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ある休日の昼下がり 秋ともなるとそろそろ肌寒くなってくる季節だが、この日は朝から暖かく、午後になると心地良い陽気が眠気を誘う 結城家にも、ソファーにもたれ掛かりすやすやと眠る少女の姿があった 「ん……りとー……」 額の上の辺りがくるりと跳ねているのが特徴的な、桃色の長い髪 綺麗に通った鼻筋に寝息が漏れる形の良い唇と、整った顔立ち そして、呼吸に合わせてパタパタと動く尻尾は、まさにララ・サタリン・デビルーク本人のものだ 美柑と一緒に作った昼ごはんを食べ、気持ち良さそうに眠るララが見ているのは、もちろん大好きなリトの夢 数分前、手紙を出しに行くと出掛けたリトはまだ帰ってこない 一緒に行くと言ったララだったが、すぐそこだからと置いていかれてしまった 美柑は友達と外出中 テレビもこの時間帯は特に目を引くものはやっていない 洗濯物も全て乾いてしまっているし、部屋の掃除も昨日したばかりだ つまり、やることがない やっぱりリトについて行けば良かったと思うものの、過ぎてしまったことはどうしようもない そこで仕方なくララが取った行動はというと…… 「……ぅぅん……♪」 そう、お昼寝だ もともと昨夜は遅くまでリトと頑張っていて眠かったのだから、ちょうどいい 寝ると決めたらものの数秒で熟睡……もとい爆睡できてしまうのがララのすごい所だ 隣で犬が吠えようが家の風呂が爆発しようが近くに宇宙船が墜落しようが、大好きなリトの声を聞くまで起きることはない 規則正しい寝息だけが、静かな部屋の中にある ララにとってお昼寝は、リトと一緒にいるのと並ぶほどの至福の時だった 「ただいまー」 用事を済ませ帰宅したリトが、玄関のドアを開ける 少々の期待を込めて大きめの声で帰宅を告げたリトだったが、妙にひっそりとしている 「おかえりリトーっ!」 そんなララの迎えがあると思っていたリトは、返事すら無い静まり返った家の様子に首を傾げる 「……? 出掛けたのかな」 でも鍵は開いてたし…… 怪訝そうに家の中へと入るリト リビングへ進むと、ソファーに座るララの後ろ姿を見つける ふっと、リトの顔に安堵の色が戻る なんだ、いるなら返事くらい…… そう声をかけようとしたところで、リトは小さな寝息に気付く 「……寝てるのか? ララ」 今度は後ろからではなく、正面に回りララの姿を見る 「すー……」 案の定ララは、天使のような寝顔を浮かべ気持ち良さそうに眠っていた 「……かわいいよな」 毎朝見慣れているのにも関わらず、見惚れてしまう ずっと見ていたい寝顔だが、そういうわけにもいかないのですぐに思考を戻す 「にしても寝てるのか……これから一緒に買い物でも行こうと……いや、待てよ」 残念に思う反面、何か悪戯心のようなものが芽生えた様子のリトが、楽しそうにニヤリと笑みを浮かべる ソファーにもたれ掛かるララの隣に腰を下ろすと、そっと桃色の髪に触れる 恐ろしい程にさらさらと指通りの良いララの髪に、すぐにリトは虜になる その身を優しく引き寄せ、ララの頭に顔を埋める 「……いい匂い……」 いつも自分の隣にある、あたたかくやわらかな香り リトの大好きな匂いだ それをいつもよりさらに近くで感じると、リトの中に更なる欲求が生まれる 「抱きしめてもいいかな……」 もちろんそんなことをすればララは起きてしまうだろう ぐっすり眠っているララを起こすのはさすがに可哀相かもしれない 必死で欲求を抑えながら、リトはララの頬に手を触れる 「ララ……」 「むー」 透き通るようなララのきめ細かい肌は、信じられないほどやわらかく触り心地が良い 閉じられた瞼の端から生える睫毛はスラッと長く、自らが女であることを強調している ツヤのある魅力的な唇からこぼれる寝息は蜜よりも甘い 「やば……」 そんなララの姿に、リトを繋ぎ止めていたものはいとも簡単に崩れ去ってしまう 堪らずララの頬に口付けをする 「ん……」 不意に零れるララの吐息に、リトは自分を抑えるのも忘れララの唇に自分の唇を重ねる やわらかいララの唇の感触がリトの思考を麻痺させる 「ん……ちゅ……」 「んん……り、とぉ……?」 唇を離すと、それに続くようにララが目を開ける 寝ぼけたままのララの瞳はリトの姿を捉えた途端にパッと輝き、腕は彼の首に回される 「リト♪」 「ごめんな、起こしちゃったな」 「ううん、おかえりなさいリトっ」 笑顔のままララは目を閉じて顔を突き出し「もう一回」とねだってくる それに応えるように、リトは軽くララの唇に重なる ただ触れ合うだけの浅いキスだが、それだけで十分幸せをかみ締め微笑みあう 「ララ、眠いのか?」 「うーん……ふぁ、少し……」 欠伸混じりでララがそう答えると、リトはふっと笑ってララの身体を引き寄せる 「……じゃあ、一緒に寝る?」 「いいの? うんっ♪」 リトと一緒にお昼寝…… 考えただけでもララは嬉しくてたまらない そんな様子がリトにも伝わったようで、意味もなく嬉しくなる だが、リトにもララに聞いてほしい頼みがあった 「あのさララ……起きたらさ、昨日の続きしよ?」 「……!」 今さら言葉の意味がわからないわけではない、嫌なわけでもない だがやはり恥ずかしさからか、かぁっと顔が赤くなってしまう 昨晩のことを思い出してしまったのだ 昨日したばかりなのに、それでもまだ足りないのだろうか? リトが、自分を求めている…… 求めてくれてる…… 「イヤか……?」 「……ううん、そんなことないよ、ただ……」 「ただ?」 「嬉しくて……リトが私のこと、欲しいって思ってくれてるんだなって……♪」 ララが少し艶を含んだ笑みを見せる 狙っているわけではなく、自然に見せているのだから余計にリトは反応してしまう 「あ、あんまやらしい言い方するなよ……」 「えへへ……やらしいのはリトだもん♪ 当たってるよ……?」 「こここれは、仕方ないだろ! こんな風にくっついてれば、男なら誰だって……! 誰だって……」 そこで黙り込んでしまうリト 確かに健全な男からしてみれば、ララ完璧なスタイルや愛らしい表情は堪らないものがある でも、それだけ……? 「……違う、それだけじゃなくて……ララが、好きだから……興奮する」 やっと絞り出した言葉 いくら距離が近くなっても、面と向かって好きだというのはやはり気恥ずかしいものがある それでも、顔を赤くし目を逸らしながらでも、リトのその言葉がララにとっては何より大切だった 「……嬉しい、リト! 私も大好きだよ♪」 「ララ」 「……だ・け・どー♪」 「えっ」 突然人差し指をリトの口に当て、ウインクしてみせるララ リトのドキドキはさらに増してゆく 「まだだーめ……ちゃんとお昼寝してからだよ?」 「あ、ああ……そうだな……」 ここのところのララは、大人っぽい表情を見せることが多い というより、リトとより親密になっていくにつれて、ララの中の女の部分が徐々に目覚めて始めているように思えた いつの間にか主導権を握られ少々納得のいかないリトだが、今はそう答えることしかできなかった 大きめのソファーに、二人して横になる 少し狭い感じもするが、その分ベッドよりも密着度が高い 「痛くない?」 「うん、ありがと」 リトがララの背中から腕を腰に回し、後ろから抱き締める形になる 狭いから足は絡み合った状態だ スカートを履いているララの足は何も纏っていない ズボン越しとはいえ、やわらかいララの足の感触が伝わってくるのを感じ、鼓動が速くなる 「リト……なんかすっごくドキドキしてるよ……?」 「わ、わかってるけど、こればっかりはどうしようもないし……ララは平気なのか?」 「ううん、私もドキドキするよ……心臓が飛びはねそう……でもね」 回されたリトの手に、ララの小さな手が重ねられる 冷たく気持ちいい手だ 「でも、それ以上に安心するの。リトに抱き締められるとね、リトの温かさを感じて、胸の奥が幸せな気持ちになるの」 「ララ……」 「きっと、リトがあったかい心をたくさん私にくれるからだね♪」 ララの言葉が胸に染み渡る 自分が抱き締めるだけで安心すると言ってくれる、幸せだと言ってくれる これ以上に嬉しいことなどあるだろうか 真っ昼間、ただソファーで一緒に寝ているだけ それだけのことなのに、ララからは溢れるほどに愛が伝わってくる 言葉だけじゃない、ララの見せる表情が、声が、自分への想いに満ちている それを感じた時、リトの奥底から込み上げるものが溢れそうになる 「っ……」 「リト……? どうしたの?」 「っ、なんでもない……ララ、やっぱり正面向いて寝よ!」 「え? きゃっ」 そう言うとリトはララを抱え上げ、自分の方を向かせて寝かせる 向かい合い抱き締め合う格好になる 「り、リト?」 「このほうがいい」 「で、でも、今ちょっと恥ずかしいから……こんなにくっついたら寝られないかも……!」 「いいの。このほうが、もっと……ララを感じるから……」 「え、な、なに?」 「なんでもない。寝るぞっ!」 オレも……もっとララを喜ばせることが言えるようになりたいな…… 優しく強く抱き締めながら思う たくさんの愛を表現してくれるララに、もっと応えられるようになりたいと 今はまだ照れが抜けきらなくて言葉に出来なくても、いつか自分の気持ちを全て余すことなくララに伝えられるようになりたい……そう思っていた 二人の鼓動は激しさを増しながらも、徐々に穏やかなものへと変わっていく 数分後、結城家のリビングには二つの寝息だけが聞こえていた 幸せそうなそれは、まるで呼応するかのように交互に立てられる 二人の寝顔が最高の笑顔だったのは言うまでもない 「まったく…イチャつくのはせめて自分の部屋だけにしてよね」 夕方帰宅した美柑は、その光景にため息を漏らす 兄が最高級の美少女と寄り添い眠る姿など、数年前に予想できただろうか 正確には寄り添うどころか、ララがリトの腕にすっぽりと収まり抱き合っているのだが 「ニヤけちゃって……ホントにララさんが好きなんだね。ララさんも……なんかうらやましーなぁ」 こんなリトの表情を見たことがあっただろうか 安心しきったように、だらしなく口元が緩んでいる 自分といる時は……兄として自分に心配をかけまいとするリトが、決して見せたことのない表情だった 「ふぅ……」 もう一度大きなため息をついたあと、幸せそうに眠る兄とその恋人――ララの寝顔を交互に眺め、ふっと笑って向かいのソファーに腰掛ける 「まあ起こすのも可哀相だし……勝手に起きるまでテレビでも見てよっかな♪ 起きた時の反応が楽しみだしね」 こんな姿を妹にずっと見られていたと知ったら、リトは一体どんな表情を見せるのか 悪戯好きな美柑の好奇心に火が点く 「……そーだ! 今のうちに写メ撮っちゃお!」 携帯携帯~♪とその場を離れる美柑 そんな妹の陰謀を知る由も無く、リトとララは幸せそうに眠り続ける そんな、ある日の出来事
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王子様とお姫様は運命的な出会いをして、手をつなぐのも恥ずかしがって、キスなんて夢のまた夢のまた夢です。 そんな二人だけれどどんな障害も乗り越えて最後には末永く幸せに暮らしました。 あたしたち姉妹は王の娘だからお姫様か。 いつかあたしたち姉妹の前にも王子様が現れるのかな。 「…ふう…」 ナナは自室のベッドの上で大きなため息をついた。 昔憧れた王子様とお姫様の物語なんて現実じゃどこにもありはしない。 その証拠に姉上と結婚しようって連中は権力目当ての碌でもないのがほとんどだった。 そういう連中にとって第二王女のあたしや第三王女のモモじゃ第一王女の姉上に比べて旨味がないらしく、あたしたちはそれほど結婚に関するゴタゴタに巻き込まれることはなかった。 姉上には悪いけど、そういう意味ではあたしとモモは随分と楽を出来たと思う。 王族の結婚の現実…。 姉上が頻繁にお見合いをするようになったのは大体2年くらい前からだっただろうか。 あの自由奔放な姉上がよく1年近く我慢したものだと思う。 結局姉上は王宮から逃げだしてしまったけれど。 ベッドで寝がえりを打ち、そのまま静かに目を閉じる。 地球…、この宇宙の片隅にある小さな星に姉上の王子様はいた。 しかも姉上だけじゃ飽き足らず他の女にまで手を出して…。 「ナナー」 自室のドアの前からララの呼ぶ声がした。 物思いにふけっていたナナは現実に引き戻された。 「開いてるよ、姉上」 ナナがそう言うとララが部屋に入って来た。 「ねえナナ、一緒にゲームしない?」 ララがDSを出しながらナナに笑いかけた。 いつもの姉の濁りのない笑顔…、今朝リトに抱かれていた時の姉、燃え上がる劣情を露わにし、快楽に溺れていたあの姿、あのときの表情が幻であったと思ってしまいそうになる。 リトもリトだけど姉上も姉上だ。 あんな男を好きになって、その挙句ケダモノのように…。 ナナの中に芽生える姉を嫌悪する気持ち。 それ故にナナの口からはララの誘いを断る言葉が出てきてしまう。 「ごめん、姉上…。ちょっと今はそんな気分じゃなくて…」 「そっか…。残念だなあ。じゃあまた今度ね」 そう言ってララはナナの部屋を出て行った。 「ねえリト~。ゲームしよ♪」 ララの次のターゲットはリトだった。 その誘いに対するリトの返答はあまりにもそっけないものだった。 「宿題やんなきゃいけないからパス」 リトの返事に対してララは不満の声を漏らす。 「え~」 「『え~』じゃないだろ?おまえだって宿題進めとかないと、あとできつくなるぞ?」 実のところリトは最近女性と過ごす時間が増えたため、宿題を計画的にやっておかなければ時間が足りなくなるのは明白だった。 ララはまだ少し口を尖らせていたが、しばらくしてこう言った。 「…じゃあリトと一緒やる」 こうしてリトとララはリトの部屋で宿題をすることになった。 ララの自室からテーブルを持って来て、二人は隣合わせに座っている。 リトは隣に座る少女に目をやった。 豊満な胸のふくらみが作り出す谷間がキャミソールからのぞき、ショートパンツからは白い太もも惜しげもなくさらけ出されており、彼女の魅力を存分に見せつけてくる。 昨夜から明け方近くまでこの少女は裸で自分に抱かれ、共に甘美な時間を過ごした仲だというのに、今更胸の谷間や太ももを見るだけで彼の下半身に血液が集中してくる。 「あ、リト。ここの問題計算ミスしてるよ」 「え?ああ…」 ララの指摘に、リトは今の自分の状態を悟られぬよう少し慌てて返事をした。 「あ、こっちも」 「え?どこ?」 「ほら、この問題。ここの繰り上がり忘れてない?」 ララはそう言いながらリトの方に身を乗り出し、リトの体に自分の体を寄せてくる。 ポニーテールにまとめられた髪からするシャンプーの香りが鼻をくすぐり、リトの欲望をかきたてる。 しかしここで行為に及んでしまうと、宿題どころではなくなってしまう。 昨夜ララはベッドの中で自分にべったりとくっついて離れたがらなかった。 今セックスしたらまた同じことになるだろう。 リトは自分が以前よりもララの甘えに弱くなっていることを自覚していた。 自分に甘えてくる彼女がかわいくてついつい相手をしてしまう。 だから昨夜本当はもっと早く眠るつもりだったのに明け方近くまで彼女と行為に及んだのである。 「ふう…暑いね、リト」 今日もかなりの炎天下であり、クーラーはあまり役に立っていない。 「私、キッチンから麦茶取って来るね。あ、リトの分も取ってくるから」 そう言って彼女は自分から体を離し、キッチンに向かうべく部屋を出ていった。 「…ふう…」 一人になったリトは緊張がほぐれ、大きくため息をついた。 肉体関係を持った相手に体を寄せられて意識しないわけがない。 だがララの接し方は今まで通りだった。 ララはそういうことはあまり気にしないタイプなのだろうか。 リトがそんなことを考えていると、リトのケータイが着信を告げた。 「はい…。あ、唯?」 電話の向こうの声の主は古手川唯だった。 「おはよう、結城くん。ちゃんと宿題やってる?」 「ああ、今やってるとこ。暑さのせいではかどらないけどな」 はかどらない本当の理由は別の所にあったが、あえてそれは伏せておく。 しかしそれが失言であったことをリトは後から気づくことになる。 「そんなんじゃだめじゃない。私が見てあげようか?」 唯の突然の申し出だった。 「え?もしかしてうちに来るの?」 「そうよ。あ、私の宿題を丸写しさせるつもりはないわよ?」 「いや、そんなつもりはないけど、炎天下の中来てもらっちゃ申し訳ないっていうか…」 「べ…別にいいでしょっ…。その…なんていうか…」 そのとき電話の向こうから別の遊の声がした。 「お、なんだ唯?リトに会いたくなってラブコールか?」 「お兄ちゃんは黙ってて!!!」 遊の言葉のあと間髪入れずに唯の怒声が飛んだ。 ああ、唯は自分に会いたくて電話してきたんだ…。 やっぱりまだどこか素直じゃない唯。 でもそんなところも可愛らしいと思ってしまう。 「わかった。じゃあ頼むよ」 リトの言葉に唯はまだ荒い息を整えながらも嬉しそうに答えた。 「じゃあ今から行くわね」 「お、いきなり上機嫌になった」 「うるさい!!!!!」 電話が切れる瞬間に他愛のない兄妹のやり取りが聞こえた。 一方、キッチンに麦茶を取りに行ったララは何やらぶつぶつと独り言を言っていた。 「ちぇっ。リトったら私がああやってくっついてもあんな感じなんだ…。ちょっとくらい抱き寄せてキスとかしてくれるかなーって思ったのにな…」 二人分のコップに麦茶が注がれ、口を尖らせた自分自身がその液面に映る。 昨夜の激しい交わりの熱がまだララの体の中で尾を引いていた。 リトから抱きしめてくれたこと、リトからキスしてくれたこと、そして二人で朝を迎え、リトが笑顔でおはようと言ってくれたこと。 それを思うと体に刻みこまれた快楽の記憶がよみがえり、再び彼とひとつになりたいという欲望が体を焦がしていく。 リトの部屋に戻ると、リトはケータイを閉じているところだった。 誰かから電話がかかって来たのだろうか。 ララはふとリトに尋ねてみる。 「リト、誰かから電話でもかかってきてたの?」 「うん、唯だよ。あいつ、俺が宿題をあまり進めてないもんだからうちに来てしごいてやるってさ」 リトの言葉は文字だけ見ればやや乱暴だったが、口調は穏やかでどこか嬉しそうだった。 「唯が来るんだ…」 ララはそう言いながら持ってきた麦茶を置き、リトにも勧めた。 「お、サンキュー、ララ」 リトは冷たい麦茶を飲みほし、大きく息をつく。 ララも同じように麦茶を飲みほしたものの、そんなことでは体の熱は引かなかった。 「さ、それじゃ続きといこうぜ」 リトはララの気持ちに気づくことなく数学の問題の続きに取り掛かった。 そして、しばらくしてから玄関のチャイムが鳴った。 「こんにちは」 「まう?」 セリーヌが声に反応し、玄関に向かって飛び出していく。 「まう!!」 そして玄関に立っている客人に大喜びで飛びついた。 「きゃっ。もう…。久しぶりね、セリーヌちゃん」 唯はセリーヌを抱え上げ、その髪を優しく撫でた。 「あ、古手川さん。いらっしゃい」 モモが唯を迎えた。 「ひょっとしてリトさんにご用事ですか?」 唯はセリーヌをあやしながら答える。 「ええ。宿題がはかどってないみたいだから、ちょっとばかりお手伝いをしようかなと思って…」 「そうですか。きっとリトさんも喜ぶと思いますよ」 モモはそう言いながら唯の腕の中にいるセリーヌを拾い上げた。 「古手川さんはリトさんと大事な用事があるので、邪魔しちゃだめですよ」 セリーヌはそう言われて少し寂しそうな表情になる。 それを見た唯は少し申し訳ないなと思いながらセリーヌに言った。 「ごめんなさいね。宿題を終わらせたら一緒に遊べるから、少しだけいい子にして待っててね?」 唯にそう言われ、セリーヌの表情が明るくなる。 「まう!」 セリーヌが元気を取り戻したのを見て、唯も顔がほころんだ。 「それじゃ、お邪魔します」 「お、唯。もう来たんだ?」 「いらっしゃい、唯」 リトは嬉しそうに唯を迎え入れた。 リトの部屋ではリトとララの二人が宿題を一緒にしているところだった。 「まあね。ちょっと早く着きすぎたかしら?」 「いや、そんなことねーよ。わざわざありがとな」 「で、どこまで進んでるの?」 「とりあえず10ページまでは終わってるよ。11ページのこの問題がちょっとわかりづらくてさ…」 「ああ、そこね。そこはちょっと難しいけど…」 こうして三人の勉強会が始まり、三人はかなりの量の問題を協力しながら解いていった。 「ふー…。今日はこんなところでいいかあ…」 リトは大きく背伸びをしながら床に寝ころんだ。 「そうね。だいぶ進んだものね」 唯もつられて背伸びをした。 張りの強い豊かな胸が強調され、リトはついその様子に見入ってしまう。 「ん?」 リトの視線に気づいた唯は赤くなってリトを叱る。 「こらっ、どこ見てるのよ」 「あ、ごめん。つい…」 その様子を見て、ララがリトに言った。 「リトも勉強ばっかだとストレス溜まるよね?今日の分はもう終わったんだし、少し遊ぼうよ」 「そうだな…っておいララ…」 ララはリトの腕にしがみつき、体をすり寄せて甘えてくる。 「離れろって…」 リトはそう言いながら唯の方をチラッと見る。 「う…」 唯はしかめっ面でじっとリトを見ている。 リトはその視線に耐えかね、唯の方に手を伸ばした。 「ちょっと、結城君…」 唯の腕をぐいっと引っ張り、自分の方に引き倒す。 リトの方に倒れ込んだ唯は顔を真っ赤にして抗議する。 「もう…ハレンチなんだから…」 そう言いながらも先ほどより唯の機嫌は良くなっており、彼女も今日彼とのセックスを期待していたことが見て取れた。 「む~、リトぉ…私の方も忘れちゃやだよう…」 ララがリトのズボンのジッパーを開け、力強く反り返ったペニスを取り出した。 唯も以前ならばハレンチだと思ったその様子をうっとりとした目で見つめた。 ララがリトの裏筋に指を這わせているところに唯の指も伸びてくる。 二人に攻められ、リトの先端から透明な粘液が漏れ出す。 「あ、なんかヌルヌルしたのが出てきた」 「ほんとにハレンチね…」 そう言いながら唯はリトのペニスに顔を近づけ、リトのカウパーをぺろりと舐めとる。 そのいやらしい光景にリトのペニスが思わずピクっと反応してしまう。 「唯…すっげーエロい…」 「そうかしら?」 唯はリトの方を見てくすっと笑うと、そのままペニスのカリの上でちろちろと舌先を遊ばせた。 そしてララも唯の顔に自分の顔を寄せ、唯と二人で両サイドからリトを攻める。 そのあまりの光景に興奮したリトは思わず二人の間で白い噴水を吹きあげた。 「「きゃっ!?」」 二人の顔にリトの精液の雨が降る。 「ちょっと結城君!出すときはちゃんと言ってよね!」 「ごめん唯…。だって唯もララもエロすぎてつい…」 リトは唯にティッシュを差し出しながら謝る。 「あーあ…。いきなりこんなに出しちゃって…」 ララはそう言うと唯の顔を自分の方に向け、彼女の顔についたリトの精液を舐めとり始めた。 「ちょっと…っ、ララさん…」 恥ずかしさからララから逃れようとするが、ララがちょっと力を込めただけで唯は動けなくなる。 唯も興奮したのか、そのままララの顔についた愛しい人の欲望の証を舌先で救い、自分の喉に運んでいく。 「ねえリト…。私の中に出す分はちゃんと残ってる?」 唯の舌で綺麗になった顔を向け、ララは夏のこもった眼差しでリトとの繋がりを求める。 「ララ…、もちろん残ってるよ…」 「ララさんの分だけじゃ全然足りないのはわかってるわよね?」 唯もララの舌で綺麗になった顔をリトに向けてきた。 「ああ、二人分がんばるよ…」 狭いベッドの上に二人の裸の少女が横たわり、裸の少年がその上に覆いかぶさる。 二人の少女の長い髪がベッドの上に広がり、黒とピンクが絡まるようなコントラストを成す。 二人の豊かな乳房を撫でると、それがスイッチであるかのように二人の膣内に蜜が流れる。 そのままリトは二人の乳房を鷲掴みにする。 片方はふにふにと柔らかく、しっとりと指に染み込んでくるような感触、もう片方はむにっとして弾力に富み、自分の指を跳ね返してくるような感触。 リトは二人の違いを楽しむと、自身の性器を少女の性器にあてがう。 そのまま少女の子宮を貫くような勢いで一気に奥までペニスを押し入れた。 「ああんっ…!リト激しいよう…」 ララは待ち焦がれた瞬間の訪れに体を震わせて喜びを表す。 その様子に唯は少し不機嫌そうになるが、リトが唯の方に首を伸ばすと唯は彼の唇に吸いついて少し機嫌を直す。 「あとでちゃんとしてくれなかったら怒るからね…」 「わかってるって…。ちょっとだけ待っててくれよ…っ」 リトは腰のピッチを上げ、ララの子宮をガンガンと叩く。 「リトっ…そんなにされたら私おかしくなるぅ…」 ララの膣からはぐちゃぐちゃと粘り気のある水音が響き、彼女の腰の動きもリトの精を絞り取ろうと激しいものに変わる。 「リト…出して…!このまま出してっ…!!」 ララが中出しを懇願し、脚をリトの腰にぎゅっと絡める。 リトはララの子宮口にペニスの先端をぐっと押し当て子宮の中に直接精液を注ぎ込む。 その間彼女は無言だったが、膣肉の締め付けが強まり、彼女が絶頂を迎えたことを彼に知らせる。 「ふう…」 リトが大きく息をつきながらララの膣からペニスを引き抜くと、白い二人の混合液がどろりと流れ落ちた。 この前私も同じようになってたんだ…。 唯の頭にこの前のリトとの初体験がよぎる。 あのときは自分の膣からあんな風に二人が愛し合った証がこぼれていたのだろう。 そう思うと今更ながら恥ずかしさがこみ上げてくる。 未だに荒く息をつくララの様子から、彼女は相当な快楽を感じていたようだ。 「なあ唯…」 リトは唯に自身のペニスを見せる。 射精した直後だからかリトのペニスは少し力を失っていた。 「どうしたの?」 「あのさ…唯の胸で大きくしてもらえないかな?」 リトは恐る恐るといった感じでそう頼んできた。 唯は一瞬ポカンとしたが、ふとリトが自分の胸の感触が大好きだと言っていたことを思い出してふっと笑った。 「まったく…。世話の焼けるおちんちんなんだから…」 唯の口から今までなら絶対に出てこなかったであろう単語にリトは驚く。 が、それも束の間、唯はリトに覆いかぶさって仰向けに寝かせ、彼が大好きだと言った乳房を彼の胸板に擦りつける。 二人の乳首がこすれ合って勃起し、唯が少し体重をかけると心地よい弾力がリトの心臓まで伝わってくる。 「私の胸、大好きって言ってたもんね…」 唯は自分の胸をくっつけたままリトのお腹へ移動させ、そして目当てのペニスがある股間まで移動させた。 その時にはもうリトのペニスはすっかり勃起していた。 「あら?もう起っちゃってるわよ?でもまあ、サービスしてあげようかしら」 唯はそのままリトのペニスを両方の乳房で挟み込む。 さっきまで自分の胸の上にあった弾力が自分の一番敏感な部分を攻め立て、リトは思わず声を上げてしまう。 「唯…。すっげー気持ちいい…」 「気持ち良くても出しちゃだめよ?」 「…ああ、そうだな…」 リトはそう言って上体を起こし、唯に自分の上に座るように促す。 どうやら座った体勢で入れるつもりらしい。 唯は促されたとおりにリトに正対するように座る。 そのときペニスが膣の中に入るように…。 「…あっ…ふあああ…」 唯の口から甘い吐息がこぼれ、二人は対面座位で奥深くまでつながる。 「結城君っ…。すごい…」 唯はリトにぎゅっとしがみつき、膣口から子宮口までを埋め尽くすリトのペニスの感触を楽しむ。 リトが少し腰を動かすと子宮内にまで入ってくるのではないかというような感触に襲われ、それが唯の欲情をさらに掻き立てる。 「唯…気持ちいいか?」 「うん…っ…。すごく…」 唯の様子にリトはついつい激しく腰を振りたくなり、唯の膣を下からぐちゅぐちゅとかき混ぜた。 「やん…っ…、結城君だめえ…」 体をビクビクと震わせ唯がこれ以上ないほどに乱れる。 リトはそのまま唯を仰向けに押し倒して正常位に持ち込む。 二人の腰のピッチはさらに速まり、何度も何度も二人の腰がぶつかって卑猥な水音が室内にこだまする。 「もう出したい…」 「いいよ…。このまま中で…」 唯がそう言うや否や彼女の膣内がぎゅっと締まり、リトのペニスから精を絞り取っていく。 「うわ…唯の中すげえ…」 「結城君だって…」 リトは唯の締め付けを、唯はリトが自分に種を付ける感触を抱き合って噛みしめ合う。 その様子を見ていたララは少し寂しさを感じていた。 リトは唯の体を大層気に入っている。 もしかしたら自分よりも唯とのセックスの方が彼にとっては楽しいのではないだろうか。 そう思うとララの中に唯に対する嫉妬心が芽生えるのだった。 三人で一階に下り、今唯はソファの上でセリーヌを膝の上に乗せ、マジカルキョーコを一緒に見ている。 きゃっきゃっとはしゃぐセリーヌを唯は優しい目で見つめていた。 その右隣にリトが座り、さらにその右隣にはララが座っている。 ララはというといつものように目を輝かせることなく、なんだか落ち込んだような顔をしていた。 唯が帰ったあと、リトはララを部屋に呼び出して尋ねた。 「なあララ。なんか元気ないけど、どうかしたのか?」 「ううん…。なんでもない。ちょっと疲れただけだよ」 「そうか…」 「…ねえリト…。唯と私、どっちとエッチする方が気持ちいい?」 いきなりの質問にリトは返答に困ってしまう。 それに気づいたララはリトの前から逃げ出してしまう。 「っ…ごめん、今の忘れてっ」 部屋を飛び出して行ったララの後ろ姿をリトはただ見つめるしかできなかった。 ララは自室のベッドに走って来た勢いそのままにダイブして布団をかぶる。 リトが皆と結婚すれば皆で楽しく暮らしていける。 そう言い出したのは自分なのに…。 「…どうしよう…私…」 自分でもはっきりとわかる嫉妬心、だが自分にはそれをぶつけられるものなど存在しない。 唯と楽しそうに裸で抱き合っているリトの姿が、リトの精を受けて甘い声を上げる唯の姿が鮮明にフラッシュバックする。 それは光しかなかったララの心に影が差す瞬間だった。
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唯の返事を待つと、リトは入り口を広げながらゆっくりと挿入していった 「あ…うぅ…」 唯の手がシーツを握りしめる 久しぶりの感触に体が痛みとも気持ちよさとも取れる感覚を唯に伝える 「大丈夫か?」 「へ…平気!だから…このままお願い!」 少し苦しそうな唯にリトはためらいがちに腰を動かしていく 「ん…ぁ…ふ…」 本人の苦しさとは裏腹に、膣内はキューっとリトを締め付けていった 膣壁が波打ち、リトを奥へ奥へ導こうと急かす 「や…やばッ」 背中にゾクゾクと電気が走った まだ半分しか入れていないのに、リトは早くも射精感が込み上げて来てしまう 少し不安そうに見つめる唯に愛想笑いで応えるリト だが、込み上げる欲望と、その焦りで、リトは一気に挿入してしまった 「あっ…くぅ」 唯の腰はビクビクと浮きあがり、半開きの口からは涎がこぼれ落ちている 「わ、悪い!」 咄嗟に引き抜こうとするが、それが仇となってしまう 「ん、ン…あぁあ、あ」 カリが唯の敏感な部分を擦り上げ、竿全体が肉壁をめくり上げる 一度の出入りだけで二度絶頂してしまった唯の身体は悲鳴を上げた 「は…はぅ、は…ぁ…」 シーツには唯の爪痕が刻まれ、その身体は小刻みに震えている 亀頭だけを膣内に残したリトの竿は、唯の本気汁で白くテカっている 「だ…大丈夫か?」 身も蓋もない言葉をかけるリトに、唯は震える口でなんとか返す 「バ…バカぁ」 手を伸ばそうとするも途中でふにゃんと折れてしまう 痙攣を繰り返す体には、まったく力が入らないのか、口元からとろりと唾液が滑り落ちた リトは唯に覆いかぶさると、舌を使ってその唾液を掬い取り、そのまま口内へ持って行く 「ん…あふ」 突然のリトの行為に、唯は最初戸惑うも次第に舌を絡ませ始める 「ん、ちゅ…ぱぁ…ンン…はふ、ン…」 いつしか手を繋ぎ、指を絡ませ合いながら互いの口を貪るリトと唯 唾液の糸を何本も引かせながら、リトは唯から離れる 「やっぱ、お前の口ってすげーうまい」 「…ヘンな事言わないの」 唯はハニカム様に頬を染めると、口元についた唾液を指で取り、それを舌の上に這わせた 小さくクスっと笑う唯 淫靡さの中にすらある唯のたまらなくかわいい笑顔にリトの理性は崩壊する リトは自分のモノを手にすると、唯の顔を見ながらその位置を確かめる様に何度も入口に押し付ける 「ン…あっん、そこ…違う」 「ここ…?」 唯はコクンと首を振ると、リトの首に腕を回した ヌプヌプと音を立てて熱い肉棒が膣壁を押し広げていく 「あ…ン、うぅ」 再び感じる苦痛と快楽がごちゃ混ぜになった感覚 唯はリトを抱きしめた 「今度は大丈夫だから!ちゃんとするよ!」 「…当たり…前でしょ。優しくしなきゃダメだからね!?」 息を切らせながらも普段と同じ様に振る舞おうとする唯に、リトは苦笑した リトのモノが根元近くまで入っていく その動きに合わせる様に、唯はリトを上に乗せながら大きく深呼吸した 首にあたるリトの荒い息 すぐにでも打ち付けたいのか、リトの腰はぶるぶると震えている 「す…げー! お前の中、ピクピク痙攣しっぱなしだぞ?」 「ゆ、結城くんが乱暴にするからでしょ!?」 そう言いながら唯は足をずらすと、リトの腰にゆっくりと回していく お尻に感じるハイソックスの感触にリトは顔をニヤケさせた 「動くな?」 「う…うん」 唯が言い終わるより早くリトは腰を動かした パチュン、パチュンと卑猥な音を立てながら、リトは唯の中を掻き回していく ネットリとした愛液と肉壁が出て行こうとする肉棒に絡みつき また入ってくる肉棒を今度は離さないように締め付ける 「あ、あ…ふっ…や…」 リトが動く度に、唯の声がどんどん高くなっていく リトを抱きしめる腕に力がこもり、その体を離さないように締め付ける 唯の腕と膣の抱擁に、リトは唯の首筋に顔を埋もれさせながら幸せいっぱいに笑った 「すげェ……気持ちよすぎ! 全部持って行かれそうになっちまう」 リトは手を伸ばすと、唯の頭をギュッと抱きしめる 「唯…」 「ン、あふ…あっ…あっ」 唯の体がますます熱を帯び、背中に回した腕に力がこもる 「あぁっ…あぁん…いい…わよ」 「え?」 「結城くんの好き…に動いても」 リトは腕に力を入れると上体を少し起こす 「いい…のか? その、好きにしても?」 唯はしばらくリトの顔を見つめた後、ふいっと顔をそらした 「そ…そんな事、聞き返さないでよ…」 ほんのりと赤くなっている唯に苦笑すると、リトは唯のおでこにキスをする 「ん!」 離れていくリトを名残惜しげな視線で見つめる唯 唯はリトのぬくもりが残る体を服の上から指でなぞっていく その仕草がリトにはとても艶かしく映った 唯の細い腰を両手で掴むリト もう繋がっているだけでは満足できない キスも抱擁も甘い言葉でも 唯を内から外から、唯の全てを貪りたいと思った ゆっくり入口ギリギリまで引き抜くと、今度は勢いを付けて突き入れる 「うっ…くぅぅ…」 一回動くだけで唯の口から高い声が上がった とろけきった目に、上気して赤くなった頬 握りしめた手も、たぷたぷと揺れる胸も 久しぶりの感触というより、全てが新鮮に感じる リトは夢中になって腰を打ち付けていった 「結城…くん」 「ん?」 リトは腰の動きをゆるめると唯の顔を覗き込む 「どした?ひょっとして痛かったとか?」 「ち…違…そうじゃなくて…」 「へ?」 唯は胸に手を当てると言い難そうに頬を染めた 「ムネ…ちょっと窮屈だから服、脱ぎたいの」 「え!? あ…ああ! わ、わかった」 リトは慌てて唯から離れようとするが、ふと何かを思い付いたかの様に動きを止めた 「何なの?」 「あのさ、オレが脱がすのってダメ?」 「え!? あ…あなたが!?」 ニコニコと楽しそうに笑っているリト そんなリトを少し訝しむも、唯は小さく首を振った リトは再び唯の覆いかぶさる 「じゃあ、オレの背中に腕回して?」 「こ、こう?」 言われたとおりに腕を回す唯に頷くと、リトはそのまま唯を抱えて体位を変えた 「キャ…ちょ…結城くん!?」 腕の中で慌てる唯を強く抱きしめると、リトはベッドの上に座りなおす 上と下から、向き合う形の対面座位に 「もぉ、するならするでちゃんと言ってよねっ!」 「わ、わりィ」 悪戯っぽく笑うリトに唯は鼻を鳴らすと、背中に回していた手をリトの肩に乗せた 強がっている反面、唯の顔は歪んでいる 体位を変えた事により、あたる角度も感じ方も変わる 反射的に腰を浮かしているが、唯の下腹部は早くも限界なのかぶるぶると震えていた リトは唯のくびれの部分に手を当てる 「ん…くっ」 「我慢しなくてもこのまま腰沈めろって!」 「が、我慢とかじゃないのっ」 間近でムッとリトを睨むが、いつものような怖さは微塵もない すぐに顔が歪み、肩に置いた手が震えだす 「ゆっくりでいいから」 「…うん」 リトに後押しされる様に、唯の腰がゆっくりと沈んでいく 「あ…ふぅ」 さっき以上に奥へと入って来る熱い肉の感触に、唯はギュッと目を瞑った ズプズプと肉壁を押し広げて入ってくる肉棒は、やがてもう一つに入口にあたる コツっという音と共に、唯は体を仰け反らせた 「あはぁ…あた…あたって…」 「オレのちゃんとあたってる?」 コクコクと何度も首を振って応える唯 リトは笑みを深くすると、腰から背中まで唯の身体を撫で回した ふるふると震え出す唯の体 「結…城くん、お願ぃ…だから、服脱がして! 体が熱くて…」 肩に置いた手にはすでに力が入っておらず、枝垂れかかる様に唯はリトの胸に頭を乗せていた リトの手がするすると服の中へ入っていく 背中に感じるその手の感触に唯は息を熱くさせた 「手、バンザイして」 唯は言われたとおりに腕を上に上げた 服を脱がすと、その下からショーツとお揃いの柄をしたブラジャーが現れる フリルとリボンの付いた可愛らしい白い色のブラ それをジーっと見ているリトに何を思ったのか、唯は顔を真っ赤にしてリトに噛みつく 「い、いいでしょ別に!? 私だって…」 「ちょ…何も言ってねーだろっ!!」 フンっと鼻を鳴らしてそっぽを向く唯 (ったく…) リトは半眼になりながら背中に手を回すとホックに指をかける 「で、取っていいのか?」 「……好きにしたら」 まだ機嫌が直らないのか唯の声は相変わらず尖ったまま そんな唯の顔をしばらく見つめた後、リトはホックを外した ポロリと外れるブラの下から、少し大き目だけれど、形の良い、白くて柔らかそうな胸が現れる 瞬間、ぽぉ~っと唯の頬が熱を帯びる 唯は恥ずかしさで顔をしかめた リトはその横顔を見つめながら、乳房へと口を近づける 「…ムネ、舐めていい?」 「ダメ…」 短くて熱のこもったその声を無視する様に、リトは乳房へと吸い付く 「あ…ふっ…」 胸の一番敏感な部分へ吸い付くリトに、唯の肩は小刻みに震える すでに赤く充血している乳首がリトの舌で転がされる レロレロと舌で転がしたかと思うと、リトはいきなりむしゃぶり付いた 母乳を飲む様に乳首を吸い上げ、舌で何度も乳輪に円を描いていく 唾液でヌラヌラと濡れる乳房 リトは反対の胸に手を這わせると、思う存分揉みしだいていった 手の平の中でたぷたぷと揺らしながら、強く優しく弄ぶ 上下左右に弄られる乳房に、しゃぶり続けられる乳首 唯の口から自然と甘い声がこぼれ、太ももをもじもじとさせる 下腹部を休ませているリトを促す様に リトの腰がそれに応える様に、少しずつ動いていった 結合部からはヌプヌプと卑猥な音が鳴り、唯の体は上下に弾む 「ンあ…く…ぅ、ああ…」 パチュン、パチュンと肉と愛液が絡み合い二人を昂らせる リトは胸から離した手で、唯の腰を掴むと、更に奥へ深く突き入れていく 「ゆ…結城、くん! 深…あたって…あふぅ」 コツコツと子宮口に当たる度に唯の体は小刻みに震える 「お、奥…ダメっ! ダメぇ…結城くんっ!!」 「何だよ? もっと、もっと?」 「違…ンン!」 下腹部を襲う強烈な刺激に我慢できなくなった唯は、リトの首に腕を回し、その体を抱き寄せる ムニュっと両頬に伝わる柔らかい乳房 胸の谷間を伝う汗を舌で舐め取ると、唯はますます腕に力を込めリトを抱きしめた 「あ、あのさ、これ気持ちいいんだけどさすがに苦しいってゆーかさ…」 胸に顔を埋めながら、くぐもった声を出すリト 唯はリトを抱きしめたまま、何も答えない 快感に全身を支配され、それどころではないようだ (って全然、聞いてねー…) それをいい事に、腰から離れたリトの手がするすると結合部へと伸ばされる 剥けた肉皮から顔を覗かせている赤く充血したクリトリス チラリと上目遣いで確認するも、唯は気付いていない リトは指の先で軽くクリトリスを押した 「ひゃっ…」 ビクンとリトの膝の上で、唯の体が跳ねる リトは小さく笑うと、親指でグリグリとクリトリスを押しつぶしていった 「ああぁあ…くぅぅ…ンっ」 唯の中でいままで以上の波が全身に広がっていく リトを抱きしめるその手がぶるぶる震え、奥歯がカチカチ鳴り出す 「ゆう…結城くん、やめ…それやめてぇ! ダメぇっ!!」 下腹部に集中する激しい刺激が唯の理性を溶かしていった 一瞬力が抜け、そのまま後ろのベッドに倒れようとする体を、なんとか後ろに手を付くことで防ぐ唯 角度の変わった体勢が、唯に新しい波を与えていく 奥へ奥へと子宮口を責めながら、リトは人差し指でクリトリスを転がしていく ぐちゅぐちゅと肉棒が突き入れられる度に、秘所から白くなった蜜がシーツを汚していった 「す、すげーやらしい…」 ヌラヌラと輝く結合部にリトはゴクリと唾を飲み込んだ 「丸見えになってる。オレとお前のが」 「え…?」 口から涎をこぼしながら唯は、何気なくリトの見ている方へ視線を辿っていき──── とたんに火の出た様に顔を真っ赤にさせてしまう 少し唯の体が後ろに下がることで、二人の間に空間が出来き、結合部が丸見えになってしまっていた 「見える? オレのと繋がってるとこ」 「こ、こんなのハレンチすぎるわっ!!」 声を大きくさせて視線をそらす唯に、リトはぷっと吹き出す 「でもお前、腰動かすのはやめないんだな? すげー気持ちよさそうな顔してるぞ?」 「うぅ…」 唯は苦い顔をしながら、そっぽを向く 「気持ちいんだ?」 ギュッと目を瞑ってリトの言葉をやり過ごす唯 けれど体は正直だ こんな時ですら、もっと、もっととリトを要求して止まらない 次第に、唯の口から嬌声が上がる 「すげーハレンチな声」 クスっと笑うリトに顔を耳まで赤くさせる唯 「違…違うの! これはっン…く違っ…」 シーツを握りしめる手に力が入る 快感と羞恥心が唯の体をどんどん昂らせる ぞわぞわと膣壁が蠢き、竿を離さないように締め付けていく 腰をガクガクと震えさせる唯に、リトも額から汗を垂らしながら笑みを浮かべた 「もうイきそう?」 顔を赤くさせながら口を結ぶ唯 けれど、その目はチラチラとリトを見ては何か言いたそうだ リトは溜め息を付くと、腕を伸ばし、唯の体を抱き寄せた 「ホラ、これでいいんだろ?」 リトにその身を抱きしめられ、その肩に額を乗せながら唯は小さく頷いた 「オレも。もうイきそう」 「う、うん」 唯はリトの首に腕を回してしがみ付くと、足を腰に回し、体をぴったりくっ付けて離れない様にする 胸板に柔らかい胸が押し付けられ、体が下から突き上げる度に、上下左右に形を変えていった 耳に直接聞こえる、唯の喘ぎ声 とろける様な甘さの中に熱がこもっていて、その声で必死にリトの名前を紡ごうとする唯 リトの中で我慢して抑えていた欲望が鎌首をもたげる 「も、もう出そう…」 「え? あ…ま、待って!」 何? と目で聞いてくるリトに唯はぽそぽそと小さな声で呟く 「キ…スし…」 「へ?」 「う…ぅぅ……キ、キスしながらじゃないとダメ」 狂いそうになる快楽の中、唯は目をギュッと瞑ると大きな声で口した 恥ずかしくて隠れたくなるほどの自分の気持ちを 今だって真っ赤になった顔をリトの首筋にうずめながら、必死にリトの返事を待っている そんな唯にリトは屈託ない笑みを浮かべると、頭にそっと手を置いた 「オレもお前とキスしたい」 「え?」 ゆっくりと顔を上げた唯は、恥ずかしさで目がうるうるとなり、口だって小さく震えている まるでいけない事を言ってしまった子どもが、怒られてしまうのではないかとビクビクしているかの様に そんな唯の頭を撫でながら、リトはやさしく笑いかける 「キスしよ? 手も口もあそこも全部お前と繋がったままがいい!」 「…う……うん! うん!」 何度もコクコク首を振る唯にクスっと笑うと、リトは唇を重ねた 舌を絡め合い、唾液を交換し、口内を貪り それらが結合部から聞こえる水音と合わさり、二人を淫靡に染め上げる お互い口を離すと、おでことおでこをくっ付け合って、至近距離で見つめ合う 「ぷは…はぁ…んっは…ぁ…」 「…またキスする?」 とろんとなった顔のまま、唯は「うん」とだけ返事をした 顔を近づけながらリトはふと気づいた事を口にする 「思ったんだけどさ、キスはできても、手を繋ぎながら抱き合うのはムリ…だよな?」 「……なんとかしなさいよ」 「ムチャ言うなって」 苦笑いを浮かべるリトだったが、思いついた様に声を明るくさせた 「じゃあ、一回目はギュッと抱き合いながらしよ?手、繋ぐのは次って事でいいか?」 「…まだする気なの?」 「ダメ?」 バカ! っと小さく呟くと、唯はリトの体をギュッと抱き寄せた 胸に当たるやわらかい感触、火照った白い肌にしっとりと光る汗、 ほのかに香る唯の匂いに、リトの顔はほころぶ 「やっぱ最高」 「何が?」 「ん? いろいろだよ!」 「何よそれ? どうせまたおかしな事考えてるんでしょ?」 「ハハ…」 図星を付かれてつい苦笑い浮かべるリトの耳に手を伸ばすと、唯はギュッと耳を引っ張った 「い…いてぇ! ゆ、唯!?」 「おかしな事考えないでちゃんとしなさいよ! 私……もうガマンできないんだからぁ」 「そだな! オレももう…」 休めていた腰を再び動かすと、それに呼応するかの様に唯の腰を動いていく すぐに忘れかけていた欲望が首をもたげ、リトは奥歯を噛み締めた 狭い膣の中でどんどん大きくなるリトの感触に唯の腰がガクガクと震える 「あ…ふぅ…結…城くん、結城くん…」 「唯…唯…」 互いの名を呼びながら、背中に回した腕に力をこめて抱き合う 苦しいけれどうれしくて、幸せで ベッドをギシギシと軋らせながら、お互いを求める手は離さない 「唯…オレもう…」 「ん…うん! 私も…い、一緒に……一緒がいいのぉ…」 リトの腕にさらに力がこもると同時に、膣内がざわざわと蠢きリトをギューっと締め付けた 「結城…くん!! あ…ふ…あぁ…ぁあああ」 「で、出る!!」 ビュクビュクと勢いよく飛び出た欲望はゴムの中に溜まり リトは腰を痙攣させながら荒い息を吐いた 「はふ…はぁ…は、は…ぁ…すごく…熱い…結城くんの…」 薄いゴム越しに伝わる熱い感触に、唯の口から涎がとろりとこぼれ落ちる 腰はビクビクと痙攣を繰り返し、体の震えは止まらない 「平気か?」 焦点が定っていないかの様にぼぉーっとなっている唯にリトは体を寄せた 断続的繰り返される荒い息遣いに、小刻みに痙攣を繰り返す下腹部 心配そうにジッと眺めるリトに、唯はゆっくりと向き直ると、本当に小さく笑った 「……結城くん、キスして。いっぱいギュってして」 一瞬、目を丸くさせたリトだったがすぐにニコッリ笑うと、薄く開いたままの小さな唇にキスをした 「ン…ん…ん」 汗で濡れる唇はいつもと違い少ししょっぱくて、抱き寄せた体はしっとりと濡れていてあたたかい 舌も愛撫もなにもない、ただ、余韻を味わうためだけのキス 顔を離した二人はどちらともなく、くすぐったそうに笑った 指で髪の毛を梳きながら、手で背中を撫でながら、ほっぺたにキスを繰り返しながら 二人は互いの顔をジッと見つめた お互い肩で息をしながらも、恍惚な表情を浮かべている 唯はチラリと視線を下に向けた まだリトと繋がっている結合部。そして、ビクビクと脈打っている熱い感触 「まだビクビクしてる…」 「ゴメン、久し振りだから…」 バツが悪そうな顔をするリトに、唯はクスっと笑いかける 「でも、気持ちよかったわよ。私も」 「唯…」 照れた顔を見られまいとリトを抱き寄せると、唯はその余韻を楽しむ様に、 リトの匂いで胸をいっぱいにさせた ケータイを耳に当てながら、美柑は顔をムスっとしかめた リトへの電話はこれで五回目 ちっとも出る気配のない兄に、美柑は電話口の向こうに愚痴を吐く 「ねェ、また出ないの?」 「…うん」 美柑はケータイを閉じると、隣を歩くララに向き直る 「ダメ。全然でない」 「む~…何やってるのかなァ。リト…」 「ホント、何やってるんだか」 美柑は可愛い眉を寄せると、ふいにララの手を取って歩き出した 「いこ! ララさん」 「え? いいの? だって今日…」 ララのくもりがちな声に美柑は思わず表情を崩してしまう 今日は美柑の案で、久しぶりにリトの好きな夕食にしようと買い物に来ていたのだが リトの好きなメニューが多すぎなため、本人に今日は何食べたい? と、それとなく聞こうとさっきからケータイを鳴らし続けていたのだが…… 一度止まりかけた足を再び動かすと、美柑はララを連れてさっさとデパートから出て行こうとする 「美柑…」 「い…いいの! いいの! ほっとこ!! あんなヤツ…」 「む~…リト何してるのかな……」 ララは美柑に手をぐいぐい引かれながら、俯きぎみのその横顔を見つめた 「や、めっ…ぁ…も、もう、限界だって…」 唯のお尻を両手で揉みながら、リトは夢中で腰を突き入れる 前後に体が揺さぶられる度に、唯の胸がたぷたぷと震えた 「ゆ…結城、くんっ!! あ…ふ…ああぁあ」 リトの方を振り返るも、下腹部を襲う電流の様な波に唯はギュッと目を瞑った もうこれで何度絶頂を迎えたかわからない 何度体位を変え、何度白濁した欲望をかけられたか 床には拭き終えたティッシュがいくつも転がり、汚れたコンドームがヌラヌラと輝いている リトも唯も、互いの体を心を貪るように交り続ける 腕から力が抜けていき、唯の上体はくてっとベッドに沈みこんだ 下半身はリトに支えられたまま、ビクビクと痙攣を繰り返している 「は…はふ…はぁ…」 汗に濡れた前髪をおでこに張り付かせながら、全身で息をする 唯はゆっくり首を動かすと、後ろのリトに視線を向けた 自分を心配そうに見つめるリトは、それでも「動いていい?」と言わんばかりの顔をしていて 「も…もうムリよ…。これ以上はホントに…」 消える様なか細い声がリトに聞こえるはずもなく、リトはゆっくりと再び腰を動かしていった 「ん…くぅ…」 また唯の体にざわざわと波が波立ち始める 敏感になっている膣内は容易に唯を昂らせた 「結城…くんっ! まだダメ…ダメだってばっ!!」 ギュッとシーツを握りしめる唯 ぐちゅぐちゅと肉棒が膣内を掻き回していき、結合部から精液と混じり合った愛液がとろりとシーツに滴る 「結…城くん、嫌ぁ…こんなカッコでするのぉ…ン…」 リトは後ろから唯の中に突き入れながら、顔を歪ませる 「こんなカッコって犬みたいなって事?」 唯は息も絶え絶えに首をコクコクと動かす 「なんか犯されてるみたいで?」 「そんな…ン…ン…」 奥歯を噛み締めて何も応えられない唯に代わって、膣内がキューっと蠢く 「お前の膣内、あったかくって、ギュウギュウ締め付けてきて、すげー気持ちいい!!」 すでにコンドームは付けていない 生のままの感触が唯の膣をさらに刺激し、悦びの声を上げさせる リトは夢中になって腰を動かし、唯の中を掻き回していった 汗でしっとりと濡れた唯の背中には、長い黒髪が張り付き 汗の珠が唯の頬を伝ってシーツにポトポトと落ちていった リトは上体を屈めると、舌を出し、唯の背中を首筋から腰のラインまで一気に這わせていく 「ひゃ…あぁ…」 ビクンと大きく唯は背中を仰け反らせた 「お前の背中、汗の味がしておいしい」 「バ…バカぁ、何言って…」 震える声でなんとか返すも、すぐに来る快感の波に唯の腕はぷるぷると震える リトは背中に何度もキスを繰り返しながら、伸ばした手で、唯の胸をたぷたぷと揉み始めた 「や…め…ン、ンン…あぁ…」 手の平全体で揉みしだき、二本の指で乳首を摘み、コリコリと弄るリト 「お前のムネ、やわらかくて気持ちいい…」 耳元でそう囁くリトに、唯はギュッと目を瞑った 「もっと揉んでいい?」 「ダ…メぇ…」 リトは背中にもう一度キスをすると、唯の胸の前に腕を回し、その体を抱き掛かると横にゴロンと寝そべった 「な…結城くん!?」 突然の事に少し不安な声を上げる唯 シーツに擦りつけた左頬を上げると、視線だけをリトに向けた 「大丈夫だって! ちょっと姿勢変えただけだからさ」 「う…うん」 背中に当たるリトの胸のぬくもりに唯は少しずつ平常を取り戻していく 「動いていい?」 「ゆ…ゆっくりね?」 リトは唯の後ろ髪を掻き上げると、赤く上気した右頬に軽くキスをした それが合図だったかの様に、リトの腰がゆっくりと動き出す 角度の変わった挿入に、初めての体位が二人の感度を上げていく 鼻孔をくすぐる髪の匂いを胸いっぱいに吸い込むと、リトは再び胸に手を這わしていった ムニュムニュと柔らかい肉感に、今は火照った温かさが加わり、リトは手の中で思う存分乳房を揉みしだく 「結城…くん……結城くん…ン、ンン」 息を切らせながら何度も自分の名前を呼ぶ唯に、リトはくすぐったい様な笑みを浮かべた たまらく可愛いと思うと同時に、もうこれ以上離れたくない、離したくないと感じる リトは両腕でギュッと唯の体を抱きしめた その体を強く強く抱きしめながら、リトは夢中で腰を振った 痛いほど締め付けるリトの抱擁に、唯の口から苦悶の声がこぼれる それでも唯は嫌だとは言わなかった 眉を歪め、奥歯を噛み締めながら、ただ、リトに身を任せる ジュプジュプと繰り返す肉の出し入れに、シーツには大きな染みが広がり 触れ合う胸と背中には、汗がネットリと光っている 全身を体液で染めながら、二人は互いの体を貪り続けた リトは腕を解くと、唯の太ももに手を伸ばし、右足を持ち上げる 「や…あ…ぁ」 とたんに唯の口から嬌声が上がる 「な…何して…」 「これでもっと奥まで届くだろ?」 頬に当たるリトの熱い息遣いに唯は顔を歪めた リトは見せつける様に股を広げさせると、深いところまで突き入れていく 「ン…ンン…ああぁあ…」 噛み締める様に我慢していた唯の口から、どんどん卑猥な声が溢れ出す 亀頭が子宮口をノックし、戻る時のカリが唯の敏感な部分を擦っていった 堪らずリトから逃れる様に、体を捩る唯 リトは逃すまいと腕に力を込めて動けない様にする 動けない体に下腹部を襲う電流の様な波。唯はどんどん感度を上げていく ゆっくりとした動きから、激しい動きへと変わったその変化に、体が過剰に反応する 下腹部を襲う震えは、次第に上へ上へと広がり、唯は全身を激しく痙攣させた 「か…ふぅ…ああぁあ」 一突き一突きがまるで絶頂を与えるような感覚 リトの先端が子宮口を押し広げ、更に中に入ろうとする (ウソでしょ……結城くんのが…これ以上…) リトの腕を掴む唯の手に力がこもる 耳に直接聞こえるリトの自分の名を呼ぶ声 (結城…くん…) 白くとろけていく意識の中、それでもその声だけははっきりと聞こえる 唯は自分の指をリトの指に絡ませていった 「唯?」 「…手、繋ぎたい。結城くんの顔、見えないから」 ぼそっとそう呟いた唯の顔は耳まで赤くなっていて、リトは小さく笑みを浮かべた 「じゃー手、繋ごっか?」 「…うん」 リトに背中から抱き締められながら、小さくなる唯 リトはそんな唯の肩に二度三度とキスを繰り返すと、唯から肉棒を引き抜いた 「え…」 離れていくその感触に唯は目を丸くさせた 「結城くん…?」 顔をぽかんとさせる唯に笑みを送ると、リトはその場で脚を伸ばしながら座った 「ほら、おいで唯」 「うん…」 唯は立ち上がるとリトの腰を跨ぎ、自分の腰をゆっくりと沈めていった 「自分でする?」 「結城くんがしなさいよ……今だってすごく恥ずかしいんだからね」 ぼそぼそと文句を言いながらも決して拒もうとしない唯に、リトは苦笑を浮かべた 手をスッと伸ばして、割れ目をゆっくりと広げていく 秘所からこぼれた愛液が唯の太ももをつーっと伝っていく様子に、リトの喉に唾が落ちていった 「じゃ、じゃあ入れるぞ?」 「うん…ン、ンぁ」 短い返事を待たずして、リトは唯の腰を深く沈めていく すぐに亀頭を咥えこんだ入口は、そのまま残りの竿を咥えようと収縮を繰り返す 「ゆ…ゆっくり…してぇ…」 少し体を硬くさせる唯のお願いに応える様に、リトはゆっくりと唯を導いていった 相変わらず唯の中は狭く、奥へ入っていく度にギチギチと締め付ける 「入っ…たァ」 「うん。お前の中すげー気持ちいいよ」 リトのその言葉に唯はハニカム様に小さく笑った 「唯、手」 「ん…」 伸ばした手と手が触れ合い、指と指とが求め合うように絡み合う 互いを見つめ合いながら、その間を埋める様に、手を握り合う二人 「動いていい?」 「うん…」 リトは勢いをつけて奥に竿を突き入れていく 「あ…ふぅ、あぁあ…」 握りしめる手に力がこもり、唯の体は上下に跳ねた 「おくぅ…奥にあた…ンン…あぁあ」 「奥がいいんだ?」 「だって…こんな…ン…くぅ」 唯の反応に、リトはますます昂る自分のモノを突き入れていく 「ダ…メ…ダメぇ! 奥ばっかり私…ンっ」 「お前の中、ずっと痙攣しっぱなしで、すごい」 「結城くんが…何回も何回も私の事…ン…イジメるからでしょ!?」 リトは少し口を尖らせている唯の手を引っ張ると、腰をぐっと引き寄せる ヌチャっと音が鳴り、結合部から白濁した本気汁がとろりと溢れ出す 痙攣を繰り返す唯の奥歯は、すぐにカチカチと音を立て始めている リトは子宮口を押し広げる様に、奥へ奥へと肉棒を突き刺していった 子宮に直接響くリトの肉棒に、半開きになった唯の口から涎がこぼれ落ちる 「かぁ…やめ…ぁ…ああぁあ」 唯の下半身は痙攣を繰り返し、力が抜けた足はだらしなく伸びきっている パチュ、パチュと水音を鳴らしながらリトは腰を打ち付ける リトが動く度に、前後左右へたぷたぷと波打つ胸 「す…げェ、お前のムネさっきからムチャクチャ揺れてる」 口の端に笑みを浮かべながら、リトは込み上げる射精感に眉を歪ませた 「もう…出そう」 唯は視線だけをリトに向けた 「お前の中に出したい」 突然、唯の手がリトの手から離れていった 「え?」 キョトンとするリトに唯は何も言わず両手を伸ばす 「唯?」 顔を赤くさせながら、もじもじと体を揺する唯にリトはクスっと笑った リトも同じ様に両手を伸ばすと、その細い体をギュッと抱き寄せる 「ホラ、これでいいんだろ?」 リトの背中に腕を回しながら、唯はコクンと頷いた 触れ合う頬が唯が赤くなっている事をリトに伝える (フツーに言えばいいのにホント、こいつは…) 「動いて…」 「ああ。でも、これじゃあ中に出しちゃうけどその……いいのか?」 リトを抱きしめる腕に力がこもり、次第にリトの腰に足を絡ませていく 「え…ちょ…」 「…ちゃんとしなさいよ?」 「え?」 唯は体を少し離すと、真っ直ぐにリトの事を見つめた 「ちゃんとしなきゃダメだからね?」 「ちゃんと?」 それは結婚?責任?それとも別の──── リトを映す唯の目には強い想いが宿っている リトはコクっと首を振ると、その背中に腕を回し、再び唯をギュッと抱きしめた 数秒で抑えていた射精感が戻ってきた 耳元に聞こえるリトの荒い息遣いに、唯もそれに重ねる様に息を荒げた リトのモノが膣内でさらに大きくなる 「ン…く…ぅ」 首筋に回した腕に力がこもり、唯は両手をギュッと握りしめた リトの腰の動きが速くなる。後はもう欲望を吐き出すだけ 唯と呼吸を合わせる様に、唯を促がす様に 肉と肉がパンパンと合わさり離れていく 一瞬ごとに二人の気持ちを昂らせた 「唯…オレ、もうイきそう…」 「う…うん! 私も!!」 リトは唯の奥まで腰を突き刺すと、その中へ欲望を吐き出した 「あ…ふ…ぅ…ン、ンぁああ…」 子宮の壁を叩く精液の奔流に、唯は二度三度と腰を浮き上がらせた 「あ…あ…ぁ…出て…出てる結城くんのが中で…出てる…」 ビュルビュルと勢いよく出た欲望が子宮内に入っていく 膣どころか子宮全体を熱くさせる射精に唯の体がガクガクと震えた それは、リトの欲望が子宮内に叩きつける様に飛び出す度に続く 二度三度と連続してイかされ続ける唯 ビクビクと下半身を痙攣させながらも、リトを抱くその手は緩めない 「き…気持ち良すぎ…」 その余韻に浸る様にぐったりとしたまま、リトは唯から体を離した ゴポリと割れ目から白濁した欲望がこぼれてくる 「あふ…は…ぁ…はぁ、すご…い。いっぱい出て…」 子宮に満ちる濃い種と、体を襲う感じたことない快楽に、唯の腕から次第に力が抜けていき 唯の体は後ろにふにゃっと倒れていく リトは慌てて腕を伸ばすと、途中で唯を受け止めた 「大丈夫か?」 心配そうに顔を覗き込むリトに、唯はぼそっと呟いた 「さっきみたいにちゃんとギュッてしてくれないとダメでしょ?」 「へ!?」 腕の中の自分を見つめながら戸惑ったように言葉に詰まるリトに、唯はムッと口を尖らせた 「結城くん!?」 「え? あ…は、はい!!」 大きな声で返事をするとリトは、腕の中でまだ小さく痙攣を繰り返すその体をそっと胸に抱き寄せた 「こ、これでいい?」 「……」 「唯?」 「…そんな事聞かないでよ」 「だ、だよな」 リトの肩におでこをトンっと当てながら、表情を隠す様に唯は口を開いた 「それより結城くん、ちゃんとわかってるわよね?」 「へ!? な、何が?」 こんな時まで間の抜けた事言うなんて!! 唯は複雑な気持ちになりながらも、ゆっくりと顔を上げた どうしても聞かなければならない事があるからだ 肩から顔を上げた唯は、心なしかいつもより小さくなっていて、その細い体が今は震えている それは、緊張のためか恥ずかしさのためかあるいは──── 「唯?」 俯いていた唯は、やがて上気した顔を上げるとすっとリトの顔を見つめた もじもじと揺れる体は止まらない 「何だよ? どしたんだ?」 「言ったでしょ? ちゃんとわかってるの? って…」 「ん? まー…な」 頬を指で掻きながらリトは、バツが悪そうに笑う (ホラ、やっぱりわかっていない!) ふつふつと次第にある感情が湧き上がってくる中 唯はぽつりぽつりと話し始めた 「結城くんは私を一人するし」 「う…だ、だから悪かったって謝ってるだろ?」 「全然、電話もくれないし」 「だから…」 「あんなに約束したのに…」 自分の体を抱きしめる様に唯は胸の前で腕を組む チラリとリトに視線を送りながら、小さく、だけどはっきりと告げる 「私の中にあんなに出して……。赤ちゃん出来てもしらないんだから」 「そ…それは……」 あたふたと一人テンパるリト 唯は長い睫毛を伏せながらポツリと呟いた 「……ねェ結城くん。結城くんは、私のこと幸せにしてくれるの?」 窓から吹き込む春の風が、唯の髪を撫でていく ほのかに香る唯の髪の匂いの中で、リトはただ唯の事を見つめていた 「しあわ…せ?」 「そう。ちゃんとしてくれる?」 気持ちを確かめるために、気持ちを知るために、リトの顔を覗き込んでその答えを待つ唯 そんな唯にリトははっきりとした口調で答えを返そうと思った 「そ、そんな事は当りま……ぇ…」 けれど言葉が小さくなって消えていく 唯を幸せにする そんな事は当たり前だし、いつもどんな時だって想ってる事だ だけど、なぜかこの時は、その事を軽々しく口に出してはダメだとリトは思った 唯は怒ってるでも、悲しんでるでも、拗ねてるワケでもない どこまでもいつも唯で、いつもの顔で だけど、その目だけは今日は違った 透き通るような黒い瞳はリトだけを見ている 他の物は見ていない。ベッドも、枕も、部屋も壁も全て映っていない リトだけをその目に映している 「結城くん?」 この時になって初めてリトは気付く 淡々とした声の中に、唯の期待と不安が混じっている事に それは、ひょっとしたらリトにしかわからないほどの小さな事なのかもしれない ──ちゃんとしなきゃダメだ── 頭ではなく心がそう言った 今言わないときっと次はない 次に期待なんかしてたらダメだ、と 開いたり閉じたりそわそわさせていた手を一度握りしめると、唯の顔を真正面から見つめる 「…しょ、正直よくわかんねェ…。お前の事好きだし、これからも一緒にいたいって思ってるけど 、お前の事ちゃんと幸せにできるかどうか……わかんねェ…」 「……」 「オレがお前にできる事っつったら、休みの日にデートに行って、買い物して、 ケーキでも食いながらお前と話して、んで…ウチに帰っていっぱいエッチして… 誕生日とか記念日とか何か行事とかあれば二人でお祝いして… すげー背伸びして、高いとこでメシ食ったり、お前の欲しい物とかガンバってプレゼントもするけどさ」 リトは俯いていた顔を上げると、バツが悪そうに頬を指で掻いた 「…オレ、これからもお前にこれぐらいしかしてやれないと思う…。情けねーけどさ」 「ホントね」 黙ってリトの話しを聞いていた唯は小さく笑って応えた 「ハハ…ハ…」 リトの口から力ない溜め息がこぼれた 「…それがあなたの言う幸せにするってコトなの?」 「その…」 言いよどむリトに唯は体を寄せるとその顔を覗き込む 「そうなの?」 「…ゴメン。オレにできる精一杯の事だと思う…」 「そう…」 リトは何気なく唯の顔を見た 唯はいつの間にかジト目になって自分の事を見つめていた 「え?」 「普通、こういう時ってもっと大きな事を言うものじゃないの?ウソでも冗談でも」 「ええ?」 「『毎月必ずおいしいところに連れて行く』とか『旅行は毎回私の行きたいところでいいよ』とか」 「え…あの…」 「せめて『世界で一番幸せにする!!』 ぐらいは言いなさいよ!!」 「確かに…」 ガックリ力なく項垂れるリト そんなリトに唯はクスクスと笑みを浮かべた (ホント…こんな時でも『いつもの結城くん』なんだから) いつまで経っても変わらないリト 変わって欲しくないと感じるリトの好きなところ 唯は両手をすっと伸ばすと、リトの両頬をムギュっと引っ張った 「へ!?」 左右に引っ張られながら、リトの頬がどんどん赤くなっていく 「な、何だよ? いたひって!!」 痛がるリトに対し、唯はムスっと頬を膨らませながら手の力を緩めない 「唯!?」 「お返しよ! 私の事、散々イジメたんだからこれぐらい当然でしょ!」 フンっと鼻を鳴らしながら要約リトのほっぺを解放する唯 キリキリと痛む頬を手で擦りながらリトは、口を尖らせた 「ってぇ……。あのな、イジメたとか言うけど「甘えたい」とか「好きに動いて」とか言ったのお前の方だろ?」 「だから何よ?」 「全然甘えてこないお前が悪いんじゃねーのかよ?」 「ななな、何を言って…そんなのあなたが……う……うぅ…」 次第に動揺する様にふるふると揺れていた目に、やがて薄っすらと涙で滲んでいった 「あ、あれ?」 キョトンするリトの胸に唯はポスンっと握った拳を当てた 「な、何だよ?」 「そ…それならそれでちゃんとリードしなさいよね!」 「そ、それはまあ…」 リト自身テクがあるワケでもない。ましていつも緊張と興奮でいっぱいいっぱいになってしまう 唯はポカポカとリトの胸を叩き続ける 「だいたい、私を不安にさせないんじゃなかったの? 寂しい時はどうするのよ? 私を一人にしないって! 私にちゃんと好きって言うってそう約束したじゃない!! 私まだ、許したワケじゃないんだからね!?」 「わ、わかってるって! でも……あれ? お前、ちっちゃくなった時の記憶なかったんじゃ…」 「黙って!!」 顔を俯かせながら唯は一際大きな力でリトの胸を叩いた 「そんな事どうでもいいの! それよりちゃんと反省しなさい!!」 「で、でも今はこーやって一緒にいる…」 「今はでしょ!! ……過去は取り戻せないんだからね…、その時の寂しさとかは消えないんだから…」 俯く唯の頭にリトはそっと手を置いた 「…何?」 「取り戻せないし、消せないかもしれないけどさ、だからその分オレが思いっきりがんばるからさ! 責任取らなきゃ、だろ?」 「え…」 「心配すんなって! オレがゼッタイお前の中からその嫌な気持ち消してやるからさ!!」 「ま、また調子のいい事言って!! だいたい結城くんはい…つも…」 それ以上言葉が出てこなかった 目の前でニッと笑うリトの姿に息が止まりそうになってしまう まるでイタズラを考えている少年の様な笑顔 ふんわりと心にふれるその顔が、いつも唯の気持ちをあたためてくれる (もぉ…なんでいつもこうなのよ? それならそれで、もっと最初からちゃんと…) ゴニョゴニョと下を向きながら小さくなる唯の頭を、リトはニコニコしながら撫でている 次第に唯の肩がぷるぷると震え始めた 「もう! いつまでそうしてるつもり!? いい加減撫でるのやめてっ。私、子どもじゃないんだからね!!」 ムッと頬を膨らませる唯にリトは不思議そうな眼を向けた 「あれ? お前、こーやって撫でられるの好きじゃなかったっけ?」 「そ…それは……と、時と場合っていうものが…」 「嫌ならやめるけど?」 「う! …うぅ……い、今だけ許してあげてもいいわ」 「そっか!」とまたニコニコ顔で頭を撫でるリトに、唯の顔は真っ赤に染まる 何だかんだと最後はいつもリトに負けている事に、唯はこの時まだ自覚していなかった 「やっぱ唯ってかわいい」 「か、かわ…いい!!?」 「そ! 食べちゃいたいぐらいかわいいって思う」 「た、食べるとか……そ、そんな事ハレンチだわっ!!」 手の下で声をキツクさせる唯にリトは慌てて言いワケを始めた 「そーいう意味じゃねーって!! オレが言いたいのは…」 「同じよ事よ! だいたい結城くん。あなたさっきから私を子ども扱いばっかりして」 「子ども扱いって…」 唯は頭の手をパシっと払いのけると、そのままビシっとリトに指を指した 「ちょっとは反省しなさいよっ!!」 指を突き付けたまま唯はぷぅっと頬を膨らませる しばらくそんな唯を見つめた後、リトは小さく溜め息を吐くと、再び唯の頭に手をポンっと乗せた 「ちょ、ちょっと…」 「そうだよな。お前はオレの子どもじゃないもんな」 「え…そ、そうよ! わかれば…」 「だってお前は、オレの彼女で、一番大事なヤツで、一番大切な存在で、そして世界で一番大好きな人だもんな!」 照れくさそうに笑うリトから目を背けると、唯はまたポスンっとリトの胸を叩いた 「遅いわよ。言うのが…」 下を向きながらぼそっとそう呟く唯をリトは、抱き寄せた 胸にトンっと頭を当てながら、唯はリトの鼓動を感じていた ドクン、ドクンといつもより大きく聞こえるのは緊張と興奮の表れだ (まったく、ムリしすぎよ) そう思うも、リトの真心がこもった言葉に唯自身、いつも以上に胸は高鳴っていた ふっと顔を上げた唯とリトの視線が交わる 互いに頬を染めたまま見つめ合う事数秒、リトの目を見たまま唯が口を開いた 「私、甘いもの食べたい」 「へ? 甘いもの? いいよ! ってか、お前好きだもんな」 「うん。あと…行きたいところとか、見たいお店いっぱいあるんだけど」 いっぱいの部分にリトの顔が軽く引きつる 「いいんでしょ? 思いっきり甘えてもいいって言ったの結城くんなんだから」 「ま、まぁ…な」 「ん、じゃあ行くわよ! 結城くん」 そう言って離れようとする唯の腕を、ふいにリトは掴んだ 「え…なに…」 唯が言い終わるよりも早く、その体をぐっと引き寄せるリト 「コ、コラ! なに考えて…」 「キスしたい」 「え? キ…キス!? な、なに言ってるのよ? これから外に出かけるんでしょ?」 「わかってる! けどその前に…」 「ちょ…ちょっと待っ…ン、うンン」 抗議の声をその口で封じると、舌を絡めつつリトは唯の背中に腕を回した 唾液の糸を引かせながら離れていくリトに、唯はムスっと顔をしかめた 「どういうつもり?」 「ゴメン。ガマンできなくてさ」 「…それならそれで、ちゃんとしなさいよね!」 口調こそ怒っているものの、どこか表情がやわらかい唯にリトはホッと溜め息をこぼした 「じゃあ、あらためて…」 まっすぐに見つめるリトの目が唯の気持ちを捉える 「好きだよ唯」 わかってるわよ 「もう一人させないから」 信じてあげる 「オレがゼッタイお前のこと幸せにするから」 期待してるんだからね! 唯はリトの首に腕を回すと、そっと顔を寄せていく 好き 私も結城くんが大好き 誰よりも何よりも一番大切だから 私もあなたの事幸せにするから だから 私も結城くんのこと食べちゃいたいぐらい大好き!! 決して面と向かって言えない言葉を込めながら唯はリトと体を重ねていった それからおよそ二時間後、雨も上がり出かける準備の整った二人を出迎えたのは、帰って来た美柑とララだった 「唯! やっぱり来てたんだ♪」 「おじゃましてます」 ペコリとおじきをする唯の腕に早速ララが飛びついてくる そんな二人の横で美柑は冷めた目でリトを見ていた 「何だよ?」 何もわかっていない様子の兄に美柑の怒りはふつふつと煮えたぎっていく 結局その後、散々美柑からシャーベットの事を含めて文句を言い聞かされたリト そのリトと何をやっていたのかと楽しそうに聞いて来るララに真っ赤になりながらあたふたと慌てる唯 二人がデートに行くのはもう少し後になってからになった
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じ~… 「…むう~…」 ララがテレビの画面を見ながら何やら唸っている。 「何してんの?ララさん」 洗濯物を取り込んだ美柑はララに声をかけるが、ララは美柑の呼びかけに気付いていないようである。 「ラーラさん」 「ふえ?」 「ようやく気付いたね。何?料理番組?」 美柑の声にようやく気付いたララが美柑の方へと振り向く。 ララが見ていたのは料理番組で、シェフがおいしそうな料理を作っていた。 「あ~…うん…」 ララにしては少し歯切れの悪い返事をし、今度はララは美柑の方をじっと見つめる。 じ~… 洗濯物を畳み始めた美柑はララの視線に気付いた。 「どうしたの?私の顔に何かついてる?」 「…うぅん…」 「…?」 「はあ…」 ララはため息を一つついてリビングから姿を消した。 「どうしたんだろう?ララさん…」 美柑は少し心配になって、その夜リトにララのことを相談した。 「ララがなんか元気ないって?」 「そう。リトって最近ララさんの相手してるの?」 美柑はどうやらリトがララの相手を疎かにしていると思っているらしい。 正直なところ今一番体を重ねた相手はララで、彼女はいつも自分に甘えるだけ甘えてぐっすり眠っている。 それなのに美柑にそんなことを思われてはリトも心外である。 「相手してないわけないだろ。でもちょっと心配だな。あいつ思い詰めると何するかわかんないところがあるし…」 「まあ、気にかけといてね。じゃ、おやすみ」 美柑は部屋に戻るとベッドに体を投げ出してぼんやりと暗い天井を見つめた。 そういえばなんか私の方を見てため息ついてたような…。何だったんだろう…? 美柑はララのことを気にかけながらもそのうち睡魔に襲われ、深い眠りに落ちていった。 翌朝、美柑が朝食を用意していたときのことである。 いつもより早い時間なのにララがキッチンにやってきた。 「あれ?ララさん?まだ朝ご飯できてないよ」 「うん、わかってる」 「…?」 ララは何をするわけでもなく、美柑の方をじっと見つめている。 美柑はララに構わずてきぱきと朝食を用意していく。 その様子をララは食い入るように見つめていた。 そして朝食の時間、いつものように美柑、リト、セリーヌ、デビルーク三姉妹の六人が食卓を囲んだ。 味噌汁に口をつけたリトがふと口を開いた。 「お?美柑、味噌汁の出汁が今日はいつもと違うな」 「まあね。いつもとちょっと趣向を変えてみたんだ。いつもはかつおベースだけど、今日は昆布ベースに変えてみたの。だからいつもより甘口な感じかもね」 「でもうまいよ。これからもたまにこの出汁で作ってくれると嬉しいな」 リトがそう言うと美柑は得意げに笑って答えた。 「はいはい。そのうちね?」 「まうっ、まう~」 セリーヌは新しい出汁の味噌汁が気に入ったらしく、もう一杯目を食べつくして二杯目を美柑にねだっている。 「もう飲んじゃったの?セリーヌ。ちょっと待ってね」 キッチンのコンロに置かれた味噌汁の鍋に向かう美柑の背を見ていたリトはちらっとララの方へ視線を向けた。 ララはというと味噌汁を啜りながら何やら考え込んでいるような顔をしている。 いつもの彼女とは明らかに様子が違う。 「……」 ララは味噌汁を少し口に含むとよく噛むようにして顔をしかめるような仕草を見せ、それから味噌汁を喉の奥へ流し込んだ。 なんだかソムリエがワインの味見をしているような風にも見える。 そして朝食後、美柑が食器の片付けをしているところにララがやってきて突如こう言った。 「…美柑ってさ、リトのお嫁さんみたいだよね」 キッチンの中を沈黙が満たし、ララと美柑はお互いの目を見つめ合ったまま時が止まった。 そして… 「え?えっ!?な…何言ってんのよララさん!?」 美柑がひっくり返った声で沈黙を破ったが、ララは落ち着いたトーンのまま続きを口にする。 「だってさ、リトにご飯作ってあげたり、家こともやって、私はリトの恋人だけど、実質のお嫁さんはどう見ても美柑だもん」 ララはそこまで言ってはあ~と深いため息をついた。 それを見た美柑はララが落ち込んでいた理由がなんとなく見えてきていた。 「…私はリトが喜ぶ料理も作れないし、リトは美柑のご飯がやっぱり一番おいしいみたいだし…」 要するにララは自分がリトのお嫁さんとしてのスキルを備えていないのではないかと不安になっていたのである。 今朝味噌汁を妙な飲み方をしていたのも彼女なりに美柑の味を研究するためだったのだ。 「ねえ美柑…。私も美柑みたいになれるかなあ?」 子犬のような目でララは美柑を見つめるが、美柑はそうされても困るだけである。 「んー…、そう言われてもなあ…。じゃあさ、ララさん。リトが喜んでくれるように練習する?」 美柑はララの想いに負けてそう言った。 「私が教えるからさ」 美柑の言葉を聞いてララはぱっと明るい顔をした。 「本当?ありがとう、美柑!」 ララは飛び跳ねて喜び、その勢いでぎゅっと美柑を抱きしめる。 ララの胸に顔を埋める形になり、美柑はララから逃れようとする。 「ちょ…ララさんってば、苦しいよぉ…」 とは言えララの太陽のような笑顔に美柑のまんざらでもない気分だったので、少し彼女の好きなようにさせておくことにした。 そして夕飯前、ララはエプロンをつけて美柑とともにキッチンへ向かった。 「今日のメニューはリトの好きなから揚げと、ご飯、味噌汁、サラダね」 「…うん」 ララは美柑の教えてもらいながら作ることに緊張しているらしく、少し声も硬くなっている。 「そんなに緊張しなくても大丈夫だって。じゃ、始めようか」 ララは美柑に教えてもらいながら鶏肉の下味をつけていく。 一口大に切った鶏肉に粗引きにんにくと塩コショウ、少量の生姜で臭みをとって香りづけをし、衣をつけて油に入れていく。 決して手際が良いとは言えなかったがララの一生懸命さが見ている美柑にも伝わってくる。 真剣なんだな、ララさん… 美柑が鶏肉を揚げているララをじっと見つめていると、いきなり鍋の油が飛び跳ねてララに襲いかかった。 「あつっ!!」 「大丈夫!?ララさん…」 「あ、うん。平気だよ…」 水道の水で油のかかった手を冷やしながらララは笑った。 「代わろうか?」 美柑の申し出をララは断る。 「それはだめ。私がやらないと意味がないもん。いきなり美柑みたいにうまくはできないけど、それでも私が最後までやりたいんだ」 ララは手を冷やすともう一度鍋に向かう。 それを見た美柑は昼間ララが言った言葉を思い出していた。 私がリトのお嫁さんみたい…か… 実際のところ今の自分とララがしていることは、小姑が兄の嫁に兄の好む料理を教えている、ということである。 …リトってば本当にいいお嫁さんをもらったよなあ… 一生懸命鍋に向かうララをぼんやりと見つめながら美柑は心の中でそうつぶやいた。 ララだけではない。リトには他にも相手がいる。 でもその誰もがリトのことを任せられる女性だ。 美柑はもう納得したことのはずなのに、少しだけ寂しい気持ちになった。 私とリトは兄妹。一番近くにいるのに決して結ばれることはない… 美柑がぼーっとしていると、鍋の油がバチバチとけたたましい音を上げ始めた。 その音に美柑はハッと我に返り、ララに慌てて指示を出す。 「ララさん!もう肉を鍋から上げて!」 「えっ?う、うんっ!!」 ララが鍋からから揚げを上げると、衣は少し焦げてしまっていた。 そして夕食、リトは食卓に並ぶ少し焦げたから揚げを見て言った。 「珍しいな。美柑がから揚げに失敗するなんて」 リトはララが美柑と一緒にいた時間ずっと自室にいたため、このから揚げを作ったのがララだとは知らなかった。 「このから揚げね、ララさんが作ったんだよ」 美柑がそう言うとリトは驚いて目を丸くする。 「え?本当か?」 ララはリトの言葉に驚きだけではなく、警戒の意味も含まれていることを察知したが、笑顔を崩さずに口を開いた。 「大丈夫だよぉ。美柑に教えてもらって作ったんだもん」 「そうか?じゃあ…いただきます」 じっとララが見つめる前でリトはから揚げを口にする。 「…うまい…」 リトの口からこぼれるその言葉にララはこの上ないくらいまぶしい笑顔を見せる。 「やったあ!」 「本当にびっくりしたよ。まさかララの手からうまい料理が生まれるなんて…」 照れ隠しなのか冗談なのかリトがそんな言葉を口にすると、ララは少し唇を尖らせた。 「もう。私だってやればできるんだもん。失礼しちゃうなあ」 そう言いながらララは自分の箸でから揚げを一つ取り、リトに向かって差し出す。 「はい。リト、あーんして?」 少し照れくさかったが、リトはララが一生懸命このから揚げを作ってくれたのだと思うと断るのは悪い気がした。 ララに言われたとおり口を大きく開ける。 リトがララの箸に掴まれたから揚げを口に入れると、ララはほっこりとした笑顔になった。 次の日、美柑がいつも通り朝食を作りにキッチンに下りると、そこにはララがいた。 「おはようララさん。何してるの?」 「あ、美柑。今日はリトと二人でピクニックに行くからお弁当作ってるんだ」 ララは昨晩の料理でコツを掴んだらしく、昨晩より綺麗に揚がったから揚げをはじめおにぎりや野菜の煮物なども作っていた。 「ちょっと見た目は悪いけど、味は大丈夫だよ」 「へえ…。ちょっともらっていい?」 ララが味に自信があるようなので美柑もララの料理をつまんでみたくなる。 「いいよ。美柑の味にはまだ敵わないかもしれないけど」 確かに見た目はそこまで綺麗ではないのだが、味は確かだった。 美柑はララの上達ぶりに目を見張る。 「…すごいね、ララさん」 「えへへ~♪ありがとう」 今のララにはトンデモ料理を作っていたころの面影などどこにもなかった。 リトとララは町のはずれにある小高い丘のある緑地に来ていた。 丘の上の大きな木の陰に座って弁当を食べるリト、大きな麦わら帽子をかぶってリトに寄り添うララ、そして… なんでこそこそとついてきちゃったんだろ… 二人の様子を影から観察しているのは美柑だった。 美柑は二人に見つからないよう二人が腰を下ろしている位置と木を挟んで反対側に回り込む。 そうすると二人の会話が聞こえてきた。 「ララ、料理が本当にうまくなったよな」 「…美柑のおかげだよ。私思ってたんだけどさ、美柑ってリトのお嫁さんみたいだよね」 急にララがそんな話をし始めたのでリトも盗み聞きしている美柑も慌てだす。 「な…なに言ってんだよララ…。美柑は妹だぞ?」 「でも美柑はご飯作ったり家のことをしたりして、お嫁さんみたいじゃない?それに…」 ララが少し溜めを作ってから続けた。 「きっとリトのこと、誰よりも大切に思ってる」 リトはララの口から出てきた言葉に返す言葉を失う。 「だから美柑の料理をリトがとってもおいしそうに食べるんだろうなって、私ちょっと美柑が羨ましくなってさ。だから美柑に料理教えてって頼んだの」 「ララ…」 ララさん…そんな風に思ってたんだ… 「そうだな。美柑に大切にされてるの、すごく感じるよ」 「うん。だからリトも美柑のことをずっと大切にしてね」 ララはそう言ってリトに寄りかかる。 リトがララの肩を抱いていると、ララの頭から麦わら帽子が落ちた。 「ん?ララ?」 リトが見るとララは目を閉じて寝息を立てている。 どうやら早起きして弁当を作った疲れが出たようだ。 「やれやれ…」 リトはララの頭を膝枕してやり、そのままララが起きるまでこのままにしておくことにした。 美柑はそっとこの場を後にすることにした。 私はリトの妹、リトと結ばれることはないかもしれない でも私はリトの一番近くにいる 私とリトの距離だからこそ私はリトの優しさをずっと感じて生きてきた これからもそれは変わらないだろう その日の夜、美柑はリトを呼び出した。 「ねえリト。私とも今度ピクニックに行こうよ」 「うん?どうしたんだ?いきなり…」 リトは美柑からそんな申し出を受けるとは思っていなかったため、少し驚いている。 「なによ?ララさんとは行けて私とは行けないわけ?」 「いや…そうじゃないけど…」 「よし、じゃあ当日のお弁当は私のスペシャルメニューにするから、楽しみにしててね♪おやすみ、リト」 上機嫌で自室に戻っていく美柑をリトは無言で見送った。 「…なんなんだ、全く…」 そう言いながらリトも眠気を感じ、自室に戻った。 月光が夜空を照らし、兄妹はそれぞれの部屋から同じ空を見つめる。 月は太陽の光を反射して光っている。 リトと美柑の関係もそうかもしれない。 ただ、太陽と月の関係と違うのは、お互いがお互いの太陽であり、かつ月であるということ。 そんな考えが二人の頭をよぎったわけではないが、二人は優しい月光が照らす夜空を見ながらなんとなく優しい笑みを浮かべた。
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(だ、ダメ…) 案内されたリビングのソファーに座るなり、唯の頭の中は真っ白になっていた (ど…どうしよ…?) チョコはすぐ横に置いたカバンの中 さっきから全然構ってくれる気配のない唯にセリーヌが寂しそうにしているが、残念なが ら、今の唯にそんな余裕はなかった (と、とにかく落ち着いて! それから…それから…) チョコのことを考えるだけで、どんどん胸の鼓動が高くなっていく 手におかしな汗を掻き始めた時、唯は、ふるふると頭を振った 「何やってんだ?」 「え…!?」 急に話しをふられた唯は、つい間の抜けた声を上げてしまう 姿勢を正し、赤くなった顔を見せまいと、冷静さ装う唯 「べ、別になんでもないわよ…!」 「なら、いいんだけどさ…。にしてもウチの前でお前を見た時は、びっくりしたぜ」 「何よ…。私がいちゃいけないの?」 「い、いや、そーゆー意味じゃなくて…」 ムッと目を細めて睨んでくる唯に、リトは身振り手振り、言葉を探す 「じゃあ、どういう意味なのよ?」 「ほ、ほら、なんの連絡もなかったし! だからびっくりしったっつーか、うれしかったっつーか…」 「うれしい…?」 「だって思ってもいなかったしさ。お前がウチ来るなんて。驚いたけど、やっぱうれしいよ」 リトの言葉を聞いている内、唯の頬がみるみると赤く染まっていく 「そう…なんだ」 「あ、ああ」 妙な雰囲気の二人に挟まれて、意味もわからずセリーヌは、一人小首を傾げる 「まう?」 リトを見て、唯を見て そわそわしっぱなしの二人の様子に、セリーヌは大きな目をクリクリさせた 「え、えっと、それでなんか用があってウチ来たんだろ?」 「…べ、別に用とか…」 膝の上で組んだ両手に視線を下ろすと、唯はぽそっと呟く 「…結城くん…今日が何の日かわかってないのかしら…」 「え?」 「何でもないわよ…! でも…やっぱりあるというか…」 目はもじもじと合わさる両手。けれども、意識はすぐ横のカバンの中 「だ、だからね…ん~…」 眉を寄せて悩むこと数秒 「もぅ! 別に用がなくたっていいじゃない! それとも何? 用がないと会いに来ちゃダメなわけ?」 「そ、そーゆーわけじゃなくて…」 「顔…見にきただけでもいいじゃない! 声、聞くだけでも…」 「そりゃいいけど…」 半分本当で、半分ウソ リトとは毎日でも会いたいし、声だって聞きたいし、ずっとず~っと一緒にいたいと思う でも、今日は違う 今日は大切な理由で会いに来たのだ。とてもとても大切なモノを渡すために 唯はまた視線を膝の上に落した そんな唯に、リトは不思議そうな顔をする (う~ん…。また唯が難しい顔をしてる…。オレ何かしたっけ?) 頭を掻きながら、唯が何を考えているのか読み取ろうとがんばるリト いつもとは様子が違う二人に、セリーヌの目が好奇心でキラキラと輝く 隣に座っている唯の膝の上にセリーヌは、よいしょ、よいしょ、とよじ登ろうとする 「え…!?」 「まうー♪」 お日様のように輝く笑顔を向けてくるセリーヌに、唯は少しだけ硬くなっていた顔をほころばせた 「どーしたの?」 「まう、まう♪」 この日、初めて見せる唯の笑顔に、セリーヌも笑顔で応える 小さな笑顔と、大きな笑顔 二人のやり取りにリトも緊張がほぐれたのか、声を明るくさせた 「そーいやオレ、まだ何にも出してなかったよな。ゴメン! 何か飲む? つってもコー ヒーかジュースぐらいしかないけど」 「べ、別にお構いなく…」 咄嗟に出た声は、いつになく小さくて、リトの耳にちゃんと届いたのかどうか疑わしいほど すでにキッチンに向かっているリトの背中に、それ以上、声をかけられないまま リビングのドアを閉める音を聞きながら、唯は小さく溜め息を吐いた リビングには唯とセリーヌの二人だけ 唯はソファーに深く腰を沈めると、また溜め息を吐いた (…何やってるのよ私はっ…!? チョコを渡すだけじゃない…) けれども、その だけ が中々できない 好きな人に、改めて自分の気持ちを伝える事がこんなにも大変なことだとは、思っても みなかった 胸の中から溢れる想いも、言葉も、いっぱいいっぱいあるのに 照れくさくって、恥ずかしくて、声が震えて、言葉にできなくて 唯は膝の上のセリーヌに視線を落とした 何て言えばいいの? どうやって渡せばいいの? スキ…って、それだけでいいの? ってそんな事いえるわけないじゃないっ!! じゃあ…じゃあ…どうやって渡すの? なんて言えばいいのよ? やっぱりスキ…って? そ、それだけでいいのかしら? もっと他に…もっと ……大スキ…とか…? 答えの出ないまま、唯の目は宙を彷徨う 膝の上のセリーヌが不思議そうな目をしながら、一人真っ赤になっている唯の顔をジッと見つめている 唯は弱々しい笑みを浮かべた 「何でこんなことも出来ないのよ…! 私のバカ…」 「まう?」 セリーヌと満足に話すことも、相手をしてあげることもできない 自分のことでいっぱい そんな状況でも、セリーヌは相変わらず屈託ない笑みを唯に浮かべる 「まう~♪」 「セリーヌちゃん…」 キラキラと輝くその笑顔は、真っ直ぐ唯に向けられる 唯の目に映るセリーヌの姿に、ふとリトの顔が重なった 「そっか…」 自分の一番好きな顔――――リトの笑顔と、少し似ている気がするセリーヌの笑顔 唯の堅くなっていた気持ちが、ほんの少しだけど、溶けていく 「……そうよね…! 今日は、私ががんばらなきゃダメな日なんだから…」 唯はそう言うと、セリーヌの頭をそっと撫でた セリーヌの満面の笑顔に、唯もつられて笑顔になる その頃、リトは―――― 「う~ん…」 冷蔵庫からジュースを取り出しながら、難しい顔をしていた 原因はもちろん唯 今日、ウチの前で会ってからというもの、唯の様子がおかしい コップにジュースを淹れる手を止めると、リトは眉を寄せた 「何かオレ…怒られるようなことしたっけ…?」 「お待たせ!」 ガチャっとドアを開け、コーヒーを乗せたトレイを手にリトは戻ってきた 「!!?」 リトの姿を見ると、物憂げだった表情が一変、唯は慌てて姿勢を正す 「どした?」 「な、何でもないわよ…!」 「まう~…」 心の準備がまだ完全に出来ていない唯に、セリーヌは心配そうに声をかける 「…ま、とりあえず、コーヒーでよかった?」 「あ…ありがと」 「セリーヌはオレンジジュースな」 「まう♪」 子ども用のコップを両手で持つと、セリーヌはおいしそうにゴクゴクとジュースを飲み始める その横で唯はコーヒーカップを手の中で回しながら。そわそわと渡すタイミングを探し続ける 「ん? もしかして熱すぎた? 気をつけてたつもりなんだけどな…。冷ましてこようか?」 「い、いいわよ別に…! コレでいいの」 「そっか。ってセリーヌお前な…」 ぷはーっ! と一気にジュースを飲み終えたセリーヌは、ご満悦な顔でリトに笑いかける 正し、コップからこぼれたジュースで口元を汚しながら 「ったく」 「いいわよ! 私がするわ」 唯はそう言うと、カバンからハンカチを取り出して、セリーヌの口元を拭いていく 「ごめん。あとで洗って返すよ」 「気にしないで。これぐらい」 唯の対応はテキパキとしたもので、セリーヌも嫌な顔せず黙って従っている そんな二人の光景に、リトはふっと表情をやわらげた (なんかいいな…。こーゆーの) 「…こんな感じかな? ハイ、もういいわよセリーヌちゃん」 「まう♪」 ニッコリと笑うセリーヌに、リトは少し声のトーンを下げた 「コラ。ちゃんとありがとうしなきゃダメだろ?」 「まうー…」 可憐な顔を曇らせながら、セリーヌはしゅん…、と肩を落とす そして、ペコリとおじぎをすると、可愛い眉を寄せて唯の様子を窺う 「だ、だから別にいいんだってば! 結城くんも、そんな風にセリーヌちゃんをイジメ ないでよね!」 「いや…誰もイジメてるわけじゃねーんだけど…」 いつの間にかセリーヌから自分に矛先が変わっていることにリトは顔を苦くさせた 唯に両手を握ってもらって、ソファーの上をピョンピョン飛び跳ねる楽しそうなセリーヌを 見ていると、ふと思う (もしかして唯って、子ども好きなのかな…?) 自分には見せてくれる素振りすらない笑顔を浮かべながら、セリーヌと遊ぶ唯に、リトは 少し複雑な気持ちになってしまう (もうちょっとオレにも優しくとかしてくれればな…) お茶を飲んだり、他愛無い話しをしたり、セリーヌと遊んだり いつもと変わらない、少しだけ騒がしくて、だけどあったかい時間が流れる (…にしても、唯の用事って何だ?) それでもやっぱり気になるのは、唯のこと 怒られる覚えも、お説教される覚えもない――――はず コーヒーカップに口を付ける唯の横顔をボーっと眺めていると、リトの目に不吉な光景が映る 「お、おい! セリーヌ!?」 「え…?」 リトと、横を振り向いた唯の視線が交わるところ――――セリーヌが、唯のかばんの中を 覗きこみ、それを頭からかぶろうとしていた 「ちょ…」 腰を浮かし、手を伸ばして止めようとするも、すでに遅い ドサドサと、頭からカバンの中身をかぶったセリーヌが、キョトンとした顔でリトを見つめる 「まう?」 「ったく…。ごめん、唯」 「い、いいわよ…! それよりも大丈夫セリーヌちゃん? どこもケガしてない?」 「まう!」 と、元気にニッコリとほほ笑むセリーヌに、唯は安堵の溜め息を吐き、リトは深い溜め息を吐いた 「ホント、ごめん。後でちゃんと言っておくから…」 「気にしないで」 散らかった化粧品や、財布を拾い集める二人を余所に、セリーヌは一点を凝視していた 自分の小さな両足の間に落ちてきた、一つの箱 それはセリーヌの両手よりも少しだけ大きくて、ピンク色のラッピングペーパーに、ハート がいっぱい散りばめられたリボンでキレイにラッピングされていた 「まう…?」 両手で持ち上げ、ブンブンと振ってみると、中から小さな音が聞こえてくる 上から覗いたり、ひっくり返してみたり カワイイ箱に興味津々なセリーヌは、床に落ちたリップクリームを拾っていた唯に、溢れる 笑顔で箱を差しだす 「まう♪」 「あ、ありがとセリーヌちゃん! 拾ってく……えっ!?」 手渡されたモノに唯は絶句した 「こ、コレ…」 「まう?」 箱を手に固まる唯をセリーヌは、クリクリした目で不思議そうに見つめた 「…コレで全部だと思うけど一応、確認して…ってどーしたんだ?」 「え…!?」 床に散らばったヘアピンを拾い集めてくれたリトと、唯の視線が合わさる 唯は、瞬時に顔を真っ赤にさせた。そして、チョコを後ろ手に隠してしまう 「どしたんだ?」 「そ、その…コレは…」 急にもじもじとしだす唯に、リトは目を丸くさせる 「も、もしかして何か壊れたとか!?」 「ち、違っ…」 「セリーヌ!? お前な…」 「ま、まうー…!?」 リトに怒られると思ったのか、セリーヌは一目散に唯の後ろに隠れてしまう 「セリーヌ!」 「まう…」 唯の腰のあたりからひょいっと顔を覗かせながら、リトの機嫌を伺うセリーヌ 唯のスカートを握りしめる小さな手に、力が入る 「ったく…」 頭をガリガリ掻きながら溜め息を吐くリトに、唯は慌てて声を上げた 「ち、違うの! セリーヌちゃんは関係ないのっ!」 「え? でもセリーヌのせいで何か壊れたとかじゃ…」 「だから違うってば! ホントに何でもないのっ! 何でも…」 唯の声はどんどんと小さく、最後は消えてしまい、リトからふっと視線を逸らした 「…まー、大丈夫ならいいんだけど。すごい大事そうなモノだったからびっくりしたぜ。 ところでアレって何なんだ?」 「えっ!?」 箱を持つ手に力が入る 心拍数がみるみる上昇し、頭の中が真っ白になっていく 「こ、コレはその…」 「?」 キョトンとした顔で見つめてくるリトの視線が、矢となって唯の胸を射抜く ドキン、ドキン、ドキン 胸の音がバカみたいに大きく、はっきりと聞こえる 「えと……もしかして、聞いちゃマズかったとか…?」 チョコの箱を持ったまま、何も言ってこない唯に、リトは頬を掻きながら気まずそうに口を開いた 「気にさわったんなら謝るよ! けど、すごい…大事そうに見えるからさ」 「だ、大事なのは大事なんだけど…」 二人の視線は一瞬重なり、また解ける 好奇と戸惑いと疑心と躊躇いと いろんな視線が混じり合う中、そこに一つの視線が加わる 「まう」 目の前にある、キレイな紙に包まれた小さな箱 セリーヌの小さな手が伸び、唯に「これはなんなの?」と、しきりに目で訴えかける 「お、おい。セリーヌ!」 セリーヌが何かしでかす前に、リトはセリーヌをひょいっと抱き抱えると、自分の膝の上に座らせた 「ダメだろ? あれは、唯の大事なモノなんだぞ?」 「まうー…」 指を口に咥えながら、セリーヌは残念のそうに顔を曇らせた リトはセリーヌを横に座らせながら、視線を再び唯に戻す 「わるい。へーきか?」 「え、ええ…」 と、小さく返事をしながら、唯の指が箱を彩るリボンに触れる 真っ赤なリボンには、大小さまざまな大きさのハートが散りばめられている それは少しでも多く、自分の気持ちを知ってもらいたいと想う、唯の女の子心だった 白い喉にコクンと唾が落ちていく 手にしっとりと汗が浮かぶ 下唇を噛み締め、ギュッと目を瞑りながら 唯は、自分の中の勇気を全部集めて、口を開く 「結城くん!」 「え…?」 セリーヌの服を直していた手を止めると、リトは唯の方を向いた 唯の胸の音がトクンと一つ大きくなる 「そ、その…」 「ん?」 真っ直ぐなリトの視線は、唯の胸をキュンキュンと撃ち抜く (だ、ダメ…! やっぱり言えない…!) 噛み締めた唇がキュッと小さな音を立て、チョコを持つ手が震える 喜んでくれるかな おいしい! って言ってくれるのかな 私の気持ち、ちゃんと届くかな スキって…大スキって、ちゃんと―――― 「その…」 目に熱いモノが込み上げてくる 唯は目をギュッと瞑った (もう…! チョコを渡すだけなのに何やってるのよ…!?) 俯き、呟く唯。そんな唯の手の上に、小さな手が重ねられる 「え…?」 目を開けると、まだ幼い、けれども、真っ直ぐな大きな瞳がジッと自分のことを見つめていた 「セリーヌ…ちゃん?」 「まう」 セリーヌは一言そう言うと、ニッコリと笑った 自分の一番好きな笑顔と少し似たその笑顔は、まるで「ガンバれ!」と言ってくれているようで 「…ッ…」 震えていた手がピタッと止まる 「唯…? ホントにどーし…」 「聞いて!」 唯は真っ直ぐにリトを見つめた そして、想いを口にする 「…こ、コレ! ……あげる…」 「え?」 唯は両手で握りしめたチョコをリトの前に出した 真紅に染まった顔をふいっと逸らしながら、すでに目はリトを見ていない。見ていられない 「えっと…」 「……ッ」 部屋の中に沈黙が訪れる どちらも無言 「まう?」 と、セリーヌが首を傾げる 早く、受け取りなさいよねっ! と、喉まで出かかった言葉を無理やり奥に押し込めると、唯は、意を決して想いを告げた 「ば、バレンタインのチョコレート! 受け取ってほしいの! 結城くんにっ!」 言い終わった瞬間、唯はギュッと目を瞑った やけに心臓の音がはっきりと聞こえる ドキ、ドキ、ドキ、ドキ――――まるで世界にたった一つだけの音の様な (早く、早く、早く…もぅ! 早く何か言いなさいよね!) リトからの返事は一秒、二秒、あるいは永遠にも感じるほど長く感じた そして、その反応は思ってもみなかったものだった かすかに聞こえる、クスっと笑ったような声に、緊張の糸が切れたのか、唯は思わず 声を大きくさせた 「な、何よ!? どうして笑うわけ? 何かおかしな事いった?」 「い、いや、そーじゃなくて…」 リトの声はあきらかに上擦っていて、そしてどこか戸惑っている様にも聞こえる それでも唯は追撃の手をゆるめない 精一杯、強がって、声にトゲを含ませる 「何よ…? 言いたいことがあるなら、はっきり言いなさいよっ!」 「い、いやその…なんつーかホッとしたってゆーか、びっくりしたってゆーか…」 「何よソレはっ! 私はねっ…」 要領を得ないリトの態度に声を大きくしようとした時、リトが待ったをかける 「そ、そーじゃなくて! なんかホントにスゲーうれしくってさ…」 「え…?」 「唯がチョコくれるだなんて思ってなかったし…。だからホント、スゲーうれしくて…け どびっくりもして…。うまく言葉にできないけど、とにかく、ホントにホントにうれしいんだ」 リトはニッコリと笑った。照れくさそうに、恥ずかしそうに だけど、本当に心からうれしそうに 唯の思考がそこで一旦、停止する そして、止まった思考の代わりに胸がキュンと音を立てる キュンと鳴った音は次第にドキドキに変わっていき、唯の顔をみるみると赤く染めていく 「な、な、ななな…」 「と、とにかく、サンキューな! 唯」 リトは唯の手からチョコを受け取った うれしそうにチョコの入った箱を見ているリトを前にしても、唯は口をぱくぱくさせる だけで、しばらく動けなかった 「まう~」 キラキラと好奇心いっぱいに輝く目をしたセリーヌが、チョコの箱を欲しさに、リト の手を引っ張る その光景に、ようやく唯の長い停止状態が解けた 「そ、そんなにうれしいうれしいとか言わないでよねっ!! ちょっと大袈裟すぎるわ! それにチョコの一つぐらい言ってくれれば、いつだって作ってあげてもいいと言うか…その…」 最初の勢いはどこにいったのか。どんどん声は細くなり、最後は消え入りそうな声で、 ごにょごにょと話す唯 さっきまで持っていたチョコがなくなり、手持ち無沙汰になった両手をもじもじさせな がら、唯はチョコを持つリトをジッと見つめる その視線に気づいたのか、リトは唯とセリーヌを交互に見ながら、ニッと笑みを浮かべる 「ところでさ。このチョコ今から食べていい?」 「え、ええ。もちろんよ」 「唯も食べるだろ?」 「え? 私!?」 唯は不安で揺れていた目を大きくさせた 「そ! 唯とセリーヌとオレの三人で! ダメか?」 「だ、ダメとかじゃなくて私は別に…」 「まう?」 唯とセリーヌの二人は、目を合わせる その期待に満ち満ちたクリクリの大きな瞳に、唯は淡い笑みを浮かべた 「ええ、いいわよ! 三人で食べましょ」 「まう~♪」 「じゃ、決まりだな!」 コーヒーを淹れなおし セリーヌ専用のコップにおかわりのジュースを淹れて セリーヌを挟んで、リトと唯は、チョコを口にする (喜んでくれたかな…結城くん…) セリーヌとチョコを半分こしているリトの横顔を見ながら、自分もチョコをぱくっと一口 最初は苦くて、少しずつ甘くなるミルクチョコをもぐもぐしながら、唯は淡い期待を 抱きつつ、リトの感想を待った そして―――― 「うま、うま…」 夢の中でもチョコを食べている最中なのか。幸せそうな顔をしながら、すやすやと気持ち よさそうな寝息を立てるセリーヌに、リトは顔をほころばせた そっと頭を撫でると、寝返りをうったセリーヌがリトにピトっとくっつく 「まう…」 「ホント、よく食って、よく寝るよな。お前は」 セリーヌの寝顔に笑みを浮かべていると、キッチンからパタパタとスリッパの足音が聞こえてくる リビングに顔を見せたのは唯だ エプロンを着け、髪を白いリボンで一つに纏めているいつもと違った唯に、リトの心臓が ドキっと高鳴る (なんかいつもと全然違って…) 「とりあえず、コーヒーカップとかは洗ったけど、ほかに洗ったりするモノはある?」 「……」 「結城くん?」 こちらをボーっと見てくるだけで全然反応がないリトに、唯は溜め息を吐くと、スリッパ を鳴らしながらリトの前に歩み寄る 「ちょっと結城くん、さっきから訊いてるんだけど? なんとか言ったらどうなの?」 「へ…!?」 目の前に来たエプロン姿の唯は、少し遠くで見るよりグッと大人っぽくて リトは自分の顔が熱くなっていくのを感じながら、慌てて返事を返す 「い、いや、別にないんじゃないかな? はは…」 どう見ても怪しい、誤魔化し笑いにしか見えないそれに、唯は溜め息を吐く 「どうせまたハレンチなことでも考えてたんでしょうけど…」 「ち、違っ…」 心地よさそうなセリーヌの寝息にお互い、それ以上は強く言えない 唯はもう一度軽い溜め息を吐くと、胸のあたりで腕を組んだ 「…ま、この事はまた後でちゃんと訊くとして…」 「何だよ…?」 腕を組んだまま、唯の目がジト目に変わる 「あなたって本当に呆れるわね…! まさかホントに、今日が何の日か忘れてたなんて…」 「し、仕方ねーだろ…! バレンタインとかオレには、あんまり関係なかったんだから…」 唯から目を逸らしたリトは、テーブルの上の空になったチョコの箱を見つめながら、少し口籠る 「いつも、美柑がくれるだけだったしさ。だから、唯が初めてだよ。こんな風にチョコくれたの」 「そう…なんだ?」 自分が初めて なんだか寂しそうなリトの横顔にも、少しうれしく感じてしまうのは、唯だけの秘密 唯は赤くなった自分を誤魔化すように、コホンと咳ばらいをした 「そ、それで、どう…なの?」 「どうって?」 「チョコよチョコ! チョコの感想よ! まだ何も訊いてないわ」 唯の目は真剣だ 授業中よりも、勉強中よりも、風紀活動中よりも、ずっとずっと 「答えて!」 いつの間にか、自分が両手を握りしめていることにも唯は気づかない いろんな意味での初体験 感想が気になって気になってしかたがない 「うまかったよ」 そんな唯の気持ちにも、表情にも、目もくれず。リトはセリーヌの頭をよしよしと 撫でながら、素っ気なく応える 暖房が利いているはずのリビングに冷たいナニかが生まれた ふと唯の方を見ると、唯の目が怖いぐらいに細くなっている 「な、何だよ?」 まだよくわかっていないリトに、唯は氷のような視線を突き立てた 「…結城くん。さっき、うれしいとか言ってたけど、アレ…本当なの?」 「なっ!? ホントだって! 当たり前だろっ!!」 疑いの眼差しを向けてくる唯に、リトは慌てて反撃する 「ふ~ん…。その割には、ほとんどセリーヌちゃんにあげてた様に見えたけど?」 「そ、それは…」 「セリーヌちゃんも喜んでたし、それはそれでうれしいんだけど…」 ずいずいとリトに詰め寄りながら、唯の口調は変わらない。目も逸らさない 「あなたが、ちゃんと食べてくれないと意味ないんだからねっ! 私は、あなたのために 作ったんだから!」 腰に手を当てながら話す唯は、怒っているというよりは、拗ねているようにも見える そんな唯に、リトは溜め息を吐いた 「ホントにうまかったって! オレが今まで食べた中で、一番うまかったよ!」 「ホント…?」 不安いっぱいの眼差しを向けながら、唯はもう一度、同じ質問を繰り返す 「ホントなの?」 握りしめた両手は、その力の強さだけ、想いの強さを物語る 唯の片膝がギシっと音を立てて、ソファーの上に乗った 「ホントにホントなの?」 「だ、だから…」 二人の距離は、お互いのちょっとした息遣いも聞こえてくるほど近い いつもなら、真っ先に赤面してしまう唯よりも、今はリトの方が赤くなっている リトは間近に迫る唯に気押されながらも、必死に言葉を探した 「ちょ…ちょっと落ち着けよ!」 「うるさいわねっ! あなたがちゃんと応えてくれないからいけないんじゃない!」 いつになく一生懸命な唯の目は、今の気持ちを表わすかの様にゆらゆらと揺れる 感想を早く聞きたい一心で、だけど、不安で押しつぶされそうで 黒い瞳に、涙をいっぱい湛えてジッと見つめてくる唯を、リトも同じように見つめ返す 「ちゃんと応えてくれるまで許さないからね!」 「だ、だから…」 「余計なことなんか聞きたくないわ! 私はチョコの感想を聞いてるだけなんだから! ちゃんと応えなさいよ! わかってるの結城くっ…え―――!?」 グイッとさらにリトに迫ろうとした時、ふいに唯の体が傾く 膝をソファーの上に不安定に乗せていたせいか、バランスを崩してしまったのだ 「キャッ…―――!?」 「う、うわっ!? ちょっ…」 バフっと音がなり、気づくと唯は、ソファーにリトを押し倒していた 「え…えと…」 「……ッ」 唇が触れるか触れないかの距離で二人は、目にいっぱいに映るお互いの顔をまじまじと見つめた ジッと見つめながら状況の確認。そして、次第に理解が広がると同時に、みるみると唯の 顔が赤くなっていく 触れなくてもリトの体温が感じられる距離で、唯はリトの顔から目を逸らすことも、離れ ることもできない 見つめ合ったまま数秒。ポトッと、唯の目からこぼれた水滴が、リトの頬を濡らす 「ゆ…い?」 「!?」 唯は慌ててリトから離れると、袖でゴシゴシと目を擦った 袖の隙間から時折、見える真っ赤になった目に、リトは上体を起こすとそっと唯の頬に 手を伸ばした 「なに…よ? べ、別になんでもないんだからっ…! ちょっと目にゴミが入っただけで …それだけで…あれ? 何で…何で…」 話しているそばから、唯の目からぽろぽろと涙が溢れ、袖を濡らしていく 戸惑いと、驚きで、微かに震えるリトの指先に何を感じたのか、赤くなった目と同じぐらい 頬を赤くさせた唯が、バツが悪そうにムッと睨んでくる 「何よ…?」 (…ホントに、ホントに、スゲーがんばって作ってくれたんだな。チョコ) リトはそっと唯の頬に触れた 触れた拍子に溢れた水滴が手の平の上を伝う 唯は、リトの手を払いのけると、慌てて袖でゴシゴシと涙を拭った 「何のマネよ!? 言っとくけど、こんなことしたって誤魔化されないんだからねっ」 目をムッと細めて怒る唯の頬に、リトはまた手を伸ばす 「いい加減にっ…」 「うまかったよ! 唯の作ってくれたチョコ」 「え…?」 その一言は、唯の胸をキュンと響かせ、何も考えられなくしてしまった 振り上げた手は、行き場を失い、宙を彷徨い、そして膝の上に落ちていく 真っ白になってしまった頭を再び動かそうと唯は、目をパチパチさせた 「な、な、何いって…」 「また作ってくれよな! その…来年も」 「来年…も?」 「ああ。スゲー楽しみにして待ってるからさ」 と、ニッコリ笑いながらリトは言ってくれた 恥ずかしそうに、照れながら、唯の大好きないつもと同じ魔法を込めて 「……」 唯はリトの顔を見つめたまま、動けないでいた ずっとずっと欲しかった言葉。聞きたかった言葉。何度も何度も 頭の中では、リトの声がリピートし続けている さっき、チョコを受け取ってくれた時の、何十倍ものうれしさで、思うように言葉を紡げない 胸の中がキューっとなって、顔がヤケドしそうなほど熱くなって、目もうるうると揺れて 目の前でニッコリと笑うリトに、花が萎れていくようにくてっと体の力が抜けていく 唯はリトの胸にトン、と頭を当てた 「え…?」 唯の行動に今度は、リトが言葉を失う (あ、あれ? オレまたなんか余計なこといったのか? さっきのってフツー…だよな…?) リトの フツー はいつも唯に特大の破壊力を与える そのことにリト自身まるで自覚がない 相変わらず鈍いリトと、いつまで経っても素直になれない唯 重なりそうで、重ならない気持ち だからこそ、一瞬でも重なった時の破壊力はとても大きくなる 「えっと…」 「……ッ」 リトは唯をどうしていいのかわからず、両手の在りかを探して、彷徨わせてばかり 唯はおデコでリトのぬくもりを感じつつ、目を瞑っていた (結城くんの匂いがする…) その気持ちは今の状況には、ひどく見当はずれなように思える それでも感じずにはおられない 目を閉じると、ずっと大きくなる大好きな匂い。次第に気持ちが落ち着きを取り戻し始める 唯はリトの服をクシャっと握りしめた 「ゆ、唯…?」 「…また作ってほしいんだ?」 「え…」 「また作ってほしいの? って訊いてるのよ」 胸に頭を預けたままの唯の顔はリトからは見えない リトは言葉に詰まりながらも、なんとか上ずった声で返す 「そりゃ作ってほしいって思ってるけどさ…。その…お前がよければだけど…」 「……じゃあ一つだけお願いきいてくれたら、考えてあげてもいいわよ」 「お願い? 何だよ?」 頭を胸から話すと、唯はゆっくりと上目遣いでリトを見つめた 上気した頬に、少しゆらゆらと揺れる黒い瞳に、リトは息を呑んだ (な、なんかすごい…) ゴクリと喉に唾が落ちていく音を間近に聴きながら、唯は視線を逸らさない ジッと覗きこんでくるその瞳は、どんどんリトを捉えて離さない 唯は、薄いサクラ色をした唇を開き、囁いた 「キス…して」 小さな、小さな囁き 時計の針の音よりも、隣で寝ているセリーヌの心地いい寝息よりも けれども、リトの耳にははっきりと聞こえる声 「キス…?」 「うん」 頷くと、前髪が揺れ、唯の顔に影を生む 「え、えと、キスしてって聞こえたんだけど…?」 「そうよ…。ダメなの?」 「い、いや! ダメとかじゃなくてっ!」 考えるどころか、想像すらしていなかった唯の言動に、リトは軽い衝撃を受けた そして、受けたと同時に、一つだけわかった事がある 今まで唯が抱えていた不安 自分の「おいしい」ってたった一言が聞きたくて。何回でも聞きたくて だけど、我ままを言えなくて、甘えることができなくて リトは指で顔にかかった唯の前髪をそっと掻き分けていく 「んっ…」 「そ…その、じ、ジッとしてろって! 目に入ったらどーすんだ?」 前髪と指の隙間から見える、リトの顔は、すこし、ほんの少しだけさっきよりもカッコよく 見える。唯の視点限定で 抗議の声を奥に引っ込めると、唯は黙って髪をリトに整えてもらう 結城くんの膝の上 結城くんの匂いも、あったかさも感じられて 結城くんの顔が一番近くから見える、特等席 私だけの―――― ジッと見つめてくる唯に気づくことなく、リトは髪をセットし終わると、両手で唯の ほっぺを包んだ 「終わり」 「うん…。ありがと」 「じゃあ…しよっか? そ、そのき、キス…」 「なっ、何よソレはっ!? もっと気の利いたセリフとかないわけ?」 「うっ、ごめん…」 「もぅ! さっきまでのカッコよさはどこにいったのよ…! そ、その…ちょ…ちょっとだけだけどね…」 すっかり上気して熱くなった唯の体温を手の平で感じながら、リトは眉を寄せて考える そして、精一杯の言葉を探し、伝える 「じゃあその…うまく言えるかどーかわかんねーけど…。オレ、またお前の作ったチョコが 食べたい! 来年も再来年も、この先ずっとずっと! オレがお前のチョコ独占した い! ってダメ?」 「…なんかいろいろと余計なモノが入ってるんだけど…?」 唯の指摘にリトは顔を顰めた 「ご、ごめん…!」 「…ギリギリ許してあげる」 唯はリトの言葉を遮るように、自分の言葉をかぶせると、リトの首筋に腕を回し顔を寄せる 「ちょ…唯!?」 「ダメ…。待てないわ」 会話は一瞬 甘いに香りと共に、リトの唇にやわらかい感触が触れる 「ん…んっ…」 触れ合うだけのキスは、一秒、二秒… 長い睫毛を揺らしながら、唯は少しだけ目を開けてみた 目の前いっぱいに映る、リトの顔 まだ戸惑っていて、だけど一生懸命で (結城くん…) 腕の力が強まり、互いの距離がさらに近づく (結城くん…) 胸と胸が当たり、お互いの胸の鼓動が相手にも伝わる 胸の音と、気持ちが重なって、溶け合って 甘い甘いチョコのような世界の中、唯はもう一度、気持ちをリトに届けた (結城くん…世界で一番…大スキ…!) 唯は腰を浮かせると、リトに自分の体を完全に預けていく 「ちょ…ちょっと待っ」 「んっ」 キスを続けたまま、唯はリトをまたソファーの上に押し倒した 上下で見つめ合う、二人 唯の髪がはらりと落ち、リトの頬を撫でていく 「えと…唯?」 「何よ」 「何って…。今の状況わかってる?」 「わか…わかってるわよ! でも仕方ないじゃないっ」 どんなに強がっていても、声も体も小さく震えてしまう 下唇を噛み締める唯の顔は、赤というよりも、真紅に近い 「だ、だって…だって…スイッチ入っちゃって…」 「スイッチって…」 リトはすぐ隣ですやすやと寝息を立てているセリーヌの様子を反射的に見た 「ま、待てって! とりあえず…」 「嫌よッ!」 唯の両手は赤くなるほど、リトの服を握りしめている まるで離れたくないと言っているように 「私だって…私だって…」 「唯…」 吐息が触れ合うほどすぐ近くで、唯は睦言のように繰り返す 唯は真上からリトの目を見つめた 前髪で隠れていた顔が見え、唯の濡れた瞳と赤く染まった頬がリトを捉える 「結城くんのお礼がほしいの…今すぐ」 「お礼…?」 今にも泣き出しそうな顔と声で、唯は精一杯の強がりを口にする 「そうよ。言っとくけど、ホワイトデーまでお預けとかなしだからね! 待ってあげないからっ」 そう言うと、唯はリトに体を重ねてきた さっきよりも強く、いつもより少し強引に 唯の全体重がリトにかかる 柔らかい胸の感触よりも、唯の体の重さがとても気持ちいい それは幸せの重さだから 耳元に唯の少し熱っぽい息遣いがかかる リトの頬に長い髪を落としながら、唯は顔を上げ、真上からリトの顔を見つめた 吸い込まれそうなほどキレイな黒い瞳に見つめられ、リトは唾を呑み込む そして、それは唯も同じ いつも以上に赤くなった顔に、緊張と恥ずかしさで、体が小さく震える それでもリトから視線を逸らさないのは、大好きな人の顔を一番近くで見たいから 結城くんの顔が好き 驚いた顔も、戸惑った顔も、困っている顔も、寂しそうな顔も、一生懸命な顔も みんな好き 笑った顔が一番だけどね 心の中でそう呟きながら、唯は何も言わず、けれど少しだけ躊躇いながら、リトに顔を寄せた 唇が浅く触れ、そして、深く重なる 「ん…あふ」 腕を首に背中に回し、脚を絡ませ合って、もっと深く体を寄せ合う 「んん…んっ」 口元からこぼれる唾液すら愛おしいのか、舌ですくって、また求め合う 唯は一度、顔を離すと、そっと自分の唇に指を当てた 「…チョコの味がする」 「そりゃさっきまで、チョコ食ってたからな」 「そうだけど…」 物憂げな表情のまま、唯の指が唇のラインに沿って這わされる 睫毛を揺らしながら、唯はジッとリトの顔を見つめた 「何だよ?」 「…結城くんのがいい」 「は?」 「結城くんの味がいいって言ってるの」 「オレの?」 コクン、と頷き、また目が合った時、唯の顔は真紅に染まっていた 触れなくてもわかる、その沸騰具合に、リトは苦笑した 赤い頬に手を当てながら、リトは唯の瞳をジッと覗きこむ 「じゃあ、味がかわるぐらいしなきゃな!」 「うん……して」 迷いも、戸惑いもない。あるのは好きな人の顔だけ 二人の唇は再び重なり、お互いの唇を貪る 舌を絡ませ合って、唇に吸い付き、唾液を送り込み 「…んっ…結城くんの味がする…」 「オレも唯の味に変わった…」 「ハレンチな」 くすぐったそうに笑いながら、唯はおデコをリトのおデコにくっ付ける 「ねェ、もう一回」 「もう一回?」 「うん…。また、結城くんの味が欲しいの」 目にいっぱいに映る唯の幸せそうな顔に、リトは自然と笑みを浮かべた そして、またキスを繰り返す 何度も求め、何度も絡め合い、何度も味わいながら 強く強く、体を抱き合って、脚を絡ませ合って 銀の糸を引きながら、二人は顔を離す リトの手がスカートの中に伸び、唯のショーツを掴む 「や…っ…」 「ダメ?」 「…いちいちそんなこと聞かないでよね…! バカ…」 ツンとそっぽを向ける唯に苦笑しながら、リトはショーツを脱がしていく この日のために新しく買ったのか。青と白の縞々のショーツに、唯は恥ずかしそうにリトの 胸に顔をうずめた 脚を広げさせ、割れ目に手を当てると、そこはもうグッショリと濡れている 「すご…今日はいつもより濡れてる」 「ば…バカ…ぁ…そんな恥ずかしいこと言わないでっ」 秘所に触れる手の感触に、唯はリトの服を握りしめる クチュクチュ、と水音がなり、唯の息を熱くさせた 「は…ァ…んっ…はぁ…」 割れ目を親指と人差し指で広げられ、膣内に指が入ってくる 唯は目をギュッと瞑った 狭い膣内を押し広げられる感触が、唯の肩を小刻みに震えさせる 「は…ぁっ…んっ」 透明だった蜜は、いつしか白に変わり、リトの手を濡らしていく 下腹部を覆う快感に、唯はお尻をピクンと震わせた 「やぁ…っ…はぁっ…」 口からこぼれた涎が顎を伝い、リトの服を汚していく 半開きの口からはみ出た舌が、何かを求めるかの様に小刻みに震える 唯はリトの首に腕を回し、ギュッと抱き付いた 「もっ…もう…イクぅっ…!」 耳元に直接伝わる熱い息遣いと、卑猥な言葉に、リトの指が激しさを増した 二本だった指は三本に増え、膣内を掻き回し、責め立てる 「唯のココすごいな…。おもらししてるみたいだ」 「や…ぁっ…へんなこと言わないでぇ…っ」 リトは牡の顔で笑うと、秘所を責める反対の手をエプロンの横の隙間に入れ、服の上 から胸を弄った 胸の感度が高い唯は、早くも全身で反応を見せ始める リトの手の動きに合わせるように腰がピクピクと動き、リトが揉みやすいように、身体の 位置を調整する 身体が本人の意思とは無関係に反応する。リトを求めて止まらない 「もう…イクぅ…もっイクっ…!」 リトの返事を待てないまま、唯の全身が震えた 「あっああっ…! んっんんんっっ…!」 抱き付くというよりしがみ付く様にして、唯は下腹部を小刻みに震えさせた 「はぁ…っ、はっ…ぁ…はあぁ…っ」 身体全部で息をする唯。リトはその頭に手を置くと、そっと胸に抱き締めた 荒い呼吸も、腰の震えも止まらない 胸のドキドキはもっと大きくて、止まりそうもない (結城くんの前で私…あんなハレンチな事いいながら…) 羞恥で熱くなる顔。それ以上に熱い身体に、唯は下唇を噛み締めた 「なんか今日の唯ってスゴイよな」 「―――ッ…!?」 「…なんつーかさ、エプロン姿がスゲーかわいい!」 と、耳元で聞こえた甘い言葉に、唯の顔がカァァっと赤くなっていく 「な、なな、何いって…!」 思わず胸から顔を上げた唯と、リトの目が合わさる イタズラをしたあとの子どもの様な笑みを浮かべるリトに、涙を浮かべすっかり火照った顔が 限界以上に真紅に染まる 唯はふいっと目を逸らしたあと、少しするとおずおずと視線を戻した そして、上目遣いのまま、ぼそっと口を開く 「……し、しないの? 続き…」 「え…?」 「……」 「……」 体の上でもじもじしっぱなしの唯に、リトは躊躇いながら声を絞り出す 「いい…のかよ? その…しても」 「……だって私ばっかり不公平じゃない。そ、それにどうせガマンできないクセに」 唯の身体の重さやぬくもりと、さっきまでの痴態とで、リトのモノはズボンの中ですっかり 反応しきっている リトは唯をソファーの上に沈めた さっきとは真逆の位置。上下で見つめ合うのもすぐ、唯はゆっくりと恥ずかしそうに脚を 広げ、秘所を露わにする 喉の奥に唾を呑み込むと同時に、リトはベルトの留め金を外していく 反り返ったモノを秘所に当てながら、リトと唯の目が合わさる 「じゃ…じゃあ挿入るからな?」 「う、うん。ゆっくりだからね」 クチュっといやらしい音を立てながら、先端が割れ目を押し広げて膣内に入っていく 「んっ…」 最初の波が唯の下腹部を襲い、唯は手を握りしめた その手を握りしめてくれる、リトの手 涙で滲む視界の中でもはっきりとわかるリトの顔に、唯の堅くなった身体から力がぬけていく 「動いていい?」 「だ、ダメ!? まだ慣れて…ッ…」 「…ごめん。ガマンできない」 リトは唯のおデコにキスをした それが合図だったかのように、リトは腰を前後に動かす 部屋に水音に混じって、唯の喘ぎ声が響く すると―――― 「ま…うぅ…」 すぐそばでもぞもぞと動く気配に、二人はビクッと顔を付き合わせた いつの間にか、セリーヌがまだ半分以上、眠っている目を擦りながら、二人の方を ジッと見ていたのだ 二人の顔が、これ以上ないってぐらいに赤く染まっていく 「せ、せ、セリーヌちゃん!?」 唯はリトを突き飛ばすようにして離れると、急いでずれたショーツを穿き直し、乱れた服や 髪を整えていく リトはセリーヌに背中を向けながら、いそいそとズボンを穿き直し、ベルトを留める セリーヌの霞がかかった瞳が、エプロン姿の唯を捉える 「まう…」 ソファーの上に危なげな足で立ち上がると、セリーヌは唯のほうへトコトコと歩いて行く 「セリーヌちゃん?」 唯の前にやってきたセリーヌは何を思うのか、ボーっと唯の顔を見つめたあと、ピョンと 唯に抱き付いた 「え? 何?」 「まうー…」 唯の胸にほっぺをくっつけて、また夢の中に戻っていくセリーヌ 「ど、どーしたのかしら…?」 「たぶん唯と一緒に寝たかったんじゃないかな? 目が覚めてもさっきまで一緒だったのにいないしさ」 「そうなんだ…」 唯はリトの話しを聞きながら、腕の中のセリーヌに視線を落とした すやすやと、本当に気持ちよさそうに眠っている姿に、自然に笑みが浮かぶ 唯は、セリーヌに浮かべた顔とは正反対の顔をリトに向けた 「ところで結城くん…」 「わ、わかってるって! きょ、今日はもうなしな! なし!」 言葉ではなく、目で訴えかけてくる唯に、リトは即答で返事をした それでも唯は、鋭い視線を向けて釘を刺さすのをやめない セリーヌとは真逆の態度に、リトの溜め息も深くなる (ホント…オレにもあれの半分でもいいから、優しくしてほしいよなァ…。オレなんて怒られて ばっかじゃん…) 両腕で揺り籠をしながら唯は、一生懸命セリーヌをあやす 少し危なっかしく見える揺り籠は、それでも、リトには新鮮に映った セリーヌを見つめるその眼差しは、女の子というより少し大人になっていて、お母さんの ような雰囲気があって エプロン姿と相まって、唯をいつもよりずっとずっと大きく見せる (子どもができたらあんな風になるのかな…やっぱ) 唯が聞いたら大声で「バカッ!!」と怒りそうな感想を、リトは胸の奥に引っ込めた 「ちょっとごめんね。セリーヌちゃん」 「ま…う…」 服を握って離さないセリーヌを抱っこしたまま、唯はソファーに腰を下ろした 「ごめんな! なんかいろいろ…」 「いいわよ。これぐらい。…それにしても、どんな夢を見ているのかしらセリーヌちゃん」 セリーヌの寝顔をジッと見つめていると、眠気を誘われたのか、唯の口から欠伸が出てくる 目尻に涙を浮かべながら、唯はセリーヌを抱き直した 「眠いのか? だったらセリーヌ代わるけど?」 「ん…、平気よ。これぐらい」 隣に座ったリトにそう返しながら、唯は腕の中のセリーヌに改めて笑みを浮かべた 「それにしても、このコ似てるわね。結城くんに」 「オレに?」 セリーヌの顔を覗き込みながら、リトは眉を寄せる 「そっか?」 「ええ。寝顔がね…。寝てるあなたにそっくりよ。あなたもホントに子どもみたいによく寝るから」 「おい…」 子ども扱いされたことにリトは、ムッと唯の横顔を睨む 文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、いつもと雰囲気が違う唯の横顔に言葉が うまく出てこない そればかりか、その横顔に見惚れてしまう (なんつーか…ホント…今の唯って…) ボーっとしていると、ふいに唯の頭がふらつき、肩に頭を預けてきた 「ちょ…唯?」 「ん…ごめんなさい…少し…だけ」 リトの肩に頭を乗せながら、すでに唯は半分以上、夢の中 (結城くんにチョコ渡せたけど、ちゃんと届いたかな…? 私のキモチ…) まどろみの中、唯はそう呟いた 右頬にあたたかい感触がする。やさしくて大好きな匂いが自分を包んでいく 「結城…くん…」 「ん?」 「…す……」 「す?」 「…ッ…」 「唯?」 とろけきった唯の声は、いつの間にか寝息にかわる 膝の上のセリーヌと同じ、スースーと気持ちよさそうな寝息を立てる唯の顔に、リトは苦笑した 「 す って何だよ? 気になるだろ」 肩にかかる幸せいっぱいの重さを感じながら、そっと唯の頭を撫でる そして、唯とセリーヌの寝顔を見つめながら、心の中で願う 来年も、再来年も、ずっとずっとこの幸せが続きますようにと―――― 「ただいまー! リ―――…ッ!?」 買い物を終え、リビングに入って来た美柑は、少し目を大きくし、そして苦笑した 「まったく…! 何やってるんだか」 毛布を取りに二階へと上がろうとした時、一緒にバレンタインのチョコに使うラッピング 材料を買いに行っていたララが遅れて帰ってくる 「あ、唯も来てるんだ! リトー。唯ー。バレンタインの…」 「ララさんっ!?」 「え?」 玄関で元気な声を上げるララの口を、美柑は慌てて塞ぐ 「しー! 今はダメ! 静かにしないと起きちゃうよ」 「ん? 誰か寝てるの?」 「誰かとゆーか…」 美柑はリビングの向こうを思い出しながら、ニンマリと笑った 「…ま、順調なのかな。いろいろとね」 「ん?」 一人置き去りにされたララは小首を傾げながら、楽しそうな美柑の横顔に?マークを浮かべる 「とりあえず、今は毛布、毛布。ゴメン、ララさん。毛布取るの手伝って。チョコは まァ……もうちょっと後でね」 「よく…わかんないけど…うん。わかった」 こうして二人は、二階に三人分の毛布を取りに行った リビングからは三人分の寝息が聞こえる リトと唯、そして、二人に挟まれながら眠るセリーヌ リトの手が唯の手を握りしめ、唯がリトに寄り添いながら眠っている 階段を下りてくる足音を夢の中で聞きながら、セリーヌは重なっている二人の手を、 宝ものの様にキュッと握りしめた バレンタインの夕暮れ時、三人が目を覚ますと、また結城家をいつもの喧騒が包み込んでいく
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1993年11月OVA発売。 監督 波多正美 原案・脚本 渡辺麻実 演出 竹渕正美 アニメーションディレクター 赤堀幹治 作画監督 松山まや 動画チェック 宮川かおり 美術監督 野谷顕治 美術設定 阿部行夫 色彩設計 田中実和子 特殊効果 谷口久美子、鈴木尊子 編集 高島健一 編集助手 川村茂 音響監督 小林克良 効果 松田昭彦 整音 内山敬章 音楽 有澤孝紀 アニメーション制作 グルーパープロダクション ■関連タイトル DVD キキとララの白鳥座のお姫さま
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熱を帯びたララのお願いにリトはスカートを脱がすのも忘れてショーツに指を這わせる 「すっげーおまえのココもうぐちょぐちょじゃん!」 指を上下になぞらせるだけでショーツの染みは広がっていく くちゅくちゅと水音がなり、女の子独特の性の匂いがしてくる 「ん…あッはァ…」 短い吐息の様なララの喘ぎ リトの指が動くたびにシーツの上をララの指が滑っていく 「…ァは…んっく」 ララの反応に我慢できなくなったのかリトはショーツに手をかけていっきに脱がせる すでにリトの頭の中はララのことでいっぱいだった 羞恥心もなにもない、ただ欲望のままにララの体を求めていく 「…ゃあ、もっとやさしくしてよリト」 ララの言葉にもリトは意地悪く笑うだけでなに言わない 剥き出しになった割れ目に指を這わせると、ゆっくりとヒダを広げていく 中からとろりとした蜜が溢れ、濃厚なララの匂いが広がる 「あんまりじろじろ見ないでっ口口口口」 恥ずかしくて秘所を手で隠そうとするララの仕草にリト胸は高鳴る (か…カワイイ!こんなにカワイイのにホントオレなんかのどこがいい?) そんな考え事をしながらもリトの指は膣内へと入っていく 中はリトの想像以上に熱く、絡みつくように肉壁が指を締め付ける 「す、すげー…」 女の子のそれもとびっきりカワイイ子のあそこの感触に、リトの口からは 感嘆の声しかでない リトは本能の赴くままに指を動かしていく すぐにくちゅくちゅと音を立てる秘所からはとろとろと愛液が溢れ、ララの口から 途切れ途切れに喘ぎがこぼれる 「はぅ…んッんあ、あッあァ…」 シーツを握り締める指に力が入り、リトの指に合わせてララの腰も小刻みに動き出す 「…ゃん、んんッそこぉ…気持ちいいよリトぉ」 甘えるようなくすぐったくなるようなララの声 リトはララの弱いところを責めたてる 「あ、…ッん、んん…やァ…あア」 気持ちよさが体中を駆け巡るような初めての経験。それにララの腰は自然と浮き上がり、 リトの前にお尻からちょこんと尻尾が現れる 最初はふるふると震えていただけの尻尾は次第にララの感度に 合わせるかのように動きを変えていく (そういえばこいつ尻尾が苦手だったんだよな……) 目の前で震える尻尾を指で軽く擦るとララの体がビクンと震える 「ひゃッ!や…やめ尻尾はダメぇ~」 ララの反応が楽しいのかリトは尻尾を掴むと、手の平の中で弄っていく 「あッくぅ…ひゃめぇ、んッ…あッあァ」 尻尾全てが性感帯なのか、軽く擦ったり指で摘むだけでララの体はピクンピクンと跳ねる 「…んッ、ああ!ダメ、ダメなのホントにッ尻尾は…ああァ」 リトは尻尾の先端を弄りながら、膣内を指で掻き回していく 二つ同時の性感帯への責めはすぐにララを狂わせた 「あッ、んリト…ッあん…おかしくなる…おかしくなっちゃうよォ~」 「いいよ!おまえがイクとこ見ててやるから」 そう言うとリトは尻尾を口に咥えた 熱い舌ととろけるような唾液の感触にララの下腹部が小刻みに震える 「なんだこうやって尻尾咥えられるのが好きなんだ?」 そう言うと尻尾に歯を当て舌を使って吸い付く 「ひっ…あ、あァ…んッんそれ、イッちゃ……あぅ」 頭の中が真っ白になりなにも考えられなくなる ララは初めての絶頂を味わうと荒い息を吐いた 「あッ、ふぅ…はあ…はぁ…んッリトぉ…」 ぐったりとした体に開きっぱなしの足の間から、薄く開いている割れ目をリトに覗かせる イッたばかりのララの乱れようにリトはただ見とれる いつものカワイさに今は女としての艶美さが加わりララの魅力を引き立てていた 「……オレもう我慢できねえ」 リトは慌ててズボンを脱ぎ捨てると勃起した肉棒を割れ目に当てる 「ララ、いいか?」 まだ息が荒いララだったがリトの要求にいつもの明るい顔を浮かべる 「うん…私もリトと一つになりたいから。だからリトお願い」 くちゅりと音を立てて入っていく肉棒にすぐに強烈な締め付けが襲う 「んッ!…ぁああ…んくぅ」 少しつらそうなララにリトは心配げな声をかける 「大丈夫かララ?無理ならこのまま……」 そう言って体から離れようとするリトの腕をララはギュッと掴む 「ダメぇ!大丈夫だからこのままお願い」 気丈に振舞うもあきらかにつらそうなララのことを思ってリトは ゆっくりと挿入させていく 「んッん、あぁ…」 「ごめんララ!もうちょっと我慢してくれ…」 リトの顔に苦渋の色が浮かぶ 自分が未熟なためにララを苦しめているんだと思った (くっそ……) 男として大事な人を傷つけてしまうことがリトにとっては許せなかった 欲望の赴くままにララを求めてしまったことを後悔もした それでも一度求めてしまった思考は元には戻らない リトの肉棒は奥へ奥へと入っていきやがて膜にあたる 「……それじゃあいくぞ?」 「うん」 リトは勢いをつけるといっきに貫く 「あッ…くぅ、ぅう」 短い吐息と共に割れ目からララの純潔だった証が流れ落ちる 体をピクンピクンと震わすララをリトは見つめることしかできないでいた 体を気遣ったり、気持ちが少しでも楽になれる言葉すら思い浮かばない それでも腰は動かさないでいた 少しでも痛みを和らげるために、少しでも楽にさせるために リトの不器用でいてやさしい気持ちにララは笑顔を浮かべる 目に涙を浮かべた顔はどう見てもまだ痛そうで、それは自分を気遣うものだとわかった 「へ…へへ、リトとやっと一つになれたね…私今すごくうれしい!」 「ララ……」 リトはそんなララが愛おしくなりギュッと細い体を抱きしめる 「どうしたのリト?」 「おまえってホント…」 リトはもう『どうしてララは自分を好きになってくれたのか?』なんて考えていなかった 目の前の自分を心から愛してくれる人を自分もこの手で抱きしめたい、思いを一つに したいと心から思った 「リト?」 怪訝な顔をするララの唇に自分のを重ねると、リトはさらに強く抱きしめる 「あァ…ん」 やわらかい体の感触にララの匂いが胸に満ちていく 「ララ…動いてもいいか?」 リトの体の下でララは今度はホントの笑顔を浮かべてうなずいた ぐちゅぐちゅと音を立てながらリトの腰は少しずつ動いていく 肉棒が出入りする度に溢れた鮮血と愛液にシーツが汚れるが、そんなことには おかまいなしに二人は気持ちを一つにしていく 「あ…ふ、ん…ふぁんッ」 少しずつララの声にも喘ぎが混じり、体の力も抜けていく それでも膣内はぎゅうぎゅうとリトを締め付ける様に中を蠢かす まるで波の様にざわざわと絡みつく肉壁にリトは早くも限界を迎えようとしていた 「…ぁあ、んッああ…んァん…リト?」 込み上げる射精感に歯を食いしばって耐えるリトはそれでもララに心配をかけまいと 気丈に振舞う 「バカ!心配すんなって」 「う…うん、けどなんだか苦しそうだよ?気持ちよくないの?」 「違…そういうことじゃなくて……」 気持ちいいどころかとろけそうなほどのララの良さにリトは参っていた 限界も近い。それでもリトはそれを口に出さなかった ララと一緒にイキたいと願ったから リトはララを安心させようと腰を打ちつけ続ける 「ララおまえってやっぱ最高…」 「へ?」 ぼそりと呟いた囁きはララの耳には入らない それでもララはリトが自分のことを思い考えてくれていると思った。リトの体を 抱き寄せる 「うわッ!ば、バカこんな体勢中に出しちまう……」 「いいよ」 「え?」 ララはリトを抱きしめる。リトを離したくはなかった 「いいよ私の膣内で出しても」 「……ララ」 それはララ自身の強い願い そして一つの思い ―――――きっとリトとするエッチはこれが最後になるから 他に好きな人がいるリトのやさしさに甘えてしまったから 自分はこれが終わったらここを出て行かなくちゃいけないから ララはリトをギュッと抱きしめる、強く強く (だけど…だけどやっぱり嫌、離れたくない…離したくないリトとずっと一緒に……) ララの頬を涙が伝い落ちる 必死に腰を動かしているリトにはそれが見えない ララはそれでいいと思った。これ以上自分がリトの迷惑になるのはダメだと感じたから 込み上げてくるリトへの思いはやがて自身の絶頂へと変わっていく 気持ちよさとリトのぬくもりの中でララは震える口で伝える 「…あッん、リトぉ…私もう…んっはあ」 「ああ、オレも限…界」 リトの額から汗がぽたぽたと胸に落ちてくる 一生懸命自分を求め抱いてくれたリトをララはじっと見つめる その顔を胸に焼き付けるように 「ララ…ララ、もう…」 「う…ん、いいよ!出してリトの…ッん私の中に…出して欲しいのっ」 キューっと締め付けが強くなる膣内でリトは白濁した欲望を吐き出した 荒い息を吐きながらゆっくりと引き抜いた割れ目からは膣に収まりきれない 欲望があふれ出す 「ララ…ホントによかったのか?中に出しても?」 リトが尋ねてもララはなにも答えない 変わりに小さくすすり泣く声とそれに混じる嗚咽が聞こえる 「ララ!?」 びっくりしたリトが慌てて近寄ると、ララは見られないように腕で顔を隠しながら 泣いていた
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「リトーッ、お昼の時間だよー!」 負のオーラならぬ正のオーラ(?)を体中から発しているようなララの笑顔、仕種、言葉。 「一緒に食べよ!」 「俺早弁しちゃったよ」 高校生の男ならそんなものだろう。 「じゃあ私の分けてあげるねっ!」 常に元気一杯なララは、リトの前の席の人間がいないのをいいことにさっさと机の向きをかえるとそれをくっつけてくる。 「何が食べたい?」 ニコニコと、少しだけ得意げに、無邪気な表情のお手本のような顔つきだ。 「別にいいよ」 ドキドキしてしまっているから口調もぶっきらぼうでそっけなくなる。 「そんなこと言わないでよー。せっかく分けてあげるって言ってるのに」 その向かいにいる少女は、瞬時に表情を変えて今度は唇を尖らせる。 本当にコロコロと変化する、それ。 おまけに絶世の美少女であるため、彼女の顔を眺めているだけでもまず退屈などしないだろう。 「さっき同じの食ったし・・・」 一つ屋根の下で暮らす二人のお弁当の作り手は結城美柑だ。 「それでもおいしーよ!美柑のお弁当は。・・・まだ全然かなわないなぁ」 (・・・それにしても) リトには気になることが二つ。 「今日はどしたんだ?」 「?」 「いや、いつもは西連寺達も誘うのにと思ってさ」 そう口にした直後、わずかに頬を膨らませて、絶妙な間をとって。 「・・・今日は二人っきりがいいんだもん・・・」 ドキッ 不覚にも身体が大きく震えてしまった。 心臓が跳ねる、なんてよく言うけれど本気で位置が上にズレたんじゃないだろうか。 (か、可愛い・・・) ほんの少しの、自然な上目遣いと快活な彼女らしくないゴニョゴニョ声。 似たような言葉は今までも聞かされてはいたけれど、そんな時の彼女は決まって満面・満開の笑みだった。 こんな風に切ない表情や態度を見せられると、素材が極上なだけに旨味はとんでもないものとなる。 「リト・・・」 小鳥の囀りのように、小さく小さく。 こんな名前の呼び方をされたことはない。 後から後から湧き出してくる気恥ずかしさ。 痛いくらいに打ち付ける心臓。顔はもう茹で上がったかのように真っ赤だろう。 こんな状況で断れる男がいたら是非紹介していただきたい。 「じ、じゃあ卵焼きを・・・」 今度はパアッと、長時間頭上にとどまっていた灰色の雲すらあっという間に吹き飛ばしそうな金色の笑顔。 「はいっ。あーん」 瞳を輝かせたララはリトの眼前、鼻先に卵焼きを持ち上げる。 (いや、いくらなんでもそれは・・・) チラリと横目で教室の隅を見ると、リサミオと一緒にお弁当を食べている春菜と目が合ってしまった。 リトはララが持ち上げた卵焼きを箸の間から素手で奪うと、すぐに口の中に放り込んだ。 「もうっ。リトのバカ」 どんぐりでも入れたかと思うほど頬を膨らませ不満たっぷりな目で見つめてくるララを何とか宥めながらリトは考える。 (何か気になってたんだけど、何だっけ・・・?) その数秒の思惟の間に、気づけばララは笑顔を取り戻していた。 そんな彼女を見ていたら、まあいいか、という気になってしまう。 そう、彼女と一緒にいるとちっぽけな悩みなどなんでもないことに思えるんだ。 彼女の笑顔の前では、大きな悩みもいずれどうにかなるような気がしていた。 そして彼女が悩みを抱えているなんて、想像すらしていなかったんだ・・・。 午後の授業も恙無く終わり、迎えた放課後。 (あれ、ララがいない・・・?) いつもなら「帰ろー」と腕にしがみついてくるのだが。 今日は例のアニメの日でもないし、どうしたものか。 「・・・ま、いいや。帰ろ」 「あれ、今日は一人なのか?」などとからかいまじりに声を掛けてくる奴等に適当に返しながら、 下駄箱で靴を履き替え校舎を出るがまるで何かに掴まれているかのように足取りは重い。 (何落ち込んでんだろ・・・。必ずしも一緒に帰ってるわけでもないのに) リト、リトとひっきりなしに話しかけてくるララが隣にいないだけでこんなにも虚脱感に襲われるなんて思ってもみなかった。 (昼休みのララ、以前とどこか違ったな・・・) ぼんやりとそんなことを考える。 まるで恋愛に奥手な女の子が勇気を振り絞ったかのような反応だった。 (可愛かったな・・・) 思わず口元が緩むが、我に返るとそのララがいない現状にため息が出た。 (やめやめ。何で俺がララのことで落ち込まなくちゃいけないんだ) お前は少し落ち込むべきだ、との天の声が聞こえてきそうだった。 ララがリトとの事でどれだけ悩み、涙を流しているか。 それを知らないリトは、校舎の裏手に足を向けた。 そこには大きくはないが、わりと綺麗に整えられた花壇がありリトのお気に入りの場所となっている。 かつて水やり担当だったこともあり、花を見るのは好きだし穏やかな気持ちになれるのだ。 しかし天誅かどうかは分からないが、今日はそこでますます心を乱されることになる。 「ごめんなさい」 耳に届いたのは女の子の声。 滅多に聞かない神妙なそれだが、毎日嫌というほど聞いている声を間違えるはずもない。 ララの声だ。 鈍いリトでもどんな状況かすぐに理解できた。 そして途端に胸がざわつき、灰と胃の中間あたりがキリキリと痛み出した。 「僕は君の事をほとんど知らない。でも、どんな君だって受け入れる自信があるんだ。 せめてデートだけでも受けてくれないかな・・・」 相手はリトの知らない男だった。見た感じ先輩だろうか。 広がっていく、焦燥感と不快感。 「本当にごめんなさい・・・。 私、大好きな人がいるんです。どうしてもその人に振り向いて欲しいから・・・ その人だけを見ていたいから・・・だからあなたとはお付き合いできません」 それはララの"その言葉"を聴いた瞬間も続いていた。 ララは言い終えると深々と頭を下げた。 静かだけれど固い意思の篭った言葉に相手は観念したようだった。 「そう・・・。それじゃあ仕方ないか・・・。 時間取ってくれてありがとう。すっきりしたよ」 言葉とは裏腹に彼からは無念さが滲み出ていたが、ララを責めるような態度は全く見せなかった。 「その彼が羨ましいな・・・」 小さくそう呟くと告白者は去っていった。 しかし彼が去った後もララは頭を上げなかった。 その細い肩が微細に震えていた。 そんなつもりはなかったが、自分とそう変わらない身長を持つ彼女がとても小さく見えてつい声を掛けてしまっていた。 「泣いてるのか・・・?」 ララは体勢を変えなかった。 リトはララのすぐ後ろまで来たが、彼女に触れることはできなかった。 リトが何も出来ないでいると、暫く経ってからララが顔をあげた。 そのまま振り返らずに話し始める。 「心が痛いよ・・・」 泣いていたのかどうかは声色からはわからなかった。 リトは何も返すことが出来ず、金縛りにあったかのようにただ立ち尽くしていた。 「ときどきね、今みたいに告白されるの・・・」 「・・・」 全然知らなかった。 リトは彼女が宇宙人でお姫様で天才発明家?で尻尾からビームなんか出せちゃうことを知っているから、 ララが告白されるなどとは想定していなかったのだ。 しかし大多数の男からすれば、ララはめちゃくちゃ可愛くて明るくて人懐っこくて スポーツ万能で頭までいいのに嫌味じゃない、まさにスーパーガールだ。 モテないはずなどなかった。 まるで独り言のようにララは話し続ける。 「相手が本気で伝えてきてくれると、胸が苦しくなるんだね。 私がリトの事を大好きっていう気持ちと同じように、この人も私を思ってくれてるのかなって。 今の私と同じように、苦しいのに失くしたくない想いを、ずっと抱えてきたのかなって。 そしてこうして断る度に、私もリトにフラれちゃったらって、考えちゃう・・・」 地球に来て、リトを好きになって、周囲の人の気持ちにも少しずつ気づけるようになってきて。 自分も本気で恋をしているからこそ、ララの胸には想いの刃が痛いくらいに突き刺さる。 彼女はそれを受け止めて傷つき、相手を傷つけてしまうことにまた傷つき、 自らの恋に照らし合わせてしまってさらに傷つく。 "その後"を考えてしまって。 そうまでして、しかも普段はそれをおくびにも出さずにララはリトを想い続けてくれている。 なのにリトは、ララらしくない作り物の笑顔で「帰ろ」と告げられ、無言のままその数歩後ろを歩くことしか出来なかった。 会話がほとんどなく、妹に妙な気まで遣わせてしまった夕食後、リトは自室で思いつめていた。 しかし募るのは苛立ちばかり。 それは、さっきのあの時から。 "どんな君だって受け入れられる自信があるんだ" あの男の言葉が耳奥でこだまする。 神経が過敏になっているのがわかる。 (くそっ!!) 握った拳をベッドに叩きつけた。 (あんたはララの境遇を深くまで知っても、同じ台詞を吐けるのかよ・・・) 顔を掛け布団に埋める。 不快な感触しかしなかった。 違う。そうじゃない。 冷静になれ。あの男のことなんて本当は関係ないことだ。 今考えるべきは、俺とララのこと。第三者なんかどうだっていい。 俺はララをどう思ってる・・・? ララのことが大切―――? 大切だ。即答。 ララに傍にいて欲しい―――? いて欲しい。いつまでだって。即答。 じゃあ、俺はララのことが好き―――? 好きだ。これも即答。 なのに俺は、ララとの関係を進めることが出来ない。 俺はララを、どう好きなんだ・・・? 近すぎる距離感。 家族のような緩い感覚が、逆にリトを縛り付ける。 そして何より、どんなに親しくなっても、どれほどドキドキさせられても、ララが自分とは異なる星の それも全宇宙で見ても強大な力を持つ星のお姫様であるという事実に、足踏みさせられているちっぽけな自分。 そのことがリトから思考力と行動力を奪っていく。 今のままではいけない。それは分かっているのに結局は今日もどうすることも出来ない。 それがリトを際限なく苛立たせていく。 ただ天井を睨みつけることしかできない。 そしてまた、苛立ちが疲労によって麻痺していくのを待つだけだ。 リトが自嘲の苦笑いを浮かべたとき、廊下から妹の声が聞こえた。 「リト、電話だよ」 「いないって言ってくれ」 今は誰とも話したくない。 「そんなこといえないよ。こんな時間に」 「どうして!?」 苛立ちを抑えきれない。美柑に当たってもしょうがないのに。 「電話、母さんからだもん」 救いの声は、その電話からもたらされた。 「よっ、息子。元気かー?」 母さんの声がやけにノイズ交じりで擦れて聞こえたのは、それが国際電話だからではないだろう。 「・・・ああ」 「んー、あまり元気じゃないか」 返事一つで見抜かれた。 「ララちゃんのことだ?」 「ちげーよ!」 間髪いれずに返答。 「クスクス。そっかそっかあ」 しまった。反応するのが早すぎた。 まあ母さんに敵わないのはいつものことなので、遅かれ早かれ見抜かれたと思うけど。 母さんは一つ咳払いをすると、それが何かのスウィッチであったかのように それまでとは打って変わって真剣な声で話し始めた。 「リト、前にも言ったけど女の子の気持ちに応えられるのは男の子の優しさなんだからね」 「それは分かってるよ・・・」 (でも、愛情と情けは別物だろ?) 「リトはさ、ララちゃんに対して構えすぎてるんじゃないかな」 「・・・俺が、ララに?」 まさか。毎日顔合わせてるし、会話だってスキンシップだって・・・まあしてるし。 ましてや一緒に住んでるのに。 「彼女のことどう思ってるとか、自分との境遇の違いとか、そういうの全ておいといて・・・。 彼女のために何かしたときのこと、思い出して。 未来のことでもいい。彼女が喜ぶことをしてあげたと仮定してみて」 仕事モードじゃないのに真剣な声色に、よく分からないがとりあえず言われたとおりにしてみる。 思い浮かんだのはララのはにかんだような、幸せそうな笑顔。 いつもリトを知らず知らず支えてきた、ララの笑顔。 それがささくれ立った自分の心に暖かな灯をともしてくれる。 表情が少し弛んでいるのが自分でも分かる。 「そのときあんたが嬉しいと思ったり、優しい気持ちや穏やかな気持ちになれたのなら、 それはあんたが彼女に対して好きっていう気持ち、愛情を持ってる証拠よ」 思わず息を呑む。今リトが感じたのはまさにそんな気持ちだったから。 「でもそれは・・・」 (情けじゃないのか?そんな感情はララに対して失礼なんじゃないのか?) 「それが、構えてるって言うのよ」 受話器越しに苦笑いが伝わってくる。 「恋愛なんてものはどちらかの一方通行から始まる場合がほとんどなのよ?」 確かにそうだ。好きになるタイミングが全く同じなんてむしろ稀なこと。 「だから言葉は良くないけど、あの娘に情けをかけなさい。 もっと真正面から受け止めてあげなさいな」 母さんの言葉は、スーッという爽快感のようなものとともに肺一杯に広がっていった。 「そうすれば、あんたの気持ちだって見えてくるかもよ?」 いつの間にか、不快なノイズは消えていた。 「・・・ありがとう。母さん」 「ふふっ。こっちも楽しみが増えたわ。じゃあまた連絡するから」 そういうとこちらの返事も聞かずに電話を切られてしまった。 リトは微笑みながら電話を置く母を想像した。 次の瞬間にはその表情は100%仕事モードに切り替わっているに違いない。 そう考えて苦笑してしまったが、モヤモヤを吹き飛ばしてくれた母のアドバイスに感謝せずにはいられなかった。 ララの気持ちに応える為には、俺の方からララを好きにならなきゃいけないと思ってた。 それも自然に好きにならなきゃいけないと、"思おうとしてた"。 例えば春菜ちゃんにフラれるとか、ララが急にいなくなるとか、そんなきっかけじゃなくて、自然に。 そう思うことで、俺はずっと先送りにしてた。 彼女の眩しい笑顔を眺めながら、何も起こらない事を願ってた。 でも、俺は決めた。 ララをちゃんと見つめようと。 自分で、結論を出すために。 「なあ、ララ」 翌日、いつものように美柑の作ってくれた朝食を取りながら徐に話しかける。 ちなみに美柑に昨日のことを謝ったら、"これからのリトに期待してるよ"、とすまし顔で言われてしまった。 「ん、なぁに?」 本当に旨そうにご飯を頬張りながら笑顔を見せてくれる。 いつのまにか根を張っていた、俺の心の栄養。 「明日、休みだろ。よかったら、その・・・映画でも行かないか?」 「えっ?」 ララはその大きな瞳を文字通り真ん丸にしていた。 隣では美柑がニヤニヤ笑っている。 「リト、それって・・・?」 「まあ、なんだ・・・その、デート」 リトの口からその言葉が出た途端ララの表情が変化していく。 いつもよりゆっくりと、蕾が開くように、輝く笑顔がふんわり膨らんで、弾けた。 「リトッ!!」 ギュっとしがみついてくる。 「ちょ、今食ってるんだからくっつくなって」 「だって、嬉しいんだもん」 瞳に涙を一杯に溜めながらもにっこりと笑う。 デートに誘っただけでこんなにも喜びを表してくれるララがたまらなく愛しい。 正直、抱きしめないようにするのにはかなりの理性が必要だった。 「ほら、くっつくのは明日まで我慢しろって」 「明日ならいいの・・・?」 期待と媚びとが1対1でブレンドされたララの表情。 可愛いぜちくしょう。 「まあ・・・デートだし、少しくらいは・・・」 「わかったっ。明日まで我慢するね!」 そういうとパッとリトから離れて食事に戻る。 が、一口食べるたびに幸せそうな顔で見つめてくるものだからリトとしては落ち着かない朝食だった。 「行こっ!」 制服姿で並んで家を出る。 ララは軽い足取りで跳ねるように歩いていく。 彼女がまだ嬉しそうにして振り返るたびに、昨日までとは違う気持ちを確かに感じる。 大量の恥ずかしさや少しの優越感とともに、確かに存在する嬉しさと暖かさ。 それはきっと、ララと向き合うと決めたから気づけたのかな。 確信に近い、予感があった。 近いうちに、俺はララのことしか考えられなくなるんだ。 「リトーッ!早く早く!」 「そんなに急かすなよ」 この時期にしては珍しいカラッとした青空に見守られながら、弾むようにララが歩いていく。 約束どおり、今日はララとお出かけ。俺から申し入れた、初めてのデート。 さっきからすれ違う男がララを振り返ってる。 一人の例外もなく、全員がだ。 春らしいレースのワンピースはアイボリーカラーで、ララが着ると本当にお姫様そのもの。 足元は優しい茶色系のブーツ。 よく映えるピンク色の髪の毛もアップにまとめていて、可愛らしさと優雅さが同居している。 やたらと日差しが眩しいのは、今が午前9時という太陽が真上に昇りきらない時間だからだけではないだろう。 キラキラと輝いている彼女。 今日は暑くなりそうだった。 「で、まずはどこに行くんだっけか?」 「最初は喫茶店で朝御飯だよー」 (ララの奴元気だなー。ほとんど寝てないのに) 本日のデートコースはララ任せ。 別に自分から誘ったのに考えなかったっていうわけじゃない。 リトだってちゃんと考えていたのだが、今朝4時に叩き起こされてララからデートプランを発表されたのだった。 それまで一睡もせずに考えていたらしい。 前日の朝からだから・・・丸一日近くか。 ララならスパッと決めてしまうか、何も考えずに出たとこ勝負だと思ってた。 そう伝えたら、 「だって、せっかくのリトとの初デートだもん。 一生忘れられない想い出にしたいから・・・」 不満をあらわにしつつ、うっすらと頬を染めて。 (ああ、可愛かったなぁ・・・) 「・・・ト!リトってばあ!ついたよ」 「・・・ああ、わりい」 昨日から惚けすぎだな、俺。 喫茶店の軽食で朝食を済ませて肩を寄せ合って買い物してお昼食べてゲーセンで遊んで映画を見て。 そんなどこにでも転がっていそうな、普通のデート。 でも、ララの想いがたくさん詰まったデートだった。 この喫茶店はあのドラマのロケに使われてたんだって。 このコーディネートは今年の流行なんだよ。 ここのレストランはお魚料理がとってもおいしいの。 あのゲーム、リト好きだったよね。 今から見る映画の主演女優さんの特技は水泳なんだよ。 もし説明しているのが猿山だったら、「へぇー」程度の反応で終わりだろう。(猿山、すまん) リトはドラマにあまり興味がないし、ファッションはよく分からない。 料理だってそんなにこだわりはないし、ゲーマーってほどでもないし、映画だって時々見る程度。 だけど、雑誌を買い込んだりネットを使ったりして一生懸命に調べるララの姿が目に浮かぶ。 今日という日が、リトの心に少しでも強く大きく残って欲しい、そんな想いで彼女は頑張ってくれたのだろう。 だからリトは出来る限りの優しさを込めて彼女の話に相槌を打ち続けた。 本当に楽しそうにしているララを見ているだけで、心が温まる。 自分もどんどん嬉しくなって、彼女に惹きつけられていく。 腕を組まれたら胸が当たってドキドキしたし、次から次へと休む間もなく引っ張りまわされて大変だったけど、 今日は他人の目とか全く気にならなかった。 そんなのどうでもよくて、文字通り眼中になくて。 余計なことも何も考えなかった。 一日中笑顔でいられた気がする。 デートなら普通はもっと甘いムードになるものなのかもしれないけれど、ただ楽しくて仕方なかった。 目に入るのはララだけ。 彼女の笑顔に夢中だった。 「楽しかったねーっ」 夕焼けが街を濃い目のオレンジに染め上げていく。 ララの口調はいつもの明るさを保っていた。 けれども微かに寂しげな色が混じっていた。 それはきっと、今リトが抱えているのと同じ気持ちからくるもの。 二人は晩御飯のために呼びに来た母親の後ろを名残惜しそうに歩く昭和の小学生のように、ゆっくりと結城家へと歩いていた。 楽しかった。本当に。 もっと何時間だって、二人で遊んでいたかった。 普段から人並み以上に楽しさとスリルに満ちた生活を送っていると自覚しているリトだが、それでもこんなに楽しかったのはいつ以来だろう。 かけがえのない、大切な時間だった。 「ねえ、リト?」 「ん?」 ララは遠くを見つめているように少しだけ目を細めていた。 夕日に照らされた横顔は美しくてどこか幻想的で、急にリトは切なくなった。 「・・・また遊ぼうね」 まるで独り言のようにララが呟いた。 ああ。また遊びたいな・・・。ララが喜んでくれるなら。 心の中で思ったそれは、言葉にはならなかった。 しなくても良いことを、リトもララもわかっていた。 それから二人は無言のまま歩き続けた。 少し火照った二人の頬を、6月の優しい風がそっと撫でていった。 二人は結城家へと帰ってきた。 玄関には鍵がかかっていたので美柑は出かけているらしい。 暖かい日差しの中を動き回ったので汗を吸い込んでいたTシャツを脱ぎ、 財布や携帯、ゲーセンの景品を無造作に辺りに置いていく。 (とりあえずシャワーだな) 「ララ、先にシャワー浴びてきていいぞ」 デートの日にリトがサラリとこんな台詞を言うとは。 最も本人にはそんな自覚はないのだけれど。 「ねえ、リト・・・」 ララが静かな、透き通るような声を出す。 そんな機会が最近増えた。 比例して、リトの心臓が跳ねる機会も。 「まだデート、続けてもいい?」 ララの口調は変わっていない。 なのにリトは圧迫感を覚えた。 跳ねるのではなく、押さえつけられたように動きを止める心臓。 今までララからそんなものを感じたことはなかった。 何かが起こる――― そんな予感を感じながらもリトは「ああ」とかえした。 拒むことなど、選択肢になかった。 「じゃあ、シャワー浴びてきて」 「・・・へっ?」 いきなり心臓にエンジンがかかった。 連続でフカされ、高速で回転を始める。 「いいから、早く!」 裸の背中を押され、脱衣所へと入れられてしまった。 身体が熱い。 汗が噴出してくる。 暑い日に外から戻って家の中で静止すると一気に汗が噴出してくるが、それにしたって熱い。 (ちょっとは落ち着けっての!) 休むことなく打ち付ける自らの心臓にどうしようもない文句をつける。 (ただシャワー浴びて来いって言われただけじゃんか) リトがララにシャワーを勧め、それに対してララが「先に入っていいよ」と返してくれたのと見かけの状況としては変わらない。 でも、今日はデート。 あまりにも純粋に楽しくて忘れていたけど、今日はデートなのだ。 (俺と、ララの) 今頃になってリトはその事実を強く強く自覚した。 男ってほんとどうしようもない。 火照りを抑え、冷静さを取り戻すため冷水を頭から被る。 それでも思考は"そこ"にしか向かってくれない。 ララの艶やかな唇に触れる瞬間。 彼女の身体はどれほど柔らかいんだろう。 あの胸は、腰は、お腹は、太ももは。 彼女はどんな声で鳴くのだろう。 俺だけに、どんな表情を、見せてくれるのだろう。 自分の身体の上で果てるララを想像して、リトはハッと我に返る。 (アホか、何考えてんだ俺は!) シャワーヘッドを持っていないほうの手で横殴りに自分の頭に一発。 (まだ好きだって、伝えてもいないのに) 生じた自分に対する嫌悪感は刹那、違和感に変わる。 (好きだって伝えてもいないのに?) リトはそこで、妙に冷静に受け止めた。 もう、彼女を受け入れる気満々の自分がいることを。 彼女への想いを、抑える気などない自分がいることを。 さっきの予感の正体を。 お湯に切り替えたシャワーからの水を顔に受けながら瞳を閉じる。 すぐに浮かんでくる、満開のララの笑顔。 (好きだよ・・・ララ) 自然に言える気がした。 しかし風呂場から出ると、そこには地獄絵図が・・・。 「ララ、出たぞ」 気恥ずかしくて、彼女から視線を逸らして呼びかける。 ふと時計が目に入る。いろいろ考え事(妄想とも言う)をしていたのでシャワーで30分以上かけてしまった。 「はーい。ソファで待ってて」 タオルで髪の毛を拭きながら何の気なしにソファに座る。 どうやって、ララに伝えよう。 頭の中がそれ一色に染め上げられる直前に、リトはその異様さに気づく。 (ララが、恐ろしいことをしていた気がする!!) 恐る恐るキッチンを覗き込む。 そこには鼻唄とともに野菜を切るララの姿が。 「おい、ララっ!」 慌てて声を掛ける。 「あっ、リト!入ってきちゃ駄目だよ!」 ララが不満の声を挙げるが構ってはいられない。 (一刻も早く止めさせなければ、想いを遂げる前に俺の命が・・・) 何気に酷いリトだが、それほどまでに彼の中でのララの料理の腕は凄まじい。 凄惨だと言っていいほどに。 (ぐはっ、手遅れだったか) さらにキッチンへと侵入したリトは、既に炊飯器が稼動し小型鍋が火に掛けられているのを目撃した。 「もう、早く出てって!」 自分の部屋(ラボ)に入られたって全く怒らないララが、かなりの剣幕でリトをキッチンから排除した。 「おとなしく待ってなさい!」 そう言われたって待っている気にはなれない。 こっそりとララの様子を窺う。 しかしそこにいるのはまるで美柑のようだった。 ララはキャベツを千切りに、きゅうりを薄切りに、トマトを輪切りにすると 冷蔵庫から調味料を複数出してカップで測り、それを入れたボウルをかき混ぜ始めた。 どうやらドレッシングを手作りしているようだ。 無駄のない、流れるような動きで手際よく作業をするララ。 いつの間にかキッチンは、食欲をそそる香りに満ちていた。 俄かには信じられないことだが、ララは料理をマスターしてしまったらしい。 (あ・・・だからか) リトは二日前の昼休みに感じた気になることの正体を思い出した。 "まだ全然かなわないなぁ" この言葉から察すると、リトが知らないうちに美柑から料理を習っていたのだろう。 悪戦苦闘しながら一生懸命に料理するララの姿が目に浮かぶ。 (そういえば、先月の食費はやたらと高くついてたな・・・) リトは得心してなんとなく微笑みを零すと、ソファへと移動した。 炊飯器がご飯が炊き上がったことを告げると、リトは立ち上がった。 「運ぶものあったら言ってな」 キッチンには入らずに声を掛ける。 小皿で鍋物の味見をしていたララが振り向く。 味を確認して満足げに頷くと、額の汗を拭いながらにっこり笑って言う。 「ありがと!今よそうから持って行ってくれる?」 「・・・あ、ああ」 ララと料理。 いや、ララと家庭的なもの。 それは大きな衝撃をリトに与えた。 (結婚したら、こんな感じなのかな・・・) リトが、ほとんど無意識に描いていた望む未来。 それは、平凡でも暖かくて優しい空間。 疲れた身と心を癒し、明日への糧を得るオアシス。 今までどうしてもそこにララを結び付けられなかった。 それが今、こんなにもリアルに描けている。 目の前に存在している。 皿に盛り付けられた料理を運びながら、リトは初めてララとの未来が描けたような気がした。 結城家のテーブルは、ララによって一時間で用意されたとは思えない食卓となっていた。 ホカホカの白ご飯と、醤油ベースの和風ロールキャベツ。 手作りドレッシングがかかったサラダは、緑、赤、黄色と色味も鮮やかだった。 見た目も匂いも問題なし、だが。 「い、いただきます・・・」 (間違いなくおいしいはずだ) そう思うものの、過去が過去だけに不安が入り込むのはしょうがないこと。 恐る恐る、メインの一品を口に運ぶ。 ララはソファに座ったリトから見て、四角いテーブルの左辺に位置して固唾を呑んで見守っていた。 噛んだ瞬間、肉汁と和風だしの旨みが口の中いっぱいに広がった。 それに玉葱の微かな甘みと上に乗っかっていたきのこ(シメジだろうか)の感触が追い討ちをかける。 (これは・・・) 「うまい・・・」 胸の前でキュッと手を結んでいたララが、それをギュッとに変える。 彼女の口が微かに開いている。 まるで大自然を目の前にしたかのように固まっていた表情が、「リト」という呟きとともに綻んでいく。 夢見心地、といった表情の彼女にもう一度感想を述べてやる。 「めちゃくちゃうまいよ、ララ」 照れたような、でも少し誇らしげな笑顔に移り変わっていく彼女の表情。 そのあまりの鮮やかさ、美しさに今度はリトが惚ける番だった。 (綺麗だな・・・) シャワーであんなことを考えてしまったからか、それともついさっき未来を想い描いてしまったからか。 どっちだって良かった。 ララに女を感じる。 この娘が、愛しいと感じる。 それだけに、従順になる。 「ララ・・・」 リトは自分にできる限りの愛情を込めて、ララを呼んだ。 「リ、ト・・・?」 ララは少し驚いた。 気が付けば目の前に大好きな人の顔があった。 いつになく真剣な表情で。 どちらかといえば幼い顔立ちのリトも、今は精悍に見えた。 それを見た瞬間に、決意は固まった。 好きだ、リトの口からそう出掛かった矢先、先に声を発したのはララのほうだった。 「私ね・・・」 静かな口調だがリトはそれに声を被せることができなかった。 しかし落胆することはなかった。 代わりに、不思議なほど落ち着いていたのに緊張が沸き起こってくる。 ララの話を聞かないと。本能が、そう瞬時に理解した。 「今日のこと、ずっと忘れない・・・」 ララは顔をまっすぐ身体の正面に向けているから、視線がリトと交わることはない。 それだけで、今の彼女の精神状態が平常時と違うことが分かる。 「ララ・・・?」 リトはすぐに違和感を感じとる。 鈍い彼も、今ばかりは感覚が鋭くなっている。 キリキリと胃が痛みを訴えてくる。 「ご飯、おいしかった?」 「あ、ああ・・・」 まだ一口しか食べてないけど、凄くうまかった。 リトは告白云々は一度置いておいて、何とかいつもの二人に戻そうとした。 それほどまでの言い知れぬ緊張が、彼を襲っていた。 「ララって、凄いよな。前は全くできなかったのに、いつの間にか料理できるようになっててさ」 握り締めた掌には汗が溜まってきていた。 「もう、遅いくらいだよ」 「お、遅いって・・・何が」 (何でそんなこと言うんだ・・・? 俺たちこれからじゃないか) ララはそっと、物憂げに微笑んだ。 (なんでそんな顔するんだよ、ララ・・・) 忍び寄る不安の影。 「私ね・・・普通の女の子になりたかった」 リトは心臓に釘を打ち込まれたような感覚がした。 「地球に来るまで、リトに逢うまで、自分の境遇を疑問に思ったことなんてなかった」 デビルーク星の、プリンセス。 「だけど、最近何度も思うんだ・・・。私も普通の女の子なら良かったって」 感じていないわけではなかった。 リトが自分のことを、他の女の子と同じように見てくれていないことを。 彼が見つめているのは、地球における普通の女の子なのであろう、春菜だった。 「だから、そうなろうと努力してみたんだ」 地球の女の子の気持ちを勉強して。 美柑に生まれて初めて料理を習って。 地球で人気の服を着て。 普通の女の子と同じようなデートをして。 リトに、受け入れられたいから。 好きになって欲しいから。 「でも、どこまでいっても私はララ・サタリン・デビルークなんだよね・・・」 普通の女の子の真似事はできても、本当にただの女の子にはなれない。 「私、パパのこともザスティンのことも好き。デビルークには他にもたくさんの人がいる。 その人たちは、私を必要としてるの」 リトは何も言葉にできない。反応すら返せない。 「私にはデビルークの王女としてやるべきことがある。 だから、全てを投げ打ってリトとずっと一緒にいることは・・・できないの」 打ち込まれた釘が最奥まで、ずっぽりと打ち込まれた。 心臓から水滴の波紋のように、広がっていくのは喪失感。 「だから、だからね・・・。せめて、その日が来るまでは・・・普通の女の子として、リト、と・・・」 もうララの声は掠れ、瞳には大粒の涙が浮かんでいた。 彼女が言う、その日。 ララが、デビルークの王女に、戻る日。 あるいは、女王になる日。 その日までララは、リトにただ普通の女の子として自分を見て欲しかった。 それが"いつか"は不確定でも、変えられない未来が彼女にはある。 リトが想像するよりもずっと、その双肩には多くのものが圧し掛かることになるのだろう。 彼女は彼女なりに、リトと同じ未来を描きたかったのだ。 できることなら、自分と一緒にデビルークに来て欲しいとも思ったはずだ。 でも、リトはそれを望んでいない。 望んでいないリトを、巻き込みたくはない。 だからララは、自分の思い描く未来を、リトのそれと重ね合わせて・・・。 リトの望む未来に、存在しようとした。 一時の夢の中だけで。 ララのすすり泣く声を耳にしながら、リトは茫然自失状態だった。 (ララが、いつか、いなくなる・・・) 分かっていたこと。 それは頭の片隅に、「そうなんだろうな」ということとして、常に存在していたはずのこと。 ずっと、考えないようにしていたこと。 "彼女のことどう思ってるとか、自分との境遇の違いとか、そういうの全ておいといて・・・" 彼女と向き合おうとした途端に、こんなことになるなんて。 (皮肉なもんだな・・・) リトは心の中でそっと呟く。 しかし彼の精神は打ちひしがれることを、ララがいなくなることを、きっぱりと拒絶した。 "それ"は、変えられること。 俺が、変われば。 「例え、俺と生まれた星が違っても・・・」 ララが真っ赤な目でリトを見つめる。 「王女様でも、なんでも・・・」 そう、そんなのは関係がないこと。 「ララはララだろ」 「・・・・・・!」 思い描いた、空想でしかない未来など、何度でも描き直せばいい。 「俺は、ララが好きだ」 ララは流れる涙もそのままに、大きく目を見開いた。 ずっと待ち望んでいた人からの、待ち望んだ言葉。 その響きが、全てを揺らす。 私もリトが好きっ!! 今すぐ叫んで胸に飛び込みたいけれど、思いの丈全てを吐き出した直後に 愛の衝撃を受けた身体は、震えるだけで動いてくれない。 「俺の未来に必要なものがあるとすれば・・・」 リトはさっき名前を呼んでくれた時と同じように、凄く優しい声をしていた。 「それは、お前がいてくれること。それだけでいい」 どんなララも、どんな事態も、立場も、全てを受け入れる。 それは、無償の愛を想わせる言葉だった。 「・・・リ、ト」 ララの身体の震えはどんどん大きくなっていた。 じっと見つめてくるララに、リトは自分の太ももを両手で叩きながら告げた。 「・・・早く来いよ。俺、待ってるんだけどな」 「リトッ!!」 胸に飛び込んで来た彼女をコンマ一秒たりとも無駄にせずに抱きしめる。 「ずっと・・・言って欲しかった」 「うん・・・」 「一緒にいたいって・・・」 「うん・・・」 「私、リトの未来にずっといてもいいの・・・?」 「俺が付いていけるかが問題だな」 そっと微笑みながらリトが返す。 「今度は俺が、頑張るから。ララの未来にいられるように」 ララの胸に、この上ない幸せが染み渡っていった。 二人は見つめあった。 確認など必要なかった。 どちらからともなく唇が重なる。 「ん・・・」 押し付けられてくるララの唇。身体。 その全てが柔らかくて、張りがあって、蕩けそうなほどに熱い。 リトはソファに倒れこむ格好になる。 「んむっ・・・ちゅる、ちゅ・・・はあ・・・はむぅ」 (!!) 押し倒すと同時に、ララは舌を差し込んできた。 知識としてしか知らない、ディープキス。 そのあまりにも淫靡な感触に戸惑っている内に、リトはどんどん蹂躙されていく。 歯茎まで舐め尽されてしまった。 「あ・・・ん、んぅ・・・ちゅ・・・ぷは」 お互いに大量の吐息と唾液を流し込んでから、ようやく唇が離れる。 「はあぁ・・・」 深く深くため息をつくララ。 「ララ、お前とばしすぎ・・・」 もう完全にララは"入って"いた。 「だって・・・気持ち、抑えられないよ」 潤んだ瞳、その髪の毛の色よりは少し薄い、ほんのりとしたピンクに染まる頬。 (可愛い。可愛すぎる) 自分の中でチロチロと燃えていた愛欲への想いが、確実に火力を強めつつあった。 「ララ、もう一度・・・」 言うと待ち構えていたかのように舌先を伸ばしてくるララ。 しかし今度は、リトだって負けていられない。 自分の舌でそれを受け止め、絡めとり、激しく吸い上げる。 「ちゅる・・・ん、じゅぷ・・・」 「ん・・・あんっ・・・リホの、舌が・・・」 甘く熱い、ララの唾液。 脳髄が溶かされそうだ。 ララの背に回した腕に力を込める。 「・・・んはっ・・・リト、嬉しいよぅ・・・はぁ」 今までより更に息苦しくなったはずだが、それでもララは幸せそうに笑ってくれた。 リトはララを抱きしめたまま体勢をを横向きに変える。 互いに片方の肩をソファに抱かれた状態で見つめあう。 「リト・・・。私、リトに気持ちよくなって欲しい」 言うなり、リト自身を掴まれた。 それを感じた瞬間、ララを抱きとめていた腕が弛む。 「ちょ、ちょっと待てって」 リトの言葉を無視して、自由になったララはまたしてもリトの上に来るとズボンのジッパーを下ろす。 「ララ、無理しなくていいって」 ララはフルフルと首を振る。 「無理なんかしてないよ。私、リトのなら平気だから・・・」 ララは本当に無理などしていない。 それは分かるが、一方的にされるのは納得できなかった。 ずっと前から自分を想ってくれていたララと、今日ララへの気持ちを確信した自分。 (それでも、期間は違っていても、相手を想う気持ちの大きさは俺だって負けない) 大好きだということ、絶対に離したくないこと、気持ちよくなって欲しいこと、幸せを感じて欲しいこと。 そのどの気持ちも、ララに負けたくない。 溢れそうなこの愛しさを言葉じゃ示せないから、態度で示す。 「じゃさ、一緒にしよう・・・」 言うなり、寝そべったまま自分の身体を180度動かす。 目の前にララの、薄ピンクの下着。引き締まったお尻。 「やっ、恥ずかしいよ・・・」 ぱっとワンピースを抑え付けるララ。 裸を見せることに恥じらいを見せない彼女が、下着を見せることを恥らう。 それがリトをやけに昂ぶらせた。 ララの秘部に真下から手を伸ばし、下着の上から触れる。 「あんっ」 ララのそこは、もうじんわりと湿っていた。 「濡れてる・・・」 「あうぅ・・・」 ララは恥ずかしそうに顔を覆ってしまった。 「キスだけで感じちゃったの?」 ララはリトを肩越しに振り返る。 目尻には涙がずっと溜まっている。 「・・・キスじゃない」 「へっ?」 「リトが好きって言ってくれた1分後には、もう準備できてた・・・」 「いや・・・、マジ?」 いくらなんでもそれは、と思ったがララの入り具合からしたらありえなくもないかもしれない。 「うん」 「・・・」 リトは少しからかおうとしていたのに、感動で言葉が出なくなってしまった。 「リトだから、私我慢できなくなっちゃう・・・。 リトだから、エッチなことも、何だってできるの」 リトだから。 それは、俺だって同じ。 ララだから、こんなことができる。 ララじゃなきゃ、無理だ。 「俺と一緒だな」 「えっ?」 「俺もララだから、我慢できなくなる」 言葉通りリトの急所はズボンの中でこの上なく窮屈そうにしている。 「リトと、一緒?」 「そう、一緒。そして俺たちは、今から一緒のことする」 「一緒のこと・・・」 二人はどちらも、相手を想う気持ちを抑えられない。 だから、同時に愛し合う。 リトも自分と同じ気持ちを抱いてくれている。 そのことがララに力を与え、恥じらいを取り去った。 彼女はあっという間に下着の中に進入し、一物を外気に晒される。 「ちゅ」 「うわっ!」 間髪いれずにそれに口付けてきた。 「ん・・・ちゅ、ちゅ」 リトの先端に、啄ばむような口付けが次々に落ちる。 その度に電流を流さたるかのように身体が震える。 あまりの気持ちよさに、意思とは無関係に一物が揺れる。 それを見て、ララが意地悪く笑う。 「あはっ!気持ちいいんだ・・・。ん・・・はむっ、んっ、んぅ」 「あぁ」 ララはリト自身を両手で包み込むと、先端を咥えてきた。 「あむぅ・・・リトの、どんどん・・・熱く」 無邪気に、戯れるようにリトを愛し続けるララ。 鈴口からは先走り汁が、次から次へと溢れてくる。 「んんっ・・・じゅぷ、ちゅる・・・はん」 ララはより深くリトを飲み込んだ。 (やばい、このままじゃ・・・) あっという間に果ててしまう。 (ララって、経験あるのかな・・・) 自分が初めてだから、ララがうまいのかどうかはわからないが、本当に気持ちいい。 「はあ・・・んっ、れろ」 大きく開けた口の中、舌先で絶妙な愛撫をしてくる。 次から次へと、猛攻を仕掛けてくるララ。 とにかく何か手を打たなければ。 目を開ければ、目の前で左右に踊る、ララの尻尾。 (そうだ、俺もしなくちゃ!) あまりの気持ちよさに完全に忘れていた。 これは二人の共同作業。 (それにララも気持ちよくなってくれれば、ちょっとは俺への攻めも収まるはず) リトはようやく、ララのお尻に手を掛けると内股に口付けた。 「あんっ!」 こちらが驚くような、敏感な反応。 「リ、リト・・・」 片時も離されることがなかったリト自身が、ようやくララの口から開放される。 この機逃すべからず、とばかりにリトはララの泉に指を滑らせた。 「あっ、リト・・・気持ちいいよお・・・」 下着越しなのにクチュクチュと、早くも水音が響いている。 むわっとした、だけど決して不快ではない、温かい湿り気がリトを包む。 「下着、脱がすな」 もう下着としての役割をほとんど果たせなくなっていたピンクの布切れを膝辺りまでずり下ろす。 「リ、リト・・・」 「なに?まさか自分だけ恥ずかしいからやめてなんて言わないよな?」 「そうじゃなくて」 (そうじゃないんだ・・・) 「私、汗臭くない・・・?」 恥ずかしがるということでなく、純粋にリトが不快に思わないかを心配しているようだ。 そんな必要ないのに。 リトはララの秘部に顔を近づけるとあからさまに空気を大きく吸い込んだ。 「ひゃんっ!」 ララの身体がびくんと震える。 「刺激的な、いい匂いがするよ」 「ば、ばかあ!」 まだ直接触れてもいないのに、ララのそこからは粘っこい液体が溢れてきていた。 リトは両手の人差し指と中指でララのそこを押し広げると、舌先をそっと潜らせた。 「きゃんっ!あうっ・・・リトっ、ああっ!」 ララの口から、それまでとは比較にならないほどの甲高い声が上がる。 「あっ、リト、待って。わ、たし・・・初めてなのに・・・」 (そっか。ララも初めてなんだ) 初めてじゃなくても、今更そのことで気持ちがなえたりはしないが、やっぱり嬉しい。 (こんな可愛いララの、初めてが、俺) 調子に乗ったリトは音を意識的に立ててララを愛撫する。 「じゅるるる」 とめどなく溢れてくるララの愛液をすする。 (これが、ララの味か) それは不思議なほどサラリとリトの中に溶け込んでいった。 「や、そんなの飲まないでぇ・・・」 「ほら、ララもしないと」 ララが感じてくれている。 不思議なものでそのことがリトの迸りを鎮めてくれたようだ。 さっきよりも大分、達するまでの余裕が生まれてきた気がする。 「んっ・・・ぢゅっ、ちゅぷ・・・んっ」 「っ!」 前言撤回。 やっぱりあっという間に達しそうだ。 ララはこの僅かな時間でリトの敏感なところを察知したようで、的確にそこを突いてきた。 「ちゅ、ちゅぷ・・・リト・・・ひもひいい?」 「うっ・・・咥えながら喋るな・・・」 聞かなくたってわかっているくせに。 そう思うが、まじりっ気なしの純粋な笑顔を見せられると文句を言うこともできない。 「んう・・・んちゅ・・・じゅちゅ」 これは本当にまずい。 かくなるうえは・・・。 「レロ・・・んー」 「ああっ!!」 リトは女の子の一番敏感なところ、目の前で微かに、しかし絶えず震えていたクリトリスを舌で愛撫する。 「やんっ!そこは・・・リトッ!」 舌先の感覚を研ぎ澄まし、小さな突起を転がすように舐めていく。 「ダメだよぅ・・・そこは、あっあっあん!」 リトの上で大きく上下に左右に跳ねるララ。 しかし今度は、その口が休んでいたのは僅かな間だった。 「んっ・・・んく!あふぅ・・・んあっ・・・ちゅ」 すぐにララは熱の篭った、激しい愛撫を加えてきた。 リトも負けじと、クリトリスの攻めを指に変更しそれを弾きながらララを舌で味わう。 とめどなく与えられる快感と、同時に耳に入る艶かしいララの喘ぎ声。 あっという間にリトは高まっていった。 「リ、リトぉ」 ララが泣きそうな表情で、いやもう実際に涙はこぼれてるんだけど、微かに目を細めた切ない表情で見つめてくる。 リトは必死に下腹部に力を入れて耐える。 (今、本気で出そうだった・・・) 辛うじて難(?)を逃れたリトだったが、直後にとんでもない追撃を食らった。 「私、もうだめなの・・・。お願い、リトも、一緒に・・・」 そんな、可愛すぎること言われちゃったら・・・。 しかもそう言ってる間も、無意識だろうけどリトをしなやかな指で擦りあげていた。 暴発する想い。 「くっ。あ、ダメだ!ごめんっ、ララッ!」 ビクンビクンビクン!! 「ひゃあっ!」 一度二度三度。 噴水のように上へと真っ直ぐに立上り、ララの美しい顔を、鮮やかな髪を白く染め上げていった。 「うあ、まだ出るっ・・・」 愛しいララを相手に一回出したくらいで立たなくなるなんてことはないだろうけど、 こんなに大量に出して大丈夫なのかと思うくらいだった。 「ごめん、いっぱい汚しちゃって・・・」 ようやく呼吸が少し楽になって、リトはティッシュを数枚取るとララに差し出す。 しかしララはそれを受け取らず、自分の髪や顔に付いたリトの精液を 「んっ、ちゅぱっ」 指で掬って口に運んだ。 「ララッ、やめろって」 慌ててララの腕を押さえる。 「へっ?どうして?私リトのなら平気だよ?」 「そういう問題じゃないって」 「男の人って、飲んでもらうのが好きなんじゃないの?」 どこまでが計算でどこまでが素なのか。 いや、たぶん素なんだろうなあ・・・。 リトは仕方がないからララの顔と髪の毛を汚した自らの分身たちを拭ってやった。 そうしている間、ララは嬉しさを抑えられないといった様子でニコニコ顔だった。 「どしたんだ?」 ララははにかみながら答える。 「リトが私で、気持ちよくなってくれた」 心から満足した、お腹いっぱい、そんな表情。 それはめちゃくちゃ可愛かったが、リトの中では悔しさが湧き上がってきていた。 (自分だけイカされた・・・) もっとも表面上はララが何かしたわけではない。 が、リトにとってあの表情は、声は、反則だった。 (俺もララを気持ちよくしたい) ララと一刻も早くつながりたい気持ちももちろんある。 でも、二人一緒に達する前に自分だけが・・・。 だから、そうしないわけにはいかなかった。 「ララ・・・」 「リトぉ」 顔を近づけたリトに、雛鳥のように唇を突き出すララ。 二人は口付けを交わした。 しかしリトの神経は、唇ではなく指先に向いていた。 きゅっ 「ふああああああっ」 ララが今日一番の大声を挙げた。 リトの左手が、ララの尻尾をそっと握ったから。 「あっ、尻尾はダメぇーーー!!」 「っ!?」 尻尾に触れると同時に膣内へと沈めていた右手の中指が、折れるんじゃないかと思うほどに締め付けられた。 手首の辺りを、両太ももできつくきつく圧迫される。 ガクガクと身体を痙攣させているララ。 予想をはるかに上回るララの反応にリトは思わず謝った。 「ご、ごめん、ララ」 「ぅ、うう・・・」 ララは瞳をギュっと閉じて、リトの腕にしがみついている。 「尻尾は、ダメなの・・・」 息も絶え絶えになりながらララがか細い声で告げた。 直前の笑顔から一変したその表情。 「ご、ごめんな・・・」 あまりにも敏感で怯えた反応に、リトはその胸を指先以上に締め付けられた。 「リトに触られちゃったら、私・・・おかしくなっちゃうから・・・」 潤んだ瞳で切実に訴えてくるララに、胸が熱くなる。 「うん、わかったよ。もう勝手に触ったりしないから。約束する」 「リト・・・」 嬉しそうに目を細めるララ。 泣き笑いのその顔は、最高に可愛い。 もう自分だけイカされたとか、そんなのはどうでも良くなっていた。 「だから、尻尾以外で気持ちよくして・・・?」 ドクンッ 本当に、この娘は。 何物にもに恥じることなく、ためらうことなく、貪欲に求めてくれる。 (そしてそれは、俺だから・・・) ララへの想いが、リトを埋め尽くしていく。 リトはララを抱き上げると、その想いを噛み締めながらベッドへと移動した。 もちろんその間、唇が重ねられていたのは言うまでもない。 額にそっと口付けてから、それ以上の柔らかさで割れ目をなぞってやる。 「ララ、好きだ。大好きだ」 耳元で愛を囁きながら指を侵入させ、その形を確認するかのようにゆっくりと円を描く。 「んあっ・・・くぅん、リト、リト」 尻尾を触られた影響がまだあるのか、すぐに震え始めるララの身体。 膣内をかき回す指を二本に増やし、唇と舌でララと繋がる。 「あんっ・・・ちゅ、ちゅう・・・リ、ト・・・私、イ・・・ちゃう」 「うん。イって。俺の指で・・・」 今自分の中にあるのは、リトの指。 間近に感じるリトの吐息、温かな体温、大事なところを蠢く、熱い熱い指先。 「あっ、ああっ・・・はあああん」 その肢体が、大きな振動を起こす。 嬌声とともにララが達し、指先が引きずり込まそうになる。 「はあっ、はあ、あうっ」 荒い息を吐き続けながら、ベッドにぱったりと背中から倒れる。 いまや髪の毛以上に朱に染まった頬、快感に細められ潤んだ瞳、 もう何が混ざっているのかも分からないけれど、脳髄を痺れさせるララの香り。 「ララ・・・すごく可愛かったよ」 こんな言葉でしか表現できない自分がもどかしい。 本当は可愛いなんてもんじゃない。 もし自分以外の誰かがこの表情を見たなんて知ったら・・・気が狂ってしまいそうだった。 「リト・・・」 今リトは達させた方なのに、頭の中がグラグラして達した直後のようになってしまっていた。 そんなリトから今この瞬間、唯一注意を引き付けることができる少女が、まだ少し息を弾ませながらこう告げた。 小悪魔っぽく。 悪戯っぽく。 両手は胸の前で組んで。 「私・・・待ってるんだけどな・・・」 「えっ?」 リトがララを、求めた言葉。 それは突然のリトの告白に動きを止めてしまったララを解放するために、 そして直前にとんでもないことを口走った(もちろん後悔など微塵もないが)ことへの照れ隠しから、発したもの。 しかし"ララがリトを"求めるならそれは"まさにその通り"だった。 彼女はずっと待っていた。 リトに好きになってもらいたいと、彼女なりの精一杯の努力を積み重ねながら。 しかし決して押し付けることなく。 リトの負担にならないように、膨らみ続けていく自分の気持ちを、必死に抑えながら。 今この場で、絶対に応えなければならない。 リトは破裂しそうな自分の想いを隠しもせず、乱暴に全ての衣類を脱ぎ捨てた。 そして、一途に自分を待ち続けてくれた大切な少女に覆いかぶさる。 「私も、リトと同じ格好にして?」 もはや少女の瞳に恥じらいはない。 なぜなら、それを完全に押し流してしまうだけの期待と幸福と情欲に、占領されているから。 そしてリトとしてもそれは望むところ。 彼女の魅力的な肢体を、余すところなく堪能できるのだから。 (でも、わざわざ脱がさなくてもペケなんじゃ・・・) 視線を髪の毛に移して、そこでリトはようやく気づいた。 「ペケがいない・・・?」 思い返せば今日はペケの声を聞いていなかった。 つまりこのワンピースは、ララの自前ってことになる。 いや、そんなことより・・・。 リトの呟きに答えるように、ララはアップにまとめていた長く煌びやかな髪をいつものスタイルに下ろす。 そこにはやはりペケの姿はない。 「今日は本当に、二人っきりが良かったから・・・」 二人の初めての、デート。 そしてもしかしたら、最後になっていたかもしれない、デート。 そのデートを、二人だけで過ごしたい。 自らが生み出し、常に共に行動してきた大切な理解者すらも、今日だけは・・・。 いじらしい。 「ララッ!」 たまらなくなってワンピースを一思いにずり下ろすと、足首に引っかかっていた布切れごと取り去りララの小さな望みを満たす。 「リト、来て・・・」 ララが膝を立てて綺麗な裏筋が入った美脚を広げてくれる。 「行くよ・・・ララ」 ララの、そして自分の。 大きな、最大の望みを、果たす。 二人が、一つに繋がる。 「くぅぅぅんっ!!」 ララが苦しそうな、しかし悦びに満ちた声を挙げる。 互いを求める想いが強すぎたのか、二人はあっという間に一番深いところで重なった。 リトはそこで、ピッタリと自分を覆いつくすララを感じていた。 ララはきつく目を閉じている。 自分のために、痛みに耐えてくれている。 今この瞬間、大丈夫?なんて言葉には意味がなかった。 だからリトは自分のもてる全ての愛情を込めて、何よりも大切な少女の名を呼び続けた。 「ララ、ララ、ララ・・・」 口に出した自分の言葉が、頭の中で回っていた。 リトの全ては今、ララだけで構成されていた。 一方ララも、リトと一つになったことを強く強く感じていた。 悦びに打ち震える心、それに呼応するように小刻みに振動する身体。 頭の中は真っ白で、何も考えられなかった。 耳元で囁かれたリトの優しい声すらも、理解することはできなかった。 ただ、彼の想いは痛いほどに伝わってきていた。 それだけは、確かに言える。 「リ、ト・・・」 その後彼女はどんな言葉を繋ごうとしていたのか。 「ありがとう」か「嬉しいよ」か、それとも。 それは誰にも分からない。 ただ名前を呼ばれた愛しい人が、それに応えるようにきつく、やさしく抱きしめてくれた事に対して彼女は小さく微笑んだ。 「リト・・・」 もう一度呼んでみる。 すると今度は口付けが次から次へと降り注いだ。 ララの身体に負担をかけないように、かつなるべく広範囲に、リトはキスを落としていった。 「リ、んぅっ・・・」 三度目は、呼びきらないうちに舌を絡め取られた。 ララの熱くて柔らかい唇を、舌を、ありったけの想いを込めて撫でていく。 「ん、んんっ・・・リト・・・はむぅっ」 くぐもった彼女の声が耳奥でそっと、やさしく響く。 「ちゅ、あむっ・・・リ、ト・・・来て」 「痛くない?もう動いても平気なのか・・・?」 「うん・・・。平気」 じっとララの瞳を覗き込む。 無理をしている様子はない。 そっと結合部に手を伸ばしてみた。 「あんっ」 彼女の内腿は粘液でぐしょぐしょになっていた。 その色は透明ではなく、かすかに白みがかっている。 (デビルーク人には処女膜はないのかな・・・?) まあ彼女の場合、いつ破れてもおかしくないほど元気いっぱいに飛び回っているからわからないが。 ララが苦しい想いをしなくて嬉しいけれど、少し勿体無い気がしてしまうのは男の性か。 「リトぉ・・・」 あっといかん。 そんなことはどうでもいい。 もうこれ以上、ララを待たせるわけにはいかない。 自分の全てを曝け出しぶつけて来てくれたララに、膜なんてものは似合わない。 ぎちぎちに締め付けられている先端。 その抵抗を電気が走るほどの快感に感じながら、ゆっくりとララの最奥から腰を引き、打ち付ける。 「ああっ・・・!んっ、ふあっ・・・!」 ララの中は彼女の想いの深さに負けないほどに熱くて、きついのに柔らかくて。 「リ、ト・・・早いよぅ!・・・はげしっ、ああん!!」 ゆっくりと動き続けることなど1分とできなかった。 その豊満なおっぱいを握り締め、乱暴に打ちつける。 「ま、待って・・・。あぅんっ!そ、なに・・・したら」 嫌々をするようにララの頭が左右に揺れる。 でもその腰はリトをより深く、より早く求めるかのように動いてくれていた。 口元は二人の混ざり合った唾液でべちょべちょになっており、唇の端からは一筋汁が垂れていた。 ビンビンと言って良いほどに固くなり、リトの掌を滑る胸の突起。 汗にまみれたその全身。はしたなく歪んだその顔。 ララが可愛くて、愛しくて、大切で、離したくなくて、もう限界だと分かっているのにもっと深くつながりたくて。 抉るように彼女の奥深くを突いた。 「ふぁぁああん!!リト・・・やんっ、もう・・・私・・・」 「くっ・・・!」 リトのほうも限界が近い。 思わず漏れそうになった声を誤魔化すため、また唇を奪う。 「んむっ・・・んあっ、あっ・・・ぃ、っちゃう・・・リト」 その唇は滑らかで、ほどよい弾力で。 その身体は一点の例外も無くすべすべで。 二人の腰がぶつかり合うたびに揺れる、小さな乳輪の大きな胸。 張りが合ってしなやかな脚。 身体の震えにあわせてピンと伸びる爪先。 熱にうかされ掠れた、いつもより少し高くて、だいぶ甘い声。 そして、その表情。 ララの、感じてるときの顔。 きゅっと閉じられた瞳、ハの字型の眉、シーツを滑るピンク色の髪、それを上回るほどに染まった頬、半開きの小さな口。 全部全部、俺の妄想なんかよりずっと魅力的で誘惑的だった。 全部全部、俺だけのもの・・・。 「ララ、ララ!!」 「リトッ!お願い・・・一緒にっ!」 その言葉が、ダメ押しだった。 「くぅっ!・・・ララ、出るっ!!」 「あ・・・あああっ!ひゃ、ぁあああっ・・・!!」 限界を超えたリトは、ララの膣にその愛の迸り全てを吐き出した。 同時にララも、ガクガクと身体を震わせる。 「はああぁっ・・・はあぁぁ・・・」 大きな間隔で荒い息を繰り返すララ。 膣内はすでにたっぷりと注ぎ込んだリトから更に愛を受けを止めようと、断続的に絡み付いていた。 二人は熱を多分に残した身体を互いに包み合い、まどろみの中で愛し合う。 「リト、好き・・・。大好き」 「俺の方が好きだよ・・・」 「絶対私のほうが好きだもん・・・」 聞いている方が恥ずかしくなるほどの囁きあいの後、「延長戦」が行なわれたことは言うまでもない。 リトの部屋から安らかな吐息が聞こえてきたのは空が白み始めてからだった。 朝、携帯のけたたましい着信音でリトは目が覚めた。 「ふぁい、もしもし・・・」 「リト、おはよ。私」 まだ半分眠りの中にいるリトには女の子の声だということしかわからなかった。 ふと身体を横に倒すと、ララがいない。 「ララッ!?」 なぜか急に不安になってリトは大声を出し・・・墓穴を掘った。 「・・・なるほど、そーいうことか」 「み、美柑!?」 電話は昨夜姿を見なかった妹からだった。 「だから昨夜メールしても返信なかったんだぁ」 メール? 記憶にない。 もしかしてララと愛し合ってるときか? 「そっかそっかあ、ついにララさんと・・・」 「なっ!?何言ってんだ!何もなかったっての!」 「くくっ、くっ」 深まる美柑の笑み。 これじゃあ何かあったって言ってるようなものだ。 ため息を吐く以外にできることはなかった。 「もういいから、何の用だよ」 「私は父さんの仕事場にいるから、心配するなって話」 「ああ、なんだ・・・」 「なんだって・・・。 ハア、もうリトの頭の中はララさんだけになっちゃったのね・・・」 芝居がかった、2時間ドラマの裕福な家の母親のような声で嘆く蜜柑。 リトはより一層深くため息をついた。 そんな兄に対して誰よりも近くで見てきた妹は短く、しかし深いエールを送った。 「大事にしてあげなよ・・・」 その言葉を最後に電話は切れた。 美柑は、茶化すような口調とは裏腹に少し寂しそうだった。 愛しい少女は、キッチンにいた。 「あっ、リト!おはよっ!!」 いつもの声。いつもの笑顔。 「すぐ朝ごはんできるからねっ」 じんわりと染み渡っていく、温かさ。 ほとんど無意識に、リトはララを背後から抱きしめていた。 「リ、リト?」 ララの肩に顎を乗せて、その温もりと甘い香りを胸いっぱいに吸い込む。 「ララ、好きだよ・・・」 付き合いだしたら、より甘えん坊になるのはリトのほうかもしれない。 (昨日のララ、片時だって忘れられるわけない・・・。 あんなの見せられたら、誰だってこうなるよ) 胸の中で誰にでもなしに言い訳してみる。 このまま、昨日の続きをしたい。 リトがララの頬に手を掛けようとした瞬間、その桃色の唇が開いた。 「私、今度はリトの奥さんになれるように頑張るから!!」 「・・・奥さん?」 その響きは、何ともむずがゆかった。 それを誤魔化すようにリトが訊く。 「明日からは洗濯でもならうつもりか?」 「それが終わったらお掃除、お花、お茶にお琴にお裁縫・・・」 「おいおい・・・」 ララの"普通の奥さん"のイメージなのだろうか。 いつの時代の和服美人だ。 「ねえ、リト・・・」 微かに見え隠れする不安の色。 身体を覆うリトの手に、そっと自分のそれを重ねてララが問う。 「その時が来たら・・・一緒に来てくれるの・・・?」 「愚問だっての。昨日もそう言ったろ?」 「だけど、美柑やみんなと離れ離れになっちゃうよ?」 (不安の正体はこれか・・・) 自分は全てを投げ打てないと言っておいて、大好きな相手にそれを求めてしまうことへの。 「見返り・・・」 「へっ?」 「ララが見返りくれるなら行ってあげる」 「・・・見返り?」 そんな不安な瞳で見るなっての、からかえなくなるから。 我慢できなくなるから。 「今さっきみたいに・・・。昨夜みたいに・・・」 元気で明るい、無邪気なララ。 俺を求めて、よがり狂うララ。 そのどちらも失わずにいてくれるのなら、全てを投げ打つのに躊躇などいらない。 「・・・?」 揺れる潤んだ瞳で至近距離から見つめられて、リトの我慢はあっさり限界を超えた。 「つまり、今までどおりのララでいてくれればそれでいいってこと!」 言葉と共にその最高の肢体を持ち上げると階段へ向かう。 「ちょっと、リト!?どこに・・・」 「確かめに行くに決まってるだろ?」 大好きなララの、"後者"をな・・・。
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今のままリトには会えない…。 ララはまだ暑くなる前の街をとぼとぼと歩いていた。 「これからどうしよう…」 財布の中には一応お金はあるので一日くらいならなんとかなる。 だがいつまでもふらふらしているわけにはいかないし、何よりリトは自分のことを心配するだろう。 私…リトの所に帰ってもいいのかな…。 「ララさんがいなくなった?」 美柑は驚いて兄を問い詰める。 「あんた何かしたんじゃないでしょうね?リト?」 「そ…そんなわけないだろ!とにかく、俺、探しに行ってくるよ」 リトは靴下を取りに一度自室に戻ろうとしたが、自室の前でナナとモモが待ち構えていた。 「リトさん…。お姉様のこと、心当たりがあるんですよね?」 「おいリト…。姉上を泣かすなんてどういうつもりなんだよ?」 モモは比較的冷静だったがナナは頭に血が上っていた。 今にもリトに掴みかかりそうなナナをモモが制する。 「ナナ、とりあえず何があったのか聞きましょう。お部屋に入っても構いませんか?」 「ああ…」 リトは二人と共に部屋に入り、昨日何があったのかを話した。 唯とララと三人で交わっていたことも、自分がつい調子に乗って唯にがっついてしまったことも。 「そうですか…。それでお姉様はリトさんを独占したいと思うようになってしまったんでしょうね…」 モモはあくまで冷静に姉の心情を分析する。 「なんだよ!やっぱおまえのせいで姉上は…!やっぱおまえみたいなケダモノに姉上はふさわしくないんだよ!」 ナナが怒りをぶちまけるのをモモが制止する。 「やめなさい、ナナ。ふさわしいとかふさわしくないとか、そんなのどうだっていいの。お姉様はリトさんが好きで好きでしかたないのよ?今の言葉はお姉様の気持ちを否定することになるわ」 「でも姉上は泣いてんだぞ?それは姉上が今幸せだって思ってないからだろ?」 リトはそんなナナを見て思った。 結局ナナはどこまでもララが好きなのだ。 たとえケダモノと蔑む自分と獣のように交わっても、どんな淫らな行為に彼女が溺れようとも。 ララも自分のことがどこまでも好きなのだろう。 でも自分は彼女の気持ちにどこか甘えている部分があったのではないだろうか。 昨日唯と一緒にララとも交わったのはこのくらいやっても平気だろうと心のどこかで思っていたからに他ならない。 リトは今更ながら自分の思慮の無さを思い知った。 「俺…行ってくるよ」 リトは起ちあがって部屋を出ようとした。 そのときナナが尋ねた。 「もし姉上を連れて帰ったとして、その後はどうするんだよ?リトは姉上以外の女との関係をやめるつもりはないんだろ?」 「…」 「そんなんじゃ連れて帰ってもまた同じことになるだけだと思うぞ?」 ナナの意見は最もだろう。 それはリトも承知していた。 「ララがさ…、昨日泣きながら言ってた。本当は唯は大切な友達で、唯とも一緒にいたいんだって。でも今の自分にはどうしたらいいかわからないって…」 ナナはリトの言葉に静かに耳を傾ける。 「…結局俺にはララを信じることしかできないから」 部屋を出る間際にリトは不意にそう言った。 ナナにはリトがなぜそんなことを言ったのか理解できなかった。 リトが部屋から出ると、モモがナナに言った。 「私たちも探しましょう?」 「…ああ…」 ナナとモモも立ち上がり、リトの部屋を後にした。 ララが街をふらふらしていると、まだ開いていない本屋の前にヤミがいるのを見つけた。 いつもなら元気に声をかけるところだが、今はとてもそんな気分になれなかった。 だがヤミはララに気づき、声をかけてきた。 「あ、プリンセス。こんな時間からどうしたんですか」 ヤミは声をかけてからララの様子がおかしいことに気づく。 それにいつもは大体リトか友人と一緒にいるのに、今日は一人だ。 「ううん、なんでもないよ。ちょっと散歩してるだけ」 「そうですか…」 ララは今は一人になりたかったので、このままヤミと別れるつもりでいたが、ヤミは予想だにしないことを言い出した。 「少し、ご一緒してもいいですか?」 こうしてララはヤミと散歩することになった。 二人の間に会話は無い。 ヤミは平然としていたがララはどこか気まずさを感じていた。 いつもならポンポンと話題が出てくるのに今日は下らない言葉のひとつも出てこなかった。 ヤミは少し歩いてから言った。 「なにか悩みごとですか?プリンセス」 ヤミはずばりと言った。 「…結城リトに関係したことですか?」」 どうやらヤミにも自分がどうして悩んでいるのか見破られているようだ。 ララは何も答えなかったが、ヤミはそのまま続けた。 「恋愛に関することは私にはよくわかりませんが…」 少し暑くなり始め、賑わい始めた街でそう大きくないヤミの声はとてもよく通って聞こえた。 「結城リトの隣にあなたがいないところなんて、私には想像できないです」 「ヤミちゃん…」 ヤミはそれだけ言うとそのまま姿を消した。 そして夕方になり、リトは未だにララが見つからないことに焦りを感じていた。 「ララ…。どこにいるんだよ…」 リトは日が傾いていくのにさらなる焦りを感じながら疲れ果てた脚に鞭を打った。 そのころララはリトと出会ったばかりの頃に二人でやってきた河原にいた。 そこに意外な人物が通りかかった。 「あれ?あれは…」 グラビアの撮影を終えて沖縄から帰って来たルンである。 ルンはララの後ろ姿を確認して少し邪な気持ちが湧いた。 『ララ…。昨日リトくんとトラブルを起こしたんだっけ…。そのことをまだ引きずってるみたいね。よーし、馬鹿に薬をつける意味も込めて、ちょっとからかってやろうかしら』 ルンはそう思い、ララに声をかけた。 「あれ?ララちゃん?こんなところでどうしたの?」 ルンの声に気づいたララが後ろを振り向く。 「ルンちゃん?あれ?旅行の帰り?」 ララはルンが小さなスーツケースを引きずっているのを見てそう言った。 「ああ、沖縄でグラビアの撮影があってね」 ここまでは他愛のない会話だった。 「なんか浮かない顔してるね。もしかしてリトくんと何かあったの?」 ルンがそう言うとララの顔は見る見る曇っていった。 さすがのルンも今のララの顔を見て彼女をからかうのは気が引けた。 「ねえルンちゃん…。ちょっと相談してもいいかなあ…」 「…うん」 ララはぽつぽつと昨日何があったのかを話し始めた。 唯に対して嫉妬心を抱いたこと、昨夜リトの気を引こうとして発明品を使ったこと、自分の気持ちがわからくなって家を飛び出したことなどを。 昨日そう長い時間ではなかったとはいえリトに会っていたルンはララのことを羨ましいと思った。 結局のところリトはララが好きで、彼女が笑顔を曇らせれば彼の心も曇るのだ。 ララはそれだけリトに愛されているのだと思うと、ルンは今の彼女に苛立ちさえ覚えるのだった。 「…私、リトに振り向いてもらいたくて頑張ったのになあ…」 ララがぽつんとそう言うと、ルンは少し間を置いてから厳しい口調で言った。 「馬鹿じゃないの?ララちゃん」 「え…」 「リトくんはそのままのララちゃんのことが好きなんだと思うよ?そんなこともわからないの?」 ララはルンの言葉に沈黙する。 「実は私、昨日ゲームでリトくんと会ったんだよね。そのときリトくんの様子がなんかおかしかったから問い詰めてみたら、ララちゃんのこと気にしてたよ」 我ながらガラにもないことを言っているな、とルンは思った。 「私だってリトくんのこと好きだし、リトくんには笑っていてほしい。でもリトくんが笑ってられるためには、ララちゃんが笑ってることが必要なんだって昨日思った」 ララはルンが昨日リトに会っていたなどと思っていなかったこともあり、ルンの話に目を丸くする。 「もっと信じてあげなよ、リトくんのこと。それだけでもリトくんの心は支えられると思うから」 ルンがそこまで言うと、遠くからリトの声が聞こえた。 「おーい!ララー!どこにいるんだー!?」 「やれやれ…。お迎えが来たみたいよ?」 ルンはそう言ってララに背を向けた。 「あ…ルンちゃん…」 立ち去ろうとするルンにララは声をかける。 しかしそれと同時にリトが自分を見つけ、そのまま土手を駆け下りてきた。 「ララ…、こんなとこにいたのか…。あれ?あれはルン?撮影から帰ってきてたのか…」 リトは遠ざかっていくルンの後ろ姿を見て声をかけようかと思ったが、今は彼にとってはララの方が優先事項だった。 「とりあえず帰ろうぜ」 「うん…」 ララはそう言うとルンに向かって思い切り叫んだ。 「ルンちゃーん!ありがとーっ!」 その声にルンはララの方を振り返ることなくチッと舌打ちをした。 『やれやれ…。ほんとに手のかかる女なんだから…』 夕日がルンの横顔を照らし、その光を受けてルンはふっと笑った。 『まったく…。ほんとガラにもないことしちゃったな…』 ルンは誰よりも自分がリトのこと想っていると自負している。 彼の笑顔にララの笑顔が必要だからあんなことを言ったまでだ。 ルンは自分にそう言い聞かせたものの、心はどこか晴れやかだった。 『明日リトくんにデートしてもらって、一日中独占しちゃおうかな』 そんなことを思いながらルンは夕日の輝きの中に姿を消した。 「リト…。心配かけてごめんね」 ララはリトの方を向いて謝った。 「いいんだよ。俺もちょっと軽率だったしさ」 リトはそう言ってララに手を差し出した。 「あ…」 ララはその手を取ることを少し躊躇した。 「なにしてんだよ?ほら」 リトはそのままララの手を取り、家に向かって歩き出した。 少し顔を赤くしたララだったが、すぐに笑顔になって彼の隣を歩く。 私は何を疑っていたんだろう。 今までリトの何を見てきたのだろう。 私はリトを信じればいい。 リトは必死になって私を探してくれた。 馬鹿な私に手を差し伸べてくれた。 今感じる温もりがリトと私の想いの証なのだ。 二人が手をつないで帰っている様子を上空から伺う影が二つあった。 ナナとモモである。 「どうやら一件落着のようね」 モモはほっと胸を撫で下ろしている。 ナナはじっと二人を見て何か考え込んでいた。 実は二人はリトより先にララを見つけていたのだが、ルンとララが真剣な様子で話しこんでいる最中だったため声をかけられずにいたのだった。 「信じ合い、支え合う…か…」 ナナはふとそうつぶやいた。 『あいつはケダモノかもしれないけど姉上のことを信じて必死に探しまわって、姉上もやっぱりあいつを信じてるんだな』 ナナが物思いにふけっていると、モモが声をかけてきた。 「さ、私たちも帰りましょう?」 「…そうだな」 ナナとモモは反重力ウイングを広げると、結城家を目指して一直線に飛んで行った。 その夜、ナナとモモはモモの部屋で紅茶を飲んでいた。 「なあモモ。なんだかんだ言ってもリトは姉上のことが好きで、姉上もリトとは離れられないんだな」 「そうね」 モモはくすっと笑った。 「どうしたの?ナナがそんな話をするなんて珍しいじゃない」 「そうかな?でもあたしなりにちょっと考えたんだ。ルンが言ってた信じあい、支え合うってことについてさ」 「そう…。私もルンさんがあんなこと言うなんてちょっと意外だったわ」 「ルンはルンなりにリトのこと考えてんだな」 「そうね」 モモはそう言ってまたカップに口を付ける。 隣のララの部屋ではリトとララが愛し合っている真っ最中だった。 「あ…リトそんなにおっぱい吸っちゃだめぇ…」 「えー?だってそのうち俺とララの子どもが独占しちゃうだろ?だから今くらいいいじゃん」 「もう…リトったらぁ…あん…」 乳首への刺激にララは身をよじらせ、リトはララの様子に興奮してララをぎゅっと抱きしめる。 唇が重なり、舌と舌が絡み合うとララの膣はその刺激に反応して愛液で中を潤していく。 「もういいよな?ララ」 リトのペニスも先ほどのキスで完全にララの中に入る準備を終えていた。 「うん…。リト、して…」 リトはララの上に覆いかぶさり、そのまま濡れた花弁の中心を迷うことなく貫いた。 「あっ…!」 ララが挿入の刺激に甲高い声を上げ、ぎゅっとリトにしがみついて快楽を感じていることを伝える。 リトはララの唇にむしゃぶりつきながら無我夢中で腰を振った。 ララのかわいらしい嬌声は聞こえないものの、間近で感じる彼女の荒い吐息と自分の舌に絡みつく彼女の舌の感触が興奮を高めていく。 ララの背中に回す腕にも力が入り、二人は今まで以上の一体感で絶頂へと昇り詰める。 リトはララの一番奥へ強烈な一突きを繰り出し、そのまま彼女の中で果てる。 そのときも二人はお互いの背中に回した腕の力を緩めず、重ねた唇も離さなかった。 膣の中でペニスが精を放つ脈動が心地よく、二人の心臓が一つになったように同じリズムを刻んだ。 二人の唇が離れてもララはリトの背中に腕を回したまま離れようとしなかった。 「リト…。愛してる…」 涙声でそう言うララだったが、リトは慌てなかった。 自分に抱かれて嬉し涙を流してくれる彼女を大切にしよう。 そう心に誓ってもう一度ララと唇を重ねた。 リトはそのあと一人で自室に下りて宿題をしていた。 ララと心を通じ合わせ、最高のセックスが出来たこともあってか、彼はいつもより気分よく宿題を進めることができた。 「そろそろいいかな…」 リトは大きく背伸びをしてそのままベッドに仰向けに倒れこんだ。 そこにナナがやって来た。 「おいリト、入るぞ」 「ん?ナナ?」 最近はナナとやや疎遠気味だったこともあり、珍しいこともあるもんだと思いながらリトは体を起こす。 「今から寝るとこだったのか?」 「ん?ああ、そうだよ」 「ふーん…」 ナナはそう言うと少しリトから顔を背け、頬を赤らめた。 「なあリト…。寝る前にちょっとあたしに付き合えよ」 ナナはそう言ってゲームのカードを取り出した。
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「ばいばいメモリーくん。これで、地球のみんなから私の記憶を消す」 ララの取り出した手のひらサイズの物に全員の目が集まる 「お…おいララ!?どーいうことだよそれ!!」 慌てるリトに振り向いたララの目には涙が滲んでいた 「プリンセスとか婚約候補とか、そういうのナシでもう一度…ゼロからの私でがんばってみたいの。私の、最後のわがまま…聞いて…」 「そ…そんなこと…」 リトはなにも言い返せず呆然となる 「ララさん!」 「友達になってくれてありがとう春菜!また、友達になってくれるとうれしいな…」 ララの指がメモリーくんのスイッチにかかる ララは何かを決心するかのようにゆっくりと深呼吸をした 「ラ…ララ?ま…待てよララ!!そんなことしなくても――――…」 「さよなら…」 まばゆい光に包まれながらも、必死に駆け寄るリトの目の前でララは笑った その顔は今まで見たどのララよりもキレイで、そして、悲しそうだった…… ごめん…リト―――― 光が全てを包み込む中、最後にリトは、はっきりと自分の名を呼ぶララの声を聞いた 「ホントにこれでよろしかったのですかララ様?」 「うん…」 ぴょんぴょんワープくんで屋上からワープしてきたララは、今地球のどことも知れない広い草原の中一人座っていた その顔は暗く、沈んでいる 「いいの…。だってあのままじゃダメだとわかったから」 「しかし…」 頭の上のペケもいつもと比べてどこか歯切れが悪い 「それに…私決めたの。リトに振り向いてもらえるようにがんばるって!もう一度最初から…もう一度ゼロから…」 ララは立ち上がるとめいっぱい伸びをする 山と山の間に日が沈み、草原に夜の風が吹きぬけていく 気持ちよくて、少し冷たい異国の風にララはギュッと腕で体を抱きしめる 「リト今頃なにしてるかな…」 ぽつり呟いた言葉にペケは溜め息を吐く 「そんなに心配なら今すぐお会いになればよろしいじゃないですか?」 「ダ~メ!すぐに会ったりしたらメモリーくんの意味がないよ。それに…それに今会っちゃうと……」 きっと、きっとくじけそうになる 自分の決めた決意が崩れてしまう 「リト…」 日本では今夕飯が終わった頃だ 「今日はどんなメニューだったのかな~?」 ハンバーグだったらうれしいな。大好きなしじみのス~プが出たらすごくうれしい 美柑の作ったものはなんでもおいしいから、いつもいつも夕飯の時は楽しみ ララのお腹がぐ~っと鳴る 「えへへ、お腹すいちゃったね」 「ララ様…」 ララは持ってきたケータイ食料の袋を開けると、それを口に入れる 「おいしくない…」 もともと栄養重視の食べ物にまともな味があるはずもなく、けれどもそれ以上に今のララにはおいしくは感じられなかった 美柑の作る料理は王宮で食べていたどの料理よりも全然豪華ではないし、食材だって高級でもなくありふれた物ばかりだ けれどもララは美柑の作る料理が好きだった 宇宙で一番大好きだった リトと美柑三人で囲む食卓はいつもにぎやかで、そして、楽しかった 献立を決める時、いつも自分の食べたいメニューを断る美柑とのやりとりもララにとっては大切な時間だった お菓子の食べすぎで、ご飯が最後まで食べられなかった時は、いつもリトが文句を言いながらも助けてくれていた みんなかけがいのない大切なモノばかり 「けど…けど、みんななくなっちゃった…」 「ララ様!?」 ララの頬に涙が零れ落ちる 無くなってしまったモノの大切さに体が震える 失ったモノの重さに涙が止まらなくなる 「私…私……」 決意したはずなのに、もう一度最初からがんばると決めたはずなのに リトの顔が頭に浮かぶ リトだけじゃない。春菜も理紗も未央も美柑もみんなの顔が浮かんでは消えていく 寂しさが体を心を包んでいく 「みんなに会いたい……リトに、リトに会いたい…」 今まで心を埋めていた大切なものに、失ってから初めて気付いた 今までどんな時でも笑顔でいられた理由が改めてわかった リトが好き―――― 最初の時とは違う、見せ掛けじゃない家出の言い訳じゃない リトのことを始めて意識したあの夜の時とも違う、曖昧な気持ちなんかじゃない 確かな気持ち。大きな想いが胸にある リトが好き。大好き。それも誰にも負けないぐらい本気で好き ララはその場でしゃがみ込むと、嗚咽を漏らしながら泣きじゃくった 失ったモノの代償はとても重く大きくララに圧し掛かる 広い草原でララは一人、孤独と寂しさに震えていた その頃 リトは息を切らせながら立ち止まると、膝に手を置き肩で息をする 額からは汗が流れ落ち、服に染みを作っていく 「クソッ……どこにいったんだよララのヤツは…」 地面に向かって吐き捨てるように呟いたリトの顔には、疲労と不安そして、後悔の念が深く刻まれている あの時、もっと早く駆け寄っていれば、もっと長く腕を伸ばしていたら 後悔してもし足りないほどの想いが後から後から込み上げてくる 頭にはあの時の笑っているララの顔と、少し寂しそうな辛そうな顔が思い浮かんだ 「考えんのは後だ。今は……」 今は――――― 夏が終わり秋にさしかかったばかりなのに、夜の風がいつもより冷たく感じる リトは深呼吸をすると、この寒空のどこかにいるララを見つけるためまた走り出した 「ララ様…」 頭の上でペケは心配そうな声をかける。が、どうすることもできない 自分にはムリだ きっとこの涙を止められるのは一人しかいないと思った だけどそれを認めたくない。認めるワケにはいかなかった 自分の主人の愛情を一身に受ける、ただの地球人の少年なんかを それでもペケは一人すすり泣く主人に思い切って声をかける 「しっかりしてくださいララ様!がんばると決めたのではないのですか? あの少年をがんばって振り向かせると決めたのではないのですか?」 ララの涙は止まらない。どんどん溢れてくる ペケは自分の主の笑顔が好きだった。宇宙で一番笑顔が似合う人だと思っていた 自分にはあの少年の様なことはできないが、それでも目の前で涙を流す主の姿には耐えられなかった 拙い言葉で、慣れない感情でペケは精一杯ララに声をかける。何度も何度も また笑顔になれるように、また元気ないつもの主に戻れるように しばらくするとララの嗚咽は止まった。袖でゴシゴシと目元を拭きながらララは笑った その笑顔はギコチなく、真っ赤になった目にまだ涙を溜めたままで それでもララは笑った。自分の弱さに負けない様に、自分の決意を曲げないように 「ララ様…大丈夫なのですか?」 「えへ、ゴメンねペケ。心配かけて…。私はもう…平気」 どう見ても平気には見えない主に、それでもペケは気を使って悪態を吐く 「まったく!やはり私はあの地球人の少年がキライです!!ララ様をこんなに苦しませて、こんなに泣かして…。 次に会った時はもうこんなコトにならない様に、あの少年にはしっかりとしていただきたいものです!」 「ペケ…」 その言葉にララは薄っすらと笑った ペケは思った。やはりララ様にはあの少年が必要なんだと 主を笑顔にさせることができるのは結城リトしかいないと思った 王宮にいる時や、いたずらして喜んでいる時とは違う、本当の意味での主の笑顔 くやしいが結城リトといる時の主人の笑顔が自分は一番好きなんだと思った 「ペケありがとう」 うれしそうに笑うララの姿に、ペケは恥ずかしさでなにも言えなくなってしまう 「よ~し!もう泣くのは終わり!だって決めたんだからがんばるって…」 もうリトから笑顔をもらってるだけじゃダメなんだ また、あの日に戻れるように。そして、それ以上の楽しい毎日を送れるように 「今度はきっと大丈夫…」 笑っていたいと思った リトのそばで、リトの隣でいつも 大好きなリトと一緒に きっとこの先もリトを困らせ、怒らせたりするんだと思う それでも、それでも―――― 「一緒にがんばろうねペケ!!」 どうして私まで!?と言う言葉を呑み込んで、どこかうれしそうなララの顔に、ペケは小さく微笑んだ 家に戻ってきたリトは、シーンと静まり返る中の様子に、わかってはいてもそれでも大声でララの名を叫ぶ 反応はなし。深い溜め息を吐くとそのままリビングに向かった 一人留守番をしていた美柑になんて報告しよう……なんて言えばいいのか 頭に浮かぶ言葉はどれも曖昧で、そして意味のないモノばかり きっと美柑のヤツガッカリするなァ そう思いながらキッチンのドアを開けると、リトは少し驚いた様に目を大きくさせる テーブルの上には、料理が所狭しと並べられていた しじみの味噌汁にハンバーグ、さんまの塩焼きにとんかつetc.…… そのどれもがララの好きなメニューであり、いつもおいしいと言っていたモノばかりだ 美柑は端の方でテーブルに突っ伏す様に眠っている スースーと寝息を立てる妹にタオルを掛けてやりながら、リトは誰もいないリビングを見つめた ガランとしたリビング 暗く誰もいない寂しい空間がそこにはあった 誰もいないソファーに笑いながらしゃべっている美柑と、お菓子を食べているララの姿が浮かぶ 「ララがこのままいなくなったら、きっと美柑のヤツ悲しむだろうな…」 普段は強がっているが、ホントは誰よりも繊細な心を持っているまだ幼い妹 きっと文句は言うし、人知れず泣くだろう 自分と美柑だけの二人だけの家に、すでにララはなくてはならない存在となっていた ララとの間には確かな繋がりができていたから その時、背後からずるっとタオルが落ちる音がする 「美…」 慌てて振り向くと、美柑はまだ眠ったままだった。リトはずれ落ちたタオルを美柑に掛け直してやる 「ん……ラ…さ…」 「え?」 寝言なのか時折、小さな声で呟く美柑 「ラ…ラ、さんどこにもいかないで…」 そういうと美柑はタオルに丸まって再び夢の中に戻っていく 「……まったく」 リトは美柑の頭を撫でると冷蔵庫に向かった。 「あいつホントにこのまま……」 このまま―――― リトは頭を振ってその先の言葉を否定する 耳に美柑の息遣いが聞こえてくる。家でひとりがんばった妹を思うとこのままでいいはずがない 美柑の泣くところも落ち込んでいるところもこれ以上は見たくはない 姉のように、友達のように、ホントの家族のようにララを想っている美柑 ――――じゃあオレは? ふと頭に過ぎった疑問に、ジュースを取り出そうとする手が止まった 寂しくて泣いてしまうのか?それとも、ララを探して追いかけるのか? 頭に浮かぶ自分の姿は、どれも悲壮感に溢れていた 「あいつ…なんでこんなコト……」 リトの脳裏に今までララと過ごした時間が甦る 時刻は午前7時。目覚ましのアラームの音にリトは目覚めた 寝起き独特の全身のだるさと、少し汗を掻いた服の感触にリトは体をうーんと伸ばす その時、ムニュっとした柔らかい感触が手に伝わった リトが恐る恐る隣に目をやると、案の定、シーツに包まった裸のララが寝ている 『ん―――っ』 リトの異変に気付いたのか、ララは伸びをすると、眠たい目を擦りながらにっこりとリトに笑いかける 『あ…リトおはよ』 ララの笑顔はだるい体も、まだ眠っている頭も吹き飛ぶ様なものだったが、あいにくリトはそれどころではなかった 『おはよじゃねー!!何、オレのベッドにもぐりこんでんだよ!!しかも裸でッ!』 『えーだって、リトと一緒に寝たかったしー』 何度言っても治らないララの行為に、リトも相変わらず慣れる様子はない 『と、とにかくおまえ服を着ろよ!服を!!』 リトの呆れたのか少し怒ったような口調にララの表情が曇る 『だって…だって、リトといつも一緒にいたいんだもん。寝ている時も、学校でもいつも一緒に…』 『だからっておまえな…』 ララは俯いていた顔を上げるとリトの顔を見つめる 『迷惑?』 『いや…迷惑ってその、そういうんじゃなくて…』 リト自身女の子に免疫はあまりないが、それでも、ララと一緒にいられることはうれしかったし、 なによりそのララに好意を抱かれることは特別にも似た感情があった だからこそ生まれてしまう疑問 『おまえ……オレなんかのどこがいいんだ?』 『え?』 ララは聞かれたことに一瞬目を丸くさせる 『えっと……わかんない』 あははと笑いながら話すララにリトの長い長い溜め息がもれる 『おまえなァ……』 『えっと…ね、そうじゃなくて言葉にうまくできないの』 『え…』 急に真面目な顔になるララにリトは釘付けになる 『リトのことが好きって気持ちはちゃんとあるの。だけど、そのコトを言葉にするのが難しくて…』 ララは自分の胸に手を当ててゆっくりと話し出す 『リトのことを考えるとこの辺がキュッとなるの。リトの顔を見たり、一緒にいたり、リトを思うだけで苦しくて…そして、うれしくなるの』 『ララ…』 言葉に詰まりながら一生懸命自分の気持ちを話すララにリトはじっと耳を傾ける 『私、生まれて初めて誰かを好きになったの。好きになると不思議な気分になるんだね~……リトといるといつも胸がドキドキしてる』 顔を赤くしながら恥ずかしさでえへへと笑うララ その時リトは、なんてララに言葉をかけていいかわからなかった ただ真剣に一生懸命自分の気持ちを話すララに、中途半端な言葉だけはかけちゃダメだと思った そして心に芽生えた小さな小さな想い 今はソレを伝える術も、相手もいない だけど、それでも―――― リトはもう一度、美柑の横顔を見つめた なにげない日常ほど本当は一番大切なモノなんだと、リトは美柑と二人で暮らす様になってから気付いた そして、その日常にララがいる 結城家の家族として。そして自分にとっては―――― リトはノドにオレンジジュースを流し込むと、もう一度ララを探しに行くため上着を羽織った 次の朝 結局ララを見つけるコトのできなかったリトは、とりあえず学校に行くため朝の支度をしていた キッチンでは美柑が朝食を作っている ララが帰ってこなかったコトを知ると、「そうなんだ…」と残念そうに呟いた後、キッチンに戻って行ってしまった 目玉焼きを作る美柑の横顔は、いつもと同じ顔でいて、今は寂しさと悲しさが入り混じっている かなりムリをしてるのは誰が見ても明らかだった テーブルの上の冷たくなっている料理がいつもの食卓に暗い影を落としていた 「おはよ…結城くん」 「西連寺…」 登校中、途中から一緒になった春菜にあいさつをするリト だけど、その表情は美柑同様浮かない 「帰ってこなかったんだ……ララさん」 「ああ…」 リトは短くそう応えると、地面を見つめたまま黙ってしまう 「私もいろいろ探したんだけど……リサ達のところにもいないって…」 いつもより声の沈んでいる春菜にリトは、溜め息を吐いた 「ッたく!あいつなに考えてんだ!?みんなに迷惑かけて悲しませて!!」 「結城くん…」 いつもと様子の違うリトに春菜は遠慮気味に声をかける 「だってあいつ……はぁ~。ララのヤツ早く帰ってくればいいけど」 「うん。帰ってきたら……やっぱり結城くん怒る?」 「そりゃ……だって…」 リトは言葉を濁した。正直ララが帰ってきたらどうするのか?なんて声をかけたらいいのか?全然考えていなかったからだ ララの屋上で見せた気持ちはホンモノだった その気持ちに、想いにはたして自分は応えるコトができるのか? 「結城くんは、結城くんのままで、結城くんの通りにしたらいいと思うよ」 少し不安顔になっているリトへ、春菜はやさしく笑いかける 「西連寺…?」 「ね?」 春菜の顔を見ていると、なんだか理由もなく大丈夫な気がしてくる リトは短くウンと返すと、学校に向けて歩き出した 彩南高校の校門前でララは一人リトが来るのを待っていた 『しかしホントにこれでよろしかったのですか?ララ様』 「わかんない…。でも、ああまでやらないと、パパは私の言う事なんて聞かないよ」 昨日いろいろ決意したその顔はまた沈みがちになっていた やはりまだまだ不安が重く圧し掛かる 「それに、もう終った事だもん。これから、また始めなきゃ!!」 どう見ても強がっている主に溜め息を吐きかけた時、ペケは遠くからこちらに歩いてくるリトの姿を発見する 『あ!?ララ様来ました!』 ドクンと心臓が高鳴るのをララは感じた 緊張が体を駆け巡るが、それでも、行かなくては。もう決めたのだから ララは深く、ゆっくりと深呼吸をする 「よし!……あ、あのっ、初めまして!私、今日この学校に転校してきたんだけど――――……」 少し慌てるように話すララの姿に、リトと春菜はお互いの顔を見合わせると、声を揃えて口に出した 『おかえり』