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第2話 ●引っ張られてたたきつけられる(キュアブルーム・キュアイーグレット) ●壁にたたきつけられて苦しむ(キュアブルーム) ●攻撃を受けて吹っ飛ぶ(キュアイーグレット) 第4話 ●攻撃を受けて吹っ飛ぶ(キュアブルーム・キュアイーグレット) 第5話 ●木にたたきつけられる、蔦に巻き付かれる(キュアブルーム・キュアイーグレット) 第6話 ●触手に巻き付かれて苦しむ(キュアイーグレット) ●岩にたたきつけられる(キュアブルーム・キュアイーグレット) 第7話 ●吹っ飛ばされてぼろぼろになる(キュアブルーム・キュアイーグレット) 第8話 ●女の子をかばって攻撃を背中に受ける(キュアブルーム) 第12話 ●触手でひっぱたかれる(キュアブルーム・キュアイーグレット)
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桃源まで、東へ五分(第1章:待っていたサプライズ) ザッ、ザッ、と枯葉を意味も無く蹴散らしながら、小学生くらいの男の子たちが騒いでいる。サウラーは南瞬の姿で、彼らから少し離れた公園のベンチに座っていた。その右手は、相変わらず本のページに添えられている。 足を組んで本を読むスタイルは、いつもと同じ。が、彼が公園で――占い館以外の場所で読書をしているなんて、非常に珍しいことだ。 ノーザが来てからというもの、館で本を読んでいても、以前ほど集中できなくなってしまった。自分の都合だけで突然現れて、否応なしに命令してくる最高幹部。ウエスターのように真っ向から反発するほど、自分は馬鹿じゃない。が、それを不快に感じていることは、ウエスターと変わらなかった。 (無駄な外出をせず、最も効率的な仕事をしてきたこの僕が、こともあろうに、こんなところで無駄な時間を過ごすなんてね・・・。) 自嘲気味に、ふん、と鼻で笑って、サウラーは本のページをめくる。と、男の子たちの会話が、何となく耳に入ってきた。 「・・・ホントなんだよ!あそこには、すっげえもんが隠されているんだって!」 「え~?すげえもんって?」 「それ、何だよ。」 「聞いて驚くなよ?あのな・・・」 鉄棒に腰掛けて、仲間二人を見下ろしていた大柄な少年は、そこで地面に飛び降り、仲間たちに顔を寄せた。 ひそひそ話というわけだろう。が、サウラーの聴覚の前では、そんなものは意味が無い。 (馬鹿な。ラビリンスですらまだ実現できていない技術だぞ。この世界の科学力で、作れるものか。) 少年の囁き声を聞きとったサウラーが、そう思ったのとほぼ同時に、 「嘘に決まってんだろ?そんなの。」 仲間の一人が、吐き捨てるように言った。 「嘘じゃないって!オレの友達の友達が見たんだ。空中に突然、車みたいな乗り物が現れて、中にはチョンマゲを付けたお侍みたいな格好の人が乗って、きょろきょろ外を見ていたんだって。で、その乗り物は、すーっと塀の向こうに、降りていったって言うんだ。」 ギュッと拳を握る少年の声が、次第に大きくなる。 「なっ?それって、タイムマシンだと思わないかっ?」 自分の声の大きさに、まだ気付いていない少年を横目に見ながら、サウラーは、夏のある日のことを思い出す。 あれはイースがラビリンスを去って、まだひと月も経っていなかった頃。この世界の人間が、思い出をとても大切にしているらしいと知ったサウラーは、写真屋の古いカメラをナケワメーケにして、プリキュアどもを「思い出の世界」という甘美な夢の中に閉じ込めようとした。 計画通り、まずはキュアピーチを眠らせたものの、彼女は仲間たちの願いどおり、思い出の世界から戻ってきた。そして結局ナケワメーケは倒され、サウラーの計画は失敗に終わったのだ。 「絶対に来てくれるって、信じてた!」 舞い戻ったキュアピーチに、そう言って笑いかけたイースの顔。その映像が、眩しく苦く胸の中によみがえってきて、サウラーは慌てて活字に目を戻した。 (思い出の世界なんて不確かな夢でなく、本当の過去の世界にプリキュアを送ってしまうことができたら・・・。) たとえ一人でも時空の彼方へ放り出すことができれば、プリキュアどもの新しい技も封じられる。インフィニティの奪回は、もっと簡単なものになるだろう。ノーザの鼻も、少しはあかせるかもしれない。 サウラーは静かに本を閉じ、立ち上がった。 少年の下らない願望が、本当である可能性は低いだろう。だが。 (どうせこんなところで無駄な時間を過ごすなら、暇つぶしに行ってみてもよさそうだ。) 「ねえ、君たち。少し、話を聞かせてくれないかい?」 サウラーは冷ややかな目で少年たちを見据えながら、彼らにゆっくりと近づいていった。 桃源まで、東へ五分 ( 第1章:待っていたサプライズ ) 「じゃーん。どう?これ。」 目の前に突き付けられたものを見て、せつなは不思議そうに首をかしげた。 「あの・・・これは?」 ラブに宿題を教えていたせつなの元へ、あゆみが嬉しそうにやってきて、見せてくれたもの。それは、せつなの顔くらいはありそうな、大きな真っ赤なリボン。柔らかな布地で作られているのだろう。その形はやさしい丸みを帯びて、表面はつやつやしている。 (きれいなリボンだけど・・・。頭に付けるには大きいし、洋服に付けるんでもなさそうだし・・・。あ、もしかして、夏休みに漫才やったときみたいな蝶ネクタイにするのかしら。) せつなのいぶかしげな視線に、あゆみは柔らかな笑みを返す。 「せっちゃん、修学旅行に持って行くバッグ、お友達と同じになっちゃったって言ってたでしょ?旅先で間違えたら大変だから、これ、目印に付けたらどうかと思って。」 「うわーっ、さっすがお母さん!これ付けたら、きっとすっごく可愛いよ。せつな、バッグ出してみて。」 後ろから覗き込んだラブが歓声を上げる。ようやく事態が飲み込めたせつなは、嬉しさに胸を熱くしながら、自分の部屋へ、いそいそと真新しいバッグを取りに行った。 来週から、ラブと一緒に沖縄へ修学旅行。観光の時に持ち歩くバッグとして、せつなはアイボリーのミニボストンを買った。マネキンが持っているのが可愛かったので選んだのだが、どうやらそれがいけなかったらしい。 昨日、級友とのおしゃべりで、偶然、クラスであと二人も同じバッグを買っていることがわかってしまった。それでせつなは、少しだけがっかりしていたのだ。 「修学旅行かぁ。私もレミさんと同じブラウス持って行って、向こうで喧嘩になっちゃったっけ。せっかくの私服なのに誰かと一緒はイヤだなんて、レミさんが言い出すから。」 せつなのバッグにリボンを縫い付けながら、あゆみが、うふっと思い出し笑いをする。何だか自分の気持ちを言い当てられたような気がして、せつなは頬を赤く染める。同時に、そんなことを考えた自分に、少なからず驚いてもいた。 「おばさまって、美希のお母さんと幼なじみだったんですよね?ブッキーのお母さんとも?」 「尚子さんは、中学の途中で転校してきて、それから仲良くなったの。あの頃は三人、いつも一緒だったわね~。今のあなたたち四人みたいに。」 そう言って微笑むあゆみに、せつなも頬を緩める。 親子二代で友達同士、という関係が、この世界でどれくらい当たり前のことなのか、せつなにはよくわからない。でも、そうやって一人と一人の関係が、家族と家族の関係になっていくのは、とても素敵なことに思える。 「家族」も「友達」も、かつてはただやたらと眩しくて、目にも心にも痛いだけの言葉だった。でも今のせつなには、どちらもキラキラと輝く、愛おしい光に見える。 「幼なじみ」という言葉は、正直少し、せつなには眩しすぎる。でも、その眩しさも含めて大切に思えることが――そう思えるようになったことが、せつなにはとてもありがたく、そして嬉しかった。 「ハイ、できたわ。これなら誰かと間違えることもないわね。」 「ありがとう、おばさま。」 せつなはちょっとはにかみながら、さっそくバッグを肩にかけて、鏡の前に立ってみる。後ろで目を細めているあゆみに、鏡越しに笑いかけたとき、あゆみの後ろにあるドアの陰から、タルトが手招きしているのが見えた。 せつなはもう一度あゆみにお礼を言うと、表情を引き締めて、そっとラブに目配せをする。ラブもすぐに気付いて小さく頷くと、せつなと連れ立って、静かに部屋を出た。 「タルト。ラビリンスが現れたの?」 「それがやなぁ。」 ラブの問いに、タルトは少々困惑した様子で、カチャリとクローバーボックスの蓋を開ける。 「何、これ。」 七色の光の膜に現れた映像を見て、ラブとせつなの声が揃った。 そこに映っていたのは、芝生の上に立っている不気味な姿。後輪だけで立ち上がった車の化け物の頭に、不釣り合いなほど大きなアンテナが付いているような格好だ。三角につり上がった真っ赤な目の少し上、丁度おでこの辺りには、緑色のダイヤ。 「サウラーのしわざね。」 「でも・・・なんで今更、ナケワメーケ?」 シフォンはタルトの隣で、不思議そうにクローバーボックスの映像を眺めている。今日はまだ、インフィニティになりそうな気配はない。 そのうち映像の中で、ナケワメーケがアンテナからレーザーのようなものを発射して、芝生を焼き払い始めた。 「とにかく行かなくちゃ!でもこれ、どこだろう?」 せつなは映像を舐めるように注視する。すると、画面の端に、途切れなく広がる芝生を二重に囲む、並木が映っているのが目にとまった。 「ラブ。これ・・・御子柴家の中庭じゃないかしら。」 「あの、地下特訓場があった?」 せつなが力強く頷いて、もう一度映像に目をやる。 御子柴家。家電製品から宇宙ロケットまで手掛ける、世界でもトップクラスの財閥グループの長の屋敷だ。つい先日、ミユキのツテで、プリキュアたちはここの特訓場を使わせてもらった。広大な中庭の地下に作られた秘密特訓場だったのだが、庭はまだまだ広くて、もっと奥まで続いていたように思う。 「よし、行こう!せつな、ブッキーに電話して。あたし、美希にかけるから。」 「わかった。」 リンクルンを片手に家を飛び出す二人に、タルトとシフォンも続いた。 御子柴財閥に雇われたエンジニアのリーダーは、自分が今見ているものが、信じられなかった。 最先端の――ここに居る者以外、現実とは思わないであろう最先端の技術の粋を集めて、開発したマシン。それがみるみるうちに形を変え、異形の化け物となって立ち上がったのだ。 (こんなこと・・・SFじゃあるまいし!) 自分たちがまさにSFばりの研究をしていることも忘れて、彼はただ呆然と、目の前の怪物の姿を見つめた。 「ナ~ケワメ~ケ!!」 怪物は一声叫ぶと、二重の並木をやすやすと飛び越えた。それを見て、彼の背中を、たらりとイヤな汗が伝う。 「い、いかん!戻ってきてくれ!」 このままでは、怪物がお屋敷の外に出てしまう。今は怪物でも、元は手塩にかけた、我が子同然の発明品だ。 彼は意を決して踵を返すと、遥かに遠い出口を目指して、屋敷の中を一心に走り始める。その耳に、正午を告げる柱時計の音が、やけに大きく響いた。 ラブとせつなが御子柴家の門の前に着いた時、丁度、美希と祈里も向こうから走って来るところだった。屋敷の奥の方からは、時折ドーンという音が響いている。 「こっち!」 ラブを先頭に、四人は屋敷の塀沿いに駆けて行く。ほどなくして、血相を変えた人々が、彼女たちの行く手から走ってくるのが見えた。 地面にずしんと衝撃が走り、コンクリートの塀がびりびりと震える。そしてついに、クローバーボックスの映像で見たのと同じナケワメーケが、その姿を現した。 額に光る緑のダイヤ。胸に取りつけられた様々な計器。網の目のように張り巡らされたコード。そして頭の上には大きすぎるアンテナ。 「みんな、行くよっ!」 凛と響くラブの声に、少女たちはそれぞれのリンクルンを構える。 「チェインジ!プリキュア!ビートアーップ!」 桃色。青。黄色。そして赤。 地面から立ち上るような鮮やかな煌めきの後に、四人の伝説の戦士が現れる。 「ピンクのハートは愛ある印!もぎたてフレッシュ、キュアピーチ!」 「ブルーのハートは希望の印!つみたてフレッシュ、キュアベリー!」 「イエローハートは祈りの印!とれたてフレッシュ、キュアパイン!」 「真っ赤なハートは幸せの証!うれたてフレッシュ、キュアパッション!」 「Let’sプリキュア!」 「よし、始めろ。」 腕組みをして塀の上に立つサウラーは、現れた少女たちを見て、口の端だけでニヤリと笑った。 「ナーケワメーケ!フ、フ、フ、フューチャー!」 車輪のような足をフル回転させて、四人に迫るナケワメーケ。 「ダブル・プリキュア・パーンチ!」 炸裂する、ピーチとパッションの拳。 「ダブル・プリキュア・キーック!」 打ちこまれる、ベリーとパインの蹴り。 が、突然、ナケワメーケの短い腕が、ぐんと伸びる。バネの先にタイヤを付けたような腕に、弾き飛ばされる四人。そして。 「ナーケワメーケ!イマイマ、しいわ~!」 頭の上のアンテナから放たれる、強烈なビーム。 「わぁぁっ!」 「何これ・・・。」 「体が・・・痺れる!」 「・・・くっ!」 動けないプリキュアたち。ナケワメーケの胸から、しゅるしゅると伸びる黒い腕。コードのような、ベルトのような長い腕が、彼女たちに迫る。 「はぁっ!」 何とか体を起こし、拳を振るうパッション。その隙にようやく立ち上がる、ピーチ、ベリー、パイン。 「・・・このナケワメーケ、元は何なの?」 ベリーが、誰にともなく問いかける。 「わからないわ。クローバーボックスで見たときは、庭の芝生の上に立ってた。」 パッションは、ムチのようなコードを避け続ける。 「御子柴家の・・・自家用リムジンとか?きゃぁっ!」 ついに一撃を食らい、吹っ飛ぶパイン。駆け付けるピーチに迫る、伸縮自在のナケワメーケの腕。 「ピーチ!」 パッションが横っ跳び。間一髪で腕をはたき落とす。その時。 「パッション、後ろ!」 ベリーの声に振り返る間もなく、高速で伸びたコードが、彼女の体を絡め取った。 「パッション!」 宙吊りにされたパッションに向かって、仲間たちが跳ぶ。が、 「うわぁぁぁ!!」 再びアンテナから放たれるビーム。三人は、またも地面に叩きつけられる。 「みんな!」 必死で拘束を解こうとするパッション。だが、締め付けたコードはびくとも動かない。 「フフフ・・・。もう一人、道連れにしてあげようか。」 再び迫るコードの束。跳んでよける三人。と、目標を失ったコードの先には、クローバーボックスが・・・! 「わっ!こりゃあかん!」 シフォンと一緒に物陰から様子を見ていたタルトが、思わず飛び出した。クローバーボックスの前に立ちはだかるタルト。その小さな体がコードに巻き取られ、宙に舞う。 「タルト!!」 「ふん。プリキュアではなかったか。まあいい。ナケワメーケ、やれ。」 「ナーケワメーケ!カーコカッコー!」 ナケワメーケの体が、ぼうっと光り出す。大きなアンテナにびりびりと稲妻が走り、胸の計器の数字が、くるくると動き出す。 「別れの時が来たようだ。挨拶はしなくていいのかい?プリキュア。」 サウラーの楽しげな声に、凍りつく地上の三人。 「パッション!タルト!」 「どうなってるの!?」 「二人を放しなさいっ!」 ベリーは塀の上のサウラーを睨みつけると、タン、と地面を蹴る。 「たあっ!!」 サウラーに向かって放たれる、ベリー渾身の蹴り技・・・と見せかけて、サウラーが回避しようと飛び上がった瞬間。この瞬間を狙って、ベリーは全身の力を、拳に込める。 「うわぁっ!!」 空中高く飛ばされるサウラー。その体は、ナケワメーケのアンテナに、引っ掛かって止まった。 「な、なにっ!?降ろせ!」 「それは、パッションとタルトを放してからよっ!」 キッとナケワメーケを見据えるピーチ、ベリー、パイン。その目の前に、ポン、とそれぞれの相棒が現れる。 「届け!愛のメロディ。キュアスティック・ピーチロッド!」 「響け!希望のリズム。キュアスティック・ベリーソード!」 「癒せ!祈りのハーモニー。キュアスティック・パインフルート!」 起動される、それぞれのアイテム。その間にも、ナケワメーケの光は、どんどん強くなっていく。 「悪いの悪いの、飛んで行け!!!」 「プリキュア!ラブ・サンシャイン・・・」 「プリキュア!エスポワール・シャワー・・・」 「プリキュア!ヒーリング・プレア・・・」 「フレーーーッシュッ!!!」 ナケワメーケの体の輪郭がぼやけるのと同時に、三つの光弾がその体にぶつかり、溶けあってひとつになる。 「今よ、タルト!」 「はいな。」 拘束から抜け出そうとするパッション。だがそのとき、彼女は自分の体の輪郭までもが、頼りなげにぼやけているのを見て、愕然とした。 「はぁ~!!!」 三人の気合のこもった声。 「シュワ、シュワ~・・・」 既におぼろけな姿となったナケワメーケが、かすかに断末魔の叫びを上げる。 そして、額のダイヤが煙のように消え失せた次の瞬間。 ナケワメーケも、パッションも、タルトも、そしてサウラーも、三人の前から、忽然と姿を消してしまったのだった。 ☆ ☆ ☆ ゴン、と何かに頭をぶつけて、パッションは我に返った。変身は解けていない。どうやら少しの間、ぼうっとしていたらしい。 何やら狭い空間にいる。ナケワメーケに宙吊りにされていたはずの体はソファのようなものに座らされ、腰にはさっきまで彼女を拘束していたものが、ベルトとなって一重だけ巻きついていた。 家族で出かけるときに時々乗せてもらう、圭太郎の車の中によく似ている。ちょうど、後部座席に座っているような感じだ。ぼんやりとそう思ったパッションは、隣で目を回しているタルトに気付いて、ハッとした。 「タルト!しっかりして!」 「あ、パッションはん。わいら、無事やったんか。」 気が付いたタルトが、きょろきょろと辺りを見回す。 「ここ・・・どこや?」 「どうやら、この乗り物がナケワメーケだったみたいね。」 「え!?じゃあ、わいらナケワメーケの中におるんか!?」 「ううん、もう浄化されてるんだと思う。でも、何だか様子が変ね。」 パッションは、右手にある窓から外の様子を窺った。 まず目に飛び込んでくるのは――空。 そして視線を下へやると――真下に見える景色が、ぐんぐんと迫ってくる!? 「タルトっ!これ、落下してるわ!」 パッションは、腰に巻き付いているベルトをむしり取ると、タルトを抱きかかえた。 「脱出するわ。しっかりつかまってて!」 窓の下にあるレバーを動かすと、壁に見えたドアが、カチャリと音を立てる。やっぱり車と同じ仕組みだ。風圧に押し戻されるドアを何とか開けて、パッションはタルトを抱えて跳ぶ。 着地したところは、見覚えのある風景。ここは・・・河原だ。四ツ葉町の外れを流れる川に架かっている、橋の下だ。 (どうして、こんなところに・・・。あれは、ただの車じゃないっていうの?) そのとき、頭の上の方でドーンという衝撃音が聞こえ、わずかに埃が降ってきた。少し離れて橋を見上げると、信号待ちで止まっていたらしいトラックの上に、やたら大きなアンテナをつけた黒い車が、覆いかぶさるように乗っかっているのが見える。 「うわぁ、危なかったなあ。おおきに、パッションはん。」 タルトがそう言って、パッションの腕の中から、ぴょんと地面に降り立った。 「トラックに乗っていた人は、大丈夫かしら。」 パッションは心配そうに眉をひそめる。が、その目はすぐさま、大きく見開かれた。 トラックの上から、黒い車体が発車したのだ。ガツン、とその鼻先が道路にぶつかった音が、河原まで響く。が、ほかに車がいないのを幸い、強引にスピンを決めて、車は態勢を立て直した。 驚く二人が見つめる中、車の窓が開く。そこから顔を出したのは、いつも以上に青白い顔をした、サウラーだった。 「プリキュアどもにしてやられたと思ったが・・・君が甘くて助かったよ、イース。僕が前の座席にいたのに、気付かなかったのかい?」 相変わらず辛辣な口調のサウラーに、パッションは思わず叫ぶ。 「サウラー!一体何をしたの!?」 「すぐにわかるさ。これで君たちは、この過去の世界へ置き去りだ。」 「過去の世界ですって?」 「フフフ・・・さよなら、イース。」 サウラーの笑い声を乗せて、黒い車は風のように走り去る。 「何だぁ?・・・うわっ!何だこれは。積み荷が滅茶苦茶じゃないかっ!!」 物音に気付いたトラックの運転手が騒ぎ始めたのを、パッションとタルトは、ただ呆然と眺めることしかできなかった。 「おねえちゃん!こっち、こっち。」 ふいに後ろから呼びかけられて、パッションはビクリと肩を震わせた。そっと振り向くと、自転車を押した一人の少年が、土手につながる細い道の下に立って、手招きしている。 小学校の高学年くらいだろうか。やけに短いジーパンから突き出した足はひょろりと長く、自転車も、大人用のものらしい。 「そんな格好でそんなところにいたら、目立つだろ?まだ朝早いから人がいないけど、この上の道路は、これから車が増えるんだぜ。」 「え?朝早い、って・・・」 そう言いかけて、パッションはさっきのサウラーの言葉を思い出す。 ――これで君たちは、この過去の世界へ置き去りだ。 ナケワメーケと対峙したのは、もう昼ごろだったはず。だが辺りを見回せば、今は確かに早朝のようだ。ということは、サウラーの言う通り、ここは過去の世界――違う時空の世界なのだろうか。 見渡したところ、河原の景色は特にいつもと変わらない――いや、違う。 季節が違うのだ。朝早くからこんなに力強い太陽には、しばらくお目にかかっていない。ついさっきまで目にしていた、あちこちに枯れ葉が吹き寄せられた街の景色とは違う。河原に勢いよく茂る雑草の緑の、何と生き生きとしていることか。 (ここが過去の世界なんだとしたら・・・一体、どれくらい前の世界なのかしら。) 「とにかく、こっちに来いってば。」 パッションの物想いは、再び少年の声で破られた。 「俺の家、ここからすぐ近くなんだ。俺しかいない家だし、何か食べて着替えるくらいはできるからさ。」 そう言って歩き始める少年の後ろ姿に、パッションは少し考えてから、 「ねえ。」 と呼びかける。 「変なこと訊くけど・・・今日って、何年の何月何日?」 そう質問したときの少年の顔は、パッションには予想外のものだった。 てっきり不思議そうな顔をされるだろうと言い訳まで考えていたのに、彼はパッと顔を輝かせ、キラキラした目をこちらに向けてきたのだ。今までの背伸びした物言いが嘘のような無邪気な笑顔に、パッションは一瞬、呆気にとられる。 「今日?今日はねぇ、昭和・・・あ、西暦・・・」 「昭和でいいわよ。」 こちらの心を見透かしたような少年の言葉に、パッションは警戒を強める。 「そう?今日は昭和××年の、8月・・・」 少年の自転車の後ろを歩きながら、パッションはそっと町の様子を窺う。 「昭和」という年号が、今の前の年号だったことは知っている。自分の計算が正しければ――そして少年の言葉が正しければ、ここは25年ほど前の世界だ。 四ツ葉町の地図は、完全に頭に入っているつもりだったが、さすがに様子が変わっていて、どの辺りなのか分かりにくい。明らかに、町を占める田んぼや畑の面積が広い気がする。同時に、何だかあちこちで、新しい建物を建てている現場に出くわす。 (やっぱり・・・過去の世界なのかしら。) 少年への警戒を緩めたわけではない。が、今はこの機会を利用させてもらおうと、パッションは思っていた。とにかく情報収集しないことには、動くに動けない。 「さあ着いた。ここが俺の家。」 「・・・凄いお屋敷じゃない。」 少年が無造作に自転車を止めた家の前で、パッションは目を丸くした。 「そう?まあ、入って。あ、その、イタチ?ペットも家の中に入れて構わないからさ。」 「イタチて・・・。フェレットより、まだヒドいわ。」 むくれるタルトの口を慌ててふさいで、パッションは少年の後を追った。 重厚な玄関の鍵をカチャリと開けて、少年は黙って家に入る。家の中はシーンとしていて、その静けさが、一層広さを際立たせていた。 「本当に、ここに一人で住んでるの?」 勧められたソファにそっと腰をおろして、パッションは小首をかしげる。 「ああ、正確には、夏休みの間だけね。ここ、父さんの家なんだけど、俺、普段は父さんと別々に暮らしてるんだ。夏休みの間だけ、ここで過ごす決まりなの。でも、父さんは忙しい人で、滅多に家に寄りつかないから。昼間はお手伝いさんも来てくれるし、別に不自由はしてないんだ。」 テキパキと飲み物の支度をしながら、あっけらかんと言ってのける少年に、パッションは心に浮かんだ疑問を飲み込む。 (せっかく子供が訪ねて来ているのに、この子のお父さんは、どうして家に帰ってこないのかしら。) 脳裏に浮かぶのは、父親のことを話す、美希の顔。彼女もまた、父親とは別れて暮らしているが、月に一度、美希が訪ねて行くのを楽しみにしているという。 「それよりさ、おねえちゃん。」 少年は、大人びた表情から一転、さっきのキラキラした目つきに戻る。そして、彼女の心臓の真ん中を射抜くような一言を、無邪気に発した。 「おねえちゃん、未来から来たんだろ?」 「隠さなくてもいいよ。俺、見ちゃったんだ。」 少年は相変わらず瞳を輝かせながら、真っ直ぐにパッションの目を見つめる。 「自転車で土手を走ってたら、いきなり稲妻が光ってさ。いい天気なのに、おかしいなぁって思ってたら、いきなり空に車が現れて。で、橋を目がけて落っこちてくるからびっくりして見てたら、中からおねえちゃんが飛び出して来てさ・・・。ねえ、あれってタイムマシンなんだろ?着陸に失敗したの?それに、なんであんな高いところから飛び下りて、怪我しなかったの?」 「・・・・・。」 パッションが何も言えずにいると、 「ひょっとして、その服のせい?パワードスーツ、って言うんだよね。やっぱり凄いんだなぁ、未来って。ねぇ、今からどれくらい先の未来?」 少年は勝手に納得して、羨望に満ちた眼差しで、パッションの姿を見つめた。 「あなた・・・未来の技術に、ずいぶん興味があるのね。」 「ずいぶんってほどじゃないよ。でも、タイムマシンには興味あるんだ。これでもいろんな本を読んで、研究しているんだぜ。もちろん、本物を見たのは初めてだけど。」 嬉しそうに話す少年の様子をじっと観察して、パッションは少しだけ警戒を解く。 雰囲気から察するに、この子は嘘はついていない。突然現れた未来人を助けて、あわよくば未来のことを教えてもらおう――それくらいの無邪気な気持ちで、ここへ連れて来てくれたのだろう。 それに――さっき父親のことを話したときの、何でもなさそうな話しぶり。その陰に潜むヒヤリと冷たい寂しさを、彼女は我がことのように感じていた。 「そう。助けてもらったんだから、ちゃんと説明するけど・・・その前に、どこかで着替えさせてもらえないかしら。」 もうずいぶん長い間、この姿でいる。が、まさかこの子の前で、変身を解くわけにもいかない。 「本当!?いいよ、こっち。でも、着替えなんて持ってるの?あ、もしかして、未来では荷物なんて、こーんなにミニチュアライズされてるとか?」 少年は、相変わらず嬉しそうに一人で納得しながら、パッションを隣りの小部屋に案内する。 「じゃ、俺こっちにいるから。どうぞごゆっくり。」 少年が閉めかけたドアの隙間から、タルトがするりと部屋の中に入って来た。 「はぁ~。これからどないするつもりなんや?パッションはん。」 「しっ!」 二人になった途端に喋り出すタルトを、パッションが制する。少年が、どこかから部屋の中を窺っているかもしれないと思ったからだ。まだ雨戸が閉まった部屋の中、分厚いカーテンの陰に隠れて、彼女は注意深く、変身を解いた。 「とりあえず、この時代のことを少し知らないと。それから作戦を立てる必要がありそうだわ。サウラーがまだこの時代にいれば、彼を探すのが早道だけど・・・タルト?」 急に反応のなくなったタルトに、せつなは不思議そうな視線を向ける。 「パ・・・パッションはん。あんさん・・・!」 タルトの慌てふためいた様子に、せつなは窓に映った自分の姿を確かめ・・・そして言葉を失った。 窓ガラスの向こうから、呆然とした表情でこちらを見返している顔。それは、かつて鏡の中で見慣れた、銀髪の少女だった。 ~第1章・終~ 第2章:アドリブ勝負の一日へ続く
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ふんわり甘い溢れる愛情 キュアシュクレ 甘野里美 愛情を司るパティシエールのプリキュア。 チームを取り仕切る頑張り屋で、”皆の幸せは私の幸せ”と思っている生徒会長。 綺麗事ばかり言う偽善者だと思われようとも気にせず、己の信じる道を突き進む熱血少女。 面倒見が良く、仲間同士のすれ違いも的確なフォローを入れて仲裁したり、 事あるごとに「それがプリキュアだから」とプリキュアの在り方を説き、 何事にも挑戦する姿から、最早里美の口癖になりつつある。 自分が一度決めたことは最後まで貫き通す意志の強さを持ち、 周りの仲間達もその姿勢に引っ張られ、強く影響されているが、 生徒会長として、プリキュアのリーダーとして常に気張っている為、 自分の弱みを他人に見せることを嫌い、誰にも頼らず意地を張り通す事がある。 そして、自身を追いこむ結果に陥る場合も少なくない。 一度これだと思いこんだら一目散に突っ走ってしまう猪突猛進な一面もあり、 ちょっとした冗談でもムキになったり、早トチリも多い。 実家は、ラ・シュクレールと言う喫茶店で、ケーキの販売もしている。 彼女自身も積極的に店の手伝いをしており、甘い物や美味しい物には目がない。 最近では仲間達が店に入り浸り、賑やかなお茶会をしている。 さらには両親の配慮で怜治がバイトとして働くようになり、更に賑やかになった。 怜治に好意を抱いていることを自覚しているが、彼の前に行くとよく赤面しては自滅する。 なおかつ、友情と恋情の境界が非常に曖昧で、その辺りは自分でもよく分かっていない。 その上、対象が色恋沙汰には全くの無頓着で鈍感である為、里美の想いはやんわりと一蹴されてしまう。 プリキュア・ローザエクレール ピンク色の稲妻を放つ。マヒ効果があり、敵の動きを鈍らせる。 プリキュア・ケイクカリス ハート型のケーキを敵に投げつけて、まろやかな気分にさせて浄化。 分量を間違えると、仲間が後処理する羽目に。 ※食べ物は粗末にしない。 IV 花澤香菜
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青年、乾巧は人生を終えようとしている。…『二回目』の死。 体は灰になって、所々から青い炎をあげている。その傍らにはファイズギア、ファイズブラスター、そして復元されたオートバジンがあった。 スマートブレインが倒産した後もオルフェノクは現れ続けていた。しかし、スーツを転送する人工衛星イーグルサットは会社の倒産と共に機能を停止させる。 だから、巧は暫くウルフオルフェノクとして、人間に害するオルフェノク達を倒していたのだ。 五つのベルトの中の一つ、巧が一番使っているファイズのベルトを見つけ、変身して戦っていた。 だが、ファイズになるという事は、オルフェノクの寿命を縮めることを意味するのだ。 だから、巧はその命が尽きようとしていた。 だがしかし、神は最後まで彼を見捨てなかった。 彼は、別世界で活躍することになる。
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あらすじ一覧 ※実際は本格的なシナリオ文章になるはずですが、いったんここにあらすじとして。 ※いろんなところが未完成ですが、完成次第ページが出来上がっていきます。 ※全49話の1年構成です。 ※現代キュアの王道ルート「オールスターズDX」「通常劇場版」や3話構成DVDも意識しています。 ※現在、本編ノベル製作中につき、当初掲載のあらすじと本編が異なる可能性があります。 第1話「プリキュアって本当? 天高き雲の流れ、キュアウェザー!」 第2話「二人目のプリキュア? 地より沸く輝きの玉、キュアミネラル!」 第3話「きぬのようにやわらかくおだやかに、でもそのコはとってもにぎやか!」 第4話「生徒会は不思議がいっぱい? はるなとわかばのめぐり合い」 第5話「ネット世界は知識の宝庫、あいりの大切な宝物」 第6話「仲良くなりたいの! 素敵な素敵なパートナー!」 第7話「学びの道はいばらの園? きぬの家庭教師・はるな」 (オールスターズDXがあるとするとこのあたりで公開になり、新キュアとしてはるな・あいりが登場することになるかな?) 第8話「遊園地は恋の予感? 度胸だ優作初デート!」 第9話「IT部があぶない! あいりとわかばの復旧大作戦!」 第10話「きぬがんばる! はるなの家のお手伝い」 第11話「本気も本気とっても危険! 覚悟のフレアス猛攻撃!」 第12話「とってもとっても、わかばって不思議っ子? 第13話「熱血体育祭! 闇の炎を打ち負かせ!」 第14話「プリキュアのピンチ!? 3幹部ラヴァロック出陣!」 第15話「はるなの役に立ちたい! 覚醒シルキィカーテン!」 第16話「 第17話「にぎやかでにぎやかな、はるなの一番大切な日」 第18話「私もプリキュア! シルク大奮戦!」 第19話 第20話 第21話 第22話 第23話「ひとりじゃない! はるなとあいりの奇跡の力」 第24話「闇を解き放て! わかばとキャメルの強い絆 第25話 第26話 第27話 第28話 第29話 第30話 第31話 第32話 第33話 第34話 第35話 第36話 第37話 第38話 第39話 第40話 第41話 第42話 第43話 第44話 第45話 第46話 第47話 第48話 第49話 放送日について。 いったんの設定メモに。なお、ハトプリの放送スケジュールにある程度準拠します。 ハトプリ本編のペースにあらすじが追いつくように鋭意追い上げ中。 なお、ハトプリが49話である保証はないため、実際はハトプリとはまったく別のペースで進行することになると思います。 49話放送するには、8月に休止回が入ることができません。 第1話 2010年2月7日 第2話 2010年2月14日 第3話 2010年2月21日 第4話 2010年2月28日 第5話 2010年3月7日 第6話 2010年3月14日 第7話 2010年3月21日 第8話 2010年3月28日 第9話 2010年4月4日 第10話 2010年4月11日 第11話 2010年4月18日 第12話 2010年4月25日 第13話 2010年5月2日 第14話 2010年5月9日 第15話 2010年5月16日 第16話 2010年5月23日 第17話 2010年5月30日 第18話 2010年6月6日 第19話 2010年6月13日 第20話 2010年6月27日 第21話 2010年7月4日 第22話 2010年7月11日 第23話 2010年7月18日 第24話 2010年7月25日 第25話 2010年8月1日 第26話 2010年8月8日 第27話 2010年8月15日 第28話 2010年8月22日 第29話 2010年8月29日 第30話 2010年9月5日 第31話 2010年9月12日 第32話 2010年9月19日 第33話 2010年9月26日 第34話 2010年10月3日 第35話 2010年10月10日 第36話 2010年10月17日 第37話 2010年10月24日 第38話 2010年10月31日 第39話 2010年11月14日 第40話 2010年11月21日 第41話 2010年11月28日 第42話 2010年12月5日 第43話 2010年12月12日 第44話 2010年12月19日 第45話 2010年12月26日 第46話 2011年1月9日 第47話 2011年1月16日 第48話 2011年1月23日 第49話 2011年1月30日(最終回)
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メンバー 九条ひかり/シャイニールミナス CV:田中理恵 春日野うらら/キュアレモネード CV:伊瀬茉莉也 山吹祈里/キュアパイン CV:中川亜紀子 明堂院いつき/キュアサンシャイン CV:桑島法子 調辺アコ/キュアミューズ CV:大久保瑠美 黄瀬やよい/キュアピース CV:金元寿子 四葉ありす/キュアロゼッタ CV:渕上舞 大森ゆうこ/キュアハニー CV:北川里奈 天ノ川きらら/キュアトゥインクル CV:山村響 有栖川ひまり/キュアカスタード CV:福原遥 輝木ほまれ/キュアエトワール CV:小倉唯 天宮えれな/キュアソレイユ CV:安野希世乃 スペック 高さは極めて高い→大変高い→かなり高い→高い→やや高い→普通→やや低い→低い→かなり低い→大変低い→極端に低い 名前 性格 学年 学力 運動神経 家族構成 実家・家族の職業 部活動及び校外活動 弱点・短所 将来の夢 ひかり 控え目 中1 A C いとこ兼保護者(藤田アカネ)・弟?(九条ひかる) たこ焼きカフェ なし 特に無し なし うらら 頑張り屋 中1 C C 父・祖父※1 ※2 現役アイドル 特に無し 大女優 祈里 優しい 中2 A D 父・母 動物病院 ダンスの個人レッスン 特に無し 獣医 いつき 真面目 中2 A A 祖父・父・母・兄 祖父は学園理事長 ファッション部・武道部員・生徒会長 好きなものの事を無理に抑えがち(後に克服) なし アコ しっかり者 小3 A A 父・母・祖父 メイジャーランド王家 なし 特に無し ※2 やよい 泣き虫 中2 E(数学が苦手) E 母※3 母子家庭 ※4 腹黒い一面あり 漫画家 ありす おっとり 中2 A A 父・母・執事(セバスチャン)※5 大財閥で複数の企業経営 園芸部・武道などの習い事多数 特に無し なし ゆうこ 母性的 中2 B※6 B(力持ち) 父・母・姉・祖父・祖母 弁当屋 なし 特に無し なし きらら マイペース 中1 B A 父・母 父は俳優、母はモデル モデル活動・プリンセスレッスン 特に無し トップモデル ひまり 臆病 中2 A A(足が速い) 不明※7 不明 塾通い・スイーツショップ務め コミュ障※8 スイーツ研究者※9 ほまれ クール 中2 ?※10 A 母・祖父・祖母・保護犬(もぐもぐ) 母はクレーン操縦士 ジュニアフィギュアスケーター(ブランクあり)、お仕事体験 お化けが苦手 フィギュアスケートでの大成 えれな 明るい 中3 ※11 A 父・母・弟3人・妹2人 花屋 なし お化けが苦手 プロの外国語通訳者 脚注 ※1…母・まりあもいたが本編では既に故人で回想のみ登場。 ※2…後日談にあたる小説版では、祖国であるメイジャーランドの次期女王として勉強を重ねていることが明かされている。 ※3…父・勇一もいたが本編では既に故人で回想のみ登場。 ※4…初期設定では漫画研究部と家庭科部の掛け持ちとされていたが本編ではその様な描写が無かった。 ※5…祖父・一郎もいたが本編では既に故人で回想のみ登場。また、ありすには兄・ヒロミチがいる裏設定が放送終了後に明かされた。 ※6…学力自体は低くないようだが、第12話でドイツの地名を答えられないなど、地理に関しては苦手なようである。このため後に世界を遠征して地名を憶えさせられる描写も見られた。 ※7…最終話まで家族に関する言及が一切無く、ひまりが自宅にいるシーンや回想にすら彼女以外の家族が誰1人登場しなかった。但しオフィシャルコンプリートブックでは両親が健在である事が補完されている。 ※8…小学生時代のあるトラブルで友人達が離れて行ってしまったトラウマが原因だった。しかしいちか達と出会ってからは克服して行った。 ※9…最終話にて食品関連の高校に進学し、数年後のエピローグではスイーツの実験をしている様子が描かれた。 ※10…最終話まで学力が言及されることはなかった。ただし不成績を取る描写は特に無いこと、学業がフィギュアスケートやプリキュア活動に支障をきたす様子は無かったこと、夏休みの宿題は(はなと違って)やり終えていたらしいことなどから、悪くは無いことは推定できる。少なくとも「低い」レベルのはなよりは確実に優れているだろう。 ※11…優れた英語力の描写が度々あり、また三者面談でも担任教師から彼女の学力なら他地域の高校も十分に狙えると太鼓判を押されていることから学力は高い部類に入ると考えられる。 名前 コメント
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32人のプリキュアの活躍により、影は浄化された。 影が現れる 「…!」 影「どうして分からないんだ?」 グレル「もうやめよう。」 「…。」 影「何でやめなきゃいけない?物凄い!プリキュアだって倒せるんだ!」 グレル「倒したいんじゃない。俺はただ……プリキュアが羨ましかったんだ。」 「…。」 グレル「キュアハッピー、皆から頼りにされているプリキュアが、羨ましかっただけなんだ。」 影「皆なんかどうでもいいだろ?どうせ、お前の事なんか分からないんだ?」 グレル「俺の事なんか誰にも分からない、確かにそうだった。でも、いたんだ!俺を悪い奴じゃないって言ってくれる奴が!いたんだ。 俺もそいつの事を知りたい。話したり、一緒に勉強したりして、エンエンとも友達になりたい。」 涙が零れるエンエン エンエン「グレル…。」 グレル「学校の皆とも友達になりたい。笑ったり、泣いたり、ドキドキしたり…自分の知らない気持ち、いっぱい×2知りたい。」 手を差し伸べるグレル グレル「お前もそうだろ?だってお前は…俺なんだから。」 笑みを浮かべ、消滅する影 影はグレルに還り、玉に戻った グレル「あ、あの皆、ごめん!こんなの謝って済む事じゃないけど…でも、ごめん!」 エンエン「あのね、グレルは凄く頑張ったんだよ!皆を助けようと本当に頑張ったんだ!」 「知ってるよ。」 グレル・エンエン「え?」 「見てたもん、ね?」 「グレルは勇気あるね!」 「こんな怖い影と戦っていたなんて!」 グレル「でも、俺のせいで学校が…」 「グレル、学校は勉強する所だ。グレルがたくさん学んでくれて先生は嬉しい。」 グレル「先生…。」 タルト「二人は勇気あるなあ。初代プリキュアの妖精になれるかもしれへんで。」 エンエン「ほんとに?」 グレル「俺みたいな妖精でも?」 ハート「あたしだって自分がプリキュアになるなんて思ってなかったよ。だから君達は。」 ハッピー「笑顔があればハッピーになれるよ。」 エンエン・グレル「…!」 グレル「エンエン!俺、プリキュアの妖精になりたいぞ!」 エンエン「僕も!」 グレル「一緒になろう!」 学校を復興するプリキュア達 おわり
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青のプリキュアは、私が何もせずともこちらの罠に嵌った。 次は、黄色のプリキュア。 山吹祈里。 しかし、どうしたものか。 祈里はラブとは違い、私と親しくない。 しかも私に対し警戒心を持っている。 美希のように、一人でこの占いの館に来ることもないだろう。 ラビリンスが作成したプリキュアのデータに目を落とす。 資料によれば、祈里の家は動物病院を営んでいるらしい。 そういえばラブが、 祈里は、獣医を目指していて、動物には詳しい。 と言っていたのを思い出す。 ここに付け入る隙があるかもしれない。 私の口から知らず知らずのうちに、含み笑いが漏れる。 数日後 ラブに会いたいというメールを送ると、すぐに返信がきた。 うまい具合に3人でダンス練習をしているらしい。 目の前には、傷ついた小鳥。私が用意したものだ。 私の作戦は、傷ついた鳥を森で拾ったということにし、 祈里の家の動物病院に診てもらう。 これなら、この先ラブを介さずとも、 祈里に連絡が取れるし、家まで行く口実になるだろう。 親しくなれば後は、こちらの罠に誘い込めばいい。 私がラブ達がいつも練習をしている公園につくと、 「せつなーー、こっちこっち」 とラブが大きく手を振ってくる。 その後ろには、祈里も美希の姿も見える。 「こんにちは、ラブ、美希、山吹さん」 「あれー、美希たんとせつな・・・」 「せ、せつな」 焦ったように、美希が私を見てくる。 私は大丈夫よ、といった風に美希に微笑みかけ、 「実はこの前街で偶然会って、ご一緒させて頂いたの。 ねえ、美希」 と美希に同意を求める。 「う、うん、そうなの」 「へー、そうなんだ、二人は仲良しさんなんだね」 ラブって本当に単純な子。 美希は体を強張らせ、こちらを全く見ていない。 そんな二人が親しい訳ないではないか。 祈里の方を見ると、怪訝な表情で私を見ている。 「それで、せつな、急用って何?」 とラブが聞いてくる。 「実は今日、山吹さんに用があって。 森で小鳥を拾ったんだけど、怪我をしていて 山吹さんの家は動物病院というのを思い出したの」 「ちょっと診てもいい」 「ええ」 祈里に小鳥を手渡す。 「・・・」 無言で、傷の具合を見ていたかと思うと、急に顔を上げ、 「せつなさん、この子、私が預かってもいいかしら」と言う。 「ええ、勿論。 でも拾った責任があるし私も病院までついていってもいいかしら。 私は山吹さんの家に行くから、ラブと美希は一緒に帰ったら」 「そうだね、美希たん帰ろう」 美希とラブの二人と別れ、祈里と病院へ向かう。 それから、私がいくら話を向けても、何か考え込んでいるかのように、生返事ばかり。 本当にやりにくい子。 ラブや美希だったら、なんらかの反応があるだろうに。 程なく、祈里の家が見えてくる。 祈里は突然立ち止り、 「せつなさん」と私の名を呼ぶ。 急に名前呼ばれ、私も立ち止ってしまう。 「この子、森で見つけたということよね」 「ええ」 「でも、この傷自然にできたものじゃないの、多分人が傷つけてできた傷・・」 「・・・でも、私は森で拾っただけだから」 「そう」 と言って、祈里は俯く。 暫くして、何かを決意したかのように、顔を上げた。 「でも、この子、せつなさんのこと、怖がってる」 変なこと言ってごめんなさい。と頭を下げ、家の方に駆け出す祈里を、 私はただ、呆然と見送るしかできなかった。 その頃。 美希とラブの二人は・・ 何よ、さっきのせつなの顔。 お膳立てはしたわよ、後は頑張ってねという感じの笑顔は。 「ねえ、美希たん、さっきから顔赤いよ、熱でもある?」 と言って、ラブがアタシの額に触れようとする。 ラブはいつも他人のために一生懸命。 ラブのこういうところは好ましいのだけど、今のアタシには洒落にならない。 ラブ、ごめんね。アタシは本当に病気じゃないの。あ、でも。恋の病か? 額に触れようとする手を邪険に振り払ったせいか、 ラブは目を潤ませている。 まったく、アタシの方が泣きたいわよーー。 美希の煩悶は続く・・・ 了
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赤い翼の輪舞曲 第17話――幸せの“セッション・アンサンブル”―― ピシリ、ピシ、ピシピシ―― イースの真っ白な闘衣の胸部にある、赤いダイヤの亀裂が広がっていく。 今の演奏が終わるまで、持つか持たないか。残された時間が、遂に尽きようとしていた。 それを待たずして、街の人々が元に戻ったのを見届けて安心したのか、ノイズの目がゆっくりと閉じられる。 辺りが闇に閉ざされる。これで、イースには何の情報も得られなくなってしまった。 スーツの損傷と共に身体の機能も大きく損なわれ、既にいくつかは停止している。 もう、目を凝らしても何も見えず、耳を澄ませても何も聞こえない。 それが、本当に光や音が存在しないからなのか、単に自分が知覚できないだけなのか、イースにはそれすらわからなかった。 時を置かずに、フュージョンの侵食が再開される。フュージョンを呑み込んだまでは良かったものの、ノイズにも、この化け物を滅することはできなかったらしい。 (――と言うことは……あなたもフュージョンに吸収されてしまうのね) イースは、薄れていく意識の中でぼんやりとそう思った。 ピシピシ――パキィーン! ついに、強化服の制御装置でもある、胸のダイヤが砕け散る。 イースの変身が解けて、東せつなの姿へと戻っていく。 こうなっては、いくら常人離れした身体能力を誇っていても同じ。人間であるせつなに、フュージョンの侵食を阻む術は無い。 せつなは観念して目を閉じる。あと数秒で、跡形もなく喰らい尽くされてしまうはずだった。 『赤い翼の輪舞曲――幸せの“セッション・アンサンブル”――』 五秒……。十秒……。二十秒……。 (……なぜ? なぜ、私はまだ意識があるのかしら……) せつなは、ゆっくりと目を開ける。驚いたことに、辺りは闇ではなかった。 濁った高密度の液体を通して、外の景色が透けて見える。耳を澄ませば、外の物音も聞こえてきた。 どうやら変身が解けて制御が無くなったせいで、身体の機能の一部が回復したらしい。でも、それだけでは説明の付かないことがあった。 (どうなっているの……?) 感覚器官が数百倍に強化されたイースならともかく、生身の体で、こんな隔離された場所から外の情報を得られるはずがない。 まして、ここはフュージョンの体内なのだ。プリキュアですらダメージを受けるような場所だ。 それなのに、どうして人間である自分が無事でいられるのか? もちろん自由に動けるわけじゃない。それでも、液体金属並みの高圧の中で、潰されもせずに生きていられるのは異常だった。 混乱しながらも、せつなは外の状況に意識を集中させる。 驚いたことに、メロディたちはフュージョンと互角以上に戦っていた。彼女たちの技は、以前見た時の十倍も二十倍もの大きさと威力を発揮し、巨大なフュージョンをも圧倒する。 しかし、決め手に欠けるようだった。フュージョンが街の人々を盾にするようになってからは、次第に劣勢に追い込まれていく。 「どうした? 私を滅ぼす切り札があるんじゃなかったのか? 見せてみるがいい!」 勝ち誇ったようなフュージョンの声。プリキュアの切り札とは、クレッシェンドトーンの力を借りた必殺技のことだろう。 それを使えない理由とは――メロディの言葉に、せつなは愕然とする。 「前にも、同じようなことがあったよね。世界を救うか、仲間を助けるか、そんな選択がさ」 (何を……言っているの!?) そして――どこを見ているのか? 彼女たちが守らなければならないものは、足元にいる人々のはずだった。 やっと、ようやく街のみんなが戻って来たんじゃないのか……。 今――ここでコイツを倒さなければ、その奇跡も、これまでの努力も、全てが水泡と化してしまうのだ。 「きっと、せつなは自分をあきらめるのが正しいと思ってる。いつだって、それが正しいと思ってる。わたしはね――そんなせつなが許せないから!」 “わたしは――わたしたちはっ! 絶対にせつなをあきらめないっ!!” (そんなこと、私は望んでいない! わかってるくせに、それでも助けようというの……) せつなの心に、一瞬浮かび上がる激しい憤り。それがすぐに、もっと強い別の感情に塗り変えられていく。 それは“歓喜”――感謝と、喜びの気持ち。 今のせつなが決して持つべきではない、あたたかくて幸せな気持ち。 (どうして――) 自分がこの世界に来て、まだたったの二日しか経っていない。仮に助かったところで、明日にも遠い世界に旅立つ人間だ。 とてもじゃないけど、彼女たちの大切な者と、比べられるような関係は結んでいないつもりだった。 「出会いに間違いなんてないよ。結んじゃいけない絆なんてあるわけない。わたしは、そんなもの絶対に認めないから!」 昨夜の響の言葉が蘇る。 自分はどれほど、この加音町に来たことを後悔しただろう。 関係のない世界を争いに巻き込んで、後少しで滅ぼしてしまうところだったのだ。 それなのに響たちは、自分がこの世界に来たことを、フュージョンという災厄を招き入れたことを、僅かばかりも恨んでいなかった。 恵まれた環境の元に生まれて、ここまで何もかも上手くことが運んできた響だから、そんなことが言える――あの時、自分はそんな風に思っていた。 でも、響の信念は、どんな状況に置かれてもまるで変わらなかった。 再び始まるプリキュアたちの死闘を、ただ茫然と眺めるせつなの耳に、“幸せのスキャット”が聴こえてくる。 加音町とメイジャーランドの住人の、プリキュアへの応援のメッセージ。そして―― 「せつな姉ちゃん! 聞こえてないかもしれないけど……。あきらめるのなんて無しだからな! ヒーローってのは、一度や二度くらい負けたっていいんだよ! 絶対にあきらめずに、最後は必ず勝つのがヒーローだろ? 俺はヒーローになるのをあきらめないよ。だから、せつな姉ちゃんもあきらめないでくれよっ!」 (あの声は……奏太君!?) せつなの目が、大きく見開かれる。 怨んでくれていいと思った。彼をあんな目に合わせたのは、他でもない自分なのだから。 でも、彼は恨むどころか、一心に自分を心配して、助けようとして、力の限り応援してくれている。 「がんばれ! がんばれっ! せつな姉ちゃん!!」 その声に―― 「がんばれ~!」 「がんばれ、プリキュア~!」 わずか数日前の、あのラビリンスでの最終決戦の日。 あんなに戻るのが怖かった、思いやりも、喜びも、幸せも無かったはずの故郷で聞いた、心震わす人々の声援が、鮮やかに蘇る。 「がんばれ! イース!」 「負けるな! 俺達が付いてるぞ!」 「イースお姉ちゃん、がんばれ――!」 その上に、初めてパッションに変身した時の、四つ葉町の人々の応援の声の記憶が重なっていく。 加音町から――ラビリンスから――四つ葉町から――心に響く、優しいメッセージ。 それらは組曲のように、繋がり合い、重なり合う。 そう、まるで――この“幸せのスキャット”のように! ドクン ドクン ドクン せつなの胸の奥から、熱い塊がこみ上げる。 それが迷いという、イースの闇を蹴散らして、一つの答えを導き出そうとしていた。 「聞こえる? フュージョン。あんたの言ってる“融合”がどれほど薄っぺらいか、この音楽が証明してるよ!」 「人はみんなバラバラで、時には理解しあえずに、傷付けあったり、いがみあったりもする!」 「だけど、間違うからこそ、許してもらえる。弱いからこそ、力になってあげられる!」 「みんな違うからこそ、一つになった時に、より大きな喜びを感じられる。助け合い、補い合って、大きな力を出すことができるの!」 四人の確信に満ちた声が響く。 これがもし四つ葉町だったら? フュージョンに街の人全てを吸収されて、持ち直すことなんてできただろうか? ノイズの存在は確かに危険だ。でも、そんな彼を、それでも受け入れたからこそ、この世界は滅びから救われたんじゃないのか。 では、四つ葉町にとって、ラビリンスの襲撃とは何だったのか? せつなの心が後悔に苛まれる。不幸な出来事だったと思う。でも、それが無ければ、プリキュアだって生まれなかった。 いつか訪れるフュージョンの襲撃にだって、まるで無力だったはずだ。 管理国家ラビリンスの侵略行為。そして、その尖兵であったイースの犯した罪。それらを正当化するつもりはない。 決して許されることじゃない。けれど―― (響が、ピーちゃんの鳴らす雑音を、素敵なセッションの演奏に繋げて見せたように) 同じように、ラビリンスのもたらした不幸だって、イースの過去だって、これからの幸せに繋げることならできるんじゃないのか? ラビリンスはもちろん、四つ葉町にとっても――きっと、いつか幸せに変えられる! そして――それは、この世界も同じはず! (ラブ。あなたは初めから、そう言ってたわよね。不幸は必ず、幸せに生まれ変われるんだって) せつなの腕が、ゆっくり、ゆっくりと上がっていく。胸の奥に生まれた熱が力に変わり、鼓動に乗って、全身に広がっていく。 生きたいと思った。生きて――もう一度やり直したいと思った。 (このまま吸収されるわけにはいかない! 私には、やりたいことがある。もう一度、会いたい人がいる。そして、帰りたい場所がある!) そう強く念じた時、せつなの身体が赤い光に包まれた。 懐かしくて、あたたかくて、不思議な気持ち。その光は――自分を守り、生かそうとしている力! (アカルン? そう、あなただったのね。私がまだ生きていられるのも。ノイズの目で、この街の様子を見せてくれたのだって!) 思考の迷宮を潜り抜け、せつなは初めて声を出す。 そう、これは誓い。だから、言葉にしなければ意味がないから! 「来て! アカルン。あなたは奇跡の扉を開く“カギ”よ。どんな障害だって跳び越えて、世界を結ぶ“幸せ”よ。 今ならわかるわ。どうして“幸せ”の妖精であるあなたが、移動能力も持つのかも! 距離を越えて、人と人との絆を繋ぐため。 もう一度……やり直したい! 今度こそ、私も一緒に幸せになるために! いつか、全ての世界の人々を、笑顔と幸せでいっぱいにするために!」 せつなは、招き入れるように両手を胸の前に掲げる。 その腕の中に、重ねた掌の中に、せつなの体内から赤い光の球が飛び出した! 「キィ――!」 「驚いた。あなた、私の身体の中に居たの? じゃあ、フュージョンはリンクルンだけを取り込んで、それが使えないのを、私が居ないせいだと思っていたのね?」 無理な長距離移動とフュージョンからの脱出で、激しく消耗していたアカルンは、せつなの体内に隠れて回復を待っていたらしい。 せつなにもそれを明かさなかったのは、フュージョンから完全に身を隠すためだったんだろう。 「さあ、始めましょう、アカルン。“過ち”を不幸のまま終わらせないために。未来に続く幸せへと繋いでいくために。私たちの、セッション・アンサンブルを!」 せつなは抱きしめるように、アカルンを胸の中に、再び自分の体内へと招き入れる。 「見ていなさい、フュージョン。本当の融合ってのはこうやるの。心と心を絆で繋いで、立ち向かうのよっ!」 せつなは、両手を胸の中心で合わせ――そして、開く! 「チェインジ・プリキュア・ビートアップ!!」 変身のキーワードを唱える。光は爆発的に膨れ上がり、周囲が知覚できない程の眩い光体となる。 視界一面が、真っ赤に彩られる。その光が収まった時、せつなは普段とは異なる空間に来ていた。 (やっぱり、この世界にもあったのね) “幸せの泉”たくさんの人の嬉しい気持ちや、楽しい気持ちが集まって生まれた、幸せのエネルギーの行き着くところ。 身体が勝手に動く。ダンスを踊るようなモーションと共に、せつなの衣服が解かれていく。 足元が液状に変化して水中に投げ出される。水に温度はなく、呼吸も妨げない。 泳ぐ必要はなかった。まるで導かれるように、“想い”という名の水中を高速で潜り抜けていく。 染み込んでくる優しい心は、せつなの身体に力を与え、新たなる姿を創り上げる。 胸にはクローバーのマークが、身体には真っ赤な衣装が、髪は大きく伸びて薄紅色に染まる。 両足にブーツ、耳にはハートのイヤリング。頭の左右には大きな髪飾り、翼を思わせる真っ白な羽が伸びる。 精神力の物質変換、腰にリンクルンが装着される。額にはイースのシンボルの赤いダイヤ、ティアラとなって燦然と輝きを放つ! 恵み、注がれる想いが臨界に達した時、イルカのように軌道を変えて垂直に飛び上がる。 水面から巨大な水柱が伸びる。突き破るようにして、 舞い降りる――伝説の戦士。 幸せの赤いプリキュア! ハートを形取った指から、真紅の瞳が覗く。愛する者を見つめるために。 失いたくないもの。大切なものを守るために! 細く美しい腕が華麗に十字を切る。 真っ赤な!――ハートは!――幸せの証! 熟れたて!――フレッシュ!―― “キュアパッション” 時間にして、コンマ数秒。特殊な空間から帰還し、せつなはキュアパッションへと変身を遂げる。 しかし、今居る座標がフュージョンの体内であることに変わりはない。 「なんとか、ここから脱出しましょう。アカルン、すぐ外でいいから、跳べる?」 「キィー……」 「そんな顔しないで。あなたは疲れているんだし、フュージョンもパワーアップしてるものね」 パッションの問いに、アカルンは力なくうな垂れる。 そうでなくとも消耗していたのに加えて、先程まで生身の状態のせつなを護っていたのだ。もう、せつなを変身させるのが精一杯だったのだろう。 パッションは、イースの時にそうしたように、フュージョンの体内を移動して抜け出すことを試みる。 無理にコアに戦いを挑まなくても、自分の無事さえ知らせれば、メロディたちの技で殲滅することもできるはずだ。 しかし、動こうとした瞬間に、両手が捻られるように締め付けられる。 次に両足に、螺旋状に渦を巻いた水流が絡みつく。四肢を封じられたパッションは、そのまま見えない力で磔となった。 「なるほど、同じ手は食わないってことね」 先程までは、メイジャーランドと加音町の住人を大量に呑み込んでいたため、制御が利かない状態であったらしい。 だからこそ、イースが自由に動き回ることも出来たのだろう。 だが、今やフュージョンはノイズの身体を完全に掌握しつつある。このままでは脱出どころか、パッションとていずれ溶かされてしまうだろう。 「大した力ね、打つ手無しってところかしら? ただし――私一人ならね!」 (せつな、忘れないで。あたしたちは、いつでも繋がっているよ) そんな声が聞こえたような気がした。 「ごめんなさい、ラブ。忘れていたわ。私はひとりじゃないってことも、そして――」 パッションの左手が、渾身の力を振り絞って、リンクルンへと辿り着く。 「どうしてリンクルンが、通信機の形をしているのかってこともね!」 その瞬間、リンクルンが眩い輝きを放った。 そう、これはただの変身アイテムじゃない! 空間を超えて、仲間との絆を繋ぐもの。 リンクルンが届けるのは――心。 (みんなっ! 私はここよっ! お願い――力を貸して!!) “ラブゥ――ッ!!” この世界は、平行世界と呼ばれる、ラビリンスで定義するところのパラレルワールドではなかった。 同一の次元の中に存在する異世界ではなく、異次元とも呼ぶべき、本来ならば決して交わるはずのない遠い場所。 そんな届くはずのない世界からの叫びが、想いが、――次元の壁をも打ち破る。 “キュア・キュア・プリップー!!” フュージョンの頭上、加音町の上空の一点が、水面に小石を投じたようにグニャリと歪む。 その歪みは徐々に大きくなって、やがてぽっかりと、人が通れるほどの時空間ゲートが出現する。 “やっと、見つけたよっ!!” 空間を捻じ曲げて出てきたのは、可憐な衣装を纏った三人の少女たち。 そして、フワフワと浮かぶ小さなヌイグルミと、悲鳴を上げながら落下する小動物だった。 “ピンクのハートは愛あるしるし! もぎたて! フレッシュ! キュアピーチ!” “ブルーのハートは希望のしるし! つみたて! フレッシュ! キュアベリー!” “イエローハートは祈りのしるし! とれたて! フレッシュ! キュアパイン!” 「貴様らは……」 三人と二匹は、フュージョンの正面でピタリと静止する。 それは、メロディたちのような飛翔ではなかった。一緒に居るヌイグルミが作り出した、不可視の力場によって身体を支える。 その中央で仁王立している少女――キュアピーチは、迷わずフュージョンへと挑みかかった。 「せつなを、返してもらうよっ!」 弾丸のように飛び出したピーチは、フュージョンにピタリと視線を据えて、見えない足場を一気に駆け抜ける。 (何があっても、必ず、せつなを取り戻す!) その決意を、胸に秘めて―― 赤い翼の輪舞曲――導け! 伝説にもない奇跡!!――へ続く
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【1月11日】 『将来の自分』 四人 『今日は、成人の日!』 美希 「うちの美容室にも、成人式の人がたくさん来たわ」 せつな「振袖姿の女の人や、袴姿の男の人をあちこちで見かけるわね」 ラブ 「いいな~あこがれるな~」 祈里 「振袖姿に? それとも大人になることに?」 ラブ 「将来の自分にだよ! 想像したらわくわくするよね!」 美祈せ『ラブ(ちゃん)だけは全然変わってないような気がする……』 【1月12日】 『冷たくて嬉しいもの』 せつな「なんだか雪が降りそうね」 シフォン「キュア~? ゆ~きってなぁに?」 せつな「空から落ちてくる水の結晶のことよ」 ラブ 「白くって、冷たくて、ふわふわしてて、とっても綺麗なんだよ」 せつな「くすっ。ラブの説明を聞いてると、なんだか美味しい食べ物みたい」 ラブ 「そうだっ! 駅前のアイスクリームを買いに行こうよ!」 せつな「こんなに寒いのにアイスを食べるの?」 ラブ 「う~んと部屋を温かくしてから食べるんだよ」 せつな「贅沢、ここに極まれりね」 ラブ 「食べたくないの?」 せつな「食べたいに決まってるでしょ」シフォン「キュア~♪」 【1月13日】 『いつでも一緒』 ラブ 「今日は学校でマラソン大会なの。せつなには負けないぞー!」 せつな「そういうことは練習で一度でも勝ってから言うものよ」 ラブ 「大丈夫! あたしは本番に――――」 せつな「弱い、でしょ」 ラブ 「じゃあ、奇跡が起こるかも?」 せつな「私に怪我でもさせる気?」 ラブ 「だって、せつなと一緒に走りたくて」 せつな「手加減なんてしないわよ」(でも嬉しい……) 【1月14日】 『ハムスターほどじゃないけれど』 祈里 「今日は、病院で預かっているワンちゃんを散歩に連れて行くの」 いぬ①「ワン! ワン! ワン!」 祈里 「ほら、とってもワンちゃんも喜んでくれてるの」 キルン「嬉しいけど、歩くの遅いから運動にはならないワン(通訳)」 祈里 「ごっ、ごめんね。できるだけ頑張るね」 いぬ②「ワン! ワン! ワン!」 キルン「気分転換なら、コースも工夫してほしいワン(通訳)」 祈里 「ごめんね。今日は違う道を通るね」 いぬ③「ワン! ワン! ワン!」 キルン「不自由だから、いっぺんに連れて歩くのはやめて欲しいワン(通訳)」 祈里 「みんなひどい! もう行かないもん!」(パタパタと走り去っていく) いぬ達(やりすぎちゃった。つい可愛くてイジメたくなるんだワン) 【1月15日】 『それでも一緒』 サウラー 「寒い日は、ゆっくりお風呂につかるのも悪くないね」 ウエスター「ぬるいじゃないか、どんどん沸かすぞう~」 サウラー 「…………お風呂は静かで、心が安らぐね」 ウエスター「風呂場だといい歌声が出るぞう~」 サウラー 「…………お風呂につかると疲れが取れるよね」 ウエスター「館のお風呂は広いからたっぷり泳げるぞう~」 サウラー 「……もういい。わかったから、せめてその浮き輪とアヒルを何とかしたまえ」 【1月16日】 『好きな色』 美希 「今日は、読者モデルの撮影で色々なコートを着たわ」 祈里 「気に入ったのあった?」 美希 「そうね、ネックに黒リボンが付いた赤のコートなんていいわね」 ラブ 「美希たんでも赤なんて着るんだ!」 せつな「わかってるじゃない!」 美希 「言うと思ったわ。でも、せつなの着ているコートはベージュよね」 祈里 「黒のジャンパーも着てたよね」 せつな「ええ、どちらもお気に入りよ」 ラ美祈(少しは過去がふっきれたのかな?) 【1月17日】 『飛んだ後に残るもの』 キュアピーチ「悪いの・悪いの・飛んでいけ! プリキュア・ラブ・サンシャイーン!!」 美希 「改めて考えると、結構恥ずかしいセリフよね…」 祈里 「改めて考えるのはやめたほうがいいと思う……」 ラブ 「痛いの痛いの飛んでいけ~みたいで可愛いよ!」 せつな「なあに、それ?」 ラブ 「怪我をした子供の痛みが消えていくおまじないだよ」 せつな「敵を倒すためじゃなくて、悪いところを消すためのおまじないなのね」 【1月18日】 『乙女の悩み』 美希 「どーしよう! お正月で太ったかも……。明日からジョギング再開しなきゃ」 ラブ 「あたし、そういうの気にしたことないなあ」 祈里 「それで太らないんだもの。なんかズルイ」 せつな「ほんとに容赦なく食べるわよ、ラブは」 美希 「なんだか腹が立ってきたわね、どこかにお肉付いてるんじゃないの?」 ラブ 「あはは、くすぐったいよ、美希たん! せつなとブッキーまでやめて」 美希 「悔しい。明日から本気で頑張るわ……」 【1月19日】 『何があったの?』 タルト「みんな、風邪ひかんように、ちゃんとうがいせなあかんで~」 シフォン「キュア!」 タルト「そうそう、手洗いも大事やで。はっ、はっ……はくしょん!」 ラブ 「大変! タルトが風邪ひいちゃった!」 せつな「フェレットでも風邪はひくのね」 タルト「わいはフェレットちゃうわ! 可愛い可愛い、はくしょん!」 祈里 「大変! 治療しなきゃ!」 タルト「なんで手袋して注射器持っとんねん。堪忍やで~!」 せつな「トラウマになってるのね……」 【1月20日】 『内緒のプレゼント』 ラブ 「今日は、久しぶりにカオルちゃんのドーナツ食べよーっと!」 カオルちゃん「ほんとに久しぶり。おじさん寂しかったよ~」 ラブ 「あはは、ちょっと金欠で来れなかったの」 せつな「ラブったら無駄使いばっかり! お年玉もらったばかりなのに」 祈里 「あのね、ラブちゃんはね、商店街の福引が目当てなのよ」 ラブ 「わっ、ブッキー! 言っちゃダメだったら!」 美希 「幸せの素に似たアクセサリーが当たるのよね」 ラ美祈(せつなが泣いちゃった……) 避2-545へ