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` ー=≠ ,. -‐ `ヽ // / / ヽ // / / / / ∧ イ ,′ / ' __ / i / / ヽ ', { ' λハ ヽ |/ ', λ なんにせよ今は友好的なんでしょ 人/ l 丿≦ミヽ| 人 ! } / 八 | 〃癶', { _,.-''" 丿 ', ! だったら仲良くしてれば大丈夫じゃない / ヽj {しヾ ', ,/ ̄`ヽ | ′ / / ゞ乂 ヽ i ノ'´ \ ハ, ノ | ヽ っていっても釣った魚にエサはちゃんとやらないとね / i _,. ノ' ≠=zz、 |/ ヽ / ! / / ' 〃 ヾミxノ'´ / / / / .∧ 卜-uy仆 / / / ,' / ', ヽ ゞ弋tソ 从丿 / ! / i | ,' i __,,厶イ イ | / | | i 弋,. -‐==ニ二三 ̄ , ´ ノ′ | /\_⊥ -‐==ニ二三 / | / \ , - 、 / ノ' ヽ ___ / \-‐-__イ \ ', x≦三 ̄', / ∨ ', `ヽ ! ワカメに紹介された裏の店の店主「だった」女性。 表の顔として風俗店を営んでおり、やる夫が彼女を買ったこともある。 娼婦を狙ったシャドウ事件が原因で店の評判が悪くなり閉店。 その後、モグリの娼婦として過ごしていたところ、やる夫とともにシャドウ事件の黒幕を追うことに。 事件の中で黒幕がばら撒いていた、人をシャドウに変える薬を使い、やる夫の銃に宿るシャドウとなる。 シャドウとしての能力はやる夫の持つ銃に融合し、好きな時に好きな銃に変身できる。 やる夫の所有物でない銃に変身することはできないが、弾数は無限。 みなしごだったため誕生日はなし。 ちなみに初めてやる夫と出会ったのは9月6日 ,. -‐== ==‐- 、 _,.-、 / r┴、`yノ. / r┴ r、ノ `ー、 . . / / i \ゝ{ `ー; ∨ヽ . / / / l | l i `ヽ\_ // \ . | | | 斗z┼ | / ┼‐t-/ト ヽノノ \. | | | | | | ハ / !/ .| i \ \ . | | | fz-‐t‐,/ )イ rj┼ レ' ノ下 \. | | i 杙. | |.. | / ィ | \. \ イ | ', ヽ  ̄  ̄ ! | t\_ ゝ, \ / 从 人 , ' | ヽ ミ、 ノ/ / 人 >、 つ_,. イ \ \ / / >、 ∨ -、 ≦从 } \ > ''´ ' x≦三///} \'⌒Y//ノ 八 \ ,. イ// }///// }☆!,// ,イ/∧ 丿 イ///////仁={ , f‐‐-、 人'V},/{ {/// / 八///// {////r´ , ヽ ヽ /r!//\ Y ノリ///>fx゙┌──‐ヽ ヽ ヽ_}__}‐――――――――┐///r//\| `^ ̄ |////////t| |//////,/ | |///// | |///{ | | 実は異世界からの転移者。物心付く前に虚無の魔法を使ってこの世界に来た 路地裏で乞食生活から文字をゴミから勉強したり体を使ってどうにかお店を持つまでになった ”天才であり努力家”という意味ではメリーと同じタイプの人間 メリーより早く仲良くなると、彼女が魔術師のペルソナ使いになっていた
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「ルイズ」 ルイズ/7弾 ルイズ/13弾 ルイズ/16弾
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生徒からかのオールド・オスマンまで幅広く名を轟かせることとなったキース・ロイヤル、 そのきっかけとなった『ヴェストリの悪夢』事件から五日が経過していた…。 事件の三日後に学院の庭に転がされていたギーシュは一見元通りだが、たまに目を見開いてうずくまり『もかもか…うぅ…もか…もかもかが…』などと呟くようになってしまい、 喧嘩別れしたはずのモンモランシーの手厚い看護を受けている。それに、ヴェストリの広場の大穴もそのまま埋められていなかった。 つまり、5日経っても傷は全く癒えていなかったのである。それはもう、壊滅的なまでにだ。 しかし、ルイズはその5日間で完全にキースの使い方を身につけていた。そう、彼を一番楽に使う方法は… 「キース、あの風っぴきを黙らせなさい」 「御意」 「なにをするんだゼロの…むがっ!」 彼と対等に話をしようとしないことである。そもそもが執事なため、彼は命令にはそれなりに忠実だ。 今も平民の使う拳銃をマリコルヌの喉へ突きこんでいるが 「殺さないようにね」 「わかりました」 密かに舌打ちが聞こえたような気がしないでもないが、気にしないことにする。 とりあえず拳銃をマリコルヌの口の中に突き入れているキースを放置し、ルイズは食堂へ向かった。 ***使い魔は変態執事 第4話~恋気と狂気と迷惑と~*** ああ、あの冷ややかな整った顔に、何も見ていぬようで全てを見ている澄んだ瞳、そしてその身にまとうミステリアスな雰囲気、そんな彼を見ていると… 「タバサ、私、あの人に恋しちゃったかも!」 「……。」 ……タバサは固まる。 傍目にはいつもと変わらない冷ややかな無表情に見えたろうが、親友の口から、いつも関わる度に平穏な日常にミミズのように潜り込んでくる男に恋をしたと言う言葉が飛び出たのだ。 そんなことがあれば固まるしかない。幸い、いつも固まっているように周囲から見られているため問題はなかったが。 「……」 キュルケの額に手の平を当てる 「タバサ、何でいつになく優しい目をして私の額に手を当てているのかしら」 「…少し熱い」 「いえ、微熱が平熱よ。それに多分あなたの手が冷たいだけ」 「…『アイス』。これを頭に当てるといい」 「そんないつになく口数が多めで優しいタバサが大好きだけれども安心しなさい健康だから」 それはそれで健康でない気もしたが、 「…本気?」 「勿論よ。――ああタバサ、この私が、微熱が燃え上がったときに嘘をついたことがあって!?」 またも硬直する。確かにこの惚れっぽい友人が恋をしたと言った時は、どんな手段ででも手に入れていた。 そのことを思い出し、それなりの深さの憂鬱に陥りながらも、一応言葉にする。 「……悪趣味」 もはやそうとしか言いようがない。それ以外の言葉が思いつかない。素直になれないけど本当は……とか、そう言う問題でもない。 例えるなら、そう 「ええ!?あのミステリアスで、あったかいのか冷たいのかわからない空気、燃え上がるのも当然でしょう?」 スライム相手に恋するようなものだ。タバサ自身は未だに人間かどうかすら怪しいと睨んでいると言うのに。 「人間だという保証はない」 「いいえ、彼は人間よ!私には解るわ!それにもしそうだとしても、種族の違い……壁は高い方が燃えるでしょう?」 言っても無駄だとわかってはいた。 ……わかってはいたが、甘いものよろしく感情は別腹として一応忠告しておいた。 さすがにそろそろ木陰での読書に戻りたい。傍らで静かにしている、と言うかすやすやと寝ているシルフィードを視界の端に収めつ、 「使い魔品評会の練習は?」 とキュルケに、目の前で使い魔たちに芸を仕込んでいる生徒たちへ戻るよう促す。 「そうね、もうフレイムも充分休んだでしょうし、戻るわ。またね、タバサ!」 しなる赤毛を見送り、本に目を戻す一瞬、視界の端に妙なものが映った 時は遡る 「キース、今度使い魔品評会があるの」 ルイズは、目の前に居る銀髪オールバックの執事を見据えて言う。 「つまり使い魔を披露する会なわけ。本当は主人と使い魔の絆を深めることが目的なんだけれど、私と貴方には不要ね」 キースは恭しく礼をする 「在り難きお言葉」 「褒めてないわよっ!深めたくない上にあんたは執事のようなものだから命令聞いてればいいってだけ! べ、別に既に絆が深いって言ってるんじゃないんだからっ!」 「はっはっは、ルイズ様は素直で御座いませんな!」 「絶対に違うと言ってるでしょーっ!」 なお、この否定は本気である。本物であると断定する。と言うかいままでこの男のどこに惚れる部分があったろうか。 ルイズは、叫んだことで多少切れた息を整え、最重要事項を口にした 「特に、今回の会にはトリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下が特別に視察にいらっしゃるのよ。だから…」 「つまり、機に乗じて暗殺せよと」 「そこふざけないっ!」 「御意、真面目に暗殺を実行します」 「だーかーらー、そうじゃないと言ってるのよおおおおおお!!」 ルイズは自室の床をごすごすと何度も蹴り付けた 「だから粗相のないようにかつ最高の演技を見せろって言ってるのよ!」 「おお、そうでしたか!これはこれはつい勘違いを!」 …これだから疲れるのだ。もう、ものすごく。具体的に言うとサモンサーヴァント7回分に相当するくらい。 しかし、一応この使い魔は姿形は人間だ。動力も行動原理も身体の構造も一切不明だが、姿からしてできることは限られてくる。 ……ルイズは頭を抱えた。 人間に芸をさせるためにこんなに必死になる貴族、しかも学生がこのハルケギニアに居ただろうか?いや、居ない。むしろ居て欲しくない。そんなのが世界に蔓延したらハルケギニアは終わりだ。雑技団の訓練にかかりっきりの学生なんて想像したくもない。 ああ……いっそ、どうでもいい気がしてきた 「もう……あんた、でかい岩10個くらいジャグリングしながら回転して空飛びなさい」 「御意」 「――ってできるの!?いよいよあんた人間じゃないわよ!?」 「はっはっは、人間とは努力でさまざまな壁を乗り越える生物なのですよ!」 「そう言うレベルじゃないわよ!まずメイジでもないのに空飛べるの!?」 「ルイズ様、回転すれば風が生まれます。風さえ生むことができれば、メイジでなくとも空を飛べるのは道理かと存じます」 「ああ、そうね……、なら、いっそゼロと呼ばれても空さえ飛べれば、――ってできるか普通っ!?」 「絶対負けるもんか、限界超えてーで御座います」 「歌わない!弾き語るの禁止!あとどっから出したのそのギター!?」 そこでルイズははたと気づく。まともに話してはいけない、と。 そうだ、自分はキースとの正しい付き合いを会徳したはずなのだ。 息を整えながら手の平に『始祖ブリミル』と3回書いて飲み込み、落ち着きを取り戻す―― 「――って、私は何奇行して落ち着いてるの!ああ、偉大なる始祖ブリミル!今のはナシ!ナシです!」 と虚空に向かって祈りを捧げエア神棚を作り出す前に我に帰り、 「と、とにかく、さっき言った芸をしてもらうんだから、ちょっと練習に出るわよ!」 「御意でございます」 こうして、ゼロとよくわからないものの主従は、使い魔王国となっている中庭に移動したのだった タバサは最初、目の前にあるものが理解できなかった。 むしろ今も理解できない。今の私には理解できない。未来の私はどうだろう?理解できているだろうか? だが、何となく理解したら母のような状態に陥るような気がしないでもない。そう言えば母はそもそもどのような状態なのだろう。心が止まっている、そんな感じだ。 そう言えばあの使い魔の心も何となく、止まっているように思える。だとするとあのルイズの使い魔は何故動けるのだろう? 以前書物で読んだ『自動的な死神』などを思い出したが、それとか?それとも 「きゅいきゅい!きゅい!」 現実逃避スパイラルからシルフィードの鳴き声で帰還し、もう一度眼の焦点をそれに合わせる。 それは、宙に浮いていた それは、岩を投げ上げていた それは、その状態で複雑な回転を織り交ぜていた それは、どさくさで岩を殴り飛ばして学園の壁にブチ当てていた それは、どさくさで学園の壁にひびを入れていた それが、ひびを入れた壁は実は宝物庫の壁だった ……しかも、飛ばした先からまたどこからともなく補給してくるので、他の生徒たちは気づいた様子がない。 少し視線を下げると、ちょっぴり(ほんの少し)だけ驚いた顔をしたルイズと、『まあステキダーリン!』とでも言わんばかりの輝く瞳で変態を見上げるキュルケ。 とりあえず これで確定した。 「……人間じゃない」 ならば何か。エルフ?しかし、シルフィードに以前聞いたところ否定された。すると、ガーゴイルだろうか。 実際タバサは、血を注いだ人間そっくりいなるスキルニルなるガーゴイルを知っているが、 それに元の人間以上の力を加えることも失われた始祖ブリミルの技術なら可能であろうと思える。 これ以上考えても仕方がない、と、タバサはかぶりを振って思考を止める。 だが、今のまま『任務』であのような存在と相対すれば、自分に待ち受ける運命は『死』の一文字だ。何としても対抗策を考えておかねばなるまい。 ひょっとすれば、もし、もしもだが、あれが生物だった場合、キースだらけの集落という存在も在り得る。 あの銀髪の執事だらけの村、……考えるだけでも、おぞ気がはしる。 自分は死ぬ訳にはいかない。復讐を果たし、母を救うまでは……。 日は瞬く間に過ぎてゆき、そして…… 品評会当日。 豪華絢爛、格の違いを見せつけながら学園へ入る大行列、柔和に微笑んでしなやかに手を振る麗しのアンリエッタ姫殿下、尊敬し、崇めながら脇に群がる貴族の子供たち、 そんな中でルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはというと…… 「……」 「…ぃゃん」 「何がイヤンよっ!」 自室で、縄で椅子に縛りつけた使い魔とにらめっこしていた。 窓から清涼感溢れる風が入り込み、さらさらとそのふわふわの桃色がかったブロンド髪をなでる。 無駄に晴れた青空は、無駄な爽やかさを演出し無駄に健康的かつ無駄に健全な雰囲気を醸し出す。 そして今、ルイズは時間を無駄にしている。全く、この世は無駄だらけだ、と珍しく詩的に仕上がったかなと自画自賛してみる。 「ルイズ様は何故私をこんなところに縛り付けているのですかな?」 ……そんな平穏な思考を邪魔する不届き者がひとり。 ルイズは嘆息すると、 「じゃあ、解いたら何をするのか言ってごらんなさい?」 「それは勿論、アンリエッタ姫殿下の所へ行くに決まっているではありませんか」 さも当然と言うかのように、表情も変えずに言う。 「行って何をするのか、言ってごらんなさい?」 「はっはっは、ルイズ様も野暮なことを聞くものですな!そんなに私が信用できないと?」 「アンタが今朝、銃やら吹き矢やら弓やらをしっかり念入りに整備してなければ信用したかもしれないわね?」 「……何が問題なのです?」 キースが訝るように眉根を寄せる 「だああああああああ!!何を当然、みたいな顔してんじゃないわよ! 姫殿下をまだ暗殺するつもり何でしょう!?そうなんでしょう!?何とか言いなさいよこのプラナリアもびっくりの超変態生物!」 キースはわめくルイズを理解できないとでも言うかのように首をかしげると、 「落ち着いてくださいルイズ様。冗談に決まっているでしょう?騒ぐと体に毒ですぞ」 「あっんったっのっせいでしょうがあああああああああああ!」 懐から抜いた杖の先にいたキースを脅威の爆発力で窓から吹き飛ばした。 そうして迎える本番、普通に飛ぶタバサとシルフィード、炎をまるでサーカスのジャグリングのごとく操るキュルケとフレイム、何故か体中に薔薇を挿して血みどろでヴェルダンテと戯れるギーシュ、などが目立つステージは進行し、遂にルイズの番となった。 麗しのアンリエッタ王女は春を思わせる暖かな笑みで、今か今かとルイズを待っている。 そして、小さな体で堂々と、ルイズは壇上へ 恭しく礼をすると、小石を宙へと放り、それに錬金をかけ、大きな爆発を引き起こす。 『おい、『ゼロ』がまた失敗したぜ!?』 『姫殿下の御前でまで失敗やらかすなんて流石はゼロのルイズだよな!』 己の失敗すら演出兼合図として利用するなど、以前のルイズではありえなかったろう。 しかし、今は違う。 どうせ変態的な使い魔を発表する、もはや多少失敗による爆発のことを言われたくらいでどうということもない。火事山に放火しても何も変わらないのと同じなのだ。 その前向きのようでいてかなり後ろ向きな決意は、召喚前のルイズにはありえなかった。成長である。諦めとも言うが、結果的に性格が丸くなったとも言える為問題はない。 「さあ来なさい!私の究極闘士一号!」 群集の前で多少緊張していたのか、それとも多少テンションがうひょーなことになっていたのか。予定にもない変な台詞を吐きつつ、杖を掲げた。 そして… 『………』 春だというのにどことなく冷たい風が吹き抜ける 『……ひょっとして、逃げられたんじゃないのか?』 『……もはや、流石はゼロのルイズとしか言いようがないな』 ルイズは真赤になって、怒りと屈辱に震える体を抑えながら、ぎこりと折れるように礼をすると、舞台をぎちりぎちりと固い動きでゆっくりと降りた 「…何故、人は争いをやめないのでしょうか」 目も眩む鮮やかな緑の平原、学園の庭 「何故、争いは止まらないのでしょうか…。」 穏やかな風が花の香りを運び、その銀髪を揺らす 「ああ、何故人は、他人を傷つけたがるのでしょう…」 「そ・れ・は・あんたみたいなヤツがいるからよおおおおおおおおおおおおっ!」 爽やかかつ激しい爆風が焦げる香りを運び、その緑を吹き飛ばす。 その風は、ハルケギニアという世界の風に溶けて、すぐに消える。 「このように、人は平穏を吹き飛ばす、そう、人間の本質は破壊者なのです。黒魔術師殿は即ち人の業」 地面にずぼりと頭から刺さって股を開いた黒いタキシードが、そのままの体勢で語り続ける 「全ての業の集合を叩くことができれば人は救われますが、その攻撃がまたもや人の業となる…」 頭を振るように腰から先を回し、 「人の業は結局、いつまでも消すことはできないのですな」 またもや穏やかな春の風が… 「いい加減にしなさいっ!」 強烈な爆風によって掻き消された。 何故このようなことになったのだろう。 自分は何か悪いことをしただろうか 馬鹿のようなというか馬鹿そのもの、むしろこの世の馬鹿をひとつに纏めたような使い魔を召喚したところまではいい、もう慣れた。 そして、その使い魔が毎回馬鹿な事件を起こすのもいい、慣れた。 ……ここまで考えて、更に落ち込んだ。何だかものすごく道を踏み外している気がする。 そして、一番の問題は、自分がこの使い魔を制御し切れていないことであった。 なにせ理解しがたい変態だ、誰にも制御できるとも思えない、とは結局いい訳だ。 相手が不思議生物だから?そんなことは関係ない。事実として、ルーンが刻まれていると言うのに使い魔の力を持て余している自分が居る。 そして、肝心なときに呼んでも来ない。これは明らかに、主としての器が足りていない 「この…馬鹿っ!」 そんな気持ちを涙腺から噴出しながら、怒りで白くなった視界の端、吹き飛んでのびていたキースに殴りかかるものの、急にむっくりと起き上がったキースに対応できず地面を殴りつけて倒れる。 なんだか、ものすごく惨めだった。心を虚無が支配し、その中をいつかどこかで聞いたルーンが飛び回る。 「あは…あははは…」 もはや惨めすぎて笑えてきた。結局、諦めただの何だの言っていたが、全てを受け流すことはできていなかった。 心の中に溜まりにたまったその怒りが、悲しみが、絶望が、その涙とともに溶けて消えてゆき、その分を空白が埋め尽くす。 そして残ったわずかな喜びも、今、こうして笑い声とともに外へ放出されている。 そうだ、この使い魔を殺そう。殺しても死ななそうだけれど、この頭の虚無を飛び回るルーンの力ならばひょっとしたら、とも思う。 そんなときだった 「む?ルイズ様、ところで、あの辺りの壁の向こうには何があるのですか?」 急に聞こえてきたキースの声に、ふと我に返る。―――今、私は、何を考えていた? 「…急に何?」 徐々に、涙で歪み、怒りと虚無で潰れていた視覚が戻る。聴覚が戻る。 「いえ、そこで巨大ゴーレムで壁を粉砕しているステキなお方がいるものですから」 ――何故自分は気づかなかったのか、身の丈30メイル以上ありそうな巨大ゴーレムが、学園の壁に向かって拳を振り上げていた。 そしてその豪腕が振り下ろされ、しょっちゅうキースが衝撃を与えていたその壁が、心臓を震わせるほどの轟音と共に崩壊する。 ルイズは慌てて、さっきのキースの質問の答えを思い出す。 「えーっと、確かあの場所は、………宝物庫!」 「ああ、あの売りさばいたら高額で売れた『アレ』があったところですな!」 不穏なことを聞かなかったが、聞かなかったことにする。聞いていない、聞いていない。 壁の中へ、ゴーレムをつたって入ってゆく黒いフードの人間を見送りながら思考する。 相手は強い地のメイジであり、宝物庫狙い。そういえば、と、ちろりと聞いた『土くれのフーケ』の噂を思い出す。見事に合致している。 と、言うことはだ ―――捕まえれば相当な名誉であり、この品評会での失敗による汚名を払拭するには充分だ そして、こちらにはスクエアクラス相手でも劣らないであろう有り余る力がある。 「――キース、あの泥棒を捕まえなさい!世のため人のため、そして何より私の名誉のために!」 「御意」 しかし、ルイズはまだ理解していなかったのだ その使い魔の奇行は、有り余る力を持て余している訳でもなく ――正真正銘、根っこからの変態性によるものであることを なんと言うか、参ったとしか言いようがない。自分に落ち度があったか考えてみる。 まず、姫の護衛に出張り学園自体の防備が手薄になる瞬間、姫自身が来訪しての使い魔品評会を狙って、こうして襲撃をかけた。 次に、前からアタリをつけていた、皹の入った壁を破壊して宝物庫内に侵入、お目当ての『自在の黒剣』を物色。 ここまでは問題なかった。華麗とも言える、無駄のない、隙のない、完璧な手際だった。 だが、ここからが問題だ。いくら探せども、お目当ての品が見つからない。 あらかじめ『黒曜石を彫り上げて作り上げたようななめらかな刃』との情報は仕入れてあったのだが、そんなものは見つからない。 そして、極めつけは… 「――キース、あの泥棒を捕まえなさい!世のため人のため、そして何より私の名誉のために!」 「御意」 まずい、人が来た。 このような祭典中に、一体何故? 「まったく大事な式典をフケるなんて、とんだ不良貴族サマもいたもんだ!」 目当ての品はまだ見つかっていない、が、捕まるつもりなんて毛頭無い。 そこまで行動を決めたら、あとはすることなんて一つだ。 フーケはひょいとゴーレムに飛び乗って戻る。自分を捕まえようと動いているのは、学院内屈指の落ちこぼれ『ゼロのルイズ』の従者、銀髪オールバックのみだ。 ならば、目撃者を潰しておいた方が手っ取り早い。 ただの平民相手にゴーレムによる全力の打撃を加えることは好みではないが、別に抵抗もない。 ゴーレムに命じると、その固くて太くて立派な腕が持ち上がる。 ルイズは、自らの使い魔がその振り下ろされた腕に潰されていくのを黙って見ていることしかできなかった ぐちゃり、と、轟音の中からですら、ルイズの聴覚はその音を聞き取った。確かに、確実に、間違いなく、肉の潰れる音だった。 いくら、死んだら新しい使い魔を召喚できるとは言え いくら、死んでしまえばいいと深刻に思ったとは言え ――普通の、少しプライドが高いだけの少女が、人が一人死んで素直に喜べるはずは無かった 潰した。足に伝わる振動だけで、そのくらいはわかる。確かにゴーレムの拳は、人一人を叩き潰した。 では、 「やりましたな土くれ殿!さあ、警備の者が来ぬうちに早いところとんずらですぞ。」 私の隣に居るこの男は何なのだろう。 「どおおおおおゆうううううことよおおおおおおおお!!??」 遥か下方から風を切り裂くように響く桃髪の貴族の声 「はっはっは、ルイズ様、こーいったトリックの基本的な解き方をご存じ無いのですか?」 「何がよ!」 キースはその固定された銀髪でかぶりを振り、 「不可能なことは不可能なのです。それを隠れ蓑にし、できる事を不可能と言う先入観で埋める、それがトリックの基本です。」 「…で?」 「つまり、あのタイミングでゴーレムの拳を避けることなど不可能、ならば、可能な方法を何か見落としている…と言うことですよ、ルイズ様」 それよりもさっきからこいつは、当の盗賊の横で何を呑気に会話しているのだろうか。 「…それで、何?」 「忍法変わり身の術をご存知ですかな?」 「あ・ん・たねぇぇぇぇぇ!」 「何だって?」 確かに肉を潰した感覚だったはず、と、ゴーレムの拳を急いでどかす。すると… ふんわりとした髪 上等なマントとドレス 纏った空気にどことなく気品を感じる 間違いなく、麗しのアンリエッタ姫殿下であった ただし血まみれの 「………」 「………」 「………」 フーケは固まり、ルイズは呆然とし、キースは冷や汗をダラダラと流す。 「………」 「………」 「………」 そのまま数十秒ほど固まった後、 「…皆さ~ん、大変です!曲者が王女様をさらってゴーレムでッ!」 銀髪執事が馬よりも早く、風のように魔法衛士隊へ走った 『何だって!姫殿下なら今この中にっ!』 『見ろ!居ないぞ!』 『おい、あそこだ!まずい、血塗れに!』 そしてすぐに、護衛の部隊のほとんどがこちらへわらわらと 『どうしよう、俺の担当だったのに!ああ、隊長に…隊長に…ッ!』 『あれは土くれだっ!』 『噂の土くれはテロリストだったんだ!』 『現在の政治に不満を持って姫様を拉致、殺害したんだ!』 『ああ…嫌だ!もうあんな痔は経験したくない!』 『取り囲め!土属性隊、壁をッ!』 『水属性、早く姫様の治療!』 『うわあああああ隊長!やめっ、こんなところでっ!』 『まずは姫様の命だ!命!命あっての物種だ!』 あっという間に完全な包囲が構築されてゆく。しかも、今の喧騒にいくつか使い魔の声が混じっていた気がする。 「え…え……」 喉が震える。フーケがゴーレムを操り、なんとか包囲を突破しようと試みているが、もうどうでもいい。 「ルイズ様」 しゅたっ! そう表現するのが正しい、そう思わせる飛び方で、まるで降って沸いたように現れるキース。 「あとは捕まるのも時間の問題です」 恭しく礼をしつつ、済ました顔で冷静に報告するキース。 「エ…エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ…」 口が勝手に、いつか、つい最近聞いた呪文を紡ぐ 「これで任務達成です。あなた様の名誉はうなぎのぼりですぞ!」 そして、この魔法の威力を理解し、理解した上で… 「吹き飛んで頭を冷やして死になさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」 フーケも、衛士隊も、キースごと全て吹き飛ばした
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前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 二九九 ウェールズ皇太子に死んでほしくはないという思いは、君もルイズと同様だ。 この実直でさわやかな青年は、王族の誇りなどという物のために、こんなところで命を散らしてよい人間ではない。 たとえ恥辱にまみれてでも、生き延びるべきだ――国のため、民のため、そしてアンリエッタ王女のために。 そもそも、ウェールズは最後の突撃を行うなどと言っているが、王党派の軍はまだそこまで追い詰められているわけではないはずだ! いくらかは余力があるのに、自暴自棄の集団自殺としか思えぬ闘いを挑もうとするなど、この理知的な青年には似つかわしくない行いだ。 平静なように見えはするが、父王ジェームズ一世の死が彼に与えた衝撃は大きかったのだろう。 彼の心のなかでは、父の命を奪った敵に対する復讐心と、父のように後方でひっそりと暗殺されてしまう前に戦場に出て、華々しく散ろうという 虚栄心がないまぜになっているに違いない。 君はなんとしてもウェールズを説得しようと心に決める。 しかし、恋人であるアンリエッタ王女のために生きろと言っても無駄なことは、ルイズが証明済みだ。 王女は、同盟締結のためにゲルマニア皇帝のもとへ嫁ごうとしているのだから、ウェールズと彼女が結ばれる望みはほとんどないといってよい。 皇太子に生きようと考え直させるためには、別の事柄を持ち出さねばならない。 死ねばすべてが失われるぞと、恐怖を煽るか(三二六へ)? 残された国民はどうなるのだと言うか(二六五へ)? それとも、王家の血筋を絶やしてはならぬと言うか(二七八へ)? 二六五 「……≪レコン・キスタ≫の輩とて、けだものではない。代々にわたって領民を守り、領地から富を生み出してきた貴族たちだ。 民をいたずらに苦しめるような真似はするまい。ハルケギニア統一の戦争を続けるために重税や労役を課すのは間違いないだろうが、 その程度なら過去のアルビオン王たちもやってきたことだ」と言うウェールズだが、 その表情は苦しげなものに変化している。 ウェールズは、≪レコン・キスタ≫が平民の生命や財産など歯牙にもかけぬ連中であることを、君以上に知っているのだ。 傭兵どもの焼き討ちに遭い、女子供まで皆殺しにされた村を見たことも、一度や二度ではあるまい。 君がそのことを指摘すると、ウェールズはうつむいて 「なんにせよ、我らにもはや勝機はないのだ。民を、国土を敵の手から守ろうという貴族の義務も果たせぬ。ならば、王家に生まれた者としての 義務だけでも果たさねばなるまい。王族にふさわしい勇気と名誉を示すという義務だ」と小さな声でつぶやく。 「トリステインに亡命する以外にも、叛徒どもから逃れて落ち延びる方法はある。しかし、生き恥をさらすわけにはいかぬのだ。滅びゆく王家の最後の者として!」 話が振り出しに戻ってしまっため、君は小さく溜息をつく。 この、名誉や矜持によってがんじがらめになってしまった青年を説き伏せるには、理屈ではなく感情に訴えるほかないようだ。 国が滅びゆくさまを見るのが怖いのだろうと挑発してみるか(三五へ)? 無礼は承知で胸倉を掴み上げ、なにが名誉だと怒鳴りつけるか(九三へ)? 三五 君は軽蔑したように鼻を鳴らすと、冷たく言い放つ。 名誉、勇気、義務ときれい事を並べ立ててはいるが、現実逃避のために死のうとしている者に、勇気も名誉もあるものか、と。 君の不遜な物言いに、ルイズとギーシュはそろって息を呑む。 ウェールズが険しい表情で 「それはどういう意味だ、使い魔殿」と尋ねるので、 君は、皇太子は≪レコン・キスタ≫によって民が殺され、国土が破壊されていくさまをその眼で見ることに耐えられぬので、部下を巻き添えに 自殺しようとしているだけの臆病者だ、と言ってやる。 ウェールズはその端正な顔を真っ赤にして、 「ぶ、無礼な! いかに命の恩人とはいえ、今の言葉は聞き捨てならぬ! 取り消したまえ!」と叫ぶ。 「あ、あ、あんた、殿下に、な、なんてこと言うのよ!? 謝って、取り消して!」 ルイズが立ち上がり、声を震わせて君を怒鳴りつける。 ギーシュは寝台から腰を浮かせて、おろおろと君たちの顔を見回す。 君は彼らに構わず言葉を続け、勇気や矜持という美名のもとに死のうとするお前たちと違って、平民たちは家族のため、愛する者のために、 屈辱と苦痛にまみれながらも生きねばならぬのだ、と言う。 さらに、苦しむ民を見捨てて、自分たちだけ『名誉の戦死』を遂げて楽になろうとする者など腰抜けだ、貴族どころか男と呼ぶにも値せぬ弱虫だ、と罵る。 君の言葉に、皇太子の表情は怒りから狼狽のそれへと転じる。 「ち、違う! 私は、私は……」 君は相手が動揺した機をのがさず、たたみかけるように言葉を浴びせる。 本当に違うというのならば行動で示してみろ、勇気を示したいのならば生きて苦しめ、絶望を味わい恐怖に震えながら生き延びろ、と。 戸惑うウェールズが、 「しかし、多くの部下たちを死なせて、私だけがのうのうと生きるわけには……」と言うのをさえぎり、 死んでいった者たちにすまぬと思うならば、彼らのことを毎日思い出すことこそがお前にできる手向けなのだ、と語る。 それに、ウェールズが生きている限り≪レコン・キスタ≫は王家の影に脅え続けることになり、他国に攻め入る余裕が失われ、離反者すら現れるかもしれぬのだ。 君は最後に、ウェールズの青く澄んだ瞳をじっと見つめて、国のため、民のため、お前は絶対に死んではならぬ身なのだと告げ、話を終える。九三へ。 九三 ルイズ、ギーシュ、そして君の三人は、うつむいて沈思黙考するウェールズ皇太子を見つめている。 三人とも緊張した面持ちであり、誰も言葉を発しようとはしない。 数分ののち、ウェールズは重々しく口を開き、 「わかった。使い魔殿の言葉に従ってみよう。一日でも長く生き延び、≪レコン・キスタ≫の卑劣漢どもを翻弄してくれよう。父上が存命ならば、 けっして許しはしなかっただろうがね」と言う。 その言葉を耳にし、ルイズの顔がぱっと輝く。 「殿下……!」 「ラ・ヴァリエール嬢。アンリエッタには、こう伝えてくれたまえ。たとえ卑怯者のそしりを受けようとも、私は生きる。生きてこの『白の国』で そなたの幸せを願い続ける、と」 そう語るウェールズの表情は悲痛なものだ。 本当ならば『生きて添い遂げると』言いたいところだろうが、彼の想い人は国を守るために、意に沿わぬ政略結婚を強いられているのだ。 やがて、ウェールズは気をとりおなしたように微笑むと、君に向かって、 「さて、使い魔殿。先ほどの言葉を取り消していただけるかな?」と言うので、 君はもう一度アルビオンに来て、彼の行いを見届けてから発言を取り消し謝罪をしよう、と返す。 青年は無邪気な笑顔を浮かべ、 「それはいい! 君の謝罪を聞くときまで、私は死ぬに死ねぬわけだ」と君の肩を叩く。 「……昨日の昼に君たちも通った、あの地下通路を使えば脱出はたやすい。それが駄目でも、温存している船と風石がある。 城を抜けたあとは、少人数の集団に分かれて遊撃戦を挑むことになろう」 ガラスの杯にワインを注ぎながら、ウェールズはこれからの展望を語る。 君とギーシュは杯を片手に皇太子の話に聞き入っているが、ルイズは早々と寝台に倒れこみ、すやすやと寝息を立てている。 今日は――厳密には昨日だが――多くの出来事が矢継ぎ早に彼女を襲った。 傭兵どもとの闘い、ウェールズ皇太子との出会い、君を送還する手段が失われたこと、婚約者との再会と裏切り、明らかになったウェールズとアンリエッタの関係、 ウェールズと君の口論……。 さんざん張り詰めていた緊張の糸が切れた今、眠りにおちてしまうのも無理はない。 「あのような隠れ家は君たちが見たほかにもいくつかあるし、食糧や秘薬のたくわえも数ヶ月ぶんはあるはずだ。この命が続く限り、奴らの悪だくみを邪魔し続けてやるさ。 あの『フッド卿』のように森に潜んで……ああ、君は異国人だからフッド卿の伝説を知らないのだな。平民たちのあいだで人気のある物語で、 悪辣な領主に公然と反旗を翻した…」 やがてギーシュも眠気に耐えられなくなり、挨拶をすると部屋に引き揚げていくが、君とウェールズはすっかり意気投合したため、会話をさらに続ける。 話がはずむので、君は七大蛇について話を持っていくことに決める。一八二へ。 一八二 「あの化け物の噂は耳にしていた。≪レコン・キスタ≫の首魁であるオリヴァー・クロムウェルが、誰も見たことのない幻獣を使い魔として召喚したという噂だ――この眼で見るまでは、信じられなかったが」 ウェールズによれば、その怪物に関する噂は一月ほど前から反乱軍のあいだでささやかれていたらしいが、それを直接に眼にしたのは一握りの ≪レコン・キスタ≫幹部だけであるらしい。 クロムウェルはさまざまな能力をもつその怪物を操って、あるときは宮殿まで忍び込んだ暗殺者を返り討ちにし、またあるときは自身に反抗的な 部下をむごたらしく抹殺したのだという。 「クロムウェルは一介の司教にすぎなかった。貴族の生まれですらない。しかし、内乱が始まると死者をよみがえらせるなどの怪しげな力を披露してみせ、 たちまち≪レコン・キスタ≫の頭領にまで登りつめたのだ。奴は自らの力を、伝説の失われた系統≪虚無≫だと称しているそうだが、 それはにわかには信じられない――もっとも、≪虚無≫がどのようなものなのかを知る者もいないのだがね。あの醜い大蛇も、 伝説の≪虚無≫の使い魔などではないのだろう?君はあれのことを知っているようだが」 君はうなずき、七大蛇について知っていることをすべて話す。 マンパンの大魔法使いによって作り出された最強の下僕であること、そのすべてが君によって倒されたこと、そしてそれが、理由はわからぬが クロムウェルの≪使い魔≫としてよみがえったことを。 七大蛇をよみがえらせたのもクロムウェルの≪虚無≫の力だというのだろうか? そうだとするならば、死体も残さず打ち滅ぼされたものが大半の怪物どもを、どうやってこの世界に呼び出したのだろうか? それに、君がルイズに召喚されたのは二十日ほど前のことだが、七大蛇がアルビオンに現れたのは一月以上は前のことだという。 君が最後の大蛇を殺したのは召喚される前日のことなのだから、計算が合わぬことになる! 君の疑問は深まるばかりだ。 スナタの森の魔女フェネストラによって、水晶玉に閉じ込められたままであろう日輪大蛇を除けば、生き残りの大蛇は土、風、時の三匹のはずだ。 彼らとふたたび遭遇したときのため、三匹の弱点をウェールズに説明すると、彼はしきりに助言に対する礼を述べる。 強運点を原点まで回復させよ。 その後も君たちの会話は途切れることなく、アルビオン皇太子と、アナランドの平民出身の魔法使い――ふたりの語らいは、東の空が白むまで続く。五二〇へ。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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「佐助ぇ!佐助はおらぬか!!」 ほぼ毎日のように繰り返される、幸村の佐助呼びは、今や一種の名物となっていた。 兵士に今日も精が出ますねなどと言われ、おう。と実に男らしい返事をするのも、定番の一つである。 「はいはーい、姫様呼びましたー?」 そして呼べば必ず、佐助がどこからともなく現れるのも然りであった。 「む、姫様はよせと申したはずだ」 「でもあんた姫様でしょうが」 「お館様まより戴いた、幸村という名がある!」 「なんだって大将も、大事な姫様に男名をわざわざあげるかなあ」 「佐助!お館様の命名を愚弄するか!」 「してないしてない。してないからちょっと槍振り回さないでよ危ないから!」 二槍を軽々と振り回す、恐るべき姫様の攻撃をかいくぐり、どうにか弁解をしてみる。 ならばよいのだが、と意外とあっさり矛先を引っ込めてくれたのに、ほっと安堵の息を吐く。 正直、幸村の攻撃を食らって、五体満足でいられる自信はない。 「まあ、呼び方はまた追々考えるとして、用件はなんです?」 呼ばれたからには、何かしら用があるのだろう。 でなければ給金を貰っている意味がない。たとえそれが雀の涙ほどであったとしてもだ。 「ああ。いや、文を戴いたのだがな、書いてある意味が難解で分からんのだ」 そのくらいのことで、屋敷中に響き渡る声で呼ばんでくださいとは思ったが、 懸命にも思うだけにとどめて、その文を受け取った。 簡単に読み飛ばしていた佐助の表情がどんどんと険しくなるのを見て、幸村は思わず首を傾げる。 「どうした佐助。それほどまでに悪いことが書いてあるのか?」 「……あんた、本当に意味が分からないの……?」 地を這うような低音に不安を覚えつつ、ああ。と一つ返事をした。 何かがぷちりと切れたような音がした。 「これ、求婚の文でしょうが!あんたなんで分からないのーっ!!」 先刻、幸村が佐助を呼んだよりも、遥かに大きな怒号が屋敷にこだました。 求婚、という単語を聞いた幸村は、たっぷり数十秒固まってから、 破廉恥ぃいい!と叫びながらどこかへ行ってしまった。 「……求婚の文で破廉恥って言ってるようじゃまだまだかなあ」 適齢期に差し掛かって久しい主を思わず見送ってしまい、ため息を吐きながら文を焚き火にくべた。 芋が焼きあがったら、逃げた幸村と共に食べよう。 そんなことを思いながら、火の番を任せて、逃亡した主を探しに向かった。 文は、幸村と同じくらいの「姫君」がいるという旧家からであった。 いずれ生まれ来る日の為に3
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前ページニニンがゼロ伝・音速の使い魔 第二話 ルイズ、怒るの巻 ここは学校の正門。 二人の少女がたどり着いた。 一人はマントを羽織った学園のメイジ。 もう一人はピンクの服を着た黒髪の少女。 二人とも服は破れ体中傷だらけ。一言で言えば『ボロボロ』だった。 「はぁ、はぁ・・・やっと着きました~いい汗かいた~」 達成感に満たされた表情でピンクの服の少女、忍が爽やかに言った。 「あ゛ー・・・死ぬかと思ったわ・・・」 もう全てに疲れたと言った表情のメイジの少女、ルイズが呟いた。 「途中、森に落ちて大変でしたね~」 「途中じゃなくて学園飛び越えたじゃないの・・・狼にも襲われるし・・・」 ジト目で忍を睨むルイズ。 「えっと、その、良い思い出はお金じゃ買えないですよね、えへへ!!」 「どこがいい思い出よーーーっ!!」怒鳴るルイズ。 「ごっ、ご免なさい・・・」しゅんとする忍。 「えっ、あっ、その・・・は、反省してるみたいだから今回は許してあげるわ!今度失敗したら許さないんだから!」 「ありがとう!ルイズちゃん!忍はアナタの優しさに感動です!!」ルイズの手をとり瞳をキラキラさせる。 「うっ・・・」頬を赤らめるルイズ。 (だっ、ダメよ、甘やかしちゃ!貴族と平民・・・コイツらニンジャとか言ってたけど、ちゃんと躾て差を思い知らせてやらなきゃ!だけど・・・だけどっ) 「あの、どうかした、ルイズちゃん?」 ニコッとして首をかしげる忍。 (だっダメだぁ・・・・) ルイズの表情はふにゃりとなった。 正常な思考をなんとか取り戻したルイズは忍と話しながら自室へと向かった。 「良い?もうあの『ムササビの術』は使っちゃダメ!使う時は一人でやんなさい!解った?」 「は~い、これからはちゃんと気を付けま~す」 (ホントに解ってんのかしら・・・) ブツブツ良いながら自室のまえにたどり着く。 扉の鍵を開けようとするが・・・ あれ?鍵が掛かって無い? おかしい、鍵は掛けたハズなのに。 ノブを回し扉を開ける。 がちゃり。 「おい遅ぇぞルイズ何処をほっつき歩いていやがった!」 テーブルの上で黄色い生物が鎮座していた。 「お邪魔してまーす」 「ルイズちゃん、忍ちゃん、お帰りーっ」 忍者たちがテーブルの周りでくつろいでいた。 ○| ̄|_ <ルイズ 「・・・てけ・・・」 何か良いながら、ゆらりと立ち上がるルイズ 「出てけぇぇぇぇぇぇ!」 怒り狂い音速丸を追い回し始めるルイズ。 「大変だ、音速丸さんを助けなきゃ!」 「音速丸さん!今助けます!」 がしっと二人の忍者が音速丸を確保する。 「ルイズちゃん、はいコレ」 一人の忍者が鞭をルイズに手渡す。 「テメェら見事なフォーメーションでオレ様に何しやがる!っていうかその鞭は何だオイ!?」 「やだなぁ、気のせいですよ。偶然ですよ偶然」 「嘘付け!ぜってぇワザとだろうが!」 ジタバタ藻掻く音速丸。 「あら・・・気が利くじゃない・・・ウフフフフ・・・」 完全にイッちゃった目で鞭を受け取るルイズ。 「イヤーッお止めになってぇー!」 「バカな使い魔には・・・お仕置きよ!!」 ビシーン、バシーン 「アヒーーーッ!!、ウヒィーーーッ!?」 鞭の音が音速丸の尻に響き渡った。 時間が経過して・・・ 「アンタたちソコに並びなさい」 音速丸の尻を鞭でたたいてストレスを発散したルイズはいくらか落ち着いて忍者たち目の前に整列させていた。 ちなみに音速丸の尻が素敵な事態になっていた為、まだ倒れたままだ。 (羨ましい・・・) (なんて羨ましい・・・) (自分が女の子だからって、なんて羨ましい・・・) 「・・・と、言うわけでアンタ達には使い魔をやって貰うわ。ちゃんと私の命令に従うのよ。解った?」 音速丸の尻を鞭でたたいてストレスを発散したルイズはいくらか落ち着いて忍者たちに言い放つ。 だが忍者たちの耳には届いて居なかった。 何が羨ましいのか? ルイズの後ろで忍が後ろからルイズを抱きしめるように立っていた。 むにっ。 忍の胸に埋まるルイズの後頭部が羨ましくてしょうがない。 「何よ、アンタたち聞いてるの?」 「ズルイ!ズルイですよルイズさん!何ですかその後頭部に押しつけられたシロモノは!?」 「見せつけられる我々の身にもなって下さいよもう!!」 「コレは何かの罰ゲームなんですか!?いや、ボーナスゲーム!?一体どっちなんだーっ!?」 身悶え、興奮し、混乱する忍者たち。 「うっさいわね!話聞けって言ってんでしょ!良いのよこれは使い魔に対するご主人様の特権なんだから!」 いや、契約したのは音速丸だけなのだが・・・ あんなヤツ、使い魔にするなんて願い下げよ! ごもっとも。 どうせならこっちの忍みたいに・・・その・・・ はいはい。 「なんか自己完結してるところを悪いんだけどルイズちゃん」 頭の上から声がした。 「ん?なーに?シノブ」 ちょっと甘えたような声になるルイズ。 「えっとね、使い魔さんってのをやるのは良いんだけど、何をすればいいのかしら?」 「んっとね、使い魔は主人の目となり耳となる・・・感覚の共有が出来るハズなんだけど・・・出来ないみたいねー」 契約は音速丸としかしていないから当たり前なのだが、当の音速丸とも出来ていない。 それ以前に音速丸と感覚の共有など以ての外。論外。 「諜報活動ですね、忍者のお仕事の基本です!何処でも忍び込んでヒミツを探っちゃいます!」勘違いする忍。 「ちょっと違うんだけど・・・ま、良いか」 「次は~?」 「あとは主人の為に望む物を探してくるの。秘薬の材料になる薬草とか鉱物とか・・・」 「それなら大丈夫です!忍者はお薬を作るのもお仕事のウチですから!」 「あら、なかなか役に立つじゃない。見直したわ。」 「へへへ、任せてください!」 この忍者たちは誰も『コチラの世界』の薬草や鉱物を知らないのだが。 「最後に、ご主人様を危険から守る事よ」 「もちろん!影ながら君主を守る事こそ忍者の本分!忍者の指命!」 拳をグッと握り目をキラキラさせる忍。 (うっ、ちょっと心配かも・・・) ムササビの術のトラウマがちょっと心をよぎる。 「まぁ、とりあえず洗濯とか掃除をとか、雑用をして貰うから」 「了解致しましたっ」シュタッと敬礼する忍。 「はぁ・・・怒ったり、話したりしたら疲れたわね・・・もう寝るわ・・・」 そういうとルイズはブラウスのボタンに手を掛け外していく。 「「「うぉぉぉぉぉ!?」」」 忍者たちから歓声が上がる。 「・・・・・。」睨むルイズ 「「「(どきどき・・・)」」」 目が合う忍者たち。 「アンタ達は外よ!!」 「ええっ!これからイイとこなのに!」 「ヒドイや、ヒドイやルイズさん!」 「お願いです!もうチョットだけでイイから!」 「うるさい!出てけーーー!」 ゾロゾロと出て行く忍者達。 「はぁ、はぁ、はぁ・・・ふぅ・・・、ねえ忍、着替えさせて」 「はぁい。」 てきぱきとルイズを着替えさせる忍。 「ねえ、ルイズちゃん。」 「何?」 「ベッド、一つしか無いんだけど、私は何処で寝れば・・・」 「使い魔はゆ・・・」床と言おうとして止めた。 「い、イイわ、私と一緒のベッドで寝ることを許してあげる。感謝しなさいよねっ」 「えへへ、ありがとうルイズちゃん」頭なでなで。 (あぁぁぁ、良いわ~)ふにゃりとするルイズ。 だがルイズの心の平穏が打ち砕かれた。 「あーもう!何ですかアナタ達!女の子同士でフトンに入るときは服を脱ぎなさい服を!お父さんこれ以外認めませんよ!あ~柔らけぇ、柔らけぇ」 ガラガラッ、窓を開け、むんずと音速丸を掴むルイズ 「死ねぇぇぇぇぇっ!」 ごしゃっ、 「うぼぁ!?」 ルイズに蹴り上げられた音速丸は天空にある双月に向けて一直線に飛んでいった。 たぶん、つづく。 前ページニニンがゼロ伝・音速の使い魔
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うろのバイト先でゼロ魔を買ったことから命名。 よくパシられている。パシられすぎて精神的にキテるらしく、myamaに相談を持ちかけてきたらしい。
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「大呪文はどうなったの?」
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「ふむ、つまり何者かの妨害にあったと?」 「はい……」 学院長室では、オールド・オスマンがシエスタの報告に頭を悩ませていた。 昨晩、シエスタはマントに波紋を通し、ハングライダーのように空を飛んでいた。 だが滑空中に『エア・ハンマー』らしき魔法を受け、墜落死の危機に陥ったのだ。 「悪質じゃのう、こうなると生徒同士の問題は生徒同士で…という訳にもいかんし」 シエスタは元平民であり、波紋という得意な魔法を使うのを理由として、魔法学院では生徒と同じ扱いを受けている。 つまりは、貴族扱い。 しかし貴族至上主義者が少なくないトリステイン魔法学院の貴族子弟達にとって、元平民のシエスタが簡単に受け入れられるはずはなかった。 オールド・オスマンには一つの誤算があった。 シエスタが吸血鬼を退治したのを理由に、『シュヴァリエ』の称号を得られるよう便宜を図ろうとしていたが、それがフイになってしまったのだ。 領地を持つことで得られる爵位ではなく、実力と功績によって与えられるシュヴァリエの称号をシエスタが得ることで、少しでも立場を固めようと考えていたのだ。 だが王宮からは、「シュヴァリエを得るには従軍が必要だ」との返事が返ってきたのだ。 近年、シュヴァリエを得ようと功績をねつ造する事件も報告されているので、審査が厳しくなるのは当然だった。 オールド・オスマンは、「タイミングが悪いのう」、とため息をついた。 「オールド・オスマン、私、自分で解決してみたいと思います」 シエスタの力強い言葉に、オスマンが驚く。 「ほう? 勝算はあるのかね」 「…………」 シエスタは無言で頷く。 「ならワシは余計な手出しはせんよ、じゃが一つ忠告をさせてくれんかの」 「『勝者』でも『敗者』でもない、第三の立場を得るよう努力しなさい」 「第三の立場?」 「戦争に例えるとな、傷病兵を治癒する水のメイジのような立場じゃ。波紋は吸血鬼を打ち倒す……しかし、吸血鬼に先導された群衆は打ち倒せん。それを味方に付ける立ち回り方を学ぶんじゃ」 シエスタは少し考え込んだ後で、頷いた。 「……はい。」 シエスタは学院長室を出た後、キュルケとタバサの二人を探し、波紋の訓練をしている教室へと来て貰った。 「ミス・ツェルプストー、ミス・タバサ、お願いがあります。」 「私達に頼み? 何かしら」 「実は……」 シエスタが説明しようとしたところで、タバサが口を開いた。 「シルフィードから聞いている」 タバサは、シエスタが夜に波紋の訓練をして、その最中に魔法で邪魔された事など、シルフィードが見ていることを話した。 シエスタがそれに重ね、『エア・ハンマー』で突然襲われた話をする。 キュルケはその話を聞き、怒りが湧いてきたらしく、目つきが鋭くなった。 「悪戯にしちゃ度が過ぎてるわね」 このキュルケ、窓から男を焼き捨てたことなどすっかり忘れているらしい。 「で、その犯人を捜してほしいってところかしら?」 「いえ、違います」 シエスタの言葉にキュルケが驚く、タバサは無言のままだったが、シエスタをじっと見ている。 「これは私の問題です、危険もありますが、自分で解決しなければならないと思っています……お二人に頼みたいことは、それとは違うことです」 そして、シエスタが語ったのは、二人を驚かせるに十分な内容だった。 波紋は技術であり、平民とメイジの隔てなく、ある程度の習得が可能 水に波紋を流すことで、周囲の生物を探知できる メイジの索敵能力を高め、感覚を鋭敏にさせる効果 吸血鬼に対して絶大な攻撃能力を誇る ディティクト・マジックでも解らない吸血鬼や食屍鬼を、波紋で識別できる 人間を治癒する『水の秘薬』の効果を、劇的に高めることが可能であること 植物や水などを利用した精霊魔法に干渉し、ある程度なら無効化できること 波紋を利用して人間の思考を狂わせることも、治すこともでき、ディティクト・マジックに反応しない 波紋をメイジに供給することで、集中力、魔力のキャパシティが一時的に上昇する 生物の生命力を高めることで、毒や病の回復を促進する 食屍鬼になりかけの人間ならば波紋で元に戻すことが可能 若さを保ち、美容健康にとても良い 現時点でわかっている『波紋』の効能を、シエスタから説明され、キュルケは感心した。 タバサも表情こそ変わらないが、ほう、とため息をついて聞いていた。 「凄いじゃない……水の秘薬の効果が高まるなんて……具体的にはどのくらい?」 シエスタはマントを外すと、シャツのボタンを外し、肩を見せた。 そこには鋭利な刃物でつけられたような傷痕がついていたが、ほぼ治っている状態だった。 「この間、ギ……吸血鬼と戦ったんですが、その時に受けた傷です」 「あんた吸血鬼と戦ったの!?」 「はい、水の秘薬を使って、ここまで塞がりました」 「その傷を塞ぐのに秘薬を?」 キュルケが傷口をまじまじと見つめる。 「はい、100倍に希釈された水の秘薬を、一滴だけ分けて頂いたんです」 シエスタの言葉に驚く。 水の秘薬といえば、水の精霊の身体の一部であり、同じ量の黄金と同じかそれ以上に高額で取引されている。 シエスタの肩についた傷は、長さ12サント、深さはよく解らないが、浅くはないだろうと思えた。 それがごくごく少量の水の秘薬ですぐに塞がってしまうのなら、水の秘薬を取引している秘薬屋は、秘薬の暴落に嘆いてしまうだろう。 「水のメイジと協力すれば、より凄い効果があるかもしれないわね…ホント驚きだわ」 感心するキュルケの横で、タバサは何かを考えていた。 「……解毒効果は?」 「まだよく解らないんです、ただ、オールド・オスマンは波紋を習得されてから『眠りの雲』にかからなくなった……と言っていました」 「そう」 「それで、お二人にお願いしたいことなんですが、波紋の研究のために協力して頂きたいんです」 「面白そうじゃない、美容にも良いんでしょう?それなら断る理由なんかないわよ」 「私も協力する、そのかわり、解毒作用についてより詳細な効果を知りたい」 「ありがとう、ございます」 シエスタは頭を下げ、二人に感謝の意を表した。 「ところで、生物を探知するってどんな感じなの?」 「はい、それじゃあ……お二人とも私の手を握って下さいませんか?」 キュルケの質問に答えようと、シエスタが手を出す。 タバサが右手を、キュルケが左手を掴んだのを確認すると、シエスタは呼吸を整えて波紋を流し始めた。 「「「……!」」」 三人が同時に同じ方向を向く。 黒板の上、三人を見下ろすような位置から何かを感じた。 タバサが杖を取り出し、ディティクト・マジックを唱える。 光の粉が周囲を舞い、タバサの感覚にぼんやりと何かが写った。 シエスタが出て行った後、オールド・オスマンは水パイプを吸おうとし、ちらりと秘書の机を見た。 ミス・ロングビルは用事があるとかで、外出中だった。 「やっぱり美女に怒られつつ吸うパイプの方が美味いのぅ」 そんなことを呟きつつ、『遠見の鏡』を見ると、そこにはシエスタの姿が映されていた。 場所は、シエスタが訓練に使っている教室だった。 傍らには二人の生徒、確かツェルプストー家の娘と、ガリアから来ているタバサという少女がいて、何かを話している。 オールド・オスマンは、波紋の研究を発展させるつもりでシエスタの立場を良くしようと画策していた。 だが、それとは別に、生徒としてのシエスタ、恩人の子孫としてのシエスタが魔法学院で友達を見つけてくれたのが嬉しかった。 鏡に映るシエスタは、波紋について説明しているようだった。 ふと、シエスタがタバサとキュルケの手を握ると、三人がオールド・オスマンの方を『見た』。 鏡の中ではすかさずタバサが杖を抜き、何かを呟いている。 唇の動きから『ディティクト・マジック』の類だと予測し、慌てて『遠見の鏡』を停止させた。 「ふぅ~、生物探知だけでなく、鏡越しの視線まで感じるのかの…いやはや、波紋は恐ろしいわい」 ぷかぁ、と煙を舞わせて、呟く。 「……波紋の効果を教えるのはあの二人か、それにしても波紋を用いた者は、勘が鋭くなるのかのう?」 いずれにせよ、シエスタの監視は難しくなってしまった。 オールド・オスマンは水パイプを吹かしながら、机の上に置かれた一枚の報告書を手にした。 そこにはアルビオンで『鉄仮面』とも『石仮面』とも呼ばれる傭兵が、鬼神のような活躍で貴族派の包囲網を突破した、と記されていた。 「石仮面か……リサリサ先生の仰っていた『DIO』や『柱の男』のように、吸血鬼の王国を作られる前に殺さねばならん……」 オールド・オスマンは、再度、遠見の鏡に魔力を込めた。 鏡に映るシエスタ達は、既に手を離している、今度は視線には気づかれないだろう。 丁度鏡の向こうでは、シエスタが『石仮面』のことをキュルケとタバサに説明しているところだった。 キュルケとタバサの顔が、心なしか青ざめている気がする。 青ざめるのも無理はないだろう。 かつての級友は『勇敢に戦って死んだ』のではなく『操られて死んだ』のだと告げられたのだ。 波紋の研究を手伝ってほしいというのも、吸血鬼として人を襲うルイズを殺すため。 オールド・オスマンにも、石仮面への怒りがあった。 人間だったルイズのためにも、吸血鬼と化した『ルイズだった者』を、一刻も早く殺さなければならない。 そう決意していた。 だが一つ誤算があったとすれば、オスマンは、石仮面の恐ろしさ『だけ』に、心を奪われていた点だろうか。 ゼロと揶揄された生徒は、オスマンが考えている以上に、誇り高かった。 人間であり続けようとする程に。 現時点で波紋を『技術』だと知る者 オールド・オスマン、ミス・ロングビル、シエスタ、キュルケ、タバサ ルイズが吸血鬼だと知る者 オールド・オスマン、ミス・ロングビル、ウェールズ・テューダー、アンリエッタ 石仮面でルイズが吸血鬼化したと知っている者 オールド・オスマン、ミス・ロングビル 『石仮面』と名乗る吸血鬼に、ルイズの肉体が乗っ取られたと思いこんでいる者 シエスタ、キュルケ、タバサ ルイズが正気だと知っている者 ミス・ロングビル、ウェールズ・テューダー、アンリエッタ To be continued → 27< 目次