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第一話 「おはよう、涼宮さん。最近嫌な事件が続いてるのね」 あたしが朝教室に着くなり阪中さんが話しかけてきた。 「おはよ。なにそれ?どんな事件?」 そう返事すると少し驚いたような顔をして教えてくれた。 「知らないの?最近この辺りで女子高生が誘拐される事件が続いてるのね。犯人はまだ捕まってないし…怖いのね…」 えっ?そんな事件があったなんて全然知らなかったわ…これは気になるわね… 「涼宮さんも気をつけた方がいいのね。それじゃあまたなのね」 そう言い残し自分の席へと戻って行った。 それと入れ替わるようにキョンが教室に入ってきた。 「おう、ハルヒ。おはよう。…どうした?」 ボーッと考え事してたからだろうか、あたしの顔を覗きこむようにたずねてきた。 …って顔近いわよっ! 「キョン!大事件よ!」 さっき聞いたばかりの事件をキョンに話した。 「ああ、その事件なら俺も知ってる。昨日のニュースでもやってたしな。 嫌な話しだぜ…」 なんだ、知ってたんだ…それなら話は早い! 「いい?これは放っておけない大事件だわ!早速今日の放課後からSOS団で調査開始よ!」 あたしは椅子の上に立ち上がり、しかめっ面をしたキョンへと高らかに宣言した。 「おい、ハルヒ!バカな事言うな。警察でも探偵でもない俺達に何ができる?」 むっ…なに呆れた顔してんのよっ! 「もし事件に巻き込まれたらどうするんだ…危険な目にあうかもしれないし…俺は…嫌だぞ、ハルヒがいなくなったりするのは…」 とつぶやくのが聞こえた。 「え…それってどういう―」 「と、とにかく事件のことは警察にまかせておけよ。わかったな?」 「わ、わかったわよ…」 急に話を終わらせたキョンにしぶしぶと答えるとちょうど岡部が入ってきた。 「みんな、おはよう。ホームルーム始めるぞ。それとハンドボールはいいぞ!」 岡部の戯言が耳に入らないくらいあたしはドキドキしていた。 さっきの言葉、どういう意味だったのかな…もしかしたらキョンもあたしのこと…好き、なのかな? いつか…この大好きって気持ちをキョンに伝えたい。今週の不思議探索の時に…頑張ってみようかな… その日あたしは授業中もずっと一人でにやけていた。かなり危ない人みたいね…今日はすごくいい日だわ!記念日にしてもいいくらいに。 そんなことを考えているとあっという間に放課後になった。 「キョン!掃除なんてさっさと終わらせて部室に来なさいよ!遅れたら死刑なんだから!」 「はいはい、わかってますよ。団長様」 いつもみたいな会話をして、一人で部室に向かった。 そして勢いよく部室のドアを開いた。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「あ、涼宮さん。こんにちわー」 あたしが部室に入るとメイド服姿のみくるちゃんがお茶の準備をしようと立ち上がる。 「ヤッホー、みくるちゃん。あれ、有希と古泉くんは?」 「えっと、二人ともクラスの用事で遅れるそうです。さっき部室に来て涼宮さんに伝えておいてくださいって言ってましたよ」 温度計とにらめっこしながらみくるちゃんが答えてくれる。 「そうなの。…ん?」 机の上に置いてあるものに気づく。編みかけの…マフラーかしら。 「みくるちゃん、マフラー編んでるの?あっ、もしかして好きな男の子に?」 冗談めかして言ってみる。 「え?あぁっー、そ、それは…その…」 んー、顔を真っ赤にしたみくるちゃんも可愛いわね! 「実はキョンくんにプレゼントしようと思って…この前新しいお茶の葉をくれたからそのお礼に。このお茶がそうなんですよ」 瞬間的に思考が凍りついた。 嬉しそうな顔したみくるちゃんがあたしの机にお茶を置く。 ちょっと待って…キョンが?みくるちゃんに?いつのまに…? 自分の中で黒い嫉妬が生まれるのがわかる。 「えへへ、マフラー渡す時にキョンくんにわたしの気持ちを伝えようかなって、ふふ、そう思ってるんです」 その言葉を聞いて、さらに黒い嫉妬は叫びをあげる。 「そん……対……許……わよ」 「はい?どうしたんですか?涼宮さん?」 聞き取れなかったのだろう、みくるちゃんが側に来る。 「そんなの絶対に許さないわよっ!なによ!こんなお茶いらないわ!」 机の上に置かれたお茶を思いっきり床へ叩きつけた。 ガシャーーンと陶器が割れる音が狭い部室に響きわたる。 「な、なにするんですか!せっかくいれたお茶なのに…」 泣きそうな顔でみくるちゃんが睨んでくる。 「SOS団は団内恋愛禁止なのよ?それを…あんたは!」 自分の感情を抑えきれなくなりみくるちゃんに掴みかかる。 「しかも…キョンだなんて…絶対に認めないわ!キョンはあたしのものよ?あんたなんかよりあたしの方がずっとキョンにぴったりだわ!諦めなさい!これは団長命令よ!?」 「わ、わたしだってキョンくんのこと大好きなんです!諦めたくありません!それに…わたしの気持ちなんだから涼宮さんには関係ないじゃないですか!」 思ったより強い力で突き飛ばされあたしは尻餅をついた。 なによ…みくるちゃんのくせに! 目の前が怒りで真っ赤にそまる。 そして気がつくとあたしはみくるちゃんを思いっきり突き飛ばしていた。 「あっ…」 みくるちゃんが後ろに倒れると椅子に強く頭をぶつけ、ガンッと鈍い音がした。 しばらく苦しそうにうめいていたがやがて動かなくなる。 ハッと一気に現実に戻った私は目の前の光景を見つめた… 「み、みくるちゃん?…嘘でしょ…?目を…開けてよ…」 震える手でみくるちゃんをゆさぶる… でも…ぴくりとも動かない。 「そ…そんな…い、嫌…嫌あああああああああああああああああああああああ!」 叫び声が響き渡る。 どうして…どうしてこんな事に…どうすればいいの… その時、ノックの音がして、部室のドアが開いた。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「うー、寒い寒い。っ!おい!ハルヒ…なにやって…」 部室に入ってきたキョンが目を見開いてあたしをみつめる。 最悪…よりによってキョンが入ってくるなんて… 「なんで朝比奈さんが倒れてるんだ?なにがあったんだよ!なあ!ハルヒィ!」 大声で問い詰められて身体の震えがいっそう激しくなった。 どうしよう…このままじゃキョンに嫌われちゃう。嫌だ、嫌だ!そんなの嫌だ! 「脈がない…死んでる、のか…」 キョンがみくるちゃんの脈を確かめながらつぶやく。 「あ、あたしは悪くない…みくるちゃんがキョンの事好きだって言うから…つい…カッとなって…」 「…お前がやったのか?どんな理由があるにしろお前が朝比奈さんを殺したことには変わりないんだぞ!」 すごい顔をしながら睨んできた。 「だってだって…嫌だったもん!キョンがとられちゃうの嫌だったもん!」 必死になって言い訳を並べる…きっとあたしは泣きそうな顔してるんだろうな… もうおしまいね…二度と今までの日常には戻れないだろう。 しばらく沈黙の時間が続く。やがて、 「…ハルヒ、聞いてくれ。俺がにいい考えがある…だから安心しろ」 さっきとはうってかわって ものすごく優しい声でキョンが言った。 最初キョンの言っている事がよく理解できなかった。てっきり怒鳴られてすぐ警察につきだされると思ってたのに… 「それって…あたしを助けてくれるって、意味…?」 「そうだ…こんな時だけど…俺はハルヒが好きなんだ!だから…離れたくない!」 「あたしも…嫌。大好きなキョンと離れたくない…ずっと、ずっと一緒にいたい!」 我慢しきれず涙がこぼれる。 「絶対俺がなんとかするから。頑張って二人で乗り越えよう。な?」 そう言って優しく抱きしめてくれた。 「うん…うん。二人で…頑張る!」 あたたかいキョンの腕の中で、あたしは泣いた。 こんな状況だけどすごく幸せで嬉しかった。 だってそうでしょう?ずっと好きだった人と両想いだったことがわかったんだから。 でも、この時あたしは気付いていなかった。自分の犯した罪の重さを、そして、どんな結末が待っているのかを… --------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「とりあえず…もうすぐ長門と古泉が来るから急いで死体を隠さないとな」 キョンは辺りをみまわしながらいろんな所を探ってる。 「よし、掃除道具入に隠しておこう。後でもっとわかりにくい場所に移動させれば大丈夫だ」 キョンがみくるちゃんの死体、かばん、制服などを掃除道具入につめこみ、床にちらばった茶碗の破片を片付けた。 「これでよし…っと。ハルヒ、二人が来てもいつも通りふるまうんだぞ?」 「うん…わかった。」 私は団長机へ、キョンはいつもの場所へと座る。すると、 「いやあ、遅れてすみません。」 「……………」 相変わらず笑顔の古泉君と無言の有希が部室に入ってきた。 「おう。遅かったな。今日はどのゲームにする?」 「おや、あなたから誘ってくるなんて珍しい。そうですね、今日は―」 キョンの向かい側の椅子に座る古泉君。有希は窓辺に座って読書を始める。 私はネットサーフィンでもしようとパソコンの画面に集中する。けど、どうしても視線は掃除道具入へといってしまう。 「涼宮さん?さきほどから落ち着かない様子ですが、どうかされました?」 キョンとチェスを始めた古泉くんが聞いてくる。 「ああ、こいつ朝から体調が悪いみたいなんだ」 「そう、そうなのよ!でも平気だから気にしないで」 キョンのフォローで助かった。 「そうでしたか。ところで朝比奈さんの姿が見当たらないようですが、どこへ行かれたのでしょう。先程部室に顔を出した時にはいらっしゃったのですが」 いきなりみくるちゃんの話題が出て思わず息をのむ… 「あ…えっと…」 「朝比奈さんならお前らが来る前に用事を思い出したとかで先に帰っていったぞ」 またもキョンがフォローしてくれる。 でも、少しずつ身体が震えてきた… 「なるほど。…涼宮さん?本当に大丈夫なんですか?震えていますが…風邪ですか?無理なさらないほうが…」 心配そうな顔をした古泉くんが話しかけてくる。 「うん。そうね…今日はもう帰るわ。このまま解散にしましょ」 「おう。わかった」 「かしこまりました」 「……………了解」 それぞれに答えみんなが帰り支度を始めた時、 ガタッ…! 掃除道具入から音がした。 っ…!なんで…!こんな時に! みんなの視線がいっせいに掃除道具入へとむけられる。 気になったのか有希が立ち上がり掃除道具入の扉に手をかける。 どうしよう!まずい、まずいまずいまずい… もう、ダメだ…諦めて目をつぶった時、 「長門、中のホウキが倒れただけだろ。気にするな」 有希を止める声が聞こえた。 「………………そう」 有希はほんの少し怪訝そうな表情を浮かべたが、やがて扉から手を離した。 それを見てあたしは気づかれないように息を吐き、そのまま椅子にもたれかかった。 本当に危なかった…キョンが止めてくれなかったら今頃… 「それじゃあお先に失礼いたします」 「………お大事に」 二人が先に出て行くと部室には私とキョンだけが残った。 「ふー、なんとか誤魔化せたな。大丈夫か?ハルヒ」 「う、うん…大丈夫…ありがと」 キョンは掃除道具入を開けて中を覗きこんだ。 「死体を運べるくらい大きなバッグを探してこなきゃな。ちょっと待っててくれるか?」 そう言うとキョンは部室を出ていこうとした。 「キョン!なるべく…早く戻ってきてね」 「ああ。わかってるよ。すぐ戻るからおとなしく待ってろよ」 キョンを見送って一人になると今さらながら自分のしでかした事に頭を抱える。 これから一体どうなるんだろう… 誰にも見つからないでうまく隠せるのだろうか… 私は椅子に座ったまま目を閉じた。
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…さて今の状況を説明しなければならない。こういう時はまずいつ・どこでを明らかにするのが正道だろう。 放課後、文芸部室だ。大体のイベントはここで我らがSOS団団長によってもたらされるが、 今回ばかりはハルヒも原因のほんの一端を担ったに過ぎず、 本日のイベンターの言葉に元々規格外にデカい口と目を更に拡張している。 つまり驚愕してるって事だ。 かく言う俺も予想だにしなかった真相に驚きを隠せない。 落ち着いて見えるのは…トンデモ三人組だけだ。 今回のゲスト、鶴屋さんは大口開けて爆笑しているから落ち着いてない方に分類するべきだろう。 三人組?朝比奈さんは卒業しただろう? ごもっともな指摘だ。だが、卒業したからといって涼宮ハルヒが彼女を解放すると思うかい? SOS団専属メイドたる彼女は団活には自由参加でいいとの辞令を受けながら、定期試験の時期以外はここで給仕してくれている。 しかし、それにしても朝比奈さんが落ち着いているのは不思議としか言いようがないね。 こんな状況ではあたふたとするのが彼女の役割で、それを微笑ましく眺めるのが俺の… 早く状況説明しろって?俺もまだ驚愕状態から回復してないんだ。勘弁してくれよ。 …隣に立っている奴の真っ赤な顔を見るのはどうも落ち着かん。 ともあれ、『発端』はやっぱりハルヒだ。こうなる事を意図していなかったにしてもな。 ---------------- 鶴屋さんの事を考えながらキョンや谷口の話を聞けるくらいまでの心の余裕を得た僕は、 谷口の追求を受け流し、キョンの妙な視線(何か疲れてるような…)を気にしつつ弁当を食べていた。 ねぇキョン、おととい自分が言ってたじゃない、笑顔は敵を減らすってさ。 僕は身を持って知ったんだ。鶴屋さんの笑顔のわけ、大事な事は行動で示す…ってこと。 「あ?そんなに不機嫌な顔してたか」 「不機嫌ってより、疲れ切った顔ってところだな。ま、涼宮に関わっていたらそうなるのも無理はない」 ふふっ、今キョン少しムッとした顔になった。すぐ取り繕うように疲れ顔に戻ったけど。 映画の時もそうだったし、キョンは涼宮さんがけなされるとすぐ怒るんだ。そういうキョンはかわいいと思う。 「あー、国木田。ニコニコしてる所に悪いが非常に…ヒジョーに残念なお知らせがある」 な、なんだろ。いきなり僕に話題が振られるとは思わなかったな。 「うぅむ…言いにくい、いや言いたくないのだが…その、だな」 「おいキョン、まさかお前…ホモだったのか?」 「何を的外れな事を言ってるんだお前はアホだな」 僕も谷口はアホだと思うけど、正直今のキョンの雰囲気は 何だか谷口の言うような重大告白をしようとしてるようにも見えた。 ねぇキョ… 「ちょっとキョン!あんたまだ伝えてないの?」 恐る恐る先を促そうとした僕の言葉は、彼女に…涼宮さんに完全遮断された。 --------------- 涼宮のヤツは俺達の食事の場に乱入してきていつも通りの命令口調で国木田に告げた。 「放課後、部室に来なさい!」 「部室って…」 「SOS団の部室!」 「で、でもどうして…」 「ウダウダ言わないで来るの!いいわね!」 ってな感じでな。恐らくキョンの野郎はこれを国木田に言えと命令されていて中々言い出せずにいたんだろう。 くだらねー。キョンも国木田も情けないぜ。いつまでもあの女の言いなりになってるといい。 「わざわざハルヒが教室を出るのを待ってやっとひねりだした言葉がそれか」 ぐっ… 「まぁまぁキョン、谷口は自分が呼び出されなかったのが寂しいんだよ」 そ、そんなわけあるか!俺は忙しいんだよお前らのように浮かれてる場合じゃねーんだ! と言ってみても二人は弁当もぐもぐしてるだけだった。 …しかしよく考えたら池に落とされたり野球やらされたりエッセイ書かされたりはしたが あの部室に入ったことはない… チキショーめ俺だってあの美少女の巣窟に行きてぇよ…! ---------------- 谷口の恨めしそうな視線とキョンの「来たくなければ来なくてもいいぞ」という言葉を受けながら 昼休みは過ぎていった。キョンはそう言ってるけど、僕は行くつもりでいる。 行かなかったら涼宮さんに何を言われるか分からないし、 SOS団の脇役として借り出される事はあっても部室に入ったことはないから 行ってみたいっていう好奇心もあったからね。 それにしても一体何の用なんだろう。僕、宇宙人でも未来人でも異世界人でも超能力者でもないのになぁ。 あ、そういえばキョンも普通の人間だよね。 何だかんだ言っても涼宮さんは気に入ってる人を集めただけなのかな。 でも僕、自分で言うのもなんだけど…っていうか悔しいけど 涼宮さんに気に入られるようなタイプじゃないと思う。 んー…まぁ気にしてもしかたないかな。谷口には申し訳ないけど、とりあえず楽しみに待ってよう。 --------------- 「先に行ってるからちゃんと国木田連れてくるのよ!」 そうキョンに言うと涼宮さんは猛スピードで教室を出ていった。 僕には聞こえないように言うべきセリフだと思うけどな。 キョンの心地良さそうなうんざりした表情が面白い。 じゃキョン、いこっか。 「…お前、本当にいいのか?具体的にはわからんがかなり面倒な事になると思うぞ」 僕は今まで涼宮さんに関わったイベント事は全部楽しかったよ。 「あのな、今回は今までと違ってだな…」 「じゃあなキョン!じゃあな国木田!」 キョンの言葉は谷口のトゲトゲした別れの挨拶で遮られた。 キョンがお決まりのセリフを吐いて歩き始めたから、黙ってついていくことにする。 --------------- ふふふふふっ…あたし、サプライズを仕掛けて待ってるこのひと時がたまらなく好きなのよね。 今日は超ビックリのゲストもいるし、キョンや国木田のアホ面が見られるはず… 笑顔が抑えられないわね…ふふふっ。 あっ、足音が聞こえてきたわ…みんな、まだ静かにしてるのよ。 しーっ、というあたしのジェスチャーにみんなが従ってくれる。 ドアノブが回転して… --------------- 「ようこそSOS団部室へっ!」 ドアを開けた途端涼宮さんの大声が襲ってきた。それにももちろんびっくりしたんだけど、 本当に僕の口を無理やり開けて閉じさせなかったのは別の事だった。 な、なんで… 何で鶴屋さんがいるの!? しかも北高の制服で… ---------------
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「先に行ってるわ!」 放課後になるなり、そう言ってハルヒは楽しげな表情でさっそうと教室を飛び出した。 何かあったのか? ハルヒの表情の天気は朝のイライラとは打って変わって晴れていた。どうやら顔にかかっていた雷曇は偏西風によって吹き飛ばされたようだ。 その偏西風は恐らく休み時間にしていたメールだろう。何をしていたかは知らないが。 こりゃ何かあるかもな。 そう嫌な予感がしつつ、おれも部室に向かった。 さーて、今日は何をしでかすやら。 部室のドアの前で覚悟を決め、ドアノブを回した。 おっと、ノックするのを忘れ…て…。 目の前の光景におれは言葉を失った。いや、元々喋っていないのだからこの表現には語弊があるかもしれないがそんなのはどうでもいい。 とにかくおれは現実を信じられなかった。 何故なら部室でハルヒと古泉が抱き合っていたからだ。 おれが来た事に気付いたらしく、ハルヒは古泉からすぐに離れた。 「キョ、キョン…ノックぐらいしなさいよね」 その通りだ、が…。 「あー悪かったよ。お前らがそういう関係だとは知らなくてな。そういう事ならおれは邪魔だな。じゃあ帰らせてもらおう」 「ちょっとキョン!」 ハルヒが何か言ってるが無視だ無視。もう知らん。 階段を降りていると朝比奈さんと出くわした。鞄を持ってまさに帰ろうとしているおれを見て不思議そうな顔をしているので、数分前の出来事をありのまま説明した。 すると朝比奈さんは嬉しそうに、 「良かったじゃないですかぁ。お祝いを言ってきますね」 と言って部室まで走っていった。 だがおれは何故だか素直に喜べなかった。 だいたい古泉の何がいいんだ?あんなヤツのどこが?そりゃ美形だしスタイルいいし金持ちっぽいが…男の価値はそんなもんじゃないだろ。おれの方がよっぽど…。 そこまで考えた時、自分がいつになく苛立っているのに気付いた。 いつもならこんな事は考えない。自分の方が誰かより優れていて相手が劣っているなんて高校に入ってからは一度も考えたことがなかった。 頭に血が昇ってるな、こりゃ。 とりあえず校内の自販機のコーヒーを飲んで落ち着くことにした。初めて古泉から機関の事を聞かされた場所だ。 喉を流れるコーヒーの冷たさと苦さが頭を冴えさせてくれる。 さて、おれは一体どうしてあんな事を考えちまったんだろうね。 「まだ解りませんか?」 突然、横から聞き慣れた声が聞こえてギョッとした。 古泉、お前何時からそこにいた? いや、それよりもお前に人の心が読める能力があるとは初耳だな。 「あいにく僕はそのような能力を持ち合わせてはいません。それと僕はあなたを追ってきたんですよ」 古泉のにこやかスマイルを見てると何だかムカついてきやがった。くそ、今までこんなことはなかったんだが。 「それよりなぜあなたがそうまで頭に来ているのか本当に解りませんか?」 わからん。 そう即答してやると古泉の表情が少し暗くなった。 「呆れて言葉も出ませんね」 じゃあお前が今発してるのは何だ。雑音だとでも言うのか? まあ実際のところ、今のおれには雑音にしか聞こえんがな。 「あなたも鈍い方ですね。涼宮さんの性格を考えてみて下さい。今まで涼宮さんが…」 そこまで聞いてある考えが頭をよぎり、おれは最後まで聞かずに走り出した。 そうだ。なんでハルヒと古泉が抱き合ってた事に違和感を感じなかったんだ?ハルヒが男あさりはしないって言ってたのは知ってたはずだろ。 なのにハルヒがあんな事をしたのは何故だ?それも打ち合わせでもしたかのようにおれが部室に入った時に。 決まってる。ハルヒがおれを好きだからだ。 おれに見せつけて焚き付けるつもりだったんだ。 口調からして古泉はグルだったんだろう。 こんな回りくどいことなんかしなくても直接言ってくれればいいのに、ハルヒのヤツ何考えてんだか。 しかしおれもバカだな…。ハルヒが古泉とあんな事をしてるとこを見て沸き上がってくるこの感情が嫉妬以外の何だってんだ。 あの閉鎖空間でキスまでしといて、こんな事をしなけりゃハルヒが好きだって気付けなかったとは…情けないとしか言いようがないな。 走りながら脳も働かせていたせいか、部室が見えてきた時になって息が切れてきた。肺が酸欠で痛んでくる。もうちょっとで着くから我慢してくれ。 「ハルヒ!」 部室に着くなりおれはドアを思い切り開けた。SOS団の中でこんな事をするのはハルヒぐらいだからか、当の常習犯は驚きの表情でおれを見ている。 「な、何よ。古泉君の事?」 おれはその質問には答えずハルヒに向かって一直線に進んで行った。 おれはハルヒの前まで行って立ち止まり、ハルヒの目を見つめた。 どうやら古泉の言っていた事は本当のようだ。ハルヒの目には罪悪感が感じられる。 「何か言いたいことあるんだったらさっさと言いなさいよ」 おれは何も言わずにハルヒを抱きしめた。 「な…」 「おれが悪かった、すまんハルヒ。お前の気持ちに気付かないばっかりに心配させちまったみたいだな」 ハルヒが抵抗せず黙って聞いている事でおれの推測が確信に変わり、そのまま話を続けた。 「だけど安心しろ、これからはもう大丈夫だ。ずっと一緒にいるから」 「バカ。ここまでしといてそうじゃなかったら罰金じゃ済まさないわよ。あたしだってもう離さないんだから」 そう言っておれと同じようにハルヒも腕を回してきた。 「ごめん、こんな遠回しの方法になっちゃって。だけどキョンの本当の気持ちが知りたくて…告白するだけじゃ駄目かなって思ったの。だから古泉君に相談したらこういうのが一番分かりやすいからって」 そうか…古泉の入れ知恵だったのか。 「そんな事しなくてもストレートに聞けばいいじゃないか。ハルヒらしくもないな」 「だって…こんな気持ち初めてだからどうしたらいいかわかんなかったんだもん」 なるほどな。今まで告白されるだけの経験しかなかったハルヒはまさか自分が告白する側になるとは思ってなかったんだろう。 人を好きになるって事を初めて知ったんだから当然かも…な。 「わかったよ。だけど今度は直接頼むぜ」 「わかってるわよ」 ハルヒが腕に力をこめた。きっと誓いのボディランゲージなんだろう。 それに答えるようにおれもハルヒを優しく抱擁した。 あの時あえて好きだとは言わなかったのは、そうしなくても気持ちは伝わったと思ったからだ。 いやすまん、実は…少し恥ずかしかったんだ。 -Fin-
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1.プロローグ 2月上旬のある日のこと。 それは、SOS団団員にして文芸部長兼コンピ研部長たる長門有希の唐突な宣言から始まった。 「あなたがたに勝負を申し込みたい」 唖然とする俺たちに対して、長門は淡々と説明した。 長門を含むコンピ研 vs 長門を除くSOS団(名誉顧問を加えてもよいとのことだった)。勝負は、去年やった宇宙戦闘ゲーム The Day of Sagittarius 3 を大幅に改良した The Day of Sagittarius 4 で行なわれる。 賭けるものも指定してきた。 コンピ研側が勝った場合には指定する日に一日限定でSOS団団長権限を長門に委譲、SOS団側が勝った場合にはデスクトップパソコンを一台進呈する、とのことだった。 堂々たる果たし状であり、こうまで言われて、ハルヒが応じないはずもない。 「相手が有希だからって、容赦しないわよ!」 「望むところ」 長門もやる気満々のようだ。 こいつもすっかり人間らしくなって結構なことだが、よりによってハルヒに喧嘩をふっかけることはないと思うのだが……。 そうはいっても二人ともやる気満々では、もはや止めようもなく、一週間後に勝負が行なわれることは規定事項となった。 その後一週間、長門を除き名誉顧問を加えたSOS団の面々は、放課後にゲームの練習にいそしんだ。 朝比奈さんも鶴屋さんも受験の真っ只中というのに、まことに申し訳ない。 俺が謝ると、 「気にしない、気にしない。たまの息抜きにはちょうどいいさっ!」 鶴屋さんは笑ってそうおっしゃってくださった。 本当に心の広いお方だ。 で、勝負を賭ける The Day of Sagittarius 4 だが、前作との変更点がいくつかあった。 完全3D化された三次元空間での戦闘。索敵艇の設定は廃止され、マップ全体が最初から見える状態。前回のコンピ研側のインチキであるワープはなし。 パラメータ100を攻撃、スピード、防御に振り分ける設定はそのままだが、ゲームの途中でも任意にパラメータ配分を変更可能。前回長門がコンピ研を苦しめた分艦隊モードも健在だ。艦隊は双方5個ずつで、全滅するか総旗艦を撃破された方が負け。 取扱説明書には他にもいろいろと書いてあったが、主なところはこんなもんだろう。 そして、一週間はあっという間に過ぎ去った。 2.決戦 勝負の日の放課後。 戦いの舞台は、整えられていた。 コンピ研帝国連合艦隊は、総旗艦を有する「ユキ総統閣下艦隊」を筆頭に、「総統閣下の下僕A艦隊」、「総統閣下の下僕B艦隊」、「総統閣下の下僕C艦隊」、「総統閣下の下僕D艦隊」。ネーミングセンスについては、とやかくいうまい。 対するSOS帝国連合艦隊は、総旗艦を有する「ハルヒ皇帝陛下艦隊」を筆頭に、「名誉顧問閣下艦隊」、「古泉くん艦隊」、「みくるちゃん艦隊」、「雑用係艦隊」。なんか俺の扱いが前回よりも悪いような気がするんだが、気のせいか? 戦闘意欲満々のハルヒの横顔を眺めている俺の耳に、開戦のファンファーレが鳴り響いた。 さて、どうなることやら……。 コンピ研部室……。 「各艦隊、制御キーを総旗艦に委譲せよ」 長門有希は開戦と同時にそう命じた。 「「「「了解!」」」」 4人の下僕たちは、すぐさま命令に従った。 長門有希は、制御キーの委譲を確認すると、猛烈な勢いでキーボードを叩き始めた。 彼女は、たった一人で5個艦隊を操ろうとしていた。 文芸部室……。 開戦と同時に、敵艦隊は連携のとれた積極的な機動で、SOS帝国連合艦隊を翻弄した。 「敵は、こちらを分散させて各個撃退する作戦のようですね」 古泉が敵の動きをそう分析した。 「この動きは人間技じゃねぇぞ」 「長門さんが全艦隊を一人で制御しているのかもしれません」 「そんなことが可能なのか?」 「ええ、取説にも書いてありました。各艦隊が制御キーを総旗艦に委譲すれば、総旗艦から全艦隊の直接制御が可能となります。前回の分艦隊モードの拡大版といったところですか」 「長門なら、それぐらいはやりそうだな」 画面を見ると、敵の思惑どおりというべきか、SOS帝国連合艦隊は、各艦隊がバラバラに分散しつつあった。 コンピ研部室……。 長門有希は、敵艦隊を意図通りに分散させたことを確認すると、キーパンチのペースを緩めずに、淡々と命令を下した。 「制御キーを各艦隊に返還した。各艦隊は、各個、対面する敵艦隊を殲滅せよ」 「「「「了解!」」」」 文芸部室……。 戦況を簡単に述べれば、広大な宇宙空間の5箇所において、それぞれ一対一の殴り合いが行なわれているといったところだった。それぞれの戦場の間には距離があって、相互支援ができるような状態にはない。 俺の雑用係艦隊は、目前の敵D艦隊を相手にするのが手一杯で、他に手が回らない。 「手ごわいですね」 古泉はいつものスマイルを浮かべたままそんなことをつぶやいていた。 善戦はしているようだが、敵B艦隊を相手にじりじりと残艦を減らしている。 「はわわわ……」 朝比奈さんは、残艦が急激に減っていく様子にただおろおろとするばかり。 「有希っこは容赦ないね。燃えてくるさっ!」 鶴屋さんは、敵A艦隊を相手に大立ち回りを演じている。 この人は、何をやらせてもすごい人だな。 「さすが有希ね! 正々堂々と勝負よ!」 ハルヒ皇帝陛下艦隊の状況を画面で確認する。 ユキ総統閣下艦隊は分艦隊モードで20個に分裂し、ハルヒ皇帝陛下艦隊を袋叩きにしていた。 そして、長門の総旗艦がハルヒの総旗艦めがけてぐんぐんと距離を縮めていた。 長門は、総旗艦同士の一騎打ちで一気に片をつけてしまう気だ。 ビーム砲の射程に入ってしまったら、ハルヒの総旗艦は、長門の精密な射撃であっという間に撃破されてしまうだろう。 俺は、雑用係艦隊のパラメータ配分を変更した。攻撃0、スピード100、防御0。 そして、旗艦を先頭に、ハルヒ皇帝陛下艦隊とユキ総統閣下艦隊が戦う戦場へと、猛突進を開始した。 今から思えば、なぜそんなことをしようと考えたのか、よく分からない。 コンピ研部室……。 「D艦隊、敵雑用係艦隊の動きを阻止せよ」 「駄目です! 振り切られました! 追いつけません!」 D艦隊は、敵雑用係艦隊を半分まで減らしたところで、完全に振り切られた。 敵雑用係艦隊のスピードは100。D艦隊のスピードを今から100に上げたところで、永久に追いつけない。 それが、あなたの気持ちか……。 長門有希は、心の中でそうつぶやきつつ、自艦隊のパラメータを変更した。攻撃10、スピード70、防御20。 敵総旗艦を撃破する前にやられてしまっては元も子もないので、それがギリギリの数字だった。 果たして、間に合うか? 文芸部室……。 間に合えぇー! 俺の心の叫びは、どうやら天に通じたようだ。 敵総旗艦がハルヒの総旗艦を射程に収める直前に、敵総旗艦に俺の雑用係艦隊旗艦が突っ込んだ。 盛大に衝突する。 これじゃ、まるで昔の神風特攻だな。 「ハルヒ、俺に構うな! 撃て!」 「えっ!? でも……」 こんなときに限って躊躇するなよ。らしくもない。 結局攻撃したのは、いつの間にかこの戦場に到達した古泉の艦隊だった。 俺の旗艦が突き刺さったまま身動きがとれない敵総旗艦は、ビーム砲を雨あられと浴びせられ、撃破された。 You! Win! そう表示されて、画面がブラックアウトした。 俺は古泉の方を向き、 「おまえ、いつの間に」 「あなたの動きを見て、すぐに意図を察しましてね。速度優先にパラメータを変更して、馳せ参じたというわけです」 古泉は、何かいいたげなニヤケ顔でそう答えた。 そのニヤケ顔はなんかむかつくからやめろ。 コンピ研部室……。 「このたびの敗戦の責任はすべて指揮官である私にある。よって、献上するパソコンの費用は私が出す」 長門有希は、淡々とそう宣言した。 「そんな! 何も部長ばかりが悪いわけじゃありません! 俺たちがもっとしっかりしていれば……」 副部長の言葉を、彼女はさえぎった。 「いい。あなたたちには、私のわがままに付き合わせてしまった。申し訳ない」 彼女はそういい残すと、部室を去っていった。 その後姿があまりにも寂しそうで、誰も声をかけることができなかった。 3.エピローグ あれから数日後、俺と古泉は、部室でオセロ対戦をしていた。 女子団員三人は、先に帰った。長門の部屋で明日の準備をするそうだ。 明日は、2月14日。 今年は、どこの山をほじくり返すことになるのやら。あるいは、マリアナ海溝にでも潜らされるハメになるのかもしれん。 「ところで、先日のゲーム対戦、あなたの最後のあの行動ですが。どうして、あんなことをしようと思ったんです?」 古泉が唐突にそんなことを聞いてきた。 「ゲームに負けてハルヒの機嫌が悪くなったら、いろいろと都合が悪いだろうが。おまえだって、例の灰色空間に行かずにすんだんだから、感謝の言葉ぐらいほしいところだな」 「ええ、その点については感謝しておりますよ。でも、理由はそれだけですか?」 「何がいいたい?」 「あのような事態がゲームではなく現実の世界で起きた場合でも、あなたは同じような行動をとったのではないかと思ったものでね」 「おいおい、勘弁してくれよ。あれはゲームだったからだ。現実では絶対やらんぞ。俺だって命は惜しいぜ」 「まあ、そういうことにしておきましょうか。それにしても、長門さんは一日団長になって何をしたかったんでしょうね?」 「さぁな。いつも団長様の理不尽な命令に従わされてばかりだから、たまには命令してみたくなったんじゃないのか?」 一方、三人娘は、長門有希の部屋でチョコレート作りに励んでいた。 「ねぇ、有希」 「なに?」 「有希さ、一日団長になって何がしたかったの?」 長門有希は、長い沈黙のあと、ぽつりともらした。 「…………団員その一」 涼宮ハルヒは思わず顔をあげて、長門有希を見る。 「……彼と明日一日をともにすごしたかった」 涼宮ハルヒは、唖然としたまま固まった。 朝比奈みくるも、目を見開いて驚いている。 「私は負けた。だから、その願いはもうかなわない」 「で、でも! そんなチャンスなんて何回だってあるわよ! 有希はいい子なんだし、あいつだって!」 涼宮ハルヒは内心の動揺を隠すようにそう叫んだ。 「あなたも、そろそろ正直になるべき」 長門有希はあくまで淡々と、核心を突くセリフを吐いた。 「……」 「大丈夫。あのゲーム対戦での彼の最後の行動。あれは、紛れもなく、彼のあなたへの気持ちそのもの」 「有希……」 「女子団員三人が共同して男子団員二人にチョコレートを贈呈するのは、今年を最後とすべき。来年は、あなたが彼にあげればいい」 翌日、男子団員二人がどれだけ苦労して、チョコレートを探し当てたかという詳細については省略する。 一連のイベントが終わったあと、長門有希は、北高の部室棟にいた。 文芸部室の前を通り過ぎ、コンピ研部室に入る。 手にしていた大量の手作りチョコをテーブルの上においた。 部員たちの視線が集中する。 そして、ぽつりと一言。 「あげる」 しばし唖然としていた部員たちは、ハッと気が付くと、全員が一斉に最敬礼し、学校中に響き渡らんばかりの大声で叫んだ。 「ありがとうございます!!!」 昨年までバレンタインデーなど無縁であった男子部員たちは、感涙にむせび泣きながら、チョコレートを味わった。
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高校野球敗退で、甲子園の砂を持ち帰るノリで京太郎を持ち帰る豊音さん 01、大会終了後に岩手に戻る電車内にて 塞「やっぱり個人戦の壁も厚かったわね」 胡桃「豊音も頑張ったけど、あんなに魔物が潜んでるんじゃ…」 豊音「頑張って追っかけたんだけど、追いつけなかったよ」 エイスリン「コワカッタ(二匹の∠が生えた怪獣とそれより小型の怪獣達が暴れてる絵)」 白望「ダルい、早く岩手に戻ろう」 豊音「えへへ、有名選手のサインいっぱい貰えてよかったー」 塞「ところで豊音、そんな大きいバッグどうしたの?」 胡桃「私が3人分は入りそうだよね、中身なに?」 豊音「お土産ってとこかな、部室で開けるね」 02、宮守麻雀部部室にて 豊音「よいしょっと、ちょっぴり重かったかな」 塞「豊音が重いって言うことは、けっこうな重さの品なのかな」 胡桃「なんだろう、お菓子なら其処まで重くないよね」 エイスリン「ミンナデヤマワケ!!(金塊の絵)」 白望「ダルいけど中身気になる」 豊音「それじゃご開帳ー」 バッグの中には猿轡され縛り上げられ気絶中の京太郎が!!w 03、宮守麻雀部部室・凍りついた空気の中 塞「」 胡桃「」 白望「」 エイスリン「」 豊音「えへへ、どう?」 塞「」 胡桃「」 白望「」 エイスリン「」 豊音「高校野球で敗戦すると甲子園の砂を持ち帰って記念にするの、TVで見てて」 豊音「つい全国大会出場記念に、都会のイケメン攫って来ちゃったよー」 塞「ついって」 胡桃「ちょっとヤバいじゃないこれ」 白望「ダルいってレベルじゃねえ」 エイスリン「ミンナデヤマワケ!!(モザイクにより見せられません)」 04、宮守麻雀部部室・そして時は動き出す 京太郎「…?、!?。むー!?、むー!!」 豊音「あ、気がついた?」 塞「マズ、とりあえず猿轡解いて」 胡桃「落ち着いて、なんにもしないから静かに」 エイスリン「アバレンナ、アバレンナヨ(先ほどとは違うモザイクのかかった絵)」 白望「ダルいけど、とりあえず鍵閉めて…」 京太郎「ゴホゴホ、あれ?皆さん宮守麻雀部の方々ですよね、いったい何が」 豊音「わ、私たち有名人になってる」 胡桃「別の意味でも有名になりそうだけどね」 塞「とにかくごめんなさい、いろいろ説明させてもらえないかな」 少女説明中……… 京太郎「そうですか、悪気が有ったわけではないようなので構いませんが…」 豊音「ごめんなさい、つい浮かれてとんでもないことしちゃって」 豊音・塞・胡桃・白望・エイスリン「すみませんでした」 京太郎「いえ、もう大丈夫です。ただ豊音さんには申し訳ないんですが」 豊音「!?、はい、私が悪いので私だけ罪を償いますからみんなには…」 京太郎「いえソッチじゃなくて、残念ながら長野出身で『都会のイケメン』じゃないんです」
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俺が奇想天外な奴らがいる世界に来て数日が経った。相変わらず俺は愉快な仲間達がいる世界にいるが、こちらの世界は俺の世界とほぼ一緒なので、たいした問題もなく生活できている。自分でも驚いているが、適応能力が高いらしいな。 日が経つにつれ、SOS団のメンバーの癖がわかってきたので報告しよう。 涼宮は、おもしろいことが大好きで、本気で宇宙人、未来人、超能力者を探しているらしい。正直な感想。おそろしいくらいの変人だ!変人ってのは、良いことだ。みんな一緒だと面白くない。個性ってのはやっぱ必要だと思うぞ。しかし、だ。こいつは度が過ぎている。やりたいなら1人でやれよ。俺達を巻き込むなっての。 朝比奈さんは癒し系で、メイド服を着たりして俺を和ませてくれる。誰しもが憧れの存在になるだろう。ただ涼宮におもちゃにされているのがかわいそうでならない。 古泉は理屈っぽいが、人当たりが良く、良すぎて涼宮の無茶に反抗するってことは全くない。暴君に仕える軍師ってタイプだろう。 長門は相変わらず無表情で本を読むだけ。全くつかめない。宇宙人ってのは、みんな無愛想なのだろうか?達観しすぎて、感情ってのを置いて進化したのかもな。 キョンはあだ名こそ変わっているが、全くもってまともな常識人だ。唯一、俺がまともに話せる奴で、だらだらと毎日を過ごしたいと願うところなんか、俺と一緒。ただ、ひねくれたところがあるのが、たまに傷だろう。 さて、人物評価はこのくらいにしておこう。今は放課後。SOS団のアジトである文芸部の部室で、いつもどおり退屈な時間を過ごしていた。部室の中にいるのは、俺とキョン、古泉、長門、朝比奈さんだけで、我らが団長は遅刻している。 キョン曰く 「どうせまた疲れるやっかい事を、どっかから拾ってくるんだろうよ」 と疲れた様子で言っていた。俺もキョンと同じで、日々平穏を祈る体質である。何事もなく1日が過ぎていき、後に平和だったなと思い返すのが、俺にとって一番幸せなことなのだ。 だが、そうもいかなかった。お騒がせ団長は、他の団員の誰でもない、俺に迷惑をかける事件を引っ張ってやってきたのだ。 涼宮が勢いよく部室のドアを開けたかと思うと 「聞いて聞いて、おもしろい話を聞いちゃった!」 叫びながら部室に入ってきた。 キョンが、「げっ」という顔をして、一瞬、古泉の顔が引きしまった。一体、何なんだ? 「実はね、学校近くにある洋館に、お化けがでるらしいのよ。最近特に頻繁に出ていて、みんな怖がっているらしいわ。これってお化けと遊ぶチャンスじゃない!?」 びっくりするくらいの笑顔で、銀河が目の中に入っているのではないかと思えるような輝きを放ちつつ涼宮がとんでもないことを言ったかと思うと、 「それなら僕も聞きました、最近噂になっているみたいですね」 古泉が余計な相づちをうちやがった。 次へ 目次
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「お姉ちゃんだってスタイルいいのにもったいないよ・・・。ほら、感度だってこんなにいいのに♪」 「ひぁ・・・!い、樹・・・ここじゃだめ・・・」 「どうして?いつも他のみんなにセクハラまがいなことしてるのに、私にされるのはイヤなの・・・?」 「そ、そうじゃない!そうじゃない、けど・・・!部室じゃだめよ・・・・・・だれか来ちゃうからぁっ」 「ふふっ♪お姉ちゃんってば恥ずかしがりやさんなんだぁ。でも、先輩たちだってみーんな部室でえっちなことしてるんだよ?お姉ちゃんしらなかったの?」 「っ、ふぅん・・・っ///そ、そんなぁ・・・あぁあっ///」 「安心して♪みんなが来る前にちゃんとイかせてあげるから・・・ね♪」
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ハルヒ「さあ、みくるちゃん。新しい衣装よ脱ぎ脱ぎしましょうね~♪」 みくる「ヒッ!い、嫌です~~~」 ハルヒ「うるさいわねー、ほらさっさとしなさいよ」 キョン「おいハルヒいい加減にしろ。朝比奈さんが困ってるだろ」 ハルヒ「何キョン、団長である私に反抗するわけ?」 キョン「そんなこと言ってないだろ。大体だな…」 ハルヒ「うるさいっ!SOS団は私のものなのよ! あんたたちは黙って私の言うこと聞いてればいいのよ!」 パンッ!! キョン「………」 私は何をされた?叩かれたキョンに。何で?何で私がキョンに叩かれるわけ? 許せない…! ハルヒ「何すんのよっ!痛いじゃない! 団員が団長を叩くなんてただで済むと思ってるの!」 キョン「うるさい!」 ハルヒ(ビクッ) キョン「いつもいつもわがまま言いやがっていい加減にしろ! 俺たちはお前のおもちゃじゃないんだぞ!!」 ハルヒ「な、何よ!そんなにアタシが気に入らなければ出て行きなさいよ! SOS団を除名してあげるわ。ねえ、みんな…」 古泉君、みくるちゃん、有希なんでみんな私を責めるような目で私を見るの? 悪いのはキョンじゃない。私は悪くないわよ。 キョン「そうかよ。わかったよ出て行ってやるよ。これで、せいせいするだろ」 ハルヒ「え、ええ。あんたみたいに使えない奴がいなくなってせいせいするわ」 キョン「…………」 そう言うと、キョンは無言で出ていった。 古泉「それじゃあ、僕も…」 ハルヒ「古泉君!?なんで、あんたまで…」 古泉「僕も人を物扱いする人の下にいるのは不愉快ですから」 それじゃあっと言い残し古泉君も出て行った。 みくる「涼宮さん…」 ハルヒ「みくるちゃん…あなたも?」 みくる「…ごめんなさい」 ただ一言だけ謝罪の言葉を残しみくるちゃんも逃げるように部室から出て行った パタンッ 有希が本を閉じてゆっくりとこちらに向かってくる。 ハルヒ「ゆ、有希…あなたは辞めたりなんかしないわよね?」 有希「この結果を招いたのはあなた自身。あなたが望んだからこうなった」 そうして有希も出て行こうとしたが、ふと思い出したように足を止めた。 有希「この部室はあなたに譲渡する。好きに使ってかまわない」 そして、もう言うこともないとばかりに出て行った。 部室に一人私は取り残された。 この結果を私が望んだ?そんなことなんて望んでいない。 じゃあ、なんでこんなことになった? (キョン「俺たちはお前のおもちゃじゃないんだぞ!!」) ああ、そうか。私が間違えたんだ。だから、また一人になっちゃったんだ…。 気付くと私の両目からぽろぽろと大粒の涙がこぼれていた。 ハルヒ「グスッ、グスッ…。ごめんなさい私が悪かったわ。謝るから、もう酷いことしないから…… 私を一人にしないでっ!!」 しかし、開け放たれた部室でハルヒの慟哭を聞くものは一人もいなかった。
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自由にコメントをどうぞ。 ご意見、要望などもここで受け付けます。 が、管理人多忙の為ご期待に添えられるかどうかはわかりません。 ワイルドショウスーシーの牌譜あったんで貼っときますhttp //tenhou.net/0/?log=2009041208gm-0061-0000-3df38fec tw=0 ts=4 -- 固定リスナー (2009-05-18 16 54 33) こっちはダイスーシーhttp //tenhou.net/0/?log=2009050804gm-0089-0000-b32a775d tw=3 ts=3 -- 固定リスナー (2009-05-18 17 00 07) 固定リスナーさん ありがとうございます!!さっそく追加させていただきますね。 -- 量産型 (2009-05-18 19 39 09) 三号目スーアンですhttp //tenhou.net/0/?log=2009061805gm-0061-0000-d508bd26 tw=3 ts=9 -- 固定リスナー (2009-06-19 23 52 24) 固定リスナーさん ありがとうございます!最近長時間の視聴が出来ないので助かります。 -- 量産型 (2009-06-20 05 46 43) お疲れ様です。役満リンクお願いします。http //www.youtube.com/watch?v=VSV7oJ5cKbw 一応こちらも貼っときます。http //tenhou.net/0/?log=2009071902gm-0061-0000-b44b15b3 tw=1 ts=1 -- 部室 (2009-07-19 18 24 33) 部室さん 動画編集お疲れ様です、作業が遅れて申し訳ありません。牌譜の方もありがとうございました。 -- 量産型 (2009-07-21 00 55 27) 役満リンクお願いします。http //www.youtube.com/watch?v=ZwUnP0RNges -- 部室 (2009-08-28 09 38 33) 久々に覗いたけど雰囲気全然違っててがっかりした -- 名無しさん (2009-09-25 12 21 03) 名前 コメント
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『想っている人との距離が縮まりそう―』 そんな朝の情報番組の占い結果を気にしつつ、校舎までの坂道を歩く。見慣れた風景だ。教室に入ると俺の後ろの席のハルヒに挨拶をするのがもう習慣になっているのだがどうも様子がおかしい。窓から空を眺めて溜息をついている。 原因は先日行われた学内模試の俺の結果が芳しくなく、放課後の補習に強制参加させられているためSOS団の活動を休んでいるせいか、と自ら解答を導きつつ声をかけた。 「よお、ハルヒ。おはよう。昨日も部室に行けなくてすまん」 「補習受けてるんでしょ。我がSOS団から成績不振者が出るなんて恥ずかしいわ」 「それが今日で終わるんだ。今日からは行けるぜ」 「・・・遅れたら罰金だからね」 そう言うとハルヒは再び目を窓の外にやった。いつもは暴走列車以上の活発ぶりをみせるハルヒだ。今日のような落ち着いた日があってもバチは当たるまい。そう思いながら俺は担任が来るのを待った。 連日の補習で頭を使いすぎたか、昼休みに俺は強烈な睡魔に襲われた。それは通常登場予定の空腹感の出番を奪い去る程のものだった。窓から容赦なく照りつける太陽も味方し、俺は深い眠りについた。その頃には朝の占いのことなど全く覚えてなどいなかった。 「ちょっと。もうすぐ授業始まるよ」 俺はその声で目を覚ました。その声は間違いなくハルヒではなかった。声を聞いて感じたのは違和感と恐怖。俺は反射的に机から身体を起こした。 「目は覚めた?次は教室移動だから早くしないと間に合わなくなるわよ」 目の前にいたのは―カナダに引っ越したことになっていて、俺のことを殺意をもって襲ってきた張本人の―朝倉涼子だった。 「ああ、そうだったな。ありがとよ」 朝倉はちょこっと頷いて待っていた数人の女子の輪に入って教室を出て行った。 またか。 またこんな世界になっちまったのか。長門も朝比奈さんも鶴屋さんも俺のことを知らず、ハルヒと古泉に至っては光陽園学院に通っている世界に。どうせこの教室にはハルヒはいないことになっているんだろう、過去の経験から狂ったように人に聞くのはやめよう、きっと解決策は見つかる。そう楽観視しながら教室を出た。 思っていた通り解決策はすぐに見つかった。放課後部室に行ったときのことだ。 文芸部の長門がいるはずだからノックをすると意外な返事が返ってきた。 「はぁい、どうぞ」 予想していなかった声が返ってきたので急いでドアを開けると、団長を除くSOS団が揃っていた。 「困ったことになりましたね」 状況を把握できないまま部室を見回している俺に最初に話しかけたのは古泉だった。お前は光陽園学院の生徒ではなかったか? 「皆あなたのことを知っていますよ。あの改変世界と今我々がいる改変世界は違います。前者の改変者は過去の長門さんでしたが、今回の改変者は涼宮さんです」 やはりな。今度は何故なんだ。 「涼宮さんは本気で世界を変えようとは思っていません。何か抱えている問題があるのでしょう。僕はてっきりあなたが答えを知っているものだと」 知るか。 「最近涼宮さんは部室にきてもパソコンをいじるか、溜息をつくかで今までの元気が無いのは明らかでした。教室では元気だったのですか」 確かに元気は無かった。もしかしたら俺の成績が悪いことが原因か。 「そうならあなたに勉強を教える等世界を改変しなくても解決できるでしょう。補習が終わるのは今日なのであなたがSOS団に参加できなかったことが原因であるのは考えにくい。予想ですが、涼宮さんは自分がいないとあなたはどうなるかを知りたいのだと思いますが・・・。結論を言うと、答えは彼女のみが知っているのですよ」 お前にとってはGod knows…か。ハルヒは何処にいるんだ。 「涼宮さんは閉鎖空間を作っています。ただ神人の出現が確認されていないので機関としては動きようがありません」 じゃあどうすればいいんだ。 「僕たちが出した結論はこうです。過去に涼宮さんが作り出した閉鎖空間に入ったことのあるあなたが再び閉鎖空間に入る」 俺はあんな所はもう嫌だ、と言いたいところだがそうは行かないみたいだな。でも、どうやって。 「以前あなたと涼宮さんだけの閉鎖空間に入ったときはどうしたのですか。それと同じ方法をとればいいのですよ」 方法も何もただ寝ただけなんだがな。 「では寝ればいいんですよ。涼宮さんは待っていると思われますから、場所はここがいいでしょう」 一つ我儘を言わせてもらえば朝比奈さんの天使の声で子守唄を歌って欲しい。でも今回は皆この部屋から出ていただくとありがたい。 「わかりました。僕たちは出ましょう。すべてはあなたにかかっていることを忘れないで下さいね」 「キョンくん・・・絶対帰ってきてね」 「・・・こっちで待ってる」 古泉はその日初めて見たニヤケ顔で、朝比奈さんは制服姿に天使の声で、長門はいつもの無表情でそう言うと部屋から出て行った。 一体ハルヒが抱えている問題って何だ?世界を変えてまで悩むことなのか。何で俺は気づかなかったんだ。いや、気づいていたが気づいていないフリをしていたのかもしれない。まあいい。閉鎖空間に行ったら思う存分聞いてやろう。多分俺にしか聞けない悩みだから閉鎖空間を作ったんだろう・・・そんなことを考えていたら昼に十分すぎる睡眠をとったはずなのにまた眠りについていた― 背中にコンクリートの硬い感覚を覚える。俺は前と同じ場所に寝ている。 目を開ける。灰色の空。静かすぎて灰色の空に吸い込まれるような感覚になる。 何度来ても嫌だな。この不気味な空間は。 俺は部室へ向かう。危機管理が全くなっていないのかと思うほど昇降口は簡単に開いた。この様子だと部室の鍵も開いている。そこでハルヒは待っている。 そんな確信と共に部室への道を駆けていった。 部室は唯一電気が点いており、やはりここかと安心した。 よく考えると今日二回目の入室だな。一回も出てないのに。 俺はドアを開けた。部屋の奥には窓から外を眺めているハルヒがいた。 「ちょっと、キョン。何よこれ。どれも暗いじゃない」 「落ち着け。一度来たことがあるように感じないか」 「言われてみればそうかも・・・。ああ思い出した。けど思い出したくない悪夢だったわ」 俺も思い出したくはないが。それより俺が部室に入ってきたことに驚きはないのか。 「別に。来てくれると思っていたしね。何となくだけど」 ハルヒの声に元気が無いことに俺は閉鎖空間に来た目的を思い出した。 「なあ、ハルヒ。今朝元気が無かったみたいだったが何かあったのか」 「えっ・・べ、別に無いわよっ。いつもの私だったじゃない」 「俺もSOS団の一員だ。団長に元気があるか無いか位わかる。本当に何も無いのか。よかったら話を聞くぞ」 「・・・・・・・」 流れる沈黙。しまった、俺は地雷を踏んでしまったか。 ハルヒが口を開く。 「・・・実はね・・私・・・・」 ハルヒは少し涙目になっている。そんなに重い悩みなのか。 「好きな・・・人が・・出来たのよ・・・」 意外な悩みに俺は言葉を失った。 「でもっ・・私全っ然素直になれなくて・・・その人の前だと」 ハルヒは泣いている。俺はどう声をかけてよいか迷っていた。 「ハルヒ、前に告白は電話とかじゃなく直接言うべきだって言ってただろ。俺もそう思う。言うのなんて数秒で済むわけだし、思い切ってその人に告白した方がいいんじゃないか。勇気が出ない、素直になれないとかここで悶々としてても想いは伝わらないぞ。行動する前に悩むなんかハルヒらしくないしな」 我ながら恥ずかしいことを長々と言ってしまった。しかしこれが解決策だろう。ハルヒの想いなんぞ、ここで言う限り俺しか知ることは出来ない。俺以外には伝わらない。だから伝えなくてはいけないんだ。 次の瞬間、頭にある言葉が浮かんだ。 『想っている人との距離が縮まりそう―』 朝の占いだ。ま、まさか― 「グスッ・・・そうね。私らしくないわ。スパッと言えばいいのに何悩んでたんだろう。私の好きな人はね、そのっ・・うんと・・・キ、キョン、あんたなの・・・」 告白した瞬間ハルヒは再び泣いた。よほど勇気を振り絞ったのだろう。俺はその勇気に答えようとハルヒを抱きしめた。 「ハルヒ、気づかなくてすまん。ハルヒの想いは受け取ったよ」 ハルヒは俺の胸で涙を流しながら言った。 「・・・返事は?」 「あ、ああ。実は俺はハルヒが消えた夢を見たことがある。その夢で俺はハルヒがいないことでパニックになった。そこで俺は気づいた。俺にはハルヒがいないとダメだ。俺にはハルヒが必要だ。ハルヒ、俺もハルヒが好きだ。ずっと一緒にいよう」 二人しかいない部室。ハルヒは涙を拭き、抱きしめてきた。俺も力を入れる。長い時間が流れる。 「なあ、そろそろあっちの世界に帰ろう。皆待ってるぞ」 「そうね・・・。あっ、戻る方法覚えてる?」 「ん・・・ああ、覚えているよ」 俺はハルヒの唇に自分の唇を重ねた。 気づいたら俺は部室の長机に突っ伏して寝ていた。ハルヒはいつもの場所に同じく突っ伏して寝ていた。 まもなく6時になる。下校の放送がかかる前に帰ろうとハルヒを起こした。 「おい、ハルヒ。起きろ」 「ん・・・ぅあ。がっ!」 ハルヒは驚いたか顔で俺を見るとすぐ目を逸らした。 「恥ずかしい夢を見たんだけど・・・。あれを夢で終わらせたらいけないと思う。ねぇ、キョン。私―」 「ハルヒ、夢の中で俺はOKをした。それでいいじゃないか。俺はハルヒのことが好きだ」 「・・・恥ずかしいこといってバカじゃないの・・///でも、嬉しい。私も好きだよ、キョン」 そんなことを話しながら俺たちは帰った。 空で輝く月の下繋いでいたハルヒの手は暖かかった。