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記憶と夢の狭間で… ふと気がつけば、上条当麻は見覚えのある公園に立っていた。そこでふいに声をかけられた。「とうま、おなかへったんだよ」「私だって、アンタの力になれる!」「カミやん、俺って実は、天邪鬼なんだぜぃ」「上条当麻、君と日和ってやるつもりはない」振り返ってみると、大勢の人がいた。かつて、守るために戦った少女が。かつて、大切なものを守るために必死になっていた少女が。かつて、自分を犠牲にするように見せて、ピンピンしていたクラスメイト。かつて、戦った、そして共に協力した、タバコをふかした神父が。上条が記憶を失ってから、関わってきた人たちがそこにいた。学園都市にいるはずのない、外にいるはずの人たちも、そこにいた。上条は彼らと、なんてことないような会話をしていた。そこで、異変に気づいた。視界の片隅で、何かが崩れ始めた。町並みが。公園の木々が。地面が。そこにいたはずの人たちが。何もない黒い空間に塗りつぶされていくように、上条の前から消えていった。そして、上条もその黒いものに飲み込まれた。目を開けたら、声をかけられた。「とうま、どうしたの?」白い修道服を着たシスターが言った。「さっきから声かけてるのに、無視してんじゃないわよ」茶色い髪の、常盤台中学の制服を着た少女が言った。「どうしたカミやん、さっきから様子が変だぜぃ」金髪にサングラス、アロハシャツを着た男が言った。「どうしたんだ?能力者」赤髪の、身長2メートルほどの神父が言った。上条にはわからなかった。声をかけてきた人がだれなのか、わからなかった。ここはどこで、自分は誰なのか、わからなかった。周りにいる人たちが、誰なのか。自分を知っているのか、何も、わからなかった。まるで自分の中から何かが抜け落ちたかのように。心の中にぽっかりと穴が開いたかのように、もやもやとしたものだけがのこっていた。「もしかして、とうま、覚えてないの?」白い修道服の少女、インデックスがなきそうな表情で言った。「アンタ…まさか…また、なの?本当に…何も覚えていないの?」常盤台中学の制服を着た少女、御坂美琴が、いつかの絶望したような表情で、泣くのを必死に堪えているような、そんな表情で言う。とっさに上条は、言った。また言ってしまった。「忘れるわけないだろ?変なこと心配してんじゃねぇよ」しかし、そんな状況にもかかわらず。再び真っ暗な闇の中にいる自分に気がついた。声を出しても、誰も答えてくれない、何もない、そんな場所だった。そこに、一点の光が見えた。暗闇から導き、引き出してくれるような、暖かい光だった。おなじみの第7学区の病院のいつもの病室で、上条当麻は目を覚ました。すごく、嫌な汗で、体中がびっしょりとぬれていた。ツンツン頭の少年、上条当麻は記憶喪失だ。記憶を失った原因は、覚えていないし、思い出すこともないだろうと思っていた。やけに重たい体を起こすと、手が握られていることに気がつく。病院のベットの横に、備え付けのパイプ椅子に座る少女。御坂美琴はなぜか、上条の手を握ったまま眠っていた。その目に一筋の涙の跡を残したまま。状況がいまいち理解できなかった上条は、あたりを見渡してみた。人が動くことに気がついたのか、美琴も目を覚ました。「…アンタ、大丈夫なの?ずっとうなされていたような感じだったんだけど…」不安そうに、心配そうに、声をかけてきた。「よく覚えてないけど、変な夢を見たんだ。なんであんな夢を見たんだろう…」上条は、かすかに震えていた。その手を、美琴は強く握り締める。「どんな夢を見たかは知らないけどさ。アンタはたまには人を頼りなさいよね。 アンタの力になりたい人が、身近にいるって事をいい加減覚えなさいよ」手を強く握り締められた見た上条の震えは、ゆっくりと収まっていった。そして、ぽつり、ぽつりと、上条は口を開く。「俺の周りにはみんながいたんだ。そしたら突然、世界が崩れ始めた。 気がつくと真っ暗な空間になっていった。そんな中に俺は一人だけ立っていたんだ。 急に明るくなったと思ったら、さっきまで回りにいた人たちがいたんだ。 だけど、その人のことが、誰なのかわからなかった。 思い出そうとして、声にだそうとしたけど、できなかった。大切なものが手の中から滑り落ちたみたいな感じでさ」徐々に思い出したのか、上条は夢での出来事を説明した。そして再び、震え始めた。見えない恐怖に震えている子供のように。美琴は、黙って話を聞いていた。そこで一つ、仮説を立てる。(コイツは一度記憶を失っている。何も無いところからいろんな人に出会っていった…。だけど…だけどもし…どこかで、再び記憶を失うことを恐れている部分があるとしたら?)その仮説に、美琴自身が納得してしまいそうだった。一度あった不幸な出来事が、その1度で終わるならいいが、実際繰り返されることがある。どんなに努力しても、とめようとしても、止まらなかったあの実験のように。美琴なりに上条の不安を読み取った彼女は、ゆっくりと上条に近づき、やさしく、包み込むように抱きしめた。「大丈夫。大丈夫だから。もし、アンタがもし、また何かを忘れてしまうようなことがあったとしても、私はここにいるから。 アンタがどうなろうと、私はアンタのそばにいてあげるから。どんなことがあっても、アンタのことを守ってあげるから。だから、安心しなさい」やさしく告げるように、美琴は言った。美琴の胸の中で、上条は涙を流し、眠っていた。安心しきったような表情で、眠っていた。「まったく、いつも人に心配ばっかりかけて…たまには周りがどれだけ心配しているか、理解しなさいよ。ばか当麻」眠る上条に、頬を赤く染めながら、尊はつぶやいた。とある日の、とある二人の、病院での出来事。
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不自然なガール 雨が降っていた。 分厚い雨雲が空を覆い、細かい水滴が絶え間なく降り注ぐ。 御坂美琴は学舎の園から徒歩で自分が暮らす寮まで帰る途中だった。 学園都市の各校はバス通学を推奨していたが、決められたバス停を往復するだけの毎日など性に合わないと、美琴はいつも徒歩で通学していた。 大体、その方が健康にだって良い。 サラサラにとかされた茶色の髪をくすぐる風も、四季によって変わる陽射しの色も、日々形を変えていく白い雲も、四角い鉄の箱の中からでは何一つ感じ取る事ができない。 でも雨の日は別だ。 道路を叩く雨粒が跳ね返って靴や靴下が濡れてしまう。傘という荷物が一つ余計に増える。それに傘を差すのは面倒だ。(失敗したなぁ。今日くらいはバスに乗れば良かったかしら) そう思っていても日頃の習慣のせいか、つい徒歩を選んでしまう。 こんな日はどこに行く当てがあるわけでもない。 美琴は雨の街を一人、薄っぺらなカバンを片手にぶら下げ、黄色い花柄の傘を差して歩いていた。いつもなら大股に風を切って歩く彼女も、今日だけは頭上に広がる傘の範囲内に収まるよう挙動を小さくしている。 ふと、美琴は対向二車線の車道の向こう側、反対側の歩道に目を向けた。 ただ何となくつられるようにして美琴はそちらを見ると、「!」 ツンツン頭の少年だった。 彼は手にした学生鞄を傘の代わりに頭上に掲げ、もう片手にはコンビニ袋をぶら下げて美琴とは反対方向に走っている。いくつもの傘の花が咲く反対側の歩道で、彼は一人雨に濡れていた。 美琴はその姿に違和感を覚えた。 彼の手に本来あるはずの傘がない。 この雨は今朝から降っていたのだから、登校する時点で彼も傘を持っているはずだった。『不幸な人』(オカルト)で何もかもが片付けられてしまう彼の事だ。おそらく途中で傘が壊れたか、立ち寄った先で傘がすり替わってしまったのだろう。 少年はとある店頭の屋根の下に入り、一息つくと辺りをキョロキョロと見回した。どうやら次に雨宿りができる屋根まで後何メートル走るのか距離を測っているらしい。 美琴は足を止め、じっと少年を見つめる。 少年は屋根の下から出るそぶりを見せない。 雨宿りできる次の屋根までは結構距離がある。あるいはこの雨が止むのを待つつもりなのだろうか。 そんな少年の動きを見つめていた美琴は、 歩道の真ん中で、自分が差していた黄色い花柄の傘を閉じた。 行き交う人々の中で一つだけ不自然に傘が閉じられたら、もしかしたら向かいの歩道に佇んでいる彼は気がつくかも知れない。 美琴は手にした傘を閉じて、ツンツン頭の少年の挙動を目で追いかける。 美琴の頭上で容赦なく雨は降り続き、美琴の茶色の髪や細い肩を包むように丸い水滴が付く。 そんな美琴の思いに気づく事もなく、少年は頭上の雲行きや自分の走る先だけを気にして視線をキョロキョロと動かしていた。(……気づくわけないか) 美琴は小さくため息をついてから、通り過ぎる人々の邪魔にならぬよう歩道の端に寄って、傘を開いた。美琴を狙い撃ちにしていた雨粒が傘によって行き場をなくし、丸く大きな粒となって傘の表面を伝い地面にポトリと落ちる。 美琴は左手に持った鞄を小脇に抱え、ポケットから携帯電話を取り出すと、『そこで何やってんの?』 向かい側の歩道で雨宿り中のツンツン頭にメールを打った。 本当に聞きたいのはそんな話ではないけれど。 屋根の下で雨をよけていたツンツン頭の少年がポケットから携帯電話を取りだし、待ち受け画面を見て首をひねっているのが見える。 携帯電話を握りしめた彼の手がちょこちょこと動く。程なくして、反対側の歩道からメールが返ってきた。『お前こそどこにいんの?』 美琴が反対側の歩道でツンツン頭の少年の姿を見ている事には気がついていないらしい。これでは美琴が傘を閉じてみたところで彼が気づく訳もない。 きっと彼にとって美琴は雨の街に咲くたくさんの花の傘のうちの一つにしか見えないのだろう。彼にとって美琴は取り立ててどうという事もない、彼の横を通り過ぎていくたくさんの人のうちの一人。 美琴は液晶画面に表示された文字を見つめて、何と返事しようか思案する。さんざん悩んだあげくたわいもない言葉を選んでメールで送る。 向かい側の歩道で雨宿りをしていた少年は視線を手元に落とした。メールを確認し終えたらしいツンツン頭の少年は顔を上げ、車道をはさんで立つ美琴に向かってコンビニ袋と学生鞄をぶら下げた両手をぶんぶんと振り回す。 美琴はもう一度小さくため息をつくとポケットに携帯電話をしまい、来た道を逆戻りして横断歩道を渡った。 美琴はとある屋根の下で雨宿り中の、ややしょぼくれた顔の少年に向かって、「……アンタ、傘はどうしたのよ?」「……、大変不幸な事故によってお亡くなりになりまして」 ここへ来るまでに風もないのに傘の骨が全部折れたんだ、とツンツン頭の少年―――上条当麻はため息混じりに告げた。骨が折れた傘は荷物になるから途中で捨てた、とも。 まぁ大体予想通りね、と美琴は呟いてから、「コンビニで傘を買うなり、バスに乗れば良かったじゃない」「貧乏学生にそんな余裕はねーんだよ」 部屋に帰ればビニール傘のストックはあるしな、と答える上条。 美琴は自分が差していた花柄の傘を上条の目の前にずい、と差しだし、「……入れてあげる。その代わり私を寮まで送って。アンタはそこからこの傘差して自分の部屋まで帰りなさい」 常盤台の寮の場所は知ってるでしょ? と上条に尋ねる。「お前、どっか行く予定があったんじゃねーの?」 上条は怒鳴りもせず傘を差しだした美琴に怪訝そうな表情を向けて、「向こう側から逆方向の横断歩道を渡ったって事は、お前と俺が行く方向は逆じゃねえのか?」 良いよそんなの悪いから、と頭を横に振る。 美琴は再び鞄を小脇に抱え、ポケットから今度はハンカチを取り出してツンツン頭の先から落ちる滴を丁寧に拭うと、「……知り合いがずぶ濡れになってて放っておけるわけないでしょうが」 アンタに風邪引かれちゃ困るのよ、と告げる。「……何で俺が風邪引くとお前が困るの?」 何だその意味不明なバタフライ効果は、と最近覚えたばかりの言葉でツッコむ上条に、「なっ、なっ、ななな、何だって良いでしょ! 知り合いが風邪引いたら良い気はしないって事よ。ましてや目の前でずぶ濡れになってたらなおさらじゃない。ほら良いから行くわよ!!」 少しだけ顔を赤くしつつ、『知り合い』という単語をことさらに強調して傘のハンドルを持ったまま上条の腕を引く美琴。「……良いって。ご覧の通りもうずぶ濡れだしさ。今だって雨の中を走るのに疲れたからちっと休憩してただけで」 ハンカチさんきゅー、と上条は少しだけ笑い、屋根の下から飛び出すべく一歩を踏み出すと、「大体な、お前の言う通り傘に入れてもらったとして……俺と相合い傘になるけど、お前はそれで良いの?」「!! ……あっ、あっ、相合い傘とか小学生みたいな事言ってんじゃないわよ!! 単に一本の傘をシェアしようって言ってるだけじゃない。そうよ別にアンタと一緒に歩いてるところを誰かに見られたってどうって事ないわよ恋人同士って訳でもないんだから!!」「もしもし。たかが相合い傘に何でそこまで重くなってんの?」「うっさい! つべこべ言わずに傘持ちなさいよほら!!」 美琴は開いたままの傘をぐいぐいと上条に押しつけると、振動で傘布についた雨粒がまとまってボタボタと伝い落ち、美琴がハンカチで先ほど拭いたばかりのツンツン頭を濡らしていく。「…………、」「……、あの」 先に口を開いたのは上条だった。「お前はさっき俺の頭を拭いてくれたと思ったんだけど。もう一回俺の頭を濡らして一体何がしたいんだ?」 これじゃ傘差す意味ねーぞとムッとしながら髪の先から水滴を垂らす上条に、「……もういい! アンタこの傘差して帰りなさい!!」「お前はどうすんの?」「アンタの知ったこっちゃないわよ!」 美琴は一声叫ぶと上条に黄色い花柄の傘を押しつけ、通りを流していたタクシーに向かって手を挙げて勢い良く振る。 黒塗りのタクシーがキキーッ、とブレーキをかけて停車し美琴の目の前でガバッ、と行儀良くドアが開く。美琴は後部座席に飛び乗るように乗り込むと『常盤台中学学生寮まで』と告げた。「あ、おい! 傘! 傘どうすんだよ! おい御坂!!」 上条の呼び止める声を振り切るようにバタン、とドアが閉まってタクシーは発車する。 窓の外は相変わらず雨模様だった。 雨雲に覆われた空は黒く、晴天時なら太陽が沈んでいる時間である事を告げる。 美琴は寮の自室の窓から外を眺めつつ、もう何度目になるか分からないため息をついて、窓ガラスにおでこを押しつけた。 火照った顔に雨で冷やされたガラスの温度が心地良い。 窓に吹きかけた吐息がガラスを曇らせて、外の景色を一瞬だけ遮断する。その曇った部分に美琴は細い指できゅっ、きゅっ、と傘の絵を描いた。 美琴は何本か傘を持っているが、上条に渡した傘はその中でも特にお気に入りの傘だった。 女物の黄色い花柄を男子高校生が差すのは少々厳しいかも知れないが、傘の出来もハンドルの造りもそんなに悪くないと思う。それをあんな形で上条に渡してしまっては、今さら『返してくれ』と言いづらい。 たまたま雨が降っていて、たまたま上条は美琴の住む寮の場所を知っていた。美琴は上条がどこに住んでいるかを知らないから『傘に入れてあげるから送ってくれ』と頼んだだけで、「あ、相合い傘なんて別にどうって事ないわよ。そんな事よりたまには少しくらい人の話をちゃんと聞きなさいっての」 もう少し上条と話をしてみたい。ただ漠然と思った。 確かに上条の事は何となく気になるが、「べっ、べっ、別に愛とか恋とかそう言うんじゃなくて毎回毎回人の話をちゃんとスルーするわ妹にちょっかい出すわで見てられないからこの機会に一発ガツンと言っておこうと思っただけよ」 そのつもりが上条の頭を盛大に濡らしてしまった事は脇に置いて、美琴は誰も聞いていない言い訳を口にする。「……い、今考えんのはあの馬鹿の事じゃなくてあの馬鹿からどうやってスムーズに傘を取り戻すかよ! アイツが言う通りアイツが風邪を引こうがどっかに飛ばされようがそんなの私の知った事じゃないわよ」 この何日か後に上条が本当に時速七〇〇〇キロオーバーでフランスまで飛ばされるとは思いもしない美琴である。 不意に、部屋の壁に取り付けられたインターホンが鳴った。 門限までは若干余裕があるが、こんな時間に来客とは珍しい。 白井がまた怪しげな薬でも通信販売で取り寄せて、宅配便が配達に来たのだろうか。 ひとまず品物が何なのか確認するのが先よね、と考えながら美琴はインターホンの通話ボタンを押して形式通りに、「……はい、どちら様ですか?」「上条だけど。その声は御坂か?」「ぶっ!!」 このタイミングでまさか上条が寮に来るとは思わず盛大に吹き出す美琴。 ななな、何よ何の用なのよとインターホンに向かって動揺する美琴に、「ああ、いたいた。悪りぃんだけど、ちっと外へ出てきてくんねーか?」「……用があるなら鍵開けてあげるから上がってきたら? 私の部屋がどこかは知ってんでしょ?」「そこまでするほどじゃねーんだよ。さっき借りた傘を返しに来ただけだから」 こっちが借りといて呼び出すのも何だけど、と上条が告げる。 美琴と上条が別れてから一時間以上経っていた。 美琴はほんの少しだけ迷う。 玄関のロックを解除するのは簡単だ。受け取りに行くのが面倒だから上がってこいと言って上条にここまで来させる。そのまま、美琴があの時したかった話の続きをすればいい。 しかし、 知らない間柄ではないとはいえ、まかりなりにも乙女の部屋に男子高校生の上条を招き入れてしまうのはためらわれる。 しかも、同室の後輩・白井黒子が今ここにいないのだ。 それではまるで白井がいない事をこれ幸いに男を引っ張り込んでいるようで、「…………………………………………………………!」 上条が二〇八号室に上がった後の光景を想像した美琴の顔が一瞬で真っ赤になる。(何馬鹿な事考えてんのよ私! アイツは傘を返しに来ただけなんだからぱぱっと下に降りて受け取って追い返せばいいでしょ!! 大事な傘を返せって連絡しないで済んだんだからラッキーじゃない!! そうよ、今一番大事なのは傘を受け取る事よ)「……あの、御坂?」 俺はいつまでここにいればいいんだとインターホン越しに聞こえてくる上条の戸惑う声に、「今すぐ行くからそこで待ってなさい」 とにかく外に出りゃいいんでしょ、と切り返して美琴は会話を打ち切った。 大事なのは傘だ。貸した傘を取り返すのだ。 自室を出ると、美琴は寮の長い廊下を心持ち早足で歩く。 本人はさっぱり自覚していないが、まるでスキップでもするようにエントランスに向かう。 美琴が玄関の大きな扉を開けてエントランスに出ると、そこには上条が所在なげに突っ立っていた。 通常、来客はこのエントランスにあるインターホンで中の人間を呼び出す。その際、場合によっては部屋から寮生が扉のロックを開けて客を招き入れることもある。 と言っても、それは来客が学園都市のIDを持つ女性や事前に許可を得た保護者に限られる。 ここは女子寮だ。 世界有数のお嬢様学校・常盤台中学の寮だった。 許可なき者はたとえ誰であれ寮内に足を踏み入れる事は許されない。 そんな訳で美琴の傘を返しに来ただけの『招かれざる客』上条はインターホンの前で美琴を待っていた。 美琴は上条の姿を良く見てみた。 やや濡れたツンツン頭。制服に湿っぽさは感じられない。右手にはきれいに畳まれた美琴の黄色い傘、もう片方の手には滴のついた安っぽいビニール傘がぶら下がっている。 何だか居心地が悪そうにキョロキョロと辺りを見回していた上条が、「御坂、傘さんきゅーな。っつー事で返しに来た」 ありがとよ、とほっとした表情で美琴に黄色い傘を差し出す。 美琴はどういたしまして、と傘を受け取りながら、「アンタ、傘一本返しにわざわざここまで来たの? 明日にはこの雨も止むって言ってたし、こっちは別に急いでなかったんだけど」「でもこれ、大事な傘なんじゃねーの?」「……何でそう思うのよ?」 上条は美琴が手にした傘のハンドルを指差して、「それ、持ち手のところにゲコ太のマークが入ってたから。たぶんお前のお気に入りの傘だったんじゃねーかなって」 そんな傘を借りておいて万が一ぶっ壊しでもしたら後が怖いぜ、と上条が息を吐く。 美琴は上条をへぇ、と感心した顔で見やって、「……良く気づいたわね」「持った時妙な感触がしたんで良く見てみたらたまたまそれを見つけてな」 それは美琴しか知らない傘の秘密だった。 この傘はハンドルの部分に目立たぬようにゲコ太の焼き印が刻まれている。ハンドルを握り込むと他人からはゲコ太が見えなくなるので、美琴はこの傘を気に入っていたのだ。「それにしても、人に大事な傘押しつけて自分はタクシーに乗って帰るとか、かなりムチャクチャだぞ?」 つかそれって変じゃねえか? と上条が告げると、「……へ、変じゃないわよ。アンタには傘がなくて、私には選択肢があった。その選択肢を有効に使っただけでしょうが」 美琴の選択は庶民を自称する上条からすれば十分不自然なものだろうが、上条がわざわざ傘を返しに来た事で舞い上がり気味の美琴はそれどころではなかった。「んじゃ、俺これで帰るからさ」「あ、待ちなさいよ。そこまで送っていくから」 いいってそんなの、と美琴を片手で制しエントランスを出た上条が手にしたビニール傘をぐっと開くと、 美琴の目の前で上条が差したビニール傘の受骨がピキパキビシッ!! と連続で親骨から外れた。「………………、」「………………不幸だ」 なす術もなかった。 目の前で『不幸な人』(オカルト)を見てしまった美琴には何もできなかった。 重力に従ってろくろからだらりとぶら下がる受骨、細い二等辺三角形になって用をなさなくなったビニール製の傘布、何の役にも立たないビニールと金属とプラスチックの複合物体を空に向かって差している上条。 無情に降る雨が生乾きのツンツン頭を濡らしていく。 上条は美琴と共に雨に濡れまいと常盤台中学学生寮の屋根の下に飛び込んで、「…………俺はこれからどうすれば?」 かつては傘だったオブジェを手にしたままがっくりと肩を落とす。「……この傘使う?」 上条の不幸を目の当たりにし、気の毒を通り越してかわいそうに思えてきた美琴が黄色い花柄の傘を差し出す。 上条は『それはお前の傘だろうが』と頭を横に振ると寮の向かいの建物を指差し、「……、仕方がないからそこのコンビニで傘を調達して帰るよ」 常盤台中学学生寮の向かいには車道をはさんでコンビニがある。そこで売っているビニール傘を買って雨をしのごうというのだ。 ああそれなら、と美琴はコンビニの方向を向いて、「売り切れてたわよ? さっき用があってちらっとのぞいただけだけどね」 それを聞いた上条はもう一度『不幸だ』と呟いてその場にしゃがみ込む。「……雨、今すぐ止む訳じゃなさそうだからあきらめてこの傘使えば?」 上条は美琴の手の中にある傘と美琴の顔を何度も見比べて、「俺が開いたらその瞬間にお前の傘が壊れそうだし、そんな事になったらこんな高そうな傘弁償できねーから良いって」 貧乏人はおとなしく濡れて帰ります、と肩を落として歩き出す上条に美琴は手元の黄色い傘を開き、差し掛けた。「……アンタが風邪を引く不幸を傘が引き受けるなら安いもんでしょ。壊れても弁償しろとか言わないからさ」「……じゃあ、お言葉に甘えて」 上条が傘のハンドルを握る美琴の手の上から自分の手を重ねた。「……ちょ! あ、あ、あああアンタ何やってんのよ!!」 上条に手を握られて瞬時に限界まで顔が真っ赤になる美琴。「いや、お前が直前で持ち手をずらすと思ってたんだけど」 お前が手を離してくんねーと俺が傘を差して帰れねーだろ、と告げる上条。 美琴は手を握られたまま傘を上下にぶんぶん振って、「はっ、離しなさいよ! 傘渡せないでしょ!!」「あ、ああ。悪りぃ」 ばつが悪そうに上条は美琴の手を離す。 美琴は重ねられた手のぬくもりが名残惜しく思えて(……! な、何で余韻を感じてんのよ私!! ここは断りなく手を握られて怒る場面じゃない!!) 上条は改めて美琴の傘の中軸をつかむと神妙な顔で、「……借りてくぞ?」「へ? ……あ、ああ、うん、使って」 美琴は怒る事も忘れて傘のハンドルから手を離すと、「……急いで返さなくて良いからさ。その代わり、なくしたりしないでよね。……その、気が向いた時にでも返してくれれば良いから」「……気をつける。そ、それじゃーなー」 上条は美琴に手を振って雨の中を歩き出す。 美琴は上条の後ろ姿を見送りながら一連のやりとりを思い返して、(……っつーかこれって、傘をわざわざ返しに来たあの馬鹿が馬鹿を見たってことなのかしら? それより傘を返してもらうんだったら今から私がアイツと一緒にアイツの寮まで行って、そこから引き返せば良かったんじゃない? そうすればあの馬鹿がどこに住んでるかも調べられて……ってアイツがどこに住んでいようとそんなの関係ないじゃない!! 大体男の部屋にのこのこついて行ってそのまま何かされでもしたら……ああ、やだもうさっきから何考えてんのよ! 傘よか・さ! ここで一番大事なのは私のゲコ太マーク入り傘であって……) 美琴はそこで小さく息を吐いた。 雨が降り続く空を見上げる。 この雨は明日には止むと言う。 次に雨が降るのはいつだろう。 雨が降れば、きっとまた上条に会える。晴れたなら、それを口実にあの黄色い花柄の傘を返してもらえばいい。 そんな事を思いながら美琴は大きな扉を開けて寮の中へ。 美琴には、一本の黄色い傘を巡って二人の距離がほんの少しだけ近づいたような気がして、 雨が降るのも悪くないわね、と自分でも気づかないほど淡い笑みを浮かべた。終。
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ひらりと桜が舞う頃に 3月上旬学園都市にも桜が咲いた。早咲きというものだ。桜を見にたくさんの人が集まっている。上条とインデックス、美琴の3人も桜を見に来ていた。「きれいな桜だね!」「ええ、本当に綺麗ね」「桜ってほんとにきれいなんだな」川沿いの一面、向こう岸にも桜が咲いていた。「ね、ね、はやくはやくー!」「久しぶりだね、上条当麻」上条に話かけてきたのは赤髪の神父、ステイル=マグヌスだ。「あ、ステイル!」インデックスはステイルと会えて嬉しそうだが、「久しぶりだな。また何か事件でもあるのか?」上条は嬉しくなさそうだ。無理もない。上条がステイルと会う時は、いつも事件が付き物なんだから。「いや、今日はただの観光だよ」上条が安心する。楽しいこの時間を邪魔されずにすんだのだから。「インデックス、近くに団子を売っていたのだが、一緒に行かないかい?」「え?お団子!?行きたいんだよ!」「じゃあ、行こうか。彼女は責任をもって預かるよ」「じゃあ行ってくるんだよ、2人とも」「いってらっしゃい」「また後でな。あ、そうだステイル」上条がステイルに近寄ると小声で話しかける。「(インデックスのやつ、すぐどっか行くからな。しっかり手、繋いでおけよ?)」「な、何を言っているんだ君は!ほ、ほら行くよインデックス」ステイルは顔を真っ赤にしながら歩き出す。「あ、まってよー」インデックスもステイルについていく。「じゃあ、俺たちも行くか」「うん」上条と美琴も歩き出す。「イ、インデックス。迷子になるといけないから手、繋ごうか」なにやらステイルの声が聞こえたが2人は聞かなかったことにした。 上条と美琴が歩いていると、反対側から白い髪に杖をついた男、一方通行が歩いてきた。その左右には打ち止めと番外固体もいる。「久しぶりね打ち止め、それに番外固体も」「お姉さま久しぶりーって、ミサカはミサカは挨拶していたり」「やっほうおねえたま、久しぶり」「そういやァ、あの白いシスターはいねェのか?」「ああ、さっき友達と団子食べにいったんだよ」「ふーん、じゃあおねえたま、今日は2人っきりでデートなんだ」番外固体がからかう様に美琴に話しかける。「えっ、そんなデートだなんて、いや、でもその通りだし・・・・・・」「み、美琴さーん、落ち着きましょうねー。上条さん恥ずかしいですよ」「そ、そうよね。ごめんね当麻」「い、いいんだよ」照れる2人を見て、番外固体は悪魔の笑みを浮かべる。「もぉ、そんな2人ともそんなにいちゃいちゃしちゃってさー。 ミサカ達の愛をもっと見せつけなくちゃね。ねっ?あーくん?」そういうと、番外固体は一方通行に抱きついた。「あー番外個体ずるーい、ミサカもー!」反対側の打ち止めも一方通行に抱きつく。「だァー!鬱陶しィ!抱きつくなァ!つゥかあーくンってなんだァ!! ほら行くぞお前らァ!」打ち止めと番外固体に抱きつかれたまま一方通行は歩き出す。「あいつ、幸せそうだったな」「ええ・・・・・・」美琴のどこか悲しそうな顔をしている。「なあ、美琴。たしかにあいつは10000人の殺しちまったけど、 自分の罪を自覚して、反省して、残りの10000人のために必死で戦ったんだよ。 それに俺はあいつが打ち止めのために命を懸けて戦ったのを知っている。 許してやってくれなんて言わない。だけど、恨まないでやってほしい」「わかってるわよ。そんなこと」「そうか、じゃあ、行くか。美琴」「うん!」2人は笑顔で再び歩き始めた。 結構歩いただろうか、桜の道も途切れていた。「結構歩いたな。そろそろ休憩するか」2人は土手に腰をかける。少ししてから上条が美琴に話しかける。「なあ美琴、俺は今幸せだ」「え?」「インデックスにステイル、神裂や一方通行、御坂妹や打ち止めに番外個体に浜面に滝壺。 それに何より美琴、お前がいる。こうしてお前と一緒に桜を見られるだけで俺は幸せなんだ。 命を懸けて戦って、皆が笑っていられる。それだけで俺は幸せなんだ」上条当麻はその拳でたくさんの人を救ってきた。「まったく、探しましたよステイル。財布を忘れるなど貴方らしくもない」「あ、ああ。すまない」「あ、かおり!かおりも一緒にお団子食べようよ」ある者はは失ってしまった時間を取り戻してた。「あ、お団子だ!ねえあなた買ってよーって、ミサカはミサカはおねだりしてみる」「あーはいはい、買ってやるよォ」「にしても司令塔には甘いよね、親御さん」「誰が親御さんだァ!つーかいつまで抱きついてやがる、さっさと離れろォ!」ある者は犯した罪を自覚しながれも、掴み取った幸せを噛み締めていた。「超遅いですよ2人とも」「悪い悪い」「ごめんね、きぬはた、むぎの」「何してんだか、今日はフレンダの墓にも行くんだから。ほら行くよ」またある者は手に入れた日常を楽しんでいた。皆が笑っていられる。そのために上条当麻は戦い、平和を手に入れた。そして自身の幸せも掴み取った。「ねえ当麻」「ん?なんだよ。っ!」美琴が上条にキスをしたのだ。「えへへ、ファーストキス、あげちゃった」「最初は上条さんからしようと思っていたのに・・・・・・」「だったら、次はあんたからできるようにしなさい」「へいへい」「あーあ、疲れちゃった」そう言うと、美琴は上条に肩を寄せる。「おやすみー・・・・・・」「あーもう。しょうがない、その寝顔に免じて許してやるか」美琴はスースーと寝息を立てている。「あー俺も眠く・・・・・・なって・・・・・・」上条も眠りにつく。「とうま、みこと、起きるんだよ。まったく2人してこんなところで寝ちゃって」上条が目を覚ましたらインデックスの姿があった。辺りも少し暗くなり始めてる。「ああ、すまん。ほら、美琴起きろ」「うにゅ?とうま?」「何寝ぼけてんだよ、ほら帰るぞ」「ふぁーい」「上条当麻、僕たちも帰るよ」上条に声をかけたのはステイルだ。「またね、ステイル、かおり」「またね、か。ああ、またね、インデックス」「では、また会いましょう」ステイルと神裂は帰っていく。「じゃ、俺たちも帰るか」「うん」「はーい」3人も帰るために歩き始める。「帰りにスーパー寄っていかなきゃね」「今日の夕飯は何なんだ?」「うーん、今日は唐揚げにしようかしら」「お、美味そうだな」「やったー!」笑顔の3人に桜の花びらがひらりと舞い降りる。
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前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/シークレットメッセージ 一端覧祭終了後 「お待たせー」 美琴がお盆を手に現れる。 大騒ぎの一端覧祭も終わり、学園都市は静寂を取り戻す。 美琴は約束通り、上条の部屋に食事を作りに来ていた。 ……凶悪な『あの』ミニスカエプロンドレスと共に。 「お、おう」 上条は美琴をちらりと見ると、再び視線をTVに戻す。 「食事の時間までTV見てるんじゃないの」 美琴は上条の手からリモコンを取り上げると、TVを消す。 「アンタのリクエスト通りに作ったけど、これでいいの?」 ローテーブルの上には肉じゃが、ほうれん草のおひたし、大根の味噌汁が並ぶ。 「ああ、うん」 「……アンタ何でこっち見ないのよ?」 上条はうつむき、テーブルの上を見つめている。 「いや、別に特に理由は」 「ないんだったらこっち見なさいよ」 美琴は、例のウェイトレス姿で上条の向かいに座っていた。 「…………いただきます」 「いただきます」 二人は手を合わせて、食事を始める。しばらくは二人とも無言で食を進めていた。 「……うまい」 「ホント? よかった」 「うん、うまい。すごくうまい」 そこで上条は顔を上げ、美琴をちらりと見るとまたうつむいた。 「えーと、何か不満でも?」 「ない。何にもない」 「にしてはアンタ無口じゃない。ホントは口に合わないんじゃないの?」 「んなことない。俺が作るより断然うまいって!」 上条は力説し、ハッとなってまた顔を下げてしまう。 「アンタこの間から変じゃない? 何か私のこと避けてるみたいだけど」 「んなことねぇよ……」 一緒に一端覧祭を回ったとき、あんなにひっついてたんだから避けてるも何もねぇだろと、上条は独りごちる。あれから、あの時の二人を思い出すとこっ恥ずかしくて、美琴を見かけても声をかけられず、美琴に見つからないよう逃げ帰る毎日だった。 「ごちそうさま」 「おそまつさまでした」 美琴は食器を下げ、流しで洗い始めた。 「ねーえー」 「んー?」 「……やっぱアンタどっかおかしいんじゃない? 具合でも悪いの?」 洗い物を終えた美琴が、上条の隣にぺたんと座る。 「おっ、俺は別にどこも具合悪くなんかないって」 「ほんとーにー?」 美琴は上条の額に手を差しかける。美琴のひんやりとした手が触れ、上条がビキッと背筋を伸ばした。 「う、うわ、おい……」 「熱はないみたいね」 「そ、そんなに顔を近づけるな!」 上条が後ずさりする。 「何よ」 「だ、だから……」 「はっきりしなさいよ」 美琴が睨むが、上条は目を合わせない。 (その格好で近づくな!) 上条の思考がぐるぐると回る。相手はあの電撃娘、御坂美琴だとわかっていても (そ、その衣装でこっち向くんじゃねぇ! 変に意識しちまうだろうが!) 上条は変な動悸を押さえられなかった。 コイツ、わかっててやってんじゃねぇだろうな? 上条はビクビクしながら、おそるおそる美琴を見る。美琴は疲れたのか、ローテーブルに突っ伏していた。座り込んだ足の間で何か見えているような気がするが、そちらに意識を向けないよう頭の中で振り払う。 「あー、それにしても一端覧祭疲れたぁ」 「あ、ああそうだな。お疲れさん。客たくさん入ったんだろ?」 「そうなのよ。喫茶室やるのは初めてだったんだけど、集客数はうちのクラスが過去最高だったみたい」 「へ、へぇ。そりゃすごいな」 「でもねー」 ここで美琴が顔を上げる。頭にはヘッドドレスを装備したままだ。 「うち、女子校じゃない? 男の客ばかり集まってきても来年の受験者数には関係ないのよねー」 「あ、ああ、そうだよな、うん」 一端覧祭で各校が門扉を広く開くのは、来年の受験者を確保するためだ。もちろんそれは、名門常盤台中学といえど例外ではない。 「クラスでお客さんをチェックしてた子の話じゃ、ほぼ毎日通ってた奴もいたみたい」 「……そりゃそうだろうな」 「はい?」 上条の返しの意味がわからず、美琴がツッコむ。 「……その服」 上条が美琴の服を指さすと、美琴は裾をつまんでみせる。 「これがどうかしたの?」 「……わかってないんだったら、いい」 「何がよ?」 「………………あーくそ!」 上条は叫んで立ち上がり、頭をかきむしる。 「ちょ、ちょっと急にどうしたのよアンタ!?」 「お前、御坂だよな?」 「何言ってんのよアンタ。頭おかしくなっちゃった?」 「学園都市第三位、超電磁砲の御坂美琴だよな?」 「何わかりきったこと言ってんのよ」 「だから、何でそんなに男の客がわんさか来てるのか」 「うん。それが何?」 「その男共は『学園都市第三位の超電磁砲』が可愛いコスプレしてるから見に来てんだって気づかねーのかよ!」 「………は、い?」 美琴はきょとんとした。 (かわいい…………可愛い?) 美琴の顔がボン! と音を当てて赤く染まった。そろそろ瞬間沸騰機と名付けて良いかもしれない。 「えっと……だって、この服着てたの私一人だけじゃないし、私より可愛い子なんていくらでもいるでしょ?」 「それでも! お前のクラスじゃ知名度が一番高いのお前だろうが! 気づけ馬鹿!」 「馬鹿とは何よ!」 美琴が立ち上がり、スカートの裾が揺れる。それを見て、上条がうっとうめき、その場に座り込んだ。 「………だいたいアンタが……どうしたの? 顔真っ赤だけど」 「な、なんでもねぇよ!」 美琴は上条の隣に女の子座りで腰を下ろす。 「私のことを馬鹿呼ばわりしたのはともかく」 「…………」 「言いたくないんだったら……良いけど」 歯切れが悪い口調のまま、美琴は上条の顔をのぞき込んだ。よく見れば美琴もほんのり顔が赤らんでいる。 「…………あの、さ」 「…………」 「アンタは……その、この服見て……どう思ったの?」 「どう、って」 「聞かせて欲しいな……アンタは、学園都市第三位の超電磁砲が、コスプレしてるのを見てどう思ったの?」 「さっき『言いたくないなら良い』って言ってただろうが」 「………………やっぱり、聞かせて」 「…………やだね。断固拒否する」 「ふーん、そうなんだ」 美琴は上条をちらりと見ると、一つ頷いて上条の正面に回り込み 「ちょ、おま、何やって」 「…………と・う・ま?」 上条の前で小首をかしげて見せた。 (ぎゃぁああああぁぁぁぁぁぁ!!) 声なき絶叫とともに、上条は全力で壁ぎりぎりまで後ずさる。 「や、やめっ、やめろ、みさかっ」 「何が?」 「だっ、だからっ、そっ、それっ」 「それが何?」 「だから! それやめろ!」 「それって何よ?」 「お前わかっててやってるだろ!」 「何を?」 美琴はにやにや笑っている。 「くーっ…………」 上条は頭を抱えてうずくまる。 「あははっ」 美琴は笑って立ち上がった。 「御坂?」 「ほら」 美琴は上条の目の前でくるりと一回転してみせる。 「ちょ! おま、ばか、やめ」 上条はジタバタと顔の前で手を振って目の前の光景を消そうとする。 「大丈夫よ、今日は短パン履いてるから。ざーんねんでした」 スカートの向こうがこの間と違うことにほっとしつつ、上条は 「し、心臓に悪い……」 「同じ失敗は二度しないわよ。美琴さんの学習能力をなめないで欲しいわね」 「そうしてくれ……」 上条は左胸のあたりが痛んだような気がした。 「えっと、それでアンタは……私がこの服着て接客してるのを見て、どう……思ったの?」 「もうその話は良いだろ……」 「いいじゃない、聞かせてくれたって」 美琴はしつこく食い下がる。 「…………中学生ということを差し引いても、その服は反則だ」 「どこが? 何が?」 「……全部」 「……他には、ないの?」 「ほかって、なにが」 「だから…………他に感想」 「…………似合ってる」 「…………それから?」 「…………可愛いと、思う」 「…………あとは?」 「…………破壊力高すぎ」 「…………私は爆弾扱い?」 「いや……これはオトコにしかわからん話です」 まぁお前は爆弾と変わらんだろ、と上条は息を吐く。 「他の男に見せるのが惜しいってのは、あながち外れじゃねぇよ。俺すっげぇびっくりしたし、ましてやお客がそんなに来てたってんならなおさら」 「………………そ、そう」 美琴がそわそわし出した。 「だから、御坂さん」 「……………なに?」 上条はがばっと土下座した。 「お願いだからこれ以上いじめないでください! 服を着替えて元の御坂に戻ってください! 上条さんはこれ以上精神が保ちません!!」 「………………えっと、意味不明なんだ、けど」 美琴がきょとんとする。 (そこは素か、素なのか!) 上条は一人悶絶する。 考えてみよう。目の前で整った顔立ちの女の子が、紺色基調のミニスカエプロンドレス&オーバーニーソックスを身につけて、女の子座りをしているところを。それを身につけているのが、例え上条当麻の天敵・御坂美琴でも、 (か、かわいい……萌え死ぬ……) 純情少年上条当麻は持って生まれた免疫の低さにより、建前と本音の綱引きで敗北しつつあった。これを世間ではギャップ萌えと言ったり言わなかったりする。 「ちょーっと確認させてね」 「あい?」 「アンタはこの服、気に入らないの?」 「そ、そんなことはにゃい!」 あ、舌噛んだ。 (お父さんお母さんごめんなさい。あなたたちの息子は中学生に手を出したすごい人になる一歩手前です!) 上条は心で血の涙を流す。 彼は思う。これはどんな拷問なんだと。 「アンタ、私に何か隠し事してるでしょ?」 「にゃ、にゃんにもしてませんの事よ? 上条当麻は裏表なきにしの事よ?」 自分が何を喋っているのか、もう訳がわからない。 「本当に?」 「ふぉんとうですぅ」 「とりあえず、アンタが私に服を着替えて欲しいことはなんとなくわかった。着替えるから、その前に私のお願いを一つ聞いて欲しいんだけど」 「にゃ、にゃんでしょうかー」 「わ、私の名前を…………呼んで? 今のうちに」 「ぴゃあああああぁぁぁぁぁぁあぁッっ!?」 もうダメかもしんないと、上条は思う。このままだと後戻りできない言葉まで口走ってしまいそうだ。 「ダメ…………かな?」 「……………………み、み、みさかっ!」 「ちょ、ちょっと! アンタいきなりどしたのよ!」 上条は美琴の肩をつかんでいた。引き返すことのできない断崖絶壁に立たされたような思いで 「おれ、おれ、おれは……み、み、み、みこ、みこ…………その幻想をぶち壊す!」 最後の意地を振り絞り、幻想殺し(右拳)を自分に向かって発射した。 岩のごとく固めた上条の右が、その額に突き刺さる。 「! ちょっとアンタ、何やってんのよ!」 自分を殴って気絶した上条を見て、美琴が仰天した。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 「うあ…………いててて」 上条は目を覚ました。 直後にふに、という感触が後頭部に触れる。 「アンタ何やってんのよ」 ジト目でにらみつける美琴が天井にいた。 違う。 美琴が上条を見下ろしていた。 「えーと、これどういう構図?」 この感触どっかで触ったことあるなぁ。ああそうか橋の上で美琴に膝枕を 「………………ええええええええ? 御坂、お前何やって」 「馬鹿、まだ起きちゃダメでしょ」 起き上がろうとした上条を、美琴が遮った。 上条の額には美琴が用意してくれたと思しき濡れタオルが乗っている。 「アンタが自分を殴って気絶したくなるくらい、私の名前を呼びたくないってのはよくわかったわよ」 「………………」 いや、あれはそうじゃないんです一時の気の迷いで危うく犯罪を起こすところだったんですと言いかけて、止めた。 目の前の美琴が、今にも泣きそうな瞳で上条を見つめていた。 「何か言うことある?」 「…………ゴメン」 「何で謝るのよ」 「…………お前に謝んなくちゃいけないと思ったんだ」 「だから、何で」 「お前を見てくれで判断しようとしたから」 「…………」 「何着てたってお前はお前だよな、美琴」 「!」 「これでいいか?」 美琴は上条に微笑みかけ、上条の額から濡れタオルを外した。そして 「……今この状態で名前を呼ぶな馬鹿!」 地球の重力に引かれ加速のついた美琴の左が上条の額を直撃する。 「うぐあっ!?」 上条は再び意識を失った。 次に上条が目を覚ましたとき、美琴の姿はなかった。 頭の下には枕が置かれ、体には上掛け布団がかけられて。 ローテーブルの上に「帰る」と一言だけ書かれたメモが置かれていた。 上条は起き上がった。 美琴がいた気配は、どこにも残っていない。 自分でぶち壊した幻想は、もうどこにもない。 『アンタ、私に何か隠し事してるでしょ?』 優しい幻想をぶち壊しても、言葉は上条の胸に残った。隠した言葉はいつか暴かれるかもしれない。それでも 「…………純情少年上条当麻さんは、意地を貫き通しましたよっと」 テーブルの上のメモを拾い上げ、くしゃくしゃと丸めてゴミ箱に放り投げ。 上条は制服のポケットにあるプリクラシールを取り出そうとする。 その直後、背筋を悪寒が走った。 「…………明日が来るのがこんなに怖いとは。…………不幸だ」 時刻は二二時〇五分。 美琴はドラムバッグを担ぎ、寮への帰路を急いでいた。 「門限破りどころかこの時間かぁ。黒子助けてくれるかな」 美琴は携帯電話の電源を入れる。画面を確認すると、美琴の携帯電話は黒子からの悲鳴混じりの留守電メッセージと山のようなメールを受信していた。 「この時間に帰るつもりはなかったからなぁ。あーあ」 この時間に帰るつもりがなかったのなら、いつ帰るつもりだったのか。それは美琴だけが知っている。 『何着てたってお前はお前だよな、美琴』 美琴の作戦は、あの瞬間たった一言でぶち壊された。上条は全てを見抜いて、あのタイミングであの言葉を言ったのだろうかと美琴は思う。何にせよ、美琴は上条に『また』負けたのだ。 美琴の作戦。それは上条の部屋を訪れたときと同様に、ドラムバッグの中に詰め込まれていた。 「とりあえず明日よ明日。あの馬鹿が残り一六枚の招待券を誰に配ったのか吐かせて、それから……殺す!」 学園都市の夜は明けて、いつもの朝が訪れる。 そしてとある通学路で少年と少女は出会い、いつもの鬼ごっこが始まる。 少年が逃げ、少女が追いかける、とてもありふれた、お互いの本音を隠した鬼ごっこが。 終 前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/シークレットメッセージ
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第一.五章 途中であった多大な揉め事の一つ 第23学区へと向かうバスの中、上条当麻を取り巻く空気は非常にピリピリしていた。『槍』を破壊するため、これから大なり小なりグレムリンと一戦交えなくてはならないのだ。緊張感が漂うのも仕方がない。………からという訳ではない。美 「…で? 何でアンタはバスの中でまで両手に花状態な訳…? 言い訳があるなら言ってみなさいよ聞く気ないけど」イ 「…とうま? いくら慈愛に満ちている私でも、我慢の限界はあるんだよ…?」上 「そ、そう言われましてもですね………」上条は汗をダラダラと流しながら、どう答えるべきか考えていた。正直、「聞く気ねーのかよ!」とか「慈愛に満ちてる奴が、人の頭をザクロにしますかね!?」とかツッコミたい所だが、慎重に言葉を選ばないと『槍』が完成するその前に、『上条当麻』という人間がこの世から消えてしまうかも知れない。目の前にいる、二人の少女の手によって。現在、上条の膝の上にはバードウェイが、隣の座席にはレッサーが座っている。レッサーはまた眠くなったらしく、先程と同じく、そして当たり前のように上条にしだれかかり、「着いたら起こしてください……」と一言残し、夢の世界へダイブしていた。一方バードウェイは、何かを勝ち誇ったかのように、インデックスと美琴に対しドヤ顔をする。それが更に二人の神経を逆撫でしていたのだった。男女比にして1:4…+1匹。「ハーレムとか羨ましすぎワロタwww」などと思うかも知れないが、ハーレムというのはお互いが合意の上でなければ成り立たない。そうじゃない場合、人はそれをこう呼ぶのだ。『 修 羅 場 』、と。つまりこの状況を一言で表すと、『俺の同居人と友人達が修羅場すぎる』、という事である。上 「つーかバードウェイ! ここはもうバスん中なんだから、座席は冷たくないだろ!? わざわざ俺の上に乗んなよ!!」インデックスと美琴に何を言っても効果は薄そうなので、言い訳をするのではなく、問題を解決する【バードウェイをどかせる】事で、この場をおさめようとする。バ 「断る。私がどこに座ろうとも私の勝手だ。 それとも何か? この国は人が腰掛けるだけでも、色々と手続きや許可が必要なのか?」上 「俺の上に座るなら、最低でも俺の許可は取ってからにしようぜ!?」彼女はテコでもここを動く気がないらしい。何だかんだで、上条の膝の上が気に入ったようだ。しかし、それを快く思わない二人が、『何故か』バードウェイに対してではなく、上条に対して威嚇行動…いや、攻撃態勢を取る。具体的には、インデックスは口を大きく開け、美琴は頭の上でバチバチと帯電させる。だが今の上条は防御態勢は取れない。何しろ、逃げようにもバードウェイが重し代わりになって立ち上がれないし、美琴の電撃だけでも幻想殺しで何とかしようと思っても、今度はレッサーが右側をガッチリとロックしている。ある種、『死』を覚悟した上条は、目をギュッと瞑る。だがその時、バードウェイが思わぬ助け舟を出してきた。バ 「……おい。いつまでも突っ立ってないで、お前らも座ったらどうだ。 この男の『隣』に座りたいなら、もう一席空いているだろう。『前』は私の特等席だがな」上条に一撃を食らわせようとしていたシスターとお嬢様は、ピタリと止め、お互いに顔を見合わせる。このバスは全席前向きシートとなっており、左側は2人がけ、右側は3人がけとなっている。上条は右側の席の真ん中に座っている。上条の右の席はレッサーが座っているが、左はフリーだ。つまり、もう一人なら上条の隣に座れる事になるのだ。美 「ふっ…ついにアンタと決着をつける時がきたようね……」イ 「む…私に勝てると本気で思っているのかな…?」 二人の間にバチバチと火花が散る。美琴の能力ではなく、比喩的表現で。そして背後にはスタンドのようなモノまで現れる。龍と虎…ではなく、ゲコ太とカナミンなのが大分迫力に欠けてしまうが。両者相対し、その拳に全てを賭ける。勝負は一瞬。美 「さい! しょは! グー!」イ 「ジャン! ケン!」美&イ 「「ポイ!!!」」決着は―――美 「っしゃああああぁぁぁぁぁ!!!!!」イ 「」インデックスの『紙』を、美琴の『ハサミ』が切り裂いた。美琴はその形のままで手を高々と上げ、ビクトリーした事を主張し、インデックスはその形のままの手を床につけ、orz←のポーズをとる。ハッキリと、勝者と敗者で明暗を分けたのだった。そんな様子を間近に見ていた上条は、疑問に思ったので素直に聞いてみる。上 「…お前ら、何でわざわざこんな俺の隣【せまいところ】に座りたがってんだ? 他にも空きはあるだろ?」素直に聞いたせいで、結局彼は噛み付かれ、感電させられ、ついでにバードウェイも足を踏んできた。訳も分からず「不幸だー!」と叫ぶ上条だが、本当に不幸なのは、こんな乙女心を欠片も理解していない男を好きになってしまった彼女達の方である。ガタガタと揺られ、バスは第23学区へとひた走る。ジャンケンに負けたインデックスとそれに抱かれたスフィンクスは上条の真後ろの席に座り、勝った美琴は左側に座っている。正に四方を少女に囲まれており、前方のバードウェイ、後方のインデックス、右方のレッサー、左方の美琴という状態だ。『神』の右席ならぬ、『上』の右席の完成である。しかし、せっかく上条の隣の席を射止めたというのに、美琴は上条との距離を微妙に開けている。先程はその場のノリと勢いでおかしなテンションになっていたが、冷静に考えたら、自分は簡単に上条に抱きついたりできる性格【キャラ】じゃない事に気がついたのだ。上条の肩を枕代わりにするレッサーや、上条の胸を背もたれ代わりにするバードウェイを横目に見て、「羨ましい!」とは思うのだが、それを自分に置き換えて想像するだけで顔が真っ赤になる。と、その時だ。デカい石でも踏んだのか、それとも道路に凸凹でもあったのか。車体は大きくガクンと揺れる。美琴は上条と距離を開ける為、若干不自然な体勢を取っており、バスが揺れると同時に、美 「きゃっ!!?」と前に放り出されそうになる。次の瞬間、美琴は前の座席の後頭部に顔面をぶつけ…てはいなかった。気がつくと、上条の左手に肩を抱かれ、美琴はそのまま上条の左肩に頭を乗せていた。美 「なっ!! な、なななっ!!! な~~~~~っ!!!?///」上 「ったく危ねえなぁ。変な乗り方してるからだぞ?」早い話が、とっさに美琴を助けた訳だ。美琴はみるみるうちに顔を上気させ、何だか急に大人しくなる。しかし、上条の後部座席【インデックス】から何故かイヤ~なオーラが立ち込めてくる。いい事をしたのに、何故非難されるのか、鈍感キング上条には分からない。分かる訳がない。しかもバードウェイまで不機嫌になっている。まるで、『お兄ちゃん』を盗られた『妹』のように。だからなのか、バードウェイは唐突に爆弾を放り投げてきた。バ 「それにしても、レッサー【コイツ】はよく寝るなぁ! 今朝、上条【おまえ】の布団の中であんなに寝てたのになぁ!」天国から地獄。人は上げてから落とされると、ショックはより大きくなる。バードウェイの爆弾は美琴にとって効果絶大だったらしく、上条に抱かれたままビシリと固まる。 上 「ちょ、バ、バードウェイさん!? 何故にこのタイミングでその話題を持ち込むのでせうか!? お、終わった事をイチイチ蒸し返すのは良くない事だと思います!」バ 「安心しろ! そんなに焦らなくても、私も一緒に寝ていた事はさすがに言わないさぁ!」上 「言ってるううううぅぅぅぅぅ!!! バードウェイさん、それ言ってるよおおおぉぉぉ!!?」バ 「あー! そう言えばレッサー【ソイツ】が『おっぱいなら服の上から触るくらいノーカウント』 と言っていたのを思い出したなぁ! どうだ!? 触ったのか!? ん!?」上 「だから何でこのタイミングで思い出すんでございますかねええええぇぇぇぇぇ!!!!!」イ 「……とうま…? どういう事なのかな…? おっぱいの件【いまのはなし】は初耳なんだよ…? それとは全く関係ないけど、後ろの座席【このいち】からだと、 とうまの頭がとってもかじりやすいと思うんだよ…… もはや、かじってかじってかじってナンボ、かじってナンボの商売なんだよ……」上 「止めろ! 止めてくれ!! お止めになってくださいませの三段活用!!! それ多分、全く関係なくないから!! それ、かじる気満々の台詞だから!! あたまかじり虫になってるから!!」何とかインデックスをなだめようとする上条だが、怒りゲージMAXで超必殺技がいつでも放てる状態なのはインデックスだけではない。美琴もまた、俯きながらワナワナと震え、美 「ア~~~・ン~~~・タ~~~・は~~~………」しかししっかりとバチバチと帯電音を響かせる。美 「何でそういつもいつもいっつも―――」溜めたモノを一気に解放するべく、美琴は俯いていた顔を勢いよく上へ向ける。だがその時だ。デカい石でも踏んだのか、それとも道路に凸凹でもあったのか。車体は再び大きくガクンと揺れる。美琴は上条をキッ!と睨むために顔を上げた直後だったので、バスが揺れると同時に、美 「きゃっ!!?」とそのまま跳ね上がる。しかし、今回は上条は余裕がなかったせいか、押さえられる事もなかった。つまり、上条を見上げた顔は、そのままブレーキする事なく―――ちゅっ…♡…という音を立てて、美琴の唇は上条の左頬に直撃する。イ 「なっ!!?」バ 「なっ…!」上 「なぁ!!!?」美 「な、なな、な……///」それは誰がどう見ても偶然の事故だった。しかし、誰がどう見ても口付けだった。上 「あ…あー、まぁ…その……き、気にするなよ! 今のはホラ! 事故だから! ノーカンだか」イ 「とぉぉぉうぅぅぅまああああぁぁぁぁぁ!!!」上条が言い終わる前に、すでに上条の後頭部にはインデックスの歯が突き刺さっていた。上 「痛い! 痛いよ!? てか、今のは俺全然悪くねーじゃん!!? この世の理不尽ここに極まれり!!?」イ 「やかましいんだよ!! とうまはもうとうまだからこうするしかないかも!!!」上 「意味が分からん!! せめて日本語で話してくれ!!! バードウェイも! 見てないで何とかしてくれ!!! 上条さんのピンチですよ!?」とヘルプされたバードウェイだが、バ 「それがどうした私が知るかっ!!!」と一蹴した。何かまた不機嫌になっている。そして事件の中心人物、美琴はといえば………美 「……………ふ……ふにゃー///」と漏電【いつものアレ】をした。上 「うおおおおおぉぉぉぉい!!! これ以上面倒ごと増やすんじゃねええええぇぇぇぇぇ!!!!!」そんな様子を見ていた三毛猫は、『この人間共は、よくもまぁ、これだけ騒いでバスから叩き出されないものだ』、と言わんばかりに、迷惑そうな声で「ニャー」と鳴き、これだけの大騒ぎの中、未だに熟睡している強者レッサーは、レ 「むにゃむにゃ………ワイヤードビキニ…スケルトンワンピ……ふへへ……」と訳の分からない寝言をほざいていた。
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/鶴の恩返し -②せっかくなのでお世話になってます- 昨日は疲れていたし、御坂を休ませなきゃいけねえから気が回らなかったが… 「一つ屋根の下に男女二人ってマズくないか…」 上条は美琴より先に起きてベタベタする汗をシャワーで流したわけだが… 今更になって冷静になった上条は現状を判断しそういった結論になる しかも、一昨日から今日に至るまでに美琴を可愛いし気になる存在という位置に置いてしまっている為 意識してしまうと結構緊張してしまう 美琴は昨日疲れてお風呂に入っていなかった為、シャワーを借りた訳だが、風呂場から出てきて上条の呟きを聞いた 「それは…そうだけどさ、私としてはアンタが迷惑じゃなければこっちの方が気が楽なんだけど…」 そう言って美琴は意識しだしたのか少し頬を染めながらもそう答える そんないつもとは違うしおらしい美琴を見て実はドキドキしている上条ではあったが冷静を装いつつ 「まあ、見えてない奴とずっと一緒ってのも辛いだろうからな、そこら辺は俺が理性を保っていればいい話だしな」 と、あながち間違いではないフォローを入れつつ上条はそう言った、後半は自分への確認だ 「にしても、縁田の言う通りになっちまったが…まさか御坂と同居する事になるとは考えもしなかったな」 そう上条が言った瞬間、美琴は「ちょっと待って…」と、そう言って昨日のことを思い出そうとする 『困ったことがあれば上条さんを頼ってくださいね…余計な事を起こすので…』 「そういえば、私も昨日縁田さんに会ったんだけど去り際にこんな事言われたわ」 そう、おかしいのだ彼は読心能力者で予知能力者ではないから未来の事が分かるわけがないのだ しかも、聞き間違いでなければ彼は、事を起すと言っているのだ 「なら話は早い、俺が縁田を問い詰めれば原因だけでもわかるんじゃないのか?」 と上条は言うが 「縁田が犯人だとして、もし逃げてて学校にしばらく来ないなら一日拘束される学校は都合が悪いじゃない」 と美琴に言われた 「うーん…確かに縁田が犯人なら学校に行かないし、この状況で御坂と別れるのは得策じゃないか…」 そういう事になり、結論としては上条も休むことになるので小萌先生に事情を説明できるんだろうか? と思いつつも電話をかけてみた ~♪~~♪~~~♪カチャ 『もしもし、上条ちゃんですか~?』 朝早かったので出てくれるか心配はあったものの意外と早く出てくれた事に感謝する 「小萌先生、実は新学期早々またいつものやつに巻き込まれましてですね…」 そう言うと電話越しにも聞こえる大きな溜息を向こうでつかれた、というかこの説明で通じるのも嫌だな… 『まあ、いつもの事だから驚きはしないんですが~、でもそろそろいい加減回避して欲しいとも思うのですよ~』 ハァ…とまた溜息が聞こえた 「それは、そうなんですけど…小萌先生今回は俺じゃなくて実害があるのが大事な人なんです、だから話だけでも聞いてはもらえませんか?」 上条から大事な人と言われた美琴は嬉しさ、恥ずかしさ共にマックス状態と言ったところで顔を真っ赤にしながらニヤニヤ、モジモジしながらうつむいていた 『それも含めて回避してくれると助かるんですけどねー、それでは上条ちゃん?内容を聞くのですよ』 どうやら聞いてくれるようなので一息吐くと上条は話始める 「それじゃ話しますよ、能力が発動しなくなったあと、友人に電話したり、知り合いに会ったりしたんですが俺以外の人に認識されなくなってるってことになってるんですが…それで…」 一応美琴の名前は出さずに要点だけの説明だったので説明し終えるまで5分はかからなかった 『うーん、でも上条ちゃん、先生はその様な現象、能力は聞いたことがないんですよー、上条ちゃんはウソを言うような子じゃないのはわかってはいるのですけどね…』 そう困ったような口調で言う、最後の方はホントに申し訳なさそうだ 「そうですか…もし時間があったら取っ掛かりでも小さなことでも調べてくれると助かるんですが…」 と上条はお願いし「俺は誰にも認識されない奴を放ってはおけないんで解決できるまでしばらく休みます」と言って電話越しに頭を下げた 『ま、それも上条ちゃんらしいといいますか…とにかくですよ、こちらでも分かったら知らせるので携帯は壊さないことですよ』 と忠告を受け上条電話を切った 「ふうっ…って御坂さん、なにゆえアナタは茹でダコの様に真っ赤のグデグデになってるんでせうか?」 美琴は大事な人宣言にニヤニヤ、モジモジから大幅に超えたグデグデ状態になっていたようです 「いや、アンタが…恥ずかしくなるようなことを言うからでしょうが…」 アンタが…以降は声が小さく出ているのかも分からないくらい小さな呟きだった 時計を見たが学生が起きるには早すぎる時間だったため 「ん?まあいいか、白井に電話するにももう少し後がいいみたいだし先に飯でも食うか」 そう言って上条はキッチンに向かっていく、それを止めるかのように美琴が前を塞ぎ 「泊めてもらうんだからご飯を作るくらい私が作るわよ」 そう言って上条を押しとどめる 「いや…でもなんか悪いなって」 「いーのよ、私が好きでやるんだからアンタは気にしなくても」 そう言って美琴は上条にやさしく微笑む そんな風に微笑まれたら誰だって断れないんじゃないかと思う上条だった 「ハア、わかったよ美琴さんの美味しい手料理を楽しみに待っていますよ」 そう言って上条は茶化しつつ自分の言ってることで顔を赤くするのであった 「よ、よし…待ってなさい」 楽しみという言葉から美琴はやる気を奮い立たせるのであった あれ、アイツ今私の事名前で呼んだわよね? ポンッと作る前に小爆発する美琴だった ・・・・・・・・・ 「えーっと…御坂さん、これは本当に上条さん家の冷蔵庫の中身から作ったものでせうか?」 美琴が作った朝食を前に上条は唖然としている 「卵とか余ってたひき肉とかは使わせてもらったけど…ちゃんと冷蔵庫の中身を使ったわよ?」 簡単に言ってのけた美琴だったが上条からすれば自分の作った朝食よりも2ランク以上も上の料理に見えるのである 「いただきます…ムグムグ、ムグ」 そう言って上条は朝食に手を付け…泣いた 「御坂さん…上条さんと、しては…女の子の手料理を食べるだけでも幸せなのですが…グスッ あまりにも美味過ぎて涙が止まらないんですよ」 そう言って泣いて喜びながら食べている上条を見た美琴は 「そんな大げさなリアクション取らなくても、し、しばらくは私が作ってあげるんだから…楽しみにしてなさい」 内心ガッツポーズで大喜びな美琴であるが悟られないように強がってみた 「…楽しみにします」 上条はそう素直に言って恥ずかしさを隠す為に朝食にがっついた 「うん、任せなさい…」 美琴はそんな子供っぽい上条を見て静かに微笑んでいた 「ごちそうさまでした」 「お粗末さまでした」 そう言って美琴は片付けようとするが上条に止められた 「いいって、作ってくれたんだから片付けくらいは俺がするよ」 そう言って二人分の食器を重ねキッチンに向かう そうこうしているうちにいい時間になった為美琴の携帯を借りて白井に連絡をとることにする 「この連絡が一番嫌な予感はするんだけどな…」 二人は同じことを感じつつも上条が口に出して言う ~~♪カチャ 『お、お姉様!いまどちらにいらっしゃるですの!お姉様!』 開口初っ端から爆音で耳が痛くなるほどの叫び声… 「あ、あのー白井…御坂が今大変なことになっててな…」 そういった瞬間 『お、お姉様の携帯から何故、上条さんの声が聞こえますの?……』 ・・・・・・・後半の無言が怖いのですが… 『上条さん?お姉様は一緒にいらっしゃいますの?』 背中に嫌な汗がツーっと一筋流れる程冷たい声 「あ、ああ昨日は電話で御坂が喋っても白井が反応しなかったから今は俺が掛けてるんだが…」 どういうことですの?と先程と同じ冷たい声… 「あー、今から説明するが…結局信じてもらえるかは白井次第なんだが…まあ、聞いてくれ…」 そう言って御坂のことを知っている白井には恥ずかしいこと以外はすべて話し、無言が返ってくる… 「正直信じられませんが、上条さんの真剣な声は伝わりましたのでしばらくはお姉様をよろしく頼みますの… ただし、お姉様を傷物にするようなことがありましたらその時は……わかっていらっしゃいますよね?」 しかたないといった声で返答されたが、明らかに最後の一言だけ殺意がこもっていた 「わかった、絶対御坂を守ると約束する」と上条は間髪いれずに答えたため 白井は呆れたのか「ハァ…これだからお姉様は惚れ…」とかブツブツ言いつつも 納得したのかお願いいたしますわと言って白井は電話を切った そうして、美琴が能力を失った二日目が始まる □ □ □ 昨晩に時間は戻る 縁田汰鶴は今、似合いもしない派手なドレスを着せられ、どこかのホテルの一室の鏡の前に立たされている 「ねえ、鶴?今日はどんなカツラがいいかな?」 縁田に声をかけてきたのは見た目15、6歳ほどのかわいらしい白いゴスロリファッションの少女 髪はクルクルとお姫様みたいにカールのかかっている比較的手間のかかる髪型で色は薄いピンク 瞳は淡いブルーで見た目にしては落ち着いた表情をしている 「ミリ様あまり、はしゃぎますとまた転びますよ?」 縁田はその少女をミリ様と呼んだ 「へへーん、そんな事言ってもさっき転んだばかりなんだから転ぶわけがないんだよ、あとミリ様じゃなくてあたしは…ってわわっ…」 ドンッ 自分のスカートのすそを踏んで盛大にこける 「ハァ…一応、私はミリ様の彼氏兼補佐なんですからもう少ししっかりしてください統括理事長の血縁者さん」 そう彼女は統括理事長アレイスター=クロウリーの血縁者らしい… と言っても別段権力を与えられてるわけでもなく邪魔ならいつでも切られる存在である。 アレイスター本人からでさえも…ただ、能力が特殊な為少し自由を貰っている微妙な立ち位置の少女なのである 縁田はそんな少女をまあ理由は別にあるとしても守りたいと思えた初めての人物 その為なら女装などの恥辱でも耐えようと思ってはいるのだが未だに若干抵抗がある… 「その統括理事長の血縁者とか言うのはやめなさい…あたしはそんなくだらないレッテルは要らないのです」 じゃ、気を取り直して…と金髪セミロングのカツラを被せてくる少女を鏡越しに見ていた 少女の表情はなにを思い出したか髪にカツラをなじませながら少しずつ曇っていく 「それにしても、恩人を泣かせてよかったの?二度も」 少女は悲しそうな表情をしているがそれは彼女の知らない恩人に対してではなく縁田に向けた心配からだ 「…怨まれても良いですよ、…ただただあの二人には幸せな一時、たとえ厳しい幻想でも、二人きりの時には幸せな幻想になるような時間が…いつもより長く、そう少しでも長く…」 恩人を悲しませた結果どんなに怨まれようともあの二人が結果として幸せになるなら私は蔑まれよともかまわない その様な決意を読み取った少女は 「大丈夫、どんなに人が鶴のそばを離れて行ってもあたしは鶴のそばにいてあげるよ…」 そう言って笑ってくれた…… 実はこの少女の能力で力を貸してもらっている為この少女も蔑まれる可能性は否定できないが守ると決めた以上守り通すことは必死である 「今、あたしのことを心配したでしょ?」 この少女には舌を巻く…なにせ、人の心から情報を得る自分の心を読んだようなことを言う 「まぁ、否定はしませんが…」 「鶴は心配しなくてもあたしの能力は書庫にも載ってないから何も心配することはないんだよ」 そう言って縁田にメイクを施していく少女はヒマワリの様に笑う 「分かりました…ミリ様」 この少女の優しさに包まれこの少女だけはなにがあっても守ろうと思う縁田だった 「ミリ様じゃなくてちゃんと本名で呼んでよ、むぅ~」 可愛く頬を膨らます少女 「この件で恩返しが無事に終れば考えましょうかね」 そう言って縁田ははぐらかす 「やったあ」そう言って今度はゴソゴソと宝石箱を漁っている その漁ってる音を聞きながらこの少女と出合った時の事を思い出す ・・・・・・・・・・・・・・ 数年前、外国の裏路地にて 縁田はうつむき裏路地にたたずんでいた… 「ねえ、そこの人、なんでそんな辛そうな顔してるの?」 目の前には雨の中白いフリルの傘を差す一人の少女 「君には関係ないだろ……」 そう言って突き放すのは土砂降りでも傘を差さずにずぶ濡れになっている縁田 そうだ、人なんて信用できるか…あいつらは私に表面上では対等に付き合ってるつもりでいたかも知れないが心の中では化け物などと恐れていたじゃないか そう、この男…縁田汰鶴は読心能力が高い為に激しい人間不信に陥ってしまっていた この能力は幼少の頃からのもので未だに能力のON、OFFが自由に出来ないでいるのも人間不信の原因である 「関係なくても放っておく理由にはならないよ?」 そう言って雨でビショビショになっている縁田を抱きしめてくれた 「私は人の心を読む能力があるのですよ…君だってそんな人間は嫌でしょう?」 自分で言っていて涙が溢れてくる…これでこの少女も私を嫌うだろう 「…人の心を読むのって辛かったでしょ?大丈夫、あたしは気持ちと心を一緒にしておくから」 少女はそう言って縁田の手を優しく握ってくれた 「このままだと風邪引いちゃうよ?」 そう言ってこの少女は自分の住んでいる近くの教会まで自分の手を引いて走って行く 教会…か、人の心を読む化け物じみた私にもまだ、神様は目を向けてくれるんだろうか… そう思い少女に引かれながら考えるのであった そして縁田は少女を通じて魔術という世界に足を入れることになる この心優しい少女も人に蔑まれて生きてきたことを知るのはもう少し後になってからであり、 それを知り日本の学園都市に正式に入る事で魔術を捨てるを望み、一昨年二人でやってきたのだ… ・・・・・・・・・・ 「…と、……の、…-い」 思い出に耽っていたことを思い出しこちらに戻ってきた 「ちょっと、鶴?聞いてるの、おーい」 目と鼻の先に少女の顔があった 「ねえ、鶴ってば人の話聞いてるの?」 ゴメン、ゴメンと謝ったのを機に少女は身を離した 「でもさ、鶴の能力って相手の声に反応するんだよね?確か質問に声で返すと複数人でも心読めるんでしょ?」 そう言って縁田にネックレスやらを付けては外しで色々試行錯誤している 「うーん、最初は私もそう思ってたんですが心を読むというよりは情報がこっちに漏れてくるような感覚が一番近いかもしれないですね、えーと、ほらルーンの魔術みたいに媒介を通して発動する感覚かな?私の媒介は質問に答えた声って言うきわめて狭いものですが、まあ読もうと思えば強制的に読めますけど…それは君への裏切りになるから絶対しませんよ」 と後半は少女が睨んできたからしっかりと宣言しておく 「ま、ミリ様の能力に比べたら物珍しさとかはないですね」 とアクセサリーを付け終わった自分を鏡で確認しながら答える 「私の能力って使い勝手悪いよ?2,3人位にしか同時に使えないと思うし、今回だって御坂美琴さんの能力の『発現の拒絶』と周囲の『認識の拒絶』の二つでほとんど半分以上能力使ってるもの」 そう、この少女に頼み2つの拒絶の能力を発動させてもらっている 少女の能力は『拒絶貼印』で特定のものを拒絶させる能力であり、身体測定では測定不能のLv0と判定、能力的には十分Lv4以上はあるはずである。Lv5になれそうではあるが生い立ちのせいで書庫からも排斥 ちなみに縁田はLv3と言っていたが全力を出せばLv4はあると思われる 「で…ミリ様…この格好で準備はいいってことでしょうけど…この後どうするんですか?」 と女装も完璧でもはや似合わない中性的な男の姿はない… 縁田はこの後のいやーな予感を感じつつ 「え?裏路地のスキルアウトさん達に売りとば…「やめてください、せめてミリ様の嗜好品程度にとどめて欲しいのですが…」…嫌、それだけだとつまらないもの」 そうですか…嫌なんですか…しかもつまらないとか言い切りやがりますか 「じゃ、さっさと裏路地へ行こー」 超ゴキゲンな少女に引きずられ裏路地へ捨てられに行く縁田がそこにいた… □ □ □ 「で…どうする御坂?お互い学校には行けそうにないし外出しても人ごみに行けばお前は辛いだろうし…」 そう上条はこの後の行動の相談を美琴に持ちかける 美琴は周囲に見えないのだからへたに人ごみに行けばもみくちゃにされてしまうだろうし、 学校に行っても欠席扱いは確実だ 「うーん、なら人の少ないところでも散歩しない?さすがに部屋にこもってるだけっていうのも疲れるでしょ?」 と美琴は言ってきた 「まあ、そうだな、確かにこもってるだけってのも身体に悪いしな」 そう上条が言い、じゃあいつもの公園にでも行ってみるかという事になった ・・・・・・・・・・・・ 公園についてみると流石に平日の学校のある時間なので人は誰一人いない 「まっ、静かだし人もいないから俺らが話してても別段変な目では見られねえだろ」 そう、上条は見えているが美琴は見えないので人がはたから見ると上条が楽しそうに独り言を言ってる様に見える訳で…つまり通報されてもおかしくないほど変人に見えるわけである 「そうね、あ、私飲み物買ってくるわね」 と美琴はベンチの横の例のお金を飲み込む自販に小銭を入れて普通に買う、蹴りを入れないのは少し上条を意識して つか、あの自販小銭は飲みこまねえのかよ…不幸だ… 夏休みのあの自販の思い出を思い出し上条はブルーになる 「アンタの分も買ったわよ?はい、ヤシの実サイダー」 サンキューと言って上条は美琴からヤシの実サイダーを受け取りベンチに腰掛ける 美琴は少し勇気を出して上条の横(結構近く)に座る 「それにしても御坂、お前ってヤシの実サイダー好きだよな?」 というか失敗しない限りこれを飲んでる気がするので上条は聞いた 「まあね、学園都市って変わった飲み物が多いからあまり気に入るものがないのよねー」 と学園都市ならではの会話を広げる、その後も最近のことについて話し出すがしばらくしてふと美琴は考える…今は上条がいるから美琴は落ち着いて話していられる、でも、もし上条にも見えなくなれば…と嫌な事が頭を過ぎった 「おい、今もし俺にも見えなくなったらどうしよう…とか思ったんじゃねえだろうな?」 心配そうに美琴の顔を覗き込む上条が横にいた 「大丈夫だ、俺にはこの右手『幻想殺し』がある…そんなお前が思う様な嫌な幻想は俺がぶち殺してやるよ」 と手を美琴の頭に置いてクシャクシャと雑に頭を撫でてくる 「ちょ、ちょっと髪が乱れるでしょ」 と撫でられたことに対して顔を赤くするが上条は気付かない 「ん?ああ悪ぃ悪ぃ、なんか電撃飛ばしてこない御坂ってなんか可愛くってさ…頭撫でたくなっちまったんだよな」 と後半尻すぼみになったが上条はちょっと本音を漏らしてみた 「うー、子ども扱いなのか微妙なラインな気がしないでもないわ…」 美琴はこれが子ども扱いなのか可愛いからなのかがよくわからなく微妙な表情をする 「それにしても、もしこれが縁田の仕業だとして、それでもやりたいことがいまひとつよく分からないんだよな…確かあいつの目標は俺に恩返しで彼女を作ること、それに対して今回起こったことは御坂が能力を失って、周囲から認識されなくなったことで…いったいなんの関係性があるんだ?」 今ここに縁田がいれば大いに嘆くだろう…上条のあまりの鈍感ぶりに アンタん家に泊まってるんだから私のことを知れって意味じゃないのかと…私は思うんだけど…違うのかな 美琴自身もよくはわかってはいない、しかしもし縁田が原因で次に会うことあったら能力が戻り次第、超電磁砲でもぶっ放してやろうと思う 「まっ、よくはわかんねえけど能力が戻るまでは俺が一緒にいてやるから心配すんな」 そう言って上条はニカッと笑った それを見て美琴はふと弾みで言ってしまった 「ね、ねえ、アンタのこときょ、今日からと、ととと、当麻って呼んでいい?」 と上目遣いでウルウルと瞳を潤ませて な、なんかホントに最近の御坂は可愛いと言うか…ってそんな瞳されたら断れないじゃないですか! 「い、いいけどよ、そんなら俺もお前のこと、み、美琴って呼ぶわ」 そうしてしばしの無言が入り… 「な、なあ、美琴そろそろ昼にしないか?時間もそろそろいい頃合だし」 そう、なんだかんだで話したりしているうちに時間はお昼を回っていた 「う、うーん、そうね時間も時間だしお昼にしないとね…あ、そうだ朝食を作ってる合間とか残りとかでお弁当コッソリ作ってたんだけど…食べたい?」 と頬を染めて聞いてくる美琴 「そりゃすげーな、朝食であんなに美味かったんだから弁当にも期待したい上条さんです」 そう言って上条は目をキラキラさせていてまるで子供である 「ま、あんまり期待されても困るんだけど…はいっこれ、と、当麻の分は少し大きめのやつにいれてきたよ」 と上条家にあったお弁当箱(何故か二つあった)の大きい方を上条に差し出した 「おぉ、すげーじゃん美琴、これ朝の合間に作ったってすごくね?!俺は出来ねーぞこんなの」 そう言って美琴と弁当を交互に見比べる、美琴は少しむず痒かったので軽く微笑んでみる 「それじゃ、美琴センセーのありがたーいお弁当、「いただきまーす」」 いただきますだけ合わせてお弁当を食べ始める 上条は食べながらも朝のメニューとこのお弁当のメニューの作り方などを聞きながら美琴と一緒に弁当を食べていく 「ごちそうさまでしたー、なんかもうこんな美味しい女の子の手作り弁当が食べられたり、朝食を戴けただけで上条さんは幸せの涙が出てくるのですよ」 そう言って実際に涙を流すのだから美琴は苦笑いをするしかない 「えっと、明日とか晩御飯とか能力治るまで作ってあげるわよ、って朝もそんなこと言わなかったかしら…」 そう美琴は言った、上条としては自分以上に美味しいものを作る、もとい女の子の手料理という嬉いイベントに嬉々としながら…あれ?俺ってこんな幸せキャラだっけとかなり不安になるのだった ・・・・・・・・・・・・・ それから二人は河原の土手を散歩して、そのまま帰り道スーパーで夕飯の買い物をして上条の寮に戻ってきた はたから見れば二人はれっきとしたカップルに見えただろうが今は美琴が見えないため上条が一人寂しく土手を散歩したり寂しい食卓の材料を買ったりしてるようにしか見えないのである そして、午後7時キッチンには約束通り美琴が立っている 「そういえば美琴、明日にでも白井と一回合流した方がよくないか?」 と上条が食器を出しながら聞いてくる 「うーん、確かにそうね、新しい情報が入ってるかもしれないし…」 と美琴はそろそろ情報が欲しいといったように言うのだが無神経な上条が一言 「まあ、それもあるんだが…年頃の女の子が毎日同じ下着とか服とかっていうのもどうかと…グヘッ」 途中で美琴は気付いたのか言葉が出る前に手が出ていた、今まさに使おうとしていたフライパンで一撃 カァァンと鉄の打つ音が聞こえた 「○☆△□@:*“#$?!!」 声にならない叫びを上げて転げまわる上条 「あ、ゴメン…い、痛かった?」 ちょっと顔を真っ青にした美琴が上条に尋ねる 「い、痛て―に決まってんだろーがぁっ!…ってみ、美琴さん…えっと…なんで泣いているのでせうか?」 後半歯切れが悪くなったのは、美琴が泣いているからであり、本心としては泣きたいのは俺ですと言いながらも泣かせてしまったことに後悔して歯切れが悪くなったのである 「いや、と、当麻がわ、悪いんじゃないの…グスッ、心配して言ってもらったのに自分勝手なことばっかで迷惑かけて…今もこれで思いっきり殴っちゃったし…嫌われちゃうのかなっって思ったら涙が…」 そう言って泣き続ける美琴 ハァ、なんていうか…ホントどうしちまったんだろうか、俺、美琴のこと好きになっちまったかも… 「なあ、美琴…俺はお前のこと嫌いになんかならねえよ、お前はお前なりに必死に今頑張ってるんだから…まあ今のはやり過ぎっちゃやり過ぎだけど、俺の言い方も配慮が足りなかったわけだし…」 そう言って美琴の頭を撫でる今度はクシャクシャとではなく優しく優しくフワフワと撫でるように 「さ、しんみりした話はお終いだ、飯にしよーぜ飯に!」 そう言って上条は美琴に背を向けた、上条の顔は真っ赤になり美琴には見せられそうになかったから 「うん…グスッ、ありがと…」 そう言って涙を拭いた美琴はキッチンに行き夕食の準備に再び取り掛かった ・・・・・・・・・・・・・ 夕食後お約束通り上条が食器を洗っている 美琴はお風呂へ入っているので今は水の音が2つ響いている カチャカチャ…チャプン…カチャカチャ… シャー、シャー…ザプン…ふー… 「……気が気じゃねえ…」 たまに風呂場から聞こえる鼻歌や溜息一つにも敏感になっておりどうも緊張してしまう上条… しかも、先程の一件で美琴を好きになりつつある、しかし、認めたくない理由は美琴が中学生だから 「なんていうか…恋とかってやっぱ理屈じゃないんだな…」 そう呟いた瞬間 ガチャッ 「上がったわよー」 と美琴がお風呂から上がったようだ ビクゥゥッと固まり 「あ、ああわかった今入っちまうな」 と言い上条は、洗い終わった最後の皿をカゴに入れ水を止める 「好きなテレビでも見ててくれ」そう言って風呂の支度をしささっと風呂場に入って行く ハァ…インデックスが住んでたときとは大違いだ… 今はイギリスで療養している暴食シスターを思い出しフフッと小さく笑う…どっちが大変だったんだろうかと 「ま、実際はどっちも楽しいんだろうさ…」 そう言ってお風呂に入った… 湯船に浸かって5分… 「ん?そういえば…この湯船って美琴が入った後の残り湯…てっ!!」 そう口に出すや否や顔を真っ赤にした純情少年・上条当麻は速攻で身体など洗い手早く風呂場を出た 「あれ…当麻?なんか上がるの早かったわね」 と不思議そうに上条を見る美琴がテレビを見てくつろいでいた 少しは気にしないのかこのお嬢様は… と声にならない溜息もついたがこのお嬢様は気付くわけもなく 「一応、黒子にメールはしてみたんだけど…どうやら明日非番みたいだから合流できるみたいよ?」 と言っても学校が終ってからなんだけどね、と美琴は言う それからまた漫画や雑誌、お互いに係わらなかった事件などを話したりして夜の11時頃には寝るかという事になり寝ることにした 「それじゃ、おやすみ」 と上条が電気を消し 「うん、おやすみ当麻」 と美琴がベッドに潜ったのを見届けて 上条は風呂場の浴槽ベッドに向かう こうして美琴との共同生活2日目が終った 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/鶴の恩返し
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小ネタ 上条美琴のバカップル子供のあやし方 赤ちゃん「ふえーん、ふえーん」上条「美琴、赤ちゃんが泣いているな」美琴「私達があやしてあげようよ、当麻」上条「よし!あれをやるぞ美琴」美琴「わかったわ!」上条、赤ちゃんの前に立つ。上条「ほーら、いないいない・・・」美琴「砂鉄の剣!」ザシュ!上条「ぐあああ!」上条「うううう・・・」上条「ばあ!」ずるん!竜王の顎バーーーン!赤ちゃん「キャッキャキャッキャ♪」上条「笑った笑った!」美琴「よかったね、当麻」ピーポーピーポー美琴「死なないで~~~当麻~~~」救急隊員「学習しろよお前ら・・・・・」END(ひでぶ!)
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終章その後 先に辿り着いた者は 第7学区にある、とある病院の一室。四人部屋のベッドの内3つが埋まっており、それぞれ上条当麻、浜面仕上、黒夜海鳥の三名が横になっている。(本当はそれぞれ別室だったのだが、 『面倒な事情を抱えた患者は一緒くたにした方が都合がいい』 という病院側【カエルがおのいしゃ】の意向で無理矢理同室にされたのであった)しかし病室には現在、入院患者三名の他に、上条の見舞いに来た客が二名。正直な所、あまり空気はよろしくない。というより最悪である。見舞い客の一人から、何やらどす黒いオーラが出ている気がする。しかも何やらバチバチと帯電音もしている。こちらは『気がする』ではなく、物理的【マジ】にだ。そしてもう一人の見舞い客は、上条に抱きつき、その豊満な胸でモニュモニュと上条の右腕を『挟んでいる』。一言でいうなら、正に『修羅場』である。黒夜は上から布団を被り、帯電音がする度にビクッとしている。サイボーグである彼女は、電撃そのものが怖いのだろう。(もしくは、ハワイで番外個体に遊ばれた【いじられた】事がトラウマになっているのかもしれない)浜面は何度も読み返した映画情報誌(おそらく絹旗からの見舞い品だと思われる)で顔を隠し、我関せずを決め込んでいる。こちらは電撃よりも、この空気が怖いらしい。そして上条はというと、電撃も空気もどちらも怖いのであった。しかし同時に、制服の上からでも分かる程の柔らか~い感触が右腕から伝わってくるので、珍しく『幸せだー!』と思っているのも確かである。よって、彼の顔は青くなったり赤くなったりで大忙しだ。? 「い、い、い、いい加減その馬鹿から離れなさいよ!!!」と、怒鳴った見舞い客は御坂美琴。当然、帯電していた方だ。? 「あらぁ、御坂さん。約束力は守らないとイケナイんじゃなぁい?」と、反論したのは食蜂操祈。当然、豊満な胸をしている方だ。どちらも常盤台中学が誇るレベル5の超能力者であり、今回の事件にも少なからず関わっていた者達だ。食 「『先に辿り着いた方が好きにする』…私の方が御坂さんよりも早くこの病室に入ったのよぉ? 上条さんを『こうやって』好きにできる権利力は、私にあるのが当然じゃないかしらぁ」美 「たかだか4~5分の差でしょ!? しかも私が遅れたのは、アンタが洗脳した奴等の妨害にあったのが原因だし!! てか、あんなのちょっとした口約束じゃない! 承認した憶えはないわよ!!」食 「あらぁ? 大覇星祭でのちょっとした口約束で、 罰ゲームと称して上条さんを連れまわしたのはどこのどちらさんだったかしらぁ?」美 「なっ! ななな何でアンタがそんな事知ってんのよ!?」食 「私の情報力をナメないで欲しいわねぇ」大方、あのツーショット写真事件を目撃した通行人の中に食蜂の手の者がいたのだろう。だが今はそこを追及している場合ではない。とりあえず、目の前で起こっている出来事【じけん】を何とかしなくてはならない。大切なのは『今』なのだ。美 「だとしても! 『好きにする』で何で『ソレ』なのよ!!!」食 「そんなの私の勝手力でしょぉ? 上条さんだって喜んでるみたいだしねぇ」美 「ア・ン・タ・も・ア・ン・タ・よ!!! 何、一切抵抗しないで胸の感触楽しんでんのよこの変態!!!」上 「あ…いや、あのですね? ワタクシ上条当麻は現在動けない状態にありまして、逃げようにも逃げられないのであります……」と、自分の弁護をする上条だが、彼の怪我は黒夜と違って、歩けない程の重症ではない。しかしながら、食蜂のモニュモニュ地獄【てんごく】を食らい続けている上条は、下半身の『一部分』が大変な事になっており、布団から出るに出られないのである。健全な男子高校生なのだから仕方がない。ちなみに浜面も、雑誌を読むフリをしながら横目でこの状況を見ており、上条同様、下半身の『一部分』が大変な事になっていた。滝壺が知ったらと思うと恐ろしい。 食 「女の嫉妬力は見苦しいわよぉ? 悔しかったら御坂さんもやればいいじゃない。 もっとも、御坂さんにそんな度胸力はないし、 そもそもその俎板力じゃ物理的にも無理だと思うけどぉ」美 「あん!?」くすくすと嘲る食蜂に対し、美琴は「バヂヂィッ!!」と本日最大の帯電音を発して威嚇する。仲裁に入ったのは上条…ではなく、黒 「やァめェろォよォォォ! ここ病院なンだぞォ!? 精密機械とかいっぱいあンだぞォ!? 他の患者さンの迷惑になるから、ケンカなら外でやれよォォォ!!!」若干半泣きの黒夜であった。しかも正論である。よほど電撃が怖いらしい。しかし黒夜の恐怖とは裏腹に、美琴の次の行動は、予想【でんげき】とは違うものだった。食 「なっ!!?」上 「み、みみみ御坂さん!!?」食蜂とは反対側、つまりは上条の左腕側に抱きついたのだ。美 「こ、ここ、これでいいんでしょこれで!!!///」食 「い、いい訳ないじゃない! 勝負は私が勝ったのよぉ!? どぉして御坂さんまで抱きつくのかしらぁ!」美 「ア、アア、アンタが『やればいい』って言ったんじゃない!!」食 「だ、だってそれは、まさか本当に御坂さんがこんな大胆力な事ができるとは思わなかったしぃ!」確かに、普段の美琴ならできなかったかもしれない。しかし今は、食蜂というライバルに煽られた事による対抗心と、目の前で上条が思いっきり誘惑されているという嫉妬心、更には、「ここで引いたら色々と負ける気がする」という謎の不安心などが入り乱れ、結果、羞恥心に勝ったのである。二人の言い争いの激しさが増す事に比例して、両サイドからの乳圧も強くなる。食蜂がスゴイのは言わずもがなだが、美琴とて決して「つーるーーー♪ ぺーたーーー♪」ではない。小振りながらもそれなりに主張してくるお胸さまと、何よりも普段では見れない大胆な美琴自身に、紳士を自称する上条さんとて理性の崩壊は目前だ。こんな時は素数を数えて気を紛らわすのが上条流なのだが、その余裕すらない。だが上条にとって、これが不安でもあった。何故なら彼は、自他共に認める『不幸体質』の持ち主だ。幸せの後は必ず不幸が訪れるものなのだ。つまり、「俺の幸せがこんなに続くわけがない」と、ラノベのタイトルのような事を思っている訳だ。と、その時である。美 「―――てんのよ!! って、聞いてんの!?」上 「……ふぁ!? は、はえ!? なな、何でございませう!?」言い争いは、いつの間にか上条に飛び火していたらしい。食 「だからぁ。上条さんは私と御坂さん、どっちの胸の感触力が良かったのぉ? 勿論、私よねぇ」美 「ち、違うわよ!! わ、わた、私の方が気持ち良かったでしょ!!?///」上 「………はい?」二人の言い争いが、どうしてそんなとんでもない所で終着したのか、両腕に神経を集中していて、ろくに会話を聞いていなかった上条には知る由もない。理由は分からない。が、とにかくここは、どちらかを選ばなければならない。 数々の戦いにその身を投じてきた上条は、本能的に悟ったのだ。二人のうち一人を選ばないと、この妙な桃色空間は終わらないと。平和的に解決しようとして、「いやー、どっちも良かったから選べないやー」などと曖昧な返事をすれば、昨日よりも恐ろしい出来事が待ち受けているのも、今までの経験から知っている。(それは上条にとって、7500人の自称ヒーロー達や、 第一位から第六位までの能力を自在に使える恋査を相手にするより恐い事らしい)なので、美琴【ビアンカ】か食蜂【フローラ】のどちらかを選ばなければならない。上条はそれぞれを選んだ時のシミュレーションをしてみる。美琴を選んだ場合、食蜂は何人もの人間を操り自分をボコボコにする気がする。それは嫌だ。食蜂を選んだ場合、美琴はコインが尽きるまで超電磁砲をぶっ放してくる気がする。それも嫌だ。……………結論、どっち道不幸だ。しかし、先ほど述べた通り曖昧にする方が危険だ。そうなるとやはり……上 「い、いや~、み、御坂の方が気持ち良かったかなー…?」食 「なっ!!?」美 「えっ!!?///」上条は美琴を選んだ。美琴を選んだ場合、実害が出るのは自分一人だけだが、食蜂を選んだ場合は病院全体に被害が出る。そうなると、先ほど黒夜の言った事が冗談では済まなくなる。食蜂がピクッと動いて身構える上条。だが食蜂は、上条が思っていたように能力を使うわけでもなく、食 「うわ~ん! 上条さんのバカアホ貧乳派~!」と、泣きながら走り去っていった。どこぞの隣人部の肉のように、それはもう見事な走りっぷりであった。ちょっと可哀相なくらいである。嵐が去った後のような病室で、上条は溜息をつきながら美琴に話しかけた。上 「あのなぁ、御坂。あまりこういう悪ふざけはやめてくれないか? 俺だって男なんだから、何か問題が起こっても………ってアレ? 御坂?」おかしい。美琴から、返事も相槌も聞こえてこない。美 「私を…選んで…コイツが…私を……///」と言うより、そもそも上条の声が届いていなかったらしい。この様子はもしや……美 「……ふ…///」いつものアレだ。美 「ふny」黒 「ぎゃァァァす!!!」上 「危ねーーーー!!!」が、とっさに右手で頭を抑えた【そげぶった】。しかし、左側にいた美琴を右手で抑えるためには体を捻る必要があり、くわえて上条はベッドで上半身だけ起こしている状態だったので、バランスを崩した挙句、そのまま美琴を引っ張りベッドに押し倒す事となる。そのせいで再び美琴は「ふにゃー」しそうになるのだが、上条の不幸は終わらない。この直後、どこから話を聞いたのか、純白のシスターが病室に入ってくる。彼女は、また上条が自分を放って何かの事件に首を突っ込んでいたというイライラ。単純にお腹が空いているというイライラ。そして何より、いざ心配して来てみれば、何やら美琴と仲良く【イチャイチャ】しているのを目撃したというイライラ。以上、3つのイライラを自らの歯に集中させ、上条の頭皮目掛けて飛び掛る。『修羅場』の第二ラウンドのゴングが鳴り響く。その一部始終を見ていた浜面が、最後にポツリと呟いた。浜 「……俺は滝壺一筋でいこう」
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/育児日記 夏祭り 夕日が差し込む。 上条が目をさましたとき、すでに1日は終わろうとしていた。 時間の進みかたがおかしいのは夏休み終了間際の恒例とでもいうのか? 寝室を出て、リビングのドアを開ける。 目の前には 「だーぶー」 「ふ、振り回すなー!! は、離せーーー!! 」 インデックスに弄ばれるオティヌスと、 「元気そうですね」 「……あぁ、そうだね」 シリアスな感傷に浸るステイルと神裂。 因みに彼らが見ている光景は、お人形が悲鳴をあげているギャグシーンである。 そして傍らではスフィンクスに威嚇されている美琴が膝をついていた。 その横では爆笑した表情のまま、トールが焦げている。大方美琴を笑いでもしたのだろう。 相変わらずの混沌に、上条はいつものように 「不幸だ」 と、呟いた。 ようやく周囲が上条に気付く。 「大丈夫ですか!!?」 「痛いところない!!?」 「心配したぞ、人間」 「ありがとな。攻撃したのもてめぇらだけどな」 「そのまま起きなくても良かったんだけどね」 「よし、その喧嘩、買った」 「……はっ!!! いらっしゃーい、喧嘩はいりませんかーー!!?」 「売ったら買うと思うなよ?」 「ぱーぱ!!」 「なんだ? インデックス」 「ばーばい!!」 「…………」 どっかいけってか。 もうツッコミ疲れた上条はなにも言わず、テーブルに肘をつき、椅子に座る。 今更だが、テーブルは10万、椅子は5万である。 それを知ったら上条はこの家では生きていけない。 安い方なんだもの。 「で、お前らは何しに来たんだ?」 ステイルと神裂は一瞬間を開けていう。 「神裂と休暇が重なったんだ。たまたま偶然ね」 「偶然たまたま彼もこの子に会いに行くと聞いて一緒に行くことになったんです」 上条と美琴が二人を見る。 「「……たまたま?」」 ジト目で。 「「……たまたまだ(です)」」 本当にそうならこっちを向いてほしい。 インデックスが二人をきょろきょろ見た後、頭を傾けた。 ずっと後ろ向いてるのはおかしいよね。 ……ルーンの天才と聖人がいないけどイギリス清教は今大丈夫なのか? 上条はため息をついてそこを流す。 「それで、インデックスと遊びたいと」 ようやく魔術師はこっちを向いた。 「はい、3人で遊びにいきたいのですが、よろしいですか?」 それを聞いた美琴がインデックスを抱き上げる。 「ステイルさんと神裂さんが一緒に遊びたいって。 遊びにいきたい?」 「あい!!!」 元気のいい返事だ。微笑む美琴。 しかし、美琴は真面目な顔になる。 「でも、魔術は使ったらダメだかんね」 「あい」 同じ真面目な表情で、心なしか神妙にインデックスは返事をした。 神裂は祈るように手を握り、目を輝かせている。 ステイルは冷静だった。 あ、いや、小さくガッツポーズしてる。 笑顔で奴等は出ていった。 「いってきまーす」 「いっまーす」 「「いってらっしゃい」」 さて、半分は片付いた。 「で、オティヌスだけど」 小さいままじゃん。 「まぁ、見ていろ」 そう言って彼女は手を振るう そして ぽんっ、と彼女は元の姿に戻った。 「アーサー王伝説のモーガン・ル・フェイはもともとケルト神話の女神だ。 しかし、彼女は妖精として扱われ、さらには魔女に……どうした?」 上条と美琴は話を聞いていない。 それどころか後ろを向いていた。 「「……なんでもないです 」」 顔を真っ赤にして。 別になんでもない。 先日赤ちゃんになった美琴が元に戻った時のことを思い出したりしていないのだ。 頭の上に?を浮かべたオティヌスはトールに回答を求めたが、 彼もわからないというジェスチャーで返答する。 しぶしぶ視線を戻し、咳払いをするオティヌス。 「と、いうことで、行くぞ!! 人間!!」 「はぇ?」 上条が変な声を出したとき、 彼はオティヌスに襟を掴まれ、残像となっていた。 「ちょ、ちょっと!! 当麻!!?」 あわてて美琴は玄関に向かうが、 扉に到着するより先に、「ぎゃぁぁぁああああああ」という叫び声を聞く。 外に出ても廊下に人影はない。 下を見ると上条はいずこかへ連れ去られている。 エレベーターのスピードではこんなに速く降りられないし、飛び降りたのだろう。 美琴はあわてて叫んだ。 「当麻!! 帰りに醤油買ってきてーーーーー!!!!!」 ん???? トールはたっぷり思考に時間をかけ、ようやくポツリと呟いた。 「ミコッちゃん。それ恋する乙女のセリフでないよ?」 数分後、 「お待ちになりやがれ!!」の言葉にようやく元魔神は止まった。 女の子に引っ張られて空を飛ぶ体験なんて…………したな、去年。 「で、なんだよオティヌス?」 「いやいや、私が元に戻れたのだぞ!!?」 「? よかったな」 とりあえず上条を殴った。 もう少し喜んで欲しいと思うのって罪ですか? あ、これこそ人間が提示した罰ですか、そうですか。 「元に戻ったんだ、やりたいことが山のようにある。貴様には付き合ってもらうぞ」 「じぇんじぇんやぶさかじゃないへど、なんでおふぇ殴られたの?」 もう一発逆の頬を殴る。 「自分の胸に聞け」 その時、オティヌスは何かを目に留めた。 「あれは……」 上条も泣くのをやめて、そちらに視線を向ける。 「……夏祭りか」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/育児日記
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上条当麻の突撃!! ウチのクリスマス クリスマスを翌日に控えた12月24日、上条当麻は肩を落として家路についていた。「明日はクリスマスだというのに、なーんにも予定がない。はぁ……」上条は現在高校三年生。おまけのおまけにもひとつおまけでなんとか進級させてもらったのだ。上条が進級できたのは担任の努力やクラスメートの優しさやとある超能力者の指導のお陰であることを上条は知っている。それはさておき一昨年のクリスマスは祝ったり騒いだりしている余裕など無く、世界中を飛び回っていてクリスマスどころでは無かった。その翌年のクリスマスはクラスメートや上条勢力の仲間とワイワイ騒いで過ごした。だというのに「なんで今年は皆予定が入ってるんだよ?今年もみんなでワイワイ過ごすとばかり思ってたのに」それには訳がある。去年のクリスマスで『誰かと二人で過ごさないのか』と問われた時上条が『そうなれば良いんだけど』と答えたせいで上条には誘いたい相手が居るのだと皆が勘違いして上条に気を遣ったからだ。「インデックスはステイル達と過ごすってイギリスに行っちまうし、家に帰っても一人……寂しい……」吐く息は白い。独りであるという事が余計に空気を冷たく感じさせる。何か暖かいものでも飲もうと考えた上条はいつもの自販機へと向かった。 「あいつ、こんな所で何やってんだ?」いつもの自販機へとやって来た上条が目にしたものは,キョロキョロと辺りを見回す御坂美琴だった。誰かが辺りを通る度にビクッと反応し、求めていたものと違うと分かると残念そうな顔をしてまたキョロキョロと辺りを見回す。しばらくの間眺めていたが、あまりにも挙動不審だったので声をかけることにした。「捜し物は見つかりましたか? 御坂さん」「それがまだなのよ。まったく、何処ほっつき歩いてんだか……ってうわあぁぁぁぁぁぁぁああぁぁ!?」「うわあぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁあ!? いきなり大声を出すな!!」「アンタが急に現れるからでしょうが!! そんなことより!! アンタ!! 今日の予定は!?」「……へ?」「……へ? じゃなくて!! 今日はなんか予定あるかって聞いてんの!!」「……未定です」「……未定?」「その通り。今年の上条さんのクリスマスの予定は未定です。きっと誰も来ない一人きりのクリスマスです……はぁ……」独りでクリスマスを過ごすことを思い出して本日何度目か分からないため息を吐く上条。その傍らでは、「そっか、何も予定入ってないんだ……よーしだったら」何やらぶつぶつと呟いていたが、「アンタ!! 今日の晩は窓の鍵を開けたままにしておきなさい!!」ズビシィ!! と上条を指差して妙な事を言い出した。「ヤダ」「何でよ!?」「だって泥棒が入って来るかもしれないし」「入ってなんか来ないわよ!! 何階に住んでるのよアンタは!!」「だって二年前の夏休み最後の日に窓から侵入したって言ってた奴が居たんだよ!!」「二年前の夏休み最後の日……」何かを思い出した美琴が急に頭をブンブンと振り出した。あぁそういえばこいつと恋人ごっことかしたなーと上条がぼんやり考えていると、いつの間にか復活した美琴が「兎に角!! 今日の晩は窓の鍵を開けたままにしておきなさい!! さもないと……」「さもないと……?」「ふふっ」「怖えよ!! 何する気だよ!?」「気にしない気にしない♪ ちゃんと開けておけば悪いことにはならないから」「おい!? 待てよ!! 気になって今夜眠れなくなるだろうが!!」言いたいことを言って美琴は去って行った。残された上条は「とりあえず帰ろう……」家路を急ぐのだった。 気が付けば夜だった。「時間の進み方おかしくないか!? なんか前にもこんな事有ったような……たしか二年前の夏休み最後の日に」気にしても仕方ないので気のせいだと思うことにした。食事を済ませ、後は寝るだけとなったところで美琴に言われたことを思い出した。「危ねえ、すっかり忘れてた。御坂に何されるか分からねえし、泥棒が入ってくることも多分、きっと、おそらく無いはずだし、一応開けとこう」鍵を開ける時に、外を見てみれば、友達で集まって騒いだり、家族で出かけたり、様々なクリスマスの過ごし方をしている人々が見えた。それが余計に、今自分は独りなのだという事を感じさせる。「……もう寝るか。寝て過ごすクリスマスっても良いだろ」寂しさを忘れようと電気を消し、ベッドに潜り込み、目を閉じた。眠ってしまえば何とかなると考えて、気付いた。コツ、コツと誰かが近付いてくる。しかもベランダ側から。(誰も来ないクリスマスだと思ってたのに泥棒が来るのかよ!!)上条が少しパニックに陥っている内に足音は上条の部屋のベランダで止まった。(こうなったら返り討ちにしてやる!!)上条が物騒な事を考えている内に人影はガラス戸を開け室内へと侵入し、上条の側へとやってきた。寝ているかを確認しているのだろう。そして部屋の照明のスイッチを入れたところで上条は飛び起き人影に掴みかかった。「捕まえた!! 覚悟しろこの泥…棒……?」「きゃあぁぁぁぁああ!? アンタ起きてたの!?」 飛び起きた上条が見たものは、サンタのコスチューム(スカートの丈の短い奴)に身を包んだ御坂美琴だった。恥ずかしそうに身を捩りながら美琴は、「か、感想とか意見とか、無いの!?」なんて事を聞いてきたので思ったことを素直に口にした。「えーと、とりあえずメリークリスマス。来年は玄関から入ってきてくれ。あとエロイ」「あ、うんメリークリスマス。来年もいいの? あと恥ずかしいからエロイいうな」「独りはやっぱりさしいしな。御坂さえ良ければ、だけど」「良いに決まってるじゃない!! でなきゃこんな格好しないし今日の予定だって聞いたりしない!!」「そっか。……ところで御坂さん?」上条は部屋を見渡しながら疑問に思ったことを口にした。「何?」「ブレゼントは?」プレゼントらしき物が無いのだ。「ああ、私」「……ん?」「プレゼントは、私」「……」「もらって?」可愛らしく首を傾げられた時、上条の中で何かが弾けた。「御坂……」ぐいっと美琴を抱き寄せた。突然の事に戸惑う美琴の耳元に「今はこれで我慢してくれ。でもいつか、きっと御坂を貰うから」そっと呟いた。「それってどういう……?」「さーてもう遅いし今日は寝るか!! あ、もう遅いし泊まっていけ、御坂」「え……? そんなに遅い時間じゃないと思うけど?」「独りは寂しいから居てくれって事だよ……あ」「ふーん、つまりアンタは高校三年生にもなって独りが寂しいんだ。それでこの美琴さんに甘えさせて欲しいんだ」ニヤニヤとした笑みを浮かべる美琴。しまったと思ったときにはもう遅い。「仕方ないわねー。甘えん坊さんの当麻くんの為にも美琴おねーさんが泊まっていってあげましょうねー」「子供扱いすんな!! もういい!! 俺は寝る!! お休み!!」そう美琴に告げ、布団を敷き、(ベッドは美琴に譲った)寝転がって目を閉じる。そういえばさっきまで感じてた寂しさはすっかり無くなったなーとか、来年もこうして一緒に過ごせたらなーと考えている内に睡魔がやってきた。美琴が頭を撫でてくれている。その感触を味わいながら上条は眠りに落ちていった。 「ん……朝か……?」布団から抜け出し部屋を見渡しても美琴の姿は無かった。美琴が眠っていたであろうベッドに触れてみてもすっかり冷え切っている。「あの格好は目立つだろうし、人目に付かない朝の早い時間に帰ったんだろう」上条の脳裏をよぎったのは昨日の事。もしかしたら今から誘えば美琴と二人で過ごせるのではないか「今日は俺が御坂の予定を聞いてみるかな。それでもし何も無ければ……それはまた後で考えれば良いか」携帯を操作しながらそんな事を考えていた上条だが、美琴との通話中にクラスメートたちの訪問、インデックスの帰宅等、二人だけでのクリスマスはもう少しの間お預けになったのだった。