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金子千尋 44GL44Gt44GTIOOBoeOBsuOCjSAvIDE5ODPlubQxMeaciDA45pelIC8g5paw5r2f55yM 44Kq44Oq44OD44Kv44K5IC8g5YWI55m6IOOAkDIwMTNTRUFTT07jgJE= US34 体 696 速 560 威 648 変 688 制 616 精 600 総 3808 LvMax 体 1044 速 840 威 972 変 1032 制 924 精 900 総 5712 SS26 体 609 速 490 威 567 変 602 制 539 精 525 総 3332 LvMax 体 870 速 700 威 810 変 860 制 770 精 750 総 4760 S22 体 565 速 455 威 526 変 559 制 500 精 487 総 3092 LvMax 体 783 速 630 威 729 変 774 制 693 精 675 総 4284 備考: km/h 150 投打 右/左 編集
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金子千尋 44GL44Gt44GTIOOBoeOBsuOCjSAvIDE5ODPlubQxMeaciDA45pelIC8g5paw5r2f55yM 44Kq44Oq44OD44Kv44K5IC8g5YWI55m6IOOAkDIwMTNGSU5BTOOAkQ== US34 体 --- 速 --- 威 --- 変 --- 制 --- 精 --- 総 --- LvMax 体 1068 速 840 威 996 変 1008 制 960 精 948 総 5820 SS26 体 623 速 490 威 581 変 588 制 560 精 553 総 3395 LvMax 体 890 速 710 威 830 変 840 制 800 精 790 総 4850 S22 体 578 速 455 威 539 変 546 制 520 精 513 総 3151 LvMax 体 801 速 630 威 747 変 756 制 720 精 711 総 4365 備考: km/h 150 投打 右/左 編集
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「ところで、その噂ってなんなの?」 セーラに椅子をすすめ、備え付けのケトルにわいたお湯で紅茶をいれながら、愛和が聞く。 「入学試験よ。あなた全教科満点だったって、みんなの評判だもの」 「ふーん。入学試験か……って、ええー!!」 いきなり大声を出してしまった。それほど驚きであったのだ。 「そりゃ、我ながらなかなかよく解けたと思ってたけど、満点なんて今初めて聞いたわよ!」 「そうでしょうよ。だって本来先生方しか知らないことだもの」 「じゃあなぜ知ってるの?」 こういうのを個人情報のろうえいとかいうんじゃなかっただろうか。 「そうね、漏れてるのよね、情報が。私の英文法の先生からね」 まあいいじゃないとセーラが笑った。あまりよくないと思うが。 「でも、それほど難しい問題だったかしら」 「難しいわよ。数学科のマドラスなんか、毎年解けない生徒が出るのが楽しみなマゾ問題出しては喜んでるのに。満点が出たからっていって私たちの学年全員に解かせて、難易度を確かめたりもしたのよ。まあ、私は解けたけどね」 日本でも有名な、論理的思考能力を図る問題である。 三人の若者が宿に泊まった。宿泊費をボーイに払った。千ずつである。 宿の主人が、若い奴らだからと五百を負けて、ボーイに返すように言った。 ボーイは、五百を三人で割ったら喧嘩になるだろうし、自分の懐に二百入れてしまった。 さて、百ずつお金を返された若者は一人あたり九百を払ったことになる。合わせて二千七百。ボーイがとったお金を加えると二千九百。おや、百足りないぞ? さて百はどこに消えたのか。 まあ、こんな問題である。愛和は昔読んだ頭の体操的な本を思い出しながら図解も付けて丁寧に答えてやった。それが意外とほかの人には解けない問題だったらしい。 「私の周りでも解けてたのは半分もいなかったわよ」 ため息一つセーラが天を仰いだ。 「それよりも私にとっては英文法やフランス語の方がむずかしかったわ」 日本人であれば高校生どころか、多くの大学性でもなかなか難しいはずだ。まさにこれぞパズル。問題文を読解することからが試験です。 「たしかにね。異国語はむずかしいわね。私だってさっぱりわからない問題だってあるわよ。フランス語なんて特にね」 セーラはくすりとわらって、それにしても。と続ける。 「あなた英語本当に上手ね、誰に習ったの?」 「死んだ母に。外国語を学ぶ方法とか、全部教えてもらったの」 「それはステキなお母様だったのね。私も会ってみたかったわ」 心底残念そうにセーラがいうものだから、愛和はなんだか嬉しくなった。 「ありがとう! 実は後妻がいるのだけれどね、家事育児全般ダメ。日本じゃハウスキーパーもあまりいないし、無駄に高いしで頼めないから、結局私が全部家事とかしなきゃいけなかったの」 「あらら。じゃあ、もしかして家から逃げ出す感じでセントローズに?」 「そ、そんな感じ。父も仕事第一であんまり家に居着かなかったしね。正直者すぎて人を疑えないのよ。だから後妻にも騙されるし、私もここにいるし」 冗談めかして言うと、セーラも笑った。 「でも、大丈夫なの? 家開けてきても」 「大丈夫よ、父の両親、私のおじいちゃんとおばあちゃんに月に一回は顔を出してくれるように頼んだし。いろいろ協力してくれたのよ」 「いいわね、それなら安心だわ」 と、そこまで話が進んだとき、控えめにドアをノックする音が聞こえた。部屋のぬしである愛和がはいと返事をして扉を開けた。 「えっと、アイナ、た、タツマチさんですか?」 背丈の低い青い瞳のお人形を体現したような可愛らしい女の子が、ひらひらとしたピンク色の服をまとって立っていた。 「ええ、そうよ」おずおずときくその様子が可愛らしくて頬が緩む。 「同室のアリス、アリス・サンヴィターレと言います。よろしくお願いします」 ワンピースの裾をつまんで頭を下げる。 「あら、そうなんだ。私はアイナ・タツマチ。って、もうしってるね。よろしくお願いします。とりあえず部屋に入りなよ」 愛和の言葉に頷いて、招かれるままに部屋に入ったアリスは、しかし部屋の奥、椅子から立ち上がったセーラの姿に足を止めた。 「て、天使様?」 電気をつけていない部屋に差し込む午後の光がちょうどセーラの立つ位置をスポットライトのように切り取っていたのだ。 「私はセーラ。よろしくね、アリス」 差し出された手に答えるようにスポットライトに入るアリス。握手をする二人が金銀に輝いて、それこそ二人の天使のように見えた。 「うわお。目に幸せだわ」 愛和がのほほんとすると、二人が揃えたように振り向いた。 「あなた、自覚してないでしょう!」 「くすみのない黒髪! 夜色の瞳! あなたこそ東洋の天使です! 二人部屋に相応しいエンジェルです!」 二人に言われて愛和がたじろぐ。 ――こんなんでも実際愛和の学園生活を大きく華やがせる出会いであるが、本人たちに全く自覚はない。 戻る 進む .
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まず現れたのは先程の団長だ。 相変わらず玉に乗っているが、シルエット的に上下をひっくり返してもわからないだろう。 団長は玉に乗ったまま器用に礼をする。 「お集まりのーォ皆々様ッ! よーォこそパキャルコサーカス団のショーへッ! ワタクシ、団長のパキャルコです」 団長の名前だったんだ。変な名前。親も考えて付けろ。 ネトシルもエルガーツも旅人も思った。というか会場中が思った。 そして当のパキャルコはそんな事慣れっこだった。 漂う憐憫の空気を意に介さず口上を続ける。 「これより! ワタクシども始めますのはァ、驚天動地のサーカスにィィございマス!」 何度も上げている口上だからか、言葉の端々に妙な節回しがついてそれだけで少し滑稽だ。 ふと、旅人が無言でエルガーツの肩をつついた。顔を向けると、サーカス小屋の外で売っていた果実飴を三つ持っている。どこまでも用意の良い事だ。 うち二つを渡し、顎でネトシルにも、と示した。ネトシルは熱心に団長を見つめて口上を聞いていた。彼女もサーカスが初めてだからだろう。 同じように肩をつついて飴を渡す。ネトシルが顔を向けるとエルガーツの向こうで旅人が『僕からでーす』とばかり自分を指し微笑んでいた。エルガーツは突っ返すかなと思ったが、意外と嬉しそうに受け取り食べ始めた。 ……餌付けに弱いのか? エルガーツはそこはかとなく不機嫌になった。嫉妬、というよりは、難解なパズルに取り組んでたら、いきなり横から現れた人にサッと解かれた気分だった。 「以上が本日の演目デス! さて、口上はこれくらいに致しましてェ、それでは始めたいと思いマス! 皆々様、ごゆっくりお楽しみ下さい!!」 そうこうしている内に口上は終わったらしい。演目説明を聞き逃した事に彼は気付いたが、知らない方が面白いかも知れないと気を取り直した。そして、さっきの不機嫌はどこへやら、期待に満ちたわくわく顔になった。 外で団長が客寄せしていた時に演目についても言っていた事を、どうやら完璧に忘れているらしかった。 まず最初は曲芸。 壮麗なファンファーレと共に、きらびやかな衣装を纏った四人の女達が舞台の上に現れ、衣装の裾を閃かせ煌めかせながら様々な舞や雑技を披露していく。ある種艶めかしい動きに思わず「おぉ~」とか言ったエルガーツはネトシルに冷ややかな目をされた。 自分だってさっき下の人の掌のみを支えに逆立ちした人には目を輝かせてた癖に。思ったが口にはしなかった。 両手合わせて六枚もの皿を回したり、酒壜のような形の棒を互いに投げ合ったり、色とりどりの旗をかざして踊ったり、うっとりさせつつも次第に興奮が高まるような素晴らしい物だった。 しかし「うわー」だの「すごーい」だの「今の見た!?」だの隣の旅人程歓声を上げている人もいなかった。 正直ちょっとうるさいんですけど。エルガーツが横目で睨んだが、旅人は気付かないようだった。 その次の演目は手品だった。 燕尾服にシルクハットの出で立ちで現れた手品師が、帽子の中から、ハンカチの中から、燕尾服の裾から、懐から、何もない所から、いたる所からあらゆる所から純白の鳩を出してみせた。 ただ彼にとって不幸だったのは、飛び立って舞台袖に消えるはずの鳩達が全てネトシルに飛び寄って止まった事だ。 当然、騒然となった。 結局観客と手品師とその助手の全員に見つめられ、仕方なくネトシルが威嚇の気配を発するまで、鳩達はネトシルの頭や肩に居座り楽しげに「クルックー♪」などと鳴いていた。旅人はしきりに果実飴で鳩を呼ぼうとしていたが、見向きもされなかった。つくづく不憫な男だった。 髪の長い歌姫が、きらきらと光る素材のドレスを纏って歌い、誰も彼もが聞き惚れる。 化粧を施し奇抜な衣装を着た二人のピエロが、滑稽な動きで菓子を奪い合い、誰も彼もが笑い転げる。 短い胴着にたっぷりとしたズボンの異国風の服を着た男が、布を巻いた二本の曲刀を操り、誰も彼もが息を飲む。 あっという間に時間は過ぎ、とうとう最後の演目になった。 「それでは参りましょう、本日最後の演目にして我がパキャルコサーカス団の一番人気の見世物、 動物達のショーです!」 それを聞いた瞬間、にわかにネトシルの表情が変わった。今日一番目が輝いている。 爛々と。煌々と。炯々と。 再びファンファーレが高らかに鳴り響く。 可哀想な名前の団長に連れられ、二本脚で歩く、チョッキを纏った小熊が現れた。 舞台中央で小熊は台に乗り、団長と一緒に可愛らしくお辞儀をした。喝采の声が観客から上がる。 おもちゃ箱のような楽しく明るい音楽が奏でられると、ひらひらとした裾の短いドレスを纏った少女が二人現れ、裾をつまんで一礼した。それと同時に団長は舞台袖へ消える。 音楽に合わせ少女が右手を差し上げる。すると小熊も同じように右手を上げた。 少女がその手を振ると小熊も短い手を一生懸命振る。 その愛らしさに観客達は魅了された。 「きゃー!! 可愛いー!」「いやーん今こっち向いたっ!」「ね、ぱぱあたちくまさんほしい!」「クマちゃんこっちも向いてー!」「私にも手を振ってー!」「彼女にしてー!!」「結婚してー!!」「さらってー!!」 何か色々間違っている気がする。男性陣は同じことを思った。 少女達と手を繋いで小熊は楽しげに体を揺らし、最後は少女達がくるりとドレスを翻して回ると、その繋いだ手を軸に宙返りをした。それを見た観客の拍手たるや、まるで嵐の日の雨の音のようだった。 黄色い声は稲妻に匹敵した。 小熊は最後に観客全員に手を降りながら、退場して行った。 「いやぁ可愛かったねぇあのくまさん! もう何?! 焦げ茶色の妖精!? 踊るクマなんて初めて見たよー!! 凄いね、一家に一匹欲しいよね!」 あの手の振り方がさぁ、とかひたすら喋り続ける旅人に、エルガーツは耳栓を持っていない事を激しく後悔した。それでも、彼もかなり興奮したのは動かしようのない事実だ。 ふとネトシルをちらりと見る。 戻る 進む .
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⑤台風の過ぎた後のように 俺がいつものように人目を避けて訓練に集中していると、横の訓練装置に人が乗ってきた。こんな時間に珍しい。しばらく無視して自分の操作にかかりきりになっていたが、今度は隣の音が気になり始めた。何しろ、やたらレーザー弾の発射音がするくせに命中音がなく、戦闘機がやられたことを示すブザーが何度も聞こえてくる。要するにめちゃくちゃ下手くそ。いつもなら他も騒がしくて気にならないんだけど、今は二人だけだ。 俺は自分の機械の電源を落とすと、キャノピーを上げて隣を覗き込んだ。ちょうどブザー音が鳴り響いて、乗っていた人が頭を抱えた。横で俺が見ているのに気づいて、キャノピーを上げた。 「トレーンさん、戦闘機にでも乗る気ですか?」 俺は少しばかり呆れながら、それを表情に出さないよう気を使った。自分の足で歩いててもけがする人が、何で宇宙船なんか。 トレーンさんは眼鏡を押し上げて、照れたように笑った。 「いやねえ、リナさんがいなくなってから研究に張り合いがなくなっちゃってね。かと言って他の研究や仕事をする気にもなれないし。それでせっかく軍の駐留地にいるんだし、船の乗り方ぐらい覚えようかなあ、と思ってさ」 肩をすぼめながら言うトレーンさんを見て、俺は軽く息をついた。でも大勢の目の前でやってからかわれるのが嫌で、こうして人のいない時にやるって訳か。 「でも戦闘機の操作って難しいんだよね。これがエンジン速度切り替えレバーで、こっちが銃の強さ調節レバーだよね。で、このボタンは」 「ちょっと待ってください。最初っから逆です」 それからは、暇があるたびにトレーンさんに操縦を教えるようになった。飲み込みが悪い上に操作に手間取るせいで、上達は恐ろしく遅い。でもそのせいでこちらも必死に教え方を考えるようになり、次第に里菜の事を考える時間が減っていった。減ったというより、折り合いをつけられるようになってきた。 「こういう時は一旦八の字に操縦して、スペースのある所まで持ちこたえた方がいいです。いや、機体安定装置はこっちで――」 明かりがほとんど落とされた中で授業をしていると、背後でドアの開く音がした。顔を上げて振り向くと、ミラとマーウィが入ってきたところだった。アルタは最近別の基地の任務に就いたとかでほとんど見かけない。ミラが歩み寄ってきながら、俺たちの方を見てにやりと笑った。 「こそこそしないで、特別レッスンするんなら私達も誘ってくれればいいのに。教師は三人の方がはかどるよ。夕飯終わる度にどっかに抜け出してるから、何企んでるのかと思ってた」 どう答えるべきか迷っていると、マーウィが反対側から操縦席にかがみこんだ。 「燃料が切れかかってるぜ。ここは隙を見て母艦に引き返さねえと」 急に別の人にも操縦を見られたせいか、トレーンさんが焦った。操縦桿を回し過ぎて、あろうことか味方の機に衝突してしまった。次の瞬間画面がブラックアウトする。間抜けなブザー音が、静かな部屋に響いた。 「実戦じゃなくて良かった」 ミラが俺の後ろから茶化した。トレーンさんが眉を寄せて、珍しく勢いよく言い返した。 「よおし、もっと練習して上手くなってやる! そして実戦にも参加……はしないけど」 急にしょげかえって、梅干を食べた時のような、変な表情になった。それを見てマーウィが吹き出す。ミラも、つられてトレーンさんも、とうとう俺まで吹き出してしまった。笑い始めるとそのこと自体が面白くなって、しばらく腹が痛くなるまで、思いっきり笑い転げた。 「そうだ、今度アラル軍の基地に奇襲かけに行くんだけど、ティート(大斗のなまり)も来る?」 マーウィが笑い涙を拭きながら言った。俺はお腹を抱えながら、トレーンさんをちらりと見た。 「俺が行かなかったら、代わりにトレーンさんを連れてくのか?」 マーウィが再び笑い出した。ひいひい言いながら、もう勘弁してくれとか何とか言っている。トレーンさんはと言うと、ひどいなあとぼやきつつ、顔は笑っていた。 「じゃあ行くってことでいい?」 「おう!」 ミラに肩を叩かれて、俺は元気よく胸を張った。 「それから、ティートが部屋に持ち込んでる古パソコンの山、出てくる時何か変な音出してたよ。大丈夫?」 「うわっ」 俺は笑っていた顔を引きつらせると、トレーンさんたちそっちのけで訓練場から駆け出した。確か、受信したアラルの暗号データを分析させていたはずだ。あまり重要そうじゃなかったから油断してたけど、アラルがデータをハッキングしようとする人に対して、ウイルスか何かをしかけていたら! 戻る 進む .
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私はパネルに目をこらした。一つだけあがっていないレバーがある。きっとあれだ。 短剣を上向きに構えると、レバーを突き上げるようにゆっくりと短剣を上に動かした。 レバーが上がり、カチンという音がしたような気がした。 背後で機械音がして、冷たい風が、大量の雪と一緒に吹き込んでくる。気おされたように、弾の数が一気に減った。 「こっちに乗れ!」 大斗の声ですぐ横の戦闘機に飛び乗る。吹雪のせいで足元が不安定だけど、だてに雪国で育ってきたわけじゃない。 前の席で大斗が何やらいじってたけど、じきに低いエンジン音とともに宇宙船が動き出した。透明なカバーが頭上で動いて、吹雪を遮断する。 弾が何発か飛んできたけど、視界が悪いおかげで全部それていった。 「やっぱゲーセンも馬鹿にできねえな! アラル軍機のシューティングゲームそっくりだ!」 大斗が操縦桿を引きながら、エンジンの音に負けない声で叫んだ。 「よっしゃあ、一気に上がるぞ!」 その声は必死に逃げてるというより、ジェットコースターを楽しんでるかのように弾んでいた。背中が座席に押し付けられて、戦闘機はぐんぐん高度を上げていく。後ろを振り向いて見ると、既に基地は吹雪の向こうに消えて、追ってくる宇宙船の影もなかった。雪が横に降っている。風にあおられて、機体ががたがた揺れる。 少しは肩の力が抜けたけど……ちょっと吐き気がしてきた。ゲーセン仕込みの運転のせいかな……。 宇宙空間に出ると、大斗が機体の向きを水平に戻した。ボタンを楽しそうに、てきぱきと弾いている。 「おお、ハッキングした時の内容そのまんま。じゃあこっちがマップキーだな――」 発進の仕方といい今の手さばきといい、ハッキングした内容を全部覚えられるっていうのは本当らしい。不器用な私は黙って座っている事にした。 しばらくして、大斗の悩む声が聞こえた。 「一応、ワープできる場所を検索してみたんだ」 確かに目の前の画面には、地球を中心とした円とその中の惑星が映っている。 「問題あるの?」 私のセリフに、大斗がため息をついた。 「これは戦闘機なんだから、登録してある星はアラル軍に都合のいい場所、例えば軍の専用星なんかが多いはずだろ。うかつに飛べねえよ。それにのんびりしてもいられねえみたいだし」 後ろを振り向くと、日本列島のほうから点が近づいてくるのが見えた。戦闘機が追ってきたんだ。全く次から次へと! 「前からも来てる」 私は画面をじっと見た。星が登録されてない所に飛んで、そこに星があるのを期待するっててもあるけど、最悪どの惑星にも着けずに燃料切れなんて事もある。その結末は……あまり考えたくない。どうしたらいいんだろう。 「あと三十秒で射程距離だ」 大斗の焦った声がした。私は無意識のうちに手もとの短剣を握り締めた。 宇宙船の操縦席に座っている。任務もこれで終了だ。走査すると、画面に一つの惑星とその位置が現れた。時間も無いし、ひとまずここに行こう。ボタンを押すと、背中が押し付けられるような感覚と共に宇宙船がワープ空間に入った――。 「大斗! この位置に飛んで!」 私は画面に触れてその場所を呼び出した。この戦闘機のデータでは、星は存在していない。 「里菜?」 「いいから早く!」 大斗はつかの間迷っている表情を見せたけど、機械が接近警報を鳴らし始めたことで決心がついたらしい。ぐっと機体を暗い宇宙に向けて、ワープレバーを引いた。 戦闘機も地球も、色とりどりの線になって、消えた。 戻る 進む .
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関連ブログ @wikiのwikiモードでは #bf(興味のある単語) と入力することで、あるキーワードに関連するブログ一覧を表示することができます 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_161_ja.html たとえば、#bf(ゲーム)と入力すると以下のように表示されます。 #bf
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★用語解説(五〇音順) アト人…地球人に似た外見を持つ、アト星出身の人達。 アラル連邦…全ての星を束ねている組織。 エガル人…爬虫類のような鱗に覆われている、エガル星出身の人達。 オルキーラン…かつて存在した超能力を使う人々。八年前に滅びたとされている。 クラル…オルキーランが使っていた、自分の能力を引き出すための道具。短剣、長剣、腕輪、数珠など様々な形の種類がある。 クロリア…アラルに抵抗する組織。 ルシン人…地球人に似ているが、額に三つ目の眼、六本目の指、尖った耳を持つ。オルキーランが生まれた星の種族で、オルキーランのほとんどがルシン人だった。八年前にウイルスによって滅びた。このウイルスにはアラルが関係しているといううわさがある。 ★前回のあらすじ 十四歳の星崎里菜は地球でスクールライフを送る普通の中学生だった。 ある日、宇宙から未知の人類がやってきた。外見は地球人そっくりでもはるかに進んだ技術を持った彼らによって、地球人は広い宇宙を知るようになった。 しかしそれと同時に、里菜には危機が迫っていた。里菜が物置で見つけた短剣が、何故か政府のスパイに狙われていた。里菜は幼馴染でハッカーの早瀬大斗と共に地球を脱出する。 二人を保護してくれたのは、政府に反抗する組織クロリアだった。そこで里菜は、短剣がかつてオルキーランと呼ばれた超能力者が持っていた道具、クラルなのだと知る。 山火事をクラルの力で消し止めるなど能力を開花させていく里菜。しかし、大斗達宇宙船乗り達の留守に、里菜のいる基地が襲撃される。 大斗は里菜が死んだと告げられたのだが――。 Ⅳ銃か獣か 私は走りながら、対戦闘機用の銃を草むらに投げ捨てた。走るたびにホルダーに首が引っ張られて邪魔だ。腰から拳銃を抜いて、暗い森の中を進んだ。 私たちが守っていた入り口はあっという間に落ちた。元々こっちの兵や武器の数が負けてたせいで、ほとんど反抗もできずに散り散りになってしまった。そばにいたはずの仲間のミラとも、攻撃から逃げて走っているうちにはぐれてしまった。 巨大な木の根の間に滑り込むと、座り込んで息を整えた。手首の指令装置を見ると、避難場所と経路が表示されている。脱出用の宇宙船が用意されてる場所だ。 深呼吸をしながら立ち上がると、根っこを踏み越えて避難船に向かおうとした。 途端に足元の地面がはじけた。とっさに走って木立の中に逃げ込む。 「今度はアラル軍地上部隊のお出まし?」 私は小声でぼやきながら、銃の安全装置を外した。また光弾が飛んできた。私は転がるようにして逃げ出した。 敵がどのぐらいの数かは知らないけど、新兵一人でかなうような相手じゃないってことだけは確かだよね。かといってこのまま直接避難船に向かったら、撃ち落してくださいって言うようなものだし。 どうやって振り切るか考えているうちに、足元でぴしゃりと水音がした。驚いて一歩後ずさる。辺りを見回して、やっと状況が把握できた。 目の前に暗い池が広がっている。そしてその池は、目の前にそびえる岩壁に開いた洞穴の中に消えていた。 ミラたちが案内してくれた穴とは違うけど、地下水脈への入り口だ。もしかしたら、ここを通れば追っ手を振り切れるかも知れない。 腰の辺りに光弾がかすめた。何か機械の焦げる匂いがする。私は慌ててしゃがみこんだ。 銃を防水ケースに戻しながら、少し迷った。地下水脈には、勇敢な調査隊が真っ青になるほどの猛獣が住んでいるらしい。そんな所を通る必要があるんだろうか。 また近くで土がはねた。「あそこだ!」と言う声が遠くから聞こえる。まずい、居場所がばれてる。私は決心を固めた。敵に私一人で勝てるとは思えない。たとえ敵に投降したって、クラルが見つかったらたとえ素人オルキーランでも、きっと殺されちゃう。だったら猛獣だらけの湖に飛び込んだ方が、まだ生き延びられる可能性、ある、よね。 今は一旦相手から距離を取らないと。 辺りを見まわすと、ミラ達が教えてくれた木の実がなっている木があった。いくつかを手でむしる。一瞬中腰になって、遠くに向かって投げた。 木の実が割れたらしく、破裂音が大音量で鳴り響いた。アラル兵がそちらに走っていく足音がする。 今のうちに。私は息を吸うと、音を立てないように水の中に滑り込んだ。 進む .
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俺は部屋に駆け込むと、隅に小ぢんまりと押しこめられているパソコンをのぞきこんだ。マウスをいじって、すぐに安心して息をついた。何でもない、前からいかれてたデータの異常だ。いつかこうなるとは思ってた。俺は軽くキーボードを叩いて壊れたデータを消すと、肝心の暗号データを開いた。 こちらも大したことはなかった。アラル軍部向けに発信された、大統領の演説画像だ。立体画像を強引に平面の画面に映しているから、ボールの上に貼り付けたみたいに隅の方がゆがんでいる。本当は新しい立体映像装置がほしいけど、クロリアで生活してるとそうもいかない。こうやってスクラップ寸前のコンピュータを掘り出してくるのが精いっぱいだ。 俺はしかめ面をしながら床にあぐらをかいて、画像を再生した。 『――から、クロリアを倒すという君たちの信念はこの世界全体にとって有益となるはずだ』 耳に突っ込んだイヤホンから、大統領の力強い演説が聞こえてきた。それに合わせて画像の中で腕を振る。地球でもクロリアに来てからも、何度も見て、すっかり見慣れてしまった顔だ(ちなみに開かれた軍であるべきというロータス指揮官の考え方から、クロリアでは敵の情報を入手する事に規制はない)。 はっきり言ってしまうと、俺は最初ネシャト大統領をテレビで見た時、とてもいくつもの惑星を束ねる大統領だとは思えなかった。会見を待っている彼は小柄で、茶色の目がよくあちこちに動いていた。一見気の弱そうな男性で、固そうな黒い髪がそれを強調していた。 その印象が覆されたのが、彼とアメリカの大統領との会談映像だった。そこで話している彼の眼は意志の強そうな光をたたえていて、口調も聞いている人を圧倒させるような響きがあった。さっき言ったようなマイナスの特徴はその裏にすっかり隠れてしまう。つまり、周りに呼びかける時こそ最も彼の能力が発揮される場面だった。 今も演説台に立ってアラル軍に呼びかけるネシャト大統領はリーダーシップのある人間、という評判を見事に表していた。 「ティート、そんなの聞いててよく嫌気がささねえな」 その声に顔を上げると、マーウィが部屋に戻ってきて、コンピュータの画面を覗き込んでいた。手には食堂から拝借してきたらしいアルコール缶がある。俺はイヤホンの片方を取って答える。 「少なくともいい気分で聞ける内容じゃないけどさ。でも、この弁論術は尊敬に値すると思うぜ」 マーウィが賛成とも反対ともつかない顔で頷くと、俺の横に座った。 画面では、ちょうど大統領からカメラが切り替わり、後ろにいる高官たちを映しているところだった。マーウィがその中の一人を指差す。 「こいつだっけ、アラル軍を率いてる将軍って」 俺もその男を見ながら頷いた。 「たしか、クルナス将軍。大統領の腹心の部下って事で有名だよな。確かあの機械操縦の戦闘機開発を考えたのもこの人だったはずだ」 俺は口元で微かに笑いながら将軍の表情を見た。顔に出さないよう努力してるみたいだけど、眉間にしわが寄っているのが分かる。マーウィも缶を傾けて、楽しそうに笑った。 「さぞかしご不満だろうな。例の裏切り攻撃で、アラルは全然新型戦闘機を出せなくなっちまった。むしろそっちの製造にかかりきりになってたせいで、全体の宇宙船の数は少ないぐらいなんだってよ」 「ちょっと残念だな。俺たちの仕事が減る」 俺が冗談交じりに笑った。まさかそれが地球人のハッカーのせいだなんて思ってもみてないんだろうな。俺が出撃するたびにプログラムを書き換えてやってたのがよっぽどこたえてたらしい。 マーウィが俺の方を向き、不意にまじめな表情になった。 「ティート……」 俺が返事をする暇も無く、マーウィはすぐにいつもの明るい顔に戻り、パンと膝を叩いて立ち上がった。 「忘れるとこだった、作戦会議があるからお前を呼びに来たんだよ。早くしないと始まるぜ」 俺は分かった、と返事をしてパソコンの電源を落とした。アラル軍基地の前でこれをいじって、半泣きになっていた里菜の顔を一瞬思い出して、はっきりと自覚する前に消えた。台風が過ぎた直後のように、里菜に対する感覚はすっかり静まり返っていた。代わりにそのエネルギーがどこか別の場所、別の感情の中で燃え盛る炎のように動いている気がした。 里菜を殺した奴らを許しはしない。 続く…… 戻る 2011杏夏部誌に戻る .
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Ⅶオルキーランの修行 トゥスアに着いた次の日、私は昨日かなり疲れていたくせに、朝早くに目が覚めた。新しい環境で心が高ぶってるみたいだ。遠足とか修学旅行とかの前みたいに。部屋を見回したけど、ウィラ・ソルインの姿は無かった。 机の上に目をやると、お盆の上に朝食が用意してあった。横には小さなメモがある。定規で引いたような角ばった文字が、これまたきっちりと並んでいる。鉛筆で書いてなかったら、印刷かと思えるくらいだ。 『朝食後寮の入り口 村の案内』 これは、間違いなくウィラだ……。私の遠足気分は一気にテスト前の気分にまで落ち込んだ。 朝食の後ずっしりした心を抱えて寮の出入り口に行くと、相変わらずのしかめた顔で、ウィラが待っていた。 「あ、おはよう」 今日はよろしく、と言うつもりだったのに、ウィラは返事も待たずに歩き出してしまった。ちょっと、せっかくこっちが友好関係を築こうと努力してるっていうのに! 私は心の中で叫びながら後を追った。 ウィラが近くの建物全体を指差した。平屋の小ぢんまりとした家々だ。 「一般の家」 それ以上何も言わない。耐え切れなくなってこっちから口を開いた。 「一般ってどういうこと?」 「本部、寮、それ以外」 「……あ、オルキーラン以外の人が住んでる家ってこと?」 「ん」 全部がこんな調子だった。こっちはキレそうになるのを何度もこらえる事になった。 ウィラの案内で改めてこの村を見て、規模の小ささに驚いた。オルキーランの遺族が住んでいる家は全部で三十位。オルキーランの寮は五階建ての建物、オルキーランの修行場とその住宅街の間にあった。片仮名のロの字型になっていて、中庭もある。寮に住んでいるのは一人前のオルキーランと、十二歳以上の見習い(と言っても私を含めて三人だけだけど)だそうだ。後は家族と一緒に暮らしている。あとは昨日の離着陸場とその向こうに共同菜園、これで全部だ。 案内にはほとんど時間がかからなかった。村が小さいせいと、ウィラがほとんどしゃべらなかったせいだ。あと、私もさっさと終わらせてウィラと別れたかった。 ウィラはそのまま、私を修行場のある建物へ連れて行った。入り口から入ると、サラが待っていた。 サラは早足で立ち去るウィラとそっちを見もしない私を見て、ただ軽く肩をすくめた。背中で長いポニーテールがゆれる。 「ついて来て」 サラはそう言うと、建物の奥に私を案内した。階段を下ると、ひんやりとした空気の中に、ドアがひとつだけあった。でも地下なのに、そのドアに近づくに連れて暖かくなってくるような気がする。サラがドアのへりに手を当てると、かちりと鍵の外れる音がした。 「ここは使われていないクラルの保管室。混乱の中、わずかだけど持ち出すことができたの」 サラがそう言いながら中に入った。自動的に明かりが点いて、部屋を白く照らし出した。 十畳ほどの部屋の壁に、いくつも箱が並んでいた。両手で持てる大きさのものから、長剣が入っているらしい細長いものまで。どれも色鮮やかな、細かい装飾がされている。 外以上に肌寒い。なのにここにいると、何だか家族に囲まれているような、あったかい気持ちになってくる。クラルの持つ力のせいかな。 「クラルは作られる時に、まず鍛冶職人によってオラスが吹き込まれる」 棚の間を回りながら、サラが口を開いた。 「そして一時的に保管されるの。オルキーランになりたい人は約三年間の訓練の後、保管室に連れてこられる。一つ一つのクラルに触れていき、クラルがその子を認めた時、子どもはオルキーランになる許可を得る」 「クラルが選ぶんですか? それにクラルがもらえるのは訓練の後なんですか」 私は腰に下げた、自分のクラルに触れながら言った。サラが頷く。 「本来は訓練の後だけど、今は非常事態だからあまりこだわらない事にしているの。クラルに相手を選ばせるのは、作り手を尊重するという意味もあるし、そのクラルを使っていた先代の意見を聞くという意味もある」 私の頭の上に、「?」が一つついた。ちょっとついていけなくなってきた。サラが箱の装飾をなぞりながら説明する。 「オルキーランが亡くなった時、そのクラルはまた保管庫に帰って来るのよ。そのクラルは持ち主だった人の人生を記憶しているの。その分オラスも強くなっている訳。だからクラルを何代にも渡って使うことで、そのオラスは強化されていくし、その記憶から解決策を見出すこともできる」 私は頷きながら、短剣の柄をこすった。じゃあ危険な時に声をかけてくれたり、夢の中で見覚えのない状況を見せたりしていたのはクラルだったんだ。 「そう言えば、昔私の家に短剣を――クラルを持ってきたのは誰だったんでしょう? やっぱりオルキーラン?」 私が首を傾げると、サラの指が装飾の上で止まった。 「……それはきっと地球に偵察に行ってたオルキーランよ。公に政府と接触を持つ前から、地球にはアラルの調査隊やオルキーランの偵察員が行ってたから」 私はクラルの柄を握りながら、記憶にない前の持ち主を思い浮かべようとした。母さんの話では私も会ってるはずなんだけど、どうも思い出せない。クラルが私の家に売られたのは八年前だから、ちょうどオルキーランが滅ぼされかけた時と一致する。クラルを持っていたらアラルに見つかると思って、とっさに近くの家に売ったのかな。でもそんなことしたら売った先が危なくなるかもしれないし(実際なってる)、山にでも捨てた方が手っ取り早かったはずだ。なのになんでわざわざ私の家なんかに。 サラに聞いてみると、サラも厳しい考え込む表情になった。しばらくして、小さくため息をつく。 「その疑問には、私も答えられないわ」 私は目の前にある答えに手が届かないような不満を抱えながら、サラに続いて保管室を出た。 戻る 進む .