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「あ、熊井ちゃん笑った!もう元気?」 「うん、何か元気でた!」 千聖は目いっぱい手を伸ばして、自分よりもずっと大きい熊井ちゃんの頭を撫でた。 熊井ちゃんも熊井ちゃんで、ちょっと頭を下げて触りやすいようにしてあげながら、さっきの暗黒顔はどこへやらニコニコしている。 今鳴いたカラスが・・・と思ったけれど、2人が笑い合っているのは何だか可愛いから、そのまま黙って見守ることにした。 ――別の星の人、か。 熊井ちゃんはもう自分で言ったことも忘れて千聖とはしゃいでいるけれど、改めてその言葉を反芻しながら千聖を観察していると、私の中で燻っていた違和感がまた大きくなってきた。 千聖はこういうヒラヒラしたスカートは穿かなかったはず。 千聖はこんな凝ったメイクはしなかったはず。 千聖はもっと大きな声で笑ったり泣いたり怒ったりしていたはず。 「もー!熊井ちゃんウケるぅ!私そんなこと言ってないよー」 のけぞってケラケラ笑う時も、パンチラ防止に足に力が入っている。手はお上品に口元を隠す。 熊井ちゃんを見つめる顔が、何だかお母さんのように優しい気がする。 お母さんて、それじゃあ私と千聖は 「茉麻ちゃん?」 「キャラが被るじゃん!」 「・・・えっ?」 「あっ、ごめん。別になんでもないよ?」 いきなり話しかけられたから、うっかり変なことを口走ってしまった。 よく考えたら、キャラは被らないよね。だって私はお母さんキャラだけど、結構豪快だしガサツだし、今千聖がやってる感じとはまた違う。 「茉麻?キャラが被るって、誰と?」 あ、ヤバイ。熊井ちゃんの興味をひきつけてしまった。こうなると、熊井ちゃんは納得いく説明を受けるまですっぽんみたいに食いついて離れてくれなくなる。 「別にたいしたことじゃないよー。何か千聖とキャラ被ったりしてって思っただけ。」 「ははは、何でー?全然違うじゃん、ねー千聖?」 千聖もケタケタ笑っている。 「だよねー。何か今日の千聖がママっぽいから。でも何か、今日の千聖は女の子らしいからお嬢様ママって感じだね。」 ・・・・・・・・・・・・ あれ? 何か変なこと言ったかな? 千聖が目を見開いて、私の顔を凝視したまま固まった。 「え、ご、ごめん!まぁと被るとかやだった?」 無言で首を横に振る千聖。 「何か言っちゃいけないこと言った?」 「あ・・・ぁの」 急に、千聖の表情が変わった。 ギュッと眉間にしわを寄せて、何かに耐えるように俯いてしまった。 「千聖?ちょっと、本当にどうしたの?」 「ごめんなさい、私」 千聖はいきなり立ち上がると、廊下を走り出した。 「待って!」 私は筋力と瞬発力だけは結構ある。後を追いかけると、千聖はさっきまでいたトイレに駆け込むところだった。 「まーさー・・・待ってよー早いよー」 「先行くから!さっきのトイレね!」 くまくました喋り方と走りの熊井ちゃんをひとまず置いて、私は千聖に専念することにした。 「千聖!千聖!どこ?」 幸いなことに、個室は一個しか鍵がかかっていなかった。 ここにいるんだ。 私は呼吸を整えて、まずは小さくノックをした。 「千聖?ここでしょ?」 「・・・・・・ごめんなさい、私、大丈夫です。」 ・・・喋り方、違ってる。 何だか声も細くて、どう考えても別人だ。 でも今はそれより。 「ねえ、千聖。私なんか気に障ること言ったなら謝るよ。」 「あの、違うんです。茉麻さんは、悪くないんです。」 「まあささんて・・・」 いろいろ聞きたいことはあるけれど、これ以上刺激するのはよくない気がする。かといって、このまま放っておくわけには絶対いかない。 「いた!まーさ!」 そのうちに熊井ちゃんがヘロヘロになりながらもトイレに入っていた。 「千聖、いるの?」 「あっちょっ」 熊井ちゃんはいきなりドアをガンガンたたき出した。 「千聖?ごめんね、私が首絞めたから?」 「ひっ!・・・あの、本当に私、違うんです。友理奈さんのせいじゃありません。」 熊井ちゃんは千聖の言葉遣いに驚いて、怯えた子供みたいな顔になった。 「ま、茉麻・・・何で?ユリナさんって言われた。」 そういわれても、私にもわけがわからない。 「千聖、とりあえず、よかったら出てきてくれないかな。私たちも何が何だか。」 「う、うん。説明してほしいな。千聖。」 ついつい夢中になって、ちょっと大きい声で2人がかりの説得を始めてしまった。 長身の熊井ちゃんに、これまた体格のいい私が、トイレを囲んで騒いでいる。 ・・・・これ、はたから見たらいじめみたいに見えるんじゃなかろうか。 「ちょっと!何してるの!千聖がそこにいるの?」 悪い予感というのはあたってしまうものだ。 独特のキャンキャン声。 振り向くと、トイレの入口に腕組みをしたなっきぃが目を吊り上げて立っていた。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「あーっ千聖!」 舞美ちゃんの大声と何かが落ちた鈍い音に驚いて振り返ると、千聖が階段の一番下で倒れていた。 どうやらくすぐり合いっこをしていたら、バランスを崩した千聖が足を滑らせてしまったらしい。 雑誌の撮影が終わり、階段を降りていく途中の出来事だった。 「もー何やってんの」 まだ舞美ちゃんに笑顔の余韻が残っていたから、私はそのまままた前を向いて愛理とのおしゃべりを続行することにした。 でも「やだ、ちょっと・・・千聖動かないよ。」 「どうしよう、私・・・」 千聖と一緒に階段の途中でふざけていた舞美ちゃんが、みるみるうちに青ざめていく。 舞美ちゃんに抱きかかえられている千聖はピクリとも動かない。 「違うよ、マイが最後に千聖をちょっと押しちゃったんだよ。舞美ちゃんのせいじゃないよ。」 舞ちゃんの目に涙が溜まっていくのを見ていたら、つられて私も泣き出しそうになった。 栞菜も愛理もすごく動揺しているのがわかる。 えりかちゃん・・・はずいぶん前を歩いていたから「どうしたのー」なんてケーキをモシャモシャ食べながらのんびりこっちに向かってきた。 こんなことになるなんて・・・。 「とにかくさ、誰が悪いとかどうでもいいからマネージャー呼んでこよう?」 一番最初に冷静さを取り戻した愛理がそういうと。玄関の方に向かって走り出した。 そのとき「う~ん・・・」 千聖が短く声を漏らして、ゆっくりとまぶたを開けた。 「千聖!」「大丈夫?」「どっか痛いとこない?」 みんなが走りよって、千聖にいっせいに話しかける・ 「よかったぁ私千聖に何かあったらどうしようって・・・」 「なっきぃ泣きすぎだよ」 涙でほっぺたをぬらしている栞菜に突っ込まれたけど、私の涙は止まってくれなかった。 そんな私たちの顔を、順番にゆっくりと見つめながら、千聖は体を起こした。 「皆様、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。わたくしはもう大丈夫ですので、早くお家に帰りましょう。」 「千・・・聖?」 「それでは参りましょう、皆様。」 えりかちゃんの手から、食べかけのケーキが落ちた。 TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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ここではいろんな事でうちの子を比較します。 見る価値は切った爪くらいだと思う。 身長 1から順に高い順 順番 名前 身長 順番 名前 身長 01 宗司 184cm 02 赤彦 180cm 03 イザナミ 175cm 04 灯 173cm 05 天照 172cm 06 眼 170cm 07 兎吉 170cm 08 咲月 169cm 09 若 167cm 10 海祈 164cm 11 小春 153cm 12 夜鶴 150cm 13 瑞蘭 150cm 14 淡雪 145cm 15 愛依 145cm 16 木ノ影 142cm 17 琴嘉宵 141cm 18 雛小桜 140cm 学力 年齢に合ったテストをやらせた場合 平均点=国/数/英の平均点 ※小数点は四捨五入 順位 名前 平均点 順位 名前 平均点 01 瑞蘭 99点 02 兎吉 96点 03 宗司 93点 04 琴嘉宵 91点 05 咲月 89点 06 海祈 88点 07 愛依 87点 08 木ノ影 86点 09 眼 85点 10 天照 83点 11 若 76点 12 夜鶴 73点 13 イザナミ 72点 14 灯 69点 15 小春 51点 16 淡雪 43点 17 雛小桜 22点 18 赤彦 10点
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今日みたいに衣装合わせのみの場合は、メイクさんはつかない。 私はメイクが好きだから入念にやるけれど、キュートはわりとすっぴん派も多い。 今も鏡に向かっているのは、私以外は栞菜となっきぃぐらいだ。 乳液でベースを作って、私物のファンデを塗りこんでいく。 ふと自分の顔から目線をずらすと、鏡ごしに千聖と目が合った。 にっこり笑いかけてくれたのに、私の心臓はズキンと痛んだ。 取り繕うように唇をつりあげて微笑みを返すと、目を逸らしてまたメイクに没頭した。 ああ。ヤバい。 まためーぐーるーが頭をよぎった。 千聖のことを考えると、ひどく心が乱れる。 日傘なんかさしてしずしず歩く姿を見てちょっと楽しくなったり、お嬢様の千聖のちょっとした仕草に、前の千聖の要素を見出してなぜか落ち込んだり、自分でもわけのわからない感情に振り回されてしまう。 いったい私は、千聖にどうなってほしいのだろう。 前の千聖が懐かしいといっても、舞ちゃんのようにハッキリと「前の千聖に戻ってほしい」と思っているわけでもない。 かといって愛理のように「このままでいてほしい」というわけでもない。 自分の気持ちが自分でも理解できてないのに、千聖を助けるために動くというのはなかなか難しかった。 だから少し距離を置いて、千聖を、みんなを観察する側にまわった。 必要以上に接しなければ、表向きはいつもの梅田えりかでいられる。 きっとこの胸の痛みも、時間がたてば自然に解決する。 これは千聖は関係なく、私の個人的な問題。 そう割り切っていたのに、なっきぃには見抜かれてしまっていた。 「えりかちゃん、冷たい。」 さっきなっきぃに言われた言葉が、今更胸を刺し始めた。 なっきぃはストレートに物を言い過ぎるところがあるけれど、ちゃんと本質を見抜いて喋る子だ。 おそらくある程度は、私の心情を理解してくれているんだろう。 あーあ。気をつかわせたくないから目立たないようにしていたのに、上手くいかないものだ。 この分だと、千聖自身にも何らかの変化を感じ取られているかもしれない。 「えりかさん。」 あの子はなっきぃと似た意味で、周りの変化に敏感すぎるところがある。 「あの、えりかさん。」 「あーもう、ウチ本当だめだよー・・・ってうおおい!千聖!」 気がつくと、空いていた隣の椅子に千聖がちょこんと座っていた。 驚きのあまり、上の空で引いていたアイラインがものすごい太さになってしまった。プリンセステンコーか。 「ご、ごめんなさい。私ったら、驚かせてしまって。後の方がよかったかしら。」 「ううん。大丈夫。私がボーッとしててこんな顔にね。・・・どうかした?」 「いえ、あの・・・あの・・・」 何だか様子がおかしい。胸の前に手を置いて、私の顔を覗き込んだと思ったら目を逸らす。 「大丈夫だよ。ウチ、口は固いよ?」 とりあえず千聖の口元まで耳を近づけると、柔らかい吐息と一緒に、小さな声が耳に入り込んできた。 「あ、あの、下着が・・・」 「え?うん」 「さっき、下着が壊れてしまって・・・あの、それで」 ええええ? 「ど、どうしてよ。下着って、上の方だよね?壊れたってきょにゅ」 うになりすぎたから?とは口が裂けても言えない。相手はお嬢様だ。 「それで、あの、どうしたらいいのかと思って。」 「で、何でウチに?愛理たちでいいんじゃない?」 「あ・・・ごめんなさい。迷惑ですよね。こんなこと」 千聖は悲しそうにうつむいてしまった。 「千聖、違うの。ごめん。迷惑とかじゃなくて・・・なんていうか私の問題で・・・」 嫌な沈黙が流れた。 千聖に話さなきゃいけないことはたくさんある。 でも、私の心の葛藤を、ここで千聖にすべてぶつけるわけにはいかない。 優しい千聖は全て受け止めようとして、私と一緒に押しつぶされてしまうかもしれない。 よし。 「千聖。一緒に来て。見てあげますよブラでもなんでも!」 千聖の二の腕をガシッと掴んで、ドアを目指して進む。 言葉なんて、何の意味があるというのか。 ここは、うちの全力リーダーを見習うことにした。 「ちょっ、どこいくの?えり?ブラが何だって?」 「すぐ戻る!・・・あ、なっきぃ。」 「え?」 「さっきはありがとうね。」 なっきぃに、ウィンク付きで投げチューをしてみた。 返って来たオエッて声は聞こえなかったことにしようっと。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「・・・・ねえ。」 舞美ちゃんの家から仕事場に一緒に来た私は、楽屋の鏡の前でぼんやりしている千聖の横に立った。 「舞、さん」 「話があるから一緒に来て。」 腕を掴んで立ち上がらせて外に出ようとしたら、栞菜となっきぃが前にたちはだかった。 「ちょっと待って、舞ちゃん。栞菜も舞ちゃんに話があるんだ。ちっさーにも聞いてほしいから、ついていっていい?」 「舞ちゃん、私も。おとといの夜のこと、ちゃんと話したい。謝りたいよ。」 「2人とも、舞はちっさーと2人で話したいんだって。後でいいじゃないか。」 「でもっ」 ああ、そうか。 私がこの千聖のことをいじめるんじゃないかって、心配してるんだね。 無理もない。私は自分の感情にまかせて、かなりひどい仕打ちをしてきた。 挨拶無視にはじまって、一昨日はついに直接本人を責めた。 なっきぃはその現場にいたわけだし、栞菜の耳にだって入ってないわけがない。 愛理は私を睨んでいる。えりかちゃんは「舞美・・・」と何かいいかけて口を閉ざした。 皆にいじめっ子認定されちゃったわけか。でもそれも、自分の起こした行動が生んだ報いというやつなんだろう。 「別に、何にもしないよ。」 「でもさ、実際に舞ちゃんちっさーのこと」 「栞菜。早貴さん。」 その時、ずっと黙って私に手を引かれていた千聖がもたもたした口調で喋り出した。 「私も今舞さんと、2人で話がしたいわ。私が先ではだめかしら。」 「ちっさー・・・」 ちょっとボーッとしているみたいだ。顔色が悪くて隈が出ているから、寝不足なのかもしれない。 でも、はっきり「舞さんと話したい」そう言ってくれた。 「ごめん、もう行く。ちょっと時間がないんだ。」 「時間って、どういうこと?」 「ほらほら、舞がそう言ってるんだからちょっと2人にしてあげようよ。さ、行って。みんなは舞美のところに集合!」 ありがとう、お姉ちゃん。 きっと今回の事件について、みんなに話してくれるんだろう。 私も後でちゃんと、なっきぃと栞菜の話を聞かなきゃいけないな。 「こっち。ついて来て。」 ちょっと奥まった自販機の前に千聖を連れて行くと、 「おごって。」 と唐突に言ってみた。 「えっ・・・」 「前の千聖なら、舞におごってくれた。」 「・・・・ええ。」 千聖は困惑した表情で、ジュースを差し出してきた。 「舞の好きなやつだ。忘れてなかったんだね。」 「舞さんは、いつもこれを選ぶのよね。もちろん覚えているわ。」 微笑む顔につられて、つい表情を緩めてしまった。 この千聖と笑いあうなんて、これが初めてだ。 「・・・一昨日の、夜なんだけど。」 一呼吸置いて、私は本題を切り出した。 「ごめんなさい。舞が悪かったです。」 「舞さん、待って、頭を上げて。舞さんは悪くないわ。」 千聖の手が、私の手を包み込んだ。 「以前の私がどんな性格だったのか、自分ではわからないれど、本当に全く違うのでしょう? ずっと仲良くしてくれていた舞さんが、今の私を拒絶するのは仕方がないと思うの。 でもね、・・・たとえ舞さんが私を嫌いになってしまったとしても、私は舞さんが好き。 どうか、この気持ちだけは拒まないで。」 「もういいよ、わかったから。」 これ以上聞いていたら、また心が乱れてしまいそうだった。 動揺しているのをごまかしたくて、千聖の目元に手をやった。 「ひどい顔してる。また泣いてたんだ。あと、寝てないでしょ。顔色ヤバいって。」 「そん、なにひどい?」 「最悪だよ。アイドルなのに。 あの、さっきは、気持ちをきかせてくれてありがとう。だから、舞の話も聞いて。」 もう逃げない。 千聖の目をまっすぐに見つめながら、私は昨日舞美ちゃんと考えた事一つ一つを言葉に変えていった。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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【妄想属性】幼女シリーズ 【作品名】いろんな幼女 【メンバーリスト】いろんな幼女のメンバーリスト デリンジャーを持った幼女 たいまつを持った幼女 竹槍を持った幼女 サブマシンガンを持った幼女 木刀を持った幼女 ナイフを持った幼女 スタンガンを持った幼女 スパナを持った幼女 普通の幼女 チェーンソーを持った幼女 鞭を持った幼女 ショットガンを持った幼女 敏捷幼女 怪力幼女 堅牢幼女 硫酸を持った幼女 鎖分銅を持った幼女 催涙スプレーを持った幼女 2人の幼女 3人の幼女 5人の幼女 7人の幼女 10人の幼女 15人の幼女 30人の幼女 14万5296人の幼女 1363万4685人の幼女 1億2686万人の幼女 73億人の幼女 すべてが幼女になる あらゆる全てより多い幼女 半分の幼女 ハムの幼女 爪楊枝1000本を持った幼女 フラッシュライトを持った幼女
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明日も早いからもう一眠りしようか、と舞美ちゃんに言われて、一緒のふとんに入り込んだ。 さっきまでぐっすりだったからまだあんまり眠くはなかったけれど、すぐ近くに大好きな人のぬくもりがあるのは心地良かった。 「おねえちゃん。」 「ん~・・・」 呼んでみたけれど、舞美ちゃんはもうすでに寝付いてしまったみたいだ。 きっとすごく疲れてたんだろうな。全然関係ないのに私たちのゴタゴタに巻き込まれて。 もう一眠りなんて言ってるけど、舞美ちゃんはさっき寝ていなかったと思う。 私が目を覚ました時に寂しくないように、ずっと起きててくれてたんだ。 「ごめんなさい、おねえちゃん。」 私はこんなに子供で聞き分けがないのに、舞美ちゃんはそのことを咎めない。 その優しさが、今はどうしようもなく苦しかった。柔らかい棘で、心をつつかれているような気分だった。 朝になれば、もう少し落着いて考え事ができるかもしれない。 舞美ちゃんの匂いに包まれて眠ろうと思ったけれど、目を閉じればさっき夢の中で会えた千聖を思い出してしまう。虚しさが胸をよぎる。 「千聖に会いたい。」 何度つぶやいたかもうわからないけれど、また自然に唇から零れ落ちた。 がさつでお調子者で子供っぽかったけれど、誰よりも優しかった千聖。 どれだけ無神経な振る舞いをしても、勝手なことを言っても、千聖は私を見捨てないでいてくれたのに。 前の千聖に会って、ごめんねを言いたい。 顔中ふにゃふにゃにして、「舞ちゃんもういいよぉ」って笑ってほしい。 もう二度と、元気な千聖に会えなくなるなんていやだ。 「会いたい。」 私はピーピー子供みたいに泣くのは嫌だ。 キュートはみんな結構泣き虫だけど、自分だけは違うって思っていた。 でも、千聖のこととなると別問題だ。 なっきーの前で泣いて、舞美ちゃんの前で泣いて、「あの千聖」の前でも大泣きした。 今もすでに涙腺が決壊しそうになっている。 「ちさと・・・・・」 「舞。」 その時、私の肩に大きな手が触れた。 カッと目を見開いた舞美ちゃんがそこにいた。 「ひぇ・・・」 情けない声が出た。 「・・・・・」 私の名前を一度呼んだきり、舞美ちゃんは微動だにしない。 舞美ちゃんは喜怒哀楽のでやすいタイプだから、顔を見れば大体機嫌がわかった。 なのに今私を凝視するその顔からは、何も読み取れなかった。 美人の無表情って、すごく怖いかもしれない。 5分、10分、空気が凍りついたまま、時間がすぎていく。 「よし。」 何がよしなんだかわからないけど、舞美ちゃんはおもむろに立ち上がって、部屋を出て行った。 しばらくすると、何が言い争うような声が聞こえてきた。 “でも今じゃなきゃ” “こんな時間に非常識だろ” 何の話をしているんだろう。耳を欹てていると、勢いよくドアを開かれた。 舞美ちゃんの目が異様にキラキラしている。 「舞、行こう。」 「え、ちょっと待って。行こうって、どこに?」 舞美ちゃんに強引にTシャツを剥ぎ取られ、着替えさせられる。 そして、信じられないことを言われた。 「今から、ちっさーの家に行こう。」 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
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「・・・あぁ、そうか。3分ぐらいが限界だった。」 3分?何のことだろう。 愛理は眠る千聖にも泣きじゃくる私にもそんなに驚いてないみたいで、いつもと変わらない口調で「飲む?」とペットボトルを差し出してきた。 「ありがと。」 私が麦茶に口をつけている間、愛理は何にも言わずに千聖の髪を優しく梳いていた。 苦しそうだった千聖の表情が少しずつ和らいで、寝言も収まってきた。 「すごいね、愛理。千聖辛そうにしてたのに、愛理が来ただけで落ち着いてる。」 「私も最初はどうしたらいいかわからなかったんだけど、お泊りのときとかこういうこと何度かあって、それでいろいろ試してみたの。頭に触れられると安心するみたい。 それより、梨沙子は大丈夫?」 愛理は千聖の顔を見つめたまま、私に話しかけてきた。 「あ、うん。お茶飲んだら落ち着いた。」 「そっか。」 その後しばらくの間、私と愛理は黙って千聖の頭を撫で続けた。 いっぱい話したいことはあるけれど、何をどう言ったらいいのかわからなかった。 愛理は私と違って、困ったり傷ついたりしてもあんまりそれを表には出さない。 こういうデリケートな話の時は特に、知らないうちに愛理を追い詰めてしまいそうで怖かった。 同い年だけれど大人っぽくて、とても優しい愛理。 できれば困らせたくないけれど、このまま黙り続けているのは辛い。 私は千聖の髪を滑る愛理の指を掴んだ。 目が合った。 愛理はいつもどおり、穏やかで優しい眼をしている。 「梨沙子、ごめんね。」 「えっ」 愛理の手が、千聖から離れる。 そのまま、私の肩を優しく抱きしめてくれた。 「気づいてたんだよね、梨沙子。黙ってるの、辛かったでしょ。本当にごめん。」 何のことかなんて言わなくてもお互いに通じ合っていた。 「謝らないで。愛理は悪くないの。私が馬鹿だから、勝手に悩んでただけだよ。」 ああ、また気を使わせてしまった。 さっきまで平気な顔してたのは、これ以上私を刺激しないためだったんだ。 「本当に気にしないで。それよりも、私が千聖にしてあげられることがあったら教えて。愛理の言うことだったら、何でもやるよ。」 さっき思い切り泣いたから、今度は落ち着いて話すことができた。 「いいよ、梨沙子まだ調子悪いんでしょ?今はキュートで何とかできるから。」 「でも私だって、千聖のこと助けたい。だって愛理は、いつも自分のことより私とか、千聖のこととか、そっちばっかり優先してくれるでしょ。 私だって愛理の役に立ちたいもん。私たち、中2トリオでしょ。」 「梨沙子・・・」 それから私と愛理は千聖の側を少し離れて、ちっちゃい声で情報交換しあった。 キュートの楽屋に行く前から、千聖のお嬢様キャラについて知っていたこと。 ももにだけそのことを話してあること。 さっきプロレス技を仕掛けたのは、自分でちゃんと今の千聖のことを確認したかったから。 愛理は生真面目にメモまで取って、熱心に聴いてくれた。 「そっか、もう楽屋に来たときには知ってたんだね。キュート全員、慌てちゃったよ。ばれたらどうしようって。」 「多分、何にも知らなかったら気づかなかったと思う。千聖、演技するの上手いんだね。」 私がそう言うと、愛理はちょっと難しい顔になった。 「でも、そのせいで千聖を追い詰めてるとしたら」 「えっ」 私たちの目線は、眠っている千聖に向けられた。 まだ口をむにゃむにゃ動かしているけれど、もう怖い顔はしていないみたいだ。 「キュートの中で今、もとの千聖に戻って欲しい人とこのままでいい人とで意見が別れてるの。 前の千聖がいい人にとっては今の千聖の存在自体が許せなくて、その気持ちを直接千聖にぶつけてしまったこともあったらしいんだ。」 これは、多分舞ちゃんが千聖に謝っていたあのことだ。 「皆にはそこまで強く言ってないけど、私は今でもそのことが許せなくて。 もともと、私はどっちかって言ったらお嬢様キャラのままでいてほしい派だったのね。何か、前より共通点が見つかったり、気があったりしてたから。 でももうそんなことどうでもいい。ただ、最新の千聖の心を守りたい。 だから、今の千聖にとって不自然じゃない状態・・・・それがお嬢様なら、そのままでいたほうがいいんじゃないかって思ってる。 いくら上手に前の千聖を演じてたって、こうやってすぐに疲れちゃうよね。 夢の中でまで苦しいなんて、そんなのは可哀想だ。 でも私はさっき、梨沙子にバレたら困るからって、明るい千聖になって、梨沙子と接してって千聖に言った。矛盾してるよね。」 愛理はすごい勢いでまくしたてる。私は黙って、愛理の吐き出す言葉を受け止めてあげることしかできなかった。 戻る TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/chisato_ojosama/pages/456.html
前へ 来ると思ってた。うん、確実に。 けど本当の事は言えない。いや言っていいんだけど半分本当で半分嘘。 だってさ…… * * * 『犬飼ってるんだって? 名前はッ!!名前ッ!! っていうか飼い始めた時に教えてよ!!』 えりかちゃんのブログの回答の流れで(詳しくはブログで!)来たメール。 飼い始めた時にすぐ教えておけば良かったのかもしれないけど何となくメールする事が躊 躇われた。……っというか私からメールってしなくなった。 気にする様な仲じゃないのにね。強い“絆”でまだしっかりと結ばれてるのに。 「ねぇ、名前教えてだって」 足元にいる愛犬に声を掛ける。こげ茶で目を細めるとあの娘に似ている子。 ……それが名前を教えるか否かの悩みなんだけどさ。 「取り敢えず表向きの名前だけでいいよね」 ◇ ◇ ◇ “カゲツナ” お婆ちゃん家の猫が“マサムネ”だから有能な家臣だった片倉景綱からなんてのっちが聞 いたら喜びそうなこの子の名前の由来。その時はあの娘に似ているなんて全然思わなかっ た。 「ちょっとカゲ! 靴が履けないってば!」 一緒に散歩に行くのはほとんど私。それをカゲツナも理解しているらしく靴を履こうとす る度に足に纏わり付いてくる。私は何時もそれをボールを投げて気を逸らさせる事で何と かしてたんだけどこの日は違った。 「ほら! 取っておいでッ!!」 軽く投げたつもりのボール。けどそれは玄関を越し階段にまで行ってしまった。 そんな事はお構い無しで駆けて行くカゲツナ。ボールを咥えてこちらに戻って来ようとし た瞬間と私が振り返った瞬間がぴったり合って私はその光景を目の辺りにする。 カゲツナが……階段から落ちた。 その時に思ったのはカゲツナの事ではなく別の事。 慌てて頭を振って母親に階段から落ちた事を伝えると頭を打っているかもしれないからと 動物病院に連れて行く事になった。当のカゲツナは平気そうな様子だったけど念には念。 幸い異常はなさそうとの事で私が診療代を払いそのまま家に帰った。 けど異常があったんだよね。うん、思っている通りの事だカンナ。 それまではどうしようもない程のやんちゃっ子でいわゆるダメ犬の部類に入ってた。 トイレは覚えない。噛み癖はある。リードをぐいぐい引っ張る。etc… それが一変。物覚えが良く従順な子に。親はその事に関して喜んだのだが問題は私。 どうしても重なっちゃうんだよね。千聖と千聖お嬢様と。 気付いたらもう遅くて私だけの時はチサトと呼ぶようになっていた。って言うかチサトっ て呼んだ時の方が反応が良いのも困るんですけど!? 「チサト。お手!」「ワン!」 「チサト。おかわり!」「ワン!」 「チサト。伏せ!」「ワン!」 「チサト。チn(略)!」「ワン!」 愛理並の妄想力を持っていた事もあってか最近だと犬の着ぐるみを着た千聖お嬢様に脳内 変換されるようにまでなってきちゃったし。 いや、まぁ、それはそれでおいしいんだけど♪ ◇ ◇ ◇ 「カゲツナだよっと。ほらカゲ、写真も一緒に送るからこっち向いて」 「………」 「チサト」 「ワン!」 次へ TOP
https://w.atwiki.jp/stairs-okai/pages/311.html
翌日。 「舞、何か元気ない?」 「え?」 最近はほぼ毎日あるゲキハロの稽古終わりに、私のお姉ちゃんこと舞美ちゃんが声をかけてきた。 「・・・伝わっちゃった?お姉ちゃんいつも鈍いのに」 「なんだとー!一言多いんだから、舞は!お姉ちゃんは悲しいよ!とかいってw」 舞美ちゃんの大きな手が、私の髪を優しく梳く。 「ちっさーとケンカしちゃった?」 ――おお。そんなことまで感づかれてるとは。 「さっき、私とちっさーがふざけっこしてた時、ちっさーが舞に話しかけたのに、聞こえないふりしてたでしょ。いつもの舞なら、ちっさーが話しかけた時すっごい嬉しそうな顔するのに。」 「・・・そう、かな。」 「そうだよー。」 そう言って、舞美ちゃんが視線を上げた先には、隅っこのほうでえりかちゃんと雑誌を見て談笑している千聖の姿があった。 “赤レンガ倉庫が・・・”“中華街が・・・” 漏れ聞こえる声を拾ってみたところ、やっぱり横浜デートのお話をしているところらしい。 ふいに、えりかちゃんが千聖に何か耳打ちする。からかうような内容だったのか、千聖は恥ずかしそうに首を横に振って、眉を寄せた顔でもじもじしている。 ――あ、まずい。昨日の妄想を思い出してしまった。首の後ろが熱くなる。 “そんなことやめて、舞さん。はずかしいわ” 「あー!もう!」 その妄想から意識を逸らすべく大声を出してみる。 「舞、怖ーい!」 「だって・・・」 「えりにちっさーを取られちゃいそうで怖いの?」 まったく、お姉ちゃんは普段はありえないぐらいの天然っぷりをかましてくれる人なのに、時々こうやって人の痛いところをクリーンヒットでえぐってくる。 「もう、お姉ちゃんてさぁ」 「でも、ちっさーは舞のこと大好きだと思うよ。」 舞美ちゃんはくったくのない顔で、ニカッと笑いかけてきた。 「・・・本当に?」 「うん。だから、早く仲直りしちゃいな。2人がケンカしてるとね、キュート全体が暗ーくなっちゃうんだから。」 「でも、何て言ったらいいのかわかんない。舞の逆ギレが悪いんだけど、千聖は舞が何にキレたのかわかってくれないと思う。・・・違う、本当はわかってもらいたくないのかもしれない。せっかく千聖が謝ってくれてるのに、これじゃいつまでたっても仲直りできない」 仲直りはしたいけど、千聖と向き合うことで、千聖の気持ちのありかを再確認したくない。だけどそんな都合のいい話があるはずもない。 「うーん。むずかしいけど・・・・・・とりあえず、謝っちゃえば?難しいことは抜きにしてさ。」 少々難しい顔で黙り込んでいると、お姉ちゃんは私の肩を抱きながらそう言って微笑んだ。 「でも、でもさ」 「だって、ちっさーも舞と仲直りがしたいんでしょ?舞もそうなんでしょ?だったら、難しいことはおいといて、一言“ゴメン!”で。それでもだめなら、ゆっくり話せばいいじゃないか。あんまり頼りないかもしれないけど、私もできることがあれば協力するから」 「お姉ちゃん・・・・」 舞美ちゃんの背中に、後光が射している。なんだかんだ言っても、それこそ千聖がお嬢様化する前から、私たちのケンカを仲裁してくれていたお姉ちゃんなんだ。その一言だけで、私の心はだいぶ軽くなった。 「おねーちゃん、大好き!」 ひざに飛び乗って、猫みたいに体をすりつけて甘えてみる。 「なーに?甘えん坊モード?とかいってw」 本当に、舞美ちゃんの言うとおりだ。 いろいろ理由をつけてみたところで、行き着くのは「仲直りしたい」ただそれだけ。 「ちゃんと仲直りするからね。」 「そうそう、その調子!それにしても、なっきぃも舞ちゃんもどうしてえりがちっさーと仲良くすると怒るのー?仲良きことはすばらしきことって言うじゃないか!」 ――それは、舞の口からはとても。はい。 ともあれ、私はこうして舞美ちゃんに背中を押してもらって、一歩踏み出すことができた。 ドッキリの計画もあり、千聖の身辺が慌しくてなかなか切り出せなかったけれど、バースデーパーティー当日、私は少々ルール違反をして、思い切って千聖に頭を下げた(事実上のプロポーズ付き。) お姉ちゃんの言うとおり、千聖は笑って謝罪を受け入れてくれた。そして、(あくまでも仕事上の話だけど)私を一番に選んでくれると暗に言ってくれた。 嬉しかった。天にも昇るような気持ち。だけど、ワガママな私はそこですべて満足するというわけではなくて。 「千聖。」 千聖のバースデーパーティの最中。 たくさんの人に話しかけられている千聖を、そっと輪の中から連れ出した。 「なぁに?舞さん」 「今日、このあと舞のうちに来て。」 「え・・・」 「お願い。あんまり遅くしないから。帰り、ママの車で送るから。」 実は、明日はゲキハロ初日だ。ゆっくり体を休めるように劇団の皆さんにも言われているけれど、こうなったら私はこのテンションのまま、すべて解決させて明日に望みたかった。 「・・・わかったわ。」 さすが、長年の相方。私の本気が伝わったらしく、ちょっと困った顔をしながらも承諾してくれた。 この時の私は、本当に、少し話し合って終わりにするつもりだった。ええ、本当に、そのつもりだったんです、神様。 前へ TOP 次へ コメントルーム 今日 - 昨日 - 合計 -