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http //pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1301391825/409-419 「では、講習を始めるぞ!」 そのかけ声に、クラス全員の目が担任に集まった。 我が校にAEDが配備されたのでそれの使い方を教育するんだと。 AEDってのは、心臓の動きがおかしくなった人に電気ショックを与えて 救命措置をするアレだ。 それと併せて、人工呼吸とか骨折とかの応急措置の講習もある。 ま、確かに勉強しておけば誰かを助けることが出来るかも知れねえし、 俺自身が助けられるかも知れない。 もっとも、こういうモノが役に立つシチュエーションなど有って欲しくないが。 ところでAEDってのは、電気ショックが必要かどうかを機械の方で診断して ほぼ自動で動くらしい。健康な人に電気ショックを与えることは無いそうだ。 よくできているモンだぜ。 人工呼吸の方は、人形の口にキスをして空気を吹き込む、よくあるパターン。 おっと、俺の順番が来たようだ。 「顎を上げて、鼻を塞いで、息を吹く込むように」 インストラクターの指示に従い、人形の鼻を塞ぎ、口にキスをして息を吹き込むと 人形の胸がわずかに膨らんだ。どうやら上手くできたらしい。 その時、嫌な感じの視線を感じた。 視線の主を捜すと、髪の赤い巨乳の眼鏡女がドアの窓越しに俺を見ていた。 「うへへへ」と笑っているように見えたのは気のせいじゃあるまい。 それもこれも、この人工呼吸人形が男っぽく見えるせいだ。 リリエント工業さん、新しいビジネスチャンスだと思いますよ! そして最後に、骨折時の副え木のやり方をして、講習は終わった。 せっかく受講したのだから、やってみたい気がする。 おっと、それは不謹慎だよな! 「今日はお風呂の時間の頃に停電があるらしいわよ」 家に帰り、四人揃って晩飯を食っていると、お袋からの言葉。 へいへい、気をつけますよ、などとお袋の言葉を軽く流し気味に、 俺は停電までの時間を勉強に費やすことにした。 『桐乃~、お風呂に入りなさい』 『は~い』 桐乃のヤツ、風呂に入るのか。じゃあ俺はその後だな。 この時間だと‥‥‥俺は停電の中、風呂に入ることになるな。 暫く机に向かっていると、 フッ――― あ、消えた。ほぼ時間通り。しゃあねえ。勉強は止めだ! 俺はベッドに身を投げ、目を閉じた。 ‥‥‥‥‥‥ どれだけ時間が経っただろう。携帯を見ると停電からほぼ1時間が経過。 さて、俺も風呂に入りますか。 真っ暗の中、辿り着いた脱衣所で服を脱ぎ、浴室のドアを開けて中を覗く。 やはり真っ暗。 窓から月明かりくらい入ると思ったが、生憎月の位置が悪いようだ。 ドアを閉めて手探りで浴槽の位置を確認すると‥‥‥ん? 湯船のフタが開いているぞ。桐乃のヤツ‥‥‥閉めとけよ。 俺は体を軽く流し、湯船に浸かろうと片足を入れた。 俺は自分に問うたね。「やあ、地雷を踏んだ気分はどうだい?」って。 「ちょ!」 何かが足に触れたぞ? なんだこれ? そして今の音、いや、声は? ま、まさか‥‥‥ 「ちょっと、アンタ! ナニやってんよ!?」 「桐乃!? オマエ、風呂に入っていたのか?」 「入っているわよ! 何で気づかないのよ?」 「真っ暗だからだよ! オマエこそ何で気づかないんだよ?」 「アンタ! アタシが音楽に夢中になっていると思って‥‥‥!!」 げ、コイツ、プレーヤーで音楽聞きながら風呂に浸かっていたのかよ。 最近、防水のヤツを買ったと言っていたが、ヘッドホンで気づかなかったのか!? 「変態! シスコン!! 強姦魔!!!」 恒例の罵倒三連コンボを食らった俺は暗闇の中、必死にドアを開けようとした。 開かない‥‥‥ ウソみたいだろ? この非常時にドアが開かないんだぜ? エロゲみたいだろ? 「は、ははは、ドア、開かねえ」 「ハァ~~~~? ナニ笑ってんのよ?」 真っ暗のハズなのに、桐乃の突き刺さるような視線を感じた。とても痛い。 「あ、あのさ、説明させてくれ!」 「こっち見んな! 変態!!」 「いや、真っ暗でマジ見えねえんだけど。オマエだってわかるだろ!?」 「‥‥‥ま、まさか、アンタ、裸なワケ?」 「当たり前だろ! 風呂なんだからな」 ザバン 何やら水の音がした。 「桐乃?」 「イヤッ! 見んなっつってんでしょ!!」 オイ、『イヤッ!』だとよ。あり得ねえ。コイツがこんな台詞を吐くとは。 何度も言うが、マジ見えないんですけどねえ? つーか、裸だからちょっと寒い。 「オイ、俺も湯船に浸からせろよ」 「ハァ? ナニ言ってんの? 一緒に風呂に入りたいなんて、このシスコン!」 「シスコンじゃねえ! 普通に寒いんだよ!」 俺が桐乃の反論を無視して湯船に浸かると、お湯が湯船から溢れ出た。 「ちょっと、お湯勿体ないじゃん! アンタ立ってなさいよ!」 「‥‥‥勃ってねえよ」 「だから立ちなさいよ!」 「オマエ、エロゲのやり過ぎ」 「は‥‥‥‥‥‥?」 「あ、そういう意味じゃないのか?」 「ブッ殺す! ブッ殺す!! ブッ殺す!!!」 ガボッ この暗闇の中、桐乃は両手で俺の頭を掴み、湯船に沈めた。 「ねえ、アンタ知ってる? お風呂での事故って多いらしいよ?」 何やら物騒な言葉を吐く桐乃の声は、死神のそれにしか聞こえなかった。 「き、きびの、グボゥ やめで‥‥‥くでっ! ガボッ」 ‥‥‥‥‥‥ 「仕方ないわね。我慢してあげる」 俺の必死の抵抗が功を奏したのかは知らないが、桐乃様のお怒りは鎮まり、 何とか落ち着きを取り戻したようだ。マジ、死ぬかと思ったぜ。 「その代わり触ったりしたらマジ殺す!」 「触るかよ!」 「アタシ、向こう向いているかんね! アンタはあっち向いてなさいよね」 というわけで、俺たちは背中合わせに湯船に浸かった状態となった。 当然、気まずい。 ふたりきりで密室にいること自体、慣れてないのに、今はお互い素っ裸なんだぞ。 ドアは開かねえし、どうすりゃいいんだよ? 「‥‥‥‥‥‥」 桐乃がすっかり無口になった。まあ当然か、と思ったら、 「なんか熱い。水入れるよ」 「そんな熱くないだろ? 停電で追い焚きできねーんだぞ!?」 「うっさい! 熱いんだから仕方ないじゃん!」 「やめろコラ!」 どん 俺は桐乃ともつれ合った。 桐乃を壁に押しつけ、桐乃の体温を感じるほどに密着した体勢に。 「なっ、な、な‥‥‥!」 「違う! コレは事故―――」 「離れてよ! あっち行け!」 これ以上暗闇で暴れられたら危なくて仕方ない。大人しくするか。 黒い静寂がふたりの空間を支配していた。 桐乃のヤツもすっかり大人しくなったようだ。 でも、静か過ぎるな‥‥‥? 「オイ、桐乃」 「‥‥‥‥‥‥」 「桐乃? どうした?」 俺は振り返ると手探りで桐乃を探した。 お湯に顔を浸けたままの桐乃の存在に気づくのに時間はかからなかった。 「桐乃! 大丈夫か!? 桐乃!!」 返事がない。そして何よりも息をしていない。 ―――『ねえ、アンタ知ってる? お風呂での事故って多いらしいよ?』 さっきの桐乃の言葉が頭の中を駆け巡る。 冗談じゃねえ! こんなことで桐乃を! 桐乃を! ―――『顎を上げて、鼻を塞いで、息を吹く込むように』 昼間のインストラクターの言葉が浮かんできた。躊躇している時間など無い。 俺は講習の通りに桐乃にキス、いや人工呼吸を施した。 1回、2回、3回、クソッ! 戻れ! 戻ってきてくれ! 俺がガサツなばっかりに、妹をこんな目に合わせるなんて。畜生! 7回、8回、9回‥‥‥ 「グゥッ ボフォ ゲホッ! ゲホッ!」 桐乃が水を吐いたようだ。戻ったか!? 桐乃!! ‥‥‥‥‥‥ 「桐乃! 桐乃! しっかりしろ!!」 「あ、兄貴‥‥‥? アタシ‥‥‥どうしたの?」 「上せて、溺れかけたんだよ!」 「溺れ‥‥‥? マジ?」 「悪かった! 俺のせいで‥‥‥済まん!」 俺は桐乃を抱きしめると、桐乃も俺の背中に腕を回してきた。 そのままの体勢でどれだけの時間が経っただろう。 桐乃の躯がいきなり熱くなった。 「ちょ、アンタ、一体、ナニを‥‥‥してんのよ!?」 みんな覚えておけよ。これが、ヴェローナの毒気の解けた瞬間だ。 冷静に考えると、俺は素っ裸で、同じく素っ裸の妹と抱き合っていたワケよ。 事情はどうあれ、どう考えてもエロゲもしくは鬼畜変態兄貴です。うん。 「アタシが溺れたことをいいことに、キス‥‥‥して、抱きしめて‥‥‥!!」 「落ち着け、桐乃!」 「他にナニしたの? まさか、アタシを‥‥アタシに‥‥アタシの‥‥!」 「オマエ、すげーエッチなことを想像しているだろ?」 「うっさい! 無理矢理キスしたくせに!」 「キスじゃねえ! 人工呼吸だ!」 ぱぁ――――ん 「ブッ!」 桐乃のビンタが正確に俺の頬を捉えた。 なんでコイツは暗闇の中、正確に俺を殴れるんだよ? ‥‥‥‥‥‥ 俺は頬に鈍痛を感じながら、完全復活した桐乃様の説教を拝聴していた。 「アンタがアタシにキスした事実は消えないから グスッ」 「オマエ、泣いてんのか?」 「泣いてない!」 「悪かった。済まなかった」 「そんなの、アタシが許さない」 「オマエの好きな相手との?‥‥‥キスじゃなくて悪かったよ」 「違う!! 問題なのは―――」 「え?」 「アンタがキスしたことじゃなくて、アタシがワケわかんない間にキスを‥‥!」 「え? 何だって?」 「何でもない‥‥‥」 何だよ。言いかけたことを引っ込めるなよ。気持ち悪いじゃねーか。 「でも‥‥‥ありがとね。助けてくれて」 「うん? あ、ああ」 暗闇の中でもコイツの口調から感謝の“表情”を読み取れた。 「でも、久しぶりだよね? こんな風に‥‥‥ふたりで‥‥‥入るなんてさ」 「そうだな。いつ以来だろ?」 「う~ん、小学校1年の時にはもう入らなくなったカモ」 「随分、入ってなかったんだな」 さっきは背中合わせで顔も合わせてなかったのに、今この瞬間は向き合って 普通に話している。真っ暗とはいえ、俺たち裸なのにな。異常だぜ。 「ねえ‥‥‥窓、開けてみる?」 「何言ってんだオマエ? 外から見えちまうだろ」 「そっか。じゃ、ブラインドだけ」 シャッ 「ここからじゃ、月、見えないんだね」 「オマエ、それでも月明かり入るんだぞ。その‥‥‥み、見えるぞ?」 「あんまよく見えないじゃん」 そんなことはない。 どこかで反射した月明かりが、ガラス越しにわずかに射し込む。 表情は伺えないが、ブラインドを開けるために立ち上がった桐乃の躯が わずかな月明かりに照らされて‥‥‥ ヤバい。 「星がきれい‥‥‥」 「‥‥‥あ、ああ。キレイ‥‥‥だな」 窓の外側にあるものではなく、窓の内側にあるものを見た感想だ。 マジ、ヤバい。 「もう閉めるぞ!」 「ちょ、何すんのよ?」 俺は無理矢理ブラインドを閉めた。目の毒だ。 再び真っ暗になった浴室の中、俺は短い静寂を破った。 「悪かったな、桐乃」 「ううん、いいの。ありがと、兄貴」 随分久しぶりとなった、ふたりでの風呂イベントで起こったことを思い返し、 俺たちが向き合って囁いていると、 パッ 停電が終わった。『ああよかった』と安堵したのもほんのつかの間。 「きゃあああああああああああああああああああ―――ッ!!!」 「ぬああああああああああああああああああああ―――ッ!!!」 ふたりで一緒に風呂に入っているという現実に戻された俺たち。 「出てけッ! 出てけッ!! 出てけッ―――!!!」 桐乃が烈火の如く喚き散らし、俺は這々の体でドアを開けて出て行った‥‥‥ ん? ドアは壊れていたんじゃないのかって? それが違うんだな。 暗闇の中で、しかも桐乃と鉢合わせしたせいで前後不覚になり、 浴室に向かって内開きのドアを必死に押していたんだよ、あの時の俺は。 いずれにしろ、このままでは俺は ”妹と風呂に入りたいがために、ドアが壊れたフリをした変態鬼畜兄貴” のポジション確定だ。俺は自分の部屋に戻って服を着て出かける用意をした。 外に逃げて少し時間をつぶせば何とかなるだろう。 よし、着替え完了! 俺はドアを開けて階段に駆け下りようとした‥‥‥が、 はははは、やっぱり手遅れだった。 「やあ、桐乃! 濡れた髪が色っぽくて素敵だ! とても可愛い!」 取り繕い丸出しの俺の甘言に無反応のまま、服を着た桐乃が階段を昇ってくる。 俺が踵を返して部屋に逃げ込もうとすると、桐乃が俺の服を掴んでこう言った。 「ねえ、アンタ知ってる? 階段での事故って多いらしいよ?」 『月と星と妹』 【了】
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約5分で出来ましたw失敗。。。OTL -- 管理人 (2007-03-05 19 34 38) 名前 コメント
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太陽と月と星がある 第七話 「ホワイトデーとは、バレンタインデーのお返しをする日です」 私の言葉をガン無視し、御主人様は手酌でお酒をのみまくっています。 この呑んだくれ。 心の中でぼやいても伝わるはずもなく、もう一度言ってみます。 「バレンタインデーのお返しする日ですよ」 「空だぞ」 無視ですか。 大切な事だから二度言ったのに。 御主人様はヘビのマダラ?です。下半身は蛇ですが。 ごつくてカッコイイ鱗のいかつくて長い尻尾をお持ちで、十代後半位の幼さが残る整った顔に暗褐色の瞳。 ターバンを巻いて黙っている姿は、遺跡とかにある彫刻を連想させます。 いや、こんなのはどうでもいい。 とにかく、御主人様はマダラだから多分もてる。 あえて言わないけど、もててるに違いない。 バレンタインデーは渋面で無言だったから、閉口するほどプレゼントを貰ったに違いない。 と、私は確信していました。 「ちゃんとお返ししないと、相手に悪いですよ」 睨まれた。 思わず腰が引けたけど、ここで負けてはいけない、と自分に言い聞かせます。 今の御主人様は凄くいいヘビです。 こんなんで世間を渡っていけているのか、と不安になるほどです。 ですが時々常識的な部分が抜けているようなので、そこをフォローするのが自分の務め…だと思っています。 ペット的に。役に立つかどうかは別として。 「たとえ義理でも、お返しするのが筋だと思いませんか?」 「早くお代わり」 「呑み過ぎです」 脂肪肝になったらどうする気なんだろ。 まだ若いのに。 せっかくの腹筋が緩んだらどうするんだか。 どう説得しようか悩む私に無表情で御主人様が肩を近づけてきました。 「オマエは」 この御主人様、顔が鱗でも毛むくじゃらでもないのに妙に表情が読めません。 眉間に皺がよってるから怒ってるというのはわかりますが。 整った顔というのも不便な点があるものらしいです、つーか近いです。 吐息が掛かりそうなのでなんとなく身を引きました。 ええ、…なんとなく。 「誰かにやったのか?」 何言ってるのか一瞬わからなくて考えてしまった。 「チョコならジャックさんとサフと商店街の(以下略)にあげました」 御主人様が無言になってしまいました。 心なしか先ほどより視線が冷たくなっているようです。 …何がいけなかったのか。 「ジャックさんとサフは欲しいと言われたのであげました。 商店街の(以下略)さん達は買い物に行くと良くおまけをしてくれるのでお礼を込めてです。バレンタインですから」 御主人様は何故か頭を抱えています。 非の打ち所の無い説明だと思うのですが、いったい何が問題だったんでしょうか? 「俺は貰ってないぞ」 「欲しかったんですか?」 そう返すと、凄い目で睨まれました。 怒ると目が金色になりますよね。御主人様。 「どうして俺だけ、人には義理だなんだと散々言って、俺は八百屋の店主以下か!?」 「でも私ヒトですよ?商店街の(以下略)さん方は私の事ウサギだと思ってるので気楽に受け取ってくれましたが」 私は買い物に行く時は付け耳着用していますので、それなりに知り合いやら世間やらというものができました。 しかし、ヒトはモノと同じ。落ちてから、散々仕込まれた事です。 御主人様は私がヒトだと当然知っているわけで…ですのでモノに貰っても嬉しくないと思いますが。 ふと、腐っても鯛とか、枯れ木も木の賑わいという格言を思い出しましたけど。 ちなみにサフは子供だし、ジャックさんはアレなので別格です。 御主人様といえば、再び無言になってしまいました。 眉間に皺が寄っています。 冷血美少年が台無しです。 どうにかしなくては…。 「もしそういうのに興味があるのでしたら、今更ですがチョコプレイとかしますか? どっちに塗りますか?アレ結構熱いですけど大丈夫ですか?鱗火傷しませんか?」 無言で頭突きされました。 痛い。 そのあと苦労して購入した貴重な小豆を使って作成した汁粉を進呈するまで、御主人様は口を利いてくれませんでした。 意味不明です。
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太陽と月と星がある 第八話 「ねぇコレみてみて!」 御主人様曰く居候二号のスナネズミ幼女、チェルが抱えていたのは―――なんだろう。 チビトトロを彩色してふさふさ尻尾をつけて一つ目にしたような怪生命体。 昔、家庭科の時間に作ったぬいぐるみを思い出します。失敗的な意味で。 トドメに形容し難い音声発してます。異界の神様召還系の。 どうせ一つ目なら唐傘お化けとか一つ目小僧の方が。と言いたいのを堪え笑顔を作ってみる。 うっかり馴染んでいましたが、ここは異世界です。 不思議生物の闊歩するファンタジーです。 そりゃ見たことのない生命体が千や万はいるのは当然です。 「それは、煮込み?焼き?刺し?それとも漬け?」 チェルは質問の意味が分からなかったのか、きょとんとした顔になりました。 「寄生虫とか怖いから、火は通すべきでしょうね。二人の意見も聞いてみましょうか」 きびすを返そうとしたところで後頭部に何か当たって私は思わず蹲りました。痛い。 「チェル、ソレ、元の場所に戻して来い」 「えー?なんで?飼っちゃダメ?」 食べ物じゃないんだ。アレ。てっきり今日のおかずにする分かと思ったのに。 というか、前振りもなく後頭部チョップはひどいです。御主人様。 「ダメ」 「雨にぬれてふるえてたんだよ?」 「今日は晴れてるだろうが」 あ、でもそもそもアレを捌く包丁は無かった気が。 刃毀れしたら困るし、頼むとしたら肉屋さんかな? 「がっくんのケチーたんしょー!」 「どこで覚えたそんな言葉」 押し問答をする二人をよそに、手にふさふさした感触。 「キヨカ、大丈夫?」 しゃがみこんでいる私にフンフンと心配そうに鼻を寄せてくる強面わんこ。 御主人様曰く居候一号のサフです。 真剣な目とピンクの鼻とふさふさした毛とピンとたった耳を見ると手がむずむずします。 じっと見ていたのを何か勘違いしたのか、心配そうな表情のままサフが私に手を貸してくれました。 立ち上がるとイヌとはいえ子供なので私の胸くらいまでしか身長のない彼は、「でっかいふさふさわんこ」そのもので 思わずぎゅっとしたくなる様な愛らしさです。 サフは真剣そうな表情になり、ピンクの口を開いて一言。 「キヨカ、大きくなったら結婚しようね!」 「オマエは骨でも齧ってろ」 間髪居れずに御主人様の尻尾がサフの頭を直撃。 予想外にいい音が室内に響き渡り、驚いた怪生物がチェルの腕から飛び出しました。 ちなみにサフは微動だにしません。 …丈夫過ぎるだろ常識的に考えて。 それはともかく、奇声を発しながら部屋中を飛び回る怪生物。 壁に当たっても平然とバウンドし、ゴムボールのように別方向へ飛び回ります。 それを大はしゃぎで追いかけるチェルとサフ。 怪生物は二人の手を避け、花瓶に激突しましたが、そのまま何事も無かったように跳ね回ります。 花瓶は破壊されました。 鼻先でバウンドされ、興奮したサフが思いっきりこけ、流し場に凄まじい破砕音が響き渡りました。 ああ、最後の陶器製食器が…。 明日からは全部木製食器です。 窓際で必殺の一撃をかわされ、意外と鋭いチェルの爪が換えたばかりの春物カーテンを引き裂きます。 御主人様は無言でその光景をみつめています。 春らしく爽やかな印象を醸しつつ、意外と厚手で暖房効果ばっちりの素材を選んだのは御主人様でしたね。 怒りのオーラとともに普段の三割くらい体が大きく見えるのは気のせいでしょう。きっと。 「さて、じゃあ私は晩御飯のおかずを買いに行きますね」 後ずさりして付け耳を手に取り、そのままダッシュ。 同時に足元を怪生命がすり抜けて行き―――背後から物凄い音が聞こえたような気がしましたが、きっと気のせい。 晩御飯はエセブッフー肉大セールというのがやっていたので焼肉にしました。 美味しかったです。
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太陽と月と星がある 第八話 「ねぇコレみてみて!」 御主人様曰く居候二号のスナネズミ幼女、チェルが抱えていたのは―――なんだろう。 チビトトロを彩色してふさふさ尻尾をつけて一つ目にしたような怪生命体。 昔、家庭科の時間に作ったぬいぐるみを思い出します。失敗的な意味で。 トドメに形容し難い音声発してます。異界の神様召還系の。 どうせ一つ目なら唐傘お化けとか一つ目小僧の方が。と言いたいのを堪え笑顔を作ってみる。 うっかり馴染んでいましたが、ここは異世界です。 不思議生物の闊歩するファンタジーです。 そりゃ見たことのない生命体が千や万はいるのは当然です。 「それは、煮込み?焼き?刺し?それとも漬け?」 チェルは質問の意味が分からなかったのか、きょとんとした顔になりました。 「寄生虫とか怖いから、火は通すべきでしょうね。二人の意見も聞いてみましょうか」 きびすを返そうとしたところで後頭部に何か当たって私は思わず蹲りました。痛い。 「チェル、ソレ、元の場所に戻して来い」 「えー?なんで?飼っちゃダメ?」 食べ物じゃないんだ。アレ。てっきり今日のおかずにする分かと思ったのに。 というか、前振りもなく後頭部チョップはひどいです。御主人様。 「ダメ」 「雨にぬれてふるえてたんだよ?」 「今日は晴れてるだろうが」 あ、でもそもそもアレを捌く包丁は無かった気が。 刃毀れしたら困るし、頼むとしたら肉屋さんかな? 「がっくんのケチーたんしょー!」 「どこで覚えたそんな言葉」 押し問答をする二人をよそに、手にふさふさした感触。 「キヨカ、大丈夫?」 しゃがみこんでいる私にフンフンと心配そうに鼻を寄せてくる強面わんこ。 御主人様曰く居候一号のサフです。 真剣な目とピンクの鼻とふさふさした毛とピンとたった耳を見ると手がむずむずします。 じっと見ていたのを何か勘違いしたのか、心配そうな表情のままサフが私に手を貸してくれました。 立ち上がるとイヌとはいえ子供なので私の胸くらいまでしか身長のない彼は、「でっかいふさふさわんこ」そのもので 思わずぎゅっとしたくなる様な愛らしさです。 サフは真剣そうな表情になり、ピンクの口を開いて一言。 「キヨカ、大きくなったら結婚しようね!」 「オマエは骨でも齧ってろ」 間髪居れずに御主人様の尻尾がサフの頭を直撃。 予想外にいい音が室内に響き渡り、驚いた怪生物がチェルの腕から飛び出しました。 ちなみにサフは微動だにしません。 …丈夫過ぎるだろ常識的に考えて。 それはともかく、奇声を発しながら部屋中を飛び回る怪生物。 壁に当たっても平然とバウンドし、ゴムボールのように別方向へ飛び回ります。 それを大はしゃぎで追いかけるチェルとサフ。 怪生物は二人の手を避け、花瓶に激突しましたが、そのまま何事も無かったように跳ね回ります。 花瓶は破壊されました。 鼻先でバウンドされ、興奮したサフが思いっきりこけ、流し場に凄まじい破砕音が響き渡りました。 ああ、最後の陶器製食器が…。 明日からは全部木製食器です。 窓際で必殺の一撃をかわされ、意外と鋭いチェルの爪が換えたばかりの春物カーテンを引き裂きます。 御主人様は無言でその光景をみつめています。 春らしく爽やかな印象を醸しつつ、意外と厚手で暖房効果ばっちりの素材を選んだのは御主人様でしたね。 怒りのオーラとともに普段の三割くらい体が大きく見えるのは気のせいでしょう。きっと。 「さて、じゃあ私は晩御飯のおかずを買いに行きますね」 後ずさりして付け耳を手に取り、そのままダッシュ。 同時に足元を怪生命がすり抜けて行き―――背後から物凄い音が聞こえたような気がしましたが、きっと気のせい。 晩御飯はエセブッフー肉大セールというのがやっていたので焼肉にしました。 美味しかったです。
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太陽と月と星がある 第七話 「ホワイトデーとは、バレンタインデーのお返しをする日です」 私の言葉をガン無視し、御主人様は手酌でお酒をのみまくっています。 この呑んだくれ。 心の中でぼやいても伝わるはずもなく、もう一度言ってみます。 「バレンタインデーのお返しする日ですよ」 「空だぞ」 無視ですか。 大切な事だから二度言ったのに。 御主人様はヘビのマダラ?です。下半身は蛇ですが。 ごつくてカッコイイ鱗のいかつくて長い尻尾をお持ちで、十代後半位の幼さが残る整った顔に暗褐色の瞳。 ターバンを巻いて黙っている姿は、遺跡とかにある彫刻を連想させます。 いや、こんなのはどうでもいい。 とにかく、御主人様はマダラだから多分もてる。 あえて言わないけど、もててるに違いない。 バレンタインデーは渋面で無言だったから、閉口するほどプレゼントを貰ったに違いない。 と、私は確信していました。 「ちゃんとお返ししないと、相手に悪いですよ」 睨まれた。 思わず腰が引けたけど、ここで負けてはいけない、と自分に言い聞かせます。 今の御主人様は凄くいいヘビです。 こんなんで世間を渡っていけているのか、と不安になるほどです。 ですが時々常識的な部分が抜けているようなので、そこをフォローするのが自分の務め…だと思っています。 ペット的に。役に立つかどうかは別として。 「たとえ義理でも、お返しするのが筋だと思いませんか?」 「早くお代わり」 「呑み過ぎです」 脂肪肝になったらどうする気なんだろ。 まだ若いのに。 せっかくの腹筋が緩んだらどうするんだか。 どう説得しようか悩む私に無表情で御主人様が肩を近づけてきました。 「オマエは」 この御主人様、顔が鱗でも毛むくじゃらでもないのに妙に表情が読めません。 眉間に皺がよってるから怒ってるというのはわかりますが。 整った顔というのも不便な点があるものらしいです、つーか近いです。 吐息が掛かりそうなのでなんとなく身を引きました。 ええ、…なんとなく。 「誰かにやったのか?」 何言ってるのか一瞬わからなくて考えてしまった。 「チョコならジャックさんとサフと商店街の(以下略)にあげました」 御主人様が無言になってしまいました。 心なしか先ほどより視線が冷たくなっているようです。 …何がいけなかったのか。 「ジャックさんとサフは欲しいと言われたのであげました。 商店街の(以下略)さん達は買い物に行くと良くおまけをしてくれるのでお礼を込めてです。バレンタインですから」 御主人様は何故か頭を抱えています。 非の打ち所の無い説明だと思うのですが、いったい何が問題だったんでしょうか? 「俺は貰ってないぞ」 「欲しかったんですか?」 そう返すと、凄い目で睨まれました。 怒ると目が金色になりますよね。御主人様。 「どうして俺だけ、人には義理だなんだと散々言って、俺は八百屋の店主以下か!?」 「でも私ヒトですよ?商店街の(以下略)さん方は私の事ウサギだと思ってるので気楽に受け取ってくれましたが」 私は買い物に行く時は付け耳着用していますので、それなりに知り合いやら世間やらというものができました。 しかし、ヒトはモノと同じ。落ちてから、散々仕込まれた事です。 御主人様は私がヒトだと当然知っているわけで…ですのでモノに貰っても嬉しくないと思いますが。 ふと、腐っても鯛とか、枯れ木も木の賑わいという格言を思い出しましたけど。 ちなみにサフは子供だし、ジャックさんはアレなので別格です。 御主人様といえば、再び無言になってしまいました。 眉間に皺が寄っています。 冷血美少年が台無しです。 どうにかしなくては…。 「もしそういうのに興味があるのでしたら、今更ですがチョコプレイとかしますか? どっちに塗りますか?アレ結構熱いですけど大丈夫ですか?鱗火傷しませんか?」 無言で頭突きされました。 痛い。 そのあと苦労して購入した貴重な小豆を使って作成した汁粉を進呈するまで、御主人様は口を利いてくれませんでした。 意味不明です。
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太陽と月と星がある 最終更新日 : 2011年03月06日11時27分44秒 【作者】 : vthree 【舞台】 : ネコの国 【作風】 : ほのぼの 【注意】 : 時々鬱 =話数= ==================簡易解説や補足================== =文量= -- 『拾われた』 -- 01話 非エロ「第1話:セリグマンの犬」 11kb 02話 非エロ「第2話:嵐の空を見つめる花」 1kb 03話 非エロ「第3話:金運欲しい」 5kb 04話 非エロ「第4話:耳掻き」 12kb 05話 非エロ「第5話:泳げタイヤキ」 51kb 06話 非エロ「第6話:鳥味」 18kb 07話 非エロ「第7話:チョコ配るアレ」 4kb 08話 非エロ「第8話:ナマモノ注意」 4kb 09話 非エロ「第9話: museum 」 17kb 10話 非エロ「第10話 初春 」 11kb 11話 非エロ「第11話 擬態と欺瞞」 23kb -- 『いつの日か』 -- 12話 微エロ「第12話:時々喧嘩相手」 32kb 13話 非エロ「第13話:笹の葉さらら」 8kb 14話 「第14話:Hot Limit 」 36kb 15話 非エロ「第15話:星の子守唄」 29kb 16話 非エロ「第16話:ナマモノ再び」 5kb 17話 非エロ「第17話:シネマ 」 ?kb 18話 エロ「第18話:微熱」 ?kb 19話 非エロ「第19話:葡萄の寓話」 ?kb 20話 非エロ「第20話:カレーと王子様」 86kb 21話 バカ「第21話:クリスマス」 ?kb 22話 エロ「第22話:初デート」 ?kb 23話 エログロ「第23話:3分あれば終わり」 65kb 24話 最終回「第24話:桃花の季節」 11kb -- 『 小 話 』 -- 21.5話 非エロ「節分」 5kb 25話 非エロ「VD2」 5kb 26話 非エロ「サナギ」 7kb 27話 非エロ「ハロウィン」 4kb 1.5話 バカ「触感フェチ」 5kb ??話 バカ「元祖天才☆」 5kb ??話 パラレル「 if 」 9kb メイン登場人物 一行紹介ガエスタル/オティス … 美形のヘビマダラな御主人様。冷血。猫舌 キヨカ … 過剰な内弁慶の中古メスヒト。超ど級の鈍感。人間不信 ジャック …顔傷付き垂耳黒兎。医者。自称28歳 チェル …スナネズミ幼女。悪食 サフ …雑種イヌ。ショタい <あらすじ> 猫の国の地方都市で中古ヒト召使・キヨカの一人称で語られる、ヘビマダラ御主人様とのハートフルボッコラブコメディ。シェア歓迎しています。