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前ページ次ページ涼宮ハルヒクロスの作品集 数十分後、戻って来た彼女の手にはミネラルウォーターが有る。 それを少し飲むと彼女はゆっくりと続きを語り始める。 朝倉「それに、彼が最初に【時空跳躍】を行なった時、彼は精神的に危ない状態、人間で言う精神崩壊する直前だったの。 …仮に実験をするなら間違いなく精神崩壊、つまりは心の底から【此処から居なくなりたい】【消えてしまいたい】と願わないと いけないの。」 つまり【シンの能力を人為的に発動させるには、命を落としかねない位の人体実験をしなければいけない】 映写機を消してから少しして彼女の口が動き出した。 朝倉「だから情報統合思念体は彼をそれらの事柄から守る為に消去されるはずだった急進派の私を再び再生してシン君の側に付けたの。 急進派の私なら任務(シン君を守る)の為なら多少の非人道的行為もやれるから。」 そう言って彼女は何かを懐かしむように語り出す。 朝倉「前の任務の時も、そうやって行動を起こす事で現状を動かしたかったと私は思ったのね。 その結果、 あの一件であの子(長門)は彼(キョン)に信頼される事になったのだから私は消去された事を喜ぶべきなのよね。」 自身の消去がきっかけで、動きがあった。 その事実が彼女に喜びを与えている。 そして彼女は笑顔を見せながら語りを続ける。 朝倉「それにそのおかげで今の生活ができるんですもの。私にとってはその事の方が大事なの。」 そう言い終わると少し離れてこちらを見て喋りだす。 朝倉「もしあの世界で今後私が出てきたとしてもそれは私の残した消去前のデータから創られた新しい朝倉涼子、私であって私で無い存在。 だけど彼女が居るから私はシン君に集中出来るの。その代わりにもう二度と帰れないんだけどね。」 それから少し時間を置いてから彼女は話を再開した。 朝倉「さっきはああ言ったけど、管理局の中にはシン君を【特殊な能力を持つ人間】として見ないで【仲間】として接してくれる人達がいたのよ。 それが機動六課の皆なの。」 そう言うとまた映像を映し出す。 そこには六課のはやて、なのは、フェイトの三人と朝倉が話て居る姿が流れ出した。 朝倉「私がここに来て少しして、私は六課の隊長達に真実を伝える事にしたの。これはその時の映像ね。 ……正直な所、私一人ではどうしようも無かったし、何より彼女達のシン君への接し方から信頼できるって思ったの。 もし真実を知ってシン君の能力を狙うようなら消そうと思ってナイフを隠し持っていったんだけど、真実を知るなり八神さんったら、 はやて「私のシンになんちゅうことしようとしてんねん! こんな事、私絶対に許さんよ!散々酷い目にあってきて、さらにそんな事になったら、 シンが可哀想やないか!私はシンの為に協力するで!って私に言ってきたの。他の二人も色々思うところが有るみたいで協力をしてくれる 事になったのね。 それで私は彼女達に色々と手伝ってもらう事にしたの。」 すると場面が変わって今度は先程と違う書類が映し出される。 朝倉「この書類は簡単に言えば能力を欲しがっている上層部の人達に【シン・アスカの身柄は機動六課で守りますから安心して下さい】 って書類なの。この書類は八神さん達からリンディさんとクロノ提督に伝わりそこから管理局でもシン君の事を大事に思ってる 上層部の人達が協力して出来た一つの成果なのよ。」 彼女はそう言うと映写機から写し出されている書類を暫くじっと見つめていた。 見つめるのを止めた彼女はすっかり温くなったミネラルウォーターを全部飲み干してから笑顔で喋り始める。 朝倉「そろそろシン君達が帰ってくるからお話はおしまいね。今回の事は新人の皆とシン君とデス子ちゃんには内緒ね。 シン君には今のままでいてほしいし、新人の皆に知られちゃったら顔にでそうな子が居るのよね。 後、報告書のテープの事は誰にも言っちゃ駄目だからね。ちなみに私もあのテープの中身を聞いた事無いの。 あれはあくまで情報統合思念体宛ての物だから。」 それだけ言い終わると先程まで暗かった部屋が明るくなりいつの間にか映写機とスクリーンが部屋からなくなっていた。 朝倉「でも、不思議なのは、真実を知ってなお、シン君を求めるなのはさんとフェイトに、あそこまでシン君を求めて暴走できる八神さんよ。私 は、彼女達には敬意に値する人達だと思うのね。私も何時かあんな風に気持ちを素直にだせたら良いなってと思うの。」 そう言って居る内にシンの大声とデス子の足音が聞こえてきた。 朝倉「もうすぐ帰ってくるわね。多分デス子ちゃんにまた隠し事をバラされちゃって隊長達に頭を冷やされちゃったのかしら。 ・・・それじゃあ、今日はここまでね。話を聞いてくれた皆、じゃあね。」 そう言い終えた彼女は部屋を飛び出しシンに駆け寄って抱きしめる そしてそれを見たデス子から嫉妬のパルマを打たれてシンが倒れる。 その後、医務室に運ばれたシンはデス子から有る事無い事を言われた六課の女帝達に文字通りの熱い看病を受けたそうだ。 これで今日の話を終わる。 おまけ デス子「・・・と言う事をマスターがやってました。(涙目)」 はやて「シンの奴、私の時と違って抱きしめ返すなんて許さへん!」 なのは「そうだね。シン君は頭をとっても冷やさないといけないね。」 フェイト「そうだね。許さないね。頭を冷やさないとね。」 そう言うと彼女達は医務室に向かう。 デス子「(フッフッフ、マスターしっかり養生してくださいね。」 そう言いながら、デス子はゆっくりと医務室に向って歩く。 終わり 前ページ次ページ涼宮ハルヒクロスの作品集
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前ページ次ページなのはクロスの作品集 『決意と絆と覚悟と思い 後編』 窮鼠かえって猫を噛む、という古いことわざがある。 追い詰められた獣は、例え自分がどれほど傷ついていようと果敢に勇猛に相手に立ち向かう、と言う意味だそうだ。 だが、例え噛みつけたとして、その牙が相手の命に届くことなどあるのだろうか。 『ありえない』どれだけの勇気があろうと所詮ねずみはねずみ。 中途半端な反撃など相手の感情を逆撫でするだけだ。 恐らく窮鼠は、噛み付いたのちは無残に残忍に殺されたのだろう。 今のシンも窮鼠と同じだ。半端に手に入れた力で誰かを守れると思っている。 勝ち目の有る無しなどまるっきり考えていないのが丸わかりだ。 勝てるかどうかではなく勝つ方法をまず考え、どこまでもしぶとく戦い抜く。 今まではそれで何とかなってきた。 しかし、今度ばかりはそうは行かない。 闇の書の闇は強い。 これまでに相対した相手などコイツに比べれば赤子以下だ。 格が違うといってもいい。 それだけにデス子は恐ろしかった。 もしも退くべき時に退かず、闇の書の闇に殺されるようなことになったら・・・。 命を捨ててでもリインフォースを救う道をシンが選んでしまったら・・・。 シンはあのメサイア攻防戦で、ラクシズ艦隊に核エンジンを暴走させて特攻した前科がある。 リインフォースを救うためにまた同じことを繰り返しても可笑しくない。 命を賭けなければ戦いにすらならない相手だ。このままここにいれば、シンはまず間違いなく命を落とす。 シンが、マスターが、自分の大切な人が死ぬ。 自分の命よりシンの幸せを願うデス子にとって、そんなことは想像するだけでも耐えられない。 シンが過去のはやて達と出会ったことで、タイムパラドックスが発生する可能性が生まれたことは事実だ。 しかし、彼らが会ったのは十年前の一ヶ月だけであり、もしもはやて達がシンを覚えていなければ、タイムパラドックスは発生しないかもしれない。 少なくとも、そちらの可能性のほうが目の前の化け物に勝てる確率よりもはるかに高かった。 デス子に突きつけられた選択肢は二つ リインフォースを見捨てこのまま未来に変えり、はやて達の記憶にシンが残っていないことにかけるか 毛ほどの可能性に賭け、相打ち覚悟で奴と最後までやりあうか 病院で話したカルネアデスの船板が思い出されてくる。 つい数時間前の出来事なのに、今は何故かはるか過去の出来事のようだ。 シン「今の状況と似ていると思わないか? デス子、お前ならどちらを助ける?」 はやてを犠牲にすればリインフォースは助かる。リインフォースを犠牲にすればはやてが助かる。とどのつまり、どちらかが救われるためにはどちらかを必ず犠牲にしなければならない。 デス子「そんなの・・・選べるわけないじゃないですか!溺れて大変なら私の翼で両方助けます!」 あの時は、はやてとリインフォースだったから両方助けると無茶も言えた。 けれど、比べる対象がシンだったなら・・・。 リインフォースの命とシンの命。デス子がどちらかを選ぶのだとすれば・・・。 デス子(ごめんなさい、マスター。私は・・・・) 最後に彼女は必ずシンを選ぶ。 デス子『・・・覚悟を決めるときかもしれません、マスター』 シン「不吉なこと言うなよ、デス子。俺はまだ死ぬつもりは・・・『私が言っているのは撤退の覚悟です!』・・・!?」 デス子『マスター、イザと言う時にはリインフォースを諦めることも視野に入れて置いてください』 シン「デス子、お前何を言って・・・」 大体自分たちの日常はリインフォースがいないのが当たり前だったはずだ。 マスターが助かるためならば・・・・。 そう思い込むことで、デス子は噴出しそうな自分の感情を無理やり押さえ込んだ。 デス子『私は本気です! 武装もほとんどが損傷しています。魔力残量だって残り40%を切りました。なのにどうやって勝つっていうんですか!』 シン「お前・・・泣いてるのか?」 確かに迷いはしなかった。それでも、同じ釜の飯を食った家族を見捨てるのが辛くないはずがない。 デス子はシンの中で叫びながら、必死に涙を堪えていた。 それでも、シンを救うことができるなら、デス子は喜んでカルネアデスの船板からリインフォースを突き飛ばす。 デス子「・・・・・・帰りましょう、マスター。皆待ってますよ」 シンをベースに構築したはずのプログラムでありながら、どちらか一方を選んでみせる。 デス子の心は、既にプログラムを超えた進化を遂げていた。 戸惑いながらも、言葉を返そうと口を開こうとしたシンだったが、ふと、ピンク色の小さな球体が彼の目に映る。訓練と称する嫉妬の刃から逃れようとしたときによく目にした魔法。 ――――――それが何かを、彼らは嫌と言うほどよく知っている。 デス子『ワイドエリアサーチ!?』 シン「こんな魔法まで蒐集してたのか! くっ、見つかった!」 デス子『スラスター全開! 一気に離脱を!』 上方に飛ぶと同時に、ディバインバスターが間髪いれず飛んでくる。 周りに漂っていた残骸(肉片)が一筋に伸びる光の中で消滅していく。 僅かでも回避が遅れれば、削り取られ、焼け焦げた肉片と同じ運命をたどるところだった。 デス子『見たでしょう、あの威力を!このままここに居たって無駄死にするだけです!』 シン 「いい加減にしろよ、デス子! ここで諦めたらリインフォースはどうなるんだ! あいつは俺よりもはるかに不幸な運命をたどってきた。けど、俺と同じでようやく光を掴めたんだ。 これから、もっともっと、たくさん幸せになる権利がある! こんなところで死んでいいはずがないだろ!」 シンは次の残骸へ飛び移るともう一度ミラージュコロイドをばら撒いた。 奴がワイドエリアサーチを使えるのだとすれば、いよいよもって余裕がなくなってきた。 デス子『自分の心配をしてくださいマスター! ここであなたが死ぬようなことがあれば、 あなたはこの世界に居なかったものとして歴史が修正するんですよ! そんなこと・・・私には耐えられません!』 矛盾を抱える存在になったシン・アスカが生き残るには『死なない』ことが第一条件だ。 シンが死ぬ=シンは元々ミッドチルダに呼ばれなかったものとして修正される =シンは向こうの世界(CE)では(核自爆によって)既に死んでいる。 それは、向こうにもこちらにも存在しないということになる。 つまり、シンが死ぬようなことになれば、 シンの存在はこの世界に来た瞬間までさかのぼって痕跡一つ残らず完全に消滅させられるわけだ。 記憶も、物も、シンに関するものは塵一つ残らないだろう。 デス子『それに幸せになる権利ならマスターにだってあるでしょう! ボロボロになるまで戦ってようやく居場所を見つけたんじゃないですか。 ようやく・・・幸せに慣れるかもしれないんですよ! もう誰かのために死のうとするマスターを見るのはごめんです』 シン(それでも、俺は引けないんだよ、デス子) 目を閉じれば、病室で苦しんでいるはやての姿が思い浮かぶ。 家族が死に、たった一人で寂しく泣いていた少女。 ようやく家族ができ、幸せを掴もうとしている少女。 『彼女が目覚めた時そこにはもうリインフォースはいない』 そんな未来を俺ははやてに見せられるのか・・・? 再び彼女を悲しみの中へ突き落とすのか・・・? 昔の自分と同じ家族を失った苦しみをまた味あわせるのか・・・? 冗談じゃない! はやての家にはじめて招かれた日、俺はリインフォースに『あんた達は俺が守る!』と誓った。 リインフォースもはやても絶対に救う。そして、俺たちも生きて帰る。 シン(帰ると約束したから、俺は何があっても死ねない。けど、だからってあいつ等を見捨てることも俺にはできない!) 判断力はあるくせに、イザと言うときには失うことを極端に恐れ優柔不断になる。 結局のところシンはそういう弱い人間なのだ。 これまでも、たぶんこれからも・・・。 だからこそ、彼はここまで来られたのかもしれない。 シン(負けられないから戦う、か。もう二度とこんな思いはしなくてすむ筈だったのに。 この世界に来てから、背負うものが前よりだいぶ増えちまったな) 感傷に浸るのはここまでだ。 考えろ、どうすれば奴に勝てる? レリックをあいつに向けて投げつけたあと、撃ち壊して起爆するか? 駄目だ、あれだけ濃い弾幕を張られたら、途中で撃破される可能性が高い。 MS形態は・・・使えない。的が大きい上に魔力防御がないからあまりに不利だ。 こんな時に補助魔法の一つも使えれば・・・いや、ないものねだりしても仕方がない。 シン「・・・・はぁ、あるわけないよな。そんな都合のいい方法なんて」 デス子『・・・・・・えぇ?』 シンは大きなため息をつくとあっさり頭を切り替えた。 小細工ならなんとでもなるが、あいつを倒すとなると小手先の手段じゃ通用しない。 幾ら考えたって倒せる方法は一つ。 俺がやれることも一つ。 なら、考えるだけ無駄と言うものだ。 シン「慣れないことはするもんじゃない。元から俺にはこっちが似合いだ!」 考える前に前進したほうが早い。 僅かでも先へ、一歩でも前へ! あの強靭なバリアがあいてじゃ、俺の出す魔力弾なんて子供だましだ。 倒す方法がレリックなら、俺に残された攻撃手段は突撃のみ。 デス子『マ、マスター、何を!』 迷うな、考えるな。そんな鎖で縛られてるようじゃ前に進めない。 危険を恐れるな。奴を倒す、そのことだけを頭につめろ! シン「ウイング展開、ミラージュ・コロイド作動、デスティニー高機動モード!」 シンは背部のウイングユニットに仕舞われた小型ウイングを全て展開した。 CE世界最速の翼型高推力スラスターはいまだ健在だ。 これでヴォワチュール・リュミエールは最大の機動性を得られる。 シン「突貫するぞ、デス子!遠距離じゃ埒が明かない。」 デス子『な!? あの弾幕の中心に考え無しに突っ込むなんて無謀です! おとなしく帰りましょう、マスター! このまま殺されるつもりなんですか!』 近付いたものを、蜂の巣にしようと待ち構えている数百の触手と それに囲まれて、悠々と広域攻撃魔法を放つ闇の書の闇。 眼下に広がる悪夢のような光景を見て、デス子はごくりと息を呑む。 そんなデス子の不安をシンは一蹴した。 シン「馬鹿言うな! 俺はまだ死ねない! 誰一人救えないまま死んでたまるか!」 シンは背中のアロンダイトを右手で抜き放つと、左手で壊れかけたバリアジャケットの破片と 余計なウエイトとなるビームライフルを投げ捨てた。 シン(これで少しは軽くなる) 触手も時間に比例して数を増やし、こちらに対する攻撃も激しさを増してきている。 あそこに突っ込んで接近戦を挑もうなどと考えるのは、無謀を好む馬鹿か真性の馬鹿の どちらか一つか両方だ。 シン「どうして・・・か」 ――――――さっきはやてのことを思い返してようやくわかった気がする。 俺がこんなに意地になるのは・・・・。 シン「デス子、リインフォースが自分が消えるといった時の笑い顔、知ってるか?」 デス子『こんなときに何を・・・!』 あいつを守りたいのははやてのためだけじゃない 俺がボロボロになったとき、あの人達が支えてくれたように。 俺も・・・ シン「昔は俺もあんな風に笑ってたんだろうな。 自分の幸せを諦めて、自暴自棄になって・・・。誰かのために人柱になることを望んで・・・。 だからわかる。あいつの笑い方は、レイの言っていた昔の俺にそっくりなんだ。 俺はあいつにそんな顔をさせるコイツを・・・ ・・・・どんなことがあっても、倒さなくちゃならない!」 俺が殺した人達のためにも、俺が守れなかった人達のためにも、俺があこがれ俺を救ってくれた人達のためにも・・・なにより、俺自身のためにも。 俺はコイツを倒して、リインフォースを救う! シン「そうしなきゃ、おれ自身が前に進めないんだ。」 デス子(きっとここで生き残れたとしてもマスターは永遠に人のために自分の命を削り続けるんでしょうね。 なら、私のすべきことは・・・) デス子『・・・前言撤回です。マスターはぜんぜん成長してません』 シン 「・・・ごめん」 デス子『でも、あなたがそれを望むなら、私はあなたにどこまでもついていきます。」 シン 「・・・・・いいのか? だってさっきまで」 デス子『さっきの醜態は忘れてください。ちょっと取り乱しただけです。 それに、マスターは死にません。 マスターがみんなを守るなら、マスターを守るのは私の役目ですから 勝って帰りましょう、皆のところへ!』 シン「・・・ありがとな。さぁ、第二ラウンドと行くか、デスティニー!」 前ページ次ページなのはクロスの作品集
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前ページ次ページなのはクロスの作品集 『コード:NANAYA』 あの満月の夜、俺は彼女を見殺しにした。 全部終わったら、もう一回無駄なことをしようって約束したのに――――。 別れる前にもう一度こうして会おうって約束したのに――――。 俺が弱かったから―――。俺が守れなかったから―――。 彼女は俺の目の前で逝ってしまった。 アレから何年たっただろう? 彼女の遺志を継いだ俺は、彼女の代わりに蟻のように湧いてくる化け物どもを殺しまくった。 殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して 殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して 殺して殺して殺して――――。 『殺人貴』なんて面白くもない呼び名まで貰って、報われることのない殺戮劇を踊り続けた。 そして今、俺は血反吐を吐きながら空を見上げている。 あれから十数年もたつ。 元々弱かった体を酷使し続けてたんだ、こうなることはわかっていた。 やり残したことも、やるべきことも残ってない。 そろそろ退場の時間かな――――。 これでようやく――――彼女の元へ逝ける――――。 ああ---気がつかなかった。 こんやはこんなにも つきが、きれい――――だ―――――。 『コード:KIRUSURESU』 ・・・・・・これで、ようやく僕は死ねる。 無色の派閥から呪詛を受けたあの日、僕の運命は決まってしまった。 いつ起きるかわからない発作に苦しみながら、死ぬことが叶わない体。 生きていても仕方がないと、何度命を絶とうとしただろう。 刃物、毒・・・ありとあらゆる物を試した。 その度に、僕は死の苦しみを味わって―――何事もなかったようにベットで目を覚ました。 この運命を閉じる方法に気付いたのは、紅の暴君を手に入れたときだった。 魔剣を扱う適格者はもう一人いる。 この苦しみを終わらせるにはそいつに殺してもらうしかない。 ただの人間じゃどうやっても無理だ。同じだけの力を手に入れたあの女じゃないと。 それだけのために僕は島の皆を裏切って、あいつを剣の意思に飲み込ませた。 遅かった。 気付いたときには全てが手遅れで、あいつを庇った姉さんは僕らに殺され、 姉さんを殺した僕らもあいつに殺された。 間に合わなかった。 僕が怨んでいたのは、あなたじゃない。 必要のなくなった自分だと告げることも出来ずに、僕はあの人を逝かせてしまった。 後は、静かに滅んでいくだけだ。 望んだ未来と違ったとしても、もう引き返すことはできなかった。 そのつもりも無かった。 自分から居場所を捨てた僕に、何かを手にする資格はないのだから。 ・・・・・・ようやく、これで終わることが出来る。 でも、暴れまわる先生は、この島の皆はこれからどうなってしまうんだろう。 それだけが・・・僕の・・最後の・・・・・・ 『コード:A-TU』 失ったものは二度と帰ってこない。 理解はしてたさ。どうしようもない、仕方のないことだってのもわかってる。 世界を秤にかけるべき時に大事な人を選んでも、きっと彼女たちは喜ばなかっただろうから・・・。 でも、愛した人が隣にいない。 時がたつごとに、顔も、声も、思い出も、暖かさも頭から消えていく。 その寂しさは・・・・とても言葉じゃ言い表せなかった。 あれから幾歳月を経ようとも、失った心の傷はいえない。 こうして最後のときを迎えようとしている今も、頭をよぎるのはあのころの思い出だけだ。 帰ってこれる日常があった、あの頃の・・・・。 例え、どんな禁忌でもいい。輪廻の鎖から外れてもかまわない。 一目だけでいい。 生きている間に、もう一度だけでいいから会いたい。 ステラ、グリューネさん。 あなた達を守れなかった俺に、あなた達の傍へ逝く資格があるんでしょうか? 『コード:ZYENOBA』 俺、英雄になれたのかな? エリアスのことも、セフィロスのことも全部あいつに投げっぱなしだし。 お袋たちとも結局会わなかった。 シスネの本名も聞き忘れたまんまだ。 ・・・・・結局、全部中途半端か。 アンジール、ジェネシス・・・悪いな。 俺はまだ、そっちへはいけそうにない。 呼んでる奴がいるんだ、力が欲しいって。想いを途切れさせたくないって。 そいつなら、もしかしたら俺の心残りを満たしてくれるかもしれない。 だから、賭けてみたいんだ。 俺が、俺の信じた英雄でいるために・・・。 シン編第六話 『 セ イ オ ウ ノ ツ ル ギ 前編』 いつからそうしていたのだろうか。 気がつけば、何もかもが白い部屋で、シンはただ一人地面に座って『それ』を見ていた。 ふわふわと自分の周りを浮かぶ、小さなモニターに写る『夢』を・・・。 見知った人々が命を削りあう、幾つものモニターに写る『悪夢』を・・・。 いつから見ているのかもわからない。いつまで見ているのかもわからない。 シンはそこに座り、延々とそれを見続けていた。 それは現実であり、真実である夢。 それは世界の断片であり、世界の本来の姿。 シン「・・・・・なんだよ」 それはシンが機動六課にたどり着かなかった『歴史』であり、本当の意味でのなのはたちの『現実』。 それはスカリエッティが欲望のまま生き、管理局の腐敗は闇へと消えた、血と涙と戦いの『未来』。 シン「・・・・・何なんだよ!」 機動六課と地上本部は陥落し、ナンバーズとティアナ達が殺し合い、ギンガさんが操られ、ルーテシアとキャロたちが争い、 フェイトが傷つけられ、はやてが苦しみ、なのはがヴィヴィオを撃ち倒す『世界』。 そしてそれは、ドゥーエとゼスト、レジアス中将が命を落した『運命』。 シン「何なんだよ、これはぁっ!!!」 悔しさに拳を固めるシンを尻目に、画面内の彼女たちは一人また一人と傷つき倒れていく。 日常を一緒に過ごした人々が・・・この手で守ると誓った人々が、自分の手の届かないところで互いに殺し合っている。 なのに、そこには最初からシン・アスカは存在しない。 笑いあった日々も、泣いた日々も、励ましあった日々も、始めから存在していない。 幾ら声を荒げようと、画面に写る彼女達の苦しみは一向に止む気配がない。 叫び声も、嘆く声も何一つ変わらず流れ続けている。 その無言の答えを前に、シンの感情を溜め込むダムはあっけなく決壊した。 シン「くそ、もう・・・もうやめろおおおおっ!」 平常心を失ったシンは、固めたこぶしを映像を写す画面に向ける。 それが平行世界の現実なのか、それとも単なる作り物かなどどうでもいい。 ただ許せなかった、そんな現実があるという可能性が。 嘘でも真でも、彼女達が苦しむ世界など認めるわけにいかなかった。 何とかして映像を止めさせようとモニターに挑みかかるシンだったが、拳はモニターをあっさりすり抜けてしまう。 もんどりうって倒れかけた彼に宙に浮く画面たちはもう一度向きなおった。 まるで無力を見せ付けるように。 シン「何が! こんな『壊れた世界』を俺に見せて、一体何がしたいんだ! 俺じゃあ歴史は変えられないって、リインフォース一人すら守れないって ・・・そういいたいのかよ、ちくしょおおぉ!!」 拷問にも等しい悪夢を押し付けられながらも、力なき自分をかみ締めることしか出来ないシン。 ところが、誰に向けたわけでもない彼の叫びに答える声があった。 ?「『壊れた世界』?・・・違うね。そっちが『正常』なんだよ、シン・アスカ。彼女達の歩むのは『そっちの歴史』のはずだったんだから」 シン「・・・な!?」 聞いたことのない誰かの声が白い空間に響いたかと思うと、一瞬のうちに世界がひっくり返った。モニターは消え、白かった部屋が真っ暗に塗りつぶされていく。 シンの体も宙を舞い、気がつけば今まで天井だった場所に真っ逆さまに落下していた。 考える前に体が動く。 とっさに体を丸め、着地の瞬間に前転をすることで衝撃を前に分散させた。 何回か地面を転がったあと、ようやく衝撃を打ち消し終えたシンは痛む体を無理やり起こす。 シン「痛・・・まさかあんな訓練が役に立つなんて、帰ったらシグナム隊長にちゃんと御礼しとかないと。 それにしても・・・・どうなったんだ?」 恐る恐るまぶたを開いたシンの目に映ったのは、光源となるべきものが何一つない、周りの視界全てが闇に包まれた空間だった。 天井も壁も何一つ確認できない。 声も反響しないし、霧のせいで視界もきかない。 真っ白で光に満ち溢れていたさっきまでの部屋とは何もかもが逆さまだ。 シン(落とされた。いや、飛ばされたのか・・・・・!?) 何が起こったのかわからないまま呆然としていたシンは、背中に誰かの気配を感じて振り返った。 いや、正確に言えば気配ではない。 シンにはまだ武道の達人のような人の気配を感じる力はない。 もっと別の・・・口では言い表せない何かが、本人も気付かないうちにシンをその方向に導いたのだ。 ?「そして、君が消えた後起こる『必然』でもある」 そこから、あの部屋から飛ばされた時と同じ声が聞こえてきた。 やはりこの声の主がシンをここへ招きいれたのだろうか? シンは目を凝らして声がした方向を必死に探ろうとする。 しかし、誰かがいるのはわかるのだが、光すら遮る暗い霧のせいで人間であるかどうかでさえ掴めない。 シン「俺にあの映像を見せたのはあんたか。誰なんだ、あんたは!?」 ?「俺かい? 俺は君だよ、シン」 声の主が答えると同時に、彼の周りにある黒い霧が晴れていき、その姿がくっきりと浮かび上がってきた。 目に古そうな包帯を巻き、どこかの高校の制服を着ている自分と同年代くらいの男。 一見どこにでもいそうな普通の青少年のように見えるが、包帯の奥に隠された狂気とその身にまとう威圧感は まさに『死』そのものだ。 シン「あんたは・・・・『遠野 志貴』。・・・ってなんで!」 シンは自分の口にした答えに愕然とした。 これまで、ザフトや管理局で多くの人間と出会ったが、『遠野 志貴』という人物など聞いたことがない。 なのに、シンの脳裏に勝手にその名が浮かんできたのだ。 何の脈絡もなくである。 志貴「なんで『見たことも会ったこともない俺の名前がわかるのか?』かい?」 シン「・・・・・・・!!!」 志貴「そう驚かないでくれ。別にとって食おうって訳じゃないんだからさ」 シン(どうなってるんだ? そうだ、俺は『闇の書の闇』と戦ってたはずじゃ・・・ これは・・・・夢・・・なのか?) 志貴「ああ、それとあの映像は俺じゃないよ。もっと別の奴からの助言代わりの贈り物さ」 見たことも聞いたこともない人間が自分の名前を呼び、そいつの名前が勝手に頭の中に浮かんできたことにシンは少なからず動転する。 しかし、疑問は湧くものの不思議と恐怖は感じなかった。 むしろ、長い間離れていた家族と久々に再会したときのような安心感さえ感じていた。 ザックス「そうそう、あんまり真面目にやりすぎると肩がこるぜ? イスラみたいによ」 イスラ「僕に言わせれば、君はもう少し頭を使ったほうがいいと思うけどね、ザックス」 シン「・・・ザックス。・・・イスラ」 セネル「おいおい、俺も忘れないでくれよ」 シン「・・・セネル」 志貴と同じように声のした方向の霧が晴れ、シンを囲むように三人の男が姿を現した。 一人は大柄で自分の身長ほどもある大剣を背負った黒髪で青い瞳の男。 一人は小柄で女の子のような顔をした黒い髪と眼の赤い魔剣を手にした少年。 一人は奇抜なカッコウをし、白い髪とエメラルドのような目をした顔にダイヤ型の傷を二つもつ少年。 シン(どうなってるんだ。悪い夢でもみてるのか、俺は) 冷静さなんて、当の昔に吹き飛んでいる。 これだけ考えがまとまらないのは、CEから飛ばされてきた時以来だ。 シン(何がどうなってるんだ、くそ! ・・・・・ん?) ここにきてようやくシンはあることに気が付いた。 彼らの体が例外なく薄く透けているのだ。 シン(体が透け・・・幽霊!? 死にかけた人間の夢に死人が出てきたってことは・・・まさか、俺をあの世に迎えにきたのか!) ならば、彼らはシンの魂を狩るために、わざわざ三途の川を越えて死神気取りで迎えに来たということになる。 くだらない映像を見せたのも、シンに話しかけたのも、シンを目覚めさせたくないからと考えれば納得がいく。 そうやって、シンの肉体が『闇の書の闇』に消されるのを待っているのだろう。 迎えに来たのがマユでもステラでもなく、見知らぬ男達だったのは甚だ遺憾だが この際それはどうでもいい。 シン「く、まだ誰も守れてないのに連れて行かれてたまるか!!」 リインフォースを救えないまま『闇の書の闇』と決着を付けることも出来ずに死んでいく。 その方がシンにとってはよほど重要だ。 自分が夢に現を抜かしている間、意識の外ではデス子が一人で闇の書と対峙しているはずだ。 こんなことをしている場合ではない。早く目覚めなければ、これまでのみんなの頑張りも全て水の泡になってしまう。 シン(それにはまず、目の前のこいつらを俺の夢から叩き出す!) シンは半分錯乱したまま、一番近くにいた志貴という男にCQCを仕掛けようと挑みかかっていった。 間合いは3メートル。少々遠いがやってやれない距離ではない。 志貴「まったく・・・まいったね。どうも」 腕をつかみ、間接を固め、技が決まったと思った瞬間、志貴の姿が僅かにぶれた。 シン「・・・・・あっ?」 気がつけば、反転する視界の中でシンの体は宙を舞っていた。 何をどうやったのか、胸、腹部、腕、足にそれぞれ一発ずつ、合計して四発の打撃つきだ。 シン「・・・ぐうっ!(・・・・なんだこいつ、速い!?)」 吹き飛ばされはしたが、なんとかシンは空中で体勢を立て直し軟着陸する。 当て身にしては威力が軽い。十中八九、けん制だ。 追撃が来るとシンは身構えるが、志貴は「まいった」とでも言いたげに頭の後ろを掻いているだけだった。 シンの身体的なポテンシャルはひ弱そうな外見とは異なりかなり高い。 アカデミーでもナイフ戦でトップを取り、教官であったナイフのレッドとも戦って勝利している。 ティアナにナイフ戦の基礎を教えたのもシンだ。 それなのに、殴る動作どころか殴られた瞬間でさえ、視界に捉えきれなかった。 シン(もしかすると・・・フェイト隊長と並ぶくらい・・・・!?) 機動六課であれほど動体視力を鍛えたというのに。 志貴という男の速さはコーディネイターと比べても人間離れしすぎている。 残りの三人にも目をやるが、誰も彼も纏っている闘気というかオーラが桁違いにでかい。 最終決戦で戦ったアスランなど、こいつ等の前では霞んで見える。 (まぶしいな意味ではなく) 機動六課に在籍していることでシンはこれまで多くの強者を見てきたが、この四人の威圧感は彼らに勝るとも劣らない。 志貴 「何を勘違いしてるのかは知らないけどさ、いきなり殴りかかるのはひどいんじゃないか? 」 セネル「もしかして、幽霊だからって何か勘違いしてるんじゃ」 イスラ「君を連れて行くつもりならとっくにそうしてるよ。 少し落ち着いて僕たちの話を・・・・」 シン「そんな悠長なこと言ってられないんだよ! 早く目覚めないとはやてが、リインフォースが・・・! これが夢じゃないって言うんなら早く俺をここから解放してくれ! 俺は一刻も早く奴を倒して帰らなくちゃならないんだ!」 間に合わないかもしれないという焦りが、シンを駆り立てている。 ――――――いや訂正しよう。 彼を駆り立てているのは焦りだけではない、恐怖だ。 また守れないかもしれないという恐怖が、シンの焦りを何倍にも増幅させているのだ。 イスラ「そしてまた無様に負けるつもり? 第一、あれほどの敵を前に、君に勝ち目なんて万に一つもないんだよ。 違うかい?」 セネル「CEで学ばなかったのか。どれほど頑張っても一人で出来ることは限られてる。 今行ったって殺されるだけだ」 時間がないと焦るシンに、イスラとセネルの言葉が突き刺さる。 シン「う・・・それは・・・。でも!」 正論を前に言い返せないシン。 彼らの言っていることは何一つ間違っていない。 そのことは実際に奴と戦った彼が一番よくわかっている。 膨大な魔力を背景にした火力と攻撃範囲、四重結界と自己再生能力に裏打ちされた鉄壁の防御力。 そんな化け物相手に、ようやく魔法を使えるようになったばかりのシンが レリック無しで勝つのは現実的に考えて不可能だ。 シン「それでも、俺は・・・。俺にしかあいつらを助けられないなら・・・・」 しかし、リインフォースを救うためには『闇の書の闇』に勝つしかない。 勝つためには、戦わなければならない。 例え思いが届かなくても、力が足らなくても、守りたいなら向かっていくしかない。 シン「・・・・外で待ってる皆と約束したんだ。今度こそ守るって。死んだ皆と誓ったんだ、もう約束は破らないって」 リインフォースは言っていた。短い間だったが、はやてや自分達と一緒にいられて幸せだった。だからもう何の後悔もないと。 だが、そんなもの命が助からないと決め付けた自分への言い訳だ。 『どんな命でも、生きられるのなら生きたいだろう』 救えなかった親友のためにも、もう二度と許すわけにはいかない。 生きたいと願っている人の命を理不尽に奪って行く奴等も。 そいつ等に負けて、大切な人を失う自分も。 シン「だったら、引くわけにはいかないだろっ!! どうしても退かないって言うなら力ずくでも・・・・!」 セネル「混乱するのも無理はないと思う。だけど、まずは話を聞いてくれないか」 直情的になったシンに、あくまで話し合おうとするセネル。 シン「・・・・でも、時間が!」 イスラ「焦らなくても大丈夫だよ。外の時間はそれほど進んじゃいないから。 ここでの時間の進み具合は外の時間の0.0023%に過ぎないからね」 そんなシンの焦る気持ちを汲み取ったかのようにイスラが話しかけてきた。 今度は先ほどのように辛らつな口調ではなく、言い方も穏やかだ。 シン「何でそんなことをあんたが? ・・・そもそも、あんた達はいったい何なんだ!?」 外の世界とのズレを正確に知っていること、既に死んだ人間であること。 自らをシンと同じといい放ち、それに納得してしまいそうになる可笑しな感覚。 そして、機動六課の面々と比べても全く見劣りしない圧倒的なまでの強さ。 どれをとっても現実離れしている。 それとも、まともじゃないのは自分のほうで、この世界も目の前の彼らも、死ぬ間際に自分が見ている 妙にリアルな夢に過ぎないのだろうか? 前ページ次ページなのはクロスの作品集
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前ページ次ページなのはクロスの作品集 はやて編3話『争いは混沌の果てに・・・後編』 注:これはあくまでヒロイン争奪サバイバルゲームです。まじめに見ると馬鹿を見るので 肩の力を抜いて、シンが頑張ってんのにお前等何やってんの! と言う気持ちで見てください 元第一地上前線本部 なのはとティアナ達の死闘が始まってから既に三十分。 そこは生命の息吹など微塵も感じられない荒野となっていた。 テントや資材は跡形もなく吹き飛び、ついさっきまで平坦だった大地は人が通ることすら困難なほどにクレーターだらけになっている。 ぺんぺん草どころか微生物すら蒸発している大地に、ボロボロになった三人の少女が横たわっていた。 スバル「・・・つ、よい」 ティア「・・・・こんなの、悪魔なんて表現じゃ・・・生ぬるいでしょ」 ギンガ「三人がかりでも・・まるで歯が立たないなんて・・・」 ところどころ擦り切れたバリアジャケットと、彼女達の憔悴しきった姿が痛々しい。 体につけてある風船もティアナ達が合計しても五つなのに対して、なのはは未だ三つのままだ。 なのは「私言ったよね? 勝てるなんて幻想だって・・・。 Aランク魔導師が三人集まったくらいでどうにかなると思ってたの? あはははっ!! 私の言ったことそんなに間違ってるかなぁ?」 精神のたががはずれヤンデレ化した『ナノハサン』は、通常の三倍の壊れっぷりでティアナ達を圧倒していた。 まさに『白い悪魔』だ。気のせいか目も赤く光っている気がするし、台詞回しといい強さといいまんまラスボスである。 ティア「・・・スバル、あんただけでも逃げなさい。ここは私とギンガさんがなんとしても持たせるから・・・」 始まってから幾度砲撃を受けただろうか。 どれだけ撃っても尽きることのないなのはの圧倒的な魔力量は、確実に彼女らの戦う意思を奪い取っていた。 ギンガ「ええ、現状ではそれが最善の手だわ」 ギンガさんもそれに同意する。 なのはの無傷の風船三つに対し、自分達はすでに二つ。 残りの体力も考えると、落とされることあっても全員無事に逃げ切れる可能性は低い。 それならば指揮官として最善の方法を取るべきだとティアナは判断を下す。 ティア「新式のシフトDも通用しなかったし、くやしいけど、このまま全滅するくらいなら・・・」 自分とギンガが囮となりスバルを逃がす。それならば最低一人は生き残れる。 ティア「あたしが合図したら本部に真っ直ぐ向かうの。いいわね、スバル」 スバル「そんなのいやだよ!」 ティア「いいから行きなさい! このまま意味もなく全滅したら、あたしの指揮能力が疑われちゃうでしょ!」 スバル「・・・でも、ティア、ギン姉・・・」 ギンガ「そんな顔しないの。これはゲームなんだから死ぬことはないわ」 そのとき、今まで一言も発さなかった彼女達のデバイスが戦いが初めて話しかけてきた。 (判りにくいので和訳) ブリッツキャリバー『まってください、マスター』 マッハキャリバー 『私達はまだ戦えます。それなのに諦めるつもりですか?』 クロスミラージュ 『何もできずに負けてしまっては、あれから何も成長していない ことになります。あなたはそれでも良いのですか?』 彼らだけは気付いていたのだ。 今の自分達の状態で敵に背を向ければ全滅は免れないことを。 そして、まさに冥王と化した『ナノハサン』を倒せる唯一の方法に! ティア「無理言わないで。あんた達だって見てたでしょ。いくら攻撃したって、あの鉄壁の防御力の前じゃ無意味よ。 ギンガさんの全力の一撃が片手で受け止められたのよ」 マッハキャリバー『触ることすらできなくても、風船をやれば彼女は脱落します。その方法ならあるはずですよ』 ギンガ「触らなくても・・・そうか! 『振動破砕』!」 ギンガの答えに三体は満足そうに点滅した。 いくらナノハサンでも一応人間だ(たぶん)。 バリアブレイクと一撃必殺の威力をもつ「振動破砕」を二つ同時に打ち込めば、 いくらナノハサンでもひとたまりもない・・かもしれない。 ティア「・・・やってみる価値はあるわね。でも、あの人は機動性も伊達じゃないわ。 一瞬でウイングロードの届かない上空まで逃げられたらやりようがないわよ」 ギンガ「動きを止めて、なおかつ必殺の一撃を食らわせられる技といえば。 ・・・・スバル、アレを使うわよ!」 スバル「アレって・・・まさかアニメで見たアレのこと!?」 ティア「ちょっと、何の話? ぜんぜん読めないんだけど!」 ギンガ「たった一つだけ方法があるの。だからお願い。二人とも力を貸して!」 なのは「おかしいな。皆もっと手ごわかったはずなのに・・・。どうしちゃったのかな。 ああ、今日は魔力リミッター解除してたんだっけ。じゃあ、最後のお話も終わったみたいだし、そろそろ再開しようか」 自分の勝利を信じているのか、なのはは余裕の表情だ。 だが、古来より言われているように余裕は慢心を生み、慢心は隙を生む。 そして、相手が命を懸けて向かってくる戦場では一瞬の隙が命取りになるのだ・・・・ってどこかで誰かが言っていた。 ティア「(全員の余力をかんがみても、これが本当に最後の一撃。必ず決めないと・・・) はあぁぁぁぁっ!!! ファントム・・・ブレイザァアアアアーーーーッ!!!」 なのは「そんなものが今更・・・」 ティアナの全力の必殺技はなのはのディバインバスターの前にあっけなくかき消される。 ティア「引っ掛かった! 今よ、スバル、ギンガさん!」 初めから暴走ナノハサンにこの程度の技(ティアナにとっては必殺技なのだが)が通用するなんて思っていない。 これは作り上げた煙幕によって隙を作り・・・。 スバル「取った! ダブル・・・・」 ギンガ「行けぇ! リボルバー・・・・」 ――――――両側から姉妹同時攻撃を決めるための布石! なのは「その程度の手が見抜けないとでも思ったの? アクセルシューター、打ち落として!」 なのははありえないほどのスピードでアクセルシューターを周囲に展開した。 その数は優に三十を超えている。 そして、それらは一目散にギンガとスバルに向かっていった。 ギンガ「! きゃああああ!」 爆煙に包まれギンガが落ちていく。 ギンガの二つ目の風船が割れたことで彼女の残りの風船は一つ。 あの体制からなら、こちらへの追撃は不可能だろう。 もうすぐスバルもおちる。二十発近くのアクセルシューターを全て避けきれるほど、彼女は回避がうまくない。 なのは「いい手だったね。煙幕にまぎれての左右同時攻撃。でも、これで終わり・・・」 だが、スバルのほうに打ち込んだはずのアクセルシューターはすり抜けていった。 これでお終いと油断していたなのはは、このタイミングでの幻影の使い方に意表を疲れる。 なのは「えっ! スバルは幻影?」 ギンガ「・・・・後は任せたわよ、スバル」 ティア(おそらく、普通に隙を作ろうとしても通用しないわ。だから、最後に懇親の力で攻撃すると見せかける。 頼むわよ、スバル) 自分を倒せるとしたらISの超振動による合体攻撃しかないはずだ。 何故このタイミングでティアナ達の方からそれをはずしたのか、なのはは冷静に分析する。 答えはごくシンプルだ。 彼女達には『それ以上の切り札がある』! スバル「ありがとう、ティア、ギン姐。おかげで・・・完成したよ。この必殺技が!」 ギンガ「ええ、上出来よスバル」 なのはは落ちていくギンガの方を見てみて驚いた。 彼女は最初から左手のリボルバーナックルを装備していなかったのだ。 全てはスバルに力を集中させるためのフェイク。 なのはを落とすために三人が編み出した最後の奇襲。 なのは「リボルバーナックルが両手に!じゃあ、ギンガさえ囮!」 ギンガ「これが勝利の鍵よ!」 スバル「はあああああああ!」 突如、ウイングロードを覆い隠していた煙の中から、魔力を帯びた巨大な風の渦が生まれ なのはを渦の中に閉じ込めた。 スバルは最初からギンガの後ろにぴったりと付いて隠れていたのだ。 アクセルシューターをくらい、大げさに下に落ちる振りをしてみたのも展開しっぱなしのウイングロードから目を逸らすためだ。 なのは(この風圧じゃうまく動きが取れない! 突破できないことはないけど、 一瞬でも隙を見せれば・・・!) スバルの両腕に装着されたリボルバーナックルが超回転することによって、加熱した空気が渦を巻き、敵の動きを渦の中に閉じ込める。 スバル「なのはさん、覚悟!」 なのはの力量なら周りを取り囲む渦を抜けることも不可能ではない。 だが、この渦に巻き込まれ、僅かでも体制が崩れればスバルの強烈な一撃は防ぎきれなくなる。 超振動を一撃でも貰えば、自分と違って柔らかく何の防御能力も持たない風船は簡単に割れてしまう。 だったら・・・。 なのは「打たれる前に撃て! レイジングハート! エクセリオンモード ドライブ」 ――――――『IGNITION』 なのは「アクセルチャージャー起動、ストライクフレーム」 ――――――『OPEN』 なのは「エクセリオンバスター ACS ドライブ!」 ウイングロードが真っ直ぐになのはの元へと伸びていく。 スバル「いくよ、マッハキャリバー!」 ――――――『はい、相棒』 スバルは一瞬だけ、自分の『相棒』に微笑みかけるとスバル「フルドライブ」 ――――――『IGNITION』 スバル「ギア・エクセリオン!!!」 ――――――『A.C.S. STANBY.』 スバル「いきます、なのはさん!」 なのは「遊んであげる。おいで、鉄女」 レイジングハートとダブルリボルバーナックルが組んだ拳と槍と化した巨砲が激しくぶつかり合い 凄まじい光と轟音があたりに響く。 なのは「強くなったね、スバル。でも、これで終わりだよ。・・・ブレイク!」 ティア「まさか、なのはさんはあの体制からでも討てるの!スバル、逃げて!」 ほぼゼロ距離からの砲撃にスバルはかわす術を持たない! スバル「くっ・・・!」 なのは「シュート!」 掛け声にあわせて発射された『高速突撃砲エクセリオンバスターA.C.S』はほとんど真正面からスバルに直撃した。 ティア「スバルーーーッ!!!」 ティアナの絶叫が荒野(になった草原)に響く。 なのは「ほぼゼロ距離で、全力全壊のエクセリオンバスターの直撃。 よっぽどのことがない限りはこれで落ちるはず。そう、リインフォースでもない限りは・・・」 リインフォースの名を思い出して、なのはの心が僅かに疼く。 目の前で苦しんでいた彼女に何もできなかった事実はいまでも彼女たちの胸に暗い影を落としている。 後悔や無念・・・些細なきっかけで蘇った苦い記憶は、瞬く間になのはの心を蝕んでいく。 分にも満たない気の迷いだったが、刹那の判断が生死を分ける戦場において、その時間はあまりに長すぎた。 スバル「まだまだぁ!!!! 」 直撃を貰いながらもスバルは止まらない。 振動拳を前に向かって展開することで、偶然にも魔力素の大半を弾いていたらしい。 なのは「・・・しまった!」 とっさにレイジングハートの柄で攻撃を受け止めるが、スバルの「振動拳」は防御そのものを受け付けない。 レイジングハートはなのはの両手ごと上方に弾かれてしまう。 スバルはそれを見て、技を完成させるため両腕を胸の前で組みなのはに向けてかかげた。 スバル「一撃・・・・必倒!」 魔力を片手で練り上げ、前方にそれぞれ一つずつ魔力スフィアを形成し、 それを維持した状態で両手を組むことで、二つの魔力スフィアは一つとなる。 そして両手を組んだまま、相手に向かって数倍に威力が膨れ上がったディバインバスターを打ち出す。 辛く厳しい訓練の中で編み出したスバルの最終必殺技が、ついになのはに向け放たれた。 スバル「ツイン・・・ディバイン・・・バスター!」 ティア「これ、まんまヘルアンド○ブンじゃ・・・」 ギンガ「勝つのは勇気あるものよ」 ティア(このサイボーグ姉妹相手にわたし一人じゃ突込みが足りないわ・・・orz) フェイト「そうだね♪ 何とかしないとね♡」 ギンガ「い、いつの間に隣に!」 ティア「って人の心を読まないでください!」 ツインディバインバスターの輝きが消える。 そこには、ほぼゼロ距離で魔法を打ち返され動きを止めたなのはと追いすがるスバルの姿があった。 なのは「ぐ、このくらいなら・・・」 なのは自身にはダメージはほとんどないようだ。直前でシールドを何十にも張ったのはさすがというべきだろう。 だが、衝撃で三つの風船の内一つはバラバラになっていた。 なのはの体制が崩れた千載一遇のチャンス。ティアナ達が追撃しないはずがない。 スバル「ギン姉! 受け取って!!」 この隙に、ギンガはウイングロードで一気に飛び上がりスバルから左手のリボルバーナックルを 受け取ると落下しかけたなのはに強襲を掛けた。 ギンガ「今よ! 合わせなさい、スバル!!」 スバル「ナノハサン、覚悟! 疾風! 三・連・撃!! 」 (注:回転しているのは腕のデバイスだけです) ギンガ「 旋風! 回・転・脚!! 」 (注:足は回転していません) ナノハサンが体勢を立て直せない隙に、姉妹の息のあったコンビネーションがこれでもかというくらい気持ちよく決まっていく。 卑怯かもしれないが、戦いは非情なのだ。 実際問題、ナノハサンの戦闘力のほうが卑怯です、ホント。 スバ・ギン「とどめ、疾風!! 双 連 撃!!!」 なのは「きゃああああああっ」 止めの一撃も見事に決まりナノハサンはそのまま干上がっていなかった湖まで吹き飛ばされ,水柱と共に水底に消えていった。 バリアジャケットがあるため死にはすまい。 だが、かなり効いたはずだ。 戦略的に考えるなら、前線隊長の戦闘力を奪うだけでも十分こちらの勝ちと言えるだろう。 スバル「はぁはぁ、・・・・やった?」 ギンガ「・・・・たぶん、ね。二人ともお疲れ様」 スバル「やったよ、ティア~! 私達とうとう勝ったんだよ♪ あのナノハサンに!」 ティア「こら引っ付くな! ・・・そうね、あんたにしてはいい動きだったわ (ホント、今度ばかりはよくやったわよ)」 ギンガ「でも、最後のアレはもう駄目かと思ったわね」 スバル「えへへー」 ティア「さ、時間もないし早く後方の部隊と合流しましょ。」 ――――――勝手に終わらせないでくれるかな ・・・何が起こったの? わからない。 何か聞こえたかと思うと、気が付けばみんな地面に突っ伏していた。 そうだ、声の方向に振り向いたら、いきなりピンク色の魔力光が目の前に迫ってきて・・・。 なのは「あ~あ、風船が残り一個になっちゃった」 ティア「あ・・あああ・・」 信じられなかった。信じたくなかった。 あれだけ頑張ったのに。アレだけ努力したのに。この人はいつもそこに平然と立っている。 ――――――ホントに人間なの? なのは「誤算だったなぁ。三人がこんなに強くなってるなんて・・・。でも、残念。あと一歩がんばりが足りなかったね」 体ももう動かない、逃げる術もない、救援も来ない。 ギンガ「・・・・万事休す・・・ね」 チャージを済ませたレイジングハートが自分達に向けられ、三人は今度こそ覚悟を決めた。 パアンッ! ティア「・・・ひっ! 」 しかし、幾ら待とうと何も起こらない。 テ・ス・ギ「・・・・・・・・・?」 不思議に思って恐る恐る目を開けてみる。 普段なら開けた瞬間、撃ってくるなどといった鬼畜的所業はとてもしないだろうが、 今はなのはさんではなくナノハサンだ。わかるものか・・・。 スバルティア「え!?」 ギンガ「・・・・・なんで」 目を開けたティアナたちは驚愕した。 なのは「・・・なんで、私の風船が・・・?」 割れた風船はティアナたちのものではなくナノハの風船だった。 しかし、何故? どうして? 周りに味方がいないのは魔力反応を見ても明らかだったはず。 おまけにここら一体は荒野と化したため、潜む場所など存在しない。 ならば、誰にも気付かれないまま誰がどうやってなのはの風船を割ったと言うのか? いや、それを成せる人間が機動六課に一人だけいた。 ??『どうやら、射撃の腕前は落ちてねぇようだな。毎日覗きで鍛えてただけはあるぜ』 テ・ス・ギ「「「 ヴァイス陸曹!!! 」」」 ヴァイス「やばそうだったんで手を加えさせてもらった。どうだ、当たったか?」 通信機から入ってきた音声に目を丸くするティアナたち。 なのは「ホント・・・誤算・・・」 注意深く探れば見つかったかもしれない。 二次の方向に微かに見える魔力反応を。 戦闘開始から今まで一度も動くことなくなのはを見つめ続けてきた男の存在を。 穏健派射撃部隊筆頭ヴァイス・グランセニック。 男達は言う、彼のスコープに捉えられない女性はいない・・・と。 なのは「三キロ先からの超精密射撃。うかつ・・・だったね。一番厄介な伏兵を忘れてたなんて」 なのはは最後にそう言い残して『敗者隔離ゾーン』に転送されていった。 ティアナ「・・・今度こそ終わったのね」 スバル「ティア、あたしたちもっともっと強くなろう! そして今度こそ・・・」 ギンガ「私達だけの力でなのはさんに勝ちましょう、絶対に!」 こうして、彼女達の因縁の対決は第三者の横槍が入ったことであっけなく終了してしまった。 次は負けないという彼女達の強い決意を残して・・・。 前線戦闘指揮官補佐 高町 なのは ・・・・・戦線離脱 ヴァイス(ふ、決まった。これで俺の株も急上昇! シンがいない間に高感度を挙げておく策は大成功だぜ!) ギンガ「・・・・ところで『覗き』ってなんのことですか?」 スバル「詳しい話が聞きたいんですけど・・・」 ティアナ「ちょっと、ご同行願いましょうか」 ヴァイス(高感度アッ・・・・・あれ?) 戦いは最終局面へ。 NGシーン ナノハサンはそのまま湖まで吹き飛ばされ水柱と共に水底に消えていった。 乙樽「ふ、貴様等には水底が似合いだ」 ティアナ「・・・・・あんた誰?」 乙樽「私はランク1位、オッツダ・・・・」 ナノハサン「駄目じゃない、あなたが出てきちゃ・・・」 乙樽「ば、馬鹿な!!」 ナノハサン「作者はACFAやってないんだよ? MAD素材だけで補完しようなんておこがましいよね。 私の言ってること間違ってるかな?」 乙樽「こんなものが私の最後か・・・」 ナノハサン「ちょっと・・・頭冷やそうか・・・」 乙樽「認めん、認められるか、こんな(ry」 ウィン・D「人類など(機動六課には)どこにもいないさ、水没王子」 フェイト「そうだね。どこにもいないね」 ティアナ「だから、どこから出てくるのこの人たち!」 前ページ次ページなのはクロスの作品集
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前ページ次ページなのはクロスの作品集 十年前 海鳴市 はやての家 リインフォースの部屋前(シンが消えてから79時間35分後) 俺は少し緊張しながら、リインフォースの部屋をノックした。 他のメンバーはだいたいどんな人間かわかってるけど、彼女とはほとんど初対面だからな。 シン 「俺だ、リインフォース。少し話があるんだが・・・」 リインⅠ「かまわん、入っていいぞ」 ドアを開けると、リインフォースは電気もつけずに窓を開け外を眺めていた。 シン 「なにやってんだ?風邪は・・・引くわけないか」 リインⅠ「ん、すこしな。月を眺めていた。」 今夜は満月だ。この部屋からならよく見えるだろう。 俺は無言でリインフォースの隣に並んだ。今日は不思議と虫の音がよく響く。 シン 「はやてが心配してたぞ。あんたがいきなり消えるんじゃないかって」 リインⅠ「そうか。本当はお前とあった日に消えるつもりだったのだがな。見ての通り、死に損なってしまった」 リインフォースは悲しげに微笑んでいる。 その表情があのときのはやてと重なって、俺は思わず目をそらした。 シン 「はやてから話は聴いたよ。何もそんなに急がなくてもいいんじゃないか。この前だって、皆助かったんだし」 リインⅠ「次に防衛プログラムが再生したとき、おそらく主はやての体は持たないだろう。この前のような奇跡はそう何度も起こらない。」 シン 「……防衛プログラム再生までの時間は?」 リインⅠ「遅くても三ヶ月、早ければ三日後に再生する」 俺は絶句した。まさかそこまで早いなんて・・・。 リインⅠ「シン、私は明日消えるつもりだ。」 シン 「リインフォース!」 リインⅠ「これまで私は幾人もの人々の人生をゆがめてきた。これはその罰なのだろうな」 シン 「・・・・思い出を作る時間ぐらい・・・・・あってもいいはずだ」 リインⅠ「思い出があれば・・・・別れがよけいに辛くなる」 俺はリインフォースの言葉を否定できなかった。失った者なら誰でもわかることだ。 大切な人が思い出になったとき、どれほど辛いか。 楽しかったはずの思い出にどれほど苦しめられるか。 だけど、だからって思い出にも残らないなんてさびしすぎるだろ。 リインⅠ「主はやては強い。今は悲しくても、きっといつか乗り越えていくだろう。今夜こうして満月が見えたのも、お前のおかげだ。ありがと う」 俺はポケットの中にあるマユの携帯を握り締める。 わかってるのか!その人の死を乗り越えるってことは、その人を忘れていくってことなんだぞ! 声も、顔も、人格も、どこに行ったかも、何をしたのかも、その笑顔すらも・・・。 そんなことは俺がさせない!お前を、リインフォースを、はやての思い出になんてさせてたまるか! シン 「・・・リインフォース、明日一日待ってくれないか?」 リインⅠ「・・・なぜだ?」 シン 「明日、闇の書の修正プログラムが見つかるから」 顔を見なくてもリインフォースが驚いていることはわかったが、俺は無視して言葉を続けた。 シン 「明日ユーノが、闇の書の修正プログラムを無限書庫で見つけるんだ。俺はそれを知っている」 リインⅠ「・・・なん・・・・だと。シン・アスカ、お前は一体?」 シン 「今は・・・・何もいえない。でも、これだけは信じてくれ!『あんた達は俺が守る!』」 呆然としているリインフォースを残して、俺は部屋を出た。 やることは山ほどある。まずは、クロノに連絡して、午前中に無限書庫に行かないといけない。 あとは午後からユーノを誘って、もう一度無限書庫に行けばいい。普段からあそこに言っているユーノなら、特に違和感もないはずだ。 そこであいつに修正プログラムを見つけさせれば、俺の役目も終わる。 シン「マユ、ステラ、ハイネ、レイ、俺はリインフォースを助けたい。力を貸してくれ」 これは修復プログラムの完成が早いか、それとも暴走プログラムの再生が早いかのでかい賭けだ。 もはや一国の猶予もない。俺はリビングの受話器に手をかけた。 十年前 海鳴市 はやての家 お風呂へ続く廊下(シンが消えてから79時間28分後) ようやく、全て終わった。なのはに連絡先を聞けたおかげで、案外楽にクロノとユーノに約束を取り付ける事が出来た。 これも、デス子の嘘のおかげか。あまり感謝したくないけど・・・。 さあ、あとは明日がんばるとして、はやての言ってた通り今日はゆっくり休まないとな。 シン「おっと、早く風呂に入らないと・・・冬場は電気代が高いからな」 俺がおもむろに風呂の戸を開けると シグナム「・・・・・・・」 シン 「・・・・・・・」 実に認めたくないことだが、シグナムが先に風呂に入っていた。 いや、なんか水の音がするとは思ってたんだよ。 考え事してて、気にしなかっただけで・・・。 シグナム「・・・・・シン・アスカ。なにか言い残したいことはあるか?」 シン 「・・・油断した 俺の女難は 消えてない」 シグナム「・・・辞世の句は読み終わったようだな、行くぞ!」 シン 「ちょ、紫電一閃は風呂が壊れ・・・ぎゃああああっ!!!」 吹き飛ばされながら考えていたんだが、女ばかりの家に毎日いるってことは もしかして、終始こんなことが起こるんじゃ・・・(ドグシャ) 俺の意識が持ちこたえたのはここまでだった。 翌日、無限書庫に行ったユーノ・スクライアは闇の書の修正プログラムを発見 以降、時空管理局はリンディ提督の下、このプログラムの完成に全力を尽くすことになる。 修正プログラム完成まで あと28日 シンの日記 ○月?日 俺は十年前の海鳴市に来た記念に、日記を書き始めることにした。 早速だが今朝俺が寝ていたら、いきなりヴィータが捨て身タックルをかましてきた。 完全に無防備な状況でこれはきつい! なんでも朝飯は皆で食べるのが八神家のルールだそうだ。 あとでリインフォースに聞くと彼女は普通に起こされたらしい。 なんか、納得がいかない。 デス子の日記 同月 同日 私もマスターと一緒に日記を書き始めました。 早速ですがここでもマスターは、シャマルさんとヴィータちゃんにパルマをしていました。 シグナムさんは着替えを覗かれ、はやてちゃんに至ってはついでに一緒にお風呂に入ったそうです。 もちろん、はやてちゃん以外の皆さんからはフルボッコでした。 まだ二日目だというのに、こんなに飛ばして体はもつんでしょうか? シンの日記 ○月××日 今日は休日だったので、皆でデパートに行くことになった。 俺とリインフォースの服を買うのが主な目的のようだ。 まさかあと一ヶ月でいなくなるとは言えず、俺はしぶしぶついていった。 ちなみにザフィーラとデス子はお留守番、ヴィータはゲートボール、シグナムは道場だ。しかし、女の買い物ってとにかく長い。 はやてとシャマルはおもいっきり自分達の世界に入っていたため、俺とリインフォースは完全に置いてけぼりだった。 言っておくが、金はちゃんと俺が出したぞ。 デス子の日記 同月 同日 今日は一日中はやてちゃんの家で大人しくお留守番をしてました。 でも、お土産を楽しみにしていたのに、マスターは買って来てくれませんでした。 なので仕返しに、シグナムさんの下着をマスターの部屋に隠しておきました。 ばれたときが楽しみです♪ 追伸 マスターは疲れているといいながらヴィータちゃんのお風呂に遭遇し、シグナムさんにパルマを仕掛けていました。 どうやら、マスターのらき☆すけ回路は疲れ知らずのようです。 シンの日記 ○月△?日 夕飯のとき皆で恋愛ドラマを見ていると、ヴィータが唐突にチャンネルを替えたいと言い出した。 なんでも、ドラマの主人公が気に入らないらしい。 ヴィータ「だれがこんな女々しい主人公に惚れるんだよ。こいつも男ならバシッと言ってやれば良いじゃねえか」 シグナム「ふむ、たかがドラマとはいえ一理あるな。醤油をとってくれ」 リインⅠ「私もそこが気になっていた。醤油だ、受け取れ」 はやて「う~ん、私はこんな彼氏でもいいと思うんやけどな。そうや、シン兄はどう思う?」 シン 「え、そうだなぁ。この主人公の事だけど、自分の気持ちに気付いてないだけだと思うんだ。本当に好きなら、どんなことをしてでも相手 と一緒にいたいって思うだろうからな」 ザフィーラ「なるほど。では、このヒロインはどうするべきだと思う?」 シン 「相手が気付いてないんだ。気付くまでアタックし続けるしかないさ。」 はやて「そんなことしたら逆に嫌われるんやないか?」 シン 「その時は所詮その程度の関係だったってことだろ?まあ、俺も彼女が出来たことがないから、偉そうな事は言えないんだけど・・・」 今日の夕食は、恋愛話でもちきりだった。しかし、女の子って皆こういう話が好きなんだな。 マユやステラのことを思い出して、俺は少し胸が痛んだ。 デス子の日記 同月 同日 マスターは自分で自分の死亡フラグを立てたことに気付いてないようですね。 まさか、十年後はやて部隊長がああなったのは…。 深く考えるのは怖いのでやめます。 今日は、ヴィータちゃんのお着替えを覗いた後、はやてちゃんとシャマルさんにパルマして、私のお風呂に乱入してきました。 …懲りない人です。 シンの日記 ○月△▼日 最近は財布の中身まで冬に近付いてきた。原因は他でもないデス子の食事代だ。 デス子の食事代はスカリエッティから支給された金で支払っていたのだが、もはや限界に近い。 八神家は大人数にもかかわらず収入が少ないので、はやて達には頼れない。 意を決した俺は、リンディ提督に臨時艦長補佐として雇ってもらうことになった。 リンディ「ちょうどよかったわ。エイミィもクロノも最近働き詰めだから、少し休ませようと思ってたの」 仕事は機動六課でやっていた雑務と変わらなかったのですぐになれることが出来た。 これからも時々手伝いに来てほしいとのことだ。ただ、リンディ提督が出してくれた『砂糖の塊みたいな緑茶』だけは勘弁してほしかった。 (なぜかこのときシャマルの顔が浮かんだ) デス子の日記 同月 同日 今日はマスターの恐ろしさを改めて実感しました。 なんと、時空管理局の重鎮ギル・グレアム顧問官の双子の使い魔にツインパルマをかましたのです。 ロッテ「ほう、いい度胸じゃないか」 アリア「どうやら地獄を見たいようですね」 マスターは二人に引きずられていったあと、訓練施設で仮面の男にボコボコにされたそうです。 顧問官の使い魔に手を出すなんて、マスターは命が惜しくないんでしょうか? 追伸 不思議なことに、臨時艦長補佐は奇跡的に続けられることになりました。 前ページ次ページなのはクロスの作品集
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前ページ次ページなのはクロスの作品集 シン「はぁ、今日も忙しかったな。体がガタガタだよ」 機動六課に配属になってもうすぐ一年。最近はスカリエッティも事件を起こさなくなり(むしろナンバーズをつれて遊びに来るし) 六課の面々は本気で来るのか来ないのか分からなくなった『カリムの予言』を信じて日々、訓練に明け暮れている。(最近休日が多くなった気がするけど) シン「後はこの報告書をはやて部隊長に届けるだけか」 最近は俺もティアやスバルたちと共に訓練に加わっている。 理由は俺の斜め後ろをふわふわとついて来る・・・。 デス子「今日も激しかったですねマスター。私壊れちゃうかと思いましたよ?」 シン「誤解を招くことを大声で言うな!」 このはた迷惑なミニ美少女?にある。なんでも俺の相棒だったディスティニーがロストギアを取り込んだ結果こうなったらしいが俺は断じて認めたくない、いや絶対に認めない! 問題は調査の結果、このデス子(愛称)はユニゾンデバイスらしく俺と融合すると、魔力がまったく無い俺でもほどほどに魔法が使えるらしいということだ。 シン「しかし、はやて部隊長がじきじきに訓練してくれるなんてな。でも、なんで途中からいなくなったんだ?」 デス子「貧血だそうです。鼻血を出しすぎたんでしょう」 訓練中にどこかにぶつけたのか?隊長格でも油断すれば怪我をするんだ。俺も早く実戦の勘を取り戻さなくては・・・。 シン「はやて部隊長、入りますよ」 はやて「・・・。」 返事は無い。この時間帯ははやて部隊長しかいないはずだが・・・。 思い切って部屋に入るとはやて部隊長は何かをじっと眺めていた。 あれは・・・・デバイス? シン「はやて・・部隊長?」 デス子「気づいてないみたいですね」 少しためらいながらも、俺ははやて部隊長に近付いた。 心なしか目が潤んでいるように見える。 出直したほうがいいのか?と考えているとはやて部隊長も俺に気付いたらしい。 はやて「な、シ、シン!?お、女の子の部屋に来るのにノックもなしじゃ嫌われるで!」 と、真っ赤な顔を膨らました。 シン「自動ドアでノックも何も無いでしょう。それに一応声はかけましたよ」 デス子「ところで何を眺めていたんですか?その・・・悲しそうでしたけど・・・」 はやて「ああ、前にいったことがあるやろ、リインフォースのことを。 これは彼女が残してくれた形見・・・みたいなものやねん」 そこまで聞かされて俺はようやく気が付いた。この世界にはじめてきたとき絶望し、死ぬことばかりを考えていたとき、はやて部隊長が聞かせてくれた話。 闇の書事件ではやて部隊長が多くのものを得た代わりに失った、大切な人。沈黙が重苦しい雰囲気となって場を支配する。 シン「見せて・・・もらえませんか?」 特に意味があったわけじゃない。ただ、触れてみたかった。 今はもう傍にいなくても、思いは残っていると信じたくて・・・。 はやて「・・・うん、ええよ」 はやて部隊長は少し微笑んで俺にそれを渡してくれた。 さっきまで握られていたからだろうか?受け取ったそれはほのかに暖かい。 ???「おま・・にも、いずれ・・・る。」 シン「!!!えっ」 驚いて周りを見回す。この部屋に隠れられる場所は無い。 そしてこの部屋にいるのは俺とデス子とはやて部隊長だけ。 なら、今の声は・・・・・? はやて「どうかしたんか、シン」 デス子「マスター?」 この感覚は、確か前にも・・・。 ???「海・・り深く愛し、・・・の幸福を守りた・・・思える・・・と」 手に持ったデバイスが輝き始める。 それと呼応するように俺の意識もすこしずつ薄れていく。 デス子「いけない!強い思いに引きずられてる!マスターそれを離して!」 はやて「シン!しっかりしい、シン!」 なに言ってんだデス子。こんな悲しいそうな声をほっておけるわけ無いだろう。 はやて、顔が青いぞ。まだ貧血が治ってないんじゃないか? ???「出会えればな」 謎の声が完全に聞き取れたと思った瞬間、 デバイスの輝きが部屋の全てを包み込んだ。 シン「寒い。何で九月に雪が降ってるんだ?」 目が覚めると俺は報告書を脇に抱えたまま雪の上に寝そべっていた。 どうやらまたどこかに飛ばされたらしい。 シン「もう慣れたけどな。さて、とりあえず情報を集めるとするか」 見たところデス子はいないようだ。持ち物は・・・特になし。 場所は・・・。 シン「なんだ海鳴市じゃないか。ってことは地球に飛ばされたのか」 それなら安心だ。この公園も前になのは隊長やヴィヴィオと一緒に来たことがある。しばらく歩き回ってみた。間違いない、前にも来たことがある。 現にあそこにも・・・・。 シン「・・・・・・ちょっと待て。あそこにあんな遊具は無かったぞ。」 いやな予感がした。 すぐに公園のゴミ箱を漁りまくる。 シン「冗談じゃない。そんな・・・そんなことがあってたまるか!」 ありえない!時空管理局すら次元は移動できても時は移動できなかったんだ。 だが、もしも、もしもそうだとしたら・・・。 指先にガサリと紙をつかむ様な音がした。あった!昨日の新聞だ! うそだと思いたかった。 信じたくなかった。 しかし、現実は俺に逃げることを許さない。 シン「そんな・・これは・・・どういうことなんだ・・・。」 そこに書かれていたのは何度見返しても約十年前の日付だった。 時間を移動できない六課には、彼を救う手段はない。 シンの帰還は絶望的だった。 ミットチルダ機動六課会議室(シンが消えてから3時間後) シンが公園のど真ん中で絶望感に浸っている頃、ミットチルダでは機動六課のメンバー全員に非常招集がかけられていた。 事情を聞いたメンバーはみな愕然とした。 ことりという少女と出会った時もドルファンという国に意識だけが飛ばされたときも、シンの肉体はこちらの世界にあった。 しかし、今回は状況がまるで違う。 肉体ごと丸々他の世界へ飛ばされたのだ。 みんな口にこそ出さないが、 スバル「もう、戻ってこないのかな」 訂正、天然が一名口に出したが、大体スバルと同じことを考えていた。 ティア「スバル!不吉なこと言わないでよ。」 スバル「でも、シンは元々この世界の人間じゃないんだよ! 彼の帰る場所は・・・ここじゃなくても・・・・いいんだよ。」 ここにいる誰もが考え、そして否定しようとした一言だった。 キャロ「たとえ離れ離れになるとしても、最後に一言いいたかったです。」 エリオ「そうだね。こんなの突然すぎるよ」 ドアが開いて、シャマルとなのはが入ってきた。 あまりいい知らせでないことは、言葉にしなくても伝わってきた。 フェイト「どうでした?なにかわかったことは?」 シャマルは黙って首を横に振った。 なのは「シンの消えた現場には、魔力反応は一切なし。 探し出そうにもまるで手がかりがないの」 シャマル「魔力を媒介にして向こうの様子を探ろうとしたんだけど、反応すらしなかったわ。」 クロノ「遅れてすまない」 続いてクロノも会議室に入ってきた。 フェイト「何かわかった? お兄ちゃん!」 クロノ「そ、その呼び方はよせ。それより大変なことがわかったぞ。ここ数日、ミットチルダ一体では次元転移は全く観測されていない」 ヴィータ「そんなはずねーだろ!次元転移をおこなえば・・・。」 シグナム「多かれ少なかれ、必ず次元に揺らぎが生じる。 クロノ提督、念を押すようだが観測にミスはなかったのか?」 クロノ「残念だが・・・ない。シンは次元転移とは別の方法で消えたことになる」 ザフィーラ「その方法とは・・・?」 クロノ「さすがにそこまではわからないが・・・。」 ヴィヴィオ「・・・役立たず」 クロノ「ぐっ!」 なのは「余計わかんなくなっちゃったよ」 ティア「シン、本当に・・・どこに行っちゃったのよ」 デス子「・・・過去です」 今まで黙っていたデス子がいきなりとんでもないことを言い出した。 デス子「マスターは今、過去の海鳴市にいます。」 クロノ「いや、いくらなんでもそれは・・・」 全員「「「「 黙ってて! 」」」」 クロノ「・・・はい」 デス子「マスターには元々、時空を越える能力があります。 それがあのデバイスにこもった思いに反応して・・・。」 シグナム「暴走したというわけか。いや、あのデバイスだからだろう」 シャマル「それなら納得がいくわ。次元の揺らぎが起こらなかったのも、何故急にこんなことが起こったのかも」 エリオ「あの、話が読めないんですけど、その話に出てきたデバイスって?」 ザフィーラ「・・・話しておいたほうがいいだろうな」 ヴォルケンリッター達は話し始めた。自分たちの過去を、はやての苦悩を、そして、消えていったかけがえの無い彼女のことを。 ティア「そんなことが・・・(もう、軽々しく狸なんていえないじゃない)」 スバル「そういえば、八神部隊長はどうしたんですか?姿が見えませんけど」 なのは「部屋に篭って出てこないの。リインもついてるから心配ないはずだよ」 この判断は誤りだったと後に機動六課全員が思い知ることになるのだが、現時点でそれを知っているのは本人と縛られたリインのみであった。 リイン「むぐー(はやてちゃん正気に戻ってください)」 はやて「逃がさへんで、シン。ふふふ、こんなこともあろうかとレリックを一つ隠しといてよかったわ。今行くでダーリン♡」 十年前 海鳴市公園内 シン「考えてみりゃ十年たったら会えるんだよな。」 さきほどはありえない状況にかなり動揺したが、冷静に考えてみれば何のことは無い。 用は十年間生き残ればいいのだ。そうすればまたみんなに会える。どの道一度ならずに三度捨てた命だ。たかが十年待てないほどじゃない ???「あの」 問題は金だ。身分証明書もなしに就職できるだろうか? ???「あの、すいません。」 身分を問わないところ・・・フランスの外人部隊にでも行ってみるか。しかし、フランスに行く金がない とにかく今夜の寝床を・・・ ???「あの! すいません!」 シン「何だよいきなり!俺は今急がし・・・。」 目の前に信じられないものが立っている。確かに予想はしていた。 面影もあるし、声も聞き覚えがある。 だが、彼女が彼女である証の『冥王のオーラ』がそこにはない。 たのむ! 間違いであってくれ! シン「・・・・ヴィヴィオ、なのは隊長のコスプレか? 似合ってるぞ」 なのは「ヴィヴィオ?だれのこと?私は高町なのはだよ。 な、何で泣いてるの?どこか怪我でもしたの?フェ、フェイトちゃーん」 シン「・・・・時の流れって・・残酷だ」 ミットチルダ機動六課会議室(シンが消えてから4時間後) シャマル「ちょっと待って下さい!デス子ちゃん!あなた確かシン君が過去いるって言ったわね」 デス子「そうですよ。正真正銘、過去の海鳴市です」 シャマル「そんな・・・」 シャマルの顔が目に見えて青ざめていく。 シグナム「どうかしたのかシャマル?顔色が悪いようだが・・・」 どうみても様子がおかしい。彼女の料理を作ってシンが倒れた時も、薬の分量を間違えてシンが死に掛けたときも、これほど狼狽はしなかった。 ヴィータ「おい、シャマルなんだってんだよ。シンが過去にいるとなんかまずいことでもあんのか?」 シャマル「まずいなんてものじゃないわよ、ヴィータちゃん」 声が震えている。長く同じ時を過ごしてきたヴォルケンズもこんなシャマルを見たことが無かった。 シャマル「もしも、もしも過去の世界でシン君が、なのはちゃん達や私達ヴォルケンリッターに遭遇してしまったら・・・。」 「最低でもシン君は人々の記憶から消滅、最悪ミットチルダ自体も連鎖崩壊します」 前ページ次ページなのはクロスの作品集
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#navi(なのはクロスの作品集) シン編第七話 後編 『 勝利を掴む掌の槍(パルマ・フィオキーナ) 』 この空間の中心にある無重力空域へ向けて、空中に展開したフローターフィールドを蹴り上げながら、 シンはひたすら上を目指していた。 触手による物理攻撃の間合いからははずれたものの、巨大な雪崩を想像させるまでに数を増した魔法弾が 相変わらず足元から発射され続けている。 その総数、一分につきおよそ三千。 距離が離れているためにかなり拡散しているが、500本近い触手の発する光跡が空に輝きを絶やすことはない。 無誘導弾なのが僅かな救いだ。 絶え間ない攻撃は僅かに残った体力を、避けるための動作ははやてを救うための時間を 流れ弾によるフローターフィールドの破壊は回復しかけた魔力を、容赦なく削っていく。 それでも、翼を失ったシンにはこれしかない。 地上からの進撃は無限に再生する触手に阻まれて突破不可能、半端な高度では『闇の書の闇』が使う広域攻撃魔法に撃ち落される。 デス子が見つけた、あの巨体のほぼ唯一の弱点。 攻撃が届かない、死角となる直上からの攻撃に最後の望みを託すしかないのだ。 シン(まずいな、弾のかすりが増えてきてる) 気のせいか先程よりも攻撃の精度が上がっている気がする。 もしかすると、新たな姿に進化してから具体的な動きを見せていなかった『闇の書の闇』が本格的に目覚め始めたのかも知れない。 反対に発射間隔が伸びてきているのは“狙う”という行動を触手が学習したからだろう。 飛んできたきわどい攻撃を身をよじってかわしながら、シンはちらりと時計を見た。 残り時間は十五分を切った。 もう、いつ闇の書を閉じるための儀式が開始されてもおかしくない。 焦るシンをあざ笑うかのように、また一つ展開したばかりの足場が破砕された。 デス子「何とか耐えてください。計算ではあとちょっとのはずなんです!」 シン 「わかってるさ。あいつらを助ける前に・・・落されてたまるかぁ!」 シンが咆哮と同時に新たなるフローターフィールドを作り出した瞬間、僅か・・・ほんの僅かだが体が軽くなるのをデス子のセンサーが感じ取る。 デス子「捉えましたマスター。重力帯を抜けるまであと数十メートルです。そこまでいければ!」 シン「本当かデス――――うわっ!?」 あと数秒も掛からず無重力空間に到達できるというところで、スターライトブレイカーがシンの視界を遮った。嫌な予感が当たったのだ。 何とかかわしたものの、踏みしめようとしたフローターフィールドが水あめのようにあっけなく溶けていき、行き場を失った足が空を切る。 シン(やばい、このタイミングで・・・) すがるべき仮初の大地を失ったシンの体は、あっという間に重力の渦に飲み込まれた。 シンが体勢を崩すということは、そのまま下から見あげる者達にとっての絶好の機会が訪れたということだ。 緩んだ重力を利用してAMBACを使い、逆さに落ちていた体を反転させると、次なるフローターフィールドを自分が落下している軸線上に展開し直すシン。 その間に、罠に掛かった獲物目掛けて、地表に生える触手と『闇の書の闇』からゆうに千に迫る数の『ブラッディダガー』が一斉に発射された。 バリアジャケットがろくに働いていない今、どれだけ数が多かろうが一発たりとも直撃をくらうわけにはいかない。 しかし、回避の方向を示唆しようとしたデス子はその弾幕の動きに得体の知れない違和感を覚えた。 デス子「これは・・・。マスター、フローターフィールドを破壊してください!」 シン「なにを・・・」 デス子「はやく!」 シンは戸惑いながらも着地するはずだったフローターフィールドを通常の三分の一くらいの魔力で生成した(ミニ)ビームブーメランⅡで破壊する。 当然、シンの体は足を止めることなく落下していくが、それが結果的にシンの命を救うことになった。 フローターフィールドがあった場所をコンマ数秒の差で、『ブラッディダガー』が削り取っていったのである。 射線上にあるもの全てを飲み込む、すさまじい数の暴力は肝を冷やすには十分すぎる。 あのまま着地していれば、恐らく命はなかっただろう。 形成し直した足場を蹴って再度上昇を始めながら、デス子はシンに先ほど感じた違和感の正体を話し始めた。 デス子「奴らは私達の着地する場所を狙ってきていたんです。 フローターフィールドが・・・光り輝く魔方陣が、標的を定めるための標準器みたいに働いて」 シン「そういうことかよ。けど、だからって、俺たちはフローターフィールドを使わないわけはいかないんだぞ」 これまで弾幕を回避しながらこの高度まで上がってこれたのは、作り上げた足場を驚異的な脚力で蹴り続けることで、 ランダムな軌道をとりつつある程度の自由な回避が可能だったからである。 しかし、この戦術には自らの全体重を一蹴りにたくす為にどうしても踏み込む瞬間に動きが止まってしまうという欠点があった。 ただでさえ、彼らのフローターフィールドは真紅に輝いているために目立つのだ。 それを展開した場所が次の止まり木だとばれてしまっては、どれほど素早く動こうが意味を成さないことになる。 ダミーを織り交ぜようにも、戦闘に使う分の魔力を除けば余裕はほとんどない。 まさに、ジレンマだった。 足場がなければ『闇の書の闇』には辿り着けず、足場を頼れば『闇の書の闇』に落される だとすれば・・・。 デス子「待ってください。どうするつもりなんですか」 シン「あいつが予測して弾を撃つより早く次の足場に跳ぶ」 デス子「そんな・・・そんなことができるんですか!?」 シン「やらなくちゃ救えないんだよ!」 無茶苦茶な理屈だが、今の彼にはそれ以外に打てる手がないのだ。 闇の書の闇の砲火の精度は、進化前とは比べ物にならない。 このまま触手との連携を覚えられたら、落されるのは時間の問題だ。 シン(ちくしょう。俺がもっと早く、恭也さんや美由紀さんみたいに動くことさえできれば!) 口で言うほど簡単ではないことはシンにもわかっている。 一流の剣士の力量は才能と血筋でほぼ決まる。努力はあくまで三番手だ。 平凡な家庭に生まれたコーディネイターであり、剣士ではなく軍人として体を鍛えてきたシンが幾ら努力しようと 高町家の人々のように動けるはずがないのだ。 シン(うまくできるなんて最初から思ってない。けど、体捌きを真似するくらいなら俺にだって!) 軸足の位置、飛行能力無しでの三次元戦闘のやり方・・・etc 道場で、わざわざ時間をさいて恭也に奥義を喰らってきたのは使うためではない。 全ては記憶するため。 才能を持つ一流の剣士でも、一つ習得するのに数年はかかると言われている御神流の奥義を頭に留め、自らの戦い方に生かすためだ。 記憶の底を総ざらいし、教え込まれた『技』の全てを反芻する。 どれだけ未熟でも、底の浅い猿真似でもかまわない。 シン(次の足場だけじゃ足りない。全ての足場を把握して二手、三手先まで攻め手を構築しろ! がむしゃらじゃない、考えて体を動かすんだ。) 力任せの加速が意識の変革とともに変化し、限界ぎりぎりのはずだった速度がじわじわとのびていくのが分かる。 無理やりの跳躍が理にかなった躍動となり、一つ一つの足場を過ぎる時間がだんだんと短くなっていく。 ―――――だけど、まだ遅い。それでもまだ届かない。速く・・・もっとはやくだ・・・! シン(意識を引き伸ばせ、研ぎ澄ませ、外へ向けろ!) 弾幕の迫る間隔が長くなる。体が空気の壁に押し返される。 既にその速度はスバルやエリオをはるかに凌ぎ、フェイトやシグナム等のSランククラスに到達している。 だが、まだいけるはずだ。あの人たちはこんなもんじゃなかった。 助けを求める人のためなら、自分の限界なんて幾らでも超えて見せる。 彼女達はみんなそうだった。憧れたのはそんな強さだった。 そして、そうなれることを夢見て戦ってきた。 今はまだ足元にも及ばないかもしれない、それでも。 シン「すがり付いてみせる! 絶対にぃ!」 放たれる弾幕より速く、奴の認識より早く、自分の限界より疾く! シン「うわぁぁぁあああぁぁああぁあああぁっ!!!!」 シンはどんどん加速していく。 この世界で暖かさを教えてくれた人達のために、今も帰りを待ってくれている仲間のために、 悲しい未来を変えるために、受け継いだ想いのために、俺を救ってくれた助けたい人に・・・・。 なにより、歪んでしまった運命を悲しみだけ残して終わらせないために。 ―――――そしてある一点を越えた瞬間、視点が変わった。 始めは何が起こったのかわからなかった。 空に浮かぶ百数十の弾幕は動きを緩め、自分の周りの空気がまるで固まりかけのゼリーのように、動きを妨害する。 その未知の感覚が何であるのか、まだ剣士として未熟なシンにはわかるはずもない。 シン(なんだよ・・・これ・・・) 未完成ながらそれができてしまったのは、エクストリームブラストモードによって強化された肉体のスペックが 御神の剣士の筋力配分と適合したため・・・・言ってみれば単なる偶然だ。 いや、これまでの経緯を考慮すればそれも十分“奇跡”と呼べる代物だろう。 その奇跡の名は・・・。 ――――――――――小太刀二刀御神流奥義之歩法 『神速』―――――――――― これは何なのかと、シンはたっぷり五秒は思案する。 あくまで体感速度で五秒である。『外』の時間では、まばたきすら終わっていない。 デス子も闇の書の闇も入ってこれない自分だけが有する時間の流れ。 それがもたらしたのは、勝利への確信だった。 シン(・・・行ける、これなら!!) 即座にフローターフィールドを目の前に展開すると、 足を踏ん張り、強化された筋力を総動員して体を引っ張り挙げた。 ボロボロの体が軋み、足の筋肉がはち切れそうになる。 それでも、シンは止まることなく一足飛びに空へと飛び上がり続ける。 懐かしい宇宙(そら)の感覚が待っている場所へ。 ここにきて、ようやくシンの中でこれまでに培ったものが実を結び始めていた。 だが、シンの力が爆発的に進化したのは偶然の力だけではない。 心、体、技。過去の世界に辿り着いたとき、シンはまだその全てが中途半端だった。 機動六課によって癒された心。しかし、まだ癒えきってはいなかった心。 訓練によって鍛えられた体。しかし、魔力もなく人の域も脱していない体。 戦争によって得た戦いの技術。しかし、あくまでも殺すことに特化した技術。 悲しいまでに不完全で繋がりのない穴だらけの力。 その穴が、海鳴市での様々な経験によって徐々に塞がれていった。 高町家での一ヶ月あまりの修練で体と技術を鍛え上げ、リンディ提督から アルバイト代わりに受けていた職務の手伝いでそれらを反復練習した。 機動六課でやっていた訓練メニューも欠かしていない。 なにより、八神家での穏やかな暮らしやマユとの会合と別れ、 異次元同位体との擬似融合による想いの引継ぎはシンの心の隙間を埋めるのには十分だった。 あいまいな今を過去で保管したことで、彼はこれまでちぐはぐだった自分の中の力を 繋ぎ合わせることに成功したのである。 比べ物にならないほどに体が軽い。 自分が消えてしまうような不安定な気持ちが懐かしい。 デス子「やりましたよマスター。ここまでくれば・・・」 空間の中心―――――無重力地帯に着いたのだ。 ここでなら何者であろうと翼を得ることができる。 ここからだ。 シンは残量魔力の三割をユーノから貰った“お守り”に注ぎ込む。 紅きフローターフィールドが、眼下にそびえ立つ『闇の書の闇』を取り囲むようにいっせいに展開し、 シンは一筋の閃光となってその間を迅雷のごとく駆け抜けた。 目指すは『闇の書の闇』を構成している中核となるコア。 最初の狙いは遠距離魔法をかき消し異物の進入を拒む『六層物理魔法複合バリア』。 慣性の法則を完全に無視した規格外の空制動で跳び回るシン。 元来、ユニゾン後の彼が持つ飛行能力自体は一般的な魔導師の平均値と変わらない。 失っていなかったとしても、そのままならすぐに撃ち落されていただろう。 だが、フローターフィールドを使うことで状況は変わった。 今の彼には、大地を蹴るために魔力で強化された筋力があり、エクストリームブラストモードで得た身体能力があり、 擬似的に習得できた御神流奥義之歩法『神速』(しんそく)がある。 その軌道はもはや何者であろうと束縛できず、捕捉する術などありはしない。 相手にできるのは、ただ当たることだけを祈って惰性で撃ち続けるのみ。 それは恐怖という呪縛から解き放たれ、全てを賭けて挑もうとした闇の書の闇も例外ではなかった。 タイムラグ無しで連射しているにも関わらず、連続して光跡を描くSLBが面白いようにかわされる。 直径にして六メートルはあるかと思われる巨大な魔砲が、多くの猛者を破ってきたはずの魔砲が通用しない。 ダミーのフローターフィールドを織り交ぜ、ランダムに変化する軌道に、あの闇の書の闇が全く追いつくことができないのだ。 触手たちの砲撃にいたっては論外である。 種割れしたシンすら捕らえられなかったのに、今のシンを認識できるはずがない。 彼らの弾幕が辿り着く先は、シンが数秒前に通り過ぎた場所だった。 シン 「デス子、カートリッジは!?」 デス子「残り三個、内蔵済みも含めて合計24発あります」 シン 「あのバリアを叩き割って胸元に飛び込む。データの解析はできてるな」 デス子「私だって遊んでたわけじゃありません! 左腕が使えないので、右手のアロンダイトだけでやりあうことになります。気をつけてくださいね」 シン 「ああ、サポートは任せるぞデス子!」 ユニゾンしているデス子からデータが転送され、シンの眼球に弾幕の軌道を分析して得たパターンと数値が直接投影される。 そこには、弾幕の密度から敵の攻撃予測、はては『闇の書の闇』への到達可能軌道までが表示されていた。 元にしている情報源が常時進化し続ける『闇の書の闇』のため信頼性には掛けるが、無駄な動きが死に繋がるこの状況では何にもましてありがたい。 シン「このデータが確かならあと数秒で・・・・きたっ!」 予想通り、魔力も再生能力もほぼ無限にあるとは言っても、それを射出する機構まが 無限であるとは限らない。自身の火力で焼ききれたそれを再生させるために闇の書の弾幕に僅かな切れ目が出来た。 その隙を突き、シンは彼の愛刀であり、その実全く違う剣を正眼に構えた。 『アロンダイト・キルスレス』 紅の暴君の力を取り込み大きく形を変えているが、その姿はなお荘厳だ。 シン「カートリッジ・・・ロード!」 三本の薬莢が刀身からはじき出され、加熱した柄から蒸気が吹き出る。 異常なほど圧縮された魔力が、シンの身長ほどもある長刀に集中していく。 通常のストレージデバイスの限界値を考慮すれば耐えられるはずのない魔力量にも関わらず、 壊れるどころか赤い輝きは増すばかりだ。 シン(さっそく力を借りるな、ザックス) ミッドガルの手前で命を落とし、ライフストリームへと還った英雄ザックス・フェア。 シンが使おうとしているのは彼の知る中でもっとも破壊力を持った技。 すなわち、『裏・超究武神覇斬』である。 シン「はぁぁぁああああああっ!!!」 『闇の書の闇』へと突撃するシン。 数百メートルの距離が一瞬でゼロになり、ゼロだった速度が一瞬で音速を超える。 弾幕の波を掻い潜り、一秒と掛からず闇の書の闇の上空に回ったシンは、新たな姿と力を得たアロンダイトを すれ違いざまに複合六層式バリアへ振り下ろした。 シン「でぇぇぇええい!!」 白銀色に輝く魔力刃が、弧を描きながら闇の書の闇目掛け飛翔する。 一太刀。 生半可な魔法を何発放とうが傷一つ付かなかった絶対の障壁が、産声代りに放たれた、 たった一太刀の魔力刃の前に二層一度に砕け散った。 一度の咆哮で、強靭を誇ったバリアを布でも引き裂くように真っ二つに引き裂いたのだ。 理不尽なほどの破壊力である。 だが、それで終わりではない。 バリアを切り裂いたシンは、そのまま眼下の敵をやり過ごし再び無重力空間へと昇っていく。 そして、運動エネルギーのほぼ全てが位置エネルギーに変換され、速度がゼロにさしかかろうとした時、シンは身を翻して闇の書の闇へ向け降下した。 さながら、湖面を泳ぐ魚を捕らえる鳥のように。 カートリッジがロードされ、さらに輝きを増した魔力刃が三層目のバリアを突き破る。 シン「これで・・・三枚目ぇっ!!」 『闇の書の闇』が苦し紛れに放つ弾幕が空を切る。 上昇中のシンを撃墜しようにも、魔法弾の初速をシンの移動スピードが上回っているため到達できず、 降下中のシンを狙おうにも移動が変則的過ぎて予測がつかない。 隙の大きいカートリッジのロードはフローターフィールドを飛び交う間に済まされ 再攻撃の布陣は『闇の書の闇』の手が届かないうちに整っていく。 デスティニーで構築されかかっていたヒットアンドアウェー戦法は、ここにきてついに完成を遂げた。 そうこうしているうちに、六層あったバリアは残り一層まで削られていた。 シン「この一撃でっ!」 六層目のバリアを破壊するためにシンは直上から突撃する。 闇の書の闇の周囲にある触手が迎撃のために魔力弾を発射しようとするが、シンは既に攻撃態勢に入っている。 今から的を狙っているようでは到底間に合わない。 シン「でぇぃやあああああっ!」 デス子「やりました、マスター。最後のバリアの破壊を確認。これで奴は丸裸です!」 シンは、アロンダイト・キルスレスの強大な突きで最後に残ったバリアを破壊して着地の体制に入る。 もちろん、ただ下りるつもりはない。 こちらを睨みつける薄気味悪い目玉を、駄賃代わりにたたき潰す気だ。 シン「(セネル、技を借りるぞ)魔神拳・竜牙!」 シンは、本来なら両手に集めるはずの気を右足に集中させ、落下点に存在するもろもろ目掛けて躊躇無く撃ち放った。 闇の書の闇の胴体を貫く強大な衝撃波に巨体が揺れ、耳を劈く悲鳴が上がる。 それと同時に反作用で落下速度が緩くなったシンの体を、他の目玉から発射した幾つかのレーザーが貫いた。 シン「・・・っかは!」 デス子「えっ!」 闇の書の闇の体に散りばめられた目玉はお飾りではなく、火力の少ない背面を守る迎撃機構だったのだ。 バランスを崩し、クレーターのように凹んだ闇の書の闇の背に落下するシン。 唯でさえ減っていた血液が致死量に近い量まで流れ出し、幾つかの臓器が潰された。 痛みはないが、酸欠による症状と体から抜けていく温もりが、シンに自分の命がもう持たないと知らせていた。 デス子「(こんなに血が・・・私の予測が甘かったから・・・)ごめんなさい。私が気付いてさえいれば・・・」 シン「だい、じょうぶ、だ。動けるなら、まだ負けちゃいない! 俺の愛機なら、俺より先に諦めるなデスティニー!」 デス子「(シン・・・)いけない、立ってくださいマスター! 再生に巻き込まれてしまいます!」 デス子の言うとおり、破壊した部分の肉がシンを飲み込まんばかりに盛り上がってきている。 シンの落下した穴はもう半分ほどにまで縮まっていた。 恐るべき再生速度だ。これでは、六層複合バリアが再起動するのも時間の問題だ。 デス子「急所は外れてます! はやく !」 シン 「何言ってんだよ。ようやく、静かになったんだ。これで・・・切り札が使える!」 シンは、肉の海に飲みこまれるかもしれないピンチを召喚の好機と睨んだ。 めくれ上がった傷口が、他の目玉からの攻撃を阻む壁の役割を果たしていることに気が付いたのだ。 怪我を押して、シンはゆっくりと起き上がった。 シン「(イスラ、頼む) 振り、そそげ・・・。 闇傑の剣よ!」 右手の剣を真っ直ぐに天に掲げて、声を荒げながら叫ぶと。 シン「こいつを斬り裂け! 召喚 ダークブリンガー!」 アロンダイト・キルスレスが紅く輝き、虚空から十五本の闇の刀剣が現われた。 召喚された様々な形をしたそれらは、刃を下に向けたかと思うと闇の書の闇に一斉に襲い掛かり、幾つかの翼を切り飛ばし、 たくさん目玉を吹き飛ばし、多くの足を引き裂いた。 サモナイト石の代わりに右手の魔剣が触媒となり、シンの次元跳躍能力が無理やりゲートを開かせる。 『霊』と『無』属性の召喚獣しか出せず、一回の戦闘で呼べる召喚獣の数も限定されているが、 暴走召喚はそれを補ってあまりある威力を発揮する。 シン「もう一度だ! パラ・ダリオ 悠遠の獄縛を!」 剣が紅く輝くと、今度は霊界より大悪魔の骸が降臨した。 ミイラに複数の仮面が付いたような醜い風貌だが、すさまじい力を持っている。 その目が光るとシンに迫っていた肉の壁が石化し、闇の書の闇の周囲にあった触手が一斉に弾けとんだ。 通常召喚の三倍近くの破壊力は伊達ではない。 一気に決着を付けようとシンは更なる大物を呼び出す。 シン「聖なる七天使よ。我は、古き盟約により、その力の体現を望む。 霊界の洞から古き盟約と術によりて呼び出したるその名は――――」 シンのすぐ後ろの空間に穴が開き、中から現れたのは・・・闇の書の闇と変わらぬ大きさを誇る、 白銀の鎧を身に付けた空を覆うほどに巨大な竜の鎧だった。 シン「聖鎧竜スヴェルグ! 闇を粉々に握り潰せ!」 シンの言葉を受けて、聖鎧竜スヴェルグは全力で敵を潰しにかかる。 その巨体から繰り出される一撃一撃が闇の書の闇を、砕き、もぎ取り、締め、握りつぶしていく。 再生さえ上回るその圧倒的な破壊力に決着は付いたかと思われたが・・・。 シン「スヴェルグ、断罪の無限牢でこのまま止めを・・・ぐ!?」 突如、シンが苦しみ始めた。サモナイト石を用いないことで、暴走召喚の反動はすべてシンに還元されていたのだ。 召還に耐えられなくなったことで、聖鎧竜はその役目を果たしきれないままゲートの中に戻っていった。 シン「か・・は・・・」 さすがに反動がきつい。 肺をやられているのか、痛みは感じなくても呼吸が出来ない。 中に血が溜まっているのだろう。 だが、これで膨大な数を誇った『闇の書の闇』の砲門の大方を切り潰すことが出来た。 残りは前方にある四本の腕だけだ。 デス子「マスター、耐えてください! あと一歩です」 シン「・・・当たり・・前だ。・・・・ここまで・・・来て・・・・」 足と翼をほとんど潰され、満足に動くこともできないはずの『闇の書の闇』だが、 この程度で倒れてくれるほど生易しい相手ではなかった。 既に、再生しない各部位の代わりに他の場所から翼が生え始めている。 それも、前よりもはるかに凶悪な形で、だ。 どうやら、破壊されれば破壊されるほど学習、強化し、更なる進化を遂げるらしい。 シン「ここまで来て・・・負けられるかあ!」 もう一度力を振り絞って召還しようとするシンを黒い翼が包み込んだ。 ドーム上に変化したそれは光すら通さず、他の翼とぴったりと融合してしまっている。 だが、一つ一つがバリア一層分の防御力を持つとはいえ、先ほどそのバリアが破られたのを 闇の書の闇は知っているはずだ。 シン「何をする気だ!?」 戸惑うシンを更なる衝撃が襲う。何かの炸裂音とともに、シンの体が宙に浮いた。 何がどうなったのだろう。今の衝撃はまるで、何かを切り離したような・・・。 デス子「マスター! 魔力が、私達の周りにある魔力が膨れ上がっています!」 シン「まさか・・・やばい、逃げ――――」 次の瞬間、闇の書の闇の下半身は、シンを中に閉じ込めたまま閃光を撒き散らして爆散した。 『闇の書の闇』が起こした魔力爆発は、意外にも広範囲に広がることはなかった。 内部に閉じ込めた物体を焼き尽くすことに全威力を費やしたからだ。 レリックの爆発ほどではないにしても、その破壊力は管理局の魔導師が得られる火力をはるかに超えている。 『闇の書の闇』の意図に気付かないままだったら、確実に灰になっているところだった。 シン「はぁ、はぁ。くそ、危な、かった・・・」 デス子「まさか、自分で自分の体を爆破するなんて・・・」 立ち昇る煙の中で、脱出に成功したシンは片膝をつきながらも右手の大剣で何とか体を支えていた。 遠野志貴の『死の視る能力』を使い、翼の死の線を切り裂いて脱出したシンだったが、その代償は安くは無かった。 爆心地でなかったとはいえ、爆発に巻き込まれたために傷は更に広がっている。 漏れ出した熱と衝撃波によって与えられたダメージも、シンの体に蓄積されたままになっている。 出血もひどくなるばかりだ。痛覚が正常に働いていれば痛みで気を失っていたかも知れない。 シン「げほっ、げほっ(本格的に息が苦しくなってきてる。体にも力が入らない。 はやてだけじゃなく、俺にも時間は残ってないのか)」 それにしても、見事な戦術というほかない。 三枚の翼をらせん状に融合させればバリア三層分の防御力を持つことになる。 いくらアロンダイト・キルスレスが強力でも、一撃で破壊することは不可能だ。 四十メートル級の『闇の書の闇』の胴体をぶち抜くことは更に難しい。 その鉄壁の檻にシンを閉じ込めたまま下半身を切り離して保有魔力を暴走させたのだ。 並みの魔導師なら確実に死んでいる。 例えそれで仕留め切れなくても、距離と時間、ダメージを稼ぐことが出来る。 その間に、バリアと失った下半身を再生しなおせばいいのだ。 デス子「どうするんですか。もう一度空へ昇る時間はもう・・・」 シン「・・・あいつだって、もう・・・ぎりぎりのはずだ。この一撃でけりをつける!!」 そう言うと、シンはアロンダイト・キルスレスに全魔力を集め始めた。 後がないのは闇の書の闇も同じだ。 自分の半身を爆破してしまったのだから、当然コア部分は上半身に残っている。 そこを吹き飛ばされればさすがにひとたまりも無いだろう。 カートリッジをすべてリロードし、体に残った一滴の魔力さえ注ぎ込み、キルスレスの力がそれを増幅させていく。 瞬く間に膨れ上げる魔力に『闇の書の闇』も最後の攻撃が来ると気付いたのか、失った下半身の再生を止めて 前方に伸びた四本の腕に膨大な魔力を集め始めた。 正真正銘、真正面からの切り札のぶつかりあいだ。 集まった魔力量からして闇の書の闇の選択した魔法はスターライト・ブレイカー、それも威力は 本家よりはるかに上なのは間違いない。 それに比べれば、シンの搾り出した魔力などすずめの涙ほどにも満たない。 だが、代わりにアロンダイト一本に全魔力が収束されている。 当たりさえすればどんな敵だろうと粉みじんに砕いて見せるだろう。 はちきれんばかりの魔力が周辺に満ちていく。 シンが右手に巻きつけた鋼糸が音を立ててちぎれていき、 『闇の書の闇』が四本の腕で巨大な魔法陣を空中に出現させる。 距離も近い。勝負は一瞬で決まる。 『闇の書の闇』の魔砲と邪魔な腕をコアごと破壊できればシンの勝ち。 そうでなければ、闇の書の闇がはやてを食い破り世界を焼くか、リインフォースが消滅し 歴史はシンの存在しない状態で書き直される。 ――――先に仕掛けたのは『闇の書の闇』だった。 四つの掌をぴったりとあわせ、超巨大な魔法陣を形作ったかと思うと、そこから瞬時に スターライト・ブレイカーが発射された。 それは、管理局の艦艇さえ呑み込めるほどの、まさに星を砕かんばかりの大きさだった。 シンの視界がすべてSLBで埋まり、景色がピンク色の光で染め上がった。 これだけ圧倒的な質量が相手では、借り物の『魔眼』では話にならない。 シン「その魔法は、あいつがフェイトを助けるために作った魔法なんだ・・・」 デス子の計算能力をもってしても解析しきれないほどの破壊力が迫る中、 シンは静かに剣を構え シン「それ以上・・・なのはのスターライトブレイカー(たましい)を汚すなあああああっ!! 魂からの叫びとともに、それを投擲した。 投擲されたアロンダイト・キルスレスは、目前に迫っていたスターライトブレイカーをかき消し―――――――――――― 発動していたあらゆる魔方陣を砕き―――――――――――― 受け止めようとした『闇の書の闇』の四本の腕を全て吹き飛ば―――――――――――― そして―――――――――――― ――――――――――――刀身から―――――――――――― ――――――――――――砕け散り―――――――――――― ――――――――――――落ちていった――――――――――― シン「これでも・・・・まだ・・・・届かないのかよ・・・・・」 魔力を使い果たした体から、力が抜けていく。 もう立っていられるだけの体力も尽きた。 シン(今日はよく、走馬灯を見る日だな・・・) 命がつきかけたシンの頭を日常を映した記憶のカケラがぐるぐる回り始める。 それが次第に鮮明に見えてきて、シンは――――。 シン「なのは、お弁当忘れていったろ。フェイトも箸が入ってないってリンディさんが慌ててたぞ、ほら」 なのは「にゃはは、失敗しちゃった」 フェイト「ありがとう、シンお兄ちゃん」 なのは「でも、わざわざ、学校まで届けてくれるなんて思ってなかったよ」 シン「急ぎの用もなかったし。皆ははやてを病院に連れて行ったから。俺が一番暇だったんだよ」 アリサ「いいわねぇ、家族に甘えられて。ま、私達は両親が忙しいから仕方がないんだけど」 すずか「アリサちゃん・・・」 シン「・・・(両親が忙しい、か。オーブにいた頃の俺にはマユがいたけど、この年頃の子供にはやっぱり寂しいもんだよな)」 なのは「そうだ。あのね、私達は授業が終わったらアリサちゃんの家に遊びに行くんだけど、シンお兄ちゃんも来れないかな?」 アリサ「え、ええ!? 」 シン「・・・そうだな。招待してくれるなら行かせて貰うよ」 フェイト(でも、シンお兄ちゃん。今日は管理局の仕事があるって) シン(あ~、ごめんフェイト。リンディさんの件は断っといてくれ) すずか「ほら、アリサちゃん」 アリサ「わ、わかってるわよ。・・・その、どうしても来たいって言うなら・・・特別に来てもいいわよ」 シン「ありがとな」 アリサ「別にお礼なんて・・・」 なのは(素直じゃないなぁ。アリサちゃんも) シン「さてと、せっかくだから俺も一旦帰ってお菓子を作ってくるよ」 フェイト「シンお兄ちゃんの作るお菓子はアースラ・・・じゃなかった、お母さんの仕事場の皆にも好評なんだよ」 すずか「へぇ~、楽しみ~」 シン「ああ、とびっきり美味しいのを持っていくからな」 なのは「うん、きをつけてね」 シン(それにしても、お金持ちの家に御呼ばれするのにクッキーぐらいで釣り合うのか? 今度会うときはおいしいケーキぐらい作れるようになっておかないとな) シン「じゃあ、俺は行きます恭也さん、美由紀さん。」 美由紀「頑張ってきてね」 恭也「必ず帰って来い」 シン「・・・士郎さん。あの、俺・・・」 士郎「今だから言うがな、シン君。君には剣術家になれるだけの才能はない」 シン「・・・・・・!」 恭也「父さん!」 士郎「それでも、君はよく頑張った。短期間でここまで成長できたのは、体が鍛えられてたからだけじゃない。 気が遠くなるほど続けた反復練習のおかげだ」 シン「そんな、教え方が良かったからですよ」 士郎「そんなことはないさ。一月という短い期間で、私達が出来ることなんてほとんどなかったからね。 ただ、最初に言ったことだけは忘れないで欲しい」 シン「『御神の剣士は力無き人々の牙であり、大切な人々を守るための盾』・・・ですね」 士郎「そうだ。だからこそ、私達は自分を守ることに貪欲でなければならない。 絶対に死を選んではいけない」 シン「・・・・・・」 士郎「自分の死は同時に守る対象の死を意味するんだ。そのことを君は忘れないでくれ」 シン「・・・はい。俺、忘れません!」 はやて「あと、五日で修正プログラムが完成するんやね」 シン「ああ、これでようやくみんな一緒に暮らせるな。・・・・・どうしたんだ、はやて?」 はやて「ん、なんでもない。少し怖くなっただけや」 シン「・・・怖い?」 はやて「ほんの時々思うんよ。もしも、間に合わんかったらって・・・」 シン「・・・・・」 はやて「あかんなぁ、こんなことで弱気になったら、ヴィータに笑われるわ」 シン「・・・大切なものが奪われるのは・・・誰だって怖いさ」 はやて「シン兄・・・」 シン「大丈夫だ。絶対にそんなことにはならない。俺がそうさせない」 はやて「・・・ありがとうな。でも、なんでそこまでしてくれるん?」 シン「さあ? はやてが俺に居場所をくれたからかな?」 ――――その両足に、力を込めた。 シン「約束は・・・守らないとな」 体力不足でがくがくと震える足を精一杯伸ばし、血液不足で痺れてきた拳を握り、酸素不足の頭を必死に働かせる。 シン(魔力エンプティ・・・残量は完全に0。カートリッジも使い切った。どうする?) 幸いにも、闇の書の闇は攻撃手段を失い触手も動きを止めている。 自身の修復に全魔力を傾けているためだ。 デス子をデスティニーに戻して攻撃すれば、とも考えたがあの火力相手に一撃でも反撃を受けたら その時点でこっちは爆発四散する。 刺し違えても、というわけでないなら触手の復活を警戒してデスティニーにはならないほうがいいだろう。 とにかく、今は攻撃できるだけの魔力だ。 それさえあれば、隙だらけの闇の書の闇に一撃を加えられる。 魔力さえあれば・・・。 シン(なんだ、魔力が・・・戻ってくる?) ほんの僅かずつだが、最後の最後まで搾り出したはずの魔力がシンの中に戻りつつあった。 その魔力を辿った先にあったのは、刀身が砕け散り力を失ったはずの―――― シン「アロンダイト・・・キルスレス。でも、なんで・・・」 ふと、シンは自分の先程まで剣を握っていた右腕を見る。 どれほど傷ついても剣を握っていられるようにと腕ごと鋼糸で雁字搦めに縛っていたが 今はすべて千切れてその役目を終えたと思っていた。 だが、一本だけ残っていた。 その細い鋼の糸が、剣に残っている魔力をシンへと伝えていたのだ。 赤い糸のように小指に巻きついた、たった一本の絆が。 デス子「まるで、指きりみたいですね。何度目の奇跡でしょうか。これで・・・」 爆発の衝撃で機能を停止していたデス子が、魔力を得たことで再び稼動し始める。 弱音も諦めも、とうに出尽くしてしまった。 残ったのは、前へ進むための言葉だけだ。 シン「さあな。とりあえず、これでもう一度勝機が出来た」 どうしようもなくぼろぼろで、どうしようもなくみずぼらしい格好だ。 こんな姿、機動六課の皆には格好悪くて見せられないな。 そうシンは愚痴りながら右手に魔力を集め始める。 さっきに比べれば悲しいまでに小さくて、誰から見ても一瞥されそうなちっぽけな力だけど。 これが、俺の最後の攻撃だ。 『悠久なる凍土』 ずっと、攻撃を続けてきた。 延々とダメージを与えてきた。 そして、ようやく見えてきた。 シン「あれが、ヤツの・・・『死の点』・・・」 闇の書の闇のてっぺんに張り付いた、女性の姿をした船首像にも似た生体パーツ。 その右胸に、拭いようもない死の集結する部分が黒い点として浮かび上がっていた。 あとは、そこまで飛べばいい。 『凍てつく棺のうちにて』 シン「デス子」 デス子「はい?」 シン「あそこまで、行けるな!」 デス子「・・・はい!」 シンを包んでいたバリアジャケットが光とともに解除され、その中から巨大な人型ロボットが姿を現した。 眩いばかりの光の粒子を振りまくはずだった翼は無残にもへし折られ、左手は破損し 武器も盾もなく、ところどころにひびが入った痛ましい姿だったが それは確かに、勝利めがけて羽ばたいていた。 デス子「はぁああああああぁぁっ!」 シン 「いけえええええええぇぇっ!」 そのままデスティニーは闇の書の闇の上を取ると シン「これが、俺の切り札だぁああああ!」 一瞬の内にユニゾンし直し、闇の書の闇に向けて降下していった。 闇の書の闇からの攻撃は一切ない。 触手からの迎撃は間に合わない。 動きを止めている今なら、ヤツの急所を貫くことができる。 この戦いに終止符を打つことができる。 シン「これでぇ、終わりだあああああああああアァァッ!!!」 シンは、魔力をすべてこめて右手を振りかぶった。 『永遠の眠りを与えよ』 何が、起こった。 わからない、とにかく、寒い。 凍っていく、腕が、顔が、足が、体が。 冷たくさめていく。音を立てて凍り付いていく。 もう何も聞こえない、何も見えない、声も出せない、息もすえない、指一本動かない。 寒い、体が、寒い。 凍っていく、全てが・・・。 罠だった。 闇の書の闇はシンにもう遠距離攻撃を行えるだけの余力がないことを看破して待ち構えていたのだ。 そして、クロノ・ハラオウンと氷結の杖デュランダルが見せた、 自分が凍結されるはずだった魔法を使って、自らの敵を封印した。 ――――――極大の凍結魔法 エターナルコフィン―――――― それは、完璧に一部の隙もなく再現されていた。 周辺の一切を凍結しつくし、空気すら例外なく凍らせた。 触手も、散らばっていた肉片も、何もかもが動きを止めた。 静かで、冷たい死の世界。 闇の書の闇が発する勝利の雄叫びだけがそこに響きわたる。 だが、想いだけは凍らなかった。 全身が凍りついてもシンは止まらない。 闇の書の闇に向かって、真っ直ぐに落ちていく。 前へ突き出した右手が氷の砕けるような音を立てて動き始める。 僅かにずれた標準を調節し、導かれるように『死の点』へと突き出される。 もう見えていないはずなのに、聞こえてもいないはずなのに、触覚さえ残っていないのに。 ありったけ魔力をかき集めても出せるかどうかは五分と五分の、撃てても撃てなくても最後になる一撃。 闇の書の闇は、勝者の余裕を持ってそれをかわそうとして――――――できなかった。 体を動かす足がない、体をよじる腕もない、身を守る翼もない。 どれもすべてシンが奪い取っている。シンに奪い取られている。 魔法での迎撃―――不可能だ。オーバーSランクの魔法を使ったことで魔力を著しく消耗してしまった。 触手からの砲撃―――不可能だ。今から再起動させても間に合わない。 再生しての迎撃―――不可能。動作による回避―――不可能。 バリアの再生による防御―――不可能。敵の攻撃の回避――――――不可能! 白く凍った紅い眼は、なおも闇の書の闇を睨み続けている。 闇の書の闇に再び恐怖が蘇った。 ――――――我は勝っていたはずだ。敗率は皆無だったはずだ。 ならば、何故こうなっている。何故追いつめられている。 判断ミスはなかった。常に最善の方法を選び取った。 なのに、何故こいつはここにいる。何故こいつを破壊できない。 避けられない。これが全てを殺す能力だとすれば間違いなく我に死が訪れる。 死? 転生を繰り返しながら、永遠に闇を振りまき続ける我がこんなところで死ぬ? こんな魔導師に、こんな一撃で、最強を誇った闇の書の防衛プログラムが? ありえない、ありえるはずがない、ありえていいはずがない・・・。 こんなことが起こる訳が―――――― 闇の書の闇は、最後の最後まで死を理解することはできなかった。 凍りついた右腕は魔力を通したことで反動に耐え切れず砕け散った。 デス子は魔力切れで機能を停止し、シンの全身にはひびが広がった。 放たれたのは虫も殺せないような貧弱な魔力 シンの人生でもこれ以上はないくらいの最弱の一手 だが、それは正確に、そして確実に貫いていた 『闇の書の闇』の胸にある、『死の点』を 闇の書の闇に、シンは勝利したのだ。 さらさらと霧になっていく闇の書の闇 断末魔の叫びを上げながら崩壊していくそれを尻目に シンは、ざまあみろとばかりに凍えた口元をゆがめながら、 地面に落ちて、粉々に砕け散った・・・ シン編第七話 後編 『 勝利を掴む掌の槍(パルマ・フィオキーナ) 』 完 #navi(なのはクロスの作品集) ----
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前ページ次ページゼロの使い魔クロス シンがシルフィードと言うウィンドドラゴンに咥えられたまま召喚され、タバサの使い魔となって既に四日が過ぎた。 召喚された当日の夜に、タバサの部屋でようやく気絶から目覚めたシンが最初にした事はタバサとの情報交換であった。 タバサ側からはシンが自分の使い魔になったと言う事、シンを咥えていたドラゴンの事、そして今自分のいる学院の事等を。 そしてシン側からは自分は元軍人だったということ、自分がいた場所は恐らくこの世界ではないと言う事等を伝え合う事となったのだった。 無論、タバサもシンの情報は最初から鵜呑みにはしなかった、だが、あまりにも自分が知っている世界の常識と異なる情報からその事実を認識する事になったのだ。 タバサは日頃から本を読み漁り続けていると言う事から学生でありながらも下手な学者よりも遥かに知識に精通している。 その為、シンが言っているプラントと言う言葉、ナチュラルとコーディネイター、そして月が一個と言う話を聞くにつれて、異世界からの訪問者と認識するようになったのだ。 事実、この世界ハルケギニアにはこういった「異世界からの訪問者」と言う伝承は以外に多い、もっとも、多くの人間はそんな事を信じはしないが… だが、タバサはシンの瞳をじっと見つめ、嘘を言っていないという確信を得たために、シンの言葉を信じることにしたのであった。 そして、タバサは幾つかの条件をつける以外は基本的にシンの自由を許す形を取ることとなったのだ。 まずはシルフィードが会話可能だと言う事を他の人間に漏らさないこと、そして近郊の森に小屋を構えてそこで一緒に住んでほしいと言う事。 前者の理由はシルフィードは貴重な種族で、そのことがアカデミーの研究者たちに知られると実験材料に提出しろと言われかねないということだった。 元々シンもそういった連中には激しい嫌悪を抱く性質なので前者の条件はあっさりと飲んだ。 そして後者はシルフィードもずっと話せない、そして寝るときに一人では可哀想だというタバサなりの優しさである。 シンも、最初食われそうになった事もありやや警戒していたが、そもそもの原因が自分の誤解だと知るとその罪滅ぼしをかねてそれを承諾したのだ。 トリステイン学院近郊の森 シンとシルフィードの小屋 「きゅいきゅい、朝よ朝、おきて、お話、お話の続き~」 「ふわぁぁ…、わかったわかった、朝食の用意するから少し待てって…」 そんなこんなで学院からやや離れた森で同居する事となったシルフィードとシンの朝は非常に早く、日が昇るとほぼ同時に始まる。 これは学院についたら喋れなくなるシルフィードが先にシン相手に出来るだけお話をしたいという思いがあっての事だった。 というのも、シンは学院についた後シルフィードと自分の食事のせめてもの礼として食堂で働く事になったからだ。 最初はお話の時間が少なくなると渋っていたシルフィードだったが、シンが食べ残しで出たお肉を持って帰ると言う事で何とか納得したようだった。 実際シンは余り物や調理した時に残った野菜屑等を貰って帰り、それを簡単に調理して朝食にし、シルフィードもそれを食べるのが楽しみになっている。 「それで、昨日は何を話してたんだっけ?」 「えっと~…そうそう、ヨウカンって子とであったときの事だったわ」 「ヨウカン? あぁ、ヨウランの事かあいつとであったのはアカデミーの食堂で…」 シンはまるで妹に語る様にシルフィードに調理した肉や野菜を与えつつ、自分の食事を食べながら思い出話をシルフィードに聞かせる。 シルフィードにとっては未知の世界の言葉ばっかりだったが、それでも人間の話が聞けると言うだけで嬉しいのかいつも満足そうだった。 人間とドラゴンと言う姿の違いさえ気にしなければ、まるで兄妹の会話のように自然な会話が二人の間では繰り広げられていた。 「で、アイツは唯の事故だって言うのに俺の事を変なあだ名で… って、そろそろやばいな」 「きゅいきゅい… 太陽が大分昇っているのね、そろそろシンのお仕事の時間、早く乗って、急いでいきましょう」 放っておけば何時までも続きそうな二人の会話だが、そうもいかずシンの仕事の時間が近づくと一度お開きになる。 ちなみにシンとシルフィードがどうやって時間を知っているかと言えば、シンが作った簡単な日時計で時間を計っているのだ。 朝食が終わり、仕事の時間が近づくとほぼ同時にシンは荷物を入れたバッグを手に持ち、シルフィードの背中に乗って学院の食堂へと向かう。 ちなみにその飛行中は学院に近づくと言う事から会話が殆ど出来ないのでシルフィードも減速はせず、かなりの速度で向かうようにしている。 トリステイン学院 食堂裏口 食堂の裏口付近まで来るとシルフィードは減速し、そのまま着陸する、そしてそれとほぼ同時にシンがシルフィードの背中から降りて裏口から食堂に入る。 「今日もサンキュー、シルフィード、また帰りも頼む」 「きゅいきゅい~~」 その寸前、裏口に入るかはいらないかの時にシンは何時もそう簡単にシルフィードを労ってから内部に入る。 そしてシルフィードもそれを聞き、シンが入るのを見届けた後に再びゆっくりと飛行を始め、空のお散歩を開始するのであった。 「おはようございます、マルトーさん」 「おう、来たなアスカ、ほれ、今日のノルマだ、確り頼むぜ!!」 「了解です」 調理服に身を包んだシンが食堂に入ると同時にその食堂を取り仕切る料理長であるマルトーに声をかけ、マルトーもそれに返事をしながら野菜の束をシンに渡す。 之はシンが幾らサバイバルやある程度の食事が出来るとはいえ調理師としての実力は持ってない事から、野菜の皮むきや下拵えを担当する事になったからである。 ちなみに、この食堂で働こうとシンがマルトーに頼み込んだときには少しひと悶着が起きたりもしている、それを少し語るとしよう。 マルトーはこのトリステイン魔法学院で働いてこそはいるが、本来は魔法が使えるからと威張り散らしている貴族が大嫌いな人間である。 もっとも、それはマルトーが特別と言うわけではない、この世界での平民―魔法が使えない人々―が当然のように抱いている感情である。 しかし、魔法を持たない平民はどれだけ足掻いても魔法が使える貴族には勝てない、そういう考えがこの世界には蔓延している。 だからいかに嫌悪の感情を抱いたとしても、反逆の刃を向ける事は出来ず、ただひたすらに耐えるしか出来なかったのだ。 そして、そんな彼らから見た、タバサの使い魔となったシンの姿は「貴族に媚を売っている裏切り者」と印象であった。 最初は使い魔、つまりは奴隷同然の扱いを受けるだろうとして同情されかけたのだが、タバサは一切そんな事を行わなかったからである。 特に、同じように召喚されたサイトと言う少年がその主であるルイズに犬扱いされている事からも、シンへのそういう逆風は強くなっていた。 だからこそ、シンが最初に働かせてほしいと言っても、マルトーは当然のようにそれを拒絶し、ご主人様の貴族に養ってもらえと言い放った。 だが、シンは拒絶されても何度も、何度もマルトーに頼み込んだ、途中で怒ったマルトーがシンの顔を蹴り飛ばしても、それでも頼み込んだのだ。 そんなシンの必死な態度にほだされたのか、マルトーはたった一つだけの質問をした、雇うか雇わないかの判断のために。 「お前は何でそんなにここで働きたいんだ? 別に働かなくてもあのタバサって貴族様ならひどい扱いはしないだろう?」 そんなマルトーの問いに、シンは必死な表情をして答えた。 「俺は、迷惑をかけたくないだけです、タバサには色々と助けてもらっているから、少しでも、迷惑をかけたくない、だから働きたいんです。」 そんなシンの言葉を聞いたマルトーは、覗き込むようにしてシンの瞳をじっと見つめていたが、柔らかな笑みを浮かべると、シンの頭を軽くなでる。 「迷惑をかけたくないから、せめて食い扶持くらいは自分で…か、顔を蹴って悪かったな、下拵えや皮むきくらいはできるな?今日から働いてもらうぞ?」 「あ、ありがとうございます!!」 そのシンの言葉に偽りは混じっていないと思ったマルトーは、シンの顔を蹴った事をわびると近くにあった予備の調理服をシンに手渡しながらそういい。 そしてシンもその調理服を受け取ると、まるで少年のような無垢な笑顔を浮かべて、マルトーに深く礼をすると近くの少女―シエスタと言うらしい―に案内されて更衣室に向かっていった。 しかし、シンは気付いていなかった、過去の自分なら間違いなく蹴られればマルトーに襲い掛かっていたと言うのに、何故今の自分は我慢していたのかと言う事を。 失う事への潜在的な恐怖に蝕まれてしまった己の心の歪みにシンは気付かないまま、トリステインでの日常生活に馴染み始めていたのであった…… 閑話休題 野菜の下拵えや皮むきくらいならシンも中々の手捌きをみせらる事ができ、まったく出来ないと思い込んでいたマルトーをほんの少しだけ感嘆させたりしていた。 とはいえ、その皮むき技術などもサバイバル技術の延長線上の為、細かい細工技術はさすがにシンでは出来ないのもまた事実であり。 そういう細工部分は一緒に皮むき等の下拵えをしているメイド達、特に最初にシンと会話してきたシエスタと言う少女によく習う事になっていた。 シンはさすがコーディネイターと言うべきか、技術の吸収は早く、最初は足手まといの部分もあったがどんどんと急成長していた。 その成長速度は、シンから約一日遅れで食事抜きの期間賄い食を貰う御礼にと手伝いに来たサイトが激しい闘志を燃やす程でもあった。 そして、シンも元々の性格柄か相手にライバル視されてスルーできない性格で、その結果発生するサイトとシンの競争のお陰で下拵えの終了速度はどんどん早くなっていたりする。 「よ~し、アスカ、今日はそれでいい、後はサイトに任せてデザートの配膳の手伝いを頼む」 「え… いいんですか?」 「あぁ、下拵えも大半終わったからな、訓練もかねて残りはサイトに任せたい、だからお前はシエスタ達の手伝いを頼む」 マルトーのその言葉にシンは頷き、デザートの配膳準備をしていたシエスタ達の手伝いに向かう。 ちなみにこの食堂では基本的に配膳はメイド達が行うようにしている為、シンがその手伝いをすると言うことは女学校に紛れ込んだ男一人の状態になる。 そして、シンの顔立ちも決して悪くは無いどころかかなりランクは高い、その結果メイド達の中にはシンと御近づきになろうとするものも出てくる。 もっとも、女性に非常に弱いシンにとってそのアプローチを回避する有効な手段が思いつかないのでシエスタに話しかけてそこから抜け出ると言う形になる。 そんなラブコメな空気を見ていたサイトは「シンの癖に… いや、逆に考えよう、キラやアスランじゃ無くてよかったと…」と、不思議な言葉を呟きながら皮むきを続けていた。 配膳開始間際はシエスタと一緒に配っていたシンだったが、4人程回ったところであらかたの配り方を理解し、シエスタと別行動を取るようになった。 多少のぎこちなさはあったが、女性陣には美形といえるシンが配膳してくれると言う事で案外良好な受け入れ方をされていた。 そして、シンが自分が担当する最後の人物にデザートの配膳を終えたそのとき、食堂の隅のほうに不自然な人だかりをみつけ、そちらの方に向かって歩いていった。 「申し訳ありません!! 申し訳ありません!!」 「まったく、之だから平民は… いや、平民ごときに配慮を期待した僕が愚かだったのかもしれないね」 その人だかりの中心では、明らかに貴族のお坊ちゃまと言う感じの男がシエスタに何か因縁をつけている様な光景が広がっていた。 状況をよく理解できていなかったシンは幸い付近にいたタバサの姿を認めて、状況を聞こうと声をかけた。 「なぁ、いったい何がどうなっているんだ?」 「……二股の痴情の縺れ、そして少女に責任転換」 シンの疑問にタバサは本を読んだまま、はしばみ草のサラダを食べながらあっさりとそう答える。 そして、シンはそれだけの情報でも大体の状況を理解し、シエスタを助けようと人だかりを割って中にはいっていく。 「貴族を侮辱した平民を処刑してもいいんだが… 女性相手に手を上げるのは紳士ではないな、そうだ、この侘びに一晩僕に付き合ってもらおうか な?」 最初は憤怒の表情だけであったが、実はスタイルも顔も良いシエスタを好色な瞳で見始めたその貴族は自分の夜伽の相手をしろとシエスタに言い寄る。 貴族に平民は逆らえない、その事を生まれた時からずっと教え込まれたシエスタは、悲痛な表情を浮かべてそれを受け入れようとした…その時。 バッキィィイイ!! 「いい加減にしろよ、アンタは!!」 憤怒の表情を浮かべたシンが、全力の右拳でその貴族の顔を殴りつけ、シエスタと貴族の間に割ってはいる。 「ウグッ… 平民…いや、ミス・タバサの使い魔か、貴様、使い魔ごときが貴族に手を上げて唯で済むと思っているのか!!」 「あぁそうでした、アンタはお偉いお偉い貴族様でしたね、でもな、仲間が言い掛かりつけられている所を見逃せるもんか!!」 最初は挑発するように、そして後半では殺気さえも伴った威圧感を漂わせながら、シンはその貴族に対してそう反論する。 「…シエスタに謝れ、そうすれば俺も謝ってやるさ」 ゆっくりと、戦闘態勢にはいり、殺気を隠さないままその貴族を威圧し続けるシン。 そして、その貴族も、幾つもの実戦と修羅場を潜り抜けてきたシンの威圧に押し負けるように怯み、冷静さを取り戻したので謝ろうとしていたのだが… 「おいおい、ギーシュの奴魔法も使えない平民、しかも使い魔ごときにびびってるぜ」 「そりゃその程度の奴はモンモランシーにも、あの一年の女にも捨てられるよなぁ」 「所詮ドットメイジなのに二つに手を出したのが大間違いって事か?」 外野から聞こえるシンと対峙している彼―ギーシュ=ド=グラモン―を嘲る声により冷静さを失い、逆にシンに対して憎悪を抱くようになっていた。 「ふ、フフフ…… いいだろう、貴族に手を上げた君に、死刑されるだけの君にちょっとしたチャンスをやろう、ヴェストリの広場で決闘だ!!」 そして、ギーシュはその憎悪の感情のままに、自分の理性が「やめろ、謝ったほうが安全だ」と警鐘を鳴らすのを無視して、シンに対して決闘を申し込んだ。 「…謝る気は無いんだな?」 「くどい!! どうしても謝らせたいなら僕を、このギーシュ=ド=グラモンを決闘で破りたまえ、平民の使い魔君」 シンの最後通達と言える声にも、ギーシュは冷静さを取り戻せないままそう言い放ち、決闘の場所であるヴェストリの広場へと向かっていった。 そして彼らを取り囲んでいた貴族たちも、面白い見ものが始まるといった表情で次々とギーシュの後に続いていったのであった。 そんな貴族達にまるで路傍の石でも見るかのような視線を向けていたシンだったが、シエスタが座り込んだまま怯えている様子だったので声をかける。 「大丈夫かシエスタ?」 「こ、殺されちゃいます!! 私が私が犠牲になればアスカさんは… お、お願いです、決闘なんてやめてください!!」 シンの言葉に反応するように、シエスタは必死にシンにしがみつき、決闘をやめるようにと懇願する。 だが、シンはそんなシエスタを落ち着かせようと頭をなでながら、優しい笑みを浮かべながらこういったのだ。 「大丈夫、シエスタは、俺が守るから」 場違いともいえるような、まるで一見すればプロポーズのようなその言葉を受けてシエスタの脳内はオーバーヒートを起こし、シエスタの動きは完全に止まる。 シンはそんなシエスタの様子を見て、何とか落ち着いてくれたと言う誤解をすると食堂の更衣室へと向かっていく。 そんなシンからしばらく遅れて更衣室に向かったシエスタの視界に飛び込んできたのは、衣服を脱ぎ捨て、下着一枚になっているシンの姿だった。 「俺は、ああいう奴らが許せないんだ、力を持っているのに、守る事が出来るって言うのに、力の無い人達を虐げる奴らが…」 そんなシエスタの行動を、「何故決闘を受けるのか?」という疑問によるものだと思ったシンは、自分の内心を吐露し始める。 「だから俺は、軍人になった、そんな奴らを止めたくて、一人でも多くの人達を守りたくて……」 そう言いながらシンは荷物の中に入れていたパイロットスーツを身に纏い、ナイフとハンドガンを装着していく。 段々と鋭くなっていくシンの気配、だが、シンの内心を聞いているシエスタやマルトー、食堂に居る人間達はそれ以上に悲しさを覚えていた。 そう、内心を吐露しているシンのその声は、まるで帰る場所を探して泣きじゃくっている子供の声のように聞こえていたから…… 「でもさ、結局どれだけがんばったって守れない人達も居た、倒せない奴らも居た、でも、やっぱり俺は諦められないんだ…だから」 そこでシンは言葉を区切り、深く、深く深呼吸をすると、決意を秘めた表情を見せ、自分へとの宣言を行った。 「だから、アイツは、ギーシュ=ド=グラモンは、俺が倒す!!」 そんなシンの決意を秘めた言葉に、食堂に居る面々は感激し、シンを激励しながら送り出していき、シンも其れに応えるように片腕を上げると、決闘の場所へと歩いていくのであった…… おまけ 今回のNGシーン そんな貴族達にまるで路傍の石でも見るかのような視線を向けていたシンだったが、シエスタが座り込んだまま怯えている様子だったので声をかける。 「大丈夫かシエスタ?」 「こ、殺されちゃいます!! 私が私が犠牲になればアスカさんは… お、お願いです、決闘なんてやめてください!!」 シンの言葉に反応するように、シエスタは必死にシンにしがみつき、決闘をやめるようにと懇願する。 だが、シンはそんなシエスタを落ち着かせようと頭をなでながら、優しい笑みを浮かべながらこういったのだ。 「大丈夫、シエスタは、俺が守るから」 場違いともいえるような、まるで一見すればプロポーズのようなその言葉を受けてシエスタの脳内はオーバーヒートを起こし、シエスタの動きは完全に止まらなかった。 「は、はい!!そ、その、全身全霊尽くしますので、末永くお願いします!!」 突然のシエスタの言葉に逆にフリーズを起こした我らがシン、ようやく言葉の意味を理解して必死に弁解しようとしたが。 「いや~、アスカ、そういう事か、なるほどねぇ、惚れた女のために決闘を受ける… 泣かせるじゃねぇか、だが、男ってのはそうじゃなきゃ な!!」 料理長であるマルトーが先に行動、シンの背中をバンバンたたくとコック達に声をかけ始める。 「よ~し、お前ら!!今日のディナーメニューの変更だ!! アスカが決闘から帰ってきたらシエスタとの披露宴だ、手を抜くなよ!!」 「「「うぃ~~~~っす!!!!」」」 そんなマルトーの言葉に、同じくシンの「愛する人のため決闘に挑む平民」の姿に感激したコック達が腕によりをかけた料理作りを開始し始める。 「なんで、なんでこうなるんだ…… なんなんだよ、これは……」 あまりの急展開にシンはそう漏らしたのだが、もはやシンの言葉を聞く人間はその場には誰も居なかったという…… 前ページ次ページゼロの使い魔クロス
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前ページ次ページ涼宮ハルヒクロスの作品集 1 シン「なあキョン、 みくるさん見なかったか?」 キョン「まてまて、 アスカよ。何故朝比奈さんの事を名前で呼ぶ?それに一体何の用だ?」 シン「名前は、 みくるさんからそう呼ぶ様に言われたんだ。用事の方は、 今日は鶴屋さんと買い物に行くから一緒には帰れない って伝えたかったからだ。」 キョン「……、 アスカよ、 お前は朝倉と同棲しておきながら、鶴屋さん、 更には朝比奈さんにまで手を出しているのか?」 シン「なっ! 何を言ってるんだ。朝倉との生活は、 ほぼ毎日食事が、朝はおでんとわかめの味噌汁だし、昼は朝比奈さんからの お弁当と朝倉のおでん詰め合わせを鶴屋さんを入れた三人と一緒に食べて、三人の視線で毎日胃に穴が開きそうだし、 夜は朝倉と喜緑さんに連れて来られた長門の三人で、 おでんとわかめサラダとカレーなんだぞ?お前に代わってもらいた い位だ。」 キョン「なら代わってくれ、 すぐ代わってくれ!お前が嫌なら俺がやろう。」 シン「[キョンの後ろを見る。]おっ、 俺、 やっぱり頑張ってこの生活に耐えて生きて行くよ。 だからキョン、 今すぐ発言を撤回しろ、 出来るだけ早く!」 キョン「[シンの後ろを見る。]あっ、 ああ、 なら俺からも言わせてくれ。今の生活が幸せなんだろ?そうだと言うんだ!早く!」 ???「フ~ン、 キョンってそんな生活に憧れてたんだ~。」 ??「……、 そう。貴方は、 一人では満足しない。」 ??「僕としては、 貴方にそんな欲望があるなんて、 フフ、 判りませんでしたよ。[にやけた笑顔]」 キョン「[動きが止まる]」 ??「ごめんなさいね、 ほぼ毎日おでんしか作らない女で。[笑顔]」 ???「フフ、 シン君ったら。[目が笑って無い笑顔]」 ??「は~はっは、 いっぺん、 死んで見るにょろか?[笑顔で怒って居る」 キョン・シン「「……、 お互い、 生きてたらまた逢おう(ぜ)。」」 それぞれの関係者に連れて行かれる二人を少し離れて見ているワカメ頭の女性 喜緑「……、 人間って面白いですね。これだから人間関係をかきまわすのは止められませんね。」 2 妹「あ~! シン君だ~! いらっしゃ~い」 シン「ああ、 お邪魔します。」 キョン「なぁ、 妹よ、 俺にお帰りの挨拶は無いのか?」 妹「え? ……、 キョン君お帰り」 キョン「なんだそのついで扱いは、 まあいい。アスカ、 俺の部屋に行くぞ。」 シン「そうだな。」 キョンの部屋 キョン「それで、 今度は、 何があったんだ?今日の昼休みから顔が悪いぞ?それに、今日の部活は、朝比奈さんの目が笑ってな い笑顔が怖くて俺の至福の時間が台無しだ。」 シン「今回の事は、 俺にも良く判らないんだ。」 キョン「それは、 無いだろ?SOS団の中では、 悔しいが、一番朝比奈さんに近いお前が知らない筈は無い。」 シン「ただ、 鶴屋さんの話だと、「みくるなら、 ワカメの処に行ったにょろ」って、 言ってた。」 キョン「あ~、 アスカよ、 原因は判った。その証言だけで充分だ。」 シン「本当か? 原因はなんなんだ?……、まさか!」 キョン「ああ、 ワカメと言えば、 あの人しか居ないだろ?」 喜緑「くしゅん!……、私の事を誰かが噂している見たいですね。後でその方の人間関係をかきまわすとして、さて、次は誰の 人間関係をかきまわしましょうか?(笑顔)」 3 長門「……、 人が居ない。」 プリムラ「……、 うん居ない。」 シン「ああ、 そうだな。」 長門「……。」 プリムラ「……。」 シン「……、 頼むから、なにか話しをしてくれ。」 長門「……、 そう。」 プリムラ「……、話す事、無い。」 シン「あ~! 何か話題が有るだろ! 話題!」 プリムラ「……、この人、誰?(指を指す)」 長門「……、私も知りたい、誰?」 指を指さされた先には、フェイト「(ニコニコ)」 シン「一応聞きますけど、 何で、 居るんですか?」 フェイト「便じょ、「便乗、も~らい! だよ。フェイト、初めてまして、シンお兄ちゃん☆(笑顔)」う、……、何で貴方が居るの?」 〇〇〇〇「まだ教えな~い!今回は、シンお兄ちゃんに挨拶に来たの!それじゃあ、また逢おうね、シンお兄ちゃん!」 プリムラ「……、私達これだけの為に呼ばれたの?」 長門「シン、説明を要求する。要求を受け入れ無ければ、貴方を私の敵と判断する。」 フェイト「そうだね、 シンに便乗出来なかった分だけ、貴方達に便乗するよ。」 シン「俺、関係無、長門「問答(攻撃準備完了)」 プリムラ「無用(魔法準備完了)」 フェイト「問答無用☆(便乗準備完了)」 って、 うわ~!」 長門「貴方達に、私の家でカレーを食べてほしい。」 プリムラ「……、 うん、 食べる。」 フェイト「食べよう、食べよう!」 長門の家に向かう三人 シン「俺が……、何をしたんだよ……。」 置いて行かれるシン 4 朝倉「ねえ、シン君。」 シン「ん、なんだ?」 朝倉「最近私の出番少なく無いかしら?」 シン「確かに最近は、 出番無いよな?」 朝倉「でしょ? だから私、最近のお話しを読んで見たのね。そしたら、楓さんのシリアスにはほぼ一瞬しか出番が無いし、 八神隊長達の集まる話には名前すら出てこないのよ?いくら私でもこれ以上の空気は許せないのね。」 シン「それは、 シアに聞かれたら泣くぞ?」 朝倉「ねえ、シン君。やらなくて空気になるよりやってメインになる方が良いと思うのね。私の独断で強行に存在感を求めるの は、仕方ない事だと思うのよ。それに私、空気にはなりたくないの。だから。貴方に私の出番を減らされた怒りを与える 事で、私の存在感が与えられる。またとない機会だわ。」 シン「それ、何かの台詞じゃないのか?」 朝倉「無・駄・な・の、 話をそらそうとしても私の決意は、 変わらないもの。(ナイフを出す)」 シン「とにかく、ナイフをしまってくれ。本当に洒落にならないから!」 朝倉「うん、それ無理。だって私は、本当に空気にだけはなりたくないんですもの。……、シン君、じゃあ、私の(空気脱却と 出番を減らされた怒りの)為に、 死んで。」 シン「━━━!!(声にならない叫び)」 朝倉「………、 ふふっ、 な~んてね。冗談よ。私が本当にそんな理由で貴方を殺す訳無いじゃない。」 シン「………。」 朝倉「貴方を守りに来て、そんな理由で貴方を傷つける訳ないわよ。だから安心して。………あら、気絶してるわね。」 シン「………。」 朝倉「……、そうだわ! 良い事を考えた。怖がらせたお詫びに私の膝で膝枕してあげるわね。」 その膝枕を見られ、シンの部屋は最悪の地獄絵図を展開する事になる。 おわり 前ページ次ページ涼宮ハルヒクロスの作品集
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前ページ次ページ涼宮ハルヒクロスの作品集 【未来の可能性~彼女[達]の暴走日和~】 ……俺の話を聞きたいって? う~ん……、別に構わないけど、 この話を聞きたいなら最初に聞いてもらわないといけない事がある。 これは、俺に何時か訪れるかもしれないある未来の可能性の中でも、 かなり異質な部類に入る。 そこを理解して聞いて欲しい。 ……理解してくれたか? それじゃ、始めるか。 ……俺、シン・アスカとその妻[達]の騒がしい夫婦生活の話を……。 はやて「朝ごはんも出来た事やし、 そろそろシンを起こしに行こか。」 彼女は……って、皆は知ってるよな? 彼女が俺の妻、旧姓八神[はやて・アスカ]2※才だ。 昔の自分からしたら理解出来ないだろうけど、 気が付いたら彼女と恋人になって結婚式を挙げてた。 ……ただ、この結婚式は、今でも鮮明に思いだせる位かなり大変だった……。 なのはさんは冥王になって、「はやてちゃん……、永遠に頭冷やそうか。」 何て言って式場を舞台にはやてと全力全壊なバトルをしたり、 フェイトさんはフェイトさんで、「私、はやてに便乗してシンと夫婦の誓いを立てるね?」と、黒いウェディングドレスを着て迫って来たり、 それを見るなりブラコン提督がキレて「妹に何をする!」って、 俺に向かって魔法を放ってくるし、 ヴォルケンの皆は皆で、両副隊長(ヴィータ、シグナム)は俺に「はやて(主はやて)はお前(貴様)には渡さない!」って言うなり襲ってくるし、 シャマルさんは皆から離れて一人酒を沢山飲んでて怖かった。 後……は、……思い出せないけど多分式場には居た筈だと思う。(彼は淫獣と二人で自らの存在意味について話してたらしい事を後日知った。) ティアナは「……あんた、偽物ね?本物のシンならあんな狸を妻にしないで私を妻にするに決まってるじゃない。」って色彩を無くした目で俺を偽物扱いして撃ってくるし、 それを見てスバルが「うわ~、面白そうだから私も混ぜてよ~。」なんて言ってティアナの加勢をしたりして本当に大変な結婚式だった……。(沁々と語る) そんなこんなでかなり滅茶苦茶だけど俺達は普通?の夫婦になったんだ。 ……そう、彼女達が現れるまでは、な。 っと、話の続きに戻るけど、 はやてが俺を起こしに来て何やら様子が変な事に気づく。 そして用心しながら寝室に入ると……! はやて「……!(状況を理解した) ……何やっとるんや?あんた。」 〇〇〇「??? 何って、私[も]ダーリンと夫婦なんやし、 一緒に寝ててたら不味いんか?」 そこに居たのは、年齢的には16才位の俺の妻はやてに似た女性だった! ……ま、真相を明かすなら彼女は間違いなく俺の妻はやて・アスカだ。 但し、其所に[平行世界から来た]と言う単語が入るけどな。 妻はやて「不味いんか、……って! あんたな~……、 今週は[私]とシンがイチャイチャする番なんやで! せやのにあんたは[決め事]無視してシンとイチャイチャしとるし。 ……どうしても理解出来へんのなら、あんたには出てってもらうけどええんか?」 はやて16才「……嫌やな~、年増の独占欲言うんは。 皆で散々話し合って決めたやろ?私[ら]皆でシンの嫁になるて。 それに[決め事]には朝シンの布団に潜りこんだらあかんとは一言も書いてへんし。」 すると其所に、 〇〇〇「あ~!なにシン兄と寝とるんや~! 私かて、シン兄と寝たいの我慢しとるのに~…。」 と今度は9才のはやてが車椅子を動かしながらやって来る。 だけど、まだ終わりじゃないんだ。 〇〇〇「朝からうるさいな~。 少しは静かに出来へんのんか?」 そう言ってやって来たのは、15才のはやて。 更に、 〇〇〇「はぁ~…、しゃあないやろ? なんせ私の事なんやし。 ……シンごめんな。 私らが迷惑かけてもうて。 後で私が言い聞かせるから。」 続いて来たのは、20才のはやて。 つまり家に[はやてがご…、 〇〇〇「あ~ん~た~ら~!何やっとんねん! すぐに、こいつら全員私が消したるから待っててな?シン。 そして私とシンはラブラブ生活を始めるんや![荒い息]」 妻はやて「……[また]暴走したんか。 いい加減、あんたも懲りたらどうなんや? …って、あんたは私やし無理やろな。」 ……驚いたろ? これが今、俺達の過ごしている生活なんだ。 この家には、異世界のはやてが五人、 つまり、はやてが六人住んでる事になる。 ……何で5人のはやてと暮らす事になったか理由を知りたい? ……そうだな~、あれは俺達が結婚して数週間位した頃の話になるけど、 まず最初に9才のはやてが俺達の前に現れたんだ。 隣には驚いてる妻が居て、 目の前には、小学生位の妻が車椅子と一緒に現れて俺達はかなり驚ていた事を覚えてる。 それだけでも大変な出来事なのに、それから数日の間にはやてが4人も現れたんだ。 其々に理由を聞いてみると、 9才のはやては、家族が欲しいと星に願っていたら、 目の前が明るくなっていつの間にか此処に辿り着いて、 15才のはやては、俺と距離をおいてる間に俺が他の人と付き合う事を転送直前に知って、魔力を暴走させてしまい、 その際に、俺と幸せになりたいと思い浮かべたらしく、 その結果、この世界に来てしまったらしい。 16才19才20才のはやて達は、 それぞれの世界に居る俺がはやてを選ばなかった為に、 それなら自分と一緒になったシンの世界に行き、 其処の世界に住む俺と自分を説得して暮らそうと思ったそうだ。 つまり、それぞれの世界の俺が彼女達を選ばなかったので、 俺に選ばれなかった彼女達を引き受けて欲しいそうだ。 勿論、最初は其々の世界へ戻る様に妻と彼女達に何度も説得をした。 げどその度に、9才のはやてからは「私と家族になって」とお願いされ、 15才のはやては「夢ならこっちでも叶えられるし、どの世界であれ、もうシンから離れるつもりはない。」と堅くなに拒否される。 16、19才のはやて達には「今更あっちに帰るつもりはあらへん。」と言われ、 20才はやてからは「何でもします!もう帰る場所は此処しかないんや!」と泣きつかれた。 ……そうしてある朝遂に、 妻はやて「……しゃ~ないな。(苦笑) ……私かて、もしもあんたらと同じ立場になったら、 多分同じ事しとったかもしれへんしな。 ええやろ?シン。」 そう言って妻が納得した事で、彼女達は俺の妻(と家族)として暮らして行く事になった。 ……変な話だろ? まさか平行世界で年違いながらも同じ人間を妻や家族として迎えるなんて。 ……でもさ、不思議と後悔はないんだ。 これが惚れた弱みってやつなのかは分からないけどな。 ちなみに、管理局から俺達の生活に関して、 特に何も言ってこない。 多分だが、万年人材不足の管理局からしたら、 レアスキル持ちで総合SSランク相当の魔術師が4人(9才はまだ未覚醒な為)もこの世界にとどまり、 こちらの戦力に加わるのだから何も文句が無いのだと思っている。 そりゃ大変だしこうして愚痴をたまには言いたくなるけど、 何時か、時が経てば[俺]にも判る筈だ、 人を愛するって事を。 ……ん、そろそろ帰るのか? なら俺から助言だ。 ……涼子を大事にしろよ。 俺は[選ばなかった]けど、涼子は俺にとって大事な女性であり[仲間]だからな。 ……じゃあな、頑張れよ[平行世界のシン・アスカ]。 シン「……俺、未来の自分と話せて良かったと思う。 何時か、俺も未来の自分みたいに幸せな顔をする日が来る事を信じて見たくなったから。」 はやて「なら早速、私と結婚しよか?」 シン「え?な、何でいきなり結婚が出てくるんだ!?」 はやて「何でって、その未来のシンは幸せやったんやろ? せやからその未来の通りにしたらシンも私も幸せになれて言う事無しや!」 フェイト「はやて!その未来に私も便乗させて~!」 なのは「……シン、はやてちゃんと結婚、しないよね?[微笑みつつレイジングハートを構える]」 ティアナ「そんな狸なんかよりもわ、私とけっ、 喜緑「アスカさん、私と結納しましょう。 私が妻になれば将来も安泰ですよ?」 水銀燈「シ~ン、貴方のアリスにしてちょ~だ~い。」 あゆ「あんたを私の下僕にしてやるさ! 感謝するだわさ。」 ……あんた達、私の邪魔しな、 スバル「あ~!まだ此処に居たの? 早く行かないと店が閉まっちゃうからほら、行こ?ティア。」 ちょ、バカスバル~……!」 朝倉「うふふ、ねぇシン君。 ……助けてほしい?」 シン「涼子……。 ああ、助けてくれ。」 朝倉「うんそれ無理。 だって、私の出番、これだけしかないから怒っているんですもの。」 シン「そんな!? ……こうなったら誰でも良い! この状況を何とかしてくれ~……!」 ……やっぱ、こうなる、か。 妻はやて「しゃあないやろ?これがこの頃の私らなんやし。」 そうだな……。 妻はやて「さてと、旦那様。 皆待っとるからそろそろ帰ろか? ……私ら皆の家に。」 ああ。 じゃあ行こうか。 ……強く生きろよ?シン・アスカ。 はやて「シ~ン!私らの未来は間違いなく輝いとるに違いない! さ、早速式場に行こか!」 シン「くそっ、バインドで逃げられない。 誰か外してくれ!」 はやて「無駄な抵抗は止めて、 私とヴァージンロードを歩こうな、シン。(照)」 朝倉「……如何だったかしら? 最後はドタバタしてたけど、 楽しめたらと思っているわ。 ……それじゃ、そろそろシン君を助けないといけないから、 最後の挨拶は彼女達に任せて私はシン君を助けに行くわね。」 はやて一同「「「「「ほな、さいなら。」」」」」 前ページ次ページ涼宮ハルヒクロスの作品集