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この宇宙には、幾つもの並行世界があり、 そうしたものの中でも、現し世にもっとも近い世界の一つ それが鏡世・・・ またの名を 【 鏡 界 】 という。 それは、現し世に隣接し、 ことあらば人を飲み込み、吐き出す。 今宵、この鏡界に7つの客人が訪れた。 彼らはそれぞれ、譲れぬ願いを持っている。 ならば、その願い、叶えてあげようではないか。 安価式聖杯戦争のルール 安価式聖杯戦争の参加者データ一覧 登場人物一覧 セイバー組 コリエル12号・アナキン あまり声を出せないコリエルと、フォースで声を解することなく会話が出来るアナキンのペア 仲のいい組み合わせであった 自身の願いのために他者を犠牲にすることは自分の願いの否定だとして、聖杯を諦めた アーチャー組 真・ジャンパーソン お姫様に憧れる真と、正義を守る特捜ロボジャンパーソンの組み合わせ 真にとっては嬉しい組み合わせであっただろう 聖杯が使われる時、最後の場に現れなかったため、気がつけば帰還しているものと思われる ランサー組 オリヴィエ・アンク 今再びの命を望むオリヴィエと、命を求め死を受け入れたアンクの組み合わせ 互いに人外であり共通項も多く、互いを理解し合った 聖杯によって望みである受肉を叶えた ライダー組 アシュレー・牙狼 恋人の為に職場に異動したいアシュレーと、金色の黄金騎士牙狼のペア お互い人を脅かす化生を討つ生業なので気はあったようだ 最後は一度負けたアンクにリベンジを挑む、勝負の結果は・・・? キャスター組 千雨・スフィンクス オカルトに関わりたくない千雨と、インフェルシアの賢神スフィンクスのペア はじめはスフィンクスがなだめながら、後に千雨が自らの意志で歩き出した 聖杯の器となった少女を救うため願いを放棄、千雨の冒険はこれからだ! アサシン組 ミツルギ・スーパーX2 猫耳好きなミツルギと、(AAの都合で)狐耳なスーパーX2の組み合わせ 猫耳から獣耳全般に性癖を広げたミツルギはある意味勝ち組 戦争中何度も獣耳の良さを広めようと努力し続け、理想の嫁の姿を見て、轟沈したw バーサーカー組 ナッパ・ゴジラ 髪の毛が欲しいナッパと、最強候補であったゴジラの組み合わせ おそらく単純に見れば最強の組み合わせであった 安価の導きにより真っ先に脱落、その毛根を散らした イレギュラー組 新城・アマゾン 聖杯戦争に巻き込まれた少女を救いに来た二人 ただし参戦時は少女が聖杯になっていると知らなかった 無事に少女を救い出した十分な勝ち組
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おかえり聖杯戦争◆wd6lXpjSKY 夜の街を駆け抜ける二つの影。 夜科アゲハは奥歯を噛み締め、月に照らされながら北を目指していた。 靴裏とアスファルトの擦れる音が耳に残る中、彼は自分の記憶に振り回される。 「呑気に寝ている場合じゃねえ……!」 起床時には学園の崩壊という一報に驚き、覚醒せぬ頭では思考が回らなかった。 異形の化物の襲来により、考えるよりも先に身体が動いていた。 戦場へ向かう真っ最中であるが、火蓋が切って落とされるのは数刻先である。故に脳に安らぎの一時が生まれていた。 夜科アゲハの記憶に差し込まれるは主催者――天戯弥勒の声だった。 時計の針が十二と重なりし瞬間、彼の声が聖杯戦争の参加者に届いていたが、肝心の夜科アゲハは瞳を閉じ、寝てしまった。 「アサシンの脱落――人吉のとは別のサーヴァントが落ちた。 変な化物が動いていることを考えれば、昼よりも他の奴らが活発になっているのは明らかじゃねえか……っ!」 目覚めと同時に記憶に混在する天戯弥勒の声はやけに透明だった。 聞いていない言葉は間違いなく不純物である。他人に記憶を改竄されたような、一種のトランスに陥ったとも捉えられる。 しかし、感じぬ違和感が夜科アゲハの心を静かに侵食する。まるで聖杯戦争の記憶を自然と理解していた始まりと同じ感覚である。 「学園がぶっ壊れたってのはフェイクの可能性もあるが……テレビでやってんならマジだよな。 巨人がいたのも多分……今更俺らより馬鹿デケえ奴がいたって、ロボットが出ても不思議だなんてことはありえない」 太陽が昇っている間に通っていた学園の崩壊は、偽りの学び舎ながら夜科アゲハの興味を惹くには十分過ぎる情報だった。 複数の聖杯戦争参加者が集う規格外の火薬庫が弾け飛んだ。そう考えれば理解し難い話ではあるまい。 問題は戦闘が行われていたことである。彼は全てのマスターやサーヴァントと出会った訳ではない。 未だ見えぬ脅威、或いは仲間になり得る存在かもしれないが、何よりも圧倒的な情報不足である。 寝ていた自分を殴りたい気持ちに駆られ、過去に飛べるならば睡眠を妨害していただろう。 そして極めつけは―― 「俺は――落ちる前に全てを片付けてやる」 夜空を見上げれば満月が世界を嘲笑っていた。 天戯弥勒の言葉の幕切れは比喩でも無ければ、詩的に表した訳でも無かったのだ。 偽りないその意味は月が世界の崩壊を物語っていた。彼曰く聖杯戦争のリミットである。 世界の終わりが見えたこと。 聖杯戦争に新たな脱落者が現れたこと。 アッシュフォード学園が崩壊してしまったこと。 謎の巨人が現れたこと。 地震や津波の類が発生していること。 異形の化物が現れたこと。 ――金のキャスターの手先が接触してきたこと。 眠気を吹き飛ばすには充分だろう。 脳に叩き込まれた多くの情報が夜科アゲハの脳を刺激し、彼の意識を覚醒させる。 次に自分が行うべき行動は何か。場所は、敵は、味方は、天戯弥勒は――人吉善吉は。 大地を蹴り上げる足に自然と力が籠もる。 肌で風を切り、ちらほらと視界に入り込む通行人を避け、着実に北へ向かう。 金のキャスターによって操られた人間が怯えていたのは何故なのか。 幾つかのパターンが考えられるが、夜科アゲハの思考は唯一つの答えを最速で弾き出していた。 不敵な笑みを浮かべ、少々ではあるがこんな答えに満足してしまう自分に恥ずかしさをも覚えてしまう。 「辿り着けば、全てがわかるんだよ……!」 などと、思考を放棄出来ればどれだけ楽だっただろうか。 言葉では簡単に吐き捨てるが、彼の脳内は未だに出口の見えない迷路を彷徨っている。 情報の処理と理解を締め付けるは寝ていた自分への愚かさである。 少しでも動いていれば――状況は全てが変わっていたかも知れない。 彼は全てを知らず、未来の海賊王が固有結界を発動したことも、とある世界の頂点と天使と悪魔の世界に踏み入った二番手の決戦も。 世界の壁を超越した対立も、全てに出遅れている。彼がその事実に辿り着くことは無いが、取り残される感覚だけが心を埋め尽くす。 故に少しでも前へ。 北上すれば人吉善吉や金のキャスターとの接触する可能性が高い。 月が世界に迫ろうが、夜科アゲハの行動は変わらず、彼は己の為すべきことを――天戯弥勒の元へ辿り着け。 「そこら辺から盗ん……拝借してきたぜっ! 早く後ろに乗りな!」 考え事に夢中になっていたのか、夜科アゲハはバイクが並走するまでエンジン音にすら気付かなかったようだ。 横目を流せば相棒であるセイバー纏流子がヘルメットも被らずに、じゃじゃ馬に跨っていた。 窃盗に注意する筈もなく、夜科アゲハは右足を振り上げ宙へ跳び、纏流子が待ってましたと言わんばかりに軽くブレーキを握り締めた。 彼らは所謂、不良の類。窃盗の一つや二つ、違法走行程度に口を挟む人種とは掛け離れた存在である。 「飛ばしてくれ! 俺達の出遅れた分を一気に回収してくれ!」 「言われなくても飛ばしてやるさ、舌を噛むなよ手を離すなよ? そんじゃあ――飛ばすぜぇ!!」 夜科アゲハが後ろに跨った瞬間、バイクは唸りを上げ一瞬でフルスロットルへ。 アスファルトに焦げ付くは彼らの思いか、溢れ出る熱を表現するかのようだった。 「昼も大概だったけどよ、夜になると一層暴れてやがる」 「なあ纏、アサシンが脱落したって話だけど、他に何体のサーヴァントが落ちたと思う」 「あー……知らねえな。エスパーじゃねえし。でも、確実に他の奴もくたばってるさ」 「一応聞くけど、根拠はあるのか?」 「――しっかり捕まってろ、ちょいとこっちも暴れるぜ」 マスターの問を中断し、サーヴァントたる纏流子はハンドルを傾ける。 身体を襲う衝撃に夜科アゲハは顔を歪め、文句の一つでも言い放とうとした瞬間だった。 先程まで走っていた地点に何かが降って来た。 ハンドルから離れた纏流子の右腕が掴むは紅き鋏の片割れ――片太刀バサミ。 その刀身はハサミの冠に似合わず刀と同義かそれ以上。月夜を反射し紅に纏流子の鋭い瞳が浮かび上がる。 「ん~、誰だお前?」 不気味な襲来者を夜科アゲハは壊れた人形のような存在だと感じ取る。 人間を型どってはいるが、疎らに歪な造形、見た者を不安にさせるような表情や挙動。 寝起きの襲撃者はどこかファンタジーやメルヘンらしさを匂わせていたが、今回は違う。 生理的な恐怖や悪寒を引き立たせる存在は、奥に製作者の顔を覗かせているようにも感じてしまう。 「お前が誰だって話じゃねえかぁ!!」 空から降って来た人形が地面に着地する寸前の出来事である。 纏流子は片手運転で器用に体勢を整えたまま接近すると、空いた右腕を空へ伸ばす。 握られた片太刀バサミが振り下ろされ、人形はあっという間に一刀両断。 バイクが道路を走り抜け、からんころんと飛び散った部品が大地を転がる音だけが人形の結末を演出する。 「……なんなんだよ、あいつ」 「さあな。どうやら人違いっぽいから誰かを狙ってたみたいだったけどな」 「喋る服に戦国武将に悪魔に人形か……なんでもありだよな」 「わけが分からねえのがサーヴァントみたいなところあるからな」 あの人形はサーヴァントじゃないからな。 そう付け加えた纏流子は一切振り向かずにバイクを走らせる。 襲撃者は確実に誰かを狙っていた。それは恐らく創造主に命令されていたのだろう。 推測ではあるが魔力に反応しこちらを襲って来たのだろうか。 真実を包む闇を晴らすのは現状じゃ不可能だ。だが、下っ端を使役し暗躍している存在は認識した。 人形を使役するサーヴァント――話に聞いていたキャスターであろう。 金のキャスターとは異なる存在に纏流子は遭遇しておらず、ランサーである前田慶次らからの又聞きでしか把握していない。 しかし、碌でもない人物であることは確かであり、キャスターの英霊は揃いも揃って悪趣味な連中なのだろうか。 ふと夜空を見上げれば月。 生前の纏流子は大気圏を突破し宇宙へ到達したことを思い出す。 最悪の結末を迎える前に自分が正面から破壊することも視野に入れるべきだろうか。 などと考えていると、必要以上に黙るマスターに気を取られてしまいため息を零す。 「睡眠も大切だって」 「……うるせえ」 「出遅れた感じはあるけどよ、目的はドンパチすることか? 見境なしに喧嘩をふっかけることか? 違うよな」 いつまでもくよくよすんな、らしくない。 そう言葉を投げ、纏流子の笑いが風に流れて後方へ。 「絶対に姉キのところへ帰るんだろ? だったら止まらねえで、やることがあんだろ」 振り向いた彼女の口から歯が覗き、無邪気な笑顔を見れば夜科アゲハは考えることが馬鹿らしくなっていた。 最も自分のやるべきことを見失ってもいなければ、落ち込んでいた訳にも非ず。ただ、ケジメが必要だった。 睡眠の選択は戦局を長い目で見据えれば悪い訳ではなく、体力温存の面から考えれば最善の可能性すらある。 結果的に人吉善吉の捜索を打ち切ったこと。言い換えればダチを見捨てたことが、夜科アゲハの心を静かに苦しめていたのかもしれない。 「そうだな……あぁ、そうだよな。 さっさと行こうぜ。俺にはやらなくちゃいけないことがまだまだあるんだ……こんなところじゃ止まれねえ」 「全くだ。これまで散々寝てた分を取り返してやろうぜ! 盛り上がっているところに悪いが、まだあたし達がいるんだよ」 人知れず輪から取り残された彼らがバイクに跨がり夜を駆け抜ける。 舞台を照らす灯りが増え、カーテンの切れ間から覗く役者も舞台に躍り出た。 だが、彼らが残っている。参加者にして唯一、主催者たる天戯弥勒を知る彼が残っているのだ。 之より戦場に帰還するは一人の男。 夜科アゲハ――沈黙を破り、再び舞台の上で踊り狂う。 【B-4/二日目・未明】 【夜科アゲハ@PSYREN-サイレン-】 [状態]魔力(PSI)消費(小) [装備]なし [道具]グリーフシード×1 [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。 1.北上し、地震の原因と金のキャスター、人吉を探す。 2.地震が人為的なものでなく、危険を感じたら避難する。 [備考] ※ランサー(前田慶次)陣営と一時的に同盟を結びました ※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。 ※ランサー(レミリア)を確認しました。 ※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました ※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』により、食蜂のマスターはタダノだと誤認させられていました。 ※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています ※グリーフシードを地球外由来のもの、イルミナに近い存在と推察しています。 【セイバー(纒流子)@キルラキル】 [状態]魔力消費(中)疲労(小) [装備]バイク@現地調達 [道具] [思考・状況] 基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。 1.北上し、地震の原因と金のキャスター、人吉を探す。 2.地震が人為的なものでなく、危険を感じたら避難する。 3.キャスターと、何かされたアゲハが気がかり 4.アーチャー(モリガン)はいつかぶっ倒す [備考] ※セイバー(リンク)、ランサー(前田慶次)、キャスター(食蜂)、アーチャー(モリガン)、ライダー(ルフィ)を確認しました。 ※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。 ※キャスター(フェイスレス)の情報を断片的に入手しました ※アゲハにはキャスター(食蜂)が何かしたと考えています。 ※アーチャー(モリガン)と交戦しました。宝具の情報を一部得ています BACK NEXT 067 We go! ……and I m home 投下順 069 とある少女の前奏曲 067 We go! ……and I m home 時系列順 069 とある少女の前奏曲 BACK 登場キャラ NEXT 064 きっとどこかに繋がる世界 夜科アゲハ&セイバー(纏流子)
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はじめての聖杯戦争 ◆qB2O9LoFeA 「おっ、いらっしゃいませー。」 その人物――便宜的に彼と呼ぼう――が最初に見たのは青い髪の少女が事務用らしいデスクの前でにこれまた事務用らしいイスに座って煎餅を食べている光景だった。 白一色の廊下。そこにデスクを挟んで立っている彼の顔を見ると「おぉっ!?もしかしてもしかすると‥‥」などといって少女は古めかしいMacを操作する。「とうとうあの世界から」とか「でも勝ち残れるかなー」とか「まあ予選次第かな」などと一人で呟いている。それに彼が困惑して声をかけようとしたとき、これまた古めかしいPHSが音を立てた。 「モッテイーケッサイゴニッワラッチャウーノワッアタシノハッ↑ズッ↑ピ。あ、もしもし?そっちもういれちゃっていい?うん、うん、なんかペース早くなってきたね。うん、そろそろルーラーさんにシフト代わるよ。んじゃねー。」 懐かしの着ウタならぬ着メロを響かせたPHSを切ると少女は彼に向き直りニッコリと笑う。 「おめでとうございます!こちらは第1回ムーンセル聖杯戦争受付です!詳しくはこの廊下の突き当たりにあります面接会場でご説明致します。あ、それとパンフレットどうぞ。」 そう言うと少女はデスクに山積みされた二つ折りの冊子を彼に渡した。彼の困惑は深まったが別の場所で説明するといわれた以上素直に従うのは彼の性格がそうなのかそれともこの異様な空間がそうさせたのか。 とにもかくにもデスクの横を通りすぎて彼は廊下を進み始める。少女の後ろにある段ボール――中には今手に持っているのと同じパンフレットがぎっしりと、恐らく百枚単位で入っている。それが何箱もあることを考えると千枚はおろか一万枚は下らないだろう。――に足をとられるも進んでいくが同じ光景を見続けているというのはつまらない。自然目線は彼の手にあるパンフレットへと向いた。 『第1回ムーンセル聖杯戦争~最強のマスターは俺だ!~』というタイトルの下で全身を金色の鎧で身を包んだ男が不適な笑みで腕組みしている写真が表紙だ。タイトル以外には『七番目のサーヴァントクラス決定!バーサーカー対ビースト完全決着!!』とか『スキルエラッタ プロトタイプルールとどこが変わったの?』とか『英雄王の英霊問答 第一回ゲストは仮面ライダーディケイドさん』とか『ついにあのエピローグが投下!?』などの煽り文句が並ぶ。 ページをめくると、左のページは七かけ二の十四のブロックに分けられていた。左の列にセイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー←NEW!と並びクラスなるものの簡単な紹介文が書かれている。右の列にはスキルなるものが存在し、それぞれがどういった効果を持つのかが書かれていた。なかでも対魔力は太字で書かれていて、『魔力の代わりとなるものを用いた攻撃にも対応しました!』などとアンダーラインまで引いて主張している。 そして右のページの英霊問答というやたらきらびやかでこころもち材質も違うページを読もうとしたとき。 ! 今までなかったはずの扉が目の前にあった。 振り返れば白い廊下が延々と続きその果ては見えない。どうやらこの扉を開けるしかないようだと彼は悟ると銀色のノブを廻して部屋へと入った。 「お待ちしておりました。」 部屋へと入った彼をイスに座って迎えたのは黒髪の青年だった。どうぞこちらへ、という言葉と共にパイプイスを指される。彼は先ほどと同じようにデスクを挟んで青年と向き直った。 「上級AIのルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと申します。」 そう言って頭を下げるとルルーシュは「規則ですので 価値 の測定を」というとその目に謎の紋様が浮かびすぐ消える。 彼はここがどこか、聖杯戦争とはなにかを尋ねる。それを聞いた青年、ルルーシュは一つ一つ説明を始めた。 「聖杯戦争とは今回我々『第1回聖杯戦争実行委員会』が主催を勤めます『第1回ムーンセル聖杯戦争~最強のマスターは俺だ!~』の略称です。」 「聖杯戦争は聖杯、つまり願望器の所有権を奪い合う戦いです。参加者の皆様には聖杯が再現した英雄をサーヴァントというプログラムとして操り、そのマスターとして最後の一組になるまで戦っていただきます。そして最後の一組には我々『第一回聖杯戦争実行委員会』から聖杯の所有権を譲渡いたします。」 「次に聖杯について説明します。聖杯は量子コンピューターを魔術的概念によって運用している自動書記装置です。地球が誕生してから地球に関する情報を全て記録しつづけています。それによって過去の英雄を再現することができるのです。」 「英雄を再現する際、一定の書式に基づいて再現されます。お手元のパンフレットの2ページを御覧ください。当聖杯戦争ではその七種類の書式に基づきサーヴァントという形で再現いたします。」 「マスターはサーヴァントを令呪と呼ばれるプログラムを用いることで使役できますが通常サーヴァントは自由意思を持ちます。サーヴァントの行動を強制させる場合令呪を一画以上使用してください。なお、一人のマスターには三つの令呪を予選参加時に支給いたします。令呪を全て使いきる、またはサーヴァントを失う等した場合マスターのデータは失われます。」 「今回、記念すべき第一回目の聖杯戦争を行うにあたりまして広くマスターの参加を募りました。有形無形問わず様々な伝達手段を試した結果、我々の予想を大幅に越える参加希望者が現れました。ですが、一度に適正に管理できるサーヴァントの数には限りがあります。そこで当聖杯戦争では臨時に予選を開催することになりました。」 「予選会場は『札幌』『仙台』『東京』『名古屋』『大阪』『高松』『博多』の七つの臨時サーバーで行われます。会場はそれぞれサーバー名の都市を再現しており、現地に配置されたエネミーを撃破することなどで本選参加のマスター及びサーヴァントを決定いたします。」 「お手元のパンフレットの四ページを御覧ください。そこに書いてある番号が参加希望者のIDです。参加希望者は聖杯戦争に道具を持ち込むことができますが、公正を期すために一度だけ元の世界に帰ることができます。その際再び聖杯戦争に参加するためにはお手元のパンフレットが必要です。また元の世界での準備期間は二十四時間とし、それ以上時間が経過した場合パンフレットが自動で消滅しますので遅れることのないようお気をつけください。また持ち込む道具は手に持てる範囲でお願い致します。浮遊、飛行できる物は持ち込む際それらの機能を無効化して検査いたします。ご了承ください。」 「参加希望者は予選開始まで一時データを凍結させていただきます。その後解凍の際一時的な記憶障害を起こす可能性がありますがただちにデータに影響はないものと考えられます。ご了承ください。」 「聖杯戦争のルールは事前に参加者への予告なく変更する場合があります。ご了承ください。」 「当聖杯戦争における参加者間のトラブルに『聖杯戦争実行委員会』は一切責任を持ちません。ご了承ください。」 「それでは さん。一時元の世界に戻られますか?もしくはデータの凍結に移りますか?」 「ルルーシュくんお疲れ~、さっきの人どうだった?」 「‥‥その名で呼ぶな連絡用AI。モデルと俺は関係ない。」 「えぇ~、でも運営用AIって言いにくいし。でどうだったの?」 「元の世界に帰ったよ。たぶん戻ってこないだろうな。」 「え!せっかくあの世界から来たのに!?あの世界ってたしか――」 二つの上級AIの会話する姿は、見るものが見れば既視感を得られるだろう。 もっとも所詮はただのデータ。ムーンセルが観測した人物の劣化コピーでしかない。 ムーンセルが外部の願望器と接続してもっとも興味を引かれたのは自らと似通った願望器だった。 その願望器は何万という人間のデータを集めその一つたりとも元の世界に帰ることはなかった。はずだった。 ある三人の人間の例外が発生するまでは。 そしてその願望器は、その例外が発生してすぐに消滅した。そのことは聖杯にあるシミュレートを行わせる。 なぜ聖杯は消滅したのか。 ムーンセルはその現象を観測するために動き出す。万全のセキリュティを整え、規格外の人数のマスターを集め、外部の願望器と接続しデータを集める。 そしてムーンセルは考えうる最高のAIを用意した。もっとも優秀でもっとも変化をもたらすであろうNPC達を。 ぶん、という音と共に突如二人の周囲が暗くなる。それを見て連絡用AIはため息を吐いた。 「ねぇ、セキリュティに廻すリソース減らさない?最近なんか体調悪いんだけど。」 「ただ処理落ちしているだけだ。何も問題はない。」 「いやいやいやまずいですよまだ予選も始まってないのにこれは!また『札幌』サーバー落ちてるし壊れるなあ‥‥」 「‥‥もうすぐ試験用に動かしている他のサーバーのテストが終わる。そちらのリソースを回せば対処は可能だ。」 「まあ元は全部ムーンセルだしね‥‥あっそうだ。エデンバイタルのことなんだけどやっぱりうまく接続できなかったよ。あっちの聖杯の消滅からアクセスができなくなってるみたい。神崎とローゼンは陽介くんが探してるけどなかなか見つからないっぽいね。あとアカシック・レコードはものすごい簡単にアクセスできたよ。『聖杯戦争やるのか!またあの殴り合いが見れるんじゃなっ!』ってムルムルって子が言ってた。やっぱ好きなんだね。」 「やはりムーンセル以外にもあの現象を観測していた存在はいたか。願望器ならありえるとは思っていたが‥‥」 外部との接続を強めるにしたがつてムーンセルはそのセキリュティを強めていった。それは同時に次々と現れる参加希望者達に対処するためでもある。 ムーンセルは、聖杯の消滅はウイルスの感染によるものという可能性を考えていた。あれだけのデータを集めれば悪性情報が紛れ込む可能性もある。それを考えたムーンセルは、その手足となりうるルルーシュこと運営用AIにセキリュティの強化をさせたのだ。 もっとも機能が違う連絡用AIにはそんなことはわからないしわかったとしても強化しようとは思わなかったが。 運営用AIは鳴り始めたPHSを手に取る。受付からの連絡でこちらに新たな参加希望者が向かっていることを聞くとしっしっと邪険に連絡用AIを追い払う。くちびるを尖らして出ていくのを見届けるとそれは天井を見上げた。なんとなく先程よりさらに暗くなっている気がするが彼にはそんなことは些末事。重要なのは聖杯戦争を滞りなく行うこと、そのためにセキリュティを万全にすることだ。 「全てはムーンセルのためだ。」 彼はそう呟くと扉に目を向ける。今まさにドアノブが廻り人が入ってくるところだった。 「お待ちしておりました。」 そう言うとそれは新たな参加希望者にパイプイスを指しめした。 《第二次二次キャラ聖杯戦争、登録開始中》 《主催者》 主催:聖杯戦争実行委員会 【運営用AI@第二次二次キャラ聖杯戦争】 [思考、行動] 聖杯戦争を成功させるためにセキリュティを万全にする。 [備考] 処理落ちしています。 外見はCLAMPデザインな感じの魔眼持ってそうな草食系男子です。 【連絡用AI@第二次二次キャラ聖杯戦争】 [思考、行動] 聖杯戦争をもっと楽しんでもらうためにデータの収集につとめる。 [備考] 処理落ちしています。 外見は青髪ロングの貧乳がステータスなロリです。 【探索用AI@第二次二次キャラ聖杯戦争】 省略 【ルーラー@?】 省略 後援:願望器に関わりのある人たち [思考、行動] 聖杯戦争を楽しむ。別に参加者を送り込んでも構わんのだろう? [備考] 本編投下マダー?(・∀・)っ/凵⌒☆チンチン [備考] 舞台はムーンセル・オートマトン@Fate/EXTRAです。 登場話は予選に参加している扱いです。札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、高松、博多の予選会場が用意されています。演出に使えばいいんじゃないでしょうか。 NPCが存在しており日常生活を送っています。なお、予選会場の時間は2002年の八月です。 マスターは最初記憶を失っている可能性がありますが、仕様です。最初から令呪はありますが、サーヴァントの契約はしていません。しようと思えばいつでもできますしひょんなことで契約してもおかしくはないですね。 予選会場内にはエネミーが配置されていてそれを倒したりすると本選に出場できますがそうじゃなくてもいいみたいです。 演出に使えばいいんじゃないでしょうか。 監督役のルーラーはたぶんジャンヌですがもしかしたら他のサーヴァントかもしれないし全然違う二次キャラかもしれません。演出に使えばいいんじゃないでしょうか。 予選は2002年8月1日(木)から8月31日(土)までです。それまでに本選に出場できなかった場合消滅させられます。 外部を観測していること、参加希望者が多すぎること、それにともないセキリュティを厳しくしていることでムーンセルが処理落ちしています。AIもサーヴァントも処理落ちしています。結果的にセキリュティに穴が開いているかもしれませんがルルーシュがそのうちなんとかすると思います。 持ち込める魔術礼装などは手に持てる範囲でお願いします。生きててもいいです。個人的にはアインツベルンのホムンクルスとかいい感じです。 魔力を用いない攻撃にも対魔力が対応するようになるという明らかなチートが行われました。そこまでして三騎士を強くしたいのでしょうか。 後援は基本的に見てるだけの煽り担当です。つまりにぎやかしです。
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開催予定 FGO式第四章 6/2(日) 21 00~ 第十一次 ?/?() 21 00~ トレーラー Trailer from YouTube 貴方宛てに届いた、一枚の招待状。 《孔》の中に見える街。 入り乱れる真実(シリアス)と真実(ギャグ)。 零と全を内包する虚構世界。 或る少女の願いは聞き届けられ、優しき夢幻の杯を生む。 誓いと願いの交差点、想起するは《人類悪》。 思惑入り乱れる騒乱の果てに、遊戯聖杯を手にするのは、果たして―― ハウスルール ルール記載サイトの『サーヴァント』に記述のあるクラスは使用可能。 参加者間でのクラス被りあり。 1つ以上の令呪、もしくは6以上の英雄点を使った【スキル】は禁止(クラススキルを除く)。 2つ以上の令呪、もしくは6以上の英雄点を使った【宝具】は禁止(令呪1つ+英雄点5点も不可)。 【宝具】を3つ以上持ったサーヴァントは禁止。 同じ効果のマスタースキルは重複不可。 その他、ルールに沿ったシートであれば基本的に許可。 お助けサーヴァントルール 交戦フェイズ開始時、自陣営のサーヴァントの人数が相手陣営未満であった場合に宣言可能。 令呪を一画消費し、『Support Servant』という枠にいるサーヴァントを任意に一体選び同盟を結ぶ事が出来る。 「交戦フェイズ終了」「お助けサーヴァントの敗退」「同盟陣営の敗退」の条件が満たされた場合、同盟は破棄される。 また、以下の特殊ルールが適応される。 お助けサーヴァントは能力値に関係なく、交戦フェイズに一回「判定の振り直し」を行える。 同盟陣営はお助けサーヴァントに対し、令呪を使用できる。 セッションログ・FGO式 第一章「生死逢瀬境界ヨモツヒラサカ」 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/59 第二章「冥焔呪怨戦争オケアノス」 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/62 第三章「表裏超越王国ワンダーランド」 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/63 第四章「虚数紅夢魔海エデン・パンタシア」 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/64 セッションログ・冬木式 第一次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/34 第二次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/35 第三次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/36 第四次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/37 第五次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/38 第六次 Twitterにて行われたセッションです https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/39 第七次 ログ喪失の為掲載不可。 第八次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/40 第九次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/41 番外・夏 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/42 第十次 https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/57 世界観 この酔狂な聖杯戦争が行われる空間は、通常の世界線とはかけ離れたところにある。 並行世界の狭間に浮き、「世界のどこでもない場所」としてあらゆる世界と隔絶されているのだ。 また、この空間はその主の意志により門を開き、どこかの並行世界から人を連れてくることもできる。 そのため、この聖杯戦争は世界線の如何を問わず受け入れる。 もしかしたら、誰もが思いもよらぬ邂逅も在り得るかもしれない。 人物 謎のヒロインT 【年齢】不明(外見10代後半) 【性別】女性 【所属】なし 並行世界の狭間に浮かぶ空間、固有結界「遊戯聖杯」の主。 魔術協会もその動向を追い切れておらず、現在に至るまで素性は不明。 規格外の魔力炉とあらゆる魔術を使いこなし、現代の魔術師はおろか、単体でサーヴァントを圧倒しうる実力を備える。 一説には、過去に時計塔天体科にて観測された「全世界における大気魔力の増幅現象」に関係があると目されている。 アルターエゴ 【年齢】不明(外見10代前半) 【性別】女性 【所属】なし ヒロインTが従える、探偵風の装いのサーヴァント。 一見するとその霊基の強度は普通の少女と大して変わらず、本人も自身を「ただの少女」と評している。 マスター曰く「最終抑止装置」とのことで、普段は街を模した結界内のカフェで紅茶を啜っているらしい。 その他の設定 固有結界「遊戯聖杯」 謎のヒロインTの固有結界。 彼女の主催で行われる聖杯戦争の舞台として設定されており、小さな街と同規模の空間を備える。 また、街としての各設備(店舗、工場、駅など)はすべて整っており、現実における街と何ら変わりのない風体となっている。 この空間内に生命体はおらず、街の営みはすべて人型を模した擬似生命が行っている。 擬似生命の再現度はすさまじく、傍から見れば言動共に人間そのものにしか見えないほど。 但し、これらは結界内でのみ作動する仕組みのようで、使い魔などとして外に出すことは行われない。 霊地は街の中央にある湖。 魔力を含んだ水で満ちており、これを摂取することで失われた魔力の回復などを行える。 Café de Graal 結界内に存在するカフェテリア。 席数はそれほど多くなく、レトロな装飾と店内音楽のジャズ・ミュージックが落ち着いた雰囲気を演出する。 この店は監督役が直接運営しているらしく、聖杯戦争中は中立地帯となっている。 そのため、監督役を頼る場合はここに行けば出会えるだろう。 オススメ商品は、ハニーマスタードが食欲をそそる「バゲットサンド(ハムチーズ)」で、お値段は390円。 紅茶は常駐する少女の趣向で最高級のブランド品となっている。
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開催予定 2019.8/9~:7名、フルメンバー形式聖杯戦争、上演・現在終幕 誘いしは白百合の香 何処かの国の、何処かの場所。喧騒から離れた場所にある“私立リリウム女学院”で囁かれる、ひとつの噂。 「ねえ、ご存知? 何時かの日の夜、選ばれた生徒が、願いのために争う儀式があるんですって」 荒唐無稽なそれ、けれどいつまでも、学院に伝わるささやかな、噂話。 「仮初の楽園へようこそ、乙女達」 「――さあ、聖杯戦争を、はじめましょう」 ――とある夜、其の女学院の秘密の扉は開かれる。 回想 初演 公演記録:https //ux.getuploader.com/onsenfatetrpg/download/66 +初演出演者 初演出演者 中等科3年生 E組:若村 あゆか / セイバー 高等科1年生 N組:ヨツハ・ミユキ / アルターエゴ W組:朝潮 涼風(生徒会) / アーチャー 高等科2年生 E組:美空・A・ビゴー / ライダー 高等科3年生 N組:新絹 久遠 / ランサー S組:キャトーズ・ジュイエ・ソーシア・スーエ(生徒会会計) / アサシン E組:アデーレ・グラシーズ(クラス委員長) / キャスター 世界観・設定 私立リリウム女学院 何処かの国の何処かの場所、喧騒から少し離れた郊外にある全寮制、中高一貫女子校。 幼稚舎~大学まで存在しているが寮制度は中高のみ。特別な理由がある場合を除き、基本的に中高生は寮暮らしとなる。 クラスは各学年4つ、N組、S組、E組、W組。挨拶は“ごきげんよう”が指定されているがその実、良家子女のみではなく一般家庭の女生徒の受け入れも広く行っている。 ……魔術師の家系、或いは無自覚ながらも其の素質を有する女生徒が多いとか。 “白百合聖杯戦争”の舞台は本校舎・新校舎からはやや離れた旧校舎付近の庭園。妙に広い。 白百合聖杯戦争 “願いを叶える為の儀式”として、生徒の間でまことしやかに囁かれる噂話。 参加資格を有するは心に何かしら願いを抱く者、或いは“主催者”の気まぐれで選ばれた学校関係者。 資格を有する者の中からランダムで送られる“招待状”の下部“参戦”の項へと丸をし、自筆のサインを添えて、寮の自室の机の引き出しに入れておく事で参戦が可能となる。 後日届く“本案内”に従い前日までに各自指定された時間・場所にて召喚の儀式を行った上で本戦会場へと向かう必要がある。 全て本案内にて書かれている手順で行う事で恙無く全ては終了する。 招待状 百合を象ったシーリングスタンプで封がされ、校章の添えられた白い封筒にて寮室、或いは住まいへと送られる手紙。 開けると微かに、花の良い香りがする。 願いを、祈りを、此処に。 世界は再構築される。全て、全てはゼロに。 そうしてこれは 始まりの――
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小規模聖杯戦争 ここではプレイヤー人数が2~4人で構成される「小規模聖杯戦争」における特殊ルールを解説します。 小規模聖杯戦争では、セッション時間の短縮のため、クリンナップフェイズでの令呪、運命点の使用を禁止とします。 それ以外は全て通常のルールと同じです。
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亜種聖杯戦争の設定 "聖杯大戦"その後、魔術協会は、その地の管理の権利を手に入れた。 その地では、"大聖杯"の喪失により、霊脈の均衡が乱れた。 そして、偶然にも、その地には、数十もの聖杯を呼び出すだけの魔力を有してしまった。 だが、"大聖杯"無くては、今後正規的な聖杯戦争をすることはできない。 ───ならば、"大聖杯"の復活の為に、霊脈の高いこの地を、"召喚の地"としりよう。 ───ならば、この地に別の"聖杯戦争"が起きないために、"亜種聖杯戦争"と名を騙り、"聖杯戦争"を続けよう。 そうして、魔術協会は"亜種聖杯戦争"を始めた。 シスターK シスターKの正体は、ブカレストの調停者(ルーラー)。 彼女は、聖杯に呼ばれたサーヴァントである。 彼女は、"聖杯戦争"に、干渉する気はない。 ───彼女は、只、籠の中で祈り続ける。 謎の男 coming soon ●■▲聖杯大戦 coming soon
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月を望む聖杯戦争 ◆Ee.E0P6Y2U ……月が綺麗な夜だった。 彼がその坂を登るのは何度目だっただろうか。 僅かに息荒くしながら彼はたった一人で歩き続ける。 その途中風が吹く。道沿いに生い茂る木々がざわざわと生き物のように揺れた。 こんなにも涼しくて気持ちの良い夜だというのに、彼の身体はじっとりと汗ばんでいる。 この山のせいかな。 彼は学生服の襟元を正しながら思った。 その視線の先には延々と続く坂道だ。艶のないアスファルトの道が月に照らされぬっぺりと浮かび上がっている。 ゆるやなに蛇行しているため坂の上に何があるかまでは見えなかった。 こんなにも長い坂道では帰るのも一苦労だ。 この山の上には幽霊が出ると噂の屋敷があるが、幽霊だってこんな山の上には住みたくないに違いない。 と、そこまで考えたとき、あんな坂は山とは認めない、といっていたクラスメイトを彼は思い出した。純朴だが、変な奴だった。 実際、山というのには少し無理があった。それなりに長く、それなりに急な坂であるが、それでも一時間もあれば登り切れてしまう。 だから疲れはするが、別に登れない訳ではない。特に今日は月が綺麗だ。 彼は空を見上げた。都会の雑踏から逃れくっきりとその存在を示す星々の中心、漆黒の夜を背景に真ん丸と光る大きな月がある。 あれはきっと満月だろう。彼は理由もなく決めつけた。 あれがあるから今日は楽だ。実際、深夜にこの坂を上るのに道沿いに備えた電灯では少々心もとない。足下が見えるだけ楽なのだろう。 空を見上げる彼の頬をと不意に風が撫でた。熱がすう、と引いていくのが分かった。 寒いとまではいかなかったが、汗ばんだ体に冷えた風は少し堪えた。 早く帰った方がいい。 冬はまだ遠いとはいえ、こんな夜<じかん>なのだから。 そう思い彼が足を進めようとしたとき、 「……あら」 ――美しく響く銀色の声を聞いた。 そこには一人の少女がいた。 金色に光る瞳は夜の中浮かび上がる。その肌はぞっとするほど白い。 そして、おかしなくらい美しい月に照らされ、その銀色の髪は艶やかにきらめいた。 声は出なかった。 その美しさに見蕩れたか、少女の持つ妖しげな雰囲気に気圧されたか、彼は呆けたように彼女を見ていた。 「こんなところで“マスター”に出会うなんて、少し意外でした」 が、対する少女は素っ気ない。自分との邂逅を、意外と言いつつも何でもないことのように語った。 吹きつける風に真っ黒な服が音を立ててたなびく。そこでようやく彼は少女が法衣服を纏っていることに気付いた。 シスターなのだろうか。そんな、あまりにもぼんやりとした印象を、彼は抱いた。 ひゅうう、と風が吹いた。 少女の髪が舞った。銀色が月光に溶け込むようだった。 吹きつける風に彼は身体を震わせる。 ……今度ははっきりと寒気を覚えた。 早く、早く帰らなくてはならない。 「…………」 だが彼は足は止まっていた。歩くどころか、指先一つ動かせない。 だって、少女が見ているから。 金色の瞳はまっすぐに自分を射ぬいている。その無機質な視線は、あたかも自分の価値<バリュー>を測ろうとしているかのよう。 見竦められた彼は不思議な息苦しさを覚えた。ここにあるだけで、何か罪を覚えているかのような、奇妙な居心地の悪さがそこにはあった。 少女がシスター服を着ているから、なのだろうか。 彼は手に持った学生鞄を手放さないようぐっと手を握りしめた。 教科書やら新聞部の資料やらの、ずっしりとした重みが少しだけ心地よかった。 「いえ。どうやら貴方は“まだ”のようですね」 ……しばらくして、少女は興味を失ったように彼から視線を外した。 そしてふぅ、と息を吐く。そこには僅かに失望の響きがあった。 「“マスター”でないのなら、私に会ったところで何も意味がありません。 少し早かったですね、私に会うのが」 少女はそう言ったきり、彼の方を見なかった。 その言葉の意味は分からない。 自分が何か失敗したのだろうか。 ……そう思いはしたが、それ以上に視線から逃れられた安堵が大きかった。 彼はほっと胸をなでおろす。降りかかっていた圧迫感から逃れられたようだった。 彼は迷いつつも、再び歩き始めた。 何かを探すように坂を見つめる少女を無視して、彼は帰ろうとする。 もうこれ以上、彼女の前にはいたくなかった。 「ああ、それと一応」 すれ違いざま、少女がぽつりと漏らした。 「名乗っておきます。今の貴方には無用の情報でしょうが、近いうちに必要になると思われますので」 彼はもう少女を見ていない。恐らく少女も彼を見ていないだろう。 淡々と仕事をこなす、事務的な素っ気なさで彼女は言った。 “――――――カレン” 機械を思わせる冷淡な口調でありながら、しかしその名は、人を思いやる上質な音楽のように胸に響いた。 「カレン・オルテンシア。私の名前です」 そう彼女は名乗り、そして去って行った。 夜道はくれぐれもお気をつけを、と最後に付け加えて。 そうして彼は歩き続ける。 凍てつくよう月の光を受け、彼は一人歩いていた。 結局彼は、少女に対し一言も喋ることができなかった。 ◇ そうして坂を上り切ると、そこには大きな門があった。 例の幽霊屋敷のものだろう。その門は、来訪者を拒むようにそびえ立っている。 錠前はついていないようだった。入ることだけなら、誰でもできるだろう。 本当に人が住んでいるのだろうか。 門の向こうに続く薄暗い林道を眺めながら、彼は少し疑問に思った。 幽霊だって住みたくないだろう、と先程は思ったが、 それこそ幽霊でもなければこんなところ、住めないのではないだろうか。 彼は何となしに門に触れた。ぎぃと錆びついた鉄の音がする。 硬く、冷たく、来る者を拒絶するような門。しかしこの門はいま開いている。 迷い込む者を口を開けて待っているのだろう。人をおかしな世界にぱっくりと呑み込むことを、この門は待っている。 この先にいけば、きっと―― 風が吹き続けていた。 夜の林はいまや歌っている。あちらでも、こちらでも、揺れ動く木々が奇妙な音を立てていた。 彼は森全体がバケモノになった気がした。 バケモノはこうささやいている。 カエレ カエレ カエレ と。 「帰ら、なくちゃ」 ようやく彼は口を開いた。 その声は変に上ずっていた。自分の声だと言うのに、初めて聞いたようなおかしな乖離がそこにはあった。 それでも、自分がするべきことを確かめ、彼は門から離れ自分の道を行こうとする。 意を決して一歩を踏み出そうとした。 しかし、彼は幽霊を見た。 「え」 見て、しまった。 幽霊は森に現れた。 静まり返った夜の中、白い顔がぬうっと浮かび上がってきたのだ。 そのヒトガタは人と呼ぶには小柄過ぎた。膝までの丈しかないような小人が、闇に溶け込むような黒いローブを羽織っている。 ――真っ白な髑髏が夜の中浮かび上がった。 声は出なかった。悲鳴すら上げられない。 こんなにも近くにいるのに、今の今まで気配すら感じることができなかった。 その事実に彼はぞっ、と総毛立つ。 一秒もなかったと思う。 彼は一目散に駆け出していた。 学校<にちじょう>のものが詰まった鞄を放り投げ、去ろうとしていた異界への門を通り抜けた。 そして、とにかく走る。 走る。走る。走る。汗が吹き出て、視界が歪み、足が悲鳴を上げようと彼は走り続けた。 は、は、は、と彼は必死に息をする。 苦しかった。辛かった。しかし止まる訳にはいかなった。 止まればアレがする。アレは駄目だ。追いつかれれば、自分はただ死ぬしかない。 何故だか知らないが彼はそう確信していた。乱れぼやけ曖昧な意識の中にあって、その事実だけははっきりとしていた。 ――だってあれはサ雎ァ縺トじゃないか。サ雎ァ縺トに人は勝てない。それが聖h縺戦¥譁というものだろう、 彼は叫びたかった。助けて、と。 だが声は出なかった。言葉が見つからない。あるべきはずの言葉を、自分は知らないのだ。 ――メモリーを、預けた記憶を返してもらわなくては。 でも、帰らないと。カエラナイと。 その思いが意識を探る彼の手を邪魔する。 もう指先はかすっている。あとほんの少し、少しだけ手を伸ばせば、届くと言うのに……! 逃げ続けながら彼は必死に手を伸ばす。 あった筈の記憶へ、持っていた筈の想いへ、秘めていた筈の悲願へ、魔術師<ウィザード>としての力へ、 ただ生き残る為に。 だが、届きはしなかった。 だって、それよりも速く暗殺者<アサシン>が追いついてきたのだから。 そもそも勝負にすらなっていなかっただろう。 小柄な体を生かした俊敏な動きを長所とするサ雎ァ縺トに、ただの人間が逃げようなどというのは。 あれ、と彼は思った。身体が急に動かなくなっていた。 変な音がした。すると何故だか力が抜けて、気付けば鈍い音を立て地面に突っ伏していた。 ぎこちなく彼は首を動かした。すると大きな大きなお屋敷が見えた。ああこれが幽霊屋敷か、と納得する。古い造りをしたそれは、いかにもな外観をしていた。 事実幽霊が立っている。突っ伏した彼を見下ろし、手に持った刃をてらてらと赤く光らせながら。 「他愛ない。目覚める前のマスターなどこんなものか」 不意に、幽霊はそんなようなことを言った気がした。 笑っているような、泣いているような、奇妙な表情をした面が彼を無慈悲に見下ろしていた。 「本来はルールに抵触しているそうだが、これも主人の命令だ」 幽霊の言葉は遠い。目の前にいるはずなのに、ずっと向こうの方から聞こえているような心地がした。 どういうことだろう、と疑問に思ったが、すぐに答えが出た。 ああ、遠のいているのは自分の意識の方か。 幽霊が近づいてくる。その手には刃がある。 確実にトドメを刺すつもりなのだろう。万が一生き延びることがないように。 そうして死が彼に触れようとしたとき、 「そこまでです、アサシン」 凛とした声が響いた。 「一般NPCの大量殺戮は禁じられています」 遠のく意識を何とかつなぎ留める。少しでも気を抜けば持っていかれそうだ。 それでも彼は何とか顔を上げた。ここでオイテイカレる訳にはいかない。 そして、一人の聖女を見た。 「貴方は既に再三の警告を受けているので分かっているでしょう。 これはメモリー復帰前のマスターにも適用される条項です」 凛然と語るその姿は気品に満ち溢れており、その青い双眸には一切の迷いがない。 銀の飾りに収められた金色の髪、輝く甲冑とたなびく藍色。 何よりその手にあるものが異様だった。 それは旗だった。大きな大きな、背丈ほどもある旗を聖女は堂々と握りしめている。 「アサシン、ハサン・サッバーハ。今すぐに攻撃を止めなさい」 その警告には差し迫ったものがあった。 最後通告。聖女が決して悪を告発する際の、有無を言わせぬ戒めがあった。 それを前にして、幽霊は僅かにたじろいだようだ。トドメを指さんとしていた刃はぴたりと止まり、幽霊は聖女を見た。 対峙する二騎のサ雎ァ縺ト。 聖女と幽霊。それはまるで生と死を象徴しているかのようであった。 一対の狭間で、彼は必死に意識を繋ぐ。 ――ああ思い出してきた。 ――ここで僕がやるべきこと、やりたかったことは。 つう、と右腕に痛みが走った。 それまでのぞっとするほど冷たい刃の痛みとは違う、熱く煮えたぎる力を感じさせる痛み……! 強引に痛みを振り払い、彼は右手を掲げた。 そこには三画の光が灯っていた。見覚えのない奇妙な紋章。しかしそれが力であり印であり、何よりこの場にいる証明であることを彼はもう思い出していた。 「令呪……! いままさに“マスター”としての目覚めが始まっているのですか」 聖女が僅かに驚きを滲ませ、動きを止める。 その瞬間を見計らってのことだろう、幽霊の黒衣が静かに待った。 刃がきらめく。白の髑髏が目覚めつつある彼へ猛然と迫る。 「令呪を以て命じます――止まりなさい、アサシン」 が、それを聖女が制した。彼女がその腕に灯した光をかかげると途端に幽霊は動きを止め、ぬぅ、と唸り声をあげた。 「何故止める、ルーラー! その男はもはや一般NPCなどではない。この聖杯戦争の参加者たるマスターだぞ!」 「その判断は“裁定者”のサーヴァントである私が下します。 完全に記憶が覚醒しない間、彼はNPCであり保護対象になります。そして――」 不平を叫ぶ幽霊に対し、聖女はそこで一度言葉を切る。 一瞬の間が空く。その間に彼女は持ち合わせた溢れんばかりの容赦をすっぽりと置いてきたかのように、 「――アサシン。再三に渡る警告の無視した貴方は処罰の対象になります。 ステータス低下、令呪の剥奪等のペナルティを課します。貴方のマスターに伝えてください」 そう突き離すように告げた。 その言葉に幽霊は一瞬動きを止める。だが、一瞬だった。幽霊は何かに突き動かされるように再び地を蹴った。 その標的は地に伏せる彼ではなく、聖女。 「【空想電――」 聖女の下へと飛び込んだ幽霊はその左腕を解放せんとする。 空間がぐにゃりと歪み、そこから秘められた神秘が溢れ出る。そして聖女の命を奪わんと異形の腕が迫る。 「愚かな」 しかし、幽霊の神秘が届く前に、聖女は告げていた。 「令呪を以て命じます――アサシン、自害しなさい」 と。 聖女の掲げる光が迸ったとき、事は全て終わっていた。 幽霊は己の胸を自ら突き、末期の言葉一つも漏らすことなく静かに倒れた。 そうして再び森は静かになった。幽霊の身体は光に包まれ、その存在感を薄めていき、最後には跡形もなく消え去っていた。 騒いでいた木々も、耳障りなほどうるさかった風も、幽霊のように何時の間にか過ぎ去っていた。 月はたださんさんと輝いていた。そびえ立つ古屋敷の前で倒れ伏したまま、彼は手に届きそうなほど大きな月浮かぶ夜空を眺めた。 ――ああ、月が綺麗な夜だ。 そう思った時、またあの声が聞こえた。 「終わりましたか、ルーラー」 月と同じ色をした、凍てつくほど美しい声が。 揺れる銀の髪、人形のように美しい肌、映すものの罪を表すかのような澄んだ瞳。 カレン・オルテンシア。 闇の中より歩いてきたのは、会ったばかりのあの少女だった。 今度は法衣服ではなく奇妙なほど扇情的な漆黒の衣装を身に纏っている。 また、一枚の長い布が彼女を守るようにその身に絡んでいる。 紅い紅い、布だった。 「はい。結果としてアサシンを脱落させることになりましたが、まずかったですか?」 「いえ問題ありません。あれほどの警告を無視した以上、当然の処置です。 最後の攻撃はマスターの令呪でしょうね。あのアサシンも愚かなマスターを持ってしまったものです。 もっとも、そのマスターも今頃解体が始まっているでしょうが」 淡々と語るカレンらの声を、彼は現実味の薄い、どこか遠くのことのように聞いていた。 が、しかしもはや彼はそれを無視することができない。先ほどまでは全く意味の分からなかった言葉が、今や自分の身に迫った情報として頭に入ってくるからだった。 「……それで、彼ですが」 聖女――ルーラーと呼ばれていた少女が倒れ伏す彼を一瞥した。 その視線には傷つく者に手を差し伸べる慈しみが感じられたが、同時に聖女として確かな規範を重んじているような色があった。 「“マスター”として目覚めているようですね。令呪が刻まれ、記憶も取戻しつつある」 カレンが平坦な口調で言った。ルーラーのそれと違い、非常に事務的な響きだった。 「で、あなたはもう今の状況が分かるでしょう?」 頭上から問い掛けが降ってくる。 カレンのの声色は先ほどの、何も知らなかった頃に会ったときと何ら変ってはいない。 「……聖hィ戦争」 彼は声を絞り出した。その単語をひねり出すだけで、じん、と頭が痛んだ。 消された筈の、空白に上書きされた筈の言葉を思い出す。そんな矛盾が痛みを読んでいるのかもしれない。 「まだ記憶の封印が完全には解けていないようですね」 その様子を見てカレンがふぅと息を吐いた。 「まぁこうして覚醒の瞬間に居合わせたのも縁です。少し手伝ってあげましょう。 貴方が持っている筈の記憶をたどる形で状況を説明していけば、おのずと記憶の回復もできるでしょうし。 では、説明いたしましょう。この聖杯戦争――月を望む聖杯戦争について」 セイハイ、センソウ。 聖杯戦争。 その単語がようやく意識に浮かび上がってきた。 そう、それがずっと思い出せなかった。 届かなかった。 「聖杯戦争とは万物の願いをかなえる“聖杯”を奪い合う争い。 魔術師たちが己が望みを物にすべく七騎の“サーヴァント”を統べ競いあう。 あり大抵に言ってしまえば、万能の願望機を求め殺し合う。 そんなシステムのことです」 聖杯、サーヴァント、願望機……その単語が聞こえる度、脳みそをかきまぜられているような痛みが走る。 同時に、ああ、あの幽霊はサーヴァントだったんだな、と納得もしていた。 「サーヴァントとは聖杯がこれまでに観測し記録してきた膨大なデータから再現される、過去の英霊たち。 人類が生み出してきた情報の結晶。それを七つのクラスに当てはめる形で再現する。 セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカー……彼らサーヴァントを参加者たるマスターは令呪によって従えるのです。 このシステムは当初、それぞれ一騎づつ選出された、七騎のサーヴァントで行われていました」 ですがこの“月を望む聖杯戦争”は違います。カレンはそう淡々と告げた。 「この“月を望む聖杯戦争”で呼ばれるサーヴァントはその何倍にも多い。 二十……いえ三十に近いサーヴァントが呼ばれることでしょう。 それはひとえにあの月に依るもの。 地球をその誕生から観察し続け、地球上のあらゆる生物、あらゆる生態、あらゆる歴史、そして魂さえも記録してきた――月の聖杯。 ある者はそれをこう呼びました。 量子コンピュータが魔術的概念により実現されている自動書記装置。 “ムーンセル・オートマトン”と」 そして、とカレンは月を背に言った。 「ここは月を手にしようとする者が集う箱庭。月に停泊せし放浪者。存在しない筈の二番目の月。その観測のされ方は様々です。 月は観測者次第でいかようにも姿を変え得る。貴方方がここをムーンセルの付随物としてみたように、ある者はそれを方舟<アーク・セル>として見た。 しかし何にせよ意味は同じです。それは……月に到る階段<スパイラル・ラダー>」 月の聖杯、ムーンセル、方舟……理解が追いつかない。何しろ思い出しながら、だ。 それでも、彼は一つ分かっていた。 そうか、自分はいまあの月を目指しているのか。妖しくも美しいあの月に、手を伸ばしている。 「ここはムーンセルが観測した過去。月より降りそそぐ情報を受け船が造り出したユメ。 例えばこの屋敷。ここはかつて一人の魔法と使いと、一人の魔女、そして一人の孤独な青年が住んでいました。地名自体は白犬塚というそうです。 少なくともそんな可能性を持った並行世界があり、月は観測した。それを再現した場所。 ここでは月が識る、土地や歴史、木々、水、空、そして人間が再現されている。 どこでもあって、どこでもない、過去であり、未来であり、現在である」 そう、それが今回の聖杯戦争の舞台。 彼はようやく思いだしてきた。自分が何者であったかを。 「貴方がたは様々な方法でこの方舟にアクセスしてきました。 量子ハッカー、魔術師<ウィザード>として月を見つけた者、古来より伝わる魔術師<メイガス>として月に到った者、全く異なる並行世界の力より月を探し当てた者、はたまた月のきまぐれか何の能力もないのに呼びこまれた者……その手段は様々です。 鍵は様々なカタチで観測されました。それはある時はデータ上に浮かび上がるコードとして、ある時は聖遺物の欠片として現れ“ゴフェルの木片”として。 ただそれを手にし。参加者としてマスターとなった以上、何かしら願いを持っているはずです。 月を望み、月に到る。万能の願望機を願った貴方がたには先ほど告げたように殺し合ってもらいます。 ――最後の一人となるまで」 殺し合う。その言葉もまた、カレンは淡々と言った。 「そして、私たちはその監督役。聖杯戦争が滞りなく行われるかを裁定する者。 私とルーラーは参加者ではなく、運営に携わるものということです」 よろしくお願いします。 言ってカレンはぺこりと頭を下げた。 隣りに佇むルーラーも軽く礼をした。彼も挨拶をしようとしたが、それよりも早くカレンが口を開いていた。 「監督役として、助けを請われれば出来る範囲で応えましょう。円滑かつ平等に活動が行える取り計らいましょう。 ですが場合によっては警告と、そして制裁を下します。先ほどのアサシンのように」 今しがたルーラーにより脱落させられた幽霊――アサシンの姿が脳裏を過る。 ルールを破れば、ああなる。彼女らにはそうする力がある。 「もっとも、余程のことがない限り私たちは手を出しませんが。現状、一般NPCへの度を過ぎた無差別殺戮は禁じられていますが、それ以外で大きく動くことはないでしょう。 NPCの殺人も、よほどひどくない限りは何も言いません。サーヴァントの魔力源として魂喰いを行うこと自体は何らありません。 その他追加ルールがあれば随時お伝えします。ただしルーラーにはその権現、各サーヴァントへ二回まで使用可能な令呪があることを覚えていてください」 令呪。 その単語を聞いた彼は右手の甲に刻まれた三画の紋様を眺めた。 先ほどはぼんやりとしていた光も、今やくっきりと確かな輪郭を持ってその手に定着していた。 「令呪とは本来マスターとしての証、たった三回だけのサーヴァントへの絶対命令権。 それがあるからこそ、貴方たちはマスターでいられる。 逆にいえば、失われた時点でマスターとしての資格を失います。令呪なくともサーヴァントを従えることができるのなら別ですが、そうでないのならば強制的にSE.RA.PHより消去<デリート>されます。 それを手に入れるまでが“予選”でした」 “予選” 思わず彼は聞き返していた。 「“予選”です。全てのマスターはSE.RA.PHにアクセスした際、そのメモリーデータを封印された状態でアバターが生成されます。 聖杯戦争のことは勿論、魔術のことも、自分が秘めた願いのことも、全て忘れた状態でこの街で過ごしてもらいます。 その状態に違和感を抱き、記憶の封印を解き、自らマスターであることを思いだす。そのとき初めて令呪が浮かび上がるのです」 そうか、だから忘れていたのか。 自分自身のことを、こうまでも。 彼は不思議と腑に落ちた心地になった。 「それが“予選”。中には自分がマスターであったことを思い出すことすらできず、NPCとして埋もれていく者もいます。 そんな中、貴方は思い出しました。マスターとして、月に認められたのです」 おめでとうございます。カレンは平坦な口調で祝福の言葉を漏らした。 彼はそれを呆然と受け止める。 まずカレンの顔を見つめ、次にくっきりと浮かぶ令呪を見つめ、最後に蘇りつつある自身の願いを見つめた。 ――ああそうか、僕は……月を望んでいたんだな。 「記憶封印の解除と同時に、月よりサーヴァントが宛がわれます。 日常の違和感に気付き、心に刻んだ願いを思い出し、サーヴァントと契約する。 それが参加者に与えられた最初の試練」 胸が昂揚するのが分かった。自分はいま、喜んでいる。 最初の試練を、辛くも自分は突破したのだ。 「サーヴァントを手に入れれば、あとは残りのマスターを全て倒すだけです。 それだけで、貴方は月に到れる」 そんなこと簡単だろう、と彼は奇妙な自信に支配された。 先ほどの状況を突破できたのだから、あとはもう大丈夫、と。 根拠もなく思っていた。 カレンは顔色一つ変えず口を開く。 「ですが」 そこで、それまでカレンの隣で無言を保っていたルーラーが、どういう訳か顔を背けた。 「貴方にもうその資格はありません」 ――え? 「だって、貴方もう死んでいるもの」 ……その口調は相変らず平坦で、事務的で、淡々としていて、それでいで優しさやいたわりといったものを感じさせた。 彼はそこでようやく己の胸を窺った。 アサシンに一突きされた胸からは血がだくだくと流れ、心臓部はぽっかりと穴が開いていた。 身体<アバター>は既に解体が始まっている。情報が剥がれ落ち傷口は泥のように黒ずんでいた。 「あの時点で一般NPCだった貴方は保護対象でありましたが、だからといってその際に受けたダメージの回復まではできません。 貴方が助かる見込みはもうないでしょうね。目覚めるのが、あと少しだけ遅かったですね。 帰ろうなんて、思っているから。帰る場所もないのに」 ああ、そうか。 そういえば、さっき 自分はどこに帰ろうとしていたのだろうか? そもそも、僕の名前は。 「貴方の脱落は傷を見た瞬間分かっていました。 それでもわざわざ丁寧に説明したのは、半分マスターとして覚醒していた貴方のデータが、変な形で残らないようにするため。 死んだことにすら気づかず、サイバーゴーストになんてなられても監督役として困るもの。 だから、納得して死んでもらいます」 カレンはそう言って目を閉じた。 それはまるで冥福を祈るよう―― せめて名前を教えて欲しい。 僕の名前を、僕が何というカタチをしていたかを。そしてできることなら呼んで欲しい。 でも、無理だろうな。 そう思ったからこそ彼はただ陶然と月を見ていた。 綺麗な綺麗な、月。 空に浮かぶ月は依然変わらず手が届きそうで―― 「では、聖杯戦争を始めます」 ――絶対に届きはしない。 ◇ そうして、月海原学園の一学生を演じていた筈の彼は、消滅した。 彼がいかな願いを持った、どんな魔術師であったのか、カレンは知らない。 ただ、もう彼にまつわる全ての情報が解体されてしまったことは確かだった。 それを見届けたカレンは一言呟いた。 「では、聖杯戦争を始めます」 と。 「始まるん……でしょうか」 その呟きをルーラーはどこか自信なさげに反芻した。 「まだ、あとから目覚める人も居るんじゃないですか。 さっきのあの人のように」 「かもしれませんね。でも、恐らくないでしょうね。 記憶の封印を解けるとしたら、大体今ぐらいがリミットでしょう」 封印された記憶と、長く付き合えば付き合うほど元の記憶は埋もれていく。 だから、この辺りが限界だとカレンは当たりをつける。 恐らく各マスターが目覚めた時間にそれほど差はない。あって数時間程度の差だろう。 だから実質聖杯戦争が動き出すのは今ぐらいからだ。 「一体、どんなサーヴァントが呼ばれているのでしょうね」 ルーラーがぽつりと漏らした。 これから始まるであろう戦いに、思いを馳せるように。 カレンは視線を上げた。 その視線の先には、この丘から見下ろした街の光がある。 錆びれたマンションがある。昔ながらの商店街がある。できたばかりのレジャープールがある。奇妙な噂の絶えない名家の屋敷がある。人を導く教会がある。 月が用意した此度の聖杯戦争の舞台。 今頃街では多くのマスターがサーヴァントと出会っている頃だろう。 いかなる英霊、あるいは反英霊がこの地に呼ばれたのか。 それはまだ分からなかった。 ――ただひとつ分かることがあるとすれば、 カレンは無言で空を見上げた。 月が、ある。 美しく輝く、月が。 こんなにも近しくあの光を拝めるのは、きっとここだけだろう。 ――みなあの月を望んでいる、ということでしょう。 【アサシン(ハサン・サッバーハ)@Fate/hollow ataraxia 脱落】 【プロローグの青年 @Fate/EXTRA 脱落】 【二次二次聖杯戦争 開幕】 主催 【カレン・オルテンシア@Fate/hollow ataraxia】 【ルーラー(ジャンヌ・ダルク)@Fate/Apocrypha】 BACK NEXT OP.1聖杯戦争序幕 ~ 宙船、来たる ~ 投下順 001 言峰綺礼・セイバー OP.1聖杯戦争序幕 ~ 宙船、来たる ~ 時系列順 001 言峰綺礼・セイバー BACK 登場キャラ NEXT 参戦 ルーラー(ジャンヌ・ダルク) 029 初陣 参戦 カレン・オルテンシア 050 主よ、我らを憐れみ給うな
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あなたは唐突に中空に浮かんでいた。 そこは、まるで小惑星帯のように星々が動き、またぶつかり合っている宇宙空間のようだ。 周囲を見渡すと、銀髪の青年が目の前に立っていることに気づいた。 「やあ。この地に最後まで残ったマスター」 青年は柔らかい物腰で語り掛ける。 「改めて自己紹介しておこう。僕はこの聖杯戦争を司る裁定者、ルーラーのサーヴァント『アルヴィース』だ。 聖杯戦争の本選開始まで、後1時間も無い。そこで君に質問をしよう。君が抱くのが『できれば叶えたい』という程度の願いならば、これ以上は止めておくことをお勧めするよ。 今なら僕に与えられた令呪で、瞬時に君を元の世界へ帰還させる事が出来る。どうだい?」 あなたは言葉を発さないことで、帰還の意思がないことを示した。 「帰る気は無いようだね。では、質問をもう一つしよう」 アルヴィースは指を一本立てた。 「『この聖杯戦争は聖杯のあるべき場所『楽園』に辿り着く者が既に確定している。そして、それは君ではない』」 その言葉をアルヴィースが口にした瞬間、あなたの頭の中を何かが通り抜けた。彼の言ったことは真実であると思うようになった。 「そう知ったとしても、君は戦えるかい? 奇跡に手を伸ばせるのかい?」 聖杯を手に入れるのは自分ではない。そう悟ったあなたの返答は―― 『そうだとしても、確定した未来の後は白紙でしょ? 勝者の横からぶん殴って聖杯を手に入れられる可能性がある以上、未来が決まっていても、まだ現在を変える余地があるなら私は決してあきらめないわ』 『だったらそいつが聖杯にたどり着く道を探り、横から令呪をかっさらって私が願いを叶える』 『僕は別に人を殺してまで聖杯を手に入れる気はないよ。でも最後のマスターがどんな願いを叶えるのか見届けたい』 『辿り着く者が決まっていたとしても、その後聖杯を手に入れるとは限りません。あなたが測定した未来でも現在を変える権利は今を生きる僕たちにあり、そして聖杯を手に入れるのは僕です』 『なら、俺とその一人が生き残った時点で、そいつを死ぬ方がマシな状態まで追い詰め俺の願いを叶えさせればいい』 『私は! そんなこと信じない! 私は聖杯を手に入れて過去をやり直す!』 『波紋の催眠術みてーなこと使って言われても信じられねーな。それに俺は黒幕をぶちのめすのが目的なんだ。聖杯は悪人の手に渡らなければそれでいい』 『聖杯を一目見ようとは思うが、僕はそこまで執着していない。あなたを倒すのは僕の目的の一つだ。特にスタンド能力のようなものを使い、意志を無理やり押し付ける相手は』 『それがあなたの未来予測だとしても、私は聖杯を求めるわ。諦めるよりやって後悔した方がいいもの』 『私は聖杯に叶えるべき願いはありません。ですが最後の一人が私欲で世界に悪意をもたらすのならば、それを止めます』 『……その言葉が真実だとしても、俺は友に会いに行く。絶対に』 『俺は聖杯にたどり着く結果より、そこまでの過程で何を信じたくて、何を願いたいかを知りたい。だから手に入らないとしても戦う』 『そいつがマスター全員を殺しつくした上でたどり着くのなら、そいつの願いと造る世界はさぞ醜いものだろう。俺が手に入れなくても人間は皆必要なら誰でも殺すことが示されればそれでいい』 『なんでそんなこと言うの? ぼくは家族のために、ポーキーにむちゃくちゃにされた世界をなおすために聖杯を使いたいのに。その思いはアルヴィースに聖杯に行けないと言われても変わらないよ』 『それならそのたどり着く人の首にかぶりついて、無理やり私の願いを叶えさせるわ』 『私は……聖杯を手に入れる。そのためならそのたどり着く人が聖杯に向かう途中でその人を殺してでも聖杯にたどり着く』 『貴方は高天原と同じで価値を決める意志がない。ならば私が聖杯とその担い手を見極めましょう。遥かな過去、聖杯と似た力を持つ矛を奪い取った者として』 『もし聖杯が手に入らなくても、私が先輩を殺しさえしなければそれでいいんです』 『……もうあたしに戻る道はねえ。戻っても行っても死ぬのなら戦って死ぬ』 『不可能だとしても最後まで戦う。元々俺は国を相手にしてきたんだ。今更言葉一つで決意が変わりはしない』 『あんたも"大赦"と同じよ。いいように人を操ろうとするそんな奴のいう事なんて信じられないわ。私は絶対に聖杯を手に入れる!』 『それでも俺は最後まであきらめずに戦い、生きるよ』 『『もし人が私に繋がっており、また私がその人と繋がっておれば、その人は実を豊かに結ぶようになる』。私が聖杯に到達できなくとも『人はなぜ出会うのか?』。その「答え」を知る者が現れればいい』 『洗脳など私にとっては無意味だ。聖杯を手に入れるのは私以外にいない』 『とーぜん! だってあたいはサイキョーなんだから!』 『私じゃなければエミリコが手に入れる可能性もあるってことね。たとえ私が死んでもエミリコは必ず元の世界に戻して、あの忌まわしいおじい様を倒してみせるわ』 『その辿りつく者ってのは『主催者』か『黒幕』の事じゃねえのか? もしくは辿り着いたヤツをそいつらが利用するとか。どっちにしても聖杯に繋がる道を見つけ裏から操ってる黒幕野郎をブチのめしてみせるぜ』 『それなら『前』みたいに辿り着く道を探って横からそいつを殺すだけよ』 『俺は俺が聖杯にたどり着けなくても、戦いを止めるため、人を救うため戦うだけだ』 『私はまだ聖杯が何なのかも、どう願いを叶えるのかもわからない。だけどお前の言うことが本当だとしても、私は私を取り戻すために戦う』 『それでも例えばマスターみんなでそこに行きさえすれば、誰が本当にたどり着く人間かなんてわからなくなっちゃうでしょ? 私はそのために戦うわ』 「君の『覚悟』は受け取った。その意志が強く保たれん事を」 あなたとアルヴィースの距離が離れてゆき、小惑星帯のような景色は暗闇に塗りつぶされていった。 ◇ ◇ ◇ 教会内で言峰綺礼とDIOがそれぞれ手を後ろに、前に組んで空中投影パネルの前に立つ。 カウントタイマーが00 00 00 00になった瞬間、パネルにマスターの名前とサーヴァントが並んで表示された。 01.マスター:遠坂凛 サーヴァント:セイバー 02.マスター:巴あや サーヴァント:セイバー 03.マスター:ユウキ サーヴァント:セイバー 04.マスター:レオナルド・ビスタリオ・ハーヴェイ サーヴァント:セイバー 05.マスター:黒岩満 サーヴァント:セイバー 06.マスター:二階堂ルイ サーヴァント:アーチャー 07.マスター:ジョセフ・ジョースター サーヴァント:アーチャー 08.マスター:パンナコッタ・フーゴ サーヴァント:アーチャー 09.マスター:朝倉涼子 サーヴァント:ランサー 10.マスター:胡蝶カナエ サーヴァント:ランサー 11.マスター:静寂なるハルゲント サーヴァント:ランサー 12.マスター:吉野順平 サーヴァント:ライダー 13.マスター:尾形百之助 サーヴァント:ライダー 14.マスター:クラウス サーヴァント:ライダー 15.マスター:エスター・コールマン サーヴァント:キャスター 16.マスター:新条アカネ サーヴァント:キャスター 17.マスター:日瑠子 サーヴァント:キャスター 18.マスター:間桐桜 サーヴァント:キャスター 19.マスター:佐倉杏子 サーヴァント:キャスター 20.マスター:キロランケ サーヴァント:アサシン 21.マスター:犬吠埼風 サーヴァント:アサシン 22.マスター:千翼 サーヴァント:アサシン 23.マスター:エンリコ・プッチ サーヴァント:アサシン 24.マスター:ザキラ サーヴァント:バーサーカー 25.マスター:チルノ サーヴァント:バーサーカー 26.マスター:ケイト・シャドー/エミリコ サーヴァント:バーサーカー 27.マスター:エドワード・エルリック サーヴァント:バーサーカー 28.マスター:和田垣さくら サーヴァント:アヴェンジャー 29.マスター:衛宮士郎 サーヴァント:アルターエゴ 30.マスター:小蝶辺明日子(■■▪■) サーヴァント:アルターエゴ 31.マスター:イリヤスフィール・フォン・アインツベルン サーヴァント:ブレイド XX.マスター:ミザリィ サーヴァント:アヴェンジャー、フォーリナー 「ミザリィを除いた全マスターの端末に回線を接続」 綺礼が口を開く。 「只今を以って聖杯戦争の本戦開始を宣言する。これより各自元の世界に戻るための扉は消え去り、聖杯を手に入れ帰還できるのはただ一人となった。 その事実を認識し、皆存分に殺し合い給え。そして汝自身を以って最強を証明せよ。 されば『天の聖杯』は勝者の元にもたらされん」 ◇ ◇ ◇ ビッグアイ屋上。 真下で正月のパレードが行進している中、ガラクシアはそれを怒りの念を込めて睨みつけた。 「憎み、恨み、叫び、吠え、全ての者に何物とも知れぬ怒りを抱いてきた同志たちよ」 ガラクシアは高らかに宣言する。 「時は満ちた。今こそ、我らガラクシアの底無き憎悪を存分に叩きつける時だ!」 ガラクシアの胴体から機械の部品が作り出され、一つの何かが構築されようとしている。 出来上がっていく形は、巨大な爆弾だ。 完成した瞬間、ガラクシアはためらいなく起爆。轟音が鳴り響き、爆風が夜空を赤く染めた。 ◇ ◇ ◇ 物質転換炉、特別捜査官ルームにてオペレーターが叫んだ。 「『ビッグアイ』屋上で大規模な爆発が確認されました!」 「録画をズームして爆発の対象を確認」 動揺するオペレーターに対し、冷静にアルヴィースは指示を下す。 「これは……女性です! 女性が爆弾に体を変換しているようです!」 「顔認証システムで全ての監視カメラから同一人物をチェック」 意図が分からないままオペレーターは指示に従い検索を始めた。 「確認できました。対象一致者はB-1地区『Eアイランド』内、D-2地区『ラストアンコール』屋上。D-5地区タウンゼン街、C-6地区ティア―ブリッジ1のケーブル上です。 その全てが、10名以上の武装した人間を連れています」 「起動兵を随伴した防衛隊を出動。武装した人間共々テロリストグループ「ガラクシア」として処理。抵抗するなら射殺も許可」 「了解しました」 驚きを隠せないルーム内のメンバーはアルヴィースに尋ねた。 「捜査官……あれは我々にとって未知の起動兵なのでしょうか……。自我を持つ起動兵は我々も所持していますが」 「あれは憤怒と憎悪の結晶だ。これが未知というならこれから先僕たちはさらに未知なる異変を目撃することになる」 そう言ってアルヴィースはモニターに目を向けた。 「これで全ては始まった。これからは君たちマスターが未来を、世界を創るんだ。 叶うならば、停滞と閉塞の未来ではないことを」 アルヴィースは誰にも聞こえぬ小声で呟く。かつて自身が見届けた『二つ』の『世界創造』を思い起こして。 ――――聖杯戦争、開幕――――
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聖杯戦争序幕 ~ 宙船、来たる ~ ◆eBE8HIR9fs ――地球には、もうひとつの月があるという。 複数の月が登場する神話を持つ文明は多い。 古代中国の射日神話と同様に、英雄が多すぎる月を射落とす伝承は各地の文化に散見される。 また伝承の研究ではなく科学として、実際に19世紀末には第二の月の実証を研究する学者も現れた。 例えばフランスの天文学者プチはクラインヒェンなる衛星の存在を主張し、同様の説を掲げた別の研究者も存在する。 サイエンスフィクションの祖と賞されるジュール=ヴェルヌもかの代表作「月世界旅行」にて同様の天体を登場させている。 しかし、その実証への道程は果てしなく遠く、そして限りなく不可能に近かった。 あるものは計算式に誤りを見つけられ、またあるものは理論に見合う結果を見出だせなかった。 また観測技術の向上により、光学的に捕捉できない衛星という最後の逃げ道も消失した。 ゆえに地球の衛星は今なお、月ただひとつとされている。 そういうこととされている。 ただ、それは物理世界の側面から見た話にすぎない。 遥か以前から魔術師達やそのルーツのひとつたる占星術師達は、地球の衛星軌道を周回する存在を感知していた。 地球を中心として遠大な楕円軌道を描く謎の物体が数十年おきに接近するという事実は、ごく限られた人間しか知らない。 しかし、それはその物体の持つ秘密の一端に過ぎない。真実を知る者は、更に限られる。 曰く、自然物ではなく被造物。あれは、『星』ではなく、『船』だ――と。 何らかの魔力的な撹乱により今まであらゆる物質世界の学者に捕捉されなかったその『船』の謎を、魔術師達は追い求めた。 失われた神代の『古代遺物(アーティファクト)』。星の海を巡り地球を廻る『宙船(そらふね)』。 その存在を知る者はそれが地球に接近するたびにあらゆる手段を用いてその謎へと近付くべく挑み、 やがては親が子に魔術刻印を受け継がせるがごとく、その蓄積された研究成果を知識として次の世代へと託した。 そして永い時を経て観測値(データ)は集約され、それが真実であれば魔術世界を揺るがすであろう結論が導き出された。 あまりに壮大過ぎる結論を、多くの者は幼稚で荒唐無稽な与太話(パルプフィクション)だと一笑に付した。 しかし全ての魔術師がその『船』を追うことを諦めたわけではない。 かつて人間が月を目指したように、第二の月たる『船』を目指す者は尽きはしなかった。 そして、現代。 『宙船』は遙かなる星海の旅を終えて地球圏に帰還し、じきに最接近の時を迎えようとしている――! ▼ ▼ ▼ 「……何故このような話をしているのか分からない、という顔だな、綺礼」 「は……」 当惑を見透かされた言峰綺礼は、卓を挟んで向かい合う父、言峰璃正に対して曖昧な返事を返した。 綺礼は曖昧な物言いをする類いの人間ではないが、父はそれ以上に意味のない冗談を好む人間ではない。 その父がこうして改まって話をする以上は、この突拍子もない話にも何らかの理由があるに違いない。 そう思ったからこそ綺礼はそれ以上の言葉を返さず、思案した。 冬木の第四次聖杯戦争に備え、綺礼が父の歳の離れた友人、遠坂時臣に師事してもうすぐ三年になる。 本来は異端者を討滅することを生業とする聖堂教会の執行者である綺礼がこうして魔術を学んでいるのは、偏に父と師との盟約にある。 万能の願望機たる冬木の聖杯を、もっとも相応しき主たる遠坂時臣の元にもたらせ。その為に陰から時臣の戦いを支えよ。 それが来るべき聖杯戦争における言峰綺礼の役目であり、それは自分自身も納得済みである。 それがどうして、このような天文ショーの紛い物の話を聞かされているのだろうか。 もうじき遠坂・間桐・アインツベルンの御三家だけでなく、外来のマスター達も戦いの準備を整えてくるだろう。 専念すべきは聖杯戦争の備えであって、このような話はそれこそ占星術師にでも任せるべきではないか。 綺礼はまずそう考え、次にこの状況であえて「自分に話さねばならない理由」へと思いを巡らせた。 「……父上。それは、魔術協会だけでなく聖堂教会にとって見過ごせぬものである……と、そういうことでしょうか」 「聡いな、綺礼よ。だがそれは真実であっても全てではない。お前の今の立場にも関係のある話だ」 「私の、今の、立場ですか」 噛み砕くように繰り返して口にする。 聖堂教会の代行者、という意味ではあるまい。それでは教会の問題であることに変わりはない。 そうでないならば。魔術師としての……あるいは聖杯戦争のマスターとしての? 無意識に口元に手をやった綺礼を見、璃正は先回りするかのごとく口を開いた。 「――綺礼よ。聞いたことがあるかね、月こそはこの世界最古の古代遺物(アーティファクト)であると」 今度ばかりは綺礼は本当に父の言葉の意味を測りかねた。 しかし父の目は真剣そのものであり、その視線には理性の光が確かに灯っている。 これまでの話と同様に冗談を言ったわけではなく、ましてや耄碌して妄言を吐いたとは思えない。 綺礼は努めて冷静に、否定の言葉を口にした。 「――いいえ。父上は、あの月が人工物であると?」 「人の手によるものではない。神の御業だよ。月はあらゆる時の流れの中で、この地球を観測し続けているという。 これはこの老骨の与太話ではない。知る者は限られているが、魔術協会では既に封印指定の取り決めが成されたと聞く」 封印指定といえば、魔術協会が触れ得ざる遺産足りうると指定した魔術を術者ごと永久保存する措置のことだ。 だが魔術師ではなく遺物が封印されるなどという事態は耳にしたことがない。 「封印の必要があるほどまでに魔術師が手を出すには大それた遺物、ということですか」 「それどころではない。月……『ムーンセル』はあらゆる事象を演算し、記録し、その結果として現実すら改変しうるという。 この世の理を根本から打ち崩しかねん、人の子には過ぎたるもの……真なる万能の願望機よ」 「万能の願望機……それではまるで、」 聖杯だ。 綺礼はそう言いかけ、そこでようやく父が謎の天体の話を持ちかけた理由に思い当たった。 月が願望機であるというという話は俄には信じがたいものではあるが、それが事実だという前提に立てば。 聖杯戦争のマスターである綺礼にとって、天体は聖杯と同じかそれ以上の重みを持つのだとすれば。 「このたび地球に接近するというその『船』が『月の聖杯』と関係があるものだと、父上や教会の者達はお考えなのですね?」 綺礼の言葉に年老いた父は僅かに驚きの表情を見せ、それから皺の刻まれた顔に満足気な笑みを浮かべた。 「その通りだ。月を手にすることは叶わなくとも、あれを手にすることは出来る、とな」 「少なくとも、それが願望機に準ずるものであると仰るように聞こえますが」 「正確には、月へと干渉しうる装置といったところか。願望機そのものではなく、月の願望機への道しるべよ」 装置、という言葉に引っかかりを覚える。まるで『船』が何かの働きを為すための物であるかのような。 その思考をそのまま父が引き継ぐ。息子の虚無こそ知らぬ父だが、こういう阿吽の呼吸は親子である。 「あれの本質は演算装置なのだ。もっとも、月――『ムーンセル』同様、本当に人の手で作られたとは限らんがな」 「既に観測がなされているのですか」 「前回の接近時に、魔術師達が血眼で調査した結果だ。ムーンセルの間に魔術的な交信が行われているという事実も明らかになっている」 魔術師達も無駄に手をこまねいていたわけではないらしい。綺礼は他人事のように感心した。 「そしてその理由も既に推測が付いている。『船』はそれ自体が演算装置であると同時に、いわば月の子機とも言うべき存在なのだ」 「と、いうと」 「あの『船』はそれの存在目的を果たすため、月に蓄積された観測結果と演算能力を使用しておるのだ――ときに綺礼、あれは何で出来ていると思う?」 脈絡のない唐突な質問に、綺礼は思案する。 「素材ですか。被造物であれ天体ならば、鉱物と考えるのが自然では」 無難な回答を返した綺礼に、父は自分自身も信じ切れていないかのような表情で応えた。 まるで自分のこれから告げる真実が綺礼の想像を凌駕していることを象徴するように。 「――木材だよ。あれはこの地上に存在しない種類の木で出来ているという。 この事実を知る魔術師達は、最終的にこの結論へと辿り着いた――すなわち、あれこそが『ゴフェルの木』だと」 「――『ゴフェルの木』?」 初め、綺礼は聞き間違いかと思った。 この星の歴史において、『ゴフェルの木』で作られた構造物はただのひとつしかない。 父も教会の神父である以上それを知らないはずはなく――そして、知っていながら訂正しようとしない。 「うむ。魔術的なノイズにより正確な大きさは測定出来ずにいるが、その長さは三百、幅は五十、高さは三十の比を持つ箱形であると判明している。 いいかね、三百、五十、三十の箱形だ。それも未知の木材で覆われた、な……聡明なお前ならここまで言えば分かるだろう、綺礼」 それは聖書の一節。幾度となく目を通した数字。 三百キュビト、五十キュビト、三十キュビト。 滅多に動揺を見せない綺礼の頬を、一筋の汗が伝った。 「――――馬鹿な」 続いて声に出せたのはそれだけだった。 しかし父の視線が、表情が、これが冒涜的な類いの冗句ではないと語っていた。 呆然とする綺礼の意識へと沁み入るように、璃正の沈着かつ毅然とした声が響く。 「聖堂教会は判断した。このたび地球圏に帰還した被造物が、聖遺物『ノアの方舟』である可能性は否定できんと。 聖遺物回収は我ら『第八秘蹟会』の責務。言峰綺礼よ、汝の任はこの『方舟』の確保にある」 ――軌道上に存在する古代遺物(アーティファクト)は旧約聖書に謳われる『方舟』であり、月の願望機の鍵であると、そう言うのか。 綺礼は息を吸って、吐いた。 「――確保。方策は、あるのですか」 荒唐無稽の極みだ。聖者ノアの聖遺物が、今も星の海を航海しているなどと。 しかし、教会にとってそれの真偽がどちらであれ確保の必要性に変わりはないのだろう。 後世の遺物であろうと放置する理由にはならないし、それが願望機としての性質を備えているのならば尚更だ。 綺礼は既に任務遂行の手段へと思考を巡らせていた。それを見、璃正は頷く。 「ある。『方舟』の存在意義とは種の記録の保存……かつて『方舟』に乗った生命のうち、人間だけが一対でなかったのは知っているだろう。 故に『方舟』は地球に接近するたびにムーンセルから記録を受け取り、同時に地上の人間を内部の世界に召喚しておるようだ」 伝承によれば、方舟に乗り込んだのはノアとその妻、三人の息子とそれぞれの妻。 人間だけが一対の存在ではなかったために、方舟は使命を遂行するために今も自動的に稼働しているということか。 ならば男女のつがいが必要なのか、という綺礼の問いに璃正は首を振った。 「そうではない。男女のつがいではなく、いわば過去と現在、あるいは未来。時代、更には世界を繋ぐ一対のつがいだ。 地上の人間と月に保存された英霊の記憶とを組み合わせ、生き残りを賭けて戦わせ、真に記録すべき一対を選別する――『方舟』はその為にある」 そうして情報として残すべき一対の魂の選別を、方舟は地球圏に帰還するたびに行っているという。 綺礼は眩暈を覚えた。冬木の御三家達はあらかじめこの事実を知っていたのだろうか。 偶然一致したのか御三家の最初の誰かがこの事実を参考にしたのか。どちらにせよ、 「……まるで聖杯戦争ですね」 「そう、聖杯戦争だ。これは紛れもなく、万能の願望機に連なる聖杯戦争に違いないのだ、綺礼よ。 そして最後まで勝ち残ることが出来たならば、方舟から願望機たるムーンセルへの道が示されると推測される。 お前が為すべきは、方舟のマスターとしてこの聖杯戦争に参戦し、万能の願いをもって方舟を手にすることだ」 綺礼は深呼吸した。 未だに信じがたい話ではある。しかし、そこまで分かれば十分だった。 冬木の聖杯戦争の前哨戦にしてはあまりにも壮大ではあるが、与えられた役目ならば果たすだけのこと。 そして元より、言峰綺礼に意志など無いのだ。 「――了解いたしました。この言峰綺礼、父上と聖堂教会に、必ずや勝利を」 綺礼の答えに、老いた父は改めて満足した顔で頷いた。 ▼ ▼ ▼ ――ひと月の後。 綺礼は万全の準備を整え、ひとり夜空を見上げていた。 師である時臣には、この試練のことはせいぜい数日ほど師の元を離れるとしか話していない。 時臣は純粋に、この離脱を冬木の聖杯戦争に備えるための戦支度として受け止めているだろう。 無論綺礼も冬木での戦争を放棄したわけではない以上、師の認識は決して間違いというわけではない。 しかしこれはあくまで第八秘蹟会の代行者としての任務であり、時臣には無関係と判断しただけのことだ。 表向き魔術協会とは敵対関係にある聖堂教会にとって、信頼できる魔術師の戦力は極めて少ない。 ゆえに綺礼に白羽の矢が立ったのはある意味では自然だが、それ以外に教会よりの傭兵魔術師が参加する可能性があると父は言った。 教会も一枚岩ではない。いくら方舟が『ノアの聖遺物』であるという確証はないとはいえ、動く者は動く。 また方舟そのものに価値を見出す者が、教会同様に傭兵を雇う可能性もある。あるいはカネ目当ての者も。 加えて単純に、己が願いを叶えるために参戦する魔術師もいるだろう。冬木における外来のマスターのように。 いくら緘口令のようなものが敷かれているとは言っても、そもそも璃正の情報の出処は魔術協会の側である。 魔術師の中にはとっくの昔にその情報を入手している者がいると見て間違いないだろう。 すでに綺礼の周りは既に敵だらけと言ってよかった。 今、綺礼の掌の中には、小さな古ぼけた木片が握られている。 一見何の変哲もない木片だが、これが方舟の構成材と同じ『ゴフェルの木片』であると聞かされている。 この地上には存在しない樹木では無かったのかと問うた綺礼に、父は「最初に脱皮した蛇の抜け殻」よりは容易に手に入ると答えた。 要は、あるところにはある、ということだ。もしも世界中に散逸しているのだとしたら、それは厄介だが。 偶然ひょんなことからこの木片を手に入れてしまう人間がいなければいいと、そう祈る他ない。 方舟の媒介たるこの『ゴフェルの木片』に願いを通わせる。聖杯戦争への鍵は、ただそれだけだ。 その願いを感知した方舟が、その内部……『アーク・セル』とでも呼ぶべき演算世界へと魔術師を召喚する。 そして、それぞれに相応しい使い魔たる英霊……『サーヴァント』を、月の記憶を介して降臨させるのだ。 過去アーク・セルに召喚されたとされる魔術師は全て同じ日同じ時間に姿を消したわけではないという。 方舟の力が時空を越えるものであるとするならばそれこそ魔法の域だが、それを証明するのは困難だろう。 綺礼は木片を握りしめた。 言峰綺礼には意志がない。 正確には、熱意が、渇望が、目的意識というものがない。 今まで幾多の巡礼でこの身を焼き、幾多の異端を屠り続けて、しかし何一つ得ることなくここまで来た。 冬木の聖杯戦争へと至る前に転がり込んできたこの試練は、綺礼に答えを与えてくれるのだろうか。 そうであればいいと思う。その思いは、願いと呼ぶにはあまりに熱を持たないものではあったが。 夜空を見上げる。この遥か彼方に、目指す神代の遺物がある。 心中で幾度となく繰り返した呪文を唱える。この聖杯戦争には必要のないものとは分かっていても、だ。 (――告げる。汝の身は我が元に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ) 手中の木片へと思念を集中させる。空っぽの願いを使命で上書きした瞬間、木片が熱を持つのを感じた。 (誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者) 大気に満ちる魔力(マナ)が、綺礼を中心として渦巻く。方舟の秘蹟が、今顕現しようとしていた。 (汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!) 綺礼は遥か星空に浮かぶであろう方舟を睨み、そしてこの地上から忽然と姿を消した。 ――この日。『方舟』は、地球圏へと真の意味で帰還した。 BACK NEXT 聖杯戦争開幕 投下順 OP.2 月を望む聖杯戦争 聖杯戦争開幕 時系列順 OP.2 月を望む聖杯戦争 BACK 登場キャラ NEXT 参戦 言峰綺礼 001 言峰綺礼・セイバー