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竜と肉食獣 1 903 ◆AN26.8FkH6様 どこまでも抜けるような青空の一部を切り取ったかのような真っ青な旗が風にはためく。 青地には白と赤で鎧の騎士と、彼に従う機械種の意匠が縫いこまれ、見る者の胸を勇壮にかきたてた。 俺が所属する機殻騎士団の戦旗だ。 その旗の下、機殻鎧を纏った新兵達が陽光に剣を煌かせながら、一心不乱に統制訓練を続けていた。教官の俺の指示の元、一糸狂わぬマスゲームを長時間演じるのだ。ただでさえ心身に負担のかかる機殻鎧を装着し、神経をすり減らして長時間動いた結果、新兵達は最後には疲労困憊で剣も振るえないような状態になる。 一人が膝を落とし、ゲェゲェと吐き出した。 「錬兵所の土をゲロで汚すとは見下げ果てた軟弱野郎だな!!右隣!連れて行け!!」 俺が怒鳴ると、崩れ落ちそうになっていた兵士の右に立っていた兵士が、慌てて敬礼して仲間を医務室まで引きずっていった。別段サディスティックな趣味に走っているわけではなく、これはひとつの通過儀礼だった。騎士となるからには装着に負担の大きい機殻鎧を長時間つけての行動も多くなる。自分の活動限界を身体に覚えこませ、ついでに活動限界を超えるとどうなるか教えるのが主な目的である。俺も新兵のころにはよく教官にゲロを吐いて倒れるまでしごかれたと教えてやれば彼らの溜飲も少しは下がるかもしれない。 訓練は夕刻まで続けられ、そのころにはほとんどの兵士が倒れ、呻き、地に伏していた。 一日中つけていられた者がいただけでも大したものだが、これから彼らは厳しい訓練の元、さらに長い活動時間を得なければならない。地獄はこれからだ。彼らに幸あれ。 錬兵所を後にすると、離れた高台で見学していた友人が軽く手を上げてきた。 我が国では、高位貴族の長子は教育の一環として全員一度徴兵され、軍に放り込まれる。 厳しい訓練に耐え、忍耐力を養い、戦場を卓上ではなく、膚で感じさせ、学習させる為だ。 かつての同僚で今は故郷に戻り、領主として勤めている友は、薄い唇を吊り上げてニヤリと笑った。 「お前も立派になったもんだな、アルトグラーツェ。お前がゲロ吐いた時には、私が医務室まで引き摺っていったもんだが」 「頼むからひよっこ共の前でそんな事言うなよロスヴィート。教官の面目丸つぶれだ」 薄く笑いながら、友は軽く伸びをして、空を仰いだ。薄紫のヴェールが夕日の上にふんわりとかかって、宵闇が静かに降りてくるのを、俺も友も眺めていた。 「ふん、どうせ教官もあと数ヶ月で辞めるんだろうが。潰れる面目なぞ無い癖にな」 「耳が早いな」 「……軍に戻ると聞いたぞ。それも、緑鉤隊に入ると」 「おい、誰に聞いた?まだ正式な辞令はどこからも出てないはずだが」 友は黒髪を風に靡かせて、俺の前を足早に歩き出した。 紺の軍装の背に揺れる長い鴉の羽のようなその髪を見ながら、俺は慌てて追いかけた。 城の周り、貯水池がいくつも設置された外回廊を走る俺達の姿が水に映る。 「おい、ロス!何怒ってんだお前」 「そんなに死にたいのか」 「え?」 振り返った友の、紅玉のような赤い目が怒りでつりあがっていた。 「お前はつくづく度し難い馬鹿だよ、アルトグラーツェ・イェラ・ドラゴニアン!!まだ復讐に燃えてるとはどこまで根暗で粘着質で陰険な馬鹿竜なんだ!!」 「ロ、ロス」 「煩い黙れ、そこまで死にたいなら今ここで私が叩き切ってやる、さあ首を出せ」 「あの」 「黙れと言ったのが聞こえないのか?腐れ脳が溶け落ちたか?その一つしか残ってない眼球を抉り出したらそこからスライムみたいに流れ落ちるのか?なあ本当に一回死んでみないか。馬鹿が死んで治るか試してみる価値はあると思うんだがな」 目が据わった状態で捲くし立てる友につめよられ、胸倉をつかまれて俺は黙るしかなかった。 俺の一族はかつてこの国で一番数の少なかった竜種ではあったが、俺が幼体の時、数人を残して一切が居なくなった。領地で発掘された、古代機械種『アバドン』に領地ごと喰われたのだ。首都で竜種に義務付けられた予防接種と固体管理の為の登録に連れて行かれていた俺と、付き添いで着ていた数名の供だけが生き残り、かつての領地は第一種危険指定地域として封じられた。 今も厳重な結界で覆われた領地には、『アバドン』がのうのうと眠りについている。 緑鉤隊は機殻騎士団の中でも、特に凶暴な機械種を愛馬とし、危険生物排除を主な任とする部隊だった。各隊一番の手練れが集まる隊でもあったが、重症率、死亡率も群を抜いていた。 その緑鉤隊についに『アバドン』討伐の命がかかると聞いたのは、去年。戦場で追ったいくつかの傷、片目や吹っ飛ばされた両足の為、一線を退いて教官として新兵訓練を仕事としていた俺は、現場復帰を願い出た。失った両足は下位機械種の移植で補っていたが、今回の現場復帰の為、より攻撃に即した上位種を移植しなおした。癒着していた部位を切り取っての移植に多くの苦痛はあったが、現場に復帰できるなら俺は半身だって差し出しただろう。 「あの化物を葬れるなら、俺は何を失ってもいい」 俺は呟いた。 「奴を倒しても何も戻ってこないのはわかっている。わかっているが……」 俺は自分の手を見た。青緑色の鱗が、薄闇の中で光った。 同族達の踊り。青緑が、皆が踊るたびに光の中でキラキラと揺れて、陽気に尻尾を、鉤爪を打ち鳴らす音が聞こえて、その中で若い父と母が回って、互いの尻尾を巻きつけて幸せそうに笑った。そして、俺の方を振り向いて呼びかけるのだ。おいで、愛し児よ、と。 この光景だけは、どうしても忘れることができなかった。 青緑色の鱗の光。もう、その鱗を持つものは、俺と老齢の家人数名しか残っていない。 「俺は、どうしてもあの光景に報いたかったんだ。意味がないとわかっていても、な……」 「よし死ね」 正面から、ぶん殴られた。 お手本のような完全なストレートだった。体重の乗りも申し分ない。かなりの身長差、体重差があるのに、友はストレートを叩き込んだ後、間髪入れずに足払いまで入れて2m超えの俺を地面に殴り倒す事に難なく成功した。 そのまま馬乗りに飛び乗られ、胸倉を掴んで抱き起こされると、さらに何発か殴られた。 軍隊仕込みのマーシャルアーツは、対格差のある相手にも有効である。新兵諸君にも是非見せてやりたい光景だ、極めりゃ150ちょっとしかない人間の女でも、2m超えの竜種をボコれるってな。 「ちょッ待ッ」 「ああん?聞こえんな!!そんなに一族郎党の仇が取りたきゃ勝手に死ね!! この馬鹿竜!!もう本当に死ね!!生まれてきてごめんなさいと言え!!」 「すいませんでした落ち着いてくださいロスヴィート・ユッカ卿!!俺が悪かったですごめんなさい!!」 俺はバタバタと尻尾で地面を叩き、降参の意を表明した。これ以上牙を折られてはたまらない。 ロスがペッとツバを吐いた。おい、高位貴族様のやるこっちゃないだろう、これ。お前、仮にも領主様…。 「何か言ったか?」 「いいえ何も言ってません本当生きててすみません」 俺の血で殺人鬼が使っていたような有様になった白の皮手袋を外すと、ロスは俺の頬に触れた。 俺の鱗をそっと指先でなぞられ、体が勝手にビクリと震えた。 「なあ、アル。お前が過去に酔うのは勝手だが、嫌だろうがなんだろうがお前は現在に生きてるんだ。わかるか?後ろしか見てなくても、身体は前にしか進まないんだ。お前の居場所は、過去じゃない。今なんだよ」 先ほどまで鬼のような顔で俺をボコボコにぶん殴っていたくせに、友は泣きそうな顔で少し笑って、血まみれの俺の口周りをなぞり、指に付いた血を舐めた。 「一族の仇を取りたいなら取ればいい。でも、取ったところで、今のお前は居場所を得たと喜べるか?仇を取ったと、ご両親の墓前で胸を張って報告できるか?お前は……幸せになれるのか?」 「ロス……」 「なあ、私じゃ駄目か?お前と初めて会った時から、お前はずっと後ろばっかり向いてたけど、私はお前を見てたよ。なあ、私じゃ居場所にならないか……?」 俺の返り血の飛んだ彼女の頬を、手を伸ばして、少し触った。 柔らかい。俺の鉤爪のついた鱗手じゃ、少し力を込めたら、簡単に刻んでしまえそうだった。 「ロス、俺は……」 「黙れ馬鹿竜」 また胸倉をつかまれて、引き寄せられる。ロスが、俺の口の先に口付けてきた。口をこじ開けられ、彼女の舌が俺の口内に入ってくる。熱くて柔らかな質量が、俺の牙を舐め、俺の口端を噛み、思わず答えた俺の舌に絡んできた。 チュクリと粘着質な水音が絡み合う。彼女の甘い味に興奮した俺の股間を、彼女の指がツツっと撫でた。その指が、ベルトにかかる。 「いや待てッ!ちょ、おま、外だぞここ!というかお前当主がいいのかこんな!!」 「お前の意見なんて誰が聞いた?」 いつの間にかベルトを外され、軍装をひんむかれ、普段はスリットに収まっているはずの俺の性器が立ち上がっている様を、強引に外気に晒された。なんというか、これってレイプというのではないだろうか。 悲しい男のサガで、若干萎え気味だったそれも、裏筋をなぞられたりとか、カリをひっかかれたりとか、微妙な強弱でやわやわとされれば元気になってしまうのだ。俺が抗議の声を上げようとしたら、口先をそのまま上から咥え込まれた。いやらしく人の口周りを嘗め回して、傷口にまで歯を立てられた。 「私はもう、決めた、んだ…ッ!んんん……ッお前は…ッ私のものにするって、な…ッ!」 息を荒げたまま、自分もベルトを外し、スラックスを落として、彼女が俺の性器の上に、軽く自分自身を触れさせてきた。そこは、少し触れただけでもたっぷりと濡れているのがわかった。 彼女が少し腰を落とすと、柔らかな熱い割れ目に、俺自身がどんどんと飲み込まれていった。 「馬鹿な事…ッ本当に何やってるかわかってるのかロス…ッ!」 「お前よりは…よっぽどわかってるよ」 上気した頬を赤らめ、濡れた唇を舐めあげて、肉食獣のように俺の上で友は笑った。 こいつの方がよっぽど獣だ。肉食獣だ。なんてこった。 俺は、肉食獣に喰われちまったんだ。俺は、うめき声をあげて、思わず腰を動かした。 彼女が上で、気持ち良さそうに笑った。 俺達がもみ合っているうちにいつの間にか空には月がかかっていて、月明かりを移す水面には、押し倒され、ボコられ、顔面血だらけの哀れな眼帯をつけた青緑の竜と、その上に馬乗りになって竜を犯す小柄な女性の姿が映っていたと思う。俺の両腕は、彼女にかきむしられて鱗がボロボロになっていた。 「アル、アル、アル」 歌うように肉食獣が言う。 「お前はもう、私の竜だよ」 「ロ、ロス……ッ」 その口を夢中で塞ぐ。彼女の甘い味。彼女の狭い口内。その細い腰に犯されて、俺は彼女の中に何度も絶頂の証を弾けさせた。尻尾が、射精するごとにバタバタと外回廊の床を叩いていた。 時間というのは、あっという間に過ぎるもんだ。 俺が新兵にゲロを吐かせたり、訓練で死ぬほどどつき回したりしている間に討伐の準備はあっという間に整って、俺が教官を辞め、一騎士としてまた戦場に向かう日が来た。俺の受け持ちのヒヨコ共は、戦場で『アバドン』に喰われて二度と戻ってこないよう願をかけにいった奴もいるという。気持ちはわからんでもないが。 その間、何度かその、まあ色々あったのだが正直言いたくない。 俺が殴り返すとあの小柄な体を粉砕されるのではないかと思うし、あの綺麗な赤い目を傷つけなくたくないとも思うが、少しは反撃してもよかったんじゃないかと今になって思う。 考えたら、奴はあんな外見でも機殻鎧を一週間は平気で着こなして戦場を飛び回っていた人間で、機械種を乗り潰した事も数度ではきかないようなタフネスだったのだ。俺が少々殴ったところでそんなダメージでもなかったんじゃ、と今になって気がつく。 多分アイツの一番のダメージは俺を殴りすぎた拳だろう。 「何を考えてるんだ、そこの馬鹿竜」 「ある肉食獣との戦いについてな」 「ほう、さすができる男は違うな。最危険種討伐を前に、もう別の対決を考えてるとはな」 「誰かさんの教育のおかげで、未来に重きを置ける男になったもんでね」 俺がそう返すと、不意打ちだったのか彼女の白い顔にさっと朱が走った。 俺がささやかな勝利感に浸っていると、今度は彼女が何か思いついたのかニヤリと嫌な感じで笑いかけてきた。 「そうだな、私との未来もさぞかし楽しみにしてくれているだろうしな。お前が帰ってくるころには卵がいくつ孵化しているか、楽しみにしているといい」 「た」 「た?」 「卵?」 「ああ卵だ」 「いや卵って誰の」 「お前と私の」 「いやだってお前と俺じゃ卵なんてでき」 「アホか、何のために高位貴族の優先遺伝法があると思っている。お前の精子の遺伝子情報ちょっといじくって、こちらの卵子と掛け合わせて、とっくにいくつも受精卵を作っているんだが」 「もしかしてお前……」 「腹触るか?パパですよーとか言ってみるか?ん?私に似て、可愛い青緑の竜種の仔だと思うぞ。まあユッカ家の女は元々色んな種族の配偶者を得るたびに体いじってるからな。子宮で有精卵育てるのも何人か先達がいるし」 俺はあいた口がふさがらなかった。貴族怖い。超怖い。 「帰ってきたら結婚式だ、盛大にやるから楽しみにしとけよ。ああそうだ、あんまり欠損部分は作るな、タキシードが合わなくなる」 俺の胸倉を掴んで(もう俺達のキスはこれがスタンダードな形だった)、盛大な音を立ててキスしてきた俺の肉食獣もとい恋人は、楽しそうに笑った。 「とっとと行って倒してこい、これから忙しくなるんだからな。過去なんか思い出していられないほど楽しくさせてやる!」 隊の同僚達や、見送りに来ていた新兵達から大きな口笛や冷やかしの声が飛んだ。 俺はこの先一生、彼女に頭があがる気がしない。 → タグ … 人間♀ 女性上位 騎士 鱗 竜 !903◆AN26.8FkH6
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パイロットアビリティ 強化人間 薬物投与や心理操作によって ニュータイプ的な能力を引き出された人間。 反応、覚醒値アップ。 レベルを上げる事で効果が上昇する。 Lv Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 Lv6 Lv7 Lv8 Lv9 LvMAX 上昇値 +3 +4 +5 +6 +7 +8 +9 +10 +12 +15 必要AP - 60 60 70 70 80 80 90 90 100 習得キャラ 習得レベル フォウ・ムラサメ Lv 1 マシュマー・セロ(強化) Lv 1 キャラ・スーン(強化) Lv 1 プルツー Lv 1 ギュネイ・ガス Lv 1 カロッゾ・ロナ Lv 1 カテジナ・ルース Lv 65 ファラ・グリフォン Lv 1
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人間 ノルド インペリアル ブレトン レッドガード ニード コスリンギー ノルド スカイリムに住む人間種。金髪碧眼で、人間としては最も大柄な体躯を誇る好戦的な蛮族。 寒さに対する高い耐性を持ち、屈強な体と相まって、彼らは非常に優秀な戦士である。 今作の主要構成種族であり、規模を問わず、ほぼ何処でも人口の大半を占めている。 生来の気質もあってか、他種族を見下し、差別する傾向がある。 彼等はメレシック時代後期に北方の大陸アトモーラから渡ってきた民の末裔と考えられており、 エルフの土地であったタムリエル大陸に歴史上初めて勢力を拡げた人間種族である。 そういった歴史的な諍いもあり、特に各種のエルフ種族に対しては差別的な傾向が強い。 オブリビオンの動乱以降は魔法に対しても強く反発しており、地域的な対立を生む要因となっている。 古代においては『声』を自在に操り、軍や城砦すらも破壊するほどの術を体得していた者も多く存在したが、 現在のノルドで同じ技を操るものは極めて少ない。 多くのノルドはエイドラの神々を信仰しており、特にスカイリムの英雄であるタロス(イスミール)に対する信仰は根強い。 また、太古の昔より人間の神であるロルカーン(ショール)の寵愛を受ける種族でもあり、 名誉ある死を遂げたノルドはかの神の領域であるソブンガルデに導かれると固く信じられている。 種族名が示すように北欧に住むゲルマン系の民族がモデルであり、エッダ詩歌集など関連ネタも多い。 基本的に名字を持たない者が多いが、自らの家系や職業にちなんだ屋号を名乗る文化がある。 インペリアル シロディールに住む人間種にして、帝国の支配的種族。 交渉、外交、商取引等の分野で比類無き才能を見せる非常に文化的な種族ではあるが、 その反面他の文化圏を非文明的とする風潮もあり、帝国文化の押しつけにより反発を招くことも多い。 元々はアイレイドの奴隷だったが、第一紀に聖アレッシア指揮下で反乱を成功させ、シロディールの支配権を得た。 エルフ諸侯の中に人間と手を組む者が多く存在したことや、 アイレイドが内乱によって既に疲弊していたことが、その勝利の要因とも言われている。 種族の象徴であったセプティム王朝が絶えた後は、エルフ国家のアルドメリ自治領と戦火を交えたが、 一時帝都は陥落し、不平等条約の締結を余儀なくされてしまった。 そのため、現在は、かつての権威を失墜した落ち目の種族とも見なされている。 宗教は主に八大神(九大神)を信仰しており、当然ながら八大神教団の中心的種族でもある。 教団設立時に除外されたロルカーンに関しては、「シェザール」という名で密かに信仰する者もいる。 氏名・容姿・文化など、古代ローマ帝国を彷彿とさせる要素が多い。 ブレトン ハイ・ロックに住む人間種。人間の中では特に魔法の才に優れ、高いマジカと魔法耐性を併せ持つ。 古代のエルフであるアルドマーと、彼等の奴隷であったネディック人との混血によって生まれた種族である。 最初の記録はノルドがアルドマーとの戦いでハイ・ロックに進軍した時のもので、ハーフエルフの集落を発見したという内容。 当時は人間エルフという意味で「マンマー」と呼ばれていた。 第一紀498年にアルドマーのディレニ一族からバルフィエラ島を除く全ハイ・ロックの支配権を勝ち取り、 名実共にハイ・ロックの主要構成種族となった。 多くの場合穏やかで人当たりの良い種族であり、各地で魔術の才能を生かした職に就いている者が多い。 が、ハイ・ロックの都市国家に君臨する貴族階級に限っては総じて高慢で意地汚い。 スカイリムのリーチ地方の先住民「リーチの民」と非常に似ており、元々は同じ種族だったと言われている。 ハイ・ロック出身のブレトンはフランス風の名前で名字を持つのに対して、 リーチの民は名字を持たず顔に戦化粧を施すのでおおよその区別は出来る。 宗教はエイドラ系であり、八大神に加えてマグナス、フィナスタール、イフレなどエルフ系の信仰が残っているのが特徴的。 リーチの民は「古き神々」と呼ばれる存在(デイドラと思われる)を信仰していたものの、現在はノルドにより禁止されている。 種族のモデルはイングランド系のケルト民族であり、前述の通り名前がフランス風なのでブルターニュ地方の民と思われる。 レッドガード ハンマーフェルに広がるアリクル砂漠に住む人間種。 浅黒い肌をしており、戦士としての優れた能力を持っている。 思慮深く、ストイックで、それでいて情熱的な人々であり、落ち着いた物腰が特徴。 名字や屋号、二つ名などには全くと言っていいほどに馴染みがなく、単純な個人名のみを名乗る人物がほとんどである。 第一紀800年代に西のヨクーダという大陸から移住してきた民の末裔であり、タムリエルの他種族に比べて圧倒的に新参者。 最初にタムリエルに渡ったのが彼等の言葉で「戦士の波」を意味する「ラ=ガーダ」と呼ばれる一団であった為、 タムリエルの先住種族には「レッドガード」という発音で彼等全体の呼称として知られるようになった。 タイバー・セプティムによりハンマーフェルが征服されて以降は永らく帝国の傘下にあったが、 帝都が陥落して弱気になった新帝国がハンマーフェルをアルドメリに割譲したことに激怒し離反。 独力でアルドメリの軍勢を退け、独立国家を打ち建てるという快挙を成し遂げた。 ハンマーフェルにおける彼等の宗教はヨクーダの神々を信仰する独特のもの。 長身のパパとして知られるラプトガ神をはじめ、戦神ディアグナ、導きの神フーンディングなど、帝国では馴染みのない名前が多い。 (とは言え、彼等の神話の中にはタムリエルの神話と同じ出来事を指していると思われるものも多数含まれる) また、生物の魂を崇高なものとして尊重する文化があり、魂縛、死霊術、デイドラ召還などは好まれない。 種族のモデルは今でこそ北アフリカ系の民族であるが、シリーズ初期には日本がモデルであった話は有名。 ディアグナ騎士団の団長ガイデン・シンジの名前は当時の名残である。 ニード 一般的にはネディック人として知られる人種で、ノルド、インペリアル、ブレトンの祖先。 その由来は謎が多く、アトモラからやって来た人間という説と、最初からタムリエルにいた原住民とする説に分かれている。 コスリンギー かつてブラックマーシュに住んでいた、タムリエル原住の人間種族。 光沢を放つ肌を持ち、Z en(現在のボズマー宗教では物品取引を司る神)を信仰していたと言われている。 第二紀に流行したナハテン疫により絶滅したと考えられており、現在確認できる彼らの痕跡はブラックマーシュに残る遺跡のみとなっている。 第一紀の終焉を描いたカルロヴァック・タウンウェイ著の2920シリーズにコスリンギーのキャラクターが登場する。
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亜人間族 解説 エルフ族やドワーフ族、獣人族、鬼族などの人型種族の総称。 亜人種族とも呼ばれる。 人間族から見て多種族を人括りにする呼び方であり、人間族の中には亜人間族を蔑む者も多い。 三神戦争以前から交流をしていた人間族もいたらしく、その存在は古くから知られていた。 エルフ族ならばルリエンら緑の杜七柱、獣人族ならベルーラというように、基本的には自分達の産みの親である神を信仰する。 稀に他の神を信仰する者もいるが、人間族と比べてその数は少ない。 (余談だが亜人間族と比べて特定の神との結びつきが弱い事が、多くの現神が人間族に着目した理由でもある。) その多くはネイ=ステリナ出身の種族だが、ナーガ族のように古神の眷属も存在する。 雑感・考察 蔑称とまではいかないようだが、多くの種族を一纏めにしてしまってる呼称なのであまり良い言葉では無さそう。 名前
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強化人間(きょうかにんげん) 人工的に能力を強化された人間の総称 強化方法によりサイボーグ、ホムンクルスなどと様々な呼称がある 人体に機械などを埋め込んで、反応速度や操縦能力等を強化したり 遺伝子操作で能力を強化した人造人間を強制成長させたりなどの手法がある ちなみにデュラン・エンオウや蹂躙のミミーなどは素で強化人間以上の能力を 発揮出来る模様だが、彼らが強化人間か否かは本人に聞かねば判らない 下記の表では、サイボーグ(人体改造)とホムンクルス(人造人間)に大別してみた (厳密に言えばハイヌウェレはネフィリムとなるが、便宜上ホムンクルスに分類) 強化人間一覧表 サイボーグ 地球陣営 耐撃の百文字、ミル、リヒャルト、ドンナー アムステラ陣営 アセト、ガル、サーメット、ヘラ、黒血鬼隊、アザレア、チャカ、鷲鼻のバトゥロ 〃 ズレアバーシャ、マスク・ド・サンキスト“金柑”、マスク・ド・サンキスト“柚子” その他 ミンファン、ルネ、GEAR化兵、ワイアード・ヂェロニモ、プカハンタ 〃 ジャック・ダグラス、ダークフーゴー、EEE、マハン・ガン、オレグレイ・カレロフ 〃 アンガ・キタンバ・名取川、デビルクラーケン ホムンクルス 地球陣営 レイ アムステラ陣営 アシェル、イオ、カナタ、ティカ、ハイヌウェレ隊 その他 No.3、No.7、ロイド 両方 アムステラ陣営 アンドゥー、ウドラン(サイボーグのみか?)、デスロイド 不明 その他 アレクサンダー(『人間』では無いが、便宜上こちらに記載) 関連項目 GEAR サイボーグ ネフィリム ホムンクルス 強化人間専用機
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神の殺した人間の数は、最低でも282万1364人と見積もられている。明記されていない分も推定すると2500万人に迫る勢いである。 http //dwindlinginunbelief.blogspot.jp/2010/04/drunk-with-blood-gods-killings-in-bible.html
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いつか、道の果て 5 5-177様 互いが、ただ、目的を達する為だけの道具となる道程。 (同じ道を歩んであげる。だけど、わたしは絶対に許さない) 協力者、あるいは、共犯者。その立場があれば、近付きすぎることはないと思っていた。 (ひとは、弱いから) かの青年は『精製』と、相応の訓練とを受けている。多少の怪我ならば直ぐに癒えるし、常人ならば命を落とすような傷を負っても、命に関わりはない。けれど、それでも。 それは、時計の巻きを早めているだけで、異種の頑健さとは別物だ。 だから、刃と銃弾を受ける役割は、自分のものだと思っていたのに。 (……また) 根の世界。血の国。極大集合。 異種たちは、その世界をさまざまな言葉で語る。 深い深い血の色は、あつまれば、漆黒にも、群青にも似て。 (―――わたしが、義母さんに、外の世界を教えてもらうより、前は) 未だ、自分が研究素体として、番号で呼ばれていたころは、この世界が全てだった。この世界しか、知らなかった。 ほかにはなにも、この目には映らなかった。 ほかにはなにも、きこえなかった。 匂いもなく、熱もなく。 全てを飲み込む、虚無の世界。 何もかもがあるのに、何もないところ。 全てが還る場所。どれほど叫んでも、どれほど足掻いても。 全てを飲み込む虚無の空。 異種の王、その娘。根の世界に、もっとも愛された者。 (……嫌い) 夢を見る。 (嫌い。) 特に、血を呑んだ、力を得た、その直後は。 「……と、逆か」 言葉の、途中。 ぽつりと枕元で囁く声を聞いた。続けて、何故、と囁く声も。 すこしだけ安心する。彼が、未だに近くあることに。 「『お迎え』を、ここの連中が追い返すまで、三時間ってとこか―――」 独白が止まる。あるいは突破された、その先のことに考えを巡らせているのだと、つと気付いた。その可能性はけっして高くはないと理解していても、そこまで想定せざるを得ない。こういった一つ一つの経過が、ふたりの二年間の道程を可能にした。細い細い糸の上を歴るように、そうでなければとっくに終わっている。 異種と人間たちの世界を牛耳る、巨大な悪意を向こうに回した、二人きりの、たたかいは。今は、そうでないかもしれなくとも。 同時に、自分が意識を手放してからそれほど時は過ぎていないのだと、知った。 「……アラム」 もう目を覚ましたのか、と、彼が名を呼ぶ。 そこに含まれる驚きも、不安も、マリィは聞き取っている。 気付いていることに、気付かないふりをする。 ここまでの二年間と同じように。感謝してもしきれないことは知っていた。 けれど、手を伸ばしたら、きっと損なわれてしまうから。 呟く。 「アラム」 名前だけを呼ぶ声は、あからさまに、みっともないほどに心細げだった。 「わたしの、やりたいこと、は」 ……何を、話しているんだろう。 心と躯が離れてしまったように、言葉が零れ落ちる。 「かあさんのやろうとしてたこと、あの、塔を」 ああ、と首肯の気配。すこし安心した。 「こわすことで。それだけで。貴方のやりたかったことは、然るべきタイミングで、 わたしを、『彼』に引き渡すこと、で。そう、だよね……?」 確かめる間でもないこと、その筈だった。 それが、たったひとつの契約。 そうだね、と、もうひとつ頷く気配に、安堵する。こころの底から。 「そうだね。然るべきタイミングで君を引き渡して、ホルボーンと取引。 アリス・ハドスンの身柄を取り戻すことが僕の目的だった」 アラム・ヴォフクは、淡々と認める。 けれど、そこに続くのは逆接の言葉。でも、と言ってアラムは笑う。 「―――僕は一度、彼らを裏切った」 「いまからでも、わたしを連れて行けばいい。結果が全て。そうでしょ?」 「無駄なことはしない主義だ、知ってるだろう?」 事実だけを並べる調子で、彼。 「ここで君がのこのこ出て 行っても、恐らく先手を打たれる。何の意味もない」 「………」 尤も、だった。返す言葉もない。 ここまで事態が動いてから首を差し出しても、後手に回った行動にしかならない。 「それに」 階下の喧騒。他人事ではない。他人事ではありえない。 それなのに。 「今更。もう、決めたからね」 ―――思わず、顔を背ける。 彼が何を伝えようとしているのか。本当は気付いている。 不意に、視界が揺れた、気付けば、覆いかぶさるようにアラムの影。 生きた人間の、体温。彼女のそれとはまるで違う。今も、じわじわと、死の世界に惹かれて、熱を失って行くこの身体とは。 やむを得ず、目線を合わせた。 (だめ) 声に出さず、語りかける。まだ自らの出自も立場も何も知らなかった頃、ほんの少しだけ思いを寄せていた相手に語りかけるように。 (貴方は、ここにこないで) 胸中では狂おしいほどにこの人を求めていても。 辛うじて囁く。 「……近すぎるよ、アラム」 「距離は先刻とそんなに変わらないと思うけど」 「屁理屈だわ、それ」 こつん。 「………っ」 額が合わさっている。風邪を引いた子供と、その親のように。 そのまま、一拍。 (あ、かあさんが、前に) すこしだけ気が緩むその間隙を撞いて、 「ん………っ、ん」 触れる。 はじめに、短く切りそろえた前髪のすこしだけ固い感触、つぎに、生暖かく乾いた、温もりが触れる。同じ場所に。額と同じ場所に。止める暇もなかった。 唇をあっさりと割り開いて、潜り込んでくる。彼の、舌先が。 接吻はごく短く。 「―――!」 児戯のようにあっさりと離れた。架け橋ひとつ。 「斬り殺されたいの。さっきの連中みたいに」 「殺していなかったと見えたけど」 「……黙って」 ひとつ、息を吸う。努めて、浅くならないように意識しながら。 「子供に興味はないって」 「ん」 「手を出すほど女には困っていないって」 「ああ」 「言っていたのは、誰?」 「さあ、誰だろう」 「ふざけないで」 青年が一度、上体を持ち上げる。き、と硬材が軋む音。当然だ。決して柔らかくはないけれど、そもそもこれは、二人分の体重を支えるためには作られた寝台ではない。おそらくは。 「……僕の、これも」 もう一度、視界が翳った。 「市警の連中の前に両手を差し出すのと同じ程度には馬鹿な行動、かな」 半分笑いながら、青年が言う。 「抵抗する?」 「さっき言ったけど。斬り殺されたいの」 「君が、それを出来るなら悪くない提案だ」 手を、絡め取られる。 彼は捉えた少女の指先を、自らの喉元にあてた。 ―――息を呑む。 「悪く、ない」 振り払おうにも、腕力の差は歴然。青年は、目を逸らさない。 口元に、嗜虐的でありながら、どこか自嘲じみた笑み。 (このひとは、嘘をつく) 信じる根拠なんて何も―――何も? この期に及んで、それを問えるのか。 彼女の抵抗を肩先で押さえ込んでそのまま、男はゆるく笑っている。 身を切られるように、心が痛んだ。 背に腕が回り、身体が、もう一度傾ぐ。 彼が何を意図しているのかは悟っていた。けれど。 「どうして」 「嫌なら、力を込めればいい」 簡単だろう? そう告げる口調は軽い。言葉を失って、見上げる。 「や、だ」 ひどく優しく。壊れそうなものを扱うように。背に、そっと腕が回る。 湧き上がる感情は怒りと恐れと、そして困惑。それと、悲しみ。それと、 (―――どうして) どうして。 彼は、少女が手を下さないことを、回答と受け取ったようだった。 「なら、君が、後悔するだけだ」 ぎしりともう一度、2人分の体重に、寝台が軋む音が響く。 ←・→ タグ …
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人外アパートのキャラの話ですが、連中の住むアパートは一切出てきません。ちょっとダウナーで流血描写もありますが、昆虫人間×人間の和姦です。 ヘラクレスオオカブトとソープ嬢859 ◆93FwBoL6s.様 吸いたくもないタバコを吸い、体液を濁らせる。 昆虫人間は呼吸器官が上半身には備わっていないのだから、顎にタバコを挟んで吸ったところで何の意味もない。本当にタバコを吸いたいのなら、腹部の両脇に並ぶ気門のどれかにタバコを差し込んで吸い込み、体内に回すべきだろう。だが、それをしたことは一度もない。人間の真似事のように口で吸い、味覚器官で味だけを吸い尽くし、残りは吐き捨てる。我ながら無意味だとは思うが、どうにも止められなかった。タバコの灰を落としてから、曲がったフィルターを顎に挟んだ。 ヘルは、人型のヘラクレスオオカブトである。頭と胸から太いツノが生え、外骨格は黒と金、全長は三メートル近くある。乗用車など軽く持ち上げられ、爪を振るえば鉄板をも叩き潰せ、至近距離から鉛玉を撃たれても掠り傷しか付かない。昆虫人間の中でも並外れたパワーとタフさを誇るが、有り余る力を真っ当な方向に生かせているとは思っていなかった。というより、ヘル自身が生かす術を見出そうとしていない。長らくヤクザの用心棒に落ち着いているのも、そのためだった。 夜更けの歓楽街は、猥雑だが居心地が良い。ヘルのような、収まりどころを見出せない人外も多く歩いているからだ。己の知性や理性を否定した文句で春を売る獣人の娘達。従順さを売りにしている機械の娘達。そんな娘達を買う男達。呼び込みの男が通り掛かった男を捕まえては格安の値段を持ち掛けるが、それが嘘であることは誰もが知っている。どこもかしこも金と性が入り乱れ、卑猥な言葉が並ぶ看板が淫靡に輝き、酒と女の生臭い空気が雑居ビルから流れていた。 その雑居ビルの間から垣間見えた路地裏に、ヘルは触覚を向けてから複眼を向けた。甲高く引きつった声がしたからだ。頭上で瞬く赤と青のネオンサインを上右足で遮ってから闇に目を凝らすと、何人もの男達が固まって何かを蹴っていた。それが蹴られるたびに呻きが上がり、肉が叩かれる鈍い音が繰り返されているが、ヘルの他は誰も目を留めなかった。歓楽街では見慣れた光景であり、日常の一部だからだ。下手に助けて面倒事に巻き込まれるのは、誰だって嫌だ。ヘルはそう思い、二本目のタバコを吸おうとしたが、風体の悪い男達が揃って上げた下品な笑い声がビルに反響した。それが外骨格の表面に生えた体毛をくすぐり、音として伝わってきたが、全身の神経が逆立つような不快感が募った。 「…ああ、くそ」 別に助ける気はない。ただ、鬱陶しいのだ。ヘルはぎちぎちと顎を軋ませて苛立ちを吐き出しながら、大股に歩いた。ビルとビルの間に転がっていた空き缶を蹴散らしながら近付いていくと、人間の男の匂いが触覚をごってりとなぞった。それが更に不快感を呷り、ヘルは本格的に苛立った。それでなくても、今日はヤクザの若頭に顎で使われて機嫌が悪い。若頭が囲っている女に組の力量を見せつけるためだけに呼び出され、荷物持ちもさせられ、一日中連れ回されてしまった。だから、今日は酒も飲まずにさっさとアパートに帰るつもりでいたのだが、このまま放っておくのは何か後味が良くなかった。 わざとらしく足音を立ててヘルが近付くと、男達が振り返った。路地裏に押し込められていたのは、薄物を着た女だった。衣服としての意味を成さないキャミソールを一枚着て紐同然のパンツを履いているだけで、裸足の足の裏は汚れていた。仕事を終えて間もない淫売の女だろう。ヘルは吸いかけのタバコを顎で噛み潰し、ツノを見せつけるように頭をもたげた。 「おい」 「ヘルさん!」 男達の中の一人が歩み出し、ヘルに近付いた。ヘルが雇われている組の下っ端だった。 「今、お帰りっすか」 「おう。んで、そいつはなんだ」 ヘルが顎をしゃくると、ぐったりしている女は近くの男に腕を掴まれて引き摺り上げられた。 「ぅ、あ…」 「こいつ、借金も返しちゃいねぇのに逃げようとしたんですよ。んで、締めておこうかと」 下っ端はヘルに擦り寄り、いやらしく笑った。 「バラす気か?」 「すぐにはバラしませんよ、マワしてからじゃねぇと勿体ないじゃねぇっすか」 「どういう女だ?」 「大した女じゃないですよ。顔はそこそこだけど体はショボいし、客を取るのも下手で、本番始めるようになっても稼ぎが悪くって」 「大体解った」 ヘルは下右足の爪先を女の顎に引っ掛け、その顔を上げさせた。 「あ…」 反射的に唇を開いた女は、頬や額にいくつも痣の出来た顔を向けてきた。辺りの暗さも手伝って、その表情は窺えない。助けを求めるようなこともせず、震えることもせず、己を諦観しているようだった。言葉も発さず、逃げ出すような気配もない。ヘルの背後からどぎついネオンの光が差し込み、女の顔を縁取っていた。しばらく眺めて、ふと、誰かに似ていると思った。 若い頃に好きだった人間の女に、面影が似ていた。その女はこちら側の人間ではなく、明るい日差しが似合う女性だった。用心棒としてヘルが出入りしていた、バーを装った違法賭博場の近所にある花屋の店員で、見かけるたびに挨拶してくれた。それがただの社交辞令だと解っていても嬉しくて、ヘルも挨拶を返していたら、顔見知りになって言葉も交わすようになった。彼女は、ヘルが知る女達に比べれば純粋で清潔で、立ち上る匂いも化粧や酒のそれではなく、心地良い花の匂いだった。だが、知り合って半年も経たないうちに、彼女は幼馴染みと結婚してその街を去ってしまい、ヘルとの接点も完全に失った。顔を合わせている時はなんとも思わなかったが、彼女がいなくなってから、ヘルは少しだけ彼女が好きだったことを知った。 この女は、その女性に似ている。だが、彼女ではない。彼女は目元に愛嬌のあるホクロがあり、この女よりも背が低かった。別人だと認識しても、尚、ヘルの胸中はざわめいた。決して爪の届かぬ、穏やかな世界への羨望が振り払えていないからだ。 「俺が飼う」 ヘルはタバコを吐き捨てて踏み躙ると、上右足で女の腕を掴んだ。 「飼う? 飼うって、そいつをですか?」 男達がざわめいたが、ヘルは抵抗すらしない女を担ぎ、一笑した。 「お前ら人間は、俺の同族をカゴに入れて飼うだろう。だから、その逆をしてやるだけだ」 ただ、それだけのことだ。ヘルは生温い体温を滲ませる女を肩に載せると、繁華街から程近い自宅アパートに向かった。その間も、女は黙り込んでいた。それが少しばかり物足りなかったが、暴れられて泣き喚かれるよりも余程楽だと思った。 部屋に戻ったら、まず何をしよう。酒を浴びるか、適当な物を胃に詰め込むか、気晴らしに拾ってきた女を犯してみるか。そういえば、人間の女を抱くのは久し振りだ。だが、体格に相応の逸物が備わっているヘルが相手では壊してしまうだろう。昔に囲った女も、慣らして慣らしてようやく挿入出来たほどだ。すぐに出来ないのが残念だが、それもまた面白いかもしれない。 どうせ飼うなら、慣らしてやらねば。 女の名は、葉月と言った。 だが、女は自分の名前以外のことを話さなかった。ヘルも知りたいとも思わなかったので、問い詰めることもなかった。ヘルは葉月を飼い始めたが、普通に囲っているのとなんら変わらず、接し方も飼い主と愛玩動物というわけではなかった。服を欲しがればいくらでも買わせ、外に出たければ連れ出し、物を食べたければ食べさせるが、ただ一つ制限を与えていた。 いついかなる時も、ヘルが求めてきたら拒むなと。月経を迎えていようが、空腹だろうが、眠かろうが、疲れていようが、お構いなしに組み伏せて服を引き剥がす。その中で葉月の体を慣らし、ヘルの逸物を受け入れられるように仕立て上げた。人間の体は、外骨格に覆われた昆虫人間に比べれば融通が利く。皮も伸びれば肉も広がるので、回数を重ねて拡張させた。 ヘルにとって、女とは暖かな袋だ。血と脂肪がたっぷりと詰まった肉の固まりでしかなく、執着を抱くほどの存在ではない。花屋の店員のような例外は彼女一人だけで、後は皆、同じだ。相手にしてきたのが水商売や淫売だからかもしれないが。 その日も、ヘルは朝方に帰宅した。用心棒の仕事は夜の仕事なので、夜行性であるカブトムシにとっては好都合だった。他の組から目を付けられているキャバクラに入り浸り、いい加減な味の酒を飲み、店で起きる些細なトラブルをねじ伏せる。そんなことを繰り返しているうちに夜が明け、判で押したように同じ化粧をした娘達が退勤したので、ヘルも帰ることにした。 アパートに戻ると、葉月は寝室である和室で大人しく眠っていた。水を求めて冷蔵庫を開けると、夕飯が作られていた。腹は減っていなかったので皿を手に取ることもなく、ミネラルウォーターのボトルを取ってキャップをねじ切り、流し込んだ。酒で膨張した胃袋に水が馴染み、染み渡ると、夜の間に煮詰まった体液も薄まったので、ヘルは腰を下ろして胡座を掻いた。 「落ち着かねぇな」 葉月を飼い始めたのはヘル自身だが、部屋に誰かが居るということに未だ慣れない。 「ああ、くそ」 冷蔵庫の中の夕食。他人の体温で僅かに暖まった空気。かすかな気配。それが、狂おしいほど息苦しい。 「おい」 空のペットボトルを投げ捨てたヘルは立ち上がり、乱暴に襖を開けた。 「あ…」 葉月は物音で目を覚まし、布団から身を起こしてヘルを見上げた。 「お帰りなさい、ヘルさん。ご飯、あるけど」 「いらん」 「そう、じゃあ…やっぱり、アレ?」 葉月は布団の上に座り、寝乱れた髪を指で整えた。ヘルが買い与えたパジャマを着ているが、大きすぎて袖が余っている。連れ込んだ当初は痩せぎすだった体も、まともに食べて寝させたおかげで肉付きが良くなり、顔付きもふっくらと優しくなった。人目を引くほどの美人ではないが、穏やかで愛想のある顔をしている。雰囲気も表情も、薄汚い淫売には似合っていない。日中の明るい公園で我が子の手を引いて歩いていたり、夕方の商店街で買い物をしていたりする方が、余程しっくり来る顔だ。 「そのままでいい」 ヘルは葉月を引き倒し、葉月の体温が強く残る布団に押し付けた。 「うん」 葉月は抗うこともなく、ヘルに覆い被さられた。大きすぎる襟元から覗く白い首筋に顔を埋め、舌を伸ばしてざらりとなぞる。カブトムシの舌は、元々は樹液を吸うための口が発達したものである。だから、舐めることよりも吸い取ることに長けている。葉月自身も意識していないほど薄く滲んだ汗を吸い、首筋から耳を舐め、髪に隠れた襟足をまさぐりながら、パジャマをめくる。肌着も着けずに寝ていたのか、すぐに乳房が現れた。乳房にも腹部にも、ヘルの顎によるいびつな噛み痕が付いている。たっぷりと丸い乳房には赤黒い線があり、まだカサブタが剥げていない。首筋から顔を上げたヘルは、その噛み痕を舐めた。 「ひうっ」 ざらり、ざらり、と硬い毛のような味覚器官が生えた舌をなぞり、ずりゅりとカサブタを引き剥がす。 「んぎっ」 古い血の下から新しい血が膨らみ、細く抉れた傷口が開いて肉の切れ目が露わになる。 「あ、ぁあ、いぁ、あっ…んっあぁっ」 少しずつ滲み出る血を吸うと同時に乳房の傷口を擦り取るように舐められ、葉月は両手足を突っ張ってシーツを歪めた。白い肌は痛みが生じた脂汗が伝い、葉月はきつく目を閉じていたので、ヘルはツノを上げて上左足で葉月の顎を掴んだ。 「俺を見ろ」 「ご、ごめんな、さいぃ…」 唇を歪めながら葉月が謝ると、ヘルはその頬に爪先を食い込ませてから、口元に一本の爪を差し出した。 「ん…」 葉月は素直に口を開き、ヘルの爪を口に含んだ。鋭利な部分に触れると舌を切ってしまうので、側面を丁寧に舐めた。葉月の唾液が滴るほど潤ったことを確かめてから、ヘルはその爪を下げ、既に脱がしておいた葉月の下半身に添えた。爪の先端で抉ってしまうと陰部もろとも肉が裂けてしまうので、べとべとに濡れた爪の背を葉月の性器に擦り付けてやった。乳房を舐め回している際に分泌された愛液が唾液に混じり、ぢゅぶぢゅぶと粘ついた泡を立て、葉月は甘い声を殺した。 「ん…ぁ…」 「どら」 ヘルは葉月の性器から爪を外すと、足を広げさせ、その太股に噛み付いた。 「ぐぇあっ!」 唐突に訪れた激痛に葉月は仰け反り、目を見開いた。ヘルは脂肪の付いた内股を噛み締める顎に、更に力を込めた。葉月は声にならない声を上げて自由の利く片足を撥ねたが、ヘルはその足を難なく押さえ付け、骨と筋の存在を感じた。このまま思い切り力を込めれば、筋肉も骨も噛み千切れるだろう。ヘルにはそれだけの力があり、葉月には防ぐ術はない。 「あ、ぅああああっ」 ヘルの顎を伝い、血が落ちる。赤黒い飛沫がぼたぼたとシーツに散り、汗の匂いに蛋白質と鉄の匂いが重なる。 「へぇ、へるさぁん、痛い、痛いよ、痛いよおおおっ!」 悲鳴にも似た愉悦を上げ、葉月は乳房を揺らして胸を上下させた。 「この辺はまだ噛んでなかったからな。痛覚が傷んでねぇんだろ」 楽しくなってきたヘルが笑みを交えて零すと、葉月は自由の利く左足を曲げ、ヘルの下右足に絡めてきた。 「ヘルさん、お願い…」 「言われるまでもねぇよ」 ヘルは葉月の内股から顎を外して血をぞんざいに拭ってから、陰毛の下でひくついている膣と赤く充血した肉芽を認めた。血と等しい温度の澄んだ体液がとろりと一筋溢れていて、血の飛沫がいくつも出来たシーツに無色の染みを新たに作った。恥じらいすらなく、葉月はヘルを見つめた。ヘルは食欲を呼び起こさせる血を飲み下してから、生殖器官を体内から出した。 「ああ、痛いんだ、痛いんだぁ…」 これから訪れる苦痛を期待し、葉月は弛緩した。妙な性癖だとは思うが、ヘルにとっては都合が良いので文句はなかった。色も形も大きさもビール瓶のようだと称された生殖器官を見せつけると、葉月は目を輝かせ、ヘルの下腹部に顔を埋めた。外骨格そのものを円筒形にしただけの生殖器官に何度もキスをし、舌を這わせながら、葉月は自身を淫らに慰めていた。だが、その方法は荒っぽい。三本の指を突っ込んでは引き摺り出し、を繰り返しているだけで、ヘルの方が余程丁寧だった。 「んふ」 顔や顎までべとべとに汚しながら口淫した葉月は、赤く濡れた唇を舐めた。 「足、開け」 ヘルが命じると、葉月は横たわり、真新しい傷口から血が溢れる太股を躊躇いもなく広げた。そこに、生殖器官を添える。 「ぅがあああぁっ!」 ずぶり、と一息で押し込むと葉月は汗ばんだ喉を反らし、目尻に涙を滲ませた。だが、まだ半分ほどしか入っていない。ヘルの生殖器官は、葉月の二の腕よりも一回りも太いからだ。全部収めたとしたら、葉月の腹は容易く割けてしまうだろう。現に、半分入れただけで葉月の下腹部には縦長の膨らみが出来ている。葉月はその膨らみを見、だらしなく頬を緩めた。 「あは…」 「そら、行くぞ」 ヘルは粘液の絡み付いた生殖器官を前後させると、葉月の上げる声が甲高くなり、涙と汗に涎を混ぜるようになった。シーツに縋っていた手をヘルに回し、物理的に奥まで入らない生殖器官を最深部に導くように、腰に足を巻き付けてきた。 「ヘルさぁん、ああ、ヘルさぁんっ!」 「お前は物好きだ」 呼吸も乱さずに葉月を責めながら、ヘルはその頬の汗と涙と舐め取った。 「痛いのがそんなにいいなら、いずれ手足を喰い千切りながら犯してやろうじゃねぇか」 「それ、きっと凄く気持ちいい…」 うっとりとした葉月は、ヘルの首に腕を回してしがみついた。 「だが、手も足もなくなっちまったら、誰がこの部屋を片付ける?」 「ひいんっ!」 ヘルが中両足で葉月の腰を掴んで捻ると、葉月は体を強張らせた。陰部から異音がし、拡張された入り口が少し裂けた。 「あ、あぐぁっうっ」 裂けても尚、ヘルが腰を捻り続けると、上半身を横に曲げた葉月は息を荒げた。 「そういうの、嬉しいの?」 「解らん」 捻った腰を元に戻したヘルは、葉月の体の上に這い蹲った。 「私も、解らない」 葉月は目を上げ、間近に迫ったヘルの漆黒の複眼を見つめた。 「そうか」 ヘルは触覚を揺らして汗の匂いを存分に味わってから、上両足で葉月を抱き寄せた。こうしなければ、深く入らないからだ。葉月はヘルの背に汗でぬるついた手を回し、苦痛を待ち受けた。中両足で腰も抱き寄せてから、ヘルは下半身をぐっと曲げた。足の中から上がる葉月の悲鳴が高ぶり、強烈な快楽に掠れていく。幾度も幾度も前後させると、葉月はヘルに噛み付いてきた。人間の顎では昆虫人間の外骨格に傷も付けられないので、いつも放っておく。よがるのは良いが、泣き叫ばれては面倒だからだ。 葉月は泣きながら、幸せそうに達する。一度だけで終わらせるのは惜しくなってしまったので、それからも何度も責め立てた。葉月の内股の傷から流れる血が止まっても、シーツに付いた体液が乾いても、カーテンから差し込む日差しの色が変わっても。 事を終えたのは、再び夜が始まりかけた頃だった。布団の上に横たわる葉月は傷だらけで、新たな傷がいくつも出来ていた。ヘルは血も体液も拭い取らずに葉月の傍に胡座を掻き、水の入ったコップを渡すと、葉月は怠慢に起き上がってコップを受け取った。喉を鳴らして水を飲み干した葉月は、涎と涙が乾き切っていない頬を手の甲で擦り、枕元に投げ捨てられたパジャマを取った。 「そういえば、今日、何も食べてなかった」 パジャマの上だけを着た葉月は、全身の虚脱感に紛れそうになっていた空腹に気付いた。 「俺もだ」 酒が抜けていなかったせいで、感じなかったのだ。タバコに火を灯しながらヘルが呟くと、葉月は言った。 「でも、お腹一杯」 「何がだ」 「痛いのが」 葉月はとろりと顔を緩め、真新しい噛み痕が目立つ内股に触れた。 「色んな人に一杯お金をあげて、一杯一杯痛くしてもらったけど、ヘルさんのが一番痛くて大きいから好き」 「お前、どうしてそこまでされたがるんだ? 散々しておいて何だが」 「私、空っぽだから。何も出来ないのに、色んなことが怖いから。だから、痛いと嬉しいの。生きてるって感じるから」 「解らないでもない」 ヘルは触覚を汚す紫煙を感じながら、平坦に答えた。外骨格が焼け付くような危険に身を晒していれば、生を感じられる。だから、いつまでたっても足を洗えない。ヤクザ同士の抗争や縄張り争いに噛むのは、危うい世界に浸っていたいからだ。この世界には、ヘルの身の置き場はない。元々は観賞用として日本に密輸入された幼虫で、羽化した直後に脱走したのだ。親の顔も知らず、故郷の土の味も知らず、同胞の名も知らない。我が身にあるのは凶暴さと強靱さだけで、他は何もない。争いを求めるのは、せめて痛みは知りたいからだ。共通項が出来たな、と、ヘルは妙なところで喜んだが、腹の内に止めた。 「立てるか」 ヘルが葉月を見やると、葉月は腰をさすった。 「まだ、だるい」 「だったら、しばらく休んでろ。昨日の夕飯でも温めてやる」 「え、でも…」 葉月が意外そうに目を丸めると、ヘルは襖を開けた。 「俺はお前を飼ってるんだ」 襖を閉め、ヘルは一人恥じ入った。酒は抜けたはずなんだが、と自嘲したが、きっと性交の高揚感が抜けていないのだ。これまで、葉月を慣らすために何度か抱いたが、時間が経つのも忘れて犯したのは初めてだ。だから、それだけのことだ。 「ヘルさん」 襖が細く開き、葉月が顔を覗かせた。疲れ、汚れてはいたが、葉月は嬉しそうだった。 「んだよ」 照れ隠しにヘルが語気を荒げると、葉月は襟元を直して肌を隠した。 「ご飯、一緒に食べよう?」 「…仕方ねぇな」 ヘルが苦々しげに吐き捨てると、着替えるね、と葉月は襖を閉めた。ヘルはタバコを噛み潰し、灰皿にぐりぐりと埋めた。余計なことを言うんじゃなかった、と後悔したがもう手遅れだ。仕方なく、一日遅れの夕食を準備しようと冷蔵庫を開けた。二人とは裏腹に一日中冷え切っていた料理を取り出し、電子レンジで温め返しながら、ヘルは葉月が出てくるのを待った。 葉月の体温によって暖められたヘルの体温が入り混じった生温い空気を、火を消し損ねたタバコから上る紫煙が汚した。温まりつつある夕食。葉月の体温で緩やかに温まった空気。確かで甘ったるい気配。そのどれもが、狂おしいほど悩ましい。 飼い慣らされたのは、葉月だけではなさそうだ。 ↑ 名前 コメント すべてのコメントを見る タグ … 人間♀ 和姦 昆虫類 !859◆93FwBoL6s. *人外アパート
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人間考察 ◆NQqS4.WNKQ 「お前…・・・『何だ?』」 橙色の着物に、赤いジャンバーというミスマッチな格好をした女の人の声が、僕に投げかけられる。 その酷く冷静な声は、僕が何度も繰り返してきた自問を、再び思い起こさせた。 ……僕は、何なんだろう? この世には、『紅世の徒』という、名の歩いて行くことのできない隣の世界、『紅世』からの来訪者達が居る。 彼らは、人間や徒が存在するのに必要なエネルギー『存在の力』を求めてこちらの世界にやって来る。 そして、存在の力を求めて……人を食らう。 いや、ある意味ではもっと酷い、彼らが食べるのは、肉体ではなくて、文字通り存在するための力であり、その力を食われた人間は、この世から『欠落』する。 彼らは元々そこに居なかった事になり、家族の居ない子供や、住む人の痕跡すら無い空家といった歪んだ欠落のみを残して消え、その事を誰一人気にも留めない。 この世からの完全なる喪失、それが紅世の徒に食われた人間の、末路。 ただ、彼ら徒も、こちらの世界で好き勝手に人を食らえるという訳では無い。 彼らの住む紅世と、僕たちの世界は、隣り合い互いに支えあっている二つの家のようなものらしく、片方が崩れれば、もう片方も滅び行く、という構図らしい。 その事に気がついた徒たちは、こちらの世界に現れた徒たちに、存在の力の乱獲を止めるように忠告した、けれどこちらの世界で自遊気ままに力を振るうことを覚えた徒たちは、その言葉には従わなかった。 そうして、世界のバランスに思い悩む徒たちは、ある決断をする。 自分たちも世界を渡り、自遊に力を振るう徒たちを討滅する、という苦肉の決断を。 ただし、弱い徒が世界を渡っても意味が無い、行くならば徒の中でも『王』と称される強い徒が行かなければならない。 だが、強いという事は相応に大量の存在の力を必要とする事であり、それは結局は世界のバランスを崩してしまう。 そこで生み出されたのが、彼ら王が人間の内に宿る、という方式だ。 人間が、自らの全ての可能性たる存在の力を捧げ、王がその人間の器に宿る。 王自身は紅世にあり、彼らと契約した人間が、自身の存在の力を消費してその力を借り受け、徒を討滅する。 人と徒の間のゆらぎのような存在『フレイムヘイズ』の誕生であった。 フレイムヘイズは徒が存在の力を食らえば、その反応たる世界の歪みを感知出来る。 存在し、力を振るうには人を食わねばならず、食えば敵を呼び寄せる、そこで、徒たちは一つの方法を編み出す。 食らった人間の一部、『トーチ』という食いカスのようなものを残すのだ。 トーチは残されたわずかな力しかなく、当然遠からず消滅するが、元々そこにあったものが緩やかに消滅するというプロセルを経る為、世界に大きな歪みを生み出しにくい。 無論大量に食らえばその限りではないが、それでも世界の歪みを感知するフレイムヘイズには感知され難い。 そして僕、坂井悠二は……そのトーチだ。 世界の真実など知らず、己が食われた事にも気がつかず、遠からず消滅していくだけだった筈の存在。 そうあの日、全てが静止した空間の中で、彼女、フレイムヘイズ、『炎髪灼眼の討ち手』に出会うまでは。 名前はシャナ……僕が、名づけた。 あの静止した空間、フレイムヘイズと紅世の徒が、自分たちの存在を世界から隠す為に展開する結界、『封絶』の中で、僕は消えかけていた。 正確に言うなら、その時すでに僕という存在自体は食われ、トーチが残されていただけのだけど、その僕の中に、ある『秘宝』が転移してきたのだ。 秘宝とは紅世の関係者など、存在の力を操ることの出来る者が作り出す、力を持つ道具の事で、それらの内幾つかは持ち主が奪われそうになったときに、とっさにトーチの中に隠される事がある。 そのトーチが自然消滅した時にはまた何処か別のトーチの中に、と延々と流転していくという仕組みで、僕が食われた時に、その一つが偶然、僕の中に転移してきたという訳だ。 そうして、封絶の事を認識できるようになった僕だけど、その時にはまた別に危機が迫っていた。 何しろ、封絶の中で動く存在という異常故に、僕を食べた怪物、『とある紅世の王』が作った僕に、再び食われそうになり、そこをシャナに助けられた。 その後は僕の中にある秘宝を放っておく訳にはいかないという事で、僕の事を食べた王を討滅するまでの間、シャナと彼女に力を貸している『王』、アラストールに保護(?)される形になって、そして僕は紅世に関する事実を知った。 そうして、紆余曲折の末、その王はシャナとアラストールに討滅され、僕はその時の戦いで残り少ない存在の力を消費して、消え去る……とはならなかった。 僕に宿った秘宝は『零時迷子』という名前で、その能力は『午前零時に前の日の午前零時の状態にまで存在の力を回復する』というもので、その力によって僕は未だにこの世界に存在し続けている。 その後にも色々な出来事があったのだけど、その中で僕は自問する事になる。 僕は、人間か、否か。 零時迷子は、確かに僕を消滅の危機から救ってはくれたけど、同時にもう一つの問題を残していた。 つまり、僕の身体は、永遠に同じ一日を繰り返している状態、わかりやすく言うと、不老の存在になったのだ。 紅世の徒や、フレイムヘイズと同じ。 僕は、短時間の消滅に怯える事は無くなった代わりに、いつかは人の世界では暮らしていけなくなる存在になった。 だから、僕は少しずつだけど、シャナ達と同じような存在のような自覚を得始めていた。 でも、ある時クラスメイトの一人、吉田さんは、僕の事をが好きだと、人間だと言ってくれた。 いや、吉田さんだけじゃなくて、ひょんな事から紅世に関わった佐藤や田中も、僕の事を坂井悠二だと受け入れてくれた。 いずれ捨てなければならない筈の、当たり前の生活、それを捨てなくてもいいんじゃないかと、そういう考えも、浮かんできた。 だから、僕は悩む。 僕は人間か、否か。 ◇ 人一人居ない街。 居心地の良さを感じなくもない空間の中で出会ったそいつは、最初何なのか判らなかった。 死体に宿った悪霊というものを昔に見たが、それに近い『人の姿をした壊れやすい何か』であり、それでいて間違いなく生きた人間。 中身が普通じゃないモノは色々見てきたけど、外見からして異常極まりない、生きた普通の人間、というのは初めてお眼に掛かった。 「へえ、トーチにミステス、か」 そいつ、外見に特に特徴のない、坂井悠二というヤツの話はまあ面白かった。 微妙に信じにくい話ではあるのだが、目の前に実物がいるのだから本当なのだろう。 何となくだが、興味を引かれる。 紅世の徒というのは、『この世界』の存在ではないという事だ。 前にトウコはこの世界には外があり、そこを目指すのが全ての魔術師の目的だと言っていたが、あるいはソコからの来訪者、という事なのかもしれない。 「君は、紅世の関係者じゃないの?」 「さあな、少なくともオレにはその存在の炎とやらは見えない。 判るのは、お前の見た目が普通の人間とは違うという事くらいだ」 悠二が色々と聞いてくるが、私はその紅世とやらとは関係無い。 私はただ、『見える』だけだ。 トウコ曰く、根源と繋がっているとかいうこの目は、あらゆるものの『線』を見通す。 それが人であれ、物であれ、形無い物であれ、そこにあるものなら何でも『壊せる線』 この世に誕生した時から内包しているという『死』そのものを見ているとか、まあ理屈はどうでもいい。 ようは、この目はあらゆる存在の死が見える。 「けど、そういう風に見えるって事は、やっぱりここにいる僕は幽霊みたいなものなのかな」 「幽霊? そんなものはそこいらじゅうに居るがお前とは違う。 連中には、生きているものに介入する力なんて無い。 何故って死んでいるんだからな。 お前はこうして現実に生きて喋っている、だからお前は幽霊とは違う」 私の見た坂井悠二像に、コイツはこんな感想を返して来た。 人間のようで、壊れやすいのだから意味的には近いが、近いだけだ。 『死んだ』モノは、もう『生きている』モノに戻る事は無い。 たまに間違えて動き出したり、死んだまま存在しているモノが居たりはするが、それは断じて『生きた』人間では無い。 「けど、僕は運よくこうしていられるけど、元々はそのまま消滅する筈だったモノで」 「別に世の中余命何ヶ月なんてヤツは山ほどいる。 寿命が何年あろうが事故で死ぬヤツはもっと山ほどいる、それだけの話だろ」 「違うよ、全然違う、トーチの最期は死じゃなくて消滅なんだって。 誰の……紅世の関係者以外の記憶に残らずに、この世から零れ落ちるんだ」 「奇特なヤツだなお前、自分が死んだ後に他人にどう思われるか何てどうでもいいだろ」 「……え?」 「死んだ後に自分がどう思われるか何て、『そんな事』確認仕様も無い。 なら、別に死ぬのも消滅するのも本人からすれば一緒だろう」 そう、死というのモノは二度と戻れない、捕まれば這い上がる事も出来ずに引きずり込まれる。 ああ、あれに捕まる事を思えば、生きているというのはどれだけ光溢れていることだろう。 生を失うという点では、死だろうが消滅だろうが、本人からすれば何一つ変わらない事象でしかない。 そういう意味でいうなら、悠二は間違いなく今ここに存在している。 「え、いやそれはそう……だけど。 でも、自分の事を誰も覚えていてくれないと言うのは、怖いと思わない?」 「さあな、悪名だけ残すよりはむしろマシな死に方かもしれないぞ? どちらにしろ、おまえ自身にはどうしようも無い事だろ、なら考えても仕方が無い」 「…………」 悠二が呆然とした感じで私の事を見てくる。 けど、そもそも私は普通の人間て訳じゃない。 私の中はとうに伽藍堂で、人間としてどうのこうの何てモノは存在していない。 人間として壊れてるヤツに人間的な感覚を問うなんて間違いだ。 「ああ、確かにお前という器は人間では無い別の何かだ、だけどそれが何だって言うんだ? 肉体的にはヒトでなくても、人間として生きているヤツだっているし、人間の姿形をしたまま、人間を止めるヤツだって山ほどいる。 結局、普通の人間というのは生物でなくてあり方なんだよ。 他者を何十人と殺せば、殺人鬼と、あたかも人間とは違うものとして扱われる、肉体自体がどうとか関係無くな。 そういう連中に比べれば、トーチだとかは関係なくお前は普通の人間だ」 そして、違うものとして扱われる私から言わせれば、悠二はどこまでも普通の人間だ。 何かしらの人間には無い力くらいは持っていそうではあるが、それだけ。 殺しても面白くない、普通で無い身体の、普通の人間でしかない。 「……僕は、人間でいて、いいのかな?」 「わからない奴だな。 お前は人間としての生を詰め込んで来て、そうして周りの人間も、お前を人間と、同胞として扱っている。 ならそれでいいだろう。 トーチだとかそんなものは、それとは全く別の事柄でしか無いんだよ。 お前が考えるべきなのは人間で『いていいのか』じゃなくて、人間で『いたいか』どうかだ」 だから、悠二というかミステス、いやトーチか、が人間か何て、決めるのは本人以外の何者でもない。 魔術師なんていう胡散臭い連中が人間として折り合い付けて普通に暮らしているし、どこまでも普通の人間が、どこかネジが外れて人間をやめたりする。 入れ物がどうとかじゃなくて、決めるのは本人の心持ちだ。 ……そして、コイツは多分そんな事はとっくに理解している、理解して、それで答えに迷っている。 その答えによっては、私はコイツを殺したくなるのかもしれない。 ◇ もう用は無いと思ったが、向こうはそうでは無いらしい。 そして、そういえば名乗ってもいなかった事を思い出す。 「オレは式だ、両儀式」 「そう、両儀さん、僕はさっきも名乗ったけど坂井悠二」 「式でいい」 悠二の方が年下なんだろうが、それで呼び名を変える理由も無い。 多分悠二は私の事同じくらいの年だと思っているだろうが、訂正する必要も無い。 「そう、式さん。 式さんはこれから、どうするつもりなの?」 「オレの目的? そんなの決まっている、あの変なのを殺す」 ああ、私の目的なんて、最初から決まっている。 トウコのところで割と長い間仕事を手伝わされてきたが、実際に人を殺せたのは数えるほど。 元々相手が人間でなかったり、殺したいと思える相手がいなかったりと満足できない状態だった。 そして、今回のあれは、今までに無いくらい殺したい相手だ。 だから、アレは私が殺す。 「えーと、何か心当たりでもあるの?」 「そんな物ある筈無いだろ。 オレは視る事しか出来ない、なら視て周る以外にする事なんて無い」 「力技だなぁ……」 「そうだな」 別に何時もの事だ。 私の役割は視ることで、捜したり考えたりするのは別のヤツの仕事だ。 「オレの知り合いに、黒桐幹也っていうフランスの詩人みたいな名前の奴が居る。 あいつは探し物に関してだけは一流だから何とかなるだろ」 そうか、そうなるとまず幹也を捜さないといけない。 そういうときに頼りになるのはトウコの奴なんだが、果たしてアイツはいるのか。 後は鮮花は出来れば会いたいとして、浅神藤乃は……今更興味は無い。 ……それはそれとして、だ。 「お前、まだオレに何か用か?」 「用って訳じゃないけど、目的としては一致しているのだし、一緒に行動しても良いんじゃないかな……?」 目的の一致、か。 悠二の言う、フレイムヘイズ達もアレを倒したいと思うのは間違い無いそうだが。 ただ、私は殺したいから殺す、悠二達は世界のバランスを守る為に殺すと、手段は同じだが目的には大きな開きがある。 まあそのくらいは別に大した違いでも無い。 ただ、そのフレイムヘイズという連中が殺したいと思える相手だとすると困るが。 「僕を力づくで止める?」 「いや、別に好きにしたらいい。 一緒にいて特に不快になるわけでも無いしな」 言いながら、先ほど悠二が告げたように、私も鮮花と幹也の特徴を告げる。 シスター服を除いても鮮花は基本的に人目を引く。 対して、幹也は黒い眼鏡で多分黒い服を着ている事くらいしか特徴の無い奴だ。 まあ悠二もどこかの制服くらいしか特徴の無い奴ではあるが。 「……ああ、そうか」 要するに、悠二も幹也並みに普通な、変な奴だ。 そう考えると、私について来ようとするのも変では無いのか。 【B-6/一日目・深夜】 【両儀式@空の境界】 [状態]:健康 [装備]:無し [道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品1~3個 [思考・状況] 基本:主催者とやらを殺す。 1:黒桐幹也、黒桐鮮花を捜す。 2:坂井悠二が付いてくるなら好きにさせる。 3:フレイムヘイズというのに興味、殺せるならば……? ◇ 「決めるのは僕……か」 いや、それは判っていた事かもしれない。 ただ、選べなかった、選びたくなかったんだ。 シャナと一緒に戦うか、吉田さんを守るか、 自分自身でも情けなくなるほどに、僕は決めかねていた。 ……けど、そう遠くない、僕はその選択をしなければいけない。 【坂井悠二@灼眼のシャナ】 [状態]:健康。 [装備]:無し [道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品1~3個 [思考・状況] 基本:シャナ、吉田一美、ヴェルヘルミナを捜す。 1:当面は他の参加者と接触しつつ、情報を集める。 ※清秋祭~クリスマスの間の何処かからの登場です(11巻~14巻の間) 投下順に読む 前:忍法 魔界転生(にんぽう しにびとがえし) 次:とある舞台の人間失格 時系列順に読む 前:Sleeping Beauty 次:とある舞台の人間失格 両儀式 次:天より他に知るものもなし 坂井悠二 次:天より他に知るものもなし
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統和機構が人工的に作り出した、特殊能力を持った人間のこと。 人工的にと一口に言えど、0から人を作り出されたタイプ、普通の人間を改造したタイプなどがある。 「戦闘型」「洗脳型」「索敵型」などのタイプが存在する。どのタイプでも共通な点として、人並み外れた身体能力、回復能力があげられる。 また味覚がないわけではないが、味と感動が結びつかないものが多い。 合成人間を作る技術は、統和機構の他にも存在する。 基本的に合成人間は、統和機構に所属している。だが他の場所で作られた者、組織を抜け出した者も若干名存在する。 普通より製作費用の多い 特別製(スーパービルド) と呼ばれる合成人間も存在する。 能力は"科学的に説明できる力"を人間に付加したものがほとんどである。特に体内から攻撃性のある液体を放出するワイバーンタイプ、ラッチェバムなどの振動を発生させるタイプが多い。 対してMPLSの能力は、科学的に説明できない。しかし、合成人間の中にも完全には説明できない者は存在する。 合成人間の中にもMPLSに目覚める者がいる。 コメント ビートのディシプリン ブギーポップシリーズ 基礎用語 統和機構