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餡コンペ10春作品 ※ひらがなが多いので、読みづらいかもしれません。 ※ネタ的に失格覚悟です。 ■証言ゆ1 ゆっくりまりさ あのれいむのことは、よくしっているんだぜ。むかしはよくいっしょにあそんでいたんだぜ。 ゆ……でいぶ? ああ、そういうふうによぶゆっくりもいるけど、れいむはしょせんれいむなのぜ。 れいむもまりさも、おちびちゃんのときはふつうのゆっくりだったんだぜ? "げす"や"でいぶ"として、うまれおちるわけじゃないのぜ。 ゆぅ……すくなくともおちびちゃんのときは、あのれいむは"でいぶ"じゃあなかったぜ。 いっしょにぴょんぴょんしたり、すーりすーりしたり、たまにはれいむのおうちで、 ごはんさんをむーしゃむーしゃしたこともあるくらいなのぜ? ゆふふ。 おうたもうまかったし、れいむはとてもゆっくりした"びゆっくり"だったのぜ。 まりさも、あのれいむとたくさんゆっくりしたけれど、れいむといちばんゆっくりしていたのは、 やっぱりちぇんだったのぜ。 そうだぜ、れいむのつがいのちぇんだぜ。 ちぇんは……くやしいけど、むかしからまりさよりあんよがはやかったのぜ。 おとなになったときは、きっとむれでいちばんあんよがはやかったのぜ。 ……いまは、まりさがいちばんだけど。 まりさもれいむと『ずっとゆっくり』したかったけど、"かり"のうでも、ちぇんがまりさより うまかったのぜ。 だから、れいむがちぇんと『ずっとゆっくり』するのをきめたときも、あいてがちぇんだったから なっとくっ! したのぜ。 あんなことがなかったら、きっとれいむとちぇんは、ゆっくりした"ゆんせい"をおくることができたのぜ。 あれは……えっとうがおわってすぐのことだったのぜ。 れいむとちぇんは、ゆっくりはるさんがきたから、おちびちゃんをつくったのぜ。 ただ、おちびちゃんたちのかずがおおすぎたのぜ。 ……れいむのあたまには、くきさんがさんぼんもはえていたのぜ。 おちびちゃんは、えーっと、いち、にい、さん……たくさんはえていたのぜ。 ――そうだぜ! "おさ"のぱちゅりーはたしか、"じゅうに"といっていたのぜ。 まりさのおめめでみても、おちびちゃんはおおすぎたのぜ。 かりのへたなつがいでも、おちびちゃんはひとりかふたりそだてられるのぜ。 かりのじょうずなちぇんなら、きっと"たくさん"そだてられたのぜ。 でも、れいむがうんだおちびちゃんは、"たくさん"よりももっともっとおおい"たくさん"だったのぜ。 れいむもちぇんも、ゆっくりしないでがんばったのぜ。 ちぇんは、おぼうしがいっぱいになるくらい、むしさんや、やわらかいくささんをとってこれたのぜ。 だから、れいむも"かり"にいければ、ひょっとしたらおちびちゃんたちをみんな、 そだてることができたんだぜ。 ただ、おちびちゃんがおおいってことは、それだけれいむの"こそだて"がたいへんだってことなんだぜ。 おちびちゃんがおおきくなったら、かってにうごきまわるんだぜ。 そのうえ、たべるごはんさんもふえるのぜ。 れいむはみんなにすーりすーりしたり、おうたをうたってあげたりでへとへとになって、 とても"かり"にはいけなかったのぜ。 れいむが"かり"にいけなくなったから、ちぇんは……。 ちぇんは……だんだんつかれて、"かり"をするのにじかんがかかって。 とうとう、おひさまさんがいなくなるまえにおうちにかえることができなくて。 れみりゃに……。 あとのことは、あんまりおもいだしたくないんだぜ。 "おさ"のぱちゅりーにいわれて、むれのゆっくりがすこしずつごはんさんをわけてあげたのぜ。 ゆぅ……たりるわけがないのぜ。 れいむは、きっとおなかがすいていーらいーらしたから、あんな"でいぶ"になってしまったのぜ。 おちびちゃんたちが、ほかのゆっくりのおちびちゃんをいじめたりしても、ちゅういしなくなったのぜ。 ほかのゆっくりがあつめたごはんを、とってたべるようになってしまったのぜ。 ことばも、ゆっくりできないことばをたくさんしゃべるようになったのぜ。 そのうえ……。 さあ、にんげんさん、まりさのはなしはおしまいなのぜ。 そろそろまりさのおうちから、ゆっくりでていくんだぜ。 まりさは、つがいのありすと、おちびちゃんといっしょにゆっくりするから。 ……。 もっとはなしがききたいのなら、むこうのありすにきくといいんだぜ。 れいむとちぇんのおうちの、おとなりさんだったのぜ。きっと、つきあいがふかかったのぜ。 にんげんさん……おやさいさん、ありがとうなのぜ。 ■証言ゆ2 ゆっくりありす あら、にんげんさん。ありすはありすよ、ゆっくりしていってね。 すてきなおやさいさんね。よかったら、"とかいは"なありすがもらってあげてもいいわ。 か……かんちがいしないでよね、どうしてもほしいって、そんなわけじゃ……どうしても もらってほしいってうのなら、"とかいは"なありすがもらってあげるわ。 おはなし? ありすのおはなしがききたいの? あら! あの"いなかもの"のでいぶのこと!? だったらありすのとかいはなはなしを、 たくさんきいてほしいわ! ありすは……ありすはだまされたのよ。 ふゆさんがくるまえ、ちぇんとれいむがちかくに"おひっこし"してきたときは、ほんとうに ゆっくりした、とかいはなふうふだとおもったわ。 ちぇんはあんよがはやかったし、れいむも――ありすほどじゃないけど――"とかいは"に おうちをこーでぃねいとしていたもの。 "えっとう"まえに、ありすはすこしごはんさんがたりなかったの。 それをれいむにそうだんしたら、ちぇんとれいむはすこしごはんさんをもってきてくれたのよ。 とっても"とかいは"だとおもったから、ありすがつくった"とかいは"なかごさんや、かざりさんを おれいにあげたわ。 とてもゆっくりしたゆっくりだから、はるさんがきたらもっと"とかいは"になかよくしましょう。 そうおもって"えっとう"したの。 そしてはるさんがきたら……れいむのあたまには、とてもゆっくりしてないかずのおちびちゃんが! ありすはもう、おどろいておどろいて。 ゆん! "いなかもの"が、さいしょからすきなだけ"すっきりー"をして、"とかいは"なありすに "こそだて"をてつだわせるつもりだったにきまってるわ! もちろん、"とかいは"なありすは、それにだまされたりはしなかったわよ。 それに、れいむをみすてたりもしなかったわ。 ごはんさんがあまったときには、ちゃんと"おすそわけ"をしたもの。 『すそ』ってなにかしら? きっとゆっくりしたものね。 ……ありすにはわかっていたわ。どれだけ"とかいは"でゆっくりできるおちびちゃんたちでも、 いち、にい、さん……"たくさん"よりももっと"たくさん"のおちびちゃんは、そだてられないって。 "おさ"のぱちゅりーも、うまれてからゆっくりさせてあげられないなら、くきさんにいるうちに "まびき"をしなさいっていっていたんだからっ! それでも、ちぇんは"とかいは"にがんばっていたわ。ゆっくりしないで"かり"にいっていたわ。 もんだいだったのは"れいむ"のほうよ。 おちびちゃんたちを"まびき"するのもいやがったのに。"さとご"にだすのもいやだといったのに。 "こそだて"がいそがしいといって、かり"にもいかなくなったの。 それどころか、"かり"からかえったちぇんにむかって、ゆっくりできないことばをいって。 おうちのなかにずっといて、たまにでてくるときは、ありすのごはんをわけてもらいにくるときだけ。 あれじゃあ、おちびちゃんたちも"とかいは"なゆっくりになれないわ。 『ゆっくりしていってね』すらいえない、とんだ"いなかもの"のおちびちゃんばっかりだったもの。 ……でも、すえっこのちぇんだけは、ちゃんとあいさつをしていたわね。 あのすえっこのちぇん、いっつもおなかをすかせて、ないていたわ。 ほかのおちびちゃんはみんな、れいむによくにたれいむだったの。 ちぇんはいつもつかれていて、すこしもゆっくりしていなかったわ。 あるとき、ちぇんが"かり"でもってかえってきたごはんさんがすくなかったのね。 おひさまさんが、もうすぐさよならするときだったのに、れいむはちぇんを"かり"にいかせたの。 むのうだとか、このくそどれいだとか、ひどいことばをあびせて。 それでちぇんはれみりゃに……。 ちぇんも、ことわればよかったのに……"いなかもの"よ。 それからのれいむは、もっとひどくなったわ。おちびちゃんたちも。 あうたびに、ごはんさんをねだる。 ひどいことばをあびせるし。 おちびちゃんたちのしつけもぜんぜんできていなくって、ありすの"とかいは"なたからものも、 かってにもっていかれたわ。 ……? できるわけないでしょう? おちびちゃんたちはいち、にい、さん……ええと、たしか"じゅうに"も居たのよ? もしかしたら、ひとりかふたりはえいえんにゆっくりしちゃったかもしれないけれど。 とてもありすひとりでは、ゆっくりみはりはできないわ。 ええ、ありすはあの"いなかもの"のでいぶにがまんできなくなって、"おひっこし"してきたの。 ありすのごはんさんをかってにぬすむ。 ありすのおうちにかってにはいってきて、おうちせんげんをしようとしたり。 そう、でいぶのおちびちゃんがありすのおうちにかってにはいってきて、ありすのつくった "とかいは"なこーでぃねーとのしたじきになって、えいえんにゆっくりしちゃったの。 でいぶはもう、ひどい"いなかもの"だったから、それをありすのせいにして、ありすを えいえんにゆっくりさせようとしてきたのよ。 これはあぶないとおもったから、ありすはでいぶからにげてきたの。 どうせ、ありすがいなくなったら、ごはんさんがたりなくなって、でいぶも、そのおちびちゃんも、 すぐえいえんにゆっくりしちゃうとおもったけれど、"いなかもの"の"げす"なでいぶなんて、 もうどうでもよくなっちゃったから。 そのあとの"じけん"は、くちにするのもけがらわしいわ。 ありすも、"おさ"のぱちゅりーからきいただけだもの。よくしらないことだし。 ……いやよ。 じぶんがよくしらないことを、ひとにきかせるのは"とかいは"じゃないの。 どうしてもききたいのなら……そうね。 このゆっくりぷれいすのでぐちに、ながれもののみょんがいるわ。 あのみょんにはなしをきいたらどうかしら? あのでいぶをつかまえたから、このゆっくりぷれいすにはいることができるようになったの。 それじゃあ、"とかいは"なありすはおうちのこーでぃねーとをつづけるわ。 にんげんさん、"とかいは"なおやさい……ありがとう。 ■証言ゆ3 ゆっくりみょん みょん? あのでいぶのことですかい、ちーんぽ。 みょんのしっていることでしたら、ゆっくりはなすみょん。 びっぐ……まらぺにす。 みょんはみてのとおり、ながれゆっくりだみょん。 ゆっくりぷれいすをもとめて、さすらいのひとりたびをしていたみょん。 きせつはあきさんだったみょん。あのでいぶをみたのは、このゆっくりぷれいすのそとだみょん。 ひとめで、なかなかの"びゆっくり"だとおもったちーんぽ。 いきなりついていったのは、ひょっとしたらみょんのいきりたつ"はくろーけん"を、 しずめてくれるかもしれない、そうおもったからだばいあぐらっ! おちびちゃんもちの"みぼうゆ"だとしっていたら、えんりょしたみょん。 でいぶのおうちには、おちびちゃんがたくさんいたみょん。 いち、にい、さん……たくさん。 …………。 "たくさん"がふたつ、それぐらいいたみょん。ぜつっりん! みょんはでいぶのおうちにあがって、それからでいぶのはなしをきいたみょん。 でいぶは、つがいのちぇんが『えいえんにゆっくり』してこころぼそいといっていたみょん。 なにかゆっくりできないにおいのするおうちだったみょのの、それはつがいのちぇんが えいえんにゆっくりしたせいだとおもったみょん。 みょんは、でいぶのおうちにとまることにしたみょん。 そして、おひさまさんがさよならをしたすぐあとのことだみょん。 でいぶが、きのえだをくわえて、みょんにかかってきたのだれいぽぉっ! とうぜんみょんはていこうしたみょん。 でいぶは、みょんのことをひどく ことばぜめっ! したみょん。 みょんをゆっくりできないゆっくりだとか。 みょんは、えいえんにゆっくりするのがとうぜんだとかいっていたみょん。 みょんは、けいこくしたみょん。 それでもでいぶは、みょんをおそうことをやめなかったみょん。 ……みょんは、"ろーかんけん"をぬいたみょん。 しょせん、みょんはけんをふることしかできないゆっくりだみょん。 でいぶを『えいえんにゆっくり』させずにすんだのは、こうっうん! にすぎないちーんぽ。 おひさまさんがのぼるまで、みょんはおとなりのおうちで、でいぶとおちびちゃんたちの なきごえをきいていたみょん。 ……いーんぽっ! あさになって、むれのゆっくりが"おさ"のぱちゅりーをつれてきたみょん。 みんな、『まさかでいぶがいきてるなんて』と、そんなことをいっていたみょん。 みょんは、そのまえのじじょうなんかしらないみょん。 ただ……。 でいぶのおうちからは、"たくさん"よりもっと"たくさん"の、おぼうしや、おりぼんがみつかったみょん。 ■証言ゆ4 ゆっくりぱちゅりー(群れの長) ゆっくりいらっしゃい。人間さん。ぱちゅはぱちゅよ。ゆっくりしていってね。 むきゅ……おどろく事は無いわ。 まりさから、あのでいぶの話を聞いている人間さんが居るって聞いたもの。 ――それとも、胴付きのぱちゅを見るのは初めて? そう、みょんから話を聞いてきたのね。だったら、ぱちゅから話せる事はそう多くないわ。 ……すべての原因は、ちぇんとれいむが、ちゅうとはんぱにゆっくりしたゆっくりだった事なの。 ええ、もちろん、本当の原因は、れいむが十二もおちびちゃんを作ってしまった事ね。 次の不幸は、生まれたおちびちゃん達が、末っ子をのぞいてれいむだったこと。 もしも、一番上のおちびちゃんがちぇんで、ゆっくりしないですぐに"狩り"を手伝える子ゆっくりになれたら。 むきゅ……まだけっかがちがったかも知れないわ。 でも、れいむたちには、途中で何度も、生きのびるチャンスがあったの。 一つはそう……おちびちゃんをゆっくりとした"里子"に出すこと。 あのちぇんとれいむだったら、そうね……八までなら、おちびちゃんを育てられたと思うわ。 だけど、れいむはそれも選ぶことが出来なかったの。自分によく似たれいむのおちびちゃんと、 ひとりだけちぇん似の末っ子。どのおちびちゃんも、はなれたくないと言ってね。 ……何度もゆっくりちゅうこくはしたのだけれど、けっきょく、だめだったわ。 二つ目はね、おちびちゃん達に"狩り"を覚えさせること。 群れの『えんじょ』と、ちぇんがゆっくりしないでがんばったおかげで、れいむのおちびちゃんは みんな、赤ちゃん言葉が抜けるまでにはなったわ。 そうなったら、上のお姉ちゃんたちだけでも、ちぇんと一緒にゆっくり"狩り"に出るべきだった。 少しの間は、取ってこられるごはんさんが減るかも知れないけれど、おちびちゃんたちが自分の分を "狩り"で食べられるようになれば、それだけちぇんもれいむも負担が減ったわ。 でも、れいむはそれを決して許さなかった。 "狩り"をするのは危険だと言って、その危険な"狩り"に出ているちぇんの事を考えなかった。 せめて、末っ子のちぇんだけでも、と思わずには居られないわ。 "かほご"……むきゅ、漢字さんでどう書くのか、ゆっくり教えてくれないかしら、人間さん。 ……ありがとう。"過保護"だったのね、れいむは。 むきゅ……何かの事故で永遠にゆっくりすれば、それでも"口減らし"になるでしょう。 ……冷たい言い方かしら? ……いいえ、一番傷付いていたのは、きっと末っ子のちぇんだったと思うわ。 あのおちびちゃんがいつも泣いていたのは、お腹が空いたからでもない。 お父さんちぇんに、お母さんれいむがやさしくしなかったからでもない。 自分が"狩り"に出かけられれば、強くて元気だったお父さんと、優しくて暖かかったお母さんが ゆっくり戻ってくる。それなのに、"狩り"に出かけられない悔しさに泣いていたの。 でも、れいむはそれをしようとしなかった。 そして、全ての"狩り"をつがいのちぇんに押しつけて、全ての"子育て"を自分で背負う事で、 家族全部でゆっくりしようとしたの。 ちぇん? ……おちびちゃん達がみんな子ゆっくりになる頃には、もう"狩り"に疲れ切って、 他の事を考えるゆっくりが足りなかったわ。 ……れいむも、そうだったかも知れないわね。 秋になってしまったの。 みんな、"越冬"の準備に入ったわ。そうなるともう、群れの『えんじょ』…… 『援助』って書くのね、ゆっくり記憶したわ……『援助』も出来なくなるの。 どんなにゆっくりしたおうちでも、"狩り"が少しも出来ないおちびちゃんを抱えて、"越冬"の準備は 出来ないからよ。れいむのおちびちゃん達は、おうたやおどりしか教わって居なかったわ。 普通は、おちびちゃんにゆっくりお留守番をさせて、つがいで"狩り"に行くか、 大きくなったおちびちゃんを連れて"狩り"に行くかなのよ。 食べる量が増えるのに、ちぇんはだんだん元気が無くなって行くんですもの。 ……れみりゃに食べられてしまうのも、仕方が無いわ。 それからのれいむはとても酷かったわ。 沢山のおちびちゃん達は、れいむを真似てわがままばかりいうようになったし。 末っ子のちぇんは、ゆっくりさせられなくていつも泣いていたの。 むきゅ……れいむがどんな事を言っていたか? ゆっくりごめんなさい、確かに覚えているけれど、余り言いたくは無いわ。 大抵の場合は、言われた方じゃなくて、言った方がゆっくりしていないゆっくりなの。 ――"げす"という言葉は、ね。 ありすは、今でこそれいむを嫌っているけれど、じぶんはゆっくりしないで、あのれいむを ゆっくりさせようとがんばっていたのよ。 ただ、ありすが"狩り"に行っているうちに、れいむのおちびちゃんがご飯さんを取ろうと忍び込んで、 テーブルさんの下じきになって、永遠にゆっくりしてしまったの。 それをれいむが酷くののしってね。 ありすも、ぱちゅのおうちの近くに引っ越してきてしまったわ。 私も"越冬"の準備で忙しくて、誰も様子を見に行かない。 だから、群れのゆっくりはみんな、れいむ一家は永遠にゆっくりしてしまっただろうと思ったの。 それがまさか……。 ええ、れいむは、近づいたゆっくりを永遠にゆっくりさせて、それを食べて生きていたの。 おかざりは……れいむのおうちに、十も残っていたわ。 みょんじゃなかったら、きっと捕まえられていないでしょうね。 むきゅ……ばっじさん? いいえ、良く探したけれど、ばっじさんは見つからなかったわ。 れいむは、直に群れで裁判に掛けたわ。ええ、 きょっけいっ! 以外あり得ない。 でも、群れの掟で、親と子供は引き離さない事になっていたの。本ゆ達が望まない限りは、ね。 れいむも、おちびちゃん達も、離れることは望まなかったわ。 だかられいむは、おちびちゃん達と"越冬"させた後で きょっけいっ! にする事になったわ。 むきゅ……分かっているわ。蓄えのないれいむ達が、"越冬"できるわけなんて無いこと。 冬に、ゆっくりが通りかかるなんて、無いことだし。 通り掛かったらそれは、"れてぃ"か"ちるの"だもの。 れいむと、そのおちびちゃん達は、おうちに閉じ込めるまでの間ずっと、酷い言葉を吐き続けていたわ。 つばを吐きながら。 うんうんやしーしーをもらしながら。 ずっと、私たちを呪っていたわ。 私たちが、れいむ達をゆっくりさせるのが当然だ、と言ってね。 ちぇんは泣いて居たわね。いつも通りに。 "越冬"に入る日――ぱちゅ達の中身さんが凍りそうな、冷たい風の吹く日だったわ。 れいむのおうちを外から"結界"でふさぐのは、ぱちゅがやったの。 れいむは最後まで、ぱちゅを呪って、恨んでいたわ。 けれど、本当に最後の最後。ぱちゅが"結界"を最後の枝さんでふさぐ時にね、急にれいむが静かになって、 赤ゆっくりも通れないような小さなすきまから、ぱちゅの方を見て、そして聞いたの。 「おちびちゃん達を助けるにはどうすればいい?」って。 だから、ぱちゅは答えたわ。 「れいむが本当に反省しているのなら、"おたべなさい"をしなさい」と。 「それで、おちびちゃんをひとりだけは助けられるでしょう」とも。 れいむなら分かったはずなの。それは、"おたべなさい"をする前に、助けたいおちびちゃんをひとり選んで、 それ以外を永遠にゆっくりさせる事だって。でなければ、"おたべなさい"をしたところで、れいむを取り合って、 おちびちゃんは全滅してしまうんだって。 れいむは黙ったわ。凄く、静かになったの。 そして"結界"を塞ぐ瞬間に見たれいむは……とても言葉に出来ないくらい、"美ゆっくり"だったわ。 むきゅ。一つだけ最後に良いかしら? ぱちゅ達はこのゆっくりぷれいすの物を食べて生きているわ。 そして、ぱちゅ達も、鳥さんや虫さんや、れみりゃやふらんに食べられて生きているの。 だから、もしも人間さんの何かを、ぱちゅ達が食べてしまっていたとしても。 ……れいむが、人間さんの好きなゆっくりを食べてしまっていたとしても。 ぱちゅ達を、食べないのに傷つけたりするのは、止めてくれないかしら? どうしてもぱちゅ達を許せない事があるとするなら――むきゅぅ。 そうね、ぱちゅひとりになら、どんな酷い事をしてくれても…………良いわ。 さあ、これでぱちゅのお話はお終いよ。 後は……まだ聞きたいのなら、本ゆに聞くと良いわ。 まだ、あのれいむのおうちに居るの。 ■証言ゆ5 ゆっくりちぇん ゆっくりしていってね-。にんげんさんなんだねー、わかるよー。 ちぇんはちぇんなんだねー、ゆっくりわかってねー。 ……ゆぅ。 あきさんになったあと、おとうさんがゆっくりしちゃったんだねー、わかるよー。 ちぇんは、おとうさんのかわりに"かり"にいきたかったけれど、あぶないからだめなんだねー。 おかあさんがそういったんだねー、わかるよー。 おねえちゃんは、てーぶるさんのしたじきでゆっくりしちゃったんだよー。 てーぶるさんはしぼうふらぐなんだよー、わかったよー。 つぎのおねえちゃんは、ありさんでまっくろになったんだよー。 そのあといなくなったんだよー、わかってねー。 つぎのおねえちゃんは、くもさんにむーしゃむーしゃされちゃったんだよー。 くもさんがきたら、はしってにげないとだめなんだねー、わかったよー。 むれのみんなは、おかあさんを"でいぶ"といったけど、そんなことはないんだよー。 おかあさんは、"かり"のめいじんだったんだからねー。 おとうさんのかわりに、あまあまをもってきてくれるんだねー。わかるよー。 でも、ちぇんはむーしゃむーしゃできなかったんだよー。 すえっこだったからだねー、わかるよー。 おねえちゃんたちは、たくさんあまあまをむーしゃむーしゃしたから"しあわせー"だったんだねー。 だからちぇんは、あまあまじゃなくて、そとでむしさんや、くささんをむーしゃむーしゃしてたんだよー。 ありさんは、すこしだったらぺーろぺーろできるよー。 くもさんは、ぴょんぴょんしてつぶしたら、むーしゃむーしゃできるんだよー。 けど、ちぇんも、いっかいくらいあまあまさんをむーしゃむーしゃしたかったよー。 おとなになったら、おかあさんにたくさんむーしゃむーしゃさせてあげられたんだねー。 ほんとうだよー、わかってねー。 でもね、みょんがおかあさんをいじめて、ゆっくりできなくさせちゃったんだよー。 それから、ちぇんたちをおうちにとじこめちゃったんだよー。"おさ"の"けっかいっ!"はすごいんだねー。 どうしてとじこめられたのかなー、わからないよー。 おかあさんは"えっとう"をするっていったんだよー。 だけど、しばらくはごはんさんがなかったんだよー。 ちぇんは、"おさ"の"けっかいっ!"に、すきまをみつけたんだねー。 ここからちぇんが"かり"にいくって、おかあさんにいったんだよー。 おねえちゃんたちも、それにはさんせいしてくれたんだねー。 でも、おかあさんにおこられたんだねー。 ちぇんはやくたたずなおとうさんににているから、"かり"にでかけても、どうせやくたたずだって、 そういわれたんだよー。わかってねー。 だから、おかあさんが"かり"にいってくるっていったんだよー。 あまあまをもってくるって、いったんだよー。 はるさんがくるまでは、あまあまはすこしずつむーしゃむーしゃしようねって、そういったんだよー。 わからないよー。 すきまはちぇんしかとおれなかったんだねー。 すぐうえのおねえちゃんでも、ちぇんよりずっとおおきくて、とおれなかったんだねー。 おかあさんにそういったら、ぴこぴこさんで、とってもつよく、たたかれたんだよー。 とってもいたかったんだよー、わかってねー。 ちぇんはなくのをがまんしたけど、おねえちゃんたちがわらってたから、おもわずないちゃったんだねー。 『なにがわがるのおおぉぉぉっ!』って、いわれたよー、わからなかったよー。 なんとかおきようとしたけど、おかあさんにもういっかいたたかれちゃったんだよー。 とっても、つよかったよー。 それでちぇんはおめめがまわって、すーやすーやしちゃったんだねー。 きがついたら、おかあさんはいなかったよー。 かわりに、おっきなあまあまがあったんだねー。 ちっさなあまあまも、いち、にい、さん……たくさんあったんだねー。 おかあさんも、おねえちゃんもいなかったんだよー。 きっと、あまあまのあるところにいっちゃったんだねー。 "おさ"の"けっかいっ!"をとおれるなんて、おかあさんはすごいんだねー。 ちぇんは、はじめてあまあまさんをむーしゃむーしゃしたんだよー。 おいしかったけれど、あんまり"しあわせー"じゃなかったよー。 なんでかなー、わからないよー。 ちぇんは、おかあさんのいったとおり、すこしずつむーしゃむーしゃしたよー。 ずっとたべたかったあまあまさん、あったかくなるまで、すこしずつでがまんしたんだよー。 はるさんがくるまで、ずっと、あまあまさんをむーしゃむーしゃできたたんだよー。 でも、あんまり"しあわせー"じゃなかったよー。 はるさんはきたけど、おかあさんはかえってこなかったんだね。 なんでかなー。わからないよー。 ……。 ……わかってるよ。 ちぇんがむーしゃむーしゃしたあまあまさんが、なにだったのか。 それくらいは、わかってるんだよ。 ゆ……ちぇんはなかないよー。 ないたら、おかあさんがゆっくりできないんだね、わかるよー。 ちぇんは、おかあさんのゆっくりしたこどもなんだねー。 おかあさんは、おかあさんは、ゆっくりしたゆっくりなんだよー。 "でいぶ"なんかじゃ……なかったんだよー。 にんげんさん、ゆっくりわかってねー。 おかあさんがゆっくりできなかったのは、ちぇんがないてたせいなんだねー、わかるよー。 だからちぇんは……もう……グス――なかないんだよ-。 ぜったい、ぜったいに……なかないんだよー。 ~fin~ 最後まで読んで頂いて、有り難う御座います。
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ザクッザクッザクッ ここは街から少し外れた住宅街。 豪雪地帯で有名なこの地方は、昨晩から降り続いた大雪で一面銀世界に様変わりしていた。 「おいっちにー」ザクッ「さんしー」ザクッ 男は除雪用のプラスチック製スコップを片手に雪かきに精を出していた。 今朝は晴天に恵まれたので街まで買出しに行こうと、まずは家の前を除雪しているのだ。 「…あ゛ー。腰にくるなー」 男は雪かきを一休みし、トンットンッと後ろ手で腰を叩く。 久しく力仕事らしいことをやっていなかったらしく、そのツケが腰に回ったようだ。 まあそれもあと少し。今日は買出しに車を使うので、車庫前に積もった雪を除雪すれば最後だ。 そう思いながらスコップでスノーダンプ(ソリのように雪を押して運ぶ除雪用具)に雪を掻き集めていく。 そうして雪で山盛りになったスノーダンプを、家の前の道路脇に運び雪を捨てていく。 「しかしこれだけ雪が降ったってのに今日はこの温度かよ。最近は異常気象が多いな」 男は道路脇に捨てて山盛りになった雪を見ながらつぶやいた。 昨晩の大雪の反動か、今日は季節外れの小春日和になったのだ。 真冬には氷点下になる地域なのに、昼の予想平均温度は15度を超えるらしい。 ニュースでは春が来たと勘違いして桜が咲いたとも伝えていた。 このままなら除雪せずとも雪が溶けそうだが、温かいのは今日だけらしい。 明日からはまた雪が降るので、男は今日中に買出しを済ませたかったのだ。 「よし!雪かき完了!さあてさっさと買出しにいくか…あれ?」 除雪を終えて振り返った男の目には、この季節にはありえない生物が写っていた。 「ゆーん!げんかんさんゆっくりあけるんだぜ!」 「かわいいれいむのおねがいだよ!」 「「「「きゃわいくてごめんにぇー!」」」」 ワケがわからないことを叫びながら玄関に体当たりを繰り返す汚饅頭。いやゆっくりだ。 しかしなぜこの真冬にゆっくりが? ここは豪雪地帯なので街の野良ゆも越冬のため巣に篭るはず。 「ゆっ!こうなったらまどさんをわってはいるんだぜ!」 「さすがれいむのまりさだね!ゆっくりがんばろうね!」 「「「「ゆっくちがんばっちぇにぇー!」」」」 そう叫びならが玄関から窓のあるリビング方面にポヨンポヨンと跳ねていこうとするゆっくり達。 なんとなく子ゆっくりは頭の出来が悪そうだ。 「家主の前で窓を割るとか言ってんじゃねーよ!」 ドガガッ! 「「ゆ゛べべっ!」」 男はそうはさせぬと走りこんで親ゆっくり達を一蹴する。 子ゆっくりは親ゆっくりに追従するだけなので無視した。 「ゆ゛うっ!なんでひどいことするの!まりさなにもわるいことしてないのに!」 「「「「お゛がーちゃん!ゆ゛っぐぢー!」」」」 足を止めるだけの軽い蹴りだったので、涙目ながらもすぐに立ち直った親まりさが文句を言う。 親れいむは落ち方が悪かったらしく、雪に頭をうずめてケツを振りながらもがいている。 子ゆっくり達は親れいむを助けに向かった。よく見るとすべて子れいむのようだ。 「これから悪いことをするんだろうが。言っとくがこの家は俺のだぞ?」 「ちがうよ!ここはまりさたちのおうちだよ!にんげんさんはでていってね!」 「…ここは外だぞ。おうち宣言というのは家の中でやるもんじゃないのか?」 「…ゆっ?」 言われてみれば、まだ家の中に入れてない。 外でおうち宣言してもそれは外の話。家の中で宣言してはじめてゆっくりの巣になるのだ。 「それじゃあ無効だな。じゃ俺は用があるから、さっさとお前らは元のおうちに帰れよ」 男はゆっくり虐待にはこれといって興味がないタイプであった。 もちろん自分に害があれば潰すこともあったが、無害であれば放置するスタンスなのだ。 今回ゆっくり達は家に侵入しようとしたが、未遂で終わったのではじめの蹴りのみでとどめた。 この家の窓はゆっくり対策済みの強化ガラスなので、割られることはないのを知っていての軽い処置だ。 「ゆゆっ!まってねにんげんさん!れいむのはなしをきいてね!」 「「「「きいちぇねー!」」」」 やっと雪から脱出できた親れいむが子れいむと共に話しかけてきた。 「にんげんさんのおうちにきたのは、ゆっくりあやまるよ! れいむたちは、はるさんがきたとおもったんだよ! それなのにゆふさんのままで、ごはんさんがなくなったんだよ!」 「「「「おなきゃしゅいちゃー!」」」」 何度か聞きなおすと、どうやらこのゆっくり家族はこの温かさに春が来たと勘違いしたらしい。 しかも春が来たと安心しておうちに貯めた越冬用のご飯を食べきったようだ。しかしいざ外に出てみると雪が積もったまま。 手詰まりになって仕方なく人間の家に侵入しようとしたらしい。 「話はわかったが…というか何で越冬中なのに子ゆっくりがいるんだ?」 親れいむの横には子れいむが4匹いる。 まだ赤ゆ言葉が抜けていないところを見ると越冬中に生んだと思われる。 「ゆん!さむくてすーりすーりしてたら、がまんできなかったんだぜ!」 「れいむにのかわいいおちびちゃんだよ!」 「「「「きゃわいくてごめんにぇー!」」」」 (…どちらにせよ越冬失敗したんじゃないのかな…) 「…そうだな、かわいい子れいむだね。子まりさはいないのかな?」 男は心の中で本音をつぶやきつつ適当に相槌を打つ。 そろそろ買出しに行きたいのだが、ゆっくり達をどうしようか悩んでいた。 馬鹿なだけで潰すほど悪い奴らではなさそうだが、放っておくのも可哀想になってきたのだ。 「ゆぅ…。まりさにのおちびちゃんもたくさんいたけど、いつのまにかいなくなってたのぜ…」 「ん?越冬中で締め切ったおうちの中でいなくなったのか?」 「そうなんだぜ…ふしぎなんだぜ…」 親まりさはかなり落ち込んでいた。 越冬中は寒気が入らないように入り口は念入りにけっかい!で封じてあるのでに子ゆっくりが外に出れるわけがない。 しかもたくさんということは、4匹以上が行方不明ということになる。まさに神隠しである。 「不思議なことがあるもんだな。れいむはなにか知らないのか?」 ビクッ!「れっれいむもしらないよ!わっわからないよー?!」 ビクッビクッ!「「「「わっわきゃらないよー?!」」」」 なんとなく話を振ると、なぜか動揺しておもわずちぇん語になる親れいむ。 子れいむまで動揺している。 (…こいつら親まりさに隠れて子まりさだけ食ったんだろうな…) 越冬用のご飯が足りなかったんだろう。子まりさが食われたのを気付けなかった親まりさに同情する。 しかし、越冬中に子供を作ってしまったのは親まりさの責任でもある。 れいむ種だけ残したのは親れいむの贔屓だろうが、親れいむなりの苦渋の決断だったんだろう。 (…というか、次は親まりさが食われるところだったんじゃないのかな…) 「そっそれでね!はるさんがくるまで、おにいさんのおうちにおいてほしいんだよ!」 最悪でしかも正解になっただろう予想をしていると、親れいむが悪い流れだとおもったのか、むりやり話を戻した。 「悪いがそれはダメだ」 「「ゆがーん!」」 「「「「ゆぎゃーん!」」」」 男はあっさり断る。躾もなってない野良ゆっくりを家にあげる気はない。 しかしこのまま断るのもかわいそうだ。代わりに車庫の中は…いや、新車だし傷つけられたら困る。 となると外で住めるところとなるが、そんな都合がいい場所は…。 ふと、さっき捨てた雪の山を思い出した。 「かわりにお前らのおうちを作ってやるよ」 そう言って、男はスコップを持ち上げた。 「よーし、これでどうだ?」 「「ゆゆーん!すごいよ!すてきなおうちだよ!」」 「「「「ちゅてきー!」」」」 男は雪の山に横穴を掘って雪洞を作った。いわゆる『かまくら』というやつだ。 人間が入る大きさの穴を掘るのはいくら雪とはいえ重労働だが、あくまでゆっくり用。 ゆっくり家族が入る程度に大まかに掘っただけの横穴だが彼女らには十分だろう。 今日の温かさで程よく溶けて固まっている雪洞は、夜になれば凍って簡単には壊れない強度になるだろう。 「よし、お前らはそこに住め。そこに住むなら春までは餌を恵んでやろう」 「「ゆわーい!これでゆっくりできるよ!!」」 「「「「ゆっくちできりゅよー!」」」」 「でだ、俺はもう買出しに…お前ら風に言えば狩に行かなきゃならん。 暗くなる前には戻るから、それまで餌は我慢しろ。 その間に前のおうちから荷物や巣材をもってこい。このままじゃ寒いだろうしな」 「「ゆっくりりかいしたよ!!」 「「「「ゆっくちー!」」」」 そうして車に乗って男は街へ急いだ。 ついでにゆっくりフードというのも買ってこようかな。 と、すっかりかまくらでゆっくりを飼う気になっていた。 男が出かけている間にゆっくり家族は引越しを終わらせた。 「「ゆゆーん!すてきなおうちになったよ!」」 「「「「ちゅてきになっちゃよー!」」」」 親まりさは大まかに掘られた雪穴をふやけながらもお口で丁寧に仕上げた。 親れいむは冷たい雪の地面に拾ったダンボールを3重に敷き、入り口は発泡スチロールで蓋をして快適にした。 子れいむは宝物のビー玉を大事そうに運び込んだ。 外気が流れ込まなければ、かまくらの中は案外温かいものである。 豪雪地帯であるこの地方なら、春までかまくらが溶けることもない。 あとはご飯さえ確保できれば越冬が可能であろう。 「ゆっゆっゆっ!あとはにんげんさんをやっつければ、あのおうちはれいむたちのものだね!」 「さっきはゆだんしたんだぜ!つぎはまけないんだぜ!」 「「「「ゆっくちちねー!」」」」 ゆっくり親子は人間の家をまだ諦めてはいなかった。 さっきは不意打ちでやられたと思っていた。それにお腹が空いていたので力が出なかったのもある。 そこで人間に取り入って、油断させて体力が回復したら改めて襲おうと画策したのだ。 もっとも体力が万全でも人間に敵うわけがないのだが、所詮はゆっくりの浅知恵である。 男はゆっくりに深く関わったことがなかった。それゆえに通用した策であると言えよう。 「「「「おなきゃしゅいちゃー!」」」」 ゴゴッ 「ゆゆっ!おちびちゃんたち!にんげんのどれいがごはんさんをとってくるまでゆっくりしようね!」 ゴゴゴゴッ 「そうだぜ!おちびちゃんたちは、いなくなったまりさにのおちびちゃんのぶんまで、ゆっくりしてほしいんだぜ!」 ゴゴゴゴゴゴッ ビクッ!「そそそそうだね!ままままりさにのおちびちゃんのぶんまでゆっくりしようねねね!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ ビクッビクッ!「「「「ゆゆゆゆっくちしゅるよよよー!」」」」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ 「さっきからなんだかうるさいよ!おちびちゃんがゆっくりできないよ!」 「そとがうるさいんだぜ!まりささまがみてくるんだぜ!」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーッ 「ゆっ?」 親まりさは発泡スチロールの蓋を外し、外へ飛び出したとたん無い首をひねった。 発泡スチロールが音を遮断していたのか、外へ出ると思っていたより近くに、そう、まさに目の前に騒音の原因があった。 予想よりも近くにその物体があったため、親まりさにはそれがなんなのか餡子脳では理解できなかった。 鉄でできた歯が激しく回転し、雪を砕き、飲み込むそれは、少しもゆっくりしていない――― シュガッ! 餡子脳が結論を出す前に、回転する歯が親まりさの体に到達する。 無骨な鉄の歯車が一瞬にして親まりさを帽子ごと蹂躙する。 その勢いは凄まじく、悲鳴をあげることもできずあっという間に四散する親まりさ。 かまくらの中でくつろいでいたれいむ達に返り餡子がかかるほどであった。 ビチャチャ! 「ゆゆっ?おちびちゃんがよごれてるよ!ぺーろぺーろ!…しししあわせー!」 「「「「おきゃーしゃんもよごれちぇるよ!ぺーりょぺーりょ!ちちちあわちぇー!」」」」 親まりさの餡子とも知らず、能天気にもしあわせー!を紡ぎあうれいむ達。 親れいむは知らぬ間にしんぐるまざーだ。 しあわせの余韻に浸る間もなく、親まりさを滅した排雪車がローラーを激しく回転させながら、かまくらの入り口を破壊した。 シュガガガガッ! 一瞬で吹っ飛ぶ発泡スチロール。 ガガガガガガガガッ! 次々と砕け散るダンボール。 「なななななんなのこれええええぇえぇえぇ!?!?」 「「「「ゆわーん!」」」」 あまりのことに、ただ叫ぶだけの親れいむ達。叫ぶのも当然だ。 ゆっくりが越冬する期間にだけ活躍する排雪車は、親れいむも初めて見る大型すぃーなのだ。 そのとき、排雪車の震動でバランスを崩した子れいむから、宝物のビー玉が転がり落ちた。 「ゆ!れいみゅのたきゃりゃもの!」 ローラーに向かって転がるビー玉に、慌てて駆け寄る子れいむ。 「ゆゆっ!おちびちゃん!そっちへいったらだめだよ!」 親れいむの叫びも耳に入らず、ビー玉に駆け寄り口に咥える子れいむにローラーが迫る。 シュガッ! 子れいむの目から上半分が掻き消えた。 その口にビー玉を咥えたまま、まるでオブジェのようにその場に佇む子れいむ。 次の瞬間には下半分も後を追うように掻き消える。 身を砕くはずの鉄のローラーは、やわらかい子ゆっくり相手には鋭利なナイフのようだ。 「ゆ、ゆ、ゆわああああああああああああああぁあぁあぁ!?!?」 「「「おにぇーちゃんがー!」」」 ローラーに負けない勢いで叫ぶれいむ達。 目の前で子れいむが死んだことで、事態の深刻さにやっと気付いたようだ。 しかし回りはすべて雪の壁、唯一の出入口は死を運ぶローラーが回っている。 いわゆる詰み状態だ。 「ま、まりさは?!まりさはどこ?!かわいいれいむをたすけてね!!」 「「「きゃわいいれいみゅをたちゅけてね!」」」 れいむ達は状況を打開するため、奥の壁に張り付きながら親まりさに助けを求める。 すでに排雪と満遍なく混ざり合っているとは気付かずに。 叫んでるうちにローラーに巻き込まれたダンボールが引きづられていく。 その上に子れいむを一匹乗せたまま。 「お、おちびちゃん!もどってくるんだよ!!」 「ゆわわわわ!おきゃーしゃん!たすけ」シュガッ! ダンボールごとローラーに消える子れいむ。断末魔は回転音でかき消された。 先ほどと違いダンボールに押しつぶされたのか、子れいむの中身が返り餡子となって降り注ぐ。 ブシャー!! 「いやあああああああああああああ!おちびちゃんがああああああああああ?!」 「「いもうちょがー!」」 モロに返り餡子を浴びた親れいむが叫ぶ。と同時に返り餡子が口に入った。 先ほどおちびちゃんの汚れを舐め取ったときと似た味がするのに気付く。 いや、さっきのあまあまはどちらかと言えば、前のおうちで潰して食べた子まりさ達の味に近い。 あれ?まりさの味?れいむのすてきなまりさはどこ? やっと親まりさが外に出たことを思い出す親れいむ。 その直後にこの有様だ。ということは… 「あああああああああああ!まりさもしんじゃったああああああああああああ?!」 「「おとーしゃん?!」」 一時期は越冬用の食料にしよう考えたとはいえ、番であるまりさの死にショックを受ける親れいむ。 最後の頼みの綱が切れたのだ。この状況では絶望的である。 「おきゃーちゃん!なきゃないで!れいみゅがいりゅよ!」 「お、おちびちゃん…」 次女の子れいむだ。常に家族をフォローする役にあった彼女は、こんなときも親れいむを元気付けていた。 「れいみゅがおちょなになっちゃら、おきゃーしゃんをゆっきゅりさ」シュガッ! フォローするのも時と場所を選ぶべきだろう。 親れいむの前に立っていた次女の後頭部が丸ごと消えた。 顔の前面だけが残り、目玉がドロリと後頭部の穴から流れ落ちる。 そこには親を元気付けようとした笑顔のまま、目玉のない奇怪なデスマスクが出来上がった。 そのデスマスクも次の瞬間には掻き消える。 「れいむのおちびぢゃんがぁあああああああああ!どぼじでこんなことにいいい?!」 「ゆぎゃぎゃぎゃ!えれえれえれ…」 「あああああああああああ!おちびちゃんがなかみをはいちゃったああああああ?!」 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」 あまりの凄惨さに、ゆっくりできなくなった最後の子れいむが中身を吐き出す。 止める間もなくぺらぺらになる最後の子れいむ。 とうとうしんぐるまざーでもなくなった親れいむだけが残った。 「…ゆっくりしたけっかがこれだよ!!!」 親れいむの最後の叫びごと、かまくらは排雪車に砕かれ消えた。 専用の大型排雪車で巻き上げられた雪は、隣を並走していた大型ダンプに排雪される。 そうしてゆっくり親子の残骸も、雪と共に巻き上げられ大型ダンプで運ばれていった。 日が沈みかけたころ、約束どおり男は帰ってきた。 家の前の道路は大型除雪機でキレイに除雪・排雪されていた。 ゆっくり家族がいただろう、かまくらごと。 豪雪地帯の道路は、各自治体が地元業者に除雪作業を依頼しているのである。 「あちゃー。道路は除雪されるの忘れてたや。庭にかまくら作ればよかったな…」 男は除雪されてキレイになった道路の上に立ちながら、バツが悪そうに頭をポリポリ掻きながらつぶやいた。 男の足元にはダンボールや発泡スチロールの破片に混じって、夕日を受けて鈍く光るビー玉だけが残されていた。 二作目になります。今回から名乗るようにしました。 いま書いてる長編がまとまらなくて気分転換に勢いで書きました。 そのためあまり推敲されていませんがご容赦願います。 もう雪はねはイヤだよ…。 作:248あき 過去作 ふたば系ゆっくりいじめ 633 バス停
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おめめをぱちくりとさせて、まりしゃはすぐに理解した――外に出られたのだ。 お父さんとお母さんのおかげで、あのゆっくりできない公園から、ゆっくりできない人間さんから、逃げ延びることができたのだ。 * * * 「ゆんやああああああああああ!!」 朝、まりしゃは誰かの悲鳴で目を覚ました。 「やめてね! やめてね! れ、れいむおこるとこわいんだよ! ゆびゃあああああああん!!」 「みゃんみゃああああああああ!!」 「いだいのはいやぢゃああああああ!! ゆっぐぢでぎないいいいいいいい!!」 「だずげでぐだざいいいいいい!! だずげでねええええええ!!」 まりしゃの寝ぼけたおつむでも、そこかしこから聞こえてくる悲鳴の主はすぐにわかった。 公園に住む他のゆっくりたち――みんな顔見知りだ。 お父さんとお母さんは、おうちの前で外の様子を伺っている。 「これは……いっせいくじょだね……」 「ゆう、やっぱり、ゆんずうがふえすぎたんだよ……」 「……れいむ。かぞくみんな、ぜったいににげきろうね」 「おちびちゃんとさんにんで、もっといっぱいゆっくりしようね、まりさ……」 お父さんとお母さんの声が聞こえたが、まりしゃには何を話しているのかわからなかった。 「やめちぇええええええ!! たちゅけちぇええええええええ!!」 「ゆ、ゆっくりにげるよ! ――ゆわあああああああ!! なんでこっちにもにんげんさんがいるのおおおおおお!?」 「やめてあげてね! いたがってるよ!」 「どぼじでこんなこどするのおおおおおおおおお!?」 悲鳴が絶え間なく響く。 お父さんとお母さんに何が見えているかはわからない。 しかし、おうちの中にいるまりしゃにもわかることがあった。 昨日の夜までみんなのゆっくりプレイスだった公園が、ゆっくりできない公園に変わっているのだ。 「おとうしゃん、おかあしゃん……」 とてもじゃないがゆっくりできない雰囲気――不安になったまりしゃが声をかけると、お父さんとお母さんは慌てたように振り返った。 「ゆっ! おちびちゃん! なにもしんぱいしなくていいからね!」 「おちびちゃんは、おかあさんとおとうさんのいうことを、ゆっくりよくきいていればいいからね!」 いつもと同じ笑顔のお父さんとお母さん。しかし、明らかにいつもとは違う。ゆっくりしていない。 朝一番の「ゆっくりおはよう!」や「ゆっくりしていってね!」というご挨拶がなかったことからもそれが窺えた。 「ゆっくちしちぇ――」 まりしゃの挨拶も、しかし、 「おちびちゃん! すぐにおっきして、おうちからでようね! こうえんからでようね!」 お父さんの声に遮られた。 「ゆっくりできないにんげんさんたちがやってくるよ! ここにいたらこわいこわいだからね!」 「さあ、ゆっくりはやくおしたくしてね! おかあさんがてつだってあげるよ!」 「ゆ? ゆ?」 よくわからないが、何やらゆっくりしていないことだけは確かだ。人間さんがどうしたというのだろう。 「おかあしゃん! いったいどうちたにょ? ゆっくちしていにゃいね!」 おうちの中で素敵なお帽子さんをただしてもらいながら、まりしゃはお母さんに尋ねてみた。お父さんは外の様子を窺っている。 「ゆっ? ゆ、っと……にんげんさんが、こうえんにいるみんなを……お、おいだそうとしているんだよ!」 「なんでにんげんしゃんがおいだしょうとしゅりゅの? こうえんはまりしゃたちのゆっくちぷれいしゅでちょ?」 「こうえんはもともとにんげんさんのものなんだよ! ゆっくりりかいしてね、おちびちゃん!」 「ゆゆっ?」 まりしゃは驚いた。 信じられない――ゆっくりプレイスであるこの公園は人間さんのものだったのか? 公園の中で人間さんたちを見かけることはある。みんなとてもゆっくりしていて、まりしゃにあまあまをくれたこともある。 彼らはこの公園に住んでいるわけではない。住んでいるのはまりしゃたちゆっくりだ。公園に滞在する時間は、圧倒的にゆっくりたちの方が長い。 ならば公園はゆっくりたちのものと言えるのではないか。人間さんたちはごく稀に短い時間だけ遊びに来る、それだけの存在なのだから。 それなのに、この公園は人間さんたちのものだというのか――。 まりしゃには理解できなかった。 それでも、お母さんが言うのならそれは正しいのだろう。 「ゆっくちりきゃいしちゃよ!」 「こうえんにすむゆんずうがふえすぎちゃったから、にんげんさんはおこっちゃったんだよ!」 そういえば、いつだったか大人ゆっくりたちが懸念していた。「こうえんにこれいじょうゆっくりがふえたら、にんげんさんたちがだまっちゃいないよ」と。公園に移住したいというゆっくり相手に、入園試験なども行っていたようだ。 ゆん数が増えると何が問題なのだろう。まりしゃなどは、お友達やご近所さんが増えて嬉しいとさえ思う。 よくわからないが―― 「それもりきゃいしちゃよ!」 「にんげんさんたちはいたいことをして、みんなをこ……こうえんからおいだそうとするんだよ! だからそのまえに、じぶんたちででていくんだよ! にげるんだよ!」 痛いのは嫌だ。ゆっくりできない。 「ついでにりきゃいしちゃよ!」 「ゆっ! おちびちゃんはかしこいね!」 「ゆふっ!」 「ゆふふっ!」 まりしゃとお母さんは笑いあい、お父さんに支度が完了したことを告げた。 「おちびちゃん! おとうさんにゆっくりついてきてね!」 「ゆ、ゆっくちちゅいていきゅよ!」 不安はある。 ゆっくりできない公園内を移動するだけでなく、なにより公園の外に出なくてはならないのだ。 まりしゃはこの公園の外に出たことがない。 お父さんとお母さんにお話ししてもらっているとは言え、その世界はまったくの未知数だ。何が待っているのか、自分の身に何が起こるのか、想像もつかない。 そんなまりしゃの様子を見て取ったのか、お父さんはにっこり笑って、 「ゆふふ、だいじょうぶだよ! おちびちゃん! おとうさんとおかあさんがついているからね!」 と言ってくれた。 大丈夫だ。 恐くないと言えば嘘になるが、お父さんとお母さんについて行きさえすれば、きっと大丈夫だ。 人間さんに追い出される前に、自分たちで公園から出る――ただそれだけのことではないか。 「ゆっ! まりしゃはへいきだよ! もうおねえしゃんだからにぇ!」 まりしゃが胸を張りそう宣言すると、お父さんはゆっくりと頷いた。そしてまりしゃの背後、ダンボールのおうちに目をやる。 つられて、まりしゃも振り返る。 まりしゃが生まれ育ったおうち。 思い出も思い入れもたっぷりある。 まりしゃよりも長くここに住んでいるお父さんとお母さんともなれば、それらはまりしゃ以上だろう。 ――ふと、まりしゃは思い出して言った。 「おとうしゃん! まりしゃのたきゃらものをもっちぇいきたいよ! ゆっくちまっちぇちぇにぇ!」 まりしゃの宝物――お父さんにもらった小石をここに置いてはいけない。 そんなまりしゃのお願いに、すぐに優しく「ゆっくりまってるよ」と言ってくれるかと思ったが、お父さんは困ったように笑い、 「ゆう……。ごめんね、おちびちゃん。いしさんはおうちにおいていこうね」 と言った。 「ゆっ!? ど、どうちてえ!? まりしゃのたきゃらものにゃんだよおお!?」 「なるべくみがるでいないと、とってもあぶないんだよ。ゆっくりりかいしてね?」 「ち、ちゃんとまりしゃのおぼうちしゃんにいれるからあ!! いいでちょ? いいでちょ?」 「……ごめんね、おちびちゃん。またひろってきてあげるからね」 まりしゃに謝るお父さんに、 「おかあさんもてつだって、もっとすてきないしさんをひろってきてあげるよ。おちびちゃん、それまでゆっくりがまんできるよね?」 お母さんが助け船を出す。 それでまりしゃは諦めた。自ら「おねえしゃんだからにぇ!」と見栄を切ったばかりなのに、わがままは言えない。 「ゆゆう……ゆ、ゆっくちりきゃいしちゃよ。いししゃんは、おうちにおいていきゅよ……」 ――お父さんにもらった、とってもゆっくりした素敵な小石。まりしゃの大事な、大事な宝物。 思わず涙がこぼれそうになるのを、下唇を噛んでこらえる。 お父さんがお下げさんで頭を撫でてくれた。それでこらえきれなくなり、涙の粒が、ぽろりとこぼれてしまった。 「ゆっくり、ゆっくりありがとうね、おちびちゃん。――ゆっ! それじゃあ、ゆっくりしゅっぱつするよ! こうえんのおそとにでれば、きっと……そうだよ! おそとにでれば、あんっしんっだからね!」 お父さんのかけ声を合図に、まりしゃたちは歩き始めた。 公園を囲むように張られた金網のフェンス。それに沿って、まりしゃたちは進む。 公園の本来の出口は目立つので使えない――そう考えたお父さんは、別の場所からお外に出ることを提案した。 このまま先に進めば、金網にぽっかりと大きな穴が開いている箇所があるらしい。そこを出口にすると言うのだ。 ふと横を見ると、金網とそれを覆う草木の隙間を縫って、外の景色がよく見えた。 まりしゃなら、すぐにでもこの隙間から外へ出られないこともない。しかし体の大きいお父さんとお母さんはそうもいかなかった。 かと言って、ぴょんぴょんで飛び越えられる高さでもない。 「ずーりずーり……」 「こーそこーそ……」 「じゅーりじゅーり……こーしょこーしょ……」 まりしゃたちは、あくまでもゆっくり静かに歩を進めた。 お父さんとお母さんが「にんげんさんにみつからないようにね!」と念を押したからだが、草むらをずーりずーりで進むのは、なかなか骨が折れる。 人間さんたちが追い出すというのなら――納得はできないが――まりしゃたちが自ら公園から出ていけばそれですむのではないか。 それなら、何もこーそこーそする必要などない。人間さんの目など気にせず、堂々とぴょんぴょんで進めばいいだろう。 まりしゃはそう考えたが、 「ごべんだざいいいいいい!! こうえんがらででいぎばずがらあああああ!!」 「おうぢもゆっぐぢぷれいすもいりばぜんっ!! だがらたじゅげでくだざいっ!!」 「きょわいよおおおおおおおおっ!! もう……おしょとでゆっくちさせちぇえええええええ!!」 「ででいぐっでいっでるのにいいいいいい!!」 嫌でも目に、耳に入ってくるそんな公園内の光景に、すぐにそれが甘い考えだと悟らされた。 公園を出ていく意思を持っていようが関係ない。問答無用だ。 お揃いのお洋服を着た大勢の人間さんたちは、棒で、大きく長いおててで、あんよで、公園に住むゆっくりに暴力を振るっている。 あまあまをくれた人間さんたちとはまったく違う人間さんたち。――彼らは何でこうもゆっくりしていないのだろう。 そんなに必死になってまで、まりしゃたちにこの公園から出ていって欲しいのだろうか。 「やべろおおおおおおお!! おぢびじゃんにてをだずなああああ!!」 「ゆべっ! ゆべええっ! だだがないでええええええ!!」 「やべでぐだじゃい! やべでぐだじゃい! れいぶ……まだじにだぐないんでじゅ!!」 「もうやぢゃゃああああああああ!! おうぢがえるううううううう!!」 見知った顔が、ゆっくりしていない人間さんたちに殴られ、蹴られ、踏まれている。 今見えたあれは都会派レディのありすお姉さんだ。いつでもツンと澄ましていたお顔の真ん中にはぽっかりと大きな穴が空き、あんなにも醜く歪んでしまっている。 その向こうは物知り博士のぱちゅりーお姉さんだ。ぱっくりと裂けた頭から口から、どろどろと漏れだしているクリームの中には、どれだけの知識が詰まっていたのだろう。 みんなあんなにゆっくりしたゆっくりだったのに、もはや見る影も無かった。 この公園は地獄だ。 いつか、人間さんに連れられてきた飼いゆっくりのれいむが、「ここはとってもゆっくりしたゆっくりぷれいすだね!」と褒めてくれた公園。まりしゃはとても誇らしい気持ちになったのを憶えている。 今のこの惨状を見たら、あのれいむは何と言うだろうか。 「ゆわあああああ……」 おうちを出た時は、まさかここまで酷いことになっているとは思わなかった。 まりしゃは、ついおそろしーしーを漏らしてしまった。あんよもすくんで、もう一歩も動けそうにない。 涙も出てきたが、お下げさんでお口を押さえて、悲鳴を上げることだけはなんとかこらえた。 悲鳴を聞きつけた人間さんに見つかったらどうなるか、もうまりしゃにも理解できていた。 「おとしゃ……おかしゃ……ゆええ……」 思わず前を行くお父さんとお母さんに泣きつく。それ以外にどうしたらいいかわからなかったからだ。 すると、お父さんとお母さんはまりしゃを振り返り、いつもと変わらない笑顔と、小さくても優しい声を返してくれた。 「ゆう……ごめんね、おちびちゃん。こわかったよね、こわかったよね」 「おかあさんがおんぶしてあげるからね。もうなかなくてもいいんだよ」 それだけでまりしゃは安心した。 「ゆっくち……ゆっくちい……」 安心したはずなのに、涙が溢れそうになった。 まりしゃはお母さんのおつむの上に乗せてもらった。体を揉み上げさんでしっかり押さえてもらうと、何とも言えないゆっくりした気分になれた。 「ゆっ。じゃあまたこーそこーそすすむよ。でぐちはもうすぐだからね」 「ゆっくりすすもうね」 まりしゃがもっと小さかった頃――まだ満足にあんよを動かせなかった頃、よくこうやって公園内のお散歩に連れていってもらった。 そして、 「ゆっくりのひ~、まったりのひ~」 今と同じように、お母さんのお歌を聴かせてもらったのだ。 こんなにゆっくりできない時だというのに、まりしゃのお胸はぽーかぽーかと温かくなった。 「ゆう……。おかあしゃんのおうたはゆっくちできりゅよ……」 「すっきりのひ~。――ゆふふっ。おちびちゃん、ゆっくりしていってね」 まりしゃは目を閉じた。 次に目を開けた時には、無事に外に出ていられたらいいなと思った。 公園の外にさえ出てしまえば、人間さんに酷いことをされる理由も無くなるのだ。 体が痛い。鋭利な痛みだ。それに何だろう、この圧迫感。 まりしゃは目を覚ました。お母さんのおつむの上のあまりのゆっくり具合に、少し眠ってしまっていたようだ。 目の前にはお母さん。 まりしゃは、いつの間にかお母さんのおつむの上から降ろされていたのだと気いた。 「ゆむむむ」 お母さん、と声を出そうとしたが上手くいかない。お母さんの両方の揉み上げさんでお口を塞がれているからだ。 いや、お口を塞いでいるのではない。お母さんは揉み上げさんを使って、「ゆーしょ、ゆーしょ」の掛け声とともに、まりしゃの体全体を押していた。 先ほど覚えた圧迫感の正体はこれだ。 「ゆーしょ、ゆーしょ。まだこうえんのなかだよ。いたいかもしれないけど、すこしがまんしてね、おちびちゃん。ゆーしょ、ゆーしょ」 ぐいぐいと力の入る揉み上げさんに反し、その声はあくまで優しい。 それにしても体が痛い。 揉み上げさんによる正面からの圧力ではない――お母さんがまりしゃを労わってくれているのがわかる――この尖った痛みは体の側面にこそ感じる。 ゆっくりできないなと横を見ると、細い針金が――細い針金で編まれた金網があった。これはフェンスの金網だ。まりしゃたちはこれに沿って歩いてきたのだ。 少し寝ぼけた頭で状況を整理する。 まりしゃの体は、なぜか公園を囲むフェンスの隙間に挟まっている。それをお母さんが、なぜか揉み上げさんで押しているのだ。 なぜか。――寝起きのぼおっとした頭でもわかる。まりしゃの体を、まりしゃ自身を、フェンスの――金網の隙間から通して、向こうへ押し出そうとしているのだ。 外へ。公園の外へ。 「ゆむむむむう!?」 なにちてるの!? おかあしゃん!? という意味を込めたまりしゃのその言葉に、お母さんはにっこり笑って、 「おちびちゃん、ゆっくりしずかにね」 と小さな声で言った。 そしてその声に被るように聞こえた、 「にんげんさん、ゆっくりしていってね! まりさはまりさだよ! ゆっくりそこでとまってね! あんよをとめてね!」 というこのご挨拶は、間違えようもないお父さんのものだ。 お母さんとは大違いの、とても大きな声だ。声の感じからして少し離れた所にいるらしい。 まりしゃは驚いた。 自分が眠っている間に人間さんに見つかっていたこともそうだが、公園にいるゆっくりできない人間さんにご挨拶なんて、お父さんは何を考えているのか。 「むこうのれいむははずかしがりやさんなんだよ! にんげんさんのおかおをみるのがはずかしいんだって! なにかしているわけじゃないから、きにしないであげてね! きにしないであげてね!」 お父さんは何を言っているのだろう。 不思議に思うまりしゃに、お母さんが囁く。 「ゆーしょ、ゆーしょ。おちびちゃん。おそとにでたらね、ゆっくりだっしゅでこうえんからはなれてね。ゆーしょ、ゆーしょ。それからね、ゆっくりできるゆっくりをさがすんだよ。 そのゆっくりにごあいさつして、ゆーしょ、ゆーしょ、こころをこめてごあいさつして、おとなになるまでおせわしてもらってね。いうことはしっかりきくんだよ。 ゆーしょ、ゆーしょ。おかあさんたちがおしえたから、きちんとできるよね。おちびちゃんはゆっくりしたこだものね」 お母さんまで訳の分からないことを口走り始めた。いつになく早口だ。ちっともゆっくりしていない。 「ゆっ! なんだかにんげんさんはゆっくりしていないね! まりさといっしょに――ゆべえっ! ふ、ふーみふーみはゆっくりできないよ! ゆがっ!」 お父さんの声は苦しそうだ。ひょっとして、人間さんにひどいことをされているのではないか。 「にんげんさんにたよるのはさいごのしゅだんにしてね。ゆーしょ、ゆーしょ。そしてたよるなら、まえにこのこうえんにきていたような、ゆっくりできるにんげんさんだよ。 おちびちゃん、みわけられる? むりなら、ぜったいに、ゆーしょ、ゆーしょ、ぜったいににんげんさんにちかづいたらだめだよ。ゆーしょ、ゆーしょ。ゆっくりできなくされちゃうからね」 言いながら、まりしゃの体を押し続ける。思いの他、隙間の幅とまりしゃの大きさはギリギリだったようだ。まりしゃの小さな体は、なかなか隙間から抜けない。 それにしても、こんなことをしているより、お父さんを見てやるべきではないのか。 二人ともどうしてしまったのだろう――いや、 「ゆぎっ! ゆぎっ! ――ゆゆ……ゆふふ! だめだよにんげんさん! もっとゆっくりして――ゆっがあっ!」 もう、まりしゃには、 「ゆーしょ、ゆーしょ。――たくさんむーしゃむーしゃして、おひさまさんがでていたらおそとでこーろこーろして、にんげんさんのすぃーにきをつけて、たゆんになるべくたよらず、つちのうえでぴょんぴょんして……しあわせーになってね」 まりしゃにはわかった。 お父さんは必死に人間さんの気を引こうとしている。 お母さんは必死にまりしゃを外に出そうとしている。 まりしゃにはわかってしまった。 予定していた出口にたどり着く前に人間さんに見つかってしまったまりしゃの家族は、この公園から逃げる事が出来なくなってしまった。 一家全員永遠にゆっくりさせられてしまいそうになった。 それでもお父さんとお母さんは――まりしゃの大好きなお父さんとお母さんは、金網の小さな隙間から、まりしゃだけでも逃がそうと必死に戦ってくれているのだ。 まさか、これでお別れなのだろうか。こんなに急に、あっけなく。 「ゆむっ! ゆむむむううううううっ!!」 どうちてしょんなことしゅるにょおおおおお!? というまりしゃの絶叫は、しかし優しく力強い揉み上げさんによって封じられた。 その代わりに、お口と違って自由なまりしゃのおめめから、かつてないほどの涙が流れ出る。 以前、ゆっくりできないガラス片を踏んであんよを裂いてしまった時も激しく泣いて、大量の涙を流したものだが――これはきっとあの時以上だ。 「ゆっ……ゆべっ! ゆっぎゅうっ! ……ゆ、へへへ……ばりざは、ぼうりょくには……ごふっ! くっしない、よ……。ばりざはおとうざんだがら…… ぎゃっ! ぎゃっ! がぞぐを、まもるよ……」 お父さんの声がだんだんか細くなってきた。 それに反比例するように、まりしゃの涙は激しさを増す。 「こら、おちびちゃん。『おねえさん』がそんなにないたらだめだよ。なきむしは、おにわにさくひまわりさんにわらわれるよ。どんなときも、ゆっくり、ゆっくりわらってね」 そう言ったお母さんの顔こそ、涙でぐしょぐしょだ。きっと、自分の顔もあんな風なのだろう。 これほど泣いたらお互い涙で体が溶けてしまうのではないかと、まりしゃは思った。 それならそれでもいいや、とも思った。その方が、今のこの状況よりは、よほどゆっくりしているからだ。 がしゃん、という音と振動がして視線を横にやると、そこにはお父さんが倒れ伏していた。 人間さんに蹴られでもして、金網に衝突したのだろう。 「ゆ……ゆ……かぞく……まも、る……」 「ゆむむむむうううう!?」 おとうしゃあああん!? と揉み上げさんの下でまりしゃが叫ぶと、 「ゆーしょ! ゆーしょ! もうすこしだよ! もうすこしだよ、おちびちゃん! いたいよね! いたいよね! でも、もうすこしがまんしてね!」 突然、お母さんが大声で叫んだ。 まりしゃを押す力も増した。 もう揉み上げさんどころではない。これは体全部を使ってまりしゃを押している。ほとんど体当たりに近い。 まりしゃの体のことなどおかまいなしになったようだ。 「ゆむむむむうううううううっ!?」 苦しく、痛い。さっきまでとは全く違う、優しさを微塵も感じさせない力だ。 それでも我慢しなければいけない。まりしゃは歯を食いしばって耐えた。 「ゆーしょ! ゆーしょ! ゆーしょ! おちびちゃんっ! がまんしげべれえええええっ!?」 お母さんが意味不明な事を口走った。まりしゃはゆっくりできない予感がした。 「ゆむむっ!! むむむうううううう!?」 おかあしゃあああん!?――お母さんの体の下でまりしゃは絶叫した。 「ゆべえっ! ……おぢびぢゃんっ!! もうずごじっ!! ぎゅっ!!」 お母さんも絶叫した。 まりしゃが思わず体内の餡子を吐き出しそうになるくらいの、お母さんの圧力。 すっ、と金網と揉み上げさんの抵抗を失い、まりしゃの体は宙に投げ出された。 ふわっと、浮遊感に包まれる。 ようやく自由になったお口でまず何を言おうか――考える前にお口が動いていた。 「おしょらをとんでいるみちゃいっ!!」 「あいちゃちゃ……ゆふう」 自分の背よりも少し高いところからころりと落ちて、あんよを強く打ってしまった。 おうちを出る時にお母さんに整えてもらった素敵なお帽子さんも、おつむからずれてしまっている。 ふと見上げると、公園の中と外を区切るフェンス。 その向こうに人間さん。少し呆けた顔をしているのは、まりしゃの気のせいだろうか。 おめめをぱちくりとさせて、まりしゃはすぐに理解した――外に出られたのだ。 お父さんとお母さんのおかげで、あのゆっくりできない公園から、ゆっくりできない人間さんから、逃げ延びることができたのだ。 いまだかつてない達成感に、まりしゃの体は震えた。 お帽子さんに乗って公園の池に――ほんの少しの間だけ――浮かんでいられたあの時にも、これほどの達成感は味わえなかった。 「ゆわああああああああああんっ!! おとうしゃんっ!! おかあしゃああああああああん!!」 まりさは空に向かって吠えた。ゆん生最大の大きな声で。 昂ぶった体からは、不思議と涙は流れない。さっき、お母さんと一緒に顔をぐしゃぐしゃにして泣きあった時に、すべての涙を流しきってしまったのだろうか。 それはそれで少し悲しい気もするが――とにかく今は泣くべきではない。笑うべきだ。 ――おそとにでたらね、ゆっくりだっしゅでこうえんからはなれてね。 お母さんの言葉を、ゆっくり思い出す。 疲れたのでゆっくりここで休んでいきたいが、言われたことは守らなければいけないのだ。まりしゃは『お姉さん』なのだから。 「ゆっ!」 短く気合を入れて、お帽子さんをかぶり直す。 「おとうしゃん! おかあしゃん! いままでゆっくちおしぇわになりまちたっ!!」 お別れだ。 お世話になったお父さんとお母さんに、きちんとご挨拶を忘れない。 その時に見てしまった。 人間さんがフェンスの向こうで、ぐったりしたお母さんを踏みつけている。 「おぢびっ……ぢゃぶうっ!! ゆっぐりっ!! ゆぎゅっ!! ……じあわぜにいっ!!」 お母さんが苦しむのにも構わず、蹴る。踏む。何度も何度も、執拗に。 「かふっ……ごふっ!! ひゅぎゅ、う……!!」 「ゆわあああああっ!? おかあしゃあああああああん!!」 たまらずフェンスに取り付くまりしゃ。だが、お母さんはまりしゃに気付いてくれないようだ。顔も上げてくれない。 お母さんは人間さんの長いあんよで踏まれ、蹴られ、そしてまた踏まれ、やがて「ゆ゛っ」と短く言ったきり、ぴくりとも動かなくなってしまった。 「……っ!! おか、しゃ……!!」 お母さんを虐めた人間さんは、次いで、 「ばりざは……がぞぐを、まもって……」 と呻き声を上げているお父さんを踏み始めた。 「ゆわあああああっ!? おとうしゃあああああああん!!」 「ゆぶうっ!! ばりざは……ぎゃあっ!! おどう、ざんっ!! だぎゃらっ!!」 「お、おとうしゃ……っ!!」 人間さんの長いあんよは、見るからに強そうだ。あのあんよは今日一日だけで、どれだけのゆっくりをゆっくりできなくさせてきたのだろうか。 やがてお父さんも「ゆ゛っ」と短く言って動かなくなってしまった。 「……っ!! ……っ!!」 まりしゃは目の前の光景に声を失った。ゆっくりの「ゆ」すら、今までどう発音していたのか一瞬で忘れてしまった。 何かを言いたいのに、叫びたいのに、この気持ちをどう口にしたらいいのかわからない。まるで、体の中の餡子が真っ白になってしまったかのようだ。 ――ゆっくちしていっちぇにぇ! ――むーちゃむーちゃ! ちあわちぇー! ――こーろこーろしゅりゅよ! ――ここはまりちゃのゆっくちぷれいしゅだよ! どれもふさわしい言葉ではない。 さっぱりわからない。まりしゃの餡子脳では、語彙では処理しきれない。 結果、まりしゃの口から出たのは、 「ゆぴっ! ゆぴっ! ゆぴぴぴいいっ! ゆっひっぴぴいいいいいんっ!」 とても言葉とは言えない、単なる音だった。 「ゆぴっ! ぴぴぴぴっ!! ゆゆゆぴっ!」 この音はまりしゃの意思では止められなかった。 枯れたと思っていた涙が溢れてきた。おそろしーしーも漏れている。それらもまりしゃの意思では止められない。 がしゃん、と人間さんがフェンスに手をかけた。足も乗せた。 「ゆっぴぴっ!?」 何をするつもりだと思った瞬間、ひらりとフェンスを飛び越え、人間さんは公園の外に降り立った。 まりしゃが――まりしゃの家族が必死になってようやく辿りついた公園の外へ、いともたやすく。 人間さんは腰をかがめて、まりしゃに手を伸ばしてきた。 まりしゃは驚き、そして恐怖した。 「ゆぴぴぴぴぴっ! ゆぴぴぴぴぴっ!」 どうちてにんげんしゃが、おしょとにでるのおおおおおおお!? ――そういった意味の言葉を発したつもりだ。 どうして公園の外まで、まりしゃを追ってくるのか。 公園の中でまりしゃたちゆっくりに酷いことをするのは理解できる。それは、ゆっくりを公園から追い出そうとしているからだ。 だからこそわからない。 なぜ、すでに公園から逃げ出したまりしゃにこだわるのだろうか。公園の中にいないのだから、放っておいてくれてもいいだろう。 散々見せられた、率先して公園から出て行こうとするゆっくりへの乱暴も理解できなかったが、これはそれ以上の疑問だ。 「ゆぴょっ!?」 人間さんの手がまりしゃをつかんだ。ざらざらした布のようなものに包まれたおてては、何だかゆっくりできない。 持ち上げられた拍子に、せっかく被りなおしたお帽子さんが、ぽとりと落ちる。 「ゆぴいっ! ゆぴいっ!」 人間さんのおててに力が入った。 強烈だったお母さんの体当たりよりも、さらに痛くて苦しい。とてもゆっくりできない。 ようやくまりしゃは、人間さんの目的が理解できた。 公園から追い出すために暴力をふるうのではない。 まりしゃたち公園に住むゆっくりに暴力を振るうこと、殺すこと、それ自体が目的だったのだ。 まりしゃは公園から出ればそれで大丈夫だと思っていた。しかしそうではなかったのだ。 恐ろしい。あまりにも恐ろしい目的だ。 おそろしーしーが止まらない。おそらく腰も抜けている。 仮に今、人間さんの手を逃れたとしても、恐ろしさのあまり、まりしゃは一歩も動けないだろう。 ――にんげんさんが、こうえんにいるみんなを……お、おいだそうとしているんだよ! ――こうえんのおそとにでれば、きっと……そうだよ! おそとにでれば、あんっしんっだからね! お父さんとお母さんの、あの言葉。 二人は間違っていたのだろうか。それとも、まりしゃに嘘をついたのだろうか。 「ちゅ、ちゅぶれりゅううううううう!!」 体を締め付ける痛みが、まりしゃの言語能力を正常に戻してくれたらしい。久しぶりに言葉らしい言葉を発することができた。 しかし喜んでいるわけにはいかない。命の危機だ。この人間さんは、確実にまりしゃを殺そうとしている。 「ゆぶううううう……たしゅけちぇ! たしゅけちぇ! おとうしゃんっ!! おかあしゃんっ!!」 反射的に、フェンスの向こうで倒れ伏しているお父さんとお母さんに助けを求める。 しかし二人は何の反応も見せてくれない。こんなに近い距離で、大声で叫んでいるというのに。 「やめちぇえええええ!! まりしゃ……まりしゃ、まだしにたくにゃいよおおおおおお!!」 「……一斉駆除なんだ。わかるだろ?」 人間さんが初めて言葉を発した。こんな状況だが、何だか嬉しい。ご挨拶をしたら怒られるだろうか。 しかし言葉の意味はわからない。――いや。 いっせいくじょ――つい最近、どこかで聞いたような気もする。 しかし、まりしゃにそれを思い出している暇はなかった。 「おめめ……おめめがとびでりゅううううううう!! まりしゃのおめめ、とびださにゃいでええええええ……」 おめめが痛い。今にも飛び出しそうな激痛だ。 人間さんのおててで圧迫された体内の餡子が、勢いそのまま、まりしゃのおめめを押し出そうとしているのだ。 まるで先ほど、お母さんが金網の隙間からまりしゃをそうしたように。 「やめちぇえええええ!! おめめいやぢゃあああああ!! ゆぐうっ! まりしゃから……もうなにもとらないでええ……」 まりしゃは切実に願った。 ゆっくりプレイスから、おうちから、目が覚めていきなり離れることになった。 宝物の小石はそこに置き去りだ。 見知ったゆっくりたちは、みんな殺された。 お父さんとお母さんも、目の前で蹴り殺された。 素敵なお帽子さんは、今、地面に落ちてしまった。 そして今、おめめまでがまりしゃから奪われようとしている。 お父さんとお母さんにも褒めてもらった、自慢のキラキラおめめが。 もうやめちぇ……まりしゃを、ゆっくちさせちぇ……」 体内の餡子を口から、あにゃるから、しーしーの穴から一斉に吹き出したその瞬間、まりしゃは永遠にゆっくりした。 幸運にも、おめめは最期までまりしゃの体に残ったままだった。 (了) 作:藪あき 挿絵:儚いあき
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『まりさは飼われゆっくり7』 26KB 観察 差別・格差 日常模様 群れ 野良ゆ 現代 続けて失礼します ※「anko4326 まりさは飼われゆっくり6」の続きです。 奇妙な胴付きはそれからも自然公園に留まり、要らぬとまでは言わないが特別ありがたいものでもない、まさしく「それなりー」なお節介を焼き続けた。 その活動範囲は自分たち親子に止まることなく、すぐにこの自然公園に住み着く群れのゆっくりたちにまで広がっていく。 群れから胴無しのあんよでそれなりに離れた位置にあるダンボールハウスにそのまま居を構えることにしたれいむは、半分群れから独立して生活しながらも時たま訪れる長を初めとした群れのゆっくりと交流し、あるいは飽きずにやって来る胴付き自身から直接えーゆーたんっ!を聞いて、その動向に関する情報を得ていた。 あの胴付きまりさは自称英ゆんまりさの子孫だそうで、「まりさも、みんなをゆっくりさせるためにがんばるよっ!」と最初にわざわざ宣言したらしい。 本当に捨てゆなのかただの迷いゆなのかは判別できないが、少なくとも元々かなりいいところで飼われていた愛玩ゆに違いない身にしては、薄汚い野良に対して極めて寛容で、身体の汚れにもお飾りの欠損にもケチをつけない。 衣食住すべてが劣悪な野良生活に苦労はしているようだが、それに対して文句も言わない。 何より、そんな中でも自分を二の次にしてまで他ゆんのために尽くすほどの殊勝な子である。 だが、殊勝なだけで許されるほど世の中もゆっくりも甘くない。 お遊戯の世界でない確固たる現実を生きている野良の身にとっては、最終的に出される結果こそが大きな意味を持つ。 そしてこの胴付きまりさの場合、結果に関しては壊滅的なまでに「それなりー」なのであった。 …………。 子れいみゅと子まりちゃの反応がよっぽどショックだったらしい胴付きは、群れのゆっくりのためのご飯さんとして、生ゴミさんを「狩って」くるようになった。 胴無しの身ではお山の自然公園から出て、ゴミ捨て場からゴミ袋を持ち去り、再び戻ってくることは到底出来ない。 そういう点では胴付きの行為は確かにありがたい。 だが、あの時と同じように「しあわせー!になってねえ!」というような満面の笑みで提供されるそれらは、かつての懐かしきあまあまでもゆっくりフードでもなく、所詮は生ゴミ。 お野菜さんの切れ端を初めとしたまともにゆっくりできるものも含まれているが、完全に腐っているもの、ゆっくりにとって毒になる辛いもの、苦いものなどの方がむしろ多い。 そして、それを見分ける術を奇妙な胴付きはまたしても持ち合わせていなかった。 「むーちゃむーちゃ……ゆっぎぇええ!! こりぇ、どくはいっちぇりゅううう!! えれえれえれえれええ!!」 「れいみゅのも しゅっぴゃいよっ! くさっちぇりゅよぉぉお!!」 「ゆゆっ! どうつきさんっ! おやさいさんは どこなのっ!? ゆっくりしないで だしてねっ! たくさんでいいよっ!」 「ゆぁ~ん、これだけなのぜぇ? ……もしかして、ひとりっじめ!してるんじゃないのぜぇ? しぬのぜえ!?」 群れの並みの餡子脳たちにそうやって罵倒されるたび、胴付きは例のおちびちゃんのような顔で泣くらしかった。 気持ちは必ずしも分からないわけではない。 大体群れのゆっくりの方も、それほど賢かったり善良だったりするわけではないようで、胴付きまりさがゆひぃゆひぃ言いながら運んでくる大量の生ゴミに遠慮なく群がり、そこに生えてきたとでも言わんばかり、当然のようにおうちに持ち帰っていく。 「むれいちばん さいっきょうっ!のおとーさんが、ゆっくりかりにいってきたのぜえっ!」 などと家族に虚栄を張るために利用している小ゆん物の惨めな雑魚まりさまでいるとのことだ。 それはさておき、調子に乗っただぜだぜ饅頭等などにいじめられて大泣きを始める胴付きまりさを慰めるのは、長であるぱちゅりーとその番であるありすの仕事。 あなたはゆっくりしているわっ。 みんな、まりさにかんしゃしてるのよっ。まりさは、とってもとかいはよっetc.etc. まるでおちびちゃんの面倒を見ているみたいだわ、という長ぱちゅりーの愚痴にれいむは同意し、同情した。 今ではぱちゅりーとありすが先立って生ゴミの選別を行った上で配給を行っているとのことだった。 …………。 ある日、胴付きは群れのゆっくりやおちびちゃんたちを連れ、自然公園内にある花壇の近くにまで行った。 人間さんにとってはせいぜい丘程度であるこのお山の自然公園には水道が引かれており、人間さん用のトイレもあるし、花壇に水をやるために屋外の水道もあるのだ。 自慢のお手手できゅきゅっと蛇口を捻った胴付きまりさは、怖がるおちびちゃんを無理やり掴み、「しゃわーさんだよっ!」と冷たい流水の中に晒した。 「おみずしゃんは、ゆっくちできにゃいいいい!! とけちゃうよぉおおお!!!」 と怯えて垂れ流されるおそろしーしーも、あにゃるにこびりついているうんうんと一緒に流されていく。 さらに、地面の土や砂埃で全体的にくすんだ色をしていて、親ゆっくりの唾液や自身のうんしーでべっとべとだったおちびちゃんの肌が、本来のきれいですべすべなものになっていく。 責め苦とも言えなくないシャワーさんを終えて胴付きの手に乗せられたおちびちゃんを見て、周囲のゆっくりたちは 「れいむのおちびちゃん、とってもはんっさむ!だよぉお!!! きまってるよぉおお!!」 「ゆゆーっ! まりちゃって、そんなに びゆっくりだっちゃにょ!?」 と歓声を上げ、泣いていた子まりちゃおちびちゃんも、「ゆわぁ……」と笑顔を取り戻す。 そして、地面に置かれた瞬間、まだ乾いていない身体とあんよに土がべったりと付き、一瞬で前より酷い泥団子に戻るのだった。 汚れるだけならまだしも、水気を取る手段も発想もないのにゆっくりを水に濡らすという行為は、さらに酷い結果を引き起こした。 熱い太陽さんが輝く真夏でなくても、体表の肌なら自然乾燥でいくらでも乾く。 じめじめした梅雨さんも過ぎているので、よっぽどじっとしているのでない限り、下部になるあんよがカビるということもない。 しかし、細かい糸のような砂糖細工が何本も織り込まれている髪の毛さんは別だ。 砂まみれでぐしゃぐしゃになった髪の毛にきゅーてぃくるっ!を取り戻してあげようと、おちびちゃんたちのうち数ゆんが冷水だけのシャンプーさんを決行され、後日頭皮をゆカビに侵されることとなった。 「まりちゃのあちゃまが かゆいかゆいだよぉおお!!」 「むーじゅむーじゅしゅるのじぇええええ!! ゆんやあああ!!」 「かいてにぇえええ!! ゆっくりかーりかーりごーしごーししちぇええええ!! しゅぐでいいよおぉお!!」 もったんもったん跳ねて暴れ回り、逆さになって地面に頭を押し付けても、それは小さな饅頭がころんと転げただけに過ぎず、頭皮には緩い一様な圧力しか感じない。 自身あるいは親ゆっくりがお下げや揉み上げで頭を掻こうとしてもふさふさと表面をむず痒く撫でることしかできない。 最終的に、尖った木の枝で「しゅじゅつっ!」を試みた親ゆっくりによって子まりちゃが体を貫かれて永遠にゆっくりし、子れいみゅは髪の毛を毟り取られて禿げ饅頭となった挙句、非ゆっくち症でやはり永遠にゆっくりした。 親ゆっくりたちは胴付きが元凶だと責め、せいっさい!だと騒ぎ立てたが、長ぱちゅりーが胴付きの持つあまあまによる示談を提案すると飛びつくように同意し、事件はともかく一件落着となった。 その後、自分のおちびちゃんにシャンプーさんをして欲しいという親ゆっくりが何ゆんか現れたが、長ぱちゅりーに止められた胴付きまりさがそれに応じることはなかった。 …………。 名誉挽回を図る胴付きは、近づくだけで怖がるような仕草を見せるようになっていたおちびちゃんたちを再び無理やり連れ出し、今度は飼いゆ専用プレイス「ゆっくりプレイス」に赴いた。 毎日子ども達が遊びに来るほど繁盛している公園ではないが、ここにも柔らかな芝生と硬い植垣からなる「ゆっくりプレイス」が設けられており、休日になればクソ飼いゆとクソ飼い主が遊びに来ているらしい。 野良にとっては禁じられた領域とでもいうべき「ゆっくりプレイス」に、胴付きまりさはずんずんと入っていく。 汚い胴無し野良ゆっくりがナメクジのような速度でゆったんゆったん入っていこうとすれば、その丸い体を脚で蹴飛ばされるか、小さなおちびちゃんなら摘み上げられてぽーい!される。 ゆっくりに愛護的な人間さんなら乱暴まではせずとも、少なくとも中には入れさせてくれない。 おちびちゃんたちが中に入れるのは、一般的に保護の対象とされている胴付き形態のまりさがいるからだ。 「まりさたちも ゆっくりなかまにいれてねっ! まりさが おちびちゃんたちの ほごしゃさんだよっ!」 珍しいものを見たとばかりに目を丸くし、「ゆっくりしていってね……?」と挨拶までしてくれる愛で人間さんの横を胴付きはゆっへん!と胸を張って通り過ぎる。 一方で帽子に乗ったり、胸に抱えられていたりするおちびちゃんたちが、大きな人間さんを見て「ゆぴぃぃ……」と鳴く。 「さあっ、おちびちゃんたちっ! ここがおちびちゃんたちの ゆっくりぷれいすっ!だよっ!! たくさんぴょんぴょんしても、ずーりずーりしても、ぜんっぜん!いたくないでしょ? ゆっくりできるあそびばさんで、いーっぱいいーっぱい!ゆっくりしていってねぇっ!!」 「ゆぅぅぅ……ぴょん、ぴょん……ふーかふーか……」 「ゆっくち、できりゅのじぇ……ゆわーいぃ」 人間さんや飼いゆっくりの目を気にしてびくびくそわそわとしながらも、人間さんと同じく自分たちをどうにでも出来る力をもつ恐ろしい胴付きまりさの管理下にいる手前、言われたとおりに「ゆっくり」しなくてはならない。 「くしょのりゃ!!」 「「「ゆひぃっ!」」」 隅の方でおずおずと蠢いていた野良おちびちゃんたちのところに、毛糸のお洋服を着た飼いゆの子れいみゅが跳ねてくる。 その後ろには家族と思しき成ゆんれいむ・まりさと、子まりちゃが付いてきていた。 「にゃんで こうきっ!なれーみゅのゆっくちぷれいしゅに、ぶさいくな くしょのりゃがいりゅにょ!? にゃんなの? そのごみくじゅみちゃいなおかざりは? れいみゅたちゆっくちを、ばかにしちぇりゅにょ? じぇんじぇん!ゆっくちできにゃいにぇえ!! いましゅぐ ちんでにぇ! そしちゃら、きえちぇにぇ!」 「なに かっちぇに まりちゃしゃまをみてりゅのじぇっ!! なまいきなのじぇっ! ずがたかいのじぇっ! げしぇんなのらゆっくちは、くっしゃいうんうんにかおをつっこんでてにぇ! ずっとでいいのじぇっ!!」 「「「ゆぴぃぃぃい……!!」」」 「れいむのかわいいおちびちゃんたちっ! だめだよっ、のらゆっくちにちかづいちゃ……!」 「ゆっくりこっちにもどってくるのぜぇっ! きょういくっ!にわるいのぜえっ!!」 親ゆっくりが汚物を見るように顔をしかめて、野良おちびちゃんたちを見下す。 可哀想なおちびちゃんたちは、自分たちよりはるかに大きなおとなっ!のゆっくりが近付いてきたことでさらに震え上がってしまう。 ゴツゴツのゴム底お洋服を履いた親まりさや親れいむが少し動くたび、ぷしゃっ!とおそろしーしーを漏らしている。 「でみょでみょ、おきゃーしゃっ! おとーしゃっ! こいつりゃ、じぇんっじぇん!ゆっくちしちぇにゃいのじぇっ! むーかむーかしゅりゅのじぇっ!」 「きちゃにゃい くしょのりゃとは ゆっくちできにゃいよっ! くじょっ!しちぇにぇっ!」 「ゆゆぅぅ……たしかにくそのらは ゆっくりしてないのぜ。それなら、さいっきょう!のまりさが ゆっくりせいっさい!してやるのぜ……?」 「まりさまで、だめだよっ! のらゆっくりは、ゆっくりしないでいきてるんだよっ!? がいっちゅう!のうんうんゆっくりなんだよっ!? みてっ! あのぶっさいくなおかおっ! きっとじぶんのうんうんさんをたべてるんだよぉ……!! ゆげぇ! そこらへんのなまごみさんより、ずーっと!きたないよぉ……ゆかびがうつっちゃうよぉぉ……!!」 「ゆゆ~ん、のりゃゆっくちは うんうんゆっくちぃ~♪ まりちゃしゃまの かりぇいな あにゃるふーりふーりだんすっ!で、しっしんするがいいのじぇっ! それぇっ! もりゅん もりゅんっ!もりゅりゅりゅーんっ! ゆきゃっ!うんうんでりゅっ!!」 「れいみゅのうんうん、たべちぇもいいよっ! いっぴゃいあげりゅにぇえっ! ゆんゆんゆーんっ!! ゆぅぅん、れーみゅは まるで てんししゃんぢゃよぉぉおっ! やさししゅぎて ぎょめんにぇえええ!!」 「ゆぅぅぅ!! ゆっくりやめてねっ!!!」 飼いゆっくりがゲスな本性を丸出しにし、ゆっくり特有の間延びした口調で野良おちびちゃんたちへの罵倒の文句を垂れ終わってから、胴付きまりさは颯爽と両者の間に立ちはだかった。 飼いゆから向けられる悪意に野良おちびちゃんたちは完全にやられ、ぴーぴー鳴いておそろしーしーおそろうんうんを垂れ流し、ゲス飼いゆたちの言うとおりのうんうんゆっくりになってしまっている。 「のらゆっくりだって、ゆっくりだよっ! れいむたちとおなじで いきてるんだよっ!! ゆっくりしたいんだよっ!! なのに、どーして なかまはずれにするのっ!? どーして、いじめたりするのっ!? かいゆっくりと のらゆっくりで、なにがちがうっていうのおおお!!?」 「ゆぁ~ん? なにいってるのぜぇ……のらゆっくりは ゆっくりしてないのぜ。ぜんっぜん ちがうのぜ」 「しょんなことも わからにゃいにょ? ばきゃにゃにょ? ちぬの?」 「あんこのうにゃのじぇっ!」 「あんこのうじゃないよっ! まりさは、えいっゆん!なんだよっ! おなじゆっくりとゆっくりできないまりさたちのほうが、よっぽどあんこのうで、ぜんっぜん!ゆっくりしてないよお!!」 胴付きまりさは眉をキリッ!と立てて、両の手を広げて庇うように立ちはだかる。 顎を突き上げてゲスな表情を丸出しにしている小さめのバランスボール大の飼いまりさも同じく、おちびやれいむの前に一歩踏み出した。 「ゆぁ~んっ? どうっつき!だからって、ちょーしのってるんじゃないのぜぇ? げすなくそどうつきは、まりさまのぷくぅ!で いますぐしぬのぜえ!! ぷぅぅっくうううう!!!」 「ゆんっ! なんなの? そんなのぜーんっぜん!!こわくないよっ! ゆっくりしてないよっ! まりさがなーでなーでしてあげるから、ゆっくりしてねっ! そしたら、おちびちゃんたちにあやまってねえ! ほら、なーでなーでぇ!!」 「ゆゆっ! や、やべろおおっ!!! まりざ、おちびちゃんじゃだいんだぞぉおお!! ゆっがあああ!!! やせがまんっ!しないで、さっさとしねえええ!!! ちーちーもらせえええ!! ぷくぷくぷっくうぅぅう!!」 飼いまりさが必死な顔でふくれっ面をし、胴付きまりさがひたすらその頭を撫でる。 次第に飼いまりさはプライドが折れて涙目になり、一方の胴付きまりさもいつまでも「はんっせい!」してくれない飼いまりさの態度にオロオロし始める。 おちびに「おとーしゃんは ざこゆっくりだったんぢゃにぇっ!」と馬鹿にされた飼いまりさが 「ちに゛ぇ ちにぇ゛え゛え゛!! どぼじぢぇ、まりぢゃのしゃいきょーな たいっあちゃり!でちにゃにゃいにょじぇええ!! ゆぴぃぃい……!!」 と胴付きまりさにじゃれ付き始めるが、紛いなりにも上半身の体重をしっかりと支えるほど丈夫な胴付きのあんよに大した効果はない。 「いたくないよっ!」「かんじないよっ!」と胴付きがそれを受け止め始めてからやっと、飼いまりさの飼い主がやって来た。 両者とも「なんにもわるいことしてないっ!」と確信していただろうその場は、英ゆんまりさ曰く飼いまりさが飼い主さんに叱られ胴付きの方は立派な――間違いなく何かの勝手な解釈だろうが――ゆっくりだと褒められて、収められた。 調子付いた胴付きは、ペットの漏らしたクソを片付けている最中の飼い主さんに向かって 「おねーさんっ! かいゆっくりのしつけっ!はちゃんとやってねっ! そのこたち、げすになっちゃうよっ!」 と苦言まで呈したそうだ。 それでもおちびちゃん含め全ゆん無事帰ってきたということは、その人間さんはよっぽど心の広い愛で人間だったのだろう。 あるいは増長した飼いゆにすら強く出られない弱気コミュ障な真性奴隷なのかもしれない。 ぶつくさと負け惜しみを言いながら遠ざかっていく親れいむと飼いおちびちゃんたち、その後ろを必死にぴょんぴょん付いていく涙目の親まりさ。 飼い主のお姉さんになーでなーでしてもらい、ご機嫌直しにあまあまを与えられている。 遠めに胴付きたちの方をちらりと見やり、お前ら野良はこんなあまあま食べられないだろう? といやらしい視線を送ってくる。 親まりさに至っては先ほどの腹いせか、口を大きく開けて麦チョコをくっちゃくっちゃ噛み砕いている様を見せつけ、まだ震えていたらしい涙声で「じーああばせええ!!」と大きく叫んだそうだ。 おちびちゃんたちが羨ましそうな、それでいて絶対に手に入らないことを悟っている表情で、そちらを見る。 胴付きまりさはそんなおちびちゃんたちにそっと寄り添い、飼いゆたちを負けじと睨み返し、自らのお帽子に手をかけた。 うぞぞぞぞぞぞ…… 「ゆんっ! おちびちゃんたちぃっ! まりさたちも、おやつにしようねぇ!」 そう言って胴付きが山盛り取り出したのは、れいむや長ぱちゅりーが教えてやったお山で取れる極上の食べ物――芋虫さんや蝶々さんである。 こちらを見ていた飼いゆや飼い主の人間さんたちが、「まりさたちのおやつがあまりにゆっくりしていた」ためにびっくりして、一斉にうげえええ!と顔をしかめる。 「さあっ! ゆっくりめしあがれっ!」 おちびちゃんたちが震えて身を寄せ集まっている方に、芋虫の山をざーっと寄せる。 恐らくおちびちゃんたちはぐぐっと後ずさりするように身を反らしただろう。 飼いゆとしての教育も経験も受けていない生粋野良のおちびちゃんにとって、胴無しの親が極々たまに取ってくる芋虫さんは確かにごちそうであった。 が、目の前で飼いゆたちが食べている本当のあまあまを実際に見てしまった今ではどうか。 きれいなお洋服とお飾りの”ゆっくりした”人間さんや飼いゆたちが見るからに気持ち悪がっているものを、どう思うのか。 胴付きの手によって引き寄せられ、うねうぬうねええ!!と激しくのたうつこれらは、本当にゆっくりしていると言えるか。 「ゆぅぅ……れーみゅ、いらにゃい……」 「おにゃか、すいちぇにゃいのじぇ……ゆっくち……」 「ゆゆーっ! えんりょ!しなくていいんだよぉっ! おちびちゃんたちのためにとってきたんだからねっ! いっぱい むーしゃむーしゃしようねぇっ! ほーら、いもむしさん、こんにちわあっ!」 「ゆゆぅぅぅ……!!やめちぇにぇ、やめちぇにぇええ!! れーみゅ、いらにゃいっていっちぇりゅにょにぃぃい!!」 「ゆふふー、ほらー、むーしゃむーしゃっ! しあわせ? しあわせえーっ? ゆわわーい!」 「ゆびゅびゅぶぅぅう……むーぢゃむーぢゃぁあ……!! ゆぇぇぇ……!!」 「い、いいのじぇっ! まりちゃはおにゃかいっぴゃぃ……ゆ、ゆぁぁあ……ゆ、ゆんやあ゛あ゛ばばば!!」 小さな体を掴まれた子れいみゅ子まりちゃが、叫んで開いた口に無理やり芋虫を詰め込まれていく。 肉厚でじゅーしー!な芋虫さんたちがたくっさん!お口に飛び込んでくるのは、かつてのおちびちゃんたちにとっては夢にまで見るようなしあわせー!だっただろう。 それなのに、今は何故か目から涙が溢れ、口の中でもぞもぞもぞぉぉ!と蠢く芋虫たちに吐きそうな気持ち悪さまで感じてしまう。 その様子を遠くで見ていた飼いゆたちは、普段の都会派な暮らしとはかけ離れたグロテスクさに驚愕し、お下げや揉み上げで目を覆い、あるものはゆっぷ!えれえれと軽く吐餡してしまう。 何より人間であるクソ飼い主たちが、仮にも自分たちが愛でているものと同じ形をした生物のそんな生々しい姿を見せ付けられて何を思ったのか、想像に難くない。 直後に「らんちさんをたべにかえった」という人間さんたちは、多分二度とここに来ないだろう。 --------------------------------------------------------- 「――ってねっ! おちびちゃんたち、しあわせーしあわせー!っていってくれるんだよっ!! ゆゆぅぅん!! ゆんっ! こんどあのまりさたちがきたら、まりさのいもむしさんをゆっくりごちそうしてあげるんだよっ! ……ゆゆっ! だいじょーぶ!だよっ! おちびちゃんたちっ! またまりさたちがいじわるしてきたら、まりさがゆっくりまもってあげるからねぇ!!」 「ゆはぁ…………」 今現在ダンボールハウスの隣に座り、えーゆーたん!をとうとうと語る胴付きまりさを見て、苦悩多き野良れいむの気分は限りなく重たかった。 胴付きのお帽子のツバに乗せられたおちびちゃんたちが、胴付きが興奮してゆん!ゆん!と動くたび、転げ落ちそうになって「ゆぴぃい!!」と鳴いている。 今日もまた飼いゆ専用ゆっくりプレイスに”遊びに”行くそうだ。 「はぁ……まりさ、もっとゆっくりしたらどうなの。 なんでそんなにあくせくしてるの? しぬの?」 「ゆゆー?」 れいむは自分のおちびちゃんたちを隠すようにダンボールハウスの奥、自分のお尻の下に挟んで、胡乱な目で胴付きを見上げた。 「だって、まりさはえいっゆん!になりたいんだよっ……みんなに、ゆっくりしてほしいんだよっ……! きょうもねっ、むれのみんなが『おちびをよろしくのぜっ!』『あそんであげてねっ! ゆっくりでいいよっ!』 っておねがいしてくれたんだよっ! まりさは、ほいくゆんなんだよっ! ゆっへんっ!」 「ゆっはぁぁぁ……すくいようがないね……」 れいむは既に大体予想できていたことが確認され、諦めの気持ちをより強くした。 「みんなをゆっくりさせるため」という錦の旗を振りかざして行動する胴付きまりさ。 その志や立派かもしれないが、何をしても「それなりー」にしかならないことに焦り、こいつは節度を失っている。 例えば先のおちびちゃんゆカビ事件もそうだし、生ゴミを狩ってくる行為にだって様々な二次的リスクが付きまとう。 「ゆっくりプレイス」でついに飼いゆや人間さんにまで接触し始めた胴付きに、長ぱちゅりーやありすも危機感を募らせているそうだ。 お山の麓まで何往復もして持ち込まれたダンボールハウスでいっぱいになった群れの中心部で、同じくぷれぜんとっ!された特別ふーかふーかな羽毛布団の端にちょこんと埋まりながら、長ぱちゅりーもありすも胴付きに説得をしているとのことだった。 「もっとゆっくりしたら?」と。 しかし、そう言うぱちゅりーたちも、自分たちの放つ言葉が詭弁に過ぎないことをよく理解しているはずだ。 大人しくゆっくりしていろとは言っても、胴無しの群れに胴付きがただ佇んで、どうゆっくりすればいいのか。 胴無しゆっくりと一緒のおうちには入れない。 すーりすーりと頬と頬を合わせ、互いに信頼しあった目線を交わすことも難しい。 番になってくれるものも当然いない。 養子になりたいといってくれるおちびちゃんすらいない。 そもそも成ゆんの方にも胴付きまりさを本当に慕っているゆっくりなど、いないかもしれない。 胴付きまりさのおかげで日々の家事や労働が一気になくなったゆっくりたちは、ひたすらおうちに篭って文字通りゆっくりしたり、すっきりしたりしている。 以前は狩りやその他共同で行わざるを得ない仕事を通じて多少は交流があった群れは、今やただの集合住宅状態。 その中で唯一ゆっくりせず働く、自分たちとは微妙に違う異質な存在。四肢のあるその姿。 同族として認識しないといったことこそなけれど、さて、そのような”ゆっくりしていない”存在、自分たちのためにひたすら奉仕する存在を、ゆっくりたちは一般に何と呼んでいたか。 まりさの帽子の上から、ちっちゃなれいみゅが縋るような目で同種たるれいむを見る。 それはれいみゅの下にある胴付きの暢気な顔と対照的で、その対比にれいむは再び重苦しい気分になった。 英ゆん改め保育ゆんを自称し、おちびちゃんたちの面倒を見ているつもりのおめでたい胴付き。 その”ほいくえん”の実態は、うんうん製造機の厄介払いに過ぎない。 あんよの弱い子ゆっくりが枝や石だらけの群れの中心部で遊びまわるわけにも行かず、昼も夜も狭いダンボールハウスに一家がぎゅうぎゅう詰めになる。 土や埃で薄汚れ、緩いあにゃるまみゅまみゅから常にうんしーを垂れ流して悪臭を発する子ゆっくりは、実ゆっくりのように見ているだけでゆっくりできるような都合のいい存在ではない。 常に何かしらゆっくりできない・ゆっくりしたいと、自分たち親のプライドを傷つけるようなことを呟く。 すっきりーの邪魔にもなるし、生えてきた茎をその場で間引く場合にもやはりおちびがいては気が引けてゆっくりできない。 そんなうざったいだけの、かつ殺せば殺したで群れの掟に違反してしまうわ死臭はしてしまうわの何とも面倒くさい存在を、日中ぐらい胴付きに引き取ってもらえれば都合がいい。 胴付きはおちびちゃんをゆっくりさせる気満々なようだし、きっと楽しくやってる。子育て上手でごめんね!というわけだ。 そういう親ゆっくりのエゴに振り回されている子ゆっくりたちは――食われずに生きているだけしあわせ、かどうかもよく分からないが――何とも可哀想だ。 せめて胴付きがまともな”ほいくえん”をやってくれればいいのに。 「ほいくえんがやりたいなら、せんようのだんぼーるでもよういすれば? それで、しねば?」 と提案したれいむに対して、胴付きは眉をひそめたムカつく泣き顔で 「そんなの だめだよっ! れいむたちにもわるいけど……だんぼーるさんなんかじゃ、おちびちゃんたちのあんよは、ぜんっぜん!ゆっくりできないよっ!」 と反論してきた。 独善ここに極まれり。何が「あんよがゆっくり」だ。 部分に目を捉われていて、大切なことを見失っている。 おちびちゃんたちが嫌がってるのだとストレートに言ってやっても、全然聞かない。 下手におちびちゃんたちが利口でイイ子に「ゆっくちできりゅ……」と振舞っている、振舞わざるをえないのが厄介だ。 一体こいつの目におちびちゃんたちの姿は本当に映っているのだろうか。 何故おちびちゃんたちが泣きそうな顔をしているのが分からないのだ。 いっそのことぱちゅりーが長の権限を以って「ついっほう!」してくれればいいのだが、そうもいかない。 ぱちゅりーは長といってもこんな小規模な群れでは実質的な権力など持たない、ただの意見調整役の知恵者に過ぎない。 それに中身はともあれ胴無しに比べて圧倒的な身体スペックを持ち、自分たちに好意を寄せて献身的に尽くしてくれる胴付きまりさを、生きる上で何が起こるか分からない野良の群れが容易く手放せるわけがない。 群れの多くのゆっくりが都合のいい労働力としての胴付きに「ここでゆっくりしていって」ほしいと思っているだろうし、群れを統べる長の身としては尚更だ。 この奇妙で危なっかしい胴付きに飼い主さんのところに帰ることを促しているのは、恐らく自分だけだろう。 「――いむっ! れいむぅっ! きいてるのっ!? ゆっくりーっ!!」 「ああ、はいはい、ゆっくりゆっくり。れいむのおちびちゃんたちは、きょうも れいむとゆっくりするよっ どうつきさんは きえてねっ……。そしたら、しんでねっ……!」 毎回「れいむのおちびちゃんたちもっ!」と誘ってくるのを、れいむはそのたび突っ返していた。 ゆふーやれやれと立ち上がる胴付きまりさのお帽子から、先ほどの脱力して潰れかけた子れいみゅが依然寂しそうな目を送ってくる。 可哀想なのは、そう、まさにこのおちびちゃんたちだ。 母性というものがあるのだろうれいむの胸に、哀しく熱い感情がこみ上げてきてしまう。 れいむ自身もこの腐敗した世界にわが子を生み堕としてしまったことに何度も懺悔と後悔の念を抱いたが、この自分勝手な胴付きに囚われたおちびちゃんたちこそ、本当に何のために生まれてきたのか。 親ゆっくりにとっては都合のいいときに愛でるだけの憂さ晴らしの愛玩奴隷および非常食。 胴付きまりさにとっても己の英ゆんっぷりを発揮するための道具に過ぎない。 そして、そんなエゴだけで自分たちを好き勝手振り回す存在は、どちらも小さな饅頭にとっては抗えるべくも無い強大さを持っている。 大きさが5倍も6倍も違う成ゆんと、それよりさらに巨大で手足まで備えている胴付き。 何より厄介で泣きたくなる事実として、おちびちゃんたちは親ゆっくりあるいは胴付きの庇護の下にいなければ決して生き延びられないということだ。 危険な地面さんを移動することも出来ないし、ご飯さんも狩ってこれない。 自分だけでは最低限の清潔も保てないので、うんしーするたびにゆカビ感染のリスクが上がる。 下手すると蟻やその他の小さな昆虫にだって捕食されてしまいかねない脆弱な存在。 自分の無力さをこれ以上なく知り尽くしている哀れで醜い可愛い小饅頭たちは、動くものの最底辺にいるゆっくりのさらに最底辺にて虐げられながらも、卑屈になって必死に無価値な生にしがみついているのだ。 しかし、そう嘆くれいむ自身も所詮は無力な饅頭。 草の間をかき分けて颯爽と去っていく胴付きまりさの背を、ただ見送ることしか出来なかった。 --------------------------------------------------------- 「ゆっくりプレイス」についたまりさとおちびちゃんたち。 ある程度近くに来た時点で人間さんの姿も見えず、飼いゆが発する例の特徴的な声も聞こえなかったが、果たしてこの日の「ゆっくりプレイス」は初めてまりさたちの貸切だった。 おちびちゃんたちの顔にわずかに笑顔が宿る。 自分たちより圧倒的にしあわせー!で”ゆっくり”しており、それなのに自分たちをいじめてくる飼いゆや人間さんたちがいなければ、ここは確かにふーかふーかひーろびーろしてゆっくりできる場所なのだ。 「ゆゆんっ! きょうはまりさたちだけだねっ! おもいっきり、ゆーっくり!あそぼうねぇ!!」 「「「ゆ……ゆゆーん♪」」」 小さなおちびちゃんたちが、拙いあんよでもったんもったんとかけっこ!をする。 街にいた頃も今のおうちでも「うるさいよっ!」と禁止されているおうただって、好きなだけ歌って、好きなだけ姉妹やお友だち、そして胴付きさんに褒めてもらえる。 見上げられないほど身体の大きな胴付きさんがやってくれる「たかーいたかーい」は、まさしく「うちゅうっ!」まで飛び上がるほどの高揚感だ。 飼いゆたちの食べているものと比較されなければ、胴付きさんが出してくれる芋虫さんは、ああほら、やっぱりゆっくりしている。 こんなにたくさんのごちそうを、いつもいじめてくるクソ親のいないところで、大好きな姉妹やお友だちたちとゆっくりむーしゃむーしゃし、存分にしあわせー!を分かち合う。 この充実感。この開放感。 まさにここはゆっくりプレイスであり、胴付きさんは英ゆんだ。 「ゆゆ~ん……おちびちゃんたち、とーってもゆっくりしてるよぉ」 おちびちゃんたちの姿を笑顔で見守るまりさの方も、胸がいっぱいになるような温かさを感じていた。 迎えにも探しにも来ないところを見るとまりさを捨てたのであろうお兄さんだが、きっと最後に餞別として、まりさにただのおとーさんに留まらない真の英ゆんになれるチャンスを与えてくれたのだ。 街中や加工所でなく、いつもの小さな自然公園でもない、他ならぬこのお山の自然公園に置いていかれたからこそ、まりさは多くのことを学ぶことが出来た。 野良ゆっくりのことをよく知れたし、他人および他ゆん任せでなく自立的に行動することも出来る。 自分は、やっとほんっとう!のおとなっ!になったのだ。 胸に手を当てて、ぽーかぽーかする達成感を噛み締めていたまりさは、しかし、気付けなかった。 あるいは気付いていたとしても、意味はなかったかもしれない。 貸切の「ゆっくりプレイス」の入り口に立てられた案内の看板。 れいむとまりさのイラストが描かれたそこにはいつもどおりの魔術文字――ここは飼いゆを遊ばせるところです云々といった説明――の他に、真新しいスクロールがもう一枚。 「 一 斉 駆 除 の お 知 ら せ 」 範囲を示す地図と文字だけがプリントされたその殺風景な紙を、まりさは読むことが出来なかった。 つづく ---------------------------------------------------------
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ここでは、僕がちびちゃとでよく会う「常連さん」、僕がよく喋る仲間を紹介しますww 天翔 4ee4b085e165a6629399bf07bf9c933a.jpg 備考 最近友だちになった、喧嘩を売られると人が変わったように 口調がかわる、ほかの喧嘩師からみるとまぁまぁ喧嘩は強い。(僕から見るとです・・・) 一樹 383136cb4e0d7da8e9edb7c77ac93ca0.jpg 備考 昼から夕方にかけて出没する。1ヶ月前ぐらいに友達になった どちらかといえば平和軍(でもたまに死ねなどという言葉を使う) 新生愛上尾 ca16a48e8f399a4b70cf5a60f583ae50.jpg 備考 ちびちゃとにいくとよく見かけるこちらから見ると 常連だと思う・・・たぶんそうだと思います、タイピング結構早いです。 ERISU 936e2a4450cf956ecd56defaa38944b8.jpg 備考 ちびちゃとはもちろんもなちゃとでも有名な喧嘩師です、ちなみに僕のリア友です 昼ごろからちびちゃとにいます!タイピング糞早いです!! 最近るんと@ちくわさんの運動会に潜入したりしてるそうです・・・ 春 5c0a845e4c7f1f0910479ae508a21c1e.jpg 備考 ちびちゃとの常連さん、昼ごろに良く見かけるタイピングはまぁまぁ早い 僕と良く喋りますww!バスケを習っているらしいんですね! るんと@ちくわ runto1214?cmd=upload act=open pageid=2 file=tikuwa.jpg 備考 最近skypeでもちびちゃとでも見かけないですね ERISUがたまに運動会とかに潜入捜査しているようです・・・ 注・ss無許可です(笑)
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ゆ食文化圏 14KB 虐待-普通 理不尽 ツガイ 現代 うんしー ぺにまむ 初投稿です ずっとROMしてたんですが、みなさんの上げる素敵なシチュに QNQNが止まらなくなり、自分でも書いてしまいました。 初めて書いたSSがゆ虐になるとは。。 いくつかのネタは、先達の皆さんの素敵なシチュからインスパイア させていだだきました。 これからいろいろ精進していきます。 ■ ゆ食文化圏 ゆっくりが日本に突如出現して早数年。 動く饅頭であるそれは、世界の食糧難地域の食生活を劇的に変えた。 放っておくだけで勝手に増え、小麦粉の皮と甘い中身をもつゆっくりは 主食としても甘味としても重宝され、世界中に爆発的に広められていった。 --- ここはとある国の国営ゆっくり養殖施設。 体育館程の広さの建物の中で、たくさんのゆっくり達が育てられている。 『ゆっくり~のひ~♪ まったり~のひ~♪ すっきり~のひ~♪』 『ゆゅ~ん、れいむのうたはきょうもすごくゆっくりしてるのぜ!』 『ちゅぎはれいみゅのびゃんだよ! ちゅごきゅゆっきゅりできるよ!』 『まりちゃもうちゃうー!』 『『ゆーーゆぅゆゆー、ゆっきゅりー、ちていっちぇにぇー!!』』 『とってもとかいはながっしょうね! さすがまりさのおちびちゃん』 『ゆゆーん、それほどでもあるのぜ。ありすはみるめがあるのぜ』 『むきゅ。そろそろごはんのじかんね。みんなでれすとらんへいどうしましょ』 ぱちゅりーの声でごはんのことを思い出した皆は、ゆっくりと「れすとらん」と呼んでいる 餌場に移動を始めた。 『そろそろまりさのどれいがくるじかんなのぜ。きょうはどんなあまあまなのぜ』 『むきゅ。まりさがいくらつよいからといって、そんなこといっちゃだめよ。あれはみんなのどれいなんだから』 『うっかりしてたのぜ』 ゆっくり達が「どれい」と呼んでいるのは、餌係の職員達である。 家畜用の飼料に廃棄処分になったゆっくりや回収したうんうんを混ぜあわせたものを 日に3回、餌としてゆっくり達に提供している。 『おいどれい!まちくたびれたのぜ!あいかわらずむのうなのぜ!』 『ごしゅじんさまをまたせるなんて、まったくとかいはじゃないわ』 『ばきゃなの!』 『おちびちゃん、ばかにばかっていっちゃかわいそうよ。むきゅきゅ』 餌係の職員は気にとめる様子もなく、淡々と仕事を進めている。 『ばーきゃ!ばーきゃ!』 とニヤニヤしながら話しかけてくる子まりさに、笑顔を返すほどの余裕もあるようだ。 ゆっくり達の腹が膨れると、次はすーぱーうんうんたいむの時間が始まる。 ゆっくりした「れすとらん」は、「おといれ」に早変わり。 『きょうもたべすぎたよ。れいむうんうんするよ! すっきりー!!』 『まりさはまだたべてるんだぜぇぇぇ!!! うんうんどれはゆっくりしないではやくかたづけろぉお!!! ゆぎゃ! ぎだないてでまりざざまにざわるなぁー!!』 『あいかわらずのろまでむのうなどれいね、まったくとかいはじゃないわ』 食事が終わる頃になると、掃除係の職員がそこら中にまき散らされるうんうんを回収してまわる。 「おといれ」と化した「れすとらん」を、次の餌やりまでに綺麗にするのが仕事だ。 彼らは「うんうんどれい」と呼ばれ、触るとゆっくりできないとして誰も近寄らない。 『どれいがめにはいるとゆっくりできないわ。とかいはなおうちにもどりましょ』 ちなみに「おうち」といってもさすがに家族ごとの個室があるわけではない。 たっぷりと置かれている干し草を家族ごとにこーでぃねいとし、それぞれのゆっくりプレイスを 作り出している。 あかちゃん達は「鳥の巣べっどさん」でゆっくりし、ありす達はとかいはなおふとんを作りに余念がない。 ゆっくり達はこれからゆっくりとした午後のおひるねたいむに入るのだ。 ここはゆっくり達にとってまさに楽園。理想のゆっくりプレイスと言えるだろう。 三食昼寝にどれい付き。 まさにこの世の春を謳歌していた。 そんなゆっくりしているゆっくり達にとって、最上級にゆっくりできるイベントがある。 人間達が(ゆっくり視点で)豪華な車を引いて現れ、特別にゆっくりしたゆっくりを選び、 別のぷれいすに案内するのだ。 『ゆゆゆゆぅっ! ついにまりさがえらばれたのぜ!! いまごろまりささまのいだいさにきづくなんて、ゆっくりしすぎなのぜ!』 『もちろんとかいはなありすとおちびちゃんもいっしょよ!』 『『ゆっきゅりー』』 『みんなで「ゆんごく」でゆっくりしましょうねー』 今回選ばれたのは、でっぷり太ってなすび型になったまりさとありす。そして子まりさ2匹に 子ありす2匹。 家族単位で選ばれることが多く、毎日でっぷり太ったゆっくり達が数十家族運ばれていく。 ここは国営のゆっくり養殖施設。 もちろん運ばれる先は、ゆっくり達が信じている「ゆんごく」などではない。 たっぷりとゆっくりしたゆっくりは、これからの生活の変化で身が引き締められ、コクが増す。 どうやらこのまりさ一家は、市場へと運ばれていったようだ。 --- 『『おそらをとんでるみたーい!』』 台車から出されたまりさ一家は、それぞれ網をかけられ、店先に吊るされた。 西瓜サイズの親たちに、大きめのみかんサイズの子供たち。 遠目に見ると、網にかかったフルーツが吊るしてあるようにも見えなくはない。 ・・・ぷりん、ぷりん、と動いていなければの話だが。 『ゆゆっ、なんだかいたくなってきたのぜ』 吊るされていたせいで、網があんよに食い込んできたようだ。 『おいっ!そこのどれい! おそらはもういいから、ゆっくりしないでおろすのぜ』 『きこえないのぜ! はやくするのぜ!!』 店員は笑顔。 持ち前の営業スマイルを発揮して、お客の相手をしている。 「前のがダメになっちったんだけど、生きのいいゆっくりはないかしら」 「それならこのまりさとありすの番なんていかがですか? 今しがた直送されたぷりんぷりんで、もちもちのあんよもたっぷり面積ありますよ!」 『までぃざをむじずるなあぁぁぁ!!』 「あらあら生きがいいわねえ。ありすの方はおとなしいみたいだけどどうなのかしら」 「ありすはこのぐらいの方が、れいぱー化しなくていいんですよ。 れいぱーになると、すぐに品質落ちちゃいますからねえ」 彼女を見つめる2つの視線に、ありすは 『まったくとかいはじゃないわね。ありすのびはだをいためるこのあみさんを はやくとってもらいたいのだけど、ここのどれいはぐずすぎるわ。ばかなのかしら』 とため息をついている。 「うーん、繁殖楽だし、たまにはありすもいいかしら。それじゃ番でもらうわ」 「まいどありっ! おちびちゃんはどうしましょう?」 「そうねえ、増えるまで時間かかるし、子まりさでももらおうかしら」 「ありがとうございますっ! 奥さんきれいだから、子ありすもおまけっ!」 「まったくもう!」 こうしてまりさ、ありす、子まりさ、子ありすの4匹は主婦に買われていった。 途中 『はやぐまでぃさをおろせえぇ!!』 『まって!まだおちびちゃんがのこってるでしょ!このぐずどこみてるのぉぉぉ!!』 『おきゃぁしゃぁあん!まっでよぉぉ。ありしゅをおいてかないでぇえ』 『まりさ!まりさもいぐのに!!づれでげぇぇぇ!!』 『までぃさをおろせぇぇ!!!!』 などというやり取りがあったようだが、市場の喧騒にかき消され、気にとめる者は誰もいなかった。 --- 家にたどり着くと、まりさとありすは台所の専用フックに網ごと吊るされ、 子まりさと子ありすは網のまま調理台の上に転がされた。 吊るされた2匹の下にも調理台があり、桶が並べて置いてある。 主婦は桶に水をはると、亀の子だわしをつけ、まりさを網の上からゴシゴシとこすり始めた。 『!!!』 『ゆっぎゃああああ! やべどやべっぶっ』 ぷりんぷりんと暴れて洗いづらいので、ヘッドロックの要領でまりさの顔を抑えこみ、 一気にゴシゴシこすりだす。 『やめてええ!! まりさがいやがってるでしょおぉぉ! ごのいながものぉぉぉ!!』 あんよは特に念入りに。汚れはすべて削り取ってしまう。 ひとまず下半分はOK。 ゆひぃ、ゆひぃ、と荒い息をついているまりさの網のフックを外し、桶にどぼんと落とす。 残った汚れを綺麗にすすぐと、今度はおもむろに帽子を取り上げ 『までぃさのすてきなおぼうぶぶぶ』 逆さにして水につけると、髪をゴシゴシ洗っていく。 帽子も中身をゴミ箱に空け、一緒に洗ってしまう。 15分後、そこにはすっかり綺麗になったまりさが吊るされていた。 『すっきりー! だけど次からどれいはもっとやさしくあらうのぜ。 かんだいなまりささまは、こんかいだけとくべつにゆるしてやるのぜ。 それといいかげんまりざをおろぜぇぇ!!!!』 --- 親まりさがタワシで洗われているのを見ていた子まりさは、ちょっとだけ おそろちーちーを漏らしたものの、すっかり綺麗になった親をみて安心したのか 初めて見る台所に興味を示し、網を引きずってずりずり移動を始めた。 それを見た主婦は網を持ち上げ、子まりさを網から転げ出させる。 『ゆぅぅ、めがまわりゅぅ』 子まりさは2,3回転して壁にぶつかって止まり、網からは遅れて お帽子がヒラヒラと落ちてきた。 『このいながものぉ! おちびちゃんをざつにあつかうなぁ!』 主婦はちょうど外れた帽子に処置を施そうと手を伸ばすが、 思いのほか回復が早かった子まりさはさっと帽子に飛びつくと、 つばを思い切り噛み締めた。 『むぐぐぐぅ、まりしゃのおぼうぢ、どらないでぇ』 よっぼど手放したくないのか、持ち上げても帽子をくわえたまま離さない。 手首のスナップを効かせ、調理台にびたん、びたんと叩きつけるが、 目にいっぱいの涙をためながら全力で口をつぐんでいる。 『やべろおぉぉ! ありずのとがいはなおちびちゃんをいじめるなぁ!』 『ゆゆっ! おいこらどれい! まりさのおちびちゃんを離せ! そしてしねぇ!!』 ふぅ、と主婦はため息をつくと、空いている方の手で調理バサミを取り出し 帽子のてっぺんに、ちょんちょん、と十字の切れ込みを入れた。 『ゆっぎゃぁぁああああ!!! まりしゃのゆっくじとしたおぼうじがぁぁああ!!!』 ピンと尖っていた自慢のお帽子の先端は4つに分かれ、くたっ、ぺろんと折れ曲がる。 こうなってはもう修復はきかないだろう。 ささやかな抵抗もむなしく帽子に処置を施された子まりさは、目をいっぱいに見開いて もうゆっくりしているとは言えなくなってしまった自分の半身を見ながら、涙を流し続けている。 『もうおこったのぜ! ばかなどれいはまりさがじきじきにせいっさいしてやるのぜ!!!』 主婦はボウルに水を張ると砂糖水の涙でべとべとになった子まりさを掴み、 ジャガイモのようにゴシゴシと洗い始める。 『ゆがっ、ゆぶぶぶぶがっ』 『おちびちゃぁあああああん!!!!!!!!』 『ゆがああ!!! せいっさいしてやるからごごがらだぜぇええ!!!』 そして軽く水を切って子まりさを蒸し器に入れると、時計を一瞥して火をつけた。 --- 主婦は蒸し器から徐々に蒸気が上がってくるのを確認すると、今夜の主食の準備をするため ぷりんぷりんと暴れるまりさの前に立った。 『こんなげすなどれはみたことないんだぜ! せいっさいしてやるからはやくおろせえぇ!!』 『おちびちゃぁぁん! ぎごえだらありずにおへんじじでぇ』 水を吸った上、長時間目の粗い網に吊るされていたまりさのあんよは網に食い込み、弾力のある まるい餅が連なったようになっている。 主婦はそのうちの一つを掴み、引っ張って軽くねじると、手にしていた調理バサミで思い切りちょんぎった。 『ゆっっぎゃああああ!!!! いだいいぃぃぃ!! まりざのびきゃくがあああぁぁ』 主婦はちょんぎったあんよの弾力を確かめ満足げにうなずくとボウルに放り込み、 ジョッキン! と二撃目を入れる。 『びぎぃぃぃいいい!! やべどぉおおお!!! くそどれいがぁあああ!!!』 ジョキン 『いだいいぃぃぃ!! もうやべでぇえええ』 ジョキン 『ごべんなぁざぃぃ! あやばりばずがらぁぁぁ』 ジョキン 『ごべんなざあい! ごべんなざあい! ごべんな』 ジョキン 『ぴぐぅぅぅぅ!!! かひぃ、、かひぃぃ、、』 ジョキン ジョキン ジョキン ジョキン ジョキン ジョキン ・・・ 一通り切り取りが終わり、ボウルあんよで一杯になる頃には、 3度目の気絶から目を覚まし、砂糖水の汗と涙でグチョグチョになったまりさが 呆然と吊るされていた。 主婦の切り取りは慣れたもので、餡子は一切漏れていない。 途中少しだけ吐き出した餡子は別の用途があるのかボウルに入れて取ってある。 隣で見ていたありすはおそろしーしーを漏らして気絶していた。 「ただいまー」 切り取ったあんよをさっと水洗いしていると、子供が帰ってきた。 「あっ! あたらしいゆっくりだ! 今夜はご馳走だねえ」 ゆっくりのあんよは何度でも再生するが、再生後一度もぴょんぴょんしていないあんよと ずっと使われていたあんよでは、やはりおいしさが違うのだ。 ちなみにこの近所では、子供たちはゆっくりの鳴き声が聞こえたらご飯が近いので 家に帰る約束になっている。 「今夜は久しぶりのお造りよー。子まりさと子ありすもあるからソースは2種類!」 「やったー! お皿運んでるね」 再生したあんよはお造りには向かないため、食べられるのは新しいゆっくりを 入れたときだけ。2,3ヶ月に一度の贅沢なのだ。 ちなみに普段は、茹でたり揚げたり焼いたりして食べている。 形状も、丸いままでも、薄く伸ばしても、麺状にしてもいいので、意外とバリエーションが多く いろいろな料理を楽しめる。 まさに、世界の食糧難の救世主なのだ。 --- そうこうしているうちに、子まりさを取り出す時間になったようだ。 火を止めて蒸し器を開けると、壁に体当たりする格好で子まりさが蒸しあがっていた。 取り出して皿に移すと、微妙にぴくぴく動いている。 餡子の流出はなく、皮が溶けるほど長時間も蒸していないので死ぬことはない。 蒸すことで餡子を甘くやわらかくし皮をむきやすくする、これがこの工程の意味だ。 主婦は子まりさの後頭部を両手の指でつまむと、餡子がもれないようにゆっくりと 皮を引き裂きはじめた。 『ゆぴっ!』 目を覚ましたらしい。突然後頭部を襲った痛みに戸惑っているようだ。 主婦はそのまま丁寧に頭の上からあんよまで、縦に皮を破っていく。 『ゆぴゃぁぁ! やめちぇぇぇ! もういちゃいのやじゃぁぁああ』 子まりさは逃げようとするが、たっぷりと蒸気を吸ったあんよは動かない。 縦に切れ目を入れるのが終わると、主婦は左右の皮をそれぞれつまみ ゆっくりと皮を剥がしはじめた。 『ゆっぎゃああああ! やべで! むかないでぇぇぇええ!!』 後ろ半分の皮を剥き終わると、先程先端に切込を入れた子まりさの帽子を 取り出し、顔が上に来るように子まりさを静かに置いた。 『ゆぴいいいぃぃぃ! せながいだいいいいぃぃぃ』 半身であるお帽子とはいえ、餡子を直接に触れるのは相当痛いのだろう。 主婦は気に止めず、最後の仕上げに顔面の皮を静かに剥がした。 『はがれりゅぅぅぅうう! がお、おがおまっでぇええええ!』 帽子の中には、目玉と口が付いた餡子の塊がひとつ、砂糖水の涙を流している。 主婦は帽子を静かに持ち上げると、ついていたリボンをほどく。 そしてつばを広げて餡子の塊を帽子の奥に落とすと、リボンをキュッと結んで 帽子のくちを閉めた。 帽子の先端に切れ目が入っているため、ちょうど生クリーム絞りのようになっている。 食卓ではこれを絞り、切り取ったあんよにつけて食べるのだ。 ちなみに餡子を使いすぎなければ、親が吐いた餡子あたりを食べさせることにより 子まりさはそれなりに長期間持つ。 でっぷりと太った親のぱさぱさの餡子をしっとりと甘い餡子に変換する生活の知恵なのだ。 --- 最後の仕上げは子ありすだ。とっくの昔に気絶している子ありすを網から出し、 両手でやさしく包みこむと、ゆっくりと振動を与えていく。 程なくして、子ありすが目を覚ますのと同時にぺにぺにが顔をのぞかせた。 『んほぉぉぉぉ! どれはなかなかてくにしゃんねえぇぇぇ!』 そしてぺにぺにが十分に大きくなったのを確認すると、調理用バサミを取り出し、 先端に、ちょん、ちょん、と十字の切れ込みを入れた。 『んっびゃぁぁぁあああああ!! あでぃすのどかいはなぺにぺにがぁあああああ!!!』 手の中で、子ありすはものすごく暴れている。手馴れた主婦はそれを右手に持ち替えると、 左手で小皿をぺにぺにの先端におき、カスタードを搾り出し始めた。 『いだいいぃぃぃっんほぉぉぉぉ!! ずっきりー! ずっきりー!! ずっきりぃぃぃいいいだぁいいぃぃぃぃんほぉぉぉぉ!!!』 強制的に絞り出される痛みと、ぺにぺにをカスタードが通過するすっきり感が混じり合い、 独特の辛さを生み出しているようだ。 この工程により、子ありすのカスタードにほどよいコクと甘みが生まれる。 先に搾り出してしまうのは、帽子に包まれた子まりさと違い、暴れて搾りづらいからだ。 すっきりの表情も子供の情操教育上よろしくない。 ちなみに子まりさ同様、親のカスタードを食べさせておけばそれなりに長期間持つ。 切れ込みをいれたぺにぺにはすぐにくっつくため、置いておいてもカスタードが漏れないのがいい。 先端を切り取らず十字に切れ込みを入れるのも、長持ちさせるための生活の知恵だった。 --- これでゆっくりの準備は完了だ。 あとは残り物のおかずを出せば夕食が始まる。 このような、しあわせーな生活は、数年前には考えられなかった。 食料は切り詰めても足りず、甘味などめったに食べられない。 ゆっくりはまさに救世主であった。 中には悲鳴を嫌う人もいるが、ほとんどの人は日本語で叫ぶ悲鳴をただの鳴き声と認識している。 この主婦も、鳴き声に意味があることにすら気付いてないのではないだろうか。 この国の家族の幸せな食卓は、ゆっくりの鳴き声から始まる。 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ゆっくりの言葉ってどうなるんだろうな? 日本発祥だから日本語?それとも、原始ゆっくりが日本語を覚えたように、外国語に順応する? どっちにしても主食にするなら肉まんや稲荷寿司のほうが需要があるだろうに。 通常種は甘すぎるww(特にこの処置の後だと尚の事ww) -- 2018-01-18 06 44 32 ワタシノクニジャヒジリヲニコミマス -- 2014-01-20 22 30 20 ↓↓めいりんだけは中国にいそうだ。 ・・・・・・汚染されてそうだけど(小声) -- 2013-09-26 12 47 24 「あんよのおつくり」ってどんなもんだろう?饅頭の皮と餡子少しw 外人さんが旨いと思うかな? -- 2012-09-10 13 56 09 なるほど、外国のお話だったのか 外国にはゆっくりいないんだな -- 2010-12-03 15 19 46 面白い話だなー 色んな国で独特の料理方法が生まれて夢が広がるなw -- 2010-11-04 20 38 31 仲間が増えるよ! -- 2010-10-05 13 34 35 なんでゆっくりって身動き取れない絶望的状況にも関わらず人間様に全く媚びずに悪態ついて死ぬ間際まで自分が優位だと思い込んでるんだろう そんな餡子脳だからこそ虐待しがいがあるんだけどね -- 2010-09-04 04 43 32 とても面白い話だったよ ↓↓ようこそ!こちら側へ!歓迎します!! -- 2010-08-12 02 26 59 おかしくないよ。それは正常な反応だよ。虐待されてるとこなんてもう死ぬほど楽しいよ。 -- 2010-08-11 12 43 55 普通に美味そうなんですけど。 ゆっくりって現実に存在したら、やっぱり第一には食料として扱われるんだろうな。 ……オレ頭おかしくなったのかな?ゲスゆっくりが悪態ついてると楽しくて楽しくて、笑っちゃうんだけど。 -- 2010-08-06 20 02 31
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『ぼくは重機』 13KB いじめ 虐待 いたづら 家族崩壊 姉妹 子ゆ 現代 普通 ※正解率50%の問題!少年が明日に行く工事現場はどこか!? 10歳になる少年は工事現場が大層お気に入りだった 『ガガガガガ』とブルドーザーの鋼鉄のフォークが瓦礫をおもちゃの様に押し崩し 『ガチャンガチャン』とショベルカーの大きなスプーンが土をプリンのようにすくい上げ 『ウィィィン』と高架クレーンが資材を空高く、ネコをつまみ上げるように持ち上げる 少年はそんな光景に心を躍らせ 毎日の様に工事現場でお気に入りの重機を飽きることなく眺めていた。 「僕も重機になりたい」 今日も近所のビル建設現場で、少年は心底そう考えて空想にふけっていた。 ブルドーザーのように力持ちな自分 ショベルカーのように手が長い自分 クレーンのように背の高い自分 実際には背が低く痩せっぽちな (そしてさらに、それが原因でよく学校でからかわれる)少年には そう思いを馳せる事がこの上無い幸福な時間だった。 影が長く伸びた時間帯 「どうしたら重機になれるのかな?そうすれば僕だって皆に馬鹿にされないのに・・・」 少年は自転車を押し歩きながら、楽園に後ろ髪を引かれるような思いで家路を歩いている。 「れいむおちびちゃん!おひさまがばいばいするからおうちかろーね!」 「ゆっきゅち!まりさ!またあしたあそぼーね!」 「まりさおちびちゃんも、ままといっしょにおうちかえろーね!」 「ゆっきゅり!れいみゅまたあしたゆっきゅりあそぼーね!」 伏目がちに取り止めの無い考えが頭を巡っている少年の耳に甲高い声が入り、顔を上げる。 何事かとびっくり顔で歩道から公園を覗き見ると そこには芝生の上を隅のトイレの方へと行進するゆっくり親子が見て取れた。 「ゆ~ゆ~ゆっくりのひ~まったりのひ~」 「「ゆぅ~ゆぅ~ゆっきゅりのひ~まっちゃりのひ~」」 「ゆふふふ、おちびちゃんたち!おうたがとってもじょうずだよ!」 「ゆっへん!れいむは、れいむおきゃーさんのこどもだもん!」 「ゆ!まりさもれいみゅおねーちゃんにはまけないんだじぇ!」 「ゆゆ~ん、すっごいうれしいよ~」 彼の顔はすぐに曇った。 少年はゆっくりが嫌いだった。いや、大嫌いだった。 弱くて、脆いくせに何時だって自信たっぷりの言動。 そのくせ、ちょっと小突くと酷く卑屈になり 皮が破れれば、不気味な絶叫とともに死ぬ。 まるで『弱い自分の醜さ全てを見せつけられる』みたいで大嫌いだった 故に今、目の前で ニコニコとした顔で、ゆ~ゆ~と歌い、プリんプリんと下膨れの顎を振りながら巣に戻る ゆっくり達がたまらなく汚く、許せない気がした。 「・・・・ぼくは重機だ」 少年は、黙って公園の入り口に自転車を止めると、人影の無い園内へと入っていった。 「ゆ~ふっふんふ~ゆゆんゆう~おちびちゃんたちごはんにしましょ~」 「ごはんだじぇ!!ごはんだじぇ!!ゆっくり~」 「れいみゅおなかぺこぺこだよぉ!ゆっきゅり!」 「ゆふふ!あわてないでね!たくさんあるからね!ゆっくりたべようね!」 トイレの裏にダンボール箱の居を構えるれいむはシングルマザーだった。 亡き夫(人間に絡んで潰されたまりさ)との子供である、子れいむと子まりさを気丈にも独りで育てている。 町ゆっくりにしては母性の強い珍しいれいむだった。 日中は公園で知り合った他のゆっくり家族に子供を預け、れいむ自身は一日かけて 食料集めに駆けずり回り、夜に集めた食料を最愛の子供達と食べる。 「むーちゃ、むーちゃ、し、しあわせーーー!!」 「きょうもごはんさんとってもおいしいのじぇ!!」 「ゆふふ、おちびちゃんたちあわてないでね。ゆっくりたべるんだよ。」 「「ゆっくりりかいしたよ!!」」 ごはんをむーしゃむーしゃする子ゆっくり達の喜びの声が響き渡る。 みかんのダンボール箱を横にしたただけのおうちではあるが 赤ちゃん言葉も抜け始めた遊び盛りの子ゆっくり達には多少狭くもあるが 町ゆっくりにとっては立派な住まいだ。 「それでね!おきゃーさん!きょうれいむね!ぱちゅりーにおうたをほめられたんだよ!とってもゆっくりしてるって!」 「まりさはありすにこくっはくされたんだじぇ!おとなになったらいっしょになろうねっていわれたんだじぇ!」 「ゆゆ~ん!おちびちゃんたちはきょうもとってもゆっくりできたんだね!えらいよ!」 食後の団欒の一時。子ゆっくり達は先を争って一日のゆっくりとした出来事を報告する。 本当に小さなゆくっりぷれいすではあるが 家族にとっては何物にも変えがたいゆっくりぷれいすだった。 「ゆふぁぁ・・・それでにぇ・・えっとにぇ」 「ゆふぅ・・ゆふぅ・・ありすとすっごいゆっくり・・じぇ・・」 「ゆふふ、おちびちゃんたち、きょうもいっぱいあそんだからおねむだね」 まだ時刻は夕方ではあったが、子供たちはお腹一杯になるとすぐに睡魔に襲われてしまった。 母れいむは静かに子守唄を歌いながら唯一の寝具である薄汚れたタオルを子供達に被せる。 (ゆふ~・・・・まりさ。きょうもおちびちゃんたちはとってもゆっくりしたよ) 慈しむ瞳でゆぴーゆぴー寝息を立てる子供達を眺めながら自分も食事を取る。 れいむの食事はトイレの裏に生えてるペンペン草やドクダミ草。 ゆっくりの味覚にしても不味いシロモノだ。 しかし、一日かけて集める食料全ては育ち盛りの我が子の為だ (ゆゆぅ・・・にがいよぉぉ・・・・あまあまさんたべたいよぅ) 顔をしかめながらも、れいむは毎日それを食べている。 「ゆぴ~・・・・おきゃーさん・・だいすき・・ずっとゆきゅり・・・」 「・・・おきゃーさんをいじめるやつはゆるさないん・・だじぇ・・・かかってくるのじぇ・・こわいのか・・じぇ」 ふと子供達の寝言が漏れた。 母れいむの顔があっという間に柔らかくなる。 (まいにちごはんさんをあつめるのはたいへんだけど・・・・ でも、おちびちゃんのえがおをみればそんなのふきとんじゃうよ! にがいくささんもとってもおいしくなるよ!) 一般的にれいむ種は狩猟(餌集め)が苦手だ。 基本の運動能力が低いのに加え、携帯貯蔵が可能な帽子も無い。 それでもこの母れいむは一生懸命に頑張っている。本当に珍しい個体だった。 「そろそろ・・・れいむも・・・ゆっくりやすむよ・・・」 公園内の街頭が灯き始める頃、食事を終えた母れいむも眼をつぶり体を休めた。 「あしたも・・・がんばる・・「ウィーン。ガガガガ。ブルドーザーが近づいています。」 メリメリメリ 音を立ててダンボールのおうちが軋み始める 「ゆわあわわわわわ!!!なになに!!なにがおきたの!!!」 寝入り端、突然の出来事に飛び起きる母れいむ、目を凝らすと真っ黒い何かが おうちの入り口を塞ぐように迫ってきていた。 「ウィーン。ガガガガ。ブルドーザーが近づいています。」 それは言うまでも無く少年の声だった。 彼は公園に落ちていたベニヤ板を拾い、それを盾の様に持ち 屈んだ姿勢で全体重をかけて"ゆっくりぷれいす"に押し込んでいるのだ。 しかし、中の母れいむはそんな事分かる訳も無くパニック状態だ。 「ゆわわっ!!ゆっくりしないで!!おちびちゃんはゆっくりしないでおきてね!!!」 「ゆぴ?おきゃーさんなにかあったの?ゆっくりしてね」 「ゆう・・・あささんなのかじぇ?」 「いいからはやくおきてねぇぇぇぇ!!!」 少年が板を押し付けるダンボール中身がガタガタ騒ぎ始めた。 「進行方向にご注意ください。進行方向にご注意ください。」 少年は"進行方向"を曲げない メリメリメリ 「ゆひぃぃ!!なんなのじぇ!!なんなのじぇ!!おうちがこわれちゃうのじぇぇぇぇ!!!」 「おぎゃぁぁさぁぁんん!!!つぶれぢゃうぅぅぅれいみゅだぢちゅぶれちゃうぅぅっぅ!!」 「おおおおおおちついてね!!おちびちゃんたちおちついてね!!」 ダンボール内の残り幅が15cmぐらいになった所で家族の悲鳴はピークに達した。 「停止します。停止します。」 と、そこで少年は動きを止め押し付けていたベニヤ板を取り外す。 グシャグシャになった"ゆっくりぷれいす"の中には恐怖による涙と涎まみれのゆっくり家族が居た。 「ゆゆゆ・・・た、たしゅかったのじぇ・・・?」 「きょわかったよぉぉぉぉ!!しにゅかとおもっちゃよぉぉ」 「・・・おちびちゃんもうだいじょうぶだからなかないで・・・・ゆゆっ!!にんげんさん!?」 母れいむの顔が安堵したのも束の間、暗がりでも分かる位に顔が青ざめている。 街燈に照らされる少年はそんな饅頭を冷たく見降ろして、ポツリと呟いた 「ピー。クレーン車が発進します。ご注意ください。」 母れいむは、少年の声に我にかえると大急ぎで避難を始める。 「ゆゆゆ!!おちびちゃん!まだあぶないよ!ゆっくりしないでおかあさんのくちに入ってね!」 「ゆっくりりかいしたのじぇ!!!ゆっくりいそいでおくちにはいるのじぇ!」 「おかーしゃんのおくちのなかならゆっくりぃぃぃぃぃ「ピー。赤ちゃんゆっくりを捕獲しました。捕獲しました。」 少年は子れいむが母の大口に隠れる前にもみあげをを掴み上げた。 「!?れいみゅおねーちゃんがきえたのじぇぇ!!??」 「ゆわわわぁぁああんん!!!!まりさぁぁぁ!!おぎゃぁぁぁさぁぁあんん!!!!」 「!?れいむおちびちゃぁぁぁぁんんん!!??」 母れいむと子まりさの頭上に、聞きなれた子れいむの叫び声が上がる。 地上の饅頭達から見上げると、はるか上方に片方のもみ上げで全体重を支える子れいむの姿があった。 「れいみゅ・・・おしょらをとんじぇ・・・ゆわぁぁぁ!!ぴこぴこがいぢゃいよぉぉぉ!!!」 「ウィィィィン。クレーンアームを旋回します。クレーンアームを旋回します」 地上に残された母子が驚愕の表情で固まっているのを尻目に 少年は腕を水平に伸ばし、つま先を軸にしてその場で回転を始めた。 遠心力が最大になるのは腕の先、の手の先、のもみあげの先、の子れいむだ。 ブン・・・・ブン・・・・ブン・・・・ 「ゆひぃぃぃぃ!!!!!ぎょわいよぉぉぉぉぉ!!!だじゅげでぇぇぇぇ!!!」 「おちびちゃぁぁん!!おぢびじゃぁぁぁんん!!!」 「れいむおねぇぇぢゃぁぁぁんんん!!!」 子れいむの悲鳴が輪になって響き渡る。 回転する少年の足元にいる母と妹まりさは必死に叫ぶが何もできない。いや、何ができるだろう? ブン・・・・ブン・・・・ブン・・・・ 「ゆきひぃぃぃぃぃ・・・・・えれえれえれ~~~~」 「!?おぎゃぁぁさん!!れいむおねぇぢゃんがあんござんをはいでるよぉぉぉ!!」 「にんげんさん!!おねがいでず!!やめでぐだざい!!ゆっぐりどまっでぐだざい!! れいぶのおぢびぢゃんが、しんじゃいまず!!こもままじゃゆっぐりでぎなぐなっぢゃいますぅぅぅぅ!!!」 回転の輪から悲鳴では無く嘔吐餡が飛び散りだした しかし、母れいむには何もできない。少年の傍で泣いて謝ってすがるだけだ。 ブン・・・・ブン・・・・ブヅン!!「ゆっぎゃっぁあ───── もみあげが千切れた ────あぁぁぁ」ベシャンッ!! 子れいむトイレの壁に顔面から激突した。 まるで腐った柿が地面に落ちるような音を立てて。 ズ・・・ズ・・・ズルンズルンズズズズ・・・・ボドン 衝突後、地球の重力には逆らえず潰れた饅頭はトイレの壁を地面までずり落ちてくる 餡子の墨汁で縦線を描く様に "潰れた顔"をさらに"削り降ろす"ようにして 思わず駆け寄る、母と妹 「おちびちゃぁん!!おちびちゃぁぁん!!」 「おねぇちゃぁぁん!!ゆっくりぃぃ!!ゆっくりぃぃ!!!」 トイレの壁をずり下がった子れいむは微動だにしない。 後姿はついさっきまでご飯食べて「ちあわちぇー」と言っていた時と変わらず 壁に向かってボーっと座っているようにも見える。 そんなわが子に意味不明な希望的観測を抱きながらを、母れいむが優しく振り向かせ顔を覗き込む。 「れいむおちびちゃん!!だいじょう・・・・!!!!!!??????」 しかし、トイレの壁に激突した"それ"の前面は 裂けたザクロのようであり、顔のパーツは一つも無かった。 眼が潰れ散っているから「うれちいよー」と二度と涙できない。 口が爆ぜ飛んでるから「ちあわちぇー!!」と二度と言えない。 何より子れいむは、もう死んでいる。 「────ああ・・・ああ・・・れいむ・・おちびちゃん・・・」 「れいみゅ・・おねぇ・・ちゃん・・・ゆっ!!ゆげぇぇ!!!えれぇえれぇーーーー!!」 子れいむの遺体を前に母れいむは顔色を失い、幼い妹まりさはショックで嘔吐餡してしまった。 「ゆげぇ!ゆげぇぇ!!・・・もういやだよぉっ!!もういやだよぉっ!!なんじぇまりだちをいじめるのぉぉぉ!!!」 「!?ゆっくり!ゆっくりりして!まりさおちびちゃん!!」 餡を吐き続けながら泣き叫ぶ子まりさ、狼狽する母れいむ 次にどうすればよいのか? 2匹は最早分からない。 しかし、周囲は容赦しない 手に太めの木の枝を持ち、ユラリと近づいてくる少年。 「パイルドライバーによる杭工事を開始します。ご注意ください」 「!?っまりさおちびちゃん!!れいむのおくちにはいってね!!ゆっくりしないではいってね!!」 「ゆぇーーんゆぇーーん、もういやだよぉぉ!!こんなゆっぐりできないのなんてどっかいってね!!だいっきらいだじぇ!」 「まりさおちびちゃん!!しっかりして!!れいむおこるよ!!」 幼児特有の愚図りを発症する子まりさ、母れいむもギリギリの精神状態だが 本当に瀬戸際のラインで理性と母性が勝っていた 「もうゆっくりできないよ!おちびちゃんちょっとがまんしてね!」 「ゆぁぁ!!おがぁぁさん!!なにずるのおぉぉお!!『バクンっ!』 迫ってくる少年に間に合わないと判断した母れいむは口を大きく開き 強引に、我が子を食べるように口の中に収容した。 しかし、その為中の子まりさのパニックは収まらない。 「ゆぎゃぁぁぁ!!ぐらいよぉぉぉ!!ごわいよぉぉぉ!!」 「いだい!!いだいよ!!やめてね!まりさおちびちゃん!!あばれないでね!ゆっくりしてね! でも、これでゆっくりしないでいそいでにげるよ!!」 と、頬を膨らませた母れいむが踵を返すと目の前には靴があった。 誰のか?少年のだ。 「ゆ・・ひ・・?・・・へ・・・」 グサッ!! 少年は手に持った木の枝を思いっきり足元の饅頭に突き刺す 「ゆぁぁぁ!!!いぢゃいぃぃぃぃ!!!でいぶのほっぺたざんがぁぁ!!!」 「おがぁしゃん!!おがぁーしゃん!!どおじたのぉぉ!!??」 ズボッ!! 木の枝を饅頭から引き抜く 子供の声がすると言う事は、まりさには突き刺さらなかったようだ 「ゆひっ・・ゆひっ・・・れいぶは・・こどもを・・・ばぼるんだよ・・・」 頬に大穴を空けられて、それでもなお子供を守り貫こうとする母の意志。 その決意が、ボロボロの体に鞭打って、少年からの遠ざかろうとする。 だから、少年は一歩間合いを詰めた。 「パイルドライバーによる杭工事を開始します。ご注意ください」 「でいぶだちは!!にげるんだよ!!ばりさとのこどもを!!ぜったいにぃぃっぁぁぁあぁあああ!!!」 「ゆひぃあっ!!いぢゃいいいいよぉぉぉ!!!!」 グサッ!! 少年は手に持った木の枝を思いっきり足元の饅頭に突き刺す 今度は先程とは逆の頬を貫く。中の子まりさにも当たったようだった。 「ゆーひぃ・・ゆーひぃ・どぉして・・・ごんなごど・・・するの・・・?」 「僕は・・・・」 虫の息の母れいむが涙を流す瞳には 「・・・・重機だ」 少年の薄い笑みが映り込んでいた。 「回転掘削工事を始めます。ドリルスピンスイッチオン。」 「「ゆっ────!!!!!!!!!!!!」」 "掻き回される母子"の悲鳴が、トイレの裏に響き渡った。 日が完全に暮れた時間帯。公園の駐輪場 「・・・悪いことしたなぁ。ゴミをゴミ箱に入れ忘れちゃった。次から気をつけなきゃ」 少年は自宅へと大急ぎで自転車を漕いで帰っていった。 明日の工事現場の事を思い浮かべながら ───後書き─── もっと狂気に満ちたSSを書きたいなー 作:六人 「下卑た快感」 「アザーワールド」 「公認虐待」 「真理の扉」 「全自動復讐システム」 「全自動復讐システム -初期型-」 「全自動復讐システム -世界」 「ただ淡々と」 「幸運」 「2cmの世界」
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『僕は絶対にれいむを捨てない』 12KB いじめ 小ネタ 飼いゆ 野良ゆ 現代 愛護人間 小ネタです 僕は絶対にれいむを捨てない またもや小ネタ 独自設定満載 一部のゆっくりは潰れません、それが嫌な方はcloses 金曜、仕事が終わった僕は飼いゆっくりのれいむ(金・胴無し)にあるお土産を持って帰宅した。 そのお土産とは僕の職場で主催するゆっくりのお見合いパーティーの招待状である。 それはれいむが金バッヂを拾得して1年、僕に逆らう様な事はせずゲス化の兆候もなく これなら子育てもしっかり出来るだろうと判断された上司の計らいでもあった。 だが・・・ 「おかえりなさい、おにいさん」 「ゆ?だれなのぜ?ここはまりささまのゆっくりぷれいすなのぜ!」 僕が帰宅した時その目に映ったのは勝手に上がりこんでいた野良のまりさと 既にすっきりーも済ませていたらしく、茎に3つの赤ゆを実らせた飼いゆのれいむであった・・・。 僕が突然のショックに戸惑ってると・・・ 「おにいさんにそんなこといったらだめだよまりさ!そんなこといったらすてられちゃうでしょ!」 いや、そもそもそんなどっぷりと汚れたまりさなんぞを飼ってやった憶えはない。 「だいじょうぶなのぜれいむ、あんなやつまりささまのてきじゃないのぜ!」 お前もお前でどっからそんな自信が出てくるの? 何てやりとりを心の中でツッコミ入れてたらまりさがこっちを振り向いた。 「おいどれい!おなかがぺーこぺーこになったからはやくまりささまにあまあまをもってくるのぜ!」 開口一番がそれですか・・・救い様がねぇ。 確かに僕は愛で派の人間でゆっくりは可愛がるべきだと思っている。 だが・・・ 「残念だがまりさ、お前なんぞにくれてやるあまあまはない」 「はぁぁぁああー?なにいってるのぜ!まりさはれいむのだんなさんなのぜぇー!」 れいむは僕の仕事を知らない・・・ 「そうか・・・じゃあ」 「はやくするのぜ!さもないとせいっさいしてやるのぜぇ!」 僕は鞄から仕事の時に被る事を義務付けられている帽子を被った。 「時間外だが仕方がない・・・お前を・・・駆除させて貰おうか」 そう・・・れいむは知らない・・・僕が[加工所の職員]だという事を。 「え・・・あ・・・・あ・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 まりさの最初の威勢は何処へやら・・・ 僕が加工所職員の帽子を被っただけで既におそろしーしーにうんうんまで漏らし 歯をガチガチと鳴らし全身をガタガタと震わせてしまっている。 っつーかまりさ、お前加工所の職員を何だと思ってたんだ? お前がついさっきまで舐めきってたのと同じ人間なんだが・・・知らなかったのか? 「おいおい、どうしたんだいまりさ?僕をせいっさいするんじゃないのか?」 「ひ・・・ひっ・・・ゆがああああああああああああああああああ!!」 (ポフッ ポフッ) まりさは目の焦点も合っておらず、半狂乱で体当たりを繰り返している。 だが悲しいかな所詮はゆっくり、こんな攻撃じゃ虫すら潰せないだろう。 「ど・・・どぼじで・・・どぼじでおにいさんが・・・かこうじょのしょくいんさんなの?」 ふとれいむに目をやると冷や汗を流しつつ目を点にしていた。 まあ・・・こうなるだろうと思ったから黙ってたんだけど。 「じねぇ!おとーさんとおかーさんといもーとたちをえいっえんにゆっくりさせたげすはじねぇぇぇ!」 (ポフッ ポフッ ポフッ ポフッ) そうか、こいつ・・・一斉駆除の生き残りか。 こんなゲスいゆっくりがよくもまあ生き残れた物だ・・・運の良い奴め。 もっとも、その運もこの場で使い果たした様だが。 (ポフッ ポフッ ポフッ ポフッ) さて・・・そろそろ鬱陶しくなってきたし終わらせるか。 僕は善良なゆっくりは愛でるけどゲスにはビキィって来るんだ。 「じねぇ!じね・・・(ヒョイッ)おそらをとんでるみたい!」 はいはいテンプレはいいから・・・。 「やいじじい、はやくまりささまをおろすのぜ!そうすればはんっごろしにしてやるのぜ!」 「お前如きが出来る訳ないだろばぁーか」 「ゆがああああああああああああああああ!まりさはばかじゃないのぜえええええええ!」 近くで見ると精神衛生上大変宜しくないのでそのまま落とす。 (ドシャッ)「ゆげぇっ!」 ただしおぼうしは僕の手の中で。 「ゆ゛ゆ゛っ!おぼうし!まりさのおぼうしどこにいったのぜ!」 とりあえずまりさのおぼうしをタンスの上に置いて再びれいむに向いた。 「なあれいむ、お前とすっきりーしたまりさはこいつか?」 「ゆゆっ!」 今の今まで呆けていたれいむは僕の一言で覚醒し、状況を把握するべく部屋全体を見渡した。 そしてテンプレ通りの展開になるだろうと思いきや・・・ 「そうだよ!れいむはおぼうしがないだけじゃだまされないよ! そのまりさはれいむのだんなさまだよ!」 流石に金を取っただけの事はあったらしい・・・賢い奴め。 「そうか、これで騙されてくれてりゃまだ諦めもついたんだがな・・・」 「なにいってるの!はやくまりさにおぼうしをかえしてあげてね!かわいそうだよ!」 「だがそれは無理だ、何故ならこのまりさは今・・・「(グシャッ)ゆびっ!」死んだから」 まりさを潰して大体3分が経過した辺りで唖然としていたれいむがようやく自体を飲み込んだ。 「ま・・・まりざああああああああああああああ!」 そして潰れ饅頭と化したまりさに駆け寄ろうとしたれいむをすかさず透明な箱へと入れた。 「どぼじで・・・どぼじでごんなごどじだのおおおおおおおおおおおお!!」 やれやれ・・・説明をご所望か。 「れいむ、僕は言ったよな?野良とすっきりーなんてしちゃ駄目だって そもそも野良とお話するな、家に近づけるなって」 「たしかにいわれたけど・・・でもあのまりさはとくべつだったんだよ!」 何がどう特別なんだっての・・・だがそれを問い詰めた所で答えられる筈がない。 僕は話をしつつれいむの頭にゆっくりの成長促進剤を注射し、赤ゆ達はあっという間に生まれ落ちようとしていた。 因みにれいむは注射された事にすら気が付いていなかった。 何せ・・・ 「・・・ゆ?おちびちゃんがもううまれようとしてるよっ!」 これである。 そこらのゆっくりよりも賢い筈なのにこういう所はどんなゆっくりよりも鈍い。 とりあえず僕が赤ゆを急ぎ大きくさせたのはこの赤ゆを使ってゲス化しない様にれいむを教育する為で 間違っても一緒に飼ってやる為ではない。 「なあれいむ、ひとつ言っておく事があるんだが・・・」 「ゆ?なに、おにいさん?」 「その赤ゆが生まれたらその茎を赤ゆに食べさせるんだよな?」 「そうだよ、これはおちびちゃんたちのさいしょのごはんさんなんだよ!」 「こんな話がある・・・どんなに親がゆっくりしてると思っていても、その赤ゆがゆっくりしてないゆっくりだった場合は 最初の茎を食べた瞬間しあわせーと言う事も無く永遠にゆっくりしてしまうと」 「ゆゆ!?」 無論こんなのは嘘である。 こんな嘘を言うのはれいむの頭の茎にグリーンタバスコを塗る際に気が付かれない様にするためだ。 因みにこのれいむは少量の辛味ではビクともしない様に鍛えてあるので、万が一食べた所で気付く事はないだろう。 「だ・・・だいじょうぶだよっ!れいむとまりさのおちびちゃんはとてもゆっくりしているよっ!」 「そうかい・・・」 何てやり取りをしている間に先端の赤れいむが今にも生まれようとしていた。 「んゆ・・・ゆぅー!」(ボフンッ) 因みに透明な箱の底には脱脂綿を敷いてあるので怪我をする事はないだろう・・・。 「ゆ・・・ゆっくりしちぇいっちぇにぇっ!」 「ゆっくりしていってね!おちびちゃん!」 何てやり取りが3回に渡って繰り返され、遂に最初の食事の時がやってきた。 もみあげで器用に引き抜いた茎をキッチリ三等分に分け、赤ゆ達の前に差し出して・・・ 「さあおちびちゃん、ゆっくりあじわってたべてね!」 『ゆっきゅちいちゃじゃきまーしゅ!』 「むーちゃむーちゃ・・・」 「むーちゃむーちゃ」 「はむっ、ガツガツガツガツ・・・」 それにしてもこの赤ゆ・・・れいむ2匹はウチのれいむに似た様だが子まりさは既にゲスそのものだなオイ。 『ししし・・・しあわぶぇえええええええええええええええええええええええ!!』 赤ゆ達は恐らく体中の餡子を一気に吐き出してしまい、遺言を残す事無く永遠にゆっくりした。 「ど・・・ど・・・どぼじでえええええええええええええええええええええええええ!!」 そして一部始終を見ている事しか出来なかったれいむは物凄い困惑をしている。 「言っただろう?ゆっくりしてないゆっくりは最初の茎を食べてそのまま永遠にゆっくりするって」 「そんな・・・どぼじで・・・」 「だから野良とすっきりーなんてするなって言ったんだ、これで分かっただろ?」 まあ僕のせいなんだけどね・・・許せよれいむ、これも教育なんだ。 「で・・・でも・・・のらゆっくりだってすっきりーしておちびちゃんを」 「それは野良同士ですっきりーしているからだ」 「ゆ・・・」 説明としてはかなり苦しいかなーと思ったんだが・・・どうやらこれで納得出来たらしい。 本当にお前は・・・こういう時は賢いんだか馬鹿なんだかが分からん。 さて・・・かなり心苦しいんだが 「それじゃれいむ・・・非常に残念なんだが・・・」 「ゆ・・・なに?」 「僕は今からお前を・・・去勢する」 「・・・ゆゆ!?」 僕が去勢すると宣言した途端、れいむは透明な箱の隅まで逃げ必死に抵抗をしている・・・。 「どぼじでそんなことするのぉー!おにいさんはさいしょにいったよね!きょせいはしないであげるって! なのにどぼじでぇー!」 確かにこのれいむを飼い始めた時、もしも賢いゆっくりだったならと仮定してそう言った。 でも・・・ 「本当はな、れいむを去勢なんてしたくはない・・・お前の子供ならその子供も金バッヂを取れる可能性があったからな」 「だったら・・・」 「だがれいむ・・・お前は僕の言いつけを破って野良とすっきりーして子供を作った」 「だってそれは」 「そのまま僕の言いつけを守っていたのなら・・・次の日曜にお前の番を探してやろうと思っていたんだ・・・」 「え・・・」 僕はポケットに入れていたチケットをれいむに見せてやった。 「次の日曜に、金バッヂのゆっくりを集めたお見合いパーティーがあって そこにれいむ、お前を連れて行ってやろうと思っていたんだよ・・・」 「あ・・・ああ・・・」 「でも・・・それはあくまでも僕の言いつけを守っていたならの話だ」 「そんな・・・そんな・・・」 れいむは涙を流しながら小刻みに震えて・・・そして 「・・・して・・・」 「何だい、れいむ?」 「きょせいするぐらいなら・・・きょせいされるぐらいならしんだほうがましだよ! だから・・・だかられいむをころしてえええええええええええええええええ!」 何で・・・何て事を言うんだれいむ・・・ 「れいむは!れいむはおにいさんとおちびちゃんといっしょにゆっくりしたいんだよ! おちびちゃんのおかあさんになりたいんだよ! でも・・・でもおちびちゃんはえいえんにゆっくりしちゃったんだよ! なのにきょせいされたらもうおちびちゃんはつくれなくなっちゃうんだよ! そんなのはいやだよ!それならえいえんにゆっくりしたほうがましだよおおおおおおおおおおおおおおお!」 そうか・・・お前はそこまで自分の子供が欲しかったんだな・・・。 でも・・・ 「残念だけど・・・去勢はするし、お前を永遠にゆっくりさせる様な事はしない」 「どぼじでええええええええええええええ!」 「理由は・・・お前が野良とすっきりーしたからだ」 「な・・・」 「飼い主が何で飼いゆに野良とすっきりーするなって言っているのか・・・考えた事があるか?」 「そ・・・それは・・・」 どうやら考えた事もないらしい・・・。 「簡単な話だ、野良ゆっくりはその半数以上が飼いゆっくりにとっての病原菌の固まりだからだ そんなのとすっきりーなんてしてみろ、お前の体内にその病原菌が直接入ってくるんだぞ?」 「あ・・・」 「個体差はあるが・・・その半数以上はゆ性病に繋がるんだよ そうなったら去勢してもしなくても一緒だ、二度と子供なんて作れなくなる」 「そんな・・・」 どうやら理解してくれたらしい・・・ 「それに・・・もしも病原菌が付いてたとして、そのままにしていたら お前は10日と経たない内に体中にカビが生えて死ぬよりも苦しい目に合ってしまうんだぞ?」 「う・・・うう・・・」 れいむはそのまま2時間・・・たっぷりと泣き・・・そして 「ゆっぐ・・・ゆっくり・・・りかいしたよ・・・」 「分かってくれたか・・・」 こうしてこの日・・・僕の飼いゆっくりのれいむは二度と子供を作る事が出来なくなった。 そして1週間後・・・ 「ほられいむ、ご飯だぞ」 「ゅ・・・ゅ・・・」 去勢したあの日以降、れいむは食欲が10分の1以下に低下し 水を飲む事もうんうんを自力でする事も出来ない廃ゆんとなった。 丸くモチモチとしていたれいむは今ではやつれてパサパサになってしまっている・・・。 加工所の研究員やゆっくり科の医師に診断して貰った所 原因は僕に去勢させられた事、そしてあのまりさが持っていた病原菌がれいむの中枢餡を刺激した所為らしい。 こんな事になるんなら説得よりも先にさっさと去勢してしまえばよかったと後悔している。 時々・・・まるで呪われたかの様に存在しない自分の子供に呼びかけるような声と 何もない所にぺーろぺーろしたりすーりすーりする様な奇行が目に痛々しい。 でも・・・ 「ほら、ちゃんと食べなきゃ駄目だ」 「ゅ・・・うー・・・」 僕は・・・あくまでも愛で派の人間なんだ。 加工所に入ったのはゆっくりの立場をどん底に落としているゲスを駆逐する為だけ。 だから・・・例え二度と治らないと分かっていても僕は絶対にこのれいむを捨てたりなんてしない。 殺すなんてもってのほか、れいむだってあの時あんな事を言ってたけど死にたいなんて思っていない筈だから・・・。 そして夜・・・ 「大丈夫だよれいむ、僕は絶対にれいむを苦しめたりなんてしないからな」 「ぅー・・・ゅー・・・・・・・」 「オヤスミ、れいむ・・・」 (バタン) 「ゅぅ・・・ぅー・・・・・・・・・・る・・・・・じぃ・・・・・・・・も・・・にたい・・・よ・・・」 「も・・・・・・・ぉ・・・・・・・・・・・ろじ・・・で・・・・・・」 この辛うじて搾り出したれいむの本音は・・・ 3年後、れいむが寿命で永遠にゆっくりする直前までお兄さんに届く事はなかった・・・。 ~~Fin~~ 後書き 安楽死と闘病どっちが幸せなのかと後輩と口論になってそれをゆっくり風にしてみたらこうなった 因みに自分は闘病を押しました [読者様はどちらを選ぶのだろうか?] マーラーあきでしたm(_ _)m
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ほんのりと俺設定注意 車を走らせ馴染みのコンビニへと向かう。 途中ゆっくりが飛び出してギリギリかすめて通過。セーフ。 車が汚れなくて良かったとひと安心。 駐車場でに着いてドアを開けると不快な熱い外気、と、 「ゆっふ!ゆっ!ゆーふっ!!」 不快な声が耳に響く。 店の前に設置しているゆっくり専用ゴミ箱から聞こえてくる。 その前を通りすぎる際にゴミが話しかけて来た、 「ゆっ!?おにいさん!れいむをたすけてねっ!」 無視。 「どぼじでむしするのぉ!?」 自動ドアから店の中に入る。冷房が効いていて最高の環境だ。 お目当ての弁当と飲み物を買ってから週刊誌を立ち読みする。 そのあと、気に入った雑誌を追加購入して店を出た。 「おにいさん!かわいいれいむをたすけにきてくれたんだねっ!」 (まだ居るのかよ……。) れいむは、ゴミ箱の淵をもみあげで掴み踏ん張っている。 体は半分穴に埋もれていて、自力での脱出は厳しそうだ。 「れいむはとってもゆっくりできるんだよーっ!」 滅茶苦茶必死の形相。凄く暑苦しい。 全然ゆっくり出来て無いじゃん。 「はやくたすけてねっ!このままじゃおちちゃうよっ!?」 唾を撒き散らし喚く。 こんなゆっくり誰も助けたいとは思わない。 「かわいいおちびちゃんをみせてあげるから れいむをたすけてねっ!」 「…おちびちゃんはどこに居るんだ?」 「おにいさんのあしもとにいるでしょうっ!おめめがみえないのっ!?」 足元? 下を見ると確かに居た。 虫の息だったが。 「おちびちゃんたちはかわいいでしょっ!?ゆっくりれいむをたすけてねっ!」 「可愛くないから助けなくていい?」 「どぼじでぞんなごどいうの゛ーーっ゛!?」 号泣。本当に暑苦しい。 下に落ちている赤ゆを摘みあげれいむに見せる。 驚愕の眼差しの後、「ひどいことするにんげんはゆっくりしねっ!」と喚きだす。 ただ拾っただけだっつーの。 「れいむ口開けて。」 「ゆっ!そうだねっ!れいむのおくちのなかにゆっくりかくれてねっ! やばんなにんげんさんはゆっくりできないよっ!」 赤ゆ達を放り込む。 勝ち誇った顔がまたムカツク。何も好転してねーよ。 「おちびちゃんたちをきずつけた いしゃりょうをせいきゅうするよ!」 チラチラと手に下げた袋を見ながら催促をして来る。 口に赤ゆ詰め込んで流暢に喋るその無駄な技術。何げに凄くね? 「はいはい。わかりましたー。」 「なかなかいいこころがけだよっ!」 戯れにパックのジュースを飲ませてみた。れいむは至福の顔でとろけている。 普段口に出来ない甘みに感動しているようだ。 ゴックンと喉?を大きく鳴らす。 「もっといしゃりょうをちょうだいねっ!こんなんじゃたりないよっ!」 大口を開けて追加を要求する。 そこで先程放り込んだ物体が無いことに気づいた。 「……赤ゆは?」 「ゆゆっ?」 口を閉じて、もごもごと動かした後、れいむは固まった。 信じられない…。と言う顔をして、また口中を舌で探る。 いや、居ないから。明らかにお前が飲んだから。 「うっ!うわぁぁぁぁぁぁぁっ゛!!?あかちゃんがぁぁぁっ!」 「あーあ。お前アホだろ?」 「じゅーすをいっぱいおぐぢにいれるからでしょぉぉぉっ゛!?」 また言いがかりですか。 もう付き合いきれん。というか暑いからそろそろ帰りたい。 「ゆっくりはんせいしたなら れいむをひろってかわいがってねっ!? いっぱいかわいいあかちゃんうんであげるよっ!かんしゃしてねっ!?」 自信に満ち溢れた声を張り上げる。 可愛いからジュースを貰えたし、ゆっくりプレイスにも連れて行ってくれる。 お嫁さんといっぱいすっきり~っ!してあかちゃんを作るよっ! 都合の良い妄想で未来を作り出している最中に、人間の手がゆっくり迫ってきた。 それを見てれいむは最高の笑顔で声を張り上げる。 「れいむをゆっくりさせてねっ!にんげんさん!」 薄暗い穴の底で蠢く物体が二つ。 ゆっくり出来る環境では無い事は確かである。 臭い,狭すぎる,暑い。まさに地獄。 「ぐぞにんげん!れいぶをおどしだなーーーーっ!?」 油断していたれいむはあっさり落ちた。 箱の中で運悪く逆さまに落ちて身動きが取れなくなっている。 「ゆ゛ーーっ!ぜっだいゆるざないよーーーっ!!」 マヌケな姿で強気に吼える。 体を震えさせ起き上がろうと試みるが、スペースが狭すぎて思うようにいかない。 そこで不安からちょっと弱腰になってしまい、 「いまたすけてくれたらゆっくりゆるしてあげるよっ!」 あっさり和平交渉に入った。 「きこえてるんでしょぉぉぉぉっ!おみみがわるいのっ!?」 『…ユッ』 「かわいいれいむがこまってるんだよっ!ばかなのっ!?」 『ユフッ。コフーッ!』 「しぬのっ!?……ゆっ!?じゃましないでねっ!せなかがあついよっ!」 れいむは背中に熱い風がかかるのが気になった。 人間さんを説教してる時に邪魔するなんてゆっくりできないよ! さらに声を張り上げて話を続けようとした時、 『アマアマッ!イタダキマァァァスッ!』 後頭部に鋭い痛みが走った。 次は頬っぺたが引っ張られる感触。 そしてブチブチと千切れて何かの口に収まる。 「いだいーーー~っ゛!どぼじでっほっべざんがいだいのっ゛!?」 髪ともみあげが無理矢理毟られ 頬からは餡子がボタボタと床に落ちる おりぼんが軽快な音を立てて砕けた 硬い物がれいむの体を削り取っていく 『ウッメッ!メッチャウメーーー~ッ!!』 「やべでーーっ!?ゆっぐぢでぎない゛ぃぃぃぃっ゛!!」 許しを願っても全く辞める気配を感じない。 自分の餡子が急激に減っている事が嫌でもわかる。 このままではれいむが死んじゃう! にんげんさんっ!にんげんさんっ!おねがいっ! 「にんげんざん゛っ!だずげでっ!れいぶだべられぢゃうよっ!」 『ムーシャ!ムーシャッ!!』 「おでがいだがらっ!ゆっぐぢざぜでーー~っ!?」 『ウンメッ!マジパネェッ!!』 「うっ゛ぎゃぁあぁぁぁぁぁぁ!?」 このゴミ箱は水流式ではない。 コンビニでは回収作業が定期的に行われるので、投下式を設置していた。 この最新のゴミ箱は、転倒防止機能と這い上がりが出来ない構造に作られている。 回収作業を容易に行える様に、箱の底には棘状の突起物は無い。 その為、生きたまま投入されるゆっくり達は、そのまま底で生存する確率が高い。 餌の代わりに他のゆっくりを共食いして、生き残るのも珍しい事ではなかった。 そして、れいむはゴミ箱に居た主の糧となり死んだ。 食われる少し前にジュースを大量に飲んだ為なのか、 生命維持活動が活発になってしまい、なかなか絶命する事が出来なかった。 どこまでも不幸なれいむである。 「やっぱり野良は可愛く無いな。」 残りのジュースを飲みながら結論を述べた。 あの自信満々な声で喚いているのを聞いていたら、いつの間にか突き落としていた。 野良は人をイライラさせる何かがある。 やっぱり躾が行き届いて可愛いゆっくりの方が良い。 「そのあまあまをまりさによこすんだぜっ!」 「まりさっ!かっこいいっ!」 「ぴゃぴゃ!ぎゃんばれっ!」 「いちゃいめみりゅまえに こうちゃんしてにぇっ!」 とか思ってるとまた野良ゆっくりだよ。 全然ゆっくりできない。 「さっさと…」 「はいはい。ゆっくりゆっくりーっ。」 ポイポイと捨てる。 手際のよさに呆気を取られ、親達は何の反応も見せずゴミ箱の中へと消えた。 「…ぴゃぴゃとみゃみゃがぁー~っ!?」 「うぅ?にゃんでぇぇぇぇっ゛!?」 煩く騒ぐ赤ゆも例外なく放り込む。 片方の赤ゆを放り込んだ所で、残りの1匹が、 「…お、おにいしゃんのこじょもになりゅよ!」 早い、早いよ!裏切りが。 この赤ゆは優秀だ。生き残る術を知っている。 「ゆゆー~ん!きゃわいく…。」 でも残念ながらゴミ箱にIN! 汚いし可愛くも無い。それに簡単に家族見捨てるのは良くないよ? みんなに会わせてやるから謝ってきな。 片道キップでの送迎になっちゃったけどね。 ……すっごくガタガタ揺れてるよ。喧嘩でもしてるのか? まぁ、なにはともあれゆっくり仲良くしていってねーっ。 家族の幸せを適当に願いつつ帰宅する事にした。 「ゆあっ゛!?ゆっぐぢやべでっ!まりざはづよいんだよっ! あ゛ぁー~っ゛!?」 「れいぶはおいじぐないよっ!だべるならおちびぢゃんをたべてねっ!?」 「「ぢょぼじでじょんなごぢょいうにょー~っ゛!?」」 『ムーシャ!ムーシャッ!シッ…シアワセーーー~ッ!!!』 「「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ゛!?」」 食欲旺盛にモリモリと食らう。 親ゆの大半を食らった後、隅に逃げた赤ゆを追い詰めていく。 「りぇいむはおいちくにゃいよ!おにぇちゃんのほうがおいちいよ!」 「いみょうとのほうがまろやきゃでおいちいよ!だきゃら……ゆびゃぁ!?」 「ゆっふゅふゅ!れぇいみゅはえりゃばれたんだにぇ!しゅーりりゅーりすゆよ! ゆ…?おくちしゃんあけてにゃにするの?」 一口で絶命した。……ら幸せだったのに。 紙一重で生きていたが擦れ声を上げたのは大失敗。再度大きな口が迫ってくる。 もう一度容赦なく噛まれる恐怖を味わいながら、赤ゆは天に召された。 租借しながら狂ったように歓喜の声を上げ続ける主。 環境のストレスから食べる欲求のみが色濃く表面化して、完全に壊れていた。 この主も夕方の回収を待たずに死ぬだろう。今からまだまだ暑くなる。 じっくり蒸されてこの世にお別れをするのは時間の問題だ。 ひと時の幸せを求めて哀れな主は腹に同胞を詰めていく。 帰り道の途中で路上に転がる、ゆっくり家族の変り果てた姿が視界に入った。 (さっきのが餌を狩った後に戻ろうとして轢かれた。のかな?) ゆっくりの固体判別は難しい。 外見個性が乏しすぎる。 そこに加えて現状はただの餡子の塊が数箇所に点在するのみ、 詳細な判別はほぼ不可能。 「こういうのは誰が片付けるんだろ?」 疑問を呟きながら、塊を避けるのは対向車が接近してる為にちょっと厳しいと判断する。 洗車を覚悟しながら、愛車で餡子に新しい轍を刻み込み走り去った。 終 「れいむとまほうのいた」 「金バッチ品質保障証」 「まりさは優秀な劇団員」 「ぬし」 このSSに感想をつける
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注意 「」はゆっくりの発言です。 『』は人間の発言です。 ゆっくりが死にはしませんが、ひどい目にあいます。 独自設定があります。 「ゆっくりめをさますぜ。…ゆ?」 ゆっくりまりさは目が覚めた。そして周りを見渡す。 見たことがない場所だった。コンクリート打ちっぱなしの床、壁、 そして壁の大人のゆっくりでも届かないところに窓がある。 窓とは反対の方向は人間が座る用の椅子がある。 そしてその向こうには曇りガラスのずらすタイプの扉がある。 この景色にまりさには見覚えはなかった。 「ゆっくりめをさますよ。…ゆ?」 番であるゆっくりれいむが起きたようだ。 「れいむ ゆっくりしてってね!」 「ゆっくりしてってね! ここはどこなの?」 「わからないぜ。」「おちびちゃん どこなの?」 まりさたちは周りを見渡しおちびちゃんを探す。 いた。子まりさと子れいむ。生存している2匹の子供も近くで寝ていた。 よくみると自分たちの下にはバスタオルが引かれていて冷たくはない。 一安心するまりさだが、次に考えたのは「自分たちがなぜここにいるか」である。 昨日の夜は、家族と公園の片隅の段ボールのおうちで、 「ゆっくりおやすみなさ~い」 をしたはず。それがなぜ? 「「ゆっくりおきるじぇ(よ)。…ゆ?」」 二匹の子供も両親と同じような反応をする。 ここがどこだかわからないのだ。 季節は初春。春とはいえ、外である公園は寒い。しかしここは暖かい。 そしてタイル張りと曇りガラス。 まりさは餡子の奥にある記憶を引っ掻き回す。 「! もしかしたらここは…。」 「にんげんさんの…」 「「ごはんしゃんがあるのじぇ(よ)!」」 子供たちの視線の先には、たしかにお皿の上に乗ったゆっくりフードがあった。 一目散に駆け寄る子供たち。後からついていく両親。 少し警戒をする両親、だがお腹の空腹には勝てない。 「「「「いただきまーす むーしゃむーしゃ…しあわせ~」」」」 久々に食べた生ゴミでも雑草でもない食事に舌鼓をうつ親子。 「ゆゆゆ もうなくなっちゃのじぇ…」「ごはんしゃんいじわるしてないででてきてにぇ~」 しかし、その量は決して満足できるものではなかった。 「おちびちゃんたち ごはんさんはここまでだよ」 多くはなかったとはいえ、久々の安定した環境下での食事後に、 まったりとする両親。二匹はこの場所がどういう場所であるかを確信していた。 「「きょきょを まりしゃ(れいみゅ)たちの ゆっくりぷれいすにするのじぇ(よ)」」 親二匹の考えは子二匹の宣言で中断された。 「ちょ ちょっとまつのぜ おちびちゃんたち」 「そ そうよ ここは にんげんさんの ゆっくりぷれいすよ」 「にんげんさんの?」 親たちの考えはこうだ。 ここは人間の家。自分たちがここに入った記憶がないっていうことは、 自分たち一家はここの家の人間に拾われたということ。 そして飼いゆっくりになったのだと。 ただ、人間の家でおうち宣言をしたゆっくりがどうなるかは 昔から嫌というほど話を聞いていた。 「にんげんさんの おうちで おうちせんげんは ダメなんだぜ」 「どうして?」 「それはね…」 そこで曇りガラスの扉がガラガラと空く音がした。親子は扉の方を見る。 そこには一人の人間の青年が立っていた。 「「きょきょはまりしゃ(れいみゅ)たちの ゆっくり…むぎゅ」」 青年に早くもテンプレ発言をしようとした子供たちを抑え、 親たちは青年の前に移動する。 「まりさたちを かいゆっくりにしてくれて ありがとう。」 昔の癖で人間の前だと、話し方を変えるまりさ。 「すみません おちびちゃんたちは まだあまりにんげんさんに なれていないので」 すると青年は 『いやいやいや、僕は飼い主じゃないよ』 とにっこり笑いながら右手を振る。その笑顔はとてもゆっくりしているように見えた。 「「ゆ?」」 『えっと、そうだなぁ。僕はお客さんといったところかな。』 青年は左手で自分の顎を触りそう答える。 『さて、おちびちゃんにはお近づきの印としてあまあまさんをあげよう。』 というと青年はポケットからお菓子の袋を出し、子供たちにお菓子を与えた。 「「あまあましゃーん!」」 子供たちはよろこんで食べ始めた。 「「むーしゃ、むーしゃ、にゃんだきゃにぇみゅい…zzzzzzzzz」」 子供たちは眠りに落ちた。両親にはわからなかったが、青年があげたのはラムネである。 「お おちびちゃん!?」 『安心してくれ、毒じゃない。ちょっと眠ってもらうだけだよ。さて、僕は君たちに話をしに来たんだ。』 青年はそういうと人間用の椅子に座る。 『僕と話を聞いてくれたら…』 青年はそこで言葉を区切ると持っていたリュックサックから何かを出す。 『おいしいあまあまさんをあげよう』 それはゆっくりフードの箱だった。箱は金色に輝いている。 「ゆゆゆ! あれはきんいろのゆっくりフードさん!」 れいむが驚く。 「知ってるの? れいむ!」 「にんげんさんが たべさせてくれる フードさんのなかで いちばんしあわせーできる フードさんだよ でもれいむはまだたべたことないよ」 れいむが答える。 『よく知ってるね。』 青年は感心する。まりさも番を褒められて悪い気はしない。 『さっきの僕への対応でも思ったんだけど、もしかして君たちはもと飼いゆっくりだったのかい?』 「「ゆゆゆ! どうしてわかるのぉ!?」」 まりさとれいむは、また驚いた。 青年の指摘通り二匹は金バッチの飼いゆっくりだった。 しかし同じ家で飼われていたわけではなく、隣同士で飼われていた。 二匹とも家の外には出られなかったが、晴れている日には庭で遊ぶことができた。 ある日、まりさは隣の家への金網がほつれていて隣の家の庭にいけることがわかり、 探検がてら庭に行ってみる。 そこには見た目麗しき美ゆっくりがいた。それが今の番のれいむだった。 「それは うんっめいっのであいだったよ!」 まりさは鼻息(?)を荒くして語る。 まりさはれいむに一目ぼれし、それから家人には内緒でちょこちょこと遊びに行った。 ところでこの二軒の家、仲は良くなかった。 それはペットであるゆっくりたちにもわかるほどだった。 二匹は憂えた。そして二軒の仲を良くするための方法を思いついた。 二匹はある日、まりさの家の人にれいむの額から生えたおちびちゃんたちを見せた。 これでまりさの家の人はゆっくりする。そしたら次はれいむの家の人をゆっくりさせよう。 そうすれば二軒の家の人たちは仲良くできる。 『でも、人間は理解してくれなかったわけだね。』 青年は腕を組んで残念そうにいう。 結局2匹そろって捨てられることになった。 おちびちゃんが生まれるまで家の倉庫に居られたのは、家人のせめてもの情けだったに違いない。 そのあとは野良落ちし、公園で生活をはじめるも野良生活に慣れていなく、 はじめは5匹いたおちびちゃんも2匹になってしまった。 まとめるとこういった話なのだが、ゆっくりの話だ。そんなに上手く伝えられるはずもなく、 たくさんの時間もかかったのだが、青年の誘導もありなんとか伝え終わった。 おちびちゃんはというと、まだすーやすーや眠ったままだ。 『なるほどね。君たちはおちびちゃんでそれぞれの家を仲良くしようと思ったんだね。 君たちはゆっくりのロミオとジュリエットだよ!』 青年は目をきらきら輝かせる。 「ろみおさんとじゅりえっとさん?」 『お話の世界だけど、人間でも君たちと同じようなことをした人たちがいるんだよ。 まあ、最後は悲劇だったんだけどね。…さて、今度は僕の話を聞いてもらおうか。』 青年はリュックの中からお茶のペットボトルを取り出すと、キャップを開けて一口飲む。 『君たちは、“愛で派”と“虐待派”って知っているかな?』 「まりさは ならったことあるよ ゆっくりにたいして かわいがってくれるにんげんさんと いじめてたのしむ にんげんさんのことでしょ?」 『そうだった。君たちは元飼いゆっくりだったね。 その“愛で派”なんだけど、ゆっくりを飼いたいが、 お家が、ゆっくり禁止のアパートだったり、ゆっくり嫌いの人間と同居していたりと いろんな理由があって飼えない人がいる。 そういう人たちのために、ゆっくり達と触れ合える場所があるんだ。』 ここで青年はまたお茶を飲んだ。 青年の話をまとめるとこうである。 「ゆっくりカフェ」 ここは、“愛で”派でゆっくりを飼えない人がゆっくりと触れ合えるゆっくりプレイス。 来店したお客が好きなゆっくりを指名し、一緒にお菓子を食べたり、遊んだり、おしゃべりしたりできる。 場所代はかからず、料金がかかるのは自分の飲む飲み物と、ゆっくりに与えられるお菓子類なんかだ。 この話を青年はゆっくりにもわかりやすく丁寧に教えてくれた。 「おにいさん ゆっくりかふぇさんには れいむはいるの?」 れいむは尋ねる。 『ん~、残念ながら普通のれいむ種やまりさ種なんかはいないね。 胴付きれいむなら見たことあるけど。』 青年は残念そうに答える。 基本種でいるのは少し珍しいちぇん種や、ゆっくりにしては頭がいいばりちゅりー種である。 しかし人気はにとり種や、もこう種、ちるの種などの希少種なんだそうだ。 キモカワイイの評判のきめぇ丸、 じゃおーんしか言えないが人懐っこいめーりん種も人気と聞いてまりさは少し驚いた。 ゆっくりの中での人気と違っていたからだ。 「ゆっくりかふぇさんでは みんなゆっくりしているの?」 というまりさの問いに、青年はちょっと考えて、 『ま、大体ね』と答えた。 『今度は“虐待派”の話だ。』 “虐待派”は“容認”はされているが、“歓迎”はされていない。 “虐待派”であることは、おおっぴらに世間に公表できないのである。 就職面接で、「私はゆっくり“愛で派”です。」といえば、 同じ“愛で派”の会社の人と話が合うかもしれないが、 「私はゆっくり“虐待派”です。」といっても、 「いやあ、実は私もなんだよ。」なんて言ってもらえるわけはなく、 ドン引きされて試験も落とされるのがオチである。 せいぜい入社した後の同期の飲み会なんかで お酒の勢いに任せてカミングアウトすれば、 「俺も俺も」って言ってくれる人がいるかもしれないといった程度だ。 虐待も大変である。 まずは場所。ゆっくり達の中身で場所が汚れてしまう。 これらはシートを引くなどすれば少しは軽減できる。 次に騒音。赤ゆぐらいなら環境によっては問題なかったりするが、 成体ゆっくりの悲鳴は防音の環境でないと隣の家まで響いてしまう。 そして処分。終わったあとのゴミをゆっくり専用のゴミ入れに入れなければいけないが、 これが意外とめんどくさい。 そして掃除を完璧にやらないと虫が寄ってきて大変である。 ふき取り忘れの餡子に蟻がたかり、うわぁぁとなってしまう。 虐待用具をそろえるのもお金がかかる。 これも青年がわかりやすくまりさ達に説明した。 ここでまりさは違和感を感じた。体の中枢餡をちくっと刺されたような感じ。 (にんげんさんは なんでこんなはなしをするんだぜ?) 社会的地位のある人、教師などの虐待派がバレると名誉が傷つく人もいる。 “愛で派”と同じように虐待できる環境にない人もいる。 虐待してみたいが、どうしたらいいかわからない人もいる。 『そんな人たちのためにあるのが、通称「ゆっくりハウス」なんだ。』 青年は語る。 ここではもちろん秘密厳守。 入り口で受付しお金を払い、部屋に案内される。中には、ゆっくりがいる。 そのゆっくりをどうしてもいいのだ。 まりさの違和感は徐々に大きくなっていく。 それは既に違和感というよりは悪夢の予感というべきか。 『料金はゆっくりの数や種類なんかで決まるけど、親二匹子二匹の平均的は家族の値段は8000円だ。』 そこで青年は一呼吸置く。両手で隠している口元が歪んだ、気がした。 『君たちは10000円だった。』 「え? どういうこと? いちまんえんさんって?」れいむはわかっていないようだ。 まりさは言葉を出すことができなかった。 『平均よりも少し高いんだよ。なぜだかわかるかい?』 「ねえ しかとさんはゆっくりできないよ。」 「……」 まりさは答えられない。 青年はれいむの発言を無視して話を続ける。 『お店がお客のニーズに合わせて、どんなゆっくりがいいか決めてくれるんだ。 ゲスなゆっくりを制裁したい人、善良なゆっくりを虐殺したい人、 希少種を虐殺したい人なんかもいる。まあ、希少種は値が張るけどね。』 そして青年は壁をペタペタと触る。 『この壁だと壁や床に餡子やクリームがついても丸ごと水洗いできるんだ。 もちろん洗うのはお店の人だけどね。』 「にんげんさん さっきから はなしが…」 そんなれいむの発言を遮って、まりさが口を開く。 「にんげんさん もしかしてここは ゆっくりハウスさんなの?」 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 青年はまりさの発言に驚く。 『その通りだよ。まりさ。』 青年はまさかゆっくりの方からそう言ってくるとは思わなかったのだ。 『素晴らしい、素晴らしいよ。この時点でわかるなんて、まりさ君はなんて頭がいいんだ! さて、ここで僕は宣言する。君たちが僕に襲い掛からない限り、僕は君たちに危害を加えない。』 ここで青年はれいむの方を向いた。 『れいむ、君にも説明しよう。ここは人間が君たちゆっくりをいじめて殺す。そんな施設さ。 もっとわかりやすくいうと、君たち家族はえいえんにゆっくりする。 すぐにではないけど、おそらく今日中にはね。』 「お おちびちゃんも?」 流石にれいむも状況がわかったようだ。とはいえ、ゆっくりとしてはこれは平均的だろう。 『うん、そうだね。』 「どぼぢでーーーーーーっ」 『あんまり大きな声を出すと、おちびちゃんが起きちゃうよ。 それともこの話、おちびちゃんにも聞いてもらうかい?』 「おにいさん それはおちびちゃんがゆっくりできないから やめてね。」 『まあ、僕がわざわざ起こすことはしないよ。…そうだな。』 青年は一旦虐待ルームから外に出るとあらかじめ置いてあったモノをとってまた戻る。 青年は右手で持っていた、虐待グッズの基本である透明な箱(Sサイズ、防音仕様)を 床に置き、ラムネですやすや眠っている2匹の子ゆっくりを起こさないように 慎重に透明な箱の中に入れ、蓋をしめる。 さらに、透明な箱(Lサイズ)を床に置き、その中に親ゆっくり二匹と子ゆっくりが入った 箱も入れる。ただ蓋は開けたままにしておく。 「おちびちゃんになにをするの!?」れいむが抗議の声をあげる。 『いや、おちびちゃんが起こさないように、音が聞こえない箱の中に入れてあげたんだよ。』 青年は説明した。 「れいむ おにいさんは まりさやおちびちゃんに ひどいことはしないっていってくれから だいじょうぶだよ。』 『危害を加えないって言ったんだけどね。まぁいいや。』 青年は、2匹の目の前に扉の外から持ってきたものを置いた。 また、リュックの中かられいむ種のぬいぐるみを取り出す。 『さて、ここにあるのは皆、君たちのあんよさんを動かなくさせてしまうモノだ。』 青年はチャッカマンを取り出し、火をつける。 「ゆゆゆ ひさんはゆっくりできないよ」 子供を起こさないようにか、まりさが小さくつぶやく。 青年はぬいぐるみの持ち上げ、その底部にチャッカマンを当て『カチッ』と口で言う。 『こうして念入りに足を焼いてしまうと、君たちは動くことができなくなってしまう。』 「ぬいぐるみさんが いたがってるよ やめてあげてね」 同じ種のぬいぐるみだからか、れいむがぬいぐるみを労わる。 『本当に焼いてるわけじゃないってば。…次だ。』 今度はホットプレートを二匹の前に出す。 『これもさっきのと同じように、君たちのあんよさんを動かなくさせてしまうようなもんだ。 ホットプレートさんだよ。』 ホットプレートのスイッチをひねる。もちろんコンセントを入れてはないので温度は変わらない。 また、さっきのぬいぐるみを持ち上げ、ホットプレートの上で押しつける。 『ジューーーー。ジューーーーー。』青年は口真似をした。 ぬいぐるみを細かく揺らす。 『あじゅい! あじゅいよ! あんよさんがあじゅいよー!』 青年はゆっくりの物まねをしながらぬいぐるみを押しつける。 「おにいさん ほっとぷれーとさんがゆっくりできないのはわかったからやめてね」 今度はまりさがいう。 その声はもちろん青年には届いている。だが、 『あじゅいよ! いちゃいよ! やめてね! やめてね!』 青年は続ける。そしてホットプレートからぬいぐるみを離すと床に置く。 その場でぬいぐるみを左右に揺する。 『あんよさん! うごいてねっ! ゆっくりしないでうごいてねあんよさん!!』 ちらっとゆっくりの方に視線を動かすと、れいむはおそろしーしーをしている。 「おにいさんもういいよ! ゆっくりしないでやめてね!」 まりさは顔を振って懇願する。 『その質問に1回だけ答えるよ。断る。…だけど、実際に君らを虐待はしない。 安心してくれ。さて、君たちのあんよさんを動かなくさせるのはこれだけじゃない。』 青年はそれから部屋にある虐待道具を、ぬいぐるみに虐待する振りをしながら説明をした。 聞きたくない音は人間だったら、手のひらで耳を覆うなど何かしらの対抗手段を取れる。 だが、ゆっくりには耳がない。全身で音を聞いているともいわれている。 だから聞きたくない音への対抗手段は遠ざかるしかない。 しかし、親ゆっくり2匹は透明な箱で囲まれているので逃げる手段もない。 青年が一通り虐待道具を説明し終わった時、 れいむは青年と反対方向を向いていて、顔の下にはしーしーと思われる液体がこぼれていた。 動いていないところをみるとまた気絶してしまったのかもしれない。 このれいむは先ほども餡子を少し吐いて気絶してしまったが、 青年によって餡子を口の中に入れられ、オレンジジュースで強引に回復させられた。 まりさは帽子を目深にかぶって視界を消しているが、しーしーは漏らしていないようだ。 『君たちゆっくりがこの世界で見つかって、一番売れるようになったものは何かわかるかい? オレジンジュースだよ。今ではソフトドリンクで一番売れているそうだ。 他にもホットプレートやチャッカマン、鉄串などの売り上げも急上昇したそうだ。 これらを作っている企業はウハウハなんじゃないかな。 そこの企業で働いている人は、とてもゆっくりできることを君たちに感謝しているかもしれないね。』 青年はもはや何のリアクションも示さない親ゆっくりに向かって語る。 『さて、君たちがこれからどうなるか教えてあげよう。 僕がこの部屋から去ると、次にこの部屋に人間さんがやってくる。 だけどこの人間さんはゆっくりハウスの人で君たちには危害を加えない。 君たちの様子を見に来るだけだ。そのあとは少し間があくだろう。 そのあとに来る人間。彼らは君たちを虐待するつもりで来る。 その時が君たちのゆん生が終わる時だ。…ここまで話を聞いてくれたお礼だ。 約束通りさっきのおいしいゆっくりフードさんをあげよう。』 青年は横に置いてあった、ゆっくりフードヘブン味の袋を開ける。 「おにいさん おねがいがあるよ」 まりさに声をかけられた。 『なんだい?』青年は手を止めてまりさの方を向く。 「まりさとれいむは しかたないけど おちびちゃんはたすけてほしいよ」 (まあそもそも何が仕方ないのかわからないが、いいところをつくな)青年は思う。 たしかに、ゆっくりハウスで処置を施し、自宅に持ち帰って放置したり、 公園の野良に制裁させたりするためにゆっくりの持ち帰りはOKである。 だから、おちびちゃんだけじゃなくて家族そのまま持ち帰ることはできる。 『あー、それはダメなんだわ。僕は実家暮らしだし、親がゆっくり嫌いだから。 ここから連れ出してほしいっていうなら聞かないことはないけど、 そのままゆっくり用ゴミ箱に入れるだけだよ。どっちがいい?』 青年がそういうと、まりさは深くため息をついた。 「…おちびちゃんは まりさたちといっしょでいいよ」 『んじゃ、先にれいむを起こすかな。また気絶してるかな?』 青年がれいむの正面に回るとれいむは餡子を吐いて再び気絶していた。 青年は先ほどと同じように、餡子を口に押し込みオレンジジュースで起こす。 「ごべんだざいごべんだざいごべんだざいごべんだざい。」 何故か知らないが、れいむはいきなり謝り始めた。 『いやいや、君たちは何も悪いことはしてないから。落ち着いてね。』 青年は手を振る。 「れいむ おにいさんのはなしは おわったからだいじょうぶだよ。」 まりさはれいむの頬に頬を寄せすーりすーりする。 「ううううううううううぅぅぅぅぅぅ」 れいむは震えている。 『さて、今度はおちびちゃんに目覚めてもらうよ。』 青年は子ゆっくり二匹が入っている透明な箱を開けると、 寝ている二匹をタオルの上に置き、気付けがわりにオレンジジュースを一滴ずつ垂らした。 「ゆ? ゆっくりおはようだよ。」「ゆ? ゆっくりおはようだじぇ。」 二匹に目覚めるが、隣で震えている母親に驚く。 「お おかーしゃん ゆっくちちてね ゆっくちちてね」 二匹は泣きながら母親をぺーりょぺーりょする。 青年はそんなゆっくりたちに構わず、ゆっくりフードを開け、お皿の上に載せる。 『ここにフード置いておくよ。ということで僕はここで帰るから、後は家族でゆっくりしてってね。』 青年は「ゆっくりしてってね」の声を背に部屋を後にした。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― (今回はまた新たな楽しみ方ができたな。) 青年は帰りの電車で回想する。 青年がゆっくりハウスを利用するのは3回目であった。 1回目は、要領が良くわからず、虐待用具の説明がうまくゆっくりに伝わらなく 襲い掛かってきた親まりさを叩き潰してしまい、あとはもうグダグダになってしまった。 2回目は、前回の反省をふまえ、ゆっくりのぬいぐるみを用意した。 部屋にいたのはゲスで、最初こそ威勢よく「さっさとあまあまもってこい!」と勢いこんだものの、 虐待用具を説明するうちに態度を変え、最後は「たすけてほしいのぜ」と土下座する様に満足した。 ただ、子供を隔離をしなかったので、子供を非ゆっくり症にしてしまい、 間接的とはいえ、子ゆっくりを殺すことになってしまった。 青年はこうして恐怖を植え付けたゆっくり達がどうなるのかを店員に聞いたことがある。 「生き残った分は、またハウスに入れたままにしますよ。 恐怖を植え付けられたゆっくりたちは人間を恐れるんですよ。 人間を見ると震えて逃げる。そんなゆっくりたちを虐待するのを好むお客さんがいるんですよ。 まあただ、他の人間の手がかかってしまっているので値下げをさせてもらいますけどね。」 (しかし、面白いなこれ。また給料が出たら来ようっと。) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ゆっくりカフェ「ゆっとぴあ」内―― シュッシュッシュ 「どうも! 清く正しくきめぇ丸です。」 『わはは、今日もキモカワイイよ、きめぇ丸』 「おお、恐縮恐縮」 土曜日の午後ということもあり、お客さんがたくさん入っている。 青年は、トレイにコーヒーと砂糖水、そしてクッキーを載せて運んでいる。 『お待たせいたしました。アイスコーヒーに砂糖水、クッキーでございます。』 青年はトレイに載っていたものをテーブルの上に置いた。 『おお、ありがとう。』 『ご注文は以上ですか?』 『あ、はい。』 『それではゆっくりしてってくださいね。』 『めーりん、今日はクッキーを頼んだから、一緒に食べようよ。』 「じゃおーん、じゃおーん」めーりんが甘えるようにお客さんの胸に飛び込み頬をこすり付ける。 『こらこら、コーヒーこぼしちゃうだろう? もー。』 青年はテーブルから離れた。 ちなみにクッキーは基本的にはゆっくり用だが、人間も問題なく食べられる。 問題ないどころではない。甘さ控えめでおいしいのである。 青年はトレイを脇に挟み、次の注文を運ぶために調理室へ戻る。 調理室へ近づくと声が聞こえる。 「ちょっと、私のお客さんが注文したアイスティーまだ?」 青年がどうしたんだろうと思い入ると、 店のゆっくりである胴つきゆうかが青年の後輩店員に怒っているところだった。 『すいません。すぐ作ります。』 青年はこれまたお店の子ゆっくりのらんの面倒を見ているところだった。 このらんは下痢状態で、誰かが面倒を見ていなければならない。 どうやら昨日、お客さんの持ち込んだ食べ物を食べてこうなってしまったらしい。 本来、お客が自分で持ち込んだお菓子などをゆっくりに食べさせるのは禁止だが、 その禁止事項を破ってしまったお客さんがいたらしい。 本ゆんは大変そうだが、あにゃるからおかゆを出す様はシュールである。 『僕がすぐ作るよ。ゆうかさん、ちょっと待っててくださいね。』 青年が素早くアイスティーを作る準備を始める。 「お早くお願いしますね。」 ゆうかはぷりぷり怒りながら戻っていった。 「ぽんぽんいちゃいよー」子らんが苦しそうにいう。 『はぁ~』後輩はため息をつきながら、うんうんの処理をする。 『お前も大変だな。』青年は同情する。 この後輩は一番後輩ということもあり、 また本人の性格上ゆっくりにあまり強く出られない性格ということもあり、 どうしてもゆっくりからナメられ易い。 特にさっきの胴つきゆうかから目をつけられている。 (そうだ、彼にゆっくりハウスを紹介してみようかな。 それで無事に仕事ができれば何より、副作用が起こったらそれはそれで面白いかもしれないぞ。) 青年は密かに思うのであった。