これ幸いとこの事件を最大限に利用することにしたのだろう。 まったくよけいなことをしてくれる。 おかげでさらに事件がややこしくなったじゃないか。 長ぱちゅりーとしては、はっきり言って長の地位などにはまったく執着がない。 いやむしろ、誰かほかに適任がいるのなら、さっさと代わって欲しいくらいだ。 だが、あの幹部ちぇんと幹部みょんのどちらかという選択肢は、はっきりいってあり得ない。 二匹ともバカではないが賢くもない(ゆっくりの基準なので人間からみればバカ)ゆっくりであり、とても長の器ではないのだ。 そもそもあの二匹は幹部としての資質ですら問題が多いのだ、幹部みょんはやたら乱暴者だし、幹部ちぇんはズルくてせこいことばかりする。 ではなぜそんなゆっくりが幹部をしているかというと、群れの有力者の子供(ただ古くからいるってだけで偉いって風習はどうにかならんかねこれ。名門とか死ねよ)だからだ。 あぁ、アホらしい。 まあ、長うんぬんの問題はこの際いい、重要なのはこれが事件に与える影響の方だ。 幹部二匹がこの事件の真相に気付いているかはわからない。 だがその目的ははっきりしている。 幹部みょんと幹部ちぇんの目的は、この事件を利用して自身の知名度、影響力を高めつつ、ライバル候補だったまりさを社会的に抹殺することだ。 つまり必然的にれいむ贔屓の立場にあるわけだ。 そしてもしこの状況において、実はれいむは嘘ついてました、なんてことが明らかになったらどうなるか? そんなことになれば、幹部二匹はいい恥さらしである。これはもうイメージダウンどころの話ではない。 最悪ゲスを擁護したといことで、せいっさいはないにしろ幹部の地位を追われるかもしれない。 これはプライドの高い二匹にとっては、絶対に避けたい事態である。 そうはならないためにも、幹部二匹は全力でれいむを援護することだろうことは想像に難くない。 それこそ、真相をねじ曲げるぐらいは簡単にやってのけるだろう。 現に今、まりさが犯罪者であるという雰囲気が群れ内を覆っているのは、幹部二匹が意図的に流した噂の影響も大きいのだ。 「むきゅう!これは……まりさつんでるわね……」 一通りの分析を終え、事態の深刻さに改めて長ぱちゅりーはため息をついた。 長ぱちゅりーとしては、なんとかまりさたちを助けてやりたい気持ちがあった。 それは、群れのためとはいえ、まりさたちに嘘をついたという負い目が多少なりともあるからだ。 しかしまりさを助けるための障害があまりにも多すぎるのである。 自分はおろか、れいむやまりさですら直接与り知らぬところで、さまざまな状況がれいむを有利にし、まりさを不利にしている。 あきらかに天がれいむに味方してるとしか思えない。 まるで三流以下の作家にありがちな、ゲス特有の無双状態のようだと長ぱちゅりーは思った。 「むきゅ!これはもう、まりさとありすのにひきを、このむれからついっほう、ということにするしかないかしら。 せいっさいをのぞむゆっくりもでるだろうけど、それは、だいりしゅっさんはつみではない、ということでなんとかごまかして、 ひがいをさいしょうげんにとどめるしかほうほうはなさそうね……」 この状態からのまりさたちの逆転劇は不可能、と判断した長ぱちゅりーがしばらく考えた末に出した答えは、まりさとありすの番の群れ外追放処分であった。 幹部みょん幹部ちぇんがれいむ味方に付き、自分もうかつに真実を話せない状況の今、このままいけばまりさたちを制裁しろ、という声が群れ内で膨れ上がるのは必至。 となれば、そうなる前にまりさとありすを群れから出してしまうのだ。 こうすることで、一応の体裁は保たれ、かつ、人間がありすを去勢したという件もばれることがない。 実質的に何も罪を犯していないまりさちと追放するのは心が痛むが、制裁されるよりははるかにましだろう。 れいむに対しては、嘘を見抜いていることを伝えた上で、おちびちゃんの親権を正式に与えることで黙らせることにし、 また幹部二匹についても同様に、れいむが嘘をついていたことをほのめかし、ばらされてイメージダウンされたくなかったら、あまり増長しないようにしろと釘をさすことにする。 おそらくこれが一番波風立たないベストな選択のはずだ。 「むきゅ、まるでこれじゃぱちぇがげすみたいね……」 自嘲気味につぶやく長ぱちゅりー。 仕方がないとはいえ、あまり後味がよいとは言えない結論を出さざるを得ないこの状況で、気分がよいはずもない。 何より結果敵にあのれいむの味方をしなければならないというのが気に食わない。 こんなんでいいのか?と思わなくもないが、それしか手がない以上、自分は長としてその責任を全うするまでだ。 「ふぅ、まったくこれだからおさはいやなのよ……。 さて、それじゃこのことをみんなにつたえにいかないと!」 善は急げとばかりに、長ぱちゅりーがおうちから出ようとしたその時、 「おさー!おさはいるのおおおおおおお!」 外からけたたましい声が聞こえてきた。 長ぱちゅりーはなにがとかと眉をひそめながら、おうちから顔を出す。 そこにいた声の主は、誰であろうか、あの問題のれいむだった。 「ゆゆ!おじゃまするよおさ!」 まだ入っていいとも、わるいともいってないのにお構いなしにずんずんとおうちへと入ってくるれいむ。 そんなれいむに顔をしかめる、長ぱちゅりー。 「いったいなんのようなのかしられいむ! というかあなたおちびちゃんは? いっしょじゃないの?」 怪訝に思い、訊ねる。 れいむは一匹であり、そばにはおちびちゃんの姿はなかった。 シングルマザーであるはずのれいむが、おちびちゃんを放って一匹で行動できるはずがないのだが。 「ゆふふふふ!おちびちゃんのしんぱいならむようだよ! むれのみんながひろばで、めんどうをみててくれるからね! れいむはおさと、にひきだけで、じゅうようなはなしがあるっていったら、みんなよろこんでひきうけてくれたよ! おちびちゃんはい、まむれいちばんのだいっにんきだからね! まっ、れいむのおちびちゃんなんだからそれもとうぜんだけど!」 誇らしげな表情で言うれいむ。 なるほどそういくことか、と納得した。 事件の渦中のゆっくりであるおちびちゃんが人気でないはずがない。 いまごろ、さぞ群れのみなからちやほやされていることであろう。 「ふーん!それはわかったわ! で、いったいなんのようなわけれいむ? ぱちぇはいま、とってもいそがしいのだけど!」 トゲトゲしい口調を隠そうともせず言う長ぱちゅりー。 当然だが、長ぱちゅりーはこのれいむに大していい印象を抱いているはずもない。 自然と接する態度も辛辣なものとなる。 「ゆふふふ!はなしというのは、ほかでもないあのげすまりさのことだよ! そのしょぐうについて、ていあんにきたんだよ!」 「はぁ?ていあん?なにいってるの?」 いきなりわけのわからないことを言われて呆れる長ぱちゅりー。 まりさの処遇については長であるぱちゅりーが全権を持っているのだ、 そのことに関しては群れの一ゆっくりにすぎないれいむが口をはさむようなことではない。 「ゆふふふふ!あのげすまりさはこのままだとまちがいなくせいっさいだよね! それだけのことをしたんだから、とうぜんだよね! でもね、れいむはとってもじひぶいかいゆっくりだよ! だからね、あのげすまりさにも、ちゃんすをあげようとおもうんだ! なにより、あんなげすでも、おちびちゃんのかたおやであることはまちがいないからね!」 「ちょっと!ちょっとまちなさい! いったいなんのはなしをしているのれいむ!」 れいむとまったく話がかみ合わず、口調が強くなる。 だがれいむはお構いなしに話を続ける。 「そこでかんがえたんだけど、あのげすまりさには、このれいむとおちびちゃんのしょくりょうを、いっしょうめんどうみさせてあげるぎむをかすことにしようとおもうんだ! こうすれば、つみをつぐないながらも、おちびちゃんとれいむのために、せいっさいされずにいきのこることができるんだよ! ゆふふふふ!いいあんでしょ! さぁ、わかったら、はやくこのけいをむれのみんなにはっぴょうしてね! れいむも、おちびちゃんも、とってもおなかをすかせてるんだよ!まりさには、きょうからでもはたらいてもらわないとね! ああ、それとありすのことな……」 「いいかげんにしなさい!」 れいむの言葉を遮るように、長ぱちゅりーの声が響く。 「ゆっ、ゆゆゆゆ?」 「ふん、いったいなにをいいだすかとおもえば、あきれたげすゆっくりね、れいむは!」 「ゆなっ、なんてこというのおおおおおおおおおおおお! いくらおさでもいっていいことと、わるいことがあるよ!あやまってね!れいむにあやまれええええ!」 「はっ!」 突然ゲス呼ばわりされ、顔を真っ赤にするれいむを見下した目で見る長ぱちゅりー。 「げすにたいして、げすといってなにがわるいのかしら! それと、おあいにくさま!まりさたちのしょぶんついては、もうきめてあるわ!せいっさいはなしよ!あのにひきにはむれをでていってもらうわ! そもそも、これはあなたがくちだしするようなもんだじゃないのよ!ひっこんでなさい! だいたい、なに?『れいむとおちびちゃんのしょくりょうを、いっしょうめんどうみさせてあげるぎむをかすことにした』って! それって、つまりまりさをどれいか、するってことじゃない! あれだけ、おちびちゃんをどれいにされそうになった、ってさわいでたちょうほんにんが、ほかのゆっくりをどれいにしたいなんて、おわらいね! しってのとおり、むれでのゆっくりのどれいかは、じゅうざいよ! あなた、そんなにせいっさいされたいのかしら?」 「ちっ、ちがうよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!これは、れいっがいだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! これはせいっとうなけんりだよ!とうっぜんのことなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおお! まりさは、げすゆっくりなんだよおおおおおおお!これくらいのつみは、あたりまえのことでしょうがあああああああ!」 「なにが、せいっとうなけんりよ、あんたみたいなげすのかんがえは、おみとおしよ! いま、かんぜんにりかいしたわ!あんたがまりさをうらぎったしんのもくてきは、これだったわけね!」 長ぱちゅりーは確信した。 さっきまでは九割方の推測だったのが、このれいむを見て十割の事実に確定した。 このれいむは間違いなくゲスだ。 それもかなり悪質なでいぶタイプのゲスに違いない。 長ぱちゅりーの推測では恐らく、このゲスれいむの真の目的は事件の後、まりさを奴隷化し、自分とおちびちゃんに対する安定した食料の供給源とすることにあったのだ。 事件の罪とおちびちゃんを盾に取り、延々とまりさに食料を貢がせ続けるのが本当の狙いだったのである。 そのためにまりさを裏切り、さらには虚偽の罪まで押しつけて、ゲスゆっくりに仕立て上げた。 まったく吐き気がする悪党ぶりだ。 「ゆぐうっ!ゆっ、ゆへへへへへへ! うらぎったとか、なっ、なんのことかなー! れ、れいむはひがいしゃなんだよ!かわいそうなんだよ!あんまりふざけたこといってるとおこるよー!」 長ぱちゅりーの言葉に明らかに動揺しているものの、なんとか平然と振る舞おうとするれいむ。 しかしその目は不自然に宙を泳ぎ、また体中から脂汗が噴き出している。 誰がどう見ても不審な態度だった。 そんなれいむに長ぱちゅりーはとどめをの言葉を突き刺す。 「どうやらりかいできていないようね! あんたがむれのみんなにはなした、れいぷだの、おちびちゃんをうれとかのはなしは、ぜんぶうそっぱちよ! そうやって、まりさをはめて、あまいしるをすおうとしてることはおみとおしだって、いってんのよ!」 「ゆぐっ!」 長ぱちゅりーの言葉に、ビクッと身を震わせるれいむ。 そして次の瞬間、 「ゆぐあああああああああああああああああああ!ふざけるなあああああああああああああああああああああああ! したてにでてれば、ちょうしにのってえええええええええええ!なんなんだよおおおおおおおおおおおおおお! だいたい、しょうこはあるの!しょうこはあああああああああああああああああああああ! れいむがまりさをだましたってしょうこはさああああああああああああああああああ! おら、だせよおおおおおおお!だしてみろよおおおおおおおおおおお! ないでしょうがああああああああああ!へんないいがかりはよしてねええええええええええええええ! れいむはひがいしゃなんだよおおおおおおおおおおおおお!やさしくしなくちゃいけないんだよおおおおおおおおおお! さっさと、れいむのいうことをきけばいいんだよおおおおおおおおおおお! このくそげろぱちゅりーがあああああああああああああああああああ!」 れいむは爆発した。 ついにそのゲスな本性をさらけだしたのだ。 その突然の豹変に、一瞬たじろぐ長ぱちゅりー。 「くっ、たしかにしょうこはないわ、でも……」 「でもってなんだ!でもってえええええええええええええ! しょうこもないのに、でいぶをはんにんあつかいかああああああああああああ! げすはどっちだあああああああああああああああ! そっちがそのきなら、こっちにもかんがえがあるぞおおおおおおおおおおおお! おぼえてろおおおおおおおおおおお!」 それだけ言い終えると、バッとれいむは身をひるがえし、長ぱちゅりーのおうちを凄い勢いで出て行った。 後にはあっけに取られた長ぱちゅりーがポカンとした表情で残されるのみである。 「にっ、にげたの?なっ、なんのかしらあれは!いったいどうするつもり?」 突然やってきて、そして突然帰って行ったれいむに戸惑いを隠せない長ぱちゅりー。 一体れいむは何をする気なのか? 単純に考えれば、自分のたくらみが暴かれ、逆上したものの、打つ手がないために捨て台詞をはいて逃げたようにも見えるが、 しかしれいむの「こっちにも考えがある」という捨て台詞には、単なる負け惜しみとは思えないなにか不気味なものを長ぱちゅりーは感じた。 いや、しかし慌てることはないはずだ。 ただの群れの一ゆっくりにすぎないれいむに、何かができるというのだ。 自分はさっき決めたまりさたちの刑を、ただ群れの皆に伝えればいいだけのことだ。 それで今回の件は決着がつくはずなのだ。 そうだ、それですべてが終わるはずなのだ。 そう思いなおすと、長ぱちゅりーは、群れの皆に自身の判断を発表しに行ったのであった。 、 そして次の日。 「ゆゆ!きいたきいた?あのじけんのこと!」 「ゆー!きいたよ!なんだかへんなことになってきたね!」 「おさのはんだんはおかしいよね!まりさたちをかばってるとしかおもえないよ!」 「まったくそのとおりね!れいむがかわいそうだわ!」 「そのてん、かんぶみょん、かんぶちぇんのはんだんはしっかりしてるわよね!」 「ゆふふふ!これはがぜんおもしろくなってきたのぜ!」 今日も今日とて、群れ内は例の事件の話題でもちきりだった。 事件について、様々な憶測や噂を口にするゆっくりたち。 その内容は以下のようなものであった。 事件の続報である。 かねてから話題になっているまりさ容疑者による奴隷売買事件にその後大きな進展があったようだ。 さて、この事件はすでに幹部みょん、幹部ちぇん、被害者れいむらの活躍によって一応の解決を見せており、 容疑者まりさの有罪についてはもはや議論の余地はないのだが、肝心の刑罰の行方について、物議を醸しだしている。 昨日の夕方ごろ、長ぱちゅりーにより正式にまりさ容疑者およびありす容疑者の刑についての発表がなされた。 群れのゆっくりたちの間では、まりさ容疑者たちの刑はその罪の重さから考えて、当然極刑であるせいっさいが予想されており、 なかでも群れの皆の前でじわじわなぶり殺しにされる、公開せいっさいを求める声が多かった。 しかしである。 長ぱちゅりーによる刑の発表はなんと、まりさ容疑者たちの群れ追放のみという意味不明のものであった。 この発表の直後、広場は大いにどよめいたという。 中には、こんな刑では軽すぎる!せいっさいしろ!とか、いったいどういうわけでこんな結論になったのか説明しろ!などの声も上がったが、 長ぱちゅりーはそれらの声を完全に無視。 とにかく刑は決まった、これ以上事件について蒸し返すような話はするなの一点張りである。 これには群れの善良なゆっくりたちといえど納得がいくはずもなく、不満の声が出るのも無理はない。 しかし、長ぱちゅりーは発表を終えると、もう話すことは何もないといった様子で、逃げるようにそそくさと広場を後にしてしまったのだ。 困惑の形で広場に取り残される群れのゆっくりたち。 いったいなぜ、善良な群れのゆっくりたちが、こんなにもゆっくりできない思いをしなければならないのか。 そんな状況の中、長ぱちゅりーと入れ違える形で颯爽と現れたのが、我らがヒーロー幹部みょん幹部ちぇん、そして被害者れいむだった。 被害者れいむはまず群れの皆にこう言った。 自分は長ぱちゅいーの判決に納得していないと。 その言葉にうなずく群れの面々。 部外者である自分たちですら、あの判決には不信をつのらせているのだ。 当事者であるれいむが納得するはずもあるまい、というわけである。 その上で、被害者れいむは自身が望むまりさ容疑者たちの刑について語ったのだ。 当然、観衆のゆっくりたちは、被害者れいむはまりさたちのせいっさいを望むだろう期待していた。 だが、意外や意外。 れいむが口にしたのは、まりさ容疑者たちのせいっさいではなかった。 れいむが語った内容は、まりさを生かし、おちびちゃんのために働かせるというものだったのである。 これには群れのゆっくりたちは仰天し、長ぱちゅりーの発表の時と同じように広場はざわめいた。 なんでせいっさいじゃないんだ!あれだけのことをまりさにされて、くやしくないのか! 被害者れいむに向かって納得できない、といった言葉が飛ぶ。 だが被害者れいむは、刑の理由についてこう語った。 あんなゲスゆっくりであっても、おちびちゃんの親であることは変わりない。 それを殺してしまうのは、いかがなものか?ということである。 大切なのは、自身の恨みを晴らすことではない。 生まれてきたおちびちゃんのことを第一に考えるべきなのだ、と。 この被害者れいむの言葉によって、広場は感動の渦に包まれた。 れいむの慈悲深さに、憎しみにとらわれない崇高な精神に、そしてそのあふれ出る母性に。 さらにたたみかけるように幹部みょん幹部ちぇんの二匹は、全面的にこのれいむの主張を支持することをその場で発表し、長ぱちゅりーとの対決姿勢を明らかにしたのである。 この発表に広場のゆっくりたちは大いに沸いた。 なぜなら今発表された被害者れいむの刑が、現実のものとなる可能性が出てきたからだ。 通常、一ゆっくりに過ぎない被害者れいむが、どれだけ叫んだところで、長の決定は覆らない。 だが、被害者れいむの意見に、幹部が二匹も賛同しているとなれば話は別である。 いかに長といえど、これは無視できない。 ましてや、その意見が、群れの皆の支持を得ている正論となればなおさらなのである。 また、れいむの意見が通るということは、長の判断が間違っていたということを意味する。 これは必然的に長ぱちゅりーの退陣が求められ、被害者れいむを支持した幹部みょん幹部ちぇんのどちらかが長になるということを意味しているのである。 こうして、まりさ容疑者のゲス行為から始まった一連の事件は、群れの長の座をかけた権力闘争へと発展の様相を見せており、 ますます目が離せない状況となっている。 以上、群れの噂から抜粋。 所変わって長ぱちゅりーのおうち。 「むっきゅー!あのくそげすれいむ!なんてことを!」 群れのゆっくりたちが、昨日の出来事の噂で盛り上がっている頃、長ぱちゅりーおうちで頭を悩ませていた。 もちろん、その原因はあのゲスれいむのことである。 正直あのゲスれいむにしてやられた感は否めなかった。 まりさの刑さえ、正式に決定してしまえばこれ以上荒れたり、ややこしいことにはならないと思っていたが、 まさかこんなことになってしまうとは。 読み誤っていた。 あのれいむのゲスさ加減を。 あいつは、ことゲス行為にかけては自分以上にキレるかもしれない。 単なる怠け者と、甘くみていた結果がこれだ。 そして、幹部みょん、幹部ちぇんのことにしてもそうだ。 まさかここまであからさまに自分に対して全面戦争を仕掛けてくるとは完全に予想外だ。 もはや、幹部ちぇん、幹部みょん、そしてゲスれいむの三匹は、完全に共闘状態にあると見ていいだろう。 長の地位欲しさに、ゲスに手を貸すとは、あの二匹がここまで愚かだったとは。 それにしても、いったいいつの間に手を組んだのか? 普段の仕事はさぼってばかりでまったくやらないくせに、こういうことのかけては異様に行動が素早い。 まったく救いがたいったらありゃしない。 自分たちがやっている行動がどういう結果をもたらすのか全くわかっていないのだ。 とはいえ、あの三匹が行っている戦法は、癪だが実にいい案だ。 まず意図的な噂の流布。 どうやら相変わらず子飼いのゆっくりを動員し、偏った内容の噂を群れ中にまき散らしているようである。 この噂によれば、もはやまりさが有罪かどうかは確定したものとして隅におかれ、刑の行方についてのみ重点的に語られている。 つまり事件の論点を刑の行方のみに絞っているのだ。 これは上手い手だった。 このことによってゲスれいむ最大の弱みである、嘘をついたという事実を完全に過去の物にしてしまっているのだ。 とりあえずまりさが有罪ということを確定させておけば、自身の弱みに対して突っ込まれることはなく、 安全な立場から、好き放題事件に大して言及できるというわけだ。 そして、自分の主張を群れのゆっくりたちに演説するタイミングも絶妙。 ちょうど自分が群れのみんなにまりさたちの刑を発表後、皆の不満が高まっているところを見計らっての登場。 悲劇の被害者という自らの立場を最大限に利用した演説内容。 さらには、幹部の賛同という権力の後押し。 全てが完璧であった。 おかげで今や群れは完全にれいむムードだ。 このままでは、自分が下したまりさたちの追放刑を撤回し、れいむの主張しているまりさをおちびちゃんのために働かせるという刑(その本質は奴隷刑だがそのことに気付いているゆっくりはいない) を執行しろという気運が群れの内で高まるのは目に見えている。 最悪、現長であるぱちゅりーを無理やり退陣させて……という展開すらあり得る状況だ。 前にも考えたことだが、長ぱちゅりーとしては、長の地位などちっとも惜しくはない。 だがこの状況はだめだ。 今自分が、れいむたちの思惑通りに退陣するわけにはいかない。 それはすなわち、群れの崩壊に繋がりかねないのだ。 となれば、やることは決まっている。 「むきゅ!あのばかなみょんと、ちぇんにきっちりとはなしをつけにいかないとね!」 今長ぱちゅりーができる最善手は、れいむと幹部二匹の繋がりを断つことだった。 こうすれば、れいむは後ろ盾を失いれいむが主要している馬鹿げた提案は絵空事ととなる。 「むきゅ!そうときまればこうしちゃいられないわ!さっさとあのにひきにあわないと!」 今度ばかりは後手に回るわけにはいかないと、長ぱちゅりーは急いで二匹の幹部を探しにおうちを飛び出したのであった。 その頃、群れ内の某所。 「わかるよー!むれのれんちゅうのはんのうはじょうじょうなんだねー!」 「みょん!けいかくどうりだみょん!」 群れのはずれにある小さな洞窟で、二匹のゆっくりがコソコソと何事かを話し合っている。 幹部みょんと幹部ちぇんであった。 二匹は今、とある計画についての最終確認を行っていた。 その計画とは、もちろん例のまりさの事件のことである。 「わかるよー!このままいけば、むれのれんちゅうが、ぱちゅりーにおさをやめろといいだすのは、じかんのもんだいなんだねー!」 「みょん!」 幹部ちぇんが上機嫌に言い放つ。 たしかにその言葉の通り、計画は怖いくらいに順調だった。 このままいけば、遠からずその目的は達成されるであろうことは間違いない。 だが……。 「みょん、これでほんとうによかったのかみょん……」 ぼそりと幹部みょんは呟いた。 「ゆゆ!わっからないよー!いまさらびびってるのー!」 弱気なセリフを吐いた幹部みょんをバカにするように幹部ちぇんが言う。 「ゆがぁ!ふざけるんじゃないみょん!べつにびびってるわけじゃないみょん!」 揶揄するちぇんに、ぶっきらぼうに応える幹部みょん! だが言葉とは裏腹に、その態度にはどうにも落ち着きがない。 あるいはわざと大声を出して、虚勢をはっているようにも見えた。 そう、実は幹部みょんの内心では、不安な気持ちがヘドロのように堆積していた。 なんというか、どうにも事件が大きくなりすぎている気がするのだ。 そもそも自分はここまで大事は望んでいなかった。 あの時はこんなことになるとは思ってなかったのだ。 そう、あの時は。 それは数日前の話である。 幹部みょんは、いつものように狩りを終えると、群れの広場でだらだらとゆっくりしていた。 だが正直言ってその日の気分はあまりいいものではなかった。 幹部みょんには悩みがあったのだ。それは言うまでもなく次期長のことだ。 一体いつになったら、自分は長になれるのか?何度長ぱちゅりーにそのことを進言しても、まだ早いといった返事ばかり。 しかもそれだけならまだしも、一時期は幹部でもなんでもないただのまりさが、その候補にあげられるといった始末。 親族の連中もさっさと長になれと皮肉を言ってくるし、ここのところゆっくりできないことばかりだ。 その上もしライバルの幹部ちぇんに出し抜かれ、自分を差し置いて長になんかなられた日には……。 考えただけでもゆっくりできない。憂鬱な気分にもなろうというものだ。 「まったくいいかげんにしてほしいみょん!」 誰にともなく愚痴をいう幹部みょん。 その時である。 なにやら広場の中央から、やかましい声が聞こえてきた。 「ん?」 目線を向けると、どうやら一匹のれいむが群れのゆっくりたちに何やら訴えているらしい。 助けてだの、レイプだのといった声が聞こえてくる。 しかしそれらの言葉が特段幹部みょんの関心を引くことはなかった。 勝手にやってくれ、そのうち誰かが何とかするだろう。 面倒はごめんだ、こういうことは適当に見て見ぬふりをするにかぎる。 そう思っていた。 ところがである。 思いもよらないことが起こり、状況が一変した。 そこに一匹のまりさが現れたからだ。 なんとその場に現れて、れいむに犯人扱いされているのは、あの長候補でもあったまりさだったのだ。 その現場を見た瞬間、幹部みょんはひらめいた。 ひょっとしてこれはチャンスなのではないか? 今の時点では、れいむとまりさのどちらかが悪者かは定かではない。 だが両者の間に不穏な空気が漂っているのは事実だ。 ここで颯爽と自分が登場し、この喧嘩を仲裁すれば群れからの評価が上がり、さらにどんな事情であれもめ事を起こしたまりさは失点となる。 これで長の座に一歩近づけるかもしれない。 そう思ったみょんは、既に行動を開始していた。 「ちょっとまったみょん!」 間一髪のところで、まりさとれいむの間に割り込むことに成功した幹部みょん。 決まった!完璧だ!やったぁ!かっこいい! これで、群れのゆっくりたちの評価はうなぎのぼりに違いない。 だが、そう思っていると予想外の事が起こった。 ある意味ではこの場で一番聞きたくない声が聞こえてきたのだ。 「わかるよー! じゃあこのたいりょうのしょくりょうはどうせつめいするのー!」 幹部ちぇんだった。 なんとライバルである幹部ちぇんが、この場に割り込んできたのだ。 しかも自分が仲裁したこの争いに、追い打ちをかける方向で。 瞬間、カッと頭に血が上った。 ふざけやがって!これは自分の手柄だぞ!それなのに後からのこのこやってきて、なにドヤ顔してやがんだ! 「ほら!こっちへくるみょん!」 「ゆぎぃ!」 これ以上幹部ちぇんを目立たせるわけにはいかない。 そう思った幹部みょんは、強引にまりさの髪をつかみ引っ張っていく。 容疑者を連行するという目立つ役目は絶対に自分がしなければならない。 今の時点では100%まりさが犯人と決まったわけではないが、なに構うものか。 周囲の様子は完全にまりさが犯人の扱いなのだ、そんな中弱気な態度を見せるわけにはいかない。 これは自分の手柄なのだから。 「わかるよー!このしょくりょうは、ぼっしゅうだよー!」 しかしその矢先、今度は幹部ちぇんがまりさの持っていた食料を証拠だといって没収する。 またも自分の存在をアピールする売名行為に、幹部みょんの怒りのゲーシはどんどん溜まっていく。 それならば自分は……。 こうして幹部みょんと幹部ちぇんによる、まりさの粗捜しが始まった。 幹部みょんとしては、始めはここまで徹底的にやるつもりはなく、ちょっとしたポイント稼ぎのつもりだったのだが、 幹部ちぇんがやってきた以上後には絶対に引けなくなってしまったのだ。 そして多分幹部ちぇんも同じように考えていたのだろう。 二匹は競うように、まりさが犯人である証拠(そのほとんどは言いがかりだったり、捏造だったりしたものだった)を提示し合あった。 そしてその過程で、初めは半信半疑であったまりさの犯人説をいつのまにか盲目的に自分でも信じるようになっていた。 幹部みょんにとっては、もはやまりさが犯人だということは疑う余地のない決定事項だったのだ。 しかしそんな状況が一変する出来事が起こった。 あれは昨日の夕方頃のことである。 事件も一段落し、いつものように、幹部ちぇんと口喧嘩(そのときの内容は、どちらがこの事件でより多くの手柄を立てたかというものだった)で争っているところに、あの被害者れいむがやってきたのだ。 「ゆがあああああああああ!にひきとも、なにくだらないことやってるのおおおおおおお! たいへんなんだよおおおおおお!いちだいじなんだよおおおおおお!」 「は?」 「みょん?」 突然やってきたと思ったら、いきなり大声でわけのわからないことをのたまうれいむに、 さっきまでケンカしてたことも忘れ、思わず顔を見合わせる幹部みょんと幹部ちぇん。 「あのげろぱちゅりーは、まりさたちを、むれからついほうしようとしてるんだよおおおおおおお! そんなことゆるされないよおおおおおお!あのまりさは、れい……じゃなくて、おちびちゃんのためにはたらかせるんだああああああ! さぁにひきとも!れいむについてくるんだよ!そしてむれのみんなのまえで、このことをうったえるんだあああああ! そしてあのげろぱちゅりーに、おもいしらせてやるんだよおおおおおおおお!」 「「…………」」 やたら興奮しまくっている(なんか嫌なことでもあったのか?)れいむを尻目に、何ともいえない表情で黙りこむ幹部みょんと幹部ちぇん。 なんというか、どうコメントしていいか、悩む内容だった。 どうやら長ぱちゅりーはまりさたちの刑を、群れからの追放としたらしく(せいっさいじゃないのは意外だった)それを不満に思ったれいむが自分たちに、 力をかせと訴えているらしいが、それはお門違いだと幹部みょんは思った。 確かに自分らは、事件中一貫してれいむを擁護する立場をとっていた。 だがそれは決してれいむのためでなく、自分自身の利益のためなのだ。 決してれいむの味方というわけではない。 「わっからないよー!どうしてちぇんたちが、れいむのいうこときかなきゃいけないわけー! かんちがいしちゃこまるよー! ちぇんとれいむは、なんのかんけいもないんだよー! なにかやりたいことがあるんあら、ひとりでかってにやってねー!ちぇんはかんけいないよー!」 幹部ちぇんも同じ考えだったようで、きっぱりとれいむに協力できないと言い放つ。 そりゃそうだ、もはや事件は一応の落ち着きを見せいている。 これ以上引っ掻き回すのは得策とは言えない。 そもそも自分は、長候補でもあったまりさの社会的抹殺という目的は十分に果たしている。 それなのに、れいむの味方をして長ぱちゅりーと対立するなど、リスク以外なにものでもないし、そんな義理もない。 「みょん!どうやられいむは、みょんたちがれいむのみかただとおもっているようだけど、それはちがうみょん! ただ、むれのかんぶとして、じけんのはんにんをつかまえた!それだけのことだみょん! さあ、わかったらさっさとかえるみょん!みょんたちはいそがしいみょん!」 幹部みょんは、これいじょうここでれいむに騒がれても面倒なので、さっさと帰るように促した。 「そうだよー!」 これに便乗するちぇん。 忌々しいが、珍しく意見が一致したようである。 だがれいむはプルプルと小刻みに体を震わせると、突然クワッと目を見開き、すさまじい大声で叫びだした 「ゆがああああああああああああああああああ!どいつもこいつもおおおおおおおおおおおおおおお!」 「みょ、みょん!」 「なんなんだみょん!」 あまりのことに驚く二匹。 このれいむ、事件の時からあんまり上等なゆっくりじゃないと薄々思っていたが、やっぱりちょっとおかしいんじゃないか? そんなことを幹部みょんが考えていると、れいむは何を思ったが今度は一転してニヤニヤと不気味に笑い出す。 「はぁはぁ!ゆふふふふ!いいのかなー!いいのかなー!このれいむに、かえれなんていっちゃっていいのかなー! そーんなことして、こまるのは、おまえらのほうなんじゃないかなー!ゆふふふ!」 突然叫びだしたと思ったら今度は笑い出す。 いくらなんでも情緒不安定すぎである。 「わっ、わからないよー!くだらないことごちゃごちゃいってないで、さっさとかえってねー! べつにちぇんは、れいむがいなくなったところでぜんぜんこまらないんだよー!」 「そうだみょん!そうだみょん!さっさときえるみょん!」 あまりの不気味さに帰れ帰れと促す二匹だが、れいむは余裕顔である。 そしてれいむは、二匹にとって、あまりに不都合な真実を語りだしたのだ。 「じつはさぁ!ここだけのはなしぃ!れいむがれいぷされたりぃ!まりさにおちびちゃんをうれっていわれたのはぁ!ぜんぶうそなんだよおおおおお! ゆっふっふっふっふっ!ごべんねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇー!」 「「…………は?」」 突然のカミングアウトに目が点になる幹部みょんと幹部ちぇん。 何だ!なんだって!うそ?じゃあまりさは?いままでのことは?というかなんなんだこれは! うそって、意味が分からないぞ! れいむの言ったことを即座に理解できず、混乱状態に陥る。 だがそんな幹部みょんを尻目に、なおもれいむの話は続く。 「ゆふふふふ!そうなんだよー!ぜぇーんぶれいむのうそでしたぁぁぁぁぁぁ!ざぁんねぇええええええん! ゆっふー!びっくりしたぁー! それでねぇー!もしー!こーんなことが、むれのみんなにばれちゃったらどーなるかなー! むれのかんぶともあろうものが、うそつきのみかたをして、まりさをおとしめたということがばれたらどうなるかなー! みんなおこるんじゃないかなー! これは、せいっさいもありえるかもねええええええええええ!」 「みょ、みょん!」 思わずビクリと体を震わせてしまう。 なんて、なんてことだ! もし今れいむがいったことが本当で、それが群れのみんなに知られることになんてなったら、一大事だ。 事件を解決したヒーローが、一転して冤罪を生み出した無能幹部ということになってしまう。 そうなれば一気に針のむしろだ!やばい! 「わっ、わがらないよおおおおおおおおおおおおおおお! うそだ!そんなはなしうそにきまってるんだよおおおおおおおおおお! いや、かりに、ほんとだったとしても、いまさらそんなはなしだれもしんじないんだよおおおおおお! はんにんは、あのまりさなんだよー!これはもうけっていじこうなんだよおおおおおおおお!」 れいむの言葉を受けて、吐き出すように幹部ちぇんが言い、そこでふと気づく。 そうだ!その通りじゃないか! 仮に今れいむが言ったように、れいむの主張が嘘まみれだったとしても、もはや事件の大勢はまりさが犯人ということで確定している。 いまさらどんなことがあったとしても、この状況は覆らない。 大丈夫だ!大丈夫なはずだ! 「そのとおりだみょん!いまさらおまえがなにをいってもむだだみょん!」 そうであると確信しているというよりは、そうであって欲しいと願うように様に言う。 だがそんな淡い希望はれいむの次の言葉であっさりと打ち砕かれる。 「だっから!そうもいかないからこまってるんだろうがああああああああ! あのくそげろぱちゅりーは!なぜか、れいむがうそをついてることを、みぬいてるんよおおおおおおおお! れいむがやったことが、ぜんぶばれてるんだよおおおおおおおおおおおおお!」 「「…………」」 沈黙。 何も言えなかった。 言えるはずもない。 終わった。 すべてが終わった。 長への夢も。 いや、それどころか、自分のゆん生も。 あの賢い長ぱちゅりーが、すべての真実を知っているというのなら、このままで済むはずもない。 「ゆっふっふー!ようやくじぶんのおかれてるたちばが分かったようだね!」 落ち込む幹部二匹を見て、してやったりという表情のれいむ。 だがそんなれいむに幹部ちぇんがかみつく。 「なによゆうぶってるんだよー! おまえだって、うそがみんなにばれたらただじゃすまないんだよー! そもそもおまえが、こんなうそつかなきゃこんなことにはならなかったんだよー! どうしてくれるんだ!せきにんとってよー!」 「ゆっふっふー!もちろんだよぉ! だからいったでしょ! れいむにきょうりょくしろってさぁ!」 「わっ、わからないよー!」 困惑する幹部ちぇん。 そしてそれは幹部みょんにしても同じだった。 一体この絶望的な状況からどうするというのだ。 「ゆふん!それじゃあはなすよ!このれいむの、かんっぺきなけいかくをさぁぁぁぁ!」 ………………。 …………。 ……。 こうして三匹は運命共同体となった。 その目的は、長ぱちゅりーの長の地位失墜にある。 三匹が連携して立ち回ることにより、この問題をまりさの件から、長の権力争いへとすり替えるのだ。 議論がまりさ事件のみの場合、長ぱちゅりーが真実を知っているというのは、致命的なアキレス腱となるが、 事が、群れの長の問題となれば、長ぱちゅりーは中立な判断を下す立場から、事件の当事者と立ち位置が変わってくる。 その状況では、仮に長ぱちゅりーがれいむたちに対して嘘だと言い放ったところで、 それは自分が長の地位を脅かされているから、嘘を言っているのだと言うことで、苦しいが言い逃れることが一応可能なのだ。 そして目論見通り、長ぱちゅりーが引退に追い込まれ、幹部ちぇんか幹部みょんが長の地位に納まれば、 後のことはどうとでもなるというわけだ。 そして今現在、作戦は極めて順調だった。 れいむの演説は、大成功に終わり、群れのゆっくりたちの反応は上々。 意図的に流した噂の効果も相まって、群れではすっかりれいむムード一色である。 もし仮に今の状況で長ぱちゅりーが、れいむことを嘘つき呼ばわり(実際に嘘つきなのだが)したとしても、 証拠がない以上、それは、長の地位を追い詰められた長ぱちゅりーが、苦し紛れにれいむ陣営をネガキャンしているようにしか映らないだろう。 群れのゆっくりたちからは、冷ややかな目線で見られるのがおちだ。 真実は真実としての力を発揮できないのだ。 つまり長ぱちゅりーに打つ手はない。 全てこちらの思惑通り。 なのになぜだろう。 幹部みょんは漠然とした不安を感じずにはいられなかった。 このままでは取り返しのつかないような……。 いや、今の時点でもう十分取り返しのつかない事態になっているのだ。 これ以上最悪なんてことはもうあるまい。 だとすれば突き進むしかない。 自分の道はもはやこれしかないのだから。 そう、幹部みょんが決意を新たにしていた時、 「むきゅ!みつけたわよ!にひきとも!」 長ぱちゅりーがやってきたのであった。 「みょん!?」 「ゆっ、ゆわわわ!」 驚愕の声を上げる二匹。 それも当然だ。 二匹でコソコソと秘密の洞窟でこれからのことを相談してたら、その相談内容の張本人である 長ぱちゅりーが洞窟の入り口に現れたのだ。 幹部みょんは、一瞬これは何の冗談だと思った。 「わからないよー!なんでおさがここに!」 驚きがそのまま口に出る幹部ちぇん。 それに対してバカにしたように長ぱちゅりーは言う。 「ふん!あんたらにひきは、こゆっくりのときから、なにかわるだくみをするときは、いつもこのばしょでこそこそとそうだんしてたでしょ! だからもしやとおもってきてみれば、あんのじょうというわけ! まったくこゆっくりのときから、まるでせいちょうしてないわね!」 「ぐぬぬぬぬ!」 「わっ、わからないよー!」 思わずうめいてしまう。 言われてみればそうだった、自分たちは何か困ったことがあると大抵この洞窟でひそかに相談をする。 子ゆっくりのときからの習慣みたいなものだった。 長ぱちゅりーからしてみれば、そんなことはお見通しだったというわけだ。 「れいむは……いないようね! こうつごうだわ!」 きょろきょろと周りを確認しながら、長ぱちゅりーが言う。 「じゃあ、さっそくようけんにはいるけど、 あなたち、れいむのいけんをしじするなんて、ばかなまねはやめなさい いまならまだ、ぎりぎりとりかえしがつくわよ! むれのみんなのまえで、れいむへのさんどうを、てっかいするのよ!わかったわね!」 強い口調で命令するように長ぱちゅりーは言う。 いや、実際にこれは命令のようなものなのだろう。 幹部に対しての長の命令。 本来の立場なら、逆らうことなどあり得ない。 だが、今は平時ではない。 「わっ、わからないよー!そんなことできるわけないよー! おさは、じぶんのちいがあぶなくなったからって、そんなめちゃくちゃいうなんて、ずるいよー!」 幹部ちぇんが、ややたじろぎながらも言い返す。 あくまで、自分らは正当な理由に則っての行為だという立場を崩さない。 だがそんな幹部ちぇんを、長ぱちゅりーはジロリと睨みつける。 「ひっ!」 「あんたねぇ!ぱちぇがきづいてないとでもおもってるの? れいむとくんでるんでしょ! おさのちいほしさに、げすとくむなんて!このはじしらずが!」 完全に軽蔑しきった態度で長ぱちゅりーが言う。 「それは……その……」 「もっというとねぇ!このままいくとむしろやばいのは、あんたらのほうなのよ? それがりかいできてるの?」 「ど、どういことだみょん!」 思わず訊ねてしまう。 「わっ、わかるよー!はったりだよー! じぶんがまけそうだからって、つよがりいってるんだよー! みみをかすんじゃないよー!」 慌てて幹部ちぇんが会話に割り込む。 何も聞きたくないといった風にぶんぶんと首を振っている。 やはり、幹部ちぇんも自分と同じように、何か漠然とした不安を感じているのだろう。 だから、それを増長させるような、長ぱちゅりーの話は聞きたくないのだ。 それに対して長ぱちゅりーは、はぁと呆れたよういに息を吐き、 「あんたたち、ほんとなんにもわかってないのねぇ!」 と言った。 「いいわ!おしえてあげる!このじょうたいのままですすんだばあいの、あんたらのみじめなみらいをね!」 「なっ、なんだっていいうんだよー!」 長ぱちゅりーの断言口調に、もはや幹部ちぇんは半泣き状態だった。 「まずあんたらのたくらみどおり、むれないで、れいむをしじし、ぱちぇのいんたいをのぞむこえがつよくなったとしましょうか。 そうなると、とうぜんぱちぇはおさをやめざるをえないわね。 いくらおさとはいえ、むれぜんたいのいこうにはさからえないわ!」 「そのとおりだみょん!」 幹部みょんは肯定の相槌を打った。 「するとどうなるかしら? あなたたちのどちらかが、おさに、ということになるのかしらね。 まあ、こんかいは、かりに、みょんがおさになったとしましょうか!」 「わがらないよー!なんでちぇんじゃなくて、みょんなんか……」 「だまってききなさい!かりにって、いったでしょう! じゃあ、いいわ! ちぇんがおさになったとするわ!そうするとどうなる?」 「みょ、みょん!どうなるって……」 言われてみて、幹部みょんは、幹部ちぇんが長になった未来を想像してみた。 幼馴染でもあり、同時に長候補でもあり、今ともに死線を潜っている幹部ちぇん。 その幹部ちぇんが自分を差し置いて、長になる。 そんなことは……。 「みょん!ゆるせないみょん!せったいにごめんだみょん!」 幹部みょんは素直な気持ちを口にした。 そう、絶対に認められない。同じように危ない橋を渡ったというのに、何で幹部みょんだけが長で、 自分は幹部のままなのか! こんな不公平認められるはずもない。 「そうね!そうなるでしょうね! これは、みょんがおさになったばあいもいっしょ! あなたたちは、どちかかいっぽうのみがおさとなることを、けっしてみとめられない! さあ、そうなるとどうでしょうね! みょん、あなたは、なんとかしてちぇんをおさのざからひきずりおろそうとするんじゃないのかしら?」 「みょ、みょん!」 そう言われて幹部みょんは、ふと気付く。 その通りだ。 もし幹部ちぇんが長になんかなれば、自分はなんとしてでもそれを妨害する行為に出るはず。 そして、自分にはそのための手段がある。 だがその手段は……。 「どうやらきづいたようね! あなたは、ちぇんのすきゃんだるをにぎっている! でもどうじにそれはじぶんのすきゃんだるでもある! しかし、あなたはそれをつかうことを、おそらくためらわない! なぜなら、ちぇんだけが、ひのめをみるのは、ひどくふこうへいだとかんじるから! そんなことになるぐらいなら、ともだおれをのぞむはず!」 「くっ!」 長ぱちゅりーに指摘され、まったくその通りだと痛感する幹部みょん。 もしいま長ぱちゅりーの言ったような状況になれば、自分は自滅覚悟で今までのことを群れのゆっくりたちに暴露するだろう。 それもきちんとした証拠と共にだ。 たとえそれが最悪の結果を招くとしてもである。 「つまりね!あんたたちどちらかのうちいっぴきがせいこうし、りえきをどくせんするためには、 おたがいによわみをしりすぎているのよ! じゃあどうするか? おたがいにころしあう? でもそれはあんまりかしこいほうほうじゃないわね! つねにいのちをねらわれるのは、あまりにもゆっくりできないし、 だいいち、さつがいにせいこうしたとしても、おさこうほのうちいっぴきがあんさつされたとなれば、 とうぜんうたがいのめは、もういっぽうのこうほにむくことになるからね! はんにんは、じぶんだといっているようなものだわ!」 ここまで言うと、長ぱちゅりーは一息入れる。 「まっ、おそらくは、にひきでおさをやる、きょうどうとうちというかたちでおちつくでしょうね! それがおもてむき、いちばんかどがたたない。 でもそれでめでたしめでたしというわけにはいかない。 むしろ、このむれにとっても、あなたたちにとっても、これがもっともさいあくのてんかい! なぜだかわかる?」 「なっ、だんでだみょん?」 「わからないよー!」 どいういうことだ? 幹部ちぇんと一緒に長をやるのは、こういう状況では最善かつ最も問題のない方法に思える。 「それはね! れいむよ!れいむのそんざいよ!」 あっ、と幹部二匹は同時に声を上げた。 「あなたたちについては、にひきでおさをやりましょう!ってかたちでけりがつくかもしれない。 でもれいむは?おさのすきゃんだるをにぎっているれいむが、このままおとなしくしているかしら? だんげんするわ! こたえはのーよ! あのれいむは、あなたたちにひきのよわみをにぎっているのをりようして、 さまざまな、むちゃをようきゅうしてくるはずよ!」 「そっ、そんなことないみょん!れいむのもくてきは、あのまりさをどれいにすることだみょん! もくてきがはたされたいじょう、そんなことするはずが……」 「あまい!」 「ゆぐぅ!」 「それはあますぎるかんがえよみょん! じっさいにあって、はなしてみて、きずかなかったの? あのれいむは、むれをおさめるうえで、もっともきをつけなかればならない、でいぶたいぷのげすよ! いっぴきのげすが、けっかとして、むれをほろぼすことになるというはなしを、むかしなんどもおしえたでしょう! でいぶたいぷのげすには、よくぼうのさいげんがないわ! そもそも、あのれいむは、はじめはまりさとのとりひきにまんぞくしていたはずなのよ! でも、それよりも、うまいはなしがあることにきづいて、あっさりまりさをうらぎった! あなたたちにしてもおなじことよ! むれをおさめているおさにたいして、きょうはくできるざいりょうがある! こんなおいしいたちばを、あのれいむがみのがすはずがないわ! いまや、れいむのもくてきは、このむれを、かげからぎゅうじることにかわっているのよ!」 「なっ、そんなことが……」 口からうめき声がにじみ出る。 そんなバカな!いくらなんでもそんなこと……。 「まったくたいしたやつよ!あのれいむは! まりさのけいを、そうきゅうにかくていさせて、ぱちぇがしんじつをみぬいていることをほのめかせば、 おとなしくなるとおもっていたら、あんたたち、ばかにひきをまきこんで、こんなさくせんにでてくるとはね! ころんでも、ただじゃおきない!まんまとぴんちをちゃんすにかえてきたわ! そしていまごろは、ぱちぇをいんたいにおいこんだあとのこともかんがえているのかもしれない! ひょっとしたら、もうすでに、じぶんをかんぶにしろ!なんてはなしも、もうでてるんじゃないの?」 「ゆぐ!」 「それは!」 思わず体がビクリと反応してしまう。 確かにその通りだった。 あのれいむとは、この作戦がうまくいった暁には、自分を幹部として取り立てるようにという約束を交わしている。 その話が出た時には、将来自分が長になるのだから、幹部の地位くらいくれてやると軽く考えていたが、 しかしそれは、れいむが群れを牛耳るという野望のための第一歩なのかもしれない。 群れの幹部となれば、専属の部下が持てる。 それを使ってガードをか固められてしまえば、れいむを暗殺するのも難しくなるだろう。 幹部みょんの体中を冷たい汗が流れる。 そうか、そういうことだったのか。 自分が感じていた不安の正体はこれだったのだ。 自分はあのれいむからドス黒い何かを無意識のうちに感じ、それに恐怖していたのだ。 「ふん!どうやら、ようやくじぶんたちのおかれたじょうきょうがりかいできたようね! あなたたち、このままいけば、いっしょう、あのれいむにこきつかわれる、ゆっくりできないまいにちよ! それでいいのかしら!」 「ち、ちぇんたちはいったいどうすればいいのー!」 弱々しい声で幹部ちぇんが長ぱちゅりーに訊ねる。 もはや幹部ちぇんには反抗する気力はない様だった。 「そうね!まずやることは、はじめにいったとおり、あのれいむへのしじひょうめいをてっかいしないさい! そうすれば、あのれいむはうしろだてをなくすことになるわ!」 「わからないよー!でもそんなことしたら、ひみつがばれて……。 それに、いったんれいむをしじすると、むれのみんなにだいだいてきにひょうめいしたいじょう、 すぐにそれをてっかいしたら、みんなからのしじが……」 幹部ちぇんがおどおどしながら、長ぱちゅりーに意見する。 「ひみつのことなら、しんぱいするひつようはないわ! れいむにしたって、ばれたらやばいのはおなじなんだから!じぶんからばらしはしないわよ! ぱちぇにしても、こんかいのけんについては、あまりおおきなさわぎにするつもりはないの! だからこそ、まりさたちは、ついほうというかたちにして、おんびんにかたづけようとしたわけ! まあ、どこかのだれかさんたちが、はでにうわさをばらまいてくれたおかげで、そうもいかなくなっちゃたけどね! それと、むれのみんなからの、しじりつていかは、もうあきらめなさい! これからあなたたちは、かんたんにいけんをひるがえす、せっそうのないゆっくりとして、みんなからけいべつされることになるとおもうけど、 それはじごうじとくというものよ!れいむにいいようにつかわえるよりは、ずっとましでしょ!」 「そっ、そんなー!わからないよー!」 泣きそうな声を上げる幹部ちぇん。 「ふん!なさけないこえあげるんじゃないわよ!みっともない! それじゃ、そういことで、みょんもいいわよね!」 「よくないみょん!」 「……あんですって!どっ、どういうことよ!」 「よくないって、いったんだみょん!」 「なっ、ちょっと!あなたいまのじょうきょうがわかっているわけ!」 長ぱちゅりーが信じられないといった面持で見つめてくる。 わかってる。 いわなくても今の状態が絶望だというのは重々承知だ。 れいむの側につけば、将来的にあのゲスれいむに弱みを握られ、ゆっくりできない毎日。 かといって、長ぱちゅりーの側につけば、群れ中のゆっくりたちから侮蔑され、長どころか幹部の座すら危ぶまれることになる。 どちらにしても最高にゆっくりできないことは確実だ。 クソッ! どうしてこうなったんだ! 始めは軽い気持ちだったんだ。 ちょっとした点数稼ぎのつもりだったんだ。 それがこんな事態になるなんて誰が予想できる! そもそも!そもそもだ! 元はといえば、長ぱちゅりーがいけないんじゃないか。 さっさと自分を長に指名しないから!そればかりか、あのまりさなんかを長候補として持ち上げるから! だからこんなことになったんだ。 だというに、まるで自分たちが悪いみたいなこの扱い! ふざけやがって! そもそも長ぱちゅりーの策を行った場合、ダメージを受けるのは結局自分たちだけじゃないか。 自分が元凶のくせに、被害を全く受けないなんて、そんなバカげた話があるか! だいたい、長ぱちゅりーは本当に群れのことを思って行動しているのだろうか? 結局のところ単に長の地位を奪われたくないだけではないのか? そのために自分らを群れから抹殺しようとしているのでは? そうだ!そうに違いない! 長ぱちゅりーは始めからそいういう腹積もりだったのだ。 だってそうでも考えなければおかしいのだ! なぜ長ぱちゅりーはれいむの嘘を看破していたのにもかかわらず、そのことを早急に群れのみんなに発表しなかったのだ? 自分と幹部みょんが、あのクソれいむと組まざるを得なかったのは、れいむの嘘が長ぱちゅりーにばれているということを知ったからだ。 だから問題を群れの長の問題にすり替えようという策をとるため、早急に同盟を組む必要があった。 だが、いつまでたっても、長ぱちゅりーは真実を発表しようとしなかった。 なぜだろうか? その理由は一つしかない。 長ぱちゅりーはきっと待っていたのだ。 自分たちがれいむと組むのを。 そして三匹が組んだところで、例の提案を持ちかけ自分たちを社会的に抹消するつもりなのだ! そして最後に残ったまりさは、群れ外へ追放してしまえばいい。 これで、長候補と目されていたすべてのゆっくりは綺麗にいなくなる。 よって自分が死ぬまで長の地位は安泰というわけだ。 なんてことだ。 こいつが!こいつこそがゲスじゃないか! みずからの地位を守るため、何の罪もない自分や幹部みょん、さらにまりささえも抹殺しようとする。 こんなやつを長にしておくわけにはいかない! 「みょん!ちょっと!きいてるの! このままじゃ、あのげすれいむが、むれのはけんをにぎるかもしれないのよ! そんなことになれば、このむれぜんたいが、きけんにさらされるのよ! それがわかってるの!」 「だまるみょん!このげすが!」 ギリッと長ぱちゅりーを睨みつけて言う。 「なっ、ちょっと!なにいうの! げすはそっちじゃないの!げすれいむとてをくんで! あなたしょうきなの?あたまは?」 「ふん!かくしてもむだだみょん!みょんは、ぱちゅりーのかんがえをみやぶったみょん! はじめから、みょんやちぇん、まりさをしまつするつもりだったみょんね!」 「なにわけのわからないこといってるの!そんなわけないじゃない! いいかげんになさいよ!」 「だったらどうして、むれのみんなにしんじつをじぶんのくちでつたえないみょん!」 「えっ……」 その瞬間、いままで詰め寄ってきていた長ぱちゅりーの表情が固まった。 それを見て幹部みょんは確信する。 やはり長ぱちゅりーは、意図的に真実を隠ぺいしていたのだ。 「おもったとおりだみょん! やはりおさはわざと、しんじつをむれのみんなにはつたえないようにしていたんだみょん! そして、みょんとちぇんがれいむとくんで、あともどりできなくなるたいみんぐをみはからっていたんだみょん!」 「わっ、わからないよー!どういうことなのー!」 幹部ちぇんが混乱し、助けを求めるような口調で聞いてくる。 ふん、普段から頭脳派だと威張ってるくせに、肝心なときにこれか。 「かんたんなことだみょん! おさは、はじめからみょんたちをはめるつもりだったんだみょん! じぶんがおさでありつづけるために!」 「まって!まちなさい! それはごかいよ! たしかにぱちぇは、いとてきにしんじつを、むれにみんなにつたえなかったことはみとめるわ! そして、そうきゅうにこのことを、むれのみんなにせつめいしていれば、こんなふくざつなことには、ならなかったかもしれないこともみとめる! でもそれにはふかいわけがあるの! けっしてあなたたちをおとしめようとか、そういういとは、まったくないわ!いませつめいする!」 慌てふためくように長ぱちゅりーが言う。 まったくしらじらしいことこの上ない。 「いいわけなんてききたくないみょん! いや、もうこうなってしまったいじょう、もはやりゆうなど、どうでもいいことだみょん! みょんはこのむれのおさになるみょん!」 「しょうきなの!れいむのことはどうするき!」 「みょん!あんなげす、あとからどうとでもなるみょん! いざとなれば、どんなてをつかってでも、しまつすればいいだけのはなしだみょん!」 「そんな! いくらげすとはいえ、ただしいてじゅんをふまないでのせいっさいは、ゆるされないわ! そんなことをすればむれのちつじょがみだれる! あなた、ぼうくんになるつもりなの! はじをしりなさい!」 「だまれみょん! みらいのおさにむかって、そのくちのききかたはなんだみょん! だいたい、ほんらいなら、たいしたつみじゃないまりさを、むれからついほうしようとしたやつのいうことかみょん!」 「ぐっ……」 幹部みょんのセリフにたじろいだ様子の長ぱちゅりー。 しかしすぐに気持ちを立て直すと、こんどは幹部ちぇんに向き直った。 「ちぇん!あなたはどうなの? みょんといっしょにおさになってむれをきけんにさらすの?それとも、ぱちぇのいうことをきいて、 むれのために、れいむとえんをきるの?どっち?」 「ちぇんは……ちぇんは……」 おろおろと戸惑う幹部ちぇん。 幹部みょんを説得するのは難しいと踏んだ長ぱちゅりーは、まず崩しやすそうな幹部ちぇんを説得することにしたのだ。 確かにれいむの側について長になる場合は二匹がそろってないとだめだが、長ぱちゅりーの側について、れいむの指示を崩す場合は、 二匹のうち一匹だけでも効果はある。 最悪幹部ちぇんだけでも引き込めれば、幹部みょんとれいむの企みは阻止できるのだ。 「ちぇん!おもいだすみょん!いままでのひびを! みょんたちがいくらおさになりたいといっても、おさは、ぜんぜんおさにさせるけはいがなかったみょん! それは、はじめからじぶんがずっとおさをやるつもりで、みょんたちのおさをやらせるきなんてなかったからだみょん! あまつさえ、こんかいのけんをりようして、みょんたちをまっさつしようとした! こんなことされてくやしくないのかみょん! くやしかったら、みょんといっしょにおさになるみょん!」 「みょん!よくききなさい! ちいさいころからいいつづけてきたように、むれにげすがはびこるのはとってもきけんなのよ! れいむはいうまでもなくげす!そしてみょんもげすへとおちたわ! もうあなたしかいない! ぱちぇといっしょにこのむれをただしいほうこうへとみちびくのよ! そうだ!このけんがおわったら、あなたをせいしきにおさへとすいせんしてあげる!」 お互いに自分の側へと引き込むように説得の言葉を投げかける幹部ちぇんと長ぱちゅりー。 幹部ちぇんはしばらく黙っていたが、やがて顔を上げてハッキリとした口調で言った。 「ちぇんは!ちぇんは、みょんといっしょにおさおやるよー! おさもれいむもしんようできないけど、みょんならしんようできるよー! なんだかんだいって、ちっちゃいころからのくされえんなんだねー!」 「そっ、そんな!」 「みょん!さすがちぇんだみょん!」 そうだよ!そうだった。 自分たちはもともと仲だって悪くなかったのだ。 だが、どちらかが長に、という話になってから急激に仲が悪くなっていったのだ。 互いにライバル同士となり、しなくてもよい争いをし続けてきた。 だがそれも終わりだ。 よく考えてみれば、二匹が長になれるのなら嫌う理由は何もないのだ。 そして二匹一緒なら老害ぱちゅりーにも、ゲスれいむにも負けやしない! そうさ!新しい群れは、自分たちが切り開く。 「なんて……おろかなことを……」 放心したように長ぱちゅりーが呟く。 「これでわかったみょん! おさのまけだみょん! おとなしくおさのざをあけわたすみょん! いまじたいすれば、むれのみんなからのいんしょうもわるくないみょん!」 「……そうね」 長ぱちゅりーがポツリと言った。 「みょん?」 その瞬間幹部みょんはおやっと思った。 あの長ぱちゅりーにしてはいやにあっさりすぎる。 いや、それもしかたのないことなのか? なぜなら打つ手などなにもないのだから。 「もうぱちぇにはあなたたちをとめれれないようね。 ……はぁ。 このてだけは。 このてだけはつかいたくなかったけど、しかたがないわ! むれをげすのてにわたすわけにはいかない!」 「なっ、なんなんだみょん!」 長ぱちゅりーは、どこかあきらめたような、達観したような表情だった。 それは何か壮絶に不吉な予感を幹部みょんに感じさせた。 その恐怖は長ぱちゅりー自身からではない、 長ぱちゅりーの背後に漠然と存在している、絶対的な何かから漂っているものだった。 「えいきを!ゆっくりえいきをこのむれのよぶわ!これでぱちぇもあなたたちもおしまいね!」 長ぱちゅりーは静かにそう言ったのであった。 続く ナナシ作
https://w.atwiki.jp/idol7/pages/3291.html
藤瀬じゅりをお気に入りに追加 藤瀬じゅりとは 藤瀬じゅりの88%はカルシウムで出来ています。藤瀬じゅりの6%はツンデレで出来ています。藤瀬じゅりの4%は黒インクで出来ています。藤瀬じゅりの2%は嘘で出来ています。 藤瀬じゅり@ウィキペディア 藤瀬じゅり 藤瀬じゅりの報道 gnewプラグインエラー「藤瀬じゅり」は見つからないか、接続エラーです。 藤瀬じゅりをキャッシュ サイト名 URL 藤瀬じゅりの掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る 藤瀬じゅりのリンク #blogsearch2 ページ先頭へ 藤瀬じゅり このページについて このページは藤瀬じゅりのインターネット上の情報を時系列に網羅したリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新される藤瀬じゅりに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。