約 1,177,114 件
https://w.atwiki.jp/horaimystery/pages/13.html
2010年度「このミステリーがすごい!」 ●第1位・・・『新参者』東野圭吾(著) 立ちはだかるのは、人情という名の謎 日本橋の片隅で発見された四十代女性の絞殺死体。 「なぜ、あんなにいい人が」と周囲は声を重ねる。 着任したばかりの刑事・加賀恭一郎は、未知の土地を歩き回る。 「この町のことを思い浮かべるだけで、忽ち様々な人間が動きだした。そのうちの一人を描こうとすると、そばにいる人々の姿も描かざるをえなくなった。まる でドミノ倒しのように、次々とドラマが繋がっていった。同時に謎も。最後のドミノを倒した時の達成感は、作家として初めて味わうものだった」――東野圭吾 東野圭吾作品の中でも、「加賀恭一郎シリーズ」はかなり好きなので、迷わず購入しました。 この小説の舞台は日本橋。 その一角で起こった絞殺事件を調べるべく、着任したばかりの加賀刑事は日本橋界隈のさまざまな場所に出向いていきます。 ただし、「営業マンの上着」から始まり、加賀刑事の見事な洞察力はそれまでの作品同様に見ることができますが、事件そのものの真相は、それほどビックリするようなものではありません。 しかしそれよりも印象深いのが、日本橋界隈の人々や、加賀刑事自身が見せる「人情」です。 全九章ありますが、第一章~第八章までそれぞれ、加賀が訪れる日本橋の8か所が舞台となっています。 そして事件の調査のために訪れた加賀が、その手掛かりをつかむ様子だけでなく、彼の働きによってそこに隠されていた人々の「大切な人への想い」が前面に出てきたり、通い合っていなかった心と心が再び交流を始める様子などが描かれ、読んでいて非常に心温まりました。 どれも事件の解決に向けての「通過点」の一つに過ぎないのですが、結末が非常によく、それぞれの章がエピソードとして独立して成り立っています。 そして第九章のラストも、「心を通わせていたつもりが実はそうでなかった」という点では非常に考えさせられました。 ↓ 【アマゾン】『新参者』東野圭吾(著) 【楽天】『新参者』東野圭吾(著)
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/115.html
2011年11月9日 『韓国ミステリ史 第二章』では、1940年代から1960年代までを扱っている。 目次 金来成(キム・ネソン)簡略紹介 第二章 1940年代~1960年代: 金来成(キム・ネソン)後の忘れられた作家たち第一節 戦前~戦後の読書事情 第二節 日本や欧米の作品の翻訳・翻案(1)金来成による翻訳・翻案 (2)パン・イングン(方仁根)による翻案 (3)その他の翻訳・翻案 第三節 1940年代~1960年代の創作探偵小説(1)金来成が戦後に発表した探偵小説 (2)1960年代に活躍したホ・ムンニョン(許文寧) (3)1960年代の『週刊韓国』長編推理小説公募 (4)推理小説を積極的に執筆した文学作家のヒョン・ジェフン(玄在勲) 第四節 邦訳された1940年代~1960年代の韓国推理小説 参考文献 金来成(キム・ネソン)簡略紹介 韓国ミステリ史 特別編 - 金来成(キム・ネソン)(1909-1957)【1】 韓国ミステリ史 特別編 - 金来成(キム・ネソン)(1909-1957)【2】 以上の2つの記事を未読の方は、金来成についての以下の簡略紹介をご覧になってから第二章にお進みください。 金来成 (きん らいせい、キム・ネソン、1909-1957) 1909年、平壌(ピョンヤン)近郊に生まれる。平壌の学校で英語教師(後に翻訳家)の龍口直太郎(たつのくち なおたろう)の授業を受け、探偵小説の魅力を知る。21歳から26歳まで日本に留学。早稲田大学法学部独法科在学中の1935年、探偵雑誌『ぷろふいる』(1933-1937)に「楕円形の鏡」が掲載されデビュー。同年には、同誌の創刊二周年特別懸賞募集に投じた「探偵小説家の殺人」も入選し掲載された(ほかの同時入選作は、光石介太郎「空間心中の顚末」など)。日本語で発表した創作はほかに、雑誌『モダン日本』(1930-1951)の懸賞ショートストーリー募集に入選したユーモア掌編「綺譚・恋文往来」(こちらで全文公開している)がある。 『ぷろふいる』でのデビュー後は、探偵作家の光石介太郎が同誌デビューの作家に声をかけて結成したYDN(ヤンガー・ディテクティブ・ノーベリスト)ペンサークルの会合に出入りした。また、江戸川乱歩を師と仰いでおり、乱歩邸を訪れたことも二、三度あった。乱歩によれば、金来成は「非常な感激屋で、情熱家で、文学青年であった」(「内外近事一束」『宝石』1952年9・10月号)という。 金来成が日本で発表した2編の探偵小説は本格謎解きもので、中島河太郎も『ぷろふいる』から出た新人の中で金来成には特に注目していたようである(『日本推理小説史』第九章「ぷろふいる」五年史)。しかし、金来成はデビュー1年後の1936年春、早稲田大学を卒業すると朝鮮に戻る。以降は金来成は朝鮮語(韓国語)で作品を発表し続けたが、その作品は一作も邦訳されておらず、彼がどのような作品を書いていたのかは日本ではほとんど知られていない。 朝鮮に戻った金来成は、日本で発表した「探偵小説家の殺人」を翻訳改題した「仮想犯人」(1937)を皮切りに、「狂想詩人」(1937)、「復讐鬼」(1938)、「異端者の愛」(1939)、「屍琉璃(しかばねるり)」(1939)、「白蛇図(はくじゃず)」(1939)、「霧魔」(1939)(こちらで翻訳公開している)、「第一夕刊」(1940)、「秘密の扉」(1941)などの短編探偵小説(多くは変格物)や、ベストセラーとなった長編通俗探偵小説『魔人』(1939)、『台風』(1943)、さらには少年向けの探偵小説『白仮面』(1937-1938)、『黄金窟』(1937)などを発表。また同時期に、『赤毛のレドメイン家』の翻訳や、ホームズ物、ルパン物の翻案を行った。朝鮮半島に探偵小説を広めるため、まさに韓国の乱歩と言っていいほどの八面六臂の活躍をしたのである。 金来成の作家生活は約20年だったが、後半の10年は主に大衆文学を執筆しており、探偵小説の創作は少ない。戦後の探偵小説作品としては、日本語で執筆したまま未発表だった長編探偵小説『血柘榴』を原型とする『思想の薔薇』(1955)や「罰妻記(ばっさいき)」(1949)などのほか、『巌窟王』、『鉄仮面』、『ルルージュ事件』の翻案などがある。 金来成は朝鮮に戻ってからも乱歩に手紙を送っていた。それは戦争で一度途切れるが、1952年からは再び乱歩と文通を開始している。金来成は旧友と会うことや探偵作家クラブ(現・日本推理作家協会)の見学を望んでいたが当時の情勢では渡航は難しく、探偵作家クラブが韓国政府に金来成の来日を認めるよう手紙を送ったが、結局来日は実現しなかった。また、金来成は自作を翻訳して日本の探偵雑誌に掲載することを望んでいたが、これもどうやら叶わなかったようである。 金来成は1957年、脳溢血のため死去。人気作家として大衆文学のベストセラーを連発しているさなかのことだった。生誕100年となる2009年を迎えて以降、韓国では長編『魔人』の復刊や新編集の短編探偵小説集の刊行などがあり、金来成の探偵作家としての再評価が進んだが、日本ではほとんど知名度がないというのが現状である。 第二章 1940年代~1960年代: 金来成(キム・ネソン)後の忘れられた作家たち 第一節 戦前~戦後の読書事情 1952年に金来成(キム・ネソン)が江戸川乱歩に送った手紙で、韓国の当時の推理小説事情を知ることができる。おそらく、金来成が韓国(朝鮮)に帰った1930年代後半~1940年代初頭のころの状況を説明したものだと思われる。 江戸川乱歩(1952)「欧亜二題」 次に現代の朝鮮探偵小説については、金君は左のように書いている。 「結局一般読者が探偵小説を認識しはじめたのは、欧米からではなく、日本から輸入されたものにあったと思います。それには欧米のものの翻訳と創作とを含みますが、ポー、ルブラン、ドイル、ガボリオなどをはじめ、江戸川乱歩、森下雨村、水谷準、大下宇陀児、横溝正史、小酒井不木等の諸氏の作品が入って来ました。中にもルパン(ルブランではないのです)と、江戸川乱歩(明智小五郎ではないのです)と、ホームズ(ドイルではないのです)が大いに受けました。昔の黒岩涙香を知っていたのは私一人であったかも知れません」。 ポーやルブラン、ドイル、ガボリオなどは確かにこの時期にすでに韓国語に翻訳されていたようだが、引用中に名前が挙がっている日本の作家、江戸川乱歩、森下雨村、水谷準、大下宇陀児、横溝正史、小酒井不木らの作品が韓国語になっていたのかは分からない。1930年代以降、朝鮮半島では、日本の大衆雑誌『キング』(Wikipedia)や少年向け雑誌『少年倶楽部』(Wikipedia)などが日本語のままで若者の間で広く読まれていた(南富鎭「『キング』と朝鮮の作家」(2005))。おそらくは、日本の探偵作家の作品は翻訳されたのではなく、そのまま日本語で読まれていたのだろう。たとえば江戸川乱歩は、『キング』には『黄金仮面』(1930-1931)、『鬼』(1931-1932)、『妖虫』(1933-1934)、『大暗室』(1936-1938)を連載し、『少年倶楽部』には1936年から1940年にかけて少年探偵団シリーズを連載しているが、これらは日本のみならず朝鮮半島でも読まれていたことになる。【注1】 なお、金来成は1937年に少年向け探偵小説『白仮面』と『黄金窟』の連載を始めている。金来成にこのような少年向け探偵小説の依頼が来たのは、あるいは江戸川乱歩の少年探偵団シリーズの人気を受けてだったのかもしれない。また、江戸川乱歩が少年探偵団シリーズ第二作『少年探偵団』を『少年倶楽部』に連載したのは1937年だが、翌1938年には韓国を代表する文学作家のパク・テウォン(朴泰遠)(박태원)(1910-1986)(Wikipedia)が、少年向け探偵小説『少年探偵団』(소년탐정단)を雑誌『少年』に連載している。 戦後の韓国では正式なルートで日本の本や雑誌が入ってくることはなかったようだが、闇で入ることがあり、金来成は1946年に創刊された日本の推理雑誌『宝石』などを韓国で読んでいた(江戸川乱歩「内外近事一束」(1952))。 南富鎭(なん ぶじん)氏は戦後の韓国の読書環境について以下のように書いている。 南富鎭(2011)「松本清張の朝鮮と韓国における受容」 松本清張文学の韓国での受容を論じる際に不可欠な要素になるのが翻訳の問題である。しかし、日韓においてはこれ以外の大きな問題がある。植民地期の日本語教育、あるいは自発的な日本語の習得から、翻訳を通さずに原文をそのまま読める層が幅広く存在しているからである。【中略】松本清張が活躍しはじめる一九五〇年代、あるいは一九六〇年代には、日本とほぼ同時で清張の作品に接した日本語読者層が韓国にかなり存在していたと言える。翻訳の必要性はなく、日本語のほうがかえって理解しやすいという読者層である。当時の読者層を支えた知識人層が一般的にそうであったと思われる。後にハングル世代が増えていくに従って、また彼らが読者層の主流を占めることになるに従って翻訳の必要性が生じてくる。 また、韓国推理作家協会のチョン・テウォン氏は1950年代の韓国について、日本語からの重訳でルパンやホームズ、ポーが訳されたと紹介した後で以下のように書いている。 鄭泰原(チョン・テウォン)(2000)「韓国ミステリ事情」 日本の推理小説自体は反日感情があり、ほとんど出版されることはなかった。かろうじて韓国作家による翻案という形で出版されていただけだった。 少なくとも1950年代までは、以上のような要因から、日本の推理小説の翻訳は韓国では出版されなかったようである。韓国の作家による日本の探偵小説の翻案にどのようなものがあったのか気になるが、それについての資料は見つけられなかった。 注1:少なくとも雑誌『キング』は台湾でも読まれていたようである。中島利郎「日本統治期台湾の「大衆文学」」(2002)参照。 第二節 日本や欧米の作品の翻訳・翻案 (1)金来成による翻訳・翻案 1935年に日本の探偵雑誌『ぷろふいる』でデビューした金来成(きん らいせい/キム・ネソン、1909-1957)は、1936年に韓国(朝鮮)に戻ってから探偵作家・大衆小説作家として活躍した。金来成は戦後になると一般向けの創作探偵小説はほとんど発表しなかったが、少年向け探偵小説や翻案探偵小説は発表した。 金来成についての記事と重複するが、金来成による翻訳・翻案小説のリストを掲げておく。 金来成が翻訳・翻案した作品(韓国での単行本刊行順) 【韓国の国文学研究者パク・チニョン(박진영)氏のブログ記事「金来成略年譜(간추린 김내성 연보)」および「金来成著書目録(김내성 작품집 목록)」を参考にしている。この2つはパク・チニョン氏の研究の成果であり、2009年に韓国で刊行された金来成の翻案小説『真珠塔』(パク・チニョン編)に付録として掲載された】 年 著者 一般的な邦題 韓国語タイトル 1940年 イーデン・フィルポッツ(英) 『赤毛のレドメイン家』 『赤毛のレドメイン一家』(홍두 레드메인 일가) 翻訳 1947年 アレクサンドル・デュマ(仏) 『巌窟王(モンテクリスト伯)』 『真珠塔』(진주탑) 翻案 1947年 コナン・ドイル(英) (ホームズ物5編) 『深夜の恐怖』(심야의 공포) ※短編集 翻案・翻訳 1948年 モーリス・ルブラン(仏) 『奇巌城』 『宝窟王』(보굴왕) 翻案 1948年 エミール・ガボリオ(仏) 『ルルージュ事件』 『魔心仏心』(마심 불심) 翻案 1949年 フォルチュネ・デュ・ボアゴベ(仏) 『鉄仮面』 『秘密の仮面』(비밀의 가면)【少年向け】 翻案 1954年 ジョンストン・マッカレー(米) 『黒星(くろぼし)』 『黒い星』(검은 별)【少年向け】 翻訳? 『真珠塔』はラジオドラマの脚本として書かれたもので、放送翌年の1947年に単行本化された。これは『モンテクリスト伯』の翻案作品であるが、おそらく『モンテクリスト伯』(1844)を翻案した黒岩涙香の『巌窟王』(1901)を再翻案したイ・サンヒョプ『海王星』(1916)をさらに翻案したものだと思われる。この『真珠塔』は大ヒットし、のちに漫画化されたりテレビドラマ化されたりもしている。2009年には約50年ぶりに再刊された(『真珠塔』2009年版)。 金来成の訳業についての詳細は、「韓国ミステリ史 特別編 - 金来成 第一章 第三節 (2)翻訳・翻案」を参照のこと。 (2)パン・イングン(方仁根)による翻案 パン・イングン(方仁根)(방인근)(1899-1975)は戦前から恋愛小説などで有名だった文学作家。日本の中央大学卒業。戦前には探偵小説に近い長編小説『魔都の香火』(1934)を発表しているほか(韓丘庸「翻訳時評 「韓国ミステリー」の課題と展望(1)」参照)、ルブランの『813』等の探偵小説の翻訳もしていた。 1940年代後半から1960年代半ばまで、チャン・ビホ(張飛虎)(장비호)探偵シリーズを断続的に発表した。これは李建志氏によれば、「実はコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」を翻案したもので、残念ながら独自の作品とはいいがたい」という(李建志2006)。パン・イングンは戦後も多数の作品を発表しているが、すべての作品がホームズ物などの翻案だったのか、それとも創作も含まれていたのかは分からない。 韓国国立中央図書館の蔵書探偵小説『復讐』(복수)(1948) 探偵小説『放火殺人事件』(방화살인사건)(1949) 探偵小説『悪魔』(악마)(1949) etc... (3)その他の翻訳・翻案 1950年代半ばから人気を集めた大衆雑誌には創作推理小説だけでなく翻訳の推理小説も多く掲載された。 南富鎭(なん ぶじん)氏の調査によれば、松本清張作品の最初の韓国語訳は1961年の『点と線』と『ゼロの焦点』である【注2】。また、韓国推理作家協会のチョン・テウォン氏によれば、それと同時期から佐野洋、黒岩重吾、水上勉、南條範夫、西村京太郎、多岐川恭らの短編が紹介されるようになった。(日本と韓国の国交回復は1965年) 欧米の推理小説の翻訳では、1962年にルパン全集、世界名作推理文学全集(全10巻)、世界推理傑作選(全6巻)など全集の刊行が相次いだ。また、1960年代には映画とともに007シリーズが高い人気を得ていたという。 注2:松本清張の作品は1961年から次々と翻訳されたが、「無節操に重複翻訳され、時には翻案され、しかも題目も原題を大きく変えられている作品が多いため、清張の原作と翻訳作品の対応関係はいまだに明らかにされていない」(南富鎭2011)という。清張作品は2012年1月から30作品ほどが韓国語訳されることが決まっている(参照:「日本‘社会派推理小説’元祖作品 異例的にコンソーシアム通じ翻訳出版」)。 第三節 1940年代~1960年代の創作探偵小説 (1)金来成が戦後に発表した探偵小説 金来成(キム・ネソン)は戦後には、探偵小説の短編集『狂想詩人』(1947)(のちに『怪奇の画帖』に改題)、『秘密の扉』(1949)(乱歩の蔵書にあり)などを刊行し、短編「罰妻記(ばっさいき)」(1949)などを発表してはいるが、1949年に連載を始めた『青春劇場』を機に大衆文学作家へと転身し、以降は少年向け探偵小説(翻案含む)は発表したが、一般向けの新作探偵小説は発表しなかった。 1954年には、1936年に日本語で執筆した長編探偵小説『血柘榴』を『思想の薔薇』として連載開始。1955年に上巻、1956年に下巻を刊行した。この作品は金来成が最初に書きあげた長編探偵小説であり、また最後に発表した探偵小説となった。戦後、少年向け探偵小説としては、『夢見る海』(꿈꾸는 바다)、『黄金蝙蝠』(황금 박쥐)、『二重の虹がかかる丘』(쌍무지개 뜨는 언덕)、『おばけ敢闘』(도깨비감투)などを発表している。 (2)1960年代に活躍したホ・ムンニョン(許文寧) 活動期間は短かったものの、この時期に推理小説専門作家として活躍した作家にホ・ムンニョンがいる。 ホ・ムンニョン(許文寧)(허문녕 or 허문영)は1960年代に登場【注3】。ホ・ムンスン(허문순)、ソンゴル(성걸)などの筆名も使った。金来成と日本の推理小説の影響を受けている(パク・クァンギュ2008)。1963年より短編シリーズ「暗行御史(アメンオサ)朴文秀(パク・ムンス)」(암행어사 박문수)を連載【注4】。ほかにも歴史ミステリやエロティックハードボイルド、サスペンスなど様々なミステリ作品を発表した。短い期間で長短編合わせて約200編を発表したが現在では忘れられた作家になっており、新刊書店ではホ・ムンニョンの作品を見つけることはできない。 韓国国立中央図書館の蔵書1961年:『白雪領』(백설령) - 時代探偵小説 1964年:『明洞夫人』(명동부인) 1965年:『稲妻二丁拳銃』(번개 쌍권총、번개 雙拳銃) - エロティックハードボイルド、稲妻シリーズ 1966年:몽당비 마귀(몽당비 魔鬼) - 稲妻シリーズ 1965年:『君を狙う』(너를 노린다) - サスペンス小説 1965年:『魔の女体』(마의 여체、魔의 女體) 1965年:『黒い禿鷲』(검은 독수리) etc... 韓国国立中央図書館の蔵書を検索すると、石坂洋次郎『雨の中に消えて』の翻訳『비속으로 사라지다』(1964)の訳者が「許文寧」となっているが、推理作家のホ・ムンニョンと同一人物かは分からない。 注3:「許文寧」という名前は「ホ・ムニョン」と発音される場合もある。ここでは仮に「ホ・ムンニョン」としておく。 注4:パク・ムンス(朴文秀/박문수、1691-1756)は暗行御史(アメンオサ/암행어사)という役職に就いていた実在の人物である。日本でいえば、名裁判官として知られる大岡忠相に相当するような人物である。パク・ムンスを主人公にしたファンタジー漫画『新暗行御史』(しん あんぎょうおんし、全17巻)が小学館の漫画雑誌に2001年から2007年まで連載されていたので、名前を聞いたことがある人もいるだろう。パク・ムンスを主人公とする物語は文献として伝わるものだけでなく、口承伝承としても韓国全土に分布している。 (3)1960年代の『週刊韓国』長編推理小説公募 【2012年6月11日、加筆修正】 ホ・ムンニョンが作品を発表していたのと同じ時期の1965年、韓国日報社の雑誌『週刊韓国』(주간한국)で第1回長編推理小説公募が行われている。この時の当選作はムン・ユンソン(文允成)(문윤성)(1916-2000)の『完全社会』(완전사회)。ただ、これは純然たるSF小説で、韓国SF史上初の長編SFとされる記念碑的な作品でもある。東亜日報2007年4月13日付の記事「SF小説は未来社会の問題を解くカギ - 韓国SF小説100年」(リンク先韓国語)によると、この作品はコールドスリープで眠りについた男性主人公が100年後の女性しかいない時代に目覚めて苦しむというストーリーで、「単性」社会の問題点を指摘するものだという。同記事で書影も見られる。この作品は1985年に『女人共和国』(여인 공화국)というタイトルで再刊されている。 1968年にはキム・ハビン(金瑕彬)(김하빈)の『君とその人が痛みをともにするとき』(너와 그가 아픔을 같이 했을 때)が入選している。キム・ハビンは雑誌『少年中央』(소년 중앙)1977年1月号に連載第1回が載ったA・A・ミルンの『赤い館の秘密』(붉은 벽돌 집의 비밀)の翻訳などをしているが、詳しいことは分からない。 『週刊韓国』の推理小説公募がいつごろまで実施されていたのかは分からない。 (4)推理小説を積極的に執筆した文学作家のヒョン・ジェフン(玄在勲) 純文学作家としてデビューしたものの、早くから推理小説も積極的に執筆した作家にヒョン・ジェフン(玄在勲)(현재훈)(1933-1991)がいる。1957年、高麗大学哲学科を卒業。1959年、『思想界』新人賞で短編「憤怒」が入選しデビュー。推理小説の手法を用いることで主題の重さを強化した。1958年には『夜』。1977年、世界の推理小説を集めた叢書《河西推理選書》(全36巻)が韓国で刊行された際には、韓国の作家でただ一人収録作家に選ばれ、『熱い氷河』、『流れる標的』が収録された。《河西推理選書》には、日本の推理作家の作品では、江戸川乱歩『孤島の鬼』『陰獣』、横溝正史『本陣殺人事件』、松本清張『ゼロの焦点』『点と線』『砂の器』、森村誠一『高層の死角』『人間の証明』『野性の証明』が収録されている(→ラインナップ)。 1985年には推理小説の短編集『絶壁』で韓国推理作家協会主催の韓国推理文学賞(後述)の第1回大賞受賞者となった。この短編集は主に1970年代後半から1980年代初めまでの作品を集めたもので、12編収録。松本清張などの日本の社会派の影響が見て取れるという。(韓国推理作家協会のソン・ソニョン氏による「ヒョン・ジェフン紹介記事」(2009年4月18日)参照) ハン・サンジン氏によるヒョン・ジェフン『絶壁』のレビュー(ブログ「極限推理 hansang's world」、2009年9月11日) ほかにも、純文学作家が散発的に推理小説を執筆することがあった。クァク・ハクソン(郭鶴松)(곽학송)の「白色の恐怖」(백색의 공포)(1963)、チョ・プンヨン(趙豐衍)(조풍연)の『深淵のアンテナ』(심연의 안테나)(1966)、ソン・サンオク(宋相玉)(송상옥)の『死後に話す女』(죽어서 말하는 여자)(『幻想殺人』(환상살인)に改題)(1971)などがある。 第四節 邦訳された1940年代~1960年代の韓国推理小説 この章で名前を挙げたパン・イングン(方仁根)(1899-1975)、ホ・ムンニョン(許文寧)、ヒョン・ジェフン(玄在勲)(1933-1991)は韓国でも現在では忘れ去られた作家であり、彼らの推理小説を韓国の新刊書店で手に入れることはできない。この時期の韓国の推理小説で日本語に翻訳されたものは見当たらない。 韓国ミステリ史に組み込むのは無理があるが、この時期には日本とソビエト連邦で、朝鮮半島に出自を持つ小説家が推理小説を発表していた。野口赫宙(かくちゅう)とロマン・キムである。 野口赫宙(1905-1997)は当初のペンネームは張赫宙(ちょう かくちゅう/チャン・ヒョクチュ/장혁주)。1932年に張赫宙というペンネームで文学作家としてデビューし、1950年代から野口赫宙というペンネームを使用した。1950年代末から1960年代初めにかけて『宝石』や『探偵実話』で推理小説を発表。推理小説の単行本は『湖上の不死鳥』(東都書房、1962年)のみである。 ロマン・キム(1899-1967)は朝鮮名は金夔龍(きん きりゅう/キム・ギリョン/김기룡)。両親とも朝鮮人だがソ連で生まれ、1950年代から1960年代にかけてソ連でロシア語でスパイ小説を発表した。邦訳に『切腹した参謀たちは生きている』(長谷川蟻訳、晩聲社、1976年12月)がある。 ロマン・キムの生涯については、「ソ連/ロシア推理小説翻訳史/ロマン・キム」を参照のこと。 参考文献 韓国ミステリ史 参考文献 (新しいウィンドウで開きます) 『韓国ミステリ史 第一章』(20世紀初頭~1930年代) 『韓国ミステリ史 特別編 - 金来成(キム・ネソン)(1909-1957)【1】』 『韓国ミステリ史 特別編 - 金来成(キム・ネソン)(1909-1957)【2】』 『韓国ミステリ史 第二章』(1940年代~1960年代) ←今見ているページ 『韓国ミステリ史 第三章』(1970年代) 『韓国ミステリ史 第四章』(1980年代~20世紀末) 『韓国ミステリ史 第五章』(1990年代末~21世紀初頭)(未公開) 『読書案内』
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/54.html
2010年6月5日作成 2010年12月19日大幅更新 日本の推理小説の仏訳本のリスト。 Amazon.frで適当に日本の作家名を検索し、そこから「この商品を買った人はこの商品も買っています」をたどっていくことでリストを作っている。そのため、フランスで刊行された日本のミステリを網羅する完全なリストではない。 数バージョン刊行されている場合は、表紙画像があるものに優先的にリンクしている。たとえば、『悪魔の手毬唄』は、唯一表紙画像がある1998年5月に刊行されたものへリンクを貼っているが、これはこの作品の初訳が1998年だったということを意味しない。 また、まず作家で選んで、それぞれの作家について翻訳状況を書いているので、なかにはミステリではない作品も含まれる。 2010年12月19日追記 Twitter上でフランスにおける日本ミステリが話題になったのをきっかけに( 「Togetter:フランスで読まれている日本のミステリ」 )、今まで中途半端なまま放置していたリストを一応完成させた。 リスト作成の作業中に、坂本浩也氏による「フランス・ミステリ通信2 「メスプレード事典」 をめぐって」(2003年11月8日、Webサイト「本棚の中の骸骨:藤原編集室通信」の投稿コーナー「書斎の死体」に掲載)という記事に行き当たったので、リンクを貼っておく。2003年にフランスで刊行されたミステリ大事典を主題にしつつ、現代フランスミステリやフランスでの日本のミステリの受容について簡潔にまとめた非常に有用かつ興味深い記事である。以下で示しているリストは、Amazonから抽出した単なる情報の羅列に過ぎないので、フランスでの日本のミステリの受容について知りたい方には、まずはこの坂本浩也氏の記事のご一読を勧めたい。 「フランス・ミステリ通信2 「メスプレード事典」 をめぐって」で挙げられているフランスで刊行された日本ミステリのうち、長尾誠夫の作品については刊行を把握していなかったので、この記事を読んだ後にリストに加えさせていただいた。また、夏樹静子作品と西村京太郎作品に一部、原題が分からないものがあったので、それもこの記事を参考にして付け加えた。 ブログ「翻訳ミステリー大賞シンジケート」に寄稿した「日本のミステリー小説の仏訳状況」(2014-04-17)も合わせてお読みください。 Index あ行赤川次郎 (Jiro Akagawa) 綾辻行人 (Yukito Ayatsuji) 伊坂幸太郎 (Kotaro Isaka) 石田衣良 (Ira Ishida) 江戸川乱歩 (EDOGAWA Ranpo) 岡本綺堂 (Kido Okamoto) 奥田英朗 (Hideo Okuda) 乙一 (Otsuichi) 小野不由美 (Fuyumi Ono) か行桐野夏生 (Natsuo Kirino) 栗本薫 (Kaoru Kurimoto) 黒沢清 (Kiyoshi Kurosawa) 小池真理子 (Mariko Koike) さ行島田荘司 (Soji Shimada) 鈴木光司 (Koji Suzuki) た行高木彬光 (Akimitsu Takagi) 高見広春 (Koushun Takami) 戸川昌子 (Masako Togawa) な行長尾誠夫 (Seio Nagao) 中村文則 (Fuminori Nakamura) 夏樹静子 (Shizuko Natsuki) 西尾維新 (NISIOISIN, Nisio Isin) 西村京太郎 (Kyotaro Nishimura) は行原尞 (Ryo Hara) 坂東眞砂子 (Masako Bando) 東野圭吾 (Keigo Higashino) ま行松井今朝子 (Kesako Matsui) 松本清張 (Seicho Matsumoto) 水上勉 (Tsutomu Mizukami, Tsutomu Minakami) 宮部みゆき (Miyuki Miyabe) 森博嗣 (Hiroshi Mori / MORI Hiroshi) や行山田風太郎 (Futaro Yamada) 山村美紗 (Misa Yamamura) 夢野久作 (Kyusaku Yumeno) 横溝正史 (Seishi Yokomizo) 吉田修一 (Shuichi Yoshida) アンソロジー・関連書籍 更新情報 あ行 赤川次郎 (Jiro Akagawa) (フランス語版Wikipedia) Le piège de la marionnette /『マリオネットの罠』(1977) ISBN 2877301915 (Rose-Marie Makino-Fayolle訳、Philippe Picquier、1998年5月) ISBN 2877303861 (Rose-Marie Makino-Fayolle訳、Philippe Picquier、1999年4月) Meurtres pour tuer le temps /『ひまつぶしの殺人』(1978) ISBN 2877302423 (Aude Bellenger-Sugai訳、Philippe Picquier、1998年5月) ISBN 287730387X (Aude Bellenger-Sugai訳、Philippe Picquier、1999年11月) 『マリオネットの罠』は『本格ミステリ・フラッシュバック』でも取り上げられている名作。 綾辻行人 (Yukito Ayatsuji) Meurtres dans le decagone / 『十角館の殺人』(1987) ISBN 2953396217 (Otsu Masami、Olivier Paquet、Patrick Honnoré訳、Karasu、2009年11月) 伊坂幸太郎 (Kotaro Isaka) La Prière d'Audubon / 『オーデュボンの祈り』(2000) ISBN 280970242X (Corinne Atlan訳、Philippe Picquier、2011年2月) Pierrot-la-gravité / 『重力ピエロ』(2003) ISBN 2809703086 (Corinne Atlan訳、Philippe Picquier、2012年1月) 新潮ミステリー倶楽部賞を受賞したデビュー作『オーデュボンの祈り』と、映画化もされた『重力ピエロ』が翻訳されている。またほかに、漫画版『魔王』が翻訳されている。 石田衣良 (Ira Ishida) Ikebukuro West Gate Park /『池袋ウエストゲートパーク』(1998) ISBN 287730776X (Anne Bayard-Sakai訳、Philippe Picquier、2005年4月) ISBN 2809700419 (Anne Bayard-Sakai訳、Philippe Picquier、2008年5月) Ikebukuro West Gate Park II /『少年計数機 池袋ウエストゲートパークII』(2000) ISBN 2809701148 (Anne Bayard-Sakai訳、Philippe Picquier、2009年5月) Ikebukuro West Gate Park 3 - Rave d'une nuit d'ete /『骨音 池袋ウエストゲートパークIII』(2002) ISBN 2809701555 (Anne Bayard-Sakai訳、Philippe Picquier、2010年2月) 『池袋ウエストゲートパーク』を翻訳したアンヌ・バヤール=サカイ氏は、この翻訳で第17回(2009年)野間文芸翻訳賞を受賞している。 野間文芸翻訳賞決定! - フランス生活情報 フランスニュースダイジェスト (2009年11月5日) ほかに、『池袋ウエストゲートパーク』の漫画版(第1巻)や、『アキハバラ@DEEP』の漫画版(第1巻)が刊行されている。 江戸川乱歩 (EDOGAWA Ranpo) (フランス語版Wikipedia) La Chambre rouge /短編集『赤い部屋』(「芋虫」、「人間椅子」、「二廃人」、「赤い部屋」、「二銭銅貨」を収録) ISBN 287730230X (Jean-Christian Bouvier訳、Philippe Picquier、1998年5月) La Proie et l'ombre /『陰獣』(「心理試験」を併録) ISBN 287730180X (Jean-Christian Bouvier訳、Philippe Picquier、1998年12月) La bête aveugle /『盲獣』 ISBN 2877304396 (Rose-Marie Makino-Fayolle訳、Philippe Picquier、1999年5月) L'Île panorama /『パノラマ島奇談』 ISBN 287730440X (Rose-Marie Makino-Fayolle訳、Philippe Picquier、1999年6月) Mirage /『押絵と旅する男』(「虫」を併録) ISBN 2877304957 (Karine Chesneau訳、Philippe Picquier、2000年5月) Le Lézard noir /『黒蜥蜴』 ISBN 2877304973 (Rose-Marie Makino-Fayolle訳、Philippe Picquier、2000年6月) Inju La bête dans l'ombre /『陰獣』 ※訳題が1998年のものと異なる ISBN 2809700680 (Jean-Christian Bouvier訳、Philippe Picquier、2008年8月) ほかに、三島由紀夫の戯曲版『黒蜥蜴』や、丸尾末広が漫画化した『芋虫』が刊行されている。 Wikipediaフランス語版の「江戸川乱歩」の記事に「フランス語に訳された作品」の項目があるのでそこも参照のこと。 また、フランスの探偵小説雑誌『マガザン・ノアール』創刊号に、「芋虫」が「シエニーユ・ブローヌ」というタイトルで掲載されたという(探偵作家クラブ会報第86号、1954年7月)。 関連文献ジャン=クリスチャン・ブーヴィエ(Jean-Christian Bouvier、訳:梁木靖弘)「グルノーブル便り 紅毛京太郎奮戦記」(『EQ』1989年1月号、pp.178-181)フランス、グルノーブルのミステリ祭(第10回、1988年)のレポート。前年は松本清張が招待されて日本代表として参加している。1988年は『名探偵なんか怖くない』と短編集が仏訳刊行されたばかりの西村京太郎が招待されたが、直前で都合により参加できなくなり、代わりにその2冊の訳者であるジャン=クリスチャン・ブーヴィエが日本の推理小説を紹介する記者会見などを行った。ブーヴィエは江戸川乱歩『陰獣』等の訳者でもある。この記事では、仏訳版『陰獣』に対する仏紙の評も紹介されている。 間瀬玲子「フランスにおける江戸川乱歩と横溝正史の受容」(日本比較文学会編『越境する言の葉――世界と出会う日本文学』彩流社、2011年6月、pp.237-247) 岡本綺堂 (Kido Okamoto) (フランス語版Wikipedia) Fantômes et Samouraïs Hanshichi mène l'enquête à Edo ※収録内容は光文社時代小説文庫版の第1巻と同じ14編 ISBN 2877307158 (Karine Chesneau訳、Philippe Picquier、2004年4月) ISBN 2877309649 (Karine Chesneau訳、Philippe Picquier、2007年9月) Fantômes et kimonos Hanshichi mène l'enquête à Edo ※光文社時代小説文庫版の第2巻(13編収録)の前半6編を収録 ISBN 2877308561 (Karine Chesneau訳、Philippe Picquier、2006年5月) ISBN 2809700400 (Karine Chesneau訳、Philippe Picquier、2008年5月) + 『Fantômes et Samouraïs』収録作(14編収録) 『Fantômes et Samouraïs』収録作(14編収録) フランス語タイトル 日本語原題 L'esprit d'Ofumi お文の魂 La lanterne en pierre 石灯籠 La mort de Kanpei 勘平の死 A l'étage de la maison de bains 湯屋の二階 Le professeur-monstre お化け師匠 Le mystère de la cloche d'incendie 半鐘の怪 La dame de compagnie 奥女中 L'étang de la Ceinture-voleuse 帯取りの池 La fonte des neiges au printemps 春の雪解 Hiroshige et la loutre 広重と河獺 La demeure Belles-de-jour 朝顔屋敷 Chats en rébellion 猫騒動 La fille de la déesse Benten 弁天娘 La nuit de la fête de la montagne 山祝いの夜 + 『Fantômes et kimonos』収録作(6編収録) 『Fantômes et kimonos』収録作(6編収録) フランス語タイトル 日本語原題 A la poursuite du faucon 鷹のゆくえ Le bébé-monstre 三河万歳 Meurtres à la lance 槍突き Kappa et geishas お照の父 Le pavillon de Mukôjima 向島の寮 La malédiction de la fille du marchand de saké 津の国屋 ほかに、WorldCatによると、1929年にパリのLibrairie Stock社の《Cabinet cosmopolite》叢書で岡本綺堂の『Drames d'amour』という本が出版されており、"Une histoire de Shuzenji"(「修禅寺物語」)、"Le double suicide du Toribeyama"(「鳥辺山心中」)などが収録されているようである。訳者はKuni Matsuoと、E. Steinilber-Oberlin。 奥田英朗 (Hideo Okuda) Les remèdes du docteur Irabu /『イン・ザ・プール』(2002) ISBN 291918623X (Wombat、2013年1月) 精神科医・伊良部シリーズの第1作。 乙一 (Otsuichi) (フランス語版Wikipedia) Rendez vous dans le noir /『暗いところで待ち合わせ』(2002) ISBN 2953396209 (Myriam Dartois-Ako訳、Karasu、2009年7月) Un flingue et du chocolat / 『銃とチョコレート』(2006) ISBN 2745935860 (Editions Milan、2010年10月) ほかに、『少年少女漂流記』、漫画版『GOTH』が刊行されている。 小野不由美 (Fuyumi Ono) (フランス語版Wikipedia) 小説『十二国記』が翻訳されている(最初の巻)。また、『屍鬼』の漫画版(第1巻)も刊行されている。 か行 桐野夏生 (Natsuo Kirino) (フランス語版Wikipedia) Disparitions /『柔らかな頬』(1999) ISBN 2268042618 (Editions du Rocher、2002年5月) ISBN 2264037083 (Editions 10/18、2004年6月) ISBN 2757837133 (Points、2013年10月) OUT /『OUT』(1997) ISBN 2020789531 (Seuil、2006年5月) ISBN 2757804812 (Points、2007年6月) Monstrueux /『グロテスク』(2003) ISBN 2020931990 (Seuil、2008年1月) ISBN 2757811584 (Points、2009年1月) Le vrai monde /『リアルワールド』(2003) ISBN 2020981270 (Seuil、2010年2月) Intrusion / 『IN』(2009) ISBN 2021034704 (Seuil、2011年9月) L'île de Tokyo / 『東京島』(2008) ISBN 2021034712 (Seuil、2013年4月) 栗本薫 (Kaoru Kurimoto) (フランス語版Wikipedia) Guin Saga /『グイン・サーガ』 1巻 ISBN 2265081248 (Fleuve Noir、2006年5月) 2巻 ISBN 2265081507 (Fleuve Noir、2006年5月) 3巻 ISBN 2265081515 (Fleuve Noir、2006年9月) 4巻 ISBN 2265084263 (Fleuve Noir、2006年5月) 5巻 ISBN 2265084271 (Fleuve Noir、2007年10月) 6巻 ISBN 2820300030 (Kazé Editions、2011年1月) ほかに、沢田一による漫画版(第1巻 2009年8月)、柳澤一明による漫画版(第1巻 2010年3月)が刊行されている。 黒沢清 (Kiyoshi Kurosawa) Kairo / 『回路』(2001年) ISBN 2877305937 (Philippe Picquier、2002年4月) ISBN 2877307387 (Philippe Picquier、2004年9月) 小池真理子 (Mariko Koike) Le chat dans le cercueil / 『柩の中の猫』(1990) ISBN 2877304388 (Philippe Picquier、1999年5月) ISBN 2877306054 (Philippe Picquier、2002年5月) Je suis déjà venue ici / 『玉虫と十一の掌篇小説』 ISBN 2809700478 (Philippe Picquier、2008年9月) ISBN 2809702721 (Philippe Picquier、2011年6月) さ行 島田荘司 (Soji Shimada) Tokyo Zodiac Murders /『占星術殺人事件』 ISBN 274362048X (Rivages、2010年2月) フランスのミステリ作家 ポール・アルテによる『占星術殺人事件』評 (南雲堂『本格ミステリー・ワールド2011』、ポール・アルテへのメールインタビューより(p.209)) (『占星術殺人事件』を読んだかと尋ねられて) 「もちろんです。『占星術殺人事件』を手にしてすぐに、むさぼるように読みました。なんといっても、フランス語に翻訳されると聞いてから、その瞬間を待っていたのですから。ジョン・ピュグマイアー氏とローラン・ラクーブ氏は、ミステリーの傑出した専門家ですが、『占星術殺人事件』は、すばらしい傑作だと教えてくれたのです。まさにそのとおりでした!」 「『占星術殺人事件』は、特別な作品で、肩を並べるほかのミステリー作品はありません。筋立てがあまりにも魅力的で、密室の謎さえも二の次に思えてしまったほどです。」 「ミステリー・マニアにとって大満足の作品ではないでしょうか。形而上学的な仮説の中で読者は我を忘れ、芸術的なタッチによって、過去の描写は雰囲気たっぷりのものとなっています。そして、当然のことながら、結末で明かされる真実は十分に美しいもので、率直に言って天才的なものだと思います。島田荘司氏には脱帽です。なんと、本作が処女作なのですね。」 「出版された書評はまだ読んでいませんが、私も入っているアマチュアのミステリー愛好会では、頻繁に話題にのぼっています。フランスのミステリー・マニアは皆、この作品が大好きで、マスター・ピースだと考えています。さらに、島田さんが同じくらいの霊感に満ちたほかの作品を書いていることに、誰もが注目していて、フランス語に翻訳されるのを待ち望んでいます!」 鈴木光司 (Koji Suzuki) (フランス語版Wikipedia) Ring /『リング』 ISBN 2266121235 (Pocket、2002年3月) ISBN 2265077224 (Fleuve noir、2003年9月) Double hélice /『らせん』 ISBN 2266121243 (Pocket、2002年5月) ISBN 2265077216 (Fleuve noir、2003年9月) La Boucle /『ループ』 ISBN 2266121251 (Pocket、2002年11月) Birthday Ring zéro /『バースデイ』 ISBN 2266130706 (Pocket、2003年3月) Dark Water /『仄暗い水の底から』 ISBN 2266131567 (Pocket、2003年3月) ISBN 2265081175 (Fleuve noir、2005年6月) ほかに、『リング』の漫画版なども刊行されている。 た行 高木彬光 (Akimitsu Takagi) 『本格ミステリー・ワールド2011』(南雲堂、2010年12月)に掲載されたメールインタビューでポール・アルテが、『刺青殺人事件』の仏訳が2011年に出版される予定で楽しみにしていると述べている(pp.209-210)。ただ、その後結局出版はされていない。 『刺青殺人事件』はすでに英訳はあり、ほかに英語圏では『ゼロの蜜月』と『密告者』が出版されている。ドイツ語訳はない。 高見広春 (Koushun Takami) (フランス語版Wikipedia) Battle Royale /『バトル・ロワイアル』 ISBN 2702136737 (Calmann-Lévy、2006年8月) ISBN 2253122351 (Le Livre de Poche、2008年2月) ほかに、『バトル・ロワイアル』の漫画版も刊行されている。 戸川昌子 (Masako Togawa) Le baiser de feu /『火の接吻』(1984) ISBN 2869303491 (Rivages、1990年5月) 『本格ミステリ・フラッシュバック』でも取り上げられている作品。この『火の接吻』は欧米の多くの国で刊行されている。 な行 長尾誠夫 (Seio Nagao) Meurtres à la cour du prince Genji /『源氏物語人殺し絵巻』 ISBN 2877303047 (Karine Chesneau訳、Philippe Picquier、1998年5月) Le prince des ténèbres /『黄泉国の皇子』 ISBN 2877303691 (Karine Chesneau訳、Philippe Picquier、1998年6月) ISBN 2877305775 (Karine Chesneau訳、Philippe Picquier、2002年1月) 1986年、『源氏物語人殺し絵巻』でサントリーミステリー大賞の読者賞を受賞しデビュー。この作品は、週刊文春ミステリーベスト10で第7位にランクインした。 中村文則 (Fuminori Nakamura) Pickpocket / 『掏摸(スリ)』(2009) ISBN 2809703930 (Myriam Dartois-Ako訳、Philippe Picquier、2013年1月) 夏樹静子 (Shizuko Natsuki) Meurtre au mont Fuji /『Wの悲劇』(1982) ISBN不明 (Librairie des Champs-Élysées、1986年) La promesse de l'ombre /『第三の女』(1978) ISBN 2702418996 (Editions du Masque、1989年6月) Hara-Kiri, mon amour /『訃報は午後二時に届く』(1983) ISBN 270242130X (Editions du Masque、1991年2月) La femme au bout du fil /(英訳すると「The Woman on the Phone」) ISBN不明 (Editions du Masque、1997年1月) Marianne /『わが郷愁のマリアンヌ』(1986) ISBN 2702428533 (Le Masque、1998年11月) 『La femme au bout du fil』(The Woman on the Phone)は、米国『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』1990年5月号に掲載された夏樹静子「The Woman on the Phone」を表題作とする短編集か? 『第三の女』の仏訳版は、1989年にフランスの冒険小説大賞(フランス犯罪小説大賞、ロマン・アヴァンチュール賞)を受賞している。その前年の受賞作はポール・アルテの『赤い霧』(平岡敦訳、ハヤカワ・ミステリ、2004年)。 『Wの悲劇』、『第三の女』、『訃報は午後二時に届く』は『本格ミステリ・フラッシュバック』で取り上げられている。 西尾維新 (NISIOISIN, Nisio Isin) Death Note Another note L'affaire B.B. des meurtres en série de Los Angeles / 『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』(2006) ISBN 2505005729 (Kana、2010年9月) 西村京太郎 (Kyotaro Nishimura) 長編 Les Dunes de Tottori /『ミステリー列車が消えた』(1982) ISBN 2020222736 (Seuil、1993年5月) Les Grands détectives n'ont pas froid aux yeux /『名探偵なんか怖くない』(1971) ISBN 2877303268 (Philippe Picquier、1998年5月) 短編集 Le Maître chanteur bienveillant ISBN不明 (Futuropolis、1983年) Petits crimes japonais ISBN 2869309422 (Rivages、1995年6月) 『Le Maître chanteur bienveillant』は収録作不明。『Petits crimes japonais』の収録作はこちらのサイトを参照のこと(リンク切れ)。 + 短編集『Petits crimes japonais』収録作 短編集『Petits crimes japonais』収録作 フランス語タイトル 日本語原題 Métro à gogo 「行先のない切符」 Les bonnes œuvres de l'agent Shibata 「柴田巡査の奇妙なアルバイト」 L'amour du prochain 「隣人愛」 Le jeu de la charité 「チャリティゲーム」 Les pigeons 「鳩」 L'invitation au meurtre 「殺しへの招待」 L'homme qui venait d'Andromède 「アンドロメダから来た男」 Le maître chanteur bienveillant 「優しい脅迫者」 ポール・アルテによると、西村京太郎はフランスでは「日本のフレデリック・ダール」と呼ばれているとのこと(『本格ミステリー・ワールド2009』南雲堂、2008年12月、p.126)。 『ミステリー列車が消えた』と『名探偵なんか怖くない』は『本格ミステリ・フラッシュバック』で取り上げられている。 関連文献ジャン=クリスチャン・ブーヴィエ(Jean-Christian Bouvier、訳:梁木靖弘)「グルノーブル便り 紅毛京太郎奮戦記」(『EQ』1989年1月号、pp.178-181)フランス、グルノーブルのミステリ祭(第10回、1988年)のレポート。前年は松本清張が招待されて日本代表として参加している。1988年は『名探偵なんか怖くない』と短編集が仏訳刊行されたばかりの西村京太郎が招待されたが、直前で都合により参加できなくなり、代わりにその2冊の訳者であるジャン=クリスチャン・ブーヴィエが日本の推理小説を紹介する記者会見などを行った。 は行 原尞 (Ryo Hara) (フランス語版Wikipedia) Nuit sur la ville /『そして夜は甦る』 ISBN 2226069437 (Editions Albin Michel、1994年11月) ISBN 2877306569 (Philippe Picquier、2003年6月) 『ミステリマガジン』1995年6月号の「洋書案内」コーナーで例外的に取り上げられている。 坂東眞砂子 (Masako Bando) Les Dieux Chiens / 『狗神』(1996) ISBN 2742773614 (Actes Sud, Actes noirs、2008年2月) 東野圭吾 (Keigo Higashino) La Maison où je suis mort autrefois / 『むかし僕が死んだ家』(1994) ISBN 2742789510 (Actes Sud, Actes noirs、2010年4月) ISBN 2330001320 (Actes Sud, Babel noir, 2011年11月) Le Dévouement du suspect X / 『容疑者Xの献身』(2005) ISBN 2330001398 (Actes Sud, Actes noirs、2011年11月) ISBN 2330013140 (Actes Sud, Babel noir, 2012年11月) Un café maison / 『聖女の救済』(2008) ISBN 2330006136 (Actes Sud, Actes noirs、2012年5月) ISBN 2330018800 (Actes Sud, Babel noir, 2013年11月) La Prophétie de l'abeille / 『天空の蜂』 ISBN 2330019580 (Actes Sud, Actes noirs、2013年5月) 『容疑者Xの献身』の刊行にあわせて『むかし僕が死んだ家』の新装版が出たようだ。 なお、東野圭吾の欧米やアジアでの受容については「東野圭吾『容疑者Xの献身』の英訳版、エドガー賞候補に」(2012年1月22日)でまとめた。 「【エドガー賞の前に】東野圭吾『容疑者Xの献身』のフランスでの評価やいかに」(2012年4月14日)も参照のこと。 ま行 松井今朝子 (Kesako Matsui) Les mystères de Yoshiwara / 『吉原手引草』(2007) ISBN 2809702969 (Philippe Picquier、2011年10月) ISBN 2809709483 (Philippe Picquier、2013年10月) 松本清張 (Seicho Matsumoto) (フランス語版Wikipedia) Journal local /短編集?「地方紙を買う女」 ISBN 2737654211 (Futuropolis、1985年) Le rapide de Tokyo /『点と線』 ISBN 2702413773 (Editions du Masque、1986年3月) Tokyo express /『点と線』 ISBN 2877300188 (Rose-Marie Makino-Fayolle訳、Philippe Picquier、1989年) ISBN 2877301885 (Rose-Marie Makino-Fayolle訳、Philippe Picquier、1998年5月) Vase de sable /『砂の器』 ISBN 2876220105 (Rose-Marie Makino-Fayolle訳、Philippe Picquier、1987年) ISBN 2877303284 (Rose-Marie Makino-Fayolle訳、Philippe Picquier、1998年5月) La Voix / 短編集、表題作「声」 ISBN 2877302601 (Philippe Picquier、1998年5月) Un endroit discret / 『聞かなかった場所』 ISBN 2742795367 (Actes Sud, Actes noirs、2010年11月) 『La Voix』(声)は6編収録。収録作は英訳短編集『The Voice and Other Stories』と同じ(収録順は少々異なる)。 + La Voix 収録作 La Voix 収録作 Le complice 「共犯者」 Le visage 「顔」 Au dessus de tout soupçon 「捜査圏外の条件」 Roman-feuilleton 「地方紙を買う女」 La voix 「声」 La coolaboratrice d'une revue de haïkus 「巻頭句の女」 水上勉 (Tsutomu Mizukami, Tsutomu Minakami) Le Temple des oies sauvages / 『雁の寺』 ISBN 2877302172 (Philippe Picquier、1998年5月) - 最初の刊行は1992年? ほかに『越前竹人形』のフランス語訳 Poupées de bambou(1998年版、2000年版)が刊行されている。 宮部みゆき (Miyuki Miyabe) (フランス語版Wikipedia) La Librairie Tanabe /『淋しい狩人』 ISBN 2877302288 (Philippe Picquier、1995年6月) ISBN 2877304418 (Philippe Picquier、2001年12月) Une carte pour l'enfer /『火車』 ISBN 2877305619 (Philippe Picquier、2001年10月) ISBN 2809709254 (Philippe Picquier、2013年6月) Brave Story /『ブレイブ・ストーリー』 1巻 ISBN 2266180304 (Pocket Jeunesse、2008年1月) 2巻 ISBN 2266181858 (Pocket Jeunesse、2008年3月) 3巻 ISBN 2266181866 (Pocket Jeunesse、2008年5月) Crossfire /『クロスファイア』 ISBN 2809700451 (Philippe Picquier、2008年8月) ISBN 2809701865 (Philippe Picquier、2010年6月) Sang Sur la Toile /『R.P.G.』 ISBN 2809701857 (Philippe Picquier、2010年6月) 連作短編集『淋しい狩人』は日本では6編収録だが、フランス版は5編しか収録されていない。「歪んだ鏡」がカットされている。また、収録順も変更されている。 + フランス版『淋しい狩人』収録作 フランス版『淋しい狩人』収録作 フランス語タイトル 日本語原題 日本版での収録順 De terribles années 「詫びない年月」 3 Mort sans mot dire 「黙って逝った」 2 Le Clairon menteur 「うそつき喇叭」 4 Le Chasseur solitaire 「淋しい狩人」 6 Un mois de juin peu ordinaire 「六月は名ばかりの月」 1 日本版での5編目「歪んだ鏡」はフランス版ではカットされている。 ほかに、漫画版『ブレイブ・ストーリー』(第1巻)が刊行されている。 森博嗣 (Hiroshi Mori / MORI Hiroshi) (フランス語版Wikipedia) The Sky Crawlers /『スカイ・クロラ』 ISBN 2723478149 (Glénat、2010年9月) None But Air / 『ナ・バ・テア』 ISBN 2723480046 (Glénat、2011年3月) ほかに、森博嗣の小説を原作とする漫画が「Les chefs d'oeuvre de Hiroshi Mori」(The masterpieces of Hiroshi Mori)というシリーズ名で4巻まで刊行されている。 God save the Queen /漫画『女王の百年密室』 ISBN 2849463949 (Soleil Manga、2006年3月) Le labyrinthe de Morphée /漫画『迷宮百年の睡魔』 ISBN 2849465224 (Soleil Manga、2006年7月) F The perfect insider /漫画『すべてがFになる』 ISBN 2849464333 (Soleil Manga、2006年5月) Meurtres en chambre froide /漫画『冷たい密室と博士たち』 ISBN 2849466328 (Soleil Manga、2006年10月) や行 山田風太郎 (Futaro Yamada) (フランス語版Wikipedia) Shinobi /『甲賀忍法帖』 ISBN 2702138470 (Calmann-Lévy、2007年11月) Les Manuscrits Ninja /『柳生忍法帖』 1巻 ISBN 2809701709 (Philippe Picquier、2010年4月) 2巻 ISBN 2809701954 (Philippe Picquier、2010年9月) ほかに、『甲賀忍法帖』を原作とする漫画『バジリスク』(第1巻)が刊行されている。 山村美紗 (Misa Yamamura) Des cercueils trop fleuris / 『花の棺』(1975) ISBN 2877303837 (Philippe Picquier、1999年4月) La ronde noire / 『黒の環状線』(1976) ISBN 2877303772 (Philippe Picquier、1999年5月) 両作とも『本格ミステリ・フラッシュバック』で取り上げられている。 夢野久作 (Kyusaku Yumeno) (フランス語版Wikipedia) Dogra Magra /『ドグラ・マグラ』 ISBN 2877306453 (Philippe Picquier、2003年4月) ISBN 287730857X (Philippe Picquier、2006年5月) 横溝正史 (Seishi Yokomizo) (フランス語版Wikipedia) La hache, le koto et le chrysanthème /『犬神家の一族』 ISBN不明 (DENOËL、1985年1月) ISBN 2070380661 (Gallimard、1988年9月) ISBN 2070783049 (Gallimard、2007年1月) La Ritournelle du démon /『悪魔の手毬唄』 ISBN 2877302237 (Rose-Marie Makino-Fayolle訳、Philippe Picquier、1998年5月) ISBN 2809709270 (Rose-Marie Makino-Fayolle訳、Philippe Picquier、2013年6月) Village aux huit tombes /『八つ墓村』 ISBN 2877304590 (Philippe Picquier、1999年11月) ポール・アルテによると、横溝正史はフランスでは「日本のアガサ・クリスティ」と呼ばれているとのこと(『本格ミステリー・ワールド2009』南雲堂、2008年12月、p.126)。 関連文献間瀬玲子「フランスにおける江戸川乱歩と横溝正史の受容」(日本比較文学会編『越境する言の葉――世界と出会う日本文学』彩流社、2011年6月、pp.237-247) 吉田修一 (Shuichi Yoshida) Park Life /『パーク・ライフ』 ISBN 2877309622 (Philippe Picquier、2007年9月) ISBN 2809701474 (Philippe Picquier、2010年1月) Parade /『パレード』(2002) ISBN 2809701504 (Philippe Picquier、2010年1月) ISBN 2809703051 (Philippe Picquier、2011年10月) Le mauvais /『悪人』(2007) ISBN 2809702977 (Philippe Picquier、2011年10月) アンソロジー・関連書籍 Les noix, la mouche, le citron ISBN 2877304086 (Philippe Picquier、1999年5月) 江戸川乱歩「鏡地獄」収録 Trains du mystère 150 ans de trains et de polars ISBN 229607667X (L'Harmattan、2009年2月) 鉄道ミステリの評論本。第9章(pp.215-226)は日本の鉄道ミステリを扱う章になっている。 フランス語の無料月刊誌『ZOOM JAPON』創刊号(2010年6月号)(pdf) 日本ミステリ特集号(pp.4-7)。権田萬治氏および、作家では綾辻行人・宮部みゆきへのインタビューが掲載されている。 更新情報 2011年4月29日:新たに刊行された伊坂幸太郎と、リストから漏れていた山村美紗を追加。乙一『銃とチョコレート』、森博嗣『ナ・バ・テア』追加。 2012年1月24日:リストから漏れていた東野圭吾『むかし僕が死んだ家』を追加。新たに刊行された東野圭吾『容疑者Xの献身』、伊坂幸太郎『重力ピエロ』を追加。 2012年2月7日:リストから漏れていた綾辻行人『十角館の殺人』を追加。『ZOOM JAPON』2010年6月1日号(日本ミステリ特集号)の情報追加。 2012年2月11日:リストから漏れていた夏樹静子『わが郷愁のマリアンヌ』、水上勉『雁の寺』を追加。 2012年4月28日:昨年刊行の桐野夏生の『IN』と、東野圭吾の近刊『聖女の救済』を追加。坂東眞砂子『狗神』、黒沢清『回路』を追加。 2013年11月11日:リストから漏れていた松井今朝子『吉原手引草』、西尾維新『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』を追加。 2013年11月15日:奥田英朗、小池真理子、中村文則、吉田修一を追加。 「日本ミステリの海外刊行」へ
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/55.html
2010年6月5日作成 2012年2月11日大幅更新 日本の推理小説(を含む広義のエンターテインメント小説)の独訳本のリスト。 Amazon.deで適当に日本の作家名を検索し、そこから「この商品を買った人はこの商品も買っています」をたどっていくことでリストを作っている。そのため、ドイツで刊行された日本のミステリを網羅する完全なリストではない。 また、まず作家で選んで、それぞれの作家について翻訳状況を書いているので、なかにはミステリではない作品も含まれる。 Amazon.co.jp内に作成したリスト(ドイツ語版の表紙をざっと一覧できます) ドイツ語訳された日本のミステリ 2012年2月11日追記 雑誌『ミステリーズ!』のドイツミステリ特集号が刊行されたのを機に、今まで中途半端な形で公開していたリストを整理した。また、ページ最下部にドイツミステリ関連文献の一覧を付した。 Index あ行赤川次郎 (Jiro Akagawa) 江戸川乱歩 (Edogawa Rampo) 大沢在昌 (Arimasa Osawa) 奥田英朗 (Hideo Okuda) 小野不由美 (Fuyumi Ono) か行桐野夏生 (Natsuo Kirino) 栗本薫 (Kaoru Kurimoto) さ行桜庭一樹 (Kazuki Sakuraba) 鈴木光司 (Koji Suzuki) た行高橋克彦 (Katsuhiko Takahashi) 高見広春 (Koushun Takami) 戸川昌子 (Masako Togawa) な行夏樹静子 (Shizuko Natsuki) 西尾維新 (Nisioisin) 西村京太郎 (Kyotaro Nishimura) は行東野圭吾 (Keigo Higashino) ま行松本清張 (Seicho Matsumoto) 水上勉 (Tsutomu Mizukami) 宮部みゆき (Miyuki Miyabe) や行結城昌治 (Shoji Yuki) 漫画の翻訳のみ石田衣良 (Ira Ishida) 乙一 (Otsuichi) 山田風太郎 (Futaro Yamada) アンソロジー・その他 リンク ドイツ語圏のミステリについて ※ISBNをクリックするとAmazon.deの該当ページが開くようになっています。 あ行 赤川次郎 (Jiro Akagawa) (ドイツ語版Wikipedia) Japanischer Alltag. Kurzgeschichten Japanisch-Deutsch 1 - Wie Lügen anfangen (嘘の発端) 2 - Falsch verbunden! (まちがい電話) 3 - Der Unlust-Index 79 (不快指数79) 4 - Die Braut ist erst achtzehn (十八歳の花嫁) 5 - Das Erfrischungstuch war zu heiß (熱すぎたおしぼり) 6 - Ich zeige dir mal, wie man richtig Urlaub macht (正しい休日の過し方教えます) 7 - Ausgerechnet unsere Tochter - Ein Schulaufsatz (わが子の作文) 8 - Das Gerücht (うわさ) ISBN 3875485386 (2009年10月) 見開きの左ページに日本語の原文、右ページにそのドイツ語訳文を配置した、日本語学習者向けの日独対訳本。赤川次郎のショートショート集『散歩道』(27編収録)から8編を収録。赤川次郎作品は、英訳は『三姉妹探偵団』と短編集『真夜中のための組曲』、フランス語訳は『マリオネットの罠』と『ひまつぶしの殺人』がある。 江戸川乱歩 (Edogawa Rampo) (ドイツ語版Wikipedia) Spiegelhölle. Acht Erzählungen / 短編集『鏡地獄』 Zwei Versehrte (二癈人) Zwillinge (双生児) Der psychologische Test (心理試験) Das Rote Zimmer (赤い部屋) Der Sesselmann (人間椅子) Spiegelhölle (鏡地獄) Die Raupe (芋虫) Auf der Klippe (断崖) ISBN 3929010976 (2004年11月) 乱歩がジェームズ・B・ハリスと協力して作成した英訳本『Japanese Tales of Mystery Imagination』(1956年)には9短編が収録されているが、ドイツ語版短編集はそのうち「押絵と旅する男」を除いた8編の収録となっている。 英訳やフランス語訳はそれぞれ数冊ずつ出ているが、ドイツでの単行本はこの1冊のみのようである。 大沢在昌 (Arimasa Osawa) Der Hai von Shinjuku / 『新宿鮫』(1990) ISBN 3980902226 (2005年2月) Der Hai von Shinjuku Rache auf chinesisch. / 『毒猿 新宿鮫II』(1991) - ドイツ語タイトルの直訳は『新宿鮫 中国人の復讐』 ISBN 3980902234 (2007年11月) 大沢作品の英訳はドイツ語訳と同じでこの2作のみ。フランス語訳はない。 奥田英朗 (Hideo Okuda) (ドイツ語版Wikipedia) Die japanische Couch Neue Geschichten aus der Praxis des Dr. Irabu / 『イン・ザ・プール』(2002) ISBN 3442737656(2008年6月) Die seltsamen Methoden des Dr. Irabu / 『空中ブランコ』(2004) ISBN 3442736021(2007年1月) Die merkwürdigen Fälle des Dr. Irabu / 『町長選挙』(2006) ISBN 3442740606(2010年8月) 精神科医・伊良部シリーズの全作品(短編集3冊)が翻訳されている。このシリーズは英訳は『イン・ザ・プール』のみ。奥田作品の英訳はほかに『ララピポ』がある。奥田作品のフランス語訳はない。 小野不由美 (Fuyumi Ono) 『十二国記』が4冊翻訳出版されている(第1巻)。(『十二国記』は英訳もフランス語訳もある) か行 桐野夏生 (Natsuo Kirino) (ドイツ語版Wikipedia) Die Umarmung des Todes / 『OUT』(1997) - ドイツ語タイトルの直訳は『死の抱擁』 ISBN 3442309174(2003年5月) ISBN 3442458528(2005年1月) Teufelskind / 『I m sorry, mama.』(2004) ISBN 3442311659(2008年11月) ISBN 3442473918(2010年10月) Grotesk / 『グロテスク』(2003) ISBN 3442301300(2010年5月) 英訳:『OUT』、『グロテスク』、『リアルワールド』 フランス語訳:『OUT』、『グロテスク』、『リアルワールド』、『柔らかな頬』 イタリア語訳:『OUT』、『グロテスク』、『リアルワールド』、『柔らかな頬』、『東京島』 『OUT』は2004年にアメリカ探偵作家クラブ(MWA)・エドガー賞最優秀長編賞の候補になったこともあり、世界中で翻訳されている。英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語以外に、オランダ語、スペイン語、ポルトガル語(ブラジルで出版)、ロシア語、ポーランド語、スロベニア語、アイスランド語、ノルウェー語、スウェーデン語、デンマーク語、ヘブライ語、ハンガリー語、中国語、韓国語、タイ語、インドネシア語などにも翻訳されている。 栗本薫 (Kaoru Kurimoto) 『グイン・サーガ』が6冊翻訳出版されている(第1巻2005年版、第1巻2010年版)。なお英訳は5冊、フランス語訳は6冊、イタリア語訳は3冊。 さ行 桜庭一樹 (Kazuki Sakuraba) Gosick / 『GOSICK』 第1巻 ISBN 3865809162 (2006年11月) 第2巻 ISBN 3865809170 (2007年3月) 第3巻 ISBN 3865809189 (2007年6月) 第4巻 ISBN 3865809197 (2007年10月) 第5巻 ISBN 3865809200 (2008年2月) 第6巻 ISBN 3867195579 (2008年11月) 英訳は第2巻まで。フランス語訳はない(フランスでは天乃咲哉による漫画版『GOSICK』が第4巻まで出版されている)。 桜庭作品のドイツ語訳はほかに、漫画版『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』(上巻、下巻)がある。漫画版『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』は英訳なし。フランス語訳あり。 鈴木光司 (Koji Suzuki) (ドイツ語版Wikipedia) The Ring / 『リング』(1991) ISBN 3453866797 (2003年2月) Spiral - The Ring 2 / 『らせん』(1995) ISBN 3453873866 (2003年12月) Loop - The Ring 3 / 『ループ』(1998) ISBN 3453878051 (2004年6月) The Ring 0 birthday / 『バースデイ』(1999) ISBN 3453431324 (2006年5月) Dark Water / 『仄暗い水の底から』(1996) ISBN 3453565002 (2004年12月) Der Graben / 『エッジ』 ISBN 3453437446 (2014年1月) 英訳:『リング』、『らせん』、『ループ』、『バースデイ』、『仄暗い水の底から』、『楽園』、『神々のプロムナード』、『エッジ』 フランス語訳:『リング』、『らせん』、『ループ』、『バースデイ』、『仄暗い水の底から』 イタリア語訳:『リング』、『らせん』、『ループ』、『仄暗い水の底から』 『リング』は日本のエンターテインメント小説として世界で成功した作品である。ほかにスペイン語、ルーマニア語、ポーランド語、ブルガリア語、リトアニア語、中国語、韓国語、タイ語、ベトナム語、インドネシア語、トルコ語などに翻訳されている。タイでは現在、日本の推理小説が韓国や台湾、中国につぐペースで翻訳されているが、タイで日本のエンターテインメント小説(ミステリ含む)の翻訳ブームが起こったのは『リング』の翻訳出版がきっかけだったという。 た行 高橋克彦 (Katsuhiko Takahashi) Auf der Suche nach Sharaku / 『写楽殺人事件』(1983) ISBN 3861249189 (2013年3月) 江戸川乱歩賞受賞作。文化庁の「現代日本文学の翻訳・普及事業」(JLPP)で選定・翻訳された。 高見広春 (Koushun Takami) Battle Royale / 『バトル・ロワイアル』(1999) ISBN 3453675193 (2006年8月) ドイツ語のほか、英語、フランス語、イタリア語、ノルウェー語、中国語、韓国語などに翻訳されている。 戸川昌子 (Masako Togawa) (ドイツ語版Wikipedia) Der Kuss des Feuers / 『火の接吻』 ISBN 3442051142(1996年7月) Der Hauptschlüssel / 『大いなる幻影』 (江戸川乱歩賞受賞作) ISBN 3886195104(1997年11月) ISBN 3293202926(2004年2月) Trübe Wasser in Tokio / 『深い失速』 ISBN 3596139414(1998年) ISBN 3293202527(2003年2月) Schwestern der Nacht / 『猟人日記』 - ドイツ語タイトルの直訳は『夜の姉妹』 ISBN 3293202462(2002年9月) ISBN 3293204473(2009年2月) 英訳:『火の接吻』、『大いなる幻影』、『猟人日記』、『深い失速』 フランス語訳:『火の接吻』 イタリア語訳:『火の接吻』、『大いなる幻影』、『猟人日記』 スペイン語訳:『火の接吻』、『大いなる幻影』、『猟人日記』 『猟人日記』はほかにオランダ語、ノルウェー語、スウェーデン語、デンマーク語などにも翻訳されている。 1987年に国際推理作家協会の第1回理事会が開かれた際、戸川昌子は協会からの指名で日本代表の理事となっている。その時期、戸川昌子は欧米でそれなりの知名度があったようだ。 な行 夏樹静子 (Shizuko Natsuki) Zwei Fremde in der Dunkelheit / 『第三の女』 ISBN 3442051436 (1994年11月) Mord am Fujiyama / 『Wの悲劇』 ISBN 3442051487 (1995年11月) ISBN 3442458684 (2005年) 『Wの悲劇』のドイツ語タイトルは英題と同じく『富士山の殺人』となっている。 『第三の女』は1987年に英訳、1988年にイタリア語訳が出ており、1989年にはフランス語訳が刊行された。このフランス語訳は同年、フランス冒険小説大賞を受賞している。 長編の英訳は6作品、フランス語訳は5作品、イタリア語訳は2作品。 夏樹静子は1981年5月、スウェーデン・ストックホルムで開催された第3回世界推理作家会議に日本推理作家協会代表として参加し、日本の推理小説事情に関して講演を行っている。1988年5月にアメリカ合衆国・ニューヨークで開催された第4回世界推理作家会議にも参加している。 西尾維新 (Nisioisin) Death Note Another Note / 『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』(2006) ISBN 3867193711 (2008年5月) この作品は英訳もある。西尾作品で英訳があるのはほかに『クビキリサイクル』、『クビシメロマンチスト』、『xxxHOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル』。 『DEATH NOTE アナザーノート』は密室殺人を扱った作品で、不可能犯罪へのこだわりで知られるアメリカの本格ミステリ作家ハル・ホワイトも読んでいるらしい(参照)。 西村京太郎 (Kyotaro Nishimura) Das klatschende Äffchen /『南神威島(みなみかむいとう)』 - ドイツ語タイトルは「手を拍く猿」 ISBN 3936018839 (2012年2月) 表紙写真は「こちら」で見られる。おそらく西村京太郎の初のドイツ語単行本。「手を拍く猿」と「南神威島」が収録されているようなので、短編集『南神威島』(収録作:「南神威島」、「幻想の夏」、「手を拍く猿」、「カードの城」、「刑事」)の翻訳だろう。 西村京太郎作品の英訳は『ミステリー列車が消えた』のみ。イタリア語訳も同じく『ミステリー列車が消えた』のみ。フランス語訳は『ミステリー列車が消えた』を含め4作品ほどが刊行されている。 は行 東野圭吾 (Keigo Higashino) (ドイツ語版Wikipedia) Mord am See / 『レイクサイド』 ISBN 398090220X (2003年7月) Verdächtige Geliebte / 『容疑者Xの献身』 ISBN 3608939660 (2012年11月) Heilige Mörderin / 『聖女の救済』 ISBN 3608980121 (2014年2月) ほかに、東野圭吾原案・間瀬元朗作画の『HEADS』全4巻が翻訳出版されている(第1巻)。 東野圭吾の作品の欧米諸言語への翻訳は2000年刊行のイタリア語版『白馬山荘殺人事件』が最初で、次がドイツ語版『レイクサイド』である。 『容疑者Xの献身』は英語、フランス語、スペイン語、カタルーニャ語(スペイン東部で話されている言語)、ロシア語、中国語、韓国語、タイ語、ベトナム語などに翻訳されている。ドイツ語訳はそれらよりもやや遅れて、2012年11月の刊行である。なお『容疑者Xの献身』のドイツ語への翻訳は国際交流基金より助成金を受けている(参照:国際交流基金 > 文化芸術交流 > 映像・出版 > 出版分野の支援 > 助成事業一覧 平成24(2012)年度 出版・翻訳) 関連記事 東野圭吾作品の欧米での翻訳出版について (2012年1月22日) ま行 松本清張 (Seicho Matsumoto) (ドイツ語版Wikipedia) Spiel mit dem Fahrplan / 『点と線』 B0000BSJUX、B006XV9NQM (1969年) ISBN 3596282306 (1991年5月) Mord am Amagi-Paß / 『天城越え』 B00273WMZE、B005MGDKGS (1983年) ISBN 3596281865 (1991年1月) 「天城越え」は短編なのでドイツ語版『天城越え』はもちろん短編集だろうが、収録作は分からない。 桐野夏生『OUT』がエドガー賞の候補になるまで、世界で(特に欧米で)最も有名な日本のミステリ作家といえば松本清張だっただろう。松本清張の作品は欧米主要言語は言うに及ばず、チェコ語、ブルガリア語、クロアチア語、ギリシャ語、フィンランド語、エストニア語、さらにはグルジア語やアルメニア語などにも翻訳されている。 水上勉 (Tsutomu Mizukami) (ドイツ語版Wikipedia) Im Tempel der Wildgänse / 『雁の寺』 ISBN 3861249049 (2008年2月) 『雁の寺』は英訳やフランス語訳もある。 宮部みゆき (Miyuki Miyabe) (ドイツ語版Wikipedia) Feuerwagen / 『火車』(1992) ISBN 386124912X (2011年10月) 英訳:『火車』、『クロスファイア』、『R.P.G.』、『魔術はささやく』、『龍は眠る』 ファンタジー作品『ブレイブ・ストーリー』、『英雄の書』 フランス語訳:『火車』、『クロスファイア』、『R.P.G.』、『淋しい狩人』 ファンタジー作品『ブレイブ・ストーリー』 イタリア語訳:『火車』 2011年になってやっと初のドイツ語単行本が出た。『火車』はスペイン語訳やギリシャ語訳もある。 や行 結城昌治 (Shoji Yuki) Ich bin kein Hund / 『ぼく、イヌじゃないよ』(1985) ISBN 3876275067 (1997年2月) 河出書房新社の叢書《メルヘンの森》(全6巻)の1冊として刊行された絵本。 漫画の翻訳のみ 石田衣良 (Ira Ishida) 漫画版『池袋ウエストゲートパーク』が刊行されている(第1巻)。 乙一 (Otsuichi) 清原紘による漫画版『傷』、『失踪Holiday』、『きみにしか聞こえない』 大岩ケンヂによる漫画版『GOTH』 都筑せつりによる漫画版『きみにしか聞こえない』 山田風太郎 (Futaro Yamada) 漫画版『柳生忍法帖』(第1巻)および『バジリスク』(第1巻)が刊行されている。 アンソロジー・その他 アンソロジーについては、国際交流基金の「日本文学翻訳書誌検索」を参考にした。 Japanische Kriminalgeschichten (エラリー・クイーン編、Ullstein、1983年)『Ellery Queen s Japanese Golden Dozen』(1978年)のドイツ語版。 収録作:石沢英太郎「噂を集め過ぎた男」、松本清張「奇妙な被告」、三好徹「死者の便り」、森村誠一「魔少年」、夏樹静子「断崖からの声」(Schrei von der Klippe)、西村京太郎「優しい脅迫者」、佐野洋「証拠なし」、笹沢左保「海からの招待状」、草野唯雄「復顔」、戸川昌子「黄色い吸血鬼」(Der Vampir)、土屋隆夫「加えて、消した」、筒井康隆「如菩薩団」 Japanische Kriminalgeschichten (Ingrid Schuster編、Reclam、1985年)上記と同タイトルだが別の本。谷崎潤一郎「私」、江戸川乱歩「赤い部屋」、松本清張「証言」、戸川昌子「黄色い吸血鬼」(Blutsauger)を収録 Die drei Metamorphosen der Tsuruko (Iudicium、2002年)泡坂妻夫「鶴の三変」が表題作となっている日本小説のアンソロジー。全15編収録。 ほかの収録作は山村美紗「高齢の使用人」、森岡浩之「普通の子ども」、星新一「うるさい上役」、高村薫「棕櫚とトカゲ」、山口洋子「花烏賊のころ」、内田春菊「夜の足音」、田辺聖子「三日月」、皆川博子「川」、黒井千次「家の中の扉」、阿刀田高「愛のすみか」、山田正紀「死蝋」、内海隆一郎「帰郷」、北野勇作「ペットを飼うヒト」、大槻ケンジ「のの子の復讐ジグジグ」 Ellery Queen's Kriminal Magazin 75松本清張作品掲載? リンク PDF Japan Forum, Vol.137 / Aug. 2006 特集「Krimis aus Japan」(日本の推理小説)在デュッセルドルフ日本国総領事館の発行。バックナンバー。 ドイツ語圏のミステリについて ドイツ語圏ミステリの邦訳状況については「ドイツ語圏ミステリ邦訳一覧」をご覧ください。 ドイツ語圏ミステリを知るための文献一覧は「ヨーロッパの推理小説#ドイツ語圏」をご覧ください。 「日本ミステリの海外刊行」に戻る
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/123.html
2011年5月1日 2011年5月6日 ペルシア語圏について追加 大きな地図で見る 日本のミステリは西アジアでも刊行されている。 このページでは、国際交流基金が作成している「日本文学翻訳書誌」を基礎資料として、それに独自に調査した分を加え、西アジアの言語に翻訳された日本のミステリをまとめている。なお、「日本文学翻訳書誌」では現地での刊行タイトルはすべてラテン文字に転写され、アルファベットにつける特殊記号も削除されているが、このページでは現地の表記に戻している。 ※トルコ語に含まれる特殊なアルファベットおよび、アルメニア文字、グルジア文字、アラビア文字、ペルシア文字を使用しています。携帯電話等では表示されません。 Index トルコ鈴木光司 アゼルバイジャン アルメニア松本清張 グルジア松本清張 アラビア語 ヘブライ語 ペルシア語 リンク 「★追加」と注記した書籍は、国際交流基金のデータに掲載されていないものである。 トルコ トルコ語:話者数 約8300万人 鈴木光司 Halka / 『リング』 Sarmal / 『らせん』 Düğüm / 『ループ』 Doğum Günü / 『バースデイ』 4冊とも、2008年、トルコ・イスタンブールの出版社「Doğan Kitap」から刊行。著者名の現地表記は「Koci Suzuki」。翻訳者はHüseyin Can Erkin氏。 「Doğan Kitap」のサイトに掲載されている鈴木光司のプロフィール トルコのミステリが邦訳されているかは分からないが、トルコのノーベル賞作家オルハン・パムクの『わたしの名は紅(あか)』(邦訳刊行2004年)はミステリとして読める作品である。トルコ語版Wikipediaを見ると、「カテゴリ:推理作家」( Kategori Polisiye yazarları )には英米の推理作家コナン・ドイル、アガサ・クリスティ、レイモンド・チャンドラー、ダシール・ハメット、パトリシア・ハイスミス、ミネット・ウォルターズ、アレグザンダー・マコール・スミス、ローレンス・ブロック、ドナ・レオン、ヴァル・マクダーミド、英語で執筆しフランスで作品を発表していたチェスター・ハイムズ、フランスのブリジット・オベール、レオ・マレ、フランス語で書くベルギーの作家ジョルジュ・シムノンと並んで、Ahmet Ümit(1960年生まれ)、Celil Oker(1952年生まれ)という2人のトルコの推理作家の記事がある。 Ahmet Ümit(アフメト・ユミット?)は1996年にギリシャで刊行したトルコ語の推理小説『霧と夜』が代表作で、これはトルコ語で執筆されたサスペンスとしては初めて諸外国語に翻訳された作品らしい。ドイツ語には『霧と夜』ほか数作品が翻訳されている(『霧と夜』のドイツ語版はスイスで刊行、ドイツ語では『夜と霧』【書影右側】)。また、『Masal Masal İçinde』(物語は物語の中に)は韓国語版が刊行されている。ほかにスペイン語に翻訳されている作品もある。Celil Oker(ジェリル・オケル?)は1999年にデビューした推理作家で、長編4作品がドイツ語に翻訳されスイスで刊行されている(【書影左側】は、ドイツ語版『ボスポラスの雪』)。 ほかに、著作が英語やドイツ語、フランス語に翻訳されているトルコの推理作家に、メフメット・ムラート・ソマー( Mehmet Murat Somer )がいる。この作家については、catalystさん( @biotit )が英語で著作を読んで、こちらのページ(→リンク)で詳しく紹介している。この作家は、ウォール・ストリート・ジャーナル2010年7月5日の記事「米ミステリー界へ海外から新たな旋風」(日本語)で、東野圭吾や吉田修一らとともに取り上げられている。 また、トルコに出自を持つ推理作家に、現在はドイツに居住しドイツ語で執筆しているアキフ・ピリンチがいる。『猫たちの聖夜』とその続編の『猫たちの森』が邦訳されている。 アゼルバイジャン アゼルバイジャン語:話者数 約3000万人 アゼルバイジャン語はトルコ語と同系統の言語で、相互の理解度がかなり高い。国際交流基金のデータでは、日本のミステリのアゼルバイジャン語への翻訳はない。日本文学全体では、児童文学作家の松谷みよ子の『龍の子太郎』と、遠藤周作の『海と毒薬』がアゼルバイジャン語に翻訳されている。 (蛇足だが、アゼルバイジャン語ではアーサー・コナン・ドイルを「Artur Konan Doyl」(アルトゥール・コナン・ドイル)、アガサ・クリスティを「Aqata Kristi」(アガタ・クリスティ)と、ラテン文字圏であるにもかかわらず異なる綴りで書いているのが面白い。2人の名前はロシアではこのように発音されるが、アゼルバイジャン語も1990年代初めまではロシアの文字で表記されていたので、その影響でこうなっているのだろう。) アルメニア アルメニア語:話者数 約700万人 松本清張 Ստորջրյա հոսանք (1968年刊行)書影 / 『深層海流』 (著者名表記: Մացումոտո, Սեյտյո )(マツモト・セイティオ) Կետեր և գծեր (1973年刊行)/ 『点と線』 (著者名表記: Մացումոտո, Սեիտե )(マツモト・セイテ) Երկիր անապատ (2010年刊行)書影、書影 / 『球形の荒野』か? (著者名表記: Մացումոտո Ս. )(マツモト S.) (★追加) 『深層海流』は1965年にロシア語版が出ているので、アルメニア語版はおそらくその重訳だろう。『点と線』もロシア語訳があるが、ロシア語訳の刊行が1973年よりも早かったかどうかは分からない。『球形の荒野』は、1979年にロシア語訳が出ている。 『点と線』のデータは現地のネット書店等では見つからなかったが、中西印刷株式会社の中西亮氏が世界各地で集めた文字資料を国立民族学博物館がデータベース化した「中西コレクションデータベース」で書影を見ることができる。 →中西コレクション アルメニア文字資料一覧 (蛇足 アルメニア語版『点と線』やグルジア語版『黒い福音』の著者名が「マツモト・セイテ」となっているのは、松本清張のロシア語表記「Мацумото, Сэйтё」(マツモト・セイチョー)の最後の文字「ё」を「е」に置き換えてそれぞれの文字に転写したからだと思われる) アルメニア語で書かれたミステリの話題は目にしたことがない。アルメニア語版Wikipediaの検索窓で「 Դետեկտիվ ժանրի գրողներ 」(推理作家)を検索してみると、コナン・ドイル、アガサ・クリスティ、ガストン・ルルーが引っかかったが、アルメニアの推理作家の記事は見当たらない。 グルジア グルジア語:話者数 約600万人 松本清張 შავი სახარება (1975年刊行?)(国際交流基金のデータでは1972年)/ 『黒い福音』(著者名表記: მაცუმოტო, სეიტე )(マツモト・セイテ) 『黒い福音』はロシア語に翻訳されているので、おそらくその重訳だろう。この作品はほかにリトアニア語版も出ている(これもロシア語からの重訳だと推定される)。 『点と線』はグルジア語では「 წერტილები და ხაზები 」と書くようで、グルジアのミステリ関連の掲示板でタイトルが挙げられているのを見たが、グルジア語に翻訳されているのかは分からない。 グルジア語で書かれたミステリの話題は目にしたことがない。グルジア語のWikipediaを見ると、「カテゴリ:推理作家」( კატეგორია დეტექტიური ჟანრის მწერლები )には英米の推理作家コナン・ドイル、アガサ・クリスティ、ジョン・ディクスン・カー、ダシール・ハメット、ロス・マクドナルド、ディック・フランシス、チャールズ・パーシー・スノー、ヒュー・ペンティコースト、ハドリー・チェイス、ジョー・ゴアズ、シドニー・シェルダン、レイ・ブラッドベリや、ロシア語で書くグルジア出身の推理作家ボリス・アクーニン、フランス語で書くベルギーの推理作家ジョルジュ・シムノンの記事があるが、グルジアの推理作家の記事は見当たらない。 アラビア語 アラビア語:世界に約2億8000万人の母語話者 国際交流基金のデータでは、日本のミステリのアラビア語への翻訳はない。日本文学全体を見ると、クウェートやイラク、シリア、レバノン、アラブ首長国連邦、オマーン、エジプトで、夏目漱石や三島由紀夫など、日本の代表的な小説家の作品の翻訳が出ている。 ちなみに、アラビア語版Wikipediaの「推理小説」を機械翻訳で見ていたら、いまいち文意は不明だが、少年向け作品の節で『名探偵コナン』やその作者青山剛昌の名前が書かれていて、こんなところまで江戸川コナンの名声は届いているのか……と驚いた。(アラビア語版Wikipediaの「名探偵コナン」の記事も詳しくて驚く。作者の「青山剛昌」の記事もある) アラビア語で書かれたミステリの邦訳があるという話は聞いたことがない。Abdelilah Hamdouchiという人が書いたミステリの英訳版『The Final Bet』の紹介文に、「Abdelilah Hamdouchiは、アラビア語で推理小説を書く最初の作家たちの一人だ」と書かれている。調べてみると、この作品のアラビア語の原著『al-Rihan al-akhir』(الرهان الأخير)(原綴りはラテン文字転写からの推定)が刊行されたのが2001年のようなので、アラビア語でミステリが書かれるということ自体が今まであまりなかったのだろう(といっても、英語圏で日本のミステリ作家がほとんど知られていないのと同じように、アラビア語圏のミステリ作家も実際にはいるが英語圏で知られていないだけかもしれない)。Abdelilah Hamdouchiはモロッコのシナリオライターで、この『The Final Bet』もテレビドラマ用に書かれたものだとのこと(『The Final Bet』の著者紹介)。 ヘブライ語 イスラエルの人口約720万人のうち、約520万人がヘブライ語母語話者 国際交流基金のデータでは、日本のミステリのヘブライ語への翻訳はない。日本文学全体を見ると、村上春樹や夏目漱石の作品のほか、『源氏物語』などがヘブライ語に翻訳されている。 ヘブライ語から(直接・間接問わず)日本語に訳されたミステリは、バチヤ・グール『精神分析ゲーム』(イーストプレス、1994年)、『教授たちの殺人ゲーム』(イーストプレス、1996年)、シュラミット・ラピッド『「地の塩」殺人事件』(マガジンハウス、1997年)などがある。 ペルシア語 イランを中心に、約7000万人の母語話者 国際交流基金のデータでは、日本のミステリのペルシア語への翻訳はない(日本文学のペルシア語への翻訳自体が、1件も登録されていない)。 ペルシア語で書かれたミステリ、またはイランで出版されたミステリの話題は、いずれにしろ目にしたことがない。フランスに Naïri Nahapétian というミステリ作家がいて、この人はこちらのインタビュー記事で、イラン出身でイランを舞台にして推理小説を書く初めての作家だと紹介されている。ただ、彼女はイランのアルメニア系の家族に生まれ、幼少期からはフランスで暮らしているようで、執筆言語はペルシア語ではなくフランス語だし、イランの推理作家とも言い難い。彼女のデビュー作『Qui a tué l'ayatollah Kanuni?』(2009)は、オランダ語(Achter gesloten deuren)やスウェーデン語(Vem dödade ayatolla Kanuni?)に翻訳されている。 探偵作家クラブ(現・日本推理作家協会)会報第73号(1953年6月)に「インドとイランの状況報告」という記事が載っている。この記事では、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)会報の1953年3月号にイランの探偵小説事情が報告されているとして、その内容を伝えている。それによれば、テヘラン滞在中のMWA会員が、イランのある地方雑誌にパトリック・クェンティンの作品のペルシア語訳が掲載されているのを発見したのだという。この会員もペルシア語は読めず、それ以上のことは不明とされている。 おそらくペルシア語版Wikipediaのこのページ「رده جنایینویسان」が「カテゴリ:推理作家」だと思うが、ここにある記事はコナン・ドイルとアガサ・クリスティの記事のみである。 リンク 邊見由起子「エジプトとトルコの出版事情―出張報告」(国立国会図書館 アジア情報室通報 第5巻第2号(2007年6月) 「日本ミステリの海外刊行」に戻る
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/121.html
2011年4月30日 大きな地図で見る 最近、日本で北欧ミステリが注目を集めている。その一番の要因としては、スウェーデンの作家であるスティーグ・ラーソンの『ミレニアム』(1~3、各上下巻、早川書房)が2008年末から2009年にかけて日本のミステリ界を席巻したことが挙げられるだろう。『ミステリマガジン』2010年11月号では北欧ミステリの特集が組まれ、今年に入って以降も、4月にハヤカワ・ポケット・ミステリからスウェーデンの作家ヨハン・テオリンの『黄昏に眠る秋』が出て話題になっているのみならず、5月にはノルウェーの作家カリン・フォッスムの『湖のほとりで』の刊行が予定されており、また年内にはアイスランドの作家アーナルデュル・インドリダソンの長編2作品の東京創元社からの刊行も予定されている(※2012年に延期)。 このページでは、逆に北欧では日本のミステリがどれほど読まれているのかを知るため、国際交流基金が作成している「日本文学翻訳書誌検索」を基礎資料として、それに独自に調査した分を加え、北欧諸言語に翻訳された日本のミステリをまとめている。なお、国際連合の区分では、バルト海を挟んでスウェーデン・フィンランドの対岸にあるバルト三国、すなわちエストニア、ラトビア、リトアニアも北欧5カ国とともに「北ヨーロッパ」に分類しており、また言語系統的にも北欧5カ国の一部とバルト三国の一部は関係があるため、このページではバルト三国での翻訳状況も一緒に扱うことにする。 北欧およびバルト三国の言語について 北欧に「ガラスの鍵賞」というミステリの賞がある。これは、北欧5カ国、すなわち、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの5カ国で1年間に発表されたミステリの中で、最優秀ミステリを決定しこれを表彰する賞である。この5カ国ではどの国でも国名に「 - 語」を付けた言語が使われていて、つまりこの賞は言語の壁を越え、5つの異なる言語で書かれたミステリから最優秀作を選ぶという、非常に手間のかかっていそうな賞なのである。 『ミステリマガジン』2009年10月号でミステリ評論家の松坂健氏は、「仮にアジアでこのようなミステリ大賞をつくって、日本、韓国、台湾、中国などとミステリ作品を競わせることができるだろうかと考えると、難しいだろうなあと思う」と述べているが、これは確かにそうだろう。北欧5カ国でこのような賞が可能になっているのは、その言語の近さによるものだと思われる。北欧5カ国の言語は、まったく言語系統の異なるフィンランド語を除けば、どの言語も北方ゲルマン語群(英語やドイツ語の親戚)に属し、「知識人であればどの北欧語も読めるというほど互いに似通っている」のである。なかでもノルウェー語話者は、特に訓練をしなくても、「スウェーデン人とデンマーク人の間では両者の仲介が出来、アイスランド人の発言の通訳が出来る」のだという。また、唯一系統の異なる言語を使用しているフィンランドでも、フィンランド語とともにスウェーデン語が公用語となっており、国民の94%を占めるフィンランド語母語話者の中にはスウェーデン語を理解できる人も多いという。東アジアの日本、韓国、台湾、中国は同じ漢字文化圏に属するとはいえ、言語は日本語・韓国語・中国語でまったく異なっており、翻訳の手間だけを考えても、北欧の「ガラスの鍵賞」と同じような賞の実現は難しいと言わざるを得ないだろう。 北欧5カ国の言語の中で唯一系統の異なるフィンランド語は、バルト三国のうちのエストニアの公用語であるエストニア語と非常に近い関係にある言語で、「相互理解も困難ではない」という。ただし、バルト三国の言語の中でフィンランド語に近い関係にあるのはエストニア語だけで、ラトビア語とリトアニア語は、北欧5カ国の言語やエストニア語とは異なる別系統の言語である。(言語に関する引用箇所は『世界のことば』(朝日選書、1991年)より) Index アイスランド (Iceland)桐野夏生 (Natsuo Kirino) ノルウェー (Norway)桐野夏生 (Natsuo Kirino) 高見広春 (Koushun Takami) 戸川昌子 (Masako Togawa) スウェーデン (Sweden)桐野夏生 (Natsuo Kirino) 戸川昌子 (Masako Togawa) デンマーク (Denmark)桐野夏生 (Natsuo Kirino) 鈴木光司 (Koji Suzuki) 戸川昌子 (Masako Togawa) 宮部みゆき (Miyuki Miyabe) フィンランド (Finland)高木彬光 (Akimitsu Takagi) 松本清張 (Seicho Matsumoto) ――北欧5カ国まとめ―― バルト三国のミステリ エストニア (Estonia)松本清張 (Seisho Matsumoto) ラトビア (Latvia) リトアニア (Lithuania)小林久三 (Kyuzo Kobayashi) 鈴木光司 (Koji Suzuki) 松本清張 (Seisho Matsumoto) 森村誠一 (Seiichi Morimura) 参考文献 リンク 以下、ISBNをクリックすると、現地のネット書店等の該当ページが開くようになっている。 「★追加」と注記した書籍は、国際交流基金のデータに掲載されていないものである。 アイスランド (Iceland) アイスランド語:母語話者数 約32万人(北欧5カ国およびバルト三国の中で最少) 桐野夏生 (Natsuo Kirino) Næturvaktin / 『OUT』 ISBN 9789979788157 (2005年) 翻訳者のJón Hallur Stefánsson氏(ノルウェー語版Wikipedia)はアイスランドの推理作家。 アイスランド語から(直接・間接問わず)日本語に訳されたミステリは、イルサ・シグルザルドッティル『魔女遊戯』(集英社文庫、2011年)、アーナルデュル・インドリダソン『湿地』(東京創元社、2012年6月)、『緑衣の女』(仮題/東京創元社から出版予定)などがある。 ノルウェー (Norway) ノルウェー語:母語話者数 約500万人 桐野夏生 (Natsuo Kirino) Ute / 『OUT』 ISBN 9788205352513 (2006年) 翻訳者のIka Kaminka氏は、ほかに村上春樹や夏目漱石、パトリシア・ハイスミスのノルウェー語訳を手掛けている。(日本の作品は、英語からの重訳だろうか?) 高見広春 (Koushun Takami) (ノルウェー語版Wikipedia) Battle Royale / 『バトル・ロワイアル』 ISBN 9788204105134 (2006年) 翻訳者のYngve Johan Larsen氏は、ほかに村上春樹の翻訳などを手掛けている。 戸川昌子 (Masako Togawa) Blodig dagbok / 『猟人日記』 ISBN 9788251403566 (1990年)(リンク先 書影なし) 翻訳者のAtle Næss氏(英語版Wikipedia)は、ノルウェーの小説家。 ノルウェー語から(直接・間接問わず)日本語に訳されたミステリは、ベルンハルト・ボルゲ『夜の人』(ハヤカワ・ポケット・ミステリ、1960年)、アンネ・ホルト『女神の沈黙』、『土曜日の殺人者』、『悪魔の死』(集英社文庫、1997-1999年)、トム・エーゲラン『狼の夜』(扶桑社ミステリー、2008年)、ジョー・ネスボ『コマドリの賭け』(ランダムハウス講談社文庫、2009年)、カリン・フォッスム『湖のほとりで』(PHP文芸文庫、2011年5月)などがある。 スウェーデン (Sweden) スウェーデン語:母語話者数 約1000万人(北欧5カ国およびバルト三国の中で最多) 桐野夏生 (Natsuo Kirino) (スウェーデン語版Wikipedia) Fri / 『OUT』 (★追加) ISBN 9789170022180 (2007年) ISBN 9789170026645 (2008年) 翻訳者のLars Vargö氏は、ほかに夏目漱石や安部公房の翻訳を手掛けている。 戸川昌子 (Masako Togawa) Kvinnojägaren / 『猟人日記』 ISBN 9789150209181 (1988年)(リンク先 書影なし) 英語からの重訳。翻訳者はÖjevind Lång氏。 ほかの北欧の国々と比べると、スウェーデンのミステリの邦訳は以前からそれなりになされており、古くは『新青年』にS・A・ドゥーゼやフランク・ヘラーの作品が邦訳されていた。1970年代から80年代にかけては、マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールーのマルティン・ベックシリーズ全10作(角川書店)や、ヤーン・エクストレム『誕生パーティの17人』(創元推理文庫、1987年)が注目を集め、その後もヤン・ギルー(1995年)、シャスティン・エークマン(1998年)の邦訳が刊行されている。21世紀に入ってからは、2001年にヘニング・マンケルのミステリ作品が刊行されたのに続いて、リサ・マークルンド(2002年)、ホーカン・ネッセル(2003年)、カーリン・アルヴテーゲン(2004年)、アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム(2007年)、オーサ・ラーソン(2008年)、スティーグ・ラーソン(2008年)、カミラ・レックバリ(2009年)、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト(2009年)、ラーシュ・ケプレル(2010年)、ヨハン・テオリン(2011年)と、次々に新たな作家の邦訳が続いており、日本ではスウェーデンは、英米やフランスに次ぐミステリ大国として認知されているといっていいだろう。 デンマーク (Denmark) デンマーク語:母語話者数 約600万人 桐野夏生 (Natsuo Kirino) Ude / 『OUT』 (★追加) ISBN 9788791812309 (2008年) 鈴木光司 (Koji Suzuki) (デンマーク語版Wikipedia) Ring / 『リング』 (★追加) ISBN 9788759525012 (2005年) Spiral / 『らせん』 (★追加) ISBN 9788759526132 (2006年) 戸川昌子 (Masako Togawa) En kvindejægers dagbog / 『猟人日記』 (★追加) ISBN 9788777243462 (1993年)(リンク先 書影なし) 宮部みゆき (Miyuki Miyabe) Skyggefamilie / 『R.P.G.』 (★追加) ISBN 9788711431740 (2010年) 題名から判断して、英訳版『Shadow Family』からの重訳だろう。 デンマーク語から(直接・間接問わず)日本語に訳されたミステリは、アーナス・ボーデルセン『轢き逃げ人生』、『罪人は眠れない』、『殺人にいたる病』、『蒼い迷宮』、アイザック・ディネーセン(カレン・ブリクセン)『復讐には天使の優しさを』、ペーター・ホゥ『スミラの雪の感覚』(新潮社、1996年)、『ボーダーライナーズ』(求龍堂、2002年)などがある。 フィンランド (Finland) フィンランド語:母語話者数 約600万人 高木彬光 (Akimitsu Takagi) Ilmiantaja / 『密告者』 ISBN 9789510064917 (1974年) 翻訳者はMarjukka Iizuka氏。名字から判断して、日系の人が日本語から訳したのかなと思ったが、WorldCatによれば英語からの重訳だそうだ。 松本清張 (Seicho Matsumoto) Junaongelma / 『点と線』 ISBN 9789510059869 (1973年) 翻訳者はKristiina Kivivuori氏。 フィンランド語から(直接・間接問わず)日本語に訳されたミステリは、マウリ・サリオラ『ヘルシンキ事件』(TBS出版会、1979年)、ペンッティ・キルスティラ『過去よさらば』(新樹社、2000年)などがある。 ――北欧5カ国まとめ―― フィンランドを除く4カ国 桐野夏生『OUT』が4カ国すべてで翻訳されているのは、やはりエドガー賞の候補になったというのが大きいのだろう。またアイスランドを除く3カ国では、戸川昌子『猟人日記』が翻訳されている。戸川昌子は、ジュリアン・シモンズの推理小説研究書『ブラッディ・マーダー』でも取り上げられており、欧米ではある程度知名度があるようだ。あとは宮部みゆきの作品がデンマークで刊行されているぐらいで、有名どころの江戸川乱歩、松本清張、夏樹静子の本が出ていないか各地のネット書店等で検索してみたが見つからなかった。広義のミステリまで目を配ると、ノルウェーで高見広春『バトル・ロワイアル』、デンマークで鈴木光司の『リング』、『らせん』が訳されている。 フィンランド 言語系統が違うことが影響しているのか、翻訳されている作品もほかの4カ国とは異なっている。北欧5カ国およびバルト三国の8カ国の中で、唯一、高木彬光の作品が刊行されている。 上では単行本として刊行されたもののみまとめたが、短編では、スウェーデンの雑誌『CDM』(Short Stories of Crime, Detection Mystery)に宮部みゆき「うそつき喇叭」が掲載されている(情報源:『ミステリマガジン』2009年1月号、p.37)。また、国際交流基金のデータによると、ノルウェーのHalldis Moren Vesaas氏(英語版Wikipedia)が1988年に岡本綺堂の「平家蟹」(青空文庫)を翻訳している(ノルウェー語タイトル: Heike krabbane )。 ほかに、小松左京『日本沈没』(日本推理作家協会賞受賞作)のスウェーデン語訳(Japan sjunker、1980年刊行)もある。 国名 人口 公用語とその母語話者の数 推理作家一覧(各言語版Wikipedia) アイスランド 32万人 アイスランド語(32万人) ノルウェー 494万人 ノルウェー語(500万人) Kategori Norske krimforfattere (カテゴリ:ノルウェーの推理作家/146人) スウェーデン 942万人 スウェーデン語(1000万人) Kategori Svenska kriminalförfattare (カテゴリ:スウェーデンの推理作家/111人) デンマーク 556万人 デンマーク語(600万人) Kategori Krimiforfattere fra Danmark (カテゴリ:デンマークの推理作家/35人) フィンランド 538万人 フィンランド語(600万人) Luokka Suomalaiset rikoskirjailijat (カテゴリ:フィンランドの推理作家/74人) (フィンランドでは、国民の6%が母語とするスウェーデン語も公用語になっている) (母語話者数は、国外居住者も含む) バルト三国のミステリ 国名 人口 公用語とその母語話者の数 エストニア 134万人 エストニア語(105万人) ラトビア 223万人 ラトビア語(150万人) リトアニア 325万人 リトアニア語(400万人) (比較:横浜市の人口が約370万人) (母語話者数は、国外居住者も含む) バルト三国のミステリについて書かれている日本語の文献は今までに見かけたことがない。乱歩が世界のミステリについて手紙のやり取りをして苦労して情報を集めた時代とは異なり、現代ではインターネットという便利なものがある。 Google翻訳を使いつつWikipediaの記事を辿っていくと、以下の記事が見つかった。北から順に並べる。 エストニア語版WikipediaKriminaalromaan (推理小説) Eesti kriminaalkirjandusteoste loend (エストニアの推理小説リスト) Kategooria Eesti kriminaalkirjanikud (カテゴリ:エストニアの推理作家) ラトビア語版Wikipediaなし リトアニア語版WikipediaDetektyvas (推理小説) Kategorija Lietuvos detektyvų rašytojai (カテゴリ:リトアニアの推理作家) 「エストニアの推理作家」のカテゴリには10人の作家の記事がある。その中でも一番若い Indrek Hargla (1970年生まれ、男性)の作品はフランス語やロシア語、フィンランド語に翻訳されているとのことだが、amazon.frではそれらしき書籍が見つけられなかった。長編ではなく短編が翻訳されただけなのだろう。SFやホラーも書く作家のようだが、2010年には、15世紀のエストニアの首都タリンを舞台に、薬剤師のメルキオール(Melchior Wakenstede)が事件の謎を解く『Apteeker Melchior ja Oleviste mõistatus』(薬剤師メルキオールと聖オラフ教会の謎)(書影)と『Apteeker Melchior ja Rataskaevu viirastus』(薬剤師メルキオールとラタスカエヴ通りの幻影)(書影)を発表している。 ラトビア語版Wikipediaでは推理小説に関連する記事が見つけられなかった。エストニア語版Wikipediaが約8万の記事を擁しているのに対して、ラトビア語版Wikipediaは総記事数が3万ほどなのでこれは仕方がないか(比較:日本語版の総記事数は約73万)。 「リトアニアの推理作家」のカテゴリには8人の作家の記事があるが、他言語へ作品が翻訳されている作家はいないようだ。古い時期の作家の記事が多いが、1950年以降生まれの作家に、Juozas Šikšnelis(1950年生)とSaulius Stoma(1954年生)がいる。 この3言語では、日本の推理作家の記事は書かれていない。 エストニア (Estonia) エストニア語:母語話者数 約105万人 松本清張 (Seisho Matsumoto) Mäng sõiduplaaniga / 『点と線』 ISBN不明 (1974年版) 1974年?(国際交流基金のデータでは1972年)、エストニアの出版社「Eesti Raamat」から刊行。翻訳者はAgu Sisask氏。 エストニアでの刊行が確認できる日本のミステリはこの一作のみ。エストニアでの刊行とほぼ同じ時期に、フィンランドでも『点と線』が刊行されている。フィンランド語とエストニア語が非常に近い言語であることが関係しているのだろうか。 ほかに、国際交流基金のデータによれば、1962年に江戸川乱歩の短編「人間椅子」が翻訳されているとのこと(エストニア語タイトル: Inimtooi )。 ラトビア (Latvia) ラトビア語:母語話者数 約150万人 国際交流基金のデータでは翻訳なし(ミステリに限らず、ラトビア語への翻訳のデータが1件もない)。上で示したように、日本のミステリのデンマーク語への翻訳については、国際交流基金のデータではゼロだったが実際には翻訳があったので、ラトビア語訳も実際には刊行されているかもしれない。 リトアニア (Lithuania) リトアニア語:母語話者数 約400万人 小林久三 (Kyuzo Kobayashi) Rugpjūtis be imperatoriaus / 『皇帝のいない八月』 ISBN不明 (1984年) 1984年、リトアニアの出版社「Mintis」から刊行。翻訳者は(国際交流基金の記述では)Damute Skuoziuniene氏(正しくは Danutė Skuodžiūnienė か?)。 英訳やフランス語訳、ドイツ語訳も出ていない作品が突如出てきたが、この作品はロシア語訳が出ているので、おそらくロシア語からの重訳だろう(翻訳者の名前 Danutė Skuodžiūnienė で検索すると、ロシア語からリトアニア語への翻訳者であったことが推察できる)。表紙に書かれた作者名は「K. Kobajasis」となっている。 鈴木光司 (Koji Suzuki) Skambutis / 『リング』 ISBN 995597253X (2005年) Spiralė Skambutis II / 『らせん』 ISBN 9955700009 (2006年) Kilpa Skambutis III / 『ループ』 ISBN 9789955700104 (2007年) Tamsus vanduo / 『仄暗い水の底から』 ISBN 9789955972556 (2005年) 松本清張 (Seisho Matsumoto) Juodoji evangelija / 『黒い福音』 ISBN 5415001964 (1991年版) 1969年、リトアニアの出版社「Vaga」から刊行。翻訳者はJuozas Vaišnoras氏。 松本清張の作品の中で、なぜ英訳もフランス語訳もドイツ語訳も出ていないこの作品が?と思ってしまうが、この作品もロシア語訳が出ているので、その重訳だろう。なお、リトアニア語では清張の名前は「Seitė Macumotas」と書くようだ。発音は「セイチョー・マツモタス」でいいんだろうか。 森村誠一 (Seiichi Morimura) Mirties konteineriai/ 『死の器』 ISBN不明 (1986年) 1986年、リトアニアの出版社「Mintis」から刊行。翻訳者はStanislovas Nekrašius氏。国際交流基金のデータではタイトルの綴りに誤りがある。表紙に書かれた作者名は「S. Morimūra」。 国際交流基金のデータでは原題が書かれていないが、1986年以前にロシアで刊行された森村誠一作品を探したところ『Контейнеры смерти』(死の器)が見つかったので、リトアニア語版のタイトルからみても、これの翻訳と見て間違いないだろう。 参考文献 北欧5カ国のミステリについて:『ハヤカワミステリマガジン』2010年11月号【特集 北欧ミステリに注目!】(早川書房、2010年9月)(小山正「北欧ミステリ徒然草」、およびその他の北欧ミステリ特集記事) 北欧5カ国およびバルト三国の言語について:『世界のことば』(朝日選書、1991年)(池上佳助「アイスランド語」、大島美穂「ノルウェー語」、本間晴樹「スウェーデン語」、村井誠人「デンマーク語」、百瀬宏「フィンランド語」、松村一登「エストニア語」、志摩園子「ラトビア語」、村田郁夫「リトアニア語」) リンク Hið íslenska glæpafélag (アイスランド推理作家協会) Rivertonklubben (リバートンクラブ) ※ノルウェーの推理作家団体 Svenska Deckarakademin (スウェーデン推理作家アカデミー) Det Danske Kriminalakademi (デンマーク推理作家アカデミー) Suomen dekkariseura (フィンランド推理クラブ) Asociación Internacional de Escritores Policíacos (国際推理作家協会)北欧支部:Skandinaviska Kriminalsällskapet (スカンジナヴィア推理作家協会)Glasnyckeln - The Glass Key (ガラスの鍵賞) 「日本ミステリの海外刊行」に戻る
https://w.atwiki.jp/vipbunko100/pages/20.html
王道・一般 姑獲鳥の夏(京極夏彦/ミステリ) そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティ/ミステリ) 秘密(東野圭吾/ミステリ) 孤島の鬼(江戸川乱歩/ミステリ) フィネガンズ・ウェイク(ジェームス・ジョイス著・柳瀬尚紀訳/ミステリ) オーデュボンの祈り(伊坂幸太郎/ミステリ) 火車(宮部みゆき/ミステリ) VIP ドグラ・マグラ(夢野久作/ミステリ) 死の泉(皆川博子/ミステリ) 男性週期律(山田風太郎/ミステリ) 詩人と狂人たち(ギルバート・キース・チェスタトン/ミステリ)
https://w.atwiki.jp/amayui/pages/135.html
防具 修正パッチ1.07適応済み NoはAP全て未適応の状態、APを適応することでNoにズレが生じます 数値が二段あるものは上段が強化前、下段が最大強化後の数値になります 分類・軽装 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 001 麻の衣 1 2回 1 2 1 002 鍛梁師の衣 1 2回 2 +1 鍛梁師専用装備リンクあり 4 +1 003 天縁神の衣 1 3回 1 1 +1 -1 フィア専用装備リンクあり 2 3 +1 -1 004 暗殺者のローブ 1 2回 5 2 -1 +1 装備リンクあり 5 3 1 -1 +1 005 白毛のローブ 1 2回 1 3 -1 +1 疲再Ⅰ 1 5 -1 +1 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 006 月鱗の革鎧 2 3回 -2 3 2 -1 +1 -1 -2 5 2 +1 -1 007 緋繭の衣 2 3回 2 5 -1 +1 カトリト専用 4 5 1 -1 +1 008 魔術師の衣 2 3回 5 3 4 魔術結界Ⅰ 装備リンクあり 5 3 7 009 水蛇の革鎧 2 4回 -2 5 4 -1 +1 潜水 装備リンクあり 6 -2 6 4 -1 +1 010 艶舞踏の衣 3 4回 10 3 5 2 魅了無効 女性専用装備リンクあり 13 3 5 3 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 011 水炎の衣 3 3回 4 5 -2 +1 +1 再生Ⅰ カトリト専用 6 6 -2 +1 +1 012 雷府の竜鱗 3 5回 8 2 -2 +1 +1 カトリト専用 11 4 -2 +1 +1 013 怨濁の衣 3 3回 5 -20 9 13 -1 -2 +2 復活Ⅰ 呪い 5 -20 10 15 -1 -2 +2 014 黒帷子の衣 3 5回 8 10 3 隠密Ⅱ 装備リンクあり 5 8 10 3 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 015 神響の衣 4 7回 12 17 +2 -2 魔術結界Ⅱ 装備リンクあり 3 14 19 +2 -2 016 エウシュリテルパ 4 9回 16 16 -1 +1 +1 +1 +1 防護結界Ⅱ 女性専用装備リンクあり 10 5 5 18 19 -1 +1 +1 +1 +1 防護結界Ⅲ 017 天結の神衣 5 9回 20 24 -2 +1 +1 +1 麻痺無効 装備リンクあり 10 5 5 22 27 -2 +1 +1 +1 間接軽減 043 地獄の王衣 4 3回 10 16 22 ベリアル専用 10 17 26 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 フィアの寝間着 4 -- 10 20 20 5 +2 -2 間接軽減 AP02 装備リンクありフィア専用 マイスターの衣 5 -- 威圧Ⅲ AP02 装備リンクあり 使い魔の衣 3 3回 5 15 10 17 AP01リリィ専用 5 15 5 12 18 盗獅子の衣 3 3回 5 15 17 10 AP01ヴァレフォル専用 5 5 15 18 12 歪精域の衣 4 3回 16 20 +1 +1 +1 +1 AP01 装備リンクあり 5 17 21 +1 +1 +1 +1 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 東方魔術士の衣 3 4回 12 12 AP03 装備リンクありユエラ専用 14 14 きわどい水着 3 5回 30 10 10 +1 高揚Ⅲ 間接軽減 AP03 装備リンクあり女性専用 35 10 10 +1 えっちな水着 3 7回 12 18 5 +1 高揚Ⅴ 間接軽減 AP03 装備リンクあり女性専用 10 13 22 5 +1 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 燐武の衣 4 8回 23 15 -2 +2 +2 魔神特性 AP03 27 17 +2 +2 女神の衣 5 9回 25 25 -3 +1 +1 +1 +1 AP03 装備リンクあり 30 30 -1 +1 +1 +1 +1 闇の衣 3 4回 5 7 +3 AP05 装備リンクありフィア=イブラム専用 7 9 +3 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 入手先 店:ディートヘルムの店で購入(数値は値段) 宝:迷宮の財宝・宝箱 報:迷宮のミッション報酬 落:敵モンスターのドロップ No 名称 入手先 001 麻の衣 カトリト初期 002 鍛梁師の衣 製作 アヴァロ初期 003 天縁神の衣 フィア初期 004 暗殺者のローブ イオル初期 005 白毛のローブ ミケユ初期 006 月鱗の革鎧 製作 007 緋繭の衣 製作 008 魔術師の衣 ロズリーヌ初期 店:3700 009 水蛇の革鎧 製作 宝:ドシュア砕屑崖 010 艶舞踏の衣 製作 宝:府幻の祠 宝:レザァリグラ柱廊 011 水炎の衣 思春期カトリト初期 012 雷府の竜鱗 成竜型カトリト初期 013 怨濁の衣 製作 宝:竜閣の城砦 宝:竜閣の強襲路 落:悪しき精霊師 014 黒帷子の衣 製作 宝:ヴィネヘデス遺跡 宝:破炎浄化の城 015 神響の衣 宝:荒んだ北山峡 宝:歪滅妖の裂け目(EX) 宝:歪みの滅妖駅(EX) 016 エウシュリテルパ 白エウ娘初期 エウカードと交換(EX) 017 天結の神衣 製作(EX) 043 地獄の王衣 ベリアル初期(EX) フィアの寝間着 製作(AP02) マイスターの衣 報:謀略の宝物庫(AP02) 使い魔の衣 リリィ初期(AP01) 盗獅子の衣 ヴァレフォル初期(AP01) 歪精域の衣 宝:異界断層の玉座(AP01) 東方魔術士の衣 製作(AP03) ユエラ初期(AP03) きわどい水着 製作(AP03) 宝:魅了斑の結界(AP03) えっちな水着 製作(AP03) 燐武の衣 製作(AP03) 宝:峻険の大渓谷(AP03) 女神の衣 製作(AP03) 闇の衣 製作(AP05) フィア=イブラム初期(AP05) 分類・中装 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 018 鍛梁師の鎧 1 3回 -5 3 1 鍛梁師専用装備リンクあり -5 5 1 1 019 黒鋼の胸当て 1 3回 -2 3 2 -2 5 2 1 020 呪鍛の鎧 1 4回 -5 3 5 -5 4 7 1 021 戦士の鎧 1 3回 -3 5 2 -1 装備リンクあり -3 7 2 022 騎士の鎧 2 3回 -5 7 3 -1 装備リンクあり -5 9 3 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 023 ミスリルの鎖帷子 2 2回 -6 8 5 -2 装備リンクあり -6 10 5 -2 024 戦鬼の鎧 2 5回 -5 12 -2 +2 -1 -1 -1 -1 -1 -1 高揚Ⅰ 呪い装備リンクあり -5 15 2 -2 +2 -1 -1 -1 -1 -1 -1 025 誘惑の水着鎧 3 6回 5 9 2 疲再Ⅰ 魅了無効 女性専用装備リンクあり 5 10 6 1 026 白亜の魔法鎧 3 6回 -7 12 7 -3 -7 15 9 -2 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 027 守護天使の鎧 3 6回 4 4 -5 10 10 -2 +1 -1 再生Ⅰ 恐怖無効 装備リンクあり 4 4 -5 10 15 -1 +1 -1 028 レイシアの鎧 4 2回 -10 15 12 -3 装備リンクあり -10 17 12 -3 029 精域の鎧 4 9回 -8 18 16 -4 +1 +1 +1 +1 即死無効 装備リンクあり 5 2 2 -8 21 19 -4 +1 +1 +1 +1 030 天結の神鎧 5 9回 -8 22 20 -4 +1 +1 +1 即死無効 装備リンクあり 10 4 4 -8 25 23 -4 +1 +1 +1 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 女剣士の鎧 3 5回 15 15 20 20 高揚Ⅰ 魅了無効 AP03女性専用 15 15 20 25 雷竜の鎧 4 8回 -5 15 35 -3 +2 麻痺無効 AP03 -5 19 39 -1 +2 女神の鎧 5 9回 -8 30 30 -5 +1 +1 +1 +1 AP03 装備リンクあり -8 36 36 -2 +1 +1 +1 +1 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 入手先 店:ディートヘルムの店で購入(数値は値段) 宝:迷宮の財宝・宝箱 報:迷宮のミッション報酬 落:敵モンスターのドロップ No 名称 入手先 018 鍛梁師の鎧 製作 019 黒鋼の胸当て 製作 キスニル初期 宝:胴部第一層区域 020 呪鍛の鎧 店:2400 021 戦士の鎧 製作 022 騎士の鎧 製作 ミクシュアナ初期 宝:荒れ果てた森都 023 ミスリルの鎖帷子 店:8600 宝:封錬ノ城 宝:封錬ノ大祭壇 024 戦鬼の鎧 製作 025 誘惑の水着鎧 店:13600 026 白亜の魔法鎧 製作 宝:竜閣の城砦 宝:竜閣の強襲路 宝:魔シキ封錬ノ塔茎 027 守護天使の鎧 宝:封錬廠廊 028 レイシアの鎧 製作 宝:蒼涙の洞窟 029 精域の鎧 宝:レザァリグラ柱廊 宝:千足の魔神列車(EX) 宝:最果ての電撃回廊(AP02) 030 天結の神鎧 製作(EX) 女剣士の鎧 製作(AP03) 宝:峻険の大渓谷(AP03) 雷竜の鎧 製作(AP03) 女神の鎧 製作(AP03) 分類・重装 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 031 プレートメイル 1 2回 -15 6 -3 恐怖無効 装備リンクあり -15 6 2 -3 032 ラウロソメイル 1 3回 -15 6 3 -2 +1 +1 恐怖無効 リシュ専用装備リンクあり -15 8 4 -2 +1 +1 033 ルーンメイル 1 3回 -10 4 4 -2 恐怖無効 -10 7 4 -2 034 ミスリルメイル 2 4回 -10 9 2 -3 恐怖無効 装備リンクあり -10 11 4 -3 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 035 プレニシアメイル 2 3回 -10 13 3 -4 恐怖無効 -10 13 6 -4 036 ネークリス 3 6回 -5 12 9 -4 +1 -1 恐怖無効 -5 14 13 -4 +1 -1 037 パールザミエル 3 6回 -15 15 7 -3 -1 -1 +1 +1 再生Ⅰ 戦闘指揮 装備リンクあり -15 18 10 -3 -1 -1 +1 +1 038 レイシアメイル 4 4回 -10 18 7 -4 装備リンクあり -10 20 9 -4 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 039 イザヤアルマトラ 4 8回 -10 22 10 -5 +1 +1 +1 +1 再生Ⅰ 装備リンクあり -10 25 13 -3 +1 +1 +1 +1 040 メイド魔導鎧 4 4回 -10 24 8 -4 +1 +1 全弾発射M 白エウ娘専用 -10 30 11 -4 +1 +1 041 フォルニョート 4 3回 -10 20 14 -4 強酸無効 フォルネウス専用 -10 24 15 -4 042 フィアスファイレ 5 8回 -10 28 12 -5 +1 +1 +1 即死無効 装備リンクあり -10 31 15 -3 +1 +1 +1 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 ビキニメイル 3 5回 30 20 25 +1 高揚Ⅲ 間接無効 AP03女性専用 30 20 30 +1 魔導鎧スティア 4 8回 -10 35 35 -2 +1 +1 +1 +1 全弾発射M AP03 -10 40 40 +1 +1 +1 +1 ヴァルキュリア 5 9回 -15 40 30 -6 +2 +2 AP03 -15 46 36 -3 +2 +2 No 名称 R 強化回数 HP SP FS 命中 回避 物攻 物防 魔攻 魔防 敏捷 運 移動 痛打 物理 地脈 冷却 火炎 電撃 神聖 暗黒 装備効果 装備スキル 備考 入手先 店:ディートヘルムの店で購入(数値は値段) 宝:迷宮の財宝・宝箱 報:迷宮のミッション報酬 落:敵モンスターのドロップ No 名称 入手先 031 プレートメイル ディート初期 032 ラウロソメイル リシュ初期 033 ルーンメイル 製作 034 ミスリルメイル 店:7400 035 プレニシアメイル 製作 036 ネークリス 製作 037 パールザミエル 製作 038 レイシアメイル 製作 039 イザヤアルマトラ 宝:鼓炎嘯(EX) 040 メイド魔導鎧 製作(EX) 041 フォルニョート フォルネウス初期(EX) 042 フィアスファイレ 製作(EX) ビキニメイル 製作(AP03) 宝:静炎の洞穴(AP03) 魔導鎧スティア 製作(AP03) 宝:隠された書史殿(AP03) ヴァルキュリア 製作(AP03)
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/260.html
2020年8月16日 松川良宏(非英語圏ミステリ研究家) [日本推理作家協会・本格ミステリ作家クラブ会員] 「フランス・ミステリ」を特集した探偵小説研究会の機関誌『CRITICA』第15号[summer 2020](2020年8月13日発行)で、当サイトにご言及いただきました。ありがとうございます。 ただ、当サイト内のフランスミステリ関連情報は、どこにどの情報があるのか、いまいちまとまっておりません。そこでこの機会に、当サイト内のフランスミステリ関連情報の一覧を作成しておくことにいたしました。 当サイトは頻繁に更新していたのは2015年の夏ごろまでで、それ以降はあまり情報を更新できていません。今回、更新・整理のきっかけを作ってくださったことに感謝いたします。 探偵小説研究会 公式サイト『CRITICA』第15号は2020年8月16日現在、古書店・盛林堂書房(東京、西荻窪)およびその通販サイトでのみ購入可能 『CRITICA』第15号で当サイト(及び筆者が実施した企画)に言及してくださった論考横井司氏「ささやかな読書量でフランス・ミステリの十傑を選んでみよう」 嵩平何(たかひら なに)氏「フランスミステリの紹介者たち」 Index 2014年の企画「フランスミステリベスト100」関連2020年の日本におけるフランスミステリの《位置》と、2014年の企画「フランスミステリベスト100」の背景 フランスミステリ必読リスト フランスミステリ邦訳一覧 フランスのミステリ賞受賞作の邦訳状況 フランスミステリの日本での評価本格ミステリ・ベスト10(原書房) このミステリーがすごい!(宝島社) 『週刊文春』ミステリーベスト10(文藝春秋) ミステリが読みたい!(早川書房) 『IN☆POCKET』文庫翻訳ミステリー・ベスト10(講談社) 東西ミステリーベスト100(1985年版、2012年版) フランスにおける日本ミステリ 関連ページ 2014年の企画「フランスミステリベスト100」関連 フランスミステリベスト100(2014年8月14日)Les cent meilleurs romans policiers français de tous les temps(「フランスミステリベスト100」の結果をフランス語原題で示し、英語で企画について簡単な解説を加えたページ) 関連:非英仏語圏ミステリベスト100(「フランスミステリベスト100」と連続して実施した相互補完的アンケート企画) Webサイト「翻訳ミステリー大賞シンジケート」に寄稿したもの実施要項Twitterにて「フランスミステリベスト100」アンケート実施!(2014年7月31日) 「書影付き」順位発表 ※ただし書影はamazonにデータがあるもののみフランスミステリベスト100結果発表!(その1)【1位~30位】(2014年8月20日) フランスミステリベスト100結果発表!(その2)【31位~69位】(2014年8月20日) フランスミステリベスト100結果発表!(その3)【70位~100位+作家ランキング】(2014年8月20日) リアルタイムの結果発表の模様Togetter「フランスミステリベスト100」結果発表(2014年8月13日) フランスミステリベスト100概要 2014年7月17日、当時筆者がWebサイト「翻訳ミステリー大賞シンジケート」で月一回の連載をしていた「非英語圏ミステリー賞あ・ら・かると」の記事内で実施予告。7月31日、「翻訳ミステリー大賞シンジケート」で実施要項公開。同日21時より8月12日24時までの約2週間弱のあいだ、Twitterにてアンケート回答を募った(ハッシュタグ #ATB仏ミス)。1人最大10作品まで(順位はつけてもつけなくてもよい)。高名な小説家や評論家、翻訳家のかたも含め、締切の8月12日までに67名の方から投票をいただき、翌8月13日に予定通りTwitterにて結果を発表した。 実施要項の公開などで「翻訳ミステリー大賞シンジケート」の場をお借りしたが、企画・主催者は筆者(=松川)個人であり、実施要項の策定や集計・発表も筆者が個人でおこなったものである。 なお、このアンケート企画の結果をフランスの人にも見つけてもらえたらいいなという思いで、拙いフランス語と英語で欧米向けページを作ったところ、実施半年後の2015年2月になってフランスのミステリ専門図書館「BILIPO」のFacebookアカウントにより捕捉され、「日本の読者が一番好きなフランスミステリはピエール・シニアックの『ウサギ料理は殺しの味』」という情報がフランス中に拡散され(てしまっ)たようである。(該当のFacebook記事) さて、本ページは本来、当サイト内に分散している「フランスミステリ関連情報」にアクセスしやすくするため、単にページの一覧(羅列)を作成して終えるつもりだった。ただ、2014年に筆者が実施したアンケート企画「フランスミステリベスト100」に関しては、2020年現在と当時(6年前)の状況の違いを踏まえた解説を新たに書いておく必要があると考え、以下に記しておく。 2020年の日本におけるフランスミステリの《位置》と、2014年の企画「フランスミステリベスト100」の背景 2020年現在でこそ、フランスミステリは集英社文庫やハヤカワ・ミステリ(いわゆる「ポケミス」)などで毎年ある程度の点数が翻訳出版され、そのなかで注目を集め、ミステリの年間ベスト10にランクインするような作品もある。今年度(2019年11月以降)でいえば、集英社文庫のギヨーム・ミュッソ『パリのアパルトマン』(吉田恒雄訳、2019年11月)および『作家の秘められた人生』(吉田恒雄訳、2020年9月予定)、ポケミスのエルザ・マルポ『念入りに殺された男』(加藤かおり訳、2020年6月)、ジャン=クリストフ・グランジェ『ブラック・ハンター』(平岡敦訳、2020年9月予定)、ほかにベルナール・ミニエ『魔女の組曲』(上下巻、坂田雪子訳、〈ハーパーBOOKS〉ハーパーコリンズ・ジャパン、2020年1月)などが刊行され、(来月刊行予定の2点はまだ分からないが)どの作品も高い評価を得ている(タイトルのリンク先はすべて、「翻訳ミステリー大賞シンジケート」内「書評七福神の今月の一冊」の該当月のページ)。 しかしこのアンケート企画を実施した2014年7~8月当時はフランスミステリの邦訳がほとんどなくなっていた時期であった。フランスミステリは日本では1970年代までは盛んに訳されていたものの、その後は急激に翻訳点数が少なくなっている*1。2014年当時の日本の若いミステリ読者にとって《フランスミステリ》とは、ごく一部の語り継がれる名作を除き、「過去に大量に訳されているらしいので読もうと思えば読めるけど、そもそもどんなものが訳されているか分からないし、入手困難なものも多いようだし、どの作品から手を付けていいかも分からない」ものだったといっていいだろう。 なお当サイトでは、「どんなものが訳されているか分からない」という状況を打破するため、2012年に「ポケミス非英語圏作品一覧」と「創元推理文庫海外ミステリ非英語圏作品一覧」、2013年に「ハヤカワ・ミステリ文庫非英語圏作品一覧」を公開した。「非英語圏作品一覧」といっても、実質的にはフランスミステリがリストのほとんどを占めていたわけである。 *1 +ポケミスで見るフランスミステリの刊行点数(クリックで展開) ポケミス(1953年9月創刊)でのフランスミステリの刊行点数は、1950年代が20点、1960年代が31点、1970年代が35点であったのに対し、1980年代前半は8点、1980年代後半は1点(フランソワ・ラントラード『バルザック刑事と女捜査官』高野優訳、1989年8月)、1990年代は10年間でたった1点(ロジェ・ラブリュス『罪深き村の犯罪』高野優訳、1991年8月)である。ポケミスではその後、ポール・アルテ『第四の扉』(平岡敦訳)が2002年5月に刊行されるまで、実に10年以上もフランスミステリの刊行がなかった。 つまり見方を変えれば、1985年1月~2002年4月の約17年間で、ポケミスではフランスミステリが2点しか刊行されなかったということである。(もっとも、ポケミスの刊行ペース自体が年代によって異なることにも留意する必要があるし、ポケミスだけで日本におけるフランスミステリの隆盛を判断するのも無理がある) 『ミステリマガジン』2003年7月号に「フランス・ミステリ必読30冊」(選者の記載なし/レビュー:小木曽郷平、香川勇人、川出正樹、不来方優亜、杉江松恋、南波雅、羽取慶治、福井健太、古山裕樹、村上貴史、与儀明子)が載っているが、雑誌のバックナンバーを入手または閲覧するのは必ずしも容易ではない。2012年に新版が出た『東西ミステリーベスト100』(『週刊文春』臨時増刊号 文藝春秋 / 2013年文春文庫)のように書店に行けばすぐに入手できるものではないのである。つまり2014年当時、フランスミステリを読む「指針」になるようなものはほぼ存在しなかったといっても過言ではないだろう。むろん、その「未知の沃野」へと徒手空拳で挑んでいくことこそ読書の醍醐味ではないかと考える読者も多いのではないかと思うが、個人的には、過去に邦訳された膨大なフランスミステリを読むための、なんらかの「指針」がほしいと思ったのも事実である。筆者は2012年版『東西ミステリーベスト100』を発売日の2012年11月21日に購入したが、その翌日、以下のようにツイートした。 東西ミステリーベスト100に続いて、投票対象をフランスミステリだけに限った『仏蘭西ミステリーベスト100』をどこか出してくれないかな。 午後11 13、2012年11月22日 2014年に実施した「フランスミステリベスト100」は、約1年8か月を経てこれを自分で実現した形であった。なお、上に引用したツイートにすぐさまリプライをくださったのは、探偵小説研究会の一員(当時および現在)である千街晶之氏であった。千街氏のリプライを以下に引用する。 ルルーやジャプリゾは当然ベストテンに入るとして、ピエール・シニアックがいきなり票を伸ばしたりとかカオスな結果になりそうです。 午後11 18、2012年11月22日 これはまさに慧眼としかいいようがない(千街氏は、当時も今も、筆者が最も信頼しているミステリ評論家のひとりである)。実際、2014年に実施した「フランスミステリベスト100」では、おおかたの予想を裏切り、ピエール・シニアックの怪作『ウサギ料理は殺しの味』が1位を掻っ攫ったのである(ルルーは3位、ジャプリゾは5位)。 このアンケート企画を実施した2014年当時、筆者は特にフランスミステリに詳しかったわけでも、たくさん読んでいたわけでもなかった。むろん、投票するに際してそれなりの冊数をまとめて読んだわけだが、「フランスミステリベスト100」は、そんなフランスミステリの初心者だった筆者が、「かつて邦訳されたフランスミステリ」について、どの作品がお薦めなのか、どの作品から手に取っていけばいいのか、なんらかの指針が作れないものかと思って実施したものである。 なお、「フランスミステリベスト100」の結果発表の約3週間後、文春文庫からピエール・ルメートル『その女アレックス』(橘明美訳)が刊行されて大ベストセラーとなり、以降、日本でのフランスミステリの翻訳出版状況は一変することとなった。集英社文庫からはエルヴェ・コメール、ミシェル・ビュッシら、新たなフランスのミステリ作家の紹介が続き、また《その女アレックス以前》に紹介されていたポール・アルテやジャン=クリストフ・グランジェらの作品の邦訳も再開され、まさに日本における《フランスミステリ再興(ルネサンス)》の様相を呈するようになったのである。*2 *3 *2=集英社の果たした役割/なぜ『その女アレックス』というヒット作が「潮流」の起点になり得たか【2020年8月17日追記】 +クリックで展開 もっとも、エルヴェ・コメールの初訳作品『悪意の波紋』(山口羊子訳、集英社文庫)が刊行されたのは2015年3月、つまり《その女アレックス以後》ではあるが、この作品の刊行は2012年12月刊の『このミステリーがすごい! 2013年版』に掲載された「我が社の隠し玉」で、『水の波紋』としてすでに予告されている。日本の翻訳ミステリ界が『その女アレックス』旋風に沸く中で、集英社の編集部がそれに続けとばかりに版権を取ったわけではないということである。また、ミシェル・ビュッシの初訳作品『彼女のいない飛行機』(平岡敦訳)は2015年8月に刊行されている。これもおそらくは、『その女アレックス』旋風以前に版権を取得したものだろう。 つまり、2014年以降の《フランスミステリ再興(ルネサンス)》は『その女アレックス』が一つの起爆剤となったとはいえるだろうが、それがピエール・ルメートルという作家の単発の人気で終わらず「フランスミステリ復権」へのひとつの流れとなったのは、時間的にはあとになったが、集英社文庫の支えがあったからこそだといえるだろう。集英社文庫が「点」を「線」に、あるいは「局所的爆発」を「一つの潮流」に変えたのである。 そもそも、『その女アレックス』を出版した文藝春秋は、ほかのフランス作家のミステリを続けて刊行したりはしていない。その点からみても、2008年に邦訳出版が始まった《ミレニアム》シリーズに端を発する北欧ミステリ・ブームや、2011年に邦訳されたフェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』を契機とするドイツ語圏ミステリ・ブームと、2014年からの日本における《フランスミステリ再興(ルネサンス)》はかなり質の違うものである。北欧ミステリ・ブームとドイツ語圏ミステリ・ブームにもまた明確な差異があるが、この3つの違いについては時間があれば改めて述べたい。 *3=ポール・アルテの復活/《フランスミステリ再興(ルネサンス)》の成立過程【2020年8月17日追記】 (※注3は注2の内容を前提に書いたものです) +クリックで展開 ポール・アルテの邦訳が再開されたことも、『その女アレックス』のヒットとは関係がない。ポール・アルテは2002年から2010年にかけて、ポケミスで平岡敦氏の訳で9冊が刊行されたが、2010年10月の『殺す手紙』を最後に邦訳が止まっていた(短編の邦訳が『ミステリマガジン』に載ったことはあった)。そして2018年7月、福岡の小出版社・行舟文化(ぎょうしゅうぶんか)から、『あやかしの裏通り』を皮切りに、同じ平岡敦氏の訳で、日本では未紹介だった《名探偵オーウェン・バーンズ》シリーズの翻訳出版が開始された。この「アルテ復活」は、本格ミステリマニアで日本語も堪能なある福岡在住の中国人夫婦のミステリ愛と行動力によって実現したものである。筆者が知っている限りで、ざっと経緯を書いておく。(前にTwitterで書いたこともある) その福岡在住の中国人夫婦というのは、麻耶雄嵩作品や三津田信三作品の中国語訳を手掛け、霜月蒼『アガサ・クリスティー完全攻略』や権田萬治『謎と恐怖の楽園で』などの評論書の中国語訳もおこない、さらには自ら推理小説も上梓しており、またミステリ賞の審査員として陸秋槎らを発掘した張舟(ちょう しゅう)氏のことである(公開されていることだが、夫妻2人の筆名である)。 筆者が張舟氏から、なぜ日本ではポール・アルテの翻訳が出なくなったのかを尋ねられたのは、2016年6月のことだったと思う。東京で本格ミステリ大賞受賞者のトークショー&サイン会が開催され、張舟氏はこれに申し込んで上京してきていたのである。 筆者はそれ以前に、平岡敦氏が雑誌でポール・アルテをまた訳したい旨書いていたことを覚えていたし(『ミステリマガジン』2013年11月号[ポケミス60周年記念特大号]だと思うが、実家に置いてあるため、確認できない)、なにかのミステリ賞の授賞式に参加させていただいたときに平岡氏とお会いする機会があり、そのときにもご本人からそのご意向を伺っていた。そこで、それを張舟氏に伝えたわけである。 次に張舟氏に会ったのはその1年後、2017年6月の本格ミステリ大賞イベントのときだが、そのときに張舟氏から、「自分が設立する出版社でアルテを出すことになった。版権はすでに取れており、翻訳は平岡敦氏が引き受けてくださった」というようなことを言われて、その行動力に仰天することになった(その1年のあいだに、関連するメールはもらっていたのだが、見逃していたのである)。そしてさらに1年後の2018年7月、張舟夫妻が設立した行舟文化からポール・アルテ『あやかしの裏通り』が刊行された。そして見事、年末の各種のミステリランキングで上位に入ったのである。 長くなってしまったが、つまり2014年以降の《フランスミステリ再興(ルネサンス)》は、『その女アレックス』に端を発するひとつの流れというわけではなく、実際には、『その女アレックス』でルメートルを大人気作家にした文藝春秋、それ以前から着実にフランスの実力派ミステリ作家に目を付けていた集英社、そして並外れた行動力でアルテを復活させた行舟文化、といった別々の出版社の別個の動きが、なにか一つの大きな潮流に「見えた」ということなのだと筆者は考えている。とはいえ、それも「最初はそうだったのだろう」という話である。ジャン=クリストフ・グランジェの邦訳が再開されたのは、やはりその「潮流」(のように見えたもの)が影響しているのかもしれないし、ポケミスからサンドリーヌ・コレット『ささやかな手記』(加藤かおり訳、2016年)やソフィー・エナフ『パリ警視庁迷宮捜査班』(山本知子、川口明百美訳、2019年)が刊行されたのも、この「潮流」なくしてはありえなかったかもしれない。いまや《フランスミステリ再興(ルネサンス)》の潮流は、翻訳ミステリ界を形作る重要な要素のひとつとなり、厳然として存在しているといえるだろう。 このアンケート企画を『その女アレックス』邦訳刊行直前に実施したのは単なる偶然だったが、振り返って考えると2014年版「フランスミステリベスト100」は、ちょうど《その女アレックス以前》の日本のフランスミステリの状況を切り取ることができており、まさにベストなタイミングだったのではないかと考えている。仮に今後同趣旨の企画が実施された場合、《その女アレックス以後》の邦訳作品群により、ランキングの結果は一変することになるだろう。次はどこかの出版社や雑誌の企画で「正式」に実施していただきたいところだが、《その女アレックス以後》を反映した新たな「フランスミステリベスト100」のランキングを見られる日が来ることを期待している。 なお、「フランスミステリベスト100」はそれ単独で企画したものではなく、続けて実施した「非英仏語圏ミステリベスト100」と合わせて1つの企画となっている。後者では北欧ミステリやドイツミステリ、中南米ミステリなどが上位を競っているが、華文ミステリは非常に影が薄い。2014年当時、「華文ミステリ(ー)」という言葉は日本のミステリ読者のあいだではまったく一般的ではなく、邦訳もまだ少なかった。この言葉が日本のミステリ読者に広く知られるようになったのは、2017年9月に刊行された陳浩基『13・67(いちさん ろくなな)』(文藝春秋)の「帯」で使用されたのがきっかけであり、その後、陸秋槎(りく しゅうさ)の『元年春之祭(がんねんはるのまつり)』や『雪が白いとき、かつそのときに限り』などの邦訳が続いたことで、「華文ミステリ(ー)」、あるいは「華文推理」という言葉が日本のミステリ読者のあいだに定着することになったのである。「非英仏語圏ミステリベスト100」を仮にまた実施することがあれば、華文ミステリももっと存在感が強まっていることだろう。 完全に脱線するが、筆者は2016年ごろから、「非英語圏ミステリ3年周期説」というものを唱えている。 日本では3年に一度、非英語圏から界隈を席捲するミステリ小説が翻訳出版され、翻訳ミステリ出版業界を一変させる という、まあ冗談みたいなものである。 2008年、スティーグ・ラーソン《ミレニアム》三部作(スウェーデン作品)の邦訳が開始され、それ以降、スウェーデンのみならず北欧ミステリの邦訳が急増する 2011年、フェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』(ドイツ作品)が邦訳され、それ以降、ドイツ語圏ミステリの邦訳が急増する 2014年、ピエール・ルメートル『その女アレックス』(フランス作品)が邦訳され大ベストセラーになったことにより、フランスミステリが再度注目され、邦訳がコンスタントに出るようになる ここから勝手に「3年周期」という法則を読み取り、「じゃあ来年(2017年)あたりに中国語圏ミステリ・ブームを引き起こす大作でも訳されないかな」という単なる冗談に過ぎなかったわけだが、2017年に陳浩基『13・67』が邦訳され、実際に華文ミステリへの注目度が一変することになるとはまさか思ってもいなかった。いや、『13・67』という作品のポテンシャルは当時原書で途中まで読んで知っていたので、『13・67』が邦訳出版されると知った際に、早くも「3年周期説」の実現を確信した、というのが実際に近いが。 そう考えると、今年、2020年はまさにその「3年周期」の年に当たる。今年は、2020年8月現在のところ、新たなブームを巻き起こすような非英語圏ミステリは翻訳されていないように思う。ただ、今年の翻訳ミステリ界で気になるのは、イタリアミステリの邦訳が増えていることである。把握している限りで、 イーゴル・デ・アミーチス『七つの墓碑』(清水由貴子訳、〈ハヤカワ文庫NV〉早川書房、2020年2月) アントニオ・マンジーニ『汚(よご)れた雪』(天野泰明訳、〈創元推理文庫〉東京創元社、2020年2月) マウリツィオ・デ・ジョバンニ『集結 P分署捜査班』(直良和美訳、〈創元推理文庫〉東京創元社、2020年5月) アンドレア・プルガトーリ『裏切りのシュタージ』(安野亜矢子訳、〈ハーパーBOOKS〉ハーパーコリンズ・ジャパン、2020年8月17日発売予定) の4点がある。あくまで「3年周期説」を唱え続けるとしたら、今年は「なにか飛び抜けた一作があったわけではないが、イタリアミステリが続々と刊行されるようになった年」として日本の翻訳ミステリ史に刻まれるべき年なのかもしれない。もっとも、「今年」はまだあと4か月半残っている。今年の終わりまでに、思わぬところから優れた一作が現れることもあるかもしれない。自分がちょっと発した冗談に囚われるのもおかしな話だが、今後も翻訳ミステリには引き続き注目していきたい。 フランスミステリ必読リスト 「フランスミステリ」の必読リストと、フランスの「ミステリ必読リスト」。 フランス・ミステリ必読30冊(『ミステリマガジン』2003年7月号)(2013年5月16日)附:2000年以降に日本で出版された主なフランス・ミステリ(~2013年) 附:森英俊編(編著)『世界ミステリ作家事典』で扱われているフランス語圏作家一覧 フランスのミステリ編集者が選んだ必読ミステリ100(2014年8月27日)フランスで2008年に刊行された『Le guide des 100 polars incontournables』(必読ミステリ100作ガイド)で選ばれている100作品の一覧。選者はフランスのミステリ編集者でありミステリの翻訳や創作も手掛けるエレーヌ・アマルリック(Hélène Amalric)。 100作品中、英語圏の作品が74作品、フランス語圏の作品が16作品、それ以外が10作品。英語圏の名作と並べて自国のどの作品を選んでいるのかという観点で興味深い。 関連:ポーランドのミステリ評論家が選んだ最重要ミステリ100(2014年8月28日)ポーランドで2007年に刊行された『Krwawa setka. 100 najważniejszych powieści kryminalnych』(ブラッディー・ハンドレッド: 最重要ミステリ100選)で選ばれている100作品の一覧。選者はポーランドのミステリ研究家・評論家であるヴォイチェフ・ブルシュタ(Wojciech Burszta)と、ミステリ研究家でミステリの創作も手掛けるマリウシュ・チュバイ(Mariusz Czubaj)の2人。フランス語圏の作品が4作選ばれている。 フランスミステリ邦訳一覧 当サイトでは、「北欧ミステリ邦訳一覧」(最終更新:2017年3月)、「南欧ミステリ邦訳一覧」(イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ / 最終更新:2014年)、「ドイツ語圏ミステリ邦訳一覧」(最終更新:2014年)など、全邦訳を網羅することを目指して作成したリストを公開しているが、フランスミステリに関してはあまりにも量が多すぎるため、網羅的なリストは作成していない。 ただ、当サイトでは「ポケミス非英語圏作品一覧」などレーベルごとの非英語圏作品のリストを作成・公開しており、事実上、それがほとんど「フランス語圏の作品のリスト」であることが多い。 ハヤカワ・ミステリ(ポケミス)非英語圏作品一覧(2012年1月14日 / 最終更新:2020年8月17日) ハヤカワ・ミステリ文庫非英語圏作品一覧(2013年6月22日) 創元推理文庫海外ミステリ非英語圏作品一覧(2012年9月1日 / 最終更新:2018年11月6日) 文庫で刊行されたフランスミステリの一覧(2014年8月6日) - 「フランスミステリベスト100」のために作成した参考リスト また当サイトでは、日本で翻訳出版された非英語圏ミステリの年度ごとの一覧を作成していたが、2013年からスタートし、2015年秋ごろにストップしてしまった。 非英語圏ミステリ2013年の邦訳出版一覧 非英語圏ミステリ2014年の邦訳出版一覧 非英語圏ミステリ2015年の邦訳出版一覧 関連オランダ語圏ミステリ邦訳一覧 ロシア・中東欧ミステリ邦訳一覧 中南米ミステリ邦訳一覧 東アジアミステリ邦訳一覧 東南・南アジアミステリ邦訳一覧 中東ミステリ邦訳一覧 アフリカミステリ邦訳一覧 フランスのミステリ賞受賞作の邦訳状況 フランスのミステリ賞(2013年5月16日) - 受賞作の邦訳一覧 フランスミステリの日本での評価 年間ミステリランキング 非英語圏作品一覧(2012年9月9日 / 最終更新:2020年8月17日) 本格ミステリ・ベスト10(原書房) 順位 タイトル 作者 国 備考 2003年 第1位 第四の扉 ポール・アルテ フランス このミス4位、文春2位 第8位 死者を起こせ フレッド・ヴァルガス フランス 2004年 第1位 死が招く ポール・アルテ フランス 2005年 第1位 赤い霧 ポール・アルテ フランス 文春10位 2006年 第3位 カーテンの陰の死 ポール・アルテ フランス 2007年 第3位 赤髯王の呪い ポール・アルテ フランス 2008年 第1位 狂人の部屋 ポール・アルテ フランス このミス7位、早ミス3位 2009年 第3位 七番目の仮説 ポール・アルテ フランス 2010年 第3位 虎の首 ポール・アルテ フランス 第7位 騙し絵 マルセル・F・ラントーム フランス 2011年 第6位 殺す手紙 ポール・アルテ フランス 2013年 第10位 彼の個人的な運命 フレッド・ヴァルガス フランス 2015年 第10位 その女アレックス ピエール・ルメートル フランス このミス1位、文春1位、早ミス1位、IN☆POCKET1位 2016年 第7位 悲しみのイレーヌ ピエール・ルメートル フランス このミス2位、文春1位、早ミス5位、IN☆POCKET7位 2017年 第10位 傷だらけのカミーユ ピエール・ルメートル フランス このミス6位、文春1位、IN☆POCKET6位 2018年 第4位 黒い睡蓮 ミシェル・ビュッシ フランス このミス5位 2019年 第2位 あやかしの裏通り ポール・アルテ フランス このミス6位、文春8位 2020年 第5位 金時計 ポール・アルテ フランス このミステリーがすごい!(宝島社) 順位 タイトル 作者 国 備考 1996年 第10位 パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない ジャン・ヴォートラン フランス 2003年 第4位 第四の扉 ポール・アルテ フランス 本ミス1位、文春2位 第9位 グルーム ジャン・ヴォートラン フランス IN☆POCKET10位 2008年 第7位 狂人の部屋 ポール・アルテ フランス 本ミス1位、早ミス3位 2015年 第1位 その女アレックス ピエール・ルメートル フランス 本ミス10位、文春1位、早ミス1位、IN☆POCKET1位 第6位 ハリー・クバート事件 ジョエル・ディケール スイス(フランス語) 文春4位、早ミス9位 2016年 第2位 悲しみのイレーヌ ピエール・ルメートル フランス 本ミス7位、文春1位、早ミス5位、IN☆POCKET7位 第9位 彼女のいない飛行機 ミシェル・ビュッシ フランス IN☆POCKET9位 2017年 第6位 傷だらけのカミーユ ピエール・ルメートル フランス 本ミス10位、文春1位、IN☆POCKET6位 2018年 第5位 黒い睡蓮 ミシェル・ビュッシ フランス 本ミス4位 2019年 第6位 あやかしの裏通り ポール・アルテ フランス 本ミス2位、文春8位 第8位 監禁面接 ピエール・ルメートル フランス 文春5位 『週刊文春』ミステリーベスト10(文藝春秋) 順位 タイトル 作者 国 備考 1997年 第10位 眠りなき狙撃者 ジャン=パトリック・マンシェット フランス 2002年 第2位 第四の扉 ポール・アルテ フランス 本ミス1位、このミス4位 2004年 第10位 赤い霧 ポール・アルテ フランス 本ミス1位 2012年 第6位 ルパン、最後の恋 モーリス・ルブラン フランス 2013年 第9位 HHhH プラハ、1942年 ローラン・ビネ フランス 2014年 第1位 その女アレックス ピエール・ルメートル フランス 本ミス10位、このミス1位、早ミス1位、IN☆POCKET1位 第4位 ハリー・クバート事件 ジョエル・ディケール スイス(フランス語) このミス6位、早ミス9位 2015年 第1位 悲しみのイレーヌ ピエール・ルメートル フランス 本ミス7位、このミス2位、早ミス5位、IN☆POCKET7位 2016年 第1位 傷だらけのカミーユ ピエール・ルメートル フランス 本ミス10位、このミス6位、IN☆POCKET6位 2018年 第5位 監禁面接 ピエール・ルメートル フランス このミス8位 第8位 あやかしの裏通り ポール・アルテ フランス 本ミス2位、このミス6位 2019年 第8位 わが母なるロージー ピエール・ルメートル フランス ミステリが読みたい!(早川書房) 順位 タイトル 作者 国 備考 2008年 第3位 狂人の部屋 ポール・アルテ フランス 本ミス1位、このミス7位 2015年 第1位 その女アレックス ピエール・ルメートル フランス 本ミス10位、このミス1位、文春1位、IN☆POCKET1位 第9位 ハリー・クバート事件 ジョエル・ディケール スイス(フランス語) このミス6位、文春4位 2017年 第5位 悲しみのイレーヌ ピエール・ルメートル フランス 本ミス7位、このミス2位、文春1位、IN☆POCKET7位 2019年 第7位 黒い睡蓮 ミシェル・ビュッシ フランス 本ミス4位、このミス5位 『IN☆POCKET』文庫翻訳ミステリー・ベスト10(講談社) 順位 タイトル 作者 国 備考 1998年 第9位 鉄の薔薇 ブリジット・オベール フランス 2002年 第10位 グルーム ジャン・ヴォートラン フランス このミス9位 2003年 第6位 夜鳥(よどり) モーリス・ルヴェル フランス 2004年 第7位 蜘蛛の微笑(のちに『私が、生きる肌』に改題) ティエリー・ジョンケ フランス 2014年 第1位 その女アレックス ピエール・ルメートル フランス 本ミス10位、このミス1位、文春1位、早ミス1位 2015年 第6位 悪意の波紋 エルヴェ・コメール フランス 第9位 彼女のいない飛行機 ミシェル・ビュッシ フランス このミス9位 2016年 第7位 悲しみのイレーヌ ピエール・ルメートル フランス 本ミス7位、このミス2位、文春1位、早ミス5位 2017年 第6位 傷だらけのカミーユ ピエール・ルメートル フランス 本ミス10位、このミス6位、文春1位 『IN☆POCKET』休刊(~2018年8月号)のため、2017年11月号での発表分をもって終了 東西ミステリーベスト100(1985年版、2012年版) 1985年 第16位 黄色い部屋の謎 ガストン・ルルー フランス 第23位 わらの女 カトリーヌ・アルレー フランス 第41位 813 モーリス・ルブラン フランス 第67位 シンデレラの罠 セバスチアン・ジャプリゾ フランス 第83位 男の首 ジョルジュ・シムノン ベルギー(フランス語) 2012年 第28位 黄色い部屋の謎 ガストン・ルルー フランス 第41位 シンデレラの罠 セバスチアン・ジャプリゾ フランス 第53位 わらの女 カトリーヌ・アルレー フランス 第92位 奇岩城 モーリス・ルブラン フランス フランスにおける日本ミステリ フランス語に翻訳された日本の推理小説/ミステリ(最終更新:2013年) 2012年に欧米で翻訳出版された日本の推理小説(2013年4月17日) 日本の小説の海外での受賞一覧(2014年7月7日) 『このミステリーがすごい!』過去のベスト10作品の英・仏・独訳状況(2018年12月11日)筆者は『このミステリーがすごい! 2019年版』(宝島社、2018年12月)に「日本ミステリー、世界へ――あるいは、ミステリー小説の真の国際化」(pp.134-135)を寄稿しているが、このリストはその記事と合わせて『このミス』に載る予定だったものである。残念ながらページ数の都合で掲載はされなかった。 なお、2013年以降については、当サイトのトップページで時系列順に日本ミステリの欧米での翻訳出版情報を載せている。日本ミステリのフランス語訳については、トップページを「【フランス語訳】」でページ内検索していただきたい。 関連ページ インターナショナル・ダガー賞 受賞作・候補作一覧英国推理作家協会賞(CWA賞)の最優秀翻訳長編部門の受賞作・候補作の一覧。フレッド・ヴァルガス、ピエール・ルメートルが何度も受賞している。 非英語圏ミステリ各種リスト
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/101.html
2011年1月16日 かつて西尾維新が「期待の新人推理作家」だったという、嘘のような本当の話。 すでに4か月も前の話題だが、Togetterでまとめられた「西尾維新がラノベ読みに広く知られるようになったのはいつ頃か」(2010年9月15日)を昨日たまたま目にした。ライトノベルレーベルから作品を出していない西尾維新が、いつ頃からライトノベルの読者に読まれるようになったのかという議論である。 西尾維新は、2002年2月に、当時「ミステリの賞」と見なされることの多かった講談社のメフィスト賞を受賞した『クビキリサイクル』(講談社ノベルス)でデビューしている。その後も、講談社ノベルスや講談社BOXなどで作品を刊行しており、文庫サイズの一般的なライトノベルレーベルから作品を刊行したことは一度もない。 さて、この議論を見たときに、 「某掲示板の「ミステリー板」と「ライトノベル板」のスレッドの消費速度を見れば、当時の読者の分布が目に見える形で分かるのではないか」 と思いいたった。今でこそミステリー板に西尾維新のスレッドはないようだが、以前は確かにあったのである。ミステリー板の西尾維新スレッドがいつ頃消えてしまったのかも気になる。という訳で、調べて以下の表にまとめた。 当時のメフィスト賞をめぐる環境 2000年3月 『2000 本格ミステリ・ベスト10』(東京創元社)で殊能将之『ハサミ男』(メフィスト賞受賞作)第2位。 2000年12月 『2001 本格ミステリ・ベスト10』(原書房)で古泉迦十『火蛾』(メフィスト賞受賞作)第2位、殊能将之『美濃牛』第5位、古処誠二『少年たちの密室』(のちに『フラグメント』に改題)第6位。 2001年3月 舞城王太郎デビュー 2001年4月 『メフィスト』巻末座談会にて、秋月涼介『月長石の魔犬』、佐藤友哉『フリッカー式』、津村巧『SURVIVOR』(=DOOMSDAY)、西尾維新『並んで歩く』(=クビキリサイクル)、北山猛邦『失われたきみ』(=『クロック城』殺人事件)がメフィスト賞に当確。 2001年7月 佐藤友哉デビュー 2001年11月 (米澤穂信デビュー、滝本竜彦デビュー) 2001年12月 『2002 本格ミステリ・ベスト10』(原書房)で古処誠二『未完成』(のちに『アンフィニッシュト』に改題)第4位、黒田研二『硝子細工のマトリョーシカ』第5位。『このミステリーがすごい! 2002年版』で舞城王太郎『煙か土か食い物』第8位。 2002年2月 西尾維新デビュー 2002年3月 北山猛邦デビュー 2002年7月 (乙一『GOTH リストカット事件』刊行(本格ミステリ大賞受賞)) メフィスト賞はミステリ専門の賞という訳ではなく、エンターテイメント全般を募集する賞だが、この時期は特に受賞者が「本格ミステリ」の分野で活躍しており、ミステリの賞だと見なされていたように思う。そんな中、2001年になってメフィスト賞から舞城王太郎・佐藤友哉がデビュー。そして翌2002年2月、西尾維新がデビューした。 米澤穂信・滝本竜彦・乙一(3人とも1978年生まれ)はメフィスト賞作家ではないが、この界隈で関連して触れられることが多いので、関連情報を示した。上記で挙げたその他の作家は、メフィスト賞作家である。 2002年2月の西尾維新デビューから、2006年12月の講談社BOX『化物語(下)』刊行までの約5年間 ★=ミステリ側の反応 ▼=サブカルチャー(?)側の反応 ◆=ライトノベル側の反応 ミステリー板(2000年2月8日開設) ライトノベル板(2000年1月24日開設) 出来事 2002年2月 『クビキリサイクル』(戯言シリーズ1作目) 3月 ガンバレ!戯言使いスレッド(03/14) 4月 5月 クビキリサイクル、クビシメロマンチスト(05/18) 『クビシメロマンチスト』(戯言シリーズ2作目) 6月 7月 8月 戯言遣い 西尾維新 Part2(08/16) 『クビツリハイルクール』(戯言シリーズ3作目) 9月 ★『本格ミステリ・クロニクル300』(原書房)で300冊のうちの1冊に『クビキリサイクル』 10月 西尾維新その2 クビキリシメツリ戯言遣い(10/02) 11月 戯言遣い 西尾維新 Part3(11/10) 同人誌『タンデムローターの方法論』/『サイコロジカル』(戯言シリーズ4作目) 12月 戯言遣い 西尾維新 Part4 「傑作だな」(12/03) 西尾維新その3 ロジカルマジカル戯言使い(12/19) 『零崎双識の人間試験』連載開始/★『2003 本格ミステリ・ベスト10』(後述) 2003年1月 ★2chが選ぶこのミステリーがすごい!2003年版で『クビシメロマンチスト』第4位 2月 戯言遣い 西尾維新 Part5(02/05) 3月 戯言遣い 西尾維新 Part6(03/28) 西尾維新その4<戯言シリーズ>(03/18) JDCトリビュート『ダブルダウン勘繰郎』 4月 『メフィスト』に『きみとぼくの壊れた世界』「もんだい編」掲載、解答を募集★『本格ミステリこれがベストだ!2003』(東京創元社)西尾維新インタビュー 5月 西尾維新その5<きみとぼくの戯言世界>(05/29) 6月 戯言遣い 西尾維新 Part7 『甘えるな』(06/05) 7月 戯言遣い 西尾維新 Part8 「師匠は」(07/14) 西尾維新その6<師匠の事、好きです>(07/08)西尾維新その7<魔女・七々見奈波>(07/24) 『ヒトクイマジカル』(戯言シリーズ5作目) 8月 戯言遣い 西尾維新 Part9 『俺とお前の因果』(08/12) 西尾維新その8<やさしい戯言は遣えない>(08/24) 9月 西尾維新玖<惜しまれる萌えキャラなのが子荻なの>(09/19) 『ファウスト』Vol.1 10月 戯言遣い 西尾維新 Part10 『戯言だけどね』(10/27) 西尾維新その十全ですわ<最萌潤優勝>(10/25) 11月 西尾維新 Part11 『犯人はメイドのゲートベル』(11/25) 西尾維新その11<戯言使いと破片拾い>(11/16) 『きみとぼくの壊れた世界』 12月 西尾維新その12<ぽわぽよブルマー>(12/11) ▼『波状言論』創刊準備号、1号(翌月)、2号(翌月)に西尾維新インタビュー 2004年1月 西尾維新 Part12 『戯言遣いの新しいステージ』(01/23) 西尾維新<13階段>(01/17) 2月 西尾維新 Part13 『豚野郎』(02/28) 西尾維新 紫木一姫中間試験 追試第十四回目(02/10) 『零崎双識の人間試験』/『ファウスト』Vol.2 3月 西尾維新 part14 『エアマスター』(03/18) 西尾維新 その15<お兄ちゃん助けに来たよ!>(03/06)西尾維新 その16 <答えよう。優しさで>(03/30) 4月 5月 西尾維新17 気分がいいので、西尾スレに行こう。(05/21) ◆『Quick Japan』掲載の「ライトノベル必読書一〇〇冊」に『クビシメロマンチスト』◆ネット上の有志による企画「このライトノベルがすごい!」で作家別ランキング第1位作品ランキングでは『きみとぼくの壊れた世界』第6位、『ヒトクイマジカル』第7位 6月 西尾維新その18<不幸中の災い>(06/20) 7月 西尾維新その19≪もっと牛乳、飲まなくちゃ≫(07/17) 『新本格魔法少女りすか』/『ファウスト』Vol.3◆『ライトノベル完全読本』のランキングで戯言シリーズ第5位 8月 西尾維新その20≪20番目の地獄≫(08/06)西尾維新lt;lt;21歳の処女作 gt;gt;(08/25) 9月 西尾維新<発売延期から22日目>(09/18)西尾維新その23<絶体絶命、戯言遣い!>(09/30) ▼『ユリイカ』臨時増刊号「総特集 西尾維新」 10月 戯言遣い 西尾維新 Part15 @ファウスト合宿中(10/13) 西尾維新<24OISIN>(10/13)西尾維新その25<ヒトクイマジカル絶賛発売中!>(10/28) 11月 西尾維新その26<西尾維新の読者殺し>(11/17) 『ファウスト』Vol.4 12月 西尾維新その27<曳かれ者の小唄>(12/03)西尾維新その28(12/22) ◆この年刊行が始まった『このラノ』で戯言シリーズが第2位男性キャラクター部門でいーちゃんが第1位 2005年1月 西尾維新その29<クビツリへの十三階段>(01/14) 2月 西尾維新その30<電波読者はネコソギの夢をみるか>(02/01)西尾維新その31<行けるとこまで>(02/09)西尾維新その32<続きがないから、終わり>(02/12)西尾維新lt;泳いだのっ!?gt;(02/15)西尾維新その34<それでも物語は存在するのだから>(02/22) 『ネコソギラジカル(上)』(戯言シリーズ6作目) 3月 西尾維新その35<「……わん」>(03/07)西尾維新その36<「にゃるろ!」>(03/21) 『新本格魔法少女りすか(2)』 4月 西尾維新その37<終わりへの加速は発売日への加速>(04/05)西尾維新その38<シメキリスギテル 富樫義博と戯言遣い>(04/28) 5月 西尾維新その39<FOXワード>(05/19)西尾維新その40<さんくーいーちゃん(39+1=40)>(05/21) 『ファウスト』Vol.5 6月 戯言遣い―西尾維新 Part16(06/17) 西尾維新その41lt;狐に赤き征裁をgt;(06/06)西尾維新その42<もふもふフレンチクルーラー>(06/10)西尾維新その43<リストカットで気分スカッと>(06/17)西尾維新その44<四天王とかに4とけよ>(06/27) 『ネコソギラジカル(中)』(戯言シリーズ6作目) 7月 西尾維新その45<体は剣で出来ている>(07/13)西尾維新その45<4匠はいちいち5月病です>(07/13) 8月 西尾維新Part46(08/21) 『化物語』第一話「ひたぎクラブ」、『メフィスト』に掲載 9月 西尾維新 Part48(09/19) 『ニンギョウがニンギョウ』 10月 西尾維新その49(10/10)西尾維新その50~hollow ataraxia~(10/24) 11月 西尾維新その51(11/03)西尾維新その52~約束されし勝利の剣~(11/07)西尾維新その53(11/09)西尾維新その54(11/13)西尾維新その55(11/21) 『ネコソギラジカル(下)』(戯言シリーズ 完結)/『ファウスト』Vol.6A 12月 西尾維新その56(12/09)西尾維新その57(12/31) ◆『このラノ』で戯言シリーズが第1位、男性キャラクター部門でいーちゃんが第1位『ファウスト』Vol.6B/『化物語』第二話「まよいマイマイ」、『メフィスト』に掲載 2006年1月 58 戯言シリーズ、台湾で刊行開始(『斬首循環』)/『西尾維新クロニクル』 2月 戯言遣い―西尾維新 Part17(2006年2月~2009年7月) 59、60 3月 61 4月 62、63 『化物語』第三話「するがモンキー」、『メフィスト』に掲載 5月 64 6月 65 『ザレゴトディクショナル』 7月 66、67 8月 68、69 ノベライズ維新『DEATH NOTE』、『xxxHOLiC』 9月 70 10月 71、72 戯言シリーズ、韓国で刊行開始(『잘린머리 사이클』) 11月 73、74、75 講談社BOX創刊、『化物語(上)』/『零崎軋識の人間ノック』 12月 76、77 『化物語(下)』◆『このラノ』で戯言シリーズが第3位 2007年~現在は省略。『化物語』が刊行されておよそ4年が経った。ミステリー板では、2006年2月に立てられたPart17が2009年7月まで約3年半存続して落ちたのち、後続の西尾維新スレッドは立っていない。ライトノベル板では、2011年1月16日現在、「西尾維新その176」が立っている。 ライトノベル板では、53番目のスレッド以降は「西尾維新そのXX」でスレッドタイトルが統一されているため、2006年のものはタイトル(とスレッド開始の日付)を省略した。 右の「出来事」の欄では、短編の雑誌掲載などは省略している場合がある。 こうして見てみると、やはり最初は、西尾維新のスレッドはミステリー板に立っていることが分かる。メフィスト賞を受賞し講談社ノベルスから刊行される作品は、当時としてはやはりミステリとして語るのが自然の流れだったのである。 ミステリー板に遅れること2か月、戯言シリーズの2作目『クビシメロマンチスト』が刊行された月に、ライトノベル板に西尾維新のスレッドが立っている。その後、『メフィスト』に『きみとぼくの壊れた世界』の「もんだい編」が掲載された2003年4月頃(デビューから1年と2か月)までは、ミステリー板の方がやや速いペースでスレッドを消費している。 この頃は「本格ミステリ」の文脈で西尾維新が語られることが多く、1987年9月以降のミステリ小説を300冊紹介する『本格ミステリ・クロニクル300』(2002年9月、原書房)ではその1冊に『クビキリサイクル』が選出されている(ちなみに佐藤友哉『フリッカー式』も選出されている)。2001年11月に刊行されていた米澤穂信『氷菓』が300冊の内に入らず、『クビキリサイクル』が入っているのはやはり刊行レーベルの差だろう。講談社ノベルスから刊行されている、ということが当時それなりに重要な意味を持っていたのである。 2002年12月(デビューから10か月)刊行の『2003 本格ミステリ・ベスト10』では、西尾作品はランクインしなかったものの、「新人作家総まくり」と題された市川尚吾氏によるコラムでは以下のように紹介されている。 メフィスト賞で該当するのは『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』の西尾維新と『「クロック城」殺人事件』の北山猛邦の二人。両作ともマンガ等からの影響が強く感じられ、そういう部分では安直さも感じられるが、この二人には確実に本格ミステリ作家としてのセンスがあるし、すでに両者とも三作品を刊行して健筆ぶりを見せてくれているので、次代の本格を担う書き手として期待を寄せたい。 2003年4月の『本格ミステリこれがベストだ!2003』(東京創元社)では、2本のインタビューの内の1つが巽昌章氏による西尾維新インタビューだった。もう1つは『活字倶楽部』編集部へのインタビューであり、つまりは、ミステリがキャラクター小説との距離感を探っている時代だったのである。 ◆ 転機になっているのは、2003年7月(デビューから1年と5か月)刊行の戯言シリーズ5作目『ヒトクイマジカル』のようである。完全にミステリから離れ、異能バトルものと化した感のあるこの作品が刊行されて以降、ライトノベル板のスレッドは消費速度が急に上がり、2003年10月にはついにミステリー板に先んじてスレッドのPart10が立っている。ただし、翌2003年11月には『きみとぼくの壊れた世界』というミステリ作品が刊行されており、ミステリー板の方でも、この板では通常ありえない程の速度でスレッドが消費されていった。デビューから2年後の2004年2月には、ミステリー板のスレッドがPart13まで、ライトノベル板のスレッドがPart14まで進んでいる。 やや前後するが、『ヒトクイマジカル』が刊行された2か月後の2003年9月(デビューから1年と7か月)には、講談社から文芸誌『ファウスト』が創刊されており、西尾維新・舞城王太郎・佐藤友哉らは「ファウスト系」などとも呼ばれるようになる。 2004年、ライトノベル評論ブームにともなって、西尾維新をライトノベルとして評価する目に見える動きが多発するようになる。まず2004年5月、『Quick Japan』Vol.45でライトノベル特集が組まれ、「冲方丁×乙一によるライトノベル必読書一〇〇冊」の1冊に『クビシメロマンチスト』が選出される。『クビシメロマンチスト』を選んだのは乙一だが、冲方丁との話し合いの中で乙一は「広義のライトノベルに入ると思います」と発言している。また同月、インターネット上の有志により行われた企画「このライトノベルがすごい!」(注:当時は宝島社の『このライトノベルがすごい!』の刊行がまだ始まっていない)で、西尾維新が作家別ランキングの1位に選出される。作品のランキングでも、『きみとぼくの壊れた世界』が第6位、『ヒトクイマジカル』が第7位と好位置につけた。その2か月後、2004年7月に刊行されたライトノベル評論本の先駆け『ライトノベル完全読本』では、戯言シリーズが第5位となっている。 このような時期を経て、その5か月後の2004年12月(デビューから2年と10か月)に初めて刊行された『このライトノベルがすごい!』では、戯言シリーズが第2位(1位は涼宮ハルヒシリーズ)、男性キャラクター部門で戯言シリーズの語り手である「いーちゃん」が1位と好成績を収めている。つまりこの頃には、ライトノベル読者の間で、戯言シリーズは十分すぎるほどに知名度があったということになる。戯言シリーズは翌年に第1位に輝き、男性キャラクター部門では「いーちゃん」が連覇した。戯言シリーズはその翌年にも第3位となっている。3年連続でベスト3に入ったことで、「西尾維新の作品はライトノベルなのか」という議論をあざ笑うかのように、西尾維新作品は「ライトノベルとして評価された」という既成事実を手に入れたのである。 さて、このように、2004年には西尾維新のライトノベルとしての評価が目に見える形で広まったが、一方でミステリー板の西尾維新スレッドの方は、消費スピードが急激に落ち、やがては消滅することになった。 ◆ 2004年以前については、ライトノベル評論本の類が出ておらず、戯言シリーズが当時どのように評されていたのかは、ライトノベル読者の思い出を聞くしかなさそうである。ただ、スレッドの消費速度から見れば、やはり『ヒトクイマジカル』の頃、西尾維新はライトノベル読者の間で急激に知名度が高まったと言えそうである。 個人的な思い出を語れば、『クビキリサイクル』を読んだ当時(刊行の翌月)はライトノベルというものの存在すらおそらく知らなかった頃で、メフィスト賞作家のミステリを追いかけていた流れで、西尾作品もなんのためらいもなくミステリだと認識して読んでいた。3作目の『クビツリハイスクール』はミステリとは呼べないものだったが、この頃から、西尾維新の魅力は別のところにあるようだとやっと認識し始めた。それでも、4作目の『サイコロジカル』はミステリ作品だったし、2003年4月に『メフィスト』に掲載された『きみとぼくの壊れた世界』の「もんだい編」は、よく読み込んで、熱心に解答を考えたものだった。だから個人的には、西尾維新はミステリの流れをくむ、ライトノベルと一般文芸の中間にいる作家だというのが最もしっくりくる考え方である。 リンク 西尾維新@2ch カコログオキバ メフィスト賞と講談社ノベルスの愉快な仲間達@ミステリー板 過去ログメフィスト賞と講談社ノベルスの愉快な仲間達 (西尾維新デビュー時の講談社ノベルススレッド) 【ファウスト】【講談社BOX】【パンドラ】@ライトノベル板 過去ログ ライトノベル関連に戻る