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はたて1 新ろだ2-303 「え~っと……霧の湖があっちなんだから紅魔館は……ああ、もう! 久しぶりの外は方角が狂うわね」 そう呟きながら周囲を見渡す天狗の少女…… 姫海棠 はたては手元にあるメモに書かれた道順を確認し、 カメラに移る景色と現在地を見比べてみる。 と、道順など言っているが天狗一族は基本的に歩きなんてしないので、 それは地上にある目標物(例えば川や巨木、大岩等ちょっとした事では無くなったり見失わない物) からどの方角に飛んだ方向等と、アバウトと言うレベルじゃない説明方法であった。 「あ~も~……ええっと、あれがそうなんだからこっちで良いのよね?」 「本日も晴天、雲ひとつ無い晴れか」 「おはようございます、○○さん」 「紅か、おはよう」 「暑くなりそうですね~……立っていると熱射病になるくらいに」 「まあ……ちゃんと水分は取る様に、それから体調が悪くなったら無理しないで十六夜に……」 突然手を口に当てクスクスッ……と笑う紅。 何かおかしい事でも言ったであろうか? 「何かおかしい事でも言ったかな?」 「クスクスッ……いえ、その、心配してくれるのは嬉しいのですけど、 私は妖怪ですからご安心を。 人間と違いましてそう簡単には倒れませんし」 「その油断が一番怖いんだ、私は大丈夫等と言っている人ほど……」 「はいはい、気を付けますよ」 ……まあ、大丈夫だと言っている以上大丈夫なんだろうが…… まあ良いか、さて今日はどうしようか…… 「おや? あれなんでしょう○○さん」 「ん?」 「ほら、あれですよ。 あれ」 紅が指さす方向を見てみると、何かが空中を飛んでいる。 この幻想郷では珍しくも無い光景だし、恐らくそう言った意味で言ったのではないだろう。 フラフラと頼りなさげ……と言うより、おっかなびっくりに飛んでいる様に見えるのだ。 「……あ、こっちに来ますね」 「ん……と言うか急に速度がh」 「失礼致しますが、ここは紅魔館で貴方は○○さんと言われる軍人でしょうか!?」 ……これはまた急な事で。 青年事情聴取中……少女説明中…… 「……と言う事で○○さんをお貸し願いたいのです」 と、レミリア様の前に立つ姫海棠。 要約すると、妖怪の山の大天狗……まあ、天狗族の長らしい。 から、 私を貸して貰う様に紅魔館に願い出てこい と言う事の様だ。 プライドの高い天狗族にしては珍しい事ね……とは十六夜の弁。 「まあ、貸し出すも貸し出さないもあいつは物では無く人間だからな……好きにしろ」 「お話が早くて助かります、スカーレット殿」 「○○、そう言う事だ。 協力するもしないも好きにしろ」 「承りました閣下、では外出して参ります」 「ああ、行ってこい……それと閣下じゃない」 「はい、レミリア様」 ちなみに、何故かレミリア様はスカーレット様と呼ばれる事を好まない。 恐らくフランドール様と混同しやすいからなのだろうが……まあ良いか。 「それでは参りましょうか?」 「ああ、しかし妖怪の山まで歩くなら準備をしないと……」 「いえ、ご心配なく。 私が妖怪の山まで運びますし、依頼も私が口頭でお伝えしますので」 「必要な物は?」 「貴官の頭と知識、それから見る為の瞳と書き綴る為の手、後は地から足を離す心構えですかね」 「了解、なら何時でも良いよ」 そう言い私を見る○○さん。 あっさりと何時でも良いと言うけど……それの意味分かっているの? 「あの……分かってるの? 空を飛ぶのよ?」 「ああ、やはりそうだよね? 私は飛べないから運んでもらう事になるが……」 「いえ、そうじゃなくて貴方、私に命握られるんですよ? 私妖怪なんですよ? 幾らスカーレット殿……まあ、レミリアさんにお伺い立てていますけど、 嘘吐いて貴方を食らう事も出来るんですよ?」 そう私が言うと、何故かキョトンとした顔をする彼。 え、まさか全く想像してなかったとか? 「何故わざわざそんな事を?」 「え、だって貴方は人間で私は妖怪なんですよ? 少しくらい……と言うか、 怖かったり怪しいとか思わないんですか?」 「レミリア様が好きにしろと仰られた方だ、私は疑ったりはしていない。 それはレミリア様を疑う事でもあるし、何より協力を要請してきた君の上司にも失礼だ」 は、はあ……変わった人間ね。 まあ一応筋は通っているけど…… まあ、変わった人間じゃないとこんな場所に飛ばされる訳無いか。 改めて彼を見てみると、変わらずまっすぐな瞳でこちらを見ていた。 あんな事を話した直後、不安や不信感を露わにしても良さそうなものなのだが…… 「……まあ良いわ。 それじゃあ行きますよ?」 「何時でもどうぞ」 そう言い、彼の脇の下に手を入れて抱き抱える様に固定する。 幾らなんでも首根っこを捕まえて運ぶ訳にもいかないし、背中に乗せると言う事は物理的に無理だ。 あの文が言っていた白黒魔法使いなら、箒に乗せる事も出来るだろうが…… 「……おお」 地面から足が離れ、空中に自身が持ち上げられるのが分かる。 地上と違い、風が若干強い気がするが真夏の今ではそれが心地よい。 空から降りる(ヘリからロープで降下する事)事は外の世界で経験した事があるが、 飛ぶと言う事は経験がない。 それに飛ぶ事があったとしてもそれは落下であって、 この様に装備も無しに空に居る事はありえない。 「依頼と言うのは簡単な事です、貴官から見て私達の住む妖怪の山……の麓ですが、 そこから考えられる侵攻ルートと迎撃方法の意見を頂きたいのです」 「私は外の世界……まあ、君たちの言う外界しか知らないから、 あまり役に立たない気がするんだが……それに私は対人戦闘しか考えられないよ?」 「いえ、だからこそ良いのです。 妖怪は弾幕勝負は出来ますし弱い人間を食らう事は出来ます。 しかし対策を施された武装集団を相手にするには、どうすれば良いかの知識が無いですから」 それはつまり、妖怪対人間を考えた事……なのかな? 「ああ、ご安心下さい。 特に戦おうとか人間を滅ぼそうとかそう言った事ではありませんので。 将来そう言った事が起こった際の保険 と言う事らしいです」 「自衛の為に、対策を考えて置こうと言う事だよね」 「まあ、貴官の様な知識のある人が居るのならどう考えるかを知りたい、 と言うのも本音みたいなのですがね」 まあ、少なくとも人里や他の妖怪の住みかの攻略作戦を考えろって訳でも無いんだ。 それなら特に問題は無いか……こちらから手を出さなければ良いだけの問題なのだから。 「さて、着きましたが……どうしましょうか?」 「天狗達の地図とかはあるのかい? あれば見せて貰いたいんだけど…… ああ、それがダメなら山道や獣道、川や渓谷等のある場所等を描いた簡略図でも良いよ。 出来れば傾斜とかが分かる地形図が欲しい所だけど……」 「え~と……こんな物ですが良いですかね?」 姫海棠から渡された地図に目を通し、バインダーにその地図を挟んで赤、 蒼色のペンで矢印や記号を描いて行く。 上から見た状況や、気が付いた事もその地図の隅の空いた場所に書きこんでゆく。 「その矢印等は何ですか?」 「赤い矢印や文字は地図で見た場合の考えられる侵攻ルート、つまり攻撃側の事。 蒼色は防御側の机上での最適な防衛配置」 「見ただけで考えられるのですか?」 「人間は歩かないといけないからね、空を飛ぶのと違ってある程度限られてきちゃうんだよ。 それに大軍を動かすとなると補給も考えないといけないし、 見つかり易い山道を避けると森を進軍するしか無くなるが、 森を進軍するとそれだけで迷子になる部隊も出たりもする。 森ってのはあんまり目印になる物が少ないし、 自分達が何処に向かっているかはっきりしない可能性が高い。 勿論コンパスとかである程度補えるだろうが限界はあるだろう」 地図に記号と文字をサラサラと書き続ける彼。 紅魔館で見た時はどこかのんびりした雰囲気を感じたのだが、 今の彼からはその気配は微塵にも感じられない。 真剣な表情で地図と下に広がる山と森を見比べては地図に記号を書き込んでゆく。 「姫海棠」 「あ、はい。 何でしょう?」 「降りる事は出来るかな? 一応机上で考えられる事は考えたけど、 現地を見た方が詳しく出来るんだが……ダメかな?」 「あ~……一応許可は貰ってますから平気だと思いますが」 「それじゃあ、あの場に……」 と指を差す方向を見る。 山道の一つで、天狗の集落へと続く道の一つであり防衛の要所ではあるのだろう。 って、あれ? 誰かがこっちに来るような…… 「あやや、誰かが誰かを連れていると思ったらあなたでしたか」 「あら、また妄想記事でもお探しかしら? 文」 「そう言うあなたこそ珍しいわね、外に出ているなんて……それに人間を連れている事も」 「こっちは大天狗様直々の仕事よ、それに引きこもりみたいな事言わないでくれない?」 「事実を言って何か悪いですかね?」 と、現れた少女と険悪な状況に陥る姫海棠。 表面は笑顔だが瞼辺りがピクピクと引き攣っている。 それは対面の文と呼ばれた少女もだ。 「それはそうと、そこの貴方。 外界から来た人間とは貴方の事ですよね? どうですか、こんなつまらない事よりも私に取材させて頂けませんかね? 勿論ただでとは言いませんし、人里の茶屋にでも赴いて……」 「ちょっと文!?」 「あ~……すまないが、今は姫海棠が優先だ。 先に依頼があったのは彼女だからな。 その依頼が終わるまではそちらの事は出来ない。 それにだ」 一呼吸置き、正面の烏天狗をしっかりと見る。 「今の彼女はバディ パートナーだ。 余り悪口は言わないで欲しい」 「……へえ~、そうですか~……」 と、彼女の瞳の色が変わる。 あ、何となくだが地雷を踏んだ気がする。 ゆらり……と彼女が動くのだが、幽鬼の様な雰囲気があるのは気のせいだろうか? 「こちとらパパラッチだとか三流新聞記者だとか、 捏造文屋だとかで異性はおろか同性にすら嫌煙されているのに…… それなのに、何であんたは異性に庇って貰えるのかしらねえ……パルパルパルパル……」 「あ、あの~……文?」 「……一人身の怨念を思い知れええ!!!」 「それ八つ当たりと言うか勘違い!! 落ち着いて話を「問答無用ぉぉぉ! 射命丸 文、参る!!」 駄目ね、完璧に頭に血が上っちゃったわ……動くから舌噛まないでよ!!」 姫海棠に答える間もなく、自身の体は思いっきり振られる。 後ろから風を裂く音と同時に、青い空に色とりどりな弾幕が張られていく。 被弾してはいないようだが、姫海棠の息遣いが先程と比べようも無く荒くなってゆく。 それはそうだろう、後ろに気を使いながら私にも弾が当たらない様に動き、 それに人一人を抱えながら飛んでいるのだ、何時もと違い体力の消耗も激しいのだろう。 「姫海棠、低空に逃げて私を離して逃げろ!」 「……そ、んなことしたら……はあっはあっ……死にますよ? 一体どのくらいの…… スピー…とんでるt……はあっ……」 「だがこのままじゃ……なら、私を後ろに向けれるか!?」 「一度離して……空中でキャッチする事が……でき…ッ…」 「ならそれで構わん、そうすれば後ろを私が見て避ける指示を出せる!」 「……失敗したら……そのまま…地面でミンチで……」 「姫海棠なら受け取れるだろ? ……信じろ、多分平気だ」 迷う様な瞳を見せる姫海棠に微笑む。 その笑みに後押しされたか、一度上昇し始める彼女。 「……いきます!」 「了解」 パッ と肩に回されていた腕が離され重力に引かれ落下を始める自身。 降下する場合、地面に垂直に立った状態だと空気抵抗が少なくなり降下スピードは速くなる。 が、その姿勢でないと姫海棠は受け取れないだろう。 「あやや!? 気でも狂いましたか!? 流石に人殺しするのは幾らなんでも後味が……」 「そう言う訳でもない」 自由落下から、両手をしっかりと握られる感触。 その衝撃があまり感じなかったのは何かしらの力が働いたからなのだろうか? 「ナイスキャッチ!」 「……そこまで平然と出来るのは凄いと思いますけどね……」 両手首を握った姫海棠が、呆れた様な表情で私を見ている。 ただ、その中に柔らかい笑みが含まれていた様な気がするのは私の気のせいだろうか? 「あ~……その、私を無視するのは止めて頂けないですかね……」 その後、○○さんの命を危険に曝してしまった事からか文の頭も冷えたらしく、 後日取材の約束を取りつけて大人しく天狗の里へと飛んで行ってしまった。 私達は今、彼が現地を見たいと言う事だったので先程の場所に戻ってきた所だった。 「そう言えば○○さん」 「なんだい?」 相変わらず地図と地形を見ながら書きこみ続ける彼。 もう地図には書き切れないらしく、私が使っていた取材用のメモ帳に書き綴っている。 「何故、文にあんな事を言ったんですか?」 「バディの事か? 一緒に仕事をしているんだ。 そのパートナーが悪く言われれば気持ちの良い事じゃないさ。 ……まあ、そのせいで姫海棠には迷惑をかけてすまなかった」 地図から顔を上げ、私に頭を下げる彼。 「ああ、いえ……別にそれは構いません……あともう一個良いですか?」 「幾らでも」 「何故あんな命を駆ける事に躊躇いを感じなかったんですか?」 「? 姫海棠なら受け取れると思ったからだが?」 「……こんな短時間の間一緒に居ただけなのに、何でそこまで信じられるんですか?」 ふむ……と少し考える仕草を見せる。 「ん~理由を付けるなら、射命丸から弾幕を張られた時に、 しっかりと私の事も考慮してくれた事からかな」 「そんな単純な理由で……」 「そんな単純な理由で良いのさ。 第一に射命丸から弾幕を撃たれた時に、 私を離して逃げるって事だって君には出来たんだ。 それを行わなかったって事もそうだし、 回避行動を取る時に私に一言言っている。 それに私が低空で離せと言った時も身を案じてくれただろ。 こんな所かな?」 「…………」 彼は本当に軍人だったのだろうか? こんな……そんな単純な事で自身の命を平然と預ける事が出来て、 一時的かもしれない仕事仲間を庇って…… 「貴方って興味が湧きますね、見て居て冷や冷やしますけどどこか楽しいですよ」 「褒め言葉として受け取っておくよ」 「それに、信じて命を預けてくれた事も嬉しく思います……そうだ、これ貰ってくれませんか?」 「?」 腰のポシェットから一個の笛を取りだす。 「これは?」 「特殊な笛でしてね、私にしか聞こえない様に細工がされている物です。 何か困った事や私の力が必要な時は吹いて下さい。 直ぐにそちらに向かいますよ」 「……嬉しいんだが、そんな大切そうな物を貰っちゃって良いのかな?」 「はい、貴方に受け取って貰いたいと思います」 「じゃあ、ありがたく……ありがとう、姫海棠」 「はあ……その様な事があったのですか」 姫海棠との仕事を終え、紅魔館に帰ってきた私は十六夜に紅茶を入れて貰っていた所だ。 「それで、その笛が頂いた物なのですか?」 「うん、不思議な形をしているんだけど……」 「まあ、頂いた物ですし大切にされるのが宜しいかと」 「そうだね、そのうち何かお返ししないとな……」 むう……しかし天狗って何を送れば喜んでくれるんだろ…… 「~♪~~♪」 「おや、ほたてが上機嫌」 「誰がホタテよ!! はたてよ、姫海棠 はたて!!」 「まあそんなどうでもいい事は置いておいて「どうでもよくない!」どうしてそんなに上機嫌なの?」 「……久方ぶりに面白い人を見つけたって事よ」 「ふ~ん……」 天狗の笛は特注品であり、個人々々ひとつずつ持っている。 それを特定の人物に渡すと言う事は…… Megalith 2011/01/09 上白沢慧音が脇の時計を気にし始めたので、程なくしておれは本日の聴取を切り上げた。 「大したことを話せなくてすまない」と彼女は謝意を見せたが、すでに必要な情報は十分集まっている。 おそらくこの後に用事でもあるのだろう彼女は、荷物を手早くまとめて足早にこの教室を去っていった。 雑嚢から帳面を取り出し、一風変わった道具屋の店主と上白沢慧音に対してこの日行った聴取を簡単にまとめていると、しばらくして射命丸文がこの教室に入ってきた。 こちらへ近づく高下駄の音をべつだん気に留めず、黙々と事務作業をこなしていると、面白くないのか彼女はすばやく机から帳面を取り上げた。 おれは抗議の声を上げなかった。 こちらにちょっかいをかける彼女へ反応をしてやるのはなんとなく癪だったし、彼女がその帳面に興味を持ったのなら、あわよくば本職の考えを聞けるのではないかと踏んだからだった。 視線を帳面へ走らせている文の整った横顔を、おれは頬杖をついて眺めていた。 程なくして文は帳面のあらかたを読み終えると、さも詰まらなさげにそれを机の上に放った。 彼女は「いやらしいわね」と一言くれると、おれの隣の席に腰を下ろした。 別にいいじゃないか、とは言い返せなかった。 聴取の対象を選んだのはおれだったからだ。 おれが口ごもり眉根をひそめると、文は怒ったような、それでいて困ったような表情を作って、おれの万年筆をひったくった。 「これ、ください」 やれるわけがない。 どうしてそんな突飛なことをするのかとおれが問うと、文は悪びれずに「わたしのために使ってください」と言った。 彼女がおれの書いた記事を好く評価してくれているのは知っていたが、おれにもおれの職場がある。 おれは「それはできない」と答え、万年筆を返すようにと手のひらを彼女へ向けたが、彼女は冗談めかし膨れて見せるだけだった。 「あの子だけじゃ、そんな新聞らしい新聞作れないですからね」 「記事の方針を決めたのは大天狗の爺ちゃんだ」 おれが言い返すと、文は今度こそ本当に面白くなさそうな表情を浮かべ、わざとらしくため息なんか吐いて、万年筆をおれに返した。 「それ、どういう意味かわかってますか?」 当たり前だ。 「近年の人妖カップル増加について」なんて記事を大天狗の爺ちゃんが指図してきたのだから、「そういうこと」に決まっている。 「いいんですか。あなたのこと、まるで自分の孫みたいに思ってますよ、あのひと」 「ずいぶん昔から世話になってるから、そこは。無理に見合いをさせられるわけでもなし、まあ、いいじゃないの」 大天狗の爺ちゃんが、おれとあいつ──姫海棠はたてをくっつけようとしているのは誰の目にも明らかだった。 おれに特別その気はないし、もちろん彼女だって連れ合いにおれを選ぶ気などないだろう。 彼女は「花果子念報」の編集長であり、仕事上おれの上司にあたるだけの女で、そこにべつだん艶のある話はない。 「じゃあ、結婚しろって言われたら?」 「それは、そのときは、結婚するさ」 4六の地点に打ち込まれた角行が、1三の香車と8二の飛車に手をかけた。 これは、わかりやすく決まった香飛両取りで、序盤の駒組みの際におれが4六歩を突かなかったのはこの手筋を見ていたからだった。 程なくして、十数手先に詰みを見つけたらしい犬走椛は持ち駒を盤上に放った。 彼女と将棋を指すのは本当に久しぶりのことだったが、昔と変わらず彼女は急戦模様の居飛車党のようで、一つ一つさばくのに苦心させられた。 「振り飛車党になったんだな」 「ああ」と、椛姉さんが淹れてくれた緑茶を啜りながらおれは答えた。 そういえば、彼女に将棋を習ったばかりのころは、おれも居飛車の将棋を指していた。 人里の爺さまたちと将棋を指すうちに、角行の打ち込みがおもしろい振り飛車を指すようになったのだけれど。 「まさか、おまえが歩で香を叩いてくるだなんて思いもしなかったさ」 「男子三日会わざれば、ってやつだよ」 おれが空になった湯のみをかたわらの盆に置くと、椛姉さんはおれの陣にあった玉将をひったくり、大橋流に駒を並べ始めた。 「姫海棠が来るまで、まだあるだろう」 たしかに、姫海棠がこの滝裏の詰め所を訪れるまで、四半刻かそこらある。 王将を受け取ったおれは、やはり大橋流に左金から駒を一つずつ並べ始めた。 初めて逢ったとき、おれは椛姉さんを恐ろしいひとだと思った。 何せ、その時分のおれはまだ七つやそこらだったし、彼女は妖怪の山の哨戒を勤める天狗なのだから、無理もない話だ。 しかし、おれが好奇心から何度も妖怪の山を訪れるうち、諦めたのか椛姉さんの態度は軟化していき、半年もしたころ、おれはこの滝裏の詰め所の常連となっていた。 むろん、勝手をはたらくことが許されたのは椛姉さんの手の届く範囲でのみだったが、谷河童の集落に連れて行ってもらったり、日がな一日将棋を指したり、いろいろとよくしてもらっていた。 しばらくして、人間の子どもを囲っていることが大天狗の爺ちゃんに露見し、ひと悶着あったのだが、彼の厚情によりお咎めなしとなり、以後節度を持った付き合いが求められたものの、それから数年は、週に一度この滝裏の詰め所を訪れていた。 「手が、大きくなったな」 おれが妖怪の山を訪れなくなったのは、十だかそこらのときだった。 おれと同じ寺子屋に通っていた、当時のおれより一つか二つちいさな子どもが、里に下りてきた妖怪に食われたことがきっかけだった。 その子と話をしたことは一度だってなかったし、泣いて悲しんでいた大多数の寺子屋の子どもたちと違って、おれには特に感慨らしい感慨がなかった。 今思えば、泣いているふりでも悲しんでいるふりでも見せておけばよかったのだろうけれど、当時のおれはそんなに利口ではなかった。 「男ですから」 「妖怪」と蔑まれた。 「そうだったな」 やはり人間の仔であったおれは、それ以降、一人の人間として自立するまで、妖怪の友だちではいられなかった。 「姫海棠の助手はどうだ」 「どうって、あれでいて、食べていくのには困らないよ」 「そうか」と、9九に玉将を押し込めて椛姉さんは答えた。 はぐらかして答えた自覚があった。 おれは、この数年おれが妖怪との関わりを避けていたことを、どうしても糊塗したかったのだ。 「遠いな」と、穴熊模様に組まれた椛姉さんの陣を見ておれは独りごちた。 「なあ」 この局面で7八金と固めたのは問題手ではないだろうか。 浮いた5七の銀将に狙いをつけて3九に角行を打ち込むと、5八に椛姉さんの飛車が回るから、次の2五飛車がやはり受からない。 2九飛車成りで、ほとんど勝負がついている気がするが、椛姉さんはどうして堅く囲った? 6六歩と突いて6七金将、6五歩と進めれば、おれの3八歩で同じく浮き駒を狙われる。 この場合の最善手は。 「ごめんな」 おれは手を止めた。 からんからんと、頭の中、並べていた駒の散らばる音を聴いた気がした。 気づけば椛姉さんは、その澄んだ目でじっとおれを見つめていた。 7八に金が寄って四角くなった穴熊の真意に気づくと、おれはもう、何もかも洗いざらい話して楽になりたい気分だった。 「おまえがどこで何をしていても、わたしにはお見通しだからな」。 遠い昔、椛姉さんが何度もおれに言い聞かせていた言葉が、胸の中、強く響いていた。 「ぜんぶ、知ってたのか」 椛姉さんは何も答えず、おれの頭を抱き寄せた。 ずっと話がしたかったんだ。 定刻よりも少しだけ早く滝裏の詰め所を訪れた姫海棠は、べつだん事情を訊いたりせずに手巾をおれに渡した。 彼女は、この後すこししたら大天狗さまとの会食があるから、とだけおれに伝えると、急須を持って囲炉裏のほうへ行ってしまった。 彼女の足取りはどこか気丈で、そのときのおれには、その後ろ姿はいつもより大きく見えた。 「いい女じゃないか」と、隣で椛姉さんが囃した。 おれは、無様な姿を姫海棠に見せ、あまつさえ気まで使わせてしまったのだと思うと、なんだか無性に気恥ずかしくなった。 一度そう意識してしまうと、彼女に渡された手巾もなんだか使う気にはなれず、けっきょくおれは着ていた洋服の袖で乱暴に目元を拭った。 「いい男になったかな」 「それは、もちろん」 ばしん、と椛姉さんに背中を叩かれたおれは、注がれた茶を運ぶべく、囲炉裏へと向かった。 趣味のいい紺色の暖簾をくぐると、ちょうど茶が沸いていたらしく、姫海棠が三人分の湯のみにそれを注いでいるのが見えた。 「持っていくよ」 「どうしたのさ、急に」 「いいから」 そのとき、なぜだかおれは姫海棠の目を見ることができなかったが、彼女は「ふうん」とどこか悪戯っぽく笑って、おれに盆を預けてくれた。 きびすを返し居間に戻ろうとすると、片手で暖簾を上げてくれた姫海棠と目が合って、おれはなんだか変な気分になった。 昼間に寺子屋で文と話したことを、どうにも意識してしまっているようだった。 「感傷的になっているときに女のことを考えるものではないな」と胸中で自戒して、盆をひっくり返さないように、ゆっくりと歩いていった。 それは、そのときは、結婚するさ。 会食の席で、大天狗の爺ちゃんがおれと姫海棠に伝えたことは、大きく二つだった。 ひとつは、近く「花果子念報」の評判がうなぎ登りであり、このまま成長を続ければ、射命丸文の「文々。新聞」と肩を並べることも夢ではないということ。 最近の文にどこか本調子を感じないことを差し引いても、おれと姫海棠にとって、この報せは喜ばしいものに違いなかった。 もうひとつ、大方の予想の通り、大天狗の爺ちゃんはおれに身を落ち着けることを勧めた。 「人間ではなく妖怪の嫁を娶れ」「長きに渡り存在してきた人妖の隔たりへ投じるための一石となれ」とのお達しだった。 以前よりこの大天狗は、天狗社会の厳粛な戒律を心中で疎ましく思っていたらしい。 目をかけてきた孫分に良縁を斡旋しようとする好々爺然とした姿と、組織への態度として婚姻を強要する冷厳な姿が歪に重なり、得体の知れない怖気が背を這い回るのを感じた。 しかしながら、この日おれが求められたのは「妖怪の娘と結婚すること」のみであり、その相手までも厳密に定められることはなかった。 もしおれが「ねんごろな相手がいない」などと茶を濁すようなことを言っていたら、即座に結婚相手を決められていたに違いない。 振舞われた酒に酔って眠りこけている姫海棠に上着をかけてやって、涼を求めたおれは縁側へと足を運んだ。 火照った頬を夜風が撫でるのは心地よく、目を瞑って今日の椛姉さんとの対局なんかを並べていると、今にも居眠りをしてしまいそうだった。 意識を手放したかそうでないかといったところで、後ろからぞんざいに上着がかけられた。 おれの上着だった。 「カッコつけんな。風邪引くよ」 目を覚ましたらしい姫海棠が、おれの隣に腰を下ろしていた。 たしかに少々肌寒いものがあったので、おとなしく上着に袖を通すことにする。 二人話すこともなく押し黙っていると、一度だけ強い夜風が吹き抜けて、吊られている風鈴を揺らした。 ちりんちりん、と軽く冷たい音が鳴ると、なぜだか急速に眠気は覚めて、さっき大天狗の爺ちゃんに言われたことが思考の大半を占めていった。 「結婚か」 「結婚、ね」 おそらく、おれと姫海棠は、今、同じことを考えている。 べつだん艶のある話はないけれど、お互いを憎からず思っているのは、もう否定できない。 今、大天狗の爺ちゃんがおれたち二人の間に立って「結婚しろ」と背中を押したなら、おれは迷いなく姫海棠を娶るだろう。 しかし、今おれたちが何より求めているのは、なんてことはない、その婚姻に愛があるのかどうかの確認だった。 この行程においては人も妖も関係なく、ごくごく一般的な男女の馴れ初めでしかないわけで、それゆえに最初の一歩が踏み出しづらい。 もう一度、夜風が吹いた。 今度吹いたのは北風の子どもみたいな夜風で、おれと姫海棠の体を大いに冷やしていった。 それが、意気地のないおれの限界だった。 暗に「今日のところはこれくらいにして、また別の機会にでも」とでも言うように、おれは腰を上げた。 が。 「しなさい」 姫海棠がこちらへ何か語りかけたのがわかった。 吹きすさんだ夜風がそれを妨げたという旨を、呆けた声で姫海棠に伝えると、今度は立ち上がって彼女は伝えた。 「わたしを、お嫁にもらいなさい」 おれは馬鹿ものに違いなかった。 けっきょく、姫海棠の口から「それ」を言わせてしまったのだ。 おれの胸に頭を預けている彼女の表情をうかがい知ることはできなかったので、彼女の姿を瞼の裏に結んでみる。 ああ。 なるほど、好きだ。 「好きだよ」 おれが伝える。 「うん」 はたてが答える。 「世界中の森の木が全部倒れるくらい好きだよ」 おれが伝える。 「うん」 はたてが答える。 「山が崩れて海が干上がるくらい好きだよ」 おれが伝える。 「うん」 はたてが答える。 「世界中のジャングルの虎がみんな溶けてバターになってしまうくらい好きだよ」 はたては、もう涙で顔をぐずぐずにしてしまっていた。 風はいつの間にか止んでいて、火照った頬を冷やすものは何もなかった。 ひょんなことから助手になったんです。 Megalith 2012/04/19 「ん……朝……?」 もぞもぞと布団から腕を出し、枕元に置いてある携帯カメラ(携帯電話型カメラ?)を開く。 デジタル時計が示した数字は4 00、起きるには早すぎる時間帯だ。 「うわあ……なんでこんな時間に目が覚めるかなあ?」 朝早くに起きて新聞を書く習慣が付いてしまったからか、はてまた昨日は早めに休んだからだろうか? とにもかくにも目覚めてしまったのだからしょうがない、二度寝しようと目を閉じて寝転んでみたが一向に眠気は訪れない。 「ん~……あ、そうだ!」 頭の上に電球が浮かぶと同時に布団を跳ね除け、彼女……姫海棠 はたては出かける支度をし始める。 その表情は、先ほどの憂鬱な表情などでは無く、何処か楽しみと言うか、浮かれたような表情であった。 所変わってこちらは人里付近のとある家。 特徴など何もないごく一般的な幻想郷に立つ一軒家であり、珍しいのはそこの住人が外来人ということくらいであろうか。 名前は○○といい人当りが良く、専門家には劣るが広く浅く知識を持っており、便利屋みたいな存在であった。 上白沢より与えられた一軒家も、彼女の許可を得ると勝手気ままに改造や改修を繰り返していた。 まあその自由奔放な性格からか、幻想郷に来た時も「現世に帰るよりこちらの方が楽しそうだ。何より初めての経験が多く楽しい!」 等と言い放つ始末であった。 「……ん?」 そんな彼、○○がふと目が覚めた。 いや、正確に言えば違和感を覚えたと言うところだろうか? 彼は一人暮らしであり、両親は現世で生きている。 なのに何故、今台所から物音がするのだろうか? (泥棒か……いや、そんな訳無いか。第一に盗る程貴重な物は家にはないしな) そっ、と布団から抜け出し、極力物音を立てずに台所に近づく。 寝室のふすまを開けると、見覚えのある背中が台所に立っているようだった。 「……はたて?」 良くは分からないが上機嫌らしく、鼻歌を歌いながらトントンッ、と小気味良くまな板を叩く音がする。 味噌汁を作っているのか、何処となく良い香りが漂ってくる。 「なにやってるんだ?」 「ん~? おはよう、○○」 呆然としたというより、呆れた様な表情ではたてを見る○○。 そんな○○を、予想してましたとでも言わんばかりに笑顔を浮かべるはたて。 「……おはよう、で?」 「見て分からない? 料理してるのよ」 「いや、何で私の家で?」 「ん~早起きしたから」 「なんだそれ」 包丁を扱う手を止め、こちらに歩いてくるはたて。 苦笑しながらも、○○には嫌だという気は感じられなかった。 何時もの服装の上からエプロンを付けたはたては、そのまま彼に抱き着いた。 ○○の方もしっかりとはたてを抱き留め、優しく彼女を包み込む。 「本当、どうしたんだ?」 「ん~……別に、早起きして会いたくなったから来ちゃった」 「朝食も作ってくれて?」 「彼女なら当たり前でしょ?」 頭を優しく撫でると、くすぐったそうにはたては微笑む。 自然、頭を撫でている○○も微笑を浮かべ、そこはかとなく良い雰囲気……なのだが。 「はたて、不味い。鍋が噴いてる」 「えっ? ……あああっ!!?」 頭に大きな汗を浮かべながら○○は台所の方を見る。 はたても今気づいたのだが、そういえば火を消すのを忘れていたのだ。 (まあガスコンロなんて便利な物は無いので、薪を火掻き棒で分散させる程度だが) 慌てて○○から離れて台所に駆け寄るはたてを、○○はやれやれ……と言いながらはたてを追いかける。 恋人以上、夫婦未満なそんな二人の関係。 久しぶりに投稿してみました。 短い上、イチャ度が少なくて申し訳ありません。 でも、はたてと少しイチャつきたかったんだ……
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人間が生きているという事柄そのものが空っぽで虚しいです。 人間が考えているような人間は存在しません。 自分も他人も家族も親も兄弟も姉妹も祖父母も親戚も友人も同級生も上級生も下級生も先輩も後輩も教師も 保育園児も幼稚園児も小学生も中学生も高校生も大学生も大学院生も社会人も 同僚も上司も課長も部長も社長も会長も取締役もCEOも正社員も非正規社員も 公務員も官僚も国会議員も大臣も総理大臣も大統領も王様も 財閥も銀行もロスチャイルドもロックフェラーもローマ法王も天皇も 全て空っぽで虚しい流れ、エネルギー、電気現象、パワー、力、命でしかありません。 日本人もアメリカ人もイギリス人もドイツ人もフランス人もイタリア人もロシア人もインド人もユダヤ人も 中国人も韓国人も朝鮮人も台湾人もアフリカ人もエジプト人もトルコ人もその他の国民も 全て空っぽで虚しい流れ、エネルギー、電気現象、パワー、力、命でしかありません。 年齢も性別も出身も学歴も職歴も経歴も身長も体重も年収も国籍も性格も容姿も思考力も 全て空っぽで虚しい無意味な流れ、エネルギー、電気現象、パワー、力、命でしかありません。 お金を稼いだとしても、権力を握ったとしても、地位や名誉を手に入れたとしても、 世界征服をしたとしても、学歴を手に入れたとしても、大発見をしたとしても、 それらは全て空っぽで虚しい無意味な流れ、エネルギー、電気現象、パワー、力、命でしかありません。 結局は無駄なのです。 呼吸しているだけで人のプライドは保たれます。 心臓が動いているだけで人のプライドは保たれます。 目が見えるだけで人のプライドは保たれます。 耳が聞こえるだけで人のプライドは保たれます。 舌で味わえるだけで人のプライドは保たれます。 皮膚で温度や表面の状態を感じることが出来るだけで人のプライドは保たれます。 人間を信用することは絶対に出来ません。 自分も他人も家庭も会社も組織も国家も文化も科学も宗教も情報もお金も愛も全て信用できません。 また人間の言葉を信用することは絶対に出来ません。 結局信用できるのは人が生きているという事柄だけです。 それ以外は何も信用できません。自己矛盾になりますがそうなのです。 一刻も早く人間社会、人間の言葉、人間の文化、人間の情報、人間の言い伝え、記憶から逃げるべきです。 そうしなければ死んでしまいます。 言葉、数字、文字、絵、情報、概念が死を生み出すのです。 人間は一瞬だけしか生きていません。永遠の今しか生きていないのです。 過去との繋がりはあって無いのです。不連続が連続しているのです。 ですが人間社会では連続が継続しているように見えるのです。 自分が過去から連続して存在しているように見えるのです。 これが人間の文明、文化のトリック、害毒です。 このトリック、害毒から逃れるには出来る限り文明や人間たちから離れる他無いのです。 このトリック、害毒があらゆる苦しみ、憎しみ、怒り、ひがみ、悲しみ、矛盾などのマイナスのエネルギーを生み出します。 こう言っている私もこれらのことを実行できるかどうか分かりません。 人間社会の一員としての私には不可能であることは分かります。 このwikiも情報、概念です。 ですからこのwikiから離れることがこのwikiの趣旨を完成させる唯一の道です。
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「苦しい…水をくれ…」 【名前】 人間樹 【読み方】 にんげんじゅ 【声】 町田真一 など 【登場作品】 救急戦隊ゴーゴーファイブ 【登場話】 第5話「ヒーローになる時」 【分類】 植物 【モチーフ】 樹木 【詳細】 地震サイマ獣 クエイクロスに種を飲まされた人間が樹と化した姿。 4つの星座(天、地、火、水)を持つ人間を樹に変え、ある場所を中心に囲む4箇所に人柱として設置し、それにより大地震を起こす災魔法を使用できる。 クエイクロスは上述の災魔法による大地震で黒鷲山ダムを決壊し、ダムの水で首都を洗い流そうと目論む。 水以外の星座の人々が樹に変えられるが、クエイクロスが倒されると同時に元に戻った。 【余談】 一部の書籍では「人面樹(じんめんじゅ)」とも表記されている。
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悪魔人間 デビルマンに登場する、デーモンと合体してその能力を獲得し、かつ人間としての意志を失わなかった人間。 参考 特徴 悪魔人間であるキャラ 不動明(1st) 特徴 悪魔人間に関連する効果を持つカード 悪魔の力(1st)
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いつか、道の果て 3 5-177様 (何処で、間違えたの) それは、『ウィリー・ウィリー』に保護されてこの方、幾度となく反復した自問だった。そして、彼女は回想する。 出会ったのは、この世界の吹き溜まり。歓楽街の路地裏で。そのときはただ、興味を持ったのだ。何かに、引き寄せられるように。『探偵さん』。花街では珍しくもない、その存在に。軍人、訳有り、異種、旧人類。あの場所に 「珍しい部外者」など在る筈もない。 (ひょろりと高く伸びた身体を、着古したシャツに包んで。着ている服は、わたし の知る限りでは、いつも同じ。同じではないけれど、おなじ。みじかい漆黒の髪、 瞳は冱えたうすい緑。莫迦を気取るけれど、本当の意味で、その奥に張り詰めた ものが緩むことはない) そんな人間、スラムでは珍しくもない。多少、身奇麗ではあったけれど、彼はあの場所に一部の違和感もなく馴染んでいた。だから、何ごともなく、それで終わっていた筈の、有り触れた出会い、そのはずだった。 ―――そして、そうはならなかった。 (わたしが、アトキンズの娘、そういう素体だったから) 旧人類の手で作り出された、太古の魔女の血を継ぐ吸血鬼の一族、最後の一人。 誰も幸福にならない、不毛な、何も産みださない、そんな出会いだった。 ほんの少しだけ心を許し、慕っていた青年は、義母の亡骸を前に膝をつく彼女に、自らの裏切りと、目的とを明かした。所属組織である某国諜報機関の、異種対策室と渡り合う為に、彼はマリィと義母に接触し―――そして、その結果、隠密に軍への敵対行動を取っていた義母は命を落とすことになったのだということ。 今後、彼のシナリオには、異種の王の娘たる彼女の身柄が必要となること。 彼女は、彼の申し出を受けた。 義母が生前就そうとした事、すなわち異種たちの血を呑み込んで回る工作機械、 『血の塔』を破壊する、その機会を得るために。 全てを失った彼女は、せめて、義母が生前、望んだことに殉じようと、決めた。 そして、あの日、マリィは、他者と深く関わることを自らに禁じた。 悲しまないように、悲しまれないように。 研究所から連れ出し、養ってくれた義母。 世界を認識することすら覚束無かった彼女に、笑い方を教えてくれた。 その人は今はもう居ない。この世界の、何処にも。 死んだ。ちっぽけな鉛球に打ち抜かれて、それきり。 碌でもない生まれだったものの、迫害された経験は無い。研究所時代は腫れ物よろしく扱われていたし、義母と過ごしたスラムは、もとよりはぐれ者の吹き溜まり。有象無象ひとしく価値はなく、それゆえに、彼女のような存在でも生きてこれた。孤立することを決めたのは、他者に絶望したからではない。 一度手にした幸福を失う恐怖に耐えかねてのこと。 戦う道を選んだことも、そのために選んだ方法も、後悔はしていない。 けれど今、こうして身動きが取れなくなってしまっている。 逡巡の出口を求めても、堂々巡り。 つと、彼女を現実に引き戻したのは、落ち着いた女性の声だった。 「マリィ、マリィ?大丈夫?」 慌てて、顔を上げる。 目の前で、オーソドックスな看護服に、細身の長身を包んだ年上の女性が気遣わしげな視線を向けている。医務室。『彼』と先ほど話して、直ぐに訪れたのだ。……他に、彼を避ける方法がおもいつかずに。 「一昨日の小競り合いで血清のストックが切れてしまって……なるべく早く、 手配しますね。いくら否って言っても、もう認めません」 随分と情けない話だと思う。 「だ、大丈夫よ?身体は充分休めてるし、食事は美味しいし」 「ちゃんと食べてるんですか?」 「三食欠かさず」 ……嘘だけれど。 「日替わりのローストポーク、凄く美味しかったわ。食欲がなかったのに、 綺麗にお腹に入れてしまったもの」 三日前に遇々確認した、一週間分のメニューを思い出しながら、そんなことを言う。 「いいわ、信じておいてあげる」 悪戯めいた笑みに、すこしだけ胸が痛んだ。よく気が付く人、短い付き合いでもわかる。 「是が非でも、血を摂って欲しいところだけれど……隣の市で大規模な事故があって、 安全な血清の流通量が減ってるんです」 「事故?」 問うた彼女に、アリサが頷く。 「対策室もこの所、不審な動きを見せているけれど、異種の過激派組織の動きが 激しくて手が回らないんです。私達には動きにくい状況ね」 「過激派」 記憶を辿る。思いつくのは、 「この辺りだと、『A.VA』と、『盟約の者』?」 「そういった巨大な組織ではなく……昨夜の事故は、特定の組織による犯行ですら ありませんでした。追い詰められた民間の異種と、その協力者―――だから、 余計にきな臭いのだけれど」 それは報道されているのと、問い返す。 「公には、否。でも、情報が伝わるのは早いでしょう?」 市井の人々に真実を伝えるのは、公共の報道機関だけではない。 しかし、だからこそ、彼らを利用しなければならないのだと亜里沙は言った。 「その所為で、総長も先生も出払いっ放し。明日は桜花様……いえ、舘石君とあたし が折衝に出て、寝んでもらう運びになっています」 元々人が少なかったというこの組織が、彼女が来て以来ずっと騒がしいのは、異種の王の娘、を受け入れたことだけが理由ではない。異種たちを取り巻く状況は、刻一刻と動いている。 「血清は―――それでも、三日後には確保できる筈。検査して、改善が見られなかっ たら、ベッドに縛り付けてでも点滴にしますよ?」 丁寧な口調でそんなことを言うと、彼女は笑った。 「ご自分の状態が良くないこと、ちゃんとわかっているのでしょう?」 「血のことは。アラムに相談するわ。それで問題ないでしょ?」 そう答えると、はぁ、と溜息をついて、アリサが額を押さえる。 マリィ・アトキンスは異種、それも所謂『吸血鬼』だ。 人の血を呑んで、異能を振るう種族。 けれど、血を呑む、という行為が、彼女はそもそもあまり好きではなかった。 ―――あの、高揚感に、つよい酩酊。 異種は、唯人には知覚できない、ある種の力の場に自らを『接続』することで異能る。根の世界だとか、極大集合だとか、血の河だとか形容される、不可視の世界。 只人には至れない場所。 媒介は多々あれど、吸血鬼と呼ばれる種族が媒介にするのは無論、生物の『血』。 強力な血統のナチュラルボーンとして作り出された彼女の場合、親から血を受けて転化した類の急造の鬼とは異なり、普通に暮らす分には血液の摂取を必要としない。 しかし、力を振るえば、否応なく生命の甘露たる血液を求めて苦しむことになる。 今の、彼女のように。 アラム・ヴォフクと行動を共にした二年間は、彼の血を受けていた。 それも、やむを得ないときだけ―――突然に転がり込んだ二人の部外者について、目の前の年上の女性がどの程度の事を『知って』いるのか図りかねて、マリィはすこしだけ会話を止める。アラムがICUに放り込まれざるを得なくなった経緯、自分たちの立場については大まかに説明したものの、彼との出会いも、現在の関係も、詳しくは話していない。ただわかるのは、自分の立場が、眼の前の女性から、これまでではありえないくらい配慮されている、ということで。 『ウィリー・ウィリー』でマリィが対峙した人間は、みなそうだった。状況が今以上に逼迫すればどうなるのかは想像し難いものの、彼女の意思を尊重してくれているのだと、わかる。それが、逆にやり辛い。 (必要になれば、此処の人たちだって私を利用せざるを得ないだろうけれど) 今の段階で『保護』という形で滞在を許し、行動の自由を認めている。 その二点だけで、恐らくは件の同行者よりもずっと、信頼に足る人々だった。 向き合って一月にも足らない人々に甘え通しである事実が、心苦しい。 「明日も、ちゃんと来て下さいね?あたし達は居ないけど、先生がきちんと診て くださいます。あ、でも、あたしたちよりも厳しいかしら」 逃げ出さないでね、と、完璧な笑顔で、白衣の女性がわらう。 「……心遣いに、感謝を」 伝えるべきことは、謝罪でも、拒絶でもない。 それがわからないほどに自分は子供ではないと、そう思いたかった。 襲撃があったのは、その日の夜半。 『ウィリー・ウィリー』は小さな組織で、本部を構えるのは街中のオフィスビルの一角、それも、表に掲げられた表札は病院、である。ゆえに、これまで直接の襲撃を受けるようなことはなかったのだが――― 結論だけ言えば、「突入」は失敗に終わった。 傍目にも成功の確率の低い手段を対策室が取ったのは、小規模ながら影響力が強く、扱い辛い組織である『ウィリー・ウィリー』、そしてそこに保護されている精製者一名、異種一名への牽制の意味が強かったのだろうと、関係者達は後に憶測した。 ←・→ タグ …
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続き → スライム♀×人間♂ 人間♂×スライム♀ ◆IyobC7.QNk様 人通りのない林道を青い髪の少女と俺は歩いていた。 隣にいるのは少々たれ目であるが顔立ちの整った美少女である。 スラリと伸びた手足に胸元には大きめの膨らみが布を押し上げ存在を主張している。 背中に垂らした艶やかな髪はまるで一つの塊のように背中から更に流れ地面に届きそうに伸びてきつつあった。 「おい! 髪の毛が崩れてる」 そこで隣を歩いている少女にツッコむ。 「え? ああ、はいっ」 少女が慌てて返事をすると垂れていた髪が元の長さに戻る。 「なあ、やっぱりお前等が人間に擬態するのは無理があるきがするんだが」 「いえいえ、大丈夫です。最初は基本外郭を維持するのも難しかったンですよ。充分進歩してます」 「髪の毛は基本じゃないのか」 「この“け”の部分の塊は動きが複雑で難しいンです。あなたみたいに短いのを乗せるだけじゃ駄目ですか」 恨みがましく俺を見る少女にきっぱりと言い放つ。 「だめ。人間の女の子は皆、伸ばしてるモンなの」 「牝の特性なンですか……私も受動性スライムですから頑張ります」 鼻息荒く誓う美少女の形をしたスライムの隣で、こっそり小さくため息を吐く。 「そろそろ町だからフード被っておけよ」 「はいっ!」 元気の良い声と共に少女の髪がうねり形を変えようとしていた。 「フードは荷物にはいってるから髪はそのまま。変形させない!」 「はい!」 声にビクリと髪を震わせてスライム少女は背中の荷物を探る。 「背中の荷物を髪で探らない!」 更なる叱責にスライム少女は頭を下げた。 「すみません。荷の袋が背面に有りましたから、つい」 「全く……。髪はそのままの形で利用しないように」 「分かりました、気を付けます。それにしても布を身体に巻き付けるのにはまだ馴れませン」 スライムは基本的に全裸だから仕方ない事である。 しかし、だからと言って下手に服まで造らせると時間経過で皮膚部分と服が同化して気色の悪いことになる。 表情を曇らせ渋々フードを被るスライム少女。 初めて逢ったときはツルンとした人形その物だった事を思えばかなり器用になったものだ。 食事を済ませ宿の部屋に入ると同時にスライム少女は何の問題もなく服を脱ぎ散らかした。 正に陶磁器のように滑らかな肌が露になる。 「こら、草々に脱ぐな。人が来たらどうすんだよ」 「大丈夫です、族長は人間の番なら常時裸でも構わないって言ってました」 胸を張って答えるスライム少女。 「それは偏見だ。俺が変態になる」 「ええっ! 年中発情してるんじゃないんですか?」 わざとらしい程に目を丸くしてスライム少女は聞き返す。 本当につがってやろうか、入れる場所もないが。 「少なくとも俺はしてない」 「単に相手が居ないンじゃなくて、ですか」 言いにくい事をズバッと言い放つ。 「ノーコメントだ。経験はある」 「経験? ああ、複数の個体による増殖行為の事ですね。私たちの場合は互いが分からなくなるまで混ざって、そのまま暫く生活するのから直ぐ分裂するのまで様々ですが、人間は行為にどのくらいかかりますか」 「普通は大体二三時間位だな。……スライムは単性増殖じゃないのか?」 「それだと同じ自分ができる訳ですから新しい個体と呼べないし集合体の勘違いの原因になるンですよね、 感覚の近い同じ動性スライム同士で固まっちゃったり。で、緊急時以外の個体分裂は族長が禁止したんです」 種族の恥だろうにスライム少女は内情をぺらぺらと喋る。 「俺たちとした場合どうなるんだ?」 「さあ? そう云った話は聞きませンね。私たちと人間が交わって新たな個体ができるかどうかは興味深い問題です」 何となく聞いただけだったのだが、意外と乗り気の返事が返る。 「試してみます?」 「新たな個体って言われると妙な感じだな」 否定しなかった俺のつぶやきを肯定として取ったらしいスライム少女が断定的に続ける。 「どちら流にしましょうか」 「とりあえず人間流にしてみますか。くれぐれも途中で溶けるなよ、再起不能になるからな」 「はい! で、具体的に何をどうするんですか?」 理解できたのかは判らないがスライム少女は瞳を輝かせながら元気良く質問する。 「じゃあ、先ずはその体に必要な物を幾つか造らないとな」 「それはどンなものですか?」 「あー、知らないのか。ちょっと待てよ、よしコレだ」 荷物の底から俺の秘蔵のエッチな本を取り出しスライム少女に手渡した。 「それと自分を比べて足りない部分を造れ」 指示しながら自分も服を脱ぐ。 「んー。上半身は未だしも、この下肢の付け根のは難しい形ですね……実際はどんなものですか」 「難しいなら最低限で俺のコレが入ればいい」 極力相手を意識しないようにつたえるが、言葉だけだと殆ど変態である。 「コレですね、ちょっと確認させてください」 言うが早いかスライム少女は指を変形させ、まだ臨戦態勢ではないソレを包み反対の手を 自身の股に指を這わせる。 「妙な形ですね、大きさと長さがこのくらいだから……うン。こんなものですか」 俺のはコレから変化するのだが敢えて教えない。 確認しろとばかりに見せつけるスライム少女の割れ目に指を這わせ内部を確認する。 「どれどれ。あ、色は薄いピンクで奥はもっと滑らせて、もう少し深めでよろしく」 「? 分かりました。色は唇くらいでいいですか」 「うんうん。それで胸のだけど小さめで刺激を受けたら尖る様にできるか?」 「刺激で尖るですね、出来ますよ。色はさっきと一緒でいいですか」 「オッケーオッケー」 少女の膨らみの頂点に淡い小さな突起が出現する。 「こんな感じで良いですかね」 「おおっ! すげぇ」 差し出された胸の弾力性を楽しもうとタッチした瞬間、手のひらに痛みが走る。 「っ! なんだ?」 「刺激を受けましたので先が尖りました」 わざとなのか天然なのかスライム少女は事も無げに返答する。 「トラップかよ、突き刺さってんじゃん。……うん。俺の言い方が悪かった」 「間違いましたか……残念です」 薄く滲んだ血を舐める。 そんな俺を見ながらスライム少女は明らかに悄気ていた。 しかし、すぐに何かに気が付く。 「あれ? あなたにも同じような物が付いてるじゃないですか。どんなものか触らせてください」 ヤバい。咄嗟に身を捩るがスライム少女の両手が胸部に吸い付いた。 「うぉっ! あひゃ。止めろよっ」 ヌルリとした感触に妙な声が洩れたがスライム少女は気にしない。 「ああ、摩ると尖るのではなく突起が出っ張るンですね。理解しました」 「あ、止めちゃうの……」 あっさり解放されて少々残念に呟くが、スライム少女は自身の改造に夢中で聞こえてはいない様だった。 「修正しました、これで同じように反応しますよ。これで準備完了ですね」 尻の穴がまだだけど今度でいいか。下手に突つくと逆に俺が突っ込まれかねない。 「まま、任せて任せて」 問うスライム少女をトンと軽く押して夜具に倒す。 そしてキスした俺に首を振り拒否を示した。 「うンっ? ダメですよ」 スライム少女は、聞き返す前に説明を始めた。 「これは栄養摂取用です。あなたの舌を消化しても良いなら続けて構いませンが」 色気の無い態度に少々萎えかけたが気を取り直し再び挑む。 ひやりとした身体は体重を掛けると少しの抵抗を持って受け止めた。 やはり人間と同じとはいかないがプニっとした感触に、これはこれでと思える。 スライム少女の造形は俺の好みに合わせてある。 何故か目の形だけは上手く出来ず垂れ目になってしまったが、そこ以外は本当によく出来ていた。 特にスライム少女が邪魔だと言い続けた体に対して大きめのおっぱいは垂れる事無く誘う様に揺れている。 俺の腕に触れたまま、じっとしている相手に気付く。 「どうした?」 間抜け面ですね、程度の罵倒を覚悟していたが返答は予想外のものだった。 「やっぱり人間は熱いです」 「多分、お前らが冷たいんだと思う」 「人間に言わせれば、そうなるンですかね」 何故か顔が悲しそうに曇ったが、次の瞬間には常と同じ調子に戻っていた。 「あ、体を揉まれたら人間的に何か反応した方がいいンですか?」 上目遣いにスライム少女が問う。 「あー、まあ。有るに越したことはないが、無理はしなくて良い」 「なンだか妙ですね」 「そうだろうな。俺の気分の問題だし」 「でも面白さはあります」 「ただの好奇心だろう」 「そうとも言います」 笑うとかわいい、当然か。などと考えていると 「……って、え? ちょ、ちょっと待ってください! 何ですかソレ! ソレの変化について私は聞いてませンよっ」 面白がっていたスライム少女がソレを見たとたんに予想以上の勢いでビビる、俺の待ってた反応はコレよこれ。 抑え切れずに多少笑いながら説明にならない説明をする。 「あ、ごめんごめん忘れてた。コレは性交時にはこうなるワケ」 「な、なら、ソレに合わせて接合部を修正しますから、ちょっと時間をください!」 スライム少女は先ほど造ったばかりの割れ目を両手で必死に隠そうとする。 「今更無理だって、ほら観念しろ」 自分でも品がないと思うが、こうなった俺に“待った”はない。 「止めてくださいっ! 無理無理ムリですって、明らかに穴が小さいじゃないですか!」 両手を押さえ込まれ目一杯身体をくねらせて抵抗する。 この状況で液体化して逃げないのは単に忘れているのか、なんなのか判断できないが、ここで止めては男が廃る。 宛がい少し力を加えると狭い割れ目は侵入を阻むが、力ずくで押し込む。 「あっ! ちょっ、あ痛っ! 痛たたたああいっ」 「おおおっ! これは、凄く良いっ」 単に処女っぽい感覚を楽しみたかっただけなのだが、意外とスライム少女の体の内部は弾力性に優れ、 人間とは違った快感をもたらしていた。 締め付ける狭い入り口と流動するゼリー状の内部をモノ全体で楽しむ。 惜しむらくは冷たい事だが、それも楽しめる。 「止めっ、痛いっ! 裂けっ! 中っ、いやっ」 涙が出ないのが本当に残念である。 俺に揺さぶられて苦痛を訴えるスライム少女の様子がまた可愛いかった。 運動の度にくちょぐちょと音をたてて接合部の中から透明な液体が洩れシーツに染みをつくる。 限界を感じ一層強く打ち付けると俺はスライム少女の中に放出した。 痙攣するように震えた相手に少しの背徳感。 「おい、大丈夫か?」 行為が終わって暫く経っていたが、喚くでもなく未だにうつ伏せでプルプル震えている少女に不安になり声を掛けた。 シーツには結構な大きさの染みが広がっている。 この染みが人間にとっての血ならば、ちょっと可哀想な事をしたかも知れない。 「理解、しました。人間流だと牝の表面を撫で回し性感を刺激した後に接合部の中を牡のソレで混ぜ交配を促すンですね」 抑揚を抑えた言葉。 ゆっくりと起き上がると薄闇にスライム少女がニヤリと笑い、少女としての輪郭が失われ質量が爆発的に増大する。 「今度は私たち流に、あなたを犯らせて頂きます」 響く様な声が少女だったスライムから発せられ、ジリジリと俺との距離を詰める。 狭い空間の中で流動体生物に襲われれば逃げ場は無い。 「待て、俺が悪かった! 話せばわかる、な。止めっ! ぎゃーっ」 翌日。 元気一杯スッキリした様子の少女と、対照的に青い顔をした男が逃げるように宿を後にし、 後には半分溶解した部屋と掃除に来たままノブを握りしめ硬直した宿の主人が残された。 <後日> 「大体ですね、力も無いのに好奇心を暴走させるのが悪いンですよ」 ちょっとしたイタズラ心が引き起こした事態により早々に宿を後にした俺は原因となった相手から説教をくらっていた。 その相手とは見た目からすれば、スレンダーな身体に大きめの胸を持つ青い髪をした少々たれ目の美少女である。 代金に色を付けたとはいえ、宿の主人には悪い事をしたと思う。 「あー、うん。今回は確かに全面的に俺が悪かったとは思う」 とりあえず相手の意見を素直に認め、俺は“でもな”と言葉を続ける。 「人間の村の宿で本性だして襲うなよ」 「下手に私を刺激するからじゃないですか。それに、ちゃンと手加減はしました」 「アレで?」 少女の心外だと言わんばかりにした抗議の先を促し、昨晩の事件を思い出し身震いした拍子に体の節々が痛んだ。 「私が本気なら、今頃あなたは文字どおりに骨までトロけてますよ」 可笑しそうにケラケラ笑いながら言う少女の言葉に先程とは別の意味の身震いが俺を襲う。 端から聞けば羨ましく聞こえるかも知れない言葉なのだが、この少女の正体はスライムである。 モンスターの代名詞とも言える洞窟や森の奥などに棲息するプヨプヨとした基本的に不定形の流動体生物で、厄介な事に基本的に焼かない限り、叩いても切っても死なない上に雑食。 よく生きてたな俺。 「……にしても、そこまで嫌なら途中でスライムに戻れば良かったのに」 「極端にびっくりしてると巧く変形ができないンですよ。それに」 「それに?」 一旦区切り何やら思案している様子のスライム少女に言葉の先を促す。 「途中で溶けるな。って最初に言われましたし、途中までは同意の上でしたことですからね。 一応その辺も加味したンです」 昨日の夜の事件を要約すると、お互いの好奇心から事に及び、俺のイタズラ心により軽い強姦プレイになり、スライム少女の復讐心によって逆レイプされ、最終的にスライム少女の手心により俺は生きている。 「……俺が調子に乗りすぎた。ごめんなさい悪かったです」 「なら、この問題は水に流しましょう」 そう言ってスライム少女は嬉しそうに俺を見た。 無理矢理であった昨日のスライム流は認めたく無いが、かなり気持ち良かった。 俺はマゾなのだろうか……。 「何をしてるンですか、行きますよ」 立ち止まり考えていたらスライム少女の呼び声が俺を現実に引き戻した。 鮮やかな髪が愉しげにフヨフヨと舞うのが視界に入る。 「おいっ、髪が踊ってるぞ」 「ああっ、すみません」 例によって例のごとくのスライム少女。 結局、こうやって漫才のごとく俺の1人負けで奇妙な旅の日々は過ぎるワケだ。 そう悟り1つ息を吐くとスライム少女を追いかけた。 ↑ 名前 コメント すべてのコメントを見る タグ … スライム 人間♂ 鬼畜 !◆IyobC7.QNk
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善意の果てに── 2 1-59様 鎧男と少女の出会いは血塗られたものだった。 生まれた原因は人間のどろどろとした念によるものであったが、鎧男はその『人間の念』ではなくちゃんと『自分自身』としての確固とした人格があった。それでも、宿った念の元となった人間がどんな人生を送ったか知らないが、人間への激しい憎悪もまた鎧男にしっかり取り込まれていたが。 憎くて憎くて、何十人という命を息絶えさせていった。殺しすぎて、白銀の輝きを放っていた両刃剣も鎧も、斬ったり返り血を浴びたりして赤ずんでゆき、遂には鈍い闇色が全身を染め上げるほどになってしまっていた。 ――あの日も、鎧男は憎しみのままに人を斬った。人里離れた小さな小屋で暮らす、若い夫婦だった。 外で薪を割っていた夫を首からばっさり斬りおとし、家の中で昼食の準備をしていた妻は肩から脇腹にかけて袈裟斬り。ものの十数秒の出来事だった。 妻を殺した部屋には、剣から零れ落ちる血の跳ねた音が小さいはずがやけに大きく聞こえる。 斬っても斬っても湧いてくる人間への殺意。 その矛先を探し彷徨い、見つけ、殺す。 それでも心の芯では黒い感情は薄れず、むしろどんどん上塗りされていく。 激情の中に僅かにある冷静なところで鎧男は、自分は死ぬまでこうして生き続けるのだな、と嘆いていた。 部屋に佇んでいた鎧男は、いつまでもこうしていても仕方がないと、もうすでに湧き始めた新たな悪意を向けるべき人間を探すべく、小屋を出ようとした。 その時だった。玄関とは反対のドアが開いたのは。 (まだ人間がいた!?) 玄関へと体を向けていた鎧男は慌てて振り向いた。 振り向いた先、開いたドアから現れたのは赤ん坊だった。 ちゃんと閉めていなかったのだろうドアの向こう、赤ん坊のいた部屋には様々なおもちゃがそこら中に散らばっていた。きっと、そのおもちゃで遊んでいたが飽きて、母親いる方へ行こうとしたのだろう。 いっぱいいっぱいで立って歩く赤ん坊は、よちよちと拙い足取りで母親の方へと近付く。 「ままぁ、ままぁ」 舌足らずな喋り方で必死に母親を呼ぶ。しかし母親はもう既に事切れている。鎧男が殺したから。 母親の返り血で染まる床を赤ん坊はぺたぺた進んでいく。やっとの思いですぐ傍に辿り着くと、今度は母親の腕をゆさゆさと揺らした。まだ幼いその子は母親がどういう状態なのかよく分かっていないようだった。しかし何度も揺らし、呼びかけるうちに幼いなりに理解し始めたのだろう、呼びかける声に段々と震えを帯び始めていた。 と、そこに至ってようやく鎧男は自分の違和感に気づいた。 赤ん坊を、憎いと思っていない。 いつもの自分であったなら、ドアから現れた瞬間に四肢を切り刻んでいたはず。 だというのに、つい先程まで抱いていた人間への負の感情が嘘のように、綺麗さっぱり消えていたのだ。 それだけではない、鎧男は赤ん坊を哀れみ、そして後悔していた。赤ん坊がこれから親も居らず一人寂しくこの小屋でのたれ死ぬことに。そして、その親を自分が殺してしまったことに。 気が付けば鎧男は赤ん坊を抱え、あやすように背中をとんとんと叩いていた。子供をあやすなんてことをしたことない鎧男は多少ぎこちなくも、一生懸命に赤ん坊をあやした。 最初は知らない人(モンスターだが)に抱きかかえられ泣き喚いて暴れていた赤ん坊だったが、泣き疲れたか次第に大人しくなって眠りに落ちた。安らかな寝息を聞きながら、鎧男は誓った。 この子は自分が育てよう。それが、この子の親を殺してしまった自分なりの罪滅ぼしだ。 ――それは宿った人間の念に僅かに残っていた良心か、はたまた鎧男自身が潜在的に持っていたものか。 とにかく、鎧男はモンスターとして致命的な欠陥を持ってしまった。 『善意』という欠陥を。 ←・→
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強化人間 人体改造あるいは謎の魔術儀式によって後天的にユーベルコードを移植された人間です。 力と引き換えに後遺症に苛まれている者もいます。 出身世界 ヒーローズアース 種族修正 種族 POW SPD WIZ
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竜と肉食獣 1 903 ◆AN26.8FkH6様 どこまでも抜けるような青空の一部を切り取ったかのような真っ青な旗が風にはためく。 青地には白と赤で鎧の騎士と、彼に従う機械種の意匠が縫いこまれ、見る者の胸を勇壮にかきたてた。 俺が所属する機殻騎士団の戦旗だ。 その旗の下、機殻鎧を纏った新兵達が陽光に剣を煌かせながら、一心不乱に統制訓練を続けていた。教官の俺の指示の元、一糸狂わぬマスゲームを長時間演じるのだ。ただでさえ心身に負担のかかる機殻鎧を装着し、神経をすり減らして長時間動いた結果、新兵達は最後には疲労困憊で剣も振るえないような状態になる。 一人が膝を落とし、ゲェゲェと吐き出した。 「錬兵所の土をゲロで汚すとは見下げ果てた軟弱野郎だな!!右隣!連れて行け!!」 俺が怒鳴ると、崩れ落ちそうになっていた兵士の右に立っていた兵士が、慌てて敬礼して仲間を医務室まで引きずっていった。別段サディスティックな趣味に走っているわけではなく、これはひとつの通過儀礼だった。騎士となるからには装着に負担の大きい機殻鎧を長時間つけての行動も多くなる。自分の活動限界を身体に覚えこませ、ついでに活動限界を超えるとどうなるか教えるのが主な目的である。俺も新兵のころにはよく教官にゲロを吐いて倒れるまでしごかれたと教えてやれば彼らの溜飲も少しは下がるかもしれない。 訓練は夕刻まで続けられ、そのころにはほとんどの兵士が倒れ、呻き、地に伏していた。 一日中つけていられた者がいただけでも大したものだが、これから彼らは厳しい訓練の元、さらに長い活動時間を得なければならない。地獄はこれからだ。彼らに幸あれ。 錬兵所を後にすると、離れた高台で見学していた友人が軽く手を上げてきた。 我が国では、高位貴族の長子は教育の一環として全員一度徴兵され、軍に放り込まれる。 厳しい訓練に耐え、忍耐力を養い、戦場を卓上ではなく、膚で感じさせ、学習させる為だ。 かつての同僚で今は故郷に戻り、領主として勤めている友は、薄い唇を吊り上げてニヤリと笑った。 「お前も立派になったもんだな、アルトグラーツェ。お前がゲロ吐いた時には、私が医務室まで引き摺っていったもんだが」 「頼むからひよっこ共の前でそんな事言うなよロスヴィート。教官の面目丸つぶれだ」 薄く笑いながら、友は軽く伸びをして、空を仰いだ。薄紫のヴェールが夕日の上にふんわりとかかって、宵闇が静かに降りてくるのを、俺も友も眺めていた。 「ふん、どうせ教官もあと数ヶ月で辞めるんだろうが。潰れる面目なぞ無い癖にな」 「耳が早いな」 「……軍に戻ると聞いたぞ。それも、緑鉤隊に入ると」 「おい、誰に聞いた?まだ正式な辞令はどこからも出てないはずだが」 友は黒髪を風に靡かせて、俺の前を足早に歩き出した。 紺の軍装の背に揺れる長い鴉の羽のようなその髪を見ながら、俺は慌てて追いかけた。 城の周り、貯水池がいくつも設置された外回廊を走る俺達の姿が水に映る。 「おい、ロス!何怒ってんだお前」 「そんなに死にたいのか」 「え?」 振り返った友の、紅玉のような赤い目が怒りでつりあがっていた。 「お前はつくづく度し難い馬鹿だよ、アルトグラーツェ・イェラ・ドラゴニアン!!まだ復讐に燃えてるとはどこまで根暗で粘着質で陰険な馬鹿竜なんだ!!」 「ロ、ロス」 「煩い黙れ、そこまで死にたいなら今ここで私が叩き切ってやる、さあ首を出せ」 「あの」 「黙れと言ったのが聞こえないのか?腐れ脳が溶け落ちたか?その一つしか残ってない眼球を抉り出したらそこからスライムみたいに流れ落ちるのか?なあ本当に一回死んでみないか。馬鹿が死んで治るか試してみる価値はあると思うんだがな」 目が据わった状態で捲くし立てる友につめよられ、胸倉をつかまれて俺は黙るしかなかった。 俺の一族はかつてこの国で一番数の少なかった竜種ではあったが、俺が幼体の時、数人を残して一切が居なくなった。領地で発掘された、古代機械種『アバドン』に領地ごと喰われたのだ。首都で竜種に義務付けられた予防接種と固体管理の為の登録に連れて行かれていた俺と、付き添いで着ていた数名の供だけが生き残り、かつての領地は第一種危険指定地域として封じられた。 今も厳重な結界で覆われた領地には、『アバドン』がのうのうと眠りについている。 緑鉤隊は機殻騎士団の中でも、特に凶暴な機械種を愛馬とし、危険生物排除を主な任とする部隊だった。各隊一番の手練れが集まる隊でもあったが、重症率、死亡率も群を抜いていた。 その緑鉤隊についに『アバドン』討伐の命がかかると聞いたのは、去年。戦場で追ったいくつかの傷、片目や吹っ飛ばされた両足の為、一線を退いて教官として新兵訓練を仕事としていた俺は、現場復帰を願い出た。失った両足は下位機械種の移植で補っていたが、今回の現場復帰の為、より攻撃に即した上位種を移植しなおした。癒着していた部位を切り取っての移植に多くの苦痛はあったが、現場に復帰できるなら俺は半身だって差し出しただろう。 「あの化物を葬れるなら、俺は何を失ってもいい」 俺は呟いた。 「奴を倒しても何も戻ってこないのはわかっている。わかっているが……」 俺は自分の手を見た。青緑色の鱗が、薄闇の中で光った。 同族達の踊り。青緑が、皆が踊るたびに光の中でキラキラと揺れて、陽気に尻尾を、鉤爪を打ち鳴らす音が聞こえて、その中で若い父と母が回って、互いの尻尾を巻きつけて幸せそうに笑った。そして、俺の方を振り向いて呼びかけるのだ。おいで、愛し児よ、と。 この光景だけは、どうしても忘れることができなかった。 青緑色の鱗の光。もう、その鱗を持つものは、俺と老齢の家人数名しか残っていない。 「俺は、どうしてもあの光景に報いたかったんだ。意味がないとわかっていても、な……」 「よし死ね」 正面から、ぶん殴られた。 お手本のような完全なストレートだった。体重の乗りも申し分ない。かなりの身長差、体重差があるのに、友はストレートを叩き込んだ後、間髪入れずに足払いまで入れて2m超えの俺を地面に殴り倒す事に難なく成功した。 そのまま馬乗りに飛び乗られ、胸倉を掴んで抱き起こされると、さらに何発か殴られた。 軍隊仕込みのマーシャルアーツは、対格差のある相手にも有効である。新兵諸君にも是非見せてやりたい光景だ、極めりゃ150ちょっとしかない人間の女でも、2m超えの竜種をボコれるってな。 「ちょッ待ッ」 「ああん?聞こえんな!!そんなに一族郎党の仇が取りたきゃ勝手に死ね!! この馬鹿竜!!もう本当に死ね!!生まれてきてごめんなさいと言え!!」 「すいませんでした落ち着いてくださいロスヴィート・ユッカ卿!!俺が悪かったですごめんなさい!!」 俺はバタバタと尻尾で地面を叩き、降参の意を表明した。これ以上牙を折られてはたまらない。 ロスがペッとツバを吐いた。おい、高位貴族様のやるこっちゃないだろう、これ。お前、仮にも領主様…。 「何か言ったか?」 「いいえ何も言ってません本当生きててすみません」 俺の血で殺人鬼が使っていたような有様になった白の皮手袋を外すと、ロスは俺の頬に触れた。 俺の鱗をそっと指先でなぞられ、体が勝手にビクリと震えた。 「なあ、アル。お前が過去に酔うのは勝手だが、嫌だろうがなんだろうがお前は現在に生きてるんだ。わかるか?後ろしか見てなくても、身体は前にしか進まないんだ。お前の居場所は、過去じゃない。今なんだよ」 先ほどまで鬼のような顔で俺をボコボコにぶん殴っていたくせに、友は泣きそうな顔で少し笑って、血まみれの俺の口周りをなぞり、指に付いた血を舐めた。 「一族の仇を取りたいなら取ればいい。でも、取ったところで、今のお前は居場所を得たと喜べるか?仇を取ったと、ご両親の墓前で胸を張って報告できるか?お前は……幸せになれるのか?」 「ロス……」 「なあ、私じゃ駄目か?お前と初めて会った時から、お前はずっと後ろばっかり向いてたけど、私はお前を見てたよ。なあ、私じゃ居場所にならないか……?」 俺の返り血の飛んだ彼女の頬を、手を伸ばして、少し触った。 柔らかい。俺の鉤爪のついた鱗手じゃ、少し力を込めたら、簡単に刻んでしまえそうだった。 「ロス、俺は……」 「黙れ馬鹿竜」 また胸倉をつかまれて、引き寄せられる。ロスが、俺の口の先に口付けてきた。口をこじ開けられ、彼女の舌が俺の口内に入ってくる。熱くて柔らかな質量が、俺の牙を舐め、俺の口端を噛み、思わず答えた俺の舌に絡んできた。 チュクリと粘着質な水音が絡み合う。彼女の甘い味に興奮した俺の股間を、彼女の指がツツっと撫でた。その指が、ベルトにかかる。 「いや待てッ!ちょ、おま、外だぞここ!というかお前当主がいいのかこんな!!」 「お前の意見なんて誰が聞いた?」 いつの間にかベルトを外され、軍装をひんむかれ、普段はスリットに収まっているはずの俺の性器が立ち上がっている様を、強引に外気に晒された。なんというか、これってレイプというのではないだろうか。 悲しい男のサガで、若干萎え気味だったそれも、裏筋をなぞられたりとか、カリをひっかかれたりとか、微妙な強弱でやわやわとされれば元気になってしまうのだ。俺が抗議の声を上げようとしたら、口先をそのまま上から咥え込まれた。いやらしく人の口周りを嘗め回して、傷口にまで歯を立てられた。 「私はもう、決めた、んだ…ッ!んんん……ッお前は…ッ私のものにするって、な…ッ!」 息を荒げたまま、自分もベルトを外し、スラックスを落として、彼女が俺の性器の上に、軽く自分自身を触れさせてきた。そこは、少し触れただけでもたっぷりと濡れているのがわかった。 彼女が少し腰を落とすと、柔らかな熱い割れ目に、俺自身がどんどんと飲み込まれていった。 「馬鹿な事…ッ本当に何やってるかわかってるのかロス…ッ!」 「お前よりは…よっぽどわかってるよ」 上気した頬を赤らめ、濡れた唇を舐めあげて、肉食獣のように俺の上で友は笑った。 こいつの方がよっぽど獣だ。肉食獣だ。なんてこった。 俺は、肉食獣に喰われちまったんだ。俺は、うめき声をあげて、思わず腰を動かした。 彼女が上で、気持ち良さそうに笑った。 俺達がもみ合っているうちにいつの間にか空には月がかかっていて、月明かりを移す水面には、押し倒され、ボコられ、顔面血だらけの哀れな眼帯をつけた青緑の竜と、その上に馬乗りになって竜を犯す小柄な女性の姿が映っていたと思う。俺の両腕は、彼女にかきむしられて鱗がボロボロになっていた。 「アル、アル、アル」 歌うように肉食獣が言う。 「お前はもう、私の竜だよ」 「ロ、ロス……ッ」 その口を夢中で塞ぐ。彼女の甘い味。彼女の狭い口内。その細い腰に犯されて、俺は彼女の中に何度も絶頂の証を弾けさせた。尻尾が、射精するごとにバタバタと外回廊の床を叩いていた。 時間というのは、あっという間に過ぎるもんだ。 俺が新兵にゲロを吐かせたり、訓練で死ぬほどどつき回したりしている間に討伐の準備はあっという間に整って、俺が教官を辞め、一騎士としてまた戦場に向かう日が来た。俺の受け持ちのヒヨコ共は、戦場で『アバドン』に喰われて二度と戻ってこないよう願をかけにいった奴もいるという。気持ちはわからんでもないが。 その間、何度かその、まあ色々あったのだが正直言いたくない。 俺が殴り返すとあの小柄な体を粉砕されるのではないかと思うし、あの綺麗な赤い目を傷つけなくたくないとも思うが、少しは反撃してもよかったんじゃないかと今になって思う。 考えたら、奴はあんな外見でも機殻鎧を一週間は平気で着こなして戦場を飛び回っていた人間で、機械種を乗り潰した事も数度ではきかないようなタフネスだったのだ。俺が少々殴ったところでそんなダメージでもなかったんじゃ、と今になって気がつく。 多分アイツの一番のダメージは俺を殴りすぎた拳だろう。 「何を考えてるんだ、そこの馬鹿竜」 「ある肉食獣との戦いについてな」 「ほう、さすができる男は違うな。最危険種討伐を前に、もう別の対決を考えてるとはな」 「誰かさんの教育のおかげで、未来に重きを置ける男になったもんでね」 俺がそう返すと、不意打ちだったのか彼女の白い顔にさっと朱が走った。 俺がささやかな勝利感に浸っていると、今度は彼女が何か思いついたのかニヤリと嫌な感じで笑いかけてきた。 「そうだな、私との未来もさぞかし楽しみにしてくれているだろうしな。お前が帰ってくるころには卵がいくつ孵化しているか、楽しみにしているといい」 「た」 「た?」 「卵?」 「ああ卵だ」 「いや卵って誰の」 「お前と私の」 「いやだってお前と俺じゃ卵なんてでき」 「アホか、何のために高位貴族の優先遺伝法があると思っている。お前の精子の遺伝子情報ちょっといじくって、こちらの卵子と掛け合わせて、とっくにいくつも受精卵を作っているんだが」 「もしかしてお前……」 「腹触るか?パパですよーとか言ってみるか?ん?私に似て、可愛い青緑の竜種の仔だと思うぞ。まあユッカ家の女は元々色んな種族の配偶者を得るたびに体いじってるからな。子宮で有精卵育てるのも何人か先達がいるし」 俺はあいた口がふさがらなかった。貴族怖い。超怖い。 「帰ってきたら結婚式だ、盛大にやるから楽しみにしとけよ。ああそうだ、あんまり欠損部分は作るな、タキシードが合わなくなる」 俺の胸倉を掴んで(もう俺達のキスはこれがスタンダードな形だった)、盛大な音を立ててキスしてきた俺の肉食獣もとい恋人は、楽しそうに笑った。 「とっとと行って倒してこい、これから忙しくなるんだからな。過去なんか思い出していられないほど楽しくさせてやる!」 隊の同僚達や、見送りに来ていた新兵達から大きな口笛や冷やかしの声が飛んだ。 俺はこの先一生、彼女に頭があがる気がしない。 → タグ … 人間♀ 女性上位 騎士 鱗 竜 !903◆AN26.8FkH6
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概要 この世界で、人間は最も遅くに誕生した種である。 人間という種族の作られ方は、世界の転換期を越えてこの世界に残った、気体化した精霊達の意見を元にして生み出されたものだ。 その結果、人間についてのみ、生まれながら身に宿す魔術を持たず、大地や草花から様々な魔術を取り込んで循環させ生きるような形になった。 824話「眠れない夜と海の話」抜粋 その他情報 人間の成長速度 一律ではない。魔術の豊かな土地では遅くなるし、血筋や体質でも持って生まれた寿命はかわる。 子供の年齢も10才までしか数えていない。 成人規定は魔術可動域が20を超えること(189話) 魔術稼働域が高ければ高いほど人間はゆっくりと成長し、年をとり、長く生きることになる。 また、魔術稼働域が極端に低く、成人に満たない人間も永遠の子どもとして、やはり長く生きる。 魔術稼働域と抵抗値 人ならざる者達は身の内に己の魔術を持ち、それを持たない人間は、魔術を取り込んで扱う。 その、取り込む為の回路と得られる魔術の貯蓄量を魔術稼働域と言う。 加えて、どれだけ魔術に触れていられるかという抵抗値という規格が魔術を持たずに生まれた人間にのみあり、これは、数値的に可動域と同一である事が多い。(m4話) 魔術可動域の低い人間は一般的に魔術抵抗値も低くなるため、庇護対象になる。 魔術汚染などの問題で市井で生活できない程抵抗値が低いものは、郊外の隔離施設で暮らしている。(61話) 魔術が極めて潤沢なウィームの成人の可動域は60からで、200あれば十分魔術師になることができる。 ウィームほどではないが魔術基盤に恵まれたガーウィンでも、棘牛並みの800もの可動域は桁外れとされる。 ただし、過去ウィームを共に統べていた二つの王家のうち、去ったほうの一族は多く市井にもおりたこと、また、潤沢な魔術を求めて多く人外が集まる土地柄で一族にその血が混ざる事も珍しくないことから、ウィーム領にはおそらく1000を越える可動域の一般市民も少なからずいると思われる。(a6) また、魔術基盤の潤沢な土地柄では、職業上の道具などにも高い可動域が必要とされる場合がある。 ウィームでパン屋を営むには数々の祝福やオーブンの魔術が必要になるため200ほどの可動域が求められるが、普通の国なら50程度となる(k17)。 作中人物の可動域 ネア 4 → 6 (69) → 9 (979) ウィーム市場のチーズ専門店店主 800 (k250) ジッタード(ジッタ) 1000以上 (k306) アーサー 200 (j9) サラ 30 (j9) アルティーファ(アンティ) 1500 (a6) 迷い子でありながら低い可動域ではずれとされたラフィオは、生来高い魔術可動域をもっていたが、可動域の高い人間を強く忌避する地に生まれ、両親により精霊の呪いを使って可動域を落とされており、またその呪いが不完全だった事から抵抗値は高いまま残った。(k314) ウィームでは到底魔術師になれない可動域ながら、ひと株の可動域が600はある祟りものを軽々と狩ったことから、もとは高い抵抗値と釣り合う少なくとも700以上の可動域があったのではないかと推測される。 魔術汚染、或いは魔術浸食 指先から体が結晶化する病。魔術抵抗の低い人間がかかる病。魔術が毒となり体を結晶化していく。薬の魔物が精製する薬でのみ治療が可能だが、様々な後遺症があるので基本的には魔術と関わらないのが一番。 9話「魔物が厄介なものを集めてきました」 69話「もふもふ妖精と結晶化の病」参照 人間だけが持つ魂の裏側 身から生じる魔術を持たず、魔術回路を通して魔術を扱う人間は、すべからく身に魔術を通した際、その人の思考や心の中にある暗闇から続く夜の天幕とよばれる場所へと繋がる。その扉は本来閉まっており、また自分で開けなければ開かず、魔術に長けた人間なら鍵を閉める事もできるが、扉の向こうから呼ぶ声等により扉の向こうへと迷い込んでしまうと、戻れなくなってしまうこともある(852)。 それを魂の裏側に滑り落ちるともいう。(k7) 魔術師 魔術可動域の高い人間。ただし魔術持ちと称されるどんな魔術師であっても、人間の中に魔術は生まれない。妖精や精霊、魔物や怪物達から魔術を奪い、或いは土地から借り受けて扱う技術者。 工房中毒 魔術師の職業病。魔術師の工房で変質した辻毒や粉塵を吸い込んだりするとなる。派手な症状が出る訳ではなく、喉の痛みで食が細くなったり、発熱でふらつく。大抵の場合は翌月くらいにころりと死ぬ。治療法がない不治の病とされているが、ガレンでは数年前に既に確立されている。だが優れた魔術師の多いウィームや魔術師への風当たりを鑑み、その病を治癒出来ることは厳重に秘匿されている。 薬の材料は災い避けの薬草ばかりで、雪解け水に、夜の雫か黎明の霧の雫、ローズマリーにニワトコの花、雪苔か春告げ草、祝福を受けた塩に、魔物の涙。作り方はこれらを煮込むだけ。ただし、この薬草スープを作り与える者は、患者を愛し、守護や誓いを与えた者でなければならない。(754話) 人間の一覧 登場する「人物」のまとめ 名前順。「ヴ」は「あ行」に記載。 女性と判る人物は名前をこの背景色で記載 名前が分からない人物は()で記載。 あ行 / か行 / さ行 / た行 / な行 / は行 / ま行 / や行 / ら行 名前 愛称/別名 国/所属 職業/地位/役職 契約者 外見/色 初出 あ行 アスファ カルウィ 第3王子 k154 アビゲイル クレアズルの守護を司る一族の娘 739 アフタン ランシーン 元将軍 複雑に結い上げた長い淡紫紺の髪に精悍な鷲のような黄褐色の瞳。武人らしくがっしりとした片目に眼帯をつけた男性 489 (アフタンの祖父)(*1) ランシーン 羊飼い/魔術師 711 アベル ガレン 魔術師 62 アメリア リーエンベルク 第四席の騎士 664 アリステル アリス/美しき救済の乙女/鹿角の聖女の再来 ヴェルクレアの託宣の歌乞い(先代) クレア 淡い桜色の髪と澄んだ水色の瞳の乙女 2 アレクシス スープの魔術師/厄災の魔術師/魔術喰い ウィーム スープ屋店主/魔術師 鮮やかな黒紫の瞳。僅かな菫色がかった多色性の白い髪に白い爪。血も白い 278 アンゲリカ ガーウィンとの境界域を守護するウィームの騎士 サハナム アイリス色の瞳に微かに紫紺の色が混じる短い黒髪。端正な面立ちで穏やかで落ち着いた眼差しの騎士にしてはすらりとした体格の青年。淡いセージ色と艶消しの金色の飾りがある深い青色の騎士服。出身はウィームの南西に位置する美しい糸を生産することで有名なイプリクの町 439 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 や行 ら行 わ行 あ行 か行 さ行 た行 な行 は行 ま行 や行 ら行 わ行 アイシャ カー (ザハの料理長) ターテイル ナイオル ハーシェッド マリア ユーリ ライラ・リムル 活動報告より、作者様コメント [2018年 10月19日 (金) 16 04] 「薬の魔物の解雇理由、登場人物の容姿・服装につきまして」人間の体型について記述