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1 はやて「シン、とうとうゲームで共演できるんや!」 シン「はあっ!?」 はやて「これでいつも一緒やでシン!」 シン「…」 はやて「なんや、もっと喜んでいいんやで!」 シン「ただ、取りこんだ画像使ったキャラをゲームで使えるだけですよねソレ」 はやて「いいやないか!声がないのが不満ならなんぼでも隣でアドリブでいれたるで!」 シン「それに俺、そのゲーム出来ませんよ」 はやて「え?」 シン「それ、思いっきり18禁なんですが」 はやて「…プラントでは15歳で成人やからいいんや」 シン「いや、よくないです」 なんのゲームかわかる人は残念な大人 2 私の名前は高町ヴィヴィオ。初等科三年生のごくごく普通の女の子。 今日は待ちに待った土曜日。久々に会えるから凄く嬉しいんだ。 誰にかって?それはもちろん・・・ 「アラ、ヴィヴィオ。学校はいいの?あ、今は夏休みだっけ」 「うん。だから休みの間は司書のお仕事やろうと思って。でも今日は待ち合わせで無限書庫に来てるんだ」 「待ち合わせ?誰か待ってるの?」 「うん。今日はでぇとなんだ~」 「デ、デート?ヴィヴィオが?じょ、冗談よね?」 失礼な。私だって花も恥らう9歳の女の子なのだ。でぇとの相手くらいいるよーだ! 一人だけだけどね♪ 「今日は三ヶ月ぶりに会えるからずっと楽しみにしてたんだ~」 「へ、へえ・・・さ、最近の子供は随分とマセてるのね・・・」 さっきから懐疑的な視線を向けてるこの人は私より一ヶ月後輩の司書。 年はあの人と同じだったかな?自称仕事に生きる女だそう。何かあったのかな ま、あえて聞かないけど 「オッス、ヴィヴィオ」 あ、来た♪ 「おそいよシンパパ!」 「スマンスマン。久々に本局に来たからちょっと迷ってな」 そう。この人がでぇとの相手シン・アスカパパ。六課が解散した際、 パパはその戦闘能力を買われたとかで別の管理惑星の都市の警備隊長に抜擢されたのだ 娘の私としてはあんまり危ないお仕事には就いて欲しくなかったんだけど・・・ 今日は久々にパパに会えるので思いっきり甘えちゃうぞ! でも今日はもう一つ懸案事項があって・・・ 「ママ心配してたよ。ちゃんと生活してるのかなって。ちゃんとご飯食べてるのかなって」 「ははは・・・大丈夫、ちゃんとやってるさ。それに俺はなのはさんより料理上手いんだぜ?」 「あ、ママが聞いたら怒るよ?でもシンパパの料理が美味しいのヴィヴィオも知ってるけどね♪」 「え・・と、ヴィヴィオ達の方こそ元気でやってるのか?その・・なのはさんも無理したりしてないのか?」 「大丈夫だよ。でもいい加減、なのはママには支えて貰えるパートナーが必要だと思うんだ。ね?シンパパ」 そうなのである。あれから三年経つというのにこの人達は中々進展らしい進展を見せずに私に歯痒い思いをさせている パパとママをくっ付ける為に奔走してるというのに当人達は空回り 子の心親知らずとはこのことだ(そんなことわざねえよ!) 「と、とにかくメシでも食いにいこうぜ。なのはさんももうすぐ仕事上がりだろ?三人で、な?」 「うん!」 シンパパは照れ屋さんなのだ。そんな仕草が見ていて可愛くはあるんだけど・・・ でも中学生じゃないんだからいい加減前に進んで貰わないと。娘の私がしっかりハッパをかけてやらねば! 「あの・・・ちょっといいですか?パパって一体・・・??」 あ、後輩君がいたのすっかり忘れてた 「ちゃんとした私のパパだよ♪今からなのはママと三人ででぇとなんだ。じゃあね」 目を点してる後輩を背に、私は夢想する 今は三人だけど、近い将来私に弟や妹が出来て家族みんなで仲良く暮らすんだ 来るべき青写真を描きながら、私はママとパパのキューピットになるんだ!と胸に決意を秘めた 3 六課解散から二年後- JS事件から始まった俺の新たな一歩から二年立った。 当初はひよっこだった俺も今では管理局の紅い悪魔と陰で呼ばれるまでに成長した。 そして… シン「ただいまー」 なのは「あ、シン。おかえり」 大事な家族も出来た。 シン「ヴィヴィオは今日友達のところでお泊りだっけ?」 なのは「うん、それにしてもあれだね。有給おりなくて残念なの」 シン「そりゃあ、この忙しい時期に俺となのはの二人のエースが同時に休んだらな」 なのは「そっか、そうだね…。それより…これから何する。ご飯にする?お風呂にする? それとも…あ・た・し(はぁと)」←といいつつシンを抱きしめてキスをする シン「んん…ふむっ!ん…、っはぁ。と、とりあえずはご飯かな」 なのは「うん、それなら今用意するね」 と、愛する妻は頬を紅潮させながらいそいそとキッチンへと戻っていった。 そして、食事の準備が終わると。 なのは「はい、あ~~~ん」 シン「あ、あ~ん」 対面ではなく俺の隣(しかも体を必要以上にくっつけて)に座り、たまにこうしてあ~んを強制される。 その表情は蕩けきっており、普段の職場での姿とは比べられるものではなかった。 さらに言うならばヴィヴィオの前でもこのような顔はしない(といっても他の人からみたら甘い顔なのだが) そう、この必要以上に甘えてくるのはシンと二人っきりでいる時のみなのだ。 元々、なのはは高町家の末っ子として産まれながら甘える親に甘える機会が少なく育ってしまった。 そして、そのまますくすく育ち現在に至った。今はシンという初めて自分の全てをさらけ出せる伴侶を得たことにより。 その反動がきたのか、必要以上に甘えまくっているのだ。今日みたいにヴィヴィオが特別な理由で家にいない日、もしくは 二人が休みでヴィヴィオが学校に言っている時、夜の時間など二人で入れると途端になのはは甘え出すのだ。 しかし、シン曰く「今日はまだ軽めの方だった」という。 この前の時は裸エプロンで今回帰ってきた時の問答をした、しかもわざとらしく胸の見せてきたりするからたまらない。 まぁ、その時は湧き上がる理性に勝てずなのはを食べてしまったのだけれども。 シン「ごちそうさん」 なのは「はい、ごちそうさまでした。じゃあ次はお風呂だね」 シン「あ、あぁ」 と強制的に風呂場に連行されるシン、もちろん入る時も二人は一緒だ。 なのは「シン、そういえばさ。シンって」 シン「ん?なんだ?」 わしわしとなのはに後ろから抱きつかれて体を洗われるシンは慣れた様子でなのはに答えた。 まぁ、押し付けられる胸の感触には今でも慣れないのだが。 なのは「シンって…お兄ちゃんみたいだよね」 シン「ぶふっ!!」 なのは「なんか…こう、おかしよね私のほうがお姉さんなのに」 シン「な、なのはぁ…」 なのは「ねぇ、シン…お兄ちゃんって…呼んでいいかな」 シン「!!」 なのは「おにいちゃぁん、私の…背中…洗ってくれないかなぁ」 シン「あ、あぁ。よし、後ろ向け」 なのは「うん…」 もちろん、この後事あるごとにシンをお兄ちゃんと呼び続けシンの理性は崩壊したというのはいうまでもない。 爛れすぎだ、自重しろお前ら。 なのは「もう、お兄ちゃんのケダモノ」 シン「ははは、ご、ごめん…ってかまだ終わってなかったんだ。その呼び方」 風呂から上がって、体を拭くと、そのまま二人はベッドに入った。無論服は着ていない。 なのは「えぇ~、普通にそう呼んじゃだめかな?」 シン「ダメってヴィヴィオに聞かれたらどう答えればいいんだよ」 なのは「もう、二人だけの時。だって私たち夫婦じゃないあ・な・た」 シン「あんたって人は~」 シンの上に乗っかり抱き付きながらいたずらっ子みたいな声で甘えるなのはであった。 なのは「ねぇ、今日はまだ寝る時間じゃないよね?」 シン「あ?もちろんだろ」 なのは「きゃぁっ」 シン「いいよな…って今更か」 なのは「お風呂で散々やって…今更だよ」 シン「なのは…」 なのは「お兄ちゃん…」 シン「って、やっぱりまだ続けるのかよ」 なのは「もちろん、そのかわり…いっぱい甘えさせてあげるから」 シン「甘えてるのはどっちなんだろうなぁ」 そういうと二人はまた顔を重ねた。夜はまだ始まったばかりだ。 ヴィヴィオ(たまには二人っきりにさせて上げないと、こっちがもたないもんなぁ…) 友達A「あれ?ヴィオどうしたの?」 友達B「まさかホームシック?」 ヴィヴィオ「いやだな、そんなんじゃないよ(今戻ったら糖尿病になるの)」
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1 ???「バン!」 シオニー「ひっ」 キラ「シオニーさんがまたいじられてる…流石にかわいそうだね」 シン「キラさんでもそう思いますか? 確かに、遊び半分でやってる人が増えてる気がします」 キラ「言い方が微妙にムカつくけど、僕も同意見だよ。それと遊び半分じゃなくて完全に遊んでるよ」 シン「…ダメですよ、こんなの。俺、やめさせてきます」 キラ「待って」 シン「何で止めるんですか」 キラ「それは効果のある方法だと思う…でもね、シン」 シン「…何ですか」 キラ「それは彼女のプライドを傷つける、そうは思わない?」 シン「プライドって…でも、こんな事が続くよりは!」 キラ「その結果、“バン!”されて“ひっ”する事は無くなった。でもそれは君のおかげで、自分自身の力で得た結果じゃない」 シン「それでも怯える事が無くなるのに変わりは無いじゃないですか!」 キラ「君はシオニーさんの事をとても思いやってはいる。けどね、それに尊重は含まれていないと思う」 シン「尊重…ですか」 キラ「彼女はプライドの高い人だよ。年下の君に庇われた事が分かれば、感謝する一方で複雑な思いを抱くはずだ」 シン「じゃあ、俺はどうすればいいんですか」 キラ「君は…いや、僕達はね、彼女に抵抗する方法を教えるべきだと思うんだ」 シン「抵抗する方法?」 キラ「“バン!”されても反応されなくなれば、皆も無駄だと分かれば、自然と“バン!”される事は無くなる。僕はそう考えてる」 シン「…確かに、その通りかもしれません」 キラ「抵抗する方法を、その力を彼女に付けさせる事。それが僕らの出来る“尊重”だと思うんだ」 シン「…キラさんって」 キラ「ん?」 シン「すごいんですね。そう言う事を、そう言う深い所まで考える事が出来るだなんて…」 キラ「べ、別に、君に褒められたって嬉しくないんだからねっ!」 シン「褒めたらコレだよ…そう言う所があるから素直に尊敬できないんですよ」 キラ「そんな事言う君もツンデレだよね☆」 シン「…」 キラ「ごめんごめん、謝るよ。だからその冷たい目はやめて、本当に怖いよ」 シン「はぁ…分かりました。それで、具体的にはどうすればいいんですか?」 キラ「僕にいい考えがある。準備は全部こっちでするから、シンは計画実行直前に合流してもらっていいかな?」 シン「分かりました」 ~次の日の早朝、計画実行直前~ キラ「と言う訳で、僕達はリモネシア外務大臣公邸、シオニーさんの寝室前にやってまいりました。 これより“寝起きドッキリバズーカでシオニーちゃんのソフトクリーム並のメンタルを鍛えてあげよう”作戦を開始しようと思います」 シン「…」 キラ「あれ、どうしたのシン? ひょっとして朝は弱い?」 シン「少しでもアンタを尊敬した俺が馬鹿だった。てか何ですかこれ?」 キラ「最初に言ったでしょ。寝起きドッキリバズ…」 シン「そうじゃねえよ! ドッキリする意味がわかんないんだよ!!」 キラ「朝から騒がないで。近所迷惑だよ、シン」 シン「チクショウっ! 何で俺の方が怒られてるんだよ…」 キラ「これは抵抗、つまり“慣れる”ための、免疫を作る作戦だよ。バズーカの発射音に比べれば、机叩く音なんて屁でもないでしょ?」 シン「理屈は正しいような気がっ…! いや、こんなのはやっぱり間違ってる…」 キラ「間違ってる…か。そうだね」 シン「えっ?」 キラ「これは間違ってるよね」 シン「キラさん…キラさんがまともな事を…」 キラ「やっぱりバズーカより戦車のがいい…ひでぶっ!?」 シン「死ね!!」 ・ ・ ・ キラ「こちらキラ・ヤマト。外務大臣寝室への侵入に成功しました、指示をお願いします」 シン「…」 キラ「まぁ誰も答えてくれる人はいないんだけどね。えっと、ターゲットは…」 シオニー「スゥ…スゥ…」 キラ「よく寝ています。パジャマはカワイイ系です…あ、口からよだれを垂らしてる。これは恥ずかしい映像だね、ビデオに撮っておこう」 シン「やめろ」 キラ「ん? どうしたの? て言うか、なんのかんの言ってたわりに、結局は付いてきたね」 シン「アンタから目を離すと本当に戦車とか持ち出しかねないから監視してるんですよ」 キラ「へぇ…でもさ、そんな事言って本当はさ」 シン「…何ですか」 キラ「女の人の部屋に入りたかったんじゃない?」 シン「な、なっ!? そ、そんな訳!」 キラ「シーッ! 図星だからって騒がないでよ。これだから思春期のチェリーボーイは困るんだよね」 シン「ぐっ…何でここまで言われなきゃならないんだよ…」 キラ「悪かったよ。ところでシン」 シン「…何ですか」 キラ「僕が準備するまでの間、探索とかしても…ええんやで?」 シン「す、するわけ無いでしょ! てか何で関西弁なんですかっ!」 シオニー「ンムゥ…?」 シン「」 キラ「」 シオニー「…ムニャムニャ」 シン「…ほっ」 キラ「…ふぅ。もう、やめてよね。騒ぐなら出て行ってよ」 シン「キラさんが変な事言うからでしょうが」 キラ「反応する方もする方だよ…反応する砲、なんてね☆」 シン (今度はコクピットを縦に斬ろう) キラ「さて、起きられると面倒だから手早くすまそう…はい、君はこれ持って」 シン「…看板?」 キラ「寝起きドッキリには必要だよ」 シン「…今更だけど趣旨を完全に見失ってますよ」 キラ「あ、カメラの方も君が持って。彼女の醜態をしっかりと収めてね」 シン「いやですよ。ここまで来て言うのもなんですけど、さすがにカメラだけはやめてあげましょう。そう言うのはここだけに留めましょうよ」 キラ「そう硬い事を言わないで。ここで硬くしていいのは上の頭じゃなくて、下の方の頭だよ…ほら、これあげるから」 シン「何意味の分からない事を言ってるんですか。大体、買収なんて手には引っかかりません…え、これって…」 キラ「そこのタンスから失敬した彼女の物だよ…ふぅ、縞々はいいよね」 シン「い、いつの間に?!」 キラ「部屋に入って君がキョロキョロさせてる間にね…僕なら君がまばたきしてる間に数と種類を把握できる。忘れない事だ」 シン「ドヤ顔で語らないでください。それ以前に社会の為に役立ててください、その力」コソコソ キラ (顔真っ赤にしながらポケットにしまいながら言っても説得力無いんだけどなぁ…) シン「な、何ですか、ニヤニヤと気色悪いですね」 キラ「別に。さて、色々話している間に準備完了…」 キラ「じゃ~ん。寝起きドッキリバズーカ、ハイマット&ドラグーンフルバーストモ~ド」 シン「」 キラ「どう?」 シン「…はぁ?」 キラ「感想が無いのは、少し寂しいかな…」 シン「いや…あの、馬鹿じゃねえの?」 キラ「何それ。小学生以下の感想だよ」 シン「いやいや、何で罵られるの? てかこれ何門あるの? それ以前にどっから出したの?」 キラ「君に戦車はダメって言われたから、質がダメなら数で対抗しようと思ってね」 シン「答えになってないでしょ! てかこれじゃ戦車の方がまだマシ…いや、どっちも無しだけど!」 キラ「シンはどうでもいい所で細かいよね」 シン「どうでもよくない所だよ! これは」 キラ「キラ・ヤマト! 寝起きドッキリバズーカフリーダム、行きます!」 シン「話を聞けぇ!」 キラ「それでも、守りたい世界が…」 シオニー「んに? だれかいるの…」ガバッ シン「げっ」 シオニー「ひ?」 キラ「あるんだぁあああ!!!」 ・ ・ ・ シン「耳が、耳がっ、耳がぁああ!」←バズーカの発射音で鼓膜に大ダメージ キラ「」←大量のバズーカ発射の反動で吹き飛ばされて壁にめり込んでいる シオニー「」←爆音で思考を吹き飛ばされている シン「ぐぉぉおっ…! し、シオニーさん大丈夫ですか!?」 シオニー「」 シン「って…大丈夫な訳…無い…ん?」 シオニー「…」 シン「このパジャマの、とある部分…主に股間部分に出来た染みって…嘘だろ、マジかよ」 ガヤガヤ ナンダイマノオトハ ダイジンノヘヤカラダ ヨシ、ダレカトビラヲ バン ッテアケルンダ マカセロー モウヤメルンダ シン「やばい、人が来る! 逃げないと…でも、このまま、この人を放置してたら」 シオニー「…」 シン「大人になって、しかも外務大臣なのに粗相をしたなんて汚名を…こんなあられもない姿を衆人に晒す事になる…」 キラ「し、シン。ねぇ、君の持ってるカメラ、まだ動いてるよ…そのあられもない姿をバッチリ撮ってるよ…」 シン「くそっ、どうすれば…」 キラ「まず僕の声を聞いて。まず電源を切って…」 シン「放って…放っておけるかよ、この人の尊厳を、この人自身を!!」 キラ「…ぼ、僕の事も放っておかないでほしいな…」 シン「シオニーさん、すみません!」 シオニー「なに…? あなたは…ひゃん?!」ダキアゲ シン「犯人はキラ・ヤマトォ!! キラ・ヤマトが出たぞぉ!!」 キラ「ちょ!?」 シン「エスケエェプ!!」 シオニー「ひぃいやああああぁあ?!」 騒ぎを聞きつけた人間が部屋に飛び込んできたのは、シンがシオニーを抱えて窓から脱出した直後の事だった。 ちなみに抱えている最中はずっと胸を掴んでいた。 これが、後に“リモネシア外務大臣誘拐事件”として世間を騒がせる一大事の、知られざる発端であった。 ~続かない 2 ――戦闘機 かつての戦争の主役を担っていたが、MSの登場以降、その座から転落した存在。 MSから戦闘機形態へと移行し、機動力を向上させる機体も存在するが、それはあくまでもオマケであって、やはりMSとしての運用に重きがもたれている。 そんな過去の遺物と言える戦闘機が、敵対行動を取ってくる。 並みのMSパイロットであれば鼻で笑うだろう。そして返り討ちにしてやると打って出るだろう。 それが一機や二機、多くても五、六機であればの話だ。 カミーユ・ビダンは、愛機であるZガンダムのコックピットの中で、戦慄に近い物を覚えていた。 眼前の宇宙空間に展開する戦闘機の、文字通りに群を成す姿に圧巻されていた。 視界を、レーダーを覆いつくす、数えるのが馬鹿らしい程の量の戦闘機の群。 一体どこから現れたのか。突如として出現した戦闘機の群は、Zガンダムに対し、その猛烈な数でもって濃密な火線を展開しながら、文字通り雪崩打って襲い掛かった。 並みのパイロットならば一瞬で打ち落とされてしまう程のそれらを、だがカミーユは悉く回避し、返り討ちにし続ける。 技量は流石であるが、多勢に無勢と言う状況には変わらない。いくら撃墜しようとも、敵の数は一向に減らない。むしろ増えているとカミーユは感じて、それは不幸にも正解だった。 高い火力を有するZガンダムでも手に余る数。MA形態へと移行し、退却すべきだと考えたが、一瞬でも隙を見せれば致命傷を負いかねない数。 大口径のメガ粒子砲や、反応弾の様な、圧倒的な面制圧力を誇る武装でもなければ、この状況を打破する事は難しい。 撃っても落としても、湯水の如く湧いてくる。恐れる事はないのか、仲間がどれだけ撃墜されようとも、攻撃の手を緩める事をしない。 戦慄はカミーユに焦りが生じさせ、冷静な思考を妨害しはじめ、ついに一瞬の隙が生まれてしまう。 「しまった!」 その隙を見逃さず、敵機はZガンダムに攻撃を仕掛けた。戦闘を開始してから、これが初めての被弾となる。 幸い撃墜には至らなかったが、このまま同じ事を繰り返してしまえば時間の問題だ。 冷静さはさらに失われ、最悪の結末がカミーユの脳裏に過ぎる。 そんなカミーユの動揺を見越してか、さらに数を増やした戦闘機が、手負いを仕留めようと襲い掛かる。 その戦闘機の群を、一条の光が撫でる様に走る。光に撫でられた戦闘機は、一瞬にして爆散する。 「カミーユ! 無事か!?」 通信から聞こえてきたのは、カミーユの親友の声。 「シン!」 カミーユの窮地を救ったのは、赤い翼を持つ一機のMS。血涙の様に両目を赤で隈取った顔を持つガンダム。デスティニーガンダム。 その背に装備された、高出力のビーム砲の一撃で、戦闘機の群をなぎ払ったのだ。 「シン、すまない、おかげで助かった」 「遅くなって悪い。それより、こいつらは何だよ。ゼントラーディなのか?」 「わからない……ただ」 「ただ?」 「凄まじい敵意だ、ゼントラーディや今までのどんな敵よりも悪意を持った奴らだ」 「話は出来そうにない……か」 撃墜された分を補うかのように、再び数を増してくる戦闘機。 NTとして研ぎ澄まされた、カミーユの勘。戦友として共に戦場にたったシンに取って、それは信頼に値し、この場での行動を一瞬で決断させるものだ。 「レイやアムロ大尉達、あとアスランがもうすぐ来る……それまでやれるか、カミーユ」 「この程度なら問題ないさ」 二機は撤退するでなく、突撃し、敵を殲滅する事を決めた。 たった二機で、友軍の到着まで無数に挑む。無謀であるが、やり通す自身は二人にあった。 「行くぞ! カミーユ!」 「おう!」 ・ ・ ・ 数で勝る敵に対し、二人は、その類稀なる技量と連携を持って劣勢を撥ね退ける。 その後しばらくして戦域に到着した、アムロやレイ達の援軍の活躍もあり、戦闘機の群はその数を減らしていく。 もうすぐカタが付く。気を抜く訳ではないが、誰もが確信を持ち始めた時だ。 「来る……!」 「カミーユも感じるか!」 「アムロ大尉、どうしたんですか?!」 「気を付けろシン、何かが起こる」 カミーユやアムロ、クワトロらのNT達が、機敏に何かを感じ取る。 その直後だ。宇宙空間が“裂けはじめた”のは。 死を恐れずに襲い掛かって来る戦闘機が、まるでクモの子を散らす様に撤退していく。 裂け目はどんどん広がっていく、大きくなっていく。空気の存在しない宇宙空間が、まるで震えている様だと、その場にいる全員が感じる そして戦闘機の姿が見えなくなった時、大きく割れた宇宙空間の隙間の中から、一つの巨大な影が姿を表す。 「さ…魚?」 無意識にシンが呟いた様に、その影は魚の形をしていた。正確に言うなら、古代魚であるシーラカンスの姿。 本物とは違い、その体は鋼鉄で出来ていて、大きさも数百メートルと桁違いのものである。戦場にいる者、全てが圧倒される。 そして鋼鉄のシーラカンスは、先ほどの戦闘機の群がそうであったように、何の予兆もなく、ただ敵意をむき出しにして、シン達に襲い掛かった。 「クソッ! 何だってんだよ! アレは!!」 「各機、回避行動に専念しろ!」 アムロの指示は自然なものだ。得たいの知れない敵に対し、無闇に仕掛けては、返り討ちにあう危険を伴う。 シーラカンスはどうでるか。大きさからして、戦闘機やMSの様に機敏には動けないだろう。だが、その図体であるなら、戦闘機やMSの持ち得ない、破壊力のある兵器を搭載している可能性が高いし、実際そうであった。 シン達に対し、シーラカンスは全身から高出力のビームを、そして自身の鱗を大量に飛ばしきた。 高速で飛んでくる鋼の巨大な鱗。直撃すればMSを一撃で破壊する程の質量を持つそれは、ビームライフルを数発当てて、ようやく破壊できる硬度。 鱗がそうであるなら、本体も同様だ。何機かが隙を見て行った攻撃を受けても、シーラカンスは涼しい顔をして宇宙を遊泳している。 責めあぐねるシン達をあざ笑うかの様な攻撃を繰り広げるシーラカンスが、一旦攻撃をやめ、その尾びれを向けてくる。 尾びれの中央が光を放つと、センサーが強力なエネルギー反応を感知する。まるで何かを警告するかのように。 「いかん! 全機散開!!」 クワトロの言葉と、尾びれからの光線の発射は同時であった。幸い逃げ送れた機体はなかった。 だが間髪をおかず、シーラカンスは再び鱗と、今度は腹部から巨大なミサイルとアンカーを発射する。 先ほどよりも、さらに濃密な量の攻撃。 それら全てが、一瞬で消えた。突如出現した黒い穴が飲み込んだのだ。 続いて、シーラカンスの前に、二機の戦闘機が飛び込んでくる。 先ほどの戦闘機とは違う、銀と青、あるいは赤色の二機。無茶だ、止めろと誰もが叫ぼうとした。 次の瞬間、銀と青の戦闘機が発した、先ほどのシーラカンスの光線と同様の出力の光線が、シーラカンスの体を貫き、胴体が真っ二つになる程の大爆発を起こす。 誰もが呆気に取られている。自分達が苦戦した敵を、突如現れたあっと言う間に倒したのだから、当然である。 「――こちらダライアス宇宙軍。応答願います」 全機の通信回線に、戦闘機からと思しき声が入り込む。無感情で抑揚のない少女の声だ。恐らくはどちらかの機体のパイロットであろう。 「……こちらは地球連邦軍、ロンド・ベル所属のアムロ・レイ大尉だ」 「地球連邦軍? ロンド・ベル?」 アムロの問いに応えたのは、先ほどの少女とは違う、今度は野太い男の声だ。やはり、二機の内のいずれかのパイロットであろう。 「聞きなれないのはこちらも同じだ。敵意はない。所属と、先ほどの敵の正体を知ってるなら教えてくれ」 「ダライアス宇宙軍のリーガ・プラティカ大尉だ……おい、どう言う事だ! ベルサーを知らないと言うのか?!」 「ベルサー、それが奴らの名前か」 「……埒があかねぇ、落ち着けて離せる場所はあるか」 ベルサー。 地球圏に現れた、新たなる脅威。 シン達はリーガ、Ti2、そしてシルバーホークと共に、新たなる脅威へと立ち向かう。
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<女王と少年、時々ラーメン~フラワーガール~> 一度目だけなら偶然だが、二度以上起こったならそれは必然である。 そんな話を聞いたことがある。 まぁ世の中には二度あることは三度ある、なんて言葉も残っているわけだから先人の言葉というのも数撃ちゃ 当たるくらいのものなのではないかとも思うが。 ただ、今ならその言葉を信じられそうだった。 陽も暮れ、空に数え切れないほどの星と心奪われるような満月が浮かぶ夜。 そういった日には、必ずと言っていいほど彼女がそこにいた。 「――貴音」 「っ、何奴!」 そして声をかける度にこんな反応が返ってくるのも恒例のこととなっていた。 「あ……あなた様は」 「あー、とりあえずこれをどうにかしてくれ」 目の前に突き出された手のひらをつっつくように指さすと、慌てて貴音は腕を引っ込めた。 「も、申し訳ありません。またこのようなお恥ずかしいところを……」 「いいって、そんなに気にしなくて」 正直もう慣れたし……というのは心の奥に仕舞っておくことにした。 「また月を見てたのか?」 「はい。やはり満月の夜は、心安らぎます」 そう言って上がった視線を辿ると、頭上に淡く輝く月の姿があった。 自分もよく月を見上げている方だと思うが、貴音は決まって満月のときにこの場所に佇んでいるようだった。 初めて会ったときと同じく。 「こんな風に声かける度に怒鳴られるのも、もう4回目だっけ?」 「そ、それは……」 自分と同じくらいの背丈の少女が縮こまっている。いつも毅然とした態度を崩さない『銀色の女王』が。 そのことがどこかおかしくて、つい頬が緩んでしまう。 「わ、笑わないでください! あなた様は……いけずです」 「悪い悪い。でも変わったよな貴音も」 「え?」 「前より、少しだけ明るくなった」 月を見上げると思い出す。初めて出逢ったとき、思いつめた表情で月を見上げ語りかけていた目の前の少女。 しかし765プロでも仕事をするようになってから、その憂いを帯びた瞳には別の輝きが宿るようになっていた。 もっとも、彼女自身と彼女たちを送り込んだ黒井社長がそのことに気付いているのかは分からないが。 「そう、でしょうか?」 「あぁ」 それっきり彼女は俯いて黙り込んでしまった。顔に複雑な色が見え隠れしているのを目の当たりにして、自分 が失言してしまったのではという不安に駆られる。 「何か、悪いこと言ったか俺?」 「いえ、あなた様は何も。ただ……己の使命を忘れてしまったわけではないにしろ、安らぎに我が身を置いてい た自分が情けなくなっただけです」 「使命?」 「私は、民たちに……」 ――くぅ。 言葉を遮るように何かが暗闇の中で響いた。 何かあったかと辺りを見渡してみるが、近くには誰も、そして何もない。 貴音にも聞いてみようと視線を彼女に戻すと、月明かりに照らされた顔には朱が差し、いつもは凛々しい双眸 もどこへ向けていいのか分からないように右へ左へと彷徨っていた。 「……あぁ」 時刻は8時を過ぎた頃。 仕事を終えてからずっとここで月を眺めていたというのなら腹の音も鳴るというものだろう。 かく言う自分も昼以降何も食べていない。つられてこちらの腹の虫まで騒ぎだしそうだった。 「どっかで何か食べてくか?」 「え? あ、いえ、それは……」 「一応言っておくけど、俺の懐に二人分食費の余裕があるのはかなり珍しいと思う」 その言葉に呆気にとられていた貴音だったが、やがて小さく笑みを浮かべて頷いた。 「それでは、馳走になります」 「よし! それじゃあどこで……」 と考えようとしたところで、視界に端に屋台が飛び込んできた。のれんにはでかでかと『ラーメン』と書かれている。 屋台のラーメンとは不思議な魔力が込められている。醤油の香りが鼻腔の奥をくすぐり、空腹と相まって一層 食欲が沸いてくる。 ――まてまて、一人ならともかく今日は貴音がいるんだぞ。 なんとか駆け寄りたくなる気持ちを押し止め、改めて貴音に声をかけようとして…… 「――らあめん」 何やらとてもうっとりとした眼差しで、先ほどまで自分が見ていた屋台を見つめる『銀髪の女王』がいた。 ・ ・ ・ ――夢の中で また包んで…… テレビから聞こえてくる貴音の歌声を聞きながら、次のオーディションに参加するための資料をまとめる。 本来ならじっくり聞きたいところなのだが、今は誰の場合でも仕事中に番組を見ることが多くなった。もちろ ん彼女たちが出ている時に限るのだが。 そしてまるで自分の代わりとでも言うように、雪歩が真剣な表情でテレビに映る貴音の姿に注目していた。 ――あなたが来た! 待ち伏せするの ――でもやっぱりサッパリ 目合わない ――ドキドキした ハートがしぼむ ――もう シュン ねぇ bad bad you! 「……四条さん、少し雰囲気が変わりましたよね?」 「ん? あぁ、そうだな」 世間からの評価もそんなものだった。765プロとのコラボによって歌う楽曲の幅が広がったことが主な要因で はないかと言われているが、なんとなくそれだけではないように思えた。 ――雲の陰から 応援してる ――早く見つけてよ王子様 ――そのときをまってる ちらりと見ただけでも、その歌う姿から発せられるもの……オーラとでも呼べばいいのだろうか? ともかくそれが以前まで感じられていた険のようなものが抜け落ちていたように思える。 昨夜と似たような感覚。だが彼女はそれをただ良しとは思っていなかったようだが。 ――ねぇ いいかな もっと笑顔送ってみて ――そうよ 指の先まで 真っ赤になるわ ――あなたが好き! だが、少なくとも自分は今の貴音の方が好きになれそうな気がした。 物腰穏やかに礼儀正しく、どこか少し変わっていて可愛げのある今の貴音の方が。 「……何考えてるんだか」 「え? 何か言いましたか?」 「いや、なんでもない」 ――胸の奥が苦しくって ええ もう! ――花になりたーい もっと ――鮮やかなカラー ……歌い終わると共に拍手が沸き上がり、司会が貴音に語りかける。先ほどまでの歌とはがらりと印象が変わ り、いつもの古風で上品さを感じさせる貴音に戻っていた。 「はぁ……やっぱりすごいなぁ四条さん。私も、あんな風に凛々しくてかっこいい人になれるかなぁ」 その言葉に、作業していた手が止まった。 「え? な、なんでシンさん笑ってるんですか?」 「い、いや! なんでもない」 脳裏に浮かんだのは、昨夜幸せそうにラーメンを食べる貴音の姿だった。 ――今までも似たようなことがあったけど、この仕事ってみんなのいろんな顔が見れるよな。 ならば、いつかは彼女の言う『使命』というものを知ることができるのだろうか? そんなことを考えながら、また満月の夜にはあの場所へ行こうと心に決めていた。 「うぅ、やっぱり私なんかが四条さんみたいになれるわけないですよね……穴に埋まって反省してますぅ」 「え? あ、違うって! 笑ったのはそういうことじゃな……雪歩!? 出て来い雪歩ーーー!!」 ……一度目だけなら偶然だが、二度以上起こったならそれは必然である。 その原因が『彼』にしろ『彼女』にしろ、 また次の満月の夜に二人は出会うのだろう。 きっとまた、出会うのだろう。 オマケ P 「ユカタメイド……それは浴衣とメイド服を組み合わせた、まったく新し衣装!」 小鳥「すごい! どちらか片方だけの2倍、いや10倍の破壊力があるわ!」 二人「「萌え的な意味で!」」 シン「馬鹿やってないで二人とも雪歩引き上げるの手伝ってください!」
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1 黒いマントに身を包む少年 ――― 最早青年と言っても差し支え無いのだが―――は、瓦礫と折り重なる人で埋め尽くされた平原を見渡す。 その身には傷一つたりとも、その装いには煤の一片たりとも無い。 よくよく耳をすませば、そこかしこから立ち昇るうめき声。 その声に、眉を動かす事もせずに、少年は物憂げに空を見上げる。 「浮かない顔だねぇ~シン」 「さくら…」 桃色のマントの少女が、いつの間にか少年、シンの傍らにて、鈴の鳴るような声を上げる。 「さっすがシン~ヒゲのご自慢の部隊が全滅だね~♪」 「雑魚と屑をいくら倒しても自慢にはならないさ」 「この人たちって一応エリートでしょう?」 常識の範囲内での、と続ける。 「精鋭だか知らないが、所詮は道場剣術と一緒さ。厄介な事件を全部六課に押し付けて温室でヌクヌクしてた報いだ」 「にゃははは、説得力あるなぁ~そうそう今『観てきた』よ」 「悪趣味」 「お髭の人が獄中で●●な事になってた。あれはもう完全に×××になってるね~」 「何だ、レジアスのオッサン、存外脆いな」 「ルルがどさまぎに裏でやってた悪事ぜ~んぶバラしたからね」 「ルルーシュも相変わらず容赦ねぇ…流石だけどさ」 『ナイト・オブ・Ⅶ』の名を持つ友人の顔を思い浮かべる。 一瞬、苦笑にも似た笑みが浮かぶが、すぐに消える。 「心配?」 「まさか、レイも刹那も負けないさ」 「ハマーンさんは?あの四騎士相手だよ?」 「それこそ有り得ない。あの人はⅠだ。負ける筈が無いさ、ヴォルケン如きに」 「む~~その絶対的な信頼に嫉妬」 「何だそれ」 「って、そうじゃなくて、楓は?」 「楓はラウンズだ。バリバリの戦闘型じゃなくてもキャロ相手でサシなら負けるわけ無い」 「ラウンズは皆S以上だもんね」 「ああ、だから負けないさ」 「ふ~~ん、ま、私も楓の心配はしてないんだ・け・ど~~」 「もって回った言い方は止めろ」 苛立ちが混じるシンの声に、少しも慌てる事無く、微かに呆れたようにさくらは溜息を吐く。 「あのピンクちゃんは?」 「………」 微かにシンの表情が曇る。 「俺が敵の心配をするとでも?」 「楓の容赦の無さはラウンズで一、ニを争うよ?」 「だから…?」 「………ハァ……頑固だね」 「フン……」 「そんなに気にするくらいならいっそ攫ってきたら?鳥篭にでも閉じ込めちゃったら?」 「下らない事言うな。キャロは妹みたいなものだ。下衆な勘繰りはするなよ」 「妹ねぇ~」 兄と妹があんな『顔』で見つめ合うものなのかなぁ、とさくらは呆れたようにシンを横目に見る。 少なくとも、あの少女はこの赤目の少年を兄とは思っていない。 それこそ、蕾とも言えない、まだ芽が出たばかりの感情であろうが。 鋭い楓はそれに気付いたのだろう、だからこそ珍しく前線に志願した。 兄妹であれば、いつものようにラウンズの仲間を見送り、食事の支度をして帰りを待つなり、いつでも援護に出られるように控えるなりしているだろう。 さくらが、しばし思考に耽っていると、電子音が響く。 シンは携帯に出ると、幾らかの言葉を交わして、電話を切る。 「さくら、ハマーンさんからだ」 「何だって?」 「目的のものは全て回収。ヴォルケンの連中は死なない程度に痛めつけておいたってさ」 「うわ……あの人基準の痛めつけておいた…か…大丈夫かなぁ…」 「一面火の海だろうよ。さ、行くぞ。さっさと合流するぞ」 「りょ~かい」 シンとさくらの姿は風に溶けるように消えていった。 2 「何で……」 剣を持った少女は目の前にいる自分よりも幼い少女に苛立っていた。 その少女は少女の剣により傷だらけになってもまだ倒れずに立ち上がって来る。 「何で倒れないんですか!!これだけやっているのに……」 「私は倒れません!……シンさんを取り返すまでは…絶対に!!」 傷だらけの少女……キャロの眼はその幼い年齢ながら実年齢以上の強さと意思を持っていた。 その姿勢が剣を持つ少女、楓の神経を逆撫でしていた。 何でこんな子供が…… 現実を受け入れようとしない我侭なこんな子供がシンを惑わせる。 「気に入らない……」 「!」 「アンタのその眼が気に入らないって言っているんだ!!!何でアンタなの!?何で私じゃなくてアンタなの!」 「……え?」 楓の感情が決壊するかのように暴発する。 「アンタもあの人と同じ、私の好きな人を奪う……でも、今度は奪われないためにアンタが消えればいいんだ!!」 「キャロ!」 「お前達の相手は俺だと言っているのが分からんのか?」 フェイトはキャロの所に行こうとするが、レイに阻まれてそれ所でない。 エリオの方もスバル、ティアナと共に刹那に苦戦を強いられ、キャロを助けに行く事ができない。 「しかし、拍子抜けだ…これまでも幾つもの事件を解決して来たと言う噂のエース3人の実力がこの程度とは…飛んだ期待外れだな……」 3人は所々、ダメージがあるに対して、レイの方は全くの無傷だ。 「そんなに余裕があるのなら、我々の相手もして貰おうか?」 「!?」 背後からの自身に向けられた殺気に反応し、その場から離脱する。 先ほど、レイがいた場所に数本のナイフが飛んで来る。 レイがなのは達とある程度距離を取ると4人の女性が現れる。 女性は少女が2人となのはらよりも年上と思われる女性が2人。 服装は4人とも同一のものであった。 「ドクターの情報通りね。」 「貴様らは…確か、ナンバーズと言ったか?」 「我々を知っているとは…」 「お前達の事はナイト・オブ・Ⅳから聞いているからな。……だが、それ故に貴様達もそこの3人同様、消えて貰おうか。」 「消えるのは姉ではなく、お前の方だ。お前を倒してシンを連れ戻す。」 「やれるものならやってみるが良い。……そして、自分達の無力さと甘さを呪え。」 「なら、その言葉をそっくりそのまま返してやるわ。」 レイは表情を崩さず、体中からは更なる憎しみの渦が溢れ出る。 手に持つ剣に力が更に篭る。 「予定外の介入……!?」 刹那の方も予定外の乱入者達に驚きを隠せない。 それはエリオ、スバル、ティアナとの間に立ちふさがった5人の少女。 「ナンバーズ!?どうしてここに…」 「シンが奴らに関ってるって事をドクターから聞いた。」 「あたしらもシンのことを追っていたッスけど、何の手がかりなく困っていったッスよ。」 「予定外の介入だが、ミッションの支障はない。」 「てめぇ、あたしらを舐めてんのか?」 「……この程度の連中を相手にできなければ、“ガンダム”の名を称する資格はない。」 刹那も依然としたまま、表情を変えない。 「消えろぉぉぉぉ!!!!」 「私は…………絶対に負けません!!」 シンを救いたい……シンを助けたい…… キャロの決して諦めようとしない。その強い不屈の意志に応するかのように彼女に変化が起きる。 そして、脳内で何かが弾け飛ぶような光景が見える。 それは少女の瞳と全く同色の種子。 そこからキャロには楓の振る剣はスローモーションに見えるほどとても遅く見えた。 「遅いです!」 「!!」 キャロは楓の一撃を回避。 だが、楓は間髪を入れずに続けざまに剣の連撃を放つ。 しかし、その連撃もキャロは最小限の動きで全て避け切る。 「動きが急に変わった……!?」 楓はキャロの表情―正しくは、キャロの瞳―を見て驚愕する。 彼女の瞳はハイライトが消失していた。 キャロの方も自分の変化に戸惑いを隠せずにいる。 当人も自分に何が起こったのか分からないでいた。 だが、1つだけ分かった事がある。これなら目の前に少女にも対抗できる。 「行くよ、フリード!蒼穹を走る白き閃光。我が翼となり、天を駆けよ。来よ、我が竜フリードリヒ。竜魂召喚!」 キャロの声と共にフリードは白銀の竜となりて、その姿を現す。 「これが……」 「行きます、私は、機動六課ライトニング04!キャロ・ル・ルシエ!行きます!!」 少女は白き龍と共に愛する者を救うために立つ。 その感情は芽生えたばかりのとても小さな物…… しかし、芽は成長し、天にも昇る巨木へと姿を変える。 3 なのは「シーン」 シン「なのはさん、どうしたんですか?」 なのは「もう、シン。約束忘れちゃったの?」 シン「あ、いや、その・・・やっぱり恥ずかしくて・・・」 なのは「もう・・・はい、もう一回」 シン「あの、その・・・な、なのは・・・」 なのは「なぁに?あなた」 シン「ちょ!なのはさん!!?」 なのは「あー!またさん付けしてる・・・」 シン「あ、すいません」 なのは「いーもん。シンがさん付けしなくなるまで甘えるから」 4 フェイトの場合 フェイト「シ~ン」 シン「フェイトさん?」 フェイト「シン、付き合いだしたんだから呼び捨てでいいのに~。」 シン「あ、いや。やっぱり恥ずかしくて・・」 フェイト「もう。今日は買い物に付き合ってね。」 シン「はい。」 フェイト「二人っきりの時は敬語はやめてほしいな。(耳元で言う。)」 シン「あ・・う・・。(顔真っ赤。)」 その後フェイトはシンの腕に抱きつきながら買い物をしたという。 買い物の後、夕飯を食べフェイトはシンも食べたらしい。 5 コロコロ・・・ シン「ん?」 ?「シン!シン!」 シン「ハロか、こっちの世界では見たことなかったな・・・ん?」 なのハロ「アタマヒヤソウカ!アタマヒヤソウカ!」 フェイハロ「ソウダネ!ソウダネ!」 はやハロ「シン!アイシテルデー!」 シン「うわあぁぁぁぁぁぁ!」
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12 「まったく本当に頼りになるぜ」 ある時は、獣のように標的の群れを崩し。 ある時は、獣のように味方の群れを守る。 まさしく戦場に現れるためにシン・アスカは生まれたようなものだ、とエドは直感的に感じた。 『ですな』 と、エドのソードカラミティの後ろについてくるシビリアンアストレイJGCからジェニーもそれに応える。 ほかの分隊隊員たちもリラックスしたいい感じだ。 もう“本命”との距離はそこまで離れてはいない。 偵察隊の調べてくれたデータを幾度か見直すが間違いない。 このまま予定通りに移動できれたならこちらと海賊の“本命”の戦力差は――約5対1。 必勝の戦力差と陣形を作りだしている!! 恐ろしい。 あえて表からははっきりと弱点とわかるように穴をつくり、裏ではその弱点こそに殲滅の罠をしく。 そして勢いを殺したところで必勝の陣形と戦法で一気に決着をつけるこの戦法。 “相手からみた警戒度”を推測する深山の狩人のような観察眼。 それからキャンパスに模様を描くように罠を作り出す想像力。 「これがおっさんと渡り合った戦術か・・・」 まったくもって末恐ろしい・・・・。 コーディネーターは過信の過ぎるものじゃなかったのか? と、味方ながらに恐れた。 「!」 光る何かを発見。 送られてくる海賊のMSの位置データと照らしわせる。 プロトペラタンクを装備したザクウォーリア2機と、ゲイツアサルトシュラウド2機。 ゲイツアサルトシュラウド。 火力、推力、装甲の強化を目的に開発された追加オプションユニットを装備したゲイツEである。 上下可動できるスラスターをバックパック側面の推力偏向スラスター2基が撤去された箇所に設置。 胸部、肩部、前腕部に対ビームコーティングを施した装甲が追加。 MA-MV05 複合兵装防盾システムから新たにビームガン2門を増設した対ビームシールド。 ビームライフルの代わりに装備した右手の大型のレールバズーカには散弾を装填(シールドの裏に予備マガジンを装着)。 脚部にはスラスター内蔵の追加装甲に3連ミサイルポッドを設置(使用後脱着可能)。 画面の一部を拡大――バーニアから光を吹かしながら移動する“本命”である海賊を確認。 このあたりの宙域はNジャマーの影響が強い。よってまともに索敵や通信はできない。 エドたちが普通に通信できるのは機体の側頭部についている量子通信用アンテナがあるからだ。もちろんそれは一般にも軍隊にも出回っているものではいない。 情報能力の有利さは戦闘において何よりも強い。このことは戦争の歴史が証明していることだ。 「そんじゃ。俺は俺の仕事をするとしよう!」 ソードカラミティが右手が背中のゲシュベルトベールの柄を握り、掴み取る。 左手は柔軟な行動がとれるようにあえて空にしておく。 「よし、“傘”を開け!!」 巨大な『光の傘』が――モノフェーズ光波シールドが展開される。その巨大な『光の傘』を支えているのはマっシブなシルエットの――量産型パワーシリンダーのシリビアンストレイJGCだった。それと同時に、普段は“隠している数”のMSたちが姿を現す。 今このまま戦闘に入れば被害を出さずに海賊たちを殲滅できるだろう。 だが。 「警備隊各員に告ぐ!」 『!』 警備隊員たちに心の準備をさせ。 「ブッ放すぜ!!」 ソードカラミティはその胸から猛る獣の咆哮のようにスキュラを放つ。敵には当たってはいない。 その光の咆哮は4機のゲイツにソードカラミティの存在を、“『切り裂きエド』の存在”を知らしめた。 四面楚歌、という言葉がある。 その昔、古代中国の楚という国の軍隊が敵を包囲し、歌を歌うことで敵に包囲されたことを教えた戦術からきた言葉だ。今はまさにその状況。 もしくは。 前虎後狼、だろうか。 前門には集中砲火の用意ができた難攻不落の要塞。 後門には5倍の兵力差と、さらに『切り裂きエド』。 量でも、暴力的に勝てるはずもなく。 質でも、実力的に勝てるはずもない。 どちらにしろ。 悪夢。 まさにその一言である。 そしてエドワード・ハレルソンは叫ぶ。 「お前たちに逃げ場はない!! 死にたくなかったら投降しな!!!!」 まだ誰も傷つかなくてもいい可能性がある。 エドはまだその可能性を捨てはしなかった。 『・・・・・・分かった。投降する』 観念した成人した男の声が公開チャンネルから聞こえてきた。どうやらこの声の主が“頭”のようだ。 『各員、武装を解除』 その声とともに4つの1つ眼から灯が消えていく。 「・・・ふう。お利口さんで助かったぜ」 そしてこのまま緊張の中で海賊は武装を解除していく、そう思った。 だが。 思っていたその時。 『オイッ!! 武装を解除し――』 その時、2機いたゲイツアサルトシュラウドのうちの片方のモノアイが突然光り。頭の男の乗ったゲイツアサルトシュラウドのレールバズーカの砲身を対ビームシールドの先端から発生させたビームサーベルで切りつけた。 『!?』 「!?」 そして今度はレールバズーカをシリビリアンアストレイJGCの集団の密度の薄い箇所に打ち込み、突撃するようにバーニアを吹かして、広げた“穴”を目指した。 「各員コックピッドを守れ!!」 エドの指示により、混乱していた警備隊の者たちは混乱の中。 シールドでコックピッドを――自分を守るという行為のみを精一杯に行動。動くことすらできなかった。 何も言わず。 何も言わないからこそ、不気味に映る逃亡していくゲイツアサルトシュラウドから警備隊の全ての者が自ずから遠ざかっていき。 ゲイツアサルトシュラウドの逃亡は成功した。 『撃つなアアア!!』 戸惑うザクウォーリアのパイロット達。 発砲は止められたが、2つのビーム突撃銃は逃げていくゲイツアサルトシュラウドに構えられたまま、だ。 構えたまま、ということは、撃つ可能性がある、と捉えるのが当たり前だ。 そして、そんな危険な可能性をもった者たちを排除するのも、当たり前だ。 『待ってくれ! アイツは雇われ者だ、俺たちはこれ以上戦闘をする気はない!!』 見るとそこには迫ってくるソードカラミティ、標準をつけ始めるシリビアンアストレイJGC達のビームガン。 『くッ!!?』 どうする!? ただただそれだけを数瞬のうちに精一杯考えた。考え、答えを出さなければ、部下が死ぬ。最初に指揮をとる自分が殺されて、後にコーディネーターとはいえ混乱状態になった部下たちが殺されてしまう。 『ク・・・ッ!!』 ゲイツアサルトシュラルドは、全ての追加ユニットをパージ。 さらに両手を広げ、コックピッドを開け。 なんと。 「ッ!?」 ノーマルスーツを着て両手を上げたパイロットがコックピッドから出て身をさらした。 『……これで、信じてもらえるか?』 助からないかもしれない、という可能性を・・・・・・頭にいれ・・・・。 それでも・・なお、部下を生かす可能性に・・・賭ける。 「信じよう」 その姿をエドは信じた。 祖国のために闘った男の魂と、敵とはいえ部下の命のために巨大な剣と無数の銃の前に身と命をさらす男の魂の高潔さに幾寸の違いがあるだろうか? 撃ちあわない。 血を流さない。 無駄な死人を出さず、この戦闘は自分の背中についてくる者たちを思う2人の男の判断によって終わりを迎えた。 この男の判断により、数分後、シン・アスカによって見つかる海賊船の組員達は命を拾った。 不明になったパイロットの名は、アチ。 シン・アスカの殺したセイブとランセの妹だった。 彼ら兄弟は妹の身を買い、妹を自由にするための費用のためにここに来た。その結果、シン・アスカとの戦闘によって死亡。 だがシン・アスカを遅らせて妹を生き残らせる、という目的は完遂。 それは誰も知られぬ、最期まで妹を想った兄2人の勝利ともとれた。 13 鋼の巨人たちは帰っていた。 「・・・・」 どうやらガイア2ndがその参列に戻ったの最後の最後だったようだ。 いつもの動作を戦闘の後でも難なくこなし、ハンガーに固定。 ガレージハッチが閉じていくのをゆっくりと見ていた。 閉じて、ようやくこの無限に広がる宇宙に限定的にだが人を安心させる空間が安定する。 「ふう・・・・お疲れさん」 暗くなったコックピッドの中でモニターの頭を撫でながら労いの言葉を言った。 その言葉はもちろん、さっきまで命を預けていた相棒に送った言葉だ。 自分がこのコックピッドから出ればすぐにでもメンテが始まるだろう。 まったく修理代・メンテ代・武装代・エネルギー代・推進剤代・・・・その他諸々が“込み”ではないというのは正直言って辛い。契約書はちゃんと読むべきだった。 しかも、取引をする者のなかには胡散臭い者までいる始末だ。 まったくこっちはできる限り稼いでおきたいのに・・・・戦争屋も楽じゃない。 ボーナスが欲しい。 チッ。 やっぱ、ギャラを稼ごうと思えば金持ちや大企業と契約を結ぶのが手っ取り早いな。 「・・・・ん?」 !? 俺は今・・・・どんな“価値観”を持っていた? 「へっ・・やっぱし――」 『シン、お迎えだ!』 突然モニターが光ったと思ったら文字が映し出されてすぐに消えた。どうやらあの音声は止めたらしい。 というより、本当に怖いから突然文字をを映し出すのは止めろと言いたい。心臓に悪すぎる。 「生きてる!?」 今度は突然コックピッドハッチが開いた。 開いた瞬間に光が入り込んできた。シンは左手で目に入り込んでくる眩しい光を遮った。 次の瞬間にはノーマルスーツを着たディエチが飛び込んできた。ディエチを遮るものは存在しなかった。 「ウワットオ!?」 「骨は折れてない!? 実は破片が刺さってったのは無しだよ!?」 心配そうな顔をしてディエチは呆気にとられるシンの体を急いで調べた。 8から中途半端に情報を聞いていた分、色々な妄想をしてしまい恐かったのだ。 「・・・・良かった。外傷はない」 ほっ、と一息。本当に安心したのだということが一目で分かる仕草と表情だった。 「気分は悪くない?」 「・・・悪くはないけど。ちょっと疲れた」 そうは言ったものの。 シンの相手をしたゲイツハイマニューバ―の2機。2機いれば部隊を攪乱できた。 その2機を己の策に乗せるための演技。 それらの猛攻を引きつけ続けるための精神力。 どれほどの集中力が必要になろうか。 三日三晩休まず行軍できる体力をもつシン・アスカがたった1戦でここまで疲労しているのがその証拠だった。 「そう。でも一応医務室へ行こ・・・」 ディエチは見上げてシンの顔を見ようとした。すると・・・・ 「見るな」 そこには2つの畏るべき眼があった。 まるで血の凍るような眼、というよりもさらに凍てつく。 まるで血を凍らせてつくった氷のような紅い眼だった。 そしてその紅い氷には引き込まれそうな妖光が煌めいている。 そう。以前にディエチが恐れた殺人者の目がそこにあったのだ。 だが。 「大丈夫。大丈夫だから・・・ね」 ディエチは受け止めた。 戦闘とは忌むべき行為だ。 殺人とは嫌うべき行為だ。 今回の襲撃において唯一戦闘で殺人を犯したシン・アスカは独りのみ。 よって警備隊の人間たちにさえも心の中で忌み嫌われ、誰にも理解されず、シン・アスカは孤独になる――はずだった。 それをディエチは救った。 『孤独』から救った。 孤独という敵には、どんな最強の矛も盾も意味を成さない。 孤独という痛みは、どんな覇者をも死へと誘うものである。 それをその心身で知っているからこそ、ディエチにはシンを救いたかった。 無論、それだけの器をただで手に入れたわけではない。 悩んだ。悩み。迷い。苦悩し尽した挙句に、そこまでにいたる器に至ったのだ。 それを誰にも気付かれないように表には出さなかったのは、目の前の男の為・・・・。 「・・・・わかった。」 シンは悲しく悔やんだ。 この娘にここまで強さと覚悟を強制してしまったことへ。 だが確かと心の闇を振り払ってくれたことを自覚している。 「ならよく見て覚えておいてくれ。これがもう、元には戻れない最悪の加害者の目だ。」 そう言ってヘルメットを外す。 するとよりいっそう眼の妖光は冷たく煌めく、だがその表情はなんとも切ない。 それでもディエチは揺るがない。 揺るがない、そこに美しさがあった。 「君は・・・・」 「私はもう、人に向けて引き金を引かない」 その眼には、引き金を引けないのではなく、引かない覚悟がそこには確かとあった。自生の運命と闘い続ける強い覚悟が。 「・・・・ただいま」 切ない表情で、何にも考えずに出たシンの言葉。 「お帰り」 だがそれ以上にそれを包み込むような優しい微笑みでディエチは迎えた。 「さっ、一応検査しとこ。早く早く」 そう言ってディエチはシンの腕を引っぱってコックピッドから出た。 「ははっ・・引っ張るなよぉ」 口からはそんな言葉しかでなくて、でもやっぱり本心では引っぱってくれるその手が嬉しかったんだ。 ようやくシン・アスカは笑った。 それを見てディエチは安心した。 だが。 次の瞬間、ディエチの表情は固まった。“覚悟していなかったもの”を見たのだ。 無残。 無残にもコックピッドのみを抉られたMSが2機横たわっている。 シン・アスカが撃墜したゲイツハイマニューバだ。 「・・・・」 そこに人が乗っていたのだろう、と考えディエチは目を伏せた。 「“あれ”、俺がやったんだ。」 だからどうしたんだ? というのが俺の本心だった。そこに一片の罪悪感もなければ一粒の涙の気配すらもない。 今回の報酬、そこに命の価値の存在なんてなかった。 金になるものが金になっただけの現実。たかがそれだけだ。 だけどやっぱり。 必要なんだよ、金が・・・。 そんな俺を汚いと、理想という麻薬で頭がオシャンになった人間は思うかもしれない。 けれど。 けれどもし。 もし、その金で万が一に俺が死んだあとでディエチの明日が買えるのなら安いもんだ。 今さら天国行きの切符が買えるわけじゃないしな。 運が無きゃ死ぬ、それがあの場所だ。 だから運があるうちに稼ぐ、たかがそれだけの道理。 キレイごとなんて、“クソ食らえ”ってヤツだ。 「・・・・そう」 だけどそんな道理、ディエチには“知ったこと”じゃないんだよな・・・。苦しいんだろうなあ。 それらの言葉を交わすうちに冷たい床に着地。 そして・・・・ 「?」 ディエチはゲイツハイマニューバに向かい、目を閉じて頭をほんの少し下げ、手を合わせていた。 祈っているように見えた。いや、見えたのではなく何かを祈って・・・・。 悼んでいた。 「勝手なことをしてごめんなさい。」 俺が尋ねるより先に、ディエチは謝った。 こちらを向かずに浮きながら祈りながら謝った。 「そいつらは“敵”だった奴らだぜ?」 その質問は意地が悪いと自分でも正直そう思う。 けど確認したかった。中途半端なキレイごとなのかどうかを。 自己満足のためにやっているのならそれは最悪的に性質(タチ)が悪い。 「・・・・分かっているよ。けどだからって、一度でも目を背けたり、しょうがないんだって思ったりしたら・・・・上手くはいえないけど、取り返しのつかないことになるんだって分かるんだ」 顔は見えない。 けどその声には強い意志があった。 そう返事を聞き、シン・アスカもまた体を向けた。 悔みはしない。できないから。 悼みはしない。できないから。 ただ一言。 「お前たちの連携はキラ・ヤマトとアスラン・ザラの連携を凌ぐものだったッ!!!」 その言葉はディエチだけが知る。 シン・アスカが自らが散らせた敵に送った唯一の華だった。 「ディエチ。頼みがある」 俺はあえて顔を向けなかった。それが本心からの頼みだったからだ。 「祈ってくれ。安らかに眠れるように――こんな言葉しか添えられない・・俺の代わりに」 “慣れた”俺にはもう、罪悪感が無い。 本心がないのなら、それこそ自己満足・・・自己満足ですらない、ただただ虚しいだけの動作だ。 嘆くべきところは多分そういう考え方なんだろう。 悩むべきところなんだろうけど、無くなったものはもう無いと割り切ったほうが楽だ。 というより、いくら求めても、もう・・・・取り戻せないんだ。 ギュリッ・・とシンが悔しそうに拳を握る音を隠してくれる音は静かなその空間には存在しなかった。 「うん」 ディエチは小さな背中で返事をした。 14 「戦闘中の1人の勝手が仲間の死を招く! しばらくはMSの搭乗禁止だ!」 こだまするエドの怒号。 そしてエドの拳によって倒れるライ。 エドの拳は痛かった。心と体の一部、殴ったエドと殴られたライ、計4つの意味で痛かった。 その迫力は大の大人でもビビりそうだ。いや、ビビッていた。そしてライゴを心配しながら見守っていた。 ライはエドの見下すエドの視線から目を背けた。恐かったから。 だがエドの瞳は怒り以外の何とも言えぬ表情も表し、それはライの位置からでしか見えない。 もし仮にライがエドの瞳を見ていたら、エドの心のどこか深い部分を理解できていたのかも、しれない。 だが恐かった。 責められることが。 自分の行動がここにいる全員を危険にさらしてしまったことを理解してしまうことが? 否。 それ以上に。 誰かの父親である誰かを死なせ自分のような孤児をつくりだしていたかもしれなかったことを理解していくことが。 怖かった。 「反省してろ!!」 「・・・・はい。申し訳ありませんでした」 エドは分かりやすいぐらいに怒りながら出て行った。 「!?」 ライは、グルグルグルグルと永遠に続くのではないかと錯覚するような朦朧とした頭の中でキィィー・・・・と響く金属音のような音に耐えながら言葉をなんとか、なんとか絞り出す。 すると。 お父さんの声、お母さんの声、兄さんの声、オヤジの声・・・・聞いたことのある死んだ人間の全ての声がライの名前を呼んできた。 怒った声で。 「ライ!」「ライっ!」「ライゴ!」「ライゴオオ!」「・・・・ライ」 呼んでくる! 木霊する! 雷鳴のように大きく!! 夜の海風のように続き続ける!!! ライは先ほどの緊張からくる疲労から一度だけ、目蓋を閉じてしまった。 「う・・あ・・・くぁ・・」 その自分を悔やんだ。 「大丈夫! 大丈夫だから・・・ッ!」 姉ちゃんだ。姉ちゃんの声だ。 おぼろげだった体の感覚も戻ってきている。 両手の感覚だけがしっかりと感触を伝える。 姉ちゃんが手を握ってくれているんだ。 ミランダの心配しているその声と手の触感は、その吹き荒れる暗い嵐の中で灯台のように正気に導いてくれた。 「ハっ・・!?」 ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、・・・・・・と異常なほど短く荒い呼吸を過呼吸になるほど繰り返し、力を込めて目蓋を閉じて再び開くと、数回繰り返すとガレージに戻っていた。 目の前にはミランダがいて。 両手でライの右手をどこにも行かないように掴んでいた。 オヤジも・・・・“あっち”に逝ったんだ・・・。 そして2人目の父親はもう死んだのだと、この時に自覚した。 嫌な汗がべっとりと冷たくなって全身を冷やしていく。 まわりには大人たちが心配そうに囲んでいたし、「大丈夫か?」などと声をかけているの者や、「一人で立てるか?」と手を差し伸べる者いた。 ジャンク屋の多くは元は戦災孤児の者が多い。だからこそ多くの者が温かい。 だがまだ誰もライ自身もライの本当の心の闇には気付ぬふりをし、手を出さなかった。 踏み込めなかった、とも言う。その痛みを知っているが故に。 「・・・・姉ちゃん」 泣きそうなミランダの顔を見て心が締め付けられる。 「もうっ! 心配させて!」 ミランダは抱きしめた。 愛情を表現するために。 涙を見せてライにこれ以上無茶をさせぬために。 だが。 「・・・・ラ・・イ?」 「・・・・ゴメン。・・・ごめん、姉ちゃん」 力の無い腕。 力の尽きた手で、力ミランダの腕を振りほどき。 「・・・・・・・・ごめん。1人にさせてくれ・・・・」 力なく去っていく。 ミランダは動けなかった。 言葉を出すこともできず。 ただ茫然と――また自分は孤独になってしまったんだ、と見送ることしかできなかった。 「・・・・ごめん。ごめん」 なにも分からずに。 なにも分からないから。 どこかへ行かなければ、ミランダを傷つけるかもしれない――という恐れからミランダから離れた。 それが一番ミランダを傷つけるということも考えずに・・・・。 15 シンは着替えてとディエチは医療室に向かう途中。 エドは取り調べ室に向かう途中。 「あ」 とシンとエドは廊下で顔を見た瞬間、同時に声を出した。 あの交叉した瞬間から、ようやく再会したのだ。 数秒後、気を取り直し。 真っ直ぐな瞳でお互いを見て、無言で互いが近づき。 ガっ、とお互いの右拳をぶつけた。そこにはもうすでに、絆と呼ぶに足りる信頼関係が築ていた。 「それにしても悪かったな。お前1人が汚れ役になっちまった・・・・」 拳を下ろしてエドは苦い顔で言った。 いくら確信があったとしても、あの状況でシンを1人に押し付けたことには罪悪感があった。 「何言ってるんです。今回、俺たちは1人も犠牲者を出さなかった。俺たちの“勝ち”です!」 シン・アスカは思う。 はたして自分はエドのように事をもっていけただろうか、と。 無理だ。 損害を限りなくゼロに近づけ続けられたのはエドワード・ハレルソンだからこそだ。 互いが自分にできることをやり通したからこそ、今回は誰も死なずに済んだのだ。 「こちらこそ、ありがとうございました。」 シンは頭を下げて礼を言った。 それはライゴを助けてくれた事。ライゴの“あの種”を覚醒させなかったことだ。 「気にすんなよ」 まいったな、という疲れた表情をしていた。 「あの・・ライゴは?」 「修正した」 エドはライを殴った己の拳を見てさらに苦い表情をした。 エドだってあんな少年を殴って気分がいいわけがない。 だが規律だ。 規律がなければ集団は生きてはいけない。 集団でいなければ弱者は生きてはいけない。 「そうですか」 内心、ほっとした。 シメシをつけたというよりかは、“ちゃんと叱ってくれた”ことにたいして。 「けどまあ。・・・胸糞わりいいぜ」 エドはライの左手を握っていた自分の掌を見て眉間にしわを寄せる。 MSに乗れる――だからどうした? 何のために大人はいるんだ! というのが心の叫びだった。 「なあシン。俺からも――頼みたいんだがな・・・あのガキの面倒、見てくれねえか?」 伏せていた視線を上げ、エドはシンを見る。 「え?」 「あのくらいのガキに必要なんだよ、なんつうか・・・・親父や兄貴の背中ってもんが」 後頭部を右手でかきながら言い難そうに・・・・。 「俺もかまってはやりたいんだが・・・お前にしかできない、ような感じがするんだ」 しかし、それでも真っ直ぐに言う。 「・・・・すいません」 シンは少し頭を下げ・・・・何かが喉に詰まっているように断った。 「そっか・・・・すまなかったな。なら話題を変えよう。」 引きずらない。 たった一言で終わらせる。 ねちねちしないこともこの男の好かれる理由なのだろう。おかげでシンは解放された気分になった。 「あの高機動型ゲイツのパイロット達は強かったか?」 「強かったですよ・・・。あいつらの実力なら一個中隊の攪乱なんてのも可能でした。」 一個中隊を攪乱できる2人組と撃破できる1人の対決。 だからこそお互いが、ここで命を奪っておくべきだと行動した。 「確か・・・・『サーカス』出身だとか、言ってましたね」 「『サーカス』?」 「プラントで親から捨てられた子供を引き取って兵士にするエース養成機関ですよ。プラントには捨て子が多かったんです。」 「? 確かコーディネーターは子供が生まれにくいはずじゃあ・・・」 子供は大切、なはずだ。なのに? と疑問ができる。 「そのことが発見される以前は、髪の毛やら顔やら容姿がコーディネイト通りじゃないという理由で子供を手放してたらしいですよ。ま、今でもその『サーカス』ってのがあるのかどうかは分かりませんがね」 あの2人以前にも2人殺したことがある。 死ぬほど努力すればどんなコーディネーターでもエースになれる――そのことを実践した厄介な組織だ。 「ふうん・・・・。ろくでもないことをするっていう点じゃあコーディネーターも、結局は人間のままってわけかよ」 呆れてため息が出る。 「新しい人類」とは前々大戦であちらが言っていたが、結局は人類・・・・なんにも変っちゃあいない。 「まあ、海賊の尋問は俺がやっとくから、お前は彼女と検査に行ってな。」 ふと自分の仕事を思い出す。 シンの仕事は次に備えて休むことだ。 「あ、俺も行きますよ!」 「・・・・何をして尋問するのか話してみろ。できたらソフトに」 ウ~ンとうなってからエドはシンに聞く。 「とりあえず焼けた太い針金を指と爪の間にブッ刺します。そのあとは爪を剥いでいって、その次に指を切り落として――」 「OKOK分かった! それ以上言うな! 聞くだけで痛くなる!!」 エドは耳を塞いで怒鳴った。 やりかねない、この男ならやる。それだけはわかった。 「でもただ、人死にを嫌った戦術だけは評価します。」 「・・・・」 呆然とするエド。 「どうかしましたか?」 「いや・・・」 安心した。シンに敵を正確に評価する能もあることに。 「!」 エドは置いてけぼりになったディエチの存在に気づいた。頬を膨らませてジト目でシンを睨んでいる。 シン、後が恐いぞ・・・・。 「今度ビールでもおごらせろよ! このこのォ!」 「あたたたた!」 コブラツイスト。 レールガンの衝撃を受けた体に対して。 「かはぁ・・・」 返事が無い。どうやらただの屍のようだ。 「そんじゃあなあ!」 じゃれるだけじゃれ、いつもの陽気な雰囲気になったと思ったら去っていった。 「なんだか嫉妬しちゃうな」 宙に四つん這いのかたちに浮くシンに対して、ディエチは近づいてジト目で見る。 「ん。何が?」 ディエチの視線が恐い・・・・目を合わせないでおこう・・・・。 「さっき・・・・私置いてきぼりだった」 「あ・・あー・・・んんー・・・・」 ようやく後悔。後悔後先たたず。 ただ悩んだ。 男同士のこういう付き合いは楽しくて、つい夢中になってしまう。 「仕事の付き合いなんだ。分かってくれよお」 なんだろう。いつだったか、父さんも同じようなことを言っていたような・・・・。 あの夜見た土下座の真意を俺はまだ知りたくない。 「どう見ても子供同士のじゃれあいだったッ」 「う~~ん~~・・・・ディエチがいじめるぅ」 「なにか言った?」 「なんでもないです・・・・」 小さくうなるシン。 さっきのお返しとばかりにせめるディエチはジト目でうりうりとシンの頬を指で突っつく。 ディエチは若干活き活きしてる。つまりはニヤついて楽しんでいるのだ。 ジト目で見つめられ、ニヤつかれ・・・・ほんのちょっぴり背徳感・・・・。 主人公よ、最初のSなお前はどこへ行った? 「でもいいや」 「はへ?」 「シンさん。さっきのコワイ雰囲気が抜けているし」 そういえば、と思い返す。 エドワード・ハレルソン、心(シン)から南米の風を吹かせる不思議な男であった。
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キャラ設定 シン・アスカ(男)年齢二十四歳 本作の主人公。 第三京都大学法学部卒業後、大手企業総合商社オーブに入社。 欧州課資材調達班に配属後目まぐるしい活躍を見せる。 元々成績は並であったが、幼馴染で現上司であるアスラン・ザラに負けたくない一心で勉強し、 府内でも有数の進学校に合格し、アスランに対抗するように進路を選んだ。 性格はぶっきら棒で案外流され易い性格をしているが、それなりに芯は強い方。 思い込んだら引くことを知らない性格は長所でもあるが短所であった。 上記の事から割と根に持つ性格でもある 運動神経は良く大学ではアメフト部に在籍。 ポジションはワイドレシーバーでパスを受ける人。 クォーターバックであるレイとのコンビネーションは抜群で、赤服や運命等と言った恥ずかしい異名を取る程の実力だったとか。 因みにチームは中堅で弱くも無いが格別強くも無かった。 幼馴染のルナマリアとは気がつけば深い仲になって居たが、距離が近すぎた二人は、お互いの気持ちを尊重し過ぎ、結果としてその関係は歪な物となってしまった。 煮え切らない毎日を送るシンの前に突如現れた二人の女性。 八神はやてとティアナ・ランスターによって、シンの人生は大きく変わって行く事となる。 レイ・ザ・バレル(男)年齢二十四歳 女王陛下のお膝元のやんごと無き血筋のお方。 両親からバレル(撃ち払う者)の家名に加えレイ(斬り開く者)の称号を 名づけられた一族期待の星だったが、何の因果か出来上がったのは特定個人 に熱すぎる友情を向けるホ○だった。 因みにご先祖様は物量攻撃と大砲至上主義の騎士に取って有るまじき貴族で、戦場では外道の名を欲しいままにしていた。 勝てば官軍の好例。 シンの事を生涯の友と認め、彼の為に日夜東方西走する困ったちゃん。 彼にホ○と言うと「これは深い友情だ!そんなヤマシイ関係では無い!」 と話を懇切丁寧な大演説を三時間位聞けるので、勇気がある方は試して見ると面白い。 でも、勇気と無謀は違う。 ルナマリア・ホーク(女)年齢二十五歳 シンの元カノ。 中学時代は、アスランに目移りした時期もあったが、幼馴染の特権を活かしシンの恋人の座を手中に収めた女の子。 だが、些細なすれ違いから、シンとの蜜月に終止符を打つ事となり現在に至っている。 本人は未練たらたら。 ミニスカに常人では計り知れない情熱を傾け、寒風吹き荒む日本海でもお婆ちゃんに なろうとも彼女はミニスカ道を貫くのだろう。 彼女にとってミニスカとは最早呪いの領域である。 二次コンのBL好きだがそれ以外は非常に常識人。 三次元のヤヲイは汚いと公言しており、実生活にBL趣味は持ち込まず、 姉御肌な一面も有り男女ともに人気は高かった。 でも、三次元のヤヲイが好きだったらどうなっていたかは神のみぞ知る言った所。 見て分かる通り、ボンキュッボンでスタイル抜群。 学生時代はチアガールに没頭し青春を捧げる。その巨乳と脚線美で空を舞い多く野郎を虜にした。 だが、残念な事に彼らにルナマリアの気持ちは向く事は無く、彼女の全てはシン・アスカへと向いていた。 ティアナ・ランスター(女)年齢十六歳 元々ドイツに住んでいたが、とある目的の為に来日し京都で舞妓をやっている少女。 アスランに連れられて来たシンと運命の邂逅を果たす。 性格は努力家で冷静沈着と思われがちだが、目的の為に手段を選ばない事が等、苛烈な一面も多く、 案外に情にほられ易く結局人を見捨てる事の出来ない難儀な性格の持ち主。 誰も居ない所で苦労を背負い込み、勝手に内圧高めて自爆してしまうタイプ。 性格は3期準拠。 もう少しツンツントゲトゲ分多めで、簡単に言えばツンデレ配合比率8 2くらいで。 八神はやて(女)年齢二十歳 ちょっと大人なはやて。 後見人から資金援助を受け、両親が残したお座敷を守っている少女?。 自身もお座敷に立つ事もあるが、彼女の本分は経営者である。 座敷の他に幾つから雑貨屋などを経営しているようだが、殆どは人任せらしい。 性格は温和で人見知りしない陽気な性格だが、何処か影のある印象が否めない。 アスラン・ザラ(男)年齢二十七歳 ザ・近所のお兄ちゃん。 運動に勉強と非常にハイスペックだが、妄想癖が激しい為に色々困った想像を常に考える付ける割とニッチな人。 本人は無自覚だが、人生と言う名の荒波を巧く乗りこなせる世渡り上手。 平たく言えば物事に便乗するのが真に巧いが、その性格を自分自身快く思っていないため必要以上に苦労する人種。 結局プラマイゼロのトントンな人生を楽しんでいる。 カガリを更正させたが故に、彼女の人生を責任を持って面倒見る事にしたらしい。 どうにも行動原理が極端な人。 カガリ・ユラ・アスハ(女)年齢二十六歳 現在まで名前だけの人。 大学時代は家庭環境の複雑さに荒み、弟とドンジャラのコンビ打ちで罪も 無い人から金を巻き上げていたダーティガールだった。 そんな背中が煤けていた人生をアスランの無限の正義パンチで更正させられ、以後彼に全幅の信頼を置いているとかいないとか。 結構嫉妬深い。 舞台設定 舞台背景は2008年現代に順ずる。 国家間の相関図も現代世界準拠とする。 正し技術レベルはCE世界に該当するので、現代よりも遥かに進んでいる。 工事現場では土方のおっちゃんが作業用MSレイスタに乗ったり、警察仕様に改造されたダガーに乗った 警察官が、賃金引上げデモの警備に借り出されたり、廃棄物13号と熾烈な戦いを繰り広げたり、日本海をアークエンジェルが 平気な顔して沿岸警護していたり、北○道の自衛隊演習場でストライクがアグニをぶっ放している世界。 もっと具体的に言えばアフガニスタン等ではテロリストに鹵獲されたジンとウィンダムがドンパチやってたり、 アメ○カ海軍所属のミネルバが太平洋のど真ん中での陽電子砲の試し撃ちを某過激環境保護団体にすっぱ抜かれお偉いさんの 首がすっ飛んだり、弾丸を曲げる事の出来る暗殺者が、自分探しに頑張ったり、ゴッサムシティでは超大金持ちが財力に鎌掛けて 正義の英雄をやってたり、ア○リカの地方都市では正体不明のエイリアンが仲間を日々仲間を増やす事に没頭し(核で焼き払われたり) 南米のアマゾンの奥地では、プレデターが戦士の誇りを胸に日夜自爆したりと前半はともかく色々騒がしい舞台設定となっている。 この調子でいけば喋る自動人形や吸血鬼や魔法使いも居そうだが、残念ながらシンの周りには現れていない。 でも、婦女子と○モと舞妓は居た。 八神SAAAAAAN!-01へ進む 一覧へ
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1 なのは「子供かー・・・」 はやて「うん?なのはちゃんどうかしたん?」 フェイト「なんかあったの?」 なのは「うん。なんかね、シン君の子供産みたいなーって」 シン「っぶーーーーーーー!!!?」 ヴァイス「うわ!こらシン、きたねーだろ!?」 シン「いや、その・・・すんません・・・って、なんでいきなりそんな話になってるんですか!?」 なのは「え?なんかおかしかったけ?」 はやて「いや、なのはちゃんいきなり話飛びすぎやろ?」 なのは「なんで?シン君と私の愛の結晶が欲しいって言ってるだけなのに・・・」 フェイト「気持ちはものすごく分るけど・・・ぶっちゃけ過ぎだよ、なのは」 なのは「うーん・・・とりあえずクリスマスプレゼントはシン君の白いおたまじゃくしを1億から2億ほどもらって・・・」 シン「なんで確定なんだよ!?あと具体的過ぎるぞ!?」 フェイト「え?それだけでいいの?」 はやて「あ、はへ?」(リアルな話についていけなくて赤面中) なのは「え?量ってそんくらいなんじゃないの?ねぇ、シン君」 シン「当たり前のように俺に聞いてくるな!!あと、セクハラで訴えるぞ!?」 なのは「大丈夫。得てしてこういうのは男性が悪いから」 シン「ジェンダーフリーは嘘かよ畜生!!」 フェイト「あのね、なのは。一回でいいの?」 なのは「?どういうこと?」 フェイト「あのね、夜から朝までシンとぐちょぐちょのねとねとになって。もう、何処までが自分の肌なのか分らなくなるまで交じり合って もうシンの形を覚えこまされて、その形だけを受け入れられるようになるまで整形されて・・・」 シン「おいこら!!なにを公共の場で話してんだあんたはーーーー!?」 フェイト「人類の繁栄について?」 なのは「生命の神秘について?」 シン「ダーウィンに謝って来いこの二人!!」 なのは「まぁ、なにはともあれそれもいいよね・・・って、はやてちゃん?」 フェイト「あれ?はやて、どうしたの?」 はやて「あうあうあうあうあう・・・」(生生しいのを想像したらしくオーバーヒート中) なのは「あちゃー・・・完全にゆだってる・・・」 フェイト「はやてって、いざ生々しい話になると、いきなり弱くなるもんね・・・」 なのは「あ、シン君。というわけで今晩あけておいてね」 フェイト「今夜は寝かせないぞ?」 シン「いい加減にしろ!!」 なんとなくイメージで、普段はセクハラとかしまくりのはやてだけど、いざ受けに廻ると弱いイメージががががが ついでに余談です。 ヴァイス「・・・」 エリオ「どうかしたんですか?ヴァイスさん」 ヴァイス「いやな、よくよく考えたらクリスマスに来るには2月14日あたりに種を植えておかないといけないなーとおもってな」 エリオ「はぁ・・・」 ヴァイス「ま、お前はルーテシアとキャロに呼ばれてるんだろ?がんばってこいよ」 2 シンとなのは達は幼馴染 ~クリスマス。あるいは平行世界の可能性~ 小学生時代です。 シンなのフェイはやアリすず「「「「「「メリークリスマ~ス!!」」」」」」 シン「ふぉれにひても・・・ふぃふぃふぁりふぁな・・・(それにしても・・・いきなりだな)」 アリサ「ちょっと!口の中のものは食べてから喋りなさいよ!!」 フェイト「うん。本当にいきなりだね」 なのは「でも、シン君だってパーティしたかったんでしょ?」 すずか「なのはちゃんもフェイトちゃんも、よくわかるね・・・」 はやて「あ、わたしもわかるで?」 アリサ「そ、そのくらいわたしにだって・・・」 シン「んぐ・・・んで、どうしてまたいきなりこんな時期にクリスマスパーティ?もう正月間近だろ」 はやて「確かに・・・てか、パーティーするっていうて着てみれば、パジャマパーティやもんな・・・」 アリサ「兼クリスマスパーティーよだって仕方ないじゃない。家もすずかの家もクリスマスは忙しかったんだもん」 なのは「あー、確かに・・・アリサちゃんの家もすずかちゃんの家もすごいもんねー。クリスマスとか、大変そうだったし」 すずか「うん。だからね、クリスマスに皆と一緒にいられなかったから・・・」 フェイト「今日は、その代わり?」 アリサ「そ、そういうこと。でも、お手伝いさんも大変だから・・・簡単にパジャマパーティーにしようって話」 シン「ふーん・・・で、男の俺が呼ばれた理由は?」 アリサ「べ、べつにいいでしょ!?あんたを仲間はずれにするのも気が引けたからよ!!それだけよ!!」 なのは「アリサちゃん・・・」 すずか「あははは・・・」 はやて「なんというツンデレ・・・」 フェイト「シンは来たくなかった?」 シン「そんなこと言ってないだろ?でも、正直男が俺一人って言うのもな・・・」 シンの寝巻きは柄の入ったTシャツに短パン。 簡単なものでは在るが、逆に使い古されたが故の着崩しが成されており、鎖骨とかモロ見えである。 はやての目が爛々と輝き、なのはがチラ見し、アリサは赤面しながら、アリサが首筋を、フェイトが鎖骨を凝視している。 シン「・・・なんだか、視線を感じるんだが・・・」 はやて「気のせいや」 なのは「気のせいだよ」 アリサ「じ、自意識過剰じゃない!?」 すずか「ねぇシン君。ちょっと首筋舐めていい?ちょっとだけ、舐めるだけ、ちょっとだけだから」 フェイト「シン、鎖骨がかっこいいね」 はやて「あ、せやったらわたしも!!」 シン「・・・お前ら、ぶれないな・・・」 なのは「にゃ、にゃははは・・・でさ、シン君。わたしのパジャマはどう?」 ピンクの可愛らしい典型的なパジャマ。 普段は両サイドで結われている髪を解いているために、常とは違うなのはの雰囲気。 年相応といえばそれだけだが、上目遣いという追加攻撃が入り込む。 シン「あぁ、かわいいんじゃないのか?よくわからんが・・・」 なのは「むぅ・・・誉められてるのになんか腹が立つの・・・」 シン「じゃあどうしろって言うんだよ・・・」 アリサ「なんか誉め言葉がおざなりよね。いい加減っていうか」 はやて「しかし、あれやな。なのはちゃんのくるぶし、なかなかに味わい深い・・・」 すずか「それはなんか・・・違う気がするよ?」 フェイト「あ、このレース可愛い。いいな・・・なのはわたしのは・・・」 フェイトのパジャマは少女らしさがあまりない実用本位のもの。 色はモスグリーン。 レースも 柄も入っていないが、逆にフェイトの年不相応になりつつあるからだと、容姿を際立たせている。 シン「いや、いつものフェイトだろ?」 なのは「ちょっと変わってるよね。モスグリーンだし」 アリサ「ていうか、シン。あんたはなんでそういう風に無感動なのよ?」 シン「んなこと言われても、たまにこいつ家にとまりに来るぞ?ご近所だからとかいって」 アリサ「な!?」 フェイト「えへへ・・・」 はやて「今、凄い勢いで女の友情に亀裂が入った音が・・・」 すずか「ふぇ、フェイトちゃんは中身が可愛いから、逆に新鮮だよね」 すずかのパジャマは薄い紫のワンピースタイプ。 柄も百合が薄く入っているというもので、かなり上質なものと一瞥で分る。 ちなみに、激しく動くとチラリが起こるというはやてが歓喜した一品。 はやて「わたしの一押しや」 シン「お前は少し自重しろ」 なのは「でも、本当にキレイだよね」 フェイト「うん。お姫様みたい」 アリサ「当然でしょ?だってすずかなんだもの!!」 シン「なんでお前が偉そうなんだよ・・・」 すずか「えと、シン君。どうかな?」 シン「・・・また俺かよ・・・」 アリサ「はん。あんたしか男がいないんだから仕方ないでしょ?光栄に思いなさい」 シン「んだと!?」 はやて「まーまー。んで、シン。ご感想は?」 シン「いや、感想って言われても・・・だー!!もう、普通に似合ってる!ドキドキした!以上!!」 はやて「なるほど、後ろから襲い掛かって食い散らかしたい・・・と」 シン「お前は本当に自重してくれよ!!な!?」 はやてのパジャマは以外にも黒。 完全に男物に見えるが、ぶかぶかで元から小柄な彼女を更に小さく見せている。 袖や裾を折っても手足が殆ど隠れてしまっている。 はやて「どや!!」 なのは「なんだろう。普通に可愛いのに違和感感じてしまうの」 アリサ「これもギャップって言うのかしらね」 すずか「でも、普通に可愛いよね」 フェイト「黒・・・わたしのイメージカラーなのに・・・」 シン「お前はなんで悔しがってんだよ・・・」 はやて「んで?シンの感想は?」 シン「つか、なんでそんなにぶかぶかなんだよ・・・」 はやて「あー・・・ほら、わたしちょっと前まで下半身が動けれんかったやん?せやからなるべくゆったりしたのを・・・」 シン「・・・ガチねたかよ・・・」 はやて「ま、今度可愛いの買いに行くの計画中や。んで?似あっとる?」 シン「お前って、本当に小さいよな・・・」 はやて「胸のことは聞いてない!!」 シン「誰が胸の話をした!?背だよ!身長のことだよ!!」 はやて「いやいや、まさか今のは『俺がお前の胸を大きくしてやる。お前は俺専用の愛玩』」 アリサ「言わせないわよ!!はやて、少しは乙女の自覚を持ちなさい!!」 アリサのパジャマは映えるような黄色。 大輪のひまわりを思わせる鮮やかな色彩にふんだんにレースがあしらわれている。 まさしく彼女のような快活な少女には相応しい。 すずか「アリサちゃん。そのパジャマお気に入りだよね」 アリサ「ま、イエローはわたしのラッキーカラーだしね」 なのは「うー・・・黄色って着こなすのが難しいのに・・・うらやましい」 シン「単に自己顕示欲が強いってだけだろ?」 アリサ「なんですって!?」 シン「なんだ?図星か?」 アリサ「な、なによ!!似合ってないって言うの!?」 シン「似合ってないなんて言ってないだろ!?」 アリサ「じゃあ可愛くないっていうの!?」 シン「はぁ!?いきなりなに言ってんだ!?」 はやて「はいはーい。んで、シン。アリサちゃんのパジャマは可愛いか可愛くないか。どっち?」 シン「んなもん!可愛いにきまって・・・・あ」 アリサ「な、なにいってんのよ!?」 はやて「はいはい。ツンデレツンデレ」 フェイト「はやて、今なんで二回言ったの?」 すずか「多分、大事なことだからじゃない?」 なのは「あとそれから二人いるから二回言ったとおもうの」 フェイト「???」 ◆□◆□◆ シン「にしても・・・今年ももう、おしまいか・・・」 フェイト「はい、シン」(シンにポッキーを差し出す) シン「お、サンキュ」(そのまま差し出されたポッキーを口に運ぶ) はやて「せやねー・・・いろいろあったなぁ・・・」 なのは「そうだね。あの事件から一年・・か・・・」 フェイト「そういえば、シン。ショテル達はどうしてるの?」 シン「あぁ、あいつらなら今は監査中だってさ。速けりゃもう少しで猶予期間らしいけど・・・」 なのは「けど?はい、ジュース」 シン「あぁ、なんか、闇の書関係での解析もやりたいって話だから、どうなることやら・・・」 フェイト「そっか・・・早く会えるといいな」 アリサ「もう!皆、今日はクリスマスパジャマパーティなのよ!?湿っぽい話は禁止!!」 シン「・・・振り替えだけどな」 アリサ「空気を読んで突っ込みなさい!!」 はやて「んじゃ、なに話す?恋話?」 アリサ「ちょ!?はやて!!」 フェイト「わたしは、別にかまわないよ?」 なのは「ふぇ、フェイトちゃん!!」 すずか「えーっと・・・さすがに、その男の子(好きな人)がいるまえで恋話は、ちょっと・・・」 はやて「なーんや、しゃーないな」 フェイト「わたしはね、シ・・・」 なのアリすず「「「すとーーーーーーっぷ!!!!!」」」 フェイト「もが!?!」 シン「ん?どうかしたのか?」 なのは「にゃ、にゃははははは。なんでもないよ!?うん、なんでも」 アリサ「そうよ、なんでもないのよ!!」 すずか「うん。大丈夫だよ!?」 シン「・・・だったらなんでフェイトを押さえ込んでるんだよ・・・」 はやて「シン。察せなあかんで、これが女の戦いなんや」 シン「・・・お前はなんでそんな死地に送る戦友を見るようにしてあいつら見てるんだよ・・・」 はやて「気にせんときって、そういえば・・・シンはクリスマスプレゼント、なにもろうたん?」 シン「俺か?俺はまぁ、アレだな。ローラースケート。色は赤だけど」 なのは「へー今度見せて欲しいの」 シン「あぁ、いいぜ。てか、それが中々面白くてさー。思わず一日中走り回っちゃったよ」 アリサ「一日中って・・・どんだけ走り回ってるのよ・・・」 シン「後もう少しで風の王になって空の玉璽(レガリア)を手に入れれるような気がするんだ!!」 すずか「あはは、シン君はまりすぎだよ」 アリサ「てかさ、あんただったら空自由に飛べるんじゃないの?」 シン「いや、なんてーか。空を飛ぶのも面白いけどさ、普通に自分の足で蹴る感触が在るのに速いのって中々はまるんだって」 フェイト「だったらわたしは棘の王に・・・」 すずか「もしくはうちの学校の女子の制服着てジュエルシードの回収を・・・」 はやて「んで、なのはちゃんは何もろうたん?」 フェイト「むぅ・・・」 すずか「ちぇ・・・」 なのは「わたし?わたしはね。お父さんとお母さんから新しい携帯かってもらったんだ!!」 すずか「え?みせてみせて・・・あ、これ最新機種だ!!」 アリサ「へー・・・凄いの?」 なのは「うん。これはね、今までに無かった機能を詰め込んで、なおかつバッテリーももつっていう触れ込みなの!!」 すずか「おかげで値段が跳ね上がっちゃってね・・・いいなぁ・・・」 なのは「今度一緒に改造しようよ」 すずか「いいの?」 なのは「うん!!」 シン「・・・女子の会話って、こんなんだっけか?」 フェイト「えと・・・わたし、よくわからないかな?」 はやて「ま、二人らしいっちゃらしいわな」 アリサ「まったく・・・二人とも、性能よりも外見だと想うんだけどなー・・・」 シン「俺はどっちでもいいよ」 フェイト「シンって、欲しいもの以外は無頓着だもんね」 シン「ほっとけ」 なのは「あ、あとね。お兄ちゃんからなんかお札もらったの」 シン「札?あの人から?」 アリサ「なにあんたいきなり不機嫌な声だしてんのよ・・・」 フェイト「シン、なのはのお兄さん苦手だもんね」 すずか「・・・そのお札、どうしたの?」 なのは「シン退散ってかかれてたから速攻で燃やしてきました」 はやて「ですよねー」 シン「そういえば、はやては何をもらったんだ?」 はやて「え?わたし?」 アリサ「こら!シン!!」 なのは「シン君・・・デリカシーがないの・・・」 フェイト「シン・・・」 はやて「ふふふ・・・それはなぁ・・・って、なんでみんなドン引きしてるん?わたしかてもろうてるよ。グレアム叔父様から」 フェイト「あ、そっち?」 なのは「びっくりしたの・・・」 アリサ「あんたがまったく空気を読まないせいよ」 シン「なんでだよ!?てか、グラハムさんのことお前ら忘れてないか!?」 なのは「・・・そんなことないよ?」 フェイト「わたしは、シンが覚えててくれるから」 シン「こらまてや!!」 はやて「まぁまぁ、シン。グレアムさんも悪気があってのことやないし・・・んで、わたしがもろうたんはな。ボールペンや」 アリサ「また渋い趣味ね・・・」 はやて「せやなー。でも、ものごっつ書き易いんやで!?もう、すらすらすらーってな!!」 すずか「ちょっと見せてもらえる?」 はやて「うん?かまんよ。はい、これ」 すずか「・・・はやてちゃん。これ、万年筆・・・」 はやて「へ?そうなん?」 アリサ「・・・しかもこれ・・・一本10万するやつじゃない・・・」 はやて「ふーん。すごいんやねー」 シン「お前・・・軽いな・・・」 はやて「だって、グレアム叔父様からもらったものなんやもの。値段なんて関係あらへんよ」 シン「・・・お前、シリアスだといい事言うよな」 はやて「ひど!?」 フェイト「えと、わたしはね・・・シンと一緒なんだ」 アリサ「え?ローラーブレード?」 シン「あぁ、こいつ俺が買いに行く時に一緒に来てたんだ」 フェイト「ちょうど一緒だったしね。練習も一緒にしてたんだよ?」 はやて「ほう・・・」 なのは「あ!そういえばガチエアートレックしてるとかいう噂が・・・」 すずか「・・・シン君もフェイトちゃんも運動神経がいいもんね」 アリサ「・・・いいなぁ・・・」 シン「ま、あと少しで俺とフェイトの合体技であるグングニルが・・・」 フェイト「ちなみに、わたしのは黒色だよ?」 なのは「でも、フェイトちゃんの能力的には雷のじゃないの?」 フェイト「だって、シンのつがいがよかったんだもん」 アリサ「・・・この子は・・・はぁ」 すずか「本当に、フェイトちゃんは一途だよね」 なのは「わたしも、負けてられないの」 はやて「ま、最後に勝つんはわたしやけどな!!」 シン「なんの話してるんだ?」 フェイト「今度また練習しようね、シン。わたしが、シンを羽ばたかせるから」 なのは「シン。翼は一枚じゃ足りないよね?」 アリサ「今度わたしもやるから、付き合いなさいよ」 すずか「わたしもちょっとはがんばれるからね」 なのは「アリサちゃんはなにもらったの?」 アリサ「わたし?わたしは・・・」 すずか「アリサちゃんは、帽子もらってたよね」 アリサ「ちょ!すずか!?」 シン「帽子?どんなのだ?」 すずか「ほら、シン君がよくかぶってる」 シン「あぁ、あれか・・・でもあれってそんなに高いもんじゃないぞ?いや、値段は関係ないけどさ・・・」 アリサ「そ、そうよ!!わたしみたいなお嬢様があんな低俗なものを買うんだから、逆にこんな特別な日じゃないとだめなの!!」 シン「低俗って、おいこらあれは俺のお気に入りなんだぞ!!」 アリサ「う、うっさい!!ばか!!」 はやて「・・・んで、真実は?」 すずか「うん、あれってさ、実はすっごいプレミアものらしいの。たった一年。しかも販売数が1万にも行かないレベル」 フェイト「え?でもシンけっこう普通にもってるよ?」 すずか「そうなんだけど・・・めちゃくちゃ人気のデザイナーが、最後の最後に限定販売。しかも通販とかじゃなくて自分自身で気に入った人にだけ。 おかげで価格は高騰し続けて、そのデザイナーが死んでから更に倍。もう定価がかすむくらい・・・」 なのは「ちなみに幾らくらいなの?」 すずか「・・・車が二、三台買えちゃう・・・」 はやて「なん・・・だと?」 なのは「それにはびっくりなの・・・」 フェイト「すごい・・・」 すずか「おかげで、アリサちゃんのお父さんも大変だったみたい」 はやて「知らぬは本人ばかりなり、とはこのことやな・・・」 はやて「そういうすずかちゃんは何もらったん?」 すずか「わたし?わたしはね・・・新しい工具」 シン「・・・工具って、お前これ以上なに欲しがってたんだよ・・・」 なのは「む、シン君。工具にもランクがあるんだよ?安くても使えるっていうのは確かにベストだけど、モノには限度があるの」 すずか「うんうん。その通り。でもこれで色々できるよ」 フェイト「工具・・・どんなの?」 すずか「ナノからマイクロレベルでの微細加工を可能にする電子線照射装置」 シン「・・・なんだそりゃ・・・」 アリサ「魔法の言葉よ。ばーか」 シン「なんだと!?お前だってわかってないくせに!!」 アリサ「あんたよりは分かってるわよ!」 なのは「すずかちゃん、けっこう高いでしょ?あれ」 すずか「TEM観測装置よりは安いよ。あれ一台一億だし・・・」 フェイト「すご・・・」 シン「そのいくらかでいいから分けて欲しいぜ・・・」 すずか「あ、シン君ならできるよ?」 シン「まじで!?てか、冗談なんだから本気にするな。親友(ダチ)から金せびるなんて最低だろ」 すずか「ううん。違うよ。シン君がわたしのお婿さんになればそれで全部解決だもん」 シン「さらっと爆弾発言してんじゃねーよ!!」 すずか「ふふ・・・ばれちゃった」 シン「ったく・・・」 アリサ「・・・今のすずか、本気だったよね」 はやて「まちがいないわ」 なのは「今、なんかボイスレコーダーいじってたの」 フェイト「すずか、恐ろしい子・・・」 すずか「残念・・・」 ◆□◆□◆ シン「ふぁ~・・・眠い・・・」 はやて「そろそろええ時間やしな、ねよか」 アリサ「えーもうちょっと話しましょうよ」 すずか「もう、アリサちゃん。明日も遊べるんだし、ね?(シン君の寝顔を見るチャンス。そして添い寝に・・・)」 なのは「そうだよ。それに、逆転しちゃうと学校始まってからきついよ?(シン君の寝顔を最高の角度で・・・そして添い寝)」 フェイト「うん。大変だもんね(シンの寝顔を見ながら寝るなんて、久しぶりだし・・・)」 はやて「うし、んじゃシンの隣はわーたし!!」 シン「って、だーもう!抱きつくな!!」 フェイト「あ!はやて!!!」 なのは「っく!!車椅子からの押し倒し・・・さすがなの!!」 アリサ「・・・っあ!!」(今色々と気がついた) すずか「アリサちゃん・・・」 なのは「じゃあシンの右となりはわたし!!」 アリサ「まった!!パーティー主催者権限により。シンの隣はわたしの場所!!」 すずか「じゃあ、わたしは場所の提供ということでその逆側」 なのは「ひ、ひきょうなの!!」 はやて「あーあかんわー。下半身が動かんわーやっぱこういうときは男手がないとつらいわー(棒読み)」 アリサ「今更そんな棒読みで言ってもだめ!!」 すずか「てことで、なのはちゃん。交代」 フェイト「じゃあ、わたしはシンの上に・・・」 なのはやアリすず「「「「その手があったか」」」」 シン「だー!!もう、お前らおちつけーーーー!!」 ???「ふふふ・・・真打は遅れて現れる・・・今この瞬間こそ、選択のとき・・・!!」 ???「ふぇ!?なんでわたしまで・・・」 はやて「な!?だれや!?」 なのは「声はすれども姿は見えず、なの」 シン「この声・・・まさか・・・」 フェイト「!?皆、あそこ!!」 すずか「机の上!?」 デス子「そう・・・真打登場!!」 リインⅡ「さ、さむいのです・・・」 デスティニーは妖精のような体に赤いスケスケのネグリジェ。 えぐすぎず、かと言って幼すぎない絶妙のバランス。 妖精のようでありながら、その実巨乳な彼女の武器を最大限に生かしているといえるだろう。 デス子「ふふん。まさしく魔性の女。大人の魅力・・・艶やか女、艶女(アデージョ)!!!」 リインⅡは・・・下着姿であった。 否、正確には下着だけではない。下着だけではないのだが・・・ はやて「・・・なんでリインは裸なん?」 デス子「あ、それは違います。ちゃんとシャネルの5番つけてますから」 シン「モンローかよ!?」 リインⅡ「こ、この時期にこれは自殺行為なのですーーーー!!」 はやて「あぁ、リイン可哀想になぁ・・・こんなに震えて、下着姿で・・・しかもシャネルの5番・・・ うし、これからリインのパジャマはこれでいこうな。可愛いし」 リインⅡ「マイスター!?」 デス子「ふふん、どうですかマスター?他の小娘には出せない大人の魅力・・・まさしくこれこそ・・・」 シン「この・・・どあほ!!」 デス子「ほぎゃ!?」 なのは「おーちょっぷなの」 フェイト「手加減なし・・・ちょっとうらやましい・・・」 すずか「えっと、その心は?」 フェイト「え?シンって、本当に気心を許したら容赦しないから・・・それくらいシンの信頼を受けてるのがうらやましいから」 アリサ「な、なるほどね・・・ちょっとびっくりしちゃったわ・・・」 フェイト「うん・・・でも、いいな、ドSなシン・・・」 デス子「痛い痛い!!痛いですって!!マスター!!」 シン「だーもう!お前はちょっと説教だ!!」 デス子「あ、だめでっすって!!そんなところ持ったら脱げちゃう!!服が脱げちゃいますって!! こんな公開プレイなんて・・・興奮しちゃうじゃないですか!!」 シン「・・・よし、ガチ説教開始だ」 デス子「え?マスター?や、やだなーちょっとしたおちゃめじゃ・・・ぎゃー!! やめて、それだけは・・・だれかー!!たすけて・・・・あーーーー!!!!!!」 なのは「シン君。ティスちゃん連れて行っちゃったね・・・」 はやて「ちぃ。ギリギリでかわされてしもうわ・・・」 アリサ「ふ、ふん!!別に悲しくなんてないんだからね・・・ないもん」 すずか「残念だったね。あと少しだったのに」 フェイト「ティスちゃん・・・いいなぁ・・・」 なのはやアリすず「「「「・・・え?」」」」 ちなみに、この番デスティニーの苦痛の声はとどまることが無く。 次の日には何故か魂を抜け出させながらも恍惚とした表情のデスティニーが発見されたが、 何が起こったのかは、誰も知らない。
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ここは宇宙(そら)に浮かぶ城。シン・アスカは城の一角にあるテラスで、銀髪の少女アンゼロットと見えるのであった。 ゴシックなドレスに身を包み、ティーカップを傾けるアンゼロットは、可憐な女の子にしか見えないが、「守護者」としてこの世界を守る使命を持っているのだ。 アンゼロット「というわけで、シン・アスカさん、これから言う私の質問に、ハイかイエスで答えてくださいね」 シン「……いきなり訳わからないぞ。しかもそれ、質問になってないし」 アンゼ「先行しているウィザード達と協力して、ちょっと世界を救ってきてほしいのです」 シン「ず、ずいぶんと大きい話だな。『ウィザード』でもない俺が役にたつのか?」 アンゼ「ええ、もちろん。彼らにシンさんが加わればとても楽しそうですから」 シン「へ?」 アンゼ「いえ、今の発言は気にしないように……。それにシンさん、私達もあなたの力になれるかも知れないのですよ」 シン「何です、それは?」 アンゼロットは優雅にティーカップに口をつける。そして、彼女のお気に入りでもある、あるウィザードの事を話す。 アンゼ「先行しているウィザードの一人、柊蓮司(ひいらぎ れんじ)さん。彼は人呼んで『下がる男』と呼ばれています」 シン「……『下がる男』?」 アンゼ「詳しくは言えませんが、彼の『力』ならば、あなたを悩ましている女難も、少しは「下がる」かも知れません」 シン「その任務、やらせてください(←即答)」 シン(女難が減るのなら多少の危険は…! それに世界を守る為に、俺の力が役に立つと言うのであれば望むところだ) ためらいのないシン。だが、これが悲(喜)劇の幕開けになろうとは、露知らぬ彼であった……。 アンゼロット「いいお返事です。では」 ニコリと微笑みティーカップをテーブルに戻す。すると…… シン「うわ!? 何なんだ!?」 いきなり現れた屈強な男たちに捕まり、連れ去られていくシン。そのまま連れられていった場所は、シンがよく知っている場所に似ていた。 宙に向かってレールが延びる。そう、MSの発進カタパルトである。ただし、人間サイズの……! 『シン・アスカ、発進シークエンス、スタート』 無機質なアナウンスの声とともに、ガチリとシンの足が床に、いや射出プレートに固定される。 シン「ちょ、ちょっと待て! 外れない!?」 部屋の奥がドアとなり、開いていく。その扉の先に見えるものは、宇宙そして大きく見える青い星、地球。 『ゲートオープン。進路オールグリーン』 光が灯り、宇宙への道を示す。 シン「ちょ、ちょっと待て! これを止めろ!」 アンゼ「あなたに合わせた趣向でしたが、お嫌ですか?」 カタパルトに守護者の声が響く。 シン「嫌とかそういう問題じゃない! 生身で宇宙なんて……!」 アンゼ「そのプレートは特製の”大気圏突入用箒”です。問題はありませんわ」 シン「問題ありすぎだ!」 アンゼ「先行しているウィザード達には、連絡してあります。シン・アスカさん……世界を救えるのは、あなたしかいないのです」 シン「『コレ』と何の関係が!?……って、あ!?」 アンゼ「では、いってらっしゃいませ♪」 『カウントダウン、スタート。……2・1・GO』 無常なアナウンス。轟音とともにプレートとシンは射出される。 シン「なんでこうなるんだああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」 流星となり地球へと向かう、もとい落ちていくシン。 アンゼ(シンさん……あなたのそれは、いわば「女難力:∞」。ヒイラギチカラをもってしても、手に負えないかも知れませんね。でも……) シンが飛んでいった地球を眺めつつ、笑みをうかべる。 アンゼ(また一つ、私の楽しみが増えましたわね) 『世界の守護者』アンゼロット、世界の危機(と自分の興味)の為には、犠牲をためらわない人であった……。 一覧へ
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「よーしよし、ちゃんと効いてるじゃあないか。シンは人を驚かせすぎなんだよ」 箒に跨って喝采を上げる魔理沙。その隣には氷を浮かばせているチルノと、そんな二人をオロオロと見比べている大妖精がいる。 「で、でも、やっぱりあの人のいう通りに隠れてた方がよかったんじゃあ」 「なによ、大ちゃん怖いの? 怖いんなら大ちゃんだけ隠れてればいいんだよ、大ちゃんの怖がり」 「……うう、何ようチルノちゃんのバカ。そんな風にいうことないじゃない」 相変わらず喧嘩を続ける二人。だが、そんなことはシンの耳には入らない。 たたらを踏んだジンが態勢を立て直す。モノアイの向きを変えて三人を見た。感情は見えない、否、そもそも存在しない。だが。 その時なんと叫んだのか、シンは後から思いだしても思い出せなかった。 三人に向き直りジンが突進する。同時にシンもまた駆ける。 魔理沙が退避する、続いてチルノが。最後に二人を見比べていた大妖精が。 だが、二人を見比べまごついていた分の遅れが致命的だった。足を掴まれて地面に叩きつけられる。 痛みに顔を歪めるが、目の前にあった物を見て意識が凍る。桃色の無機質な光。それが大妖精を見つめていた。害意も悪意も感じられないはずのそれが、大妖精には愉しそうに笑っているように見えた。 ゆっくりと重斬刀を振りかぶる。逃げなければと思うのに体が動かない。チルノが何か言っているが何と言っているのか聞こえない、分からない。 (謝れなくなっちゃう) あの人間の言うとおりだった、今になって後悔している。詰まらない意地を張ったばっかりに謝れなくなった。 謝りたい。ただその一心で大妖精は口を開いて。 だが、そんな少女の願いを踏みつぶすようにジンは重斬刀を振り下ろし。ゆっくりと目を閉じて。 「ぐ、ギ」 最初に聞こえたのは金属同士が派手にぶつかる音。次いで、肉が潰れ骨が砕ける音。そして、痛みを堪える苦悶の声。 自分の体から発せられた音ではない、自分は金属製のものなどは持っていない。何よりも、自分の体には何の衝撃も伝わってなどいない。 恐る恐る目を開けてみる。真っ先に飛び込んできたのは黒い服の広い背中。先ほど、この機械人形と闘っていた人間。 シン・アスカが、大妖精とジンの間に割り込んでいた。 (間に合った!) 『間に合って無いっ! それのどこが間に合ったと言える!』 会心の叫びを心中で上げるシンに、デスティニーは珍しく怒気を含んだ声を上げる。 ―――デスティニーの言う通りだ、間に合ってなどいない。最高速で駆けたシンはかろうじてジンが重斬刀を振り下ろす直前に大妖精の前に飛び込むことはできた。 だが、それだけだ。盾も無く、ただ重斬刀を受けるための的でしかない。なんとかアロンダイトで重斬刀を受け止めることは出来たが、今のシンの有様で攻撃を防ぐことができたなどとは誰も言えまい。 なにしろ、ろくに構えもせずに受けたためにアロンダイトが体にめり込んでいるのだから。 その影響で胸骨は砕け肺に突き刺さっている、内臓だってどこが破裂しているか分かったものではない。 (大妖精は無事だ、仔細問題はない!) 『君は―――ええい、君の性格のことを忘れていた僕が悪いか!?』 (そう言うこったよ……シールドを使う!) 既にジンは左手でこちらを殴るべく拳を握っている。接触する寸前、実体を持つ対ビームシールドで防ぐ。衝撃で胸が火箸を突っ込んだように痛むが、ダメージはない。 が、慣性までは無くすことはできずにシンはゴム毬のように地面を数度跳ねながら吹き飛ばされる。刈り飛ばされそうになる意識は胸を何度も叩いて覚醒させる。こんなところで気など失っていられない、こうしている間にもジンは大妖精に迫っているのだから。 逃げろ、と言おうとしたが口から洩れるのはひゅーひゅーという音と意味を成さない呻き声だけ。それでも大妖精はシンが何を言おうとしているのか伝わったのかずるずると後ずさる。後ずさるが。 「――――ァッ」 激痛で声が出ない。大妖精の細い脚をジンが踏みつけたためだ。いくら人間大にダウンサイジングされていてもMSは鉄の塊だ、その重量は成人男性よりも遥かに重い。 今度こそ、大妖精に重斬刀を突き立てるためにジンが右腕を引く。例え万全であろうと今のシンの位置ではほんの少しだけ間に合わない。この怪我では尚のことだ。 全身を土埃まみれにしながら、跳ね飛ばされた時に割れた爪にも頬に刺さった木の棘にも切れて血が流れ出す額にも構わずに突き進んでも尚。 (まだだ、まだだ、まだだ、まだだ、まだだ――――!) CIWSを起動させ、ジンに向けて発射させ続ける。この距離だ、ほとんどが当たらずに外れて木々の合間に消えていく。当たった弾もろくに効果を与えられない、僅かにジンの装甲を削るだけだ。 (諦めるものかよ) 体中の激痛は脳内でまき散らされ続けるエンドルフィンでもう感じない。ならば足の骨が砕ける程の力で走り抜けても問題はない。 (諦めるものかよっ) アロンダイトはもう投げ捨てている、あったところで邪魔にしかならない。ビームライフルを使いたいところだが、この震える手では簡単に避けられてしまうだろう。 (諦めて、たまるものかよっ) それでも、ジンは引いた右腕を突き出す。 が、重斬刀は刺さらない。大妖精の胸を覆った氷に重斬刀が阻まれていた。その光景にジンはまるで人間のように首を傾げ、 「大ちゃんを―――」 声に振り向く。もしもこのジンが有人機であったのならばその声に込められた感情を理解し即座に退避しただろう、怒りに満ちた声。 「いじめるな、ばかああああああぁぁぁああっ!!!」 チルノが生み出した巨大な氷をぶつけられて吹き飛ばされる。ジンの装甲を以てしてもその重量にフレームが軋みを立てる。 ジンが蹲るのを確認するとチルノは大妖精の傍に駆け寄って真剣な顔で大妖精を揺する。 「大ちゃん、だいじょうぶケガしてない!?」 「え、あ、えっと。あ、うん、大丈夫、平気」 揺れる頭で大妖精が周りを見ると、隣には顔を青ざめさせた魔理沙が箒に乗って浮かんでいる。 「話は後にしとけ! 大妖精、飛べるか?」 「あ、はい、なんとか」 「よし、じゃあシンを回収して逃げ」 るぞ、と続けようとした魔理沙の声を、がしゃんという音が遮る。 三人の目に立ちあがったジンの姿が見える。その恐怖で一瞬大妖精の飛翔が遅れる。 その間にもがしゃんがしゃんがしゃんと音を響かせてジンが走る。 魔理沙が強引に箒に乗せて飛ぼうとするがその魔理沙の足にジンはその手を伸ばし。 ジンが横合いから押し倒された。 チルノが頑張った分でなんとかシンは間に合い、右手でジンを思いきり殴りつけて左手で全体重をかけて押し倒す。何一つ加減もせずにMSを殴りつけ、拳の骨は砕ける。構うことなどない、これで少女たちを守れたのだから。 地面に押し倒されたままのジンが重斬刀を振り抜こうとするが、それよりも早くシンはモノアイを掴んで、 「ふ、ううぅぅぅううううぅう!」 獣のような唸り声をあげながらモノアイを引き千切った。 流石に堪らずにジンは腕を振り回して抵抗する。もう何も見えてはいないらしくシンに狙いをつけることはないが、シンの体に当たるたびに皮膚を裂き血を噴き出させる。 だがそんなことは小事とばかりにシンはフラッシュエッジをジンの胸に突き立てる。機体がビクリと痙攣を起こし、腕が何度もピアノでも弾くかのような激しさで暴れ回る。 「ぐギ、ぐ、るぅぅあああああぁぁあああ!!!」 最後のとどめとばかりにビームサーベルモードに切り替え光刃がジンの胸を完全に刺し貫くとそのままフラッシュエッジをまっすぐ下におろし、断面から煙をあげてジンは両断された。 全身から流れる血も拭わずに荒い息を吐きながらもう完全に動かなくなったジンを苦悶と怒りの混じった凄まじい形相で睨みつけるその姿は、まるで悪鬼のようで。 少女たちは言葉を発さずにただ固まっている、そんな少女たちにシンは向き直る。怯えた顔をしているが全員無事。 そのことが分かるとシンは微かに笑って、その場に崩れ落ちた。 夢を見る。 全てを失ったあの日の夢。自分の平穏が粉々に砕かれた日の夢。 顔のなくなった母。上半身しか残っていない父。 あと一人。右腕が千切れ飛んだ妹。 泣き叫ぶ自分を軍服を着た大人が手を引いてこの場から逃げるよう言う。 大人になだめすかされなんとか立ち上がって、逃げようとする直前、家族の方を振り向いて。 妹の、自分と同じ赤い眼と目があった。その眼は――― 「――――ン」 「あ、起きました」 目を覚ます。目の前には大妖精がいた。心配そうにこちらを見ている。 「大丈夫ですか?」 「ん、まあなんとか……なんとか?」 少し頭が重い程度。あれだけ自分の身体に無茶をさせたにもかかわらず、だ。訳が分からずに砕けたはずの胸の骨を触ってみる。無事だ、折れていない。 「その、お薬を塗りました。ひどい怪我でしたから」 「薬、ねぇ。薬……いや、まあいいさ。なんにしてもありがとう」 塗り薬で治る骨折、というのも何か妙だと思わなくもなかったが無事であるのならまあ些細なことだろう。そう判断し深く考えないことにする。 『たかが薬であれだけの怪我が治ることを不思議だと思わないのかね?』 (考えたら怖くなるだろっ。大体、今更そんなこと驚いてたら幻想郷で暮らしていけないんだよ) デスティニーにそう返しながらシンは首を大きく回す。段々と頭も動き始め、状況を認識し始める。 場所は大して動いていない、さっきの場所のまま。日は大きく傾き、少なくとも三、四時間はたっているだろう。 「ん……そうだ、ジン」 自分が破壊した先ほどのジンを思い出す。どうしてあんなものがここにあったのか、なぜ自分達に襲いかかってきたのか、誰が行動プログラムを組み込んだのか。 あのジンは考えるまでもなく危険すぎる存在だ、きっちりと調べあげないといけないだろう。それに、もしかしたらC.Eに戻る手がかりになるかもしれない。 もうすっかり幻想郷に馴染みはしたが、C.Eに戻れる可能性があるのならばそれを放っておけるほどの間抜けではない。 「ジン? もしかして、さっきのアレ、ですか?」 「ああ、もう動かないとは思うんだけど。一応調べるだけは調べにゃならんだろ」 あまり怖がらせないよう大したことではないと言葉は選んだが、実際には重要なことだ。 辺りを見渡して見るがジンの残骸はどこにもない。完全に分断したのだ、動かないはずなのだが。 顎に手を置き眉をしかめながら思案する。そんなシンに大妖精は申し訳なさそうに声をかけた。 「あのー、そのことなんですけど………その、沈めちゃいました」 「…………ゑ?」 「え、えっと、さっきのアレ、湖に沈めたんです。あの、もしかしたらまた動き出すかもってチルノちゃんと魔法使いさんが……あの、まずかったですか?」 一瞬の沈黙。えー、あー、うー、と意味のない言葉をシンは漏らし。 「き、気にするなよ! そうだよな、また動き出すと危ないもんな、あは、あはは、あはははは……」 「や、やっぱりまずかったんですね!?」 「………まあ、気にしないでくれ、絶対調べないといけないものでも無し。それに君らの気持ちも分かるしね、管理できない危険物は処分せにゃ」 ガリガリと頭を掻くシンと体を縮こまらせる大妖精。その空気に耐えられずにシンは無理やりに話題を変える。 「えーと、ああそうだ。魔理沙とチルノは?」 「え? あ、はい、魔法使いさんなら湖の方に。チルノちゃんなら、後ろに」 そう言われ後ろを振り向く。チルノは木に寄りかかって眠っていた、よく見ると目元が赤くなっている。 「ごめんなさいって」 大妖精の言葉に振り向く。僅かに微笑んでいる。 「チルノちゃん、私が無事でほっとしたんでしょうね。わんわん泣きながら言ってました、ごめんなさいって。ずっと泣いてました、さっきまで泣いてたんですよ?」 「それで泣き疲れて寝た、か。見た目通り子供だなぁ………しかし、そうか。やっぱり当たってたか」 自分がチルノと大妖精の間に入った時に感じた違和感。冷静になって考えてみればわかりやすいものだ。 もし本当にチルノが大妖精を嫌っていたのなら忠告などせずに闖入者ごと氷弾で撃てばよかったのだ、それをしなかったのは一重にシンで大妖精の視界が隠れて撃った氷が見えなくなるから。 もっと言ってしまうのなら。自分では氷を当てるつもりがないのに視界を遮られてしまった大妖精に当たってしまうかもしれなかったから。 無論、チルノはそこまで計算はしていない、「なんとなく」程度の気持ちだろう。だが、その「なんとなく」があることこそがチルノが大妖精を本気で嫌っていなかったことの証。 軽く笑って立ち上がる。別に自分が介入するまでもなく問題は解決していたらしい。 「なんにしてもよかったじゃないか、仲直りできたみたいで。そう考えりゃ、俺が怪我した甲斐があるってもんだよ」 怪我、と言われ大妖精は僅かに体を震わせる。そして逡巡、意を決したように一つ頷くと突如頭を下げる。 「ごめんなさい」 「ん、怪我のことか? 別に気にすることじゃあないさ、治ったわけだし」 その言葉に、だが大妖精はふるふると首を振る。 「違うんです、そうじゃないんです。あ、いえ、それもあるんですけど、そうじゃなくて」 首をかしげる。怪我をしたことではないとするとなんだと言うのか。 「あの、その………私たちを助けてくれたんです、大怪我をしてまで。でも、私は……」 もう一度、頭を下げられた。 「私は、あなたを怖いって思ったんです。あんな目にあっても助けてくれたのに、なのに。だから、ごめんなさい。本当に、ごめんなさい」 頭を掻く。確かに、怖いと思われても仕方がない戦いだった。全身血みどろ、形相は凄まじいものだったのだ、怖くないはずがない。 「……別に、気にすることじゃあない、戦いは怖いものだから。それに、血が流れるのも、さ。怖くないわけがないだろ?」 戦いとは、即ち暴力と暴力のぶつけ合いに他ならない。 自らと相手にどれほどの理想があろうとも横合いから見ている他人には関係はない、その見ている他人が戦士でないのなら尚のこと。 そこに血が、穢れの象徴が流れるのなら尚のことだ、誰だって自らの死を連想してしまう。 恐れるのは当然。むしろ怖がらせてしまったことを恥じるべきだ。 「謝らなきゃならないのは俺の方。それに……お礼を言わなきゃいけないのも俺の方だよ」 「お礼って……私は何もしてないですよ?」 「俺のことを怖いって思って、それが申し訳ないって思ってくれたんだろ? だったら、やっぱりうれしい。俺のことを思って言ってくれる言葉はすごくうれしい」 気恥ずかしくなりもう一度頭を掻く。 「まあなんだ、ほら。あれだ、うん、そう。友達の受け売りだけど」 破顔一笑、気楽そうに笑う。 「気にするな、俺は気にしない」 大妖精が目を瞬かせている横でシンは大きく伸びをする。 「さて、それじゃあ俺はそろそろ行かないと。もう魔理沙も本返し終わった頃だろうな」 偉そうなことを言っておきながら自分は伸びていただけ、など魔理沙に申し訳が立たない。 夕食に誘うことで詫びを入れるべきかなと思いながら湖に向かう。 と、大妖精に呼び止められる。 「あの。ごめんなさい怖がったりして」 「ん、だから気にするなって」 「それから!」 自分の声の大きさに驚き大妖精は口を手で押さえ。 どんな表情をすればいいのか分からず百面相を起こして。 やがて大きく頷いて花が咲くかのように笑う。 「ありがとう、ございました」 その笑顔に、その言葉に。照れくさそうに鼻をこすりつつ笑顔で応えた。 「どういたしまして」 「なんだ、ここにいたのか」 湖のほとりに座り込んでいる魔理沙に声をかける。 正直、いるとは思っていなかった。それなりの時間気を失っていたのだ、もう紅魔館に向かっているものとばかり思っていた。 座り込んでいる隣には家で風呂敷に包んだたくさんの本。 「って、なんだよ、まだ紅魔館行って無いのか?」 帰ってくる言葉はなく、沈黙。俯いたまま魔理沙は何も言ってこない。 沈黙に耐えられずにシンは頭を掻く。 「えーと、ああと。あ。もしかしてもう行ってきて、また新しく盗んできたとか」 「まだ、行って無い」 「………ああ、そう。んー……あ、もしかして俺を待っててくれたのか?」 首を縦に振る。 「うう、すまん。待たせて悪かった……な、なら早く行かなきゃな」 「………他に」 「ん?」 「他に、言うことは」 俯いたまま魔理沙が呟いた言葉にシンは僅かに考え込み。 「あ。もしかして怪我したのか? そうだよな、ちょっと考えりゃ分かることなのに。すまん、気が回らなかった」 謝罪の意味をこめて頭を下げ、魔理沙と視線を合わせるためにしゃがみ込む。 「ごめんな、大丈夫だったか? どこを怪我したん「何で」だ、って……魔理沙?」 なんで、ともう一度魔理沙は呟く。 「なんで、何も言わないんだよ。死ぬところだったんだぞ。なのに………なんで」 「……あのなぁ、別にお前が悪いわけじゃ」 大きく頭を振る。その動きで帽子が落ちるが魔理沙は構わずに続ける。 「私なんだよ。私が、チルノをけしかけたんだ。大丈夫だあいつ一人じゃ心もとないし、構わないから攻撃しようぜ、って。そんな大した事にはならないだろう、って………」 ぶんぶんと、頭がとれるんじゃないかと思うほどに首を振り続ける。 よく見ればぽたぽたと水滴が地面に落ちているのが見えた。 「死んじゃうかもしれなかったんだ、死んじゃうところだったんだ。私が、何にも考えなかったせいで。私の……」 顔を上げる。涙でぐしゃぐしゃに濡れた顔。 「私のっ、せいなんだ。だからっ、何でもするつもりだったんだ、どんっ、な、ことでも。なのに、なんで。なんで、何も言わな、いんだよぉ」 しゃくりあげながら、涙をぼろぼろと零しながら、何度も詰まりながら。 魔理沙はただひたすらにシンに謝り続ける。 言葉もなく、シンはぽろぽろと涙を流し続ける魔理沙をどうすべきか考える。気にするなと笑い飛ばすべきか、だが。 (それで納得ができるか?) できないだろう。付き合いの浅い自分でも目の前の少女がまっすぐな性格をしていることぐらい分かる。 そんな性格の持ち主が、そんな言葉で納得などできるわけもない。少なくとも、自分だって納得はできないだろう。 ならばどうすべきか。こういうときに自分の女性経験の少なさに情けなくなってくる。 (あの凸だったら上手くやるんだろうけどな……ジゴロにはなれそうにないな、俺) 自分のやれることなんてどの道大したものでもない、ならば。 考えていることを洗いざらい話す。いつものごとく当たって砕けるのみ、だ。 「俺は別に気にしちゃいないさ、お前らが無事なら十分。だから」 「何言ってるんだよお前? お前、死にかけたんだぞ、死んじゃうところだったんだぞ!?」 穏やかな表情で発した言葉は、魔理沙の叫びで遮られる。予想していた反応だ、魔理沙が落ち着くのを待って続ける。 「その顔でな」 「え」 「その顔と、その涙で十分だ。後悔したんだろ、バカなことしたって反省してるんだろ? だったら、いい。俺が怒る必要なんてないじゃないか」 でも、と漏らす魔理沙に続きを言わせないために言葉を続ける。 「大体、お前はなんでチルノをけしかけたんだよ。お前なりに俺のことを心配してくれたんじゃないのか?」 「それは、そうだけど。でも、あんなことになるなんて思わなくて、それでお前は」 「ストップ、それはもういいって……お前がそう考えたのには俺にも原因があるよ。ちゃんとアレの危険を説明しなかったんだからな」 そう。ジンの危険性をきちんと説明していれば魔理沙が軽率な行動に走ることもなく、大妖精が怖い思いをすることもなく、自分が死にかけることも―――まああったかもしれないが。 要は何のことはない、自分の説明不足と未熟さが招いた自業自得。 「心配してくれてやったことを怒ることなんて俺にはできないし、俺が怒らなくてもちゃんと反省してるんなら俺が怒るのは余計なことだよ、ただの自己満足だ」 「………それで、いいのか?」 「ま、二度目は怒るけどな。俺聖人君子じゃないし」 アハハ、と軽く笑い。 「それでいいよ」 涙で濡れた顔をあげて、何度も迷うようにシンと地面を見くれべ、ようやく魔理沙は僅かに頷いた。 「はい、この話はおしまい。ちょっと動くなよー」 ハンカチで魔理沙の目元を優しく拭う。むずがるような声を上げるが特に抵抗はしない。 「ほら、鼻チーン」 鼻にハンカチを抑えられたので特に何も考えず思いきり鼻をかむ。 ようやくすっきりした。すっきりした頭で考える。 (あれ? 何か今、私すごいことされたような?) 「あ、そうだ!」 「わひゃう!?」 予想外に近かったシンの顔に思わず奇声をあげてしまう。だがそんな魔理沙に構わずに続けるシン。 「お前、さっき何でもするとか言ってたよな。駄目だぞー、男にそんなこと軽々しく言ったら」 そんなこと言ったら男は悪の野獣に簡単に変身してしまうんだからなー。そんな事をめっ、とでも言いたげに人差し指を立てながらシンはのたまう。 「お前……実はわざとやってないか?」 「ん、何がだ?」 (うわぁ素だ) 「ところで魔理沙、さっきからなんで顔が赤いんだ? もしかして、やっぱり怪我を」 「な、なんでもないのぜ!」 「のぜ?………ま、怪我がないんならいいさ。さて、と」 落ちた帽子を拾い上げて軽く叩き、魔理沙の頭にかぶせなおす。 「そんじゃま、改めて行くとするか。案内は頼むぞ」 「あ、うん………そうだ、言い忘れてた!」 くるりと振り向いて、太陽のような爛漫な笑顔を浮かべて。 「守ってくれてありがとうな」 僅かに笑ってくしゃり、と魔理沙の頭を撫でる。どうやら十分どころか十二分だったらしい。 箒に跨って空に向かって飛び上がった魔理沙を見ながらシンは、少しだけ胸を張ることができた。 「んあ。…………そうだ! 大丈夫、大ちゃん!?」 「あ、チルノちゃん起きたんだ。うん、大丈夫だよどこも痛くない」 「痛くない……よかったぁ」 「うん、ありがとう。それから……ごめんなさい」 「うぇ!? えーと、えーと、違うそうじゃなくて、えっと。あの、あたいが悪かったんだから大ちゃんが謝ることないって!」 「んー、でも私も変に意地張っちゃったりしたから」 「大ちゃんは悪くないよ! あたいが一人でおやつ食べちゃったから」 「いや私が」 「あたいが」 「「………」」 「今度、おやつ食べるときは半分こしよう? それでいいよね、チルノちゃん」 「うん、それがいいよね。さっすが大ちゃん………ねえ、大丈夫? やっぱり怪我してない?」 「え、してないけど……なんで?」 「いや顔赤いし、それになんか、なんか……なんか! なんか、えーと、なんか、なんかな感じで、なんかがなんかで、なんか」 「――――大丈夫だよ。どこも怪我なんかしてないよ。ちょっとだけ、ちょっとだけ、ここがね」 「胸? 痛いの!?」 「痛くはないよ、痛くはないんだけど……えへへ」 「??? 大ちゃん、あたいよくわかんないよ」 「シン・アスカ……シンさん、かぁ。あ、それともアスカさんのほうがいいかなぁ。えへへ……」 「……なんだかよくわかんないけど、おのれあの、えーと、えーと、名前わかんない………黒黒め! 次に会ったらケチョンケチョンにしてやるんだから!」 前へ 一覧へ
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1 ピリリリリリリリリ…ピリリリリリリリリ… 静かだった部屋に、突如として擬音で表現すれば上記の如き電子音が二回響く。だが、瞬間的、しかし確実に部屋を支配していたはずのそれらの支配は、小さな音と共にピタリ、と断ち切られた。 「う~…ん…………ふぁい、もしもしぃ…」 そして、代わりに聞こえる眠たげな声。見るまでもなく半分眠っていることが解るうえに、辛うじて起きている半分も通話中にも関わらず安楽の魔の手を伸ばす布団へと屈しようとしている。 『…相変わらずだな、お前は。まだ、朝が弱いのは直っていないのか。』 ……まるで、爆弾が七百メートル先で爆発した時のように、眠気が吹っ飛んだ。信じられないものでも見るかのように(見るではなく聞いているのだが)、二、三回瞬きを繰り返す。その間、五秒足らず。 だが、その間にばさっ、という音を立てて掛け布団が捲り上がる…捲くり上がり終えた時には既に、ベッドに腰掛けるように座っている少年の姿があって。 「―――アイ――い、いや、セ…シルくんっ!!」 『……もう少し、音量を落とせ。こっちは真夜中なんだ。』 「あ、ご、ごめん…」 食い入るように受話器へと叫ぶ。だが、直ぐに窘められてしまった。…電話なので、目の前に誰かが居る訳ではない。しかし、昔の癖で誰かがいるみたいに身体も同時に謝ってしまう。名前を呼びかけて、慌てて偽名に直した事も、癖が抜けていない証左だ。この癖を直さなきゃなあ…と心中で強く思う(最も、そうそう簡単には治らないからこそ『癖』と言うのだろうが)。 「え、えっと…ところで、一体何の用かな。」 言外に、「君が連絡してくるなんて、しかも直接掛けてくるなんて珍しいね」と示しながら、訊ねる。それほどまでに、彼が俺に連絡を取ってくるのは珍しかった。しかも、最後に別れてからまだ一月くらいしか経っていない…こんなに短い間隔は、向こうにいた時でもそうはなかったのだから、何かあったと思っても仕方が無かろう。 『…いや、大した事じゃない。お前が、向こうで上手くやれているかが少しだけ気になってな。』 「む~…その言い草だと、俺が人見知りしてるみたいじゃないか。」 『実際、そうだったと記憶しているが。…一年前の出来事を忘れたのか?』 「う、ぐぅ。」 それを言われると、ぐぅの音も出ない…もとい、ぐぅの音しか出ない。だけど。 (でも、こんなやり取りも一ヶ月ぶりだと思うと何だか懐かしいな…) くすり。思わず、微かな笑い声が漏れる。思えば、外国での生活も結構楽しかった。そりゃ、文化の差は結構大変だったし、『バイト』も大変だったけど。それでも……楽しかった事は、確かだ。だからこそ、その輪から外れると少し寂しい。 海の遥か向こうにいる、彼も似たような心境なのだろうか。そうだったらいいけど、未だ俺には声だけで彼を聞き定める事が出来ない。それが出来るのは…恐らく、今のところは話に聞く彼の幼馴染だけだろうから。 (セシル君もそうだったら嬉しいけど…はあ。) 残念ながら、それはないだろう。まだ、一年と半年くらいの付き合いなのだ。それに、自分は所詮『部外者』だ。逆立ちしても、真の意味での『関係者』にはなれないのだから。 『……どうした。』 「…ううん、別に。それより、用件はそれだけ?」 「…残念ながら、もう一つある。……『バイト』の話だ。」 ドォォ…ォン。なんてタイムリーな。受話器の向こうから、雷鳴が轟く音が聞こえた…この話が出る時は、雷が鳴っている事が多いな。向こうにしろ、こっちにしろ。 ――――――――――――――― さて、初夏とはいえ日が落ちた夜は暑くもなく寒くも無くという割と快適な気温が続く金曜日。それが一つの大きな要因(もう一つは翌日の休日不思議探索ツアーだが)での早めの睡眠を図らずも俺が貪っている中、それを見事に邪魔する携帯電話の着信アラームが、室内を飛翔する勢いで乱反射のように鳴り響く。 ったく、こんな時間から誰だ一体?立ち上がって、机の上に置いてある携帯電話が裏返しのままつながれた犬の如くけたたましい震動音を発しているのを、手に持つ事で黙らせる。 …と、くるりと裏返して発信者名を見たところで…暫し息を呑んだ。発信者名―――涼宮、シン。現在、ただでさえ様々な勢力の思惑の渦中にある俺たちSOS団メンバーの中でも、最も新しく、そして他のメンバーの事情を僅かながら知っている俺にとっては、故に最も謎に包まれた存在だった。 え、謎に包まれた存在も何も…謎なんかあったっけ、だって?いやいや、確かに前回は無かった。しかし、ある時を境に、俺は彼にとっての謎を目の当たりにせざるを得なくなっていた。 そう、それは一週間前…シンが始めてSOS団主催の、休日不思議探索ツアーに参加した時に遡る…。 ――――――――――――――― 「遅い、罰金!」 いつもどーり死刑確定時刻の9時より少し早めに北口駅前に着いた俺を出迎えたのは、これまたいつもど~りの団長様の無慈悲な宣告だった。へいへい。財布の中に在中している数枚の野口英世に密かに別れを告げ、集まっている皆に挨拶をする。 「おはようございます。」 「…………おはよう。」 「おはようございまぁす。」 古泉・長門・朝比奈さんの順に挨拶が続き、最後に。 「おはようございまーっす。」 にこにこと、姉譲りの100ワットの輝きを放つ笑顔で挨拶をしてくるシン。…何か、えらく機嫌がよさそうだな。その上機嫌さを、隣でアヒル顔を作っているお前の姉にも分けてやってくれ。っていうか、何であいつはそんなに不機嫌なんだ。 「何でも、留学時代の友人から電話が掛かってきたそうで。誰か、と聞いたけど、はぐらかされたようです。」 なるほど、だからあんなに不機嫌なのか。しかし外国からわざわざ国外電話か…良い、友達みたいじゃないか。 「ええ。やはり、二年も外国にいるとそういったコミュニティが形成されるのでしょうね。ただ…」 古泉、お前の説明はいらん。何時もどおりそう突っぱねる。と、団長様がいやに尊大そうにづかづかと何時もの喫茶店に入っていくのが見えて… 「どうやら、その時間も無さそうですね…どうも、最近はあなたとの密談が反故になる事が多い。」 ……気持ち悪い言い方するな。すれ違いざまに囁いた古泉に顔をしかめて、最早半自動的に出てくる小さな息を吐いて、喫茶店の入り口へと向かった。……不機嫌なあいつとペアを組むのだけはごめんだ…と切に思いながら。 ――――――――――――――― さて、何時もどおりの事を話していてもつまらんと思うから、さっさと話を進めることとしよう。喫茶店の中に入っても未だ絶賛不機嫌中だった団長様は、それでも飲み物を口にすると少しはクールダウンしたのか、眉間に解るか解らないか程度のひくつきを浮かべた程度で、ペアメンバーの選出に移った。 「SOS団のメンバーもちょうど偶数になったし、これからは二人づつ三組で行動するわよ。『下手な鉄砲数撃ちゃ中る』…メンバーが増えて初めての今日こそは、この世の不思議を何としても見つけるの!あ、それと今回はシンを慣れさせるために延長、六時まで二時間ずつ、計四回組合せを変えるから!!」 …それは別にいいんだが。ハルヒ、どうやって三組に分けるんだ。何時もどおりの赤白色別の選出じゃあ、二組が関の山だぞ。 「そうね…じゃあ、こういう手はどう?」 そういってハルヒが提案したのは、『爪楊枝の赤を勝ち、無色を負けとして、勝者が敗者の中から一人を指名できる』というルールだった。ただし、その直前の人との合組は絶対禁止、選ぶ順番は最初の勝者三人でじゃんけんをするという条件付ではあったが。 「なるほど、それならば公平無比に選出できますね。さすg(ry)」 この評は何時もどおりのハルヒ専属イエスマン古泉の談だ。…まあ、それはともかくとして。そのルールで行った第一回の組合せは… ――――――――――――――― やっぱりここしかないな、うん。…芸が無いと言いたくば言え。最早火の車状態の財布に負担も掛けないし、これからじりじりと日当たりを強めてくる暑さも問題無いくらいには涼しいし…ああ、素晴らしきかな、県立中央図書館!やっぱりいいよなあ、公共施設は。 …この活動を(団長の指示で強制的に)開始する前にはほとんど想いもしなかったそんな感慨をしみじみと味わいつつ、俺は後ろにいる小柄な人物へと目を向ける。 相変わらず感情を表に出さない無表情な視線を俺に向けながらも、その頸は何故俺がいきなり止まったのか、解らないといった感じで傾げられている。しかし、その手はまだかまだかと親鳥に餌を催促する雛鳥のようにぴくぴくと僅かに動いていた。…毎回思うけど、本当に本が好きなんだな。 さて、無言の催促が少し忙しなくなってきたから、そろそろ入るか。…顔を後ろに向けたままで一歩進むと、ガーッ、と自動ドアの開く音が聞こえる。 「………危ない。」 へ…?うぉっと!いきなり呟かれた長門の声。と、開いた自動ドアからちょうど出てきた人物にぶつかった。…どさっ、と相手のカバンが地に転がり、更に相手自身もぺたん、と尻餅を付く。 お、おい。大丈夫か?相手が小柄だったためか、不意を突かれながらもよろめくだけですんだ俺は、慌てて尻餅を付いた少女に手を差し伸べる。 「いたたたたたぁ…あ、いえ。大丈夫ですよぉ。怪我もしていませんし。」 そう返しながらも、とりあえず差し伸べられた手を取って立ち上がる栗色の髪を持つ制服姿の少女。…珍しい。こっちの連れ以外にも、休日に制服姿で出歩く娘がいたんだな… ぱっぱっぱ。そんな素朴な疑問を俺が思っている間に、少女は服に付いた埃を簡単に払い、カバンの中身が散らばっていないかを確認した後で、にこり、と俺の目を見据えて笑うと。 「ありがとうございましたあ。」 鞄を手に取ると、にこやかに礼を言って、足早に立ち去っていった。…俺に谷口のような女性をランク付けするという阿呆な趣味はない。だが、結構いい娘だな――初対面ながらそう思ってしまうのは、致し方無き事だろう、うん。 そんな思いが強かったのか、何とも無しに軽く駆け出したその後姿を目で追う…と。 「………」 立ち止まったまま、ぢっ、と俺をその無機質な眼で…その鏡の如き瞳に感情は読み取れないが、何故か俺には非難しているように思えた…見ている長門がいて。あー…入るか。目を逸らしたくなる衝動を抑えて、すっかり閉じてしまった自動ドアへと歩を進める。 ……今度は、何も無かった。だけど、集合時間の十五分前くらいに、本にかじり付いたままの長門を図書館から連れ出すのに、いつも以上に苦労したのはまた別の話だった。 ――――――――――――――― 「朝比奈先輩ー、こっちですこっちー。」 「ひゃああああ。ま、待ってくださーい。」 晴れやかな陽の光が差し込む樹々の間で、元気いっぱいな声が聞こえ、少し遅れて慌てた声が追いかけるように続く。もし、その声に反応した人がいたのなら、お姉さんと見られる栗毛の娘の手を引っ張る、黒髪紅眼の少年を目撃したに違いない。…100%、恋人という誤解は張られないだろう。 もっとも、それは公園内のあちらこちらで湧き起こっているから、誰も気にも留めない、日常の風景でしかないが。…齢が少しだけ、大きいだけで。 「ほらほらほらー、いいでしょ?この公園!ちょっとした小高い丘になってて街の光景を見渡せるし…それに、動物たちも人懐っこいし。」 「わあ…本当ですね。犬さんこちら、手の鳴る方へ~…ひゃあああっ!?」 朝比奈先輩がそういいながら手を鳴らして呼びかけると、近くにいた小さい犬が駆け出して飛びついてきた。それに驚いて、ぺたんとしりもちを付く朝比奈先輩。 飼い主らしい女性の方(眼鏡を掛けた、何ともキャリアウーマンっぽい女の人だった…こういうのを「眼鏡美人」っていうんだっけ?)が、こちらに向かってくるのも見える。…最も、ぺろぺろと頬を可愛らしい舌で舐め回されてくすぐったさそうにじゃれている朝比奈先輩は、気付いていないだろうけど。 「すまないわね、うちのモミジが迷惑をかけてしまって。」 「いえ、先輩も満更じゃなさそうですし、いいですよ。でもここに限らず、いくら安全だといってもまだ小さい小犬をこんな見晴らしのいいところで、放しておくのは少し危ないと思います。小動物を狙う外敵は、何もお金欲しさの人間だけとは限りませんから。」 実際に数年前、猛禽類の襲撃のせいで(連れて行かれることは無かったものの)懐かれていた小犬が死んでしまい、大泣きした子をシンは知っている。自分よりも二つも年上なのに、大粒の涙をぼろぼろと零して泣きじゃくる彼女を宥めるには、かなり苦戦したものだ…最も、それがパワーアップしたハル姉の猛突を避わす事が出来る策の一部となっているのだから、何とも言えないが…閑話休題。 「朝比奈先輩―。飼い主の人、来ましたよー?」 「はひゃ!?あ、ごめんなさい。私、ついつい夢中になっちゃって…」 少々謝りながら、可愛さが長じて思わず抱き抱えていたらしい小犬を地に放つ。…が、小犬は、中々朝比奈さんのそばを離れようとはしなくて、クンクンと切なげな甘え声(哀しみの声とも聞こえるが)を鳴らし続ける。 「あ、あれ?ほら、行かないとだめだよ。ワンちゃん~」 もう一度、困り声で促す。と、『仕方ないな…』とでも言いたそうな呆れた鳴き声で一声鳴き、飼い主の元へと勢いよく駆け出した。 「ふふ…元気一杯ね、モミジ。そんなにあのお姉さんが気に入ったのかしら。」 「朝比奈先輩は、優しいですからね。動物は素直です…って、わっ。」 ワォン。駆けた勢いのまま、軽く一鳴きすると同時に飛び付いてきたモミジくんを、出来るだけ優しく抱き止める。先程の朝比奈先輩にしたように、尻尾を激しく振りながら顔をぺろぺろと舐め回そうとしてくる彼を、何とか落ち着かせようとして地に降ろしたけど…余り、落ち着いてはいないようだ。……ふう。やんちゃだなあ。 そんな少年の様子を見て、クスリ、と飼い主の女の人が笑った。 「その理屈で言うと、君も優しい事になるわね?」 「か、からかわないでくださいよ~…ほ、ほらモミジくん。またね。」 何とか宥めて、リードを飼い主の女の人へと返す。…まあ、モミジくんは相変わらずしぶしぶとだけど。と、その女の人はリードを受け取って、 「ええ、またね。」 と言って去って行ってしまった…う~ん、「また」って事は、これからもこの公園で会うって事かな?いや、でも何か含みのある言い方だったような気も… 「シンく~ん、助けて~っ。」 かわいらしい悲鳴が、思考を思い切り中断させた。見ると、朝比奈先輩が今度は複数匹の猫にまとわりつかれている。…あれを見るとヒッチコックの往年の名作、『鳥』を思い起こされるなあ…何事も限度が必要って事だね、こりゃ。 「はいはい、みんなみんな。遊ぶのなら今度にして、今は帰ろうね?」 努めて優しく言いながら、しかし僅かに『代わる』と、鋭い猫たちが機敏にそれを感じ取って一目散に逃げていく。そして、それに他の猫も続いて…一分後には、毛玉(※( ゚д゚ )に非ず)に埋め尽くされて(?)いた朝比奈さんは、すっかり解放されていた。 「朝比奈先輩、大丈夫ですか?」 「つ、疲れましたあ~…ありがと、シンくん~~…。」 …暫く、休憩させよう。目を回している朝比奈さんに手を貸そうとして…ふと、いつも懐に忍ばせている懐中時計をぱちりと音を立てて開けた。十時十五分…大体、四半刻(十五分)くらいは休めるかな。 「本当に、いいところですね。この公園は。私、動物とかに好かれていないと思ったから、あれでも結構嬉しかったんです。」 「でしょでしょ?地元でもこんなに和めるってあんまり知られていない場所だけど、SOS団の皆に教えてあげようと思って、最初に行くならここ、って決めてたんだー。」 そうだったんですかー。ベンチに腰掛けて休んだまま、すっかり感心した口調で、朝比奈先輩が返す。…キョンさんじゃないけど、やっぱりかわいらしい人だなあ。ハル姉とは正反対、あの子ともまた、違った魅力だな、これは。 「それに、ここってあながち不思議探索に関係が無いってわけでも無いんだよねー。」 「……ほえ?こんな長閑な公園で、ですか?」 不思議そうに、本当に不思議そうに朝比奈先輩が首を小さく傾げる。うーん、詳しく言うべきか言わないべきか。…朝比奈先輩の今の幸せそうな、穏やかな表情を壊したくないんだけど…でも、言わなかったら言わなかったで、また「機会」を作らなきゃいけないしなあ。 …仕方ない。彼女だけ『仲間外れ』にするのも、ね。でも… 「実はねー、ここって四年前に……」 …世の中には、知らない方がいい事っていうのも往々としてあるんだよね……そう、申し訳なく思いながらも、俺はその話をする。そう、それは…日常にしてはあまりにも不可思議で、しかし「非」日常としてはあまりにもありふれた話。 ――――――――――――――― っと、セーフ…かな。余ほど読みたい本が有ったのか、いつも以上に本にかじりついたように動こうとしない長門を何とか宥めすかし、手を引いたままようようとして待ち合わせ場所に到着した俺。…お陰で十分くらい前に着く予定が、ぎりぎりになってしまった。当然、その時間帯には全員いるみたいで。 ……また、ハルヒの「遅い、罰金!」とかの類の、怒砲が響き渡るか?そう、半ば覚悟はしていたが、意外にも怒っていたのはハルヒではなかったのである。そう、怒っていたのは… 「シンくんのバカ、シンくんのバカ、シンくんのバカ~っ!!」 「わ、悪かったですって。落ち着いてくださいよ、朝比奈先輩。」 「もうあの公園、一人で行けなくなっちゃったじゃないですか~っ!」 「だから落ち着いて…ってハル姉も、煽らないでよ!?」 「だめよみくるちゃん。もうちょっと捻りを加えて打つべし打つべし!」 ……意外だった。穴も穴、大穴を超えた十万馬券だ。ぽかぽかと擬音がつきそうな軽いパンチ(俗に言う駄々っ子パンチという奴だ)をシンに向けて繰り出している朝比奈さんを見た、俺の疑問はただ一つ。……何で、こんな状況になっているんだ?それとハルヒ、掠ってもいないのに無意味に煽るな。 「さあ?僕もさっき来たところでさっぱり…」 ああ、そうか。一緒に来たはずのハルヒは、ああやって順応しているけどな。古泉の話を軽く流して、煽るだけじゃ物足りなくなったのか、自身も参加して後ろから羽交い絞めにしているハルヒと逃げようとじたばたしているシン、そして密かに近づき始めている長門を見て…思った。 やれやれ、一体どんな事を言ったのやら。