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─たかみな、男説またしても浮上する!? 「まぁ~たこんな事書かれてるよ、たかみなぁ」 先日収録した番組の放送が今日で、それの見出しがそれで、それを見た隣のやる気のなさそうな雰囲気を醸し出す黒髪の似合う彼女は笑いながら私にその番組表を見せてくる。 「えーっマジすか!? もう男性ネタは終わったんじゃないのかー?」 クリスマスで気持ちが盛り上がっていたのもあったし、観念してメンバーと一緒にお風呂入って証拠を見せざるを得ない状況になったのにも関わらずまたそういうネタが出るとは、私高橋みなみ(間違いなく女性でス☆)は少々その番組紹介には納得がいかないのであります。 ぶーたれたって収録はもう済んでしまっているし、今更撮り直しなんて自分勝手すぎる事は出来るわけもなく番組の方でも問題がなかったからそこをチョイスして放送するんだろうし、あと数時間後に迫るそれは免れる事も出来ないのは分かってはいるけど。 「おかしいね? たかみなは可愛い女の子なはずなのに」 そう言ってくすくす上目遣いで私を見あげてくる瞳の奥には”あの時”に見せる少しSっぽい雰囲気が感じて取れた。 「そ、それはどうも…ていうか私が男じゃないかって思われるのは少なくてもあっちゃんに原因があると思うんだけど…」 「えーそういうの責任転嫁っていうんだよ?」 不満そうな声をあげつつこのやり取りを楽しんでいるだろう隣の黒髪の子は相変わらずの真っ黒な瞳で私を見上げてくる。 「責任転嫁って…だって、あっちゃんいつも…その、跡つけるから…メンバーと入ると見つけられるんじゃないか心配で…」 「当たり前じゃん、だってたかみなは私のだし」 「う…うん、まあそれはそうなんですケド…」 はっきりそう言葉にされると正直恥ずかしい経験値の低い自分がちょっと情けない。とは言えこの二人きりの時に出してくるあっちゃんのデレに対抗できる術はワタクシ残念ながら持ち合わせておりません。という事でAKBのリーダーとして普段はキリリと見せてる私の威厳も、この可愛い悪魔の前では形無しです。 「たかみなは私にキスマークつけられるのが嫌だったりするの?」 なんだか予想外な質問が私の元に降りかかってきた。 「えっ?」 ちらちらと隣を見たり手元にある漫画雑誌を見たりと行ったり着たりさせていた目線を隣に改めて移すと、少々不満そうな表情で前田敦子ことあっちゃんが正面から私を見つめていた。 「だって私とは一緒にお風呂入ってないのに、他のメンバーとは入っちゃうし。入りたくない理由が私のせいだって言うし、たかみなは私より他のメンバーと一緒にいたいっていう事なの?」 「それは、えと…確かにメンバーは大切だし一緒にいたいと思うけど、でもあっちゃんの事も大切に思ってるから一緒にいたいと思ってるよ…」 あーなんか自分で言っててものすごい恥ずかしいセリフ吐いてるな、って言いながらしみじみ思い始めて途中から言葉尻に向けて声のトーンがなんとも小さくなっていって、最後の方に至ってはハッキリ聴こえてるか怪しいくらいになってしまった。 でもあっちゃんの事はAKBのメンバーとして、そして一人の人間として大切に思ってるのは事実だから別に恥ずかしいなんてことないんだけど、やっぱり自分的にこういうのをさらっと言えないのは情けないと思う。仕事モードの時は思い返せばくっさいセリフなんていっぱいメンバーにかけてきてたと思うし、それこそあっちゃんにも言ったし言われたし…そう考えるとオフの時の自分のヘタレっぷりに正直呆れる。そりゃ高橋女だけど、草食系男子なんて言われちゃったりもしますよ。 「じゃあいいじゃん」 そう言うが早いかするりと細い彼女の腕が首に回され、くっついている箇所が更に範囲を広めていく。 さらさらとした黒い髪が腕と共に顔の前に寄せられ鼻と鼻が触れ合うほどの距離から微かに感じる彼女の艶やかな髪の感触と、同じシャンプーを使っても同じ匂いにならない彼女独特の香りを私の嗅覚を刺激する。私はこの匂いと共に育ってきたと思うと、それだけで懐かしさと嬉しさと色々な感情が入り混じって離れられなくなる。 「いいじゃん、って…大体あっちゃんには一緒に入るより前に裸全部見られてるし…別にメンバーと比べなくても…」 またしても言葉尻が小さくなってしまう。この手の話はちょっと苦手でつい小声になる癖があるみたいだ。 「私にとっての一番はたかみなだから、たかみなにとっても私が一番でいたいの。」 ぐっと腕の力が強まり、腕の先の華奢な手は私の後頭部を固定して動かせないようにして、軽くちゅっと唇を吸われる。あっちゃんの唇はぽてっとしていて、こういう関係になる前からよくグロスで綺麗になっていた唇に何度目を奪われたか分からないくらいで、実際味わってみれば女の子の唇って柔らかいんだなぁとまるで思春期真っ盛りの男子学生みたいな感想が出る。そして当然今もまたその唇の柔らかさは変化する事無く相変わらず私の心を掴んで離さなかった。 「でも、あっちゃん私以外のメンバーと普通にお風呂入ってるジャン」 確かに私がメンバーと一緒にお風呂に入ったときはあっちゃんはいなかったけど、私がいようがいまいが関係なくあっちゃんはメンバーとお風呂楽しんでるわけだし。あっちゃんの最初のお風呂を一緒にしているわけじゃないし、私ばかり責められるのはちょっとそこは不公平かなと思うわけでス。 「それはそれでしょ、たかみなのくせに口ごたえするなんて生意気」 それって何てジャイアニズムと聞きたくなっても、その言葉を発するより前にまたしても口を柔らかいもので塞がれる。例えばあっちゃんがなんかの間違いで誰かと私みたいなこういう関係を持ってしまったとしても、こうやってついつい流れで許してしまいそうな自分が怖い。 何回したか分からないキスでも、まだ慣れるわけではないのであっちゃんからされるとつい「ん」と息を止めてしまう私は唇を啄ばまれている最中にふは、と酸素を取り入れようと口を開いてしまう。あっちゃんはそんな事はお見通しと言わんばかりにそのタイミングで舌を口内へ入れ込んでくる。 それは呼吸を整えようとしている私にとってなかなかの行為で、ただでさえ息苦しい状態だったのに更にあっちゃんの体重をかけてきて隙間を作ろうとせずに舌を私の中で暴れまわらせる。私はどうする事も出来ずその舌の動きに思考も何もかも翻弄されるだけで、息苦しい感覚が段々気持ちいいものと思い柔らかでざらつきのある舌の感触を味わうのだ。 「ぷはっ」 さすがに閉じてる目の奥が白くちかちかしてきた辺りであっちゃんがやっと離れてくれた。 肩でぜーはーと息をする私に対して、口の周りをてからせてにこーっと笑うあっちゃんはとても可愛くてとてもSっ気が出てる顔だと思う。 「こんな可愛い顔して男説だイケメンだなんだって言われてるけど、私の前だけでは可愛い女の子なのになぁ…」 「あ、あっちゃん…」 「何で男なんて言われちゃうんだろうね?」 首をかしげながら心の底から不思議そうな顔をして言うあっちゃんは、何で私がそうなるかわかってるくせにこうやって意地悪な質問を私にしてくる。そして分かってる自分もいるんだ、それをちゃんと言わないと始まらないという事も。 「こんなところ見せるのは、あっちゃんだけだから知らないんだと思う…」 そう言うとよろしいと言わんばかりに微笑んで、私を優しく押し倒すのがいつの間にか体を重ねる内に出来た私たちのルール。 「うん、たかみなの傍にいつでもいるからね。ずっとだよ」 「ありがとう…あっちゃん」 「こら、違うでしょ?」 「あ、えっと…ありがとう敦子」 満足げな敦子は私の首筋に顔を近づける、そしてふわりと顔にかかる髪から敦子の匂いを感じて私はこれから体いっぱいに敦子を感じるのだった。 ──翌日、更にきわどい場所に跡をつけられ元々ぎこちなかったスキンシップが更にぎこちなくなり、今日の放映の内容に拍車がかかったという事はまた別の話。
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愛の伝道師が彼女の作り方を教えます。
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第217話:彼女の覚悟 作:◆E1UswHhuQc 「ミズーさん、大丈夫……?」 大丈夫なわけがない。 俺の方は腿のあたりを抉られただけで弾も残っておらず、既に包帯を巻いて止血したからそれでいい。 だが、ミズーは違う。肩に銃弾が残っているのだ。 「平気……平気よ。大丈夫、わたしは……死なない」 なのに彼女は新庄を安心させようと、気丈に応える。なんていい女だろう。花丸をあげたい。 などとふざけた思考は、主にギギナに関する記憶が満載してある脳内ダストボックスに投げ入れて、俺は救急箱の中身を漁った。 飛び込んだこのビルは、どうやら開店前の雑貨店か何かだったらしい。箱詰めにされた商品が山積みになっており、その中にこの救急箱があったのはつい先程信心深くなった俺へのプレゼントだろう。そう信じておくから次もよろしく神様。 しかし困った。傷口を切開するにしても、道具はミズーの持っているグルカナイフだけだ。麻酔薬なんてしゃれたものもなかった。 どうするか、と悩むうちにミズーの体温が上昇してきた。女の肌に傷が残るのは良くないが、仕方がない。 ミズーの腰元の鞘からナイフを引き抜いて、はたと気付く。こういうときはまず煮沸消毒すべきなのだろうが、火がない。 ライターでも探してくるか、と思ったところで、ナイフに銀色の糸が巻きついた。 「熱っ!」 いきなり加熱されて思わず取り落としかけたが、持ち替えて柄にタオルを巻きつける。 糸はミズーから伸びていた。休憩時の情報交換の際に聞いた、念糸という技だろう。 「それで……」 「分かった。あと、これ噛んでてくれ」 呟くミズーに、タオルを噛ませる。歯を噛み締めて奥歯を砕かないようにするためだ。 麻酔なしの切開など、激痛以外のなにものでもない。 「行くぞ。……新庄は見ない方がいい。できれば耳も塞いで」 「う、うん……」 新庄が横を向いて両手で耳を押さえたのを確認し、俺はナイフを突き立てた。 「――っ、!」 暴れる体を空いた手で押さえつけながら、切り開く。肉を刻む感触など、気持ちの良いものではない。 何とか弾丸を見つけると、ナイフの切っ先でひしゃげた弾丸を引っ掛け、抉り出した。 取り出された弾丸が床に落ち、金属音を響かせる。 「よし……」 一息つく。だがまだ終わっていない。開いた傷口を縫うか包帯で縛るかしなければ。 そこで、またもや念糸が伸びた。 「おい!?」 銀色の糸が傷口を灼く。 「――ぅうぅ、……うっ……!」 肉が焦げる匂い。俺は新庄に鼻を塞ぐように言わなかったことを後悔した。 糸が消えた時、ミズー・ビアンカは気絶していた。 【B-3/ビル一階/一日目/07:55】 【ミズー・ビアンカ(014)】 [状態]:気絶。左腕は動かず。 [装備]:グルカナイフ [道具]:デイバッグ(支給品一式) [思考]:気絶 【新庄・運切(072)】 [状態]:健康 [装備]:蟲の紋章の剣 [道具]:デイバッグ(支給品一式) [思考]:1、ミズーが気がつくまで休憩 2、佐山達との合流 3、殺し合いをやめさせる 【ガユス・レヴィナ・ソレル(008)】 [状態]:右腿は治療済み。歩けるが、走れない。戦闘はもちろん無理。疲労。 [装備]:リボルバー(弾数ゼロ) 知覚眼鏡(クルーク・ブリレ) [道具]:デイバッグ(支給品一式) 救急箱 [思考]:疲れた。眠い。 ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第216話 第217話 第218話 第239話 時系列順 第258話 第207話 ガユス 第256話 第207話 ミズー 第256話 第207話 新庄・運切 第256話
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彼女のカレラ 著者 麻宮騎亜 出版 集英社 1~10 戻る
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彼女の理由◆s4f2srXljQ ◆ 森の中に雨避けを見つけて、錆白兵は足を止めた。 爆縮地―――人知を超えたその足運びにより、長距離を走破したその身に疲労は見られない。 軒をくぐり、土足で中に入り込む。どうやらここは、薬問屋らしい。 医療器具を見回しながら、錆は適当に縫合した腹部の裂傷に今一度、適度な修繕を施した。 「……さて」 錆がため息をつく。 その嘆息の理由は、入り口近くにある机の上に放られた剣を見れば明らかだ。 選定の聖剣・カリバーンは、見るも無残な鋼の残骸へと成り果てていた。 「真逆、拙者の逆転夢斬を初見で見切る剣士がいるとは、驚きでござる……。 更に言えば、あの見えない刀身―――『えあ』とか言っていたか? あの不可解な技術による拙者の速遅剣との間合いの取り合い……まさしく、緊迫の極み。 その膠着状態を打ち破ったあの疾風の一閃もまた、一揆刀銭に見劣りせぬ神技。 カウンター 拙者に刃取りがなければ、確実に両断されていたな。そして反力学で放った一揆刀銭を弾いた、 あの禍気の奔出……まっこと、恐ろしい相手でござった」 カリバーンを砕かれるほどの激戦を終えてなお、錆の目には余裕がある。 疲労よりも、戦の高揚のほうが勝っている―――否、強き剣士との出会いに、心を躍らされているのか。 「あれほどの強敵、この一生万死の坩堝では殺しきれなかった事を悔やむべきなのであろうが―――」 久しく出会っていなかった、自分より強い存在。 まだ見ぬ他の参加者達も、あるいはあれほどの強さを持っているのか。 期待を膨らませながら、錆は鉄の棒を拾い上げ、僅かに刻んで刃のように加工する。 錆ほどの剣客になれば、どんな獲物であってもその実力に翳りは落ちない。 カリバーンの鞘に俄刀・鉄を収め、錆はしばしの休息に入った。 【G-5 診療所/一日目/黎明】 【錆白兵@刀語】 【状態】健康 疲労(中・無感) 【装備】加工した鉄の棒 【道具】支給品 悪刀・鐚@刀語(電力残量55%) カリバーンの鞘 【思考】基本:優勝し、元の世界に戻って失敗作から脱却する 1:拙者にときめいてもらうでござる 【備考】悪刀・鐚は活性化の性能が制限されているため、 基本は疲労無視と痛覚遮断の効能しかありません。 ダメージを負うごとにそれを治癒しますが、その度合いによって電量を消費し、 電力がカラになると鐚の全機能が停止します。 ◆ ダイとアーチャーを見逃してから、少しの時間が過ぎた。 黒化したセイバーは彼らを追うでもなく、その場に残っている。 夜風に揺れて、更地の向こうから音を立てる森林に気を配りながらも、その心は冷静だった。 (森という戦場は、弓兵にとって絶好だ。深追いは不味い) 頭に浮かぶ直感に従い、風王結界を解除し、鎧も無に還す。 受肉しているから消滅の心配はないにしても―――供給の目処がない現状、魔力の浪費は避けたかった。 風の纏境を解かれた剣は、必然その姿を見せる。 それは、木刀だった。何の意匠もない、何の外連味もない、ただの木刀だった。 何の毒もないそれを、セイバーが黄金の瞳でじっと見つめる。 「……不思議な剣だ。嘘を見破り、心を浚い、己の真実を見せる。……私には、矛盾した王道を見せるか」 ..... 王刀『鋸』。とある刀鍛冶が鋳造したその日本刀は、セイバーの心に黄色の信号を燈していた。 ....................... 違う―――いまのお前は違う―――真実ではない―――英霊と呼ばれた、アーサー王ではない! 「そうだ。私は反転した英霊。聖杯の泥に侵された、逆属性のアルトリアだ。 だが―――果たしてお前に、私がどうであれば正しいのか、などという事が、決められるのか」 王刀が黙る。否、黙ったのは王刀が看破し、黒化したセイバーに突きつけた、アルトリアの本性だ。 しかし、セイバーはそれを否定する。正しい自分を否定し、自分の正しさを開示する。 「私の望みとは誤った過去の清算。それはいい。それは私にとって、否定できない唯一の物だ! だが―――それに伴う犠牲を、果たして私は理解していたのか」 それは、彼女もとうに理解しているはずの矛盾。英霊でありながら、己が生きた過去の変針を望む意思。 だが、その意思がもたらした物を、彼女は黒化してから嫌というほど知った。 かって自分が敗退した、冬木の第四次聖杯戦争……あの最後に、自分が放った約束された勝利の剣。 その一撃は聖杯を破壊し、中身の泥を撒き散らし、アンリ・マユの力で多くの人の命を奪ったのだと、 間桐桜とゾウゲンの会話から、はっきりと理解できた。自分が黒化していなければ、罪悪感に膝を折っていただろう。 それについては何も感じなかったが……さすがに、第五次聖杯戦争の結末は、堪えた。 「私がシロウとの一騎討ちに破れ、トドメを刺す前にシロウが息絶えた後……。 桜が死に、凛が死に、制御を失って溢れ出した泥の量は、四次の時の比ではなかった。 そして私は泥に呑まれ、消化される寸前に確かに見た。冬木の町が、アンリマユに蹂躙される瞬間を!」 黒化した桜を止めるために戦った衛宮士郎は、セイバーに勝って死んだ。 妹を殺す覚悟を決めていたはずの遠坂凛は、結局妹を殺す事ができずに死んだ。 とうに正気を失っていたはずの間桐桜は、姉の愛に触れ、自ら死んだ。 同じように悲惨な終わりを迎えて消滅した筈の自分が、何故黒化したままここにいるのか……それは理解できないが、 セイバーは、最後の光景を忘れなかった。再び受肉してもなお、その時の思いを忘れなかった。 「私が過去の改竄を願う度に未来の命が消えるのならば、私に夢を見る権利などなかったのだ……。 私の願いは聖杯の中身など関係なく、初めから、間違っていた……たった一つの理想こそが、 私を蝕む毒だった! 何度も、気付く機会はあったはずなのに! 私はそれに目を向けなかった! これは変えたいと望んだ生前の我が行いと、変えられると信じた生前の国の末路と、何も変わらないではないか!」 王刀は、持ち主の毒を殺す。 だが―――殺した毒は、属性を変換させる聖杯の泥ではなかった。 それはアルトリアを殺し、アーサーが望み、セイバーが叶えようとした歪んだ願い。 決して曲がらない、王道と騎士道。それら全てを蹂躙して、黒騎士は叫ぶ。 過去の毒に影響されない、彼女自身の、現在の心からの渇望。 「私はあの願望器を獲り、『聖杯の存在しない冬木市』を実現させる。選定は―――間違っていたと、受け止めよう」 受け止める。セイバーが搾り出したその言葉は、もはや王の選定のやり直しを望まないという意味を孕んでいた。 黒化しても変わらない彼女の誇りが最後に選んだのは、 自身の仮マスター、間桐桜と、かってのマスター、衛宮士郎の救済。 騎士ならぬ騎士が見せる、最後の忠義……否、それは親愛にも似ていた。 それを実現させるため、英霊アルトリアは、殺人者セイバーとして地に足を付けた。 ――――だが、彼女は気付いているだろうか? その選択もまた、矛盾を孕んでいるという事実に。 王刀の特性が『毒のなさ』だけでなく、抱える矛盾にある事に。 「……」 突如セイバーの黄金の瞳が細まり、敵の接近を告げる。 かなりの距離まで詰められている―――アサシンでもなければ、これほど見晴らしのいい更地で ここまで気配を立てずに接近する事は不可能なはずだと、セイバーが周囲に目をやる。 「その刀は―――いい刀でござる」 何故気付かなかったのか、セイバーは即座に理解した。 目の前に現れた、目麗しい堕剣士は、人間の気配を出していなかった。 ... それはまるで一本の刀のような、鋭く、近寄りがたく、しかし美しい、そんなそれだった。 (――――――!) 敵の力量を測るために目をやった腰に、セイバーは息を奪われる。 そこにあったのは全ての元凶。自分の生き方を決定付けた、選定の聖剣だった。 浮かんだ感情は怒りか、憎悪か、あるいは当然のように美しいままの聖剣への呪いか。 「その剣は―――悪し剣だ」 ともかくその感情のまま、セイバーは白髪の剣士に斬りかかる。 風の鞘を招来し、黒の鎧を身に纏い。 この戦いの結果がどうあれ、彼女はこれからも同じ事をし続けるだろう。 ……そして、その結末も、また……。 【F-6 森/一日目/深夜】 【セイバー(オルタナティブ)@Fate/stay night】 【状態】疲労(小) 魔力消費(小) 【装備】王刀『鋸』@刀語(風王結界) 魔力で編みあげた鎧 【道具】支給品 ランダムアイテム×1 【思考】基本:ロワの提示した万能の願望器を得、『聖杯のない冬木市』を実現させる。 1:敵を倒す。 【備考】受肉した肉体なので、物理攻撃の無効化・霊体化などは出来ません。 BACK NEXT 026 我刀・ノヴァ 投下順 028 サムライ 025 魔剣混沌 時系列順 029 本当の願い/不屈の意志 BACK 登場キャラ NEXT 003 激突! 竜の騎士!! セイバー 041 七転八刀 005 ときめき☆トゥランス 錆白兵 041 七転八刀
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amazonで探す @楽天で #彼女のヒミツ を探す! 2020.10.30 youtube検索 / dailymotion検索 / bilibili検索
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第359話:彼女の哲学 作:◆MXjjRBLcoQ 竜人により崩壊した遊園地の一角で、人知れず回り続けるメリーゴーランドがある。 「ハハ、アッハハハ!」 破砕音を伴奏に、悲鳴と笑い声を織り交ぜながら、歌い踊るメリーゴーランド。 その名をマージョリー・ドーと言う。 「ねずみよ回せ、ハッハッハアァ、♪」 伸ばした両手の先には画板ほどの本、グリモア。マルコシアスの意思を表す神器。 今はただの鈍器となって、回転のたび、何がしかと衝突し、それらをことごとく破壊する。 そのつどマルコシアスは、相方の所業に悲鳴を上げた。 「長身、短針、時計の針、♪ ……っとぉ」 相方は足元をふらつかせ、スピードを落とす。片手がこちらから離れグラスへ。 「逆さに順に、回しておくれ、♪」 コインの代わりに、琥珀色の液体を飲み干して、またもメリーゴーランドは回りだす。 元はバーであろう店内は、ほぼ全ての椅子が薙ぎ倒され、机や壁は傷だらけ。まさしく戦闘の後のような様相を呈している。 飲んでは回り、回っては飲む、それを幾度となく繰り返すマージョリー。 その様はどこか遠心分離機を髣髴とさせた。 押さえの効かない切迫感、その身を焦がす殺戮衝動。それらを搾り出すかの様に、彼女は踊り、回り続けている。 マルコシアスは黙ってそれに付き合っていた。 この島での彼女は少しばかり異常だった。“炎髪灼眼の討ち手”に負かされる前の様に、誰彼かまわず喧嘩を売る。 かと思えば、最後までその態度が続かない。相手が断ればあっさり退く。逃げる敵は追わない。 だからマルコシアスも、そんな彼女をからかいはしたものの、酒を飲みたいという意向には逆らわなかった。今も為すがままになっている。 (回せ回せ、全部吐き出しちまえば楽にならぁ。我が苦悩する迷い子、マージョドブゥ!) グリモアがまた一つ、机の脚をへし折った。 「ハハッ、もろ~い、足一本で倒れるよ~じゃ、フレイムヘイズは務まらないわよ~」 倒れる机に向いケタケタ笑いながら、マージョリーは三つ目のビンを空ける。 「せめてこ~れぐらいは、丈夫でなきゃ~、アッハハ!」 そのまま加速をつけ、大きく一回転し、 「!」 グリモアをつかむ手を離した。 「んギャァ!」 回転から開放されたマルコシアスは、しかし勢いだけはそのままに、ドアへと叩きつけられる。 「おいおい、いくらなんでもこれはあんまりだろうよ、我が呑んだくれの暴君、マージョリー・ドー」 思わず不平が漏れた。 「……」 しかし返ってきたのは静かな寝息。それを聞いて、“蹂躙の爪牙”は群青色のため息をつく。 (次の放送は十二時か。それまでは静かに寝かせてやるさ) 相棒が、在るが儘にいられるよう、今は静かに眠らせる。“蹂躙の爪牙”と言う名からは、およそ想像もつかない気遣いである。 群青の炎が、本の隙間からかすかにけぶる。 「安き眠りを、我が愛しの眠り姫、マージョリー・ドー」 彼の最後のつぶやきは、相方に届くことなく虚空に散じた。 【E-1/海洋遊園地/1日目・09 30】 【マージョリー・ドー(096)】 [状態]:熟睡中、酔っ払い、二日酔いは確実、怪我は完治 [装備]:神器『グリモア』 [道具]:デイバッグ(支給品入り) [思考]:胸の内にたまったものを吐き出してから、これからのこと考える。 ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第358話 第359話 第360話 第318話 時系列順 第185話 第347話 マージョリー 第382話 第347話 マルコシアス 第382話
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第301話:彼女の選択 作:◆69CR6xsOqM 血だまりを後に少し進んだ場所で……福沢祐巳は足を止めた。 どくん 祐巳の視線の先にあるのは……明らかに人為的に盛り上がった土と その上に置かれた両手で抱えるくらいの石。 石には何も刻まれてはいない。しかし墓だということは充分に認識できた。 どくん どくん 恐らくは、あの少女の墓。子爵が作ったのだろう。 いや、子爵は……でも……もしかしたら。 どくん どくん どくん 近づく。 一歩を踏み出すたびに心臓が跳ねた。 全身の血液が沸騰しているかのように熱い。 どくん どくん どくん どくん 背中に広がる赤に染まった草原を思い出して体が異常に火照り始めていた。 この、名も無き墓を見てから。 どくん どくん どくん どくん どくん 頭の中に浮かんでは消える悪夢の一場面。 子爵の元にいた少女を自分が襲う、とても恐ろしい夢。 どくんどくんどくんどくんどくんどくん 夢? 本当に……夢だったのだろうか? 自分には倉庫から海までの記憶が無く、真っ直ぐに進んだのならここはその通過点……。 そして血塗れの自分の衣服。 どくんどくんどくんどくんどくんどくんどくん その簡素な墓の前に跪く。 「嘘よ。そんなはず……ない」 盛り上がった土に手をかける。 ざくり、ざくり、ざくり 何をしているんだろう、自分は。 掘り出して何をしようというのだ。これは明らかな死者への冒涜だ。 マリア様はいつもみていらっしゃる。このような行為が許されるはずは無い。 このことを知ればお姉さまも許しはしないだろう。 ざくり、ざくり、ざくり やめるんだ。今ならまだ間に合う。 大体遺体を確認して何をしようというのだ? この下に埋まっているのはあの少女であることは確信しているというのに。 ざくり、ざくり、ざくり 止まらない。 頭ではこれは禁忌の行為だと理解しているのに、手は機械のように土を掘り返し続ける。 掘り返し続けてしまう。何かの予感に責めたてられながら。 ざくり、ざくり、ざく 白い布が露出した。刺繍に見覚えがある。 やはり彼女の纏っていたマントだ。ここに埋まっているのはやはりあの少女なのだ。 もうやめよう。確認は終わったのだから。 ざく ざく ざく ざく ざく 「どうして……もう、いいじゃない」 祐巳は再び土を取り除き、遺体を掘り起こし始める。 何か、いいようのない衝動に突き動かされ遺体の上の土を掻き分ける。 だんだんと遺体の露出が多くなり……そして終に完全に露出した。 朱茶色に染まった元は白であっただろう洋服。 体のあちこちに引き裂かれたような傷跡。 ……そして、肩口に明らかな牙の後。まるで吸血鬼に血を吸われたかのような。 ど く ん フラッシュバック。 眠っている少女を襲う爪。 切り裂かれ、目を覚まして恐怖に歪む少女の顔。 そして……その肩口に牙をつきたてる……獣となった自分の姿。 鮮血に染まる私の服。 思い、出した。 「いやああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」 私が殺した。 あれは夢なんかじゃない。私が起こした現実。 無抵抗な少女を。子爵が、潤さんが救った命を私が奪った。 私は力が欲しかった。 でもそれは他人を傷つけるためではなく、守るためだったはず。 お姉さまを、志摩子さんを、守る。聖さまを……止める。 そして由乃さんの分まで生きると誓い、手に入れたはずの力。 それなのに……ごめんなさい。 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。 私、福沢祐巳はあなたを殺してしまいました。 謝って許されることではないけれど、ごめんなさい。 ……どうしよう。 潤さんにも、疑ってしまった子爵にも……もう会うことなんて出来ない。 お姉さまにも……もう合わす顔なんてない。 ……終わろう。ここで私を終わらせてしまおう。 そうすればもう誰も傷つけることは無い。お姉さまを傷つけることも無い。 どれくらい、座り込んでいただろう。数分か数時間か。 頭の中に響き渡る声で祐巳は覚醒した。どうやら放送を聞き逃してしまったらしい。 しかしそれももうどうでもいい。祐巳はゆっくりと立ち上がり、ヨロヨロと幽鬼のように歩き始める。 坂を上り、木々の間をすり抜け……崖の上に立つ。 不意にヴォッドのレザーコートが風になびいた。 ヴォッド。自分に力をくれたダンピール。いや、私が一方的に力を奪ったのだ。 だからその礼として共に行こうと彼のコートを羽織った。 でも……もうその資格もない。彼はさぞ自分に失望しただろう。 祐巳はコートを脱ぐとそれを崖の下へと投げた。 風に乗って何処かへと舞い飛ばされていくレザーコート。 次は、自分だ。 一歩、崖へと近づく。 これで……私は終わる。もうお姉さまとも会うことは無い。 志摩子さんとも聖さまとも、潤さんとも……もう、会えない。 お父さんとも、お母さんとも、祐麒とも二度と会えない。 楽しかったあのリリアン女学院の日々にはもう戻ることはできない。 足が、止まる。 肩が、手が、足が震え、それを押さえつけるように祐巳は肩を抱いてその場に座り込んだ。 涙が知らずに溢れ出て頬を伝う。 「……そんなの、やだぁ……いやだよ……誰か、助けて……」 怖い、死ぬのが恐ろしい。 これが一番良い方法だと判っているのに竦んで体が動かない。 死にたくない。ごめんなさい。ごめんなさい。 人の命を奪ってしまったのに……、自分は死にたくないんです。 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。 涙を絶え間なく流しながら呪文のように唱え続ける。 「たす……けて……」 「助けてあげるわ。私があなたを苦しみから解放してあげる」 不意に、声が、聞こえた。 振り向くとすぐ傍に剣を携えた少年が佇んでいた。 哀しそうな瞳でこちらを見つめている。 「可哀相に……この島の狂気に囚われてしまったのね。 でももう苦しむことはないわ。永遠の安息をあなたに与えてあげる」 そう言って、彼……カーラは手にした剣、吸血鬼を振り上げた。 祐巳はその姿をただ呆然と見上げている。 殺される? ここでこの人に? いやだ。何故。望んでいたはずじゃない。私は終わる。 いやだ。受け入れるべきだ。いやだ。私は罪を犯した。逃げろ。許されるはずが無い。 いやだ。逃げろ。どこに。生きろ。死ぬべきだ。逃げられない。それでも。生きたい。 死ね。死にたくない。生きたくない。死にたくない。死ね。死にたくない。死にたくない。 死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない。死にたくない……。 どくん 心臓が活性化を開始する。 血液が全身を駆け巡り、臨戦態勢を整える。 「さようなら。願わくばあなたの来世が幸せでありますよう」 そして剣が振り下ろされ……祐巳の意識はそこで途絶えた。 【C-4/崖の上/一日目、12:07】 【福沢祐巳】 [状態]:看護婦 魔人化 記憶混濁 [装備]:保健室のロッカーに入っていた妙にえっちなナース服(血まみれ) [道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り) [思考]:死にたくない [補足]:12時の放送を聴いていません。 ※【ヴォッドのレザーコート】がC-4付近の何処かへ飛ばされていきました。 【竜堂終(カーラ)】 [状態]:やや消耗 [装備]:吸血鬼(ブルートザオガー) [道具]:なし/ サークレット [思考]:目の前の少女を救う/フォーセリアに影響を及ぼしそうな参加者に攻撃 (現在の目標、坂井悠二、火乃香) ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第300話 第301話 第302話 第403話 時系列順 第343話 第289話 福沢祐巳 第316話 第273話 竜堂終 第316話 第273話 カーラ 第316話
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2009年05月20日(水)03時35分-K 言うまでも無く口は災いの元だ。僕の冗談半分の一言で彼女はこうなったのだ。だから僕はできる限りのことをすると誓った。あるだけの心に誓ったし、真剣に考えたこともない言葉だけの存在だった神様にも誓った。しかしいろいろ誓っておいて、実際できることといったら、時どき病室に花を届けることくらいだなんて、全くのお笑い種だ。しかもあの頃ならまだしも、あれから十年経って、欲しくもない成人式の記念品を役場まで取りに行かなくてはいけない歳になっても相変わらずなのだから、そろそろお笑い種から花が咲くころあいである。もしきれいな花だったら、窓際に飾ってもらおう。 顔なじみになってしまった看護師に挨拶してから病室に入ると、誰もいなかった。もちろん、ベッドの上で動かない彼女を除いてではあるが。彼女の母親には事前に連絡はしているので、じきにあらわれるだろう。まずは窓を開けて淀んだ空気を入れ替える。一月の針が混じったような空気が肌と肺に心地よかったが、さすがに開けっ放しにする気にはならなかった。次に窓際の花瓶を確認する。この前見舞いに来たのはもう1ヶ月前なので、活けてあったのはもちろんそのとき持ってきた花ではない。どのくらい前に花を変えたのか分からないが、少し萎びているようだ。その花を捨てて、洗面所で花瓶を洗ったあと水を入れて、買ってきた新しい花を差しておいた。そういえば、この十年間何回この病院の向かいにあるスーパーで花を買ったか分からないが、今でも花の名前は覚えられないままだ。花瓶を元の場所に戻すついでに、窓からそのスーパーを眺める。見舞い客のために花と果物の盛り合わせがいつでも買えるスーパーも、それ以外の部分ではあまり繁盛していないらしく、なんだか寂れているようにも感じられた。十年も経てばいろいろ変わる。つぶれてしまったら、花はいいとして、どこで果物の詰め合わせを買うのだろうか。そもそもなぜ果物なのか。消化にいいから? 大量にもらうと腐るけどな。頭の中で竹中直人が「だって果物好きなんだもーーん」と踊り狂うのを横目で見ながら、考えてみると一度も見舞いに果物を持ってきたことがないことに気がついた。当たり前だ。彼女がどうやって果物を食べるのか。点滴に絞り汁でも混入させるのか。 馬鹿なことを考えるのを一度中止して、ベッドの横に椅子を寄せてそこに座り彼女の顔を眺める。看護士や母親が定期的に身だしなみをしているのだろう、体やシーツは清潔に保たれている。確か十年前は、どちらかというとぽっちゃり気味だったと思うが、ベッドの上の姿は見る影もなくやつれている。点滴で必要な栄養はとりつづけているはずなのだが、意識的な運動をこの十年間一切行わずに、ベッドの上で寝続けて、すべての筋肉が萎びてしまっている。表情筋も同様なので、顔全体が弛んだようになっている。喉から肩や手首などの露出している部分はまるで、布団圧縮袋か真空パックのように、内側の空気を抜ききったように見える。当時はあまりそんなこと考えていなかったが、今あの頃の写真を見ると、それなりにかわいらしい女の子に思える。もし、ちゃんと大きくなっていたらどんな女性になっていたのだろうか。 首の部分には、呼吸補助のために、澁澤龍彦みたいな穴が開いている。穴のある体か。そういえばあの時、もう初潮は済んでいたのだろうか。昏睡状態になっても生理は来るのだろうか。もし来ているのだとすれば、看護士さんが処理をしてくれているのだろうか。 参考書でも出して読もうかと思っているところに、彼女の母親が現れた。この人も、この10年で10年以上老けたように見える。いろいろと苦労しているのだろう。ほぼ一人で眠ったきりの娘の世話を焼き続けてきたのだ。たいした精神力だ。その娘はぱっと見、眠り姫というにはあまりに貧相で、また放っておけば異臭を放ち始め、ときどきこちらで姿勢を変えてあげないと背中の皮がめくれ、骨が見えてしまう。もちろんある程度は看護師がやってくれるが、そのためには毎月入院費を払わなくてはいけないし、その半分は離婚した夫が払っているが、それとは別に自分の生活費も稼がなければいけない。あれから再婚したという話も聞かない。娘の看護をしながらでは、そんな余裕はないのだろう。僕の顔を見ると、疲弊しきった顔の中に埋没した両の瞳にかすかな微笑が宿った。まだ希望を持ち続けているのだろうか。原因不明では希望を捨てることも難しいのだろうか。もっと早くあきらめてしまえば、こんなにもやつれはしなかっただろう。すべては僕の責任である。 今日僕がここに来たのは、単なる見舞いのためだけではない。センター試験が終わって、二次試験までの間に一度見舞いに行こうと連絡したときに、成人式の話が出たのだ。戸籍をもとに招待状を出しているので、彼女の所、正確には彼女の母親の所にもそれは来た。しかし、どうすべきなのか判断を下す前に、成人式は目の前をドップラー効果を起しながら通り過ぎてしまった。イベント事ってのは大抵そうだ。でも、記念品とやらがあり、取りにいかないといけないらしいし、やっぱり娘の成人を何らかの形で祝いたい。どうしよう。そんな折、僕が電話をかけてきた。話の流れで成人式の話題を振ると、僕はセンター試験と丸かぶりしてて無理だったとまるで本当は行きたかったみたいな言い方をした。ついでに地元の仲間にも久しぶりに会いたかった、と相手に思わせかねない言葉まで発した。そこですかさず記念品を取りにかなくてはいけない、という話を持ちかけると、何かのついででもないと取りに行く気のしない僕は、では自分のを取りに行くついでにとって見舞いのときに持ってきます、と言ったのだった。彼女は、悪いです、と最初は言っていたが、すぐにそれでは頼みます、と承諾した。引換券がどうのこうのと言っていたが、あらかじめ役場に連絡しておけば大丈夫だと思ったら、やっぱり大丈夫だった。そうして、今僕は鞄から記念品の『大人の常識事典』を市の代理で進呈している。当局の素晴らしいチョイスにどんな顔をしていいのかよく分からなかったが、どんな顔をしていいのか分からないときは笑えばいいよ、とある人が言っていたが、また別のある人は、これ笑うとこ? と言っていたので、結局安部公房いうところの表情の三角形の中点へと収束していくかと思われた所に、「この娘の振袖姿も見たかったんですけどね」と言われたものだから、思わず「ぶひひっ」と吹き出してしまった。別に振袖が面白かったわけではないのだが、どこで笑えばいいのかタイミングがよく分からずに、結局一番笑ってはいけないときに笑ってしまうのが僕の悪いくせなのだ。物凄く怪訝な表情で顔を見られたが、うつむいて適当にごまかしておいた。うつむいているのでごまかせたかどうかはよく分からないが。みんななんで、ああ笑うタイミングを合わせることができるのだろうか。誰かが喋り終わると同時にみんな一斉に笑い始めたかと思うと、僕が喋り始めると同時に部屋全体がしいんと耳が痛いほど静まり返る。冗談を言うタイミングだってそうだ。冗談を言っていいときか言っていけないときかが僕にも分かるように信号機でも設置しておいてくれれば助かるのに。そういえば、あのときだってよく考えたら冗談を言うタイミングじゃなかったのかもしれない。が、彼女がまじめな話をし始めたので、僕はどんな顔をしていいのかよく分からなくて、結局あの致命的な冗談を言ったのだった。 「あら、お花。変えてくださったんですね。ありがとうございます」 やれやれ、どうやらごまかせたらしい。顔を上げると 「いつもいつもすみません」 と言いながら、名も知らぬ花に顔を寄せている。そして、ベッドの上の呼吸補助器具の差し込まれた娘の顔を見やると、 「もう十年になっちゃうんですね」 と呟いた。確かに十年は長い。キサントパンスズメガの口吻と同じくらい長い。 進化論に思いを馳せ危うくオメガ点まで到達しそうになっているところで、彼女が何か言いたげにこちらを見ていることに気がついた。まあ、何がいいたいのかは大体分かる。なんでここまでしてくれるのか、とかそんな感じのことだ。冷蔵庫の左右どちらからでも開くドアがどういう仕組みになっているのかと同じくらい疑問に思って当然のことだ。だが、彼女は何か言いたげなだけで、その何かを言い出そうとはしない。この十年言い出しそうで言い出せなかったことが、十年の節目だからと言う理由で口に出せるわけではないし、たぶん、それを口に出さない理由の一つは、訊いて見るまでもなく、こちらが思いもよらないような答えを向こうで出してくれているからなのだろう。そのおかげで、適当な理由をでっち上げる気苦労が減っているのだから感謝すべきだ。彼女が僕と彼女の娘の関係をどう想像していたってたいした問題ではない。それに、本当の理由なんか説明したって仕方がない。たぶん話している途中であまりの馬鹿らしさに、僕が笑いをこらえられないだろう。そして、『あ』研究家の松本人志さんが「おかしいんじゃないか、これ?」と思ったときみたいな顔で見られること請け合いだ。 しばらく世間話をしていたら、彼女は医者と何か話があるらしく、僕は病室にひとり残されてしまった。いや、正確には二人だ。いつも勘定に入れるのを忘れる。もう一度ベッド脇の椅子に座る。そしてこの十年間、この部屋に一人きりに残されたときにいつもしていたように、ベッドに横たわる少女に話しかけ始める。女性を少女って呼んでいいのは何歳までだ。 「もういい加減あきらめろよ」 もちろん、答えは返ってこない。たぶん、聞こえてもいない。 「世の中にはね、無理なことってのがあるんだよ。無理なことはいくらがんばっても無理で、もうそれはどうしようもないことなんだよ。努力すれば何とかなるとか、夢はかなうとか、小学生に教えていることは全部嘘なんだよ。絶賛二浪中の僕が言うんだから説得力炸裂だよ。これは風の強い日に立小便をすれば自分の足にかかるくらい確実な話だよ」 とこの十年で僕がようやく学び始めたことを話すのだが、その十年を一切外界との接触を絶ってすごしてきた彼女に言っても無駄なのかもしれない。そもそもあんな冗談を真に受けるのだから、彼女はあの頃から相当な馬鹿だったのだろう。そこから一歩も成長していない以上、今だって馬鹿なのだ。馬鹿になに言っても始まらないことを、僕はすでに学んでいただろうか。 いつの間にやら、窓の外の空が暗くなっていた。昼間からどんよりと雲が立ち込めていたが、夜にかけて雪が降るかもしれない。 彼女がこうなってしまった日は夏だったから、まだこの時間帯は明るかった。僕達は下校中で偶然一緒になった。彼女のほうから話しかけてきた。親の離婚の話だった。そのとき僕は、よくよく考えると帰る方向は一緒なのにほとんど話したことがないことにようやく気がついたところだった。なぜそのとき彼女が僕に話しかけたかはよく分からない。たぶん誰でも良かったのだろう。彼女が学校でそのような類の話をしているのを見かけたことがないから、たぶん普段話していない人間の方が話しやすかったと言うだけなのだろう。こちらとしてはいい迷惑だ。どんな反応をすればいいのか分からないし、そもそもどんな反応も求められていないのかもしれないが、やっぱり無反応なわけには行かないのである。そして、ふーん、とか、大変だね、とかをどのようなタイミングで出すかと言う大変難しい問題に取り組んでいたときに、何故か僕は、相手の気を紛らすようなことを言わなければいけない、と言う謎の欲求に襲われてしまったのだ。彼女は言った。 「どっか、もうちょっと素敵な場所に行って、そこに住みたい」 だから僕は行ったのだ。 「全力で念じれば、全身全霊をかけて念じることができれば、そこに行ける」 と。その日の夜彼女は、いつも通りベッドに入りそして二度と目覚めることはなかった。原因は誰にも分からなかった。ただ、僕だけが、彼女は全身全霊をかけて念じ続けている、あらゆる能動的活動や生命維持に関わる活動を放棄してでも、脳のすべての部位を動員してでも、祈り続けているのだ、念じ続けているのだ、その責任は自分にあるのだ、という十年前の思い込みを律儀に守り続けているのだ。誰にも話さず、またもともと仲など良くなかったのに頻繁に見舞いに行くのを不思議に思われながら、気がついたら十年経っていたのだ。あの会話以外ほとんど話したことなどなかったのに、この十年間一番話しかけたのはよくよく考えてみれば彼女だった。何とか彼女の無駄な努力をやめさせようと説得し、頼み込み、そして時にはやけになって応援してみたり、関係のない愚痴をこぼしたり、方針を変えて、もうちょっと素敵な場所なんてないと言ってみたり、相対論的にワープの可能性の薄さについて語ってみたりした。彼女は話しかけやすかった。反応に困る反応を返してくることがなかったから。だが、それも今日までだ。十年は長い。無駄なことをしているのが自分であることに気付くのには十分な長さだ。僕はほかにやることがある。君はここで死ぬまでお花畑でも念じ続けて、母親に迷惑をかけ続けるがいいさ。 挨拶してから帰ろうかと思っていたけど、医者との話が長引いているのかなかなか帰ってくる様子がなかった。空を見るために窓を開けると、空気に雪の匂いが混じっている。日没直後のはずだが、雲のせいで夜中みたいに真っ暗だ。これは吹雪く前に帰ったほうがよさそうだ。そう思って、窓を閉めようとしたとき、空が光った。すぐさま腹にくるような重低音が響いてきた。雪起こしの雷だ。本格的にヤバイな、と思うが早いかとんでもない衝撃を喰らって、床に投げ出された。 すぐにはどちらが上でどちらが下なのかも分からなかった。とんでもなく眩しい、という認識があったが、何が眩しいのかは全く分からなかった。その理由が自分が眼を強くつぶっていることだと分かるまで、少しかかった。眼を開けたとき、妙に薄暗いな,とまず思って、次に電気が消えていることに気付いた。停電だ。そうか、雷が落ちたのか。いや、この地方の雷は下から上に走るから、落ちるというのは間違いなのだろうか。とまで考えたとき、逆に視界が明るすぎることに気付いた。稲光で目をくらまされているのに、この暗さでこんなに物がはっきり見えるのは変なのだ。薄暗いのではなく薄明るいのだ。体を起して周りを眺めて、すべてのものが身投げした蛍烏賊のように青緑色の燐光を発している。床も壁も天井もテレビの画面も消えた蛍光灯も医療機器もベッドもベッドのシーツも、目の前にかざした僕の手も。その光りがきらきらときらめき、ゆらゆらとゆらめく。脈動する。テレビで見た珊瑚の産卵のように、光の粒が指の先から空中へいくつも躍り出る。窓の外に目をやると、付近の明かりがすべて消えているのに、病院だけが建物全体で怪しく光り輝いていた。その光がまるで生きているように、この窓に集まる。そして、それらがベッドの上に流れ込む。まるで、ベッドの上から水が湧き出してくるのを逆再生して見ているみたいだ。空中の光球もその周りをうろちょろしているうちに、流れに合流していく。ほとんどすべての光がベッドのシーツの中に入ってしまうと、内側から輝きでシーツが透けて、中の肉体が見える。その肉体の中で光の奔流が形を変えながら渦巻く。しだいにそれらは一点に集まり始めると、目を開けていられないほど眩く輝き始めた。僕は本気でシーツが破れないか心配になった。そして、一瞬であっけなく光は消えてしまった。 直後、予備電源が作動して、非常灯が付いた。呆然としていると廊下をドタバタと行き来する足音がしてきた。口々に何かを叫んでいる。今の停電でいろいろと不具合が生じているのだろう。すぐにこの部屋にもスタッフが流れ込んでくるに違いない。その前にそっと部屋を出て、行きかう人ごみにまぎれて、病院から出ると、ちょうど最初の雪のひとひらが病院の非常灯に浮かびあがったところだった。病院の周りは停電で暗かったが、独立電源の街灯が燈っていたので、道行く人々の混乱も終息しかかっていた。コートのポケットに手を突っ込んで、身を縮こまらせながら、足早に最寄の駅まで歩く。落雷のため少し遅れていた電車を待ちながら、頭を整理する。整理するまでもなく確信していた。今、あのベッドの中には誰もいない。そんなことは実際にシーツの中を見てみなくたって分かる。彼女は旅立ってしまったのだ。念願かなって、ついにどこかにいけたのだ。十年間の無駄な努力が報われたのだ。 数日後、彼女の葬式が行われた。話によると、彼女は病院に雷が落ちたことによる停電と非常電源が作動するまでの数秒の間におこった、予期しない医療機器の故障により医師の奮闘空しく死亡したことになっている。もちろん、嘘に決まっている。あの光の乱舞が続いていたのは、数秒ではなかったはずだ。それにあの時すでにベッドはもぬけのからであるはずだから、医師の奮闘空しくもくそもない。 葬式には、小学校の同級生達がたくさん来ていたらしい。らしい、というのも僕はそこにいっていないからだ。いっても何も見るものはない。棺おけの中が空なのは見るまでもないことだからだ。彼らは空っぽの棺おけに見てみぬ振りをして涙を流すだろう。中身のない棺おけに花を投げ入れるだろう。軽いはずの棺おけを重そうに持ち上げるだろう。そんな茶番に付き合うつもりはない。さいわいこちらには時期的に行かない理由はあるのだ。 彼女の祈りが通じたのかどうかは僕には分からない。通じたのかもしれないし、努力とか思いとかとは何の関係もない偶然により、願いがかなったのかもしれない。物事はうまくいったりうまくいかなかったりするものだが、そこに意味などないのかもしれない。こんなことは世の中の考えても仕方がない多くのことの一つだ。 彼女がどこにいったかも知らない。だいたい、彼女がどこに行きたかったのかも知らないのだ。ただ、彼女が今いる場所が、ここより多少素敵な場所だったらいいな、と思うだけである。 疲れた。 見直してないから誤字だらけかも
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彼女のお飼い者 彼女のお飼い者 Stellar 05/05/27 住んでいたアパートが全焼した主人公。先輩OLの住む女子寮に居候させてもらう事になるが。 ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) 『彼女のお飼い者』体験版をやった。・彼女(ナース)に強引な中出し→無計画な膣内射 精についてのお説教・上司をベランダで犯しながら周囲の住人に絶叫卑語をお聞かせする プレイ →孕ませ台詞を言わせて中出し・・・せずに外出し(工エエェェ(´Д`)ェェ エエ工) ・ベランダから室内に移動して拘束騎乗位→自分から中出しおねだり→中出しTRUST の姉妹ブランドだし孕ませシチュは他にもありそうだが・・・これも低価格ゲーだな。 ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) とりあえずB2な感じですかな? ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) まあB2かな。室内ではもう堕ちて壊れ気味 ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) 彼女のお飼い者は全然話に出ないな 体験版では「中はダメ!」とか言うセリフが満載な ゲームだったんだが ----------------------------------------------------------------- (ウホッ!いい名無し・・・) ネタバレ/ 彼女のお飼い者購入しました 腹ボテセックス&CGは無し Hシーンは序盤 はB2、後半B1、A1になります HR関連のテキストは多く、内容も濃いです 本格 派には物足りないかもしれませんが、チキン派には値段もお手ごろで内容もそれなりに充 実しているのでオススメかも ネタバレ:腹ボテはありませんが、エンディングで聡美が 主人公の子供を産みます ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) そういえば、彼女のお飼い物にはHRシーンはあったのか?誰か買った人いない? ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) ネタバレ/ 本格派未対応 価格相応かと思われ。分類はB2→B1(調教後)かな。上司 のOLは、EDにて娘出産済み&第2子仕込みシーン有り。もう片方はピル服用済みとき た瞬間背景化した。 ----------------------------------------------------------------- (好々爺) 「彼女のお飼い者」(stellar)のENDで上司に子を生ませ(もう4歳位に成長 )さらにもう一人仕込んで終わってます。Type:B1 ----------------------------------------------------------------- (名無しさん@2ちゃんエロゲ板) 低価格ゲームで「彼女のお飼い物」に孕ませ関係のセリフ多量にあった。中田氏拒否→見 事に「孕ませて」に変異