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れみりゃの子育て ******************************************注意*********************************************************************** オレ設定が含まれます 虐待描写が少ないです。 良いゆっくりも傷つきます。 いつもながら会話が結構多いです。 ********************************************************************************************************************** 春、雪解けがだいぶ進み新しい命が次々と生まれる季節。 山に住む多くの住民たちが目覚める季節。 そんな季節に泣きながら巣から出てくるゆっくりがいた。 れみりゃだ。 胴無しタイプのようだ。 「う~……れみりゃのおちびちゃん……」 いくつもの黒ずんだ子れみりゃを咥え出して墓を掘り始めた。 このれみりゃの番はいない。 冬眠の準備中に野鳥に襲われて死んでしまっていた。 その後、子供達と共に狩りに行くもうまくはいかなかった。 ゆっくり育てようと考えていたので冬眠明けまで狩りを教えないでいようと考えていたからである。 急いで狩りを教えるも、未熟な子供たちでは気配を気取られすぐにエモノに逃げられてしまう。 れみりゃ自身も失敗続きの子供たちが気になり狩りに集中できなかった。 そのせいで食糧が満足に集められず子供達は冬眠中に飢えて死んでしまった。 しばらくして墓も完成したころ、 ぐぅ~、と空腹を告げる音が鳴った。 「いつまでもないてちゃみんなにわらわれるど~!」 そう自らを奮い立たせて冬眠が明けて初の狩りに出かけて行った。 飛んで間もない時だった。 れいむ、まりさ、ちぇん、ありす、ぱちゅりー等がたくさん集まっているのを見つけた。 近くの木の根元にはたくさん穴がある。 ゆっくりの群れ、しかもなかなかの大きさだ。 食料としては数ヶ月分はあるかもしれない。 「こんなちかくにこんなにいたんだど~!?……れみりゃがもっどはやぐにきづいでれば……」 悔しさと悲しさ、それから自分自身への憤りからまた涙が溢れ出す。 「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 それら全てをぶつける様に勢いよく群れへと突撃する。 「ゆ?……!!れ…れみりゃだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「わがらないよー!なんでもういるのー!?」 「むぎゅ!エレエレエレ・・・」 「ま…まりさはたべてもおいしくないからありすをたべてね!」 「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉ!!?」 混乱する群れ、そしてその中で大暴れするれみりゃ。 もっと早く見つけていれば… おちびちゃん達は…おちびちゃん達は…助かったのに! れみりゃの頭の中にはそれしか無かった。 これは食事ではない、八つ当たりの虐殺ショーだった。 1時間ほど経っただろうか。 辺りはゆっくりの死骸で一杯だった。 正気に戻ったれみりゃは泣き止み食事を始めた。 「……しゃん……きゃらにゃいよー……」 声。 微かにだが確かに聞こえる。 「まだいきのこりがいたんだどー?」 耳を澄まして場所を特定する。 「そこだっどー!!」 勢いよく飛びかかる…が牙があと数センチで届くところで止まる。 とても小さいちぇんがいたのだ。 おそらく植物型で生まれたばかり、もしくはさっきの襲撃で生まれ落ちてしまったものかもしれない。 れみりゃの頭には薄らと自分の子供達が重なって見えた。 「お……おちび…ちゃん…だっど?」 つい、口に出ていた。 「ゆ?おきゃーしゃん?わきゃりゅよーおきゃーしゃんだねー!ゆっくちしていちぇにぇー!」 「うう!?ゆっぐりしでいくどー?」 れみりゃの言葉からちぇんはれみりゃを母親と勘違いしてしまったようだ。 ちぇんの言葉にぼーっとしていたれみりゃは思わず返事を返してしまっていた。 「ゆゆ~♪おきゃーしゃん!しゅーりしゅーりしゅるよー!」 れみりゃは混乱したが落ち着いて事態を把握しようと努めた。 自分は捕食種のれみりゃ。 目の前にいるのは中身が甘ーいチョコクリームのちぇんの赤ちゃん。 ちぇんはれみりゃを見たら逃げる。 でもこいつは逃げない。 こいつはれみりゃをお母さんと呼んでいる。 つまりこいつはれみりゃの子供。 子供なら逃げないのは当たり前。 そこまで考えているとれみりゃにはもう目の前の赤ちぇんが自分の子供としか思えなくなっていた。 小さい体で一生懸命自分に近づき、「しゅーりしゅーり!ちあわちぇだよ~!」とやっている赤ちぇんが愛しくてどうしようもなかった。 「このこをりっぱなほしょくしゅにそだてるど~!こんどこそ…かならずそだててみせるど~!」 れみりゃは赤ちぇんを育てることを決意した。 「うっう~!ちぇん、いっしょにこーまかんにかえるど~!」 「こーまきゃん?わきゃらにゃいよ~?」 「こーまかんはれみりゃのゆっくりぷれいすだっどー!」 「ゆっきゅり?わきゃるよ~ゆっきゅりできりゅんだにぇ~!」 れみりゃは笑顔で頷くと赤ちぇんを羽で帽子の上に乗せて飛び立った。 「わきゃるよ~!!おしょりゃをちょんでりゅんだにぇ~!!!」 帽子の上で興奮しながら喜ぶ『我が子』を見てれみりゃはとてもしあわせ~だった。 そしてその日かられみりゃとちぇんの奇妙な親子生活が始まった。 数ヶ月後、季節は変わって夏。 れみりゃの子育ては順調そのものでちぇんは子供サイズにまで成長していた。 立派な捕食種に育てるという教育方針により、ご飯は全てゆっくりの中身だった。 虫や草花であったことなど一度もない。 しかしちぇんの心では少しづつ疑問が膨らんできていた。 疑問が限界まで膨らみ切ったある日、ちぇんは思い切ってれみりゃに疑問をぶつけてみた。 「おかーさん!ちぇんはどうしてはねさんもないしきばさんもちいさいのー?わからないよー?」 「うう!?」 「……ちぇんは…おかーさんのほんとうのこどもじゃないんだねー?」 「…うー…」 一緒に暮らし始めて数か月、ちぇんが気づいてしまった。 今まで気づかれないようにれみりゃなりに十分気を付けていたはずだった。 ご飯は全て中身だけにしてゆっくりだとは気づかないようにしてきたしれみりゃは自信があった。 狩りを覚える頃になれば大きくなっているだろうしその時全てを話そうと決めていた。 れみりゃはちぇんの本当のおかあさんを殺した。(と思われる) 全てを話したその時、立派に捕食種として育った我が子に食い殺されよう。 ちぇんにはその資格がある。 れみりゃはそう思っていた。 しかし思っていたよりもまだだいぶ早く気づいてしまった。 それでも可愛い我が子に嘘は付けなかった。 「うー…そうだど…れみりゃはちぇんのほんとうのおかーさんじゃないんだど…」 「…わかるよー…ちぇんとおかーさんはちがいすぎるんだよー… …ちぇんの、ちぇんのほんとうのおかーさんはどこなのー?」 「……れみりゃが…ころしたんだど…」 「!」 ちぇんはある程度覚悟していた。 つい最近こっそりこーまかんから抜け出してれみりゃの狩りを見たから。 「ゆっくりさせてよー!…ゆっゆっゆ!もうやだぁぁぁ!おうぢがえるぅぅぅぅぅ!ゆゆ!?ゆんやぁぁぁぁぁぁ!!」 悲鳴と命乞いを叫びながら逃げるれいむをれみりゃは躊躇せずに噛みつき、絶命させていた。 そして中身だけを口一杯に詰め込むと羽を広げ、帰る仕草を見せた。 ちぇんは混乱しながらもバレてはいけないと判断し、急いで帰った。 足の速いちぇんは先に帰ることができ、バレることは無かった。 「ころしたことをべんかいはしないんだど、でもれみりゃはちぇんをほんとうのこどもだとおもってるど! ちぇんといっしょにいれてれみりゃは、しあわせ~だったどー……」 「おかーさん…」 「もし…もしちぇんがれみりゃをきらいなら…れみりゃを…れみりゃをころしてもいいんだど!!」 「!!!???」 ちぇんは驚き、そして泣いた。 「ゆっぐ…ゆっぐ…どぼじでそんなごどいうのー?わがらないよぉぉぉ! ちぇんは、ちぇんはおかーさんのごどだいすぎなんだよぉぉ!? ちぇんもおかーさんといっしょでとっでもとーっでもしあわせ~だったんだよ!? それなのに…なんでごろじでもいいとがいうのぉぉぉ!?」 ちぇんは怒っていた。 自分の本当の親を殺したことへではない、自分にれみりゃを殺してもいいと言ったことへだ。 ちぇんはただ本当のことが知りたかっただけだった。 自分はれみりゃの本当の子供ではない、だから似ていない、本当の親はもう死んでいる。 それを認めてもらった上で気持ちを整理してこれからも一緒に暮らしていこう、そう思っていた。 「う…うあ…ちぇんは、れみりゃがおかーさんでいいんだど?」 「とうぜんだよー!」 「れみりゃはちぇんの…」 「そんなことはどうでもいいんだよー!!ちぇんのおかーさんはおかーさんだけなんだよー!!ゆっくりわかってねー!!」 「ううう…うぅぅぅぅぅぅ!!」 れみりゃは羽を、ちぇんは2本の尻尾を、それぞれ相手を抱きかかえるようにして泣いた。 れみりゃは全てを謝罪し、ちぇんは全てを許した。 そう、今この瞬間からこの2匹は本当の親子になったのだ。 数日後、ちぇんは悩んでいた。 本当のことがわかったのは良かったが、自分があまりに捕食種らしくないことに。 れみりゃのような羽で一緒に空をぱーたぱーたしたい。 れみりゃのような牙で一緒に狩りに出かけたい。 そもそも捕食種ではない自分がそれらも無しにこれから生きていけるか、と。 れみりゃもそれには気づいていた。 そして大分早いが前々から計画していたことを実行しようと決めた。 「ちぇん?これからだいじなことをはなすどー!」 「わかったよー!ゆっくりきけばいいんだねー?」 れみりゃはちぇんに説明を始めた。 れみりゃ命名「ちぇんとぱーたぱーたしようだいけいかく! ~ぱーたぱーたはきもちいいんだど!~」である。 1:ご飯をたくさん貯め込む 2:れみりゃが自分の羽にかみつき引き抜く 3:羽の付け根をちぇんの背中に刺し込む 4:しばらく貯め込んだ餌で耐えつつ羽が取れないよう見守る 5:羽がくっつく 6:動かす練習をする 7:飛ぶ練習をする 8:一緒にぱーたぱーたする れみりゃは捕食種なのでしばらくすれば羽はまた生えてくる。 ちぇんに羽が馴染んでくれればちぇんも飛べる。 なんとも浅はかな計画だが、れみりゃからすれば練りに練った最高の計画である。 「ゆぅ…でも、おかーさんいたいいたいだよー?」 「うっう~♪だいじょうぶだっど~!れみりゃはつよいからすぐにあたらしいはねさんがはえるんだっどー!」 それを聞いたちぇんはとても喜んで賛成した。 夢にまで見た自分だけの羽のために。 れみりゃもそんなちぇんを幸せそうに眺めていた… 更に季節は流れて秋。 れみりゃの計画は大成功だった。 始めたのが夏だったこともあり貯め込むご飯は簡単に捕獲できたし、 涼しいこーまかんで羽がくっつくのをゆっくり見守るのはむしろ幸せだった。 まだ少し小さいちぇんの体には余るくらいの大きな羽だが、 ちぇんのれみりゃのようになりたいという気持ちが強かったことが作用したのだろうか、 羽は一週間程度でくっつき、それから一か月位でなんとか飛べるまでになっていた。 「わかるよ~!こうやってちからづよくぱーたぱーたすればいいんだねー?」 今となってはゆっくりなられみりゃと並んで飛ぶこともできるが、初めて並んでぱーたぱーたした時は抑えきれない喜びを感じ意識を失って落下。 れみりゃが焦って救出したほどだった。 それから、余った時間で狩りも習った。 ちぇんは気配を消すのがとてもうまく、その点だけは初めかられみりゃを超えていた。 また茂みから普通のちぇんを装って声を出して相手を油断させる等頭も良かった。 それでも飛び立つ時の初速が遅いせいで狩りの成功率は低かった。 そこが現在の課題ではあるが、ちぇんだけ食べる分には問題ないくらいには上達していた。 「うっう~!きょうもとうっみんっのためごはんをあつめるんだっど~! これはとっでもだいじだからがんばるんだどー!」 そう、実りの季節を迎えちぇんも狩りができるようになったこともありそろそろ冬支度しなければいけないのだ。 狩りは二手に分かれて行っている。 ちぇんのノルマは自分で今日食べる分以上を集めることだが、それができるのは3日に1度くらいである。 それでもれみりゃは食糧集めに集中できるだけでだいぶ楽だった。 「それじゃあここでふたてにわかれるど~!かげさんがむこうのやまさんのほうをむいたらこーまかんにしゅうごうだっどー!」 「わかるよー!きょうこそいっぱいまりさをつかまえるよー!」 いつもれいむやぱちゅりーなど動きの遅いものばかり狙っているちぇんにとって身体能力の高めなまりさは捕まえにくい。 群れに突撃しない限り負けることは無いが逃げられることが多かったのでまりさをいっぱい捕まえることを目標にしていた。 「わからないよ~!どこにもまりさがいないんだねー!」 しばらく飛び回るがどこにもまりさの姿が無い。 それどころかゆっくりすら見られない。 「やめてね!まりさをたべないでね!…ゆっぐりしだいよぉぉぉぉ!!」 まりさの声が聞こえた。 声のする方に向かうと2匹の胴無しれみりゃがまりさを襲っている。 「うっうー☆きょうもじゅんちょうだっどー♪」 「う?おかーさんへんなちぇんがいるんだどー?」 初めて母親以外のれみりゃを見たちぇんは反応に困った。 「ちぇ…ちぇんはほしょくしゅのちぇんだよー!きばさんはちいさいけどはねさんはあるよー! れみりゃおかーさんとかりしてるんだよー!わかってねー?」 捕食種として育ったこともあり「ゆっくりしていってね!!」とは言わなかった。 とりあえず自分についてを相手に伝えようと必死だった。 「うー?ちぇんはほしょくしゅじゃないんだっどー!」 「ならあれはごはんだどー?うー!い☆た★だ☆き★ま☆すだっどー♪」 れみりゃ親子がちぇんに飛び掛かった。 「わからないのー!?ちぇんはごはんじゃないよー!?」 ちぇんは叫びながら逃げた。 しかしやはり遅い… 「どーしたんだど?♪もっとはやくとばないとた~べちゃ~うぞ~♪」 「うっう~☆れ★み☆りゃ★う~♪」 明らかにこの親子は遊んでいた。 「やめてねー!いじめないでねー!!わがらないよぉぉぉぉ!!おがーさぁぁぁぁぁぁん!!……ゆぎゃ!」 ついに捕まってしまった。 体を子れみりゃに押さえつけられる。 「いだいよぉぉぉ!!わがらないよぉぉぉ!!はなじでよぉぉぉ!!」 「ちぇんがはねさんなんてなまいきなんだっどー!」 「!?!?!?!?!?!ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!やべでねぇぇぇぇぇ!!!」 親れみりゃはちぇんの羽に噛みつくと勢いよく引き抜いた。 既に自分の一部となっているちぇんに今まで味わったことのない激痛が襲う。 「もうかたほうもぬいちゃうんだっどー!」 「ゆ…ぁぁ…やめ…はねさん…おがーざんにもらっだ…だいせづな…はねさん…」 「いくどー!れ★み☆りゃ★うぅぅぅぅぅぅぅ!!」 「sdfgghhj!!!!!ゆぢゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 これでちぇんに羽は無くなった。 背中の羽の付け根だった部分には穴があき、チョコクリームが垂れ始めていた。 ちぇんは背中の痛みよりも羽が無くなった悲しみの方が苦しかった。 自分と母親を繋いでくれる羽。 母れみりゃが痛い思いをしてくれた大切な羽。 脈打つ背中の痛みをはるかに超える悲しみがちぇんの意識を奪おうとしていた。 「ちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!!」 その時、ちぇんには赤い光が見えた。 母れみりゃだった。 鬼の形相の母が今まで見たことのない速さでれみりゃ親子に突撃していたのだ。 「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「うびゃっ!!」 数メートル転がっていくれみりゃ親子と自分に近寄ってくる母。 「ちぇん!!くるのがおくれたど!!ごめんだどー!!」 さっきの鬼の形相が嘘だったような泣き顔を見せる母にちぇんは安心した。 「わかるよー…たすけてくれたんだねー…でも、ごめんねー… おかーさんにもらったはねさん……だいじな……だいじな…ゆっぐ…だいじなはねざん… なぐなっちゃっだよー……ゆっぐ、ゆっぐ…ごべんねー…ほんどに…ごべんねー…」 「いいんだどー!こんどまたあげるんだどー!ちぇんのためならいくらでもあげるんだどー!!」 「……なら、いのちをもらうんだどー!!!」 「う!?」 油断した。ちぇんが気になってトドメを刺すのを忘れていた。 いつのまにか戻ってきていたれみりゃ親子が母れみりゃを両脇から噛みついた。 「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」 「よーくおぼえておくんだどー!?エオモノをいちげきでしとめれないれみりゃはいちりゅうじゃないんだっどー!!」 「おがーざんわがっだどー!!ふいうぢするゲスなれみりゃはころしでやるんだどー!!」 初めて聞く母の悲鳴。 苦痛に歪む母の顔。 いくら強い母といえども両脇から噛みつかれては身動きが取れない。 このままでは自分だけじゃない、母も殺されてしまう。 自分がもっと強かったら……母の様に強い捕食種だったら…… …その時、ちぇんは心になにか熱いものを感じた。 すると、背中の痛みが消えてゆく。 それどころか体中に力が漲ってくる。 「うっうー!これだけやればこのゲスりゃはしばらくおきれないはずだどー!」 「うー…おかーさん、おなかすいたんだどー…ちぇんをたべてもい……!?!??!?!? いだいんだどぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 子れみりゃは右頬に痛みを感じた。 …ちぇんだ。 ちぇんが噛みついたのだ。 「いだいんだどぉぉぉぉぉ!!はなれるんだどぉぉぉぉぉ!!」 中々離れない。 ちぇん種の小さい牙なら簡単に振りほどけるはず… そう考えていた子れみりゃは混乱した。 そして、ブチッ!!と鈍い音と同時に子れみりゃは開放感を感じた。 「いぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!ざぐやぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!」 子れみりゃの右頬は噛みちぎられていた。 ちぇん種の牙では傷付けるので精一杯のはず… 親れみりゃはちぇんに向き合う。 そこには見たことのないゆっくりがいた。 先ほどの背中の穴はもうほとんど癒えている。 口からはれみりゃ並の大きな牙が見え、顔は先ほど見たれみりゃの鬼の形相そのもの… 「あれ?きばさんがおおきくなってるよー!?わからないけどわかるよー! これが、これがおかーさんとおなじほしょくしゅなんだねー!!」 これはちぇんではない、少なくとも間違いなく捕食種だ。 そこで子れみりゃを思い出し子れみりゃのほうに目をやる。 痙攣しているが捕食種の再生力ならなんとかなる程度だ。 今ならまだ助かる、目の前の捕食種は羽が無いから飛べないはずだし飛べば逃げ切れる。 親れみりゃは勢いよく子れみりゃの方へと飛ぶ。 「わかるよー!こっちにくるとおもってたよー」 「うべぇぇぇぇ!!なんでもういるんだどぉぉぉ!!」 そこにはちぇんが待ち受けていた。 確かに少し目を離したがそれでもさっきのあの遅さではここまで来れない。 「わからないのー?ちぇんはね、ぱーたぱーたするよりぴょんぴょんしたほうがはやいんだよー!」 「じゃ…じゃあなんでさっきとんでにげたんだどぉぉぉぉぉ!?」 「はねさんがじめんさんにこすれてぴょんぴょんしにくいからだよー、わかってねー!?」 「うぅぅ…!うぅぅぅぅぅぅ!!!」 苦肉の策。 いくら早いとは言えど羽無しなら飛べば追いつけないはず。 子供を置いていくのは忍びないが子供はまた産めばいい。 親れみりゃは泣きながら飛び立った。 「うっうー!はねなしならここまでこれないんだっどー! やーいやーい♪うっうーうあうあー♪」 「さっきはすまなかったどー…」 「うあえあえ~!!??」 空に逃げのび余裕が出たのか挑発を始めた親れみりゃの背後に母れみりゃの影があった。 「おまえのいうとおりエモノはいちげきでしとめなきゃいちりゅうじゃないどー」 「うあ…あ…うあ…」 「こんどはいちげきでしとめてやるどぉぉぉぉぉぉぉ!!」 ガブッ!!…… 素早く背後から正面に移動した母れみりゃは大きく口をあけ、親れみりゃの顔面に喰らいついた… 顔だけは再生できない。 顔面を食いちぎられた親れみりゃは力なく落ちて行った。 「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 母れみりゃは悲鳴の先を見る。 するとちぇんも同様のことをして子れみりゃにトドメをさしていた。 その場には顔面と一部が食いちぎられたれみりゃの死骸が2つ、力なく横たわっていた。 「おかーさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」 「ちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」 いつの日かのように泣きながら抱き合った。 「ごめんだどぉぉぉ!!」 「いいんだよー!それよりちぇんをみてほしいよー!おおきなきばさんもあるし、きずさんもいたくないんだよー!」 ちぇんの姿を改めて見なおしたれみりゃは涙が止まらなかった。 今自分の目の前にいるのは紛れもない捕食種、立派な捕食種の姿だからだ。 ついに成し遂げた。 立派な捕食種を育てるというあの日の決意を。 …いや、まだ大事なことがある。 「きょうはすこしはやいけどこーまかんにかえるどー!きょうはたいりょうだったどー!」 そう、前は成し遂げられなかった越冬だ。 まだ自分の仕事は終わっていない。 でも今日は、今日くらいはちぇんと一緒にゆっくりしよう。 そう思いゆっくり家路についた。 春、雪解けがだいぶ進み新しい命が次々と生まれる季節。 山に住む多くの住民たちが目覚める季節。 そんな季節に泣きながら巣から出てくるゆっくりがいた。 れみりゃだ。 胴無しタイプのようだ。 「う~…ちぇん…」 「わかるよー!さびしいんだねー!ちぇんもおなじだよー!」 背中の羽と釣り合いのとれた体になったちぇんは涙を堪えてそう言った。 羽が無い方が速いのだがいつか必ずれみりゃのように速く飛んでみせるというちぇんの声を尊重して再び羽を付けた。 しかしただ付けたわけではない。 あのあとこーまかんに帰ったちぇんの背中には羽が生えかかっていた。 しかしいつまでも繋がっていたいというちぇんのわがままで羽を片方づつ交換したのだ。 「うっ…うっ…さびしくなったらいつでももどってくるんだど~?」 「だいじょうぶだよー!ちぇんはいつもおかーさんといっしょなんだよー!」 予定よりも大分早いがれみりゃがちぇんに教えることはもう無かった。 残る課題の飛び方は厳しい自然の中で暮らせばどんどん上達する。 それ故の早い巣立ちだった。 そしてちぇんは巣立っていく。 自分の羽と母の羽を大きくはばたかせて……… ************************あとがき************************************************************************* 今回も最後まで読んでいただき本当にありがとうございました! 今回はオレ設定が多く含まれるものを作ってみようと思い作りました。 ちぇんは最初れいむの予定でしたが後半で捕食種の強さを持ったれいむが想像できなかったのでちぇんになりました。 れみりゃを3匹出すので区別しにくかったかもしれません。 まずそれが今後の課題の一つ。 それからオレ設定はやっぱり読み返すと違和感ありますね… ゆっくりの思い込み次第でどうにでもなる感じをもっと引き出したかったです。 今度はもっと違和感が無くなるようにゆっくり頑張ることが二つ目の課題です。 最後にもう一度、読んでいただき本当にありがとうございました。 著者 ライトM制裁派お兄さん ************************過去作品************************************************************************* 過剰愛でお兄さんの悲劇 元祖ゆっくりとの遭遇 リーダーまりさの成長 このSSに感想をつける
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「ぎゃおー!たーべちゃうぞー!」 「たべちゃうだってさ」 「おおこわいこわい」 魔法の森のゆっくり達は襲い掛かるゆっくりれみりゃを見てゆっくり構えつつも即座に逃走に移った。 森を熟知しているゆっくり達はれみりゃが手を伸ばすよりはるかに前に散り散りになりれみりゃの視界から消えた。 「うー?う゛ー!う゛ー!ざぐやー!おながずいだー!」 相当おなかがすいていたのか、ごはんにありつけずゆっくりれみりゃは地べたに座り込んで泣き出した。 その汚らしい声に木に止まっている森の鳥達が眉根をひそめて囀るのをやめた。 このゆっくりれみりゃ、ある人間の女の子に飼われていたのだが大きくなった上にわがままで、親に言われて泣く泣く捨ててしまうことになったのだ。 父親が戻ってこれないようれみりゃが寝ている間に魔法の森に入って木の洞に入れておいたのである。 洞の中に朝日がさして目を開けたとき、誰も居ないことで最初はさびしくてずっと森の中で泣いていたが そこはゆっくりブレイン、すぐに飼い主のことなど忘れおいしそうな匂いのするゆっくりを見つけると本能なのかすぐにゆっくりを狩り始めた。 最初のころは油断したゆっくりを何匹か捕まえることが出来た。 しかしれみりゃが居ることがゆっくりネットワークによって広まるとすぐに警戒され、ゆっくりを発見するところまではいけるのだが 捕まえようとするとすぐに逃げられてしまい全く狩りは成功しなかった。 そんな状況が二日ほど続きれみりゃはもはやふらふらでもうザグヤザグヤと泣き喚くしかなかった。 ちなみにさくやというのは前の飼い主の女の子のことである。 その子はさくやという名前ではないのだが何故かれみりゃは飼い主の女の子のことをそう呼んでいた。 「うー!ざぐやー!うあー!うあー!だれでもいいからごはんー!ごはん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ー!!」 「ゆっくりでてきましょうか?」 そんなれみりゃの前に森の木々の間からぴょこん、とゆっくりゆかりんが飛び出してくる。 「ほらゆっくりでてきました」 「う?うー!ぎゃおーたーべちゃうぞー!」 ゆっくりゆかりんが目の前に出てくるとすぐに噛み付こうと諸手をあげて突っ込んでくるれみりゃだったが あっさりとゆっくりゆかりんによけられて顔面から地面に思い切り突っ込んだ。 「う、う゛ー!どおじでみ゛んな゛れ゛み゛り゛ゃにだべら゛れ゛でぐでだいどぉー! お゛な゛がずいだー!ざぐやー!ざぐやー!!」 案の定泣き出したれみりゃを見てゆかりんはあきれながら言った。 「ゆー…れみりゃにたりないのはゆっくり人のはなしをきくことかしら ごはんにありつくための」 「うー?ごはん?うー♪ごはんちょーだいーごはんー!」 現金なものでれみりゃはごはんと聞くとすぐにごはんをくれると勘違いして河馬の様に大きく口を開いて食べ物を貰うための体勢を整えた。 「だからゆっくりゆかりんのはなしをきいてね」 ゆっくりゆかりんは溜息をつくと嗜める様にれみりゃに言った。 「ゆかりんがごはんを集めるのをてつだってあげるよ そしたられみりゃはおなかいっぱい食べられるようになってゆっくり出来るよ そのかわりにゆかりんが冬を越すためのたべものをいっしょに集めてほしいの」 「うー♪れみりゃたべものいっぱいあつめるー!だからごはんごはんごはんー!うー!」 とにかくご飯にありつきたいれみりゃは躊躇せずにいい笑顔で即答した。 「ゆっ、れいむゆっゆっれいむぅ…!」 「ゆっ、ゆっまりさ!まりさぁ!」 「ゆゆぅっ、すっきりするぅ…!すっきりしちゃうぅ…!」 「ぎゃおー!たーべちゃうぞー!」 『ゆんほぉおおお!?』 粘餡を出しながら体をこすりつけ合わせている、要するに交尾真っ最中のゆっくり二匹を発見し ゆっくり近づいて茂みから飛び出したゆっくりれみりゃ。 「ゆ!すぐににげないとゆっくりできなくなるよ!」 名残惜しみながらもすぐさま体を離すゆっくり二匹。 その頬からは粘着質な糸が引いていた。 「ゆー…まりさたちにたりないのはの少女臭かしら あさましいしょうどうを抑えるための」 ゆかりんはれみりゃに抱えられながらそう言い放つと地を這うれいむとまりさに口から何かを吐いてかけた。 「ゆぐぅうう!?くさい!くさいよおおおおお!?」 「ゆ!ひどいよ!れみりゃもゆかりんもゆっくりしね!!」 納豆を頭にかけられたゆっくり二匹は捨て台詞を吐くと即座に用意していた逃走ルートを通って逃げて行った。 「うー!ま゛っでぇー!う゛ー!」 追いかけようとして思い切り転んでしまうれみりゃを尻目に二匹は後で落ち合って続きをしようと目配せをした。 「ゆー…臭いよ…れいむ…」 苦もなくれみりゃとゆかりんの魔の手から逃げ切ったまりさはゆかりんの吐いた納豆の臭さに辟易していた。 「ゆっくりけんじゃなんていってゆかりんもぜんぜんたいしたことなかったよ! あんなばかはゆっくりしねばいいのに」 ゆかりんに対して文句の一つも言わないと収まりきらない気分だった。 ああこんなゆっくり出来ない気分の時は早くれいむと落ち合って体を洗ってさっきの続きをしたい。 そのことを考えると体がぬとっとしてくるまりさであった。 「ま゛り゛さ゛にげでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「ゆ゛!?」 突如後ろから聞こえてくる声にその忠告を無視して思わずまりさは後ろを振り向いた。 「うー!ぎゃおー!たーべちゃうぞー!」 「れいむうううううううう!!!!」 まりさの目の前に居たのはゆかりんとれいむを両腕に抱えるれみりゃだった。 れいむの頭にリボンが外れかけて変わりに黒っぽいものが見える。 あれはなんだろうか、あの黒いものは。 「どうじでれ゛い゛む゛のあ゛んごがああああああ!!!」 「はいゆっくりでてきました」 恐怖に駆られ逃げ出そうとするまりさの前にれみりゃの上でから飛び降りたゆかりんが立ちふさがった。 「うーたーべちゃうぞー!」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「ま゛りざああああああああああああ!!!」 ゆかりんを避けるか、それとも弾き飛ばすかを躊躇した瞬間、まりさの頭をれみりゃの手が掴んでいた。 こうなればもうまりさに逃げる手段は無い。 「どうじでえ゛え゛え゛え゛!どうじでみづがっだの゛おおお! ちゃんとにげだの゛に゛い゛いいいいいい!!」 絶望で包み込まれたまりさが考えたことは何故自分の逃げた行方がれみりゃにわかったのかということだった。 「まりさの少女臭をゆっくり追って来たよ!」 「うー♪くちゃいくちゃい!」 「臭くないよ!少女臭だよ!」 そう、れみりゃとゆかりんはまりさ達についた納豆の臭いを追って来たのだ。 なんということだ、ゆっくり歩かずにすぐにでも川に向かって体を洗うべきだった、とまりさは嘆いた。 「うああああああああああああ!!!! じにだくな゛い!も゛っどゆっぐりじだいいいいいいいいい!!!」 「ぎゃおー!たーべちゃうぞー!!」 「だべだいでええええええええええええ!!!」 「そんなにゆっくりしたいなら、いくらでもゆっくりさせてあげるわよ」 「!?」 「ほんとに!?」 生気を失っていた二匹のゆっくりの目に光が戻った。 「うー?だめ~、これはれみりゃのごはんー!」 「れみりゃもおなかいっぱいになれるはなしよ」 「う~?おなかいっぱいー!ごはんー!ごはんー!」 「ただしゆかりんの言うことを聞いたらだよ そしたらゆっくりさせてあげるよ」 片目を閉じて二匹を横目に言うゆかりん。 「聞きます!聞きますうううううううう!!!」 泣きながらまりさはゆかりんにすがりついた。 しかしれいむは警戒を解こうとはしなかった。 既に頭を齧られているので当然といえば当然だろう。 そんな二匹に対してゆかりんは言った。 「れいむかまりさの家族の居るおうちをおしえてくれたらゆっくりさせてあげるよ」 ニヤリ、とゆかりんの口元がいじわるそうに歪んだ。 「!ぜったいにおしえたりしないよ! れいむたちをたべるならゆっくりしてないでとっととたべてね!」 やはりそんなことだろうと思った、れいむは胸中でそう自分の命は諦め代わりに家族を守るために硬い決心をした。 絶対に家族を売ったりするものか、その想いはまりさも同じである。 「こ゛っち゛です゛!ごっぢに゛れ゛い゛む゛だぢのおうぢがありまずううううう!!!」 「ま゛り゛さ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」 と思っているのはれいむだけだったようだ。 まりさは顔中から餡子汁を流してニヘラニヘラと卑屈な笑いを浮かべながらゆかりんとれみりゃを案内し始めた。 ゆかりんはそれをみてケラケラと笑いながらついていった。 「まりさだよ!ゆっくりあけてね!」 「ゆ、いまあけるよ!ゆっくりしていってね!」 巣の中で冬の支度をしていたお母さんれいむは娘のれいむの友達のまりさが娘と共にゆっくり帰ってきたようなのですぐに家の扉を開けた。 「お゛があ゛ざんあげぢゃだめ゛え゛え゛え゛!!!」 「ぎゃおー!たーべちゃうぞー!!!」 「ぎゃあああああああああ!?」 扉を開けるとそこにあったのは娘とその友達の笑顔ではなく小さな、それでもゆっくりにとってはとても大きな手。 その手はお母さんゆっくりのおでこに5本の指を突き刺すとまるでみかんの皮でもはがすかの様に顔面の皮を引き剥がした。 黒い餡子にぽっかりと開いた空洞から断末魔が響き渡った。 「うー♪うま♪うま♪」 「いやー!」 「どうじでごんなごどずるのま゛り゛さ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「はなぢでええええええええええええええ!!!!」 次々と食べられていくれいむの家族達。 「ここはゆかりんのおうちにするから汚さないでね!美しくね!」 ぼろぼろと食べこぼしながら巣の中を漁るれみりゃのおしりにゆかりんが噛み付いて抗議していた。 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!お゛があ゛ざんお゛があ゛ざんお゛があ゛ざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!!!」 「ゆー、騒がしくて美しくないからそのれいむももう食べていいよ」 「うー?うあー♪たーべちゃうぞー!!」 「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!」 ゆかりんからの許可が出て早速さっき付けた傷の辺りから餡子を吸い出すれみりゃ。 れいむは一瞬で全ての餡子を吸い出されて湿った皮だけになった。 「うー、あま♪あま♪」 まるでその皮はデスマスクのようで、その表情は恐怖と悲しみと怒りの全てが入り混じった恐ろしい表情だった。 人間を使ってもこうも見事なデスマスクはそう簡単に作れないであろう。 「これいあない♪ポイっ、するの♪ポイっ♪」 しかして残念なことに餡子を吸い出した後の皮にれみりゃは全く興味は無くその辺に放り出して その皮はゆっくり、鳥と虫の滋養となった。 「これでまりさはゆっくりできるよ!」 その惨状を後ろから見ていたまりさは全てが終わったと思い歓声を上げた。 その笑顔はとても清清しいもので、それを見て思わずゆかりんも微笑み返してこういった。 「あのまりさももう用が無いから食べていいよ」 まりさの笑顔が凍りついた。 「ど、どどどどどどどどどどどどど」 まりさはカタカタと震えだした。 交尾の時でもこの半分も震えないだろう。 清清しい笑顔は引き攣った笑いとなってまりさの顔にへばりついた。 思い切り泣きわめきたいのに涙だけが一筋こぼれても引き攣り笑いしか出来なかった。 「どっどっどどどおしてややややくそっそそくしたたたたたた」 「ゆー、たしかまりさとはこれが終わったらいくらでもゆっくりさせてあげるわよってやくそくしてたわね」 「!?そそそうだよ!わすれちゃだめだよ!ゆっくりできないところだったよ!」 ただ単に約束を忘れていただけなのだ、そう知って安心したまりさは引き攣り笑いをやめて再びあの清清しい笑顔をしようとした。 「お友達のれいむのところで、永遠にゆっくりしていってね」 「たーべちゃうぞー♪」 しかしそれよりも早く現実とれみりゃの爪がまりさを引き裂いた。 「うー♪おなかいっぱい♪うーうーうあっうあっ♪」 そんな風にゆかりんとれみりゃが協力して狩りを続けて一週間ほどが経った。 れみりゃもゆかりんの指導の下で大分野生の生活と魔法の森にも慣れて、頑張れば一人でも餌を取れるようになっていた。 特に姿が見え無いときは饅頭の臭いを辿ってゆっくりを捕まえればいいとゆかりんに教わったことでれみりゃの狩りの力は大きく成長した。 まあ野生のれみりゃ種やフラン種は本能で簡単にやってのけてしまうことではあるのだが。 「そろそろゆっくりしてないでゆかりんのごはん集めを手伝ってね!」 れみりゃも一人前になってきたのでそろそろ当初の予定通り自分の冬越え用の食料集めを手伝ってもらってもいいだろうと ここ二日ほどゆかりんはしきりにそのことをれみりゃに訴えかけていた。 「…うー」 「拗ねても駄目だよ!ちゃんと集めてね!約束だよ!」 しかしれみりゃはせっかく気分良く踊っていたところで怒鳴られて邪魔されて面白くない。 ここ二日間ほどはずっとそうだった。 れみりゃはそのゆっくりブレインで考えた。 もう狩りの仕方も覚えたしれみりゃがゆっくりするのを邪魔するこの納豆は要らないのではないか。 そうだ、もうこれは要らない。 「うー♪こえいらない!ポイっするの!」 「ズギマ゛!?」 思い立てばその行動はすばやかった、全くゆっくりしていない。 ゆかりんは森の木に向かって投げつけられた。 「ゆ…ゆぐほっ!?」 ゆかりんはずるりと地面に落ちて、口から納豆を垂らして咳き込んだ。 「うー♪くちゃいくちゃい♪こえいらなーい♪ぽいっ♪するの、ぽいっ♪」 れみりゃは今までの鬱憤を晴らすためにもう何度も投げて壊れるまで遊んでやろうとゆかりんの方へと歩き出した。 「鼻につくわ…そのゆっくりれみりゃ特有の上から目線…!」 ゆっくりゆかりんの目付きがそれまでのゆっくりした目付きから鋭い、肉食獣のような目付きに変わった。 しかしれみりゃはそれに気づかずに屈んで手を伸ばした。 ゆかりんは負傷しているとは思えないほどの速さでその手の上に跳ね乗るとそこからさらに跳び、れみりゃの鼻に噛み付いた。 「!?う゛あ゛ー!?あ゛ぐや゛ー!!!あ゛ぐや゛ー!!!」 予期せぬ反撃にしりもちをついて手をぶんぶんと振り回すしか出来ないれみりゃの鼻の中にゆかりんはプッと何かを吹き込んだ。 「!?!?!?!?!?!?!?」 れみりゃが目を白黒させる。 「う゛あ゛あ゛ああああああああああ!?ぐぢゃ゛い゛!ぐぢゃ゛い゛い゛い゛い゛!!!!!??????」 そう、ゆかりんはれみりゃの鼻の中に納豆を吹き込んで居たのだ。 「まったく、れみりゃ風情が、ゆかりんとの約束をやぶるのは絶望的にはやいわ」 ゆかりんはれみりゃの鼻を離して地面に降りると、冷めた表情でれみりゃに問いかけた。 「ゆっくりでていきましょうか?」 「う゛あ゛あ゛あああぐぢゃ゛い゛の゛おおお!!!あ゛っぢい゛っでえ゛え゛え゛え゛え゛!!!」 「ほらゆっくりでていきました」 そういうと、ゆっくりゆかりんはどこからともなく現れたときのようにいつのまにか木々の間へと消えていった。 「う゛あ゛ー!!!ざぐや゛!ざぐや゛あ゛あああ゛ああ゛ああ゛あ゛!!!!」 「うー、うー…」 それから数日が経ち、何とか臭いになれて動けるようになったれみりゃは生きるために餌のゆっくりを探して何日もさまよい続けていた。 しかしゆかりんの下で覚えた狩りの方法は全くその効果を発揮しなかった。 れみりゃはあの鼻納豆で嗅覚を完全に破壊されていたのだ。 再生力の強いれみりゃ種でもここまで鼻の機能を壊されてしまえば臭いを追って獲物を捕まえることも出来ない。 目視できる場所からでは空腹で力の出ないれみりゃでは捕まえる前に逃げられてしまう。 れみりゃは着々と衰弱していた。 「うー…おなかすいた…さくや…さくやー………」 恐らくれみりゃが獲物にありつくことは二度とないだろう。 「さくや、さくや、さくや…」 遂に森の中でへたり込み、何度も飼い主の名を呼ぶ。 困ったときはいつもさくやが助けに来てくれた。 そのまま一歩も動かずれみりゃはさくやとの思い出を反芻し続けた。 「これかってもいいの?ありがとうおかあさん! よろしくね、わたしはあなたのかいぬしの○○○よ」 初めてさくやにあった日、まだ顔だけだったれみりゃにさくやは奮発してプリンをプレゼントしてくれた。 「もー!れみりゃー!散らかしたら駄目でしょ!」 れみりゃがおもちゃを散らかすとさくやはぷんぷんと怒りながらも代わりに片付けてくれた。 「れみりゃ、もうちょっとまわりのことを考えて迷惑をかけないでね お父さんとお母さんもちょっとれみりゃのわがままに迷惑してるんだから」 さくやは本当に心配そうにれみりゃにそう言った。 れみりゃにはよく意味がわからなかった。 「もうみんなに迷惑かけないって約束して、ね れみりゃだってがんばればちゃんと私との約束守れるよね」 さくやはれみりゃに不安で不安で仕方ないのを隠しながらきっと出来ると言った。 れみりゃは横を向いておやつを食べながらうんと返事をした。 「もう庇い切れないの!お願いだからもうお父さんとお母さんに迷惑かけるようなことしないで! 約束を守ってくれないと次は本当に…!お願いれみりゃ!私との約束を守ってぇ!!」 さくやは泣きながら、縋るようにれみりゃに頼み込んだ。 れみりゃはさくやに笑顔で返事をしてあげた。 その日の夕方ごろ、おかしはないかと食べ物を入れてある棚の中をぐちゃぐちゃにして結局おかしは見つからずふてくされてベッドで眠った。 朝起きると森の中に居た。 「うー、さくや、さくや…」 段々と、れみりゃにもわかり始めていた。 『拗ねても駄目だよ!ちゃんと集めてね!約束だよ!』 『まったく、れみりゃ風情が、ゆかりんとの約束をやぶるのは絶望的にはやいわ』 『約束を守ってくれないと次は本当に…!お願いれみりゃ!私との約束を守ってぇ!!』 「うー…ごべんな゛ざい゛…やぐぞぐやぶっでごべんな゛ざい…うー、うー…!」 ようやく、れみりゃにも何が悪かったのかがわかった。 「ざぐや゛ごべんな゛ざい゛…!やぐぞぐやぶっでごべんな゛ざいい…! う゛ー!ごべんな゛ざい゛ごべんな゛ざい゛ごべんな゛ざい゛、う゛ー!う゛ー!」 れみりゃは涙ながらに今までの自分の行いで裏切り、傷つけてきた人たちのことを想い心から謝った。 「やぐぞぐやぶっでごべんな゛ざいい…!ざぐや゛!ごべんあざい!ごべんあ゛ざいいい!ざぐや゛!ざぐや゛ぁ!」 飼い主の女の子がこの言葉を聞いたならばどれほど喜んでれみりゃを家まで連れ帰ってくれるだろう。 だがこの心からの謝罪がその子に届くことは無かった。 木々の枝葉の間から、鳥達が何も言わずにれみりゃが力尽きるのを見下ろしていた。 このSSに感想を付ける
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かりしゅま対決! ============================ ≪はじめに≫ 「でびりゃまん」の続き(その2)になります。 本家東方のキャラが出ますが、口調・性格ともに結構いい加減です (※fuku2706.txtから一部修正しました) 以上、ご容赦ご了承ください。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。 ============================ 空を、一匹のれみりゃが行く。 このれみりゃ、見た目は一般的な胴体付きのれみりゃに近いが、少しばかり勝手が違った。 体は、他のれみりゃより一回り大きく、120~130cm程もある。 お飾り程度にしかついていないはずの羽も、それなりに大きく、飛行速度はうーぱっく並。 また、普通のれみりゃの服がピンク色なのに対して、 このれみりゃの服は紫がかったスミレ色をしていた。 ……というのも、このれみりゃ、 諸々の事情によって、れみりゃ種とフラン種の間に生まれた変異種なのだ。 「う~♪ とうちゃーく」 紅魔館を囲うように繁る木々、 その中でも一際大きな木の枝の上に降り立つ、れみりゃ。 「うー! おっきぃーどぉー!」 れみりゃは紅魔館を見て、ただでさえ大きな目を丸くする。 「えれがんとなおやしきだどぉー♪ わるいやつぽぉーいしたら、ここをべっそうにするどぉー♪」 "わるいやつ" このれみりゃは、森で偶然助けたれみりゃ達から頼まれ事をしていた。 れみりゃ達をいじめる悪い奴がいるから助けて欲しい、と。 このれみりゃは、その話を聞いて、わるいやつをやっつけるべく、 こうして紅魔館にやって来たのだった。 「う?」 れみりゃは、館の庭先にとある一団を発見する。 「う~~♪ れみりゃがいっぱぁ~~い♪ か~わいいどぉ~♪」 館の庭先には、紅魔館で飼われているゆっくりれみりゃ達が勢揃いしていた。 みな歌を歌ったり、うぁうぁ踊ったりして楽しそうだ。 「うー……? みんな楽しそうにゆっくりしてるどぉ?」 見たところ、いじめられている様子は無い。 話に聞いていたのは、何やら様子が違う。 「れみりゃもゆっくりしたいどぉー♪ なかまにい~れてぇ~♪」 パタパタ木から下りていくれみりゃ。 が、れみりゃが屋敷に下りるよりも一歩早く、 庭先のれみりゃ達はメイド達に連れられて屋敷の中に入っていってしまう。 「みんなどこぉ~♪ れみりゃおいてけぼりにしちゃイヤイヤ~~ん♪」 誰もいなくなった庭に下りた、れみりゃ。 周囲には、ゆっくり一匹おらず、広大な庭の中央に一人取り残された形となる。 「うー♪うー♪ ゆっくりゆっくり~♪」 しばらく、ニコニコしながら仲間の登場を待ったが、何も起こりはしなかった。 「うー……」 せっかくたくさんの仲間と"ゆっくり"できると思ったのに……。 れみりゃは、がっかりしてしょぼーんとする 「うっ! わかったどぉ!」 やがて、れみりゃは顔を上げ、プンスカ憤慨しだした。 「みんなわるいやつにつかまっちゃったんだどぉー!」 そう、やはりここは悪い奴のヒミツ基地なんだ! れみりゃはそう解釈し、仲間を助けるべく燃え上がる。 「みんなぁ~いまたすけるからまっててねぇ~ん♪」 だが、相手はあれだけたくさんいたれみりゃ達を捕まえてしまうほどの強敵! うかつに入るのは危険と感じたれみりゃは、なにか良い手は無いかと屋敷の周りをパタパタ回る。 「うっ! これだどぉー! やっぱりれみりゃはおりこうさんだどぉ~♪」 れみりゃは、屋敷から出されたゴミを集める集積所で"あるもの"を見つけ、目を輝かせた。 「うーしょ♪ うーしょ♪」 その"あるもの"をえっちらおっちら引っ張り出すれみりゃ。 それは、大きなダンボールの空箱だった……。 * * * 「……はぁ」 紅魔館の廊下を、一人の少女が溜息をついて歩いていた。 彼女の悩みの種、それは少女への巷の評価に因るものだった。 「納得いかないわ……。この私のどこがカリスマブレイクなのよ……」 そう、この少女こそ齢500年、幻想郷でも屈指の力を誇る吸血鬼、 紅魔館当主レミリア・スカーレットであった。 しかし、その立場や実力に反して、昨今の彼女の評判は決してかんばしくない。 恐怖と畏怖の的であるべき彼女のイメージは、今や地に落ちていた。 人々は影でごう囁いていた"カリスマ(笑)"と。 「もう! それもこれも咲夜があの変な奴らを飼い始めたせいよ!」 そう言って、勢いよく自室の扉を開けるレミリア。 部屋の中からは心地良い風が流れてきて、彼女の髪を揺らした。 「あら? 窓を開けていたかし…ら……」 レミリアは、部屋の中の様子を見て、ピクっと体を硬直させる。 部屋の窓ガラスが割られ、部屋の中に石ころが転がっている。 そして、もっとも大きな違和感。 部屋の中央に、巨大なダンボールが置かれていた。 しかも、そのダンボールの下からは、短い足と隠し切れていない大きなお尻が伸びていた。 「…………」 絶句するレミリア。 たった今、彼女が口にした自分の評判を貶めているもの。 すなわち、にっくき"ゆっくりれみりゃ"なる存在が、あろうことが部屋に入り込んでいた。 「う~~♪ せんにゅうせいこうだどぉ~♪」 そのれみりゃは、レミリアの存在など気にも留めず、 嬉しそうに口を開いた。 「……あなた、ここがどこだかわかっているの?」 「うっ!?」 れみりゃは、レミリアの声を聞くと、慌てて身を屈めてダンボールを目深に被る。 しかし、ダンボールはれみりゃより小さく、体を完全に隠し切れてはいない。 「うー、あぶなかったどぉー♪」 ……と、安堵の声をあげるれみりゃ。 どうやら、れみりゃ本人は完璧に隠れられていると思っているらしい。 「……それで隠れてるつもり?」 「うっ!?」 「……バレバレじゃない」 「うー! そんなことないのぉー! れみりゃのへんそうはかんぺきなのぉー!」 返事までしておいて何を言っているのか…。 レミリアは、仮にも自分の姿と似ている(と周りが言う)このゆっくりが、 あまりにもバカで情けないことに対し、怒りを通り越して悲しくなってきていた。 運命を操作する能力を持つ吸血鬼にしても、 この神のイタズラとでも言うべき運命には、ただ悲嘆するしかなかった。 「なんて……情けない……」 「うー♪ ここにはだれもいましぇ~ん♪ おねぇーさんはゆっくりしないでどっかへいくどぉー♪」 「どこへも行かないわよ」 「うー! だめぇーなのぉー! それじゃれみりゃがゆっくりできないのぉー!」 「だって……」 「ぎゃおー♪」 「ここは私の部屋だもの!」 レミリアは、我慢がならず、れみりゃのダンボールをがばっとはぎ取る。 「うっ!」 一瞬、ダンボールを取られたのに気付かなかったれみりゃは、 レミリアと視線が交わっていることに首を傾げた後、ポンポンと両手で自分の頭を撫でて、 ダンボールが無いことを認識した。 「う~~~♪ みつかっちゃたどぉー♪」 れみりゃは、慌てず騒がず、ただ笑顔でそう言った。 目の前に立つレミリアの恐ろしさも、その機嫌の悪さも、 全く理解していないからこそできる言動だった。 もし、この場に並の人間や妖怪がいたならなら、そんなことは出来はしない。 何故なら、レミリアは怒りでプルプルと体を震わせ、今にも爆発寸前だったのだから。 「れみりゃを見つけるなんてなかなかのもんだどぉー♪ ごほうびになでなでしてあげるぅ~♪」 とてとてレミリアに近づき、 精一杯、背と手を伸ばして頭を撫でようとする、れみりゃ。 が、あともう少しのところで手が届かず、上手く撫でることができない。 「うー! あたま下げてくれないと、なでられないどぉー!」 レミリアに頭を下げるように催促する、れみりゃ。 「私が、お前に、頭を……?」 「そうだどぉ! じゃないとなでなでしてあげないどぉー?」 「いらないわ、そんなもの……」 「う~? もしかしてなでなで以外のごほうびがほしぃのぉー?」 れみりゃは、しばし考え込んでから、合点する。 「ゆっくりりかいしたどぉー! もぉ~~おねぇーさんはよくばりやさんだどぉ~~♪」 れみりゃは苦笑してから、 「でびりゃうぃーーーんぐ♪」 と叫んで、レミリアのベッドの方へパタパタ飛んでいく。 そして、靴も脱がずに土足のまま、ベッドの上に着地する。 「れみりゃの~とっておきのしぇくしぃ~だんすぅ~~♪ とくべつにみせてあげるぅ~~ん♪」 「………………」 レミリアは無言だった。 しかし、その怒りは確実に溢れだしていき、部屋の中の小物をカタカタと揺らす。 「れっつ☆しゅびどぅばぁ~~~♪」 れみりゃは、そんなレミリアを無視して、勝手にベッドの上で踊り出す。 他のれみりゃでは踊れない……と本人が勝手に思っている、自慢の創作ダンスだ。 うぁうぁリズムを刻み、手足をヨタヨタ動かし、お尻をふりふり。 やがて、のってきたれみりゃは、さらに自慢のテーマソングを歌い出す。 「あれは~だれどぉ♪ だれどぉ♪ だれどぉ♪」 それは、森のれみりゃ達と一緒に何日もかけて考えた歌。 「あれは~でびりゃ♪ でびりゃま~ん♪」 正義の味方である自分を鼓舞する、お気に入りの歌。 「でっび~りゃまぁ~~~~~ん♪」 ばぁーん! 両手両足を大の字にして、決めポーズを取る、れみりゃ。 「……でびりゃ、まん?」 「うっうー♪ れみりゃは~せいぎのみかた、でびりゃまんなんだどぉ~~~♪」 正義の味方・でびりゃまん。 れみりゃは、それが自分の名前であり、役目であり、使命だと思っていた。 そして今日も、正義の味方でびりゃまんは、こうして悪い奴がいる屋敷に潜入したのだと。 故に、れみりゃは何も悪びれず、レミリアからも理解と協力が得られて当然だと考えた。 「でびりゃまんのかつやく、ききたい~♪」 「……聞きたくない」 「えんりょしないでいいどぉー♪ とくべつさぁーびすだどぉ♪ う~、れみりゃやっさしぃどぉー♪」 まずはどこから説明しようかな? れみりゃは、「う~~~」と考えた後、 まずは格好良いテーマソングの続きを聴かせてあげようと結論づけた。 「うぁうぁもの~なを~う~けてぇ~♪ ぷっでぃんをたべてぇ~たた~かう~れみりゃ~♪」 「……うるさいっ!!」 とうとう我慢の限界。 レミリアは、れみりゃを怒鳴りつけた。 「う?」 「おまえなんかの、おまえなんかのために、私のカリスマが……」 下唇を噛み、握り拳を振るわせるレミリア。 「う~? おねぇーさん、かりしゅまでおなやみなのぉ~♪」 一方、この状況になってまだ、れみりゃは危険を感じていなかった。 このれみりゃ、れみりゃ種としてはなまじ強く、 また、でびりゃまんとしてチヤホヤされてきたため、 いまだに危機的な状況や死ぬような目に陥ったことがなかった。 それどころか、自分はヒーローなのだ、カリスマなのだという自負心ばかりが強くなっていた。 「しょーがないどぉー♪ このでびりゃまんがぁ~、かりしゅま☆のなんたるかをおしえてあげるどぉ~♪」 全くの善意から、レミリアに"かりしゅま道"を教えてあげようとする、れみりゃ。 だが、次の瞬間。 れみりゃはおかしなことに気付いた。 目の前にいたはずのレミリアがいつの間にか消えているではないか。 「うー?」 代わりに見えるのは、天井とシャンデリア。 いつの間にか寝てしまったのだろうか? れみりゃは不思議に思って体を起こそうとする。 「う~~? おきれないどぉ?」 「そりゃそうでしょうね……」 「う?……うわぁぁぁぁぁぁぁ---っ!!」 レミリアの声に振り向く、れみりゃ。 すると、そこには首の無い体があった。 その体は、紫がかったスミレいろのおべべに身をつけていた。 森のみんなから賞賛された自慢のスミレ色が。 「うあぁぁぁぁっ! それ、れみりゃのだいじだいじだどぉーーー!!!」 顔だけになり床に転がるれみりゃが、泣き叫ぶ。 レミリアは、一瞬の間にれみりゃをなぎ払い、体を奪い取っていたのだ。 「ふん、これが無ければ、あなたも無礼を働けないでしょう?」 「うあ~~っ! かえせぇぇ~~っ! かえすんだどぉぉぉ~~~っ!!」 「ふふ、イヤよ♪」 吸血らしく、邪悪な笑みを浮かべるレミリア。 「れみりゃのおからだぁぁーーーっ!! かえさないとぉたべちゃうぞぉぉぉぉーーーっ!!」 「おおー、こわいこわい♪」 ぶ~んぶ~んと、レミリアは雑にれみりゃの体を振り回す。 振り回されるたび、切断面からは肉餡が飛び散っていく。 「うっぎゃぁぁぁ! れみりゃのぷりぃてぃーぼでぃがぁーーー! ないすばでぇがぁぁーーーーっ!」 大事な体を粗雑に扱われ、気が気でないれみりゃ。 「やだ、手がベトベトだわ……汚らしい」 「ぎゃぉぉぉっ! れみりゃのおからだ、きちゃなくなんてないのぉぉぉーーっ!!」 「なに言ってるのよ。もう、手がベトベトになっちゃたじゃない!」 「う~~~! べとべとちがうのー! れみりゃのかりしゅま☆おじるなのぉー!」 かりしゅま汁って……。 つくづく、目の前のゆっくりに対して呆れ果てるレミリア。 「そんなに言うなら取り返してみなさいよ……ねぇ、カリスマさん?」 「うーーー! かりすまじゃなくて、かりしゅま☆なのぉー!! おねぇーしゃんのぶーーかぁっ!!」 悪態をつく、れみりゃに対して、レミリアの額に新たな青筋が浮かぶ。 「口の利き方に気をつけなさい? つい手が滑って、この体ポイしちゃうかもよ?」 「うううーーーっ! おねーしゃんわるいやつだどぉーー! れみりゃがやっつけてやるどぉーー!」 床の上のゴロゴロ転がる、れみりゃの頭部。 レミリア、最小限に力を絞った弾幕を、そのれみりゃの額に当てる。 「ひどぉいどぉぉーーーーっ!!」 「あら、だから忠告したでしょ? 口の利き方」 れみりゃの額が赤く染まる。 だぁーだぁー涙を流す、れみりゃ。 「ざくやーあーーーー! なにしてるんだどぉーーー! はやぐおぜうざまをだずげるんだどぉーーーっ!!」 「……もう、一発くらいたいみたいね♪」 「ひ、ひぃっ! い、いやぁ~~~!」 れみりゃは、がくがく震えながら、か細い声をあげる。 「いやぁー、いたいたいの、こあいどぉー……」 れみりゃは、ぎゅーと目を瞑り、小刻みに頭を振り出す。 「う~~~、いたいいたいの、もうやめてぇ……」 「あらあら、この程度で降参だなんて、とんだカリスマさんね」 追い打ちをかけるレミリア。 彼女は、ここぞとばかり普段の鬱憤を晴らしにかかっていた。 「う~~~、れみりゃはかりしゅまなんだどぉ~~~~! こんなことしちゃ"めぇ~"なのぉ~~~!」 「あら、まだそんな生意気言うの?それなら」 レミリアが再び弾幕を撃とうとする。 と、れみりゃは何かに納得が言ったらしく、顔を上げた。 「うーー! わかったどぉ! おねぇーさんのねらい!」 「え?」 「おねーさん、れみりゃにしっとしてるんだどぉーー!」 思いもよらぬ反応に、レミリアは弾幕を撃つのを止め、唖然としてしまう。 (嫉妬? この私が? この品性の欠片もない肉まんに?) レミリアは、怒りや呆れを通り越して、頭が白けていくのを感じた。 彼女は、まさか目の前の肉まんから、そんな無礼を言われるとは思っていなかった。 そして、すっかりその肉まんと同じ目線で自分が話していることにも気づき、なんだか無性にばからしくなっていった。 「……ふん、興が冷めたわ」 レミリアは、れみりゃの体を、れみりゃが隠れていたダンボールの中へ放り投げる。 どさっと無造作にダンボールの中に格納される、れみりゃの体。 「な、なにするんだどぉぉぉーー! れみりゃのかりしゅまぼでぃだどぉぉーーー!!」 「もういい、飽きたわ……」 レミリアの発言を、れみりゃは都合良く解釈して、元気を取り戻す。 「う~~♪ しっとはみにくいどぉー♪」 「……なんですって?」 「れみりゃのおからだをとっても、かりしゅま☆は手にに入らないのわかったのねぇ~~ん♪」 「…………」 レミリアは無言のまま、弾幕をれみりゃの体に放つ。 部屋を汚してはいけないと威力を絞った一発は、れみりゃの体だけに的確に穴を開けた。 「も、もうやめてぇぇぇぇ!! れみりゃのかりしゅま☆わけてあげるからぁぁーー!!」 「いらないわよ、そんなもの」 「なんでそんなごどいうどぉぉーーー!!?」 「……それより急がないと、お前の体が無くなっちゃうわよ」 レミリアは、もう一度弾幕を当てようと指先をれみりゃの体に向ける。 それを見たれみりゃは、必死に自分の体へ向かっていく。 「うあぁぁぁん! れみりゃのおからだぁ! そこでまっててねぇ~~~!」 れみりゃは、ゆっくりらしく、ぴょんぴょん頭を跳ねさせて、ダンボールへ近づいていく。 れみりゃ種の本能として、すぐに体を取り戻せば、まだ接合して再生することができると感じていた。 「うーー!」 力を込めて跳躍する、れみりゃ。 ダンボールの中の、自分の体の上に無事着地する。 「うっう~~~♪ れみりゃのおからだだどぉ~~~♪ すぅ~りすぅ~り♪」 れみりゃは、愛おしそうにスミレ色のおべべに頬ずりを繰り返す。 それを軽蔑の眼差しで見つめる、レミリア。 彼女は、元々れみりゃの体をここで破壊することは考えていなかった。 そんなことは造作も無いことだったが、それでは忌むべき肉まんの匂いが、 一時的にでもこの部屋に染みついてしまうだろう。 だから、"いつも通り"の処分の仕方を、冷静に行おうと考えていた。 「……咲夜、来なさい」 「はい、お嬢様」 レミリアが呼んだ刹那、その傍らに忠実な従者が姿を現した。 時と空間を操作する力を持った、レミリア自慢の従者。 わずかな欠点を除きパーフェクトな、メイド長の咲夜だ。 「あら?」 咲夜は、ダンボールの中のれみりゃを見ると、早速その欠点の一つを露わにした。 「どうしたの、れみりゃ?」 「うーー♪ さくやだどぉー♪」 れみりゃに駆け寄る咲夜。 れみりゃは、本能でそれが"さくや"であることを察して、顔をほころばせる。 「ほら、しっかり」 れみりゃの扱いには、慣れている咲夜。 分断された体の上半身を抱え起こすと、れみりゃの頭をその上にのせる。 そして、エプロンのポケットから常備している小瓶を取り出すと、 その中身を手にのばして、れみりゃに塗っていく。 瓶の中身は、小麦粉と蜂蜜と油を混ぜたものだ。 それは、遊んでいてケガをしたゆっくりれみりゃに塗るために、 咲夜が日夜研究して作り上げた、お手製のゆっくりゃ用傷薬だった。 「うーー! さくやーーー! あのおねぇーさんがひどいことするのぉーー!」 「はいはい、いま治してあげるから静かにしてるの」 「う~~♪ れみりゃいい子だからぁ~ゆっくりしずかにするどぉ~♪」 「はい、ぬ~りぬ~り」 「う~♪ う~りう~り♪」 流石に手慣れた様子の咲夜。 ゆっくりゃ用の傷薬を、手早くれみりゃの首周りに塗り込んでいく。 すると、ゆっくりれみりゃ特有の再生能力とあいまって、れみりゃの胴と頭が見る間につながっていった。 「う~♪ いたいのぽぉ~い♪」 さっきまでの泣き様がウソのように、れみりゃは笑顔を取り戻していた。 「うわ……きもちわる……」 ゆっくりの不思議生態を目の当たりにして、 自分よりもれみりゃを優先した咲夜への怒りも忘れ、引き気味になるレミリア。 「それでお嬢様、何か御用でしょうか?」 完璧で瀟洒なメイドは、れみりゃを膝の上に乗せてあやしながら、 本来の主人であるレミリアに話しかける。 「そ、そうよ!そのことで呼んだの! いい、そいつが勝手に私の部屋に入っていたのよ!」 咲夜は、それを聞いて顔を曇らせる。 「……本当なの?」 「うっうー! れみりゃはかれいにせんにゅうしたんだどぉー♪ いいこいいこしてぇ~♪」 れみりゃは、ダンボールを指差して笑う。 「わかってるわよね、咲夜。 こいつらを飼う時にした、私とした約束?」 「はい、お嬢様には決して御迷惑をおかけない。もしかけたら……」 「……今夜はダンボール肉まんね」 ニィと口の端を上げるレミリア。 れみりゃは、俯く咲夜の顔見上げ、楽しそうにはしゃぐ。 「うーとね、うーとねぇ、れみりゃは今夜はぷっでぃんがいいのぉー♪」 "わるいやつ"を退治する……そんな目的はすっかり忘れ、 館のれみりゃのように咲夜に甘える、でびりゃまんれみりゃ。 咲夜は、悲しそうに微笑んで一度だけれみりゃの頭を撫でると、 れみりゃをダンボールにいれて、それごと持ち上げる。 「う~~?」 「行くわよ、れみりゃ」 レミリアはその様子を見て、楽しげに目を細める。 「ふふ、今晩の食事が楽しみだわ♪」 「それでは、失礼します……」 咲夜は一礼すると、ダンボールごとれみりゃを持って部屋を退室する。 ダンボールの上で揺られるれみりゃは、これから起こることを考えもせず楽しそう。 「ゆ~らゆ~ら♪ たぁーのしぃどぉー♪」 咲夜は、何も言わずツカツカ廊下を歩いていく。 「ねぇーさくやぁー♪ れみりゃちょっとつかれたからー、ゆっくりしたいどぉー♪」 「そうね、たっぷりゆっくりできるわよ……」 と、口にしかけて、咲夜はふと気付いた。 このれみりゃが、自分が飼っていたれみりゃでは無いことに。 「あなた、ウチのれみりゃじゃないの?」 「うー♪ れみりゃはもりからきたのぉー♪ ここはえれがんとなおやしきだからぁー、れみりゃのべっそーにしてあげるどぉー♪」 咲夜は、興味深そうにれみりゃを見つめる。 自他ともに認めるれみりゃマニアの咲夜ではあったが、 このスミレ色の服を着たれみりゃは見たことが無かった。 咲夜の中で葛藤が起こる。 主レミリアの命令は絶対だ。 そして、彼女への忠義もまた絶対。 それは強制ではなく、自らの願いであり矜持だ。 けれど。 同時に。 この珍しいれみりゃを調べてみたい、飼ってみたい。 咲夜は、その自らの欲望を否定できなかった。 「……ねぇ、あなた名前はあるの?」 「うー! よくぞきいてくれたどぉー!」 れみりゃは、例のテーマソングを歌いだす。 「あれは~だれどぉ♪ だれどぉ♪ だれどぉ♪」 それは、森のれみりゃ達と一緒に何日もかけて考えた歌。 「あれは~でびりゃ♪ でびりゃま~ん♪」 正義の味方である自分を鼓舞する、お気に入りの歌。 「でっび~りゃまぁ~~~~~ん♪」 バンザーイ! ダンボールの中で、両手を上げて決めポーズをとる、れみりゃ。 「ふふふ、そう……でびりゃまんね……」 「そうだどぉー! れみりゃは~~、もりのかりしゅま☆なんだどぉ~~~♪」 咲夜は、ダンボールを床に置き、れみりゃだけを抱き上げる。 「うー♪ うー♪ だっこしゅきしゅきぃ~~~♪」 無邪気に微笑むれみりゃに対し、 咲夜は邪な笑みを浮かべて口元を歪める。 実は最近、咲夜はお気に入りのれみりゃの一家を失い、落ち込んでいたところだった。 その一家とは、母親が"ザウルス化"してしまった一家だった。 ザウルス化したれみりゃは、その能力の低下とともに、大概が短命に終わる。 故に咲夜は、その一家を大事に屋敷の中に匿っていた。 だが、それを不満に思ったのか、気が付いた時には、その一家は屋敷から逃げ出していた。 厳しい自然環境に放り出されては、あの一家が生き延びられる可能性は皆無だろう。 咲夜は、無念で胸をいっぱいにした。 そして同時に、こんなことがもうないよう、 より一層"ゆっくりれみりゃ"に対して愛情を注ぐようになったのだった。 その矢先に現れた、特別なゆっくりれみりゃ。 咲夜は、でびりゃまんれみりゃに対し、(勝手に)何か特別なものを感じだしていた。 「ふ、ふふふふ♪ 一緒にゆっくりしましょうね♪」 「うー! れみりゃ、さくやといっしょならあんしんして、ゆっくりできるどぉー♪」 「ふふ、嬉しいこと言ってくれるじゃない……」 咲夜は、れみりゃの顔を撫で撫でムニムニ繰り返し始める。 「そーれ、む~にむ~に♪ す~りす~り♪」 「う、うぅーーー? さ、さくやぁーーー?」 怪しく微笑み、鼻血を垂らす咲夜。 れみりゃは、なんだか背中が寒くなった気がした……。 おしまい? ======================== ≪あとがき≫ gy_uljp00198に見て元気になったので ティガ5を終わらせようと思ったんですが……。 気付いたら、こっちが先に出来ていました(汗) by ティガれみりゃの人 ======================== このSSに感想を付ける
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れみりゃシャッフル 十京院 典明 朝起きたら、家のれみりゃに赤ちゃん(?)ができていた。 一匹だけなのにどうやって繁殖したのか知らないが、れみりゃの回りを 小さな二匹のれみりゃが飛び回っているのだ。 「う〜♪」 「う〜♪」 当のれみりゃは段ボール箱の中で眠っているが… 俺はれみりゃのお家である”こうまかん”を覗き込む。 「う〜う〜…」 すやすやと眠っているれみりゃ。太平楽としたその顔つきはまさに幸せそのものといった風情だ。 (この不思議生物なら、『しあわせだから』って理由で子供の一匹や二匹生んだとしてもおかしくないんだろうなあ…) あるいは人智を超えた宇宙の法則にしたがって子供を作ってるのかもしれないが… 深く考えると怖いのでやめておく。 「おい、起きろ、れみりゃ」 「う〜あとごふん〜」 「よーし、10秒につき腕立て5回な」 「うでたてやだどぉ〜」 れみりゃは嫌々ながらこうまかんから這い出て来、ぶんぶんと飛び回るそれを目にした。 「う〜!れみりゃのおちびぢゃん〜!」 子れみりゃもうちのれみりゃを見て嬉しそうな声を上げる。 「うっう〜♪」 「まんまぁ〜!」 「やっぱそうなんだ…」 親子はすぐに仲良し。 「うっうー!」 「うあ☆うあ☆」 生物学的に見て親子なのかは怪しいところ、というかあきらかにアウトだが、 お互いに相手を家族と認識しているようなのでよしとする。こまけぇこたぁいいんだよ! * * * * 「で、だ」 「う〜?」 「うーうー」 「うっうー」 親れみりゃは床をごろごろし、二匹の子れみりゃは行儀良く手を前に揃えてホバリングしている。 俺は子れみりゃのこの仕草が大好きだ。こうやってうーうーと宙に浮いているれみりゃを見ると、 「ぬるいぢめしたいな〜」という、どこか暖かい気持ちが沸いてくるのだ。 「ヘイ!」 俺は子れみりゃの帽子を取り替えてみる。 「うー!」 「やめでぇ〜!まんまぁだずげでぇ〜!」 「うー!まんまぁにまかせるどぉ!」 親れみりゃは取り乱すことなく、二匹の子れみりゃの帽子を取り上げる。 それをそれぞれ元の持ち主のもとへ返すつもりなのだろうが……そうは問屋が下ろさない。 俺は子れみりゃ二匹の方に両手をのばし、その小さいながらも太ましい胴体を掴む。 両手に一匹ずつ掴み取ると、親れみりゃに背を向け二匹をシャッフル。 「ヘイヘイヘイヘイ!!」 「あうーー!!」 「めがまわるどぉーー!!」 「ヘイヘイヘイヘイヘイヘイヘイヘイ!!」 「うあーー!!でびびゃのおぢびぢゃんーーー!!」 「ほれ、返してやるよ」 すっかり目を回した二匹の子れみりゃをポイと放る。 「うーおちびちゃん……」 握りっぱなしだったお帽子を返してやろうとして、親れみりゃは固まる。 「うー?うー?あうー?」 どちらがどちらかわからなくなってしまったに違いない。 「う゛……う゛……あ゛う゛……」 「どうしたんだ?れみりゃ?ん?」 「あーーうーーー!!おちびぢゃんごべんなざいだどぉーー!!!」 慟哭するれみりゃ。 * * * * と、ここでネタばらし。 「大丈夫だよ、帽子貸してみろ」 帽子を取り、その内側を覗き込む。 そこには、さっき奪った時に爪で刻んでおいた小さな印がある。 「この印があるほうが、こっちの……あれ?」 並んで床で目を回す二匹の子れみりゃは、生き写しのようにそっくりだ。 「あ、あれ…?どっちがどっちだったっけ…?」 「おぼうじぃぃぃぃ!!!おにーざんおぢびぢゃんにちゃんとおぼうじがえじであげでぇぇぇぇ!!!」 「あ、いや、ちょ、ごめ」 「う゛う゛う゛う゛う゛う゛ーーーーー!!!!」 「こ、ここはおにーさんのゆっくりぷれいすだよ!れみりゃはゆっくりしてね!」 「う〜まんまぁ〜?れみりゃのおぼうしどっち〜?」 「れみりゃのはぁ〜?」 「う゛う゛う゛う゛う゛う゛ーーーーー!!!!」 END このSSに感想をつける
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ティガれみりゃ その4 ======================== ≪はじめに≫ 『ティガれみりゃ3』の後編になります。 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。 パロディネタおよび、自分設定有りです。 本家東方のキャラの性格口調、壊れ気味です すみません、まだ続きます。 以上、何卒ご理解・ご容赦ください。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。 ======================== 4、誇りをかけた試練(後編) 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪』 「ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪」 歌いながら森を往く2匹のゆっくり。 よったよったどたどた歩く、巨大ゆっくり・ティガれみりゃ。 そんなティガれみりゃの頭の上に乗っている、通常サイズのゆっくりゃザウルス。 全長20メートルの、くてくてだぼだぼのヌイグルミ風恐竜。 大きく開かれた口から覗く、れみりゃ種特有の下ぶくれスマイル。 その大きな顔の上の、恐竜の頭部の上では、 ゆっくりゃザウルスが、腹ばいになって、ティガれみりゃにしがみついている。 ゲスまりさに襲われて千切られた手足と尻尾は、もう殆ど回復しきっている。 ニコニコ笑いながら、体全体を左右に揺らしながらリズムをとっている。 『うっう~うぁうぁ~♪』 「うっう~うぁうぁ~♪」 ゆっくりゃザウルス……先だって子供を失った親れみりゃは、 その悲しみを払拭するかの如く、楽しげに歌う。 親れみりゃにとって、ティガれみりゃの存在は、 まさに希望であり、憧れであり、救世主であった。 このティガれみりゃと一緒なら、どんな困難も悲しみも乗り越えられる。 親れみりゃは、巨大なティガれみりゃに揺られながら、かつてない安心と勇気を感じていた。 ティガれみりゃもまた、親れみりゃのことを、 親友のように、妹のように、娘のように愛おしく感じていた。 その巨体故に、他の生物から常に避けられ続けるティガれみりゃにとって、 自分をこの上なく慕ってくれる親れみりゃの存在が、嬉しくて楽しくてたまらなかった。 この温かい気持ちをどう言えばいいのだろう? この胸にこみ上げる幸せをどう表現すればよいのだろう? そんな時、不器用なれみりゃ種がとる行動は一つ。 嬉しい時も、悲しい時も、わき上がる思いをあらわにして。 (歌っちゃおう♪) (踊っちゃおう♪) 『ティガ☆』 「れみ☆」 『りゃ☆』 「うー♪」 『「にぱぁ~~~♪」』 決まったぁー♪ 渾身の「れみりゃ☆うー」が決まり、 ますます幸福感に包まれる2人のれみりゃ。 そんな2人の前に、1人の少女が現れた。 「やぁ! ずいぶんと御機嫌だねぇ~」 少女は空を飛んでいた。 知識のあるゆっくりならば、その時点でその少女が人間ではないこと。 恐い人間よりもさらに恐ろしい、妖怪と呼ばれる存在であることに気付いただろう。 しかし、そんな知識、れみりゃ種に求めるのは酷である。 『うっうー♪ れみりゃはいつでも御機嫌だどぉー♪』 「うー♪ おねぇーさんだぁーれだどぉ?」 屈託無い笑顔で少女とのコミュニケーションに応じる2人のれみりゃ。 「……ふふ、まぁ名乗るほどのものじゃないさ」 そう言って口の端を歪める少女。 『う~? おねぇーさんの角、とぉ~~ってもかっこいいどぉ~~♪』 そう言って、目を輝かせるティガれみりゃ。 角。 そう、少女の頭には、二本の角が生えていた。 れみりゃ達が知るよしも無いが、この少女こそ、 既に幻想郷からは姿を消したといわれていた伝説の種族・"鬼"の一角、 小さな百鬼夜行、伊吹萃香であった。 「それより聞きたいんだけどさ……」 『う~、なんでもきくがいいどぉ♪』 「ゆっくりれみりゃってのは、おまえ達のことであってる?」 『「うーっ♪」』 嬉しそうに反応する、2人のれみりゃ。 『そうだどぉー! れみりゃは~~♪ ティガれみりゃだどぉ~~~♪』 ティガれみりゃは、両手を頭の横に持ち上げ、うぁうぁとリズムを取り出す。 『「うっうーうぁうぁ♪ うっうーうぁぅぁ♪」』 最高に上機嫌なれみりゃ達。 そんなれみりゃ達に、萃香の真意など図れるわけがなかった。 「そりゃよかったよ。おまえ達をさがしていたんだ」 『「う~~?」』 不思議そうに首を傾げる、れみりゃ達。 「そう、おまえ達がほしいんだ」 笑顔のまま屈託なく告げる萃香。 一方、れみりゃ達は、いっぱく置いた後、 両手を自分の頬に充てて、身をよじりだした。 『きゃーきゃー♪ おねぇーさんだいたんなんだどぉーー♪』 「すとれーとなあいのこくはくだどぉーーー♪」 頬を赤くして、きゃーきゃー騒ぐ、れみりゃ達。 れみりゃ達は、萃香の言葉を、プロポーズと勘違いしていた。 「ま、というわけでね、どっちか一人でいいんで、私についてきて欲しいだ」 空高くを指さす萃香。 『「う?」』 意味を理解しかねる、れみりゃ達。 萃香は、山の上の天上の地で、大宴会を開こうとしていた。 しかし、天上の地にあるツマミといえば桃くらいのもの。 やはりここは塩味のもの、お腹にたまるものも欲しい。 腹が減っては夜通しどんちゃん騒ぎもできぬ。である。 そこで、萃香はかねてから噂に聞いていた珍味。 ゆっくりれみりゃの肉まんを探していたのだ。 それも、ただのれみりゃ肉まんではない。 一層珍しく、美味しいとされる、ゆっくりゃザウルスの肉まんをだ。 そんな折、巨大な肉まん……もとい巨大なゆっくりゃザウルスがやって来るのを見つけたのだった。 話に聞いていたのとは、ずいぶんサイズが違うが、 まぁ本人達がれみりゃだと言っているのだから、そうなのだろう。 萃香は納得し、ティガれみりゃ達を連れ去ろうとする。 しかし、それに異を唱えたのは、他ならぬれみりゃ達だった。 「う~~~! イヤだどぉ~~~! れみりゃはもうおうちにかえりたいんだどぉ~~~!」 『う~~~、そうだどぉ~~~! れみりゃたちはおねぇーさんとはいけないんだどぉ』 ティガれみりゃは、親れみりゃをお家(紅魔館)に送り届ける途中であった。 もっとも、2人とも紅魔館の場所など知らず、適当に歌って踊って歩いているだけであったが。 「ふーんそっかぁ……それは困ったな」 ちっとも困った風じゃない顔をして、萃香は腕組みをして考えるフリをする。 「……よし! じゃあこうしよう! 私と勝負して勝った方が負けた方の言うことを聞く!」 明らかに強引な論法。 だが、れみりゃ相手には、このムチャクチャな単純さが功をそうした。 『う~~~、わかったどぉ♪ れみりゃがあいてになるどぉ♪』 「おっ、話がわかるじゃないか! デカイの!」 『そんなに褒められると、さすがに照れてしまうどぉ~~♪』 もじもじと体をよじるティガれみりゃ。 "デカイ"というのは、褒め言葉として捉えるらしい。 『う~♪ れみりゃが勝ったら、おねぇーさんの角が欲しいどぉ♪ それがあれば、れみりゃはさらにぱーふぇくとなれでぃーになれるどぉ♪』 「はいはい」 適当に流す萃香。 「きゃーっ! ティガれみりゃがさらにかっこよくなっちゃうどぉー!」 興奮する親れみりゃ。 ティガれみりゃは、そんな親れみりゃを手に乗せ、少し離れた場所の地面に降ろす。 『あぶないがらぁ~ちっちゃいれみりゃはそこで見ててぇ~♪』 「わかったどぉ! ティガれみりゃ~がんばるんだどぉ♪」 『う~♪ まかせるんだどぉ♪ ちっちゃいれみりゃもおうえんじでねぇ~ん♪』 「うー! まかせとけだどぉ♪」 「やれやれ……そろそろいいかい?」 待ちくたびれて、肩をまわす萃香。 『うーっ、準備おっけぇーだどぉ♪ おねぇーさんなんかイチコロだどぉー!』 「ふーん、はたしてそうかな♪」 萃香は笑みをこぼし、スペルカードを使用する。 鬼神"ミッシングパープルパワー" 『「ううううう~~~~っ!?」』 目を丸くして驚く、ティガれみりゃと親れみりゃ。 小さな人間の少女でしかなかった萃香が、みるみる間に大きくなり、 いまやティガれみりゃと同等か、それより一回り大きい姿になっていた。 『うー♪ おねぇーさんおっききぃどぉー』 自分より一回り多くなった萃香を見上げるティガれみりゃ。 「それじゃ、勝負開始といこうか!」 『うっうー! いっくどぉー♪』 ぎゃぉー! と叫びながら、ティガれみりゃが萃香に突進する。 いや、正しくは、それは突進などと呼べるシロモノではなかった。 どたばたどたばた。 短い手足を振り回しながら、えっちらおっちらやって来るティガれみりゃ。 (……お、遅っ) 萃香は、逆の意味で驚きつつ、 わけもなくティガれみりゃの突進をかわす。 『うっ?』 ドターン。 勢いそのままに前のめりに倒れるティガれみりゃ。 普通のれみりゃ種ならば、ここで泣き叫ぶところだが……。 『う~、ゆだんしちゃったどぉ♪』 ティガれみりゃは、笑顔のまま立ち上がる。 この点こそが、ティガれみりゃ最大の強点であった。 体の大きさや防御力ではない、言わば痛みを痛みとして認識しない超鈍感力。 根拠無きポジティブシンキングと思いこみ、そして実際に鈍い五感と思考の速度。 その自身が置かれた状況に対する"鈍さ"が、痛みや苦しみを和らげ、 いいこと・たのしいことだけを考えさせる。 そんな鈍感力こそが、ティガれみりゃの得た、ゆっくりするための切り札といえる。 『おねぇーさんはつよいからぁー、れみりゃもとっておきを披露するどぉ♪』 「ふーん、とっておきねぇ」 『くらっておどろくどぉ♪』 ティガれみりゃは、萃香に背を向けると、 両手を腰にあて、おしりと尻尾を左右に振り出した。 『ティガれみりゃの~、の☆う☆さ☆つ☆しっぽふりふりぃ~~だどぉ♪』 「きゃぁ~~~! しぇくしぃーーーすぎるどぉ♪」 ティガれみりゃの勇姿を見て、地上の親れみりゃが興奮する。 あんなセクシーな姿を見せられては、 どんな相手もメロメロになってしまわずにはいられない! 顔を紅潮させて叫ぶ親れみりゃは、本気でそう信じていた。 『うっふぅ~~~ん♪ 尻尾ふ~りぃふりぃ~~♪』 尻尾を左右に振りながら、徐々に萃香に近寄っていくティガれみりゃ。 だが、萃香は溜息をつくと、その尻尾をむんずと掴んだ。 『うっ?』 「そぉーら!」 『ううううっ!?』 萃香は尻尾を綱引きのように引っ張り、ティガれみりゃを引き寄せる。 ティガれみりゃは抗おうとジタバタするが、結局萃香の目の前まで引っ張られ、 「う~♪」と反転して萃香の方を向いた瞬間、両脇を掴まれ、空中に持ち上げられてしまった。 『うっうー♪ つかまっちゃったどぉ♪』 まだ余裕なティガれみりゃ。 『う~~~♪ たかいたかぁ~い♪』 いつも以上に高い位置からの眺めに、ご満悦だ。 「すっごいどぉー! ティガれみりゃがおそらをとんでるどぉーー!」 そんなティガれみりゃを見て、興奮する親れみりゃ。 「……はぁ」 ただ一人、萃香だけがテンションを下げていた。 『うー、おねぇーさんはつよくてやさしぃんだどぉ♪ れみりゃのめしつかいにしてあげるどぉ♪』 萃香が自分のために高い高いをしてくれているものと信じるティガれみりゃ。 観戦している親れみりゃにしても、萃香がティガれみりゃの力に恐れをなして、 "こうさんです~あなたがいちばんです~"とあがめているのだと勝手に思いこんでいる。 (もういっか。宴会に遅れてもなんだし) れみりゃ種のペースに巻き込まれているのがバカらしくなった萃香は、 さっさと勝負を決めることにする。 「そりゃ!」 『うっ!?』 抱え上げたティガれみりゃを、背中から地面に叩きつける萃香。 ドシーンと、土煙が舞い上がる。 『う~~~♪ おねぇーさんつよいどぉ♪』 地面に大の字になったまま、萃香を見上げるティガれみりゃ。 思い切り叩きつけたにもかかわらず、まだ笑顔でいるティガれみりゃを見て、 鈍さだけは大したものだと呆れる萃香。 萃香は、ティガれみりゃの上に馬乗りになり、 大の字に広げられたティガれみりゃの腕を両手で押さえつけて固定する。 『うぅ~~♪ おねぇーさんのえっちぃ~~♪』 「きゃー! あかちゃんたぢには、みぜられないどぉー!」 勝手に興奮するティガれみりゃと親れみりゃ。 それに対し、萃香は冷静にティガれみりゃの体を眺めて、吟味する。 こんなやつが本当に絶品珍味なのだろうか? だんだんと不安になってくる萃香。 ゆっくりが出没しはじめたのは最近のことなので、 鬼にしてもゆっくりに関する知識は殆ど持ちあわせていたなかった。 「うーん……いちおう味見してみようかな」 萃香はティガれみりゃの下ぶくれ顔に、そっと顔を近づける。 そして、舌をのばして、ほっぺたを舐め上げた。 『くしゅぐったぁーい♪』 照れるティガれみりゃ。 一方、萃香は口の中に、たしかに肉汁が広がっていくのを感じていた。 (へぇー! こいつの汗、肉汁なんだ!) 妙に感心した萃香は、引き続きティガれみりゃの顔を舐め回す。 最初は嬉し恥ずかし状態だったティガれみりゃだったが、 次第に嫌悪感をあらわにしだす。 『う~~~~、う~~~~』 レロレロレロレロレロレロ。 『うぁ、うぁぁ、うぁうぁうぁ~~~~』 なめ回されていくうちに、奇妙な感覚を覚えるティガれみりゃ。 肉まんの皮がふやけていくのと同時に、顔に適度に振動を与え続けられたことで、 なんともむずかゆい気持にさせられてしまっていた。 そして萃香は、とうとう一つの決断をする。 「う~~ん、思い切って食べてみるか」 肉汁はうまいし、これだけデカければちょっとくらいつまみ食いしても大丈夫だろう。 いや、むしろ宴会の幹事としてはツマミの味を確認しないわけにはいくまい。 萃香はそう己を納得させ、 口角を歪めて、牙をひからせる。 『う~~? れみりゃ、おねぇーさんにたべられちゃうどぉー♪』 顔を紅潮させ、 かぶりを振って、イヤイヤ♪とするティガれみりゃ。 だが、その顔は相変わらずの満面しもぶくれスマイルのままで、むしろ嬉しそうでさえある。 「さっすがティガれみりゃだどぉ♪ あんなにつよいおねぇーさんを、もぉーとりこにしちゃったどぉ♪」 親れみりゃも、何を勘違いしたか興奮気味。 変なところで耳年増なのか、2人のれみりゃは、萃香の「食べちゃう」発言を、 これからいっしょに「すっきりぃ~♪」しようという誘いに受け取ったらしい。 『れみりゃはじめてだからぁ~♪ やさしくしてねぇ~~ん♪』 どこで覚えたのか、恥じらいの台詞を口にするティガれみりゃ。 ちなみに、本当に「すっきり」するのが初めてかどうかは定かでない。 「はいはい、やさしくなっと」 萃香はティガれみりゃの勘違いを軽く受け流すと、 にぃーっと笑った後、徐々に口を開いていき、鬼の牙を煌めかせた。 次の瞬間。 ぱくり。 萃香の小さな(?)口が、 ティガれみりゃの下ぶくれ顔の端にかぶりつき、そのまま一部をえぐりとった。 『「う?」』 何が起こったかわからず、硬直するティガれみりゃと親れみりゃ。 構わずむしゃむしゃ租借し、モチモチとした皮と、上質な肉餡を舌の上で堪能する萃香。 口内にじゅわぁーと肉汁がひろがっていくのにつれて、萃香の顔が輝いていく。 「おっ、おいしぃー!」 パァーと輝く萃香の笑顔。 その笑顔と言葉で、超鈍感力の持ち主たるティガれみりゃも、ようやく事態に気付いた。 おそるおそる、視線を下に向けると、自慢のふくよかな顔の一部が、えぐれていた。 『いっ!』 認識した瞬間、痛みが一気に広がった。 『いだぃぃぃぃぃ!』 泣き出し、ジタバタと体を動かすティガれみりゃ。 だが、ティガれみりりゃの動きは、馬乗りになった萃香によって封じられ、 その場から逃げ出すことは出来ない。 『うぁぁぁぁぁっっ! うぁぁぁぁぁぁっっ!!』 ティガれみりゃは、唯一動かせる顔だけを左右に揺らし、わめき散らす。 『しゃくやぁー! はやくぎでぇぇ! ごぁいひどがいるぅぅぅぅっっ!!』 「ん~? 咲夜ならこないぞ。 今頃は山の上じゃないか?」 『うぞづくなどぉぉぉ! しゃくやはでみりゃが呼べばぎでぐれるどぉぉぉ! でみりゃはおぜうさまだからえらいんだどぉーー! そしたらおまえなんがぁっ!!』 「そりゃお前がアノ吸血鬼だったらそうかもしれないけどねぇ。お前は違うだろ、恐竜さん♪」 『うぞだどぉー! うぞだどぉーー! ぎゃおーーっ! ぎゃおーーーっ!!』 自分が紅魔館のお嬢様でないはずがない! れみりゃ種特有の絶対的矜持を揺るがされ、必死に抵抗するティガれみりゃ。 恐竜と言われて否定するつもりが、「ぎゃおー!」とやってしまうあたりが、 れみりゃ種の限界らしく、それはティガれみりゃといえど例外ではなかった。 一方、そんな苦しむティガれみりゃの姿を見た親れみりゃ。 当初は下ぶくれスマイルのままだった彼女も、 次第に冷や汗がうかびだし、顔が徐々に青くなり、いまではガクガクと小刻みに震えだしている。 親れみりゃは、ティガれみりゃを崇拝し、信じ切っていた。 その崇拝と信頼は、如何にティガれみりゃが劣勢に立たされても揺らぐことはなかった。 萃香に捕まれようと、持ち上げられようと、投げられようと。 ティガれみりゃにとっては何の問題もない。そう期待していた。 現に、ティガれみりゃは笑顔のまま立ち上がったではないか。 やっぱり凄い、きっと自分だったら最初に転んだ時に泣き出してしまっていただろう。 すごい、ティガれみりゃ。 そんなティガれみりゃとそっくりな自分も、きっといつかあんな風に……。 そう、思っていた。 だが、しかし。 今のティガれみりゃの姿は。 動きを封じられ、なすすべなく助けを呼ぶ光景は。 まるで、さきほどゲスまりさに食べられそうになった自分そっくりで……。 崇拝と信頼と憧れで栓をしていた、恐怖と不安がどっと湧き出てきて、 親れみりゃを混乱させる。 「うぁ、うぁ……」 笑顔は自然と消え、 目からは涙が流れ出す。 だめ! ティガれみりゃは負けちゃだめ! じゃないと! じゃないと! 私まで! 「ううううーっ! ティガでみりゃぁぁぁ!! だづんだどぉぉ!! がんばっでだどぉぉぉぉっっ!!!」 号泣し、ろれつの回らないまま叫び続ける親れみりゃ。 けれど、そんな親れみりゃの応援むなしく、 ティガれみりゃは、萃香に食べられ続ける。 『うあぁぁぁぁっっ!! うあぁぁぁぁぁっ! おねがぃぃぃぼぉうやべでぇぇぇぇっっ!!!』 耳を貸さず、萃香はティガれみりゃの下ぶくれ顔をパクパク食べ続ける。 「う~ん、こんなうまい肉まん初めてだよ♪」 「うっ!!」 "肉まん" その単語を聞いて、親れみりゃはビクッと体を硬直させる。 ちがう、ちがう、ちがう! れみりゃは、れみりゃは! 「ちがうどぉぉーーっ!! でみりゃはにぐまんじゃないどぉぉぉぉーーーっ!!」 まるで自分のことのように叫ぶ親れみりゃ。 だが、叫んだその刹那。 暴れるティガれみりゃから飛散した肉まんの小さな欠片が、 大口を開いた親れみりゃの口の中へスッポリと収まった。 「うっぎゃぁ!! ティガでみりゃのおかおぉぉ!!」 嫌悪し、吐き出そうとする親れみりゃ。 ほんの小さな破片とはいえ、崇拝対象の顔を口の中に入れてしまうなんて。 「うーっ! うーっ! ………ううっ!?」 吐き出そうと咳き込むその時、 親れみりゃは、誤ってティガれみりゃの欠片を噛んでしまった。 じゅわぁ~~~と口内に広がるアツアツの肉汁。 「う、うーっ!!?」 そのあまりの肉汁の美味しさに、 親れみりゃは反射的に、ティガれみりゃの欠片を租借しだす。 噛めば噛むほど味が染み出る肉餡の美味しさに、もはや罪悪感もなんのその、 親れみりゃは食べるのを止めることができなくなっていた。 ごっくん。 ティガれみりゃの欠片を堪能し、飲み込む親れみりゃ。 「う~♪ しあわせぇ~~だどぉ~~~♪ こんなにおいじぃにぐまんははじめてだどぉ~~~♪」 そして。 思わず、言ってしまった。 ぷっでぃんとも甲乙つけがたいその美味しさに、 親れみりゃは決して言ってはならないことを言ってしまったのだ。 そのことに、数秒後に気付き、 親れみりゃは震えが止まらなくなった。 ティガれみりゃ、食べちゃった。 とっても美味しかった。 美味しいなんだった? ぷっでぃん?おまんじゅう? ううん、ちがう。 おいしぃおいしぃにくまんさん。 あれ。 ティガれみりゃはおいしぃにくまん? それじゃ、れみりゃは? れみりゃはこーまかんの? おぜうさ? にく? れみりゃは……。 にくま。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」 親れみりゃの中で、決定的な何かが壊れた。 小さな体であげたその悲痛な叫びは、巨大なティガれみりゃと萃香がたてる音によってかき消されていった…。 数分後。 『た、たしゅげでぇぇ……』 既に下ぶくれ顔の三分の一近くを失ったティガれみりゃは、 ブクブクと泡を吹き、白目を向いて、ぴくぴくと体を痙攣させていた。 「……うっ、しまったな」 萃香はハタと我に返り、立ち上がる。 眼下で苦しむティガれみりゃを見つめて苦笑いする萃香。 「調子にのって食べ過ぎた。こんな食べ残しを土産にしちゃ悪いかな…」 とはいえ、この素晴らしい肉まんの味は、是非他の連中にも味わってもらいたいのだけど。 う~ん。と、しばし考える萃香。 すると。 「おや?」 ふと眼下の森をを見ると、そこには目の前でノビている恐竜そっくりな、小さいヤツがいるではないか。 その小さな恐竜は、逃げるでも戦うでもなく、ぼぉーとその場に突っ立ているように見えた。 「そういえばいたな。 あれって、おまえの子供?」 ティガれみりゃに話しかける萃香。 ティガれみりゃは、ずりずりと地面を這いつくばりながら萃香から逃げ出そうとしていた。 「なぁ、ちょっと!」 『は、はぃぃぃ!』 萃香に呼び止められたティガれみりゃは、 這うのを止め、両手で頭を抱えて、ブルブルと震え出す。 『う~~~~っ! う~~~~~~っ!』 やれやれと肩で息を吐く萃香。 この様子では聞くだけ無駄か。 「なぁ、お前…」 『ごめなざぃぃぃぃ!! あなだのかぢですぅぅぅぅう!!』 何を勘違いしたか、ティガれみりゃは萃香の方を向き、 へへぇー、へへぇーと、何度も両手をついて土下座を繰り返し始めた。 「お前、もういいよ。さっさとどっかへ行きなよ」 『は、はぃぃぃぃっ! ありがどぉぉございまずぅぅぅぅ!!』 ティガれみりゃは涙を流し、 そのままずりずりと地面を這い出す。 『うぅ~~~~~~、うぅ~~~~~』 痛くて、辛くて、悲しくて、悔しくて、恐くて、惨めで、 ただただ泣きながら、逃げ去っていくティガれみりゃ。 その後ろ姿を溜息で見送った後、 萃香は元の人間の少女大のサイズに戻り、 森で呆然と立つゆっくりゃザウルス……即ち、 先ほどティガれみりゃの欠片を食べてしまった親れみりゃの下へ降りる。 「あばっ、あぶあっ、あばばばばばばば……!」 親れみりゃの様子は、既に正常を失っていた。 目の焦点を失い、口から泡を吹き、足下に肉汁の水たまりを作って、 よれよれと体を左右に揺らし続けている。 「おい、おまえ!」 萃香が呼ぶと、親れみりゃは、反射的に体を強張らせる。 「はいぃぃっっ! なんでじょぉぉ!?」 じぃーと親れみりゃを眺める萃香。 やはり、先ほどの大きいヤツの子供なのだろうか? そんなことを考えつつ、口を開く。 「おまえも、あのデカイ奴みたいに食べられるんだよね?」 すると、親れみりゃは、 実にストレートな答えを返した。 「そうでずぅぅ! でびりゃばおいじぃにぐまんでずぅぅぅぅぅぅっっっっ!!」 口角から肉汁を飛ばしながら喋る親れみりゃ。 「にぐまんいっばいうむがらぁぁぁ! いじべないでぇぐだじゃいぃぃぃぃぃっっ!!!」 その顔は満面笑顔だが、笑ったままの目尻から大量の涙を流し続けている。 「ふーん、じゃ鬼らしくさらわせてもらおうかな」 よくよく考えれば、こいつ一体いればツマミの肉まんとしては充分すぎる量かもしれない。 そう考えた萃香は、しばらく親れみりゃを物色した後、 ひょいっと親れみりゃを抱え上げ、その場を後にした。 無機物のように抱え上げられた親れみりゃ。 移動中、その顔は常に笑顔であり、ずっと歌を口ずさみ続けていた。 「うぁ~~うぁ~~♪ あばばぁ~~♪ でびりゃばおいじぃ~にぐまんだどぉ~~~♪」 ……数時間後。 『ティ…ガ…ティガ…ティガ……』 息も絶え絶えに地面を這い続けるティガれみりゃ。 萃香に食べられた下ぶくれ顔は、既にかなりの部分が再生している。 だが、いくら表面的な体の傷がなおっても、 再生に栄養をまわしたぶん、体力の消耗は激しかった。 それに、深く心にえぐられた傷はそうそう治るものでもない。 『ティガ…れみ…りゃ……うぅ……』 少しでも気を紛らわせようと、弱々しく口を開くティガれみりゃ。 しかし、いくら歌を歌っても、 その気持は、痛みは、苦しみは、ちっとも晴れはしなかった。 おかしいな。 そうティガれみりゃは感じていた。 ついさっきまで、あんなに楽しく歌ったり踊ったりしていたのに。 あれ、そういえば、誰かといっしょにいたような? おかしいな、だれだっけ? とってもやさしくて、おうたもダンスもじょうずな子だったような。 思い出せないけど、きっとあの子は今頃たのしくおうたをうたっているんだろうな。 また、いっしょにおどりたい、な。 『うぅー…うぅー…うぁ…うぁ……』 森のはずれの湖のほとり。 そこでティガれみりゃは意識を失った。 『…………ZZZ』 それから、どれくらいの時間がたっただろうか? たまたま湖を訪れ休憩する、ゆっくりの一団がいた。 「むっ、むっきゅーーーーーっ!!??」 昏睡するティガれみりゃを見つけて叫んだのは、 かつてティガれみりゃによって、群れを壊滅させられた、あの胴体付きぱちゅりーだった……。 to be continued 次回予告 『ティガれみりゃ5・さらばティガれみりゃ(予定)』 ============================ (あとがき) どうも、ティガれみりゃ第4回です。 今回は、『ティガれみりゃ3』から直接続くエピソードになります。 どうにも肉体的な虐め描写は苦手なのですが、 苦手ゆえに、敢えてこの前後編で挑戦してみました。 如何だったでしょうか? ……それにしても、ただの一発ネタのはずのティガれみりゃも、 随分書いた気がします。とりあえず次回で一区切りつける……予定です。 byティガれみりゃの人 (これって自分で名乗るものなんでしょうか?) ============================ このSSに感想を付ける
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ティガれみりゃ その4 ======================== ≪はじめに≫ 『ティガれみりゃ3』の後編になります。 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。 パロディネタおよび、自分設定有りです。 本家東方のキャラの性格口調、壊れ気味です すみません、まだ続きます。 以上、何卒ご理解・ご容赦ください。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。 ======================== 4、誇りをかけた試練(後編) 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪』 「ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪」 歌いながら森を往く2匹のゆっくり。 よったよったどたどた歩く、巨大ゆっくり・ティガれみりゃ。 そんなティガれみりゃの頭の上に乗っている、通常サイズのゆっくりゃザウルス。 全長20メートルの、くてくてだぼだぼのヌイグルミ風恐竜。 大きく開かれた口から覗く、れみりゃ種特有の下ぶくれスマイル。 その大きな顔の上の、恐竜の頭部の上では、 ゆっくりゃザウルスが、腹ばいになって、ティガれみりゃにしがみついている。 ゲスまりさに襲われて千切られた手足と尻尾は、もう殆ど回復しきっている。 ニコニコ笑いながら、体全体を左右に揺らしながらリズムをとっている。 『うっう~うぁうぁ~♪』 「うっう~うぁうぁ~♪」 ゆっくりゃザウルス……先だって子供を失った親れみりゃは、 その悲しみを払拭するかの如く、楽しげに歌う。 親れみりゃにとって、ティガれみりゃの存在は、 まさに希望であり、憧れであり、救世主であった。 このティガれみりゃと一緒なら、どんな困難も悲しみも乗り越えられる。 親れみりゃは、巨大なティガれみりゃに揺られながら、かつてない安心と勇気を感じていた。 ティガれみりゃもまた、親れみりゃのことを、 親友のように、妹のように、娘のように愛おしく感じていた。 その巨体故に、他の生物から常に避けられ続けるティガれみりゃにとって、 自分をこの上なく慕ってくれる親れみりゃの存在が、嬉しくて楽しくてたまらなかった。 この温かい気持ちをどう言えばいいのだろう? この胸にこみ上げる幸せをどう表現すればよいのだろう? そんな時、不器用なれみりゃ種がとる行動は一つ。 嬉しい時も、悲しい時も、わき上がる思いをあらわにして。 (歌っちゃおう♪) (踊っちゃおう♪) 『ティガ☆』 「れみ☆」 『りゃ☆』 「うー♪」 『「にぱぁ~~~♪」』 決まったぁー♪ 渾身の「れみりゃ☆うー」が決まり、 ますます幸福感に包まれる2人のれみりゃ。 そんな2人の前に、1人の少女が現れた。 「やぁ! ずいぶんと御機嫌だねぇ~」 少女は空を飛んでいた。 知識のあるゆっくりならば、その時点でその少女が人間ではないこと。 恐い人間よりもさらに恐ろしい、妖怪と呼ばれる存在であることに気付いただろう。 しかし、そんな知識、れみりゃ種に求めるのは酷である。 『うっうー♪ れみりゃはいつでも御機嫌だどぉー♪』 「うー♪ おねぇーさんだぁーれだどぉ?」 屈託無い笑顔で少女とのコミュニケーションに応じる2人のれみりゃ。 「……ふふ、まぁ名乗るほどのものじゃないさ」 そう言って口の端を歪める少女。 『う~? おねぇーさんの角、とぉ~~ってもかっこいいどぉ~~♪』 そう言って、目を輝かせるティガれみりゃ。 角。 そう、少女の頭には、二本の角が生えていた。 れみりゃ達が知るよしも無いが、この少女こそ、 既に幻想郷からは姿を消したといわれていた伝説の種族・"鬼"の一角、 小さな百鬼夜行、伊吹萃香であった。 「それより聞きたいんだけどさ……」 『う~、なんでもきくがいいどぉ♪』 「ゆっくりれみりゃってのは、おまえ達のことであってる?」 『「うーっ♪」』 嬉しそうに反応する、2人のれみりゃ。 『そうだどぉー! れみりゃは~~♪ ティガれみりゃだどぉ~~~♪』 ティガれみりゃは、両手を頭の横に持ち上げ、うぁうぁとリズムを取り出す。 『「うっうーうぁうぁ♪ うっうーうぁぅぁ♪」』 最高に上機嫌なれみりゃ達。 そんなれみりゃ達に、萃香の真意など図れるわけがなかった。 「そりゃよかったよ。おまえ達をさがしていたんだ」 『「う~~?」』 不思議そうに首を傾げる、れみりゃ達。 「そう、おまえ達がほしいんだ」 笑顔のまま屈託なく告げる萃香。 一方、れみりゃ達は、いっぱく置いた後、 両手を自分の頬に充てて、身をよじりだした。 『きゃーきゃー♪ おねぇーさんだいたんなんだどぉーー♪』 「すとれーとなあいのこくはくだどぉーーー♪」 頬を赤くして、きゃーきゃー騒ぐ、れみりゃ達。 れみりゃ達は、萃香の言葉を、プロポーズと勘違いしていた。 「ま、というわけでね、どっちか一人でいいんで、私についてきて欲しいだ」 空高くを指さす萃香。 『「う?」』 意味を理解しかねる、れみりゃ達。 萃香は、山の上の天上の地で、大宴会を開こうとしていた。 しかし、天上の地にあるツマミといえば桃くらいのもの。 やはりここは塩味のもの、お腹にたまるものも欲しい。 腹が減っては夜通しどんちゃん騒ぎもできぬ。である。 そこで、萃香はかねてから噂に聞いていた珍味。 ゆっくりれみりゃの肉まんを探していたのだ。 それも、ただのれみりゃ肉まんではない。 一層珍しく、美味しいとされる、ゆっくりゃザウルスの肉まんをだ。 そんな折、巨大な肉まん……もとい巨大なゆっくりゃザウルスがやって来るのを見つけたのだった。 話に聞いていたのとは、ずいぶんサイズが違うが、 まぁ本人達がれみりゃだと言っているのだから、そうなのだろう。 萃香は納得し、ティガれみりゃ達を連れ去ろうとする。 しかし、それに異を唱えたのは、他ならぬれみりゃ達だった。 「う~~~! イヤだどぉ~~~! れみりゃはもうおうちにかえりたいんだどぉ~~~!」 『う~~~、そうだどぉ~~~! れみりゃたちはおねぇーさんとはいけないんだどぉ』 ティガれみりゃは、親れみりゃをお家(紅魔館)に送り届ける途中であった。 もっとも、2人とも紅魔館の場所など知らず、適当に歌って踊って歩いているだけであったが。 「ふーんそっかぁ……それは困ったな」 ちっとも困った風じゃない顔をして、萃香は腕組みをして考えるフリをする。 「……よし! じゃあこうしよう! 私と勝負して勝った方が負けた方の言うことを聞く!」 明らかに強引な論法。 だが、れみりゃ相手には、このムチャクチャな単純さが功をそうした。 『う~~~、わかったどぉ♪ れみりゃがあいてになるどぉ♪』 「おっ、話がわかるじゃないか! デカイの!」 『そんなに褒められると、さすがに照れてしまうどぉ~~♪』 もじもじと体をよじるティガれみりゃ。 "デカイ"というのは、褒め言葉として捉えるらしい。 『う~♪ れみりゃが勝ったら、おねぇーさんの角が欲しいどぉ♪ それがあれば、れみりゃはさらにぱーふぇくとなれでぃーになれるどぉ♪』 「はいはい」 適当に流す萃香。 「きゃーっ! ティガれみりゃがさらにかっこよくなっちゃうどぉー!」 興奮する親れみりゃ。 ティガれみりゃは、そんな親れみりゃを手に乗せ、少し離れた場所の地面に降ろす。 『あぶないがらぁ~ちっちゃいれみりゃはそこで見ててぇ~♪』 「わかったどぉ! ティガれみりゃ~がんばるんだどぉ♪」 『う~♪ まかせるんだどぉ♪ ちっちゃいれみりゃもおうえんじでねぇ~ん♪』 「うー! まかせとけだどぉ♪」 「やれやれ……そろそろいいかい?」 待ちくたびれて、肩をまわす萃香。 『うーっ、準備おっけぇーだどぉ♪ おねぇーさんなんかイチコロだどぉー!』 「ふーん、はたしてそうかな♪」 萃香は笑みをこぼし、スペルカードを使用する。 鬼神"ミッシングパープルパワー" 『「ううううう~~~~っ!?」』 目を丸くして驚く、ティガれみりゃと親れみりゃ。 小さな人間の少女でしかなかった萃香が、みるみる間に大きくなり、 いまやティガれみりゃと同等か、それより一回り大きい姿になっていた。 『うー♪ おねぇーさんおっききぃどぉー』 自分より一回り多くなった萃香を見上げるティガれみりゃ。 「それじゃ、勝負開始といこうか!」 『うっうー! いっくどぉー♪』 ぎゃぉー! と叫びながら、ティガれみりゃが萃香に突進する。 いや、正しくは、それは突進などと呼べるシロモノではなかった。 どたばたどたばた。 短い手足を振り回しながら、えっちらおっちらやって来るティガれみりゃ。 (……お、遅っ) 萃香は、逆の意味で驚きつつ、 わけもなくティガれみりゃの突進をかわす。 『うっ?』 ドターン。 勢いそのままに前のめりに倒れるティガれみりゃ。 普通のれみりゃ種ならば、ここで泣き叫ぶところだが……。 『う~、ゆだんしちゃったどぉ♪』 ティガれみりゃは、笑顔のまま立ち上がる。 この点こそが、ティガれみりゃ最大の強点であった。 体の大きさや防御力ではない、言わば痛みを痛みとして認識しない超鈍感力。 根拠無きポジティブシンキングと思いこみ、そして実際に鈍い五感と思考の速度。 その自身が置かれた状況に対する"鈍さ"が、痛みや苦しみを和らげ、 いいこと・たのしいことだけを考えさせる。 そんな鈍感力こそが、ティガれみりゃの得た、ゆっくりするための切り札といえる。 『おねぇーさんはつよいからぁー、れみりゃもとっておきを披露するどぉ♪』 「ふーん、とっておきねぇ」 『くらっておどろくどぉ♪』 ティガれみりゃは、萃香に背を向けると、 両手を腰にあて、おしりと尻尾を左右に振り出した。 『ティガれみりゃの~、の☆う☆さ☆つ☆しっぽふりふりぃ~~だどぉ♪』 「きゃぁ~~~! しぇくしぃーーーすぎるどぉ♪」 ティガれみりゃの勇姿を見て、地上の親れみりゃが興奮する。 あんなセクシーな姿を見せられては、 どんな相手もメロメロになってしまわずにはいられない! 顔を紅潮させて叫ぶ親れみりゃは、本気でそう信じていた。 『うっふぅ~~~ん♪ 尻尾ふ~りぃふりぃ~~♪』 尻尾を左右に振りながら、徐々に萃香に近寄っていくティガれみりゃ。 だが、萃香は溜息をつくと、その尻尾をむんずと掴んだ。 『うっ?』 「そぉーら!」 『ううううっ!?』 萃香は尻尾を綱引きのように引っ張り、ティガれみりゃを引き寄せる。 ティガれみりゃは抗おうとジタバタするが、結局萃香の目の前まで引っ張られ、 「う~♪」と反転して萃香の方を向いた瞬間、両脇を掴まれ、空中に持ち上げられてしまった。 『うっうー♪ つかまっちゃったどぉ♪』 まだ余裕なティガれみりゃ。 『う~~~♪ たかいたかぁ~い♪』 いつも以上に高い位置からの眺めに、ご満悦だ。 「すっごいどぉー! ティガれみりゃがおそらをとんでるどぉーー!」 そんなティガれみりゃを見て、興奮する親れみりゃ。 「……はぁ」 ただ一人、萃香だけがテンションを下げていた。 『うー、おねぇーさんはつよくてやさしぃんだどぉ♪ れみりゃのめしつかいにしてあげるどぉ♪』 萃香が自分のために高い高いをしてくれているものと信じるティガれみりゃ。 観戦している親れみりゃにしても、萃香がティガれみりゃの力に恐れをなして、 "こうさんです~あなたがいちばんです~"とあがめているのだと勝手に思いこんでいる。 (もういっか。宴会に遅れてもなんだし) れみりゃ種のペースに巻き込まれているのがバカらしくなった萃香は、 さっさと勝負を決めることにする。 「そりゃ!」 『うっ!?』 抱え上げたティガれみりゃを、背中から地面に叩きつける萃香。 ドシーンと、土煙が舞い上がる。 『う~~~♪ おねぇーさんつよいどぉ♪』 地面に大の字になったまま、萃香を見上げるティガれみりゃ。 思い切り叩きつけたにもかかわらず、まだ笑顔でいるティガれみりゃを見て、 鈍さだけは大したものだと呆れる萃香。 萃香は、ティガれみりゃの上に馬乗りになり、 大の字に広げられたティガれみりゃの腕を両手で押さえつけて固定する。 『うぅ~~♪ おねぇーさんのえっちぃ~~♪』 「きゃー! あかちゃんたぢには、みぜられないどぉー!」 勝手に興奮するティガれみりゃと親れみりゃ。 それに対し、萃香は冷静にティガれみりゃの体を眺めて、吟味する。 こんなやつが本当に絶品珍味なのだろうか? だんだんと不安になってくる萃香。 ゆっくりが出没しはじめたのは最近のことなので、 鬼にしてもゆっくりに関する知識は殆ど持ちあわせていたなかった。 「うーん……いちおう味見してみようかな」 萃香はティガれみりゃの下ぶくれ顔に、そっと顔を近づける。 そして、舌をのばして、ほっぺたを舐め上げた。 『くしゅぐったぁーい♪』 照れるティガれみりゃ。 一方、萃香は口の中に、たしかに肉汁が広がっていくのを感じていた。 (へぇー! こいつの汗、肉汁なんだ!) 妙に感心した萃香は、引き続きティガれみりゃの顔を舐め回す。 最初は嬉し恥ずかし状態だったティガれみりゃだったが、 次第に嫌悪感をあらわにしだす。 『う~~~~、う~~~~』 レロレロレロレロレロレロ。 『うぁ、うぁぁ、うぁうぁうぁ~~~~』 なめ回されていくうちに、奇妙な感覚を覚えるティガれみりゃ。 肉まんの皮がふやけていくのと同時に、顔に適度に振動を与え続けられたことで、 なんともむずかゆい気持にさせられてしまっていた。 そして萃香は、とうとう一つの決断をする。 「う~~ん、思い切って食べてみるか」 肉汁はうまいし、これだけデカければちょっとくらいつまみ食いしても大丈夫だろう。 いや、むしろ宴会の幹事としてはツマミの味を確認しないわけにはいくまい。 萃香はそう己を納得させ、 口角を歪めて、牙をひからせる。 『う~~? れみりゃ、おねぇーさんにたべられちゃうどぉー♪』 顔を紅潮させ、 かぶりを振って、イヤイヤ♪とするティガれみりゃ。 だが、その顔は相変わらずの満面しもぶくれスマイルのままで、むしろ嬉しそうでさえある。 「さっすがティガれみりゃだどぉ♪ あんなにつよいおねぇーさんを、もぉーとりこにしちゃったどぉ♪」 親れみりゃも、何を勘違いしたか興奮気味。 変なところで耳年増なのか、2人のれみりゃは、萃香の「食べちゃう」発言を、 これからいっしょに「すっきりぃ~♪」しようという誘いに受け取ったらしい。 『れみりゃはじめてだからぁ~♪ やさしくしてねぇ~~ん♪』 どこで覚えたのか、恥じらいの台詞を口にするティガれみりゃ。 ちなみに、本当に「すっきり」するのが初めてかどうかは定かでない。 「はいはい、やさしくなっと」 萃香はティガれみりゃの勘違いを軽く受け流すと、 にぃーっと笑った後、徐々に口を開いていき、鬼の牙を煌めかせた。 次の瞬間。 ぱくり。 萃香の小さな(?)口が、 ティガれみりゃの下ぶくれ顔の端にかぶりつき、そのまま一部をえぐりとった。 『「う?」』 何が起こったかわからず、硬直するティガれみりゃと親れみりゃ。 構わずむしゃむしゃ租借し、モチモチとした皮と、上質な肉餡を舌の上で堪能する萃香。 口内にじゅわぁーと肉汁がひろがっていくのにつれて、萃香の顔が輝いていく。 「おっ、おいしぃー!」 パァーと輝く萃香の笑顔。 その笑顔と言葉で、超鈍感力の持ち主たるティガれみりゃも、ようやく事態に気付いた。 おそるおそる、視線を下に向けると、自慢のふくよかな顔の一部が、えぐれていた。 『いっ!』 認識した瞬間、痛みが一気に広がった。 『いだぃぃぃぃぃ!』 泣き出し、ジタバタと体を動かすティガれみりゃ。 だが、ティガれみりりゃの動きは、馬乗りになった萃香によって封じられ、 その場から逃げ出すことは出来ない。 『うぁぁぁぁぁっっ! うぁぁぁぁぁぁっっ!!』 ティガれみりゃは、唯一動かせる顔だけを左右に揺らし、わめき散らす。 『しゃくやぁー! はやくぎでぇぇ! ごぁいひどがいるぅぅぅぅっっ!!』 「ん~? 咲夜ならこないぞ。 今頃は山の上じゃないか?」 『うぞづくなどぉぉぉ! しゃくやはでみりゃが呼べばぎでぐれるどぉぉぉ! でみりゃはおぜうさまだからえらいんだどぉーー! そしたらおまえなんがぁっ!!』 「そりゃお前がアノ吸血鬼だったらそうかもしれないけどねぇ。お前は違うだろ、恐竜さん♪」 『うぞだどぉー! うぞだどぉーー! ぎゃおーーっ! ぎゃおーーーっ!!』 自分が紅魔館のお嬢様でないはずがない! れみりゃ種特有の絶対的矜持を揺るがされ、必死に抵抗するティガれみりゃ。 恐竜と言われて否定するつもりが、「ぎゃおー!」とやってしまうあたりが、 れみりゃ種の限界らしく、それはティガれみりゃといえど例外ではなかった。 一方、そんな苦しむティガれみりゃの姿を見た親れみりゃ。 当初は下ぶくれスマイルのままだった彼女も、 次第に冷や汗がうかびだし、顔が徐々に青くなり、いまではガクガクと小刻みに震えだしている。 親れみりゃは、ティガれみりゃを崇拝し、信じ切っていた。 その崇拝と信頼は、如何にティガれみりゃが劣勢に立たされても揺らぐことはなかった。 萃香に捕まれようと、持ち上げられようと、投げられようと。 ティガれみりゃにとっては何の問題もない。そう期待していた。 現に、ティガれみりゃは笑顔のまま立ち上がったではないか。 やっぱり凄い、きっと自分だったら最初に転んだ時に泣き出してしまっていただろう。 すごい、ティガれみりゃ。 そんなティガれみりゃとそっくりな自分も、きっといつかあんな風に……。 そう、思っていた。 だが、しかし。 今のティガれみりゃの姿は。 動きを封じられ、なすすべなく助けを呼ぶ光景は。 まるで、さきほどゲスまりさに食べられそうになった自分そっくりで……。 崇拝と信頼と憧れで栓をしていた、恐怖と不安がどっと湧き出てきて、 親れみりゃを混乱させる。 「うぁ、うぁ……」 笑顔は自然と消え、 目からは涙が流れ出す。 だめ! ティガれみりゃは負けちゃだめ! じゃないと! じゃないと! 私まで! 「ううううーっ! ティガでみりゃぁぁぁ!! だづんだどぉぉ!! がんばっでだどぉぉぉぉっっ!!!」 号泣し、ろれつの回らないまま叫び続ける親れみりゃ。 けれど、そんな親れみりゃの応援むなしく、 ティガれみりゃは、萃香に食べられ続ける。 『うあぁぁぁぁっっ!! うあぁぁぁぁぁっ! おねがぃぃぃぼぉうやべでぇぇぇぇっっ!!!』 耳を貸さず、萃香はティガれみりゃの下ぶくれ顔をパクパク食べ続ける。 「う~ん、こんなうまい肉まん初めてだよ♪」 「うっ!!」 "肉まん" その単語を聞いて、親れみりゃはビクッと体を硬直させる。 ちがう、ちがう、ちがう! れみりゃは、れみりゃは! 「ちがうどぉぉーーっ!! でみりゃはにぐまんじゃないどぉぉぉぉーーーっ!!」 まるで自分のことのように叫ぶ親れみりゃ。 だが、叫んだその刹那。 暴れるティガれみりゃから飛散した肉まんの小さな欠片が、 大口を開いた親れみりゃの口の中へスッポリと収まった。 「うっぎゃぁ!! ティガでみりゃのおかおぉぉ!!」 嫌悪し、吐き出そうとする親れみりゃ。 ほんの小さな破片とはいえ、崇拝対象の顔を口の中に入れてしまうなんて。 「うーっ! うーっ! ………ううっ!?」 吐き出そうと咳き込むその時、 親れみりゃは、誤ってティガれみりゃの欠片を噛んでしまった。 じゅわぁ~~~と口内に広がるアツアツの肉汁。 「う、うーっ!!?」 そのあまりの肉汁の美味しさに、 親れみりゃは反射的に、ティガれみりゃの欠片を租借しだす。 噛めば噛むほど味が染み出る肉餡の美味しさに、もはや罪悪感もなんのその、 親れみりゃは食べるのを止めることができなくなっていた。 ごっくん。 ティガれみりゃの欠片を堪能し、飲み込む親れみりゃ。 「う~♪ しあわせぇ~~だどぉ~~~♪ こんなにおいじぃにぐまんははじめてだどぉ~~~♪」 そして。 思わず、言ってしまった。 ぷっでぃんとも甲乙つけがたいその美味しさに、 親れみりゃは決して言ってはならないことを言ってしまったのだ。 そのことに、数秒後に気付き、 親れみりゃは震えが止まらなくなった。 ティガれみりゃ、食べちゃった。 とっても美味しかった。 美味しいなんだった? ぷっでぃん?おまんじゅう? ううん、ちがう。 おいしぃおいしぃにくまんさん。 あれ。 ティガれみりゃはおいしぃにくまん? それじゃ、れみりゃは? れみりゃはこーまかんの? おぜうさ? にく? れみりゃは……。 にくま。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!」 親れみりゃの中で、決定的な何かが壊れた。 小さな体であげたその悲痛な叫びは、巨大なティガれみりゃと萃香がたてる音によってかき消されていった…。 数分後。 『た、たしゅげでぇぇ……』 既に下ぶくれ顔の三分の一近くを失ったティガれみりゃは、 ブクブクと泡を吹き、白目を向いて、ぴくぴくと体を痙攣させていた。 「……うっ、しまったな」 萃香はハタと我に返り、立ち上がる。 眼下で苦しむティガれみりゃを見つめて苦笑いする萃香。 「調子にのって食べ過ぎた。こんな食べ残しを土産にしちゃ悪いかな…」 とはいえ、この素晴らしい肉まんの味は、是非他の連中にも味わってもらいたいのだけど。 う~ん。と、しばし考える萃香。 すると。 「おや?」 ふと眼下の森をを見ると、そこには目の前でノビている恐竜そっくりな、小さいヤツがいるではないか。 その小さな恐竜は、逃げるでも戦うでもなく、ぼぉーとその場に突っ立ているように見えた。 「そういえばいたな。 あれって、おまえの子供?」 ティガれみりゃに話しかける萃香。 ティガれみりゃは、ずりずりと地面を這いつくばりながら萃香から逃げ出そうとしていた。 「なぁ、ちょっと!」 『は、はぃぃぃ!』 萃香に呼び止められたティガれみりゃは、 這うのを止め、両手で頭を抱えて、ブルブルと震え出す。 『う~~~~っ! う~~~~~~っ!』 やれやれと肩で息を吐く萃香。 この様子では聞くだけ無駄か。 「なぁ、お前…」 『ごめなざぃぃぃぃ!! あなだのかぢですぅぅぅぅう!!』 何を勘違いしたか、ティガれみりゃは萃香の方を向き、 へへぇー、へへぇーと、何度も両手をついて土下座を繰り返し始めた。 「お前、もういいよ。さっさとどっかへ行きなよ」 『は、はぃぃぃぃっ! ありがどぉぉございまずぅぅぅぅ!!』 ティガれみりゃは涙を流し、 そのままずりずりと地面を這い出す。 『うぅ~~~~~~、うぅ~~~~~』 痛くて、辛くて、悲しくて、悔しくて、恐くて、惨めで、 ただただ泣きながら、逃げ去っていくティガれみりゃ。 その後ろ姿を溜息で見送った後、 萃香は元の人間の少女大のサイズに戻り、 森で呆然と立つゆっくりゃザウルス……即ち、 先ほどティガれみりゃの欠片を食べてしまった親れみりゃの下へ降りる。 「あばっ、あぶあっ、あばばばばばばば……!」 親れみりゃの様子は、既に正常を失っていた。 目の焦点を失い、口から泡を吹き、足下に肉汁の水たまりを作って、 よれよれと体を左右に揺らし続けている。 「おい、おまえ!」 萃香が呼ぶと、親れみりゃは、反射的に体を強張らせる。 「はいぃぃっっ! なんでじょぉぉ!?」 じぃーと親れみりゃを眺める萃香。 やはり、先ほどの大きいヤツの子供なのだろうか? そんなことを考えつつ、口を開く。 「おまえも、あのデカイ奴みたいに食べられるんだよね?」 すると、親れみりゃは、 実にストレートな答えを返した。 「そうでずぅぅ! でびりゃばおいじぃにぐまんでずぅぅぅぅぅぅっっっっ!!」 口角から肉汁を飛ばしながら喋る親れみりゃ。 「にぐまんいっばいうむがらぁぁぁ! いじべないでぇぐだじゃいぃぃぃぃぃっっ!!!」 その顔は満面笑顔だが、笑ったままの目尻から大量の涙を流し続けている。 「ふーん、じゃ鬼らしくさらわせてもらおうかな」 よくよく考えれば、こいつ一体いればツマミの肉まんとしては充分すぎる量かもしれない。 そう考えた萃香は、しばらく親れみりゃを物色した後、 ひょいっと親れみりゃを抱え上げ、その場を後にした。 無機物のように抱え上げられた親れみりゃ。 移動中、その顔は常に笑顔であり、ずっと歌を口ずさみ続けていた。 「うぁ~~うぁ~~♪ あばばぁ~~♪ でびりゃばおいじぃ~にぐまんだどぉ~~~♪」 ……数時間後。 『ティ…ガ…ティガ…ティガ……』 息も絶え絶えに地面を這い続けるティガれみりゃ。 萃香に食べられた下ぶくれ顔は、既にかなりの部分が再生している。 だが、いくら表面的な体の傷がなおっても、 再生に栄養をまわしたぶん、体力の消耗は激しかった。 それに、深く心にえぐられた傷はそうそう治るものでもない。 『ティガ…れみ…りゃ……うぅ……』 少しでも気を紛らわせようと、弱々しく口を開くティガれみりゃ。 しかし、いくら歌を歌っても、 その気持は、痛みは、苦しみは、ちっとも晴れはしなかった。 おかしいな。 そうティガれみりゃは感じていた。 ついさっきまで、あんなに楽しく歌ったり踊ったりしていたのに。 あれ、そういえば、誰かといっしょにいたような? おかしいな、だれだっけ? とってもやさしくて、おうたもダンスもじょうずな子だったような。 思い出せないけど、きっとあの子は今頃たのしくおうたをうたっているんだろうな。 また、いっしょにおどりたい、な。 『うぅー…うぅー…うぁ…うぁ……』 森のはずれの湖のほとり。 そこでティガれみりゃは意識を失った。 『…………ZZZ』 それから、どれくらいの時間がたっただろうか? たまたま湖を訪れ休憩する、ゆっくりの一団がいた。 「むっ、むっきゅーーーーーっ!!??」 昏睡するティガれみりゃを見つけて叫んだのは、 かつてティガれみりゃによって、群れを壊滅させられた、あの胴体付きぱちゅりーだった……。 to be continued 次回予告 『ティガれみりゃ5・さらばティガれみりゃ(予定)』 ============================ (あとがき) どうも、ティガれみりゃ第4回です。 今回は、『ティガれみりゃ3』から直接続くエピソードになります。 どうにも肉体的な虐め描写は苦手なのですが、 苦手ゆえに、敢えてこの前後編で挑戦してみました。 如何だったでしょうか? ……それにしても、ただの一発ネタのはずのティガれみりゃも、 随分書いた気がします。とりあえず次回で一区切りつける……予定です。 byティガれみりゃの人 (これって自分で名乗るものなんでしょうか?) ============================ このSSに感想を付ける
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「う~~~♪ ここはれみりゃのおへやにするどぉ~~~♪」 「ばぁ~か♪」 「うっう~♪ うあうあ~♪」 「ぎゃ~をた~べちゃ~うぞ~♪」 「れみりゃはつよいんだどぉ~~♪」 「ざぐやにいいつげるどぉ~♪」 「う~♪ ぷぅっでぃ~ん♪ ぷぅっでぃ~んもっでぎで~~♪」 「ちがうの!! ぷりんじゃなぐでぷぅっでぃ~んなの~!!!」 「いりゃにゃい!!! おやさいにがいからきらい!!!」 「おさかなもおにくもくしゃいからきらい!!!」 「ぽいするの♪ ぽいっ♪」 「れみ☆りゃ☆う~♪ にぱ~♪」 「う~~♪」 これは全てゆっくりれみりゃの言葉である。 更に詳しく言うと、紅魔館に住んでいる ザ・メタボリックれみりゃ の言葉である。 このれみりゃは、普通の俊敏な動きのできる四肢無しれみりゃに少し劣るが運動性能が高いれみりゃよりも遥かに劣る種類?だ。 だからこそ、普段は食料として出荷されている。 人間が侵入するのは難しいが、良く訓練された同系のれみりゃで友釣りするのだ。 そこで、俺は思った。 他にもれみりゃができる仕事があるんじゃないだろうか、と。 ゆっくりとはいえ四肢もある個体だ、可能性はある。 俺はその可能性を探求するために、イジメ、じゃ無くて研究を始める事にした。 「……」 そうして、紅魔館が見える所で張り込む事一週間。 「うっう~~♪ れみりゃう~♪」 きた!! ゆっくりれみりゃだ。 「みゃみゃ~~♪」 しかも四匹の子供連れだった。 「大丈夫ですかれみりゃ様? 家族だけでお出かけなんて?」 「う~~♪ れみりゃはこ~まかんのおぜうさまだど~~♪ だいじょうぶだど~♪」 「「「「う~う~♪」」」」 ……ふむ。 どうやら今回は勝手に抜け出したんじゃなくて、きちんと伝えてから出て行くらしい。 これはひょっとしたら不味いかもしれない。 「うっう~いっでぐるどぉ~~♪」 「いってらっしゃいませれみりゃ様」 手を振っているメイド長は、ずっとれみりゃ一家を見続けている。 「うっう~~♪」 おそらく、特製であろう日傘を片手で持ち、もう片方の手をブンブンと振りながら先頭を切って歩いてくるお母さんれみりゃ。 「う~ごっじにいくど~♪」 角を曲がってメイド長から見えなくなると、やはりメイド長がコソッと追いかけてきた。 仕方ない、これは諦めよう。 そう思い仮眠を取ろうとしたら、メイド長の動きが止まった。 「……どうしたの?」 「はい、レミリア様が至急お話があるそうです」 「そう。……分かったわ」 これはラッキー、屋敷の中へ戻って行った。 この機を逃す手は無い。 「おーいおまえたちー!!!」 「う~~~♪ うっう~れみりゃはこ~まk」 「よこせ!!!」 先手必勝、れみりゃの手から日傘を、そして帽子を奪い取る。 「うあああーーーー!!!!! れみりゃのぼーじかえぜーーーー!!!!!」 おお酷い酷い。 頼むからそんな顔でこっちを向かないでくれ。 「んー。こんなきったないものは処分しないとなー!」 「だめーーー!!!! それはゆいじょだだじーこーまがんのれみりゃのものなのーーーー!!!!」 「じゃあやっぱりごみだね!!! ごみがこはこっちだったね!!!」 「までーーー!!! までーーー!!!!」 俺の後ろを必死になって走ってくるれみりゃ。 必死になって走っているが、俺は唯歩いているだけなんだがな。 「まぁまぁ~~まっで~~~♪」 「う~~~♪」 その後ろからは、赤ちゃんれみりゃが追いかけてくる。 これは面白い事になりそうだ。 「うーーーー!!! がえじてねーー!!!!」 「はいはい。この帽子だったかな?」 漸く、目的の場所に到着した俺は、れみりゃに帽子を返さなかった。 「ほれ、ここにすでじゃう~♪ ぽいするど~♪」 そこの側溝に何時もれみりゃがやるように捨ててやった。 「あああーーー!!! れいむのぷりでーなおぼーじがぁー!!!!!」 躊躇なく側溝に飛び込んでいくれみりゃ。 そのまま、帽子と同時に側溝に落ちる。 「うっう~♪ うーーー!!! きだないーーー!!!!」 帽子を被り、漸く周りの状態を理解したれみりゃが勢い良くその場から上がってこようとする。 「セイヤ!!!」 「うぎゃ!!!」 上がってくるれみりゃをけり落とす。 そのままお尻を打って尻餅をつくれみりゃ。 「うーーー!!! ぎたないどーー!!! こーまかんのおじょーざまのごーじゃすなおよーふぐがよごれじゃったどぉーーー!!!!」 「そのほうが似合ってる。お前は今からそこを綺麗にするんだよ!!」 「うっう~♪ いやだぁ~~♪ ざぐやにやってもだう~~♪」 仕方がないなぁ。 「うっぎゃー!!! まぁまぁーーー!!!!」 取ったままだったれみりゃの日傘で一匹の赤ちゃんれみりゃを串刺しにする。 「あああ!! あがじゃん。れみりゃのぷりでーーなあがじゃんがーーーー!!!」 その言葉を無視し、その子供を放り投げると相違していたスコップでどぶをさらいれみりゃの頭にかけてあげる。 「うあーーー!! ぎだないーーー!! こーまgん!!!」 「ちがうだろ? お前は紅魔館のお嬢様じゃないんだよ?」 余りにも紅魔館紅魔館煩いので、スコップでガンガン叩く。 「うあーーー!! うあーーー!!!」 「分かったか? お前は紅魔館のお嬢様じゃないんだよ?」 「わがったーー!! わがったからゆるじてーー!!!」 よーし。 これで漸く計画どおりに事が運べる。 「よし、それじゃあさっさとココを綺麗にするんだ」 「うーーわがったーーー!!!」 少し小さめのスコップを投げてやる。 小さくても鉄製なのでずっしりと重い。 「うーーおもい!! ざぐやーーーれみりゃのかわりにやっでーー!!! んびゃあ!!」 「お前が一人でやるんだよ」 「はいーーー!!!」 全く。 れみりゃは、よろよろと立ち上がり必死になってスコップを持った。 「う~~?」 そうか、どうして良いか分からないのか。 「こうやって、すくってこっちに捨てるんだ」 身振り手振りを交えて、れみりゃに教えてやる。 「うーー!! うーー!!!」 単純な作業なので、ゆっくりにしては簡単に覚えた。 そして、今れみりゃは必死になってどぶをさらっている。 「うあーーー!! づがれだーー!! もうおわり~~♪」 「……」 「あぎゃああ!! まぁまぁーー!!!!」 もう一匹、赤ちゃんれみりゃの四肢を引きちぎってみた。 その後スコップで本人を殴打。 「さっさとやれ」 「はいーー!!! はいーーー!!!!」 何度も何度も、重いスコップを持ってかき出していくれみりゃ。 最後の方になると、疲れて何度も転びながら、何とか100Mのどぶさらいを終える事ができた。 「うーーー!!! うーーーー!!!」 「おい! 最後の仕事だ」 未だ側溝で荒い息をしているれみりゃに、最後の仕事を言いつける。 「うーー? ざいご?」 「そうだ。これで最後だ」 「う~~♪ れみ☆りゃ☆う~♪ にぱ~♪」 コンだけ元気があれば大丈夫だろ。 「ほい」 「うっぎゃーーー!!!」 「ほいほい」 「まぁまぁーー!!!!」 「ほーい」 「ぎゃーーー!!!」 「ラスト」 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーー!!!!」 四匹の子肉まんをバラバラびしてそこに放り込む。 「あああ!!! れみりゃのぷりでぃーなあがじゃんがーーー!!! んびゃ!!」 「違う! それはどぶだよ。さっさとそれをすくってココに入れろ」 大きなバケツをれみりゃの前に落とす。 「ちがうのーー!! これはrぎゃーー!!!!」 「はやくしろっていってるんだよ?」 「はいいーーーー!!! いれまずーーーー!!!」 おお早い早い。 随分と速いペースでバケツの中に入れ終えたれみりゃに、それを上にもってこいと命令する。 「ううーー!!! うーーー!!!」 律儀にスコップを持ったまま、バケツを上にあげたれみりゃ。 「ご苦労さん。それじゃあ、これ持って」 「う?」 「こうやって摺ってみて」 「うーー」 「あ、折れちゃったね。もっと早くやってみてね。折れたのはバケツの中に捨ててね」 「うー。う~~~!! う~~~♪」 「火がついたね。それもバケツの中に入れてね」 「う~~~♪ ぽい♪ うあああ゛あ゛ーーーー!!!!!」 うん、予め灯油を入れていただけあって良く燃える。 「まぁまぁーー!!!」 「あずいーーー!! あずいーーー!!!」 「あ゛あ゛あ゛あ゛!!! あがじゃんがーーー!! あがじゃんがーーー!!!」 物凄い炎を上げるバケツの前で、唯呆然と立ち尽くすれみりゃ。 ここは一つ言葉をかけてやらねば。 「おまえがころしたの」 「!!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーー!!!!」 おっと、馬鹿なれみりゃにも分かりやすく言ったのに、意味が分からないから泣き叫んだのかな。 まあいいや、もう焼け終わったみたいだし。 「ご苦労さん。これはごほ-びだよ」 「あああ!! う♪ ぷぅっでぃ~~ん♪」 「そうだよ。食べて良いよ」 「う~~♪ ぷぅっでぃ~~ん♪ うまうま!!!」 やっぱり働いた後のプリンは最高だよね。 「赤ちゃんは?」 「うあああーーー!!!」 「プリンは?」 「うっう~♪」 わースイッチみたい。 「それじゃあね…………」 俺は、二・三れみりゃと言葉を交わした後に紅魔館に返した。 俺も、先回りして張り込み現場に戻る。 ……。 待つ事数時間。 漸くれみりゃが帰ってきた。 「れみりゃさまーー!!! おそかったですねーー!! 咲夜心配しま……した……よ?」 「う~~~ざぐや~~~♪ れみ☆りゃ☆う~♪ にぱ~♪」 メイド長さんが驚くのも無理はない。 全身どぶまみれで差している日傘には、一つの赤ちゃんれみりゃの帽子が中身をべた付かせて同道と刺さっているのだから。 「あの? その格好は?」 「う~~~!! ざぐやはばぁかだ~~~♪ こ~まかんのおぜうさまのれみりゃのえれがんどながっごだどぉ~~~♪」 「それじゃあ、その傘は?」 「うっう~♪ れみりゃのかさはかっこいいどぉ~♪ たたぐとつよいんだど~~♪」 「……それじゃあ、子供達は?」 「う~~~?」 予想通り、混ざりまくった記憶から必死に子供の事を探し出すれみりゃ。 「う~~♪ こどもおいじかっだどぉ~~♪ うごいでつがれだがら、おながいっぱいだべたどぉ~~~♪」 呆気に取られたメイド長。 俺は、その結果を必死にメモに取った。 その為、屋敷の中で、数人の笑い声が聞こえた事など知る由も無かった。 このSSに感想を付ける
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『みにくいれみりゃのこ』 16KB 虐待 制裁 自業自得 差別・格差 妊娠 追放 捕食種 自然界 現代 独自設定 二作目です。虐待自体は薄目です。 ※独自設定ありです苦手な方はご注意を れみりゃの一人称はコロコロ変わりますが、そういうものと思ってください。 作中で言及されるれみりゃとは、基本的に胴付きのことです。胴無しとは別生命とお考えください。 ゆっくりのセリフに読みづらい箇所がありますが、ご容赦ください。 ある森の中に、一匹の胴付きれみりゃが暮らしていました。 そこは人間が訪れることもほとんどなく、危険な野生動物もふらんもいません。 れみりゃもそんな環境で、思う存分ゆっくりと暮らしていました。 「すてきなおぜうさまは~、せかいじゅうからあいされてるんだど~☆」 そんなことを本気で言い切っています。 「でも~、ぷっでぃ~んをだ~れももってこないんだど~!めしつかいのしつけがなってないど~!」 おやおや、世界中が自分の召使いだと思っているようです。 こんな性格から、人間からの好感度は最悪なれみりゃ。そんなれみりゃにある変化が訪れました…。 -みにくいれみりゃのこ- 能天気なれみりゃ、今日も今日とて【かりすまだんす☆(自称)】を踊っています。 「うっうー☆うあ☆うあ!せぷ☆てっ☆ど~!にっぱ~☆」 もたもたぼてぼて、体を振り回しています。本物のダンサーに見せたら怒り心頭でしょう。 「う~、きょうもいちだんとかりすまにみがきがかかったんだどぅー!」 「うあ?なんだかぽんぽんがすこしくるちぃど~?」 お腹の違和感に気づいたようです。食べすぎて肥えたのでしょうか? 「うっ!そういえばむかし、みゃんみゃ~がいってたど!れみぃをうむまえぽんぽんがいたかったって!」 「う~!きっとれみりゃにもあがぢゃんがいるんだど~!」 どうやらにんっしん!したようです。 「う~!うれちぃんだど~!たのしみなんだど~!!」 とても嬉しそうです。れみりゃにも母性があるのでしょうか。 「これでりっぱなれでぃ☆なんだど~!もっとかりすまになって、みんなにじまんできるんだど~!」 ……どうやら赤ちゃんは自分の為に生まれると思っているようです。(他のゆっくりも大差はないけれど…) しかし1人で暮らしてすっきりー!もしていないのに、どうしてにんっしん!したのでしょう。 れみりゃはプライドが高くわがままなため、他のれみりゃとの助け合いなど考えません。 それに普通のゆっくりに比べ数は少ないけれど、力は強いため、群れを作ることもありません。 ゲスのように他のれみりゃを利用するほどおつむの回転も良くありません。 そのうえ大半のゆっくりをご飯と思っているため番もいません。 結果、れみりゃはすっきりー!に頼らない繁殖方法を得ました。 それはいっぱいいっぱいゆっくりすることです。 れみりゃは幸せを感じるほど、自分のカリスマが高まっていくように感じます。 そんなカリスマな自分にはかわいい赤ちゃんができるべきだ、と本能的に思います。 すると、ゆっくりの思い込みパワーにより本当ににんっしん!してしまうのです。 人間・ふらん・一部の希少種に会わない限り好き勝手にできるれみりゃならではの能力です。 そのようにしてにんっしん!したれみりゃはと言えば… 「うー!あがぢゃんがおおきくなったらうごけないんだどー!いまのうちにあまあまをたくさんつかまえるんだど~!」 なんと、ゆっくり界随一のおバカのれみりゃがご飯の貯蔵を思い付きました。 番のいないれみりゃには、ご飯を採ってきてくれる相手はいません。 にんっしんっ!したことで、ぷっでぃ~ん!脳も、少しはまともになったのでしょうか。 「おぜうさまは~、かしこいからぁ~、あまあまを~、あちゅめるんだど~!さすがだど~!」 こんなときも自分をほめることを忘れません。 「こんなときにいないなんて、やくたたずなめしつかいだど!おせっきょうしてやるんだど!」 見たこともない召使いへのお叱りも欠かしません。 「うああ゛ぁぁあ゛あ゛あ゛あぁぁっぁああ!!!でびぢゃだぁぁぁぁ!!!」 「どぼぢでいるのよぉおおおぉおお!!!とかいはじゃないわああああああ!」 「わぎゃらにゃいよぉぉおおおぉ!らんしゃみゃああああああ!!!」 「むっぎゅううぅぅうぅうう!! エレエレエレエレ……」 「まりささまだけはいきのこるんだぜ!ほかにやつらはゆっくりたb おそらをとんでるみたい!」 さっそくご飯集めです。単身群れにカチコミです。 「あまあまは~、れみりゃにたべられるためにあるんだど~!」 「だから~、おとなしくたべられてねぇ~ん!」 目に映るご飯を手当たり次第に捕まえては永遠にゆっくりさせます。 「ちっちゃいあまあまは~、じぶんへのごほうびにたべちゃうんだど~!」 保存のきかない赤ゆっくりはすぐに食べちゃいます。 しばらくたつと、もう動くご飯は見えません。 「う~!れみぃったら、かりもたつじんきゅうなんだど~!み~んなつかまえちゃったど!」 本当は半分以上逃がしているのですが、れみりゃが気付けるはずがありません。 それに本当の達人は、味の鮮度が落ちぬよう生かさず殺さず捕まえます。 「さっそくこーまかんにもってかえるんんだど~」 ご飯を両手に抱え、えっちらおっちら歩いていきます。 重い体にたくさんのご飯。空を飛べるわけがありません。 なんとか住処のほら穴に着いたれみりゃ。ドサドサご飯を地面に落としました。 「う~!もっとたくさんとってくるど!」 と、自慢のこーまかんを離れるれみりゃ。他の群れを探しに行きます。生態系の破壊もなんのその! その後もいくつも群れを荒らして、たくさんのご飯を手に入れました。 「う~。これでしばらくだいじょうぶなんだど~!」 どうやらもう、赤ちゃんが生まれるまでこーまかんに籠って暮らすようです。 あれから一週間後、れみりゃはしゅっさんっ!真っ只中です。 「う゛ぅぅぅぅう~~~!!くるちぃど~!いちゃいどぉ~!!」 さすがのカリスマ(笑)おぜうさまもしゅっさんっ!は苦しいようです。 「ざぐやぁ~~!はやぐなんどがずるんだど~!ぽんぽん…いぢゃいど~!!」 れみりゃはさくやを呼びつけます。絶対来るはずないのにね。 「あがぢゃんはばやぐうばれるんだど~!!おそずぎるど~~!」 とうとうお腹の赤ちゃんにまで文句を言い始めました。そんなことを言っても生まれてきません。 「う゛う゛ぅぅううう~~!うあ゛ぁああぁ~~!う゛っ!!」 長い長い格闘のすえ、ついに赤ちゃんが生まれました。 「みゃんみゃ~、れみりゃだぢょ~!」 「う゛~~!!あがぢゃんれびぃにぞっくりでがわいいど~!」 やっぱり自分にそっくりな赤ちゃんはかわいいみたいです。 「うぁっ!?まだうばれるど!?」 おやおや2匹目がいたようです。 「う゛あ゛っ!!」 今度はすぐに生まれました。 「おきゃ~しゃん!あみゃあみゃほちいぢょ~!」 「う~~…ぷりち~なあがぢゃんふたりもいるど~!!」 2匹目にも大喜び。苦しかったけど笑顔です。 「う゛ぅ!?まだいるのがど!?も゛ういらないど!?」 酷いことを言います。 「うっぎゃあ゛あああぁぁぁあぁぁ!!!」 とっても痛くて叫んでしまいます。 「う~…もういないんだど…ゆっくりするんだど…。」 少し休んで大分落ち着いたれみりゃ。3匹目の赤ちゃんを見ようとします。 「きっとこんどのあがぢゃんもかわいいんだど~!おちびちゃんがた~くさん!かりすまなんだど~!!」 さっきの苦痛もどこへやら、もうすっかり元気です。 「み゛ゃんみ゛ゃぁ~!ゆっくぢじでいっでなど~!」 「うあ゛???」 そこにいたのは自分とは似ても似つかない(と思っている)目と口が異常に離れた赤ちゃんでした…。 「うぅぅうう~~…、ぶちゃいくなおちびちゃんなんだど…」 れみりゃもぶさいくですが、それを遥かに凌ぐぶさいくさです。 「みゃんみゃ~!おなががずいだんだど~!」 声もガラガラ、ぶさいくれみりゃが母親に近づきます。 「ふん゛っ!!」 なんと生まれたて自分の子どもを本気で突き飛ばしました。 「おまえみたいなぶちゃいく!かりすまなおぜうさまのおちびちゃんにふさわしくないど!なれなれしいど!!」 「う゛…うあ…」 自分の子どもを否定してしまいました。 「みゃんみゃ~、どうちたの~?」 「おにゃかしゅいたんだど~! う?しょこのぶちゃいくなのにゃ~に?」 他の子どももよちよちやってきました。 「う~!なんでもないど~!ちょっとれみぃはでかけてくるからおちびちゃんたちはこのあまあまをたべてまってるんだど!」 れみりゃはあのぶさいくな子どもを抱えてこーまかんから出ていきます。 「み゛ゃんみ゛ゃ~!どうぢでおそどにいぐにょ~?でびりゃもあみゃあみゃたべだいど~!」 無視してれみりゃはこーまかんから離れていきます。 こーまかんが見えなくなってきた頃… 「こんなみにくいこはおぜうさまのこどもじゃないど!ぶちゃいくながきはポォ~イ!だど~!」 笑顔で自分の子どもを捨てるれみりゃ。罪悪感はないようです。 「みゃんみゃー!!みゃんみゃーーー… みゃ…ん…みゃ…。」 急いでそこから離れるれみりゃ。変な子が居なくなって清々しい気分です。 「う~!おぢびぢゃんたちおまたせなんだど~!ままがかえってきたんだど~!」 叫ぶれみりゃ。すっかり捨てた子どものことは考えていません。 しかし、声はかえってきません。産まれたばかり赤ちゃんは、さわがしいはずです。 「う~…」 「おぢびちゃん!?どこにいるんだど?こっちにくるんだど!」 聞こえた声にほっと一安心したれみりゃ。おちびちゃんを呼びつけます。 「う~…しね!!」 なんと、怖~い怖~いゆっくりふらんが陰から姿を現しました。した。しかも体がついています。 「どぼじてふらんがいるんだどぉおぉおおおお!?」 さすがのれみりゃも大慌て。この森にはめったにいないふらん、それも胴付きです。 ふと、ふらんの足元に目が行きました。するとそこにあったのは…。 「お、お、おおおおおお、おぢびぢゃん゛んんんん!?どぼじでちんじゃっでるんだどぅ~~~!!!」 2匹の赤ちゃんの無残な姿でした。 頭は半分無く、首から下はズタズタです。 「おぢびぢゃんがじんじゃったど~~…!ごれじゃありっぱなれでぃじゃないど!かりずまになれないど~~~~……。」 かりすま溢れるゆん生計画が台無しになったれみりゃ。その後ろから…。 「やあれみりゃ、ゆっくりしてないね!」 「あ、おにーさん!」 1人の男性が声をかけてきました。どうやらふらんの飼い主のようです。 「う゛ぅぅぅうう~~!めしづがい!おぞずぎるんだど~!おぜうさまのあがぢゃんしんじゃっだんだど~!」 どうやら事態は理解できていないご様子。 「ばやぐあのぶれいもののぶらんをぜいっざい!ずるんだど~!!そのあどおまえもぜいっざい!だど!」 男性に命令するれみりゃ。それに対して男は…。 「ねえ、君はじぶんのおちびちゃんを捨ててたんだよね?」 「うあ゛!?」 どうしてどうしてこっそりいったのに…。男の言葉にれみりゃはうろたえます。 れみりゃもさすがに子捨ては悪いことだと知っていたようです。でもかりすまだからばれないと思っていたのです。 実は彼は出産直前かられみりゃを見ています。 その後れみりゃが子どもを捨てに行ったのを見送り、ふらんと共に待ち伏せしていたのでした。 子捨て自体は彼にとってどうでもよく、単なる虐待の口実に過ぎないのですが…。 「ヒャア!子を捨てるゲスれみりゃは虐待だぁ!!赤ん坊に罪はねぇ!ふらんのおもちゃとして死なせてやったぜ!!感謝しな!!」 「うー!しね!ゆっくりしね!げすはしね!」 本性を現した虐待お兄さんとふらんが声を上げます。 「うあぁ・・・!ざぐやぁあああああああ!!!おだぢゅげぢでぇぇえぇえええぇぇええ!」 その後れみりゃは1か月間死ぬより苦しい虐待を受け続け、自分を醜い豚以下の存在と思い込み、絶望の末に死んでいったとさ。 めでたしめでたし 一方、幸運(?)にも捨てられたぶさいくれみりゃ。 「う~みゃんみゃ…」 慣れない足つきでよたよた森を歩いています。 ですがおうちにたどり着けはしません。 産まれてから何も食べておらず、もう体力の限界です。 大人のゆっくりに殺されるかもしれません。 「すーや…すーや…」 「うあ?」 どこかから寝息のようなものが聞こえます。 音の出どころを探してみると… 「う~!あみゃあみゃだ!」 木の穴で、数匹の赤ゆっくり達が寝ていました。どうやらお留守番中のようです。 「う~!おいちいど~!」 パクパク!と口に入れていきます。 「う~!みゃんぷくだど~!」 もうすっかり元気です。母親のことなんて忘れてしまいました。すると…。 「どぼじでれみりゃがいるんだぜ~~~!!」 「おぢびぢゃんんんん!!べんじじでぇええぇええ!」 赤ゆっくりの両親でしょう、大人のまりさとれいむが帰ってきました。 「うーー!おおきなあみゃあみゃ!」 「ゆぎゅぶりゅぐぅ…!!」 まりさはもっとゆっくりしたかったという間もなく、潰されてしまいました。 お腹いっぱい元気いっぱいのれみりゃ。もうおとなのゆっくりも怖くありません。 「ばりざああああああああああ!!!!」 れいむはもうなにがなんだかわかりません。 「う~…このあみゃあみゃはさっきのほどおいちくないんだど…」 手に付いた餡子を舐めながら言うれみりゃ。 「こっちのおおきなあみゃあみゃもいりゃにゃいからちゅぶしちゃうど~~~!」 「ゆびゃぎゅえぐでぶふぅ……!!!」 れいむも潰したれみりゃ。 「ふんじゃうんだど~!」 死んだ二匹の死体を踏みつけるれみりゃ。満腹だからもったいないとは思いません。 一瞬で苦しむことなく死ねたこの一家は幸せだったのかもしれません。 しばらくたって… 「ぎゃおーーー☆たーべちゃうぞーー!」 「「「「れみりゃだあああああああああ!!! おもにかおがきもいいいいいいいいい!!」」」」 「う~~☆しつれいなあまあまなんだど~!」 すっかり大きくなったれみりゃは、その醜い顔から森のゆっくり達に最も恐れられる存在になっていました。 あまりの醜さにふらんが逃げ去ったということもありました。 その結果れみりゃは自分がこの世で一番偉いと思い込むようになりました。 群れを作らないから、その醜さにも気づかず、自分はとってもびゅぅ~てふる!と思っています。 今では母親以上に無駄なプライドを持っています。 「う~~…。こんなところおぜうさまにはふさわしくないんだど…!」 ある朝、れみりゃは自分の住む森に不満を感じていました。 「かりすまなおぜうさまは、このしっこくのつばさでもっとおおきなせかいにはばたくんだど!!」 森を出ようというのです。 「どこかにれみりゃのためのほんとうのかりすまこーまかんがあるんだど…」 「そしてさくやとたくさんのめしつかいにぷっでぃ~んをもってこさせるんだど!!!」 れみりゃはとっても野心家です。 さあ、思い立ったが吉日。早速森を出ることにしました。 「うー☆うー☆うあ☆うあ☆」 森から出て道を歩くれみりゃ初めて見る森の外の世界にとってもご機嫌です。 すると、道のそばにお家のようなものが見えてきました。 「うーー!れみりゃのこーまかんにちがいないんだど!いそぐど!!」 れみりゃはワクワクして走り出します。 「うあ?」 するとどうでしょう。自分の為のこーまかんなのに、嫌なものがあるではないですか。 「う゛ぅぅーーーー!どうしておやしゃいがあるんだど!!」 そう、れみりゃはお野菜が大嫌いなのです。 「うー!まじゅいおやしゃいはポーイッ☆くしゃいおやしゃいはポーイっ☆だど~!!」 こーまかんの主として、邪魔なものは排除しなくてはなりません。 「いやなおやしゃいは~、こうっ!こうだどっ!!」 自慢のあんよでぐちゃぐちゃに踏み潰します。 すると…。 「おいっ!!そこの糞豚まん!!うちの売りもんに何してやがる!!!」 「うぎゅぶぅっ…!!!」 怒った男性がれみりゃを殴りつけます。 そう、ここはこーまかんではなく野菜の無人販売所なのでした。 れみりゃにとっては見たこともない立派な屋根が付いていたため勘違いしたのです。 ゆっくりに売り物の野菜を地面に叩きつけられ踏み潰され、まともなものはほとんど残っていない。 しかも食べるためですらない。男はたまったものではありません。 さらに不運なのは、まだ早朝だから野菜はまだ売れていなかったことです。被害は大きいです。 「おぜうざまになにずるんだど~~~!!ざぐやあ~~~!こいづをごろずんだど~~~!!!」 「うるっせぇ!俺が丹精込めて作った野菜を!!収入源を!!台無しにしやがって!!!」 近所ではかなり評判の彼の野菜。無人販売もなかなかの利益になるのです。 「(どぼじでおぜうさまがこんなめに!?こーまがんをおそうじしてただけなのに!!)」 理不尽を感じるれみりゃ。しかし本当に理不尽なのは意味なく野菜を潰された男性のほうです 男は怒りに任せてれみりゃの全身をサンドバッグにします。 「ゆぶっ!ぶふぅ!うげっ!おえっ!」 痛くて怖くて何が何だかわからないれみりゃ。 「うっぴぃぃぃいい!ざぐやぁああ!ごわいひどがいるぅぅううぅうう!」 とうとうさくやを呼ぼうとするれみりゃ。すると、れみりゃを殴る手が止まりました。 「う?さく…や…?」 ついにれみりゃの叫びがとどいたのか、そこには完全で瀟洒なこーまかんのメイド長さくやが……… いるわけがありません。 「う?うあ?おぜうさまのかりしゅまにきづいたの…?」 恐る恐る尋ねるれみりゃに男は…。 「このれみりゃ、なんか一段と不細工じゃないか?」 「う゛ぅっ…!!!?」 男は少し冷静になって気づきました。 ただでさえ不細工なれみりゃですがこのれみりゃはその比ではありません。 男は自分の記憶を掘り起こします。 「うー!おぜうさまはとってもびゅぅ~てふる!なんだど!ぶちゃいくじゃないど!」 たしか目口がが異常にはなれたこの不細工れみりゃは… 「そうだっ!こいつはぶさりゃだ!!!」 ぶさりゃとは… それは数年前発見されたばかりのれみりゃの亜種のことです。 なぜか胴付き以外には存在せず、ただでさえ不細工な胴付きれみりゃを遥かに超える醜さで一時話題になったのです。 けれど、ぶさりゃは醜いだけで有名になったのではありません。 味がこの上なく美味だったのです。 様々なグルメ評論家からの絶賛を受け、究極至高の肉まんの太鼓判を押されたぶさりゃ。 当然加工所は量産を試みましたが失敗。低い確率で産まれるのを待つしかないのです。 よってその値段は高騰し、一匹につき数百万は下らない最高級食材ゆっくりとなったのです。 そんなぶさりゃを目の前にした男は… 「すげぇ!超貴重食材じゃないか!こいつを売れば野菜の損益なんて大したことないぞ!!」 「う?ぶたないの?」 何が何だかわからないれみりゃですが、れみりゃを賞賛してるようです。 「う~!はんせいしたんならぷっでぃ~んをもっでくるんだど!たぁ~くさんだど!いそぐんだど!」 調子に乗ったれみりゃはここぞとばかりに命令をします。 「おぜうさまをなぐったつみはおもいど!さくやにし~から~れちゃ~うぞ~?そのあとはいっしょうどれいt 「早速加工所を呼ばなくちゃ!!」 「うあ!?」 加工所…それはゆっくりたちにとって一斉駆除と並ぶ恐怖の代名詞です。 どうやらそれはおぜうさま(笑)たるれみりゃでも例外はないみたいで…。 「うあ゛あああああああああ!かごうじょはいやなんだどぉぉおおお!!」 「ほらほら暴れんな!大事な大事な高級食材なんだからさ!」 男は満面の笑みを浮かべていました…。 その後、れみりゃは加工所で、苦痛と悲しみに満ちた最期を迎えましたとさ。 実の親からさえ見捨てられたみにくいみにくいれみりゃの正体は、美味しい美味しい高級食材だったのです。 れみりゃはその黒い翼とともに、大きな大きな市場(せかい)に羽ばたけたのでした。 ―完― あとがきなんだど!! どうも、二作目です。 一作目を書き終えた後、他の童話をモチーフにして考えたら、これが一番しっくりきたので書き始めた次第です。 でもやっぱり胴付きれみりゃの虐待はいいですね!他の胴付きはダメなのになぜだろう…。 きっとあのにやにやした顔にボテボテした体のバランスが絶妙だからですね! 中身が善良ならこの上なくかわいいんだけどな… ~過去の作品~ anko3815 はだかのれみりゃ
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※ちょっと長めになるかもしれません。 ※胴体付きれみりゃいぢめです。あまり積極的ではありません。 ※その上、それ以外の饅頭は基本ゆっくりしています。 ※ムチャクチャな俺設定であるおそれがあります。 ※ご了承いただける場合は、お読みいただきたいと存じます。 『冬のれみりゃ Part1』 「う~♪う~♪きのごがいっぱいはえてるどぉ~♪みぃ~んな でみでゃがだべちゃうんだどぉ~♪」 時は十一月の終わり。幻想郷の過酷な冬が、目前に迫っていた。あらゆる生物が、冬を迎える準備に追われ、 あわただしい空気が張り詰める季節。そんな折、緊迫したムードとはまるで無縁の、 能天気な大声を張り上げて、よたよたと頼りなげに漂う、ひとつの影があった。 「う~♪おがしなにおいだどぉ♪でもきにせずにだべちゃうんだどぉぉ~♪♪」 ふらふらした影は、アカマツの根元にまばらに生えたきのこの香りに誘われてきたらしい。 言うまでもなく、それはマツタケであった。手当たり次第、むさぼるようにして食い散らかす「それ」。 その挙動は、まさしく、刹那に生きる者のそれだった。 幻想郷にも、厳しい冬がやって来る。だから、ゆっくりと呼ばれる饅頭も冬眠こそしないが、 命をつなぐために冬ごもりの支度を念入りに行うことはよく知られていた。 饅頭は愚鈍である。知性も、運動能力も、他のどんな野生動物と比較しても劣っている。 そんなゆっくりでさえ冬に備えるというのに、より本能に忠実に生きんとする生命体があった。 その名を、ゆっくりれみりあ。略して「ゆっくりゃ」とか「れみりゃ」などと呼ばれているのだが、 当の本人の発音によると、「でみでゃ」としか聞こえない。悪趣味な服装をし、 奇怪なポーズで所構わず創作ダンスを踊りまくる。甘いものに目がない反面、野菜は絶対受け付けない。 また、自立心が乏しく、何かあればすぐ、某パーフェクトなメイドの名を叫び、頼ろうとする。 極めつけは、ゆっくりチルノにも劣る、人間の乳幼児と同程度か、あるいはそれ以下の知能。 このお馬鹿ぶりは底知れないわがままさと相まって、「れみりゃ」の性質を決定付けていた。 むろん、その能天気な肉饅頭たちには「冬支度」という高度な計画など、及びもつかない。 そこで、なぜれみりゃたちは絶滅せずにいるのか、という疑問が起こってくるのであるが、 それはおそらく、れみりゃの持つ、驚異的な代謝(再生)能力が鍵となると思われる。 つまり、連中は冬の間、なすすべなく猛吹雪にさらされ、カチンコチンの冷凍肉まんとなる。 だが、冬期が終わりを迎え、温かな春の陽射しにより解凍されることによって、 以前の状態に、何一つ相違なく、復元することが出来るわけなのである。 にわかには信じがたい話であるが、吹きさらしの野原を長期間観測した結果得られたデータ故、 信用に値するものと、私は信じている。ついでに言うと、私はその観測員だった。 「うっう~♪へんなあじだどぉ~♪すじっぽいどぉぉ~♪♪♪ う~う~うあうあ☆ あっちのはやしにもいっでみるどぉ♪」 私が荒野の冬期観測員となって、二度目の冬がやってくる。観測の拠点となるのは、 簡素な山小屋だった。夏期と冬期とで、観測員は交代制で居住することになり、 半年の空白を挟んだとしても、内部が荒れ果ててしまっているといったことはなかった。 内装や家具のレイアウトが、前の住人好みに様変わりしてしまっている点だけは、未だに慣れないのだが。 こうして私が、懐かしの職場へと復帰し、ようやく火のおこった旧式の石炭ストーヴでお茶を淹れ、 一息つこうとしていた時であった。かなり遠くのようではあったが、ゆっくりの悲鳴がこだましてきたのだ。 私はそれを聞き逃さなかった。むろん、救助に駆けつける義務はなかったのだが、 好奇心を抑えきれず、厚いガラスを嵌め殺しにした窓から双眼鏡を用いて、はるかな雑木林の様子を窺うことにした。 「う~!!あま゛ぁ~いのまでぇぇ~!!た~べちゃ~うぞぉ~!!!」 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛っ!!ごっぢに゛ごな゛いでえ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛え゛!!!」 先の悲鳴は、胴体付きゆっくりゃの追跡に遭い、命の危機に瀕したことを悟った、 一匹の子まりさのエマージェンシーコールだった。泣き叫びながら、親の名を呼んでいる。 林に分け入り、落ちた木の実を採取していたのだろう、頬一杯につめたドングリやクリの実を、 吐き散らかしてこっちに向っているようだ。……こっちに来ている。困ったことになりそうだ。 観測員の業務とはまさしく、決められた期間、決められた土地周辺の様相を、文字通り、 観測し続けることにある。自然環境や、その状態を把握することは勿論、大繁殖しているゆっくりたちが、 万が一、里へ侵攻しようとする場合などは、それを察知し、速やかに本部へ打診する必要があった。 いわば物見やぐらか、斥候の役割といったところだった。これに照らしてみれば、 目前で繰り広げられているハンティングなどは、たいした出来事ではないのである。 だが、私は頭を抱えていた。それは、里とゆっくりとの間に結ばれ、代々受け継がれてきた、「協定」の存在が原因だった。 条文にいわく、「ゆっくりは人里に立ち入らず、人間に迷惑をかけないこと」そして「人間はゆっくり保護区にむやみに立ち入らず、 ゆっくりに危害を加えないこと。互いの生命を尊重すること」というものである。協定というよりはむしろ、 単なる人間社会における法令のようなものではあったが、山野の鳥獣とは異なり、 ゆっくり饅頭たちはちっぽけながら知性を持っていたため、このように、文書化され、「協定」の形を取ることになったと伝えられている。 例えば、今回のような場合、上記の法をいかように解釈すべきだろうか。 私のいる山小屋とその周辺は所謂緩衝地帯であり、立場としては中立である。 その行為基準は、先の協定とはまた別の法に拠るものであった。とは言え、目前の事態は、緊急性を孕んだものであり、 現にゆっくり一匹の命が懸かっていた。こんな時、私はいかような行動を取るべきか。「ゆっくりとゆっくり保護区に関する法令集」、 略して「ゆ法全書」にまとめられた、「人里とゆっくり保護区との境界におけるゆっくり観測局についての特則」、 略して「ゆ特則」の「第四条 特別観測員の行動基準」によれば、目前にかような事態が起こった場合、「ゆ法」の基礎的精神にのっとり、 攻撃者が保護対象外の場合であるなど、諸々の条件の下、観測員はこれを排除してよいということになっている。 このレベルのことは、観測局員養成学校の時代に叩き込まれていたため、私は渋々ながらも、ゆっくりまりさに加勢することを決め、 山小屋を後にしたのである。もっとも、躊躇う理由はあくまで寒いからであり、私は虐待おじさんというわけでもないのである。 「う~!あま゛いのまづんだどぉ~~!!」 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ!まりざはお゛い゛じぐない゛よ!!ゆ゛っぐり゛あぎらめでね!!」 小屋のそばの、なだらかな坂道を子まりさが駆け降りてきて、そこに、ゆっくりゃが追いすがる。 坂の上に並び立つ、マロニエの木の落葉がクッションとなるが、勢いを殺しきれず、子まりさがスポーーンと、こちらに飛んで来る。 踏み切り台となってしまったようである。私の胸に飛び込んできた子れいむ。 「お、おじざん!!まりざを゛だずげで!!まだじにだぐない゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!!!」 顔面を餡子色の涙でぐしょぐしょにしており、泣き腫らした目は水羊羹の色だった。 とりあえず、よしよし、もう大丈夫だなどと慰めて、後続の肉まんに相対する。 「うっう~♪そのあま゛いのはでみでゃのだどぅ♪さっざどわだざないど、いだいめ゛みるんだどぉ~~♪♪♪」 相変わらずの肉餡脳であり、厚手のコートに身を包み、いかめしいブーツを履いた私の姿を見ても、 ひるむことがない。むしろ、狩りの間の無邪気さはどこへやら、ふんぞり返って上から目線である。 抱えていた子まりさを降ろしてやり、私の背後に隠してやる。 「う~~!!!その゛たいどはなんだどぉお゛!さっさどひぎわださないど、たべちゃうんだどぉぉおぉお~~~!!!」 「ゆ゛ぎゅ゛ぅ゛ぅ゛!!おじざん!!お゛ねがいじまず!!!までぃざをだずげでぐだざい゛!!!」 子まりさは滂沱の涙をながし、私のコートの裾をぎりぎりと噛み始めた。ゆっくりゃはさらに態度をでかくし、増長し、 ぷす、ぷすっと合間合間に屁をこいている。この珍妙な空気のながれる場にあって、私は「法律って何だろう」と考えざるをえなかった。 我に返ると、ゆっくりゃが間近に迫り、子れいむが腰を抜かして、卒倒してしまっているではないか。すわ一大事。 私はそれなりの力を左足に込め、みぞおちを狙ってゆっくりゃを数メートルほど蹴っ飛ばしてやった。 右足はかつてのゆっくりとの戦争で失ったため、既に義足である。 「ぶっぎぎ!!!でゅべ!!!!!」 盛大に肉汁を噴出し、ふざけた放物線を描いて吹っ飛んだゆっくりゃ。私が履いていたブーツは、 軍靴と見紛うほど頑丈なものだったので、わずかの力でも、ゆっくりゃにかなりのダメージを与えたようだ。 生地はピンク色だが、薄汚れている衣装はやぶれ、胸部の筋肉が張り裂けていた。 黄ニラや青ネギの混じった肉餡を露出させた大きな裂傷からは、じゃぶじゃぶと豚汁様の液体が、泉のようにあふれ出ていた。 「ぎゅあ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!でみでゃの゛ぜぐじぃ゛~な゛おむ゛ね゛がぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!! お゛べべがあ゛ぁ゛ぁ゛!!やぶれ゛ぢゃっだどぉ゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!!!ざぐや゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!!」 「ぶびっ!ぶぼ!ぶりゃーーーーっ!!!びしびしっ!ぶごご!ばぷぅぅぅっ!!!!!」 少々やりすぎたようだ。激臭のする屁を猛烈な勢いで連発し、痛みに悶え苦しみ、完全で瀟洒な某メイド長の名を叫んでいる。 やむなく防毒マスクを装着する。いくら代謝が並外れて活発なゆっくりゃとはいえ、ダメージの大きさと、 自らの負った深刻な傷を目の当たりにした精神的なショックのために、この場合は回復に相当の時間を要するものとみられる。 とは言え、あくまでゆっくりゃなので、この程度では致命傷とはならない。気絶したままの子まりさの介抱にかからねばならない。 「うぎぎぎ…………!!!???ぶばっ!!!!!ぐっざい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!!! ぐさいよ゛ほぉお゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!!!!!!」 なんと、ゆっくりゃの放ったニンニクガスの臭気が、子れいむに賦活効果をもたらした。 白目を剥いて餡子色の泡を吹いていたのが、逆に目玉をひん剥き、血走らせ、過呼吸状態になっている。 「ぐざい!!!ぐざい゛よぉお゛おっ!!!いぎがでぎない゛!!!!!!!!!!!!」 途端に跳ね起き、この場を逃れようとする子まりさ。私は自らの山小屋の方角を指し示した。 脱兎の如く駆け出す子まりさのスピードは、もはやゆっくりのそれではなかった。観測記録更新の仕事が出来たことになる。 「う゛ぶぶ……ぐざぐないんだどぅ……でみでゃのぶり゛ぢーなお゛ならはごぞうろっぷにしみわだるんだどぅ………」 すっかり生気を失ったゆっくりゃは、マスタードガスかくあるべしという、自らの放屁を弁護しつつ、その場でのびてしまったのだった。 (続く) ハチの話を書いた者です。SSは書き慣れないのですが、どうしてもゆっくりをいぢめたくて、 やらかしてしまっております。規制中でスレに書き込めない状態ですので、 感想を頂戴したお礼をこちらでさせていただきます。ありがとうございました。 このSSに感想を付ける
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ティガれみりゃ その3 ======================== ≪はじめに≫ 『ティガれみりゃ』の続きになります。 時系列は、ティガれみりゃ1→ティガれみりゃ2→本作、となります。 他の作者様の設定や名称を一部使わせていただいております。 パロディネタおよび、自分設定有りです。 今回のエピソードには、本家東方のキャラが出演予定です。 口調やキャラなど、壊れ気味かもですが、ご容赦あれ。 すみません、まだ続きます。 また、今回のエピソードは長くなってしまったので、前編後編に分割しました。 以上、何卒ご理解・ご容赦ください。 少しでも楽しんでいただければ幸いです。 ======================== 3、誇りをかけた試練(前編) 「ゆぐぅ……もっと…ゆっくりじだがっだ、よ……」 とある山の、とある森。 一匹のゆっくりれいむが、今まさに力尽きようとしていた。 あちこち皮が破け、その傷と口から大量のあんこを吐き出している。 しかし、この森に充満する甘い匂いは、このれいむだけが原因ではなかった。 「みんな……れいむもゆっくり……そっちへいくよ……」 れいむが語りかけた先、 れいむの眼前、左右、背後、 そこには膨大な量のあんこが飛び散り、地面や木に染みを塗りたくっていた。 所々にリボンや帽子の残骸が垣間見えるそれは、大量のゆっくり達の死骸であった。 赤ちゃんから、大人まで、原型をとどめないその数は200を越えていた。 「ゆぅ……くやじぃ、ょ……」 視界がぼやけ、意識が朦朧としていく。 そんな状態でなお、この惨状を生み出した元凶の影が、目に焼き付いて離れない。 耳をすませば、今なおアノ恐ろしい鳴き声と歌が聞こえてくるようだ。 その歌い手の主、たった一体のゆっくりによって、 れいむの家族も、友達も、喧嘩相手も、同じ森に住むまだ見ぬ同胞達も、 みんなみんな殺されてしまったのだ。 圧倒的な力で、抗いようの無い絶望を撒き散らしたそのゆっくりを、れいむは決して許さない。 その憎悪の炎だけが、れいむの命を辛うじてつなぎ止めていた。 ……もっとも、許すも許さないも、どうせ自分はこのまま死んでしまうのだろう。 ゆっくりのあんこ脳であっても、その事実だけはハッキリ認識できた。 「むっきゅーっ! まだ生きてるのね!」 「……ゆ、ぅ?」 聞いたことの無い声だった。 ゆっくりと目を開き、最後の力を振り絞り、声の主を見上げるれいむ。 そこには人間の少女に似たゆっくりが立っていた。 「大丈夫!? しっかりしてね!」 れいむを心配する少女。 よく見れば、少女もまたゆっくりであるようだった。 『ぱちゅりー、どうしたの?』 「むきゅ! まだ生きているれいむがいたのよ、まりさ!」 ぱちゅりーと呼ばれたゆっくり、 即ち胴体付きのゆっくりぱちゅりーの背後から、重たそうに跳ねて近づく巨大なゆっくり。 れいむはそれを知っていた。とっても強くて大きくて優しいゆっくり、ドスまりさだ。 それも一匹ではない。 二匹、三匹、四匹……次々とやってくる。 さらには普通のサイズのまりさやアリス、ちぇんにみょん、 何十匹ものゆっくりが、木々の隙間を跳ねてきた。 「ゆゆゆ?」 わけがわからなくなる、れいむ。 疑問と困惑があんこ脳を支配し、一時的に痛みも恐怖も忘れさせていた。 「むきゅー。もう大丈夫よ、れいむ」 ボロボロのれいむを優しく抱え上げる、ゆっくりぱちゅりー。 「ゆぅ……おねぇさんたち……だれ?」 「むきゅ! よくぞ聞いてくれたわ!」 ゆっくりぱちゅりーは、れいむを抱えたままドスまりさら仲間へ向き直る。 「わたしたちは、ゆっくりフォース!」 「ゆっ!?」 「ティガれみりゃを倒すために集まった、ゆっくりなれじすたんすよ!」 高らかに宣言する、ゆっくりぱちゅりー。 れいむは、力を振り絞って、ゆっくりぱちゅりーに懇願する。 「おねぇーさん、れいむをみんなの仲間にしてね! れいむもティガれみりゃを許せないんだよ!」 口からあんこを吐き出しながら、されど目には炎を宿して叫ぶれいむ。 ティガれみりゃと戦う上で、この傷だらけのれいむがどれほど役に立つかはわからない。 けれど、その気高いゆっくりマインドだけは、ぱちゅりーやドスまりさ達にも痛いほど伝わった。 なぜなら、その場に集まる殆どのゆっくり達が、ティガれみりゃの犠牲者だったから。 故に、そのれいむの申し出を断るゆっくりはいなかった。 ぱちゅりーを筆頭に、数多のゆっくり達が、れいむに歓迎の言葉をかける。 「「「「「ようこそれいむ! ゆっくりしていってね!!」」」」」 * * * 「うっめっ! むっちゃうめぇっ!」 「まんまぁぁぁーーっ!たしゅげでぇぇぇぇっ!!」 「やめでぇぇぇぇっ! れみりゃのあがぢゃんたべないでぇぇぇぇぇっ!!」 通称・ゆっくりフォースが、そのメンバーを増やしていた頃。 とある湖畔で、胴体付きれみりゃの親子が、複数のゆっくり達に襲われていた。 親だと思われるれみりゃが一匹、その子供が4匹。 親れみりゃは四肢をもがれ、地面にころがされている。 四肢の切り口は、強引に食いちぎられ、断面から肉汁があふれている。 その親れみりゃの前で、4匹の子供達はリンチされ、食い散らかされていく。 「むーしゃむーしゃ♪」 「なにこのにくまん!むっちゃうめぇ!」 「すっごくゆっくりできる味だぜ!」 れみりゃ達を襲っているのは、3匹のまりさ種だった。 それも、もっとも性悪といわれ、専門家達からがゲスまりさと分類される種だ。 「うわぁぁぁぁぁん! しゃくやぁぁぁ! はやぐぎでれみりゃとあぢゃんをたすけるんだどぉぉぉぉ!!」 泣きわめく親れみりゃ。 そんな親れみりゃを、見下すゲスまりさ達。 「おお、おろかおろか」 「うるさいにくまんだぜ!」 「よわいれみりゃは、ゆっくりたべられるんだぜ!」 そう言って、一匹の子れみりゃを丸呑みにして、咀嚼していくゲスまりさ。 「うぎゃぁぁぁ!!」 「うわぁぁぁぁぁっっ!!」 子れみりゃの断末魔と、親れみりゃの悲痛な叫びが湖畔の森に響き渡る。 「ぎゃおぉぉぉーーーーっ! ぎゃおぉぉぉぉーーーーっ!!」 怒りと悲しみで、ゲスまりさを倒そうと体をジタバタよじる親れみりゃ。 だが、四肢の千切られたその体では、文字通り手も足もでない。 「ったく、うるさいにくまんだぜ!」 ゲスまりさがピョンと跳ね上がり、親れみりゃの顔に体当たりをくらわす。 「ぷぎゃぁぁーーーっ! いたいぃぃぃぃーーーっ!!」 苦痛の叫びを上げ、ボロボロと大泣きする親れみりゃ。 「まんまぁぁぁ! がんばてぇぇぇぇ! こいちゅらやっちけてぇぇぇぇ!」 いじめられる親を見て、これまた泣き出す子れみりゃ。 なんとか助けて貰おうと、親れみりゃを応援する。 「ブサイクなにくまんのぶんざいで、なまいきだぜ!」 「うっぎゃっ!」 気分を害したゲスまりさが、跳ね上がり、子れみりゃを押しつぶす。 「どうだぜ! まいったかだぜ!」 「「「うぎゃ! ぷぎゃ! いだっ! ゆぎぃ!」」」 何度も何度も、子れみりゃ達をプレスしていくゲスまりさ。 間もなく、子れみりゃ達は物言わぬ肉まんの残骸と化してしまった。 「ああああああっ! れみりゃのあがじゃんんんんんっ!!! 目の前で全ての子供を失い、白目を向きながら泣き叫ぶ親れみりゃ。 その脳裏に、子供達と過ごした日々が浮かぶ。 森の中でアリスに襲われ、妊娠した日の戸惑い。 自分の体内で新たな命が育まれていくのを感じた感動。 とっても痛かった出産と、それ以上に可愛い赤ちゃんとの対面。 はじめて「まんまぁ~」と呼んでもらえた時の嬉しさ。 一緒に顔中を汚して食べた、さくやとくせい・ぷっでぃんの甘さ。。 立てるようになった子供達に、れでぃーのたしなみとして歌とダンスを教えた日々。 いままでも、そしてこれからも、自分と赤ちゃんたちには楽しくて素敵な毎日が待っている。 だって、れみりゃたちは、とってもえらくてかわいくてつよい、こーまかんのおぜうさまなのだから! だから、今日だって、メイドの言いつけをやぶってでも、 一緒に遠くまでお散歩に来たのに。 それなのに。 あかちゃん。 なんで。 「……あかちゃーん、あかちゃーん♪ ……とぉーってもかわいいどぉー♪」 親れみりゃは、放心状態となり、空想の中で子供達と遊びだした。 一方、ゲスまりさ達は、そんな親れみりゃの様子を見て、ふざけだす。 「おいおい、せっかくのにくまんをつぶしてどうするんだぜ♪」 「おっと、ついやっちまったんだぜ♪」 「そうだぜ、でも心配はいらないんだぜ♪」 ニヤニヤと笑みをこぼしあうゲスまりさ達。 「……う、う~~~~?」 そのゲスまりさ達の言動に、現実に引き戻され、 不安な気持ちでいっぱいになる親れみりゃ。 「「「だって、にくまんはまだこんなにあるんだぜ!」」」 そう言って、いっせいに親れみりゃに噛みつくゲスまりさ。 「うぎゃぁぁぁ! やめてぇぇぇ! れみりゃはにくまんじゃないどぉぉぉ!!」 「なに言ってるんだぜ! どうみたってお前はにくまんだぜ!」 「そうだぜ! 肉汁だってこんなにアツアツウマウマなんだぜ!」 「かんねんするんだぜ! このぶさいくなにくまんが!」 「ちがうのぉぉー! れみりゃはぷりてぃーなこーまがんのおぜうさまなのぉっ! にくまんでもぶさいくでもないのぉぉぉ!!!」 「なにいってやがるんだぜ!」 「そうだぜ! このにくまん!」 「おぜうさまにこんな尻尾なんかあるわけないんだぜ!」 そう言って、尻尾にかぶりつくゲスまりさ。 尻尾。 そう、この親れみりゃは、胴体つきは胴体つきでも、 希少種であるゆっくりゃザウルスであった。 しかも、元々ゆっくりゃザウルスであったわけではない。 ついこの間まで、紅魔館に住み着き、メイド達に甘やかされて育った、 ごくごく普通の胴体付きれみりゃであった。 だが、子供を産み、子育てを経ていく間に、れみりゃの体に異変が起こった。 ある朝、起きたらゆっくりゃザウルスになっていたのだ。 ゆっくりゃザウルスとなった親れみりゃを見て、 普通の胴体つきれみりゃである子れみりゃ達は、たいそう感激し、 「まんま、かぁっこいいどぉ~~♪」と、ことあるごとに褒め称えた。 ただでさえ子供達と優しいメイドに囲まれ幸せだったのに、 さらにこんなにも素敵な体になって、いいんだろうか!? しばらくの間、親れみりゃは幸福感でいっぱいになった。 だが、いくつかの誤算が、親れみりゃの幸福に水を差す。 メイド達が、館の外へ出してくれなくなったのだ。 いつもは定期的にお散歩に行けたのに、 今ではどこかへお出かけしようとするたび、 名前を忘れた門番に呼び止められ、連れ戻されてしまうようになった。 自分は、こーまかんのあるじなのに! こんなにかっこよくなった自分を、いろんな人に見せてあげたいのに! そしたらきっと、みんな喜んで、褒め称えて、自分と赤ちゃんにぷっでぃーんをくれるのに! 腹をたてたれみりゃ親子は、たまに館にやってくる、箒にのった少女に頼み込み、 こっそり館の外へ連れ出してもらったのだ。 けれど、そこで二つの誤算があった。 一つは、遠くへ来すぎて、館へ帰れなくなってしまったこと。 そして、もう一つは、このゲスまりさ達にからまれたことだ。 たしかにゲスまりさ達は、いつもれみりゃ親子がエサとして与えられるゆっくりより大きかった。 その体長は、帽子を抜かしても50cm前後はあるだろう。 だが、そこはくさっても捕食種・れみりゃ。 殆どが子供とはいえ、れみりゃ5匹に対して、 少しばかり大きいエサが3匹いたところでものの数ではないと思っていた。 しかし、それが大間違い。 親れみりゃは、ぎゃぉ~~とゲスまりさに襲いかかったが、あっさりよけられ、 逆に3匹のゲスまりさのコンビネーションの前に、なすすべもなく体当たりされ続け、 あっという間に泣き出してしまった。 すると、あんなにも強くて格好良いと思っていた親れみりゃがやられたことで、子れみりゃ達もすっかり意気消沈。 子供達だけで狩りをしたことが無いこともあり、パニック状態に陥ってしまう。 その隙を突かれ、子れみりゃ達も、さして抵抗するでもなくゲスまりさ達のオモチャとなってしまった。 これこそが、館のメイド達がゆっくりゃザウルスを外へ出したがらないかった理由だった。 当のれみりゃ達は、何故か"最高に強そうで格好良い"と感じるのだが、 ゆっくりゃザウルスへの変化はパワーアップでも何でもないのだ。 むしろ、全ての面において弱体化しており、 その戦闘力は、れみりゃ種の中でも最弱と言っても過言ではない。 しかし、なまじ物珍しく、また肉まんとしてもより肉厚が増えて美味しくなっているため、 ゆっくりを愛好する人間達や、れみりゃの味を知っているゆっくり達から、しばしば狙われ命を落としてしまう。 それを知らず、勘違いしたが故に、このれみりゃ親子の悲劇は起きた。 「おねがいやべでぇぇぇぇ! れみりゃをたべぢゃだべぇぇぇぇぇっっ!」 「「「むーしゃむーしゃだぜぇ~♪」」」 泣き叫び哀願する親れみりゃと、構わずれみりゃの尻尾を食べ続けるゲスまりさ達。 親れみりゃにとって、永遠に続くかと思われた生き地獄は、 断続的な地響きと、その後に続く鳴き声……"とってもエレガントでイケている"と 親れみりゃが苦痛を忘れて聴き惚れた歌によって、遮られた。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪』 「だれだぜ! じめんをゆらすのをやめるんだぜ!」 「なんだぜ? だれがうたってるんだぜ?」 「だれだぜ? まりさたちのしょくじをじゃまするのは!」 きょろきょろ左右を見回すゲスまりさ達。 しかし、見えるのは、湖と木と緑と潰れた肉まんと今たべているにくまんと……。 「ゆっ? だれもいないんだぜ?」 「おかしいんだぜ!」 「もういちどかくにんするんだぜ!」 ゲスまりさは警戒を怠らず、3匹がそれぞれ背中を合わせて、死角を無くす。 ゆっくりらしからぬコンビネーションは、この3匹が長年をともにし、 いくつかの修羅場を乗り越えてきたことを示していた。 「……うぅ?」 一方、一時的にとはいえ、解放された親れみりゃもまた、 "エレガントでかっこよくて綺麗な声の"歌の主を、目だけを動かして探す。 『ティ~ガティ~ガティガ♪』 「「「姿をあわらせだぜ!」」」 いらつくゲスまりさ達。 何度みても、そこには異常は確認できない。 見えるのは、湖と木と緑と潰れた肉まんと今たべているにくまんと……。 ……緑? この緑は葉っぱじゃない。 それによく見ると動いている。 『ティ~ガティガティガ♪ ティガれみりゃ~~♪』 ゲスまりさ達は、その視界に入っている緑を追って、徐々に顔を上げていく。 同じく、その緑色の存在に気付いた親れみりゃも、つられて瞳を上へ向ける。 そして。 「「「うぶっぼげぇぇぇ!!!」」」 「うーーーーーーっ!!!」 声にならない驚愕の叫びと、まるで神にでも出会ったかの如く感嘆に染まった叫びが、湖畔に重なる。 ゲスまりさと、親れみりゃが見上げた先、 そこには、超巨大ゆっくり・ティガれみりゃの満面のしもぶくれスマイルが広がっていた。 ゲスまりさの視界に入っていた緑色は、ティガれみりゃの足先だったのだ。 『ティガ☆れみ☆りゃ☆う~~~~♪』 「げぇぇぇぇぇぇぇっっっ!」 「う~~~~~~~~♪」 ゲスまりさと親れみりゃを見つけ、お得意のダンスを披露するティガれみりゃ。 ゲス達は恐怖で青ざめさせ、親れみりゃは興奮で顔を紅潮させている。 「か、か、か、か……かっこいいどぉーーー!!!」 目をキラキラと輝かせる親れみりゃ。 自分がゆっくりゃザウルスになった時も、鏡を見ては惚れ惚れしたものだが、 いま目の前に立っているれみりゃは、そんな自分から見ても格が違う! 「ま、まさに、かりしゅまだどぉ~~~♪」 ゲスまりさ達に虐められ、子供を目の前で失い、絶望のさなかにあった親れみりゃにとって、 このティガれみりゃの存在は鮮烈だった。 これこそ、自分達れみりゃが目指すべき姿! れみりゃ達の救世主! れみりゃの完成系! れみりゃの最終兵器! れみりゃを終わらせたれみりゃ! 「れみりゃが歩いたばしょなど、このれみりゃはすでに2000年前につうかしてるんだどぉ~~♪」 ……と、錯乱するほどに、親れみりゃは感動を覚えていた。 一方、ゲスまりさ達といえば、 口をパクパクさせたまま動けずにいた。 あまりにも違いすぎる大きさは、それだけで相手の戦意と思考を喪失させる。 まして、こざかしくもこれまで何度かの修羅場を切り抜けてきたゲスまりさ達だったからこそ、 いま目の前にいる巨大なゆっくりが、いかに絶望的な存在かを本能的に察してしまっていた。 本能的な恐怖が体を萎縮させ、ゲスまりさの体を、こおりつかせて動けない状態にさせていた。 『うっ~う~♪ れみりゃとおんなじれみりゃがいるどぉ~♪』 「うーうー♪」 ティガれみりゃに呼ばれたことが嬉しくて、うれしそうに反応する親れみりゃ。 立ち上がり、一緒に踊ろうとして…… 「うっぎゃぁぁっ!」 体の無い部分を動かそうとして痛みがよみがえり、 四肢と尻尾を食べられてしまっていたことを、嫌でも思い出す。 『う~~~?』 そんな親れみりゃの様子を不思議そうに眺めるティガれみりゃ。 やがて、肉餡の脳が、的はずれな答えを導き出す。 『わかったどぉ~♪ おなかがすいてうごけないんだどぉ~♪』 ティガれみりゃは言うや否や、 足下でかたまっているまんじゅうを一つつまみ上げる。 「た、たすけるんだぜ!」 「し、しらないんだぜ、まりさは無関係なんだぜ…」 「そうだぜ、それにきっとそのまりさが一番おいしいんだぜ…」 「ど、どぉじでぞんなごどぉいうんだぜぇぇぇぇっ!!!??」 ゲスまりさは、いかにもゲスらしく、自分のためだけに仲間を売り払おうとする。 『うーー、うるちゃいおまんじゅうだどぉーー』 ティガれみりゃは、つまみ上げたゲスまりさに、少しだけ力を込める。 『うるちゃいと、つかれたれみりゃがたべられないんだどぉー! しずかにしないとたーべちゃうぞー♪』 「ぷぎょげっ!」 ティガれみりゃの指に込められた力に耐えきれず、瞬時にパァーンと弾けるゲスまりさ。 ちょっとしかるだけのつもりでも、ティガれみりゃの力は、普通のゆっくりにとっては致命的な威力となってしまう。 『う~~~♪ れみりゃしっぱいしちゃったどぉ~~♪』 てへっ♪と舌を出しておどけるティガれみりゃ。 「や、やめるんだぜ~~~~!」 二匹目のゲスまりさをつまみあげるティガれみりゃ。 『しぃぃ~~~~だどぉ♪』 ティガれみりゃは、おとなしくするよう告げるが、 生命の危機にさらされた生物が、それでおとなしくなるわけもなく。 「はんすんだぜ! このでかにくまん! まりさよりあっちのまりさの方がおいしいんだぜ!」 「やぁべろぉぉぉ! ぞんなごどいうなぁぁぁぁ!」 『う~、おまんじゅうのくせにれみりゃのいうこときかないなんて、なまいきだどぉ』 いつまでたっても静かにならないゲスまりさ達に、 ティガれみりゃは、ぷくぅ~と頬を膨らませる。 「ぎょえぇ!」 無意識的につい力がこもってしまったのか、ゲスまりさがパァーンと弾け飛ぶ。 『うーーーっ! どぉーしてうまくいかないんだどぉー!』 いらつき、3匹目のゲスまりさをつまみあげるティガれみりゃ。 「や、やめてほしいでございますだぜ…」 卑屈に下手に出るゲスまりさ。 一方、ティガれみりゃはゲスまりさの言葉など聞かず、 ポケットに手を入れガサゴソと動かした後、そのまま空の手を取りだした。 『うっう~~~! すぴあ☆ざ☆ぐんぐにるを、忘れてきちゃったどぉ~~♪』 "れみりゃのおっちょこちょいさん♪"とでも言いたげに、 自分の頭を軽く叩き、頬を赤く染めるティガれみりゃ。 ちなみに、"すぴあざぐんぐにる"とは、 ティガれみりゃがポケットの中にしまって持ち歩き、 ゆっくりを狩る時に愛用する、立ち枯れた木のことだ。 ティガれみりゃは、その木の枝にゆっくり達を突き刺して、 "とくせいゆっくりだんご"を作って食べる習性があった。 「ま、まりさにひどいことすると、ドゲスたちがだまってないんだぜ、わかったらさっさと……」 ゲスまりさは、相変わらずティガれみりゃに自分を見逃すよう説得を続けていた。 しかし、ティガれみりゃ相手にそんな交渉は意味も無く、 「ゆべしっ!」 次の瞬間、押しつぶされて体を四散させていた。 『う? またやっちゃったどぉ♪』 しかたない、それじゃ次のおまんじゅうで……。 ティガれみりゃは足下をみるが、そこには既にゲスまりさはいない。 それはそうだ。 3匹のゲスまりさは、他ならぬティガれみりゃによって殺されたのだから。 『う~~~! これじゃ、れみりゃにごはんをあげられないどぉ~~~!』 鼻の上のあたりを真っ赤にしてジタバタするティガれみりゃ。 『しゃくやーー! はやくれみりゃたちにぷっでぃんもってきてぇーー!』 と、お決まりに、いもしない従者の名前を呼ぶが、当然誰かがくるはずもない。 『うー……』 しかたなく、短い手と膝をつき、顔をよせて、 小さな親れみりゃに話しかけるティガれみりゃ。 『うー、ごめんだどぉ。おまんじゅうなくなっちゃたんだどぉー』 ティガれみりゃは詫びるが、 それに対して親れみりゃの方は全く気にする素振りもない。 それどころか、自分達をいじめたあの3匹のゲスまりさを、 まったく寄せ付けず倒してしまった強さに、ただただ感動していた。 「うーうー♪ れみりゃは気にしないどぉー♪ それより助けてくれてありがとうだどぉー♪」 『う~~? いいのぉー?』 ティガれみりゃからすれば、別に助けたつもりもなかったので、 ただただ自分のミスを許してくれて、おまけに何故か御礼を言われたことに気分を良くする。 『うー♪ ちっちゃなれみりゃは優しい良い子だどぉ♪ れみりゃは、れみりゃにごほうびをあげたいどぉー♪』 「うっ? ごほーび?」 『そうだどぉ♪ なんでも言ってねぇ~♪』 うっふんとウィンクし、 うんしょ、うんしょと立ち上がるティガれみりゃ。 「……うぅー」 親れみりゃは考える。 そして、自分の置かれた立場を思い出した。 迷子になってしまったこと、子供を失ってしまったこと。 次々に悲しみがよみがえってきて、自然と涙が流れてくる。 『うーっ! どぉーしたんだどぉ?』 「うーーー! うーーー! うーーー!」 『う~~、れみりゃに泣かれると、なんだかれみりゃもかなしくなるどぉ~~』 困ったような笑顔のまま、ティガれみりゃは目尻にうっすら涙を浮かべる。 「……う~、れみりゃ、おうちにかえりだいどぉ」 嗚咽をすすりながら、親れみりゃは口を開く。 そう、おうちへ帰ろう。 そして、ぷっでぃんを食べて、さくやに慰めてもらって、ふかふかのベッドで眠ろう。 親れみりゃは、それだけを強く願い始める。 『う~~♪ わかったどぉ~~♪』 「うっ?」 『れみりゃがいっしょにおうちを探してあげるどぉ♪』 ティガれみりゃは、潰さないよう、優しく手の平の上に親れみりゃを乗せ、 自分の顔の前へ持ってくる。 至近距離で互いの顔をじっと見つめ合う、ティガれみりゃと親れみりゃ。 『う~~♪ ちっちゃいれみりゃだどぉ~~♪』 「う~~♪ おっきぃれみりゃだどぉ~~♪」 自然と笑顔になる、ティガれみりゃと親れみりゃ。 『うっうー♪ ちっちゃいれみりゃもかわいいどぉー♪』 「うっうー♪ おっきぃれみりゃもかっこいいどぉー♪」 互いを褒め合い、たたえ合う2人(?) ティガれみりゃは、親れみりゃを自分の頭の上に乗せる。 「う~! すっごい高いどぉー! 風がきもちいいどぉー♪」 痛みも忘れ、喜ぶ親れみりゃ。 実際、既に手足はだいぶ再生しており、 ふりおとされないようティガれみりゃの頭にしがみつくくらいのことはできるようになっていた。 最弱といえど捕食種れみりゃ。ゆっくりゃザウルスとなっても再生力は健在である。 『うー、それじゃいっくどぉー♪』 「うーっ♪」 よったよったのしのし。 よったよったどったどった。 頭の上にゆっくりゃザウルスを乗せて、 ティガれみりゃは湖に背を向けて、森を進んでいく。 ……紅魔館は、湖の対岸にあるのだが、 そんなことはティガれみりゃも親れみりゃも知らなかった。 2人はそろって楽しげに、うぁうぁダンスのリズムを取り始める。 『「うーうーうぁうぁ♪ うーうーうぁうぁ♪」』 楽しげに歌って踊るうち、親れみりゃは、 自分の中に芽生えつつあった嫌な疑問を払拭しはじめていた。 疑問。 それは、あのゲスまりさ達がたびたび口にした内容。 "れみりゃ達はおぜうさまではなく、たべられちゃうにくまんなの?"という不安。 けれど、そんなのは気のせいだ。 あのいじわるなゆっくり達がウソをついたに決まっている。 (だって、こんなにも可愛くて強いティガれみりゃが、にくまんなわけないもん!) 親れみりゃは、強く確信し、ティガれみりゃにあわせて快心のリズムを刻んでいく。 『ティガ☆』 「れみ☆」 『りゃ☆』 「うー♪」 『「にぱぁ~~~♪」』 にぱぁ~のタイミングでティガれみりゃと親れみりゃは、 その下ぶくれスマイルを最高に輝かせた。 あまりにも歌も踊りも素敵だったから、気持ちよくて楽しかったから、 だから2人は気付かなかった。 ティガれみりゃの進む先、空中を浮遊する1人の少女の姿を。 人とも妖怪とも違う、もっと強くもっと恐ろしい、幻想郷からは本来姿を消した存在。 甘ったるい桃ばかりに飽きて、塩からいツマミを探していたその"鬼"の存在に。 to be continued 次回予告 『ティガれみりゃ4・誇りをかけた試練(後編)』 ============================ (あとがき) どうも、ティガれみりゃ第三回です。 すみません、ちょっと長くなってしまったので前編後編わけました。 ……というか、風邪をこじらせてしまいまして、 そろそろ意識が朦朧としてきたので、とりあえずここで区切らせていただきます。 (ほんとはこの先が書きたくて、このエピソード作ったのにorz) それと、本当にどうでも良いことではあるんですが、 そろそろモンハンが元ネタのタイトルが尽きてきました……。 byティガれみりゃの人 ============================ 続 このSSに感想を付ける