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第12回 ショウタの伝説 ハルカは、周囲が驚くほどに勉強に集中した。これまでのことで、相当下がっている成績を元に戻し、できればトップクラスにまで上げるためだ。それにより周囲や両親を安心させ、余計なことを一切言わせないためだ。 それにより、一刻も早く『とおくのまち』を目指すためだ。 メギ曜日にはフトシと会い、新たに多くのことについて学んだ。 フトシは、過去数十年にわたって、「メギの組」の間に伝わってきた膨大な伝承を、すべて脳に蓄えた驚くべき語り部だったのだ。 伸吉文書でもわかるように、メギ曜日の記録は非常に残しづらい。そこに行くことができるのは、ほとんど子供であるし、行った者はほぼすべて死ぬか狂うか、ハルカのように「調整」されてしまう。 ノートなどを残しても、子供か狂人のたわごととして処分されるのがほとんどだ。そのためメギの組には、フトシのような語り部が必ず一人いて、メギ曜日の歴史を代々受け継いできたのだという。 フトシから学んだ中で、特に重要な二つのことについて、ここに記しておこう。 ショウタとキクコ、そしてあの「物語爆弾」についてだ。 ショウタとキクコ(御ショウタ、御キクコと呼ばれることが多い。)は、昭和四十二年~四十四年ごろに実在した、メギの組の伝説的なリーダーらしい(17代目)。ショウタについて残された伝承は少なくとも四つあって、 「ショウタ君」 「ショウタさんの話」 「御ショウタ伝」 「翔太の冒険」 フトシはそのすべてのバージョンを、一字一句に至るまで完全に覚えていた。 細部の描写などからして、「ショウタ君」が一番古く、字を当てている「翔太の冒険」が、実は一番最近のものらしい。そのため「翔太」が表記として正しいかは大いに疑わしかった。(口伝えなのに、これのみ漢字がわかるのは、「翔太の冒険」に、「ショウタのショウは飛翔のショウ」という一節が何度も登場するためだ) 一番古い「ショウタ君」は、おそらくショウタの実際活動した時期か、あるいは数年後にまとめられたもので、ショウタが壊滅寸前だったメギの組を組織しなおし、「爆弾」で、0犬や青青魚魚、オウキ、ウウウエイ(同様の怪物だったらしいが不明)などを撃退したことが淡々と語られている。キクコの扱いは小さく、ほとんど名前のみの登場にすぎない。 結末が唐突なのも特徴で、これのみショウタが最後にどうなったかについて、語られていない。ショウタが怒りっぽく、粗暴な性格だったことに触れているのも、このバージョンのみだ。 続く「ショウタさんの話」では、一気に理想化が進み、後のバージョンの共通点である「物語爆弾の完成」、「キクコとの結婚」、「インチキさんを追って『とおくのまち』へ去るショウタ」などの要素が、はじめて登場する。 唯一成立年代が判明している「御ショウタ伝」(昭和五十一年九月八日)では、クリスチャンの子供などが関わったためだろうか、宗教的な要素が多く混入し、ショウタとキクコは、イエスとマリアのような聖者、救世主に扱いが変化している。 「翔太の冒険」は、言い回しが難しい「御ショウタ伝」に対して、より低学年の子供にもわかるように作られたものようで、当時人気だったらしいアニメや漫画の要素が多く混ざり、ほとんど別の物語になっている。 いずれにせよ、ショウタが「物語爆弾」を使用することで、青青魚魚などを一時的にせよ撃退し、メギの組を再興した、偉大なリーダーだったらしいことは間違いない。 物語爆弾そのものの構造、製法については、「ショウタさんの話」に詳しく登場するのだが、ハルカはそれをおよそ理解できそうになかった。 何というべきか、それは呪文と数式が組み合わさったような、16番まで続く奇怪な歌のようなもので、途中からフトシが神がかりのような状態(相当怖い)となるため、言葉にすることすら困難なのだった。 苦心してなんとか理解した範囲では、それは紙(これはノートの切れ端でもなんでもいい)に書いた三十六画の「核字」を、三十六個の部首(!)が、ある順番で包み込んだ全体像を、さらに一つの文字として「同時に」頭に思い浮かべることで作動する…らしいのだが、それがどのように爆弾としての効果を発揮するのか、さっぱりわからなかった。 それは、メギの組の子供たちも同様だったようで、「物語爆弾」を一応完成させることができたのはわずか四人。あの日カナタが使用したものも、彼がなんとか理解できた14番までの情報をもとに、核字と部首を二十にまで簡略化した、不完全なものであったらしい。 ただ、それが不完全なものであれ、「物語爆弾」の威力にはおそるべきものがあった。 「御ショウタ伝」では「物語爆弾」が全面的に使用された時期について「物語戦争」あるいは「ラケシの三学期(意味は不明)」と呼んでいるが、この時期青青魚魚などをほとんど根絶できた反面、多くの子供たちが爆発に巻き込まれて物語を破壊され、またメギ曜日の大田区全体も、そのためかなり荒廃してしまったことが語られていた。 (このことは、伝承の日付に異様に執着するフトシの記憶の中に、昭和四十四年から五十一年にかけてのものが非常に少ないことからも裏付けられる) このようにしてハルカは、メギの組の28代として、新たに多くのことを学んだ。 メギ曜日の、メギの組の歴史を、メギ曜日を行き抜くための術を、そしてカナタの目指していたものを知った。 カナタは、「物語爆弾」が、やがて敵味方の双方を破滅させてしまう危険を知っていた。 だからこそ彼は、再び勢力を盛り返しつつあった青青魚魚との絶望的な戦いを続けつつ、「グーメン弾」を用意し、その一方で、インチキさんやショウタが最後に赴いたという『とおくのまち』へ、必死の救援を求めようとしていたのだ。 しかし、これは書いておく必要があると思うが、インチキさんはともかく、ショウタが実際にとおくのまちにたどり着けたかは疑わしい。 「ショウタ君」の唐突さからすると、彼の最期は、むしろ物語爆弾による事故死であって、だからこそ結末があえて語られていないのではと思えた。 0犬や青青魚魚におびえるメギ曜日の子供たちが、はるか遠くに見える『とおくのまち』を、いつしか救いの地として見るようになり、無残なショウタの死をも、それで美しく飾ろうとした…と考える方が自然ではないだろうか。 いずれにせよ、それがどれだけ非現実的な希望であったか、カナタ自身にもわかっていたに違いない。だが彼はそれをやったのだ。メギの長として。 (私もやる) ハルカは決意していた。 今やハルカの時間は、ほとんどが勉強に費やされた。 平日には受験の、メギ曜日にはメギの組の。 学ぶべきことはあまりに多く、ハルカは睡眠時間を削り、遊びにもほとんど行かなくなった。 カナタのことを思い出せば、そんなことはどうでもよかった。 病院からもらった薬は、すべてトイレに流した。 ついつい薬を飲みたくなってしまう誘惑に負けないようにするためには、そうするしかなかった。 いつの間にかハルカは、薬を飲まないと眠れなくなっていたのだ。 わけもない不安や苛立ち、そして窒息や発狂、死の恐怖が湧き上がってきて、深夜何度も、汗まみれになって目覚めてしまう。 だが、薬を飲めばメギ曜日には行けない。 だから、薬は捨てるしかなかった。 不眠のため、みるみる形相が変わっていくのが自分でもわかった。 自分は妄想にとらわれて治療を拒否し、どんどん狂気の世界にはまり込んでいるのだ。ハルカの心の一部は冷静にそう分析していた。 だが、そんなことはもはやどうでもよかった。 (カナタは私を助けてくれた。だから今度は、私がカナタを助けなければならない) (どんなことをしてでも) ヒコギ 足腰も鍛え始めた。 カナタの自転車「ヒコギ」を乗りこなすためだ。 あの自転車には、特別な目的があった。 フトシによれば、カナタは数年前から、あの「サンライズカマタの戦い」の直前まで、これによって『とおくのまち』を目指したのだ。 だが、それは163分という制限時間の中ではギリギリの行程であり、カナタは何度も挑戦したあげく、とうとう見出すことができなかったのだという。 (ハルカがはじめて偶然カナタと出会ったときも、まさに彼はその帰途にあったのだろう) 以前にも少し説明したが、この奇妙な装備品だらけの自転車は、フトシによれば、正しくは「ヒコギ」あるいは「ヒコーギ」という。 雲母粉を混ぜた黄色いペンキで塗装されており、ブレーキもチェーンも変速機も、全てカナタが手を加えた特殊なものだ。ハルカにはとてもこんなものは作れない。 「インチキさん」の昔から伝えられてきたものらしいが、奇妙な仕組みがあちこちにあって、ハルカはもちろん、製法を記憶していたフトシでさえ、それが何なのかよくわからなかった。 おそらく、実際作ったカナタもわかっていなかったのではないか。 大きなプラスチック定規や分度器(学校の先生が授業で使うようなやつだ)、その補強のためらしいビニールパイプやアルミ板を組み合わせたそれは、なにかの計測器のようにも見えた。 ハルカは以前に三日でやめた早朝ジョギングを再開し、一ヶ月をかけて多摩川の土手を走りこんだ。受験のための体力づくりと親には言った。 時にふと、夕闇の中を去って行ったカナタの力強い走りを、その後姿を思い出した。 カナタもあるいは、こうして走っていたのだろうか。 もはや名前以外、顔も声も思い出せない彼の、それは数少ない記憶だった。 ハルカが足をいくら鍛えても、ヒコギをカナタほどに走らせることは無理だろう。そうすると『とおくのまち』など夢のまた夢ということになる。だがハルカには強みがあった。 カナタはメギの組36人の長として、『とおくのまち』までたどり着くだけでなく、仲間を救うため、そこからさらに帰ってくる義務があった。 ハルカには、それはない。 メギの組は今やハルカと、フトシの二人だけだから。 復路を考えなければ、時間は倍使えるのだ。 一ヶ月がたって、ハルカはフトシに言った。 「フトシ、いっしょに『とおくのまち』に行こう。帰れなくなるかもしれないけど」 フトシに返事はなかった。 そんな質問に意味はなかったからだ。 この、いまやハルカの忠実な相棒は、たとえ地獄に行くのだって、目を輝かせて、ハルカから離れるわけがないのだ。 ヒコギを残像化させない方法も学んだ。 それは細かく分解した車体を自分の体に密着させ、金属の蓑虫のような格好となってメギ曜日を待ち、覚醒とともに、即座に元通り組み上げるという、おそろしく複雑で、ほとんど常軌を逸したものだった。 だが実際ヒコギは、カナタの手でそのように作られており、部品の組み合わせ次第で、子供が自転車を細工して作った不格好なオブジェのよう見せかけて、普段の部屋にも置いておけるのだった。 もちろんそれは女の子の部屋にいかにも不釣り合いな代物ではあったが、毛糸のカバーをかけることで、両親の不審の目を何とかごまかすことはできた。 ハルカは今さらながらカナタの仕事に驚嘆しつつ、スパナや六角レンチの扱いを腕に覚え込ませていった。 『とおくのまち』への行程については、フトシもよく知ってはいなかった。 これまで誰もが、カナタのように見つけることができなかったか、あるいは「インチキさん」のように行ったまま帰ってこなかったためだ。 だがガス橋から見える塔、つまり『とおくのまち』の方向と、道路図との関係からを考えると、おそらくは国道二号線沿いか、少なくともその付近にあるのではないかと思われた。 国道二号線は、さらに上流の丸子橋からが直通で、ガス橋からは細い枝道を通って行く必要がある、しかしガス橋から直進を選べば、国道14号線を経て、やがてハルカが以前巻き込まれた国道一号線に出てしまう。 それならカナタは、素直に多摩川大橋からのルートを選ぶはずだった。 ガス橋を選んだのは、丸子橋までの遠回りの時間を惜しんだためではないだろうか。 ちなみに、国道一号線は最終的に、京浜急行の子安駅付近で国道二号線とも合流する。 ということは、『とおくのまち』も、その地点までのどこかにあるということだ。 ガス橋からの総距離は、約18キロメートル。 進路としては全体的に南下のコースで、ここまで来るとほとんど横浜だ。 残像と接触しながら維持できるヒコギの速度、そしてメギ曜日での疲労の具合、なによりフトシとの二人乗りを考えると、復路を考慮に入れなくとも、これはギリギリの遠征となりそうだった。 この旅は、失敗すればまず生きて帰れないだろう。 あらかじめ何度か試走をし、ルートを確認してからとも思ったが、やめた。 『とおくのまち』は、おそらく常に目視できるため、多少コースを間違っても、修正ができるという目算もあったが、それよりはるかに重大な理由があった。 薬を止めたその反動なのか、いまやハルカは様々な妄想や幻覚に昼夜を問わず悩まされるようになってきていた。 周囲の人間が、皆ひそかに自分のことを嘲笑し、あるいは監視しているように感じられ、また時には自分の思考に別の誰かが入り込み、命令を与えるように感じられて、その度合いはひどくなる一報だった。 新聞の文字もますます読めなくなり、地図を見れば、いつの間にか東京の区が全部で17になっていた。都道府県の数も47しかない。 (おかしい、変だ) (確かもっとあったはずだ) なぜか奇妙な確信があった。 かといって、それが一体いくつだったのか、何区や何県がなくなってしまったというのか、よく思い出せなかった。 ハルカの叔父が住んでいたはずの下田も、いつのまにか神奈川には存在しなくなっていた。神奈川県そのものの形が変わっているように見え、その代わり静岡に、見たこともない怪しい半島が生えていて、そこに字だけは同じでまったく別の「下田」という街ができあがっているように見えた。 それがいかにも胡散臭く、ニセモノのように見えるのが奇怪だった。 そもそも叔父のことそのものが、ひどくぼんやりとしか思い出せなかった。以前、何かとても大切なものを送ってくれたはずなのに。 (あれはなんだったのだろうか、思い出せない) (こうして次第に自分の物語を奪われていけば、やがてはカナタのように影になってしまうのかもしれない) (あるいは、これこそが、「病院」の狙いだったのではないか) (薬を捨てている自分、禁止されたメギ曜日へ干渉を繰り返す自分が、あえて放置されているのも、実はそのためなのではないか) (薬を飲んで「調整」されるか、それとも飲まずに影になるか、奴らにとってはどっちでも好都合なのだ) (違う、こんなものは全部ただの妄想だ) (いや、どっちなのか) (わからない) (こわい) (影になってしまう) (影になってしまう) (こわい) (だけど) (私はカナタを助けなければならない) (私はカナタを助けなければならない) 孤独の中、狂気と妄想のはざまにあって、ハルカは煩悶し、恐怖した。 この状態で、試走などと悠長なことをしていては、遠からず完全に正気を失ってしまうだろう。 まだ自分が自分でいられる間に、一気にやってみるしかなかった。 最大の不安は、『とおくのまち』に万一たどりつけたとして、それからどうしたらいいか、カナタの言っていた『すべてのすくい』とは何か、自分にもフトシにもよくわかっていないことだった。 10月9・5日、メギ曜日。 ハルカとフトシは、ガス橋を越え、『とおくのまち』を目指した。 国道二号線 自分とフトシの分、そして残像で破けた場合の予備とあわせて5着、黄色のレインコートを用意した。 ポケットには、雲母粉、手帳に赤鉛筆、そして二発のグーメン弾。 グーメン弾については、フトシの指示通りにやってみたのだが、ハルカには二発しか作ることができなかった。もっとも弾体をケド第二曜日にさらすなど、そもそも製法について理解できない部分も多かったため、これは名前ばかりでほとんど気休めにしかならないだろうと思った。 背中には吹き矢とデイパック。デイパックの中身は、飲み水用のペットボトルと、カロリーメイト。そして四万分の一の神奈川県地図。 ヒコギを元通りに組み上げ、それぞれの家から、橋の上に集合するまで1047を数えたところで、ハルカたちは出発した。 フトシがいてくれれば、時間についてはとりあえず安心だ。 フトシは以前のハルカのように、後輪の車軸の上に乗って、ハルカの肩につかまった。肥満体のフトシに寄りかかられるとずっしりと重く。坂道が大変そうに思われた。 ハルカはできるだけ車残像を避け、慎重にハンドルを操作しつつペダルを漕いだ。 通るのは主に車線中央だ、中央分離帯のある場所はやっかいだが、歩行者道や車道の端では、一時停車する車や原付の残像が多く、スピードが出せなかった。 これも体感だが、だいたい平均して時速6から10キロのペースを維持できているように思えた。 だがこれは、順調に車線中央を走れている場合だ。 今日のように、いくつか枝道を通って国道二号線に乗るためには、車残像をまともに横断しなければならない部分があちこちにある。 少しでもダメージを減らすように、車残像の進行方向にあわせてヒコギを乗り入れたり、そのつど雲母粉を塗りなおしたりしていると、時間はどんどん過ぎていった。 ようやく国道二号線まで出たときには、すでに3600以上、一時間が経過していた。 往復を考えると、足を伸ばせるのは、あと5キロがいいところだろう。カナタの苦労がしのばれた。 『とおくのまち』は予想通り、常に視界の中にあってよく見えた。方角もすこし西寄りだが、二号線沿いのルートで大きく間違っていないようだ。 あいかわらずはるか巨大にそびえ立つそれは、いくらペダルを漕いでも、少しも近づくように見えなかった。よほど遠くにあるか、あるいはよほど大きいのだろう。 時折、0犬と思われる黒い塊がいくつか、遠くの空に浮かんでいるのが見えた。だが黄色いレインコートのためなのか、他に獲物がいるためか、ハルカたちのそばに近づくことはなかった。 他にもいくつか、細長い翼を持ったものや、光りながら飛ぶ大きな布のようなものを見た。 あるいはあれが、「ショウタ君」に登場する、「オウキ」や、「ウウウエイ」なのかとも思ったが、よくわからない。 疲労が、次第にたまってきた。ヒコギをこぐ疲れよりも、むしろ残像を避け、通過していくための疲れだ。不安定な車軸の上に立ち続けているフトシもかなりつらいに違いなかったが、一言も不平を漏らさない。終始笑顔で、時々思い出したように、様々なメギの組の伝承を語ってくれた。 ハルカたちは一本のペットボトルを回し飲み、昔からあまりおいしくない大塚のカロリーメイトをかじりながら、国道二号線をさらに南下していった。 国道二号線は、ほとんどが東急東横線に平行して走っている。東京に比べれば少しだけ緑の多い、のんびりとした神奈川の風景が続いた。 日吉駅付近を通り過ぎ、綱島駅の近くでフトシが4890、つまり81分半を告げた。 メギ曜日の半分は過ぎた。これ以上進むと、もう戻るための時間はなくなる。 『とおくのまち』までたどり着くか、それとも、死ぬか狂うかだ。 目の前、やや西寄りに見えるとおくのまちは、依然として視界の中に小さく、近づく気配を見せない。残り81分半で、あそこまで本当にたどり着けるか、微妙だった。 ハルカはフトシを振り返った。 フトシは無邪気に、力強くうなずいた。 その疑うことを知らない、というか、多分何も考えていない笑顔に、ハルカも吹っ切れた。 (行こう!) 幻覚も妄想も今やどこかに消し飛びんだ。 不思議な高揚感が湧き上がってきた。 ハルカは再びペダルを漕ぎ出した。綱島駅前を通り過ぎ、さらに大綱橋を渡った。鶴見川だ。ここからは鶴見区となる。目の前の道に次第に勾配がつき、やがてはっきりと上り坂となった。大倉山だ。 普段なら、たいした坂ではないのだろう。だがここはメギ曜日で、後ろには丸々と太ったフトシが乗っかっていた。さっきの高揚感はどこへやら、やっぱりこんな重しを連れてくるんじゃなかったと思った。ハルカを信じきっているのか、面倒だからか、フトシはニコニコとして後輪に乗ったままだ。この肥満児が、ここで降ろして一人で坂道を登れるかも不安だった。 山頂に到着するまで、おそらく20分近くかかったろう。 さすがにいったんヒコギを降りて、道路中央で休むハルカに、フトシが突然小さく声をかけた。 ちょうど山頂部分の中央線を指差している。 見ると、中央線のペンキに傷をつけて、何かが小さく彫り付けてあった。 黄色い。 油性マーカーか何かで、字がよく目立つよう、傷の部分に塗りこんである。 車が走っている日中なら、ほぼ誰も気付かないだろう。 最初は、何か工事のための目印かと思ったが、違った。 漢字が五つ。どれも今のハルカには読めない字だ。だからこそわかった。 カナタだ。 読めないのは、それが彼の名前、破壊された彼の物語の一部だからだ。 ハルカはしゃがみこみ、読めないその字を、指先で何度もなぞった。 彼はここまで来たのだ。 ハルカより脚力のあるカナタは、81分半でここまで来た。そしてここに印を残し、仲間のところに引き返したのだ。 ここから先には、おそらくまだ誰も行ったことがない。インチキさん以外には。 ハルカたちに残されたのは、あと1時間。 それで、どこまで行けるだろうか。 国道二号線 苦労して登った後の下り坂は爽快だったが、時折道路中央にはみ出た車残像に突っ込んで転倒しないよう、何度かブレーキを使わねばならなかった。 再び平地に戻り、20分ほどペダルを漕いだ。 残り時間を考えると、そろそろとおくのまちの近くに来ていなければいけないはすだ。 だがとおくのまちは、最初見たときと比べ、相変わらず近づいてはこない。 フトシが7500を告げた。 地図を取り出し、見比べた。 焦った。計算が合わない。とおくのまちは、この道の果て、国道一号線と合流するまでの18キロ間にあるはずだ。それなら163分で走破できるはずと計算して、ここまできたのだ。 まさか、と思った。 あれはどこまで行ってもたどり着くことの出来ない、蜃気楼のようなものではないのか。 急に不安になってきた。 ハルカはペースを早めた。車残像と高速で接触するのは危険だったが、もうそんなことも言っていられない。 フトシが8000を継げた。163分は9780だ。 脇や額に、次第に冷や汗がにじみ出てきた。 肩をのしかかるフトシの重さに、わけもない苛立ちを感じた。 ふと、道の向かって左側に、黄色い建物が見えるのに気づいた。 最初はまた「シミズデンキ」の支店にでも行き付いたのかと思ったが、そうではなかった。 空き地の真ん中に、正確には、おそらく元は何か建っていたのだろうが、取り壊されて駐車場となっているところに、いかにも唐突に、小さな黄色い家が建っていた。 「圓團圖門」と同じ、特徴的な半透明だ。 時間が惜しかったが、ヒコギを停めた。手がかりになるかもしれないと思ったのだ。 交差点の近くで車残像を横断し、駐車場に入ってそばまで近づいてみると、家は家なのだが、屋根も窓もドアも、ちょっと見たことのないデザインだ。 アフリカだか南米だか、どこかの国の写真で見たことがあるような、やっぱりないような、何ともいえない不思議な家だ。 周囲を巡ってみて気づいた。家の裏手は破壊され、すでに廃屋となっているようだった。 そばのフトシが8500を継げた。 軽い吐き気が喉の奥から登ってきた。メギ曜日が終わろうとしているのだ。 もう時間がない。ハルカはそれ以上の調査をあきらめてヒコギに戻り、さらに先を急いだ。 めまいと吐き気をこらえつつ、ハルカはふと気が付いた。漕ぎ続けるペダルが、次第に軽くなっている。 下り道はすでに終わって、道は平地のはずなのに、ヒコギはどんどん加速を続けているのだ。 ハルカは困惑しつつ、ふとあることを思い出していた。 あの多摩川。 なぜかはわからない。だが、あの時と同じ何かが起こっているようだった。 ヒコギは何かに引っ張られるように、ますます速度を上げ、飛び過ぎていく風景の中で、やがて先ほど見たような黄色い廃屋が、周囲のあちこちに姿を見せるようになった。 菫色の風景の中で、それはとてもよく目立った。 最初は駐車場や空き地に、だがやがて、普通の家やビルにも重なって、先に進むたびに、つまり東京方面から離れるたびに、黄色い家はその数を増していくように思えた。 家だけでなく、逆三角形を連ねたように茂る奇妙な木や、その森のようなものも見えはじめた。 どれも黄色だ、目がチカチカした。 菫色の風景は、しだいに黄色い風景に覆い尽くされ、空と大地は鮮やかな二色のコントラストの中にあった。 もはやここが神奈川県とは、ほとんど思えなかった。 住宅地に食い荒らされ、無残に削られた、みすぼらしい山々の替わりに、ゆるやかな黄色い丘陵が現れ、どこまでも広がっていた。 激しい吐き気とめまいの中で、その光景はこの世ならぬ美しさに思われた。 時速はすでに80キロ近いだろう。速度に耐え切れないヒコギは激しく振動し、ハルカは必死にハンドルにしがみついた。だが、それがあるときピタリと止んだ。 フトシが小さく声を上げた。理由がハルカにもわかった。 ヒコギは飛んでいた。 高速のためか、それとも他に理由があるのか、いまやヒコギの車輪はわずかに路面から浮いて、ハルカとフトシを矢のように運んでいるのだった。 そして目の前に、街が現れた。 黄色い丘陵の向こうに、金属質に輝く、黄色い城壁のようなものが見えた。 その中に囲われた、同じ黄色の街が見えた。 全体がうっすらと透き通っており、おそらく神奈川のどこかの駅なのだろうが、こじんまりとした菫色の駅舎や商店街を包み込むようにして、壮麗で奇妙な街が、そして天空にそびえ立つ塔が目の前に近づいてきた。 『とおくのまち』が、そこにあった。 ふと、ハルカは気付いた。 道の前方、50メートルほどに、誰かが立っていた。 人間だった。 一面の黄色の中で、さらに抜けるような鮮やかな黄色の、マントのような奇妙な服を着た、それは男だった。 フトシが、9000を告げた。 男は、ゆっくりとこちらに歩いてきた。
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http //astroboy-gba.sega.jp/contents_news.html 2003.12.18. 「ASTRO BOY 鉄腕アトム ~アトムハートの秘密~」本日発売! お待たせしました! ようやく「ASTRO BOY 鉄腕アトム ~アトムハートの秘密~」が 本日発売されました。 「難しい!でも面白い!」「ストーリーがいい!」 「さすがトレジャー」「よくやったゾルゲ!」等々 ヒットメーカーにもチラホラとプレイした方の感想が入ってきております。感謝感謝! クリスマスプレゼントや年末帰省のお供にピッタンコなこのソフト ちょっと気になっている方、一度手にとってみてください。 絶対損はさせませんぞ! http //astroboy-gba.sega.jp/secret01.html 職人集団トレジャーとの出会い さて、「GBAのキャラクターもの」ということで、私は「これは妙なことはやめて、素直にストレートな2Dアクションゲームを作ろう」と決めました。 ただ、決めたはいいものの、私はこれまで2Dアクションを作った経験がなく、そればかりか妙でキテレツなゲームばっかり作ってきましたので、ここでハタと困ってじっと手を見ました。 するとどうでしょう!そこには、ふしぎな宝の箱のような紋章が… 「おお!!マハー・カーラ!」 なにが「おお!!マハー・カーラ!」なのかよくわかりませんが、それこそ、今回開発に全面的なご協力をいただいた、「株式会社トレジャー」のロゴマークだったのです。 「株式会社トレジャー」 それは、ゲームマニアなら知らぬものはない、泣く子も黙る硬派のゲーム製作集団。 その完成度の高いアクションゲームの数々はマニアの絶賛を集め、武道館では女子高生が失神し、その拳は天を引き裂き、その蹴りは大地を割ったとされております。 古くはメガドライブの「ガンスターヒーローズ」「ダイナマイトヘッディー」「幽々白書 魔強統一戦」「エイリアンソルジャー」、サターンの「ガーディアンヒーローズ」「シルエットミラージュ」「レイディアントシルバーガン」、そしてドリームキャストの「爆裂無敵バンガイオー」「斑鳩」などなど…、セガ関係だけに絞ってみてもこれだけの数、まさにキラ星のような傑作群を誇る、熱すぎる男のメーカーです。 私の脳裏に、「ガンスターヒーローズ」で、ゴールデンシルバー戦に熱く燃えた日々が、「エイリアンソルジャー」で、Xiタイガーを瞬殺したものの、セブンフォース楓を倒せなくて泣いた日々が、さらに「斑鳩」いまだにクリアできないけど井内さんあれはいったいどうなってるんだという日々が、走馬灯のように駆け巡りました。だいたい走馬灯ってよく聞くけど、実物見たことないよな。 走馬灯の話はさておき、「アクションと言えばトレジャー!トレジャーに作ってもらうしかない!」という電撃のような啓示に撃たれた私は、(*1)そこで「トレジャー!」と叫んで風呂から裸で飛び出し(いつ入ったんだ)街を走り回ってローマ兵に捕まりましたがそれもさておき、勇躍トレジャーの門を叩いたのでした。 http //astroboy-gba.sega.jp/secret02.html 豪華メンバー はじめてお会いしたトレジャーの前川社長は、斗酒なお辞せず、短く刈り揃えたヘアスタイルが大変ダンディーなお方でした。しかし、なにしろ2003年のクリスマスに間に合わせるというので、最初はスケジュール的にちょっとムリというお話。 しかし、その際同席いただいた開発三部の部長様&副部長様が、この企画に興味を覚えてくださり、幸運にもキツいスケジュールを承知の上で、引き受けていただけることとなったのです。 「開発三部の部長様、副部長様。」 こう書くと、グレーのスーツが似合う素敵な中年紳士の姿がイメージされるかと思いますが、マニアのみなさんの間では「やいまん」「ナオキマン」さんとしてのほうが有名かもしれません、そう、「ガンスターヒーローズ」や「爆裂無敵バンガイオー」を作られたメインプログラマー&デザイナーさんです。 「アトム」&「トレジャー」! これで凄いものにならないはずはありません! そう思った私は、そこで再び「トレジャー!」と叫んで風呂から裸で飛び出し(いつ入ったんだ)街を走り回って以下同文。ここにGBA版アトムがスタートしたのでした。 こだわりのトレジャー トレジャーとの作業で、大変感心したのが「ゲーム」に対するその真剣なこだわりです。 私もいちおう長くこの仕事をやってますので、それなりの算段を立てて開発に臨みました。こういう版権モノアクションで、妙に目新しいシステムを盛り込んでも拒絶反応を起されるだけなので、(クリスマスシーズンに合わせるという至上命題があるので、目新しいことを試すヒマはないという事情もありますが)だれが見ても『ああ、そういうゲームね』とわかるオーソドックスな絵面と操作系…といいう大枠だけを決めて、とりあえず作業に入れるかなあと思っていたら、これが大誤算。 「ライフ制と自機を並存させる意義は?」 「ジャンプは本当にAボタンでいいのか?」 「対戦格闘風の上ボタンジャンプでは、なぜいけないのか?」 「スコアやタイムは必要ないのでは?」 などなど… それこそボタン操作の一つ一つ、表示される情報一つ一つに対して、もうあきれるほどの徹底したコダワリ!(せっかくの機会ですので、当初私が考えていた仕様ラフ(*2)をお見せします。このアバウトきわまる操作系が、最後にはどれだけ洗練されたかは実際のゲームでごらん下さい)
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オタ電ブログ移行前。 http //maglog.jp/zolge/ (Maglogのサービス終了に伴い消滅)2007/05/29 肝に銘じよう 2007/05/29 そういえば 2007/05/31 どこに行くんだR-TYPE 2007/05/31 3Dにおけるゲーム性 2007/06/01 悟り 2007/06/02 ニコニコ動画のセガガガ関連 2007/06/03 買い物 2007/06/06 萌とマスターチーフ 2007/06/07 さらにニコニ動画 2007/06/09 ミニマリズム 2007/06/10 ゲームが舐められるのは 2007/06/22 大日本人とゲド戦記 2007/07/20 マイベスト 2007/08/04 TAMAYOラヴ 2007/08/25 大本営発表 2007/10/01 適当な主張 2007/10/09 その本のことは、知ってはいました。元ネタ(2007/10/19) 2008/01/19 私はあなたがたにたぶん大体合ってる意訳(2008/01/19) 2008/02/08 偽りの旗のもとにたぶん大体合ってる意訳(2008/02/08) 2008/03/01 金曜ロードショー「パニッシャー」 2008/03/15 魂斗羅デュアルスピリッツ 2008/03/21 恐竜はなぜ鳥に進化したのか。 2008/04/06 未来少年コナン 2008/04/26 島耕作とのらくろ 2008/05/05 ドリフトとビブラート http //maglog.jp/zolge/ (Maglogのサービス終了に伴い消滅) 2007/05/29 肝に銘じよう ttp //www.sankei.co.jp/culture/enterme/070320/ent070320001.htm からの引用らしい(現在は観覧不可) こないだ出たこういう記事 ゲームについては、ぼくは異論がある。アニメや漫画は感動をもたらすけれど、ゲームは、お金だけ持っていって、子供の時間奪ってますね。その人生にプラスアルファがない。宮崎さんとか他のアニメ見て、人生変わったという人はいると思います。心ふるえるほどの感動とか、ゲームは若干難しい。ビジネスとしてはいいかもしれないが、恨みをもたれる。かつてのエコノミックアニマルのコンテンツ番みたいにね。敬意も払ってくれない 素晴らしい言葉だ。この言葉をオレたちはぜひ肝に銘じよう。 オレ等が人生を削るようにして作っているものは、こんなクズみたいな野郎に舐められているのだ。その現実を噛みしめよう。こいつら皆殺しだ。 何年かかってもいい、こんなクズ野郎に絶対に舐められることのないモノを作ろう。敬意とか人生のプラスアルファとか知ったことじゃないが、オナニーや銭儲けだけでは終わらない、ガキから小銭を巻き上げるだけの中身のある、本当にいいモノを作ろう。 2007/05/29 そういえば ZARDの松岡さんが昨日に自殺されてましたね。お悔やみ申し上げます。 農林族として数々の名曲を世に送り出したわけはないだろう!てめえ!ぶち殺すぞ! 2007/05/31 どこに行くんだR-TYPE 今度のR-TYPEはPSPで横画面ヘックスシミュレーションだそうな。こないだのR-TYPEファイナルもいい加減微妙なゲームだったが、いったいアイレムに何があったんだろう。 海物語で儲かりすぎたから節税対策なんだろうか。それとも開発者はそういうのが好きで好きでたまらないマニアなのか。「コスミックウォーズ」とか「GUNばれ!ゲーム天国」とか「ファミコン版源平討魔伝」とかの。 R-TYPEの根本的な魅力は、どう考えたって「よくできたシューティング」であることだし、その部分を改変して、キャラや世界観で客を呼べるほどの一般性もないと思うんだが。 なによりいい気がしないのは、制作者の姿勢に、オリジナルに対しての理解もリスペクトもあまり感じられないことだ。他人のふんどしで相撲を取るのはそもそも恥だし、どうしてもそういうことがやりたいなら、扱いはきちんとして、倍にも立派にしてから持ち主に返さないと恥の上塗りというものだろう。自分も何度か同じようなことをしでかしてしまったので、自戒の意味を込めて言うのだけど。 実はこれまでのR-TYPEを超えるようなもの凄い傑作で、遊びもせずに批判してるこのオレをギャフンと言わせてくれるといいんだけどな。絵はなんかきれいだし。まあ、オレはオレのできることをやるよ。 2007/05/31 3Dにおけるゲーム性 3Dにおけるゲーム性というのが、だいたい ●鉄砲持って走り回る ●刀をぶんぶん振り回す ●実質的に2Dとして扱っている …あたりに固まってしまうのは、3Dでは画面内の状況全体をうまく把握できないという問題に尽きると思う。 要は、2Dでは表現上の制約上もあって「図」だったものが「絵」になってしまったので、迫力が出たはいいけど、パッと見よくわからなくなってしまったのだ。 たとえば、「ファイナルファイト」や「ゴールデンアックス」の醍醐味だった「複数の敵を相手にした近接戦闘」というのが3Dではなかなかゲームにならない。「間合い」「軸合わせ」みたいな、わかりやすいルールの明示ができないからだ。これでムリにファイナルファイトをやると、攻撃は当たらないわ、よけられないわで、まずプレイヤーは怒る。そうなると結局、走り回って刀をぶんぶん振り回すしかなくなるのだが、ご存じの通り、これはそのうち飽きる。迫力は勝るけど、ゲームのやりとりは2Dよりかえって退化しているからだ。 ゲームを3Dで作ると言うことは、煎じつめるとカメラをどう扱うか、それをインターフェイスとどう絡めるかという話になる。これは、酔っぱらいのおっちゃんが一目見てルールが理解できた「ポン」に比べると、要求スキルが初手からものすごく高い。誰でも遊べるモノを、となると最初に挙げた三種類くらいしかムリだというのが正直なところだろう。 これ以上複雑にしたら客は逃げるばかりだし、このままでも先はない。3Dを豪華に見せるたびに金ばかりかかる。こういう爆弾を抱えたような状況でゲームを作り続けるというのは、結構ヤバい。「サンダーバード」で成功したのに、「キャプテンスカーレット」でドツボにはまったジェリー・アンダーソン的というか。「ウルトラ」に対する「MJ」というか。なるほどそりゃ脳トレに流れるだろう。 ゲームというのは、できるだけルールが単純でわかりやすく、しかも奥が深い方がいいという鉄則がある 表現においての3Dというのは確かに強みだけど。ゲームと3Dは基本的に相性が悪いと言うことは憶えておいて損はない。 2007/06/01 悟り 最近朝起きたりメシを食ってたりのたびに、なんだかいろいろ悟りを開いちゃってもう大変。そういうお年頃なのかしら。 こういうものをこそ、まさに生悟りというんだろうけど、そもそも悟りに生もドライもなかろう。少なくとも禅寺に座禅で渇とかやってても悟りなんかあるわけないこともなんとなく悟った。ヤバい。オレ仏陀かもしんない(もうダメだ) 2007/06/02 ニコニコ動画のセガガガ関連 まさかこんな形で見られると思わなかったのでちょっとビックリ 内容の確認のためにDC起動しなくて済むので正直助かる。 ラストのオマケなので、当時はほとんど見てもらえなかったR-720もようやく陽の目を見たようで何より。モゲタンとお姉さんは最後の一話が抜けてるな。まあ見て興味を持った人はアマゾンで購入してオレの黒いアフィリエイト計画を成就させてくれ。攻略本もあるよ。 2007/06/03 買い物 ヨドバシでテラステーションの2テラと、PS2のメタルスラッグコンプリートを買った というかテラステーションのポイントでメタスラ買ったのだが。HS-DH2.0TGL/R5、2テラで99800の21%ポイント還元!えれえ安いが大丈夫なのか。これでねんがんのアイスソードじゃないデータの一元化を画策中。 メタルスラッグの方は、これまで手を出してなかった6をいきなり無限クレジットでクリアして死ぬ。なんかトレマーズ4みたいな煮詰まり具合になってるなあ。後半面の作業感がキツい。6本入りで助かった。 つーか4以降は普通いらんよな。このゲーム、アーケードで100円かっぱぐのが目的だからウリのドット芸を見てると死にまくるのだが、そこらへんを一切面倒見ないシステムのままでストレスが溜まる。もう残機制とか武器ロストとかいらないと思うんだが。 ともあれ、1~3のためだけにでも買う価値はあるよ。パッケが高荷義之先生だし。 2007/06/06 萌とマスターチーフ 外人には萌が理解できない。 瞳が顔面建坪率70%を超える美少女キャラクターにビビビと来るというのが想像もつかず、何がいいんだかまったくわからないそうだ。 一方でマスターチーフという人がいる。米制ゲーム「ヘイロー」の主人公で、全身緑のバイク便ドライバーみたいな人だ。日本人にとっては、どう見ても「イー」とか叫びながら五人ほどまとめてライダーに蹴り殺されるようなザコキャラにしか見えないのだが、外人は奴が好きで好きでたまらないらしい。あれこそ最高のキャラクターというものであり、ビビビと来るのであり、萌えというモノがもしもこの世にあるのなら、それはこういうものなのかもしれないとすらいう。 絶対に違うと思うが反論する気力もない。やっぱ肉食ってるやつらは違う。 2007/06/07 さらにニコニ動画 アトムハートまでアップされてる!誰だか知らないがありがとう。 こういう風に役立つとは予想外だった。 2007/06/09 ミニマリズム 以前から思うのだが、ファミ通やアスキーの連載マンガはすごい。 雑誌におけるマンガの意義を、あそこまでギリギリに極め尽くした例はほとんど絶無なのではないか。一種のミニマリズムというか、スーパーの刺身の上に乗ってるタンポポみたいというか。まあ、マンガ以外もほぼそんな内容なんだけどな。 2007/06/10 ゲームが舐められるのは ゲームが舐められるのは、インタラクティブという特性上、内容がプレイヤーの幇間的なものに終始しがちという問題がある。要は甘ったるく、薄っぺらいのだ。 あたりまえだが、自分の努力に対するリターンがないと、プレイヤーは怒る。社会を告発する映画というのはあるけど、社会を告発するゲームというのはありえない。 ゲームの描いているのは、実はあくまでプレイヤーに対するリターンであって、世界やその状況なんてのは、単なるその風味付けだからだ。これは、どっかのお偉いさんのバカ息子を主役に据えて、無理やり撮ってる映画みたいなものだ。手取り足取り、ご機嫌を取って「演じていただく」のだ。バカ息子を満足させることはできるかもしれないが、作品をマトモに仕上げることは至難のワザだ。 だけど、忘れちゃいけないのは、別にバカ息子に罪はないということだ。 プレイヤーというのは確かに無知で怠惰で傲慢で甘ったれで、どうしようもないヤツだけど、彼らにしたって、乏しい小遣いの中から決して安くはない(ゴメンな)ゲーム代をひねり出し、大事な自分の時間と引き替えに遊ぶゲームのその中に、安っぽい作り物でない感動や、学校では教えてくれないある種の真実や、人生を変えられるような衝撃を求めているはずなのだ。 ぼくらがいつのまにか、手段と目的を取り違えて、勝手に幇間になってしまったのだ。ゲームを通じて伝えたい何かのためにこそ、プレイヤーのご機嫌を取っていたはずなのに、楽にプレイヤーのご機嫌を取ることが目的になってしまったのだ。こんなものは舐められて当然だ。 白黒時代の黒澤映画が何よりカッコいいのは、まず娯楽として最高のレベルにあることだ。そして決してそこに堕していないことだ。客は娯楽性以外、会社は収益性以外のことをまったく求めてないから、後の部分はただの作り手の意地だ。 その意地を見せてこそ、はじめて世間に舐められずに済むのだ。 2007/06/22 大日本人とゲド戦記 どちらも見てないし、今後も見る予定もないけど、はっきりクズだろう。 だが、こんなクズで十分、というか、今求められているのは、むしろこうしたクズなのだということをよく教えてくれる。そこに気づいた奴は偉い。 映画だと思えば腹が立つが、カニカマがカニを堕落させたと怒る奴はいないだろうし。 2007/07/20 マイベスト よく「あの映画の、あのマンガの、あんな感じでやってくれ!」という言い方をする。 こればっかりだと模倣しか生まれないが、そこで相手に「ああ、あれね」とピンと来てもらえることがモノ作ってると大事だ。基礎教養というか。 表現したいものの「マイベスト」を脳にストックしておくクセがつく。マイベスト斬撃エフェクト「斬鉄剣の透過光」とか。マイベスト派手な攻撃「達人のサンダーレーザー」とか。 あんまり役に立たないのもある マイベストしらばっくれ「聖闘士星矢のドルバル教主」とか。イベストたくらみ「東周英雄伝の楚の恵王」とか。(両方とも実際見てみたまえ、すげえぞ)いつかあんなふうに、激しくしらばっくれたり、たくらんだりするキャラクターを登場させてみたいものだ。 いや知らんけどどっかに。 2007/08/04 TAMAYOラヴ 最近 河本圭代 が気になってたまらぬ。 ゲームミュージックの名手だ、昔から好きだったアレスの翼、大魔界村、さらにレイフォース、レイストームも実はTAMAYOの仕業と最近知って仰天。アレスの翼のネームエントリーには腰が抜けたのだよ。 レイフォースすげえよな、今聞いても泣ける。あれはシューティングへの挽歌だろう。最近なにやってるんだTAMAYO、さっさと引っ越しとかやってる場合じゃないだろう あれはMIYOKOだっけ。 2007/08/25 大本営発表 最近のファミ通がますますすごい。 きっと彼らなりの志を持って、ゲーム業界を景気づけたいんだろうなあと思う。きっといろんなしがらみがあるんだろうなあ、と思うと気の毒でならない。 作り手を大切にする、というのは大事な姿勢だが、言葉を変えれば、買い手は大切にしない、ということだ。客商売で客をナメたらどうなるか、ツケはそのうち必ず払わされると思うのだけど、客だってどうせロクなもんじゃないし、客を持ち上げてどうなったかは、「ゲーム批評」の末路とかで明らかだ。もう確信犯的にやってるのだろう。 あと三年くらいして、いよいよ業界が斜陽化してたら「ゲームを買わないのは非国民」とかやってくれるんじゃあるまいか。期待したい。 2007/10/01 適当な主張 昔から「やばい!サツだ!ずらかれ!」とか「へっへっへっ、こいつは最高のヤクだぜ」とか、実生活で使ってみたいのだがとんとご縁がない。 福田内閣が福祉に力を入れると言うことであれば、一般家庭にもっと警察のスパイを紛れ込ませ、もっと麻薬を流通させるべきではなかろうか。早急な対応が望まれる。 2007/10/09 その本のことは、知ってはいました。 正直に言うと、書店で探し出して買おうと思って手には取ったのですが、ぱらぱらとめくってみてやめました。●根さんがうっかり儲かって、オレより幸せになったりしたら妬ましいからです。ちくしょう、うまくやりやがって。 ところで、世の中にゲームについて書かれた本は数多くありますが、どれもこれも、どうもピンときません。唯一、●村さんが書かれているものは、よくわかります。単純な話、●村さんの書くものだけが政治的に正しいからです。 今、ゲーム業界の内側から外に向けて、いろいろなことを発言していかなければならないタイミングだと思ってはいました。ただ、それはあくまでも業界の政治的判断に基づいた、適切な内容でなければなりません。日本のゲーム業界の未来はあくまで明るく、勝利は目前です。 もちろんPS3も断じて失敗などしておらず、あれはあくまで戦略的転進と言うべきなのです。悪質なデマゴーグで大衆を惑わせようとする者などは、敵性分子であり、ゲーム非国民と誹られるべきです。 皆さんも、こんな汚らわしい本は即座にうち捨て、ゲームを愛する者にとって唯一ピンとくる●村先生の著作を精読するべきであると思います。 ●根さん=多根清史氏…ゲーム雑誌「Continue」のデスク。 ●村さん=浜村弘一氏…エンターブレインの社長でゲーム雑誌「ファミ通」の元編集長 元ネタ(2007/10/19) 2007-10-09 09 00 その本は、買いもしませんでした 電撃PlayStation編集長 倉西誠一 プレステ3はなぜ失敗したのか? GameTSUTAYA Blog(10月1日) その本のことは、知ってはいました。正直に言うと、書店で探し出して買おうと思って手には取ったのですが、ぱらぱらとめくってみてやめました。これは電撃PlayStationの編集長の読む本ではないなと、これは根拠もなく、直感したのでやめました。ちなみに、僕個人としても、その本を読む義理も必要も感じませんでした。 本当はこんな記事をブログにアップするのもどうかと思ったのですが、まぁ、どうでも。世の中に、ゲームについて書かれた本は数多くありますが、どうも、どれもこれもピンときません。攻略本を別として、読み物は圧倒的になんかこう、実感がわきません。唯一、浜村弘一さんが書かれているものは、よくわかります。単純な話、同じような職業的な経験を持っている後進として、理解できるということです。 こういうことを言うとあれなんですが、ゲームについて書くことは、この業界にいない人にはなかなか難しいことだと思います。失礼のないように、でも申し上げますが、生まれた時からゲームに触れていたとか、そういう年代でもない限り、通常の出版業界で言うところのフリーランスのライターさんにも、なかなか書けない題材だと思います。もう10年くらい、題材としてはあきらめてみませんか? と、思わず提案したくなります。 ただ、今、ゲーム業界の内側から外に向けて、いろいろなことを発言していかなければならないタイミングだと思ってはいました。そしてそんなことを思っていたところで、最近、浜村さんが2冊の本を上梓されました。ばたばたしていて時間がなく、まだ読んでいませんが、近いうちに読ませていただこうと思っています。ゲーム「業界」に興味のある方はぜひ、どうぞ。 あ、僕が出そうとしている本はあれですよ、「モンスターハンターポータブル2nd」についてだけ書いている本ですからw 楽しい(のか?)読み物です、はい。 2008/01/19 私はあなたがたに 私はあなたがたに、新しい星を見せよう。 地上の泥濘や黄金ではなく、 また天にあってすでに死んだ星や、その偶像でもなく、 虚無と偽りのその向こうに、なおも輝くものを見せよう。 あなたがたには、我々には、高く仰ぎ見るものが必要だから。 たぶん大体合ってる意訳(2008/01/19) メガドラSTGのVC化計画、打ち切られそうってマジかよ。まだまだ予算を懐に入れたりないっつーの。と言ってもこのままじゃヤベェな。何とか企画を続行させる案を…。 ん?そういえば、去年ブロークン何とかがちょっとした騒動になってたな。サンダーフォース信者共が大量に釣られたらしいが…。 …待てよ?同人であんだけ盛り上がるって事は、セガから正式にサンダーフォースの続編発売って事になったら、もっと釣れるんじゃね?いやいや、サンダーフォースだけでなく、他の死に掛けタイトルも餌にすれば…。名前の使用許諾だけ受けて後は適当に開発を済ませれば、高い版権量払ってVC化するよりもかなり安上がり……。シューター共は死に掛けタイトルの続編出したってだけで喜ぶだろうから、開発費抜いて散々な出来になっても叩かれにくいに違いない……。上手く事が運べば高利益で会社からも高評価、しかも俺はシューティングを復権させた救世主として祭り上げられる………。 ケケケ、これだ。素晴らし過ぎる計画じゃねぇか!待ってろよお前ら。もうすぐVCなんて偶像でない、新しい星を見せてやるよ。俺様の手による新作という輝かしい星をな。 2008/02/08 偽りの旗のもとに クズとバカの泥沼の中に(それすら崇高な) オレは修羅だ。 やるのだ。 逃避でも欺瞞でもやるのだ。 やれなかった奴の分は、やるのだ。 たぶん大体合ってる意訳(2008/02/08) 俺様のシューティング復権プロジェクト、考えれば考える程に素晴らしい企画だな。クズでバカなシューター共が俺を神と崇める様が目に浮かぶぜ。 それもこれも、BROKEN THUNDERでヘマをやらかしたFNAGが身を挺してヒントになってくれたおかげだな。ま、安心しろFNAG。お前らのやれなかった分も俺がしっかりとやり遂げてやるよケケケケ。やってやるぜケケケケ。 2008/03/01 金曜ロードショー「パニッシャー」 あまりのデキに「オレの二時間を返せ!」とか騒ぎになってるようだが、おまえら甘すぎる。 オレはE3の時、ロサンゼルスのユニバーサルスタジオで、わざわざ見ちまったぞ! 映画館爆破しようかと思った。 2008/03/15 魂斗羅デュアルスピリッツ よくできてる。てめえら買え 真やネオでピンとこなかったヤツも安心していい。ちゃんと魂斗羅だ。 一発死にで難しいけど、魂斗羅って昔からこんなもんだし。海外開発っぽいけど、描き込まれた「わかってる」ドット絵も好印象。DSならではのムリヤリな二画面演出もバカっぽくて「魂斗羅感」満点。 サウンドも一生懸命雰囲気を取り入れてる、でもちょっと腰が引けてるかな。欲を言えばグラディウスジェネレーションの1、2面みたいな新解釈のコナミ節が聞きたかったところ。(まあ十分なレベルなので、贅沢な願いだけど。サントラは当然押さえろよな)オマケでNES版の魂斗羅、スーパー魂斗羅も遊べるらしいよ。 ところで…オレにだけでいいから、30人モードのコマンドを教えてくれ。コンシューマ魂斗羅ったらやっぱあれだろう。イージーの10人では足りん あの、弾幕を避けずに屍の山を乗り越えていくテキトープレイがいいんだよ。中国共産党軍みたいな物量作戦でゲームバランスが破壊されてく感じがたまらんのだよ。あと、コンティニューがBGM鳴り終わらないと選べないのはなぜかしら? ともあれ2D最高! 2008/03/21 恐竜はなぜ鳥に進化したのか。 いろいろあってついにPS3を購入した、40Gの黒。 とりあえず「ラチェット&クランク」とか「アンチャーテッド」とか「デビルメイクライ4」とかの体験版をダウンロードして、今さらながら瞠目する。なんという豪華フルコース、満艦飾、大艦巨砲主義。絵といい音といい、実にすげえ。ここまでやるかという感じ。 だが、これはおそらく進化の袋小路だ。どう考えてもこの路線を続けたらほとんどの国内ゲームメーカーは、早晩採算が合わなくなるだろう。これだけ肥大化したゲームを支えるだけの市場は、おそらくもう日本にはないから。日本では、一部の例外を除いてゲームはどんどん売れなくなってきている。海外ではまだマシな状況だが、外人はもう日本製のゲームをそれほど欲しがらない。 今読みかけの「恐竜はなぜ鳥に進化したのか」という本をちょっと思い出した。 大気中の酸素濃度の変化が、生物に大絶滅や進化をもたらすという骨子だが、これは今のゲーム業界にも、いろんな意味で当てはめられるのでないか。 ゲームは、つまるところ「流行りモノ」だ。だが流行は永遠には続かない。いつかは終わる。ことに国内ではそのようだ。それによって日本のゲーム産業を恐竜のように肥大化させ、豊かな多様性をもたらしていた市場が、つまり酸素がなくなってきたのだ。 任天堂のWiiや脳トレ系DSゲームが売れているのを見て、まだまだゲームも安泰と思う人も多いだろうが、あれは鳥なのだ。きわめて希薄な酸素(ユーザー需要)という厳しい環境に適応するため、新しく進化した別種の商品であって、我々とは違う種族なのだ。 任天堂のゲームだけが売れて、他が売れないのは、そういうわけだ。これからますますそうなるだろう。その根本的な部分を理解しない限り、我々はそのうち恐竜のように滅ぶしかないのかもしれない。自分は鳥になりたいとは思わないし、むしろあえて最後まで恐竜でありたいと思うが。 2008/04/06 未来少年コナン 30年記念DVDが狂ったようにお買い得だったので&PS3のDVDアプコンを試したかったので、20年ぶりくらいに通しで見る。大切なものは逆に軽々しく見返さない主義なのでな。 やっぱすげえなこの気迫と志。オレ何やってるんだろう。次に見るのは20年後とかだろうか。その時までにはもうちょっと何かモノになってるといいんだが。 2008/04/26 島耕作とのらくろ とうとう島耕作が社長になったそうな。これが戦後における立身出世譚の代表例、つーか「のらくろ」だろう。 違いは、軍部に睨まれ結局大尉で終わった「のらくろ」に比べ、島耕作は世間を味方に最後までうまく立ち回ったことだ。 バブルの勢いでアメリカのエンタテインメントに手を出し、その後は中国やインドに進出、サムソンの魔の手から救い出したシャープと松下を合併させた原発推進派。この経歴、普通の会社だと五回くらいクビが飛んでると思うが。すべてコネと下半身関係で切り抜けてきた手腕はさすがとしかいいようがない。これと「釣りバカ」の浜ちゃんが、現代ニッポン中年サラリーマンの理想像らしい。 犬コロまんがの「のらくろ」の方に、遙かに人間的な深みを見るのはどういうわけだろう。 竹熊健太郎の考察のパクリらしい。 2008/05/05 ドリフトとビブラート マリオカートwiiを買った。何がいいって付属ハンドルのガジェット感だろう。誰の心の中にもある「自動車ごっこ」の体現で、見てると笑える脱力モノのシンプルな構造といい、意外な質感の高さといい、あれだけで買う価値はある。 だがマニュアルドリフトがわからん。自爆しまくる。ボタンでアサインされたせいか、かえって混乱する。親切にオートドリフトも搭載されてるんだけど、それじゃ世界の強豪を相手に勝負できないッ!勝負になってないけど気にしないッ!ハンドル回しながらアイテム使いながらドリフトってムリ。この曲芸的操作感はバイオリンのビブラートといい勝負だろう。 世界中のクソガキがこんな超絶技巧を使いこなしているのが信じられん。憎い、悔しい、みんな死ね。「まさし」とか「さとる」とか、テメエらみんな小学生だろう。いつまで起きてるんだ。勉強しろ。親と学校にチクってやる
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●セガガガとは 「セガガガ」は、ここ2年ほど、この私ゾルゲールが、それなりに力を注いで製作してきたソフトであります。 こんなページをわざわざ見つけて読んでいるような人は、知らないわけはないと思いますので、ゲーム内容に関する説明は省きますが、まあ、おそらく史上初の企業セルフパロディのゲームなわけです。 もちろん皆さんがご想像の通り、「昨今世間の話題を集めることも多い、狂乱のゲーム業界を舞台にして、その実態を自虐的なブラックジョークで描く」...ようなものがコンセプトなわけで、その意味で皆さんの期待を裏切ることのないよう、きっちりと作ってきたつもりではあります。 (もちろんそれは、こんなワケのわからないプロジェクトに、最後までついてきて下さった開発スタッフみなさんのご協力があればこそです。この場を借りて、改めてありがとうを言わせて下さい...ってまだ終わってませんが。) しかしながら、言い出しっぺの私としては、できればもう一つ掘り下げた部分として、「なぜ自分たちの携わる仕事(あるいはメシのタネ)を、わざわざ貶めるようなモノを作るのか」が、描ければと思い、製作を続けてきました。 やれ仕事がつらいとか、給料が安いとか、上の連中は判っちゃいないとか、様々な不平をこぼしながら、それでもゲーム業界から離れようとはしない連中が、私のまわりにはたくさんいます。それはなぜか。 いまさら、「夢を求めて...」などと薄っぺらいことは言いませんが、だからといって本当に趣味と実益、あるいは生活のためだけなのか。 そろそろ10年になろうかという時間を、このロクでもない業界で費やしてきた私としては、そうした自分たちの、複雑な思いに対しての問いかけとして(あわよくばその答えとしても)、このゲームがまとまれば、と思ったのです。 「ゲーム屋の心意気」。これがこのゲームに私が託した、本当のテーマです。 それが果たしてきちんと描けたかどうかは、皆さんのご判断にゆだねます。 力至らず「ただの品性卑しき自虐」で終わっている場合もあるかと思います。 どうか皆さん、このセガガガを実際手にする機会がありましたら、ちょっとだけそんなことも考えながらプレイしてみて下さいね。 あっ!読み返してみたら、なんかオレってスカしたこと書いてるぞ!
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電撃オンライン http //dol.dengeki.com/soft/recommend/sggg/index.html 『セガガガ』超ロングインタビューゾルゲール哲 氏 vs 電撃オンライン編集部 プレイヤーはセガの経営者となって、与えられた三年の間にシェア100%、つまりゲーム業界制覇を目指すというトンデモないゲーム『セガガガ』。このゲームが、2001年5月31日に店鋪販売を開始したことを記念して、電撃オンラインでは開発者にインタビュー取材を敢行いたしました! この、ぶっとんだコンセプトのゲームが生まれるまでの経緯や、開発中のアブナイ裏話を完全掲載しちゃいます! 長文注意!! 【ゾルゲール哲氏】 『セガガガ』の生みの親。企画は当然のこと、キャラなどのイラスト製作からプロデュースまで、トータルに開発に参加。この人がいなければ、『セガガガ』が生まれなかったといっても過言ではない。ちなみに余談ではあるが、本作の広告費は、氏が着用している特製マスク(3万円)のみとの話。 代表作:『ドラゴンボールV.R.V.S』 ●涙! 『セガガガ』はこうして誕生した! ――発売からかなり時間が経ってはいますけれど、まずはあいさつとして…、開発おつかれさまでした! 開発中のイヤなコトなんかもそろそろ忘れてきた頃だとは思いますが、開発中のコトをいろいろとほじくりかえさせていただきますので、よろしくお願いいたしますね。では、さっそく月並みな質問かもしれませんが、開発に着手されたのはいつ頃からだったのでしょうか? ゾルゲール哲(以下ゾル):最初に企画があがったのが、1999年のお正月。それでプレゼン(会議での発表)をしたのが、その年の1月中旬かな。そのときのプレゼンでは、いっしょに『スペースチャンネル5』なんかもやってましたよ。社長がまだ中山さんの頃ですね。プレゼンの評判はすごくよくて、人気は高かったんですけど、企画が企画だけに誰も本気にしてくれなかったようで…。プレゼンが終わったら、みんなゾロゾロ帰っちゃうんですよ、何事もなく。ですから、「この企画はマジなんです」って認識させるべく、もう1回プレゼンをやりました(笑)。そんなこんなで、実際に開発がはじまったのは1999年の秋ですね。いろいろありましたよ…。 ――ゲームのコンセプトからして反響がかなりありそうなのは、よくわかりますが…。具体的にはどんなカンジだったんですか、その反響というのは? ゾル:ゲーム中のオープニングと雰囲気的に同じようなモノをビデオで作って、プレゼンで流したんですけど、コレが馬鹿ウケで! みんな「オッケ~オッケ~」ってカンジで、ウケは最高でした(笑)。とはいえ、誰もこれが本気だとは思っていなかったみたいで。だから、オレはプレゼンの席でウケを取りにいったようなもので、「企画を通す」という本来の目的とはまったく違った方向での反響がありました。「おもしろい! おもしろい! じゃあね~」って言って、みんなそのまま帰っちゃった。よかったんだか悪かったんだか。最初にビデオを見せられて、本気の企画だと信じてくれる人は、あんまりいなかったですね。 ――プレゼンが同時期だった『スペースチャンネル5』なんかは、もうかなり前に発売されてますよね。そう考えると、開発がかなり遅れたようで…。それにしても、"ドリームキャストの生産中止"などのセガの一連の出来事と、『セガガガ』発売の時期ってのが、いろんな意味ですごく合っていましたけど、もしかして何か狙ったトコロがあったりのです? なんて勘ぐりたくなりますけど。 ゾル:当初は、2000年の秋頃には発売できるかな、というペースで開発を進めてたんですけどね。出来上がったモノを会社に持っていって「出来ました! こんなカンジです」って見せたら、みんなが真っ青になって…。それからまた紆余曲折があって、スケジュールが順調に遅れていきました(笑)。発売日を2001年3月29日に決めてくれたのは、ヒットメーカー広報の笹原くんです(※1)。最初は「なんでそんな時期に売るんだよ」って意見も出たけど、みるみるうちに会社(セガ)が傾いていってねぇ。まるで『セガガガ』の発売日に合わせたように…(苦笑)。え~、まとめますと、特に狙ってやったというワケではなく、開発中にいろいろな問題が起こったり、事態が変な方向に転んだりする度に、『セガガガ』が何かしらウマイ目を見る! そんな不思議な運命の巡り合わせがあって、これはすべて仏様のお導きかな、と。信仰の毎日でございます(笑)。 ※1 発売日が決まった理由 まず、D-Direct専売ということで、受注期間をきちんと取る必要があったんですよ。あとは初回限定版を作ろうという話がありまして、ユ-ザ-に納得してもらえるクオリティの高いモノをちゃんと作るには、どれぐらい時間がかかるかを計算し、それを踏まえた上で発売日を考えたら、あのタイミングになりました。(ヒットメーカー 広報企画室室長/笹原拓氏) ● 涙! 『セガガガ』はこんなコンセプトで作られた! ――『セガガガ』は、セガを立て直そうというぶっとんだ設定のゲームですが、最初からこういう設定のゲームを作るつもりだったんですか? ゾル:不思議なことでねぇ。企画書に書いたコト100%そのままが、なぜかできてしまったという。…今でも「よく途中で止まらなかったなぁ」と思っていますね(笑)。 ――これもやっぱり仏様の御加護なのでしょうかね(笑)。そもそも、こういう設定にしようと思われたきっかけは何だったのですか? ゾル:何か1つのアイデアがあって、そのアイデアを具現化するべくお金や人などの工面をつけて作りましょうっていうのが、そもそものゲームの作り方だったんですけど、最近ではそういう作り方が成立しにくいんですよね。本当にそのアイデアがゲーム化するに値するモノなのか、という検討の基準のハードルがすごく高くなってしまって。作りようがないんです。そこで、GOサインを出させるためには、相当の変化球を投げる必要があるだろうと考えまして、こういうインパクトのあるコンセプトのゲームを作ろうと思ったわけです。 ――コンセプト自体は変化球かもしれませんが、ゲームにまつわる業界を包み隠さず、ストレートに表現しているあたりはある意味、直球といえますよね。 ゾル:こんなゲームを作っているわけで、開発現場ではいろんなトコロから冷たい視線をいつも感じてましたから…。これでテキトーなことやったら許されないでしょ。会社とか上司とかじゃなくて、身の回りの親しい人に「おいおいテキトーなモノつくってんじゃねーよ、なに半端なことやってるんだ! このヤロー」って言われちゃうので。こういったゲームを作りましたけれど、オレはもちろんオレの周りにいる人たちにとっては、飯のタネじゃないですか。飯のタネをセルフパロディという形で人前に出す、それは決して茶化していいことじゃないと思ったんで、企画自体は変化球でもいいけど、実際にその変化球で語ることは、変に細工せずに直球でいこうというところはありましたね。でも、これがもしも最後まで茶化したモノだったら、プレイヤーのみなさんは画面にコントローラぶつけてますよ(笑)。まあ、ある意味賭けではあったんです。これだけ全部茶化しておいて、でも最後にグルっとひっくり返って、ちょっとでもマシな結論が出せないかな、みたいな。そういった意味では、最終的に変化球の中でも語るべき部分は直球になってますし、結論もうまくまとまったのでは? と思っていますので、自分では満足していますね。 ――うーんとても深い。深すぎます! ゾルゲールさんカッコイイっす! 感動しました! さて、「企画自体は変化球だ」というお話ですけど、「時が未来」という設定も変化球を投げやすくするためでしょうか? 実際の年代、2001年とかの方が感情移入しやすく、すんなりゲームの世界に入れていいように思えたんですけど…。なにか2025年じゃなきゃいけない理由があったのかなぁ、と。 ゾル:2001年とかだと「これは誰それのことを批判しているんじゃないの?」と、言われる可能性があったので、関係者がみんないなくなっているであろう年代に設定して、「これは未来のお話です」と言い訳しようと思っていたので…。25年も経っていれば、ひょっとするとセガもないかもしれない、それならいいだろうって思いで(笑)、2025年にしました。やっぱり2001年のセガを舞台にしちゃうと、現実っぽくなっちゃうんですよね。そういった現実のドロドロしたところをあんまり見せたくなかったから、アニメにしたり工夫したんですけど、それでもかばいきれないだろうと…。うっかりすると、感動はできるけどベタなモノになってしまうか、ふざけたモノにしかならないと思ったので、ほどよい風化作用として、25年ぐらい経っていればいいんじゃないか、と。とはいえ年代については、ちょっといいかげんで、実は途中までは2015年だったですけど(笑)。 ――え? ゾル:ステータス画面に表示したときに、1だと少し幅が狭かったので、2にした方がいいだろうというごくくだらない理由で、2015年から2025年に変更しました(笑)。 ――がははは(笑)。あ、今の笑い声で思い出したんですけど、この『セガガガ』というタイトルって、いったいどんな意味があるんですか? このタイトルを初めて聞いた時、正直な話「インパクトがある変な名前」って思ったんですけど、どうしてこういうタイトルをつけられたんです? 実はこの4文字にすごい秘密が隠されていたりします? ゾル:実はキーをうっていたら、多く打っちゃって…もちろんウソですよ(笑)。まあ、いろいろ理由はあって、開発中には『セガつく』でもいいんじゃない? みたいな話があったんですが、それだと別の会社(スマイルビット)さんの作品になっちゃう。やっぱりセガが題材であること、あと名前の語感として、すごく変なことをやっているという雰囲気があって、しかもあわよくば壮大なイメージが出たりせんかなと…。 ――欲張り~。 ゾル:はっきりしたことはもう覚えてないんですけど、企画段階の一番最初のイメージノートとかを読み返してみると、『セガセガ』とか『セガガガ』とか書いてあったので、たぶんこの辺の言葉が変なふうに脳細胞につながって『セガガガ』ってタイトルになったんじゃないかと思います。特に秘密は隠されていませんが、企画書に書いてあった言葉が、そのままタイトルになったという意味では珍しい例ですね。 ●涙! ある意味セガじゃなければできないゲームだった! ――『ファンタシースター』とか、『ゴールデンアックス』とか、ゲーム中では、歴代のセガハードのゲームが実際に開発できますよね。ファンにとってはかなりうれしい演出なんですけど、開発できるゲームをセガの往年の作品にしようというのも、当初から考えられていたアイデアで? ゾル:それはちょっと微妙でしたね。オレはマニアなんですけども、一般的なユーザーが、こういったことを喜んでくれるかだろうかって、迷っている時期がありました。ただ、"ゲームを作るゲーム"っていうのは、『セガガガ』が初めてじゃなく、過去に何本かあるんですけど、すごく苦労してシミュレーションをやって、見たことも聞いたこともないゲームができても、思い入れないから、あんまりうれしくないんですよね。でも、『スペースハリアー(※2)』ができました! ってなると、やっぱりグッとくるでしょ? ※2 スペースハリアー 1985年にセガがアーケードで発表された3Dシューティング。大型稼動匡体として話題を呼んだ作品で、Mark3、セガサターンなどの歴代のセガハードに移植されている。鈴木裕氏が手掛けたことでも有名で、ドリームキャストの『シェンムー』にも収録されており、遊ぶことができる。 ――やっぱり実名の方がウレシイですよね、ファンにとっては。 ゾル:で、オリジナルをいくつか入れようと思いまして。編集デザインという部署に歴代ゲームのパッケージが保管されているという話を聞いて、行ってみたんです。すると、誰も見たこともないようなピッカピカの「MarkIII(※3)の」ソフトのパッケージがズラーと並んでいるのを見た途端、「これは何が何でも絶対入れるだろッ!」ってことになって(笑)。 ※3 MarkIII(マークスリー) SG-1000、SC-3000の次に発売されたセガの3台目のハード。周辺機器で拡張可能だったFM音源を内蔵した、マスターシステムもある。ちなみに海外のみで発売された、マスターシステム2というモノも存在する。 ――(笑)マニア魂に火がついたんですね。 ゾル:当時、まだゲームが形になってなかったにも関わらず、毎日編集デザインに行って、部屋の端っこでガッコンガッコンとパッケージをスキャンしてました。たぶん、あれは絶対、怪しい人間だと思われてましたね(笑)。 ――ゲームでは「SGー1000(※4)」とかの作品も開発できますよね。それを考えると、かなり古い作品のパッケージも残っているようですね。 ゾル:そうですね。でも、ホントはSGのソフトをもっと入れたかったんですが、さすがにもうほとんど処分しちゃったということだったんで…。そんなわけで、開発できるゲームは、Mark3以降のソフトが多くなっちゃってます。まあ、SG用のソフトでも個人的な思い入れの強い『占いエンジェル キューティー』なんかは、どうしても絶対に入れたっかったので、無理矢理入れましたがね…。 ※4 SG-1000 セガが家庭用として発売した、初のコンシューマゲームマシン。デザインの 変更と付属品が追加されたSG-1000II。パソコンとして使用可能なキーボード一体型のSC-3000もある。 ――そう言えば『セガガガ』で最初に作ったゲームが、『占いエンジェル キューティ』でした(笑)。 ゾル:あれはオレの心の中のハズレソフトのナンバー1だったので、最初に仲間になるディレクターが一番最初に作るようにしました。なので、何も知らずにプレイすると、『占いエンジェル キューティー』を作るようになってます(笑)。 ――そういうカラクリだったのか…。そうそう、開発と言えば、キーワードから開発できるソフトを想像するのが楽しいですよね。思わぬソフトができたりして…。 ゾル:キーワードを考えたのは、あまりセガの古いゲームを知らない人で…。単なる印象だけで考えているから、ああいうキーワードが出てくるんですよ。あれ、ゲームを知ってる人が考えていたら、もろヒントになっちゃって、つまらなかったでしょうね。 ――でも、すごいですよね。どんなソフトでも開発の仕方次第で150万とか売れちゃいますから。 ゾル:そのヌルさがいいですね。「ゲーム業界の夢をもう1度!」みたいなカンジで。なんかユーザーの人で『占いエンジェル』をテレビアニメ化して、137万本売ったって人がいましたし(笑)。実は開発当初「どうせゲームなんだから、何作っても10万本いっちゃおうぜ!」ってことで、100万本なんかも当たり前だったんです。でも、それだとゲーム性が維持できなくて。逆に1万本っていう設定だと、現実のソフトの売り上げみたいで。この前某誌の売り上げランキングを見たら、『リボルト(※5)』471本とか書いてあって…むーん。で、結果的に夢いっぱいの数字にしてしまいました(笑)。 ※5 リボルト 2000年の夏に発売された、ラジコンカーを題材にしたレースゲーム。 価格は3,800円。 ――開発できるソフトって、かなりたくさんの数ありますが、よく考えてみると、基本的にセガのゲームなんですよね。 ゾル:基本的にはセガの作品です。でも、スキャニングしていて思ったんですけど、ホントにソフトの数はすごいですよね。ナムコさんなんかでもあんなにいっぱい持ってないんじゃないですか。あれだけザクザクとソフトを資産として持っているのは、セガしかあり得ないと考えると、「やるじゃん!セガ」と思いましたね。 ――ソフトの数の面だけじゃなく、それ以外の部分でも、やはりセガだからこそ出来たってのはあるかなという気がするんですが。 ゾル:そうですね。正気とは思えませんものね(笑)。こういうコンセプトのゲームを出してしまうこと自体…。 ――冷静に考えて、他のハードメーカーさんがこういうゲームが作れるかっていうと難しいですよね。 ゾル:1つすごくがんばってるのがあって、ジャレコさん(現パシフィック・センチュリー・サイバーワークス・ジャパン)の『ゲーム天国(※6)』。オレはすごくマニアだから、"ポニーチェンジャー"っていうのは、ちゃんとグっとわかるんだけどねぇ。普通のユーザーは「誰もわかんねぇだろうな…」って。その点、セガはいいなぁと思いましたね。「R-720(※7)」っていうのに、みんながピンと反応してくれますから(笑)。 ※6 ゲーム天国 『エクセリオン』『プラスアルファ』『モモコ120%』などの歴代のジャレコ作品のキャラクターが登場するSTG。もとはアーケードの作品だが、セガサターンやプレイステーション(一部システムを変更)にも移植されている。ちなみにポニーチェンジャーというのは、ジャレコが製作した両替機のことで、ゲームではボスとして登場している。 ※7 R-720 『セガガガ』の中で登場する架空の大型ゲーム匡体の名前。現実にR-360という大形ゲーム匡体があり、それをパロッている。 ●涙! 往年のキャラクターはこうして登場した! ――アレックスキッド(※8)が出てくるのには、ビックリしましたね。なにせメガドライブの『天空魔城』以来ですから…。 ゾル:昔のセガのイメージキャラクター、アレックスキッドは絶対入れたかったのでね(笑)。現在のイメージキャラクターは「ソニック」なんですけど、オレにとっては今でもアレックスキッドっていう気もするんです。すげぇ一生懸命がんばってるんだけど、明らかに方向性が間違っていて、「これからはこのキャラで、世界を目指します! ちなみに好物はおにぎりです」。世界を目指しているくせに、「おにぎり」なんて日本人にしかわかんない食べ物を堂々と謳っている(笑)。不思議なローカルさがありますよね。おまけに会社でバックアップしていたもんだから、作品は6本あるんですよ。しかも最初は主演だったのに、版権問題でこじれたゲームの、主人公の代役として入るようになって…。 ※8 アレックスキッド 本名はアレックスキッド・オサール。『セガガガ』の中では、ゲーム屋の店長だが、各主演作品(下記参照)では明るく勇敢な王子として、国の平和のために戦っていた。ソニック以前のセガのマスコットキャラクターで、グッズなども販売されており、走るカンペンケースはマニア垂涎のグッズ。 主演作品 ●アレックスキッドのミラクルワールド(MarkIII) ●アレックスキッド ザ ロストスターズ(MarkIII) ●BMXトライアル アレクッスキッド (MarkIII) ●アレックスキッド イン シノビワールド(マスターシステム 海外版のみ) ●アレックスキッド イン ハイテクワールド(マスターシステム 海外版のみ) ●アレックスキッド 天空魔城(メガドライブ) ――…そんな悲しい過去があったんですね…なんかしんみりしちゃいましたね。えー。話題を変えて…。もちろんソニックも登場していますよね! ゾル:中裕ニさんに直談判したら、「使っていいよ」と。こういう企画が通ったからには、イメージキャラクターがアレックスキッドからソニックに至った経緯を押さえないと。しかも、そこにドラマがないとイカンだろうってことで、ゲームではああいう形にしました。 ――アレックスキッドが38歳にはショックでした…。 ゾル:オレも計算してみたら、すごいショックで。「うわ~っ、あらビックリ」といったカンジでしたね。そう言えば、ゲーム中には声が入ってるじゃないですか、アフレコする時に絵がなくて、「38歳なんですけど、かわいい男の子なんです」って説明したら、すごく声優さんが困ってしまって。最終的に「運の悪いピーターパンみたいな声」でと、お願いしたんですけど、なんか『サクラ大戦3』のロベリアのしゃべり方にソックリらしくてね。意外なところでロベリアがしゃべってるって、ウワサになってるみたいですよ。でも、そういう反響からわかったんですけど、意外とアレックスキッドのことを知っている人が多かったですね。「まったく知らない、これ誰だ」とか言われたら――まあ、少しは言われたんですけど(笑)――、どうしようかと思っていただけに、かなりたくさんの人がわかってくれて、うれしかったですね。 ――またアレックスキッドの話に戻ってしまいましたが…、アレックスキッドと言えば、『ミラクルワールド』が頭に浮かぶんですけど、今考えると、すごいゲームでしたよね。 ゾル:(『アレックスキッド ミラクルワールド』のソフトを手にとって)セガならではの負けん気がこもっている作品ですよね。「マリオのマネじゃない。うちはボタン配置が逆だ」とか、最悪のオリジナリティを発揮していて…(笑)。あと、苦労してステージの最後までたどりついくと、ボスとジャンケンで勝負するんだけど、これがイベントじゃなくて、負けると死んじゃうですよ。これが不評だったので、続編の『天空魔城』では、相手の手のうちが見えるアイテムが新たに追加されたんだけど、かえってわかりづらくて負けちゃう(笑)。おもしろいゲームだけど、なんかすごいよね。 ――あと「アソビン教授(※9)」も出てきますね。あれなんか、かなりマニアックなので、知ってる人もかなり限られてくると思うんですけど、反響はありましたか? ゾル:ごく一部からのごく小さな声だったんですけど、手応えはすごかったです。「オレは間違ってなかったんだ」って実感しましたね。オリジナルのイラストが残ってなくて、説明書からわざわざスキャニングして、色をペタペタ塗って作った甲斐がありました。ちなみに「ゲームズ博士(※10)」も出したかったんですけどね。まぁ、この辺りのキャラがわかってくれるユーザーがいるっていうのは、やっぱりセガならではだと思いましたね。 ※9 アソビン教授 セガ・ゴールドカードリッジの説明書に登場する謎のウサギ。ゲームの攻略法を教えてくれるのだが、「敵はうまく倒そう」といったように、全体的にアバウトで役に立たない。 ※10 ゲームズ博士 SGー1000、SCー3000用の説明書に登場する謎の博士。アソビン教授同様、わかりきったゲームの攻略法を伝授してくれる。 次へ >
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美食倶楽部バカゲー専科 実践企画!キノコを食べてパワーアップ!キミもマリオになろう! もうあんな女(ピーチ姫)どうでもいいんだ。 全世界が自分のものになったようなピュアなパワー感が感じられる。 ああ、クッパが虹色に輝いてとってもキレイ。 今なら奴とも理解しあえる。 そうだオレたちはみんな宇宙の兄弟なんだけけけけけすげえや任天堂! おまえが本当は何を言いたかったのか今はすごくよく判る 言葉が直に脳に入ってくるから時間も空間も関係ない ああマリオこそが偉大なる導師(グル)宮本茂様がオレだけのために送ってくれた 聖なるメッセージなんだああああああああああ。 必殺みなごろしジャガー拳 アタリ超人伝説 いい気味だぜ!兄貴 早く家に帰って「サンダーフォースⅤ」で楽しもうぜ! ああ。バトルガレッガもな! 究極ゲームデザイナー ムサシ いいか!!! ゲームデザイナーってのはゲームを作るんじゃねえ!!!作らせるんだ!!! ゲーム性や世界観なんぞ、それっきゃ能のねえオタクのプログラマーやデザイナーに振って、こっちはダメ出しだけしてオイシイ部分を拾ってりゃいいんだよ!!! ゲーム開発現場の実態 クリエイターの墓場 「あっ●●●●だ!」 「あそこには●●もいるわ!」 薄暗い地下室は、才能の枯れた企画屋や、馬脚を表したハッタリ屋、 過去の名声で食い繋ぐ恥さらしなどで埋め尽くされています。 これこそ華々しいゲーム業界の影に隠された「クリエイターの墓場」なのです。 謎のゲーム魔境2 P32 所で斑鳩のあの人、折角すごいゲームを作れるのにどうしていつも 妙なフィーチャーを義務のように盛り込むんでしょう。 こんな所に書いてもしょうがないとは思いますが、ああいったものは 「覚えると圧倒的に有利で楽しく覚えなくても特に損はしない」ように設定しないと、 なかなかユーザーに受け入れられないと思うんですが 謎のゲーム魔境4 ウルフファングレビュー ウルフファング 空牙2001(92年2月) 個人的評価 90 スペースの関係で位置が入れ替わってます。 あんまり『空牙』とは関係ないような気がするけど続編にして傑作! 『レイノス』『ヴァルケン』などの「ロボットアクションもの」のハシリ といえる横視点アクションシューティング。 デコのオリジナリティは、大抵他社の真似できないものなので(会社つぶれるから)、 このようにパクられた例というのはわりと稀有なのでした。 (中略) ゲームシステムはかなり独特。 基本ショットはレバー操作に応じた横とナナメ上の2方向を左右撃ち分け、 ショットボタンで方向固定という相当トリッキーなもの。 敵の上に飛び乗ることでダメージを与えられるのも珍しいですね。しかしこの複雑さも、 「戦闘機でなくロボットを操縦している感」の表現としてかなり成功しており、 後の『レイノス』などに受け継がれていると思います。 (後略) レイノスが発売されたのは1990年2月2日なんですが…。 嘘臭いゲーム愛アピール 筆者の一番好きなシューティングなどは、まさに「自分が作りたいものを作る」という一見カッコよく見える自己満足的な繰り返しの果てに、マニアックなだけのどうしようもない遊びになってしまいました。 一番悲しいのはそうした状況を、筆者をはじめ誰もがただ傍観するばかりで、大好きなビデオゲームを守っていこう、世に広めようなどというアクションを起こせなかったことです。 このふざけた本がその足しになるなどとはゆめ思いませんが、今回デコピンや堀口さんとTPOの方々の活動を知るにおよび、自分もビデオゲームを愛する者の端くれとして、その落とし前はキッチリつけねばなるまいと強く思うのでありました。 ゾルゲ大全集(下) p.239 また行きたいなあ韓国 p.247 今度ぜひ新大久保で韓国料理をおごらせて下さい! p.251 もう韓国サイコー!!ケンチャナヨ~~! と言っておきながら裏ではこんな本に参加してました。
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電撃オンライン http //dol.dengeki.com/soft/recommend/sggg/index.html 『セガガガ』超ロングインタビューゾルゲール哲 氏 vs 電撃オンライン編集部 ●涙! イラストはインパクト重視! ――パートがRPGとSIMの2つあったり、キャラの数が多かったりと、なにかと作業が多くて、開発に携わっていた人の数が多いように思えるのですが、ズバリ開発されていたチームの人数は? ゾル:のべ3,000人ということになっているんですけど(笑)、実際には多い時には13~14人で、平均で10人ぐらいでやってました。今どきのゲームとしては少ないのでは、と言われるんですが、本来はあれぐらいじゃないと、全体が見えなくなるので。特に作業で不都合を感じたこともなかったですし。 ――ゲーム中では、開発メンバーは最大7人ですけど、最終的にその数字にいきついた理由というのは? 実際の開発の経験がもとになっていたりしますか? ゾル:ゲームを設計する時に、既存のゲーム製作シミュレーションを遊んでみたんですよ。オレ自身、シミュレーション自体が好きじゃないっていうのもあるんですが、とてもおもしろそうに見えなかったんです。例えば、背中を向けたキャラが何人か座ってて、コマンドを入力すると、ターンとして動き出す。こんなおちゃらけたゲームで、「さぁシミュレーションです!」っていっても、堅苦しさがあったら、誰もやってもらえないと思ったんですよ。そこでまず第一に、とってもわかりやすい絵面にしようと考えたんです。それで仕上がっているイラストを並べて、ゲームを作っているように見えるミニマムの人数を考えてみました。で、7人ぐらいがちょこちょこ動いているとそれらしく見えるので、7人にした、というわけです。特に実際のゲーム開発の経験からというわけではないですよ。 ――イラストのお話が出ましたが、開発者などのキャライラストは何人の方で…。軽く100人以上いるくらいですから、相当多いんじゃないです? ゾル:みんな嫌がって、誰も描いてくれなかったので、ラフ画はオレがまとめて描いています。クリンナップや色塗りなどは、いろいろな人に手伝ってもらいました。でも、だんだんムチャクチャになってきてね。イラストがない時に、白いダミーのデータを入れておくんですが、見分けが付かないから手書きで名前を入れておいたんですよ。ゲーム中に「ヌシ」って登場するんですが、あれ、実はダミーデータがそのまま製品に入っているんです。ちゃんとイラストは一生懸命描いてたんですけど、白い画面に「ヌシ」って書いてあった方が、インパクトが強い! 「んじゃあ、こっちにしよっか」って。このゲームのイラストは、絵のうまい下手は問わず、とにかくインパクトの強いものを採用しました。 ――すごいですね! ほとんど1人で描かれたんですか…。でもそのわりに、というと変ですが、登場キャラ"週一秋葉"のTシャツに「秋葉原電気祭り」とさりげなく書いてあったりと、細かい部分までかなり凝ってて、気合い入ってますよね。 ゾル:よく気が付きましたねぇ。ちなみにあのキャラが持っている紙袋には「メッセサンオー(※11)」ってて書いてあるんですよ。それはさておき、今どきのRPGの戦闘シーンは、敵がアニメーションしてくれるとか、口から吐いた火がエフェクトでキレイに見えるとかじゃないと、申し訳ないじゃないですか。でも、このゲームは設計の時点で「戦闘シーンは絵が1枚出るだけ」ってことになっていたので、こだわれる部分って、イラストの細かさだけなんですよ。だから、細かさについてはそれなりに凝りに凝りましたね。 ※11 メッセサンオー 東京・秋葉原の中央通りにあるゲーム専門店。全部で5店鋪あり、家庭用ゲーム機のソフト&グッズ以外に、パソコンゲームや同人誌、同人ソフト、さらに海外ゲームorアジアの怪しいオモチャなどを取り扱っている。 ――でも、どのキャラもインパクトがあるっていうか…はっきり言っちゃうと、変なキャラばっかりですよね(笑)。 ゾル:最初は全体的にもうちょっとマシな、人間型のキャラが多かったんですよ。でも、基本となる人間型のキャラを描いて並べたら、次から人間型のキャラを置いても見分けがつかなくなっちゃって…。見分けがつくようにするために、頭だけのヤツとか、箱に入っているヤツとか、下半身が水中モードになっているヤツとか、変なキャラばかりになっちゃたわけです。 ――変と言えば、D研で開発できた新ハードにもビックリしたんですけど…。あの超次世代機はどなたが考えられたんです? ゾル:あれもひどい話で…。ドグマ社(セガの架空のライバル会社)に勝つためのハードだから、すごいモノができる予定だったんだけどね。オレが考えるつもりだったんだけど忙しかったもんで、開発メンバーに「すごいの考えてくれ! どんなのでもいいから!」って頼んだら、ハムスターとか、ゴミ箱とか、目玉焼きとか(笑)、めちゃくちゃなものが上がってきて(笑)。トンカツをおごってイラストをお願いした人(後述)なんか、ラーメンと変なおっさんのイラストとか描いてきちゃって。「このおっさんのどこが超次世代機なんだよ!」って(笑)。でも、スケジュール的にきつかったので、途中からは見なかったことにして、結果的にバリエーションが増えた、と開き直ることにしました。ちなみにポリバケツとか、使い捨てカメラとか、フルCGなんですよ。当時は「そのくだらない情熱を、他に生かせないのか!?」なんて思いましたね。 ――インパクトがあったと言えば、シミュレーション中に起こるイベントのイラストですね。プレイした人間はみんな「あの絵はいいよ~」って言ってました。あれはどなたが描かれたんです? もしかして、これも…。 ゾル:あれも半分くらいオレが描きました(笑)。最初はデザイナーにイラストを描いてもらったんですけど、そのイラストが内容的にヤバくて。で、描き直しをお願いしようとデザイナーを訪ねたんだけど、もうスケジュール的に申し訳なくて…。しようがなくオレが描き直すハメに…。コテコテの絵はオレが描いたイラストです。 ――ということは、ひらめいた時のイラストって、もしかしてゾルゲール自身さんが…? ゾル:あれもねぇ。「いかにもひらめきというイラスト描いて」って頼んだんだけど、「ひらめきのイラストってどんなイラストですか?」って言われて。結局、オレが描くことになったその時、はたと気づいたんだけど、そんな絵ってありえないのね。だから、しようがないから、アルキメデスが裸で走っているイラストにして…。でも、これは元ネタを知らなかったら、意味全然わからないよな(笑)。 ――ホントにあそこの絵はおもしろいですよね。個人的には「バグ襲来」が一番爆笑しました(笑)。 ゾル:ありがとうございます。でも、あの絵なんか、ゲームの中のアイコンとしては、まったく用途を果たしてないよね。こういうゲームだからOKだけど、普通のゲームであんなイラストを描かれたら、「ふざけるな、描きなおせ」って、怒るでしょうね(笑)。 ――でも、その一方で「ドットコム子ちゃん」みたいな萌えなキャラクターがいたりもして(笑)。 ゾル:あれいいでしょ! 今はもうかなりビッグになられましたが、ビッグになりかけのころに、片倉真ニ(※12)先生に蒲田でトンカツをおごって、食べ終わったところで話を切り出して…、トンカツ1枚で描いてもらったんです。ホント、みなさんの熱い友情に応援されましてね。スキヤキで描いてもらった人なんかもいますよ。 ※12 片倉真ニ ゲ-ム雑誌の表紙や小説のカバーなどを手掛ける人気イラストレーター。 ――トンカツをおごって、イラストを描いてもらったというのは笑えますが、すごい方が参加されてますね。あと、すごいと言えば、みんだなお(※13)さんとか、岡田斗司夫(※14)さんとか、豪華な面々がゲストとして出演されてますよね。 ゾル:岡田さんとか、最後までゲームに登場することを知らなかったと思いますよ。「ファンです。写真撮らせてください」って言って、撮った写真を使って…。ほとぼりが冷めたころに、ゲームのサンプルを送る(笑)。どうしても「コミケ」というモノを入れたかったんですよ。ゲーム業界だけのパロディだったら省いちゃう要素かもしれないけれど、オタク的な要素も半分悪意を込めて入れたくて。「それならコミケだろ」ってことになって、そこで誰かに出演してもらおうと思ったんだけど、コミケの人気作家さんだと、どうせ手伝ってくれない…。それなら、コミケ→オタクの代表→オタキングということで、面識のあるみんだなおさんを通じて、岡田斗司夫さんにお願いしたんですよ。 ※13 みんだなお(正式には眠田直) 83年に漫画家デビューし、主にアニメのパロディ漫画家として活躍。その後、ゲームやアニメなどの製作などに参加、漫画以外にジャンルでも活動範囲を広げている。また、唐沢俊一氏(※)と 岡田斗司夫氏と"オタクアミーゴス"を結成しており、定期的にトークショーを開催している。 ※唐沢俊一 作家、評論家。趣味の古書蒐集で発掘したB級カルト本を、雑誌などで発表している。また、弟の唐沢なおき氏とは「唐沢商会」という名で、漫画も多数出している。 ※14 岡田斗司夫 映像/イベントプロデューサー。オタキングと呼ばれており、オタクの教祖的な存在。オタクに関しては、この人の右に出る人はいない。「オネアミスの翼」「ふしぎの海のナディア」といったアニメや『プリンセスメーカー』などのゲームを手掛けている。 ●涙! こうしてムービーは作られた! ――オープニングはもちろん、研究室に入るシーンといった、ゲーム中の随所に挿入されるアニメーションって、見た目がにぎやかで、とっても気に入ってるんですけど、企画当初から入れる予定だったんですか? ゾル:このゲームにアニメがなかったら、見た目が今よりショボくなったと思うんですよ。ゲームの魅力の1つになってくれれば、ということでアニメはがんばって入れました。アニメ製作は、数社にお話を持っていったんですけど、予算が予算だけに難航しまして。最終的には、『ドラゴンボールV.R.V.S』以来お付き合いが深い東映アニメーションさんにやっていただくことになり、いろいろお世話になりましたね。でも、アニメの予算は5分間分しかないのに、入れたいムービーは20分間ほどあったんですよ。で、どうしたかというと…濃縮還元卵スープみたいに…相当涙ぐましいことをやってなんとかしのぎました(笑)。 ――実写のムービーも強烈ですよね。 ゾル:「モゲタンとおねえさん」ですか(笑)。 ――そう、モゲタンとおねえさん(笑)。あれは各話の最後に総括として入ってますが、最初から各話の最後に入れていこうと? ゾル:そうですけど、実はもっと入る予定だったんですよ。第2話で「セガはどうしてできたの?」っていうセガ創設についての話が出てくるけど、結論が出てこないでしょ。ホントはあったはずなんですよ。オレともう1人が、ツケ鼻して、まぶたに青い目を書いて、外国人のフリをして、「アイム デビット・ローゼン!」とか言って、「ここに会社作るね」とかやろうと思ったんだけど。肝心の相方がみつからなくて…ポシャりました(笑)。 ――う~ん、それは残念…ちょっと見てみたかったです。でも、モゲタンを見られたからいいかな。モゲタンを最初に見た時の衝撃は、今思い出してもすごかったですね。「この生き物はなんなんだ~!?」って。相当インパクトありますから、彼の容姿は(笑)。 ゾル:最初はもっとかわいかったんだけど、作っているうちに、だんだん目が出てきちゃって。魔獣みたいになってきて(一同爆笑)。 ――おねえさんはなぜか手がドリルだし。 ゾル:実はアフレコの時、まだぬいぐるみが完成していなくて。かわいいヌイグルミとしか声優さんに伝えてなくて、すごくほがらかな雰囲気で「おねえさん、おねえさん」って。まさか魔獣が出てくるとは、声優さんも思ってなかったでしょうね。 ――笑ったのが、話が進むにつれて、後ろの窓ふきの人が、徐々に降りてきてて…。 ゾル:カメラを回してて、「あれ、降りてこないだろうな」って心配していたら、案の定だんだん降りてきちゃって(笑)。実はあのセガの看板の裏って、植え込みがあって人が入れるスペースがないんですよ。這いつくばっての撮影でした。しかも会社前の道にはトラックがバンバン通るんで、排気ガスがすごい。おまけに9月で残暑が厳しく、やってるうちにハイになってきて。正気の沙汰じゃなかったですね(笑)。あれでゲームが発売中止になってたら、ただの危ない人ですよ(笑)。 ――コミケのシーンのムービーも笑いましたね。なんか同人誌を買うための戦士が集う戦場、修羅場みたいで…。 ゾル:あれは、まだゲームが企画書の段階の時に、ゲームにも登場しているディレクターの鈴木さん(ゲームでは鈴キ)といっしょに撮りにいったんです。鈴木さんは、全然オタクっけのない人。「スノボ行きたかったのに…」って言うのを無理に連れてきての撮影だったので、彼にとっては地獄のような風景だったと思いますよ。この時点でゲームが本当に完成するとは、彼は思ってなかったらしいですし…(笑)。 ●涙! ゲーム中に流れる歌はこうして採用された! ――オープニングシーンで社是が出ますが、あれはセガの本物の社是ですよね。どうして入れたんです? ゾル:あれは最初から絶対入れてやるつもりでいましたから。ゲームを作ろうとしてセガに入ってきて、「なんだ、この社是っていうのは、ムカツク!」ってずぅっと思っていて。だから、入れました(笑)。 ――社是が入っているので、セガの社歌「若い力」が入ってるかと思ったんですけど…。 ゾル:「セガガガマーチ」っていうのを作ってもらったんですが、「若い力」よりもよっぽどよくできていて、これをさも社歌のように使ってしまおうと(笑)。だって、若い力は最後にしかセガって言わないじゃないですか。でも、セガガガマーチは、セガって言いまくりだから(笑)。とはいえ、「どうして『若い力』が入ってないの?」と言われることもよくあったので、入れてもよかったかもしれませんね。 ――歌と言えば、秋葉原でバックにかかる「♪アキハバラ~、アキハバラ~♪」って、歌もグーですよね! テレビのボリュームを上げて、聴き入っちゃいましたよ(笑)。 ゾル:今回、音楽を担当された金子さんという方が、もともと歌謡曲の関係の人で、ゲーム音楽しか作れない人と違って、頼めばいろいろ作ってくれるんですよ。それで「アキバにテーマソング作ろうよ」って言って、シャレのつもりで詞を書いたら、本当に作ってくれて(笑)。しかも、勝手に2番も作ってくれて、聞いたこともない外国語でしゃべってるの(笑)。 ――あの謎の言葉は何語なんです? 気になるんですけど…。 ゾル:金子さんが作ってくれた造語だと思います。あと、なにがスゴイって、普通ドリームキャストソフトは内蔵音源で鳴らしているんですけど、それだと金子さんが作ったこの曲が再生できないので、プログラムを作り替えたんです。この曲のためだけに。すごくいらんところに、手間がかかっているゲームなんですよ(笑)。それと、「ふたりのドリームキャスト」という曲とエンディングのテーマ。あれも金子さんが勝手に作ってきた曲なんですよ。こちらとしては、安いお金でお願いしているにも関わらず、率先してヴォーカルの方とかも連れてきてくれたりと、今でも頭が下がる思いですね。エンディングの曲なんか、本当だったら、別にお金をお支払いするべきなんですが、「このエンディングムービーにつながるんだったら、こういう曲じゃないとダメだ」と、金子さん自身がおっしゃって、収録までして頂き…。最初はエンディングの後に、「チャッチャラッチャチャ、セ~ガ~」とかにしてたんですけど、あの曲のおかげでゲームがギュッとしまり、本当に大助かりでしたね。あと、そう言えば、ソフトをCDとして再生したときの警告音も金子さんが勝手に作ったモノです。 ●涙! 他にもイロイロな話を聞け! ――ストーリー面だと、やっぱりC研で語られる「萌え」の解釈、「小萌え」とか「大萌え」っていうのが、心に残ってますね。 ゾル:どうでした? 逆にオレが伺いたいんですけど…。 ――「萌え」という言葉って、かなり抽象的でイメージとしてはなんとなくわかるんだけど、具体的な定義、説明って今までありませんでしたよね。ですから、なんだかノドにつかえていたモノがとれた、みたいな。 ゾル:よかったよかった。まあ、正直なお話をしますと、A研、B研とやってきて、ネタが尽きちゃったんですよ。またA研とそんなに変わらない話のダンジョンがもう1度あっても、誰もおもしろがって遊んでくれない。そこで「C研は萌えにしよう」って提案したら、すごく反対されたんですよ。「オレたちはそんな薄気味悪いモノを一生懸命やりたくない!」って。その嫌がり方が妙におもしろかったなぁ。実際、「オタクとか、なんかヤダよね~」って言うヤツが、ガンダムのマスターグレードを集めたりしてるんだよ。キミたち、もう少しその辺はしっかり見た方がいいだろってことで、採用しましたね。あとは、ゲームが取り上げられる時、あまりにもカッコ悪い部分をマスク(隠)してはないか。「そんなにカッコいいものじゃないんだよ。ゲーム業界は、実際はこういうモンなんだよ!」ってところを表現したかったんですよ。ちなみに、社長の声を担当された声優の岸野さんに、ついでに「萌え老」というキャラの声もお願いしたんですけど。「どんなキャラですか?」と聞かれたので、「100歳のオタクです」って答えたら、めちゃくちゃノってくれて、思わずセリフ増やしました(笑)。最高でしたね、あのアフレコは。最初はアニメがどうとか、オタクがどうとかいうセリフは嫌がられると思ってたんですが、嬉々としてやってくれましたよ。 ――セリフの話になりましたが、戦闘中のセリフなどは、かなり鬼気迫るモノがあるんですけど、やはり開発の方全員で考えられたんですか? ゾル:そうです。開発の人間で考えました。実は最初、あんなに入れる予定はなかったんです。従来のゲームだったら、ランダムで20種類も入っていれば十分だと思ってたんですよ。それで10種類ぐらい書いて、「あとテキトーにいくつか足しておいて」って頼んでおいたら、300種類ぐらい入ってるの(笑)。日頃「アイデアを出せ!」って言っても、2つか3つ出てくるのが関の山なのに、こんこんと湧き出てきて、しかもどれも痛い…。なんだかシャクだったので、さらにオレも追加したりして(笑)。 ――ホント、痛いですよね。 ゾル:現実のことを言っているだけにね(笑)。 ――ゲームでは開発中、デザイナーとかが途中でいなくなったりすることがありますよね。雑誌なんかでもライターが締め切り直前に原稿もあげずにいなくなるなんてことが実際にあるんですが、やっぱりあれは実体験をもとにしたイベントだったりしますか? ゾル:オレはそういう経験ないんだけど、イベントを担当したプログラマーはあるらしくて。最初はいなくなるといっても、パッと消えるぐらいだったんだけど、彼の実体験をもとに「わぁ~」と駆け去る、という仕様になりました(笑)。あと、ゲーム中の開発室の独特のドンヨリとしたリアル感は、メインプログラマーの手によるものです。 ――この前、ゲームメーカーの開発の方とお話した時に、「『セガガガ』は開発現場はリアルすぎて、プレイするのがつらい…」と、のけぞっておっしゃってましたよ。 ゾル:話が戻りますが、キャラクターといったって、1枚絵しかないじゃないですか。やることがないんですよ。だから、サボっている人は寝かそうとか、元気なキャラは回そうとか、むちゃくちゃになってきて。とても開発現場とは見えないんだけど、結果的にそれが妙にリアルな雰囲気を表現できて、よかったなぁと思っています。ちなみに話は全然変わりますが、プレイされてシェアは何%までいかれました? ――一応、100%取りました。あと真のエンディングも見てます。そう言えば、ちょっと攻略的なお話になってしまいますが、真エンディングの正確な条件というのは? ゾル:ネットとかで大変盛り上がっているので、教えるのがもったいない気がしてならないんですが…。今のところは、がんばってくださいとしか言えないです。わりとこのゲーム、謎の部分、キーの部分を2つ、3つ明かしちゃうと、あとは「な~んだ」になっちゃうので。なけなしの謎ということで、秘密でお願いします。ただ、理不尽な条件ではないですし、追加プレイで資金が増えるなど、プレイはどんどん楽になりますので、3回もプレイすれば、真のエンディングは見られるようには作ってます。でも、この前、26回プレイしても見られないって人がいて。さすがにメールでちょっと教えてあげよっかなと思いましたね(笑)。 ●涙! 『セガガガ』はセガマニアじゃなくとも楽しめる! ――プレイする前は、昔からのセガファンじゃないとわかりづらいゲームだと思ってたんですけど、トータルに見ると、ゲーム好きな人だったらひっかかる部分がたくさんあるように思いました。企画当初のターゲットはどのあたりと考えてましたか? ゾル:セガマニアというよりはゲームマニアでしたね。やっぱりセガマニアにターゲットを絞ってしまうと、ネタがあんまりにも揃わないんですよ。あと開発側としては、『セガガガ』という名前はついてますが、セガという入口を通して、出口でゲームそのものがなんだったのかというところまで、持っていければいいなぁと…。 ――『セガガガ』って、先程ゾルゲール哲さんがおっしゃられたように、かなりの変化球じゃないですか。そうなると、次はもっとすごい変化球のゲームを作ってほしいとユーザーは期待してしまうかもしれませんよね。そういった意味で、次の作品を作りづらいのではありませんか? ゾル:ゲームっていうのは、小説とか映画とかマンガとかと同じで創作だから、創作すること自体は、いくらでも続けていけると思うんですよ。ですから、次が作りづらいとは思っていません。ただし、商業的な創作ということになると、儲けや人を動かすだけの内容がないと動けないわけですけど。お金があって、ゲームを作る環境が整うのであれば、いつでも「やってやるぜ!」という気持ちはありますね。 ――安心しました! 次の作品もがんばってください! 最後になりますが、『セガガガ』をプレイした人、これからプレイしようと思っている人に、メッセージをお願いします。 ゾル:基本的にすごく変化球なソフトなので、手に取って頂いて、楽しんで頂ければ、それで満足という部分がまずあります。あとはこのゲームを遊んでみて、ゲームにも出演しているプログラマー岡の言う「ゲーム屋の心意気」というものを感じ取っていただけるとウレシイです。実際のプログラマー岡っていうのは、もっと無口で最後まで黙って一生懸命ゲームを作ってくれる人なんです。ゲームを支えているのは、基本的に、こういう語らないなりに「誇り」を持ってやっている人たちなんだ、というのを感じ取ってもらえれば…。今回は代表としてオレが話をさせて頂きましたが、プレイする時には、その後ろにいる金子さんとか、鈴木さんとか、岡橋くん(プログラマー岡)といった開発メンバーに思いを馳せて頂ければ、幸いです。 ――わかりました。ゲーム屋の心意気、ですね。今日は貴重なお話をありがとうございました! 特別付録 初回限定版の話 (語り:広報企画室室長/笹原拓氏) 『セガガガ』は、セガマニアだけのゲームと見られがちだったので、特典はキャラ寄りにしたくなかったんですよ。それで、一般の人が冷静に見ても欲しがるような特典を考えてみました。製作に関しては業者さんが非常にがんばってくれまして、こちらのテキトーな注文にも、しっかりした物に仕上げてくれて…。特にピンバッチの木箱なんかは「宝石箱か、へその緒が入っているような箱」というアバウトな注文に対して、予算外で木の豪華な箱を作って頂き、しかもサービスで焼き印まで…! 本当に感謝しております。ちなみに最初、初回限定版は1,500セットしか作る予定はありませんでした。しかし、注文が殺到したため、できるだけ多くのユーザーに提供したいということで、急きょ生産ラインを増設。出荷本数を増やしましたが、初回限定版の特典の原価は3,500円なので、ほとんど儲けがありません(笑)。あと、メガドライブ仕様のビジュアルメモリですが、私も実物を見たことがないほどレアです。持っている人はぜひぜひ自慢してください < 戻る
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説明書P2~3掲載。 時期的には当の昔に出禁を食らってる筈な頃なので、「いっちょ媚売り記事でも書いて関係修復してやるか」等と考えていたのかもしれない。 ガンスターヒーローズとその時代 ゾルゲール哲(ゲームクリエイター) 時代背景 『ガンスターヒーローズ』が登場したのは1993年9月。 メガドライブの歴史の中でも、ハードの性能を使いこなした傑作が、次々に揃ってきた時期にあたります。 そしてそれは同時に、各社最新ゲームハードがユーザーのシェアを奪い合う、いわゆる「ゲーム機戦争」の、華やかなりし頃でもありました。 実際にはもちろん、王者任天堂の絶対的優位は揺るがなかったわけですが、だからこそと言うべきか、王者に挑もうとするメガドライブのようなチャレンジャーには、熱烈な支持者「セガマニア」もいたわけです。 もっとも、セガのコンシューマーには歴史的に、サードパーティ層の薄さという問題がありました。 メーカー各社のパワーバランス、また一社ですべてを抱え込みがちだった当時のセガの営業体質など、その理由はいくつか考えられますが、いずれにせよ、サードパーティ各社の多彩なラインナップを揃えた他社ハードに比べ、メガドライブはその点少し見劣りしたのは確かです。 そんな中で彗星のように登場したトレジャーの『ガンスターヒーローズ』は、「セガにもこんな心強い友がいる!」とばかりにセンセーションを巻き起こし、テクノソフトの『サンダーフォース』シリーズなどと並び、セガマニアの熱狂的支持を集めたのでした。 新たな表現のはじまり 今回収録されている『ガンスターヒーローズ』『ダイナマイトヘッディー』『エイリアンソルジャー』という、トレジャーのメガドライブタイトルに共通している特徴は、何よりその技術力による表現、アピールでしょう。 多関節、ラフタースクロール、擬似回転拡大縮小、矢継ぎ早に繰り出される超絶技巧の数々が、当時いかに衝撃的だったか説明することは困難とさえいえます。 これより以前、いわゆる「8ビット期」の時代には、ゲームの表現力はごく低いものでありました。世に言うゲームクリエイターは、とりあえず見た目はさておき、自分のアイディアを面白くゲームとしてまとめることで精一杯だったのです。 これが「16ビット期」に至り、ハードウェア性能の向上によって、ゲームはようやく新たな表現の幅を手に入れることになりました。 メガドライブ本体に、金メッキでカッコよくも恥ずかしく記された「16-BIT」のエンブレムをご記憶の方も多いでしょう。 それはまるで、チェンバロからピアノへと至る鍵盤楽器の進歩が、音楽の歴史にも劇的な変化をひきおこしたように、ハードウェアの進歩を武器とした新たな表現、新たな才能が、ゲームの世界にも次々に登場したのでした。 そしてトレジャーのメガドライブタイトルには、まさにその見本市のような華やかさあったのです。 メガドライバーズ・カスタム 今回のトレジャータイトルを特徴付けるもう一つのポイントは、徹底した「ゲーム性」の追求でしょう。 ゲームであるからにはゲーム性を追求するのはいかにも当然のようにも思われますが、実際にゲームを作っていくうえで、「ゲーム性」というキーワードは、意外に難しい問題をはらんでいるのです。 というのも、ゲームというのはインタラクティブな娯楽ですから、見るだけで済む映画などと違って、プレイヤーにもある程度のスキルが要求されます。 つまり、ゲーム性を追求することは、その分スキルをプレイヤーに要求することでもあり、気軽に楽しみたいライトユーザーは脱落させてしまいかねない、一種諸刃の剣でもあるのです。 多くのゲームでは、「奥深さ」と「気軽さ」を天秤にかけ、ゲーム性の追及をあえて避けている部分さえあります。 しかし、そうしたゲームを一般向けのファミリーカーとするなら、トレジャータイトルはF1マシンのようなカスタムカー。 操作系、システムともに徹底してチューンアップされたマニアックな作り込みはトレジャーの真骨頂であり、『エイリアンソルジャー』のタイトル画面に誇らしく表示される「メガドライバーズカスタム」の一語に集約されています。 それは、万人向けのゲームじゃ満足できないセガユーザーへの強烈なメッセージであり、最高の賛辞でもあったのでした。 実際プレイしてみて泣くと思いますが。 「2Dアクション」の意義 今回収録のタイトルは、ジャンルで言うと、どれも「2Dアクション」にカテゴライズされます。 それは、アクティビジョンの『ピットフォール』あたりを嚆矢として、『スーパーマリオブラザーズ』で爆発的に流行した、いわば「ビデオゲームの王道」と言えるスタイルでした。 そして同時に、あらゆるゲームが3D化されてしまった今日、歴史の中に埋もれてしまったスタイルであるとも言えます。 しかし、もし実際にプレイされたならば、たとえばこの『ガンスターヒーローズ』が、容量や表示能力において数百倍の性能を誇る今日のゲームに比べ、いささかの引けも取らないどころか、わかりやすさ、面白さではかえって優れていることに気づかされるでしょう。 繰り返しになりますが、映画などと異なり、ゲームはプレイヤーにスキルを要求されます。 つまり、ただ見た目がきれいなだけでなく、スキルを問われるそのルールや、ゲームの状況といったものが、いかにプレイヤーにとって把握しやすいか、それが重要なポイントとなるのです。 ところが、16ビットから、さらに32ビット、64ビットと、ゲームのハードウェアが進歩するにつれ、ゲームの表現力は、もう途方もなく増大してしまいました。 過剰な表現は、いつしかゲームの本質を押しつぶしてさえいます。 画面全体をすばやく一覧でき、コントローラ上の操作を画面表示のXY軸にダイレクトに一致させられる「2Dアクション」。 その優秀さ、意義といったものはこの『ガンスターヒーローズ』が、『ダイナマイトヘッディー』が、『エイリアンソルジャー』がまぎれもなく証明してくれています。 ゲームが、その表現力と引き換えに失ってしまったものがこれらのタイトルには詰まっており、それは今後も、それこそきらめく宝石のように、いささかも色褪せることはないでしょう。
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第6回 0犬 0犬は四匹。 いや、なんと数えるべきかはわからない。 それは熊ほどもある巨大な塊で、伸吉の絵にあった通りの、生物かどうかも判然としない奇怪な物体だった。 あの絵が抽象画などではなく、この想像を絶する何かを、伸吉ができるだけ正確に描き残そうとしたものであったことを、ハルカは今はっきりと理解した。 全体の濁った茶色も、密集した椰子の葉のような左右対称の細部も、絵そのままだった。 距離は、ハルカの後方50メートルほど。いましがた渡ってきた多摩川大橋の上空に、5メートルほどの間隔を空けて、横一列に、整然と浮かんでいた。 羽ばたいたり、なにか空中に留まるための努力をしている様子は見えない。そもそも手や足や目といった、生物的な要素が何も見当たらなかった。それはいかにも唐突に、ただそこにあった。 地上からの高さは8メートルほどだろうか。 いつからこんなものが後ろにいたのだろう。まったく音がしなかった。 ハルカは、しばらくの間呆然として、橋の上に浮かんでいる四匹の0犬を眺めていた。 だが、それらが突然動き出したのを見て、ハルカは我に返った。 一匹が、空中を滑るように一定距離を進んで止まり、それを待って次の一匹がまた動く。四匹全部が動き終わると、ハルカとの距離を少し縮める形で、再び横一列に並んでいた。チェスの駒か、訓練された兵士を思わせる動きだった。 ハルカは本能的に危険を感じた。それはまるで、獲物を狩りたてる猟犬の動きのようにも見えたからだ。 見ると、しばらくの静止状態の後、また一匹がハルカの方に動きだして止まった。急ぐ様子はなく、むしろのろのろとした動きだ。しかしあの四匹が、ただそこに浮かんでいるのではなく、何かの意思を持ってハルカの後を追い、少しづつ距離を詰めてきているのはもはや明らかだった。 ハルカは思わず足を速めた。 0犬はまた動いた。 早足で前に進みながら、心の奥で警報が鳴った。 このまま進めば、家からはどんどん遠ざかってしまう。しかし四匹の0犬は橋の上にいて、ハルカの戻る道を完全に塞いでいた。 国道一号線は、神奈川県側に達すると1キロほどは一本道で、横道はほとんどない。追ってくる0犬から距離を取ろうとすれば、前に進むしかなかった。 ハルカはできるだけ何気ないそぶりで、さらに足を速め、大股で歩いた、しゃにむに歩いた。 走って逃げなかったのは、0犬がそれに反応して、急に襲いかかって来るかもしれないと考えたからだ。今のところ、どうやら急ぎ足にするだけで、0犬は追いつけないらしかった。 歩きながらハルカは必死に考えていた。 (この先に交差点がある) (そこで左に曲がれば、下流の六郷橋まで回り道ができるだろう。) (そこから東京側に渡れば、たぶん時間はギリギリになるが、あいつらを避けてなんとか家に帰れるはずだ。) (大丈夫だ。落ち着け。あれが何か知らないが、隙を見せなければ平気だ。) 4匹の0犬は、相変わらず一定距離を保ってハルカを追ってきていた。 交差点がずっと先に見えて、なかなか近づいてこないのがじれったかった。 200メートル、150メートル。マラソンランナーの気分だ。それまでの探検気分はとうに消えうせて、ハルカの心の中には、すでに不安と恐怖しかなくなっていた。 ようやく交差点の近くまで来ると、ハルカは後ろの様子をうかがってから、0犬たちが静止した瞬間を見計らって一気に駆け出し、角のコンビニを左に曲がった。 それによって彼らを出し抜けるかと思ったのだ。 しかし角の向こうで、ハルカはまたも硬直した。 コンビニの看板に隠れるようにして、目の前に3匹の0犬がいた。 これは罠だった。 六車線 ほとんどパニック状態になった。 交差点は、車残像の合流点だ。右には、これまで並行して歩いてきた国道一号線。前方には、それに直交する409号線の流れがあった。二つの流れはハルカの目の前でぶつかり合い、混ざり合って、複雑な模様を描いている。それは透明な死の壁だった。 後ろと左には合計7匹の0犬だ。逃げ場はなかった。 まるで白昼夢だった。ここは自宅から3キロと離れていない国道一号線で、すぐ隣にはコンビニがある。ファミリーマートだ。以前に店先でアイスを食べたことがある。 ここはただの、神奈川県川崎市なのだ! しかし菫色の太陽の下で、いまやハルカはおそるべき危機にあった。 振り返ると、後ろの4匹は、さらにハルカとの距離を音もなく詰めていた。待ち伏せをしていた新たな3匹とは、すでにほとんど距離がない。 思考はほとんど停止状態で、「電気・水道料金振込みサービス」「宅急便」など、コンビニの看板に書かれた文字がやけに鮮やかに見えた。視界の端にあるのは、東芝科学館の看板だ。そして7匹の0犬。 一匹が、飛び出してきた。 反射的に後ずさりをした。 そのまま国道一号線に巻き込まれた。 絶叫した。 痛いなんてものではない。いきなり熱湯の激流に突っ込んだようなものだった。路面のアスファルトの上で何度も転がり、ひじやひざは大きくすりむけた。とても立ってはいられない。体は恐ろしい勢いで、 どんどん神奈川方向に流されていった。 ハルカは必死になって横に転がった。 先ほど知った、タイヤの間に生じる流れの空隙を思い出して、そこに逃れようとしたのだ。 何度も失敗した。 車の大きさによってタイヤの位置には差があり、通行する車は、いつもきちんと車線中央を走るわけではない。激痛に襲われながら、全身を隠せるだけの空隙を残像の中に見つけるのは、かなりの苦労だった。 手足を棒のように一直線に伸ばし、車線中央にへばりつくようにすることで、ハルカはようやく空隙の中に潜りこむことができた。 流れの底から外をうかがった。プリズムを思わせる不思議な光線の屈折の向こうに、角にいた3匹が、すでにハルカを追って迫りつつあるのが見えた。 肘と膝のするどい痛みが、ハルカの思考力をよみがえらせた。 ぐずぐずしてはいられない。0犬が残像の中にまで入ってきたらおしまいだった。 その前に、とにかくこの流れを横断するしかない。 ハルカは残像の中を、車線の空隙を目指して次々に駆けた。呼吸を整えながら、まるで塹壕の兵士のように。 国道一号線は、上りと下りで各三車線、合計六車線もある。車線を移るたびに、さらに流された。まさに必死だった。 200メートルは流されたところで、ようやく下りの三車線分を横断するところまで来た。 流された分、0犬との距離はかなり離れた。しかしここからは上り車線だ。今度は逆方向に流されることになる。つまり0犬の待ち構える方に。 走り抜けるしかなかった。 中央分離帯の空隙に身を潜ませたまま、ハルカはよろよろと、ぶざまに腰を持ち上げた。運動会でやった、あの要領だ。クラウチングスタートとか言ったっけ。 そのまま一気に飛び出すと、ハルカは上り車線に飛び込んだ。 全力で走った。 今度は流れに逆らわず、むしろ流れに乗るようにして、斜めに進んだ。さっきは避難所だった空隙に、今度は足を取られないよう走りながら飛んだ。まるでハードル走だった。途中で転ばないことしか頭になかった。 流れに運ばれ、ハルカはたちまちに100メートルほどを駆け抜けた。二車線を越えた。 その思い切った前進は、退路を塞いでいた3匹を、一気に出し抜くことに成功した。 しかし、前にはさらに4匹がいる。みるみる距離をつめて、間近に迫ってきていた。 ハルカは恐怖と戦いながら足を動かし続けた。 足を止めるわけにはいかなかった。止めれば転ぶ、転んだらもうおしまいだ。 なんとかあの4匹より先に、さっきの交差点までたどり着くしかなかった。そうすれば、反対側の横道に抜け出せる。 ハルカは数秒の間、迫り来る0犬と真正面に向き合い、これまでになくはっきりと見た。 間近で見る0犬は、物質であることすら疑わしい、ぼんやりとした異様な質感で覆われていた。 しいて表現すれば、手入れのよい髪の毛のような茶色い繊維質。そこにもう一種、鼈甲のような光沢部分があり、二つが絡みあって、まるで椰子の葉のように見えていたのだ。 見たこともない曲線によって構成された複雑な細部は、それが何かの生物的器官なのか、それとも機械的構造の一部分なのかすら、ハルカにはわからなかった。 0犬もまたハルカを見ていた。 目はなかったが、ハルカははっきりをそれを感じた。 それは、人間が何ら意思の疎通を期待することのできない、まったく異質で、攻撃的な存在だった。 その距離が20メートルを切ったあたりで、ハルカはとうとう、0犬より先に交差点までたどり着き、歩道へと抜け出した。 ついに国道一号線を横断したのだ。 逃避行(1) おそらく全部で一分にも満たない間の出来事だったろう。 アスファルトの路面にへたりこみ、荒い呼吸の中で振り返ると、0犬はあわてる様子も見せず、空中で一カ所に合流していた。 まるでハルカがこちらに気付くのを待っていたかのように、大きく半円を描くようにして隊列を展開し、再びハルカに迫りはじめた。 (まだだ、もっと逃げなきゃ。) ハルカは気力をしぼり出すようにして、なんとか立ち上がり、交差点を曲がり、さらに走った。ここからは409号線だ。 全身が火傷のように赤く腫れ、痛んだ。疲労もひどい。足がもつれて、走ることが難しかった。さっきの横断が、やはりなにか大きなダメージを体に与えているようだ。 ハルカは足を引きずるようにして、必死に409号線を進んだ。 この道から家に引き返そうと思えば、上流にある「ガス橋」まで回って、多摩川を渡るしかない。 下流の「六郷橋」を経由するよりも、かなり遠回りだ。メギ曜日の終わりまでに、家に帰れるかわからなかったが、もうそれしかなかった。 7匹の0犬は、いまや悠々としてハルカを追っていた。 動きのパターンが変化している。 ハルカを囲む半円形から、まず中央の一匹が大きく突出する。続いて左右の三匹が内側から順にそれを追う形で、楔形となった。そして今度は、左右の三匹が外側からさらに前方に進んで、再び元の半円形に戻るというものだ。そうした一連の動作を、5秒ほどの間隔で繰り返していた。 自分の状況さえ考えなければ、それは美しいとさえいえる整然とした動きだった。 動きの意味はよくわからない。中央の一匹が、より正確にハルカの方向を目指すようになってきたところを見ると、獲物を追い詰めるためのパターンなのかもしれない。 最初の全力疾走で、50メートルほど稼いだ距離も、少しづつ詰められてきていた。ハルカはあえぎながら、必死で前に進んだ。 今度追いつかれたら終わりだと確信していた。走れずとも歩いた。足を引きずりながら、とにかく歩いた。 信号やバス停、郵便ポスト、ガムの包み紙、アルミの空き缶。 視界に入っては通り過ぎていくものは、どれも見慣れた日常の一部だった。自分にとっては必死の逃避行にも関わらず、それはひどく間が抜けて見え、ハルカはわけもない悔しさで涙をあふれさせた。 前方に歩道橋が見えてきた。「スクールゾーン」と大きく書かれた垂れ幕が下がっている。あれなら危険な車残像を横断せずとも、先に進めそうだ。 一気に駆け出そうと顔を戻して、ハルカは小さく声を上げた。 歩道橋の陰から、あらたな0犬が空中に姿を現したのだ。 さらに5匹。やはり整然と横一列に並んでいた。 ハルカはその場にへたり込んだ。 逃避行(2) あわせて12匹の0犬は、挟み打ちをする形で、ゆっくりとハルカに迫ってきた。 ハルカは、かたわらの壁にもたれかかるようにして、顔を覆った。 30秒か、一分か、どれくらいそこで止まっていただろう。 ふと、自分がまだ無事なことに気付いた。 おそるおそる顔を上げた。 0犬の群れは、ハルカを中心に、半径50メートルほどの円陣を組んでいた。しかしなぜかそれ以上近づこうとはしないのだった。 見上げて気付いた。 必死のあまり目に入らなかった。大きな黄色い看板があった。紫色の世界の中で、やけに浮き上がって見える黄色。 「圓團圖門」や塔と同じ色調だ。 ハルカが背にしたコンクリの壁も、同じ鮮やかな黄色だった。 「シミズデンキ 川崎店」 派手な書体で、あちこちに書かれていた。 郊外のあちこちにある、家電の量販店だ。 車の客にも目立つようにするためか、建物全体が黄色く塗られていた。 (まさか) ハルカが壁から離れると、0犬は敏感に反応した。 あわてて壁にくっつくと、また動きが止まる。 ゆっくり10数えて見たが、やはり0犬は止まったままだった。 間違いない。理由はさっぱりわからないが、この独特な黄色のせいで0犬は近づかないのだ。ハルカは放心したように、再びその場にへたりこみ、黄色い壁を背に、ひざを抱えて座り込んだ。 12匹の0犬は、まるで時計の文字盤のような正確な角度で、ハルカと電気店を取り囲む円陣を保っている。やはり近づく気配はない。 この黄色がそばにある限りは、どうやら安全と言えそうだった。 しかし、不安は去らないどころか、ますます大きくなっていた。 このままでは身動きがとれない。「163分」というメギ曜日の終わりまで、もうそんなに時間はないはずだった。 ここでメギ曜日が終わればどうなるか見当もつかない。同じマンションの三階と四階であれだ。この距離を引っ張り戻されれば、たぶん即死ではないだろうか。 気ばかりが焦った。 肌がますますヒリヒリする。もうちょっと雲母粉を念入りに塗ればよかった。 さもなければ、こんなジョギング姿でなく、服をもっと選べばよかったかも。 服を。 ふと考えが浮かんだ。 脱出(1) ハルカは「シミズデンキ」の自動ドアを一気に通過して店内に転がり込んだ。 店内は、冷たく静まりかえっていた。 安っぽいエアコンやテレビ、洗濯機や冷蔵庫といった家電製品が、「大特価」「激安」などと書かれたポップとともに、賑やかにディスプレイされている。 郊外からの客で混みあうのだろう、通路はその残像で濃い。 0犬は、やはり追ってこない。ハルカはまっしぐらにレジを目指した。机を乗り越え、レジ下の引出しを引っかき回した。 ゼムクリップ、はさみ、ステープラー、伝票、領収書。 やはりあった。 看板や壁と同じ黄色の、ビニールの買い物袋が、束になって出てきた。 ラッピングの要領で、手に巻きつけた。取っ手の部分が、結びつけるヒモのかわりだ。それは、ハルカのひじから手首までを、あの黄色で覆った。 (いける!) ハルカは必死の勢いで、全身に黄色い袋をまきつけにかかった。 ドアが重かったのと逆に、軽いビニール袋はおそろしく軽く、もろく感じられた。うっかり触ると、水に塗らしたティッシュペーパーのように破けた。一度に5枚ほど重ねなければ、巻きつける最中にビリビリに破けてしまう。 ハルカは、工作にあまり自信がなかった。自分の手先と、やたらに破けてしまうビニール袋を呪った。仕上がりはいかにもみっともなかったが、それどころではない。二重、三重、ひたすらに黄色い袋を巻き付けていった 袋に大小があるのを利用して、大きな袋は胴体や太ももに使った。 最後に三枚ほど束ねた袋を頭からすっぽりかぶり、目と口に指で穴をあけると、それは完成した。 百枚近いビニール袋でできた、世にも奇妙な黄色い防護服だ。 体のあちこちに「シミズデンキ」のロゴがちりばめられて、まるで仮装大会だった。 だが今は、そんなことに構ってはいられない。 ハルカは、裏口の自動ドアから飛び出した。フェイントのつもりだ。 ドアのガラスを通過するとき、即席防護服の表面は派手に裂け、ちぎれ飛んだビニールが黄色い羽毛のように一面に飛び散った。 それが威嚇となったのか、0犬は一瞬、一斉に後ずさりをするように見えた。 (今だ) ハルカは走った。 円陣の隙間を目指し、全力疾走で包囲を破った。 駐車場を必死に駆けた。出入りする車の残像に接触して、ビニールの切れはしがさらに激しく舞った。 行き先は多摩川だ。 249号線に戻らず、このまま横道を通って、とにかく多摩川の土手まで出るのだ。見晴らしのいい土手の上に出れば、あの待ち伏せもできないとハルカは考えた。 狭い細道の、残像の中をもろに突っ切るコースになったが、ハルカは走った。しゃにむに走った。 車、自転車、歩行者の残像に何度も激しく接触した。そのたびに防護服はどんどんボロボロになり、肌が露出しはじめたが、気にしていられない。 目の前の道が急になくなり、雑草に覆われた坂が見えた。土手だ。 土手の上まで一気に登りつめて、はじめてハルカは後ろを振り返った。 0犬は20匹近くに増えていた。 第7回へ続く(7月3日公開予定)