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将棋部では随時新入部員を募集しています!新たに入部を希望される方は、以下の方法で連絡を下さい。 ①Twitterアカウントに対してリプライまたはDMを送る。 ②新入生勧誘冊子に掲載されているメールアドレスか携帯番号に連絡を送る。 ③直接部室にお越しになる(常に開室しているとは限りませんのでお勧めはいたしません)。 その上で一度部室でお会いして部活動の簡単な説明(活動目的、入部後のスケジュール、部費について等)をさせて頂いて、活動の趣旨をご理解して下さった方に入部していただこうと思います。 私どもの将棋部には初心者も多いですし、0Bには県代表クラスの高段者もおります。将棋に興味があるならどのような棋力の方でも大歓迎です!1人でも多くの方の入部をお待ちしております。
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「あ~、もう!ほんっと退屈だわ!!」 ハルヒの不機嫌そうな独り言を聞きながら、俺は古泉とオセロをしていた。 放課後いつも通りに部室に集まり、何事もなく時間だけが過ぎていく。 平和そのものだった。ただ、その平和というものを団長様はいたく嫌っている。 「何かおもしろいことは無いのかしらねー? 最近は本当に退屈すぎて死にそうだわ!」 確かにここ最近は特にイベントごともなく、放課後部室に集まっては ただぼけーっとした時間を過ごすだけだった。 さすがに退屈だとは感じるが、死にたくなることはないね。 俺が不意にハルヒに目をやると、じー、っと長門の方を見ている。 十数秒は見ていただろうか?ハルヒは突然何かを思いついたかのように 満面の笑みを浮かべ俺の方を見た。今度は何をしようってんだ? 「キョン、あんた有希の笑ってるとこって見たことある?」 「ん?あぁ、…いや、見たこと無いな」 俺は瞬間的に、あの改変世界での長門の優しく微笑む顔を思い浮かべたが それはこの長門じゃないからな。 「でしょう!実はあたしも有希が笑ってるとこってみたことないのよ! これって大発見じゃないかしら!?」 そんなもんは大発見でもなんでもない。長門と三日も見ていれば 誰だってそんなことには気づくさ。こいつはそういう奴だってな。 「そうと決まれば話は早いわ!みくるちゃん、古泉君 こっちに来て。作戦会議よ!」 俺達4人は部室の隅に集まって作戦会議とやらを始めた。 「いいみんな?この作戦は有希を笑わせることよ! 半端な笑い方じゃダメ。それこそお腹を抱えて転げまわるくらいの笑いよ!」 長門が腹抱えてもんどりうってる姿なんぞ俺は見たかない。 いや、少しは見てみたいかもしれないが。 俺はこれまた部室の隅で本を読んでる長門を見ながら考えていた。 「あの有希の笑いのツボが分からない以上、とにかく色々試す必要があるわね。 まずはみくるちゃん、なんかしてきなさい!」 「へ?ふぇぇ~!?わ、わたしがですかぁ?む、むむ無理ですぅ~!」 朝比奈さんは今にも泣き出しそうにハルヒにすがっている。 「いいからやるの!団長命令よ!」 俺は今回、ハルヒを止めようとはしなかった。 正直なところ、俺も退屈していたからな。 「うぅ~」 朝比奈さんは困り果てたように長門の目の前まで行った。 長門は依然としてイスに座り本を読んでいる。 朝比奈さんは一体どうやって長門を笑わそうというんだ? 「そ、そのぅ…な、長門さん!き、きき聞いてください!」 なにやらものすごく気合が入っているようだ。 いや、これはもはや開き直ってるのかもしれん。 「ふ、ふとんがふっとびましたぁ~!!」 「………」 瞬間、その場が凍りついた。 朝比奈さん、それギャグになっていませんよ。 「………」 長門は何の反応を示すこともなく読書に勤しんでいる。 「あ、あれぇ??つ、鶴屋さんはこれで笑ってくれたのにぃ。 ど、どうしてぇ~?へ?み、みんなまでどうしちゃったんですかぁ~!?」 すみません朝比奈さん。俺もそれで笑うことは出来ません。 鶴屋さんはきっと違う理由で笑ったんだろう。 もっとも、あの人なら何言っても笑ってくれるかもしれないが。 「仕方ありませんね。僕に考えがあります」 そう自身ありげに長門の方へ向かう古泉。 朝比奈さんはすっかり落ち込んでしまったようだ。 さて、古泉の考えとやらに期待でもするか。 古泉は長門の前まで行くと、いつも以上に眩しい、いや、腹立たしい笑顔になっていた。 「長門さん。今日の朝食はなんでした?」 「……カレー」 「そうだね!プロテインだね!!」 パクリやがった。 「違う。今日の朝食はカレー」 「え、い、いや、ですから、その…」 「プロテインというものを朝食で食べたことはない」 「…あの、長門さん。今のはですね…」 「あなたは間違っている」 古泉は死んでしまうんじゃないかと思うほど落ち込んでしまった。 「あぁ~ん、もう!しょうがないわね、あたしが何とかするわ!」 そう言って団長自ら長門を笑わせに行くようだ。 さて、ハルヒはどんなことをするのやら。 言っておくが、長門が笑うことは絶対に無いと断言しておこう。 俺としては、つまらないギャグを飛ばしてハルヒが落ち込む姿を 見てみたいものだな。 俺がハルヒの落ち込む姿を想像していると ハルヒは長門の後ろに回りこんでいた。 ん?何をするんだ?そう思った瞬間、ハルヒは 長門の両脇をくすぐり始めた。 「ほらっ!有希~、ここかしら?ほれほれ! さっさと降参しちゃいなさい!その方があなたの為よ!」 こいつに正攻法を期待した俺がバカだった。 強硬手段に訴えているハルヒは、そりゃもう楽しそうだった。 長門が笑っているかは気にしてないなこいつ。 つーか普段長門とじゃれあうことなんてないからな。 ハルヒは長門の感触だけで十分楽しそうだった。 ハルヒが長門をくすぐり始めて数分が経ったとき 長門はいい加減なんとかしてほしかったのだろう。 俺の方を見ている。どうやら助けを求めてるみたいだな。 ハルヒも楽しんだようだし、もうそろそろ止めるか。 「おいっ。もういいだろ?長門だって、無理やり そんなことされたら迷惑だろうよ」 そう言って俺は長門からハルヒを引き剥がす。 ハルヒはまだ物足りなかったようだが、まぁそれなりに 退屈をしのげたからだろう、すんなりと俺の言うことを聞いてくれた。 「結構面白かったわ!じゃあ今日は解散!!」 さっさと部室を出て行くハルヒ。それに続けと 古泉も出て行った。今日はメイド服を着ていない 朝比奈さんも、ぺこりとお辞儀をして帰っていった。 ったく、長門を笑わせるのに大げさすぎなんだよ。 気づけば部室には俺と長門の2人だけだった。 長門は読んでいた本を閉じる。今日はもう帰るようだ。 帰る前に俺は長門にお願いしてみる。 「長門、ちょっと笑ってみてくれないか?」 「………」 部室には野球部の金属バットの音が聞こえ、放課後ってのを演出していた。 窓際には夕日が差し込んでいた。 そこには笑顔のよく似合うひとりの美少女が立っていた。
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胡桃「遅れちゃった……ん、部室から何か聞こえる……」 『京太郎……もっと奥……』 『この辺ですか……?』 『うん……気持ちいい……』 胡桃「こっこれは!」 バタン 胡桃「何してるの!」 京太郎「何って」 シロ「耳掻き……」 胡桃「あ……そうなんだ……」 翌日 胡桃「また部室から何か聞こえる……」 『きょ、京太郎!そんなに動いちゃだめぇ……あんっ!』 『くっ……塞さんっ!……塞さんっ!』 胡桃「もう騙されないよ」 胡桃「どうせ昨日みたいな事でしょ」 ガチャ 胡桃「ごめーん遅れたー」 京太郎「く、胡桃先輩!?」 塞「く、胡桃!?ち、違うの!これは……」 胡桃「ほんとにヤッてんのかい!!!」 カンッ
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#またまた実験作です。 掃除当番ということで、俺はいつもより遅れて部室に向かった。 なぜか長門が部室前に立っている。どうしたんだ、一体? 「この前掲示板に張った文章を彼女に見られた」長門は淡々と説明する。 ひょっとしてそれで立たされているのか? 「そうではない。新作を見せたところ『あたしがいいというまで外に立ってなさい』と言われた。ゆえに立っている。」 「また書いたのか」 「そう。悪気はない。喜ばせようと思っただけ」 「なるほどね。ま、いいや一緒に入ろう。ハルヒには俺はから話をしてやるから。」 そうして俺と長門は部室の扉を開いた。 確かにハルヒはぶんむくれた表情のまま団長席にあぐらをかいて座っている。怒りゲージMAXというところか。エプロンドレス姿の朝比奈さんは、丸盆を抱き締めたままブルブルふるえているだけだった。 「どうした、団長様ともあろうものが。もう、いい加減長門を許してやれよ」 「有希はね、とんでもない文章を掲示板に張ろうとしたのよ」ハルヒはA4用紙を俺に突き付けた。「これ、読んでみなさい!」 俺は読み始めた。 鈴宮はるひの後悔 その1 「なんで、あたしの前でみちるちゃんといちゃいちゃすんのよ、この馬鹿きょん!」頬に一筋の涙が見えた。 そういって鈴宮はるひは部室の扉を蹴り開けて、走ってどこかに行ってしまった。ああ、また部室の扉が破壊されてしまった。この前直した蝶番が見事に外れてしまっている。 またドア中央部には大きなへこみが出来ている。圧縮合板で出来た扉にここまでのダメージを与えるにはどんな力が必要なのだろうか。 「きょん君、追いかけてください。」さきほどまでのオレとのいちゃいちゃで顔を上気させた浅比奈さんがいう。「鈴宮さんはあなたを必要としています。」 「え、オレが?」別にあんな怪力女には興味ないんだが。「でも、浅比奈さんをひとりには。」 「私は大丈夫。心はあなたとあります。だから、鈴宮さんを追いかけてください。」 「いや、だからオレはあなたのことが」 「だめです。それは。鈴宮さんはあなたが追いかけてくることを望んでいます」 「いや、あのアホはほっといて二人で楽しくやりませんか?」 「・・・・それは落着いてから、ね」浅比奈さんがぼそりといった。「とにかく鈴宮さんを追いかけてください。慰めて連れて帰ってきてください。 なんならキスの一つや二つしてもいいです。そうしないと世界が・・・」 そうだ、そういえばそうだった。なぜか鈴宮はるひの御機嫌をとらないと世界は滅んでしまうのだった。 「勇気をあなたにあげます」そういって浅比奈さんはオレに口づけをくれた。 鈴宮はるひの後悔 その2 オレのツレである小泉は文芸部員だ。それでちょくちょく文芸部部室に遊びにきていて、浅比奈さんと出会った。それが恋に成長するのに時間はかからなかった。 オレと鈴宮はるひはクラスも違うし、なんの接点もない。しかし、ちょくちょく遊びにいっているうちに、浅比奈さんや小泉が「あなたは鈴宮はるひに選ばれてしまった」と突然いいだした。 それは百歩譲ってそういうものだと理解してやってもいい。でも、オレは浅比奈さんといちゃいちゃしたり、小泉とツルんで遊んでいた方が楽しいのだ。 なんで、あんな電波女の相手をせにゃならんのだ。 まあ、とにかく鈴宮はるひを見つけだし、慰めて連れて帰らなければならない。 しかし、あの泣き虫怪力女はどこに消えたのだろうか。 「やあ、こんなところにいたとは」小泉の声に振り返った。 「おお、鈴宮を知らないか?」 「また泣かせたのですか?」あきれたように小泉がいう。 「あいつが勝手に泣いたんだよ」肩をすくめて答えた。「んで、ドア蹴破って逃亡さ。」 「やれやれですね・・・ちょっと待ってください」小泉は携帯を取り出した。電話で二言三言話をすると、電話を切った。「鈴宮さんの場所が分かりましたよ」 「どこにいるんだ?」 「近所にある神社だそうで」小泉は興味深そうにいう。「いきますか。」 「いこういこう。」 鈴宮はるひの後悔 その3 「ここか?」 「そうです・・・ね」 目の前には古ぼけた神社がある。霊気がただよっているような、いないような。霊感は0なので、どっちでも同じことだが。 「お堂の中にでもいるんじゃないでしょうか?」小泉がとぼけた調子でいう。 「うーん、外からではわからんな」 「ここはあなた一人でいくしかありません」小泉は残念そうにいう。 「ま、やってみるさ」オレは肩をすくめながら言う。「骨は拾ってくれよ」 「ご武運を」小泉は言う。 小泉とげんこつを合わせていざ出陣だ。気まぐれ自己中女との対決だな。 お堂を一回り回って見たが、入り口は正面しかないようだ。そうっと階段を上る。 隙間から中が伺えないかとのぞいてみたが、なにも見えない。 あけてみるしかなさそうだ。 きぃきぃきぃといいながら扉が開く。真っ昼間だというのに背中が寒くなるな。 外からの光でやっと中が見える。・・・・あの人影、たぶん、鈴宮だ。 「鈴宮か?」 「ばかきょん?なんでくるのよ。」すすりあげるような声が聞こえた。 「心配したぞ、帰ろうぜ」 「いやよ、どうせしばらくしたら、あんたとみちるちゃんがいちゃいちゃしだすにきまってるわ。そんなの耐えられない」 「もうしないよ、約束する。」部室ではな。 「・・・・・・・ホント?」 「ホントだとも」当然部室限定でな。 「・・・・・・・あたしとも遊んでくれる?」 「ああ、遊んでやるとも」部室ならな。 「・・・・・・・こっちきて」 反射的にヤダといいそうになるが、グッとこらえて中に入った。中はわずかにかび臭い匂いがするが、それほど不快でもなかった。 鈴宮はるひの後悔その4 「さっきいったこと本当に約束してくれる?」泣き濡れた目が赤い。好きな女の子を泣かす趣味はまったく無いが、泣いた女の子はそれなりに心にヒットするな。 「ああ、約束する。」心の中で舌を出しながら答える。「だからな、鈴宮、帰ろう」 「2つ、約束して」はるひがまぁかわいいともいえなくもない笑顔になって言う。 「な、なんだ?」 「ひとつは、今度からあたしのこと『はるひ』って呼んで」 「ああいいとも」まあ計算のうちに入っている。 「もうひとつ、お願いがあるんだけど」顔が赤い。熱でも出たのだろうか。 「なんだ?」 「抱き締めて、好きっていって」 正直躊躇する。浅比奈さんであれば先週したし、小泉にだって頼まれればやってやってもいい。 しかし、こいつにそんなことする義理は・・・・ 突然、オレの腕の中で甘える浅比奈さんの笑顔が浮かんだ。夕日の中に立つ小泉を見た。邦木田や溪口、麻倉を始めとするクラスメートの笑顔も浮かぶ。両親や妹、そして飼い猫も浮かんできた。 オレにはかけがえのない恋人や親友、友人、そして家族。退屈もするが楽しい世界。その世界をオレは守らなければならない。そのために払う犠牲と考えれば安いものだ。 すっと鈴宮を抱き寄せる。浅比奈さんほどじゃないが、思ったより肉感的な体で驚く。 ちょっとこれは危険だな。 鈴宮の耳元に唇を寄せて、ささやいた。 「好きだ」と。 鈴宮はるひの後悔 その5 「ありがとう。」鈴宮は顔を赤くしたまま言う。 抱き合っていると、さすがに変な気分になってくるな。 ちょっとぐらい悪戯しても許されるんじゃないか?そんな気分になってきた。 首筋に軽くキスをしてみた。ぴくんと体が反応した。いい反応だ。 両手をすっとお尻にまで降ろし、さわさわとなでて見る。はるひの体は、すばらしい反応を見せた。 「中学時代、遊んでたって話は本当なのか?」 「な、なにをいうのよ、突然。」 「ほら、すごく感度がいいんだ。」首筋をなぞるようにキスを繰り返す。そのたびに、はるひの体が反応した。「中学時代に、開発されたんだろ?」 「ば、ばか」否定せず、うつむくはるひ。 はるひの顎を右手で軽く持ち上げた。潤んだ瞳に欲情の炎が見てとれる。唇を荒々しく奪う。ハルヒは目を大きく広げ、そして素直になった。 「こんなとこで・・・・」うっとりとした顔は、ここでしてって言ってるぞ。「そんなこと、いわないで・・・」 文章はそこで終わっていた。なるほど、ハルヒが怒るのももっともだ。 「長門、これ話がむちゃくちゃだろう」 「さまざまな要素を詰め込んでみた。主人公がヒロインを泣かせて追いかけて、葛藤があって、告白があって、さらにエロティシズムまでカバー」 「実験にも程があるぞ。これじゃハルヒをいじめてるだけじゃないか。 しかも、なぜ俺が古泉に頼まれれば抱き締めて好きとささやくような性格になってるんだ」 「主人公は鈴宮はるひであって、涼宮ハルヒではない。またあなたも同じ。」 どうも反省が足りないようだ。掃除用具入れを開けて、バケツを取り出した。 3人が見守るなか、俺はバケツに水をたっぷり入れると、長門に渡した。 「これもって、いいというまで外で立ってろ」 しばらくして古泉がやってきた。同じように長門を部室に招き入れる。 おれはさきほどの紙を渡してやると静かに古泉はそれを読み始めた。 古泉もおれと似たようなことをいい、小さなホワイトボードを探しだし、なにかを書いた。 「これを首にかけて、僕がいいというまで外で立ってなさい」 ホワイトボードにはこう書いてあった。 「わたしはねらーです」 おしまい。
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一般情報 トンちゃん 2期2話から登場。軽音部が部室の備品を購入しに行ったホームセンターで売られていた子ガメで、品種はスッポンモドキ。 部室にあったさわ子の古いギターを売ったお金で1つだけ何か買ってもいい、とさわ子に言われ、唯の提案(と言うよりは勘違い)により梓の後輩の新入部員としてアクアリウム設備付きで購入。梓よりも唯の方がとても気に入っており、唯曰く「鼻にピーナッツを入れたくなる可愛さ」とのこと。 性格は非常に大人しく、賢い面を持つ。つぶらな瞳と大きな鼻の穴がチャームポイントで、軽音部のマスコットキャラクターとして愛されている。 主に梓と紬がエサや掃除などの世話をしており、夏休みの間は梓が家に連れ帰って世話をしている。 検索結果一覧 取得中です。
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涼宮ハルヒの約束 part51-372~377、part52-40~50,54、part58-181,182 372 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 04 45 07 ID IbCCbANj0 初めて会う人は「初めまして」、そうでない人は「またお会いしましたね」、 どうも、「俺」です。 俺が何者かであるか知らん奴には 「涼宮ハルヒの並列」のページの最初の方を読んでいただくとしよう。 いやー、新刊が出ないと枕を濡らす日々が続いていた(大げさ)んですが、 近々新刊が出そうな雰囲気になってきたんで何よりです。 まさか、「涼宮ハルヒの並列」に込めた俺の熱烈ラブコールが原作者様に届いたとか!? (んな事ぁ無い) そんなわけで、この物語は「涼宮ハルヒの並列」で味を占めた筆者が 原作者様にエールを込めて贈る一大スペクタクルである。 プロローグ それは、初夏の日差し眩しい、ある日曜日のことだった。 市内の「不思議探索パトロール」、本日は記念すべき第二回目である。 例によってせっかくの休みを一日潰してあてどもなくそこらをウロウロするという企画なのだが、 どういう偶然だろう、朝比奈さんと長門と古泉が直前になって欠席すると言い出し、 俺は今、駅の改札口で一人、ハルヒを待っている。 俺は腕時計に目をやった。集合時間まではあと30分もある。 こんなに早く俺がやってきたのは、遅刻の有無に関わらず最後に来た者は 皆に奢るという定めがSOS団にあるからで、他意はない。 参加人数は二人なので、これでハルヒの奢りは確定である。 今日はハルヒに色々なことを話してやりたいと思う。 数々のネタが頭に浮かんだが、まあ、結局のところ、最初に話すことは決まっているのだ。 そう、まず、宇宙人と未来人と超能力者について話してやろうと俺は思っている。 程なく憮然とした様子でハルヒはやって来て、俺たちはいつもの喫茶店に入った。 「二回目にしてこれじゃ、SOS団の前途が危ぶまれるってものよ。 次からSOS団の会合は、何があっても絶対欠席禁止よ。 SOS団は必ず全員集合!いいわね、キョン」 て、唯一の出席者である俺に言っても意味無いだろ、と言ってやるかどうか迷っているうちに、 注文したものがテーブルに運ばれてきた。 ハルヒは無言でカフェラテのカップを口に運んでいる。 何も話さないときのこいつは、正直、この国の女子高生としてはかなりかわいい部類に入るだろう。 このまま止め絵にして見つめていられるならそうしたい。 だが、そんなゲームにおけるイベントスチルのような都合のいいことができるわけもなく、 このまま放っておくと再び喋り始めるだろうから、 先に俺が話を振ることにする。 373 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 04 46 14 ID IbCCbANj0 「なあハルヒ、重要な話があるんだが、聞いてくれ。 聞いて喜べ、あの長門有希はなんと宇宙人なんだ」 「へぇ、あの有希が……」 「実はな、朝比奈さんは未来人なんだ」 「なるほどねぇ。みくるちゃんが……」 「驚いたことに、古泉は超能力者なんだ」 「ふぅん。古泉くんが……」 沈黙すること数秒。 「ふざけんなっ!」 ハルヒは叫んだ。まぁ、そう言いたい気持ちもよくわかる。 俺だって同じことを誰かに言われたら、同じ反応をするだろう。 「キョン、よーく聞きなさい。宇宙人、未来人、超能力者なんてのはね、 すぐそこら辺に転がってなんかいないのよ。選んできた団員が全員そんなのだなんて、 あるわけないじゃない!」 かくして、俺が思い切って言ってやった厳然たる真実は冗談と決め付けられ、 挙句の果てにハルヒは財布を忘れたとかで喫茶店の払いは俺がすることになってしまった。 後から考えると、あの一件は、 もしかしたらここでの会話がきっかけだったかも知れない、という気もする。 それが起こったのは、喫茶店での会話から五ヶ月を経て、文化祭を翌日に控えた、 暦の上ではとっくに秋だというのにまるで夏のようにじっとりと暑い、そんな日だった。 374 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 04 48 38 ID IbCCbANj0 第一章 今日は文化祭の前日。俺はとある珍妙な映像作品を文化祭で公開すべく、 昨日から夜を徹して部室のパソコンに向かい、編集作業に取り組んでいた。 しかし、いつの間にか睡魔に撃沈されてしまったらしく、結果、こうして むさくるしい部室で冴えない朝を迎えたわけだ。 部室の外へ出る。ん?今、小学生くらいの女の子が走っていったように見えたが、気のせいか? たぶん気のせいだろう。俺は顔を洗って頭をすっきりさせた後、 購買部に行きメロンパンとコーヒー牛乳を調達し、広場に行ってそれを食った。 そこへ、ファンタジー小説から飛び出してきた吟遊詩人のような格好の古泉が通りかかった。 古泉がそんな格好をしているのは、彼のクラスの出し物である演劇で、 何とかという舌を噛みそうな役を演じるからであって、断じてコスプレなどではない。 少し話をしたあと、これから通し稽古があるなどと言って古泉は去っていった。 朝飯を食い終わった後部室に戻ると、そこでは長門がいつものように分厚い本を広げていた。 今、長門は映画の撮影で着ていた悪い魔女の衣装を身に着けている。 これもクラスの出し物である占いの館で、長門が占い師をやるからだった。 そろそろ編集作業を再開するかと思っていたところ、長門は 「まだ時間はある」 と俺に言った。確かに、映画は明日の朝までに完成させればいいし、そう考えるとまだ時間がある。 後から考えると、長門なりに精一杯俺にヒントを出していてくれていたのだが、 そのときの俺はその言葉を「もっとノンビリしろ」という風に解釈し、よって午前中は 校内を散策しつつノンビリすることにしたのだった。 「おかえりなさい。今、お茶を淹れますね」 部室に戻った俺を出迎えたのは、我らが天使、メイド服姿の朝比奈さんである。 程なくして、 「みくるちゃん、お待たせ!焼き上がったわよっ!」 俺と朝比奈さんとの心地良い空間に土足で踏み込んできたのは、ハルヒだった。 「ほら、キョン、受け取りなさい」 ハルヒが差し出したそれはCD-Rであった。 朝比奈さんが歌ったという、映画の主題歌「恋のミクル伝説」がその中に焼き込まれているらしい。 ハルヒと朝比奈さんが部室を出て行った後、こっそり聴いてみる。 聴いた事がないという読者諸兄は一度聞いてみてほしい。 ある意味ですごいモノなのである。 この歌をどうやって映画に組み込むのか、俺は大いに頭を悩ませることとなった。 編集作業もろくに進んでないというのに。 375 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 04 50 12 ID IbCCbANj0 日も傾いてきた頃、いきなり部室のドアが開けられた。 「やあやあ、キョンくん!」 いつものハイテンションで俺の前に現れたのは鶴屋さんだった。 説明しよう。鶴屋さんは朝比奈さんのクラスメイトで、今回の映画制作でもお世話になった人である。 「実はさっき玄関で、キョンくんに会いに来たって言う人に会ったのさっ!さあ、入っといでっ!」 鶴屋さんの後ろからひょっこり顔を出したのは我が妹だった。 「キョンくん、やっと見ぃつけたぁっ!」 妹から俺の着替えと、母親からの差し入れだというおにぎりが入った容器を受け取った。 「ねえねえキョンくん、シャミはー?」 妹が言うシャミとは、シャミセンのことだ。 シャミセンは成り行きでうちで預かることになった猫である。 三毛猫なのにオスだという、それだけでも非常に珍しいのだが、 それよりももっと稀有なのは、彼が人語を解し、自らも話すことが出来るということだろう。 シャミセンがそんなスーパーキャットになってしまったのは、もちろんハルヒのせいなのだが。 登校するとき、俺はシャミセンを連れ出して、学校の近くで放しておいたが…… どこへ行ったんだ? 「シャミ、あたしが連れて帰るぅ!ねぇ、シャミ、どこ?」 妹はシャミセンに執拗にこだわっていたが、行方がわからんのでは致し方ない。 それより、そろそろ暗くなるから家に帰った方がいいんじゃないのか? 「あ、それなんだけど、妹ちゃん、あたしが家まで送って行こうか?」 鶴屋さんは、一度家に帰る用事があるというのでそんなことを言い出した。 そんな鶴屋さんのお言葉に甘えさせてもらうことにして、 校門を出て行く妹と鶴屋さんを見送る俺だった。 「行ったようだな。正直な話、ここに留まらせてくれたことを感謝している」 こいつがシャミセンだ。まったく、計ったようなタイミングで出てきやがる。 シャミセンは、普通の猫のフリをしなくちゃいけない我が家より、 自由に振舞えるここの方がいい、ってなことをのたまいつつ、グラウンドの方へと消えていった。 すっかり夜になった。俺は部室に戻って編集作業に勤しんでいたが、 いつしか睡魔に負けてしまっていた。 376 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 04 51 30 ID IbCCbANj0 第二章 今日は文化祭の前日。俺は部室で目を覚ました。そうか、編集作業の途中で眠ってしまったんだな。 部室の外へ出る。ん?今、小学生くらいの女の子が走っていったように見えたが……。 気になったので追いかけてみたが、見失ってしまった。 俺は顔を洗って頭をすっきりさせた後、購買部に行き朝飯を調達し、広場に行った。 そこへ、劇の衣装を着た古泉が通りかかった。 「あなたの朝食のメニューを当てて見せましょうか?メロンパンとコーヒー牛乳。違いますか?」 え?当たってるが、それがどうかしたか? 「なるほど。これで僕の仮説がひとつ、証明されました」 古泉は気になることを言いながら去っていった。 部室に戻って長門に会い、昼ごろになって「恋のミクル伝説」のCD-Rを渡される。 ん?前にもこんなことあったような……って気のせいか。 午後になり、ハルヒに見つからないところで昼寝でもしようかと、 ひと気の無いところを求め校内をさまよい、非常階段にやってきたところで古泉に会った。 「おや、こんなところにいらっしゃるということは、もうお手隙になられたのですか?」 だったらどんなに良かったか。そうだ、この際だから……。 「お前に聞こうと思ってたことがあるんだ。ハルヒの暴走を止める特効薬ってのはないのか?」 「なるほど、そういうことですか」 俺の質問に古泉はしばし考え込んだ。 「待て、何がなるほどなんだ」 「いえ、今の一言で、少々ひらめいたことがありましてね。 特効薬の件は、また改めてお話いたします」 そろそろ稽古に戻るというので古泉は教室に戻っていった。何のこっちゃ。 日が傾いてきて、そろそろ編集作業に本腰を入れなければマズいなと思いつつ、 俺は部室のドアを見つめていた。 朝から何度か感じている既視感、それが気のせいじゃなければ、 もうすぐあのドアを開けて鶴屋さんがやってくるはずだ。 「やあやあ、キョンくん!」 俺の予想はものの見事に当たっていた。妹から差し入れを受け取った後、 妹と鶴屋さんは騒がしく部室を出て行った。 377 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 04 55 41 ID IbCCbANj0 今度こそ本当に編集作業に勤しもうとした俺だったが、 何故か古泉、長門、朝比奈さんという非日常三人組に、屋上へと呼び出されることとなった。 もしかして、あの「特効薬」の件だろうか。 朝比奈さんや古泉は、今朝から何度も既視感みたいなものを感じているという。 こんなことが前にもあった、というあの感覚である。俺も今朝から感じている。もしかして……。 「わたしたちが同じ一日を繰り返しているから。今日で三回目」 長門にしてはわかりやすい説明だった。またそのパターンなのか。時間がループしているとかいう。 しかし三回目ってのはずいぶんと少ないな。 前回は八千回×二週間とか、実際の時間に換算すると気が遠くなるような回数だったが。 しかも、今回の状況は少々特殊だという。朝になると記憶のリセットが行われるわけだが、 それはごく弱いリセットなのだ。強く意識していれば記憶の維持が可能なほどに。 言い換えれば、文化祭前日が何度訪れようとも、誰もがそれを当然として受け止め、 少しもおかしいとは思わずに普通に過ごしている、ということだ。 さらに困ったことがある。俺たちは校内に閉じ込められたということだ。 皆で校門まで行く。そこから出ようとするのだが、見えない壁に阻まれてしまう。 閉鎖空間を自由に出入りできる古泉の能力をもってしても出ることはかなわない、 通常とは異なる性質の閉鎖空間。これを便宜上「閉鎖的閉鎖空間」と呼ぶことにする。 が、正直、この空間が何と呼ばれようが、どうでもいい。俺はただ、元の空間に戻りたい。それだけだ。 「とにかく、この閉鎖的閉鎖空間は涼宮さんが創造主であるわけですから、涼宮さんに働きかけることから始めましょう。 文化祭前日が繰り返してるということは、涼宮さんがこの日に何らかの未練を残していると考えるのが、最も自然です」 だから、ハルヒの未練を解消してやれって言うんだろ、古泉? 「そういうことです。今回もまた、あなたの力に期待することになりそうです」 ああ、わかった。出来る限りのことはやってみる。でないと、俺もあの映画を永遠に編集し続けることになってしまうからな。 部室に帰ろうとしたところで、妹を送っていくという鶴屋さんとバッタリ会った。 「キョンくんは編集、頑張るのだよっ!そんじゃっ!」 「じゃーねー、キョンくん。ばいばーい」 妹と鶴屋さんは校門を出て行った。二人を見送ってから気づいた。 学校から出られた、ってことは、鶴屋さんや妹は、閉鎖的閉鎖空間の影響下にはないらしい。 でも、あの二人にも文化祭前日は繰り返してるんだよな?よくわからん。 そんなことより、ハルヒの気持ちを文化祭当日に向けることが重要だ。 部室に戻った俺を待っていたのは、読書を決め込んでいる長門と、不機嫌そうなハルヒであった。 やがて古泉と朝比奈さんもやってきた。皆で差し入れのおにぎりを食べることになった。 食後、ハルヒはパソコンを立ち上げて、映画の編集済みの部分をチェックし始めた。 「ちょっとキョン!今朝見たときから、編集済みの部分、増えてないじゃない」 「すまん。今から徹夜でやる」 「そう。……ねぇキョン。今、編集済みの部分をざっと見て思ったんだけど、 なんていうか、こう、動きのあるシーンが意外に無いわね。 うーん、もっと突き抜けた感じが欲しいのよ。例えば、夏のギラギラした太陽の下で、 何かスポーツしてるとか。そうねぇ……野球ね!出来れば野球場を借りて撮りたいわね」 ちょっと待て。今さら、追加撮影なんて無理だぞ。明日はもう、文化祭なんだからな。 「そうよね」 ハルヒはその思いつきを渋々と断念し、その場は収まった。 しかし、ある予感、否、確信を覚えていたのは、俺だけではなかっただろう。 ハルヒの思いつきは、世界に何らかの影響を与えるに違いないと。 40 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 04 57 37 ID IbCCbANj0 第三章 そして、翌朝。 「……さん、起きてください」 目を開けると視界いっぱいに広がる古泉の顔。これ以上無いってくらいに最悪な目覚めだ。 それから古泉に屋上に連れて行かれた。そこで見たものは、かつてグラウンドであったところに 違和感なく収まっている、ハルヒご所望の野球場だった。 ハルヒ超監督の指揮により、野球場にて追加撮影が行われた。 撮影が終わった後は、一応編集作業をする。 その合間に、気分転換として校内をブラついたのだが…… 何だか、校内にいる生徒の人数が減っているような気がする。 夜、部室にやってきたハルヒは何だかご機嫌ななめである。 このままでは意味もなく怒られそうな気がするので、俺はハルヒに話しかけてみることにした。 「なぁハルヒ、追加撮影はもう必要ないよな?」 「そうねぇ。もう必要ないと思うわ」 「本当に、本当に、必要ないよな?」 「そこまで言うなら考えてみようかしら。そうだわ、『燃え』じゃなくて『萌え』が足りないのよ! 健康的な色気、それが必要なのよ!」 ハルヒは上機嫌で部室を出て行った。またハルヒの変な気を起こさせてしまった。 でも、健康的な色気ってどんなんだ?例えば、朝比奈さんの水着姿、 それこそは健康的な色気と呼べるのではないか? そんなことを考えながら眠りに落ちた。 第四章 いや、個人的な意見では、この日起こったことが、 野球場が出現するよりも悪いことなのかと問われれば、 そう悪くもなかったんじゃないかと思ったりもするのだが、 朝目を覚ますと、学校のプールは白く輝く砂浜へと変わっていた。 皆は水着に着替え、早速ビーチで追加撮影が始まった。 それが終わったあとは棒倒しやらビーチバレーやらで楽しく遊ぶ。 ちなみにSOS団のメンバー以外の人物は、もうこの閉鎖的閉鎖空間の中にはいないらしい。 日が暮れてからやっと編集作業に取り掛かった俺だったが、 やはり途中で睡魔に撃沈されてしまった。 41 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 04 59 18 ID IbCCbANj0 第五章 今日もやはり文化祭の前日であった。 窓を開けて確認してみたが、ビーチや野球場がいつの間にか元に戻っている、 なんてことは起きていなかった。 ハルヒは追加撮影するとは言い出さず、平穏に午前中が過ぎていった。 昼になって、古泉に非常階段へと呼び出された。 行ってみると、そこには朝比奈さんと長門もいた。 「さて、皆さんにお集まりいただいたのは他でもありません。 今回の、この事態の解決についてです。 僕はいっそ、涼宮さんに、明日が来てほしくてたまらないと考えていただくように 仕向けてみようと思うのですが」 古泉がそんなことを言い、皆は賛同した。俺も異議はない。 「では、その誘導役ですが」 そこでなんで俺を見る? 「全会一致のようですね。それでは、実行は、夕方辺りに部室でということにしましょうか」 やれやれ、世界の命運を握っちまった。 俺は重い気持ちのまま、フラフラと野球場に来た。 「そのように思いつめた顔をしていると、転んでしまうぞ」 シャミセンだった。俺はシャミセンとしばらく話をした。いい気分転換になったような気がする。 夕方。俺はパソコンを操作しつつ、出来るだけさりげなくハルヒに話しかける。 「なぁハルヒ、例えば遠足の前の日とかって、寝付けない方か?」 「そうねぇ、小さい頃はそうだったかしら」 「じゃあ、例えばショートケーキのイチゴって、最後までとっておいたりとか?」 「うーん、何とも言えないわ。それがどうかしたの?」 いや、その……。どう言ったらいいものか。 「言いたいことはハッキリ言いなさい」 「いや、なんつーか、もしかしてお前、明日が来なきゃいいとか思ってたりしないか?」 言ってからマズイと思った。少々核心を突き過ぎた。 「キョン、あんた、映画を仕上げる気、ないでしょう? 完成を間近にして『明日が来なきゃいい』なんて、怠惰な発想だわ」 こちらの真意を知られたわけではないようなので、まずは一安心。 だがハルヒを不機嫌にしてしまったわけで。 「チラシ貼りに行って来るわ。キョン、編集進めときなさいよ!」 結局のところ、作戦は失敗だ。 42 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 05 01 05 ID IbCCbANj0 編集作業に没頭すること数時間。まったく、ハルヒはチラシ貼りにどこまで行ってるんだろうね? 「はかどってますか?」 やってきたのは朝比奈さんである。 朝比奈さんはこれから、体育館のシャワー室に行くのだという。 「キョンくんも一緒に行きませんか?」 なにっ?いつの間に俺はこんな素敵イベントのフラグ立てをしてしまったんだ? もちろん喜んでご一緒させてもらうことにした。 だが、そんな浮かれた気分も長くは持たなかった。 「なんじゃこりゃー!」 体育館は無惨にも崩壊していた。 第六章 「少々お話をよろしいでしょうか。緊急事態です」 いつものごとく部室で目覚めた俺に古泉は、神人の気配を感じていると言った。 しばらく後、長門が部室にやってきて読書を始めた。 「始まった。古泉一樹は神人と戦闘状態にある」 ふと顔を上げて長門が言う。 俺は部室を飛び出して、崩壊した体育館の前に行った。 そこで、古泉は小学生くらいの女の子とにらみ合っていた。 長い髪をリボンで留めている、かわいらしい女の子。 見覚えがある。いつか見かけて、追いかけたこともある子だ。 おい古泉、まさか、これって……? 「ご推察のとおり、彼女が『神人』です」 冗談にしちゃタチが悪いぞ。前に見たことあるが神人ってのは もっと巨大で不気味なモンじゃなかったのか? 「僕はいたって大真面目です。今回は少々特殊な事例のようですね。 ようやくここまで追い詰めました。彼女を倒します。よろしいですね?」 待て、古泉。俺は、やっぱり――。 「見た目に惑わされないで下さい。昨夜の体育館の崩壊も、 この神人が関わっているのは間違いないのです」 ああ、わかってるさ。その子は本当に神人なんだろう。だけどな。 「彼女が女の子の姿をしている限り、俺はその子が攻撃されるのを見たくないし、 お前がそんな小さな子を痛めつけるのなんか、見たくないんだよ!」 古泉に隙が出来ると、女の子は逃げてしまった。 43 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 05 02 50 ID IbCCbANj0 部室に戻ると、そこにいたのは朝比奈さん一人だけだった。 朝比奈さんが淹れてくれたお茶をすすりながらくつろいでいると、ハルヒがやってきた。 「キョン!それにみくるちゃん!準備しなさい!」 何をだよ? 「決まってるでしょ、ピクニックよ!」 ピクニックって言ったって、この閉鎖的閉鎖空間から出られないんじゃ…… と考えながら窓の外を見て愕然とする。 中庭を隔てた中館(なかかん)の屋上は、緑豊かな草原と化していたのである。 「そうそう、今日は特別ゲストがいるのよ。いらっしゃい」 ハルヒの言葉に応えて、おずおずと入ってきたのは、あの「神人」の少女だった。 ハルヒと少女はバッタリ出会って、すっかり仲良くなったのだという。 「さあ、行こう、リボンちゃん」 かくして、SOS団は、神人の「リボンちゃん」とのピクニックを執り行う運びとなった。 長門が言うには、リボンちゃんは四年前のハルヒの姿なのだという。 だが、過去のハルヒがタイムスリップしてやってきた、というわけではなく、 彼女はハルヒの真相意識が具現化した存在なのだそうだ。 まぁ、今は難しいことを考えるのは止そう。 中館の屋上で弁当を食べた後は皆でバドミントンをして遊んだ。 リボンちゃんは皆に懐いて、普通に喋り、普通に笑っている。 夜は朝比奈さんのクラスに勝手に入り込んで焼きそばパーティーをした。 もちろんリボンちゃんも一緒だ。 しかし、文化祭のためにと買い揃えた食材を俺たちが勝手に使っていいものかね? さて、パーティーが終わった後、朝比奈さんのクラスがある中館と、 部室がある旧館への渡り廊下を歩いていたときのことである。 リボンちゃんが朝比奈さんのクラスに忘れ物をしたと言い出した。 ハルヒは自分がとって来ようと申し出たのだがリボンちゃんはそれを断り、 長門と朝比奈さんと古泉を指定して取りに行かせようとした。 リボンちゃんは無邪気な顔して、完全にこの場を仕切ってやがる。 ハルヒと同じと言えば確かにそうなんだが。 三人は意外にもあっさりと了承し、中館へ向けて歩みを進める。 十数秒後、地震のような振動が感じられる。 振り向くと、渡り廊下は途切れ、中館はゆっくりと崩落を始めていた。 これはきっと、リボンちゃん、いや「神人」の仕業に違いない。 三人は崩れ行く中館に取り残された。あの三人なら、簡単にこの状況を抜け出せるはずだ。 だが、三人は俺たちを見つめるばかり。 そうか。ハルヒに能力を使うところを見せるわけにはいかないのだ。 呆然と立ち尽くすハルヒを説き伏せ、俺たちは旧館へと入った。 ハルヒの目の届かないところで三人は中館から脱出し、事無きを得た。 今晩は皆で部室に泊まることになった。寝る前に少し古泉と話をする。 古泉もやはり、中館の崩落は神人の仕業だと睨んでいるらしい。 だが、神人の目的は何だろう?古泉たちを殺すこととは考え難い。 それなら、あんなにゆっくりと崩落させる意味は無いからな。 44 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 05 04 27 ID IbCCbANj0 第七章 目を覚ますと、部室には俺とハルヒだけが残されていた。 長門に朝比奈さんに古泉、そしてシャミセンも姿を消してしまっている。 「あんた、映画にあたしの声を入れたいとか言ってなかった?」 ハルヒが唐突にそんなことを言う。 ああ、あれは確か、前に録音したヤツがパソコンに入っているはず。 俺はパソコンの中を探してみたが、それらしいデータは見当たらなかった。 「じゃあ、キョン、行くわよ!」 俺とハルヒは放送室の設備を借りて録音することになった。えらく本格的だな。 「『この物語はフィクションであり実在する人物、団体、事件、その他固有名詞や 現象などとは何の関係もありません。嘘っぱちです。 どっか似ていたとしてもそれはたまたま偶然です。他人のそら似です。』 え? もう一度言うの?こんなの必要ないじゃない」 こいつに原稿を素直に読ませることはこんなにも難しいことなのか。 仕方ない、さっきのテイクで満足しよう。 「ちゃんと録音されてるかチェックするから、そこで待っててくれ」 チェック作業に入ってしばらく後。 「ねぇ、キョン」 「ん?」 「この映画が無事完成したら、遊園地とか行く気ある?あたしと」 いつもとは違うトーンで、ハルヒはそう言った。もしかして、デートへの誘いか? 「ああ、そうだな、いいかも知れないな」 俺は動揺を隠しつつもそう答えた。 「そう、じゃあ考えとくわ」 しかし、二人きりで遊園地って、払いは全部俺とかじゃないだろうな? その後、編集作業に邁進するはずだったのだが、居眠りをしたりして気が付けば昼過ぎになっていた。 「あら、キョン、ここにいたの?」 部室の静寂はハルヒの声によって破られた。編集作業なら進んでないぞ。 「みくるちゃんや、有希や古泉くんは?お昼に集合するって約束だったのに」 そう言われてみると、今朝から三人の顔を見ていない。 まさか、リボンちゃんに消されてしまったのでは? 「あたし、あの三人を探しに行って来る!」 ハルヒは部室を飛び出して行った。 45 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 05 06 28 ID IbCCbANj0 しばらく後。 まだ日が暮れる時間には早いはずなのに、窓の外はさっきよりずいぶん暗くなっている。 俺は何故か不安に駆られ、ハルヒを探して校内を走り回った。 そしてリボンちゃんの姿を見つけたのだが、彼女は俺の顔を見るなり逃げ出しやがった。 追いかけたが見失ってしまった。 「あらキョン、どうしたの」 そこにハルヒがいた。 「キョンっ!どう、誰か見つかった?」 えっ?そこへやって来たのは、もう一人のハルヒだった。 「なんなのあんた、あたしのそっくりさん?」 「あんたこそ、なんであたしにそっくりなの?」 二人のハルヒは取っ組み合いを始めてしまった。 おそらく最初に会った方のハルヒがニセモノだろう。リボンちゃんが化けているのだ。 それくらいは俺にもわかる。だが、今となってはどっちがどっちだか見分けが付かない。 よーし、こうなったら……。 「おい、涼宮ハルヒ!これからお前たちは俺と話してもらう」 そうすればたぶん、わかるだろう。 ここで本物が見分けられないようじゃグッドエンドなんて夢のまた夢だ。 会話例を以下に示す。 A: 「映画、評判良いといいな」 「ハリウッドからオファーが来たらどうしよう」 「それは絶対無いから安心しろ」 B: 「映画、評判良いといいな」 「ま、大丈夫じゃない。あたしが作った映画なんだから」 「……そうか」 言わずもがな、Bが偽のハルヒである。 偽のハルヒは妙に醒めているところがあるのだ。 46 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 05 08 22 ID IbCCbANj0 さて、どちらが本物かはわかった。 俺は本物のハルヒを、お前が本物だ、という気持ちを込めて見つめた。 それが伝わったかどうかはわからんが、今はハルヒを信じるしかない。 その上で、 「お前が本物だ」 と偽のハルヒに向かって言った。本物のハルヒよ、大人しくそこで待っていてくれ。 俺は偽のハルヒを部室に連れて行った。 「ふふっ、『あたし』も、何であんたみたいなのとつるんでるのかしら」 「それは俺が宇宙人でも未来人でも超能力者でもないからか? 一応言っておくけどな、お前がニセモノだってことはわかってる。 すまんな、凡人の俺に無理やり付き合わせちまってさ。なぁ、リボンちゃん」 「あんた……」 「最初の質問だ。お前の目的は一体、何なんだ?」 「あたしは、あの三人が非日常的存在だということを、『あたし』に教えたかったの」 昨夜の中館の崩落、あれはやはり、リボンちゃんの仕業だった。 あの三人が能力を使うところをハルヒに見せたかったらしい。 このリボンちゃん、否、ハルヒの深層意識は、あの三人の正体を知っている。 というのも五ヶ月前に俺が三人の正体をバラしたからなのだが……。 ハルヒの表層意識はあのとき、俺の発言を冗談だと言って否定したが、 深層意識では肯定していたのだった。 「文化祭前日をループさせたのもお前なんだな?何でこの日じゃないといけないんだ?」 「それは……楽しかったからよ。文化祭の前の日が、すっごく楽しかったから!」 楽しかったから、何度も過ごしたいってことか? 「違うわ。だって変じゃない。楽しいはずがないのよ。 『あたし』が楽しくちゃいけないのよ! だって『あたし』は、非日常と邂逅するっていう夢を叶えてないのよ? なのにどうして、そんなに楽しくしていられるの?おかしいでしょう?」 ハルヒの深層意識が現れた理由がわかった気がした。 要するにハルヒは心の奥深くで矛盾を感じてたってわけか。 「ただの人間には興味ありません」なんて自己紹介で言っておきながら、 ただの人間に過ぎない(と表層意識では思っている)奴らを相手に楽しくてたまらない自分に。 それで深層意識がリボンちゃんとなって具現化し、妙な空間に俺たちを閉じ込め、 非日常がそこに存在していることを表層意識に教えようとした。そういうことだな。 47 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 05 10 10 ID IbCCbANj0 「やれやれ」 「何よ」 「お前があまりにもアホだから呆れてるんだ。そんなこともわからんのか? 簡単なことだ。それはな、朝比奈さんや、長門や、古泉や、そして俺も、 ハルヒにとってもう『ただの人間』なんかじゃないからさ。 今、俺たちはSOS団の仲間なんだよ。仲間といるときは、楽しいもんだ。 それは全宇宙における普遍的真理ってヤツでな、深層意識がどんなにグダグダ言おうと、 絶対に、変わらないもんなんだよっ!!」 「……」 「わかったらこの空間を元に戻せ!ハルヒはな、いや、ハルヒだけじゃない、俺もそうだし、 あの三人もきっとそうだろうが、あの映画とも呼べないようなこっぱずかしいシロモノを、 文化祭で公開するのが楽しみで仕方ないんだよ!」 「……いいのね?あたし、楽しくても、いいのね?」 ああ。俺が保証する。お前はその楽しさを、たっぷり謳歌していいんだ。 だってハルヒ、お前は確かに普通とは言い難いが、それでも高校一年生なんだぜ。 高校生らしく、楽しく過ごせばいいじゃないか。 「そうね。あたし、楽しむことにする。キョンもたまにはいいこと言うわね」 リボンちゃんは光の粒子に包まれ、消えていった。 「いやあ、お見事ですね」 朝比奈さんに古泉、長門、そしてシャミセンが部室に入ってきた。 古泉、お前消えたんじゃなかったのか? 「いえ、我々はコンピ研の部室に隠れていただけですよ」 急に力が抜けてしまう。もちろんハルヒが探しに来たらしいが、 長門が手を回して見つからないようにしていたらしい。 古泉は、リボンちゃんの目的は三人の正体をハルヒに教えることではないか、と推理した。 そこで三人がいなくなれば、リボンちゃんは何も出来なくなって、 事態は解決に向かうと踏んだわけだ。やれやれ。 最後にわれらが団長様が部室にやってきた。 慌ててつまずき、俺にぶつかりそうになる、いつものハルヒだった。 48 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 05 15 24 ID IbCCbANj0 エピローグ いつものように俺は部室で目覚めた。 恐る恐るパソコンを確かめてみると、そこには文化祭当日の日付が表示されていた。 崩壊した体育館やら中館、その他メチャクチャになった諸々も見事に元に戻っている。 ん?パソコンのデスクトップには、既に編集済みの動画があった。 編集作業などちっともやっていないのに。誰がやったんだ? しかもその動画には今の俺には到底無理なCG合成やらエフェクトやらが盛り込まれていて、 それなりに見られるレベルになっていた。 俺は朝の校内を歩き回って、編集作業をした奴を探した。 ハルヒは当然違う。古泉と長門に聞いてみたが否定された。 朝比奈さんや鶴屋さんでもない。じゃあ、誰が? 念のためにシャミセンにも聞いてみることにした。 「私は見た。いつだったか、キミたちが焼きそばパーティーとかいうものに興じていたときだ。 そのときパソコンの前に座っていたのは、キミだった」 は?俺? 「今私の前にいるキミとは違うキミだ。つまり……」 「キョンくぅん!」 そこへ闖入してきたのは我が妹だった。おい、どうしてここにいるんだ? 「今日はね、昨日のおにぎりの入れ物を取りに来たんだよ!それで、シャミを連れて帰るの!」 妹はシャミセンを連れて行ってしまった。 てかシャミセン、どういう意味だよ、俺とは違う俺が映画の編集をしてたって? 俺の頭には、一つの考えが浮かんでいた。まさか、未来から来た俺、なんて言うんじゃなかろうな? その可能性はゼロとは言い切れない。 やれやれ、エフェクトのやり方とかCGとかの勉強しとくか。 部室に戻ってみると、ハルヒ御大がおいでなすった。 「今日はいつもより調子がいいのよ。夢見が良かったからかしら。 最近まれに見る、スカッとした夢だったわね」 なるほどな。あの突拍子も無い状況は夢だと思っているわけか。 しかし、よっぽどその夢が気に入ったようだな。何よりだよ、ハルヒ。 こうして俺たちの、長い長い文化祭前日は終わった。後はこの祭りを楽しむだけだ。 俺は今日という日を楽しむことにする。いや、今日だけじゃない。 この先何が起ころうと、俺はそうするつもりだ。 だからお前も、心おきなく楽しめばいい。どんなことでも、お前のやりたいようにさ。 49 :涼宮ハルヒの約束:2010/06/16(水) 05 18 29 ID IbCCbANj0 そして無事、文化祭は終わった。 かくも長きに渡って俺の心の重荷であり続けたあの映画が、 他の生徒たちからどのような評価を得たかは……思い出させるな。 過ぎてしまったことは忘れよう。忘れるしかない。忘れないとやってらんねー。 ともあれ、そんな文化祭から数日が過ぎた、土曜日の午後のことだった。 「キョン、今日、例のアレを決行するわよ。約束したでしょ、忘れたの? 駅前に三十分以内に集合ね」 いきなりハルヒから電話がかかってきて、そう告げられた。 訳のわからないまま駅前に行った俺はハルヒと一緒に電車に乗った。 すっかり辺りが暗くなった頃、電車は目的地に着いた。 ここって、遊園地か?ということは、だ。放送室でのアレか?デートなのか? と思ったが、長門に古泉に朝比奈さんも後からやって来た。 どうやら今日は、SOS団の文化祭打ち上げイベントらしい。やれやれだ。 「ね、約束通りでしょう?」 ハルヒが振り返って俺に微笑む。 「今後、SOS団の会合は絶対に全員集合だって。 いい、これからもSOS団は必ず全員集合よ。わかったわね」 ああ、そうだな。そうしよう。 「さあ、キョン、心おきなく楽しむのよっ!」 以上、ハルヒグッドエンドでした。 50 :ゲーム好き名無しさん:2010/06/17(木) 20 06 32 ID xm6bjn+Q0 ハルヒ乙でした あと前スレ埋めも乙 原作知らないからよくわからんのだけど、 書き出しにあった「俺」ってのは前作の「~の並列」と同じ語り手の「キョン」って人? 54 :ゲーム好き名無しさん:2010/06/17(木) 20 54 16 ID MRBDh46D0 50 ハルヒの人ではないが、総じて俺=キョンでおk 181 :涼宮ハルヒの約束:2011/07/03(日) 02 11 22.76 ID Ina/338x0 (ハルヒバッドエンド) 本物のハルヒを見抜けなかった俺は、偽のハルヒを選んでしまった。 そいつは「あたしが本物のハルヒよ」と言って不敵な笑みを浮かべる。 自分が間違っていたことに気付いたときにはもう遅かった。 偽ハルヒ――神人の手に墜ちた俺は見ていることしか出来ない。 そして、この閉鎖的閉鎖空間は闇に包まれた。 182 :涼宮ハルヒの約束:2011/07/03(日) 02 17 37.80 ID Ina/338x0 (ハルヒアナザーエンド) 幼い少女の姿をした神人と古泉は睨み合っていた。 古泉は手のひらから眩く輝く光球を出現させた。その超能力を使って神人を倒そうとしている。 俺はこれから展開されるであろう凄惨な光景を想像しつつ、それに堪えかねて目を閉じた。 「終わりましたよ」 古泉の声に応えるように目を開けると、神人の姿はなくなっていた。 って、古泉!お前、消えかけてるぞ! 「落ち着いてください。こうなることは予測していました」 古泉が言うには、あの少女の姿の神人は、 宇宙人や未来人や超能力者たちと一緒にいたいというハルヒの願望を象徴する存在らしい。 そして、神人がいなくなった今、ハルヒの願望も消え、用済みの宇宙人(以下略)の古泉たちは、 この世界から、この閉鎖的閉鎖空間から消えてしまうのだという。 「涼宮さんのこと、頼みましたよ」 そう言い残すと古泉は光る粒子となり、後には何も残らなかった。 ハルヒのことが心配になった俺は、部室に戻り、気絶したハルヒを発見した。 ホッとしたのも束の間、辺りは闇に包まれた。数時間が経過した後、ハルヒは目を覚ました。 「ここは……どこ?」 「どこって、SOS団の部室に決まってるだろ?」 「SOS団?何それ?」 ハルヒは、俺のことは覚えていたが、それ以外、SOS団のことや、 長門、朝比奈さん、古泉のことは忘れていた。なるほどな。こうなるのか……。 とにかく、ここでボケッとしていても仕方ないので、外に出てみたが――。 部室の外には絶望を絵に描いたような光景が広がっていた。 無事なのは部室だけで、校舎の他の部分は残骸となっていた。 そしてその残骸の外側には見渡す限りの荒野が広がっている。 どうやら、この世界には本格的に俺とハルヒしか存在してないみたいだ。 だが、そんなものを見せられてもハルヒは希望を捨ててはいなかった。 俺たちは校舎の残骸を漁って食材やら調理道具やらを調達し、飯を食った。 「おなかがいっぱいになったら、なんだか眠くなってきちゃった。本当はお風呂に入って着替えたいところだけど……」 ハルヒは入ったら死刑などとのたまいつつ部室に入った。 俺は仕方なく外にいることにした。そのとき、近くの地面が陥没して……。 驚きを通り越して笑うしかないね。そこには源泉かけ流しの露天風呂と、ご丁寧に着替えまで用意されていた。 こんな状況になっても、ハルヒの願望を叶える能力は健在らしい。 もしかしたら、ハルヒに元の世界に戻りたいと願わせれば、それは叶うのかも知れない。 だが、どうやって?そうだ、あの映画だ。俺は3日間かけて編集作業に没頭し、映画を完成させ、ハルヒに見せてやった。 見終わった後、ハルヒはつぶやいた。 「そうよ、この映画の監督はあたしよ!有希は、みくるちゃんは、古泉くんはどこへ行ったのよ!?」 そして、世界は光に包まれる。 今日は文化祭の前日。俺はとある珍妙な映像作品を文化祭で公開すべく、 昨日から夜を徹して部室のパソコンに向かい、編集作業に取り組んでいた。 しかし、いつの間にか睡魔に撃沈されてしまったらしく、結果、こうして むさくるしい部室で冴えない朝を迎えたわけだ――。
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# ジャズ研究会 ――ジャズ研 部室 ガチャッ 純「こんにちはー」 先輩B「おいーっす」 純「あれ? 部長だけですか?」 先輩B「まぁねぇ~…珍しくまだ誰も来てないみたい」 先輩B「それにしてもなんかこそばゆいねぇ~、部長って響き」 純「部長がそう呼べって言ったんじゃないですか」 先輩B「そうだっけ? まぁどうでもいいんだけどさ~そんなのは」 純「なにしてるんですか?」 先輩B「部室の整理。純も手伝え」 純「えー」 先輩B「部長の言うことは絶対じゃ」 純「…は~い」 ――職員室 先輩「失礼します」 顧問「ん?どうした? 三年は今日休みだろ?」 先輩「えぇ、そうなんですけど…受験も終わってやることがなくて」 顧問「そっか、タバコ吸う?」 先輩「吸いません」 顧問「あぁそう」 先輩「体に悪いですよ?」 顧問「たとえ体に悪かろうが値段が上がろうが、それでも戦い続けるのが喫煙者なんだよ」 先輩「……あの」 顧問「なに?」 先輩「前から失礼を承知で聞こうと思ってたんですけど……」 先輩「先生が元暴走族って本当ですか?」ボソッ 顧問「あぁ゛ん?」 先輩「ひっ…ご、ごめんなさ…」 顧問「なんてね、ウソウソ。ちなみに元暴走族ってのもね」 先輩「な、なんだ」 顧問「なんか顔が恐いからってさー、よく間違われるんだよね。高校のときなんか爽やかなテニス部だったのに」 先輩「そうだったんですか…」 顧問「ヒマなら私の青春時代の話でも聞いてく?」 先輩「いえ、結構です。暴走族かどうか知りたかっただけなので。ありがとうございました」 先輩「では失礼します」 顧問「え……それ聞きに来ただけ?」 ――廊下 先輩(ふぅ…ずっと気になってたことが聞けてすっきりした) 先輩「……」 先輩(これからどうしよっかなー) 先輩「……」 先輩(部室…まだ練習は始まってないかな) 先輩(暇だし行ってみよう) ――ジャズ研 部室 ガサゴソ ガサゴソ 純「このスコアはどうするんですか?」 先輩B「あ~~…そっちにしまっといて」 純「はーい」 純「結構ゴチャゴチャしてますね、部室」 先輩B「私はゴチャゴチャしたままでも別にいいんだけど……おっ、面白そうなの見つけた」 純「え?」 先輩B「じゃ~ん、謎のノート~」 純「ノート?」 先輩B「読んでみようよ~」 純「いいんですか? 勝手に」 先輩B「いいのいいの、部室にあったんだし」 先輩B「整理してるとこういうのが見つかるから楽しいよね~」 純(まさか初めからそれが目的で…) 先輩B「どれどれ…」ペラペラ 先輩B「『今日はウォーキングベースを弾けるようにがんばった』」 純「……なんですかそれ」 先輩B「知らん。まだなにか書いてある」ペラペラ 先輩B「『誰も来なくて寂しい』…」 先輩B「……」 純「?」 ガチャッ 先輩「あれ? もう来てたんだ」 純「あっ、先輩」 先輩B「今日三年は休みじゃなかったんですか?」 先輩「やることないから…ってなにそれ?」 先輩B「このノート? さっき部屋掃除してたら見つけた」 先輩「それ…」 純「知ってるんですか?」 先輩「懐かしい…私が一年のときに買ったやつだ」 先輩B「一年のときに? そのわりには数ページしか書き込まれてませんけど…」ペラペラ 先輩B「こんなの何に使ってたんですか?」 先輩「まぁ…ジャズ研の日誌みたいなものよ。その日にあった楽しいことや思い出を書き残そうと思って」 先輩「けど私が一年のときは部員二人でまともに活動もできなかったし…途中で書くことがなくなっちゃったのね」 先輩B「そりゃまた暗い学校生活だったようで」 先輩「うるさい。二年になってからは急に忙しくなったから…ノートとることも忘れてたみたい」 先輩B「ふ~~ん…」ペラペラ 純「先輩、このあと予定とかありますか?」 先輩「え? ないけど」 純「あの、それじゃあ…よかったら練習を」 先輩「そうね、せっかく来たんだし」 純「!」 純「ありがとうございます!」 先輩B「ねぇ」 先輩「なに?」 先輩B「このノートさぁ~…使ってもいい?」 先輩「いいけど……あっ」 先輩「だったらちょっと貸して」 先輩B「ほい、なにするんですか?」 先輩「久しぶりに…なにか書こうと思ってね」 先輩「……」カキカキ 先輩B「……もう寂しくないですもんね」 先輩「え?」 先輩B「いえいえ、なんでもないですよ~」 ガチャッ 先輩A「こんにちは~」 先輩C「先輩? どうしてここに」 先輩「あなた達の様子を見にね」 先輩B「うそつけ、暇なだけだったくせに」 先輩「うるさい。はい、ノート」 先輩「ちゃんと書くのよ」 先輩B「へいへい」ペラペラ 先輩B「……」 ジャズ研は桜ヶ丘で一番最高の部活!! みんな大好き!! byジャズ研元祖部長 先輩B(シンプルだなぁ~…) # ジャズ研究会 おわり 戻る おまけ
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愚者 愚者 愚者 愚かな子 部室棟からやってきた 愚者 愚者 愚者 集まった 奇術研の 愚かな子 スマブラ やってたら 3時になった 帰っちゃお 例会 終わった 10時を過ぎた 泊っちゃお 秋連見てると テンション上がるよ わーくわく(お願いしまーす!)わーくわく(お願いしまーす!) 手品が 大好き 学館前の 愚者 愚者 愚者 愚かな子 部室棟からやってきた 愚者 愚者 愚者 集まった 奇術研の 愚かな子 麻雀 東一 四暗刻だ とばしちゃお よーくよく 見てみよう 爺さん 露出 している ひとりで 騒いで 勝手にカニるよ わーくわく(サァーッ)わーくわく(サアーッ) 騒ぐの 大好き 学館前の 愚者 愚者 愚者 愚かな子 学館前に たむろした 愚者 愚者 愚者 集まった 奇術研の 愚かな子
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§第八章§ ――20―― 警戒心を煽る声。聞き覚えのあるトーン……間違いない。 俺は振り向いた。歩道にいたのは、あいつに他ならなかった。 名前すら知らない、朝比奈さんとは別の未来人。二月に朝比奈さんを誘拐しやがった時以来だ。 「お前は!」 叫ぶ俺に野郎はまたも敵意ある目を俺に向けていた。大人版朝比奈さんの話では、こいつらの勢力が朝倉の突然の奇行に一枚噛んでいるとのことだった。 「どうだ、楽しんでるか? 既定事項を脱した突然のハプニングを」 そいつは腕を組んで俺に笑いかけた。笑いと言っても古泉のような微笑ではなく、嘲笑の部類に含まれる笑みだ。 俺と奴の距離は四メートルほどだった。仮に殴りかかっても、十分に避ける余裕がある。それにこいつならばためらいなく時間跳躍の瞬間を俺に見せて逃げおおせるかもしれない。 「これがお前の仕業だってのは本当か」 俺はつとめて冷静に言った。いけ好かない未来人は、嫌な感じに口の端を歪めて、 「あんまり僕たちをなめてもらっちゃ困るからな。今回は仕掛けさせてもらった。無論、僕だけの力ではないが」 ここで一度顔を横向け、目の端で俺を見ると言った演出じみた仕草をして、 「僕個人にしてみれば、朝比奈みくるが困る事態ならば何でもいいんだよ。お前には分からないだろうがな」 こいつ……。腹に力が入ってくる。だが、こんな奴に構っている場合ではない。俺は部室に行き朝倉を止める必要がある。 「何の用だ」 今回は俺一人で朝比奈さんはここにいない。矛先を俺に変更したのか? 「ふん」 未来人は片手の平を上向けて嘆息し、 「広域宇宙体のインターフェースが暴れようが、僕にはどうでもいいことだ」 だったら今すぐ帰れ、俺にとってお前は邪魔以外の何者でもない。 「なぁ、あんた」 そいつは顎を引いて俺を上目がちに睨み、 「こっちに着く気はないか?」 咄嗟に意味を測りかね、俺は訊き返す。 「何を言ってるんだ?」 未来人は邪悪な笑みを緩和させた。それで友好的な表情のつもりか。もう少し練習した方がいいぜ。 「既定事項を満たすことに疑問を持ったりしないのか? お前は。朝比奈みくるが固定しようとしている未来がどんな物かも知らないで、よく言いつけを守れるものだな」 この言葉に、俺はわずかばかり動揺した。確かに、誘拐事件が終わった後大人版朝比奈さんから受けた説明は、肝心なところが不明瞭で、俺はまだ配って歩けるほど疑問を抱えている。なるほど。そりゃ主人の言いつけを守る忠犬のように見られても仕方ない。 ……だがな、 「他の人間が傷つくことを平気でできる奴のところに行くつもりなんかねーよ」 俺は言った。こんな状況じゃなきゃ出てこない言葉だ。だが本心でもある。俺が凍りついちまった時の朝比奈さん(小)と、夜中に訪ねて来た朝比奈さん(大)の涙は、そう簡単に忘れられそうにないしな。 未来人は十秒ほど無感動な目を俺に向けていたが、やがて、 「ふん、そうかい。そう言うだろうと思ったが訊くだけ訊いてみたんだ。まぁいい、あんたがどう答えようが変わりはない」 何がだ。俺が意味の分からないことを延々喋るのはやめろ。古泉が消えちまっててもお前の出番はねぇぜ。 「ならせいぜいあの宇宙人と地球防衛に躍起になるんだな。……お前とはまた会うこともあるだろう。だが、もうさっきの質問はしない。それを覚えておけ」 どうでもいい、さっさと失せろ。 「じゃぁな。キョンくん?」 最後に俺のあだ名を言ってそいつは歩道を歩いていった。こんなに嫌味ったらしくこの名を呼ばれたこともまたない。 だが今はぐだぐだ考えている場合ではない、時間に余裕を持って来たが、思わぬところで余計な茶々が入った。 考えることはすべてが終わってからでいい。 今はすべきと分かっていることを実行するだけだ。 難しいのはタイミングだった。朝倉が部室に入った直後にドアの前に立てるくらいが望ましい。 朝倉は部室に入った後、わずかな時間ではあるが俺たちと会話していたはずだ。つまり、最低でもその時間の範囲内に侵入し修正プログラムを撃つ必要がある。かなりタイトだ。もしもしくじったらどうなるかとか、そんなことを思い悩むのも後回しで構わない。俺は朝比奈さんから借り受けた電波時計を見た。午後三時二十七分……四十秒。 俺は待機場所を決めると、校舎に向かって歩き出した。 「……君さぁ、何でうちの部室にいるわけ?」 「すいません、ちょっと黙っててもらえますか」 俺が身を潜めておく場所に選んだのはコンピ研の部室であった。ここからならば渡り廊下の様子が一望できるし、頃合いを見計らってすぐにふたつ隣の文芸部部室へ駆け込める。 もしかして入部希望かい? とか、新しいゲームができたんだけどテストプレイに付き合って、とか言う部長氏の方を見ずに、かつやんわりとレトリックによる拒否をしつつ、俺はベテランの現場刑事による張り込みばりに集中して廊下の監視を続行していた。うーん、双眼鏡と牛乳とあんぱんが欲しくなるね。視力悪くなくてよかったな。 時計をチラチラと眺め、一階と二階の廊下を睨み、十分ほどが過ぎようとした頃……。 「……あれだ」 間違いない、俺が歩いている。何つう足取りだ。一歩、また一歩、何かに引っ張られるようにして奇妙な挙動で前進している。確か部室にどうしても行かなきゃならない気がして、朝倉を振り払って走ったつもりだった。 だが実際はどうだろう。何とも情けない体たらくである。あれが俺なのか。谷口も真っ青のマヌケっぷりだ。 などと考えている間に過去の『俺』はこちら側、旧館部室棟校舎にふらふらと吸い込まれて消えた。まもなく階段を上って文芸部部室に到着するはずだが、まだ俺が向かうのは早計だろう。続けて朝倉が現れるはずだ。 窓から外を見て奇矯なリアクションを取り続ける俺に、コンピ研の面々が痛い人に対する視線を送っている気配がしたが、振り返っている余裕はない。 朝比奈さんの時計で午後三時四十五分になろう頃――、 「来たか――」 朝倉である。二階の渡り廊下を悠然と歩いている。その姿はさながら文化部の友人に会いに行く道中といった風情だ。 俺は朝倉がこちらの校舎に入るのを見届けると、急いでコンピュータ研究部部室のドアに走り寄った。わずかにドアを開けて様子を伺う。ここで俺が飛び出しちまうようなことになれば最悪である。階段を上るとすぐに部室が並んだ廊下に突き当たるから、俺の姿は即座に目撃されてしまう。ナノマシンがどこまで効くかは分からないしな。 俺はコンピ研の部員全員の動きを目で制しておいて、床に這うようにしてドアの下方から片目を覗かせた。 間もなく朝倉が何食わぬ顔で階段を登ってきた。一歩、一歩……。朝倉はSOS団のアジトたる文芸部部室前で足を止め、一呼吸置いてからドアを開け……中に入る。 直後、俺は起き上がってコンピ研の部室内を睥睨し、 「どうもお騒がせしました。それじゃ失礼します」 と誰を見るでもなく言って再度廊下の様子を確認し、誰もいないと分かると外に出た。扉を閉める。 二秒でふたつ隣の扉の前に移動して、聞き耳を立てる。 「……と早く効果が切れちゃったのね。所詮テストプログラムだったかぁ」 朝倉の声だ。間違いない、俺の聴覚と思考だけがおぼろに復活した頃だ。 「キョ……キョンくん! だ、大丈夫ですかぁ~、うぅぅぅ、しっかり、ふえっ、えっ」 朝比奈さんの声。突然俺がやって来てぶっ倒れりゃパニックにもなろう。 「朝倉、あんた一体」 「下がっていて」 ハルヒと長門の声だ。今気付いたが、長門の声は普段のこいつからは考えられないくらい大きく、はっきりしている。 「キョンくん……うぇぇぇぇえええん」 朝比奈さんが泣いている。悔しいが、今の俺に彼女を慰めることはできない。 「彼に何をした」 長門の声が響く。この音量ならドアに耳をつけていなくても聴こえるかもしれない。 「何て言ったらいいかしらね。端的に言えば幻覚を見ていてもらったんだけど、どう? 涼宮さん、彼が心配? 大丈夫よ。死にはしないから」 朝倉が言う。あの薄笑いが見えるようだ。俺は人通りがないことを確認して、懐から白銀に輝く短針銃を取り出した。 「朝倉……これ、あんたがやったの!? ねぇ、有希! これって一体……」 ハルヒが当惑した声を上げる。この時のこいつはまだ、まったく何にも分からないのだ。 「あなたは黙っていて。彼の傍を離れないこと。朝比奈みくるも離さないこと」 鋭く研いだ金属のような長門の声。 「キョン、しっかりして! 目を覚まして! ねぇ、キョン!」 「無駄よ。そいつは完全に意識も神経機能も失ってる。分かりやすく言えば植物状態かしらね」 記憶にある通りの台詞を聞きながら、俺は銃の安全装置を解除する。これの扱いは長門に繰り返し説明されたからな。 「さ、決着をつけましょうか。今回は絶対に負けないからね」 朝倉の冷たい声。俺は状態を確認する。……廊下に人はいない。大丈夫だ。 銃を持つ手に汗が滲む。 「長門さん、よろしくお願いします」 これまで一度もしなかった大人版朝比奈さんの声だ。これから俺とハルヒと朝比奈さん(小)を連れて四年前に遡行するはずである。 ――。 一瞬、静寂が室内を支配した。少なくとも俺の耳には何も届かない。 俺が固唾を飲むと間もなく、 「ふふふ……。そっか、そういうことなの。へぇ。……長門さん? あなた、この一年でずいぶんお友達が増えたのね」 朝倉の声。今やはっきりと分かる。これは、裏の顔。 「わたしが時間跳躍できないって知ってたの? それともただの偶然かしら」 「あなたの異時間同位体は昨年五月二十五日の異常動作までは問題を起こさない。ヒューマノイドインターフェースに時間跳躍能力を持たせることは不可能。この二点により彼らを時間移動させることが最善と判断した」 長門は淡々と語ったが、かつての長門のような機械的側面は影をひそめていた。声だけでも分かる。 今、長門有希は怒っている。 「さすがね。あなた、この部室にも防衛プログラムを施したでしょう。おかげで空間封鎖と情報封鎖ができなかったじゃない」 朝倉は相変わらずの優等生口調だ。俺はタイミングを計っていた。……長門が特定の単語を言ったら、それが合図だ。 「でももう大丈夫。あと一分足らずでこの部屋には誰も出入りできなくなるから。ね?」 朝倉の言葉に俺は動揺した。……何だって? 「今度こそあなたを葬ってあげる。再構成もできないように」 汗が伝う感覚。脊髄を通るような悪寒。 「わたしは必ずあなたの情報結合を解除する」 長門の声だ。……だが何だ? 何か妙な感じがする。先ほどまでとは長門の声に表れる色が違っているような。それに朝倉の話が本当なら、そろそろ合図がないとまずい。 「空間封鎖、情報封鎖」 「……!」 その言葉を告げたのは朝倉ではなく長門だった。 俺は気付くと同時にドアノブを思い切りひねった。 「くそ!」 開かない。 「長門! バカやろう!」 俺はドアをガンガンと叩いた。 「何やってやがるんだ。無茶するなってあれほど言ったのに!」 長門は自分と朝倉だけを部室に閉じこめて、例の封鎖行為を行ったのだ。 叩こうが、体当たりしようが、押そうが引こうが、ドアは開かない。 「どうして気付かなかったんだ……。どうしてもっと早く中に入らなかった……」 自分を叱責するように、俺は自分の頭を部室のドアに打ちつけた。 「どうして……」 「……」 思い出したのは、渡り廊下での会話だ。 あの日、長門は自分のことを責めていた。 古泉がいなくなってしまったのは自分のせいだと言っていた。 あの時に、何としても言ってやるべきだったのだ。 ……お前は悪くないさ。自分を責めるのは、やめにしようぜ。 たったそれだけでよかったはずだ。 だが、もう遅い。 「長門……」 大人版朝比奈さんは言った。この時間に介入の手が入っている、と。 それを証明するかのように、未来人野郎が現れやがった。 そして、結果がこれか……? 長門は、朝倉に勝てるだろうか。 俺は、また何にもできないのか。 「キョン!」 ……誰かが俺を呼んでいる。 俺は顔を上げて、声のしたほうを見た。 その姿を視認する直前に、声が誰のものであったかに気がついた。 「ハルヒ?」 ハルヒが息を切らせて階段を駆け上がり、俺の元までやって来た。 どうしてお前がここにいる。朝比奈さんの家にいろって言ったじゃないか。 「……はぁっ、はぁ。あたし、あんたと有希が……心配で」 俺はお前が心配なんだよ。いいから帰ってろ。頼むから……。 ハルヒはむっとして眉を怒らせ、 「あたしはね、キョン。もう知ることを恐れない。あんたや有希が何者なのかは分からない。けど、どんなことになってもあんたたちはあたしの大事な団員であることに変わりはない!」 俺はハルヒを見た。 「お前……」 「ねぇ……有希はどこに行ったのよ?」 俺は心臓を叩かれた気になる。長門は、この中で……。 「……」 「なぁ、ハルヒ」 俺はハルヒの肩をつかんだ。 「何よ」 ハルヒは俺と視線を交わす。 「お前、さっきの言葉にウソはないか?」 「さっきの言葉って?」 俺は一瞬間を取って、言った。 「もう知ることを恐れない、ってやつだ」 ハルヒは小さく口を開き、また元の表情に戻って、 「えぇ。でも、どうして?」 俺はドアノブに視線を落とした。 「ハルヒ、このドアを開けてみてくれ。どうしても開かないんだ」 ハルヒは俺を先鋭芸術作品を鑑賞するような不可解な眼差しで見て、 「何で? カギかかってるの?」 「いや、別の理由で閉ざされてる。ものは試しだ、お前が開けてみてくれないか」 ハルヒは解せない顔のままドアノブに手をかける。ひねる――。 カチャ 直後に轟音が響いた。 「長門!」 開け放たれたドアから長門が飛ばされてきた。廊下の壁に当たって床に崩れ――、 「!」 窓がない。光が射していない。まったくの灰色。振り返ると、そこに並んでいるべき部室の扉はまったくない。 「有希!」 ハルヒは長門の元にしゃがみ込んだ。長門は外傷こそ見当たらないが肌や制服が灰や焦げだらけになっている。壁に打ち付けられた衝撃からか気を失っていて、文芸部部室からは噴煙が立ち昇っている。 「あら、また邪魔する気なの?」 煙の向こうに人影。声からしても間違いない。 「朝倉!」 もうもうと上がり続ける煙の向こう側を見つめ続ける。 「有希! しっかりして! 有希!」 ハルヒは長門に呼びかけ続けている。俺は長門製の銃を握り直す。 「ふふ。長門さんもいつの間にそんな情にもろい子になっちゃったのかしらね?」 煙の中から朝倉涼子が姿を現した。傷ひとつ、汚れひとつない。 「朝倉! あんた有希に何をしたの!? どうしてこんな……」 朝倉は愉快でしょうがないかのように笑みを浮かべつつ、 「本当ならとどめを刺すところだったのよ? あとは結合解除するだけだったのに、あなたたちときたらやっぱり邪魔するのね。助けてもらったお礼のつもりかしら? お互いがお互いをかばい合うなんて、美談のつもり? わたしにはそうする理由がさっぱりだけど」 やはりインターフェースには本当の意味での感情がないのだろうか。ただ、設定としての性格があるだけで。でなきゃこんなことはできないはずだ。長門……。 「ちょっと、有希っ!」 ハルヒの声に長門を見ると、頭部から赤い液体が滴り始めている。 「無駄よ。呼びかけても。言ってみれば瀕死の状態だから。もともとわたしに敵うわけなかったのよ。長門さんも分かっていたはずなのに。わざわざ二人きりになるような状況を自分から作るなんて、バカな子よね」 その言葉に俺は腹の底が熱くなるのを感じる。 「……朝倉。満足か」 「キョン?」 ハルヒが俺に呼びかけているが振り向かない。朝倉は俺に流し目のような視線をよこし、 「えぇ。そうね。おかげでこれまでより随分事態が進展したと思わない? 現に、涼宮さんがこの場にいるでしょう? 急進派は喜んでいるわ」 「てめぇ……」 今すぐ殴りかかりたいところだったが、長門すら片付けちまったこいつに生身の人間が勝てるはずもない。 俺が拳を震わせていると、 「朝倉、……あんたが有希をこんな目に遭わせたの?」 ハルヒの声が飛んだ。朝倉はハルヒに視線を移す。 「そうよ? でもそんなことはどうでもいいの。わたしが見たいのはあなたの今後だから」 ハルヒは無言で長門をそっと壁に預けた。 立ち上がって朝倉に近寄り――、 「ハルヒよせっ!」 「バカ!」 バシッ! ハルヒは朝倉の頬をひっぱたいた。思いきり。 「…………」 唖然として頬を押さえているのは朝倉である。 「…………痛い」 「当たりまえよ! ぶたれれば誰でも痛いのよ! あんたはそんなこともわからないの!」 俺は呆気に取られてハルヒを見た。ハルヒは凄まじい形相で朝倉を真っすぐ見据えている。 俺の見間違いではなく、その目はうるんでいた。 「どうして、わたしが……?」 「有希を傷つけたからよ! あたしは自分の団員を傷つける奴は、例え相手が宇宙人だろうが異世界人だろうが許さない!」 ハルヒが怒る姿はこれまでだって数え切れないほど見てきた。大体その矛先や捌け口は俺であり、それがゆえに俺が一番こいつの怒る姿を見ているかもしれない。だが、そんな俺でも今回のハルヒの怒り方は圧巻だ。 ハルヒは、本気で怒っていた。 こんなのを初めて見た。もしかしたら、こいつ自身今までこんなに怒ったことはなかったのかもしれない。 ハルヒは両手を握って全身を震わせたままで、 「有希の痛みはこんなものじゃないわ! あんたにはどうしてそれが分からないの!? どうしてこんなことをするの!」 一番驚いているのは俺ではなく朝倉のようだった。まだ片手で頬を押さえている。まるで今、『痛み』という感覚を初めて知ったかのように。 「どう……して……?」 「朝倉」 ハルヒが鋭く言った。 「……なに?」 朝倉は呆然として、かろうじてハルヒの方に首だけ向けた。 「有希に謝りなさい」 「……?」 朝倉は言われた言葉の意味が分からないかのように立ちすくんでいる。 「…………どうして?」 「有希を傷つけたからよ!」 ハルヒは朝倉に再度歩み寄って胸ぐらをつかんだ。一方の俺は目の前の光景が今だ信じられず、またハルヒを止めようと思いもしなかった。朝倉は両腕を完全に弛緩させてハルヒにされるがままになっている。 「あや……まる……の? わたしが……?」 俺はここでようやく長門のことを思い出した。振り向くと長門は壁にもたれて、首にも力が入らずくたっとしている。頭部から流れた紅色は、頬を長々と伝って今や首に至っている。即座に俺は長門の傍に寄った。 「長門! 大丈夫か、しっかりしろ!」 長門はぴくりとも動かない。両目は閉じられ、白い肌はあちこちが黒くすすけている。 「長門……」 何の表情もない長門に俺は呼びかける。 「しっかりしろ。目を覚ましてくれ……」 どうしていつも傷つくのは俺じゃなくてこいつなのだろう。なぜ俺はのうのうとしてて、こいつは動かないのだろう。 「頑張りすぎなんだよ、いつも、いつも」 俺は長門の小さな顔を抱き寄せた。 たくさんの出来事が蘇ってくる。俺が初めてこいつと会った部室での横顔。最初の市内探索で図書館に連れて行ったこと。その後に聴かされた長い話。野球。七夕。カマドウマに孤島。夏の浴衣姿。映画撮影での魔女姿。そして年末に見せた幻の笑み……。 「ちくしょう……」 長門、死ぬなよな。絶対に五人揃ってSOS団を元の状態に戻すんだからな。 お前は、元通り部室で本を読むんだからな。 なぁ長門。俺はまだお前に借りてない本が山脈ほどもあるんだよ。 一生かかっても読みきれないくらいだ。 そうだ、図書館にも行こう。しばらく行ってなかったもんな。 何万時間だって付き合ってやる。 だから……だから。頼むから、目を開けてくれよ。返事は無言だって構わないから。 目を閉じたままでいるのだけはシャレになってないぜ。長門……。 「ご……めん、なさ、い」 途切れ途切れの声が微かに耳に届いた。長門じゃない、朝倉の声だ。見ると、ハルヒが後ろで眼光を飛ばしている。 直後、朝倉は膝から力を抜かして床に手をついた。 「ごめん……なさ、ごめんなさい……!」 声が震えていた。これまで俺は朝倉の二面性をさんざん見てきたが……こんなのは初めてだ。 「わたしは……。わたしは……っ」 朝倉は片手で長い髪をかき上げるようにして押さえる。一体何が起きたのだろうか。ハルヒが朝倉をひっぱたいてから、こいつは明らかに様子が違う。 「ごめんなさい……」 朝倉涼子は、泣いていた。 「長門さんに、わたし……何てこと……」 床にうずくまるようにして朝倉は顔を両手で覆った。ハルヒはそれを複雑な表情で見守っていた。さっきまでの止められない火山噴火のような烈火の如き怒りは、もうそこにはないようだった。 「……分かってくれたのね」 ようやくハルヒが言った言葉だった。 「本当に、ごめんなさい……」 俺が見とれている中、ハルヒは素早く朝倉に近寄ると片手を差し出した。 「さ、立ち上がって。有希を病院に連れて行かなくちゃ。急いで」 朝倉はハルヒを忘我の面持ちで見上げていた。 「え……?」 「ほら、早く!」 朝倉は言われるままハルヒの手を取った。ハルヒは朝倉の手を引くと立ち上がらせる。 その瞬間――、 「これは……」 廊下が元通りになっていた。 部室のドアも窓も元通りに整列している。文芸部室の窓には夕陽が射している。 「キョン、救急車お願い」 「あ? ……おう」 俺は半ば無意識のうちに119番をプッシュしていた。 「長門さん……ごめんね……。ごめん」 朝倉は夕方の廊下で、ひとり泣き続けていた。 第九章
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1 澪梓 2010/11/02 http //yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1288691096/ 戻る 名前 コメント すべてのコメントを見る これは澪ちゃんじゃなくて澪さんだわ -- (名無しさん) 2014-11-16 19 23 41 澪、ちょっと詰めが甘かったねw でも、澪が梓にリップ塗るシーン、なんか感応的というか、絵を想像すると非常に美しいというか。 非常に萌えですな。 -- (名無しさん) 2013-04-30 22 05 27 食わず嫌いだったということか。 初めて呼んだが、澪のカッコよさが際立つ名品だな。 ムギの「斉藤ォーッ!!!!!!しくじったわね!!!」が最高ォー -- (名無しさん) 2012-11-28 20 59 58 ムギwwww やっぱり澪梓は原作寄りだからいいな -- (スミーレ) 2012-11-28 00 35 14 これは惚れますわ -- (名無しさん) 2012-10-07 03 42 39 これはいい -- (名無しさん) 2012-06-11 00 28 53 斎藤「これが試合に負けて勝負に勝つということですぞ、お嬢様。」 -- (名無しさん) 2012-05-15 21 57 49 イケメン澪ちゃん プリティーあずにゃん -- (名無しさん) 2012-05-15 00 05 36 ムギ、荒ぶり過ぎwww -- (あずキャット) 2012-04-29 10 59 12 何度見てもいい -- (名無しさん) 2012-04-28 18 36 30