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登場 Recipe 136 本の海に沈む闇 備考 |] レシピNo.924 鬼灯球  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄[属性:火] ┏──────────┓ 《材料》 ∥ ∥ ・ 燃える砂x1.0 ∥ ∥ ・ 紅いたましいx1.0 ∥ 、 ∥ ・ 鬼灯x1.0 ∥ ({圭}) |. ∥ ・ ∥ ({圭}) ..∥ 《器具》 ∥ .∥ ・悪霊の魔法陣 ∥ ∥ ・ ┗──────────┛ 【効果】 暗闇を感知し周囲を照らす。 【価値】 不明 ───────────────────────────────── 天井に吊るすタイプの灯り。 本当は提灯の様に手に持って、百鬼夜行に参加 ───────────────────────────────── する為の物であったり、魂を導く為の灯りであったりする。鬼灯を参考に昔、 ───────────────────────────────── 私が作った物。 火を灯せば、周囲の闇に反応し辺りを照らす。 その光は魂の ───────────────────────────────── 様に儚いものではなく、太陽の様に明るいもの。魂の様に僅かな眩しさしかなく、 ───────────────────────────────── 読書に最適の明かりとなっている。 (by ベス) ───────────────────────────────── →参考資料:『魂みたいに儚い鬼灯 著者:ベス』
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運命の星夜 ◆STvdrPmVks 星夜、二人、運命に出会った。 ◆ その日、運命に出会った。 幾千の銀が降るような、荘厳の夜天。 その下で男は、彼女の声を聞いていた。 『永続調和の……契りを……』 鼓膜を振るわせた小さな言葉は、男にとって誓約だった。 これより一生を懸けて完遂すると、自ら定める祈りとなった。 命救われた恩義を果たすべく。 目前で輝く、睡蓮花の咲くような笑顔。 泡沫の雪の如き白く儚い少女の未来を守り抜く。 これぞ私情にして大義であると。 胸の内から溢れ出す歓喜、そして礼賛。 ならば我が主よ、天の子よ。 この魂魄、全て貴女に捧げよう。 乱れた現世を変えて見せよう。 心優しい少女の生きる将来を造る為に。 誰もが自由に堂々と、外の世界を歩けるように。 そう、いつか交わした約束(ちぎり)を、果たすため。 滾る熱と誇りを胸に、この夜から、男の戦いは始まった。 ◆ 日の光も無く、街灯の灯りも無く、陽の無き深夜である。 鮮やかな月明かりのみが地を照らし、陽炎のようにその光景を映し出している。 そこは、広大な花畑であった。 強く、東方の風が吹いている。 一面の白き花々が揺られ、波打って伝播する。 ざあざあと鳴る、葉と葉の触れあう音にまじり、さくりと、微かな足音が響いていた。 睡蓮の花が延々と咲き誇る白色の大地。 そこに、一組の主従が並んで立っている。 並んで立ち、並んで歩く、男女がいた。 「星刻……」 その、片側の女――少女が、自らの手を引く男の名を、震えた声で、呼ぶ。 「どうされましたか、天子様」 消えそうな声を聞き逃さず、答えた男は齢二十後半に至らぬほどの若者であった。 しかし磨き上げたような頑強な肉体、不足や余分のない体格。 そして聡明を思わせる鋭き眼光が、青年という呼称を酷く不釣合いなものにしていた。 男の身に纏う軍服は中華風の意匠刻まれた鮮やかな青と白。 たなびく黒髪は長く、流れるようで、ともすれば女性以上に美麗である。 正に眉目秀麗、容姿端麗を顕現させたかのような、星刻とは、完璧さを備えた武人であった。 「わたしたちは、これからどうなるのだろう?」 無垢に問う少女は、真逆。 それは美しさ、力強さが星刻に比べて劣位に在るという意味では、無論ない。 美しさの総量ではなく、性質が真逆なのである。 「あの女性……紫とはいったい……それに、殺し合いとは……」 星刻を眉目秀麗と評するに対し、この小さき少女は純情可憐と呼ぶが相応しい。 雪のように白い髪、柔肌。潤んだ赤い瞳。 身につけたドレスもまた純白。 体弱く、力無く、儚き、故の美しさ。 粗雑に触れれば壊れてしまうかのような、危うきガラス細工を思わせる純情こそが、少女に宿る美の形であろう。 曰く、天子。 中華連邦という一つの国にして大陸。 その頂点に座する存在こそが、この少女なのである。 「恥ずかしい限りですが」 己が主である少女に、従者たる星刻は嘘偽り無く答えた。 「現状、この星刻にも事の推移は理解しかねます」 何時から立っていたのか、或いは立たされていたのか。 二人は気がつけばここにいた。 どのようにして移動させられたのか、 紫と名乗った女は如何なる術をもって、このような怪奇な状況を創り上げたのか。 星刻にも、ようと知れない。 「しかし一つだけ、ご理解頂きたい事が」 言い切れることは一つ。 星刻は足を止め、己を見上げる少女と向き合って、膝を折る。 「天子様。ここは既に戦場です」 それだけが星刻にとって、唯一確かなことだった。 「御身にも危害が及ぶ、及ぼさんとする敵が、ここにはいるのです。 勿論私に、それを許す気など欠片もありませんが。 しかしご理解いただきたい。ここはもう、安全では無いのだと」 「…………うん」 握った手の平が、ぎゅっと、硬くなった。 怖がらせたのだろうと、理解している。 けれど伝えておかなければ、ならない事だった。 「申し訳、ありません……」 歯がゆさに星刻は、天子の姿を見ていられなかった。 見つめ返す赤色の瞳から、目を逸らす。 「安心なされよ」と、言えぬ己が疎ましい。 「何も心配はないのだ」と、嘘でも言えぬこの身を呪う。 しかし現実問題、これは星刻にとって、過去最大級の危機的状況である。 ここには敵がいるのだ。 国をあげて厳重に警護されていたはずの天子と己を攫い、殺し合いを強要させる怪物がいる。 少女が誰であろうか知りもせず、道理の通らないであろう魑魅魍魎の影が、間も無く二人を襲いに来る。 ここには味方がいないのだ。 敵を打ち倒す砲、連邦の軍はここにない。 少女を守る剣、星刻の神虎はここにない。 こうなってしまえば、此処で天子を守れる存在は己が身一つ。 そのどれほど矮小なことか。 神虎と軍、そして策無き身では限界がある。 怪物を打ち倒す以前に、十を超える武威の主従を超えることすら、この二本の腕しかない今は苦難。 更に言えば、星刻には残された時が少ない。 この身は癒えぬ病魔に侵されている。 環境によっては何時果てるかも分らない。 「しかし、この命にかけて、必ず貴女を守り抜きます」 しかし、それでも斃さねばならないのだ。 魑魅魍魎を払い、いずれはあの怪物を打破せしめねば。 後の世で、彼女が民草と心安らかに暮らせるように。 「このような醜態を見せること、お許しください。 ですが必ず、貴女は必ず、この私が命に代えても……」 膝を付き、頭をたれて、決意に震えながら。 星刻は堪えきれぬ、心の激情を軋らせていた。 対する少女の、返答は、 「顔を……上げて、星刻」 たどたどしい、小さな声。 驚いたことに震えはない。 怖の色の無いように、聞こえた。 「ですが、」 「しんくー」 尚も自らを罵倒する言葉を吐こうとしたとき、それを優しく押し留めるものがある。 それは星刻の名を呼ぶ声であり、同時に暖かい、熱だった。 あの夜から変わらない、柔らかな響き。 「天子、さま……」 すうっと、星刻の頭に手を回し、抱き寄せた天子の腕と胸の、その温かさ。 震えのない少女の身体と乱れない鼓動の音に、絶大の信頼と優しさを感じ取る。 お前を信じていると、だから大丈夫だと、言われずとも骨身に染みて伝わった。 「ありがとう、星刻。ここに、いてくれて、嬉しい」 あの日、あの夜、誓った約束を彼女もまた忘れていない。 少女の心もまだ、あの夜のままあったのだと。 星刻の心と、同じように、此処に在るのだと。 理解した故に、星刻は思う。 「勿体無い……お言葉です……」 この少女だけは、必ず。 何が起ころうとも、どんな手段を使ってでも、必ず守らねばならないと。 あの夜の、誓いに懸けて。 ◇ その日、運命に出会った。 幾千の銀が降るような、荘厳の夜天。 その下で男は、彼女の声を聞いていた。 『問おう。貴方が私のマスターか?』 鼓膜を振るわせる毅然とした言葉は、男にとって誓約だった。 これより戦いの終着地まで相克せよと、外界から定められた縛りとなった。 一人でも多くの人々を救うため。 遍く犠牲の数を最小限に留めるべく。 そのために繰り返してきた負の連鎖に終着を。 これぞ聖杯に懸ける願いであると。 心の底から信じる意志、そして義務。 ならば我が従よ、英雄よ。 この意志、全てお前には渡さない。 今だ癒えぬ現世を救おう。 全ての流血が消え去るように。 誰も不当に傷つかず、失わない未来を得るために。 そう、いつか言えなかった夢を、果たすため。 冷え切った闘志を胸に、この夜から、男の戦いは始まった。 ◇ その場所は地図上ではただホテルとだけ記されていた。 少なくとも、そこがスタート地点であった一組の従者にとっては、その程度の意味しかなかった。 「ならばマスター。 北上を選べば花畑、映画館、水族館に。 南下を選べば温泉や博物館に行き当たることになるでしょう」 このように切り出したのはダークスーツに袖を通した金髪の美少年。 否、男装の少女であった。 切り出されたのはその前を歩く一人の男性である。 かつかつと、磨き上げられた薄茶色の大理石の床を、男と少女の黒革靴が静かに叩いていた。 「移動を行うならば、何れかの施設を偵察するのが肝要かと」 高級なブランドスーツを着こなした少女の立ち姿。 歩き方一つ一つが貴族の男性と見まごう程、様になっている。 厳格で硬い印象を与えるはずの、しかしそれは少女の少女たる美しさ、そして荘厳さを隠しきれてはいなかった。 「とはいえ、霊体化が不可能な私では短時間で様子を伺うことは難しい。 そこでまずは二人で南下し、地図の中央を目指すことを提案します。 我々は双方ともこの戦場を知りません。知らぬ地で戦い続けることは避けたい。 フィールドが限られている以上……兵法の観点から見ても地の利を得ることは至上命題と考えます。 そしていずれは……あの奇怪な女を打倒せねば……」 結われた金の髪。鬣である。 澄み渡る緑の瞳。宝石である。 誉れと武功と神威の一端が、彼女の全身から世界に散らされて止まない。 如何なる凡夫も彼女を一目見れば理解できよう。 空間から彼女だけが浮き出たように、それは特別であり、極位の存在であると知らしめていた。 支配し、統べる、王者のみが備える風格を、男装の少女は放っている。 「そもそもこの戦いについて、あなたはどう思いますか、マスター」 ならばこそ、如何なる凡夫も到底信じられまい。 少女、聖杯より現世に招かれし英雄の一人、セイバーのサーヴァント。 彼女が此度の戦いにおいて、従者と呼ばれる立ち居地に甘んじているなどと。 それも主が、いま彼女の目前にて先を進む男。 黒スーツの上からくたびれた黒いコートを羽織った、ボサボサ頭に無精髭の男、衛宮切嗣であるとは。 「マスター……」 しかし、現に切嗣の、 己を追ってくる少女に対する態度とは、従者に対するそれである。 いや、従者に対するそれですら、なかったのかもしれない。 「マスター……、……っ…………キリツグッ!」 堪えきれない、と言うように。 セイバーは、声を荒上げていた。 「いい加減、なにか言ったらどうなのですか!!」 膨大な怒気。積もり積もった屈辱によるものか、端整な顔を顰めている。 対して、どこ吹く風と、切嗣は夜空を眺めながら紫煙を吐き出していた。 一方的な無視、無言。干渉と不干渉。言するセイバーと、黙する切嗣。 かようなやり取りが、二人がホテル内に移転させられてから既に数度、行われている。 傍目には主従関係とは思えない程の断絶。 それはここに至る以前の戦い――第四次聖杯戦争――の時点から始まっていたことであり、一応は戦略に則った行いであったはずだ。 とはいえ、戦略の重要なファクターであった女性が今は欠員。 「あなたは状況が見えているのですか? ここにアイリスフィールはいない。 いったい何時まで、無駄なそれを続けるつもりだ!?」 至極真っ当な怒りをしかし、切嗣は未だ黙殺する。 何も語らず、黙し続け、己だけの思考に浸り、そして思うことは辛辣だった。 ああ、やはり、煩わしくてならない。 と、男は再び紫煙を、ため息と共に夜空へ吐く。 「状況は変わったのです!! もう我々の意思疎通無しには事は運べない、そうでしょう!?」 「…………」 不可能なのだと、魔術師、衛宮切嗣は断じていた。 この少女とは、戦いに取り組むことが出来無いのだと、彼は今に至るも揺らいでいない。 聖杯戦争、七人の魔術師による願望機を巡る殺し合い。 マスターの内一人――衛宮切嗣――とセイバーのサーヴァント――アルトリア――との相性は最悪。 手段を選ばぬ外道の殺し屋と、誇り高き騎士王の矜持、これ不倶戴天。 喩え聖杯戦争が崩れようと、状況が如何に変化しようと、結論は変わらない。 故に今、ホテルを出立し、静まり返ったビジネス街を歩く切嗣が思うこと。 それはつまり、これからをどうするかという、先ほどセイバーが語ったこととほぼ同一の事柄だった。 しかしその行き着く先は、おそらくセイバーが落ち着いた場所から大きくズレている。 「どうやって……駒を進める?」 漸く発された切嗣の、掠れた言葉。 当然セイバーに向けられたものではない。 ただ己に向って問いかけたに過ぎなかった。 この戦い、従者との連携は必須であり、それが為せぬものに勝ちはない。 しかし結託しては勝てない、結託できないからこそ、そもあの戦略を取っていた。 今も変わらぬ道理。 だが今はアイリスフィール、仮のマスターはいない。 こうなっては、セイバーの存在は切嗣にとってただの制約のようなものだ。 とはいえ騎士王の火力、有効活用しない手はないのだが。 「ようは最優のサーヴァントを最優のまま使う。それがここでも出来るか否か」 見切りを付けるか、歪ながら続けるか。 切嗣は最終的に、決めなければならない。 戦いの形式が変わった以上、関係にどのような修正を加えるか。 そして切嗣にとって、戦いの最終目的とはなにか。 「…………」 再び黙した切嗣の、下ろした視線は己の両手に向けられる。 火のついたタバコを挟む指の繋がる先、右の甲には赤アザのような模様があった。 刃が繋がりあったような、先の尖った十字の形。 此処に来る以前から見知った、主従の印である。 逆の手、左の手の甲には同じく赤の、しかし違う模様。 星形をした、違った意味での主従、付け加えられた印がある。 この二つ、事によれば使うこと。 変ずること、ありえるかもしれない。 少なくともこのとき切嗣は、それすら辞さない覚悟であった。 勝つために、否、終わらせるために。 必要で、あるならば。 ◆ ◇ 姫たる主と、護者たる従。 傭兵たる主と、王たる従。 相応と、不相応との、両の主従。 遭遇したのはちょうど、花畑と都市部の中間に差し掛かる辺りだった。 ◇ ◆ 冷え切った星空に、刹那の闘気が揺らめき昇る。 奔る剣戟。 轟く銃声。 閃く火花。 しかし熱が燃えたのは一瞬だった。 壮絶の武闘なれど。 戦はあまりにも呆気なく、終わりを告げた。 「見事。鋭き刃物のような戦意でした。 感服します、人の身でよくぞここまで。 若干奇襲めいていたとはいえ、魔力の加護無しに我が鎧に一刀を加えられる存在など、そういません」 黄金の騎士はこう語るが、 どちらがどのようにして勝利したかなど、わざわざ語る必要もなく。 火力の差、地力の差、結果は覆せぬ道理だったといえよう。 敗北した主従、勝利した主従、自明である。 「貴様……ッ」 苦悶と嚇怒の混じった念が、夜に響いた。 雑草の生い茂るあぜ道で膝をつく星刻が、発する怨嗟の声だった。 取り落としていた己が武器、輪刀を探せど、手の届く位置に無く。 「なんの、つもりだ……?」 星刻は敵手に対して睨み据えながら、問うた。 目前で星刻の喉元に剣――不可視だが星刻にはそれが在るとしか思えない――を突きつけた黄金の騎士、セイバー。 ではなく、そのさらに後方にて佇む、黒コートの男を。 冷たい目をこちらにむけながら、星刻の守るべき天子へと拳銃を突きつけている、衛宮切嗣の姿を見ていた。 「私からも聞きたい。なんのつもりですか、マスター? 性急に戦いを始めておいて、決着も付けず人質など恥知らずな……っ」 同時、セイバーもまたそれを、不愉快そうな表情で見据えている。 彼女にとっても意図せぬ事態であるようだった。 「そちらから仕掛けておいて何故、我々を殺さない。何を考えている?」 重ねて星刻は問う。 数分前、先に干渉を仕掛けたのは星刻だった。 支給されていた遠見鏡によって、数キロメートル先に切嗣とセイバーの姿を確認した彼は干渉するかはさて置き、偵察を行うと決めた。 苦虫を噛み潰すような気持ちで、天子に安全な場所に隠れているように言い渡して。 「質問はこちらからする。まずは状況と立場を理解してほしい」 そんな星刻に今、返された答えに棘はなく、しかし同時に容赦もなかった。 「聞きたいことがある。君たちは、何者か」 答えねばこの少女を殺すと、魔術師の凍った眼差しが告げている。 数分前、先に交戦を仕掛けたのはこの男、切嗣だった。 セイバーの有する直観スキルと、少し遅れて切嗣本人の索敵技能が近づく星刻と天子を捉え、 次に気配から害意の薄さを悟ったセイバーの提案――様子見または交渉――というを言葉を完全に無視した切嗣の発砲。 これが開戦の狼煙となった。 「名と、立場を、知っていること、知らないこと、全て聞かせてほしい」 戦闘の結果、一瞬にて趨勢を決めたセイバー。 極めつけには切嗣の握るグロック17の銃口が、星刻を按じ近くから様子を窺っていた天子を捕えて、 チェックメイト、徹底された決着の形。 現在、星刻の目前には絶望的状況がある。 「我々は……」 星刻にできることは、ありのままを語るのみだった。 勝敗は明瞭、結末は不動、全てこの問答にかかっていると言って過言ではない。 しかし語りつつも星刻の胸中では自責と激怒の念が膨らむ一方であった。 星刻を今も縫い付ける、騎士の剣、強かった。 話にならないほどに、度が抜けて強かった。 これほどの強さが己にあれば、きっと天子を守りきれよう。 不甲斐ない姿を晒さず、彼女を安心させてやれるだろうに、と。 「中華連邦、天子か……なるほど、知らない文化だな」 「キリツグもういい、勝負はついている。その子から銃を下してやってもいいだろう? 私がこうしている限り、この男は何もできない」 だがしかし同時に、星刻にはもう一つ気づくことがあった。 「おそらくその方が、交渉もやりやすくなる筈だ。 いまだに彼らを殺さないということは、あなたにもそういう考えがあると――」 「では、もう一つ聞こう、星刻」 この男、出会ってより一度も、従者の声に応えていない。 顔を見てすらいないのだ。 その上で星刻を制する為にはきちんと利用した手際。 まるで空気と接するような扱い。協調と呼べるものを欠片も感じられなかった。 「やはり応えてくれないのか……」 「星刻、君たちの目的はなにか。僕の目的と合致するのか。それ次第で、次を決めよう」 無理なのかと、少女もまた諦めかけていることを、星刻は悟った、 これほどの強さを誇る従者を持ちながら、いったい何が不満なのか。 それは甚だ疑問だったが、今はかかずらっていられなかった。 男の問いと、今から返す答えに、星刻の命、すなわち天子の命が掛っている。 故に彼もまた黄金の騎士を素通りして、男へと口を開いた。 「私の願いは……天子様の安寧。ひいてはこの世の安寧だ。 飢えて死ぬ民の無きように、不当な戦火で消える命の無いように」 それは、偽らざる本心だった。 「その未来のためならば、全てを捨てる覚悟、手放す意志があるか」 愚問、成す為ならば。 「他の一切を犠牲にしようと厭わない」 男からも視線を逸らし、星刻はあぜ道に蹲った少女、守るべき天子の姿を見る。 「……しんくー」 赤の目が、見返していた。 銃口を突きつけられ、命の危機に瀕しつつも、我が身を案じてくれる。 信じてくれている。彼女を守るためならば、いいとも、何を捨てようと構わない。 どんな非道に手を染めようが突き進む。 喩え己が破滅しようともその先に、かなう願いがあるのなら。 この身、果てる前に。 「何でもしよう」 彼女の願いを叶えると、誓ったのだから。 「そうか、ならば僕と君らは、協力できるだろう」 答えを受けた男は、頷いて、 「お互いのために、―――――と、いかないか?」 「……なんだと?」 覚悟を決めた星刻をしても、驚愕を禁じえぬ提案を述べた。 それは突拍子も無く、こんな状況でなければ到底受け入れられないことであるが。 「そんな事が、可能なのか?」 「見ての通りだ、僕は僕の従者とはやっていけない。ならばすべきことは限られる」 「キリ……ツグ……」 しかし驚愕とそして落胆は、おそらく黄金の従者にとってすれば、星刻の比ではない域にあったことだろう。 が、依然無視し、魔術師はその右の手の甲を、星刻に突きつけた。 そこには赤い刺青のような、複雑な十字の模様があった。 「これは令呪という。僕のサーヴァント、従者に対し、絶対の命令を下せる印だ。 使えば、可能だろう」 皆まで言わずとも、意図は知れた。 「この提案、受け入れるか、否か、答えを聞こう」 変則的であって、同時に合理的、だが切嗣以外の誰にとっても屈辱となる策だった。 しかし元より選択肢もなく、またこれは紛れもなく星刻が望んだことでもあって。 「…………ッ」 苦情に歪みきった顔で今度こそ、星刻は結論を告げる。 「――わかった。好きにしろ」 そして、答えを受けて、魔術師は頷き。 この時初めて、己の従者の姿を、見据えていた。 ◆ 儀式のように、それは執行された。 「――令呪をもって我が傀儡に命ず」 セイバーに向き直った衛宮切嗣の右手の甲、令呪の内、一画が紅の光を放つ。 「待て、キリツグ、私は……っ。本当に……無理なのか、私達は……!」 その時まで、ついぞこの主従は言葉を交わさなかった。 一切の問答を許さず、過たず下される指令、それは絶対である。 間隙、己は如何にするべきなのか、最後までセイバーは決めかねて。 「――セイバー、これよりお前は彼女の、天子の騎士(けん)となれ」 「…………ッ」 告げられた。 それはあまりにも簡単で、単純な、別れ言葉だった。 ◇ 「これで……?」 「ああ、令呪の一画によってセイバーのサーヴァントは、彼女の従者に等しき存在と化した」 そこまで言って漸く、切嗣は天子の頭部から銃口を下した。 瞬間、つい先ほどまで彼の腕のあった場所を、透明の剣が切り裂く。 一足でセイバーは天子の元に参じ、切嗣へとその刃を向けていた。 腕を切り落とさなかったのは切嗣の迅速な判断ともう一つ、渾身の力で耐えたセイバーの抵抗である。 それほどに、今の彼女は制約に縛られてる。 「この通りだ。もはや主の僕にすら、セイバーは矛を突き出すだろう。 天子を傷つけようとするならば」 見せつけられ、星刻は理解する。 すなわち従と従の交換。やはり、この男は本気だったのだ。 一人の男は目的を達する為に、連携可能な従者を求めていた。 一人の姫にはその命を維持する為に、絶対無敵の守護者が必要だった。 利害が、ここに一致する。 「天子様には黄金の守護者を」 「引き換えに、僕にはいかなる手段も選ばぬ兵を」 それぞれに与えられた。 加えて、これより星刻は天子をセイバーに預けることで、自身をこの状況改善のために動かすことができる。 切嗣は馬の合わない従者に独自行動を強いつつ、星刻を使い、あるいは天子を通じて外部から、ある程度は有効に扱うことが見込める。 「ならば私も、……っ、協力しよう」 「ああ、そうでなくては困る」 対等な交換条件、しかしそれは、否だった。 「僕も、令呪を二画も消費したくない」 取り消せない令呪の束縛も、更なる令呪であれば上書き可能。 いくら主従の関係がより歪なものに変わったからといえども、 つまりこの状況、星刻は天子を守護されているようで同時に、人質に取られたに等しいのだ。 「……外道が」 星刻も理解はしていた、しかしセイバーと切嗣の二人を見て、やはりこのままではいけないと確信したからこそ、こうした。 虎穴に入らずんば虎子を得ず。 諺にある通り、虎穴に姫を押し込む無礼は許されぬと知って言えど、それで守れるならば、先に進めるならば厭はない。 「外道、か。否定はしない。だが君もそうすることを選んだのだろう?」 その通り。 こちらも否定はしない。 「重畳だ。ならば早く行こうか。 このような下種の行いに、我が天子を付き合わせるのは最小限に留めたいからな」 大切な者に、血は見せたくない。 外道は、外道同士。 清廉なる者は、永久に綺麗にあってほしい。 だから相応しいものと、共に行くべきなのだと、星刻もまた同意する故に。 彼はこの道を、肯定した。 ◆ 「では暫しの別れになります、天子様」 お互いを心配し、同時に信頼する瞳と言葉。 「星刻、どうか……」 最後まで、目前の主従は通じ合っていた。 「どうか死なないで」 「当然です。必ず私は、天子様の元に戻ってきます」 暗い夜の、月明かりに照らされたあぜ道で、 主と従者は再見の誓いを交わしていた。 「それなら……約束」 俯いた少女が星刻へと、すっと小指を差し出した。 「もう一度、ここで、わたしとしてほしい」 「……はい」 男も微笑んで、応じる。 絡められた、小指と小指。 「永続調和の……」 「……契りを」 そうして二人は再び誓い合った。 いずれまた出会うこと、生きて願いを叶えること。 永遠かもしれない別れを、暫く、惜しんで。 やがて指は、解かれた。 【B-5/野外あぜ道/1日目-深夜】 【主:衛宮切嗣@Fate/Zero】 [主従]:セイバー [状態]:健康、令呪(2画) [装備]:背負い袋(基本支給品)グロック17、タバコ、不明支給品x1 [方針/目的] 基本方針:詳細不明。ひとまず従者(セイバー)とは別行動。 1:星刻と行動。 【従:黎星刻@コードギアス反逆のルルーシュ】 [主従]:天子(蒋麗華) [状態]:健康 [装備]:輪刀 覇幻@戦国BASARA、双眼鏡 [方針/行動] 基本方針:天子を守るために動く。 1:ひとまず切嗣と行動。 【主:天子(蒋麗華)@コードギアス反逆のルルーシュ】 [主従]:黎星刻 [状態]:健康 [装備]:背負い袋(基本支給品)不明支給品x2 [方針/目的] 基本方針:星刻が心配。 1:セイバーと行動(?) 【従:セイバー@Fate/Zero】 [主従]:衛宮切嗣 [状態]:令呪による強制『天子の騎士(けん)となれ』 [装備]:何らかの刀剣(風王結界により不可視、詳細不明) [方針/行動] 基本方針:考慮中。ひとまず主(衛宮切嗣)とは別行動。 1:天子の守護。 【輪刀 覇幻@戦国BASARA】 毛利元就の扱う、均整のとれた質実剛健な輪刀。 前:BAD TO THE BONE 投下順に読む 次:大好きな人を想って 前:BAD TO THE BONE 時系列順に読む 次:大好きな人を想って 衛宮切嗣 次:Bout the city (前編) セイバー 次:姫ふたり 天子(蒋麗華) 黎星刻 次:Bout the city (前編) ▲上へ戻る
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春を導く精霊 スピネル 13580030500278.jpg Level 攻撃力 防御力 1 150 2982 7018 名前 コメント
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【検索用 DreamingwithU 登録タグ 2020年 D VOCALOID まふゆ 初音ミク 曲 曲英 芳田】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:芳田 作曲:芳田 編曲:芳田 唄:初音ミク 曲紹介 曲名:『Dreaming with U』 芳田氏の30作目。 歌詞 お互いの姿求めて 遠回り繰り返して 気づけばひとりぼっちが 当たり前になった 紡ぎ出す祈る言葉に 意味などないのだけど 信じてゆくことだけが 生きてく意味に変わる 真夜中 目覚めた瞼に焼き付いた あの時 確かに誓った愛だけが 何もかも作り物の見せかけばかりの世界で 君の鼓動だけが確かに 刻むよ 運命の針 二人だけで繋がった 月の照らす道を 手を取り行くよ ah dreaming with you 眩しく揺らめくものを ひとつずつ手繰り寄せて 全てはそこに連なる 星の再生のよう ぎこちない不安に襲われていたけど 君を目の前にしたら溶け出した もう二度と離れることなどありえないと 心で分かっているんだ 僕らは 何もかもどんなものも本物へと昇華すると 受け入れてゆくから ほら目を開けて oh I’ll live with you ヒュルル 吹きすさぶ 長い時間失ったけど それは孤独を知るため必要だったんだ 何もかも作り物の見せかけばかりの世界で 君の鼓動だけが確かに 刻むよ 運命の針 二人だけで繋がった 月の照らす道を 手を取り行くよ ah dreaming with you コメント この曲大好きです -- 名無しさん (2021-05-05 12 04 15) もっと伸びてほしい -- Ddddd (2024-03-28 08 52 14) 名前 コメント
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【登録タグ 0108-音屋- NexTone管理曲 SOLIDIO W テラ小室P 初音ミク 曲】 作詞:SOLIDIO 作曲:テラ小室P 編曲:テラ小室P mix:vanette マスタリング:SOLIDIO 唄:初音ミク 歌詞 (ピアプロより転載) 失くしてく このココロと 現実はウソになるのかな 幼すぎた感情は迷い、コワレてゆく 逃げていく 青い鳥 ボクらは今もこの場所で 遠い空を見上げてる 高く雲は走る 人はただ、そう、夢見て・・・ いつかまた 巡り逢うよ・・・ 魂の戻れる場所はいつもここにあるよ・・・ 僕たちの行く道を照らす光さえ 今は届かないけれど 「二人なら、君となら、生きてゆけるよね?」 君は笑い そう言った・・・ 重ねてる この気持ちは 二人の枷になるのかな 淡い色した想いが 風に揺らめいてる 飛び立てる その翼で 傷つくことをおそれてる 何も無いこの世界で さまよい続けていた・・・ 今はまだ、そう、気づかず ボク達を すり抜けてく・・・ 掴めない夢の欠片は キミのそばにあるよ・・・ 僕たちはいつまでも待ちこがれている この旅路の終わりには 運命も何もかも 変えるような 強い チカラがあることを・・・ 人はただ、そう、夢見て・・・ いつかまた 巡り逢うよ・・・ 魂の戻れる場所はいつもここにあるよ・・・ 僕たちはいつまでも待ちこがれている この旅路の終わりには 運命も何もかも 変えるような 強い チカラがあると信じて・・・ 僕たちの行く道を照らす光さえ 今は届かないけれど 二人なら、君となら、生きてゆけるはず この旅の終わりまで・・・ コメント 名前 コメント
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朱雀「それじゃ、行ってくるよ。はやて」 はやて「うん、気ぃつけてな。朱雀兄ぃ」 地球、日本国、海鳴市。 ここに、身を寄せ合いながら穏やかに暮らす2人の兄妹がいた。 八神朱雀、そしてその妹はやて。 彼らは早くに両親を亡くし、天涯孤独の身の上だが、自らの境遇に嘆く事無く 互いを支えあいながら懸命に生きてきた だが、彼らの父が生前に遺した1冊の書物が彼ら自身の運命を大きく揺るがす 多くの出逢い、そして災厄をもたらす事となる・・・ 彼らがこの後に迎える余りにも大きな運命、そして彼らの身に絡みつく繰り糸。 今の2人に、その事を知る術は無い・・・ 彼らの先に待つのは絶望か、それとも希望か・・・ これは彼らが自らの運命を覆すために懸命に生き、戦う物語である。 目次へ 次へ
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運命操作 No.0719 運命操作 条件:レミリア2 使用:戦闘 呪力3 追加代償(使用):準備状態のスペル1枚を捨て札置き場に置く フェイズ終了時まで、 相手のスペル1枚 はイベント・特殊能力の目標にならず、更に「攻撃-1」「迎撃-1」「命中-2」を得る。 「無駄無駄無駄無駄ぁ」 illustrator/ムラ黒江 考察
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「本当に、それでいいの?」 異界東京都、雪積もる公園の一角。 切り取られた隔絶の静寂の中。 少女が少女に問いかけている。 問いを投げるのは巫女装束に身を包んだ少女。 腰まで伸びた黒の長髪。 明けの明星の如き碧空色の瞳。 モデルの如き完璧なプロポーション。 まるで、完成された偶像のように。 まるで、崇め奉れられた現人神のように。 まるで、神の天啓を幻視させるかのように。 少女は、アルターエゴは、眼前の只人に問う。 「私の気持ちは、変わりません。」 問いかけられたのは、只の少女だった。 何の力もない、ほんのちょっぴり正義感の強い少女。 ヒーローに守られているだけの少女。 ヒーローが戦う理由を知った少女。 橘日向。覆されて尚、何度も死の運命と言う呪縛を科せられた少女。 「私は、私の願いの為に聖杯を望みます。」 「何を聖杯に望む?」 「救けたい人のため。」 只人の少女は、答えた。 大いなる英霊、異界の英雄を前に震えを覚えながらも。 目を逸らさず、確固たる決意を秘めて。 「私を今でも救ってくれている、たった一人のヒーローの為に。」 橘日向のヒーロー、花垣武道。 何度挫けそうになっても、立ち上がるヒーロー。 負けるとわかってても、立ち向かうヒーロー。 どんな事でも諦めず、彼女の笑顔のために戦える泣き虫のヒーロー。 そんな彼を救けたいと、そう願った事。 「……健気だな。そこまで惚れ込んでいるのね。」 「そうですね。自分でもこう言いだしちゃってるのが、ちょっと怖いですけれど。」 苦笑気味に、橘日向が呟く。 聖杯戦争、万能の願望器を巡り殺し合う。 願望、矜持、復讐、享楽、妄執。数多の感情が巡り混じり合う戦場に。 橘日向という一般人がそれに巻き込まれて、怖いと思わないのが不自然だ。 それと同時に、橘日向が花垣武道が思う気持ちに嘘偽りはない。 「だけど、私のヒーローは。そうだとわかっていても、行ってしまうんです。」 そう。 橘日向のヒーロー、花垣武道とはそういう男なのだから。 勝てないと、負けるとわかっていても。 誰かを助けるために立ち向かう、そんな人だから。 それは、勝てる人よりも、100倍かっこいい。 「そんな彼に、私は恋をしました。」 橘日向が花垣武道に恋をした日。 子猫を囲んでいたいじめっ子たち。 子猫を逃がすために声をかけた彼女。 泣き出しそうな強がりをする彼女を助けにやってきたヒーロー。 負けるとわかっていても立ち向かって、自分を守ってくれたヒーロー。 あの日が、橘日向にとっての恋の分岐点。 「……まるで、お陽さまのようね、マスター。」 アルターエゴが、口元を緩ませる。 橘日向を、太陽だと例える。 優しき太陽。 迷い人を導く日向。 向日葵の如き光。 ああ、確かに、ヒーローが守りたいと願っても仕方のないのだと。 その輝きは、まるで陽の巫女のような―――。 「……が。」 アルターエゴが瞳を閉じる。 静寂を裂いて、風が吹きすさぶ。 飛び散る蝶の如く、白雪が空に舞う。 刹那、アルターエゴが変貌した。 黒き髪は白へと。碧空の瞳は深紅へと。 『故に、妾は解せぬ。』 神が、降りた。 天に響き、地に木霊する。 高天原より、舞い降りる。 アルターエゴに宿る、大いなる神。 今までが鞘ならば、これは剣。 剣神・叢雲の命(みこと)。 それが、この神の名。 『貴様は太陽であるが、力あるものではない。』 神が、問う。 お前は戦う力を持たぬもの。 ただの向日葵。 誰かを支えることは出来ても、誰かと戦うことは出来ぬはず。 それを橘日向が理解ていないわけがない。 だから、問う。 『死ぬぞ。』 決意は十分、信念は十分。 だが、身に余る戦場に、余りにも力不足。 思いだけでも、余りにも足りない"戦争"では。 お前の様な木端は意図も容易く刈り取られると睨む。 神威が、暴風となり吹きすさぶ。 積もった雪が、吹き飛ぶ。 その審判に、部外者が関わるに能わず。 アルターエゴは少女をただ見据える。 剣神は少女をただ見下ろす。 叢雲は少女をただ見定める。 『力不足だと、無力だと理解した上で、挑むのか?』 橘日向にはその正義感と優しさ以外に、何もない。 守ってくれるヒーローは、今は居ない。 力もなく、ただ誇れるのは思いだけ。 思いだけでは、余りにも足りない。 それでもなお、その選択を取るのかと、神は問う。 空気が震える。神の圧が橘日向を包み込む。 これは神判。神が人に価値を見出すかどうかの判別、区別。 迂闊な問いは、即ち終わりに直結する。 だが、橘日向は、最初から答えが決まっている。 意を決し、こう告げる 「私、死ぬんです。」 その言葉に、神は僅かながら眉を動かす。 「私、十二年後に死ぬんです。――殺されるんです。」 『――なん、だと?』 神も、流石に驚きを隠せない。 未来、自らが死ぬ運命だと知っていると来た。 だが、彼女から感じるのはただの少女であること。 魔眼による未来視では全くない。 ならば何故、この女は未来に己が死ぬことを知っているのだと。 己ですら、己の死の未来を視ることなど、不可能だったというのに。 いや、あるではないか。彼女が未来を知りうる手段である人物が。 橘日向の言っていた、聖杯を願う理由に繋がるヒーロー。 「私のヒーローは、タケミチくんは、それを止める為に、未来から来たんです。」 その言葉に、神は合点が行った。 聖杯を望む根幹の理由に関わる存在、タケミチというヒーロー。 彼が、彼女の未来に待ち受ける死という呪いを解こうと足掻いているのなら。 彼女が、その事実を知ってしまったのならば。 「私だけじゃない、みんなの未来を知ってる。みんなを救けたいと思ってる。そのために、タケミチくんは必死だから。」 橘日向の声が、震える。 透明なグラスから、水が溢れてゆくように。 その瞳から雫が落ちて、降り積もる雪に消えてゆく。 孤独に戦う、彼の最大の理解者として。 未来のために、抗う彼に寄り添う者として。 「なのに私は、彼の為に何もできない…。」 それが、苦しかった。 それが、後悔だった。 逃げず、先の見えない真っ暗闇に突っ込んで、絶望と悪意に立ち向かうヒーローに。 何一つ手助けすら出来ない事が、橘日向にとっての哀しみ。 それが彼女が、ヒーローに授けてしまった愛にして哀。呪いなのだ。 「本当なら、タケミチくんの支えになれるだけで、それだけで良いなんて、心のなかで思ってた。」 俯いた顔を上げ、涙を拭う。 悲しみの涙も拭い、凛とした表情で神に視線を向けて。 「こんな訳の分からない事に巻き込まれて。私の心じゃタケミチくん頼りのままで。」 正しく歪んだ過去。異界東京都。欠けた未来。 無敵の彼は闇に落ち。 救いをヒーローは今はいない。 「私はヒーローなんかにはなれない、だから。」 橘日向は花垣武道のようなヒーローにはなれない。 橘日向は誰かのような強さを持てない。 悪く言えば他人頼りの極み。 それでも、宣言せずにはいられない。 「私は、未来に繋がる不幸の運命を全て壊す。」 もう、後には戻れない。 聖杯戦争、初めて経験する戦場に巻き込まれ。 逃げて何もかも投げ出すという選択肢もあった。 だが彼女はそれを放棄した。 橘日向だからこそ知っている、ヒーローの弱さを。 橘日向だからこそ知っている、ヒーローの諦めの悪さを。 橘日向だからこそ、ヒーローは逃げないことを知っている。 「私が、タケミチくんにとっての聖域で。」 花垣武道がタイムリープを決めた引き金。 橘日向の死を覆すため。 その願いの為に、彼は過去に、絶望に抗い続けた。 その内に、橘日向以外にも守りたいものが増えていった。 全ては橘日向という聖域が始まった事。 その愛が、ヒーローを縛っているというのなら。 その哀が、ヒーローにとっての使命であると同時に呪いとなったのなら。 「―――なら、私にとっての聖域は、タケミチくんを含めたみんなが幸せに過ごせる未来。」 だったら彼女は、橘日向は。 ヒーローですら取り零してしまった命も。 ヒーローが抱えた悲しみも。 何もかも掬い上げて直してしまおう。 「ヒーローを信じるだけの私とはもうさよなら。だから、私が――橘日向が、運命を破壊する!!」 それは、人の身が願うには余りにも傲慢。 只人が望むには余りにも重すぎる奇跡。 されど、橘日向は望んだ。 救われず、命を落とした誰かにも、救済を。 運命を他人に決めてもらう甘えは終わらせる。 「だって――」 『運命は抗うもの、だろう。』 橘日向の言葉を黙って聞き入ってた神が、割り込むように漸く口を開いた。 まるで、懐かしい光景を見るような微笑みで。 まるで、成長した子を喜ぶ母親のように。 『お前の覚悟、しかと聞き届けた。』 そして満足だと、そう表情で告げ神は去る。 白は黒へ、紅は碧へ戻る。 神は少女へと。愛宮千歌音の意識へと戻る。 「……驚いたわ、運命を破壊するだなんて言い方。本当にあの子……姫子みたい。」 アルターエゴの過去。贋作が人間になる前の記憶。 神様・叢雲でなく人間・愛宮千歌音であることを肯定してくれた陽だまりの彼女。 来栖守姫子が運命を、神の力を破壊したことで、愛宮千歌音になれた。 信じるだけの運命を棄て、自ら運命に抗うことを決めた。 正に彼女の生き写しだと、アルターエゴは思う。 「まあ、英霊となって、また神の力にお世話になるなんて思わなかったけれど。」 英霊となって、またしてもこの剣神を宿すことになるとは因果な事。 少女聖域もまた、アルターエゴの中にいる。 それがどのような形であるか、それはまだ知らず。 「全く、姫子になんて言われるかしら。」 「好きなんですか? その姫子さんって人は。」 「……そうね。好きよ、でも私は。」 偽物だから、と言いそうになって、やめる。 愛宮千歌音とは本来、叢雲の命の分け身。 神が人を愛するがあまり、人へと姿へ変えたもの。 そんな自分を、神の力だけを破壊し、人で在る事を来栖守姫子は認めてくれた。 でも、それでも来栖守姫子が慕う本来の千歌音は来栖守千歌音の方。 こんな自分を卑下したら、それこそ姫子に怒られそうだと。 寂しげに、自嘲気味に微笑む。 来栖守姫子は神の力の破壊を代償に、神と姉と共に、高天原へと還っていったから。 二度と、彼女と会えるとは、思えなかったから。 「……アルターエゴ。私の聖域を守るために、聖杯の獲得を。」 橘日向が、らしくもない強い口調で告げ、手を出す。 これが、一種の覚悟表明なのか。 恐らくは、アルターエゴの過去を夢として垣間見た影響か。 そんな所も、彼女らしくなくてもと、アルターエゴは苦笑して。 「わかったわ、マスター。」 アルターエゴが告げる。頭を垂れて、その手を取る。 それはまるで、姉妹のようで。 其れはまるで、太陽と月のようで。 振り続ける白雪だけが、彼女たちの始まりを照らしていた。 ☆★☆★ ★☆★☆ 長き時を経ても、変わらぬ星明かりのみが照らす。 疲れ部屋で眠るマスターの側、星明かりに照らされるアルターエゴの姿。 弱くも強い、死の運命に縛られ続ける少女。 ヒーローをその愛で縛ってしまった少女。 「マスター……その道は、きっと。」 大いなる神、叢雲の命。 二人の巫女、千歌音と姫子を愛してしまった神様。 二人と共に居られる幸せを願ってしまった神様。 それが永遠にかなってしまった。 永劫の時の流れに、願いは呪いへと変貌し錆びついた。 マスターの願いが、マスターの願う幸せは。 いつか呪いとなって、湧き出た憎悪が己に牙を向くかもしれない。 彼女は何処かでわかっているのか、それとも全くわかっていないのか。 それとも、それでも幸せを願わず得なかったのか。 「でも、私は―――。」 叶うならば、会いたい。来栖守姫子に。 あの優しさにもう一度、絆されたい。 その肌に、もう一度触れたい。 その唇に、もう一度契りたい。 その身体と、もう一度愛を捧げたい。 だが、それを叶う権利はない。 それを願えば、再び姫子を縛ってしまうから。 姫子は私のために、神と共に高天原へと還ったのだから。 「会いたいよ、姫子………。」 ぽたぽた、ぽたぽた。 寂しさで、涙が零れ落ちる。 本当に、情けなかった。 蘇った神の力、それで彼女の心は満たせない。 仲間が居ても、マスターが居ても、その寂しさだけは満たせなかった。 その喪失を、願望器という甘い汁が、再び浮き上がらせてしまった。 「姫子ぉ……。」 彼女の哀しみを抑える者は、今は居ない。 今にも崩れそうな、喪失に耐えられなかった少女の姿がそこにある。 涙はとめどなく流れ続ける。 星だけがそれを寂しく見下ろしている。 「――ちかね、ちゃん。」 「――え?」 声がする。 暗き夜に、人影が一つ。 人形のような顔立ちで。 可愛らしい童顔で。 おひさまのような、紅茶色髪で。 黒い修道服に身を包んだ、少女の姿。 「……せつな?」 アルターエゴが、思い浮かんだ一つの可能性。 愛宮千歌音の少女聖域。剣の力、神の力が姿かたちを為したもの、せつな。 神の力が在るのなら、彼女もまた在ると、予想はしていた。 だけど、彼女の声は、瞳は、姿はまるで――。 「……ううん。違う。」 その少女は、違うと告げる。 アルターエゴに向けて、笑顔を向ける。 その瞳に、心なしか雫が溜まっているようにみえる。 「お姉ちゃんには、すごく反対されたよ。……でも、会いに来ちゃった。」 「―――ッ!」 その言葉だけで、アルターエゴは全てを理解する。 何故、壊された神の力を再び使えるのか。 何故、自分のクラスがアルターエゴなのか。 有無も言わず、脇目も振らず、アルターエゴは少女に抱きつく。 目一杯、もう二度と離したくないと、肌をすり合わせて、唇を近づかせて。 「ただいま、千歌音ちゃん。……私も、本当は、会いたかったよ……寂しい思いさせて、ごめんね……!」 「姫子……姫子……ひめこぉ………!」 輪廻を超えて、永劫の時を超えて、呪いすら超えて。 神の気まぐれにて再開した二人は激しく愛し合った。 月と星だけが、それを祝福していた。 ★☆★☆ ☆★☆★ 愛は―――呪いになり、哀になる…でも 想う事は自由だ。望まず…想うだけなら 男が、女を想う事も 女が、男を想う事も 姉が、妹を想う事も 人が、神を想う事も そして私は…この異界東京都で思ってしまうのだ 人は――――それでも、愛する事を、止めないだろう―― 全てに、愛を… ☆★☆★ 【クラス】 アルターエゴ 【真名】 愛宮千歌音@絶対少女聖域アムネシアン 【属性】 秩序・中庸 【ステータス】 筋力:C++ 耐久:B 敏捷:C 魔力:B+ 幸運:C 宝具:B+ 『神格化』発動中 筋力:A 耐久:A 敏捷:B+ 魔力:A 幸運:B 【クラススキル】 対魔力:B 神性:C++ 【保有スキル】 アムネシアン:B アルターエゴの居た世界での、異能者の総称。人が愛のために神を縛り、神の力の欠片を得た者たち。 このスキルを所有しているものには、「神性:C」が付与される。 アルターエゴの場合、かつて神様の生まれ変わりだったという点も踏まえて付与される神性は本来のランクよりもプラス補正が掛かる。 カリスマ:C+ 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。 アルターエゴは叢雲としての神威も踏まえ、ランクが上がっている。 少女聖域(来栖守姫子):EX アルターエゴの少女聖域。剣の力そのものにして、少女の形をした神の力そのもの。 そのはずなのだが、「出来ることなら二人一緒の方がいいんじゃ!」とかほざいた高天原帰還済みの某神様の心情を、同じく高天原に還った一人の少女の願いとの利害一致が噛み合い力を合わせた事で変質。 本来ならせつなという少女聖域が呼ばれる所を、よりにもよって来栖守姫子本人がスキルという形で再開しに来たという滅茶苦茶をしでかした。 来栖守姫子という少女自体が、英霊の使い魔や戦闘向けのサーヴァントでなければ相手取れるステータスを持ち、さらに彼女の主武装である大鎌「天命剣クラウソラス」は、C+クラス相当の宝具と同等の性能を誇る。 尚、姫子の姉は英霊の座から「ふざけんな神様、妹が納得してなかったらもう一度殺しに行くぞ」と憤っている模様。 【宝具】 『神格化・剣神叢雲の命』 ランク:B+ 種別:対人宝具(自身) レンジ:1 最大捕捉:1人 アルターエゴの、本来の姿だったものの解放。剣神としての神格の顕現。 全ステータスの上昇に加え、前述の少女聖域が来栖守姫子へと変化した結果さらなる恩恵付与が追加。 スキル化に伴い、仮に来栖守姫子が英霊と呼ばれた際に宝具となる外ツ神の力も上乗せする結果に。 発動中さらに「戦闘続行:B+」「領域外の生命:D++」も追加される。 【weapon】 『七星剣』 セブンス・ソード。1本の実体剣と6本の幻影剣を自由に繰り出す能力。実体剣には紫の飾り紐がついており触れることも可能だが、幻影剣の方は千歌音以外触れることができない。 『天叢雲の剣』 神格化発動中のアルターエゴの主武装。草薙剣とも称される八岐大蛇を討伐した三種の神器の一つ。 【人物背景】 神の生まれ変わり。かつて神であった人。 愛という呪いから解き放たれて、人になった少女。 【サーヴァントとしての願い】 マスターの"聖域"を守るため、聖杯を手に入れる。 【マスター】 橘日向@東京卍リベンジャーズ 【マスターとしての願い】 タケミチくんと、みんなを不幸になる運命を破壊する 【能力・技能】 なし。 【人物背景】 泣き虫のヒーローにとっての"聖域" 人より正義感が強いだけの少女。 【備考】 参戦時期は佐野エマ死亡後
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ディアネ・コリーニ様のS的好奇心調査結果報告書 予想に反し、2006年7月までのログにはS的好奇心の発動はなかった。 ディアネ暫定には貢いで発言があるもののS的要素は低いように思える。 しかし、7月末のログにて、今後のS化の予兆と思われるものが発見された。 ディアネ様君臨(2006.7.28) ペル ディアネ神の教義ってなんだろ? ディアネ・コリーニ 考えてください ペル ディアネ神は神聖にして侵すべからず ペル でもディアネ神はA Jと商会員統合の「象徴」 ペル どこかの国の新旧憲法に記された天皇見たいですが気のせいです ディアネ・コリーニ 「君臨すれども統治せず」かな? ファンダレル 君臨するんですか?w ディアネ・コリーニ 教義的にそうなりそうなんですがw フリート 神よ我を導きたまえ。。。 ペル 教義は神が「考えてください」とおっしゃったので個々人のその時の都合によって変わりますw ディアネ・コリーニ それでいいですw フリート 神よ我を導きたまえ。。。 ディアネ・コリーニ 開錠なら導けるけどw ひょっとしてディアネ教がS的要素の発言につながってしまったんじゃないだろうな?
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