約 1,531,163 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3383.html
ルイズとその使い魔として召喚された猫耳少女・南波の2人は、学院の温室でキノコ狩りをしていた。 「あったー! ほら見て見て!」 そう言って南波が差し出したキノコは、鼻にツンとくる異臭が漂い傘が蕩けかけていた。 「……真面目にやる気あるの?」 「えー!?」 取ってきたキノコを投げ捨てたルイズに不満そうな南波。 「それにしてもタバサちゃんも来ればよかったのにね」 「用事があるって言ってたから仕方ないわよ」 そう肩をすくめたルイズだったが、最初からタバサを誘ってはいなかったのだ。 「きっと残念がってるから今日の話はしないようにしましょ!」 「ルイズちゃんやっさしー!」 「そっ……、遭難したー! まだ2レスしか経ってないのに遭難しちゃったよ!」 「うるさいわね。落ち着きなさいよ」 「私のせい? 『そうなん』です。なんちゃっ――」 「落ち着けー!」 この状況で笑えないギャグをかました南波に、ルイズは容赦無く魔法で吹っ飛ばした。 遡る事30分前。 南波はルイズの手を取って今にも崩落しそうな崖の先端部に生えているキノコを取りに行き……、 お約束通り崖が崩落、2人は断崖絶壁から落下した。 さらにその下を流れる激流の川に流されて、熱帯性の植物が繁茂するこの場所に漂着し現在に至る。 「ここどこ? ジャングル?」 「私が聞きたいわよ!」 ――グキュルルル~…… 朝食から数時間、そろそろ昼時という事もあって南波の腹の虫が盛大に泣き声を上げた。 「お腹空いたなあ……。そういえば、さっき崖で取ったキノコ……」 南波が懐からキノコを取り出した瞬間、ルイズはそれを神速の速さでひったくり、 「! ……あんたほんっとーにキノコを見る目が無いわね! この毒々しい色、臭い! どう見ても毒キノコよ! こんなキノコのために私達遭難したの!?」 しかし南波はそんなルイズの言葉に耳を貸さず、 「……ルイズちゃん。そう言ってこのキノコ独り占めする気なんでしょ!」 「!?」 と一口で丸呑みしてしまい、案の定、 「お……、美味しい……」 ばったり倒れ伏してしまった。 「嘘おっしゃい!」 キノコの毒を受け、南波は脂汗を垂らしつつうんうん呻いている。 「大変!! 凄く苦しそう! 毒キノコを食べた時の治療法は……」 ルイズは慌ててなぜか持っていたサバイバルに関する書物から治療法を得ようとするが、その内容は彼女の想像を超えていた。 「……じ、人工呼吸!?」 思わず赤面するルイズだったが決意を固め……、 「そうね、今は一刻を争うんだから仕方ないわ……こ、心の準備が……」 ……たものの、やはり照れからか顔を背けてしまった。 「よし、今度こそ……」 「あ~、死ぬかと思った!」 今度こそ人工呼吸をと思った瞬間、何事も無かったかのように南波がむっくり起き上がった。 「治るの早いわよ!」 「???」 「ルイズちゃん、ごめんね。まさか本当に毒キノコだったなんて……」 「まあ、体が何ともないならいいんだけどね」 体調は回復したものの空腹までは回復しなかったようで、南波は何か食料が無いか周囲を見回していた。 「あ~、お腹空いたなあ……バナナだ!」 とある木にバナナがなっているのを発見はしたものの、実には到底手が届かない。 「でも高いなあ。あ、棒と箱が落ちてる!」 南波は棒を振り回してみたり箱の上でジャンプしてみたりしたが、バナナには手が届かなかった。 その様子を見かねてルイズが箱の上に乗り棒でバナナを叩き落すと、南波は心底感心した表情で手を叩き、 「ルイズちゃん、凄ーい!」 「私にこんな恥ずかしい格好させて……。わざとやってんじゃないでしょうね!?」 ルイズは怒りと羞恥心で赤面しつつ震えていた。 「お腹は膨れたけど、私達帰れるのかなあ……」 俯いて深刻な表情の南波だったが、バナナの皮の山を背にしているためいまいち緊張感に欠ける。 「だ、大丈夫よ! 帰れるに決まってるわ! ……それにいざとなったら私がいるんだから」 自分の言葉に赤面したルイズだったが、 ――アーアアー 「ターザンだ!」 その時既に南波の興味は遠くから聞こえてきた謎の声に向いていた。 「は?」 「凄い! ターザンって本当にいたんだ! こっち来た!」 そして垂れ下がった蔓にぶら下がって2人の前に現れたのは――、 「タバサちゃんにそっくり!」 どう見てもタバサです。本当にありがとうございました。 じー…… さっ じー…… さっ 顔を覗き込んでくるタバサの視線からルイズは必死に顔を背ける。 「なぜ目を逸らすの」 「タバサ、誘わなかったから怒ってるんでしょう?」 「私はターザンだからわからない。でも近々素敵な事が起こる」 肩を竦め無関係なふりをしてさらりと不吉な発言をするタバサ。 「ひぃいいい!!」 「ルイズちゃん、ターザンと知り合いなんて凄い!」 「だから、あんたはわざとやってんの!?」 そんな2人を南波はやはり心底感心した表情で目を輝かせて見つめ、ルイズはまたも怒りと羞恥心で赤面しつつ震えていた。 「こっち」 そう言ってタバサは藪をかき分け2人を先導し始める。 「帰り道も知ってるなんて流石ターザン!」 「……何にせよ助かってよかった……」 「でもルイズちゃんと2人で遭難するの、結構楽しかったよ。また一緒に遭難しようね!」 「まったく、縁起でもない!」 南波を魔法で吹き飛ばしたものの、少し嬉しいルイズだった。 (いつまで歩くのかしら) ルイズがそう思い始めた時、突然ラバサが立ち止まった。 「? タバサ?」 「迷った」 『ええええええ~!??』 「てへ」とでも付けそうな口調でのタバサの発言に、南波・ルイズの悲鳴がジャングル中に響き渡った。 その時、 「ミス・ヴァリエール~!」 そう3人に向かって大声を張り上げる人影――コルベール――がゆっくり降下してきた。 「ミス・ヴァリエール、心配させないでください」 「ミスタ・コルベール……」 「しかし、まさか隣接する人工ジャングル温室に迷い込むとは……」 「何でそんな温室があるのよ!」 翌日……、 「それでね、ターザンがね!」 救出後に書いてもらったサイン片手に心底楽しそうに昨日の話をタバサにしている南波の様子を、ルイズはジト汗を垂らして見ていた。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1535.html
数千度、それは人間の腕など一瞬で炭と化す温度であり、いかに冷血な人間であろうとも例外ではない。 結果、ワルドの腕は一瞬のうちに炭と化し砕け散った。 身を焼く激痛に耐え、前を睨み、片膝をつき、現存する腕で杖を拾い直したワルドにみかんは告げる。 「ワルドさん…こうさんして」 その言葉に、その眼に迷いはない。 年端のいかない少女の決意を固めさせるにいたらせたのははたしてワルドであろうか、それともルーンであろうか? 「反則じゃないかな?みかんちゃん」 その決意を、圧倒的不利な状況を前にしても、しかしワルドは笑みを浮かべた。 もっとも、当初のようなさわやかさは欠片もない、醜くひきつった笑みだ。 「こうさんして」 二度目の言葉。 それに違いがあるとすれば、込められた殺意。 どれだけ卑劣な人間であっても誰かを殺すということは倫理的道徳的に一線を画すものがある。 ルイズにはそれを受け入れる覚悟はない。 のどが渇くのはオルトロスの火炎のせいばかりではないだろう。 「残念だが…降参はできない」 その一言にみかんは目を細め、呼応するようにオルトロスが唸る。 「どうしても?」 「ああ、どうしても、だ。それに…」 「?」 「降参する必要もない」 今度のそれは、引き攣ったりなどしていない、不敵な笑み。 どういう意味だろうか? 単なる虚勢だとは思えない。 平然と毒を盛るような人間である、何かしらの罠のような策略を張り廻れせているのかもしれない。 「ワルド、どういう意味?」 「そのままの意味だよ、僕のルイズ。もうすぐここには戦争のために艦隊がやってくる。そしてこのあたりを全て吹き飛ばす手はずになっている」 「なんですって?!そんなことしても何の意味もないじゃない!!戦争なんてする必要ないでしょ?!もうここには王国軍はいないのよ?!」 返事は、含み笑い。 「それは違うよルイズ、戦争はあったことにならなきゃいけない。毒殺なんかじゃメンツが立たないだろう?」 「じゃぁ、じゃぁなんでこんなひどいことしたの?!彼らは、戦うことを望んでたわ!!こんなの卑怯よ!!卑劣よ!!」 「事情があるんだよルイズ、今は言えないけどね」 会話を遮りみかんが警告をする。 「もういい?こうさんするの?しないの?」 みかんに向きなおったワルドは、得意げに語りだした。 「本当ならね…」 「?」 「もうとっくに砲撃は始まってるはずなんだよ。この広場一帯にね?それを僕が待ってもらうように頼んだんだ。君たちを説得する時間が欲しくってね」 「だから何なの?」 ワルドは、その杖をわきに挟み、親指と中指を交差させる。 「つまりね…こういことさ」 パチンと、指がなると同時に、耳をつんざく轟音が鳴り響いた。 「ワルド!!あんた何したのよ?!」 大気事態が震えているかのような轟音の中、乾いた音が聞こえる。 「GYAAAAAAAAA!!」 「オルトロス!!」 硝煙の中にたたずむ男は冷酷に告げる。 「とっくに我々レコン・キスタの戦艦による包囲は完了してるんだよ。これはエンジンを雲の中で休めていた戦艦が一斉に動き始めた音さ。そしてこの銃声は、君たちの頼りの綱が倒されたことを証明する音だ」 血を流すオルトロス、それに寄り添うみかん。 オルトロスはもう戦えそうにはない。 みかんは、結果を張り続けなければならない。 ルイズはそもそもなにもできない。 「どうかな、二人とも、降参してくれないだろうか?」 「誰が…!!」 強がっては見たものの、万策尽きたことには変わりない。 仮にワルドを倒せたにしても砲撃の雨の中生還できるとは思えない。 「ルイズ!!降参してくれ!!君の才能が僕には必要なんだ!!」 才能?…ああ、そうか。私には才能があったんだっけ? ルイズは、その杖をワルドに向ける。 「ルイズ?何をしているんだい?」 「あんたのいう才能、試してみたくなったのよ…レビテーション!!」 「なっ…--!!」 ワルドを狙ったそれは、しかし足元を吹き飛ばした。 決意を固めたルイズ、冷汗を流すワルド。 はたしてどちらが有利な状況なのだろうか? 「ワルド、降参してくれない?」 沈黙は、オルトロスの声が弱まっていくことによってより強まっていく。 「これは、少々分が悪いな。ルイズ、君は改めて迎えに来ることにするよ。フライ!!」 「待ちなさい!!」 飛び去るワルドに向けられた爆撃は確かな威力をもってはいたが、当たらなければ意味がなかった。 「逃げられたわね…。みかん!!オルトロスは大丈夫?!」 振り向けば、そこには水の魔法を行使するみかんがオルトロスを癒していた。 弾丸が貫通していたことが幸いだったのだろう。 ガンダールヴとして強化されたみかんの治癒は傷を一瞬でふさいでいく。 「あんた、水の属性魔法が使えたの?!」 「うん、れんしゅうしたらつかえるようになったの。それより、どうしよう?ルイズお姉ちゃん」 砲撃はもうすぐだろう。 空が戦艦で黒く染まり始めていた。 圧倒的火力をもってしてこのアルビオン王国軍を一瞬で壊滅させたことにしたいのだろう。 「建物に入りましょう?外よりはきっと安全だわ」 外よりは、安全なはず。 二人は惨劇の場所に戻ってきた。 できればもう見たくないというのが本音ではあったが、最後にウェールズ王子に別れを告げておきたかったのだ。 「ウェールズ王子…」 先ほどまでの気迫など微塵も感じられなかった。 みかんはオルトロスの背に力なくうなだれている。 ルイズも同じようなものだ。 すっと、ウェールズの目を閉じさせる。 途中、指輪が目にとまった。 せめて姫様への形見にしようと、一応ことわったうえでそれを外し、ポケットに入れた。 「これからどうする?」 せっかく形見を手に入れたにしてもここから帰れなくては意味がない。 「にげなきゃ…」 そんなことは分かっている。 ワルドがどういった風に逃走したのかは分らないが、おおかた仲間の戦艦に合図でも送ったのだろう。 実際指ひとつで戦艦を動かしていた。 「だからその方法をっーーー!!」 大地をうがつ爆音と体全体で感じる揺れが砲撃の始まりを知らせた。 ルイズもみかんも、オルトロスを抱きかかえるようにして耐える。 豪雨のようにつづけて着弾する砲弾と耳がおかしくなるほどの大砲の音。 視界の隅にキュルケの姿が移った時はとうとう頭までおかしくなってしまったのかと思った。 いよいよもって死ぬのかと、キュルケに手をひかれているとあたりが真っ暗になった。 やはり自分は死んでしまったのかと、ルイズは意識を手放した。
https://w.atwiki.jp/fgthomas/pages/75.html
虚ムネのルイズ 日が沈み、ろうそくの明かりがほんのりと部屋の一角を照らしている。 俺はルイズの部屋で一人、義手の手入れをしている。頭のタンコブがひりひりする。 ルイズはいま、キュルケの誕生パーティーに招待されて部屋には居ない。 小一時間前、ピンクのドレスでおめかしして部屋を出て行った。 その時、ドキッとしたのを隠そうと「ハッ、馬子にも衣装だな!」と言ってしまったのがタンコブの原因。 まだしばらくは戻ってこないだろうから、退屈しのぎに手入れをしている・・・と、扉をバタン!と乱暴に開けてルイズが戻ってきた。 「あ~、ムカツクムカツクムカツク!!」 肘まである白い手袋を無造作に脱ぎ捨てながら1人荒れている。 「お・・・おい、どうしたんだよ?パーティーで何かあったのか?」 ピタッ、と体と一瞬止め・・・ゆっくりとこちらを振り向く。目が怖い。 そして、ゆっくりとこちらに歩いてくる。 目の前で止まり、うつむき小声でポソリ、と言う。 「あなた、ジンタイレンセイっての研究してるんでしょ?」 「あ・・・あぁ、そうだけど。」 「・・・・・・して。」 「 え?よ、よく聞こえなかったけど」 きっ、と俺の目を見て今度ははっきりと言う。 「私の胸を今すぐジンタイレンセイで大きくしなさい!」 「はぁ?な、なに言ってるんだよ?ちょ、冷静に」 「私は冷静よ!早くしなさい!」 なりふり構わずまくしたてる。 「(う~ん、困ったな。たぶんキュルケになにかからかわれたんだろうけど、そんな事で人体練成なんてやる訳にはいかねーし・・・あ、そうだ!)」 「わかった、ルイズ。じゃあ、今すぐ練成するから、そのまま立ってて」 「え・・・あ、うん・・・」 急にOKして拍子抜けしたのか、おとなしく指示に従ってる。 「よし、じゃあ今からやるから。そのまま目をつむって。」 「このまま?ドレスは・・・」 「ああ、大丈夫大丈夫。心配しないで。さ、始めるよ。」 そして、練成陣をイメージしながらパン!と両手を合わせる。 そして、そのまま両手を前に・・・ルイズの胸をタッチ! 「ふぇ?」 ルイズがパチッと目を開けて呆然と自分の両胸に当てられた手を見ている。 突然の事で思考が止まっているのか。 「エ、エ、エド・・・・あんた、何してるのよ?」 明らかに怒ってるなー。でも、もう練成が完成する。 バチバチバチッ ドレスの胸の部分がどんどん盛り上がっていく。A・・・B・・・C・・・D・・・・・ 「な、なこよこれ?」 「どうだ、完成だ。名付けてDカップドレス!」 そう、巨乳ドレスを練成したんだ。 「何言われたかシラネーけど、人体練成は禁忌。くだらない事には使わないよ」 その時、ドアをコンコン、とノックする音。そのままドアを開けて入ってくる人影。キュルケだ。 「ルイズ、開けるわよ。ごめんね。みんなの前でスリーサイズをバラしちゃって。私の完璧なスタイルを際立たせようと思って、つい口が滑ったのよ。」 あ~、そういう事か。でも、キュルケ、ちょっと顔が赤く高揚してるな。まさか、酔ってるのか? 「あ、謝ったって許さないんだから!それにそれだけじゃない。きょ・・・」 口篭る。 「ん?ああ、【ゼロムネのルイズ】って言ったこと?だってB・Wほとんど同じなんだもん。つい・・・ね。」 うへ~、それは酷いなぁ。 その時、キュルケがルイズの胸に気づく。 「え?ルイズ、その胸・・・何?」 「・・・エドに大きくしてもらったの。」 「ほんとに?ちょっと見せてよ。って、これパッドじゃない。」 胸の谷間から中身を覗き込みながらキュルケは言った。そして、ニヤ~と顔を弛ませて、 「あっははは!サイコーだわ!これが本当の【虚ムネのルイズ】ね!!みんなに教えないと!」 笑いながら部屋を飛び出していった。 しばしの静寂が戻った部屋。後からみんな見にくるんだろーな。ちょっと気の毒。 「エ・ド・ワ~・ド~~~」 ルイズが鞭を取り出す。 ぴしっ!ぴしっ! みんなが来るまで、ルイズの手が休まることは無かった。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1111.html
マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ (1)死者再生 神聖アルビオン共和国神聖皇帝オリヴァー・クロムウェルは、その胸を貫く剣により絶命した。 アルビオン貴族連合『レコン・キスタ』の長の命を刈り取った死神は薄く微笑んだ。 「さあ、お目覚めの時間だクロムウェル皇帝陛下」 子供のような無邪気さで詠うと、クロムウェルの亡骸に手を差し伸べ、呪文を呟く。 するとどうだろうか、先ほど確かに黄泉へと旅立ったクロムウェルの瞳が開いたのだ。 「おはよう、クロムウェル」 おぞましくも蘇ったクロムウェルは、殺人者/蘇生者である男に親しげに微笑む。 「おはよう、ワルド子爵」 果たして、クロムウェルを殺害し、それを今蘇生させたこの男こそ、ルイズの放った光の柱で消滅したと言われていたジャン・ジャック・ド・ワルドその人であった。 「ではまず。邪魔者を片付けるところから始めようか」 アルビオンの新たなる支配者ワルド、その目的を知るものはまだ誰もいない。 あのアルビオンでの脱出劇から、すでに2ヶ月が経過していた。 トリステイン王国王女アンリエッタと帝政ゲルマニア皇帝、アルブレヒト三世との婚姻が発表され、両国の軍事同盟が締結された。 当初、式は同盟締結後一ヵ月後に行われる予定であったものの、王女の健康上の問題から三ヵ月後と変更された。 アルビオン王国改め、神聖アルビオン共和国の新政府は、軍事同盟締結の翌日にトリステインとゲルマニアに特使を派遣し一年の期限付き不可侵条約の締結を打診してきた。 これを両国は協議の結果、受け入れる形で合意した。 トリステインとゲルマニア、両国の空軍力を合わせてもアルビオンの戦力に及ばないことを考慮しての戦略的判断である。 期限期間に軍備を整え、アルビオンに対抗しようと考える両国は、平時でありながら戦時さながらの緊張状態に入ったのであった。 トリステイン国内では、いたるところで来る戦争への準備が着々と進められていた。 それはここ、トリステイン魔法学院においても同じである。 普段通りの授業も行われているが、授業科目の中に軍事演習が設けられた。 有事の際には志願兵を徴募する旨の発表が王宮から出され、食料の常備蓄の量が増え、王宮から貴族子弟の護衛の為少数の兵が派遣された。 その他、戦争に関わるこまごまとしたものが変化した。 その中で、最も異様なものとしては、学院の塀を越えた隣の空き地では今まさにフネの建造が急ピッチで進められている。 最近、ウルザとコルベールによって占拠された炎の塔(勿論オスマンの許可を得ている)にあって、コルベールは苦悩していた。 自身が進めている研究、実験、そして計画、それら全てがやがて争いに使われることになるだろう。 自分の作ったモノが人殺しの道具に過ぎないことを、誰よりもコルベールが認識している。 しかし、ウルザによってもたらされる知識や技術は何より官能的で、コルベールのそうした葛藤すら時に忘れさせてしまう。 追い出され本塔や他の塔に研究室を移された教師達から、今や冗談交じりに「コルベールの塔」と呼ばれている炎の塔では、ウルザのもたらした技術によってスラン鋼なるものが精製されていた。 学院外から運び込まれる鉱物を、地下に用意された魔力炉を用いて精製されるスラン鋼、これを建造中のフネの材料として供給しているのだ。 また、ウルザとの共同開発で様々なアーティファクトや機械を開発した。 それらもまた、恐ろしい戦争の道具となる。 そんなことを考えるだけで、あの作戦の夜を思い出し、体中に震えが走るのだ。 「まだ苦しいかね、ミスタ・コルベール」 いつの間にか研究室の扉の前に立っていたウルザから声をかけられる。 「ええ、やはり自分の作ったもので誰かが死ぬかもしれないと考えると、たまらなく怖くなります」 疲れた顔で振り返りながらコルベールが答えた。 「何の為に作っているかが分かっていても、恐ろしいものは恐ろしいのです」 「しかし、やらねばらぬ」 研究室の窓、そこから見える建造中のフネを見つめながらウルザが呟く。 「わかっています……だからこうして、続けられます」 確かに憔悴しているコルベール、しかしその瞳は決して力を失ってはいない。 そのことを確認して、ウルザはゆっくりと頷いた。 「それにしても、よく王宮があのような予算をつけてくれたものですな」 「オールド・オスマンが決戦用兵器の研究開発という方便で取り付けてくれたようだ」 「ははあ、まああながち間違ってはいませんが」 ウルザが見つめるフネをコルベールも見下ろした。 「ところで、確認はしておりませんでしたが…あのフネ、名前はもうお決まりなのですかな?」 「ああ、それは既に決まっている……… ウェザーライトⅡだ」 死者が黙して語らないのは間違いだ だからちゃんと語れるようにしてあげないとね ―――ワルド マジシャン ザ ルイズ 進む
https://w.atwiki.jp/kensakukinshi_kamina/pages/414.html
名誉の殺人 主に中東のイスラーム文化圏を中心に現在も行われている、殺人の風習。
https://w.atwiki.jp/monaring/pages/3248.html
名誉の道行き 1白 インスタント クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。このターン、あなたが選んだ発生源1つが次にそれに与えるすべてのダメージを軽減する。 赤の発生源からのダメージがこれにより軽減された場合、名誉の道行きはその発生源のコントローラーに同じ点数のダメージを与える。 ……イイカラタテナサイヨ。ゴミムシ…… ――我が身省みぬ者しぃ 1版の 187 本家からの確定再版カード。 [部分編集] イラスト ∧_∧ 从 ∧_,,, て 三 (*゚ ー゚)二⊃∴;' ( ;);o゚ ) ⊃ / W / ;;; つ ~( / └=;; ;; )~ (/"(/ (ノ """"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""
https://w.atwiki.jp/thesecretsociety/pages/92.html
●名誉のメダル(希望リストに追加可能) アイテム 入手場所 組み合わせるためのアイテム コレクション/報酬 知性のメダル マヤの神殿(上級探索者) ゼンマイのネジ×2金のゼンマイのネジ×2歯車×3アンティキティラ島の機械×1 メダルコレクションタイムマシン×24500コイン 勇気のメダル ゴーストタウン(専門家) 速さのメダル ゴーストタウン(専門家) 敏捷さのメダル 楽しいカフェ(探偵) 力のメダル 楽しいカフェ(探偵)
https://w.atwiki.jp/toho_yandere/pages/2442.html
ルイズ ロダ -[[(作品タイトル) up***]] スレネタ ■○スレ目 -[[ルイズ/○スレ/□□]]
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/816.html
苦労の末ルイズが呼び出したのは奇妙な金色の物体だった。 形状は正四角錐をなしており、垂直断面には取っ手のように金属のリングが取り付けられている。 ルイズにはそれはただの悪趣味な置物にしか見えなかったが、教師コルベールに自らが呼び出したそれと契約を交わす様強制されてしまう。 当然ルイズは抗議するが、使い魔召喚の神聖性を理由に召喚のやり直しは認めてもらえず、しぶしぶその物体と契約を交わすルイズ。 一瞬使い魔のルーンが浮かぶものの、その物体に吸い込まれるようにして消えてしまった。 当然他に何の変化もなく、奇妙な置物でしかないそれを抱えて失意のなかルイズはとぼとぼと教室へと戻ったのだった。 拳大のそれは手で持ち歩くには面倒であったし、ポケットにも入れ辛い。 そのためリング状の突起に鎖を通してペンダントのように首から下げることにしたルイズは、部屋を出た直後キュルケに。更に教室では意地の悪い生徒たちから己の使い魔を笑われた。 悔しかったが、何も言い返せず、こんなもの部屋に置いてくれば良かったと後悔した。 錬金の授業で爆発を起こしたルイズは罰として教室の片付けをさせられ、更に不機嫌になった。 片づけが終わった後食堂へと向かったルイズは、そこで昼食を取る。 その時ルイズはギーシュがメイドへ絡むのを見かけた。 一部始終を見ていたルイズは、どう考えてもギーシュの自業自得であり、メイドにしているのは八つ当たりでしかないと思ったが、機嫌が悪かったし、平民のメイドをわざわざ庇おうなどと「ルイズは」思わなかった。 その後何事もなく一日を終えて部屋に戻ったルイズは、鎖から首を抜いてその置物を部屋の隅に乱暴に放り出した。 こんなものは持ち歩いてもしょうがない。使い魔が死ねば再召喚できるのだ。虚無の曜日にでも準備してこんなものは破壊してしまおう、と思ったのだ。 そうしてルイズは眠りに就いた。 深夜、熟睡していたはずのルイズはむくりと起き上がり、夢遊病のように部屋の片隅へふらふらと歩み寄ると、そこに投げ捨てられていた置物を取り上げ、自らの首に掛け直したのだった。 ―――同刻、ギーシュ・ド・グラモンは自室にてすやすやと眠りこけていたが、いつのまにか響き始めたノックの音で目が覚めた。 こんな夜中に何事かと思って戸を開くと、そこにいたのはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢その人であった。 ギーシュは彼女を特別意識したことはなかった。 大貴族の令嬢である彼女であったが、魔法無能者の「ゼロ」として見下す家柄だけは良い劣等性、と言う程度の認識しかもっていなかったが、夜遅くに寝巻き姿で自分の部屋を訪れたとなれば話は別であった。 ギーシュは自分に、特に異性に対する自分の魅力には自身を持っていた。 ルイズは同年代の少女たちと比べれば発育は悪い方だ。 しかし、彼女の抜きん出た美少女と表現しても差し支えない容貌は、薄手の寝巻き姿が背徳的な扇情さを醸し出しており、深夜の自室であると言うことと、彼女が高貴な血筋であるということもあって若いギーシュの脳から、抑制心というものを簡単に吹き飛ばす威力をもっていた。 この時点で彼女を拒否する、と言うことは完全に思考から消えていたギーシュであったが、即座に襲い掛かるような真似は彼の美意識が許さなかった。 まずはルイズのはしたない振る舞いをたしなめ、次に彼女にそのような振る舞いをさせてしまった自分の魅力を詫び、しかるのち彼女を「いただこう」と都合の良い段取りを考えていたが、ルイズによってそれは阻まれることになった。 彼女はまず、余計なことを言われないようその愛らしい唇の前に人差し指を立て、沈黙を促すジェスチャーをする。 ギーシュがそれに頷くと、ルイズは彼の耳に唇をよせ囁く様に言う。 「ヴェストリの広場に来て」 そう言って、ギーシュが止める間もなくルイズは歩きさってしまう。 一瞬呆気に取られたギーシュだったが、ルイズはもう少しロマンスのある手順を求めているのだと思い直し自分を納得させた。 肩透かしを食らったが、あせる事はない、ほんの少しお楽しみが延びただけのことだと思って彼は広場へと着て行く服を選び始めたのだった。 彼が広場に着いたとき、ルイズは既に広場の中央で彼を待っていた。 彼女は先程の格好にマントを羽織っただけの格好で、そう寒い季節ではないとはいえ、月明かりの下でそれはいかにも頼りない。 「やぁ、待たせてしまったねルイズ。そんな格好で寒くはなかったかい?」 「良いのよギーシュ、気にしないで。それより、ねぇお願いがあるの」 「なんだい?何でも言ってくれたまえ」 「私とゲームをしましょう」 「ゲーム?」 「そうよ、ルールは簡単」 そう言って自らの杖を取り出すルイズ。 「決闘をするのよ。そして、勝った方は負けた方を好きにできる。ね、簡単でしょ?」 その突然の提案にぎょっとしたギーシュだったが、すぐに理解した。 決闘と言って杖を持ったとして、ゼロのルイズに勝ち目等あるはずがない。 つまりこれは、ただ自分を好きにしていいというのではあまりにもはしたないから、それを繕う為に言い出したゲームなのだと。 勝利の報酬を思ってギーシュは小鼻を膨らませながら、しかしがっついた印象を与えないようあえて反論をする。 「決闘だなんて、かよわい女性を相手にそんな事をする理由がないよ」 「ふふ……そう、理由が必要なの。ならこういうのはどうかしら?貴方は昼間食堂でメイドを叱っていたでしょう?私はあれは八つ当たりだと思うの。だから貴方のことが許せなくて、決闘を申し込むのよ。当然私が勝ったら貴方に罰を与えるわ。どう?」 人は本当のことを言われると怒り出すものである。 自らの所業を八つ当たりと言い表されて、不快に思ったギーシュは彼女にちょっとお灸をすえてやろうと思った。 力によって相手を屈服させてモノにするということに原始的な興奮を覚えたのも事実だった。 「良いだろう。そういうことであれば、君の思い違いを正してあげようじゃないか」 ギーシュは自らの杖である薔薇の造花を取り出す。 ルイズは一歩、二歩、しめて七歩歩いて間合いを取った。 「さ、始めましょう。貴方の番よギーシュ。貴方の手札を呼びなさい」 まったく淀みない口調でルイズは言う。 もちろんこれは勝負などでは無いのだから、彼女が怯える必要などあるわけがない。 しかしギーシュは彼女に怪我はさせないまでも、少し驚かせ、怖がらせてやろうと思った。 「では、使わせてもらおう。僕の魔法を!いでよ、ワルキューレ!」 ギーシュが薔薇を振るうと、その花弁が一枚はらりと舞って、見る間に槍を持ち鎧をまとった女戦士を形作る。 所詮箱入りのお嬢様。この槍を顔の間近まで突き出してみせればきっと怯えて止めてくれと頼んでくるに違いない、とギーシュは思った。 「呼んだわね。では私のターン」 ルイズは杖をマントの内側へとしまうと、入れ替わりにトランプのようなカードを取り出した。その数5枚。 そしてその中から1枚を引き抜いて、空中へと放りなげる。 「【エルフの剣士】を攻撃表示で召喚!」 放たれたカードが光り輝き、まるで召喚のゲートのように広がったと思うと、次の瞬間剣と盾で武装したエルフが現れた。 「な、なんだってぇーーーーっ!!!??」 ギーシュの叫びがヴェストリの広場に響き渡るが、観衆無き決闘の場でそれを聞くものはギーシュ自身と、ルイズしかいなかった。 そのルイズはギーシュの驚愕など僅かも気にかけず更に1枚のカードを手札から抜き取り、手前に置くような動作を見せると、カードは空中にぴたりと固定された。 「更に、場にカードを1枚伏せてターンエンド」 ギーシュはわけがわからなかった。 ちょっとルイズをからかって、その後は勝利の報酬が待っているだけのゲームだったはずなのに、なぜエルフが! エルフ!まさか、エルフがこの学院へと侵入し、ルイズに取り付いたのでは!? 混乱するギーシュへとルイズが促す。 「どうしたのギーシュ。貴方の番よ?何もしないのならこちらの番にうつらせてもらうけれど」 ここへ来ても一切乱れぬルイズの声とは対照的に、動揺が聞いて取れるギーシュの声が返される。 「きっ、君はっ、こんなっ、エ、エルフだなんて!」 「いやねぇ、これはゲームなのよ。そんなに怯えないで。これはあくまでゲームの駒。勝手に行動したりはしないわ」 そう言って【エルフの剣士】を見るルイズ。 その視線を追ってギーシュもそれを観察する。確かに、顔を伏せ静かに佇む其の姿はルイズの命令を待つ駒のようにも思えた。 しかしだからこそ、それを平然と従え、冷たい目でギーシュを見るルイズの異様さがここへきて恐ろしい! 「ルイズ!馬鹿なことはやめるんだ!エルフに組するなんてただじゃ済まないぞ!」 「やめるですって?それは無理よギーシュ。私も貴方も既にゲームの盤の乗ってしまった。決着がつくまでこの盤から降りることはできないの」 「なんだって!?」 辺りを見渡すギーシュ。 しかしヴェストリの広場の外は闇に包まれている。夜だから、ではない。 当然見えるはずの各塔の明かりすらいつの間にか見えなくなっていることにやっと気づいたのだ。 「わかった?貴方は無事にここから出るには、私に勝つしかないのよギーシュ」 「うぅ……」 短い間に様々なストレスに晒されたギーシュの精神は既に限界を迎えていた。 そして耐え切れなくなった心は、眼前の脅威へ全力で攻撃することを選択する。 無我夢中で薔薇を降り、更に6体のワルキューレを造り出し、ギーシュは声を張り上げた。 「ワルッッキューレッ!あのエルフを攻撃しろォォォッ!!」 7体の青銅の女戦士が、一斉にエルフの剣士へと肉薄する。 それを見たルイズは唇を歪めて微かに笑い、小さくこう宣言する。 「トラップカード発動。【聖なるバリア・ミラーフォース】」 ルイズがそう呟いた瞬間、空中に伏せられていたカードが躍り上がって光を放つ。 その光が七つに分かれ、ワレキューレ達を襲う。光が収まった時、ギーシュのワレキューレ達は唯の一体も残さず消滅していた。 「あ、あ……僕の、ワルキューレ……」 呆然と呟くギーシュを尻目にルイズはゲームを続ける。 「そして私のターン。ドロー、並びにエルフの剣士、ギーシュにダイレクトアタック!」 ルイズから初めて下された命令に、エルフの剣士は忠実に従った。 ギラリと手にした刃を光らせて、ギーシュへと襲い掛かる。 「ぎゃああああああああぁぁぁっっ!!!!!」 剣士の刃に切り裂かれたギーシュは、奇妙なことに怪我は負わず、血の一滴もでなかったが、しかし凄まじい痛みがギーシュを襲い、頬が裂けんばかりに開かれた口からは絶叫が放たれた。 「ふ、ふ、ふ、ギーシュ。貴方の負けね……」 痛みにがくりと膝を突いたギーシュに、無造作に歩み寄るルイズ。 エルフの剣士はいつの間にか姿を消している。 「負けたからには『罰』を受けてもらわなくっちゃぁね」 「あ、あ、あ、、、」 恐ろしい恐ろしい恐ろしい。 ギーシュは見た。ルイズが胸に下げたペンダントに刻まれているのと同じ文様の「眼」が、ルイズの額に浮かびあがってギーシュを見下ろしているのを。 「罰ゲーム!」 ルイズが宣告し、その指でギーシュを指し示す。 ずぶり、と音をたててギーシュの精神に穴が開き、その心が穴中に落ちて行った。 ―――次の日、ルイズが自室のベッドで眼を覚ますと、放り投げたはずの千年パズルがテーブルの上に置かれていたので、何故だろうと頭を捻ることになった。 ギーシュは意識不明の状態で発見され、その意識は数日の間悪夢の中を彷徨い、眼が覚めた時には何も覚えていなかったという。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1006.html
空賊の船、いやアルビオン空軍本国艦隊本艦『イーグル』号は王党派残党とその大使達を乗せて浮遊大陸アルビオンの海岸線を雲に隠れるように航海した 三時間ばかり進んで行くと大陸に突き出た岬とその突端でそびえ立つ大きな城が見えた ウェールズは後甲板に立ったルイズ達にあれがニューカッスルの城だと説明した しかしイーグル号は真っ直ぐに進まず大陸の下側に潜り込むような進路を取った 「なぜ、下に潜るのですか」 ウェールズは城の遥か上空を指差した 遠く離れた岬の突端の上から巨大な船が降下する 「叛徒どもの、船だ」 本当に巨大としかいいようがない禍々しい巨艦であった 長さはイーグル号のおよそ二倍はある 帆を何枚とはためかせ、ニューカッスルに向けて並ん砲門を一斉に開いた 斉射の振動がイーグル号まで伝わってくる 砲弾は城に着弾し、城壁を砕き、小さな火災を発生させた 「かつての本国艦隊旗艦、『ロイヤル・ソヴルン』号。叛徒どもが手中に収めてからは『レキシントン』と名前を変えている。やつらが初めて我々から勝利をもぎ取った戦地の名から取っているらしい」 ウェールズは微笑を浮かべて言った 「あの忌々しい艦は空からニューカッスルを封鎖している。備砲は両弦合わせ108門、おまけに竜騎兵まで積んである あの艦からの反乱から全てが始まった因縁の艦さ さて我々は大陸の下からニューカッスルに近づく。そこに我々しか知らない港があるのだ」 雲中を通り、大陸に出ると辺りは真っ暗になった 大陸が上にあるため日が指さない、オマケに雲の中で視界が0に等しい 簡単に上の大陸に座礁する危険があるので反乱軍は近づかないのだ、とウェールズは説明した 「地形図を頼りに測量と魔法の明かりだけで航海する事は王立空軍の航海士にとって造作もないことだ」 しばらく航海すると、マストに灯した魔法の灯りのなか、直径300メイルほどの穴がぼっかり開いているのが見えてきた 「一時停止」 「一時停止、アイ・サー」 「微速上昇」 「微速上昇アイ・サー」 掌帆士達がウェールズの命令を復唱すると、ゆるゆるとイーグル号は穴に向かって上昇していく イーグル号の航海士が乗り込んだマリー・ガラント号も後に続く ワルドが頷いた 「まるで空賊ですな。殿下」 「まるで空賊なのだよ。子爵。そう、奴等のせいでな」 穴に沿って上昇していくと、頭上に光が見えた 艦はニューカッスルの秘密の港に到着していた ウェールズはルイズたちを促し艦から岸壁に引き寄せられたタラップに降りた 背の高い老メイジがウェールズの労をねぎらう ウェールズが戦果を説明すると老メイジはおいおいと泣き出し、港の気は兵達の歓声に埋もれた にっこりとウェールズは笑った 「これで王家の誇りと名誉を叛徒どもに示しつつ敗北出来るだろう」 「栄光ある敗北ですな!して、ご報告なのですが叛徒どもは明日の正午に攻城するということ」 「してみると間一髪とはまさにこのことだな。戦に間に合わねばこれは武人の恥だ」 ウェールズ達は心底楽しそうに笑いあっている ルイズは敗北という言葉に顔色を変えた つまり、死ぬと言うことだ この人達はそれが怖くないのか? 「パリー、この方たちはトリステインからの大使だ。重要な用件で王国に参られた」 「これはこれは大使殿。殿下の侍従を仰せつかまつっておりまするパリーで御座います。たいしたもてなしはできませぬが今夜はささやかな祝宴が催されます。 是非とも出席くださいませ」 ルイズたちは、ウェールズに付き従い彼の部屋に向かっていった 部屋は王子のものとは思えない、とても質素なものであった 王子は椅子に腰かけると机の引き出しを開いた そこには宝石が散りばめられた小箱 ウェールズは首からネックレスを外し、先についた小さな鍵を小箱の鍵穴に差し込み箱を開けた 蓋の内側にはアンリエッタの肖像が描かれている ルイズがその箱を覗き込んでいることに気付いたウェールズははにかんで言った 「宝箱でね」 ウェールズは中にあった手紙を取り出すと愛しそうに口づけたあと、開いて読み始めた 何度もそうやって読まれたらしい手紙はくしゃくしゃであった ウェールズは手紙を丁寧に畳むとそれをルイズに渡した 「このとおり、確かに」 「ありがとうございます」 ルイズは深々とおじきして受け取った 「明日の朝、非戦闘員を乗せたイーグル号がここを出港する。君達はそれに乗って帰りなさい」 「あの、殿下・・・・・。先程栄光ある敗北とおっしゃりましたが、王軍に勝ち目はないのですか?」 ルイズは躊躇うように問うとウェールズはあっさり答えた 「ないよ。我が軍は三百。敵軍は五万。我が軍に出来ることは勇敢な死を奴等に見せつける事だ」 「殿下の死も・・・・、それに」 ルイズが恐る恐る問うとウェールズは頷いた 「当然だ。私は真っ先に死ぬつもりだ」 このやり取りを見てロムは苦々しい思いで見ていた 皇太子は取り乱す所を見せない 死ぬという覚悟が出来ているのだ 自分が死んで悲しむ人がいるのに明日絶対に訪れる死を恐れていない それはあまりにも辛い事だと言うことは、戦いに身を投じ、敵味方関わらず様々な死を見てきたロムは理解していた 思えば自分をかばって死んだ者は、彼の様な覚悟を持って死んでいったのかもしれない 「殿下・・・・、失礼をお許しください。恐れながら、申し上げたいことがございます」 「なんなりと、申してみよ」 「この、ただいまお預りした内容、これは・・・・」 「マスター、それは」 ロムはルイズをたしなめたがルイズはさらに尋ねた 「この任務をわたくしに仰せつけられた姫様のご様子は尋常ではございませんでした。そう、まるで恋人を案じるような それに、先程の小箱の内蓋には姫様の肖像。手紙に接吻しなさった殿下の表情。もしや、姫様と殿下は」 ウェールズは微笑んで答えた 「君は従姉妹のアンリエッタと、この私が恋仲であると言いたいのかね?」 ルイズは頷いた 「恋文だよ。君の想像通りさ」 かつてウェールズとアンリエッタは始祖ブリミルの名の下に永久の愛を誓った しかし始祖ブリミルに誓う愛は婚姻の際の誓いでなければならない もしもこの恋文が、彼女の嫁ぎ先である帝政ゲルマニアの皇帝に渡れば、アンリエッタは重婚の罪を問われ、婚約は取消、同盟は成らず トリステインは一国にて貴族派に立ち向かわなければならないのだ 「とにかく殿下と姫様は恋仲であらせられ」 「昔の話だ」 ルイズは熱っぽい口調でウェールズに言った 「殿下!亡命なされませ!」 「それはできんよ」 ウェールズは笑いながら言った 「殿下、これは私の願いではございませぬ!姫様の願いでございます!船でお渡しした手紙の末尾にあなたの亡命をお勧めになっているはずですわ!」 ルイズは剣幕を立てて言ったがウェールズは首を降った 「そのようなことは書かれていない」 「殿下!」 「私は王族だ!嘘はつかぬ」 ウェールズは苦しそうに言った 「アンリエッタは王女だ。自分の都合を、国の大事に優先させるわけがない」 ルイズは、ウェールズの意思が果てしなくかたいのを見て取った ウェールズはアンリエッタを庇おうとしているのだった アンリエッタが情に流された女と思われるのがイヤなのだろう ウェールズはルイズの肩を叩いた 「君は正直な女の子だな。ラ・ヴァリエール嬢。正直で真っ直ぐでいい目をしている」 ルイズは寂しそうに俯いた 「忠告しよう。そのようでは大使は務まらなぬよ。しかしながら亡国への大使としては適任かも知れぬ。明日に滅ぶ政府は誰よりも正直だからね。名誉以外に守るものが無いからね」 机におかれた盆の上に載った、針を見つめた どうやら時計のようだ 「そろそろ、パーティの時間だ。我ら王国が迎える最後の宴、是非とも出席してほしい」 ルイズたちは部屋の外に出た ワルドは居残ってウェールズに一礼した 「まだ御用がおありかな?子爵」 「恐れながら、殿下にお願いしたい議がございます」 「なんなりとうかがおう」 ワルドはウェールズに自分の願いを語って聞かせた 「なんともめでたい話ではないか。喜んでそのお役目を引き受けよう」 パーティは城のホールで行われた 明日自分達が滅びるというのに随分と華やかなパーティであった 王党派の貴族達はまるで園芸会のように着飾り、華やかに振る舞う 年老いたジェームズ一世が激励の言葉をかけると辺りは喧騒に包まれる 王党派の貴族達はルイズ達に明るく料理を進め陽気に冗談を言う そしてアルビオン万歳と怒鳴って去って行くのであった この様子を眺めていたロムは憂鬱になった 死を前にして明るく振る舞う人があまりにも悲しく見えた そしてロムは無念であった 目の前でいる人々が救えそうで救えない、天空宙心拳は人を救う拳法ではなかったのか ロムは自分が無力を恨んだ ルイズはもっと思うことがあったらしく、ロムの顔を見ると寂しそうに去っていった それをワルドが追い掛けていく ロムが寂しく佇んでいるところにウェールズが声をかけてきた 「ラ・ヴァリエールの使い魔だね。しかし、人が使い魔とは珍しい。トリステインは変わった国だな」 ウェールズはそう言うと笑った 「トリステインでも珍しいそうです」 ロムが言った 「君と睨み合った時、気付いたことがある」 ウェールズは遠い目になる 「あの時、君はとても強い眼差しをしていた。今まで強い騎士やメイジを見てきたが、あの様に澄んで力強い目を持ったものは居なかった。 正直勝てる気がしなかったが君から身をひいてくれて助かった」 「・・・・それは、貴方が悪人では無いと思ったからです」 ウェールズが声をあげて笑うとロムはまた話始めた 「私は、彼女の使い魔になる前は多くの戦いを繰り広げて来ました。貴方達が誇りと命を賭けて反乱軍に立ち向かう気持ちもわかる しかし、貴方達が生き延びればアルビオンはまた立て直せるかもしれない。それなのに何故死に向かおうとするのですか?」 ロムが語気を強めて言うとウェールズは遠くを見るような目で語り始めた 「我々の敵、『レコン・キスタ』は、ハルケギニアを統一しようとしている。『聖地』を取り戻すという『理想』を掲げてな 理想を掲げてるのはよい。しかし、あやつらはその為に流される民の血を考えぬ。荒廃するであろう国土を考えぬ。 だから私達は奴等に見せ付けなければならない。 ハルケギニアの王族が、弱敵では無いことを。これが我らに課せられた最後の義務だ。それに・・・・」 「それに?」 「私達の意思を後世に伝えなければならない。そうすればアルビオンは滅びない。形は滅びてもその意思は滅びない」 その一言にロムはクロノス族族長、父キライが死んだ日を思い出した キライは死を賭して剣狼を自分に授けた 剣狼には今でも父の強い意志がこもってある 鍛えた拳には教えが 正義の為に悪を討てと、人を生かす為に邪悪を斬れと 自分が死んでも後世に意思は継がれる クロノス存続の為に・・・・、生きとし生ける者の為に・・・・ ウェールズもまた、父と同じく長として、王としての意思を残そうとしていたのだ 「アンリエッタ姫はどうなるのですか?貴方の事を愛しているはずだ。手紙にも亡命を勧めていた筈だ」 ウェールズは微笑んで言った 「愛するが故に、知らぬ振りをせねばならぬときがある。愛するが故に、身を引かねばならぬときがある。 私が亡命をすれば貴族派が攻め入る機会を与えてしまう」 それは愛が強いが故の答えだった 「すまない、今言った事はアンリエッタには告げないでくれたまえ。いらぬ心労は、美貌を害するからな。彼女は可憐な花のようだ。君もそう思うだろ?」 ロムは頷いた 出来れば彼女の悲しむ顔は見たくない それでも、ウェールズの決心を翻す事は出来ない事を悟った ウェールズは目をつむっていった 「君もまた、重いものを背負って戦っているのだろ?わかってくれ。ただ、これだけは伝えてくれ、ウェールズは勇敢に戦い、勇敢に死んだと」 ウェールズは再び座の宙心に入っていった 「私も欲しかったな。あの様な目を。狼のような目を」 ロムはこれ以上いるつもりがなくなって近くにいた給仕にどこで寝ればいいか尋ねた 部屋の場所を教えて貰うと後ろからワルドに肩を叩かれた 「君に言っておかねばならぬ」 「なんだ?」 「明日ルイズとここで結婚式をあげる」 思わずロムは目を見開いた 「こんな時にか?」 「ああ、是非とも僕達の婚姻の媒酌をあの勇敢なウェールズ皇太子にお願いしたくなってね。皇太子も快く引き受けた」 ロムは頷く 「君も出席するかね?」 「使い魔だからな、出席させてもらう。それと一つ俺からも言っていいか?」 「なんだい?珍しい」 ワルドが不思議そうな顔で言う 「話がある。出来れば人の居ないところで」 するとワルドがニコリと笑った 「では、地下室ならどうだ?あそこは確か今は見張りも居ない筈だ」 暗い廊下で、窓の向こうの月を見ながら、一人涙ぐんでいるルイズ。 長いピンクがかかったブロンドの髪を月の光で照らされていて、白い頬に伝う涙が真珠の粒のように輝いていた。 「どうして・・・・、どうしてあの人達は死ぬことを恐がらないの、死んじゃえば二度と家族や恋人に会うことなんて出来ないのに・・・・」 月に語りかけるようにそう呟く、すると横から人の気配を感じてそっと横に顔を向けた 暗闇の奥からロムが現れた 「ロム・・・・」 ルイズはロムの顔を見て、思わずか細い声をだした。 目頭をゴシゴシと拭って、今度は問いかけた。 「聞いていた?」 「ああ、聞こえた」 ルイズの顔はふにゃっと崩れる。 よたりよたりとロムに近づいてロムの体にもたれ掛かった。 ロムは戸惑いながらもルイズの手を握り、ルイズの肩にそっと手を添えた。 小さな肩は小刻みに震えていて、今にも崩れてしまいそうだった。 泣きながらルイズは言った。 「ねえ・・・・、何であの人達は死を選ぶの?どうして、どうして死を選ぶの?恋人が逃げてって言っているのに、どうして・・・・・・・」 「・・・・大切なものを守る為に戦うからだ」 「何よそれよ・・・・。恋人より大切なものがあるの?恋人を悲しませてまで戦う理由なんてあるの?」 「理由の無い戦いなんて無いんだ。彼らは今、心の中にある大切なものを守る為に戦う事を選んだんだ」 ルイズはロムの手を強く握り、俯きながら呟いた 「・・・・やっぱり私、もう一度王子様を説得してくるわ」 「それは駄目だ」 「どうしてよ。勝ち目の無い戦いに出たって犬死じゃない」 「彼らの決意は固い。止めることは出来ないんだ。それにマスターの仕事は姫様に手紙を届けるだろ。彼らの想いは手紙と一緒に伝えるんだ」 ルイズはポツリと呟いた。涙がぽろりと頬を伝った。 「・・・・早くトリステインに帰りたい。この国嫌い。誰も彼も、自分の事しか考えていない。あの王子様もよ。残される人なんてどうでもいいんだわ」 そうではないと思ったが、王子の言葉は今のルイズには解らないだろう、いや、解る必要もない そう思ったからロムは頷いた するとルイズははっとした顔になり、ポケットから何かを取り出した 「それは?」 「さっき、お城の人から貰ったの。火傷の治療にきく水の魔法薬よ。薬だけは一杯あるみたいだから。そうよね。戦争しているんだから」 「マシン生命体にその薬にきくかどうかわからないぞ」 「傷を放っておくよりはマシでしょ」 そう言ってルイズは傷がある左腕を出すように言ったが、ロムは自分でやると言って薬を貰う。 やっぱり優しいところがあるんだなと思った。 だから守らなくてはいけない この小さな女の子を悪の手から、使い魔として。 ルイズと別れた後、ロムは自分の部屋に入り、時間が経つのを静かに待った。 そしてその時が来た。 部屋を出てワルドが指定した地下室へと向かう。 暗い廊下を静かに歩き、長い階段コツリコツリと静かに降りる。 ロムの目には次第に鋭く、まるで狼のような眼光が宿っていた。 地下室の壁には火のついた松明が掲げてあった。 見渡してみると、どうやらそこは倉庫のようで、材木のみが残ってあった。 ロムは奥に向かって声をだした 「ワルド、居るのか!?居るのなら返事をしてくれ!お前には色々と聞きたいことがある!」 牢獄にロムの声が響き渡るが、肝心のワルドの声は聞こえてこない。 ロムは奥へ足を歩かせ、再び続けた 「大樹で現れた白仮面の男だ!あの男と剣を交わした時。あの男からお前の気配を感じた! あの男とお前はどういう繋がりを」 後ろからカツカツ、と床を蹴る音が聞こえてきた。 振り向くと、そこには黒いローブを身に纏い、白い仮面をつけた男が立っていた。 ロムは無言でデルフリンガーを握り、鞘から引き抜いた。 左手のルーンが輝くと、 白仮面を睨み、剣を構える。 それに合わせて白仮面も杖を懐から出した。 一触即発、今の状況に相応しい言葉だ。 静寂が続き、デルフリンガーがその中でボソッと呟いた。 「相棒、魔法には気を付けろよ」 勝負は一瞬だった。 白仮面は杖を振り上げるとロムは一瞬で懐に飛び込んだ。 横から薙ぎ払うように剣を振る。 瞬間、白仮面の杖は頭の上で弧を描きながら舞った。 ロムの勢いは止まらない。 杖が飛んだのと同時に折り畳んだ足を前に出して、突くように白仮面の腹部を蹴りあげた。 砲弾のように白仮面は階段に向かって飛んでいく。 ロムはデルフリンガーを鞘に納めて男の方に駆け寄っていった。 「見せてみろ、貴様の、正体を」 仰向けになっている白仮面のローブを背中から掴み、ばっと剥ぎ取った。 しかし、そこには男の姿は影も形も無く、白仮面だけしかなかった。 「なに!」 ロムが驚愕の声を出した時、自分の声以外の別の声が聞こえる事に気付く。 そして後ろを振り向くと強烈な光、それを見た時、体に電撃が走る。 ロムは力無く倒れ、気絶した。 立っていたのは白仮面をつけた男のみ。 白仮面の男は、ロムからデルフリンガーを取り上げるとその場に投げ捨てる。 そして鎖を取り出してロムを壁に縛り付けた。 鎖には、『固定化』の魔法がかけてあった。 そして男は『サイレント』を唱え、小さな沈黙の世界を作り上げる。 満足したのか男は笑いながら去っていった。