約 1,177,114 件
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/108.html
2011年2月3日 2011年8月7日:増補(詳細はページ最下部の「第二章 更新履歴」参照) 『中国ミステリ史 第二章』では、1910年代から1940年代まで(中華民国時代)の中国の探偵小説(偵探小説)/推理小説/ミステリの歴史を紹介している。 目次 第二章 1910年代~1940年代: ホームズ、ルパンからフオサン、ルーピンへ第一節 中国ミステリ草創期: 上海の「青」と「紅(あか)」(1)程小青(てい しょうせい)/名探偵フオサン (2)孫了紅(そん りょうこう)/怪盗紳士ルーピン (3)同時代の中国探偵作家 第二節 中華民国時代の探偵雑誌(1)中国初の探偵雑誌 (2)終戦後の探偵雑誌創刊ブーム 第三節 同時代の日本から見た当時の中国探偵小説界 第四節 邦訳された19世紀末~1940年代の中国探偵小説 参考文献 第二章 更新履歴 第二章 1910年代~1940年代: ホームズ、ルパンからフオサン、ルーピンへ 第一節 中国ミステリ草創期: 上海の「青」と「紅(あか)」 (1)程小青(てい しょうせい)/名探偵フオサン 【主要参考文献:老蔡(ラオツァイ)(2009)「百年華文推理簡史 二、程小青与霍桑(上)」、「二、程小青与霍桑(下)」】 中国で探偵小説の創作及び理論面での基礎を築いた人物は、程小青(てい しょうせい/チョン シャオチン)(1893 - 1976)である。 1893年、上海生まれ(日本では甲賀三郎、イギリスではドロシー・L・セイヤーズ、アントニイ・バークリーが同年生まれ)。12歳の時にコナン・ドイルのホームズものを偶然目にして虜になり、16歳で創作を開始。1914年、上海の新聞『新聞報』(新闻报)の文芸特集ページ「快活林」で行われていた公募に短編「灯光人影(とうこうじんえい)」が入選。この作品の主人公の霍桑(かくそう/フオサン)はシャーロック・ホームズ型の探偵で、ワトソン役は包朗(ほうろう/バオラン)。この作品が読者の好評を得たため、霍桑が探偵を務める物語はシリーズ化され、30年以上にわたって愛される人気シリーズとなった(ほぼ同時期の1917年、日本では岡本綺堂の半七捕物帳シリーズの掲載が始まっている)。 「灯光人影」の入選の前にいち早く彼の才能を見抜き小説創作の指導をしていたのは、小説誌の編集長を務め、西洋作品の翻訳で名高かった医師の惲鉄樵(うん てっしょう/ユン ティエチャオ)(恽铁樵)である。 1919年、霍桑シリーズの「江南燕(こうなんえん)」が当時の人気俳優・鄭君里(てい くんり/ジョン チュンリー)(郑君里)主演で映画化されたことから、このシリーズはさらに知名度と人気を高めた。 1915年、大学付属中学の臨時英語教師になった程小青は、そこでアメリカ人教師と知り合って英語の能力を格段に高め、英語で小説が読めるまでになる。翌年には、程小青ほか数名が翻訳した『ホームズ事件簿全集』(福尔摩斯探案全集、全12巻)が刊行されている。これは中国語の文語に訳したものだったが、1930年には程小青らにより口語訳の『ホームズ大全集』(福尔摩斯大全集)も刊行されている。程小青が翻訳に携わったのはホームズシリーズのみにとどまらず、ヴァン・ダイン、レスリー・チャータリス、エラリー・クイーン(『ギリシャ棺の謎』)、さらには中国人探偵が活躍するアール・デア・ビガーズのチャーリー・チャンシリーズなど、大量の作品を翻訳している。 程小青の探偵小説への貢献は創作および国外ミステリの翻訳にとどまらず、その能力は探偵小説論でも発揮された。また彼はアメリカの大学の「犯罪心理学」、「探偵学」などを通信教育で受講するなどして、当時の最先端の知識を得ていた。 1946年には、程小青の探偵小説74編を収録する『霍桑事件簿全集』(霍桑探案全集袖珍丛刊)全30巻が刊行された。1949年の新中国成立後は旧来の探偵小説を書くことは禁止されてしまったが、1957年からは実際の事件に題材を採った大衆向けスリラー小説を書くようになり、どれも20万部を越える大ヒットとなる。中国で名高い映画「徐秋影案件(じょしゅうえい あんけん)」(1958)は、程小青の小説に基づくものである。(日本では1957年、松本清張が『点と線』の連載を開始し、いわゆる「社会派推理小説」の時代が幕をあける) 晩年の10年間は、中国で知識人が迫害にあった文化大革命の時期に当たり、彼も迫害を受けることになった。かつてともに探偵小説の翻訳などを手掛けた仲間が病死したり、あるいは自殺に追い込まれたりする中で、1975年には妻をもなくし、彼も自身の作品の改訂版全集を出すという夢をかなえられないまま、1976年、北京にて没。享年83歳。 近年中国では、1997年の『霍桑探案集』(全6巻)など何度か作品集が刊行されているが、ほとんど品切れになっているようだ。現在新刊で入手できるのは、10編収録の短編集『血手印(血の手形)』(華夏出版社、2008年)。また、2007年には『近現代偵探小説作家程小青研究』という研究書が刊行されている。 また、2006年にはハワイ大学出版からフオサンものの英訳短編集"Sherlock in Shanghai Stories of Crime And Detection"が出ている(著者名の表記は Cheng Xiaoqing )。翻訳はほかに少なくとも、イタリア語訳"Sherlock a Shangai"(2009年)が刊行されている。 (2)孫了紅(そん りょうこう)/怪盗紳士ルーピン 【主要参考文献:老蔡(ラオツァイ)(2009)「百年華文推理簡史 三、孫了紅和他的“反偵探小説”」】 1920年代から40年代末までの中国探偵小説界を支えたもう1人の人物として、孫了紅(そん りょうこう/スン リャオホン)(孙了红)(1897 - 1958)が挙げられる。 1897年、上海生まれ(程小青の4歳年下/日本では海野十三、木々高太郎が同年生まれ)。彼は紙とペンさえあればどこでも小説を書き始めるような男で、喫茶店で小説を書いては、周りの人に見せて喝采を浴びていた。雑誌に小説などを発表していたが、1923年のある日、『アルセーヌ・ルパン全集』(亚森罗苹案全集、1925年出版)の翻訳に誘われ、そこから探偵小説創作の道へと入る。1923年11月には、ルパン(Lupin)をもじった魯平(ルーピン)(鲁平、Luping)という怪盗紳士探偵が登場する短編「傀儡劇(かいらいげき)」(傀儡剧)を雑誌『偵探世界』に掲載する(日本ではこの年、乱歩がデビュー)。この作品は好評を得てシリーズ化され、怪盗紳士ルーピンはこの後約25年間にわたって活躍することになる。探偵小説の創作以外に、いくつかの探偵小説雑誌の編集長も務めた。また恋愛小説も執筆している。 孫了紅の作品は「反探偵小説」(反侦探小说)と呼ばれている。これを聞くと、日本に少なからずいる「アンチ・ミステリ」ファンは色めき立ってしまうかもしれないが、これは単に彼の作品が当時の一般的な探偵小説と異なり、探偵ではなく怪盗を主人公にしていることからきた名称である。 程小青とは交流があり、探偵小説論を交わし互いに刺激し合った。霍桑(フオサン)が登場する作品を孫了紅が書いたこともあった(「鴉の鳴く声」(鸦鸣声))。当時上海では、二人の名前にそれぞれ「色」が含まれていることから、二人のことを「青紅(あおあか)コンビ」(青红帮)と呼んでいた。ただ、老蔡(ラオツァイ)(2009)によれば、孫了紅の創作の量は程小青ほど多くはなく、また孫了紅の作品は出来不出来の差が大きいという。 1949年の新中国成立後は、旧来の探偵小説雑誌や探偵小説は発行が禁止されてしまったため、劇団の劇の脚本を書いたり、新聞でスリラー小説(驚険小説/惊险小说)を連載したりした。若い頃から病弱であったが病状が悪化し、1958年没。享年61歳。同年に書きあげ新聞連載された反スパイ小説『青島迷霧(チンタオ めいむ)』(青岛迷雾)が最後の作品となった。 現在中国で手に入る孫了紅の単行本は、5編収録の短編集『血紙人(血染めの紙人形)』のみである。 同時代のアジアの動向 インドネシアでは、1926年に程小青の霍桑(フオサン)ものが翻訳されている。1929年には、代表作の1つである「江南燕」が訳された。(柏村彰夫(2010)) 上海でルパンの名をもじった怪盗紳士ルーピン(魯平)が活躍していた頃、朝鮮半島ではルパンシリーズの作者ルブランの名をもじった探偵ユ・ブラン(劉不乱)が活躍していた。探偵ユ・ブランを創造したのは、早稲田大学留学中の1935年に日本の雑誌『ぷろふいる』でデビューし、江戸川乱歩とも親交があった韓国ミステリの始祖・金来成(キム・ネソン、1909-1957)である。探偵ユ・ブランは『ぷろふいる』1935年12月号に掲載された「探偵小説家の殺人」で劉不乱(りゅう ふらん)として初登場。金来成は1936年に朝鮮半島に戻り、以降はユ・ブランが活躍する探偵譚や乱歩風の変格短編を朝鮮語で執筆していた。(金来成についての詳細は、「韓国ミステリ史 特別編 - 金来成(キム・ネソン)(1909-1957)」) (3)同時代の中国探偵作家 【主要参考文献:老蔡(ラオツァイ)(2009)「百年華文推理簡史 四、民国時期的其他原創作品(上)」、「四、民国時期的其他原創作品(下)」】 程小青、孫了紅と同時期に中国で活躍した探偵作家に以下のような人たちがいる。 陸澹安(りく たんあん/ルー ダンアン/陆澹安)(1894 - 1980)程小青のフオサンシリーズ、孫了紅のルーピンシリーズとともに「中華民国時代の三大探偵小説シリーズ」と呼ばれる李飛(リーフェイ)シリーズの作者。当時の探偵小説作家の中で唯一、法律の専門教育を受けた人物だった。1923年に創刊された中国初のミステリ雑誌『偵探世界』では、程小青らとともに編集を担当。作品数があまり多くないため、後世に与えた影響は程小青や孫了紅ほど大きくはない。 兪天憤(ゆ てんふん/ユー ティエンフェン/俞天愤)(1881 - 1937) 張碧梧(ちょう へきご/ジャン ビーウー/张碧梧)(1897 - 没年不明) 趙苕狂(ちょう ちょうきょう/ジャオ ティアオクアン/赵苕狂)(1892 - 没年不明) 中国では2002年に、20世紀に発表された中国ミステリの傑作短編を集めたアンソロジー『20世紀中国偵探小説精選』(全4巻)が刊行されている。この時期を対象とする第1巻の収録作品は以下のとおりである。 『20世纪中国侦探小说精选(1920-1949) 少女的恶魔』(少女的悪魔)程小青「案中案」 程小青「白紗巾」(白纱巾) 孫了紅「藍色響尾蛇」(蓝色响尾蛇) 陸澹安「夜半鍾声」(夜半钟声) 兪天憤「白巾禍」(白巾祸) 張碧梧「箱中女屍」(箱中女尸) 趙苕狂「少女的悪魔」(少女的恶魔) 何朴斎(か ぼくさい/ホー ピャオジャイ/何朴斋)「鸚鵡緑」(鹦鹉绿) 徐卓呆(じょ たくがい/シュー ジュオダイ)「臨時強盗」(临时强盗) 同時代のアジアの動向 タイでは1912年にホームズが初めて翻訳されたのに続いて、モーリス・ルブランのルパンものや、エミール・ガボリオ、ガストン・ルルーの探偵小説などが多数翻訳・翻案され、圧倒的な人気を博した。創作では、前述のラーマ6世『トーンイン物語』に続いて、ホームズものの翻訳者だったルアン・サーラーヌプラパンによる『黒い絹と悪霊の顔』(1922)、シーラット・サパーポンワット『それから永久に』などが発表された。1930年代に入るとこのジャンルはやや下火になったが、パイサーン・サーンブット『私の王女』(1937)、アルンプラサート『邪悪な巣窟』(1938)、タンマティアンの〈探偵チューチュープシリーズ〉(1938~)、ディンソー『探偵チェム博士』(1941)などが書かれた。(宇戸清治(2009)) 第二節 中華民国時代の探偵雑誌 【主要参考文献:老蔡(ラオツァイ)(2009)「百年華文推理簡史 五、民国時期的偵探雑誌(上)」、「五、民国時期的偵探雑誌(下)」】 【2011年8月7日加筆】 (1)中国初の探偵雑誌 少し時間をさかのぼって話を始めるが、1923年というのは日本のミステリ史においても、そして中国のミステリ史においてもエポックメイキングな年であった。この年、日本の雑誌『新青年』は4月号を初の「創作探偵小説号」とし、翻訳ではなく日本のオリジナルの探偵小説を特集するという新たな試みに出る。そしてこの号に掲載された「二銭銅貨」で華々しくデビューしたのが、江戸川乱歩である。この号では乱歩の作品を含め4編の創作短編が掲載されたが、その中には上海を舞台にした松本泰の短編「詐欺師」もあった。 日本人がイマジネーションの中の魔都・上海を描き出していたとき、現実の上海でも、今まさに中国ミステリ史における重大事件が起ころうとしていた。1923年6月、中国初の探偵小説雑誌『偵探世界』(世界書局)の創刊である。中国の作家によるオリジナル作品を重視し、中華民国時代の探偵小説界の三大巨頭、程小青(てい しょうせい)・孫了紅(そん りょうこう)・陸澹安(りく たんあん)の作品を多く掲載したほか、探偵作家以外の小説家にも積極的に声をかけ、探偵小説を依頼した。ただし、この雑誌自体は探偵小説専門というわけでなく、探偵小説が一番多いとはいえ、ほかに武侠小説や冒険小説も掲載していた。小説以外に、程小青による「科学と探偵術」、「探偵小説作法の管見」等のコラムも掲載された。程小青の名前は編集委員としてもクレジットされていたが、実際には程小青は編集に参加していないと言われている。彼の名前がクレジットされているのは、当時すでに探偵作家として名声を博していた彼の名前を借りて売り上げにつなげようと出版社が考えたからである。月2回刊という刊行ペースに創作小説の供給が追い付かなくなり、次第に作品の質が低下したことで読者離れを招き、全24冊、1年という短命に終わったが、この雑誌が後の中国ミステリ界に与えた影響は大きかった。 その後の中国の探偵小説雑誌としては、1938年9月創刊の中国第二の探偵小説雑誌『偵探』があった。当初は月刊、のちに月2回刊となったこの雑誌は、バックナンバーが散逸しており研究はまだ進んでいないとのことだが、1941年刊行の第54号の存在が確認されており、現在知られている中華民国時代の探偵雑誌では、最も刊行号数が多いものである。 なお、日本初の探偵雑誌は、1916年から3年ほど刊行された『探偵雑誌』(実業之世界社)というタイトルの探偵雑誌だとされている。 (2)終戦後の探偵雑誌創刊ブーム 終戦後、日本では1946年3月創刊の『ロック』を皮切りに、探偵雑誌が多数創刊された。1946年には『ロック』に続いて、『宝石』(3月)、『トップ』(5月)、『ぷろふいる』(後に『仮面』)(7月)、『探偵よみもの』(11月)が、1947年には『黒猫』(4月)、『新探偵小説』(4月)、『真珠』(4月)、『妖奇』(後に『トリック』)(7月)、『Gメン』(後に『X』)(10月)、『フーダニット』(11月)が創刊されている。もっとも、これらの雑誌はほとんどが2~3年ほどで廃刊になっており、1940年代に創刊された雑誌で1950年代になってまだ刊行が続いていたのは、『Gメン』(『X』)(~1950年)、『探偵よみもの』(~1950年)、『妖奇』(~1953年)、そして『宝石』(~1964年)だけである。 中国でも戦後になると探偵雑誌の創刊ブームが訪れる。中国で戦後最も早く創刊された探偵雑誌は、程小青が編集長を務めた『新偵探』だが、この創刊は日本の『ロック』創刊よりも早い1946年1月のことだった。続いて同年のうちに、『大偵探(だいていたん)』(4月)、『藍皮書(らんひしょ)』(7月)が創刊されている。 『新偵探』は月2回刊。編集長の程小青は、創刊号から毎号のように霍桑シリーズを掲載し、またレスリー・チャータリスのセイントシリーズを翻訳するなど、自ら健筆をふるった。雑誌は創作が大部分を占めたが、翻訳ではほかに、エラリー・クイーンの短編「アフリカ旅商人の冒険」なども掲載された。創作作品の不足のため次第にページ数が少なくなり、約半年、全17号を刊行して廃刊となった。 『大偵探』は、孫了紅が初代編集長を務めた月刊の探偵雑誌。『新偵探』とは異なり、こちらは翻訳作品を主軸としており、欧米黄金時代のアガサ・クリスティ、エラリー・クイーン、ジョン・ディクスン・カーの作品や、ジャック・フットレルの作品などを翻訳掲載した。また、犯罪実話も人気を博した。『新偵探』が休刊になると創作も載せるようになり、次第に創作の割合の方が多くなっていった。孫了紅もルーピンシリーズの「藍色響尾蛇」(蓝色响尾蛇、別名「1947年の怪盗ルーピン」(一九四七年的侠盗鲁平))を連載している。 『藍皮書』は不定期刊。探偵小説のほか、ホラー小説、武侠小説も掲載された。創刊号には、当時『大偵探』の編集長だった孫了紅も小説を寄せており、孫了紅はのちには『藍皮書』の編集長にもなっている。孫了紅は、金庸などに影響を与えた当時一番人気の武侠作家、還珠楼主に執筆を依頼し、これにより『藍皮書』の売り上げは大幅に上がった。さらに程小青のフオサンシリーズの連載や、孫了紅のルーピンシリーズの掲載もあり、『藍皮書』当時の一番人気の探偵雑誌となった。 1949年1月には、探偵小説雑誌『紅皮書』が創刊された。この雑誌にも孫了紅のルーピンシリーズが掲載され、またたく間に『藍皮書』と並ぶ人気雑誌となった。そして、中国の探偵小説界はこのままの形で発展していくかに思われたが、1949年、新中国=中華人民共和国の成立により、状況は一変する。(以降、第三章) 第三節 同時代の日本から見た当時の中国探偵小説界 【2011年8月4日新設】 日本の雑誌『新青年』は、1930年代に中国の探偵小説を4編訳載している。この4編は、江戸川乱歩編「翻訳短篇探偵小説目録」(『探偵小説年鑑 1951年版』岩谷書店、1951年 巻末)に記載されていない。 (タイトルに付した振り仮名は、実際に『新青年』で振られているもの) 掲載号 ページ タイトル 作者 翻訳者 1930年夏季増刊号(11巻11号) pp.100-113 「白玉環」(はくぎょくくゎん) 武進呂侠 記載なし 1931年新春増刊号(12巻3号) pp.278-290 「無名飛盗」(ウー ミン フェイ タオ) 張慶霖 記載なし 1933年夏季増刊号(14巻10号) pp.125-138 「賭場母女」(トゥ チャン ムー ヌー) 幸福斎 呂久餘七 1935年夏期増刊号(16巻10号) pp.161-169 「絶命血書」(チュエ ミン シェー シュ) 呂侠 阿羅本洋 どれも初出情報や作家の経歴等の親切な情報は付されていないが、調べてみると、このうち呂侠(ろきょう/リューシア)の2作品は、1907年に刊行された呂侠『中国女偵探』(商務印書館)に所収のものであることが分かった。1907年というのは、中国で次々とホームズ物やその他の欧米探偵小説が翻訳され、また中国の作家が見よう見まねでオリジナルの作品を発表しはじめていた時期である。この本には、原題で示すと「血帕」、「白玉環」、「枯井石」の3短編が収録されているが、このうち1作目と2作目が『新青年』に訳載されている(2作目の「白玉環」の方が『新青年』では先に掲載されている)。なおこの『中国女偵探』は、「こちら(中国のサイト)」で全ページを画像ファイルで見ることができる。作者の呂侠は、中国の史学家の呂思勉(ろ しべん、1884-1957、中国語版Wikipedia)と同一人物だという説があるようだ。 張慶霖(ちょう けいりん/ジャン チンリン)と幸福斎(こうふくさい)は、1923年に創刊された中国初の探偵小説雑誌『偵探世界』などに作品を発表していた作家のようだが、『新青年』に掲載された作品の原典は分からない。この4作品については、のちに別ページでまとめる予定である(※現在未公開「アジア推理小説翻訳史 中国編(1) 『新青年』掲載の忘れられた四短編」)。 上で示したように、早くも1930年代には中国の探偵小説が日本で翻訳されていたわけだが、これらの短編は発表年も作者のプロフィールも付されず、ただ翻訳されて掲載されただけだったので、これでは中国の探偵小説界について知りようもなかった。中国の探偵小説界についてある程度まとまった情報が入ってくるのは、戦後になってからである。 戦後、江戸川乱歩を中心に探偵作家が集まって、土曜会という探偵小説を語る会が毎月1回開かれるようになった。1946年6月に始まったこの土曜会では、1947年から1950年の間に計3回、中国の探偵小説についての講演会や座談会が行われている。 (1)東震太郎 講演「中国の探偵小説界」(第13回土曜会、1947年6月21日) 1947年6月21日、すなわち探偵作家クラブ(現・日本推理作家協会)創設の日に開かれた第13回土曜会では、探偵作家クラブ会員で作家の東(あずま)震太郎氏が「中国の探偵小説界」と題する講演を行っている。最初に日本のミステリ界で中国の探偵小説について詳しく紹介したのは、おそらくこの東震太郎氏だと思われる。 東震太郎 講演「中国の探偵小説界」要旨 (「第13回土曜会記録」『探偵作家クラブ会報』第2号(1947年7月))「ビガース(米)の伸査礼(チャーリーチャン)探偵は、人物が温厚謙遜なので好まれている。」 「ルパン、ドイルは夙に翻訳され、わが乱歩の「D坂の殺人事件」「二銭銅貨」「白髪鬼」「蜘蛛男」等も訳されている。」 「創作は至って少く、張恨水、耽小適等の作品も、人情本又は之に類するものであり、曹禹も実録物を書いている。」 「種本は、康煕年間に多い公案物(裁判物)が主で、中にも「龍図公案」(包公案)はその模倣が多い。この本は例の「棠陰比事」と同じくわが「本朝桜陰比事」の淵叢で大岡政談的な物語が六十三種も収録されている。又、謎々的な一種の暗号めいた「柏案驚奇」と云った本も好まれている。」 上記の第13回土曜会記録が掲載された号には、東震太郎氏のエッセイ「中国の探偵小説」も掲載されている。東氏はそこで、中国の探偵小説を3つに分類している。(判読不明の文字は■で示す) 中国の探偵小説(1)実録もの(耽小適(人情本作家)曹禹(劇作家)その他) (2)公案もの ― 棠陰比事(明末■■) ― 龍図公案(一名包公案)(清■) ― その亜流 (3)翻訳もの ― ルパン物、ドイル物、乱歩もの(二銭銅貨、D坂の殺人事件、白髪鬼、蜘蛛男等) アメリカの推理作家アール・デア・ビガーズが創造したチャーリー・チャンは、ホノルル警察の警部で中国系アメリカ人という設定。このころには少なくとも、程小青訳のものが刊行されていた。現在ではチャーリー・チャンの中国語表記は陳査理(チェン・チャーリー/陈查理)が普通だが、このころは伸査礼(シェン・チャーリー)と書いていたんだろうか。 中国のオリジナル作品の現状や発展については、東氏はかなり悲観的な見方をしている。東氏は戦前はジャーナリストとして大陸におり、終戦前後には上海にいたそうだが、残念ながら程小青や孫了紅の活躍や、終戦後の探偵雑誌の隆盛については、東氏の耳には入らなかったようである。東氏が挙げている中国の三人の作家は、推理小説関連の文献では名前を見掛けたことがない。今ほど情報が手に入りやすい時代ではないので仕方がないが、中国における創作探偵小説の実情の紹介としては、やや的外れのものだったと言わざるを得ないだろう。(ここで名前が出ている張恨水、耽小適(耿小適?)、曹禹については、のちに別ページでまとめるかもしれない) (2)柴田天馬 講演「中国文学に現れた犯罪、探偵」(第18回土曜会、1947年11月22日) 東震太郎氏の講演から5か月後には、『聊斎志異(りょうさいしい)』の完訳者である中国文学者の柴田天馬が土曜会に招かれている。この回では主に中国の古典文学作品に現れる侠盗についての話がなされたようで、19世紀末以降の中国探偵小説の話題は出なかったようである。(『探偵作家クラブ会報』第7号(1947年12月)) (3)江戸川乱歩、ロバート・ファン・ヒューリック、辛島驍、魚返善雄ほか 座談会「中国の探偵小説を語る」(第47回土曜会、1950年5月27日) この前年に『狄公案(てきこうあん)』の英訳を出したロバート・ファン・ヒューリックと、中国文学者の辛島驍(からしま たけし)、同じく中国文学者の魚返善雄(おがえり よしお)を招いて座談会が行われた。その模様は、『宝石』1950年9月号に座談会「中国の探偵小説を語る」として掲載されている。ここで辛島氏は、中国の探偵小説史を第一期から第七期に分類して説明しているが、ここで「第七期」とされているのが19世紀末から20世紀初頭のホームズなどの西洋文学の翻訳時期のことであり、その後の程小青や孫了紅の登場についてはこの座談会では触れられていない。 結局、この時期には中国の創作探偵小説の実情について、正しい情報は伝わらなかったようである。 乱歩は中国以外にも、インドや韓国などアジア各地の推理小説に興味を持ち、情報を集めていた。しかし、1965年に乱歩が死去して以降は、アジアの推理小説に目を向ける人はおらず、日本のミステリ界において「アジア」の存在は忘れられたものとなった。日本のミステリ界においてアジアが「再発見」されるのは、21世紀になり、島田荘司がアジア各地の本格ミステリに目を向け始めてからのことである。 第四節 邦訳された19世紀末~1940年代の中国探偵小説 【2011年8月4日訂正】 清末から中華民国時代の中国探偵小説で、一般流通の書籍・雑誌等で翻訳された作品は、第五節で紹介した『新青年』掲載の4編以外には見当たらない。 2004年の第4回本格ミステリ大賞で評論・研究部門の候補になった井波律子『中国ミステリー探訪 ― 千年の事件簿から』(日本放送出版協会、2003年)は、中国ミステリの歴史を4世紀にまでさかのぼり、そこからの歴史を丁寧にかつ読みやすく紹介した好著である。基本的に19世紀以前の作品を紹介しているが、最後の方で程小青と孫了紅にも言及があり、フオサンシリーズの中編「舞宮魔影(ぶきゅうまえい)」と、ルーピンシリーズの「血染めの紙人形」(血紙人、1942)のあらすじが詳しく紹介されている。 ネット上では、この時期の上海の探偵小説については、ブログ「中国推理小説研究会」の上原草さんが、作品のあらすじを詳細に示しながら丁寧な紹介をしていらっしゃいます。程小青のフオサンシリーズや孫了紅のルーピンシリーズのほかに、趙苕狂(ちょう ちょうきょう)の失敗探偵シリーズなどにも言及があります。 また、Webサイト「翻訳書肆・七里のブーツ」では、フオサンシリーズの「別荘の怪事件」(別墅之怪)が全訳されて公開されています。(程小青のフオサンシリーズの英訳が出ていることは、このサイトで知りました) 参考文献 中国ミステリ史 参考文献 (新しいウィンドウで開きます) 第二章 更新履歴 2011年2月3日:公開 2011年8月4日~7日「第三節 同時代の日本から見た当時の中国探偵小説界」を新設。 中華民国時代の探偵雑誌についての記述を第三章から第二章に移動して「第二節 中華民国時代の探偵雑誌」とし、大幅に加筆。 『中国ミステリ史 第一章』(19世紀末~1910年代) 『中国ミステリ史 第二章』(1910年代~1940年代) ←今見ているページ 『中国ミステリ史 第三章』(1940年代末~1970年代) 『中国ミステリ史 第四章』(1970年代末~1990年代) 『中国ミステリ史 第五章』(1990年代末~21世紀初頭) 『中国ミステリ史 第六章』(現代)
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/188.html
2012年5月12日 大きな地図で見る 「オランダの推理小説」というものが日本でことさら取り上げられることはほとんどない。オランダの外交官・東洋学者・探偵作家のロバート・ファン・ヒューリック(1910-1967)は例外的に日本での知名度が高いが、その作品が「オランダの推理小説」だと意識されることはあまりないだろう。ファン・ヒューリックは中国を舞台とするミステリを英語で執筆していたからである。 とはいえ、オランダと日本の推理小説界の因縁(?)は浅くない。西洋の探偵小説が初めて日本語に翻訳されたのは江戸時代末期だとされるが、その翻訳探偵小説はオランダの作品だったのである。また、江戸川乱歩は前述のロバート・ファン・ヒューリックと親しい付き合いがあったほか、日本ではまったく無名のオランダの探偵作家W・G・キエルドルフと手紙のやり取りをしたりもしている。以下では日本との関係をメインに、オランダ推理小説の歴史を紹介する。 関連記事:「オランダ語に翻訳された日本の推理小説/ミステリ」(2012年5月12日) Index 江戸時代に邦訳されたクリステメイエルの短編探偵小説2編 江戸川乱歩とオランダの探偵作家の交流 W・G・キエルドルフによるオランダ探偵小説略史(20世紀初頭~1950年代) 1960年代以降の主なミステリ作家 オランダ推理作家協会とフランドル推理作家協会 江戸時代に邦訳されたクリステメイエルの短編探偵小説2編 今から151年前、江戸時代末期の西暦1861年(明治元年は1868年)、洋学者の神田孝平(たかひら)(1830-1898)がオランダの短編探偵小説(または探偵実話)2編を和訳している。これが西洋の探偵物の最初の邦訳だとされている。神田孝平自身がつけた訳題は「ヨンケル・ファン・ロデレイキ一件」と「青騎兵并(ならびに)右家族共吟味一件」。1997年に西田耕三氏が神田孝平の訳文を現代語に訳して出版した際には、タイトルは「ヨンケル・ファン・ロデレイキ殺人事件」、「青騎兵とその家族の捜査の顚末」としている。現代語の方が分かりやすいので、以下、これらの作品については西田耕三氏の訳題を使うこととする。 「ヨンケル・ファン・ロデレイキ殺人事件」と「青騎兵とその家族の捜査の顚末」の作者はオランダのヤン・バスティアン・クリステメイエル(Jan Bastiaan Christemeijer、1794-1872)。この2編は、1820年に出版のクリステメイエル『刑事裁判および人間の過失の実録からなる文書』(短編5編収録、訳題は宮永孝氏に拠る)に掲載されたのが最初だと目されている。その前年にはクリステメイエルの同様の趣旨の短編7編を収録する本が出版されており、1830年にはその2冊を合わせた全12編収録の本が出版されている。神田孝平はこの1830年出版の本から2編を選んで翻訳したのである(この1830年版はGoogleブックスで全ページ閲覧可能)。 この2編は神田孝平が1861年に翻訳してからすぐに広く世間に知られた訳ではなく、最初は写本の形で回し読みされた。「ヨンケル・ファン・ロデレイキ殺人事件」の方は1877年から1878年にかけて「楊牙児(ヨンゲル)ノ奇獄」というタイトルで雑誌『花月新誌』に連載されたのが世に出た最初で、1886年には『和蘭美政録 楊牙児奇談』(Googleブックスで全ページ閲覧可能)というタイトルで出版されている。これらは神田孝平の訳文のまま世に出た訳ではなく、一部が省略されるなど他人の手が加わっていた。なお、エドガー・アラン・ポー(1809-1849)の「モルグ街の殺人」が初めて邦訳・新聞掲載されたのが1887年、須藤南翠(1857-1920)の「殺人犯」の発表が1888年、黒岩涙香(1862-1920)の「無惨」の発表が1889年である。「ヨンケル・ファン・ロデレイキ殺人事件」の邦訳が世に出たのはそれらよりも早かったことになる。 「青騎兵とその家族の捜査の顚末」の方は、1892年に『日本之法律』に「探偵小説 青騎兵」というタイトルで連載されたのが世に出た最初である(川戸道昭氏の論文「ミステリー小説のあけぼの」で明らかにされた)。同時期に『日本之少年』にも連載された。のちに『新青年』1931年4月号にも掲載されている。 さて、探偵小説の嚆矢とされるエドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」が発表されたのが1841年なので、クリステメイエルの作品はそれよりも早いということになる。法政大学教授で、原典およびクリステメイエルについての詳細な調査を行った宮永孝氏は論文「楊牙児(ヨンケル)奇獄」(2011)で以下のように書いている。 ポーの先の探偵小説【注:「モルグ街の殺人」】が活字となる二十年ほど前に、オランダにおいてちゃんとした探偵小説が存在したのである。が、オランダ語といった特異な言語のせいか、世間の注意をほとんど惹かず、また大して問題にもされず、こんにちに至っている。 同論文(こちらで全文閲覧可能)の末尾には、宮永氏による 「ヨンケル・ファン・ロデレイキ殺人事件」のオランダ語原典からの翻訳「ヨンケル・ファン・ロデレイケ一件――別名 喜劇の表題(タイトル)によって発覚した二重殺人事件」が付されている。気になる方は、ぜひこちらで実際に読んでもらいたい。 なお、中島河太郎氏は宮永孝氏の調査結果を紹介しつつ、「日本探偵小説史」で以下のような見解を示している。 中島河太郎「日本探偵小説史」『日本探偵小説全集12 名作集2』創元推理文庫、1989年2月、p.609-610より引用 ともかく日本の最初の翻訳探偵小説の身許がようやくつきとめられた。原作は一八二〇年刊行のオランダの作品となると、ポオの「モルグ街の殺人」より、さらに遡ること二十年あまりである。肝腎の原著者については皆目分らないし、また構成の上から眺めても、果たして小説として書かれたか疑問が残らないわけではない。「楊牙児」は(――ネタばれ――)に趣向があり、「青騎兵」は二つの事件を交錯させ、他人を陥れようと種々のトリックを弄するおもしろ味はあるが、ともかく推理的部分は薄弱で、本格的構成はポオに譲らなければならない。 西田耕三氏による神田孝平の訳文からの現代語訳(「ヨンケル・ファン・ロデレイキ殺人事件」、「青騎兵とその家族の捜査の顚末」)は、西田耕三編『日本最初の翻訳ミステリー小説 吉野作造と神田孝平』(耕風社、1997年)に収録されている。「青騎兵とその家族の捜査の顚末」が現代語で読めるのはおそらくこの本だけだろう。なおこの本には、神田孝平が和訳した「ヨンケル・ファン・ロデレイキ一件」と「青騎兵并(ならびに)右家族共吟味一件」、および1877年に『花月新誌』に掲載されたバージョンの「楊牙児ノ奇獄」も収録されている。 おまけ:なお、SFで最初に邦訳されたのもオランダの作品だそうだ。北原尚彦『SF万国博覧会』(青弓社、2000年)によるとその作品は、ジヲス・コリデスの『新未来記』。1868年に近藤真琴によって訳され、その10年後に刊行されたとのこと。横田順彌『日本SFこてん古典』にあらすじ紹介などがあるそうだ。 江戸川乱歩とオランダの探偵作家の交流 江戸川乱歩(1894-1965)がオランダの探偵作家のロバート・ファン・ヒューリック(Robert van Gulik、1910-1967)と交流があったというのはよく知られた話だろう。ファン・ヒューリックは中国の裁判小説に題材をとった狄(ディー)判事シリーズ(ハヤカワ・ミステリで全作品邦訳されている)で知られるが、外交官・東洋学者でもあり、日本語・中国語に堪能だった。乱歩は1949年の大みそか、高島屋の古書展でファン・ヒューリックが中国語から英訳した『Dee Goong An』(狄(ディー)公案)を入手。乱歩はこの中国の探偵小説を「長篇本格探偵小説の体をなしていて西洋のガボリオやボアゴベイに比べても、大して見劣りしない」(探偵作家クラブ会報第33号、1950年2月)と称賛している。乱歩は古書店の店主を通じてファン・ヒューリック本人とも連絡を取り、1950年5月の土曜会(探偵作家クラブの月例会)に招いたりもしている。その模様は、雑誌『宝石』に掲載の座談会「中国の探偵小説を語る」(1950年9月号)で読むことができる(ロバート・ファン・ヒューリック『柳園の壺』[ハヤカワ・ミステリ、2005年]巻末にも一部再録)。なおファン・ヒューリックはオランダの推理作家だが、作品は英語で執筆した。最初の創作"The Chinese Maze Murders"の邦訳が『迷路の殺人』と題されて英語版に先駆けて出版されたのは1951年のことである(2009年刊のハヤカワ・ミステリ版のタイトルは『沙蘭(さらん)の迷路』)。 乱歩は1957年、ファン・ヒューリックの仲介で、オランダの探偵作家のW・G・キエルドルフ(Wilhelm Gustave Kierdorff、1912-1984)と手紙のやり取りをしている。キエルドルフが乱歩に送った手紙によれば、キエルドルフは1956年、オランダの探偵作家クラブであるジェフリー・ギル・クラブ(Geoffrey Gill Club)を創設。会員は約50名。クラブの名称になっているジェフリー・ギルとは、オランダ探偵小説の創始者とされるイファンス(Ivans、本名:Jakob van Schevichaven、1866-1935)の作品で主人公を務めるイギリス人探偵の名前だという。乱歩のもとにはこのジェフリー・ギル・クラブの機関誌『MYSTERIE-Detective』も送られてきている。キエルドルフは機関誌の第3号で日本の探偵小説と探偵作家クラブについて紹介したいと書いているが、それが実現したのかは分からない。キエルドルフは乱歩のほかにも、フランス版EQMMの編集長のモーリス・ルノール(Maurice Renault)、アメリカのドナルド・A・イェイツ(Donald A. Yates)、デンマークのシャーロック・ホームズ・クラブ創設者のヘンリックセン(Henriksen)、フランス在住のペルシャ人フレイドン・ホヴェイダ(Fereydoun Hoveyda、邦訳書に『推理小説の歴史はアルキメデスに始まる』[東京創元社、1981年]等)、オーストラリアの探偵作家アーサー・アップフィールド(Arthur Upfield)など、世界中の探偵小説関係者と連絡をとっていたようだ。キエルドルフが乱歩に送った最初の手紙の原文(英語)は、日本探偵作家クラブ会報第133号(1958年9月)に全文掲載されている。乱歩とキエルドルフの手紙のやり取りがどれぐらい続いたのかは分からない。乱歩はキエルドルフの最初の手紙に対して「詳しい返事を出しておいた」(日本探偵作家クラブ会報第119号、1957年5・6月)と書いているので少なくとも1度は返信したようだが、お互い手紙を1通送ったきりで終わってしまったのかもしれない。 乱歩は海外のミステリ事情の紹介に熱心で、1960年11月の日本探偵作家クラブ会報第158号では英国推理作家協会(CWA)会報1960年8月号の記事を紹介している。それによれば、オランダのジェフリー・ギル・クラブのJacqueline Kempeesが英国推理作家協会に、オランダの推理小説界を紹介する手紙を寄越してきたのだという。英国推理作家協会に寄せられたこの手紙では、ジェフリー・ギル・クラブの会長はピム・ホフドルプ(Pim Hofdorp)とされていた。乱歩は気付いていなかったと思われるが、ピム・ホフドルプというのはW・G・キエルドルフの筆名であり、つまりホフドルプとキエルドルフは同一人物である。 ところで、W・G・キエルドルフとは一体何者だったのだろう。オランダ語版Wikipediaの記事をGoogle翻訳で英語に直すという不確かな方法に頼って紹介すると、W・G・キエルドルフは1912年2月4日生まれ。ピム・ホフドルプ(Pim Hofdorp)という筆名で、1959年から1980年にかけて、オランダのハーグを舞台とする推理小説シリーズを発表した。このシリーズにはハーグについての地誌学的・歴史学的知識がふんだんに盛り込まれていたそうだ。1984年6月9日逝去。残念ながら、その作品の邦訳はない。 W・G・キエルドルフによるオランダ探偵小説略史(20世紀初頭~1950年代) 『探偵倶楽部』1958年7月号にはW・G・キエルドルフの「オランダの探偵小説」という記事が載っている。キエルドルフが乱歩に送った最初の手紙の原文(英語)を読んでみると、その手紙にはキエルドルフがフランス語で書いたオランダ探偵小説略史が同封されていたことが分かる。手紙によれば、モーリス・ルノールが創設したフランスの探偵小説愛好クラブ Club Mystère Fiction の会誌に寄稿したものだという。『探偵倶楽部』に載った記事は、おそらくはこれを翻訳したものだろう。ちなみにネット上を検索してみたところ、Club Mystère Fictionの会誌の目次を紹介しているページがあった(リンク)。キエルドルフの寄稿"Le Roman policier aux Pays-Bas"(オランダの探偵小説)はClub Mystère Fictionの会誌の第5号(1955年11月・12月)に載ったようである。 この時期には乱歩は探偵雑誌『宝石』の編集長となっていたので、キエルドルフの原稿がライバル誌である『探偵倶楽部』に載ったのは少々不思議である。 以下、W・G・キエルドルフ「オランダの探偵小説」に従って、オランダの1950年代までの探偵小説略史を紹介する。 この記事によれば、オランダ探偵小説の創始者であるイファンス(Ivans、本名:Jakob van Schevichaven、1866-1935)は1910年にデビュー。この特異な筆名は本名の一部を拾って作られたものである(J + van + S → Ivans)。イファンスの探偵小説で探偵役を務めるのは、シャーロック・ホームズそっくりのイギリス人名探偵ジェフリー・ギル(Geoffrey Gill)。ワトソン役はオランダの法学博士ウィレム・ヘンドリクス。ジェフリー・ギルの探偵譚は1930年までにオランダ国内に10万人の読者を獲得し、北欧の言語にも翻訳されたという。 イファンスの後継者とみなされていたのが探偵作家のハファンク(Havank、本名:Hendrikus Frederikus van der Kallen、1904-1964)。この筆名はイファンスの筆名と同じやり方で作られている(H + van + K → Havank)。ハファンクはパリ警視庁のシルヴェール警部(Silvère)とその助手シャルル・カルリエ(Charles C.M. Carlier、通称Schaduw[影、シャドー])を主人公とする探偵小説を執筆。2人はヨーロッパ各地で活躍。時にはオランダが舞台になることもあったが、基本的にはフランスが舞台の作品が多い。 大手出版社のブルーナ社が1947年、新人探偵作家発掘のためのコンテストを開始。これによりオランダの探偵小説は飛躍することになる。受賞者の中で特筆すべきはアムステルダムの新聞記者、ヨープ・ファン・デン・ブルーク(Joop van den Broek、1926-1997)。彼の受賞作の『ナドラのための真珠』(Parels voor Nadra、1953)は、ジャカルタの質屋で盗まれた真珠の財宝が主題になっている。この作者はアメリカのハードボイルド、特にミッキー・スピレーンの影響を受けていたという。同時期には、ベルト・ヤーピン(Bert Japin)、アプ・フィッセル(Ab Visser)、ハリエット・フレーゼル(Harriët Freezer)、エリーネ・カーピット(Eline Capit)、ボプ・ファン・オイエン(Bob van Oyen)など続々と若手の探偵作家が登場している。 ちなみにブルーナ社は、ミッフィーで知られるディック・ブルーナ(Dick Bruna)の父が経営していた出版社である。ディック・ブルーナはブルーナ社の推理小説のペーパーバックの表紙デザインを手がけており、その数は2000点以上にのぼるという。その一部は輸入雑貨店assistonのサイトのこちらのページや、古書店dessinのサイトのこちらのページなどで見ることができる。 前述のハファンクの作品もブルーナ社から出版されており、ディック・ブルーナが装丁を手がけていた。ハファンクの作品は邦訳がなく、日本のミステリファンの間でその名はまったく知られていないと思うが、この名前は日本のディック・ブルーナファンの間では有名であるらしい。「ハファンク」と日本語で入力して検索してみると、結構な数の情報がヒットする。 ハファンクは創作のほかに英米探偵小説のオランダ語への翻訳も行っていた。1961年に出版された江戸川乱歩のオランダ語訳短編集『Griezelverhalen uit Japan』の編訳者でもある。もちろん日本語からではなく、1956年に出版された江戸川乱歩の英訳短編集『Japanese Tales of Mystery Imagination』から重訳したものだろう。この乱歩のオランダ語訳短編集もブルーナ社から出版されており、ディック・ブルーナが装丁を手がけたようだ。表紙イラストはこちらで見られる。同社より1981年に新装版が刊行されているが、表紙を見てみると、乱歩の名前よりもハファンクの名前の方が目立っている(リンク)。 ほかの特筆すべき作家に、W・H・ファン・エームラント(W.H. van Eemlandt、本名:Willem Hendrik Haasse、1889-1955)がいる。彼は1953年、65歳で探偵作家デビュー。アムステルダム司法警察のアールト・ファン・ハウトヘム警視(Aart van Houthem)を主人公とする探偵小説シリーズを1953年から1955年の3年間で12作発表した。1955年11月逝去。その作品はドロシー・L・セイヤーズと比較されることもあったというが、キエルドルフは、むしろジョルジュ・シムノンのメグレ警部ものと共通する点が多いと述べている。なお、娘のヘラ・ハーセ(Hella Haasse、1918-2011)もミステリ作家ではないが有名な作家で、父よりも早くデビューしている。ヘラ・ハーセの作品は邦訳される予定があるらしい。 キエルドルフ「オランダの探偵小説」に記述されているのはここまでである。この記事はW・H・ファン・エームラントの1955年11月の死去に言及があり、また1955年のことを「去年」と書いていることから、1956年に執筆されたもの(または1956年に発表することが予定されていたもの)だと推定できる。この記事がClub Mystère Fictionの会誌の第5号(1955年11月・12月)に載ったとする推定とは辛うじて矛盾しない。または、乱歩のもとに送られてきたのは、キエルドルフがClub Mystère Fictionの会誌に寄稿したものに少々加筆したものだったのかもしれない。 1960年代以降の主なミステリ作家 1960年代以降のオランダのミステリ界について、日本で知られていることは少ない。ここでは邦訳のある作家について紹介する。 ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンク(Janwillem van de Wetering、1931-2008)はオランダに生まれ、南アフリカ共和国、イギリス、日本、コロンビア、オーストラリアなど世界中を渡り歩く。日本を訪れたのは哲学の勉強を通して禅に興味を持ったためで、京都で一年半ほど座禅三昧の日々を過ごしたという。その後オランダに帰国して警察官となり、1975年、40代で推理作家デビューした。代表シリーズはアムステルダム警察のフライプストラ警部補(Grijpstra)とデ・ヒール巡査部長(de Gier)のシリーズで、日本では第4作まで邦訳されている。ほかに、日本人の斎藤警部が主人公の短編作品などもある。 ティム・クラベー[ティム・クラベとも表記](Tim Krabbé、1943- )はウェテリンクより10歳以上年下だが、デビューはティム・クラベーの方が早い。1967年にデビューし、現在も執筆活動を続けている。1995年には、前年発表の『マダム・20』(邦訳1996年、青山出版社)でオランダ推理作家協会の黄金の首吊り輪賞を受賞している。邦訳は『マダム・20』のほかに、『失踪』(邦訳1993年、日本放送出版協会)と『洞窟』(邦訳2002年、アーティストハウス)がある。 トーマス・ロス(Tomas Ross、1944- )はオランダ推理作家協会創設の主導者で、会長も務めた人物。本名はウィレム・ホーヘンドールン(Willem Hogendoorn)。1980年ごろから政治小説やサスペンス小説を発表しはじめた。1987年、1996年、2003年に黄金の首吊り輪賞を受賞。1990年にはスウェーデンの推理作家マイ・シューヴァルと合作した『グレタ・ガルボに似た女』がスウェーデンの出版社から刊行されている(邦訳は1993年、角川文庫)。この作品は、それぞれが一章ずつ書き、その原稿を粗訳とともに相手に送り、送られた方がそれに自分なりに手を加えて、また翻訳をつけて送り返す、という方式で執筆されたもので、完成までに3年かかったという。マイ・シューヴァルはマルティン・ベックシリーズの共同執筆者であった夫のペール・ヴァールーが1975年に死去して以来創作から遠ざかっており、『グレタ・ガルボに似た女』は15年ぶりの新作となった。 《世界のミステリ》を特集した『ミステリマガジン』1999年3月号にはオランダの推理作家、クリス・リッペンの短編「芸術」が掲載されている。クリス・リッペン(Chris Rippen、1940- )は48歳で推理作家デビュー。1991年に発表した第2作"Playback"で翌年、オランダ推理作家協会の黄金の首吊り輪賞を受賞。『ミステリマガジン』1999年3月号に短編が掲載された当時にはオランダ推理作家協会の会長も務めていた。 ところで、オランダの南に隣接するベルギーの北半分(フランドル地方)ではオランダ語が使用されており、もちろん、オランダ語で推理小説を執筆している作家もいる。クリス・リッペンの作品の邦訳が載ったのと同じ『ミステリマガジン』1999年3月号には、オランダ語で作品を執筆するベルギー人作家ボブ・メンデスの短編「国王への報告書」も掲載されている。ボブ・メンデス(Bob Mendes、1928- )は1989年に会計士の仕事を辞めてから本格的に執筆活動を開始。1993年には"Vergelding"(復讐)でオランダ推理作家協会の黄金の首吊り輪賞を受賞。1997年には"De kracht van het vuur"(火力)で再度同賞を受賞した。 ベルギーの推理作家としてはジョルジュ・シムノン(Georges Simenon)とスタニスラス=アンドレ・ステーマン(Stanislas-André Steeman)が有名だが、二人はベルギー南部の出身で、創作活動にはフランス語を使用した。 オランダ推理作家協会とフランドル推理作家協会 オランダ推理作家協会(Genootschap van Nederlandstalige Misdaadauteurs[略称 GNM])は1986年創設。同年より毎年、オランダ語で書かれた年間最優秀のミステリ作品に黄金の首吊り輪賞(Gouden Strop、公式サイト)を授与している。この賞の名前は先に言及したヨープ・ファン・デン・ブルーク(Joop van den Broek、1926-1997)が1982年に発表した『黄金の首吊り輪』に由来する。Gouden Strop賞は『ミステリマガジン』1998年4月号p.53では「黄金の首吊り輪賞」、1999年3月号p.35、p.61では「金の投げ縄賞」という訳語が使われている。また、2008年11月号p.66では単に「オランダ推理作家協会賞」とされている。このページでは仮に黄金の首吊り輪賞という訳語を使用しておく。 オランダ推理作家協会は1997年より、年間最優秀新人にシャドー賞(De Schaduwprijs、公式サイト)を授与している。この賞の名前はハファンクの作品に登場するシャドーに由来する。オランダ推理作家協会が主催する賞にはほかに、GNM巨匠賞(De GNM Meesterprijs)がある。 オランダ推理作家協会(GNM)が1986年に創設されたのち、1991年にはベルギー北部のオランダ語使用地域(フランドル地方)でフランドル推理作家協会(Genootschap van Vlaamse Misdaadauteurs[略称 GVM])が創設されている。フランドル推理作家協会は2002年より、オランダ語で執筆された年間最優秀のミステリ作品にダイヤモンドの弾丸賞(Diamanten Kogel)を授与している。前述のボブ・メンデスは2004年、"Medeschuldig"でダイヤモンドの弾丸賞を受賞している。2004年以降、ダイヤモンドの弾丸賞の対象にはオランダの作家の作品も含まれるとされた。 フランドル地方の推理小説を対象とするミステリ賞としては、フランドル推理作家協会が主催するダイヤモンドの弾丸賞以外に、エルキュール・ポアロ賞(Hercule Poirotprijs)というのもある。 関連リンクオランダの推理作家一覧 - オランダ語版Wikipedia フランドル地方の推理作家一覧 - オランダ語版Wikipedia 邦訳されたオランダの推理小説/ミステリ (日本のamazon内に作成したリスト) 関連記事 江戸川乱歩と交流のあった海外ミステリ作家の紹介オランダのロバート・ファン・ヒューリック、W・G・キエルドルフ(当ページ) ソ連のロマン・キム 韓国の金来成(キム・ネソン) ミステリ略史オランダ(当ページ) ソ連/ロシア スペイン・ポルトガル・中南米 イタリア チェコ推理小説略史 インド推理小説探求・受容史
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/151.html
2011年2月3日 ※2011年8月 改訂作業中 『中国ミステリ史 第三章』では、1940年代末から1970年代まで(中華人民共和国成立から文化大革命終了まで)の中国の探偵小説(偵探小説)/推理小説/ミステリの歴史を紹介している。 目次 第三章 1940年代末~1970年代: 社会状況の変化による中国ミステリの転変第一節 中華人民共和国の成立とソ連探偵小説の流入 第二節 中国の探偵作家とソ連の探偵作家の交流(1956年) 第三節 ソ連の探偵小説(1)ソ連の探偵小説の新潮流(1956年) (2)ロマン・キムの手紙で知る当時のソ連探偵小説界(1956年~1957年) 第四節 程小青の探偵小説論(1957年) 第五節 文化大革命期の"写本"現象 第六節 1940年代末~1970年代の代表的な作品 第七節 邦訳された1950年代~1970年代の中国探偵小説 参考文献 第三章 更新履歴 第三章 1940年代末~1970年代: 社会状況の変化による中国ミステリの転変 第一節 中華人民共和国の成立とソ連探偵小説の流入 【主要参考文献:老蔡(ラオツァイ)(2009)「百年華文推理簡史 六、新中国的反特小説」】 【2011年7月29日、加筆】 第二章第二節で述べたとおり、中国(中華民国)では終戦後、日本よりも早く探偵雑誌が創刊されている。1946年1月に創刊された『新偵探(しんていたん)』を皮切りに、同年には『大偵探(だいていたん)』、『藍皮書(らんひしょ)』が創刊されたが、これらの雑誌は、程小青の霍桑(フオサン)シリーズや孫了紅の魯平(ルーピン)シリーズなどの国内創作や、エラリー・クイーン、アガサ・クリスティ、ジョン・ディクスン・カーの翻訳作品などを掲載し人気を博していた。1949年にも探偵小説雑誌『紅皮書(こうひしょ)』が創刊され、中国の探偵小説界はこのままの形で発展していくかに思われた。 しかし、1949年、新中国=中華人民共和国の成立により、状況は一変する。これにより、かつてのような探偵小説を発表することは許されなくなり、『大偵探』、『藍皮書』【注1】、『紅皮書』は廃刊となる(『新偵探』は創刊から半年で廃刊となっていた)。欧米(西ヨーロッパやアメリカ)の探偵小説に代わって入ってきたのは、ソ連を中心とする共産主義国家の探偵小説で、それにより中国の探偵小説は変質を余儀なくされる。 この当時のソ連では通常の犯罪を描く探偵小説は刊行されておらず、ソ連で探偵小説【注2】といえば、潜入しているアメリカやイギリスのスパイを摘発する反スパイ小説のことであった。そのため、この時期は中国でも探偵小説といえば反スパイ小説をさすようになる。「スパイ」は中国語で「特務」であり、この時期の探偵小説は中国では反特小説(はんとくしょうせつ)と呼ばれる。 この時期に中国語に翻訳されたソ連の反スパイ小説の代表格としては、1955年に中国語訳が出たニコライ・トマン【注3】(1911-1974、ロシア語版Wikipedia)の『戦線付近の駅で』【注4】(邦訳なし、原題: На прифронтовой станции、中国語タイトル:在前线附近的车站)が挙げられる。 注1:1946年7月に創刊された『藍皮書(らんひしょ)』は1949年5月に休刊となったが、1950年に香港で復刊されている。江戸川乱歩は1956年から1958年ごろにかけて、この香港版『藍皮書』を定期購読している。 注2:この当時のソ連では、探偵小説・探検小説・SF小説などを総称して「冒険もの」(приключения、プリクリュチェーニヤ)と言っていた。日本ではこれらの小説は「探偵小説」と総称されていた。 注3:ニコライ・トマンは、飯田規和(1965)では、レフ・シェイニン(1906-1967、ロシア語版Wikipedia)と並んで当時のソ連の「スパイ小説的な推理・冒険小説」の代表的な作家だと紹介されている。ニコライ・トマンは小説の邦訳はないが、ソ連・東欧SFアンソロジーの『遥かな世界果しなき海』(早川書房、1979年)にエッセイ「SF論争 ――モスクワ・1965年」が訳されているようだ(著者名表記は「ニコライ・トーマン」)。 注4:仮に邦題を『戦線付近の駅で』としたが、『戦線付近の駐屯地で』の方がいいかもしれない。 第二節 中国の探偵作家とソ連の探偵作家の交流(1956年) 【2011年7月29日追加】 当時の中国ミステリ界とソ連ミステリ界の関わりについて伝える資料に、ソ連のスパイ小説作家ロマン・キムが江戸川乱歩にあてた手紙がある。(乱歩とロマン・キムが文通を開始した経緯については、「ソ連/ロシア推理小説翻訳史 - ロマン・キム(1899-1967)」を参照のこと) ロマン・キムからの第二信(『宝石』1957年1月号)に非常に興味深いことが書かれている。ソ連の探偵作家が北京や上海を訪れ、中国の探偵作家と交流したというのである。 1956年8月、ロマン・キムを含むソ連の探偵作家たちは、北京を訪れ、中国の探偵作家たちと歓談した。ソ連の作家たちは、ソ連ではスパイ小説に代わって本格的な探偵小説が現れはじめたということを伝え、中国の作家たちは、中国ではスリラー小説(驚険小説/惊险小说)が読者の間で絶大な人気を博しており、このジャンルの本が次々と出版されているということを伝えた。またソ連の探偵作家一行は上海にも赴き、探偵ものの戯曲「十五貫」を観覧したという。上海といえば、第二章で紹介した程小青(てい しょうせい)と孫了紅(そん りょうこう)がいた地である。彼らもこの交流に参加したのだろうか。なかなか興味深いところである。 また、この第二信によると、中国のムー・リンとハン・シンの中編「図面四〇七」は非常に中国国内で評判がよい作品で、ロシア語に翻訳され新聞『友情(ドルージバ)』(дружба)に掲載されたという。中国におけるスパイの活躍を扱ったものだというが、この作品が誰のどの作品を指しているのかは分からない。ほかに、中国の作家のスリラー小説中短編集『謎の数字』のロシア語訳の刊行が予定されているとも書いてあるが、これについても誰のどの作品を指しているのか、現段階では分からない。 第三節 ソ連の探偵小説 【2011年7月29日追加】 この時期の中国の探偵小説はソ連の探偵小説に大きな影響を受けていたが、そもそも日本では、ソ連の探偵小説自体があまり知られていない。そこでこの節では、主にロマン・キムが江戸川乱歩にあてた手紙を用いて、やや脱線に見えるかもしれないが、当時のソ連探偵小説界を概観する。 (1)ソ連の探偵小説の新潮流(1956年) 第二節でも少し触れたが、ロマン・キムの第二信によれば、ソ連ではこのころ、スパイ小説以外に本格的な探偵小説も現れ始めたとされている。実は、ソ連の探偵小説が(反)スパイ小説一辺倒だったのは1950年代半ばまでであり、スターリン死去(1953年)後しばらくすると、モスクワ警察の刑事たちが強盗事件などの一般の犯罪を捜査するような、いわゆる警察小説のタイプの探偵小説が刊行されるようになる。その先陣を切ったのが、1956年にソ連で雑誌掲載・単行本化されたアルカージイ・アダモフ(1920-1991、ロシア語版Wikipedia)の『雑色事件』(邦訳なし、原題:Дело «пёстрых»、ロシア語版Wikipedia)である。この作品は、翌1957年には早くも中国語訳(『形形色色的案件』)が刊行されている。 アルカージイ・アダモフの名は日本のミステリ界ではまったくと言っていいほど知られていないが、アダモフは中国では当時のソ連探偵小説界を代表する作家だと見なされており、たとえば中国で1998年に出版されたミステリ史の本、曹正文(そう せいぶん)『世界偵探小説史略』では、ソ連の探偵小説についての総論的な節とは別に、アダモフの紹介のための節が設けられている。 アダモフの『雑色事件』は残念ながら邦訳が出ていないが、幸いなことに、ソ連ミステリ・ソ連SF翻訳家の袋一平氏が『日本探偵作家クラブ会報』第120号(1957年7月)でこの作品のあらすじをごく簡単にだが紹介している。袋氏は作品タイトルを『雑色事件』としており、このページではこの訳題を採用した。 袋一平「ソ連の探偵小説界近況」(『日本探偵作家クラブ会報』第120号、1957年7月) 「雑色事件」 アルカージイ・アダモフ 四〇〇字、一千枚位の長篇 主人公はセルゲイ・コルシュノフという復員士官で、モスクワ刑事捜査局に勤務する。強盗、殺人団が横行しているが、正体がつかめない。というのはスタッフがあらゆる種類の人間の集まりだからで、題名の「雑色」はその意味。そしてこの一味は「犯罪のロマンス」を信奉し、手口が非常に凝っている。主な犯罪者は「パパーシャ」、ソフロン・ロジキン・クプツエウィチなど。このロマンチック犯罪をコルシュノフとその助手たちが解決して行く物語。 また、桜井厚二氏の論文「ロシア刑事探偵のフォークロア ―ワイネル兄弟『恩恵の時代』を中心に―」でも、アダモフのこの作品のあらすじがまとめられている。この論文は、「21COE研究教育拠点形成 スラブ・ユーラシア学の構築 中域圏の形成と地球化」の研究報告集No.23「文化研究と越境:19世紀ロシアを中心に」(2008年2月)に掲載されたもので、桜井氏はタイトルを「まだら事件」としている。 桜井厚二(2008)「ロシア刑事探偵のフォークロア ―ワイネル兄弟『恩恵の時代』を中心に―」 アルカージー・アダモフの『まだら事件 Дело пёстрых(1956)』は、ワイネル兄弟より以前に、戦後モスクワのギャングに挑むソヴィエト刑事探偵の肯定的イメージを提示してみせた先駆的作品であった。この作品は、以下のような梗概の連作短編集である。 第二次世界大戦から復員した青年セルゲイ・コルシュノフは、その軍功によりモスクワ警察犯罪捜査部の刑事に採用される。折しも首都で頻発する様々な凶悪事件から、その背後で犯罪者たちを仕切る「親爺」と呼ばれる黒幕の存在が浮上していた。当局は「親爺」に操られた雑多な者たちによる多種多様な一群の事件を「まだら事件」と名付け、特捜班を設置する……。 アルカージイ・アダモフの『雑色事件』はソ連では映画化されたほか、ソ連時代に少なくとも2度、ソ連崩壊後に少なくとも3度再刊されており、人気作のようである(最新の2002年版→ロシアのオンラインショップ)。また、ソ連時代の推理小説を集めた全集や選集がソ連崩壊後に何度か刊行されているが、この作品はほぼすべてに収録されており、どうやらソ連/ロシアの推理小説史においては記念碑的な作品のようだ。そのような作品が、結局邦訳されることがなかったのは残念なことである。 なお、翻訳は中国語訳以外に、少なくともドイツ語訳『Die Bunte Bande von Moskau』(1962年)が刊行されている。 アルカージイ・アダモフの作品は、『雑色事件』を含め1作も邦訳されていない。この当時のソ連の探偵小説(警察小説)で邦訳が出ているものとしては、1965年にハヤカワ・ポケット・ミステリで刊行されたユリアン・セミョーノフ『ペトロフカ、38』(原著1963年)がある。ユーモアとサスペンスにあふれ、一般的にイメージされる共産主義の暗いイメージとは無縁の傑作である。 (2)ロマン・キムの手紙で知る当時のソ連探偵小説界(1956年~1957年) 『宝石』1956年10月号に転載されたロマン・キムからの第一信は、「ロシヤでは探偵文学のジャンルは十九及び二十世紀(革命前)には発達しておりませんでした」、「革命後のわが国には探偵文学が発達しはじめました」――と、探偵の冒険ものやスパイ小説から始まって、次第に本格的な探偵小説が書かれるようになっていたソ連のミステリ史を伝えている。当時の最新の状況に触れているところを引用する。 ロマン・キム第一信(『宝石』1956年10月号、原卓也訳) ここ数年間というもの、ソヴェートの探偵文学は量的にも質的にも飛躍を続けております。主要な位置を占めておるのは云うまでもなくスパイ小説です。――外国の密使がいかにしてソ同盟に潜入し、秘密の工作を行うか、またソヴェートの偵察兵がいかにして彼らの正体を見破るか、といったたぐいのものです。しかし、最近のわが国には、犯罪とか、或いはソヴェートの探偵の活躍などに関する純然たる探偵小説も現われはじめました。例えばアダーモフの「複雑な事件」など。この秋にはモスクワで探偵小説を含む冒険小説の諸問題に関する第一回全同盟会議が開かれます。数百名の作家が参集し、当面の諸問題を審議するはずです。わが国の新聞雑誌には、もう一連の論文が現われておりますが、その中で、探偵小説というものは主題の興味や独特の構成のほかに、登場人物の性格とか全体の背景とかの巧みな描出によっても優れたものでなければならないという希望を、批評家や読者が表明しております。 わが国ではイギリス、アメリカ、フランスの作家の作品で政治的、社会的テーマが取扱われているようなものに深い関心が示されております。その意味でグレアム・グリーンの長篇「静かなるアメリカ人」(もうこちらの雑誌に掲載されたのです)はソヴェート読者の興味をひきました。またクイーンの「帝王死す」とか、大都市における腐敗堕落(コラプシオン)の光景が示されているチャンドラーの「さらば愛しき女よ」とか、「長いお別れ」などのような作品にも深い関心が寄せられております。 ロマン・キム第二信(『宝石』1957年1月号、原卓也訳) ごく近いうちに、ソ同盟で本格的探偵小説が発表されます。民警と犯罪者との闘いを描いたヴァレンチン・イワノフの「黄色いメタル」と、モスクワ捜査局の活動を扱ったアダモフの「さまざまな人の事件」がそれです。後者は一九五六年の雑誌「青春(ユーノスチ)」に載ったものでその雑誌は既に一月前木村浩さんに送りました。しかしこの長篇は単行本としてはまだ出ておりません。その後直ぐスパイ小説が出ます――エヌ・アターロフの「変名の死」と、ヴォエヴォディンのものと、タルンチスの「固い合金」がそれです。ポーランド語からの翻訳中篇「静かなる戦線」(東独に於ける西独スパイ組織の活動を扱ったもの)や、中国語からの翻訳で、中国作家の驚険中短篇小説集「謎の数字」も出ます。 レニングラードでは目下イギリスの作家プリイストリの「危険な転換」が上演されています。これは本格探偵作品ではありませんが、疑いもなく心理的スリラアです。 (中略) 小生は木村浩さんに、「さまざまな人の事件」を読んだら、その作品の筋を先生に伝えるよう手紙を出しておきました。多分この作品は日本語に訳されるのでしょう。 ロマン・キム第三信(『宝石』1957年8月号、木村浩訳) わがソ連邦では、探偵小説に対する興味が、それも特に本格探偵小説に対するそれが非常に高まっています。最近、コナン・ドイルの大きな選集の新版がでました。雑誌「外国文学」は、近々、今日の欧米の探偵小説の特集号をだす予定です。 (中略) 最近は、犯罪摘発をめぐるソヴェト捜査局及び民警の活躍に関する探偵小説が人気をよんでいます。(改段落)アダーモフの「ぐれん隊事件」につづいて、ブレスト及びランスキイの「見えない前線」、レフ・シェイニンの「探偵の手記」、ロイズマンの「狼」その他が出版されました。(改段落)わが国の文学において、かつてこれほど沢山の探偵小説があらわれたことはありません。もちろん、英米のそれと比較しますれば、わが国での探偵物の出版はそれほど多いとは申せませんが、しかし、過去と比較すれば、現在はかつて今まで見なかったほど多量の本が出たというわけです。 (中略) わが国でも多勢の学者、ジャーナリスト、エンジニヤ――一口にいってハイブラウな人々――は、クリスティ、クロフツ、クイーン、ブレイク、ウールリッチ、アイルズその他をよんでいます。多くの人々の机の上やポケットのなかに、ペンギンのマークのついたポケットブックを見かけることができます。 当時のソ連で反スパイ小説(引用文中では単に「スパイ小説」)が流行っていたことがロマン・キムの第一信からも確認できる。そのスパイ小説全盛の時代の中で出てきた最初の本格的な探偵小説として、アダモフの「複雑な事件」「さまざまな人の事件」「ぐれん隊事件」が挙がっているが、これはおそらくすべて前述の『雑色事件』(まだら事件)を指していると思われる。 「冒険小説(プリクリュチェーニヤ)」(探偵小説・探検小説・SF小説等の総称)に関する積極的な議論も行われていたようで、一般的なイメージにある「ソ連では推理小説は流行らなかった」という気配は微塵も感じさせない(もっとも、ロマン・キムはいわばソ連を代表して自国の推理小説を「宣伝」しているわけなので、いくらか割り引いて見るのが適切かもしれない)。 第四節 程小青の探偵小説論(1957年) 上原草さんのブログ「中国推理小説研究会」程小青 探偵小説論 その1(2009年5月10日) 程小青 探偵小説論 その2(2009年5月11日) 程小青 探偵小説論 その3(2009年5月12日) 程小青 探偵小説論 オールド上海の時代は?(2009年5月14日) この時期は、前述の程小青や孫了紅も、反特小説やスリラー小説(驚険小説/惊险小说)を書いている。作者にも読者にも、選ぶ余地はなかったのである。 1950年代の中国の反特小説は、ストーリーよりも政治性、思想性が強調され、また登場人物も類型的なものになり、誰が善人で誰が悪人かが一読してすぐ分かるようになっており、旧来の探偵小説の面白さは失われてしまった。このような問題点は1960年代になるとある程度改善される。また、1960年代には、大規模な詐欺事件を扱った作品や、警察官の生活を描いた作品など、異なる趣を持つ探偵小説も少しずつ書かれるようになる。 第五節 文化大革命期の"写本"現象 【主要参考文献:老蔡(ラオツァイ)(2009)「百年華文推理簡史 七、“文革”中的地下偵探小説」】 第三節で述べたように、ソ連では1956年にアダモフ『雑色事件』が発表され、スパイ小説一辺倒だった状況から脱し、警察が事件を捜査するような通常の推理小説が刊行されてるようになっていった。「共産圏では推理小説は発達しない」と思っている人は少なくないと思うが、それはまったくの誤りで、『雑色事件』以降、ソ連の推理小説の伝統は絶えることなく連綿と続いている。 一方中国では、1960年代半ばより文化大革命による文化の大弾圧が始まり、それまで刊行されていたソ連影響下の「反特小説」(反スパイ小説)すら刊行が許されなくなった。この時期には書籍に代わって、紙にペンで書きつけた「写本」の形で民衆の間に物語が広まった(こちらで写真が見られる)。写本として広まった物語の中には、50年代から60年代にかけての反特小説にストーリーの起伏やサスペンスを加えた変異形や、スリラー小説も多く含まれ、ひそか流行していたという。 第六節 1940年代末~1970年代の代表的な作品 李長声(リーチャンション)(2002)「中国のミステリー事情 大衆文学への渇望」では、1950年代から1970年代まで、「中国の探偵小説に見るべきものはほとんどない」とされている。ただし、反特小説の中でも、陸石(りく せき/ルー シー)と文達(ぶんたつ/ウェン ダー/文达)の共著による短編小説「双鈴馬蹄表(そうれいばていひょう)」(双铃马蹄表)や、白樺(はっか/バイフア/白桦)の短編小説「無鈴的馬幇(ぶれいてきばほう)」(无铃的马帮)は佳作といえるという。前者は「国慶十点鍾(こっけいじってんしょう)」(国庆十点钟、1956)というタイトルで、後者は「神秘的旅伴(しんぴてきりょはん)」(1955)というタイトルで映画化されている。 20世紀の中国ミステリの短編を集めた前述のアンソロジー『20世紀中国偵探小説精選』(2002年、全4巻)で、この時期を対象とする第2巻の収録作は以下のとおりである。 老蔡(ラオツァイ)(2009)によると、この時期はすべての探偵小説が反特小説だったわけではない。たとえば、国翹(こっきょう/グオチャオ/国翘)の短編「一件積案」(一件积案)は、欧米の黄金時代の作品を思わせる古典的な謎解き小説で、この年代にはなかなか得難い好編だという。これと同じようなタイプの作品として、ラオツァイ氏は弍丁(じてい/アルディン)の短編「一具無名屍体的秘密」(一具无名尸体的秘密)を挙げている。 『20世纪中国侦探小说精选(1950-1979) 谁是凶手』(誰是凶手)(=犯人は誰だ)白樺「無鈴的馬幇」 陸石・文達「双鈴馬蹄表」 国翹「一件積案」 弍丁「一具無名屍体的秘密」 賀慈航(が じこう/フー ツーハン/贺慈航)・樊家信(はん かしん/ファン ジアシン)「神秘的解剖室」 高現(こう げん/ガオ シエン/高现)「誰是凶手」(谁是凶手) 陸長源(りく ちょうげん/ルー チャンユアン/陆长源)「蛛糸馬跡」(蛛丝马迹) 葉一峰(よういつほう/イエ イーフォン/叶一峰)「一件殺人案」(一件杀人案) 王亜平(おう あへい/ワン ヤーピン/王亚平)「神聖的使命」(神圣的使命) ※ 王亜平 … 1980年刊行の長編ミステリ『刑警隊長』はロングセラーになった。 第七節 邦訳された1950年代~1970年代の中国探偵小説 【2011年7月31日、加筆】 柯藍(コーラン) 「鴉の告発」 (『探偵実話』1952年第2号) 参考文献 中国ミステリ史 参考文献 (新しいウィンドウで開きます) 第三章 更新履歴 2011年2月3日:公開 2011年8月7日「第一節 中華人民共和国の成立とソ連探偵小説の流入」の記述内容を訂正。 「第二節 中国の探偵作家とソ連の探偵作家の交流」を新設。 「第三節 1950年代のソ連探偵小説界」を新設。 「第六節 邦訳された1950年代~1970年代の中国探偵小説」に柯藍(コーラン)「鴉の告発」を追加。 『中国ミステリ史 第一章』(19世紀末~1910年代) 『中国ミステリ史 第二章』(1910年代~1940年代) 『中国ミステリ史 第三章』(1940年代末~1970年代) ←今見ているページ 『中国ミステリ史 第四章』(1970年代末~1990年代) 『中国ミステリ史 第五章』(1990年代末~21世紀初頭) 『中国ミステリ史 第六章』(現代)
https://w.atwiki.jp/madofuki/pages/59.html
関西ミステリ連合冬の総会2017 本イベントは終了いたしました。 今年の関ミス連総会には、古野まほろ先生をお呼びします。 講演会には、一般の方もご参加いただけます。 ぜひご来場ください。 期日:2017年12月2日(土) 場所:立命館大学衣笠キャンパス 明学館401 開場 13 00~ 開演 14 00~ 終了 ~17 00(予定) 入場料:無料 入場について:先着順 当日の入場は開場後に先着順で受け付けます。 会場の席数には余裕がございますが、 収容上限を上回ると判断すれば、入場を制限させていただく場合もございます。 あらかじめ、ご了承ください。 形式:質疑応答 当日来場された方の質問に、古野先生より回答していただきます。 事前質問: 当日参加いただけない方に向けて、事前質問を募集したします。 事前質問は、メールおよびTwitterのDMにて承っております。 名前(ニックネーム可)と質問をご記入いただきますようお願いいたします。 なお、構成の都合上利用できない場合もございますので、あらかじめ、ご了承ください。 メールアドレスはこちら ritsumys@yahoo.co.jp Twitterアカウントはこちら @Ritsmys サイン会: 実施いたします。 対象書籍のいずれかをご持参していただきます。 対象書籍 『全日本探偵道コンクール セーラー服と黙示録』(角川文庫) 『R.E.D. 警察庁特殊防犯対策官室』(新潮文庫nex) 『禁じられたジュリエット』(講談社) 新刊を特に対象としたサイン会ですが、 思い入れのある既刊をお持ちいただいても構いません。 ※参加者多数の場合は、抽選となることがございます。
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/128.html
2012年5月12日 関連ページ:「オランダ推理小説略史/日蘭ミステリ交流史」(2012年5月12日)も合わせてお読みください。 オランダ語に翻訳された日本のミステリ小説の一覧。ミステリを中心として、周辺のエンターテインメント作品についても調べている。 調査方法 最初はオランダのネット書店で、オランダ語に翻訳されていそうな(≒ほかの欧米の言語に翻訳されている)作家の名前を入力・検索して調べたのだが、その後、以下のサイトで「Japan」と入力して検索するだけでオランダ語に翻訳された日本のミステリ一覧が簡単に入手できることが分かった。 VN Detective en Thrillergids このサイトには日本ミステリのオランダ語訳を調べている過程でたまたまたどり着いたのだが、『ミステリマガジン』2009年1月号(世界のミステリ雑誌特集号)で翻訳家の塩崎香織氏がこのサイトを紹介していることにあとから気が付いた。それによれば、オランダのニュース週刊誌『Vrij Nederland』(VN)は年に一度、一年間に出版されたミステリの目録と作品レビューを載せた『VN Detective Thrillergids』(VN推理小説・スリラーガイド、以下、VNDT)を付録につけている。上でリンクを貼ったサイトは、このVNDTのWebサイト版である。この付録がつきはじめたのは30年ほど前からだそうだが、Webサイト版にはそれ以前の出版情報も登録されているようである。 VNDTで「Japan」と入力して検索してみると、江戸川乱歩、桐野夏生、高木彬光、戸川昌子、松本清張、宮部みゆきの作品がオランダ語に翻訳されていることが分かる。このうち高木彬光については、オランダのネット書店を検索した際には発見できなかったのでありがたい。なお、ネット書店で検索した際に、鈴木光司の作品がオランダ語に翻訳されていることが分かっていたが、VNDTには鈴木光司の書籍のデータは登録されていない。日本では鈴木光司の『リング』や『らせん』は『このミステリーがすごい!』や「週刊文春ミステリーベスト10」のランキングにも入っており、ミステリを中心とするエンターテインメントに含まれるとも考えられるが、オランダの「推理小説・スリラー」の枠には入ってこないようだ。また、今月(2012年5月)刊行予定の東野圭吾『容疑者Xの献身』のオランダ語版のデータも、当然ながらまだVNDTには登録されていない。 なおVNDTのデータはオランダでの出版年、出版社などのデータが示されていないことも多い。以下の書誌データは、オランダ王立図書館、WorldCat、およびオランダのオンライン書店bol.comのデータに基づくものである。 Index 著者名50音順江戸川乱歩 (Edogawa Rampo) 桐野夏生 (Natsuo Kirino) 鈴木光司 (Koji Suzuki) 高木彬光 (Akimitsu Takagi) 戸川昌子 (Masako Togawa) 東野圭吾 (Keigo Higashino) 松本清張 (Seicho Matsumoto) 宮部みゆき (Miyuki Miyabe) アンソロジー 著者名50音順 江戸川乱歩 (Edogawa Rampo) Griezelverhalen uit Japan / (江戸川乱歩短編集) 1961年刊 ディック・ブルーナデザインの表紙(VNDTより) ISBN 9022904377、1981年刊 ※表紙は2008(2011?)年版と同じ ISBN 9044930753、2008年(WorldCat)または2011年(ネット書店)刊 表紙 収録作De menselijke stoel (人間椅子) De psychologische test (心理試験) De rups (芋虫) De rots (断崖) De hel der spiegels (鏡地獄) De tweelingen (双生児) De rode kamer (赤い部屋) Twee verminkte mannen (二癈人) De reiziger met het bonte schilderij (押絵と旅する男) ブルーナ社より1961年刊行。その後、同出版社より何度か再刊されているようである。収録作は1956年出版の江戸川乱歩英訳短編集『Japanese Tales of Mystery Imagination』と同じ。オランダ語版の表題は、Google翻訳で英語に訳すと"Horror Stories from Japan"となった。編訳者は「オランダ推理小説略史/日蘭ミステリ交流史」で紹介したオランダのミステリ作家のハファンク。おそらく、英訳版からの重訳だろう。 なお、ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンクが編んだアンソロジーにも乱歩の短編が収録されている。当リスト末尾の「アンソロジー」も参照のこと。 De hel van de spiegels / 鏡地獄 (『Een Oosterse huivering』に収録、ブルーナ社、1980年) De rode kamer / 赤い部屋 (『Brief uit het dodenrijk』に収録、Loeb社、1983年) 桐野夏生 (Natsuo Kirino) (オランダ語版Wikipedia) De nachtploeg / 『OUT』(1997) ISBN 9024553520 (Sijthoff、2005年2月) ISBN 902100531X (Poema Pocket、2008年7月) ISBN 9021008475 (Poema Pocket、2009年5月) Grotesk / 『グロテスク』(2003) ISBN 9021800268 (Sijthoff、2007年5月) ISBN 9021007967 (Poema Pocket、2009年3月) Echte wereld / 『リアルワールド』(2003) ISBN 9021802465 (Sijthoff、2009年4月) ISBN 902107110X (Poema Pocket、2010年10月) この3作品は英訳も出ている。VNDTによれば『OUT』は英訳版からの重訳。ほかの2冊もおそらく同じだろう。辛口で知られるVNDTの五段階評価では『OUT』から順に四つ星、二つ星、三つ星の評価を受けている。 鈴木光司 (Koji Suzuki) Ring / 『リング』(1991) ISBN 9022989208 (ブルーナ社、2005年3月) 電子書籍版もあり Spiraal / 『らせん』(1995) ISBN 9022991385 (ブルーナ社、2005年11月) 電子書籍版もあり Dark water / 『仄暗い水の底から』(1996) ISBN 9022991113 (ブルーナ社、2005年8月) 電子書籍版もあり 3冊とも英訳版からの重訳。『リング』『らせん』『ループ』は三部作だが、『ループ』のオランダ語訳は出ていないようだ。 高木彬光 (Akimitsu Takagi) De zaak Segawa / 『密告者』(1965) ISBN 9027436878 (Het Spectrum社 《Prisma-detective》269、1973年) 表紙(VNDTより) Rouw voor de bruid / 『ゼロの蜜月』(1965) ISBN 9027436908 (Het Spectrum社 《Prisma-detective》272、1974年) 表紙(VNDTより) この2作品は英訳も出ている。『密告者』は英訳版からの重訳。『ゼロの蜜月』もおそらく同じだろう。Het Spectrum社のミステリ叢書《Prisma-detective》の刊行作品一覧(全576巻?)はこちらで見られる。 戸川昌子 (Masako Togawa) De ladykiller / 『猟人日記』(1963) ISBN 9062912753 (BZZTôH、1987年) 表紙(VNDTより) 英訳版からの重訳。その後何度か再刊されているようだが、詳細不明。VNDTで見られるこの表紙は1989年のHema社版(ISBN 9069761637)だろうか。なおどちらの表紙にも、下の方に「日本のパトリシア・ハイスミス」と書いてあるのが見える。 なお、ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンクが編んだアンソロジーにも戸川昌子の短編が収録されている。当リスト末尾の「アンソロジー」も参照のこと。 De vampier (『Een Oosterse huivering』に収録、ブルーナ社、1980年) おそらくは、1978年刊行の日本ミステリ英訳短編集『Ellery Queen s Japanese Golden Dozen』に収録の「黄色い吸血鬼」(The Vampire)をオランダ語に重訳したものだろう。 東野圭吾 (Keigo Higashino) De fatale toewijding van verdachte X / 『容疑者Xの献身』(2005) ISBN 9044521128 (Geus De、2012年5月) 『容疑者Xの献身』はいわずと知れた、本格ミステリ大賞と直木賞を受賞し、『このミステリーがすごい!』、『本格ミステリ・ベスト10』、「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位となり、アメリカ図書館協会により年間ベストミステリに選出され、アメリカのエドガー賞最優秀長編賞およびバリー賞最優秀新人賞にノミネートされた作品である(バリー賞の受賞作は2012年10月に確定)。2012年5月までに、韓国語、中国語、タイ語、ロシア語、ベトナム語、英語、カタルーニャ語、スペイン語、フランス語に翻訳されている(ほぼ出版順に並べた)。オランダ語版は2012年5月刊行予定。『容疑者Xの献身』の海外出版状況およびアジアと欧米での東野圭吾の受容については以前に「こちら」でまとめた。 松本清張 (Seicho Matsumoto) De Amsterdamse koffermoord en andere verhalen / 中短編集『アムステルダム運河殺人事件(and other stories)』 ISBN 9029530464 (Arbeiderspers、1979年) 表紙(VNDTより) 収録作中編「アムステルダム運河殺人事件」(De Amsterdamse koffermoord) 短編「顔」(Het gezicht) 短編「地方紙を買う女」(Het opgezegde abonnement) 短編「巻頭句の女」(De haiku dichteres) 【収録作は、ブログ「浩寧の事件簿」のホーリンさん(twitter)に教えてもらいました。感謝。/2013年4月17日 記】 「アムステルダム運河殺人事件」(1969)はオランダが舞台になっている作品。英訳はないので、日本語から直接訳したのだろう。訳者はM. Vos-Kobayashi。日本で刊行されている作品集『アムステルダム運河殺人事件』は「アムステルダム運河殺人事件」と「セント・アンドリュースの事件」の2編が収録されているが、オランダでは後者は翻訳されていないようだ。 なお、ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンクが編んだアンソロジーにも松本清張の短編が収録されている。当リスト末尾の「アンソロジー」も参照のこと。 De behulpzame verdachte (『Een Oosterse huivering』に収録、ブルーナ社、1980年) おそらくは、1978年刊行の日本ミステリ英訳短編集『Ellery Queen s Japanese Golden Dozen』に収録の「奇妙な被告」(The Cooperative Defendant)をオランダ語に重訳したものだろう。 宮部みゆき (Miyuki Miyabe) Dubbelrol / 『火車』(1992) ISBN 9029055405 (Meulenhoff-M、1997年) 英訳版からの重訳。VNDTの五段階評価では四つ星の評価を受けた。 アンソロジー 邦題は推定である。 Een Oosterse huivering (ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンク編、ブルーナ社、1980年、表紙[VNDTより]) 谷崎潤一郎 De tatoeeerder 「刺青」の抄訳か? 谷崎潤一郎 Verschrikking 魯迅 Dagboek van een gek 「狂人日記」の抄訳か? 戸川昌子 De vampier 「黄色い吸血鬼」 クシュワント・シン Daulat Ram sterft 松本清張 De behulpzame verdachte 「奇妙な被告」 馮夢竜 De kanari moorden ロバート・ファン・ヒューリック Vier vingers 江戸川乱歩 De hel van de spiegels 「鏡地獄」 芥川龍之介 De folteringen van de hel 「地獄変」 蒲松齢 De herberg in Ts ai-tiyen ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンク Spelevaren ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンク Een kleine vergissing 表題は「東洋のホラー」(機械翻訳)。戸川昌子「黄色い吸血鬼」と松本清張「奇妙な被告」は1978年刊行の日本ミステリ英訳短編集『Ellery Queen s Japanese Golden Dozen』に収録されている。クシュワント・シン(Khushwant Singh)はクシワント・シンとも表記される。 Brief uit het dodenrijk(死者の便り) (ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンク編、Loeb社、1983年、表紙[VNDTより]) 上田秋成(Oeda Akinari) De raad van de kookketel 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン) Twee legenden 谷崎潤一郎(Junichiro Tanizaki) De dief 芥川龍之介(Ryonosuke Akutagawa) In het struikgewas 「藪の中」 江戸川乱歩(Edogawa Rampo) De rode kamer 「赤い部屋」 ロバート・ファン・ヒューリック Moord op oudejaarsavond 三島由紀夫(Yoekio Mishima) Dood in midzomer 「真夏の死」 西村京太郎(Kiotaro Nishimoera) De vriendelijke afzetter 「優しい脅迫者」 三好徹(Tohroe Miyoshi) Brief uit het dodenrijk 「死者の便り」 筒井康隆(Yasoetaka Tsoetsoei) Hele aardige dames 「如菩薩団」 草野唯雄(Tadao Sohno) Het herstelde hoofd 「復顔」 ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンク Het flaporen dossier ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンク De nieuwe leerling 三好徹の「死者の便り」が表題になっている。このアンソロジーでは日本人の名前の綴りが特殊なのでそれも示した。 西村京太郎「優しい脅迫者」、三好徹「死者の便り」、筒井康隆「如菩薩団」、草野唯雄「復顔」は1978年刊行の日本ミステリ英訳短編集『Ellery Queen s Japanese Golden Dozen』に収録されている。 「日本ミステリの海外刊行」に戻る 関連ページ:「オランダ推理小説略史/日蘭ミステリ交流史」(2012年5月12日)
https://w.atwiki.jp/kyoku/pages/236.html
極・魔導物語 ドクマムシ ND 秘封霖倶楽部 ミステリーボックス 「ミステリーボックス」は『秘封霖倶楽部』のエピソードの一つ。2018年12月26日公開( pixiv )。 一定の期間にわたって投稿されたブログの形式で物語が展開していく。語り手(ブログの筆者)は森近霖之助、宇佐見蓮子、マエリベリー・ハーンなど日によって異なる。 - 目次 あらすじページ1~5 ページ6~14 ページ15~21 考察 あらすじ ページ1~5 初めに、蓮子がミステリーボックスと呼ばれるダークウェブの商品に興味を持つ。ミステリーボックスとは、いい値段がついているが中に何が入っているかわからないという箱の商品。蓮子は薫子に頼み込み、霖之助を好きにさせることを代価としてミステリーボックスを購入させる。 一か月後、配達先に指定した秘封霖倶楽部に、部室の窓を破って投げ入れられる形でミステリーボックスが届く。それは大きめの重い段ボール箱で、中にはバレエの靴、バレエクラウン、白い皮の箱、アナベル人形、手紙が入っており、手紙にはフランス語で「さようならエリサ」と書かれている。白い皮の箱は爆薬を使うことでようやく開き、中にはフランス語での自己紹介の音声が記録されたカセットテープが入っていた。声の主はエミールという12歳の人物で、フランスのゴルドの郊外にある城に住んでいると話す。城の中にはほかにも多くの未成年の女の子が一つの部屋の中に住んでおり、隣には男の子の部屋もあるが、それぞれの住人たちは互いに出会うことがないという。 蓮子はミステリーボックスの内容の意図について手掛かりを探すうち、海外の一人のユーチューバーに辿り着く。その人物が開けたミステリーボックスの中には首輪と血まみれの鎖、兎の剥製、人の排泄物で満たされた蓋つきのオルゴール、白い皮の箱、手紙が入っていた。手紙にはフランス語で「さようならポーレット」と書かれており、白い皮の箱は拳銃でかろうじて開き、中には霖之助たちの入手したものと同じカセットテープが入っていた。いたずらの可能性を疑う霖之助に対し、蓮子は調査続行のため、霖之助と薫子、メリーを連れてフランスのゴルドへと発つ。 ページ6~14 フランスのシャルル・ド・ゴール空港に到着した一同は、国際免許を持つ薫子の手配したレンタカーでアヴィニョンTGV駅( Wikipedia )へ行ってホテルに宿泊後、観光を楽しみつつゴルドを探索する。 ゴルドでの二日目(11月17日)、目立った成果も出せないまま、疲労した蓮子とメリーを先にホテルへ帰した霖之助たちは、まだ花の咲いていないラベンダー畑で、少女の首吊り遺体を発見する。少女は安らかな笑顔のまま息絶えており、近くには少女の私物と思しきものが詰められた箱、さらにその中には白い皮の箱が入っていた。通報で現れた警官は、この自殺が複数連続しており、「伝染」する恐れがあることを仄めかす。 三日目(11月18日)、霖之助たちはゴルドでの調査を続行するうち、出発前に動画で目にしたミシガンのユーチューバーと遭遇し、調査を共にすることとなる。手当たり次第に建物の壁を調べていると、偶然その壁がスライドして地下遺跡への穴が開き、一同は遺跡の奥を調べることにする。その先には、コンピューターに接続された頭部だけの少女の遺体があった。遺体に驚いた一同は遺跡から地上へと逃げ出し、その建物で店を営んでいる人物を呼び、遺体のもとへ戻ろうとするが、遺跡への道を再び発見できずに終わる。 しかし、頭部だけの遺体の発見を通じて、霖之助のスマートフォンには「AIの少女」が住み着き始める。少女は「ELIZA-RC」(イライザ・アールシー)という規格名を名乗り、霖之助たちに愛想よく接し、霖之助たちが手に入れたミステリーボックスに入っていたものの持ち主であったことを明かす。彼女によれば、ミステリーボックスに入っていた白い皮の箱には、もともと自身の自己紹介映像を記録したUSBメモリを入れていたというが、手紙のことやミステリーボックスの配達人のこと、霖之助たちが発見した首吊り自殺のことは知らないという。 少女はネットの世界に存在しており、霖之助をその世界へ招き入れようと呼びかける。ネットの世界へ移るためには、自分の身の回りの物を箱にまとめ、この世への別れの手紙とともに他人の手へと渡した後、自殺するのだという。(※この場面はあとの場面と前後する形になっている。先の場面で手紙のことは知らないと言ったことと矛盾している。) ページ15~21 四日目(11月19日)、一同はホテル周辺の田舎風景の中を探索し始めると、ミシガンのユーチューバーと再会する。彼は自身の購入したミステリーボックスを持参しており、中には日本製の球体関節人形、娘の顔だけが破り取られた家族写真、現世への恨みつらみが綴られた日記のノート、白い皮の箱と手紙が入っていた。霖之助の能力を通じて、球体関節人形の中には金色の髪の毛が詰まっていることがわかり、気味が悪くなったユーチューバーは人形を地中に埋めてしまう。 その後、一同は柱と床と多少の壁だけが残った遺跡を発見するが、調べようとするや否や地盤が沈下し、遺跡の地下に閉じ込められてしまう。電話で救助を呼ぶ傍ら、暗闇の奥へと進んでいくと、「マルキア家の執事」と名乗る老人と出会う。執事は「ヒルクお嬢様」という人物の世話をしているといい、手には箱を持っているが、その内容は「お嬢様のお友達の生前の思い出」だという。執事は出口のある方向を指し示した後、その方向へと立ち去っていく。 一同もその方向へ進むと、突き当たりには施錠されたドアがあり、ミシガンのユーチューバーが電動ドライバーで鍵を破壊してさらに先へ進む。するとそこには、頭を大きな機械と接続された銀髪で全裸の少女がおり、大きな機械には少女たちの笑い声を発するものと、少年たちの笑い声を発するものがある。テレビ画面に映る人型の影は少女から「パパ」と呼ばれ、「パパ」と少女の会話によってその少女の名前が「セリア」であると明かされる。会話によれば、「ヒルク」はこの世を厭った子供のためにインターネットへ行く方法を見つけた人物だという。そこで霖之助だけでなく蓮子たちのスマートフォンからも、少年少女が語り掛け始める。 一同は自分たちのスマートフォンを破壊してその場から逃げ出し、執事の指し示した出口へ進む。するとその先には、いくつもの赤黒く腐敗した遺体と首掛け縄があり、比較的新しい遺体の顔は安らかに微笑んでいる。部屋の奥から執事の声が語り掛けてくると、彼は「セリア様のため」だと言い、出口は施錠され、遺跡は爆破される。霖之助たちは生き埋めにされるが、事前に救助を呼んでいたために救出される。しかしながら、遺跡の中が暴かれることはなかった。 帰り際の空港での待ち時間で、霖之助はミシガンのユーチューバーの新しい動画を視聴する。そこには彼が地中に埋めたはずの人形が映っていたが、その真意を問う術はなく、そのまま霖之助たちは日本へと帰って行く。方や、一連の出来事が記されたブログの最後のページで、何者かが霖之助を発見したことを告げる。 考察 終盤に登場する「ヒルク」と「セリア」の関係についての謎が残っている。 遺跡で現れた執事は「ヒルク」の世話係を自称し、その先で現れて「パパ」と会話する銀髪の少女は「ジイジ」という名を口にする。「ジイジ」は執事のことと思われる。ここまで読めば、銀髪の少女は執事と主従関係である「ヒルク」と思われ、疑う余地はない。 しかし、「パパ」は少女との会話で「ヒルク」に呼びかけたかと思いきや、その次では「セリア」に呼びかけている。その後再び現れた執事は、一転して「セリア様のため」といって一連の出来事の隠滅を図る。「ヒルク」が唐突に「セリア」になってしまったかのような描写である。少女には双子の妹がいるというが、その妹とは「パパ」の言及した「マーヤ」のことと思われ、日本で母親に伴われて逃げ出しているという。 なお、「マーヤ」は別のエピソードに登場する麻耶のことではないかと考察されている。
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/201.html
2012年9月1日 最終更新:2018年11月6日(ページ末尾の「更新履歴」参照のこと) 1959年4月に創刊された東京創元社、《創元推理文庫》の非英語圏作品一覧。 (「非英語圏作品」だと日本の作品も含むことになるが、日本の作品はリスト化していない。創元推理文庫で刊行された海外ミステリの非英語圏作品の一覧である。) 関連ページ:ポケミス非英語圏作品一覧(早川書房、1953年9月創刊) Index 創元推理文庫/海外ミステリ/非英語圏・非フランス語圏作品一覧 創元推理文庫/海外ミステリ/フランス語圏作品一覧 創元推理文庫/海外ミステリアンソロジー/非英語圏作品一覧 おまけ1:創元推理文庫/ホラー&ファンタジイ/非英語圏作品一覧 おまけ2:創元SF文庫/非英語圏作品一覧 参考文献 更新履歴 創元推理文庫/海外ミステリ/非英語圏・非フランス語圏作品一覧 著者 タイトル 訳者 出版年月 # 原題(年) 備考 ラテンアメリカ(特記なき場合、原語はスペイン語) パコ・イグナシオ・タイボ二世(メキシコ) 影のドミノ・ゲーム 田中一江 1995年1月 Mタ2-1 Sombra De La Sombra (1986) 英語からの重訳 スウェーデン(スウェーデン語) ヤーン・エクストレム 誕生パーティの17人 後藤安彦 1987年1月 Mエ1-1 Ättestupan (1975) ヘニング・マンケル 殺人者の顔 柳沢由実子 2001年1月 Mマ13-1 Mördare utan ansikte (1991) リガの犬たち 柳沢由実子 2003年4月 Mマ13-2 Hundarna i Riga (1992) 白い雌ライオン 柳沢由実子 2004年9月 Mマ13-3 Den vita lejoninnan (1993) 笑う男 柳沢由実子 2005年9月 Mマ13-4 Mannen som log (1994) 目くらましの道【上下巻】 柳沢由実子 2007年2月 Mマ13-5,6 Villospår (1995) 英国推理作家協会ゴールド・ダガー賞、フランス・ミステリ批評家賞 タンゴステップ【上下巻】 柳沢由実子 2008年5月 Mマ13-7,8 Danslärarens återkomst (2000) 五番目の女【上下巻】 柳沢由実子 2010年8月 Mマ13-9,10 Den femte kvinnan (1996) 背後の足音【上下巻】 柳沢由実子 2011年7月 Mマ13-11,12 Steget efter (1997) ファイアーウォール【上下巻】 柳沢由実子 2012年9月 Mマ13-13,14 Brandvägg (1998) 霜の降りる前に【上下巻】 柳沢由実子 2016年1月 Mマ13-15,16 北京から来た男【上下巻】 柳沢由実子 2016年8月 Mマ13-17,18 2014年刊行作品の文庫化 ピラミッド 柳沢由実子 2018年4月 Mマ13-19 モンス・カッレントフト 冬の生贄【上下巻】 久山葉子 2013年3月 Mカ11-1,2 Midvinterblod (2007) 天使の死んだ夏【上下巻】 久山葉子 2013年10月 Mカ11-3,4 Sommardöden (2008) 秋の城に死す【上下巻】 久山葉子 2015年12月 Mカ11-5,6 カーリン・イェルハルドセン お菓子の家 木村由利子 2013年6月 Mイ4-1 Pepparkakshuset (2008) パパ、ママ、あたし 木村由利子 2014年3月 Mイ4-2 Mamma, pappa, barn (2009) 子守唄 木村由利子 2015年6月 Mイ4-3 リザ・マークルンド ノーベルの遺志【上下巻】 久山葉子 2013年11月 Mマ26-1,2 Nobels testamente (2006) M・ヨート、H・ローセンフェルト 犯罪心理捜査官セバスチャン【上下巻】 ヘレンハルメ美穂 2014年6月 Mヨ1-1,2 Det fördolda (2010) 模倣犯 犯罪心理捜査官セバスチャン【上下巻】 ヘレンハルメ美穂 2015年1月 Mヨ1-3,4 白骨 犯罪心理捜査官セバスチャン【上下巻】 ヘレンハルメ美穂 2017年6月 Mヨ1-5,6 少女 犯罪心理捜査官セバスチャン【上下巻】 ヘレンハルメ美穂 2017年11月 Mヨ1-7,8 アンナ・ヤンソン 消えた少年 久山葉子 2014年10月 Mヤ2-1 死を歌う孤島 久山葉子 2015年3 Mヤ2-2 クリスティーナ・オルソン シンデレラたちの罪 ヘレンハルメ美穂 2015年8月 Mオ5-1 カタリーナ・インゲルマン=スンドベリ 犯罪は老人のたしなみ 木村由利子 2016年9月 Mイ8-1 老人犯罪団の逆襲 木村由利子 2017年10月 Mイ8-2 シッラ ロルフ・ボリリンド 満潮【上下巻】 久山葉子 2016年10月 Mホ12-1,2 トーヴェ・アルステルダール 海岸の女たち 久山葉子 2017年4月 Mア18-1 レイフ・GW・ペーション 許されざる者 久山葉子 2018年2月 Mヘ19-1 デンマーク(デンマーク語) エルスベツ・イーホルム 赤ん坊は川を流れる 木村由利子 2015年2月 Mイ6-1 過去を殺した女 木村由利子 2016年6月 Mイ6-2 ノルウェー(ノルウェー語) アンネ・ホルト 凍える街 枇谷玲子 2014年12月 Mホ10-1 ホテル1222 枇谷玲子 2015年9月 Mホ10-2 カーリン・フォッスム 晴れた日の森に死す 成川裕子 2016年9月 Mフ36-1 アイスランド(アイスランド語) ヴィクトル・アルナル・インゴウルフソン フラテイの暗号 北川和代 2013年11月 Mイ5-1 Flateyjargáta (2002) アーナルデュル・インドリダソン 湿地 柳沢由実子 2015年5月 Mイ7-1 2012年刊行作品の文庫化 緑衣の女 柳沢由実子 2016年7月 Mイ7-2 2013年刊行作品の文庫化 声 柳沢由実子 2018年1月 Mイ7-3 2015年刊行作品の文庫化 フィンランド(フィンランド語) レーナ・レヘトライネン 雪の女 古市真由美 2013年1月 Mレ7-1 Luminainen (1996) 推理の糸口賞(1997年) 氷の娘 古市真由美 2013年9月 Mレ7-2 Kuolemanspiraali (1997) 要塞島の死 古市真由美 2014年5月 Mレ7-3 Tuulen puolella (1998) ドイツ語圏 アンネ・シャプレ(ドイツ) カルーソーという悲劇 平井吉夫 2007年5月 Mシ11-1 Caruso Singt Nicht Mehr (1997) ドイツ・ミステリ大賞受賞シリーズの第1作 ネレ・ノイハウス(ドイツ) 深い疵(きず) 酒寄進一 2012年6月 Mノ4-1 Tiefe Wunden (2009) シリーズ第3作 白雪姫には死んでもらう 酒寄進一 2013年5月 Mノ4-2 Schneewittchen muss sterben (2010) シリーズ第4作 悪女は自殺しない 酒寄進一 2015年6月 Mノ4-3 シリーズ第1作 死体は笑みを招く 酒寄進一 2016年10月 Mノ4-4 シリーズ第2作 穢れた風 酒寄進一 2017年10月 Mノ4-5 シリーズ第5作 悪しき狼 酒寄進一 2018年10月 Mノ4-6 シリーズ第6作 フォルカー・クッチャー(ドイツ) 濡れた魚【上下巻】 酒寄進一 2012年8月 Mク18-1,2 Der nasse Fisch (2007) 死者の声なき声【上下巻】 酒寄進一 2013年8月 Mク18-3,4 Der stumme Tod (2009) ゴールドスティン【上下巻】 酒寄進一 2014年7月 Mク18-5,6 Goldstein (2010) アンドレアス・グルーバー(オーストリア) 夏を殺す少女 酒寄進一 2013年2月 Mク19-1 Rachesommer (2010) 黒のクイーン 酒寄進一 2014年1月 Mク19-2 Schwarze Dame (2007) 月の夜は暗く 酒寄進一 2016年2月 Mク19-3 刺青の殺人者 酒寄進一 2017年4月 Mク19-4 バルドゥイン・グロラー(オーストリア) 探偵ダゴベルトの功績と冒険 垂野創一郎 2013年4月 Mク20-1 Detektiv Dagoberts Taten und Abenteuer シャーロック・ホームズの異郷のライヴァルたち(1) ドイツ語圏編 ヴォルフラム・フライシュハウアー(ドイツ) 消滅した国の刑事 北川和代 2013年6月 Mフ28-1 Torso (2011) シャルロッテ・リンク(ドイツ) 沈黙の果て【上下巻】 浅井晶子 2014年9月 Mリ7-1,2 Am Ende des Schweigens (2003) 失踪者【上下巻】 浅井晶子 2017年1月 Mリ7-3,4 ペトラ・ブッシュ(ドイツ) 漆黒の森 酒寄進一 2015年2月 Mフ31-1 フェルディナント・フォン・シーラッハ(ドイツ) 犯罪 酒寄進一 2015年4月 Mシ15-1 2011年刊行作品の文庫化 罪悪 酒寄進一 2016年2月 Mシ15-2 2012年刊行作品の文庫化 コリーニ事件 酒寄進一 2017年12月 Mシ15-3 2013年刊行作品の文庫化 禁忌 酒寄進一 2018年12月? 刊行予定。2015年刊行作品の文庫化 フレドゥン・キアンプール(ドイツ) 幽霊ピアニスト事件 酒寄進一 2015年9月 Mキ12-1 『この世の涯てまで、よろしく』改題文庫化 ニーナ・ブラジョーン(ドイツ) 獣の記憶 遠山明子 2015年10月 Mフ34-1 ライナー・レフラー(ドイツ) 人形遣い 事件分析官アーベル&クリスト 酒寄進一 2015年10月 Mレ8-1 ウルズラ・ポツナンスキ(オーストリア) 古城ゲーム 酒寄進一 2016年4月 Mホ11-1 ザーシャ・アランゴ(ドイツ) 悪徳小説家 浅井晶子 2016年7月 Mア16-1 シュテファン・スルペツキ(オーストリア) 探偵レミングの災難 北川和代 2017年7月 Mス15-1 天国通り殺人事件 北川和代 2018年7月 Mス15-2 アンドレアス・フェーア(ドイツ) 弁護士アイゼンベルク 酒寄進一 2018年4月 Mフ37-1 オランダ(オランダ語) ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリンク アムステルダムの異邦人 池央耿 1981年1月 Mウ17-1 Het lijk in de Haarlemmer Houttuinen (1975) 英題:Outsider in Amsterdam オカルト趣味の娼婦 池央耿 1981年5月 Mウ17-2 Buitelkruid (1976) 英題:Tumbleweed 大道商人の死 池央耿 1987年5月 Mウ17-3 De dood van een marktkoopman (1977) 英題:Death of a Hawker スペイン(特記なき場合、原語はスペイン語) マヌエル・バスケス・モンタルバン 楽園を求めた男 田部武光 1985年8月 Mモ4-1 Los Mares Del Sur (1979) フランス語からの重訳/フランス推理小説大賞、スウェーデン推理作家アカデミー賞 死の谷を歩む男 田部武光 1986年4月 Mモ4-2 La Soledad Del Manager (1977) フランス語からの重訳 R・リーバス、S・ホフマン 偽りの書簡 宮﨑真紀 2016年5月 Mリ8-1 マルク・パストル(カタルーニャ語作家) 悪女 白川貴子 2018年3月 Mハ24-1 ギリシャ(ギリシャ語) アンドニス・サマラキス きず 小池滋 1987年10月 Mサ2-1 Το λάθος (1965) フランス推理小説大賞(1970年) ブルガリア(ブルガリア語) アンドレイ・グリャシキ 007は三度死ぬ 深見弾 1985年8月 Mフ10-7 Срещу 07 (1966) 『ミステリマガジン』1967年2月号に『ザホフ対07』のタイトルで訳載(袋一平訳) ※注記したもの以外にも重訳の作品はあるかもしれない。 創元推理文庫/海外ミステリ/フランス語圏作品一覧 数え方にもよるが、以下では32人、164冊をリストアップしている(2017年11月発売のグザヴィエ=マリ・ボノ『狩人の手』までをカウント)。 冊数の多い作家ジェラール・ド・ヴィリエ … 50冊 カトリーヌ・アルレー … 25冊 モーリス・ルブラン … 23冊 ジョルジュ・シムノン … 12冊 ボワロ&ナルスジャック … 6冊 ミッシェル・ルブラン、セバスチアン・ジャプリゾ、フレッド・ヴァルガス … 各5冊 1990年代には創元推理文庫でフランス語圏の作品は1冊も出版されていない。(ちなみに、早川書房のポケミスでも1990年代にはフランス語圏のミステリは1冊しか出版されなかった) 創元推理文庫に収録されたのが早い作家から順に並べた。 2000年代以降に新訳が出たものについては【新訳】と示した。 著者 タイトル 訳者 出版年月 # 備考 ガストン・ルルー 黄色い部屋の謎 宮崎嶺雄 1965年6月 Mル2-1 旧訳は水谷準訳(1959年5月) 黒衣婦人の香り 石川湧 1976年3月 Mル2-2 2008年の復刊フェアで新カバー化 ジョルジュ・シムノン(ベルギー) 男の首/黄色い犬 宮崎嶺雄 1969年5月 Mシ1-1 『男の首』(1959年9月)、『黄色い犬』(1959年9月)合本 13の秘密/第1号水門 大久保輝臣 1963年8月 Mシ1-2 『13の秘密』改題 ゲー・ムーランの踊子 他 安堂信也 1973年9月 Mシ1-3 『ゲー・ムーランの踊子』(1959年11月)、『三文酒場』(1960年8月)合本 猫―ねこ― 三輪秀彦 1985年1月 Mシ1-4 サン・フィアクル殺人事件 三輪秀彦 1960年4月 Mシ1-5 『サン・フィアクルの殺人』改題 怪盗レトン 木村庄三郎 1960年5月 Mシ1-6 オランダの犯罪 宗左近 1960年9月 Mシ1-7 アルザスの宿 原千代海 1960年11月 Mシ1-8 メグレ警部と国境の町 三輪秀彦 1961年1月 Mシ1-9 港の酒場で 木村庄三郎 1961年4月 Mシ1-10 死んだギャレ氏 宗左近 1961年7月 Mシ1-11 影絵のように 望月芳郎 1961年8月 Mシ1-12 ボワロ&ナルスジャック 女魔術師 江口清 1961年7月 Mホ2-1 技師は数字を愛しすぎた 大久保和郎 1960年3月 Mホ2-2 2012年4月【新版】 思い乱れて 大久保和郎 1959年10月 Mホ2-3 呪い 大久保和郎 1963年4月 Mホ2-4 仮面の男 井上勇 1964年7月 Mホ2-5 犠牲者たち 石川湧 1967年8月 Mホ2-6 カトリーヌ・アルレー わらの女 安堂信也 1964年8月 Mア5-1 大いなる幻影/死者の入江 安堂信也 1973年9月 Mア5-2 『大いなる幻影』(1968年11月)、『死者の入江』(1962年4月)合本 黄金の檻/泣くなメルフィー 安堂信也 1974年8月 Mア5-3 『黄金の檻』(1963年4月)、『泣くなメルフィー』(1964年12月)合本 死の匂い 望月芳郎 1963年10月 Mア5-4 目には目を 安堂信也 1961年1月 Mア5-5 二千万ドルと鰯一匹 安堂信也 1974年12月 Mア5-6 剣に生き、剣に斃れ 荒川浩充 1975年4月 Mア5-7 犯罪は王侯の楽しみ 安堂信也 1975年6月 Mア5-8 2014年の復刊フェアで新カバー・新解説 決闘は血を見てやめる 鈴木豊 1975年8月 Mア5-9 黒頭巾の孤島 安堂信也 1976年2月 Mア5-10 死ぬほどの馬鹿 安堂信也 1976年10月 Mア5-11 さよならメラニー 荒川浩充 1978年1月 Mア5-12 『またもや大いなる幻影』改題 砂の鎧 安堂信也 1979年6月 Mア5-13 地獄でなぜ悪い 安堂信也 1979年10月 Mア5-14 三つの顔 窪田般彌 1980年3月 Mア5-15 共犯同盟 小野萬吉 1980年10月 Mア5-16 死体銀行 加藤尚宏 1981年6月 Mア5-17 理想的な容疑者 荒川浩充 1981年12月 Mア5-18 2010年の復刊フェアで新カバー化/フランス冒険小説大賞(1981年) 白墨の男 安堂信也 1982年12月 Mア5-19 罠に落ちた女 安堂信也 1983年9月 Mア5-20 呪われた女 安堂信也 1984年4月 Mア5-21 21のアルレー 安堂信也 1985年6月 Mア5-22 死神に愛された男 安堂信也 1986年2月 Mア5-23 アラーム! 安堂信也 1987年3月 Mア5-24 疑惑の果て 安堂信也 1988年2月 Mア5-25 ミッシェル・ルブラン 殺人四重奏 鈴木豊 1961年4月 Mル3-1 旧訳は鈴木豊・河村正夫訳(1961年4月)/フランス推理小説大賞(1956年) 贋作/モンタージュ写真 望月芳郎・三輪秀彦 1972年12月 Mル3-2 *注1 未亡人 鈴木豊 1972年7月 Mル3-3 まちがえた番号/ストリッパーの死 鈴木豊 1973年4月 Mル3-4 ミッドウェイ水爆実験/自殺志願者 鈴木豊 1973年11月 Mル3-5 ノエル・カレフ 死刑台のエレベーター 宮崎嶺雄 1970年5月 Mカ2-1 2010年7月【新版】 その子を殺すな 宮崎嶺雄 1961年8月 Mカ2-2 パリ警視庁賞(1956年) ミラクル・キッド 宮崎嶺雄 1963年8月 Mカ2-3 『名も知れぬ牛の血』改題 フレッド・カサック 殺人交叉点 平岡敦【新訳】 2000年9月 Mカ8-1 フランス・ミステリ批評家賞 *注2 セバスチアン・ジャプリゾ シンデレラの罠 平岡敦【新訳】 2012年2月 Mシ2-1 旧訳は1964年11月、望月芳郎訳/フランス推理小説大賞(1963年) 寝台車の殺人者 望月芳郎 1966年10月 Mシ2-2 新車のなかの女 平岡敦【新訳】 2015年7月 Mシ2-3 旧訳は1968年10月、望月芳郎訳『新車の中の女』/英国推理作家協会 最優秀外国作品賞 殺意の夏 望月芳郎 1980年9月 Mシ2-4 スウェーデン推理作家アカデミー賞 長い日曜日 田部武光 2005年3月 Mシ2-5 モーリス・ルブラン 怪盗紳士リュパン 石川湧 1965年6月 Mル1-1 リュパン対ホームズ 石川湧 1965年7月 Mル1-2 水晶の栓 石川湧 1965年9月 Mル1-3 奇巌城 石川湧 1965年10月 Mル1-4 リュパンの告白 井上勇 1966年3月 Mル1-5 金三角 石川湧 1972年12月 Mル1-6 虎の牙 井上勇 1973年3月 Mル1-7 カリオストロ伯爵夫人 井上勇 1973年1月 Mル1-8 謎の家 井上勇 1973年7月 Mル1-9 緑の目の令嬢 石川湧 1973年1月 Mル1-10 二つの微笑を持つ女 井上勇 1972年11月 Mル1-11 『ふたつの微笑を持つ女』改題 バール・イ・ヴァ荘 石川湧 1973年8月 Mル1-12 特捜班ヴィクトール 井上勇 1973年10月 Mル1-13 赤い数珠 井上勇 1974年1月 Mル1-14 カリオストロの復讐 井上勇 1973年6月 Mル1-15 オルヌカン城の謎 井上勇 1973年5月 Mル1-16 ジェリコ公爵 井上勇 1974年4月 Mル1-17 リュパンの冒険 南洋一郎 1965年10月 Mル1-18 綱渡りのドロテ 三好郁朗 1986年12月 Mル1-19 ノー・マンズ・ランド 大友徳明 1987年7月 Mル1-20 三つの目 田部武光 1987年10月 Mル1-21 バルタザールの風変わりな毎日 三輪秀彦 1987年11月 Mル1-22 リュパン、最後の恋 高野優監訳池畑奈央子訳 2013年7月 Mル1-23 クロード・アヴリーヌ U路線の定期乗客 三輪秀彦 1977年6月 Mア13-1 ブロの二重の死 三輪秀彦 1983年6月 Mア13-2 ジェラール・ド・ヴィリエ SAS/セーシェル沖暗礁地帯 伊東守男 1978年12月 Mウ18-1 SAS/イスタンブール 潜水艦消失 伊東守男 1979年2月 Mウ18-2 SAS/イラン CIA対マルコ 大友徳明 1979年3月 Mウ18-3 SAS/ソマリア 人質奪回作戦 鈴木豊 1979年3月 Mウ18-4 SAS/ニューヨーク 大追跡 鈴木豊 1979年4月 Mウ18-5 SAS/日本連合赤軍の挑戦 鈴木豊 1979年6月 Mウ18-6 SAS/ヨルダン国王の危機 飯島宏 1979年8月 Mウ18-7 SAS/ブルンジ スパイ衛星墜落 小野萬吉 1979年9月 Mウ18-8 SAS/怒りのベルファスト 小野萬吉 1979年11月 Mウ18-9 SAS/鄧小平の密命 三輪秀彦 1979年11月 Mウ18-10 SAS/リオ マンガン鉱争奪戦 鈴木豊 1979年12月 Mウ18-11 SAS/シンガポール 華僑の秘密 飯島宏 1980年2月 Mウ18-12 SAS/ロンドン スパイ連合作戦 大友徳明 1980年2月 Mウ18-13 SAS/クワイ河の黄金 小野萬吉 1980年3月 Mウ18-14 SAS/ケネディ秘密文書 加藤尚宏 1980年4月 Mウ18-15 SAS/エチオピア皇帝の宝 鈴木豊 1980年5月 Mウ18-16 SAS/ローデシアの陰謀 飯島宏 1980年7月 Mウ18-17 SAS/ワルシャワ 同志を売る男 小野萬吉 1980年7月 Mウ18-18 SAS/カリブ海 ハリケーン作戦 田部武光 1980年8月 Mウ18-19 SAS/モンテビデオの天使 小野萬吉 1980年10月 Mウ18-20 SAS/インディアン狩り 小野萬吉 1980年10月 Mウ18-21 SAS/伯爵夫人の舞踏会 飯島宏 1980年12月 Mウ18-22 SAS/カンボジア式ルーレット 荒川浩充 1980年12月 Mウ18-23 SAS/バグダッドの黒豹 飯島宏 1981年2月 Mウ18-24 SAS/北極圏の逃亡者 小野萬吉 1981年3月 Mウ18-25 SAS/アンゴラ 独立前夜 小野萬吉 1981年4月 Mウ18-26 SAS/サイゴン サンライズ作戦 飯島宏 1981年4月 Mウ18-27 SAS/寄港地パゴ・パゴ 田部武光 1981年6月 Mウ18-28 SAS/香港 三人の未亡人 三輪秀彦 1981年7月 Mウ18-29 SAS/アメリカ 石油封鎖ショック 飯島宏 1981年7月 Mウ18-30 SAS/リスボン KGB秘密計画 秋本紀夫 1981年9月 Mウ18-31 SAS/バリ島の狂気 田部武光 1981年10月 Mウ18-32 SAS/ゲバラ万歳! 飯島宏 1981年10月 Mウ18-33 SAS/ザイール レッド・アイ・ミサイル 三輪秀彦 1981年11月 Mウ18-34 SAS/ラオス 黄金の三角地帯 田部武光 1981年12月 Mウ18-35 SAS/ハイチ 黒犬に化けた男 三輪秀彦 1982年1月 Mウ18-36 SAS/ニカラグアの十字軍 秋本紀夫 1982年2月 Mウ18-37 SAS/ボリビアのナチ狩り 三輪秀彦 1982年3月 Mウ18-38 SAS/ベイルートの連続殺人 田部武光 1982年4月 Mウ18-39 SAS/セイロン 舎利塔の秘宝 飯島宏 1982年5月 Mウ18-40 SAS/チェックポイント・チャーリー 佐藤到 1982年6月 Mウ18-41 SAS/ハワイ CIA危機一髪 飯島宏 1982年7月 Mウ18-42 SAS/ザンジバルのために死す 三輪秀彦 1982年9月 Mウ18-43 SAS/コロンビアの決闘 飯島宏 1982年10月 Mウ18-44 SAS/イスラエル 嘆きの壁の女 田部武光 1982年11月 Mウ18-45 SAS/サンチアゴ 冷たい手の男 荒川浩充 1982年12月 Mウ18-46 SAS/ハンガリー 我が祖国 飯島宏 1982年12月 Mウ18-47 SAS/アブダビ 王宮の陰謀 三輪秀彦 1983年2月 Mウ18-48 SAS/マルタを見て死ね 三輪秀彦 1983年3月 Mウ18-49 SAS/エル・サルバドル 殺人指令 田部武光 1983年4月 Mウ18-50 ピエール・マニャン アトレイデスの血 三輪秀彦 1981年4月 Mマ19-1 パリ警視庁賞(1978年) スタニスラス=アンドレ・ステーマン(ベルギー) 殺人者は21番地に住む 三輪秀彦 1983年12月 Mス4-1 六死人 三輪秀彦 1984年8月 Mス4-2 フランス冒険小説大賞(1931年) ギ・デ・カール 破戒法廷 三輪秀彦 1984年4月 Mテ3-1 ドミニク・フェルナンデス シニョール・ジョヴァンニ 田部武光 1984年7月 Mフ18-1 ブリス・ペルマン 穢れなき殺人者 荒川浩充 1984年9月 Mヘ5-1 顔のない告発者 荒川浩充 1985年5月 Mヘ5-2 モーリス・ドニュジエール 暗号名はフクロウ 小野萬吉 1985年4月 Mト8-1 パスカル・レネ 三回殺して、さようなら 田中淳一 1988年6月 Mレ6-1 ジャン=ジャック・フィシュテル 私家版 榊原晃三 2000年12月 Mフ14-1 フランス推理小説大賞(1994年) ジャン=クリストフ・グランジェ クリムゾン・リバー 平岡敦 2001年1月 Mク11-1 2018年11月【新版】 コウノトリの道 平岡敦 2003年7月 Mク11-2 狼の帝国 高岡真 2005年12月 Mク11-3 フレッド・ヴァルガス 死者を起こせ 藤田真利子 2002年6月 Mウ12-1 フランス・ミステリ批評家賞、英国推理作家協会インターナショナル・ダガー賞 青チョークの男 田中千春 2006年3月 Mウ12-2 英国推理作家協会インターナショナル・ダガー賞 論理は右手に 藤田真利子 2008年4月 Mウ12-3 裏返しの男 田中千春 2012年1月 Mウ12-4 フランス・ミステリ批評家賞 彼の個人的な運命 藤田真利子 2012年8月 Mウ12-5 モーリス・ルヴェル 夜鳥(よどり) 田中早苗 2003年2月 Mル4-1 ジャン=ピエール・ノーグレット ハイド氏の奇妙な犯罪 三好郁朗 2003年10月 Mノ2-1 カトリーヌ・キュッセ ジェーンに起きたこと 長谷川沙織 2004年7月 Mキ4-1 アンドレア・H・ジャップ 殺人者の放物線 藤田真利子 2006年8月 Mシ10-1 ジャン=クロード・イゾ 失われた夜の夜 高橋啓 2007年2月 Mイ3-1 トロフェ813受賞 ジャック・ルーボー 麗しのオルタンス 高橋啓 2009年1月 Mル5-1 誘拐されたオルタンス 高橋啓 2017年2月 Mル5-2 マルセル・F・ラントーム 騙し絵 平岡敦 2009年10月 Mラ6-1 ピエール・シニアック ウサギ料理は殺しの味 藤田宜永 2009年12月 Mシ12-1 カミ ルーフォック・オルメスの冒険 高野優 2016年5月 Mカ14-1 『ミステリーズ!』vol.77で特集 ジョエル・ディケール(スイス) ハリー・クバート事件【上下巻】 橘明美 2016年11月 Mテ15-1,2 2014年刊行作品の文庫化 グザヴィエ=マリ・ボノ 狩人の手 平岡敦 2017年11月 Mホ14-1 注1:ミッシェル・ルブラン『贋作/モンタージュ写真』(1972年12月) - 『不許複製』(1962年2月)と『モンタージュ写真』(1963年3月)の合本。『不許複製』は合本時に『贋作』に改題。 注2:フレッド・カサック『殺人交叉点』(2000年9月) - 1962年7月に創元推理文庫で『連鎖反応』(諏訪正訳)が単独で出版され、1979年には「殺人交差点」(荒川浩充訳)と「連鎖反応」(荒川浩充の新訳)を収録した『殺人交差点』が出版された。そして2000年9月には、収録2作を平岡敦が新訳した『殺人交叉点』が出版された。 創元推理文庫/海外ミステリアンソロジー/非英語圏作品一覧 江戸川乱歩編『世界短編傑作集』【全5巻】(1960年7月 - 1961年5月)第1巻 - アントン・チェホフ「安全マッチ」 - ロシア 第2巻 - モーリス・ルブラン「赤い絹の肩かけ」 - フランス 第2巻 - バルドゥイン・グロルラー「奇妙な跡」 - オーストリア(ドイツ語) エラリー・クイーン編『ミニ・ミステリ傑作選』(1975年10月)W・ハイデンフェルト「月の光」 - 南アフリカ(1911年、ベルリン生まれ。執筆は英語だと思われる) フェレンツ・モルナール(名-姓)「最善の策」 - ハンガリー ミゲル・デ・セルバンテス「サンチョ・パンサの名探偵ぶり」 - スペイン アントン・チェーホフ「子守歌」 - ロシア アレクサンドル・デュマ「ナイフの男」 - フランス ギイ・ド・モーパッサン「復讐」 - フランス ギイ・ド・モーパッサン「正義の費用」 - フランス ヴォルテール「犬と馬」 - フランス オットー・ペンズラー編『魔術ミステリ傑作選』(1979年8月)マニュエル・ペイロウ「ジュリエットと奇術師」 - アルゼンチン(スペイン語) エドワード・D・ホウク(エドワード・D・ホック)編『最後のチャンス――年刊ミステリ傑作選 78』(1982年5月)ポール・セルー「犯人(ホシ)はシロ」 - フランス ピーター・ゴドフリ「殺人の治し方」 - 南アフリカ(執筆は英語だと思われる) ピーター・ヘイニング編『ディナーで殺人を』【上下巻】(1998年1月)上巻 - ガストン・ルルー「胸像たちの晩餐」 - フランス 上巻 - アルフォンス・ドーデー「三つの読唱ミサ」 - フランス 上巻 - アレクサンドル・プーシキン「葬儀屋」 - ロシア 下巻 - ジョルジュ・シムノン「競売の前夜」 - ベルギー(フランス語) おまけ1:創元推理文庫/ホラー&ファンタジイ/非英語圏作品一覧 1969年2月に創元推理文庫の「怪奇と冒険」部門としてスタート。1989年から「ホラー&ファンタジイ」部門という名称に。1991年まで使用されていた分類マークでは「帆船マーク」。 日本の作品は省略。 著者 タイトル 訳者 出版年月 # 分類 備考 フランス語 アレクサンドル・デュマ(フランス) 黒いチューリップ 宗左近 1971年3月 Fテ1-1 歴史ロマン 王妃の首飾り【上下巻】 大久保和郎 1972年4・5月 Fテ1-2,3 歴史ロマン マルセル・エイメ(フランス) 第二の顔 生田耕作 1972年3月 Fエ3-1 幻想小説 ジョリス=カルル・ユイスマンス(フランス) 彼方 田辺貞之助 1975年3月 Fユ1-1 幻想文学 ガストン・ルルー(フランス) ガストン・ルルーの恐怖夜話 飯島宏 1983年10月 Fル1-1 ホラー オペラ座の怪人 三輪秀彦 1987年1月 Fル1-2 ホラー ジャン・レー(ベルギー) 新カンタベリー物語 篠田知和基 1986年4月 Fレ2-1 幻想小説 ロラン・トポル(フランス) カフェ・パニック 小林茂 1988年1月 Fト3-1 奇妙な味 トーマス・オーウェン(ベルギー) 黒い玉――十四の不気味な物語 加藤尚宏 2006年6月 Fオ2-1 ホラー 青い蛇――十六の不気味な物語 加藤尚宏 2007年5月 Fオ2-2 ホラー ドイツ語 H・H・エーヴェルス(ドイツ) プラークの大学生 前川道介 1985年9月 Fエ2-1 幻想小説 エーリヒ・ケストナー(ドイツ) 消え失せた密画 小松太郎 1970年2月 Fケ1-1 ユーモア 雪の中の三人男 小松太郎 1971年11月 Fケ1-2 ユーモア 一杯の珈琲から 小松太郎 1975年9月 Fケ1-3 ユーモア ケルスティン・ギア(ドイツ) 紅玉(ルビー)は終わりにして始まり 遠山明子 2015年11月 Fキ4-1 ファンタジイ カイ・マイヤー(ドイツ) 魔人の地 嵐の王1 酒寄進一・遠山明子 2015年12月 Fマ11-1 ファンタジイ 第三の願い 嵐の王2 酒寄進一・遠山明子 2016年4月 Fマ11-2 ファンタジイ 伝説の都 嵐の王3 酒寄進一・遠山明子 2016年7月 Fマ11-3 ファンタジイ ロシア語 イワン・エフレーモフ(ソ連) アレクサンドロスの王冠【上下巻】 飯田規和 1979年6・9月 Fエ4-1,2 ファンタジイ チェコ語 ヤン・ヴァイス(チェコ) 迷宮1000 深見弾 1987年8月 Fウ3-1 幻想小説 2016年の復刊フェアで新カバー化 ※分類は『東京創元社 文庫解説総目録』より 『怪奇小説傑作集 4 フランス編』(1969年6月、【新版】2006年7月)(東京創元社公式サイト 内容紹介) 『怪奇小説傑作集 5 ドイツ・ロシア編』(1969年5月、【新版】2006年8月)(東京創元社公式サイト 内容紹介) S・P・ソムトウ(タイ)『ヴァンパイア・ジャンクション』(2001年9月、金子浩訳)(Vampire Junction (1984)) - タイの作家が英語で執筆した作品。著者は別名、ソムトウ・スチャリトクル。 アンソロジー平井呈一編『恐怖の愉しみ』上巻(1985年5月) - エルクマン=シャトリアン「見えない眼」 - フランス アル・サラントニオ編『999 聖金曜日』(2000年2月) - ピーター・シュナイダー「紛う方なき愚行」 - ドイツ おまけ2:創元SF文庫/非英語圏作品一覧 1963年9月に創元推理文庫のSF部門としてスタート。1991年に「創元SF文庫」として独立した。ここでは創元推理文庫のSF部門の作品も一緒に扱う。 日本の作品は省略。 著者 タイトル 訳者 出版年月 # 備考 フランス語 ジュール・ヴェルヌ(フランス) 月世界へ行く 江口清 1964年10月 SFウ1-1 地底旅行 窪田般彌 1968年11月 SFウ1-2 悪魔の発明 鈴木豊 1970年8月 SFウ1-3 オクス博士の幻想 窪田般彌 1970年11月 SFウ1-4 海底二万里 荒川浩充 1977年4月 SFウ1-5 動く人工島 三輪秀彦 1978年2月 SFウ1-6 八十日間世界一周 田辺貞之助 1976年3月 SFウ1-7 サハラ砂漠の秘密 石川湧 1972年3月 SFウ1-8 必死の逃亡者 石川湧 1972年6月 SFウ1-9 十五少年漂流記 荒川浩充 1993年8月 SFウ1-10 地軸変更計画 榊原晃三 2005年9月 SFウ1-11 ピエール・ブール(フランス) 猿の惑星 大久保輝臣 1968年7月 SFフ7-1 ジャック・ヴァレ(フランス) 異星人情報局 礒部剛喜 2003年5月 SFウ10-1 ドイツ語 ハインリッヒ・ハウザー(ドイツ) 巨人頭脳 松谷健二 1965年8月 SFハ18-1 K・H・シェール(ドイツ) 地底のエリート 松谷健二 1966年7月 SFシ1-1 地球人捕虜収容所 松谷健二 1968年3月 SFシ1-2 地球への追放者 松谷健二 1969年7月 SFシ1-3 宇宙船ピュルスの人々 松谷健二 1970年6月 SFシ1-4 テア・フォン・ハルボウ(ドイツ) メトロポリス 前川道介 1988年12月 SFハ16-1 FからSFに移動/2005年の復刊フェアで新カバー化/2018年の復刊フェアで復刊 ロシア語 アレクサンドル・ベリャーエフ(ソ連) ドウエル教授の首 原卓也 1969年1月 SFヘ3-1 2016年の復刊フェアで復刊 セルゲイ・スニェーゴフ(ソ連) 銀河の破壊者 深見弾 1983年12月 SFス4-1 ペルセウス座進攻 深見弾 1984年3月 SFス4-2 逆時間の環 深見弾 1985年3月 SFス4-3 チェコ語 カレル・チャペック(チェコ) 山椒魚戦争 松谷健二 1968年2月 SFチ1-1 『ロシア・ソビエトSF傑作集 上』(1979年3月) 『ロシア・ソビエトSF傑作集 下』(1979年4月) 『東欧SF傑作集 上』(1980年9月) 『東欧SF傑作集 下』(1980年11月) 文庫ではないが、2011年9月には東京創元社より『時間はだれも待ってくれない 21世紀東欧SF・ファンタスチカ傑作集』(高野史緒編)が刊行されている(東京創元社公式サイト 内容紹介)。 アンソロジージュディス・メリル編『年刊SF傑作選 5』(1973年9月)ヨゼフ・ネスワドバ(ヨゼフ・ネスヴァードバ)「第三帝国最後の秘密兵器」 - チェコ ロマン・ギャリー(ロマン・ガリー)「退廃」 - フランス ホセ・マリア・ヒロネリャ「赤い卵」 - スペイン ジュディス・メリル編『年刊SF傑作選 6』(1975年3月)ホルヘ・ルイス・ボルヘス「円環の廃墟」 - アルゼンチン(スペイン語) スチュアート・デイヴィッド・シフ編『マッド・サイエンティスト』(1982年4月)ヴィリエ・ド・リラダン「ハルリドンヒル博士の英雄的行為」 - フランス 参考文献 高橋良平+東京創元社編集部編『東京創元社 文庫解説総目録』東京創元社、2010年12月2010年3月までの目録。それ以降の出版物については東京創元社公式サイトで調べた。 「Mシ1-1」のような方式の整理番号が付されるようになったのは1991年以降だが、この本ではそれ以前に刊行されたものについても整理番号が付されている。 更新履歴 2018年11月6日2014年7月で更新が途絶えていたが、2014年8月以降に刊行された海外ミステリの非英語圏作品50タイトルのデータを追加(2018年10月刊行分までのデータを反映/11月・12月の刊行予定もいくつか記載)。 ただし、原題および原著刊行年のデータは未記載。 リストに新たに追加した作品については、作品名をクリックすると東京創元社の書籍紹介ページが開くようにした。 関連記事 非英語圏ミステリ各種リスト ポケミス非英語圏作品一覧 ハヤカワ・ミステリ文庫非英語圏作品一覧 年間ミステリランキング 非英語圏作品一覧 『ミステリマガジン』洋書案内〈世界篇〉で紹介された本とその邦訳状況 ヨーロッパの推理小説 - ヨーロッパの推理小説に関する日本語文献の一覧
https://w.atwiki.jp/mystery2ch/pages/21.html
2010年10月15日作成 最終更新:2010年10月15日(未完成) ミステリー板のアドレスの変遷 インターネットアーカイブ 「Internet Archive Wayback Machine」( http //www.archive.org/ )に保存されたミステリー板の過去のトップページへのリンクを並べた。 残念ながら、開設の年(2000年)のものは保存されておらず、最も古いアーカイブは2001年2月23日に保存されたものである。 ミステリー板のアドレスの変遷 日付 アドレス インターネットアーカイブ 2000年2月8日~ http //www.jbbs.net/2ch/mystery/index2.html なし ? 2000年 http //teri.2ch.net/2ch/mystery/index2.html なし ? 2000年 http //mentai.2ch.net/mystery/ mentai アーカイブ mentai スレッド一覧アーカイブ 2002年5月4日~ http //book.2ch.net/mystery/ book アーカイブ book スレッド一覧アーカイブ 2004年3月23日~ http //book2.2ch.net/mystery/ book2 アーカイブ なし 2004年5月9日~ http //book3.2ch.net/mystery/ book3 アーカイブ book3 スレッド一覧アーカイブ 2007年1月10日~ http //book4.2ch.net/mystery/ book4 アーカイブ book4 スレッド一覧アーカイブ 2007年2月23日~??? http //love6.2ch.net/mystery/ love6 アーカイブ love6 スレッド一覧アーカイブ 2010年8月2日~ http //kamome.2ch.net/mystery/ (今のところなし) (今のところなし) インターネットアーカイブ 2000年 なし 2001年 2001年2月23日 mentai 2001年6月24日 mentai 2001年9月3日 mentai 2001年10月24日 mentai 2001年12月4日 mentai 2002年 2002年2月5日 mentai 2002年4月8日 mentai 2002年6月9日 book 2002年8月2日 book 2002年10月13日 book 2002年12月8日 book 2003年 2003年4月9日 book 2003年6月1日 book 2003年10月2日 book 2003年12月2日 book 2004年~2006年 2004年2月1日 book 2004年4月4日 book2 2004年5月12日 book3 http //web.archive.org/web/*/http //book3.2ch.net/mystery/ book3 2007年 2007年1月8日 book3 2007年1月16日 book4 2007年1月17日 book4 2007年1月21日 book4 book4 2007年2月5日 book4 2007年3月11日 book4 2007年3月20日 book4 2007年4月20日 love6 2007年6月29日 love6 2007年7月1日 love6 2007年8月20日 love6 2007年9月30日 love6 2007年10月2日 love6 2007年10月6日 love6 2007年10月8日 love6 2007年10月9日 love6 2007年10月9日 love6 2007年10月11日 love6 2008年 2008年2月20日 love6 2009年・2010年 なし
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/174.html
2012年1月3日 韓国の出版社・ハクサン文化社のレーベル《BOOK HOLIC》(ブックホリック、북홀릭)の刊行作品一覧。(※出版社名の漢字表記は「鶴山文化社」、ハングル表記は「학산문화사」) 基本的には日本のミステリの翻訳レーベルと言えそうだが、ミステリ以外の作品もある。以下の表で示した「ジャンル」は出版社の公式サイトで示されているものである。また、韓国のオリジナル・ミステリも1点だけ刊行されている。 ハングル表記のタイトルをクリックすると出版社の該当ページが開く。出版年月日等のデータは出版社のサイトで示されたものに従っている。 韓国語のタイトルは基本的に原題の直訳である。原題と大幅に異なる場合は「備考」で示す。 著者 タイトル 韓国語タイトル 訳者 発行年月日 ジャンル 備考 1 乙一 『GOTH リストカット事件』 GOTH 고스 - 리스트 컷 사건 クォン・イリョン(권일영) 2008-05-20 ミステリ 「19禁」指定 2 米澤穂信 『インシテミル』 Incite mill 인사이트 밀 チェ・ゴウン(최고은) 2008-08-01 ミステリ 3 桂望実 『Run! Run! Run!』 RUN! RUN! RUN! 런! 런! 런! ハン・ヒソン(한희선) 2008-10-10 ドラマ 4 乙一 『死にぞこないの青』 미처 죽지 못한 파랑 キム・ソニョン(김선영) 2008-10-10 ミステリ 5 天野節子 『氷の華』 얼음꽃 コ・ジュヨン(고주영) 2008-11-05 ミステリ 6 乙一 『暗いところで待ち合わせ』 어둠 속의 기다림 キム・ソニョン(김선영) 2008-12-30 ミステリ 7 舞城王太郎 『みんな元気。』 모두 씩씩해 キム・スヒョン(김수현) 2009-02-15 ドラマ 8 有栖川有栖 『絶叫城殺人事件』 절규성 살인사건 チェ・ゴウン(최고은) 2009-03-02 ミステリ 9 有栖川有栖 『46番目の密室』 46번째 밀실 チェ・ゴウン(최고은) 2009-03-15 ミステリ 10 津原泰水 『ルピナス探偵団の当惑』 루피너스 탐정단의 당혹 コ・ジュヨン(고주영) 2009-03-15 ミステリ 11 乙一 『失踪HOLIDAY』 실종 홀리데이 キム・ソニョン(김선영) 2009-06-15 ミステリ 12 橋本紡 『月光スイッチ』 월광스위치 キム・ヘヨン(김해용) 2009-07-01 ドラマ 13 津原泰水 『ルピナス探偵団の憂愁』 루피너스 탐정단의 우수 コ・ジュヨン(고주영) 2009-08-25 ミステリ 14 荻原浩 『メリーゴーランド』 회전목마 キム・ソヨン(김소연) 2009-10-25 コメディ 15 我孫子武丸 『人形はこたつで推理する』 인형, 탐정이 되다 チェ・ゴウン(최고은) 2009-10-30 ミステリ 直訳:『人形、探偵になる』 16 我孫子武丸 『人形は遠足で推理する』 소풍 버스 납치 사건 チェ・ゴウン(최고은) 2009-12-15 ミステリ 直訳:『遠足バスジャック事件』 17 恩田陸 『ドミノ』 도미노 チェ・ゴウン(최고은) 2010-01-05 コメディ 18 湊かなえ 『贖罪』 속죄 キム・ミリョン(김미령) 2010-01-20 ミステリ 19 多島斗志之 『黒百合』 흑백합 キム・ミリョン(김미령) 2010-01-20 ミステリ 20 乙一 『小生物語』 소생 이야기 キム・ソニョン(김선영) 2010-02-10 エッセイ 21 米澤穂信 『儚い羊たちの祝宴』 덧없는 양들의 축연 チェ・ゴウン(최고은) 2010-03-25 ミステリ 22 北山猛邦 『『クロック城』殺人事件』 클락성 살인사건 キム・ヘヨン(김해용) 2010-04-05 ミステリ 23 薬丸岳 『虚夢』 허몽 ヤン・スヒョン(양수현) 2010-05-20 ミステリ 24 道尾秀介 『鬼の跫音』 술래의 발소리 キム・ウンモ(김은모) 2010-05-13 ホラー 25 佐藤友哉 『子供たち怒る怒る怒る』 아이들 화낸다 화낸다 화낸다 パク・ソヨン(박소영) 2010-06-15 ドラマ 「19禁」指定 26 我孫子武丸 『人形は眠れない』 인형은 잠들지 않아 チェ・ゴウン(최고은) 2010-06-22 ミステリ 直訳:『人形は眠らない』 27 矢部嵩 『紗央里ちゃんの家』 사오리의 집 キム・ヘヨン(김해용) 2010-09-15 ホラー 28 山下貴光 『屋上ミサイル』 옥상 미사일 キム・スヒョン(김수현) 2010-09-20 ミステリ 29 佐々木譲 『廃墟に乞う』 폐허에 바라다 イ・ギウン(이기웅) 2010-11-01 ミステリ 30 篠田節子 『仮想儀礼』 가상의례 上巻、下巻 キム・ヘヨン(김해용) 2010-11-17 ドラマ 31 佐々木譲 『制服捜査』 제복수사 イ・ギウン(이기웅) 2011-02-01 ミステリ 32 有川浩 『クジラの彼』 고래 남친 キム・ミリョン(김미령) 2011-02-28 ロマンス 33 米澤穂信 『追想五断章』 추상오단장 チェ・ゴウン(최고은) 2011-03-15 ミステリ 34 佐々木譲 『暴雪圏』 폭설권 イ・ギウン(이기웅) 2011-03-25 ミステリ 35 我孫子武丸 『人形はライブハウスで推理する』 라이브 하우스 살인 사건 チェ・ゴウン(최고은) 2011-05-15 ミステリ 直訳:『ライブハウス殺人事件』 36 薬丸岳 『闇の底』 어둠 아래 ヤン・スヒョン(양수현) 2011-05-20 ミステリ 37 伊坂幸太郎 『オー! ファーザー』 오! 파더 クォン・ヨンジュ(권영주) 2011-07-20 ミステリ 38 梓崎優 『叫びと祈り』 외침과 기도 キム・ウンモ(김은모) 2011-08-10 ミステリ 39 ハン・ドンジン 『血の絆 京城探偵録2』 피의 굴레-경성탐정록 두 번째 이야기 - 2011-10-25 ミステリ 韓国オリジナル作品 40 曽根圭介 『鼻』 코 キム・ウンモ(김은모) 2011-11-15 ホラー 41 小林泰三 『密室・殺人』 밀실・살인 チェ・ゴウン(최고은) 2011-11-25 ミステリ 42 馳星周 『不夜城』 불야성 イ・ギウン(이기웅) 2011-12-15 ミステリ ハン・ドンジン『血の絆 京城(けいじょう)探偵録2』は、2009年刊行の『京城探偵録』に続く第二短編集。このシリーズの詳細は以下のページを参照のこと。 1930年代の朝鮮京城を舞台にしたシャーロック・ホームズパスティーシュ『京城探偵録』 2012年 既刊道尾秀介『球体の蛇』 有栖川有栖『ダリの繭』 小林泰三『大きな森の小さな密室』 桜庭一樹『製鉄天使』 刊行予定米澤穂信『折れた竜骨』 恒川光太郎『草祭』 連城三紀彦『造花の密』 曽根圭介『藁にもすがる獣たち』、『熱帯夜』 馳星周《不夜城》シリーズ第2作、第3作 有栖川有栖『暗い宿』 小野不由美『屍鬼』、『黒祠の島』 麻耶雄嵩『貴族探偵』 沼田まほかる『彼女がその名を知らない鳥たち』 小島正樹『武家屋敷の殺人』、 清涼院流水『コズミック』、『ジョーカー』 《BOOK HOLIC》 - サイト1、サイト2 《BOOK HOLIC》 Twitter - @bookholic_1
https://w.atwiki.jp/asianmystery/pages/250.html
2014年10月7日 このページは、今月初めに中国語の短篇ミステリ4作を翻訳・電子出版した稲村文吾さん(現代華文ミステリ翻訳部)にご寄稿いただいたものです。(Dokuta / 松川良宏) 稲村文吾さん Twitterアカウント (主に未邦訳の中国語ミステリの感想ツイート) 現代華文ミステリ翻訳部 Twitterアカウント (主に中国語ミステリの翻訳出版についての告知ツイート) Index 主催者挨拶 「人体博物館殺人事件」御手洗熊猫(みたらいぱんだ、ユーショウシー ションマオ) 「おれみたいな奴が」水天一色(すいてんいっしき、シュイティエンイースー) 「バドミントンコートの亡霊」林斯諺(りんしげん、リン スーイェン) 「犯罪の赤い糸」寵物先生(ミスターペッツ) 主催者挨拶 はじめまして、中国語のミステリを読み、日本で紹介する活動を行っている稲村文吾と申します。今回はこの場をお借りして、新しく翻訳が発表される中国語ミステリのご紹介ができることとなりました。 作家の島田荘司氏が中心となった華文ミステリの振興活動や、このサイトをはじめとするネットでの草の根の布教などを通して、中国語圏においても盛んにミステリが書かれているということ自体は日本でもある程度知られるようになっていると思われます。しかし、その成果を日本語で読むことのできる機会はまだまだ多いとは言えず、また中国語を学んでいる方や中国語圏の文化に興味を持っている方の中でも、ミステリに関心を向ける方はあまり多くないというのが現状です。 それでも、私の乏しい読書経歴の中だけを見ても、紹介されるべきだと思える華文ミステリ作品にいくつも出会ってきました。そこで、現代の中国語ミステリの姿を日本の読者の方々により知っていただきたいと決心し、翻訳の許可を取るところから始まって、翻訳、編集、出版準備や広報と、多数の方々から様々なお力沿えを頂き、今回、短篇作品4作の翻訳をAmazonの提供する電子書籍出版サービス、Kindle Direct Publishingを通し出版する運びとなりました。 今回紹介する4作品、それぞれ作品のタイプは異なりますが、日本の読者からしても各々に大きな魅力を持った作品です。この出版を通して、多くの素晴らしい作品が紹介されずに眠っている、現代華文ミステリに意識を向ける方が一人でも増えればと思っております。 ※ Kindleストアで販売している電子書籍は、Kindle端末を持っていない場合でも、Android端末(スマートフォン、タブレット)やiPhone、iPadなどからアプリを使用して読むことができます。 【追記】2015年1月に「KIndle for PC」日本語版がリリースされ、PC等からも読むことができるようになっています。 『現代華文推理系列 第一集』(以下四作の合本版) (表紙画像をクリックすると、Amazonのページが開きます) 「人体博物館殺人事件」御手洗熊猫(みたらいぱんだ、ユーショウシー ションマオ) 原題:”人体博物馆谋杀案”(人体博物館謀殺案)、2008年初出 (表紙画像をクリックすると、Amazonのページが開きます) 作家紹介1988年生まれ。雑誌『歳月・推理』(岁月・推理)の編集者であった杜撰に見出され、島田荘司にオマージュを捧げた短篇「異想天開之瞬移魔法」(异想天开之瞬移魔法)でデビュー。不可能犯罪とそのトリックに強くこだわった作風が特徴。 作品紹介「人体博物館殺人事件」は第一短篇集『御手洗濁的流浪』(御手洗浊的流浪)に収録された作品で、若き芸術家「小栗虫子」が設立した「人体芸術の美術館」で二重密室殺人事件が起こる。執筆にあたっては『黒死館殺人事件』から影響を受けていたと作者が語っている。 本文サンプル pdfファイル / mobiファイル 関連ページ 中国のミステリ作家・御手洗熊猫の長編推理小説『島田流殺人事件』 中国ミステリ史 第五章 「おれみたいな奴が」水天一色(すいてんいっしき、シュイティエンイースー) 原題:”我这样的人”(我這様的人)、2008年初出 (表紙画像をクリックすると、Amazonのページが開きます) 作家紹介1981年北京生まれ、北京工業大学コンピュータ学部卒。2001年ごろからインターネットフォーラム「推理之門」などで作品を発表、2006年に雑誌『歳月・推理』が創刊されると2008年まで編集者を務めた。2009年には長篇『蝶の夢 乱神館記』が日本語訳され、これは『2011本格ミステリ・ベスト10』海外篇で14位相当にランクされる健闘を見せた。 作品紹介『蝶の夢』は唐代を舞台にした作品だったが、本作「おれみたいな奴が」は現代が舞台で、卑小な男の破滅を冷静な筆致で描く倒叙ミステリ。『歳月・推理』2009年9号に発表され、北京偵探推理文芸協会の主催する賞、第五回全国偵探推理小説大賽(2011年)において最優秀短篇小説賞を受賞したほか、北京師範大学教授の任翔氏が編集した『中国百年偵探小説精選』第八巻(2012)などのアンソロジーに採られている。 本文サンプル pdfファイル / mobiファイル 関連ページ 2011本格ミステリ・ベスト10 海外本格ミステリ・ランキング 中国ミステリ史 第五章 中国ミステリ史 第六章 「バドミントンコートの亡霊」林斯諺(りんしげん、リン スーイェン) 原題:”羽球場的亡靈”、2004年初出 (表紙画像をクリックすると、Amazonのページが開きます) 作家紹介1983年、台湾嘉義県生まれ。台湾推理作家協会会員。2002年に短篇「判決」(のちに「褪色的愛」と改題)を『推理雑誌』誌に掲載してデビュー。2004年に本作「羽球場的亡靈」で第二回人狼城推理小説賞を受賞。2009年に『氷鏡荘殺人事件』で第一回島田荘司推理小説賞最終候補、2012年に短篇「第五大道謀殺案」で、中国大陸の雑誌『歳月・推理』が主催する賞、華文推理大奨賽(华文推理大奖赛)第二等入選。現在は『歳月・推理』誌で特約編集員を務める傍ら旺盛に執筆を続けている。 作品紹介本作はシリーズ探偵・林若平が安楽椅子探偵を務める密室もの。受賞後に『野葡萄文学誌』14、15期に発表され、2007年に輔仁大学の学生によって映画版が作られているほか、Ellery Queen s Mystery Magazine 2014年8月号に "The Ghost of the Badminton Court" として訳載された。 本文サンプル なし 関連ページ 島田荘司推理小説賞 米国EQMM掲載の日本ミステリ 「犯罪の赤い糸」寵物先生(ミスターペッツ) 原題:”犯罪紅線”、2007年初出 (表紙画像をクリックすると、amazonのページが開きます) 作家紹介1980年生、台湾大学情報技術学部卒。台湾推理作家協会理事。2007年に本作「犯罪紅線」で第五回人狼城推理文学賞受賞。2009年には長篇『虚擬街頭漂流記』で第一回島田荘司推理小説賞を受賞し、これは日本語訳も出版されて『2011本格ミステリ・ベスト10』海外篇では12位相当にランクされている。 作品紹介本作は「運命の赤い糸」を操るという神「月下老人」の伝説を十年前の誘拐事件に絡め、ある夫婦の馴れ初めを描いていく軽快にしてサスペンスルフルな作品。中国本土の『歳月・推理』誌にも掲載され、同誌の8周年記念号や、任翔編『百年中国偵探小説精選』第八巻(2012)にも収録された。 本文サンプル pdfファイル / mobiファイル 関連ページ 2011本格ミステリ・ベスト10 海外本格ミステリ・ランキング 島田荘司推理小説賞 このアジアミステリを邦訳してほしい! (台湾編) 関連ページ 台湾ミステリ 読書案内 中国ミステリ 読書案内 東アジアミステリ邦訳一覧