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さざん 氏
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はっぴーにゅーにゃあああああああ 別ゲカンストしたら戻る 12/9 狩り豚誕生 1/14 110転生、2次104までソロ頑張った 1/21 job50!刹那ゲーのはじまり 1/28 お出かけと言い残し、失踪 2/ 8 帰還 2/ ? ログ漁ったけどわかんねぇwwwwwwwwww3次110おしり 4/22 マエストロ110、ロボ強化の始まりである 12/3 ロボフルカン30転生 イベントおつおつ ぽにての品で倉庫状態の庭なんとかする、いつかね Joできた、寄生は任せろー メモ帳 超特大リュック 防水布 2革のベルト 10タイタニアレザー 2プラチナの部品 2 頑丈な布 1ロウ 4革 1鉄の部品 1 ドミニオンブーツ 玉鋼 4メタルアーチンのとげ 10戦乙女の涙 2上等な革 4 砂鉄 1 Ha So Ma Ro Gu Gl Gu2 +キャラリスト 名前 種族 職業 Lv 備考 ロボきちん ハイエミル♀ Ma/Ca・As・So/ 110/66 DOGEZA おまーんちん イクスドミ♀ Er/Gl 110/24 ツインテは正義 むちんぽ ハイエミル♀ St/Ro 110/7 ちんぽない ちん農 ハイエミル♀ Ha 98/50 ざんねん 闇ちん ハイエミル♀ So 103/50 闇のコロンかと思えばSSもある 生産用ロボきちん アクタイタ♀ Ma 100/50 養殖から生産 池ん商 ハイエミル♀ Ro 77/33 何に使おう やりちん ハイエミル♀ Gu 101/50 HP増やす魂 ちんぽソード ハイエミル♀ Gl 98/50 けんない むしょきちん ハイエミル♀ Jo 1/1 圧倒的ニート やりちんちん エミル♀ 内藤 81/1 りふしっし しようにん エミル♀ 商人 27/29 しばらく育てない おまんちんちん エミル♀ れんじゃい 27/29 きんすキャラ予定 ちんすちん○ エミル♀ のうけ 39前後 きんすキャラ +たのしいロボ育成の記録 かわいいぺろぺろ -- 名無しさん (2013-03-14 12 47 43) フルカンめでてえwwwwwww -- 名無しさん (2013-04-25 15 29 51) 30フルカンこわいめでたい -- 名無しさん (2013-12-03 09 02 57) ふるかんきてたかめでたい -- 名無しさん (2013-12-03 17 07 37) さいきんみない -- 名無しさん (2014-03-18 22 53 33) test -- 名無しさん (2014-03-19 23 57 35) クラ落ちなおったら戻る、メンテ終了のお知らせまだー -- おまーん (2014-03-20 16 07 32) けっこう移動しててもまだ蔵落ちないからはよ -- 名無しさん (2014-03-20 20 10 48) いきてた! -- かぁ (2015-01-01 14 18 42) かぁちゃんのページ消えてた! -- おまーん (2015-10-13 08 58 46) 名前 コメント
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【ありす】「・・・」 【ありす】「・・・私、佐城ありす。高校一年生」 【ありす】「・・・鈴木裕樹様の性処理肉人形」 【ありす】「・・・今日は何やる? 漫画? ゲーム? それとも・・・性処理?」 【ありす】お人形になりたい、むっつりスケベな145cmのゴスロリ風女の子です。 【GM】では、はじめていきましょうー 【GM】 【GM】学校が終わり放課後。 もう少し立てば連休日 そんな帰り道に 裕樹は あっと思い出したように言う。 【裕樹】「あ、そうだ…ありすさんは今度の3連休どうするの?」そういって思い出したようにありすの予定を聞いてくるのであった。 【ありす】「・・・予定、ないよ?」 【ありす】こくんと首を傾げ、上目遣いに裕樹の顔を見上げる。ごく自然なありきたりな動作なのに、どこか期待しているようにも見える。 【裕樹】「ん-そっか。ならさ…二人でどこかに行かない?うちの親両方とも仕事でいないからさ。たまには…うちやありすさんの家じゃないところに行くのもいいかなーってね」その言葉を聞いて嬉しそうにしながら提案してくる。 【ありす】「・・・なら。いいところ、知ってるよ」 【ありす】ふふ、と無邪気そうな笑みを浮かべる。そこにどこか悪戯めいた笑いを感じる。 【裕樹】「ホント?どこにあるんだろ。ありすさんならいいところ知ってそうだし、どこにあるんだい?」ありすの言葉に嬉しそうにそういって 【ありす】「・・・うちの別荘。ログハウスで三日ぐらいなら滞在できるよ・・・二人っきりで」 【ありす】二人っきりで何をするのか。期待した瞳で裕樹を見つめる。 【ありす】「・・・いいよね?」 【GM】ありすのその顔を見て……ありすとの行為を始めてか、その顔をされれば… 【裕樹】「もちろん、だよ?ありす」その顔はいつも行為をしているときに見せる御主人様としての貌。「いっぱい楽しも?」そういいながらありすを見つめる。 【ありす】「・・・うん。裕樹様」 【ありす】性処理肉奴隷の気分のありすは、恥ずかしそうに頬を染めながら、裕樹にそう返した。 【GM】ではそうして二人は予定を立てて そして一番に楽しいことを考えて……そして時間が経って。旅行の日。 新幹線から移動して、目的の場所まで到着。着替えやらゲームやらを入れた荷物とキャリーケースを引きずってそこへたどり着く。 【裕樹】「んーー…いい天気でよかった。ここからちょっと歩く感じなんだっけ?」そういってありすの方を見て、聞いてみる。 【ありす】「・・・うん。裕樹のスマホに地図入れたから、それで・・・その前に」 【ありす】ちらっと駅前のラブホを見る。前々からしたいと言ってたことを、今日、ここで裕樹にやってもらうのだ。 【裕樹】「うん、そうだね。それじゃ行こうか。ありす」そういってそういってラブホのほうに向かってありすの手を掴んで歩いていく。そのまま、中に入って行き一部屋借りて…そこには多くの道具があるからこそ、そこで向かっていく。 中に入ればベットが一つそして大量のアダルトグッズとかが一式揃っているのであった。「ここで いいかな?」クスっと笑いながらありすを見る。 【ありす】「・・・」 【ありす】こくりと頷くと、裕樹の持ってきたキャリーケースを開ける。人ひとりが入れそうなぐらいな大きさだが、中はほとんど空だ。そう。人がひとり入れそうなぐらい。 【ありす】「・・・お願いします」 【ありす】ありすは目隠しと足枷、手錠、猿轡を裕樹に手渡すと、両手を後ろに回し、神妙に待った。 【裕樹】「いい子。じゃあ…してあげるね」そういってありすのから両手を縛るそして足もしっかりとまげて両足首から縛り上げ。目隠しをしてからありすの口を開かせて、そのまま口に轡をかませ、締め付けていく。そのままの状態でキャリーケースを開く。そして可愛い可愛い愛しい人形を愛するようにありすの頬を首筋を胸を背中をお尻を撫でていく。「壊れないように、ね?」そういってありすの身体を抱き上げていき、キャリーケースの中に収めていく。 【ありす】「・・・ん」 【ありす】両手両足を縛られ、目隠しをされ、猿轡をされ、キャリーケースに入れられる。まるで誘拐のようだ。 【ありす】だがこれでいいのだ。これがいいのだ。人形は動かない。動かないからキャリーケースに入れて運ぶ。当たり前のことだ。 【ありす】これから裕樹に別荘に連れていかれる。そうしたら何をされるのか。期待に胸を膨らませ、秘部を湿らせながら、小さなキャリーケースの中で身悶えていた。 【裕樹】「いい子だよ。ありす」そういいながらパタンっとキャリーケースをしめる。そして…そのままキャリーケースを引きずっていく。キャスター付きなのでそのまま引っ張られていくと…ガタガタと揺れている感覚がありすの身体に響いてくる。その振動は間違いなく…今自分が”その中にいて拉致されている”感覚がやってくるだろう。 【ありす】「・・・ん」 【ありす】拘束され物として扱われて運ばれるのは、誘拐されているようで。 【ありす】相手が裕樹であるのは安心できるとともに、裕樹が自分を誘拐しているということに興奮を覚えてショーツを愛駅で濡らしてしまう。 【GM】そのままガラガラという音と振動をありすの身体に味合わせて しばらく歩いてから……ログハウスへと到着する。そのまま教わったとおりに中に入っていき扉を開く。その音がありすの耳に入ってくる。 そして、そのままがちゃりとケースが開かれる 【裕樹】「ついたよ?ありす。ここで今日から過ごすんだよ。」そういいながらありすの身体を抱き上げて、目隠しを取ってやる。 【ありす】「・・・ん」 【ありす】キャリーケースから解放され、目隠しをとり、裕樹をその視界に収めると、安心したように、嬉しそうに、にこりと笑った。 【裕樹】「どうだった?こんなことされて。」そういいながらありすの股を確認するように…ありすの下着ごと下を丸出しにさせていく。 「どんな気分だったか言ってみてよ」 【ありす】「・・・んー」 【ありす】猿轡をしたまま言えとは意地悪なこと言うと、少し頬を膨らまさせるも、スカートをたくし上げられ、黒いショーツが愛液でぐっしょりになり、太ももを伝っている様子を見られると、恥ずかしそうに顔をそらして頬を紅潮させる。 【裕樹】「あはは、下の口がちゃんと答えてくれてるね」クスクス笑いながら濡れた秘所にそっと指を這わせて撫でていく。 くちゅ くちゅっとわざと水音を立てるようにしながら、ありすの顔を見て。「嬉しそうだね」そういいながらもう片方の手で猿轡を外していく。 【ありす】「・・・ふぁ、ぁ、ん、ん、うん・・・ん」 【ありす】猿轡を外されると唾液が糸を引いて。熱い吐息を裕樹に吹きかけながら、まともに立っていられないのか、裕樹に寄りかかってしまう。 【ありす】「・・・ちょっとだけ、怖かった、けど、気持ち、よかった・・・」 【ありす】愛液が、裕樹の指を濡らしてしまう。 【裕樹】「あはは、そうだったんだ。僕も緊張したよ。でも楽しかったね」そういいながら寄りかかってきたありすを抱きしめて愛液で塗れた手でそっと自分のズボンのチャックを下ろして。勃起した肉棒を丸出しにして「緊張して興奮を抑えるのが大変だった…よっ」そのままじゅぶんっ!と勢いよくありすの秘所の中に肉棒を挿入していく。ごちゅんっと子宮を強く突きあげしっかりと興奮している肉棒を脈打たせて教えていく。…興奮していたことを。 【ありす】「んんんっ!! 裕樹様、ん、ありすを、犯したかったんだ・・・んんっ!」 【ありす】自分の身体で興奮し、自分の身体を犯すことを楽しみにしていたという裕樹に喜びを覚えながら、両手両足の自由が利かないまま、膣内に入れられた肉棒を締め付け、裕樹を楽しませようとする。 【裕樹】「もちろん。僕の愛しい性奴隷人形ありすをたっぷり犯したかったよ。」そういいながらそのままありすの身体を掴んだままそのままピストンしていく。締め付けを感じながら強く突きあげ、膣内を押し広げるように角度を変えて突き上げていく。 【ありす】「・・・ん、嬉しい・・・もっと、犯して、ありすを犯して、裕樹様・・・」 【ありす】学校では友人だったありすと裕樹も、この場ではご主人様と性処理肉人形。裕樹の寵愛を一身に受けたありすは、四肢の自由を奪われたまま、嬉しそうに裕樹に犯され、自ら犯されることを望む。 【裕樹】「もちろんだよ?これから数日間はずっと犯すからね♪」言いながら、服を捲っていき乳首をきゅっと摘まんでやる。乳首を摘まみこねくり回しながら、子宮を強く突きあげていく。 【ありす】「・・・うん、犯して・・・性処理肉人形のありすを犯して、楽しんでください・・・あ、んんっ」 【ありす】ほとんど膨らみのない乳房。しかし、乳首は勃起しており、敏感なそこを摘ままれると嬌声が漏れ出してしまう。 【裕樹】「うん、そうだよ君は僕の所有物だからね」そういいながらどんどんとピストンしていき、大きく膨れ上がった肉棒は我慢できずにびゅるびゅくびゅくううううっと精液を吐き出していく。そのままどんどんと子宮の中を満たしていきながら…ぐちゅ ぐちゅっと押し込むように突き上げる。 【ありす】「んんんんっ!! はぁ・・・はぁ・・・うん、ありすは、裕樹様の、もの」 【ありす】裕樹に膣内出しをされると、呼応するように絶頂を迎える。子宮に放たれる精液を受け入れ、蕩けた瞳で裕樹の顔を見上げる。 【裕樹】「ほら、僕のが入ってきてるのがわかるでしょ?」そういいながらドクンドクンと肉棒を脈打たせながら中に注ぎ続ける。「僕の物っていうマークだからね?ちゃんと忘れないでよ?」いいながらちゅ ちゅっとありすの唇にキスをしていく。舌を入れて絡ませていき…唾液を絡ませていく。 【ありす】「・・・うん、裕樹様の、肉棒が、ありすの中に入ってます・・・ありすの身体は、裕樹様のものと、刻まれてます」 【ありす】四肢が使えない状態で、頭だけを動かして、口づけに自分も舌を絡ませていk。 【裕樹】「んっんちゅ…ぴちゃ…はぁさて…それじゃ…次はどうして遊ぼうか」クスリと笑いながらそっとありすの顔を見てこれから数日間はたっぷりとね? そういいながらありすの頬を撫でて。 【ありす】「・・・ん、好きなように、好きなだけ、ありすを使ってください。裕樹様・・・」 【ありす】二人だけのログハウス、誰にも邪魔されない空間での生活が始まった。 【GM】 【GM】
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秋月りすをお気に入りに追加 秋月りすのリンク #blogsearch2 Amazon.co.jp ウィジェット 秋月りすのキャッシュ 使い方 サイト名 URL 秋月りすの報道 「4/4は4コマの日2021 4人の4コマ作家を語る」 - PR TIMES 「OL進化論」連載30周年で秋月りす描き下ろしイラストプレゼント、第1話も掲載 - ナタリー asahi.com:35歳で独身で(秋月りす) - 漫画偏愛主義 - 文化・芸能 - 朝日新聞 秋月りすとは 秋月りすの64%は運で出来ています。秋月りすの12%は心の壁で出来ています。秋月りすの11%は海水で出来ています。秋月りすの6%は成功の鍵で出来ています。秋月りすの4%は不思議で出来ています。秋月りすの3%はやらしさで出来ています。 秋月りす@ウィキペディア 秋月りす 楽天売れ筋ランキング レディースファッション・靴 メンズファッション・靴 バッグ・小物・ブランド雑貨 インナー・下着・ナイトウエア ジュエリー・腕時計 食品 スイーツ 水・ソフトドリンク ビール・洋酒 日本酒・焼酎 パソコン・周辺機器 家電・AV・カメラ インテリア・寝具・収納 キッチン・日用品雑貨・文具 ダイエット・健康 医薬品・コンタクト・介護 美容・コスメ・香水 スポーツ・アウトドア 花・ガーデン・DIY おもちゃ・ホビー・ゲーム CD・DVD・楽器 車用品・バイク用品 ペット・ペットグッズ キッズ・ベビー・マタニティ 本・雑誌・コミック ゴルフ総合 掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る ページ先頭へ 秋月りす このページについて このページは秋月りすのインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新される秋月りすに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
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そのありすは、いわゆるレイパーと呼ばれる類の存在ではなかった。 ありすにはゆっくりした恋ゆっくりのまりさがいて、 二匹は同じ群れに生まれ、子供のころから互いに想い合った相手であり、 出合ってから一年の歳月を重ねる間に近々愛を結ぶ約束を交わし、多くの子を設けようと誓った幸多きカップルであった。 ――つい、この間までは。との但し書きが着くが。 * * * ぽいん、ぽよん。 ぽゆん、ぽよん。 夜の帳が既に下りた森の中。間抜けな音が、ぽやん、ぽわんと響いている。 その音、気の抜けたバスケットボールが地面に跳ねる音に似ていた。 音の発生源は、一つではない。二つ、寄せ合うようにして跳ねている。 背の高い木々の枝葉から漏れる月明かりの中、その丸いナマモノは必死の形相で前へ、前へと跳ねていた。 「ゆっ、へっ、ゆっ、へっ……も、もうすぐだよ!」 「ゆぅ、はぁ、ゆぅ、はぁ……も、もうすぐね!」 この時、れみりゃがふらんが徘徊する夜の闇を無謀にも疾駆するのは、二匹のゆっくりである。 それぞれまりさと、ありすだった。 「ゆっ、ほっ……はやく、ゆっくり、したいねっ」 「ゆぅ、はぁ……そうね、まりさ、ここはゆっくり、できないものねっ」 言い交わす二匹は、絶えず見えない何かに怯えているようだった。 覚悟の強行軍だ。夜のおそとを出歩くことが、どれほどゆっくりできないことか、二匹は当然よく知っている。 同じゆっくりの夜行性捕食種ばかりではない。 野犬や狐狸といった動物たちから、幻想郷の主たる住人である魑魅魍魎の類まで、夜に活性化するゆっくりの外敵はとても多いのだ。 それをおして、夜間の旅路を採らなければならない理由を、二匹は共有していた。 「でもっ……夜なら、群れのみんなも、追いかけて……これないものねっ……」 「ゆぅ、へっ……そうだね、追いかけて、これないものね……ゆぅ……」 或いは、外敵が多いからこそ夜を選んだというべきか。 二匹の旅路は逃避行だ。同じゆっくりから、捕食種ではないゆっくりから逃げている。 それも、同じ群れに属していたゆっくりから。 だから、夜を選んだ。夜に逃げれば、わざわざ危険を冒してまで自分たちを追いかけてくるようなことはないだろうから。 二匹は何も、群れにおいてゆっくりできない罪を犯したわけではない。 ありすはレイパーではなく、まりさもゲスではなく、むしろとてもゆっくりした、ゆっくりの優等生のようなゆっくりだった。 だが、群れは自分たち――正確にはありす種に生きる価値を認めなかった。 そういう群れになってしまった。 群れがレイパーの被害を受けたということは、確かに幾度かあった。 だが、それは常によそ者の――流れ者のありす種による仕業だった。群れの中からレイパーを出したことは、一度たりともない。 例え、被害を受けたゆっくりやその家族の内心はどうであれ、流れのレイパーの罪の責を群れのありす種に負わせるなんて、 全然ゆっくりできないことだとみんな了解しているはずだった。 ならば、どうして群れは変わってしまったのだろうか。 原因は、はっきりしている。一匹のゆっくりが、 ドスの側近を務めるぱちゅりーが、憑かれたように危険も顧みず人間の里に足しげく通うようになったのはいつのことだっただろう。 最初は、色々なことを教えてもらったと嬉しそうに周りに話していた。 人間の里に行くたびに、いろいろなごほんの内容を教えてもらえて、ぱちゅりーの知識は少しずつ増えていくのだといっていた。 確かに、ぱちゅりーは少しずつ賢くなっていくようだった。 だが同時に、ありすは違和感を感じていた。少しずつ賢くなるぱちゅりーが、少しずつおかしくなっていくように感じられた。 どこがどう、とはいえない。何かが極端に変わったわけでもない。 ただ、少しずつ、ぱちゅりーは『ゆっくりするため』になら、『ゆっくりらしくない』考え方をするようになっていくように思えた。 おかしくなったぱちゅりーが、ドスにまで変なことを吹き込んで、一緒におかしくしてしまったと気付いたのは、 随分後になってからのことだった。 そうして異変に気付いた所で、だからといってなにも手も出せず、気がついたら、歯止めなんて利かなかった。 あっという間に、群れ全体がおかしくなってしまっていた。 「もうすぐ、『ゆーまにあのもり』を、抜けるわっ……」 ゆーまにあのもり。 ありすは眉根を曇らせて、ありすの故郷だったこの森の名前を呼ぶ。 本当は、この森に名前なんかなかった。おかしくなったぱちゅりーが、「もりさんややまさんにもなまえがあったほうがべんりよ」と ある日突然主張しはじめて、この故郷を『ゆーまにあ』と名付けてしまった。 確かに、土地にも名前があったほうが便利ではあった。 例えば、位置関係がはっきりして、狩りや遠出の際にもどこへ行くのかがわかりやすくなった。 新しい場所にどんどん新しい名前をつけていくことが、群れのゆっくりの間で流行った。 新たに見つけた場所の名前を聞くたびに、世界が広がっていくような喜びを群れのゆっくりたちは共有した。 でも、とありすは思うのだ。 世界は広がったようで、実は狭くなったんじゃないかって。 どこそこの森、どこそこの山。名前を付けることで、その場所とそこに存在するものが結びついてしまった。 特にゆっくり同士の付き合いにおいて、群れのゆっくりはひどく他の群れに対して狭量になっていった。 『あの森のゆっくりの群れはどうだ、どこそこの山出身のゆっくりはこうだ』 『それに対してゆーまにあの森のゆっくりは、これだけとってもゆっくりできている』 『だからゆーまにあの森のゆっくりはそれだけえらいんだ』 とても、居心地が悪い雰囲気をありすは感じた。みんな、ゆっくりできていない、と素直に思った。 だから、ありすは群れの仲間たちから少し距離を置いた。自分もそんなゆっくりできないゆっくりにはなりたくなかった。 それは無意識の危険信号だったのかもしれない。だからこそそれだけでは足りないのだと、もっと早くに気がつくべきだった。 みんながみんな、自分と違うもの、否定していいものを探し始めたらどうなるか、気がつくべきだった。 『……ありすたちは、レイパーになるゆっくりだよ』 『れいぷでゆっくりをころすゆっくりだよ』 『おお、こわいこわい』 結局、ありすたちがある日気がついたときには、みんなの『ゆっくりできていない』探しはもうありす種に向けられていた。 そしてみんなから『わるもの』を見る目で自分が見られていることに気づいた時。 ありすはやっとドスとぱちゅりー、そしてその他の群れの長老たちが何をしようとしているのかを悟った。 それは、ありすにだって子供の頃、何度も経験したことがあることだった。 子ゆっくりが何匹か集まれば、必ずといっていいほどいじめていい相手というものを見つけ出す。 ちょっとした違い、ちょっとした鈍さ、それを目ざとく見つけ出して、その劣った部分を責め立てる。 何故って? そんなの簡単だ。楽しいからに決まっている。 みんなと違うことは、悪いことだ。 みんなと同じことができないのは、気持ち悪いことだ。 そう、『わるいやつ』がはっきりしていると、みんなゆっくりできるのだ。 まだ、わからない? それは、気に入らないことを全部『わるいやつ』のせいにして叩いてしまえば、なんとなくすっきりー!した気分になれるからだ。 それに、ドスはみんなをゆっくりさせることができなくても、みんなが『わるいやつ』を叩いている間は自分もゆっくりできるのだし。 みんなで『わるいやつ』に『せいさい』を加えている間は、群れ全体が一つにまとまっていられる。 運悪く、『わるいやつ』にとして指定されたゆっくり以外は。 そしてありす種は、まさにその『わるいやつ』に指定されたゆっくりに他ならない。 ありすはそんなひどいお芝居の役周りに付き合うつもりは、さらさらなかった。 「……ひがしのドス、うけれいてくれるかしら」 だから、ありすは森を逃げ出そうとしている。 恋仲であったまりさに連れられて、日増しに強まるゆーまにあの森でのありす種迫害から逃れるために。 ゆーまにあの群れの縄張りに隣接する、強大な東のドスの縄張りへと。 「ゆぅ……それは、いってみなきゃ、わからないよ」 危険から物理的に遠ざかるにつれて、ありすの中で不安の暗雲がどんどん大きく広がってゆく。 疲労ではなく、心労から徐々に跳ねる速度が落ちてゆくありすに気づいて、まりさが叱咤の声を掛ける。 確かにまりさにしても、逃げ延びれば東のドスに保護してもらえると確信があっての逃避行ではない。 このまま群れに残った場合、何が我が身に起きるかわからないという恐怖に駆られたからこその逃走劇だ。 「ありすが、ゆーまにあの森を出たいなら。ゆっくりしないで、いくしかないよ」 先のことはわからない。 それでも、進む先にしか生き延びる可能性は残されていないように思えた。少なくとも、幸福の可能性は森の外にしかなかった。 そして、ありすだってその可能性をあきらめるつもりなどなかった。 ありすと共に、この先のゆん生を生きていきたかったから。まりさもまた、ありすと共に生きていくと誓ってくれたから。 その誓いを、どんな形であれありすは最後まで貫くつもりだった。 「だめなら、きたのドスのところにいくよ。あそこのドスは、どんなゆっくりもうけいれてくれるってきくよ」 そこまで険しい表情で続けてから、まりさはありすに改めて視線を向けなおして、「ゆっくりまわりみちだね」と笑った。 そうだ、最後まであきらめない。可能性すべてにすがりつくんだ。 大好きな、今までいつも支えてくれたまりさと、これからもずっと一緒に生きていくために。 「……ちょっとしたはねゆーんね」 まりさの笑顔が、ありすの心を勇気付ける。 疲れた身体に、まだまだ走り続ける力を分け与えてくれる。 「もうすぐだよっ。もうすぐもりをぬけて、ぷるとのおがわだよ!」 「ぷるとのおがわをわたったら、もうひがしのドスのなわばりね……!」 東のドスの群れに受け入れられたら。 たとえ、そうでなくたって。 まりさは一緒にいてくれると誓ってくれた。 ありすはそれだけで胸が一杯だった。しあわせー!で身体中がいっぱいだった。 「そこまでよ!」 この裁きの時が来る直前まで、しあわせー!で身体中が一杯だった。 「「ゆゆーっ!?」」 それは、森を抜け、川原に出る本当に直前の事だった。 鋭い叫びが、前から響いた。後ろからではなく、前から。 東のドスの群れが支配するはずの領域の側に、突如多くの気配が沸いた。 ありすは驚き、たたらを踏んだ。 まりさはとっさに危険を察知したのか、跳ねるのを止めるや一歩後ろに下がった。、 「このむれからにげられるとでもおもってるの? ばかなの? しぬの?」 「おお、おろかおろか」 「レイパーで、しかもひがしのドスのスパイなんて……」 「おお、はじしらずはじしらず」 前方から投げられる声は、一つではない。 闇の分厚い緞帳の向こうに、数多の気配が沸いていた。 追っ手ではない、はずだ。ありすは努めて、予想外の事態に冷静であろうとする。 「か、かくれてひとのわるぐちなんてとんだいなかものね! とかいはは、あいてのまえできちんといけんをいうものよ!」 「もちろん、でていってあげるわ」 精一杯の虚勢を込めたありすの呼びかけに、闇の中の声は笑いの気配を乗せて応じた。 前にいるのは追っ手ではない。誰にも気付かれずに群れを抜け出したのは。 捕食種でないことも間違いない。れみりゃにせよ、ふらんにせよ、狩りの対象に襲い掛かる前に会話の猶予を設けるほど悠長ではない。 捕って食うことが目的である以上、唸り声を上げて威嚇することはあっても襲う時はほぼ例外なくいきなりズドン、だ。 だから追っ手と捕食種、両者ではありえないはず。警戒しつつも、だからありすは必要以上に恐れない。 とはいえ、姿の見えない相手の口振りから察するに、こちらに好意を抱いていないことも確かだ。 そもそもこんな冬場、しかも夜更けに活動しているゆっくりがいること自体、不審だった。 確かに冬といっても暖かい日なら、縄張りの境界ぎりぎりまで狩りに出かけてその日の内には帰ってこない仲間が出ることもある。 そんな、遠出して日のある内に帰巣できなかった仲間と、偶然出くわしてしまったのだろうか? だが同じ群れのゆっくりならば尚更、敵ではないとはいいきれなかった。群れは、ドスに忠誠を誓うゆっくりが多数派なのだ。 どう言い逃れるか、無理ならばどう逃げるか、ありすは相手の姿を求めて目線をきょろきょろと泳がせる。 そして。 「いけんするためじゃなくて、あなたをえいえんにゆっくりできなくするためにだけどね!」 「ゆげっ……」 暗闇の中、啖呵を切りながら進み出てきたゆっくりたちの姿に目を限界まで見開いて言葉を失った。 「ど、どぼぢで……?」 目の前で、茫洋と開けた未来の前で、ようやくありすが手にしようとする光明の前で、ありえないことが起きていた。 未来へ続く道筋が、急速に狭まってゆく。 届いたかに思えた光が急速に遠ざかり、闇へと置き換わっていく。 今、目の前の闇の中から現れて、ありすの希望を根こそぎにしようとする『連中』の名前を、ありすはよく知っていた。 その恐怖を、その悪夢を、ありす種である彼女が知らないわけがなかった。 目の前に現れたものは、群れから放たれた追っ手だった。目の前にいるはずのない、群れからの追っ手だった。 そして追っ手として群れから出るものたちのうち、考えうるその中でも最悪の存在でもあった。 どんどん数を増す『連中』の姿に耐え切れず、ありすの恐怖と悲しみに塗りつぶされた叫びが夜の森に響く。 「どぼぢで『ゆっくりたあて』がまえにいるのおおぉぉぉ!!?」 ――『ゆっくりたあて』。 ありす種を迫害するためにぱちゅりーが中心になって作り上げた、ありす狩りのための特別なゆっくりたちだ。 その目的とするのはありす狩りだが、そこに属するゆっくりもまた、その多くがありす種だという。 そこに属するものたちは、ありす種も、そうでないものも、例外なくレイパーありすの子どもだった。 レイパーありすが襲い、孕ませ、朽ち果てさせたゆっくりたちの子どもたちだった。 ぱちゅりーはその生まれながらにして親の亡い赤ちゃんゆっくりたちを『群れに授かった子どもたち』として集め、 彼女たちにドスと群れ全体のためだけに働くことと、『ゆっくりたあて』として教育された仲間以外のありす種を憎むように仕向けた。 そして、ことありす種には見た目からしてレイパーとなるありす種とは違うのだと自覚させるために、生まれながらに身に着けていた ありす種の証であるカチューシャを捨てさせた。 不思議な事に、そうしてカチューシャを捨てたありすたちには、新たに青いリボンがどこからか生まれるのだった。 こうして変異したありす種が、誰ともなく『ろりす』と呼ばれ始めたのがいつのことからかわからない。 そしてその青いリボンをつけたありすこそが『ゆっくりたあて』の象徴になり、彼女たちの団結と忠誠心の証になった。 それは同時に、ありすや群れのあり方に疑問を持つゆっくりたちにとっての恐怖の対象でもあった。 このありす――否、ろりすたちは今、ありすを殺し、ドスと群れの恩に報いるためならば夜の闇すら欠片も恐れない。 自己の身の危険すら問題としない狂信が、鋭利過ぎる刃となって少しでも意見を異にするゆっくりたちに容赦なく突き立てられるのだ。 「ドスのおさめるむれをうらぎるなんて、ぜったいにゆるされないのよ」 今、この瞬間、むき出しにされたその牙にありすが追い詰められているように。 「ゆ、う……どうして? どうしてここがわかったの……?」 じりじりと、ろりすが間合いを詰めてきた分だけありすは背後に後じさる。 今の群れは、裏切り者を絶対に許さない。いなくなったことに気づかれた後で、群れから追っ手が掛かることは予想していた。 だからこそ、一切ゆっくりしないでこの境界線まで一目散に逃げてきたのだ。 ゆっくりは持ち運べる明かりを持たない以上、たとえスィーを使ったって夜に素早く森を移動する手段なんてない。逃げ切れる、はずだったのだ。 それなのに、ろりすたちは先回りして目の前にいる。 ありすとまりさが、家族を捨ててまで選んだ未来への道を遮っている。 どうやって? その疑問に対する答えを、ありすは持たない。 だが、なんのために? ということであれば、自問するまでもなくはっきりしている。 ありすを、この場で殺すため。それ以外の目的なんかあるはずがない。 「うふふふふ……」 死への絶望にその顔をゆがめたありすを嘲笑う声は、後ろから聞こえた。 驚き慌てる間に、後ろにも回りこまれたのだ。ありすは自分の迂闊さを悔やんだ。 振り向く間に、不安にも襲われる。ありすが気付かない間にろりすたちが後ろに回りこんでいたのだとしたら. まりさは、最愛の恋ゆっくりは、無事でいてくれているのだろうか。 「どうして『ゆっくりたあて』がまりさたちのまえにいるのかしらね?」 「ゆ? まりさ?」 まりさは、無事だった。表情は豹変、じっとりと湿度の高い笑顔を顔に貼り付けて、しかしまりさは無事だった。 その口から名前を呼ばれて、ようやくのこと。 ありすは、自分が聞いた笑い声が、後ろに留まるまりさが上げたものだったことに気が付いた。 心の中に湧き上がった不安が、その瞬間急速に変質していく。 ありすにはまりさの笑顔の理由がわからない。 前方に現れたろりすなど一顧だにせず、まりさが満面に湛える嫌な笑みは完全にありすにのみ向けられていた。 ありすはこれまで、まりさからこんな小ばかにするような視線を向けられたことはない。 それどころか、まりさが誰かにこうもあからさまに蔑む眼差しを送るところすら、見たことがなかった。 いったい、これは、目の前にいるこのゆっくりは本当にありすが愛したまりさなのだろうか。 そんな馬鹿げた疑問すら、重大な深刻性を持ってありすの脳裏を過ぎる。それほどの違和感だった。 「それはね、ありす」 まりさが何か言っているが、ありすはその声音を聞いて、しかし内容はよく聞いていない。軽いパニック状態だった。 まりさが本当のまりさかどうかなんて、いったい、別の誰かがすりかわっているとでもいうのか。 ばかばかしい、とありすは意識して自分の頭からそんな妄想を追い払う。 だいたい、目の前にいるまりさのおぼうしは間違いなくありすの愛したまりさのおぼうしだし、 まりさのお声は間違いなくありすの愛したまりさのお声だ。口調は何故か、どこかゆっくりできないものに変わっているけど。 長い間、とかいはな愛を育んだ二匹だ。例え何者かがおぼうしを奪って成り代わっていたところで、その声で真贋の区別は絶対につく。 そうだ。声さえ聞けば。望むと望まざるとに関わらず。 ありすには、その真贋がついてしまうのだ。 「まりさがゆっくりたあてにしらせておいたからよ」 「……ゆ?」 あたりまえだ。ほんものかどうかなんてすぐにわかる。 「ゆぅ? わからない? まりさが、ドスをうらぎろうとしているありすがいるって、れんらくしたの」 すぐに、わかる。たとえわかりたくなくても、わかってしまう。 ながいあいだ、いっしょにあいしあったのだから。 だから。 いま、めのまえで、ありすをうらぎったとほこらしげにつげたのは、まちがいなく、ありすのあいした、あのまりさだ。 「まりさ、おつかれさま。もういいわよ」 「ゆゆっ、ありがとうねろりす。じゃあまりさはつかれてるし、ちょっとおやすみさせてもらうわ」 ろりすとまりさが、親しげに言葉を交わす。互いの労を労っている。 その光景を目の前にして、ありすはまったく凍り付いていた。 何が起きたか、わからないからではない。 わかってしまったからこそ、凍り付いていた。 「まり……さ……? どういう、こと?」 わかっていて、理解したくないから、我知らずそんな問いを口にしていた。 自分でも、ばかばかしい問いだとしか思えない。 まりさがまりさである以上。何が起きたかなんて、この上なくはっきりとしているのに。 「ありす、おどろいてるみたいね。つまり、こういうこと」 まりさが口元に浮かべた笑いは、ろりすたちと同質の冷たさを備えていた。 軽く体を前に傾けたまりさのおぼうしに、ろりすの一匹が口に咥えた何かを飾り付けた。 それは、三日月の形をした小さな帽子飾り。 普通のまりさではない、『ゆっくりたあて』に与するレイパーありすの落とし子たるまりさ種の徴。 まりさが、最初から最後まで、決してありすの味方などではありえなかったことの、 出会った最初の瞬間から、迫る最期の瞬間まで、ありすに対する群れのスパイであったことの、 まりさが最初から最期まで、ありすの敵であったことの、紛れもない絶対の証。 「……だっ。だましたの!? だましたのね、まりさ!」 氷が、解ける。心を鎖していた氷が。跡形もなく、揮発するほどの勢いで。 身を焦がすような、心を焼き滅ぼすような、光をいっさい発することのない真っ黒な炎。 ありすの中に唐突に燃え上がったその炎が、心を閉ざしかけた氷をたちまちの内に消し飛ばす。 「ゆゆ? まりさはむれのためにはたらいただけ。むれをうらぎったのは、ありすよ」 炎の燃料は、怒りと絶望。 だがありったけの激怒をぶつけてなお、それに怯むでもなく薄く、まりさは湿った、陰りのある笑いを動かさなかった。 彼女の反応は、とても薄い。今まで共にしてきた時間を、根本から疑わせるほどに。 ただ、まりさにとって当然のことを、当然のこととして告げるだけだ。 さながら、まるで面識のない赤の他人にものごとの道理を説くように。 「むれをうらぎったゆっくりは、えいえんにゆっくりできないことになるの。あたりまえじゃない」 「ゆあ……ゆあ、ゆがああぁぁぁぁっ!!」 ありすは叫んだ。 言葉にならなかった。考えなんて、まとまるわけがない。 心の中は煮え立つような激情と、凍りつくような絶望でぐちゃぐちゃだった。 今までありすがありすのままでいられた、拠って立つべきものが、跡形もないほど粉々に打ち砕かれてしまっていた。 まるで、宙に放り出されたような感覚。 出会ってからいつも、まりさは一緒だったのに。 いつも、ありすよりさきをすすんで、ありすをひっぱってくれたのは。 いつも、ありすのしらないいろいろなことをおしえてくれたのは。 いつも、ありすをそばでやさしくささえてくれたのは。 これからもいつもいっしょだと、みらいをちかいあったのは。 であってからいつも、ずっとずっとふたりでつみかさねてきたまいにちは。 ――ぜんぶ、うそだったの? 「……じね!」 瞬間、ありすの頭から思考が消失した。 口にしたこともないような単純な罵声が、抱いたこともなかったような純粋な憎悪に乗って喉の奥から迸った。 恐怖が消え、怒りに置き換わり、殺意となってまっすぐにまりさを射抜いた。 その殺意の射線を辿って、ありすが一個の弾丸と化して地を蹴り、飛んだ。 「じね! うらぎりものはじねっ! ゆっぐりじね! じね! じね!」 「うらぎったのはありすだっていってるでしょ?」 そう嘯き、心外そうに眉根を寄せるまりさの顔がひと跳ねごとにぐんぐん迫る。 まりさへの疾走、その最後の跳躍は、ありすのゆん生で最良の跳躍だっただろう。 ありすはまりさの身体を食い破るべく、まっすぐ、綺麗に飛翔した。放物線を描き、金色の髪をなびかせて。 破滅へ向かって、まっしぐらに。 「ドスのもりに、レイパーのきたならしいこえがひびくのはゆるされないわ」 そんな、事務的ですらある淡々とした声が、ありすの極端に狭まった――まりさ以外の全てをオミットした視界の外から聞こえた。 次の瞬間、その狭い視界の下方から、茶色い何かが突き出してきた。 避ける余裕も、その意思もなかった。ありすの頭の中は、まりさを殺すことだけで占められていたから。 そしてありすと茶色い何かは一点で交差し、『とすっ』、と軽い音と衝撃がしたかと思うと、 ありすは喉の奥に焼き付くような――いや、焼き尽くすような激しい痛みを覚えた。 「ゆべっ……!!」 それは、死を予感させるほどの苦痛だった。 ありすは絶叫すら上げられず、飛び出そうなほどに剥いた眼球をぎょろぎょろと動かして、必死に我が身に起きた事態を知ろうとした。 まともに声が出ないのは、何も痛みのせいだけというわけではなかった。 ありすは最初、目の下に伸びる茶色い棒が何かわからず、数回転ほど地面をごろごろ転げまわり、十分すぎる苦しみを味わった末に、 ようやくそれが口の中に突き立つ木の棒なのだと理解した。 もっとも、たとえ理解が及んだ所で苦痛の源に対処するための手段は貫かれたありす本人には存在しない。 のた打ち回れば回るほど、口から突き出した長い棒が激しく地を打ち、その衝撃が中身をえぐり、かき回す。 「えべっ、ゆえぼぶぇべっ! ふびぃぃぃ、うびぃぃぃぃ!!!!」 それでも、ありすは死ぬ事が出来ない。ありすの口のサイズに等しい太さの棒が、カスタードを吐き散らすことすら許さないから。 中身を失わない以上死ぬ事も出来ず、継続的に与えられる苦痛が意識を失うことすら許さない。 「びっ……ぶいぃぃ……ぶぃべぇっ……ば、ばでぃざぁぁぁ! びゅぐっり、びぶぇえ……!!」 塞がれた口から漏れ出る音は、死の世界に落ち込みつつあるものが生あるものに遺す呪詛の言葉だ。 まさに生き地獄という状態で、ありすはぎろりとまりさを睨み据えた。 この世の全てを呪うような眼差しで、この世の全てそのものだったまりさをぎろりと睨みすえた。 睨んだものを道連れにする力が自分にあったなら。 そう願い、力ない自分に絶望し、だがせめて、もはや免れる望みはない死の瞬間まで憎悪と憤怒を叩きつけてやろうと、 命を緩慢に削られてゆく苦悶の中、まりさに向けた視線だけは決して反らさず睨み続けた。 「ドスのもりを、レイパーがきたならしいめつきでみることはゆるされないわ」 「……びゅっ」 その儚い抵抗の術すら、ろりすたちは行使する権利を認めない。 視線が突然、二匹のろりすに遮られたと思うと、視界が同時に暗転した。 「ゆぶびっ!! ゆぶぁゃあばばぁばぁぁぁぁぶぁばぁっ!!?」 ワンテンポ遅れて、新たに焼かれるような苦痛の源が二つ増えた。 両目を深々と鋭く尖れた枝が抉っていることを、もはやめくらのありすには永遠に認知する事はできない。 「ドスのもりを、レイパーがみにくくうごきまわることはゆるされないわ」 「ぶびゅっ……っびゅびぃ!!? ゆべびぃっ、ゆびいいぃぃぃぃ……っ!!!!」 それどころか、ありすはついにのたうつことすら許されなくなった。 激しく横殴りの衝撃を受け、横転したありすの底部にすかさず幾本もの鋭い木の枝が続けざまに突き立てられた。 その全てが、皮を軽く突き破り、中身の奥深くまで達する深手だった。 これでもう、ありすは二度と大地を跳ねたり這い回ったりすることは出来ない。 「ドスのもりを、レイパーのきたないなかみでよごすことはゆるされないわ」 「ゆぐっ……ゆびゅっ、ゆぶぅ……」 ろりすの冷たい宣告が聞こえるたび、ありすの機能は一つずつ奪われていく。 今のありすはおしであり、めくらであり、足萎えだった。 聞くことはできる。ありすがまりさに向ける憎悪より遥かに暗く、強い憎しみの篭ったろりすの声を聞くことはできる。 嗅ぐことはできる。傷口から僅かずつ体内から漏れ出していくカスタードの甘い香りを、自らに迫る死の臭いを嗅ぐことはできる。 感じることはできる。何匹ものろりすたちがありすの金髪を銜えて乱暴に引きずり、どこかに運び去ろうとしているのを感じることはできる。 それ以外はできない。なにも、できない。 そして、例え意味ある言葉をろりすの口から聞くことが出来ても、ありすはもうその言葉の意味を理解するだけの認知力を持たない。 全身を激流のように駆け巡る苦痛の情報は、ついにありすの精神の限界を超えつつあるからだった。 (どぼぢで……) 緩慢に死に逝く、身体よりも。 先に、絶望と苦悶と憂悶に支配された心が掠れて逝く。 ありすの心が薄まり、消え果て、ただ蠢くシュークリームと変じてゆく。 身体より一足早く、虚無へと向かうありすの心に浮かぶのは、たった一つの疑問だった。 (どぼぢで、ありずをみんな、ぎらうの……) 何もしていないのに。 みんなと共にあることを祈っていたのに。 まりさに愛されたいと願っていたのに。 ただただ、ゆっくりを――すっきりではなく。ただひたすらにゆっくりとした日々を――望んでいただけなのに。 「ドスのもりに、レイパーのいばしょはどこにもないわ……っさっさと、きえなさい!」 勝ち誇った叫びを聞くと同時に、どん、という衝撃をありすは感じた。 ふわりとした浮揚感の次に、水面にわが身が落ちる冷たい感触。あの小川に突き落とされたのだ、と理解するまでに少し掛かった。 (このかわの、むこうにいけば――) ゆっくりした生活が、待っているはずだった。 まりさと共に誓い合った、誰からも迫害を受けないしあわせーな生活が。 そのまりさ自身に壊された未来が、舌を延ばせば届きそうなほどの間近にある。 ありすの枝が突き立つ両眼から、餡子の混じった涙が二筋生まれ、すぐさま水流の中に溶け込んだ。 ありすは流されていくだけだ。 今までもそうだったように。死の後にすら、流されていくのだ。 己の意志など、そこに介在はしない。 ゆっくりの織り成す社会の流れが、川上より川下へとただ下るだけの水の流れが、ありすの行き着く先を決定する。 例えどれほど求めるものが近くにあっても、流れがそこへと向かってくれぬ限り、ありすの努力など未来永劫結ばれることはない。 そして、流れはありす種が総じてレイパーとして忌まれ、疎まれ、斥かれる方向へと定まっていた。 川の流れはありすを乗せて、ゆっくり、ゆっくりと、下流へと流れ下っていく。 凍りつくように冷たい川の水は、不幸にしてありすの皮をすぐには溶かすようなこともなく、カスタードの流出を許さず、 思いつく限りのこの世の全てを呪う猶予をありすに与えてなお生命あるままに流してゆく。 (もう……ゆっくり……ざぜで……) その願いすら、ありすを翻弄し続けた『流れ』は容易に許すことなく。 ありすに安息が許されたのは、それから日が昇り、月が没して川魚たちが活発に動き出したあとのこと。 ありすはやはりゆっくりと、川魚たちが気まぐれに身体を食い千切る苦痛の中に悶えて死んでいった。 この冬。 ゆーまにあと自らを呼ぶゆっくりたちに端を発したありす排斥の流れが冬の食糧事情に絡んだ間引きを呼んで、 数千、数万のありすの死体が幻想郷近くまで流れ着き、文々。新聞の記事にちょっとした怪現象として描かれることになるのだが――、 それは一足先に旅立った、ありすにとっては関係のないことだったろう。 エピローグへ
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そのありすは、いわゆるレイパーと呼ばれる類の存在ではなかった。 ありすにはゆっくりした恋ゆっくりのまりさがいて、 二匹は同じ群れに生まれ、子供のころから互いに想い合った相手であり、 出合ってから一年の歳月を重ねる間に近々愛を結ぶ約束を交わし、多くの子を設けようと誓った幸多きカップルであった。 ――つい、この間までは。との但し書きが着くが。 * * * ぽいん、ぽよん。 ぽゆん、ぽよん。 夜の帳が既に下りた森の中。間抜けな音が、ぽやん、ぽわんと響いている。 その音、気の抜けたバスケットボールが地面に跳ねる音に似ていた。 音の発生源は、一つではない。二つ、寄せ合うようにして跳ねている。 背の高い木々の枝葉から漏れる月明かりの中、その丸いナマモノは必死の形相で前へ、前へと跳ねていた。 「ゆっ、へっ、ゆっ、へっ……も、もうすぐだよ!」 「ゆぅ、はぁ、ゆぅ、はぁ……も、もうすぐね!」 この時、れみりゃがふらんが徘徊する夜の闇を無謀にも疾駆するのは、二匹のゆっくりである。 それぞれまりさと、ありすだった。 「ゆっ、ほっ……はやく、ゆっくり、したいねっ」 「ゆぅ、はぁ……そうね、まりさ、ここはゆっくり、できないものねっ」 言い交わす二匹は、絶えず見えない何かに怯えているようだった。 覚悟の強行軍だ。夜のおそとを出歩くことが、どれほどゆっくりできないことか、二匹は当然よく知っている。 同じゆっくりの夜行性捕食種ばかりではない。 野犬や狐狸といった動物たちから、幻想郷の主たる住人である魑魅魍魎の類まで、夜に活性化するゆっくりの外敵はとても多いのだ。 それをおして、夜間の旅路を採らなければならない理由を、二匹は共有していた。 「でもっ……夜なら、群れのみんなも、追いかけて……これないものねっ……」 「ゆぅ、へっ……そうだね、追いかけて、これないものね……ゆぅ……」 或いは、外敵が多いからこそ夜を選んだというべきか。 二匹の旅路は逃避行だ。同じゆっくりから、捕食種ではないゆっくりから逃げている。 それも、同じ群れに属していたゆっくりから。 だから、夜を選んだ。夜に逃げれば、わざわざ危険を冒してまで自分たちを追いかけてくるようなことはないだろうから。 二匹は何も、群れにおいてゆっくりできない罪を犯したわけではない。 ありすはレイパーではなく、まりさもゲスではなく、むしろとてもゆっくりした、ゆっくりの優等生のようなゆっくりだった。 だが、群れは自分たち――正確にはありす種に生きる価値を認めなかった。 そういう群れになってしまった。 群れがレイパーの被害を受けたということは、確かに幾度かあった。 だが、それは常によそ者の――流れ者のありす種による仕業だった。群れの中からレイパーを出したことは、一度たりともない。 例え、被害を受けたゆっくりやその家族の内心はどうであれ、流れのレイパーの罪の責を群れのありす種に負わせるなんて、 全然ゆっくりできないことだとみんな了解しているはずだった。 ならば、どうして群れは変わってしまったのだろうか。 原因は、はっきりしている。一匹のゆっくりが、 ドスの側近を務めるぱちゅりーが、憑かれたように危険も顧みず人間の里に足しげく通うようになったのはいつのことだっただろう。 最初は、色々なことを教えてもらったと嬉しそうに周りに話していた。 人間の里に行くたびに、いろいろなごほんの内容を教えてもらえて、ぱちゅりーの知識は少しずつ増えていくのだといっていた。 確かに、ぱちゅりーは少しずつ賢くなっていくようだった。 だが同時に、ありすは違和感を感じていた。少しずつ賢くなるぱちゅりーが、少しずつおかしくなっていくように感じられた。 どこがどう、とはいえない。何かが極端に変わったわけでもない。 ただ、少しずつ、ぱちゅりーは『ゆっくりするため』になら、『ゆっくりらしくない』考え方をするようになっていくように思えた。 おかしくなったぱちゅりーが、ドスにまで変なことを吹き込んで、一緒におかしくしてしまったと気付いたのは、 随分後になってからのことだった。 そうして異変に気付いた所で、だからといってなにも手も出せず、気がついたら、歯止めなんて利かなかった。 あっという間に、群れ全体がおかしくなってしまっていた。 「もうすぐ、『ゆーまにあのもり』を、抜けるわっ……」 ゆーまにあのもり。 ありすは眉根を曇らせて、ありすの故郷だったこの森の名前を呼ぶ。 本当は、この森に名前なんかなかった。おかしくなったぱちゅりーが、「もりさんややまさんにもなまえがあったほうがべんりよ」と ある日突然主張しはじめて、この故郷を『ゆーまにあ』と名付けてしまった。 確かに、土地にも名前があったほうが便利ではあった。 例えば、位置関係がはっきりして、狩りや遠出の際にもどこへ行くのかがわかりやすくなった。 新しい場所にどんどん新しい名前をつけていくことが、群れのゆっくりの間で流行った。 新たに見つけた場所の名前を聞くたびに、世界が広がっていくような喜びを群れのゆっくりたちは共有した。 でも、とありすは思うのだ。 世界は広がったようで、実は狭くなったんじゃないかって。 どこそこの森、どこそこの山。名前を付けることで、その場所とそこに存在するものが結びついてしまった。 特にゆっくり同士の付き合いにおいて、群れのゆっくりはひどく他の群れに対して狭量になっていった。 『あの森のゆっくりの群れはどうだ、どこそこの山出身のゆっくりはこうだ』 『それに対してゆーまにあの森のゆっくりは、これだけとってもゆっくりできている』 『だからゆーまにあの森のゆっくりはそれだけえらいんだ』 とても、居心地が悪い雰囲気をありすは感じた。みんな、ゆっくりできていない、と素直に思った。 だから、ありすは群れの仲間たちから少し距離を置いた。自分もそんなゆっくりできないゆっくりにはなりたくなかった。 それは無意識の危険信号だったのかもしれない。だからこそそれだけでは足りないのだと、もっと早くに気がつくべきだった。 みんながみんな、自分と違うもの、否定していいものを探し始めたらどうなるか、気がつくべきだった。 『……ありすたちは、レイパーになるゆっくりだよ』 『れいぷでゆっくりをころすゆっくりだよ』 『おお、こわいこわい』 結局、ありすたちがある日気がついたときには、みんなの『ゆっくりできていない』探しはもうありす種に向けられていた。 そしてみんなから『わるもの』を見る目で自分が見られていることに気づいた時。 ありすはやっとドスとぱちゅりー、そしてその他の群れの長老たちが何をしようとしているのかを悟った。 それは、ありすにだって子供の頃、何度も経験したことがあることだった。 子ゆっくりが何匹か集まれば、必ずといっていいほどいじめていい相手というものを見つけ出す。 ちょっとした違い、ちょっとした鈍さ、それを目ざとく見つけ出して、その劣った部分を責め立てる。 何故って? そんなの簡単だ。楽しいからに決まっている。 みんなと違うことは、悪いことだ。 みんなと同じことができないのは、気持ち悪いことだ。 そう、『わるいやつ』がはっきりしていると、みんなゆっくりできるのだ。 まだ、わからない? それは、気に入らないことを全部『わるいやつ』のせいにして叩いてしまえば、なんとなくすっきりー!した気分になれるからだ。 それに、ドスはみんなをゆっくりさせることができなくても、みんなが『わるいやつ』を叩いている間は自分もゆっくりできるのだし。 みんなで『わるいやつ』に『せいさい』を加えている間は、群れ全体が一つにまとまっていられる。 運悪く、『わるいやつ』にとして指定されたゆっくり以外は。 そしてありす種は、まさにその『わるいやつ』に指定されたゆっくりに他ならない。 ありすはそんなひどいお芝居の役周りに付き合うつもりは、さらさらなかった。 「……ひがしのドス、うけれいてくれるかしら」 だから、ありすは森を逃げ出そうとしている。 恋仲であったまりさに連れられて、日増しに強まるゆーまにあの森でのありす種迫害から逃れるために。 ゆーまにあの群れの縄張りに隣接する、強大な東のドスの縄張りへと。 「ゆぅ……それは、いってみなきゃ、わからないよ」 危険から物理的に遠ざかるにつれて、ありすの中で不安の暗雲がどんどん大きく広がってゆく。 疲労ではなく、心労から徐々に跳ねる速度が落ちてゆくありすに気づいて、まりさが叱咤の声を掛ける。 確かにまりさにしても、逃げ延びれば東のドスに保護してもらえると確信があっての逃避行ではない。 このまま群れに残った場合、何が我が身に起きるかわからないという恐怖に駆られたからこその逃走劇だ。 「ありすが、ゆーまにあの森を出たいなら。ゆっくりしないで、いくしかないよ」 先のことはわからない。 それでも、進む先にしか生き延びる可能性は残されていないように思えた。少なくとも、幸福の可能性は森の外にしかなかった。 そして、ありすだってその可能性をあきらめるつもりなどなかった。 ありすと共に、この先のゆん生を生きていきたかったから。まりさもまた、ありすと共に生きていくと誓ってくれたから。 その誓いを、どんな形であれありすは最後まで貫くつもりだった。 「だめなら、きたのドスのところにいくよ。あそこのドスは、どんなゆっくりもうけいれてくれるってきくよ」 そこまで険しい表情で続けてから、まりさはありすに改めて視線を向けなおして、「ゆっくりまわりみちだね」と笑った。 そうだ、最後まであきらめない。可能性すべてにすがりつくんだ。 大好きな、今までいつも支えてくれたまりさと、これからもずっと一緒に生きていくために。 「……ちょっとしたはねゆーんね」 まりさの笑顔が、ありすの心を勇気付ける。 疲れた身体に、まだまだ走り続ける力を分け与えてくれる。 「もうすぐだよっ。もうすぐもりをぬけて、ぷるとのおがわだよ!」 「ぷるとのおがわをわたったら、もうひがしのドスのなわばりね……!」 東のドスの群れに受け入れられたら。 たとえ、そうでなくたって。 まりさは一緒にいてくれると誓ってくれた。 ありすはそれだけで胸が一杯だった。しあわせー!で身体中がいっぱいだった。 「そこまでよ!」 この裁きの時が来る直前まで、しあわせー!で身体中が一杯だった。 「「ゆゆーっ!?」」 それは、森を抜け、川原に出る本当に直前の事だった。 鋭い叫びが、前から響いた。後ろからではなく、前から。 東のドスの群れが支配するはずの領域の側に、突如多くの気配が沸いた。 ありすは驚き、たたらを踏んだ。 まりさはとっさに危険を察知したのか、跳ねるのを止めるや一歩後ろに下がった。、 「このむれからにげられるとでもおもってるの? ばかなの? しぬの?」 「おお、おろかおろか」 「レイパーで、しかもひがしのドスのスパイなんて……」 「おお、はじしらずはじしらず」 前方から投げられる声は、一つではない。 闇の分厚い緞帳の向こうに、数多の気配が沸いていた。 追っ手ではない、はずだ。ありすは努めて、予想外の事態に冷静であろうとする。 「か、かくれてひとのわるぐちなんてとんだいなかものね! とかいはは、あいてのまえできちんといけんをいうものよ!」 「もちろん、でていってあげるわ」 精一杯の虚勢を込めたありすの呼びかけに、闇の中の声は笑いの気配を乗せて応じた。 前にいるのは追っ手ではない。誰にも気付かれずに群れを抜け出したのは。 捕食種でないことも間違いない。れみりゃにせよ、ふらんにせよ、狩りの対象に襲い掛かる前に会話の猶予を設けるほど悠長ではない。 捕って食うことが目的である以上、唸り声を上げて威嚇することはあっても襲う時はほぼ例外なくいきなりズドン、だ。 だから追っ手と捕食種、両者ではありえないはず。警戒しつつも、だからありすは必要以上に恐れない。 とはいえ、姿の見えない相手の口振りから察するに、こちらに好意を抱いていないことも確かだ。 そもそもこんな冬場、しかも夜更けに活動しているゆっくりがいること自体、不審だった。 確かに冬といっても暖かい日なら、縄張りの境界ぎりぎりまで狩りに出かけてその日の内には帰ってこない仲間が出ることもある。 そんな、遠出して日のある内に帰巣できなかった仲間と、偶然出くわしてしまったのだろうか? だが同じ群れのゆっくりならば尚更、敵ではないとはいいきれなかった。群れは、ドスに忠誠を誓うゆっくりが多数派なのだ。 どう言い逃れるか、無理ならばどう逃げるか、ありすは相手の姿を求めて目線をきょろきょろと泳がせる。 そして。 「いけんするためじゃなくて、あなたをえいえんにゆっくりできなくするためにだけどね!」 「ゆげっ……」 暗闇の中、啖呵を切りながら進み出てきたゆっくりたちの姿に目を限界まで見開いて言葉を失った。 「ど、どぼぢで……?」 目の前で、茫洋と開けた未来の前で、ようやくありすが手にしようとする光明の前で、ありえないことが起きていた。 未来へ続く道筋が、急速に狭まってゆく。 届いたかに思えた光が急速に遠ざかり、闇へと置き換わっていく。 今、目の前の闇の中から現れて、ありすの希望を根こそぎにしようとする『連中』の名前を、ありすはよく知っていた。 その恐怖を、その悪夢を、ありす種である彼女が知らないわけがなかった。 目の前に現れたものは、群れから放たれた追っ手だった。目の前にいるはずのない、群れからの追っ手だった。 そして追っ手として群れから出るものたちのうち、考えうるその中でも最悪の存在でもあった。 どんどん数を増す『連中』の姿に耐え切れず、ありすの恐怖と悲しみに塗りつぶされた叫びが夜の森に響く。 「どぼぢで『ゆっくりたあて』がまえにいるのおおぉぉぉ!!?」 ――『ゆっくりたあて』。 ありす種を迫害するためにぱちゅりーが中心になって作り上げた、ありす狩りのための特別なゆっくりたちだ。 その目的とするのはありす狩りだが、そこに属するゆっくりもまた、その多くがありす種だという。 そこに属するものたちは、ありす種も、そうでないものも、例外なくレイパーありすの子どもだった。 レイパーありすが襲い、孕ませ、朽ち果てさせたゆっくりたちの子どもたちだった。 ぱちゅりーはその生まれながらにして親の亡い赤ちゃんゆっくりたちを『群れに授かった子どもたち』として集め、 彼女たちにドスと群れ全体のためだけに働くことと、『ゆっくりたあて』として教育された仲間以外のありす種を憎むように仕向けた。 そして、ことありす種には見た目からしてレイパーとなるありす種とは違うのだと自覚させるために、生まれながらに身に着けていた ありす種の証であるカチューシャを捨てさせた。 不思議な事に、そうしてカチューシャを捨てたありすたちには、新たに青いリボンがどこからか生まれるのだった。 こうして変異したありす種が、誰ともなく『ろりす』と呼ばれ始めたのがいつのことからかわからない。 そしてその青いリボンをつけたありすこそが『ゆっくりたあて』の象徴になり、彼女たちの団結と忠誠心の証になった。 それは同時に、ありすや群れのあり方に疑問を持つゆっくりたちにとっての恐怖の対象でもあった。 このありす――否、ろりすたちは今、ありすを殺し、ドスと群れの恩に報いるためならば夜の闇すら欠片も恐れない。 自己の身の危険すら問題としない狂信が、鋭利過ぎる刃となって少しでも意見を異にするゆっくりたちに容赦なく突き立てられるのだ。 「ドスのおさめるむれをうらぎるなんて、ぜったいにゆるされないのよ」 今、この瞬間、むき出しにされたその牙にありすが追い詰められているように。 「ゆ、う……どうして? どうしてここがわかったの……?」 じりじりと、ろりすが間合いを詰めてきた分だけありすは背後に後じさる。 今の群れは、裏切り者を絶対に許さない。いなくなったことに気づかれた後で、群れから追っ手が掛かることは予想していた。 だからこそ、一切ゆっくりしないでこの境界線まで一目散に逃げてきたのだ。 ゆっくりは持ち運べる明かりを持たない以上、たとえスィーを使ったって夜に素早く森を移動する手段なんてない。逃げ切れる、はずだったのだ。 それなのに、ろりすたちは先回りして目の前にいる。 ありすとまりさが、家族を捨ててまで選んだ未来への道を遮っている。 どうやって? その疑問に対する答えを、ありすは持たない。 だが、なんのために? ということであれば、自問するまでもなくはっきりしている。 ありすを、この場で殺すため。それ以外の目的なんかあるはずがない。 「うふふふふ……」 死への絶望にその顔をゆがめたありすを嘲笑う声は、後ろから聞こえた。 驚き慌てる間に、後ろにも回りこまれたのだ。ありすは自分の迂闊さを悔やんだ。 振り向く間に、不安にも襲われる。ありすが気付かない間にろりすたちが後ろに回りこんでいたのだとしたら. まりさは、最愛の恋ゆっくりは、無事でいてくれているのだろうか。 「どうして『ゆっくりたあて』がまりさたちのまえにいるのかしらね?」 「ゆ? まりさ?」 まりさは、無事だった。表情は豹変、じっとりと湿度の高い笑顔を顔に貼り付けて、しかしまりさは無事だった。 その口から名前を呼ばれて、ようやくのこと。 ありすは、自分が聞いた笑い声が、後ろに留まるまりさが上げたものだったことに気が付いた。 心の中に湧き上がった不安が、その瞬間急速に変質していく。 ありすにはまりさの笑顔の理由がわからない。 前方に現れたろりすなど一顧だにせず、まりさが満面に湛える嫌な笑みは完全にありすにのみ向けられていた。 ありすはこれまで、まりさからこんな小ばかにするような視線を向けられたことはない。 それどころか、まりさが誰かにこうもあからさまに蔑む眼差しを送るところすら、見たことがなかった。 いったい、これは、目の前にいるこのゆっくりは本当にありすが愛したまりさなのだろうか。 そんな馬鹿げた疑問すら、重大な深刻性を持ってありすの脳裏を過ぎる。それほどの違和感だった。 「それはね、ありす」 まりさが何か言っているが、ありすはその声音を聞いて、しかし内容はよく聞いていない。軽いパニック状態だった。 まりさが本当のまりさかどうかなんて、いったい、別の誰かがすりかわっているとでもいうのか。 ばかばかしい、とありすは意識して自分の頭からそんな妄想を追い払う。 だいたい、目の前にいるまりさのおぼうしは間違いなくありすの愛したまりさのおぼうしだし、 まりさのお声は間違いなくありすの愛したまりさのお声だ。口調は何故か、どこかゆっくりできないものに変わっているけど。 長い間、とかいはな愛を育んだ二匹だ。例え何者かがおぼうしを奪って成り代わっていたところで、その声で真贋の区別は絶対につく。 そうだ。声さえ聞けば。望むと望まざるとに関わらず。 ありすには、その真贋がついてしまうのだ。 「まりさがゆっくりたあてにしらせておいたからよ」 「……ゆ?」 あたりまえだ。ほんものかどうかなんてすぐにわかる。 「ゆぅ? わからない? まりさが、ドスをうらぎろうとしているありすがいるって、れんらくしたの」 すぐに、わかる。たとえわかりたくなくても、わかってしまう。 ながいあいだ、いっしょにあいしあったのだから。 だから。 いま、めのまえで、ありすをうらぎったとほこらしげにつげたのは、まちがいなく、ありすのあいした、あのまりさだ。 「まりさ、おつかれさま。もういいわよ」 「ゆゆっ、ありがとうねろりす。じゃあまりさはつかれてるし、ちょっとおやすみさせてもらうわ」 ろりすとまりさが、親しげに言葉を交わす。互いの労を労っている。 その光景を目の前にして、ありすはまったく凍り付いていた。 何が起きたか、わからないからではない。 わかってしまったからこそ、凍り付いていた。 「まり……さ……? どういう、こと?」 わかっていて、理解したくないから、我知らずそんな問いを口にしていた。 自分でも、ばかばかしい問いだとしか思えない。 まりさがまりさである以上。何が起きたかなんて、この上なくはっきりとしているのに。 「ありす、おどろいてるみたいね。つまり、こういうこと」 まりさが口元に浮かべた笑いは、ろりすたちと同質の冷たさを備えていた。 軽く体を前に傾けたまりさのおぼうしに、ろりすの一匹が口に咥えた何かを飾り付けた。 それは、三日月の形をした小さな帽子飾り。 普通のまりさではない、『ゆっくりたあて』に与するレイパーありすの落とし子たるまりさ種の徴。 まりさが、最初から最後まで、決してありすの味方などではありえなかったことの、 出会った最初の瞬間から、迫る最期の瞬間まで、ありすに対する群れのスパイであったことの、 まりさが最初から最期まで、ありすの敵であったことの、紛れもない絶対の証。 「……だっ。だましたの!? だましたのね、まりさ!」 氷が、解ける。心を鎖していた氷が。跡形もなく、揮発するほどの勢いで。 身を焦がすような、心を焼き滅ぼすような、光をいっさい発することのない真っ黒な炎。 ありすの中に唐突に燃え上がったその炎が、心を閉ざしかけた氷をたちまちの内に消し飛ばす。 「ゆゆ? まりさはむれのためにはたらいただけ。むれをうらぎったのは、ありすよ」 炎の燃料は、怒りと絶望。 だがありったけの激怒をぶつけてなお、それに怯むでもなく薄く、まりさは湿った、陰りのある笑いを動かさなかった。 彼女の反応は、とても薄い。今まで共にしてきた時間を、根本から疑わせるほどに。 ただ、まりさにとって当然のことを、当然のこととして告げるだけだ。 さながら、まるで面識のない赤の他人にものごとの道理を説くように。 「むれをうらぎったゆっくりは、えいえんにゆっくりできないことになるの。あたりまえじゃない」 「ゆあ……ゆあ、ゆがああぁぁぁぁっ!!」 ありすは叫んだ。 言葉にならなかった。考えなんて、まとまるわけがない。 心の中は煮え立つような激情と、凍りつくような絶望でぐちゃぐちゃだった。 今までありすがありすのままでいられた、拠って立つべきものが、跡形もないほど粉々に打ち砕かれてしまっていた。 まるで、宙に放り出されたような感覚。 出会ってからいつも、まりさは一緒だったのに。 いつも、ありすよりさきをすすんで、ありすをひっぱってくれたのは。 いつも、ありすのしらないいろいろなことをおしえてくれたのは。 いつも、ありすをそばでやさしくささえてくれたのは。 これからもいつもいっしょだと、みらいをちかいあったのは。 であってからいつも、ずっとずっとふたりでつみかさねてきたまいにちは。 ――ぜんぶ、うそだったの? 「……じね!」 瞬間、ありすの頭から思考が消失した。 口にしたこともないような単純な罵声が、抱いたこともなかったような純粋な憎悪に乗って喉の奥から迸った。 恐怖が消え、怒りに置き換わり、殺意となってまっすぐにまりさを射抜いた。 その殺意の射線を辿って、ありすが一個の弾丸と化して地を蹴り、飛んだ。 「じね! うらぎりものはじねっ! ゆっぐりじね! じね! じね!」 「うらぎったのはありすだっていってるでしょ?」 そう嘯き、心外そうに眉根を寄せるまりさの顔がひと跳ねごとにぐんぐん迫る。 まりさへの疾走、その最後の跳躍は、ありすのゆん生で最良の跳躍だっただろう。 ありすはまりさの身体を食い破るべく、まっすぐ、綺麗に飛翔した。放物線を描き、金色の髪をなびかせて。 破滅へ向かって、まっしぐらに。 「ドスのもりに、レイパーのきたならしいこえがひびくのはゆるされないわ」 そんな、事務的ですらある淡々とした声が、ありすの極端に狭まった――まりさ以外の全てをオミットした視界の外から聞こえた。 次の瞬間、その狭い視界の下方から、茶色い何かが突き出してきた。 避ける余裕も、その意思もなかった。ありすの頭の中は、まりさを殺すことだけで占められていたから。 そしてありすと茶色い何かは一点で交差し、『とすっ』、と軽い音と衝撃がしたかと思うと、 ありすは喉の奥に焼き付くような――いや、焼き尽くすような激しい痛みを覚えた。 「ゆべっ……!!」 それは、死を予感させるほどの苦痛だった。 ありすは絶叫すら上げられず、飛び出そうなほどに剥いた眼球をぎょろぎょろと動かして、必死に我が身に起きた事態を知ろうとした。 まともに声が出ないのは、何も痛みのせいだけというわけではなかった。 ありすは最初、目の下に伸びる茶色い棒が何かわからず、数回転ほど地面をごろごろ転げまわり、十分すぎる苦しみを味わった末に、 ようやくそれが口の中に突き立つ木の棒なのだと理解した。 もっとも、たとえ理解が及んだ所で苦痛の源に対処するための手段は貫かれたありす本人には存在しない。 のた打ち回れば回るほど、口から突き出した長い棒が激しく地を打ち、その衝撃が中身をえぐり、かき回す。 「えべっ、ゆえぼぶぇべっ! ふびぃぃぃ、うびぃぃぃぃ!!!!」 それでも、ありすは死ぬ事が出来ない。ありすの口のサイズに等しい太さの棒が、カスタードを吐き散らすことすら許さないから。 中身を失わない以上死ぬ事も出来ず、継続的に与えられる苦痛が意識を失うことすら許さない。 「びっ……ぶいぃぃ……ぶぃべぇっ……ば、ばでぃざぁぁぁ! びゅぐっり、びぶぇえ……!!」 塞がれた口から漏れ出る音は、死の世界に落ち込みつつあるものが生あるものに遺す呪詛の言葉だ。 まさに生き地獄という状態で、ありすはぎろりとまりさを睨み据えた。 この世の全てを呪うような眼差しで、この世の全てそのものだったまりさをぎろりと睨みすえた。 睨んだものを道連れにする力が自分にあったなら。 そう願い、力ない自分に絶望し、だがせめて、もはや免れる望みはない死の瞬間まで憎悪と憤怒を叩きつけてやろうと、 命を緩慢に削られてゆく苦悶の中、まりさに向けた視線だけは決して反らさず睨み続けた。 「ドスのもりを、レイパーがきたならしいめつきでみることはゆるされないわ」 「……びゅっ」 その儚い抵抗の術すら、ろりすたちは行使する権利を認めない。 視線が突然、二匹のろりすに遮られたと思うと、視界が同時に暗転した。 「ゆぶびっ!! ゆぶぁゃあばばぁばぁぁぁぁぶぁばぁっ!!?」 ワンテンポ遅れて、新たに焼かれるような苦痛の源が二つ増えた。 両目を深々と鋭く尖れた枝が抉っていることを、もはやめくらのありすには永遠に認知する事はできない。 「ドスのもりを、レイパーがみにくくうごきまわることはゆるされないわ」 「ぶびゅっ……っびゅびぃ!!? ゆべびぃっ、ゆびいいぃぃぃぃ……っ!!!!」 それどころか、ありすはついにのたうつことすら許されなくなった。 激しく横殴りの衝撃を受け、横転したありすの底部にすかさず幾本もの鋭い木の枝が続けざまに突き立てられた。 その全てが、皮を軽く突き破り、中身の奥深くまで達する深手だった。 これでもう、ありすは二度と大地を跳ねたり這い回ったりすることは出来ない。 「ドスのもりを、レイパーのきたないなかみでよごすことはゆるされないわ」 「ゆぐっ……ゆびゅっ、ゆぶぅ……」 ろりすの冷たい宣告が聞こえるたび、ありすの機能は一つずつ奪われていく。 今のありすはおしであり、めくらであり、足萎えだった。 聞くことはできる。ありすがまりさに向ける憎悪より遥かに暗く、強い憎しみの篭ったろりすの声を聞くことはできる。 嗅ぐことはできる。傷口から僅かずつ体内から漏れ出していくカスタードの甘い香りを、自らに迫る死の臭いを嗅ぐことはできる。 感じることはできる。何匹ものろりすたちがありすの金髪を銜えて乱暴に引きずり、どこかに運び去ろうとしているのを感じることはできる。 それ以外はできない。なにも、できない。 そして、例え意味ある言葉をろりすの口から聞くことが出来ても、ありすはもうその言葉の意味を理解するだけの認知力を持たない。 全身を激流のように駆け巡る苦痛の情報は、ついにありすの精神の限界を超えつつあるからだった。 (どぼぢで……) 緩慢に死に逝く、身体よりも。 先に、絶望と苦悶と憂悶に支配された心が掠れて逝く。 ありすの心が薄まり、消え果て、ただ蠢くシュークリームと変じてゆく。 身体より一足早く、虚無へと向かうありすの心に浮かぶのは、たった一つの疑問だった。 (どぼぢで、ありずをみんな、ぎらうの……) 何もしていないのに。 みんなと共にあることを祈っていたのに。 まりさに愛されたいと願っていたのに。 ただただ、ゆっくりを――すっきりではなく。ただひたすらにゆっくりとした日々を――望んでいただけなのに。 「ドスのもりに、レイパーのいばしょはどこにもないわ……っさっさと、きえなさい!」 勝ち誇った叫びを聞くと同時に、どん、という衝撃をありすは感じた。 ふわりとした浮揚感の次に、水面にわが身が落ちる冷たい感触。あの小川に突き落とされたのだ、と理解するまでに少し掛かった。 (このかわの、むこうにいけば――) ゆっくりした生活が、待っているはずだった。 まりさと共に誓い合った、誰からも迫害を受けないしあわせーな生活が。 そのまりさ自身に壊された未来が、舌を延ばせば届きそうなほどの間近にある。 ありすの枝が突き立つ両眼から、餡子の混じった涙が二筋生まれ、すぐさま水流の中に溶け込んだ。 ありすは流されていくだけだ。 今までもそうだったように。死の後にすら、流されていくのだ。 己の意志など、そこに介在はしない。 ゆっくりの織り成す社会の流れが、川上より川下へとただ下るだけの水の流れが、ありすの行き着く先を決定する。 例えどれほど求めるものが近くにあっても、流れがそこへと向かってくれぬ限り、ありすの努力など未来永劫結ばれることはない。 そして、流れはありす種が総じてレイパーとして忌まれ、疎まれ、斥かれる方向へと定まっていた。 川の流れはありすを乗せて、ゆっくり、ゆっくりと、下流へと流れ下っていく。 凍りつくように冷たい川の水は、不幸にしてありすの皮をすぐには溶かすようなこともなく、カスタードの流出を許さず、 思いつく限りのこの世の全てを呪う猶予をありすに与えてなお生命あるままに流してゆく。 (もう……ゆっくり……ざぜで……) その願いすら、ありすを翻弄し続けた『流れ』は容易に許すことなく。 ありすに安息が許されたのは、それから日が昇り、月が没して川魚たちが活発に動き出したあとのこと。 ありすはやはりゆっくりと、川魚たちが気まぐれに身体を食い千切る苦痛の中に悶えて死んでいった。 この冬。 ゆーまにあと自らを呼ぶゆっくりたちに端を発したありす排斥の流れが冬の食糧事情に絡んだ間引きを呼んで、 数千、数万のありすの死体が幻想郷近くまで流れ着き、文々。新聞の記事にちょっとした怪現象として描かれることになるのだが――、 それは一足先に旅立った、ありすにとっては関係のないことだったろう。 エピローグへ
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※駄文、稚拙な表現注意。 ※俺設定注意 ※『ふたば系ゆっくりいじめ 440 れいむとまりさとありすとぱちゅりーがゆっくりするSSさん』をリスペクトして作りました。 ※「ふたば系ゆっくりいじめ 440 れいむとまりさとありすとぱちゅりーがゆっくりするSSさん」を先に読むことをお勧めします。 ※短いうえ、メタ視点注意 ※読みづらい文章注意 ※「あるゆっくりできない2匹の一生」のドMてんこが餡庫の「れいむとまりさとありすとぱちゅりーがゆっくりするSSさん」を読んでSSを考えました。 あんまりしつこくてんこが頼むので長月はそれを清書し、パソコンに打ち込み、餡庫にUPしました。 つーか、てんこ、お前は次の作品、ゲスト出演するんだからさっさと戻って来い!! てんこがゆっくりするSSさん 作、長月(てんこ?) 注意事項 てんこが悪い子、または虐待したいとおもったら、コメントで「とくになし」のぼたんさんを押してね。 てんこを虐待できるよ。 『てんこは悪いこです。ちょう悪い子です。 虐待されてもしょうがないぐらい悪い子です。 今日もあきかんさんをポイ捨てしました。あとお年寄りさんに席をゆずりませんでした。 お風呂さんにはいりませんでした。ごはんさんを食べるとき「いただきます」をしませんでした。 てんこは救いようもなく悪い子でした。(注てんこは悪い子)』 さあどくしゃさん。てんこをいじめてね。こめんとさんで「とくになし」をおしてね。 さあはやく。 えっ、どーしてむしするのおおおおお!!! まだわるいことがたりないのおおおおお!!! よーしそれなら。 『てんこは悪いこです。ちょう悪い子です。 ゲスまりさやでいぶ、のーぶるゆっくりが悪いことをするのも全部てんこのせいです。 不況さんも政治家さんの汚職さんも全部てんこがやらせたことです。大悪党です。 てんこは救いようもなく大悪党でした。(注てんこは大悪党)』 さあ、なぐってね。けってね。しばってね。 こめんとさんで「とくになし」をおしてね。 ・・・どーしてまた、むしするのおおおおお!!! てんこもうまちきれないのよおおおおお!!!! 『てんこは悪いこです。ちょう悪い子です。(注てんこは悪い子) 今日はゆうかをいじめました。「このメス豚ゆうかめ!!」とかいっていじめました。(注てんこは悪い子) あとめーりんもいじめました。さくやとさなえもいじめました。(注てんこは悪い子) てんこは悪い子でしかもいじめっこです。(注てんこは悪い子)』 もうじゅうぶんでしょぉおおおお!! ほんとはてんこだっていじめたくないんだよぉおおおお!!! いじめられるほうがいいのよぉおおおおお!!! はやくモヒカンあたまでハーレーにのって、ひやっはーって、てんこをさらってねぇええええ!!! えっまだたりないのぉおお!? じらしすぎよぉおおおお、おにいさん!!! 『てんこは(注てんこは悪い子)悪い(注てんこは悪い子)こです。ちょう(注てんこは悪い子)悪い子です。(注てんこは悪い子) きょうは(注てんこは悪い子)おにいさん(注てんこは悪い子)にぷくーっ(注てんこは悪い子)をしました。(注てんこは悪い子) おうち(注てんこは悪い子)せんげん(注てんこは悪い子)も(注てんこは悪い子)しました。(注てんこは悪い子) て(注てんこは悪い子)ん(注てんこは悪い子)こ(注てんこは悪い子)は(注てんこは悪い子)悪(注てんこは悪い子)い(注てんこは悪い子)子(注てんこは悪い子)で(注てんこは悪い子)す。』 さあ、さぶみりなるこうかさんまでつかったのよぉおおおお!!! はやくてんこをいじめてねぇえええ!!もうてんこ、まむまむがぬれぬれなのよぉぉおお!!(ジョロジョロー) たとえるなら「いんらんだんちづまじょうたいっ!!」なのよぉおおおおお!!! さあ・・・・ 長月よりお詫び SSの途中ですがてんこの行動があまりにきもくなってきたので強制終了させていただきます。 お見苦しいSSを見せてしまったことを深くお詫びいたします。 あとがき 何、書いてるんでしょう俺は。あるドスまりさの一生の続き書いてたはずなのに。 『れいむとまりさとありすとぱちゅりーがゆっくりするSSさん』の作者さん、本当にすいません。 今まで書いた作品 ふたば系ゆっくりいじめ 176 ゆっくりちるのの生態(前編) ふたば系ゆっくりいじめ 185 選ばれしゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 196 新種ゆっくり誕生秘話 選ばれしゆっくり番外編 ふたば系ゆっくりいじめ 208 ゆっくり見ていってね ふたば系ゆっくりいじめ 218 またにてゐ う詐欺師てゐの日々 ふたば系ゆっくりいじめ 227 VS最強のゆっくり 史上最低の戦い ふたば系ゆっくりいじめ 247 夢と現実のはざまで ふたば系ゆっくりいじめ 264 あるまりさの一生 ふたば系ゆっくりいじめ 298 ゆっくりを拾ってきた ふたば系ゆっくりいじめ 336 ゆっくり Change the World(出題編) ふたば系ゆっくりいじめ 357 ゆっくり Change the World(出題編2) ふたば系ゆっくりいじめ 391 ゆっくり Change the World(解答編) ふたば系ゆっくりいじめ 400 あるゆっくりできない2匹の一生 あるドスまりさの一生 とてもゆっくりした群れ(前編)
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【検索用 ねこたまり 登録タグ VOCALOID ね アルセチカ 初音ミク 大江カルシー 曲 曲な】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:大江カルシー 作曲:大江カルシー 編曲:大江カルシー 絵:アルセチカ 唄:初音ミク 曲紹介 春といえば猫ですね。裏切って前を向く話。 『忘れないように』 曲名:『猫溜まり』(ねこだまり) アルセチカ氏によるテーマ・投稿日統一企画、#eneeemy参加作品。 動画に出てくる男の子は日高 史(ひだか ふみ)。出席番号18番。プロフィールはこちら。関連楽曲「春びらき」 歌詞 (動画説明欄より転載) 校舎裏の猫溜まりの其の小さな路地の隅で 君は一人うずくまり何か独り言ちている 悲しい話ばかりちらついて動けない僕を どこか重ね合わせて見てる それは愛と憐憫とを履き違えているのだと 笑う友は期待に向かって歩き出していて 文に書いた文字が雨で滲んでしまう様な 何か忘れている春 だけど世界は、流る毎日は 立ち止まる僕らを置き去ってく 探していた 君というイデア 破れないディプロマ さよならだって謳って 思い出なんていつか消えるから 心に針[ピン]を刺したまたひとつ 忘れないように 春催い 今、傘を閉じて 雨音だけが二匹を包む 特に理由なんて無いけれど 覚えてたい気がして 校舎裏の猫溜まりの其の小さな路地の隅は 壊れかけのオルゴールの様に一つ空いたまま 悲しい話がまたちらついてうずくまる僕を 誰かがそこで見ている だけど巷間は、つまらない今日は 与えもしないのに奪っていく 滲んでいく視界じゃ何もわからない a lie ただ、頬を濡らして伝った雨 何処を覗いたって君が居る 風に舞う灰を花と見紛う そんな春から 過ぎ行く日々と君の間 要らない行間ばかりを読んで 散らかって仕舞った心の裏 聞こえないように 時が経って誰かを愛して 雪解ける日が来て そしていつか珈琲片手に思い返すから さよならだって謳って 思い出なんていつか消えるから 心に針[ピン]を刺したまたひとつ 忘れないように 春催い 今、傘を差して 雨音だけが一匹を悼む 痛くなるように 忘れぬように 歩き出すから 風に舞う灰を花と見紛う そんな春から コメント 名前 コメント
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空き缶の記憶 18KB いじめ 愛情 不運 日常模様 お家宣言 家族崩壊 駆除 姉妹 子ゆ ゲス 都会 現代 独自設定 過去回想テイスト 「空き缶の記憶」 羽付きあき ・理不尽物テイスト ・ゲスゆっくり登場注意 ・幾つかの独自設定を混ぜておりますご注意を ずーりずーりと「空き缶まりさ」は袋を引いていた。 中には空き缶が詰まっている。 空は晴れているが、時折冷たい風が吹いており、秋を感じさせる季節となっていた。 「ゆ・・・?」 目の前には金バッジを付けたありすが、底部に「A」と書いた巾着袋の靴を履いて跳ねている。 どこか面影を感じて立ち止まってしまっていた。 「・・・」 「・・・ゆ!ゆ!」 空き缶まりさを見た途端に、金バッジのありすは、急いでその場を離れてしまった。 どこか面影を感じるのは、何だったのだろう。 空き缶まりさは、金バッジのありすの後姿を見て、過去を思い出していた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「ゆ!かえじで!あでぃずのどがいばなばっじざんをがえじでえええええ!あぎっ!」 「さっさとでていくんだぜ!・・・ゆっへっへ!これでまりさもきんばっじさんなんだぜ!」 ・・・ 「ゆゆ!くそじじい!まりさはきんばっじなんだぜ!さっさとあまあまをぶぇえええっ!」 「おでがいじばずっ!ゆるじでぐだざいいいいい!までぃざはただがいゆっぐりになりだがっ・・・がごうじょいやあああああ!あ”あ”-----っ!!あ”あ”あ”あ”あ”--------!!ばなじでえええ!!」 ・・・・・・ ・・・ 「おねーざん!あでぃずよ!きんばっじざんをどられぢゃっだの!ゆばっ!ゆ”!ゆ”!おでがい!じんじで!おねーざん!おねーざ・・・」 ありすのかちゅーしゃに輝く金色の栄光は、ある日突然無くなった。 常に周りにあったのは、多くのあまあま、快適な「おうち」、そして金バッジの栄光・・・尊敬のまなざし 今、ありすにあるものは、ようやくしのげるボロボロのダンボールに擦り切れかけたボロ雑巾、そしてボロボロになったカチューシャと踏みにじられ、蹴飛ばされる見下された視線。ただそれだけである。 ただ、その中でも光明はあった。唯一の希望それは、子ゆっくりである。 「みゃみゃ!ありしゅ!のーびのーびできりゅようになっちゃわ!」 「まりしゃはおうちゃがうちゃえりゅんぢゃよ!ゆ~ゆゆ~!」 モチモチの小麦粉の肌とは言い難い生傷だらけの擦り切れた薄汚い風貌 飾りも所々が解れていたり、不自然に変形していたりしている。 茶色のシミや汚れすらも不自然と思わなくなったその姿は、最早金バッジゆっくりではなかった。 (ありすのおちびちゃんたち・・・こんなきたないいなかものなおうちでごめんね・・・いつもごはんさんがすくなくてごめんね・・・でもありすがぜったいにおちびちゃんたちをまもるからね・・・) あまりにも無力なありす達。夏が過ぎ去って秋も間近に迫り、時折冷たい風が吹くのをふるえながら夜を過ごし、薄汚く餌場を漁る。 それもこれも子ゆっくり達の為だ。子ゆっくり達の・・・ 雨が降りそうな曇り空を見上げてありすは思う。金バッジに戻りたい、と ・・・・・・ ・・・ 「ゆふっ!ゆふっ!」 ありすは餌場を漁っていた。 ゴミ箱の周りに零れ落ちる様にしてはみ出している空の弁当を見つけては、僅かな残飯をあさっていた。 底部をプリンプリンと動かし、頭だけを突っ込んで、探す。 悪臭も、汚れも全て気にならない。そんな金バッジゆっくりのプライドはとうに捨て去った。 まりさ種と違い、帽子の中に収容できる訳ではない。 「・・・きょうもこれだけしかあつまらなかったわ・・・」 口に残飯を詰めて、その場を跳ねようとした瞬間、目の前に何か黒いものが迫ってくるのが見えた。 突如衝撃と共に壁に吹き飛ぶありす。 口からは残飯が飛び散っている。 「ゆぎぇっ!ゆひっ・・・!ゆひっ・・・!いだいぃぃ・・・!いだいわぁぁ・・・!」 カスタードクリームが口をあけると砂糖細工の歯と共にビチャビチャと地面に落ちた。 どうやらゴミ箱を漁っている街ゆっくりだと思われたのだろう。 ありすの目の前に人間がゆ叩き棒を持って近づいてくる。 通常なら「ぷくー」をする所だが、それをしなかったのはありすが賢かったからだろうか。 残った残飯を拾い集め、底部に隠すと、蹲る様にして下を向く。 男がゆ叩き棒をふるった。 ドコッ、ドコッと後部を叩かれるたびにありすの声が漏れた。 「ゆぎっ!あぎっ!」 その場を動かないありすに人間がありすの砂糖細工の髪を引っ掴んで持ち上げた。 「ばなじでぇぇ・・・!ばなじでっ・・・おでがいぃぃっ・・・!」 弱弱しく体をくーねくーねとさせるが全く意味は無く、男が腕をふるうと、壁に向けて顔面から突っ込んだ。 「ゆぎっ!・・・ぶげぇええ・・・!」 一撃で砂糖細工の歯がパキパキと言う音を立てて折れた。 カスタードクリームが壁に広がって飛び散る。 がっくりと項垂れて小麦粉の皮が下に力なく垂れ、ぶーらぶーらと揺れている。 「おでが・・・ぃ・・・ゆるじ・・・で・・・ぐ・・・ざ・・・ぃ」 弱弱しく口をモゴモゴと動かすありす。それが聞こえたかどうかは定かではない。 男がもう一度ありすを壁に叩きつけた。 今度は力なくぶーらぶーらと垂れたまま、ボコボコに膨れた下膨れの顔の切れ目から砂糖水の涙と涎が垂れ落ちた。 ブリブリとうんうんがあにゃるからひり出される。 「おで・・・が・・・じば・・・あでぃ・・・ず・・・ゆ・・・じ・・・で・・・ゆひゅー・・・!ゆひゅー・・・!」 しーしーとうんうんを垂れ流しながら哀願するありす。 男は無言でありすを地面に投げ捨てると、吐き捨てるように言葉を紡ぎ、消えていった。 「もう二度と近づくなよ」 うんうんとしーしーまみれで突っ伏しているありすが、ナメクジの様にずーりずーりと這い始める。 屈辱とふがいなさに涙を流して 「ゆぐっ・・・!ふぐっ・・・!ゆ”ぇ”ぇ”え”え”っ・・・!どぼじで・・・どぼじでぇぇ・・・!なんでぇぇ・・・!」 その涙を知るものは誰もいない。 ・・・・・・ ・・・ 「ゆぐっ・・・!ぐぅぅっ・・・!」 「みゃみゃ!ゆっきゅりよくなっちぇね!ぺーろぺーろ!」 「おきゃあしゃんしゅっぎょくいちゃそうぢゃよ!」ゆっくち!ゆっくちしちぇいっちぇね!」 ボロボロの「おうち」の中で、傷ついた小麦粉の体を必死にぺーろぺーろする子ゆっくり達。 あまり意味のある物でないが、今のありすにはその暖かさだけげ救いであった。 「ゆ”・・・!ゆ”・・・!まま・・・は・・・ごれぐらいべいぎっ・・・よ・・・!ゆぐぅぅっ・・・!ぞれ・・・より・・・!ごばんざんがどれなぐで・・・ごべん・・・ね・・・」 「ありしゅはいまおなきゃいっぴゃいだきゃらへいきぢゃわ!」 「まりしゃも!まりしゃもぢゃよ!だきゃらおきゃあしゃん・・・!ゆっきゅりしちぇいっちぇね!」 普段から満足な食糧も無いのに、必死に嘘をついてありすを慰めようとする子ゆっくり達。 砂糖水の涙を流して悲しむ子ゆっくり達に弱い所は見せまいと、必死に涙をこらえて語りかける。 「ごばんざん・・・は・・・まだどりにいげるわ・・・!ゆひゅー・・・!ゆひゅー・・・!ゆぐっ・・・!あでぃずはだいじょうぶだがら・・・!かなじい・・・がおをじないで・・・どがいばじゃない・・・わ・・・!」 「みゃみゃぁぁ・・・!ゆえーん!ゆびぇえええん!」 「ゆぐっ!ひぐっ!おきゃあしゃーん!おきゃあしゃああん!」 ボロボロのありすに泣きながらすーりすーりを繰り返す子ゆっくり達。 (ごめんね・・・いっぱいおいしいとかいはなごはんをたべさせられてあげなくてごめんね・・・) 無力感と悲しみに打ち震えるありすを、曇り空がつつみこんでいた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「ゆゆーん!おきゃあしゃん!まりしゃおべんとうしゃんをみちゅけちゃよ!」 子まりさが重そうに中身がたっぷりと入った弁当を引きずって持ってきた。 子ありすとありすは感嘆の声を上げる。 「ゆゆ!すごいわ!とってもとかいはね!」 「おねえしゃんしゅぎょいわ!」 ありすや子ありすはそれほど「狩り」がうまくは無かった。 勝手の違う街ゆっくりとしての生活が合わないのは当然であるが、ありす一体で食料を集められた事がそもそも奇跡に等しかったのだ。 回復し切らない小麦粉の体を引きずりながら、狩りに出ようとするありすに、子ゆっくり達が手伝うと申し出た。 最初はあまり集められなかったが、子まりさの成長は凄まじく、今やありす一家は、子まりさ無しには生きて行けぬほどのものとなっていたのだ。 「きょうのかりはここまでにするわ!みんなでおうちにかえってとかいはなごはんさんをたべましょうね!」 「「ゆっきゅりわかっちゃよ!」」 弁当を頭に載せて移動するありす一家。 少なくとも、平穏はそこまでは続いているはずだった。 ・・・・・・ ・・・ その日、弁当を見つけた子まりさが見たのは、「おうち」の目の前にいる大きなまりさ種とその子ありすであった。 「ゆゆ!まぁこぎたないけどしかたがないんだぜ!ここをまりさとおちびちゃんのゆっくりぷれいすにするんだぜ!」 「は、はなれなさいこのいなかもの!ありすおこるわよ!」 ありすが大きく膨れて威嚇をしている。 膨れてようやく同じ大きさと言うぐらいの巨体を誇ったその「だぜまりさ」とカチューシャの無い「ゲス子ありす」がそれを見てせせら笑ったのを覚えている。 「げらげら!なんなんだぜそれは!」 「いなきゃもにょにぇ!げらげら!」 だぜまりさが膨れて威嚇するありすに、帽子の中から取りだした木の枝を舌で持つと、寒天の右目に突き刺した。 「あ”ぎゃあ”あ”あ”っ!!あでぃずのおべべがああああ!ゆっぎいいいいいい!!」 その瞬間寒天の目を見開き、ごーろごーろと転がりのた打ち回るありすの姿を子まりさは見た。 だぜまりさの巨体が宙を舞うと、ありすの上にドシンと圧し掛かった。 「あ”ぎぇ”え”え”っ!」 なすび型に変形したありすの口からドバッとカスタードクリームが吐き出される。 「みゃみゃあああああ!!」 「おきゃあしゃああああああああん!」 子まりさと子ありすは叫んだ。 その声は届かないようだ。 ありすは取れて舌に垂れさがった寒天の右目をぶーらぶーらと揺らしながら、残った寒天の左目が白目をむいて、痙攣を繰り返している。 「ゆ”っ!ゆ”っ・・・!ゆ”っ・・・!ゆ”っ・・・!」 子まりさは恐怖で何もできずに固まっていた。 だが、確かにその光景は鮮明に覚えている。 「きょにょ!みゃみゃをいじめりゅいなきゃもにょはゆっきゅりしになしゃい!」 子ありすが「ゲス子ありす」に体当たりを仕掛けた。 ゲス子ありすはぶつかると「ゆげっ」と声を上げてゴロゴロと転がる。 「おぢびぢゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!?」 凄まじい声を上げてだぜまりさがゲス子ありすに近づく。 「おぢびぢゃん!?だいじょうぶかぜ!ぺーろぺーろ!」 「ゆえええええん!いちゃいわあああああ!」 「・・・ごのぐぞあでぃずがああああああああ!!ぶっごろじでやるんだぜえええええええええ!!」 怒りに顔を歪めただぜまりさが、口で子ありすの砂糖細工の髪を噛むと、振り回して壁に投げた。 「いぢゃいわあああああびゅっ!ゆぐっ!」 壁に激突しカスタードクリームをはいて悶絶する子ありすを、舌で持ち上げると、地面に何度も叩きつけ始めた。 「あぎっ!ゆぎゅええええっ!いだいっ!いだいわぁぁ・・・!あぎょおぉぉおおお!!」 「ゆっぐりじにやがれごのぐぞあでぃずがああああああああ!」 怒りに身を任せて何度も地面に叩きつけるだぜまりさ。 そのたびに砂糖細工の歯が飛び、カスタードクリームがビチャリと地面に落ちて子ありすがボロボロになっていく。 地面に下ろされた時には、うんうんとしーしーを垂れ流し、ぐったりと突っ伏したまま小刻みに動く事しか叶わなくなっている。 「がみのげぜんぶぶぢぬいでやるんだぜええええええ!」 だぜまりさが口を使って子ありすの砂糖細工の髪の毛をブチブチと引き抜いて行く。 「ゆぎっ・・・ぎぃぃ・・・!」 僅かに身をよじらせて抵抗するだけで、子ありすは為すがままに砂糖細工の髪が引き抜かれて行った。 僅かな産毛を残して禿げ饅頭となってしまった子ありすに、だぜまりさが木の枝をゲス子ありすに渡して叫んだ。 「おぢびぢゃん!ばりざはごのぐぞあでぃずをおざえでいるがらごのぐぞあでぃずのおめめをえぐりだずんだぜっ!」 「やべ・・・ぢぇぇ・・・ゆるじ・・・ぢぇ・・・おねぎゃ・・・い・・・じば・・・ず・・・ゆるじ・・・ゆ・・・る・・・じ・・・」 ブツブツと何かを呟く子ありすであったが、ゲス子ありすが木の枝を口にくわえて進んでくるごとに体をぐーねぐーねとさせ始める。 木の枝と子ありすが交錯する刹那、子まりさは目をつぶっていた。 グチャッ!グジッ!ブチッ!プチプツブチッ!と音が聞こえる。 「ゆ・・・る・・・じ・・・お・・・で・・・が・・・あ”あ”ぁ”ぁ”ぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!!いだいいだいいだいいだいいだいいだいいいいいいいいいいい!!おべべっ!おべべがいぢゃいわあああああああああ!!」 カスタードクリームと共に寒天の両目がボトリと落ちる。 体をくーねくーねとさせて子ありすが苦しみもがいた。 「くりゃいわぁああああ・・・!!みゃみゃ・・・!みゃみゃぁぁ・・・!たしゅけちぇぇぇ!!きょわいわぁぁ・・・!くりゃいわぁぁ・・・!いちゃいわぁぁぁぁっ・・・!」 辺りを右往左往し始める子ありすを見た途端に、子まりさは意識を失った。 ・・・・・・・・・ ・・・・・・ ・・・ 子まりさが目覚めたとき、そこには、大きなハゲが出来たありすと、最早何種かもわからない子ありすの姿があった。 「おぢびぢゃんっ・・・!おぢびぢゃぁぁんっ・・・!」 「きょわいわぁぁ・・・!いぢゃいわぁぁ・・・!」 必死にぺーろぺーろとすーりすーりを繰り返し、カタカタと震える子ありすを宥めるありす。 外はいよいよ、冷たい風が吹きすさび、「おうち」を無くしたありす一家はこれから「おうち」を探して流転しなければならない。 それは即ち、ゆっくりできなくなると言う事を示している。 必然的に元々狩りが不得手だったありすは、子ありすと常に一緒にいないといけないと言う制約のため、殆ど役に立たなくなっていた。 たった一体で子まりさは狩りをしなければならない。 さらにありすはあのまりさ達から逃げる途中で、ガラスの破片を底部で踏みつけてしまったのだ。 最早ありすの底部は跳ねる事も叶わず、ずーりずーりと動かすのもやっとの状態にまで陥っていた。 疲弊を重ねる子まりさは・・・だんだんとありす達が鬱陶しく感じる様になっていった。 どれだけ食料を取ってきても、僅かな量しか自分にまわってこない。 何度も危険な目に会っても、あのありす達は安全だ。 感謝の念も口だけに感じる様に思える。 子まりさの不満が爆発するのもそう遠くは無かったのが必然なのかもしれない。 「・・・きょうはごはんしゃんがしゅきゅにゃいわ」 「ゆぅ・・・ほんとうね・・・」 いつもより食料が少なかった。その事に、悪気も無く出したほんの一言に子まりさは怒りを覚えた。 「もういやぢゃよ!」 子まりさが大きく膨れて威嚇する。 ありす達がビクリと震えた。 「おぢびぢゃん・・・」 「いいかげんにしちぇね!まりしゃがどれぢゃけちゃいへんなめにあっちぇるかもしりゃないぢぇわがままいうなんちぇまりしゃもうおこっちゃよっ!!」 「おちびちゃん・・・ごめんね・・・そんなつもりはなかったの・・・」 「ごめんなしゃい・・・おねーしゃん・・・」 「もうまりしゃはじぶんのぶんしかちょりゃにゃいよ!あとはかってにおきゃあしゃんちゃちがちょっちぇね!」 砂糖水の涙を流し、ありすと子ありすの所から跳ねて離れる子まりさ。 遠くへ、とても遠くへ跳ねた事を子まりさは覚えている。今思えば結構近い距離だが・・・ それが今までいれた大きな要因であったと思っている。 なんであんなことを言ってしまったのだろう・・・怒りに身を任せたとはいえ、自分はありすや子ありすをひどく傷つけてしまった。 後悔の念を抱きながら下を俯いていると、遠くからゆっくり達の悲鳴が聞こえた。 「・・・ゆゆ!?」 子まりさは驚いて近くの茂みに隠れた。 今までの経験が、行ってはいけないと判断したのだ。 子まりさは「狩り」の先で、加工所につれていかれる街ゆっくり達を何度も目にした。 その手がここにも回ってきたのだろう。 「・・・おきゃあしゃん!いもうちょが・・・!」 危険だとはわかっていた。 今すぐ助けに行けば何とかなったかもしれない。だが子まりさはそれをしなかった。いや、できなかったのだ。 茂みの向こうでは、多くのゆっくり達が跳ねて逃げ回っていた。 その中に、あのありす達がいたのを子まりさは見た。 「ゆふっ・・・!ゆふっ・・・!おちびちゃん!しっかりままのかみにつかまってるのよ・・・!」 「ゆっきゅりわかっちゃよ・・・!ゆぅぅ・・・!」 動かぬ底部を必死にずーりずーりと動かし、砂糖細工の髪にしがみついた子ありすと共に逃げていく。 必死に、必死に・・・ 「おきゃあしゃん!こっちぢゃよ!」 子まりさは大声を上げた。 何とか安全な方向へ誘導しようと考えたのだ。 多くのゆっくりが逃げている言う事は、その先に加工所がいるとみて間違いは無い。 「おちびちゃん!」 「おねーしゃん!」 ありす達がずーりずーりとこちらへ向かってくる。 「はやきゅ!はやきゅしちぇね!ゆ!?」 何か大きな音がありす達に近づいてくるのを感じる。 これはまさか・・・ 「おぎゃあじゃあああああん!!にげぢぇええええええ!!」 子まりさが叫んだ。 「おちびちゃ・・・」 ありす達が口を開いて途端に、「ゆっくり加工所」と書かれたトラックがありす達を弾き飛ばしたのだ。 こちらに向けて、ボトリとありすが落ちる。 「ゆ”・・・ぎ・・・!」 「おぎゃあじゃああああん!?」 子ありすは衝撃でどこかへ弾け飛んでしまったのだろう。助かる確率は限りなく低い。 「おぎゃあじゃん!おぎゃあじゃぁぁん!」 「ゆ"・・・!ゆ"・・・!おぢび・・・ぢゃ・・・」 下膨れの顔の右半分が吹き飛んでしまっている。 カスタードクリームがドロドロと流れ出ていた。 助からないと悟っていたのだろうか・・・当時を振り返ればそう思う。 「おぎゃあじゃん!ゆっぎゅりよぐなっぢぇええええ!ぺーろぺーろ!」 「ゆ”ぐっ・・・!おぢ・・・び・・・ぢゃ・・・ご・・・べ・・・ん・・・ね・・・」 ありすの残った寒天の目から涙が流れている。 子まりさは必死に叫んだ。そしてぺーろぺーろをした。 カスタードクリームの甘い味が口いっぱいに広がっている事もお構いなしに。 「おぢびぢゃ・・・ばが・・・り・・・むりざぜ・・・で・・・ご・・・べ・・・ね・・・」 「いいんぢゃよ!おきゃあしゃん!まりしゃはぜんぜんおこっちぇにゃいよ!だきゃら!だきゃらああああ!」 「おぢび・・・ぢゃ・・・どが・・・い・・・ば・・・」 それだけ言い残すとありすは動かなくなった。あっけなく。あまりにもあっけなく。 「ゆ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」 慟哭が辺りに響いた。 だが、突如として何かが自分の上に覆いかぶさってくる。 それは息絶えたはずのありすだった。 カスタードクリームの中に身をうずめていたおかげで、子まりさは逃げ伸びる事が出来たのだ。 全てが終わった後、子まりさはありすの前に立ち尽くしていた。 何時間も動かずに。 ・・・・・・ ・・・ 夕方近くなった頃、後ろから声が聞こえた。 「いつまでそこにいるきなんだぜ?」 虚ろな目で振り返ると、そこにはバスケットボール程のまりさがいた。 銅バッジと、そのほかに白い羽を差している。それが一番印象に残っていた。 「ほっちょいちぇね」 「ほっとくわけにはいかないんだぜ。そこのありすだったゆっくりをかたづけないとまりさはしごとがおわらないんだぜ」 「・・・」 「おおかたじじょうはさっしがつくんだぜ。でもいつまでそこにいるきかぜ?」 「もうまりしゃにはきゃえれりゅちょころがなくなっちゃんぢゃよ・・・ここぢぇおきゃあしゃんちょいっしょにいりゅよ・・・」 「じゃあ、そこのありすをかたづけるならおまえもいっしょにかたづけなきゃならないわけだぜ」 ・・・子まりさは体がふわりと浮くのを感じた。 舌で無理やり羽根のついたまりさに持ち上げられたのだ。 「はなしちぇ!おきゃあしゃん!おきゃあしゃぁぁん!」 「しごとのじゃまだぜ。いっしょにいきたいといったのはおまえだぜ」 その言葉の意味を深く考えた瞬間、水飴の汗がだらだらと流れ出た。 きっとありすと一緒にどこかへ放り捨てられてしまうのだ。動かぬ饅頭となって 全てが怖くなった、その瞬間に、子まりさは意識を失った。 夕暮れが赤く染まっていたのを覚えている。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「ゆ・・・!ゆ・・・!」 まりさは、今、空き缶を拾い集めては袋にいれて運んでいる。 あの後、目が覚めるとそこに羽根のついたまりさの姿は無かった。 代わりに、飾りに銅のバッジを付けたゆっくり達がいたのだ。 どうやらまりさは地域ゆっくりに預けられた様だった。 後で事情を聴くと「はねつき」と言われていた羽根のついたまりさがそこまで運んでこの子まりさを頼むと言い残して置いて帰ったのだと言う。 それから、まりさは地域ゆっくりの見習いとして生きていくこととなった。 幸い、もともと「狩り」が得意で、何かを見つけて集めると言う事に才能があった子まりさは、空き缶を拾い集めると言う仕事を任された。 今は空き缶を拾っては人間に届けると言う仕事を地域ゆっくりとしてこなしている。 長い月日が流れ、まりさがバスケットボールほどの大きさになっても「はねつき」と会う事は無かった。 恐らく、これからも無いのだろうとまりさは思う。 「ゆゆーん!みゃみゃ!ありしゅかえっちゃらちょこれーとしゃんがちゃべちゃいよ!」 「まりしゃはぱしたしゃんがちゃべちゃいよ!」 空き缶の入った袋を引いていると目の前にはありすとその子ゆっくりであろう子まりさと子ありすが進んでいる。 「ゆふふ!おちびちゃんたち!あわてちゃだめよ!おにーさんはここでまっててねっていってたわ!」 「どうしちぇかしりゃ?」 「ばっじしゃんをもっちぇいっちゃけぢょ・・・」 「ばっじさんをあたらしくこうかんしてくれるのよ!ゆっくりみんなでまちましょうね!」 「「ゆっきゅりわかっちゃよ!」」 それを見たまりさは、一瞬立ち止まった。 「・・・」 「ゆゆ・・・あのまりしゃありしゅちゃちのこちょをみちぇりゅわ・・・」 「きょわいよぉぉ・・・」 「ゆゆ・・・!しんぱいいらないわ!"おちびちゃんたちはありすがまもるわ"!!」 気分を害してしまったのか、それを察知してまりさはすぐに袋を引いてその場を離れた。 何故かあのありす達を見て、何か懐かしさの様な物が込み上げたのだ。 「おかあさん・・・」 まりさは一言ぽつりと呟いた。 そして下を俯くと、再び無言で袋を引き始める。 周りからは「空き缶」とあだ名されたまりさは、今日も袋を引く。 冷たさを感じさせる秋の風が、入道雲の隙間から吹いている様に感じた。
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