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異世界へと渡って何か月過ぎただろうか。 まったく意識していなかったし、そんな風習まで共通するとは思ってもみなかった事態に遭遇した。 年末進行である。 思えば支店長が今月に入り急に「師走」などと口に出したあたりで気が付くべきだったのだが、 その時は地球側はもう12月なんだな程度にしか考えが及ばなかった。 年末年始は異世界の国ミズハミシマにも存在したのだ。 それはつまるところ、仕事納めという概念も存在する事を意味するのだ。 「支店長、書類決裁をお願いします。 旅程計画の案件が3と、渾月の金銭まとめがこちらです。 アユさん。七番書庫からウマハレ旅程の資料を持ってきて。 チキュージン!手が動いてない!その程度の仕事に時間かけすぎ。 あ!アユさん。それ終わったら八番書庫から行事一覧綴じ書を。 支店長、先日おっしゃっていました業務助手はまだですの?」 年末年始に休みたければ、それまでに仕事を全て終えねばならない。 仕事納めというヤツだ。 そうして今、ロブデ・コルテ女史はまるで嵐のように猛烈に仕事をこなし続けている。 しかもウマハレ初日の出ツアーまで立ち上げようというのだ。 異世界にも初日の出を眺める習慣があったのかと尋ねてみると、 ラ・ムールでは太陽神自ら元日に太陽を掲げて顕現するのだという。 そこでは大勢の人々が集まり、神に向かって攻撃を仕掛ける祭りが開催されるのだとか。 物騒すぎる。 「もう少し穏やかな初日の出があってもいいでしょ?」 ロブデ・コルテ女史はクスリと笑ってそう言った。 そこで同意したのが良くなかった。 お陰で、ただでさえ忙しい年末に仕事を一つ増やしてしまった。 「いやぁ、これでは大掃除まで手が回らないねぇ」 書類の山と格闘しながら支店長が言う。 その時、玄関ドアに取り付けた鐘がカラコロと音を鳴らした。 「失礼しますです。えぇと、ドリームジャーニー社ですよね? シオナンベ冒険者ギルドから派遣されてきましたです」 玄関からひょいと顔を出したのは、まだ10代前半くらいの少女だった。 特徴的なしっぽや皮膚のウロコから、鱗人なのは間違いない。 『冒険者ギルド』とは、ミズハミシマ行政府と提携して各町に置かれた窓口で、 ハローワークに有償ボランティア受付と観光案内所がくっついたような組織だと思えばほぼ正解だ。 彼女もおそらく1日銅貨10枚くらいの『クエスト』を受けてきたのだろう。 「おお、よく来てくれました。 私がここの責任者のカツラギです。 さっそくだけれども、事務所の掃除をお願いしようかな。 アユさ~~ん。ちょっとこの娘に更衣室の場所とか教えてあげて~ あとお茶をお願いします。熱いのを」 アユさんが奥の部屋からパタパタと書類を抱えてきて、娘の手をひいてパタパタと行ってしまった。 「はいチキュージン、また手が止まってる。 大掃除はあの娘にまかせて、こっちはこっちの仕事。 ウマハレツアーの募集要項とチキュー側への案内発送よろしく」 ロブデ・コルテ女史の手により、ドスンバタンと綴じ書が目の前に積まれる。 ああ、タバコを吸いたい。 しかし大切に吸わないと無くなってしまう。 地球産のものは何でも高すぎる。 15分ほど経っただろうか。 アユさんが鱗人の娘を連れて戻ってきた。 「おお、いいじゃない。それじゃあ、お掃除よろしくね」 支店長は笑顔で褒めていたが、こちらは絶句するしかなかった。 何故メイド服を着ているのか。というか何故ある。 確かに掃除するとなれば、この服装は問題ないかもしれない。 にしても異世界に何故この服があるのか。 「どうした。見たことがないのか? 元々はチキューの奉公人が着る服じゃないか。 こちらでも10年ほど前にスラヴィアから爆発的に広まったんだ。 ミズハでもスラヴ式の王道形式と、ツキヤマ式の2種類があるな。 そもそもミズハミシマでは・・・」 ロブデ・コルテ女史がミズハミシマの奉公人の歴史を得意げに話す。 もう完全に歴女決定だ。 半分聞き流しながら書類仕事を進める。 2時間ほど経ったろうか。 書類は全て終わり、つかの間の休憩時間。 屋上で地球産のタバコをふかす。 残数が少なくなってきており、若干心もとない。 伝書連絡用のイセカイリョコウバト(和名)のグルルルという鳴き声が響く。 そうだ。ここも掃除してやらなければ可哀想だな。 そう思っていると(タバコの方が優先順位が高い。慌てる事などない)、 メイド姿の鱗人娘がバケツとモップを持って屋上に上がってきた。 屋上の掃除に気づくとは優秀じゃないか。 「お疲れ様です。ここも掃除して問題ないんです? あ、ハトさんです。いつもお手紙ご苦労さまです」 鱗人娘は伝書鳩にも深々とお辞儀をした。 邪魔になっちゃあマズいな。 携帯灰皿にタバコを押し込んで立ち去ろうとすると、鱗人娘に話しかけられた。 「あの・・・ちょっとだけお話してもいいです?。 実は私、チキューに渡って暮らすのが夢なんです。 親戚がチキューのトツクニってところに住んでいましてですね。 私もそこに行ってみたいなぁって」 鱗人娘は目をキラキさせながら語った。 ここで、腐ったドブのような場所だと伝える必要もないだろう。 夢は夢のままでいたほうが幸せだ。 それに十津那学園に行けば知る事でもあるだろう。 この鱗人娘が入学できるかどうかまでは、わかりはしないが。 2本目のタバコに火をつける。 いや。 逆に、こちらの世界を腐ったドブだと思う者もいるのだろうな。 タバコの値段がクソ高い事だけは許せないものな。 鱗人娘が不思議そうにこちらを見るので、楽しいところだよ、とだけ伝えた。 休憩から戻ると、支店長もちょうど事務所に戻ってきたところだった。 「やあ皆、お疲れ様。お昼ご飯はまだだったろう。 今日は凄いご馳走を持ってきたよ。 ちょっと早いが、年越しソバといこうじゃないか」 支店長はそう言うと、紙袋からいくつかの容器を取り出した。 それは紛れもなく『カップそば』だった。 何という事だろうか。 異世界で買えば1個で軽く1週間分の食費が吹っ飛ぶ値段のソレが目の前にある。 しかも関東版の濃い口醤油味ではないか。 個人的には博多とんこつ味のラーメンが良かったが、それは贅沢と言うものだ。 ロブデ・コルテ女史は怪訝そうな顔をしているし、アユさんはキョトンとしているが、 彼女たちにこの感動は理解できまい。 「支店長、これは一体?食事をいただけるものと思っていましたが・・・」 ロブデ・コルテ女史はカップそばを手に取ってジロジロと眺めている。 「アユさん。お湯を沸かしてきてください。 さあ皆さんお待ちかね。 なんとたったの3分でお蕎麦を作ってしまうワザを披露しようじゃないか」 支店長はそう言うと、パッケージのビニール包装を破りはじめた。 鼻歌を歌いながらかやくの袋を切り、容器の中に丁寧に入れる。 ロブデ・コルテ女史も鱗人娘も、沸いたお湯を持ってきたアユさんも何も言えないでいる。 支店長はこちらを見ると、くちに人差し指をあててシーと言った。 インスタント麺の魔法の秘密は語ってはならぬようだ。 それにしてもお湯が沸くの早くないか? そう思ってアユさんの方を見ると、彼女もそれに気づいたようで、 「火精霊に助けてもらいました」とだけ言った。 アユさんがお湯を入れて3分。いい匂いがカップからにじみ出てくる。 ちなみに時間は地球から持ち込んだ砂時計で測った。 腕時計よりも原始的な分、持ち込みに関しては審査が甘いのだ。 「よーし出来たぞ。ほら皆で食べよう。 ロブデさんもアユさんも、キミもだ。 はい、トビハミさん。お掃除お疲れ様。これは地球の食べ物だよ」 支店長がそう言って鱗人娘のトビハミさんにソバを渡すと、彼女は酷く困った顔になった。 「あの・・・こんな高価なものはいただけませんです。 だって、今日はお掃除しただけですよ」 まさか彼女もこれが地球では貧乏学生の常食するものとも思うまい。 異世界では高額なのは間違いないのだが。 「心配しなくても大丈夫だよ。これ、タダでもらったものだから」 タダ・・・まさか。 容器をひっくり返して製造年月日と消費期限を確認する。 今日が期限だ。 「門自の知り合いから糧食を廃棄すると聞いてね。 本来ならば期間内に食べない事そのものが問題になるところで、極秘裏に処分する予定だったようだよ。 それをまあ、某門自出向陸将補にムニャムニャムニャってワケだ。 これ以上は他言無用だよ。いいね」 支店長はニヤリと笑ってそう囁いた。 「いただきまーす」 こちらの事はまるで無視して、アユさんが真っ先にハシをつける。 続いてロブデ・コルテ女史が。そしてトビハミさんが。 「おいしーい」「何だこの塩辛い食べ物は。汁も真っ黒でゲテモノすぎる!」「美味しいです」 二人が笑って、一人が眉間にしわを寄せながら食べている。 久々のカップソバをずずずとすする。 ああ・・・なんだか安心する味わいだ。 「食べ終わったらもう一仕事。皆で頑張ろうじゃないか!」 異世界に来て初の年末に、年越しそばを食べた。 お題:「仕事納め」「メイド」「年越しそば」「(火精霊)」 前→【カレワシの磯】 次→【】 面白いくらいに異世界テイストだけどどこにでもある小会社風景。のんびりとした空気が和む。事務員がいなくて挨拶客の応対に追われている身としてはアユさんやコルデさんがまぶしく見えるほしい -- (名無しさん) 2014-01-03 20 38 48 これでもかというくらいのコッテコテ会社の年末風景に物品の価値というテイストがしっかり効いてて面白い。日本食品の賞味期限はオーバーしたって大丈夫ですよと異世界で啓蒙したい -- (名無しさん) 2014-01-07 23 23 53 楽しそう!でも本当に普通に会社として営業しているね -- (名無しさん) 2014-01-24 23 36 35 異世界らしさと会社が混ざりあって面白い。ゴブリンはスーパー事務員 -- (名無しさん) 2015-04-21 21 30 34 名前 コメント すべてのコメントを見る
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#blognavi 午前中ラッキョウ畑の耕耘機作業で耕し終わりました。 午後から畝立てを予定していましたが雨が降り出し土がべたつき作業不能でした。 作業はストップしましたがまとまった雨が降ったので乾燥していた畑が潤い生姜やサトウキビが精気を取り戻しました。 あと2、3日雨が降らなければ散水しなくてはいけない状況だったので恵みの雨でした。 カテゴリ [日記] - trackback- 2011年07月29日 18 57 07 名前 コメント #blognavi
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迷いましたが、半月前でしょうか、少し雨が降っていましたが、暇を見つけては出かける「例の」ゴルフ練習場に知人と一緒に出向きました。 ゴルフというスポーツは少しお金がかかりますが、楽しいです。 我ながら悔しいのは、当日はなかなか思うようなスイングが出来ません。 実際、余裕があれば次回はドライブがてらあこがれのゴルフスイングの練習は毎日欠かさず素振りを繰り返しているのに不思議です。 よく経験するのは、たまにフックもするのですが、なぜかスライスが増えてしまいます。スタミナ不足なのでしょうか。メンタル面の影響でしょうか。 キャディーさんの中には、ボールを変えたらという声も聞きます。本当でしょうか。 ほうが基本的に自分のためになるでしょう。基本を見直したほうが良いでしょう。 希望としては、出来れば次はあこがれの北海道 旭川国際カントリークラブに高速を使って家族と一緒に行ってみようかな。
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驚くかもしれませんが、少し前に少し雨が降っていましたが、近くのあのゴルフ場にまたもや一人でプレーしに行ってみたのです。 少しくらいお金がかかっても、ゴルフプレーは楽しいスポーツです。 我ながら悔しいのは、当日はなかなか思いどおりのプレーが出来ない状況です。 実際、ゴルフスイングの練習は毎日庭で欠かさず素振りを繰り返しているのにわかりません。 よく経験するのは、前半は調子が良くても後半に崩れてしまうことが多いのです。集中力が途切れてしまいます。メンタル面の影響でしょうか。 キャディーさんの中には、ゴルフにはリズムが大切だという人もいらっしゃいます。ですが、よくわかりません。 はじめからチャンスがあれば次は宿泊旅行であこがれのゴルフスイングの基本を本気で考え直したほうが自分のためになるでしょう。 都合がつけば次は有名な茨城 石岡ゴルフ倶楽部に知人と一緒に出向きたいかな。
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こうず【登録タグ 【♂】 【えりー】 【かくとうタイプ】 【ナゲキ】 【擬】 【擬こ】 【擬/ちびっこ】】 最終更新日時【2012-02-04 21 52 07 (Sat)】 コウズ 親 えりー 種族 ナゲキ 性別 ♂ 年齢 ちびっこ 性格 いじっぱり 好き ダゲキ♂ミヨと遊ぶこと、修行すること 苦手 渋柿 口調 一人称:おれ 二人称:お前「ミヨ、早く行こう」とミヨよりも少し落ち着いた話し方です 得意技 なげつける、やまあらし 設定 ★ヌオー♀オウリの暮らす旅館の裏山に住んでいる子鬼。いつも野山を駆け回っている。 ダゲキ♂ミヨといつも一緒にいる。バラバラに行動しているときはケンカをしたとき。 オウリのために、雨が降ってきたら洗濯物をしまうこともある一方、濡れたまま旅館に上がりこんで畳を濡らすこともある。イタズラっこ。 補足 角があります。中央に1本です。髪の毛は少しかりあげっぽい感じ。 笑います。 寒いときは我慢します。服は後ろに×模様があります。 オウリよりも少し小さめ。見た目は10歳いくかいかないかくらいです。 コメント 名前 コメント 上へ
https://w.atwiki.jp/chroro/pages/17.html
《Eau 水の物語》 「嗚呼、まだ雨は降らないわねぇ」 「そうね、お母様」 《これは恵みを得ようとする一人の娘の領域》 【ナレのバック水の音】 何故この地には恵みが もたらされないのでしょうか 限りない砂の海 ただ一人で見てる 龍神様が消えてから この地に雨は降らない 流れる時が雨の雫に変わればいいのに [母ソロ] いつか見たあの雨の日 私の姉は消えてしまった 遺されていたのは… [娘ソロ] この地に雨が降らないならば私のこの身を捧げましょう 「ああ竜神様どうか私達を御救い下さい」 <娘は雨を降らす方法をさがしている途中ある昔話を聞いた> <それは十年前の悲劇、彼女の叔母であるサラが龍神の滝壺へ身を投げた すると龍神の滝から雲が沸き上がり雨が降ったという> <話を聞いた彼女は…> 「さあ捧げましょう身体を魂をなにもかも」 「それで死ねるなら本望よ」/「私は彼に殺されたの」(娘とサラを) 【水に飛び込んだ音】 《聖暦175年ある砂漠の村に洪水を起こすほどの雨が降った》 《その村に長く降り続いた雨はやがて地に吸われ砂漠の村を緑へ変えた》 《娘は眠り続けるだろう龍神の胸に抱かれて》 「さあいらっしゃい」 「ここは境界」 「僕と共に行きましょう」/「僕と共に逝きましょう」 イメージは『星屑の革紐』と『海の魔女』。
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#blognavi 昨日の大雨で野外作業は出来ませんので、作業場が乱雑になっているのを片付けました。朝からカンカン照りの晴天なので、午後から土の固い土手の草取りをやりました、傾斜45度高さ8Mぐらいあります、雨が降ってもすぐ流れ、土も硬いので草の育ちも良くないですが性質の悪い草?は小さくても花を咲かせ実がなるので見逃せません。斜度がきついので草刈り機は使えません、手で一本づつ抜きました。長いハシゴ使うので少し怖い思いしながらの作業となりました。夕方千葉から「さんしん」友達のMさんが遊びに来てくれました。女房と共通の友達でも有るので3人でユンタクが長引き、途中さんしんを弾きながら夜中12時過ぎまで語り合いました。遠方からの友達が来て一緒にさんしんが弾き語り出来るのはとても嬉しい事ですね。 カテゴリ [日記] - trackback- 2007年04月20日 01 02 23 #blognavi
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あめはまだやまない【登録タグ citro あ 初音ミク 曲】 作詞:citro 作曲:citro 編曲:citro 唄:初音ミク 曲紹介 citro 初音ミク第1作目。 ちょっと切ないノスタルジックな感じの曲です。3拍子。 歌詞 (ピアプロより転載) 空を仰げば 雲ひとつない そんな気分で 窓を開けたら 雨が降ってた しかも土砂降り サイアクだけど 今日はデートだ 待ち合わせ場所に着いて 右手に傘をさして待機 あの人はまだ来なくて ひとりぼっちの朝 メール打っても 返事が来ない 不安になって 携帯鳴らす 電池切れかな つながらないよ 天気予報は 昼過ぎに晴れ 向こう側の改札口 降りる人波確認して あの人はまだ来なくて 雨はまだ止まない (間奏) 待ち合わせ時間はもう とっくに過ぎてお腹も鳴る あの人はまだ来なくて ひとり震えていた 向こう側の改札口 降りる人波確認して あの人はまだ来なくて 雨はまだ止まない コメント 切なくて・・・、きれいな曲・・・聞いてて癒されました・・・ちょっと切なく素敵な曲で・・・もっといろんな人に聞いてほしい -- 麻里亜 (2011-06-24 07 42 42) 名前 コメント
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朝方はぽつぽつと降っていた雨が今現在、ざあざあという音に変わり本降りになっている。 この調子だと今日は一日中、雨が降り続けそうな感じかな……ま、それはいったん置いておこう。 「じゃ、いただきます」 「いただきます」 お昼休みを迎え、私は今日部室で梓と二人で昼食を共にしていた。 本当なら昼は屋上で一緒に食べようとしていたのだが今日はあいにくの雨で、それが朝から今に至るまで降り続いていて。 それで今日は部室の方で一緒に食べることにしたのだった。 「雨が降ってなければ、屋上で食べれたんですけど……」 「んー、けどしょうがないよ、今は梅雨だしさ。 それに部室で食べるっていうのも悪くないよ」 普段、放課後にみんなと騒いで楽しむ空気も好きだけど、こうして梓と昼に部室で二人きりというのはとても貴重な感じ。 これはこれで、なんだか良いなって思う。 「梓、よかったらこれ食べないか?」 「えっ、いいんですか?」 「うん。梓、好きだろ? 魚のフライ」 弁当箱をつつく中で、梓が魚系のおかずが好きなことを思い出し、今日の弁当のおかずの一つである白身魚のフライをつまみ梓の口元に差し出す。 「はい、あーん」 「あーんっ……はむっ、もぐもぐ」 「美味しい?」 「美味しいです!」 にこにこと笑みを浮かべながら、梓は美味しそうに食べてくれた。 やっぱり笑っている梓はこの上なく可愛いし、私としても嬉しく感じる。 「じゃあ私からはだし巻きたまごを」 「え、いいのか?」 「はいっ」 魚のフライのお返しにと、梓の方からはだし巻きたまごを私に差し出してくれた。 「先輩、あーん」 「ん、あーんっ……もぐもぐ」 「美味しいですか?」 「うん、美味しい!」 ありがたく頂くと、だし巻きたまごの甘味が口いっぱいに広がり、私は満面の笑みを返した。 「くしゅっ」 「梓?」 他愛ない話をしながら昼ご飯を食べ終え、互いに弁当箱を片付けていると、梓がくしゃみをして両手で自分の腕を軽くさすった。 「大丈夫? もしかして寒い?」 「あ、はい……今日はちょっと寒いですね」 そういえば昨日辺りまでは30度近い夏日が続いていたのに、今日の朝見た天気予報では昨日までと比べて10度近く下がるって言ってたな……肌寒く感じるのも無理はないかもしれない。 よし、昼休みもまだまだ時間残ってるしここは……。 「梓、ちょっとごめんね」 「えっ、澪せんぱっ……!?」 椅子から立ち上がり歩み寄ると、梓の背中とそして両足の下に腕を通し、ひょいと持ち上げる。 やっぱり梓の体は軽くて、少しうらやましいとも少し心配にも思う。 「せ、先輩、なにを!?」 「こら、暴れない。ソファに連れていくだけだから」 慌てふためく梓を腕に抱き上げたままソファに移動して座りながら、梓を自分の膝の上に横向きに下ろす。 「こうしていれば、寒くないだろ?」 「あっ……」 そのまま優しく包みこむように、梓を抱きしめる。 梓の髪からシャンプーのほのかな香りがする。 「澪先輩……あったかいです」 「私もだよ、梓」 最初はあたふたとしていた梓だが、しばらく抱きしめていると甘えるように私の体に抱きついてきてくれた。 梓の顔が目と鼻の先にあり、上目遣いで私を見上げる。 「梓」 「澪先輩」 真紅の瞳を見つめながら「キスしていい?」と視線を送ると、梓はそれを肯定するかのように静かに目を閉じた。体ごしに、梓の鼓動が早くなっているのを感じる。 梓も同じように、私の鼓動が早くなっているのを感じていると思う。 そうして私も静かに目を閉じて、 「ん……」 ゆっくりと、壊れものに触れるかのように、そっと梓の薄い唇に唇を重ねた。 「んっ……ん……」 「はん……ぁ……」 しばらく唇を離さず、梓の肩が震えはじめる所でいったん顔を引いて少しだけ離れ、ほんの数秒の後に再び口付ける。 そうしたキスを何度も繰り返している内に、梓の頬はすっかり赤く染まっていた。 「梓、顔赤いぞ」 「み、澪先輩だって赤くなってますよ」 「そっか、ごめん」 どうやら、私自身も梓とキスしている内にすっかり顔に熱が集中していたみたいだ。 「けどこれでもう寒くないだろ?」 「は、はい、むしろ暑いぐらいです」 「うん、それはそうだ」 「え?」 きょとんとする梓に対し、 「だって、私と梓の仲はいつだってアツアツだろ?」 「?!!」 そう言うと、梓の顔が一気に真っ赤になった。 「そっ、それはあの、そのっ」 「違うのか?」 「いえ、決してそんなことっ!」 真っ赤な顔のまま、再び慌てふためく梓。その様子が微笑ましくて、つい頬が緩んでしまう。 「な、仲が冷えてたら、キスなんてしないです……よ」 「そっか、よかった」 「もう、澪先輩ったら……」 よしよし、と髪を撫でると梓は嬉しそうに微笑む。 そしてお互いに再び温もりを感じ合うかのように優しく、柔らかく抱きしめ合う。 「好きだよ、梓」 「私もです、澪先輩」 ――校舎の外は雨が降り、じめじめとした空気だけど。 今、私達二人だけの部室は温かく、穏やかな空気を醸し出していた―― (FIN)
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サバイバル1日目 今、避難シェルターでこれを書いている。 こんな事でもしなければ気がおかしくなってしまいそうだ。 一体何が起こった? 突然「奴ら」が現れ、人を襲い、食い始めた。 最初は「宇宙戦争」のような、少々悪趣味なジョークだと思っていた。 だが、これは現実だった。「世界の終わり」が始まっていた。 軍隊の誘導に従い、なんとかこのシェルターへと逃げ延びる事はできた。 しかしろくな管理がされていなかったのだろう、避難民全員分の物資が用意されていなかったのだ。 すぐに物資は底を尽き、生存者達はシェルターを出て行った。 誰も帰って来なかった。 避難してから5日。もうここには私しか残っていない。 ハンターとして生活していた私は、シェルター付近の動物を狩ってなんとか食い繋いできた。 狩り、食べ、寝るだけの生活。助けも来ないだろう。動物も減ってきた。 もう限界だ。 ここを出て、街へ向かう。私はまだ死にたくない… 街はシェルターの南西にある。 シェルターのベンチを壊し、武器にするネイルボードを作成。 地下に残されていたバックパックも背負い出発した。 道中で石を拾っていく。こんな物でも投げれば武器になる。 しばらく南に進むと、「奴ら」…ゾンビを発見した。 白衣を着ている。元は研究者だったのだろうか? 茂みの近くで石を投げていたら、突然何かを落とした。 どうやら酸の入った容器を落としたらしい。 距離は離れているが、注意しながら石を投げ、茂みに入った所を殴り倒した。 すぐそばに研究者達が倒れていた。 既に亡くなっていた。気は引けるが、彼らの持ち物を漁る。 服や水、いくつかの物資を頂く。このIDカードは研究所で使えるのだろうか? 街のずっと北に研究所があるので、いつか行ってみる。 北西に向かい、家を探索する。 ゾンビ達に会わないよう、裏の窓を割って侵入。 しかし、音を聞きつけたのかゾンビ犬に襲われる。 動きが素早く、狙いが定まらない。なんとか倒したが、何箇所か噛まれてしまった。 窓の破片を掃除し、家の中に。 腕時計を見つけた。これでおおよその時間が分かる。 他には何も見つからない。ここを拠点とし、邪魔な荷物を置いていく。 カーテンは閉め、ゾンビ達に見つからないようにする。暗いがこの程度ならなんとかなる。 この手記を書くのにも大して支障はない。 現在午前10時。まだまだ余裕はある。 水を飲んで探索再開。家が3軒に家具屋があるので、今日中にこれらを調べてしまいたい。 南の家付近にはゾンビが多いので、北から始める。 何故か街の北東に地雷原があった。誰かが防御用に仕掛けたのか? ともかく使わせてもらう。ゾンビ達をおびき寄せて地雷を踏ませる。 解除の手間も省けて一石二鳥だ。 家は鍵がかかっていた。面倒なのでドアを破壊して入る。 食料、薬、ポット、バックパックを発見。 2個背負うと動きにくくなるので、コートを脱いでポロシャツのみになる。 一度拠点に戻り、腹が減ったのでスパムを食べる。まずい。やる気がでない。 外に出ると小雨が降っていた。濡れるとますますやる気が出ない。 濡れた体を拭くためのタオルが欲しい。布切れは用意できるが、縫うための道具がない。 骨を加工すれば簡単な裁縫道具を作れるので、動物を狩りに行く。 びしょ濡れになる。しかも酸性になる。とことんやる気が削がれる。 仕方ないので、家に置いてあったゾンビサバイバルガイドを読んで過ごす。 いつの間にか雨が止んでいた。この本は意外と面白い。 今後に備え、タオルの作成を優先。 街外れにいたイタチを狩って骨と肉を手に入れる。 ついでに落ちていた木の棒を加工し、これを使って肉を焼いて食べる。 久々に温かい物を食べることが出来た。 帰る途中、何故か犬2匹が喧嘩しながら追いかけてきた。 放っておいたら一匹が襲ってきた。気は進まないが、返り討ちにして肉を頂く。 もう一匹はどこかに逃げていってしまった。 拠点に戻り骨を削っていたら、何故か家に狐が入り込んできた。 うろちょろしてるだけなのでこれも放っておいたら、また襲われた。 仕留めて外で解体する。作業を再開し、ボーンニードルが完成。 糸を用意し、シートをナイフで切って布切れを作り、縫ってタオルも完成。 これで雨が降っても活動できる。 物音がしたので玄関を見ると、また狐が入ってきた。 ドアを閉め忘れていた事を思い出した。仕留めて解体。 雨が降り始め、辺りも暗くなってきたので今日の探索はここまでにする。 Henry Coleman Augustsにて あるハンターの手記・2日目