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職業 成長率 HP MP 攻撃力 防御力 素早さ 9 9 12 10 13 習得スキル スキル名 習得SP 消費MP 属性 効果 ミスディレクション 50 60 無 ボムを消費して攻無効付与 ルナクロック 100 80 無 全体回復 殺人ドール 150 60 攻 単体攻撃+素早さ減少 エターナルミーク 200 90 攻 複数回攻撃 ※備考 咲夜の全スキルは低確率で時止め発動(敵の行動なしに発動)出来る
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■咲夜3 「咲夜お手」 「わん」 「咲夜おすわり」 「わふん」 「うぎぎぎぎgかぁわいいなぁー咲夜はぁ~」 「??」 「よーし、パパ咲夜と一緒に風呂に入るぞぉ~」 カポーン 「こら咲夜!あばれるんじゃない!風呂桶に毛が入るじゃないか!」 「く~ん」・・・ 「ほ~らよしよし良い子良い子、あとでジャンキー食わせてやるよ」 「わん!わん!」 5スレ目 304 ─────────────────────────────────────────────────────────── 月がこんなに綺麗だから、思わず紅魔館の屋根に登ってしまった。 何で紅魔館nかって?消去法でここしか残らなかったんだよ。 まず候補に入ったのが永遠亭。だが、月見だんごに何を盛られるか分かったもんじゃないから却下。 次に候補として上がったのは博麗神社。毎年毎年どんちゃん騒ぎで収集が付かなくなるから却下。 あと、萃香に月見酒の呑み比べなどを挑まれようものなら最悪だ。月見酒はしんみりと嗜むのが通なのだよ。 で、残るは紅魔館。ここは湖が近くて涼むには最高の場所だ。レミリアは霊夢の所に行ってて不在だけど。 ちなみに正式に招待されてないから不法侵入扱いなんだなこれが。カリオストロよろしく壁をよじ登って潜入する。 「よっ、と。おぉ、絶景かな絶景かな」 遠くの山やら空の雲やらが月明かりに照らされて浮かび上がる。手を伸ばせば月さえも掴めそうだ。 しかし風が強い。庭の木々はざわめき、空の雲はもの凄い勢いで流れて行く。 「あら、あなたも涼みに来たの? 呼んだ覚えは無いんだけれどね…」 どうやら先客がいたようだ。屋敷のメイド長が屋根の上で佇んでいた。 この強風でも靴下とスカートの間の絶対領域は揺ぎ無い。少しくらい見えても良いものの… え?何がって?そりゃあ旦那、こっちはスカートを履いたメイドさんを見上げる形になるんだぜ? 「屋根とメイドと夕涼み、か。なんかミスマッチで面白いな」 「もう深夜よ? それに、招待していない客人には即刻退場して頂かないとね」 「堅いこと言うなって。隣座るぞ? だめか?」 そう言いながら腰を降ろす。世の中やったもの勝ちなのだよワトスン君。 「言いながら座らないの。……仕方が無いわね。今夜の月に免じて特別よ?」 「サンキュ。いやぁ、屋根の上から見る夜景はいいなぁ」 「この辺りにはここ以外に建物が無いから、見渡す限り真っ暗よ?」 「なあに、どんなに暗い夜でも俺の北極星はいつでも輝いているから問題無い」 そう言いながら咲夜の肩を抱き寄せ……ようとしたが逃げられた。 「……その程度じゃあ口説いている内には入らないわね」 そうは言っているが、頬が少し紅く染まっているように見えるのは、屋敷の壁の色のせいだろうか? 「その割には顔、真っ赤だぞ?」 「えっ? あ、そ、そんなことは……」 「嘘。暗くて見えないよ」 「っ!?」 おぉ慌ててる慌ててる、こんな珍しい光景滅多にお目に掛かれないからな。いやぁご馳走様でした。 「ま、いつもお仕事お疲れ様ってことで」 「言うようになったわね……仕返しよ」 刹那、時の流れが止まったかと思うと ちゅ 頬に何か柔らかいものが触れた感触と同時に時が動き出す。 「……真っ暗で見えないわね?」 「そ、そうだな……」 「……ふふっ」 「あれ、今珍しく笑った? 笑ったよな?」 「…………さぁ」 うーむ、どうも昨夜さんは難しいな…… 5スレ目 585 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「お嬢様の命令なの。ごめんなさい…」 咲夜さんの声に、いつもの優しさは……ない。 何かの冗談かと思いたかった。しかし、咲夜さんの目の色を見て冗談でないというは分かった。 「…っはは、何でさ」 乾いた笑い。 普段の「オレ」を演じるコトは、できなかった。 「自分では気付いていないみたいだけど、あなたはイレギュラーな存在。 スキマ妖怪の能力もお嬢様の運命操作も通用しない。そんなあなたが負の方向へ目覚めたら……」 幻想郷のパワーバランスは崩れて、世界そのものが崩壊する……か。図書館の主も言っていたな。 つまり、スキマ妖怪の力で元の世界へ戻せないのなら―― あとは俺を殺すしか方法が無いというのか。 いくらイレギュラーな存在とはいえ、今の肉体は生身の人間そのもの。殺すなら今のうちという訳だ。 ぶしゅり。 そんな音と共に、オレは地に伏した。どうやら右足を斬られたらしい。 ……逃がすつもりは毛頭無いってことか。 「他に方法が無かったの。容赦はしないわ」 二度目の衝撃。 銀色に光るナイフの刃が、今度は左足を切り裂いた。 容赦しているんだかしていないんだか、わからない。 足を刺すなんて面倒な事をする前に、腹でも頭でも刺せたのに。 そう。その気になれば、赤子の手をひねるぐらい簡単に、俺を殺せる。 時を止めて、1080度全方位からナイフの集中砲火を浴びせればいい。 何故だか、俺は。 咲夜さんに看取られて最期を迎えられるなら、幸せかなぁ……などと考え始めていた。 それで、気付いてしまった。 つまりオレは、どうしようもなく咲夜さんのコトが好きだったというコトに。 「これで最期ね。何か言い残すことはあるかしら? もう少し抵抗するかと思ったけど、何もしてこないのね」 見れば、咲夜さんはナイフを振り上げている途中だった。 ここで何も言わなければ、彼女はナイフを振り下ろすだろう。 ……だけど、そんなコトは、出来るはずがない。 「馬鹿なこと言うな。俺が、あなたの事を傷つけられる筈が無い。 それに、オレはあなたに殺されたって別に構わない。 最期まで昨夜さんの傍にいられて、オレは本当に幸せだったんだからさ これだけは最期に言っておく」 俺はな。…お前に殺されるなら、後悔なんて一つたりともないんだか…r 急に目の前が真っ白に染まり、俺の身体は地面に崩れ落ちた。 どうやら両足からの出血が予想を遥かに上回る量で、体中の血液が抜け落ちたらしい。 これがウワサの出血多量ってヤツか。 ――ナイフは、いつまでたっても落ちてこない。 当然だ。 咲夜さんは、ナイフを捨てて俺の身体を抱き起こしているのだから。 もう目の前は白一面の世界で何も見えないハズなのに、ふと瞼を開いてみると… 咲夜さんは泣いていた。 あぁ、もう少しだけ……この顔を眺めていたい。 …でも、そろそろ限界だ。 まぁ、単なる貧血に過ぎないだろう。 咲夜さんは必死に何かを叫んでいるけど、もう何も聞こえない。 ――次に目が覚めて、紅魔館か永遠亭のベッドで起きた時に、また彼女に会えると期待して 俺は瞳を閉じた。 Ending No.19 伝えられなかった想い(咲夜編) (後日談を見たければ、ノーマル以上でノーコンティニュークリアをめざそう!!) 5スレ目 599 ─────────────────────────────────────────────────────────── 咲夜さんにアタックをしかける事数週間 努力の甲斐あってか、遂に向こうからアプローチが来た! そう、それは激しい雨の降る日だった…… ……雨は雨でも、ナイフの雨だったけどな! 「う! あああああああああ…… ヒトゴロシーーーッ!! ハァ、ハァ、ハァ いきなり何をするんですか咲夜さん!! 死んでしまうじゃないですか!!」 「あら? 少し激し過ぎたかしら? ごめんなさい。 うふっ、あなたって案外ノーマルなのね。 でも人殺しよばわりはひどいわ。 また今度、あなたの準備が出来てから、ゆっくりと愛を確かめあいましょう、○○」 「さ、咲夜さん! そんな! それが君の愛し方だなんて! 激しいよ咲夜さん! 激し過ぎるでヤンス~~~~~~!!」 正直、反省してる だが俺は謝らない 5スレ目 823 ─────────────────────────────────────────────────────────── 121 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/12(日) 02 16 31 [ 3xLW6UFg ] あーあ、抱いてもいいのよとか誘惑してきたさくよさんをただぎゅっと抱き締めて ちょっとだけ困惑されつつもそっと抱き締め返されてそのままほんわかのんびりしたひと時を過ごしてーなぁー 122 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/12(日) 11 56 56 [ KTEsP7Cg ] 121 さくよさんと申したか 123 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/12(日) 15 17 41 [ 7/c0..Vw ] 121 さくよさん? 咲夜さんじゃないの? ところで、スレちがいで申し訳ないが。 貴方に合うSSを探すスレで紹介している以外に、オリキャラ(ドーリム)小説がのったサイト誰かしらない? 124 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/12(日) 15 25 26 [ N6O1WR7U ] 121を見て本の精を思い出した。 で、 121の内容で本の精を書いてみる。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 「〇〇、私を抱いてもいいのよ」 咲夜(さきよ)がいきなりそんな事を言って来た。 次の瞬間、俺と咲夜は自分の部屋に移動していた。 ―― 恐らく時を止めたのだろう 俺は無言で咲夜に近づく。 「(……所詮は元人間か)」 咲夜は何かを呟いた。 その目に映っているモノ、それは失望。 俺はそれに気付かずに咲夜を抱きしめた。 ―― 数十秒経過 「…〇〇 ?」 咲夜は抱きしめられたまま困惑したような声で俺の名前を呼ぶ。 「んー?」 俺は咲夜の温もりを感じながら、生返事を返した。 ……やばい。なんか、眠たくなって来た。 「どうして ?」 何が【どうして】なのかよく解らない。半分寝ている頭をフル回転させて考える が、全く解らない。 「俺は咲夜が抱いていいって、言ったから抱きしめたなんだけど……」 咲夜はキョトンとした後、笑いを堪えるように肩を震わせる。 その瞳から失望の影は消え、あるのは【呆れ】と少しの【喜び】だった。 そして、現在の情況に今気がついた様に赤くなり、おずおずと俺の身体を抱き返 した。 残り頁数 ――????頁 6スレ目 121-124 ─────────────────────────────────────────────────────────── 223 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 05 25 50 [ ZUVDTdVQ ] 「咲夜さん!! 俺、貴女の事が――ってか既にいないし! 消えたし!」 224 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 05 45 38 [ aB4sagP. ] 斬新な振られ方だw 225 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 06 41 19 [ JhUuo/D2 ] そこは恥ずかしがって逃げたに90crn 226 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 14 03 24 [ x3eeEr8E ] いやいや、幻想卿を出る日がかならずくるから故意に避けてるんだよ。 227 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 14 07 04 [ NwuH/ogg ] 良い方に解釈すれば廊下の影あたりで真っ赤っか……かな。 228 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 15 02 19 [ pYWeKQjI ] そして、廊下の影から○○を見つめるようになる……かな。 229 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 21 38 16 [ QlRGW/MI ] 更に後ろの影からお嬢様が恨めしそうに見つめるように……かな。 230 名前:名前が無い程度の能力 投稿日: 2006/11/21(火) 21 45 10 [ jtJDY/4g ] で、その事をお嬢様に見られてさらに赤面……かな。 6スレ目 223-230 ─────────────────────────────────────────────────────────── 歪んだ世界の中を歩いていく。数歩先に見えるのは鬼火。それ以外は出鱈目としか言いようのない空間。 鬼火は道標、この空間で迷わないためのもの。これが無ければ自分自身も出鱈目の一部になってしまう。 どれぐらい進んだだろうか。鬼火の火が広がり、空間の一部が穴になった。 ――その先に見えるのは最近になってありつけた就職先。 穴をくぐり、地面に足を乗せ……られなかった。 「だぁっ!?」 急に足場が無くなり、思わず声を上げる。そのまま回転し、地面に一点倒立。 ……要は着地に失敗して頭からまっ逆さまに落ちた。 「ぷっ、ぷくくく……」 「……っ、くくっ……」 周囲から笑いが漏れる。……よりによって門の近くで降ろしやがって。 「……警備のメイドさん達?頼むから根っこになった俺の頭を地面から抜いてやってほしいんだけれど」 俺の台詞を聞いた瞬間、門の向こうにいたメイド達が爆笑し…… 突然、頭で立った。 この言い方は正確じゃない。詳しく説明すると『爆笑していたメイド達が次の瞬間杭のように逆さまになって地面に突き立ってた』、ということだ。 しかしスカートは裾を紐で縛ってあって捲れていない。……くそう。こういう場合はおふぁんつも丸見えだろうが。 「お帰りなさい、__。荷物はちゃんと紫に頼んだかしら」 そして背後に気配。……どうやったのか考えたくは無いがこの惨状(男的な意味で)の犯人であり、俺の上司でもある人。 「ええ、食料品は食堂の保管庫、消耗品は備品倉庫の方に頼みました。……というか抜いて下さい。これじゃあ生殺しですよ咲夜さん」 スカートの中身を見られたくないからという意外に乙女ッチーな理由で俺の後ろに立った咲夜さんが、思いっきり俺の頭を蹴り飛ばした。 「あだぁっ!」 首の骨に負担がかかり、ちょっと嫌な音が鳴った。 「ふざけていないで納品数のチェックをしなさい。特に食料品は見直しをちゃんとお願いね。場合によってはいろいろしなくちゃいけないから」 何をですか!?そう聞けないのがつらい。 「……わかりました」 痛む首を押さえ立ち上がる。しかし誰もいない。 「相変わらず多忙な人だな……」 ふと地面を見るとメッセージが。 『ポケット』 すぐに今着ている服のポケットを探す。すると紙片が出てきた。 そこに書かれていたメッセージを見て苦笑する。 「……まったく」 そして、地面のメッセージを靴で消して、自分の勤務に戻るために目の前の館……紅魔館へと走った。 *** *** 少し前まではただのイチャスレ閲覧者だった自分が、まさか本当にこちら側へ来れるとは。 幻想郷に着いたとき、最初に思ったのがこの一言だった。 着いた当初はとりあえず村に住まわせてもらい、畑を耕したりしていたが、『ちょっと待て』と心の中で突っ込みを入れられた。 『畑仕事してないで少しは東方キャラと仲良くなろうぜ』 その一言から俺は鍬を放り投げ、受難の日々を送った。 語れば長い話を一気に省略し、現在は紅魔館の使用人として過ごしている。 というわけで、今俺はある部屋の前に立っている。服装は最初に着ていたよそ行きの服と違い、使用人としての制服を身に付けていた。 「メイド長、納品数の点検が終了いたしました」 公私で呼び方を変える性格なので、仕事中は名前ではなく役職で呼ぶ。 「そう、入って」 「失礼します」 中に入ると、咲夜さんが簡素な執務机に乗った書類に目を通していた。 「口頭で報告を頼める?」 「あ、はい。こちらに搬入された物資は搬入前から搬入後のマイナスはありませんでした。ただ……」 咲夜さんに言われ、点検の結果を報告する。 「ただ?」 「何者かがリストに書き込みを加えたようで、必要とは言えない代物まで購入させられましたが」 「……たとえば?」 声が低くなる。 「主に従業員の私物ですね。ゲーム、コミック……中には『おねがいレ○リア』というのもありました」 あえて伏字にしたのはうちの主の尊厳に関わるから、と言っておこう。 「まったく、困ったものね……」 さすがにあきれが行動に出たのか動いていた手が止まり、はあ、とため息をつく。 「いくら__が外の世界を行き来できるからって、呆れたものだわ」 ここで必要なものにはどうしても幻想郷には無い物資も存在する。だけに外の世界を知っている人間が必要だった。 最初のうちは咲夜さんが行っていたらしいのだが、メイド長としての事務もあるために時間が限られてしまう。 そういうわけで俺が来るまでの間はメイド達が交代で物資調達をしていたらしい。 しかし、たまに向こうの人間をいろいろな意味で食べてしまう不遜な者もいたらしく、博麗の巫女も正直頭を抱えていたようだ。 そこでつい最近まで外にいた俺が登場。身の安全と衣食住を保障され、めでたく買い出し要員としての地位を手に入れた。 「正直困りますよ。いつぞやなんて『セー○ームーン』全巻買って来いなんて指示もありましたし」 「馬鹿正直に買うあなたもあなただけれど、ね」 「まあ、セ○ムンについてはフランドール様の希望ですから」 メイドならともかく上司(?)、しかも能力が『すべてを破壊する程度』の妹様に逆らおうものなら残機がいくつあっても足りない。 むしろコンティニューすら出来ない。 「後はこれとか……ですね。メイド長、もとい咲夜さん」 俺が取り出したのは白い袋。 「何で名前で呼んだのかしら……って」 仕事中だというのにプライベートの呼び方を使った俺が気になり、こちらを向いた咲夜さん。 袋の中には一枚のチケットとそのおまけ。 「大丈夫です、他のメイドにも、ましてや紫さんにも気づかれてませんよ。……命がかかってますし」 実は買い出しに出る前に咲夜さんに一枚の紙と言伝を預かっていた。 『これの交換をお願いね』、と。 紙……引換票に書いてあった店名を見たら昔バイトしていたところだったり、咲夜さんってこういうのが好きなんだ、とか思ったり。 そんな感じで買い出し中に交換、彼女の即席スペル『ベクター○ラップ』で封印していた。 そして、冒頭に出てきた紙片にはこう書かれていた。『報告時にブツを持って来い』と。 「恥ずかしかったんですからね。ちょうど付き合いの長かった店長にレジやってもらって、その間ずっとからかわれっぱなしで……」 咲夜さんにブツ……劇場版プリキュア&デジモンのチケット+プリキュアポーチを渡した。 「それは悪かったわ。でも私自身が行こうにも時間も無いし、あなたに頼むしかなかったのよ」 「……役に立てて嬉しいです」 おそらくお嬢様と行くつもりなのだろう。咲夜さんの顔が微笑んでいた。 「報告の続きですが、先ほど言ったとおり余計な買い物をしたせいで少々金銭面でのマイナスがあります。 赤字というほどではありませんが、それなりの節制は必要かと」 館の維持費やメイド達の食費、その他諸々。それをすべてやりくりしているのは咲夜さんだ。 「そう……今月も厳しそうね……」 「まあ、彼女らにもその辺は覚悟をさせておきましょう。以上で報告は終わりです」 そう言って部屋を出ようとした時。 「待ちなさい」 咲夜さんの声が俺に放たれた。 「何でしょうか、メイド長」 「あなたに頼みたい事があるの」 *** *** 「…………言いだしっぺが遅いのもなんだかな……」 現在俺がいるのは幻想郷の外。横○駅地下のトイレの前にいる。 紫さんが無駄に気を利かせてスキマをこのトイレに繋げたのだ。 で。俺が待っている人はもちろん咲夜さんだ。頼みたい事……『一緒に映画を見に行きましょう』という言葉に同意し、こうして外の世界に来た。 咲夜さんはなぜか張り切って二日分の仕事をこなし、後はメイドさん達でも出来る仕事だけを残していた。 しかし、遅い。時間を守らないなんて珍しい事だ。……大方紫さんが軽くからかってるんだろう。 「お待たせ」 「遅いですよ咲……っ」 後ろを向いた瞬間さまざまな感情が俺の中にわきあがった。 ……主に大きかったのが『驚愕』、そして『笑い』。 何しろ、小さいのだ。咲夜さんが。全体的に。 大体で小学校高学年、大きく見積もっても中学生くらいにしか見えない外見。 普段の咲夜さんからは考えられないほどの可愛らしい子供服。 そして……肩に下げられてる特典のプリキュアポーチ。 思わず床に突っ伏していた。バンバン叩きながら笑っていた。 「ちょwwwwwww咲夜さんwwwwwwww」 無論直後にナイフを突きつけられたわけだが。 「今の状態だったらあなたを殺しても少しの罰で済むわよね?」 「ごめんなさい」 ナイフを収め、チケットを取り出した。 「仕方ないでしょ?このチケット親子ペアなんだから」 見てみれば、確かに『大人1名様と小人(3歳~中学生)の1名様』と書いてある。 「でも律儀にポーチを持って歩くだなんて……」 「いいじゃないの別に。子供の姿に戻ったんだからそれぐらい許してよ」 「まあ、ギャップがおかしすぎていいんですけど……って、『戻った』?」 咲夜さんの言葉に疑問を感じた。何故『なった』じゃなくて『戻った』なんだ? 「この姿が私の本当の姿。あっちでは他の連中に見下されない為と作業がこなせるだけの体が必要だったから大人の姿になっていたの」 「……なるほど」 確かにこの姿じゃあ、実力を抜きにしても少し前の俺みたく爆笑してしまいそうだ。……主にギャップで。 「それにね」 咲夜さんが続ける。 「いつも甘えられてばっかりだったから、たまには甘えたいな……とか思ったりしたわけで」 顔がほんのりと赤くなる。 ……あれ?今すごく可愛くなってませんか咲夜さん? 「驚いたかしら?私、中身はまだ子供だから……甘えたい時だって、あるのよ」 あー、うん。これなんて最終兵器侍女長?体格差でどうしてもなってしまう上目遣いとかその指先を弄るしぐさとか…… 「……驚きましたよ。ええ、真面目な咲夜さんにこんなにも可愛い一面があるなんて思いもしませんでした」 「かっ……」 おお、真っ赤になった。お約束すぎますよ咲夜さん。 「……こんな俺でよかったら、思う存分甘えてください。というか俺にだけ甘えてください」 微笑みながら咲夜さんへ言葉を渡す。 「本当に、いいの?」 「ええ」 顔を上げ、年齢相応の笑みを浮かべる。 「ありがとう、__」 思わず頭を撫でようとする手を理性で止め、俺も笑顔で返した。 「それだったら、私の呼び方を変えてほしいな」 「呼び方、ですか?」 「ええ。今の姿でだけ、咲夜、って呼んでほしいの。あと敬語も抜きにして」 一応は年上なんだし、と思っていたが、本人がいいのであれば。 「わ、わかったよ。咲夜……」 つい出そうになる『さん』をこらえていると咲夜さんが吹き出す。 「それでいいの」 笑いながら俺の手を引く。 「ほら!早く行きましょう!」 「あ、ああ」 傍から見れば兄の手を妹が引っ張っているように見えるだろう。 それでも俺は幸せだった。……ようやく見つけることが出来たから。 *** *** 「ずいぶん幸せそうじゃない」 「あ、顔に出ていましたか?」 「ええ。まったく、私は熱いのが苦手なのよ」 「すみません。すぐに室温を……」 「そっちじゃないわ」 「……はい?」 「あなたよあ・な・た。まったく、その立場だからこそ平然としていられるようなものだけど他のメイド達はもう怒り心頭よ」 「はあ……」 「で、彼に返事は?」 「……すいません、仰る意味がよくわからないのですが」 「……呆れた。仕事ばかりに集中するからそうなるのよ」 「すいません」 「話すと彼がかわいそうだけど、あなたのような鈍な者には言わなきゃわからないみたいだから教えてあげる。 前にあなたが彼をキネマに誘った時の『俺にだけ甘えてください』っていう言葉、覚えてるかしら?」 「み、見ていたんですか!?」 「その辺の言及は後にして。アレ、彼からあなたへの告白よ。『君の素顔を俺だけに見せてくれ』……って所かしらね」 「え?」 「ああもうまったくダメだわこの大馬鹿者!しかもその後に『呼び捨てにしてほしいの』だなんて気があるみたいな言い方しちゃって!」 「…………」 「極めつけはその後もたまに仕事を先に終わらせて休んでは外の世界に行ってるそうじゃないの? これで今更『あなたの気持ちに気づいていませんでした』とか言うつもり!?」 「…………」 「……咲夜?って気絶してるし。あーもうこの超絶鈍感娘!……__!__はどこにいるの!?この馬鹿ひっぱたいて起こしてやりなさい!」 *** *** さーくやおねえさまぁぁぁぁ(ナイフ 失礼しました。 現在(2006/12)公開中の映画「ふたりはプリキュアS☆S チクタク危機一髪」は時がテーマらしいので「咲夜さんに見せたいな」とか思ってたらこんな事に。 誰かふたりはアリマリB☆S歌ってくれる勇者はいないのか? 6スレ目 570 ─────────────────────────────────────────────────────────── 今日は、クリスマス・イブ。 そして、幻想郷の住人が紅魔館に集まっている。 外界ではクリスマスを恋人と過ごしているが幻想郷には男が殆ど居ない。 だから、恋愛沙汰は(女同士でない限り)あるはずが無い。 だから、イブは皆が広い紅魔館の大広間に集まって宴会をするのだ。 「お~い、○○も飲もうよ。ノリ悪いな~」 と、萃香が背中から覆いかぶさってきた。 てか、酒ぐらいってレベルじゃねぇぞ! 一体、どれだけ飲んだ!? しかし、周りを見ると確かに他の連中はかなりの量を飲んでいる。 スキマ妖怪と亡霊の姫様は文字通り浴びるほど酒を飲みながら料理を食べている。 ……まぁ、あの人達は別格だから気にしないでおこう。 そもそも、俺はこの幻想郷に来て数ヶ月しか居ない。 ある日、イキナリこの幻想郷に迷い込み途方にくれていた。 そこを、紅魔館の美鈴さんが助けてくれ色々あって今は、この紅魔館で執事をしている。 執事と言っても紅魔館のレミリアお嬢様のお世話では無く、その他、雑用が殆どだが…… その時、この紅魔館のメイドである十六夜 咲夜さんにもお世話になった。 力のチの字にも満たない俺に体術やナイフの投げ方を教わった。 時には、紅魔館のパチュリー様にも頼み込んで魔法を教わらしてくれたこともあった。 本人曰く、 「弱い人間は紅魔館には要らない。だから、強くなってくれないと困る」 だそうだが、俺はそんな一生懸命に教えてくれた咲夜さんに、いつしか淡い恋心が芽生えていた。 「てか、俺は執事だから酔えるほど飲めないんだよ。仕事もあるし」 と、俺は後ろに抱きついている萃香に言った。 萃香は目を丸くしていたが我に返って言った。 「エー、○○ってまだ仕事あるの? ……まぁ良いや。飲めー!!」 「だから、飲まないって言ってるだろうが、この酒乱!」 と、俺は萃香に綺麗な背負い投げを決めた後、大広間から出て行った。 頭が少し、クラクラする。 どうも、酒の匂いに酔ったみたいだからテラスに移動することにした。 俺がテラスに行くと、其処には咲夜さんが一人で空を見ていた。 そういえば、大広間には居なかったな。 こんな所に居たのかと思い、俺は咲夜さんに声を掛けた。 「咲夜さん。なんでここに? 大広間には行かなくてもいいんですか?」 「あぁ、○○。どうも酔いすぎたみたいだからここで休憩してるの」 「咲夜さんもですか。まぁ、俺は酒の匂いで酔ったみたいですけどね」 と、軽く会話を交わしながら俺は咲夜さんの隣に並んで空を見た。 冬の空は視界が澄んでいて星が良く見える。 「匂いで酔うなんて、○○ってそんなにお酒苦手だったの?」 「いえ、アルコールには強いと思うんですけど、どうもあそこの空気は苦手だった見たいで」 「まぁ、あれだけ酒気と妖気に包まれてたら並の人間はそうなるわね」 と、咲夜さんと俺は笑いながら話している。 「そうだ。さっき大広間から出て来るときに持ってきたんだけど○○も一緒に飲む?」 と、咲夜さんが俺にワインを見せてきた。 「頂きます」 「そう。ハイ、グラス。注いであげるわよ」 と、咲夜さんが俺にグラスを渡してそれにワインを入れてくる。 真っ赤な色のワインだ。この紅魔館に良く似合う。 咲夜さんも自分のグラスにワインを注いでいる。 「乾杯」 「乾杯」 と、俺と咲夜さんは二人だけの乾杯をし、ワインを飲んだ。 ワインの味はとても口当たりの良い素晴らしいものだ。 素人の俺が分かる位なのだからさぞかし高い物なんだろう。 そして、飲みながら話すこと数十分。ワインも空になっていた。 しかし、一本のワインを二人で飲んだのに全然、酔いはしなかった。 「さて、じゃあそろそろ戻ろうかしら」 「そうですね。……あぁ、そうだ。咲夜さんに渡したいものがあったんだ」 「私に?」 俺は自分の服の内ポケットから小さな箱を取り出した。 俺に色々なことを教えてくれた咲夜さんにささやかなプレゼントだ。 そして、俺は咲夜さんにプレゼントを渡した。 咲夜さんが箱を開ける。中には懐中時計が入ってあった。 俺が咲夜さんに気に入ってもらおうと香霖堂の店主に頼み込んで貰った物だ。 「気に入ってもらえるといいんですが……」 「……ありがとう、○○。じゃあ、私からもプレゼントよ」 と、イキナリ俺と咲夜さんの周りがテラスでなく紅魔館の屋上になっていた。 これが、咲夜さんの時間を操る程度の能力なのだろう。 紅魔館の屋上は明かりも無く星や月が先ほどよりも明るく見える。 「私からのクリスマスプレゼントよ。気に入ってもらえた?」 「凄い。幻想郷の景色とはこれほど素晴しいものだったんですね。とても気に入りましたよ」 「良かった。じゃあ、もう一つ言いたいことがあるの」 「なんですか?」 俺が聞くと咲夜さんは顔を少し朱に染めていった。 「私は貴方のことが好きになったみたい。良かったら付き合ってもらえるかしら」 今度は、俺の頭の中の時間が止まった。咲夜さんが俺の事が好き? それって、俺も咲夜さんが好きだから両思いって事ですか。 咲夜さんは俺の方を見ている。 だから、俺もその期待に応える。 「俺も……俺も、咲夜さんのことが大好きですよ、喜んでお付き合いさせてください」 そして、咲夜さんに近づき口付けをする。 これほど、このまま一生、時が止まればいいと思った事は後にも先にも無いだろう。 「今よ! そのまま押し倒して!」 「何やってるの○○! もっと咲夜さんを抱きしめて!」 「咲夜さん……お幸せに」 「咲夜、○○。私の了承も無しに恋人とは……まぁ、いいだろう。今日は特別ね」 と、スキマ妖怪のスキマ実況で下の大広間にいる人達全員がこの二人を見ていたのは別の問題。 ――――後書き―――― 皆さん、メリークリスマス・イブ。 今回は、クリスマス・イブということで長編にしてみました。 まだ、至らない点もあると思いますがこれからも頑張って生きたいと思います。 では、最後までご覧くださって有難うございます。 皆様も残り数日を健康にお過ごしてください。 メリークリスマス。 6スレ目 579 ─────────────────────────────────────────────────────────── ―――メイドの仕事、一人じゃ大変でしょう? 俺でよければ、お手伝いさせてくれないかな? 7スレ目 668 ─────────────────────────────────────────────────────────── 事の起こりは数日前……夜雀が俺の家に来てから 『きっといいコンサートになるから来てね!! あ、あと、あなたの恋人も絶対連れてくること! 絶対よ!!』 と、何故かニヤニヤしながら言ったことからだった。 ・ ・ ・ 「ふぅん……いい音色ね、騒霊と夜雀もやるじゃない」 「ふふ、喜んでもらえて何より」 そして今、俺は恋人の咲夜と一緒に夜雀&騒霊のコンサートに来ていた。 咲夜が褒めるだけあり、彼女たちの奏でる音色は素晴らしいものだった。 俺たち以外の全観客が惚れ惚れとして聴き入っているのがその証拠だ。 曲のジャンルがロック、ポップ、クラシックだの バラバラなのも彼女達らしいといえば彼女達らしい。 そして、やけにハプニングが多いのも幻想郷ならではだろうか? 例えば……確か3曲目「魔理沙はとんでもないものを盗んでいきました」を歌っている最中 妙な服を着た謎の5人組が「すぐに呼びましょ陰陽師! Let s GO!」と歌いながら乱入。 さらに、なぜか永遠亭の面々が乱入して「えーマジ初月? キモーイ」だの 「患部で止まってすぐ溶けて高熱などの症状を緩和します」だの歌っており 某混沌教授以上にカオスだったのは忘れられない。 ああ、乱入といえば数曲前 スウェディッシュポップというおしゃれでポップな曲を演奏していたときに 突如として悪魔のような3人組が 「SATSUGAIせよ! SATSUGAIせよ!」 と乱入してきたのはビックリした。 その3人のうち、一番危なそうな奴が 「バイオリン、トランペット、キーボードなど、まとめてレ○プしてくれるわー!!」 と叫んだとたん、キレた騒霊三姉妹の「大霊車 コンチェルト・グロッソ」が発動。 ただ、そいつはマトリックスのような動きで全弾回避してしまった。 スゲェ…… 彼らは、一体何者だったのだろうか? 噂によると、隙間がどこからか呼び寄せたらしいが 定かではない。 なお、咲夜は「SATSUGAIせよ!」の歌に ウットリしてたような気がしたが、気のせいと言うことにしておこう。 と言うか、気のせいであってほしい。 「SATSUGAIせよ……ふふふ」 マジ気のせいであってほしい。 ……そんなこんなでコンサートももう終盤。 俺と咲夜は寄り添うようにして心地よい音色と歌声に耳を傾ける。 そして、演奏されていた曲が終わり―――― 「みんな、今日はありがとう! 本当に……本当に名残惜しいけれど、次の曲が最後になるわ!!」 観客の間に「えーー」という落胆の声が広がる。 もっと、聴いていたかったのだろう。 「残念だな……あと一曲か」 「そうね、私ももっと聴いていたかったわ」 かくいう俺も……そして、咲夜もやはり名残惜しかった。 「これから歌う最後の曲は、このコンサートに来てくれている、あるカップルに捧げます……ふふふ」 へー、カップルかぁ……誰だろうな。 上白沢先生とその彼氏かな? それとも、ドールマスターアリスと●●のコンビか? こないだ、決闘したとか聞いたが……●●が勝って、うまく結ばれあったんだっけか。 あの二人は曲のネタになりそうだしなーーーあっはっはw 「幻想郷初公開! 曲名は――――――――――よ!!」 「「――――は?」」 曲名を聞いた瞬間、俺と咲夜は同時に間の抜けた声を上げた。 そして、俺の頭の中で全てが繋がる。 なぜ、ミスティアは俺をコンサートに誘う時、あんなにニヤニヤしていたのか。 なぜ、ミスティアは必ず咲夜も連れてくるように言っていたのか。 「なお、スペシャルサンクスは文々。新聞記者の射命丸 文さん!! 彼女の情報をもとに、この歌を作ったわ!!」 あいつは―――― ミスティアと騒霊達は―――― 「紅魔館のメイド長 十六夜咲夜 と 異邦人 ○○の愛の軌跡……たっぷり聴いていきなさい!」 俺たちのことを歌にしやがった!! 「ラストナンバー……『十六夜咲夜が倒せない』!!」 うpろだ267 ─────────────────────────────────────────────────────────── 『十六夜咲夜が倒せない』 ―――――― 気がついたら いつもレミリアを狙い そしていつも同じ場所で負けて ―――――― ○○「今日もまた、立ちふさがるか……俺の愛の前に」 咲夜「今日もまた、立ち向かうのね……弱いくせに」 ○○「やかましい! 今日こそ、お前を倒してレミリア様に俺の想いを聞いてもらうんだ!!」 咲夜「懲りないわね…時間も押してるし、30秒で始末してあげる」 ―――――― あきらめずに 殺人ドールに 挑戦するけど すぐに 地に倒れるよ ―――――― ○○「ぐぅっ……あ、諦めて……たまる…か!!」 咲夜「なかなか頑張るわね……なら、もう一発喰らいなさい。幻符「殺人ドール」!!」 ○○「ぎにゃああああああああ!!」 ―――――― 弾幕スペカがあれば ラクに レミリアの部屋に 着くのに ―――――― ○○「ち…くしょ……弾幕やスペルカードさえ…あれば……」 咲夜「まだ喋る元気があるの? なら、もう一発」 ○○「え? いや ちょっと……もういっぱいいっぱいなんですけどってNOOOOOOO!!」 ―――――― 何回やっても 何回やっても 十六夜 咲夜がたおせないよ あのナイフは何回やっても よけれない ―――――― ○○「い、痛い 痛い! ってか、マジ刺さってるんですけど!!」 咲夜「刺してるのよ……そろそろ、終わりにするわ――――」 ―――――― 必死にかわして 逃げ回っても いずれは時間止められる ―――――― ○○「て、てめえ また時間止めるつもりか!? 卑怯ナリよ その能力!! 」 咲夜「黙りなさい侵入者! 幻世『ザ・ワールド』!!」 ○○「……(青年硬直中)」 咲夜「時は止まる……はい、ジャスト30秒でチェックメイトね」 ……… …… … ―――――― 裏口侵入 試してみたけど 完璧メイドにゃ 通じない! ―――――― ○○「くくく……前は失敗したが、ここから侵入すればあの殺人メイドに見つからずに―――――」 咲夜「―――― ネズミが一匹」 ○○「!!??」 咲夜「こんなところで何をしてるのかしら?」 ―――――― だけど 次は 絶対会うために 僕は あいつに勝って 最後に笑ってやる ―――――― (少女(が)ネズミ駆除中) ○○「おーーーぼえーーーーてろーーーーー!!」 咲夜「まったく……しつこいんだから」 (それにしても、あそこまで、強く想い…想われるって……どんなものなのかしら…?) ・ ・ ・ ―――――― 気がついたら ライフもう 少ししかない そしていつも そこでリポDつかう ―――――― ○○「くそ……あの中華門番、てこずらせやがって……ファイト 一発! 諦めてたまるかよ!!」 ―――――― あきらめずに 咲夜さんまで たどり着くけれど すぐに少女処刑中 ―――――― 咲夜「最近、レミリア様を狙う あなたを見てると不愉快になってくるわ……」 (私、最近おかしい……この男を見ていると…胸がもやもやして…落ち着かない。) ○○「え? ひょっとして今日機嫌悪いのかってミギャアアアアアアアアアア!!」 ―――――― 紅色マジック あれば ラクに 咲夜さんは たおせるけど ―――――― ○○「くそぅ……マジ許さん この殺人メイドめ……だが! 今日の文々。新聞の記事から得た情報によると――――」 『紅色マジック : レミリアを倒せば入手できる。咲夜の弱点武器。』 (5面記事『ティウンティウンな同人ゲーム『メガマリ』最強攻略』より抜粋) ○○「――――つまり、レミリアを倒せば おまえは楽に倒せるってことだったんだよ!!」 咲夜「……大馬鹿ね」 ○○「グスン……」 (『な、なんだってー!!』って返してほしかったのに……) ―――――― 何回やっても 何回やっても レミリアまで 辿り着けないよ デフレワールド 何回やってもよけれない ―――――― ○○「いてて……あーーーもーーーー! レミリアから武器ゲットする以前に 辿り着けねぇよ!!」 咲夜「お嬢様には近寄らせないって言ったでしょう? だいたい……レミリア様を倒すって、本末転倒じゃないの?」 (信じられない……私の最高のスペカ『デフレーションワールド』を無傷とはいえないまでも死なずに切りぬけるなんて……) ○○「いーんだよ! まずはお前を倒せればそれでいい!! ギャフンと言わせてやる!!」 咲夜「………」 ―――――― デレかけている お茶目なメイドが 素直になれずに SATUGAI ―――――― 咲夜「ぎ…ぎゃふん……(////⊿//)」 ○○「……」 咲夜「……」 ○○「……そ、それはひょっとしてギャグで――――」 咲夜「――――ッ! 『デフレーションワールド』!!」 (な……何、言ってるのよ私ーーーー!!) ○○「どうみても、実はお茶目な性格です!! 本当にありがとうござい ひでぶッ!!」 ―――――― 風呂から侵入 試してみたけど あいつが入ってちゃ 意味がない! ―――――― ○○「げ……」 咲夜「あ…あなた……なんで、お風呂場に……」 ○○「い…いや、ここから侵入してレミリアを倒しに行こうと…」 咲夜「~~~~~~~ッ!!」 (少女滅殺中) 咲夜「こ、今度やったら 殺人ドール100連発よ!!」 (み、見られちゃった……この人に…私の裸……) ○○「は…はひ……」 (こ、こいつの身体……すごくキレイだったな……) ―――――― だけど 次は絶対勝つために 僕の 変わる想いに 白黒つけてやる ―――――― ○○「……レミリア一筋だったはずなのに……なんで俺は――――」 咲夜「……あの男は、ただの侵入者のはずなのに……どうして私は――――」 「「―――― 気がついたら、あの女(男)のことばかり考えてるんだろう?」」 ・ ・ ・ ―――――― 弾幕スペカがあれば ラクに 貴方の元まで つくけど ―――――― ○○「ハー…ハー……くそ、弾幕やスペルカードさえあれば、あいつのところまで楽に行けるんだがな……」 咲夜「き、今日も来たのね……いいかげん諦めたらいいのに」 ○○「ハハ……諦めの悪いのが俺の持ち味なんでね……」 ―――――― 何回やっても 何回やっても 愛しい咲夜がたおせないよ あのナイフは 何回やっても よけれない ―――――― ○○「……く…そぅ……」 (ここに来るまでの体力の消耗がマジで痛い……かわしきれねぇ……) 咲夜「あ、あんまり無理しないほうがいいわよ……あなた、普通の人間なんだから」 (どうして、ここまでやるの……? ただ、私に勝つためだけのために、どうしてここまで?) ○○「うるさい……普通の人間だからって無礼るな!!」 (咲夜に勝って……彼女に俺の想いを聞いてもらうんだ!!) ―――――― 必死にかわして 逃げ回っても いずれは時間止められる ―――――― 咲夜「幻世『ザ・ワールド』!! 時は止まる」 ○○「………(青年硬直中?)」 (あれ? 時間止まってるのになんで見えてるんだ?) 咲夜「……(///σ//)ちゅっ………」 (……じ、時間が止まってるから…大丈夫よね…) ○○「!!!???」 (な……なにイイィィィ!!) 咲夜「と、時は動き出す……」 ○○「お、おま……今、キス……」 咲夜「!!?? な…なんで、時は止まっていたはずなのに……」 ―――――― 時を止めてのキス見えたけれど 『忘れなさい』とか ありえない!! ―――――― ○○「い、いや……時間止まってたけど見えていたぞ。動けなかったし。」 咲夜「……ッ! ま、まさか……」 (少女照れ隠し(もとい殺人)中) ○○「ちょ! タイム! タイム! タイム! それ以上は死ぬって!!」 咲夜「同じタイプの能力を持っていたなんて……さ、さっき私がしたこと、今すぐ忘れなさい!!」 ○○「そ、そんな御無体な!!」 咲夜「いいえ! 忘れさせてあげるわ!!」 ―――――― だから 次は絶対勝つために 僕の この愛だけは 最後まで取っておく ―――――― ○○「や、やだ! 好きな人にキスされたこと、絶対忘れたくない!!」 咲夜「え?」 ○○「あ……」 (……言っちまったよ、俺……) 咲夜「……嘘?」 (え? え? ……○○も……好き……?) ○○「うっ、嘘なんて言うか! ……ほ、本当だよ(ボソッ)」 「「………」」 咲夜「……~~~~~~~!!!」 (ああ……ど、どうしよう……!) ○○「ど、どうした?」 咲夜「げ、幻世『ザ・ワールド』!!」 (と、とにかくいったん距離を置かなきゃ! ドキドキが止まらなくて、考えがまとまらない!!) ―――――― 倒せないよ……(いないから)―――――― ○○「……逃げられた…… えーと…不戦勝? … …… ……… 納得できるかこんな『勝ち方』! ってか 逃がすかぁーーーー!! むぁーーーーてぇええええええい!! さぁーーくぅーーーやぁーーーーーー!!」 咲夜(ッ!? お願いだから、追って来ないで! こんな真っ赤な顔してる私、見られたくないから――――!!) ・ ・ ・ 「なお、二人はこの後、紅魔館の中を12時間ほど鬼ごっこした揚句、ようやくくっつきましたとさ……ひゅーひゅー!!」 「「(////⊿//)」」 ひゅーひゅー!! 「あはは! 二人とも、これからも仲良くね――――!!」 ……こうして、大喝采のうちに夜雀と騒霊のコンサートは幕を閉じた。 余談だが、数日後……咲夜さんは時間を止めて 「――――何回やっても 何回やっても 愛しい咲夜がたおせないよ」 と頬を染めながら歌っていた。 そして、それを偶然見てしまった俺は またもや照れ隠しがわりにSATSUGAIされてしまった。 The End 曲の元ネタ『ttp //www.youtube.com/watch?v=KLbFctG3tw0』 うpろだ269 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「咲夜」 「何ですか○○さん」 「いや・・・君は今夜も綺麗だな、と思ってさ」 ぼっ、と音がしたかのように真っ赤になった 相変わらず彼女は可愛い 「なななななにをおっしゃてるんですか!?」 「はっはっは、赤くなっても可愛いな君は、家のメイドにならないか?」 「○○、吸血鬼は独占欲が強くてよ?」 おおっと、レミリア嬢から目をつけられてはこまったこまった 「おいおいレミリア嬢、そんなに睨むな、か弱い私はにらまれただけで震えあがってしまうよ」 わざとらしく恐がって見せる 「・・・」 やはり怒らせてしまう訳だが 「紫との交渉を任せたい」 「私が交渉役!?冗談じゃ無い!あんな化物となぜ俺が対峙せねばならんのだ」 「・・・其処を何とか頼みたいのよ、お願い」 「・・・代償は高いぜ?俺の命がかかってるからなぁ」 この馬鹿なお嬢様が何かやらかしたらしく、面と向かって対峙する訳にも行かないので俺というクッションが必要ならしい 結局断れないんだけどねぇ・・・ 用件は聞いたので席を立つ 「食事は?」 「結構、用件も聞いたし帰らせてもらうよ」 「そう・・・咲夜、玄関まで送りなさい」 「はい」 席を立ち、玄関へ歩き出す その後を彼女がついててきている 玄関まであと少しだ 「あの・・・今回のお仕事は大丈夫なんでしょうか?」 「安心しなさい、私が責任を持って遂行しよう」 「いえ、その・・・○○さんが・・・」 ああそうか、心配してくれているのか なんといじらしい、乙女だ 「ありがとう咲夜、心配は無用だ・・・逃げ足だけは一級品だからね」 視界から消えてみせる 脚にだけは自信がある、人間の視界から姿を消す事は容易だ 突然の出来事に驚いている咲夜を― 壁に押し付けるように、両腕を拘束する 「きゃっ!?な、なにを」 「君の肌は実に美しい、その細い首筋、ぞっとするほど、だ」 そう、まるで磔のイエスのような 「一人の男としても、人狼という種としても、君が欲しくなってしまうよ」 細い首筋に、ざらついた舌を蛞蝓のように這わせる 「あっ、ん、ふ、ぁあっ」 「このまま、薔薇のような、珠のような、血を」 「はぁっ・・・○○さん?」 「ふふ、安心しなさい、そんなことをしたらレミリア嬢に殺されてしまうよ」 ぱっと、身を離す、何事もなかったつもりで 彼女は乱れた服を調え、私を見る 「なぁ咲夜、俺の事は・・・好きか?」 「あ・・・は、はい!」 「そうかそうか、じゃあレミリア嬢に伝えておいてくれ、今回の貸しは十六夜咲夜を貰う、とな」 「はい!そう伝えておきます」 「それじゃあ、御休み、咲夜」 「おやすみなさい○○さん」 大掛かりな門が閉じる、彼女との小さな小さな壁 さて、死なない程度にがんばってこようかな、彼女の、いや俺のために うpろだ341 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「愛してる」 「え? あ、あの……」 そう呟き、青年は己の身体を使い、少女を壁に追い詰める。 少女は背を壁に密着させ、2人の距離は僅か20センチ程度。その距離が ゆっくりと縮まってゆく。 少女は脇から逃げようとするが、青年は少女の背後にある壁に片腕を立てて、少女の逃亡を阻止した。 間髪入れず、もう片方の手を少女の頬に添えて、少女らしく瑞々しい唇に情欲のまま自らの唇を重ねる。 「~~~~ッ!?」 少女の瞳が大きく見開かれ、声にならない叫びが響き渡った。 想いの丈をぶつけられるように、唇が強く……だが優しく押し付けられる。 仄かに匂う青年の匂いが、麻薬のように少女の精神を惑わしていった。 少女は青年が押しつけてくる唇を、首を振りもぎろうとする。 だが、その動きには、ほとんど力が込められていない。 少女は、スラッとした細い両腕で青年彼を引き離そうと、その胸を押す。 だが、その動きにも、ほとんど力が込められていない。 青年は少女が本気で嫌がってはいないことを理解していた。 少女がその気になれば、この状態から脱出することはおろか、青年を叩き伏せることなど造作もないからだ。 にもかかわらず、少女は青年のされるがままに、その唇を貪られ か細く身を震わせる。 既に、少女の頬は紅潮し、その吐息は熱く上気していた。 青年の温かい吐息が頬に、首筋にかかり、その心地よさにゾクゾクと背筋を震わせる。 じわじわと湧き上がる甘い快楽に、少女が身を任せようとした矢先―――― 「ん……ぅ……!?」 少女の瞳が再び、驚きに見開かれる。 青年の舌が少女の口の中までを侵略しはじめたのだ。 既に、心臓の鼓動音はドクン、ドクンと彼女自身の耳に聞こえるほどに激しく高鳴り 少女は――――これ以上されたら自分はどうなってしまうのか――――という恐怖を表情に孕ませる。 その間にも、青年は思うがままに少女の口腔内を嬲り者にしていく。 まずは、唇の裏側を撫で回し、次いで優しく歯と歯茎の間に沿って舌を滑らせる。 そして、最後に少女の脳髄が蕩かされ痺れたように動かない舌を優しく蹂躙し、痺れを解きほぐしてゆく。 少女の四肢から、力が抜けてゆき、膝がガクガクと力なく震える。 けれども、少女が抱いていた恐怖は期待に塗りかえられ、少女は青年の唇と舌に貪られるままになってしまっていた。 少女自身の舌がもみゃくちゃに、めちゃくちゃに掻き回され、彼女は 氷が溶けるように じわじわと痺れが溶けてゆくのを実感していた。 「…ん……ぅ…」 青年は少女の腰に左手を回し、ともすれば崩れ落ちそうになる少女の体を支えた。 そして、少女の左手首を優しく掴み、そのまま己の指を滑らせ少女の指に絡める。 少女が、自らの舌をおずおずと、だが自ら青年の舌に絡めようとしたその時…… ――――! ――――……! 少女の茹った意識に、何者かの声が届く。 「―――――!!」 はっとして視線を声が聞こえた方向に走らせるが、そこには誰一人いない。 しかし、声は次第に近づいて来ている。 このままでは、十秒と経たずに青年と少女にはち合わせるだろう。 もし、このまま見つかったら。と恐ろしい想像が少女の頭をよぎった。 僅かに残った総動員させ、甘く蕩かされていた思考を必死で修復していく。 そして、さらに声が近付いてきた その時―――― 「ありゃ……」 青年が間の抜けた声を上げた。 それもそのはず、今の今まで腕の中に抱いていた少女が一瞬で消えてしまったからだ。 「やり過ぎたかな?」 その一秒後に、ニ人のメイドが曲がり角から姿を現すのを青年は見た。 ・ ・ ・ 一方、こちらは紅魔館のとある一室―――― 「……何やってるのよ 咲夜、ノックもなしに」 突然の乱入者に、少女の主――――レミリアは僅かに不機嫌そうな声をあげた。 ただ、その瞳には怒りの色はほとんど無く、どこか咲夜の姿を楽しんでいるような節がある。 「はぁ……はぁ……は…ぁ…」 咲夜は、荒い息をつきながら、閉じられた部屋の扉を背に座り込んでしまっていた。 その顔は耳までもが紅色に染まっており、レミリアに言葉を返すこともできない。 ○○の手から逃れ、手近にあった空き部屋に飛び込んだのだが、何故主がここにいるのかと不思議に思う。 しかし、やはり今はそれどころでは無かった。 未だフルスロットルで激動する心臓の鼓動を止めるのに精一杯だ。 「はぁ……」 しばらく時間がたち、ようやく落ち着いたのか、まずは「も、申し訳ございません、レミリア様」と、座り込んだまま頭を下げ一言。 「……部屋の外で、あの男とよろしくやっていると思ったら」 「――――!!??」 主にはすべて見透かされている。 その事実に再び咲夜の心臓の鼓動が跳ね上がった。 「ううっ……」 弱々しい呻き声をあげ、茹った顔を主に見られまいと俯く。 そんな従者の貴重な姿を生温かい視線で見守りながら、レミリアはふと首を傾げた。 何故、咲夜はいつまでも座り込んでいるのだろうか――――と。 「どうしたのよ、いつまでも座り込んじゃって?」 「い、いえ……それがその……」 「?」 「こ…腰が……」 ほのかに想いを寄せる男に強引に唇を奪われた時、あまりの驚きと、喜びと、心地よさのために、腰が砕けてしまったのだ。 その事実をレミリアに告白することを恥じ、俯きながらボソボソと口を濁す。 咲夜は――――時を止めた世界で動けるのは、彼女のみであることに――――己の能力にこの上なく感謝していた。 必死で這いずり、手近の部屋に逃げ込む無様な姿、見られたらたまったものでは無い。 たとえそれが、愛しいあの男であったとしても。 「ぷっ」 あまりの可笑しさと、咲夜の愛らしさにレミリアは噴き出す。 瀟洒で常に氷のように表情を崩さない自分の従者がずいぶんと変わったものだ、と。 そして、咲夜の背後に視線を移して―――― 「――――だそうよ、○○」 「え?」 咲夜が引き攣った顔でゆっくりと背後を振り返る。 いつの間にか、背後の扉は開かれており…… そこには先程まで咲夜の唇を思うがままに蹂躙していた男が彼女をニヤニヤと見下ろしていた。 とたん、咲夜の心臓の鼓動が三度跳ね上がる。 「い、いつの間に!?」 「ほら、○○……咲夜を介抱してあげなさい」 レミリアが、○○に勝るとも劣らない程度に顔をニヤつかせて命じる。 「はいよ」 無論、○○がレミリアの命令を拒む理由などは無い。 むしろ、やるなと言われてもしただろう。 ○○は、両腕をそれぞれ咲夜の背と膝の下に回し、軽々と持ち上げた。 「や、ちょ、ちょっと! 降ろして! 降ろしなさい!」 「ヤダね」 抱えあげられながら、腕の中で咲夜は足をじたばたさせてもがく。 そんな彼女を笑顔で見つめながら、○○は子供のようにペロリと舌を出し片目をつぶる。 しかし、未だ彼の腕の中では、再び頬を紅く染めだした少女が暴れていた。 だから、○○は僅かな悲哀を表情に滲ませて―――― 「……嫌なのか?」 と、一言。 とたん、叱られた子供のように咲夜は大人しくなる。 悲哀が一杯に織り込まれた○○の表情と言葉に、抵抗する気概さえも挫かれてしまったのだ。 「…ぅ……」 この男は本当にずるい、そんな顔で、そんな聞き方をされたら断れないじゃない――――と、咲夜は心の中で呻き声をあげた。 「それじゃあ失礼します、レミリア様」 ○○はレミリアに退出の礼を尽くし、開いていたドアから外に出ようとする。 無論、彼の腕の中には咲夜姫が抱えられたまま。 「え、ちょっと……どうして外へ…?」 「ん? いや、だから咲夜の部屋に行って介抱するんだが」 あまりの衝撃に咲夜の目の前が真っ暗になった。 咲夜の部屋は、今彼女がいる部屋から歩いて5分程度。 この館の中ではそれほど遠いわけではないが、今の咲夜にとっては その距離も時間も那由他に等しい。 もし、こんな姿 誰かに見られたら――――と考えると、何のために必死に○○から逃げたのかわからない。 「や…ダメ! お願い それだけは許して!」 「いいじゃん、見せつけてやれば」 「やっ、やめ――――!」 外に出ると、いきなり通りがかったメイドと鉢合わせした。 彼女は○○の腕の中に咲夜が抱きかかえられているのを見て、あんぐり口を開ける。 まるで、鳩が豆鉄砲を喰らったかのように。 咲夜が覚えているのはそこまでだった。 あまりの羞恥と――――本人は気付いてはいないが――――それに勝るとも劣らない喜びに気を失ってしまったのである。 そして案の定、向こう2カ月は紅魔館はその話題でもちきりになってしまった。 天狗の少女のカメラにその場面を抑えられなかったのが、不幸中の幸いとも言えた。 『初めてのチュウ 咲夜受編』end うpろだ419 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「咲夜さん!あなたに会ったその日から、俺の時間は止められてしまいました!!」 返事は 「私があなたの時間を止めたのならなら今度はあなたの時間を動かしてあげる」 ってもらいたいな 7スレ目 800 ─────────────────────────────────────────────────────────── 拝啓 木々の紅葉も日ごとに深まってまいりましたが、 貴方にはますますのご隆昌のこととお慶び申し上げます。 また、採用試験の節には皆様方に大変お世話になり、ありがとうございます。 そのうえ、採用内定をいただきまして誠にありがとうございます。 早速、採用承諾書をお届けいたしますので、どうぞよろしくお願いします。 なお、本採用までの残り少ない日々をさらなる勉学に当て、完璧な従者になるためにがんばります。 そして、従者になった暁には少しでもお役に立てるような執事になれるように努力を怠らないように心がけます。 今後ともご指導くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。 貴方のいっそうのご繁栄と皆様のご健勝をお祈りいたしまして、お礼のご挨拶とさせていただきます。 敬具 平成××年 ○月△日 丸々 ○○ 紅魔館 当主 レミリア・スカーレット 様 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「ふぅ・・・」 俺はペンを置き、ぐっと伸びをした。 集中し物事に取り組んだ後に来る脱力感が気持ちいい。 先日、あの真っ赤な真っ赤な紅魔館に就職試験を受けに行った。 何故あの紅の悪魔のいる紅魔館なのかというと、その・・・なんだ、一目惚れってやつだ。 三ヶ月ほど前、里でのバイト中に見かけた銀髪でメイド服の少女。彼女に恋をしたから。 その後は毎日大変だった。 執事になろうと決めた。 周りの友人達は馬鹿にしたので〆た。 執事の勉強をしようと独学で頑張った。 ただ彼女と同じ場所で、同じ時間の中働きたいと思ったから。 だが独学には限界がある。 そんな時、紅魔館の図書館の事を知った。 幸い紅魔館の図書館は一般人も入れたので、勉強ついでに下見もできた。 感想・・・広い、綺麗、広い、紅い、紅い。多少目に悪い気もしたが、慣れればどうってこと無い。 それからは里と図書館を行き来する日々が続いた。 そんなある日、館内で彼女と会話を交わすことができた。 何時ものように図書館で勉強していた時に、声をかけられた。 「執事になりたいんですって?普通の人間ががんばるわね」 俺は緊張のあまり、しどろもどろで言いたい事も言えなかった。 彼女はそんな俺を見て言った。 「まともに話が出来ないんじゃあ、執事なんて無理ね」 その一言で俺は落ち込んだ。情けないと思った。 やはりこんな男が紅魔館で執事など馬鹿げている。 彼女はさらに続けた。 「でも、貴方はこのところ毎日ここに来て勉強しているらしいじゃない。努力は何時か実るものよ、がんばりなさい」 やる気再浮上。 その日は図書館から20冊ほど本を借りていったので、司書さんが結構驚いていた。 そして運命の日、採用試験の日がやってきた。 受験するのは俺一人でなんだか心細かったが、門の前では中国風の・・・そう、美鈴さんから激を入れてもらった。 「緊張しないで。○○さんなら絶対受かりますから!」 何度も図書館に通う内に、門番の美鈴さんと仲良くなっていた。 美鈴さんのその言葉と笑顔に自分の緊張が大分和らいだ。 館に入ると、内勤の妖精メイドさんに待合室に案内された。 待合室は他の部屋と比べて質素だった。恐らく集中するために無駄な装飾品を取っ払ったのだろう。ありがたい配慮だ。 時が来るまで何度も何度も脳内でイメージトレーニングをする。 ・・・あれ? 戸って押し戸、引き戸? ・・・・・・あれ? 当主の名前なんだっけ? ・・・・・・・・・あれ? 俺やばくね? 助けてメイド長。 「えー○○さん、準備が済みましたので、出てすぐ左手側の部屋へ行ってください」 「は、はい!」 来た。 素早く案内状の当主の名前を確認し、身形をもう一度整え、さらにもう一度名前を確認し決戦の場へと向かった。 「いやー、緊張してたな俺」 面接時のことは全て忘れてしまった。 確か面接官には図書館の子悪魔さんと副メイド長と、彼女がいた。それしか覚えていない。 精一杯自分をアピールできたと思う。 変なミスは・・・・歩く時手と足が同時に出ていた事ぐらいだ。 彼女はどう見てくれたのだろうか。 今目の前に採用内定書があるが、やはりこんな紙切れよりも本人から直接どうだったかを聞きたい。 「そういや来週からか・・・」 来週から研修期間に入る。実際に館内での仕事を体験し、執事になるための本格的な勉強をする期間。 恐らく彼女と接する機会がぐっと増えるだろう。 そして研修を乗り越え本採用が決まれば、さらに彼女との距離が縮まる。 何年かかるか解らないが、執事長となり彼女の隣に立つ事も夢ではない。 「っしゃ! やる気出てきた」 この想いがあればどんな苦しい時でも頑張れそうだ。 一目惚れから始まったこの恋物語、今やっと序盤が過ぎたところだ。 目指すはゴールの職場結婚のみ。他のフラグは全部無視だ。 「うおおおおお!!! 待っててくれマイスウィートォォォォ!!!」 「おい○○! こんな夜中に五月蝿いぞ!!」 「あ、すみません」 隣の家のハクタクに怒られた。 10スレ目 133 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ちょっと・・・もう少しどうにかならないの?」 「だから無理だって!これ以上は」 里のとある店、軒先に並べられて商品からして雑貨屋、万屋であろうか 薬に服、履き物、鍋だの装飾品だの一貫性がない 「もうちょっと・・・ね?いいでしょ?」 メイド服のリボン?をするりと解き、胸元をはだけてみせる 「・・・乳でかくして出直しな」 「っ!もういいわよっ!お邪魔しました!」 会計に座っていた俺の頬を銀のナイフが掠っていった 「こえー・・・あ・・・代金」 しょうがないので紅魔館に請求書を、そんな風に考えたときナイフが貫いているのは壁だけでないことに気づいた 「あ、お金・・・お金をナイフで刺すなと何度言えば・・・」 壁のナイフを引き抜いて、お金を回収、こんな状態でもちゃんと使えるのが幻想郷のいいところだな 「しかし・・・俺の理性はいつまで持つかなぁ」 強がって見せても、さっきのはだけた胸元が、目に焼きついてしまっているのだった 「・・・私ってやっぱり魅力ないのかなぁ?」 胸は無いけど、スタイルも悪くないと思うし 何よりメイド服といえば問答無用のリーサルウェポンって言ってたのになぁ(byパチュリー 何処かの誰かも「胸が無い?馬鹿だな、そこがいいんじゃないか!!」って言ってたし 「あ、そうか」 お嬢様に頼んでみよう 「お色気むんむんな服ぅ?」 「はいっ!どうしてもTKOしてやりたい奴がいるんです!」 お色気むんむんなTKO?話がまったく見えてこないわ 「それと!明日おやすみをください!」 「え、ええいいわよ好きになさい」 ありがとうございますと一礼し、十六夜咲夜は退室した 「・・・勢いでOKしたけど・・・明日紅魔館は機能するのかしら?」 はぁ・・・あの咲夜が、何事だろうか? 「おはよう美鈴!行ってくるわねっ!」 「い、いってらっしゃいませ・・・」 翌日朝、勢い良く館を出て行く咲夜、それを何事かと噂する妖精メイド そして驚き桃の木山椒の木で一日を迎えた美鈴、そんなこんなでメイド長不在の紅魔館は一日を乗り切れるのか!!? 「あれ?まだ閉まってるのね・・・どうせ鍵掛けてないんでしょ」 予想通り裏口のドアは簡単に開いた、泥棒でも入ったらどうするつもりなのかと小一時間 「おはよう・・・暗いわね」 部屋どころか家が暗い、この家の主はいまだ目を覚ましていないらしい 「寝室は何処かしら?」 襖を開けるとすぐにわかった、布団の敷いてるのだから当然か 「・・・あ、寝てるのね」 寝息が聞こえる、上下する胸・・・起きる気配はない 何を思ったのか、私は彼のいる布団にもぐりこんだ 「あ、暖かい・・・・・・」 何だろうこの暖かさ、すごく、安心できる―― 「ん・・・」 朝か、少し寝過ごしたかな、だいぶ明るい・・・なんか腕が重・・・ 「え?・・・・え?」 現状を整理しよう、俺は今目を覚ました、昨日まで、寝付くまではこの布団には俺しかいなかったはず なのに俺の腕の中には見覚えのある少女、十六夜咲夜が?・・・居るねぇ 夢なはずはない、今起きたんだから 「・・・・事後?」 彼女は俺の腕の中にすっぽり納まる感じで、でも微妙に隙間風が・・・うーさむ、いやそういうことではなくて 「んん・・・あれ・・・?」 ばっちりと目が合った、完全に、お互いに固まった 「お、おはよう・・・」 「お、おはようございます」 とりあえず布団を出た、続いて彼女も 「あー・・・着替えるから台所の方に行っててくれるか?」 「は、ひゃい!」 噛んだな 「まぁつまりお布団暖かそうだなぁ、と思って、気付いたらすやすやと・・・そういうことだな?」 「はい・・・ごめんなさい」 「いや、謝らなくても別に・・・美味そうな朝食と君の抱き心地で十分」 「ば、ばか!」 あ、また赤くなった、まぁそれはおいといて・・・和食も上手だなぁ、メイドなのに 「・・・ごちそーさん」 「おそまつさまでした」 また沈黙、台所には食器を洗う音のみ 沈黙に耐えかねた俺は 「ねぇ」 「・・・なんだ?」 先に話しかけてきたのは彼女の方だった 「今日・・・お店の手伝いしてもいいかしら?」 「は?いや、俺は別に構わんが・・・せっかくの休みだろ?」 「ええそうよ、私の休みなんだから私のしたいことをするの、だから今日は貴方のお手伝い」 「ふむ、まぁ・・・いいけどな」 「ありがとーございましたー・・・十六夜、今ので食油切れたから倉庫から出してきてくれ」 「幾つあればいい?」 「うーん、5つあれば大丈夫だろ」 「わかった」 昼過ぎ、なかなかどうして今日は儲かっている 塩と油の在庫が尽きるかもしれない、寒くなってきたからなぁ、油の方は相当売れる、食油も売れる 「一月分の売り上げが今日だけで・・・」 「いらっしゃい、油?ちょっと待ってくれ、もう直ぐ」 「○○ー持って来たわよ」 「お、丁度来た、ありがと十六夜、早速一つ」 持って来た油が直ぐ売れた そういえばさっきからお客さんがニヤニヤと、生暖かい目で見てくる 「そういえば噂になってるのよ、○○ちゃんが嫁さん貰ったって」 「はぁぁぁああああ!!?なんで?いったいどこから」 「え?彼女は違うの?」 十六夜咲夜のほうを、みて、おばちゃんはそう言った 「え?わ、私はそういうのじゃ」 真っ赤になって照れながら否定する十六夜、その様子を見て更にニヤニヤするおばちゃん おばちゃんは去り際に 「非のないところに煙は立たないわね、んふふふふ」 といって去って行った 「あー・・・」 気まずい空気、今朝のような感じだ 「なぁ十六夜・・・いや、咲夜」 「えっ?な、に?」 「前々から言おうか悩んでたんだがな、今日を逃したら言えないような気がするんだ、だから言わせてくれ」 いつの間にか常連になっていた彼女、安くしろオマケしろと五月蝿いメイド、何だかんだでいつの間にか 「俺は君が好きだ、愛してる・・・俺と結婚してくれないか?」 「え、あ、そ、その・・・お、お嬢様に聞いてみないと」 「咲夜!・・・俺は君の気持ちが知りたい」 「あ・・・はい、不束者ですが、よろしくお願いします」 「咲夜・・・此方こそ、これからもよろしくな」 俺は今度こそしっかりと、彼女を抱きしめた、もうそこに隙間風なんて通らないように 「!?おねー様?何で泣いてるのっ?」 「嗚呼フラン・・・娘が嫁にいくときの両親の気持ちが、痛いほどわかったわ」 「おねーさま・・・でも悲しんでいられないでしょ?咲夜がいない紅魔館が荒れ放題じゃ咲夜も安心してお嫁にいけないよ?」 「そうね・・・小悪魔を司書からメイド長にしてがんばってもらうしかないわね」 「(いや、あんたががんばれよ)」 哀れ小悪魔、仕事量が一気に増えるけど君なら乗り切れるはずだ!がんばれ小悪魔!負けるな小悪魔! ~新婚生活はまだ始まったばかりだ!~ 10スレ目 281 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「咲夜、今夜出かけようか」 客の途絶えた昼時 ぼーっと店番をする俺は、昼飯の片づけをしている咲夜に、話しかけた 聞こえているとは思うが返事がない 少し間をおいて 「いいけど・・・変な事したら駄目だからね」 たぶん台所で赤くなっているのだろう ほんとに初心な娘だ、思わずからかいたくもなるが・・・我慢 「ほら、今夜は十六夜だろ?月見しようぜ」 結局その後客はあまり来なかったので早めに店じまいした 「けど大丈夫かしら、こんな夜に山に登るなんて・・・妖怪とか」 「大丈夫だって、お前と俺のデュエットなら妖怪なんて楽勝さ」 「コンビ、もしくはタッグ・・・だと思うけど」 今はまだ夕方、俺は背中に酒瓶、片手にランタン 咲夜は弁当と・・・シーツを持っている 後1時間もあれば日も暮れるだろう 「荷物持とうか?」 「ん、大丈夫よ」 山とはいえ一応道になっているので歩きづらい事はないが・・・ 「歩きづらかったら言え、おぶってやる」 「大丈夫・・・貴方って過保護なのね」 前にも言われたぞそれ、お嬢様並みに過保護って言われたなぁ・・・はぁ 「おお・・・ギリギリ夕焼けも見れたな」 「ほんと・・・綺麗」 山頂に着くとシートを広げて寝転がった 手近な木にランタンを下げ明かりをとる、思ったよりは明るい、やはり山頂は違うな 「はい、どうぞ」 「ん、いただきます・・・うん、美味い」 さんどうぃっちと熱い紅茶、吐く息が白くなる・・・程ではないがやはりは寒いのに変わりない 「咲夜、コッチにおいで」 夕食を食べ終わり、後片付けを済ませた咲夜を呼び寄せた 何も言わず、寄り添うように 肩が軽く触れるぐらいの距離 遠慮がちに距離をつめる、俺はそれがじれったい 「ああもう!よい、っしょ」 胴に手を回し、持ち上げて、抱き寄せた 「ッ~!?」 俺の腕の中にすっぽりと納まってしまう咲夜、小さい・・・こんなに小さかったんだなぁ 「ほら・・・ソラを見て」 高く上がった月、満月 彼女と同じ・・・十六夜 「わぁ・・・綺麗」 言葉を交わすのも忘れて、丸い丸い大きな月に、魅入ってしまった 「今までありがとう・・・ばいばい」 「どうした?」 「十六夜にね、今までお世話になりました、って言ったの」 「?」 「もうこんな機会ないだろうから」 「またくればいいだろ、年に一回ぐらいは見に来ればいいさ」 「違うわよ・・・十六夜の私が見る最後の十六夜ってこと」 「?」 「だから!・・・これからもよろしくね、アナタ」 「っ!?あ、ああ・・・よろしく、咲夜」 俺達は口付けを交わした、自然と、そうなった 「ひゃっ!や、やだ、んっ」 咲夜は俺に背中を預けるかたちで座っている、つまりまぁ・・・無防備なわけで 首や、鎖骨に口付けしたり、下を這わせてみたり、色々と調子に乗ってみた、言い訳するなれば月のせいだと言っておく 「ここがいいの?」 「や、ち、違んっ」 リボンを解いて胸元をはだけさせた 「咲夜・・・その・・・いいかな?」 「・・・こんなにも月が綺麗だから、い、いいよ」 「出来るだけ優しk「たーんたーんたーぬきの・・・きん・・・た」 藪から上機嫌で飛び出してきたのはどっかの屋台の雀 「え、あ・・・・お邪魔でしたか?お邪魔ですね、あはは」 みすちー は 逃げ出した 「・・・」 「・・・」 完全に、空気をぶち壊してくれた 「えーと・・・咲夜?」 「あ、あはは」 そういうムードでもなくなったので、そそくさと退散する事にした 山を降りて、静かな里の通りを歩く、何処も寝静まっている 神社の方で明かりが見えたので宴会でもやっているのだろう 「ねぇ○○」 「ん?どうした?」 「ぎゅーって・・・して?」 「・・・」 「んー・・・ありがと」 「・・・さ、もうすぐ家だ」 「ええ、帰りましょう」 手を繋いで、夜のお出かけを名残惜しむように、ゆっくり、ゆっくりと、歩んでいった 「そうだ咲夜」 「何?」 「鶏肉が食べたいなぁ」 「それじゃあ飛びきり息のいい雀を捕まえてきますね♪」 まださっきの事を根に持ってました みすちー は 逃げ出した! しかし回り込まれた END 10スレ目 356 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「俺はな、お前の時計を動かす鍵になりたいんだ」 7スレ目 830 ─────────────────────────────────────────────────────────── 咲夜さん、さーやって呼んでもいいですか? 「何故部下に呼び捨てにされなければならないのかしら。」 …スミマセン。じゃあさーちゃんで 「ちゃん付けにされるのはガラじゃないわ。」 …ナカナカテゴワイデスネ。じゃあ可愛くさっきゅんなんてどうでしょう? 「私はパチュリー様ではないのですよ?」 ……ソーデスカ。わかりました、みんなと同じメイド長と呼ぶことにします。 「…。(それでは愛が感じられないわ)」 どうかしましたか? 「だめよ、あなたは今まで通り名前で呼びなさい」 こんな咲夜さんですか? 7スレ目848 ───────────────────────────────────────────────────────────
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制作者 ギース氏 最新版 10/08/22 概要 改変元はGATT氏の咲夜。 一時期トップクラスの殺傷力だったことで有名なキャラ。 犬咲夜に変身したりオズワルドやDIOといったキャラの技を使用したりとネタが豊富。 また、R.S.Pに勝つと特殊演出が発生する。 性能解説 1~6Pカラー playerヘルパーがAI殺しだが普通に倒せる。 AIが無かったり若干不具合があったりするので 動画等で使用する際は神咲夜の弱体化的なキャラのイフ咲夜を使った方がいいと思われる。 7~10、12Pカラー 混線、オロチキラー等を使用している。専用対策が豊富。 3ラウンド目以降は体力が減らなくなる。 11Pカラー イントロが犬咲夜。常時混線。体力も減りづらい。 (以上readmeより) n
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「メ、メイド長……どうしてここに……」 コンビニで立ち読みした後に少々買い物を嗜み、アパートに帰った〇〇を待ち構えていたのは かつて幻想郷に迷い込んだ自分を迎え入れてくれた紅魔館のメイド長、十六夜咲夜その人であった。 幻想郷から戻って半年経った今でも、銀髪でメイド服を来た瀟洒な女性を忘れよう筈が無かった。 「久しぶりね、〇〇……こちらとあちらの時間軸が同じなら、半年ぶりくらいになるかしら?」 「はぁ……」 「相変わらず呆けた顔ね。だらしないからやめなさい……と、これは前にも言ったわね」 「いや、いやいや……なんで外の世界に……」 「ああ……解雇されたから、ここに泊めてもらおうと思って」 「……へぇー」 〇〇はそれほど頭の回転が良くなかったので、彼女が何を言っているのか理解できなかった。 とりあえず彼は、最近観た番組で使用されていた「へぇボタン」を叩く真似をしてみせた。 「って……解雇? メイド長が? まさかのクビ?」 「もうメイド長ではないわ……ふふっ、笑いたければ笑いなさい……」 「クビっすか!! HAHAHAHAHA!!」 外国人を下手に真似た笑いは、自虐的な咲夜の言葉によって作られた微妙な雰囲気を吹き飛ばすための 彼の精一杯の努力であった。それがより微妙な雰囲気を醸し出してしまったことは言うまでもない。 「…………なんか、すいません……で、なんでまたクビに……?」 「……まぁ、恥ずかしい話なんだけど……お嬢様の度を過ぎた我侭にうんざりして、つい……」 「え……? 普段お嬢様にヘーコラしてる咲夜さんが、うんざり?」 「へーこら……そう見られてたのね、私……」 紅魔館当主、レミリア・スカーレットの命令には誰一人として逆らえない。 それは紅魔館に与する者にとって絶対遵守の理であり、完全で瀟洒な従者である十六夜咲夜には 生命体の呼吸と等しいと言って過言では無い程、当然の事柄でもあった。 「……それで、つい……何ですか?」 「……つい、『カリスマも無い癖に偉そうに』って言ってしまって……」 「うわぁ、これはひどい」 「あと、場の勢いで『妹様の方が強いのに』『ただの引きこもり』的なことを……」 「ひどいって言うか、もうボロクソじゃないですか……」 「時を止めてないのに場が固まったわ」 「能力いらずですね……」 珍しく瀟洒な従者が放ったささやかな冗談ですら、〇〇には痛々しく見えるだけであった。 かつて彼女が紅白の巫女や黒白の魔法使い、半人半霊や月の兎と鎬を削ったことなど、 誰が今の弱々しい彼女から想像できるだろうか。その燦然と輝く歴史はもはや過去の栄光でしか無かった。 「……それで、気付いた時には辞表をお嬢様の顔に叩きつけて、紅魔館を飛び出していた……」 「…………ストレス溜まってたんですね、メイド長……」 「いい音がしたわ……スパーン、って……」 〇〇は「それは厳密にはクビではなく辞めてきたのではないか」と考えていたが、 そのような言動や振舞いをあの唯我独尊・傍若無人な当主が許すわけもないだろうし、 本人はそれも分かってクビだと言い張っているのだと思って、言うのを止めた。 「……だからって、何も外の世界に出なくても……」 「だってあなたの家くらいしか、行くアテが無いし……」 「……メイド長の、わずかな知り合いに選ばれて光栄な反面……複雑な気分です……」 「わずかな、って失礼ね。否定はしないけれど」 幻想郷は全てを受け入れる場所ではあるが、それは行けたら、という仮定の話である。 通常、平平凡凡な人間では行くも帰るも容易いものではなく、十六夜咲夜とて例外ではない。 一度こちらへ来てしまった以上、彼女は二度と幻想郷へ戻れないかもしれない。 「時を操るメイド長」なる肩書きが平平凡凡であるか、という疑問はあるが…… 「神社とか、永遠亭とかに駆け込めば……」 「お嬢様ならともかく、私が言ってまかり通るわけないでしょう」 「けど、友達の友達は友達ですよ?」 「お嬢様とあの巫女はともかく、私とお嬢様は友達じゃないわ……」 「まぁ、確かに。主従関係ですしね」 「ふふっ、今や主従ですらないわ……赤の他人よ」 〇〇は言ってから後悔した。今の彼女に追い討ちをかけるのは非常によろしくない。 彼女は幻符「殺人ドール」の使い手だが、精神的「殺人ドール」には耐性が無いらしい。 「……それにしても、思い立ったら早いものだったわ」 「どうやってこっちに出てきたんです? しかも俺の家の前……なんとなく予想はつきますけど」 「とりあえずマヨヒガに行ったの」 「もう分かったので結構です。でも、よりにもよって俺の家か……」 「……やっぱり、迷惑だったかしら」 やはり後ろめたいのか、咲夜はしょぼんと項垂れてしまった。 「とんでもない。ただ、アパートはあまり広くないとは言っておきます。あと散らかってます」 「どこかの魔法使いの家ほどじゃないでしょう?」 「たぶん……まあ玄関で話すのも何ですから、とりあえず上がってくださいよ」 「ありがとう……お邪魔します……」 幻想郷、紅魔館――― 「小悪魔、レミィは部屋にいた?」 パチュリー・ノーレッジは自分の使い魔である小悪魔に、当主レミリア・スカーレットの状態(主に精神的な)を 確認するよう指示していた。忠実な下僕を失った友人の状態によっては、何らかの対処をせねばなるまい、 と彼女は考えていたのである。 「一応、いるにはいるのですが……責任を感じておられるのか、随分と落ち込んだご様子で」 「布団にくるまってなかった?」 「くるまってました。引きこもりの構えですね、あれは」 「やっぱりね……普段強気に振舞ってる分、打たれ弱いのよね、レミィ……」 以前、パチュリーが大切にしていた魔導書にレミリアが紅茶を零した事があった。 パチュリーはあまり寛大では無いので当然怒ったが、レミリアは開き直って 零す様な場所に置いているのが悪い、と主張した。これがパチュリーの神経を逆撫でし、 彼女は般若のような形相で紅魔館を出ていった。小悪魔はおろおろするばかりで、結局残ったが。 しかし、咲夜が魔理沙の下に身を寄せていたパチュリーに泣きつくまでには、数日とかからなかった。 食事も摂らず、布団にくるまって部屋から出てこない友人に流石の咲夜もお手上げだったようだ。 紅魔館に戻り彼女の部屋を訪れるなり泣いて抱きつかれた時は、冷静なパチュリーでもかなり動揺した。 そして、涙を流して謝る友人を胸に抱きつつ、そういえば以前にもこんなことがあったと思い返し――― 「キリがないわ」 「はい?」 「なんでもない。他に気付いたこととかある?」 「えーと……あとですね、ただでさえ赤い部屋が更に真っ赤になってました」 「……何故?」 「あまりにも鬱だったようで、ナイフで手首を切ったとか」 「自殺? はぁ、莫迦ねぇ……」 「ほんと莫迦ですよね。そんな程度じゃ死なないのに。プフー!」 腕一本吹っ飛んでも死なない吸血鬼が、手首を切った程度で死ぬわけもない。 しかしパチュリーにとっては、レミリアが自殺できなかったという事実よりも、 彼女がそこまで追い込まれている、ということの方が遙かに問題であった。 「ずっと凹まれてても困るのよね……」 「はぁ、そうなんですか? 静かでいいですけど」 「あのね……」 どうにも自分の使い魔は、組織の階層構造が保たれていることの重要さが まるで分かっていないらしい。そう思ったパチュリーが頭を抱えるのは至極当然の流れである。 上から指示や権限を与えられて初めて下は機能する。実際、現状の紅魔館は 当主とメイド長を失い、指揮系統がひどく混乱しているというのに。 「事実上、パチュリー様がトップですよね」 「私は客人よ。だから、何かあった時の責任は取れないわ」 「じゃあ、美鈴さんがトップですか?」 「あら凄い。門番が紅魔館全体に指揮を出して、周りの問題も全て解決してくれるだなんて。 あの門番のどこにそんな潜在能力があるのかは知らないけど、小悪魔ったら物知りなのね?」 「え……ご、ごめんなさい……」 「……だからあの二人には早急に元の状態に戻ってもらわないと困るの」 パチュリーの皮肉で、ようやく小悪魔も気付いたらしい。 妖精メイド達だけに任せていては、最悪の場合、紅魔館の機能が停止する、ということに。 「あ……そ、そうなるとまずいです……咲夜さんが外の世界に出た、って報告が」 「は!?」 「ひぃ!?」 「……ちっ、咲夜、思い切ったわね……神社あたりにでも行くかと思ってたけど、そう来るとは……」 「や、やっぱり〇〇さんのところでしょうか……」 「他に行くところ無いでしょう。半年前、〇〇を外へ送ったのはあのスキマ妖怪だから…… 咲夜もアイツに頼んだに違いないわね。〇〇の場所も知ってるだろうし」 外の世界は、幻想郷の住人にとって未知の世界である。 そんなところに飛び込んで行くのに、彼女は何の躊躇も無かったのだろうか。 それとも、考えている余裕が無かったのか。パチュリーや小悪魔には知る由も無かった。 「どうします? 咲夜さんは戻ってこないでしょうから、こちらから出向くしか……」 「そうね……けど外の世界がどうなってるか分からない以上、レミィは……」 「太陽の光が危ないですし、そもそもあの引きこもりには何も期待できないです。 かと言って、妖精メイドでは些か頼りないですよね……」 パチュリーにとっては小悪魔も頼りないものであったが、面倒なので言わなかった。 そして、小悪魔が先ほどから友人に対して辛辣な言葉ばかり吐くのが気に食わなかったが、 莫迦なのも引きこもりなのも真実なので、やはり言わなかった。 「じゃあ何? 向かえそうなのは、私とあなたと門番ぐらいしかいないの?」 「門番は門番だから門番なんですよ?」 「ごもっともね……それじゃ、私とあなただけ?」 「そうですね……外の世界への遠征だっていうのに、二人しかいないなんて……」 「はぁ……」 翌日、紅魔館――― いつものように門前に仁王立ちしている紅美鈴。 「今やこの紅魔館も、私と妖精メイドだけ……あ、お嬢様もいたっけ」 と、そこに響く轟音。 「……館の中から? パチュリー様の新しい実験かな?」 「美鈴さぁーん!」 そこには、茫然とする美鈴に駆け寄る妖精メイドの姿が! 「もう妹様なんてこりごりさ! 二度と食事の差し入れなんてしないよ!」 「あら、妖精メイドAじゃない。なんとなく事情は分かるけど、どうしたの?」 「大変なんです美鈴さん! 妹様が目を放したスキに扉を破壊して……」 目を放したスキに出ていくのなら扉は破壊しなくていいと思うが、 そこは妹様、次の犯行に備えてキッチリ壊していくんだな、と美鈴は感心していた矢先。 今度は、轟音というよりも、爆音が辺りを揺るがした。 「あ、今壊れたの美鈴さんの部屋ですよ」 「…………」 同時に、美鈴は咲夜の存在が如何に大事であったかを思い知らされた。 通常、このような事態が起こった場合、メイド長である咲夜に指示を仰ぎに行くのが規則だ。 この妖精メイドが昨日の咲夜の事件を知っており、咲夜が不在だと分かっていても、右往左往した後、 美鈴に助けを求めに来るまでには、幾ばくかの遅延時間が生じただろう。 この時間が、妹様、すなわちフランドール・スカーレットの脱走においては "このような"致命的な問題と成り得るのである。 そもそも、食事の差し入れ自体、時を止められる咲夜でなくては務まらない仕事であったので、 別のメイドがそれを行っている時点で、これはある意味、当然の結果だと言える。 「じゃあパチュリー様にお願いして雨を……あ、いないんだっけ」 「どどどどうしましょう!?」 「落ち着いて、まだ慌てるような時間じゃないわ。それならお嬢様にお願いして……」 「お嬢様はまだ布団にくるまってます!」 「ああ、そうだった……必要な時に役に立たない……」 「も、もうおしまいです……紅魔館、バンザーイ!!」 咲夜やパチュリー、小悪魔がここに帰ってきた時、紅魔館が無くなっていたら顔向けができない。 何より自分が、職を失いたくはない。そう考えた紅美鈴は、ある決心をした。 「……安心なさい。私が妹様を止めるわ」 「め、美鈴さんが!? 無茶です! 細切れの肉片にされますよ!?」 「大丈夫よ。そんなウルフマンみたいなことにはならないから」 だが彼女の頭の中では、スプリングマンにバラバラにされるウルフマンと自分が重なって見えていた。 もちろん先ほどの発言は虚勢である。しかし美鈴には退くことは許されない。 「肉片にされない、って……肉片も残らないってことですか!?」 「いや、なんでマイナス方向の解釈なの?」 「だ、だって……」 「ふふっ、忘れたの? 私には虹符「彩虹の風鈴」があるのよ……?」 「あ、やっぱりダメじゃないですか……」 「どういう意味だゴルァ」 自分のスペルカードが自分より圧倒的に弱い妖精メイドにさえ弱小と認識されているのは、 門番としての役割が果たせていないと莫迦にされ続けている美鈴でも、流石にショックであった。 「あ、妹様が来ましたよ!」 「ええ、壁という壁をぶち破ってくるあの赤いお姿はまさに妹様」 赤いものが凄い速度でこちらに向かってくると、もしかしたら何かが三倍なのではないか、 と現実逃避を始める妖精メイドA。しかし美鈴は未だ毅然としていた。 「ほ、ほんとにどうするんですかぁ!」 「ふ……最初から勝てないと思うから勝てないのよ」 「……心構えの問題ってことですか?」 「そう……まぁ見ていなさい。私のスペルカードを……!」 ─────── 「ひどい……」 〇〇の部屋(アパートの一室)に入って開口一番、そう呟く十六夜咲夜。 それが心からの言葉であったことが、彼女の表情からも伺える。 「だから言ったじゃないですか」 「狭いし、散らかってるし、人の住むところじゃないわ」 「……そこまで言わなくても……」 〇〇のガラスのハートにヒビが入ったが、咲夜がそのようなことを気にかける訳もなく。 広く、そして清潔に保たれていた紅魔館に長く住んでいた咲夜は、 〇〇の部屋に対してあからさまに嫌悪感を示していた。 「とりあえず、今すぐ掃除しなさい……」 項垂れながら咲夜が言った。 「はあ……あのですね、メイド長」 「何?」 「掃除が面倒だから、こんな風になってるんじゃないですか」 「でしょうね」 「それで、やれと言われて、やるわけないでしょう」 胸を張って誇らしげに言う〇〇。 「……開き直るつもり? あなた、私に逆らえる身分じゃ……」 咲夜はいつもの調子でそこまで言って、後悔した。今の咲夜は所詮ただの客人であり、 彼女だけでなく〇〇すらも、既に紅魔館におけるヒエラルキーとは関係が無いのである。 加えて仮に階層構造が成り立っていたとしても、今の二人の立場は…… 「…………」 無言で掃除を始めようとする咲夜。 「ちょっと、メイド長……」 「いいわ、私がやるから。あなたはくつろいでて」 「いやいや従者、そういう訳にもいきません。お客人に働かせるなんて」 「無償で宿を借りるのだから、これぐらいはさせて」 「俺も手伝いますって」 「……気持ちだけ、受け取っておくわ」 「いや、だから――」 ―――――― 結局〇〇が気付いた時には、散乱していた本が本棚に綺麗に収まり、広告や新聞紙が紐で纏められ、 多量のゴミが袋詰めで外に置いてあり、エロ本が机の上に並べてある、という有様であった。 咲夜は時間を操ることができる、ということを〇〇は完全に失念していた。 特に紅魔館にいた頃は、掃除をする時は埃が散らないよう、彼女は必ず時を止めていたというのに。 「なるほど、俺ができることなんて無かったわけですね……」 「だから気持ちだけ、って言ったじゃない」 「腐っても鯛、とはよく言ったもんです」 「……何が?」 「職を失っても、やっぱりメイド長はメイド長だなぁ、って感心してたんです」 「…………あ、そ」 〇〇の言葉が恥ずかしかったのか、咲夜はぷいっとそっぽを向いてしまった。 「……さて、綺麗になったし……次はこの部屋を広くしましょう」 「流石に無理です。スキマ妖怪でも無理です」 「さあ、それはどうかしら」 なんということでしょう! 咲夜(匠)が不敵な笑みを浮かべそう呟いた瞬間、 途端に部屋の広さが2倍程にも拡張したではありませんか! 「どう?」 「…………ああ、そういえば……」 時間を操る者は空間をも操る。紅魔館が見た目より広いのは 咲夜が空間をいじっていたからだということも、やはり〇〇は忘れていた。 「これで、健康で文化的な最低限度の生活ができるわね」 「俺の部屋は今まで、生存権すら保障されない魔境だったんですか……」 〇〇は咲夜が日本国憲法第25条を知っていることを不思議に思ったが、 「まあ、メイド長だしな」ということで無理矢理自分を納得させた。 「それじゃ一段落したし、お茶でも淹れますよ」 「お茶? いえいえ、僭越ながら私めが」 「あの、メイド長。本当に気を遣わなくていいですから。普通逆ですから」 「お言葉ながら、既にメイド長ではありません故に……不肖の身ではありますが、どうか」 急に敬語を使い始めた咲夜は、そう言った後、深々とお辞儀をした。 「うわぁ、頭なんか下げないで下さい!」 「いえいえ……この家のご当主はあなた様であるからして、瀟洒な振舞いは至極当然と言えましょう」 「ぬぅ……もう当主でも何でもいいから、その態度と敬語はやめてください、メイド長……」 〇〇は、咲夜が悪乗りを始めたことには気付いていたが、 咲夜自身が解雇されたショックを忘れるために気丈に振舞っているのだと思い、水を差すようなことはしなかった。 一方咲夜の本心はと言うと、泊まるどころか完全に住むつもりになっていたので、 その冗談めいた言葉の中には感謝と敬服の意も込められていた。だから、このようなことも言ってみせたりした。 「あ、それと……名前で、呼んで」 「はい?」 「お嬢様だって、私を「メイド長」とは呼んでいなかったでしょう?」 「ああ、また俺が当主だから、って話ですか」 「もちろん。あと、敬語も禁止」 実は〇〇は、咲夜がそう言い出すであろうことをなんとなく予想していた。 この完全で瀟洒な従者が、主人が敬語や敬称を用いることなど許すはずもない。 「お断りします」 「どうして?」 「だって……俺はずっとメイド長の下で働いていたわけですから。俺が主人だなんてとてもとても」 「……確かに、長年染みついた癖は離れ難いものだけど」 「でしょう?」 「…………なら敬語はともかく、名前……これが最大限の譲歩」 なんで従者に譲歩されてるんだろう、とは言えない〇〇であった。 言えば主従関係を認めたとされて、結局敬語も止めさせられるだろうから。 〇〇は半年前どころか今でも、心から彼女を尊敬していたから、それだけは譲りたく無かった。 ―――― 「お風呂、いただいてもいいかしら?」 こちらの世界に出た後、てんやわんやで疲れの溜まっている咲夜がそう言い出すのも無理は無かった。 「いいですよ。でも着替えとか持ってます?」 「そういえば、メイド服以外持ってきて無いわね……失敗したわ」 おそらく無いだろうと思いつつ、〇〇は聞いていた。 彼女の手荷物と言えば、スペルカードと銀のナイフ、他に少々の小道具程度だったからだ。 「じゃあ、俺のシャツでもいいですか? ちょっと大きいと思いますけど」 咲夜は何の躊躇もなく「それでいい」と言おうとした。 が、迂闊にも、白い素肌の上に〇〇の普段着ている衣服を纏う、という行為を鮮明に思い描いて。 「しょ、しょうがないわね……早く持ってきなさい」 少しばかり動揺したり、色白の顔にやや赤みがさしたりするのも、しょうがなかった。 ―――― 咲夜が体を清めている間に、〇〇は咲夜の衣服を洗ってしまおうと考えた。 しかし、綺麗に畳まれて洗濯籠に入れられているメイド服を手に取ったところで、〇〇はふと疑問に思った。 「……これ、洗濯機で洗っていいのか……?」 洗濯機には「手洗い」という項目もあるが、彼女の意見も聞かずにそれを行うのは暴挙だろうか。 やはり、手で直に洗うべきなのだろうか。まだ持ち主の温もりが残る衣服を手にしたまま、〇〇は葛藤していた。 そんな中、〇〇はその疑問を抱えると同時に、半年前まで抱えていた疑問を一つ解決できた。 籠の底に入れられていた、彼女の肌着を見て、こう呟く。 「……パッドじゃ、なかったんだ……」 その直後、風呂場から「ガン!」という激しい音がした。 咲夜が風呂桶だか持っていたシャワーだか、とにかく何かを落としたらしい。 しかし、〇〇にとって大事なのは何を落としたか、という事より。 「……あれ……聞こえ、て……」 〇〇は「血の気が引く」という言葉を、今身を持って体感した。 女性の脱いだ衣服を手に取り、あまつさえ肌着を観察し、その持ち主に感想を述べるなど。 彼の脳裏には、つい最近読んだ漫画の「変態!変態!」という一コマが映し出されていた。 いたたまれなくなった〇〇は、その場から脱兎の如く逃げ出した。 とは言っても、おそらく彼に科されるであろう制裁を、潔く待つしかないのだが。 どうせこの部屋は倍の広さになったところで、逃げるような場所も無いのだから。 ―――― 幻想郷、紅魔館――― 「もうおしまいなの? つまんなぁい」 「さ、咲夜さん、パチュリー様……早く、帰ってき、て……」 そう呟いて、紅美鈴は地に倒れ伏した。 美鈴は、痛みに耐えてよく頑張った。妖精メイドAも感動した。 しかし悲しいかな、彼我実力差は如何ともし難いものであった。 「勝てないと、思うから……勝てない……」 「でもさ、勝てると思ったら勝てるの?」 「そんなわけ……ないですよ、ね……」 「でしょー?」 スペルカードルールで勝敗が決まった場合は、相手の命までは取らないのが原則である。 が、狂気の吸血鬼、フランドール・スカーレットにそのような常識は通用しない。 何の気まぐれか今は美鈴との会話に興じているが、これがいつキュッとされるとも限らない。 「ねーねー、お姉様は? 咲夜は? パチュリーは?」 フランの機嫌を損ねたくない美鈴は、とりあえず紅魔館の現状を嘘偽りなく伝えることにした。 ありとあらゆるものを破壊する程度の能力を持つ彼女が「じゃあ私も行く!」などと言い出さないことを祈りつつ。 ―――― 〇〇の部屋――― 上気した顔の咲夜が、少し大き目のYシャツを纏って居間に現れた。 〇〇は彼女の纏められている髪が下ろされている姿を初めて見たが、 先程の一件でいっぱいいっぱいだったので、そんなことに気を取られている余裕など無かった。 ちなみに、ボタンの外れたYシャツの隙間から咲夜の美しい鎖骨が見えていたり、 下に至ってはあらかじめコンビニで買ったインナーを着けているだけなので 生足が艶めかしく伸びていたりしたが、やはり〇〇の視界に入ることは無かった。 「さっぱり、したわ……」 「………………」 「……羽織るもの、ある? 湯冷めはしたくないの」 「あ、はい……」 とは言ったものの特にそれっぽいものが無いので、とりあえずジャケットを渡す〇〇。 〇〇は罵詈雑言を浴びせられた挙句引っ叩かれるぐらいの覚悟をしていただけに、 咲夜があからさまに話題を避けているのがかえって不気味であった。 「ありがとう……」 「いえ……それより、あの」 本当は、咲夜は全然そんなことを気にしていないのではないか、と思った〇〇は、 自分から先手をうって謝ることにした。どちらかと言えば、この空気に耐えられなくなった意味の方が強かったが。 「詰めてないわ」 「…………」 あっさりとその目論見は崩れ去った。結局行く手を遮られて、いっそ開き直る〇〇の姿は実に滑稽かな。 「詰めてるって噂があったので、つい」 「『つい』じゃない……ちょっとした犯罪者よ」 「本当にごめんなさい」 咲夜は、自身も『つい』元主人に暴言を吐いてしまったことを未だ後悔していたし、 素直に謝られては怒るに怒れなくなってしまい、結局それ以上〇〇を追い詰めるようなことはしなかった。 同時に、もし仮に、紅魔館に帰ることがあったとしたら……その時は噂の元に制裁を科すことを固く決心した。 ―――― 波乱の一日であった為か、〇〇はいつも以上に腹を空かせていた。 それは咲夜も同じだったようで、〇〇が夕食の提案をすると即座に乗ってきた。 咲夜は料理の腕前に定評があったので〇〇としても任せたいところだったが、 こちらの世界は久方ぶりということで見慣れないものが多いらしく、結局〇〇が調理することになった。 そこまでは、良かった。しかし、夕食ができるなり咲夜が満面の笑みで。 「はいご主人様、あーん」 「じ、自分で食べられますから」 「紅魔館ではこうしてたのよ? はい、あーん」 少なくとも自分が知っている限り、お嬢様はこのような事をさせていない。 自分が尊敬していたメイド長は、こんな俗っぽい人だっただろうか。 解雇されたことでショックのあまり、何か大事なものを失ってしまったのだろうか。 そんな不安感を抱きつつも、また悪乗りが始まった事実を認識した〇〇は、心の中で大きな溜息を吐いた。 「……そんなに、嫌?」 上目使いで〇〇を見る咲夜。子犬のような表情は普段の毅然とした態度からは想像もできない。 これで〇〇が断れないことを分かっていてそうしているのであれば、かなりタチが悪い。 「……咲夜さんは、ずるいです」 〇〇がそう言うと、咲夜はまた元の笑顔に戻って。 「ごめんなさい。はい、あーん」 「……もうどうにでもなーれ……」 〇〇は覚悟を決めて、美味しくいただくことにした。無論、味など分からなかったが。 その後、仕返しとばかりに咲夜に「あーん」を強要したが、これが完全に逆効果で、 むしろ〇〇への精神的ダメージが倍になっただけであった。 ―――― 「ご馳走様でした」 「お粗末様でした……」 げんなりしている〇〇に、咲夜が思い出したように言う。 「やっと、呼んでくれた」 気恥ずかしかった〇〇は、あえて聞こえない振り。そんな下手な演技に気付かない咲夜ではなかったが、 自分も思い出して少し恥ずかしくなったのか、それきり黙りこくってしまった。辺りに流れるなんとも温い空気。 「……あの……」 「な……なに?」 こういう空気が苦手な〇〇は、なんとか空気を変えたかったので、妥当そうな話題で流れを切った。 「……今日は疲れたんで、もう寝ます」 「あ……もうそんな時間なのね。ごめんなさい、色々」 「いえいえ。ああ、そうだ……寝床、は……」 〇〇と咲夜の視線の先には、最近買い換えたものの万年床となりつつある布団が一式。 一人暮らしの家に、布団が二式以上無いのは当然のこと。〇〇もそんなことは分かっていたし、 だからこそ自分は毛布にでもくるまって寝るか、なんて考えていた矢先に。 「……いい、わよ……」 「…………」 「…………」 「……何が、ですか……」 〇〇はなんとなく分かっていたが、一応言ってみた。顔に赤みを差しながら。 咲夜もまた赤くなりつつ「一緒に……」などとぼそぼそと呟いている。 〇〇には、咲夜の考えがまるで理解できなかった。また悪乗りなのか。それとも完全で瀟洒なメイドは、 この何の取り柄もないただの青年に、まさか気でもあるのだろうか。 半年前、幻想郷を出る際にもう二度と会うことは無いと思っていた人と、再会を果たした。 しかし彼女が自分の元へ来た理由も所詮、自分がこちらの世界で、唯一頼れる人間であったからに過ぎない。 名前で呼ばせたり、飯を食べさせたりなんていうのは、彼女の気まぐれか道楽だろう…… と考えたところで、〇〇は毛布を被って床に転がった。簡潔に言えば、逃げた。 自分に気があるのではないか、など世迷い事にも程があると、気付いてしまって虚しくなったのと。 上も下も布一枚、しかも下は最低限しか覆われていない女性と寝床を共にして、 一晩中耐えられる自信が無かったから。彼女がどれだけ魅力的な女性か、知っているから尚更。 明日服を買ってきます、とだけ言って、〇〇は目を閉じて考えるのをやめた。 「…………」 咲夜は悲しげな表情で何も言わぬまま、本来の持ち主がいない布団に身を沈めていった。 ─────── 床に着いたはいいものの全く眠れなかった二人は、 少しぎくしゃくした関係のまま、翌日の朝を迎えた。 しかし、それから一日二日はそんな関係が続いたものの、後はそう悪いようにはならなかった。 それも当然の話で、元々二人はお互いの事が嫌いではない。 紅魔館ではメイド長と下っ端という関係ではあったものの、私的な会話を交わす程度の 交流はいくらでもあったし、お互い少なからず好意を持っていたことも事実であった。 だから、ちょっとした心の隔たりなど、無いも同然だった。 〇〇の買ってきた服がセンスの欠片も無かった為、後日一緒に買いに行って、 あれでもないこれでもないと目移りする咲夜を微笑ましく見守る〇〇、などという光景も見られたり。 そういった共同生活を通して、〇〇はなんとなくだが理解した。 紅魔館では見られなかったような笑顔を、今、自分に向けてくれる咲夜。 自惚れで無いならば、咲夜は僅かばかりにせよ自分に想いを寄せてくれているのだということを。 朴念仁ならあのような行動も「またまた御冗談を」で済ませるのであろうが、 幸か不幸か〇〇はむしろ敏感な方だった為、共に過ごす時間が多ければ気付いてしまうのは当然だった。 しかし、〇〇は気付かない振りをした。彼女への親愛、尊敬、憧れといった情に 静かに混ざり溶け込んでいる、咲夜への好意に気付いていながらも。 彼は、知っていた。出会いがあれば別れがある、その怖さ。 そして親密になってしまえば、それだけ別れも辛くなってしまうことの辛さを。 だから、咲夜とはこれからも紅魔館に居た時の様に、多忙な毎日でありながら、 働く喜びを共有できる同僚、欲を言えば気の置けない友人のような関係でありたいと思っていた。 ―――― 「私のこと、どう思ってる?」 が、その〇〇の願いは咲夜によって、無残にも打ち砕かれた。 「そこで問題だ! この咲夜さんの質問をどうかわすか?」 3択 1つだけ選びなさい。 答え①賢い〇〇は突如打開のアイデアがひらめく。 答え②お嬢様が来て助けてくれる。 答え③かわせない。現実は非情である。 「私は、あなたが……好き……」 「!?」 「かも、しれない……」 咲夜自身が未だ自分の気持ちを本当に理解できてはいないからか「かもしれない」という あやふやな言葉ではあったが、それでも〇〇の道を塞ぐには十分過ぎるものだった。 結局この追撃により、〇〇は強制的に③を選ばされることとなった。 ―――― 〇〇が紅魔館を離れると聞かされた時は、頭が真っ白になって、心も酷く乱れたものだった。 「悲しい」だとか「行って欲しくない」だとか、そういう感情がごちゃ混ぜになって。 けれどそれは、小悪魔が〇〇との別れの際に涙した理由と同じ、 友人、同僚、家族と離れるのが辛いとか、そういう感覚なのだろうと思っていた。 〇〇がいなくなった後、毎日なんとなく物足りないと思っていたのも、そうに決まっている。 それから数ヶ月が経ったが、その心のスキマは埋まらなかった。 小悪魔はとうにいつもの調子に戻り、しっかりと仕事をこなしているというのに、 私ときたら効率が落ちているなんてものではない。失敗して、マイナスになることも多々あった。 久方ぶりにお嬢様に烈火の如く怒られて、初めて私は自覚した。 〇〇の存在が、自分の中で予想以上に大きくなっていたこと、 そして彼に会えないことが、辛くて悲しくてしょうがないのだということを。 私は、誰かを恋愛感情的な意味で好きになったことは無い。 だから、これがそういう気持ちなのかは自分でも分からない。 ただ、会いたいと思った。顔を見たいと思った。声を聞きたいと思った。 しかし、私は紅魔館に尽くす身であるが故、 片道切符の外の世界への旅など、お嬢様に許していただけないだろう。 いや、仮に出られたとしても、私が居た頃と大きく変わってしまったであろう向こうの世界で、 生きていける自信が正直なところ、まったく無い。 ―――― 「……だから紅魔館を出た時、あなたのところへ来たの。 念願の外の世界へ、経緯はどうあれ出ざるを得なくなってしまったのだから…… あなたにまた会えて、本当に良かった。本当は、はしゃぎたいくらい嬉しかった」 「……それで、あんなことを?」 揃って「あんなこと」を思い出し、赤くなる二人。 「……けれど、あなたは何をしたって、全然相手にしてくれない」 「…………」 至極当然である。〇〇の取った行動と言えば、 彼女の想いに気付く前は、咲夜の事があまりにも分からなさ過ぎて、ひたすら突っぱねた。 気付いた後も、今までの関係を保つことにひたすら努めてきた。 つまりこの状況こそ咲夜が〇〇を追い詰めているようにも見えるものの、 その実、事態を引き起こしたのは〇〇が咲夜を追い詰めたのが原因であったのだ。 「いつか、あなたが振り向いてくれると思ってた…… だけど、あなたが私を迷惑だと思うだけなら、こんなのただの空回り……」 「……咲夜さん……」 「拒絶されたくない、嫌われたくない……こんな気持ちになるの、自分でも不思議だと思う。 ふふっ、完全で瀟洒な従者なんて、とんだお笑い草……」 「………………」 「私なんて、いない方が良かった?」 「……そんな訳が無い。美人で可憐で優しい咲夜さんが 俺みたいなのと一緒にいてくれる、それだけで人生の幸福全てを使い果たした気分です」 「…………」 咲夜の白い肌がまた朱に染まっていく。満更でも無く思えるのは、惚れた弱みの所為なのだろうか。 「……でも……咲夜さんの気持ちには、応えられません……」 「え……」 一転して泣きそうな顔をする咲夜に、〇〇は心を痛ませた。 気丈に振舞ってはいるものの、内心〇〇も泣きたい気分だった。 自分を好いてくれている人がいて、自分もその人が好きなのに、 なぜそれを不意にする言葉を自分で言わなければいけないのか。 「咲夜さんは、俺とは少し違う世界に住む人で……俺なんかとは、その存在価値も雲泥の差です」 「………………」 「近いうちに「お迎え」が来ることは確実でしょう……というか、もう向かっているかもしれない」 「………………」 「どのような関係になろうと、俺と咲夜さんはもうすぐ別れることになる。 なら、俺は咲夜さんの気持ちを知らない、咲夜さんも俺の気持ちを知らない。 それでいいじゃないですか。これから、と言っても短い間でしょうが、このままの関係で」 「絶対、嫌」 目に涙をいっぱいに溜めながら、咲夜が言った。 「あの、だから……」 「そんなの関係ない。あなたの気持ちを聞いてるの」 「………………」 「もう一回聞くわ。私のこと、どう思ってる?」 逃げに逃げた〇〇も年貢の納め時らしかった。そもそも〇〇が話の方向を変えようとした時点で、 咲夜もまた、〇〇が咲夜のことを本当は嫌いではない、ということに気付いてしまった。 だから、言ってみれば〇〇は自爆したのである。それで観念したというのもあるが、 やはり〇〇もただの人間であり、咲夜から向けられる純粋な想いに気付かない振りをして逃げるよりは、 真っ直ぐに受け止めて、そして自分の想いを伝えたかった。 「……すぐに、離れ離れになるかもしれませんよ」 「ならないわよ」 「「お迎え」が来たらどうしますか?」 「撃退するわ」 「俺、だらしないですよ」 「知ってる」 「部屋散らかってますけど」 「毎日掃除しましょう」 「あと、狭いです」 「広くすればいいじゃない」 「………………」 「他に解決して欲しいこと、ある?」 〇〇は、ふぅ、と溜息をついて。 「……あと一つだけ」 「なに?」 「あなたが好きで好きでしょうがないんですが、どうしましょう」 「恋人から始めればいいじゃない」 「友達からではなく?」 「お互い好きなのに、そんな遠回りしてられないわ」 「好き、かもしれない……じゃ、なかったんですか?」 「……意地悪。好き、大好き……」 〇〇に抱きつく咲夜。〇〇はそれをしっかりと受け止めて、優しく抱き返した。 咲夜は涙する自分の顔を、〇〇は真っ赤になった自分の顔を見られたく無くて、 顔を相手の肩口に埋めていた。お互いの温もりを感じながら。 「ずっと……一緒に居てくれますか?」 「……こんな風になって……もう完全でも瀟洒でも何でもない私なんかで、本当にいいの?」 「俺の前では、ありのままの咲夜さんでいてくれると嬉しいです」 「じゃあ、いつものメイド長だった私は、嫌いだった?」 「まさか。最初に俺が惚れたのは、そういう咲夜さんだったんですよ? ただ……飾っていない咲夜さんはもっと可愛くて、こっちの咲夜さんは独り占めしたいなって」 「欲張りね。でも、私も他の人には見せたくない。あなただけに、知っていて欲しい……」 「嬉しいです。でも俺は強欲なんで、他にも欲しいものがあります」 「私も、まだあげたいものが沢山あるわ。本当に好きな人ができるまで、取っておいた大切なもの」 そう言うと咲夜は〇〇の顔を自分と向き合わせ、有無を言わせず〇〇の唇に自分のそれを重ねた。 突然で〇〇は戸惑ったが、すぐにそれを受け入れ、やがて二人はお互いの唇を啄み始めた。 何分かそうしているうちに、やっと咲夜が満足したのか、〇〇の顔から自分の顔を離した。 「ぷはっ……い、いきなりですね……」 「ふふ、さっきも言ったじゃない……遠回りは嫌いなの」 「最初がこれだと、後が凄いことになりそう……」 「大丈夫よ……時間はいくらでもあるもの」 「……そうですね。じゃあとりあえず、もう一回……」 「んっ…………」 ―――― その頃――― 〇〇の部屋の玄関前には、二つの陰。 「入りづらい」 「そうですねぇ」 「今入ると完全に悪役よね」 「いつ入っても悪役じゃないでしょうか……」 「あなた、小さくても悪魔でしょ。悪役らしく行ってきなさい」 「嫌ですよ! 咲夜さんに殺されちゃいますよ!」 「あなたが死んでも代わりはいるもの」 「酷い……」 某妖怪の大サービスで、〇〇のアパートの前に出してもらったパチュリーと小悪魔。 しかし様子を探ろうと耳をすませてみれば、聞こえてくるのは 大好きだのずっと一緒だの可愛いだの惚れただの、糖分高めの会話ばかり。 来るやいなやこれでは、うんざりするのも無理はない。 やがて諦めたように、パチュリーが言った。 「……まあ、折角ここまで来たんだし、お茶の一杯でもいただかないとね」 「お、行きますか?」 「あなたも行くのよ……」 「ですよねー。はぁ……戦いたくないなぁ」 「莫迦。誰も戦うなんて言ってないでしょう」 「え? 今の、そういう流れでしたよね?」 「弾幕ごっこで全部解決しようとするのは、ただの愚行よ」 ―――― 一ヶ月後、紅魔館――― 「……あと二ヶ月。はぁ……」 咲夜の盛大な溜息。椅子に座った彼女の背中からは哀愁が漂っている。 「パチェ……あれ、なんとかならない?」 「彼女のこと? 無駄よ、ああなったら何言っても聞こえないもの」 「咲夜がここに帰ってきてから一月経つけれど、毎日あんな調子…… 前と違って仕事にミスは無いようだけれど、あれじゃこっちまで滅入ってしまう……」 パチュリーが二人に示した案は、咲夜が紅魔館を離れられないなら、 〇〇が紅魔館に住めばいいじゃない!というものであった。 当然ながら、急に言われてすぐ了承できる内容でもないので、 〇〇は様々な身支度や手続きに時間が欲しいと告げた。 しかし境界を操る妖怪、八雲紫がそろそろ冬眠の時期に入ってしまうため、 結果として咲夜が先に紅魔館に戻り(当主のカリスマを即座に取り戻す為にも)、 紫の目覚める三ヶ月後に〇〇が後を追う形で紅魔館に向かうことになった。 今回の騒動で一番迷惑を被った紫に対し、それを引き起こした原因のレミリアが 相応の謝礼を用意させられたのは言うまでもない。 「……だけどね、レミィ。これからが本当の地獄よ」 「あら、何故?」 「〇〇がこっちに来たら……いえ、帰ってきたらと言うべきかしら。 とにかく、咲夜と〇〇が再会を果たした時の事を考えてみなさい」 「いいじゃない。咲夜やパチェが居れば、私だって文句は言わないわよ」 「その日から毎日のように、人目も憚らずイチャイチャする二人を見ても、同じことが言えるかしら?」 「……なん……だと……」 「ああ、考えただけでも恐ろしい。本当に「はい、あーん」とかやったりするのかしらね」 「……それが何かは分からないけど……何となく、私にとって良くないものなのは、分かる……」 レミリアは先行き不安ながらも、自分に仕える者たちが、経緯はどうあれ 幸せになってくれるというのはそう悪くないものだと思えていた。 「〇〇が帰ってきたら、少しぐらいは祝ってあげましょうか」 「へぇ……レミィがそんなこと言うなんて、明日は槍でも降るの?」 「槍なら間に合ってるわ……パチェ、私、変わったかしら?」 「ええ、とてもね。でもそれはきっと良い事よ」 「そう……変わったとしたら、きっと人間のせい。全く困ったものね……」 レミリアとパチュリーは、また溜息をついている咲夜を一瞥すると顔を見合せて、やれやれ、と呟いた。 二ヶ月後、紅魔館でまた一騒動あるのは、別の話である――― ~ FIN ~ ―――― 二ヶ月後、紅魔館――― 「なあ、〇〇」 「な、何でしょう」 レミリアに招かれ、お茶の時間を彼女と共に過ごす〇〇。 当主が下っ端を誘うなど前例が無く、〇〇は自分の態度が気まぐれなレミリアの機嫌を 損ねやしないかと、かなり緊張気味であった。 「……そう固くなるな。取って食べようってわけじゃない。お望みとあらば話は別だけど」 「望んでませんから」 「心配しなくても、お前は良く働くし人当たりも悪くない。人間の中では割と好きな方。5番目くらい?」 「恐縮です……」 「それで、本題だけど……とりあえず、お前達の行動は少し目に余る。 咲夜はいい従者だし、お前も知らない仲では無いから多少は目を瞑るつもりでいたけど」 「……何の事でしょう」 「分かってるでしょう? 具体的に言うと、出会い頭に見つめ合ったり、 廊下で人目も憚らず抱き合ったり、飽きもせず綺麗だとか可愛らしいとか褒めちぎったり…… 咲夜も咲夜で、拒否するどころかもっと褒めてと言わんばかりのオーラを出してるし」 外面だけ装って自分の気持ちを誤魔化し続けて、耐えに耐えていた二人が、 遂にその束縛から解放された。そして結ばれたと思いきや、諸事情により すぐに離れ離れにたってしまい、三ヶ月のインターバルを挟んで、念願の再会を果たした。 その反動からか、二人は所構わずイチャつくようになり、今や紅魔館全体が砂糖成分で汚染されつつあった。 レミリアは最初こそ自分にも責任が無いとは言えないため黙殺していたが、 流石に毎日毎日甘ったるい会話を垂れ流されては敵わない。 そこで直々に本人を呼び出して、ちょっと苦言を呈しようと思ったのだが、これが良くなかった。 「……ああ、そんなことですか。それはしょうがないです。まず、自分がふと咲夜さんの方を見ると、 向こうも何故かこちらを見ていることが多いので、自然と見つめ合う回数は増えてしまいます。 加えて、咲夜さんが俺に気付いていない時に咲夜さんの方を見ると、これも何故か分かりませんが、 咲夜さんがこっちに気付いて俺を見てくれるんですよね。それで、咲夜さんの顔を見れば その吸い込まれそうな瞳に心が奪われてしまうのは当然ですから、見つめ合っている時間も 自然と長くなってしまうと。いや、俺にとっては全然短いくらいなんですが、色々と仕事もありますし。 次に、抱き合っていると仰られましたが、これにも理由がありまして、近くにいれば その全てを包み込むような母性を感じさせられるが為に気がつけば抱きついているという有様で、 いやはやお恥ずかしい。とは言っても実際そうなのは半分くらいで、あとの半分は 咲夜さんから抱きついてくるんですけど。まあ結果的にお互いが抱きしめ合う形になるわけですから、 そういう過程にはあまり意味が無いですよね。お互いそうなることを望んでいるわけですから。 あと褒めちぎったって仰られましたけど、芸術作品を鑑賞して美しいと愛でることを 褒めちぎったとは言わないでしょう。過度に褒めた場合は褒めちぎったと言うかもしれませんが、 咲夜さんは実際綺麗だし、やはりお嬢様が完全で瀟洒な従者と誇るだけのことはあるのですが、 時に見せる仕草も実に可愛らしいのもまた事実。特に俺が好きなのは本当に心から笑っている時で、 俺が以前紅魔館に居た時には見れなかった笑顔が俺に向けられていると思うと光悦至極です。 そういったところも全部含めて俺は咲夜さんが好きになったわけですけど。あの、聞いてます?」 砂糖を見るのも嫌になるような惚気を聞かされて腹が立ったので、 とりあえず瓶に入った紅茶用の砂糖をまるまる〇〇のカップに注ぎ込むレミリア。 「真っ白で紅茶が見えないんですけど」 「一度、医者に見てもらった方が……いえ、もう手遅れかしら……」 「まあ、恋の病は医者には治せないでしょうし」 「……だめだこいつ……早くなんとかしないと……」 「で、何の話をしてたんでしたっけ」 「もういい……ああ、そういえば、お前の惚気話を聞いていて思い出した」 「惚気だなんてとんでもない。普段の行動にはちゃんと理由が」 「それはもういい。それで、パチュリーが言ってたんだけど…… お前達は俗に言う「はい、あーん」もやるの? 私には何のことだか分からないけれど」 「ああ、毎日やりますよ」 「毎日……何を示しているの、その名称は」 「う~ん……実際にやってみた方が早いですね。ただ相手が必要なんで、誰か呼びましょうか」 「……私でいいじゃない?」 「え……あ、いや……これ、いいのか……?」 「私がいいって言ってるんだからいいでしょ。それとも私じゃ不満?」 「いえ、そんなことは……」 「なら、さっさとしなさい」 〇〇は渋々、お茶請けに用意されていたチョコレートクッキーを一つ摘んで レミリアの口元に運んだ。何をしているのか分からないといった様子のレミリア。 「はい、あーん……あ、口開けて下さい」 「…………!」 〇〇はクッキーを口元に運んで、口を開けろと言う。 即座にその意味を理解したレミリアは一瞬で真っ赤になった。 だが恥ずかしくはなったものの、やれと言ったのは自分だし、 ここで撤回するのも彼女のプライドが許さなかった。 「……分かっていただけたなら、もういいですよね」 「…………」 「って、なんで口開けてるんですか」 「……早くして」 「え?」 「恥ずかしいからさっさとしろって言ってるの」 ―――― 「なんだかんだで、もう4個食べてますよ」 「うるさい、次」 「はいはいっと」 〇〇は今までレミリアに対し畏敬や恐怖という感情しか抱けなかったが、 こうして接してみると割と普通の(?)少女のようにも思えて、しょうがないな、という感じで 自然とくだけた態度になってしまっていた。 レミリア自身も何故か悪い気はしていなかったので、それを咎めはしなかった。 「……ふむ、むぐ……なる、ほど……」 「物を食べながら話さないでください」 「ふん、この紅魔館では私がルールよ」 「そんなこと言うのなら、6個目はお預けです」 「私としたことが作法がなって無かった」 「分かっていただけて嬉しいです」 〇〇に与えられた5個目のクッキーを咀嚼しながら頷いているレミリア。 レミリアは、咲夜が〇〇と毎日のようにこれをしている理由が、なんとなく分かった。 自分ももし好意を持っている相手がこれをやってくれたら、ちょっとカリスマが危ないかもしれない、 などと考えて一人で悶えている彼女は、〇〇に奇異の目で見られていたが。 「……それより、お前の指」 レミリアがクッキーを食べる際にそれを持った〇〇の指も咥えてしまうので、 〇〇の指はクッキーの粉よりもレミリアの唾液に塗れてしまっていた。 「ああ、お気になさらず……」 そう言いつつ、自分の指を口に含む〇〇。 〇〇にとっては、クッキーの粉がついていたから思わず舐めてしまった、 くらいの感覚だったのだが、口から離れた指にはブレンドされた二人分の唾液が。 「待て、お前は何をしている」 「え、いや……特に深い意味は無いです」 「意味もなく人の唾液を味わう習慣があるのか、お前は」 「……一度、手を洗ってきます」 「まぁ、待て」 席を立つなりレミリアに呼び止められ、立った体勢のまま硬直する〇〇。 レミリアのニヤニヤした顔に、〇〇は悪意を感じずにはいられなかった。 「6個目」 「……それは、これを洗い流した後で」 「お前だけ、私の体液の味を知っているのはずるいわ」 「……嫌な予感しかしない」 「〇〇は賢いな。さぁ座れ、そしてその指を私に捧げろ」 「一応言っておきますけど、捧げるのはお茶請けの方であって、指じゃないですよ」 「どっちも頂くから関係ないわ。ほら、早く」 「分かりました、分かりましたよ……はい、あーん……」 「あー……」 その時、この空気に不釣り合いな、カシャン、という何かが割れる音が響いた。 二人が扉の方を見ると、茫然と立ち尽くす咲夜。その足元には割れたカップ、赤い絨毯に染み込む紅茶。 レミリアは咲夜にあらかじめ、ある程度時間が経ったら無くなった紅茶を足しに来い、と告げていたのだが、 行為に夢中になり過ぎた所為か、それはとうに記憶から消え去っていた。無論、最初に咲夜に淹れられた 紅茶もほとんど減っていない(〇〇の紅茶は砂糖の山に覆い尽くされていて、既に飲むことは叶わないが)。 「さ、咲夜さん……いつから……」 「……咲夜……これは、その……」 「…………どうして……二人が……」 ―――― 紅魔館に咲夜が戻った時の話 「あ、咲夜さん……お帰りなさい」 「ただいま美鈴。お嬢様は?」 「自室に君臨する皇帝となっておられます」 「……なるほど」 「それにしても、戻ってきてくれるとは思いませんでした。 私、てっきり咲夜さんは〇〇さんと一緒になって、戻ってこないものだと」 「実際、お嬢様に嫌われて、もう戻れないものだと思っていたわ…… ところが、お優しいお嬢様は私のような人間風情がいなくなってしまっただけでも 悲しんで下さった。勿論、あの非礼を詫びて許して貰えるとは思っていないけれど……」 「許していただけますよ。というか多分、逆になると思います」 「……それに、パチュリー様にも申し訳ないし。パチュリー様が私の元を訪れた時の気持ちは、 以前私がパチュリー様に戻ってくださるように懇願した時のものと、同じだったかもしれないし……」 「恩を仇で返すようなことは、したくないですよね」 「お嬢様に関しては、完全に仇で返した形になるけどね……」 「それを言っちゃあおしまいです……」 ―――― 「ねーねー、咲夜」 「何でしょう、妹様」 「この間さ、〇〇とキスしてたよね」 「……見ておられたのですか。ですがこの間と申されましても、 それは日課ですので、いつ頃の事を示しておられるのか」 「ああ、そう……まあそれはいいの。それより、キスって美味しいの?」 「……美味しいですよ」 「魚のキスとどっちが美味しい?」 「そういう知識はどこで覚えてくるんですか?」 「ね、どっち?」 「……9:1くらいで、彼とのキスの方が美味しいです」 「ふーん。そんなに美味しいなら私も」 「駄目です」 「……どうして?」 「駄目なものは駄目です。人間が彼とキスすればかなりの活力回復になるのですが、 吸血鬼がキスするとたちまち猛毒に侵されて死んでしまうのです」 「あ、それ知ってるよ。和尚さんと水飴の話だ」 「だからどこで覚えてくるんですか?」 「むー、独り占めするなんてずるいよ……あ、でもその話だと一休さんは結局食べちゃうんだよね」 「そうですね……って」 「ちょっと〇〇のところまで行ってくるね!」 「だから駄目ですって!」 ―――― 「唾液を交換だなんて、不潔」 「咲夜さん、機嫌直して下さいよ……」 「私だって、そんなことしてないのに……」 「……じゃあ、しますか?」 「……そ、そんなこと言っても、懐柔されないわよ」 「咲夜さんとなら、違う交換の仕方がありますけど」 「え?」 「間接じゃなくて、直接……」 「え、ちょ、んっ」 (省略されました・・全てを読むにはあなたの妄想をスレにぶちまけて下さい) うpろだ1342、1346、1359 ─────────────────────────────────────────────────────────── 門番に賄賂を渡し、一気に走り抜けるとそこは愛しの桃源郷。 大福2個とは、紅魔館の門も安いものだ。 妖精メイドと軽く挨拶を交わすと、目当てのその人が見えた。 「さっくやさーーーん!」 声をあげると、彼女が気づいてくれた。 「あら、いらっしゃい。」 「こんにちは咲夜さん。紅茶を――」 「ごめんなさい。いまちょっと忙しいの」 本当に忙しそうな表情で、笑えるほどの即答だった。 「それなら仕方ない。日を改めますか」 肩をすくめ、そういって踵を返すと、不意に声をかけられた。 「待って。せっかく来ていただいたお客様を手ぶらで帰らせては、紅魔館の名が廃ります。 幸いもうすぐ終わりそうですし、そうね……図書館で待っていてくださる?」 「喜んでぇっ!!」 そんなことをにっこりと言われたら、これ以外の選択肢はない。 予想外の展開だ。今日は何かいいことがあるに違いない。 諸君、私は本が好きだ。漫画が好きだ。小説が好きだ。歴史本が好きだ。学術書……はあんまり好きじゃない。 魔理沙からこの図書館を聞いたときは心が躍って、体まで踊りだしそうだった。 そうだ、咲夜さんに始めて会ったのもあのときが最初だったな―― 「何やってるの○○?ぼーっとして」 「あ、パチュリー様。」 図書館の主に声をかけられ、トんでいた意識が戻ってくる。 「いえ、ちょっと昔を思い出していて…」 「なにジジくさいこと言ってるのよ。私よりずっと幼いくせに」 そうだった。見た目にだまされがちだけど、この屋敷の人々は大半が年上なんだ。 備え付けの椅子に腰掛けると、小悪魔が紅茶をくれた。礼を言って喉を潤す。 「で?今日は何を借りるの?」 「あ、今日は借りません。咲夜さんのお仕事の終わりを待たせていただきます」 「あらそう?」 なんだか残念そうな顔をされた。 と思いきや、真剣な顔つきになっている。今日は表情の忙しい日のようだ。 「ねえ」 「ん、何ですか」 「あなたって、咲夜が好きなの?」 紅茶吹いた。 「……行儀が悪いわよ。」 「すみません……でも、いきなりなんですか」 「いきなりかしら?私は、切り出すのにずいぶん時間をかけたつもりよ」 心なし、不機嫌な顔をしている。 考えてみれば、そうかもしれない。半年、いや、もっとか。彼女に会ってから、俺は―― 「返事が無いのが、一番失礼よ」 顔を上げる。どうやら、また呆けていたらしい。 「で、どうなの」 やたら真剣な表情でこちらを見つめてくる。これは―― 「…パチュリー様。俺、実は――」 ――これは、答えないわけにはいかない類の話だ。 「実は、メイドさん萌えなんです」 「…………は?」 「ヘッドトレスとかエプロンドレスとか、そういうものになんかこう…リビドーを感じるんです」 「ちょ、いや…え?」 困惑している。まあそりゃあそうだろうな。 だけど、こうなりゃ意地だ。止めるわけにはいかない。 「この図書館に来て、彼女に会って……始めはもの珍しさで。 だんだん、ヘッドトレスを見てると、綺麗な銀髪やかわいいみつあみに目が行って、 エプロンドレスを見てると胸に目が行って、さすがにまずい、と顔を上げると目が合って……。 そうこうしているうちに、もう目が離せなくなっちゃったんです」 パチュリー様は黙って聞いている。下を向いていて、表情は見えない。 「動機は不純ですけど、道理は純粋です。俺は……彼女が、十六夜咲夜が好きです」 俺が黙ってから、図書館はしばらく静かだった。 こんな空気は嫌いだった。昔からこんな空気になると、壊してしまおうと適当なことを話していた。 今は違う。これは、俺が壊していい空気じゃない。 パチュリー様が、何かを言おうとしているのが感じて取れた。 「あの子は……レミリアの大事なもの。貴方が適当な人なら、あの子はきっと壊れてしまうと思った。 そうなればレミィはとても、とても傷つく。 なんてこと。この私が杞憂なんてすると思わなかったわ」 「……」 びしっ、とでも擬音の付きそうな指を突きつけられた。 「合格点にしておいてあげる。頑張りなさい」 「……はい」 自然と、笑みが顔に浮かんだ。 「そろそろあの子の仕事も終わっているでしょう。いってらっしゃい」 返事をして椅子から立ち上がる。 「それと、今貸してる本に紅茶なんかかけないでよ?」 信用が無いのか。思わず苦笑が浮かんだ。 「本当なら、貸し出しなんかしてないのよ?貴方は特別。あの黒白から本を取り返してくれたんだから」 「大丈夫ですよ。――いってきます」 扉をぬけ、ロビーを目指す。 ○○が図書館を出たら、私は一人になってしまった。 小悪魔には仕事を言いつけていたから、きっと奥のほうにいるのだろう。 「……はぁ」 彼が出て行った扉に額を寄せる。 『私は?』 それが聞けない私は、きっと長く生きすぎて臆病になってしまったのだろう。黒白がうらやましい。 「そうよ。貴方は……特別、なんだから」 ため息は、冷たい扉が吸い込んでくれた。 涙は、絨毯に染み込んでいった。 「あら丁度いい。これから呼びにいこうと思ったところよ。」 廊下を走っていると、妖精メイドに走るなと怒られた。 仕方ないので早歩きをしていると、曲がり角で咲夜さんに出くわした。これはなんだ。運命か。 「じゃあ、テラスにでも行きましょうか。」 春の二時過ぎの陽気は、人をやわらかくする何かがあると思う。 そんな優しい日差しの中で、好きな人と紅茶を嗜む。なんという幸福だろう。 これは俺が始めて紅魔館に来たときに、パチュリー様の『咲夜の紅茶はおいしいわよ』の一言から始まった。 それが本当においしくて。 たしかにおいしいけど、なんだか最近は手段と目的が入れ替わってる気もする。まあいいか。 「魔理沙に連れてこられたのよね、あなた」 いまの話題は、俺がここに初めて来たときの話だ。 「そんな拉致みたいな言い方……でも、そうです。面白い図書館があるからこないか?って。 もともと本が好きでしたし、断る理由も無くて」 「そういえば、どうやってあいつから本を取り返したの?まさか力づくってわけじゃないでしょう?」 「それはですね、あの直前に宴会があったでしょう?」 ふんふん、と咲夜さんは話に食いついてくる。気にされてるって、いいなあ。 「酔っ払ってるうちに、こう持ちかけたんです。『なあ魔理沙、お前が持ってる本、貸してくれないか?』」 「……それ、やってることは一緒じゃない?」 あ、あきれた目してる。 「失礼な。正当な持ち主に返しただけですよ。」 「それもそうね。パチュリー様も助かってるし」 ああもう、ほんとうに咲夜さんは笑顔が似合う人だ。 ああ、本当に幸せだ。いつまでもこうしていたい。 けど、俺は今、この手でこの幸せを壊そうとしている。 「ところで、咲夜さん」 一か無か。 懸けてみるのも――悪くない 「今、好きな人とかいますか?」 なにを言われたのか、よくわからなかった。 好きな人?なにを言っているのだろう、この人は。 そんなこと、考えたことも無かった。 本当に? 思い返してみる。いつの間にか、彼がいるのが日常になっていた。たった半年程度なのに。 あるいは、それだけ彼が大きな存在になっていたのかもしれない。 ○○が来ない日は注意が散漫になっていた。 来ないと事前に聞かされたのに、時計を何度も確認したりした。 「私、は……」 言いよどむ。だって―― ――こんなの、初めてなんですもの 「……わからない。」 期待した答えでも、最悪の想定でもなかった。ある意味、一番困る。 そして、それが顔に出てしまったらしい。 「そんな顔しないで。私だって、わからないことくらいあるわ。自分のことなんて、特に。 教えて。あなたを見てるとどきどきするの。 あなたが来ないと不安になるの。 あなたがいると、安心するの。 これは――好きってことなの?」 小さな机で助かった。 その答えを聞いた瞬間、机越しに抱きしめてしまっていたから。 「……紅茶、こぼれちゃうわ」 「拭けばいいさ」 背中に手が回ってきた。 「私、普通じゃないのよ?」 「普通の人間がじゃない、十六夜咲夜が好きなんだ。」 力を込める。あわせて、強く抱きしめられる。 「教えて。あなたは、私が好き?」 「好きだよ。世界中の誰よりも」 見詰め合えば、あとは一瞬だった。 二つが一つになるのに、時間なんて概念は無粋なだけ。 能力なんて使わなくても、時は止められた―― 「これがあの人と私の馴れ初めよ」 老婆は二人の孫に語りかける。おしどり夫婦として評判だった私たちの話に興味を持ったらしい。 「それから!?それから!?」 少女は興味津々なのか、目を輝かせて続きを促す。 「おねぇちゃん、きっともうおばあちゃん疲れてるよ。ぼく達ももう寝よう?」 男の子は優しく姉を諭す。 少女は、しぶしぶといった風に、つかんでいた私の服を離し、おやすみなさいを告げた。 たくさん喧嘩をした。それ以上に愛し合った。 少し前にその旦那に先立たれてからも、子供たちのおかげで寂しいことだけは無かった。 孫の成長も見れた。思い残しなんて何も無い。 ああ、○○。愛しい私のあなた。 もうすぐ、そちらへ行きますわ。 瞳を閉じ、肘掛に手をやる。 その手は空を切り、力なく垂れ下がった。 冥界にうっとうしいカップルができた、と西行寺が八雲に愚痴をこぼすのは、また別のお話。 うpろだ1430 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「・・・ぅん」 新年早々、寝不足だ 今日が楽しみで眠りが浅かったか、子供じゃあるまいし 時間に遅れるといけない、そう思いベットから出ると、とても寒い カーテンを開け、外を見た 「・・・ホワイトロックが頑張ってるわね」 これだけ積もっていれば寒いのは納得だ 着替えを済ませると、外出のために、少し用意をした 「咲夜さん明けましておめでとう御座います!」 部屋を出ると美鈴と出会った 「おめでとう、今日は冷えるわね」 「外は辛いですよ~。あ、そういえば○○さんがいらしてますよ」 ちょうど約束してたぐらいの時間か 「ありがと・・・行ってくるわね」 言ってらっしゃいという美鈴の声を背に受け、私は彼の元に向かった 「やぁ咲夜、明けましておめでとう」 「お、おめでとう御座います」 一昨日あったはずなのだが、少しの緊張 しかし、新しい年に出会う彼は、いつも通りで少し、安心した 「あ、○○さん、少ししゃがんでもらえますか?」 「ん?」 私は彼の髪についていた雪を払った どうやら雪が降っているようで、溶けていないという事はまだ来たばかりと言う事か 待たせなくて良かった、なんて思ったり 「ありがとう・・・じゃあ行こうか」 「あら、珍しいものを見たわ」 思わずそんな台詞が口からこぼれた 「初詣なんて柄じゃないでしょうに・・・やっぱり男ができると違うわね」 「ち、ちがっ!?」 「ああ、違うの」 「いやちがわなくもないことも・・・・」 顔を赤くして何やらごにゃごにょ言ってるが、独り身としてはちょっと嫉妬しちゃうわね 「・・・まぁその幸せを分けると思ってお賽銭のほうよろしくね」 「お、霊夢、あけましておめでとう」 「ん、おめでと・・・ほら二人でなんか願掛けでもしてきなさい」 もうちょっとからかっていたかったが、今年は忙しいのだ、特に金銭面で重要な一日である 賽銭箱に向かう二人を見送りながら、小さなため息をついた ちゃりん がらんがらん ぱん ぱん 「何をお願いしました?」 彼が熱心に祈っていたようなので、気になってきいてみた 「今年も面白おかしく異変を眺めていられますように、ってね」 なるほど、彼らしいといえばそうか 彼は私はなにを?ときいてきたが、それは恥ずかしくていえない 食い下がる彼に、乙女の秘密です、と言ったのだがそれのほうが恥ずかしかった お神酒を飲んで、お守りを買って、甘酒を飲んだ おみくじも引いた こんな普通の人間みたいな事をしている自分を、不思議に思う 少し前ならば考えられなかっただろう、隣が、暖かいなんて 「あの・・・○○さん・・・これどうぞ」 神社からの帰り道、彼にあるものを渡した 「?・・・おお、マフラーか」 袋から出して全体を繁々と見ている、私も改めて見てみる どこか不出来なほうが編み出しか、最後のほうはだいぶ上手くなっているが・・・アンバランスだ 「ちょっと長いね、最後のほうはコツがつかめてきて思わず余分に編んだって感じかな」 完全にお見通しのようだ この寒いのに体が熱くなる、もしかしたら湯気が出ているのではないだろうか 「○○、さんが首元が、さむそうだったから・・・」 「・・・ありがとうな、咲夜」 彼は首にいろんな感じで巻いて試行錯誤するが微妙な長さが残る 「・・・嗚呼、こりゃあ良いな」 何を思いついたのか私の隣に来ると、そのマフラーを私の首にも回した 「え?え?ふ、二人でするには短いです、よ?」 「ほら、こうやってくっつけば、ちょうど良いだろ?」 彼と私は、非常に密着した状態である 「ああ、歩きづらくないですか?」 「問題ない・・・この方があったかいじゃん」 心臓が2倍速ぐらいで鼓動しているようだ どきどきと、彼と触れている場所をいしきしてしまう 「咲夜、どきどきしてるな」 そう言って笑うと、最後に俺もだよ、とつけたした 雪が積もった道を、二人でぎこちなく歩く 歩き辛いけど、暖かくて この動き辛さも良いかもしれないと思った だってその分長く、彼とこうしていられるのだから うpろだ1489 ─────────────────────────────────────────────────────────── ―紅魔館 咲夜「お疲れ様○○。あとは私がやっておくから、そろそろ休みなさい」 ○○「ああ、でも咲夜さんも休んだほうが・・」 咲夜「私は大丈夫よ、ずっとやってきてる事ですから。」 ○○「じゃあ、甘えます。お疲れさまっす」 紅魔館で働くようになってから数ヶ月経つけど 咲夜さんっていつ休んでるんだろうか・・ 夜中もお嬢様の相手だし、24時間働いてるんじゃ・・ 要領が良く、無駄も無く、隙も無く、一度も疲れた顔すら見せない彼女。 ○○「メイド長の鑑なんだろうな、憧れるなあ」 それでもやっぱり心配ではある。 無理してポーカーフェイスしているんじゃないかとね。 俺は与えてもらった部屋へ足を運ぶ。 ○○「あー疲れたぁ、今日はもう早めに寝よう。」 俺は布団にもぐりこみ、死んだように眠りに付いた。 その時、なんの夢を見たかは覚えていなかったが すごくいい匂いがして、そしてすごく居心地がいい。そんな夢を見た。 ―早朝。 ガチャ ドアの開く音で目が覚める。 入ってきたのは紅魔館の主、レミリアお嬢さんだった。 レ「あれ~?いないか~」 ○○「・・ん。どうしたんすか、まだ朝早いっすよ」 レ「ああ寝てたの、ごめんごめん、ところで咲夜見なかった?」 ○○「咲夜さん?いや、知らないけど・・」 レ「そっかー、いやね、昨日の晩からずっと居なかったのよね~ 今までこんな事なかったのに。」 ○○「はぁ。確かに珍しいすね・・」 レ「なのよー。んでこっちに来てないかと思ったんだけど、 まあ、邪魔したわね、それじゃ」 バタン ていうか、こんな所に居るわけないのにな。 それだけレミリアお嬢さんも必死って事か・・ でも本当にどうしたんだろう、あの後、夕方くらいに別れて、その後姿を消したのかな。 まさか過労で嫌になって・・ ハハ、咲夜さんに限ってそんなわけないか。 まだ少し早いのでもう少しだけ横になろう・・ふぁ・・あぁぁ~。 俺はもう1度布団にもぐり横になった。 ・・・・・・・・ ・・・・・ ・・・ 寝返りをうつと鼻先に生温かい風が当たった。 目を開けると、そこには熟睡している咲夜さんの顔があった。 咲夜「すぅ・・すぅ・・」 ○○「・・!!!!!?????」 ワケが分からなかった。 なんで俺のベッドに咲夜さんが・・?そしてこのゼロ距離! ○○「え・・ちょ・・咲夜さん!?何でここに・・!?」 咲夜「・・ん、なんか騒がしいわね・・」 目を覚ました咲夜さんと目が合う。 キョトンとした咲夜さんの目。普段みせた事のない表情。 そして次第に顔が赤くなっていく咲夜さん。 咲夜「えっ・・!? えぇぇぇーー!?なんでなんで!?」 ○○「・・俺の台詞っすよ・・」 咲夜「って、なんで朝になってるの!?って何で○○が動いてるのよっ」 こんなに取り乱す咲夜さんは初めてみたかもしれない。 しかし何をわけのわからない事を言っているのやら・・ 咲夜「・・こんな事って・・。・・・まさか・・あ、やっぱり・・」 ○○「・・・もしかして・・・ 時間を止めたつもりで、ちゃんと発動してなかったとか・・?」 後ろ向きに座り込んだままの咲夜さんが、小さくコクっと頷いた。 ○○「は・・はは、咲夜さんもそんなミスするんだ・・」 咲夜「う、うるさいわねっ、多分疲れてたから発動忘れたのよっ はぁ~、もうなんでこんな情けない所を・・しかも貴方に見られてしまうなんて・・ あ”ぁ~~~もう最悪よーーーーー!!」 自分の頭を両手でくしゃくしゃ掻きながら悶える咲夜さん。 その姿がまた可愛かった。 ○○「いいじゃないすか、俺は安心しましたよ。」 咲夜「どういうイミですか・・」 頭がボサボサになって言う咲夜さん ○○「咲夜さんもやっぱり人間だったんだな~って、 人間らしいミスもすれば、人間らしく体力も限界があって」 咲夜「・・あなたずっと私を妖怪と思ってたのね・・失礼ねえ・・」 ○○「あ、はは、そんな事ないすよ、・・あ、でもちょっと思ってたかも。」 咲夜「もう・・これ内緒よ・・?特に美鈴とかに知られたら何て言われるか・・ はぁ・・私の完璧なメイド長が・・こんな所で崩れてしまうなんて・・」 ○○「・・・・」 俺は苦笑した。 ―そして 咲夜「お嬢様、申し訳ありませんでした。ただいま戻りました」 レ「おかえり咲夜、○○もおはよう」 ○○「おはようございまっす」 レ「あ~、さっそくだけど最近この椅子がキシキシ言うから 新しいのと取り替えて欲しいんだけど、あ、それとこのテーブルあちこち傷が・・あとは、」 咲夜さんに今までどこで何していたかレミリアさんに問われると思ったが・・ 咲夜さんもそう思ってたのか、不思議そうな顔をしていた。 ―昼休み。 ○○「モグモグ、そういえば咲夜さん」 咲夜「ん?何かしら」 ○○「寝る時は毎晩、俺の部屋で時間止めて寝てるんすか? いやぁ、なんで俺の部屋なのかなーと思って。」 咲夜「・・・・・」 そう聞くとみるみる咲夜さんの顔が赤くなっていったと思ったら ○○「咲夜・・さん・・?ってうお!」 ヒュン! カッ! カッ! カッ! カッ! ○○「ひぃ!?」 咲夜さんが顔を真っ赤にしながらナイフを飛ばしてきた。 俺は慌てて逃げる ○○「うわぁああああ!ちょっと~~、えぇー俺何かマズイ事言ったかなぁー!?」 メイド妖精1「こら~、廊下走るとメイド長に怒られますよー?」 メイド妖精2「あ、あれ?今、メイド長も一緒に走っていったような・・」 メイド妖精3「えー、まさかぁ~」 今日も紅魔館は騒がしい。 新ろだ47 ─────────────────────────────────────────────────────────── 豪奢な調度がいたるところに置いてあるホテルのロビーで、○○は自分一人が浮いた存在のように感じていた。 場違いもいいところじゃないかと……。 紫主催の『神無月限定外界デート』に申し込んだところ咲夜がこの日じゃなくてはダメだと押しに押してきたため その日に決めたのはいいがまさかこんなホテルだったとは○○は思わなかった。 ○○は分不相応な気がしてロビーの隅っこで俯き加減に固まっていた。 「○○、おまたせ」 不意に咲夜の優しげな声が聞こえて、○○は顔をあげた。 と、同時に口をぽかんと開けて、目の前の女性を食いいるように見つめる。 そこには、ドレスアップした咲夜の姿があった。 彼女は、一見素顔のようなナチュラルメイクを施し、瀟洒なドレスを身にまとっていた。 細い鎖骨と片方の肩をおしげもなくさらけだしている。 肩を覆った側の袖は大きく膨らみ、まるで中世の姫君のようだ。 襟元は繊細なレースがいく重にも折り重なっており彼女の胸を優しく覆っていた。 裾は長く、彼女の足元まで覆っている。ここにも襟元と同じ種類のレースが存分にあしらわれている。 「綺麗……です」 不意に○○の口から正直な感想がもれでた。 たちまち、咲夜の頬がバラ色に染まる。 「……あ、ありがとう」 はにかみながら、咲夜は○○にそっと手を差し伸べた。 ○○は己の心臓が高まるのを感じながら、そのほっそりとした小さな手を握りしめる。 まるで骨がないように柔らかだった。 「さ、今夜は存分に楽しみましょう」 特別な夜が今、始まろうとしていた。 「あ、あの、俺こんな豪華なところ来るの初めてなんですけど……」 「私だってそうよ」 「でも咲夜さん平気そうじゃないですか」 「いつもお嬢様の傍に付き添っているからこういう雰囲気に慣れているだけよ」 緊張でがちがちになっている○○に普段と変わらない咲夜。 二人は窓際の席に座っていた。 大きな観覧車を中心に、色とりどりのネオンが煌めいているが、その光の瞬きを楽しむ余裕が○○にはいっさいなかった。 (うへぇ……テーブルマナーなんて俺知らないぞ) ずらりと目の前に並べられたカラトリーを不安そうに見つめる○○。 そんな彼に笑いかけると、咲夜はささやいた。 「大丈夫よ。そんな緊張しなくても。食べ方やマナーなら私が教えてあげるから。せっかくの料理が美味しく感じられないのはつまらないじゃない?」 シャンパングラスを手にすると、咲夜は○○に向かってその手を差し出した。 ○○も慣れない手つきでグラスを手にして、彼女のグラスに近づける。 澄んだ音を立ててグラス同士が軽く触れ合った。 前菜が運ばれてきて、優雅な咲夜の仕草を見よう見まねで○○は必死にナイフとフォークを動かす。 そんな様子を、咲夜は目を細めてうれしそうに眺めている。 「う……? ど、どうしたんですか? そ、そんなに見て……。どこか変ですか?」 「ねぇ、何で今日を選んだか分かる?」 考えつくかぎりでは○○の頭には何も浮かばない。 その様子から分かってないと察した咲夜は軽くため息をついて○○を睨んだ。 「あのね、今日はあなたと私が出会ってちょうど1年になるのよ」 「あ……!」 「……まぁ、今回は許すけど、次忘れたら承知しないわよ……?」 咲夜は射るような視線を○○に向け微笑む。 場所が場所ならナイフが飛んできただろう。 ○○は絶対忘れないようにしようと肝に命じた。 咲夜は、うっとりとした表情で夜景を眺めている。 ネオンが彼女の群青の瞳に映ってゆらぐ。 「今日までいろいろあったわね……良いことも、悪いことも」 「悪いことって俺が間違えてお風呂に入ってきたことですか?」 咲夜が○○の言葉に噴き出した。 広い大浴場で誰が入っているかなどは解るはずもなく、みごとに中で鉢合わせしたのであった。 思いっきり頭に桶をぶつけられたのは言わずもがな。 「まったく……そういうどうでもいいことは覚えているんだから」 そう微笑むいつもの咲夜がそこにいた。 「ケンカもたくさんしたわね。でも、いつも○○から謝ってきてくれて。私、我が強くて自分から謝れなくて…… あと、風邪引いたときも看病してくれたわね。初めてにしては悪くなかったわ……あの御粥。 美鈴と一緒に薬草取りに行っただけなのにやきもち焼いて困らせたわね。 それから……」 次から次へと彼女の口からは、二人の思い出が紡ぎだされる。 ○○もそのときのことを思い出しながら何度も何度もうなずく。 どれ一つとして全てが一致する思い出などはない。受け取る人によって、思い出の細部はまるで変わってくるからだ。 気がつけば○○の緊張は完全にほぐれていた。 ただ、ひたすら夢中になって彼女と出会ってから今に至るまでの話に花を咲かせる。 おいしい料理にワインを楽しみながら、二人は二人だけのまったりとした特別なひと時を過ごしたのだった。 フルコースを堪能した二人は、今ホテルの最上階に来ていた。 予約してあった部屋は、なんとスイートルームだった。 今まで紅魔館で働いていた仕事の量から換算して紫から円に換金してもらったらしいのだが、まさかこれほどとまでは○○は思わなかった。 広さはレミリアの部屋と同等くらいあるだろうか。 天井は高く、えんじ色のじゅうたんはふかふか。凝った細工がいたるところにちりばめられているいかにも高そうな調度品がそこここに構えている。 ホテルの部屋を予約している。その意味するところは一つしかないだろう。 ○○ははるか彼方に広がる夜景を見つめながら、体を硬直していた。 「シャワー終わったわ。○○も浴びる?」 咲夜の涼やかな声がする。窓ガラスは夜景を存分に楽しめるよう、全面ガラス張りになっているため、咲夜の全身も映っている。 ガウンを羽織った彼女が○○にゆっくりと近づいてきた。 不意にふわりと彼女の両手が○○に差しのべられた。 咲夜はそのまま背中から手をまわすと、彼をそっと抱きしめた。 咲夜の濡れた髪としなやかな手と、密着した乳房を背中に感じて更に体を硬くする。 「ふふっ、そんなに緊張しなくても」 「あぅあぅ……。今日の咲夜さん大胆ですね……」 「んー? 酔っているからかしら?」 咲夜が○○の耳もとで熱い吐息まじりの声でささやいた。 ○○はぞくりとして首をすくめる。 咲夜のつややかな声が耳から侵入して、彼の体全体へとひろがっていく。 「○○、抱いて……」 「はははは、はいぃっ!?」 咲夜がつぶやいた言葉に○○は絶句した。あまりにもストレートな愛情表現だったからだ。 ○○は窓ガラスに映る咲夜の姿を食い入るように見つめる。 その目をまっすぐに見つめ返してくる咲夜の目は熱っぽく大きく潤んでいる。 「私、○○のこと、好きなのかもしれない。こういうこと初めてだからよくわからない……。 けどあなたはもう私の中で欠かせない存在なの……好きって言葉じゃ足りないくらい……そうね、たぶん愛しているって言った方がいいかしら……」 かすかに震えているのだろう。肩が小刻みに揺れている。 初めての告白に咲夜も緊張しているのだろう。 ○○は振り返ると咲夜の細く、火照った体を力いっぱい抱きしめた。 「ずるいですよ……。俺だって咲夜さんのこと好きで好きで堪らないのに……そんな告白の後じゃ何言っても陳腐にしか聞こえないじゃないですか」 「そんなの気にしないわ……。あなたの言葉で私に伝えてくれればいいの」 「……好きです。大好きです。あなたのこと、好きすぎて狂ってしまいそうなくらい……」 「ああ……うれしい。好きよ○○。大好き……」 頬を真っ赤に染めた咲夜が胸の中で幸せな表情を浮かべる。 ○○は彼女の顔を上に向かせて、唇を寄せた。 柔らかな互いの唇を感じながら、二人は情熱的に舌を絡めていく。 唾液が絡み合い、舌は生き物のように口内をまさぐる。 「んっ……ふぁっ……んぅっ!」 吐息まじりの喘ぎ声が咲夜の口からもれでる。 ○○は彼女の下唇を軽く甘噛みしながら、ガウンのベルトに手をかけた。 緩く結んであるだけのベルトは、すんなりと床に落ち、同時に咲夜の前衣が大きくはだけた。 純白のブラジャーやショーツに派手な装飾はない。それが咲夜の美しさに拍車をかけている。 すらりと伸びた脚は黒のガーターベルトとストッキングをまとっている。 白黒のコントラストが妖艶で、なおかつ清らかさをけして損なわない品のある最高のデザインの下着を身につけた咲夜はひどく魅惑的だった。 「さぁ、これから先は私の時間は○○のもの……。好きなように私をあなた色に染め上げて……」 ○○がゆっくりと咲夜をベットに横たえたところでプツリと映像が途切れた―― 「はいざんねん!! ここから先はそこまでよ! になるので映像はおしまいでーす」 「えーーーー!!!!」 宴会で各々のデートシーンが流され、他のカップルもそうだが自分たちの番になって紫はこんなところまで見ていたのかと改めて彼女のデバガメ癖に気がついた。 酔いまくった酔っ払いどもの大ブーイングの中、○○は俯いて震えている咲夜に声をかけた。 「だ、大丈夫ですか?」 「ええ、大丈夫よ。ちょっとあの妖怪を黙らせてくるから」 ゆらりと立ち上がった咲夜を慌てて羽交い絞めにする。 「さ、咲夜さん! 落ち着いてください!!」 「は、離して○○! あの紫ババア一回痛い目みせてやらないと気が済まないのよー!!」 暴れる咲夜を止めるため○○は彼女の弱点を攻撃した。 ふぅっ、と耳に息を吹きかけささやく。この間のデートで見つけた咲夜の弱いところだ。 びくびくっと身体を震わせポロリとナイフが手から落ちる。 「ダメですよ。あんまり暴れちゃ」 「いやぁん、でも○○これじゃオチがつかないわ……」 「もうこの状態で十分落ちてますよ」 あむあむと耳を甘噛みされるたびに猫撫で声をあげ、身をくねらせる。 「ああん、そういう強引なところもすきすきぃ。もっと噛んでぇ」 完全に別世界に行ってしまった二人の空気にやられ、早々と宴会はお開きになりみんな自分のうちでイチャイチャはじめたそうだ。 新ろだ54 ─────────────────────────────────────────────────────────── 秋晴れの風が気持ちいい日。紅魔館の庭では咲夜が洗濯物を干していた。 白いシーツが秋風になびき、鼻歌が風に乗る。 「ん~♪ ふんふ~ん♪ ふふ~ん♪」 「ご機嫌ですね。咲夜さん」 そこに執事長の○○がやってきた。 しかしいつもの燕尾服ではなくつなぎにTシャツ、手ぬぐいを頭に巻いたまるで用務員のような格好だった。 「そうね。天気がいいから久しぶりにいっぱい洗濯物を片づけたわ」 「お嬢様にはあまり良いとは言えませんけどね」 「そうね。○○は?」 「庭の手入れです。結構枝が伸びていたので剪定を」 しばらく軽い世間話を続け、ふと空白がうまれ二人の視線がからまる。 顔を赤らめて、○○に近づくと咲夜は彼と口づけを交わす。 「……んっ」 ○○が目を開けると爪先立ちで肩に手を置いて懸命にキスをする咲夜の顔が近くにある。 ふんふんと鼻で息をして上気した顔は普段の凛としたメイド長からは考えられない可愛さだった。 「んっ、んん、ちゅっ……んふぅ、くちゅっ……ふうんっ、ちゅぴ、んんん……んっ」 どれ位の時が経ったのであろう。名残惜しげに咲夜の唇が離れると頬を赤くしたままはにかむ。 「うふふ……」 指で唇を撫で笑顔になる彼女を見て○○も笑みがこぼれる。 胸の前で握りしめているのが自分の下着だというのもなんだか照れくさい。 そこに一陣の風が吹き、洗濯物が翻ると―― 目を丸くした小悪魔がいた。 「ひゃわああぁぁあぁぁっ!?」 「はひぃいいいぃぃっ!?」 両者驚きで声をあげて真っ赤になる。咲夜なんて茹でダコのようになり、わたわたと○○の下着を振り回し小悪魔も洗濯カゴを持ったままモジモジとしている。 確かにここまで接近されていれば洗濯物など遮蔽物にすらならないだろう。 「こぁ? どこまで見てたんだい?」 「はははは、はいいっ! さ、咲夜さんがは、鼻歌を歌っていたところからですっ!」 つまり全部見られていたということか。 「わわわ、私のことはお気になさらずどうぞごゆっくり~~~~!!」 すごい速さで駆けていってしまった。 「…………」 しばらく二人とも恥ずかしさで動けなかった。 咲夜の紅茶の入れる手つきは慣れたもので優雅さと気品さが溢れ、最近では優しさも追加された。 「その紅茶は誰に持って行くんですか?」 「パチュリー様に頼まれたのでこれから持っていくのよ」 紅茶の良い香りが漂い、○○はカップに鼻を近づける。 それを咲夜はそっと手で制す。 「行儀悪いわよ。これ運び終わったら入れてあげるわよ」 「ああ、ありがとう。咲夜さんの紅茶は美味しいから」 「○○も腕は悪くはないけどね。精進すればまだまだ伸びるわ」 と、またしても視線が絡む。 今度は○○から咲夜に口づけをする。 「……んっ」 彼女の吐息はまるで最高級の紅茶のような香りがした。 しかしそのなごりを楽しむ猶予もなくパチュリーの睨む視線に気づく 「きゃあぁぁあああっ!?」 今度は咲夜だけが声をあげる。 ○○はまたか、という顔だしパチュリーは未だ○○と咲夜を睨んでいる。 「……遅いと思ったらやっぱり乳繰り合っていたわけね」 「ちちちち、乳繰り合ってなんか!」 「パチュリー様、いったいどうしたんですか?」 「ああ、魔理沙が来たからもう一杯紅茶を頼むわ。今度は早めにね」 言いたいことをいうとパチュリーは台所を後にするが最後にドアのところで振り向いて忠告をした。 「それと、所かまわずちゅっちゅしてたら色ボケ夫婦にしか見えないわよ」 その忠告に咲夜はまた気落ちしてしまう。 ○○は変わらないが。もう完全に開き直っている。 「あうう……」 ○○が買出しに向かうということで咲夜は必要なものを纏めたメモを読み上げていた。 「と、早急に必要なものはこれくらいね。はい、これメモね」 渡されたメモを受け取る時、○○と咲夜の指が触れる。 少しあかぎれがあるがそれでも柔らかく、細い指が透けるように白い。 またしても視線が絡まる。そうなればやることは一つだ。 「あ、あと、これもお願いね……」 ポケットから新しいメモを取り出す。 ○○はそのメモを覗き込む。 「……す、少しでいいから」 「……少しでいいんですか?」 「……うん、…………んっ」 今回は軽く触れるだけのキス。 これなら誰にも見つかることはないはず……だったのだが扉から顔を覗かせているフランがいた。 声はあげなかったがずざざざっと○○から遠ざかる咲夜。若干涙目なのが潤んだ瞳から分かる。 やれやれとため息をついてフランに○○は近づいた。 「どうしました? 妹様?」 「あ、え、う、うん……○○がお買いもの行くって聞いたからお菓子買ってきてほしかったの」 「分かりました。いつものでいいですか?」 「うん、いいよ。……○○と咲夜、ちゅーしてたの?」 「はい、そうですよ」 もはや隠す気もない○○。 フランはほにゃっと可愛らしい表情になった。 「いーなー。私もちゅっちゅしたいー」 「そのうち誰か妹様を好きになってくれる人が現れますよ」 「そうかな?」 「そうです」 「早く会えるといいなー。私だけのひと」 そのまま機嫌良く、スキップしながら去っていくフラン。 ○○はヘナヘナと崩れ落ちていた咲夜に手を差し出し、起こしてあげた。 「はぁ……どうしてこう……」 「それじゃ今後いっさい口づけしないことにします?」 その言葉を聞いた咲夜は見る見るうちに不安げな顔になっていく。 今にも泣きそうな咲夜を見て、慌てて○○は取り消す言葉を口にする。 「じょ、冗談ですよ」 「……言っていいことと悪いことがあるわ」 膨れっ面で腰に手を当てて可愛らしいスネかたをする咲夜であった。 「それじゃ行ってきます」 「気をつけてね」 「分かりました」 門まで見送りに来てもらい○○は扉に手をかけるがキョロキョロと辺りを見渡し誰もいないことを確かめると不意打ちで咲夜の唇を奪う。 「きゃっ」 「油断してましたね」 そしてもはやお約束。お手洗いから帰ってきた美鈴と鉢合わせする。 いきなり姿が消えたかと思うと咲夜は美鈴にナイフを突き付けていた。 「いいいい、いきなり何するんですかぁ!?」 「いい? 今会ったことは忘れるのよ。いいかしら?」 「わわわ、分かりました!」 解放され息をつく美鈴。 「そんなに恥ずかしいのならしなければいいのに」 「それじゃ我慢できないんだよ。俺も咲夜さんも」 「ひゃーラブラブですねー。羨ましいです」 「それじゃもう一回みせてあげようか?」 「はいっ!」 「えっ!? ちょっ!」 咲夜に近づき顎をくいと持ち上げ上向きにさせるとじっと瞳を見つめる。 咲夜は顔を赤くして目を閉じると○○のキスを今か今かと待ちわびる。 ○○は顎からすっと手を離し門を開ける。美鈴と咲夜はぽかーんと間の抜けた顔をしていた。 「ふふっ、ああいうものは何度も見せるものじゃないんです。だからさっきのでお終い」 「なっ! き、期待させておいてそれはないでしょ!!」 「咲夜さん! 励むのです!! ○○さんがメロメロになるまで励むんです!」 「ええ! 貴女に言われるのは癪だけど!」 二人のやり取りにくすっと笑うと○○は里に向けて歩き出した。 「……ところで励むってのは……よ、夜の営みのことかしら……?」 「え? もうそこまでいったんですか!」 「わー!! く、口が滑っただけよー! こ、これも忘れなさい!!」 みなの話を聞いてレミリアはため息をついた。 「まったく、あの二人はしょうがないわね。暇さえあればちゅっちゅちゅっちゅして」 「で、どうするの? レミィ」 「決まってるでしょう? 二人を引き離して私が○○を『異議ありです!!』咲夜っ!?」 ドカーンとけたたましい音を立てて扉を開け咲夜が乗り込んでくる。 「いきなりなんでそんな展開になるんですか!」 「いいじゃないの! 咲夜のものは私のもの、私のものは私のものなのよ!」 「どこのガキ大将のセリフですか!」 結局いつものやりとりが始まる。 レミリアも○○のことが気にいっていたのだが、咲夜に先を越されてしまったため何かと理由をつけ○○を奪おうとする。 もはや日常じみた二人の口喧嘩に他のメンバーは静観する。ヒートアップしてきた二人はだんだんマズいことを口走る。 「だいたいその胸はなによ! 詰め物まで入れてまで大きく見せたいの!? ああ、そうでもなきゃ○○が振り向く訳ないわよねぇ」(そこまでよ!) 「これは自前です! ○○が弄ってくれたおかげで詰めなくてもよくなったんです!! それよりお嬢様みたいな幼児体型じゃ彼を満足させることなんてできません!」(そこまでっていってるでしょ!) 「ふん、味わってみなければこの身体の良さは解らないわ! むしろ幼女じゃなきゃ欲情できなくさせてあげるわ!」(ちょっと聞いてるの!) 「おっぱいって触ってくれる人がいないと邪魔なだけですよね」 「肩こりの原因の一つですしね」 二人を止めようと息巻くパチュリーと何処かズレた話を始める美鈴と小悪魔。 そんな中ドアを開けてフランが中を覗き込む。 「やっぱりみんなここにいたんだ。またいつもの喧嘩?」 「あ、妹様。何か御用ですか?」 「うん。○○がおやつ作ったからどうですか、だって」 「それじゃ二人は放っておいてお茶にしましょうか」 「ほらパチュリー様も行きましょう」 「は、離してっ! 私は秩序を守るのよーっ!!」 この言い争いは明け方まで続いていく…… 「ふぅ、お嬢様にも困ったものだわ……」 「あはは」 ○○は睦み合った後にこうして布団の中で話を聞く。主に咲夜が淡々と愚痴を零すのだが○○は嫌な顔一つしない。 それが彼女のストレス発散になっているのだし、聞いてあげることで少しでも負担が軽くなればいいと思っているからでもある。 「ごめんね……毎回愚痴ばっかりで」 「いいですよ。それで咲夜さんの気が晴れるなら」 「……そういうとこ、好きよ。甘えたくなるじゃない」 胸に顔をすりよせ微笑む。○○はすっと手を伸ばして何もつけてない胸をつんと指で突く。 大きくはないが柔らかく張りのある乳房がぷるんと揺れる。 「やんっ。えっち」 「だって咲夜さんが可愛いから」 「褒めてもなにも出ないわよ」 胸板に顔を埋めて上気した顔でほう、と息をつく。 「○○、愛してるわ」 「俺もです」 「眠るまで顔見つめていていい?」 「いいですよ」 「それじゃおやすみ……いい夢を」 しばらくして彼女の重みと温もりに包まれてすうすうと寝息を立てる○○を見つめ、何度か起こさぬようにキスをして咲夜も眠りにつく。 この二人にさすがお嬢様のグングニルも割り込むことはできないようだ。 新ろだ100 ───────────────────────────────────────────────────────────
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←陽影みちひ 迷惑ロボ2号→ 咲夜 ■性別:女 ■攻撃力:15 ■防御力:8 ■体力:6 ■精神力:1 ■瀟洒:0 ■所持プリン:3 ■特殊能力名 血とメイドの懐中時計 ■特殊能力内容 [発動率65% 成功率100%] 同マスの、特殊能力によりターン制限つきで召喚されたキャラ1体に効果。 マップ上にとどまっていられる時間を1ターン延長する(バステ扱い) 制約なし。 効果:バステ付与 バステ効果:召喚キャラをその場に引き留める 範囲:同マス一体 時間:1ターン 制約:制約なし 調整:シンプルボーナス
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彼女の猫度 僕は○○である。二つ名はまだ無い。 紅魔館のメイド長、十六夜咲夜さんに恋をして数ヶ月。 告白するのに必要なタイミングを間違えないため、 導き出した方程式にしたがって行動してきた。 その第一条件、紅魔館に忍び込むことを今日も完遂した。 勿論、美鈴さんに見つからないで進入など僕には不可能である。 毎度、美鈴さんに賄賂と言うには ささやかな物を持ってきては通してもらっている。 そして、第二関門。 こちら○○、館内に侵入した後は図書館に迎え、である。 図書館まで咲夜さんに見つからなければいいと僕が設定したエクストラ並みの道中だ。 しかし、パターンを組めばクリアできるのがエクストラ。 ここ数日の進入時間を1時間以内の不特定にした甲斐あり、 見事にノーミスでパチュリーさんまで到達した。 自分に激甘俺ルール? いや、人間が紅魔館に侵入する時点でルナティックだから甘めの設定。 いいでしょ別に。やめてよね。 「今日の朝までの猫度は9点」 「ま、マジですかパチュリーさん!」 これが第二条件、パチュリーさんによる咲夜さんの猫度採点。 メイドちょう 9点 通しすぎ。紅茶ほしい。スカートみぢかすぎ。 もんばん -10点 通しすぎ。饅頭よこせ。胸でかすぎ。 こあくま … そう。僕の方程式には咲夜さんの猫度がかかわってきているのだ。 咲夜さんに知られずに、図書館までたどり着くことによって猫度は降下する。 それが今日、僕の図書館の侵入によって一桁まで落ち込んだ。 「ようやく一桁だ!よっし!いいぞ!」 「……ねえ」 ここまで来たら、自我開放の時間。 魔理沙の進入分も入っているだろうが、これは喜ぶべきことだ。 パチュリーさんには感謝してもしたりないな。 「よしっ! い、いや待て!ここで気を抜いてはいかんぞ!そうだ! 咲夜さんかわいいお!よっしゃ!うん!いけるいける!」 「……ウィンターエレメント」 「どわああああ」 床の魔法陣から水が噴出してきてピチュってしまった。今日は残り2機。 ここ数日、採点後はテンションが上がりすぎて パチュリーさんの水のスペルで頭を冷やすパターンが避けられない。 「いてて、すいません!ここに忍び込みはじめて数ヶ月。 ここまでこれたことに感激してしまって」 「わかったから、耳から3mの所で怒鳴らないで。 それでもう一回あなたの方程式の説明をしてもらえないかしら」 そうそう。 こちらは図書館の主のパチュリー・ノーレッジさん。 二つ名は動かない大図書館。すごく…知的です。 彼女が相談に乗ってくれなければ、 いつまでたっても行動に移せなかったところだ。 きっと人間の相応をわきまえ、 吸血鬼の館に入り浸るなんてことは出来なかっただろうが。 「またですか。人に話せるような物ではないのですけど」 「パターンだからもう一回なんだけど」 「へぇあ。わかりました」 いつも通り。 パチュリーさんに自分の情けない妄想を話さなければいけない。 結局、面と向かって告白する勇気が無いから ぐだぐだと条件なんかを付けている訳なのだから。 弱い所はいつまで経っても恥ずかしいもので。 つまりはこれだ。 ぼくのかんがえたほうていしき= 咲夜さんのかわいさ+咲夜さんの美しさ+咲夜さんの瀟洒+ さく(ryすべて足す)を計算する。 そこから咲夜さんの猫度で割って出た数値がK点を下回っている=告白 条件を難しく設定することで、自分の本気も出せると言うもの。 「うーん、やっぱりまだ足りないわね」 「僕にはやっぱりが、まだわからないんですよ」 パチュリーさんはいつもまだ足りないと言う。 そんなわけないだろうが、咲夜さんのどれかの数値が足りないのか、 と聞いても違うと答える。 僕の設定したK点に到達していないのは当たり前だし。 なにが足りないのかわからない。僕にはわからない。 そこまではいつも通りの問答だった。 「…そう」で終わって、その後は図書館で時間を潰して 咲夜さんがお茶を持って来てくれるのを待つのが王道だった。 そして、パターンは変化し根性が必要になった。 「だってこれは恋の方程式だもの」 「え?」 突然、いつもパターンの会話の所で違うことを言われると硬直してしまうもので。 だが、案外イレギュラーなことを言われると冷静になれるものでもある。 そう。 的確だっ!恋の方程式! 「す、すばらしいネーミングです!はっそうか!さk…ってうわああ」 「うるさい。 私も方程式を考えたんだけど」 ウィンターエレメントの取得率がまた下がった。 元々0だからいいけど。 これで話も聞けると言うものなのだが、なんだって? 「これを見て」 きっと僕の方程式に足りないものを補ってくれたに違いない。 そう期待して、パチュリーさんが差し出した紙を受け取ったその時。 『にゃー』 どこからか猫の声が聞こえてきた。 「猫?」 「!? …にゃー」 「な!?パチュリーさん?!」 「っ…にゃ、にゃー」 パチュリーさんの猫度が突然上がり始めた。 じゃなくて、パチュリーさんは顔を赤く染めて猫の鳴きまねをし始めた。 こ、これは。 「もしかして…」 「え、いや何でも無いわよ。ただね『にゃー』がね、ってあああ」 「あ、本当に猫だ」 パチュリーさんも鳴き声の出所がわかったようで、珍しく声を荒げる。 そちらに振り向くと一匹の子猫が居た。 次から次に子猫がちょこちょこと出てくる。1、2、3、って何匹いるんだ? そこに続いて一匹の猫を抱えた小悪魔が現れた。 「あ、あははは。すみません」 「まったく。恥ずかしい事させて」 小悪魔は弱りきった表情で平謝りしている。 パチュリーさんは諦めたのか子猫達に近寄り撫で廻した。 うわ、すげえ顔が緩んでる。 『にゃ、にゃ』 「どうしたの?お腹すいたの?」 パチュリーさんの猫度が上がっている。 間違いなくさっきより上がった。 つまりは。 「つまり猫かわいがりですね」 「あら、喘息持ちにはつらいわね」 「いや、パチュリー様のことですよ」 小悪魔がすぐさま同調したようにツッコミをいれてくれたのだが。 小悪魔もその一部だと。 僕はこの光景を見てそう思った。 この子猫達は小悪魔がどこからか拾ってきたものらしい。 その数は13匹にも上った。 『こうして捨てられた私たちだが、小悪魔さんには感謝している』 明らかに喋ってる猫がいるんだが、妖怪化してるのもいるぞ。 「ありがとう、レモン」 「その声でレモンかよ」 『名はレモン。二つ名は個別の11匹目です。以後お見知りおきを』 こ、こいつ何故持っている。羨ましいです。 連れ帰るときは僕と同じように門番の美鈴さんに正門を通してもらってたのだそうだ。 美鈴さんも咲夜さんも猫度が下がりまくってるなあ。 パチュリーさんも最初は利用する気だったのだが、許可することにしたらしい。(何ニダ) そして、知らないのが咲夜さん、レミリアさん、フランちゃん。 紅魔館の責任者とも言うべき方々に と言うよりも、吸血鬼さんに知られたくなかったのだろう。 「でも、僕にまで黙って居なくてもいいのに」 「へぇ、あなた。咲夜に言わない自信あったの」 「ぬ…」 咲夜さんに黙って?って!! 「無理ですね」 「きっぱり頂きましてありがとう」 パチュリーさんは子猫を前に掲げ、お辞儀をさせた。 それにしても、何故咲夜さんに? ああ、そうか。 「咲夜さんに知られると自然とレミリアさんに知られるってことですか?」 「そう。特に妹様には知られたくないわね」 「きっと誰もいなくなりますよ」 「わかります」 小悪魔はその様子を想像したのか、子猫を守るように上手い事言ったつもりだった。 …リアルグロは勘弁な。 いや、待て。魔理沙の話だとフランちゃんは… 「なので、あなたを抱きこむ事になったから」 「え?あ、そうか」 思考中にパチュリーさんからの懐柔案が提示された。 咲夜さんに言わないようにする為だとすぐに理解した。 この硬い心。 つまり柔らかい恋心を崩せるはずもないな。 しかし、その交渉の中身はというと。 「今まであなたの相談に乗って上げたよね?」 「は、はい」 「それを咲夜にばらすわ」 「!?」 これ以上も無い脅迫でございました。 力=正義のいい時代です。 「咲夜がお茶を持ってくるまでに決めて頂戴」 「え、ええええ」 思考開始かよおお。 パチュリーさんがばらす=咲夜さん=猫度で館から排除=俺粉砕 やべええええ。 咲夜さんに排除されてえええ。 いや、駄目だろお。 どうする。嘘を付くか。 いや、いつ終わるかもわからん嘘を突き通せるか。 第一、今恋心を隠してるよな。二つは無理。 ここはパチュリーさん達を説得。 これだろう。 いや待て、僕は見の男のはずだ。 静の男だ。だから、方程式なんて作ったんだ。 そう。説得なんてしたら、それは反逆の意思。 間違いなく玉砕ルート。全力で無い玉砕など唯の美学だ。 うあああ、小町さんの友達のノートを。 ぐううああああ、地獄に落ちるわよおおおお。 「失礼します。お茶をお持ちしましたわ」 あら、瀟洒。 そこに咲夜さんがいつも通りにお茶を持ってやってきた。 ちょ、もうそんなパターンまで時間過ぎたのかよ。 いつも通りに無難に挨拶しないと。 『やあ』って言わなければ。 「いらっしゃい○○。門から入った?」 エクステンド。 微笑みの…咲夜さんだ。 「うぇ、咲夜さん!大好きです!」 「?! って、ええ?!」 パターンで慣れすぎた方の食らいボム。priceless ちょっと何を言っているんだ。 まだ、方程式も完成していないのに。 まさかの脱落ルートに行ってしまう。 うわああ、咲夜さん顔が赤いよ。 多分僕もだあああ、どうしよう。どうしよう。 そう、そうだ。猫度が、いや猫がやってしまったんだ。 猫が。 ごまかす、ゴマカス、誤魔化すにゃあ。 「い、いや違くて。猫です咲夜さん!」 「え、ええ。え、あら、本当に猫ね」 「かわいい。ふかふかね」 ああ、咲夜さんが、ご満悦で子猫を撫でてるお。 「!!!この馬鹿ネズミ!!」 「うわああああ」 ふう。 3度目のミスで賢者になった気分だった。 「ふう。パチュリーさん。すいません」 「○○さん…最低です」 『あなたは…最低。把握しました小悪魔さん』 「ふかふか~、え。ああ、あなたって最低だったのね」 小悪魔と猫のような者が非難している。 咲夜さんは罵ってくれる。 ふう。なんのことはなし。 「はあ、咲夜もか。レミィが起きるまでに決めないとね」 パチュリーさんのふかいふかーい溜息が漏れたようだった。 ────── 「ふむ、私の館内で私の知らない住人が増えていたと言う訳ね」 「は、はい。申し訳ございませんでした」 場所は変わって紅魔館のテラス。 起き抜けのレミリアさんに小悪魔が謝罪の言葉を述べた。 結局、あの後は、小悪魔が猫達を黙って飼っていた事を謝罪し、 図書館で飼う許可を貰うと言う事で決まった。 「うん。謝罪は受け取ったわ。じゃあ、捨ててきなさい」 「え、で、でも。まだ…」 やっぱりこうなったか、と言う表情のパチュリーさん。 咲夜さんはレミリアさんの後ろで、目を瞑りメイドらしい態度で控えている。 綺麗だなあ。 僕はと言うと、紅魔館にとってはネズミなので口は出さないことにした。 ん?ネズミ? んんん! 重大な事に気がついてしまった。 図書館に猫が増えたら、咲夜さんの猫度はどうなるんだ?! 「ん?どうしたの?早く捨ててきなさい」 「い、いえ。その、あの」 猫度と本物の猫の関係はどうなるんだ。 まさか、また増えたらこれまでの苦労が水の泡に? さっきのはノーカウントになったはずだしな。 猫度はまだ重要のはずだ。 どうなんだ。どうなんだ。 「あら?謝ったのなら、誤った元凶を取り除くのは当たり前でしょ」 「え、えっと、でも…」 パチュリーさんに聞くか。それが一番早い。 考え込んで伏せていた顔を上げると、 結構良く見る困り顔の小悪魔が目に映った。 あ、そうか、今猫の交渉中だった。 そう、猫だよ。猫度だよ。 いや、子猫だよ。小悪魔可哀想だろ。 「ここからは私ね。レミィ。私はお願いに来たのよ」 「へえ。なあに?」 そこへパチュリーさんが助け舟を出した。 お願いにきた、と言う事は謝罪は小悪魔に任せたと言うことか。 マイナスからの交渉よりも、むしろ友人ポイントがプラスされた パチュリーさんの方が成功するだろう。 さ、猫度猫度。 咲夜さんは未だに目を瞑ったままだった。 「猫を飼うことにしたわ」 「ふーん。どうして今まで黙っていたの?」 「危ないと思ったから」 そもそも、僕の侵入が猫を飼ったことによって防げるか。 いや、無い。 咲夜さんが猫を連れて、侵入を防ぐ? お、これなら関係あるな。 …さっきの咲夜さん可愛かったな。 くっ、絶対猫度上がるってこれ! 「私の心配?猫如きに遅れはとらないわ」 「レミィ。黙っていたのは謝るわ」 「あら?パチェはお願いに来たんでしょう」 む、雲行きが怪しくなってきました。 自分の屋敷の中で黙って動物を飼われていたら、怒る人も居る。 現世ですでに体験してきたことだが、それを幻想郷で目にする事になるとは。 因果なことだ、とかかっこつけてる場合じゃない。 パチュリーさんも次の言葉を探して黙ってしまった。 レミリアさんは次は咲夜さんに視線を向けた。 「咲夜まで知ってたのに黙っていたのでしょう」 「あら、私が知ったのは今日ですわ」 咲夜さんはメイドらしく慎ましく答えた。 未だに目は開かれない。 真実でかわした咲夜さんであったが、 レミリアさんは更に火を噴いてしまったようだ。 「…門番。美鈴まで知ってたのね」 「……」 「…美鈴を呼んできなさい」 チェンジで。 ここに来て、ようやっと席についた気分だった。 レミリアさんはほぼ全員が知っていた事が不満だったのだ。 こればかりは吸血鬼のプライドではない。 仲間はずれの意識だろう。本人は認めないだろうが。 「おはようございます、お嬢様。今日も対吸血鬼日和でしたよ」 「……」 「皆さんおそろいでお茶は珍しい。って○○さんも一緒なんですね」 美鈴さんは、日頃の疲れは何のそのっていう笑顔でやってきた。 いやいや。 「ちょ、美鈴さん」 「え?なんでしょう」 「気を使って、気!」 「え?もう使ってるつもりなんですけど、駄目みたいですね」 そう言いながら、パチュリーさんの隣に座る美鈴さん。 この状況を見て、すべてを把握しているような振る舞いだった。 これは不満の生贄でなく、交渉人チェンジを期待できそうだ。 「美鈴?猫を通したの」 「はい。通しました」 「どうして通したの?」 「魔理沙や霊夢と一緒です」 おおお、素晴らしい。 レミリアさんも彼女たちには一目置いている。 魔理沙なんかはここの図書館によく来る訳だから、それと同じと言うことか。 結構、考えている美鈴さん。さすが、紅魔館の門番。 「違うわ」 「あなたは訳のわからない生物を館に通した。怠慢ね」 「ただの猫ですよ」 レミリアさんの反論は、難しいな。 猫を知らんわけでもあるまい。あ、猫度。 「喋るのもいるらしいね」 「あ、たしかに」 「それを知っていながら、皆の生命を危険に晒す門番。主にはどう映るかしら」 「……」 おっと。レミリアさん持ち直した。 館の主として、考えてたんだなあ。 訂正も必要かもしれないな。力ある指導者のしっかりとした考えです。 っていやいや。怒っているから言ってるだけかもしれないぞ。 そう言えば、あの猫なんなんだ? …あいつの猫度やばそうだあああ。 「美鈴は罰として通した猫の数の飯抜きよ」 「え、えええ。喋るのは一匹…はい、わかりました」 危ない、威圧感が。 飲んだ紅茶が外に出そうになったぞ。 主ルールに門番は逆らえなかった。 喋る猫が決め手となったようで、 その結果、美鈴さんは今日のおゆはんと4日の飯抜きとなってしまった。 美鈴さんっておいしそうにご飯食べるんだよなあ。 僕が持ってきた賄賂、じゃない差し入れもいい笑顔で食べるし。 罰の内容としては申し分無いかもしれない。 うーん、この結果は… 続けてレミリアさんが口を開いた。 「後、小悪魔。よかったわね。美鈴が責任を取ってくれたお陰で 猫を飼ってもよくなったわ」 「え?」 「13回の美鈴の食事と13匹の猫を天秤にかけてみる?」 ああ、もう決まった。 紅魔館の主です。体裁を整えつつも、自分への礼を 失することを戒める手腕。立派です。 「よかったね!小悪魔!これで皆も外で遊べるよ!」 「め、美鈴さん。で、でも」 「だいじょぶ、だいじょぶ」 とうとう最後には、猫を飼って良くなったわけだ。 いや、やっぱり紅魔館は概ね平和なんですね。素晴らしい場所ですね。 そう思って、麗しの咲夜さんに視線を向けると。 「……」 目が合ってしまった。 普段とは違った色を持ったその瞳。 視線を外そうとしても外せない。 真意を探ろうとしても探れない。 深い記憶の中と重なるような。 …… …はっ!いや、わかってしまった。 次にパチュリーさんに視線を向ける。 「……」 またまた、目が合ってしまった。 うわああ、さっきのフィルターじゃないか。 咲夜さんも愛しの目線かと思ったら違ったじゃないか。 パチュリーさんの目を見て、はっきりとわかってしまった。 これは。期待の眼差しっ! そう。僕に言っているのだ。 つまり… 『部外者なんだから、損をしても得になるよ』 安置うめえです。 「あー、もう。レミリアさん。僕もお願いがあります」 「あら、なあに○○」 エクストラクリアしました。ルナティックいけんじゃね? 「弾幕ごっこをして頂けませんか」 「……」 「それで、僕が勝ったら、普通に猫を飼うことを認めてほしいのです」 「負けた時は、あなた様の広い度量で、 普通に猫を飼うことを認めてほしいとか言うつもり?」 「浅ましながらその通りです」 下でベタ張り付きプレイヤーの底力みせてやるぜ! 「…ようやくね」 「フフフ、ハハハ、やったわ!皆よくやったわ!」 「え?」 何か空気がおかしい。 レミリアさんは、さっきと打って変わって嬉々とした表情を浮かべている。 いや、僕のイメージの吸血鬼の表情そのものなんですけど。 「○○!やっとあんたと弾幕ごっこ出来るね!ここに何度も忍び込む周到さ! あなたの!人間の限界を見せてね!」 あ。 ああああああああああ。 「ぐ、ぐう。まさかみんな」 「ごめんなさい、○○。お嬢様が兼ねてからあなたと弾幕たいっていうから」 「さ、咲夜さん。やりたいって読むのそれ?!そう読むんですよね!?」 咲夜さん。瀟洒レベルマックス。 いや、待て、この状況をよけるには。 違ううう。よけるとか使うなあああ。弾幕気まんまんじゃないかあああ。 そうだ、美鈴さん。助けて! 「頑張って」 美鈴さんに視線を向けると、何故かそこに咲夜さんが居て。 美鈴さんは咲夜さんに両手で口を塞がれていた。 そう。励ましてくれたのは咲夜さんであった。 ぱ、パチュリーさん! 「手加減はしてくれるよ多分」 パチュリーさんも、小悪魔の口を両手でふさぎ それはいい笑顔で見送っている。 「にーんげんの○○!かかって来いって言う権利は私よね?」 レミリアさんも良い笑顔でありました。 「もうやけだ。うわあああああ」 ::::::::::::::::::::::::::: ノーマルにかえるんだな。おまえにもかぞくがいるだろう。 そう。 今、まさに生の喜びを感じている。 「かわいい、ふさふさ、ふさふさ」 「お嬢様、それは髪の毛の擬音ですわ」 弾幕ごっこは結局、レミリアさんがスペルを使う前に僕が被弾する結果に終わった。 何故、レミリアさんが僕を強いと勘違いしたのかもわからなかった。 『よわいねえ』とニヤニヤされてもいらだつ事はなかった。 だが、この光景は。 紅魔館の面々が子猫を抱き上げ、緩みきった表情で戯れている。 心を揺り動かされ無い方がどうかしていると言う物だ。 『これなら隠れる必要もなかったか』 「やあ、ハグれている喋る猫」 『最低の○○殿、生き残って何よりですね』 こいつは猫かぶりにたった今決定した。 いやみも言えるらしい。さすが今回の元凶。 名前通りすっぱいやつだ。 ここの猫達はどうやら、フルーツの名前をつけられているらしい。 小悪魔の趣味、腹ペコなんだろうか? 「あら。あんたね。一番の問題猫は」 たしかオレンジを大事そうに胸に抱いてレミリアさんが近づいてきた。 ハグれ者を構うあたり結構優しいのか。この方は。 『はい。レモンと申します。二つ名は…』 「かわいくないわ。近寄らないで」 『……にゃあ』 レミリアさんは優しいな! 変な猫はざまあ。 二つ名うらやましいんだこのやろう。 「それに引き換え、あなたはかわいいね。カムチャッカー」 「「「「え?」」」」 レミリアさんのネーミングは素晴らしかった。 「お嬢様。その子はオレンジですわ」 咲夜さんは完全に瀟洒だった。 どんな難易度でもクリアした時の喜びは忘れない。 その夜、咲夜さんがコンティニューをしなかった僕を送ってくれる事になった。 さっきの弾幕ごっこを見て、改めて夜中の道中ではイージーでも無理だと思ったのだそうだ。 帰り道も途中まで過ぎたのだが、僕達は無言で夜を歩いていた。 こんな二人きりで、隣に咲夜さんが居てくれるにもかかわらず。 思い出すのはさっきの図書館での事ばかり。 目の前には猫が結構居たわけだが、猫度の事はまったく考えもしなかった。 今、考えてみても猫度についてあまり関心が無い。 ああ、皆の笑顔は癒されたなあ。 「ありがとう」 咲夜さんが突然口を開いた。 ありがとう?ありがとうってなんだ? ああ、ありがとうか。 いつも通りに気持ちを隠して、咲夜さんとの会話を楽しもう。 「あなたのおかげで、無難に収まった」 「美鈴さんが食事を抜けば、丸く収まったと思いますけど」 「それで納得しない者がいたわ。なるほど、最善で収まったのね」 うーむ、最善と言われてもな。 せっかくレミリアさんが館の主らしい処置をしたのに邪魔にならなかったかな。 でも、そうか。あれは僕との弾幕ごっこを引き出す芝居だったみたいだし。 いや、咲夜さんがあんな眼をしなければ。 って、さ、咲夜さん。 まさか僕の気持ちに気付いてて利用、じゃない応用したんじゃ… 「そう。小悪魔の優しさも、魔法使いの好奇心も、門番のおゆはんも 吸血鬼の矜持も、すべて守ってくれたわね」 「だから、ありがとう」 ああ、どうでもいいか 咲夜さん、やっぱり可愛いな。 うん、好きだよ。 そう言えば、さっき言ってしまったけどね。 次はもっとはっきり心を決めていいますから。 …あれ? 「咲夜さん。さっきから黙っていたのは、その文言を考えていたから?」 「どうかしらね?ただのアフターケアーかもしれないわよ?」 「流石に、咲夜さんです」 そう、それでこその完全で瀟洒な従者。 それに恋した不相応の唯の人間の唯一つの甲斐性。 「では、メイド長の信頼に答えまして。 明日も図書館に行きますから」 「そう。期待しすぎてお待ちしていますわ」 いつまでも進展しないパターンを歩んでいた 紅魔館のメイド長に恋をした一人の青年。 彼が魔法使いから受け取った紙には 『おめでとう。 あなたの方程式に彼女の好感度を加えたわ。 これで、あなたの方程式は 愛を囁く方程式 になるはず。 これから起こる事を、冷静に対処すれば解ける。 かもね。 使う人を選ぶ式であることは間違い無いから気を付けてね。 いつも私の好奇心を満たしてくれてありがとう。 パチェ (以下パチュリー・ノーレッジ式 愛を囁く方程式) 』 と何故か手紙口調で書かれていたそうだ。 しかし結局の所、本物の猫が、図書館に居座る事になり、猫度は大分上がる事になった。 彼が本当の告白をすることになるのはいつのことになるのやら。 メイド長はその時にどう答えようかをひたすらに考えていた。 一方、紅魔館の地下。 そこには館の主の妹の寝所があった。 「? 猫の声?」 後に彼女が紅魔館の猫度を覆す大事件を引き起こすことになるのだが。 それはまた…別の…話。 お し ま 文「結局猫度って何なのですか?」 霊夢「都合の良さよ」 魔理沙「まあ、何にせよ。大助かりだ」 アリス「この泥棒猫!」 お し ま い ────── 昨日の紅魔猫事件から一日が経った。 パチュリーさんからの手紙らしき物の裏を考えていたら、 いつの間にか眠りについたようだった。 時計を見ると、習慣通りの起床時間。 さあ、今日も紅魔館へ、咲夜さんに今、会いに行きますとしよう。 「あ、あれ?」 「ん、ん。んっと、あ。こっちか?」 いつも通りに、上着を羽織って出掛けよう。 そう思って、ポケットの中を探っても。 落ちているんじゃあないかと思い、床を這いつくばって探しても見つからない。 「うがー、何で無いんだ!何時から無いんだよ!」 ここ、幻想郷で人間をやる上での生命線。 そして、紅魔館へ侵入するために必要な物。 そう。ボーダーオブ猫度をいつも支援してくれた旅のお供が。 いつまでも、咲夜さんに告白も出来ない僕に愛想を尽かせたようだった。 「ああ、どうしよう。僕の財布…」 再びパターンが崩れた一日が始まった。 彼女の猫度 その③ 「うーん、来ませんね」 「そうね」 ここは紅魔館の正門前。 門番の紅美鈴とメイド長の十六夜咲夜がいた。 二人して門に寄りかかり、空を見上げて何かを待っているようである。 「来るって言っておいて、来ない人じゃないのに」 「そうね」 そう。このメイド長、完全で瀟洒なのだ。 昨日の帰りに、来訪の約束をしたため、お客として○○を待っているのだった。 「あ、プレゼントでも選んでるのかな。バラなんか持ってきちゃったり」 「そうね」 そして、紅美鈴も妖怪である前に女の子。 昨日はいい雰囲気になったはずであろう夜の帰り道。 きっと、ヘタレ○○でも告白したに違いない。 そう確信し美鈴は、ずっと咲夜の心を探ろうと、 略して恋バラ(恋のベルサイユ)をし続けているのであった。 「でも、恋人を待たせるなんて、最低ですよね」 「そうね……って、だから何も無かったってば」 しかし、こんな会話もすでに5週目。 さっきまで、どこか楽しそうにしていた咲夜も待ち惚けとなってしまい、 美鈴の気を使った会話にも、うんざりしてしまったようだった。 「あらあら~。じゃあ、今日はどうしてここで彼を待っているのかにゃ~」 「今日来るとしか言われなかったって言ってるでしょ」 「今日は朝からワクテカして待っていたのにぃ~?」 「美鈴!」 幻符『殺人ドール』 美鈴の残機が一つ減ってしまった。 咲夜も5回目のループで、ついに手を出してしまったが、 飛び散った美鈴のPを自動回収しているあたり流石である。 「いててて。ごめんっなさいっ!」 「はぁ。それにしても遅いわ」 紅魔館の時計台で時間を確認し、咲夜はまた、溜息をついた。 時間を操ってもいないのに、時間が遅く感じられる。 待ち人来たらずは何時の時代も同じなのだ。 ただ待ち続けるのは、効果があるのだ。心理状態によってはっ…!! 「そんな顔して、待ってるんだから。ねぇ」 「? 美鈴?」 そんな様子をニヤニヤして、美鈴は嬉しそうに見物していた。 うちのメイド長をこんなにも惑わしているのはあなただけだよ! 告白も出来ないのに実りはありそうね! でも、男としては… 「彼って最低の部類ですよねぇ」 「……そうね、概ね」 さすがの美鈴もこれにもニヤニヤ笑い。 しかし、それとこれとは話は別。 「そう言うところが好きなんですか?」(ループスタート) 「そうね……って、違うってば」(エンドレス) はやくきて~はやくきて~咲夜のナイトさん。 ループする周期も早くなり、美鈴の残機が無くなりそうであった。 「なんで、咲夜さんが門にいるんだよぉ」 門から離れた木の陰から覗き込む。 今日は、門の所に咲夜さんが居た。 「うう、どうしよう」 僕はパターンを敷いて歩く人間だ。 昨日の事件で、猫度を下げれば告白する恋の方程式、 つまり自分ルールが大分薄れてきているのが自覚できた。 そう。 今までよりもっと咲夜さんの事が好きになってしまったんだと気がついた。 早く会いに行くべきだと心は告げているのだが。 「あああ、習慣病ってやつなのかああ」 ここがパターンの弱いところである。 つまり僕は、咲夜さんに見つからず、紅魔館に侵入するのが習慣になってしまったのだ。 結局、財布は見つからず、美鈴さんへの門通過の為の賄賂の品が買えなかった。 なので申し訳程度に、おひつからおにぎりを作って持ってきたのだ。 準備は万端なのである。 これでは実行も出来ないのだが。 これはこれでいいのでござる。 「ああ、咲夜さんが。女の子みたいな会話のふいんき出してるお」 空をぼーっと眺めている咲夜さん。 笑顔で話をしている美鈴さんに相槌を打っている咲夜さん。 面白いことでも話しているのか、時々微笑んでいる咲夜さん。 遠くから見詰めるだけでも、かわいいなあ。 あ、また美鈴さんの残機が減った。 お!おおおお?!ああ、おしい!見えそうで見えない瀟洒クオリティ! 「はっ!」 うわあああ! これじゃあストークだああ! いつもの僕はスネークなのにぃ! レミリアストーカーならぬだあああ! いかん、いかんぞ。 普段咲夜さんを遠目で眺める機会など無いと、 いつまでもここに居ても仕様がないってことさ! さあ、どうしようか。 うむ。 忍び込むのを止めて、今日は普通に会いに行くか? 昨日約束もしたしな。 パターン?笑わせるなよ、だな。 さっきまで咲夜さんを見ていて、何も感じなかったって? 生の咲夜さんの迫力は桁違いだったんだよ! 早く会いたいんだよ!声が聞きたいんだよ!微笑んでほしいんだよ! ああ、そうか! 今日、会いに行くって約束したから、あそこで待ってるのか! メイドさんだ!メイド長だ!瀟洒なんだぁ! さすが咲夜さん。 ああ、やっぱりだ。 よし! さあ、いざ行かんと、持ってきたおにぎりの風呂敷に手を伸ばす。 「あれ??」 門を覗きながら、掴もうとしたのだが掴めない。 奇妙に思い、風呂敷を確認しようと振り返る。 すると、黒く蠢く物が、僕のおにぎりをほうばっているのが見えた。 「あ、あやややや。ばれちゃいましたね。おいしかったです」 「文さん?!何食べてるんですか!」 そこには、美味しゅうございましたと言う決まり文句で射命丸文がいた。 って、一気に平らげたのか! 虹っぽく7個も作ってきたのに… 「美鈴さんにプレゼントしたかったのにぃぃぃ!!」 「お!これはスクープ!○○氏、門番におむすびでプロポーズ!って事ですか~」 「違います!本命は紅美鈴じゃ…あ、やばい!」 大きい声を出しすぎた! 出て行く心は決まっていたのだが、スニーキングミッションで思った事がそれだった。 また、木の陰から覗くと、美鈴さんが歩いて近づいてくる姿が見えたのだが。 「あ、あれ?咲夜さんがいない?」 「○○?いつからいたの?」 あら?綺麗な囀り?僕を呼んでる? っておい!咲夜さん後ろにいるじゃないか! 時を操ったんだあ。さすがなんだああ。 ま、待て。 お、落ち着け。落ち着くんだ。 振り返って、『約束通りインしたお』って言わないと。 よし!顔の弛みもよし! さあ、振り向くぞ! 「約束通り…」 「いらっしゃいませ、○○様。歓迎いたしますわ」 あ。 エクステンド。 こちらが僕の微笑みのメイド長…咲夜さんだ… 「うぇええ!咲夜さん!愛してます!」 「?!え、ええええ?!」 ぐわああああ。 やべえええ。 また、やってしまったぁ。 こんな成り行きみたいに心を晒すことは本心じゃないんだああ。 完全で瀟洒な咲夜さんにこんな不完全な告白は無効だ! なんとか誤魔化すんだ!ゴマ!うわああ! 頭を冷やせ!コールド!フリーズ!アイスゥ! そうかあああ! 「あ、いえ!違うんです!アイス!アイス食べたいって言ったんです!」 「は、はい!って?あ、ああ!アイスね!私もアイス食べたいわ!」 ふう。 何とか誤魔化せたようだ。 今度は、咲夜さんのおみあげにアイスを持ってくるか。 「アイスって何ですか?」 「氷の妖精の主食じゃないですか?スクープいただき♪」 美鈴さんと文さんのアイス談義も相まって見事に誤魔化すことに成功したのだった。 ○○ 告白抱え落ち経験 2 咲夜 告白喰らいボム経験 2 300 「うわぁ」 紅魔館の裏口から忍び込んだ霧雨魔理沙が見たものは、数日前と打って変わった光景だった。 いつもは本の整理を忙しなくしている小悪魔が、子猫の世話で忙しなくしている。 そして、図書館の主の魔法使いは、床に仰向けに寝そべり、 お腹に子猫を乗せて本を読んでいた。 「いつからここは猫屋敷になったんだ?」 「昨日から」 本から視線を逸らさずに、言ってのけるのは相変わらずである。 「はい!魔理沙さんも、もふっとどうぞ」 「あ、ああ」 魔理沙は小悪魔が差し出した子猫を抱えた。 『にゃあにゃ』 「お、お」 最初は遠慮がちに抱いていた魔理沙だったが。 努力家の興味が引かれたのか、定番のチェックをし始めた。 「お、こいつも女の子か」 『にゃあ』 「おお?あざといな。舐めるぞこいつ」 指を舐められたり。高く揚げたり。ブーンとしたり。 最終的にパチュリーの横に寝そべり、胸に抱えてこう言った。 「結論は。かわいいな、結構」 また、一人陥落。 見事に紅魔館のネズミを捕まえた猫達であった。 しかし。 こんな和やかな雰囲気も一人の少女の声で、今日の弾幕が上がることになる。 「あ、いた!本当に居た!猫!」 「にゃあにゃあ、うるさい猫達はここに居たわ!」 「いいいい、妹様?!」 ここで今回の仕掛人、悪魔の妹フランドール・スカーレットが図書館に現れた。 「にゃあにゃあ、ってうるさいのにゃあ」 そして、最悪な事に彼女。 子猫たちの鳴き声で眼が覚めたようで、不機嫌度はマックスであった。 すごいぞ、吸血鬼の聴力。 一方で母性全開の小悪魔は、小猫達を抱えて一目散に逃げ出した。 しかし、そこに歩み寄る一匹の猫が居た。 『個別の11匹目、レモンと申します』 そう。前回の原因、生態不明の喋る猫である。 フランはこの猫を見て固まってしまった。 それにしても、この猫。物怖じしない変な猫である。 「…どうして喋るの?」 『わかりませんが、おそらくはy』 「すっごいしゃべるよ!猫じゃないの!?」 フランはその猫を抱え、地を蹴って舞い上がった。 目の前に掲げて、期待に満ちた眼で猫を見詰めている。 「それに奇遇だね!私は10人目だもん!」 「ああ、もってかないでー」 そして、そのまま図書館を飛び出して行ってしまった。 まさかパチュリーもお決まりのセリフを猫で言うとは思わなかったと話している。 また、喋る猫に眼を付けたのはフランドールだけではなかった。 「待てフラン!その猫は私のだ!」 そう。やはりの霧雨魔理沙もであった。 箒に跨り、すぐに追いかけようとしたのだが。 禁忌『フォーオブアカインド』 フランクローンABCが現れた! 「おっと!妨害あり、賞品ありの豪華な弾幕ごっこになったな!」 「あげないよ。私の猫だもの」 ワンテンポ遅れてパチュリーが魔理沙の横まで飛翔してきた。 そして、弾幕勝負は基本一対一。 魔理沙はここをパチュリーに任せて、猫を追おうとした。 「じゃあ、ここはよろしく!」 「待ちなさい。うちには一応猫がいるから」 「今攫われたじゃないか」 「多分、猫度のやつもいるでしょう」 「なるほどな」 避けて喋るのは幻想郷の基本動作。 どうやらこの二人。 フラン本体の方は、外に居る者たちに任せたようだ。 「でもまあ、あの喋る猫は私がいただくぜ!」 「どっちの喋る猫?」 「あっちの猫は、予約済みだろ」 「なるほどね。ここは連携してあげるわ」 こうして、紅魔の詠唱組が結成されたのであった。 ──── 場所は変わり、こちらは紅魔館のテラス。 咲夜さんが『今日は私のお客様』なんて、 嬉しいことを言ってくれたのでホイホイついてきたのだ。 「絶景なんだぁここはぁ」 そう、特に夕焼け。 遠くに見える湖に、沈む太陽が映り込んで幻想的に見えるんだよなぁ。 ああ、和むなあ。 『それはすごい!記事になりそう!』 『でしょう!あの人基本馬鹿なんですもん!』 あの妖怪さん達め!人の現実、突きつけちゃ駄目! 僕の回想を打ち破る大声で、門の所で文さんと美鈴さんが話をしていた。 偶にこちらを向いてニヤニヤしながら。 「くそぉ、なんて羞恥プレイだ」 どう見ても、僕に関する事。 絶対に咲夜さんに関する事を話しているに違いない。 どうにかして口止めする方法を考えなくては。 明日には『門番は見た!紅魔館の恋愛情事!』 なんて号外が配られることになってしまう。 「○○様おまたせ。お茶をお持ちしましたわ」 「え?ああ。ありがとうございます」 そこに咲夜さんが楽しそうにお茶を持ってやってきた。 こちらもこちらで最大限の違和感をお茶請けにって感じだ。 勿論、突っ込みますよ。 「あの、咲夜さん」 「何?○○様」 これだ。すっごい瀟洒だとは思う。 だが、僕の中の咲夜さんメーターが働かない。 「その、○○様じゃなくて、いつも通りに」 「だから。今日は私のお客様なの」 さっきからこの一点張りだ。 うん、もういいか。なんだか楽しそうだし。 紅茶も美味しそうだ! 「おお!これうめぇです!」 「そう言う事。なんでもお申し付け下さいな」 咲夜さんは僕の向かいに座って、紅茶を飲んだ。 昼下がり、咲夜さんと景色のいい場所でティータイム。 幸せの極みだ。 ん?ちょっと待て。 聞き逃すところだったぞ! 「つまり今日の咲夜さんは僕のメイド長なんですか?」 「そのつもりだけど」 おお。 この立場を利用すれば。 よしっ!ぐふふ。 「じゃあ、メイド長へのお願いをしてもいいですか?」 「はい?どうぞ」 前から咲夜さんにしてほしかったあれをお願いしようぜ! ぎぎぎ。 「では、まず立ってください」 「はい」 おお!スカートを乱さず立ち上がったぞ! ま、待て、ここからは慎重に。 「じゃあ、片足で立ってください」 「ん?はい」 おお、僕だけのメイド長だ! そして、見えそうで見えないぃぃ! はっ! これ以上駄目だ! い、いや。行け行け!押せ押せ! 「次に、四つん這いになってください」 「はい」 さ、咲夜さん!普通ここは聞かないよ! やべえ、後ろに回って見てえええ! 次は何?って表情でこっち見ないでぇ! 可愛いから! い、いや。待て… だ…駄目だ…まだ悶えるな… 次だ! さあ!どんなあなたを見せてくれるの十六夜咲夜! 「そこで一言どうぞ!」 「え? わん?」 「ぐはああぁぁ」 何という威力だ! にゃあ、じゃないのね! コンセプト的ににゃあって言ってほしかった! でも、悪魔の狗だもんね! かわええええ! 鼻血止まらん! 「かわいいっす!咲夜さん!」 「!!!」 顔を真っ赤にして立ち上がる咲夜さん。 可愛すぎるの。 あ、やべ。ナイフ持ってる! 怒ってるよやっぱり。 「すいません!咲夜さん!」 「ねぇ? 危機一発って言うゲーム知ってる?」 「え? いや、知りませんけど」 ナイフが飛んでくると思って身構えた。 しかし、出てきたのはよくわからん話。 「パチュリー様から聞いたの。必要なのはナイフと樽と人間の男らしいわ」 「……はっ!」 そのゲームって飛び出したらうんぬんのやつだ! か、完全に地雷踏んだ! 「聞いたときに思ったわ。私の新しいスペルにしようかって」 スペルとか!実験台にするつもりだ! どうする!今最高にクールダウンした! 頭は冴えている!解決策を探せ! 「そうね。ナイ符『○○様、危機一発』とでもしましょうか」 あ、腕が動いた。 くそっ!させるか! 「らめぇええええ!」 「え?! ○○?!」 よし!咲夜さんの右腕!手首を掴んだ! もう投げられん! そして! こっちに引き寄せ! 左腕も使えないように! このまま! 強く! 抱きしめる! 「よぉぉぉし!どうです?!咲夜さん!ナイ符とか使わせませんよ!」 「……」 「咲夜さん?……!?」 どこが冷静なんだ僕は?! 思いっきり、咲夜さんの事抱きしめてるぞ?! うわあ、どうしよう! 何か言わないと!何か! 「…やっぱり」 「え?」 な、なんだ?なにがやっぱりなんだ? 「やっぱり。結構、力強いのね」 ふと脇腹に感触があった。 咲夜さんの左腕は使えたようだ。 ほら、腰まで手を回されたじゃないか。 ああ。 もっと下に手を回すべきだった。 拘束が不完全だった。 でも。 ナイフは突き立てられない。 残機は減らない。 そっか。 これが最善手だったのか。 「しかも。結構、暖かいわね」 さっきから咲夜さん『結構』ってばっかりですね。 もう右腕も離してしまおう。 もっと咲夜さんを抱きしめてみたい。 あ、そうだ。 このお願いを聞いてもらおう。 「咲夜さん。もう少しだけ、抱きしめていていいですか?」 「…どうぞ。それがお望みであれば」 咲夜さんの頭に手を回し、なるべく力を入れないように。 だって、大好きな女の子なんだから。 優しく撫でたいじゃないか。 「ん~。結構、気持ちいいわ」 可愛いなぁ。 っと。やばい。 またメーター上がってきた! 咲夜さん、いい匂いだお!! よし!言うか! 今言わずして、いつ言うと? 咲夜さん大好きです! と、暴走しかけた次の瞬間。 屋敷を揺るがすほどの爆発音。 「うわ?!」 「…ん」 爆発音は多分図書館からだ。 音も篭っていた感じだったし、多分そうだ。 魔理沙のやつだな、邪魔をしおって! って、ん? 「あの、咲夜さん?行かないでいいんですか?」 「……何も聞こえなかったわ」 ちょ、更にぎゅっとくっついてくるんだが?! うわぁ、いい匂いだ、マジで。 うん。 何も聞こえなかった。 パチュリーさん、頑張って猫を守ってね! 「あ、そうだよ」 「…離すと撃つわ」 「い、いや。違いますって!猫!子猫達!」 「……あ」 咲夜さんも気がついたようだ。 変な猫ならいざ知らず、大半は子猫達。 マスタースパークなんてされた日には、 レミリアさんも怒るだろうな。 駄目だ、咲夜さんが叱られる。 名残惜しいが、仕方がない。 子猫のためだ。咲夜さんのためだ。 やっとの思いで引きはがした。 改めて咲夜さんを見ると、いつものメイド長な咲夜さんであった。 「では、ここからは弾幕脳で行きますわ」 「それでこそのメイド長です」 とりあえず、咲夜さんと一緒に図書館に向かうことにした。 イージー弾幕でありますように。 めでたし、めでたし。フラグ、フラグ。 ::::::::::::::::::::: 「ウフフ」 今、凄い綺麗な羽の生き物が横切ったんだ。 「ふ、フランちゃんだ!」 爆発音は噂の悪魔の妹君だった。 そして、心配の方は悪い状況。 「今あの喋る猫抱えてましたよ!」 「そうみたいね。追うわよ、○○!」 「え、さ、咲夜さん?!」 咲夜さんに両脇を抱えられ、飛び立った。 って、待ったああ! 「僕はあの子は追いませんよ!」 「連続で対吸血鬼戦とは貴重ですわ」 「僕の価値観ではありませんから!」 ちょ、これ、僕にも弾幕ごっこさせるつもりだ! 球も撃てないし、避けられないのに! 「全妖精メイド出動よ!妹様が脱走したわ!」 おお。 普段は妖精らしくきまぐれで働いているメイド達が一瞬で集まってきたぞ! これなら僕らの出番もないな! って、あー、もう! すぐに追いついちゃったし! 「咲夜だ!見て見てー、私の11人目だよ!魔理沙が連れてきてくれたの!」 フランちゃんは喋る猫を見せ付けてきた。 でも、言う事は、相変わらず訳がわからない。 「よかったですね。 私の方も猫係を連れてきました」 咲夜さんも僕を前に突き出してアピールした。 え?何これ? 「○○は猫係なの?」 「いや、違いますよ!」 「昨日猫を飼う事を決定させたのが○○ですから」 いや、仮にそうだとしても弾幕ごっこはできませんよ。 フランちゃんに抱えられた喋る猫も困っている感じだ。 あいつは猫かぶりで決定だ。黒幕妖怪め! しかし、咲夜さんは僕が猫係だという前提で話を進めるようだった。 「二つ名おめでとう○○。『紅魔館の猫係』」 「いや、え!? やったー!」 ねんがんの ふたつな をてにいれたぞ! ん?いや違うって! 紅魔館の猫係 ○○ おいぃぃ!変なテロップ入れんな! やらないってば! 「へえ。猫係如きが吸血鬼に敵うと?」 「そ、そうですよ!咲夜さん!」 「あら?二人とも無粋ですね」 フラワリングナイトだ。 紅魔館のメイド 十六夜咲夜 「メイドと猫係の相性の良さを得とご覧あれ」 咲夜さんの啖呵で、妖精メイド達が一斉に攻撃を開始した。 おお。こいつらルナティックだ! 「ウフフ、今の私は絶好調なのだよ!」 しかし、フランちゃんも緑の玉を全方位にばらまきながら避ける避ける。 「咲夜さん!離して!こっち飛んできた!」 「始まったら、オプションは静かに。お約束よ」 咲夜さんも僕を抱えながら避ける避ける。 妖精メイド達も大半が対応できている。 話に聞いていた悪魔の妹の弾幕ってこの程度なのか? これは温い? いや、紅魔館のメイド達が凄いだけさ! 「咲夜さん!行けますよ!」 「ちょ、暴れないで」 「「あ」」 ぴちゅーん。 「いたぁ、大丈夫、○○?!」 「いてええ!すいません、咲夜さん!」 僕と咲夜さんのPは、咲夜さんが自動回収していた。 しかしだ。 今日紅魔館に来て、咲夜さんを見た感じでは、 パワーも結構溜まっているはずはずなのに。 先ほどから咲夜さんは攻撃をしようとしない。 「咲夜さん!攻撃しないんですか?!」 「妹様が猫を持ってるから…と言いたいけど、あなたを持っているからよ!」 って、僕のせい?! あの猫は、球が当たっても大丈夫そうだし、それはいい。 フランちゃんを倒してから取り返せば。 「それなら、どうして僕を連れてきたの!」 「あなたが攻撃して!太股にナイフがあるから」 答えてないっす! 答えてないが、仕方がない! 届くかわからないが! 上を向いて、太股を確認しようとしたのだが。 「わ、○○!それ以上、上を向かないで!」 「ぶっっ!」 うわ、咲夜さんの胸に顔が埋まる! 駄目だ、手探りで取るしかない! ここか?!太股は?! 「ちょっと○○!お約束の間違いしないの!」 「え?わぁ!すみません!」 すげえ柔らかいの何あれ?! 「「あ」」 ぴちゅーん。 今度は僕だけが被弾。 「それは自業自得!」 「いててて、すみません!」 「ウフフ、駄目駄目じゃないあなたたち!私たちに比べたら!」 相変わらず緑の弾をばらまきながら、攻撃を避け続けるフランちゃん。 これ、噂のレーヴァテイン使われたら、やばいんじゃないか?! 「咲夜さん!やばいですよ!」 「もう大分わかったわ!」 ふと、浮遊感に襲われた。 って?!咲夜さん手を離したぞ! 「プライベートスクウェア!」 と、思ったら、咲夜さんに抱えられていて。 そして、多数のナイフが、フランちゃん目がけて飛んでいった。 いや、これは投擲だ!時を操ったんだ! 「咲夜さん!すごいっす!」 「こんなものよ!一回立て直すわ!」 ナイフが当たったかも、確認せずにこの場からとんずらした。 ::::::::::::::::::::: 少し離れたところで、二人で降り立った。 ああ、今考えると怖いぞ! 「とりあえず振り切りましたけど」 「ええ。いつも通りに状況把握しようとして、一機減らすなんてね」 咲夜さんはフランちゃんが脱走したときは、 最初に様子見を行うのが、パターンなんだそうだ。 「僕はもう残機1機ですよ」 「大丈夫。諦めないのが弾幕ごっこよ」 つまりここからが本当の勝負というわけだ。 僕も今度は隠れて、咲夜さんを応援するとしよう。 だが、妖精メイド達も頑張っているようだし。 取り合えず、咲夜さんの作戦を聞いてみよう。 「それで状況把握ってどれだけわかったんですか?」 「そうね。とりあえず、妹様はスペル発動中と言うことがわかったわ」 「どうして?」 まず、一つ目と咲夜さんは人差し指で数える。 仕草が可愛い。 「いい?周りには多数の妖精メイド。いつもだったら、スペルで一掃よ」 やっぱり。緑の弾だけだったしな。 と言うか、妖精メイド達カワイソス。 結局、全滅じゃないか。 つまり。 「それをしなかったと言うことは」 「そう。そして、それは『フォーオブアカインド』だと言うこともわかった」 そして、二つ目。 咲夜さんピース可愛い。 「いや、一々聞き返すのもなんですので、ずっと咲夜さんのターンで」 「いいわ。 パチュリー様と小悪魔が猫を攫われて追いかけてこない」 「きっと分身たちが足止めをしているに違いないわ」 うん、なるほど。 そして、三つ目。 咲夜三。 「そして、これは妹様の弾幕ごっこよ」 「今、屋敷には弾幕使いが何人いる?」 おっと。聞かれたからには答えなくては。 「えっと。咲夜さん、パチュリーさん、美鈴さんに文さん。とレミリアさんが」 「あと、魔理沙もね。妹様が言っていたから」 ああ、猫を魔理沙が連れてきたとか言ってたっけ? それでつまりどういう事なんだ? フランちゃんの弾幕ごっこで? 何人ってことは人数に関係したことか? 6人?6ってなんだ? !! 「あ!ちょうど6人!」 「そう。6面までクリアーして、猫をゲットしハッピーエンドよ」 やべぇ!最強のプレイヤーじゃないか?! ボスの面子も強いし。 これはやべぇ! 「つまり1面をパチュリー様か魔理沙が勤めてるってことね」 「あれ?一人追いかけて来ませんが」 「それを除けば理屈は合う。じゃあ、私たちは何でしょう?」 ん?私たち? 恋人!…では無いな。僕は大好きだけどな! そんな唐突な話じゃなくて、話は連続しているものだ。 つまり、弾幕ごっこで1面が2人の内のどちらかで。 僕らは何か。 ざわ… 「うっ…!!」 ざわ…ざわ… ま、まさか! 咲夜さんを見ると、4つ目の指が上がっていた。 そして、咲夜さんの4の宣告と言うのが。 「そう。2面のボス、十六夜咲夜と中ボス、○○よ」 ぐっ…!すでに組み込まれていたっ!僕も! 待て!ざわついている場合では無い! 「中ボスとか無理ですって!」 「そうかしら?妹様も抱え落ちする可能性はある。 使えるスペルは精々4、5枚 どう?やる気出た?」 「僕は弾幕撃てませんし、避けられませんよ!」 撃てないんだから、抱え落ちもさせられない。 避けられないんだから、スペルを使われても耐えられない。 どう考えても、無謀だった。 そして、咲夜さんの手が開かれた。 「ところで? 残機はいくつだっけ○○?」 「はっ…!」 このために僕をっ…!! 「そう。今の妹様の機のボムを減らしてほしいの」 「残機をかけてっ…!!それが中ボスの役目…!!」 この時、○○の残機1機。現在の価値で、この機と次の機で最後である。 『495年の波紋!』 遠くの方から、フランちゃんの声が聞こえてきた。 「あ、スペル使ってるわ。これで後二個くらいかしら」 「くっ!あ!パチュリーさん達来ますよ!」 「来ない」 「ぐっ!!」 なんで来ないの?! 2面だから?!まだ2面だから?! じゃあ、分身に任せて、2面に進んだフランちゃんはチート?! 訳がわからん?! 「ねえ?2面のボスがいつも負けるつもりで、弾幕ごっこをしていると思う?」 「うっ!」 「していると思う?」 「私は思わない。猫も取り返す。妹様も楽しませる。それが2面のボスよ」 「ぐぐぐっ!」 思いませんよ、もちろん。 どうする? すごい瀟洒だ。咲夜さん。 だが、声が緊張でもう出ない。 情けない。 「もう、仕方ないわね」 突然、咲夜さんは立ち上がった。 そして、片足で立ち。 続いて四つん這いになり、こう言った。 「お願い。○○様」 「ぐはあああ」 これさっきお願いした猫科のポーズだよ?! 実は片足立ちはいらなかったんだよ! 可愛いなああおい!! って!? 「い、いきなり何ですか」 「○○、今日のあなたは私のお客様なの。あなたと一緒なら勝ちたいのよ」 「え?」 まただ。 またこの眼だ。 咲夜さんに見つめられると、逆らえない。 何かを期待している眼だ。 今回はどういう意味かはわかっている。 「今日だけ、私の弾のお客様になってくれないかしら」 「……」 あとは、答えるだけだ。 くっ!こんな時に暴走できないでどうする! そうだ。 これくらいお願いしても罰は当たらないだろう。 「一つだけ。お願いしてもいいですか?」 「どうぞ」 「にゃん。って鳴いてください」 「………にゃん♪」 ………音符付き!!! 「よおおおおおおし!行くぞこのやろー!」 立ち上がり、咲夜さんに振り返らずに駆けだした。 生きて帰ったら、もう一回お願いするんだ… 新ろだ102、103、120、153 ─────────────────────────────────────────────────────────── 音もなく、動くものもなく、心なしか色もない、寂寞とした――けれど見慣れた世界。 能力を使えばすぐにでも展開される、私以外の如何なる存在も停止する世界。 私だけの、世界。 それが、これほどまでに口惜しく思えた事はない。 「…………○○」 目の前にいる――いや、「在る」青年。最近、執事としてこの紅魔館に迎え入れた、何の変哲もない普通の人間。 普段なら、そんな者をこの館が受け入れる事はない。ここは悪魔の住処、ただの人間のいるべきところではない。 では何故、彼がこの館に迎え入れられたのか。 決まっている。 お嬢様が、御気に召したからだ。 「……○○……」 解っている。 彼は、お嬢様のモノで。 私は、お嬢様の従者。 その所有はお嬢様のもので、 その自由は、お嬢様が握っている。 ――解っている、のに。 「○○…………」 今、彼はお嬢様と妹様の間に挟まれ、冷や汗をかくような表情を浮かべている。 おそらく、いつものように御二人が○○を取り合い、それを宥めようとして失敗しているのだろう。御二人は今にも弾幕を展開しそうな状態だ。 そしてそのまま、動かない。 動かない。 ――そう。 「○○……○○……」 私が今ここで、どんなに呼びかけても、 「○○、○○」 どんなに叫んでも、どんなに想っても、 「○○っ、○○っ、○○っ!!」 私の心が、彼に届く事はない。 解っている。 そしてそれは、たとえ時が止まっていなかったとしても、同じ。 解っている。 解っている。 ――けど、だからこそ。 「○、○……っ!」 だから、せめて。 せめてこの「時」だけは、私の。 私だけの―― 「――愛してるわ、○○……」 彫像のようになっている彼にそっと口付け、彼の体を抱き締める。 そしてそのまま安全な場所まで移動して、能力の展開を終了する。 再び時が動き始めた後、彼がどんなリアクションを取るか。そんな事を思いながら。 うpろだ1509 ─────────────────────────────────────────────────────────── 2夜連続で行われた紅魔館でのクリスマスパーティー それも咲夜さんと俺を残して皆潰れてしまうという形で終わりを告げた。 そして今は2人で片付けをしている。 「日にち的な意味ではクリスマスが終わりましたね、咲夜さん」 「えぇ、でもまだパーティーの後片付けが終わってないわよ?」 『パーティーは片付けるまでがパーティーなの』 そういわんばかりにテキパキと皿を片付けていく咲夜さん、流石瀟洒なメイド長 確かにそうですね、でも今は・・・・・・ 「咲夜さん」 「なに?」 「渡したい物があるんです」 今だけは、この時だけは、俺とあなたの時間にさせてください。 「これは・・・・・・?」 俺は執事服のポケットに大事にしまっていた小箱を咲夜さんに渡した。 「最初は指輪にしようとしたんですが、仕事の邪魔になるかと思ったんでちょっと趣向を変えてみました」 中身は咲夜さんの象徴、時計とナイフを銀や宝石の欠片で模した小さなペンダント 「中々苦労しましたよ。両方の形を崩さないでうまく組み合った物にするのは」 パチュリー様や魔理沙、アリスなど、そういう技術に詳しそうな人に知恵を拝借してようやくだった。 「そう・・・つけてみてもいい?」 「えぇ。というかつけてもらわないと、せっかく作ったんですから」 ふふっ、そうね――と咲夜さんは嬉しそうにペンダントを身に着けた。 「・・・・・・どう?」 「似合ってますよ」 「よかった。これで似合ってなかったらあなたに悪いもの」 それはない。だってそれは咲夜さんを想って咲夜さんの為だけに作られたもの。 似合わないはずはない。 「ありがとう・・・○○」 瞬間―――心臓が止まるような錯覚に陥った。 咲夜さんが笑ったのだ。 今まで見たことないような笑顔で。 「それじゃあ私からもプレゼント」 「えっ?」 咲夜さんが俺にプレゼント? ―――――シュル 能力を使ったのか、気づけば首に温かみを感じた。 これは・・・ 「マフラー?」 「そうよ。あなた、いつも首が冷えて寒いって言ってたじゃない」 あぁ、そういえばそんなこと言ってたような。 「・・・・・・暖かい、すごく」 「うん。後これはおまけ」 チュ――――― 唇に柔らかいものが触れたのが、咲夜さんの唇だと気づくのに時間がかかった。 「さ、ささささきゅやさん!???」 「うろたえないで、私も恥ずかしいんだから」 確かに咲夜さんは頭で湯が沸かせそうなほど赤くなっていた。 いや、俺もだろうか。 「・・・・・・(//_//)」 どうしよう、なんか気恥ずかしくなってきた。 こんな時は素数を落ち着くんだ、2、3、5、7、11・・・。 「あっ・・・」 頭が冷えたのか、一つ思い出した。 そういえば、まだ言ってなかったっけ。 「咲夜さん、言っておきたいことがあるんですが」 「奇遇ね、私もあるわ」 「じゃあ同時に」 「そうね。わかったわ」 「「せーの」」 「少し過ぎちゃいましたが、咲夜さん。メリークリスマス」 「少し過ぎてしまったけど、○○。メリークリスマス」 来年はきっと過ぎずに言えますよね?咲夜さん。 そう思いつつ、俺は咲夜さんと片付けを再開した。 最愛の瀟洒なメイド長が作ってくれたマフラーのぬくもりを感じつつ・・・。 新ろだ227 ─────────────────────────────────────────────────────────── 騒がしさを劈く大声が、今日は頭の芯に響く。 今月の二十五日という日は紛れもなく、かの有名な某の誕生を祝う日であり、向こうの騒ぎもそれが故だ。 もっとも、某の誕生を祝う気持ちや心など誰も持ち合わせてはいない。 酒と肴、そして飲みあう仲間さえ居れば、後は名を借りて騒ぐのみ。 ――どこへ行っても、一人は独り。 くずかごの中に積まれた歪な鼻紙を見て、昨日見た外の光景が頭に浮かんだ。 塵も積もれば山となる。人里も、神社も、森も、山も、そしてこの紅い館も、皆が皆、白銀の世界。 小さな明かりが里を彩り、大きな喧騒が館を暖め、どこかの家では眠れぬ夜を愛で語り明かす人達がいるのだろう。 騒ぎ合って、真に結構。 愛し合って、真に結構。 そんな今日ほど、虚しい日はない。 突然、僕には縁のないざわめきが、部屋にずかずかと入り込む。 華奢な造りの扉に目をやれば、今日は休む暇も無く齷齪働いているはずのメイド長が一人。 開けられた扉はすぐ、音も無いまま喧騒のみを締め出した。 「どうかしら○○、具合のほうは」 「あまり」 ベッドの傍の椅子に座し、先程のものとは対照的に、深く包み込むような柔らかい声で咲夜さんは僕に問うた。 自分は今日、その返事を曖昧に濁した。食事の度に様子を見に来てくれる咲夜さんへ、三度も。 「あまりあまりって、今日はそればっかりね。本当に」 「よりにもよってこの日とは……油断、してました」 「熱は」 がさついた自分の手を当てるよりも早く、きめ細かい手を咲夜さんは僕の額に添えてきた。 心地良い冷たさ。この時期にしては殆ど荒れていない、しなやかな肌の感触。 両方とも、いつかは何の気遣いもなく感じれるようになりたい。その決意が、僕には欠けていた。 「……あんまり下がってないわね。明日まで長引くようなら、永遠亭にでも」 溜息と共に自分の額を離れた手は、銀白の前髪に隠された額へとたどり着く。 まだ余韻が残るこちらの額を感じる最中、ふと、自分の腹から不機嫌な音が漏れ出た。 「あー、その……」 「いいわよ。朝も昼も殆ど食べなかったんだから、当然よ」 小さく屈み、一杯になったくずかごの袋の端を結びつつ、咲夜さんは僕の食の細さを嗜めた。 ここに来て三ヶ月ほど経つが、どうやら僕には咲夜さんから弟のように見られている感がある。 一人っ子の自分が咲夜さんに惹かれた根底には、そういった事も流れている。 「ああ、それと。執事が居ないのは適当に誤魔化しておいたから、私以外はここに入らないわ」 あまり人が来ては、落ち着かないでしょうしねぇ―― 咲夜さんの気遣い。一言残されてすぐ、また独りとなった。 今まで咲夜さんを支えていた椅子の上にお盆が一枚。 その上に湯気の立つお椀と蓮華の一組が、所在無さげに佇んでいる。 やがて騒がしさは影を潜め、廊下から妖精メイド達の疲労を帯びたおしゃべりが細々と耳に入ってくる。 数少ない窓があるこの部屋から遠目に見る人里に、もう明かりはない。 熱は、館に静寂が押し迫るのとは反対に、徐々に引きつつあった。 「あ、そうそう、おゆはんの感想を聞いておきたいんだけど」 食器を下げに来たついでか、今晩の感想を咲夜さんからねだられた。 今後の参考にでもするのだろう。しかし、思った以上に言葉は出ない。 見た目、温度、塩加減、それらが全体の均衡を崩さず、見事に調和していた卵かけのお粥。 好みまで考慮された点も含め、正直なところ、一分の隙もないからだ。 唯一隙を突くとすれば、舌の一部分がうまく機能していない所為で、味がぼやけていた点だろう。 ただそれは、咲夜さんの隙ではなく、僕のものであるのだが。 「美味しく、なかった?」 少し八の字に眉を歪め、不安に満ちるその瞳で、咲夜さんは黙り込む僕を見つめる。 本当に美味しい物にはえも言えないが、うんうん唸り、まだ微熱に浮つく頭で無理に吐いた。 「よく、わからなかったです。でも……ずっと、食べていたい味、だった、かな」 「参考にならないですよね」こう付け足し、その場を誤魔化すように笑った。 御椀の湯気はいつの間にか消え去り、後は時の経過に従って冷める一方にある。 「頭おかしい人に聞いても、やっぱり何の参考にもならないわね」 研がれた言葉で乙に澄まされる。瀟洒の名も伊達ではない。 傍からみてもやはりおかしいらしいから、今日は早く寝よう。 枕に頭を横たえて見る咲夜さんは、常にあるどこか凛とした空気を、纏ってはいなかった。 「……ずっと食べさせてあげないことも、ないわ」 十二時の鐘と言葉の始まりが、寸分違わず重なった。 鐘の音がそのように聞こえさせたのか。少なくとも自惚れる自分だけはそう聞こえた。 意味深いような言葉に思わず身を起こし、咲夜さんの顔を見上げてみる。 目の前に立つ人はおくびにも出さず、深く紅い瞳が僕だけを見下ろしている。 「それはありがたいですが、毎日お粥はちょっと」 「鈍いのは、熱のせいかしらね」 鳴り終わった後のそんなやり取り。 咲夜さんの言葉に、僕は気づかされた。 ……いつか打ち明けるはず想いが、不本意な形で伝わってしまったのは合点がいかない。 いずれ、もう一度。熱に惑わされない、真っ直ぐな心を、せきららな言葉で。 「……そろそろ、お嬢様が呼ぶ頃じゃないですか?」 「そうね、もう行くわ。でもその前に」 そう言って腰を屈め、僕が身を横たえるベッドに咲夜さんは左手をついた。 秋波を送り、僕の顎に右手を添え、下に誘われてから少し驚いた僕に、咲夜さんの口の両端が小さくつり上がる。 程なくずいと鼻と鼻が触れぬばかりに近づけられ、甘い吐息が鼻腔を撫ぜ返す。 後には、額に麗しい唇の感触だけを残し―― 「……早く、私を見つけられるといいわね?」 靴は残さず、今日も瀟洒な従者は紅い悪魔の傍へと戻り着く。 窓硝子の外に広がる夜空からは、皓々と輝く氷輪の光が優しく部屋に差し込んでいる。 この光はこの冬限りで、もう少し経てば見れなくなるだろう。 それまでに、きっと―― 一年後の孤独のホワイトナイトに、別れを。 新ろだ241 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「あら、博麗神社の穀潰しじゃない。まだ巫女に追い出されていなかったの」 「ふん。何の用だロリコンメイド。お嬢様中毒は大丈夫なのか?」 もはや日常と化した咲夜と○○の口喧嘩。 今日も出会い頭に罵詈雑言の弾幕ごっこが開幕した。 「何よその態度? 三枚目が何を格好つけてるのかしら?」 「三枚目なのはお前だろ。主にその服の下」 「……ハリネズミになりたいのかしら? このヒモ」 「誰がヒモだ。食い扶持くらい自分で稼いでる」 「その割にはろくなものを食べてないみたいだけど?」 「何を偉そうに。米つきバッタの分際で」 バチバチと火花を散らしながら、○○と咲夜が睨みあう。 外の世界から迷い込んできた人間である○○は、博麗神社に居候している間に、すっかり幻想郷に馴染み、帰ることが出来なくなってしまった。 そんなわけで、人里で仕事をこなしつつ、博麗神社に住み続けている。 人柄の良さが幸いしてか、人妖問わず好かれ、里の人間にも歓迎されるほど、信頼も厚い。 そんな○○と珍しく仲が悪いのが、同じ人間であるはずの咲夜だった。 全く腹立たしい。あいつに会ったおかげで最悪の気分だわ。 咲夜は鼻息荒く紅魔館の門をくぐる。用事も済ましたし、早くお嬢様のお姿で気持ちを落ち着けなくては。 それもこれもあいつに会ったせいだ。 今度と言う今度はこのナイフでハリネズミにしてやる。 そんな物騒なことを考えながら、玄関を通ると、パチュリーが人目を気にしながら、一つの部屋に入っていくのが見えた。 パチュリーが図書館から出てくる、しかもこそこそと。 これがおかしなことなのは、ここのメイドならばすぐに分かること。 いぶかしく思った咲夜は音を立てないように、その部屋に近寄る。 「パチェ遅いわよ。……咲夜には見つからなかったでしょうね?」 「ええ、聞かせるわけにはいかないから」 聞こえてきたのは、主のレミリアと、先ほど部屋に入っていったパチュリーの声。 「でもレミィ、本当なの? ○○が咲夜に惚れてるって」 「ええ、本当も本当、大本当。霊夢からの情報よ、間違いないわ」 ……今、なんて? 耳を疑う咲夜。 「信じられないのよね。あんな喧嘩ばかりなのに」 「好きな娘には素直になれないっていうのがお約束じゃない」 「まあ、どっちでもいいけど、もし本当だとしたら、○○も馬鹿よね。咲夜なんかに惚れるなんて」 「普段喧嘩ばかりだしね。もし咲夜が知ったら、どうなるか予想つくわ」 「さんざんにこき下ろすでしょうね」 「○○もそれを分かっているみたいね。咲夜のことを考えては悶絶してるそうよ」 「悪い奴ではないんだけどね」 「むしろいい方なんじゃないかしら。基本お人好しだし、真面目だし」 「受けた恩は、利子つけて返さないと気がすまないのよね、あいつは。それが仇に対してもそうなのが玉に瑕なんだけど」 「悪口言われると黙ってられないのよね。惚れた相手に対しても」 「まあ、その真っ直ぐなところは、見ていて気持ちいいけどね」 「霊夢がぼやいてたわ。重症だって。口喧嘩した後の負のオーラといったらないらしいわ」 「咲夜に惚れたのが運の尽きね。なんとかして諦めてもらうほかないんじゃないかしら」 「相手が咲夜だしねえ」 部屋の中から二つの溜め息が聞こえる。 どうやら、喧嘩相手だった○○は、自分に気があるらしい。 ……そう言えば、聞いたことがある。心を許したい相手に、素直になれないタイプの人間がいると。 思い当たる節が幾つもある。 ……まさか、本当に? ○○は義理堅い働き者だということは知っていた。 ハクタクからも信頼されているし、二人が言ったようにどこまでも真っ直ぐだ。 喧嘩ばかりだった理由。 いつだったか、「冷たすぎる」と指摘された自分になかった暖かさを、彼は持っている。 それが、とてもまぶしかった。 ……本当は、とてもうらやましかった。 そう自覚した後に生まれたのは、恋慕。 「……わたしも、ずいぶんひねくれ者ね」 まったく、とんだ災難だったぜ。 あそこであんな奴に出会ってしまうとは。まあ、仕方ない。茶でも飲んで落ち着こう。 博麗神社に戻った○○は、すぐにお茶を入れ、お帰りの一服を決め込んだ。 「咲夜のことよ」 「いきなり来て何を言い出すのかと思えば」 「音速が遅いにも程があるぜ」 そこに聞こえてくる三者三様の声。霊夢に魔理沙にレミリアといったところか。 女三つで姦しいとはよくいったもんだ。 しかし、咲夜? あの女がなんだって? 「そろそろ決着ついてもらわないと困るのよ。屋敷がまともに機能しなくて」 「しかし、○○も本気で気付いてないとしたら、恐ろしく鈍感だな」 「地獄行きよ。あんなに大きな好意に気付かないなんて」 ……はい? 「咲夜ったらもう、時を止めるのも忘れてぼんやりして仕事が進まないし。 そう言えばこないだの朝なんかナイフの雨霰だったわ。なんであんな奴が夢にー!? なんて絶叫しながら」 「いっそのこと全部○○にばらしたらどうだ?」 「無理ね。あいつのことだし、罠だとか俺は騙されないとか言い出すわよ」 「全く、咲夜ってば何であんな奴に惚れちゃったのかしら?」 「瀟酒な従者の名が泣くぜ」 「でもまあ、実際仕事振りは見事よね」 「当然。自慢の従者だもの」 「ああいうのに気に入られた奴は、きっと幸せになるんだろうな」 「信じた相手は裏切らないわよね。他人には冷たいけど」 「何だかんだでいい娘だと思うんだけど……」 「○○が気付けば万事解決なんだがな」 「無理無理。好意に対する鈍感を煮詰めて漢方薬にしたような奴よ」 「本当、なんとかならないものかしらねえ」 ……冗談、だろ? あの咲夜が? 恋患い? しかも、相手は俺!? ……そう言えば、聞いたことがある。心を許したい相手に、素直になれないタイプの人間がいると。 思い当たる節が幾つもある。 ……まさか、本当に? ああ、確かにあいつはいい女だよ。悔しいがそれは認めるさ。 だけど、あの愛想の無さはありえない。 ……いや、それこそが、本心の裏返しだとしたら? ひょっとして、俺は酷い思い違いをしていたのかもしれない。 咲夜の気持ちを踏みにじっていた。謝らなければ。 ……違うな。謝るだけじゃなく、咲夜を知りたい。 俺は彼女を知らなすぎる。 だからこそ、今まで平気で喧嘩を売って…… 会いたい、咲夜に。 話したい、咲夜と。 「こんな形で気付かされるとは。……俺も、まだまだだな」 「っ!○○!?」 「のおっ!?」 唐突に聞こえた声は今まで夢想してた少女のもの。 「……咲夜?」 「なんでここに?」 「いや、俺ここに住んでるわけで」 「あ、そうか」 忘れてたわ、と頭を抱える咲夜。 「むしろなんで咲夜がいるんだよ?」 「……お嬢様を迎えに来たのよ。……悪かったわね」 「あ、……いや。……お疲れ様」 「な、なに? 突然」 いつもとは違う反応に戸惑う咲夜。 それを見て顔を赤らめる○○。 「あ~……その」 気まずい沈黙が場に降りる。 「ほ、ほら、レミリア迎えに来たんだろ」 「え、ああ、それじゃあ」 取り繕うように○○が言うと、取り繕うように咲夜は去っていく。 「……まいった。いい女じゃないか」 その後ろ姿に見惚れながら○○はつぶやいた。 最近仕事に身が入らなくて困る。 気が付くと時間を止めて机に向ってる自分がいるのだ。 「……これも違う! どうやって書いたら、この思いを全部網羅するのよ」 「咲夜?」 「お、お嬢様!?」 いつの間にか後ろにいた主に驚く咲夜。 「珍しいわね。仕事をさぼって自室にこもりきりなんて」 「……え? 時間、ああっ!」 「能力を忘れるくらい集中して、一体何を書いていたのかしら?」 「……申し訳ありません」 「休みがほしいのなら、一日くらいはなんとかなるわよ?」 「……いえ、大丈夫です。なにか?」 「ちょっと人里までいってきてほしいの」 「ひ、人里……いえ、かしこまりました」 内心の動揺を隠しつつ、時を止め準備を済まし戻る咲夜。 「それでは行ってまいります」 「あら? ずいぶん丈が長いのね」 着替えたメイド服は、見慣れない膝下までのロングスカート。 「その…… あまり短すぎるのも下品ですし……」 「いままで気にもしてなかったのに? まあ意外な姿にときめく男もいるかもね」 「そ、そんなつもりじゃ」 「はいはい。頼んだわよ」 「……行ってまいります」 そそくさと屋敷を出ていく咲夜を見送りながら、レミリアはほくそ笑んだ。 「ここまでうまくいくなんてね。さあ、最後の仕上げっと」 言いながら、咲夜の部屋へと足を運んだ。 「……眠い」 このところずっと眠りが浅い。 寝付いたと思うと咲夜が夢に出てくる。 一回「そこまでよ」な夢を見た夜なんか、本気で自分を滅したくなった。 「だらしないぜ。霊夢が感染ったか?」 「夜中いつまでも起きてるからよ。なにごそごそ何やってるわけ?」 「いや……まあ、眠れないから気晴らしに、な」 ……咲夜への想いを書きなぐってるとは流石に言えない。 「ということは○○もみたんだよな、さくや」 「は?」 「さくやは綺麗だったなって」 「ああ、そうね綺麗だったわ、さくやは」 突然べた褒めを始める二人。 「お、お前ら何言ってるんだよ」 「お前は思わなかったのか? さくや、綺麗だって」 「いや、……だからな」 「どうなのよ、○○。わたしも知りたい。さくやを、どう思った?」 まさかこいつら、分かってて遊んでるんじゃなかろうな? だがしかし、そうやすやすとからかわれる俺ではない。 「……べ、別にどうとも思わなかったね」 ……からかわれる俺ではない。 「そうか? ○○なら分かると思ったんだがな?」 「そうね。いままで意識してなかったけどあれはあれで良かったわ、十六夜」 「……ぐっ!」 「本当は気付いてるんだろ? 十六夜の良さに」 「言っちゃいなさいよ。さくやは良かったって」 「お前ら……!」 いい加減にしないと本気で…… 「いい眺めだったな。昨夜の十六夜月」 「……は?」 「そうね。満月の後があそこまで風情が有るとは思わなかったわ」 「……なんだよ。月のことか」 「あら、なんだと思ったの?」 「え……? あ、いやなんでもない。なんでもないんだ!」 危ない。バレるところだったぜ。 「変なヤツだな。まあ、いいや。それじゃ頼んだぜ」 「なにが?」 「あ、ごめん。言うの忘れてたけど、今日ここで宴会」 「……そうかい。俺の仕事は決まったわけだな」 「そ。準備よろしく」 「……はいよ」 ○○が去った後二人は顔を見合わせる。 「で、首尾は?」 「ばっちり。ちょっと探ってみたら出るわ出るわ。大量の書き損じと一緒に」 「こっちもだ。レミリアから貰ってきたぜ。同じような感じだったらしい」 「ここまで見事に釣れるなんてね」 「宴会が見物だぜ」 霊夢と魔理沙は心底愉快そうに笑った。 ……最悪だ。まさかこんな時に咲夜と一緒なんて。 準備の手伝いをレミリアが咲夜に命じたために、二人つまみを作るハメになった。 嫌なわけじゃない。嫌なわけではないが…… 「あの」 「なんだ」 「……お酒は」 「……さっき外にありったけだしたじゃないか」 「……あ、ごめんなさい」 「……」 「あのさ」 「なに?」 「味付け」 「もう塩を入れたじゃない」 「……あ、悪い」 「……」 こんな感じできまずいことこの上ない。 おまけに何やら生暖かい視線が気になるし。 ええい。無視だ無視。 「……出来たし。持ってくか」 「え、ええ」 ぎこちなく、体を外に向ければ、ニヤニヤとこちらを見ているのが三名程。 「な、なんだよ」 「いやいや」 「気にしないでいいわよ」 「初々しいわね、咲夜も○○も」 「何言ってんだよ」 とっさに言い返せば、それに続いて咲夜も言い返す。 「誰がこんなやつ」 「む……」 そんなバレバレでまだ意地張る気かこいつ。 咲夜の方を向くと、あちらも俺を睨んでいた。 「おい」 「なに?」 「一言余計なんじゃないか? わざわざ言う必要もないだろう」 「そっくり返すわ。一言余計なのはあなたの方よ」 「……ふん。いいのかそんなこと言って。 今のお前じゃ、俺には絶対勝てないだろ」 「勝てないのはあなたよ。○○。貴方の心は私の物」 「何言ってんだ、お前? お前が俺に惚れてるんだろ」 「……冗談じゃないわ」 「俺だって」 「どこまでも強情ね」 「そっちこそ」 バチバチと火花を散らし睨みあっていると、視界の隅で霊夢が紙切れを掲げているのが見えた。 「○○、これ、なにかしら?」 「え?」 どこかで見た覚えが…… 「って、それは!」 「なにこれ?」 「ぎゃああっ! 見るなーーっ!」 紙を受け取った咲夜の顔が勝ち誇った笑みに変わっていく。 中身は眠れない夜に想いをぶつけた、恥ずかしい言葉の塊。 所謂、恋文。 頭を抱えてると、目の前に再び紙切れ。 「こっちはお前用だな」 「あ、それは!」 受け取って開くと、そこには歯の疼くような甘ったるい文句が書かれた俺宛の恋文だった。 「……」 「……」 「さて二人とも、何か言いたいことは?」 ニヤニヤと、いやニタニタといやらしく笑いながらレミリアが言う。 「……この、悪魔」 「いかにも悪魔だけど?」 よくもいけしゃあしゃあと…… 「……○○!」 突然強い口調で咲夜が切り出す。 「こ、この手紙のことだけど、う、うう、受け入れてあげるわ。 か、勘違いしないでよ。こんなことを書いたあなたが、可哀想なだけだからね」 「お、お互い様だろう。お前こそなんだよこれ。気の毒でしょうがないし、こ、恋人になってやるよ」 申し出は嬉しいが、毎度毎度余計だって言ってるだろう。 「なによその言い方。ありがとうくらい言ったら? まあ、態度でしめしてもいいけど」 「逆だろ。しめして欲しいんじゃないのか」 「あなたこそ逆じゃない。素直になったらどうなの?」 「そっくり返してやるよ、意地っ張り。だいたいお前はさ……」 なし崩し的に展開される口喧嘩。 なぜこんなことになってるのかと我に返り、横を見てみると…… 「いいたいことは言ってしまいなさい。不満を遠慮なく言い合えるのは、理想の仲よ」 「……」 このままでは埒が明かない。こうなったら…… 「よくも恥をかかせてくれたな、咲夜」 「誰のせいよ。恥かいたのはこっちだわ」 「だから……」 反撃の代わりに、咲夜の唇を奪った。 「仕返しに、これからたっぷりと恥をかかせてやるからな」 突然のことに真っ赤になる咲夜に言えば 「やってみなさいよ。返り討ちにしてやるわ」 勝気な笑みでそう返してくる。 近くで歓声が上がっているが、そんなものはもう聞こえない。 今はただ、目の前の咲夜と一緒に…… 生涯続く喧嘩相手と結ばれた初めての夜のことだった。 新ろだ253 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○様、紅茶をお入れしました」 本から目を離し、振り返る テーブルの上には紅茶が湯気を上げていた 「ありがとうメイド長」 彼女は一礼すると部屋を出て行った レミリアの世話になり始めてもう何か月か 幻想郷は居心地良く、だらだらと長居している といっても基本的に紅魔館の中にばかりいる、たまに散歩には出るが 「・・・パチュんとこで魔導書あさるか」 空になったカップを持って、部屋を出た カップを置いていこうと途中でキッチンに寄ると 「やぁメイド長、昼食の支度かな」 何人かの妖精メイドがキッチンをせわしなく飛び交っていた 「○○様?紅茶のお代りですか」 「いや、図書館に行こうと思ってね、カップだけでも返しておこうかと」 「わざわざありがとうございます」 カップを流しにおいてその場と後にしようとし、足を止め忘れていたセリフを 「美味しかったよ、また頼む」 「は、はいっ!」 おれはその返事を聞いてその場を後にした 「いつにもまして気持ち悪いわね」 「黙れ魔女、夜中にひゅうひゅう苦しそうに息してた時に助けてやっただろうが」 「押しつけがましいわね、大体何かしたわけじゃないじゃないじゃない」 「一晩一緒にいてやったじゃねーか」 少し前のことだ、夜中にふらふらしてるとこいつが苦しそうにしてたので一晩ついてやったのだ 「だからこうしてここで本を読むことを許可してるんでしょ」 「ああ、そうだな・・・確かに大きな見返りだ」 本に視線を戻した、ここにある貴重な書物、それは退屈しのぎには実に程よい 「それで、なんで機嫌がいいのかしら」 「んー、そうだな・・・紅茶が美味しかったから」 パチュリーはあきれ顔で俺を見ると数秒硬直した 「随分と些細な幸せね」 鼻で笑うように、俺を茶化す 「ああそうだな、しかしそういうものこそ得難いものだ」 「ふぅん」 理解できないか、彼女にはどうでもいいことなのか、今度こそ本当に、本へ意識を向けた 「やぁメイド長、夕食ごちそうさま」 夕食を食べ、ふらふらと屋敷を歩いていると、メイド長に会った 「御口に会いましたか?」 「うん、美味しかったよ、君みたいなメイドが我が家にもいればなぁ」 「あ、ありがとうございます」 「そうだ、後で紅茶を持ってきてくれないか?君の入れる紅茶はとてもおいしくてね」 「は、はいっ!喜んで」 「なぁレミリア、いつまで付いてくるんだよ」 咲夜と別れた直後、後ろの気配に言葉をかける 廊下の角からレミリアが姿を現した 「いやぁ、咲夜といちゃいちゃしてるものだから、気になるじゃない」 くすくすと笑いながら、彼女は近づいてきた 「のぞき見とは趣味が悪いな」 「咲夜を持っていくつもり?」 「ああそうだな、彼女が付いてきてくれるならうれしいけどなぁ」 「頑張って口説きなさい、私は邪魔するけどね」 それじゃあお休み、そういうと彼女は身をひるがえして 「おい、ちょっと待て、なんで神槍持ってんだ」 どこに持ってたのか、馬鹿でかい槍を肩に乗せて振り返る 「あなたは私の友人だけど、だからと言って容赦しないわよ(はぁと」 吸血鬼のくせに太陽みたいな明るい笑顔で言いやがった 「・・・頑固おやじかあいつは」 娘は貴様にやらん!なんて幻聴が聞こえたりした気がしなかったり 部屋に戻ると、扉が開いていた 部屋の中をのぞくとメイド長が椅子に座ってぼうっとしている 「メイド長?」 「え、あ、○○様」 彼女は跳ねるように椅子を立った 「すみません!紅茶をお持ちしたのですがお部屋にいらっしゃらなかったので、勝手に、その」 「いや、こちらこそすまない・・・紅茶、もらえるかな?」 「は、はい!」 ポットから注がれた紅茶は湯気を上げていて、入れたばかりのようだった 彼女に紅茶を頼んで、レミリアと会って話して・・・30分ほどか? これの時を止めていたということか、なるほど便利だ 「まぁ座ってくれ、少し話し相手になってもらいたいんだが・・・いいかな?」 「そ、それでは、失礼します」 「・・・そうだ、お礼というかお詫びというか、これを上げよう」 棚の中をあさり、あるものを取り出した 「・・・板?ですか」 「チョコレート・・・こっちじゃこういう趣向品が貴重だっていうからいろいろ持ってきたんだけど」 いまいちセンス悪く人気がないのだ 「レミリアに土産を上げたんだが返品された」 「な、何を上げたんですか」 「インドネシアの魔よけの木彫り人形をやったんだ」 上げてから3日目に「夜中に動いたバカー!怖いだろー!」と言って突き返されたがね お前それでも吸血鬼かと 「ぶっ、お嬢様・・・可愛い」 何やら肩を震わせて悶えてるぞ、鼻から赤い物体が見えた気がしたけど気のせいだ それから少し話をした 彼女とお茶を飲むのは、なかなか楽しかった 本当は昼間に庭でお茶したいのだが、彼女はなかなか忙しそうで誘いづらい 「長々と悪かったね」 「いえ、お話できて・・・楽しかったです」 「・・・夜に食べると虫歯になるぞ」 彼女にあげたチョコを指して、そういうと 「う、気をつけます・・・」 カップやソーサーやらを片づけながら、彼女は意を決したように、こちらを見た 意気込みというか、気圧された な、なんだ、何かしたか? 「あの・・・よろしかったらまた、ご一緒してもよろしい、ですか?」 間 一瞬理解が遅れた 「あ、ああ・・・良かった、もしよかったらまた、って言おうと思ってた」 「そ、それでは、おやすみなさい」 「紅茶美味しかったよ・・・おやすみ、咲夜」 「え・・・」 「あ、いやメイド長って呼びにくいなって思ってて・・・いやだったか」 「いえ!そんなことはっ」 「そっか・・・よかった」 「あの、私も・・・」 「ん、呼び捨てでも、好きに呼んでくれ」 「で、では・・・○○さん」 「・・・ひと文字しか変わらんではないか」 「いいんです、これが呼びやすいんです」 彼女はそういうと胸を張った まぁ好きなように呼べと言ったし 「そ、それではおやすみなさい」 「おう、おやすみ」 ばたん ドアを閉じる、静かなせいか 咲夜が歩いてゆく音が、はっきりときこえていた 振り返るとカーテンの向こうで何かが動いていた 「・・・・・・」 カーテンを勢い良く開く そこには吸血鬼姉が窓に張り付いていた 「・・・みなかったことにしよう」 そっとカーテンを閉めた がたがた 諦めて窓を開けた 「何の用だレミリャ」 「いちゃいちゃしてるじゃない、あんたって昔こんなだったかしら?」 あざ笑うように、小馬鹿にしたように 「あんたって、ジゴロ?」 窓の縁にかかった手、そして足を手で払う とん、と軽く突き飛ばした あ、という短い声を残して、窓枠という画面からフェードアウトした 「夜行性につきあってたらきりがないな」 ベットに上がって布団かぶった 窓がガタガタと言っていたが、きっと風が強いに違いない 俺は音を遮断して、眠りについた 終ワル 新ろだ344 ───────────────────────────────────────────────────────────
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DATA二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二 モチーフ:シレーヌ(デビルマン) 分類:ヴィラン/悪魔 二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二DATA /⌒Y⌒V⌒ヽ __/∨ ,∠ _」 _ノ⌒ヽ _ / \ |__く  ̄ ̄ ̄<⌒ __ ノ {_,// |\\\\ ー=ニ_ ̄ ̄ \-< _ ノ // ハ |⌒\}ト\ __二ニ=- \ /. |/ ′ | \\ /厶=ミ、 \\─- ノ }| l ニ‐- ̄ 仡ハ }ハ ⌒ヽ  ̄ ̄ ⌒ヽ ⌒\  ̄ ̄}| | { 仡ハ Vツ ト _ノ┐<⌒\| 八 \ Vツ , ノソノ_ノ⌒}へ /,/\(\\ _ __ イ  ̄ `ヽ」 //⌒V⌒V\ ̄ `´ /|八ト\}⌒ヽ|⌒\ ⌒{ |__}__〉 {_}⌒ヽ イ/} ̄} _ __ ノ\ / /⌒\/⌒ // //⌒ 〉/___\. 〈 厂/ ヒ⌒ヽ)>‐<⌒ヽニイ_/_ \| l{ ,/ 〕 ノ{ \__\_/_ノ V{ / {,/∧ に}  ̄ }こ}\ \ \_厂)ノ\_____に{ }こ} ', /´ ̄ ̄\く ̄( \___\ ノこ} } {辷辷辷_∧ )/ | <\`\_ノ__/----──────ァ. __ / / ∨ | r‐ ><⌒〉/ __ -‐  ̄ ̄ / ,′ / /二=- | |厂\/} / |  ̄ r─ ´ ; i / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`丶/ /辷} -──- . / ̄\__ l\ // 厂ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ `丶 ∨ |/ / ̄ ̄ ̄\ / / | \/ , 厂 ̄} \} | /  ̄ ̄ ̄\ \_/ 二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二DATA 「この咲夜めを捉えることはかないません」 レミリア666眷属の第2位にして、彼女の身の回りを世話するメイド。 戦闘能力以外に関しては、レミリアが最も信頼を寄せるしもべである。 常に冷静沈着で、職務に忠実。主君たるレミリアに対しては、崇拝にも近い忠誠を抱いている。 その戦闘スタイルは高速戦闘。 目にもとまらぬ超速度で、縦横無尽に駆け巡るさまは、まさに「神速」の一言に尽きる。 しかし、時には瞬間移動したとしか思えないような、不自然な挙動を見せることもある。 どうやら彼女の能力は、ただのスピードだけではないようだが…… AA出典:十六夜咲夜/東方Project 二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二DATA
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名前:小鳥遊 咲夜(たかなし さくや) 性別:女 性格:人見知り しっかり者 容姿:花柄のワンピース。髪は淡いピンクで肩までのショートカット。銀の天使の羽の形をした髪留めをしている。 血族:人間と天使のハーフ 1,主な使用武器 聖天羽(えんじぇる)…頭につけた髪留めに魔力を込めることで髪留めが本物の羽に変わり高速で長距離移動が可能になる。 2,能力について 魔法…攻撃魔法は使えず回復魔法や援護魔法を使う。 3,これまでの出来事 2002年11月03日に生まれた。いたって普通の女の子。時々顔を出すがほとんどは家で義母である月の手伝いをしている。
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――ガタガタ。 紅魔館の数少ない窓ガラスが、量と反して大きな音を立てている。 嵐だった。それも、数年に一度というほどに大きな、風と雨の合奏である。 「ねぇ、○○」 「……はい」 そんな紅魔館の中に存在する従業員たちの私室の一室にて、二人分の声が蝋燭の火を揺らしている。 その度に二つの影が揺れ、まるで外から響いてくる乱暴な音楽に、身を躍らせているようだった。 それが、二人の僅かな恐怖心を燻らせている。 「ちゃんと、そこに居るわね?」 「あぁ、ちゃんと――」 少女の問いに答えた青年の声が、近くに響いた雷鳴に遮られる。 その合間に僅かな悲鳴の音を聞いて、青年は微かな笑みと保護欲を心に滲ませていた。 「大丈夫ですか? 咲夜さん」 「だ、大丈夫……よ」 強がりを隠しきれていない、普段とは違う咲夜を前に、青年は今度こそ微笑を顔に出してしまった。 幸い、暗い部屋の中では気付かれなかったようである。 青年は今、咲夜の私室にある椅子の上に座していた。 全ては一瞬で、雷鳴と同時に青年は、この部屋に運び込まれていたのである。 そして、青年は少女らしさの残る咲夜の姿を前に、部屋に残ることしか出来なかった。 それは正に、惚れた弱みというものなのである。 「――っ!」 刹那、狭くは無い部屋の中を、白光が塗りつぶしていた。 泣きそうな咲夜の顔が、雷のそれに照らし出される。 遅れて届く雷鳴と共に訪れた暗闇の中、青年は引きずられるようにベッドへと倒れこんだ。 「咲夜……さん?」 「手……繋いでて……お願い」 普段の姿からは想像もつかない弱音を、咲夜は溢していた。 力強い姿からは想像出来ない細い体躯、凛とした姿とは矛盾した泣き顔。 そんな年相応の少女が、青年の目の前に存在していた。 湧き出す粗野な衝動を、僅かな理性で必死に押さえ込む。 咲夜の髪からは、甘い香りがした。 「いいんですか」 「……」 「俺、男ですよ……」 「――貴方なら、いいわ」 その言葉が、留めていた理性を打ち砕いてしまった。 獣の意思を持った腕が、白い肌をすべる。 少女の身体は温かかった、誘うような甘い香りがした。 そして何より、咲夜の身体は震えていた。 肌を滑り、下着の感触を得た指先が、止まる。 「――あ」 鈍い音を聞きながら、青年は腹部に重い衝撃を感じた。 止まっていた指先が、痛みと共に咲夜のから離れていく。 「そこまでしろとは……言っていないわ」 「ご、ごめん……俺」 脂汗と冷や汗が、同時に青年の背を濡らす。 嫌われただろうかと、指先は僅かな震えを見せていた。 「でも、ちゃんと止めてくれたわね」 暗闇の中、咲夜が微笑む気配を近くに感じた。 思わず、青年は顔を上げる。その唇に、微かな感触を覚えた。 「これでお預け……信用してるからね」 「……は、い?」 長い嵐の夜、熱のこもった青年は眠れそうも無かった。 そして、紅魔館の最上階に閉じこもる吸血鬼の泣き声は、夜明けまで続いたという。 7スレ目 952 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「あ、○○」 長い廊下を歩いていると、何処からともなく声をかけられた 「?」 見回してみるが誰もいない こんな長い廊下、隠れる場所など・・・? 「こっちよ」 この声は咲夜さんか? しかしどこ・・・え? 「さ、咲夜さん!?そんなところで何を?」 窓の外側からぴょこっと頭だけが出ている 「何って割れた窓を直してたのよ・・・あんまり近づくと灰になるわよ」 「え・・・危ない危ない」 うっかり日の光を浴びそうになる、まだ自覚が足りない証拠だ 「よっ、と」 窓を乗り越えて廊下に着地 乗り越える時にスカートの中が見えtげふんげふん 「ねぇ○○・・・今夜時間あるかしら?」 「え、こ、今夜ですか?何か作業が入れば解りませんが、今のところ空いてます・・・何かあるんですか?」 「ちょっとした宴会よ、博麗神社で」 「ああ、噂に聞く宴会ですか・・・面白そうですね」 「でしょ?それじゃあ行けそうだったら日が暮れてから私の部屋に来てちょうだい」 「はい、解りました」 「それじゃあお互いにがんばりましょ」 用件が済んだのか、変な工具類を持って足早に廊下の角を曲がっていった 「・・・宴会かぁ・・・どんな人が来るのやら」 博麗の巫女さんは人間の時に見たことある 鬼がいるらしいけど・・・俺も鬼の端くれだから、友達になれるといいなぁ 紫様には会いたくないな、聞いた話レミリア様より怖いらしい 「おっと、仕事仕事」 俺は足元に置いた荷物を抱えなおした 速めに仕事を終わらせてしまうために、がんばろうではないか 後10分もすれば外に出れる程度の暗さになるだろう レミリア様は行かないらしい フラン様はいつもどおり外出禁止 そういえば・・・パチュリー様は? まぁ大人数で集まるのは苦手そうだし、そもそも外に出るのは嫌いらしいからな こんこん、乾いた木の音が響く 「咲夜さーん、きましたよー」 「○○?ちょっと待ってねー」 言われた通りちょっと待った 「ごめんなさい、待たせたわね」 「いえいえ、問題ないです・・・」 なんか違うと思い、じっくりと見てみた スカートがちっと長い?リボンがちょっと派手? 手首になんかアクセサリーが・・・珍しいと言うか、女の子みたい、じゃなくて女の子だったな 「な、なに?」 「あ、いや、えっと・・・似合ってますよ」 「え?・・・ありがと」 何気ない一言で、ここまで上機嫌になってくれるのか そう思えば、世のモテル男はこれを無意識でやってるんだなぁ、凄いな 「お、メイド長のお出ましだぜ」 「あら、遅かったじゃ無い」 白黒の不法侵入者と、紅白の巫女が出迎えてくれた、その後ろではわいわいがやがやと、いかにも宴会らしい騒ぎ声 「お?○○じゃ無いか、宴会は初めてか?」 「よう魔理沙、酒は飲めるが腹の方が減ってる」 「えっと・・・誰?」 なんと、巫女さんのほうは俺をご存じなかったらしい 館で何度か遭遇してると思うんだが、まぁ扱い的には雑魚の束ね役の雑魚て感じだし 「紅魔館で執事をしている○○です、以後よろしく」 「博麗霊夢よ、ここの巫女をしてるわ・・・よろしく「れーいーむー熱燗マダー」 「・・・まぁゆっくりしていってね」 「さて・・・まあ飲むでも喰うでも早く行かなきゃな、なくなっちまうぜ」 「そうね・・・行きましょ○○」 「は、はい!」 手を引かれて皆の輪に入った いつの間にか握られていた手に、少しどきりと、した この鬼・・・いつになったら潰れるんだ? 最初は気さくに話しかけてきた伊吹さん(年齢不詳) 酒蔵が潰れるぐらいの量を飲んだのではないか?それに酒が入るにしたがって饒舌に・・・五月蝿くなって来る 出来れば酔いつぶれてくれるとありがたいのに・・・全然だ チクショウ!八岐大蛇だって酔いつぶれたのに!! 「どうしたの○○く~ん全然飲んでないじゃんYO!」 「大丈夫ですよ!伊吹さん!どうぞどうぞ!」 「あ、どもども~・・・んぐんぐ」 ちょ、ざるってレベルじゃねぇぞ!? このまま頑張るっきゃないなぁなんて思っていたら、嬉しい助け舟が来てくれた 「ちょっと○○を返してもらうわよ?」 「あー咲夜ずるーい」 ずるずると引き摺られて、端の方に腰を下ろした 「咲夜さん、助かりました」 「ふふ、お疲れ様」 あれ?なんか雰囲気が・・・? 「咲夜さん?なんか酔ってません??」 「酔ってる?私が?・・・大丈夫よ、ふふふ」 大丈夫に見えないです、うふふって笑ってます、何が楽しいんですか? ニコニコしてますよ?上機嫌ですね 「ねぇ○○」 「な、なんですか?」 ちょ、近い近い、顔が近いですって よくみたら目の焦点が合ってないじゃ無いですか?大丈夫ですか? 「ちゅー」 「え?ん、ぐ」 何が起こったか解らなかった だって完全に油断していたから、だってあのメイド長だぜ?酔ってるからと言えこんな破廉恥な、その・・・キスを 「んちゅ、んんっ」 官能小説で言う所の淫らな水音がしております もうなんかドロドロで、べたべたで・・・ 「ぷぁっ」 「ぷはっ・・・ふぅ」 「えへへ、○ー○ー♪」 「おわっ」 咲夜さんは俺に体をあずける様なかたちで抱きついてきた 「さ、咲夜さ・・・ん・・・ね、寝ちゃった?」 抱きつかれたまま固まる俺、抱きついたまま寝てしまった咲夜さん そして・・・周りからの痛い程の視線 「・・・」 「大胆ねぇ」 「写真に収め済みです♪」 「言っとくけどここ神社よ」 色々と終わった、俺の命とか人生とか でもちょっと儲けもん?だって、腕の中の感触と、さっきのキスだけで、お腹いっぱいだぜ、だぜ 今のうちにと、腕の中で眠る咲夜さんを抱きしめておいた 10スレ目 731 ─────────────────────────────────────────────────────────── 今思えば、私は嵌められたのだと思う。 「咲夜さん、これを」 それは普段着ているようなメイド服でもなく、柔らかくさらりとした手触りの光沢のある黒のドレスだった。 普通の女の子なら一度は憧れる代物だ。 身体のラインを強調するような黒のそれは太腿から深いスリットが入っていた上に、胸も必要以上に強調されるようなデザインになっていて、 それを着るには大分勇気を必要としたけれど、レミリアが着ろと言うのだから逆らうことも出来はしない。 美鈴に手伝ってもらいながら何とか四苦八苦してドレスに腕を通した。 「咲夜さん、凄く綺麗です」 そう言って、美鈴は軽くメイクを落としていく。咲夜さんの肌は綺麗ですね、だからあんまり弄らなくてもいいかな。 アイラインを引いて、口紅を差す。 いいですよと言われて目を開ければ目の前の姿見に見知らぬ女が映っていた。 揺るぎない銀の髪が辛うじて自分であることを知らしめる。 「これ、履いてってレミリア様が・・・・」 「・・・・分かったわ」 ドレスと同じ黒のエナメルの靴を履く。 大きく背中の開いたドレスといい、華奢な造りと高い踵の靴といい、全てが心許なかった。 「咲夜さん、その・・・・私たちの事・・・・」 「美鈴、留守を頼んだわよ。・・・・・さあ咲夜、行きましょうか?」 現れたレミリアにはいと頷く。 美鈴はどこか悲しそうな顔をして、私が連れて行かれるのを見ていた。 行きましょうか、と言われたものの、何処へとは聞けなかった。 聞いていいような雰囲気ではまかり間違ってもなかった。 飛行しながら、流れる景色をぼんやりと見つめながら思う。果たして私は、何処に行くのであろうかと。 数分もかからずにレミリアは地上に降り立った。 それを見てこちらもゆっくりと下降する。 先に降り立ったレミリアが促すようにその手を伸ばしてくる。 少し躊躇った後に指先を重ねて動きにくい靴と格闘しながらのろのろと歩いた。 きっと靴擦れが酷いことであろう。 目の前には数回訪れたことのある屋敷があった。 重厚な扉を開いて、人のいない廊下を歩く。 かつかつと信じられないほど大きく足音が響く。柄にもなく緊張しているのかもしれない。 どうしてこんな格好をしているのかは知らないけれど、これから会いに行く人物には心当たりがあった。 こんな屋敷で用のある人物といえば、ただ一人。 「待たせたわね」 思っていた通りの場所でドアを開けたレミリアに、ある種の落胆と絶望が滲む。 「・・・・・待つ時間っていうのは、どうしてこうも長いんだろうね。レミリア、咲夜」 「・・・・・・」 他の給仕も執事も、誰もいない部屋で彼は一人静かに佇んでいた。 明るい茶色の目と視線が合う、と思った瞬間にはすでに彼は目の前にいた。 いつの間にかレミリアに預けていた手は彼に繋がれている。 「最後に会ったのはあの悪魔の妹君と一緒の時だよね、咲夜」 「・・・・っ、△△・・・・」 「○○、だよ。咲夜が呼びやすい呼び方で呼べばいいけど苗字は駄目」 今日から咲夜は俺のお嫁さんになるんだから。 確かな笑みと共に吐き出された言葉に驚愕した。 そんなことは、知らない。 何かの間違いではないのかとレミリアを見遣ったが、ただ静かに微笑み返されただけだ。 それだけで十分だった。彼の言葉が紛れもない真実だということを思い知るには。 目の前が真っ暗になって、力が抜ける。 みっともなく床の上に崩れ落ちるかと思ったけれどそんな無様な姿になる前に、○○に腰を取られた。 そのまま抱え上げられてソファの上に横たえられる。 ふわふわと沈み込む柔らかな感触が、まるで浮世離れしているのではないのかという錯覚を起こさせた。 理由なんて分からない。 けれどこの格好はその為だったのかと合点がいった。 勿論分かったからといって嬉しくも何ともない。 「咲夜」 「レミリア・・・・様」 「こうなったのは私の責任よ。・・・・私が、彼に負けたから。恨む?」 「・・・・・・」 無言で首を振る。 嫌で嫌でたまらなかったがだからといってレミリアを恨むのはお門違いだ。 例え本当にレミリアの言うとおり彼女の行為の何かが原因だったとしても恨めるはずがなかった。 「・・・私は、いいんです」 「・・・私は貴女の幸せを心から願っているわ。貴女が嫌だと言うのならこの話は―――」 「レミリア」 静かな、威圧的な声だった。 ぞっと皮膚が粟立つ。 初めて出会ったとき、この男はこんな声はしていなかった。 震える拳をきつく握り締めて、真っ直ぐに見上げた。 薄らと笑う瞳と視線がかち合う。 それからレミリアを見遣った。・・・悲しそうな、顔をしていた。 「・・・いい、です。結婚でも、何でもします」 「咲夜・・・・」 「紅魔館の皆さんのことを、よろしくお願いします」 それだけしか言えなかった。 覚悟を決めても所詮はその程度ということだ、情けない。 温かなレミリアの手が頭に触れた。 そのまま小さな子供を宥めるように、くしゃりとひとつ髪を掻き混ぜられる。 たったそれだけのことで身を切られるような思いだった。 この温もりはもう二度と手に入れられないのかもしれない。 「○○」 「分かってるって、レミリア。ちゃんと幸せにするよ・・・咲夜」 のろのろと顔をもう一度○○に向ければ毒を持った笑みで返された。 幸せになんてなれるはずがない、美鈴もパチュリーもフランも小悪魔も敬愛する主君であるレミリアもいない世界に自分の望む幸せがあるとは到底思えなかった。 投げ出したままの左手を取って、その薬指に指輪を嵌められる。 細くて華奢でシンプルな指輪だ。 虹色の石が嵌っているがそれが何なのかは生憎と分からなかった。 「オパールだよ。綺麗だろう?似合うと思ったんだ」 そう言って指輪を嵌めた(彼のものになった)手をそっと握って、口付けられる。 そのまま強く指に歯を立てられた。 反射的に逃れようとしたら更に強く手を握られる。 おそらくは血が滲んだのだろう、赤く濡れたものが見えた。 「・・・・っ、あ」 「浮気防止に、もう一つ」 ぺろりと唇を舐めて、爽やかに笑う。 レミリアの表情は悲しげなまま凍りついたように動かない。 だから、それ以上彼女に負担はかけたくなくて、大丈夫ですと言えば無理矢理納得したような顔をしてそれでもしっかりと頷いてくれた。 「・・・・じゃあ、私はこれで」 「いつでも遊びに来ていいって、紅魔館のみんなに言ってあげて」 「お気遣い、結構よ」 それだけ言ってくるりとレミリアは後ろを向く。 その背中が全ての言葉を拒絶していて、だから何も言えなかった。 彼女の後姿がドアの向こうに消えて、その足音すら捕らえられなくなって、もう一度ソファに沈み込んだ。 靴はすでに○○によって脱がされていた。 思考が同じ所で停滞している、何もかも考えるのに疲れた。 張り詰めた神経が緩むこともなくそのままいつか切れてしまいそうだと思いながら、目を閉じる。 とにかく今は眠りたかった。 目が覚めたら全ては夢だったという都合の良い話はないだろうか。 瞼を閉じたらとうの昔に枯れたはずの涙が二粒、頬を流れ落ちた。 補足。 十六夜咲夜 元紅魔館のメイド長。 咲夜に目をつけた○○とレミリアの賭け戦闘でレミリアが負けてしまったため、○○の嫁になることを決定付けられる。 それ以降すこぶる腹黒な旦那に振り回される毎日を過ごすことに。 ○○にあまりいい感情を抱いていない(レミリアを負かしたので)。 ○○ レミリアより強い、最強?な○○。 性格はすこぶる黒い、とにかく黒い。腹の底まで真っ黒。 事実かどうかは分からないが全て計算づくの上で奸計用いて咲夜をゲットしたとかしなかったとかいう、そんな。 多分十中八九本当のこと。 意外にも結婚生活自体にはどちらかと言えば乗り気なようで、ことあるごとにあの手この手と咲夜を虐めては(困ってたり屈辱に打ち震えていたりする姿を見て)楽しんでいるらしい。 心の底から性悪ですね。 でも咲夜のことを本当に心から、 レミリア・スカーレット 親馬鹿、咲夜馬鹿。 ○○との戦闘に負けて泣く泣く咲夜を嫁に出すことになってしまった。 彼女が嫁に行った日は一人で枕を濡らしていたとか何とか。 うpろだ589 ─────────────────────────────────────────────────────────── 俺がプロポーズしてから一月ちょっと 彼女が十六夜に別れを告げて一月弱 特に変わったわけでもなく、ただいつものように、毎日が過ぎて行っている 正直に言えば彼女が来てから店の方も繁盛してるし、人でも増えて楽になった でもまだ何となく、その・・・嫁に来たという実感が湧かないのも事実だ いまだ恋人のまま、同棲しているような感覚 いったい結婚とはなんなのだろうか? 「幻想郷に・・・紅魔館に来て、お嬢様のお世話をして、パチュリー様にお茶を入れたり図書館の掃除をしたり、メイドたちをまとめたり、サボってる美鈴を怒ったり」 彼女はまるで遠い遠い昔の事ように話す、瞳は悲しげに、口調は柔らかく 「霊夢や魔理沙が遊びに来て、たまにそれを撃退したり歓迎したり、異変の時も色々と大変だったわ・・・それでも凄く・・・楽しかった」 俺があまり知らない彼女のメイド生活、だか実に解り易く・・・光景が目に浮かぶようだ 俺の知らない彼女を、見て見たいなんてすこし、思った 「このまま年老いて死ぬのも悪くない、むしろ恵まれているなんて思ってた・・・でも」 俺とであった、俺に恋をしてくれた、そして俺も恋をした 「まさか自分が普通の人間みたいに・・・人を好きになって、体を重ねて、プロポーズまでされちゃって・・・幸せすぎて、夢なんじゃないかって、でも夢じゃなくて」 もし夢でも、俺は夢から現実まで出張って、君をさらいに行くよ 「紅魔館にいたときが一番幸せなんだと思ってた、いろんな人に大切にされて、幸せだった、危険もあったけど、充実してたし、満足してた」 「・・・じゃあ、何で君は俺との生活を選んだ?」 俺は、彼女も俺とおなじ事を言ってくれると信じて、一つの質問を、投げかけた 「それは・・・私はあなたを愛してるから、そして彼方が私を愛してくれるから――」 俺も、同じ気持ちだ 俺達は愛し合ってる、だけどまだ夫婦ではない、まだ俺達は彼氏彼女なのだ 何か区切りが必要なのだ、人によって色々だが、最も一般的なのは結婚式だろう、それと 「・・・古くは蛤の殻などを渡していたらしいが」 「?」 「まぁ一般的に・・・これが一番だと思ってな」 いつ渡そうか、ずっと出番を待っていた控え選手 温めていた身体、待ちわびていた気持ち 「え・・・指輪・・・」 「あんまりいいものじゃ無いが(推定月収8か月分)外から取り寄せてもらうのに金が掛かっちまってな・・・」 「綺麗・・・白金?」 「ああ、君には銀が似合うと思ったんだが・・・まぁいつまでも色あせない二人の愛情と言う意味も込めて・・・白金で」 ああ、俺はなに言ってるんだ、よくもまぁ恥ずかしい台詞をいえたものだ、素面なのに 「あ、ありがとう・・・やだ、嬉しすぎて」 涙が、ぽろぽろと零れ落ちた 俺もつられて泣きそうになるが、其処は男ですから、しっかりと胸で受け止めてやらんといかん 「咲夜、結婚式とやらををあげようか」 「え?・・・な、なんで?」 「区切りをつけよう、それと・・・お世話になってる連中に、幸せになる、って宣言しなきゃ・・・な」 お嬢様と妹様と引きこもりと小と中国とメイドsと霊夢と魔理沙とアリスとそれから、それから・・・ 「そうね・・・うん、皆に自慢しなきゃね、私幸せですよ、ってね」 なんか違う気もするが、彼女はそれでいいのだろう、周りも、俺も・・・たぶん 陽気ぽかぽか、昼寝をするには丁度いい昼下がり あの人がいなくなって、怒られる回数は減ったけど・・・ちょっと、いやだいぶ寂しい 「美鈴、頑張ってるかしら?」 「・・・・・さ、咲夜さん!?きょ、きょうはどおして!?」 「ふふふ、ちょっとね」 久しく聞いたのは、偉く上機嫌で、透き通るように綺麗な声だった 「お嬢様、いらっしゃいますか?」 久しく聞いた従者の声、幻聴かと思ったが間違いなく、其処に姿があった 「咲夜!?まさかもう・・・別居!!?」 「ち、違いますよ!そんなことは全然」 あの男に任せて、良かった、そう思わざるを得なかった 咲夜がこんなに幸せそうに・・・ 少し、いや凄く悔しい 「今日はちょっとした、報告とお願いを」 「報告とお願い?」 「私達・・・結婚式を挙げる事にしました」 To be continued! うpろだ591 ─────────────────────────────────────────────────────────── 理由は特に無かった。 人を好きになることに理由は要らないという言葉は本当らしい。 彼女を目で追い始めたのは何時からだったろうか。 ここは紅魔館のとある一室。 丁寧に掃除をしながら俺はいつものように彼女のことを考える。 十六夜 咲夜、俺の心を捉えて放さない人。 最初はそれほど気になる人ではなかった。 周りのメンバーの印象が強すぎて、常識人に見えたのが彼女くらいだった所為なのだろうが。 話せば長くなる成り行き上、ここで仕事をすることになった俺の上司。 ただ、彼女はそうであるはずだったのに。 何時からか変わっていた。 彼女の性格、仕草、言葉。 そういった何気ないものが俺にとって妙に気になるものになっていた。 「さて、こんなものか」 部屋の隅から隅まで掃除し終えた俺は部屋に置いてあった椅子に腰掛ける。 その状態から椅子にもたれかかり、天井を見上げる。 「何やってんだろう、俺」 彼女を想い続け、数年が経った。 何時までこんな半端な状態を維持するつもりなのだろう。 何度も彼女にこの想いを伝えようと思った。 その度に俺の中にある理性が必ず警告するのだ。 断られればそのあとはどうなるのか、と。 咲夜さんと今までのように接することができなくなる。 それどころか、俺は告白する覚悟など持ち合わせていないのだ。 現状維持――その言葉がいやに俺の頭の中を駆け巡る。 どんなに悩んでも変わらない、もどかしい状態が続いてきた。 彼女を見ていると何時だって俺という存在が霞む気がした。 大した力も無い、ドジを踏む、融通が利かない、器量も普通。 それに比べて彼女は完璧と呼ぶに相応しい。 そんな俺が彼女と共に居たいと思うとはなんともおかしな話だ。 「は、自虐が過ぎるか」 そう弱気な自分を一蹴してみてもやはり皮肉の言葉が沸きあがってくる。 「ああ、畜生。どうしてこんなに愛おしいんだ。どうしてこの感情を伝えられないんだ。どうしていつも踏みとどまっちまうんだ」 自分でも気がつかないうちに言葉が勝手に紡がれる。 少しずつ声が大きくなっていく。 分かっているのに、抑えられなかった。 ガタ…と部屋のドアから音がした。 誰か居るのかと思ったころにはもう遅く、既にその誰かへと呼びかけていた。 「誰だ?」 言い終わった直後に気配を消しながら音を立てずに素早く動きドアを開ける。 そこに居たのは驚いた顔で俺を見つめる、先ほどまで俺が思いを馳せていた咲夜さんその人だった。 「咲夜さん?どうしてここに?」 いきなりドアが開いたことに対して咲夜さんは驚いているようだ。 それもそうか、時間を止めようとしている間にこうなれば。 「え、あ…その…そろそろ掃除が終わったかと思って様子を見に来たのだけれど…」 戸惑いながらも彼女はここに来た理由を告げる。 しかし、何故か妙に落ち着きが無い。 本来の彼女なら既に平静を取り戻しているはずなのに。 ……嫌な予感がする。 俺はその嫌な予感を確かめるために彼女に一つ質問をした。 「あの、さっきの言葉……聞いていましたか?」 「い、いえ。聞いてないけど」 嘘だと直感した。 何故だか分からないが、俺と同じような感じがしたのだ。 「嘘ですね。そもそも、この部屋には防音加工が施されていないですし、あれくらいの声ならば聞こえてもおかしくは無いはずです」 「っ!」 咲夜さんの一瞬見せたその顔で俺は確信した。 「図星ですね」 彼女が慌てて取り繕ってももう遅かった。 それからしばらく言いようの無い、居心地の悪い静寂が辺りを包んだ。 「その・・・ごめんなさい」 「いえ、別に構いませんよ」 言葉が続かない。 さっきからバクバクと早鐘を打つ心臓が酷くうるさい。 彼女に聞かれていた恥ずかしさと、今後の彼女との関係はどうなるのだろうという不安が綯い交ぜになって、本当に落ち着かない。 「あの、私でよければ相談してくれないかしら」 なんとなくわかっていた。 彼女ならそう言うのでは、と。 その言葉を聞いた途端に彼女との距離が遠くなった気がした。 「そういうこと、私には経験が無いけど、私ができる範囲内なら協力してあげるから・・・」 そう言って微笑んだ彼女の表情はまさしく俺を連想させた。 本当に悲しそうで、本当に辛そうな、秘めこんで消してしまおうとする表情を見て、俺はただ、ここで何かを言わなければならない気がした。 「いえ、その必要はありませんよ」 自分の心を奮い立たせて言葉を紡がせる。 何を戸惑う、ここで言わなければ全てにおいて後悔する。 それで本当にいいのか。 「え・・?」 「聞かれていたのなら、もう踏みとどまる必要はありませんからね」 さあ、言おう。 秘め続けたこの想いを。 ただ、その為に今の俺はここにいる。 「咲夜さん、俺は貴女のことが好きです」 一度溢れたら、もう流れは止められない。 なんと思われようが構うものか。 今この瞬間だけはこの想いをぶつけたい。 「咲夜さんの声をもっと聞きたい、咲夜さんの笑顔をもっと見たい、咲夜さんの心に少しでも触れたい、 咲夜さんに少しでも近づきたい、咲夜さんを近くで感じたい、咲夜さんのことを知りたい、咲夜さんを愛したい。――――」 俺の言葉は止まるところを知らなかった。 最初は口をぽかんと開けて呆けた表情を浮かべていた彼女だが、次々と述べられる言葉を理解していく内に、その顔が徐々に赤く染まり、 遂には視線を泳がせて慌てふためき始めた。 「あ、う・・あ、あの・・その・・・」 もはや彼女は、完全に落ち着きを失っている。 その様はいつオーバーヒートしてもおかしくない程だ。 対して俺は、自分の心から次々と湧き上がる言葉をただただ口に出すことに必死なので、まったくといっていいほど彼女の様子を気にしていなかった。 「こんなことをいきなり、しかも勝手に言って迷惑なのは承知しています。けれど・・・駄目でしょうか」 「っ、そんなことない!」 ほぼ即答だった。 「私だって、あなたのことが・・!その・・す、好き・・」 段々と消え入りそうになる声。 しかし、最後の言葉ははっきりと聞こえた。 そう言われて俺は気がついた。 彼女も同じだったのだと。 そう分かると、なんだか顔が一気に熱くなってきた。 たぶん耳まで真っ赤なのだろう。 「えっと・・本当、ですか?」 「嘘でこんなこと、言わないわよ・・っ!」 ああ、これではっきり分かった。 そして、なんとなく顔が綻んでいるのが自分でも分かる。 再び沈黙が辺りを包んだが、今度はあの居心地の悪いものとは違う、どこかむずがゆいような…まあ、悪くない沈黙だった。 「えーっと、咲夜さん、ってあれ?!」 気づいた時には、彼女はもうそこにいなかった。 恐らく時間を止めて何処かに行ったのだろう。 「・・・まあ、いいか」 そう、まだ時間はたっぷりある。 ようやく進展したのだ。 もう恐れる必要は少なくとも無い。 さっそく、彼女を探しに行こう。 どんな顔をして会えばいいか分からないが、とにかく会いたい。 そう思った瞬間、彼女との距離が近づいたような気がした。 さあ、行くか。 11スレ目 58 ─────────────────────────────────────────────────────────── う~ん、今日はヒマだなー 黒白も紅白も来ないし、毎日こんなだといいなー って咲夜さん!?いつからここに? え?ヒマだなーの辺りですか?いや確かにヒマだっていいましたけどサボってたわけじゃ…… ちょ、咲夜さんナイフはやめてください! ~少女説得中~ はあはあはあはあ、た、助かった…… それにしても咲夜さん今日はやけに機嫌、悪いですね さては○○さんと何かありました? え?何で分かったかって?そりゃ分かりますよ これでも私咲夜さんの何倍も生きてるんですからよ 恋をしたことだってありますし結婚だってしましたよ、子供は……できませんでしたけどね …………そんなに珍獣を見たみたいに驚かないでくださいよ まあ彼は人間でしたからもう死んじゃったんですけどね 悲しくなかったのかって?そりゃ当時は泣きましたよ、泣いて泣いて泣いて それこそ泣かなかった日なんてないぐらいでした でも、それでも私はあの人と結ばれたことを後悔はしていません だから、咲夜さんも後悔はしないでくださいね これは人生の先輩からのアドバイスとでも思ってください ○○さん、もう咲夜さん行っちゃいましたよ 私の話、聞いてましたよね?だったら私の言いたい事分かりますよね 咲夜さんにも言いましたけど後悔だけはしないで下さいね ふぅ、二人とも世話が掛かるなぁ でも、あの二人を見てると昔のわたしたちを思い出すなぁ…… あなた、私は今日も元気であなたを愛しています 美鈴は妖怪で長生きだから昔結婚しててもおかしくないんじゃないか? って事で書いてみた美鈴しか喋ってないけどwwww 8スレ目 207 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「フラン!早く部屋に戻りなさい!!」 「やだっ!もうあんな暗いところは飽き飽きよ!!」 紅魔館の中を縦横無尽に走り回るスカーレット姉妹、どうやら妹様があの部屋から脱走なされたようだ 「○○!フランを止めなさい!」 「ええっ!?私が!!?無理です!無理です!!」 「ゴメンね○○」 俺の横を抜ける時に妹様は確かにそういった すぱっ、っと綺麗に腕を切られてしまった 「ちぃっ!あのバカ妹!!」 そう言ってレミリア様も何処かへ行かれてしまった 「・・・切られ損・・・左腕どうしようかなぁ」 俺は吸血鬼(出来損ない)なのでこれぐらいはなんとも無いが・・・痛いorz とりあえず切られた左腕を拾って途方にくれた 「パチュリー様、治癒魔法って使えます?」 仕方がないので図書館へと足を運んだ 紅魔館の頭脳!引きこもり!エレメントマスター!喘息患者! 魔法使いパチュリー・ノーレッジ 彼女に聞けば大抵の問題は解決してしまうのだが 「咲夜に頼めば?彼女裁縫は得意よ?」 「いや・・・治癒力が弱いもので・・・」 「貴方腐っても吸血鬼でしょ?表面さえくっつけば遅くとも1日ぐらいで治るはずよ」 彼女はすぐに読書に意識を向けた、こうなってはもう言葉も届かないだろう 仕方がないので咲夜さんの所へ 「腐っても吸血鬼か・・・ほんとに腐ってるから笑えないなー腐った死体に改名しようか」 「何をブツブツ言ってるのよ、怪しいわよ」 「あ、咲夜さん、丁度いい所に」 「?」 これまでの経緯を説明し左腕の表面をくっつけてくれるようにお願いした 腕の接合なんて嫌がられるかと思ったがすんなり受けてくれた 「貴方も吸血鬼何だから避けるなり受けるなりしなさいよね」 「は、ははは・・・」 「ちょっと!?こんな事で落ち込まないでよ!」 「いや・・・此処に来てから一度も役に立ってないな、と思って」 妹様に逃げられる、侵入者を止められない、掃除も料理も並以下 出来るのは夜の見回りとメイド達が出来ない力仕事ぐらい 「はぁ・・・俺は、駄目だなぁ」 「・・・少なくとも、メイド達は貴方の事頼りにしてると思うわ」 「そう、ですか?」 「優しいし、何でもよく気付くし、力持ちだし、家具の移動とか楽になったわ」 「・・・少しでも役に立ててるなら幸いです」 「私は・・・貴方が此処に来て最初は胡散臭いと思ったけど・・・今は、大好きよ」 「へ?・・・え?大好きってその・・・」 「さぁ、腕もくっついたし、仕事に戻りましょ!」 「あ、ありがとうございます、あ、あの、咲夜さん?」 「ん?」 「それってどういう 彼女は優しく微笑んで部屋から出て行った、俺はその笑顔があまりにもまぶしくて思わず見とれてしまった それ以上に自分で何を言われたかまだ理解できないでいた 「―ッ!」 彼女の言葉と微笑を、理解したと言うか、思い出したというか とたんに恥ずかしくなってその後は仕事にならなかった 「LOVEなのかvery LIKEなのか・・・うーん」 8スレ目 430 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「いらっしゃい・・・なんだ、君か」 里のはずれの方に建つ一軒の怪しげな家、いや正確には店、か 「お客になんだとは失礼ね」 其処に訪れたのはメイド服のパッdげふんげふん、十六夜咲夜だった 「頼んでいおいたのは出来てる?」 「ばっちり、あまり乱暴に使うなよ、すぐ刃毀れするからな」 そう言って数十本の短剣を渡した 「わかってる、けど投げナイフはもともと消耗品でしょ」 代金を払い、短剣を鞄にいれた 「・・・」 「・・・」 じっと見つめあう、よくわからないが張り詰めた雰囲気だ 「わかったよ、お茶飲んでいきなお嬢さん」 「ありがと♪今日もゆっくりしていくわ」 ナイフ研ぎで2時間も3時間も粘られるとは・・・しかし常連さんなのである 「・・・帰らなくていいのか、吸血鬼のお嬢様が待ってるんじゃないのか?」 「いいのよ、今日は一日休みだから」 「ふ~ん、お前さんにも休みがあるんだな」 「○○なんて毎日休みみたいなものじゃない、お客も私ぐらいでしょ?」 「そんなことは無い!へんな爺さんとか二刀流の幼女とかも来るぞ」 数年に一度だがね、週一で来るのは咲夜ぐらいだろう、客が少なすぎるが生活になんら問題はない 「それじゃ帰ろうかな」 「ん、気をつけてな」 店を出て、帰路に着いた 「・・・引き止めてはくれないか」 ため息を吐きながら、自然と言葉が出た 「やだ、これじゃまるで」 そう、彼に・・・恋してるみたい 「いつか、○○のほうから・・・お茶に誘ってくれないかな」 吐く息が白くなる、私の隣は空のままだ 8スレ目 671 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○ここの荷物を4倉庫にお願い」 「はい、解かりました」 最近は咲夜さんにあごで使われてばかりだ 掃除も料理もお茶も駄目な俺は重量級の荷物整理、深夜の雑草ぬき、深夜の門番 これぐらいしか仕事がないもんだから暇でしょうがない 暇な時間はフラン様の話し相手をしたり、レミリア様から有難い講釈を受けたり パチュリー様から実験のサンプルを取られたり、そんな感じ 「お疲れ様、休憩にしましょう」 彼女は本当によく出来たメイドだ、一言で言えば堅い でも、時折見せる少女のような一面に、おれはメロメロ(死語)だった 休憩時間のことだった、窓の外に話しかけてる咲夜さんをみた 霊夢さんとでも話してるのかと思ったら、小鳥に話しかけてた いやもう、かわいいね、やばいよあれは けっこう華奢でね、腕なんかすごーく細いのよ 前に大きめの荷物を持とうとしてね、持てたんだけど重くて足の上に落しちゃったみたいなんだよ すっごい涙目でね、でも我慢してるんだよ 人目を忍んで痛かったーとかいってるのよ いや、もうね、あのギャップ、惚れたよ 普段は完璧なメイドを演じてて、実はか弱い年相応の少女ってのはね、おじさんぐっと来るね 「○○ー!この荷物をー」 「はいっ!ただいま」 いけね、へんな妄想をしてしまった 「これとこれを、終わったら今日はおしまいよ」 せっかく腕力があるんだから、こういう仕事でがんばるしかない 咲夜さんが小さい荷物を運ぼうとしててを滑らせた 「ッ!」 落としたのはこの前と同じ足の上 「あ、この前と同じとこ・・・」 「み、見てたのね!?この前私が―」 「わーごめんなさいごめんなさい、偶然見たんですよー」 頭を庇って、下を向いた・・・あれ? 「咲夜さん!?血!足血がでてます!」 咲夜のエロいじゃなくてきれいな足の甲から血が滲み出ていた 「あら、ほんと・・・大丈夫よこれぐら「救護班!手当てをー」 「ちょ!?○○!?」 音より速く、咲夜を抱えて(もちお姫様抱っこ)救護が出来るメイドの所へ駈けた 「はい、これで大丈夫ですよ、意外ですねメイド長がうっかりミスで怪我だ何て」 咲く夜は少し恥ずかしそうに、俺は横で心配そうに、メイドは何だかニヤニヤしながら 「それじゃ私はこれで、あまり足に負担をかけないでくださいね」 「ありがと・・・ほかの子には黙っててよ」 「ふふふ、解かりましたよ」 「・・・よかったー」 「○○さん」 メイドにが耳元でボソッとしゃべって言った 「○○GJ!咲夜フラグげとー!」 意味不明な呪文を呟いて部屋を出て行った、何だあれは? 「○、○○・・・その・・・あ、ありがと」 これはヤヴァイ、いつも気丈な咲夜が、頬を染めて、素直に、礼を言ってる 少し申し訳なさそうな感じが可愛さを更に引き出して、これは・・・がんばれ理性! 「い、いえ、当然のことをしたまでですよ」 「・・・そうね、そうよね、貴方は誰にだって優しいよね・・・」 なぜそんな悲しそうな顔をするんだ、俺は君の笑っている顔がすきなんだ 曇った顔は、暗い顔は 「咲夜さん?なにか・・・」 「はは、なんでもないの、仕事に戻りましょ」 部屋を、出て行こうとした彼女の手を、握った、俺は彼女を引きとめた 「俺で、俺でよければ・・・話してください」 「そう、ね・・・私、好きな人がいるんだけどね、そいつは鈍くて、何処か抜けてるけど・・・とても優しいの、誰にでも・・・誰にでも優しいのよ」 咲夜さんに好きな人?俺は・・・いやだ、そんなのは嫌だ、でも・・・彼女は 「そいつ・・・幸せな奴ですね!咲く夜さんにこんなに想われてて」 黒い感情を押し殺した、でないと俺はきっと酷い事を言ってしまう、醜い 「・・・そうよ、こんなに想ってるのに、あの莫迦鈍くて・・・」 彼女の瞳を涙が濡らす、泣いている姿をみて、不謹慎にも、綺麗だと思った 「咲夜さん・・・泣かないで」 「誰のせいで泣いてると思ってるのよ!!ばかー!!!」 ぱしーん、と勢いよくびんた、そのまま彼女は走っていった いたい・・・なんで俺が 「誰のせいで・・・・鈍くて・・・誰にでも・・・・・・」 彼女の言葉を思い返して整理して 「え・・・俺?もしかして、もしかしなくて俺?」 いや、この結論に至った事を妄想乙とか言われても構わない 彼女の言葉からは、行動からは、それが最も正しい― 「はっははは、俺が・・・咲く夜さんが俺を」 生まれて初めて、嬉しくて泣いた、嬉しすぎて笑った 笑いながら泣いた、そして走って行った十六夜咲夜の後を追って走った 8スレ目 677 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「なぁ咲夜、俺は・・・お前の事が―」 ぴぴぴぴぴぴぴがちゃ 「ん・・・夢だよね、あの人がそんな事・・・」 もう少し時計が鳴るのが遅ければ、あの人のセリフを 溶けるくらい甘いセリフが頭をよぎった、自分で恥ずかしくなった、馬鹿馬鹿しいと思って 「早く着替えなきゃ、仕事が」 すぐに着替え、身支度を済ませ仕事へと向かった 部屋を出た、瞬間何かにぶつかった 「きゃっ!」 どす、っと堅いものにぶつかった・・・あれ? 「大丈夫ですか!?咲夜さん?」 ○○さんの胸、らしい、頭のすぐ上から○○さんの声がする・・・ 「ご、ごめんなさい、私ったら急いでて・・・その」 あんな夢を見てすぐに○○さんに会っちゃうなんて、恥ずかしくて顔が見れない 「咲夜さん?どうしたんですか!?顔が赤いですよ?熱でも」 「大丈夫です、大丈夫ですから」 なんでもないからそんなに近づかないで!今は― 俯いてるのに○○さんの顔が正面に見えた・・・え? おでこが、おでこが あの例のあれ(おでことおでこで熱を測るの) ぱたっ 私は私の倒れる音を聞いた 「あ、メイド長、気がつきましたか」 「ここ、は?」 「医務室ですよ、メイド長いきなり倒れたんですよ?」 「そうだ、○○さんは!?」 とんだ失態を見せてしまった、というか恥ずかしくてしょうがない 「かっこいいですよねーメイド長を軽々と抱えて医務室まで来られたんですけど」 私が知らないうちに私はいい思いをしてたらしい、意識がないのが悔しい所ね 「すっごくあわててましたよー、お姫様抱っこって絵になりますよね」 おおおおお姫様抱っこ!??きゃー 「もう大丈夫ですよ、熱中症という事にしておきますから」 メイドはさっきからニヤニヤしている 「ニヤニヤしないでよ、私だって恥ずかしいんだから」 「あ、いえいえ、そういうことではなくてですね・・・メイド長、いえ咲夜さんは○○さんにとってとても大切な人なんだなぁって」 「な、なにを」 「だっていつもクールで優しい彼があんなに取り乱して、あれだけ思われてる咲夜さんが羨ましいですよ」 「そんなこと・・・ないわよ、彼は誰にだって優しいわ」 「・・・まぁいいですけど、思ってるだけじゃ思いは想いのままですよ?」 「・・・ありがとう、仕事に戻るわ」 「はい、がんばってくださいね咲夜さん・・・陰ながら応援させてもらいます!」 「ふふ、ありがと」 「これからどうなるかwktkしますね」 「わくてか?」 きにしないでください 「咲夜さん!もう動いて大丈夫なんですか!?」 「ええ、全然大丈夫です、すいません、朝から迷惑ばかり」 「いえ、咲夜さんが元気ならそれでいいんですよ!迷惑だなんて、ぜんぜん」 この人が私を好き?私の大好きなこの人が、私を好きでいてくれるの?本当に・ 「○○さん・・・今日は何時まででしたっけ?」 「仕事ですか?確か5時半までだったと」 「・・・6時に・・・中庭で、その・・・待ち合わせしませんか?」 「何か相談とか、ですか?」 「え、ええそんな所です、いいですか?」 「構いませんよ、それでは6時に中庭で」 その後はいつもどおりに仕事をした、仕事をすることで、少しでも気がまぎれればと思った 「メイド長!」 「な、なに?いきなり」 「○○さんを誘ったんですね~!」 「き、聞いてたの!?」 「聞いたんではありません、聞こえたんです、不可抗力であって自己の意思による選択の(ry」 「・・・今朝も言ったけど他のメイドには秘密だからね!?わかってる?」 「ええ、ちゃんと把握してますよ、こういう秘密は秘密にするからこそ面白いんですよ」 「・・・今夜は・・・がんばるわ、どんな結果であれそれを受け入れる」 「がんばってくださいね、私は咲夜さんを応援してますよ」 ほーほー ふくろうが鳴いてる、今は5時45分、私は少し早く来てしまった 待ちきれなかった、期待と不安に押しつぶされそうだった、早く楽になりたかった 楽になれるといいのにな 「せっかちさんですね、約束まであと十分ほどありますよ」 ○○さんが、来た 「呼び出しておいて遅れるの失礼だと思って」 「そうですか・・・それでなぜ私を?」 言おう、言うぞ、言えっ! 「私はっ・・・」 声が震える、上手く声がでない、なんで!? 「私は」 恐怖か不安か、黒い感情で声が震える、悔しくて涙が出た 今朝とは違う、衝突ではなく抱擁、私は、彼に抱きしめられた 「何があってどういうことなのかは解かりません・・・でも泣かないでください」 あったかい、人肌がこんなに心地いいなんて 「○○さん・・・私・・・あなたの事が好きです、大好きなんです」 「咲夜さん・・・俺も言いたい事があるんですけど、いいですか?」 「は、い」 拒絶か、怖くなって身構えた、衝撃で、壊れないように 「俺は、○○は、十六夜咲夜が好きで好きでしょうがない、大好きだ・・・だから」 「○○さん・・・」 また抱きしめられた、いや今度は違う、お互いに、抱きしめ合った 私は、私たちは、自然と、お互いの唇を求め合った 「・・・よかったですねメイド長!ぐすぐす」 遠くから二人の様子を見守っていたメイドがぼろぼろ泣きながら喜んでた レミリア様に朝早く咲夜の部屋を出て行く○○が目撃されてしまうのは別の話・・・ 8スレ目 747・750 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「いらっしゃいませ~」 「こんにちは」 此処は調味料、珍味、漢方原料取扱店「ヰ茶主列度」 「こんにちは咲夜さん、今日は何をお求めですか?」 「パチュリー様の要望でね、この紙に書いてある物を」 「かしこまりました」 十六夜咲夜は既に買出しを終えたらしい、持っている荷物の量からするとうちが最後か 「大変ですね、買出しからお遣いから、館のあれこれ」 「もう慣れたわ、流石にね」 世間話をしながら商品を探し、揃えていく 守宮の尻尾~蜥蜴の青尾~♪コウモリこうもっり♪るるるー 「これで全部です、お化けきのこは切らしてるので、申し訳ない」 「じゃあそう伝えておくわ・・・」 ・・・流石の咲夜さんもお疲れのご様子で 「これオマケしときますね」 「なにそれ?」 「栄養ドリンクヰ茶磨れすぺしゃる、です」 「…怪しすぎる、大丈夫よね?」 「少し飲んでみて駄目だったら門番か魔法使いに上げてください」 拳大ほどの瓶に容れられたワインレッドの液体・・・ とりあえず貰える物は貰う、ポケットにそっと仕舞った 「あの・・・えっと・・・来週がですね・・・その、休みなんですよ」 「久しぶりの休みですね、ゆっくり出来るといいですね」 「そうじゃなくて・・・その・・・よかったら、いえ、時間があればでいいんです!私と・・・その・・・」 ガラス細工を触るように、咲夜の唇に触れた、指だよ? 「お嬢さん、来週もしお時間が有れば、この私と、過ごしてもらえませんか?」 「あ・・・は、はいっ!喜んで!」 その晩、暗い部屋に一人、明かりを灯し瓶を眺める少女 「早く来週にならないかなぁ」 瓶の中で、真紅の液体がころがった 8スレ目 807 ─────────────────────────────────────────────────────────── ドアの閉まる音に首を向けると咲夜が立っていた。 「あれ、レミリア様のところにいなくてもいいのか?」 「ええ。なんだか体調が優れないとか言って、早々に寝ちゃったわ」 「ふうん。――ま、座れよ。紅茶と珈琲どっちがいい」 「それくらいなら私が……」 「いいって、俺にも少しはやらせろよ。で、どっちだ?」 「じゃあ……紅茶。美味しく淹れなきゃだめよ」 悪戯っぽく咲夜は笑う。いつも張り詰めたままの表情も年相応に見えた。 震える手で紅茶を渡すと、微笑んでそれに口をつけた。 「まあまあね。ま、ぎりぎり及第点って所かしら」 「……厳しいなぁ。結構自信あったんだぜ?」 「自信があっても結果が伴うとは限らないのよ。精進することね」 「妙に実感篭ってるな…。――まさか咲夜も昔は?」 「何のことかしら?」 「はは、じゃあ気にしないでおくぜ」 月が照らす部屋で俺と咲夜は小さな声で笑った。 誰が聞くこともない、笑い声が部屋に染み込んでいった。 「なんで私がここに、とは訊かないのね」 「恥ずかしいからな。あえて、だ」 「ふふふ、そう。じゃあ、恥ずかしいついでに踊りましょうか」 「おいおい、俺はステップなんて知らないぜ?」 「大丈夫、私が教えてあげる」 「そうか、なら安心だな」 「今宵、私の時間は貴方のもの。踊りましょう、日が昇るまで」 9スレ目 411 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「咲夜さーん!俺とつがいになって!!」 「こ、断らせてもらいますっ!」 ここは幻想郷、幻想になったモノが集まったりひっちゃかめっちゃかな場所・・・ 「咲夜さん!俺の愛の歌を聴いてくれっ!!」 どれだけ走っても追いかけてくる男、名前は○○というらしい 「十六夜咲夜さん!俺の名前は○○と言います!結婚を前提に御憑き愛シテクダサイ!!」 「え、ええと・・・その・・・ごめんなさい」 うん、確かそんな出会いだった ○○は里に行くたび、正確に言えば私を発見するたびに、追いかけてくる ナイフを投げようが、時を止めようが、お構い無しに きっと亡霊か何かなんだ、だから物理攻撃は効かないんだ・・・あれを人間とは認めたくない 「嗚呼チクショウ、今日も逃げられた・・・咲夜さーん!まったねー」 彼なりの精一杯の譲歩なのか、紅魔館には入ってこない、買い物中も追いかけてこない 私は買い物をした帰り道に紅魔館まで逃げ切れれば勝ちなのだ、生存的な意味で 「・・・はぁ、疲れるなぁ」 「どうぞ」 「あら、ありがと・・・」 差し出された水は良く冷えていておいしかった・・・あれ? 「うわ、びっくりした、気配を消して背後に立たないでくれる?」 背後には銀のトレイを持ったメイドが・・・でも彼女は救護担当では? 「あらあら、メイド長が息を切らしてご帰還なされたのでせめて冷たいお水を、と思った私のおせっかいでしたね・・・およよよよ」 「も、もう人をおちょくるのもいい加減に」 「およよよよ」 今どきおよよよよなんて泣く人はいない、絶対にいない 「・・・水美味しかったわよ、ありがとう・・・これでいい」 「はい、それでいいんですよメイド長」 部下におちょくられるなんて・・・私もまだまだ 「あ、そうだ救ちゃん」 「はい、何でしょう咲夜さん?」 「じつはかくかくしかじかで」 「しつこくつきまとう男を撃沈し滅するにはどうしたら良いかですって?」 「い、いや、そこまでは・・・」 「あ、咲夜さーん、こんにちは!お買い物ですか?」 「・・・」 「元気ないですか?ど、何処か体が悪いとか」 「・・・い、いい加減にしてくれない?私も暇じゃ無いのよね」 「咲夜・・・さん?」 メイドに教わったとおりに、憶えた言葉をつむいでいく 「いい加減ウンザリなのよ、毎回毎回しつこく付き纏ってきて、私の身にもなってくれないかしら?」 「・・・そうですよね、俺みたいなキモ男の愚図の無職野郎に付き纏われて、そりゃ気持ち悪いし煩わしいですよね」 「え、いや・・・そこまでは」 「すいません、迷惑だとは思ってましたが・・・いけませんね、自分のノリを他人に押し付けて・・・ははは、やっぱり俺は生まれてこの方・・・」 ふらふらと、背を向けて歩き出した、そのとき私は始めて彼の背中を見た 彼は最後に今までご迷惑おかけしました、申し訳ない そう言ってとぼとぼとリストラされた50代後半のサラリーマンのように、歩いていった 「あ・・・ま、待ちなさいよ!」 「・・・え?」 思わず呼び止めた、しかし言うべき言葉は何も考えていない、これはしまった 「え、ええと・・・そ、その程度なの!?私に拒絶されたぐらいで消える愛だったの!?私が拒もうがなに言おうが付き纏って、頑張りなさいよ!」 「さ、咲夜さん??」 自分でもなに言ってるかわからない、さっきとは真」逆のことを言っている、これではまさにあべこべ蛙だ 「私が諦めるぐらいまでがんばりなさいよ!むしろ私を惚れさせてみなさいよ!!どうなの!?」 「・・・」 ○○完全に沈黙 そりゃそうだ、自分でもなに言ってるか解らないのだから、どっちをどう受け取ればいいか混乱もするだろう 付き纏うなといったり、付き纏えといったり 「咲夜さん・・・」 もしかして怒らせてしまったのかもしれない、嫌われたかもしれない、それは少し、寂しい気がした 「え、えっとね○○、何が言いたいかというとね」 「咲夜ぁぁぁぁぁ!!好きだぁぁぁあああああ!!!愛してる!俺と夫婦に!仲睦まじい夫婦になってくれっ!!」 条件反射で私は走り出した、紅魔館に向けて 「待て、俺の話を聞いてくれ!!まず俺が君の何処に惚れたかをだな」 「いい!聞きたくない!」 「まず几帳面な所だ!しかし里に降りてきて雑貨屋などで可愛らしいアクセサリーを見つけたりすると周りを確認してちょっと着けてみたりなんかして」 「や、やめて!というかなんでそんなことまで!!?」 「俺はその雑貨屋の息子だぁぁ!!」 紅魔館はもうすぐだ、門の内に入ってしまえば、美鈴に撃退してもらうなり、なんなりとできる 「おお!?」 「はぁ、はぁ、はぁっ・・・今日も逃げ切ったわよ」 「ぐ・・・残念無念・・・また明日」 とびきりの笑顔で、彼は笑った、そして大きく手を振って帰っていった 「・・・嵐というより竜巻のような、男ね・・・」 「咲夜さん・・・アレはいったいなんなんですか?」 呆気にとられて動けないでいた美鈴が、やっと話せた一言は、当然の疑問だった 「それで、結局元に戻ったというより、余計にパワーアップさせちゃったわけですか」 「わ、笑うなら笑いなさい、私だって莫迦な事をしたと思ってるわ」 莫迦な事をした、そういう割には、いい顔をしていらっしゃる 私を惚れさせてみろ、か・・・なんだ、とっくに・・・ 「・・・咲夜さん、きっと毎日楽しいですよ、今までどおり、これからも」 「救、ちゃん?」 「人生は短いんですから、全力疾走で楽しみましょう」 「太く短く生きろって奴?」 一度きりの人生、彼のように色恋に生きるもよし、私のように人をおちょくるもよし、咲夜さんのようにいっぱいいっぱいでも、それでもよし 「それじゃあ救ちゃん・・・いろいろありがとね、仕事に戻るわ」 ほかの子にはナイショよ、そう言ってメイド長は救護室から出て行かれました 私としてはもう少しドタバタしたほうが面白いと思うのですが、残念な事にあっさりとカップル成立のようです、正確に言えばまだ成立はしてませんが 「あー・・・個人的には傍観が一番楽しいと思うのですがねぇ」 いつも見てばかりですが見られる側をした事が無いのでなんとも言えません でもメイド長を見ていれば、恋とか愛とかも、悪くないのかもしれません 「咲夜さーん!大好きですッ!」 「私もよッ!!」 「・・・・ええっ!!?ちょ、おま」 11スレ目 189 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「……何だ、これ?」 紅魔館の周りを散歩していた所、小さくて円柱状のビンが落ちていた。 いや、落ちていた、というよりは置かれていた、という表現の方が正しいだろうか。 中には液体が入っていた。誰が置いていったのだろうか。 もしかしたら、危ない物とか? どちらにしろ、この怪しい物を放っておく訳にはいかない。 こういうのに詳しそうなのは……パチュリーさんかな。 「……ごめんなさい。これは私には分からないわ」 図書館へと伸びている廊下を歩いているとき、咲夜さんを見つけたのでこのビンについて聞いた所、残念な回答と共にビンが返ってくる。 「そうですか……」 「パチュリー様なら知ってるかもしれないわ」 そう言いながら、咲夜さんは図書館があるであろう方へと目を向ける。 もちろん、俺の目的地は最初からそこだった。そもそもパチュリーさんに聞く予定だったのだから。 「じゃあ、パチュリーさんに聞いてみます。呼び止めてすいませんでした」 咲夜さんの脇をすり抜けて、本来の目的地へと向かう。 「――ちょっと、待っていなさい」 咲夜さんのいた場所から声が聞こえた。 しかし、その声を聞いている間に咲夜さんはいつの間にか俺の目の前にいる。 その手に、ビンを持ちながら。 おかしな話である。 咲夜さんが目の前にいるのに、別の場所から声が聞こえるのだから。 しかも、手に持っていたビンはいつの間にか目の前の人に渡っている。 でも、それはこの人だから出来る。 「……時間弄ったんですか」 自分でも分かるほどに呆れていた。 そんな簡単に時間弄っていいのだろうか。 「えぇ、ここからは少し遠いから……それよりもこのビンの事、パチュリー様から聞いてきたわ」 咲夜さんはそっぽを向きながら話す。 その頬が、少し紅く染まっている気がするのは、気のせいだろうか 「聞いてきてくれたんですか? 何て言ってました?」 俺が聞くと、咲夜さんはその頬の熱を感染拡大させたのか、顔中を紅くした。 何か面白い事でも聞けたのだろうか。そうでも無ければ、いつも冷静に仕事をしている咲夜さんがこんな顔をするはずがない。 しかし、その回答は予想に反した。 「その……パチュリー様にも分からなかったみたい」 ……そうですか。 「でも、毒は無いから、飲んで確かめてみるのが早いと」 ……そうなんですか。 「だから、あなた飲みなさい」 なるほど、俺が飲んで確か――え? 今、なんと仰いましたか。 「ほら、早く飲みなさい」 相変わらず、そっぽを向いたまま、ビンを俺に突き出してくる咲夜さん。 いや、その。 「の、飲めと言われましても」 「だ、大丈夫よ、害は無いんだから、死ぬことは無いわよ」 俺だって疑う人間ですから。 毒は無いけど、何の効果か分からない液体。 そんな物。 「の、飲めるわけじゃないですか! そんなの飲んで変なことになったらどうするんですか!?」 こんなのを疑いも無く飲むなんて、人間としてどうかしてる。 いや、存在するものとして、かな? 「……飲まなかったら一週間不眠不休で働かせるわよ」 「なっ……!?」 どこまで飲ませたいんだ、この人。 メイド長の指導の下で、不眠不休の仕事。 少しでも休もうものなら、問答無用で殺人ドール。 生きていられる訳が無い。 だったら、毒は無くても飲んだほうがいい、の、か? 「わ、分かりましたよ……飲めばいいんですよね?」 「えぇ、よく分かってるじゃない」 瞬間、満面の笑み。顔は相変わらず真っ赤だけど。 ビンを受け取り蓋を開ける。 えぇい、何だ。この間、誰のかも分からない血を原液で飲まされたばかりじゃないか。 そんなのに比べれば、これくらい! ――ゴクッ。 味はしなかった。ただ、少しヌメリとした感触がある。味はしないはずなのに、喉に少し残る感じがある。 あまり、良い気分はしない。一口で飲みきれる量だったのが、せめてもの救いだ。 効果は、その後すぐに現れた。 急激な目眩。立っていられなくなってその場に倒れた。 咲夜さんが顔色を変えて寄ってきた。 飲ませたのは貴女でしょうに。 咲夜さんが呟くように言った。よく聞こえなかったけど、確かに聞こえたのは"言ってなかった"。 くそぅ、やっぱり答え聞いてきたな!? どんな答えかは知らないけど、ここまで苦しむとは思ってなかったのだろうか。 全く、人を何だと思っているんだ。 負の思考全開で苦しみ抜いて、やがて引いてくる目眩。落ち着いた頃には、廊下の天井をボーっと眺めていた。 「う……あ……」 喉が痺れているようで、しっかりと声を出せない。 身体を起こそうとしても、気だるくて起きられない。 どう考えたって、毒入りだった。騙されてしまった訳だ。 横を見ると、咲夜さんがこちらを見ていた。 皮肉気味に笑みを作る。が、上手くいかない。 笑えてはいるんだけど、その大事な「皮肉」部分を表現できていない気がする。 やがて、咲夜さんは呟いた。 「……可愛い」 は? 一人の男に向かって"可愛い"ですと? いつでもどこでもかっこよさを求めている男に向かって"可愛い"は男としてのプライドをひどく傷つけることになる。 もちろん、俺もしっかりとした男ですから、凄く凹む訳でして。 凹んでいると、抱きしめられていた。 全身をしっかりと腕の中で包み込まれて、咲夜さんの中にいる状態。 凄く良い匂いがする。忙しくても、その辺は気を使っているんだなぁ。 相変わらず、すっぽりと包み込まれてしまっている。 ……あれ? 俺そこまで小さかったっけ? しばらくそうしていて、喉の痺れと、全身の気だるさが取れてきた。 「あ、あの……咲夜さん?」 咲夜さんの中から何とか抜け出し、声を出す。その声は、いつもの俺の声ではない。 確かに俺の声に似てはいる。けど、声は高くて、まるで声変わりの前のようで―― 「……うわ!」 自分の身体を見回して状況把握。 ――身体が、巻き戻ってる。 つまり、子供になってしまった。 「ちょ、咲夜さん……この状況、説明してもら……」 目の前の人を見る。 その人の目に、いつもの完全で瀟洒な従者の目は無かった。 これは、ヤバい。この人からは逃げたほうがいい。 本能から警鐘が鳴っている。 「し、失礼しました!」 それに従い、咲夜さんとは逆方向に駆け出してこの場から逃げる。 いつもよりも、地面が近い。 走る足が、いつもより遅い。 巻き戻ることによって、こんなにも不便になるとは。 自分の部屋はどこだったか。ここの突き当たりを右に曲がって最初の扉……! 突き当たりの廊下を曲がったところで、何かにぶつかった。 予期しない衝撃に速度を殺せず、その大きな反動に尻餅をついてしまった。 「ごめんなさ――」 「どうしたの? そんなに慌てて」 「…………」 目の前にいたのは、我らのメイド長、咲夜さま。 また、時間を止めたんですね。 俺が苦笑を浮かべると、 その人は満面の笑みを浮かべながら俺を抱き上げた。 気付けば、メイド服姿で咲夜さんの部屋にいた。 言われて気付いたけど、俺は身体が小さくなっている訳だから服とかぶかぶかな訳で。 「それはそれで凄く萌――いえ、何でもないわ。とりあえず、新しい服を用意してあげるわね」 そんな風に言いくるめられ、まずは咲夜さんの部屋へ。 そして出てきたメイド服に批判したところ、人様には言えないような事をされ、みっちりと身体に仕込まれた。何が、とは言わない。 メイド服は着せられ、一人称を"僕"に改められた。しかし、地まではさすがに調教できないだろう。俺は"俺"である。 更に、咲夜さんの事は名前の後に「おねーさん」を付ける事に。 短時間でここまで仕込まれた。もう俺の心身の八割は咲夜さんに染められている。 「いよいよ最後の仕上げね!」 そう言う膝立ち状態の咲夜さんの表情は今までに見ないくらい、楽しそうだった。 もう逆らえない身体となってしまっている俺は、これで最後、と言う事に対する安堵と、この最後に何をさせるのか、という恐怖感で一杯だった。 ちなみに、咲夜さんの膝立ち状態と俺の立っている背は全く同じである。 「○○、次の言葉を言いなさい。いいわね?」 「いいわね……?」 いや、待て。そこは復唱する所じゃないだろ。しかも首を傾げるオプション付き。 自分でも突っ込んでしまうほど、色々とみっちり仕込まれてしまったらしい。 これは呆れられたか、お叱りかな、と思っていたのだが。 「あぁ、もう可愛い!」 銀髪の弾丸が飛んできた。瞬く間に腕の中へ。 「もう大目に見ちゃう! おねーさん大目に見ちゃう!!」 「…………」 この溺愛ぶり。何と返せばいいのか、分からない。 何というか、新鮮だった。 あの完全で瀟洒だった咲夜さんが、こんな風に変わるなんて。 そんな咲夜さんの違った一面が見れて、何となく嬉しい気持ちになっていたのかもしれない。 気付いたら、俺は既に戻れない状況に立たされている事に気付かないまま。 とりあえず、この状況から一刻も早く抜け出したい。 「あの、咲夜おねーさん。さっきの続きを――」 俺が言うと、咲夜さんはハッと我に返り、俺から離れると膝立ちの状態で言った。 そして、少し焦れ気味に先ほどの続きを始めた。 「『僕のお嫁さんになって下さい』。はい、復唱」 「え、えぇ!?」 何を言わせますか、このメイド長。 とても楽しそうな顔で。 とても期待に満ちた眼で。 その顔が、今はとても怖い。 「はい、復唱」 もう一度、促す。 既に調教し尽くされているこの身体はいとも簡単に言うことを聞いてしまう。 「さ、咲夜おねーさん、僕のお嫁さんになって下さい」 だから、変なオプションを付けるな、と。 変な所でツボ突いちゃダメだろ。 知らない自分が、更に上を目指している。 「あぁ、もう可愛すぎる! しかも名指しなんて!」 そして二発目に打たれた銀髪の弾丸。狙いはもちろん、俺。 今度は頬ずりされながら腕の中へ。 「もうお嫁になっちゃう! おねーさん何度でもお嫁になっちゃう!!」 何度でもお嫁って、結婚して離婚して結婚して離婚してを繰り返すつもりですか。 それはそれで疲れる話だ。 「さぁ、もう一度言うのよ!」 「咲夜おねーさん、僕のお嫁さんになって下さい」 「もっとよ!」 「咲夜おねーさん――」 何度もせがむので、その度に同じことを言ってあげた。 最後の方はほとんど機械的になってしまったが、鼻血を噴いていたので、きっと問題は無いだろう。 で、大変な事になったのはその後で。 咲夜さんは止まらない鼻血を手で押さえながら、興奮冷めやらぬ様子で俺に言い放ったのだ。 「あなたはこの部屋から出ることを一切禁じます。安心しなさい、食事は用意してあげるから」 食事とそういう事が問題なんじゃない。この部屋から出られない事が問題なんだ。 しかし、既に調教完了されている俺にそんな事を言えるはずも無く。 「分かりました。咲夜おねーさん」 と笑顔で答えるしかなかった。 咲夜さんは美人だし面倒見も良いからこれでも良いかな、なんて少しでも思ってしまった自分がいた。 で、これは一体いつになったら戻るんだ? 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