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朝、眠い目を擦りながら階段を降りてくると、唯は、あるモノの前で立ち止まった 「おはよう」 と天使も見惚れてしまいそうなとびきりの笑顔で挨拶をした相手は、水槽の中の金魚だ 夏祭りの時のリトからのプレゼント あれから少し経つというのに、唯は、大切に大切に育てていた 水槽を買い、金魚の本を見ながら、慣れない事にも必死にやってきた それもこれも リトからの プレゼントだから 「ちょっと待っててね」 学校の誰も聞いたことのない、弾む様な声でそう話しかけると、唯は、金魚の朝食の準備に取り掛かる 「…さあ、朝ゴハンよ。リ…」 と 秘密の名前 を口にしかけた時、唯の背中にいつもの眠たそうな声がかかる 「…なんだよ。朝から金魚の世話かよ。ご熱心なこって!」 「ひゃッ!!?」 と情けない声を出しながら振り返った唯が見たものは、上半身裸の遊 「お、お兄ちゃん!! もぅ、驚かさないでよねッ!」 「あぁー? 知らねーよ! 金魚なんかに熱心になってるおまえが悪いんじゃねーか」 「な、なんかとは何よ! なんかとは!? このコはね…」 「あーあー、わかった! わかった!! ゆうきくん からのプレゼントなんだろ? 何回 言ってんだよおまえは。いい加減聞きあきたって…」 げんなりしつつも、しっかりと口元をニヤニヤさせる遊に、唯の肩がぷるぷると震える 「つーかンな事より、さっさとガキでもつくってソイツとケッコンでもしろよな」 「な…!?」 「アイツかなり奥手ってヤツなんだろ? オレには理解できねーけど。まーおまえが、もっ と積極的にでもなればすぐできんじゃねーか? 何のためのでかいムネだと…うッ!?」 ここにきて遊は、自分が少し言い過ぎた事に気付く。が、時すでに遅し 耳まで紅潮させた唯がギリギリと睨みつけていた 「…ヤバ…」 「ハ! ハレンチだわ!! お兄ちゃんのバカーーッ!!!」 大声でそうどなりながら階段を駆け上がっていくその後ろ姿に、遊はなんとも言えない表情を浮かべた 「…なんつーか。あの様子だと、まだまだ先になりそうだな…。」 階段下からドアが勢いよく閉められる音を聞きながら遊は、苦笑を浮かべた 部屋に入って来た勢いそのままにベッドに寝転がると、唯はムッと頬を膨らませた 「…ホント、何考えてるのよッ!! お兄ちゃんはッ!!」 枕に顔をうずめながら足をバタバタさせる事、およそ十数秒 唯の足がピタっと止まる 「…結婚…か…」 本当のところ、実はさっきから遊に言われた言葉が、頭の中をぐるぐると回り続けていた いろいろと多感な女の子である唯にとって『ケッコン』とか『子ども』などと言った事は、 まさに心をくすぐるには十分すぎる言葉で──── 唯は枕から顔を上げると、机の上に視線を向けた 窓から入ってくる朝の涼しい風がカーテンを揺らし、机の上のノートをパラパラと捲る そして、そのノートの隣には、いつもそこにある写真立ての中の一枚の写真 笑顔のリトと恥ずかしそうに明後日の方を見ている自分との、二人っきりの写真 朝日を浴びてニカっと笑っているリトに、唯はクスっと笑みをこぼす そして、写真の中のリトに向かって小さく呟く 「…あなたはどう思ってるの…?」 クリスマスの夜、初めてその想いを言ってくれた 何度も肌を合わせた日、恥ずかしそうに相変わらず不器用に、でも、一生懸命想いに応えてくれた だけど──── 「…結城…くん……」 だけど、もっと もっと、もっと!! その気持ちをほしいと思うことはワガママな事なのだろうか────? 唯は仰向けにゴロンと寝転がると、ボ~っと天井を見つめた ギュ~~っと胸が締め付けられる感触に身体がそわそわする ぽーっと熱い頬に、胸が大きく音を立てる 「…結城くんの子ども…か…」 その時には、自分はもちろん結城唯になっていて 結城くんの家に住んでいて 朝、仕事に行く結城くんを子どもと一緒に見送って それから育児の合間に掃除をして、洗濯をして、買い物をして、食事を作って 結城くんが帰って来たら、おかえりなさいのチューもするの……かな…? 休みの日はきっと結城くんがずっと一緒にいてくれて 頭をよしよしと撫でてくれたり、ホッペにチュってしてくれたり 三人でお弁当を持って動物園に行ったり、遊園地にも行ったり そして、いろいろと落ち着いてきたら…そしたら……そしたらまた二人目を…… 「…ッ…!!?」 とそこまで考えて唯は、目をパチパチさせた 体が熱いし、なんだかしっとりと汗も掻いている 「わ…私ったら何考えて…ッ!!」 けれど、どんなにその気持ちを抑えても後から後から溢れてくる 唯はシーツをギュッと握りしめた 「ハ…ハレンチだわ…!!」 時刻はまだ十時を少し過ぎたばかり 約束の時間まで、まだ、数時間もある 「…ッ…」 布団に身体を擦りつけながら、時計と机の上の写真を行ったり来たり 枕をギュッと抱きしめる頃には、唯の体はすっかり熱くなっていた 息は熱を帯び、手は無意識にTシャツの上から身体をなぞり始める 「…ン…は…ぁ…ぁ」 枕を自分の大事なところへ押し当てる頃になって唯は、ようやく気付く 自分がどんなハレンチな事をしているのかを (でも…でも…ン、ン…く…ぅ) 手は止まらないし、身体はどんどん熱くなっていく 頭の中には常にリトがいて、リトが自分の名前を呼ぶ毎に胸がキュンとトキメク 「とま…らない。とまらない…ダメなのにこんな……ん、く…ぅ」 ハーフパンツの上からなぞるだけだった手は、すでにパンツそのものをずり下げ、ショーツ の上を指で何度も擦っていた 「は…ぁあ…ン、ン…ン」 クチュクチュと卑猥な水音に混じって、唯の甘い声が部屋に響く そして、濃厚な女の匂いが満ちていく 唯は夢中だった 慣れない手付きで、それでも好きな人を頭に描きながら ぐっしょりと濡れたショーツの隙間から、恐る恐る、秘所を指でなぞっていき、二本の指で ゆっくりと割れ目を広げると、中からトロリとこぼれた熱い蜜が唯の指を濡らす 「…ッ…ン、く…ぅぁ…」 じゅぷじゅぷと膣内を掻き回しながら、唯の頭の中は、リトとの激しいセックスの真っ最中だ 普段言えない様な事、して欲しい事、言って欲しい言葉 いくつもいくつも溢れては、身体を走る電流の様な波へと変わっていく 「結…くん、結城くぅ…ん…結城く…ッ」 ホントはもっとハレンチなコトだってしてほしい… 結城くんのモノだって私は… アイスで何回か練習だってしてるんだから だから…もっと…… もっとキスして もっとギュッとして もっと…もっと…もっと…結城くんの…… 「ん…あっ、く…ぅぅ…あふぅ…っ…」 だけど一番想うのは結城くんの笑顔 いつも私のそばにあって いつも私の胸のあたりをあったかくさせてくれて 「結城…くぅ…ん…」 写真よりも鮮明に浮かぶ、頭の中の笑顔のリトに、唯は身体をギュッと丸くさせた 下腹部を覆う波はもう限界まできている その感覚に身を任せる様に唯は、自分の一番弱いところを指で擦った 「ひゃ…!? ぁう……ン、ンンンンッ…!!」 ぶるぶると身体を震わせながら、唯はシーツを掴む 目をギュッと瞑り、荒い息を断続的に吐き、余韻に浸り続ける唯に普段の凛とした面影はない だしらく半開きになった口から涎を溢れさせ、半裸になって乱れた姿なんてリトと言えど も見せられるものじゃない ぼやりと霞む視線の先には机の上の写真立て。そして、十時三十分を告げる時計 「…ぁ…はぁ……」 まだ約束の時間まで数時間もある──── 写真の中のリトを見つめながら、唯は小さく溜め息を吐いた 玄関に座りながらウエッジソールのストラップを留めていると、後ろからニヤついた声がかかる 「お、今日も出かけるのかよ? 相変わらずお盛んだなー」 「どうしてそんなハレンチな発想しかできないわけ!? 私はただ会いに行くだけよ!」 「へ~。会うだけねェ。会ってそれでナニするんだよ?」 「な、何ってそれは…」 急に口ごもる妹に遊の笑みは深くなる 「何だよ。やっぱオレの思った通りじゃねーか」 「ち…違っ…」 「何が違うワケ?」 「そ、それはその……、と、とにかく! 私と結城くんは、そんなやましいコトをするために 会うんじゃないんだからッ!!」 「へ~」 ポケットに手を突っ込んだまま歩み寄ってくる遊に、唯は視線を逸らしたまま、ぼそぼそと口を動かす 「今日はその…会って、それからいろんな話しをしながら、これからの予定とか立てて……。 それでどこか買い物とか…ケーキとかその…」 「ふ~ん」 遊は唯の前まで来ると、ポケットから手を出し、唯の頭にポンっと手を置いた 「ん…何よ?」 「ま、ナニするにしても、いっぱい甘えてこいよ!」 「あ、甘え…」 「な!」 「…う、うん」 大きな手の下で、白い頬をリンゴの様に赤くさせながら、唯はコクンと小さく頷く 遊はきちんとセットされたその長くてキレイな髪を乱さない様に、やさしく撫でていく 「…くすぐったいんだけど?」 「わりぃ。ま、気をつけていってこいよ!」 遊は唯の頭を軽くポンっと叩きながらそう言った 「うん。いってきます」 それから少し時間が経ち。リトの部屋―――― ポチポチとゲームのコントローラーを動かしながら、テレビ画面に迫る敵の一体を撃ち殺し ていると、部屋のドアがコンコンとノックされる 「はい?」 テレビ画面からドアに顔を向ける途中、時計の針を確認すると時刻は昼の一時すぎ 約束の時間よりも 一時間も早い 到着に、リトの口元に笑みがこぼれる そして、ガチャリと遠慮がちにドアを開けて入って来たその姿に、笑みが深くなる 「こんにちは。結城くん。…今、よかった?」 「って何言ってんだよ? おまえのこと待ってたんだろ?」 「…そ、そうよね」 その淡々としたいつもの声の中に、うれしさが滲んでいる事実をリトは見逃さなかった そして、唯の額にうっすらと汗が滲んでいる事も 約束よりかなり早く来たことといい、どうやら急いで来たようだ 「それで結城くんは何して……ってまたゲーム?」 あからさまに顔をしかめる唯にリトも苦い顔になる 「でもコレ、スゲーおもしろいんだって!」 画面を凝視する唯の目はますます鋭さを増していく 「おもしろいのかどうかはともかく! 人を撃つようなゲーム、私は関心しないわ!!」 腰に手を当てて、説教モードに入りかけている唯にリトは困った様に眉を寄せた 「いや…これ人じゃなくてゾンビ…」 「そんなの屁理屈よ! どう見たって人を撃ってるじゃないッ!!」 「ま、まー確かに…」 図星なため、それ以上は口を噤んでしまったリトに、フン、と鼻を鳴らすと唯は、リトの隣に女の子座りで腰を下ろした すでに腕と腕がくっ付き、左腕に唯のぬくもりが直に伝わってくる (今日もいい匂いがする) 控え目なシャンプーの香りに混じった、太陽の匂いをいっぱいに浴びたやわらかい夏の匂いと、唯の肌の匂い リトの顔が自然とほころぶ 「何ニヤニヤしてるのよ?」 「い、いや、今日も唯のいい匂いがするなって思ってさ」 少し照れながら歯を見せて笑うリトに、白いホッペをサクラ色に変えながら唯は俯いた 「バカ…」 その仕草にますます笑みを深くさせるリトに、唯の頬も赤みを増していく 触れ合う肌が唯の火照りをリトに教える 「別にそんな恥ずかしがる事ねーだろ?」 「わ、私は別に…結城くんがおかしな事言うから…」 ともごもごと口を開く唯 スカートから伸びる白い太ももの上で両手を重ねると、何度も指を絡ませ合いながら、そわそわと身体を揺らす やがて、ほんのりと赤くなった顔でリトの横顔を見つめると、言い難そうに小声で呟いた 「そ…そんな事よりも! コレはいつ終わるわけ…?」 「ん? もーちょっと待ってくれって! 今いいトコだからさ」 「う、うん。わかったわ…」 約束の時間よりもかなり早く来た負い目なのか、唯は再びテレビ画面に向き直ると、黙って リトのゲームの行く末を見守った それから三十分あまり 「ねェ、まだ?」 「あとちょっとだから待っててくれって!」 「うん…」 それからさらに一時間 「…おもしろいの?」 「…ん? ああ。スゲーおもしろいよ!!」 「そう…」 それから再び三十分後 (まだなの…) 「あれ? 何でうまくいかねーんだ? もうちょっと…あ! そっか! こうだッ!!」 「……もぉ…」 それから──── リトのベッドに寝転びながら枕をギュッと抱きしめている唯は、すっかりふてくされてしまっていた 枕を抱きしめて、右にゴロゴロ (もぅ! 何よ!! 私がいるのに…) 左にゴロゴロ (ゲームなんかに夢中になって…) むぅ~っとリトの頭を見ながらぼそっと呟く 「結城くんの…バカ…」 そんな女のコ心にまったく気づかないリトは、一人ゲームに熱中し続けている 「…もぅ…」 なんだか泣きそうな上に、唯のほっぺは限界まで膨れてしまっている 「ヤベ…ミスった! あ~あ…ノーミスで来てたのにもうムリじゃん」 (このッ…) 思わず持っていた枕をその鈍感な頭に投げつけようとして───でもそんな事できるはず もなく、唯は再び枕を抱きしめて小さく溜め息を吐いた 「…なあ、唯」 「へ!?」 その溜め息が聞こえたのか、はたまた想いが届いたのか、急に話しかけてきたリトに、唯は 枕を抱きしめたまま身体を起こした 「な…何よ?」 声にトゲがあるのは精一杯の強がり 本当なら今すぐにでも、リトに身体を寄せて甘えたいのを必死に我慢する ギュッと枕を抱きしめる腕に力がこもる 「ノド渇いてるなら下いって、好きなの取ってきてもいいんだぞ?」 「…え?」 「ついでにオレのも取ってきてくれるとうれしーんだけど」 「……」 ゲーム画面から一ミリたりとも視線を逸らそうとしないリトに、唯の肩は今度こそぷるぷると 震え、目がジト目に変わっていく (……つまり何? 私への気遣いは建前で、結局、自分が飲みたいだけなんじゃないの!?) 「あと、なんかお菓子も頼むよ!」 唯は腕を大きく振りかぶると、持っていた枕をリトの頭目がけて投げつけた 「バカッ!!!」 「お待たせ」 ガチャリとドアを開けて入って来た唯の手には、ジュースやらお菓子を乗せたトレイが握られている 結局、なんだかんだとリトの言う事を聞いてしまった唯 リトの隣に座ると、ジュースの入ったコップを渡す 「はい。オレンジジュースでよかった?」 「サンキュー!」 うれしそうな顔でジュースを受け取るリトに、心が躍り出す 「…うん」 リトの笑顔一つ、恋する女の子は、たったこれだけでもいいのだ さっきまでのモヤモヤだって、遥か彼方に飛んで行ってしまう 身体をもじもじとさせながら、唯は何気なくリトに聞いてみた 「…ね、ねェ。さっき下降りたら誰もいなかったわよ? 美柑ちゃんは?」 「ん? たぶんララと一緒に買い物でも行ったんじゃねーか? 美柑のヤツ、お前がウチ 来るとやたらとはりきるからなァ」 そうなのだ。結城家に来るたびに、美柑お手製の豪華フルコースをご馳走になっている唯 実はそれも唯の秘かな楽しみの一つになっていた そして、ご馳走になるだけでは悪いと、唯はいつも美柑の隣に立って手伝いをする 美柑にとってはそれがとてもうれしいらしい 同じ妹同士。そして、お互い困った兄を持つ者同士。自然と会話も弾み、調理もいつも以上に楽しくなる だから、ついいつも以上に美柑も頑張ってしまうのだ 唯はほんの少しだけ、リトに身体をくっつけてみた 「結城くん…」 「ん?」 いつもより少し甘い声な唯にもリトは、当然の様に気付かない チラリと唯を見ただけで、またゲームに戻ってしまう 「ねェ…」 「…もうちょっと待っててくれって! もうちょっと!」 (…さっきからそればっかりじゃない…もう!) 唯はほっぺを膨らませると、またベッドにもぞもぞと上がった 唯はベッドの上で何度もゴロゴロゴロゴロと転がる 時々、手を伸ばしては指でリトの髪をいじってみたり 「ねェ結城くん」 「ちょ…何やってんだよ!? やめ…唯ッ!!」 これ以上やると本気で怒ってしまいそうなリトに、唯は項垂れながら手を離した 「ったく…」 (…悪かったとは思うけど……けど、そんなにゲームが大事なの? 私の事よりも?) そんな事はないとわかっているのだが、やっぱり行動で見せてほしい! と思ってしまう バフッとベッドに寝転ぶと、唯は目を閉じながら、今日、何度目かになる溜め息を吐いた それからどれだけ時間が経ったのか──── 耳に誰かの吐息があたる 頬に触れるあたたかい感触 何────? 「ん…ん…」 目を瞑ってたってわかる。だってこれは────… 「あ! わりぃ! 起こしちまったな…」 「…え」 目の前にはいつの間にかリトがいて バツの悪そうな顔をしながら、ジッと自分の事を眺めていた 「結城…くん…?」 「ん? やっぱわかってないのか? お前、寝てたんだぞ」 「え?」 唯は反射的に身体を起こそうとして、ふいによろめいてしまう そういえば身体が少し重くて、頭がぼ~っとする 「大丈夫か? 眠かったら寝てろって、な?」 「ん…」 まだまどろみの中だと言うのに、その顔はいつもと同じように胸をときめかせるもので 唯はリトの首筋に腕を伸ばすと、ギュッと抱き寄せた 「え? ちょ…」 「…つかまえた」 「つ…つかまえたって…」 そのやわらかい胸の感触に顔を沸騰させながらも、リトは胸の中からなんとかくぐもった声を出す 「離さないからね」 「いや、ちょっと…」 「ゼッタイ! ゼ~ッタイ離さないから!!」 「……」 少し、熱っぽくて、涙声な唯にリトは身体の力抜いた 「…わ、わかった! わかったから!! とりあえず腕ほどいてくれって! これ以上は息が続かねーって!」 「ん~…」 悩みに悩んだ末、渋々といった感じで解放されたリトが見たものはやっぱり──── 「…ったく何泣いてんだよ?」 「……べ、別に泣いてなんか…いな…ぃ…」 黒い瞳に浮かぶ涙を指ですくいながら、リトはクスっと苦笑を浮かべた その顔に、唯のホッペはみるみる膨らみ、黒い瞳がうるうると揺らめき始める 「…な…何よ! 結城くんが…結城くんが悪いのにぃ……どーして私が…う…うぅ…」 話しているそばから泣き始める唯に、リトはその頭にポンっと手をおいた 「ごめんな」 「…許さないからね!」 「ごめん」 「…知らないッ」 ふいっと顔を反対に背けてしまう唯 何度も頭を撫でるリトの手を払いのけないところを見ると、実は半分以上はすでに許しているのだが──── 「ホントにごめん! だからこっち向けって! 頼むよ唯」 「……」 「唯」 「…フン」 いじわると言う名の制裁を与えつつも、やっぱりイロイロと想ってしまうわけで 少しすると唯はクルリと顔をリトに向けた 「…よかった! やっと許して…」 「…別に許したわけじゃ…。それよりもホントに反省してるの?」 「当たり前だろ! だからこーやって…」 「…じゃあもっとこっちに来て」 「こっち? こっちってこうか?」 ギシっとベッドを軋ませながら、リトの両膝がベッドの上に乗る 「もっと…」 「こんな感じか?」 「…う…うん」 ちょうど上下で見つめ合う体勢。身体の力が抜けきった、ほとんど無防備な唯にリトの喉がゴクリと音を立てる 「…で、こ、この後どーするんだ?」 何も言わずスッと両腕を伸ばす唯に、リトのスイッチがいよいよオンへと切り替わる 「…ギュッてして…」 「ギュ?」 「…うん…。私がいいって言うまでずっとよ」 「わかった」 努めて冷静さを保ちながら、リトは身体を少し沈めた すぐに唯の腕が首筋に、背中に、回される 体を一つに重ねると、唯の体が小さく震えているのがわかる 泣いているからではなく、力いっぱい、本当に力いっぱいリトを抱きしめているから 全然痛くもないし、苦しくもならない、とてもひ弱で精一杯な唯の本気 「…………」 顔の見えない唯が今どんな表情を浮かべているのかリトにはわからない わからないけれど…。リトは同じだけの想いを込めて唯の小さな体を抱きしめた 「ごめんな唯…」 「もぅ…もぅ…ホントに許さないんだからッ」 「ごめん」 小さな体と少しだけ大きな体はしばらくの間、抱き合い、そして──── 「…もう大丈夫か?」 「…大丈夫なわけないじゃない!」 再び上下で見つめ合いながら、二人の問答は続く 「……じゃあ、どーすればいい?」 「…………そ、そんなの…そんなの…自分で考えなさいよ」 目をふいっと逸らしたその顔に、リトはゆっくりと口を近づけていった 「ん! …ん、ん」 重なり合う唇に一瞬目をパチパチさせる唯だったが、しばらくするとリトと同じ様にゆっくりと目を閉じた 「ぅ…ン、ン…」 「…やっぱおまえの口ってすげーいい!」 「バカ…」 口を離してしまったリトに、「もっと、もっと」と言うように唯の口は小さく動く 「舌だして」 「…ン…」 その小さな舌に自分の舌を絡ませると、リトはいっきに口を貪る 互いの唾液ですぐに口元は妖しく輝き、目はお互いの顔を見ながらすでにとろけきっている 「結ひ…くん…」 「ん?」 「キスばっかりじゃ…イヤ…」 「へ~キスはもういいんだ?」 「ち、違うの! そーじゃなくて…」 「そーじゃなくて?」 「もっと…もっと…」 顔を真っ赤にさせながら、もじもじと足を動かす唯 両脚を少し開き、リトの腰をその間に導く 「…ッ…!!」 「ん?」 それ以上、唯はなにも言わない ただ、黙ってリトを待つ 目は落ちつかなげに彷徨い、ほっぺは沸騰したかの様に赤くなっている そんな唯の顔を上から見つめながら、リトの手がゆっくりと下腹部へと伸びていく 「もっとって……どーするんだよ?」 リトの指がショーツ越しに割れ目を一撫でするだけで、唯の腰がピクンと浮き上がった 「…ん…ぁ」 「何だよ…。おまえココ、もうびちょびちょじゃん?」 「や…だ…そんな事な…ぃん、ん…」 「じゃあこの音は何だよ?」 いたずらを思いついた子供の様な顔で笑うと、リトはショーツをずらし、割れ目を広げ、中を指で掻き回していく 「…ゃあ…んん」 「すげーハレンチな音だぞ?」 「ん…く…ぅ…だって…だって結城くんがいっぱい…ン」 くちゅくちゅと水音を溢れ出させるソコは、もう準備万端で、リトが来るのを今か今かと待ちわびている 「も…う、もぅダメぇ…結城くん!!」 「何だよ?」 「し…てぇ…」 「何を?」 「ん…ぅ……ぃ…じわるしないで…お願い…。ほしいの」 目に涙をいっぱい溜めながら、うるうると懇願してくる唯に一瞬、リトは心臓が止まるかと思うほどの衝撃を受ける (やっぱ唯かわいい…) 「…何よ?」 「何でもないよ」 リトは笑顔を浮かべると、そっと唯にキスをし、そして、ズボンから反り返ったモノを取り出した 「じゃあ入れるな?」 「…うん」 くちゅりと卑猥な音を立てながら入ってくる、熱い肉の感触に、唯はギュッと目を瞑った 「…ッ…入って…結城くんのが…」 「…オレのちゃんとわかる?」 コクコクと何度も首を振る唯に笑みを深くすると、リトはゆっくりと最奥目指して突き入れていく 「ん…あぁ…奥ぅ…」 ちゅぷっと子宮口に先端をキスさせると、細い腰を掴みゆっくりとグライドを始める 「ん、ん…あふ…ん」 「す…げぇ! 気持ちいい!!」 「ん…く、わた…私も気持ちいい…」 頬を染めながらも素直に快楽に身を任せる唯にリトは顔を寄せた 「キスしよ」 「うん」 互いの首筋に腕を回すと、すぐに求め合う 口を舌を絡めながら、リズムを合わせながら、腰を動かしていく 「ん…んく…ぷは…ぁ」 「おっぱいさわってもいい?」 「ダメ…」 赤くなった顔を逸らしながらの否定 腕を広げ、「どうぞ」と言わんばかりに身体の力を抜いている唯に、リトは笑みをこぼした 早速、Tシャツを捲り上げると、白い肌にかわいいおヘソ、そして、フリルの付いたブラが姿を見せる 「…ッ」 なにも言わず、ただ、ニヤニヤとするリトに次第に唯の口が尖っていく 「…どうして何も言わないの?」 「ん? 言ってほしい? 今日もかわいいよ! とか?」 「う…うぅ…もぉ!!」 思わず出てしまった拳をひょいっとかわしながら、リトは器用にブラのホックを外していった 学校では常勝無敗の唯でも、二人っきり特にベッドの上では永久全敗なのだ ぷるんと形のいい胸まで赤くさせながら、唯はぼそっと呟く 「み…見てるだけじゃなくて…その…」 「舐めていい?」 「ど、どうせ嫌って言ってもするクセにッ」 「まーな! じゃあ遠慮なく…はむ…ん、ん…ちゅぱ…やっぱおいしい…唯のおっぱい」 「バ、バカ…おいしいとか…そんな、事ぉ…ん」 まるで赤ちゃんの様に胸にしゃぶりつくリトの頭に手を伸ばすと、その頭を撫でていく いつ見ても母性本能をくすぐるリトの愛撫 (きっと…この先も、赤ちゃんができても変わらないんだろうなァ) それはリトの変わって欲しくないと思うところの一つ なんて、思ってたりすると、ふいにリトが胸から口を離した 「…もうやめちゃうの?」 なんだか残念そうな唯にクスッと笑いかけると、リトはゆるめていた腰の動きを加速させた 「オレばっかり楽しんでちゃダメだろ? 今度はお前を気持ちよくさせないとな!」 「そ、そんな事…私は…」 けれど、下腹部は本人の意思とは関係なくキュンと悦びの声をあげる 加速させた分だけ脚はガクガクと震え、次第にリトの腰にギュッと絡みつく 「…ん…あっ、あ」 「唯…唯…」 ポトポトと汗の珠を落としながらも、ずっと名前を言い続けてくれるリトに、唯の感度は 気持ちと共にますます上がっていく 「…ゆ…結城く…ん…」 「ん?」 「私…もう…」 聞くまでもなく唯の締め付けがさっきから強くなっている事にリトは気付いていた だけど、聞いてみたくなってしまう 「私…何?」 「私…ン…私…」 リトから何度となく言ってと言われた言葉 唯はまだソレを一度も口にした事がなかった 意味はわかる。だけどあまりにもハレンチすぎて口がさけてもその言葉を言えなかった だけど、言わなくてはダメだと思った なぜなら 一緒 じゃないとダメだから 「唯?」 「……ン、ンン…」 ジッと覗きこむその視線だけで、頭がとろけてどうにかなっちゃいそうになる 「…ィ…ぅ」 「へ?」 「ィ…イきそうなの! だからぁ…だからぁ…」 恥ずかしさでギュッと身体にしがみ付く唯に満面の笑みを浮かばせながら、リトは 唯の頭にやさしくキスをした 「オレも…。じゃあ一緒に、な?」 「うん…うん」 何度も首を振り続ける唯をギュッと抱き締めると、リトは最奥へと突き入れていく 膣内はざわざわと蠢き、唯の脚同様、キュッと締め付けてリトを離さない 「唯、もうっ」 「う…うん! 私…も…ダメぇーッ!!」 ビュルビュルと欲望を吐き出しながら、リトは唯の上で荒い息を吐きながらぐったりと倒れ込んだ 「はぁ…はあ…はあ…」 荒い気を吐きながら、唯はリトを抱きしめたまま離さない その手は何度もリトの背中や頭を行ったり来たり すぐ横でくすぐったそうに身を捩るその姿さえ、愛おしい リトはもう一度唯の背中に腕を回すと、そのままゴロンと身体を横に寝かせた 結合部はまだ繋がったまま、脚は絡み合ったまま、背中に回した腕で身体を密着させながら、 キスを交わす 何度も、何度も―――― 「あむ…ん、ん…くぅ…ぅぷは…はぁ」 銀の糸を引かせながら顔を離す唯にリトの口から笑みがこぼれる 白いシーツの上に広がる長いキレイな黒髪を手で梳きながら、リトはジッと唯の顔を見つめる いつものキツイ目は、さきほどの余韻ですっかりとろけきり その漆黒の瞳の中に映し出される自分の顔にリトはくすぐったさを覚えた 唯の瞳の中には自分しか映していない 世界でただ一人、自分だけを 「さっきから何?」 「何が?」 「さっきからあなた、ずっとにやけっぱなしじゃない! どうせまたハレンチな事でも考えていたんでしょ?」 少しトゲが混じる視線を投げかけてくる唯に、自分の気持ちを胸の中にしまいこみながら、 リトは唯の前髪を人差し指で弄る 「…別になんもないよ。それより、この後、どっか行きたいトコとかある? したい事とかさ」 「ん~そうね……ゲームとか」 イタズラっぽさを濃くしながら笑う唯にリトは、バツが悪そうに顔を歪ませる 「だからそれはホントに勘弁してくれって!」 心底参っているリトに、唯は声を出して笑った 「唯…」 「冗談よ! もう許してあげるから安心しなさい!」 「ホントかよ…」 「ふふ…さぁ~どうかな? 結城くん次第だったりして」 どこまで本気なのかわからない唯の表情に眉を顰めつつも、リトは顔を寄せていく 「じゃあご機嫌とりじゃないんだけさ。いっこ行きたいトコあるんだ」 「行きたいところ?」 「そ! 海! まだ二人っきりで行ってなかっただろ?」 「海? ま、まあそうだけど…。いつ行くの?」 「明日とかダメ?」 「明日!?」 リトから身体を離した唯は、驚きの表情をいっぱいに浮かべる 「何だよ? なんか用事あるのか?」 「違…そうじゃなくて!」 「そうじゃなくて?」 「水着とかどうするのッ? 私、まだ用意してないわ!!」 「…そんなの前にみんなで行った時のやつでいいじゃん」 「そんなわけいかないでしょ!!」 「え? なんで?」 まるでわかっていないリトに唯は深い深い溜め息を吐いた 確かに前にみんなで行った時の水着はまだ家にある。あるのだが──── (そんな前のなんて持っていけるわけないじゃない…) やはり、その年の水着はその年だけ! 雑誌なんかで流行りのモノを見ながらどれにするか考えないといけない 去年に流行ったモノなんか着けてリトに恥をかかせるわけにはいかないのだ なんて女の子の想いにまるで気付かないリトは、身体を起こすと腕を組みながら首を傾げた 「…よく…わかんないけどさ。とりあえず海には一緒に行ける……でいいんだよな?」 「それはまあ…」 「よかった! じゃあ今日は今からその水着を選びに行くでいいんじゃないかな?」 「え?」 「今日の予定だよ! 今から水着を見に行ったら明日にでも行けるじゃん!」 「それはそうだけど…」 リトと水着選び なんだか想像するだけで恥ずかしくなるその光景を無理やり頭から追い出しながら、唯は 胸の前で腕を組むと、ジトっとリトを睨んだ 「言っとくけどゼ~ッタイにハレンチは水着とかは買わないからね! ちゃんとわかってるの?」 「わ、わかってるって!」 「ホントかしら…」 どこまでも信用できないと言ったその目に、冷や汗を浮かべながらも、リトの心はすでに海へと向いていた そしてそれは唯も同じ こうして二人だけ? の初めての海デートが始まったのだった 青い海、そしてどこまでも広がる白い砂浜 そんな最高のロケーションの中にいながら、リトの顔は冴えない 「…つか何でお前らまで来るんだよ?」 リトの視線の先には、無邪気にはしゃぐピンク色のビキニの水着を着たララと、縞々模様の ワンピースの水着を着けた美柑の姿 「だってみんなで来たほうが楽しいよ!」 「そりゃそうだけど…」 元気に海辺に走っていくララの姿を見ながら、どんよりとした溜め息を吐くリトに、美柑は 意味深な視線を投げかける 「一声かけてくれれば私たちは別にかまわないよ?」 「何がだよ?」 幼い視線をジッと受けながら、リトはわけがわからず眉を顰める 「ま、しっかりね」 「だから、何のことだよ…?」 ララに続いて、海辺に走っていく美柑の後ろ姿を見ていた時、後ろから少し遠慮気味な声がかかる 「…結城くん」 「へ?」 後ろを振り返ったリトの顔が瞬時に変わる 「ゆ、唯!?」 「…ッ」 名前を呼ばれた唯は、終始、リトの顔を正面から見ない様に視線を逸らしながら、そわそわと 身体を揺らしている その顔もサクラ色に染まっている 真っ赤なビキニが白い肌によく映え、唯をいつも以上に色っぽく見せる ボ~っと見惚れるばかりで何も言ってこないリトに、唯はいい加減、声を尖らせた 「もぅ、何とか言いなさいよねッ! せっかく着たんだから!」 「そ、そうだよな。ごめん。よく似合ってるよ!」 「……フン」 命よりも大事な浮き輪を片手に持つと、唯はツンと顔を背けながらリトの横を通り過ぎていく その後ろ姿というか、お尻のラインや美脚にさらに顔を赤くさせながら、リトはその後をついて行った 燦々と輝く太陽の下、黄色い声がいくつもはじける しっかり腰に浮き輪を付け、ビクビクしながらチョコンと海に足をつけようとする唯に、盛大な 水しぶきがかかる 「ちょ…ちょっと! ララさん…!?」 「あはは、ユイーこっちこっち!」 浜辺ではペケと美柑が、砂で出来た巨大なソフトクリームを作ろうとしている 「は~…、平和だなァ」 とイルカのゴムボートにねっ転がりながらリトは、透ける様な青い空に向かって一人そう呟いた そして―――― 「待ってよー! リトー」 「だから、オレは乗らないって言ってるだろ!!」 浜辺では今、ララがいつかの『じぇっとイルカくん』を手にリトを追いかけ回していた 「この暑い中、元気だねェ…」 ソーダ味の棒アイスを舐めながら美柑は、涼しい場所からそう皮肉る 時刻も午後を廻り、一通りの食事も終わり、各々、自由時間を満喫している中 海の家のテーブルに肘を立てながら、唯は一人ぼ~っとリトとララの二人を眺めていた せっかくの新しい水着もすっかり乾ききり、テーブルに立てかけた浮き輪が風に揺られて ゆらゆらと揺れている 「はぁ…」 短い溜め息が聞こえたのか、美柑が椅子を手に唯のテーブルの向いに腰を下ろした 「唯さん。何してるの?」 「美柑ちゃん」 「こんなトコにいると、せっかくの水着がもったいないよ?」 「……」 唯は美柑の顔を見た後、少しするとまた浜辺へと視線を戻した 「別にいいかな…」 「ん?」 浜辺からは相変わらず逃げ惑うリトの悲鳴と、ララの黄色い声が交互に聞こえてくる 美柑は唯と同じ方向に視線を向けた後、困ったように小さく眉を寄せ、そして屈託ない笑顔を浮かべた 「じゃあ唯さん。私もヒマだから一緒に話しでもしよーよ」 「え…。別にいいけど…」 「じゃあ決まり!」 海の家の中で弾ける笑顔にかぶさるように、浜辺からは相変わらずな声が飛んでくる 「よ、と…! ホラ、そっちいったぞ」 「ええー! こんなの届かないよ~」 「ったく。何やってんだよお前は…」 いつの間にかビーチボールをサッカーボールに見立てて遊んでいる二人に、海の家の入口に 吊るされた風鈴が、涼しげな音を奏でる 風に翻弄されるビーチボールを巧みに操るリトに、唯の好奇と関心に満ちた眼差しが注がれる 「うまいわね。結城くん」 「うん。サッカーとかボール使ったスポーツ得意だからね。リトは」 ララの蹴ったボールは見当違いの方向に行ってしまい、リトは文句を言いながら熱い砂浜の上を走っていく 「ホント、変なトコだけは器用なんだから」 「そういえば結城くん、昔はサッカーしてたって…」 「うん! 中学までね」 「中学まで?」 足を砂に取られて転びそうになっているリトを可笑しそうに眺めながら美柑は、その小さな口を開いた 「うん…。アイツ、中学までサッカー部だったんだよ。小さいころからずっとサッカー好き だったし、よく庭に出て一人でボール蹴ってるの見てたな」 一旦、口を閉じた美柑の横顔を見ると、リトを見つめるその眼がどこか楽しそうに、そし て、寂しそうになっていることに唯は気付く 「…だけど、あんなに好きだったサッカーやめちゃったんだよね。リトのヤツ…」 「やめた…?」 「……高校になってからね。ホラ、ウチって親が二人ともよく家を開けるから、それで」 「で、でも、別にやめる事なんて…」 「私もそー言った! 言ったけど聞いてくれなかった……。全部、私のためなんだ…」 「美柑ちゃんの?」 「私をウチに一人にさせないためなんだって! ホ~ント、ワケわかんないよッ!!」 美柑は足をうんっと伸ばすと、ぼそっと呟いた 「ホント、バカなんだから…」 「美柑ちゃん…」 唯も美柑もそれっきり口を開かず、楽しそうにボールを蹴っているリトの姿をぼ~っと見つめていた 不器用で、だけど、相変わらずなリトのやさしさに呆れつつも、どこか納得してしまう やがて、姿勢を正した美柑が、いたずらっぽく笑いながら唯に向き直った 「今度は唯さんのお兄さんのコト聞かせてよ!」 「え!?」 「私ばっかりリトのコト話しさせてズルいじゃん! それとももっと聞きたい? リトの小さい頃の話しとか」 「え、えぇ!?」 小さいながらも鋭い視線で、正確にこちらの気持ちを読み取っていくその洞察力に、唯は 気押されてしまう 「あ、兄の話しとか別に…」 「……ふ~ん、せっかく普段リトが家で唯さんのことなんて言ってるか教えてあげよーかなーって思ったのに」 「え…」 唯の心拍数が急上昇をし始める。それを見越してか、美柑の目付きもすぅーっと変わっていく 「知りたくない? リトのこと。もっと!」 「結城くんの……こと…」 美柑と話している内に唯は、自分がまだまだリトの事をわかっていなかったと感じた 小さい頃の話し 小学生、中学生の頃の話し 自分の知らない、わからない普段の家で様子 知りたい事、聞きたい事なんて山ほどある 唯の白い喉がコクンと音を立てた 「わ…私は別に…」 それでも強がって顔を逸らす唯に美柑は声を弾ませる 「知りたいな! お兄さんのコト! カッコイイんでしょ?」 「カ、カッコイイのかどうかなんてわからないわ……ただ…」 「ただ?」 唯は視線を青空に向けると、ぼそぼそっと話し始める 「すっごくだらしないわ!」 「え? そうなの?」 「しかもハレンチだし、遊んでばかりだし。家の中で裸でいる時もあるし! おまけに よく女のコを連れ込んでくるし!」 「へ、へ~」 「それに私の言うこと、全然聞いてくれないし! やっと捕まえたと思ったらすぐどっかに 行っちゃって…。ホント、幾つになっても落ち着きないんだからッ!!」 いつの間にか、熱心に遊のことを語りだしている唯に美柑は、笑みを浮かべた 「なんかリトみたい」 「え…」 「小さい時、私がいつも遊んで~って言ってもすぐどっか行っちゃってさ。帰ってきたら 帰ってきたらで、ドロだらけだし。よくお母さんに怒られてたなーリト」 「そうなんだ…。私の兄も似たようなモノよ。小さい頃はよくケガして帰ってきてたわ。 私がいくら言っても聞かないし!」 「そうそう! リトもその時はちゃんと返事するんだけど、次の日とかまた服汚して帰ってきたりね!」 「どうしてちゃんと聞かないのかしら…?」 「男ってそーゆーモンだと思うよ…! いつも泣くのは私たち女の方なんだよね」 美柑はそのかわいいホッペをムスっと膨らませると、焼きトウモロコシを頬張った もぐもぐと小さな口を開けておいしそうに食べるその仕草に、唯の顔がほころぶ (かわいいな…。美柑ちゃん) 料理がうまくて、掃除、洗濯、家の事を何でもこなしてしまう器量持ち かわいい顔立ちに、キレイで長い黒髪、そして、その身体を彩るいつ見てもオシャレな服 話し方から、仕草全てにいたるまで、完璧な妹だと思えた 「結城くん、うらやましい…」 「え?」 トウモロコシから顔を上げた美柑と唯の視線が交わる 「うらやましいって思って。結城くんが」 「リトが? どーして?」 「だって、こんな素敵な妹がいるのよ。うらやましいわ」 瞬間、美柑のほっぺが見たことがないほどに赤く染まる 「そ、そ、そんな事……、リトが思ってるわけないよ…。よく口ケンカもするし」 「そう? でも、結城くん。いつも美柑ちゃんのこと自慢気に話してるわよ?」 「そんなワケ…」 照れ隠しなのか、赤くなった顔でもぐもぐとトウモロコシを頬張る美柑に、唯は小さな笑みを浮かべた 「 昨日の夕食おいしかった 美柑の作る料理が一番だ ホントにスゴイやつなんだ って」 「そ、そう…」 いつもの調子で返事を返そうにも言葉に詰まってしまう自分に、美柑は下唇を甘噛みすると俯いた リトがそんな事をいうなんて…… だって、だって、ウチでするコトなんてみんな当たり前のコトだし… そりゃ大変だって思うコトはあっても……イヤだなんて一度も思ったことなんてない それどころか 『美柑、おかわり!』 ニッと笑いながら茶碗を渡してくる。それだけで──それだけで私は──── 「ほかにはね…」 「も、も、もーいいって! 私のコトはもーいいんだって!! それより唯さん! 唯さん のコトの方が大事でしょ!!」 「私?」 まだまだ言い足りなそうな唯の口を遮ると、身振り手振り、美柑は赤い顔のまま話題を変 えようと必死に口を動かす 「そ、そーだよ! 聞きたいんでしょ? ウチでリトがなんて言ってるのか」 「わ、私は別に…そんな事……」 どう見ても興味津々な様子な唯に、にんまりと笑うと 今度は唯さんの番だからね と言 わんばかりに、イタズラな視線を送る 「リトはね…」 「う、うん」
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「やっとできた!」 額の汗を拭い、ララは出来たばかりの発明品を見下ろす。 それはかわいらしいピンク色のポットのように見える。 だがもちろん湯を沸かすためのものではない。 ララはそれを抱えて駆け出した。 「きっとリト、よろこぶよね」 服に変身しているペケに呼びかけたが、ため息しか返ってこなかった。 部屋に入るとリトはベッドに寝転んで本を読んでいた。 「リト、プレゼントもってきたよ」 ララはそばに駆け寄って、持っているポットを見せた。 「ポット?」 リトは身体を起こしてララが抱えているそれを見た。「台所にあるやつ……とは違うような」 「うん、違うよ。私の発明品」 その言葉を聞いたリトが顔色をなくした。 「またなんか変なものじゃねーの?」 「いい物だよ。リトのために作ったんだ。さ、これ飲んで」 と、ララがポットのてっぺんを押した。 どこから取り出したのか、マグカップにお湯をそそいでいる。 「やっぱりポットじゃねえか」 「はい、飲んで」 ララは湯気のたつマグカップをリトに渡す。 しぶしぶとリトは受け取って口をつけた。 「……甘い」 一口飲んでリトは驚いた声を出した。「甘いのにさっぱりしてて美味しい……」 「気に入った?」 うん、とうなずいてリトはララを見上げる。「けど、これなんの紅茶?」 「こうちゃ? 違うよ。これは私が作った飲み物。地球人が飲みやすいように味付けしただけ。とある薬をね」 ララがにっこり笑った。 「薬?」 リトの手からマグカップが落ち、床に転がって中身がこぼれた。 そしてリト自身もベッドに身体を横たえる。 「な……なんの……薬だよ……」 苦しそうにあえぎながらも言った。 「リトがなかなか煮え切らないから、ちょっとした手助けになるようにって思って」 ララは薬が効いたことに上機嫌だ。 「薬が全身に回ったら、身体も上手く動くようになるよ。それまでは私がしてあげる」 ララはリトの身体を仰向けにし、下半身を裸にむいた。 そして躊躇なく半端に立ち上がっていたリトのペニスを口に含んだ。 「ラ、ララ……!」 「……リト、気持ちいいところ言ってね」 「う……」 先をちろちろと舌を使って舐め、すぐにまた深くまで咥える。 優しく唇の輪で触れられたリトはすぐに射精してしまった。 「……んっ……ん……」 口の中に出されたものをララは飲み込む。 喉に絡んでしばらく咳き込むが、すぐにまたリトのペニスを咥えた。 「……もう、いいから」 切羽詰った声にララが顔を上げると、リトは身体の自由が利くようで自ら上半身を起こしていた。 「リト、もう大丈夫なの?」 薬の利きがいいのだろうか。 この媚薬を地球人に使った例がないため心配だ。 リトは無言で動く。 体調は悪そうではない。しかし、ただよってくる雰囲気に普段とは違うものを感じた。 腕を取られ、ララはベッドに転がされた。 その上にリトがおおいかぶさってくる。 「リト?」 無言のリトに呼びかけたが返事はない。 リトはララの服に手をかけた。 だが、それはペケが変身したもので簡単には破けない。 「あ、ちょっと待ってね」 様子が少し変だがその気になってくれたのは嬉しい。ララはペケに命令して変身を解いた。すぐに全裸になる。 「ペケはどっか行ってて」 「しかし、ララ様……」 何か言いたそうなペケだったがララに睨まれて、部屋から消える。 これでやっとリトと本当にふたりきりだ、と思ったのもつかのまいきなり下半身に痛みが来た。 リトがララの股間に手を入れ、指を膣に突き立てたのだ。 「やっ……! リト、それ痛い……!」 しかしかまわずリトは指を無理やりに動かす。 「やだぁっ……!」 ララはリトの手を退かそうとシーツの上でじたばたと抵抗するが上手く力が入らない。 いや……リトの力が強いのだ。 普段のリトとは比べ物にならない強さでララを押さえつけている。 中に入っている指が増やされた。 中指と人差し指の二本でかきまわされ、ララは言葉を失った。 「感じてきた? ララ」 やることは乱暴でも声はいつものリトだ。 そのことにララがほっとするのもつかの間、指が抜かれ、今度はクリトリスを親指で押された。 「んっ……」 ぴくっとララは身体を振るわせる。 リトの指は強く押したり優しく揉むように動き、ララのそこを刺激し続けた。 「あ……リト……もっと優しく……」 指を突っ込まれているよりもずっと気持ちいい。だから油断していた。 リトがララの言葉を受けてにっこり笑ったが、優しくするどころか逆に強く擦りだした。 「いたいよ……! リト、優しくしてっ……!」 涙が浮かび、視界が歪んだ。それでもリトを見つめてララはやめて欲しいと訴える。 「こんなことすると、オレのこと嫌いになる……?」 やることとは違い、リトの声は弱々しいものだった。 それにはっとしてララは「ううん。大好きだよ」と反射的に答えてしまった。 「じゃ、乱暴でもいいよな」 リトは明るくいい、ララの股間から手を退かした。 そしてララの片足を小脇に抱え、もう一方の手で自分のペニスを扱きながらララの股間に当てる。 先を割れ目にこすりつけるように動かした。 「あんっ……」 ララが敏感に反応した。 いくら乱暴でも、待ちに待ったリトとの初エッチだ。ララも興奮していた。 リトが先を押し付けてくる。入ってくると構えたララだったが、それは期待を裏切り触れただけだった。 「リト……?」 ララは自分の足の間にいるリトを見た。 リトは行儀よく正座をしている。そしてララににっこりと微笑んだ。 ララはリトの笑顔が好きだ。くったくなく、かわいらしい。 ララも釣られて微笑んだ。 その瞬間、下半身に圧迫感が来た。 そして痛み。 「あ……」 気がつくとリトのペニスはすっかり挿入されていた。 「……あったかい……」 と、リトがほっと息をつく。 ララは重くなったように感じる腰を動かした。リトが「ん……」と鼻にかかった声を漏らす。 「ララ……待ってよ。まだ動かないで」 「でも、リト……」 どくどくと脈打つ下半身が、焼け付くように熱い。広げられた入り口が痛むが、それは微々たるもので、ララは疼きをどうにかしたくてたまらなかった。 腹筋がぴくぴくと震える。そのたびに中のリトをダイレクトに感じて、ララはもうイきそうだ。 我慢の限界だ、と思ったとき、胸に感触が。 リトが両手でつかんだのだ。 そのまま揉みしだき、腰を揺さぶる。 ララの大きい胸が、リトの手によって形を変えられる。 指をぎゅっと食い込ませて動きを止めると、リトは腰だけを前後させた。 大きな棒に擦られてララは「あぁっ、リトっ……」とただ叫ぶしか出来ない。 身動きできず、ひたすらリトに突かれた。 胸を揉みながら腰を動かしていたリトだったが、手をシーツに突いて体重をかけると、激しく腰を前後させた。 そのまま動き続け、リトはララの中で果てる。 果てたあともしばらく腰を動かし、落ち着くと抜いた。 ぬるり、とそれが出て行くと、追いかけるようにリトの出したものがララの膣から流れ出てくる。 リトはそのままララの上に重なった。 「リト……」 ララはリトのぬくもりが嬉しく、その身体を抱きしめる。 これでやっと本物の恋人同士になれた。 リトがなかなかエッチまで踏み切ってくれなくて、寂しい思いをしてきたけど、これからはきっと頻繁にしてくれるはず……。 「ねえ、リト。明日もしてね?」 さっそくおねだりをしてみたが、リトの返事はない。 「リト? 疲れて寝ちゃったの?」 ララはそっとリトを隣に寝かせた。リトはすやすやと寝息を立てていた。 まだ話をしたかったけど、仕方ない。 「……おやすみ、リト」 ララはリトの頬にキスをして、自分の部屋に帰った。 朝になれば目覚めているだろう──そう思いララは翌朝リトの部屋を訪ねた。 だがリトは目覚めていない。 昨夜のまま素っ裸で寝ている。 「リト?」 ララは突いたり揺さぶったり叩いたりして起こそうとした。 それでも起きない。 「どうやらララ様、これが副作用のようですね」 と、ペケが言った。 「これが?」 「無理やり性欲を強めたんですから、かなり体力を消耗したはずです。デビルーク人ならすぐに回復可能ですが、人間には強すぎたようですね」 「そんなあ……」 淡白なリトをその気にさせようと薬を飲ますたびにこんな状態になってしまうというのか。エッチのあとにほのぼのと話をするのが好きなララはがっくりと肩を落とした。 「ララ様、これに懲りたら無理強いはせずに──」 というペケの声をさえぎって、ララは叫ぶ。 「よし! 薬を改良して、やったあとも元気になるようにする! 今日はリトも休むだろうから、私も学校行かないで実験しようっと!」 「ララさま……」 ため息をつくペケをよそに、ララは軽い足取りで自分のラボへと戻るのだった。 おしまい!
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登録日:2010/12/19 Sun 17 07 34 更新日:2024/03/19 Tue 08 06 57NEW! 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 To_LOVEる お嬢様 お嬢様に定評のある川澄 お金持ち ですわ口調 アホ セレブ チーム天条院 ドリルヘア ナルシスト 一途 令嬢 努力家 地球人サイド最大の変人 天条院沙姫 女王 妙に不遇 川澄綾子 巨乳 料理下手 美乳 被害者 高校生 お~っほっほっほっほっほっ! 『To LOVEる』の登場人物。 声優は川澄綾子。 大企業社長の娘で大金持ち。 身長165㎝、体重50㎏、スリーサイズは84/56/85。 その美しい容姿といい、ドリルの様なヘアスタイル(※縦ロール)といい、ですわ口調といい、セレブの家系といい、鷹飛車な性格といい、典型的な嫌味系お嬢様ヒロイン。 常に優雅でトップでありたいという想いが強く、魅力ある人間にしようと常日頃自分を磨き続ける努力家で、スタイルも抜群。 可愛いと持て囃されるララ・サタリン・デビルークには何かと対抗意識を燃やしているが、 必要以上に対抗し過ぎた結果、総て別荘崩壊やとらぶるな裏目に出てしまい、 トラブルメーカーな面や、やたら大袈裟でクサい表現をする癖も重なって、作中屈指のネタキャラと化した。 よく“○○クイーン”と自称したがるが、清掃活動の際にはララに“ゴミクイーン”と呼ばれたことも。 浮世絵離れした行動から変人扱いされていて、古手川からは“非常識クイーン”と呼ばれるが、沙姫様本人は一切無自覚。 登場初期はララに一方的な対抗意識を燃やした結果、痴女に走った。 同じくララをライバル視するルンと時折手を組むがロクなことが起こった試しなど無く、一度金色の闇にララを叩きのめすよう依頼したが、 ララとヤミの力が互角の為に中々勝負が着かず学校が崩壊、最終的に依頼をキャンセルした為に高額キャンセル料金発生、校舎の新築費を払う破目に。 ボディガードであり沙姫様の理解者でもある九条凛と藤崎綾の3人でよく行動している。 凛は先祖代々から天条院家に仕え、綾は幼少時に虐められている所を沙姫様と凛に助けられて彼女を慕っており、憤慨する時も一緒でとても息が合っている。 お互いの人望も厚く、3人の絆は只の主人と付き人というものではない。 意外にも思いやりがある性格で、路上に倒れていた見ず知らずの夕崎梨子を有無言わさず保護するなど、面倒見が良い。 その沙姫様の優しさを凛と綾は尊敬しているが、凛は時々沙姫様の行動に呆れているような表情を見せる。 物語の進行役として沙姫様自身の出番はとても多いが、主人公・リトその人には興味を持たず、ララの世話役のザスティンに恋をしているなど、 春菜とはまた違った意味でメインヒロインからは一歩引いた位置にいる。 ザスティンには通学中に送迎車の脱輪で困っていた所を助けられ、一目惚れしてしまう。 (そのせいで公式キャラブックには「超面食いなので攻略難易度は高い」などと実も蓋も無い事を書かれているが) 沙姫様にとってザスティンとは白馬の王子様のような存在となり、何度かアタックを試みるも、リトとララのお陰で失敗に終わっている。 また、みんな大好きとらぶるな場面では行動の裏目や、巻き添えを喰らう形が多い。 父親に強制的に転校させられるのを嫌って家出し、主人公の結城家に転がり込んだこともあり、その際に美柑の料理の腕前に感激したが、 入浴時にセリーヌに豊満な乳を吸われた。 沙姫様はザスティン一筋なので、お宅突撃イベントにもかかわらず、リトとのフラグは立っていない。 リトからもお約束の不可抗力でとらぶられ、沙姫様の肉付きの良い美しいスタイルを堪能できる。 綺麗な先輩とのイケナイ何かに悶えるとらぶらーも多数いるハズ。 ヒロイン及びレギュラーキャラとして大活躍し、強烈なキャラでファンの記憶に強く残る沙姫様だったが、149話を最後に突然登場しなくなり、 最終巻の18巻には最後の1コマを除いて一切登場しない。 ダークネス編では、相変わらず「使用人を労い、全員に手製の料理を振る舞う」という心配りを見せる。 ……が、その直後に手製料理を食べた全員が腹痛をうったえダウン。どうやらかなりのメシマズらしい。 凛がリトに対して恋愛フラグを立ててからは、「応援してあげる、たとえ相手があの結城リトであっても」と、半ば強引に凛の恋愛を応援するようになった。 コミック版『迷い猫オーバーラン!』の3話にて、沙姫様・凛・綾が3人揃ってカメオ出演している。 この“追記・修正クイーン”と呼ばれる私に、貴方が敵いまして!? よくってよ!後悔させてあげますわ! お~っほっほっほっほっほっ! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] ザスティンとのフラグ回収される可能性が絶望的。というかザスティン自体あまり出番がないのでどうしようもない -- 名無しさん (2013-09-12 23 13 29) ハーレム作品において主人公以外に矢印向けるとどうなるかを身をもって示したな -- 名無しさん (2014-03-18 18 15 33) この人が空気になったせいで俺の凛の出番が減った。責任取ってくれ -- 名無しさん (2014-03-18 21 29 38) ↑×3ザスティンが漫画のアシスタントでなく、教師にでもなっていればまた違ったのかもしれないが…… -- 名無しさん (2014-03-18 21 55 20) 凛さんの項目立ててもいいと思うんだ -- 名無しさん (2014-05-17 23 38 33) 取り巻き?の九条凛って女の子ファイアーエムブレム烈火の剣の女性主人公リンに髪型と良い武器が刀(竹刀)といいそっくりだな。 -- 名無しさん (2015-02-13 21 06 35) 中の人『しんちゃん』のあいちゃん。同じお嬢様キャラで恋をしている -- 名無しさん (2015-11-29 11 55 18) 名前の漢字間違って覚えてる人がこの漫画のキャラの中でもぶっちぎりで多そう -- 名無しさん (2016-05-08 16 42 01) どうしても天上院って頭に浮かぶ -- 名無しさん (2017-06-03 23 40 54) リトに惚れないのはいい、ザスティン一筋のままでもいいし、そこからハーレム入りする展開を描いても面白い。ザスティンに惚れたせいで出番ないのが勿体ない -- 名無しさん (2019-01-19 10 52 50) お嬢様キャラの王道みたいなキャラ、三人娘の中では一番魅力的。 -- 名無しさん (2021-11-06 20 52 27) アニメではモブ男に裸見られまくって可哀想ではあった。 -- 名無しさん (2021-11-06 22 33 33) 名前 コメント
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リトの部屋に甘い喘ぎ声と、汗と体液の混じった独特の匂いが満ちている 唯はリトに下から突き上げられながら身をくねらせていた 長いキレイな黒髪を乱し白い体を赤く火照らせ、その口からは、普段絶対聞けない様な声を出している 体が動くたびにぷるぷると揺れる唯の胸を両手で揉みながら、リトはいつもとは別人の様な唯にただ見とれていた (すげえエロイ……) 自らリトに合わすように腰を動かしている唯は完全に自分の世界に入っている 口から垂れた涎が胸の谷間へと落ちていくのも構わず、自分のことを見つめ続ける唯にリトは興奮を隠せない 「…っはァ、ンン…結城くん、結城…くん……ッあァ…」 「…すげー腰使い、だな唯は」 すっかり牡の顔つきをしているリトを唯は上から睨みつける 「バカ!結城、くんが……動、くから…ンッでしょ!?」 「へ~ホントに?オレもう動いてないのに?」 その言葉に唯の動きはピタリと止まり、顔がみるみる真っ赤に染まっていく 「も、もうっ!!どうしてあなたはそうやって私をからかうのよ!?⁄⁄⁄⁄⁄」 「悪い、悪かったって!だからそんな怒んなよ!」 頬っぺたを抓ってくる唯の手をなんとか押さえつけると、リトは聞かれないように小さな声で呟く (やっぱ唯をいじめるのって楽しい……けどもっとこう…) 「なにぶつぶつ言ってるのよ?」 冷たい目で見つめてくる唯にリトは愛想笑いを浮かべる 朝、唯がリトの家に来てからかれこれ数時間 部屋に着くなりいきなり抱きつき唇を奪いにくるリトに最初こそ嫌悪感を滲ませていた唯だったが、 今は自分からリトを求めるまでに乱れていた 唯の変化は本能的なモノなのか、リトがそうさせているのか リトは色々と頭の隅で考えていたが、今はただ目の前の体に意識を集中させる 「ア…ふぅ、ンッ…あァ…」 ぱんぱんと腰が打ち付け合う度に唯の秘所から蜜がこぼれてくる リトの肉棒が膣内を掻き回し、溢れる蜜が白濁していく ぐちゅぐちゅと卑猥な音をたてる結合部に羞恥心を煽られながらも、唯の動きは止むことはない 自分が今なにをして、どう感じているのか唯はみんなわかっていた わかってはいるが止めることができない。止めようとも思わない 普段人目が気になったり、自分の性格が仇となって、中々リトに触れることのできない唯にとって 自分が定めた一週間に一度の日だけが、唯一素直になれる時だった なによりリトに全身を愛されることの悦びが大きい 口には絶対に出さないが、今日だって色々期待して家に来たほどだ リトのモノが自分の膣内をえぐる度、愛液を絡ませながら掻き回す度 唯の中で快感と共にリトへの思いが溢れ出す 結城くんは私だけの……誰にも誰にも―――― 唯はリトの胸板に手を置きさらに身を屈め、奥へ奥へと肉棒を導いていく 「ゆ、唯!?……すげー気持ち、いい」 「うん!わた、私も…私も結城くんを……いっぱい感じる」 「唯……」 リトは唯の細い腰に手を伸ばすと勢いをつけて下から突き上げ始める リトが腰を打ち付ける度に唯の中に電流の様な快感が流れていく 肉棒が膣内を擦り上げ、子宮口を激しく突きまわす 「アアっ…んッ!はァ…ぁ」 肉壁を抉るような強烈な出し入れに、快楽が波となって子宮へ全身へと押し寄せる 「ゆ、結城…くんっ、激し…すぎて私…」 「おかしくなる?いいよ…唯のイき顔オレに見せてくれよ。ちゃんと見ててやるからさ」 「だからどう…してそんなっ、ああッ…ンいじわるばかり……やッ」 リトは顔をにやけさせると、微妙に角度を変えて唯を責めたてる 「いつものお返し」 「もうッ、後で覚えて…アアぁ…んッ、ン!!」 今までとは違う波が体に現れると、それに唯は体を仰け反らせる 何度も交えているうちに、だんだんと唯の弱点がわかってきたリトは、そこを重点的に責めたてた 「…ゃあ、そこ、ダメぇ…」 「なにがダメ?」 リトはそう言うとそこに激しく打ち付ける 「ンッ、んん…結城くんっ…ホントにそこ…あァ」 唯の乱れようにますます興奮したリトの腰は、卑猥な音をたてながら何度も何度も唯を犯していく 上へ下へと体を弄ばれる唯の額から汗が滴り、リトの胸へと落ちる 「今のおまえすごいエロくてカワイイよ」 「バ…カ言わない、で!結城くんのせいで私っ…あァ…ん」 自分の全てに反応してくれる唯にリトはうれしくてしかたがなかった 笑みがこぼれ、顔をにやけさせていく 「あんッ…結城、くん…ハレンチは顔してる」 リトは汗に濡れる唯の白くてやわらかい乳房へと指を絡ませる 「ハレンチなのはおまえの方だろ?」 ムニュッとした肌触りが、上下左右にリトの手の中で形を変え弾む 「…ッん、やァ…ンン」 「おっぱい弄られながら突かれるのおまえ好きだなァ」 リトの言葉にムッとした顔になるも、胸への刺激と膣への快感が唯の理性を狂わせていく 「…ゃあ…そんな、こと言わない…でよ」 「なに言ってんだよ?こんなハレンチな風紀委員見たことねーよ!」 リトは胸を赤くなるまで強く揉み、膣へ少し乱暴に突き入れていく すぐに気持ちよさの中に痛みが生まれ、唯の整った顔を苦痛に歪めていく 「あッ!痛い…結城、く…アアっ…ん゛あっ」 「なに?」 唯の気持ちは手に取るようにわかるが、リトは止めようとはしない 「…ちょっ、ちょっと待っ…待って!こんなの……あッ、くぅ」 そんな言葉とは裏腹に唯の締め付けが、これまで以上にギュッと強くなっている様子に、 リトの顔に笑みがこぼれる それは日頃怒られてばかりいることへの仕返しなのか、リトはなんだか楽しそうだ 「や…やだっ、こんなコト…わた、私もっと…ンっ…ぁあ…」 「もっとなに?」 ろれつが回らないのかリトの言葉にも唯は、中々応えられない 「私…私こんなンっ…ぁは、んん…」 「……なに言ってんのかわかんねーよ」 リトは唯の腰を掴むと下から激しく打ち付ける ぱんぱんと肉と肉がぶつかる度に唯の顔はますます苦痛に歪んでいく けれども決してリトから逃げようとはせず、むしろ、腰の動きを合わせようとする唯 その姿は、快楽と苦痛二つの波に、だんだんと虜になってきているようで…… リトのモノを離そうとはしない締め付けや、硬くなっている乳首に、口から溢れる涎 感度の上がった唯の体はいつも以上のいやらしさをリトに見せる 「おまえってこんな風にいじめられるのが好きなんだ」 「そ、そんなワケないでしょっ!こ、これは……違うの」 けれども心も体もリトを求めて止まないことに唯自身も気づいていた いつもの優しさとは違うただ欲望に身を任せたリト 牡の顔をして貪るように体を求めてくるリト そして快楽と苦痛の中で、そんなリトを欲している自分 「ホントに?」 「……ッ!?」 リトの言葉に思わず言いよどんでしまう 「あはは、唯はカワイイなァ」 さすがにリトの態度に頭にきたのか唯の表情は厳しくなる 「もうっ!いい加減に……」 「そんなに怒るなって!それに……」 リトは動きの止まった唯の膣に肉棒を突き刺す 「ッあ!くぅ…うぅ…」 ガクガクと震える唯の腰を掴むと、リトは耳元でそっと囁く 「それに、オレにこんなことされるのホントは好きなんだろ?」 その言葉に耳まで真っ赤に染まる唯を、リトはにやにやと見つめる 「ホント、おまえってカワイイな」 「ち、違うの!ホントはこんな…私はただ…」 「違わねーよ」 リトの腰の動きがだんだんと早くなっていく 「んッ、あぁ…痛ッ…激しぃ…」 「けど…それがいいんだろ?」 リトの乱暴ともいえる突き上げに唯の軽い体は弄ばれる 「ん!ぁあ…すご、ダメぇ…やめ…やめて結城、くん」 「ふ~ん。嫌がってるわりにはさっきからオレのことギュウギュウ締め付けるおまえはなんなんだ?」 「しら…知らないわよそんなことっ」 唯は歯を喰いしばりながら、それでもリトから逃れようとはしない そればかりか、ますますリトを求めるかの様に締め付けていく 「ゆ、結城…くん、私もう…あぅ、んッ…」 「なにイきそうなの?」 唯は首を振るだけで、返事をしようとはしなかった そんな余裕などなくなっていた 苦痛が気持ちよさへと変わり、唯の体を支配していく ガクガクと震える腰をそれでもリトの動き合わせようと必死に動かす 「じゃあイッてもいいよ。オレの前でやらしい唯を見せてくれよ」 唯は紅潮する頬を歪めながら、リトの上で腰を躍らせる 「おまえのイくところ全部見ててやるからさ」 リトのいじわるな言葉も唯にはもう聞こえてはいなかった 「あッ…ん、んん…ダメホントにもうッ…」 リトはたぷたぷと揺れる唯の胸の先端を指で摘む 「あっくッ…や、やめ…」 「なんで?おまえの体はオレのだろ?」 「そ、そうだ…けど、もっとやさしくしてッ…んッ」 膣内がキューッと蠢き、肉壁がざわざわと波打つ リトの胸板に置いた手を支えに、唯の腰が激しく卑猥に打ち付けられる 「あ…くぅ…あぁ、んッん」 「もうムリっぽい?」 唯は首を縦に振ると、リトの顔を見つめる 熱を帯びた唯の視線にリトのモノも膣内でさらに大きさを増していく 「も…もう、ダメぇ私…私……あッくぅう、あぁあーーーッ!!」 体全体で大きく息をする唯は、リトのお腹の上で一人放心状態になる 「はぁ…はあ…は…ぁ…」 「おまえすげーよがってたな」 下でくすくす笑うリトを唯はムッとした表情で睨む 「だ、だってあなたがあんなに激しいことするから私は…。って全部結城くんのせいじゃないッ!」 いつもの調子で怒る唯にリトは笑みを深くさせると、いきなり上体を起こし、まだ脹れている唯に黙ってキスをする 「ちょ…ちょっとどういうつもりなの?⁄⁄⁄⁄」 いきなりのキスに口調こそまだ怒ってはいるが、その顔は、さっきまでと違いやわらかくなっている そんな唯の顔を確かめるとリトはくすっと笑った 「それじゃあ、今度はオレの番。次はおまえがオレを気持ちよくしてくれよ」 「え!?あ…えっと……べ、別にそれはいいんだけど…。その……私どうしていいのかまだ…」 体をもじもじさせて、困惑している唯にリトは笑いかける 「心配しなくても全部オレの言うとおりにすればいいだけだからさ」 「え?でも…」 心配?そんな顔で見つめてくるリトから顔を背けると唯はつい強がりを言ってしまう 「し、仕方ないわ…それでなにをすればいいの?」 「後でいっぱい怒ってもいいから、オレの好きなようにヤらせて欲しいんだ!それだけ」 じっと見つめてくるリトになにか引っかかるモノがあるものの、唯はその場の雰囲気に呑まれてしまう 「……変なコトしないなら…いいわよ」 「それじゃあ唯、立ってそこの壁に手をついてお尻こっちに向けて」 色々と反論はあるがさっき言ったばかりなため、唯はしぶしぶリトに従う そんなギコチナイ唯の動きにリトは顔をしかめる 「もっとお尻こっちに突き出して欲しいんだけど」 「そ、そんなコトできるわけ……⁄⁄⁄⁄」 「へ~唯って約束破るヤツだったんだ……」 リトの冷たい視線に唯の顔は凍りつく 「わ…わかったわよ!やればいいんでしょ?やれば……⁄⁄⁄⁄」 自分でも卑猥なコトだと感じたがリトへの思いが勝ってしまう 「これでいいんでしょ?これで…」 唯の後ろに回ったリトは満足げにその姿を見つめる 突き出された下腹部からは性器が丸見えで、恥ずかしさのため体まで赤くなっているその姿に、リトの興奮は高まる リトの指がすーっと唯の背中を滑っていく 「…ゃあっ…んッ…」 くすぐったさに身をよじる体に合わせて胸もぷるぷると震える 「結城…くん、くす…ぐったい……」 「じゃあどうして欲しいんだ?」 リトの手が唯のお尻へと這わされ、やわらかい肉感を堪能していく 「ん…ゃ…ンッ、そこ…違う…」 「違うってなにが?胸の方がいいのか?」 リトはそう言いながらもお尻を揉んでいく 「どうして欲しいのかな~唯は?」 唯はリトの焦らしに我慢できないのか体をピクピクと震えさせる 愛液が割れ目から溢れだし太ももに滴り落ちていく リトは膝を屈めると、その流れ落ちる愛液を舌で掬い取る 「ひゃッ!な、なにしてるのよっ?」 後ろを振り向き様子を確認する唯に、リトは白い太ももに口を近づけ舌を這わしていく 「…っあ、んッ…くすぐっ…ぁは」 上下左右に動く舌に唯の下半身はピクピクと反応する 「オレおまえの脚すっげー好き!」 「う…うんあり…が……とう…」 息も絶え絶えな唯はそれでも褒められたことがうれしくて、ついつい反応してしまう (結城くん私の脚好きなんだ……) リトの言葉に顔もほころんでくる そんな唯の下腹部に手を伸ばすと、リトはヒダを広げ膣内を覗き見る 何度も掻き回された膣内は唯の本気汁で溢れ、肉壁はリトの挿入を待ちわびているかのようにヒクヒクと波をうっている 「え、エロすぎ……」 リトの声が聞こえたのか唯は体を強張らせる。と、同時に膣内もキュッと締まるかの様に蠢く 「……あんまり見ないで欲しいんだけど⁄⁄⁄⁄」 耳まで真っ赤に染まっている唯に我慢できなくなったリトは、立ち上がり肉棒を割れ目へと当てる じゅぶじゅぶと音を立てて入ってくる感触に唯の口から熱い吐息が漏れる 「あッ…ん、結城くんが入って…くぅ、ぁあ…」 「おまえそんなに入れて欲しかったんだ?」 「だ、だってあなたさっきから違うコトばっかりして全然……」 ちょっと前まで散々リトに責められていた下腹部は、すでに少し動いただけでキュッと締まり、 とろりと溢れ出す白濁した愛液がリトのモノを白く染めていく 「そんなに欲しかったんだオレの?」 唯はなにも言わないがその顔を見れば十分だった。真っ赤になった頬に体は小刻みに痙攣し、リトの動きを待ちわびている リトは口を歪めると、いっきに根元まで挿入していく 「…あんッ…も、もっとゆっ…くり…んッ」 「オレも唯が欲しいよ!欲しくて欲しくてたまらない!!」 リトはそう言いながら腰を打ち付けていく 「ん、ぁあ…やッ…くう…ん」 リトは唯の背中にキスをすると、そのまま舌を這わしていく 汗に濡れた背中は少ししょっぱくて、なにより唯の味がした 「……ッはぁ…ん、んッ…ゃあ…」 ピクンと背中をよじると艶やかな黒髪が汗と唾液に濡れる背中へとかかる その髪の匂いを胸いっぱいに吸い込むとリトは唯の体をギュッと抱きしめた 「あんッ…結城、くん?どうしたの?」 自分を抱きしめ背中に顔をうずめるリトへ、唯は不思議そうな目をする 「なんかおまえがすげーカワイくてさ」 「…なによそれ」 顔を背ける唯がますますカワイく感じられたのか、リトは唯をさらに強く抱きしめる (もう……) 心の中で悪態をつきながらそれでも唯は、リトに身を委ねていく (結城くん、こんなに私のことを……) リトの行動が思いが唯の中で溢れ出し、それが普段よりも唯に積極性を出させる 「ねぇ、動いて…結城くん……」 唯の口から熱い言葉が紡がれる 「私…もう、我慢できない…から……」 その声はすーっとリトの頭へと入り込み、理性をとろけさせる声だった 膣内が唯の欲望を表すかのようにざわめきリトを促していく その反応に背中から体を離したリトは、唯の望む様に腰を打ち付ける それは、焦らしや緩急の変化もなにもない欲望にまかせただけの動き すぐに込み上げてくる射精感にもかまわずリトの動きは、止まらない 「あ…ふぅ…あぁ……ッん、ンン」 (すご…すごく激し…ッん!結城くんに私犯されてる…) 唯のお尻の肉に揉みしだくように手を押し付けながら、動きを加速させていく 前後へと乱暴に乱れさせられる唯の体 壁に付いた手からは力が抜けていき、下半身はリトにいいように責めたてられる 「ほら、しっかり手をついてろよ!姿勢くずしたらもう動くのやめるぞ?」 その言葉に体がピクンと反応し、唯の手に少しずつ力がこめられていく けれどすぐに手は壁からずれ落ちてしまい、反射的になんとか腕をついて体を支える 「ほら、どうするんだ唯?ちゃんと体支えてないとホントにやめるからな」 「…あッく、うぅ…いゃ……嫌ぁ、やめないでお願い…」 リトの方を振り向きそうお願いする唯の目は涙で濡れていて、リトの心を昂ぶらせる リトは口を歪めた 今、唯を支えているのは、リトに支えられている下半身と、わずかしか力が入らない壁についた腕だけになっていた 唯は残った理性をかき集めて腕に力を入れていく それは普段は滅多に見せない唯の心の内を表しているかのようで そんな必死な唯の姿が、リトはとてもうれしかった 「唯…」 リトのなにを感じ取ったのか、唯はわずかに見えるリトの顔を振り返る 「いい…わよ、私の中に出しても。結城くんの出したい時で…いいから」 リトの喉がゴクリと音を立てる。いつぶりだろう唯の膣内に出すのは…… 「いいのか?ホントに?」 「ええ…」 「だって、この前あんなに怒ったのに?なのにホントにいいの?」 何度も聞き返してくるリトにいい加減唯の顔はムッとしてくる 「もう、何度もこんなこと言わせないでよ!!恥ずかしいんだから……。 それに…それにもし、私に赤ちゃんできても結城くんがずっと一緒にいてくれるんでしょ?////」 それは一ヶ月前に交わしたリトの約束、そして、リトの純粋でいて強い思い 唯は溢れ出る快楽の中でリトの返事を待っていた リトは動きを止めると唯の頭を撫でる 愛しむように、自分の思いの全てを込めるように くすぐったさで身をよじる唯の背中へとリトは顔をうずめる 「ああ、いるよ。どんな時もずっと、ずっとおまえのそばに……」 それは不器用でいて、まだまだ未熟な背伸びをしている思い 未完成のプロポーズともとれるリトの言葉 それでも、だからこそ唯はうれしかった。リトの本当の気持ちが純粋な思いが、その言葉には込められていたから 思わずくすぐったくなる体をほころんでくる顔をなんとか押さえ込み 唯は短く返事をする 「うん、私も」 「…じゃあ、おまえの中に出すからな」 そう言うとリトの腰が再び動かされていく。込み上げてくる欲望を吐き出させるために リトは唯の体を膣内を犯していく リトが腰を打ち付ける度に胸を揉みしだく度に唯は、くずれそうになる脚に懸命に力を入れる そうしていないと立っていることすらできない 壁に腕をつきなんとか姿勢を支えている唯は、耳に届くリトの荒い息を感じながら、下腹部に意識を集中させる すでにリトだけの形になっている膣内はそれでもまだまだきつくリトを締め上げる 「おまえのココすげえ…最高……」 「ゆ…結城くんのだから…結城くんだけの、だから好きにしても……」 熱い吐息と共に唯の口から淫らな言葉が出る どんなに嫌がっても、どんなに否定しても体は心はリトを求めてやまない リトといるとどんどん変わっていく自分 (違う……変わっていってるんじゃなくて私は…) 「唯…出る…うッ!!」 唯の思考を邪魔する様に熱いモノが体に満ちていく 「あ…くぅ…ッん」 子宮に注がれる熱い流れに膣内はざわめき唯に絶頂を与える それでもなお膣内は痙攣を繰り返し、リトの全てを搾り取ろうと中を蠢かす 割れ目から中に収まりきれない欲望が蜜と共に溢れ、ベッドにぽたぽたと落ちていく ガクガクと震える腰をリトに支えられながら、唯はただ全身に覆う波に体をゆだねる 二人の荒い息だけが部屋に満ちていた リトが肉棒を引き抜くと先端から飛び出した欲望が唯のお尻を汚す 「はぁ…ぁ…熱い、んッ」 崩れる様にベッドに座り込む唯の顔にリトは愛液と精液で濡れた肉棒を差し出す 「ほら、ちゃんと掃除しろよ」 鼻につく強烈な牡の臭いに顔をしかめるも、唯は言われたとおりに口にそれを運びこむ (こんな……ハレンチなこと私…) けれど気持ちとは裏腹に、唯は自分の中に生まれた小さな変化に顔をほころばせる リトの前で素直に股を開く自分、リトの行為全てに淫らな声を出し反応をする体 そしてそんな自分を求めてやまないリト 『オレだけの唯』 いつか体を交えた時に言われた言葉 リトのぬくもりと共に伝えられたそれは唯にとって宝物にも似た大切な言葉だった 不器用に竿に舌を絡める唯の髪を、リトは愛しげに撫でる 唯は伏せていた目を向けるとリトを見つめた 愛情に溢れ自分の姿しか映さないリトの目 そんなリトを、唯はただじっと見つめ返す それは普段は奥手で純情なリトが見せる精一杯の意志表示なのかもしれない 唯は口から竿を離してもじっとリトを見つめ続ける。目を離すことができないでいた 口からは唾液が糸を引き、口元は欲望で白く汚れている唯の顔 唯は口元との精液を指で掬うと口の中へと運ぶ いつもの生真面目な顔に今は恍惚さが交じり合い、唯を女の顔へと変えていた 「唯……」 リトは自分にぼーっと見とれている唯の腰に手を回すとぐいっと引き寄せる 下腹部はすでに大きさを取り戻していた リトの膝の上に座った状態の唯は目をとろんとさせリトを見つめる 「またおまえの中に入れさせて欲しいんだ」 「……結城くんの好きにするんじゃなかったの?」 くすっと笑う唯にリトはバツが悪そうに顔を赤らめると、唯の腰を浮かして自分のモノを割れ目へと当てる ずぶずぶと肉がヒダを押し広げて中へと入っていく感触 今日、何度目かになるその心地よさにリトの下腹部はビクビクと波打つ 何度入れても、何回出しても飽きることのない唯の体 自然とリトの息も熱くなる 「…ッん…あ、あァ…ンくぅ」 「やっぱ今日のおまえいつもと違って積極的だな」 いつもなら、挿入する前どころか体を触る度にいろいろと文句を言う唯の変化に、リトも不思議そうな顔をする 唯はそんなリトに少し顔を曇らせると、恐る恐る尋ねる 「…こんな私……嫌?」 リトは目を丸くさせるとぷっと吹き出す 「ちょ、ちょっとどうして笑うのよ?私は真剣に…」 「悪い、ゴメンゴメン!ただ……やっぱ唯は唯だなぁって思ってさ」 唯はまだ釈然としないのか、それでもリトの首に腕を回す。その目はいつにもまして真剣だった 「……結城くん、私が変ってもずっと一緒にいてくれる?」 「なに言ってんだよおまえ?」 リトは唯の質問の糸がわからず首を傾げる 「私だけの結城くん」 「え?」 ぼそりと呟いた声はリトの耳には届かない。唯はその言葉を胸にしまい込むとリトにキスをする 「私を離さないでね。絶対…絶対」 いつもとは違う熱のこもった唯の眼差し 「……そんなの当たり前だろ!おまえのいない日常なんてもう考えられねェよ」 溜め息を吐きながらも話すリトの目は真剣そのものだ そんなリトの胸に顔をうずめながら唯は小さな声で精一杯応える 「…うん、私も!結城くんがいないなんてもう耐えられないから⁄⁄⁄⁄」 素直でいて真っ直ぐな唯の気持ちにリトの心臓がドキンと高鳴る 「唯……おまえ…」 自分が変わっていくことが、変わることでリトの気持ちが揺れ動くのではいかという、不安があった そして自分の『心の奥にある本当の気持ち』を知った時、いつかリトにとってそれが重く迷惑になるのではないかという不安 そんな自分の気持ちをリトに知られたくないのか、唯は黙って胸の中で顔をうずめていた リトは小さくなっている唯の肩を掴むと顔を上げさせる 「バカだなおまえは……そんなくだらねー心配するなよ!オレがおまえを嫌いになるわけないだろ!!」 唯はその言葉になにも言わずにただ首を縦にふる 「おまえは相変わらずいろいろと考えすぎるヤツだなァ」 少しあきれ気味のリトにも唯はなにも応えられずにいた リトとのありとあらゆる初めての経験が、唯に様々な壁を作っていく それに悩み苦しむ日々 本当のことが言えない…自分の本当の気持ちも伝えることもできない きっと結城くんにもいろんな愚痴をこぼさせてる…… それでも結城くんはそんな私のことを好きだと、大切だと言ってくれる 結城くんからもらったモノはたくさんあって、そのどれもが大切で大事なモノ… 唯はそんなリトのやさしさや気持ちになんとか応えたいと思っていた 思ってはいるのだがどうしていいのか、なにをしてあげればいいのかわからないでいた 不器用でいて真っ直ぐな気持ち故の唯の悩み そんな自分に内心あきれつつも唯は、今自分にできることを一生懸命しようと思った 俯かせていた顔を上げるとリトに懇願する 自分の気持ち、今リトにしてもらいたいことを伝えるために 「…結城くん…きて……」 唯はもう待ちきれないのかリトに顔を近づけさせていく 「オレも唯がもっと欲しい」 二人は貪るように互いの唇に吸い付く ぐちゅぐちゅといやらしい音が鳴るのも構わずに唯はリトに合わせて腰を動かしていく そこには風紀委員でも真面目な優等生でもない、古手川唯という一人の女の子がいるだけだった 肌を密着させ汗や唾液で汚れることにも遠慮せず舌を指を絡ませ合う 「んッ、ちゅ…ぅはあ…ちゅぱ、んッく」 互いの唇に吸い付き、舌で口内を蹂躙し唾液を交換しあう 「…ふぁ…むぅ、ンン…うぅ」 背中に回した手に力を込め肌が赤くなるほどに互いを抱き寄せる (結城くん…結城くん、私だけの結城くん……) 心に宿る強い気持ちを体で表すかのように唯は乱れていく 自分の体でリトに触られていない部分も見られていないところももうないだろう 体中隅々まで舌を這わされ、吸い付かれ愛撫される。今まで嫌悪の対象でしかなかった唾液の交換も、今では心地いいぐらいだ 唯の中でどんどんリトへの思いが強くなっていく 愛おしくて好きでたまらない気持ち 糸を引かせながら口を離した後も唯はじっとリトの顔を見つめ続ける 「…ッん、はァ…ん…イイ!すごく…気持ちよくて……結城くんが奥まで、きて…ン」 腰が上下に動く度、子宮口に当たるリトのモノはさらに中へ中へと膣内を押し広げる 「あ…ン…んんッ、ァハ…あァ」 お互い抱き寄せていた体を離すと、額から流れ落ちる汗が二人の間に落ちていく 「結城…くん、もっと欲しい…もっと…」 リトは唯のお尻を掴むと叩きつけるように腰を動かす 小柄な唯の体はそれに合わせてリトの膝の上で跳ねる 「…んッく…ぅ、あァすご…イッ」 上下に動く体に合わせ、唯の乳首がリトの胸板を擦っていく 「唯、唯、唯……」 自分の名を呼ぶ声が、熱い息と共に耳元に運ばれてくる 心地よくて何度も呼んでもらいたくなる呟きが唯の体をざわつかせる 「結城くん…私、もう…ダメ…」 「オレも……限界」 リトはすぐにでも吐き出しそうになる射精感を歯をくいしばって押さえ込む 「うん…一緒にきて…結城くんと一緒が…いいの…」 リトは唯の首に腕を回し体を抱き寄せる 「じゃあ出すな…おまえの中にいっぱい」 「いいわよ!出して…結城くんのいっぱい出して!!結城くんので私をいっぱいにして」 リトの突き上げが激しさを増していき、膣内を責めたてる 「あ…くぅ…はあ…ん、ンン…ッんア…ダメぇ私もうっ!」 キューっと締め付けが強くなる唯の中で、リトはこの日二度目になる欲望を吐き出した 荒い息を吐きながらベッドに横たわるリトを尻目に、唯は身なりを整えていく さっきまでの気持ちはどこへ行ったのか いつまでもハレンチな格好はできないと、唯は気持ちを切り替え下着を着けていく ベッドの上ではまだ余韻にひたっているのかリトは寝転がったままだ 「まったくあなたは……どうしてすぐにだらしなくなっちゃうの?」 唯の少しきつめの言葉にもリトは知らん振りを決めこむ 「もうっ!結城くん少しは話を……」 ムッとした顔でリトに詰め寄ろうとした唯の目に、四時を告げる時計が飛び込んでくる 「今、四時なんだ……」 朝からずっとリトとハレンチなことに夢中になっていた唯は時間の存在を忘れていた そして、そんな自分に顔を赤くさせる (と、とにかくまだ四時ということは……) まずシャワーを浴びて、服に着替え少し休憩しても五時前には…… 頭の中でこれからの計画を考え終えた唯はリトに向き直る。緊張が体を駆け巡るが、ちゃんと伝えようと思った。 自分の気持ちを素直に キュッと握り締めた手を胸に当てて深呼吸 「ね、ねえ結城くん、も…もしよかったらこれから私と外に出かけない? ほら、私達って今までデート……みたいなことしたことないじゃない?だから…」 「……」 無反応なリトに怪訝な顔をすると唯はベッドに近づく 「だ、だって私達ずっとこんな感じだし、そ…そうよそれにこんなこと高校生らしい付き合い方じゃないと思うわ! だ、だからと言って別に結城くんとハレンチなことしたくないって言ってるわけじゃなくて……。 えっと私ただその…結城くんともっと色んなところに行ったり、色んなコトしてみたいなァって⁄⁄⁄」 「……」 リトはまた無反応だ 「結城…くん?私なにおかしなこと言った?結城くん?……ちょっと聞いてるのっ?」 自分なりに精一杯の気持ちを言ったのに、それをことごとく無視するリトに唯は口調をきつくする 「あなたいい加減になんとか言ったらどう…」 リトに詰め寄ろうとした唯の動きは止まる ベッドの上ではリトが心地いい寝息を立てていた。その気持ちよさそうな顔を見ている内に唯の体から力が抜けていく 「……もぅ…」 唯は溜め息を吐きながらもリトに布団をかぶせてあげた 結局いつもの様に夜まで家にいた唯は、美柑お手製の夕食を食べた後、リトに送られながら家路についていた 「なあ、なに怒ってんだよ?」 「……別に」 隣を歩く唯の冷たい一言にリトは顔をしかめる (なんだ?オレなんかやったのか?) リトが悩んでいたその時、二人の横を同い年ぐらいのカップルがすれ違っていく その二人をじっと見つめる唯にピンときたのか、リトは唯の手をギュッと握り締める 「ほら、オレ達だって付き合ってるんだし負けてないと思うけどな」 リトと手を繋ぐのはうれしいし、こうやって並んで歩くのもうれしい だけど唯はリトとは別のことを考えていた 通り過ぎた男の子の手にはどこかで買い物をしたのだろう、デパートの紙袋やケーキの入った箱が握られていた きっと二人で服や小物を見たり、何を食べるのかウインドの前でケーキを選んだりしたのだろう 「いいなァ……うらやましい…」 素直な気持ちが口からこぼれる そんなぼーっとしている唯を立ち止まらせると、リトは家に着いたことを教える 「おまえホントにどうしたんだよ?大丈夫か?」 「う…うん!大丈夫だから!!今日はありがとう……じゃあまたね」 名残惜しげに手を離すリトに別れを告げると唯は玄関のドアを開けた リトと別れた唯は自分の部屋に戻ると、ぼんやりと窓の外を眺めていた 「はぁ~今日も一日結城くんとハレンチなことばかり……」 自分からリトを求め、リトに身を任せているのだから文句はないのだが それでも唯の口から溜息がこぼれる 窓の外を歩く同じ年ほどのカップルに唯の羨望の視線がそそがれる 仲良く腕を組んでいる二人。自分にはそんなマネはできないが手ぐらいは繋いで街を歩いてみたい リトとデートらしいデートなどしたことのない唯にとって、待ち行くカップルはみな憧れの対象になる 唯はまた深い溜息を吐くと、窓を閉めお風呂に入ろうと着替えの支度をする その時、ふとカレンダーに目が留まった唯は何気なく日にちを目で追っていった 来週の日曜日 (そういえばこの日は確か……) そのコトを確認すると唯は明日どうやってリトにその話を持ちかけようかと考え出した そして一週間後の日曜日 今日は地元の神社で行われる夏祭りの日 花火大会もあるということで、今、駅の中は人で溢れかえっている そんな中、唯は駅構内にある鏡の前で自分の服装のチェックをしていた 自分のセンスに自信があるわけじゃない。服のコーディネイトだって雑誌を見ながらだ それでも今日という特別な日のために、唯は自分なりに一生懸命がんばってみた 白い生地に、夏らしく涼しげな青の花や赤い花をあしらった浴衣 髪を後ろでアップにし、いつもとは少し違う印象を出してみたりもしてみた 唯は鏡の前で深呼吸をする 頭に浮かぶのはリトの顔 「結城くん…あなた今日のことどう思ってるの……?」 『へ、祭り?いいぜ!特に用事もないし』 あの日、なんとかがんばってリトへデートの誘いを申し込んだ唯は、リトのあまりの簡単な返事にきょとんとなった もっと驚いたり、焦ってくれたり、喜んでくれたりしてくれると思っていただけに、唯の中で複雑な気持ちが生まれていた これまでデートらしいデートなどしてこなかった二人にとっては、これが初デートだというのに、リトの気軽さが少し唯の心に影を落とす 「結城くん……」 ぽつりと呟いた言葉に唯の胸は締め付けられる 最近リトのことばかり考えている自分。リトを中心に考えている自分 頭の中にずっと居続ける最愛の相手 好きで好きで、どうしよもなく好きでたまらなくなっている それは唯自身でもわかるほどに強く、重い感情。決して表には出すことのない自分だけの思い それは、言葉では中々言えない素直な気持ち。ひょっとしたらこの先も口にだすことはないのかもしれない この日への思いも、その思いの深さも それでも唯は大丈夫だと信じていた 口に出さなくても、気持ちを確かめ合わなくてもきっと大丈夫だと―――― そこには確証もないし、絶対なモノもない あるのは信じているという気持ちだけ 口に出さなくても伝わっている、確かめなくてもわかるお互いの気持ち だから、だからきっと今日だって…… それはエゴかもしれない、自分勝手な思いかもしれない それでも……それでも―――― 「結城となら私は…」 小さなか細い声がこぼれた 唯は鏡の中の自分の姿をじっと見つめる 鏡に映る自分の姿は、普段の自分とは掛け離れていた そんな自分の弱さに唯はキュッと手を握り締める 「そうよ…そうよ!きっと…きっと結城くんだって今日のこと大切に思ってくれているわ」 鏡に向かって言い聞かせるようにそう呟く 心の中はまだざわめいたまま それでも最後にまた髪のチェックを済ますと唯は、リトとの待ち合わせ場所に向かう リトの顔を見るために、その手を繋ぎ合わせるために その胸に、一つの悩みを残して 夕方を少しまわった駅前広場、時間にうるさい唯のためとはいえ待ち合わせ時間より 30分も早く来ていたリトは、どこか落ちつかなげに人の流れを目で追っていた 今日は自分にとって、二人にとって特別な日 こうして待っている間もドキドキと心臓の音は早くなっていく リトがそうやって一人落ちつかなげにそわそわしていると後ろから見知った声がかかる 「結城くん?」 振り向くとそこには浴衣姿の春菜が立っている 「さ、西連寺!?」 「結城くんもこれからお祭り?」 「ああ…」 (そういやララのヤツが春菜ちゃんとどうこう言ってたな……) 今日は夏祭りということもあり駅前広場はいつも以上の人で溢れていた そして、そんな中でも一際目立つ雰囲気を醸し出している目の前のクラスメイト 黒髪と薄紫の生地に花模様の浴衣が、絶妙のバランス具合となって、春菜からいつもはあまりない大人びた色気を出させていた 中学の頃ずっと思いを寄せていた相手だけにリトの心臓はドキンと高鳴る (春菜ちゃん今日はなんだかすげーキレイだなァ……) 「結城くんはここでなにしてるの?誰かと待ち合わせ?」 「え!?ああ…うん、そうなんだ。友達と待ち合わせ」 別に付き合っていることは秘密でもなんでもないのだが、つい唯との関係を友達だと言ってしまうリト 「そっか…私もララさん達と待ち合わせ。同じだね」 にっこりと笑顔を向けてくる春菜にリトの顔も赤くなる (やっぱ春菜ちゃんカワイイ) リトは思い切って心に浮かんだコトを口に出す 「あ、あのさ西連寺…きょ、今日はいつもよりなんつーかその…浴衣すげえ似合ってるよ」 思ったことの半分も口に出せないリトだったが、春菜はそれがうれしかったのか耳まで真っ赤になった顔でもごもごと口を動かす 「あ、ありがとう…⁄⁄⁄⁄」 「う、うん⁄⁄⁄⁄」 「……」 「……」 (やべ!気まずい!!なんか…なんか言わねーと!!) 微妙な雰囲気に二人は飲み込まれていく 「あ、あの結城くん!」 春菜は顔を俯かせながら少し上ずった声を出す。その顔はまだ赤いままだ 「な、なに?」 「も、もしよかったら結城くんも……わた、私と……私達といっしょにお祭りに……」 言いたいことを最後まで言うことなく、その時、春菜の巾着からケータイの着信音が鳴る 「ご、ゴメンね…ちょっと待ってて」 春菜がケータイを取り出しなにやら話し込んでいる間、リトは時計を見る 時刻は六時五分前、中々姿を見せない唯にリトは少し不安になる (あいつなにやってんだ?いつもならとっくに来ててもおかしくないのに…) リトが一人考え込んでいると話し終えた春菜がリトに向き直る 「ゴメンね結城くん、ララさんから電話あって私そろそろ行かないと…」 「ああいいよ、オレこそ引き止めてゴメンな!」 春菜はリトの顔を見るともごもごと口を動かす。それはさっき言いかけたコトを、言いたかったコトを言おうとしているみたいで その様子にリトは不思議そうな目を向ける 「西連寺?」 「……ううん、なんでもない」 「そっか…じゃあ気をつけてな」 「うん、結城くんも」 去り際、春菜はもう一度リトの顔を見つめると、なにも言わずに歩き出した 「なんだったんだ春菜ちゃん?オレになんか用事だったのかな……」 「ずいぶん仲が良いみたいね西連寺さんと」 後ろから聞こえたその声にリトの背中はビクンとなる 「唯!?」 唯は遠くに見える春菜の姿に目を細めると、リトに向き直る 「……結構前に着いていたんだけど、なんだかお邪魔みたいだったから黙ってたの」 ふいっと顔を背ける唯にリトは溜め息を吐く 「おまえなに言って……まあ、ちゃんと来たからよかったけど。それじゃあ行こっか唯」 歩き出したリトの背中を見ながら唯は不満そうな顔になる (なによ!結城くんったらあんなにデレデレしちゃって……) リトの隣に並びしばらく歩いても、その気持ちは治まるどころか大きくなっていく (しかも結城くん私にはなにも言ってくれないし……) この日のために初めて買った浴衣 袖を通す時、リトの顔が浮かんではどんなコトを言われるか期待に胸を躍らした 店で買う時もリトの好きそうな色合いを思い浮かべ悩みながら選んだ 下駄も巾着もみんなこの日のために、リトのために――――― 『あ、あのさ西連寺…きょ、今日はいつもよりなんつーかその…浴衣すげえ似合ってるよ』 そう言った時のリトの顔が、声が頭の中で甦る 手を繋ごうと伸ばしたリトの手を無視すると、唯は黙って隣を歩く その目は少し悲しげに揺らめいていた 祭りのある神社は予想以上の人でごった返していた おいしそうな匂いがする露店の数々。子供たちの楽しそうな声。それがリトの心を躍らせる そして、それは隣にいる唯も一緒なようで、リトと同じように目を輝かせていた 「へ~おまえもやっぱ、こういうとこ好きなんだな。俺も好きなんだ、祭りって!」 楽しそうな顔で笑うリト 「べ、別に私はそういうんじゃ……。そ、それに勘違いしないでね!私が今日ここに来たのはお祭り目当てじゃなく…」 「風紀活動の一環なんだろ?彩西高の風紀を乱すヤツを取り締まるとかそんな感じの」 「え、ええ…。あなたにしたらよくわかってるじゃない。そうよ!私達が今日ここに来たのは、 あなたの様な生徒が問題を起こさないように見張りに来ただけなんだから」 妙に声を強めて力説する唯 「だ、だから変な勘違いしないで」 「ああ、んなコト今さら言われなくっても、ちゃんとわかってるって」 リトはそう言うと唯に手を差し伸べる 「けど、風紀活動も大事だけど、今日はせっかく祭りに来てるんだから楽しまないと損だぜ?それに、オレ達にとってこの祭りは特別なものだろ?」 唯の胸がドキンと高鳴る なにが特別なのか、喉まで出かけたその言葉をムリヤリ呑み込むと、照れ隠しの様にリトから顔を背けてしまう 「唯?」 「きょ…今日はそんなんじゃないんだから、結城くんも真面目にしてっ////」 二人は一通り祭り会場を一周すると、神社の境内に来ていた ここは露店などがない代わりに、カップル達の溜り場となっている場所 腕を組んで歩く男女に、ベンチに座ってキスをし合う者、木の影に隠れてイチャつく様子に唯の顔も自然と赤くなっていく (な、なんてハレンチなっ!!あんなコト人前でよくも……⁄⁄⁄⁄) 「ココすげー……」 舌を絡め合う男女を隣でまじまじと見続けているリトに唯の厳しい視線が飛ぶ 「結城くん!あなたなに真剣に見てるのよ?」 「いや、だって…」 顔を赤くさせながら言い訳をしても説得力があるはずもなく、唯の目はますます厳しくなっていく 「まったく!あなたってどこでも…」 普段と同じ様に振舞っている唯だったが、実は心の中はたいへんだった。 周りのカップル達の大胆な行為に、さっきから心臓の音がドキドキと鳴りっぱなしだ どんどん早くなっていく鼓動に自然と顔も赤くなっていく 唯はそっとリトの横顔を見つめた。その顔は複雑な表情を浮かべている さっき意地を張ってリトの手を拒んだことが悔やまれた せっかくのデートを風紀活動だなどと言ってしまった自分に不甲斐なさを感じた (私が言い出したことなのに……) からっぽの手が寂しく感じられる。リトのぬくもりが恋しい リトを見つめる唯の目に熱が帯びていく そんな唯の複雑な思いがこもった視線にリトはようやく気付く 「ん?どうしたんだよ?」 「な、なんでもないわよ!早く行くわよ…」 境内に背を向けると唯は再び祭りの喧騒の中に入っていく 人を掻き分けながら進む唯の背にリトの手がかかる 「ちょっと待てって!こんな人がいっぱいだと迷子になるぞ」 「なるわけないでしょ!だいたいあなたが逸れなければ私は…」 そう言いながら進もうとする唯の手にリトの手が重ねられる 「ちょ…ちょっとなにするのよ!?」 手を握り締めるリトに唯はびっくりして思わず声を大きくする 「風紀活動だろうと、なんだろうとおまえを一人にはできねーよ!」 「え…?」 リトの手に力が込められる 「それに……それに変なヤツが来てもおまえを守れないだろ」 リトの力強さといつものやさしいぬくもりが手に伝わってくる その目は真剣だった 「う、うん……////」 唯は短く応えると、キュッと手を握り返した 「そう言えばおまえ腹減ったりしてないのか?」 「……少し」 ぼそっと話す唯の手を引きながらリトが進みだす 「それじゃあ、なにか食いにいくか。おまえなにが食べたい?」 唯は少し目を彷徨わせると、すっと一軒の露店へと指差す 「え?これって……おまえこんなのが好きなの?」 意外な唯の選択にリトの目も丸くなる 「わ、悪かったわね⁄⁄⁄⁄」 恥ずかしさで顔を俯かせる唯の手を取ると、リトは露店のおじさんに声をかける 「すみません、リンゴ飴二つください」 リトは飴を受け取るとお腹が空いていたのか早速口を近づける 「ダメよ!立ちながら食べるなんて。それに歩きながらなんてもっとダメ!!」 「おまえなァ……こんな時ぐらいいいじゃねーか」 「こんな時だからこそよ!とにかく風紀の乱れに繋がることは私が許しません!」 頑として言い放つ唯に溜め息を吐くと、再びリトは唯の手を取って歩き出す 「ったくしょうがねえな……どっか座れる場所は……」 「しょうがなくなんてないわ!だいたいあなたは日頃から…あっ」 メンドクサそうに顔をしかめるリトに注意をしようとしたその時、目に映ったあるモノの姿に唯の足は止まった 「ん?どうしたんだよ?」 ぼーっとしている唯に怪訝な目を向けると、リトはそのままその視線を追ってみる 向かいに並ぶ露店の一つ、射的屋 そして、唯の見つめる視線の先には、茶色い毛並みをした子犬のぬいぐるみがあった 「なんだよおまえ、あんなのが欲しいのか?」 リトの言葉にぼーっとしていた顔をハッとさせると、唯は慌てて否定する 「ち…違うわよ!私はただ……」 「……」 リトは手に持っていたリンゴ飴を唯に渡すと、射的屋の親父に声をかける 「おっちゃん一回!」 おもちゃの銃に玉を込めるとリトは他の景品には目もくれず、目当ての物に狙いを定めて撃つ (結城くん…?) 少し大きめなソレは一回や二回当てた程度ではグラつくだけだったが、三回四回と当てる度に揺れは大きくなり、五回目でようやく下へと落ちた リトは射的屋の親父から景品を受け取ると、少し照れくさそうに唯に渡す 「ほら、これが欲しかったんだろおまえ」 「ぁ……あ…」 リトから渡された物を受け取っても唯の口からは小さな呟きしか出てこず、もじもじと体をくねらせるだけだ 「なんだよこれが欲しかったんじゃなかったのかよ?」 「ち、違うの…そうじゃなくて……」 歯切れの悪い唯を怪訝な顔で見つめるリトに、射的屋の親父が声をかける 「そこのお二人さん!!祭りの日にケンカたァいただけねーな」 「え!?いやオレ達別にケンカしてるわけじゃ…な、なあ唯?」 リトの言葉にも唯は顔を背けて応えようとはしない (な…なんなんだよコイツ!?) リトは眉間に皺を寄せムッとした顔になっていく そんな二人の様子を見ていた親父の目が輝く 「ふ~んなるほどね…。俺の経験から言わせてもらえば彼女、きっとあんたからのプレゼントがうれしくて、どうしていいのかわかんねーのさ」 「えっ!?」 目を丸くするリトは慌てて唯の方を振り向く 「いや~カワイイ子じゃねーか!」 「唯……」 真っ赤になった顔を俯かせていた唯は二人のやり取りに顔を上げる 「ち…違います!!私は別に…だいたいコレは彼が勝手にやったことなんです⁄⁄⁄⁄」 全力で否定する唯に射的屋の親父は笑い出す 「そんなにテレなくてもいいじゃねーか!青春ってのは大事なモンだぜ」 話のまったく噛み合わない相手に唯の顔はムッとなっていく 「あ、あなたちょっとは人の話を……」 「お…おいこんなところでそんなコトやめろよな」 妙に冷静なリトに唯はつい怒りの矛先を向けてしまう 「だ、だいたいあなたが私の話を聞かずに勝手にするからこんなことに……」 「はぁ?なんでオレのせいになるんだよ?おまえが欲しそうな顔してたからオレは…」 そんな二人のやりとりを見ていた親父は交互に二人の顔を見つめて頷く 「ケンカするほど仲が良いって昔から言うしな。あんたら見てるとこっちまで微笑ましくなってくるよ。あんたらお似合いのカップルだぜ!」 「なっ!?」 「お似合いの……」 その言葉に耳まで真っ赤になった二人は、さっきまでの言い合いも忘れて、お互いの顔を見つめる そんな二人の様子をにやにやと見ていた親父は、ついにぷっと噴出し豪快に笑い出した そして、そんな様子を少し遠くから見ている者がいた 「…あれって結城くんと古手川さんよね」 それからリト達は再び人の波の中を歩いていた。リトの隣には唯と、そして、春菜がいた 「…にしてもララ達なにやってんだよ……。西連寺を置いて勝手にどっかに行くなんて」 「そんなことないよ。私がぼーっとしてたからはぐれちゃったんだし…」 小さな声で春菜が応える 「西連寺はなにも悪くないよ!悪いのはララ達なんだしさ。だいたい美柑のヤツはなにやってんだよ……なあ、唯?」 「……そうね」 怒ってるわけでも、楽しそうでもない唯の声にリトは一瞬眉を寄せる 「と、とにかく二人が見つかるまでオレ達と一緒にいるといいよ」 「う…うん。それはうれしいんだけど…。私、迷惑になってない?その…結城くん達の……」 リトは顔を赤くさせると、手で全力で否定しながら必死な声をだす 「そ!そんな事ねーよ!!オレ達はただおもしろそーだなァって感じでココに来てるだけだし!それに、こーゆートコは大勢の方が楽しいしさ!!」 その言葉に唯の目がピクリと反応する 「……ホントに?」 春菜の声はリトではなく、その隣を歩く唯に向けられている様だった 唯は黙ったまま地面を見つめていたが、やがてぽつりと言葉をこぼす 「心配しなくてもいいわよ。私もそう思うし……。二人より三人の方が楽しいじゃない」 数秒の間を置いて応えたそれは、感情のあまりこもって無い淡々としたモノだった 春菜はそんな唯に違和感を覚えるも、安心したかの様に笑顔を浮かべる 「…うん、ありがとう古手川さん」 「別にいいわよ、こんなこと…」 そんな二人のやりとりに、リトは、気付かれないように唯を横目で見つめる 黙ったまま地面を見続ける唯は、さっきまでの雰囲気はどこにもなく、どこか寂しそうだった (なんだよ…。どうしたんだこいつ……?) リトは聞かれない様に心の中だけで唯に呟いた それから3人はララ達を見つけるついでに、様々な露店巡りをした ヨーヨー釣りに焼きそばを食べたりカキ氷で喉を潤したり、そして、金魚すくい (オレはこーゆーの得意なんだ!カッコイイとこ見せてやる!!) 美柑からは散々ムダな才能だとからかわれてきたリトだったが、二人にカッコイイところ見せようと張り切って挑んだ が、中々うまく掬うことができず、結果0匹に終わってしまう 「気にしないで結城くん。ほら、金魚すくいって難しいと思うし…」 「……ゴメン、面目ない……」 春菜の励ましにもリトは力なくうな垂れたままだ そんな二人の様子を唯は少し後ろから黙って見ていた 「にーちゃん彼女をあんまり困らせたらダメじゃねーか。彼氏ならもっとドンと構えてなきゃな。 ほら、オレからあんた達カップルにサービスだ!受け取りな」 そう言って1匹の金魚を差し出す露店の親父に、リトと春菜は耳まで真っ赤にさせる 「カカ…カ、カップル~!?」 「お…おじさん待って、私たちそんなんじゃ……////」 二人の反応に唯の表情はムッとしたものに変わっていく 「なによ、もっとちゃんと否定しなさいよ……」 唯の言葉はリトに届くことなく祭りの雑踏の中に消えていった 「げ、元気出して結城くん!ホラ、おじさんがサービスで1匹くれたじゃない。…それよりゴメンね、カップルだなんて言われちゃって…」 「え!?いや…オレは別に気にしてないっていうか…その……」 リトはチラリと唯の方を見る。唯はそっぽを向いていた (唯…) 一週間前のあの日、珍しくお説教以外で唯の呼び出しを受けたリトは、少しビクビクしながら唯との約束の場所まで行った 『今日はあなたに大事な話があって呼んだの。一週間後の日曜日に近所の神社でお祭りがあるんだけど。その…結城くんその日って空いてる?』 ぼーっとしているリトへ、唯はなぜか大慌てで付け加える 『も、もちろんデートってわけじゃなくて…そう!これは風紀活動の一環として私はね…』 どんどんと一人焦りだす唯へ、リトは短くいいよと応えた 唯のほっとした様な表情と、どこか寂しげな顔に少し引っかかるモノがあるものの リトは心の中で喜びを爆発させた 唯からの誘い それはリトにとっては意外なことであり、そして、すごくうれしいことだった きっと何度も何度も頭の中でなにを言おう、どう言おうと、繰り返し練習したのだろう 唯らしいギコチない言葉の中に、唯のその日への思いがいっぱい詰まっていると感じた なのに自分は…… あいまいな言葉で濁す自分を見つめる春菜へ、リトは、思い切ってホントのことを言おうと口を開く 「あ、あのさ、西連寺っ!」 「どうしたの?」 思いのほか大きな声を出してしまったことに、リトは躊躇ってしまったのか少し間を空けてしまう そして、その声にこちらを見つめる唯の姿が目に映る 変な緊張が喉を締め付けていく 「えっと…あのさ…」 「うん」 続く言葉が出てこない。心臓がドクンドクンと早くなっていき、手に汗が浮かんでくる ただ本当のコトを言うだけなのに 「さ、西連寺その…オレ……オレは…そうだ!!腹減らない?タコ焼きでも食おうぜ」 「うん!」 ハハハと力なく笑うリトに唯は溜め息をこぼすと、その横を黙って通り過ぎていく 「ゴメン、唯……」 横を通り過ぎる時、その声が聞こえているのかいないのか、唯はリトの顔を一度も見ようとはしなかった 結局、再び祭りの中を歩く3人の中で唯の表情は晴れないばかりか、今はその顔に複雑なものを浮かべていた 唯はリトの性格をよく知っている。普段は頼りないしデリカシーもない。だけど、やる時はちゃんとしてくれる そして、なによりどんな時でもやさしさがあった だから今にしても、春菜をこんなところで一人っきりにはさせられないという思いが、あることもわかっていた (だからって……) 隣で仲良く話す二人に唯の中で、もやもやとしたモノが生まれる リトと春菜は今、高1の時の思い出話に夢中になっていた 臨海学校の水着盗難の時のこと、文化祭の話、クリスマスパーティの話にララが宇宙人だとバレた時のこと そのどれもが唯の知らない話だったし、そして、唯の知らないリトだった リトの隣を並んで歩く唯の表情は優れない リト達の話に相づちをうったり、頷いたりはするが、とても楽しめる気分ではなかった 自分の知らないリトを知る春菜 どういう理由でも春菜を思うリトのやさしさに複雑な感情が芽生える なによりリトのやさしさが自分以外に向けられていることに、春菜への嫉妬が生まれる もちろんそれはただの我がままだと思うし、いけないことだとわかってはいた わかってはいるのだが…… 隣で自分の知らない話をしている二人に唯は顔をムッとしかめる 隣で黙って歩く唯にいつもとは違うなにかを感じたのか、リトは小さな声で話しかける 「唯?」 「……」 「さっきは悪かったよ。その、オレちゃんとするから、だから…」 「……」 唯はなにも答えない 心配になったリトは唯の肩に手を置こうと手を伸ばす その手から逃れるようにリトから距離を置くと、唯は一人黙って歩き出した 「お、おい…」 「ほっといて!一人になりたいのっ」 こちらを振り返りもせずそう言い放つ唯の口調は、いつにもまして強く、そして、どこか悲しそうだった 「あいつなに考えて…。ゴメン、オレちょっと追いかけてくる」 「あっ!結城くんちょっと待って私が……」 なにか言いかけた春菜を後ろに残し、リトは唯の後を追う 「どうしたんだよ唯のヤツ……」 悪態を吐きながらも、リトは、自分の不甲斐ない態度で唯を怒らせていることをわかっていた わかってはいるがどうすることもできない 思いが空回りをしてしまい春菜に本当のコトを言えないでいた 「クソっ!なにやってんだよオレは…」 人ごみを掻き分けながら進んでいくと唯の後ろ姿が映る 「あっ!唯ッ」 リトは唯の前に回りこむと肩を掴んで捕まえる 「…なによ?」 「なによっておまえな…。なに考えてんだよ?」 その言葉に唯は顔をムッとさせる 「それは私のセリフでしょ!あなたこそなに考えてるのよ?だいたい今日は私たちの……」 「私たちのなんだよ?」 「それは……」 唯は黙って俯いてしまい、そのまま黙り込んでしまう 「とにかく一度戻ろうぜ。西連寺も心配してるだろうしさ」 「……なによそれ?」 「え?」 ぽつりと呟いた唯の声にリトは間の抜けた返事を返す 唯は俯いていた顔を上げると、そんなリトを睨み付ける 「どうして…どうして西連寺さんの心配ばかりするのよ?どうして西連寺さんばかりなの?私のことはどうでもいいの? 私だって一緒にいるのに、私はあなたのなんなの?ねえ、答えてっ!?」 唯の大きく強い口調は周囲の人たちの視線を集めるが、そんなことは気にも止まらないのか、唯はますます声を荒げる 「だいたいあなた今日がなんの日かわかってるの?すごく大切な日なのよ!それなのに…それなのに……」 リトが春菜を気にかけてるのはわかる。わかってはいるがそれが必要以上に唯の目には映っていた 自分の知らない話、目の前で春菜にデレデレしているリト 三人でいるはずなのに自分一人だけ取り残されている感覚 なによりリトが自分以外の女の子と仲良くしているのが嫌だった だって、だって結城くんは私だけの―――― 再び俯いてしまった唯にリトは溜め息を吐く 「とにかくさ、こんなところじゃなんだからどっか違うところで話そーぜ、な?」 心配そうな顔で近づけてくるリトの手を、唯は、思わず払いのけてしまう 「もうほっといてっ!!」 少し赤くなった手とリトのきょとんとした顔に、唯は苦い表情になる 「ゴメン…なさい……」 「いや、別にいいけど…それより唯…」 いつも以上に暗く落ち込んでしまった唯に、リトもそれ以上声をかけられないでいた 祭りの賑やかでいて楽しそうな人々のざわめきの中で、二人の周囲だけポッカリと寂しい空間ができていた なにもしゃべらなくなった唯へ必死に言葉を探すリト だが、焦る気持ちがリトから冷静さを奪っていく 目の前で一人あたふたとしているリトへ、唯はすっと持っていたぬいぐるみを差し出した 「これちょっと持ってて」 なにも言わず反射的に受け取ったリトの胸に、嫌な不安が広がっていく 「えっ…あのさ唯、これって…その……」 唯はリトに背を向けるとそのまま歩き出す 「もしかしてオレ…嫌われた……?」 ぼーっとその背中を見続けていたリトは、ハッと我に返ると慌てて唯を呼び止める その声に立ち止まった唯は、リトに振り返るとごにょごにょと何かをしゃべった その顔はなぜか赤くなっていて、聞き取れない声と唯の表情にリトは怪訝な顔をする リトは唯に駆け寄る 「どうしたんだよ?なに言ってんだかわかんねー」 唯は長い睫毛を伏せるかの様に真っ赤になっている顔を俯かせる 「もう…わかって……」 「え?」 ぼそりと小さな声で呟くだけの唯にリトは顔を近づけさせる 「唯?」 「……も、もういい加減わかって!トイレに行きたいだけなのっ////」 「あっ…」 ようやく納得したのかリトは一人顔を明るくさせる 「なんだ。そんなことならそうと言ってくれればいいのに」 「女の子にそんなこと聞くほうがどうかしてるわよ////」 唯は少し怒ったような目をするとくるりと背中を向けて歩き出した リトは唯が終えるのを簡易トイレのある広場前で待っていた。待ってる間、腕の中の景品に目を落とす 茶色の毛並みをした子犬のぬいぐるみ 少し大きめなソレは両手で抱きしめるにはちょうどいいサイズで、今はリトの腕の中で将来の主になる人をリトと一緒に待つ 「オレなにやってんだよ……」 今日の自分の不甲斐なさに、リトに思わずぬいぐるみに話しかけてしまう けれど、ぬいぐるみに話しかけても応えが返ってくるはずもなく、リトが溜め息を吐いていると後ろから声がかかる 「結城くん」 後ろにはいつの間にか春菜が立っていた 唯は鏡を見ていた。その口から溜め息がこぼれる 「はァ~私なにしてるんだろ……」 今日は色々と楽しみにして来た分、中々期待通りにいかないことに気持ちも沈む (こんなに思ってるのに、こんなに楽しみにしてるのにどうしてうまくいかないの?) 唯の口からまた溜め息が漏れ、鏡に映る浴衣姿の自分を白く曇らせる 今日のために、リトが喜ぶと思って一生懸命選んできた浴衣 「結城くん私より西連寺さんといる方がいいの?私よりも……」 溜め息がこぼれ、唯の顔を寂しさが覆う 「ゴメン…西連寺のことほっといたままで」 申し訳なさそうに頭を掻くリトに、春菜はくすっと笑いかける 「ううん。私は別にいいの。それより結城くん、古手川さんは大丈夫なの?」 「あいつは…」 ぬいぐるみに視線を落とし言いよどむリトに、春菜が明るい声で話しかける 「それカワイイ子だね。どうしたの?古手川さんの持ってた物だよね?」 「え?ああ…これは」 リトは一瞬目をさ迷わせた後、再びぬいぐるみへと視線を戻す 「うん、これ古手川のなんだ」 「……」 「あいつコレが欲しかったみたいでさ、オレが射的で取ったんだ」 唯はトイレを出ると、暗く沈んでしまった自分の気持ちをなんとか押さえ込み、リトの下に急いだ やせ我慢だとわかってはいたが、これ以上自分の気持ちで二人の雰囲気を壊したくないと思った なによりこれ以上リトと気持ちが離れるのは嫌だと思った そんな唯の周りを何組ものカップルが行き来する 自然と目は彷徨い、足は立ち止まってしまう (私達だってちゃんとしたカップル…なのに…) 互いに肩を寄せ合って歩く姿に楽しそうにしゃべる様子に軽い嫉妬を覚える 頭になぜか春菜と楽しそうに話すリトの姿が浮かんだ 唯の足は自然と早足になる (我がままだってわかってる!だけど、だけどやっぱり私は…) リトの姿が目に入ると自然と笑みがこぼれる。唯はそんな自分を落ち着かせる様にゆっくりと歩き出した 「お待たせ。結城…え!?……また西連寺さんと一緒なんだ…」 春菜と話すリトの姿が唯の胸に重く圧し掛かる 「さっきまでは私と一緒だったのに、私を追って来てくれてたのに…」 唯は二人に気づかれないように近くにあった木の影に隠れてじっと二人の様子を見つめる 「なにしてるのよ私は…」 言葉とは裏腹に唯の心は二人を捉えて離さない。リトと春菜の二人を 「結城くん…」 唯は胸で手を握り締めてただ二人を見つめる 「オレ…さ、駅前で西連寺に今日は友達を待ってるって言ったじゃん?あれ…ホントはウソなんだ」 「……うん」 (それって私の…こと?) 木の影からかろうじて二人の会話が聞こえていた唯は、思わずリトの言葉に耳を疑う 「ホントは違うのに…ホントは一番大事なヤツなのにオレ……誰かにホントのこと言うのが恥ずかしくってさ」 「…うん」 言葉を探すようにゆっくりと話すリトに春菜はじっと耳を傾ける。そしてそれは唯も同じだった 「オレ古手川と付き合ってるんだ!二ヶ月前からさ…」 「うん」 「うんって……あれ?驚いたりしないの?」 春菜への思いは吹っ切れていたとはいえ、それでもかつて好きだった相手に告白するのは、それなりの勇気がいったことだった それなのに、それをあっさりと受け取った春菜にリトは呆気に取られてしまう 「うん!だってわかってたし…と言っても、わかったのはほんのちょっと前なんだけどね」 少しはにかむ春菜にリトは慌ててワケを尋ねる 「えっと、それって……どういう…」 「うん実は……」 春菜はあの後、唯とリトを追って偶然話し合っている二人の姿を見つけたこと そして、その話の内容を聞いて、二人の関係を知ってしまったことをリトに告げた 「ご、ゴメンなさい!悪いことだってわかっていたんだけど…どうしても気になって…」 「いいって!気にすることないよそんなこと。それより知ってたんだ…」 リトはほっとした様な少し複雑な表情を浮かべる 「うん…それに結城くんを見ていたらわかるしね」 「え!?どういう……」 春菜は悪いと思いつつもくすくすと笑う 「西連寺!?」 「ゴメンなさい……結城くんはね、私を見る時と古手川さんを見る時とじゃ全然違うから」 首をかしげるリト 「それはね…すごくやさしくて、愛情に満ちた感じ。そんな風に古手川さんのことを見ているんだよ」 「……なっ!違…そ、そんなことねーって!!オレは別に普通なワケでっ!」 真っ赤になって慌てて訂正しようとするリトへ春菜は笑いかける 「フフ、それを自然にできるところが結城くんの素敵なところなんだよ」 「オ…オレは別にそんなつもりであいつを見てるわけじゃ……⁄⁄⁄」 「だけど大切なんでしょ古手川さんのことが?」 さらに顔を赤くさせるリトを春菜は少し切なげに見つめる 「古手川さんがうらやましい……」 「え?」 思わずこぼれた自分の気持ちを誤魔化すように、春菜は慌ててリトが抱えるぬいぐるみを指差す 「だ、だからねきっと古手川さんも結城くんと同じ気持ちだから、もっと大事にしないと!」 「そ、そうかな~」 少し否定的なリトの態度に唯の顔がムッとなる 「うん!だってそれ…ぬいぐるみを見たらわかるから」 「え?これが?……オレは全然わかんねーけど」 春菜はリトからぬいぐるみを受け取るとその顔をじっと見つめる 「西連寺?」 「……フフ、やっぱり。このぬいぐるみ結城くんに似てるの」 「へ?」 リトは素っ頓狂な声を上げてもう一度ぬいぐるみの顔を見つめる 確かに髪の色とかは似てはいるのだが…… 「そっかなー?」 「うん、顔とかそっくりだよ。結城くんが笑ったところに」 春菜にそう言われればリトも頷くしかない。リトはぬいぐるみを抱きかかえると改めて春菜に向き直る 「オレあいつを大事にするよ。今日みたいにウソなんてもうつきたくないからさ あいつは……唯はオレの自慢の彼女だからさ!みんなに自慢できるオレの一番大切なヤツだから」 リトの真っ直ぐな言葉。それはいつか自分が聞きたかった言葉だったのかもしれない…… 春菜はそんな自分の気持ちを心の奥に封じ込めると、リトの顔をもう一度見つめる 「うん!結城くんと古手川さんならきっとこの先も大丈夫だと思うから……。それじゃあ私もう行くね」 「え!?行くってでも一人じゃ……」 (やさしいな、結城くん……。だけどこれ以上一緒にいたらきっと古手川さんに悪いから) 心配そうに顔を見つめるリトに春菜は微笑む 「さっき結城くん達を探してる時に、偶然ララさん達も見つけたの。だから、心配しなくても大丈夫だよ。」 「そっか、じゃあもう安心だな。…それじゃあ気をつけてな西連寺」 リトはそう言うと春菜を見送った (結城くん…) 二人の会話を一部始終聞いていた唯は、出るに出れない状況に頭を抱えていた (あんなこと言われたらどんな顔をして結城くんに会えばいいのよ……) 『唯はオレの自慢の彼女だからさ!みんなに自慢できるオレの一番大切なヤツだから』 思い出すだけでも顔が熱くなる。何度でも聞きたい言葉 それでも唯は立ち上がると、少し勇気を出して茂みから一歩出る 「結城くん」 後ろから聞こえた声に慌てて振り向くと、少し顔を赤くした唯が立っていた 「あれ?おまえトイレに行ってたんじゃ……」 バツが悪そうに言いよどんでいる唯の様子に、リトはピンときた 「ああそっか…おまえさっきの聞いてたんだ」 「ゴメンなさい!悪いとは思ったんだけど…」 「うん…」 「……」 「……」 二人の間に微妙な空気が流れる お互い言いたいこと、伝えたいこと、たくさんあるはずなのにそれをうまく言えないでいた その時、祭り会場にアナウンスが流れる 『ただいまより恒例の花火大会を行ないますので、ご来場の皆様は……』 時刻は八時十分前、花火大会を告げるアナウンスに人々は色めき立つ 「やばっ…もうこんな時間かよ…」 一人焦りだすリトを唯は不思議そうな眼差しで見つめる 「結城くん?どうしたの?」 ぼーっとしている唯の手を掴むと、リトは、急に小走りで駆け出す 「ちょ…ちょっとどうしたのよ急に?」 「いいから!急がないと始まっちまう…」 「はぁ…はぁもうちょっとだから、がんばれよな唯」 「それはもうわかったから、どこに行くのよ?」 息も絶え絶えな二人は今、神社の境内の更に奥、どこに続くかもわからない山道に来ていた 周囲に明かりもなく、虫の鳴き声や得体の知れない物音にビクビクしながらも歩き続けていた 本当なら今すぐにでも帰りたい衝動をグッと我慢できるのも、ずっと手を繋いでくれているリトのおかげだ けれどそれも限界に来ていた。さすがに目的もどこに行くのかも知らされていないのは辛い そんな弱気になっている唯の手をギュッと握り返すと、リトは再び歩き出す 「結城くん、私もう足が……」 「もうすぐそこだからがんばって…」 その時、真っ暗だった山道に赤や青といった明かりが灯る リトが振り返ると、花火大会の開始を告げる盛大な打ち上げ花火がどんどんと上がっていた 「うわぁ!始まっちまった」 リトは足を速めると、草木を掻き分けながらも森の中へと進んでいく どんどん先へ進んでいくリトの背中を追うように、唯もその後を歩いて行く 「結城くん、いい加減にして!いったいどこに行くのか行ってくれないと私…」 自分の声を無視するかの様に先へ先へと進むリトに、唯のいらだちは募っていく 「結城くん聞いてるの?ちゃんと説明してくれないと…」 その時、前を行くリトがふいに止まる 「あった!ここだ」 「え?」 リトが身の丈ほどの草を払いのけるとその先は、小さな広場ができていた 「ホラ、唯お疲れ。到着したぜ」 リトの差し出す手を握り返すと、唯は森から一歩外に出た 雲一つない月明かりが、広場を明るく照らす 「ここって……」 「オレ子供のころよくこの神社で遊んでてさ。その時見つけたのがこの広場。 結構見晴らしがいいだろ?」 山の中腹にあるそこは、ちょうど境内の真上にあって、下に大勢の人達が見える 「すごい…こんなところがあっただなんて」 「ここだと人もこないし、周りに大きな建物とかもないからさ。絶好の穴場だろ? 花火もよく見えるし」 どこか得意げに笑うリトの顔を花火の色が染める 「いつか誰かと、って思ってずっと秘密にしてたオレだけのとっておきの場所なんだここ…」 「え?」 真っすぐ前を見つめるリトの横顔は、花火のせいなのかどこか赤くなっていた 「その…今日は初デートだろ?だからどうしてもお前とここに来たかったっていうか…////」 どんどん小さくなっていくリトの言葉に唯は、ただぼーっとその横顔を見つめる 「結城くん、今日がなんの日なのかわかってたんだ…」 「当たり前だろそんなことっ!」 照れくさいのか顔を背けるリトの横顔を、唯はまじまじと見つめる 赤くなっている顔に花火の青や黄色が重なっていくと、リトはその顔を真剣なモノへと変えていく 「さっきは悪かったな。いろいろと…」 「え…」 黙ってしまった唯にリトは頭を下げる 「オレ今日、おまえに言いたいこととかいっぱいあったんだけどさ、中々言えないどころか、おまえに色々変な誤解とか与えてたみたいでさ。その…ゴメンな唯」 「結城くん?」 「今日は初めてのデートの日だっていうのにオレなにやってんだよ……」 初じめてのデート―――― 気付いていないと思っていた。なにも考えてくれていないと思っていた 誘った時、今日の態度 普段となにも変わらないどころか、目の前で仲良く話す二人に嫉妬すら抱いた 「ホントにゴメンな唯」 申し訳なさそうなリトの顔に胸が締め付けられる 唯はそんな自分の気持ちを隠すようにそっぽを向く 「……別にいいわよそんなこと!よ、よくはないんだけど…それより」 「それより?」 「わ…私の方こそさっきはあんな態度とって悪かったわ。その…あなたがなにも考えていないと思ってたから…」 その顔は相変わらずそっぽを向いたままだったが、唯の純粋なまでの気持ちがそこには込められていた リトはそんな唯に笑いかけると、そっと手を唯の頬に這わせる 「じゃあ今日はお互い様ってことだな?」 「ま、まあ今日はね」 どこかまだギコチない唯の気持ちをほぐす様に、その手を頬から頭へと動かす 「ホントは後もう一個あるんだ、言いたいこと…」 「なんなの?」 リトは唯に顔を近づけていく。二人の距離は数センチほどしか離れていない 「今日のおまえすげーキレイだよ。他の誰よりも…」 「な、なにを言って!だ、だいたい言うのが遅いのよ。そんなことフツー会った時に言うものでしょっ////」 「ゴメン…」 リトはそう言うと唯の唇に自分のを重ねる 最初は驚きと恥ずかしさで体を硬くさせていた唯だったが、次第にリトに合わせるよう口を動かしていく 「んッ…」 リトは一旦唯から口を離すと、その顔を覗き見る うれしさと恥ずかしさで唯はギュッと目をつむったままだった 「どうしたんだよ?やっぱまだ怒ってるとか?」 唯はリトの胸に顔をうずめながら、首を振る 「違うわ。違う…そうじゃないのそうじゃ…」 必死に首を振る唯の様子にリトは笑いかける まだまだギコチない唯の表情だったが、その思いにリトはその手をギュッと握り締める 「やっぱ、おまえはおまえのままだな」 「なによそれ?」 手を握りしめ合いながら見つめる二人の空に特大の花火が上がった あたりを色とりどりの色に染めながら何度も空に上がっていく花火の下で、二人はこの日初めて笑いあう 胸からいろんな思いが消えたせいか、その顔はいつも以上に明るい 赤や青、黄色といった一瞬の光が唯の顔を美しく染める それはリトでなくても誰もが見とれる美しさだった ぼーっと見とれるリトに、唯は怪訝な顔をする 「どうしたの?」 「カワイイ…」 リトはそう呟くと唯をギュッと抱きしめた。満点の星空の下抱き合う二人を花火が赤く染める 「ちょ…ちょっと!こんなところでなにを⁄⁄⁄⁄」 リトは腕に力を込めると唯の細い腰に手を回す 「今日うちに来ない?オレ、おまえとこのままずっと一緒にいたいんだ」 つまりそれは自分とハレンチなことをしようと言っているのと同じこと あまりのストレートなリトに唯は耳まで真っ赤にして顔をうっとりさせるが 慌てて頭を振ると、気を引き締める 「な、なに考えてるのよあなたは!?一週間に一度って決めたでしょ?」 そう言いながらも唯は自分が妙に昂ぶっていることに戸惑う リトはそんな唯の体から離れると両肩に手を置く 「いいじゃん!今日ぐらいはさ」 思わず首を縦に振りそうになる自分をなんとか踏みとどまらせると、唯はふいっとリトから顔を背ける 「だ…ダメよそんなこと!約束したでしょ?だいたいなによ今日ぐらいはって?」 「えっ!?だって今日は祭りだしさ、おまえとずっと一緒にいたいって思うのは普通だろ?」 「ふ…普通のこと……なの?」 そういえば浴衣を買う際、店員から彼氏がどうとか祭りは特別な日だからなんだと色々言われたことを思い出す 「当たり前だろ!年に何回もない特別な日なんだから、やっぱ特別なヤツと過ごしたいだろ?」 唯の胸がトクンと高鳴る 「特別……なんだ⁄⁄⁄⁄」 「なに言ってんだよ?おまえ以外に誰がいるんだよ?」 自分よりも少し背の高いリトの目を上目遣いで見るように、唯はリトを見つめる 黒い瞳を潤ませ顔を赤くさせる唯の顔を、花火が幾重にも彩る リトの喉がゴクリと音をたてる 「唯……」 「…ぁ……」 肩に置かれた手に少し力を入れるだけ簡単に引き寄せられた唯は、そのまま導かれる様にリトの唇に自分のを重ねる 「…ッん、ン…うん」 短くて長い、触れ合うだけのキスは、唯から理性を奪っていく 「きょ…今日だけだからね!こんなこと……⁄⁄⁄⁄」 目を逸らし体をそわそわさせる唯を、リトは再び抱きしめた 背中に回された手がもぞもぞと動き、腰周りやお尻のあたりを撫でていく 「も、もうっ!ちょ…結城くん、ダメっ。花火が終わってから!」 腕の中で必死に抵抗をする唯を名残惜しげに離すと、リトは唯の手を取る 「悪い、ちょっとガマンできなくてさ」 いたずらっ子の様に笑うリトをムッとした表情で睨みつけるもどこかうれしそうな唯 その時、今日何度目かの連続打ち上げ花火が舞った 「うわぁ……すげーな」 幾重にも重なる花火が色とりどりに空に舞う様に、リトの口から感嘆の溜め息が漏れる 「ホント…キレイね」 そう横で呟いた唯の横顔をリトはじっと見つめる 明るく微笑む唯の横顔は誰よりもキレイだと感じた 隣通し肩を寄り添いながら座っている二人の空に、何度も花火が上がっていく 満点の星空を赤や青の光の花が幾重にも染める 「すげー……」 感慨深げに呟くリトに唯は心の中だけで笑みを浮かべる この光景を見るために、この時を一緒に過ごすために今日を選んだのだから 「よかった…」 ぽつりとこぼれた唯の本音は、花火の音にかき消される 花火が終わると静寂が訪れ、今度は真っ暗闇に浮かぶたくさんの星の光が二人を包んだ 夜空に散りばめられた星座の数々 雲ひとつない澄み切った夜空が、星の絵により一層美しさと壮大さを与える 「すげー!!キレイでおっきいなぁ……。きっと神様がいたらもっと大きいんだろうな…」 いきなりそんなことを呟くリトの横顔を唯はまじまじと見つめる 屈託なく笑うリトは純粋な子供の様な顔をしている。それに唯はクスっと笑った (西連寺さんは知ってるのかしら?こんな結城くんを…。私だけの秘密にしたいな) 「ん?どうしたんだよ?」 一人楽しそうな唯にリトは怪訝な顔をする 「なんでもないわよ」 そっぽを向く唯に、リトの顔はますます眉をひそめる 「ったく、なんなんだよおまえは……」 少しトゲのあるリトに唯は黙って手を重ねる キュッと握り締めたリトの手は、いつもと同じ様にあったかくて、そして、いつも以上に愛おしく思えた 今日何度も触れ合っていたはずなのに、なんだか久しぶりに繋いだ様な感触に、唯の顔は自然とやわらかくなる 「ホント、今日のおまえどうしたんだよ?」 わけがわからないリトは溜め息を吐きながらも、それでも唯の手を握り返す 唯と同じ強さで、唯と同じ気持ちで 夏の夜の涼しい風が二人を包む 「花火、終わったわね…」 ぽつりと呟いた唯の横顔はいつもと同じ様でいて、どこか悲しそうだった 「また、来年も来たらいいじゃねーか」 リトの言葉に今度は唯がリトの横顔を見つめる 「来年も再来年も次もその次の年も、ずっと、ずっと…オレはおまえとここに来たい!」 「結城くん…」 リトの言葉が思いがすーっと唯の胸に染み込んでいく 「私…私も、私も結城くんとまたここに来たい!ずっと一緒に…ずっとだって…だって…」 言葉がうまく出てこず、思いだけが宙に浮いてしまう 自分の不甲斐なさに唇をギュッと噛み締める唯の頭を、リトはやさしく撫でる 「心配しなくてもおまえの気持ちみんな届いてるよ」 「ホント……?」 思わず俯きかけた顔をリトに向けると、リトと目が合う じっと見つめてくるだけのリトに、唯の顔はどんどんと曇っていく 「あの……結城…」 「なあ唯、膝枕してくれない?してくれたことないだろ?」 思っても見なかった言葉に、唯はただあっけにとられる 「なあ、頼むよ唯!」 妙に真剣なリトに、唯は慌てて首を横に振る 「そ、そんな恥ずかしいこと嫌よ!それより結城くん、さっきの私の質問に…」 「膝枕してくれたら答えてやるよ!」 唯はしばらく考え込むと、少し乱れていた浴衣を直し自分の膝を手でぽんぽんと叩く 「仕方ないわね…ほら、いいわよ」 少し怒った感じの唯にリトは見えないように笑うと、唯の膝に頭をのせる 浴衣越しに伝わる唯のやわらかい太ももの感触、至近距離から伝わる唯の匂い にやけた顔を隠そうともせず、リトは唯の膝を頬で撫でるように擦り付ける 「最高…」 思わず出たリトの本音に、唯の顔が険しくなっていく 「結城くんいい加減にして!私ちゃんと膝枕したんだから、今度はあなたが私の約束守りなさい!」 少し顔を赤くしながらも本気ともとれる唯の厳しい口調に、リトもにやけた顔をちゃんと正し、唯に向き直る 「まったく!あなたはいつも…」 「届いてるよ、おまえの気持ち」 ぽつりとこぼれたリトの声に唯は一瞬きょとんとしてしまう 唯はリトの顔を見つめる。その顔は真剣だった。いつもと同じ、それ以上に 知らず知らずのうちに唯はリトの瞳に引き込まれていく 「ちゃ…ちゃんとわかってくれてるの?私のこと…」 「当たり前だろそんなこと!オレ以外におまえのコト、こんなにわかってるヤツいると思うか?」 唯は全力で首を横に振る そんな人いないと思うし、いてほしくないとも思った リトの屈託なく笑っている顔が、今はとても頼もしく思える 唯の手がリトの顔へと伸び、頬をやさしく包んでいく 「結城くん…」 手の感触よりも唯の声の響きにリトはくすぐったさを覚える リトはその声を、言葉を、そして今日の出来事をみんな胸の中に刻み込もうと思った 唯の思いもぬくもりも全て 子供時代の秘密の場所はもう自分だけの場所ではなくなっていた ここは唯と二人だけの特別な場所 リトの手が唯の手に重ねられる 「また来ような」 「うん」 唯は短く応えると、リトに顔を近づける 一瞬見つめあった二人は、互いの唇を重ね合わせる 二人の甘く熱い吐息だけが、夏の夜の涼しい風の中に満ちていった
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「ララ…西蓮寺!」 ララと春菜はミネラルンに飲み込まれてしまい、二人は苦しそうにもがいていた。 「くそ、どうすれば……」 ヤミでさえ歯が立たないといっていいほどの相手に、リトはただ呆然と立ち尽くしているだけしかなかった。 何か自分に出来ることは無いのか、そうリトが慌てふためいていると、遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。 「リトくーん!大丈夫!?」 ルンが大きな声でリトを呼びながら恭子と共にこちらへ駆けつけてくる。 「彼奴が原因か……よぉーし!」 恭子はそう言うと目一杯空気を吸い、 「超熱々火球!!」 そう叫ぶと同時に放たれた火球がミネラルンに当たり、徐々に蒸発していく。 そして最後には水蒸気へと姿を変え、天に消えていった。 「ララ(さん)、西蓮寺(さん)!」 リトや唯たちがララと春菜を呼びながら走り寄る。 「大丈夫か!?ララ、西蓮寺!」 「けほっ けほっ……結城くん、私は大丈夫だけどララさんが…!」 春菜の返事にリトはララの方を見ると、そこには微動だにしないララが横たわっていた。 「ララ、ララっ!」 リトはララを呼びながらララの元へと走り寄る。 「おいララ!しっかりしろ、ララっ!!」 リトはララの肩を掴み体を揺するが起きるどころか返事すらない。 それもそのはず、ララはさっきので溺れていたからだ。 「とりあえず救急車呼びましょ!」 唯がそう言うと籾岡や沢田たちは一緒に携帯のしまってあるロッカーに慌てて直行した。 リトはララが息をしているか確認をすると、息をしていないことに気づく。 (息をしてない……!てことはまさか!?) リトはララが溺れていると察知した。 それと同時に、リトの焦りに拍車が掛かる。 (一刻も早くどうにかしないと取り返しのつかないことになっちまう!救急車なんか待ってられねー!) そうは思ったものの、どうすれば助かる? そう思ったそのとき、リトの頭に『人工呼吸』の四文字が浮かぶ。 (でも……いや、それでララが助かるかもしれないなら、賭けるしかない……!) リトは逡巡したものの、一秒でも早くララを助けたいという思いが半刻前の悩みとそれをかき消した。 すぐさまリトはララの気道を確保をするとスゥーっと空気を吸い、ララの唇に自分のそれを重ねた。 「すぅーーー……」 速くもなく遅くもない速度で息を吹き込む。 「……ぷはっ!ハァ、ハァ、スゥーーっ」 呼吸を整えながら空気を吸い直しては再び息を吹き込む。 何回繰り返しただろうか。 リトが懸命に人工呼吸を続けるにも関わらず、未だララが息を吹き返す兆候が無い。 ますます不安に駆られるリト。 (目を覚ましてくれ、ララ!もしおまえがこのまま目が覚めないなんていったらオレは……!) リトはようやく理解した。 ララのいない日常が考えられないと。 もちろん春菜のことも好きだったことには相違なかった。 けどそれ以上にララのことを意識している自分がいたことも何度かあった。 そしてこの件でハッキリとしたのだ。 自分は他の誰よりも、ララのことが好きなのだと。 ララはいつも自分の隣にいて。 いつも自分のことを想ってくれて。 いつも自分の……数えればきりが無い、それだけ彼女は自分と共に居てくれていた。 だから今度は自分がララの気持ちに応える番だ。 これからは自分からララの隣に居よう、そうリトは誓った。 だが一向に目を覚まさないララを見る度にリトは後悔する。 もう全てが手遅れなのかとも思えてくる。 (頼む……!) リトの瞳からは涙が溢れ、溢れた涙はララの頬にぽたぽたと落ちる。 そのとき、リトの願いが叶ったのかララが息を吹き返した。 「ん……ふぅん……」 「ララ!!」 「……リト……?」 ララが体を起こしながらリトの呼びかけに答える。 「ララ……ララぁっ!!」 リトはララが目を覚ましたことに感極まり、その体をぎゅーッと抱きしめる。 「よかった……目を覚まして……オレ一時はどうなるかと……」 「ちょ、苦しいよぉリト。どうしたの、なんかあったのリト?」 どうやら御本人は溺れていたことに気づいてないらしい。 「ララ……ほん…と…よかっ……」 どさっ リトはララがいつものララに戻ったことに安堵するや否や、今度はリトがその場に倒れこんでしまった。 ――――――――――――――――――――――――― 「ん……」 「あ、リト!」 「目が覚めましたか、結城リト」 リトが目を覚ますと、そこにはララとヤミがいた。 「あれ……ここは……オレは一体……?」 「ココ?ここはね、御門先生のお家だよ」 「御門先生の……?」 リトが不思議そうな顔をしていると、そこに御門が現る。 「あら、結城くん。目覚めはいかが?」 リトは体を起しながら答える。 「別に普通ですけど……それより、一体何があったんですか?」 「あなたが倒れた後、ヤミちゃんが私のところに来て、結城くんが倒れたから助けてくれって言ってきたのよ」 「御門先生もプールにきてたみたいで、すぐ車でここまで運んでくれたんだよ」 御門に続いてララが答えた。 「そっか。ありがとな、ララ、ヤミ……」 「か、勘違いしないで下さい///あなたは私のターゲットですから。私が殺すときが来るまで死んでほしくないだけです」 リトから顔を背けながらもいつもの照れ隠しの台詞を口にするヤミ。 そこでリトはふと気づく。 「ん……?ちょっと待てよ?オレが倒れたっていうのは?」 「あら、覚えてないの?」 御門の問いかけに申し訳なさそうな顔を浮かべるリト。 「スミマセン……まったくです」 「リト、私に抱きついた後気絶しちゃってたんだよ?」 「え、そうなのか……?」 そこも覚えてないリトは顔を赤くした。 (オレいつララに抱きついたんだ……? 第一なんで気絶なんかしてたんだ?) 「プールで散々泳いだ後にあんなことがあったんだもの。肉体的にも精神的にも疲れてたんでしょ。倒れるのも無理ないわ」 「あんなこと?」 リトは首を傾げて訊くとヤミが呆れながら答える。 「呆れました。なんて都合のいい頭をしてるんでしょうか……」 「へっ?」 「プリンセスを助けるためとはいえ、公衆の面前であんな、その、えっちぃことをしておきながら……///」 「ララを助ける?一体ララに何があったんだ……?」 そこまで言うととリトは全てを思い出す。プールで何が起きて、自分が何をしたかを。 「あっ……そうか!ララ、どこもケガはないか?体の調子は!?」 ララは急なリトの変わりように最初は驚いたが、自分よりもララを心配するリトの優しさに思わず嬉しくなり抱きついた。 「ううん、リトのおかげでどこもなんともないよ……ありがと、リト♪」 「そっか……ならよかった。……あれ、そういや西蓮寺たちは?」 春菜たちがいないことにようやく気づくリト。 「そうだ、春菜たちどうしたんだろう?」 春菜たちよりも先にプールから出たララたちもその後は知らなかった。 「まぁ、きっと大丈夫でしょう。もう遅いし、家に居るんじゃない?」 「もう遅いって今何時だ……?」 リトはふと時計を見る。すると時計の時針は8時を指していた。 「やっべ、もうこんな時間か!あれ?……そういや美柑もどうしたんだ?」 「美柑だったら先に帰ってご飯の支度してるって」 「そっか……じゃあ早く帰らないとな。先生、どうもありがとうございました。ヤミもサンキューな」 御門に会釈をし、ヤミにも礼をいうと、リトはララに体を向ける。 「ララも……ホントにありがとな!」 「うん……///」 嬉しさと気恥ずかしさに顔を赤らめ俯くララに、リトの心臓が早鐘を打つ。 それも、春菜を見ていたとき以上に。そんな自分にしみじみとリトは思う。 (あぁ……やっぱりオレ、心の底からララのコトが好きなんだなぁ……) リトはそう思いつつもララの手を取り自分の手と繋ぐ。 「リっ、リト!?」 リトの思い掛けない行為にララは吃驚するが、リトは落ち着いた声で微笑みながら言った。 「帰ろう?」 その言葉にララは首を立てに振って、連られるように微笑みながら答える。 「うんっ!」 そういうとララはリトに抱きつき腕を組む。 しかしいつものように引きはがされる様子は無い。 「それじゃ、お大事に~」 バタン… 「ドクターミカド」 「何、ヤミちゃん?」 「結城リト……彼の様子がいつもと違くありませんでしたか?」 「そうね……きっと吹っ切れたんじゃない?」 「吹っ切れる……?」 「そうよ」 「……?」 「あなたにも解るときがいつかくるわよ、きっと」 「そうですか……」 その後、リトとララは腕を組んだまま無言で歩いていた。 しかしそれは帰路ではなく、家とは違う方向に。 そのことに気づいたララが沈黙を破った。 「ねぇ、リト?」 「ん、なんだ?ララ」 「お家はコッチじゃないよ?」 「あぁ、わかってるよ?」 「?」 「ちょっと行きたい場所があってさ、そこでララに話したいことがあるんだ」 「私に?」 「うん。ダメか?」 「ううん、私はいいよ。それに私もリトに言いたいことがあるから。でもあんまり遅いと美柑、余計に待たせちゃうよ?」 「そうだな……。でもどうしてもララに伝えたいことがあるんだ。だから……」 「うん、わかった……。もう一つ訊いてもいい?」 「ん、なんだ?」 「リト、イヤじゃないの?」 「何がだ?」 「今まで腕組んだり抱きついたりすると慌てて逃げてたのに……」 「あぁ、そーゆーことか」 「うん。だからイヤじゃないのかなって」 「そっか、今まで嫌がってるように見えてたのか……。ゴメンな」 「イヤだったんじゃないの?」 「あぁ」 「じゃあ?」 「その、恥ずかしかったっつーか……」 「恥ずかしい?」 「あぁ……でも、これからは自分の気持ちに素直になろうと思ったんだ」 「え?それってどー「お、着いた」 ララの言葉をリトが遮るように喋り、そして続ける。 「なぁ、ララ。ここ、覚えてるか?」 「え?ここって……?」 ララは辺りを見渡してすぐに何か閃いたかのように言う。 「あ、もしかして……!」 「そ、ここはララがオレにプロポーズした場所だな」 どうやらリトはここに向かって足を運んでいたらしい。 「でもどうしてここに……?」 「さっき、ララに伝えたいことがあるって言ったろ?それにはここが一番ふさわしい場所かなって思ったから」 リトは河川敷の芝生に足を踏み入れながらそう言った。 「そっかぁ……それで、伝えたいことって?」 そう言いながらララもリトの後ろをついていくように芝生に足を踏み入れる。 「…………」 「リト?」 「オレさ、西連寺のことが好きだったんだ」 「えっ……」 突然の好きという告白、しかもそれが恋敵でもあり親友でもある春菜に対するものでララは唖然とする。 リトはララの方に振り向いてゆっくりとした口調で続ける。 「でもだんだんララが好きになっていく自分がいて、ララと西連寺、どっちが好きなのか解らなくなってた……けど……」 「……?」 「今日になってやっと解ったんだ。オレはララが好きなんだって」 「……!」 「ララの笑顔を見てると心から安心する。それにうれしくなるんだ」 「……ほんと、に?」 「あぁ……それにララが溺れた姿を見たとき、すごく怖くなって涙が止まらなかった……それでやっと気づいたんだ、ララが大好きで大切なんだって」 「リトっ!!」 ララは声涙倶に下り、リトの胸に飛び込んで顔を埋める。 「うれしい……本当にうれしい!やっと、振り向いてもらえたんだね……」 それに相呼応してリトはやさしくララを抱き込む。 「遅くなってごめんな、ララ」 「ほんとだよ……。私、不安だった……もう振り向いてくれないかもって何度も思ったんだよ?」 「ホントにごめんな……」 「うん……」 「でさ、まだあの時の返事してなかったろ?それにこーゆーのは男から言うもんだと思うし」 「え?」 急にリトの態度が変わり、真剣な目つきになる。そしてララの目を見据えて言った。 「デビルークだとか王女だとか……そういうのは一切無しで。ララ、好きだ」 「リト……」 「ララのこと、もっといっぱい知りたい。それにこれからもずっと一緒に居たいんだ。だから……結婚しよう?」 「リトっ!!」 ララは一番言って欲しかった言葉を言われリトを抱き締める。 「私もリトのこと、もっといっぱい知りたい!一緒に居たい!!だから絶対の絶対だよ!?」 それに応えるかのようにリトは抱き返す。 「あぁ!!でも今はまだ高校生だから卒業したら、な?」 「うん!ねぇ、リト?」 「ん?」 「キスしてもいい?」 ララがそう訊くとリトはすぐに瞼を閉じララの唇に自分の唇を重ねた。 「んっ……」 ララはリトの嬉しい不意打ちに思わず目を丸くする。 前はこんなことを訊いただけでも顔を真っ赤する程奥手だった彼が自分を求めてくれている。 そう思うだけで更に嬉しさに拍車がかかる。 そしてリトの顔が離れていくとともに唇にあった暖かい感触が薄れていく。 「あ……」 「こんなんでよかったら、いつでもしてやるよ?///」 顔を赤くしたリトはそっぽを向き照れながら言った。 「うん……じゃあもう一度して……?///」 ララも顔を赤らめながらもキスをねだる。 リトは無言で肩を抱き寄せるとその唇にキスを落とす。 唇が繋がっているだけで、互いの考えや想い、全てが分かるようなこの感触、感覚。 たった数秒のはずなのに、数十秒にもとって感じられる。 今度はララの方から顔を離す。 「私もリトに言いたいことがあるの」 「ん?」 「今日はホントにありがと!リトは命の恩人だね?」 「そんな……別に当然のことをしたまでで……」 「ううん、そんなことないよ。リトはやっぱり宇宙一頼りになるね♪」 「そんな……///とりあえず、帰ろっか」 「うん!」 二人は腕を組み手を繋ぎ歩き始める。 「帰ったら続きしようね、リト?」 「続きって……///」 「えへへ、今日は寝かせてあげないよ~♪」 そんな会話をしながら帰路を歩んでいった。 そして玄関の扉に着く頃には午後九時を回っていた。 チャイムを鳴らすとすぐに美柑が出迎える。 「遅いよ、リト!ララさん!いったいどうしたの?」 美柑が心配しながら訊くとララはリトを横からぎゅっと抱き締めて言った。 「私たち結婚しまーす!!」 「はい……?」 ――――――――――― 三人は湯気が揺曵し、見るからにして美味そうな料理が並ぶ食卓を囲んでいた。 一通りのことをリトとララが美柑に話した。美柑はリトの急な決心に驚きつつも黙って聞いていた。 そして話を聞き終えて美柑は確認するかのようにリトに問う。 「そっか……そうなんだ。それでリトは結局ララさんを選んだんだ……?」 「選んだって言い方は違う気がするけど……そうなるのかな」 「よかったの?」 「よかったって何がだ?」 「春菜さんのことだよ」 「西連寺の?」 ララも「そこんとこ気になるなぁ」といった顔で美柑とリトの話し合いを傍観する。 「だってリト、春菜さんのことが好きだったんじゃないの?」 「あぁ……好き、だったのかもな。でも今にしてみれば好きっていうよりも憧れに近いものだったと思うんだ」 「憧れ?」 「誰に対しても分け隔てなく優しくて、立候補もしてないのに委員長に推薦されるくらいみんなに信頼されてて……オレもそんな風になってみたいなって憧れてたんだと思う」 「ふぅ~ん……。ま、その辺はリト自身が一番分かる、か」 リトの目を見て迷いが無いと分かった美柑は深追いしなかった。 「じゃあララさん、ペケ、これからもよろしくね!」 「うん!」 『こちらこそ』 「ところで美柑、ナナとモモ、それにセリーヌは?」 リトがモモたちがいないことに気づき美柑に訊く 「モモさんたちならデビルーク星に用事があるって言って帰っていったよ?セリーヌはほら、そこ」 リトは美柑が指差す方を見るとセリーヌはソファーの上でぐっすりと眠っていた。 「起こしたらかわいそうだからそっとしときなよ?」 「あぁ」 リトがセリーヌの寝顔を見つめていると、ララは席を立ち、弾んだ声でリトに言った。 「じゃあリト、私は先に部屋で待ってるね?」 「あれ、おまえ風呂は?」 「御門先生のとこでシャワー浴びちゃったから」 そう言うと階段を上っていった。 「じゃあオレは風呂入るかな」 「リト」 風呂場に向かおうとしたリトを美柑は呼び止めた。 「大切にしてあげなよ?」 「……あぁ。サンキューな、美柑」 「うん……」 美柑は今度こそ風呂場へ向かうリトの後ろ姿を見つめていた。 自分だけのお兄ちゃんだったのがそうでなくなる寂しさ、悲しさ。 自分の義姉がララになることの嬉しさ、喜ばしさ。 これらの感情が入り交じって、得も言えない気分になっていた。 そんな気分でも美柑はただひとつだけ言えることがあった。 「リト……ララさん、お幸せにね」 風呂をあがったリトはトランクス一丁で自室へと戻る。 扉を開けると部屋の明かりは点いておらず、カーテンは朝と変わらず開けっぱなしのまま。 窓からは満月の月光が射し込み、幻想的な雰囲気を醸し出している。 そんなリトの部屋のベッドに、ララは一糸も纏わぬ姿で横になっていた。 「もう寝ちまったのか?」 こちら側に背を向けているので起きているのか寝ているのか判別つかないララに一人呟く。 もし寝ていたら、と考えてそーっとララに近づく。 するとララはがばっと体を起こすとリトを捕まえてベッドに引き摺り込んだ。 「おわっ!?」 リトは視界が回転したかたと思うと、急に顔面が柔らかい感触に包まれ真っ暗になる。 (この柔らかい感じは……) リトはこの感触が胸のものだと解ると同時に、ララの胸に顔を埋められていると理解する。 (なんか、すごく落ち着く……でも息が!) ララの胸に安堵を覚えたリトだが、このままでは窒息死してしまうと、リトは顔を上げる。 するとそこにはリトを慈しむような目で見るララの顔があった。 「捕まえた♪」 リトの首に腕を回してがっちりとホールドするララはにっこりと笑う。 「ララ……」 ララの純粋で無邪気な笑顔にリトは思わず見とれる。 「うふふ……前よりずっとリトを近くに感じてうれしい♪」 急速に縮んだ心の距離に喜びを隠さず、笑顔でありのままの自分の気持ちを伝えるララにリトの口元も自然と綻ぶ。 「うん……。オレもララを近く感じる」 もうララの気持ちから逃げる理由は無い。ララの気持ちを受け入れ、逆に自分の気持ちもララに向かって突っ走しるだけ。 リトは早速行動に移そうとララに訊く。 「なァ、ララ。今日はララの部屋で寝かせてくんねーか?」 「? 別にいいけど……」 「よし、そうと決まれば」 ララからOKをもらうとリトの首に腕を回したままのララの胴と膝の下に腕を回し立ち上がる。いわゆるお姫様抱っこ状態。 「あは……うれしい///いつかリトにこうやって抱っこしてもらえたらなって思ってたから……///」 ララの顔は驚きながらも嬉しさで満ちる。 リトはそんなララを見て自分まで嬉しくなっていった。 「じゃあこれから抱っこするときはこうするな?」 「うん♪」 ララの意を汲んだリトの言葉にララの表情はもっと明るくなる。と同時にリトの嬉しさにも拍車が掛かる。 「他にもしてほしいこととかあったら言ってくれな」 「えっ!?ホントに!?」 リトの意外な申し出にララの嬉しさは有頂天真っ直中だった。 「出来る限りは応えるから」 リトもララに負けないくらいの笑顔で答える。 そんなやりとりをしてると、リトの部屋の隣だけあってすぐにララの研究所につく。 「リト、寝室はコッチだよ!」 リトはララが指でさす方に進むとドアがあった。ドアを開け中に入ると、そこは発明品の並ぶ研究所とは打って変わった部屋だった。 六畳ほどの部屋の真ん中にクィーンサイズのベッドがあるだけの部屋。 (こんな部屋で寝てたんだ……) 飾り気も何も無い、ただ寝るためだけにあるかのような部屋にリトは驚きながらも、リトがララをベッドの上にそっと横たわらせると、リトもララの隣で横になる。 「にしてもでかいベッドだな」 「うん、いつリトと寝てもいいようにこうしといたんだ!」 リトの胸は切ない気持ちでいっぱいになる。 いつもこんな広いベッドに一人で寝ていたのか。いったいどれだけの間、自分が振り向くのを待っていてくれたんだろう。 そう思うと以前のハッキリしなかった自分がどれだけララを傷つけてきたのか、自分に怒りを覚える。 「ごめんな」 「えっ?」 リトはララの方に体を向けて、悲しげな顔をしてララに謝る。 「今まで散々ララに辛い思いをさせてきたんだなって……」 「リト……」 ララはリトの頬に手を添えるとキスをして言った。 「大丈夫だよ?気にしてないから」 「ララ……」 無理矢理笑顔をつくって答えるララがリトには凄くいじらしく思えて、思わずララを抱きしめる。 「ありがとう」 ララもリトを抱きしめる。二人は抱き合ったまま黙り込んだ。 しばらくしてリトが口を開く。 「すごいよなぁ……」 心から感心したような声でリトは言った。 「すごいって?」 何がすごいのかさっぱり見当のつかないララの頭の上には?マークが浮かぶ。 「どれだけ広いかわからないこの宇宙でオレとララが出逢えたことがすごいなって思ってさ」 「うん……そうだね」 リトの言うことにララは頷く。 確かにどれだけ広いかわからない宇宙で二人が出逢う確率など天文学的数値に等しい。 「でもね、リト?私は出逢わなかったってことはないと思うんだ」 ララは自信満々にそう言い切った。 「どうしてそう言い切れるんだ?」 「だって……運命だったから」 「運命……?」 「うん。リトんちのお風呂で出逢って、いつか結ばれる運命だったんだよ」 「……そういうもんか?」 そんな一言で片づけていいもんなのかな、そう思いつつもリトはララに聞き返した 「うん……言葉じゃ説明できないことってあると思うの。他にもそういうのはあると思うよ」 「ほか?」 どんなのがあるんだ?とリトの目がララにそう訊く。 「うん。……例えば、リトは私が好きで、私はリトが好き。でもどんなに好きでも言葉じゃ限界があると思うの」 「確かにな……」 (好きだの愛してるだの言ってるだけじゃただの安売りだし、言葉じゃ表現出来ない部分もあるもんな……) 言葉に余るとはまさにこういうことだろうな、とリトはうんうんと頷きながら肯定する。 「だからそういう時は態度とか行動で表すものだって私は思うよ?」 ララは起き上がるとリトに跨り、馬乗りになると腰を屈めた。 顔は鼻と鼻がぶつかるのではないかという位にまで近づいている。 ララの翡翠色の瞳はリトの瞳の底を覗き込むかのように見つめる。 彼女の揺れ動く長い桃色の髪がリトの鎖骨や耳を撫でるようにくすぐり、たわわに実った胸はリトの胸板に押しつけられる。 「ララ……?」 「私たちも……言うだけ言ったから、言葉じゃもう限界だと思うよ?」 ララはそういうと同時にリトに口づけをした。 リトの口の隙間に舌を差し込み、リトの舌を誘う。 リトは舌を伸ばすとララの舌を受け止めて絡める。 「ふぁ…ん…ぁ…ちゅる…んむ、ぷはっ……」 初めてのディープキス。 とろけそうなくらい熱く、甘い。その淫猥な感覚に官能が刺激され、互いを求める気持ちがエスカレートしていく。 「ぢゅる…んぅ…ふぁ、んぅ……ぷはぁ……」 二人はようやく唇を離すと、リトとララの絡み合った唾液が糸を引く。 「リトぉ……もう我慢しなくていいんだよね?」 「あぁ、オレも我慢できそうにない……」 ララの今までずっと我慢していたリトへの想いが弾ける。 リトも今日になって解ったララを想う気持ちが止めどなく溢れていく。 「じゃあリト、一緒に気持ちよくなろう?」 ララはそういうや否や体の向きを180度回転させた。 リトのトランクスをやや強引に脱がすと怒張した一物が露わになる。先からは透明で粘りのある体液が溢れていた。 「リトの……すごい濡れてるよ?」 「ララのもすごいよ……?」 「ひゃっ!?」 リトもララのお尻に手を掛けると、突き出されたララの潤った秘部をまじまじと見つめ、愛液を舐めとるように割れ目をなぞっていく。 「リトぉ……よーし、こっちだって」 ララも負けじとリトの一物に舌を這わせ、口の奥深くまで入れる。 「くっ……ララぁ……」 ただでさえ気持ちいいのにララが舐めている、そう思うだけでリトの全身に快感が走る。 そんなリトの反応に、ララはリトの弱点を的確に攻め続ける 「ちゅぷっ…じゅる……ここが気持ちいいんでしょ?リト……」 (このままじゃヤバい!) なんとかララの猛攻を緩和しようと、リトはララのなぞるだけではなくララの割れ目に舌を差し込むと掻き回す。 「あっ、それ……気持ちよすぎて、おかしくなっちゃう!」 しかしララはこの快感を紛らわそうと余計にリトへの攻めを激しくする。 「ララぁっ……ダメだ……そんな激しくしたらオレ……っ」 最早ララを攻めることが出来なくなるにまで快感に溺れたリトは為す術が無かった。 リトはこのまま絶頂を迎えるのかと思った矢先、あるものが目に留まる。 (これだ!!) リトはふりふりと揺れ動くララの尻尾を掴み、先端をくわえる。 「し……尻尾はダメぇぇ~~~~!」 ララはリトの一物から手を離すとビクビクと震え始める。 「お願い……尻尾はっ……」 リトは口から尻尾を離すと指先で尻尾を擦り、空いた口はというと尻尾よりも敏感な、小さな突起に舌を伸ばし、包み込むように舐める。 「それ……っ、はんそ、くぅ……っ」 ララはどんどん押し寄せる快感に身悶えながらもリトの一物に再びくわえこむ。 「くっ……もうダメだ、ララぁっ!」 「私もイッちゃうよ!リトぉっ!」 二人はほぼ同時に果て、リトはララの口内に色情の全てを吐き出す。 ララはそれを「こくん」と音を立てて嚥下すると微笑んで言った。 「リトの味がする……///」 そんなララにリトは見惚れる。可愛い。可愛すぎる。 どうしてこんなにも可愛いのか。最早リトにとってはララの全てが愛おしかった。 その体も心も匂いも味も、全てが。 刹那、ララを自分のものにしたい、自分はララのものにされたいという欲求に駆られる。 「ララ……」 「うん……」 ララ自ら足を開き、リトを誘う。どれほどこの瞬間を待ち焦がれたことか。不安なんか微塵の欠片もなかった。 そして望みはついに叶う。 「いくよ……?」 「きて……」 リトは自分の一物をララに挿した。 「ひっ……くぅん!」 ララは痛みと喜びの入り交じった声を挙げ、リトは未知の感覚に早くも射精感を覚える。 ぎっちぎちに締め付けられるくらいきついのに、ぬるぬると奥へ吸い込まれていくような感覚。 それと同時に柔らかい感触がリトを四方八方から包み込む。それでいてとても熱い。 しかし少しでもララの痛みを無くそうと、リトは堪えながら止まることなく一気に進んだ。 必死に痛みを耐えるララにリトは抱きしめ、少しでも早く気持ちよくなってもらおうと唇を重ね、舌を絡める。 「見て、ララ?」 リトはララを抱き抱え座位になり、接合部が見えやすい格好をとる。 「ほら……オレとララが繋がってる……」 「うん……やっと一つになれた」 ララは涙をぽろぽろとこぼしながらリトの首に腕を回してしがみつき、口付けをする。 「ん…ふぁ…ちゅぱ……ちゅるっ…」 啄むように口付けをし、流れるように舌を絡め吸い上げる。 「もう痛くないか?」 「うん、大丈夫だよ……」 「じゃあ動くな?」 リトは後ろにぽすんとララを倒すと、少しずつ腰を引いては打ちつける。 「ん……ふぁ……あぁん……」 だんだん嬌声へと変わっていくララの喘ぎ声を確認しながらそのスピードを速めていく。 それと同時に空いた手で豊満な胸を鷲掴みながら揉みしだいていく。 「あっあっ、リトぉっ、はげしいよぅっ!」 そうは言いつつもリトのリズムに合わせてララも腰を上下に振る。 「だめ…そこっ…気持ちいいの…ああん!いっ、だめ…ッ!」 リトも限界が近いと悟り、一気にラストスパートをかける。 「リトっ、お願い…一緒にっ!」 「くぁっ、ララ、出る!」 リトは最後に最奥を突くと絶頂へ達し、ララの膣内に思いの丈全てを吐き出した。 それと同時にララは体を弓なりに反らしながら果てる。 「はぁっ…はぁっ…」 二人は繋がったままベッドに倒れ込み、倒れた反動でララからリトが引き抜ける。 「はぁっ……ララ、愛してるよ……」 「うん、私もリトを愛してるよ……リトを本当に好きになったあの日から、ずっとずっと……」 「そしてこれからも……だろ?ララ」 「うん!」 どちらからともなく、そっと口付けを交わす。 「それにしてもホンットに気持ちよかった♪ね?」 満足そうにララはリトに訊く。 「あぁ……でも凄い疲れるな。なんか眠たくなってきちまった……ふぁぁ~」 リトは欠伸をしながらそう答えると、ララはリトに覆い被さって言った。 「ね、リト?」 「ん、なんだ?」 ララは満面の笑みでリトに言った。 「今日は寝かさないって言ったでしょ♪寝ないでずーっと愛し合うの!」 その言葉にリトの一物は再び元気を取り戻す。断るの文字は頭の片隅にも無い。 自分もまだララを求めて止まない、そう思ったリトは喜んで快諾した。 「あぁ、望むところだ」
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「なあララ、今夜は久しぶりに一緒に寝ないか?」 突然のリトからの誘いにララは思わず固まった 「え…?」 目を丸く見開き、口をぽかんと開けて足を止める。 「どうした?嫌なのか?」 「あ、うぅん。そうじゃないよ。でもリト…、いいの?」 どうやら今まで散々別々の部屋で寝るように言ったのが裏目に今になって裏目に出たらしい。 しかしララ自身は自分と寝るのは嫌ではないようだった。 そしてララはリトにこう提案した。 「ねえリト。私、一緒に寝るならリトのベッドがいいんだけど、だめかな?」 リトとしては何となく美柑に女性たちとの関係がばれる可能性がある行動は避けたかった。 いや、いずれは美柑だけでなく父親である才培や母親である林檎にも打ち明けねばならないのはわかっていたが、今はまだそこまで踏み込む勇気はなかった。 「ララの部屋はだめなの?」 「私の部屋でもいいんだけど、私はリトのベッドがいいの」 ララにまっすぐ見つめられ、リトは彼女が自分の部屋を望む何かしらの強い理由があるのだろうと感じた。 ララはリトの部屋のドアを閉め、ベッドに座っているリトの隣に寄り添うように腰掛けた。 ララはリトにこれから何をされるのか知っていたが、それを不安に思うことは無かった。 ちょこんとリトの肩に頭を預け、ゆっくりと目を閉じる。 そんな彼女のかわいらしい姿にリトは胸を高鳴らせた。 「ララ…」 「リト…」 二人はお互いの名前を呼び合い、見つめ合う。 そして互いに吸い寄せられるようにキスを交わした。 初めは唇を重ねるだけのキス、それからララは口を開きリトの舌を受け入れる。 しばらくリトがララの口内を味わったあと、ララもリトの口の中へ舌を侵入させてリトの口内を味わった。 二人が唇を離すと、二人の深く甘い口づけの証に二人の唾液が糸を引いた。 リトはララを優しく抱きしめ、そのままベッドに倒れこんだ。 ララは少し赤くなりながらも笑顔でリトの顔を覗き込む。 裸を見られても動じないララが珍しいな、と思いリトが尋ねた。 「どうしたんだ、ララ?珍しく赤くなっちゃってさ」 「だって嬉しいんだもん。リトに抱きしめてもらいたいってずっと思ってたし、それが今叶ったんだって思ったら…」 「抱き締めるだけじゃないよ?」 リトはそう言ってからララの唇に自分の唇を重ねる。 「…ん…」 二人は長いキスを交わす。 そしてリトの手がララの背中からお尻へ移っていく。 「やだぁ…リトのえっち…」 「えっちなのは嫌?」 リトはララを愛撫していた手を止める。 「もう…。リトにされるんなら嫌じゃないよ…」 今度はララの方から唇が重ねられた。 「ん…あん…リト…」 「ララ…」 真っ暗な部屋の中でララとリトは裸で抱き合っていた。 リトのキスが唇だけでなくララの肩や首筋、胸にも降り注ぐ。 ララがふと時計に目をやると時刻は午前1時を回っていた。 「もうこんな時間…」 「エッチしてると時間が早く過ぎてくな」 「そうだね…。ねえリト、私が初めてリトのベッドに潜り込んだ日のこと覚えてる?」 突然ララはリトにそんなことを尋ねてきた。 「ああ、あのときのことか。俺もあのときは驚いたよ」 朝目覚めたら裸のララが自分の隣で眠っていたあの日。 女性に対して全く免疫の無かったリトにとっては刺激が強すぎて、つい大声を上げてしまった。 そんな自分がララを含めた複数の女性を抱くようになったのだから、世の中何が起こるかわからないものである。 「あのときさ、リト、私の裸を見て大声上げたよね?」 「そうだったな」 リトはくすっと笑ってララの滑らかな背中を指で撫でる。 「あのとき私、少しショックだったんだよ?リトは私が傍にいるのは嫌なのかなあって…」 「そうなの?」 「うん…。だから私ね、リトにして欲しいことがあるんだ」 ララは少し真剣な目でリトを見つめた。 その眼差しにリトの愛撫の手が止まる。 「何をして欲しいんだ?」 「…今日このまま眠って、朝起きたときに私を抱きしめて『おはよう』って言ってほしいな」 そう言いながらララはリトにぎゅっと抱きついて彼の胸に顔を埋める。 そんな彼女がかわいくてリトはララの上に覆いかぶさって彼女の体に何度も唇で吸いつき、キスマークを付けていく。 「もう、リトえっちすぎ…」 ララがそう言った瞬間リトの勃起したペニスが自身の割れ目に触れた。 もう彼は自分の中に入りたくて仕方ないらしい。 ゆっくり、ゆっくりと自分の膣が彼のペニスの形に広がっていく。 これまでの愛撫でララの膣は十二分に湿っており、リトのペニスを何の抵抗もなく呑み込んでいった。 ララはデビルーク人のため地球人より筋力が強い。 それは膣も同じのようで、ララの締め付けは春菜や唯のそれよりも強く、その強さに合わせてリトの腰の動きもつい激しくなってしまう。 「…ああっ…リト…」 膣の中に直接感じる彼の感触にララはうっとりとして吐息を漏らす。 「あのときベッドに潜り込んだのも今くらいの時間だったの…。あのときはリトは寝てたし、私を抱きしめてくれることも無かったけど、今リトとひとつになれて私幸せだよ…」 「ララ…」 繋がった部分からは白い愛液が染み出し、リトの腰の動きに合わせてグチュグチュと卑猥な音を立てた。 リトの手がララの柔らかい乳房や透き通るような白い背中、きゅっと締まったヒップ、艶やかな髪と色々なところに伸びる。 彼女を余すところなく味わいつくすような愛撫と膣内に直接触れている彼のペニスの感触、子宮に届く激しいピストンにララは今すぐにでも果ててしまいそうになる。 「あっ…、リ…リトっ…、私もう…」 「ララ…、俺ももうイくよ…」 ララの膣がより強くぎゅっと締まり、その刺激にリトは溜まった精液を一気に彼女の中に吐き出していく。 リトは射精しながらもララの奥へ奥へ突き込むように腰を振り、ララの子宮口をこじ開けて彼女の子宮内を白く染め上げる。 「…あ…は…、か…」 声も出ないほどの快楽にララの頭は真っ白になる。 リトに出された余韻に浸るララだったが、そのときリトのペニスに変化が起こった。 射精を終えて収縮していたはずのリトのペニスが急に勃起を始めたのである。 「…リ…リト…」 「ララ…。俺もっとララと気持ち良くなりたい…」 リトは腰にかかっていたタオルケットを乱暴にベッドの下に投げ捨て、ララと強く強くキスをした。 ララもリトの唇に吸いつき、そのまま二人は荒々しく舌を絡めあう。 二人から理性は完全に消え失せ、明け方近くまでリトとララは獣のように腰を振った。 入りきらない精液が膣の外にこぼれてもリトは構わずにララの中に射精し続けた。 ララもリトのペニスが絶対に抜けることのないように彼の腰に脚を絡め、本能の命じるままリトの精液を際限なく子宮に受け入れ続けた。 そして翌朝、いつものように美柑がキッチンで朝食を作り、ナナとモモが皿やコップを用意していた。 時計に目をやった美柑はふっとため息をついた。 この場にリトがいないのもまあいつものことである。 「ねえナナさん、リト起こして来てくれない?」 美柑はみそ汁の鍋を見ながらナナにそう頼んだ。 「あら美柑さん、リトさんなら私が…」 モモがにやにやしながらそう言うと美柑はきっぱりと断った。 「モモさんは結構!」 「そういや姉上も起きてきてないな。モモは姉上を起こしに行ってくれよ」 ララの姿も見えないことに気づいたナナがモモにそう言った。 「そういえばそうね。じゃあリトさんをお願いね、ナナ」 「…うん?うーん…」 リトは股間に違和感を感じて目を覚ました。 「あ、リトやっと起きた♪」 ララはリトのペニスを手に持ち、顔を近づけた状態でにっこりとほほ笑んだ。 「ララ、おはよう。ひょっとしてフェラしてくれてたの?」 「うん♪リトに気持ち良く起きてもらえるかなって思って…」 「もう、ララかわいすぎ」 リトはララを抱き寄せてキスをする。 もちろんキスだけで終わるはずがなく、リトはララを自分の下に敷くような体勢になり、そのままフェラチオで勃起したペニスをララの膣に挿入した。 「やんっ…リト朝からえっち…」 「これからララと寝たら朝になるたびにこうしたいんだけど、嫌ならやめようか?」 「もう、嫌だなんて言ってないもん…。…あっ…」 リトのペニスがゆっくりゆっくりとララの膣内を這いずりまわる。 二人が快楽にどっぷりと浸かり、リトが射精しようとした瞬間に部屋のドアが開いた。 「おいリトー。そろそろ起きろって美柑が…」 ナナはリトの部屋で行われている行為に目を見開く。 目に飛び込んできた自分の姉がリトの精を受け止める瞬間の光景にナナの中で時が止まった。 裸で唇を重ね舌を絡め、二人は腰を震わせながらお互いに夢中になっている。 言葉が出なかった。 ゲームの中で見た行為よりもずっと生々しい性行為を目の当たりにして。 ナナは愛し合うというのはもっと綺麗で美しいことだと思っていた。 だが純真で性の知識もなかったはずの姉ですらいまや愛する男とのセックスの虜になっている。 ナナが呆然としているとリトがナナに声をかけた。 「ナナ、起こしに来てくれたのか?」 ナナはハッとして返事をする。 「あ…ああ…」 リトは何事も無かったかのようにララに声をかける。 「ララ、そろそろ朝ごはんだぞ」 「え~…、もうちょっとゆっくりさせて…」 ララはリトと交わった余韻にまだ浸っていたいらしい。 「美柑に迷惑がかかっちまうだろ?ほら、手貸してやるから」 リトはそう言ってララの背中に腕を回して抱えるようにして彼女を起こした。 ララはリトの手を借りながらのろのろと昨晩脱ぎ捨てたパジャマを身につけていく。 「ナナ、ララは俺が連れてくから先に下りといてくれ」 「…あ…、うん…」 ナナはそう言われてリトの部屋を出た。 部屋を出た先にはモモが立っていた。 「お姉様、昨夜はリトさんの部屋にいたのね」 モモは何食わぬ顔で言った。 「どうしたのナナ?美柑さんが待ってるわよ?」 モモは姉とリトが何をしていたのかとっくに気づいているようだ。 ナナは無言でモモのあとについていった。 ぐちゃぐちゃになったナナの頭の中など気づかぬふりでモモはさもこれが当たり前なのだというように振る舞った。 ナナの中で恋愛の像が音を立てて崩れていった。
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ヤミ(この地球に来て、どのくらい経っただろう) (私は―――いつまで彩南町(ココ)に居られるだろう・・・) 第1話 Continue~コンティニュー~ 美柑「リト――っ、早く起きないとチコクしちゃうよ――っ」 「リトってば――」 モモ「リトさん、リトさん、美柑さんが呼んでますよ。そろそろ起きないと・・・」 リト「ん~、ムニャ・・・」 モモ「起きないと、イタズラ・・・しちゃいますよ?」 眠るリトの上に、上着だけを羽織ったモモが乗っていた。 リト「・・・・・」 リトはモモに気付いて、飛び起きた。 モモ「きゃ、あらら・・・残念♡」 リト「モ・・・モモ!!お前・・・いつからオレの布団に!!」 モモ「うふふ・・・いつからでしょう♡」 そこにナナが入ってきた。 ナナ「あれ?起きてたのか?美柑がバカ兄貴を起こしてこいって・・・・・・」 モモ「あら、ナナ、おはよう♬」 ナナ「朝からモモと何やってんだ―――っ!!」 ナナがリトの頬を引っ張る。 リト「ぐぇ・・・ちが・・・またモモが勝手に・・・」 ナナ「待て、このケダマノ!!」 リト「ひえ――っ」 リトはナナから逃げるようにして、階段を降りた。 ララ「あ・・・おはよ―リト!」 そこには、全裸のララがいた。 ララ「は――っ、朝のおフロはやっぱり気持ちいいね――っ」 リト「ラ・・ララ!家の中裸でウロつくなって、何度言ったらわかるんだ―――!!」 ララ「え――だって~~~」 美柑「やれやれ・・・毎朝騒がしいんだから・・・もう」 リト(そう・・・これがオレ、結城リトの日常) リトとララは学校に向かっていた。 リト「ふぅ・・・」 ララ「どーしたのリト、元気ないね――」 リト「朝からどっと疲れた・・・・」 リト(銀河を納めるデビルーク星の王女、ララが現れて以来、トラブルだらけの毎日) (それもララの妹、双子のナナとモモが居候してきて、さらに激しくなった気がする) (特に最近要注意なのが、デビルーク星第3王女モモだ) モモとナナはリトとララ、美柑を見送っていた。 モモ「くすくす、いってらっしゃい♡」 リト(天然で純粋なララやナナと違って、モモの行動には何かこう・・・計算された黒さというかヤバさを感じる。いや・・・ただ遊んでるだけかも知れないけど、もともと女の子に免疫のないオレにとってモモの行動はちょっと刺激が強すぎる・・・) (そして、オレの問題は他にも・・・) リトは下駄箱でヤミと会った。 リト「!!」(金色の闇!!) 「・・・・!!」 ララ「あ!おはよ―ヤミちゃん♬」 ヤミ「・・・おはようございます、プリンセス」 ヤミが去っていく。 リト「ビビった・・・ララに会ってから、色んな宇宙人と会ったけどまだあいつには緊張する・・・伝説の殺し屋、金色の闇・・・やっぱり、まだオレの命を狙ってるんだろうか・・・」 春奈「結城くん、ララさん、おはよう」 ララ「あ!おはよう~」 リトの思い人である春奈も来た。 リト「!!」(春奈ちゃん!) (ああ・・・この笑顔・・・癒される・・・♡) ララ「リト!リト!」 リト「ん?」 ララ「チャンスだよ、告白しちゃえ♡」 リトは顔を真っ赤にして、ララを連れだした。 春奈「?」 リト「いきなり何言ってんだ!!」 ララ「大丈夫だって!絶対成功するから♡」 「うまくいけば、私も春奈もリトと結婚して一緒に暮らせるね♡」 リト「だ―――っ」 ララ「え・・・だってリト、この前私の事も「好き」って言ってくれたでしょ?」 リト「そーゆー問題じゃないっ!!一度に結婚できるのは一人だけって法律で決まっててだな・・・」 ララ「ホーリツ?」 唯「ちょっとあなた達!そんな所で二人で何やってるの!風紀委員として行内でのハレンチ行為は許さないわよ!」 ララ「唯!」リト「古手川・・・」 風紀委員の古手川唯が通りかかった。 彼女は大量のプリントを抱えている。 ララ「あはは!ちょっとお話してただけだよ~」 唯「フン・・・どうだか」 リトが唯の抱えていたプリントを代わりに抱えた。 リト「うわ、結構重いなこれ。教室に運ぶんだろ?オレがやるよ」 ララ「やっさし~♡」 リト「そんなんじゃねーよ」 唯「あ・・・あああ、ありが・・・」 セリーヌ「まう―っ」 リト「セリーヌ!?」 ララ「セリーヌちゃん!?」 リト「何で学校に・・・わわっ!!」 セリーヌに飛びつかれ、リトがバランスを崩す。 唯「えっ」 リト「だ――っ」 唯「ちょっ・・・きゃつ!?」 リトは階段から落ちた拍子に、唯の股間に顔を埋め、下着をずり下ろしてしまってた。 唯「ハレンチな―――っ!!」 唯がリトを殴った。 ララ「あっ」 ナナ「何でいつもパンツに突っ込むんだ、アイツ・・・・」 モモ「相変わらず神業のような転びっぷり・・・♡」 階段の上に、彩南の制服を着たナナとモモがいた。 ララ「ナナ、モモ!?あれ?何で制服!?」 ナナ「へへー、あたし達今日からこの学校に転入するんだ!」 モモ「お姉様達を驚かせようと思って秘密で準備していたんです」 ララ「え!そーなの!?すごーい、全然気づかなかったよ――!」 ナナ「モモとセリーヌと留守番してるのも退屈らからなっ!」 唯「転入・・・って一年?そういう歳だったの?あなた達」 モモ「ふふ・・・細かい事を気にしない校長先生で助かりました♡」 校長(可愛いからOK!!) 唯「あ―――・・・」 ナナ「つー訳でヨロシクな、コテ川!」 モモ「ナナ!「ヨロシクお願いします」でしょ、先輩方には礼儀正しくしなさい」 「皆さんと仲良くできるように頑張らなくては・・・ね!リト先輩♡」 リト(ハッ!!まさかモモの奴・・・昨日の事、本気で・・・!?) 前日 夜 結城家バスルーム リト「は~~~~~・・・」 「これからどうするかな・・・春奈ちゃんに告白しようにも、ララとの関係に決着つけてからじゃないと、保険かけてるみたいでイヤなんだよなァ・・・」 「ララが言うように、両方ともくっついて幸せになろうなんて・・・虫が良すぎるもんな~~~・・・」 モモ「そうでしょうか?私はそうは思いせんよ?」 リトが風呂に入ってる所に、モモも入ってきた(当然の様に、全裸であった) リト「モモ・・・お前・・・何入って来て・・・!!」 モモ「し――っ、今日は大切なお話があるんです。大丈夫・・・身体はキレイにして来ました。・・・ねぇリトさん、きっとリトさんはご存じないですよね?」 モモが浴槽に入ってくる。 リト「ちょ・・・・・」 モモ「リトさんに秘かに想いを寄せる女性が、実はけっこう周りにいる・・・って事」 リト「は!?」 モモ「リトさん次第で幸せになれる女性が沢山いるんですよ・・・それってとても素晴らしい事だと思いませんか?」 「だってリトさんは、次期デビルーク王の最有力候補・・・王が側室を持つ事に何の問題もありはしませんもの」 モモの胸が、リトの胸板に押し付けられる。 リト「・・・・、オ・・・オレっ、もう出るっ!!」 リトが浴槽から立ち上がるも、股間をモモに見られた。 モモ「・・・♡」 「・・・迷う事はありませんわ。創りましょう・・・!リトさんの‘楽園‘を」 「皆が素直になれるよう、私がお手伝いしますから♡」 リト(楽園を創る・・・・・・確かにそう言った・・・あ・・・あれが冗談じゃなかったとしたら・・・・・) 「い・・・いや、いくらなんでもそんな・・・」 1-Bの教室にナナとモモが入った。 ナナ「ナナ・アスタ・デビルークだ!」 モモ「モモ・ベリア・デビルークです♡」 男子たち「「「おお~~~!!」」」 その直後、モモの周りに男子たちが集まってきた。 男子たち「モモさん!お話があるんですがっ!!」 「オレも!」「ぼぼ・・・僕も!!」 「今付き合っている人いる!?」「趣味は?」「好みのタイプは!?」 「ララ先輩の妹さんだよね?」「メアド教えて~~~~♡」 モモ「やだ~~~そんな困りますよぅ」 ナナ「フン、まーたいい子ぶってら、何であんなヤツがモてるんだ?」 「・・・ちぇっ、姉上達のクラスにでも行くか・・・ん?」 窓際に、一人の少女が立っていた。 ナナ「・・・・・・何してんだ?お前」 少女「・・・あのコ達を見てるの、一緒に飛んで・・・お友達なのかなぁって」 窓の向こうの空で、2匹の鳥が飛んでいた。 ナナ「あ・・・鳥か!「今日は南の方へ飛んでいこう」・・・ってさ」 少女「あのコ達の言葉がわかるの?」 ナナ「ああ、あたし生まれつき動物の心が読めるんだ!テレパシーみたいなもんかな」 「おかげで、宇宙中に色んな動物の友達がいるんだぜ」 「あ・・・ホ・・・ホントだぞ、言っとくけどなっ」 少女「素敵!」 ナナ「へっ」 少女「動物とお話できるなんてすごい才能ね!!そんなヒトがクラスにいたんてわたしビックリ・・・・・・あれ?あなた・・・クラスにいたっけ?」 ナナ「いや・・・さっき挨拶したろ、転入したんだよ」 (のんびりしたヤツだな――)「お前、名前は?」 芽亜「わたし芽亜、黒咲芽亜!えっとあなたは?」 ナナ「ナナだよ、ナナ・アスタ・デビルーク、よろしくな!」 モモは教室から出ていた。 モモ「疲れた・・・クラスの男子達には慎みってものがないわね・・・下心丸見えでガツガツしてて・・・リトさんの爪の垢でも飲ませてやりたいわ・・・」 「はぁ・・・リトさんの慌てふためく表情・・・何であんなに可愛いのかしら♡」 (でも・・・リトさんが今のままじゃ私も困るのよね、愛人の立場さえ成り立つとは思えないもの) (やはり荒療治は必要だわ) (‘楽園‘を創って、リトさんを「肉食系」に変える!!) (そうすればお姉様の恋も成就するし皆幸せ♡私の事も思いっきり愛してもらえるはず♡) (そのためにはまず・・・外堀から埋めていかなくては!!) モモは、ベンチに腰掛け好物のたい焼きを食べているヤミに声をかける。 モモ「ヤ――ミさん♬」 ヤミ「あなたは・・・モモ・ベリア・デビルーク・・・私に何か用ですか?」 モモ「ふふっ、せっかく転入してきた事だし、同じ宇宙人同士お友達になりたいと思いまして♡」 ヤミ「友達・・・私とですか?」 モモ「はい♡」 ヤミ「・・・・・別に友達募集はしていません。友達なら美柑がいるので間に合ってます」 モモ(・・・やはりこの人は一筋縄ではいかないみたいね、‘金色の闇‘・・・・) (全身を武器に変化させる‘変身能力‘を持つ伝説の殺し屋、本名・素性は一切不明、 地球に来て以来、リトさんを「標的」として狙い続けている) (でも・・・私知ってるんですよ、あなたの好物であるその‘たいやき‘の味・・・ あなたに初めて押してくれたのは、リトさんという事を・・・ 私の勘では、彼女も少なからずリトさんに惹かれている女性の一人・・・しかし・・・一方で、まだ彼女にとってリトさんは始末すべき‘標的‘でもある・・・彼女がどちらに転ぶかが、‘楽園計画‘の行く末を左右するとも言える重要な存在・・・) (だからこそ堕とし甲斐がある・・・・!!彼女をリトさんにメロメロにしてもらえば、リトさんの身の安全は保障される・・・!) 「そうだ!いっそヤミさんも転入してみたらどうですか?」 ヤミ「転入・・・?別に転入する理由がないので・・・」 モモ「そんな事ありませんよっ、制服も着られるし、学校行事にも堂々と参加できますよ?」 ヤミ「制服・・・行事・・・」 モモ(!反応あり!!)「そうですよ!彩南祭とかプールとか!・・・それに・・・リトさんとも親しくなれるかも♡」 ヤミ「・・・エンリョしておきます」 モモ「あ」(しまった、急ぎすぎた・・・) 「えっと・・・」 リト「うわわわ、よせっ!!」 リトが2人の近くに逃げてきた。 モモ「リトさん、どうしました?」 リト「モモ!あ・・・あいつらがいきなり襲ってきて・・・」 モモ「え!?」 リトを追ってきたのは、友達の猿山を初めとした数人の男子たちだった。 男子たち「ヒヒ・・・」「アアァ・・・!!」 モモ「な・・・何ですか、あなた達!」 リト「さ・・・猿山のヤツ、さっきまで普通に話してたのにいきなり・・・・・」 モモ「!?」 猿山?「み・・・見つけたァ・・・‘金色の闇‘・・・!!オレらとォォ、遊ぼうぜェエェ!!!!」 猿山達がヤミ達に襲い掛かる。 モモ「リトさん!」 モモがリトをおしのける。 猿山の拳の一撃が、ベンチを砕いた。 ヤミは、上空に飛びのいていた。 ヤミ(この力・・・普通じゃない、何者かに操作されている―――・・・) ヤミは着地したところを、男子たちに手足や髪を掴まれた。 ヤミ(はやい!・・・いや、違う。私が鈍っているんだ、地球の生活に慣れすぎて・・・・) リト「ヤミ!!!・・・ハッ」 リトは、ヤミの胸やパンツがはみ出しているのを見てしまう。 リト「あの、いま助けに・・・・」 ヤミ「見ないでください!!」 リト「のわっ、あああああ」 ヤミの髪の毛がリトの目を隠し、そのまま回転させた。 モモ「リトさ―ん!!」 猿山「うひょ―っ」 猿山がヤミに飛び掛かろうとしたが、ヤミは髪の毛を‘変身‘させた複数の拳で男子たちを殴り飛ばした。 ヤミ「えっちぃのはキライです」 男子「ガァァアァッ」 残る2人の男子が、モモとリトの方に向かう。 リト「モモ!?」 モモ「リトさん、危ないです。私の下に!」 リト「へっ!?」 リトがモモの足元に寝かされる。 モモは2人の男子の攻撃をかわす。 リト(目のやり場に困るんすけど・・・) モモが攻撃をかわした拍子に、リトの眼前にモモのお尻が迫った。 リト「!!」 モモが携帯型転送システム‘デダイヤル‘を取り出す。 モモ「転送!!」 地面から太いツタが出てきた。 リト(な・・・何が起こってるんだ~~~!?) モモが立ち上がる。 モモ「もう大丈夫です」 リト「お!?こ・・・これって」 2人の男子は植物のツタに絡まれ、動きを封じられていた。 モモ「お忘れですか?植物と心を通わせる私の能力を」 「幼い頃から銀河のあちこちで収集した数百種の植物達・・・全てが私の思いのままですわ♡」 気絶したはずの猿山の口から、彼らを操っていた者の声が聞こえてきた。 ?「やはり・・・誰一人息の根を止めていないか・・・地球で牙を抜かれたと言う情報は本当だったらしいな」 ヤミ「・・・何者ですか」 ?「本当の君を知る者だよ、目を覚ませ、金色の闇・・・地球は君のいるべき場所ではない・・・!!」 「そう・・・君の本質は闇、殺戮以外に生きる価値の無い存在、地球人と仲良くできるはずがない、甘い夢など・・・もう終わらせるべきだ」 「ターゲット、結城リトはすぐ側にいるのだから・・・・・」 芽亜が校舎の窓から、ヤミ達を見ていた。 (続く)
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「ふぅ…… 昨日は親父の漫画の手伝いが、ハードだったからな~」 午後の授業が終わって、身体のだるいのを感じたリトは、保健室へ行った。 「すぐ元気になる、いい薬ない?」 「滋養強壮なら、こんなのがあるわ」 少しは学習しろ、と言いたいが、まぁ、それほど疲れていたということだろう。 ****** 「おつかれさまでした!」 という元気な声とともに、妹カフェの通用口が開いて、飛び出してきたのは、 髪をツイン・テールに結び、アンダー・フレームの眼鏡をかけた、沢田未央。 制服を着ているところを見ると、学校帰りに、直でシフトに入っていたらしい。 「さ~て、と……」 夕暮れの街を見回してから、視線を落とし、手首を反らして、腕時計を見る。 「ん~、寄ってこーかな、ひさしぶりに!」 ****** 「お~、よしよし、こっちおいで~」 と言いながら、未央は黒猫を一匹抱きあげると、満面の笑顔で頬ずりをした。 あたりを見れば猫だらけ、ペルシャ猫やシャム猫や、アメリカン・ショートヘア、 銀のコラットや、白足のバーマンが、わがもの顔で歩いている、猫カフェの床。 カフェで稼いだお金を、カフェに落としていこうなんて、ずいぶん粋なようだが、 特に気取るでもない未央は、猫の足をもてあそびながら、陽気に呼びかけた。 「猫ちゃ~ん、元気ィ?」 猫は、“ああ、はいはい、元気ですよ” というような顔をして、未央を見ている。 「にゃあ、って言ってみ?」 「……にゃあ!」 という男の声がうしろから飛んできて、振り返ると、制服姿のリトが立っている。 「へ? 結城? 何で?」 その質問には答えずに、リトは未央の肩に手をかけると、にっこりと微笑んだ。 「猫好きとは、知らなかったな……」 肩の上の手に、チラと目をやってから、未央はリトを見上げて、微笑を返した。 「こーゆートコ、結城も来るんだ? ちょっと意外かも……」 「ショウ・ウィンドウ越しに、キミの美しい笑顔が見えたから」 「美しい…… って、あんた何か悪いモノでも…… キャッ!」 膝の上の猫が粗相をして、未央の制服のスカートが、ぐっしょりと濡れていた。 若い店員は平謝りで、すぐにクリーニングをいたします、とか何とか言った。 持ってきた替えのスカートは、店の制服らしく、猫っぽい尻尾がついている。 「うーん、さすがにコレは、ちょっとな~」 「いや、カワイイじゃないか、キミなら似合う」 元来、コスプレに抵抗のない未央は、首をかしげながらも、控え室へ入った。 しばらくして、出てきたのを見ると―――― 制服のブレザーに、猫の尻尾という取り合わせが、奇抜に映るはずなのに、 実際には、細い脚を引き立たせ、ツイン・テールと絶妙な調和を見せていた。 「ベスト! グレイト!! コングラッチュレィション!!!」 派手なジェスチャーで絶賛するリトを無視しながら、満更でもなさそうな未央。 店員にスカートを渡すと、2時間ほどお待ち願えますか、と呑気なことを言う。 「しょーがない、待つしかないかぁ……」 「暇つぶしなら、ボクにつきあってくれ!」 「えっ? ちょ、ちょっと! 結城!?」 リトはあわてる未央の肩をつかんで、強引に店の外まで押し出してしまった。 ****** 夜の街を、猫の尻尾を垂らした少女が、ジゴロもどきの少年に肩を抱かれて、 口論しながら歩いていく、という光景は、あまり見かけないものには違いない。 街の人々は、好奇に満ちた目を隠さなくて、未央の頬は真赤に染まっている。 「あのさ~、結城……」 「ん? 何だい、ハニー?」 「私に何か、ウラミでもあるわけ?」 「愛してくれない、キミのつれなさに……」 例によって、あさってのほうを向いたリトの答えに、未央は突然、立ち止まる。 「どうしたんだい?」 「歩き回るの、もうヤ!」 リトは意外そうな顔をして、未央の目を覗きこみ、ひじにふれ、腕をからめた。 「じゃあ、休んでいこう」 「どこで?」 「ホテルで」 「じょ、冗談でしょ!」 「おや、怖いのかい?」 「なっ…… あ、あのね~」 安い挑発だったが、未央の心は乱れて、ネンネと思われるのは恥ずかしいし、 リトなんかにバカにされるのはヤだし、里紗が知ったら、大笑いされかねない。 決然と顔をあげると、未央は頬を染めたまま、レンズ越しにキッ、とリトを見た。 「……い、いいよ、休むだけならっ!」 昔の赤線のあたりは、今はホテル街になっていて、派手な看板が目を引く。 堂々と歩いていくリトの半歩うしろには、堂々と見せようと必死の未央の姿。 赤い灯、青い灯が、夜露に濡れて、声を殺して黙々と、影を落として粛々と、 一帯をぐるりと回ってから、ホテル・ウッチーとかいう、大看板の下で止まる。 入口の前に立ち、横目で問いかけるリトに、未央は唇を噛んで、うなずいた。 二人は入っていく。 「申し訳ありませんが、制服でのご利用は……」 出てきた。 前方を向いたまま、未央は、ん~っと肩をすくめてから、一気に力を抜いた。 「あ~、もう! 恥ずかしかったっ」 「ハッハッハ、うっかりしていたね」 「笑いごとじゃないでしょーがっ!」 と未央は怒って、リトのとぼけた顔をひっかく真似をしたが、目は笑っていた。 「とにかく、フリダシに戻った~、ってことで、ね?」 空々しいほど明るい声で、未央は宣言すると、くるりと踵を返し、去ろうとした。 「いや、そうでもないさ…… あれを見てごらん」 と言って、リトの指さした先には、板塀に白い看板があって、墨痕あざやかに、 ― ご商談 3500円 ― 木造の二階家は年季の入った、とうの昔に絶滅したはずの、連れこみ旅館だ。 「いらっしゃいまし!」 格子戸を開けたとたん、いがらっぽい女声が奥から飛んで、足音が響いてくる。 パッ、と顔を出した年寄りの仲居が、愛想笑いを浮かべて、丁寧に頭を下げる。 べったりとした闇の中に、木目だけが鮮やかで、未央は腰が引けてしまったが、 無様なこともできないから、靴を脱いで、尻尾を押さえながら猫のように上がる。 仲居のうしろにひっついて、やたらときしむ廊下を行き、鉄砲階段をのぼったら、 長い渡りのつきあたり、うやうやしくふすまの開けられた先は、窓のない四畳半。 「う、わぁ……」 部屋のほとんどの部分を、白いふとんが占めていて、硬そうな枕がふたつ並び、 枕もとには、赤いびいどろの笠をかぶせた電気スタンドや、お茶の盆が置かれ、 ふとんの足のほうには、ダイヤルのない黒電話と、浴衣の入った乱れ箱がある。 仲居は、リトから部屋代を受け取ると、すごいスピードで電気ポットを持ってきて、 「ごゆるりと……」 と言って、ふすまを閉めていき、足音が遠ざかって、四畳半は静寂につつまれた。 「とりあえず…… 脱いだら?」 「え、えっ!?」 「ブレザー、しわになるだろう?」 「あっ…… あ、そうだね……」 あわててボタンを外した未央が、肩先からすべらせたのを、リトが受け取る。 衣紋掛けに吊るして、鴨居に下げると、リトはふとんの上へあぐらをかいた。 「ハニー、座ったら?」 ちょこん…… と端っこに座った未央は、所在なげに視線を宙へさまよわせ、 リトと目が合ったりすると、急いで腕時計を見たり、畳をむしったりするのが、 実に古風で、そんな振舞いが本性なのか、場所のせいなのか判然としない。 リトは緑茶の筒を取って、急須に葉を入れ、電気ポットを手元に引き寄せる。 給湯口から熱湯が噴き、しらじらと湯気が立って、部屋の温度まで上がった。 「ねえ、ハニー、ボクは……」 「その、ハニーっての、やめて」 「じゃあ…… ミオ……」 「お、お茶! 出過ぎちゃうっ!」 リトは苦笑しながら、急須をかたむけて、ふたつの湯呑にお茶を注ぎ入れた。 それから、中腰のまま一歩動いて、ふとんから降り、未央の身体に近づいて、 ぴったりと寄り添うように手を取り、湯呑を持たせてやったのだが、次の瞬間。 ねずみが部屋を走った。 「キャッ!」 ばしゃっ…… 「あつっ!」 「だいじょうぶかい?」 「う゛~」 「やたらと濡れる日だね」 乱れ箱の浴衣の下から、リトがちり紙を取ってやると、未央は懸命に拭いた。 「ねずみ、きらいなんだ?」 「わ、悪い?」 「猫のくせに、おかしいね」 そう言って、リトはごろんと横になり、スカートのうしろから伸びた尻尾の先を、 指でつまみあげて、なでたり、こすったりした挙句、かがみこんで、口づけた。 「うしろで、何してるの……」 リトは微笑んで、尻尾を離すと、スカートにくるまれた尻を、ちょいとつついた。 「浴衣にでも、着替えたら?」 リトは浴衣を手渡して、返事も待たずに、立ちあがって、電灯のひもを引いた。 闇につつまれて、澄みわたった空気の中、静かな衣擦れの音が聞こえ出した。 「いいよ……」 電気スタンドのスイッチをひねると、赤一色の光の中に、未央が立っていた。 古い地染まりの浴衣に、兵児帯を幅広に巻いて、内股に膝がしらを合わせ、 一方の手を衿に、もう一方を遊ばせて、うなじのおくれ毛の乱れているのが、 妙に色っぽく、頼りなげに見えて、膝を折って座るさまも、なかなかのものだ。 「メガネ、してなきゃいけないの?」 「えっ? べつに、そんなこと……」 「ちょっと、外した顔も見てみたいね」 リトは、赤く照っているレンズに手を伸ばし、フレームを支えて、そっと外した。 「いいね…… ミオ、カワイイよ……」 と言ったリトの声が、おそろしく優しかったので、未央は踏みとどまって考えた。 今日のリトは、どうかしている。 (どーせ、御門先生に一服盛られたとか……) ならば、何があっても、あやまちで済むのかもしれないが、しかし、だからって、 「ひっ!」 ねずみが飛びこんだ。 「とってとってとってェ~!!」 「よしきた!」 リトの手が突っこまれ、ねずみは逃げていったが、手のほうが出ようとしない。 乱れるまま、うしろから抱えこまれた形で、あやういあたりに指がふれていた。 「は、はなしてよ……」 「はなしません」 「ひ、ひっかくよ!?」 リトは笑って、一方の手で未央の手首をとらえ、引き寄せて、爪の先を噛んだ。 振り返って、よろめき、あごを反らした未央の鼻に、リトの鼻がすりつけられて、 からみあった二人の手が、首のほうへ流れていき、白いのどを指がくすぐった。 「ねえ、ミオ……」 「何……?」 「にゃあ、って言ってみ?」 「にゃ、にゃあ……」 唇が近づくと、未央はまつ毛をふるわせ、目をつむって、リトの首に腕を回した。 コチコチという腕時計の音が、耳もとで大きく響いて、リトは目をパチクリさせた。 「……あれ!? 何やってんだ、オレ!?」 効き目が切れたのだ。 一瞬のうちに状況を把握した未央は、精一杯の力で、リトの身体を突き飛ばす。 「いてっ! さ、沢田!?」 「ひどいわ、こんな……!」 「えっ!?」 「とぼける気? あんなことしといて」 「へ!? あ、あんなこと、って……」 涙にうるんだ目でリトを見たと思ったら、よよよよ…… と泣き崩れる未央。 「お酒に慣れない私を、無理に酔わせて……」 「え?」 「ヤだと言うのを、言葉巧みに連れこんで……」 「おいおい」 「獣のように押し倒し、折って畳んで裏返し……」 「な…… 違うだろ! 猫カフェでスカートが……」 袖から顔をあげて、キョトン、としてから、未央は探るようにリトを見つめた。 「記憶あるの?」 「あるよ!」 「なーんだ、つまんない!」 眼鏡をひろって、鼻に乗っけると、未央は立ちあがって、ひもを引っぱった。 パッ、と部屋が明るくなって、毒気の抜けた感じで、ふとんの上へ寝そべる。 ひじをついて、くだけた調子で無駄話をしていると、修学旅行の夜のようで、 ころころと無邪気に笑いこける未央の、きれいな前歯を、リトは眺めていた。 しばらくすると、黒電話が鳴ったので、リトは部屋を出て、下へ降りていった。 玄関先に佇んでいると、着替えた未央が追いついてきて、一緒に靴を履き、 格子戸に手を伸ばしたのが同時で、思わず二人、まじめな顔で相手を見た。 「人に会わないといいね」 「怖いこと言うなよ……」 表へ出ると、道の向かい側に、たい焼きの夜店が立っていて、屋台の前に、 ヤミがいた。 「――――結城リト……」 ゴゴゴゴゴ…… と不協和音が響いて、ヤミの顔の上半分が影に覆われた。 (ちょっと、結城! あんた、ヤミヤミに何かした?) (う、うん…… 実は、おまえに会う前に、少し……) ヤミの金色の刃が襲いかかり、二人の間で風を切って、板塀に突き刺さる。 「うわっ!!」 リトは飛びあがって一目散に逃げていき、ヤミは、トランスしながら後を追う。 遠ざかる二人を、未央は呆然と見送っていたが、やがて、ふくみ笑いをして、 「にゃあ……」 と一声つぶやくと、くるりと踵を返して、尻尾をゆらしながら、夜の街を去った。
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「古手川!? 待っ…」 ゴチ~ン!!! 勢いよく立ち上がりかけたリトの頭を遊具の天井が直撃する 「い……ってぇぇぇ!!?」 あまりの痛さにリトは涙ぐみながらその場にしゃがみ込んでしまった 頭を押さえた手の間から遠く唯の背中が走って行くのが見える 「……古手川…クソ」 痛む頭を無視して遊具から顔を出したリトに影が射す ふと上を見上げると、そこにはいつもの笑顔がリトを出迎えた 「ララ」 「遅くなってゴメンねリト! 傘、持って来たんだけどいらなくなっちゃった」 「…………別に謝ることなんてねーよ」 勢いを削がれてしまったのか ゆっくりと遊具から出てきたリトの声は心なしか元気がない その顔も俯いた前髪に隠れてよく見えないでいた そんなリトの様子に顔に?マークを浮かべるララ 髪から滴る雨粒が何度も地面を濡らしていくのもかまわず、リトは俯いた顔を上げようとはしなかった (オレ何やってんだよ…) 冷たくなった手が赤くなるまでリトは拳を握りしめる 『バカッ!!!』 そう言って飛び出していった時の唯の顔が頭から離れない 「クソ────……」 リトの頬を雨粒が流れ落ちていく その頬にやわらかくてあったかい何かが触れた 「え…」 チラリと横を見ると、不安そうな顔をしながらララがそっとハンカチを差し出していた 「ララ…」 「あ! よかった! びっくりしたんだよ? リト泣いてるのかと思っちゃったから」 「な!? そ、そんなワケねーだろ!」 手で慌てて顔を拭くリトに、ララはニコッリと笑った 「うん。じゃあもう大丈夫だね?」 「大丈夫って何が?」 ララは傘を差した腕で唯の走って行った方向をスっと指し示す 「ララ?」 「大丈夫だったらすぐに追いかけないと! 唯、待ってるよ」 「待ってるって…」 さきほどの光景が頭にチラつく。それにリトは顔をしかめた 「……あのなァ…」 「待ってるよ唯」 「……」 真っ直ぐに自分を見つめるララの目は、どこまでも透き通っていて、そして、眩しいぐら いの明るい笑顔をリトに浮かべている 「リト」 ララの声は急かすでも乱暴なものでもない そっと背中を押してくれる────そんな感じがした 「……ララ…オレ…」 「うん♪」 ニッコリほほ笑むララにリトはバツが悪そうに小さく笑った 「……はぁ~ホント、何やってんだよオレは」 自分を奮い立たせる様に、気持ちを切り替える様に、リトは両手で頬をパンっと叩くとい つもの笑顔でララに向き直った 「ありがとな! ララ。オレ、行ってくるよ」 「うん! きっと……きっと、リトならだいじょ~ぶだよ♪」 ララは満面の笑顔を見せると、手をブンブン振ってリトを見送った 「ララ様よろしいのですか?」 頭の上のペケが心配そうに声をかける 「…うん。いいの」 「ですが…」 「いいの! だって……だって…リトが決めた人だもん。リトが好きになった人だから。 それに私、リトに幸せになってほしい! だって私、リトの笑ってる顔が大好きだもん♪」 「ララ様…」 「リトと唯、うまくいくといいね」 ペケはそれ以上なにも言わず、黙ってララと共にリトの背中を見送った 「あ…晴れてきたね?」 「そのようですね」 見上げるララの顔に日の光がまぶしいぐらいに差し込む まぶしそうに細めるララの目からつーっと涙がこぼれ落ちた 「リトが幸せになれますようにって思ってるのに……思ってるはずなのに…なんだかちょっと寂しいな……」 (バカ、バカ、バカ、バカ、結城くんのバカーー!!) 心の中で大声でそう叫びながら、唯は走っていた 体力に自信があるわけじゃない、だけど今は無性に走りたかった 胸の動悸は治まらない 苦しいほどに締め付けてくる それは、走っているからではないのだと唯は気付いていた 胸のあたりがどんどん熱くなっていく 唯はもう確信していた 私は結城くんの事が好きなんだ それなのに 『ホラ、古手川ってクラスメイトだろ? それにオレ達ってと、友達だしさ……』 息を切らせながら足を止めると、唯は空を仰ぎ見た 雨雲の隙間から見える夕焼け空がこの時ばかりは憎らしく思える 「結城くん…」 空を見ながら呟いた好きな人の名が胸にずしりと重く圧し掛かる 自分の気持ちすらわからなくて、だけど、答えが知りたくて その想いを見ようともせず、触れようともせず、ただ、迷って悩んで もやもやしたまま時間だけが空しく過ぎて行って そうして、やっと辿り着いた答えなのに──── 「もう! いったい何のよ!?」 空に向かってぶんぶんと振り上げた腕が、空しく下ろされる 「────ホントにバカなんだから…」 さっきまではあんなに楽しくて、ドキドキして 誰かと一緒にいる事がこんなにもうれしいだなんて思わなかった 誰かを好きになる事がこんなにも幸せな事だなんて知らなかった 「結城くん。私…」 明日からどんな顔をしてリトと会えばいいのか、どんな声をかければいいのか 形のいい眉をひそめている時、後方からバシャバシャと水溜りを掛けてくる足音が聞こえてきた 「え…」 くるりと首だけを後ろ回した唯の目がみるみる大きくなる 「ウソ……結城…くん…」 全力で、そして必死な顔をして走ってくるリト それはいつか助けてくれた時と同じような感覚を唯に伝えた 「…あっ…!?」 唯の前まで来ると、リトは肩で息をしながら立ち止まった まだ乾き切っていない制服は、跳ねた泥水のせいで散々なものになっている 唯の口から驚きとも呆れともとれる小さな吐息がこぼれた 「……何か用なの」 それでもいつもの様に、いつも以上に冷たく接してしまう自分に、唯は心の中で「バカ」と呟いた 「あ…いや…古手川に話しがあるからさ」 「話しって? 風邪引きたくないからさっさと帰りたいんだけど?」 相変わらずの氷点下の声 ここまで必死に走って来たリトの心は早くもくじけそうになってしまう さっきまであんなに魅力的だった唯の目でさえ、今はまるで自分を突き放す様に感じる (………め…めげねーぞ…! これぐらいじゃ…) 「……ちょっと何なの? いい加減にして!」 リトの耳には呆れ半分、関わりたくない気持ち半分にも聞こえる唯の声に、体はビクンと震えた 「そ…その話しってゆーのは、ほかでもなくて……えっと…」 慌てて言葉を並び立てるリトだったが、空虚な言葉の羅列ばかりで肝心の言葉がまるで出てこない ここまで必死に走って来たものの、何を言うのか、どんな言葉をかけたらいいのか、実は まだ何も考えてはいなかったのだ (そうだよ…この後ってどーすりゃいいんだ? 何言えばいいんだオレ…) 一方、唯はというと 一人頭を抱えてあわあわと呻いているリトを前にして、複雑な心境になっていた (何なの……コレ) さっきまでのドキドキさせてくれた顔も、自分の想いに気付かせてくれた態度も微塵もない 頼りなくて、カッコわるくて、まったくはっきりしないリトの姿 (私…どうしてこんな人、好きになっちゃったの) 思わず肩に持ったカバンがズリ落ちそうになってしまう それでも腕を組みながらもずっとリトの言葉を待っていられるのは、やっぱり好きな気持ちがあるから 「……」 何も言わず唯はじっとリトを待ち続けた 「あ、あのさ、古手川」 「何?」 要約口を開いたリトを待っていたのは、さっきと変わらない氷の様な一声 「あ、いや…ホ、ホラ、体冷えてないかなっと思ってさ…」 (……何よそれは!? ずっと待っていた言葉がソレなわけ?) 何だか裏切られたかの様な期待はずれな展開に唯の頬が引きつる 「…別に。それに私の事なんてあなたには関係ないじゃない」 「そ…そりゃそーかもしれねーけど……」 (な、何よ! ちょっとは否定とかしてくれてもいいじゃない) また唯の頬は引きつってしまう 「……それで、話しってそれだけなの?」 「え? あ、ああ…その…」 「ん?」 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「…………はぁ~…私、帰る」 「え?」 くるりと自分に背を向けて歩き出す唯の腕をリトは反射的に掴んだ 「ちょ…ちょっと! 何よ? 離しなさい」 「ま、まだ話し終わってないんだって」 握りしめてくる腕の力に合わせる様に、唯の感情も高まっていく 「じゃあさっさと言いなさいよ! だいたい何なの? 人をずっと待たせて、やっとしゃ べったかと思えば『体冷えてない?』とか。いい加減にしてよね!!」 「古手川の体のこと心配しちゃダメなのかよ? おんなじクラスメイトだし友達だろ?」 間近で声を大きくさせるリトに唯はついにカチンときてしまった 「そんなの…そんなの…」 「え? 古手川?」 唯は目を鋭くさせると、キッとリトを睨みつけた それは今まで見たことがない唯の怒りの表情 そして、悲しい顔だった 「そんな事で優しくなんかしないでよ!」 「え?」 溢れる感情は声となって止まらない 「クラスメイトだからとか…友達だからとか……あなたがそんなだから私…私…」 悲しみやガッカリ感よりも、どうしていいのかわからない気持ちと苛立ちとで、唯の中はムチャクチャになっていた 初めて誰かを好きになって、恋をして、そして、その恋に期待して ここ数日間が頭の中でぐるぐると回り始め、唯の目に薄っすらと涙が滲む (古手…川) 「もう私に構わないで! 放っておいてよ! これ以上、私を期待させないでよ!!」 それはきっととても我ままで、身勝手な言い草なのだろう それでもリトは何も言えず、ただ茫然とした表情で唯の顔を見つめていた 「も…もういいでしょ! 離してっ」 腕を振りほどこうとする唯に、リトは思わず掴んだその手を離しそうになってしまった が、咄嗟に手に力を込めると唯を自分に向けさせる 「ちょ…結城くん!?」 唯を真正面から見つめながらリトは掴んでいない反対の手をギュッと握りしめた 「ごめんな古手川。オレお前の気持ちとかそーゆーの全然考えてなくて、自分のことばっかお前に押し付けてさ」 「そ…そんなこと」 弱々しい声のまま唯は俯いてしまう 「さっきお前が怒った後も、今もオレ、色々考えたんだけど、やっぱよくわかんなくてさ …。だけどオレのこんな態度がお前を傷つけたのは確かだし、ホントにゴメン」 「わ、私は…」 それ以上言葉が出てこなかった。ただ、結城くんも私と同じなんだなと感じた お互い相手を想いながら、それでもちゃんとした答えが出てこない、出せないでいる このままじゃダメだと思った。このままでいいはずがないと思った 唯はありったけの勇気をだして一歩前に踏み出してみる 「「あの…」」 「え…」 「あ…」 重なってしまったタイミングにまた微妙な雰囲気になる 「なんだよ?」 「あなたこそ…」 お互いチラチラと顔を見ては、目が合うと急いでそらす事の繰り返し しばらくして、リトが話を切り出した 「これじゃダメだ…」 「え?」 「こんなんじゃダメなんだ! はっきりしなきゃ、ちゃんと言わなきゃ、ちゃんと伝えないとダメなんだ!!」 ふと見上げた唯を待っていたのはいつものリトの顔だった あどけない少年の様な顔の中に、今は、真剣なものがあって 唯は吸い込まれる様にじっとリトの顔を見つめた 「オレ…オレ、好きだ! 古手川のことが」 「……」 唯はリトが何を言ったのか一瞬わからなかった 「…え…ぁ…い、今…なんて…」 「だから! 好きだって言ったんだ。お前のこと…」 「ウ…ソ……」 「ウソなんかでこんな事いうワケねーだろ!!」 リトは真っ赤になった顔でそれでも全力で唯の言葉を否定する 「で、でも私…」 唯はまだ状況が理解できないのか呆然とした目でリトを見ている 好き 結城くんが私のことを────? 次第にゆっくりとその言葉の意味が唯の胸の中で染みわたっていく 「…あ…ぁ…」 一段と大きくなった黒い瞳は次第に左右にゆらゆらと泳ぎ出し、頬は夕日よりも赤く染まっていく 「古手川の返事……聞かせてほしい」 ビクンと体が震えた 「私の……返事…」 「ああ。聞かせてほしいんだ」 結城くんへの気持ち そんな事はもうわかっている。どれだけ想って、どれだけその想いを積み重ねてきたか 他の全てがダメでも結城くんへの想いだけは誰にも負けない、負けない自信があるから 唯は両手を握りしめると、目一杯の想いを乗せて想いを口に出そうとした が、できなかった (あれ? どうして……だって…) リトへの想い それはいっぱいいっぱいありすぎて、いっぱいいっぱい伝えたい事が多すぎて 言葉にはできないぐらいありすぎて 唯は声に出せなかった (どうして……) やっと辿り着いた気持ちなのに、やっとわかった答えなのに 初めての恋が唯からいつもの自分を奪っていく (どうしたら……どうしたら…) 顔を見なくたってわかる。リトは待っている 不安そうな顔をしながら、逃げ出したくなる衝動をぐっと我慢しながら待っていてくれる 唯は奥歯を噛み締めた (また…また私は……いつもいつも結城くんに……) 甘えて、文句を言って、助けてもらって、怒って、守ってもらって、冷たくして くやしかった こんな時ですら自分の気持ちを素直に言葉にできない事が そう思った時、唯の頬に涙が伝っていった 「古手川!?」 目を丸くするリトの前で唯は生まれて初めて、誰かの前で泣いた 自然と涙が溢れ出して止まらない 「…ぅ…うぅ…」 「あ、あのさ…その…」 リトの困った様子が胸に響く 「と、とりあえずさホラ、これで涙拭けよな」 「へ…」 そう言って差し出してくれたハンカチは、さっき公園で使ったものと同じものだった 「その……お、落ち着いてからっつーかその……古手川が大丈夫になるまでオレ待ってる から! だから気にすんな! オレなら平気だから、な?」 ニカっと笑いながらそう言ってくれるものの、完全に目は泳いでるし、冷や汗だって出ている でも、その気持ちがうれしかった いつもくれるその笑顔が、いつも感じるそのやさしさが 「結城……くん…」 その呼び声を後ろに残して、唯はリトの胸の中に飛び込んだ 「こ、古手川!?」 びっくりしているリトに構わず、唯は制服のシャツを握りしめたまま胸に顔をうずめた 甘えてるってわかってる わかっているけど、今はこうしていたかった リトの優しさを温かいぬくもりをもっと感じたかった しばらく宙を彷徨っていたリトの両腕はゆっくりと唯の背中に回される 「……!?」 「大丈夫だって。待ってるって言ったろ? お前が大丈夫になるまでオレはずっとこうしててやるからさ」 「…うぅ…ひっく…うん…うん」 涙で濡れながら唯は何度もリトの腕の中で頷く 雨はすっかり止み、雨上がりの匂いに混じって夏の匂いがあたりにしだした頃 唯は少し体を離すと目元をゴシゴシとハンカチで拭いていく 「大丈夫か?」 「……うん」 小さくコクンと頷く唯にリトはホッと溜め息を吐いた 「にしてもびっくりした。古手川がこんなに泣くなんて」 「わ、わるかったわね」 恥ずかしそうにぽそぽそ話す唯にリトは笑みを深くした 「……それでさ…返事できる? ホントに大丈夫か?」 唯は何も言わないままリトの制服をキュッと握りしめている 「古手川?」 「……いい加減気付きなさいよね? す…好きでもない人の前でこんな恥ずかしいマネ、私しないわ」 「…………へ? そ、それって…」 たっぷり数秒使って導き出した答えにリトの顔がぱあっと輝く 「ちょっと鈍すぎよ! 結城くん」 ふいっと顔を背けるも唯はリトから離れようとはしない そればかりか制服を掴む手の力は強くなっているほどだ 「ありがとな!! すげーうれしい」 「…そ、そう?」 なんて素っ気なく応えるも、唯の声がうれしさと恥ずかしさで小さく震えている事にリトは気付いただろうか リトは自分の気持ちを表す様に唯の細い体をもう一度抱きしめた 「キャ!? ちょっと結城くん?」 「古手川!!!」 本当にうれしそうに幸せいっぱいに顔をほころばせるリト (結城くん……そ、そんなにうれしいんだ…) 間近に感じるリトの匂いだけでどうにかなっちゃいそうなのに、そんなうれしそうな顔を されたら、このままみんなとけてなくなってしまいそうになってしまう 「結城くん…」 しばらくその幸せを胸いっぱい、体いっぱいに感じているとふいに気付いてしまう ここは外で、そして自分達はまだ…… 「ダ、ダメよ!! こんな事はっ」 「へ?」 唯はリトから慌てて体を離した 「古手川? どーしたんだ」 「どうしたもこうしたも…」 唯は真っ赤になりながら、息をハァハァと乱している 「なんだよ? オレなんかおかしな事…」 「そ、そうよ! またあなたって人はっ!!」 「え?」 「わ、私たちまだ高校生なのよ? だ、抱き合うとかこんなハレンチな事…」 リトは頭を掻きながら不思議そうに眉を寄せた 「でも、オレたち付き合うんじゃ…」 「だ、誰もまだ付き合うだなんて……そ、それはまたちゃんとその…」 どんどん声が小さくなる唯にリトは首を傾げる 「う~ん……あのさ、好き同士ならフツーは…」 「普通じゃないに決まってるでしょ! 私たちはまだ学生なのよ! もっと他にやるべき事があるでしょ!?」 「そりゃまあ…」 声を濁すリトに何を思ったのか唯は声を鋭くさせる 「……言っとくけど結城くん、付き合ったってハレンチな事は絶対しないからね!! か、 彼氏だからって甘くなんかならないんだから! 手だって繋ぐとかしないからね! ちゃんとわかってるの?」 「ええーーっ!?」 心底びっくりしたのか、リトの目はまん丸だ 「当たり前でしょ!! そんな事っ」 胸のあたりで腕を組むいつもの唯に、リトは驚きつつも、内心、苦笑をしていた (ホント、マジメっつーか…) だけどそんな唯が好きなのは事実 リトはもう一度想いを込めて、唯に気持ちを告げた 「それでもいいよ。古手川が一緒にいる……それだけでオレはすげーうれしからさ」 まだまだ幼い少年の様なリトの笑顔 だけどその顔が今は少し誇らしく思える 「…………そんな恥ずかしい事言わないでよね……バカ」 少し口を尖らせながらそう呟く唯だったが、リトを見つめる目はどこまでも優しくて、そ して、リトに負けない様に幸せそうに笑っていた 雨上がりの帰り道 どちらもまだまだ互いへの気持ちを全部は言えていない 恥ずかしさとうれしさで、声に詰まったり、言葉にできなかったり だけど、それでもいいと思う お互いの違いで、時にはケンカして、また気持ちを知ったり、確かめ合ったり 新しい顔や仕草を見つけたりして 少しずつ進んで、少しずつ大きくなって 焦らずに進んでいけばいい どんな事があってもきっと結城くんとなら、二人なら大丈夫だから 二人の物語がこれから始まる
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「ご…ごめんね、大…丈夫のはずだったんだけど…もう平気だったんだけど、私やっぱり……」 言葉がそれ以上続かない。かわりに溢れ出すララの純粋な気持ちにリトはただそばに いてやることしかできないでいた どれぐらいの時間が経っただろう、ようやく落ち着きを取り戻したララはリトの前で 涙を拭いていた 「もう平気なのか?」 「うん!ヘへへ、一生分泣いちゃったかも」 照れくさそうに笑うララの姿にリトは顔をほころばせる 「そっか……じゃあもう大丈夫だな」 「うん、ありがとうリト!」 リトのやさしさとぬくもりに改めて触れたララは少し幸せそうに微笑む そしてそれと同じだけ寂しそうな顔を浮かべた リトの気持ちを知ってしまってはもうここにはいられないと思った もともと家出中であったため、いつかは出て行く日が来ることに覚悟はしていたのだが いざそれが来ると中々素直に体が動いてくれない ここを出て行くことがこんなにもつらいなんて考えてもいなかったから 体が足が動かない リトから離れることがこんなにも辛く悲しいだなんて思ってもいなかったから それでもこれ以上我がままを言えない そしてそれ以上にリトの顔を見るのが辛かった 心が挫けそうになってしまうから 「ララ?」 そんなララにリトは心配そうに声をかける 「エヘヘ、平気!私は大丈夫だよ!」 それは何気ないいつものララの笑顔だった。自分の横を通り過ぎていくララにリトは 思わず腕を掴む 「リト?」 「おまえ……」 今日リトはあらためてララの自分への気持ちの強さを知った そしてこの思いに応えるために、この気持ちを伝えるために リトはギュッと握り拳をつくるとララの顔を見つめる 「……どこにも行くな!ずっとオレのそばにいてほしいんだおまえに」 「え?…え、でもリトは……」 「オレ…わかったんだ。ずっとオレのそばにいてくれたのは誰だったか…… 楽しい時も寂しい時もいつも隣にいてくれたのはおまえだろ? それにおまえがいなくなると寂しいっていうか……その…」 言いよどむリトをララはじっと見つめる 「と、とにかくオレおまえとこのままさよならなんてしたくねーんだよ!」 ララは顔を俯かせるとぼそぼそと小さな声でリトに聞く 「い…いいの?だってリト他に好きな……」 「バカなに言ってんだよ?おまえも言ってたじゃねーか。エッチは好きな人同士が するもんなんだろ?」 「好きな人…同士が……あっ!それじゃあリト!?」 ドクンと胸が高鳴るのを感じた それは初めてリトを好きになった時と似ていると思った そしてその時以上の気持ちが胸から溢れ出していた 顔を赤くしながらそっぽを向いているリトへララは喜びのあまり抱きつく 「こ、コラ!おまえ離れ……」 「……ありがとうリト。私リトと出会えてリトを好きになってホントによかった! ホントにありがとうリト」 胸に顔をうずめるようにしているララからあったかいぬくもりが伝わってくる 「……ったく」 バツが悪そうに頭を掻いているリトにララは涙で濡れた瞳で見つめる 「リト…大好き」 「ああ、オレもララが好きだよ」 二人は顔を寄せ合うと再びキスをした 互いの気持ちをのせて