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『駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その1』 20KB 独自設定 最終話の導入部(?)です。 ついに物語は佳境に入ります。 投稿者の九郎です。 この作品は『ゆっくり駆除業者のお仕事風景』と 『隻眼のまりさ』の二つの共通する最終話となっています。 話のメインは駆除業者の方になりますが 隻眼のまりさも見ていただいた方が、という物になっています。 例によっていくさんをかわいがるので饅・即・虐の方はご注意。 ――――某日、午後6時、本部棟二階廊下―――― 俺は何気なしに学校内を見て回った。 残った饅頭がいないかチェックの意味合いもあったが こういう教育機関の施設は独特の空気に触れるのもいい。 長い廊下、小さな机、中が見えるような窓の多い教室。 こういうものを見ているとノスタルジックな気分になる。 「…………」 机に軽く手を置いてみると学生時分のことを思い出す。 実を言うと今となっても社会人であるというのがピンと来ない。 自分がいつも、ただそこにあるものを享受し続けてきたからかもしれない。 駆除業者になったのも言い得て妙だが偶然に近い。 自ら何かをなそうとして行動したことなど無いに等しい。 「……それでも」 それでも、自分には一つだけ守るべきものが出来た。 出会ったのは例によって偶然だが、共にいたいと思ったのは偶然ではない。 いくさん。思い出すだけで自分は元気が出る。 ただのゆっくりにそこまで愛情を向けるか、と笑う者もいるだろう。 人間である自分がそこまでの執着を見せるのもおかしいかもしれない。 しかしただ与えられるものを受け取るだけだった無気力な自分にとっては 感情を大きく動かした、確かな最初の一つだった。 人は生きる意味があれば強くいられる。 別に小さな理由でもかまわない。 飯を食ってうまかったとか、風呂に入って気持ちよかったとか 人が生きるのも、働くのも、何がしか目的があった方がいい。 いくさんは、俺の生きる理由になってくれたのだ。 「……さて、と」 柄にもなく感慨に耽ってしまったと気を入れ直す。 こんな思考、他人に聞かれたら恥ずかしすぎて 自殺ものだとちょっと可笑しくなった。 ――――同日、同時刻、体育館―――― 「ここもいないな…」 最後にするつもりで体育館を軽く見回す。 この体育館は増設されたものなのか 本部棟のようなあからさまな木造ではなく 端々に金属パーツやコンクリートが使用されていた。 天井が高く、二階放送席もある近代的な造りだ。 「そこの人!!待ってくれ!!」 唐突に大きな声が響き渡った。 「誰だ!?何処にいる!?」 理由は未だにわからないが体育館は通常の部屋より広いのに音が良く響く。 そこら中に反響して声の主を捉えられなかった。 「上だ!二階の窓!!」 そう言われてステージの斜め上にあった小さな窓枠に目を向ける。 放送席だろうか。 「……はあ?」 なんとそこにいたのはゆっくりだった。 俺は少々驚いていた。 あれほどの騒ぎが起きていればゆっくりは大人しくしている方が珍しい。 奴らの好奇心は旺盛だ。たとえそれが危険なことでも 大人しく隠れているようなタイプではないはずなのだが。 いや、それ以上にそこにいたのがゆっくりであったことが意外だ。 あの声の掛け方。俺は人間がいると思って反応したのだが…。 「えーい、もう」 少ししてから自分のしていたことを思い出す。 そうだ、あれが奴らの言っていた残り一匹のまりさだ。 探すというのは方便でちょっとのんびりしようと 学校内を散策していただけなのだが 実際にターゲットを見つけたのならば是非もない。 とっとと回収して帰るとしよう。 「ちょっと待ってくれ!!話を聞いて欲しいんだ!!」 無視。 実際はもう帰る気になり始めていたのだ。 今更あんな饅頭とのコミュニケーションの必要性など皆無。 「聞いてくれって!!待てよ!!」 上へ上がる階段を探す。 二階に上がるとは小賢しい。 基本的に一階を中心に探していたので 或いはあいつを見つけることが出来なかったかもしれない。 「今から上がってきても無駄だぜ! ちゃんと逃げ道を確保してるからな!」 その言葉を聞いてようやく俺は立ち止まる。 …逃げ道だって? どうせそのまま進めば移動速度の差で 追いつけないはずなどないと思うのだが。 が、実際こうなってから逃げられたとなると ストレスがさらに増える。 「なかなか頭がいいようだな。 だが、それだけ頭がよければ俺が どのような者かも分かってるんだろうな?」 「勿論分かっている! あんたがどんな人間かよくわかったから あんたと話すのが一番いいとも判断したんだ!」 おかしい。今更ながらに俺ははっきりと気付く。 こいつの話し方はゆっくりのそれとはまるで違う。 あの時のもこうと同等か、それ以上。 「で、話とは何だ? 面白ければ相槌くらいは打ってやってもいい」 俺はその場によいしょ、と腰掛けた。 時間をかけるのも、あいつの言いなりになるのも癪に障るが ここまでくると逃げ道を用意しているという言葉に信憑性があるのも事実。 或いはここまで頭がいいとハッタリであるという可能性もなくはないが。 「それより、そこまで降りて行ってもいいか? お互いこの距離では話しにくいだろう?」 「先ほどは来るなと言っておきながら、今度は降りてくるだと?」 「あんたは話を聞いてくれると言った。 私はあんたを信用してそちらに行こうと思う。 だからそちらも信用で答えて欲しいんだ」 「……………」 俺は眉をひそめた。 こいつは本当にゆっくりか? 人間らしい、ではなくこの言動は人間そのものだ。 姿さえ見なければ人間と話していると錯覚してもおかしくない。 「分かった。先ほどまで俺は機嫌が悪かったから 最終的に始末すること前提で話をしていたが とりあえずお前の存在には興味がわいた。 対等な目線で話をしようと思う」 「ありがとう。 じゃあそっちに降りるから…」 「いや、俺がそちらに行こう。 その身体では降りてくるのも面倒だろう。 俺が昇るほうがはるかに早そうだしな」 俺はそう言って体育館の隅にあった階段に向かった。 ――――同日、同時刻、体育館二階放送室―――― 「よう、待たせたな」 そこは荒れ放題の部屋だった。 壁には穴が開いているし 天井にある蛍光灯はまともな形状を保っているものがひとつもない。 「よく来てくれた」 放送機材は埃を被り使い物になりそうもなかった。 放送用のマイクなどが備え付けられた机はのぞき窓に面しており 眼下の体育館を見下ろしながら放送が出来る位置にあった。 そんな埃まみれの机の上にまごう事なき一匹のゆっくりがいる。 帽子は擦り切れ、髪の毛はまとまっておらず 見るからに野生の特徴とも言える外観をしたまりさ種だった。 中でも目を引いたのが左目にまたがった大きな亀裂。 一直線に入ったその傷は奴から永遠に光を奪っていた。 残った右目だけで生きながらえてきたのだろう。 まさしく『隻眼のまりさ』であった。 野生の個体の中にはこういった怪我を負ったゆっくりは数が少ない。 なぜならばゆっくりが負傷したとなればその場で動かずに泣き叫び続け まともな余生を過ごすことがないからだ。 怪我を負わせたものが害意を持った襲撃者ならなおさらである。 「とりあえず、話を聞いてくれることに感謝したい」 「別にその程度のことで感謝することもないぞ」 「そう言わず感謝の念を受け取っておいてくれ。 本音を言えば八割方命がないと考えた上での特攻だったんだ。 そうは見えないかもしれないが、本当にありがたいと思っているんだからな」 律儀な奴だ、とも一瞬考えたがこれは 意識的に律儀な態度をとっているということが容易に想像できた。 「前置きはいいのでその話とやらをいい加減聞かせてもらえないか? 俺も決して暇ではないのでな」 「分かった。本題から話したほうが良さそうだな」 近くにあった椅子を引いたが埃まみれだったので座るのをやめた。 「今私…いや、私達は二つの問題を抱えている」 「問題ねぇ…。具体的には?」 「今ある世界が、今のままの形状を保っていられなくなってきているんだ」 「具体的になってないぞ」 「だったら端的に言うが『幻想郷』が崩壊の兆しを見せているんだ」 「はぁ?」 「この世界にゆっくりが出現したことで、幻想が幻想でなくなり始めている。 このままでは大きな混乱が起きる。 場合によっては大きな戦いの火蓋になってしまうかもしれない。 以前に私が」 「まてまて、何の話だ」 立て続けに言葉を発する隻眼のまりさの話を遮る。 俺はとりあえず、一番最初に分からなかった単語を聞いてみる。 「『ゲンソウキョウ』って何だ。 それが崩壊しようとしてる?だから混乱が起きる? まるで意味が分からんぞ」 「それも分からないか…じゃあとりあえず、幻想郷について話をしよう。 …ただし」 ただし、と言ってから隻眼のまりさが付け加える。 「それは、二つ目に比べたら大した問題ではないんだがな」 ――――同日、午後9時、列車内―――― 俺は廃校での駆除の事後処理を済ませた後、電車に揺られていた。 勿論金はかかってしまうが一応出張費用の一部として清算可能だ。 事業所にも仕事完了の連絡を入れ、今日はこのまま直帰である。 「…で、その境界が曖昧になってきていると?」 「そうだ、この世界で不思議なものや ありえないものは『幻想』となって幻想郷に入ってくる。 自分から入ってくる奴もいたみたいだがそれは例外だったんだろう。 ただ、今回はその逆が起きてしまった」 列車内には帰宅する乗客がひしめき合っている。 そんな中、俺はまりさを抱えて隅っこの席で話の続きを聞いていた。 まるでファンタジー小説のようなこいつの話はすぐには終わる気配がなかったのだ。 「本来ゆっくりは幻想入りしてこの世界にはいないはずだった。 だが何かの間違いでこちらの世界に現れたんだ。 ただ一匹二匹が紛れ込んだだけなら良かったんだが 最悪のパターンでこの世界に増殖、蔓延してしまった。 幻想入りの条件は幻想として人々から忘れ去られること。 私が言うのもなんだがこうも堂々と大勢の前にいたのでは 幻想も何もあったもんじゃないからな」 「んで不思議なゆっくりがこの世界に当たり前に存在する以上 その他の魔法だの超能力だの神だの悪魔だのがいてもおかしくないってか?」 「ああ、だからこそ幻想郷の存在自体に揺らぎが出始めている。 幻想郷がどうして出来たのかまでは分からないが このまま事が運べば間違いなくいろんなものがここに現れてしまう。 それこそ、人間を喰う妖怪や悪魔なんかがな…」 「…バカな話だ」 「だが事実だ。 その時が来ればあらゆる場所で文字通り喰い合いが始まるだろう。 幻想郷の中ではルールやバランス、抑止力なんかが正しく機能していたが こちらの世界では絶対にそうはいかないだろう」 「抑止力?」 「それについては置いておいていい。 今回のことに直接関係があるとは思えないしな」 「そうかい」 「うわっ!!!」 電車が大きく揺れた。 それと同時に隻眼のまりさが驚きで飛び上がる。 「落ち着かない乗り物だな…」 「なんだ?ゆっくり出来なくても大丈夫なんじゃなかったのか?」 「それとこれとは別だ。 もっとましな移動手段はないのか…?」 「これほど一般大衆に支持される移動手段は少ないとは思うんだがね」 ――――同日、午後10時、自宅アパート―――― 「さて…」 「??…どうした?」 自宅まで戻ってきた俺だがドアの前で一旦考え込む。 このまま何も考えずに中に入っていってしまっても大丈夫なのか、と。 「ここがお前の家なんだろう?どうして入らない」 「こっちにも色々事情があるんだよ」 以前にいくさんと番になるゆっくりがどうのという話をしたことがある。 あの時番がいらないようなことを言っていたがそれ以前に 今の生活に他の個体を持ち込むようなことを 嫌がっていたようなニュアンスが込められていたように思う。 いや、いくさんは別にはっきりそう言ったわけでもないし 番が必要ないとも言葉で聞いたわけではない。 「なんだ、私を家に入れるのがそんなにいやか?」 「違うっての。まあいいや」 いくさんなら俺がこいつを飼いゆっくりにしようとしていないことを 空気を読んで理解してくれるだろう。 そう自己完結してドアの鍵を開けて中に入った。 「ただいまー…」 「おかえりなさい、おにいさん。 およよ?そちらのかたは…」 「邪魔するぞ」 隻眼のまりさがいくさんに挨拶をする。 「ああそのいくさん、こいつはな…」 「おきゃくさまですね。 おのみものをおだししましょうか?」 「え?」 俺は驚いた。いくさんの対応がいたって普通だ。 一応どのように説明しようかシミュレートまでしていたのに さも当然のように客人として迎え入れようとしている。 「おにいさん?」 「どうかしたのか?」 「ああ、いや…別に、なんでもない」 いや、実はなんでもないことはないのだが これ以上ここで追求してもしょうがない。 俺はボストンバッグの上にいる隻眼のまりさを床に下ろした。 「とりあえず話を一旦まとめさせてくれ。 突然いろいろな情報を聞いたからな」 「わかった」 「こちらへどうぞ」 いくさんは部屋の中央の折りたたみテーブルの前に 隻眼のまりさを導いてから戸棚へ向かう。 俺は上着を脱いでからテーブルの一角に座った。 「さて、話をまとめようと思うんだが…おい?」 隻眼のまりさはいくさんを目で追っていた。 なんだよ。お前もいくさんの魅力に取り付かれるような輩か。 「おい!」 「うわっ!!」 まりさを多少乱暴に持ち上げるとテーブルの上に置いた。 こちらに注意を向けさせるという意図もあるが それ以上に30cmに満たないゆっくりがテーブルの下にいると話し辛い。 「先ほども言ったがお前を殺すつもりはないが 同時に飼うつもりも全くないぞ」 「分かってる。すまない」 「おちゃですよー」 いくさんがお茶の入った湯飲みを持ってきた。 隻眼のまりさの物にはストローがついている。 「わたしははずしましょうか?」 「いや、別に聞いてくれてかまわない。 で、話をまとめるがよろしいかな?」 「ああ」 隻眼のまりさが首肯する。 お茶に口を付けるつもりはないようだ。 「まず、お前がここまで来た経緯についてだ。 生まれたときから野生だったお前はゆっくりの集落にいた。 そしてその中で食料集めや捕食種との戦闘を繰り返しているうちに 自分に必要なのは敏捷性だと、ゆっくりすることをやめた、と ここまではいいな?」 「問題ない」 「…………」 いくさんは俺の話を黙って聞いていた。 先ほども思ったが、なんだか様子がいつもと違うような気がする。 どこがどう、とも言えないが。 だが、こういう些細なすれ違いから軋轢が生まれるのだ。 とっととこいつとの話を終えていくさんの方に気を配るとしよう。 「で、そんな中他者の記憶を見た。しかも人間のものを。 その人間の記憶には様々な情報があったが 緊迫感のあるものが多かった。 そしてその内容は人間に伝える必要のあったものだということ。 ここまでもいいか?」 「続けてくれ」 もう既に俺はこいつから興味が失せ始めていた。 なぜならば、こいつが聞いてくれと言った内容が あまりにも突飛だったからである。 「それは今ある世界の崩壊の形の一つだと その最大の要因がゆっくりであると、そういうことだな?」 「その通りだ」 何せ話すことがこんな内容だ。 ただ、たとえ作り話であったとしてもゆっくりがこのような 内容のある話を他人に話して聞かせるなど考えられないことだ。 それが通常種で、しかも頭の弱い部類にあるまりさ種ならなおさらだ。 だが、そういった珍しさを感じたのも最初だけ。 この話を人間から聞いていると考えると何言ってんのコイツ、の 一言で一蹴してしまうような誇大妄想だ。 話を聞く、という約束がなければ外に放り出してやりたい。 「で、ここまでの話は分かったのだがそれで俺にどうしろと言うんだ」 「おい、まだ幻想郷の話が…」 「その話はとりあえず置いておけ。 まず最初にお前が俺に何を求めるのか聞いているんだ」 呆気にとられたのか俺の急なやる気のなさを感じたのか ポカンとするまりさ。 だがすぐに表情を取り繕って食い下がってくる。 「だから、さっき話したように世界が色々と危険な状態なんだって!」 「分かっている。その話はとりあえず先ほど聞いた。 だが具体的な解決策を何一つ聞いていないんだが?」 「だ、だからその方法を考えようって…」 「はぁ~………」 俺は盛大にため息をつく。 「お前は俺にあるかどうかも分からない異世界を探せと? いつ来るかも本当に来るかも分からない危機に立ち向かえと?」 「そうじゃない!そうじゃないが…」 「妙に小難しいことを言って俺の興味を引いたのは 要するにそうやって異世界があるだのないだの言って ここに留まるつもりなんだろう?」 「待ってくれ!違う!誤解だ!」 「ここは二階ですよ、という冗談はともかく 具体的な証拠も解決策も用意せずに俺に全て押し付けようってのは 流石に虫が良すぎないか?」 「待ってくれって!そういう突き放した言い方はやめてくれ!」 焦り始めたまりさに冷ややかな目を向ける。 確かに、ここまで周到にシナリオを描いて 飼いゆっくりになろうと画策したのは驚嘆に値する。 が、それはあくまでゆっくりの範疇での話。 人間レベルで考えるとこのような妄想話では子供でも騙せるかどうか。 「おにいさん…」 「いくさん、どうした?」 「聞いてくれ、私は」 「ちょっと黙ってろ」 少々威嚇気味にそう言うと大人しくなった。 今の反応もそうだが、これほどまでに頭のいい通常種は そうお目にかかることはないだろう。 しかるべき場所ならばそれこそ飼いゆっくりになれたかもしれない。 「その『げんそうきょう』というものはなんですか?」 「ん…?なんだ、興味を持ったのか?」 「はい」 「あっはははは…そうかい」 俺は笑ってごまかそうとしたつもりなのだが いくさんの方はごまかされた様子が全くない。 それどころか俺がその説明に入るのと待っているようである。 …やはり、おかしい。 いつものいくさんなら俺の言動に同調するのが当たり前になっている。 たとえそうでなかったとしてもそれは俺の冗談などを否定するときだけだ。 悪い言い方にはなるが基本的にいくさんは俺の言いなりである。 逆らわないのは飼い主であるからとか、可愛がっているということもあるが それ以上に自己主張の少ない性格をしている。 そもそも場の空気に敏感ないくさんのことだ、俺が苛立って こいつを追い出しにかかっていることも察知しているだろう。 にもかかわらず、話を聞こうとしている。 俺が空気を読んだ結果を言えばいくさんが『隻眼のまりさをこのまま帰すな』と 言っているようにしか思えない。 「はぁ…」 いくさんが用意してくれたお茶を口にする。 一息ついても、いくさんと隻眼のまりさは不動のままだ。 どうやらこの話には何らかの形で決着をつけない限り終わらせる気はないらしい。 考えていても仕方ない、と思っていることを口にする。 「いくさん、そして…まりさ、俺はぶっちゃけ この話を続ける気がなくなってきている」 「おにいさ…」 「最後まで聞けって。 俺は続ける気がなくなってきたが…もう少し位はある。 そこで、だ。 ここからは協力要請や約束というものはもう無しだ。 今から始まるのは討論。 俺は様々な技巧を凝らし話を終わりに持っていく。 そちらはそちらで自分の望む方向へ話を進めろ」 「なんだよ、それ…」 「こうでもしないとこの話はいつまでたっても終わらない。 いいか、ルールは簡単だ。 お前らは何とかして俺の首を縦に振らせろ。 俺は新しい話が出てこない状況を作り出す。 それが討論終了の条件だ。 それだけ。これが今の俺に出来る最大の譲歩だ」 「首を立てに振らせろって、そんなことどうしたら…」 「それくらい自分で考えろ。まあ例を挙げてやるとしたら 報酬を用意する、興味を惹かせる、納得させる、 などのものが考えられるな。 せいぜい頑張ってくれたまえ」 「「…………」」 これは、いくさんがルール上とはいえ初めて俺の敵として対峙する瞬間だ。 話のタネとしてはまあそれなりに楽しめそうだ、と結論付けた。 「話を戻そうか。幻想郷についてだったか…? そうだな、まあここは改めてお前が説明してくれないか?」 「分かった」 「お願いします」 「先に断っておくが、幻想郷に関しては私も分かっていない部分が多い。 他人の断片的な記憶を見ただけではいろんな部分が歯抜けだからな。 私なりの解釈が入っているかもしれないし間違いがあるかもしれない。 その前提で聞いてくれ」 そう前置きをしてから説明された内容を箇条書きにするとこうだ。 1.それは『そこにある』と自覚していなければたどり着くことが出来ない。 2.神社が入り口になっている可能性が高い。 3.この世に存在してはならない物、魔法や妖怪などが存在している。 4.『存在してはならない物』の定義はこの世界にとって『幻想』である事。 5.統治機関はないが、一定のルールや秩序が出来ている。 6.幻想郷は過去に様々な者の手によって成立した世界であり、元からあったものではない。 7.ゆっくりの種族を定義付けている元となった人間、妖怪などが存在する。 「…待て、それはどういうことだ?」 「え?」 「その、モデルとなった人間が存在するというのはどういうことだと言っている」 「話すのを忘れていたか? 私が『記憶』を見たのは私にそっくりな人間『霧雨魔理沙』の物だ。 他にもゆっくりになっている者は例外なくそっくりな奴らがいた。 アリス・マーガトロイド、パチュリー・ノーレッジ、射命丸文などがいるな。 ゆっくりになっていない奴はいたが、似ている者がいないゆっくりは存在しない」 「…初耳だぞ」 「そうか、すまなかった。 その『いく』にも永江衣玖という奴が居た。 一度しか会っていなかったがな」 「一度しか会っていない者の存在が、良くそんな不確かな記憶に残っていたものだ」 「確かにそうだな。 だがこの魔理沙という人間は何でもかんでも 厄介ごとに首を突っ込むのが常だったようだな。 多くの者と顔を合わせていたらしい。 会う奴会う奴戦ってばかりだが…」 「そんな物騒な奴だったのか?」 「物騒…というのとは少し違うようだ」 「何が?」 「いや、すまない。 口ではうまく言えないんだが、どうも本気で戦ってないようだ。 こっちの世界の言い方をすると遊びとか、スポーツのような感覚だ」 「ふーん…」 曖昧に返事をする。 いかん。調子に乗って突っ込みすぎた。 興味を引かれたらこっちの負けだろうが。 「話が逸れたな。幻想郷については以上か?」 「待ってくれ、ここからが重要だ。 その幻想郷が危機に陥っているんだ」 「その話を聞いてやってもいいが少し待て。 今の話はいくさんの『幻想郷とは何か』という質問から出たものだろう。 …いくさんは、今の説明で納得したか?」 「……………」 いくさんは俺の質問に答えず考え込む仕草のまま固まっている。 口元に当てた小さな手が可愛らしい…というのはさておき このままで話が進まない。 「いくさん?おーい」 「まりささん、ひとつかくにんしてもいいですか?」 「え?ああ…」 いくさんが俺を通り越して隻眼のまりさに声をかける。 ちょっと…いやかなりグサッと来た。 「その『げんそうきょう』のいりぐちとなっているじんじゃですが… いちど、じしんでほうかいしていませんでしたか?」 「………………………え?」 続く あとがき いろいろあって結果的に三ヶ月空きました。すみません。 こんな作者と作品ですが、待ってくださっている方がいらっしゃるのなら嬉しいです。 以前のようなペースでの投稿はちょっと無理そうですが 気長に書いていくんでちゃんとした終わりを迎えられるように頑張ります。 また、プロットを箇条書きで書いている限りでは すぐには終わりそうにないんで最終話と言いつつ少し伸びるかもしれません。 では、今回はこれにて…。 最後に、この作品を読んでくださった全ての方に無上の感謝を。 私がここに投稿させて頂いた作品一覧 anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 以降そのシリーズ anko3061 隻眼のまりさ プロローグ 以降そのシリーズ anko3127 ゆっくり加工業者のお仕事風景
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『駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その2』 21KB 考証 独自設定 会話はもっと少なくてもよかったかも? この作品は何処へ向かうのか…。 投稿者の九郎です。 この作品は『ゆっくり駆除業者のお仕事風景』と 『隻眼のまりさ』の二つの共通する最終話となっています。 最終話と言いつつ、伸びそうなんで長い目で見ていただければ幸いです。 例によっていくさんをかわいがるので… いや今回はあからさまではありませんが、饅・即・虐の方はご注意。 ――――同日、午後11時、自宅アパート―――― 俺は、全く動けなかった。 …え?なんで?何を言っているんだ? それは、しかし、だが。 いくさんの、その言葉は 「…なんでそれを知っているんだ?」 俺の変わりに隻眼のまりさが神妙な顔でいくさんに問う。 隻眼のまりさの問いは、質問ではなかった。確認だ。 それがよくわかる。 なぜなら、俺は否定して欲しかったからだ。 「貴方の記憶の中でも、そうなんですね?」 流暢な日本語だった。 いくさんの話し方は丁寧であってもどこかぎこちなく ゆっくりらしい喋り方であったはずだ。 もう俺の中では解答が出ている。 いくさんはすでに『スイッチが切り替わっていた』のだ。 「…奇しくも、これはある種の証拠になるな」 確かにそうだ。 例えば、両者をそれぞれ別の場所に分けて交互に同じ質問をしていく。 そしてその回答が合致するものであればこれ以上ない証拠だ。 俺は冷静さを取り繕って聞いた。 「で、いくさん。過去に神社が崩壊したことは分かった。それで?」 「それでも何も今のが何よりの証拠だろ!私が話したのは作り話じゃない!」 「結論を急いでもらっては困るな」 「何?」 「まだ話のすりあわせが出来たわけではないし 今のはお前が話した内容がただの妄想で無いという程度のものだ。 その幻想郷とやらが存在しうるという直接的な証拠にはならないぞ」 「……っ!」 隻眼のまりさが悔しそうに俺から目線をはずす。 とりあえず俺の意見の方が正しいと思ったようだ。 実際、これは状況証拠にしかならない。 「いくさん、神社の崩壊があったのはわかったが…それがどうかしたのか? それともこいつに質問して自分の知りえたことの答え合わせがしたかったのか?」 「……………」 いくさんに質問し直すが、先ほどからしきりに何かを考えている様子。 「さっきからどうしたんだ。 何か思うところでもあるのか?いくさん?おーい…」 「……………」 まりさもだんだん様子が変だと思い始めたらしい。 いくさんに怪訝な目を向ける。 「お兄さん、少し待っていただけないでしょうか?」 「待ってって…なんだ?時間稼ぎのつもりなのか?」 「そういうわけでは…いえ、そうですね。 明日まで考える時間が欲しいんですが…」 「明日までねぇ…」 俺は時計を見る。 確かにもういい時間ではある。 普段から起きる時間の早い俺としては もう寝ていても全く不思議ではない時間帯だ。 「まあいいや、分かった。 いくさんがそこまで言うなら仕方がない。 明日は出張に関する書類を書くだけだから午後半休で帰ってくる。 昼過ぎから話を再開しよう。お前もそれでいいな?」 「私は構わないが、その…」 「大丈夫だ。今すぐ放り出したりはせん。 ただし、明日の夜には何があっても出てってもらうからな」 「すまない」 「ありがとうございます、お兄さん」 「ふん…」 少々気に入らないが、やむを得まい。 何より、いくさんがここまで頑なに自分の意見を持っているのだ。 それがどういうものなのか見てみたい思いもある。 「ほらよ」 「…?これが何か?」 俺の布団を敷いた後隻眼のまりさに 汚れて雑巾にしようかと思い始めていたタオルを 投げて寄越すと、きょとんとされた。 「使えって事だよ。 体拭くなり布団にするなり好きにしな」 「あ、ああ、助かる」 「で、お前の寝床はここな」 トイレのドアを開けて指をさす。 「そこって…便所じゃないのか?」 「家にいてもいいとは言ったが同じ部屋で寝る気はない。 外の方がいいと言うなら止めはしないが」 「…わかったよ」 タオルをくわえてトイレに入るまりさ。 いくさんから一言あるかと思ったが例によって考え事に夢中な様子。 「いくさーん…」 頭を指先でコツコツとつつく。 「…え?あ、はい?」 本気で気付いてないのか…。 「電気消すが、いいか?」 「はい。おやすみなさい、お兄さん」 「…おやすみ」 電気を消して、俺達はそれぞれの思いを胸に眠った。 ――――翌日、午前7時、自宅アパート―――― 「おーい?私はいつまでここにいればいいんだー? 流石に腹も減ってきたんだがー?」 俺は無言でゆっくりフードを一握りつかみ トイレの中にいた隻眼のまりさにくれてやる。 「トイレの中で食わせる気かー?」 「文句を言うな。 それより午後になったら決着をつけるからな。 首を洗って待って…いや、お前に首はなかったな」 そう言うとまりさの方を無視していくさんに声をかける。 「じゃあ、行ってくる」 「はい。いってらっしゃい、お兄さん」 いくさんはいつも通りの笑顔を見せて俺の見送りをしてくれた。 …それを見て、俺は油断していたのかもしれない。 いくさんの背丈では、トイレも、窓も開けられないと。 ――――同日、同時刻、自宅アパート―――― 「じゃあ、行ってくる」 「はい。いってらっしゃい、お兄さん」 ガチャっとドアの閉まる音を聞きいてから声を出す。 「――――お兄さん、ごめんなさい」 そう言うと、いくの足が床から離れた。 ジャンプではない。 何故なら宙に浮いたいくはそのままじわじわ上昇し続けているからだ。 そのままトイレの方へ向かい 床に足をつけていたままでは届かないノブを回しドアを開けた。 「…ん?何だ?…ってお前、飛べたのか?」 「はい、身につけたのは昨日のことですけど…」 いくは昨日、いくつかの『記憶』を見ていた。 それは緋色の剣を持った少女であったり 通常の地面から程遠い場所で角のある者と話している情景だった。 そして何よりも多かったのが、雲の中を行き交う竜宮の使いの姿。 それを知ると、急に自分の体が軽くなるのを感じた。 いくは極めて自然に、空を飛ぶことを身につけていたのだ。 「まりささん、大切なお話があります」 「話?話し合いはあの男が帰ってきてからするんじゃなかったのか?」 いくは首を振る。 「いいえ。これは、私とまりささんだけで話したいことなんです。 …そして、外に出て行く必要があるのです」 「外に…!?だけどお前…!」 「何も言わないで下さい。 これは、昨夜ずっと考えた結果なんです。 そしてこれにはまりささんの力が必要なんです。 お願いします。ついて来てもらえないでしょうか?」 「…………。 私がついて行くこと自体は別に構わないんだが お前がいなくなったのに気付いたら私が殺されないか?」 「それについては完全な保証は出来ませんが 私の方から出来る限りまりささんに手を出さないようにお願いしてみます。 …それに、私たちの話している内容は 不確かな記憶に頼っている以上説明不足になりますし 感覚的な話ばかりで説得力もありません。 午後になって時間をかけて話し合いをしては どのように話を進めようとも必ず言い負かされてしまいます。 私たちがちゃんと行動できるタイミングは今しかありません」 「そう言ってくれるのはありがたいが…」 「携帯電話も持って行きますし場合によってはすぐ帰ってくればいいのです。 あなたも、とりあえず話は伝えられたのですから 無理をしてここにこだわらなくてもいいでしょう?」 「…分かった。そこまで言うなら。 ただ、どうして外に出る必要があるのかよくわからないのだが?」 「それについては、道中お話します」 そう言うといくは荷物を用意し、書置きを残し 隻眼のまりさを連れて窓から飛び立った。 ――――同日、午後1時、自宅アパート―――― 「いくさん…!!」 仕事を終え、自宅に戻った俺はいくさんの書置きを見た。 そこには 『私は、確認したいことが出来ましたので 少し出かけてきたいと思います。 携帯電話は持って行きます。 ですが用事がすむまでは出ないかもしれません。 そして、この外出は私から言い出したことで まりささんに責任はありません。 無理はしませんし、必ず戻ってきます。 その時、私は許されようとは思いません。 ただ、出来れば私が戻ったとき相応の罰を受け 以前のような暮らしに戻りたいという思いはあります。 どうか、少なくともお兄さんは幸せでいて下さい』 「なんだよ、それ…」 気に入らない。 いくさんが出て行ったことも あのまりさがついて行ったことも 俺に相談してくれなかったことも気に入らない。 だが、一番気に入らないのは手紙の末尾に書かれた名前らしき記述。 「『衣玖』って…誰だよ…」 俺の中で様々な感情が渦巻く。 グチャグチャなそれは一向にまとまる気配がないようにも思えたが 最終的には『怒り』が一番強かった。 「…っくっそ!!!」 が、何に対して怒っているのかは分からない。 向ける対象がないのかもしれない。 「探しに行こう」 今の俺にはそれしかない。 そしてその言葉を吐いたと同時に冷静さが戻ってきた。 「荷物…!」 必要になりそうなものを片っ端からリュックサックに入れていく。 財布、時計、ティッシュ…少し迷ってから、タオルや着替え、懐中電灯なども。 場合によっては数日間に渡るかもしれない。 最悪それでも見つからないかもしれない。 いや、本当の最悪は…。 「ええい!!」 いやな思考を打ち切る。 ポケットに手を入れ、携帯電話を確認する。 着信はない。 そして、駄目だとは思いつつも短縮ダイアルにあった いくさんの携帯にかけてみる。 「やっぱり駄目か…」 が、コール音はした。繋がったのだ。 少なくともいくさんの携帯電話は壊れていないし、バッテリーも残っている。 「よし…」 気休めの希望が手に入った。 俺は玄関のドアを開け、鍵をかけ、そして走り出す。 …どこへ? 当てなどない。だから、そこらの人に片っ端から聞くしかない。 正直相手にされそうも無かったが、警察に捜索願を出すもの手か、と思った矢先。 俺は、俺自身が知りえた情報がパズルのピースのように頭に浮かんできた。 隻眼のまりさの毒気に当てられたのだろうか。 あるいはいくさんの行動に思いのほか混乱していたのかもしれない。 去年から俺は様々な不可思議な出来事を見てきた。 が、事実として起こった以上、それぞれが何らかの意味があって起きた事なのだ。 たとえ俺には意味のないことでも、それが何かのために起きたことのはずだ。 全てのピースは出揃ったのか。 いや、全てが出揃っていなくてもジグソーパズルというものは ある程度形が出来てくれば絵は見えてくるはずなのだ。 隻眼のまりさが語ったこと。 そして俺が今まで知り得てきた情報。 今思えば妙に符合する点もあった。 事実として食い違っていても、別の論理に導かれて 意味をなすものもあるかもしれない。 俺は、パズルのピースをさらに増やすために、あるところに電話をかけた。 ――――同日、午前9時、上空―――― 「お空を飛んでるみたい、と言うべきなのか?」 「実際に飛んでいるのですから、必要ないのではないでしょうか。 ですが、空気を読むことはいいことだと思います」 いくと隻眼のまりさは空中にいた。 まりさはタオルにくるまれていくの背中に乗っている状態。 丁度風呂敷を背負っているような格好である。 飛んでいるのは地上100m程の高さ。 場合によっては写真にとられてUFOだと騒がれているかもしれない距離。 肉眼で確認するにはゆっくりは小さすぎた。 「で、結局お前はその『特異点』という場所が怪しいというわけだな?」 「はい、私が見た『記憶』の方はいつも空を飛んでいましたから 何度もその場所を目にしていたのだと思います」 いくと隻眼のまりさはずっと空中で話し込んでいた。 空中を飛んで移動するのはある種危険な行為なのだが 少なくとも地上を歩いていくよりはましだと思ったのだ。 「だが、その特異点はどこにでも突然現れたんだろう? 実際どうやって探せばいいんだ?」 「ですから『記憶』で見た方と同じ方法をとるのです。 上空から見ていればすぐに分かりますからね」 「飛んでいるのはそう言う意味合いもあったのか…」 しかし、いくは地上で言うところの腹を下にした『うつ伏せ』の姿勢で飛んでいる。 この状態では背中に乗っているまりさから地上を見ることは出来ずにいた。 「だが、そんなに簡単に開くものなのか? 私の『記憶』では神社以外に幻想郷に出入りできる場所は 無いように思えるのだが…。 何より、何もかも境界が曖昧な世界で唯一ともいえる境界が 幻想郷とこちらの世界の境界線だというらしいじゃないか」 「分かりません。ですが、貴方の言った事がどうしても気になったのです」 「私の言ったこと?」 「幻想郷との境界が曖昧になっている、ということです。 逆に考えればその幻想郷の崩壊というのが 幻想郷との行き来を可能にする『特異点』の多発と考えれば辻褄が合うのです」 「確かにそうだが…」 だからと言ってそれを確認してどうなる、という言葉をまりさは飲み込んだ。 自分には何をしていいものか全く見当もつかないのだ。 「……………」 「……………」 会話が途切れる。 二人の間には共通するものが少なかった。 人間の元で生まれて人間に飼われていたいく。 山間部で生まれ野生のゆっくりとして生きてきたまりさ。 そして『記憶』の中の存在も共通する点があまりに少なかった。 だが、逆に言えば互いの情報交換によって 様々な新情報が得られるということでもある。 いくは口を開いた。 「今回の一件には全く関係ないのですが まりささんは、野性のゆっくりとして生きてきたんですよね?」 「ああ、それが?」 「私は森の中のことや他のゆっくりと協力して暮らすということを よく知らないのです。 やはり、人間の力を借りずに生きるというのは大変なのですか?」 「そうだな。アンタの言動やあの男の対応を見る限りでは 飼いゆっくりに比べて過酷なのは間違いない。 …ああいや、嫌味のつもりはないんだぞ?」 「お気になさらないで下さい。 やっぱり、まりささんにもお仲間の方たちがいたのですか?」 そう言われ、隻眼のまりさはかつての集落に思いをはせる。 不思議なものだ。 本当にただのゆっくりであった頃と今の自分は全く違った。 『記憶』を得て以降、自分は性格も言動も全く変わってしまっていた。 なにより、あれだけ必死に生きてきた毎日が 色褪せて見えたのが意外だった。 同時に、人間から見ればゆっくりというものが いかにちっぽけなものであるのか否応無しに分かってしまうのだ。 「…ごめんなさい。余計なことを聞いてしまいましたね」 「いや、大丈夫だ」 自分の中になんともいえない感情が渦巻いていたのを察知されたらしい。 しかし、俯瞰してみると本当に妙な感じだった。 あれほどまでに感心していたぱちゅりーの知識が幼稚なものに思えてくる。 今なら上から目線で偉そうに語ることさえ出来そうだ。 あれほどまでに感心したドスの戦いが滑稽なものに思えてくる。 今ならドスさえも単独で倒すことが出来るだろう。 「…不思議なものだ」 「はい?」 我知らず口に出してしまったらしい。 だが、案外聞いてもらうのも悪くないかもしれない。 「私は、変わってしまったんだ。 あの頃の必死さとか、目線の高さとか 昔の自分から見て光り輝いていたものが随分と鈍く見えるよ」 「…………」 まりさは生気のない目で語った。 いくは神妙な顔で次の言葉を待つ。 「昔の私は、本当に子供みたいな感情を持ち続けていたんだ。 不便であったがためにどんなものでも幸せを感じていた。 今の私がそれを得たとしても何の感慨も沸かないようなちっぽけなものでもな」 いくは隻眼のまりさの言う『それ』が 食料や玩具といった即物的でない物を指していることをなんとなく察していた。 「何故だろうな。今でもゆっくりであることに変わりはないはずなのに。 ゆっくりすることをやめた私は、本当にゆっくりでなくなってしまったんだろうか。 …強くなるということは、ゆっくりすることをやめるということは ゆっくりでなくなるということは、私にとっての世界の価値を貶める行為だったんだろうか?」 隻眼のまりさの目に映る世界は変わっていた。 当然だ。人間の目から見れば野性のゆっくりの生活など 劣悪な環境で危険と隣りあわせで生きているろくでもないものだ。 ぱちゅりーと違いまりさが得たのは人間の『知識』ではなく『記憶』だ。 そうなることで次第にゆっくりの価値観は薄れ 逆に人間の価値観に上書きされてしまっていた。 かつてはあれほど輝いていた家も、食事も、仲間も ちっぽけなくだらない存在に見えてくる。 「後悔しているんですか?」 「………少しな」 隻眼のまりさは短く言った。 いくには言葉では理解した。 しかし感情で、深いところで理解することは出来なかった。 何故なら両者には、決定的な違いが多くありすぎたからだ。 『今まで見てきた目線の高さ』 『帰ることの出来る場所』 いくはこの件が綺麗に片付いたらまたあの家に戻り 以前のような暮らしに戻りたいと考えている。 自分は少し変わってしまっていたが『記憶』を得たことを幸運とも不幸とも思わない。 今までの生活と、これからの生活。 戻れることが確定しているわけではないのだが それはいくにとって大きな希望になる。 隻眼のまりさはもう戻るべき場所も 希望となるよりどころも失くしていた。 再び野生に戻ったとしてもまともな幸せは得られないだろう。 そこで得られるのはゆっくりとしての幸せであって人間の幸せではない。 それどころかなまじ人間の知識を得てしまったがために 駆除に怯え、雨に怯え、小動物に怯え…そんな暮らしに戻ることに 魅力が感じられなくなっているだろう。 だが奇しくも、まりさは気付かなかったが これはぱちゅりーが得ていた不安感との戦いに酷似していた。 『人間の知識を得る』これは、ゆっくりにとって本当に幸せなことではないのだ。 ――――同日、午前1時、自宅アパート前路上―――― 俺は、ある場所に電話をかける。 コールは五回。向こうの声が聞こえてきた。 「はい、こちらゆっくり研究所支部です」 「唐突で申し訳ない。そちらの所長に取次ぎをお願いできないだろうか?」 「所長に?…失礼ですが、どちら様でしょうか?」 「以前にそちらの所長にご招待いただいた者だ。 一斉駆除ではお世話になった」 「申し訳ありませんが、事前のご連絡のない方の電話はお取次ぎしかねます。 まずは、広報課か事務室の方へご連絡いただき、それで」 「俺はゆっくり駆除業者の九郎だ! 言えば分かるから伝えてくれ! 急ぎの用事なんだ!!」 「…………」 向こうが眉をひそめているのが電話越しにも分かりそうな沈黙だった。 だが自分でも驚いたが今の俺にはそれほどまでに余裕がない状況なのだ。 「少々お待ちください」 そう言うと保留の音楽が電話越しに聞こえ始めた。 「ええい…!!」 俺はただのんびり待っていることもできず走り出した。 ある場所へ向かって。 そういえば、いくさんはそれほど外出が好きだったわけでもない。 俺と連れ立って外へ出たときも自分から何処へ行きたい、あれはなんだと 外のものに興味を示すことは少なかった。 故に、いくさんの行き先は普段行っていた公園や買い物先を除けばかなり限定される。 俺の知らない場所へ出て行った可能性も無きにしも非ずだが 冷静に考えればいくさんが向かったのは 『いくさんが知りえた情報の中で決定することの出来る場所』ということになる。 『記憶』とやらが異世界のものであるのならこの世界の情報は入っていないはずだ。 つまりはこちらの世界での情報は俺が知らずに いくさんが知っている事柄はかなり限定される。 加えて、ゆっくりだけでは法的に電車やバスは使えない。 人間より早く移動することの出来ないゆっくりならば 何とか探し出すことが出来るかもしれない。 「もしもーし?ゆっくり研究所支部長ですがー?」 「ああ、よかった。あんたに聞きたいことがあるんだ!」 「それは別にいいんだけど、確か名刺あげなかったっけ? 携帯にかけてくれてもよかったんだけど」 「悪いが今は持ってないんでね」 「そう、まあいいけど」 奴のあまりにいつも通りの暢気な口調に苛立ちながらも 感情を抑えつつ、言葉を発した。 「以前アンタが話していたゆっくりの大本となる存在の話しあったよな!? それについてと…他にもいくつか聞きたいことがあるんだが!」 「それは別にいいんだけど…どうしたの?そんなに息せき切って」 「今は事情を説明している暇はない! 全て終わったら話すから今は質問にだけ答えてもらえると助かるんだが!」 「随分一方的だね…まあ、他ならぬ君の頼みだから聞いてあげるけど 一つ貸しにしておくからね?」 「分かった分かった!」 なんというか今更だが、この男の口調は成人男性のものとしては いかがなものかと思ってしまうのは俺だけだろうか? 気のせいだとは思うのだが。 「で、何が聞きたいんだい?」 「アンタの話した、ゆっくりの大本の存在の話しなんだが アンタはそれが一体どういうものだと考えているんだ?」 意識したわけではなかったのだが俺は走るのをやめて歩きに入っていた。 走りながら話すというきつい行為を無意識に嫌ったのかもしれない。 だがそのおかげか、多少冷静さが戻ってきた。 「大本となる存在の話っていうけど、それは仮説の一つにしか過ぎないんだけど?」 「それでは質問の答えになっていない。 俺は『あったとしたらそれはどのようなものだ』と聞いているんだ」 「さあ…ひょっとしたらドスのような突然変異体のようなものかもしれないし 女王蜂や女王蟻のような引きこもって表に出ない何かかもしれない」 「他には?」 「他に……?そうだねぇ。 ひょっとしたら元となる存在も単なる一つのゆっくりに過ぎなくて 大本Aが死んだらその途端に大本Bが現れるというシステムかもしれない。 場合によっては大本となるゆっくりが複数いるかもしれないという考え方も出来るね」 奴の話を聞いていて俺はやっぱり、と思った。 「まああくまで、大本なんてものがいればの話だけどね。 この仮説は仮説の域を出たためしがないわけだし」 「ごまかしは無しにしてくれ。気付いたのはついさっきだが もっと早くに疑問に思うべきだったんだ」 「…………」 「アンタは半年前、大本となる存在が日本にあるかもしれないと言った。 と、同時に日本はゆっくり生息分布のために調査がなされたが 何処にも大きな発見がなかったということも言っていた」 「…それが?」 「おかしいじゃないか。 二つの命題が矛盾しているというだけでなくアンタはわざわざ 『歩いていけないどこか』なんて表現を使った。 日本は山が多いが世界から見れば狭いし、人跡未踏の地なんて存在しない! それに大本となる存在の例が全てゆっくりなのはどういうことだ! あいつらは苛酷な環境で生きていけるはずのない脆弱な連中だ! 南極はもちろん高地や砂漠!雨の多い熱帯でも確認されてはいなかった! なのに何故!アンタは大本がすぐに見つかりそうな日本にあるなんて馬鹿な仮説を考えた!」 「それじゃあ、大本となる存在がいるってこと自体が 間違っているってことじゃあないかな?」 「違う!アンタは自分で言っていただろう!そうであったら矛盾がないと! それ以前にアンタは本職の研究者だ! 俺でも気付いたような今の話を自分で考えなかったはずがない! なのに何故そんな仮説を公の場で話したりしたんだ! アンタ自身の中にこの仮説に他に 何らかの論拠があったからそう思ったんじゃないのか!」 興奮してまくし立てる俺に周りの人たちが変な人を見るような目を向けてくる。 だが、今の俺には全く気にならなかった。 「…君は、研究者というものをちょっと買いかぶってるよ」 聞こえてきたのは静かな声だった。 「確かに、君の言うことは一理あるのかもしれない。 だけど研究者だって人間だ。間違いはある」 「…………っ!!」 冷静に返され俺は歯噛みした。 「間違った仮説を人前で披露してしまったのは確かに恥ずべきことだ。 だけどそれを電話越しに関係者でもない君にそこまで非難されるいわれはないよ」 「…悪かった。先ほどの俺は確かに少々興奮しすぎた。 少々厄介な問題が発生していたものでな」 「だけど、と続けるつもりかい?」 「そうだ。確かに俺が悪かった。申し訳ない。 それでも今の俺には一つでも多くの情報が欲しいんだ。 そしてそれはおそらくあんたが知っているであろう情報なんだ。 …協力してくれないか?」 出来る限り冷静さを持ってそう言った。 そして、今の俺は何故だかはわからないが こいつが嘘をついているという確信があった。 同時に、こいつの持っている情報は絶対に必要なものだということも。 続く あとがき 話を進めていくのが難しい内容になってきました。 作中の会話に矛盾や、前言っていた事と違うじゃないか というような点が出てきやしないかとちょっと不安になります。 ともあれ、私は完結まで(暴走気味に)走り続けるので 皆がハッピーエンディングを迎えられるように応援してくだされば嬉しいです。 最後に、この作品を読んでくださった全ての方に無上の感謝を。 私がここに投稿させて頂いた作品一覧 anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 以降そのシリーズ anko3061 隻眼のまりさ プロローグ 以降そのシリーズ anko3127 ゆっくり加工業者のお仕事風景 anko3506 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その1
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『駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その3』 21KB 考証 戦闘 希少種 幻想郷 独自設定 その気になればどこまでも長くなりそう… かっとビングだぜO☆RE! 投稿者の九郎です。 この作品は『ゆっくり駆除業者のお仕事風景』と 『隻眼のまりさ』の二つの共通する最終話となっています。 話のメインは駆除業者の方になりますが 隻眼のまりさも見ていただいた方が、という物になっています。 例によっていくさんをかわいがるので饅・即・虐の方はご注意。 ――――同日、午後1時、駅前―――― 「君は、ゆっくりって何だと考える?」 「は?」 俺は駅の券売機の前でマヌケな声を出した。 「なんだよ?研究者お得意の考察披露か? それとも焦っている俺への嫌がらせなのか?」 「君こそ答えをはぐらかさないで欲しいな。 質問に対して質問で返すのはルール違反だよ」 それを言ったら俺の協力してくれないか?の質問の後に そんなことを聞いてくるお前もお前だけどな、と言いたくなる。 しかし、先ほどの件もありあまり突っ込めそうもなかった。 加えて今の奴の話し方は至って真面目だ。 どうやら俺を試すつもりらしい、と思う。 「ゆっくりを何だと思う、か。 結論から言わせて貰うが『分からない』だな」 「と、いうと?」 千円札を入れて目的地までの切符を買う。 おつりと切符を手に取り改札へ。 「今の俺はゆっくりのことなど何も分かっていない。 逆に考えれば『分からないことが分かっている』のかもしれん」 「そうなんだ」 電話越しにくすりと聞こえ、満足そうな笑みを浮かべるあいつが想像できた。 「で、答えろと言われたから答えたがその質問には何か特別な意味でもあるのか?」 「あるさ、と言うよりはこれが一番重要なことなんじゃないかと思ってるんだよね」 「もったいぶるんじゃない。俺への協力に関する話も宙ぶらりんだろ。 結局何が言いたいのかはっきりしてくれ」 自動改札に切符を入れて駅のホームに入る。 目的の電車が来るにはまだ少々時間があるようだ。 「君さ、ひょっとして去年もこうが火事を起こした場所の近くに向かってないかい?」 「………!!」 俺は息を呑んだ。 そして、パズルの新たなピースがはまるのを感じた。 「…その通りだが、どうして分かった?」 「君ならもう気付きはじめてるんじゃないかな」 「アンタとの話ではさっきからきちんと会話が出来ていない。 分かってて当然、理解しているものだと思うことを省くのは常識だが 説明すべき部分は説明して欲しいんだが」 「それを言ったら、君こそこちらに事情は後で話す、と最初に言ったのはどうなのかな?」 ああもう、と俺は苛立ちを隠せずに携帯電話から耳を離す。 間違いない。こいつは今回の事件に関係のある何かを知っているのだ。 知っている上で、あえて俺を苛立たせるようなはぐらかし方をしている。 「残念ながら、俺は前もってそう断ってから話を始めた。 だがお前は違うだろう。聞かれたことだけに答えろ、と言ってそれを了承した。 だから答えるべきことには答えて欲しいんだが」 「あら、確かにその通りだね。仕方がない、こっちの負けだよ」 「負けだと言うのなら俺の質問に答えてくれるよな?」 「ああ、いいよ。何でも聞いて。答えられることなら答えよう」 えらくあっさり折れたな。 一応、最初から答える気であってはくれたようだ。 だがそう考えると今の会話は全く意味を成さなかったことになる。 また腹が立ってきたのを強引に押さえ込んで質問をぶつけた。 「アンタは最初、大本となる存在が『歩いていけないどこか』と言ったが それは一体どういう意味なんだ」 「言葉通りの意味だけど、ちょっと表現が良くないかもしれない。 なぜならそこには『そこにあると分かっていれば行けるかもしれない場所』であるからだ」 「…なんだって?じゃあやっぱりアンタは、異世界だ何だという話を聞いたことがあるのか?」 「君はすっかり忘れているかもしれないけど、去年一斉駆除が行われた山も 火事になった山も、誰の土地だったか話したよね?」 「だから、答えになっていない! アンタは異世界の存在を知っているのか!?」 「いや、実はよく知らない。ただ去年までゆっくりを飼っていてね」 「…ゆっくりを?」 「ああ、ゆっくりうどんげだよ」 「…!!で、そいつはどうなったんだ!?」 「去年うどんげに誘われるまま、いつもの山に入ったんだ。 知っての通りうどんげ種は喋れない。 それゆえに大人しいし気の弱いゆっくりだけど あの時は頑として自分の行きたい場所があるような主張をしてね」 「それで?」 「あの時のことは支離滅裂で自分でも納得がいってないけどありのままを話すよ? うどんげは山の中を何十分も歩き続けた。 流石に不審に思い始めてうどんげを止めようかと思った時、空中で轟音がしたんだ」 ――――同日、午前11時、上空―――― いくはずっと上空にいた。 むしろ地上を歩くことの方が不自然であるかのように上空は居心地が良い。 「なあ、一つ確認したいんだが…」 「何でしょう?」 「そもそも、どうして特異点が生まれるんだ?」 「………分かりませんが、一つだけ気になっていることがあります」 「気になっていること?」 「ずっと前に、お兄さんが話していたことで気になることがあったんです」 話しながらも周りを見渡す目に隙はない。 どうやら『衣玖』という存在も普段からこうやって飛んでいたらしい。 上空から周りを見回すという行為を体が覚えているため、会話をしながらでも自然に行えた。 「お兄さんは『ハウリングフィードバック現象』というものを ゆっくり研究者の方から聞いたという話をしてくれました」 「何だそれ」 「初めて聞いた後、お兄さんはその話をしたくないようでしたので 詳しく聞いていないのですが、 どうやらゆっくり同士は何らかのつながりがあるという話でした」 「つながり?私とお前にも何かがあるのか?」 「いえ、それはあるかもしれませんしないかもしれません。 ですが私達だけがはっきりわかっていることがあります」 「…まさか、私達の元となった存在のことか?」 「そうです。少なくとも、私達は幻想郷の存在と何らかのつながりがあります。 ゆっくり同士で何か伝わるものがあるかもしれませんが その一環として『霧雨魔理沙』や『永江衣玖』との関係があるのではないでしょうか?」 「それは確かにそうかもしれないが、それが特異点と関係があるのか?」 「分かりませんか?私達は常にその存在を認知しているわけではありません」 「…そうか、逆に考えれば、私達が『記憶』を見ることの出来る瞬間に 何かが起きるということになるのか」 「はい。そして、もう一つ考えてみてください。 特異点は常に開いているわけではありません。 つながりがあるということは、特異点が幻想郷と繋がっているという仮説になりますが 同時にその特異点は、そもそもどうして閉じるのでしょうか?」 あ、とまりさは思った。 そもそも、どうして特異点が開くのか、そして… 「そもそも特異点が何度も開いているのに どうして幻想郷のものがこちらに流入してこない…?」 「はい、そして今の話を全て統合して考えてみた私の結論ですが…。 特異点が開いた時、ゆっくりが『記憶』を見る。 そして幻想郷のものが幻想郷から流出しないようにせき止め 特異点を閉じて回っている誰かがいるということです」 考えてみれば当たり前の話だった。 幻想郷はあくまで人為的に作られた別世界。 その境界が何らかのトラブルで破られてもおかしくないし そして破られたとなると修理しようと思うだろう。 同時に、お互いの世界のものが行き来しないように ブロックしている存在がいるというのもうなずける。 そして隻眼のまりさは、ブロックするであろう存在と修理するであろう存在に心当たりがある。 「つまりは、特異点がある場所へ行けばそこにはこの事態の打開策を持っている奴に 会うことができるかもしれないということか」 「そうです」 「しかし、会ってどうする? 特異点の出現条件が私た…ち………の…………」 「……………………」 まりさは二の句が継げなかった。 ――――去年、午後4時、???―――― 「ねえうどんげ、一体何処まで行くつもりなの?」 「ゲラゲラゲラ」 うどんげはこちらに振り返って進む先を指差す。 何度聞いても返答はそればかりだった。 「さすがにさあ、日も暮れ始めるし帰りたいんだけど…」 「ゲラゲラ!」 その笑い声(?)には長い付き合いでなければ分からない真剣さがあった。 はぁ、とため息をついてからうどんげを押し留めるために頭を撫でる。 「ねえ、今日はもう帰ろうよ。 食事も用意してないし、今度来るときは朝から付き合うからさ」 「ケラ…」 うどんげはうつむいてしまう。 少々気の毒だが行き先が分からないため 極端な話明日の朝になっても歩き続けることになるかもしれない。 いくら自分の土地で歩きなれた山だとしても 深夜に大した装備もなしに徘徊するのはいただけない。 「……ん?」 一瞬、ビリビリと振動を感じた。 ほんの少しだったが、地震かもしれないと思った。 「まあいいや、帰ろう」 そう言ってもうどんげはうなだれたままだ。 仕方ないと思いつつ抱き上げようとすると ドォォォォォオォオオオオオン!!! 「うわ!な!何事!?」 あたり一面に振動が来るほどの爆発音が響き渡った。 うどんげと目線を合わせるためにかがんでいなければ転んでいたかもしれない。 「――――お………――――ね!…ぐや!!!」 「え?え?」 遠くから人の声のようなものが聞こえた。 ドォォォオオオオオオオオオン!! ドガァァァァァアアアン!!! 「うわあああああああああああああ!!!」 今度は爆風を肌で感じた。 木の葉がバサバサと身体に当たる。 倒れこみそうになるのを横にあった竹にしがみついて耐えた。 痛くはなかったが、凄まじい爆音に体が縮こまってしまう。 「貴方!誰ですか!?ここに入ってきては危険ですよ!!」 「え?アンタは…!?」 気が付くと、女の子が立っていた。 腕で顔をかばいつつ、こちらを見下ろしていた。 「とにかく、あちらへ走ってください!早く!!」 ドオオオオオオオオォォォォン!!! 「ひゃ!!」 「うわあああああああああああ!!!」 人生で初めて聞く実物の爆音に足がすくんでいた。 しかも振動があるので立ち上がることが出来そうになかった。 それを察したか、女の子が手を伸ばしてこちらの手をとった。 「急いでください!」 「あ、ああ!!」 助け起こされ、初めてその女の子の姿を見た。 長い薄紫の髪。 ブレザーにネクタイのミニスカート。 頭から突き出た二本の長い耳。 そして一番目に付いたのが…。 「え………?」 「あ…駄目です!!」 ドサッと手を突いて四つんばいになってしまう。 何か赤いものが目に付いた瞬間、体の平衡感覚が失われ倒れてしまったのだ。 「大丈夫ですか!?頑張って立って下さい!!急いで!!」 「わ、分かってる!!」 額に手を当てつつ、何とか立ち上がる。 再び眩暈がしたが正面にあった太陽に目がくらんだのだと思った。 「そのまま、真っ直ぐ走ってください!!」 「…………っ!!」 言われるまま、正面に向かって走り出した。 その後疲れて走れなくなるまで、ひたすらに。 ――――元の日付、午後1時、駅ホーム―――― 「なんだそりゃ…」 「分からない。分からないけど…後から考えたらおかしな点がいくつもあった。 あの山に竹なんか一つも生えていないことや あの時目がくらんだ太陽がまだ高かったこととか そもそもどうしてあの時うどんげの存在を失念していたのだろうとかね」 「その後探しに行かなかったのか?」 「行ったさ。でも見つけることが出来なかった。 何日探し回っても、調査という名目でローラー作戦寸前の真似をしても 結局は見つけることが出来なかった。 あの山は、そんなに広大な土地のはずがないのにね」 「……………」 「まあ、うどんげのことはいいでしょう? 今はうどんげ自身に確認を取ることも出来ないんだし…」 「いや、話していて辛いのはわかるがその話は重要だ」 「…そうなのかな」 初めて、こいつの人間らしい反応をしたような気がする。 うどんげのことは、もう聞かずとも分かる。 そして、俺もうどんげに導かれて竹林のあるあの場所へ行ったことも。 「聞いても答えようがない質問だとは思うが そのうどんげ、何か変わったところはなかったか?」 「変わったところ…?変わったところは別になかったかな。 強いてあげれば、うどんげにしてはちょっと頭が弱かった感じがあったかな…。 でもそうだね。あの日はうどんげにしては何か目的意識が感じられたし いつもより頑固だったから妙だとは思ってたんだけど」 「そうか…」 十中八九、そのうどんげも『記憶』とやらを見たんだろう。 だが、一つおかしな点がある。 「何故、うどんげは見つからなかったんだ?」 「…知らないよ。うどんげ種は珍しいから虐待鬼意山に捕まったのかもしれないし 或いは捕まって売りに出されたのかもしれない。 うどんげは喋れないから、転売してもばれないしね」 少々投げやりな返答が返ってくる。 気持ちは分かる。分かるからこそこいつにこのことを聞いても仕方がないということも。 …うどんげは、攫われても死んでもいなかった。 あの幻想郷と呼ばれる異世界で生きていたのだ。 半年以上経った今でも生きている保証はないが 諦めずに何かをなそうと件の竹林に留まり続けていたのだ。 そして同時に、俺が会ったれいむ種そっくりの女の子。 こいつが会ったうどんげ種そっくりの女の子。 いくつかの問題が、少しずつ繋がっていく。 「一番重要な質問だが、結局お前が大本の存在がいると思ったその理由は うどんげ種そっくりの存在を見たからなのか?」 「そうだけど…ちょっと違うかな」 「?」 そいつは一呼吸置いて続けた。 「一つは異世界が存在して、うどんげがまだ行き続けていてくれればいいという自分の願望」 「…まだあるのか?」 「もう一つは…あの時空中を飛んでた二人かな」 「まだ見た奴が居たのか…というか、空中を!?」 「ああ、あの時黒い煙の中から少しだけ見えた二人。 赤い翼を背負った白い人と、ピンクの服に赤いロングスカートの黒髪の人。 もこうと、テルヨフにそっくりだった」 ――――同日、午後2時、駅前―――― 「…おかしいですね」 「空中から見えたとは言うが、具体的にはどのあたりだったんだ?」 「いえ、このあたりのはずなんです。 実際は何もないので、見ていなかったまりささんには 信じていただけないかもしれませんが…」 「ああいや、そういうことが言いたいんじゃないんだけど…」 いくとまりさは、山中の森林の中を歩いていた。 そこには誰もおらず、不審な点は何一つ見受けられなかった。 「特異点というやつだが、具体的にはどんなものなんだ?」 「分かりません。 幻想郷との行き来を可能にするかもしれないということ以外は、皆目」 「そうじゃない。見た目の話だ」 「ああ、そう、そうですね。 空中に黒い珠が現れるといった具合でしょうか。 うまく言葉で説明できませんが…」 まりさは少し妙に思った。 いくはかなり洞察力に優れている。 それなのに、特異点に関する説明の意味を取り違えるだろうか? 「なあ、あまりここで時間を食うこともないだろう。 上空からこのあたりに特異点が見つかったのはもう分かったが ここまで何もないとなると別の場所を探すなり帰るなり 他の行動に移ったほうがいいんじゃないか?」 「そうですね…早く離れたほうがいいかもしれません」 「…え?」 ギャアギャアギャアギャア バサバサ 少し離れた場所で鳥の飛び立つ音が聞こえた。 それを聞いて、隻眼のまりさも野生の危機感を取り戻した。 この森林には、何かがいる。 それを察したのは第六感かどうかは分からない。 しかし隻眼のまりさの右目にはいくと同様に、緊張感が宿っていた。 ――――同日、午後2時、路上―――― 「随分時間食っちまった…!」 俺は電車を降りた後すぐに走り出した。 思った以上に列車のタイミングが合わなかった。 家から二駅ほど離れた場所なのでタイミングがよければ、十分程度で到着するはず。 「…は、柄にもないんだがな」 あの後、電車内でやることもないので電話越しに今回の件を話した。 マナーがどうだという話は頭のどこかへ吹っ飛び なおかつゆっくりうどんげの話に同情したのか、今回の一件を簡単に説明した。 …すると、あの男は少し興味深い考察を話した。 『じゃあ、一つだけ打開策があるね』 『どういうことだ』 『幻想のものがこちらの世界にあるのが問題なんだろう? だったら話は簡単だ。ゆっくりの謎を全て解き明かしてしまえばいい』 『…なんだって?いや、それ以前にそんなことが可能なのか?』 『さっき君に聞いたよね?ゆっくりって何だと考えるって。 ずっと前からゆっくりの研究をしていて考えたんだけど ゆっくりってひょっとしたらその幻想郷という世界の力というか 言い方を変えれば何かこちらの世界の常識の通用しない 特別な何かが影響しているのかもしれないと思ったんだ』 『だから?』 『察しが悪いね。 幻想郷なんてものが存在するのならば 今回君が関わっている事件は間違いなく幻想郷が絡んでくる。 同時にそれは、君の頑張り次第でこちらの世界にいては絶対に解き明かすことの出来ない ゆっくりの謎を解明する絶好の機会じゃないかってことさ』 『いや、そうじゃなくてだな』 『だーかーらー。 ゆっくりの存在の在り方の全てをこの世界に知らしめて 幻想を幻想でなくせばいいのさ。 そうすれば、ゆっくりはこの世界の当たり前の存在になって 幻想郷との折り合いをつけることができるというわけさ』 『まて、そんなことをすれば逆に幻想郷との境界が曖昧になってしまうのではないか?』 『別に幻想郷全ての謎を解明しろっていっているわけじゃない。 聞いた話によれば、人間は向こうにもいるんだろ? ってことは、当たり前の存在なら幻想郷とこちらに同時に存在しても構わないということで ゆっくりの謎だけを世界に広めれば幻想郷を維持しつつ ゆっくりがこちらに存在し続けることができると言うわけさ。万々歳だろ?』 本当にそうだろうか? 俺は一抹の疑問を感じつつも列車の到着を期に電話を終えた。 あいつの話した内容は確かに一部、的を得ている点もある。 が、同時にそれは危険な賭けでもある。 そもそもあの隻眼のまりさの話では幻想は幻想として 守られてなければならないというようなニュアンスを持っていたように思う。 それこそ、ゆっくりを全て…。 「いやいやいやいや」 頭に浮かんだ馬鹿馬鹿しい話を打ち切る。 俺はどうしてこうして外出してきたんだろうか。 決まっている。いくさんを連れ戻すためだ。 もう既に想像はつく。いくさんは『記憶』を見たのだ。 そして言いくるめようとする俺を避け、自分で気付いた何かを確かめるために外に出たのだ。 実際、いくさんの書置きには『確かめることがある』と書かれていた。 恐らくいくさんの見た『記憶』にはまりさとはまた違った情報があったに違いない。 そして、いくさんが知りえた情報の中で行ける場所。 あいつとの電話ではっきりした幻想郷と一番つながりがありそうな場所。 走って走ってたどり着いたのは 近くで一斉駆除と山火事が起きた、あいつの所有する山。 俺はそのまま走って森の中に入って行った。 ――――同日、午後3時、山中―――― 「いくさーん!!!」 大声でいくさんを呼ぶ。 いるかどうかは分からない。 だが、こうして探さなければ見つかるものも見つからない。 「ふぅ……」 木に手を付いて一休みする。 或いは、ここにいればまた幻想郷に繋がる手がかりが見つかるかもしれない。 そしてそう言う場所だからこそ、いくさんが向かった先である可能性も捨てきれない。 「いくさーん!!!いるかー!!??」 「ゆゆっ!!ここはれいむのゆっくr」 「うるせーよ!!!」 「ぎゅぶげ!!」 現れたクソ饅頭を蹴散らしながらさらに進む。 あのもこうの捜索とは違い、全力で探している。 「ゆっへっへ!!まりささまにせいっさいっされたくなけれb」 「邪魔だっつーの!!!」 「ぐぶべ!!!」 「いくさーん!!!」 「ここはありすのとかいはな」 「うるせー!!!」 「どがいばああああぁぁぁぁぁ………」 「ゆっくr」 「どけ!!!」 「ぶぎゅ!!」 「ゆんやあああああああああああ!!!」 「………ん?」 俺が攻撃をする前から悲鳴を上げているれいむ種がいた。 それ以前に、そいつは俺の走っている方向からこちらに向かって進んできた。 「おい貴様!!止まれ!!」 「ぼうやだああああああああ!!!おうぢがえるううううううううう!!!」 「止まれっつってんだ!!!」 そいつの髪を片手で掴み、空中にぶら下げてやる。 「ゆんやあ!!ゆんやあああああああああ!!! まりざあああああああああああ!!! おぢびぢゃああああああああん!!!」 「おい!答えろ!何があった!」 「やじゃあああああああああ!!! まりざあああああああああああ!!! まりざああああああああああああ!!! がわいいでいびゅをだじゅげでねええええええええ!!!」 「何があった!!!」 両手でホールドし、脅すように聞いてみた。 「じらないよおおおおおおおおお!!! びがーっでなっで、どがーんっでなっで!!! ばりざもおぢびぢゃんもいなぐなっぢゃだよおおおおおお!!!」 「…なんだって!」 まさか本当に、幻想郷というやつとの接点ができているというのか!? 俺は掴んでいたクソ饅頭をその場に放り出すとそいつが走ってきた方向へ向かう。 いくさんがここに来ているのなら、あいつのうどんげのように 見つからなくなってしまうかもしれない。 俺はそう思うといてもたってもいられなくなった。 さらに数分例の方向へ走った頃。 「いくさーん!!!…………え?のわっ!!!」 頭の横を赤い何かが通り過ぎていった。 思わず尻餅をついてしまう。 「ぎゃー!!!」 続けて三連弾。今度は見えた。 信じられないことに火の玉が飛んできたのだ。 「だああああああああああああ!!!」 さらに数発。 その火の玉は、間違いなく俺めがけて飛んできている。 とっさに身をよじってかわすと同時に立ち上がって走り出す。 「あいて!!いででででででっ!!!」 今度は細かい木片のようなものが大量に飛んできた。 幸い服を切り裂くほど強力ではないが、手や顔などの場所は切り傷が出来た。 服を通しても腕や足がチクチクして痛い。 場所によっては刺し傷が出来たかもしれない。 「なんなんだ一体!?いででで!!」 木片は断続的に飛んでくる。 たまらず俺は少し大きめの木の陰に隠れた。 と、同時に火の玉が飛んできた。 一旦は通り過ぎて安堵するのだが 「なんだよそれ!!!」 隠れている俺をピンポイントで狙うような変化球だった。 頭を狙っているようで俺は顔を腕でかばいつつ伏せた。 すると 「うわ!!!」 火の玉は俺に接触する寸前、一瞬の閃光と共に視界から消えた。 「大丈夫ですか!!!」 「いくさん!?」 右から聞こえた声に反応してそちらを見るといくさんがいた。 隻眼のまりさも一緒だ。 いくさんと俺が一瞬安堵の表情を浮かべると同時にまりさが叫んだ。 「伏せろ!!!」 「え!?うおあ!!!」 隻眼のまりさの右目が光ったと思ったら極太のレーザーとも呼べる光が俺の頭頂をかすめた。 あともう少し軌道が下にずれていたらと思うと冷や汗ものだ。 「お兄さん!!!後ろに!!!」 「え!?え!!??」 状況が飲み込めないでいるといくさんが俺の横を通り過ぎて行った。 振り返るとまた火の玉がいくさんめがけて飛んできた。 「いくさん!!!危ない!!!」 が、いくさんの眼前に出現した渦巻きを描く風の壁とも言えるものが火の玉を弾いた。 間髪いれず、いくさんが両手を突き出す。 「えい!!」 すると、火の玉とは比較にならない速度で空中に電気が走り、火の玉の発射点と思しき場所に命中した。 「むぎゅゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔ!!!」 「この…!!!」 「とどめだ!!!」 向こうにいる何かと隻眼のまりさが光りだした。 再び攻撃が交差すると思った瞬間だった。 「やめろ!!撃つな!!攻撃をやめるんだ!!!」 あさっての方向からそんな声が聞こえた。 その声が聞こえると同時に、向こうの光は収束して消えた。 だが隻眼のまりさの光は止まらない。 「マスタースパーク!!!」 「やめろって言ってるだろ!!!」 隻眼のまりさからレーザーが放たれる。 それと同時に攻撃目標とまりさの間に何かが割り込んできた。 「ぐぁ……!!!」 一瞬の呻き声がするとまりさから放たれたレーザーが何かを粉砕した。 だが、レーザーの軌道は大きく変わり、全く関係ない方向へと飛んでいった。 「な、なんだ…今のは…」 「あ……」 まりさも、いくさんも、俺も唖然としていた。 恐らく向こうもそうなのだろう。 十秒近く静かな時間が流れた。 だが、その沈黙を破ったのは砕け散った存在だった。 『それ』の破片は瞬く間に膨れ上がるとゆっくりの形をとり、こちらに声をかけてきた。 「やあ、久しぶりだな。『やる気のない駆除業者さん』?」 そこには、口の端を吊り上げたゆっくりもこうが佇んでいた。 続く あとがき 随分長く間が開いてしまってますが、忘れないでいてくれると嬉しいです。 お兄さん、いくさん、隻眼のまりさ、研究者、うどんげ、もこう。 役者が出揃ってきました。あともう少しです。 新しい話や単発もちょくちょく書いているのでこの作品で終了と言うことはないです。 お暇でしたら、そちらも付き合ってくださればと思います。 今回はこの辺で。 最後に、この作品を読んでくださった全ての方に無上の感謝を。 私がここに投稿させて頂いた作品一覧 anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 以降そのシリーズ anko3061 隻眼のまりさ プロローグ 以降そのシリーズ anko3127 ゆっくり加工業者のお仕事風景 anko3506 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話
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『隻眼のまりさ 第一話』 20KB 戦闘 群れ ドスまりさ 新作の続編です。どうぞよろしく。 初めましての方は初めまして 他の作品を見てくださった方はありがとうございます。 投稿者の九郎です。 タイトルどおり前作の続編です。 ――――――――――――――――――――――――――――― ドスは、寂寥感を感じていた。 初めは本当に、ただそれだけだったのだ。 ――――某日、某時刻―――― そこには六匹の若いまりさがいた。 全員が全員家族ではないが、それでも赤ゆっくりの頃から ずっと皆でゆっくりしてきた仲間達。 姉妹も同然だった。 時には狩りに出かけたり。 またある時には皆で美ゆっくりと噂されたれいむをナンパしたり。 決して理不尽な暴力は振るわない。 それでも仲間の危機や集落の害悪に対しては 確固たる決意で、第一線で戦ってきた。 六匹いれば何でも出来る。 六匹いれば何も怖くない。 そんな信頼できる仲間達を持ってゆっくりしていた。 苦しいこと、悲しいこともあったが 自分の生涯に何一つ不足はなかった。 ――――――――――――五匹が、 四匹になるまでは―――――――――――― ――――某日、朝方―――― 「むきゅー!!ドスー!!いつまで寝てるのー!!!」 「むーん…」 ドスまりさが最初に聞いた声はぱちゅりーの声だった。 ぼんやりした意識の中、ドスは数分前に見ていた夢を思い出していた。 幸せな夢だった…と思う。 だけど最後の方は悲しい夢だったような気がする。 「ゆっくり起きるよ…」 ドスの住まう洞窟は元々あったものではなく 繰り返しドススパークを撃ち続けてやっと完成した物であった。 なりは大きくてもゆっくりの本質は変わらず 雨に濡れれば命が危ないし捕食種の攻撃を受けることだってある。 結局はゆっくりまりさであるという事実からは逃れられなかった。 「ゆうぅ~」 天井から沸き出た地下水を溜めた水溜りに舌を伸ばし 顔を簡単に洗っていく。 ドスまりさは朝が弱かった。 ただ、初めから弱かったわけではない。 ドスは通常のサイズのまりさ種から巨大化したものだったのだが 巨大化するに当たって多少の能力変化が生じた。 それはドススパークであったり、高い知力であったりするのだが 問題は敏捷性の低下だ。 大きくなったことで跳ねて移動するのが難しくなり 身体を引きずっての移動、ゆっくりの言い方をすると ずーりずーりすることが多くなった。 それに伴ってか多少性格が暢気になってしまった。 成体になりたての頃は幼馴染の仲で最も足が速かったのだが。 「ゆっくりいそぐよ!」 顔を洗ったことである程度目が覚めたドスは 『ぶりーふぃんぐ』をするために待っているみんなの元へ向かった。 「長ー!おはよう!ゆっくりしていってね!!」 「おはよう!ドスー!」 「むきゅ、『ぶりーふぃんぐ』を始めるわね」 皆がぱちゅりーの方に注目する。 ドスは体ごと向けると周りのゆっくりが危ないので 目だけでぱちゅりーの方を向く。 「昨日の赤松林、まだ松茸さんがあるって言ってたわよね?」 「ゆ!あったよー!」 隻眼のまりさが答える。 「もうすぐ松茸さんの季節が終わるわ 今日は右三匹が松茸さんを取ってきてね」 「わかったよ!」 「行ってくるんだぜ!」 「左の一匹は石垣のれいむたちと狩りに行ってね」 「ゆっくり理解したよ!」 「ドスは開拓の最後、一緒に行きましょう」 「わかったよ」 「むきゅ、じゃあ解散しましょう」 「ゆっくり出発するよ!」 四匹のまりさ達は早々に洞窟を出て行く。 「じゃあぱちゅりー、行こうか」 ぱちゅりーの近くに舌の先端を持っていく。 「ええ、行きましょう」 ぱちゅりーが舌に飛び乗ったのを確認すると 帽子の上に移動させて、ドスはずーりずーりと洞窟を出た。 ――――同日、昼前―――― 「ゆ゙っ!ゆ゙っ゙!」 「むきゅー!もう少しゆっくり跳んでね!」 「ご、ごめんねぱちゅりー」 ドスとぱちゅりーは深く草木の生い茂る場所へ来ていた。 後ろでは集落での狩り担当のゆっくり達が食糧を集めていた。 「虫さんがいたよ!捕まえるよ!」 「このとかいはな色のお花さんはおいしそうね!」 「これは毒キノコなんだね!わかるよー!」 ドスも時々は立ち止まって自分の分の食糧を確保する。 ぱちゅりーの分も兼ねているので手抜きはできない。 「ドス!ここで止まって!!」 「分かったよ!皆離れてー!」 「はなれるよー!」 ドスがその場でジャンプして方向転換。 ぱちゅりーの指示するタイミングで止まり 今度はずーりずーりで草木をなぎ倒していく。 これがぱちゅりーの考案した開拓という名の道路整備だ。 近場だけを狩場にしていると集落の個体数が増えれば増えるほど 冬篭りの前の食糧調達などで苦労する羽目になる。 だからこそ、障害物をドスの大きさをもって破壊し 遠くの狩場へのルートを確保し、行きやすくするのだ。 事前に食べられそうなものが少ないルートは 精鋭のまりさ達がチェック済み。 そこを道路にするのである。 場合によってはドススパークでこじ開けることもあるが 発射のために必要なキノコには限りがある。 出来る限り戦闘目的で使いたいので 大木が横倒しになっている、など 力だけではどうにもならない時にしか使わない。 「皆止まって!ドス!ここまででいいわ!」 「ゆー!?」 「ここで終わりなんだねー!わかるよー!」 「随分遠くまで来たんだぜ!」 今日の開拓は終了となった。 ドスはこの行為の意味を理解しているが 詳しい内容、とりわけ移動方向については どこでどう進めばいいのかはさっぱり分からない。 それでも、ドスはぱちゅりーを信頼しているので その言葉に従って自分にしかできない仕事をするんだと決めている。 結果としてドスはゆっくりした生活を送っているので ぱちゅりーも自分を信頼してくれているものと信じていた。 ――――同日、夕刻―――― ドスは開拓を終了し、さらに十二分な食糧を集め終えて 集落にある自分の洞窟へ戻ってきていた。 「むきゅ、皆戻ったわね、報告お願い」 「向こうの林のキノコはもう残り少ないよ!」 幼馴染四匹が報告を始める。 自分は長である立場上この『ぶりーふぃんぐ』に参加しているが 正直内容を覚え切れていない。 いくら知能が上がったといってもドスは元々 ファイタータイプの活動的なまりさだったのだ。 ある日ぱちゅりーが『ぶりーふぃんぐをして効率的に狩りをするわよ!』と 言い始めてから毎朝毎夕この習慣は続いている。 ぱちゅりーは元飼いゆっくりであったということは聞いているが そこは情報源がとても豊富であったと話していた。 特に『いんたーねっと』は素晴らしいものだったらしい。 『てれび』や『ほん』も情報源として優秀だったが 『いんたーねっと』は知りたいことを文字にすれば 何でも教えてくれる便利な物だった、と。 ぱちゅりーが自慢げに話してくれるのはいいのだが 正直言ってドスはその価値を最初は疑問視していた。 狩りの仕方ぐらい最初から知っているし 捕食種との戦いだって仲間達と自分のドススパークがあれば 勝つことができる。 だが、それが思い上がりだということを 二年前に思い知らされた。 ――――二年前、某日、未明―――― 東の空が、そうと思って見れば分かる程度白くなっている。 太陽はこの位置から見ると山に隠れてしまっていて 森はまだ真っ暗だ。 人の手の殆ど入っていない森は自然に満ち溢れ 様々な野生動物の息吹が感じられる。 もっとも背の高い木々の覆われる深い森であり 大型の動物は存在していない。 「はっ…はっ…はっ…!」 一匹のまりさが森を走っていた。 走るとは言ってもゆっくりのダッシュと言えば ジャンプを繰り返した移動である。 それでも身体を引きずるよりははるかに早い。 (いない…だけどまだ油断できない!) このまりさは帽子をかぶっていなかった。 途中で落としたのだろうが、そんなことに構っている 余裕など無いといわんばかりにひた走っていた。 「はっ…はっ…はっ…!」 野生のゆっくりが走る時、基本的に地面を中心に気をつける。 ゆっくりは饅頭だ。 人間が人工的に作り出した饅頭よりは強度があるのだが それでも大きな石や突き出した枯れ枝などを踏めば ゆっくりの足である底部を損傷しかねない。 故に正面よりも地面に気を配らなければならないのだ。 「見つけたんだどー!」 「!!!」 「うー!うー!まつんだどー!」 金髪に白い帽子、赤い服。 そして宝石のような物が付いた特徴的な翼。 鋭い木の枝を装備し空中からの追っ手が来た。 ゆっくりを捕食する種類、ふらんだ。 人間から見れば決して速くない速度だが ゆっくり視点から見れば通常種が逃げ切れるはずも無い 速度で帽子の無いまりさに追いすがる。 「うー!くりゃえ!ればていん!!」 「うっ…!!ふっ!!」 まりさはひたすらふらんから距離をとるように走り続ける。 ふらんの持った木の枝が連続して突き出されるが 全て空を切っている。 ゆっくりに敵の攻撃を見てから回避するといった 器用な真似ができるはずもないのだが ふらんは目で見てまりさがいた箇所を狙っている。 背を向けてひたすらジャンプするまりさには 一つもクリーンヒットが発生していない。 「はっ…はっ…はっ…!」 まだ走る。というより止まったら命が無い。 もう止まりたい、ゆっくりできない。 そんな思いを振り払いながら走り続ける。 走って走って…そうすると急に視界が開けた。 聞こえるのは川のせせらぎ。 川の両側は小石が大量に敷き詰まっていて ところどころから草が生えている。 川はそれなりに深く、飛び石も無い。 中は川魚が泳げる程でとてもじゃないが ゆっくりに渡れるものではない。 「ゆっ…!!!」 ゆっくりにとって水は恐怖の対象だ。 普段なら特別な理由が無ければ近づきたくないのだが そうも言ってられなく近くまで移動し横に逃げよう、と考えた。 だが 「いだいいいいいいいい!!!」 あろうことか、踏み出した第一歩のところにとがった石があったのだ。 まりさは足をやられてその場でのた打ち回った。 ――――まりさが川原に着く4時間前―――― ドスは疲弊していた。 いつもなら体力を気にしてあまり使わないジャンプを 連続して使ったのだから。 「ふぅ…ふぅ…!えいっ!!」 「うー!うー!」 「おちびちゃんよけるんだどー!!」 ここは、集落から少し離れた狩場。 木々の生い茂る中に背の高い草花が生い茂り 地面にはキノコが、そして多くの虫が散見される 豊かな食糧の宝庫だ。 普段なら若いゆっくり達が 巣で待っている使いと子供達を持つ親が集う ゆっくり達の仕事場だ。 ただ、それはあくまで普段の光景。 今は殆ど木しかない。 倒木がある。ゆっくりの死骸がある。 それ以外のものは焼き尽くされ 或いは踏み潰されてペチャンコになっていた。 「ドス!止まらないで!」 「ゆっくり分かってるよ!!」 頭部のつばに乗っているぱちゅりーが叱咤する。 言われるまでも無い。 ドスは身体をひねり、底部を縮め 残りの体力を振り絞るようにジャンプ。 「うー…!」 「おがーじゃーーーーん!!??」 クリーンヒット。 胴付きれみりゃを踏み潰した。 ドスは足にいやな感触を覚えながらも やった、と心の中で叫んだ。 「よぐもおおおお!よぐもおおおおおおおおお!!!」 残った首だけれみりゃが襲い掛かる。 「いだっ…!!!」 「ドス!ドス!がんばって!」 「うー!!」 れみりゃに噛まれるが身体を動かしてなんとか振り払った。 だが、吹き飛んだれみりゃを見失ってしまう。 体長が二メートル程のドスはちょこまかと 空中を動き回る小さいれみりゃを捉え切れないのだ。 「いだいいいいいい!!!」 「ドス!右よ!!」 「ゆっくり逃げるよ!!」 右斜め後ろ。もみ上げの付近を噛まれて餡子をもらしてしまう。 何とか残った体力を振り絞ってジャンプ。 「えいっ!!!」 どすん、と音がして地面に降り立った。 この体格では体当たりの有効性は期待できない。 ドススパークのためのキノコなどとうに尽きた。 このジャンプだけが最後の武器だ。 体のあちこちに傷を作りながらも ジャンプ攻撃を仕掛ける。 ただただ、生き残るために。 「うー!危なかったよ!」 「駄目!外したわ!今度は左!」 「はぁ…はぁ…ゆっくり分かったよ!」 ドスが再び足に力を込めた。 れみりゃは頭ではなく感覚的に気付いたのだ。 このデカブツはぱちゅりーの声がして、ドスの声がした後に ジャンプして攻撃してくるのだと。 先ほどは噛み付いた後ジャンプが来ると思って とっさに距離をとったのだ。 「えい!!」 「うー!」 「駄目!!今度は前!!」 「ゆっくり見えてるよ!!」 もう一度だけ、もう一度だけ、と 自分を奮い立たせながら足に力を込める。 緊張感が抜けたら動けなくなる。 力を込めてジャンプする直前… 急に力が抜けた。 地面のれみりゃを踏んでしまって そちらに気をとられたのだ。 「うっ…ええい!!」 「うー!!??」 ドスン、という着地音と同時にれみりゃの断末魔が聞こえた。 これが当たったのはジャンプのタイミングがずれたこともあるが れみりゃは前しか見えていないので距離をとるときはドスを見ていない。 ジャンプし、着地したタイミングを感覚で捉えていたれみりゃは タイミングがずれたのに気付かずに方向転換して攻撃しようと 接近してしまったのだ。 「ドス!ドス!やったわ!! もう近くにれみりゃはいないわよ!!」 「ゆ…ゆっく…りし…」 その言葉を聞いてドスは他の仲間を助けないと… と考えてから意識を失った。 ――――まりさが河原に着く6時間前―――― 「ちぇんも戦うよ!」 「駄目だぜ!ちぇんは子供達を逃がすんだぜ!」 ここは通常種ゆっくりが多く暮らす集落から少し離れた広場 ちょっとした自然の芝生があるここは 狩場とは違う形でゆっくりが集まる場所であった。 普段は皆ゆっくりした顔で行き交う楽園だが れみりゃ、ふらん達捕食種が飛び交う戦場となった草原は 地獄さながら。 青々と茂る芝生のあちこちに餡子が飛び散っている。 ゆっくり達にとっては現在ここは血の海。 死の臭いに溢れ返っているのだ。 「ゆっくり死ね!!」 「ゔー!おぢびぢゃんをよぐもー!!!」 子供に狩りを教えるつもりでつれてきたれみりゃは あろうことか子供を通常種に殺され 捕食のためではなくただ殺すために まりさに襲い掛かった。 「ゔー!!」 「いだぁ!!」 まりさは必死の体当たりを敢行するが 胴付きれみりゃの腕にはじかれ ゴロゴロと地面を転がった。 ポスッと何かにぶつかって止まった。 何かと思って見てみると 「ひっ…!!」 自分の向かいの家に住んでいたれいむだ。 以前に巣穴を塞ぐための枝が足りなかったときに 家の中にしまいこんでいた予備を貸してくれたいいゆっくりだった。 おかざりを見て判別が付いたのだが 皮がシワシワのよれよれになっている。 おそらくれみりゃに捕まって中身を吸われたのだろう。 ゆっくりにとっての絶命条件は中身の喪失。 中身を吸うという行為で空腹を満たすれみりゃは まさに通常種の天敵と言える。 「うぅ…!!!!」 ぎり、と歯を食いしばる。 自分達がれみりゃを撃退できていれば このれいむは助かっていたかもしれない。 そして今そこにいるれみりゃを撃退できなければ 逃げおおせたゆっくりの命も危ないかもしれない。 「よくもぉぉぉぉ…!!」 そんじょそこらのゆっくりなら痛みで泣き叫び何もできなかっただろう。 いや、このまりさもそうだったかもしれない。 今、まりさが起き上がって立ち向かう力が沸いてきたのは ある種人間らしい感情。 それは憎悪。 それは殺意。 「殺してやる…!!」 殺されたから殺す。 まりさの頭にはそれしか無かった。 「まりさも手伝うよ!」 幼馴染のまりさが近づいてきた。 胴付きれみりゃに対抗するには最低でも二匹以上の力を合わせないと駄目だ。 二匹でも勝率が低いのは確かなのだが 一匹ではそもそも止めを刺すことができないのだ。 「うー!うー!!!」 応援に来たまりさがれみりゃの周りを円を描くように回り始める。 それを見てれみりゃが破れかぶれに手を振り回す。 経験上、そうすればれみりゃに攻撃されることはあっても 捕まる心配が大きく減ることを。 「がああああああああああ!!!」 「まりさ!?」 「うー!!邪魔だどー!!」 「ぎゅへぇっ!!」 先ほどのまりさが怒りに任せて体当たりを仕掛けた。 が、そんなものが体重差のある胴付きに効くわけが無い。 反動で動きが止まったところをれみりゃに叩かれた。 …垂直に、だ。 「いだいいいいいいぃぃぃぃ!!!」 「まりさ!まりさ!!」 「次はお前なんだどー!!」 「ゆぐっ!!」 仲間の負傷に思わず動きを止めてしまったもう一匹のまりさを れみりゃが薙ぎ払った。 後ろにいたので振り返りざまの攻撃。 腕の力と腰の回転力が合わさった一撃はまりさを 数メートル先まで弾き飛ばした。 「れみりゃは強いんだどー!!」 「ゆ…ぐぅ!!うわああああああ!!」 止めを刺そうとれみりゃが追ってきた。 こちらのまりさを突き動かしたのは生物の本能。 ただ死にたくない、という思い。 れみりゃから背を向けて逃げ出ていた。 ――――まりさが河原に着く10時間前―――― ここは、ゆっくり達の集落。 断崖にあけられたドスの住処である洞窟を中心に 辺りの木や地面の段差などに穴が開けられ ゆっくり達のすみかとなっていた。 時間は夕刻、皆は仕事を終えて思い思いの時間を過ごしている。 中には、もうすでに就寝している一家もあった。 眠そうにあくびをしている者。 大量の食糧を抱えて狩りから遅めの帰宅をする者。 巣の中で夕食をとっている者。 行動の違いはあれ、皆ゆっくりした表情をしていた。 そして日が沈み始め、空が茜色から黒くなっていく。 丁度その時だった。 「れみりゃだあああああああああああ!!!!」 一匹のまりさが大声を上げた。 その声を聞いたぱちゅりーは寝る、と言って洞窟の 奥に行ったドスをたたき起こしに行く。 「ドス!起きて!れみりゃよ!」 「む~ん…?」 「れみりゃよおおおおおおおおおおお!!! 起きなさああああああああああああい!!!!」 「ゆゆうううううううう!!!??」 ドスが飛び起きたのを確認するとさらに言葉を続ける。 「ドス!急いで!戦いになるわ!私を乗せて!」 「わかったよ!」 普段のそのそ行動するドスもれみりゃが来たという 緊急事態に慌てて行動を始める。 ドスはぱちゅりーを舌を使って帽子のつばに乗せると洞窟を出た。 「な、なによこの数…!」 「いっぱいいるよ!!」 れみりゃとふらんの捕食種は見えるだけでも胴付き胴なし合わせて十数匹はいた。 皆好き勝手に飛び回りそこらにいる集落のゆっくりを襲っていた。 「皆下がって!ドススパークを撃つよ!!」 帽子の中から専用のキノコを取り出し口にする。 このキノコはドスの頭部、帽子の中に直接生えてくるキノコだ。 栄養状態がよければたくさん生えるし、体調が悪ければ育ちも悪い。 ゆっくりの体から生えてくる以上、中身は餡子だ。 「ゆうううううううう…!!!」 発射態勢に入る。 ドススパークの発射は丁度大声を出す動作に近い。 大きく息を吸い込んで口からレーザーを発射するのだ。 「皆避けてー!!」 ぱちゅりーが叫ぶ。 できれば状況確認もせずに撃つのはやめたほうがいいと思ったが 射線上にいるのは死体を除けばちゃんと回避行動を取れることのできる 例のまりさ五匹だけだ、ということであえて止めずに発射を強行させた。 「くらええええええええええええ!!」 ドススパークが発射された。 直径は1メートル、射程は20メートルほどだ。 それ以上飛んではいるが20メートルを超えると途端に威力が減衰する。 ぱちゅりーは五匹が避けるのを一部始終見ていた。 なんだなんだと混乱するれみりゃが消し飛ぶのも。 しかしあろうことか五、六匹のれみりゃを倒したのだが ぱちゅりーの視界外にもまだまだれみりゃやふらんがいるのだ。 「ゆうううう…!!皆ドススパークでやっつけるよ!!」 「じゃあまりさ達は危ないから遊び場にいたれみりゃを退治しに行くよ!」 「まりさは狩場に行くよ!」 「むきゅー!待って!れみりゃの数が分からないわ! 皆で集まって戦わないとやられてしまうわ!!」 ぱちゅりーは焦っていた。 おかしい。れみりゃは一家で行動することはあっても こんなに集まって行動するはずが無い。 そしてこの数。全部倒すなど非現実的だ。 集まって互いを守りながら撃退を考える。 ジリ貧になってしまうが全滅させるよりは犠牲が少ないはず。 だが 「戦わないぱちゅりーは黙っててね! まりさたちはれみりゃだって倒せるよ!」 「力を合わせれば倒せない敵なんていないよ!」 「ドスもいるから大丈夫だよ!!」 「むきゅー!?何言ってるの!?」 無茶だ。 力を合わせて、というのはともかく分散したら各個撃破されてしまう。 「駄目よ!ドスを中心に集まって! ドスは動きが遅いからこれだけのれみりゃに攻撃されたら命が危ないわ!」 「ドスはドススパークがあるからまりさ達より強いよ!!」 「頭の悪いぱちゅりーは黙っててね!!」 「むきゅー!!!???」 全く聞く耳持たない。 自分の知識と考えを馬鹿にされたぱちゅりーは激昂した。 「ぱちゅりーはただ、皆を守るために言ってるのよ!! このまま戦ったら皆危なくなるわ!! 馬鹿はあなた達でしょう!!」 まりさ達は本当はぱちゅりーを馬鹿だなどと思ってはいない。 彼女の知識が豊富なのは知っている。 食糧の管理や、巣の作り方など以前では考えられないほど ゆっくりできるようになった。 だが、だからこそまりさ達は戦闘面は自分達の領分だと思っている。 ちょっとした虚栄心とプライドがぱちゅりーの指示を拒んだのだ。 「皆がんばるよ!!」 「ゆっくりできないれみりゃは死ね!!」 「むきゅー!!皆戻って!!!」 「ぱちゅりーうるさい!!ドススパークを撃つから黙っててね!!」 そしてかつて無い壮絶な死闘が始まったのだ。 ――――まりさが河原に着いた日から三日後―――― 集落は何とか形を取り戻していた。 ただそれは生活できる場所、という意味でだ。 まだ死体は全て片付いていないし、親を失った子は ドスの洞窟で寝起きしていた。 「むきゅ、だからそういう時は固まって 障害物の多い狩場に移動してね」 ゆっくりの死体が残っている以上 その臭いをかぎつけていつれみりゃが襲ってきてもおかしくない。 ぱちゅりーはその時どうすればいいか考えを話している。 「ドス、その時貴方は洞窟の奥に入るの」 「ゆゆ!?洞窟の中じゃ逃げ場が無いよ!!」 「逃げ場が無いのはれみりゃも同じよ。 洞窟に入ってくればドススパークを避ける場所が無いわ」 ぱちゅりーの戦術は完璧だ。 飼い主に無断でやっていたネットゲームが まさかこんなところで役に立つときが来るとは思っていなかった。 「ちょっとまって!ドスも一緒に戦いたいよ!!」 「何を言っているの?ドスは最高の戦力なのよ ここで迎え撃てばより多くの捕食種を倒せるわ」 「ゆー!!ドスはまりさ達の幼馴染だよ!! ドスも『ふぉーめーしょん』に入れてあげてよ!!」 「そーだよ!!」 声を上げるのはあのまりさ達。 負傷者もいたが何とか生還していた。 四匹は。 「ドスは大きいのよ! 皆と一緒ではかえって戦いにくいわ!!」 「ドスは普通のゆっくりだよ!? みんなと同じゆっくりだよ!?」 「むきゅー!!いい加減にして!!」 そしてぱちゅりーは、のんきでいやなことをすぐ忘れるドスが 生涯忘れられない一言を言ってしまう。 『ドスは普通のゆっくりじゃないわ!』 ――――元の日付の翌日、朝方―――― ドスは自宅で目を覚ました。 普段寝坊してぱちゅりーに叩き起こされてばかりの自分が 自力で起きたことに驚きもあった。 だが、そんなことが気にならないほど ドスは、泣いていた。 いつも一緒にいた六匹のまりさ。 自分はいつも皆より強く、ドスはドスになる前からリーダーをやっていた。 でも、それは特別なことじゃない。 いくら強くても、二対一ではやられてしまうだろう。 いくら賢くても、一匹で生きるのは寂しいだろう。 だから、六匹が五匹になったことに悲しみを感じたのだが これからいなくなったまりさの分までゆっくりすれば いなくなったことは忘れなくても、悲しみは忘れることができただろう。 それでも、五匹が、四匹になった瞬間だけはどうしても忘れられなかった。 続く あとがき 本格的な戦闘描写ですがすっかり他の皆さんの SSとはモノが違ってしまいましたね。 今後どうなるかは分かりませんが お付き合いいただければ幸いです。 最後に、この作品を読んでくださった全ての方に無上の感謝を。
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『駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その4』 19KB 考証 希少種 幻想郷 独自設定 何度も間が空いてすみません 投稿者の九郎です。 この作品は『ゆっくり駆(ry 饅・即・虐の方ご注意。 ――――同日、同時刻、森林―――― 「お前…あの時のもこうか…?」 俺がぽかんとして問うともこうが薄く笑って答える。 「私以外のもこうと会っているのかどうかは知らないけど 多分アンタの言うもこうだと思うが?」 若干皮肉の混じったその言葉に多少ムッとしたがそれと同時に 固まってた思考が動き出す。 思考が戻ると同時にもこうの言った言葉の意味を吟味し始める。 『あの時』? 『私以外』の? 先ほどの電話をしていなければ忘れていたままだったかもしれない。 まさか、翼を持った白い―――― 「二度あることは、三度あるってな…」 くっくっくっともこうが笑う。 どうも台詞に二重三重の意味を持たせるのが好きらしい。 俺は手に入れた新たなピースを穴に埋め込みながら結論を言う。 「お前は深夜の森だけでなく竹林であったこともあると言いたいんだな?」 「ああ、改めまして、私は『妹紅』だ」 そう言われ目を閉じる。驚きは無い。 何故ならこれは本件の裏付けでしかなく、ある種当然予想しておくべきことだからである。 「俺の名は九郎だ。 …話を急いですまないが、そこのゆっくりいくは飼いゆっくりでね。 悪いが連れ帰らせてもらいたい。 何か迷惑を掛けていたのなら謝ろう」 「まあそう言うな。ゆっくりしていってねというやつだ」 もこうは若干トゲのある笑顔でそう言うと大きく息を吸い込んだ。 「…皆!少々頭を冷やそう! 私達が争うことに利益は無い! それにせっかく人間を招待できるんだ! ここは私が話をするから下がっていてくれ!!」 大声で一帯に言い含めると、少しぼそぼそと相談するような気配がした後 ややあって幾つもの影が離れていくのが分かった。 「なかなか統制が取れているじゃないか」 「実はそうでもなかったりするんだがな」 「そうなのか?」 「私達はそれぞれでかなり『我』が強い。 今集まっている連中も方向性が近いということで辛うじて関係を保っているに過ぎない」 「ほう…」 「お前のところの『衣玖』もそうなんじゃないか?」 皮肉を皮肉で返されてしまった。 「まあ、腹の探りあいをしていても仕方がないだろう。 向こうで一旦落ち着こうか。 お二人さんも、それでいいか?」 「ああ…」 「はい」 いくさんと隻眼のまりさが首肯した。 ――――同日、午後4時、森林―――― 「さて…と。何処から話したものかな」 先ほどの騒ぎのあった場所から少し離れた場所に俺達はいた。 ここで言う『俺達』とは俺、いくさん、もこう、まりさ、そして……うどんげ。 「ゲラゲラゲラゲラ!」 「…何だって?」 「『おにいさんがいるから最初から話すのがいい』と言っています」 いくさんはゲラゲラとしか喋れないうどんげの通訳が出来た。 空気を読めるってすげぇ。 「いや、少し違うな。時系列で言うなら 私達が知らなかったうどんげとそいつの話から聞くべきだ」 このうどんげは言うまでもなく俺が以前に出会った奴だろう。 そして十中八九、あいつの飼っていたうどんげ。 「いや、まりさの話も聞かなければならないだろう」 「そうだが…」 まりさが口ごもるのを見ていくさんが俺に困ったような目を向けてきた。 確かにもこうが言った通り、皆我の強い面子のようで話を纏めるのは少々面倒なようだ。 俺はため息をついてから口を開く。 「過去よりも今の話が優先だろう。どうしてこんな状況になったのか明らかにして欲しい。 とりあえず、お前らがどういう集まりなのか そしてどうしてここで戦闘になっていたのか。 それを聞いておきたいのだが?」 「そうですね。まず自己紹介をすることも含めて目的をはっきりさせませんと。 でなければどの情報が必要なのかも分かりませんし」 俺の発言にいくさんが同調すると、もこうがいやらしい笑みを浮かべる。 「何だ?目配せしたと思ったら急に意見を合わせてきて」 「お、およよ?」 「ラブラブか?ラブラブなんだな?」 「ゲラゲラゲラゲラ」 うどんげはこちらを指差して笑っている。 「(高い声で)おにいさ~ん、いくこわい~」 「(低い声で)よしよし、俺が何とかしてやるからな」 「およよよよよよ!?今はそんなことを言っている場合では!?」 俺はというと、うんざりしながらそっぽを向いていた。 しかし同時に、以前のようにおよおよ言っているいくさんを見て安心もした。 いくさんが変わってしまったような気がしていたのだが根底の部分はそのままだと。 しばらく二匹のからかい口調を見逃し、俺も少し頭の中を整理することにした。 数分後、いくさんが消耗し始めたのが分かったのか もこうが真面目な顔を作った。 「さて、そろそろ話を進めようか?」 「およ……およ……およよ………………」 いくさんは顔を真っ赤にして大人しくなっていた。 きちんと聞いてはいなかったが『種を越えた』とか『すっきり』とか ろくでもない単語が飛び交っていたので聞かなくて良かっただろう。 「もう分かっていると思うが、ここに集まっているのは私達のような『覚醒』したゆっくりだ。 まあ、普通のゆっくりもそこかしこにいたのを見たと思うが」 「ああ、それは分かる」 『覚醒』という言い方は初耳だが意味合いは理解できるので突っ込まなかった。 「覚醒に関しては説明が必要か?」 「一応頼む」 「分かった。端的に言えばそれぞれの元となった『ヒト』…私達はオリジナルと呼んでいるが そのオリジナルの記憶と能力を一部手に入れたゆっくりのことだ」 「能力?」 「先ほど撃ち合っていたレーザーや火の玉をはじめとした射撃全般がその一例だ。 ゆっくりは最初からある程度オリジナルの特徴を持っているものだが 覚醒ゆっくりの場合、一般的な水準を遥かに凌ぐ割合で使用が可能だ」 「なら、お前の異常な再生力もか?」 「ああ、竹林で会ったはずの人間の能力だ」 「はぁ……」 俺は分かったようなわからないような感想を持ちつつも納得せざるを得ない。 もこう種には不老不死説があったが、まさかあんな状態になっても死なないとは思わなかった。 「で、記憶の方は?」 「それは私が話そう」 隻眼のまりさが割って入ってくる。 話を遮ってもしょうがないので素直に先を促した。 「ここに来てから分かったことなんだが 私達はオリジナルの記憶を一部継承できるが それにはいくつかルールがあるようなんだ」 「そのルールとは?」 「まず最初に記憶が絶対に被らないことだ。 同じ種類で覚醒するのは一匹だけで、なおかつ他の種類と記憶がバッティングすることが無い。 例えば私がAの記憶を持っているとしたら 他の覚醒ゆっくりが同時にAの記憶を持つことがありえない」 「そうなのか…それで?」 「そして私達の記憶は全てが繋がって初めて意味をなす」 「繋がって…ならば一匹一匹の記憶だけでは役に立たないのか?」 「これは推測なんだが、ひょっとして私達の記憶が重ならないのは パズルのピースのように個々が必要最小限の記憶を断片的に持っていて 全ての記憶をあわせると今回の一件に何らかの決着をつけることが出来るんじゃないか、と」 「………」 システムとしては少しずつ分かってきた。 なんとも面倒くさい状況だが、未知の情報は集めておくべきだろう。 そしてこれだけお膳立てが済んでいるのなら覚醒ゆっくりが集まるのも当然の成り行きと言える。 「実際のところ、そのパズルはどの程度組みあがっているんだ?」 「今ここにいる連中と私達で40パーセントというところか?」 そう言ってまりさがもこうを見やると、もこうは軽くうなずいた。 「パズルはあくまで例えだからアレだが そこまで情報が集まっているのなら多少なりとも輪郭くらいは見えてきているのではないか?」 俺が言ったその台詞を聞くと、そこにいた俺以外の全員がため息をついた。 「…なんだよ?何か問題でもあるのか?」 「それがあるんだよ。二つな。 さっきの話だが、その集まった情報から来る『結論』で私達は意見を異にしたんだ。 それが戦った理由さ」 まりさがそう言うともこうが目を伏せる。 目を伏せてはいるが、胴付きで無いもこうは下を向いただけでは表情が隠れない。 その苦虫を噛み潰したような、という表現が合いそうな表情からはろくでもない回答しか期待できそうにない。 「私達は状況の打開策をいくつか考えていました」 最初に口を開いたのはいくさんだった。暗い表情のまま話を続ける。 「そのうちの一つは、ここに集まった皆さんの考えた方法で 覚醒ゆっくりを、全て向こうの世界に移住させるという方法です」 「……!」 今度は俺が苦い顔をする番だった。しかし冷静さは保っていられる。 その方法は目を逸らしながらも、最初なら誰でも考える方法だからだ。 それでも、一点気になるところがある。 「移動するのは覚醒した奴だけでいいのか? 俺とて全てのゆっくりを移住、ないしは抹消してしまえばいいと考えなかったわけではないが…」 「それも間違いではないでしょう。 ですが普通に考えてそれは無理な話ですよね?」 「まあ、そうだが…」 そんなことが出来るのなら人間が既にやっていたかもしれない。 或いは覚醒ゆっくりの未知な能力を使えばと思わなくも無かったのだが。 この様子ではそう都合よくはいかないようである。 「で実際、移動させるのが覚醒した個体だけでいいという根拠は?」 「簡単です。覚醒ゆっくりさえ現れなければゆっくりはこちらの世界で絶滅するからです」 「…は?」 さすがに、この答えは予想外であった。 ゆっくりが自滅する?その通りならとっくの昔にいなくなっていて 俺がこの職に就くこともなかったと思うのだが…。 「確かにゆっくりは脆弱だし自滅の道をたどることもある。 しかしそれを補って余りある繁殖力を持っているから上にも下にも個体数には頭打ちがあるだろう? ほっとけば全滅する、なんてことがあるのか?」 「それは…」 「それは私が説明しよう」 再び説明のバトンがまりさに移った。 「さっき言いそびれたんだが、ゆっくりが覚醒する瞬間が一番の問題なんだよ」 一旦区切って、どのように説明しようか言葉を選んでいる様子を見せる。 「ゆっくりが覚醒する時には、両方の世界の境界に綻びが生じてしまう。 …この意味は分かるかな?」 「いや、説明を頼む」 「んー要するにだ、オリジナルの存在が向こうにいて、覚醒する私達がこちらにいる。 つまりその瞬間に『記憶』が向こうからこちらに移動する。 結果として両者の世界につながりが出来てしまう。 それこそが現状の問題を引き起こしているということだ」 「………?」 今までの流暢な説明とは違った少し歯切れの悪い説明。 その説明の違和感を聞こうとも思ったが話が続くようなので黙っていた。 「私はこの事象を知ったときに気付くべきだったんだが… 昔、何度か突然捕食種の群れに襲われたことがあってな」 「それで?」 「その捕食種の群れ、はっきり言って現れ方が不自然だった。 何だかんだ言っても捕食種は通常種より数が圧倒的に少ないし、集団行動もしない。 にもかかわらず、私がいた集落は一度に数十匹の集団に襲われたことがあるんだ」 「え?」 「その話は初耳ですが…?」 「そうだったか?すまない」 もこうといくさんがまりさを非難めいた目で見た。 どうやら最初に考えていた以上に状況は混沌としているようだ。 こいつらの間でもまだちゃんとした話し合いや意思統一が出来てないと見える。 「まあそれで、あの大量の捕食種は今になって考えれば こちらの世界に現れた特異点から流入していたように思う。 それでそれこそが、ゆっくりがこの世界からいなくならない原因なんじゃないだろうか?」 「なるほど……」 いくさんが納得したように嘆息した。 こちらはこちらでなにか納得する要素があったようだ。 そしてそれはまだ俺達の間に出て来ていない情報かもしれない。 「その話本当か?」 「いや、まだわからない。単なる状況から来る推察だ。 だけど話を戻すが、これだけ脆弱なゆっくりが絶滅しない理由は 不定期にそうやって開いた特異点から補充されるからじゃないかというのが私の考えだ」 確かに筋は通っている。 今にして思えば、ゆっくりは親が子を悪意を持って殺すことさえある不安定な連中だ。 その上で人為的な一斉駆除などを行えば生き残る可能性は無きにしも非ずだが 同時に必ず元の数に戻るとは考えにくい。 シロアリ駆除などとは違い、ゆっくりは目に付きやすいからその場にいた個体はほぼ壊滅状態に至る。 その状態からゆっくりの根性や能力で逆境を乗り越えられるほうが珍しいだろう。 「もう一つ、考えられることがあるんですが…」 「?」 そう言えば、ゆっくり絶滅の話を持ち出したのはいくさんだった。 今の理論はまりさが初めて公にした内容。 いくさんはいくさんで別の考えがあるはずだ。 「私達のような覚醒ゆっくりは、他のゆっくりとオリジナルを繋ぐ ターミナルのような役割を果たしているのではないでしょうか?」 「それはどういう…?」 「私は自分で言うのもなんですが、空気が読めます。 しかし空気というのはあくまで比喩で、正確にはその場の雰囲気、もっと言えば 世界に満ちている目では捉えることの出来ない状況の趨勢というものです」 「……それが?」 いくさんは口に手をあて、考え込む仕草。 覚醒前にも見せていた癖だ。 「ゆっくりは確かに弱いです。悪意も多く、生物として問題が多い種です。 しかし…例えば、例えばですけど、覚醒ゆっくり、或いはオリジナルが 一種のゆっくりの制御システムであったとしたら?」 「!」 それを聞いて以前テレビであの研修者が言っていた内容を思い出した。 同種は殺さず、同種のコミュニティは存在しない、というもの。 「つまり、例えばまりさ種が減少傾向にあるとしたら オリジナルから危険信号のようなものが発せられて 私を中心に全てのまりさ種に情報が行き渡って 繁殖行動などの数の調整が行われている、と?」 「はい、そしてそれは無意識下で行われていることであり 空気を読むといいますか、何か特殊な力を用いなければ 確認することが出来ないものであるということです」 去年、あの男は同種のゆっくり同士で『恐怖』という感情を伝播させる実験を披露していた。 いくさんの言うような信号が発信されているかどうかはわからないが 少なくとも簡単な感情の伝わりはあるということだ。 しかもそれは場の空気に流されるというような不確かなものではなく 明確なシステムとして成立する何かである。 「しかし話は分かるが、例え向こう側へ数匹の覚醒ゆっくりが移動したとしても こちらに一匹でも残っていれば情報が行き交うのを完全にせき止めることは出来ないんじゃないか?」 「だが特異点の開く回数は少なくなる。 特異点が新たに開くということは、どこかで覚醒ゆっくりが死亡し 新しい覚醒ゆっくりが生まれたということになるからな」 その点はうっかり見落としていた。 覚醒ゆっくりは一種類につき一匹しか存在しないのだった。 ならばこいつらが向こうの世界に移動した後どこかに引きこもっていれば こちらの世界に情報が流れてくることがなくなる…のか? 「結局のところ全ての種類の覚醒ゆっくりを移動させなければ 完全に元を断つことができないのか」 「そういうことになるのか」 とりあえず、状況打破の方法は分かった、しかし… 「で、まだ聞いていないのだがお前らが戦っていた理由はなんだったんだ?」 「それも重要だということはわかるが、先に断っておきたい。 私達は本気で戦っていたわけではないんだ」 「……………………は? ちょっと待て、あんなことを続けていれば俺は死んでいたかもしれないんだが?」 「んー……難しい問題ですね………」 もこうとまりさ、いくさんまでもが俺に対して 『どうやったら理解できるだろう?』とでも言いたいような反応を示す。 「実際、もこうはあのレーザーを阻止するために砕け散ったじゃないか! 場合によっては俺の頭も吹っ飛んでたんだぞ!?」 「待て待て落ち着いてくれ。アレは私の後付けの能力の影響だ。 きちんと手加減と対抗手段をとればあの程度で死にはしない。 絶対に大丈夫とは言わないが、よほど運が悪くない限り死なないさ」 「……何が言いたい?」 「おにいさん、理解できないかもしれませんがもこうさんの言っていることは本当です」 いくさんがフォローを入れる。 もこうもいくさんが話したほうが俺が受け入れやすいと思ったのか説明を任せるようだ。 「私達は『スペルカードルール』と呼ばれる決闘方法をとっていたんです」 「………よくわからんが、それはどういうものなんだ?」 「一番簡単な例えをすれば、あれはスポーツ格闘技の一種と考えていいです。 場合によっては怪我をさせたり、死に至らしめてしまう危険が無くはないですが 基本的に相手に後遺症の残らないような最小限のダメージで勝敗を決める決闘方法です」 「………ますます分からん」 「およよ……そうですね、あの戦い方を知らない人から見れば理解が追いつかないと思います。 ですが本当に、私達の間に闘志はありましたが殺意はありませんでした。 さっきの場合ももこうさんがその再生力を利用してあえて死んだだけです」 「おや、わざとだって気付いていたか」 「そうすれば私達が呆気にとられて戦いを止めると思ったのでしょう?」 「その通りだがね…まあ、そのせいで死の危険がある戦いだっていう イメージを与えてしまったのは誤算だったが…」 「しかし、勝敗はどう決める?」 「一定数以上のスペル……いや、そうだな、必殺技を打破されたら終わりだ。 その戦闘結果で傷つくのは服が多少という程度だ。 実際アンタもグレイズでかすり傷は負ったかもしれないが直撃が無かったから服は破れてないだろう?」 「攻撃を受けると体以上に身につけているものの方が持ちませんからね」 「まあ、ゆっくりが『お飾り』を欠損するのを忌避するもの恐らくそれが原因だろうが…」 「ですが、直撃と同時にスペルを発動すれば回数制限はあるがミスを無効にできますからね」 「あのタイミングは慣れなければ身につかないだろう」 「痛みに過剰反応するのもその名残かな?」 「そうですね。当たった!と思ったときにきちんと反応できなければ動けませんし」 なにやら、ゆっくりの生態が次々と明らかになっているな。 これが奴の言っていた『こちらの世界にいては得られない情報』なんだろうか。 だが逆に言えば、この情報は持ち帰ったところでこちらの世界の人間には受け入れようが無いではないか。 それはともかく、話にとりとめがなくなってきている。 こういう話し方をしていたから相互理解が出来ていないのかもしれない。 「戦闘に関しては納得してないが今はもういい。 最初に聞いた『意見を異にした』ってのはどういう意味なんだ?」 「ああ、そうだった。そうだな。……まりさ?」 「え?私が話すのか?」 なにやら責任の押し付け合いをしている二匹。 そんな両者を見ていくさんが仕方がない、というような形で口を開く。 「それは先ほど述べられた方策を採るのか、或いは第二、第三の方法をとるかということなです。 話すためにはあと二つ、説明しなければなりません」 「……まだあるのか?」 「はい。疲れてこられたようなので簡単に説明しますね。 まず一つが、ゆっくりれいむのことです」 「れいむ種がどうかしたのか?」 「早く言えば、覚醒ゆっくりの中でもれいむ種が一番重要な 『記憶』を持っているのではないかということです」 「何故それが分かる?」 「この際、幻想郷のシステムは無視して話をしますが …れいむ種は、幻想郷の『博麗大結界』を維持する上でもっても重要な存在だからです」 結界…か。野生のれいむ種は巣を覆う偽装のことを 『けっかいっ』と呼ぶがそれも種に刻まれたオリジナルの影響なのだろうか。 「で、その大結界とやらが幻想郷を形作っているから その要であるれいむ種が重要なキーを握っていると言いたいのだな?」 「ええ。でも一つ問題が。 相対的な問題ですが、希少種は元々の数が少ないですから 割合として『覚醒』する可能性は高いです。 ですがれいむ種は元の数が非常に多いので 覚醒した個体を見つけることが非常に困難だと思われます。 それにあの方はとても排他的ですし、場合によってはこの状況を無視するかもしれません」 「そうなのか」 れいむ種が掃いて捨てるほどいるのは事実だ。 しかし、現状を放置するというのはどうなのだろう。 まだ一時間そこらの付き合いだが、こいつらがどれだけ本気でこの問題に向き合っているかどうかは分かる。 れいむ種のオリジナルはそこまで薄情な人間なのか。 「しかし覚醒れいむを見つけるといっても実際どうする?」 「その話は置いておきましょう。先に第三の話をしますね」 「…ああ、分かった」 いくさんが居住まいを正すのを見て追求を思いとどまった。 なんだ?そんなに重要な話なんだろうか? 「三つ目は天変地異についてです」 「……天変地異だって?そんな話、私達も聞いていないぞ?」 「ええ、今話しましたから」 いくさんがしれっと答えるのを見て二匹も唖然としている。 天変地異って…。 「一体何が起こるというんだ?そしてどうしてそんなことが分かる?」 「私のオリジナルは『竜宮の使い』という肩書きを持っていまして 人々に地震が起きるということを伝えて回る役目をおびていました」 「ああ、それは私も知っているが…」 「私が見た『記憶』の中で最新の情報がそれなんです。 遠からず何がしかの災害が発生する。 その危険があるから今回の事件が起こったのか。 或いは幻想郷との境界が崩壊するときに起きるのか。 もっと言えばその災害で境界が崩壊する事自体が不可避なのか。 私は、それを見定めるため そして必要があればそれを他の物に知らせるためにここに来たのです」 それを聞いて、俺はいくさんの書置きの不可解な一文を思い出した。 そういえば、いくさんは確認することがある、と…。 「…その天変地異というものの詳細で分かっていることは?」 「分かりません。それはもう起こる事が確定しているのか それともこれからの努力や方策で食い止めることが出来るのか。 そもそもこの情報自体が間違いである可能性も捨て切れません」 そう言ってから立ち上がり、俺の真正面に移動するいくさん。 「私自身この話が本当かどうかわかりませんでした。 まりささんが現れなければ白昼夢とでも思って気にしなかったかもしれません。 ですが、ここまで状況が揃っている以上見過ごせるものではありません」 真剣な顔をして俺を見据えて言った。 「ですからおにいさん、それを確認するために私が幻想郷に行く許可をいただきたいのです」 続く あとがき 今回は完全に会話だけで終了してしまいました。 次回はもう少し動きを持たせたいと思っています。 ここまでくるともう最終話でも何でもありませんね。 アレも書きたいコレも書きたいで肥大化する一方です。 一話目を書いてからもう半年ですね。 まさかこれほど時間がかかるとは想定外でした。私、先見の明が無いです。 あんまり卑屈なことを言うとかえって悪い印象を与えてしまいかねないんでこの辺で黙ります。 最後に、この作品を読んでくださった全ての方に無上の感謝を。 私がここに投稿させて頂いた作品一覧 anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 以降そのシリーズ anko3061 隻眼のまりさ プロローグ 以降そのシリーズ anko3127 ゆっくり加工業者のお仕事風景 anko3506 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話
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『駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その5』 29KB 考証 希少種 幻想郷 現代 独自設定 ちょっと見ない間にいろいろあったようですが、私は平常運転です。 投稿者の九郎です。 この作品は『ゆっくり駆(ry 饅・即・虐の方ご注意。 ――――同日、同時刻、森林―――― 「……………」 「……………」 俺はいくさんがそうするように正面から見据えていた。 その状態で、いくつかの思考を巡らす。 1.いくさんは、最初からそのつもりがあったから黙って出てきたのではないか? 2.向こうへ行って、戻ってくるつもりが無いのではないか? 3.そもそも、天変地異に関する情報は完全にデタラメなのではないか? 空気に敏感ないくさんのことだ。 こちらの思考はともかく、否定的な感情は既に読まれているだろう。 ただ、3に関しては慎重を重ねて確認する必要がある。 天変地異の情報は不自然な点が多い。 『竜宮の使い』が伝えるのは『地震』と言っておきながら『天変地異』言ったこと。 これだけ重要な情報を俺はともかく、他の二匹にも話していなかったこと。 あと、本件とどの程度関わりがあるか不明瞭なこと。 災害は起こらないに越したことは無い。 いくさんは明言していないが、要するにいくさん自身や 俺にも影響が出るかもしれないと言いたいのだろう。 一つ一つは言いがかりに近い話だが、こうも重なるとその真偽も危うく思えてくる。 「実際向こうの世界に行ったとして、一体どうするつもりなんだ?」 姿勢はそのままに、いくさんが答える。 「私に出来ることは二つ。私のオリジナルにあって確認すること。 そしてこの災害を食い止めることが出来るかもしれない方に会うことです」 「そうか…まあ、その食い止める云々の話はこの際聞かないが 許可を求める時点で俺が賛成するとは思っていないのだろう?」 「…………はい」 ここで初めていくさんがうつむいた。 しかし仮に嘘だったとしても、ならばどうして向こうの世界に行こうと思ったのだろうか。 それとも、いくさんは端から覚醒ゆっくりの移住作戦に乗り気なんだろうか。 「そういえば、なんだかんだでまだ聞いていない。 結局戦っていた理由とは具体的になんだったんだ?」 「そういやそうだが…」 そう言うと、もこうとまりさが一斉にいくさんを見た。 「おいおいまさか、いくさんがいきなり仕掛けたとか言うんじゃないだろうな?」 「………いきなりではないが、仕掛けてきたのはコイツだよ」 「およ………」 「もうここまできたら私から言うが、こいつは私たちに幻想郷へ行きたいと持ちかけてきたんだ」 「それで戦ったということは、お前らも反対なのか? 覚醒ゆっくりが向こうへ移住することが目的なんだろう?」 「その通りだが問題はコイツが行って戻って来たいということと そしてそもそも私達に協力的でないことなんだ」 「戻ってくる気だったのか?」 「おにいさんにはお伝えしましたけど…私は出来ればこちらに戻って来たいです」 「だが、それでは…」 「ああ、私達の計画が成立しなくなる」 その台詞を言ったとき、もこうは一瞬だが寒気のする目をした。 恐らく今俺が考えたように、自分達に与しない覚醒ゆっくりを始末して 新たな覚醒ゆっくりに掛けるという選択肢があるからだろう。 「まああとはあまり向こうとこちらを行ったり来たりするのはいただけない。 その理由はもう分かるな?」 「ああ、しかし手段として行き来する方法をお前達は確立しているのか?」 「それはだな」 「ゲラゲラ!!」 「?」「およ?」 今まで事の推移を静観していたうどんげが初めて口を開いた。 「ゲラゲラ!ゲラゲラゲラ!!」 「……通訳頼む」 「は、はい。えーと『私は幻想郷にまつわる……不思議な力を…… 見分けたり探したりすることが出来る……だから……』あ、あのごめんなさい。 もう少しゆっくり話していただけませんか?」 「ゲラ!」 うどんげはなにやら喜色のにじみ出る表情で強く頷いた。 これは空気を読まなくても表情から読める。 自分の言っていることを理解する者が現れたから嬉しくて早口になってしまったのだろう。 もっともそれ以前に、リアルタイムでの同時通訳など慣れた者でないと難しいはずだ。 「ゲラゲラゲラゲラ」 「はい。『さっき話していた……ゆっくりとオリジナルの……つながり……を 逆に追っていけば……オリジナルや、覚醒ゆっくりを……探せる……かも』」 「おいおい!ちょっと待て!そんなことが出来るならもっと早く…………… そうか…『言えない』んだったな…」 「ゲラ!」 「しかし先ほど言いかけていたことは、こいつが移動手段であったということなのだろう?」 「ああ、何故だかこいつは『繋がり』を察知できるし 時間を掛ければ能動的に向こうへ行くこともできるのが分かっていたのだが……」 「ゲラゲラ!ゲラ!」 「え?はい、あの……いいですか?」 「どうした?」 「少し話をしたいそうなんですが、長くなるようなので私が一度全て聞いて その上で皆さんに説明しようと思うんですが…」 「…分かった、そうしてくれ」 「はい」 ……………… ………… …… いくさんとうどんげが話し始めたのはとりあえず置いておき 俺はもこうとまりさに向き直った。 「話が二転三転したが、当面のところうどんげの能力を借りて 覚醒れいむを探すのがいいと思うのだがどうだろうか?」 「私は賛成だが…」 まりさがもこうを見やる。 もこうも若干バツの悪そうな顔をする。 「はっきり言って私達の行動可能範囲は広くない。 あいつの通訳のこともあるから……」 「ああ、分かっている。俺が行こう」 「何を今更という感じはあるが、いいのか?」 「ここまできたら多少は付き合ってやるさ」 「すまない、助かる」 もこうが神妙に頭(?)を下げた。 俺は僅かに感じた照れくささをごまかすように口を開く。 「代わりといってはなんだが…いや、できればでいいんだが いくさんの心配事の方はどうにかできないだろうか?」 「分からないが、難しいと思う。 移動手段のあいつがここを離れるというのもあるが 何より実際何をどうすればいいか見当もつかない」 「そうか?私には一つ心当たりがあるぞ」 「それは?」 「あちらには地震を押さえることのできる奴がいた。 それだけじゃない。私達のオリジナルなら 運命なり奇跡なりで災害の一つや二つ、何とか出来そうなものだが」 「お前結構無茶苦茶なことを言っているぞ」 「そういう世界だから、こっちと繋げるわけにはいかないんだよ」 結局はそこへ行き着くのか…。 「…お話中でしたか?」 「いや、大丈夫だ」 いくさんが最適のタイミングで戻ってきた。 意識してかそうでないかは分からないが、空気を読んだのだろう。 「で、どういう話だったんだ?」 「えーと、うどんげさんは私の考えていた『覚醒ゆっくりとオリジナルの関係』説が 自分の得た情報と合うと言っていました」 「じゃあ、私の説は間違いだったのか?」 「ゲラゲラ!」 「それは分かりません。まりささんの言った不自然な捕食種の群れが現れたという 事態を考えれば十分に考えられることだとも思いますし、或いは両方合っているのかもしれません。 ですが、その真偽はこの際重要ではありません」 「話の腰を折って悪かった。続けてくれ」 「はい。そして覚醒れいむさんの存在はかなりはっきりと感じ取ることが出来るようなんです」 「本当か?それなら好都合だが…」 「ですが、おかしな点が。 普段感知している覚醒れいむさんともう一つ 時々現れては消えている同じ存在があるそうなんです」 あいつだ、と俺は思う。 博麗大結界、れいむ種そっくりの容姿、あの時会ったもこう、そして奇妙な注連縄。 ここまで来て、察しが付かないほうがおかしい。 「覚醒ゆっくりが一匹しか居ないというのも間違いだと言いたいのか?」 「待て、これ以上話を遮っても仕方がないだろう。 とりあえずその『いつもいる』方のれいむに会うことは変わらん。いいだろうか?」 「ああ……」 「続けていいですか?これが最後の情報ですが ゆっくりが『覚醒』する条件ですが、これはオリジナルと同じ行動をとることが きっかけになっていると考えられます」 「そう…いうことか……」 もこうを見る。こちらも得心がいったようだ。 二人のもこう、二人の放火犯。 そして同様にオリジナルとゆっくりが同じ時間帯に『れいむ』に接触していたこと。 理屈はさっぱりだが、この二つの事象が同時に起きたことが もこうを覚醒せしめた理由なのだろう。 半年越しの疑問はこれで全て晴れた。 「さて、と。いつまでも決着のつかない話をああだこうだと言っていても始まらない。 とりあえず新しい情報を得るためにそのれいむに会いに行くとしよう」 「もう行くのか?」 「俺が聞くべき情報は全て聞いた。 先程協力するとは言ったが、付き合うのはれいむ接触に当たって橋渡しをするところまでだ。 あとはお前らで勝手にやってくれ」 「そうか……まあ、仕方がない」 「ではえーと、いくさん、まりさ、うどんげは付いてきてくれ」 「悪いが、私はここに残らせてくれ」 まりさの発した台詞に、意図せず若干の剣呑さを込められてしまう。 「……何故?いくさんは連れ帰るつもりだし、うどんげは喋れない。 聞き出した情報を伝える役目が必要なのだが?」 「私は私で、やってみたいことがあるんだ」 「…やってみたいこととは?」 「これはこれでまた相談が必要になるだろうが、神社に行ってみたくてな」 「神社ってのは…さっき話に上がった?」 「そういうことだ。まあ場所なり移動手段なり検討が必要だろうしすぐには出発しない」 「でしたらそれは、後回しでもいいのでは?」 「そう言うな。思いついたことはすぐにやりたい性質なんだ」 「………」 要するに、我々を簡単に切り離したくないということだろう。 報告のためにここに戻ってくればそのときはそのときで何らかの新しい要求をされるかもしれない。 「わかった、もういい。但しこっちはこっちで思うところがある。 今から移動すると夜になってしまうだろうし、寄りたいところもあるので ここに再度訪れるのは明日以降、あるいは明後日になるかもしれんぞ」 「ああ、それで構わない」 それを聞いた俺は話は終わった、とばかりに立ち上がる。 「ではいくさん、うどんげ、行くぞ」 「はい…」 「ゲラゲラ!」 ――――同日、午後5時、森林―――― 一人と二匹が去った後。 もこうは隻眼のまりさに問うた。 「……で、お前はどうするんだ?」 まりさは目線を逸らし、考え込むように答える。 「言った通り、神社の方を確認したい。 そのために出来れば…飛行手段になる奴を貸してほしい」 「そうじゃない。神社に行ってどうする気だ?」 「別に難しい話じゃない。ただ覚醒れいむより『霊夢』か…『紫』に会えればと思うんだ」 「ゆっくりより、オリジナルに会うほうが確実と言いたいわけか…」 しかしそれは向こうの世界との接触を避けようとするあの人間が協力するとは思えない。 それでいて、やはり人間の力を借りられるということは大きなプラス。 今後どうなるかはともかく、とりあえずまた会う約束を取り付けたということだ。 だが… 「穴だらけで確実性が全く無いな…」 あるいはあの人間が約束を破って戻ってこないかもしれない。 オリジナルに会えるかどうかもわからない。 場合によってはオリジナルに殺されるかもしれない。 また首尾よく会えたとしても解決策を導けるかどうかも怪しいのだ。 「それでもとりあえず、打てる手は全て打っておきたいからな…」 ――――翌日、午前11時、車中―――― で、俺はというと。 「ゲラゲラ!」 「右です」 「あいわかった」 ウインカーを点滅させて車が止まった。対向車を待つ姿勢である。 「だけど本当に興味深いね。 君の『空気を読む能力』というのも研究のしがいがありそうだ。 こんど研究所に遊びに来ないかい?歓待の準備をして待ってるよ?」 「丁重にお断りします(ニッコリ)」 「ゲラゲラゲラ!!」 うどんげの飼い主、つまりは昨日電話をしたゆっくり研究者の男の車の中。 感動の再会に少々時間をとられたが、こうしてうどんげの案内の下に覚醒れいむの元へ向かっていた。 「だけど君も付き合いがいいねぇ。 こんなファンタジーに手を貸すなんて」 「お互い様だろう。……付き合わせて申し訳ない」 「あはは……気にしなくていいさ。 こうしてうどんげと再会させてもらったしね」 「ゲラゲラ」 左手で助手席に座るうどんげを撫でる。 「しかしアンタは虐待鬼意惨と聞いていたんだが」 「君と同じさ。虐待する奴はする。可愛いのは可愛がる。 きちんと区別して対応するんだ。 虐待派、愛で派。相容れないように見えるけど ゆっくりが好きって共通項があるから 一人の人間に両者が混在することも不思議じゃないと思うんだ」 「そんなもんか……」 そう言いつつ納得してしまう。 再会する二人を俺といくさんはあえて見なかった。 能力云々関係無しにその程度は気を回すことは出来る。 何よりこの男が多くを語らなかったから。 同時に多くを聞こうとも思わない。 この男とうどんげの関係はどうしたって俺といくさんの関係に重ねてしまうから。 憎まれ口をきいてしまうのもその影響だろうか。 いや、これは単に俺の性格が悪いだけだ。そういうことにしておこう。 ――――同日、午前12時、山道―――― 「じゃ、戻ってるから」 「本当に申し訳ない。完全に使いっ走りをさせてしまう形で」 「いいさ、このくらい。帰りは大丈夫?迎えに来なくていい?」 「まあ帰りは…電車なり何なり使えば帰れるだろう。 こっちには、レーダー代わりになる奴も居るしな」 「うどんげのこと、よろくしね」 「ああ、分かってる」 仕事に戻ると言う男の車を見送る。 うどんげは少々残念そうである(相変わらず笑顔だが)。 「さて…この奥にれいむが居るんだな?」 「ゲラゲラ!」 「そのようですね」 「……一応聞いておきたいんだが、遠いか?」 「ゲラゲラ」 「そうでもないようです」 首を縦や横に振っていれば、通訳の必要はないのだが…まあいいか。 「では行こう。疲れたらいつでも言ってくれ」 「はい」 「ゲラ!」 ――――同日、同時刻、空中―――― 一方、隻眼のまりさは。 「なあ、お前いつか会ったことがないか?」 「おお、茶番茶番。ありきたりすぎる口説き文句ですね」 きめぇ丸に抱えられ、空中から神社を目指していた。 飛ぶことは特に好きでも嫌いでもないのだが 空中ではすることが無いため、自然と口数が多くなってしまう。 「はあ……茶化されるくらいだから多分違うんだろうが…… 私は、きめぇ丸と会ったことが『覚醒』するきっかけになったんだ」 だが、ゆっくりらしさを失ったからか単に記憶がはっきりしないからか 『おかざり』を見てもきめぇ丸が同じ者であったか判断がつかない。 しかし自分の方は違う。 片目を失ったまりさなど野生ではそう次々とは居ないはず。 制裁や虐待で目を潰されたゆっくりは居るかもしれないが そういったゆっくりが自分のように立ち直って普通に生きているケースは稀だろう。 「すまない。忘れてくれ。あまりに退屈だったんでな」 「貴方は、今回の事件をどう思っていますか?」 「へ?」 会話を切り上げようとしたところで突然そんなことを聞かれ、一瞬呆けてしまう。 すぐに思考を戻したまりさは正直に答えてしまう。 「良くは思っていない。 それでもあいつの言うカタストロフは避けなければならないし 私達のせいで他の生き物に迷惑をかけるのは忍びない。 ま、本質的に見ても往々にしてゆっくりは迷惑をかける存在なんだろうけど」 「………………」 「……今の答えでは不満か?」 「私は、観察をすることが好きなんですよ」 「……はぁ?」 さっきからつながりもなく要領も得ない言葉に多少なりとも苛立ちを覚えるまりさ。 だが意味も無く喋っているわけでもなさそうなのでもう少し我慢することにした。 「私は、幸福なゆっくりを見ることが好きです。 同時にその幸福が崩れ去っていく様も。 人間との関わりもそうです。 野良が物乞いをするところ、結果として駆除されるところ。 物事には発生、経過、収束があります。 その全てを見ることが楽しいんですよ」 未だ意図の読めない話には、一つの感情があった。 波紋というレベルにも達していない程度の僅かな揺らぎだが、最初に思いついたのは『哀しみ』。 「観察者を気取る私には、善悪など問題ではないのです。 ただ、そこにある存在が全力を持って事を運ぶ。 それは壊してやることも、成就させてみるのも楽しい。 そして、ただ見ているだけということも」 意図は分からないが意味は分かった。 要するにこのきめぇ丸は、物語が好きなのだ。 物語の主人公は、何かの事象に影響され、失敗成功はともかくとして何かを成そうとする。 それを『知る』『見る』ことがこいつの趣味、ということだろう。 「……だからお前は、私の移動手段になってくれたのか? 今回の事件を解決したいわけでもなく、ただ『見ていたい』からか?」 「ふふっ……」 そう言うときめぇ丸は先程の感情を消して薄く笑った。 「何がおかしい?」 「いえ、ただ思っただけです。 『あなたと遊んでもつまらないですね』と」 ――――同日、午後1時、登山道―――― 山の中を歩き続けて30分も経っただろうか。 俺は何度目かわからない回数見たコンパスをもう一度見る。 先頭を歩くうどんげは磁石もなしに一貫して同じ方角へ進んでいた。 これなら、遭難の危険は無いと思って大丈夫そうだ。 「ゲラ?」 「?」 突然うどんげが立ち止まった。 俺といくさんもそれに合わせて立ち止まる。 「ゲラ………?」 ややあってこちらに戻ってくるうどんげ。 しかし数歩進むと、また振り返って180度方向転換をする。 「………どうした?」 「何があったんですか?」 「ゲラ………ゲラゲラ………」 なにやら言葉が交わされる。 大人しく通訳を待っているといくさんが難しい顔をした。 「えっと、何と言ったらいいんでしょうか? れいむさんですが、ここにいるのにここにいないと………」 「……要するに、何もないように見えるここに追って来た気配がある、と言いたいのか?」 「そうみたいです」 俺は思わず木に寄りかかった。 なんだそれは。 「どうする?……というか、この状況で他にできることはあるか?」 「ゲ、ゲラ………」 「およ………困りましたね………」 途方に暮れる俺達。 いくさんが何か考えるようにそこらを歩き回る。 うどんげが先程と同じように『気配』があると思しき場所を行ったり来たりする。 俺は木の上や地中にでもいるのかと、辺りを見回してみる。 「………ん?」 うろうろするうどんげを見ていたら、妙な違和感を覚えた。 「なあうどんげ、ちょっとこっちに来てくれないか?」 「ゲラ?」 こちらに歩いてくるうどんげ。 「今度はもう一度。向こうに向かって歩いてくれないか?」 「ゲラゲラ……?」 俺の指差した方向へ歩き出すうどんげ。 「……やっぱり」 「どうかしましたか?」 「ゲラ?」 足元から枯れ枝を拾う。 「この枝、概ね真っ直ぐだよな?」 「はい?そうですが……」 「で、こいつをここに置いて見ると……」 うどんげが『気配』を感じた場所に枝を置いてみると 「……曲がってますね」 「ゲラゲラ!」 あるところを境に枝が光の屈折をしたように少し曲がって見えた。 丁度、水を満たしたコップにスプーンを入れたようなイメージだ。 「ゲラ!ゲラゲラ!」 「……そうですか、そういうことですか」 「今ので何か分かったのか?」 「はい、これは恐らく『結界』でしょう」 「けっかい?……れいむ種がよく言う、巣のカムフラージュのことか?」 「そうです。勿論ゆっくりが使う偽装ではなく、覚醒ゆっくりのれいむさんが施した 本物の『結界』だと思います」 俺は釈然としないが、いくさんは納得がいったようだ。 「しかし分かったところでどうする? その話が本当ならここに覚醒れいむがいることは確定的なんだろうが……」 「ですが、少し変ですね。れいむさんの結界って」 「やれやれ、もう気付かれてしまったのね」 「「「!!!!!」」」 頭上で声がしたことに驚いた俺達はみっともなく慌てふためいてから 横一列に並び、そいつと相対した。 「お前は……!?」 「初めまして。ゆっくりゆかりと申しますわ」 白い服だ。長袖のロングスカートに身を包んでいる。 前掛けのように垂れ下がるのはどこか神道的な臭いのする紫と橙の装飾。 本来それなりの長さがあるであろう金髪は後頭部でまとめられている。 しかし、目を引くのはそこではない。 木の枝の上に佇むのは一匹の胴付きゆっくりだ。 ……いや、アレをゆっくりと言っていいのだろうか? 胴付きとは言っても基本的にゆっくりの身長は1mに満たないはず。 だがそいつは間違いなく十代前半の人間サイズである。 横に広いボール状の頭部は確かにゆっくりの面影が見て取れるが その姿はあまりに人間のそれと差が少なかった。 「最初に言っておくわ」 深く息を吸い込むと、こちらに手のひらを向けて言い放った。 「――――去りなさい、人に飼われたゆっくり達よ。 ここにあなた達の居場所は無い」 背筋がゾクッとした。 ……こいつは、今まで会ったどの覚醒ゆっくりとも違う。 もこうもこちらに対する不信感を隠そうともせずに接してきたが こうもあからさまな敵意を向けてくることは無かった。 「待ってください!私達は話を聞きに来ただけです! 貴方に害をなすつもりはありませんし 知らずにそのようなことにためにも教えてほしいことがあるんです!」 いくさんがゆかりに訴えかける。 慎重に言葉を選んだらしいが微妙な不自然さがある。 この危険な空気を読んでいるからだろう。恐らく俺以上の緊張感を持っているはずだ。 「……………」 「……………」 10m前後の間隔を空けて睨み合う俺達。 いくさんの言葉を聞いてもゆかりは反応を返すどころか、一切動かずにこちらを見ている。 少し間を空けて冷静さが戻ってきた俺は現状を打破するために口を開く。 「口ぶりから察するに、アンタは今の状況を良く知っているんだな?」 「……………」 無言を貫くゆかり。 今にも戦いになりそうな緊張感に冷たいものを感じながらも懲りずに問う。 「俺達は、何かよくないことが起こるのではないかと情報を集めて回っているんだ。 別にアンタに協力しろとは……いや情報提供は欲しいが、最悪でも敵に回らないで欲しい。 少なくとも今この場ではこちらから仕掛けるつもりは無い。 ………早い話、アンタは俺達と話を」 「駄目よ」 「………!!」 ようやく口を開いたと思ったら短く飛んできた言葉。 短いが故に取り付く島の無い、究極の拒絶。 「………帰るか」 「で、ですが!」 「ゲラゲラ!」 「聞いただろう。あいつはこちらに協力する気が全くないんだ。 ここでこれ以上食い下がってもお互いに不利益しかない」 俺は踵を返す。 素気無く断られた形だが不思議と不愉快ではない。 奴に対する恐怖心が勝っているからだろうか。 いや、そうじゃないな。俺はこれ以上この事件に関わらなくてすむという安心感を得たんだ。 こんなところにまで来てそんな思いを持っていることに僅かばかりの情けなさも感じるが。 「ゲラゲラ!!ゲラゲラゲラ!!!」 「…………え?」 うどんげが唐突に鋭い声を上げた。 しかし俺以上にいくさんが驚いた表情をする。 「ゲラ!!ゲラゲラゲラゲラ!!!」 「えっと……『あなたの………思い通りには、させない』」 拳銃を構えるようにゆかりに指先を向けるうどんげ。 いくさんが通訳を始めるとゆかりの表情が先ほど以上に険しくなる。 「『あなたが……それを否定するならば………むしろ………』………え!? ちょ、ちょっと待ってください!うどんげさん!!」 感情を剥き出しにしたうどんげがゆかりに攻撃をかけた。 いくさんがすぐに羽衣で羽交い絞めにしたが 指先から発射された銃弾のようなものがゆかりを撃ち抜く。 「ゲラァ………!!!」 「落ち着いてください!!」 「そんなことをしても無駄。あなたに私は止められない」 手遅れかと思いきや、ゆかりは平然とした表情。 それもそのはず。弾丸は障子紙を破くようにゆかりを貫通したが 数秒後にぐにゃりと歪んでその穴は塞がり、何事も無かったかのようになっている。 いくさんに羽交い絞めにされているうどんげは悔しそうに表情をゆがめていた。 「一体何なんだ?」 「細かい部分を省いて言えば、あの方はゆっくりが生息する 『もう一つの幻想郷』を作るつもりです」 「そう。あなた、もうそこまで知っているのね」 「それは……とがめられる事なのか?」 「人間の方。早い話が私達は、この世界を見捨てるつもりですから」 だんまりを決め込む様子だったゆかりが、愉快そうに笑った。 うどんげの必死さをあざ笑っているようで、少々癪に障る。 「私達が目的としている『この世界の危機』を止めるのではなく ゆっくりだけの新たな世界の創造。 うどんげさんの話から察するにそういうことですね?」 「そんなことが可能なのか?」 「ええ、もちろん。少なくとも幻想郷の『八雲紫』が一度やっていること。 そこの銃弾娘と同じように、幻想郷を行き来する手段を持つ者は 元となった存在の力と記憶をより強く受け継ぐことができる。 ……知らなかった?私達はこのままいけば、いずれオリジナルの存在と同等になる」 「ゲラ!!ゲラゲラアアアアア!!!」 「う、うどんげさん!落ち着いて!落ち着いてください!!」 「くすくす………無駄よ。もう事は始まっている。 いずれこの国に流れ込んできた者達の闘争が起きる。 最終的にはオリジナルの方がこの世界から放逐され、私達の幻想郷が本物になる。 あちらの世界から、ゆっくりと見守ってあげるわね」 「なっ………おい!!」 ゆかりの座っていた背後に裂け目のようなものができると、そこへ入り込もうと腰を上げた。 その時 「待ちなさい!!!」 「おっと」 突然飛んできた『何か』がゆかりのいた場所を通り過ぎていった。 驚いたような声を出したものの、それを回避したゆかりの身体はあっさりと空間の『隙間』に収まり姿を消す。 「ちっ………間に合わなかった………!!」 『さようなら人間さん。せいぜいあがいてこの世界を救ってみせなさいな』 姿を消したはずのゆかりの声が当たりに響く中、悪態をつくゆっくりれいむが空中にいた。 「なっ……!!胴付きれいむだと!?」 「…………珍しいのは認めるけど、そんなに驚くことはないじゃない」 ゆかりを襲ったそのれいむは緩やかな速度で地面に足を付くと、呆れたような反応を返してきた。 「そう言われてもな。 未発見と記録されていた胴付きれいむが現れたとなると誰でも驚くぞ」 「未発見ってあんた………まあいいけど。 で、あいつと何話してたわけ?」 気だるそうに頭をかきながらもこちらを威嚇するように問うてくる『覚醒れいむ』。 一応、何とか目標の相手と接触できたわけだが……。 「私達は、あなたを探してここまで来ました」 ――――同日、同時刻、神社境内―――― 「ここが…例の神社か?」 「さあ?私には分かりかねますが」 隻眼のまりさときめぇ丸はとある神社に到着していた。 かつてもこうやうどんげがうろついていた森林に 最も近い神社を上空から探した結果が現在の状況である。 「くどいだろうがもう一度言わせてくれ。 いざという時は頼むぞ」 「分かってますよ。人間がいたらすぐにあなたを抱えて逃げればいいのでしょう?」 「……あくまで、私達はゆっくりだ」 「分かってますって。もっとも、人っ子一人いないようですがね」 まりさは覚醒ゆっくり同士の交戦経験から、自らの戦闘能力を知ることになった。 少なくとも、今の自分はドスまりさ一匹に匹敵する強さがある。 しかし逆に言えば、ドスまりさ一匹分程度の戦闘力しかないとも言えるのだ。 飛行能力を持つきめぇ丸はともかく、自分は戦ってはいけない。そう考えるようになっていた。 「だけど、人がいないというのもこれはこれで困ったな。 折を見て接触……といきたかったが、情報収集すらできないぞ」 「いいえ。とりあえず『今は人がいない』ことが分かったんですから 収穫ゼロではありませんよ」 「そりゃそうだが……」 まりさは辺りを見回す。 鳥居をくぐると、左右を木々に囲まれた本堂が目に入る。 瞬間、まりさは強烈な既視感に襲われた。 「くっ………」 「おや?どうし……ぬっ……」 声をかけようとした二人は眩暈に襲われる。 暗転しかける視界できめぇ丸が右手で頭を抱えながら、本堂を確認しようとしているのが見えた。 ――――同日、午後1時、森林―――― 「あらためまして……こんにちは。いえ『ゆっくりしていってね』でしょうか?」 「別にどっちでもいいけど」 「ではこんにちはで。私はいくと申します」 「私はれいむ……見ての通りね」 見ての通り? 腕には赤い上着に繋がっていない袖があり。 下半身にはスカートのような袴。 俺はこんなれいむを見たことはない。 少なくとも『胴付きが未発見のはずの胴付きれいむ』など。 「こんなところに人間とは珍しいわね。 ひょっとして一斉駆除かしら?」 ゆっくりらしからぬ鋭い目つきでこちらを威嚇してくるれいむ。 ……全く、一昨日から驚かされっぱなしだな。 若干の呆れさえ感じならが俺は口を開く。 「そう棘々しないでくれ。お前と話がしたかっただけだ」 「……話?」 いかん、切り出し方がまずかったかもしれない。 人間に話すことは無いとか、何故自分がここに居ることがわかったとか、アレはそう言う目だ。 俺は探りを入れるのは逆効果と思い、結論を先に言う。 「今幻想郷とやらとこの世界で起きている『異変』について解決策があるなら教えて欲しい。 さらに協力してくれるなら有り難いのだが」 いかん、また言い方を誤った。 俺は自分が考えている以上に動揺しているのだろうか。 「何か、方法があればお願いします。 私達が今まで通りでいられる方法はありませんか?」 いくさんが必死さを込めて訴える。 うどんげは話が通じないと分かっているからか、静かにしている。 れいむは少し間を空けてから軽く息を吐いた。 「今まで通り……というのは少なくとも無理ね。 今ある状態に問題があるのだから」 道理である。 しかしいくさんの言ったことはそう言う意味ではないのだが。 機嫌を損ねられても仕方がないので指摘はしない。 「ということは『今まで通りでない状態』へ持っていければこの件は何とかなるんだな?」 「そうだけど……やっぱりそうなるのよね……はぁ……」 「??」 言動からするとどうやら本当に解決策を持っているらしい。 しかしなにやら余り乗り気でない様子。 れいむが重要な情報を抱えているという仮説は正しかったのだが少々腑に落ちない。 「まあいいわ、ついてきて」 「へ?……ああ」 背を向けて歩いていくれいむに俺達は付いていった。 「どこへ行くんだ?」 「神社」 「はぁ?」 まったくもって訳が分からない。 ――――同日、午後2時、山道―――― 「そう、だいたいはあいつが言っていた通りよ」 「そいつは厄介だな……」 俺といくさん、うどんげ、そして胴付きれいむは山道を走っている。 うどんげはいくさんが抱えた状態で空中を浮遊して重量を減らし、俺がそれを押している状態だ。 いくさんはそれほど速く飛べないが、こうすれば簡単に運ぶことができる。 エアホッケーのパックのような感覚である。 だが、れいむは独力だけでかなりの移動速度を持っていた。 実際、俺が小走りで追いかけなければならないほどの速度で前方を飛んでいる。 「もう一度確認するが、その結界とやらをもう一度張り直せば万事問題なく解決するんだな?」 「理屈の上ではそうなんだけど、その張り直しの方法がね……」 「?」 結局れいむは、ある種最も妥当な解決手段を持っていた。 あちらとの境界が曖昧になっているのであれば、もう一度その違いを定義し直せばいいということらしい。 だが今までもこうの話を鵜呑みにしていた俺たちにとってはかなり目から鱗な方法だ。 そう、こちらで一般化してしまった存在ならば無理してあちらに送り返してしまわなくとも ゆっくりという存在をオリジナルから完全に切り離し、こちらで定着させてしまえばいい。 あちらからの繋がりが断たれてしまった場合、いくさんやまりさの理屈で考えると 衰退の一途をたどるかもしれないが、むしろそうなるのが自然の流れとも思う。 その理論をそのまま適用するのなら、逆に切り離したところでいきなり消えてしまうわけでもなさそうであるが。 「少なくとも、今の私に大結界を張り直すだけの力はない。 私がもっと『霊夢』の力を使えるようになればわからないけど」 「パワー不足ってことか?」 「少し違うけどその理解で構わないわ。 だからこそ私の力が戻るまで待つという方法が一つ。 もう一つの方法として向こうの『霊夢』に協力してもらえればいいんだけど……」 「なるほどな」 同じ性質の能力を持っているのなら、それが最も早いかもしれない。 「……ん?だが、オリジナルに結界の張り直しができるのなら、どうして今すでにやっていないんだ?」 「それは……アンタの言い方をすれば、オリジナルだけではパワー不足ってことじゃない?」 「じゃあ、どうするんだよ?」 「そのために私が行くの」 「ああ……」 オリジナルとゆっくり。 ゆかりの話からすれば、『霊夢』も『れいむ』も同じ力を持つことになる。 ならば、両者が協力しないという手はない。 「ですが、今となってはそれほど猶予があるようにも思えません」 「……そうね」 口を挟んできたいくさんとれいむが同調する。 「どういう意味だ?」 「一番何とかできそうなゆかりはあんな状態だし すでに結界の方が破綻を始めてるみたい。 アンタ達が会ったようなゆっくりが増えているのが本当なら もう悠長に私の能力がどうのって言ってる場合じゃないの」 「そんなにやばい状況なのか?」 「今日明日は大丈夫でしょう。 ですが、一週間後はどうなっているかわかりません」 「そうか……」 確かに、俺ですらオリジナルと思しき人物と遭遇してしまったし ちょっと突いただけで歪んでしまうような結界の綻びを見たことがある。 あの時見た注連縄も、単なるその場凌ぎの応急処置だったのかもしれない。 「ただ、私が動くためにはアンタ達みたいな外部の協力者が必要だったからね」 「それは……」 「質問してばかりいないで自分で考えたらどう?」 そう言われて少し考えを巡らせる。 が、俺が口を開く前にいくさんが答えを言う。 「幻想郷との繋がりができてしまう条件が、こちらの世界とあちらの世界で ゆっくりがオリジナルと同じような行為をするから……ですか」 「そうね」 「つまり……」 「幻想郷とこちらの唯一のつながりであり 結界の発生源である神社には、れいむさんのオリジナルがいて……」 「そこに覚醒れいむが行くのは、確かに危ないかもしれんな……」 結界の重要な部分に穴が開けばどうなるか。 理屈は分からなくとも結果はどうなるか想像に難くない。 「………ちょっと、待ってくれ。 少し、疲れた……」 「およよ……大丈夫ですか?」 「それほど時間がないって言ってるのに……」 荒い息をしながら立ち止まる俺に前を飛んでいたれいむが呆れたような目を向けてくる。 いくら小走りとは言え話しながらでは思った以上に負担が大きかった。 しかしれいむもいくさんも、飛ぶのには体力が必要ないのだろうか? 「……だが、外部の者の協力って、要するに俺達がお前のの代わりの メッセンジャーになればいいってことか?」 「ええ。少なくとも私が近づくのは危険すぎる。 できればそっちの竜宮の使いも、妖怪兎も行くべきではないわね」 「そりゃ、そうか……」 れいむ以外でも、何かの偶然で同時刻にオリジナルがいる可能性があるからな。 「お兄さん……行くつもりですか?」 「いや……とりあえずもこう達と相談してから決めても遅くはないだろう。 俺じゃなくとも、神社に顔を出すことのない奴なら……」 「まあそうね。実際、神社に入り浸ってるやつはまりさくらいだし」 れいむのその言葉を聞いて、俺といくさんとうどんげが一斉に青くなった。
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九郎のSS感想用掲示板はこちら anko4548 おさはゆっくりできない anko4493 『ゆっくり』の在り方『饅頭』の在り方 anko4366 アーマードうどんげ4 終幕 anko4259 彼らの判断基準 他二本 anko4253 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その5 anko4225 ゆっくりの消えてゆく世界で anko4222 ゆっくりのいなくなってゆく世界で anko4146 アーマードうどんげ3 anko4096 いつもの風景にゆっくりの狩場を見た anko4014 打てば響く互いのシンパシー anko3966 アーマードうどんげ2 anko3931 粗末なソレは立派な虐待道具 anko3909 聡い者が悟った結果は anko3905 厄焼くところ、益あり anko3785 ゆっくりさとっていってね!!! anko3782 ゆっくりくさっていってね!!! anko3765 アーマードうどんげ1 anko3764 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その4 anko3576 おちびちゃんとゆっくりできたらいいな! anko3565 その厄誰の役? その役誰の厄? anko3560 とある沢での小騒動 anko3555 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その3 anko3517 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その2 anko3506 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その1 anko3191 隻眼のまりさ 第十話 anko3187 ゆっくり駆除業者のお仕事風景8 anko3183 隻眼のまりさ 第九話 anko3181 ゆっくり駆除業者のお仕事風景7 後編 anko3177 隻眼のまりさ 第八話 anko3171 ゆっくり駆除業者のお仕事風景7 前編 anko3166 隻眼のまりさ 第七話 anko3160 ゆっくり駆除業者のお仕事風景6 後編 anko3156 隻眼のまりさ 第六話 anko3153 ゆっくり駆除業者のお仕事風景6 前編 anko3146 隻眼のまりさ 第五話 anko3140 ゆっくり駆除業者のお仕事風景5 後編 anko3132 隻眼のまりさ 第四話 anko3127 ゆっくり加工業者のお仕事風景 anko3119 ゆっくり駆除業者のお仕事風景5 前編 anko3110 隻眼のまりさ 第三話 anko3101 ゆっくり駆除業者のお仕事風景4 anko3091 隻眼のまりさ 第二話 anko3084 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 幕間 anko3075 隻眼のまりさ 第一話 anko3061 隻眼のまりさ プロローグ anko3060 ゆっくり駆除業者のお仕事風景3 anko3054 ゆっくり駆除業者のお仕事風景2 後編 anko3053 ゆっくり駆除業者のお仕事風景2 前編 anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景
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anko3100 お兄さんとの3の約束 【虐待】 anko3101 ゆっくり駆除業者のお仕事風景4 【虐待】 anko3102 れいぱーを苦しめてみた 【いじめ】 anko3103 俺のしたことは弱い者いじめじゃない 【制裁】 anko3104 ちぇんにはなぜかわからない anko3105 ゲスとでいぶのあったか家族 【観察】【挿絵】 anko3106 学校:冬(後編) 【いじめ】 anko3107 ゆかりん 【愛で】 anko3108 さくや奮闘記 【愛で】 anko3109 伝染に注意 【観察】 anko3110 隻眼のまりさ 第三話 anko3111 代用ゆん 【虐待】 anko3112 てんこはけして離れない anko3113 りあじゅうばくはつしろ 【虐待】 anko3114 命の価値 【虐待】 anko3115 僕と秘密基地とねこのおんがえし 【小ネタ】 anko3116 美味しいピザ饅 【小ネタ】 anko3117 しゅっさん! 【いじめ】 anko3118 虐待してはいけない合宿 【虐待】 anko3119 ゆっくり駆除業者のお仕事風景5 前編 anko3120 ゆっくり闇鍋 【いじめ】 anko3121 バニラハザード (会社員のブログ) anko3122 粗末にしちゃダメ! 【いじめ】 anko3123 オ・レ 【小ネタ】 anko3124 悲劇的ビフォーアフター2 【ギャグ】 anko3125 ちるの時々まりさ 【愛で】 anko3126 田舎に帰ってゲスと戯れてみた 中編 【制裁】 anko3127 ゆっくり加工業者のお仕事風景 【虐待】 anko3128 僕は絶対にれいむを捨てない 【いじめ】 anko3129 はるですよ 【観察】 anko3130 れいむはすーぱーおかん:接触編 【愛で】 anko3131 れいむはすーぱーおかん:発動編 【虐待】 anko3132 隻眼のまりさ 第四話 anko3133 シティクリーン 【虐待】 anko3134 さいっきょうのれいむがげすなにんげんをせいっさいっしてゆっくりするよ! 【小ネタ】 anko3135 かいゆっくり 【いじめ】 anko3136 その理由 【制裁】 anko3138 おしゃかさま 【制裁】 anko3139 生命落花 【制裁】 anko3140 ゆっくり駆除業者のお仕事風景5 後編 anko3141 何故金ゲスはこんなにも多いのか? 【いじめ】 anko3142 何故金ゲスはこんなにも多いのか 補足編 【観察】 anko3143 ゆっくりばけばけ 【虐待】 anko3144 燃えるゆっくり園 anko3145 木の周りをぐるぐるするあれ。 【観察】 anko3146 隻眼のまりさ 第五話 anko3147 たった一つのシンプルな質問 【いじめ】 anko3148 ゆっくりできないから叩く 【考証】 anko3149 子供を守るためだったんだね 前半 anko3150 子供を守るためだったんだね 後半 anko3151 うわさの?けんゆんショー!! 【パロディ】 anko3152 コンポストはゆっくりできる 【虐待】 anko3153 ゆっくり駆除業者のお仕事風景6 前編 【考証】 anko3154 雪の後には 【観察】 anko3155 チクチクさんはゆっくりできない 【観察】 anko3156 隻眼のまりさ 第六話 anko3157 ケーキ屋さんのゆっくり 【愛で】【挿絵】 anko3158 使い捨てまりちゃ 【いじめ】 anko3159 ゆっくりはねるよ!! 【虐待】 anko3160 ゆっくり駆除業者のお仕事風景6 後編 【虐待】 anko3161 どーしてくれないの? 【小ネタ】 anko3162 ゆっくり絶叫シリーズ01巻 灼熱! 家族焼き 【制裁】 anko3164 ぱちゅりーとこあくまとひみつ 【愛で】 anko3165 約束された未来 【虐待】 anko3166 隻眼のまりさ 第七話 anko3167 まりさはさいっきょう! 【いじめ】 anko3168 芸術作品 【虐待】 anko3169 ムシゴロウ王国~春~ anko3170 境界線 後編その3 【制裁】 anko3171 ゆっくり駆除業者のお仕事風景7 前編 【虐待】 anko3172 田舎に帰ってゲスと戯れてみた 後編 【制裁】 anko3173 都会派ツンデレ田舎者 【制裁】 anko3174 さとりん可愛いよさとりん 【愛で】 anko3175 ごうっもん! 【虐待】 anko3176 ゆっくりもこけーね 【愛で】 anko3177 隻眼のまりさ 第八話 anko3178 夕方のゆっくり 【制裁】【挿絵】 anko3179 きらーまりさの一日 【パロディ】【挿絵】 anko3181 ゆっくり駆除業者のお仕事風景7 後編 【虐待】 anko3183 隻眼のまりさ 第九話 anko3184 やさしい町の人々 【愛で】 anko3185 まりさのくつみがきやさん 【虐待】【挿絵】 anko3186 その台詞は言わせない7 【制裁】 anko3187 ゆっくり駆除業者のお仕事風景8 anko3188 群れとつむりと変なゆっくり 【観察】 anko3189 おちびちゃんは大切だよ! 【制裁】 anko3190 おだい、おひねり、そしてあまあま 【虐待】 anko3191 隻眼のまりさ 第十話 anko3192 マスタードを少しだけ3 【小ネタ】 anko3193 どうしてこうなった 【小ネタ】【挿絵】 anko3195 ドスれいむ再び 【制裁】 anko3196 何故 【制裁】 anko3197 まりちゃのてぶくろ 【いじめ】 anko3198 授かり物 【いじめ】 anko3199 れいむの楽園 【観察】
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餡小説のシリーズ物をまとめました。掲載されてないシリーズ物があればトップコメントにてお知らせください。 ミニゆっくりとあそぼう!シリーズ 続・邪悪なる者達シリーズ Strayシリーズ Discriminationシリーズ まりさは飼われゆっくりシリーズ 単純群れ虐殺シリーズ ある畑の一年シリーズ だいりしゅっさんシリーズ 野良ゆが虐待お兄さんに目をつけられる話シリーズ てーシリーズ 都会の自然公園シリーズ しあわせ家族とお姉さんシリーズ アーマードうどんげシリーズ 家畜ゆっくりシリーズ 一緒にゆっくりしたかったいくシリーズ おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!シリーズ まりさの楽園シリーズ ゆっくりアメジョシリーズ 虐待15年目シリーズ 隻眼のまりさシリーズ ゆっくり駆除業者のお仕事風景シリーズ ゆっくりを袋に詰めて思う存分ボコるよ!!シリーズ 境界線シリーズ ゆっくり公民シリーズ バニラハザードシリーズ 遠い海から来たゆっくりシリーズ 帰省シリーズ ゲスゆっくり奮闘記シリーズ 長まりさをやってみたシリーズ HENTAIお姉さんシリーズ ゆっくりフライヤーズシリーズ 夏のゆっくりお姉さんシリーズ ゆっくり退化していってね!シリーズ まりさは“英雄ん”なのぜ!シリーズ 都会のゆっくりとその顛末シリーズ クレイモア・ゆんシリーズ よわいものいじめはゆっくりできないよ!シリーズ その台詞は言わせないシリーズ ゲス一家シリーズ ゆっくりを食べる山羊シリーズ 野良ゆっくりシリーズ ゆっくりが奇妙な新種として実在する世界シリーズ 学校シリーズ ゆっくり種シリーズ デスラッチまりさシリーズ ゆっくり教材シリーズ 老夫婦とまりさシリーズ すないぱーうどんげ養成所シリーズ 職業見学シリーズ ムシゴロウ王国シリーズ 南の島シリーズ 売ゆん婦 プラネット・ゆースシリーズ ゆっくりに関係する怖い話シリーズ 羽付きまりさシリーズ 元銀バッジまりさの末路シリーズ 売れるゆっくりを開発せよ!!シリーズ 俺が、ゆっくりだ!シリーズ 久城学園シリーズ 天然お兄さんシリーズ ゆっくり興亡史シリーズ ユグルイシリーズ 町れいむ一家の四季シリーズ 私は鬼にはなりきれないのだシリーズ ミニゆっくりとあそぼう!シリーズ anko4604 ミニゆっくりとあそぼう! anko4606 ミニゆっくりとあそぼう!2 anko4608 ミニゆっくりとあそぼう!3 anko4615 ミニゆっくりとあそぼう!4 anko4635 ミニゆっくりとあそぼう!5 続・邪悪なる者達シリーズ anko4503 続・邪悪なる者達・起 anko4504 続・邪悪なる者達・承 anko4505 続・邪悪なる者達・転 anko4506 続・邪悪なる者達・結 Strayシリーズ anko4465 Stray 1 ~れいむは地域ゆっくり~ anko4472 Stray 2 ~嫉妬と決意~ anko4487 Stray 3 ~薄れゆくもの~ anko4502 Stray 4 ~自称 稀少種~ anko4544 Stray 5 ~地域ゆっくりからでた先~ Discriminationシリーズ anko4333 Discrimination 1 ~帽子のない まりさ~ anko4334 Discrimination 2 ~歌姫れいむ~ anko4345 Discrimination 3 ~まりさの願い~ anko4349 Discrimination 4 ~まりさの涙~ anko4374 Discrimination 5 ~まりさの価値~ anko4375 Discrimination 6 ~ゆっくりした まりさ~ まりさは飼われゆっくりシリーズ anko4266 まりさは飼われゆっくり1 anko4272 まりさは飼われゆっくり2 anko4273 まりさは飼われゆっくり3 anko4286 まりさは飼われゆっくり4 anko4287 まりさは飼われゆっくり5 anko4326 まりさは飼われゆっくり6 anko4327 まりさは飼われゆっくり7 anko4330 まりさは飼われゆっくり8 anko4363 まりさは飼われゆっくり9 anko4364 まりさは飼われゆっくり10完 単純群れ虐殺シリーズ anko4244 単純群れ虐殺1 anko4245 単純群れ虐殺2 anko4256 単純群れ虐殺3 anko4257 単純群れ虐殺4 anko4264 単純群れ虐殺5 ある畑の一年シリーズ anko4224 ある畑の一年 春 anko4227 ある畑の一年 2 anko4352 ある畑の一年 3 anko4355 ある畑の一年 4 だいりしゅっさんシリーズ anko4176 だいりしゅっさん 前編 anko4246 だいりしゅっさん 中編 anko4276 だいりしゅっさん 後編その1 anko4396 だいりしゅっさん 後編その2 anko4466 だいりしゅっさん 後編その3 野良ゆが虐待お兄さんに目をつけられる話シリーズ anko4164 野良ゆが虐待お兄さんに目をつけられる話1 anko4209 野良ゆが虐待お兄さんに目をつけられる話2 anko4215 野良ゆが虐待お兄さんに目をつけられる話3 anko4216 野良ゆが虐待お兄さんに目をつけられる話4 てーシリーズ anko4095 てーとまりしゃ anko4099 てーとまりしゃとれいみゅのおとーさん anko4122 てーとありしゅのおかーさん anko4203 てーと野良と長雨 前編 anko4204 てーと野良と長雨 後編 anko4254 てーと野良と加工所と愛護団体 anko4308 てーとみなしごゆっくり anko4460 てーと猛暑日 午前 anko4463 てーと猛暑日 午後 anko4534 てーと金メッキ 都会の自然公園シリーズ anko3880 都会の自然公園 子ありすの選択 前編 anko3881 都会の自然公園 子ありすの選択 中編 anko3882 都会の自然公園 子ありすの選択 後編 anko3883 都会の自然公園 終わりの始まり しあわせ家族とお姉さんシリーズ anko3868 しあわせ家族とお姉さん1 anko3869 しあわせ家族とお姉さん2 anko3870 しあわせ家族とお姉さん3 anko3871 しあわせ家族とお姉さん4 anko3872 しあわせ家族とお姉さん5 終 アーマードうどんげシリーズ anko3765 アーマードうどんげ1 anko3966 アーマードうどんげ2 anko4146 アーマードうどんげ3 anko4366 アーマードうどんげ4 終幕 家畜ゆっくりシリーズ anko3756 家畜ゆっくり 前編 anko3761 家畜ゆっくり 中編 anko4610 家畜ゆっくり 後編1 anko3860 家畜ゆっくり 幕間 スカウト編 一緒にゆっくりしたかったいくシリーズ anko3665 一緒にゆっくりしたかったいく 1 anko3666 一緒にゆっくりしたかったいく 2 anko3667 一緒にゆっくりしたかったいく 3 anko3668 一緒にゆっくりしたかったいく 4 anko3669 一緒にゆっくりしたかったいく 終 おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!シリーズ anko3542 おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!(前編) anko3549 おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!(中編) anko3563 おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!(続・中編) anko3564 おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!(続々・中編) anko3578 おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!(後編) anko3579 おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!(続・後編) anko3580 おちびちゃんはとってもかわいいんだよ!(続々・後編) まりさの楽園シリーズ anko3488 まりさの楽園 前編その1 anko3489 まりさの楽園 前編その2 anko3515 まりさの楽園 中編 anko3567 まりさの楽園 中編その2 anko3568 まりさの楽園 中編その3 ゆっくりアメジョシリーズ anko3390 ゆっくりアメジョ anko3399 ゆっくりアメジョ2 anko3437 ゆっくりアメジョ3 anko3494 ゆっくりアメジョ4 虐待15年目シリーズ anko3232 虐待15年目 前編 anko3267 虐待15年目 中篇 anko3327 虐待15年目 後編1 anko3448 虐待15年目 後編2 anko3483 虐待15年目 終編1 anko3716 虐待15年目 終編2 隻眼のまりさシリーズ anko3061 隻眼のまりさ プロローグ anko3075 隻眼のまりさ 第一話 anko3091 隻眼のまりさ 第二話 anko3110 隻眼のまりさ 第三話 anko3132 隻眼のまりさ 第四話 anko3146 隻眼のまりさ 第五話 anko3156 隻眼のまりさ 第六話 anko3166 隻眼のまりさ 第七話 anko3177 隻眼のまりさ 第八話 anko3183 隻眼のまりさ 第九話 anko3191 隻眼のまりさ 第十話 anko3506 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その1 anko3517 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その2 anko3555 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その3 anko3764 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その4 anko4253 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その5 ゆっくり駆除業者のお仕事風景シリーズ anko3052 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 anko3053 ゆっくり駆除業者のお仕事風景2 前編 anko3054 ゆっくり駆除業者のお仕事風景2 後編 anko3060 ゆっくり駆除業者のお仕事風景3 anko3084 ゆっくり駆除業者のお仕事風景 幕間 anko3101 ゆっくり駆除業者のお仕事風景4 anko3119 ゆっくり駆除業者のお仕事風景5 前編 anko3140 ゆっくり駆除業者のお仕事風景5 後編 anko3153 ゆっくり駆除業者のお仕事風景6 前編 anko3160 ゆっくり駆除業者のお仕事風景6 後編 anko3171 ゆっくり駆除業者のお仕事風景7 前編 anko3181 ゆっくり駆除業者のお仕事風景7 後編 anko3187 ゆっくり駆除業者のお仕事風景8 anko3506 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その1 anko3517 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その2 anko3555 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その3 anko3764 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その4 anko4253 駆除業者&隻眼のまりさ 統合最終話 その5 ゆっくりを袋に詰めて思う存分ボコるよ!!シリーズ anko2922 ゆっくりを袋に詰めて思う存分ボコるよ!! 上 anko2927 ゆっくりを袋に詰めて思う存分ボコるよ!! 中 anko2985 ゆっくりを袋に詰めて思う存分ボコるよ!! 下の1 anko3028 ゆっくりを袋に詰めて思う存分ボコるよ!! 下の2 anko3035 ゆっくりを袋に詰めて思う存分ボコるよ!! 下の3(完結) 境界線シリーズ anko2757 境界線 前編 anko2869 境界線 中編 anko2997 境界線 後編その1 anko3083 境界線 後編その2 anko3170 境界線 後編その3 ゆっくり公民シリーズ anko2703 ゆっくり公民 ~奴隷制~ anko2720 ゆっくり公民 ~カースト制~(前編) anko2721 ゆっくり公民 ~カースト制~(中編) anko2722 ゆっくり公民 ~カースト制~(後編) anko2764 ゆっくり公民 ~農奴制~(春) anko2765 ゆっくり公民 ~農奴制~(夏) anko2766 ゆっくり公民 ~農奴制~(秋) anko2767 ゆっくり公民 ~農奴制~(冬) anko2802 ゆっくり公民 ~奴隷解放~(前編) anko2803 ゆっくり公民 ~奴隷解放~(中編) anko2804 ゆっくり公民 ~奴隷解放~(後編) バニラハザードシリーズ anko2695 バニラハザード (前) anko2762 バニラハザード (後) anko2763 バニラハザード (END) anko3121 バニラハザード (会社員のブログ) 遠い海から来たゆっくりシリーズ anko2673 遠い海から来たゆっくり 異郷にて anko2674 遠い海から来たゆっくり 冬、来たり anko2678 遠い海から来たゆっくり 蠢動と停止 anko2685 遠い海から来たゆっくり 猛る母性 anko2686 遠い海から来たゆっくり 彼方からの海流 帰省シリーズ anko2632 帰省(前日談) anko2636 帰省(発覚) anko2663 帰省(連戦)前編 anko2712 帰省(連戦)後編1 anko2806 帰省(連戦)後編2 anko2857 帰省(収束) ゲスゆっくり奮闘記シリーズ anko2611 ゲスゆっくり奮闘記1 anko2622 ゲスゆっくり奮闘記2 anko3414 ゲスゆっくり奮闘記3 anko3417 ゲスゆっくり奮闘記4 長まりさをやってみたシリーズ anko2484 長まりさをやってみた プロローグ anko2486 長まりさをやってみた 1話 anko2490 長まりさをやってみた 2話 anko3003 長まりさをやってみた 3話 anko3017 長まりさをやってみた 4話 anko3038 長まりさをやってみた 5話 anko3070 長まりさをやってみた 6話 anko3409 長まりさをやってみた 7話 HENTAIお姉さんシリーズ anko2259 HENTAIお姉さんとクイーンありす anko2323 HENTAIたちの無双劇 anko2463 HENTAIフルコース anko2656 ありす、家出する(前編) anko2773 ありす、家出する(中編) anko2981 ありす、家出する(後編) anko3007 飼いゆっくりすっきり死事件 anko3033 バHENTAIンデー ゆっくりフライヤーズシリーズ anko2070 U.K.フライヤーズ anko2071 ゆっくりフライヤーズ「雷雲のエース」 anko2080 ゆっくりフライヤーズ「山岳を渡る熱波」 anko2113 ゆっくりフライヤーズ「荒野の朝日」 anko2280 プラチナゆっくりの休日 anko2283 パイロットゆっくりの苦悩 夏のゆっくりお姉さんシリーズ anko2043 夏のゆっくりお姉さん anko2057 夏のゆっくり先生 anko2151 夏のゆっくり山守さん(前編) anko2154 夏のゆっくり山守さん(後編) anko2193 夏のゆっくり山歩き ゆっくり退化していってね!シリーズ anko1934 ゆっくり退化していってね!1 anko1964 ゆっくり退化していってね!2 anko2020 ゆっくり退化していってね!3 anko2346 ゆっくり退化していってね!4 anko2347 ゆっくり退化していってね!5 anko2450 ゆっくり退化していってね!6 anko2451 ゆっくり退化していってね!7 anko2601 ゆっくり退化していってね!8 anko2602 ゆっくり退化していってね!9 anko2603 ゆっくり退化していってね!10 まりさは“英雄ん”なのぜ!シリーズ anko1864 まりさは“英雄ん”なのぜ! 1 anko1876 まりさは“英雄ん”なのぜ! 2 anko1986 まりさは“英雄ん”なのぜ! 3 anko1992 まりさは“英雄ん”なのぜ! 番外編 anko1995 まりさは“英雄ん”なのぜ! 4(前編) anko1999 まりさは“英雄ん”なのぜ! 4(後編) 都会のゆっくりとその顛末シリーズ anko1790 ~都会のゆっくりとその顛末~「親子れいむ」 anko1798 ~都会のゆっくりとその顛末~「捨てありす親子」 anko2055 ~都会のゆっくりとその顛末~「夏の一幕」 anko2276 ~都会のゆっくりとその顛末~「街れみりゃ親子」 クレイモア・ゆんシリーズ anko1736 クレイモア・ユン前篇 anko1760 クレイモア・ユン後篇 anko1977 最高の餡殺者 anko2019 無残!!荒澤城渇殺し!!前篇 anko2039 無残!!荒澤城渇殺し!!後篇① anko2159 無残!!荒澤城渇殺し!!後篇② anko2359 飲み比べ anko2435 べリアル・サイス:前篇 anko2442 べリアル・サイス:中編 anko2579 べリアル・サイス:後篇 anko2594 負けたの誰だ? anko2684 負けたの誰だ?の後日談 anko2903 アストロン・シザーズその1 anko2975 アストロン・シザーズその2 anko3222 アストロン・シザーズその3 anko3366 アストロン・シザーズその4 よわいものいじめはゆっくりできないよ!シリーズ anko1548 よわいものいじめはゆっくりできないよ!(前編) anko1744 よわいものいじめはゆっくりできないよ!(中編-1) anko1745 よわいものいじめはゆっくりできないよ!(中編-2) anko2170 よわいものいじめはゆっくりできないよ!(後編-1) anko2171 よわいものいじめはゆっくりできないよ!(後編-2) その台詞は言わせないシリーズ anko1481 その台詞は言わせない anko1508 その台詞は言わせない2 anko1521 その台詞は言わせない3 anko1835 その台詞は言わせない4 anko2832 その台詞は言わせない5 anko2910 その台詞は言わせない6 anko3186 その台詞は言わせない7 anko3289 その台詞は言わせない8 anko3382 その台詞は言わせない9 ゲス一家シリーズ anko1461 ゲス一家 anko1501 ゲス一家 case2 ~とかいは~ anko1708 ゲス一家 case3 ~あまあま~ anko1749 ゲス一家 case4 ~けんじゃ~ anko2239 ゲス一家 case5 ~きしょうしゅ~ ゆっくりを食べる山羊シリーズ anko1406 ゆっくりを食べる山羊 anko1641 ゆっくりを食べる山羊その2 anko1822 ゆっくりを食べる山羊その3(1/2) anko1891 ゆっくりを食べる山羊その3(2/2) anko2015 ゆっくりを食べる山羊その4 anko2230 ゆっくりを食べる山羊その5 anko2793 ゆっくりを食べる山羊~お正月編~ anko3574 続・ゆっくりを食べる・・・ anko3786 続・ゆっくりを食べる・・・その2 野良ゆっくりシリーズ anko1356 野良ゆっくりNo.1 anko1364 野良ゆっくりNo.2 anko1381 野良ゆっくりNo.3 anko1428 野良ゆっくりNo.4(完) ゆっくりが奇妙な新種として実在する世界シリーズ anko1323 1・学者 anko1324 2・先輩 anko3853 3・小僧_前 anko3854 3・小僧_後 anko4274 4・旦那 anko4312 5・小僧 anko4313 6・ゆーか anko4314 7・所長 anko4315 8・小僧 学校シリーズ anko1279 学校:春 anko2158 学校:夏 anko2589 学校:秋(前編) anko2591 学校:秋(後編) anko3094 学校:冬(前編) anko3106 学校:冬(後編) ゆっくり種シリーズ anko1276 ゆっくり種 anko1278 ゆっくり種2 anko1291 ゆっくり種3 anko1310 ゆっくり種4 anko1331 ゆっくり種5 anko1350 ゆっくり種6 anko1391 ゆっくり種7 anko1482 ゆっくり種8(終) デスラッチまりさシリーズ 本篇 anko1237 雪原のまりさ 本篇 anko1250 まりさの思い出 本篇 anko1274 まりさとつむり 本篇 anko1282 まりさとおにいさん 本篇 anko1314 まりさとおちびちゃん 本篇 anko1337 まりさとリボン 本篇 anko1341 まりさと春 本篇 anko1711 まりさの子ぱちゅりー 本篇 anko1931 まりさの写真 外伝 anko1296 まりさとまま 外伝 anko1505 まりさとめぐりあい 外伝 anko2208 まりさに出会うまで・・・・・ ゆっくり教材シリーズ anko1241 ゆっくり教材Vol.1『野良に憧れるれいむ』 anko1257 ゆっくり教材Vol.2『大人になれないまりさ』 anko1272 ゆっくり教材Vol.3『ゆっくりありすの注意点』 anko2390 ゆっくり教材Vol.4『ゆっくりぱちゅりーの弱さ』 anko4106 ゆっくり教材Vol.5『ペットとちぇんと野良と飼い主』 老夫婦とまりさシリーズ anko1222 老夫婦とまりさ1 anko1228 老夫婦とまりさ2 anko1235 老夫婦とまりさ3 anko1247 老夫婦とまりさ4 anko1315 老夫婦とまりさ5 anko1444 老夫婦とまりさ6 後日談 anko1206 ゆっくり一家とゲスとお兄さん すないぱーうどんげ養成所シリーズ anko1132 すないぱーうどんげ養成所の最終試験 その1 anko1154 すないぱーうどんげ養成所の最終試験 その2 anko1883 すないぱーうどんげ養成所の最終試験 その3 anko1884 すないぱーうどんげ養成所の最終試験 その4(終) 職業見学シリーズ anko1007 職業見学 加工所のふらんちゃん 前編 anko1133 職業見学 加工所のふらんちゃん 中編 anko1242 職業見学 加工所のふらんちゃん 後編 anko2619 職業見学 ゆっくり校長のドスまりさ ムシゴロウ王国シリーズ anko0935 ムシゴロウ王国 anko0942 ムシゴロウ王国2 anko0944 ムシゴロウ王国3 anko0947 ムシゴロウ王国~王国の仲間達~ anko0972 ムシゴロウ王国5 anko0995 ムシゴロウ王国6 anko1099 ムシゴロウ王国7 anko1518 ムシゴロウ王国~でいぶの生態~ anko2744 ムシゴロウ王国のクリスマス anko3169 ムシゴロウ王国~春~ anko4050 ドスは外 南の島シリーズ anko0891 南の島のまりさ anko0897 南の島の生命賛歌 anko0907 南の島の葬送行進曲 anko0933 南の島の風葬墓 anko0943 南の島のスカーレットクロス anko0962 南の島の天の河 売ゆん婦 anko0821 売ゆん婦 anko0830 売ゆん婦2 anko0836 売ゆん婦3 anko0913 売ゆん婦4 anko1184 売ゆん婦5 anko1487 売ゆん婦番外編 たとえゲスであろうと 前編 プラネット・ゆースシリーズ anko0703 プラネット・ゆース anko0787 プラネット・ゆース ~きめぇ丸~ anko0956 プラネット・ゆース ~ドスまりさ~ anko1873 プラネット・ゆース ~秘境の戦争~ ゆっくりに関係する怖い話シリーズ anko0679 ゆっくりに関係する怖い話序幕 anko0681 ゆっくりに関係する怖い話1話 anko0683 ゆっくりに関係する怖い話2話 anko0688 ゆっくりに関係する怖い話3話 anko0692 ゆっくりに関係する怖い話4話 anko0698 ゆっくりに関係する怖い話5話 anko0704 ゆっくりに関係する怖い話6話 anko0706 ゆっくりに関係する怖い話7話 anko0709 ゆっくりに関係する怖い話終幕.7 羽付きまりさシリーズ anko0631 シティ・リベンジャーズ anko0690 ビルディング・フォレスト anko0701 コールド・ソング anko0713 ロンリー・ラック anko0736 ループ・プレイス anko0743 フェザー・メモリー(前編) anko0754 フェザー・メモリー(後編) anko1172 街を跳ねるもの達 anko1190 CLOUDY anko1360 風の流れる街 anko2064 狭間に見た夢 anko2069 虚構の代償 anko2277 空き缶の記憶 anko2431 RAIN anko2600 冬の別れ anko2604 GRAVITY anko2698 ラスト・ブルース anko2938 羽根の追憶 元銀バッジまりさの末路シリーズ anko0624 元銀バッジまりさの末路 上 anko0649 元銀バッジまりさの末路 中 anko0789 元銀バッジまりさの末路 下 anko1037 元銀バッジまりさの末路 終の1 anko1038 元銀バッジまりさの末路 終の2 売れるゆっくりを開発せよ!!シリーズ anko0605 売れるゆっくりを開発せよ!! プロローグ anko1317 売れるゆっくりを開発せよ!! まりさつむり量産計画Ⅰ anko1326 売れるゆっくりを開発せよ!! まりさつむり量産計画Ⅱ anko1332 売れるゆっくりを開発せよ!! まりさつむり量産計画Ⅲ anko1335 売れるゆっくりを開発せよ!! まりさつむり量産計画Ⅳ anko1339 売れるゆっくりを開発せよ!! まりさつむり量産計画Ⅴ 俺が、ゆっくりだ!シリーズ anko0501 俺が、ゆっくりだ! anko0522 俺が、ゆっくりだ! 2 anko0527 俺が、ゆっくりだ! 3 anko0531 俺が、ゆっくりだ! 4 anko0533 俺が、ゆっくりだ! 5 anko0536 俺が、ゆっくりだ! 6 anko0539 俺が、ゆっくりだ! 7 anko0546 俺が、ゆっくりだ! 8 anko0552 俺が、ゆっくりだ! 9 anko0555 俺が、ゆっくりだ! 10 久城学園シリーズ anko0438 久城学園のボランティア anko0442 久城学園の飼育 anko0445 久城学園の運動会~うえ~ anko0446 久城学園の運動会~した~ anko0449 久城学園の番人 anko0454 久城学園の日常 anko0456 久城学園の夜 anko0521 久城学園の不思議 天然お兄さんシリーズ anko0400 きゃわいきゅっちぇぎょめんにぇ!! anko0436 れいむはしんぐるまざーでかわいそうなんだよ!! anko0548 おきゃあしゃんのおうちゃはゆっきゅちできりゅね! anko0741 かいゆっくりじゃなくてごめんね!! 上 anko0742 かいゆっくりじゃなくてごめんね!! 下 anko0780 おうちのなかでかわれなくてごめんね!! anko0864 あまあまおいてさっさとでてってね!! anko0998 すっきりしたいわあああああ!! anko1205 あみゃあみゃもっちぇきょいくちょじじい!! anko1385 からだのしんからあったまろうね!! anko1642 でいぶはかわいくってかわいそうなんだよ!! anko2397 これでふゆさんもだいじょうぶだね!! anko2543 ドスはゆっくりできるんだよ!! ゆっくり興亡史シリーズ anko0360 嘘つきゆっくり anko0363 騙されゆっくり anko0388 勘違いゆっくり anko0403 仕返しゆっくり anko0508 お尋ねゆっくり anko0664 捕まりゆっくり anko1102 お話しゆっくり 前編 anko1103 お話しゆっくり 中編 anko1104 お話しゆっくり 後編 番外編 anko2004 とあるれいむにまつわるおはなし ユグルイシリーズ anko0240 ユグルイ その1 anko0245 ユグルイ その2 anko0251 ユグルイ その3 anko0256 ユグルイ その4 anko0271 ユグルイ その5 anko0322 ユグルイ その6 anko0551 ユグルイ その7 anko0557 ユグルイ その8 anko1586 ユグルイ~幕間 ビギンズナイト れいむ~ 町れいむ一家の四季シリーズ 前日談 anko0625 とてもゆっくりしたおうち 前日談 anko0739 ゆきのなか 前日談 anko0867 原点に戻ってみる 前日談 anko0876 秋の実り 前日談 anko1225 森から群れが消えた日(前編) 前日談 anko1226 森から群れが消えた日(後編) 前日談 anko1255 いつもの風景 前日談 anko2443 ワンス・アポンナ・タイム・イン・ニジウラシティ(前編) 前日談 anko2444 ワンス・アポンナ・タイム・イン・ニジウラシティ(中編) 前日談 anko2445 ワンス・アポンナ・タイム・イン・ニジウラシティ(後編) <春> anko0242 春の恵みさんでゆっくりするよ <春> anko0235 竜巻さんでゆっくりしようね <春> anko0248 お姉さんのまりさ飼育日記 <春> anko0261 お姉さんとまりさのはじめてのおつかい <春> anko0250 ちぇんの素晴らしきゆん生 <春> anko0290 町の赤ゆの生きる道 <夏> anko0215 真夏はゆっくりできるね <夏> anko0217 ゆっくりのみるゆめ <夏> anko0847 未成ゆん <夏> anko0790 飼われいむはおちびちゃんが欲しい <夏> anko0257 ぱちぇと学ぼう!ゆっくりライフ <夏> anko0321 てんこのインモラルスタディ <夏> anko0220 ゆうかりんのご奉仕授業 <夏> anko0225 雨さんはゆっくりしてるね <夏> anko0289 末っ子れいむの帰還 <秋> anko0269 台風さんでゆっくりしたいよ <秋> anko0357 都会の雨さんもゆっくりしてるね <秋> anko2211 ゴミ処理場のゆっくり達 <冬> anko0591 ゆっくりしたハロウィンさん <冬> anko1028 寒い日もゆっくりしようね 後日談 anko0210 俺の嫁ゆっくり 後日談 anko0228 ここはみんなのおうち宣言 後日談 anko0310 レイパーズブレイド前篇 後日談 anko0335 Yの閃光 後日談 anko0422 銘菓湯栗饅頭 後日談 anko0467 飼いゆっくりれいむ 後日談 anko0507 町ゆっくりの食料事情 後日談 anko0537 苦悩に満ちたゆん生 後日談 anko0773 野良ゆっくりがやってきた 後日談 anko0923 家出まりさの反省 私は鬼にはなりきれないのだシリーズ anko0111 そんなに我侭いうなら自分で生きてね! anko0158 私は鬼にはなりきれないのだ anko0273 子まりさはゆっくりできない anko0277 おいまりさ、涙の味はおいしいか? anko0286 そして家族の崩壊 anko0576 野良ゆっくりの一家の訪問を受けた
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