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神無月の巫女 エロ総合投下もの 赤ちゃんネタ 姫子と一緒に暮らし始めた千歌音ちゃん。 住んで1年経った頃、千歌音ちゃんに異変が…。 「また陽性ね…」 これで2度目。 例の女の子の日が来なくなってちょうど今日で2ヶ月。 今まで一度も生理が遅れたことがないし、来なかった月など一度もない。 でも精神的に不安定でもないし、食事もちゃんと摂っている。ダイエットとは無縁なだけに生理不順になるとは思えない。 まさかと思ってこっそり買ってみた妊娠検査薬。 (2回とも陽性反応がでるなんて…) トイレから出て自分のお腹を撫でた。 もちろん男性と交わったわけではない、千歌音が体を許すのは姫子だけでありその逆も然りである。 正直嬉しい。姫子との既成事実。 女性同士で出来るわけがないのは分かってはいるがふと脳裏を横切るはアメノムラクモの姿。 自分達の運命を司るあの神の力だと考えると納得できなくもないし、根拠はないが心のどこかでそう確信していた。 ただ、姫子がそれを受け止めてくれるかどうか……。 リビングに戻るとソファーの上で姫子が雑誌を読んでいた。 「あ、お帰り千歌音ちゃん」 戻ってきた千歌音に気づき、笑顔ですっと自分の隣を空けてくれる。 優しい気遣い。そんな姫子なら理解してくれるかもしれない。 姫子の隣に座り、千歌音は決心した。 「…あのね、姫子」 「なあに?千歌音ちゃん」 「その…私、デキちゃったかもしれないの」 「何が?」 「だから…姫子との」 「私との?」 「あ、赤ちゃんが…」 「えっ!?」 顔を真っ赤にして言った千歌音の告白に姫子は目を丸くした。 恐々と手に持っていた妊娠検査薬を渡すと、姫子は手にした雑誌を落とし泣きそうな表情になった。 その顔にあーやっぱり信じてもらえないのかも…。と不安がよぎる。 『で、でも私達女の子同士だよ!??』だとか『千歌音ちゃんまさか私以外の人と…』だとか次に姫子が言う言葉を考えると拒絶されるのではないかと恐くて目をぎゅっと閉じた。 「ありがとー!千歌音ちゃん!!」 「え?…きゃあ!」 千歌音の予想の遥か斜め上をいき姫子は突然抱きついてきた。 勢いあまって千歌音を押し倒しそうになってしまい慌てて離れる。 「あ、ごめんごめん。大事な体だもんね」 そう言って千歌音の肩を抱いてお腹をなでなで。 なんかもうデレデレモード。 「ひ、姫子…!疑わないの!?」 「え?どうして?」 姫子といえば姫子らしいかもしれないが、そんな信じきってる姫子に逆に千歌音が慌てる。 「だって!迷惑じゃないの?」 嬉しさと困惑が入り混じってぽろぽろと涙が出る。 たぶん千歌音自身自分が何を言ってるのか分かってない。 すると姫子はにこっと千歌音を安心させるように笑う。 「ちっとも迷惑なんかじゃないよ」 千歌音の目からこぼれる涙を指で拭ってやりながら姫子は優しく言葉を紡ぐ。 「私と千歌音ちゃんの子供なんだもん。とってもとっても嬉しいよ」 少し頬を染め言った姫子に、千歌音は自分の抱えていた悩みのちっぽけさに気づかされた。 いつもこの太陽の笑みに癒され救われてきた。 「ありがとう、姫子…」 落ち着きを取り戻し千歌音が笑うと、姫子も安心したように笑った。 「明日産婦人科に行くわ、ちゃんと確かめて来なきゃ」 自分のお腹を擦りながらそう言うが姫子は首を横に振った。 「うーうん、いるよ。私には分かる」 自信たっぷりに言い、屈んで千歌音の腰を抱き締めお腹にそっと耳をあてる。 「ここにいるんだね、私たちの赤ちゃん…」 とても嬉しそうな姫子の声。 まだ聞こえるはずがないのに。 くすっと笑ってしまう。でもそんな姫子が可愛くって頭を撫でる。 「名前…考えなきゃね」 「ええ、そうね」 そう幸せを噛み締め、2人はそっとキスを交わした。 FIN
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THW introduce baby hatch. 現状 概要 設備の目的は、望まれない赤ちゃんを殺害と中絶から守ることにある。新生児では外界に対する適応力(恒常性を維持する能力)が弱く、また単純にいわゆる「捨て子」として何らかの施設前に放置されると野犬や低体温症・熱中症といった脅威に晒される危険性すらあるため、これらの危険から守るために設置されている。 設置に際しては、しばしば「捨て子」を容認するのかといった議論にも発展するシステムではあるが、それ以上に「捨て子」が依然として存在している以上、それらの新生児は早急かつ安全に保護されてしかるべきだという議論もあり、道徳と人道の双方の観点からの議論がある(後述)。 この仕組みは法的裏付けが十分でないにも拘らず、ベルリンの壁崩壊後のドイツ国内にて旧東ドイツ地域を中心にNPO・キリスト教団体・病院などにより次々に設置され、2005年時点で80ヵ所を超えている。ハンブルクでは2000年の開設以来5ヵ年間に22人の赤ちゃんの命が救われた。こと同地域では、冬季に夜間の温度が氷点下にまで下がるにも拘わらず、慈善団体施設の前に放置された乳幼児が凍死した事件が契機となって設置が進んだという事情も報じられている。 これらでは、屋外と屋内に扉が設けられ、中には新生児の入ったバスケット程度の空間があり、冬は適度に保温され、夏は猛暑に晒されることが無いように工夫されている。この中に新生児を入れると、宿直室の呼び出しブザーなどに直結されたセンサーが働き、職員がすぐさま安全に保護できるような工夫も見られ、その一方ではポスト内部に捨てに来た親向けのメッセージカード(手にとって持ち帰ることができる)が用意され、このカードに同ポスト設置施設や児童相談所などの連絡先が記載されており、後々「捨てた」のを後悔して親であることを名乗り出る際に役立つといった配慮も見られる。 日本以外の例 数世紀もの間、「赤ちゃんポスト」の原型ともいうべき施設はさまざまな形で存在していた。このようなシステムは中世及び18世紀から19世紀にかけて広く普及していた。しかし1880年代後半から次第に姿を消していく。ヨーロッパにおけるこうした施設の先駆例としては、1198年にローマ教皇インノケンティウス3世の指示の下、イタリアの養育施設で作られたものが挙げられる[要出典]。ドイツのハンブルクでは、1709年にある商人が孤児院の中に Drehladen と呼ばれる施設を設置した。しかし5年後の1714年には、利用者が余りに多く、孤児院が経済的に養えなくなったため閉鎖している。その他に早期で有名なものは、カッセル(1764年)やマインツ(1811年)で設置されたものがある。大黒屋光太夫の口述などを元に記された北槎聞略には、18世紀後半のロシア帝国にも帝都ペテルブルグと旧都モスクワに「赤ちゃんポスト」そのものを備えた「幼院」の存在が、その運用方法などと共にかなり詳しく記されている。 今では赤ちゃんポストが再び注目されるようになり、1996年に最初の赤ちゃんポストが設置された後、多くの国で設置されるようになった。ドイツでは2000年にハンブルクのNPO法人によって始められ、公私立病院など約80か所に設置されている。 アメリカでは、病院が窓口となるセーフ・ヘイブン(en Safe haven law)が州によって定められている。 オーストリア 2005年までに、6つの都市で赤ちゃんポストを設置。 ベルギー 母親の母 (Moeder voor Moeder) 協会によって、2000年に、アントウェルペンの Borgerhout 地区に最初の赤ちゃんポストが設置された。 babyschuif 或いは、母親のモーセのゆりかご (Moeder Mozes Mandje) と呼ばれる。設置後3年間で保護される赤ちゃんはいなかった。 チェコ 2005年プラハで最初の赤ちゃんポストが設置される。2006年3月までに、3人の赤ちゃんを保護。 ドイツ 2000年に設置開始。2005年には全国80箇所以上に設置された[10]。 ハンガリー 1996年に最初に設置されて以来、現在までに約12箇所の赤ちゃんポストがある。そのほとんどが病院内に設置されている。 インド 1994年にタミル・ナードゥ州で子殺しの犯罪をなくすため、この州の指導者 J.Jayalalithaa の政策により、最初の赤ちゃんポストが設置された。ポストに置かれる赤ちゃんはゆりかご赤ちゃん (Thottil Kuzhanthai) と呼ばれ、国によって育てられ、また無料の教育が提供される。 イタリア いのちの行動 (Movement for Life) という組織によって設置された、8箇所ほどの赤ちゃんポストがある。2006年12月にローマで最初に設置され、2007年2月に初めての赤ちゃんを保護した。これ以外にバチカンにも赤ちゃんポストが設置されている。この地は世界で初めて赤ちゃんポストが設置された場所でもある。 オランダ 2003年アムステルダムに babyluik という赤ちゃんポストを設置する計画だったが、反対の声が強く中止に追い込まれた。健康部門の秘書官 Clémence Ross は違憲であると表明。 パキスタン Edhi財団が全国約250箇所に Jhoola と呼ばれる赤ちゃんを保護するサービスを提供する。 Jhoola とはブリキ製のぶら下げ型ゆりかごで、中にはマットが敷いてある。親は匿名でEdhi財団のセンターの外から赤ちゃんを置くことができ、ベルを使って知らせる。またスタッフが1時間ごとにゆりかごを確認する。 フィリピン マニラのサンジョーズ病院 (Hospicio de San Jose) では回転式ゆりかご (turning cradle) を設けている。ゆりかごには「ここで赤ん坊を受け取ります」と書かれている」[11]。 南アフリカ 非営利団体の「希望のドア」 (Door Of Hope) が2000年8月にヨハネスブルグの教会堂で「壁の穴」 (hole in the wall) を設置。2004年6月までに、30名の赤ちゃんを保護。 スイス 2001年5月9日に Einsiedeln の病院に赤ちゃんポストが置かれた。 アメリカ 赤ちゃんポストなるようなものはまだ設置されていないが、テキサスで1999年9月1日に「安全な避難所の法案」 (safe haven law) が実施され、その後47の州が同じく実施している。この法案は親が合法的にまた匿名で自分の新生児(生後72時間以内)を放棄し、病院や消防署などの「安全な避難所」の場所に届けることを許可している。この法案の呼び名は各州さまざまで、例えばカリフォルニアでは「赤ちゃん安全環境法」と呼ばれている[12]。ネブラスカ州が2008年7月に乳児を念頭に、育児困難な子供を受け入れる制度を導入したところ、1歳以下は1人だけで、17歳の4人を含めて10歳以上が22人置き去りにされ、州は年齢制限せざるをえない事態となっている。 日本の「こうのとりのゆりかご」 熊本県熊本市の慈恵病院[8]は2006年12月15日に「こうのとりのゆりかご」の設置申請を熊本市に提出。翌2007年4月5日に市はこの申請を許可し、5月1日に完成。5月10日正午から運用を開始した。 施設は、人目につきにくい病院東側に45cm×65cm大の扉をつくり、内部には36度に設定された保育器を設置する。新生児が入れられるとアラームが鳴り、医療従事者が駆けつける。監視カメラが設置されているが、親の匿名性を守るため子のみしか映らない。 ポストに入れるのは生まれてから2週間以内の子供に限られる。新生児への命名は熊本市長が行う。父親による場合も想定している。ポストを閉めると、新生児の連れ去りを防ぐ「自動ロック」により、入れる側からは開けられない。 親が名乗り出て、自ら育てるか、親権放棄及び母親の生活状況、精神状態、などを十分考慮し、最悪の場合は親権剥奪などをして里親または養親に引き取ってもらうかを決めてもらう。名乗り出ない場合は、警察や市役所などに連絡した上で裁判所の判断を経て施設に引き渡す。 預けられた子供は、慈恵病院が健康状態を確認し、児童相談所が6日間程度で熊本県内の乳児院に移す。県内の乳児院は、熊本市の熊本乳児院と慈愛園乳児ホーム、八代市の八代乳児院の3か所。慈恵病院には、預けられた期間に応じて、一時保護委託費(1日当たり1800円)、医療費などが支払われる。養護施設や乳児院には、措置費(乳児院の場合、毎月約50 - 60万円)と子供の生活費、里親には手当(月3万円)、子供の生活費が支給される。これらの費用は国と県が折半する。 2007年当時の県知事である潮谷義子は、かつて慈愛園乳児ホームの園長だった[1][2]。2007年5月29日、幸山政史熊本市長は「こうのとりのゆりかご」の運用状況について、年1回件数のみを公表するという市の方針を表明する。慈恵病院は、運用開始から6ヶ月を経過した11月に、件数と子供の健康状態について公表する方針とする。 2009年11月26日、「こうのとりのゆりかご」の利用状況や課題を検証する熊本県の会議は最終報告を公表した。報告では、親が判明したケースにおいて子供を預けた理由を調査したところ「戸籍に入れたくない」(8人)、「生活困窮」(7人)、「不倫」(5人)、「世間体が悪い」「未婚なので」(各3人)という結果だったこと、子供に障害児や新生児以外の幼児が複数いたこと、親が福祉・教育関係者であるケースがあったことなどを挙げ、「こうのとりのゆりかご」について「親が匿名で預ける仕組みは倫理観の低下を招く恐れがある」と指摘し、慈恵病院に対して子供を匿名で受け入れないよう努力することを求めた。一方、子供の遺棄防止に一定の効果があることも認め、国に対しては「県境を超えた母子支援が必要」と提言した。 なお、預けられた子供の人数は、設置された2007年5月から2008年3月までに17人、2008年4月から2009年9月末までに34人の計51人である[9]。 賛成意見 新生児の殺害・虐待・育児放棄を防ぐ。 預かるのが目的である。 中絶では児は生存できないが、このシステムにより児が生存できるための選択肢が増える。 人工妊娠中絶は本来法的には母体適応(妊娠出産が母体に危険)や経済的理由の社会適応しかないが、実際には他の社会適応(親の社会的側面など)、胎児適応(障害を有するなど)においても非合法だが容認されている。このシステムにより母体保護法への抵触を形式上回避できる。 慈恵病院の場合、赤ちゃんが安易にポストに預けられることがないよう「SOS赤ちゃんとお母さんの電話相談室」を24時間体制で運用しており、相談もしている。赤ちゃんポストの運用開始である2007年5月以前である、2006年12月に電話相談室を運用開始している。 反対意見 新生児の殺害・虐待・育児放棄を防止していない。預けられた子供に虐待の痕跡はなく、「命が救われた事例は認められない」と報告されている。 育児放棄、捨て子を助長する。 全国に乳児院や養護施設等があり、匿名性でなければいけない理由が曖昧である。 匿名性が倫理観の欠如を生み出している。「障害児」「幼児」「不倫の子」「戸籍に乗せたくない」等、本来の趣旨から逸脱した利用状況が見られ、匿名性が大人の事情を救っている。 新生児の死体遺棄は年間数件であり、超法規的措置を取らざるを得ない必要性が感じられない。 病院側は「年に1人あるかないか」と想定しているなど、現状に対する認識が非常に甘い。 乳児一人当たり月額50~60万円の措置費が支給されるなど、諸施設に散見される金銭目的の懸念がある。 人工妊娠中絶反対はカトリック教会の思想であり、赤ちゃんポストの設置とは異なる問題である。 外国人の新生児の場合、どうするのか? 子供の親を知る権利を侵害している。 養育できる里親がいない。 児童養護施設に問題を丸投げしている(養護施設では経済的問題から大学や専門学校に進学しにくいなど将来が限定され、虐待の懸念は恒常化している)。 カトリック系の、いち医療法人の責務を超えている。 預けられた子供たちは法的な裏付けがない実験的システムの犠牲者になりかねない。 保護責任者遺棄罪や児童福祉法、児童虐待防止法に違反する恐れがある(法的問題は後述)。 定義、プラン 日本で、赤ちゃんポストを「こうのとりのゆりかご」以外にも作る 政府が赤ちゃんポスト運営を全面的に支援する 赤ちゃんポスト以外にも相談システムなどを確立する アーギュメント Gov 遺棄される子供が救える 母親の選択肢の一つとなる 子供の最低限度の生活が保障できる 相談システムで赤ちゃんポストの利用を抑制できる。 Opp 捨て子を助長する 預けられた子供の将来の問題 倫理的な問題 金銭的負担や責任の所在
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8 名前:名無しの心子知らず[sage] 投稿日:04/06/18(金) 17 28 ID P/GdwNS1 産まれたばかりの赤ちゃんは~ 耳の後ろの付け根に垢がたまってるから良く洗え~ 女の子ならマンコもちゃんと開いて洗わないとウンコも垢も詰まってる~ チンコは剥くな~垢はおしっこで洗い流してくれるよ~ん
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赤ちゃんの発熱について、お話していきたいと思います。 赤ちゃんは大人より新陳代謝が盛んで、平熱が高いこともあり、熱が上がりやすい体の作りになっています。 発熱の症状というのは、体の中にウイルスや細菌が入ると、ウイルスや細菌の増殖を防ぐ働きをしていために起こるのです。 ■自宅で様子を見る程度の発熱 多少熱っぽいが赤ちゃんの機嫌がよく食欲もある。ぐっすり眠れる。 ■診察時間の間に受診して欲しい症状 熱が上がっているが、水分補給はできている。 赤ちゃんの脇の下や、おでこを冷やすと、眠る。 熱はあるが機嫌がいい。 ■診察外でも受診して欲しい発熱の症状 熱が下がらずにぐったりしている。高熱。水分もミルクも飲まない。 ■大至急、救急車を呼ぶ状態 赤ちゃんの意識がない。 ひきつけを起こしている。 39度以上の熱。 立て続けにいつも吐く。 生後2カ月までの赤ちゃんで38度以上の熱があり下がらない。 嘔吐、激しい下痢があり、おしっこが出ない。 発熱にもいろいろな症状があることがわかります。 すぐに下がるような微熱であれば、それほど心配することもありませんが、赤ちゃんの様態は急変しやすいので、熱がでた場合は、お医者様に見てもらうようにしてください。様態が急変したときが夜中でも、夜間の病院で見てもらうようにしましょう。 発熱から考えられるものは、おたふくかぜ、髄膜炎、尿路感染症、急性中耳炎、ヘルパンギーナ、突発性発疹などもあります。 肺炎になったり、症状が悪化することが十分に考えられるので、自己判断は絶対にしないようにして欲しいと思います。 レディースファッション
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「NTRれいむ.1」 れいむは幸せにひたっていた。 過去には辛いこともあった気がするが、今は自分が世界で一番ゆっくりしているゆっくりなのだと確信できるので、どうでもいい。 出来ることならこの幸せをほかのゆっくりにも分けてあげたいくらいだよと思えるくらい、れいむはゆっくりしていた。 隣には優しくて強いまりさがいる。れいむを大事にし守ってくれる、とても頼もしい夫だ。 夫の周りには笑い声を上げながら元気に跳ね回る子供たちがいる。 どの子もとてもゆっくりしているよい子たちだ。 お父さんまりさにじゃれて遊んでいる姿はとても愛らしく、そばで眺めているだけでこの上なくゆっくりできる。 子供達の楽しげな声を聴きながら、この子達のためならお母さんどんなことだってできちゃうよと、れいむはうっとり目を閉じて陶酔する。 れいむに似た子が二匹、まりさに似た子が二匹、どの子にも等しく愛情を注いでいて、目に入れても痛くないくらい可愛いかった。 まだ小さな赤ちゃんゆっくりだが、お母さんとお父さんの言うことを良く聞くとても賢い子供たちで、将来はゆっくりたちのアイドル兼リーダー的存在になるに違いないと今から楽しみなくらいだった。 そしてなにより、今いるのこの場所。 れいむたちのゆっくりぷれいすは、実にゆっくりした素晴らしいことづくめのぷれいすだった。 そろそろ冬が近づいて来ようかという季節なのに、ここはほんのり暖かい。 昔居た場所のようにお外で雨が降ったからといって、家の中に冷たい水が滲みてくることも無い。 強い風が吹いて、子供たちが飛ばされ危険な目に遭うことだってない。 そもそも子供たちを置いてわざわざ遠くへ狩りへ出なくても、食料はすぐそばに豊富に落ちていて、こうして家族全員が揃ってゆっくり過ごすことができる。 中でもれいむが一番ここをゆっくりしていると感じるのは、今まで嗅いだことが無いほどいい香りに包まれていることだった。 ……ああしかし、そういえばひとつだけゆっくりできないことがあった。 れいむは視線を上げて、四角い木の上にある、これまた四角い透明な箱に入った帽子のないまりさをねめつけた。 この素敵なれいむのゆっくりぷれいすに相応しくない異物がいては、本当のゆっくりはできないのだ。 「ゆひぃ!」 れいむの視線におびえ、マホガニーの手彫り電話台の上、綺麗なガラスケースの中で帽子なしのまりさが身を縮こませていた。 れいむ一家がおうちせんげんをする前は何事かを高いところからわめていたが、夫のまりさが力強くぷっくーをして威嚇すると、ケースの隅っこに寄ってすぐに何も言わなくなった。 それ以降はれいむの一家のゆっくりぶりを高みからチラチラと覗きみているばかりで何も言ってこない。 こんなにゆっくりしているれいむたちを勝手に盗み見ておいてあまあまも寄こさないなんて、とんでもなくずうずうしい奴だ。 「ここはれいむたちのゆっくりぷれいすなんだよ! ゆっくりできないくずはゆっくりしないででていってね!」 「まりさはつよいんだぜ。はやくでていかないと、ようしゃのないせいっさいをくらわしてやんるだぜ。ぷっくー」 「ゆひぃぃ!」 れいむやまりさが何を言っても、帽子なしまりさは悲鳴をあげて身を固くするだけで一向に出て行こうとしない。 れいむは苛立たしげに舌打ちをすると、電話台に軽く体当たりをした。 衝撃で揺れるケースの中で帽子なしまりさは哀れなほど弱々しく震える。もはや悲鳴も喉に詰まって出てこない。 「おかぁしゃん、ありぇはなんなのにょ?」 赤ちゃんれいむの一匹が不思議そうに母親の視線の先を見上げる。 「じぇんじぇんゆっきゅりしちぇないにぇ~。ありぇもれいみゅちゃちとおんなじゆっきゅりにゃの?」 赤ちゃんれいむのほうに向き直り、れいむはにっこりと微笑む。 「ちがうよ。ぜんぜんちがうよ。あれはおかざりのない、ただのごみだなんだよ。ぜっっったいに、かわいいれいみゅとおなじゆっくりなんかじゃないんだよ!」 「そうにゃの~?」と不思議がるあかちゃんれいむに、まりさが言葉を重ねる。 「いいかい、れいみゅ。おかざりがないっていうことは、ただそれだけでゆっくりできないってことなんだぜ。すてきなおかざりのついたれいみゅたちとちがって、まわりのゆっくりまでゆっくりできなくするから、あんなくずはころされてももんくはいえないんだぜ」 「しょうなんだ~。くじゅはちね! ぷっきゅー」 「「ちねー!」」 父親の真似をしてぷっくーと身体を膨らませる赤ちゃんれいむ。それをさらに真似て残りの子供達も揃って帽子なしまりさを責め立てる。 「ゆゆっ、なんてたのもしい! れいみゅたちはれいむのほこりだよ」 子供たちの雄姿にれいむは瞳を潤ませる。 まりさはさらに格好いいところを見せようと、ぴょむぴょむと跳ねて電話台へ体当たりを繰り返す。 電話台は壁に接しており安定はしているが、それでもグラグラと揺れ動き、その度に帽子なしまりさの情けない悲鳴が響く。 子供たちはまりさの容赦の無い攻撃を「きゃっこいぃー」と褒め称え、おびえ続ける帽子なしまりさへ思いつく限りの言葉を叩きつける。 「ぷーーっ、くすゅくすゅ」 「まりしゃのおとーしゃんはさいっきょーなんだじぇ」 「おーおー、あわりぇあわりぇ、だじぇ」 「きみょいきゃら、すぎゅにちんでね!」 れいむ一家は得意の絶頂だった。 「……頃合かな?」 ゆっくりではない、人の声がした。 引き戸を勢いよく開けて、人間の大きな足が居間へと侵入する。 突然のことに驚いて固まっている餡子脳のれいむ一家を慣れた手つきで拾いあげると、れいむ・まりさ・赤ちゃんゆっくりを2匹ずつと無造作にガラスケースの中に落とし込んでいく。 「に、にんげんさんがなんで、ばふぇ!」 「な、なにするんだぜ!? でべぇっ!」 「うわーぃ、れいみゅおそりゃを……ぶひゃ!」「びひゅ!」「ぶびぃ!」「ぶふっ!」 落ちた衝撃で不快な音を吹き出しつつ、れいむ一家がケースに分配されていく 居間の中央にあるテーブルの上に置かれたガラスケースは、帽子なしまりさが入っているものよりもずっと大きい。 れいむたちは4つに分けられたが、ケース自体は6つの部屋に仕切られていた。 「蓋は……、こいつだけでいっか」 まりさを入れた部屋の上にだけ個別に蓋をして、鬼威さんは少しかがんでガラスケース越しにれいむ一家へ挨拶をした。 「やぁどうも。虐待鬼威さんだよ。よろしく」 「に、にんげんがどうして、れいむたちのゆっくりぷれいすにいるの?」 「そ、そうだぜ。おかしいんだぜ! はやくまりさのたいせつなかぞくを、ここからだすんだぜ!」 鬼威さんは笑顔を浮かべた優しい表情でゆっくりたちを見下ろしている。 「まぁ、せっかく来たんだ。ぜひとも、ゆっくりしていってね」 「ゆゆ?! ……ゆっくりしていってね!」 好意的な態度に戸惑いながらも、思わず習性を披露するゆっくりたち。 さらに状況がつかめていない赤ちゃんゆっくりは無邪気に「ゆっきゅちー!」とはしゃいで声を上げる。 「うっは、うっぜぇ」 鬼威さんは笑顔のまま用意していた待針を一本つまみ、跳ね回る赤ちゃんまりさの一匹を突き刺した。 「ぴぎぃゃゃぁぁあああ!」 ガラスケースの底には発泡スチロールがしいてある。高い所から適当に落としたのに赤ちゃんゆっくりが潰れていないのはその為だ。 一瞬前まで嬉しそうに飛び跳ねていたまりしゃは、身体を貫く激痛と待針によって発泡スチロールの床に縫い止められていた。 「ぃひゃぁあい! おきゃーしゃん、こりぇとっちぇー!」 「まりしゃ! いま、おかーさんがたすけてあげるからね!」 慌ててれいむがケースの仕切りに身体を押しつけ、赤ちゃんゆっくりの元へ駆け寄ろうとする。 が、ただの饅頭が潰れアンパンのように形が変わるばかりで当然先へは進めない。 その間にも赤ちゃんゆっくりは苦痛を訴え続ける。 「おきゃーしゃーん! いちゃいんだじぇー。こりぇすっぎょく、いちゃいんだじぇー。おきゃーしゃーん!」 「ぺーりょぺーりょすりゅよ! ぺーりょぺーりょすりゅよ!」 もがくことでさらに痛覚を刺激していることが理解できないのか、赤ちゃんまりさは床の上で無様にのた打ち回る。 同室に分配されたもう一匹である赤ちゃんれいみゅは、待針の刺さった部分に舌を這わせ、真剣な表情で舐め上げている。 「にんげんさんひどいんだぜ! まりしゃをはやくてあてしたほうがみのためなんだぜ!」 「そうだよ。まりさはつよいんだよ。にんげんさんなんか、すぐにやっつけちゃうんだよ。だから、ゆっくりしないでれいむたちのいうことをきいてね!」 蓋をされているまりさはともかく、れいむの入っている部屋は上が空いている。 ジャンプして届けさえすれば、苦しんでいる赤ちゃんゆっくりのいる隣の部屋へ行くことができるのだが。 それを試そうともせず、無理矢理顔面をガラスに押しつけて変形させるばかりなのは愚かという他はない。 「……ああ、かわいそうなまりしゃ……。なにもできない、おかあさんをゆるしてね…」 はらはらと涙を流しながら、泣き叫ぶ我が子の姿を食い入るように見つめるれいむ。 目の前にいるのに見えない何かに阻まれて手を出すことができない。 鬼威さんはそんな光景を前にして何も口出しをせず、ニコニコと満面の笑顔でただ見守っている。 「にんげんさん、まりさのいうことがきこえていないのぜ!? はやくまりしゃをたすけないと、にんげんさんをせいっさいしてやるんだぜ」 「おねーしゃん、きゃわいそー」 「ねぇ、いちゃいの? いちゃいの? こりゃ! そきょのくしょじじぃ。ひゃやく、いみょーとをたすけないちゃい! ぷっきゅー!」 別の部屋に仕切られている赤ちゃんれいむが、鬼威さんに向かってその小さい身体を精一杯膨らませて威圧する。 鬼威さんにしてみればお笑い草だが、れいむやまりさはその家族愛に溢れた行動に万感極まっていた。 「なんて、なんていもうとおもいのいいこなの……。にんげんさん! このれいみゅをみてはんっせいしたよね? だったら、れいむたちあやまって!」 「そうだぜ、まりさのこどもたちは、まりさににてすっごくゆうっかんでつよいのだぜ。 よわよわしくてひきょーなにんげんさんにのこされたみちは、いますぐこうふくしてまりさたちのどれいになるしかないのぜ!?」 「ぷーっ、くすくす。こんなあたまのわるそーなにんげんさんに、れいむたちのどれいがつとまるかな? せいぜいきにいられるようにがんばってね!」 「あまあまさんをたくさんもってくるのぜ? にんげんさんがどうしてもってないてたのむなら、すこしくらいわけてやらなくもないのぜ?」 下卑た笑いを皮に張りつけたまま、れいむとまりさはおかしそうに笑いあっている。 「ぺーりょぺーりょすりゅよ! ぺーりょぺーりょすりゅよ!」 「……ゅぎぃ……」 針を刺された赤ちゃんまりさは、痛みを訴え続ける気力さえ絶たれたのか、ぐったりとして床に這いつくばっていた。 もう一方のまりしゃが懸命に舐め続けているが、調子に乗る親ゆっくり二匹の餡子脳には、目の前にある赤ちゃんゆっくり惨状すらも届いている様子が無い。 自分達の優位を主張することに酔ってしまい、子供の心配をすることさえあっさり忘れてしまったようだった。 「にんげん、さっきからずっとだまってるのぜ? まりさがあまりにおそろしくて、こえもだせないのかぜ? おー、いやだいやだ。ぐずはきらいなんだぜ」 「もうわかったでしょ。れいむたちをはやくここからだして、まりしゃにあやまってよね。もちろん、ゆるさないけど。 にんげんさんはこれかられいむたちをゆっくりさせるために、ゆっくりしないではたらいてね。あと、そのいやらしいめ、やめてよね。 れいむとこどもたちがどんなにかわいらしくても、ゆっくりしてないにんげんさんなんがみていいわけないんだから」 言いたい放題を続けるゆっくりたちに対して、沈黙を守ったままそれ以上手出しをしない鬼威さん。 しばらくしてれいむたちの罵詈雑言が一段落したと見ると、何も言わずにテーブルから離れていった。 「にげるかのぜ!」「このひきょーもの!」 一言も言い返してこない鬼威さんを完全に見くびっているれいむたちは、自分たちを助ける前にどこかへ行かれては困るとさらに声を荒げて非難する。 鬼威さんはまるで意に介さない様子で電話台の所まで行き、ガラスケースの中を覗き込んだ。 そこには帽子なしのまりさがいて、テーブルの上のれいむたちに背中を向ける格好で震えていた。 鬼威さんがゆっくりとした動きで帽子なしまりさの頭をつつくと、帽子なしまりさは弾けるようにケースの反対側へ逃げて行った。 鬼威さんはその反応に怒った様子もなく、口元に小さな笑みを浮かべただけで、帽子なしのまりさへ言葉をかける。 帽子なしまりさはか細い声で返事をする。 れいむたちは届かないくらいの小声だったので会話の内容はわからない。 しかし、ゆっくりした自分達を無視して、お飾りの無い屑と話をしているなんてと、れいむ達は怒り心頭だった。 声をさらに大きくして喚き散らしていると、鬼威さんはれいむたちの元へ戻ってきて言った。 「ダメだって」 お兄さんの発言の意味がわからない。 唾と一緒に汚い言葉を吐き出し続けていた口をぼんやりと止めて、ゆっくりたちが無い首をひねる 「ゆー?」 「いやいや、ゆー? じゃなくてさ。だから、ダメなんだって」 鬼威さんは苦笑しつつも、相変わらず口調だけは優しくゆっくりたちへ語りかける。 「……ゆ? いったいなにがだめなのぜ?」 「まりさやれいむたちの奴隷になってもいいかって、今のご主人様に聞いたけど、やっぱりダメだって言われたってこと」 「ゆ? ゆゆゆ!? それって、どういうことなの。れいむにわかるように、ちゃんとせつめいしてよね!」 高慢な態度で迫るれいむに、鬼威さんしかたいねとわざとらしく肩をすくめる。 「あそこにいる帽子なしのまりさが、オレのご主人様なの。つまりもうすでにオレは別のゆっくりの奴隷になってるわけ。 二君に仕えずってわけでもないけど、君達の奴隷になるには、やっぱり今のご主人様の許可が必要なわけじゃない? 奴隷だから勝手に判断できないしさ。 だからご主人様の奴隷を辞めて、あちらのゆっくり一家の奴隷になってもいいですかってお伺いを立てたんだけど、あっさり却下されたってこと。 さらにご主人様にしてみればさ君達って勝手に自分の家に侵入してきて、おうちせんげんした厄介ものなわけじゃない。オレが入って来るまで、ご主人様にずいぶん酷いこと言ってたりしてたみだいだし? あ、そこの赤ゆのれいむ、ご主人様がおまえムカつくって」 流れるような自然な動作で指の間に待針を取り出し、ぷすっと小気味がいい音を立てて、赤ちゃんれいむの揉み上げと身体の一部を貫く。 「ぴぎぃぃぇぇえええ!?」 早口でまくし立てる鬼威さんの発言に理解が追いつかず、呆然としといているれいむたち。 赤ちゃんゆっくりなどは元より理解する気も無くぼけーっとしていただけだったのだが、痛みで我に返ってあられもない悲鳴をあげる。 「ゆ、ゆっ!? れいむのかわいいれいみゅが、なんでないてるの!?」 「それでね」と鬼威さんは何事も無かったかのごとく話を続ける。 「ご主人様のゆっくりぷれいすに無断で侵入して、食い物を勝手に漁ったり乱暴狼藉を働いたオマエラゆっくり一家をさ、許してやるような筋合いは本来ならこれっぽちもないよね。 いや、オレなら殺すよ? 虐待鬼威さんなわけだし。良心の呵責も一切無く、トイレで糞したら水で流すくらい当たり前に殺して潰して捨てるんだけどね。 ご主人様ってほら、オレみたいな鬼威さんと違って優しいゆっくりじゃない? 帽子を失くしてからずいぶん仲間のゆっくりに虐げられたみたいでさ、他のゆっくりが部屋の中にいるだけで恐怖でしょんべんちびるくらいのトラウマ持ってて笑えるんだけど、でも同属を無碍に殺したりできなかったりするんだよね。 だから、これからオマエラは『お飾りのないゆっくり以下のご主人様の下の奴隷であるこのオレのさらにその下のクソムシ』としてここで生きていってもらうことに決まったから」 あまりのことに生気の抜けた表情でまりさが口を開く。 「……あのおかざりのない、くずがにんげんさんのごしゅじんさまなのぜ?」 「そうだよ」 「……おまえはあのくずの、どれいなのぜ?」 「そのとおり」 赤ちゃんゆっくり二匹のすすり泣く声と、その傷口を舐めるぴちゃぴちゃという水音が静かに響いている。 れいむは目を見開いたまま、屈辱に身を震わせており声も出せない。 まりさと鬼威さんの会話を聞きながら、帽子なしまりさはなるべく物音を立てないように怯えていた。 「そして今から君達全員、その奴隷以下のクソムシです。ゆっくりしていってね!」 初めて投稿します。 ここからクソムシ扱いの一家のプライド崩壊とまりさ視点の、帽子なしまりさによるれいむNTRに発展する予定です。 なにぶん初めてのことなので、良いも悪いも何かコメントいただけるとありがたいです。
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親戚のお兄ちゃんに子供が生まれたので、何かお祝いをしようって思っています。 とりあえずプレゼント選びから! とは言ったものの、赤ちゃん用品ってなんだか難しい 難しいのもあるし、ほかの人とかぶらないようにするのが、大事だと思います。 同じもを2個貰っても、使いようがないですもんね。 でもなにがイイの?って聞くのもなんだかあれだかなって思ったので、 なんとか自力で探すことを考えたんです。 その考えた結果が、ベビー用品ブランドという結果になりました。 ブランドはあんまり買わないかなって、しかもお子さんのおもちゃなので、何個あってもいいのかなって洩ったんです。 我ながら名案だと思います。 じぶんを褒めてあげたいです。 早く渡したいです。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/1151.html
■品種改良415号報告書4■ 野生種といった改良種でない既存のゆっくりを母体に選び、妊娠前から母体に投薬をおこなうことで、 次世代のゆっくりの知能強化等を図る本実験415号計画の途中経過について記す。 コストパフォーマンスと管理の点から鑑みて、本計画に使用する薬品はA薬を採用することになった。 以後の実験はA薬のみでおこなう。 注意していただきたいのは、B薬は決してA薬に劣るものではないこと。良品であり、むしろ強化という面ではA薬を遥かに凌ぐ。 (とはいえ、母体への投薬によって赤ん坊の知能が向上しているにも関わらず、舌足らずな喋りである点はA薬B薬ともに共通であり、関係者は首をひねるばかりだ) 知能強化はもとより効果は身体強化にもおよぶ。 (御存知のかとは思うが、投薬された母体のゆっくりの能力向上は一切存在しない) (415号実験での母体は全て植物型出産である。ニューボーンが小型であり多産であった方が投薬の効果を確認しやすいためだ) 効き目が強いためか、結果が表に出るのも早く、目覚めたばかりの赤ん坊の時点でその効果が明らかにみられるのだ。 ひどい話になると、生後15分の赤ん坊ゆっくり達に指導される親ゆっくり――というケースも誕生する。 実験施設の餌の採り方を赤ん坊から教わったり、子供より先に体力の限界が訪れ動けないとぐずる親。果たして面倒をみてもらっているのはどちらなのか。 基本的にゆっくりは純粋なモノであるため、投薬による能力差の逆転が発生しても彼ら親子の関係は良好である。 子は親を慕い、親も子に妬みを抱くことはない。ただ、ゆっくりという種特有の愚かさから、親が事故を起こすことは多々ある。 なお、ゆっくりに“慕う”“妬む”、それ以前に感情が存在するのか? という問題は本件とは別であるため考慮しない。 B薬の問題点について軽く記す。 (詳細なB薬の報告書は担当者が提出済みであるため、そちらを参照されたし) B薬の問題点は“一代限り”であるということ。 薬によって生まれた有能な子世代の能力を、孫世代以下はまったく受け継がない。 何度か実験を繰り返したが、孫世代の知能・身体能力の全ては親世代のそれである。 毎度毎度の実験で、頭の良い子世代が、能力的に劣る親世代・孫世代を不思議がるのはもう笑えなくなってきた。 何故受け継がれないのかは依然不明であるが、さすがはゆっくりブレインと言しか言いようがなく、研究員一同、苦笑いするしかない。 (笑えないのに苦笑いなのか、という意見は却下させていただく) これでは意味がない。我々が欲するのは永続的な改良種である。 能力に向上があったとしても、次の世代にそれを残せなくては無意味であり、たとえ向上がわずかであっても次世代に受け継がれる方を良しとする。 本研究の目的に適さず、なおコストがかさむため、以降の415号実験にはB薬は使用されない。 繰り返すがB薬は良品である。他の実験でB薬が日の目をみることを、研究者の一人として望まずにはいられない。 これらの理由により。本日13:00を持って、品種改良415号B薬被検体は廃棄処分となる。 (415号実験での母体は全て植物型出産である) 他の部署が実験用ゆっくりとして、品種改良415号B薬被検体の提出を要望した場合、供与して良い。 また外部に持ち出さず研究所内部に限るが、関係者による品種改良415号B薬被検体の使用が、昨日許可された。 各人存分に楽しんでいただきたい。ただし、書類は提出すること。私の分も残しておくこと。この二つを守られたし。 ■――――以上――――■ 「すーや……すーや……すっきりー!!!」 黒髪に赤いリボン、少女の顔をデフォルメしてデザインされたような饅頭。通称ゆっくり。 その一種であるゆっくりれいむは実に幸せそうな顔で目を覚ました。 「ゆゆ? へんなきがするよ! でもしあわせー!!!」 直径15cm前後の成体れいむが立つのは、直径5cm幅の円柱の上。 足場の狭さから身動きがとれない場所ではあるが、固定された彼女が気にすることはない。 生まれ落ちた頃より、とんだりはねたりとは縁のなかった彼女だ。 今更あわてることではなく、動き回れなくとも、いつだって美味しい食べ物は向こうからやってきた。だから、しあわせー!!! 「……しあわせー? ゆっ! そうだったよ! れいむはあかちゃんができてしあわせなんだよ!」 生体れいむは親れいむ。昨日の朝にお母さんになったばかり。しあわせれいむだ。 頭部に蔦を生やし、葉(の様なもの)を茂らせ、赤ちゃんゆっくりを実らしたゆっくりの姿は……。 見ただけでしあわせそうだな、と思わせる要素を多段に含んでいるのも確かだ。 頭上に実る赤ちゃんゆっくり達を見上げるためか、それとも「思い出したれいむ偉い」と胸をはっているのか、ふんぞり返る様な動作の親れいむ。 その所作で親れいむの下腹部に付けられた薄いプレートが姿を見せた。 【実験No.46B 母体(親子廃棄)】 「ゆーゆー♪ あーかちゃん♪ おかーさんとゆっくーりしようねー♪」 2~3cmサイズのちいさなちいさな可愛い赤ちゃん。 ごきげん笑顔で歌を歌う親れいむ。しあわせでしあわせで仕方がない。 早く蔦から赤ちゃんが切り離されて、ぽてちんと地面に生まれ落ちないものか。 親れいむの視界に映る赤ちゃんは、れいむが2種、まりさが1種。 見える範囲で3匹の赤ちゃん。だったら「もっといっぱいいるよ!」と勝手なビジョンを思い描いている。 それは正しい。確かに赤ちゃんは4匹以上。 ただそれが真っ当な想像力によるものではなく、ゆっくりブレインしあわせブレイン。 こうあればいいという勝手な願望にしかすぎないのだ。 周りを見ずに、己の都合のいい事だけしか頭にない。これが普通のゆっくりである。 「……ゅ」 「……ゆ?」 親れいむの頭上で声が聞こえた。 「ゆー?」 何事かと思い、親れいむが首を傾げる(様な動作をする)。 動きにあわせて、葉と葉が重なりあい、ガサガサと音を立てた。 それが合図であったのか、 「ゅ!」 「ゅぅ……ゅぅ……」 「……ゅ! ゆゆっ!」 蔦に実った赤ちゃんゆっくりの何匹かが声を出し始め、その内の1匹が目を開いた。 「ゆっくちー!」 世界への目覚めの挨拶。 一番最初に目を開いた赤ちゃんれいむは、元気よく叫んだ。 おそらく彼女がこの姉妹の長女になるのであろう。 挨拶をすませニコニコとごきげん赤ちゃんれいむ。 「ゆ! れいみゅのおかーしゃんはどこかにゃ?」 蔦に繋がったままであるため、軽く身をひねる程度ではあるが、 母親を視界にとらえよう、見つけようと赤ちゃんはきょろきょろと周りを探す。 「おかーしゃん?」 「ゆゆ! ひょっとしてれいむのあかちゃん!? あかちゃんなの!?」 「ゆー! おかーしゃんはしたにいるんちゃね!」 この時点でようやく親れいむは、赤ちゃんれいむが目覚めたことに気がついた。 ワンテンポ早く、赤ちゃんれいむは母親の位置を把握し喜ぶ。 「おかーしゃん! れいみゅだよ! いっちょにゆっくちしよーね!」 「ゆゆー!? ゆゆゆゆ! ゆっくりしようね!!!」 本来、植物型出産の赤ちゃんは、蔦から切り離され、地面に落ちた衝撃で目覚め、言葉を発する。 そのプロセスと違い、蔦に下がった状態で既に挨拶をはじめた赤ちゃんれいむ。 そういう理由もあり、事態をまだ把握し切れていない親れいむだが、そんな事は些細なこと。 赤ちゃんが目覚め、自分に声をかけてきてくれた事が何よりの喜び。 きゃっきゃと会話を楽しむ2匹の声に反応し、他の赤ちゃん達も目覚めだした。 「ゆーゆっくちー!」 「おひゃよーおねーしゃん」 「ゆゆ! おねぼーしゃん」 「まりしゃだよー」 「まりしゃもまりしゃだよー」 「れーみゅもいるよー!」 「みんにゃゆっくちちてねー」 『ゆっくちー!!!』 皆仲良し赤ちゃんゆっくり姉妹。 「ゆーん! あかちゃんたちゆっくりしてるのー?」 「ゆゆっ! おかーしゃんだよ! みんなあいしゃつしよーね?」 『おかーしゃーん!!!』 「ゆゆー!」 親れいむは、ゆーんと感動で瞳をうるうるさせている。 自分の赤ちゃんはなんとゆっくりした子供達なんだろう。 「ひーひゅーみーよー……ゆ! おかーしゃん!」 「ゆ?」 「れいみゅちゃちがよん! まりしゃちゃちがに! ろくしまい!!」 長女の赤ちゃんれいむが親れいむに姉妹の数を報告する。 親れいむの赤ちゃんは、れいむ種だけでなく、金髪に黒の三角帽子がトレードマークのまりさ種がいるようだ。 れいむが4匹、まりさが2匹、合計6匹。 本来は30を超える大姉妹達であったのだが…… この家族は投薬の効果を高めるため、今の数まで間引きされている。 もちろんそんな事実を親れいむも姉妹達も知るよしもない。 ついでにいえば、親れいむに6という数字の概念はない。 「ゆゆー! いっぱいいるんだね! れいむはうれしいよ! しあわせー!!!」 そのため、純粋に赤ちゃんの誕生を祝うのみである。 「そうちゃよ! いっぴゃいいるよ!」 『いっぴゃいいっぴゃい! ちあわちぇー!!!』 「ゆーん! すごくゆっくりしたあかちゃんだね!」 親れいむはうれしくてしかたがなかった。 だからこそ早く赤ちゃん全員の顔をみたくてみたくてしかたがなかった。 その雰囲気を、赤ちゃんゆっくりは感じとっていた。 顔をみたいのはこちらも同じこと。 早く蔦から離れ、愛する母と正式に対面して、「ゆっくちしちぇいちぇね!!!」と言ってあげたい。 先ほどから、一匹たりともとそう叫んでいないのは、無意識からの行為。 真にゆっくりできる場所は母の傍。蔦に繋がったここではないのだ。 「おかーしゃん! れいみゅがいくよ!」 一番最初に親れいむの元へと顔を見せたがったのは、親れいむの真上に実ったれいむだった。 この赤ちゃんれいむは、蔦の中心部に実っていたため、親れいむの声も聞き辛く、 葉に視界を邪魔されて景色を楽しむこともできずに寂しい思いをしていたのだ。 主張のために、ぷるぷると身を震わす。一緒に揺れるリボンには―― 【れ-4】 ――と、書かれた小さいタグが付いている。 タグは姉妹全てが付けていたが、彼女達は飾り程度にしか認識していない。 れいむもまりさも関係ない、仲良し姉妹のおそろい飾りだと。 「ゆーじゅるいよー」 「ゆ! そんにゃこといっちゃ……め!」 「ゆー! れいみゅはすねただけちゃよまりしゃおねーしゃん」 「わかっちぇるよ! みんにゃにゃかよしねー?」 『ねー?』 「じゃあいっておいちぇ!」 ゆっくり姉妹は仲良し姉妹。 みんなわかっていたのだ。彼女が寂しいことも、最初にいかせてあげるべきだとも。 姉妹に祝福され、赤ちゃんれいむは再度、身を震わせる。 今度は蔦から自分を切り離すためのものだ。 「ありがちょー! ゆっくちいくよ!」 『ゆっくちゆっくち!!!』 「ゆ……ゆ……ゆっくちー!」 プチンと軽い音とともに、赤ちゃんれいむの頭は開放感を得た。 今まであった愛する母との繋がりを失いはしたが、赤ちゃんれいむに悲しさはない。 いわば儀式の様なものである。古い繋がりを捨て、新しい親子の繋がりを得るのだ。 これからのことを思い、笑顔の赤ちゃんれいむは落ちていく。 ぽてちんと、親れいむの額で跳ねてワンクッション。 「ゆゆ~ん♪」 「ゆー! れいみゅのいみょーとおしょらをとんでるみたい!」 「おかーしゃんがゆっくちしゃせてくれちゃんだね!」 「ゆっくちおちちゃらじめんしゃんでいちゃいもんね!」 「おきゃーしゃんありがちょー!」 「まりしゃちゃちのおかーしゃんはゆっくちしてるね!」 赤ちゃんれいむはしあわせを感じていた。 優しいお母さん。お母さんの顔はどんな顔なんだろう。 背を向け、母の額から跳ねて落ちる赤ちゃんれいむは、楽しみでしょうがなかった。 お母さんに言う言葉は決めている。「ゆっくりしていってね!!!」だ。 その次はどうしよう。嬉しすぎてその次は考えていなかった。 言いたいこともしたいこともたくさんある。そうだ。綺麗に着地できるかな。 続く姉妹の手本になればいいな。上手くできたらお母さんは褒めてくれるかな。 次々と考えが浮かんでくる。赤ちゃんれいむの目はしあわせに輝いていた。 「ゆ~ん♪ 」 「…………ゆ?」 なにやらおかしい。 いつまでたっても、姉妹の「ゆっくちしちぇいっちぇね!!!」が聞こえない。 流石にゆっくりしすぎではないだろうか? 赤ちゃんゆっくり姉妹は各々首をひねった。 「おかーしゃんれいみゅは?」 「ゆ! まだー? れいむのかわいいあかちゃんまだなのー?」 挨拶が聞こえない事を疑問に思った長女れいむが、親れいむに声をかけたが…… 返ってきたのは催促の声。 姉妹達の中で不安が高まっていく。 のん気な母の声に感情を動かされながら、おそるおそる長女れいむは再度訊ねた。 「おかーしゃん……れいみゅのいみょーちょのれいみゅは……いにゃいの?」 「まだだよ! れいむのあかちゃんゆっくりしすぎだね! あかちゃんにあいたいよ!」 『ゅ゛ーっ!?』 異常だ。 先に落ちた姉妹は、怪我をして声を出せないわけではなく、“そこにいない”。 赤ちゃんゆっくり姉妹は驚愕に身を震わせた。 互いに目をあわせ、頷きあう。 “お母さんはまだ何も知らない。心配させない様にまだ黙っておこう!” 一緒の母から生まれた姉妹。思うことはみな同じだ。 そう誓い、現状を把握すべく、姉妹達はきょろきょろと動ける範囲で身を動かす。 生まれたばかりという理由もあり、家族に会えた喜びに浸って周りが見えていなかった。 先にこうしておくべきだと、もう少し注意をしておくべきだったのだと。 幼さにあわぬ考え。 しかし、生まれ持った知能の高さ故に、姉妹にとってそれは当然のこととして認識されている。 「ゆゆっ! おねーしゃんじめんしゃんがとーいよ!?」 「ほんちょ! どうじぢぇぇぇぇぇぇ!?」 「おかーしゃんのいるびゃしょはせまいにょぉぉぉ!?」 「まっちぇね! まりしゃもみゆかりゃまっちぇね!!」 「なんぢぇー!? どーいうこちょー!?」 そして、その知能の高さ故に、彼女達は自分が置かれた事態を把握し、恐怖に泣き叫んだ。 泣き叫びながらも、親れいむに心配をかけないようにと、全員がなるべく声を押し殺していたことは特筆に価する。 「ゆ? あかちゃんたちにぎやかだね! おかあさんをなかまはずれにしないでね!」 「ゆゆっ!? おかーしゃんちょっとまっちぇちぇね!」 「ゆ? ゆっくりまつよ!!!」 親れいむに待ってとお願いし、赤ちゃんゆっくり姉妹は状況を整理することにした。 幸い、親れいむはゆっくり待ってくれている。今は。 姉妹全員が得た情報を集めると、だいたいこういうことがわかった。 ●お母さんは何か長くて高いものに乗っていること。 ●おそらくお母さんの座っている場所は狭くて、他の皆は乗れないだろうということ。 (親ゆっくりが固定されているのは、幅5cm・長さ1.5mの棒の上である) ●そのため、自分達は地面さんからとても遠くて高いところにいること。 ●地面さんは色んな種類の綺麗な色だということ。 ●この高さから落ちるとどうなるの? ●……ゆっくりできないんじゃないかな。 「ゆゆゆっ! だいじょーびゅだよ!」 「まりしゃ!?」 「ほら! おかーしゃんとおなじくりゃいのたかしゃにもじめんしゃんがありゅよ!」 よく見れば、親れいむから離れた位置に、同じ高さの地面がみえる。 今いる場所からそこまでの距離は、親れいむ1.5匹~2匹分の幅だろうか。 「おかーしゃんがぴょんしちぇくれれびゃみんにゃたすかるよ!」 「おかーしゃんならいけりゅね! おかーしゃんここかりゃむきょーにぴょんしちぇね!」 「おきゃーしゃんぴょん!」 「ぴょん!」 「ゆ? ぴょんってなーに?」 『ゆ゛ぅぅぅぅぅう!?』 成体ゆっくり2匹分の幅。 自分達では無理だろうが、大きなお母さんなら跳び越えられる! そんな姉妹の希望は即座に打ち砕かれた。 5cm幅の足場での跳躍。難しいかもしれないが、一般的なゆっくりなら可能であったかもしれない。 が、この親ゆっくりは、生まれ落ちた時には既に、運動能力を削がれていた。 主な生活場所は1匹用の水槽。たまにみる仲間も同様、運動能力を削がれた個体。 動けずとも、餌は研究員が食べさせてくれた。 最初から運動はできず、運動という行為を見聞きすることもなく知らず、動けずとも不満はない。 まったく動けないわけでもない。暇なときは上下左右に体を揺らしたり、軽く身をひねる。たのしい。 そうやって、ずっとゆっくりしてきたのだ。これまでも、そしてこれからも。 「ゆっゆぅぅぅぅぅぃぃぃっ!! おかーしゃんごめんにぇぇぇ!! みんにゃごめんにぇぇぇ!!」 「ゆ? ゆ? あかちゃんなんであやまるのー?」 親ゆっくりに“ぴょん”の説明をしている途中で、赤ちゃんまりさは気付いてしまった。 理由はわからないが、母親が運動をおこなえないこと。それを理解できないことに。 だから、自分の不用意な発言が、母を傷つけ、みなに余計な希望を持たせたと、赤ちゃんまりさは思った。泣いた。 「まりしゃなきゃないちぇね!」 「……まりしゃ?」 泣く赤ちゃんまりさをなだめたのは、もう1匹の赤ちゃんまりさ。 ちょうど、親れいむの左右に実った赤ちゃんまりさ2匹は、互いの顔を合わせたことがない。 6姉妹の中でまりさ種は2匹だけ。 他の姉妹も大好きだったが、同じまりさ種同士の仲間意識がなかったといえば嘘になる。 その顔も知らない、言葉を交わすだけの姉妹が、自分を励ましてくれている。 「ないちゃらおかーしゃんもみんにゃもきゃなしーよ?」 「そうちゃよ! れいみゅちゃちもきゃなしーよ!」 「みんにゃ……」 雨降って地固まる。 結果として姉妹・家族の結束を強くする出来事となった。 見方を変えれば選択肢のひとつが減って、尻に火がついたといったところだが。 「まりしゃはまりしゃでしょ! しみゃいのいきおいににゃるんちゃよ!」 「……ゆ、まりしゃ……ありがちょー」 「まりしゃなきやんぢゃね! まりしゃしゅごいね!」 「ゆー! まりしゃはしゃっきもたくしゃんのことをおしぇーてくれちゃね!」 「でみょむりしにゃいちぇね!」 励ました方の赤ちゃんまりさは、親れいむの左外側に伸びた蔦の一本に生っていた。 その環境と持ち前の行動力で、限界ぎりぎりまで身をひねって、周りの情報を集めていたのだ。 現に姉妹が手に入れた情報の多くは、彼女からもたらされたものが多い。 長女れいむは、そんな勇敢な妹まりさを誇りに思っていたが、同時に危うくも思っていた。 蔦から切り離されるとき―― それは赤ちゃんが落ちても大丈夫なぐらい成長した結果、その自重で落ちる。 あるいは(ある程度成長しているという前提がつくが)、外敵に襲われた場合、 刺激によって目覚めた赤ちゃんが、体を揺すって自力で蔦との繋がりを切って逃げる。 あとは成体ゆっくりが切り離してくれる場合だが、前の二例ともに蔦が離れやすくなっている。 今の姉妹は、生まれ落ちる準備ができているため、蔦は動き回れば切り離されやすく、例え動かなくとも自然に切り離される。 後者の理由で赤ちゃん達は急いで対策を立てる必要があり、前者の理由で長女れいむはまりさの行動を心配していた。 今もまた、まりさは体をひねって下界を見下ろそうとしていた。先に落ちたれいむの姿を探しているのだろう。 「ゆー! みゅりじゃないよ! みんにゃのためにゃらまりしゃにちょっちぇ――」 プチンと音が聞こえた気がした。 「――ゆ?」 音と一緒にまりさの体が軽くなった気もした。先ほどまで見えなかった景色が目に入ってくる。 姉妹達が見つけたかったものが……見えた。 「れいみゅおねーしゃん――」 ――まりしゃのいみょーとのれいみゅいたよ? このまま落ちると姉妹がどうなるのか。 先に落ちた赤ちゃんれいむがどうなったのか。 これから自分がどうなってしまうのか。 赤ちゃんまりさは、ゆっくりと理解し……姉妹の視界から消えた。 「…………」 「…………」 「…………」 「……まりしゃーっ!?」 「まりしゃおねぇーしゃぁぁぁぁん!?」 「ゆー!? ゆー!? まりしゃがどうしちゃの!? まりしゃのしみゃいのまりしゃどうしちゃのー!?」 自分の見えぬ場所で何が起こったのか? 泣く自分を慰めてくれた姉妹が何故、泣き出したのか? 赤ちゃんまりさはわからなかった。わからなかったからこそ不安でたまらなかった。 もう一匹のまりさが、まりさがどうなってしまったのか? 「……ゆっぐ……ゆっぐ」 「……おちちゃった。れいみゅのいみょーとのまりしゃ……おちちゃった」 長女れいむが嗚咽を堪え、幼いなりに努めて冷静に、残った赤ちゃんまりさに事実を告げた。 姉妹がどうなったのかを伝えられた。……が、頭がついてこない。 それでもゆっくりと、ゆっくりブレインにその意味が染みこんでくる。 ……顔をみたことのない、もう1匹のまりさとはもう二度と会えない。 理解がおよんだとき、色んな感情が堰をきって流れ出そうになる。 「……ゅ……ゅぁ……っ……ゅぁ」 「りゃめ! にゃいちゃりゃめ! おかーしゃんがかなしみゅよ!」 「……ゆっぐ!」 そうだ。親れいむを悲しませてはならない。 皆で誓った。先ほど母を悲しませてしまった時、あのまりさが止めてくれた。 ここで自分が泣けば、尊いその行為を無駄になる。残された赤ちゃんまりさは、堪えた。 無駄にしないために。あの姉妹の行為を無駄にしないために。 その思いは残された姉妹も一緒。ゆっくりするよ!!! 心は一つ。 と、赤ちゃんゆっくり達はイベント満載であったが、頭上のドラマを知らぬ親ゆっくりは暇であった。 いつまでたっても、赤ちゃんが顔を見せてくれない。 待っててと言われたが、まりさと聞いて視線を上にやれば、目に見える赤ちゃんは2匹。 「ゆ~? そういえばまりさがいないよ~? どこーまりさどこー?」 のん気なことを言う。 母の言葉に子供達は震えていた。言えるはずがない。 母を思って押し黙る赤ちゃん達であったが、親からすれば返事がないだけのこと。 待てといわれ相手にされない。 親れいむは待っていてもよかった。ずっと1匹でゆっくりしていてもよかった。……いつもなら。 しかし今は話が違う。赤ちゃんが生まれ、親れいむは1匹ではなくなった。 一緒にゆっくりしたい。その欲求を満たしたいのだ。 「れいむのあかちゃんゆっくりしすぎだよ? ゆゆ! そうだ! おかあさんがゆっくりおろしてあげるね!」 待ちきれなくなった親れいむは、名案とばかりに体を揺らす。 あわせて揺れる頭上の蔦、葉、赤ちゃんゆっくり。 ガサガサと葉がすれる音はリズムカル。 「ゆっゆゆー♪ あーかちゃんゆっくりおーちてーきーてね♪」 歌い出すぐらいごきげんになる名案。親ゆっくりにとってはそうかもしれない。 が、赤ちゃん達にとっては名案でもなんでもなく、死を早める行為に他ならない。 「ゆ! ゆぅぅぅぅっん!?」 「やめちぇね! おかーしゃんゆっくちやめちぇね!?」 「おきゃーしゃぁぁぁんっ!?」 「れーみゅちゃちがゆっくちできにゃくなっちゃうにょぉぉぉ!!」 「ゆ! わかったよ! ゆっくりやめるよ!」 親れいむは愚鈍ではあったが素直で聞き分けはよかった。 この点は感謝してもよく、幸運であったともいえる。 それで事前の愚行がなかったことになるわけではないが。 間違いなく、今の揺れで赤ちゃんと蔦を繋ぐ接点は脆くなっただろうから。 元より残された時間はわずかだった。赤ちゃん達の時間は更に削がれた。 「ゆっゆっゆっ……!」 「……ゆふー」 急がねばならないのはわかっている。考えねばならないのもそう。 しかし幼い生命にとって、今をなんとか生き延びたこの瞬間から、 脳裏にちらついた死の恐怖を遠ざけ平静になろうとする時間を誰が責められようか? 恐怖は転じて生への執着でもある。落ち着きを取り戻す中、生きようとする意志が、1匹の赤ちゃんに閃きをもたらす。 その1匹は、しばし真剣な顔で前後の揺れに身を任していた。 冷静になった状態で揺れを体感し、自分の考えを実行する。 「ゆっ!」 「……ゆ! ゆっくちしてきちゃよ! ……れいみゅ?」 「ゆっ!」 声をかけられた赤ちゃんれいむは、揺れ幅の頂点で力み、自ら体を動かして勢いをつけ揺れ幅を広くしていく。 親れいむの正面付近に生る長女れいむから、親れいむの右横よりやや後ろに生る、この赤ちゃんれいむの姿はみえない。 何やら力んだ声が聞こえてくる。 長女れいむは、残った方の赤ちゃんまりさ――親の右側に生った子に声をかけた。 「まりしゃ! まりしゃにゃられいみゅがなにしちぇりゅかわかりゅ?」 「ゆ! まりしゃにょうしりょのれいみゅはびゅんびゅんいっちぇりゅ!」 びゅんびゅん? なんのことだろうと不思議に思ったが、その答えは本人から語られた。 親ゆっくりが揺らした事をヒントに、振り子運動の力を借りて、向こうまで飛べないかと。 「ゆゆっ!」 なるほど。ひょっとするといけるかもしれない。 「でもあぶにゃいよ! ぷっちんしておちちゃうかみょしれにゃいよ!?」 「しょーだよ!」 「ぢぇも! こにょみゃみゃだとおちちゃうよ!」 何もしないままでも落ちて、ゆっくりできなくなる。それは皆にもわかっていたことだ。 状況を打破できる術があるのなら、たとえリスクを抱えてもやるべきこと。 特に長女れいむは、そのことを痛いほど感じていた。責任感があった。 ほんの十数秒早く目を開けただけの僅かな差。それだけではあったが、それが長女としての意識を芽生えさせた。 ゆっくりにしてみれば、それだけで十分。 「ゆ! わかっちゃよ! じゃあおねーしゃんがしゃきにとぶよ!」 まずは自分が飛ぶ。危険なことを先に妹にやらせるわけにはいかない。 自分が飛んでいる間に、他の姉妹が別のアイデアを練ってくれるかも知れない。 「だめりゃよおねーしゃん! れいみゅがしゃき!」 「……ゆっ!?」 「れいみゅがしゃき! おねーしゃんはおねーしゃん! みんにゃのしょびゃにいちぇね!」 赤ちゃんれいむの振り子の動きが、速く大きくなっていたこともある。蔦がもう持たないかもしれない。 そんな理由もあったが、今口にしたことが一番の理由。姉妹の精神的柱になっていて欲しい。 大きく動く右側の赤ちゃんが、蔦から離れるのも時間の問題だということもあり、長女れいむは困ったが納得した。 もうこの赤ちゃんれいむは飛ぶしかないのだ。 「そりょそりょいくにょ……!」 前、後。前、後。前、後。前、後。前……。 勢いは十分。よく見ていてね、と姉妹に言う。次に飛ぶ姉妹の参考になるだろうから。 もし失敗しても、とは言わなかった。 この回で飛ぼう。決意が鈍らないうちに。 ……後。勢いを利用して前に出る。いける、いくしかない。ゆっくりするために。 そのためには、前方の頂点に達するより先にやらなければならないことがある。 加速を得た赤ちゃんれいむは、勢いの力を借り頭部に力を入れて――蔦を切り離した。 「ゆぅぅぅぅぅぅぅっ!!」 宙を舞う。 蔦という枷から解き放たれ、より前へ。 「ゆゆっ!? ゆーっ!」 赤ちゃんまりさはみた。背後にいた姉妹の背中を、勇気ある姉妹の姿をみた。 「がんばっちぇ!」 「ゆ! れいむのあかちゃん? あかちゃんとんでるの!?」 「れーみゅのおねーしゃんおしょりゃをちょんぢぇるにょ!」 「いきぇぇぇぇ!」 長女れいむと、その傍にいる赤ちゃんれいむが激を飛ばす。 お母さんが自分の姿を見てくれている。 「ゆゆーん! ゆぅぅぅぅーん!!」 飛んでいた。皆の思いに支えられ、何物にも邪魔されることなく飛んでいた。 目指す場所が近づいてくる。いや、自分が近づいているのだ。着地するために。自由を得るために。 壁が近くなる、もうすぐだ。……壁? 赤ちゃんれいむは気付いてしまった。高度が落ちているのだ。 「――ゆびゅっ!」 失敗は激突によって告げられ。失敗の結果は落下。 2cm……いや1cm高ければ、運命は変わっていたかもしれない。 だが最初のチャレンジャーの挑戦はもう終わり。もう二度と挑むことも、ゆっくりすることもない。 また1匹、姉妹がゆっくりできなくなってしまった。信じたくはない。が、赤ちゃんれいむがぶつかった場所には染み。 皮肉な話だが、それが赤ちゃんれいむの生きていた証となっている。“生きていた”、だ。 「ゆ~? れいむのあかちゃんどっかいっちゃたよ?」 赤ちゃんがどこにいったのか、不思議そうな母れいむ。 もうここにいない姉妹を思って、残った赤ちゃんゆっくりは泣きたかった。 「ゆ! でもいいよ! れいむはゆっくりまつよ! つぎはだれ!? れいむにおかおをみせてねあかちゃん!!!」 子供とゆっくりしたくてたまらない、そんな母の和やかな声が、赤ちゃん達の悲しさと申し訳なささを増加させる。 残るは3匹。その内の1匹、全姉妹の中で最後に目覚めた末っ子れいむの、感情は決壊寸前。 「まりしゃがいくよ!」 「……ゆ?」 外に流れ出してしまいそうな、末の子の感情を押しとどめたのは、まりさであった。 まりさがやるんだ。体を前後に振り、飛ぶための加速を得ながら、まりさは思う。 もう1匹のまりさは、自分を励まし皆を元気付けた。 飛んだれいむは、先に行くことと意思をみせた。 勇気あるものの行為は、皆の勇気をも奮い立たせる。誰かが笑えば皆も笑える。 まりさはそれがまりさの生き方なのだと、ゆっくりまりさのあるべき姿なのだと、そう心で理解した。 「……ゅ……まりしゃおねーしゃん……」 「まりしゃ!」 「ゆん! ゆん! ゆ……っん! あんしんちちぇね! まりしゃのかりぇーなちょーやくにおどりょいちぇね!」 誰も泣かせない。だから自分も泣かない。不敵に笑う。皆が笑える先を作るために。 泣き虫まりさはもういない。先に行ったまりさを見たとき、皆が誇りを抱き、先に進もうと思える、そんな背を持つゆっくりになるんだ! スポンという音が聞こえた気がした。すぽん、かもしれない。 結論だけいえば、決意をしてからのまりさは最期まで泣かなかった。二度と泣くことはなかった。 「…………」 「…………」 あまりにも唐突。残された赤ちゃん達は、流れるように起こった事象に、泣き出すことも叫ぶこともなく、ただ呆然とする。 理解が追いついてこない。いや、少し時間を置き何があったのかの理解はできた。理解したくないだけだ。 だが現実はそれを許さない。目の前では、蔦にぶら下がった黒いとんがり帽子が揺れている。 振り子運動を繰り返すのは帽子のみ。視界から帽子が消え、また戻ってくる度に、帽子の下にまりさがいるのではと――そんなことはなかった。 残る姉妹は2匹。 長女れいむと末っ子れいむ。6匹いた姉妹の中で、一番近い距離にいた姉妹だ。 「れいみゅ……」 長女れいむは悩む。 自分は飛ぶ気でいる。姉妹の行為を無駄にしないために、残された者の務めとしてゆっくりする未来を勝ち取るために。 妹を残して飛ぶのは気が引ける。もし自分が失敗すれば、末の妹だけ残していくことになる。 母も残っているが、自分以外の姉妹がいなくなってしまったという悲しさに、彼女は耐えられるのだろうか。 現に今も、小さく揺れる黒い帽子を眺めたまま動かない。や、無言で小刻みにぷるぷると震えている。 ゆっくり達は知るよしもなかったが、長女れいむが最初に目覚めた事から、年長者の責任に目覚めたのと同じ様に―― 末っ子は最後に目覚めたことと、長女れいむがそばにいたことで、他の姉妹より精神が幼く、他者にやや依存する傾向があった。 そんな理由を長女は知らないが、妹が残されることに耐えられるとは思わなかった。 ならば自分が横で見守り、励まし、助言を送りながら、妹を先に飛ばせるべきか? 否、先に飛んでねといえば、彼女は泣くだろう。落ちていった姉妹の恐怖がこびりついている。 ならば同時に飛ぶべきか? 否、自分にあったタイミングで飛ぶべきだ。下手に相手にあわせて距離が足りなければ意味がない。失敗は許されないのだ。 ならば答えはひとつしかない。 「れいみゅ……ゆっくちきいちぇね……おねーしゃんがしゃきにとぶよ」 「――ゆゆっ!?」 末の妹の意識が、長女の言葉で現実に引き戻される。同時、妹の浮かぶ表情は驚愕。そして悲嘆。 「れーみゅをおいちぇかないぢぇぇぇぇ! いっしょにゆっくちしよーよーっ!?」 「……れいみゅ」 できることならそうしたかった。 あるいは別の方法を一緒に考えてもよかった。 ……今なら、2匹だけになった今ならとれる方法もある。 皆がいたときは言い出すことはできなかった方法。偶然にも残った2匹は、母の正面側に実った姉妹。 狙いをすまして落ち、母に舌で受け止めてもらい口の中に避難する。向こう側に飛ぶよりも安全な方法だ。 「だいじょうぶだよあかちゃん! おかあさんがいっしょだよ!」 「ほりゃ、おかーしゃんがいるよ? だかりゃあんしんちちぇね?」 安心できる声。お母さんの声に、長女れいむの不安も薄らいでいく気がする。 お母さんはきっと受け止めてくれるよ、れいむ。疑いはない。 けれど長女れいむは飛ぶことを選ぶ。先に進むべきだと、それが残されたものが受け継いでいくことだと思うから。 「れいむ……とぶのがこわかっちゃりゃ……おかーさんにうけとめちぇもらうんぢゃよ?」 「ゆっぐ……ゆっぐ……ゆっぐ……」 妹は聡い子だ。返事はなかったが理解してくれているだろう。 前に飛ぶために、加速を得るために、長女れいむは体を動かす。 お母さん――れいむ達を産んでくれて、うれしかったよ。 れいむ――長女である自分が浮かれていないで周囲注意をくばっていれば、あんなことにならなかった。ごめんね。 まりさ――本当は自分がしなければいけなかったのに、皆を引っ張っていってくれた。ありがとう。 れいむ――皆が見た背中はとても頼もしかったよ。勇気がでたよ。がんばるね。 まりさ――泣かなくなったね。自分だけじゃなく、妹の涙を止れる子になったね。つよいね。 れいむ――お姉ちゃんが飛んだら、れいむは泣きやんでくれるかな? 感情を込め、力を得る。喜びも悲しみも、立ち止まるためではなく、巡り巡って、前にただ前に進むための糧となる。 速く速く、強く強く、前へ前へ。 こんな状況でなければ楽しかったのだろう。だが笑う。快と長女れいむは笑う。 生きるために、妹に何かを残すために。 皆! 一度でいいから力を貸してね! 不出来なお姉ちゃんが、立派なお姉ちゃんとしてやり遂げるために! れいむは飛んだ。 高くより高く。 前へより前へ。 目指す場所へ、ぐんぐん近づいていく。高台より更に高く、長女れいむは宙を飛んでいる。 身を任すではなく、意志によりれいむは風になった。進むべき風に。留まることのない風に。 次は着地だ。飛ぶ時間は思うより短い、早々に心の準備を決め。衝撃に備える。 高さは十分だった。が、着地の構えによる動きのせいか、若干軌道が変わった。着地地点が僅かだが、台の端にずれる。 このままでは、着地の際にバランスが崩れ、落ちてしまう―― 「――ゆんっ! ぐぅっ!」 前へ。 体重と勢いを前半身にかけ、進むことの意志を押し通す。 鈍痛が幼いれいむの体を支配しようとする。否。ここで痛みに飲まれることも流されることも、否。 ここまで来た。ならば前へ。前へと意志を通す。落ちるわけにはいかない。 はねる。 勢いそのままに、地面に叩きつけられた衝撃が全身に駆け巡る。 前へ進むことを選んだ結果、直前で受身を放棄した結果がこれだ。痛みはあれど、後悔はない。 始めて触れる地面さんは固かった。それでも、触れれることが喜ばしかった。 ころがる。 れいむの体は台の外ではなく、内へ。 姉妹達の想いを胸に長女れいむは到達を成し遂げたのだ。 やったよ皆。やったよお母さん。やったよれいむ。れいむはやったよ。 地面さんは痛かった。でも、お母さんは柔らかいに違いない。妹と一緒にふかふかー、ゆっくりー!!! するんだ。 そうだ! 早くお母さんにれいむの無事な姿をみせてあげよう。れいむもお母さんのお顔をちゃんとみたい。 早く妹にもお姉ちゃんは大丈夫だよって言わなきゃ。妹を早く安心させて、ゆっくりさせてあげなきゃ。 ――泣きやんでくれたかな? れいむは妹の涙を止めてあげられたかな? 痛みが引き始めたれいむが、目を開けて見たものは、母の顔でも妹の笑顔でもなかった。妹の泣き顔でもなかった。 遠い遠い地面だった。 「ゆ~~~? れいむのあかちゃんきえちゃったよ?」 母れいむは、今度こそ自分の赤ちゃんを見失うことはないと思っていた。 今回飛んだ子は、視線をあげれば見える位置。頭上でぷらぷら動き出したときから、しっかりと目を離さなかった。 飛んで自分から離れた場所に乗るのもきちんと見た。のに忽然と消えたのだ。不思議だ。 だけど母れいむは楽しかった。初めてなる母親というのは新しいできごとばかり。 赤ちゃんは飛ぶ。赤ちゃんは消える。自分にはできないことだ。 母れいむも赤ちゃんだった頃があったはずだが、そんな経験は無い。でも、きっとできたに違いない。 「ゆ? ゆゆゆゆゆっ!?」 急に髪が痛くなった。少し重い気がする。 今までなかったことだ。これも母親になったからに違いない。赤ちゃん達ができたときも頭の上が重くなった。似ている。 「ゆーん……れいむどんどんおかあさんになっていくよー」 だらしのない笑みを浮かべる母れいむ。しあわせー。 これからはもっとしあわせーだ。母れいむは1匹だけではない、家族がいる。どんどん新しい発見と喜びがあるだろう。 赤ちゃんに色んなことを教えてあげよう。ごはんは美味しいよ。みんなで食べたらもっと美味しいかな。 「……ゆ? だれかよんだ?」 考え事の途中、赤ちゃんに呼ばれた気がして、母れいむは頭上の赤ちゃん達に訊ねた。返事はない。 気になったが、何度もしつこく訊ねるような事はしない。にんげんさんに教わった。れいむはいい子だからそれを守れる。 ああ、そうだ。そのことも赤ちゃん達に教えてあげないと。にんげんさん達にも可愛い赤ちゃんをみせてあげないと。 楽しい未来に想像をめぐらせる。母れいむが好きな遊びだ。にんげんさんは忙しいから、母れいむはこの遊びに興じることが多かった。 でも、もう1匹じゃない。早く赤ちゃん達と皆でゆっくりしたいな。母れいむは楽しみで仕方がなかった。 いつの間にか、髪の重みは消えていた。 ■点数発表 +0点:れいむ4、まりさ1、まりさ2 +1点:れいむ1 +2点:無 +3点:れいむ2 +10点:無 -2点:れいむ3 昼までに各自が選んだ3匹の得点合計合計をすましておきます 2位までが集めた参加費を使って食堂でタダ飯喰ってください シャレで作ったマイナスゾーンに落ちたれいむが勝敗を分けた わりと飛ぶもんですね飛びすぎたせいで暫定1位からビリ辛い このSSに感想を付ける
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赤ちゃんの入浴 赤ちゃんはよく汗をかき、お尻もおしっこやうんちによって汚れやすいので、いつも清潔にしてあげる必要があります。 赤ちゃんは入浴することによって、体が適度に温まり、疲れがとれて、心地よい睡眠へとつくことができます。 また、体を温めることで、身体も活発になり、免疫力も上がり、元気が出て、食欲も出てきます。 ►► トップに戻る 産毛(うぶげ) (429) 後産(あとざん) (415) 異所性妊娠 (いしょせいにんしん) (357) 阿部進(あべすすむ) (315) 前駆陣痛 (272) 村上雄藏 (263) 尾木ママ(尾木直樹) (226) 帯祝い (189) 経妊婦・経産婦 (171) 赤ちゃんの夜泣き (167) 【PR広告】
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■品種改良415号報告書4■ 野生種といった改良種でない既存のゆっくりを母体に選び、妊娠前から母体に投薬をおこなうことで、 次世代のゆっくりの知能強化等を図る本実験415号計画の途中経過について記す。 コストパフォーマンスと管理の点から鑑みて、本計画に使用する薬品はA薬を採用することになった。 以後の実験はA薬のみでおこなう。 注意していただきたいのは、B薬は決してA薬に劣るものではないこと。良品であり、むしろ強化という面ではA薬を遥かに凌ぐ。 (とはいえ、母体への投薬によって赤ん坊の知能が向上しているにも関わらず、舌足らずな喋りである点はA薬B薬ともに共通であり、関係者は首をひねるばかりだ) 知能強化はもとより効果は身体強化にもおよぶ。 (御存知のかとは思うが、投薬された母体のゆっくりの能力向上は一切存在しない) (415号実験での母体は全て植物型出産である。ニューボーンが小型であり多産であった方が投薬の効果を確認しやすいためだ) 効き目が強いためか、結果が表に出るのも早く、目覚めたばかりの赤ん坊の時点でその効果が明らかにみられるのだ。 ひどい話になると、生後15分の赤ん坊ゆっくり達に指導される親ゆっくり――というケースも誕生する。 実験施設の餌の採り方を赤ん坊から教わったり、子供より先に体力の限界が訪れ動けないとぐずる親。果たして面倒をみてもらっているのはどちらなのか。 基本的にゆっくりは純粋なモノであるため、投薬による能力差の逆転が発生しても彼ら親子の関係は良好である。 子は親を慕い、親も子に妬みを抱くことはない。ただ、ゆっくりという種特有の愚かさから、親が事故を起こすことは多々ある。 なお、ゆっくりに“慕う”“妬む”、それ以前に感情が存在するのか? という問題は本件とは別であるため考慮しない。 B薬の問題点について軽く記す。 (詳細なB薬の報告書は担当者が提出済みであるため、そちらを参照されたし) B薬の問題点は“一代限り”であるということ。 薬によって生まれた有能な子世代の能力を、孫世代以下はまったく受け継がない。 何度か実験を繰り返したが、孫世代の知能・身体能力の全ては親世代のそれである。 毎度毎度の実験で、頭の良い子世代が、能力的に劣る親世代・孫世代を不思議がるのはもう笑えなくなってきた。 何故受け継がれないのかは依然不明であるが、さすがはゆっくりブレインと言しか言いようがなく、研究員一同、苦笑いするしかない。 (笑えないのに苦笑いなのか、という意見は却下させていただく) これでは意味がない。我々が欲するのは永続的な改良種である。 能力に向上があったとしても、次の世代にそれを残せなくては無意味であり、たとえ向上がわずかであっても次世代に受け継がれる方を良しとする。 本研究の目的に適さず、なおコストがかさむため、以降の415号実験にはB薬は使用されない。 繰り返すがB薬は良品である。他の実験でB薬が日の目をみることを、研究者の一人として望まずにはいられない。 これらの理由により。本日13:00を持って、品種改良415号B薬被検体は廃棄処分となる。 (415号実験での母体は全て植物型出産である) 他の部署が実験用ゆっくりとして、品種改良415号B薬被検体の提出を要望した場合、供与して良い。 また外部に持ち出さず研究所内部に限るが、関係者による品種改良415号B薬被検体の使用が、昨日許可された。 各人存分に楽しんでいただきたい。ただし、書類は提出すること。私の分も残しておくこと。この二つを守られたし。 ■――――以上――――■ 「すーや……すーや……すっきりー!!!」 黒髪に赤いリボン、少女の顔をデフォルメしてデザインされたような饅頭。通称ゆっくり。 その一種であるゆっくりれいむは実に幸せそうな顔で目を覚ました。 「ゆゆ? へんなきがするよ! でもしあわせー!!!」 直径15cm前後の成体れいむが立つのは、直径5cm幅の円柱の上。 足場の狭さから身動きがとれない場所ではあるが、固定された彼女が気にすることはない。 生まれ落ちた頃より、とんだりはねたりとは縁のなかった彼女だ。 今更あわてることではなく、動き回れなくとも、いつだって美味しい食べ物は向こうからやってきた。だから、しあわせー!!! 「……しあわせー? ゆっ! そうだったよ! れいむはあかちゃんができてしあわせなんだよ!」 生体れいむは親れいむ。昨日の朝にお母さんになったばかり。しあわせれいむだ。 頭部に蔦を生やし、葉(の様なもの)を茂らせ、赤ちゃんゆっくりを実らしたゆっくりの姿は……。 見ただけでしあわせそうだな、と思わせる要素を多段に含んでいるのも確かだ。 頭上に実る赤ちゃんゆっくり達を見上げるためか、それとも「思い出したれいむ偉い」と胸をはっているのか、ふんぞり返る様な動作の親れいむ。 その所作で親れいむの下腹部に付けられた薄いプレートが姿を見せた。 【実験No.46B 母体(親子廃棄)】 「ゆーゆー♪ あーかちゃん♪ おかーさんとゆっくーりしようねー♪」 2~3cmサイズのちいさなちいさな可愛い赤ちゃん。 ごきげん笑顔で歌を歌う親れいむ。しあわせでしあわせで仕方がない。 早く蔦から赤ちゃんが切り離されて、ぽてちんと地面に生まれ落ちないものか。 親れいむの視界に映る赤ちゃんは、れいむが2種、まりさが1種。 見える範囲で3匹の赤ちゃん。だったら「もっといっぱいいるよ!」と勝手なビジョンを思い描いている。 それは正しい。確かに赤ちゃんは4匹以上。 ただそれが真っ当な想像力によるものではなく、ゆっくりブレインしあわせブレイン。 こうあればいいという勝手な願望にしかすぎないのだ。 周りを見ずに、己の都合のいい事だけしか頭にない。これが普通のゆっくりである。 「……ゅ」 「……ゆ?」 親れいむの頭上で声が聞こえた。 「ゆー?」 何事かと思い、親れいむが首を傾げる(様な動作をする)。 動きにあわせて、葉と葉が重なりあい、ガサガサと音を立てた。 それが合図であったのか、 「ゅ!」 「ゅぅ……ゅぅ……」 「……ゅ! ゆゆっ!」 蔦に実った赤ちゃんゆっくりの何匹かが声を出し始め、その内の1匹が目を開いた。 「ゆっくちー!」 世界への目覚めの挨拶。 一番最初に目を開いた赤ちゃんれいむは、元気よく叫んだ。 おそらく彼女がこの姉妹の長女になるのであろう。 挨拶をすませニコニコとごきげん赤ちゃんれいむ。 「ゆ! れいみゅのおかーしゃんはどこかにゃ?」 蔦に繋がったままであるため、軽く身をひねる程度ではあるが、 母親を視界にとらえよう、見つけようと赤ちゃんはきょろきょろと周りを探す。 「おかーしゃん?」 「ゆゆ! ひょっとしてれいむのあかちゃん!? あかちゃんなの!?」 「ゆー! おかーしゃんはしたにいるんちゃね!」 この時点でようやく親れいむは、赤ちゃんれいむが目覚めたことに気がついた。 ワンテンポ早く、赤ちゃんれいむは母親の位置を把握し喜ぶ。 「おかーしゃん! れいみゅだよ! いっちょにゆっくちしよーね!」 「ゆゆー!? ゆゆゆゆ! ゆっくりしようね!!!」 本来、植物型出産の赤ちゃんは、蔦から切り離され、地面に落ちた衝撃で目覚め、言葉を発する。 そのプロセスと違い、蔦に下がった状態で既に挨拶をはじめた赤ちゃんれいむ。 そういう理由もあり、事態をまだ把握し切れていない親れいむだが、そんな事は些細なこと。 赤ちゃんが目覚め、自分に声をかけてきてくれた事が何よりの喜び。 きゃっきゃと会話を楽しむ2匹の声に反応し、他の赤ちゃん達も目覚めだした。 「ゆーゆっくちー!」 「おひゃよーおねーしゃん」 「ゆゆ! おねぼーしゃん」 「まりしゃだよー」 「まりしゃもまりしゃだよー」 「れーみゅもいるよー!」 「みんにゃゆっくちちてねー」 『ゆっくちー!!!』 皆仲良し赤ちゃんゆっくり姉妹。 「ゆーん! あかちゃんたちゆっくりしてるのー?」 「ゆゆっ! おかーしゃんだよ! みんなあいしゃつしよーね?」 『おかーしゃーん!!!』 「ゆゆー!」 親れいむは、ゆーんと感動で瞳をうるうるさせている。 自分の赤ちゃんはなんとゆっくりした子供達なんだろう。 「ひーひゅーみーよー……ゆ! おかーしゃん!」 「ゆ?」 「れいみゅちゃちがよん! まりしゃちゃちがに! ろくしまい!!」 長女の赤ちゃんれいむが親れいむに姉妹の数を報告する。 親れいむの赤ちゃんは、れいむ種だけでなく、金髪に黒の三角帽子がトレードマークのまりさ種がいるようだ。 れいむが4匹、まりさが2匹、合計6匹。 本来は30を超える大姉妹達であったのだが…… この家族は投薬の効果を高めるため、今の数まで間引きされている。 もちろんそんな事実を親れいむも姉妹達も知るよしもない。 ついでにいえば、親れいむに6という数字の概念はない。 「ゆゆー! いっぱいいるんだね! れいむはうれしいよ! しあわせー!!!」 そのため、純粋に赤ちゃんの誕生を祝うのみである。 「そうちゃよ! いっぴゃいいるよ!」 『いっぴゃいいっぴゃい! ちあわちぇー!!!』 「ゆーん! すごくゆっくりしたあかちゃんだね!」 親れいむはうれしくてしかたがなかった。 だからこそ早く赤ちゃん全員の顔をみたくてみたくてしかたがなかった。 その雰囲気を、赤ちゃんゆっくりは感じとっていた。 顔をみたいのはこちらも同じこと。 早く蔦から離れ、愛する母と正式に対面して、「ゆっくちしちぇいちぇね!!!」と言ってあげたい。 先ほどから、一匹たりともとそう叫んでいないのは、無意識からの行為。 真にゆっくりできる場所は母の傍。蔦に繋がったここではないのだ。 「おかーしゃん! れいみゅがいくよ!」 一番最初に親れいむの元へと顔を見せたがったのは、親れいむの真上に実ったれいむだった。 この赤ちゃんれいむは、蔦の中心部に実っていたため、親れいむの声も聞き辛く、 葉に視界を邪魔されて景色を楽しむこともできずに寂しい思いをしていたのだ。 主張のために、ぷるぷると身を震わす。一緒に揺れるリボンには―― 【れ-4】 ――と、書かれた小さいタグが付いている。 タグは姉妹全てが付けていたが、彼女達は飾り程度にしか認識していない。 れいむもまりさも関係ない、仲良し姉妹のおそろい飾りだと。 「ゆーじゅるいよー」 「ゆ! そんにゃこといっちゃ……め!」 「ゆー! れいみゅはすねただけちゃよまりしゃおねーしゃん」 「わかっちぇるよ! みんにゃにゃかよしねー?」 『ねー?』 「じゃあいっておいちぇ!」 ゆっくり姉妹は仲良し姉妹。 みんなわかっていたのだ。彼女が寂しいことも、最初にいかせてあげるべきだとも。 姉妹に祝福され、赤ちゃんれいむは再度、身を震わせる。 今度は蔦から自分を切り離すためのものだ。 「ありがちょー! ゆっくちいくよ!」 『ゆっくちゆっくち!!!』 「ゆ……ゆ……ゆっくちー!」 プチンと軽い音とともに、赤ちゃんれいむの頭は開放感を得た。 今まであった愛する母との繋がりを失いはしたが、赤ちゃんれいむに悲しさはない。 いわば儀式の様なものである。古い繋がりを捨て、新しい親子の繋がりを得るのだ。 これからのことを思い、笑顔の赤ちゃんれいむは落ちていく。 ぽてちんと、親れいむの額で跳ねてワンクッション。 「ゆゆ~ん♪」 「ゆー! れいみゅのいみょーとおしょらをとんでるみたい!」 「おかーしゃんがゆっくちしゃせてくれちゃんだね!」 「ゆっくちおちちゃらじめんしゃんでいちゃいもんね!」 「おきゃーしゃんありがちょー!」 「まりしゃちゃちのおかーしゃんはゆっくちしてるね!」 赤ちゃんれいむはしあわせを感じていた。 優しいお母さん。お母さんの顔はどんな顔なんだろう。 背を向け、母の額から跳ねて落ちる赤ちゃんれいむは、楽しみでしょうがなかった。 お母さんに言う言葉は決めている。「ゆっくりしていってね!!!」だ。 その次はどうしよう。嬉しすぎてその次は考えていなかった。 言いたいこともしたいこともたくさんある。そうだ。綺麗に着地できるかな。 続く姉妹の手本になればいいな。上手くできたらお母さんは褒めてくれるかな。 次々と考えが浮かんでくる。赤ちゃんれいむの目はしあわせに輝いていた。 「ゆ~ん♪ 」 「…………ゆ?」 なにやらおかしい。 いつまでたっても、姉妹の「ゆっくちしちぇいっちぇね!!!」が聞こえない。 流石にゆっくりしすぎではないだろうか? 赤ちゃんゆっくり姉妹は各々首をひねった。 「おかーしゃんれいみゅは?」 「ゆ! まだー? れいむのかわいいあかちゃんまだなのー?」 挨拶が聞こえない事を疑問に思った長女れいむが、親れいむに声をかけたが…… 返ってきたのは催促の声。 姉妹達の中で不安が高まっていく。 のん気な母の声に感情を動かされながら、おそるおそる長女れいむは再度訊ねた。 「おかーしゃん……れいみゅのいみょーちょのれいみゅは……いにゃいの?」 「まだだよ! れいむのあかちゃんゆっくりしすぎだね! あかちゃんにあいたいよ!」 『ゅ゛ーっ!?』 異常だ。 先に落ちた姉妹は、怪我をして声を出せないわけではなく、“そこにいない”。 赤ちゃんゆっくり姉妹は驚愕に身を震わせた。 互いに目をあわせ、頷きあう。 “お母さんはまだ何も知らない。心配させない様にまだ黙っておこう!” 一緒の母から生まれた姉妹。思うことはみな同じだ。 そう誓い、現状を把握すべく、姉妹達はきょろきょろと動ける範囲で身を動かす。 生まれたばかりという理由もあり、家族に会えた喜びに浸って周りが見えていなかった。 先にこうしておくべきだと、もう少し注意をしておくべきだったのだと。 幼さにあわぬ考え。 しかし、生まれ持った知能の高さ故に、姉妹にとってそれは当然のこととして認識されている。 「ゆゆっ! おねーしゃんじめんしゃんがとーいよ!?」 「ほんちょ! どうじぢぇぇぇぇぇぇ!?」 「おかーしゃんのいるびゃしょはせまいにょぉぉぉ!?」 「まっちぇね! まりしゃもみゆかりゃまっちぇね!!」 「なんぢぇー!? どーいうこちょー!?」 そして、その知能の高さ故に、彼女達は自分が置かれた事態を把握し、恐怖に泣き叫んだ。 泣き叫びながらも、親れいむに心配をかけないようにと、全員がなるべく声を押し殺していたことは特筆に価する。 「ゆ? あかちゃんたちにぎやかだね! おかあさんをなかまはずれにしないでね!」 「ゆゆっ!? おかーしゃんちょっとまっちぇちぇね!」 「ゆ? ゆっくりまつよ!!!」 親れいむに待ってとお願いし、赤ちゃんゆっくり姉妹は状況を整理することにした。 幸い、親れいむはゆっくり待ってくれている。今は。 姉妹全員が得た情報を集めると、だいたいこういうことがわかった。 ●お母さんは何か長くて高いものに乗っていること。 ●おそらくお母さんの座っている場所は狭くて、他の皆は乗れないだろうということ。 (親ゆっくりが固定されているのは、幅5cm・長さ1.5mの棒の上である) ●そのため、自分達は地面さんからとても遠くて高いところにいること。 ●地面さんは色んな種類の綺麗な色だということ。 ●この高さから落ちるとどうなるの? ●……ゆっくりできないんじゃないかな。 「ゆゆゆっ! だいじょーびゅだよ!」 「まりしゃ!?」 「ほら! おかーしゃんとおなじくりゃいのたかしゃにもじめんしゃんがありゅよ!」 よく見れば、親れいむから離れた位置に、同じ高さの地面がみえる。 今いる場所からそこまでの距離は、親れいむ1.5匹~2匹分の幅だろうか。 「おかーしゃんがぴょんしちぇくれれびゃみんにゃたすかるよ!」 「おかーしゃんならいけりゅね! おかーしゃんここかりゃむきょーにぴょんしちぇね!」 「おきゃーしゃんぴょん!」 「ぴょん!」 「ゆ? ぴょんってなーに?」 『ゆ゛ぅぅぅぅぅう!?』 成体ゆっくり2匹分の幅。 自分達では無理だろうが、大きなお母さんなら跳び越えられる! そんな姉妹の希望は即座に打ち砕かれた。 5cm幅の足場での跳躍。難しいかもしれないが、一般的なゆっくりなら可能であったかもしれない。 が、この親ゆっくりは、生まれ落ちた時には既に、運動能力を削がれていた。 主な生活場所は1匹用の水槽。たまにみる仲間も同様、運動能力を削がれた個体。 動けずとも、餌は研究員が食べさせてくれた。 最初から運動はできず、運動という行為を見聞きすることもなく知らず、動けずとも不満はない。 まったく動けないわけでもない。暇なときは上下左右に体を揺らしたり、軽く身をひねる。たのしい。 そうやって、ずっとゆっくりしてきたのだ。これまでも、そしてこれからも。 「ゆっゆぅぅぅぅぅぃぃぃっ!! おかーしゃんごめんにぇぇぇ!! みんにゃごめんにぇぇぇ!!」 「ゆ? ゆ? あかちゃんなんであやまるのー?」 親ゆっくりに“ぴょん”の説明をしている途中で、赤ちゃんまりさは気付いてしまった。 理由はわからないが、母親が運動をおこなえないこと。それを理解できないことに。 だから、自分の不用意な発言が、母を傷つけ、みなに余計な希望を持たせたと、赤ちゃんまりさは思った。泣いた。 「まりしゃなきゃないちぇね!」 「……まりしゃ?」 泣く赤ちゃんまりさをなだめたのは、もう1匹の赤ちゃんまりさ。 ちょうど、親れいむの左右に実った赤ちゃんまりさ2匹は、互いの顔を合わせたことがない。 6姉妹の中でまりさ種は2匹だけ。 他の姉妹も大好きだったが、同じまりさ種同士の仲間意識がなかったといえば嘘になる。 その顔も知らない、言葉を交わすだけの姉妹が、自分を励ましてくれている。 「ないちゃらおかーしゃんもみんにゃもきゃなしーよ?」 「そうちゃよ! れいみゅちゃちもきゃなしーよ!」 「みんにゃ……」 雨降って地固まる。 結果として姉妹・家族の結束を強くする出来事となった。 見方を変えれば選択肢のひとつが減って、尻に火がついたといったところだが。 「まりしゃはまりしゃでしょ! しみゃいのいきおいににゃるんちゃよ!」 「……ゆ、まりしゃ……ありがちょー」 「まりしゃなきやんぢゃね! まりしゃしゅごいね!」 「ゆー! まりしゃはしゃっきもたくしゃんのことをおしぇーてくれちゃね!」 「でみょむりしにゃいちぇね!」 励ました方の赤ちゃんまりさは、親れいむの左外側に伸びた蔦の一本に生っていた。 その環境と持ち前の行動力で、限界ぎりぎりまで身をひねって、周りの情報を集めていたのだ。 現に姉妹が手に入れた情報の多くは、彼女からもたらされたものが多い。 長女れいむは、そんな勇敢な妹まりさを誇りに思っていたが、同時に危うくも思っていた。 蔦から切り離されるとき―― それは赤ちゃんが落ちても大丈夫なぐらい成長した結果、その自重で落ちる。 あるいは(ある程度成長しているという前提がつくが)、外敵に襲われた場合、 刺激によって目覚めた赤ちゃんが、体を揺すって自力で蔦との繋がりを切って逃げる。 あとは成体ゆっくりが切り離してくれる場合だが、前の二例ともに蔦が離れやすくなっている。 今の姉妹は、生まれ落ちる準備ができているため、蔦は動き回れば切り離されやすく、例え動かなくとも自然に切り離される。 後者の理由で赤ちゃん達は急いで対策を立てる必要があり、前者の理由で長女れいむはまりさの行動を心配していた。 今もまた、まりさは体をひねって下界を見下ろそうとしていた。先に落ちたれいむの姿を探しているのだろう。 「ゆー! みゅりじゃないよ! みんにゃのためにゃらまりしゃにちょっちぇ――」 プチンと音が聞こえた気がした。 「――ゆ?」 音と一緒にまりさの体が軽くなった気もした。先ほどまで見えなかった景色が目に入ってくる。 姉妹達が見つけたかったものが……見えた。 「れいみゅおねーしゃん――」 ――まりしゃのいみょーとのれいみゅいたよ? このまま落ちると姉妹がどうなるのか。 先に落ちた赤ちゃんれいむがどうなったのか。 これから自分がどうなってしまうのか。 赤ちゃんまりさは、ゆっくりと理解し……姉妹の視界から消えた。 「…………」 「…………」 「…………」 「……まりしゃーっ!?」 「まりしゃおねぇーしゃぁぁぁぁん!?」 「ゆー!? ゆー!? まりしゃがどうしちゃの!? まりしゃのしみゃいのまりしゃどうしちゃのー!?」 自分の見えぬ場所で何が起こったのか? 泣く自分を慰めてくれた姉妹が何故、泣き出したのか? 赤ちゃんまりさはわからなかった。わからなかったからこそ不安でたまらなかった。 もう一匹のまりさが、まりさがどうなってしまったのか? 「……ゆっぐ……ゆっぐ」 「……おちちゃった。れいみゅのいみょーとのまりしゃ……おちちゃった」 長女れいむが嗚咽を堪え、幼いなりに努めて冷静に、残った赤ちゃんまりさに事実を告げた。 姉妹がどうなったのかを伝えられた。……が、頭がついてこない。 それでもゆっくりと、ゆっくりブレインにその意味が染みこんでくる。 ……顔をみたことのない、もう1匹のまりさとはもう二度と会えない。 理解がおよんだとき、色んな感情が堰をきって流れ出そうになる。 「……ゅ……ゅぁ……っ……ゅぁ」 「りゃめ! にゃいちゃりゃめ! おかーしゃんがかなしみゅよ!」 「……ゆっぐ!」 そうだ。親れいむを悲しませてはならない。 皆で誓った。先ほど母を悲しませてしまった時、あのまりさが止めてくれた。 ここで自分が泣けば、尊いその行為を無駄になる。残された赤ちゃんまりさは、堪えた。 無駄にしないために。あの姉妹の行為を無駄にしないために。 その思いは残された姉妹も一緒。ゆっくりするよ!!! 心は一つ。 と、赤ちゃんゆっくり達はイベント満載であったが、頭上のドラマを知らぬ親ゆっくりは暇であった。 いつまでたっても、赤ちゃんが顔を見せてくれない。 待っててと言われたが、まりさと聞いて視線を上にやれば、目に見える赤ちゃんは2匹。 「ゆ~? そういえばまりさがいないよ~? どこーまりさどこー?」 のん気なことを言う。 母の言葉に子供達は震えていた。言えるはずがない。 母を思って押し黙る赤ちゃん達であったが、親からすれば返事がないだけのこと。 待てといわれ相手にされない。 親れいむは待っていてもよかった。ずっと1匹でゆっくりしていてもよかった。……いつもなら。 しかし今は話が違う。赤ちゃんが生まれ、親れいむは1匹ではなくなった。 一緒にゆっくりしたい。その欲求を満たしたいのだ。 「れいむのあかちゃんゆっくりしすぎだよ? ゆゆ! そうだ! おかあさんがゆっくりおろしてあげるね!」 待ちきれなくなった親れいむは、名案とばかりに体を揺らす。 あわせて揺れる頭上の蔦、葉、赤ちゃんゆっくり。 ガサガサと葉がすれる音はリズムカル。 「ゆっゆゆー♪ あーかちゃんゆっくりおーちてーきーてね♪」 歌い出すぐらいごきげんになる名案。親ゆっくりにとってはそうかもしれない。 が、赤ちゃん達にとっては名案でもなんでもなく、死を早める行為に他ならない。 「ゆ! ゆぅぅぅぅっん!?」 「やめちぇね! おかーしゃんゆっくちやめちぇね!?」 「おきゃーしゃぁぁぁんっ!?」 「れーみゅちゃちがゆっくちできにゃくなっちゃうにょぉぉぉ!!」 「ゆ! わかったよ! ゆっくりやめるよ!」 親れいむは愚鈍ではあったが素直で聞き分けはよかった。 この点は感謝してもよく、幸運であったともいえる。 それで事前の愚行がなかったことになるわけではないが。 間違いなく、今の揺れで赤ちゃんと蔦を繋ぐ接点は脆くなっただろうから。 元より残された時間はわずかだった。赤ちゃん達の時間は更に削がれた。 「ゆっゆっゆっ……!」 「……ゆふー」 急がねばならないのはわかっている。考えねばならないのもそう。 しかし幼い生命にとって、今をなんとか生き延びたこの瞬間から、 脳裏にちらついた死の恐怖を遠ざけ平静になろうとする時間を誰が責められようか? 恐怖は転じて生への執着でもある。落ち着きを取り戻す中、生きようとする意志が、1匹の赤ちゃんに閃きをもたらす。 その1匹は、しばし真剣な顔で前後の揺れに身を任していた。 冷静になった状態で揺れを体感し、自分の考えを実行する。 「ゆっ!」 「……ゆ! ゆっくちしてきちゃよ! ……れいみゅ?」 「ゆっ!」 声をかけられた赤ちゃんれいむは、揺れ幅の頂点で力み、自ら体を動かして勢いをつけ揺れ幅を広くしていく。 親れいむの正面付近に生る長女れいむから、親れいむの右横よりやや後ろに生る、この赤ちゃんれいむの姿はみえない。 何やら力んだ声が聞こえてくる。 長女れいむは、残った方の赤ちゃんまりさ――親の右側に生った子に声をかけた。 「まりしゃ! まりしゃにゃられいみゅがなにしちぇりゅかわかりゅ?」 「ゆ! まりしゃにょうしりょのれいみゅはびゅんびゅんいっちぇりゅ!」 びゅんびゅん? なんのことだろうと不思議に思ったが、その答えは本人から語られた。 親ゆっくりが揺らした事をヒントに、振り子運動の力を借りて、向こうまで飛べないかと。 「ゆゆっ!」 なるほど。ひょっとするといけるかもしれない。 「でもあぶにゃいよ! ぷっちんしておちちゃうかみょしれにゃいよ!?」 「しょーだよ!」 「ぢぇも! こにょみゃみゃだとおちちゃうよ!」 何もしないままでも落ちて、ゆっくりできなくなる。それは皆にもわかっていたことだ。 状況を打破できる術があるのなら、たとえリスクを抱えてもやるべきこと。 特に長女れいむは、そのことを痛いほど感じていた。責任感があった。 ほんの十数秒早く目を開けただけの僅かな差。それだけではあったが、それが長女としての意識を芽生えさせた。 ゆっくりにしてみれば、それだけで十分。 「ゆ! わかっちゃよ! じゃあおねーしゃんがしゃきにとぶよ!」 まずは自分が飛ぶ。危険なことを先に妹にやらせるわけにはいかない。 自分が飛んでいる間に、他の姉妹が別のアイデアを練ってくれるかも知れない。 「だめりゃよおねーしゃん! れいみゅがしゃき!」 「……ゆっ!?」 「れいみゅがしゃき! おねーしゃんはおねーしゃん! みんにゃのしょびゃにいちぇね!」 赤ちゃんれいむの振り子の動きが、速く大きくなっていたこともある。蔦がもう持たないかもしれない。 そんな理由もあったが、今口にしたことが一番の理由。姉妹の精神的柱になっていて欲しい。 大きく動く右側の赤ちゃんが、蔦から離れるのも時間の問題だということもあり、長女れいむは困ったが納得した。 もうこの赤ちゃんれいむは飛ぶしかないのだ。 「そりょそりょいくにょ……!」 前、後。前、後。前、後。前、後。前……。 勢いは十分。よく見ていてね、と姉妹に言う。次に飛ぶ姉妹の参考になるだろうから。 もし失敗しても、とは言わなかった。 この回で飛ぼう。決意が鈍らないうちに。 ……後。勢いを利用して前に出る。いける、いくしかない。ゆっくりするために。 そのためには、前方の頂点に達するより先にやらなければならないことがある。 加速を得た赤ちゃんれいむは、勢いの力を借り頭部に力を入れて――蔦を切り離した。 「ゆぅぅぅぅぅぅぅっ!!」 宙を舞う。 蔦という枷から解き放たれ、より前へ。 「ゆゆっ!? ゆーっ!」 赤ちゃんまりさはみた。背後にいた姉妹の背中を、勇気ある姉妹の姿をみた。 「がんばっちぇ!」 「ゆ! れいむのあかちゃん? あかちゃんとんでるの!?」 「れーみゅのおねーしゃんおしょりゃをちょんぢぇるにょ!」 「いきぇぇぇぇ!」 長女れいむと、その傍にいる赤ちゃんれいむが激を飛ばす。 お母さんが自分の姿を見てくれている。 「ゆゆーん! ゆぅぅぅぅーん!!」 飛んでいた。皆の思いに支えられ、何物にも邪魔されることなく飛んでいた。 目指す場所が近づいてくる。いや、自分が近づいているのだ。着地するために。自由を得るために。 壁が近くなる、もうすぐだ。……壁? 赤ちゃんれいむは気付いてしまった。高度が落ちているのだ。 「――ゆびゅっ!」 失敗は激突によって告げられ。失敗の結果は落下。 2cm……いや1cm高ければ、運命は変わっていたかもしれない。 だが最初のチャレンジャーの挑戦はもう終わり。もう二度と挑むことも、ゆっくりすることもない。 また1匹、姉妹がゆっくりできなくなってしまった。信じたくはない。が、赤ちゃんれいむがぶつかった場所には染み。 皮肉な話だが、それが赤ちゃんれいむの生きていた証となっている。“生きていた”、だ。 「ゆ~? れいむのあかちゃんどっかいっちゃたよ?」 赤ちゃんがどこにいったのか、不思議そうな母れいむ。 もうここにいない姉妹を思って、残った赤ちゃんゆっくりは泣きたかった。 「ゆ! でもいいよ! れいむはゆっくりまつよ! つぎはだれ!? れいむにおかおをみせてねあかちゃん!!!」 子供とゆっくりしたくてたまらない、そんな母の和やかな声が、赤ちゃん達の悲しさと申し訳なささを増加させる。 残るは3匹。その内の1匹、全姉妹の中で最後に目覚めた末っ子れいむの、感情は決壊寸前。 「まりしゃがいくよ!」 「……ゆ?」 外に流れ出してしまいそうな、末の子の感情を押しとどめたのは、まりさであった。 まりさがやるんだ。体を前後に振り、飛ぶための加速を得ながら、まりさは思う。 もう1匹のまりさは、自分を励まし皆を元気付けた。 飛んだれいむは、先に行くことと意思をみせた。 勇気あるものの行為は、皆の勇気をも奮い立たせる。誰かが笑えば皆も笑える。 まりさはそれがまりさの生き方なのだと、ゆっくりまりさのあるべき姿なのだと、そう心で理解した。 「……ゅ……まりしゃおねーしゃん……」 「まりしゃ!」 「ゆん! ゆん! ゆ……っん! あんしんちちぇね! まりしゃのかりぇーなちょーやくにおどりょいちぇね!」 誰も泣かせない。だから自分も泣かない。不敵に笑う。皆が笑える先を作るために。 泣き虫まりさはもういない。先に行ったまりさを見たとき、皆が誇りを抱き、先に進もうと思える、そんな背を持つゆっくりになるんだ! スポンという音が聞こえた気がした。すぽん、かもしれない。 結論だけいえば、決意をしてからのまりさは最期まで泣かなかった。二度と泣くことはなかった。 「…………」 「…………」 あまりにも唐突。残された赤ちゃん達は、流れるように起こった事象に、泣き出すことも叫ぶこともなく、ただ呆然とする。 理解が追いついてこない。いや、少し時間を置き何があったのかの理解はできた。理解したくないだけだ。 だが現実はそれを許さない。目の前では、蔦にぶら下がった黒いとんがり帽子が揺れている。 振り子運動を繰り返すのは帽子のみ。視界から帽子が消え、また戻ってくる度に、帽子の下にまりさがいるのではと――そんなことはなかった。 残る姉妹は2匹。 長女れいむと末っ子れいむ。6匹いた姉妹の中で、一番近い距離にいた姉妹だ。 「れいみゅ……」 長女れいむは悩む。 自分は飛ぶ気でいる。姉妹の行為を無駄にしないために、残された者の務めとしてゆっくりする未来を勝ち取るために。 妹を残して飛ぶのは気が引ける。もし自分が失敗すれば、末の妹だけ残していくことになる。 母も残っているが、自分以外の姉妹がいなくなってしまったという悲しさに、彼女は耐えられるのだろうか。 現に今も、小さく揺れる黒い帽子を眺めたまま動かない。や、無言で小刻みにぷるぷると震えている。 ゆっくり達は知るよしもなかったが、長女れいむが最初に目覚めた事から、年長者の責任に目覚めたのと同じ様に―― 末っ子は最後に目覚めたことと、長女れいむがそばにいたことで、他の姉妹より精神が幼く、他者にやや依存する傾向があった。 そんな理由を長女は知らないが、妹が残されることに耐えられるとは思わなかった。 ならば自分が横で見守り、励まし、助言を送りながら、妹を先に飛ばせるべきか? 否、先に飛んでねといえば、彼女は泣くだろう。落ちていった姉妹の恐怖がこびりついている。 ならば同時に飛ぶべきか? 否、自分にあったタイミングで飛ぶべきだ。下手に相手にあわせて距離が足りなければ意味がない。失敗は許されないのだ。 ならば答えはひとつしかない。 「れいみゅ……ゆっくちきいちぇね……おねーしゃんがしゃきにとぶよ」 「――ゆゆっ!?」 末の妹の意識が、長女の言葉で現実に引き戻される。同時、妹の浮かぶ表情は驚愕。そして悲嘆。 「れーみゅをおいちぇかないぢぇぇぇぇ! いっしょにゆっくちしよーよーっ!?」 「……れいみゅ」 できることならそうしたかった。 あるいは別の方法を一緒に考えてもよかった。 ……今なら、2匹だけになった今ならとれる方法もある。 皆がいたときは言い出すことはできなかった方法。偶然にも残った2匹は、母の正面側に実った姉妹。 狙いをすまして落ち、母に舌で受け止めてもらい口の中に避難する。向こう側に飛ぶよりも安全な方法だ。 「だいじょうぶだよあかちゃん! おかあさんがいっしょだよ!」 「ほりゃ、おかーしゃんがいるよ? だかりゃあんしんちちぇね?」 安心できる声。お母さんの声に、長女れいむの不安も薄らいでいく気がする。 お母さんはきっと受け止めてくれるよ、れいむ。疑いはない。 けれど長女れいむは飛ぶことを選ぶ。先に進むべきだと、それが残されたものが受け継いでいくことだと思うから。 「れいむ……とぶのがこわかっちゃりゃ……おかーさんにうけとめちぇもらうんぢゃよ?」 「ゆっぐ……ゆっぐ……ゆっぐ……」 妹は聡い子だ。返事はなかったが理解してくれているだろう。 前に飛ぶために、加速を得るために、長女れいむは体を動かす。 お母さん――れいむ達を産んでくれて、うれしかったよ。 れいむ――長女である自分が浮かれていないで周囲注意をくばっていれば、あんなことにならなかった。ごめんね。 まりさ――本当は自分がしなければいけなかったのに、皆を引っ張っていってくれた。ありがとう。 れいむ――皆が見た背中はとても頼もしかったよ。勇気がでたよ。がんばるね。 まりさ――泣かなくなったね。自分だけじゃなく、妹の涙を止れる子になったね。つよいね。 れいむ――お姉ちゃんが飛んだら、れいむは泣きやんでくれるかな? 感情を込め、力を得る。喜びも悲しみも、立ち止まるためではなく、巡り巡って、前にただ前に進むための糧となる。 速く速く、強く強く、前へ前へ。 こんな状況でなければ楽しかったのだろう。だが笑う。快と長女れいむは笑う。 生きるために、妹に何かを残すために。 皆! 一度でいいから力を貸してね! 不出来なお姉ちゃんが、立派なお姉ちゃんとしてやり遂げるために! れいむは飛んだ。 高くより高く。 前へより前へ。 目指す場所へ、ぐんぐん近づいていく。高台より更に高く、長女れいむは宙を飛んでいる。 身を任すではなく、意志によりれいむは風になった。進むべき風に。留まることのない風に。 次は着地だ。飛ぶ時間は思うより短い、早々に心の準備を決め。衝撃に備える。 高さは十分だった。が、着地の構えによる動きのせいか、若干軌道が変わった。着地地点が僅かだが、台の端にずれる。 このままでは、着地の際にバランスが崩れ、落ちてしまう―― 「――ゆんっ! ぐぅっ!」 前へ。 体重と勢いを前半身にかけ、進むことの意志を押し通す。 鈍痛が幼いれいむの体を支配しようとする。否。ここで痛みに飲まれることも流されることも、否。 ここまで来た。ならば前へ。前へと意志を通す。落ちるわけにはいかない。 はねる。 勢いそのままに、地面に叩きつけられた衝撃が全身に駆け巡る。 前へ進むことを選んだ結果、直前で受身を放棄した結果がこれだ。痛みはあれど、後悔はない。 始めて触れる地面さんは固かった。それでも、触れれることが喜ばしかった。 ころがる。 れいむの体は台の外ではなく、内へ。 姉妹達の想いを胸に長女れいむは到達を成し遂げたのだ。 やったよ皆。やったよお母さん。やったよれいむ。れいむはやったよ。 地面さんは痛かった。でも、お母さんは柔らかいに違いない。妹と一緒にふかふかー、ゆっくりー!!! するんだ。 そうだ! 早くお母さんにれいむの無事な姿をみせてあげよう。れいむもお母さんのお顔をちゃんとみたい。 早く妹にもお姉ちゃんは大丈夫だよって言わなきゃ。妹を早く安心させて、ゆっくりさせてあげなきゃ。 ――泣きやんでくれたかな? れいむは妹の涙を止めてあげられたかな? 痛みが引き始めたれいむが、目を開けて見たものは、母の顔でも妹の笑顔でもなかった。妹の泣き顔でもなかった。 遠い遠い地面だった。 「ゆ~~~? れいむのあかちゃんきえちゃったよ?」 母れいむは、今度こそ自分の赤ちゃんを見失うことはないと思っていた。 今回飛んだ子は、視線をあげれば見える位置。頭上でぷらぷら動き出したときから、しっかりと目を離さなかった。 飛んで自分から離れた場所に乗るのもきちんと見た。のに忽然と消えたのだ。不思議だ。 だけど母れいむは楽しかった。初めてなる母親というのは新しいできごとばかり。 赤ちゃんは飛ぶ。赤ちゃんは消える。自分にはできないことだ。 母れいむも赤ちゃんだった頃があったはずだが、そんな経験は無い。でも、きっとできたに違いない。 「ゆ? ゆゆゆゆゆっ!?」 急に髪が痛くなった。少し重い気がする。 今までなかったことだ。これも母親になったからに違いない。赤ちゃん達ができたときも頭の上が重くなった。似ている。 「ゆーん……れいむどんどんおかあさんになっていくよー」 だらしのない笑みを浮かべる母れいむ。しあわせー。 これからはもっとしあわせーだ。母れいむは1匹だけではない、家族がいる。どんどん新しい発見と喜びがあるだろう。 赤ちゃんに色んなことを教えてあげよう。ごはんは美味しいよ。みんなで食べたらもっと美味しいかな。 「……ゆ? だれかよんだ?」 考え事の途中、赤ちゃんに呼ばれた気がして、母れいむは頭上の赤ちゃん達に訊ねた。返事はない。 気になったが、何度もしつこく訊ねるような事はしない。にんげんさんに教わった。れいむはいい子だからそれを守れる。 ああ、そうだ。そのことも赤ちゃん達に教えてあげないと。にんげんさん達にも可愛い赤ちゃんをみせてあげないと。 楽しい未来に想像をめぐらせる。母れいむが好きな遊びだ。にんげんさんは忙しいから、母れいむはこの遊びに興じることが多かった。 でも、もう1匹じゃない。早く赤ちゃん達と皆でゆっくりしたいな。母れいむは楽しみで仕方がなかった。 いつの間にか、髪の重みは消えていた。 ■点数発表 +0点:れいむ4、まりさ1、まりさ2 +1点:れいむ1 +2点:無 +3点:れいむ2 +10点:無 -2点:れいむ3 昼までに各自が選んだ3匹の得点合計合計をすましておきます 2位までが集めた参加費を使って食堂でタダ飯喰ってください シャレで作ったマイナスゾーンに落ちたれいむが勝敗を分けた わりと飛ぶもんですね飛びすぎたせいで暫定1位からビリ辛い このSSに感想を付ける
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■品種改良415号報告書4■ 野生種といった改良種でない既存のゆっくりを母体に選び、妊娠前から母体に投薬をおこなうことで、 次世代のゆっくりの知能強化等を図る本実験415号計画の途中経過について記す。 コストパフォーマンスと管理の点から鑑みて、本計画に使用する薬品はA薬を採用することになった。 以後の実験はA薬のみでおこなう。 注意していただきたいのは、B薬は決してA薬に劣るものではないこと。良品であり、むしろ強化という面ではA薬を遥かに凌ぐ。 (とはいえ、母体への投薬によって赤ん坊の知能が向上しているにも関わらず、舌足らずな喋りである点はA薬B薬ともに共通であり、関係者は首をひねるばかりだ) 知能強化はもとより効果は身体強化にもおよぶ。 (御存知のかとは思うが、投薬された母体のゆっくりの能力向上は一切存在しない) (415号実験での母体は全て植物型出産である。ニューボーンが小型であり多産であった方が投薬の効果を確認しやすいためだ) 効き目が強いためか、結果が表に出るのも早く、目覚めたばかりの赤ん坊の時点でその効果が明らかにみられるのだ。 ひどい話になると、生後15分の赤ん坊ゆっくり達に指導される親ゆっくり――というケースも誕生する。 実験施設の餌の採り方を赤ん坊から教わったり、子供より先に体力の限界が訪れ動けないとぐずる親。果たして面倒をみてもらっているのはどちらなのか。 基本的にゆっくりは純粋なモノであるため、投薬による能力差の逆転が発生しても彼ら親子の関係は良好である。 子は親を慕い、親も子に妬みを抱くことはない。ただ、ゆっくりという種特有の愚かさから、親が事故を起こすことは多々ある。 なお、ゆっくりに“慕う”“妬む”、それ以前に感情が存在するのか? という問題は本件とは別であるため考慮しない。 B薬の問題点について軽く記す。 (詳細なB薬の報告書は担当者が提出済みであるため、そちらを参照されたし) B薬の問題点は“一代限り”であるということ。 薬によって生まれた有能な子世代の能力を、孫世代以下はまったく受け継がない。 何度か実験を繰り返したが、孫世代の知能・身体能力の全ては親世代のそれである。 毎度毎度の実験で、頭の良い子世代が、能力的に劣る親世代・孫世代を不思議がるのはもう笑えなくなってきた。 何故受け継がれないのかは依然不明であるが、さすがはゆっくりブレインと言しか言いようがなく、研究員一同、苦笑いするしかない。 (笑えないのに苦笑いなのか、という意見は却下させていただく) これでは意味がない。我々が欲するのは永続的な改良種である。 能力に向上があったとしても、次の世代にそれを残せなくては無意味であり、たとえ向上がわずかであっても次世代に受け継がれる方を良しとする。 本研究の目的に適さず、なおコストがかさむため、以降の415号実験にはB薬は使用されない。 繰り返すがB薬は良品である。他の実験でB薬が日の目をみることを、研究者の一人として望まずにはいられない。 これらの理由により。本日13:00を持って、品種改良415号B薬被検体は廃棄処分となる。 (415号実験での母体は全て植物型出産である) 他の部署が実験用ゆっくりとして、品種改良415号B薬被検体の提出を要望した場合、供与して良い。 また外部に持ち出さず研究所内部に限るが、関係者による品種改良415号B薬被検体の使用が、昨日許可された。 各人存分に楽しんでいただきたい。ただし、書類は提出すること。私の分も残しておくこと。この二つを守られたし。 ■――――以上――――■ 「すーや……すーや……すっきりー!!!」 黒髪に赤いリボン、少女の顔をデフォルメしてデザインされたような饅頭。通称ゆっくり。 その一種であるゆっくりれいむは実に幸せそうな顔で目を覚ました。 「ゆゆ? へんなきがするよ! でもしあわせー!!!」 直径15cm前後の成体れいむが立つのは、直径5cm幅の円柱の上。 足場の狭さから身動きがとれない場所ではあるが、固定された彼女が気にすることはない。 生まれ落ちた頃より、とんだりはねたりとは縁のなかった彼女だ。 今更あわてることではなく、動き回れなくとも、いつだって美味しい食べ物は向こうからやってきた。だから、しあわせー!!! 「……しあわせー? ゆっ! そうだったよ! れいむはあかちゃんができてしあわせなんだよ!」 生体れいむは親れいむ。昨日の朝にお母さんになったばかり。しあわせれいむだ。 頭部に蔦を生やし、葉(の様なもの)を茂らせ、赤ちゃんゆっくりを実らしたゆっくりの姿は……。 見ただけでしあわせそうだな、と思わせる要素を多段に含んでいるのも確かだ。 頭上に実る赤ちゃんゆっくり達を見上げるためか、それとも「思い出したれいむ偉い」と胸をはっているのか、ふんぞり返る様な動作の親れいむ。 その所作で親れいむの下腹部に付けられた薄いプレートが姿を見せた。 【実験No.46B 母体(親子廃棄)】 「ゆーゆー♪ あーかちゃん♪ おかーさんとゆっくーりしようねー♪」 2~3cmサイズのちいさなちいさな可愛い赤ちゃん。 ごきげん笑顔で歌を歌う親れいむ。しあわせでしあわせで仕方がない。 早く蔦から赤ちゃんが切り離されて、ぽてちんと地面に生まれ落ちないものか。 親れいむの視界に映る赤ちゃんは、れいむが2種、まりさが1種。 見える範囲で3匹の赤ちゃん。だったら「もっといっぱいいるよ!」と勝手なビジョンを思い描いている。 それは正しい。確かに赤ちゃんは4匹以上。 ただそれが真っ当な想像力によるものではなく、ゆっくりブレインしあわせブレイン。 こうあればいいという勝手な願望にしかすぎないのだ。 周りを見ずに、己の都合のいい事だけしか頭にない。これが普通のゆっくりである。 「……ゅ」 「……ゆ?」 親れいむの頭上で声が聞こえた。 「ゆー?」 何事かと思い、親れいむが首を傾げる(様な動作をする)。 動きにあわせて、葉と葉が重なりあい、ガサガサと音を立てた。 それが合図であったのか、 「ゅ!」 「ゅぅ……ゅぅ……」 「……ゅ! ゆゆっ!」 蔦に実った赤ちゃんゆっくりの何匹かが声を出し始め、その内の1匹が目を開いた。 「ゆっくちー!」 世界への目覚めの挨拶。 一番最初に目を開いた赤ちゃんれいむは、元気よく叫んだ。 おそらく彼女がこの姉妹の長女になるのであろう。 挨拶をすませニコニコとごきげん赤ちゃんれいむ。 「ゆ! れいみゅのおかーしゃんはどこかにゃ?」 蔦に繋がったままであるため、軽く身をひねる程度ではあるが、 母親を視界にとらえよう、見つけようと赤ちゃんはきょろきょろと周りを探す。 「おかーしゃん?」 「ゆゆ! ひょっとしてれいむのあかちゃん!? あかちゃんなの!?」 「ゆー! おかーしゃんはしたにいるんちゃね!」 この時点でようやく親れいむは、赤ちゃんれいむが目覚めたことに気がついた。 ワンテンポ早く、赤ちゃんれいむは母親の位置を把握し喜ぶ。 「おかーしゃん! れいみゅだよ! いっちょにゆっくちしよーね!」 「ゆゆー!? ゆゆゆゆ! ゆっくりしようね!!!」 本来、植物型出産の赤ちゃんは、蔦から切り離され、地面に落ちた衝撃で目覚め、言葉を発する。 そのプロセスと違い、蔦に下がった状態で既に挨拶をはじめた赤ちゃんれいむ。 そういう理由もあり、事態をまだ把握し切れていない親れいむだが、そんな事は些細なこと。 赤ちゃんが目覚め、自分に声をかけてきてくれた事が何よりの喜び。 きゃっきゃと会話を楽しむ2匹の声に反応し、他の赤ちゃん達も目覚めだした。 「ゆーゆっくちー!」 「おひゃよーおねーしゃん」 「ゆゆ! おねぼーしゃん」 「まりしゃだよー」 「まりしゃもまりしゃだよー」 「れーみゅもいるよー!」 「みんにゃゆっくちちてねー」 『ゆっくちー!!!』 皆仲良し赤ちゃんゆっくり姉妹。 「ゆーん! あかちゃんたちゆっくりしてるのー?」 「ゆゆっ! おかーしゃんだよ! みんなあいしゃつしよーね?」 『おかーしゃーん!!!』 「ゆゆー!」 親れいむは、ゆーんと感動で瞳をうるうるさせている。 自分の赤ちゃんはなんとゆっくりした子供達なんだろう。 「ひーひゅーみーよー……ゆ! おかーしゃん!」 「ゆ?」 「れいみゅちゃちがよん! まりしゃちゃちがに! ろくしまい!!」 長女の赤ちゃんれいむが親れいむに姉妹の数を報告する。 親れいむの赤ちゃんは、れいむ種だけでなく、金髪に黒の三角帽子がトレードマークのまりさ種がいるようだ。 れいむが4匹、まりさが2匹、合計6匹。 本来は30を超える大姉妹達であったのだが…… この家族は投薬の効果を高めるため、今の数まで間引きされている。 もちろんそんな事実を親れいむも姉妹達も知るよしもない。 ついでにいえば、親れいむに6という数字の概念はない。 「ゆゆー! いっぱいいるんだね! れいむはうれしいよ! しあわせー!!!」 そのため、純粋に赤ちゃんの誕生を祝うのみである。 「そうちゃよ! いっぴゃいいるよ!」 『いっぴゃいいっぴゃい! ちあわちぇー!!!』 「ゆーん! すごくゆっくりしたあかちゃんだね!」 親れいむはうれしくてしかたがなかった。 だからこそ早く赤ちゃん全員の顔をみたくてみたくてしかたがなかった。 その雰囲気を、赤ちゃんゆっくりは感じとっていた。 顔をみたいのはこちらも同じこと。 早く蔦から離れ、愛する母と正式に対面して、「ゆっくちしちぇいちぇね!!!」と言ってあげたい。 先ほどから、一匹たりともとそう叫んでいないのは、無意識からの行為。 真にゆっくりできる場所は母の傍。蔦に繋がったここではないのだ。 「おかーしゃん! れいみゅがいくよ!」 一番最初に親れいむの元へと顔を見せたがったのは、親れいむの真上に実ったれいむだった。 この赤ちゃんれいむは、蔦の中心部に実っていたため、親れいむの声も聞き辛く、 葉に視界を邪魔されて景色を楽しむこともできずに寂しい思いをしていたのだ。 主張のために、ぷるぷると身を震わす。一緒に揺れるリボンには―― 【れ-4】 ――と、書かれた小さいタグが付いている。 タグは姉妹全てが付けていたが、彼女達は飾り程度にしか認識していない。 れいむもまりさも関係ない、仲良し姉妹のおそろい飾りだと。 「ゆーじゅるいよー」 「ゆ! そんにゃこといっちゃ……め!」 「ゆー! れいみゅはすねただけちゃよまりしゃおねーしゃん」 「わかっちぇるよ! みんにゃにゃかよしねー?」 『ねー?』 「じゃあいっておいちぇ!」 ゆっくり姉妹は仲良し姉妹。 みんなわかっていたのだ。彼女が寂しいことも、最初にいかせてあげるべきだとも。 姉妹に祝福され、赤ちゃんれいむは再度、身を震わせる。 今度は蔦から自分を切り離すためのものだ。 「ありがちょー! ゆっくちいくよ!」 『ゆっくちゆっくち!!!』 「ゆ……ゆ……ゆっくちー!」 プチンと軽い音とともに、赤ちゃんれいむの頭は開放感を得た。 今まであった愛する母との繋がりを失いはしたが、赤ちゃんれいむに悲しさはない。 いわば儀式の様なものである。古い繋がりを捨て、新しい親子の繋がりを得るのだ。 これからのことを思い、笑顔の赤ちゃんれいむは落ちていく。 ぽてちんと、親れいむの額で跳ねてワンクッション。 「ゆゆ~ん♪」 「ゆー! れいみゅのいみょーとおしょらをとんでるみたい!」 「おかーしゃんがゆっくちしゃせてくれちゃんだね!」 「ゆっくちおちちゃらじめんしゃんでいちゃいもんね!」 「おきゃーしゃんありがちょー!」 「まりしゃちゃちのおかーしゃんはゆっくちしてるね!」 赤ちゃんれいむはしあわせを感じていた。 優しいお母さん。お母さんの顔はどんな顔なんだろう。 背を向け、母の額から跳ねて落ちる赤ちゃんれいむは、楽しみでしょうがなかった。 お母さんに言う言葉は決めている。「ゆっくりしていってね!!!」だ。 その次はどうしよう。嬉しすぎてその次は考えていなかった。 言いたいこともしたいこともたくさんある。そうだ。綺麗に着地できるかな。 続く姉妹の手本になればいいな。上手くできたらお母さんは褒めてくれるかな。 次々と考えが浮かんでくる。赤ちゃんれいむの目はしあわせに輝いていた。 「ゆ~ん♪ 」 「…………ゆ?」 なにやらおかしい。 いつまでたっても、姉妹の「ゆっくちしちぇいっちぇね!!!」が聞こえない。 流石にゆっくりしすぎではないだろうか? 赤ちゃんゆっくり姉妹は各々首をひねった。 「おかーしゃんれいみゅは?」 「ゆ! まだー? れいむのかわいいあかちゃんまだなのー?」 挨拶が聞こえない事を疑問に思った長女れいむが、親れいむに声をかけたが…… 返ってきたのは催促の声。 姉妹達の中で不安が高まっていく。 のん気な母の声に感情を動かされながら、おそるおそる長女れいむは再度訊ねた。 「おかーしゃん……れいみゅのいみょーちょのれいみゅは……いにゃいの?」 「まだだよ! れいむのあかちゃんゆっくりしすぎだね! あかちゃんにあいたいよ!」 『ゅ゛ーっ!?』 異常だ。 先に落ちた姉妹は、怪我をして声を出せないわけではなく、“そこにいない”。 赤ちゃんゆっくり姉妹は驚愕に身を震わせた。 互いに目をあわせ、頷きあう。 “お母さんはまだ何も知らない。心配させない様にまだ黙っておこう!” 一緒の母から生まれた姉妹。思うことはみな同じだ。 そう誓い、現状を把握すべく、姉妹達はきょろきょろと動ける範囲で身を動かす。 生まれたばかりという理由もあり、家族に会えた喜びに浸って周りが見えていなかった。 先にこうしておくべきだと、もう少し注意をしておくべきだったのだと。 幼さにあわぬ考え。 しかし、生まれ持った知能の高さ故に、姉妹にとってそれは当然のこととして認識されている。 「ゆゆっ! おねーしゃんじめんしゃんがとーいよ!?」 「ほんちょ! どうじぢぇぇぇぇぇぇ!?」 「おかーしゃんのいるびゃしょはせまいにょぉぉぉ!?」 「まっちぇね! まりしゃもみゆかりゃまっちぇね!!」 「なんぢぇー!? どーいうこちょー!?」 そして、その知能の高さ故に、彼女達は自分が置かれた事態を把握し、恐怖に泣き叫んだ。 泣き叫びながらも、親れいむに心配をかけないようにと、全員がなるべく声を押し殺していたことは特筆に価する。 「ゆ? あかちゃんたちにぎやかだね! おかあさんをなかまはずれにしないでね!」 「ゆゆっ!? おかーしゃんちょっとまっちぇちぇね!」 「ゆ? ゆっくりまつよ!!!」 親れいむに待ってとお願いし、赤ちゃんゆっくり姉妹は状況を整理することにした。 幸い、親れいむはゆっくり待ってくれている。今は。 姉妹全員が得た情報を集めると、だいたいこういうことがわかった。 ●お母さんは何か長くて高いものに乗っていること。 ●おそらくお母さんの座っている場所は狭くて、他の皆は乗れないだろうということ。 (親ゆっくりが固定されているのは、幅5cm・長さ1.5mの棒の上である) ●そのため、自分達は地面さんからとても遠くて高いところにいること。 ●地面さんは色んな種類の綺麗な色だということ。 ●この高さから落ちるとどうなるの? ●……ゆっくりできないんじゃないかな。 「ゆゆゆっ! だいじょーびゅだよ!」 「まりしゃ!?」 「ほら! おかーしゃんとおなじくりゃいのたかしゃにもじめんしゃんがありゅよ!」 よく見れば、親れいむから離れた位置に、同じ高さの地面がみえる。 今いる場所からそこまでの距離は、親れいむ1.5匹~2匹分の幅だろうか。 「おかーしゃんがぴょんしちぇくれれびゃみんにゃたすかるよ!」 「おかーしゃんならいけりゅね! おかーしゃんここかりゃむきょーにぴょんしちぇね!」 「おきゃーしゃんぴょん!」 「ぴょん!」 「ゆ? ぴょんってなーに?」 『ゆ゛ぅぅぅぅぅう!?』 成体ゆっくり2匹分の幅。 自分達では無理だろうが、大きなお母さんなら跳び越えられる! そんな姉妹の希望は即座に打ち砕かれた。 5cm幅の足場での跳躍。難しいかもしれないが、一般的なゆっくりなら可能であったかもしれない。 が、この親ゆっくりは、生まれ落ちた時には既に、運動能力を削がれていた。 主な生活場所は1匹用の水槽。たまにみる仲間も同様、運動能力を削がれた個体。 動けずとも、餌は研究員が食べさせてくれた。 最初から運動はできず、運動という行為を見聞きすることもなく知らず、動けずとも不満はない。 まったく動けないわけでもない。暇なときは上下左右に体を揺らしたり、軽く身をひねる。たのしい。 そうやって、ずっとゆっくりしてきたのだ。これまでも、そしてこれからも。 「ゆっゆぅぅぅぅぅぃぃぃっ!! おかーしゃんごめんにぇぇぇ!! みんにゃごめんにぇぇぇ!!」 「ゆ? ゆ? あかちゃんなんであやまるのー?」 親ゆっくりに“ぴょん”の説明をしている途中で、赤ちゃんまりさは気付いてしまった。 理由はわからないが、母親が運動をおこなえないこと。それを理解できないことに。 だから、自分の不用意な発言が、母を傷つけ、みなに余計な希望を持たせたと、赤ちゃんまりさは思った。泣いた。 「まりしゃなきゃないちぇね!」 「……まりしゃ?」 泣く赤ちゃんまりさをなだめたのは、もう1匹の赤ちゃんまりさ。 ちょうど、親れいむの左右に実った赤ちゃんまりさ2匹は、互いの顔を合わせたことがない。 6姉妹の中でまりさ種は2匹だけ。 他の姉妹も大好きだったが、同じまりさ種同士の仲間意識がなかったといえば嘘になる。 その顔も知らない、言葉を交わすだけの姉妹が、自分を励ましてくれている。 「ないちゃらおかーしゃんもみんにゃもきゃなしーよ?」 「そうちゃよ! れいみゅちゃちもきゃなしーよ!」 「みんにゃ……」 雨降って地固まる。 結果として姉妹・家族の結束を強くする出来事となった。 見方を変えれば選択肢のひとつが減って、尻に火がついたといったところだが。 「まりしゃはまりしゃでしょ! しみゃいのいきおいににゃるんちゃよ!」 「……ゆ、まりしゃ……ありがちょー」 「まりしゃなきやんぢゃね! まりしゃしゅごいね!」 「ゆー! まりしゃはしゃっきもたくしゃんのことをおしぇーてくれちゃね!」 「でみょむりしにゃいちぇね!」 励ました方の赤ちゃんまりさは、親れいむの左外側に伸びた蔦の一本に生っていた。 その環境と持ち前の行動力で、限界ぎりぎりまで身をひねって、周りの情報を集めていたのだ。 現に姉妹が手に入れた情報の多くは、彼女からもたらされたものが多い。 長女れいむは、そんな勇敢な妹まりさを誇りに思っていたが、同時に危うくも思っていた。 蔦から切り離されるとき―― それは赤ちゃんが落ちても大丈夫なぐらい成長した結果、その自重で落ちる。 あるいは(ある程度成長しているという前提がつくが)、外敵に襲われた場合、 刺激によって目覚めた赤ちゃんが、体を揺すって自力で蔦との繋がりを切って逃げる。 あとは成体ゆっくりが切り離してくれる場合だが、前の二例ともに蔦が離れやすくなっている。 今の姉妹は、生まれ落ちる準備ができているため、蔦は動き回れば切り離されやすく、例え動かなくとも自然に切り離される。 後者の理由で赤ちゃん達は急いで対策を立てる必要があり、前者の理由で長女れいむはまりさの行動を心配していた。 今もまた、まりさは体をひねって下界を見下ろそうとしていた。先に落ちたれいむの姿を探しているのだろう。 「ゆー! みゅりじゃないよ! みんにゃのためにゃらまりしゃにちょっちぇ――」 プチンと音が聞こえた気がした。 「――ゆ?」 音と一緒にまりさの体が軽くなった気もした。先ほどまで見えなかった景色が目に入ってくる。 姉妹達が見つけたかったものが……見えた。 「れいみゅおねーしゃん――」 ――まりしゃのいみょーとのれいみゅいたよ? このまま落ちると姉妹がどうなるのか。 先に落ちた赤ちゃんれいむがどうなったのか。 これから自分がどうなってしまうのか。 赤ちゃんまりさは、ゆっくりと理解し……姉妹の視界から消えた。 「…………」 「…………」 「…………」 「……まりしゃーっ!?」 「まりしゃおねぇーしゃぁぁぁぁん!?」 「ゆー!? ゆー!? まりしゃがどうしちゃの!? まりしゃのしみゃいのまりしゃどうしちゃのー!?」 自分の見えぬ場所で何が起こったのか? 泣く自分を慰めてくれた姉妹が何故、泣き出したのか? 赤ちゃんまりさはわからなかった。わからなかったからこそ不安でたまらなかった。 もう一匹のまりさが、まりさがどうなってしまったのか? 「……ゆっぐ……ゆっぐ」 「……おちちゃった。れいみゅのいみょーとのまりしゃ……おちちゃった」 長女れいむが嗚咽を堪え、幼いなりに努めて冷静に、残った赤ちゃんまりさに事実を告げた。 姉妹がどうなったのかを伝えられた。……が、頭がついてこない。 それでもゆっくりと、ゆっくりブレインにその意味が染みこんでくる。 ……顔をみたことのない、もう1匹のまりさとはもう二度と会えない。 理解がおよんだとき、色んな感情が堰をきって流れ出そうになる。 「……ゅ……ゅぁ……っ……ゅぁ」 「りゃめ! にゃいちゃりゃめ! おかーしゃんがかなしみゅよ!」 「……ゆっぐ!」 そうだ。親れいむを悲しませてはならない。 皆で誓った。先ほど母を悲しませてしまった時、あのまりさが止めてくれた。 ここで自分が泣けば、尊いその行為を無駄になる。残された赤ちゃんまりさは、堪えた。 無駄にしないために。あの姉妹の行為を無駄にしないために。 その思いは残された姉妹も一緒。ゆっくりするよ!!! 心は一つ。 と、赤ちゃんゆっくり達はイベント満載であったが、頭上のドラマを知らぬ親ゆっくりは暇であった。 いつまでたっても、赤ちゃんが顔を見せてくれない。 待っててと言われたが、まりさと聞いて視線を上にやれば、目に見える赤ちゃんは2匹。 「ゆ~? そういえばまりさがいないよ~? どこーまりさどこー?」 のん気なことを言う。 母の言葉に子供達は震えていた。言えるはずがない。 母を思って押し黙る赤ちゃん達であったが、親からすれば返事がないだけのこと。 待てといわれ相手にされない。 親れいむは待っていてもよかった。ずっと1匹でゆっくりしていてもよかった。……いつもなら。 しかし今は話が違う。赤ちゃんが生まれ、親れいむは1匹ではなくなった。 一緒にゆっくりしたい。その欲求を満たしたいのだ。 「れいむのあかちゃんゆっくりしすぎだよ? ゆゆ! そうだ! おかあさんがゆっくりおろしてあげるね!」 待ちきれなくなった親れいむは、名案とばかりに体を揺らす。 あわせて揺れる頭上の蔦、葉、赤ちゃんゆっくり。 ガサガサと葉がすれる音はリズムカル。 「ゆっゆゆー♪ あーかちゃんゆっくりおーちてーきーてね♪」 歌い出すぐらいごきげんになる名案。親ゆっくりにとってはそうかもしれない。 が、赤ちゃん達にとっては名案でもなんでもなく、死を早める行為に他ならない。 「ゆ! ゆぅぅぅぅっん!?」 「やめちぇね! おかーしゃんゆっくちやめちぇね!?」 「おきゃーしゃぁぁぁんっ!?」 「れーみゅちゃちがゆっくちできにゃくなっちゃうにょぉぉぉ!!」 「ゆ! わかったよ! ゆっくりやめるよ!」 親れいむは愚鈍ではあったが素直で聞き分けはよかった。 この点は感謝してもよく、幸運であったともいえる。 それで事前の愚行がなかったことになるわけではないが。 間違いなく、今の揺れで赤ちゃんと蔦を繋ぐ接点は脆くなっただろうから。 元より残された時間はわずかだった。赤ちゃん達の時間は更に削がれた。 「ゆっゆっゆっ……!」 「……ゆふー」 急がねばならないのはわかっている。考えねばならないのもそう。 しかし幼い生命にとって、今をなんとか生き延びたこの瞬間から、 脳裏にちらついた死の恐怖を遠ざけ平静になろうとする時間を誰が責められようか? 恐怖は転じて生への執着でもある。落ち着きを取り戻す中、生きようとする意志が、1匹の赤ちゃんに閃きをもたらす。 その1匹は、しばし真剣な顔で前後の揺れに身を任していた。 冷静になった状態で揺れを体感し、自分の考えを実行する。 「ゆっ!」 「……ゆ! ゆっくちしてきちゃよ! ……れいみゅ?」 「ゆっ!」 声をかけられた赤ちゃんれいむは、揺れ幅の頂点で力み、自ら体を動かして勢いをつけ揺れ幅を広くしていく。 親れいむの正面付近に生る長女れいむから、親れいむの右横よりやや後ろに生る、この赤ちゃんれいむの姿はみえない。 何やら力んだ声が聞こえてくる。 長女れいむは、残った方の赤ちゃんまりさ――親の右側に生った子に声をかけた。 「まりしゃ! まりしゃにゃられいみゅがなにしちぇりゅかわかりゅ?」 「ゆ! まりしゃにょうしりょのれいみゅはびゅんびゅんいっちぇりゅ!」 びゅんびゅん? なんのことだろうと不思議に思ったが、その答えは本人から語られた。 親ゆっくりが揺らした事をヒントに、振り子運動の力を借りて、向こうまで飛べないかと。 「ゆゆっ!」 なるほど。ひょっとするといけるかもしれない。 「でもあぶにゃいよ! ぷっちんしておちちゃうかみょしれにゃいよ!?」 「しょーだよ!」 「ぢぇも! こにょみゃみゃだとおちちゃうよ!」 何もしないままでも落ちて、ゆっくりできなくなる。それは皆にもわかっていたことだ。 状況を打破できる術があるのなら、たとえリスクを抱えてもやるべきこと。 特に長女れいむは、そのことを痛いほど感じていた。責任感があった。 ほんの十数秒早く目を開けただけの僅かな差。それだけではあったが、それが長女としての意識を芽生えさせた。 ゆっくりにしてみれば、それだけで十分。 「ゆ! わかっちゃよ! じゃあおねーしゃんがしゃきにとぶよ!」 まずは自分が飛ぶ。危険なことを先に妹にやらせるわけにはいかない。 自分が飛んでいる間に、他の姉妹が別のアイデアを練ってくれるかも知れない。 「だめりゃよおねーしゃん! れいみゅがしゃき!」 「……ゆっ!?」 「れいみゅがしゃき! おねーしゃんはおねーしゃん! みんにゃのしょびゃにいちぇね!」 赤ちゃんれいむの振り子の動きが、速く大きくなっていたこともある。蔦がもう持たないかもしれない。 そんな理由もあったが、今口にしたことが一番の理由。姉妹の精神的柱になっていて欲しい。 大きく動く右側の赤ちゃんが、蔦から離れるのも時間の問題だということもあり、長女れいむは困ったが納得した。 もうこの赤ちゃんれいむは飛ぶしかないのだ。 「そりょそりょいくにょ……!」 前、後。前、後。前、後。前、後。前……。 勢いは十分。よく見ていてね、と姉妹に言う。次に飛ぶ姉妹の参考になるだろうから。 もし失敗しても、とは言わなかった。 この回で飛ぼう。決意が鈍らないうちに。 ……後。勢いを利用して前に出る。いける、いくしかない。ゆっくりするために。 そのためには、前方の頂点に達するより先にやらなければならないことがある。 加速を得た赤ちゃんれいむは、勢いの力を借り頭部に力を入れて――蔦を切り離した。 「ゆぅぅぅぅぅぅぅっ!!」 宙を舞う。 蔦という枷から解き放たれ、より前へ。 「ゆゆっ!? ゆーっ!」 赤ちゃんまりさはみた。背後にいた姉妹の背中を、勇気ある姉妹の姿をみた。 「がんばっちぇ!」 「ゆ! れいむのあかちゃん? あかちゃんとんでるの!?」 「れーみゅのおねーしゃんおしょりゃをちょんぢぇるにょ!」 「いきぇぇぇぇ!」 長女れいむと、その傍にいる赤ちゃんれいむが激を飛ばす。 お母さんが自分の姿を見てくれている。 「ゆゆーん! ゆぅぅぅぅーん!!」 飛んでいた。皆の思いに支えられ、何物にも邪魔されることなく飛んでいた。 目指す場所が近づいてくる。いや、自分が近づいているのだ。着地するために。自由を得るために。 壁が近くなる、もうすぐだ。……壁? 赤ちゃんれいむは気付いてしまった。高度が落ちているのだ。 「――ゆびゅっ!」 失敗は激突によって告げられ。失敗の結果は落下。 2cm……いや1cm高ければ、運命は変わっていたかもしれない。 だが最初のチャレンジャーの挑戦はもう終わり。もう二度と挑むことも、ゆっくりすることもない。 また1匹、姉妹がゆっくりできなくなってしまった。信じたくはない。が、赤ちゃんれいむがぶつかった場所には染み。 皮肉な話だが、それが赤ちゃんれいむの生きていた証となっている。“生きていた”、だ。 「ゆ~? れいむのあかちゃんどっかいっちゃたよ?」 赤ちゃんがどこにいったのか、不思議そうな母れいむ。 もうここにいない姉妹を思って、残った赤ちゃんゆっくりは泣きたかった。 「ゆ! でもいいよ! れいむはゆっくりまつよ! つぎはだれ!? れいむにおかおをみせてねあかちゃん!!!」 子供とゆっくりしたくてたまらない、そんな母の和やかな声が、赤ちゃん達の悲しさと申し訳なささを増加させる。 残るは3匹。その内の1匹、全姉妹の中で最後に目覚めた末っ子れいむの、感情は決壊寸前。 「まりしゃがいくよ!」 「……ゆ?」 外に流れ出してしまいそうな、末の子の感情を押しとどめたのは、まりさであった。 まりさがやるんだ。体を前後に振り、飛ぶための加速を得ながら、まりさは思う。 もう1匹のまりさは、自分を励まし皆を元気付けた。 飛んだれいむは、先に行くことと意思をみせた。 勇気あるものの行為は、皆の勇気をも奮い立たせる。誰かが笑えば皆も笑える。 まりさはそれがまりさの生き方なのだと、ゆっくりまりさのあるべき姿なのだと、そう心で理解した。 「……ゅ……まりしゃおねーしゃん……」 「まりしゃ!」 「ゆん! ゆん! ゆ……っん! あんしんちちぇね! まりしゃのかりぇーなちょーやくにおどりょいちぇね!」 誰も泣かせない。だから自分も泣かない。不敵に笑う。皆が笑える先を作るために。 泣き虫まりさはもういない。先に行ったまりさを見たとき、皆が誇りを抱き、先に進もうと思える、そんな背を持つゆっくりになるんだ! スポンという音が聞こえた気がした。すぽん、かもしれない。 結論だけいえば、決意をしてからのまりさは最期まで泣かなかった。二度と泣くことはなかった。 「…………」 「…………」 あまりにも唐突。残された赤ちゃん達は、流れるように起こった事象に、泣き出すことも叫ぶこともなく、ただ呆然とする。 理解が追いついてこない。いや、少し時間を置き何があったのかの理解はできた。理解したくないだけだ。 だが現実はそれを許さない。目の前では、蔦にぶら下がった黒いとんがり帽子が揺れている。 振り子運動を繰り返すのは帽子のみ。視界から帽子が消え、また戻ってくる度に、帽子の下にまりさがいるのではと――そんなことはなかった。 残る姉妹は2匹。 長女れいむと末っ子れいむ。6匹いた姉妹の中で、一番近い距離にいた姉妹だ。 「れいみゅ……」 長女れいむは悩む。 自分は飛ぶ気でいる。姉妹の行為を無駄にしないために、残された者の務めとしてゆっくりする未来を勝ち取るために。 妹を残して飛ぶのは気が引ける。もし自分が失敗すれば、末の妹だけ残していくことになる。 母も残っているが、自分以外の姉妹がいなくなってしまったという悲しさに、彼女は耐えられるのだろうか。 現に今も、小さく揺れる黒い帽子を眺めたまま動かない。や、無言で小刻みにぷるぷると震えている。 ゆっくり達は知るよしもなかったが、長女れいむが最初に目覚めた事から、年長者の責任に目覚めたのと同じ様に―― 末っ子は最後に目覚めたことと、長女れいむがそばにいたことで、他の姉妹より精神が幼く、他者にやや依存する傾向があった。 そんな理由を長女は知らないが、妹が残されることに耐えられるとは思わなかった。 ならば自分が横で見守り、励まし、助言を送りながら、妹を先に飛ばせるべきか? 否、先に飛んでねといえば、彼女は泣くだろう。落ちていった姉妹の恐怖がこびりついている。 ならば同時に飛ぶべきか? 否、自分にあったタイミングで飛ぶべきだ。下手に相手にあわせて距離が足りなければ意味がない。失敗は許されないのだ。 ならば答えはひとつしかない。 「れいみゅ……ゆっくちきいちぇね……おねーしゃんがしゃきにとぶよ」 「――ゆゆっ!?」 末の妹の意識が、長女の言葉で現実に引き戻される。同時、妹の浮かぶ表情は驚愕。そして悲嘆。 「れーみゅをおいちぇかないぢぇぇぇぇ! いっしょにゆっくちしよーよーっ!?」 「……れいみゅ」 できることならそうしたかった。 あるいは別の方法を一緒に考えてもよかった。 ……今なら、2匹だけになった今ならとれる方法もある。 皆がいたときは言い出すことはできなかった方法。偶然にも残った2匹は、母の正面側に実った姉妹。 狙いをすまして落ち、母に舌で受け止めてもらい口の中に避難する。向こう側に飛ぶよりも安全な方法だ。 「だいじょうぶだよあかちゃん! おかあさんがいっしょだよ!」 「ほりゃ、おかーしゃんがいるよ? だかりゃあんしんちちぇね?」 安心できる声。お母さんの声に、長女れいむの不安も薄らいでいく気がする。 お母さんはきっと受け止めてくれるよ、れいむ。疑いはない。 けれど長女れいむは飛ぶことを選ぶ。先に進むべきだと、それが残されたものが受け継いでいくことだと思うから。 「れいむ……とぶのがこわかっちゃりゃ……おかーさんにうけとめちぇもらうんぢゃよ?」 「ゆっぐ……ゆっぐ……ゆっぐ……」 妹は聡い子だ。返事はなかったが理解してくれているだろう。 前に飛ぶために、加速を得るために、長女れいむは体を動かす。 お母さん――れいむ達を産んでくれて、うれしかったよ。 れいむ――長女である自分が浮かれていないで周囲注意をくばっていれば、あんなことにならなかった。ごめんね。 まりさ――本当は自分がしなければいけなかったのに、皆を引っ張っていってくれた。ありがとう。 れいむ――皆が見た背中はとても頼もしかったよ。勇気がでたよ。がんばるね。 まりさ――泣かなくなったね。自分だけじゃなく、妹の涙を止れる子になったね。つよいね。 れいむ――お姉ちゃんが飛んだら、れいむは泣きやんでくれるかな? 感情を込め、力を得る。喜びも悲しみも、立ち止まるためではなく、巡り巡って、前にただ前に進むための糧となる。 速く速く、強く強く、前へ前へ。 こんな状況でなければ楽しかったのだろう。だが笑う。快と長女れいむは笑う。 生きるために、妹に何かを残すために。 皆! 一度でいいから力を貸してね! 不出来なお姉ちゃんが、立派なお姉ちゃんとしてやり遂げるために! れいむは飛んだ。 高くより高く。 前へより前へ。 目指す場所へ、ぐんぐん近づいていく。高台より更に高く、長女れいむは宙を飛んでいる。 身を任すではなく、意志によりれいむは風になった。進むべき風に。留まることのない風に。 次は着地だ。飛ぶ時間は思うより短い、早々に心の準備を決め。衝撃に備える。 高さは十分だった。が、着地の構えによる動きのせいか、若干軌道が変わった。着地地点が僅かだが、台の端にずれる。 このままでは、着地の際にバランスが崩れ、落ちてしまう―― 「――ゆんっ! ぐぅっ!」 前へ。 体重と勢いを前半身にかけ、進むことの意志を押し通す。 鈍痛が幼いれいむの体を支配しようとする。否。ここで痛みに飲まれることも流されることも、否。 ここまで来た。ならば前へ。前へと意志を通す。落ちるわけにはいかない。 はねる。 勢いそのままに、地面に叩きつけられた衝撃が全身に駆け巡る。 前へ進むことを選んだ結果、直前で受身を放棄した結果がこれだ。痛みはあれど、後悔はない。 始めて触れる地面さんは固かった。それでも、触れれることが喜ばしかった。 ころがる。 れいむの体は台の外ではなく、内へ。 姉妹達の想いを胸に長女れいむは到達を成し遂げたのだ。 やったよ皆。やったよお母さん。やったよれいむ。れいむはやったよ。 地面さんは痛かった。でも、お母さんは柔らかいに違いない。妹と一緒にふかふかー、ゆっくりー!!! するんだ。 そうだ! 早くお母さんにれいむの無事な姿をみせてあげよう。れいむもお母さんのお顔をちゃんとみたい。 早く妹にもお姉ちゃんは大丈夫だよって言わなきゃ。妹を早く安心させて、ゆっくりさせてあげなきゃ。 ――泣きやんでくれたかな? れいむは妹の涙を止めてあげられたかな? 痛みが引き始めたれいむが、目を開けて見たものは、母の顔でも妹の笑顔でもなかった。妹の泣き顔でもなかった。 遠い遠い地面だった。 「ゆ~~~? れいむのあかちゃんきえちゃったよ?」 母れいむは、今度こそ自分の赤ちゃんを見失うことはないと思っていた。 今回飛んだ子は、視線をあげれば見える位置。頭上でぷらぷら動き出したときから、しっかりと目を離さなかった。 飛んで自分から離れた場所に乗るのもきちんと見た。のに忽然と消えたのだ。不思議だ。 だけど母れいむは楽しかった。初めてなる母親というのは新しいできごとばかり。 赤ちゃんは飛ぶ。赤ちゃんは消える。自分にはできないことだ。 母れいむも赤ちゃんだった頃があったはずだが、そんな経験は無い。でも、きっとできたに違いない。 「ゆ? ゆゆゆゆゆっ!?」 急に髪が痛くなった。少し重い気がする。 今までなかったことだ。これも母親になったからに違いない。赤ちゃん達ができたときも頭の上が重くなった。似ている。 「ゆーん……れいむどんどんおかあさんになっていくよー」 だらしのない笑みを浮かべる母れいむ。しあわせー。 これからはもっとしあわせーだ。母れいむは1匹だけではない、家族がいる。どんどん新しい発見と喜びがあるだろう。 赤ちゃんに色んなことを教えてあげよう。ごはんは美味しいよ。みんなで食べたらもっと美味しいかな。 「……ゆ? だれかよんだ?」 考え事の途中、赤ちゃんに呼ばれた気がして、母れいむは頭上の赤ちゃん達に訊ねた。返事はない。 気になったが、何度もしつこく訊ねるような事はしない。にんげんさんに教わった。れいむはいい子だからそれを守れる。 ああ、そうだ。そのことも赤ちゃん達に教えてあげないと。にんげんさん達にも可愛い赤ちゃんをみせてあげないと。 楽しい未来に想像をめぐらせる。母れいむが好きな遊びだ。にんげんさんは忙しいから、母れいむはこの遊びに興じることが多かった。 でも、もう1匹じゃない。早く赤ちゃん達と皆でゆっくりしたいな。母れいむは楽しみで仕方がなかった。 いつの間にか、髪の重みは消えていた。 ■点数発表 +0点:れいむ4、まりさ1、まりさ2 +1点:れいむ1 +2点:無 +3点:れいむ2 +10点:無 -2点:れいむ3 昼までに各自が選んだ3匹の得点合計合計をすましておきます 2位までが集めた参加費を使って食堂でタダ飯喰ってください シャレで作ったマイナスゾーンに落ちたれいむが勝敗を分けた わりと飛ぶもんですね飛びすぎたせいで暫定1位からビリ辛い このSSに感想を付ける