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結婚式での誓い 本日は上条当麻と御坂美琴の結婚披露宴。美琴の要望により、自分が愛する人との神聖な儀式をたくさんの人に見てもらいたいとの事で学園都市の最大級のホールでの披露宴、全世界で生中継を行う事になった。上条は反対していたが美琴の意見は覆らせず、学園都市第3位の権力に従うしかなかった。そして今、美琴は控え室にてウエディングドレスを身にまとっている。母親の美鈴が着替えを手伝っている。「わぁ~美琴ちゃん!可愛すぎよ!父さんが見たらやっぱり嫁には行かせないって怒っちゃうわよ~。」「どんだけ親バカなのよ。お父さんはもう着いたの?」「まだだけど式までには必ず間に合うって連絡が来たから大丈夫よ。」「間に合ってもらわないと私が困るわよ。バージンロードを一緒に歩く大切な仕事があるんだから。」「くす、美琴ちゃん、とっくにバージンは捨ててるのに♪」「んな、な、なんて事言ってんのよ!母親が言うセリフじゃないわよ確実に!」顔を真っ赤にして両手をグルグル回して母親に怒る美琴。「あなたが大人になって体も私に負けず劣らずのナイスバディになったのに心はいつまでも中学生のままね。よし、もう動いていいわよ。」「う、うるさい!アイツだって高校生の頃から変わってないんだから。」「それは私も知っているわよ。会う度に当麻君の話を聞かされてる母親だからね。」「あーもう!いつまでも私を子供扱いするなー!」そう言ってじたばたする美琴。美鈴ははいはいと言いながらドレスの紐を結んでいく。これがこの親子のいつものやりとり。決して仲が悪いわけではなく、お互い凄く好きなのだ。もうこのようにやりとりするのが滅法減るのかなと美琴が考えていると、突然ドアが開いた。上条刀夜と詩菜がいた。「これは失礼、着替え中でしたか。」「あらあら刀夜さん、美琴さんが着替えているのわかっていてノックもせずいきなり開けたのでしょ?」「か、母さん、怖い顔で睨まないでくれ。こっちだって急いでいるんだから。」「どうしたんですか上条さん?急ぎとは?」「いや、急ぎというか・・・・当麻がこちらに来ていないかと思いまして。」「来てないですけど・・・当麻君がどうしたんですか?」「・・・・・・・・まだ来てないんです。」「「ええ――!?」」「もう不幸だ――!」上条当麻はホテルの自室にいた。結婚式前日、部屋に土御門元春と青髪ピアスが遊びに来て久しぶりのデルタフォース結成ということで夜まで飲んでしまった。上条は明日が式のため酒はほどほどにしていたが土御門と青髪はガンガン飲みまくり、結局上条の部屋に泊まった。「なんで明日結婚式をひかえてる俺が酔っぱらいのお前らの面倒見なきゃいけねえんだ!」「サンキューだぜいカミやん、ひっく、俺はソファを借りて寝るぜよ。」「わては床で充分やで。心配なさらず・・・うぷ・・」そう言葉を交わして就寝した。はずだったのだが二人の影はどこにも見えない。あの野郎どこ行ったんだ?いや、それどころではない。急いで会場に向かわなければ間に合わない。式の時に着るタキシードは会場にあるため上条は急いでシャツを着て、ズボンを掃き、財布、携帯を持った。その時一つのあるものに気づいた。土御門が寝ていたはずのソファに紙切れが落ちていた。何だろう?と紙切れを開いて読んだ。『カミやん、久しぶりに会えて嬉しかったぜい。あんなに綺麗になった超電磁砲と結婚するなんて考えられないぜよ。今日は結婚式だったにゃー。残ったデルタフォースはカミやんだけ幸せになるなんて許せないからカミやんの酒にちょっと強力な薬を入れさせてもらったぜい。もちろん俺たちの酔っぱらいは演技だにゃー。いつカミやんが起きるかわからないが結婚式に間に合うよう幸運を祈るぜよ。会場で待ってるぜい。土御門&青ピより♪』ここで最初の言葉を上条は叫ぶ。結婚式が始まるまであと一時間。上条当麻は走り出した「そういえばここから会場まで走ったらどのくらいかかるんだ?」ふと思った上条は携帯で調べ始める。検索結果、100メートル金メダリストの足で走り続けて約50分と出た。「不幸だ・・・美琴に連絡しないと・・・どう怒られるんだろう・・・」電話をかけようとしたその時、背後から気配を感じた。「ったくよォ。あのチビがここに行けと言うから来てみたら三下のお迎えとはなァ。」「あ、一方通行!どうしてここにいるってわかったんだ?」「ミサカネットワークには驚いた。超電磁砲の声かけ一つで俺を奴隷みたいに扱うんだからよォ。お前を連れて来ないと普通に生きられないと脅されてっからなァ。」「???」突然現れて妹達がうんぬんと言い出すから訳がわからない。「そうだ三下ァ。ここに来る前にいいモン見つけたんだが。」一方通行が取り出したのは大きい袋。サンタクロースが担ぐくらいのサイズ。「三下ァ、こン中に入れ。」「はい?俺を拉致して殺すとでも言いやがるのですか?」「人の話聞いてンのかァ?お前を連れていかねェと俺が死んだも同然だ。その右手に触れられたら能力も意味ねェしよ。お前を殺すのは多分お前の嫁になるだろォけどな。」カカカと笑い飛ばす一方通行。鈍い上条はここでやっと一方通行が会場まで連れて行ってくれるのだと理解した。「ありがとうな、一方通行。」お礼を言って袋に頭まで入れた。「礼を言われる人間じゃないンだよ俺は。あと、嫁に部屋の窓を開けろと連絡しろ。」「・・・わかった」上条は今美琴に電話すると雷を落とされそうだと思い、メールで一方通行の言った通りに送信した。「一応今連絡したけど?」袋の中でもぞもぞ伝える。「ンじゃ、死ぬなよ?」「え?」チョーカーにスイッチが入る。一方通行は上条が入った袋をハンマー投げのように振り回し、遙か遠くへ投げとばした。「うわああぁぁぁ!!なんだあぁぁぁぁ!!!!?」「最っ高だねェ!ギネス級の飛距離誕生ってか?」飛んで行った上条が入った袋を見ながら一方通行は大笑いした。美琴が部屋の窓を開けてから数分が経ち、遠くから何かが接近する音が聞こえてきた。窓に目をやった瞬間、白い物体が美琴目掛けて飛んできていたのだ。それは一方通行によってここまで飛んできた上条だとすぐわかった。ひょいと避けると袋は壁に激しくぶつかり、中から「ぐへ」と情けない声が漏れたのが聞こえた。袋を開けると中にはあははと少し壊れたように笑っている上条がいる。「当麻、理由を教えてくれないかしら?」髪の毛が逆立ちいつでも電撃発射できるわよと上条にアピールする。「いや、これはですね、土御門たちに薬を飲まされてですね、「問答無用!!」」言い訳を言っても話を途中で切られ、ガミガミと美琴にたっぷり説教を喰らった。「無事に着いたみたいだけど、美琴ちゃんと当麻君の立ち位置は既に決まっているようね。」「あらあら、当麻さんは尻に惹かれるタイプなのね。そう思わない刀夜さん?」「母さんそこで私に振らないでくれ。目が怖い・・・」そして長い説教が終わった。「まだまだ言い足りないけど今はこのくらいにしとくわ。結婚式が終わったら覚悟してなさい!ほら、さっさと着替えに行って!」「・・・・はい。」上条の両親がこっちへ来いと促し、それについて行く上条。ドアから出る前にくるっと振り返り、「美琴、ドレス凄く似合ってるぞ。こっそり俺が頼んだドレスは間違いなかったな。やはり美琴を見る目は上条さんが一番正確だぜ。んじゃ、着替えてくるから~。」じゃあなーと言って上条は去って行った。「お、お母さん、今アイツ、俺が頼んだドレスって・・・」美琴は驚きを隠せなかった。以前電話で上条と話した時に、「ドレスの質の違いがわからなかったから一番安いのをレンタルさせてもらうことになった」と言われた事があった。もちろん美琴はその時激怒したが激安スーパーでいつも食材とにらめっこしていた上条なら当然の判断なのかなと思い、ドレスの事は諦めていた。しかし今日ドレスに着替えた時、安物にしてはとてつもなく上等な生地だなと思っていた。「お母さん、アイツから何か聞いてなかった?」「私も何も聞いてないわよ。昨日当麻君にドレスを渡してもらっただけ。」「・・・あの馬鹿」美琴は廊下に出た。何も教えてくれない上条にまた説教ネタが増えたと思い、真相を問い詰めてやろうと上条がいるであろう部屋の前に立ち、バンとドアを開けた。上条当麻はいた。だが着替えの真っ最中でパンツ一枚になっておりズボンを履こうとしていた。「どうした美琴。レディなんだからノックくらいしろよ?」「きゃあ!!ごめんなさいぃ!」パンツ一枚の姿に慌ててドアを閉めた。部屋の中から「なんだ当麻、この年になって美琴ちゃんはまだお前の裸を見慣れてないのか?」「あらあら刀夜さん、娘になる美琴さんで変な妄想していたら許しませんよ?」「だああぁぁうるさい!これくらい自分で着替えれるから早く出て行けー!」そんなやりとりが聞こえたかと思うと同時に刀夜と詩菜がため息を吐きながら出てきた。この両親ならドレスの事について知っているかもしれないと思ってとっさに質問した。「あの、このドレスはどうされたんですか?」「あらあら美琴さん、そのドレス改めて見ると凄く綺麗ね。あなたが着ているからかしら。それに一つ一つ丁寧すぎる程縫ってあるわ。」「いや、ドレスは?」「どこでどう調達したかはわからないがさすが学園都市。当麻のタキシード姿が目立たなくなるな。」「・・・・・」どうやら上条の両親も知らないみたいだ。こうなったら上条本人に聞くしかない。タイミング良く上条が着替え終わって出てきた。「おまたせ~って美琴、さっきからどうしたんだ?」「このウエディングドレスどうしt・・・・ムグ」上条に手で口をふさがれた。「父さん、母さん。最後の打ち合わせがあるからもう中に入っていいよ。待っていても俺が遅れたからすぐ式始まってしまうぜ?」「そうか。では母さん一番乗りに会場に入るとするか。」「はい刀夜さん。美鈴さんも一緒に連れて行きましょうか。」「当麻、美琴ちゃんに恥ずかしい思いさせるなよ!頑張れ!」そう言い残して二人は去っていった。二人が完全に見えなくなったところで「ごめん美琴、隠すつもりはなかったんだけど隠してしまった形になってしまったな。」「何よ、このドレス、絶対ここで借りたヤツじゃないでしょ?」「ああ。借りるつもりだったんだけどケタを見てびっくりしてさ。ダメもとで舞夏に頼んだら快く引き受けてくれたんだよ。色々注文したのに一晩で作り上げたとか言ってたぞ。」「一晩でこのレベル・・・凄すぎるわよ。」「さすがメイド学校と言ったとこか。てかお前・・・・・可愛すぎ」「やめて――!は、恥ずかしい事言うなこらー!!」ビリビリ開始まであと数分、会場にはたくさんの人で埋め尽くされている。もちろん二人の親交が深い友人達、かつて(?)のライバルもいる。「初春また頭の花増えてない?」「何の事ですか?それより佐天さん、白井さんはまだですか?」「つい先程合流したことをお忘れですの?頭のお花だけ瞬間移動させてあげましょうか?」「冗談ですごめんなさい白井さ~ん!」「あ~やっと会えた!お疲れ様!てミサカはミサカはあなたの腕に抱きついてみたり!」「チッ、クソガキが」「もうクソガキじゃない!てミサカはミサカは体も著しく成長したとこをアピールするために胸を強く腕に押し当ててみたり!」「やめろこンな場所で!てめェは妹達に何を吹き込まれてンだ!」「妹達じゃないもん、お姉様だもん!てミサカはミサカは真実を告げる!」「建宮、五和はまだ来ていないのですか?」「女教皇様、それがさっきからずっとトイレに引きこもっているのよ。」「そうですか。あの方があの女性を選んでからずっと五和はこの調子ですからね。」「お、噂をすれば戻ってきたよ。」「女教皇様。いらしていたんですね。」「五和、心配してたのですよ・・・ってこんなところで何故槍を装備しているのですか!」「女教皇様、私が変な行動をとろうとしたら力ずくで止めてくださいね」「まずい、五和の目がマジになってる・・・」「小萌センセー、まさかあの上条が常盤台の超電磁砲と結婚するなんて考えられないじゃん?」「今まで上条ちゃんが立てた女性フラグは星の数です。その中の御坂さんを選ぶとは上条ちゃんも相当やり手だと見えるのですー。やはり隅におけないですねー。」「でも悔しいと思わないじゃん?」「悔しくないと言えば嘘になりますが、もう誰もあの二人を引き離すことはできないですー」「やれやれ・・上条は小萌センセーにもフラグを立てていたとは。凄い男じゃん」そして結婚式が始まった。先に上条一人入場した。祭壇の前まで進むとステイルが立っていた。「あれ?何でステイルがここに立ってんだ?インデックスにお願いしてたのに。」「誓いの言葉はシスターではなく神父が問いかけるものだ。それにあの子は君のお願いなら断らない。だが、愛する人に他の女性と永遠の愛を誓いますか?とは聞けないだろ?」「え?インデックスの奴俺の事を・・・」「今頃気づくのかい。ここまで鈍いとはもはや病気だね。とにかく今は私語は慎んでくれたまえ。僕は彼女の代役を真っ当するためにここに立っているのだから。」「・・・・」上条は思い返した。美琴と結婚すると決めた時、噛み付かれるかと怖かったが一番にインデックスに報告した。報告した時のインデックスは「あの短髪と?」と驚いていたがおめでとうと祝福の言葉をもらった。だが悲しい表情をしていた事にはこの上条は気づいていなかったのだ。『続きまして新婦の入場です』アナウンスが流れ入り口から美琴は旅掛と腕を組んで入場した。二人が上条の隣に立ち、旅掛は神父のステイル、次に上条にお辞儀をして席に座った。式が進み、いよいよ誓いの言葉を言う時がやってきた。「上条当麻、汝は御坂美琴を永遠に愛する事を誓うか」ステイルが棒読みで質問してきた。しかし上条は口を開けない。(どうしたのよコイツ。もしかして誓いますって言うのが恥ずかしいのかしら。私だって大勢の前で言うの恥ずかしいからここで漏電しないようにかなり予行練習してきたんだから。アンタが緊張したら私も余計緊張するじゃない)美琴は隣にいる上条を不安そうに見ていたが上条の本心は違っていた。(・・・インデックスが俺の事を好きでいたなんて考えもしなかったぜ。今までずっと一緒に暮らしていたのによ。もしかしたら美琴より多く同じ時間を過ごしていたかもしれねえ。ステイルが俺たちの前にいるって事はインデックスは会場のどこかで見てくれてるはず。俺は一生美琴を愛するって決めたんだ。でもインデックスの気持ちに気づいてやれなかった俺はホントに馬鹿だな。何も考えずいつも目先の事だけ見ていた俺はとんでもないな。遅いかもしれないがインデックスに言う事がたくさんある!)上条はくるっと会場の方を振り向き、生中継されている事をすっかり忘れ会場に向かって語り始めた。会場にいる女性全員にフラグを立てる事も知らずに。「俺は神に宣言はしねえ。ここにいるみんなに宣言する。美琴を一生愛する事を!妻として、そして恋人として一生愛する。昔から俺は決めていた事がある。御坂美琴と周りの世界を守ると。美琴の周りの世界はみんながいる。美琴は俺をヒーローだと言ってくれた。だから俺はみんなを守りたい!美琴を守れたらみんなが喜んでくれる、みんなを守れたら美琴が喜んでくれる。そうだと俺は信じてる。臭いセリフかもしれないが愛する美琴のために俺は動く!美琴の笑顔が見たいから!泣き顔なんて見たくねえ!この言葉に嘘はない!だから俺は美琴を愛すると誓う!まだ文句があるなら頭にでも噛み付いて来やがれ!」一瞬静まり返る会場。そしてじわじわと拍手がなり始め、最後にはスタンディングオペーションとなった。「コホン、上条当麻、一応式だからこっちを向いて言ってくれないかい?」ステイルがイライラしたように訪ねた。「はっ!俺は何をしたんだ?美琴、俺は?」美琴は嬉しすぎて今にも倒れそうだったが何とか立て直せた。「・・・生中継を録画してるから後で自分が言った恥ずかしい内容を確認して。私があ、あんな事言える訳ないじゃない!」「しまった、興奮しすぎて何を口に出したか全く覚えてない・・・不幸だ」上条は泣きそうな声でステイルに誓いますと宣言した。「では御坂美琴、汝は上条当麻を愛する事を誓うか?」「も、もちろんよ!誰に言われても気持ちは変わらないわ・・・・じゃなくて・・・ち、ち、ちちちちちちちち誓います!」会場から少し笑い声が聞こえ、それに美琴は顔を一段と赤くした。「それでは、誓いの証として口吻をしなさい。」「き、キス!?こんな大勢の前で?」「何を今更驚いてんだ?そういうのが普通じゃないのかステイル?」「事前に夫婦に聞いておくものなんだが僕は代役なので。ま、君は何て事なさそうだからやっちゃえよ。」「お前、俺をおちょくってないか?」「ちょっと!私を忘れるな!するなら早くして!私からする勇気なんてないんだから!」「やれやれ、相変わらずツンデレですな姫は。そんな美琴が大好きだぞ。」「・・・私も。これからもよろしくね。」二人は口吻を交わした。再び拍手が鳴り響いた。そして歓声の中悲鳴にも似た声もちらほらと聞こえた。式も一通り終わり、上条と美琴以外の全員は会場を出た。これから女性達の待っていたイベント、ブーケトスが始まる。「ちょっと当麻!これブーケと言うより花束じゃない!」「お前みたいに器が大きい感じでいいだろ?これも舞夏が協力して準備してくれたんだよ」上条が美琴に渡したブーケは確かにお祝いで送る時に見るような大きさの花束だった。舞夏のセンスで白い薔薇をメインにしたブーケである。会場の外は新たな夫婦が早く出てこないかと待っている。ただブーケを手に入れるために残っている女性が先頭を占めているのだが。「お姉様の投げたブーケは必ず黒子が手にしてみせますの!ウヘへへへ」「私だってほしいです白井さん!御坂さんが投げるブーケには絶対ご利益がありますから。」「非科学的な発想だね初春。でも、確かにあのブーケは欲しい・・・」この三人を良い例に他の女性達も「あの御坂美琴の投げるブーケはどうしても手に入れたい」と思っているのだ。入り口に上条夫妻が登場した。二人は大きな歓声に包まれ笑顔で声援に応える。「お姉様!早くそのブーケを黒子にお渡しくださいまし!」「あげる物じゃないのよ?能力使わないで自力で手に入れなさい!」美琴は観衆に背を向けてブーケを空高く投げた。宙に舞うと同時に白井、初春、佐天、御坂妹、打ち止め、神裂、五和、小萌、黄美川などの女性がブーケに向かって一斉に飛びかかった。しかしこの中の女性陣で誰もブーケを手にする事はなかった。小さな三毛猫が猫には大きすぎるブーケをジャンプして口で掴みとった。地面に着地するとブーケを引きずらないように持ち運んで行った。三毛猫がブーケを運んだ先には白い修道服を着た銀髪の少女、昔と比べると大人に成長したインデックスが立っていた。「わあ、スフィンクスこのブーケ私にくれるの?ありがとう!」このような出来事をみんなより少し上の位置で見ていた上条と美琴は驚いていた。「当麻、インデックスに渡って嬉しいんじゃない?」「ん?まあな。まさか能力でインデックスに行くようにしたのか?」「私にそんな能力ないわよ。普通に投げたらあの猫が捕ってインデックスに渡しただけ。黒子が瞬間移動で奪うと思っていたんだけど、これって運命よね。」「ああ。それにしても美琴、やけに嬉しそうだな?」「当麻が嬉しい事は私も嬉しいんだよ。」「はは・・口調がインデックスみたいになってるぞ」翌日、新聞やテレビのニュースでは上条と美琴の話題で持ちきりでいた。どの新聞も上条と美琴のキスをでかでかと一面に載せ、テレビでは上条の宣誓からキスまでの一連の出来事を何度も流していた。新婚の二人はソファで隣同士に座り、美琴は片手に新聞、テレビのリモコンを持っている。「どう?当麻はこんな事言ってたのよ。改めて聞いてるとホントにこっちが恥ずかしいわ。」「もうテレビは消してくださいお願いします~!」「何言ってんのよ。どのテレビ局がどのように放送したのか全てチェックしないと。もちろん全部録画の予約はしてるからね。」「やめろおぉ!もういっそのこと殺してくれ!俺はもう外を歩けない!」上条は恥ずかしさのあまりに顔を伏せた。そこに美琴が体を近づけた。「アンタはまだ死んだらダ~メ。私とその周りを守るんでしょ?」「その言葉に嘘はありませんが今は言わないでください。恥ずかしすぎます・・・」「クス、でも愛するための行動ってそれだけじゃ物足りないかも・・・」「一体どうすればよろしいでせうか・・・」「いつまで経っても当麻は鈍感なのね。子供が欲しいと思わない?」「っ――――!!」「まだ夫婦として始まったばかりよ。新しい家族を築かないとね。よろしくね、あ・な・た☆」「お、お、お、お前には敵わないよ・・・何ていうか、幸せだ。」
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/記憶鮮明! 結果的に上条とインデックスは常盤台中学の学生寮や事件現場に行くまでも無く、美琴の消息を知ることになる。 途中で連絡が入った。 しかし、それは残念ながら待ち人ではない。 上条がケガをした時、いつも世話になるカエルに似た顔をした医者からの電話であった。 『君は御坂君を知ってるよね』 『勿論です』 『ならば僕の病院へ来るといい』 『御坂はそこにいるんですか無事なんですか、先生っ!?』 『……それは君の目で確かめるしかないんだね』 安否がしれる内容では無かった。 冥土返しと呼ばれる医者の腕は確か、他の医者が諦めるしかない重傷者であっても彼にかかれば命を取り留める。どんな重傷を負っていても命さえあるなら彼の元へ届けさえすれば助かると言われている その冥土返しが曖昧なことを言う。 逆を言えば命が無い者までは彼でも救えない。 上条は冥土返しのいるとある病院へと急ぐ。病院へと走って行く途中には鉄橋があった。絶対能力進化実験を止めるため自ら死へと向かおうとする美琴を引き留めた場所。 美琴は妹達を救うために自らの命を引き替えにしようとしていた。 上条は御坂妹と彼が呼ぶ妹達を救おうとしていた。 絶望に打ちひしがれていた美琴の顔を鮮明に覚えている。 鉄橋を渡り終え上条は走る。 街路を疾走し満天の星の下を駆け抜ける。 カエル顔の医者のもとへ行けば美琴に会えると信じ、ひたすら走る。 そして走ることで不安を打ち消そうとしていた。いや、何も考えないでいたかった。 そうするうちに上条はようやく病院へと辿り着く。 インデックスも上条の全力疾走に追随したせいで息が切れていた。辿り着いた病院の前で大きな深呼吸を繰り返す。 同様に息が切れていたにも構わず上条は走ってきた勢いのまま玄関をくぐる。すると薄明かりに照らされたロビーに俯いた一人の少女がいた。 その少女は常盤台中学の制服を着ている。 「白井……」 「貴方様は……」 上条の呼ぶ声に気がついた白井が顔をあげる。 酷い顔だった。一生分の不幸が襲い掛かり途方に暮れ、悲嘆にくれた顔だった。 恐らく自分も同じ顔をしているのだろうと上条は思った。 ただ白井の目だけは怒りに悲しみに憎悪を堪えていた。 「白井……何があったんだ、御坂が爆発に巻き込まれるなんて、御坂はそれぐらいで……こんなことになる御坂じゃないだろ?」 「盾になりましたの、お姉様は」 絞り出すような声。 「盾?」 「私もその場にいた訳ではありませんので、目撃者の証言からですが……異常に気づいたお姉様が館内にいた者に退館を叫ばれたとか」 「……」 「ほどなく爆発が、一般的な爆発とは違い炎が急速に膨れ上がる、ナパーム弾が近いのでしょうか」 一瞬の閃光でなく戦争映画で見るようなあの光景、全てを焼き尽くす炎の塊だったのか。 「お姉様は館内の者が逃れるまで磁力で引っ張れる物を引っ張っり、それらでその炎を押さえ込もうとされていたそうですの、ですが最後に炎が食い尽くし……私が、私がお側におりさえすればこんなことには、お姉様!」 「まさか御坂は……炎に飲み込まれたっていうのか」 「はい……ですから速報は間違いですの、お姉様は犠牲者の一人では無く、犠牲者はお姉様ただ一人」 「御坂……犯人は能力者か」 「恐らくはですの、ただしかなりの高レベルの発火能力者になりますが遠隔でこれだけの炎を起こせるとなると、同僚が書庫を当たっておりますけど該当者がおりますかどうか」 「そうか……それで、……御坂は?」 白井の肩がビクッと震える。 それだけで余程酷い状況だったことが知れる。 この時、上条と白井の思いは同じだった。 自分がいれば 白井が居ればテレポートで最後は逃れることもできた。 上条はその炎が能力のモノであれば打ち消すこともできた。 二人のどちらかが美琴と一緒であればこんなことにはならなかったのだ。 そして直前まで上条は一緒にいたのだ。そして予定を聞かれまでしていたのだ。時間を巻き戻せないことが悔やまれる。 俯き、うなだれる上条と白井。そばで話しを聞くもその内容に二人へかける言葉がないインデックス。 で、あったが 「えっ、あれ?短髪?」 ハッと見上げる上条に白井。その見た先には 「アンタねぇ、何度ももう会ってるのに短髪はないんじゃない?私にはミサカミコトって名前があるのよ」 包帯を体中に巻かれ入院患者用の衣服を着用し車椅子に乗っている美琴がいた。 「お、お姉様?」 「ん?黒子も心配して来てくれたの?」 「そ、それは勿論でございますの。で、ですがそのお姿は?」 「ああ、これ。しくじっちゃったみたいね」 「いえ、そうではなく。それぐらいで済むような状況ではなかったと聞き及んでいたのですが」 「うーん、どうなのかな。先生の話しだとその時の事、記憶が混乱して思い出せなくなってるらしいのよね」 「そうなのですの?」 「まあ、この程度で済んでるっていうのはゲコ太先生がスゴいってことじゃない?」 「は、はあ~」 「その御坂?大丈夫なんだな?」 「まあね……暫くは入院ってことになりそうだけど」 「そうか……」 「とりあえず黒子」 「はいですの」 「入院の支度と学校、寮監への連絡をお願い……それと私は動けそうも無いから犯人を見つけて頂戴ね」 「わかりましたの、お姉様。私が必ず敵討ちをして差し上げますの」 「無理はしないでね、連絡は直ぐお願い」 「はいですの」 その言葉とともに白井は消える、美琴の無事と頼まれたことが嬉しく行動に移したのだろう。 上条はそれを見送り 「心配させんなよ御坂」 改めて美琴に言葉をかけた。上条の顔は安堵に綻びかけた。 が 「ごめん……妹達のこと、知ってるアンタにはまだ心配かけることになるわ、とミサカは申し上げます……ああ何だろこの口調?」 「えっ」 「はあ、困ったわね」 そう言うと美琴は車椅子から立ち上がった。 「なっ」 そして美琴は包帯さえも外し始める。 「ま、まさか御坂妹なのか?」 「えっ、短髪じゃなくてクールビューティーなの?」 「そうとも言えるし言えないともどうなのかな?でも私がクールビューティーで私が短髪って……」 「い、一体これは、どうなってんだ?」 「それは僕が説明しようか」 いつの間にかカエル顔の医者がそばまで来ていた。 「先生!」 「とりあえずついて来てくれるかな」 その頃 「なにしやがンだ、クソガキ」 「ふんふん、こうすれば言語機能以外を遮断できるんだ」 「くそったれ」 「キャハ、頭の中いじくったらこの言葉遣いも直せないかな」 「土下座させてゴメンナサイさせるのも面白いかも」 「それか人格改造とか、あはは、ナニこれ悪意ばんばん」 「あァ?オマエらイイ加減にしねェと」 「どうにもできない癖に」 「はァァァァァ、芳川ァ!」 「何?」 「どうなってんだァコイツはァ?」 「うーん?」 「専門だろがァァァッ!」 「おかしいわね?たしかに打ち止めと番外個体の人格と違ってるのよね」 そして家主の帰宅を告げる音がする。 「黄泉川先生が帰ってきたのかな」 「黄泉川……えっ先生?」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/記憶鮮明!
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小ネタ 自転車に二人乗り (何やかんや事件に巻き込まれて自転車に二人乗りすることになった二人)上条「ん?どうした、乗らねぇのか?」美琴「え?う、うん。乗るんだけどさ………」 (どうしよう、普通なら後ろに立ち乗りするところだけど………でもこれは公然とあいつに引っ付くチャンス なんじゃ?………って、私はこの非常事態になに馬鹿みたいなしょうもないこと考えてんのよおおおおお) 頭を抱えて悶絶する美琴。上条(御坂がまた変だ。いつもの病気か?こういう時はそっとしておくに限るけど………) 「み、御坂センセー?あの、時間が無いのでそう言うのは後に………」美琴「だー!もう、わかってるわよ、乗るわよ、乗れば良いんでしょ!」 と言いつつちゃっかり後ろに横座りする。上条「?………えーっと、飛ばすからしっかり掴まってろよ?」美琴「う、うん」 上条の背中に抱きつこうとするが、いざしようとすると抱き付くという行為を意識してしまう。 いつも気軽に触れていたり叩いたり殴ったりしていたはずなのに、どういうことか今は鼓動がどんどん速くなるばかりで、体が金縛りのように動かない。上条「ん、美琴?」美琴「ぁ、ひゃい!」 突然名前を呼ばれて動揺したが、金縛りが解けた勢いで思い切って上条の背を掴んだ。上条(ひゃい?)上条「てか、あの、御坂?」美琴「………な、何よ」上条「それは……何してんだ?」 本人的には思い切って差し出したはずの手、の指先は上条のシャツをちょこんとつまんでいるだけだった。上条(もしかして、俺に触りたくないのか?) と後ろ向きな想像をして泣きたくなる上条。美琴「なな、何よ、あんたまさか、私があんたを抱き、抱きしめ…………だからその、ふ…」上条「いや、掴むのはサドルでも……ってぎゃあああああああああああ」 切なげに言いかけたところで美琴がふにゃーとか良いながら放電。 体勢的に右手が間に合わず、やや食らって上条の体が痙攣する。上条「お、お前・・・・・・これで何度目だふざけんなコラッってちょっとまだ出てるぅぅ!!落ち着け落ち着け 落ち着いて下さいぃぃ」上条「お、お前・・・・・・これで何度目だふざけんなコラッってちょっとまだ出てるぅぅ!!落ち着け落ち着け 落ち着いて下さいぃぃ」 美琴の肩に右手を置きつつどうにか美琴をなだめると、何故か目がグルグル回って訳が分からなくなっていたのが徐々に回復していく。美琴「…………わ、悪かったわね」上条「いや、わざとじゃねぇんだろ?だったら別に良い……………って全然良くねぇ!!目的地に着くまでに 俺が死ぬ」 上条はややためらってから、美琴の右手を右手で取ると、ハンドルを握らせ、その上を右手で掴んだ。 同時に座る位置を少し前にする。それでも美琴の体が引っ張られる形になるため体は自然と密着した。上条「こ、こうするしかないな。少しくらい我慢しろよ」 怒られるかとも思ったが、これ以外に良い方法も見つからない。 スピードが出て落ち着いてきたら頃合いをみて離せばいいかも、と考えた。美琴「う、うん」 美琴はとっさのことにそれだけしか言えなかった。 頭がおかしくなりそうになりながらも、何とか左腕も上条の腰を抱く。上条(あれ、素直?……………って御坂、何か当たってる!)上条「み、御坂?」美琴「ふぁい」上条「………ま、まぁいいや。それじゃ、行くとしますか」 上条はやや緊張した声でそう言い、ペダルを強く踏んだ。 美琴はまだ不安だった。 さっきの返事が思い切り上擦ったことを変に思われなかっただろうか。とか、未だに速く大きくなる鼓動に気付かれはしないだろうか。なんてことばかりが頭の中を駆け巡る。 しかし、そんな滅茶苦茶な意識にも関わらず、漏電は起こっていない。 右手がまだ上条の右手に握られたままであることに緊張しつつも、少しだけ安堵する。 自転車はどんどん加速して、風が頬を撫でた。 試しに大きく静かに息を吸ってみると、風の匂いと共に上条の匂いが鼻腔をくすぐり、更に緊張が解れて逆にフニャフニャに弛緩しそうになる。美琴(やば………私今変な顔になってるんじゃ?) そう思って顔を隠すように上条の背中に埋めると、余計に顔がにやけるような気がした。 あとどのくらいこうしていられるのだろうか。 ずっとこのままなら良いのにと、心の中で静かに呟いた。
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スーパー彼女のスーパーデート 「頼む美琴! 俺と付き合ってくれ!」出会い頭、上条からそんな事を言われた美琴である。いつものように上条の高校付近で上条を待ち伏せ、上条が下校してきた瞬間を狙って偶然を装い声を掛け、そのまま一緒に並んで帰ろうと画策していた美琴だったのだが、この日は上条から声を掛けられ、力強く手を握られ、そしていきなりの告白である。しかし美琴とて、いい加減に上条の性格と無自覚フラグ能力は熟知している。どうせこの後、「スーパーまで付き合ってくれ」とかそういうオチが待っているのだろうと、冷静に、あくまでも冷静に対処した。「つききつ付きゃ合うってどどどどういう意味にゃのかしらっ!!? それに手とかそんないきなり握って手ぇ握じんわ熱なてっ!!!」まぁ、冷静に対処できてると思うのは美琴の勝手な訳で。あっという間に顔を茹で上がらせ、目も泳がせる美琴に対し、上条は気にせず、美琴の想像した通りの台詞を吐いてきた。「ホント頼む! スーパーまで付き合ってくれ! 今日は卵だけでなく、米やトイレットペーパーまで安いんだ! 丁度どれも切れかけてて困ってたし、買い足そうと思ってた所だったんだよ! でもやっぱりそれらは、お一人様お一つまでだから、 美琴が来てくれるとスゲー助かるんだ! レジに二回並ぶ必要もなくなるし!」やはりである。予想はしていたし、何度も同じ手に引っかかるような美琴でもないので、特にショックを受ける事もなく、普通に、あくまでも普通に対応した。「ああ……うん、分かってたし…そんなの全然分かってたしね…」まぁ、普通に対応できてると思うのは美琴の勝手な訳で。あっという間にガックリと肩を落とし、深い溜息を吐く美琴に対し、上条は気にせず、握ったままの美琴の手をブンブンを上下させた。「うおおおおぉぉおありがとう!!! もう大好きですよミコっちゃんっ!!!」まるで宝くじでも当たったかのような喜びようである。何気に「大好き」とか言ってはいるが、これも『そういう意味』ではないのは明らかだ。なので美琴は冷静に、あくまでも冷s「だだだだだ大好きいいいいいいいい!!!?」もはやコントである。 ◇ここは上条がよく来るスーパーマーケット。ご贔屓にしている理由は、安いからというのも勿論あるが、それよりも通っている高校や自分の住んでいる寮から一番近いから、という方が大きいらしい。上条はいつも通りに慣れた手付きでカートの上に買い物カゴを乗せ、入り口へと足を運ばせる。いつも通りでない所は、その隣に美琴がいる事だけである。「さ~って、まずは青果コーナーからだな」カートをカラカラと押し、上条は目の前の野菜や果物達を見回す。ここでの上条のお目当ては、主にもやしとバナナである。もやしは栄養価が高く基本的にどんな料理にでも合い、そして何より『 安 い 』。バナナはインデックスのおやつ代わりだ。甘くて量も多く、何より『 安 い 』。…何だか胸が切なくなるような理由だが仕方ない。と、上条がそんな事を思っている横で、美琴は全く関係ない事を考えていた。(一緒にスーパーでお買い物……って! も、もも、もしかしてこれって周りから見たら、私達ふ、ふふふ、夫婦っ! とかに見えちゃうんじゃないのっ!!? そ、そんなのちょっとだけ困るんですけど!!!)お互いに学校の制服を着ているクセに何を言っているのかこの子は。よくて恋人だろうに。しかも困るのも『ちょっとだけ』でいいのかレベル5の第三位。勝手な妄想で勝手にアワアワしている美琴は、勝手に周りからの視線が気になってくる。そんな状態なので、ちょっと上条から「おい美琴?」と肩をポンと叩かれただけで、「にゃあああああああああっ!!! な、なな、何っ!!?」と大声を出してしまう。「い、いや…『何?』はむしろ上条さんのセリフだと思うのですが… 急に顔を真っ赤にして周りをキョロキョロしてるんで何事かと思って声掛けただけなのに、 そんなに驚かれるとはこちらがビックリです…」「あっ、いや、その…ちょ、ちょろっとアンタとふ―――」言いかけてハッとした。まさか上条を目の前にして、『アンタと夫婦だと思われちゃってたらどうしようと思って』なんて言える訳がない。「……ふ?」訝しそうな目でこちらを見つめる上条に対して、美琴は、「…ふ………ふにゃー」とりあえず誤魔化し(?)た。もう『ふにゃー』という単語を聞くだけで、条件反射的に美琴の頭を右手で抑えてしまう上条。今回はいつもの気絶する時の無自覚『ふにゃー』ではなく、美琴がこの場を誤魔化す為に行った自覚あり『ふにゃー』なので漏電はしなかったが、スーパーの中【こんなばしょ】で漏電なんかされた日には、上条は最悪出禁になってしまう。「あっぶねー……急にどうしたよ美琴!? ここまでで何かふにゃる要素あったか!?」ふにゃる要素は基本的に上条自身なのだが、そこには気付いていない鈍感野郎上条。今回も当然、分かる訳がない。「い、いや何でもないのよ!!? ただ私とアンタがまるでふ―――」言いかけてハッとした。まさか上条を目の前にして以下略。「……ふ?」「…ふ………ふにゃー」以下、同じ事が数回あるので割愛。 ◇青果コーナーを通り過ぎると、鮮魚コーナーや精肉コーナーが見えてくる。奨学金支給日から数日間となれば話は別だが、今現在は月末の支給日前であり、上条家の主なタンパク源は玉子料理や豆腐や納豆などの大豆製品となる為、ここは素通りする予定だ。…何だか目頭が熱くなってくるような理由だが仕方ない。しかしである。そんな貧b…もとい、苦労話とは無縁のお嬢様は、素通りしようとする上条に疑問を感じちゃったりする。「…? お肉とかお魚は買わないの? ……あっ、そっか! 寮部屋【いえ】の冷蔵庫にストックがあるのね」もうやめて! とっくに上条さんのライフはゼロよ!まさか「おぜぜが足りないの」とは男として、そして高校生【としうえ】としてのプライドが許せず、「そ、そうなんですよ~! 冷蔵庫にまだ余ってたからな~! マグロの大トロと松坂牛!」と大見得を切る上条。そんないらないプライドなど、捨ててしまえばいいのに。しかもナメられないように、できるだけ高級そうな魚と肉をチョイスしたかったのだろう。とっさに出てきた名前がマグロの大トロと松坂牛という、見事な程の安直さである。だが美琴は。「あ~、分かる! 美味しいけど脂っこいから途中からキツくなって、 全部食べきれずに、つい残しちゃうのよね」まさかの分かられてしまった。美琴からの返答に上条は表情を『無』にして、「ソウデスネー…」と呟いた。女の子とはいえ中学生の胃袋でキツくなる程の油というのは、おそらく質ではなく量の問題だろう。つまり美琴は、かなりの頻度で食いきれなくなるくらいの大トロやら松坂牛やらを、どこからか頂いているという事なのだろうか。常盤台ェ…。しかしだからなのか、美琴はスーパーのやっすいやっすいお肉に興味津々だ。100gでギリギリ百円台の豚ばらブロックを見て、「どうやって採算がとれてるのかしら…」とか呟く始末である。常盤台ェ…。そんな中だ。「お一つご試食いかがですかー?」試食販売をしている店員の声が聞こえてきて、上条と美琴は思わずそちらに顔を向けた。食欲をそそる香ばしい匂いと肉が焼けるいい音。その場で焼いたウインナーに楊枝を刺して、店員は周囲の客に笑顔を振りまいている。「せっかくだから食べてみましょうよ」「んー…そうだな」上条としては全く買う気は無いが、試食でお金は取られない。故に上条は、試食は必ず行う事にしている。それが彼の数少ない楽しみの一つでもあるのだ。…もう泣いちゃってもいいかも知れない。「じゃあ、二ついただきます」「はい、どうぞー!」上条は店員が手に持っている小皿から、ウインナーの刺さった楊枝を二本取る。そしてそのまま一本は自分の口に持っていき、もう一本は―――「ん。ふぉら【ほら】、みほほもくひあけへ【みこともくちあけて】」「………え?」もう一本は、美琴の口まで持っていったのである。そう、お決まりの「あ~ん」パターンなのである。「えええっ!!? あ、その、いや…そんな、こ、こここ心の準備的なアレがまだ…」試食一つするだけで、どんな準備的なアレが必要だと言うのか。「もぐもぐもぐ…ごくん! ほれ、とっとと食わんとお店にも迷惑だろ?」「ちょ、待―――」上条は半ば強引に美琴のお口へウインナーを挿入する。字面にすると何だかとても卑猥に感じるが、事実なのでどうしようもない。「どうよ?」「もむもむ……ひょへも【とても】……おいひぃれふ【おいしいです】……」正直、味だの香りだの食感だのを感じる余裕など今の美琴にはなく、真っ赤な顔から煙をモクモクと出しながら、俯いてモソモソと租借している。店員も初々しいカップル(だと思われている)に「あらあらうふふ」と含み笑いしつつも、自分の仕事は全うするべく袋詰め【ちょうりまえ】のウインナーを上条に差し出す。「よろしかったらこち「あっ、すみません。間に合ってますので」らお一ついかが……」しかし食い気味に断る上条。先程「とっとと食わんとお店にも迷惑だろ」とか美琴に偉そうに語っていたが、どちらが迷惑なのかは一目瞭然である。ちなみに、その間に美琴はどうなっているのかと聞かれれば。「あ~んとか…あ~んとかされちゃへへへへへへへへ…」だらしない顔で、だらしない笑いを漏らしていたのだった。 ◇上条は床に手と膝をつけた状態で真っ白になったまま固まっていた。上条の右手に宿っている幻想殺し。それは異能の力ならば、魔術だろうと超能力だろうと打ち消す代物だ。しかしその副作用として、神の加護とやらも無意識に打ち消してしまい、彼は不幸体質となってしまっている。つまり何が言いたいかと言うと、だ。「卵も米もトイレットペーパーも売り切れとか……不幸だ…」こういう事である。彼は今日よりにもよって、お目当ての品だけが買えなかったのである。先程の店員さん目線からすれば、「ざまぁw」ではあるが。しかし美琴は不思議そうな顔を上条に向ける。「…? 何言ってんのよ。卵もお米もペーパーも、腐る程あるじゃない」確かに美琴の言う通り、このスーパーから全ての卵と米とトイレットペーパーが消えた訳ではない。訳ではないが、しかし。「あのなぁ! それらは特売品じゃなくて、通常価格のヤツなの! 俺が求めてたのは、お一人お一つまでの安いヤツで!」「でも、こっちの卵もあっちのお米も、 アンタが買おうとしてたのと味はそんなに変わんないんでしょ? ペーパーだって、こっちの方が使い心地良さそうだし」「味っ!? 使い心地っ!?」上条は愕然とした。誰が味だの使い心地の話などしただろうか。そりゃ上条だって、できる事ならお値段も商品のグレードも、ちょい高めのヤツを買いたいに決まっている。しかし先立つものが無ければ無い袖も振れずフトコロも寂しい状態なのだからどうしようもない。常盤台のお嬢様は、とことんお金に困った事がないらしく、当たり前のように、安いのが無かったら高いのを買えばいいという暴論を振りかざしてくる。きっとパンが無ければ普通にお菓子を食べるのだろう。「いやいやいや! それじゃあ来た意味が…って、おい!」上条が美琴に対して、ちょっとしたお説教を食らわせてやろうとした矢先、美琴は一番高い卵と、米と、トイレットペーパーを買い物カゴに入れてきやがった。「何してんの!!? ちょ、この卵、一個でウン百円とかしてるんですけどっ!!?」これには第三次世界大戦の戦場を潜り抜けてきた上条でも、顔面蒼白にならざるを得ない。だが美琴も、流石に上条がこんなに高い買い物をする訳がない事くらいは分かっている。「な~にテンパってんのよアンタは。それ全部、私が買ってあげるわよ」「………へ? マジで?」「うん。だって無いと困るんでしょ?」アッサリと、それはもうアッサリと肯定する美琴。瞬間、気付けば上条は思いっきり美琴を抱き締めていた。「うおおおおおマジかああああああ!!! もうミコっちゃん超愛してるっ!!!」そして告白。男として、そして高校生としてのプライドどこに落としてきた。ついでに美琴は。「ああああああ愛してりゅとくぁにゃぬぃいべっきゃらのまふぉいむぇぷほぱららい!!!!!」うん。何言ってんのか全然分かんね。 ◇この日、上条(とインデックスとオティヌス)は、高級卵と高級な米で作った超高級卵かけご飯に舌鼓を打ち、高級なトイレットペーパーでケツを拭いた。そして美琴は、終始何かを思い出してはポケ~ッとしたりニヤニヤしたりしていた。しかしそれぞれの部屋で、それぞれの同居人(ルームメイト)に、「ところでとうま! 今日はどうしてこんなに美味しい玉子を買えたのかな!?」「お姉様。何だか今日はとてもご機嫌な様子ですが、何か良い事でもありましたの?」と聞かれ、誤魔化しきれずに結局は不幸な目に遭うのだった。上条一人だけが。
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Daily Life インデックスの乱入もといモーニングコールにより、慌ただしい朝が始まった。 「まったくとうまは。気を利かせて一晩帰らなかったらこれなんだよ」 「上条さんが悪いんですかね?」 インデックスはぷんぷんと頬を膨らませながらお茶を飲んでいる。 上条は朝ごはんの準備としてキッチンで仕事をしており、美琴はインデックスの横で未だにぽーっとしていた。 「みこともみことなんだよ。とうまと仲良くするのはいいけど、私の前であれはあんまりかも」 「っ!?わたた私も、そんなつもりはなかったって言うか、事故って言うか……」 「いいわけするんだね?」 「ごめんなさい」 美琴が諦めたように頭を下げるのを見て、インデックスは溜息をつく。 「で、とうま。今日はどうする予定なの?」 「どうって、飯食ったら空港行ってお前ら見送るんじゃねぇか」 上条はテキパキと手を動かして卵焼きを焼いている。 「その後なんだよ。みこととデートするんじゃないの?」 「デート、っつってもなんも考えてねぇ」 「ノープランなんだね」 昨日の夜に決まったところだからな、と上条は言いながら味噌汁を注いでいる。 「美琴、どっか行きたいところとかあるか?」 「んな、私にふるの?そこは男がエスコートするもんでしょうが」 美琴はビリビリと頭の周りに飛ばしながら叫ぶ。顔を赤くしていたり上条にも分かるくらいに照れていた。 「行きたいところっつてもなぁ……思いつかんのですよ」 「アンタが……ど………いっん」 「はぁ?そんな小せぇ声じゃ聞こえねぇよ」 「アンタが……当麻が行きたい所なら、どこでも、いい」 美琴は上条に背を向けると、ぶつぶつと何かを呟いてる。隣にいるインデックスは勝手にしてくれとでも言いたげな顔だ。 「………んー。と言われましても、上条さんは寧ろ家でゆっくりしていたいと言いますか何と言いますか…」 上条が卵焼きの乗った皿を運んで行くと、美琴は肩を落としてブルーになっており、インデックスはその肩をぽんぽんと叩いている。 「あれ、美琴?インデックス?どうした?」 どうしてそんなにブルーなんですか、と上条が言うと2人は大きく溜息をつく。インデックスにいたってはやれやれと首をふっている。 「これからも苦労しそうだね、みこと」 「私、選ぶ相手間違ったかな………」 「悩みができたらいつでもで連絡していいから」 「ありがとう、インデックス」 2人はひしっと抱き合う。上条はガラステーブルに朝ごはんを用意して固まっていた。 「お前ら、本当に仲良くなったよな。つか、そもそもどうやって仲良くなったんだよ?」 「ん?それは、ね」 そう言うと、インデックスはぽつぽつと語り始めた。 2人の馴れ初めは、美琴が上条宅に通う事になった2回目の月曜日である。 女同士で話があると言って上条を部屋から追い出し、ガラステーブルで向き合って話し合ったのだったのだ。 「ねぇ、短髪。短髪ととうまはどういう関係なの?」 「それはコッチのセリフよ。アンタこそあの馬鹿とどういう関係なのよ?」 「私はとうまに助けてもらって、それからここで住ませてもらってるんだよ」 「なんだ、アンタも助けてもらったってやつか」 美琴は上条の相変わらずの部分に呆れて肩をすくめる。美琴の言葉にインデックスも察したようで同じような顔をしていた。 「そういう短髪もとうまに助けてもらった人?」 「そうなるわね。頼んでもないのに首を突っ込んできて一方的に助けてもらった感じかな」 「むぅ。やっぱりとうまはとうまなんだね」 「そ、アイツは誰にでもあんな奴なのよ」 2人はさっき外に追い出した上条の性格を思い出し、もう一度溜息をつく。全く同じタイミングに出た溜息に2人は見つめあう。 「ぷっ、はははっ……アンタも大変よね」 「あはははっ……短髪も苦労してるんだね」 あの馬鹿のせいよね、と言いながら2人は笑いあう。同じ苦労を知る者として通じる部分があったのだろう。 「で、さ……1つ聞いてもいい?」 「なにかな、短髪」 「アンタも、その………なんていうかな……」 美琴は目線を合わせないまでも、チラチラとインデックスを見る。 「短髪、言いたいことはハッキリ言わないと分からないんだよ」 「そうね………」 美琴は大きく深呼吸をすると、両頬を手で叩く。 「アンタも、アイツの事、好きなの?」 「………うん」 「そっか………」 「短髪も?」 「………うん」 最初のトゲトゲした空気から一転、恋する乙女2人によるむず痒い空気が部屋に広がっていた。 「私たちは、ライバルってやつなんだね」 「そうね、恋敵ともいうわね」 「負けないんだよ」 「もちろん。私だってそう簡単に譲るつもりはないわ」 インデックスは小さな両手をぐっと握りしめ、美琴は両腕を組むとふんっと鼻を鳴らす。 「じゃぁ、仲良くしないとだね」 「はぁ?」 インデックスは右手をスッと出すと美琴を見る。握手を求めているようだ。 「……ライバルじゃないの?」 「ライバルは友達になるもんなんだよ」 インデックスは可愛らしく笑うと、無理矢理に美琴の手を取って握手をする。 「アンタに教えられるとはね。私もまだまだだわ……………でも、友達でも容赦はしないわよ?」 「望むところなんだよ。恨みっこはなしだからね」 美琴はインデックスの手を握り返すと、目の前で微笑むシスターに笑い返す。 「じゃぁ、まずは名前で呼んでよ。短髪じゃなくてさ………美琴、って」 「わかったよ、みこと。私の事もインデックスって呼ぶんだよ」 「んっ、よろしくね、インデックス!」 「こちらこそなんだよ」 「なるほど、そんなことがあったんですね」 「結局、私は負けちゃったけどね。だから、とうま、みことを泣かせたら許さないんだよ」 「はいはい、わかってますよー。上条さんは、すでに1万人近くと同じ約束してます」 3人は上条の用意した朝食を食べ終えて空港に向かう準備をしている。インデックスの持ち物はあまりないため、それほどバタバタすることもない。 「みこと、元気ないね。どうしたの?」 「んー、アンタと仲良くなれてあんまり経ってないのにもうお別れか、と思ってさ」 「むむむ。そう言われるとなんか急に寂しくなってきたんだよ」 インデックスは荷造りの手を休めてぺたんと座りこむ。 「このベランダでとうまと出会ってから……まだ半年くらいなんだよね」 色んな事があったからもっと長く感じるんだよ、と振り返る。本当に色んなことがありすぎた。 「毎回毎回、とうまは無茶するし、私を頼ってくれないし。心配もいっぱいしたんだよ!」 「それに関しては言い訳のしようもねぇ……」 インデックスに睨まれ、上条は頭を掻く。美琴はそんな2人を見ると微笑ましいような、羨ましいような不思議な気分になった。 「ほんと、アンタら仲いいわね。ちょっと妬けるわ」 「むー。それは私へのあてつけかもしれないんだよ」 インデックスは頬を膨らませながら美琴の背中をぽかぽかと叩く。 「ごめんごめんっ、そんなつもりじゃないって」 いたいいたい。もんどうむようなんだよ。と仲良し姉妹のようにじゃれあう2人を見て、上条は頬を緩ませた。 「なんかさ、俺は家族で過ごした記憶ってのが無いわけだけど……」 上条は呟く。『竜王の殺息』によって失った、家族との記憶。それは上条にとって想像すらできない。 「こんな感じなんかな、って思うんだよな。お前らを見てると仲良しの妹2人を見る兄貴みたいな気分だ」 微笑ましいものを見る目をしている上条に、じゃれあっていた2人は白い目を送る。 「な、なんだよ、その目は」 「………アンタが兄貴ってのもなんだわね」 「ちょっと頼りないかも」 「あ、あんまりだ………」 上条はずーんと肩を落とし、いじいじと床にのの字を書く。 (ちょっと良い事言ったつもりだったのに………不幸だ) 「ねぇ、とうま。私にも家族っていうのがどんなのか分からないけどね」 インデックスは上条の隣まで来ると、ちょこんと座る。 「それでも、とうまのことは家族だと思ってるよ。お兄ちゃんとは呼べないけどね」 インデックスは悪戯っぽく舌を出すと、荷造りに戻っていった。 「じゃぁ、私とも家族になるわね。インデックス」 美琴は頬を染めつつ、荷造りをするインデックスの背に呼び掛ける。インデックスは『友達じゃなくて?』とかいた顔だけ美琴に向ける。 「そそそ、そりゃ、あれよ………わたっ、私と、当麻が……けけ結婚すればそう、なるでしょうよ」 「…………」 「…………」 顔を真っ赤にしている美琴を、2人の無表情な視線が突き刺さる。美琴の顔はその間もどんどんと赤くなっていく。 「み、美琴?今のはプロポーズでせうか?」 「こんなに惚気るなんて、とうまよりもみことの方が厄介かもしれないんだよ」 「だぁぁぁぁっ!!今のは忘れなさい!!」 顔を真っ赤にした美琴が帯電を始める。上条はその頭に右手を置き、インデックスに荷造りが済んだことを確認する。 「あとはスフィンクスを持つだけだよ」 「じゃぁ、そろそろ行きますか。美琴、ビリビリしてねぇでキャリーバック持ってくれ。」 上条は腰を上げると、インデックスの荷物を持ち玄関に向かう。顔を赤くしたままの美琴が持っているネコ用キャリーバックの主であるスフィンクスはインデックスの手の中だ。 「ここに来るのも最後かな?」 「何言ってんだ、いつでも遊びに帰ってこい」 「そうよ。私もアンタと一緒に遊んでみたいしね」 「うん。ありがとう、とうま、みこと」 3人は玄関を出ると仲良く空港に向かう。本当の家族のように。 第23学区。学園都市の空港がある学区だ。 上条たちはその空港で出発時間まで待っているところだ。 「搭乗手続きも終わったし、あとはのんびり待ってるだけだな」 「そうねー、アンタ、他の人には挨拶しなくていいの?」 飛行機の見える待合室の椅子に上条と美琴は隣り合って座っている。インデックスは神裂らとお土産を物色中だ。 「挨拶って言ってもな……ずっと一緒だったインデックスは別として、他の奴らは有事でしかあってねぇし」 「ふーん。アンタのことだから仲の良い女の子だらけかと思ってたけど」 「上条さんをどんな人間だと思ってるんですか?」 「別に、なんでもないわ」 美琴は上条の鈍感さに呆れ、なんとなく目線を背ける。いつか見た二重まぶたの少女がこっちを見ている。 「ねぇ、当麻。あの子、ほっといていいの?」 「あん?…………五和か、どうしたんだろ」 こっちきたらいいのに、と呟く上条に、美琴はもう何度目かわからない溜息をつく。 (この鈍感さは、もはや罪ね。苦労しそうだわ) 美琴はもう1度こっちを窺っている少女に目を向ける。ちらちらと上条と美琴に向けている顔には色んな感情が見て取れた。 美琴は上条の手を取って立たせると、キョトンとしている上条の背中をパシンと叩く。 「いってぇな、いきなりなんだってんだよ?」 「行ってあげなさい」 「で、でもよ……お前を置いてくわけは……」 「いいから。行って、話を聞いてあげなさい」 上条はしぶしぶとした顔で五和の方へと歩いて行く。美琴はもう一度溜息をついた。 (なんで私がフォローしなきゃいけないのよ) 美琴は上条が自分を気にしてくれていた事に喜びながら、何かを話している2人を見る。 頬を染めながら何かを話している少女。その目は明らかに恋する乙女のそれだ。 五和は傍から見ても一発で分かるような初心な反応を示しているのに、上条は気にする様子もない。 美琴が頬杖をつきながら見ていると、走り回っていた子供が上条にぶつかった。子供は特に気にする様子もなく走り去ったが、問題はぶつかられた上条である。 上条の顔が五和の特大オレンジに突っ込んでいた。いつかも見たような光景だ。 (あの、馬鹿っ) 自分でも帯電しているのがわかる。雷撃の槍をぶっ放しそうになるのを必死に堪える。近くにいた人がびっくりしていた。 慌てて離れて謝り倒す上条に、顔を真っ赤にした五和はぶんぶんと首を振っていた。 (あーあ、あんなに鼻の下を伸ばして……やっぱり大きい方がいいのかしら) 美琴は自分の胸を見てボリュームの少なさに落胆する。 (ちょっと癪だけど、聞いてみようかしら) 自分の母のプロポーションを思い出し、相談してみようかと考える。 そんなことをすれば『そんなの上条くんに揉んでもらえばいいのよ。美琴ちゃんがお願いすれば聞いてくれるって』とか言うに決まっている。 (まぁ、私としては……別にアイツに揉まれるのは……って何考えてんのよ) 美琴は妄想で顔を真っ赤にした。実はそんな事件は今日中に起こりうるんじゃないか、とかも思っていたりする。 因みに、この胸のコンプレックスを解消しようと、美琴は色々と努力を積んでいる。 某風紀委員の先輩の飲んでいる牛乳も飲んでみたし、某警備員みたいに肉まんを沢山食べてみたりもした。 半年前と比べたら少しは大きくなった気もしたが、その分体重も増えた。減量を試みると真っ先に胸が犠牲になったりもした。 自分で胸を触ってみる。オレンジみたいな大きさのは触ったことが無いが、自分のみたいに可愛らしい感触ではないだろう。 (あいつも大きいのがいいのかな) ほぅ、と溜息をつく。そういえば、上条の周りには胸の大きい人が多い気がする。 「お前、なにやってんだ?」 「にょわああああああああぁぁっ!?」 いつの間にか上条が隣に戻ってきていた。美琴は驚きのあまり、さっき我慢した雷撃を打ちこむ。もちろん打ち消されてしまうのだが。 「アアアアアアアアアアンタ、いつのまにぃぃぃ!?」 「いや、戻ってきたら美琴が自分の胸見て溜息ついてたとこで戻ってきたんだけど……見られたらまずい事でもしてたのか?」 目を丸くしたまま困り顔の上条は美琴の隣に座る。美琴は『うわぁぁぁ』とか言いながら頭を抱えている。 そんな様子を見て、上条は首を傾げるしかできなかった。 「あー、美琴さん?大丈夫でせうか?」 「…………」 「美琴さん?」 美琴は頭を抱えたまま固まっている。上条はどうしたもんか、腕を組んで悩む。 「………………ねぇ、当麻。1つ、聞いていい?」 「なんだよ?」 「当麻は、胸が大きい方が好き?」 上条はぶぅっ、と吹き出し一気に顔を赤くする。お茶を飲んでいなくて良かった、と上条は思った。 「んなっ、いきなりなんだ?どっから沸いた疑問だ、そりゃ?」 「…………」 美琴は答えない。答えられない、と言った方が正しいのか、きゅっと口を閉めて上条を見ている。 「………美琴?」 「……………」 何も答えない美琴の両頬に手をやり、上条はむにぃと引っ張る。 「っ!?にゃにふんにょよ」 「くっだらねぇ事で悩んでんじゃねぇよ」 上条は両手を離すと、今度は右手で美琴の頭をわしゃわしゃと撫でる。 「俺は御坂美琴が大好きだって言ったじゃねぇか。それじゃダメなんかよ?」 「………」 「そりゃ、あれですよ。上条さんも年頃の男の子ですから女の子のそういう部分に興味が無いわけではないです。むしろアリアリですけどね」 「………」 「でも、そんなもん全部無視して、俺は美琴が好きなんだよ。むしろ、美琴の胸が好きっ!?」 全てを言いきる前に、美琴の拳が上条の胸に突き刺さる。上条はいってぇと言いながら微笑んでいた。 「元気でたかよ?」 「………ばか」 美琴は頭を撫でられながら、どこか満足そうに微笑み返す。 上条はそんな美琴から手を離すと腕を組んでニヤニヤとした顔で美琴を見る。 「ったく、美琴せんせーもそんなこと気にするんですねぇ」 上条の手が離れて少し名残惜しそうな美琴はほんのりと涙を浮かべている。ぷぅと膨れている表情も可愛くて仕方がない。 「アンタが悪いのよ」 「俺が?」 「アンタがあの子の胸に飛び込んでニヤニヤしてるから悪いんでしょーがっ!!」 ビリビリィ、と至近距離で電撃を飛ばされ、上条は慌てて右手をかざす。 「いきなりはやめてくれ、ほんと。間に合わなかったら痺れるんですよ?」 「ふんっ、アンタの行い次第ね。で、さっきの話はなんだったのよ?」 美琴はプイと顔を背ける。相変わらず素直になれない美琴であるが、実のところ上条が五和と何を話していたのか気になって仕方なかったのだ。 「別に大した話はしてねぇよ」 「嘘ね。どうせまた告白でもされたんでしょ?」 「な、なんでわかったでせうか?」 上条は『なんだってぇぇっ』くらいに大げさに驚く。 (ほんと、なんでここまで鈍感なのかしら。見てたら誰でもわかるでしょ) ネタでやってるんじゃないかと思うくらいの鈍感さに呆れを通り越して物も言えない。 「で、なんて答えたのよ?」 「言わなきゃいけませんか?」 美琴は何も言わずにじっと睨みつける。上条は暫く悩んだ後、諦めたように口を開く。 「まず初めに『あの人とはどのような関係ですか?』って聞かれてな。恋人だ、って答えた」 「うん」 「で、『それでも私があなたを好きなのは変わりません』って言われちまってよ」 「そんで鼻の下伸ばしてたの?」 「馬鹿野郎、んなわけねぇだろ。気持ちは嬉しいけど、俺は美琴のことしか想えねぇって言ったよ、ハッキリな」 上条は顔を背ける。珍しく耳まで赤くなっている。 (本人前にして言う様なセリフじゃねぇぞ) 本人を前にしなくても十二分に恥ずかしいセリフなのだが、美琴中毒気味の上条は気付きもしない。 「ふ、ふ」 「ふ?」 「ふにゃぁぁぁ」 「またこの展開か、こんにゃろぉぉぉぉぉっ!!」 ぴんぽんぱんぽーん、と小気味いい音が館内に響く。 『11時45分発、イギリス行きの搭乗時刻となりました。お忘れ物の内容にご搭乗お願いします』 アナウンスが流れる。とうとう時間となった。 「とうま、みこと、それじゃぁ一旦お別れなんだよ」 「あぁ、あんまし迷惑かけんじゃねぇぞ」 「イギリスに行っても元気でね」 搭乗ゲートの前で上条はインデックスに荷物を渡す。 「インデックス、私が持ちましょうか?」 「ううん、自分で持つよ。ありがとうね、かおり」 そうですか、と神裂は自分の荷物を抱える。相変わらずの格好であるが、『七天七刀』を袋に入れてあるだけマシだろうか。 「神裂も元気でな。あんまりエロい格好で出歩くなよ、お前なら襲われても負けねぇとは思うが……」 「んなっ!?べ、別にエロい格好などしていません!最後に言うのがそれというのはあんまりではないですか、上条当麻」 「はははっ、気にすんなよ。俺としては最後ってつもりもねぇし。会えなくなるわけじゃねぇだろう?」 それはそうですが、と歯切れの悪い神裂に後ろから建宮がボソボソと何かを言っている。 みるみる内に神裂が赤くなり、聖人の力をフルに利用した拳が建宮の顔面に突き刺さる。ものすごい勢いでゲートをくぐり、搭乗タラップに飛んで行った。 「ねぇ、インデックス、あの人大丈夫なの?」 「いつものことだから気にしなくてもいいんだよ。むしろ、かおりの力に驚かないみことが凄いと思う」 「ツッコミどころが多すぎるわ、アンタら」 世界は広いわね、と美琴は目を丸くしてぷんぷんとゲートをくぐっていく神裂を見ていた。 天草式のメンバーもゲートをくぐり終え、残るはインデックスとステイルのみである。 「ステイル、インデックスの世話、しっかり頼むぜ」 「まったく君はこの子を馬鹿にしすぎじゃないかな?1人でも色々と出来るようになったんだろう?」 「そうだよ。掃除もご飯もだいぶ出来るようになったよ」 あとは洗濯だけだもん、とインデックスが膨れる。 「そうだな、悪い。インデックス、ステイルの世話、しっかり頼むぜ」 「任せるんだよ!」 「っ!インデックス、君まで僕を馬鹿にするのか?」 ステイルは生活能力が無いと馬鹿にされた事を憤る。まさかインデックスにまで馬鹿にされるとは思わなかったのであろう、心なしか悲しそうだ。 「ステイル、全部私が教えてあげるんだよ。洗濯は修業しなきゃだけどね」 「……むむむ」 インデックスににっこりと笑いかけられ、ステイルは何も言い返せずに搭乗ゲートをくぐって行った。 「もう、お別れだね」 「インデックス、いつでも帰ってきなさいよ」 美琴はインデックスの手を握るとぶんぶんと振る。強がった口調とは裏腹に2人の目には涙が浮かんでいる。 「さっきも神裂に言ったけどよ、会えなくなるわけじゃねぇんだし。お前が困った時はいつでも飛んで行ってやるからよ」 学園都市の超音速旅客機に乗れば一瞬だしな、と上条は続ける。 「そんときは私も駆けつけてあげるから」 うん、とインデックスは頷く。搭乗タラップから神裂の『もう時間ですよ』という声が聞こえてくる。 「じゃあね、とうま、みこと。バイバイ」 「うん。バイバイ、インデックス」 「………違う」 「とうま?」 「どしたの、当麻?」 インデックスと美琴は心配そうに上条の顔を覗き込む。 「違うぞ、インデックス。ここは『行ってきます』って言うところだろ」 家族が出かけるんだからな、と上条は言う。キョトンとしたインデックスの横で美琴はくすっと笑うと、上条の言葉に続ける。 「そうね。アンタはちょっとお出かけするだけなんだから、私も言い直さないとね。行ってらっしゃい、インデックス」 「……今度帰ってきたら、『ただいま』って言うんだぞ!行ってらっしゃい、インデックス」 上条と美琴は、涙を浮かべながらインデックスの手を握る。インデックスはそれに応じるかのように微笑んだ。 「うん。行ってきます、みこと、とうま。結婚式には呼んでくれないと怒るんだよ!」 ぎゅっと手を握り返すと、インデックスは搭乗口に駆けて行った。 上条と美琴は空港の展望ブリッジにいる。インデックス達を乗せた旅客機はその高度をあげ、どんどんと小さくなっていく。 「行っちゃった、ね」 「あぁ」 美琴と上条は小さくなる機影を眺めている。さっきまで目の前にあった旅客機は既に豆粒のサイズになっている。 「寂しくなるわね」 「そうだな」 機影が完全に見えなくなり、青い空には雲だけが浮かんでいる。 「さ、美琴せんせー。しんみりとした空気もここまでだ!デート行くぞ―」 「ちょっと、アンタ!そんな大声で言わないでよ」 行くぞ―、と上条は美琴の腕を掴むとずんずんと歩いて行く。 美琴はそんな積極的というか、自暴自棄にも見える上条の隣まで追いつくと、その腕に思いっきり抱きつく。 「っっ!?」 「あらぁ?そんなに驚いてどうしたのかなぁ?」 美琴は流し目で上条を見る。上条としては腕にあたる柔らかい感触にドギマギしているところだ。 「みみみ、美琴さん?色々と当たってるんですど?」 「当麻は大好きなんでしょ?私の胸」 ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。上条はちくしょう、と歯噛みしなるべく腕を意識しないように歩く。 傍から見れば初々しいバカップルにしか見えず、クリスマスでもなければ呪い殺されそうだ。 「で、結局、何処に行くのよ?」 「あー、どうすっかなぁ……」 上条は何気なく観光案内の掲示板を見る。外部からやってきた人用に掲示されている物だが、中の人が見ても困ることはない。 むしろ、行き先に困っている上条達にはおあつらえ向きと言ったところか。 「んー、どうせならクリスマス限定、みたいなところがいいよな」 「そうね……夕食も美味しいとこ予約は、間に合わないかなぁ」 「電話するだけしてみりゃいいだろ」 上条はレストランリストの紙を取ると美琴に手渡す。迷うには十分の量がリストアップされていた。 「んー、よし。こことかいい感じだな」 上条は掲示されたポスターを見ながらデートプランを考えると、レストランリストに目を通している美琴を促し空港を出る。 「取りあえず、夜まではその辺を歩くか。クリスマスプレゼントも用意してねぇし、見に行くか」 そうね、と言い美琴は上条の右腕に抱きつく。 「でも、行くとこ決まったんじゃないの?」 「夜中のイベントなんですよー。晩飯食ってからだな」 「私には門限あること忘れてない?」 「守る気もねぇんだろ?」 上条は美琴が見ていたリストを眺めながら駅を目指す。別の学区に移動しなければ、23学区には空港くらいしかない。 「あーあ、優秀な美琴ちゃんが当麻のせいで悪い子になりますよー」 「じゃぁ、デートはやめて帰るか?送ってくぞ?」 なんなら一緒に寮監さんに謝ってやる、と上条が言うのを聞き流し、美琴は上条に身体を寄せる。 「ううん。言ったでしょ、インデックスが羨むくらい思いっきり楽しんであげましょ」 美琴は満面の笑みを浮かべると、上条の腕を引くように駅へと向かった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Daily Life
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小ネタ 上条「よう御坂。何してんだ」美琴「天気もいいし、ちょろっとブラブラしてただけ」上条「平和だな。こんな日が長く続いて欲しいもんだ」美琴「アンタこそどうしたの。その荷物、野球の道具よね」上条「ああ、こないだ授業で使った学校の備品。無断で借りてきちまった」美琴「ふうん。草野球でもやるつもり?」上条「試合は人数が揃わねぇよ。ただのキャッチボールだな」美琴「壁を相手に?」上条「カミジョーさんにも友人は居ます。約束の時間は過ぎてんのに、まだ来ねぇけど」美琴「だったら、暇潰しに少し付き合ってあげる」上条「おいおい。ちゃんと投げれんのか?」美琴「私の運動神経、舐めるんじゃないわよ。すぐに覚えてみせるわ」上条「要は未経験なんですね。本当に大丈夫かよ」美琴「ぐだぐだうるさい。それとも電撃の的になりたい?」上条「デッドボールは結構です! まあいいか。川原に降りるぞ、汚れても知らねぇからな」美琴「グローブ借りるわね。――でかっ」上条「そりゃファーストミットだ。こっちの方が合わねぇか?」美琴「あ、ぴったり。これって子ども用?」上条「寮の押入れから出てきたんだ。ガキの頃に使ってたんじゃねーかな」美琴「アンタの……。そっか、記憶が」上条「年季が入ってるから、ちょっと汚ねぇけど」美琴「ううん。気にしないわよそんなの」上条「いきなり投げねぇで軽く準備運動しろよ」美琴「そっちもね!」美琴「死ねーっ!」上条「物騒な掛け声だな。その割に手投げだし、山なりじゃねーか」美琴「どうやるの?」上条「手首のスナップを利かせるんだよ。ほらこんな感じ」美琴「よし。死ねーっ!」上条「うん、まずはその声をやめような」美琴「なかなか上手くいかないわね……」上条「投げるのはともかく、しっかり捕球できてる。筋は悪くないぞ」美琴「手首を返して、こう!」上条「そう上達を急ぎなさんな。キャッチボールはのんびりやるのがいいんですよ」美琴「うー。じゃあ、しばらくこのまま続けて」上条「はいはい。疲れたら言ってくれよ」 上条「♪ 夏の朝にキャッチボールを」美琴「何よ、その歌。とっくに秋だけど?」上条「古い流行歌だよ。今日の言いだしっぺに布教されて、気づいたら口ずさんでるんだよな」美琴「へえ。いい曲みたいね、誰かさんの音痴は置いて」上条「♪ 幸せになるのには別に誰の許可もいらない」美琴「アンタが歌うと切実に聴こえるわ」美琴「たまにはこんな風に身体を動かすのも悪くないわね」上条「俺は御坂とゆっくり話せて驚いてるよ。ボールを遣り取りしながらだと話題も弾むもんだな」美琴「会話はキャッチボールって喩えがあるわね。……普段の私は話にならないって皮肉?」上条「そんなんじゃねぇよ。動作と言葉のテンポが噛み合ってて、悪くねぇなってさ」美琴「別にいいけど。ところで野球の表現もかなり際どいわよね。盗む、刺す、殺すとか」上条「意図的に危険球を混ぜるのはやめてください。汗が冷たくなっちまう」上条「随分、上手くなってきたな。この短時間に大したもんだ」美琴「ふふん。少しは見直した?」上条「言ってる傍から暴投すんな! 投げ方が様になった分、取りに走るのキツいんだって」美琴「あっ、川! 落ちちゃう急いで!」上条「こなくそ、届け!」美琴「あ、あー! あと少しだったのに」上条「上手い具合に橋のたもとに引っかかってる。その辺に長い棒状のモノはないか」美琴「替えのボールは?」上条「一個しかねぇんだよ。よし、この枝で何とか。御坂は俺が落ちねぇように支えててくれ」美琴「もう前振りにしか聞こえないんだけど」上条「言うな! いいか、俺の手を離すなよ。絶対に離すんじゃねぇぞ」美琴「う、うん。さらっと恥ずかしい台詞……。手も繋いじゃってるし……」 ビリッ上条「――あのタイミングで漏電は勘弁してください。びしょ濡れじゃねーか」 フコウダ美琴「ご、ごめんなさい」上条「悪気はなかったみたいだし気にしてねぇよ。けどこれでお開きだな、ボールもねぇし」美琴「うん。……今日は楽しかった。風邪引かないでね」上条「そっちも身体を冷やすなよ。そうだ、御坂」美琴「なに?」上条「これやるよ」美琴「アンタが使ってたグローブ……」上条「いまの俺にはサイズが合わねぇし。お前もせっかく上達したからさ」美琴「あ、ありがと。大切にする」上条「じゃあな中島。今度も野球やろうぜ」美琴「またね磯野。晴れたら次の日曜日に」おわり
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/シークレットメッセージ 一端覧祭を数日後に控えたとある日。 一端覧祭用の資材をホームセンターで購入し、教室に戻ろうとする上条を、美琴が呼び止めた。門の前にいたところを見ると、わざわざ上条を待っていたらしい。 「ねぇ、ちょっといい?」 「こっちも一端覧祭の準備で忙しいんだが……何だ?」 この材木やら釘やらを急いで持って帰りたいんだがなぁと思う上条。しかし、どうも美琴の様子が変なので、一応話を聞いてみることにした。 「アンタにね、見てもらいたいものがあるのよ。忌憚なきご意見を承りたい、って奴?」 「……はぁ。忌憚なきご意見、ね。まぁいいけど、それってここでか? 電話じゃダメだったのか?」 「アンタ携帯切りっぱなしだったでしょ。全然つながらないんだもん」 キタンナキゴイケンってなんだ、それって日本語か? とツッコミたくなるが、藪蛇になりそうなので上条はあえて口をつぐむ。所在なげに視線をさまよわせていた美琴が、意を決したように顔を上げた。 「えーと、ちょっと大がかりなんでここじゃ無理かな。……アンタの部屋を借りたいんだけど、いい?」 「俺の部屋? 何で」 「……つべこべ言わずに貸しなさい」 上条を含む周囲の気温が、急に二度ほど下がった。 「何で頼まれてる俺がすごまれなくちゃならないんだよ……」 「急ぎの話なんで今日の夜アンタんち行くから、住所教えなさい」 「今夜? ……今日は完全下校時刻まで大道具の組み立てやってるから、その後だったらまあかまわないけど」 それを聞いて、美琴がぱっと表情を明るくする。キタンナキゴイケンとやらは、そんなにも重要なものなのだろうか。 「ホント? じゃ、だいたいの様子見てアンタんち行くから、それじゃね」 美琴は上条から寮の住所を聞き出すと、バイバイと手を振り駆けだしていった。 「はぁ、何か嫌な予感がするけど……もう約束しちまったしなぁ。とりあえず大道具作りに専念しますかねぇ」 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 上条が寮に帰ると、入り口で美琴が待っていた。 「何だ、部屋の番号教えたんだから部屋の前で待ってりゃ良かったのに」 「そうしようかと思ったんだけどね」 上条の言葉に、何故か苦笑いを浮かべる美琴。彼女は常盤台中学指定のドラムバッグを肩から提げていた。 「それが例のキタンナキゴイケンか?」 「あ、うん、そう」 「確かにずいぶん大がかりだな。俺の部屋で広げられんのか、それ?」 「着替えるスペースを貸してくれれば大丈夫。たまたまこのバッグに入れてきただけだから」 「は? 着替え?」 「い、いいからさっさと行く!」 美琴は上条の手をつかみ、エレベータ前まで引っ張っていった。上条は『何だコイツ、照れてんのか?』と思い、即座にその考えを打ち消した。 (コイツに限ってそんなことあるわけねぇだろ) 「んじゃ上がれよ。ちらかってるけど」 「おじゃましまーす……」 上条は玄関のドアを開け、美琴を迎える。上条の後に続いて部屋に入った美琴は、周囲をきょろきょろ見回した。美琴には、一人暮らしの部屋が物珍しいようだ。 「常盤台の寮より狭いだろ?」 「アンタは一人暮らしで、必要なものが全部部屋に詰まってるんでしょ? じゃあこんなものじゃない?」 私の所は相部屋だし、キッチンはないしねと美琴が続ける。 「んで? ここで何すんだ?」 「えーとね……さっきも言ったと思うけど、着替えたいんだけど場所貸してくれない?」 「……ロボにでも変形すんのか? 大がかりって言ってたけど」 「んなわけないでしょ!」 美琴の額から青白い火花が飛ぶ。 「待て! ここで電撃を使うな! また家電が総取っ替えだなんて冗談じゃない!」 着替えならそっちのユニットバスを使え、と上条が指さす。 「ん、ありがと。……のぞくんじゃないわよ」 「死んでものぞかねぇよ!」 美琴の睨みを、上条は手を振っていなす。何で部屋に押しかけられてこんな目に遭うんだよと上条は思う。……世の中理不尽だ、と。 「……よし」 上条がのぞいていないことを確認して、美琴はドラムバッグの口を開けた。 「見てなさい。びっくりさせてやるんだから」 美琴は中に入っていた服を取り出し、広げてにんまりと笑う。 「……でも似合わないって言われたらどうしよう……」 直後、がっくりと肩を落とす。浮いたり沈んだり、美琴は美琴で忙しい。 「お待たせ。見てもらいたいのは……これなんだけど」 「あー、着替えとやらが終わったか…………って、ええええええええええ?」 ドアが開いて着替え終わった美琴が出てきたのを見て、上条は硬直した。 「……これ、どうかな。一端覧祭で着るんだけど」 「ど、ど、ど、どうって…………」 美琴が身にまとっているのは 「ミニスカエプロンドレスにヘッドドレスにオーバーニーソックス……?」 「あー、えっと、うちのクラスで喫茶室やるって話はしたわよね? その時にこれを着るんだけど……どう? 似合う?」 上条は、床にへたり込んだ体勢のままベランダのガラス付近まで後ずさる。 「ちょっと……何よその態度は。人が恥ずかしい思いしてこの格好してるんだから、何とか言いなさいよ」 「に、似合う。とても似合うすごく似合う。可愛いかもしんない」 上条は首を縦に何度も振る。 「本当に?」 「本当に」 「お世辞じゃないわよね?」 「心からそう思ってる。……お前がこう言う服を着るとは思わなかったんで、最初びっくりしたけどな」 その言葉に、美琴がほっとした表情を浮かべる。次いで、上条の前でくるりと回ってみせた。 「これ自分で縫ったんだけど、どうかな。変じゃない?」 「手縫いかよ。気合い入ってるな。けどよ、似合う似合わないなら、それこそクラスの連中と見せ合えば良かったんじゃねーの?」 「女の子同士だと、わーわーきゃーきゃーであまり指摘してくれないからね。どっちかって言うと自分重視?」 「白井は? アイツ結構シビアな意見くれそうだけど」 「黒子は『お姉様でしたら何を着ても似合いますもの』で参考にならないの。……まぁ、そういうことで、男性の目から見た意見が欲しかったのよ。アンタなら遠慮なく言ってくれそうだしね」 衣装のせいか、美琴がもじもじしている。多少は気恥ずかしいところがあるのかもしれない。 「……これ着てお前が接客すんのか?」 「そう、喫茶室だしね。といっても、七日間ずっと出ずっぱりってワケじゃないけど」 「ふーん。…………他の男に見せるのは惜しいな」 「え?」 「いや何でもない気にするな俺の脳が電波を受信しただけだから聞かなかったことにしてくれごめんなさい!」 美琴のパンチが飛ぶ前に、上条は素早く土下座にシフトチェンジした。そのまま平身低頭して嵐が過ぎるのをまだかまだかと身構えていたが、待てど暮らせど雷が落ちる様子はない。上条がおそるおそる頭を上げると、美琴は心ここにあらずといった調子で、そわそわと落ち着きなく自分の指を絡み合わせていた。 「あのー、御坂さん?」 「な、何?」 「怒らないのでせうか?」 「何が?」 珍しいことに、上条の失言について美琴は腹を立ててはいないらしい。何だか知らないけどラッキーと喜んだ上条は、気になった点を指摘することにした。 「ああそうだ。お前気づいてないと思うけど」 「?」 「その服装であんまりくるくるしない方が良いぞ?」 「何で?」 「……気づいてないのか?」 「何が?」 「お前短パン履いてないだろ。スカートの奥の白いものが丸見えぐぼあぎゃぁっ!?」 直後、羞恥で頬を真っ赤に染めた美琴のローキックが、過たず上条の側頭部に叩き込まれた。 美琴は寮への帰路を急いでいた。 先ほどの上条の一言を思い出すたびに、上条に見られたという恥ずかしさが美琴の頬を怒りとそれ以外の何かを混ぜ合わせ、赤く染め上げていく。 「でも……」 美琴の足が止まった。 「『似合う』かぁ……」 美琴の頬が知らず緩む。あの衣装を着るのは少し恥ずかしかったが、どのみち一端覧祭になれば、上条はおろか来客全員に見せるのだ。今日はその予行演習と思えばいい。 「『他の男に見せたくない』とか言ってたわよね、アイツ。……これって期待して良いのかなぁ」 美琴の歩調がスキップに変わる。気品爆発の常盤台の制服姿でスキップというのも、傍目から見ると少し怖い。 「後はあの馬鹿の予定を押さえて、それからどこへ行こうかな……」 寮まではまだ遠く、あれこれ作戦を練る時間はたっぷりある。 思い出し笑いを繰り返す中学生は、数日後に開催される一端覧祭に思いを馳せた。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/シークレットメッセージ
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/Daily Life パスタ専門店での恥ずかしいやり取りを思い出しながら、上条と美琴は再び専門店街をブラブラしている。 プレゼントを選ぶにあたって、どうせならお揃いにしようぜ、とあいなったのである。 「お揃いはいいけど、さすがにゲコ太は勘弁な」 「な、また馬鹿にしてんでしょ!」 美琴は上条を睨みつける。右手を繋いでいるので電撃は心配なさそうだ。 「もうお揃いのストラップ付けてんだから、他のにしような?」 「…………わ、わかったわよ」 不満気ながらもどうやら納得してくれたようで、上条は胸を撫で下ろす。 美琴色に染まっているとはいえ、身の回り全てがゲコ太になるのは勘弁したい。 「そこまでゲコ太がいいなら別にお揃いじゃなくてもいいじゃねぇか?巨大ゲコ太ぬいぐるみとかさ」 お前の部屋のクマぐらいのやつ、と付け足す。美琴の寮に飛び込んだ時に巨大なクマのぬいぐるみと遭遇したのだ。 美琴は一瞬考えた後、ぶんぶん!と首を振る。 「い……いや!アンタとお揃いであることに意味があんの!」 「はははっ、一瞬悩んだじゃねぇか」 美琴はむっと唇を尖らせる。電撃の一つでも浴びせてやりたいところだが、右手でしっかりと握られている。 「巨大ゲコ太は誕生日にでももらうことにするわ」 「15歳で巨大ゲコ太ね……」 上条が見守るような目で見ていると、美琴は眉をキッと吊り上げると空いている右手で握りこぶしを作る。 「なんなら、今日2つくれてもいいんだけど?」 「そうなった場合は、来年まで上条さんごとお世話になることになりますよ?」 上条は苦笑いを浮かべて、降参の意を示す。流石に2つもプレゼントを送ったら財布どころか口座まで空になる。 一般の人から見ればそんな大げさな、と言われかねないが、上条は貧乏学生である。 それに学園都市では嗜好品をはじめ『勉学に必要ないもの』は税率が高い。必然的に財布へのダメージも大きくなるのだ。 やめてくれ、と訴える上条をよそに、美琴は悩ましげに顎に手をやっていた。 「み、美琴?」 「ん、ゴメン。真剣に悩んじゃったわ」 「はい?」 パタパタと手を振って謝る美琴。いやにニコニコと笑顔なのが気になる。 (な、なんといいましたか?) 上条は目を点にしている。 「いやー、アンタを年末まで世話するのも面白いかなぁと思って。もちろん、泊まり込みで」 「ふっざけんなぁ!お前、そもそも寮はどうすんだよ?」 上条が慌てて拒否しているが、美琴はどこ吹く風だ。 「いや、ね。実は寮には今日から年明けまで実家に帰るって申請してるのよ」 「………はぁ?」 「今日は当麻の部屋に泊って、明日から実家に帰ろうと思ってたんだけど……当麻の部屋で年明けってのも悪くないわね」 ふふん、と自慢げな顔をする美琴。上条は美琴に流れを持っていかれつつあるのを自覚する。 「それじゃ、美鈴さんどうするんだよ?」 「そんなもん電話したら『じゃぁ、学園都市で年越しにしようか?』なんてことになるに決まってるでしょ」 (か、完璧だっ!?) 美琴の死角のないプランに妙な汗が流れる。 (考えろ!なにか、打開策はっ!?) 「ま、待て待て。そう、俺も実家に帰るんだぜ?お嬢様は、人の親の予定まで崩す気でせうか?」 上条はニヤリと口元を歪めると、自分の勝ちを確信する。強引な美琴ではあるが、さすがにそこまではしてこないだろう、と。 「あ………そうよね。うーん」 「ま、諦めろって。さっさとプレゼント選んじまおうぜ」 上条は知らない。母親同士が素晴らしく仲が良く、この手の話題が大好物であることを。 上条は美琴の後についてアクセサリーショップや雑貨屋などを転々としている。 美琴としては上条に選んで欲しいのだが、『俺はセンスねぇから美琴が決めろよ』とバッサリと切られてしまった。 その言葉を悔やむくらい恥ずかしいものを選んでやろうかとも思ったが、自爆を覚悟しきれない。 (婚約指輪とか言ってやろうかしら) 美琴はちらりとジュエリーショップに目をやる。大学生くらいのカップルが甘い空間を広げていた。 こういう店の店員さんは大変だろうな、と斜め上の感想を持ったところで、上条が隣にいない事に気づく。 「当麻?」 美琴が周りを見回すと、上条は興味深そうに商品の棚を見ていた。 「何見てんの?」 「あぁ、これなんかどうだ?」 上条の見ている棚には革製のブレスレットが並んでいた。細い2本の紐状革を編みあわせており、いくつかカラーバリエーションもあるようだ 「お前、能力的に金属だと危ねぇだろ?これだと問題ないと思うんだが……」 「危ないっていうほど問題はないけど……金属じゃない方がいいか、な」 美琴は上条が自分を気にしてくれたことに喜びながら、商品棚を見る。 「ねぇ、これ手作り出来んじゃないの?」 美琴は商品の隣のポップを指差す。それぞれの色を自由に組み合わせることでオリジナリティを出せるらしい。 ポップによると店の奥で制作することが出来るらしく、上条と美琴は連れだって店の奥に入って行く。 「いらっしゃいませ。レザーブレス作りでしょうか?」 店員の案内に従い、2人は椅子にかける。簡単に作り方の説明を受けると、隣の棚に案内された。 棚には様々な色の革紐が並んでおり、ここから2本とるらしい。 「んー、難しいな………何色にしよう」 「そんなに難しく考えなくてもいいわよ。そうね、アンタが私のを、私がアンタのを作るってことでいいわよね?」 「まぁ、プレゼントだからな……その代わり、俺のセンスには期待すんなよ?」 「大切なのは心よ。しっかり愛情込めてくれたらそれでいいの」 美琴はそこまで言うと、恥ずかしいのを隠すかのようにいそいそと革紐を選び始めた。 (さて、俺は何にするかね) 上条は横目で美琴を盗み見る。鼻歌まで歌いながら楽しげにアレコレと手にとっては返しを繰り返している。 (美琴に似合う色ね……) 上条は目の前にあった茶色い革紐をとる。美琴の髪に良く似たものだ。 「一つはコレだろ……」 もう一個だな、と上条は呟き、棚を見回す。恐ろしいくらいのカラーバリエーションがあることに驚愕しつつ、頭を悩ます。 (お、これなんかいいんじゃねぇか) 上条は目に飛び込んできた革紐を取ると、手元の茶色と並べてみる。あまり良い組み合わせではなさそうだ。 (ううん……でも、アイツのイメージっつったらこれだよなぁ) 茶色と、少しだけ青みがかった白。ビリビリをイメージしました、なんて言ったら怒られるだろうか、と上条は思う。 かといって、無難な他の色ってのも面白くない。ゲコ太カラーが頭によぎったが、上条は慌てて追い出した。 「コレでいっか」 上条はそう呟き、美琴に目をやる。まだ悩んでいた。 上条は優柔不断なお嬢様を放置し、先に制作に取り掛かる。 その後、手伝ってくれた店員にフラグを立てそうになり、選び終わった美琴が機嫌を損ねることになった。 「そろそろ行きますか」 上条は美琴の手を引くと、デパートを後にする。手間取ったレザーブレスもなんとか形にし、今は互いの腕に巻かれている。 因みに、上条の腕に巻かれているのはオレンジと淡めの黒のバンドである。どこぞの野球チームみたいなカラーリングであるが、上条は気にしない事にした。 外はすっかり暗くなっており、街中に施されたイルミネーションが瞬いている。 「ねぇ、当麻。何処に行くの?」 「着いてからのお楽しみ、って言いたいところだが、まぁ良いか。水族館ですのよ」 上条はポケットから折りたたまれたチラシを取り出す。空港に置いてあったものだ。 「なんか、夜間開園ってのがやってるらしくてな」 「ふーん。なかなか面白そうじゃないの」 美琴は上条からチラシを受け取ると、軽く目を通す。 「へぇ、こっから割と近いのね?」 「まぁ、ここに行きたかったから第6学区にしたんですけどね」 俺もそれなりに考えてるんですよ。上条は少しだけ恥ずかしそうに笑う。 「ふぅん。なかなかやるじゃないの。誉めてあげるわ」 口とは裏腹に、美琴は上条の右腕にぎゅっと抱きつく。おわっ、と上条が言うが気にしない。 そんな甘い空間を展開しながら歩いていると、目的の水族館に到着していた。 「さ、着きましたよ姫。チケット買うから、ちょっと離れてくれ」 「いーや。一緒に行けばいいでしょ?」 えへへへへ。美琴の緩みきった顔に、上条は溜息をつきつつもそのまま受付へと向かう。 水族館はその維持費などの問題から割と入場料が高かったりするのだが、夕方以降入場なので少しは安くなる。 そんなチケット代について、俺が出す、私が、いやいや自分のは自分で、今夜の宿台と思えばいいわ、なんてやり取りを経て、結局は美琴が出すことになった。 (年下の彼女にデート代を奢られるなんて……) 俺はヒモですかヒモなんですねヒモなんだよ、と自分の現状に落胆し、年明けからバイトでもすっか、と割と真剣に考えるのだった。 「この御恩は忘れませんよ」 「そのうち財布も一緒になるんだから気にしないの」 美琴は上条にチケットを渡す。心なしか挙動不審である。 「なんか、今恐ろしい事を聞いたような気がしたんでせうが?」 「だぁぁぁぁぁっ!!気にしなくていいの!ほら行くわよ」 美琴は顔を真っ赤にして上条の手を引くと、強引に入場していく。チケットをスタッフに渡し、ゲートをくぐった。 広めのフロントには大きな水槽があり、様々な魚達が泳いでいる。 「なぁ、美琴。さっきのはやっぱりプロポ………」 「あぁ、もう!うるさいうるさい!!そういうのは男がやるもんでしょうが!」 美琴はポカポカと上条の胸を叩く。その顔はゆでダコのようになっており、お湯でも沸きそうな勢いだ。 「美琴………」 上条は両手を美琴の肩に置くと、真剣な顔でその目を見つめる。 「え……」 (な、そんな……男がやるものって言ったけど……こんな所で?) 「こんな俺だけど……って美琴?」 「ふ、にゃぁぁ」 「み、美琴ぉぉぉぉぉ!!」 ばたんきゅー、と倒れてくる美琴を抱え、上条は端の椅子まで抱えて行くことになった。 当然、フロア中の注目を集めることになる。 さらには、その中にいた2人組の少女が『あれ、御坂さんと上条さんじゃない?』『ですよね、これはチェックです』と言っていた。 「あうううう」 美琴は両肩を落とし、うなだれている。 「お前、いい加減その『ふにゃー』ってのなんとかならねぇのかよ」 「ううっ」 あれから15分は経ったというのに、2人は入ってすぐの椅子に腰かけている。 「まぁ、『ふにゃー』の美琴も可愛いんだけどな。毎回、気絶されちゃ上条さんも大変ですよ」 「どさくさに紛れて何言ってんのよ……」 「さぁさぁ、行きますよー」 上条は無理矢理に美琴を立たせると、半ば引きずるくらいの勢いで順路を巡る。 美琴は少し抵抗したものの、細い順路にさしかかったあたりで大人しくなった。 「へぇ、水族館って普通の魚もいんのね」 「お前は水族館たるものを何だと思ってたんだ?」 上条は目の前のお嬢様が急に遠い人間になってしまったように感じた。 白い目で見られていることも気づかず、美琴は水槽にはりつくと『あれがサーモンね』とか言っている。 「サーモンて…………寿司じゃねぇんだぞ」 「まぁ、良いじゃない。分かればいいでしょ?」 そうですね。上条はゲッソリとした顔で答える。このお嬢様は意外にも抜けているらしい。 (いったいどんな教育してんだよ、常盤台は…) ペルシャ絨毯の修繕とか使えるのか分からないテクばかり教えてるんじゃないだろうか、上条はこれから先の事を思うとぞっとするのだった。 「ねぇ、当麻。金魚はいないの?」 「………きんぎょでせうか?」 「うん。久しぶりに金魚すくいしたいなぁー、って思って……って、どうしたの?そんな恐ろしい顔で」 美琴は首を傾げている。上条はワザとらしく溜息をついている。 「水族館に金魚はいないと思いますよ?というか、熱帯魚すらそんなにいねぇだろ?」 「なんで?」 「お前は動物園で飼い犬をみて喜ぶ人間なのか?」 上条は頭を抱える。これからのためにも、上条の常識と美琴のそれを繋いでおくことが大切そうだ。 「………どういうこと?」 「普段見れねぇモンを見に来るんだろ?それと、水族館じゃ金魚すくいなんかやってねぇからな」 美琴は一瞬残念そうな顔をすると、次の水槽へと向かっていく。 (誤魔化す気かよ) 上条はそれを追いかけて、美琴が見ている水槽の前まで行く。 「あ、見て見てコイツ。当麻みたい」 「ん……って、そりゃウニじゃねぇか。せめてハリセンボンにして欲しかった」 「あはは。対して変わんないでしょ?」 「いやいや、ハリセンボンの方が愛くるしいというかですね……」 しょぼーん、肩を落とす上条。心なしか頭のツンツンにも元気が無い。 「あ、こっちはクラゲ……クラゲって、可愛いのね」 美琴はガラスを指先でコンコンと叩く。中のクラゲは、そんなことにもお構いなしにふわふわと漂っていた。 「もっとグロテスクなもんかと思ってたけど」 「まぁ、グロいやつもいるけどな」 上条は気を取り直して美琴と同じクラゲを見る。 (お前はのんきそうで良いよなぁ) 上条は目の前でふわふわしているクラゲを羨む。クラゲにはクラゲなりの悩みがあるかもしれないが。 「隣にこんな美少女がいるのに、なに1人で感傷に浸ってんのよ?」 「クラゲは悩みがなさそうでいいな、と思ってな。あと、自分で美少女って言うなよ」 すいませんねー、とでも言うように上条は美琴の頭をぽんぽんと叩く。 「ま、こうやって悩めるのも幸せなんですけどね」 上条は遠くを見つめるような目で別の水槽に視線を移す。 (彼女が可愛すぎて悩んでるなんて、上条さんは罰が当らないか心配ですよ) 美琴は怪訝そうな顔で覗き込むが、上条は反応しない。 「悩み事なら私が聞いてあげるけど?」 「まだ美琴たんには早いですよ。今はゆっくり1人で考えます」 美琴たん言うな、と膨れっ面の美琴は少しだけ力を込めて上条の背を叩く。 「痛い」 「私に言えないようなことなの?」 美琴は真剣な顔で上条を見る。隠そうとしてはいるが、美琴の顔からは少しだけ不安が見て取れる。 「別に外に出て行ったりとかじゃねぇし、ましてや他の女の子の話でもないから。そんな心配すんなよ」 「……………」 それでも美琴は納得できないような顔をしている。 上条はどこまで言うか少しだけ逡巡した後、美琴の頭を優しく撫でる。 「まぁ、そうだな………お前が高校卒業したくらいになったら聞かせてやるよ」 「……うん」 「だから、今は今を楽しもうぜ?」 そうね、美琴はそう言うと、にっこりと笑う。上条は美琴の頭から手を離すと、彼女の左手をとる。 (それまでに色々と準備しないとな。バイトの給料3ヶ月分じゃダメだよなぁ) 上条は秘めたる決意を心に刻むのだった。 その後、上条たちは寝てるイルカに衝撃を受けたり、岩の隙間に潜む魚と美琴がにらめっこを始めたり、水族館を満喫し帰路に就いた。 入館者はカップルが多かったせいか、注目を集めることもなく『2人だけの現実』内での動くことができて、美琴は幸せいっぱいである。 もちろん、上条も幸せいっぱいではあるのだが、恋人となってから妙にくっついてくる美琴に圧倒されていたりもする。 「んーっ、面白かったわね」 「そうだな。お前が魚とにらめっこしてる時は置いて帰ってやろうかと思ったけどな」 やれやれ、と上条は外国人みたいなリアクションをして美琴を見ると、お約束のように恥じらっている。 「んなっ!?あれは……アイツが変な顔してきたからよっ」 「向こうは『なんだコイツ!?』って思ってただろうな」 「うっ、うるさいっ!!」 美琴の前髪からビリビリッと電撃が走る。上条はうわっ、と驚きながらもしっかりと右手で打ち消していた。 「なんだよ、ビリビリ卒業じゃねぇのか?」 「アンタが悪いんでしょうが!それに、どうせ打ち消しちゃうんだからいいでしょ」 「いやいやいや、そういう問題じゃないだろ」 分かってるわよ。そう言って口を尖らせて帯電しているお嬢様の頭に右手を置く。 「またそうやって子供扱いする」 「子供扱いじゃねぇよ。俺がやりたいからやってんだ」 「もうちょっと上手く誤魔化したり、気の利いた事でも言えないの?」 「上条さんはそんな器用じゃないですよ」 憎まれ口を叩きながらも僅かに口元を緩めてしまう。美琴は素直になりきれない自分に呆れる。 告白を契機にかなり素直になったとは思うが、それでもこんな風に上条を困らせてしまう。 (我ながら、嫌な奴よね) 上条はそんな素直になれない美琴も好きだったりするのだが、美琴は知る由もない。 「………ごめんね」 「ん、なんて?」 「いっつもビリビリして、ごめん」 しおらしい美琴もアリだな、と不謹慎なことを考えながら、上条は隣でしゅんとしている美琴の手をとった。 「ビリビリしないに越したことはないけどな」 「……うん」 「素直になりきれない美琴たんも、上条さんは好きなんでせうよ?」 上条は出来るだけ優しく笑いかける。美琴は顔を俯けていて表情は分からない。 「ってことはさ……たまにはビリビリしてもいいってこと?」 「たまにならいいぜ?しっかり受けてやるよ」 「じゃぁ、早速……そんな恥ずかしいセリフをこんなとこで言うなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 美琴の前髪からもう1度雷撃の槍が飛ぶ。右手で何とか打ち消すと、現状を把握しきれてない上条は美琴の様子をうかがう。 さっきよりも強めに帯電している。怒ってるのか、恥ずかしがってるのかはよく分からない。 「ど、どうした?」 「まわり、見てみなさいよ」 言われたとおりに周りを見る。微笑ましげに2人を見守る人たちで溢れていた。 「たぁまぁにぃなぁらぁ………良いのよね、ビリビリしてもぉっ!」 「うわぁぁぁぁぁっ!?」 一方的な電撃キャッチボールを求めてくる美琴から、上条は一目散に逃げる。右手で消せるといってもやっぱり怖い。 「待てやコラァァァッ!!」 「待てと言われて待つかぁぁぁぁぁぁっ」 上条は全力で駆け、美琴はそれを全力で追う。久しく見られなかった追いかけっこが繰り広げられる。 「あぁ、もうっ!」 上条は例の口癖を叫ぼうとした寸でのところで、喉元まで来た言葉を飲み込む。 (不幸じゃ、ねぇよな) 上条は口元を緩める。恐らくは追いかけてくる美琴も同じ表情をしているだろう。 「あぁ、もう!どうにでもなれぇぇっ!!」 結局は一晩中追いかけっこを繰り広げるのだった。 「おめでとうございます」 もう何度めだろうか。テンプレ気味のセリフで応対し、適当なところで会場入りを勧める。 肩のこる着なれない服に身を包み、大きな扉の前で相方を待っている。 「ここまで、色々あったなぁ」 脳裏に蘇る様々な記憶。 あれだけ色んな事があった魔術やら能力者との死線も今は遠い過去のようだ。 全てにカタがついてからの平和でドタバタしていた日常の方が長く感じるくらいに。 「ほんっと、色々あったよ」 怒涛のように告白された人生最大のモテ期もあったし、同居人との別れもあった。 豊胸の手伝いをしろなんて言われた事もあったし、2人して後輩に尋問されたりもした。 卒業できるように強化合宿と称したスパルタ講習もあれば、何をすることもなくぼーっと過ごす日々もあった。 大覇星祭でガチンコ勝負もしたし、一端覧祭でのドタバタもあった。 辛い事も嬉しい事も、イライラすることもぼーっとすることも。全てが重なった上に『今』がある。 いつだったかは『しあわせになれればなんでもいいです』とか書いたこともあったが、今は十分に幸せだ。 「まったく、お釣りを払ってもいいくらいだ」 ガラにもなく神様とやら感謝したくもなる。特に裕福なわけでもないが、なんでもない日常が幸せだ。 「お待たせ」 廊下の方から純白のドレスを纏った恋人が出てくる。いや、恋人だった人が。 扉の向こうには今まで関わった色んな人が待っているだろう。 主義も思想も生まれも身分も異なった人たちではあるが、みんなが自分たちの幸せを祝いに来てくれたのだろう。 そう思うと、自然に笑みがこぼれた。 「じゃぁ、いくか」 「うん」 彼女は右手に腕を絡ませると、満面の笑みを浮かべていた。 扉が開き、赤い絨毯の敷かれた一本の道が目の前に伸びる。特に合図することもなく、2人はその道を歩く。 普通はこのように2人で歩く道ではない。 『君らは小さいころから自分で選んで育ってきたんだからな。君ら2人で歩くべきだろう』 そう言ったのは、彼女の父だったか。出番を奪ってしまい申し訳なく思う一方で、自分を認めてくれた事を喜んだ記憶がある。 少し周りを見てみると、元クラスメイト達や魔術関連の人間。本当にたくさんの人がいた。 隣の彼女は後輩に小さく手を振っている。 唯一の気がかりと言えば、共通の『家族』である銀髪の女の子がいない事。なにやら外せない用があるらしい。 前を向くと、祭壇の前に人の背中が見えた。 (今日の神父さん………あれ?) 男にしては小さな肩幅。それに、どこか見たことのある背中。隣の彼女を見ると目があった。 どうやら同じことを考えていたらしい。少し驚いた顔をしている。 「私は敬虔なる修道女です。だから2人の門出を思いっきりお祝いしてあげるんだよ」 シスターが振り返る。フードと共に長い銀髪が舞った。 「おめでとう、とうま、みこと」 「ありがとう、インデックス」 会場に溢れんばかりの拍手が起こった。 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小ネタ 上条、○度目の入院後。 美琴「あ、アンタがまた入院したって聞いたから笑いに来てやったわよ!手ぶらじゃ何だから、ほら、お見舞いにクッキー持ってきたわよ」上条「……御坂たん。いったいそれは何の意地悪でせうか?上条さんはほれ、この通り利き手が使えないのですよ。ぐるぐる巻きに包帯が巻かれておりまして」美琴「へ、へぇ。それはお気の毒。せっかく今回は手作りにしたんだけどなぁ。あと御坂たん言うな」上条「手作り?お前、前回のあれ覚えてたのか」美琴「べ、別にそんなことどうだっていいじゃない。こ、こんなの朝飯前よ、ふん」上条「普通人を笑いにくるのに、手作りクッキーは持ってこないだろうけどな」美琴「い、いいじゃない別に。ほら、食べさせてあげるから口開けなさいよ!」上条「朝飯前とか言う割には、そのクッキー、形がいろいろこってるんだな。カエルに星にハートに……」美琴「か、形はどうだっていいでしょ!いちいちチェックしないでよ!いいからさっさと口開けなさい」上条「そんなおしつけんなって(ぱく)」美琴「!(ゆ、ゆび!ちょっと指がこいつの唇に……!クッキーと一緒にあたしの指がー)」上条「もぐもぐもぐ。おお、うまいじゃないか。次食わせてくれ次……あれ?御坂、何真っ赤になったまま固まってるんだよ。まだ一杯あるみたいだから次を食わせてくれよ」美琴「…………」上条「おーい?美琴さん?」美琴「ふ、ふ、ふ、」上条「お?」美琴「ふにゃー!」上条「うわぁ!病室で電撃はやめろー!」
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小ネタ しりとり 美琴「突然だけどしりとりで勝負よ!じゃぁしりとりのりから。はい!」上条「へ?何だ?…………俺から?うーん、理科室」美琴「つまみ」上条「ミートパイ」美琴「意味」上条「み、三重」美琴「笑み」上条「う………み、味覚」美琴「くるみ」上条「み、み………、おい!みで攻めるなんて卑怯だぞ!み、御坂!!」美琴「………上条///」上条「へ?あ、海!」美琴「耳」上条「またみか!?……美琴」美琴「とっ、当麻//////」上条「………魔術師」美琴「……………………………………………」上条「ん、どうした?」美琴「な、何でもないわよ!!」ビリビリ上条「ぎゃあああああああああああああああああああああ」____________※半分程度美琴キャラスレからネタを頂戴しております。 というか元々美琴スレに貼ったものです。