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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Daily Life インデックスの乱入もといモーニングコールにより、慌ただしい朝が始まった。 「まったくとうまは。気を利かせて一晩帰らなかったらこれなんだよ」 「上条さんが悪いんですかね?」 インデックスはぷんぷんと頬を膨らませながらお茶を飲んでいる。 上条は朝ごはんの準備としてキッチンで仕事をしており、美琴はインデックスの横で未だにぽーっとしていた。 「みこともみことなんだよ。とうまと仲良くするのはいいけど、私の前であれはあんまりかも」 「っ!?わたた私も、そんなつもりはなかったって言うか、事故って言うか……」 「いいわけするんだね?」 「ごめんなさい」 美琴が諦めたように頭を下げるのを見て、インデックスは溜息をつく。 「で、とうま。今日はどうする予定なの?」 「どうって、飯食ったら空港行ってお前ら見送るんじゃねぇか」 上条はテキパキと手を動かして卵焼きを焼いている。 「その後なんだよ。みこととデートするんじゃないの?」 「デート、っつってもなんも考えてねぇ」 「ノープランなんだね」 昨日の夜に決まったところだからな、と上条は言いながら味噌汁を注いでいる。 「美琴、どっか行きたいところとかあるか?」 「んな、私にふるの?そこは男がエスコートするもんでしょうが」 美琴はビリビリと頭の周りに飛ばしながら叫ぶ。顔を赤くしていたり上条にも分かるくらいに照れていた。 「行きたいところっつてもなぁ……思いつかんのですよ」 「アンタが……ど………いっん」 「はぁ?そんな小せぇ声じゃ聞こえねぇよ」 「アンタが……当麻が行きたい所なら、どこでも、いい」 美琴は上条に背を向けると、ぶつぶつと何かを呟いてる。隣にいるインデックスは勝手にしてくれとでも言いたげな顔だ。 「………んー。と言われましても、上条さんは寧ろ家でゆっくりしていたいと言いますか何と言いますか…」 上条が卵焼きの乗った皿を運んで行くと、美琴は肩を落としてブルーになっており、インデックスはその肩をぽんぽんと叩いている。 「あれ、美琴?インデックス?どうした?」 どうしてそんなにブルーなんですか、と上条が言うと2人は大きく溜息をつく。インデックスにいたってはやれやれと首をふっている。 「これからも苦労しそうだね、みこと」 「私、選ぶ相手間違ったかな………」 「悩みができたらいつでもで連絡していいから」 「ありがとう、インデックス」 2人はひしっと抱き合う。上条はガラステーブルに朝ごはんを用意して固まっていた。 「お前ら、本当に仲良くなったよな。つか、そもそもどうやって仲良くなったんだよ?」 「ん?それは、ね」 そう言うと、インデックスはぽつぽつと語り始めた。 2人の馴れ初めは、美琴が上条宅に通う事になった2回目の月曜日である。 女同士で話があると言って上条を部屋から追い出し、ガラステーブルで向き合って話し合ったのだったのだ。 「ねぇ、短髪。短髪ととうまはどういう関係なの?」 「それはコッチのセリフよ。アンタこそあの馬鹿とどういう関係なのよ?」 「私はとうまに助けてもらって、それからここで住ませてもらってるんだよ」 「なんだ、アンタも助けてもらったってやつか」 美琴は上条の相変わらずの部分に呆れて肩をすくめる。美琴の言葉にインデックスも察したようで同じような顔をしていた。 「そういう短髪もとうまに助けてもらった人?」 「そうなるわね。頼んでもないのに首を突っ込んできて一方的に助けてもらった感じかな」 「むぅ。やっぱりとうまはとうまなんだね」 「そ、アイツは誰にでもあんな奴なのよ」 2人はさっき外に追い出した上条の性格を思い出し、もう一度溜息をつく。全く同じタイミングに出た溜息に2人は見つめあう。 「ぷっ、はははっ……アンタも大変よね」 「あはははっ……短髪も苦労してるんだね」 あの馬鹿のせいよね、と言いながら2人は笑いあう。同じ苦労を知る者として通じる部分があったのだろう。 「で、さ……1つ聞いてもいい?」 「なにかな、短髪」 「アンタも、その………なんていうかな……」 美琴は目線を合わせないまでも、チラチラとインデックスを見る。 「短髪、言いたいことはハッキリ言わないと分からないんだよ」 「そうね………」 美琴は大きく深呼吸をすると、両頬を手で叩く。 「アンタも、アイツの事、好きなの?」 「………うん」 「そっか………」 「短髪も?」 「………うん」 最初のトゲトゲした空気から一転、恋する乙女2人によるむず痒い空気が部屋に広がっていた。 「私たちは、ライバルってやつなんだね」 「そうね、恋敵ともいうわね」 「負けないんだよ」 「もちろん。私だってそう簡単に譲るつもりはないわ」 インデックスは小さな両手をぐっと握りしめ、美琴は両腕を組むとふんっと鼻を鳴らす。 「じゃぁ、仲良くしないとだね」 「はぁ?」 インデックスは右手をスッと出すと美琴を見る。握手を求めているようだ。 「……ライバルじゃないの?」 「ライバルは友達になるもんなんだよ」 インデックスは可愛らしく笑うと、無理矢理に美琴の手を取って握手をする。 「アンタに教えられるとはね。私もまだまだだわ……………でも、友達でも容赦はしないわよ?」 「望むところなんだよ。恨みっこはなしだからね」 美琴はインデックスの手を握り返すと、目の前で微笑むシスターに笑い返す。 「じゃぁ、まずは名前で呼んでよ。短髪じゃなくてさ………美琴、って」 「わかったよ、みこと。私の事もインデックスって呼ぶんだよ」 「んっ、よろしくね、インデックス!」 「こちらこそなんだよ」 「なるほど、そんなことがあったんですね」 「結局、私は負けちゃったけどね。だから、とうま、みことを泣かせたら許さないんだよ」 「はいはい、わかってますよー。上条さんは、すでに1万人近くと同じ約束してます」 3人は上条の用意した朝食を食べ終えて空港に向かう準備をしている。インデックスの持ち物はあまりないため、それほどバタバタすることもない。 「みこと、元気ないね。どうしたの?」 「んー、アンタと仲良くなれてあんまり経ってないのにもうお別れか、と思ってさ」 「むむむ。そう言われるとなんか急に寂しくなってきたんだよ」 インデックスは荷造りの手を休めてぺたんと座りこむ。 「このベランダでとうまと出会ってから……まだ半年くらいなんだよね」 色んな事があったからもっと長く感じるんだよ、と振り返る。本当に色んなことがありすぎた。 「毎回毎回、とうまは無茶するし、私を頼ってくれないし。心配もいっぱいしたんだよ!」 「それに関しては言い訳のしようもねぇ……」 インデックスに睨まれ、上条は頭を掻く。美琴はそんな2人を見ると微笑ましいような、羨ましいような不思議な気分になった。 「ほんと、アンタら仲いいわね。ちょっと妬けるわ」 「むー。それは私へのあてつけかもしれないんだよ」 インデックスは頬を膨らませながら美琴の背中をぽかぽかと叩く。 「ごめんごめんっ、そんなつもりじゃないって」 いたいいたい。もんどうむようなんだよ。と仲良し姉妹のようにじゃれあう2人を見て、上条は頬を緩ませた。 「なんかさ、俺は家族で過ごした記憶ってのが無いわけだけど……」 上条は呟く。『竜王の殺息』によって失った、家族との記憶。それは上条にとって想像すらできない。 「こんな感じなんかな、って思うんだよな。お前らを見てると仲良しの妹2人を見る兄貴みたいな気分だ」 微笑ましいものを見る目をしている上条に、じゃれあっていた2人は白い目を送る。 「な、なんだよ、その目は」 「………アンタが兄貴ってのもなんだわね」 「ちょっと頼りないかも」 「あ、あんまりだ………」 上条はずーんと肩を落とし、いじいじと床にのの字を書く。 (ちょっと良い事言ったつもりだったのに………不幸だ) 「ねぇ、とうま。私にも家族っていうのがどんなのか分からないけどね」 インデックスは上条の隣まで来ると、ちょこんと座る。 「それでも、とうまのことは家族だと思ってるよ。お兄ちゃんとは呼べないけどね」 インデックスは悪戯っぽく舌を出すと、荷造りに戻っていった。 「じゃぁ、私とも家族になるわね。インデックス」 美琴は頬を染めつつ、荷造りをするインデックスの背に呼び掛ける。インデックスは『友達じゃなくて?』とかいた顔だけ美琴に向ける。 「そそそ、そりゃ、あれよ………わたっ、私と、当麻が……けけ結婚すればそう、なるでしょうよ」 「…………」 「…………」 顔を真っ赤にしている美琴を、2人の無表情な視線が突き刺さる。美琴の顔はその間もどんどんと赤くなっていく。 「み、美琴?今のはプロポーズでせうか?」 「こんなに惚気るなんて、とうまよりもみことの方が厄介かもしれないんだよ」 「だぁぁぁぁっ!!今のは忘れなさい!!」 顔を真っ赤にした美琴が帯電を始める。上条はその頭に右手を置き、インデックスに荷造りが済んだことを確認する。 「あとはスフィンクスを持つだけだよ」 「じゃぁ、そろそろ行きますか。美琴、ビリビリしてねぇでキャリーバック持ってくれ。」 上条は腰を上げると、インデックスの荷物を持ち玄関に向かう。顔を赤くしたままの美琴が持っているネコ用キャリーバックの主であるスフィンクスはインデックスの手の中だ。 「ここに来るのも最後かな?」 「何言ってんだ、いつでも遊びに帰ってこい」 「そうよ。私もアンタと一緒に遊んでみたいしね」 「うん。ありがとう、とうま、みこと」 3人は玄関を出ると仲良く空港に向かう。本当の家族のように。 第23学区。学園都市の空港がある学区だ。 上条たちはその空港で出発時間まで待っているところだ。 「搭乗手続きも終わったし、あとはのんびり待ってるだけだな」 「そうねー、アンタ、他の人には挨拶しなくていいの?」 飛行機の見える待合室の椅子に上条と美琴は隣り合って座っている。インデックスは神裂らとお土産を物色中だ。 「挨拶って言ってもな……ずっと一緒だったインデックスは別として、他の奴らは有事でしかあってねぇし」 「ふーん。アンタのことだから仲の良い女の子だらけかと思ってたけど」 「上条さんをどんな人間だと思ってるんですか?」 「別に、なんでもないわ」 美琴は上条の鈍感さに呆れ、なんとなく目線を背ける。いつか見た二重まぶたの少女がこっちを見ている。 「ねぇ、当麻。あの子、ほっといていいの?」 「あん?…………五和か、どうしたんだろ」 こっちきたらいいのに、と呟く上条に、美琴はもう何度目かわからない溜息をつく。 (この鈍感さは、もはや罪ね。苦労しそうだわ) 美琴はもう1度こっちを窺っている少女に目を向ける。ちらちらと上条と美琴に向けている顔には色んな感情が見て取れた。 美琴は上条の手を取って立たせると、キョトンとしている上条の背中をパシンと叩く。 「いってぇな、いきなりなんだってんだよ?」 「行ってあげなさい」 「で、でもよ……お前を置いてくわけは……」 「いいから。行って、話を聞いてあげなさい」 上条はしぶしぶとした顔で五和の方へと歩いて行く。美琴はもう一度溜息をついた。 (なんで私がフォローしなきゃいけないのよ) 美琴は上条が自分を気にしてくれていた事に喜びながら、何かを話している2人を見る。 頬を染めながら何かを話している少女。その目は明らかに恋する乙女のそれだ。 五和は傍から見ても一発で分かるような初心な反応を示しているのに、上条は気にする様子もない。 美琴が頬杖をつきながら見ていると、走り回っていた子供が上条にぶつかった。子供は特に気にする様子もなく走り去ったが、問題はぶつかられた上条である。 上条の顔が五和の特大オレンジに突っ込んでいた。いつかも見たような光景だ。 (あの、馬鹿っ) 自分でも帯電しているのがわかる。雷撃の槍をぶっ放しそうになるのを必死に堪える。近くにいた人がびっくりしていた。 慌てて離れて謝り倒す上条に、顔を真っ赤にした五和はぶんぶんと首を振っていた。 (あーあ、あんなに鼻の下を伸ばして……やっぱり大きい方がいいのかしら) 美琴は自分の胸を見てボリュームの少なさに落胆する。 (ちょっと癪だけど、聞いてみようかしら) 自分の母のプロポーションを思い出し、相談してみようかと考える。 そんなことをすれば『そんなの上条くんに揉んでもらえばいいのよ。美琴ちゃんがお願いすれば聞いてくれるって』とか言うに決まっている。 (まぁ、私としては……別にアイツに揉まれるのは……って何考えてんのよ) 美琴は妄想で顔を真っ赤にした。実はそんな事件は今日中に起こりうるんじゃないか、とかも思っていたりする。 因みに、この胸のコンプレックスを解消しようと、美琴は色々と努力を積んでいる。 某風紀委員の先輩の飲んでいる牛乳も飲んでみたし、某警備員みたいに肉まんを沢山食べてみたりもした。 半年前と比べたら少しは大きくなった気もしたが、その分体重も増えた。減量を試みると真っ先に胸が犠牲になったりもした。 自分で胸を触ってみる。オレンジみたいな大きさのは触ったことが無いが、自分のみたいに可愛らしい感触ではないだろう。 (あいつも大きいのがいいのかな) ほぅ、と溜息をつく。そういえば、上条の周りには胸の大きい人が多い気がする。 「お前、なにやってんだ?」 「にょわああああああああぁぁっ!?」 いつの間にか上条が隣に戻ってきていた。美琴は驚きのあまり、さっき我慢した雷撃を打ちこむ。もちろん打ち消されてしまうのだが。 「アアアアアアアアアアンタ、いつのまにぃぃぃ!?」 「いや、戻ってきたら美琴が自分の胸見て溜息ついてたとこで戻ってきたんだけど……見られたらまずい事でもしてたのか?」 目を丸くしたまま困り顔の上条は美琴の隣に座る。美琴は『うわぁぁぁ』とか言いながら頭を抱えている。 そんな様子を見て、上条は首を傾げるしかできなかった。 「あー、美琴さん?大丈夫でせうか?」 「…………」 「美琴さん?」 美琴は頭を抱えたまま固まっている。上条はどうしたもんか、腕を組んで悩む。 「………………ねぇ、当麻。1つ、聞いていい?」 「なんだよ?」 「当麻は、胸が大きい方が好き?」 上条はぶぅっ、と吹き出し一気に顔を赤くする。お茶を飲んでいなくて良かった、と上条は思った。 「んなっ、いきなりなんだ?どっから沸いた疑問だ、そりゃ?」 「…………」 美琴は答えない。答えられない、と言った方が正しいのか、きゅっと口を閉めて上条を見ている。 「………美琴?」 「……………」 何も答えない美琴の両頬に手をやり、上条はむにぃと引っ張る。 「っ!?にゃにふんにょよ」 「くっだらねぇ事で悩んでんじゃねぇよ」 上条は両手を離すと、今度は右手で美琴の頭をわしゃわしゃと撫でる。 「俺は御坂美琴が大好きだって言ったじゃねぇか。それじゃダメなんかよ?」 「………」 「そりゃ、あれですよ。上条さんも年頃の男の子ですから女の子のそういう部分に興味が無いわけではないです。むしろアリアリですけどね」 「………」 「でも、そんなもん全部無視して、俺は美琴が好きなんだよ。むしろ、美琴の胸が好きっ!?」 全てを言いきる前に、美琴の拳が上条の胸に突き刺さる。上条はいってぇと言いながら微笑んでいた。 「元気でたかよ?」 「………ばか」 美琴は頭を撫でられながら、どこか満足そうに微笑み返す。 上条はそんな美琴から手を離すと腕を組んでニヤニヤとした顔で美琴を見る。 「ったく、美琴せんせーもそんなこと気にするんですねぇ」 上条の手が離れて少し名残惜しそうな美琴はほんのりと涙を浮かべている。ぷぅと膨れている表情も可愛くて仕方がない。 「アンタが悪いのよ」 「俺が?」 「アンタがあの子の胸に飛び込んでニヤニヤしてるから悪いんでしょーがっ!!」 ビリビリィ、と至近距離で電撃を飛ばされ、上条は慌てて右手をかざす。 「いきなりはやめてくれ、ほんと。間に合わなかったら痺れるんですよ?」 「ふんっ、アンタの行い次第ね。で、さっきの話はなんだったのよ?」 美琴はプイと顔を背ける。相変わらず素直になれない美琴であるが、実のところ上条が五和と何を話していたのか気になって仕方なかったのだ。 「別に大した話はしてねぇよ」 「嘘ね。どうせまた告白でもされたんでしょ?」 「な、なんでわかったでせうか?」 上条は『なんだってぇぇっ』くらいに大げさに驚く。 (ほんと、なんでここまで鈍感なのかしら。見てたら誰でもわかるでしょ) ネタでやってるんじゃないかと思うくらいの鈍感さに呆れを通り越して物も言えない。 「で、なんて答えたのよ?」 「言わなきゃいけませんか?」 美琴は何も言わずにじっと睨みつける。上条は暫く悩んだ後、諦めたように口を開く。 「まず初めに『あの人とはどのような関係ですか?』って聞かれてな。恋人だ、って答えた」 「うん」 「で、『それでも私があなたを好きなのは変わりません』って言われちまってよ」 「そんで鼻の下伸ばしてたの?」 「馬鹿野郎、んなわけねぇだろ。気持ちは嬉しいけど、俺は美琴のことしか想えねぇって言ったよ、ハッキリな」 上条は顔を背ける。珍しく耳まで赤くなっている。 (本人前にして言う様なセリフじゃねぇぞ) 本人を前にしなくても十二分に恥ずかしいセリフなのだが、美琴中毒気味の上条は気付きもしない。 「ふ、ふ」 「ふ?」 「ふにゃぁぁぁ」 「またこの展開か、こんにゃろぉぉぉぉぉっ!!」 ぴんぽんぱんぽーん、と小気味いい音が館内に響く。 『11時45分発、イギリス行きの搭乗時刻となりました。お忘れ物の内容にご搭乗お願いします』 アナウンスが流れる。とうとう時間となった。 「とうま、みこと、それじゃぁ一旦お別れなんだよ」 「あぁ、あんまし迷惑かけんじゃねぇぞ」 「イギリスに行っても元気でね」 搭乗ゲートの前で上条はインデックスに荷物を渡す。 「インデックス、私が持ちましょうか?」 「ううん、自分で持つよ。ありがとうね、かおり」 そうですか、と神裂は自分の荷物を抱える。相変わらずの格好であるが、『七天七刀』を袋に入れてあるだけマシだろうか。 「神裂も元気でな。あんまりエロい格好で出歩くなよ、お前なら襲われても負けねぇとは思うが……」 「んなっ!?べ、別にエロい格好などしていません!最後に言うのがそれというのはあんまりではないですか、上条当麻」 「はははっ、気にすんなよ。俺としては最後ってつもりもねぇし。会えなくなるわけじゃねぇだろう?」 それはそうですが、と歯切れの悪い神裂に後ろから建宮がボソボソと何かを言っている。 みるみる内に神裂が赤くなり、聖人の力をフルに利用した拳が建宮の顔面に突き刺さる。ものすごい勢いでゲートをくぐり、搭乗タラップに飛んで行った。 「ねぇ、インデックス、あの人大丈夫なの?」 「いつものことだから気にしなくてもいいんだよ。むしろ、かおりの力に驚かないみことが凄いと思う」 「ツッコミどころが多すぎるわ、アンタら」 世界は広いわね、と美琴は目を丸くしてぷんぷんとゲートをくぐっていく神裂を見ていた。 天草式のメンバーもゲートをくぐり終え、残るはインデックスとステイルのみである。 「ステイル、インデックスの世話、しっかり頼むぜ」 「まったく君はこの子を馬鹿にしすぎじゃないかな?1人でも色々と出来るようになったんだろう?」 「そうだよ。掃除もご飯もだいぶ出来るようになったよ」 あとは洗濯だけだもん、とインデックスが膨れる。 「そうだな、悪い。インデックス、ステイルの世話、しっかり頼むぜ」 「任せるんだよ!」 「っ!インデックス、君まで僕を馬鹿にするのか?」 ステイルは生活能力が無いと馬鹿にされた事を憤る。まさかインデックスにまで馬鹿にされるとは思わなかったのであろう、心なしか悲しそうだ。 「ステイル、全部私が教えてあげるんだよ。洗濯は修業しなきゃだけどね」 「……むむむ」 インデックスににっこりと笑いかけられ、ステイルは何も言い返せずに搭乗ゲートをくぐって行った。 「もう、お別れだね」 「インデックス、いつでも帰ってきなさいよ」 美琴はインデックスの手を握るとぶんぶんと振る。強がった口調とは裏腹に2人の目には涙が浮かんでいる。 「さっきも神裂に言ったけどよ、会えなくなるわけじゃねぇんだし。お前が困った時はいつでも飛んで行ってやるからよ」 学園都市の超音速旅客機に乗れば一瞬だしな、と上条は続ける。 「そんときは私も駆けつけてあげるから」 うん、とインデックスは頷く。搭乗タラップから神裂の『もう時間ですよ』という声が聞こえてくる。 「じゃあね、とうま、みこと。バイバイ」 「うん。バイバイ、インデックス」 「………違う」 「とうま?」 「どしたの、当麻?」 インデックスと美琴は心配そうに上条の顔を覗き込む。 「違うぞ、インデックス。ここは『行ってきます』って言うところだろ」 家族が出かけるんだからな、と上条は言う。キョトンとしたインデックスの横で美琴はくすっと笑うと、上条の言葉に続ける。 「そうね。アンタはちょっとお出かけするだけなんだから、私も言い直さないとね。行ってらっしゃい、インデックス」 「……今度帰ってきたら、『ただいま』って言うんだぞ!行ってらっしゃい、インデックス」 上条と美琴は、涙を浮かべながらインデックスの手を握る。インデックスはそれに応じるかのように微笑んだ。 「うん。行ってきます、みこと、とうま。結婚式には呼んでくれないと怒るんだよ!」 ぎゅっと手を握り返すと、インデックスは搭乗口に駆けて行った。 上条と美琴は空港の展望ブリッジにいる。インデックス達を乗せた旅客機はその高度をあげ、どんどんと小さくなっていく。 「行っちゃった、ね」 「あぁ」 美琴と上条は小さくなる機影を眺めている。さっきまで目の前にあった旅客機は既に豆粒のサイズになっている。 「寂しくなるわね」 「そうだな」 機影が完全に見えなくなり、青い空には雲だけが浮かんでいる。 「さ、美琴せんせー。しんみりとした空気もここまでだ!デート行くぞ―」 「ちょっと、アンタ!そんな大声で言わないでよ」 行くぞ―、と上条は美琴の腕を掴むとずんずんと歩いて行く。 美琴はそんな積極的というか、自暴自棄にも見える上条の隣まで追いつくと、その腕に思いっきり抱きつく。 「っっ!?」 「あらぁ?そんなに驚いてどうしたのかなぁ?」 美琴は流し目で上条を見る。上条としては腕にあたる柔らかい感触にドギマギしているところだ。 「みみみ、美琴さん?色々と当たってるんですど?」 「当麻は大好きなんでしょ?私の胸」 ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。上条はちくしょう、と歯噛みしなるべく腕を意識しないように歩く。 傍から見れば初々しいバカップルにしか見えず、クリスマスでもなければ呪い殺されそうだ。 「で、結局、何処に行くのよ?」 「あー、どうすっかなぁ……」 上条は何気なく観光案内の掲示板を見る。外部からやってきた人用に掲示されている物だが、中の人が見ても困ることはない。 むしろ、行き先に困っている上条達にはおあつらえ向きと言ったところか。 「んー、どうせならクリスマス限定、みたいなところがいいよな」 「そうね……夕食も美味しいとこ予約は、間に合わないかなぁ」 「電話するだけしてみりゃいいだろ」 上条はレストランリストの紙を取ると美琴に手渡す。迷うには十分の量がリストアップされていた。 「んー、よし。こことかいい感じだな」 上条は掲示されたポスターを見ながらデートプランを考えると、レストランリストに目を通している美琴を促し空港を出る。 「取りあえず、夜まではその辺を歩くか。クリスマスプレゼントも用意してねぇし、見に行くか」 そうね、と言い美琴は上条の右腕に抱きつく。 「でも、行くとこ決まったんじゃないの?」 「夜中のイベントなんですよー。晩飯食ってからだな」 「私には門限あること忘れてない?」 「守る気もねぇんだろ?」 上条は美琴が見ていたリストを眺めながら駅を目指す。別の学区に移動しなければ、23学区には空港くらいしかない。 「あーあ、優秀な美琴ちゃんが当麻のせいで悪い子になりますよー」 「じゃぁ、デートはやめて帰るか?送ってくぞ?」 なんなら一緒に寮監さんに謝ってやる、と上条が言うのを聞き流し、美琴は上条に身体を寄せる。 「ううん。言ったでしょ、インデックスが羨むくらい思いっきり楽しんであげましょ」 美琴は満面の笑みを浮かべると、上条の腕を引くように駅へと向かった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Daily Life
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VR奮闘記 1 がやって来る……トラウマになりそうなイベントだな」美琴「運営はナニ考えてんだか、変なイベントが多すぎるのよ、バトルフィールドでは天使襲来とかやってたらしいし」上条「それは聞いたことある、確か大量の天使が襲って来るのを撃退するイベントだったとか、幸か不幸か上条さんはそんなサプライズイベントに行合わねーけど」美琴「アンタもわかったところで、これで失礼するわ」上条「まあ待てよ、それで御坂の今日のその衣装は、やっぱりイベントの強制なんだな?どんなイベントだよ御坂?」美琴「うっ、その、仮装でバトル」上条「わざわざ仮装でバトル?そういや格闘トーナメントがあるとかなんとかスケジュールにあったな。仮装とは書いてなかったから御坂だけその条件?」美琴「そうみたいね」上条「仮装つーと、なんの仮装なんだ?」美琴「『不思議の国のアリス』のアリスらしいけど、はあ」上条「アリス?それにしてはスカートが短いんでねーの?」美琴「それは言わないで!」上条「格闘トーナメントだから、動き易くするため」美琴「言うなっちゅうの!えっ、あああ遅かったか……」上条「でもアレ、タッグマッチじゃなかったか?」美琴「は~、そうよ、知り合いと組んでのタッグマッチ」 上条「なら相方がいなければ参加しないで済むんだろ?」美琴「もう遅いわ」上条「嫌そうにしてんのに、もう申し込み済ませちまってたのかよ?」美琴「違うわ、強制って言ったでしょ、アンタ自分のを確認してみなさい」上条「えっ、えーとこれだろ、はあっ!?おいおいおいおいおい、自分から申し込みしたことも承諾したこともねえのに何で参加する事になってるんだよ、俺が!?」美琴「だから強制参加」上条「ちょ、ちょっと待て俺が強制参加!?」美琴「私が知り合いとね、一定時間一緒にいるとその人と強制的にタッグを組むようになってるの、うん、サプライズイベント初参加おめでとう」上条「計ったな!!」美琴「人聞きの悪いこと言わないでよ!声かけてきたのはアンタの方じゃない!私は参加したくなくて、知り合いに会うのを避けてたのよ!!」上条「そ、それはそうでも最初に言ってくれたら良かったじゃねーかよ!解除する方法はないのか、これ?」美琴「無理、逃げまわっても時間がくれば強制転移のうえにログアウトもさせてくれないわ」上条「ログアウトもさせてくれない?げっ、ログアウトの欄が消えてやがる、なんてSAO……不幸だ」美琴「私こそよ、こんな格好で」上条「可愛い服で戦うのが嫌なのか?」美琴「か、可愛い???」上条「服がな」美琴「…………ふっ、そういうヤツよアンタは。べ、別に服が可愛いのは問題じゃないのよ」上条「なら、そのスカートが短いのが、でも常盤台の制服と一緒ぐらいだろ」美琴「一緒じゃない!」上条「見た目には違いがあるように見えねえけど?」美琴「違うの!」上条「どこが違うんだよ?」美琴「無いの!」上条「無いって……まさか、短パン?」美琴「ぐぐぐぐぐっぐぐぐぬぬぬぬ」上条「そっか、履いてないのか、短パン……」美琴「ナニ、感慨深く言ってんじゃー!!」上条「おこんなよ御坂」美琴「デリカシーが無いのかアンタには!」上条「心配すんな御坂、任せろ」美琴「何が任せろよ!衆人環視のもとパンチラ晒せっちゅうのか!うううううううううっうわあーん」上条「だから大丈夫だ、俺が御坂のパンチラを晒させたりはさせねー!」美琴「え」上条「俺が守る」美琴「え」上条「ここが仮想空間だからって運営の思惑通りにしていいって法は無いんだ」美琴「え」上条「そんなのくそくらえだ!それがパンチラを晒す運命、神のごとき運営の意図だとしても立ち向かわなきゃな!」美琴「え」上条「俺は御坂の世界を守るってあの魔術師に約束したんだ、こんな人が作った世界で御坂のパンチラをいいようにされてたまるかってんだ!」美琴「え」上条「待ってたんだろ?俺たちが俺たちでいられる世界を、パンチラを晒さないで済む世界を!さあ始めようぜ、運営の意図を挫いて俺と御坂の平和を取り戻すんだ」美琴「パンチラ、パンチラって、それを平和を取り戻すってそんな大層なもんじゃ」上条「HAPPY ENDを目指そうぜ御坂」美琴「HAPPY ENDって格ゲーでどうやればなるのよううううううううううううううう!!!!!?」
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記憶と夢の狭間で… ふと気がつけば、上条当麻は見覚えのある公園に立っていた。そこでふいに声をかけられた。「とうま、おなかへったんだよ」「私だって、アンタの力になれる!」「カミやん、俺って実は、天邪鬼なんだぜぃ」「上条当麻、君と日和ってやるつもりはない」振り返ってみると、大勢の人がいた。かつて、守るために戦った少女が。かつて、大切なものを守るために必死になっていた少女が。かつて、自分を犠牲にするように見せて、ピンピンしていたクラスメイト。かつて、戦った、そして共に協力した、タバコをふかした神父が。上条が記憶を失ってから、関わってきた人たちがそこにいた。学園都市にいるはずのない、外にいるはずの人たちも、そこにいた。上条は彼らと、なんてことないような会話をしていた。そこで、異変に気づいた。視界の片隅で、何かが崩れ始めた。町並みが。公園の木々が。地面が。そこにいたはずの人たちが。何もない黒い空間に塗りつぶされていくように、上条の前から消えていった。そして、上条もその黒いものに飲み込まれた。目を開けたら、声をかけられた。「とうま、どうしたの?」白い修道服を着たシスターが言った。「さっきから声かけてるのに、無視してんじゃないわよ」茶色い髪の、常盤台中学の制服を着た少女が言った。「どうしたカミやん、さっきから様子が変だぜぃ」金髪にサングラス、アロハシャツを着た男が言った。「どうしたんだ?能力者」赤髪の、身長2メートルほどの神父が言った。上条にはわからなかった。声をかけてきた人がだれなのか、わからなかった。ここはどこで、自分は誰なのか、わからなかった。周りにいる人たちが、誰なのか。自分を知っているのか、何も、わからなかった。まるで自分の中から何かが抜け落ちたかのように。心の中にぽっかりと穴が開いたかのように、もやもやとしたものだけがのこっていた。「もしかして、とうま、覚えてないの?」白い修道服の少女、インデックスがなきそうな表情で言った。「アンタ…まさか…また、なの?本当に…何も覚えていないの?」常盤台中学の制服を着た少女、御坂美琴が、いつかの絶望したような表情で、泣くのを必死に堪えているような、そんな表情で言う。とっさに上条は、言った。また言ってしまった。「忘れるわけないだろ?変なこと心配してんじゃねぇよ」しかし、そんな状況にもかかわらず。再び真っ暗な闇の中にいる自分に気がついた。声を出しても、誰も答えてくれない、何もない、そんな場所だった。そこに、一点の光が見えた。暗闇から導き、引き出してくれるような、暖かい光だった。おなじみの第7学区の病院のいつもの病室で、上条当麻は目を覚ました。すごく、嫌な汗で、体中がびっしょりとぬれていた。ツンツン頭の少年、上条当麻は記憶喪失だ。記憶を失った原因は、覚えていないし、思い出すこともないだろうと思っていた。やけに重たい体を起こすと、手が握られていることに気がつく。病院のベットの横に、備え付けのパイプ椅子に座る少女。御坂美琴はなぜか、上条の手を握ったまま眠っていた。その目に一筋の涙の跡を残したまま。状況がいまいち理解できなかった上条は、あたりを見渡してみた。人が動くことに気がついたのか、美琴も目を覚ました。「…アンタ、大丈夫なの?ずっとうなされていたような感じだったんだけど…」不安そうに、心配そうに、声をかけてきた。「よく覚えてないけど、変な夢を見たんだ。なんであんな夢を見たんだろう…」上条は、かすかに震えていた。その手を、美琴は強く握り締める。「どんな夢を見たかは知らないけどさ。アンタはたまには人を頼りなさいよね。 アンタの力になりたい人が、身近にいるって事をいい加減覚えなさいよ」手を強く握り締められた見た上条の震えは、ゆっくりと収まっていった。そして、ぽつり、ぽつりと、上条は口を開く。「俺の周りにはみんながいたんだ。そしたら突然、世界が崩れ始めた。 気がつくと真っ暗な空間になっていった。そんな中に俺は一人だけ立っていたんだ。 急に明るくなったと思ったら、さっきまで回りにいた人たちがいたんだ。 だけど、その人のことが、誰なのかわからなかった。 思い出そうとして、声にだそうとしたけど、できなかった。大切なものが手の中から滑り落ちたみたいな感じでさ」徐々に思い出したのか、上条は夢での出来事を説明した。そして再び、震え始めた。見えない恐怖に震えている子供のように。美琴は、黙って話を聞いていた。そこで一つ、仮説を立てる。(コイツは一度記憶を失っている。何も無いところからいろんな人に出会っていった…。だけど…だけどもし…どこかで、再び記憶を失うことを恐れている部分があるとしたら?)その仮説に、美琴自身が納得してしまいそうだった。一度あった不幸な出来事が、その1度で終わるならいいが、実際繰り返されることがある。どんなに努力しても、とめようとしても、止まらなかったあの実験のように。美琴なりに上条の不安を読み取った彼女は、ゆっくりと上条に近づき、やさしく、包み込むように抱きしめた。「大丈夫。大丈夫だから。もし、アンタがもし、また何かを忘れてしまうようなことがあったとしても、私はここにいるから。 アンタがどうなろうと、私はアンタのそばにいてあげるから。どんなことがあっても、アンタのことを守ってあげるから。だから、安心しなさい」やさしく告げるように、美琴は言った。美琴の胸の中で、上条は涙を流し、眠っていた。安心しきったような表情で、眠っていた。「まったく、いつも人に心配ばっかりかけて…たまには周りがどれだけ心配しているか、理解しなさいよ。ばか当麻」眠る上条に、頬を赤く染めながら、尊はつぶやいた。とある日の、とある二人の、病院での出来事。
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小ネタ 上条「よう御坂。何してんだ」美琴「天気もいいし、ちょろっとブラブラしてただけ」上条「平和だな。こんな日が長く続いて欲しいもんだ」美琴「アンタこそどうしたの。その荷物、野球の道具よね」上条「ああ、こないだ授業で使った学校の備品。無断で借りてきちまった」美琴「ふうん。草野球でもやるつもり?」上条「試合は人数が揃わねぇよ。ただのキャッチボールだな」美琴「壁を相手に?」上条「カミジョーさんにも友人は居ます。約束の時間は過ぎてんのに、まだ来ねぇけど」美琴「だったら、暇潰しに少し付き合ってあげる」上条「おいおい。ちゃんと投げれんのか?」美琴「私の運動神経、舐めるんじゃないわよ。すぐに覚えてみせるわ」上条「要は未経験なんですね。本当に大丈夫かよ」美琴「ぐだぐだうるさい。それとも電撃の的になりたい?」上条「デッドボールは結構です! まあいいか。川原に降りるぞ、汚れても知らねぇからな」美琴「グローブ借りるわね。――でかっ」上条「そりゃファーストミットだ。こっちの方が合わねぇか?」美琴「あ、ぴったり。これって子ども用?」上条「寮の押入れから出てきたんだ。ガキの頃に使ってたんじゃねーかな」美琴「アンタの……。そっか、記憶が」上条「年季が入ってるから、ちょっと汚ねぇけど」美琴「ううん。気にしないわよそんなの」上条「いきなり投げねぇで軽く準備運動しろよ」美琴「そっちもね!」美琴「死ねーっ!」上条「物騒な掛け声だな。その割に手投げだし、山なりじゃねーか」美琴「どうやるの?」上条「手首のスナップを利かせるんだよ。ほらこんな感じ」美琴「よし。死ねーっ!」上条「うん、まずはその声をやめような」美琴「なかなか上手くいかないわね……」上条「投げるのはともかく、しっかり捕球できてる。筋は悪くないぞ」美琴「手首を返して、こう!」上条「そう上達を急ぎなさんな。キャッチボールはのんびりやるのがいいんですよ」美琴「うー。じゃあ、しばらくこのまま続けて」上条「はいはい。疲れたら言ってくれよ」 上条「♪ 夏の朝にキャッチボールを」美琴「何よ、その歌。とっくに秋だけど?」上条「古い流行歌だよ。今日の言いだしっぺに布教されて、気づいたら口ずさんでるんだよな」美琴「へえ。いい曲みたいね、誰かさんの音痴は置いて」上条「♪ 幸せになるのには別に誰の許可もいらない」美琴「アンタが歌うと切実に聴こえるわ」美琴「たまにはこんな風に身体を動かすのも悪くないわね」上条「俺は御坂とゆっくり話せて驚いてるよ。ボールを遣り取りしながらだと話題も弾むもんだな」美琴「会話はキャッチボールって喩えがあるわね。……普段の私は話にならないって皮肉?」上条「そんなんじゃねぇよ。動作と言葉のテンポが噛み合ってて、悪くねぇなってさ」美琴「別にいいけど。ところで野球の表現もかなり際どいわよね。盗む、刺す、殺すとか」上条「意図的に危険球を混ぜるのはやめてください。汗が冷たくなっちまう」上条「随分、上手くなってきたな。この短時間に大したもんだ」美琴「ふふん。少しは見直した?」上条「言ってる傍から暴投すんな! 投げ方が様になった分、取りに走るのキツいんだって」美琴「あっ、川! 落ちちゃう急いで!」上条「こなくそ、届け!」美琴「あ、あー! あと少しだったのに」上条「上手い具合に橋のたもとに引っかかってる。その辺に長い棒状のモノはないか」美琴「替えのボールは?」上条「一個しかねぇんだよ。よし、この枝で何とか。御坂は俺が落ちねぇように支えててくれ」美琴「もう前振りにしか聞こえないんだけど」上条「言うな! いいか、俺の手を離すなよ。絶対に離すんじゃねぇぞ」美琴「う、うん。さらっと恥ずかしい台詞……。手も繋いじゃってるし……」 ビリッ上条「――あのタイミングで漏電は勘弁してください。びしょ濡れじゃねーか」 フコウダ美琴「ご、ごめんなさい」上条「悪気はなかったみたいだし気にしてねぇよ。けどこれでお開きだな、ボールもねぇし」美琴「うん。……今日は楽しかった。風邪引かないでね」上条「そっちも身体を冷やすなよ。そうだ、御坂」美琴「なに?」上条「これやるよ」美琴「アンタが使ってたグローブ……」上条「いまの俺にはサイズが合わねぇし。お前もせっかく上達したからさ」美琴「あ、ありがと。大切にする」上条「じゃあな中島。今度も野球やろうぜ」美琴「またね磯野。晴れたら次の日曜日に」おわり
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大切なメガネ 1 ―とある高校の昼休み―「青ピ、この本でおすすめの子は誰にゃー?」「せやなー、やっぱりこのメガネっ娘とかええんちゃう?どうや?かみやん、この子とか可愛いと思うで?」「んー俺はこっちの巨乳の方が…」「おぉ!この吹寄似のメガネっ娘かにゃー!」「………」「あ…つっちー、かみやん…後ろ…」「「え?…あああああああああああああああああ!!!!!吹寄いつのまにィィィィ!?!?」」「お前達…本ッ当に死にたいようだな?」「「「すいません!すいません!許して下さいィィィィ!!!!」」」「問答無用!」バコン!バギン!ドズン!――――――――――――――――――――「あー痛てて…本当、吹寄は容赦ねぇなぁ…」ある秋の日の事、上条当麻は頭を擦りながら、いつものように補習を終わらせ、友人であり隣人でもある土御門と帰っていた。「本当にそうだにゃー、もっと手加減して欲しいぜよ」「あぁ、まったくだ」ゆっくりと歩いていると、土御門が何か思い出したように話し掛けて来た。「そうだ、かみやん、青ピに見せてもらった本の女の子は全員メガネ掛けてたよな?」「ん?あぁ、そうだな」「ふと思ったんだが、インデックスや常盤台の超電磁砲がメガネを掛けてたらなかなか良いと思うんだがどうにゃー?」上条は想像する。インデックスと美琴がメガネを掛けたらどうなるか。二人とも元が良いのでかなり似あうな、と思う。「確かにいいけどあの二人がメガネを掛けるときがあるのか?二人とも眼は良いだろうしな」「かみやん、最近は「おしゃれメガネ」なるモノがあるぜよ。これはあくまでも、ファッションの一つだから二人が掛けても問題ない」「へぇ、最近のファッションなんて上条さんは少しも知りませんからねぇ…」「ま、二人に会ったら言ってみたらどうにゃー?」「そうだなー」じゃ、俺は特売があるんで。と上条は土御門と別れていつものスーパーに向かっていた。「あ、アンタ!ちょっと待ちなさいよ!」上条は頭の中で今日買うものを考える。「待ちなさいってば!!!」(うーん…今日は卵一人1パックに牛乳一人2本…ちときついな…)「あぁ!もう待ちやがれっ!!!!」ビリビリッ!と美琴が上条に電撃の槍を投げる。上条はのわぁ!っと驚きながら右手で電撃を消す。「ちょ…御坂!あぶねぇだろ!本当マジで死ぬから!」「あ、アンタが悪いんでしょ!いつもいつも無視して!」「いつこの上条さんが無視したんですか!?まぁ、今は少し考え事してたけど!」「ほ、ほらやっぱり無視したんじゃない!ひどいわ!」「あぁ、もう!すいませんでした!なにかご用ですか!?」「え、あ、あの、その…えっと…」上条は目の前でさっきまであんなに怒ってた美琴が急にしおらしくなってるのを見て(腹でも痛くなったか?)などと思っていた。「ん?どうした?大丈夫か?具合悪いのか?」「だ、だ、大丈夫よ!元気100%よ!」「ならいいけど…で、どうしたんだ?俺に用があって声掛けたんだろ?」「え?あ、うん…あの、こ、これからスーパー行くんでしょ?わ、私も行ってあげる!」「お!本当か!?ありがと~御坂、恩に着るぜ!」上条は笑顔で美琴の両手を握り、ぶんぶんと手をふる。(わわわわわ!!手握られてる…!手握られてるぅ…!)美琴は顔を真っ赤に染めながら「う、うん。じゃ、行きましょ?」――――――――――――――――――――アリガトーゴザイマシタースーパーから出た二人はゆっくりと歩く。「いやー、大漁!大漁!、これも御坂さんのおかげです!」「この位だったら言ってくれればいつでも手伝うわよ?」「いえいえ、本当にありがとな!さてなんかお礼をしないとな…何がいい?」「え?お礼?別にいいわよ~、私が勝手にやったんだし」「でもな………ハッ!?」「ん?どうしたの?」お礼…プレゼント…(かみやん、最近は「おしゃれメガネ」なるモノがあるぜよ。)そうか、おしゃれメガネを御坂にプレゼントすればいいじゃねえか!「なぁ、御坂。お前メガネ掛けたら似会うんじゃね?」「え?メガネ?」「そう、メガネ。なんか最近おしゃれメガネが流行ってるって聞いてさ、お前なら似会うかなーと思って」「おしゃれメガネか~、学校でも掛けてた人何人かいたなぁ~って、あ、アンタが私にくれるの?」「あぁ!俺がお前に似会うメガネを選んでやるよ!」お前に似会うメガネを選んでやるよ!…メガネを選んでやるよ!…選んでやるよ!…かぁ~、と美琴は顔を真っ赤にしうろたえる。「え、え、ええ、ええええええええええええええええ!?!?!?」「え?嫌だった…か?」美琴の叫びに負の感情を感じ、しょんぼりする上条に対して美琴は思わずキュンとするが呼吸を整える。「つ、つまり、アンタが選んだメガネを、わ、私にくれるてこと?」「そうだ!異論はないな?!」「え、あ、うん、ない…」「よし!じゃ、明日買ってくるからな!楽しみにしておけよ!」「う、うん!」上条は美琴が持っていたスーパーの袋を奪うようにとると駆け足で帰って行った。一方、残された美琴は…?「ふにゃー」嬉し過ぎてへたれ込んだ。 大切なメガネ 2 ―上条家―「ふぅ…ただいまぁ」「おかえりー!とうま!ごはん♪ごはん♪」「おー、インデックスちょっとまっとけ~、今日は御坂が手伝ってくれたお陰で大漁だからな!」「えー?短髪に手伝ってもらったの?」「おいおい、今日のご飯が少し豪華になるんだぞ!その立役者たる、御坂をあまりけなすなよ。」「ぶぅー」上条は牛乳などを冷蔵庫に入れると早速米を研ぎ始める。「あ、とうまー?」「ん~?なにかね~?」「明日はお休みでしょ?朝からこもえと一緒に出かけてくるんだよ!夜には帰るよ!」「おー、わかったー、気つけろよー」上条は炊飯器のスイッチを押し、フライパンを出しながら考え始める。(明日は朝からインデックスがいないからゆっくり御坂に似会いそうなメガネを探しましょうかね)フフーン♪と鼻歌を歌いながら上条は明日の事を考えながらオムレツを作っていた。―――――――――――――――――――――同じころ常盤台―「お姉さまが道端で倒れてると通報が来た時、私はもうそれこそ音速で現場に駆け付けましわ」「うん…ごめんね黒子、心配掛けちゃって…」「いえ、お姉さまが私を頼りにしてくださるのは黒子にとって、非常に嬉しいことですわ」「ありがとう、黒子」美琴と黒子の部屋、先程まで美琴は道端で気絶してたが風紀委員である黒子によって保護された。一応黒子には、疲れがたまっているから、と言ったが本当は違う。本当は嬉しかったのだ。上条に何かプレゼントしてもらえるというのが。「さて、ではお姉さま、お先にシャワー失礼しますわね」「行ってらっしゃーい」黒子はイソイソとバスルームへ向かう。美琴はそれを見届けた後、ふぅ、と息を吐きベットに倒れる。(アイツ、どんなのくれるんだろう…)(貰うときどうしよう…こうやって…「あーらありがとう、でももっといい奴なかったのかしら?」…いや、これはまずいわね)(じゃあ「ありがと!当麻!ご褒美にキスして、ア、ゲ、ル!」あわわわわわわわ!こんなの!わ、私のキャラじゃないわ!で、でもキスはしたいかも……って、ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!)(お姉さまがベットの上でなんか悶えてますの…)早めにシャワーを浴びた黒子が見たものは、ベットの上で悶絶している美琴だった。―――――――――――――――――――――次の日―「行ってきまーす、とうまー」「おー、先生に迷惑掛けんなよ」朝、朝食を食べたインデックスを送り出すと早速上条は考え始める。美琴にはどんなメガネが似合うのか。(うーん…まず形から考えるか…?形は、そうだな…)上条は考える。(うーむ、むむむ…)「あー!もう、実物見た方が早い!きっと!」上条は適当に準備し部屋を飛びたす。向かう先は第7学区の「セブンスミスト」…――――――――――――――――――――「さて、メガネ屋さんは何処かな?」セブンスミストに着いた上条は案内図と睨めっこする。「メガネ屋さんはっと、3階か」エレベーターで3階の上がり、上条は店に入る。このメガネショップは、ファッション用の度が入ってないメガネも置いてある大規模な店のようだ。「えっと、おしゃれメガネ、おしゃれメガネっと…お、ここか」上条は手書きで書かれた「今流行りのおしゃれメガネコーナーはここです!あなたもどうですか?」と書かれてる看板を見つけそこに向かう。どうやらこの店では今、おしゃれメガネに力を入れてるのか特設コーナーまで設けている。「うーん、種類が多いな…」そこには形も色も全然違うメガネが多く飾られていた。横には「サイズ変更が必要な場合は、どうぞお気軽に係員までお申し付けください」それを見て上条は気付く「しまった!御坂の頭のサイズわかんねぇ…」少し上条は考えて…「うん、まぁ普通のサイズでいいだろう。多分」勝手に決めた上条は早速手前にあったメガネを手に取る。そのメガネは黒縁でよくありそうな四角い形をしたもの。「んー、御坂は四角より丸って感じだな…」そう言いながら上条は次に黒縁の丸みを帯びた四角のメガネを取る。「お捜し中のところ失礼しますお客様、どうゆうのをお探しでしょうか?」「ん?」上条が「このメガネ御坂が付けたらどんな感じかな―」と思っていると、後ろからスーツを着た銀縁メガネの若い男に声を掛けられた。どうやら店員のようだ。「え、えぇ、そうですね…中学生の女の子に似会いそうなのってありますか」「もしかして彼女さんへのプレゼントですか?」店員はニコニコ笑いながら言う。「い、いやぁ~、そうゆうのでは無いんですけど…」「ハハッ、失礼しました。中学生の女の子ですとそうですね…」店員は棚にあるメガネをジーっと見てから、ある一つのメガネを取った。「これなんてどうでしょうか?」店員がとったのは銀縁のメガネ。「うーん…それよりこっちの方がいいですかね…」上条が選んだのは、細い赤縁でレンズの形は楕円形のもの。上条はそのメガネを受け取ると頭の中で美琴がそのメガネを掛けてる姿を想像する。(うん、なかなかいいじゃないか!)「じゃ、これ下さい。サイズは普通でお願いします」「解りました。では保証書などの書類を書いて頂きたいのでこちらへ…」上条は指示された椅子に座ると手早く書き込む。名義は取りあえず上条自身にしておく。2,3分で書き終わり上条は店員に手渡す。「はい、ありがとうございます。」店員はその書類に何か書きこむと保証書を渡してきた。「ではこちらが保証書ですので大切に保管して置いて下さい。では包装紙がいくつか有りますが、どれに致しますか?」「うーん…じゃこれでお願いします。」上条が指したのは黄色でなにかの花をあしらったもの。「解りました。ではお先に代金を頂戴いたします。ケースなどの備品含めて4980円です」「はい」上条は代金を支払い包装が終わるまで待っていた。数分後…「大変お待たせしました。こちら商品でございます。ありがとうございました」「こちらこそ、ありがとうございました」上条は店員の見送りを受け、店を後にした。――――――――――――――――――――(さて…メガネ購入したし、御坂を呼びますか)上条はいつもの自販機がある公園にいた。プルルルル…プルルルル…プルルルル…プルルルル…(あれ?出ねぇな?取り込み中か?)上条は後10コールしても出なかったら夕方電話してみるかと思いながら美琴を待つプルルルル…ガチャ!「は、はい!み、みみみみ御坂ですけどぉ!?ちょっと黒子うるさい!」オネェザマー!ナンデスノ!トノガタデズノォー?!ウワァァイイァァァ!!!(ビリビリ!)「あ、御坂か?…つか今大丈夫か?無理だったら後で電話するけど」「あぁもう黒子黙れ!!あ、あああああ嫌!だいじゅ!じゃなくて大丈夫よ!うん!」アァーオネエンダバー!!(ドゴーン!)「なんか白井が断末魔あげてるが…まぁいいや、昨日メガネ買ってやるって言っただろ?選んできたからいつもの公園に来てくれるか?」「え、あ、わわわわわかったわ!!!!に、20分くらいで行くから待ってて!!!」「いや別にゆっくりでも…って切れたし…」何か御坂焦ってたなー、大丈夫かなー、と呑気に思ってた上条は取りあえずベンチに座って待つことにした。―――約20分後―――ドドドドドドドド…うん?なんだ?と思って上条が立つと…「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ!!!!!!」「ちょぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!何ですかぁ!!!美琴サン!!!!」美琴は常盤台の制服を着崩し、髪も乱れながらものすごい勢いで走ってきてブレーキが間に合わず上条へダイブする形になってしまった。自然と上条は美琴の事を抱きかかえてしまうわけで…(ああ、アイツに!アイツに抱かれてる…しかも美琴って………ふ、ふにゃー)「え?ちょ、御坂さん?御坂さぁぁん?!上条さんの腕の中で気絶しないでえええええええ!困るううううううう!!!!!」上条は美琴を抱きかかえながら無い知能を振り絞って、必死に考える。(と、取りあえずベンチに寝かせないと…うぁ…なんか御坂すげぇいい匂い…しかも女の子ってこんな柔かいんだな…ってあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!邪念を振り切れ上条当麻ッ!!!!!)上条はものすごい勢いでベンチに美琴を寝かせると(もちろん優しく扱う)自分も座る。(あ、頭痛そうだから膝…枕してやるかな……)上条は美琴の頭を自分の膝の上に載せ髪を優しく撫でる。―数分後―「う、うーん…」「お?起きましたか、姫」美琴は静かに目をあける。見上げたそこには何故か大好きな人がいた。しかも姫とか言ってやがる。「え!あの、なんでアンタがここに…ってえぇえええ!?」美琴は気付く。何故か膝枕されてることに…ブンッ!と風を切る音が鳴るほどの速さで美琴は起き上がる。「お、おい美琴。ぶつかる所だったぞ…危ねぇな…」「え、あ、うん…なんかごめんね、気絶しちゃって…」「嫌別に大丈夫だ。そんなことよりお前大丈夫か?一旦帰った方がいいんじゃね?」「何でよ!来たばっかりなのに!」「あー、あー、わかったわかった!!そう怒るなって!」上条からすれば美琴の事を心配しただけである。ひと段落して上条はポケットから箱を取り出した。「ふぅ…さて御坂。上条さんが頑張って選んだメガネを見てくれないか?」「え、あ、ありがと…」美琴は箱を受けとると丁寧に包装紙を剥がし始めた。箱を開けると、そこには赤い色のメガネケースと…「これが、アンタが選んでくれたメガネ?」細い赤縁でレンズの形は楕円形のメガネ美琴から見ても可愛いと思うそのメガネは上条が、大好きな人が選んでくれたメガネだ。「あぁそうだ!どうだ?お気に召しませんでしたか?」「ううん…うれしい、ありがとう」美琴は頬をほんのり赤くさせる。そんな美琴を見て上条はうれしくなる。「良かった、早速掛けてみてくれないか?」「うん!」美琴は静かに掛ける。大好きな人からの初めてのプレゼントを「ど、どうかな?似会う?」美琴はモジモジしながら上目遣いで上条を見る。「……………可愛い……な……」「……ほんと?」「…あぁ、すげぇ可愛いぞ御坂」「こ、こんなときくらい、美琴って呼んで欲しいな…当麻…」「え、あ、か、可愛いぞ!!美琴!」美琴は当麻と呼んで恥ずかしくなり、美琴と呼ばれ顔をリンゴのように真っ赤にする。「あ、あ、ありがとう…当麻……」「「………………………」」沈黙を破ったのは美琴の方だった。「ほ。本当にありがとう。一生大事にするね…」「い、一生って…ま、うれしいですよ?上条さんは…ってあぁぁぁ!!!!!!」「ど、どうしたの?いきなり大声出して?」「や、やべぇ!後15分後にタイムセールスが始まる!じゃ、また明日な!美琴!!」「え、あ、じゃ、じゃーねー!とーうーまー!!!!」上条は走りながら思う。美琴はかなり喜んでくれた。そんな美琴を見て上条は自分も嬉しくなった。そして上条は一旦振り返ると「美琴ー!明日そのメガネ掛けてきてくれー!お願いだー!!」対する美琴も笑顔で「わかったー!!!楽しみにしとけー!!」余談だがメガネを掛けたままルンルン気分で部屋に戻ったら黒子に延々とそのメガネは何だー!貸して見せろー!と言われたので、「私の大好きな人からもらった物なのよ!触ったらいくら黒子でも許さないわ!」と、言ったところ黒子は何かを叫びながら意識を失ったという…
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/育児日記 イヤだ おまけ!! 「ったく、もう少し穏便にできねーのかてめーは!!!!」 洗い物をする上条の左頬には鮮やかな紅葉があった。 もうすぐ秋だね。 「うっさい!! 当麻が悪いんでしょ!!」 一方、美琴はインデックスに添い寝していた。 あの後、あまりのやかましさに起きたインデックスが号泣。 急いで上条があやし、 美琴は服を持って脱衣所に駆け込む。 木山先生は通りがかった黄泉川先生に再び説教されたのだった。 上条の文句はブツブツと続く。 「まったく、その短気なとこをもう少し直せばさぁ……」 なんだというのだ。 「???」 とにかく、悔しいことに、彼女が作った夕飯はうまかった。 「…………美琴」 「なによ? まだなんか文句があんの?」 「いや……元に戻ってくれて、良かった」 「ふぎゃ!!??」 不意討ちの笑顔だった。 美琴の顔が上条の頬にある手形と同じ色に染まる。 言葉は無く。ただ見つめ合う二人。 そうして上条家に広がったピンク色の空間は、 ドカァァァアアアアン というドアの吹き飛ぶ音で霧散した。 上条が驚くと同時に、彼の左右の肩にポンッと手が置かれる。 「やぁ、大将、遺言の準備はできてるかい?」 ゾッと背筋が震える声だった。 「三下ァ、オレはイロイロてめェに感謝してんだよ。 冥土の土産に恩返しをさせてくれるよなァ」 地獄の底から響くような声だった。 「み、美琴さん……ヘルプ!!」 「う、う……ん?」 起き上がり、片手を挙げて、二人の悪鬼に声をかけようとした美琴が、ふと動きを止めた。 あれ? アイツおもいっきりクローゼットに自分を投げたんではなかったか? 自分の裸を見た挙げ句、木山先生の下着姿を見て、鼻の下を伸ばしてなかったか?? いや、それでも彼は自分のために動いてくれたのだ。 自分のことを思っての行動なのだ。 だから、少女は静かに微笑み、 「逝ってらっしゃい」 と死刑宣告を告げた。 「ちょ!!? 美琴!! なんで!!? い、嫌だ、死にたくない!!ふ、不幸だああああああぁぁぁぁぁ」 少しずつ声が遠のいていく。 ため息を吐く美琴は、彼の情けない顔をみて、少しせいせいした。 そして、ふと記憶の片隅にある、彼の別の表情を思い出す。 「……………………」 あんな表情をするなんて思えない。 自分の記憶の誤りかもしれない。 でも 「……当麻のあんな顔、もう見たくないな」 彼女はぽつりと、インデックスの頭を撫でながら呟くのだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/育児日記
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小ネタ 上条、○度目の入院後。 美琴「あ、アンタがまた入院したって聞いたから笑いに来てやったわよ!手ぶらじゃ何だから、ほら、お見舞いにクッキー持ってきたわよ」上条「……御坂たん。いったいそれは何の意地悪でせうか?上条さんはほれ、この通り利き手が使えないのですよ。ぐるぐる巻きに包帯が巻かれておりまして」美琴「へ、へぇ。それはお気の毒。せっかく今回は手作りにしたんだけどなぁ。あと御坂たん言うな」上条「手作り?お前、前回のあれ覚えてたのか」美琴「べ、別にそんなことどうだっていいじゃない。こ、こんなの朝飯前よ、ふん」上条「普通人を笑いにくるのに、手作りクッキーは持ってこないだろうけどな」美琴「い、いいじゃない別に。ほら、食べさせてあげるから口開けなさいよ!」上条「朝飯前とか言う割には、そのクッキー、形がいろいろこってるんだな。カエルに星にハートに……」美琴「か、形はどうだっていいでしょ!いちいちチェックしないでよ!いいからさっさと口開けなさい」上条「そんなおしつけんなって(ぱく)」美琴「!(ゆ、ゆび!ちょっと指がこいつの唇に……!クッキーと一緒にあたしの指がー)」上条「もぐもぐもぐ。おお、うまいじゃないか。次食わせてくれ次……あれ?御坂、何真っ赤になったまま固まってるんだよ。まだ一杯あるみたいだから次を食わせてくれよ」美琴「…………」上条「おーい?美琴さん?」美琴「ふ、ふ、ふ、」上条「お?」美琴「ふにゃー!」上条「うわぁ!病室で電撃はやめろー!」
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小ネタ 上条美琴のバカップル子供のあやし方 赤ちゃん「ふえーん、ふえーん」上条「美琴、赤ちゃんが泣いているな」美琴「私達があやしてあげようよ、当麻」上条「よし!あれをやるぞ美琴」美琴「わかったわ!」上条、赤ちゃんの前に立つ。上条「ほーら、いないいない・・・」美琴「砂鉄の剣!」ザシュ!上条「ぐあああ!」上条「うううう・・・」上条「ばあ!」ずるん!竜王の顎バーーーン!赤ちゃん「キャッキャキャッキャ♪」上条「笑った笑った!」美琴「よかったね、当麻」ピーポーピーポー美琴「死なないで~~~当麻~~~」救急隊員「学習しろよお前ら・・・・・」END(ひでぶ!)
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小ネタ しりとり 美琴「突然だけどしりとりで勝負よ!じゃぁしりとりのりから。はい!」上条「へ?何だ?…………俺から?うーん、理科室」美琴「つまみ」上条「ミートパイ」美琴「意味」上条「み、三重」美琴「笑み」上条「う………み、味覚」美琴「くるみ」上条「み、み………、おい!みで攻めるなんて卑怯だぞ!み、御坂!!」美琴「………上条///」上条「へ?あ、海!」美琴「耳」上条「またみか!?……美琴」美琴「とっ、当麻//////」上条「………魔術師」美琴「……………………………………………」上条「ん、どうした?」美琴「な、何でもないわよ!!」ビリビリ上条「ぎゃあああああああああああああああああああああ」____________※半分程度美琴キャラスレからネタを頂戴しております。 というか元々美琴スレに貼ったものです。
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ネックレスロスのネック それは正に偶然だった。美琴はその日、何気なく特に予定もなく目的も全くなく、ただひたすらに散歩をしていた。「う、うんよし! 私は今、ただの散歩をしているだけなのであって、 別にア…アイツを探してる訳でもないんだけど、も、もしも偶然アイツに出会っちゃったら、 それはそれで仕方のない事だからしてつまり(以下略)」盛大に独り言を撒き散らしながら、ただひたすらに散歩をしていた。言いたい事はあるだろう。それも山のようにあるだろう。しかしここは我慢して頂きたい。毎度毎度ツッコんでいたらキリがない。もう本人の言う通り、偶然だという事にしておこう。ともあれ、こうして美琴は散歩をしていた訳なのだが、その道中、街路樹の根元にキラリと光る何かを発見する。「…? 何かしら、これ?」美琴はその光る何かを手に取り、拾い上げた。すると、「っ!? これ、あの子のネックレスじゃないの!?」それは見覚えのある、簡素な作りのハートのネックレスだった。9月の30日、自分が罰ゲーム(という名のデート)に上条を誘った際、上条が妹達の10032号、通称・御坂妹(上条が命名)に買ってあげた物である。上条としては、ゴーグルを取った御坂妹がオリジナルである美琴と見分けがつかないから、区別する為のワンポイントアイテムとして買った物であって、他意はない。しかし美琴からすれば、自分との罰ゲーム【デート】中に、妹【ほかのおんな】にプレゼントという、とても面白くない状況に随分とジェラジェラしたものだ。そんな経緯があったので忘れる筈もない。これは御坂妹が身につけていた物だ。だがそうなると、何故それが道端【こんなところ】に落ちていたのかという疑問に当たる。美琴がジェラったのは、このネックレスが上条からのプレゼントだからなのだが、同様に御坂妹もこれを大切にしている筈である。事実ネックレスを返品しようとした上条に対して、彼女はそれを頑なに拒否をした。そんな御坂妹が、このネックレスを街中でポイ捨てするとも思えない。「……チェーンでも外れて落ちて、そのまま気付かずに行っちゃったのかしら…? 後で本人に会った時に渡してあげましょう」御坂妹を含む妹達は、美琴の体細胞クローンだという性質上、表沙汰にはできない。よって風紀委員や警備員に落し物として預ける事もできない為、本人に渡すしか方法がないのだ。美琴はそのネックレスを制服のポケットにしまい込…もうとしたのだが、何かを思いついたらしく、その手がピタッと止まった。(……ちょ…ちょっとくらいなら私がつけてみてもいいわよね…? どっちみち妹【あのこ】に会わないと手渡せない訳だし、それまでの間くらい…ね?)心の中で自分自身に言い訳をしながら、ソワソワとネックレスをつける美琴。どうやら上条からのプレゼントを身につける事によって、擬似恋人気分でも味わいたい様子だ。しかし妹とはいえ他人の物を勝手に拝借し、しかもそれを使うという暴挙に対して、美琴はこの後、天罰を食らう事となる。そう、大 体 お 察 し の 通 り である。「にゅっふふ~! アイツのネックレスつけちゃった~♪」ネックレスをつけた瞬間、めちゃくちゃ分かりやすく上機嫌になる美琴。その場でクルクル回ってみたり、スキップしたりしている。街中なので他の人にも見られている訳だが、そんな事も気にならないくらい舞い上がっていた。他人から何と思われようがブレない。流石はレベル5の第三位になれる程の、自分だけの現実を確立させているだけの事はあ――― 「おう美琴じゃん。どしたんよ? すげぇテンション高いけど」「ほぁああああああああああいっっっ!!!?」―――確立させているだけの事はあると思ったが、そうでもなかった。突然背後から話しかけられて、美琴は奇声を上げてしまう。いや、これが全くの他人なら美琴も冷静に対処できたのだろうが、相手が悪かった。それはネックレスを拾う以前に散歩をしていた際、偶然出会っちゃったらそれはそれで仕方のないと考えていた人物、上条だったのだから。そう、皆 さ ん が お 察 し し た 通 り の 展 開 である。しかし出会ったら仕方ないと思っていた美琴だったが、今は先程までと少々状況が違う。御坂妹のネックレスを拾い、それを身につけた。それはまぁ、別に良い(良くはないが)のだが、そんな現状を上条に見られたらどう思うだろうか。(『アレ? 美琴がつけてるそのネックレス…もしかして俺が御坂妹にあげた奴じゃないか? どうして美琴がそれを……も、もしかして! 御坂妹にあげた事に嫉妬して、 美琴も同じのを買ったってのか!? それってつまり、美琴も俺の事が好き…なのか…?』 なんて展開になっちゃったらどうしよう!!? どうするのコレどうなるのコレ!?)美琴の脳内でかなり自分に都合の良いシミュレーションが流れる。上条がそんな非・鈍感な野郎なら、こんなに苦労しないのは美琴自身が一番分かっているだろうに。と言うかどうなるのも何も、美琴の頭の中での出来事なのだから、美琴のさじ加減一つでどうとでもなるだろうコレ。しかも何気に「美琴『も』俺の事が好き」とか言っちゃってる辺り、願望が妄想に色濃く影響している事が窺える。これも自分だけの現実の影響…なのだろうか。そんな奇行を繰り広げる美琴に対し、上条は普段通りに話しかける。もっとも美琴が奇行に走るのは毎度の事なので、上条も慣れているのかも知れない。美琴がこのようにしてテンパるのは、今のように上条を目の前にしている時か、もしくはどこかのスカートめくり名人に上条との関係を弄られている時…つまり大体は上条が原因なのだから。「好きすぎておかしくなるぅ…!」というヤツである。「何かいい事でもあったのか?」「いいいいやあのその、べべ、別にアンタのネックレスをつけてみたからとか、 ぜぜぜん全然そんな事とかはないんだけど、ここ、こ、恋人気分とかでもないし、 ってかそもそもテンションとか高くないんですけどっ!!?」ミコっちゃん名物、自白自爆【ポンコっちゃん】である。美琴本人としては(これでも)誤魔化しているつもりだが、実際は聞いてもいない事までペラペラと喋ってしまっている。他人から見たらこれほど分かりやすい反応もないが、鈍感を極めし者・上条だけには通用するのだから、世の中うまく行かないものである。だがここで、その鈍感を極めし者が意外な言葉を口にする。意外、と言っても良い方向にではなく、むしろ悪い方向に。「ネックレス…? ああ、そう言えばつけてるな。って事はお前、御坂妹の方か」「…………え? あ、う、うん…そう、ね…」美琴と妹達は遺伝子レベルでそっくりなので、見分けがつかなくても仕方が無い。そもそも見分ける為に、上条はそのネックレスをプレゼントしたのだから。しかしそれでも、それが分かっていても、美琴はガックリと肩を落としてしまう。 (何よ…私とあの子の違いくらい、分かるようになりなさいよ…この馬鹿……… あっでもこの状況、色々と面白い事に使えるかも)先程までのハイテンションはどこへやら。一気にどんよりとした気分になってしまう美琴。しかし気持ちが切り替わった事が功を奏したのか、美琴にある実験【イタズラ】が思い浮かぶ。美琴は出来るだけ無表情を作り上げ、上条に向かって言い放った。「は、はい。わたs…ミ、ミサカはアンt…… あ、あああ、あなたが御坂妹と呼ぶ人物に間違いありません、とミサカは肯定します」成り切りやがった。何を目論んでいるのか、突然美琴は、御坂妹に成り切りやがったのだ。超能力は勿論、料理、裁縫、運動、バイオリン等々、美琴は本来なら何をやらせても、そつなくこなせるオールマイティー型(ただし上条に関する事は除く)なので、当然ながら演技力もハンパない(ただし上条に関する事は除く)。突発的に御坂妹のマネをする事になっても、冷静に対処(ただし上条以下略)できるのである。一つ違う点があるとすれば、妹達ならば「あなたが御坂妹と呼ぶ『個体』に間違いありません」と言う所を、「あなたが御坂妹と呼ぶ『人物』に間違いありません」と言い直している箇所だ。これは彼女達を物【どうぐ】ではなく、者【ひと】として扱っているからである。だが今は、そんなちょっといい話をするような場面ではないので、とりあえずスルーしよう。「あれ? じゃあさっき大声出してたのもお前なのか? 美琴ならいつも通りだけど、御坂妹が『ほぁああああ』とか言うのって珍しいな」「な、何ですって!!? それは全部アンタが悪…って、違う違う! た、たまには声を出してストレス発散をしようとしたまでです、 とミサカは先程の……あ…あああ、あな、あなたの発言を撤回するように求めます」もう一度言う。美琴は演技力もハンパない(ただし上条に関する事は除く)。しかもどうやら、上条の事を「アンタ」ではなく、「あなた」と呼ぶ事に相当抵抗があるらしい。「あなた」と呼ぶと、どうしても夫婦間での呼び方を連想してしまうからだろう。「へ~、お前でもストレスを溜めるような事があるんだな」「そりゃまぁね! とミサカは誰かさんを睨みながら頷きます!」上条の鈍感さに対してストレスを感じているのは、果たして御坂妹としての発言なのだろうか。若干、美琴としての本音が見え隠れである。そんな御坂妹【みこと】の様子に全く気付く気配のない上条は、「そっか。まぁ何にしろ、ストレスは溜め込まない方がいいよな」「っっっ!!!?」とか言いながら、彼女の頭をクシャっと触り、そのまま撫でる。上条としては、特に深い意味はなかった。妹達がストレスを感じられるくらいまでに、自我を持ち始めている事が嬉しかったからなのか、子供を褒めるような感覚で、頭を撫でたに過ぎない。つまり、年下の女の子としての扱いだ。しかし当の美琴としては、たまったものではない状況である。上条からのナデナデとか、下手したら「ふにゃー」してしまうような案件だ。美琴は顔を真っ赤にしながら、プルプルと震えつつも必死に耐える。「コイツの手って大きくて温かい…」とか、「なにこれふわふわしてきちゃう…」とか、「やだくすぐったいわよバカ…」とか、「でももうちょっとだけ…」とか、そんな余計な事を考えられる余裕もない。だって頭をナデナデされているのだから。 と、美琴がいい感じにポヤーっとしてきたこのタイミングで、何かを思い出した上条がふいに御坂妹【みこと】の頭から手を離した。「あっ、そうだ! 俺、買い物に行く途中だったんだわ。じゃあな御坂妹」「はわわわ……………ハッ!!? いやちょ、ちょっと待って!?」「…?」簡単に挨拶を済ませて、そのまま走り出そうとする上条。ポワポワしていた美琴だったが、上条が手を放した瞬間に我に返った。ここで上条を逃しては、せっかく御坂妹に成り済ました甲斐も、そして意味もなくなる。美琴は上条の袖を摘んで引っ張り、彼の動きを止めた。そして、美琴のままでは絶対に聞けない疑問を口に出したのだ。「どうかしたのか?」「あ、い…いや、えっと……た…大した事じゃ、な、ないん…だけど…… その…お………お姉様の事っ! どう思う!? ……とミサカは疑問を…アレしてみます…」アレって何だ。「お姉様って…美琴の事だろ? どうって聞かれても…どういうことだってばよ?」「だっ、だから! わt…お姉様を異性としてどうかって聞いてんのよ鈍感! …とミサカはアンタ…いや、じゃなくて、あ、あ…あな、たの朴念仁っぷりに憤慨します」つまるところ、美琴が御坂妹に成り済ました目的は、これを聞く為だったのだ。上条に素直になれない&恥ずかしい&自分から聞くのは何か癪&答えを聞くのが怖い&自分の気持ちを知られるのも怖いと、上記の理由で本来の美琴ならばツンデレロイヤルストレートフラッシュ状態なのだが、他人【いもうと】に成り切れば、少なくとも「答えを聞くのが怖い」以外の理由【いいわけ】は取っ払える。なのでこれは、上条の気持ちを知るまたとないチャンスなのだ。美琴はそんな一世一代の大勝負(笑)を仕掛けた訳だが、しかし相対する上条は頭をポリポリとかいたりして、余裕綽々である。無自覚なだけに腹が立つ。「異性としてって…美琴は中学生だしなぁ」「高々1歳~2歳の違いでしょ大して変わんないじゃないっ! とミサカは思うんだけど!?」興奮しているからか、徐々に御坂妹キャラが崩れてきている美琴である。だが上条も強情なのか何なのか、腕を組んで「ん~…でもなぁ…」と唸っている。このままでは埒が明かない。なので美琴は、一つ設定を付け足してみる。「じゃ、じゃあ例えば! 数年後って思ったらどう!? わた…お、お姉様もアンタも高校生とか、もしくは大学生になったら、 そんなに気にならなくなるでしょ!? とミサカは今のままでも別にいいと思うけどね!」すると上条は、軽く溜息を吐いてこう言った。「そりゃ今のままの美琴だって充分可愛いし、 しかも美鈴さんを見れば、美琴がこれからもっと綺麗になってくのも分かるけどさ」「可愛っ!!? きき、綺れっ…!!?」上条からの予想外の言葉に、心臓が飛び出しそうになる美琴。先程と同様、またも「ふにゃー」を耐えなければならない状況となる。「でもそもそも前提として、美琴の方が俺の事を男として意識してないと思うぜ? 何か会えばいっつも怒ってるイメージがあるし」「そ、そそ、そん、な事は! ななない、わよ!」 上条の言葉に、美琴は思わず大声と出して反論してしまった。これも御坂妹に成り切っているおかげなのか、上条から「可愛い」とか「綺麗」とか言われて舞い上がってしまったのか、漏電を我慢する為に声を荒げて気を紛らわせたのか、もしくは全部かも知れない。とにかく美琴は、普段なら言えないような事を、思わず口に出してしまったのだ。「おね、姉様は、ただ、す、素直になれない性格だから、あんな態、度に、なっちゃう、 だけ、で、べ、べ、別に、アア、アンタの事が嫌いだからとか、そんなんじゃないのよ! む…むしろ……むしろ! 私はアンタの事が―――」「…そこで何をしているのですか。そして何故ミサカのネックレスをつけているのですか、 とミサカは額に怒りマークを浮かばせながらお姉様に詰め寄ります」「―――私はアンタの事がああああああああぁぁぁいっっっ!!!?」美琴が何かとても大事な事を言おうとしたその矢先、横から突然現れた人物によって、その何かとても大事な事はキャンセルされた。本物の御坂妹。つまり、ご本人登場パティーンのドッキリである。「どどどどどうしてここへっ!!?」「どうしたもこうしたもありません。ミサカの大切なネックレスが紛失した事に気付き、 歩いてきた道のりを逆にたどりながらネックレスを探していただけです、 とミサカは説明します。そしてやっと見つけたと思ったら、 何故かお姉様がそのネックレスを首にぶら下げてミサカのフリをしており、 しかも彼とイチャっていたので、ものすごくイライラしていた所です、 とミサカはお姉様を睨みながらポカポカと殴ります」「イイイイイイチャってなんかしてないわよ!!? このネックレスだって、元々アンタに返そうとしてて… っていうか痛…くはないけどやめなさい! チェーン外せないでしょ!?」妹の猛抗議により成り切りタイムは強制終了させられた。美琴は仕方なく、ネックレスを首から外し、それを妹に手渡す。一見ほのぼの姉妹喧嘩だが、その喧嘩を延々と見せられた上条は、当然の疑問が浮かぶ。「…え? いや、ちょっと待てよ? つまり今まで俺と喋ってたのは御坂妹じゃなくて美琴って事だよな? でもそうなると、さっき美琴が話してた事は、えっと―――」「ぴゃっ!!? え、あ、やっ…ちち、違うのっ!!! アレは、つ、つまり…… とにかく違うんだからあああああああああああぁぁぁぁ!!!!!」深く突っ込まれる前に、美琴はその場から逃げ出した。それはもう、真っ赤な顔で目に涙まで浮かべて、ダッシュで逃げ去ったのだ。残された上条は頬にほんのりと赤みを差しながら、「えっ…? じゃ、じゃあつまり、美琴って………ええぇ!!?」と明らかに狼狽する。その様子に御坂妹は、ガクガクと震えながら呟いた。「き、緊急連絡。お姉様と彼が何か急にいい感じに甘酸っぱい雰囲気になってしまいました、 とミサカ10032号はこの先どうするべきか他のミサカ達にも応援を求めます」ミサカネットワーク内が大炎上したのは、まぁ言うまでもないだろう。落し物が届けられたら、拾った人にお礼として一割渡さなければならないと聞くが、この結果が一割なのだとしたら、物価の高騰が深刻化しているのだと言わざるを得ない。