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隙間録 投下順話数 タイトル 作者 登場人物 117 天狗風――隙間録・間宮ゆうか編 ◆TPKO6O3QOM 間宮ゆうか 125 MEMORY――隙間録・三上脩、加奈江編 ◆cAkzNuGcZQ 三上隆平、三上脩、加奈江 126 Born From A Wish――隙間録・ジェイムス・サンダーランド編 ◆cAkzNuGcZQ ジェイムス・サンダーランド 131 羽生蛇村異聞 第三話・外伝『理尾や丹』――隙間録・吉村俊夫編 ◆cAkzNuGcZQ 吉村俊夫、吉村郁子、吉村孝明、吉村克明 132 失われた記憶――隙間録・宮田司郎編 ◆cAkzNuGcZQ 宮田司郎 143 Still Waiting――隙間録・ルーシー・マレット編 ◆TPKO6O3QOM ルーシー・マレット、リーガン・マレット、ゾンビ、闇人 144 Hereafter――隙間録・S.T.A.R.S.ブラボーチーム編 ◆TPKO6O3QOM エンリコ・マリーニ、リチャード・エイケン、ケネス・J・サリバン、フォレスト・スパイヤー 000 [[]] ◆ 本編SS目次・投下順 本編SS目次・時系列順
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二人) 海を越えて 海送り 海送り 時をかけて 因果律 因果律 恭也) 生贄の恋人と 赤いポスト待ち合わせ 美耶子) エスコートされたのよ いんふぇるので燃えてランデブー 二人) 月下奇人の花が香ったら 思い出して 廃屋の契約 呪われた血混ざり合う 美耶子) 掌の傷 二人) 儀式の季節 時を止めて ときめいて ときめいて だけど とめないで とめないで 血まみれの恋 視界ジャック 海を越えて 海送り 海送り 越えたなら サイレンに死す 美耶子) 英雄の恋人と 床の下でダウジング 恭也) 羽生蛇村異聞録 記された契りのジェノサイド 二人) 赤い水の味が変わっても 忘れないで 午後の蛇ノ首谷 器の中混ざり合う 恭也) イチゴのジャムと 二人) 冷麺の季節 火かき棒は 曲げないで 曲げないで いつも惑わせる 惑わせる 血だらけの恋 ジェノサイディング 海を越えて 海還り 海還り 還ったなら サイレンに死す 時を止めて ときめいて ときめいて だけど とめないで とめないで 止まらない恋の異聞録 記憶の中 きらめいた きらめいた トライアングルを探して あなたの後ろ テレポート テレポート だけど ナビゲート ナビゲート 代わりにならない ラブレター あたしの視界に テレポートしてきてよ ジェノサイダーの恋人 原曲▲ときめきに死す/アーバンギャルド 元動画▲http //www.nicovideo.jp/watch/nm17507077
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羽生蛇村が幻想郷入り 動画リンク コメント・レビュー ○ 羽生蛇村が幻想郷入り 572人目の幻想入りだったらしいです。 このシリーズは打ち切られました。 17/09/2008 21:30をもちまして、 『羽生蛇村が幻想郷入り』は打ち切りを宣言いたします。 詳しくは制作ブログ(下記URL)に。 http //hina571.blog.shinobi.jp/Entry/30/ そろそろ潮時と思いまして、 打ち切り告知含め 全ての動画は削除させていただきました。 今までご視聴・コメントなど、本当にありがとうございました。 ご理解いただけると幸いです。 繰り返しとなりますが、 今まで本当にありがとうございました。 コメント・レビュー 屍人にはしたくないなぁ… どうなるかは、是非予想してみてくださいね。 -- (未熟者ヒナ(572)) 2008-06-02 22 46 13 謎解き要素があって面白い。 あと覚醒前のSDKが重なった幻想郷に影響を与えるか楽しみです。 -- (名無しさん) 2008-06-12 00 08 50 タグ『謎解き要素あり』をつけてくださった猛者に感謝。 二行目で「何が重なった」のか意味不明なんだぜ名無しさん。 -- (未熟者ヒナ(572)) 2008-06-15 18 38 23 http //hina571.blog.shinobi.jp/ -- (ブログ) 2008-07-02 23 59 31 ↑ -- (『羽生蛇村が幻想郷入り』制作ブログ byHina571) 2008-07-03 00 00 06 ↑おお、忘れてました!感謝の極みッ -- (未熟者ヒナ(572)) 2008-07-03 05 01 25 この構成は凄いと思った。 発想はあっても実際やろうとする者はいないだろう・・・。 と思ったらいたという。 -- (名無しさん) 2008-09-02 09 54 10 >09:54:10 02/09/2008の名無しさん FOOOOO! ありがとうございます! スキマ産業とってもおいしいです。とってもおいしいです。 -- (未熟者ヒナ(572)) 2008-09-02 19 56 14 打ち切りか・・・残念だ。 -- (名無しさん) 2008-09-17 20 50 44 非常に残念だが… まあ、動画じゃなくてSSとして続けていってくれると 書いてあって嬉しかったぜ! お疲れ!そして、またよろしく! -- (七ツ夜(322)) 2008-09-17 21 40 50 >名無しさん 申し訳ありません、そしてご視聴ありがとうございました。 >七ツ夜さん ありがとうございます。 私は先に目覚めてしまいますが、これからも頑張ってください。 -- (未熟者ヒナ(元572)) 2008-09-17 21 48 01 やっぱりキャラ殺しは否定派が多い証拠か -- (名無しさん) 2008-09-18 20 06 44 キャラ殺しに賛成派が居たんですか?驚きであります -- (未熟者ヒナ(元572)) 2008-09-18 20 52 10 復活してくれないかな -- (名無しさん) 2009-03-27 02 14 21 サイレンでは人が死ぬの当たり前だしむしろ死んだ方がいい -- (名無しさん) 2011-04-20 00 58 18 名前 コメント すべてのコメントを見る
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失われた記憶――隙間録・宮田司郎編 これは――――。 とある未来で。 とある世界で。 とある次元で。 あったかもしれない、物語――――。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 「何も起きない、か」 49番目の名前の上に赤い線が浮かび上がってから、もう何時間も経過していた。 現在の名簿に残る名前は『宮田司郎』ただ一つ。殺し合いのルール上、優勝者は宮田の筈だ。 しかしそれからは、サイレンが二度鳴り、世界が二度裏返った以外には、特別な変化は一切起こらなかった。 「これで証明されたな」 「 『サイレントヒルのルール』なんてうそ 」――――おかっぱの少女から聞かせてもらった情報だ。 ルールのチラシに書かれた“Not True”の文字。――――おかっぱの少女から見せてもらった情報だ。 殺し合いなど、まやかしに過ぎなかった。最後の一人となって、それは漸く証明出来た。 そのルール自体はこれまでも特に気にしてはいなかったのだが、これによって『外国のお姉ちゃん』はある程度正しいと証明されたわけだ。 では何故50人もの人間――いや、あの幻覚の中の人々を合わせれば数え切れない程の人数が、だが――この世界に呼び寄せられたのか。 誰が何の目的で、この街に人間達を集めたのか。 楽園とは何なのか。 その辺りの事は、結局未だに何も分からないままだ。 『外国のお姉ちゃん』を見つける事も出来ず、何一つ謎を解き明かす事も出来ずに、宮田は最後の一人となってしまった。 「行くか」 一人になってしまったが、やる事は変わらない。 ここに囚われている人々の救済は、今でも諦めはしていない。 求導師の役目を引き継ぐ。宮田はその決意を改めて思い返す。 と――――不意に周囲が光を帯び始めた。 暗闇だからこそ感じられる仄かな光。 首を巡らせば、光が宮田を囲む様に――――いや、見える範囲の道の上に広がっていた。 「……何だ?」 光は徐々に強くなる。足元が徐々に白く染まる。 宮田の踝を。膝を。下半身を。白い揺らめきが昇ってくる。 眩く。眩く。光は宮田を、そして、街中を覆い隠していく。 その眩さに耐え切れずに宮田が視線を逃した先は、まだ光に包まれていない漆黒の空。 「っ!? これは……!?」 そこに、宮田は見た。 雲の高さ程の遥か上空で揺らぐ、幾つもの円によって形作られている恐ろしく巨大な紋様を。 見覚えのある紋様。それこそは正に、メトラトンの印章。 「どういう事だ……この光が空に反射しているのか? ……この光そのものが、メトラトンの――――――――うあっ!」 眩さが目に映るもの全てを覆い尽くす。 眩さの中で、匂いも、音も、そして、自らの身体すらも失われていく。 自身の推測が正しいのかどうか。もう宮田には確かめる術が無い。 ただ、その輝きの中に、一人の少女の姿が朧気に浮かび上がっていた様な気がしていた。 とても悲しげな表情で、宮田を見つめる少女の朧気な姿が。 あの少女には、見覚えがある――――。 そう、彼女は――――。 あの時の――――。 記憶の中にある少女の姿が、輝きの中の少女の姿と重なり合う。 だが――――宮田司郎が、意識を保てたのはそこまでだった。 苦痛は無かった。ただ全てが失われていくという喪失感だけが、最期のその時まで残っていた。 【宮田司郎@SIREN 消滅】 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ サイレントヒルの町は、今、全体が巨大な破魔の魔法陣による輝きで揺らめいていた。 誰にも見通せない輝きの中。異界と化したこの町は、アレッサ・ギレスピーの手により音もなく消滅していく。 この町に生み出されていた者達も。 この町に生み出されていた物達も。 この町に迷い込んでいた者達も。 この町に囚われていた人々も。 この町を異界へと変えた存在も。 そして、アレッサ・ギレスピー本人も。 異界は全てを道連れにして、光の中で消えて行く。 やがて現象は収束を迎える。 光すらも消えて行き、その場所に姿を現したのは、小さな一つの田舎町。 その町は、サイレントヒル。 動くものの姿は何処にも見えない、寂れ果てただけのかつての観光地。 その町に何が起きたのか。 それを解き明かせる者はもういない。 その町に何が起きたのか。 それに気付ける者すらもういない。 謎も。 答えも。 記憶は光の中へと失われたのだから。 やがてその町には何も知らぬ人々が再び集い、暮らし始めるのだろう。 或いは、そのまま打ち捨てられたままになるのだろう。 どちらだとしても。 その町は、サイレントヒル。 いずれ心に深い闇を抱いた誰かが迷い込む町。 いずれ再び霧は町を隠すだろう。 いずれ再び闇は町を隠すだろう。 しかし、その時の物語を話す者は、今はいない――――。 ―――――――― GAME OVER ―――――――― /Try again/ → /トップページへ/ /Give up/ → /ホラーゲームバトルロワイアル 完結/ ※最後の一人になったとしても、何かが起きる事はありません。 back 目次へ next 羽生蛇村異聞 第三話・外伝『理尾や丹』――隙間録・吉村俊夫編 隙間録・目次 Still Waiting――隙間録・ルーシー・マレット編 羽生蛇村異聞 第三話・外伝『理尾や丹』――隙間録・吉村俊夫編 投下順・目次 さらに深い闇へ
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絵師羽生蛇村@wikiへようこそ! 絵師羽生蛇村@wikiはPixiv企画の絵師羽生蛇村村人化に関する百科事典です。 基本方針に賛同していただけるなら、誰でも記事を編集したり新しく作ったりできます。 まずはこちらをご覧ください。 @wikiの基本操作 用途別のオススメ機能紹介 @wikiの設定/管理 分からないことは? @wiki ご利用ガイド よくある質問 無料で会員登録できるSNS内の@wiki助け合いコミュニティ @wiki更新情報 @wikiへのお問合せフォーム 等をご活用ください @wiki助け合いコミュニティの掲示板スレッド一覧 #atfb_bbs_list その他お勧めサービスについて 大容量1G、PHP/CGI、MySQL、FTPが使える無料ホームページは@PAGES 無料ブログ作成は@WORDをご利用ください 2ch型の無料掲示板は@chsをご利用ください フォーラム型の無料掲示板は@bbをご利用ください お絵かき掲示板は@paintをご利用ください その他の無料掲示板は@bbsをご利用ください 無料ソーシャルプロフィールサービス @flabo(アットフラボ) おすすめ機能 気になるニュースをチェック 関連するブログ一覧を表示 その他にもいろいろな機能満載!! @wikiプラグイン @wiki便利ツール @wiki構文 @wikiプラグイン一覧 まとめサイト作成支援ツール バグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は? お手数ですが、メールでお問い合わせください。
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ユーノ・スクライア 山中/ワゴン車内 初日/3時51分24秒 完全な闇の中、遠くから微かな風の音が近付いてきた。 その音が大きくなるにつれ、ユーノ・スクライアの意識も徐々に現実へと引き上げられていく。 「うぅ……っ」 強打したのか、酷く痛む頭を動かして、ユーノは意識を取り戻した。 重いまぶたを開けると、辺りは真っ暗闇に包まれており、何も見えない。 「ここは……?」 そこで自分が、レンタルしたワゴン車の運転席に座っていたことを思い出した。 それすらも一瞬忘れてしまうぐらいに、頭を強く打ったのだろうか。少し不安になりながら、気絶する前の記憶を手繰り寄せる。 (えっと……山道で車を止めていたら、確か地震があって、サイレンが鳴って………) そこで気絶したのだろう、そこから先の記憶は無い。 車の中にいたにも関わらず凄まじい音圧を感じさせたサイレン。あの音響が今も耳の中に残っているかのようだ。 (あのサイレンは、一体) 地震を見計らったかのように鳴り響いたサイレンは、機械音というよりまるで獣の咆哮だった。 なにか自分の想像を超えた事が知らぬうちに起きているような気がする。嫌な予感がした。 (とにかく、暗くて何も見えないな……明かりを点けないと) そう思い、その場しのぎに魔力光で辺りを照らそうと魔力を手のひらに集中する。 しかし、いつもはすぐに輝くはずのエメラルドグリーンの光は、一向に光らない。 「あ、あれ?」 それどころか魔力が集中する感覚すら無い。体内の魔力回路が機能していないかのような感覚だ。 焦りながら、他の様々な魔法も試しに行使してみた。 治癒魔法、シールド、思念通話……どれもこれも無駄に終わった。 「嘘だろ……?」 ユーノは愕然とした。どうしてこんなにも突然に、魔法が使えなくなったのだろうか。 AMF?いや、AMFならもっと違う、魔力を妨害されている気分の悪さが全身で感じられるはずだ。 これは魔法というもの自体を取り上げられたかのようだ。 魔法が使えないと分かった途端、ユーノは自分がただの人間にされたような気分になり、心細さと不安が胸中へと一挙に押し寄せてきた。 しかし魔法が使えない以上、どうにもならないことに変わりは無い。 (……なにかライトがあれば) こういう時こそ文明の利器が活躍しなければならないが、エンジンは掛かってないから車内の電灯は点いていない。 キーを回してエンジンを掛けようとも思ったが、この暗闇の中で仮に車からガソリンが漏れていたとしたら、キーを回したところで車が爆発する可能性がある。 下手を打ってここで爆死など笑える話ではない。 (車内ライトは駄目か……そういえば懐中電灯があったな) そう思い当たり、身体をシートから持ち上げようとして、何かに引っ掛かった。 シートベルトだ。 勢い余った身体に食い込み、空気が無理やりに肺から押し出された。 ユーノは何回か咳き込むと、溜め息を吐きながら暗闇の中、身体に食い込むシートベルトを手探りで辿り、シート脇にあるベルトの接続部を外す。 シートベルトから解放され、ユーノは手探りのまま運転席をまさぐった。 (えーと、どこだっけ) ハンドル、ラジオ、レバーと探り、ダッシュボードに行き着いた。 取り敢えず開けて中に手を入れると、金属質で円筒形の物体に触れた。 (あったあった) 引っ張り出して、側面に付いているスイッチを入れる。明かりが点き、ユーノの身辺の状況が明らかになった。 「うわっ」 まずユーノは、フロントガラスから外の風景を遮っている前方に倒れた巨大な倒木に驚いた。 背後を照らすと、上から何か力が掛かったようで車内も僅かにひしゃげている。ユーノのいる運転席側の窓は土砂で埋まっていた。 外が見える助手席に身体をずらし、窓ガラス越しに懐中電灯を外へ照らした。 「これは……ひどいな」 周りには大量の倒木と土砂。車体はどうやら山肌にあるらしく、よく見れば車は若干傾いている。 「土砂崩れかな?」 思い出せば気絶する前は吹き付けるような雨が降り続けていた。土砂崩れはその雨によって地盤が緩んだ上に地震があったから起きたのかもしれない。 なんにせよ気絶しただけで車にも閉じ込められずに済んだのだから幸運だと思う。土砂に呑み込まれでもしていたら確実に死んでいただろう。 (……六課の子達はどうしたのかな) レリックを巡り、ガジェットと戦闘機人相手に戦いを繰り広げていた機動六課の隊員達に思いを馳せた。 雨が止んでいる今、こんなにも静かだということは戦闘は既に終わっているか、あるいは途中で強制的に終わらせられたのだろう。 魔法が封じられている今、彼女達もまだこの村の中に残されている可能性は十分にあり得る。 (無事ならいいんだけど……。僕も早くここから出ないと) 魔法が使えないことに伴って通信も使えないので助けも呼べない。とりあえずは無傷だし、移動等には全く問題が無いので、外に出よう。 そう思い立ち、助手席側のドアに手を掛けた。しかし歪んでいるのか、なかなかドアは開こうとしない。 「仕方ないなぁ……」 そう言うと、ユーノは一息入れて、思い切りドアを蹴り上げた。鍵が壊れたような大きな音をたてて歪んだドアは開いた。 ライトを片手に、後部座席から手荷物のリュックサックを持ち出し、外に出る。 車から出た途端に若干の湿気を含んだ、夜に冷やされた空気がユーノを包み込んだ。 気絶する前に降っていた雨によって、辺りの土や樹木、木の葉は湿っている。 辺りはイヤに静かだ。木々が微かに揺らぐ程度に穏やかな風が吹いている。そして夏場の山奥であるにも関わらず、動物や昆虫の鳴き声が一切しなかった。 こういった場所は夜は夜で昆虫達がうるさいぐらい鳴き続けているものなのだが、まるでユーノ以外の生命が死滅したかのように、森の中は不気味に静まり返っている。 不思議に思いながら、ユーノは辺りを見渡すと、ふと、静寂の中で何かが聞こえてきた。 どこか遠くから微かに聞こえる。 (……ん?なんの音だ?) 目を閉じ、耳を澄ました。 よく聞くとそれは、さーっ、という波のような音だった。不規則な間隔で絶え間なく聞こえてくる。 (波音?まさかね……) ユーノは笑いたくなった。こんな山々が入り組んだ内陸部で波の音などする筈がない。だが木々による枝葉の擦れる音とも違うようだ。 音がするからにはその発信源があるだろう。ユーノはそれを確かめたくなった。 音はどうやら、山の上の方から出ているようだ。 (ここの山はそう高くないし……ちょっと行ってみようかな) その上山頂も近いので、とりあえず上を目指して登り始めた。 折り重なっている大量の倒木をまたいではくぐり、その合間をぬって、割となだらかな山肌を登る。 元々ワゴンを止めていた道らしきものも見当たらない。土砂に飲み込まれて消えてしまったようだ。 倒木達を頼りに、暗く先の見えない山肌をライトで照らしながら登っていく。登るに連れ、波音のような音が大きくなっていく。 十分程経ち、不意にぱったりと木が生えていない空間が、山肌を埋める木々の向こうに見えた。その向こうから波音が聞こえてくる。 (……?) おかしい、ここは林業が盛んな村でも無く、周りの山々も木が切り倒されているようなことはない。 にも関わらず、木々の向こうには妙に開けている空間が広がっているようだ。 不審に思いながらも、そこを目指して再び登り始める。そして開けた空間にまで達して、ユーノは足を止めた。 と言うより、止めざるを得なかった。 「な、なんだよこれ………」 ユーノは、自分の目の前に広がる光景を信じられなかった。 日本の内陸部は山々が連なっており、羽生蛇村は都会から離れ、その中にひっそりと存在する村だ。故に周りには山しか無いはずだ。 しかし今目の前に、日本独特のなだらかな山脈は見る影もなかった。ただただ広大な夜闇が広がっている。 そして眼下に広がっているのは、真紅の海。 暗黒の中、血のような海が不規則に波を立てている様子が辛うじて見えた。そこから波音が、とめどなく聞こえてくる。 更にユーノが立っている場所は、切り立つ崖だ。 昼に通った時はちゃんとした山だったのに、今はまるで、山自体が中途半端なところでごっそりと削り取られたかのようになっている。 (ち、地殻変動?いやこれぐらいのレベルの地殻変動があったとして、あの程度の土砂崩れで済むはずがない。 そもそもこの赤い海は一体………?) 目の前の赤い海は、ユーノがいた『地球』の『日本』とは明らかに別の世界であることを物語っている。 (レリック?いやまさか……あれには破壊する事はあっても物体をどこかに飛ばすような事例は無かったし、 そもそも、山一つレベルの物質量を次元を飛び越えて転移させるだなんて、聞いたことも無い。 となると、やっぱりこの村にあった伝承が関わっているとしか……) ユーノは日頃、時空管理局本局の無限書庫の秘書長を勤めている。次から次へと来る仕事で多忙な毎日を過ごし、ユーノは長らく休みを取っていなかった。 そのユーノがなぜ羽生蛇村にいるのかと言うと、日々労働に労働を重ねるユーノを心配した同僚や仲間達が半ば強引にユーノに休みを取らせたからだ。 突然与えられた休日に、ユーノはかつて世話になった管理外世界の地球に来ていた。 前から何度か文献で目に入れていた、怪奇現象や都市伝説などの噂が絶えないという羽生蛇村の存在に、スクライア一族としての血が騒いだのか、ユーノは強い興味を持っていた。 そして地球に来て、かつて世話になった高町家に挨拶に行った後、ワゴン車をレンタルして羽生蛇村に向かった。 交通の便もあり、羽生蛇村に入ったのは深夜。暫くして同僚から、レリックの反応を三隅郡近辺で探知したという通信が入った。 念のためと思い、ワゴン車の中で待機していたところ、深夜十二時になると共にサイレンと地震に襲われたのだ。 因みに機動六課の面々はユーノがここにいることは知らない。 しかし少なくともライトニングの面々も現世から消失しているとしたら、ユーノが巻き込まれたことも六課に間もなく知らされるのだろう。 (まさかこんな事がなのはの故郷の世界で本当に起きるなんて……。 それに羽生蛇村に伝わる海帰り、海送りの慣習。もしその海がこの赤い海を差すなら、あのサイレンは……) 「……とにかく山を降りて、村に行ってみるしかないか」 ここで考えていても仕方がない。 ユーノは不自然に削られたような崖を懐中電灯で照らして回り、そして踵を返して再び山を降り始めた。 多くの謎が隠されているであろう、まだ見ぬ羽生蛇村に向かって。
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SSタイトル元ネタ 話数 タイトル タイトル元ネタ OP 序章 サイレント・シンドローム 『 サイレントヒル 』と『 トワイライト・シンドローム 』を合わせた造語 001 霧散 002 邂逅 003 F.O.A.F.(Friend of a Friend) 「友達の友達」及び、「流行り神」の黒幕的組織名 004 零を視る者 005 Retry? SIREN原作のコンティニューの事 006 あそぼう 遊びに誘う呼び方。互いの年齢差や関係、性別を考えないと場合によっては相当危険になる言葉危険な例:『なーがいくーん! いっしょにあそびましょー!』 007 老頭児&Rookie 008 彼らは時と場所を越えて此処に集う 009 新しい風 前原圭一の異名の一つ 010 伝染神(うつりがみ) ホラー映画「 伝染歌 」+「 流行り神 」 011 魔王と邪神 012 Plague Queen カードゲーム・マジックザギャザリング(通称MTG)のカード「疫病の女王ガルザ・ゾル」 013 the 4th Survivor バイオハザード2のサブシナリオ 014 邪神達の胎動 015 惑う子羊 016 親バカ日誌 西田敏行主演映画「 釣りバカ日誌 」 017 霧笛 018 追跡者 NEMESIS-T型の二つ名。およびトミー・リー・ジョーンズ主演映画「 追跡者 」 019 戦士の心 020 少年は見た! テレビドラマシリーズ「家政婦は見た!」 021 見ぃつけた 022 探し人 023 ディアハンター ロバート・デ・ニーロ主演映画「 The Deer Hunter 」 024 見つからない 025 笑う死神 026 サイレン一周目 027 怪物と縄の巫女さまの童話。 028 夕闇通り探検隊 ホラーアドベンチャーゲーム「 夕闇通り探検隊 」 029 困惑 030 IT スティーヴン・キングのホラー小説及びそれを映画化した作品「 IT 」 031 暗中模索/臨戦態勢/カンニング 032 Close Encounters of the Third Kind SF映画「 未知との遭遇 」原題 033 雲上海下(うんじょうかいか)前編雲上海下(うんじょうかいか)後編 034 DOG 035 休息 036 愛と罪が集う街(前編)愛と罪が集う街(後編) サイレントヒル2キャッチコピー「全ての愛と罪が集まる街」より 037 罪と罰 フョードル・ドストエフスキー著「罪と罰」 038 暗闇通り探検隊 ホラーアドベンチャー「夕闇通り探検隊」 039 輝き 040 怪人・デカおじさん 流行り神1にて、小暮宗一郎に街の子供がつけたあだ名 041 When? Where? Why? 042 怪人・デカおじさん2 流行り神1にて、小暮宗一郎に(ry 043 Implication 044 Controversial Participation 045 Self question 流行り神のゲームシステム「Self question」 046 錆びた穽 トワイライトシンドローム究明編・第八の噂『錆びた穽』より 047 Creep 地下鉄を舞台にしたホラー映画「 0:34 」の原題 048 DEEP RISING 海洋モンスターパニック映画「 ザ・グリード 」の原題 049 闘争 050 Significant CommitmentHelpless Predicament 051 悪鬼がとおる 漫画「三つ目がとおる」 052 咆哮 「流行り神」のBGM名称より 053 Doppelganger 同じ姿の人間が別々の場所で同時に目撃される、もしくは自身と同じ姿をした人間を目撃する現象 054 彷徨える大罪 弾幕STG「東方花映塚」より 『罪符「彷徨える大罪」』 055 ALONE IN THE DARK サバイバルホラーゲーム「 ALONE IN THE DARK 」 056 Vicious Legacy 057 ジャックス・イン サイレントヒル2、3に登場するモーテルの名前 058 Deadly Belief 059 Plague Queen 0 060 たとえそれが損なわれていたとしても ひぐらしのなく頃に解 EDの歌詞より 061 神隠し逃亡者 流行り神1 間宮ゆうか編タイトル名「神隠し」ハリソン・フォード主演映画「 逃亡者 」 062 堕辰子様に叱られるから 弾幕STG「東方風神録」より、BGM『稲田姫様に叱られるから』 063 完全なる傲慢者 カードゲーム・マジックザギャザリング(通称MTG)のカード「傲慢な完全者」 064 魔弾の射手 カミーユ・マリア・フォン・ウェーバー作曲のオペラ「 魔弾の射手 」 065 猫歩肪当(猫も歩けば棒に当る) 諺「犬も歩けば棒に当たる」 066 A Distinctive Comrade 067 テレホンコール 「トワイライトシンドローム・究明編」第七の噂のタイトル 068 クローズアップ殺人鬼 NHKの報道番組「クローズアップ現代」。または、弾幕アクション「東方萃夢想」より 『手品「クロースアップ殺人鬼」』 069 ジェノサイダー SIREN主人公・須田恭也の異名「異界ジェノサイダー」より 070 Sensible solution = Realistic Conception 071 着信アリ 柴崎コウ主演ホラー映画「 着信アリ 」 072 混ぜるな危険 サイレントヒル3のヘザー特製殺虫剤より 073 罪物語‐ツミモノガタリ‐罰物語‐バツモノガタリ‐ 西尾維新著「化物語(バケモノガタリ)」 074 菊花の約 江戸後期の怪異小説集「雨月物語」の中の一篇「菊花の約」 075 メトロ・サヴァイブ 漫画家藤澤勇希の作品「メトロ・サヴァイブ」より 076 罪と罰――Accusation&Banishment―― 077 Collapse 078 運命の出逢い 宮田司郎とネイルハンマーの関係性を示す深い言葉 079 Concise 080 ネクタール 漫画家藤澤勇希の作品「BM ネクタール」より 081 犬とふたりとときどき、警察署 リリー・フランキーの実体験を基にした長編小説「東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜」 082 神が待ってる 083 Courage point 流行り神のゲームシステム「Courage point」 084 屍とふたりとときどき、駐車場 リリー・フランキーの実体験を(ry 085 FIGHT THE FUTURE オカルトTVドラマの劇場版「X-ファイル ザ・ムービー」の原題「 The X-Files Fight the Future 」及び、シリーズを代表するキーワードの一つ 086 傀儡とキリングフィールド カンボジアのポル・ポト政権下で大量虐殺の行われた刑場跡「キリング・フィールド」及び、カンボジア内戦を描いた映画「 The Killing Fields 」 087 生まれ変わったら双子がいいね ひぐらしのなく頃に・祭囃子編で園崎詩音がこのような事を言ってた気がしたので、それ 088 エレル――ELEL―― 漫画家藤澤勇希の作品「エレル」より 089 せめて一度くらい、幸せな夢を見させて TVアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」より、本編での台詞 090 その誇り高き血統 ジョジョの奇妙な冒険第2部の副題 091 Night of the Living Dead 記念すべき“ゾンビ”映画の第一作「 Night of the Living Dead 」 092 R Death13 093 Dog Soldiers 人狼伝説を取り入れたホラーアクション映画「 ドッグ・ソルジャー 」の原題 094 レギオン 漫画家藤澤勇希の作品「レギオン」より 095 風海純也の考察物語 096 MachRider HighWaaaaay!! 097 Unknown Kingdom 漫画家藤澤勇希の作品「UKキングダム」より 098 今日も僕は殺されるOpen Your Eyes 繰り返される“殺される今日”を描いたホラーサスペンス映画「 THE DEATHS OF IAN STONE 」の邦題夢と現実が交差するスペインのサスペンス映画「 Abre los ojos 」の英題 099 殺意と善意が交差する時物語は終わる 100 噛み合わない「世界」 101 リセット 大停電から始まる神隠し事件を描いたホラー映画「 Vanishing on 7th Street 」の邦題 102 Twilight Deadzone アメリカのオカルトSFドラマ「 The Twilight Zone 」 + スティーブン・キングのホラー小説およびそれを題材にした映像作品「 The Dead Zone 」 103 Phantom 流行り神1エンディングテーマ・タイトル「 Phantom 」 104 Exodus 旧約聖書におけるモーセの脱出劇、及びそれを元にした小説・映画作品 105 ワルタハンガBlaze Of Glory 漫画家藤澤勇希の作品、及びメラネシアに伝わる蛇女の伝承「ワルタハンガ」よりJON BON JOVIの歌う、映画ヤングガンⅡの主題歌「 Blaze Of Glory 」 106 『澱み』 107 オナジモノ 108 双子ならば、同じ夢を見るのか 羽生蛇村異聞 第五話での牧野慶、宮田司郎の台詞より 109 遠い出来事 石井竜也のアルバム「日時計」に収録されている曲「 遠い出来事 」 110 隠し件 111 今はそれどころではない SIRENゲーム内で、屍人に発見されている状態で仕掛け等を調べようとすると出るメッセージ 112 PITCH BLACKDEAD SPACE 暗闇から襲い来る怪物との戦いを描いたサバイバルホラー映画「 PITCH BLACK 」消息を絶った宇宙船を舞台にエンジニアが脱出を図るサバイバルホラーゲーム「 DEAD SPACE 」 113 地球最後の警官 R.マシスンのSFホラー小説「I am Legend」、およびそれを基としたヴィンセント・プライス主演の映画「 The Last Man on Earth 」の邦題「地球最後の男」 114 静かな丘のリトル・ジョン クロックタワー2のバロウズ城に出現する幽霊の子供達が歌う童謡『大きな城のリトル・ジョン』と、サイレントヒルの命名の元ネタである『静岡』を合体させたもの 115 春のかたみ ホラー時代劇アニメ「怪~ayakashi~」のエンディングテーマ「 春のかたみ 」 116 暗闇を照らす光の中では心の言葉MOMENT 流行り神EDテーマ Phantom の歌詞より石井竜也のアルバム「SKETCH」に収録されている曲「 心の言葉 」米米CLUBのアルバム「PUSHED RICE」に収録されている曲「 MOMENT 」 117 天狗風――隙間録・間宮ゆうか編 旋風の別名。および、宮部みゆきによる怪奇捕物時代小説「天狗風 霊験お初捕物控(二)」 118 The Thing SFホラー映画「 遊星からの物体Ⅹ 」の原題 119 Edge of DarknessSecret Window メル・ギブソン主演のサスペンス映画「 復讐捜査線 」の原題ジョニー・デップ主演のサイコ・サスペンス映画「 シークレット・ウインドウ 」の原題 120 復讐の女神 ギリシャ神話に登場する女神「ネメシス」の二つ名。この女神に因んで、寄生生物NE-α型はネメシスという愛称を付けられた。ちなみにそのネメシスとは正しくは「義憤の女神」らしいが、カプコンスタッフが間違えたらしい 121 My Dear Sweet SisterYou re Not Here サイレントヒル3でのヘザーの台詞「My Dear Sweet Sister」サイレントヒル3OP曲「 You re Not Here 」 122 鬼の霍乱 流行り神2 F.O.A.F.ファイルデータベース No. 022「鬼の霍乱」 123 蒼い朝 石井竜也のアルバム「H」に収録されている曲「 蒼い朝 」 124 Obscure 光と闇のホラーアドベンチャーゲーム「 Obscure 」 125 MEMORY――隙間録・三上脩、加奈江編 石井竜也のアルバム「ACRISM」に収録されている曲「 MEMORY 」 126 Born From A Wish――隙間録・ジェイムス・サンダーランド編 サイレントヒル2・マリア編サブタイトル「Born From A Wish」 127 譲らぬ決意 128 YOU RE GONNA BE FINE SFサスペンスドラマ「FRINGE」シーズン2、第5話にてチャーリー・フランシスが残したメッセージ「 YOU RE GONNA BE FINE 」 129 Survivor ――Eye of the Tiger―― アメリカのロックバンド「Survivor」、および「Survivor」のヒット曲であり映画ロッキー3のテーマソングである「 Eye of the Tiger 」 130 The Others 古びた洋館で、不気味な物音に翻弄される母子の顛末を描いたホラー映画「 アザーズ 」の原題 131 羽生蛇村異聞 第三話・外伝『理尾や丹』――隙間録・吉村俊夫編 SIREN公式外伝小説「 羽生蛇村異聞 」、およびSIRENの舞台羽生蛇村に伝わる聖典・天地教之伝に書かれた伝承の一つ、大海竜「理尾や丹」 132 失われた記憶――隙間録・宮田司郎編 サイレントヒル2、3に登場する書物のタイトル「失われた記憶」 133 さらに深い闇へ Xbox版の零~zero~「FATAL FRAME 零 SPECIAL EDITION」のキャッチコピー「さらに深い闇へ…。」より 134 The FEAST 1The FEAST 2 謎のモンスターと生存者との死闘を描いたコメディホラー映画「 Feast 」の邦題 135 THE DIVIDE 閉鎖された地下シェルターの中で起こる恐怖を描いたサスペンス映画「 ディヴァイド 」の邦題 136 過去は未来に復讐する 中谷美紀主演のサイコサスペンスドラマ「 ケイゾク~未解決事件継続捜査部署~ 」第九話サブタイトル 137 Against the Wind Bob Segerのアルバム「 Against the Wind 」 138 ゼロの調律 零シリーズ「零 ~月蝕の仮面~」のイメージソング。天野月子(現 天野月)の歌う「 ゼロの調律 」 139 聲 零シリーズ「零 ~刺青の聲~」のテーマソング。天野月子(現 天野月)の歌う「 聲 」 140 Let the Right One In 正しき人を導き入れよの意。および、スウェーデンのホラー映画「 ぼくのエリ~200歳の少女~ 」の英題 141 サイレン二周目 142 DIE HARD ブルース・ウィリス主演のアクション映画「 ダイ・ハード 」の原題 143 Still Waiting――隙間録・ルーシー・マレット編 ホラーゲーム「Obscure」のテーマソング、SUM41「 Still Waiting 」 144 Hereafter――隙間録・S.T.A.R.S.ブラボーチーム編 クリント・イーストウッド監督作品「 ヒア・アフター 」 144 [[]] 145 [[]] 146 [[]] 147 [[]] 148 [[]] 149 [[]] 150 [[]]
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タイムアタック等は、初日22 00 羽生蛇村小学校 トライアルに移動しました。 残弾数注意。同じ敵と複数回戦闘しないのがベター。 A「打撃/巡回」体育館を巡回。 上通路ハシゴ側~下 B「打撃/巡回」体育館を巡回。 開始地点方面~下 C「打撃/巡回」3,4年教室横を巡回。 狭い範囲をうろついている。 D「打撃/固定」 1,2年教室横の廊下で固定。 E「打撃/固定」 図書室前の廊下に固定。 F「打撃/固定」 図書室内に固定。 G「打撃/巡回」 図書室内を回っている。 H「打撃/固定」最初は階段を上り、2階空き教室中扉で固定。 警戒状態になると体育館隅まで移動。鍵入手後は強制的に3,4年教室横の階段に固定。そこで警戒すると再び2階へ。 終了条件1 敵の発見を無視して、通路を一周する様に走る。 ハシゴ手前で構えると、接近してきた敵A・B共に射程に入るので倒す。 すぐに体育館を出たら、扉を閉める。 3,4年教室横の敵Cは無視して2階へ行く。 すぐに廊下の敵Dに発見されるので倒す。先にいる敵Eも同様。 教材倉庫から道具を拾い、1階に戻る。 敵Hが開けた扉を再び閉め、体育倉庫で鍵を拾う(右端にあるので、位置に注意)。 3,4年教室で叫び、階段の敵Hが2階に行ったら成功。小倉庫の扉を開け、すぐ右の扉を開ける。(教室からすぐに扉を出て、敵を無視して小倉庫に行っても間に合います。) 終了条件2 2階までは終了条件1と同様。 廊下の敵Dを倒したら、すぐに5,6年教室に入る(なるべく開けっ放しの扉から)。 中扉から空き教室に入ったらすぐ左を向き、移動を始める敵Hを倒す。 音を聞きつけて入ってきた廊下の敵Eをかわし、図書室へ。 奥の棚から本を拾う。 後は条件1と同様に脱出。
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ティアナ・ランスター 羽生蛇村折部分校/校庭 初日/2時47分32秒 降り続けていた雨が鳴りを潜め始めた頃。ティアナが山の中で茂みを掻き分けていると、目の前に蔦に巻き付かれ、錆びついたフェンスが現れた。 その向こうには木の葉が散らばり、雑草が所々生えてはいるものの整備された地面が広がっている。 (……やっと着いた) 数十分かけてようやく人為的に作られた地面に到達したティアナは、それだけでほっと胸をなで下ろした。 フェンスに手をかけ、一気に飛び越える。 軋むフェンスを背に地面に降り立ち、周りを見渡すと、整備された地面は広場のように広がっていることがわかった。 広場は見たところさして広くなく、外周は黒く塗りつぶされたような夜の森に囲まれている。 広場の端には電柱が立っていて、そこの電灯にはか細い光が灯っている。あとは相変わらず雨音が響く夜闇が広がるばかりだ。 周りを見渡して、一際目を引いたのが、暗がりに佇む二階ほどはありそうな横長の建物の影。 案の定、建物の一階にあたるであろうところの一番端、窓らしき箇所から光が漏れていた。 (さっきの放送はあそこから流れてたのかしら) 広場には他に朝礼台のような金属製の台や、水飲み場らしきものがあり、奥に佇んでいる建物は、近付いて見てみると古びた二階建ての木造建築物だった。 雨除けの屋根が建物の壁面から飛び出ており、その下に出入り口であろう扉がある。 「……なにこれ」 しかし建物の扉はベニヤ板や角材などで頑丈に封鎖されていた。 それどころか、建物一階の窓はその全てが外側から廃材などを打ち付けられており、暗くて見にくいが二階の窓も同じように塞がれている。 「気味悪いわね……」 もともとこういう建物なのだろうか。まるで外部からの接触を拒んでいるかのような様相は、先程の放送と相まってより更に異様なものに思えた。 建物は静まり返っており、中からは何の物音もしない。 (誰もいないのかしら?いたらいたで不気味だけど) ティアナは、板や廃材を打ち付けられた窓の中で、唯一光が漏れている扉横の窓に近づいた。 廃材が剥がれており、光はそこから漏れている。ただ窓の位置が高く、中の様子までは分からない。 どうやらここから入れるようだ。 (……入ってみるか) さっきの放送に関する手掛かりがあるかもしれない。そうでなくても、この不可解極まりない現状に対して、多少なりとも調査が必要であると感じた。 なによりこの異様な状況で、一人の少女が大変な状況に置かれていたとしたら、レリックや仲間との再会よりそちらを優先するべきではないのか。 (私の思い違いだったらいいけど、そうでもなさそうだし) そう思いながら、ティアナは少し高い位置にある窓のへりに手をかけて、跳び上がった。 その勢いで壁に足をかけて、廃材の間の穴に身体を滑り込ませる。視界に飛び込む光が、夜闇に慣れた目を微かに眩ませた。 中に降り立つとそこは、そう大きくない部屋だった。 本棚や、アルミ製の机が並んでおり、机上には本や筆記用具、辞典やファイルなどが置いてある。 壁には貼り紙が整理されて貼られていて、ここがなんらかの職場であるだろうことは想像がついた。 ティアナが進入した窓側の壁にはロッカーが並んでいる。目についたのは、その奥にあった使い古されている放送器具だ。 「やっぱりここから……」 『春海』という少女はここからSOSを送ったということになるのだろう。 では、あの幻覚の視界の持ち主である女性は一体、何者なのだろうか?その女性が少女を追い回していたという可能性も否めない。 (でもその人が犯人だとして、一人でこんな風に建物を封鎖することなんてできないだろうし……) 部屋の中の様子は、廃材を打ち付けられた建物の外観とは異なって、古びてはいるものの整理されており、 ついさっきまで使われていたような形跡さえある。 その様子からして、依然から封鎖されていたような建物ではないと言うことが分かった。 つまり、何者かがつい最近にこの建物を封鎖したのだ。 考えてにわかに背筋が寒くなった。 意図が分からない分、この状況が余計不気味に感じられる。 (……とりあえず、この施設が一体なんなのか分からないと) しかし不気味な状況であるからこそ、機動六課、スターズ分隊の隊員である自分が動揺してはならない。今までもそうして来たのだから。 頭を切り替えて、情報を得るためにとりあえず壁にある掲示板の貼り紙に近付いた。 がさり その時、何かの紙を踏みつけたような乾いた音が足元から聞こえてきた。 視線を下ろすと、何かが印刷された薄黄色い紙が落ちている。 拾い上げて見てみると、翻訳魔法がまだ効いているようで書いてある文字が読み取れた。 「……星を見る、会?」 拾ったのは『星を見る会』というイベントのプリントだった。 『「星を見る会」のお知らせ』という見出しの下にある詳細を読み上げる。 (羽生蛇村小学校発行。333年に一度すい星がやってくる!星空のすばらしさ、宇宙の不思議に触れてみよう! ひにち、2003年8月2日。じかん、20 00~23 30。ばしょ、おりべぶんこう、こうてい。もちもの………) プリントに書かれたいくつかの気になるワードを拾っていく。 (羽生蛇村って確かこの近くの村の名前よね?) 通信から得た、レリック反応があった現場の情報を思い出した。日本、××県、三隅郡、羽生蛇村周辺。 (羽生蛇村小学校はその村の小学校で、場所、おりべ分校……ここはその小学校の分校ってこと? ということはこの部屋は職員室かなにかで……って言うか、この日にちって私達がレリック捜査で来たのと同じ……) 会の開催時刻もサイレンが鳴って、フリードから振り落とされたティアナが気を失った時間帯に近い。 (333年に一度の彗星……あのサイレンとなにか関係があるのかしら) プリントを手に思考をしながら壁の掲示板にティアナは近付き、貼ってある掲示物をしげしげと眺めた。 村の広報紙や、学校の予定表などが貼ってある中、一枚の写真が目に止まる。 見てみると、幼い子供達と大人が三人ほど、にこやかに微笑みながら並んで写っている。 「……ここの生徒と職員ってところ?」 おそらくそうなのだろう。自分の予想が正しければこの中に『はるみ』という子供がいるはずだが、名前など勿論書いてはいないので手掛かりにはならない。 プリントを改めて見やる。放送の少女がここの生徒だとしたら、『星を見る会』のために学校に来ていたという理由ができる。 (ここが職員室なら他に……名簿とかあるはずよね) そう思ってプリントをポケットの中にねじ込んだ。 並ぶアルミ机に歩み寄って、机の上を漁る。 教科書、図鑑、辞書……。 見る限り教材だらけの中、教員日誌を見つけてめくるも、書かれているのは取り留めのない内容ばかり。 最後に書き込まれた7月初頭のページを眺めてから、ティアナは日誌を閉じた。 (今は夏休み……か。元々人がいない中で『星を見る会』は開催されたのね) 取り敢えず日誌を机の上に置いて、一息つく。 机の上にお目当ての物は無い。 更に引き出しを開いていく。 「あ……」 一番上の引き出しに、紐で綴じられた黒い装丁の名簿がしまってあった。 取り出して開くと、グリッドが印刷されたページに名前が並んでいる。 (……あった) 『四方田春海』 少女はやはりここの生徒だったようだ。 となると、例の『星を見る会』に出席して学校に来ていた春海は、そこでなにかに遭ったに違いない。 サイレン、意識の途絶、放送、封鎖された学校、謎の幻覚……。 考えれば考えるほど頭の中に様々な憶測が浮かんでは消える。 (もうちょっと探索、してみようかしら) まだ調査の余地があった。 建物の中は静まり返っており、外からしとしとと聞こえてくる雨音以外、なんの音も無い。 ティアナは、名簿を元通りの、机の引き出しにしまって、部屋にある薄緑色に塗装さるた木製の扉に向かった。 扉を少し開けると、そこには深い闇が広がっている。 ティアナは半開きの扉から顔を出して、部屋の外を覗き込んだ。 職員室から漏れた光で、その場がおそらく廊下であることが辛うじて分かった。 光に照らされた反対側の壁には窓があるが、そこにも外から板切れ等が貼り付けてあり、窓ガラスは全て割られて床に散らばっていた。 底のないように見える闇はそれによって光が一切入ってこないからだろう。 ティアナは意を決して、闇に向かって声を張り上げた。 「誰かいませんかーーー!?」 しかし声は闇に呑み込まれ、あとには外から微かに聞こえる雨音だけが残った。 ティアナは溜め息を吐いて、廊下に出た。 扉の真上には廊下に突き出た形で、『職員室』と書かれたプレートが設置してある。 明かりが点いているのはティアナのいる職員室だけらしい。 あとは廊下の壁に二つ程点いている非常ベルの赤い光と、廊下の奥には天井に近い場所に、緑色の光を放つ小さなプレートが見えた。 緑色のプレートには何かが書かれているが、ティアナには遠すぎて読めない。しかしそこが廊下の端であることは想像がついた。 外で見た建物の外観からして、この職員室が一番端にある部屋なのだろう。 (建物の大きさから考えると、廊下に沿って2、3は教室がありそうね。……せめて懐中電灯があればいいんだけど) そう思いながら振り返り、もう一方の闇に目を向けていると、突如として鋭い頭痛が脳内を駆け抜けた。 「うぁっ!!」 突然の痛みに声をあげると同じくして、例の幻覚が視界をよぎる。 ティアナはぎょっとした。 その幻覚も先ほどと同様、誰かの視界のようなのだが、そこに映っていたのはまぎれもなく、頭痛に苦しんでいるティアナの後ろ姿だったのだ。 (う、後ろ!?) 驚いて振り向くと、強い光が目についた。目を細めて見ると、廊下にうなだれている男が立っており、キャップをかぶって、泥などで薄汚れた衣服を着ている。 光は手に持った懐中電灯から放たれており、電灯をティアナに向けたまま微動だにしない。 (な、なにこの人) その姿を目に入れた途端、ティアナは心臓が飛び上がりそうになったが、あくまで冷静に振る舞おうとした。 「あの、ここの建物の人ですか?」 「………」 黙ったままの男は、キャップを深く被って俯いたままでその表情は見えない。 ティアナは男への警戒心を最大まで引き上げながら、語りかけ続けた。 「あなたは誰ですか?どうしてこんなところにいるんですか?」 呼び掛けに対して、まるで聞こえていないかのようになんの反応も見せない男。 ティアナはそれに苛立ちを覚えた。 「答えて下さ………」 その時、男が懐中電灯を持っていない方の手を、ゆっくりと顔の位置まで上げた。 「っ!」 男が上げた手に持っている物を見て、絶句した。 懐中電灯の明かりを受けて、鈍く光を反射しているのは黒い鉄の塊。 (け、拳銃!?) ミッドチルダ、及び管理局が管理下に置いている世界では禁止されている質量兵器だ。 小型だが当たれば致命傷は必須。 ティアナが身を強ばらせるのと同時に男が肩を震わせた。 キャップの下から笑い声が漏れる。 「は はっ はは は はは」 声の調子もトーンも変則的な、気持ちの悪い笑い声。 固まるティアナを前に男は、俯いていた頭をゆっくりと持ち上げた。 「ひっ……」 露わになった男の顔を見て、ティアナの口から思わず引きつった声が漏れる。 およそ生きていると思えない青白い肌、生気の無い濁った目はそれぞれあらぬ方向を向いており、 その上、目や鼻や口からはとめどなく血液が流れ出ていた。 血液は頬から首筋まで伝い、懐中電灯の光をぬらぬらと反射している。 男は、血の溜まっている歯茎と唇をゆっくりと動かした。 「死 ねぇ」 途切れ途切れに紡ぎ出された言葉と同時に、男が銃口をティアナに向けた。 条件反射だろうか、気付けばティアナの身体は男が引き金を引く直前に、男の胴体に向けて動き出していた。 拳銃の発砲音と同時に男に体当たりを食らわせる。 腹部に強い衝撃を受けた男はそのまま床に転倒し、ティアナは男の握っていた拳銃と、衝撃で落ちた懐中電灯を奪った。 すぐさま立ち上がり、拳銃を男に向けて構える。 男は身体を持ち上げるように立ち上がり、背後に回ったティアナへと振り返った。 その動作全てが妙にゆったりとしている。 「止まりなさい!!それから両手を後頭部に組んで!!」 しかし男は、身体を不安定そうにゆらゆらと揺らすだけでティアナの言うことを聞いている様子は無い。 「聞こえないの!?両手を後頭部に乗せるのよ!!」 ティアナは、心中では顔から血を流した死人のような者に自分の言葉が通るとは到底思っていなかった。 だが焦燥感と恐怖故に、それ以外にやれることが思い浮かばなかったのだ。 男は相変わらずあらぬ方向を見ながら、魂が抜けたような呆けた顔を上げた。 そして息を思い切り吸い込む仕草を見せ 「お゛ぉお おおお ぉ ぉおお おぉお」 突如、獣のような叫び声をあげた。 神経を張っていたティアナは男の叫びに驚いて、肩を跳ね上げる。 その直後、がらり、と背後から木製の扉が開く音が聞こえた。 ティアナは拳銃を男に向けたまま、後ろを振り向き懐中電灯で照らした。 「は ぁあ あはぁ は あ はぁ あ」 そこには男と同じように肌は青白く、目と鼻から血を流している頭巾を被った初老の男が、荒く不規則な呼吸をしながら立っていた。 左手には懐中電灯、右手には錆び付いた包丁を持っている。 「ど、どうなってるのよ……」 片方では拳銃を向けられているにも関わらず、男が口角を上げて、歯茎を剥いてニヤニヤと笑いながらティアナににじり寄る。 もう一方からも、包丁を握った男がなにやら呟きながらじりじりと近付いて来ていた。 非常事態とは言え、管理局員が局の管理外世界で質量兵器を現地人に向けて使うとなると、まずただ事では済まないだろう。 男達の、光の無い濁った目を見やる。 (話を聞いてくれるような相手じゃないし……) 無闇に発砲はできない、しかし相手との対話も難しい。 職員室の扉は拳銃を持っていた男の向こう側にあるので、今すぐ学校から脱出するということは出来ない。 横目で壁を見ると、丁度、ティアナの横に教室の扉があった。 となるとティアナに出来ることは一つ。 男達に目を向けながらも、少しずつ扉に近付く。 懐中電灯を持った手で、扉の取っ手を掴み、一気に開いて身体を中に滑り込ませた。 すぐさま扉を閉め、目に付いた鍵を急いで掛ける。 振り返って周りを見渡すと、教室には小さな机と椅子がいくつか並び、奥の壁には黒板が、その前には教卓があった。 教室にはティアナの入ってきた扉とは別にもう一つ、廊下に面した扉があり、ティアナは扉に走り寄るとそこの鍵も掛けた。 扉の磨り硝子の覗き窓からは、ぼんやりと懐中電灯の光が見える。 だんだんだんだんっ 直後に扉が激しく叩かれ、打撃音がやかましく教室内に響き渡る。 男達にどれだけの力があるのか分からないが、木製の扉では破られるのも時間の問題だ。逃げなければ……捕まれば殺される。ティアナはそう直感した。 (ホラー映画じゃあるまいし……なんなのよ!!) 心中で悪態をつきながら、なにか状況を打開する手だては無いか、と教室内を改めて見回す。 窓は例によって廃材等で隙間なく閉じられてあり脱出はできない。破壊しようにも、室内は閑散としていて、教室の後ろにある棚には使えるような道具は何も無い。 そんな中で、目についたのは教卓の横にあったアルミ製のドアだった。 ティアナはドアに駆け寄るとドアノブを回してゆっくりと開けて、向こう側を覗いた。 そこにはティアナのいる教室と同じような教室があった。 教室同士が、このドアで繋がっているようだ。 扉の向こうで男達が群がっている教室をそそくさと出て行き、ドアを閉めた。そしてなるべく音をたてないように教室の奥の扉に近付いて、静かに扉を開ける。 恐る恐る廊下に顔を出すと、先程ティアナの入った教室の扉に、男達が殺到していた。 どこから現れたのか人数が二人ほど増えており、その二人も生気の無い顔に目から血を流して、各々が鎌や金槌を手に扉を叩いている。 (一体何が起こってるの……?) 身体を支えきれていないかのように不安定な動きをする男達は、まるで映画に出てくるゾンビのようだ。 違いと言えば唯一、物を扱う知能は残っているということだ。 (……こんな小さな学校じゃ、どこかに籠もってても見つかるのは時間の問題だし、ここにいてもどうにもならないわね) 教室の窓はどこも頑丈に塞がれている。破壊しようものならその音を聞きつけられ、あっという間に捕まるだろう。 なにか打開策は無いかと、ティアナは廊下を見渡した。 教室とは反対側の壁、ティアナの目の前にはちょうど男子トイレと女子トイレが並んでいる。 更に近くには、さっき職員室から見た天井辺りで光っている緑色のプレートがあった。 そこには『非常口』という文字と扉から出て行く棒人間が描かれている。どうやらティアナのいる教室が、校舎の端に位置しているらしい。 そのプレートのすぐ近くにアルミ製のドアがあった。 (『非常口』、か。一か八か行ってみるしかないわね) 改めて振り返ると、男達は相変わらずティアナがいた教室の扉に群がっている。 (……行くなら今しか無い) 機を見て、しゃがみながら廊下へと出て行った。 男達は自分達が叩いている扉の音がうるさくて、ティアナの足音には気付かないだろう。 『非常口』のドアはティアナのいた教室から見て、二階へ上がる階段を挟んだ位置にある。しゃがみながら急いで階段を素通りして『非常口』に向かい、ドアノブに手をかけた。 (………ウソ) しかしドアノブが回そうとしても、ビクともしない。鍵が掛かっているようだ。 (信じらんない、どうしろって言うのよ……) ドアの前で、ティアナは深くうなだれた。横からは扉を殴る音が絶え間なく聞こえてくる。 強行突破、は難しいだろう。もしあの四人に囲まれたら持っている農具で袋叩きに遭うに違いない。 ふと、こういう時相方のスバルがいたら……とも思った。 フロントアタッカーで格闘が主体の彼女ならこういう状態を打開できるのだが。 (……駄目ね。今いない人間にすがっちゃうぐらいじゃ、スターズ隊員としてもセンターガードとしても笑われちゃうわ) そう思うことで、弱気になり掛けた自分を奮い立たせた。 『非常口』の横には、木造の階段が闇に向かって伸びている。 (……少なくとも一階に留まるのは危険だし、こうなったらこの校舎から出られそうなところを隈無く探すしか無いわね) 決心したティアナは後ろで男達が扉に群がっていることを確認して、階段を静かに駆け上った。 踊場に出てから折り返すように上に伸びる階段を上がって、警戒しながら二階の廊下を覗き込む。 少し遠くに、懐中電灯の明かりが見えた。金属バットを手にこちらを伺っているように立っている。 懐中電灯の逆光で顔は分からないが、およそ下にいた男達と同じにまともな人間ではないのだろう。 現状ではそうとしか思えないし、警戒するに越したことはない。 二階も一階とほぼ同じような構造らしく、階段横に教室の扉があった。 (下みたいに教室を伝って向こうへ行けるかも……) バットを持った人間に注意を払いながら、近くにあった教室の中に入っていく。扉を閉め、息を潜めて誰もいないことを確認してから懐中電灯を点けた。 やはり一階と同じく教室の後ろ、荷物棚や掃除ロッカーの設置してある壁の端にドアがあった。 ドアを抜けて隣の教室に入るが、相変わらず窓は廃材でびっしりと埋め尽くされていて、逃げ場は無い。 (やっぱりここも駄目か) 使われていないのか、他の教室と違い、椅子や机が綺麗に後ろの壁に並べてある。 こうなると、後は一番奥の教室に行くしかないのだが…… がらり その時、誰かが教室に入って来た。咄嗟に教卓の影に身体を滑り込ませ、息を殺す。恐らく廊下にいたバットを持った人物だろう。 足音と共に床が軋み、懐中電灯の明かりが教室内を撫で回すように照らしていく。 (頼むからこっちに来ないでよ……) 教卓の中で縮こまり、神経を尖らせながらティアナは願った。 「はる み ちゃ ぁん、い るのか なぁ?」 不意に声が聞こえてきた。声の太さからして男性のものだろう。やはり下にいた男達と同じくしゃべり方が覚束ないようだ。 ティアナの頭の中で男の言った言葉が引っ掛かった。 (は、る、み、ちゃん……はるみ?) 名簿で見た、放送の少女と思われる『はるみ』という名が男の口から飛び出た。 ティアナは驚き、機を見て教卓から顔を少し覗かせると、向こうで頭の禿げ上がった初老の男性が、金属バットを片手に懐中電灯で教室内を探し回っていた。 (あれは、確か写真にいた……) 職員室の掲示板に張られていた写真。男はその写真の中心で児童に囲まれながら暖かな微笑みを浮かべていた。 (ってことは、あれって感染とかするの……?) 新種の病原体による症状かなにかなのか、この学校にいる人間は一様に血の気が無く、目や鼻から血を流しており、更には凶暴化している。 (道具を持ってたり、微かに喋る辺り知能は残ってるみたいだけど……どちらにしろ話は通じなさそうね) さしずめ『春海』は、『ほしを見る会』で学校にいた時に襲われたのだろう。 (これはレリックどころの話じゃ無くなってきたわね) いつもガジェットや戦闘機人を送り込んでくる相手側によるものなのか、それは分からないが、 とりあえずティアナは、自分がとんでもない状況の中に置かれているということを理解した。 (行ったかしら……) いつの間にか獲物を探して揺らめく懐中電灯の光が消えていた。耳を澄ませると、教室からは何の音も聞こえない。あの男の激しい息遣いも、歩行により床が軋む音も無い。 静寂の中、ただ雨が降る音が微かに聞こえてくるだけだ。 ティアナは恐る恐る教卓から顔を出した。ただでさえ暗い夜なのに窓が閉鎖されている教室内には深い暗黒が広がり、一寸先も見えない。 懐中電灯のスイッチに指をかける。かちり、とスイッチが入り、明かりが点いた。 「見 つけ た ぁ」 目が合った。 見開かれ血走り、濁りきった瞳。ティアナの眼前には男の顔があった。目から血は流れ、死体のような肌をした禿げ上がった男はティアナを見て、歯を剥いて笑ってみせた。 「―――――――!!!」 声にならない悲鳴をあげて、ティアナは飛び退いた。勢い余って壁に背中を打ち付けたが、それどころではない。 男はニタニタと嫌らしい笑顔を携え、金属バットを握り締めながら立ち上がった。 ティアナも壁に寄りかかりながら、なんとか立ち上がり、男から離れようと後退りをする。 男は怯えているティアナを楽しげな表情で見据えながら、金属バットを頭上に振り上げた。 「ふ ぅん゛!!」 男はティアナ目掛けて思い切りバットを振り下ろした。ティアナは咄嗟に左に飛んで避け、バットは黒板に当たって激しい音を教室に響かせた。 そこから男は間髪入れずバットを勢いよく横に振り、それは避けきれなかったティアナの二の腕に直撃した。 「ぁぐっ!!」 予想以上に重い衝撃に押され、ティアナは床に倒れ込んだ。右腕に熱と共に鈍い痛みが広がる。 男は、倒れ込み苦悶の表情を浮かべるティアナに跨り、けたたましく笑い出した。 (ヤバい……!!) 「い っはっは はは はっは は」 歪な笑い声を上げながら、男は再びバットを振り上げる。その目線は、ティアナの脳天をしっかりと狙っていた。 しかし次の瞬間。 ぱぁん 乾いた音が響き渡った。ティアナの左手には拳銃が握られており。そしてその銃口は男の頭部へ真っ直ぐに向いていた。 発射された弾丸は男の眉間を見事に射抜き、空いた風穴からは血がたらたらと流れ出している。 男は笑顔を浮かべ、バットを振り上げたままゆっくりと後ろに倒れ込んだ。 (し、質量兵器で、民間人を殺した………) 自己防衛に加え、相手が正常な状態では無かったと言えど、質量兵器を使って現地人を撃ち殺してしまった。 ティアナはよろよろと立ち上がると、自分の持っている拳銃を呆然とした面持ちで見つめた。 男はバットと懐中電灯を持ったまま仰け反った状態で死んでいる。 「……ッ!?」 ティアナはぎょっとした。 仰向けに倒れて死んだはずの男が、突然動き出したのだ。 素早くうつ伏せになり、手足を丸めて胎児のような格好でうずくまった。 ティアナはとっさに銃を向け、警戒しながら様子を見たが、男はそれきり動く様子が無い。 「……な、なに?なんなの?」 確かに額を撃ち抜かれたはずの男が、なぜいきなり動き出して身体を丸めたのか。 ティアナが動揺していると、下の男達が銃声を聞きつけたらしく、階段をぎしぎしと登る音が微かに聞こえてきた。 (とにかく今は逃げないと!) ティアナは廊下に飛び出すと、位置としては一番奥にある隣の教室に向かった。 扉の上には『図書室』と書かれたプレートがある。ティアナは図書室に入ると急いで扉を閉め、鍵を掛けた。 室内には沢山の本棚と、閲覧者用の机や椅子が置いてある。念のためティアナは懐中電灯を消し、一番奥の本棚の影に隠れて様子を見た。 やがて複数の足音が扉の向こうから近付いて来た。どうやら隣の教室に入ったらしく、扉を開ける音が聞こえてきた。 (こっちには気付かないでよね、頼むから) そう願いながら扉を睨み付けている矢先。 「……ぐっ!?」 鋭い痛みが頭の中に走った。これで三度目だ。再び幻覚が視界と聴覚を支配する。 ―――いへぇ へえ ぇへ へへ――― 見えたのは汚れた軍手をはめて金槌を持っている誰かの視界。 視線の先には、先程ティアナが撃ち殺した男がうずくまっていた。 (……これってやっぱり他人の視界、よね?) そう思った直後、頭の中がざわめくような感覚と共に、視界が切り替わった。 ―――はぁっはは は はっはひぃ は――― 今度は懐中電灯と錆びた包丁を持った男の視界。恐らく一階でティアナを挟み撃ちにしようとした男だろう。 金槌を持った男が視界の端に映っており、視線はやはり丸まっている禿げた男に向いていた。 「……………………」 段々と勝手がわかってきた。どうやらこれは他人の視界を盗み見る能力のようなものらしい。 魔法とは違う、超能力。それがなぜ突然自分に備わったのかは理解に苦しむが。 頭痛を堪えながら、ティアナは試しに意識を集中してみた。すると視界は更に変わり、今度は鎌を持った男。一階の廊下を徘徊しているようだ。 (なんでこんな能力が……サイレンといい、アイツらといい、やっぱり全部関連してるのかしら?) 現状では何とも言えないが、とりあえず男達が図書室に入ってくる様子は無さそうだ。 ティアナは本棚に寄りかかると、大きな溜め息を吐いた。混乱して、頭の中の収拾がつかなくなっている。 「あぁ、なんでこんな目に遭うかな……」 勿論返事をしてくれる者は誰もいない。嘆きは暗闇に霧散した。 おもむろにティアナは拳銃を持ち上げてみた。改めて持ってみると、鉄の塊は意外と重かった。 (……質量兵器の使用、しかも普通じゃないとは言え民間人に向けての発砲……バレたら確実にマズいことになるわね。でも) 「今はそんなことも言ってられないわね。非常事態なんだし」 弾には限りがある。シリンダーに入っている弾はあと五発。 「全部使う前にこの事態を切り抜けなきゃダメ……か」 (……早くここを出て、なんとか六課と通信を取る方法を見つけなきゃ。クロスミラージュは、少なくとも今は諦めるしかないか。それにキャロも探さないといけないし……) サイレンが鳴り響く時、錯乱して暴れるフリードに必死にしがみついていたキャロ。それが最後に見た彼女の姿だ。 (キャロ……無事ならいいんだけど) もしかしたらあのまま無事に撤退して、助けを求めているかもしれない。 あるいは自分と同じように、どこかに落ちてあの化け物達に襲われているかもしれない。 後者の状態に陥っているキャロのことを考えると、ティアナはいてもたってもいられなくなった。 (早くここを出ないとね) 「っ……く……」 目を閉じて意識を集中する。再び『彼ら』の視界が映りだした。 ―――はぁ っ は っはぁはぁ は っはぁ はっは――― 視界を切り替える。 ―――あ゛ ぁぁあ゛あ゛ あ゛ぁああ――― 視界を切り替える。 ―――くひっ ひひひは はっは っ――― ―――は ぁ はぁ、はぁ は あはぁ ――― ―――どこ ぉ に行っ た ん だぁ?――― 盗み見れる視界は全て校内にいる者ばかり。この能力にはどうやら、盗み見ることができる範囲にある程度の限界があるようだ。 視界の主達は皆校舎の中にいて、各々徘徊している。校舎内をまんべんなく懐中電灯で照らして回る化け物達はまるで見回りをしているようだった。 更に視界を切り替えると、今度は二階の廊下が映り込んだ。 ――― は ぁ るみちゃ ぁ ん、 どぉこ で すかぁ ?――― 「……!?」 その声を聞いたティアナは驚きを隠せなかった。視界の主は手に懐中電灯と金属バットを持っている。間違いない、あの禿げた男だ。 (さっき死んだはずでしょっ!?) 確かに男の眉間を撃ち抜いた。それでかろうじて生きていたとして、動けるはずがない。ましてや立ち上がって歩き回るだなんて考えられないことだ。 まさか、治癒能力か? (ありえないわ、そんなの……) ―――せ んせぇ と ぉ あそ びぃま しょ ぉ――― しかし何事も無かったかのように、男は校舎内を徘徊している。 (本当に……夢でも見てるんじゃないかしら) ティアナは疲れた顔をして、頭を抱えた。 (取り敢えず……今はここを出ることに専念するべき、ね) 手持ちは懐中電灯と慣れてない拳銃、しかも残弾が五発のもの。戦力としてはかなり頼りない。 窓に貼り付けられている廃材を再び調べる。やはりどこも頑丈に留めてある、と思ったが 「ん?」 懐中電灯で照らして見ると、角材で補強してあるベニヤ板とベニヤ板の間に、少し隙間が空いている箇所があった。 よく見れば周りに打ち付けてある釘も若干浮いている。衝撃を与えれば剥がせるかもしれない。 (……一気にやるしかない) ティアナは深呼吸し、一度バリケードと距離を置いた。そして息を入れ、ベニヤ板に渾身の蹴りを放った。 べきゃっ、という音と共にベニヤ板が大きく歪み、釘が浮いて隙間が広がる。 (いける!!) ようやく突破口が見えた。 しかしそれと同時に微かな頭痛が走り、幾つもの思念がこちらに注意を向けたのを感じた。校舎内に徘徊している男達が、音に反応したのだろう。 これも能力によるものなのか、だが気付かれたからには急がなければならない。 「ふッ」 もう一発。軋む音と共に再び隙間が広がる。 (これくらいまでいけば……) そう思うと、ティアナは隙間に手を入れベニヤ板を思い切り引っ張った。べりべりべり、と剥がれていく感触が腕に伝わる。 ばきっ そして遂にベニヤ板は大きな音を立てて剥がれ落ち、そこにはティアナが通るには十分な脱出口が現れた。 その直後、後ろで誰かが扉を開けようとしたのだろう。扉から、がたっと音が鳴った。しかし鍵が掛けられているため開かない。 完全に気付かれたようで、男達が中に入ろうと激しく扉を叩いている。 早くここを出よう、そしてキャロを探して管理局に戻り、この異変をいち早く解決しなければ。 ……外もあの化け物達だらけだったら?そうだとしたら尚更早く問題を解決しなければならない。 ティアナは決意して、開けた穴から夜の闇へ、再び飛び込んでいった。 その先には深い絶望が待っているとは知らずに。
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フェイト・テスタロッサ・ハラオウン 旧宮田医院/山中 初日/4時41分38秒 ぽたぽたと顔を叩く水滴の感触。それが仰向けに倒れていたフェイトの意識を覚醒へと促した。 意識が浮上し、閉じていた目を開くと弱い光が視界に映り込む。 目覚めたばかりで未だぼやける目を凝らすと、弱い光はすすけた街灯の明かりであることが分かった。丁度フェイトの真上辺りから仄暗く、寂しげな光を投じている。 (………とりあえず起きよう) ぼんやりと光を眺めながらそう思い、上体を起こした。 「っ………」 しかし身体を動かすと同時にあちこちに鈍い痛みが走り、フェイトは顔を歪ませながらも立ち上がった。 それに伴って気絶する直前の記憶が蘇る。 魔力を失って落下する身体、途切れ途切れの通信、揺れる大地、轟き響き渡るサイレン……あれらは相手側の手によって起こされたものなのか。あるいはレリックの暴走によるものなのか。 もしくはこちらも予想だにしない別の何かによるものなのか。 何が起きたのか詳しく分かっていない現状では、いくら推察しようと答えにはたどり着かないだろう。だがこちらにとってよからぬことが起きたのはまず間違いないようだ。 気付けばバリアジャケットが解けており、地球に来た時に着ていた私服姿に戻っている。 Gパンや黒い上着に、落下した時についたのだろう木の葉が幾つかくっついていた。 そして手の中には、待機モードのバルディッシュがしっかり握られている。墜落時に強制的にモード変更されたのだろうか。 (それにしても手の中に握ったままで落とさずによかった……) あの落下の最中に落としていたとしてもおかしくはなかった。長年を共にした愛機が手元にあることに安堵する。 周りを見渡すと、そこは闇に包まれた森だった。フェイトを照らしている街灯以外の明かりは一切見当たらない。 高所から落ちたのに、この程度の傷で済んだのは森の木々がクッションになったからだろう。 (とりあえず、通信は………やっぱりダメか) 通信回線を開こうとしても、回線が途絶されている以前にウィンドウすら開かない。しかし何故だか、フェイトは何となくそういった予想はしていた。 経験によるものだろうか。これは一筋縄で済む問題では無い、直感でそう感じていた。 しかし魔法も通信と同様、発動する気配すら無いことには流石に驚いた。 その上、バルディッシュは起動することも出来なければ音声を発することも出来ない。 バリアジャケットを構成することすら出来ず、まるで魔法そのものを封じられたかのようだ。 (AMFとは違うな。一体、なんなんだろう?) ただ一応、魔法を完全に失ったわけでも、バルディッシュが壊れたわけでもないことは分かった。 バルディッシュに魔力を流すことで、ある程度の魔力光を発することはできたからだ。 それにバルディッシュ自身が自発的に魔力光をちかちかと照らすこともでき、どうやらなんらかの理由で発声を含めた機能が大幅に制限されている状態になっているようだ。 (レリック、じゃないよね。あれが暴走したらもっと大変なことになるし、なによりこんな不可思議な影響が出た事例なんて聞いたことが無い) だいたい、最後の最後まで探知されたレリックの反応自体が微弱かつあやふやで、そもそも本当にこの地に存在していたのかどうかも分からない。 (まぁ、理由は分からないけど、とにかく魔法が使えないならどうしようもないし……それにしても困ったなぁ) こんな山奥深くに放り出され、自分の居場所も分からない。 いわゆる遭難状態に陥っているのだ。 (とりあえずここは××県、三隅群……そのどこかなのは確かだよね) 改めて周りを見回しながら、冷静に気絶する前の記憶を思い起こす。 ロングアーチから受けたレリック探知に関する情報では、この近くに村落があったはずだ。 (確か、羽生蛇村だったけ) 名前に妙な響きを持っているので覚えている。 しかし聞いたことの無い名前だが、名が残っている辺り廃村では無いのだろう。 (その村を目指すのもいいけど、無闇に動くのも危ないし……) ぽたっ と、ふと額に液体が当たる感触がした。反射的にフェイトは手の甲でそれを拭った。 そう言えば辺りにはささやかな雨が降り続けていた。きっと枝葉に溜まった雨水が大きな水滴になって落ちてきたのだろう。 なんとなしに拭ったそれを見る。 「……え」 フェイトはぎょっとした。 手の甲に伸びた水滴は、街灯に照らされてぬらぬらと光を反射している。 それは、赤色だった。 「血……?」 頭を切ったのかと思い、もう一度拭ってみるが、痛みもなければ血も付いていない。 そこで見つめた手のひらに、再び赤い水滴が落ちた。 「えっ!?」 驚くと同時に、急いで手についた赤い水滴を拭う。 (降ってきた、んだよね) フェイトは恐る恐る、バルディッシュの放つ強い光を空に向けてみた。 頭上を生い茂る木々の枝葉が照らされ、その合間合間から穏やかな雨が降り続けている。 フェイトは、光に照らされた降り注ぐ雨を見て、息を呑んだ。 血のように赤く染まった、おぞましい雨。 雨がバルディッシュの放つ光を受けて、闇の中に鮮やかな赤色を浮かび上がらせていた。 「ど、どうなってるの?」 第97管理外世界『地球』。 かつてフェイトが暮らしていたこともある馴染みのある世界だが、こんな現象は遭遇したことも無ければ聞いたこともない。 血の雨だなんて、まるで怪談話の世界だ。 寒気がして、腕をさすりながら呆然と呟いた直後。 「っ!!」 頭の中を電気が駆け抜けるような痛みが襲った。 激痛を堪えるために、フェイトは反射的に頭を抱え、目を堅くつぶる。 その瞬間、何かの思念が頭の中を流れていった。 ―――― ―― ― ―― (な、なに!?) しかし内容が全く読み取れない。 ただフェイトは、自分が何者かと瞬間的に感覚を共有したという事実だけを、直感的に、しかし確かに理解した。 (思念通話とかじゃない……これは、一体……) フェイトが目を開けると頭痛は治まり、『感覚』も途切れた。 気付けば嫌な汗が額からにじみ出ている。 思念通話とは違う、今のはそれよりもっと感覚的で原始的なものだった。 その上原因も分からなければ、感覚を共有した何者かの意図も読み取れない。ただただ、不気味だった。 (もう、なにがなんだか……) 自分の意志とは無関係に次から次へと舞い込んでくる超常現象に脳の処理が追いつかない。 (本当にどうなってるんだろ……それに、ティアナやキャロは大丈夫かな) 頭を抱えていると、ふと隊員達の顔が脳裏によぎった。 サイレンが鳴る直前まで、自分の目の前で大量のガジェットと空中戦を繰り広げていたキャロとティアナ。 あの様子だと二人も自分と同じく、この地域のどこかに墜落しているだろう。 (とにかく二人も探さなきゃ) 魔法が使えず、通信もできない。ならば、今同じ事態に直面しているだろう仲間と早々に合流して、事態の原因究明を目指すのが一番だ。 ただ問題はこの静寂に包まれた森の中をどう進むか。 深夜ということもあり、周りは不気味なくらい静まり返っている。更に凹凸が激しい山岳地帯では歩いていても一定方向には進むことはできない。 かといってこの赤い雨に晒されながら一人じっとして、森の中で助けを待つ気も更々なかった。 無闇に動くことも危険だが、六課や本局からすぐに助けが来るとも限らない。 ならそれまで現地で原因を探るのも悪いことではない。 それに自分の身に降りかかっている一連の出来事に、言い知れぬ不安もあり、気味の悪い赤い雨に打たれながらいつ来るか分からない救助を待てる自信も無い。 「……とりあえず、動いてみようかな」 赤い雨が降り注ぐ中、言い知れぬ不安を胸にしながらも、フェイトはあくまで冷静に、行動を開始した。