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英雄交差点 ◆WoLFzcfcE. 気がつけば刀を握っている。 何度目かわからない舌打ちをして、ロイド・アーヴィングは固く強張った指を一本ずつ開いていく。 赤く染め上げられた外套をまとい、鳶色の髪を逆立てた青年は一人夜の街を彷徨う。 殺し合いを打破する。彼はまずそう決めた。 ならば目指すべきはあのロワという女を打倒することだが、その途上で闘いを避けられないとは薄々感じていた。 先ほど刀を合わせた幽鬼のような男、宇練銀閣――ロイドはその名を知らなかったが――のように、殺人に忌避感を持たない人間がいるのだから。 そして殺し合いと言うのなら進んで剣を執ることのない穏健な人物ばかりを集めるはずもない。 相当数、銀閣のような人斬りがいると考えるべきだ。 運良くあの場は切り抜けられたものの、銀閣は相当の手練であったとロイドは感じていた。 世界を巡り腕を磨いてきたロイドでさえ紙一重の攻防だった。 剣士として彼らと腕を競ってみたいと言う欲はある。だがそれはあくまで尋常な試合の中でだ。 確たる理由もなく殺し合う、この状況に流されるままに剣を交え命を奪うなどと、従えるわけがない。 「三人寄れば文殊の知恵って言うしな。まずは仲間を探そう……今度は友好的な奴を」 殺し合いに乗り気でない者は必ずいるはずだとロイドは思う。まさかそういう人間が自分だけということはないだろう。 一人では妙案が浮かばなくとも、仲間が――かつて共に旅した仲間たちのような――いれば、何か活路を見出せるかもしれない。 できるだけ殺さず、犠牲を出さずにこの状況を収束させられる方法を。 「とは、言え……話してわかってくれる奴ばかりでもないだろうな」 仲間を探すにしても、無防備で接触するわけにはいかない。 銀閣のように有無を言わさず襲ってくるかもしれないし、あるいは状況に錯乱して剣を向けてくるかもしれない。 まずは自身の安全を確保することが優先――だが、そこで問題があった。 ロイドの腕はまたも柄を握り締めていた。 これが目下ロイドを悩ませる頭痛の種。どう言う訳か、無意識の内に刀を抜き放とうとしている自分がいる。 抜いてはいけないと直感した刀を抜いてしまったからだろうとロイドは推察していた。 かつて旅の中で蒐集した闇の装備品のような、ある種の魔剣、呪い刀だろうと。 精霊の加護すらも突き破るほどに強力な毒。 ロイドの精神を犯すそれは、我を解き放てとけしかけるように抜刀を促している。 行動を強制されるほどではない。しかし、いざ行動に移るか移らないかと言う境界線――それを揺らがせるには十分だった。 ロイドは静かに歩みを止める。 視線の先には銀髪に翡翠の瞳、男のロイドにさえ美しいと思わせる、そんな男が立っている。 腰におそらく対となる短刀を佩き、感情を感じさせない眼差しでロイドを見ていた。 さあ、ここからが正念場だ――ロイドは息を吸い込んだ。 「俺はロイド・アーヴィング。最初に言っておく、闘う気はあまりない」 「……あまり、とは?」 「やる気なら相手になるが、俺からは手を出さないってことだ」 意識して腕を開く。無意識にも刀を抜くことのないように。 だがそれでいて爪先に重心を移し、いつでも前後左右どこにでも身を投げ出せる体勢を取る。 銀髪の男はロイドのそういった僅かな動きをどう判断したか、腕を組んで品定めするように無遠慮な視線を向ける。 「ふむ……お前はどうやら話が通じる相手のようだな」 「と言うと、あんたも誰かに襲われたのか?」 「ああ。それも二人、恐ろしく凶暴な奴らにな」 肩を竦め、軽く言ってみせる男。ロイドは目を細める。 彼の言葉が本当なら、敵意を持った数で勝る相手をさしたる負傷もなしに切り抜けたと言うことだ。 ならば相当、腕が立つのだろう。 「俺はセフィロス。神羅カンパニー所属のソルジャー、クラスは1stだ」 「神羅カンパニー……ソルジャー? 何だそれ」 「……? ミッドガルに本拠を置く神羅電気動力株式会社、略称神羅カンパニー。ソルジャーはそこの私設軍の兵士だが」 「知らない。ミッドガルってのは街の名前か? シルヴァラントにもテセアラにもそんな街はなかったはずだけど、最近できた街なのか?」 「……ロイド、だったな。少し話を聞かせてもらおうか」 やや瞳を鋭くし、銀髪の男――セフィロスが背後の民家を示す。あの中で話の続きを、ということだろう。 セフィロスが踵を返し、ロイドも後に続く。 無造作に見えてセフィロスの足運びには隙がない。闘うとなれば苦戦は免れないだろう。 セフィロスの武器は二刀。だが短刀ゆえ刃渡りは短い。 ロイドは逆に一刀だが、こちらは長刀だ。 射程で勝り、手数で負ける。 だがロイドは本来二刀を操る剣士。ゆえに、どう攻めれば打ち崩せるかも手に取るように理解でき―― 「――ッ!?」 視界の端に銀光が閃く。 ロイドはとっさに身を投げ出す。片手で地を突き、側転。 背後でガツッと音がした。 距離が開き、ゆっくりと立ち上がる。 セフィロスはすでに双刀を抜き、ロイドへと向き直っていた。 「……何のつもりだ? 最初から騙まし討ちでもする気だったのか」 「さて、それは俺が聞きたいな。お前こそ何を考えていたのか」 セフィロスが短刀を中空へと構える。その延長線上、ロイドの手の中に――既に抜き身である、毒刀・鍍がある。 が、それを見て驚いたのは誰でもないロイド自身だ。いつ抜刀したのか、まったく覚えがない。 転がったときに抜いたのか? いやそんな余裕はなかったと、即座に否定する。 まるでそこにあるのが自然で、とても当たり前のことであるかのように毒刀はロイドの手に馴染んでいた。 「背中を見せればどう動くかと思ったが。お前もやる気だったと言うことか」 「い、いや待て……どういうことだ? 俺が先に抜いたのか?」 「何を言うかと思えば……もういい。手足を斬り落として知っていることを全て吐かせてやる」 「待……ッ!」 セフィロスの姿が霞む。 神速で間合いに踏み込んできた銀色の影に危険を察知し、ロイドの身体は脳が命令を下す前に動く。 右から奔ってきた斬撃を身を沈ませてやり過ごし、左の追撃が放たれる前に返す刀でセフィロスの胴を薙ぎ払う―― 「……くっ!」 寸前で、猛る右腕を左腕で必死に押し留める。 同時に地を蹴り、後方へ跳ぶ。が、一瞬速く繰り出されたセフィロスの左の刀に肩口を浅く切り裂かれた。 出血は浅い。皮一枚を斬られただけだ。 だがロイドはその傷に頓着せず、凍える瞳を向けてくるセフィロスへと声を張り上げた。 「待ってくれ! 本当に、俺が先に刀を抜いたのか?」 「さっきから何を言っている。命乞いをするならもう少しまともな言い訳を考えろ」 「……じゃあ、やっぱり……そういうことなのか」 ロイドにはセフィロスを害する意志はなかった。だが現実、先に抜刀したのはロイドなのだ。 セフィロスの言葉は言外に失望を物語っている。 最初からその気だったなら、回りくどい真似をせずにかかって来れば良かったのだ、と。 ロイドが握り締めるこの刀。 腕を這い上がってくるこの悪寒の正体は、やはり呪いだったのだろう。 そして今も。 毒刀はロイドの内で囁く。 奴を斬れ、殺せ。 奴は敵だ、躊躇うな。 と。 精霊の加護は完全に断たれた訳ではなく、その囁きを弱めてくれていた。護りと毒は相克している。 だが一たびロイドの注意が刀から離れれば、刀を持つ右腕は勝手に動き出すのだ。 刀を抑えることに集中すれば意志を乗っ取られることはない。 だがそれでは襲い掛かってくるセフィロスに対処できるはずもなく―― (やるしか……ないのか!?) 逡巡の時間もなく状況は動く。 刀を手放せばいいのではないか。そう考えたのだが、柄は掌に貼り付いたように放れない。 刀が拒否している。あるいは、刀に毒されたロイド自身が無意識に拒んでいるのか。 (自分の意志で闘うかどうかも決められない――これじゃ俺はただの人殺しだ!) 双刀がでロイドの身を切り裂かんと迫ってくる。 刃の軌跡を認識していながらも、動けない。 囁きがロイドを攻め立てる。内奥で毒と自らの精神とが互いを制圧しようと激しく荒れ狂っていた。 『敵』は、自分の中にいる。 ロイドは目を見開いた。 「俺、は――ッ!」 渾身の力で刀を振り抜く。 直後に腹部に灼熱の痛みを感じ、意識は闇に落ちていった。 ◆ 1stソルジャー・セフィロスは、新たに手に入れた刀を品定めする。 愛刀である正宗に比べればかなり短いが、それでも干将・莫揶の二刀よりは使いやすそうだ。 手に取った瞬間、何かが体内に侵入してきた感覚があった。 物理的な刺激ではない。実体のない、霞のように身にまとわりつく何か。 鞘を拾って収めるとその何かも収まる。 「なるほど、精神に何らかの幻惑作用をもたらす刀か。中にマテリアでも仕込んであるのか?」 倒れているロイドを見やる。 様子がおかしかったのはこの刀のせいか、と何とはなしに見当をつけた。 記憶障害でも起こしているかのような発言、放った攻撃を自ら止める行為。 どちらも刀の効力に翻弄され、抗っていたのだと考えれば説明はつく。 では今現在毒刀を手にするセフィロスはどうか。 毒刀・鍍を手にしても、セフィロスの強靭な精神は小揺るぎもしていなかった。 それはセフィロス自身の意志力だけでなく、体内のジェノバ細胞が異物の進入を拒んだためでもあったが。 「フン……刀ごときに振り回されるとは、未熟な奴だ」 鼻を鳴らし、壁に刺さったままのレイピアを回収する。 ロイドに先手を打てたのは半ば偶然だった。 僅かな刃鳴りの音を、最強のソルジャーであるセフィロスは聞き逃さなかっただけ。 レイピアの投擲が一瞬でも遅れれば背中に一太刀もらっていたかもしれない。 腕だけに限定すれば、セフィロスはロイドへかなり高めの評価をつけていた。 ロイドの荷物を回収し、東の空へ顔を向けると僅かな曙光が射していた。 もうすぐ夜が明ける。 街を出るか、それとももうしばらく留まるか。 最初に仕掛けてきた女や黒い剣士のことを考えると、あまり長居するのは危険ではある。 「まあ……どうするかは、こいつが起きてから考えるか」 二つのデイバッグを左肩に、右肩にはもう一つの荷物を担ぐ。 腰から引っぺがしたベルトで後ろ手に腕を縛り、無力化したロイド・アーヴィングを。 ロイドは激突の瞬間、自ら刀を手放すことは不可能と判断しある賭けに出た。 自分でできないのならば他人にやらせればいい。すなわち、セフィロスに刀を弾き飛ばさせることだ。 ほぼ同時に迫ってきた短刀の片方を全力で弾き、体勢が崩れた状態でもう片方の刃を迎え撃つ。 反射的にセフィロスは刀を絡め、跳ね上げていた。ロイドの狙いにまんまと乗ってしまったことになる。 刀を手放したときのロイドの表情は安堵そのものだった。 運が悪ければそのままセフィロスの刃に切り裂かれ絶命していたかもしれないのに、だ。 そうと気付いたとき、セフィロスは手首を返し干将・莫揶の柄頭でロイドの腹部を打った。 あのままロイドを殺すのは、何となく――負けのような気がしたからだ。 ロイドを生かしたまま連れ歩くのは面倒ではあるが、さほどデメリットはなかった。 最初に言ったとおりセフィロス自身積極的に殺し合いに乗る気はなく、情報は欲しい。 問答無用で襲い掛かってきた女や黒い剣士と比べれば御しやすい相手であり、会話も通じる。 刀を取り上げてまだその効果があるかはわからないが、どちらにせよ無手の相手を恐れる必要もない。 いざとなれば盾にもできるし、好戦的ではない者と遭遇したときセフィロスのスタンスを証明する道具にもなる。 何より、ロイドが刀の支配から逃れることができれば――まあ、共に闘うこともできるかもしれない。 刀に抗うロイドの姿には、少なくとも闘う意志があった。 敵と、ではなく自分とだ。 そして彼は何とかその闘いに勝利を得て、結果的にセフィロスの『殺る気』を削いだ。 敵と断定するには早計。セフィロスにそう思わせたロイドの粘り勝ちだったのだ。 最強のソルジャー、英雄セフィロスはたとえ自らに及ばずとも共に闘う意志のある者を切り捨てない。 英雄は、英雄の目に適った。 彼らが次に言葉を交わすとき、そこに刃があるのかどうか――それはまだ、誰にもわからない。 【F-3/市街地/一日目/黎明】 【ロイド・アーヴィング@テイルズオブシンフォニア ラタトスクの騎士】 【状態】刀の『毒』に犯されている、気絶 【装備】なし 【道具】支給品一式 【思考】基本:殺し合いを打破する 1:………… 【備考】 ※『 ラタトスクの騎士』本編終了後より参戦 ※毒刀の影響を受けていますが、刀を手放しても効果が持続するかは不明。 【セフィロス@ファイナルファンタジーⅦ】 【状態】健康 【装備】毒刀『鍍』@刀語、干将・莫揶@Fate/stay night 【道具】支給品、折れたレイピア 【思考】基本:専守防衛 1:生き残る。 2:ロイドが目覚めたら話をする。刀の影響が残っているなら……。 【備考】 ※ソルジャー時代からの参加。 ※今のところ毒刀の影響を受けていません。 BACK NEXT 033 隼の邂逅 投下順 035 流れの行方は 033 隼の邂逅 時系列順 035 流れの行方は BACK 登場キャラ NEXT 004 漂う匂いを追いかけて セフィロス 045 仲間 013 夜に乱雲花々乱れ ロイド 045 仲間
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情報屋「Varmilion」を辞して数日。自宅に戻っていた京は、ここ数日でいくつかの案件を片付けていた。 一線を退いたとはいえ、腕の立つ隊員だった事実は残っている。それを買われて、こうして簡単な、あるいは後処理の必要な案件が回ってくることがたまにあるのだ。 「……じゃ、この件は終了ね。アン、連絡を」 「畏まりました」 一礼して退室するアンを見送り、京は椅子を立って窓から外を見る。すっかり日が暮れて暗くなってきている。この窓は東を向いているため、夕陽が入らないのが少々不満だった。 「んー、改築すべきかしら」 そんなことを本気で呟く京の片足は、以前とは異なる頑丈そうなものへと変わっていた。アンが随分前にトライアルアークスに発注していた戦闘用の義足が、昨日になってようやく届いたのである。と言っても、いざという時の自衛レベルであり、さすがに能力者相手に真っ向からやり合えるほどではない。 京自身、戦闘力はそんなに高い方ではない。あらゆるものを「施錠」して封じる、という特異な能力を持ってはいるものの、それは周りにアースセイバーの仲間達がいてこそ真価を発揮していた。 「………あの時ドジを踏まなければねぇ」 はぁ、と重いため息をつく。ドアがノックされ、アンが戻ってくる。 「連絡は終わりました。後の案件は必要に応じて処理を、とのことです」 「それはつまり、私に丸投げってことね。わかったわ、時間を見て潰していきましょう」 言いつつ、京は机の上に広げていた書類その他をてきぱきと揃え、アンが受け取って所定の場所に仕舞い込む。一切の滞りなく、後片付けはものの数十秒で終わった。合図も、指示もいらない、まさに完璧なコンビネーションであった。 一通りの作業が済んだところで、京はカーテンを閉めつつ、アンに話しかける。 「今、さし当り気になる事象はある?」 「二つほど。ただ、一つはウスワイヤに回っていますので、動くとすればもう一方でしょう」 「そう。で、そのもう一方っていうのは?」 「実は先ほどの連絡で知ったのですが、UHラボ関連で動きがみられます」 ラボの名が出た途端、京の表情が曇る。他でもない、そのラボに関わる戦いで、彼女は片足をなくしたのである。 「……その名をまた聞こうとは思わなかったわ」 「……申し訳ありません」 「いいわ。それより、具体的なところは? まだわからない?」 「はい、詳細は伏せられています。ただ、初動が確認されたのがかなり前ですので、情報収集は不可能ではない、かと」 「……なら、ちょっと遅いけど、あそこに連絡してみようかしら」 京が言う間に、いつの間にかアンが電話機を持ってきていた。専用の皿に本体を乗せて保持するという古風極まるスタイルだった。 「ありがとう。さて……」 これまた古めかしいダイヤル式の電話を回し、連絡した先はあの情報屋。数コールほど待ってから繋がったが、 「……? もしもし?」 どうにも様子がおかしい。何度か呼びかけるが、苦しげな息遣いが聞こえるだけで返事が帰って来ない。そうしている内、 『ぅ、ぅう゛………ぅああぁぁぁああぁ……!!』 今度は慟哭が聞こえた。何かあったに違いない、しかも最悪に近い何かが。 「大丈夫? 今すぐそっちに行くわ、ちょっと待ってなさい」 早口にそういうと、京は電話を切ってアンに呼びかける。 「情報屋にいくわよ、アン」 「仕度は整っております」 「OK、急ぐわよ!! コトによると、コトによるわよ、これは……」 運命交差点・承 (その一点に) (二つの運命が、届く)
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街 ~運命の交差点~ サウンドノベル 街 -machi- 街 ~運命の交差点~ 特別篇 機種:SS, PS, PSP, Mob 作曲者:板倉真一,加藤恒太,森藤晶司,難波弘之,林秀幸,三俣千代子,鈴木結女 発売元:チュンソフト,セガ(PSP),ドワンゴ(Mob) 発売年:1998年(SS),1999年(PS),2006年(PSP) 概要 『弟切草』『かまいたちの夜』に続くチュンソフト・サウンドノベルシリーズ第3弾。 項目名はPS移植版以降でのタイトルであり、オリジナルのSS版は『サウンドノベル 街 -machi-』であった。 渋谷を舞台に立場の違う8人を操作して、それぞれ交差することで変化する人間ドラマを楽しむ作品。 売上としては奮わなかったものの、『ファミ通』の「読者が選ぶTOP20」ランキングに10年近く毎号入り続けるという、とても根強い人気を誇り、ファンの間で続編が熱望された。 ゲーム開発に際し、セガの当時の社長から開発資金援助や渋谷の撮影許可会得など熱心な協力を受けており当初はセガサターン単独で発売。 発売数年後にセガ×チュンプロジェクトが立ち上がり、後継作とも呼ばれる『428 ~封鎖された渋谷で~』が10年後に発売された。 複数のハードに移植されたが、ストリーム再生の主題歌とエンディング曲以外のBGMは内蔵音源のため、各機種毎に若干音色が異なる。 SS版発売時にサウンドトラックが発売されているが、SS版の音源ではなく内蔵音源に落とし込む前の原曲版であり、また収録されていない曲も多い。 『特別篇』に追加されたサウンドプレイヤーには100曲以上収録されているが、ここでも再生できないゲーム内使用曲がいくつかある。 ゲーム内容の特性上、楽曲のジャンルが多様なこともあって、テレビ番組のBGMなどでも使われることが多い。 特に『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』では、裁判企画や24時間鬼ごっこなどで本作のBGMが多用されている。 プロデューサー中村光一氏は本作を「ある種、90年代後半の渋谷を記録した作品」と語っている。 収録曲 曲名 作・編曲者 補足 順位 夜明けのうた 作:鈴木結女編:難波弘之 オープニングテーマ歌:鈴木結女 第3回ゲームソング262位第2回オープニング337位 オタク刑事、走る! 加藤恒太 油断 加藤恒太 WOLFIRE3 加藤恒太 哀愁 加藤恒太 慟哭 加藤恒太 シルベール 板倉真一 パニック・ダンス 加藤恒太 サウンドプレイヤー「Panic Dance」表記 ロケ隊出撃! 森藤晶司 サウンドプレイヤー「ロケ隊出動!」表記 ひだまり 難波弘之 The wrong men 森藤晶司 刑事魂 林秀幸 野良犬 板倉真一 タイム・リミット 森藤晶司 サウンドプレイヤーでは別の曲(*1)にこの曲名が付いている おてんばサンバ 森藤晶司 不安だわ… 難波弘之 仁義なき渋谷番外地 林秀幸 ティー・ブレイク 難波弘之 悪の目覚め 三俣千代子 脅迫の極意 三俣千代子 氷の美女 三俣千代子 儀式 三俣千代子 WHISTLE 三俣千代子 郷愁 三俣千代子 武者震い 三俣千代子 昼下がりの庭園 難波弘之 讃美歌 加藤恒太 サウンドプレイヤー「賛美歌」表記 出会いと別れ 森藤晶司 晶子~無駄にあがくヴィーナス 加藤恒太 サウンドプレイヤー「無駄にあがくヴィーナス」表記 B・O・D・Y 加藤恒太 トラウマ47位 やせるおもい 難波弘之 ピンチ! ピンチ!! ピンチ!!! 板倉真一 ああ無情…… 森藤晶司 しあわせはどこに 難波弘之 さわやかな風,かおる 森藤晶司 エステ・デ・エリザベス 難波弘之 美子狂奏曲 森藤晶司 たたかえ! 美子!! 板倉真一 ハッピー・マンデー 林秀幸 愛を夢みて 難波弘之 美子ロボ! GO! 林秀幸 MOVE ON TO THE CITY 板倉真一 遥かなる故郷(あのひ)へ 加藤恒太 サウンドプレイヤー「遥かなる故郷へ」表記 血の記憶 加藤恒太 これが男のいばら道 板倉真一 Moonstone 森藤晶司 Cheap Thrill 難波弘之 もあい~彷徨の果てに 加藤恒太 Maze of Nightmare 林秀幸 街へ出ようよ 三俣千代子 優しい風 三俣千代子 どっちをとるの!? 三俣千代子 きっとハッピーエンド 三俣千代子 二人だけの秘密 三俣千代子 Over Night 森藤晶司 マイ・ベイビー 三俣千代子 私達の愛 三俣千代子 The West 難波弘之 遠く、儚く、愛しいもの 加藤恒太 第2回107位第3回334位第6回805位第13回947位セガ92位夏194位初代PS225位夜125位泣き曲77位 One and Only 作:難波弘之編:難波弘之 エンデイングテーマ歌:鈴木結女 第2回235位第3回411位第6回537位第7回977位第8回533位第9回495位第10回912位第11回550位第12回349位第13回543位ゲームソング11位第2回ゲームソング25位第3回ゲームソング26位エンディング14位第2回エンディング83位セガ73位初代PS196位夜275位 サントラ未収録分 One and Only(Arr.) シナリオ選択画面「One and Only」アレンジ ゴ説明イタシましょう クイーィィズッ! キャベキャベキャ ワニ治郎の告白 さすらいのポリス ワニ治郎 鳥は翼を広げた Evening Dress 晩餐会 屋台 憩いの広場 抱きしめたい 男の大往生 『かまいたちの夜』の「わしが香山や!~男の大往生~」アレンジ 無言の圧力 狐 一途な想い シュレディンガーの猫 悪夢への彷徨 思い出のメロディ 消せない記憶 Over Night(Sax solo) 死神 資料室の親友 疑惑 カウントダウン 暗号を解け 涙 今日も元気にパトロール 虫の報せ シャチテの悪魔 刑事の閃き 独走最善戦 Quiz ネプチューン・ウォー キング・ポセイドン がんばれ美子! 走りまくるわよーっ! これってUFO? 勝利と祝福 マズイ!シマッタ!!ドウシヨウ!!! 七曜会 マスク・プリンセス 妖しい疑惑 夢心地 愛おしい寝顔 好きだよ 彼女の父親 純白のウェディングドレス なんでそうなるの?! 永遠の誓い あたままっしろ ブヒーッす エンペラー黒川 麗しの美少女 絶体絶命だぁぁッ! それは人生最大級の悲劇 のんきなのりぴー ヤナ予感がするネェ 今日も青ムシ 草木も眠る丑三つ時 スキッピーな放課後 ヤッパリ、ガッカリ パニック・ザ・青虫 あぶ、な~い挙動不審 もしかして、もしかすると 青ムシ狂進曲 オキシジェン・ドスカラス 無敵美少女セーラードールズ 青井則生パーフェクト!! エゲレス軍シュプレヒコール サウンドトラック 街 ― オリジナル・サウンドトラック
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▼渋谷『スクランブル交差点』 都内有数のターミナル駅から繋がる賑やかな渋谷は、十代から二十代の若者たちを中心に多くの人々が行き来する、新宿とは異なる雰囲気を持った街です。 中でも渋谷駅ハチ公前出口の目前から、センター街や道玄坂に繋がるスクランブル交差点は、世界的にも有名な観光名所です。定点カメラによるライブ放送があり、カメラやスマートフォンで撮影を行う外国人の姿もしばしば見受けられます。 しかし交差点――『辻』というのは魔術的な意味で危険な場所です。こうした場所に住居を構えることは伝統的に不吉なこととして避けられてきました。典型的な例が三叉路に祀られるという魔女神ヘカテーの伝承でしょう。統計的に見ても交差点では事故や事件が多発します。 『辻』は異界と繋がりやすい場所です。一般の人々は気づきませんが、このスクランブル交差点を入口としてヴァンパイアは若者たちの行き来する繁華街に侵入するのです。 若者たちは多くの悩みを抱えています。ヴァンパイアはそれに付け込み自らの『餌』にするのです。それだけではありません。ヴァンパイアの中で人間の感情の機微に疎いものは、もっと短絡的に雑踏の中を歩く人々『引きずり込む』こともあります。 『クルースニク』渋谷支部はスクランブル交差点に面した雑居ビルに事務所を構え、常にこの場所を監視しています。彼らの手に負えない事件が発生した際、応援を求められることは大いににあり得るでしょう。
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第31話 スレ違わない?交差点 「どうすれば………いいのでしょうか………………」 少女の口から、重たく深い溜息とともに小さく呟きが漏れる。 今の状況と昨日の記憶とがどこまでも噛み合わない。 少女は何故こうなったのかを考えるため、再度自分の記憶を辿る。 昨日はいつもと同じ一日だったはずだ。 朝起きて教団に行った後、神に祈って修行をして、 日が暮れたら家に帰って遅くならないうちに寝た。 いつもと違うことなど何も無かった。 変わったことといえば 私に向かって蹴りつけてきたジャックさんに ゴドウィン様直伝の技の数々を見せて差し上げたのですが……… いえ、それが原因とはさすがに思えませんし。 少女はなおも記憶を探るが今の状況の原因となりそうなものは どうしても見つけられない。 「ゴドウィン様もおられませんし、 やはりここは……神に祈ってみるのが一番でしょうか……」 ひとまずすることを決めた少女は 普段の心の拠り所としている神に祈るべく持っていたリュックを地に下ろし 目を閉じて、手を組んで、膝を突く。 そして一心に神の姿を思い浮かべて祈り、この悪夢に対してどう立ち向かえばよいか答えを求める。 エルウェンは焦っていた。 いきなり薄暗い部屋で殺しあうよう言われ、 そのまま知らない場所へと移動させられたのだから無理も無い。 だがしかし彼女が焦っているのはそんな理由からではない。 移動させられ、戸惑ったものの道具などを確認した後で、 まずは情報を得るため他の参加者と接触しようと彼女が歩き出した直後 山の山頂付近で爆炎があがり煙を上げる。 何者かが争いあっているのに違いない。 「命を握られたからといって、いいように争わされるなど愚かなっ」 そう言って彼女は山へと向かって駆けだした。 どれほど走ったろうか、それなりに長い距離を走ったはずだが彼女は息一つ切らせていない。 長年に渡って分厚い鎧を着続けてきたおかげか、鎧を着てない今は かなりの速度で走ることができるし、スタミナについても問題ない。 だが焦っていたせいか、走り続ける彼女は気づかなかった、 いや焦ってなどいなくとも彼女は気づけなかったかもしれない。 木陰に一人、ひっそりと祈り続ける少女を……… 少女が、長い睫を震わせ目を開ける。 組んでいた手を開き、立ち上がる。 祈りはそう長くは続かなかった。 集中力が切れたわけではない、 祈ったところで神が答えをくれるのか不安になったわけでもない。 いや、それならばどんなにか良かったろう。 彼女は知ってしまったのだ、神の望みを。 即ち、これは神が与えたもうた試練であると 神はこの悪夢の中で自分の信仰心を試されているのだと ならば初めに薄暗い部屋で説明をしていたのは神の使いではないだろうか。 少女は己の内で答えを導き出す。 そしてそれこそが神が自分に望むことと信じる。 ならばリュックに収められていたあれらはきっと この試練を乗り切るために神が私に用意されたもの 「そうですね、神が意味の無いことをなさるとは思えません。 このような残酷な行いもきっと何かしらの理由があってのこと、 私はただ神に従うのみ……」 決意を固めるように口の端を持ち上げ微笑みを浮かべる。 神の意思を実現するため、少女は一人歩き出す。 けれども、その微笑はどこか儚げにもみえた。 ああ、この運命の交差点、もし彼女達が出会っていたならば、 未来はまた違ったものへとなったのだろうか。 【F-4/朝】 【エルウェン】[MP残量:100%] [状態:正常、むしろ鎧が無いので調子が良い] [装備:無し] [道具:???←1~3個 本人確認済み、荷物一式] [行動方針:主催者についての情報収集] [思考:山頂へ急ぐ] [現在位置:F-4 北東部山中] 【F-4/朝】 【ミランダ】[MP残量:100%] [状態:正常] [装備:無し] [道具:時限爆弾@現実、パニックパウダー@RS、荷物一式] [行動方針:神の御心のままに] [思考:他の参加者を探す] [思考:直接的な行動はなるべく控える] [現在位置:F-4 中部街道沿い] 【残り56人】 第30話← 戻る →第32話 前へ キャラ追跡表 次へ ― エルウェン 第51話 ― ミランダ 第61話
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三人が転移で到着したのは、病院の廊下の端だった。幸い時間が時間だけに人に見つかるコトはなかったが、正直理人も肝を冷やした。 「お、おー……あーぶなかったなあ。人に見られたらえーらいコトになってましたよ」 「ゴ、ゴメン……ちょっと目測誤った……」 「……行く」 雨里の呟きを無視し、茉理が一人で廊下の奥へと進む。案内板を見ると待合室がそちらにあるようだ。理人、そして雨里もそれに倣い、進む。 「それで、実際どうするつもり?」 「んー……まーずは、このパペット、ロッギー君を持ち主に返すのが先でーすな。そーれから後は、情報屋のみーなさんの現状しーだいというコトで」 「協力するのは確定ってコトね? わかったわ」 「ですな。コトと次第によーっては……あ、いや、これはアトにしましょー」 不明瞭な物言いに首を傾げた雨里だったが、その思考はすぐに中断された。 「到着」 先頭を歩いていた茉理が、そう言って足を止めたからだ。その見る先には、二人の女性と一人の少女。 「……あら、編集長。こんばんわ」 「……雨里ちゃん? 何、何か雰囲気違うんだけど」 職場以外では何気に初となる対面を果たした雨里に、京が僅か目を見開く。一方彼女の服を引っ張っていた少女―――アーサーは、理人の手に在るロッギーを見て驚愕しきっているようだ。そちらに目を向けた京の表情が、驚きに染まる。 「……それ、ロッギー君よね?」 「そーの通りですな」 「どうして……あんなにひどい状態だったのに」 「あー、自分がなーおしました。あーのままだと、話もろーくに聞けなかったんでね」 「話? いえ、そもそもどうやってあの状態から無傷に」 アンの問いには答えず、理人はロッギーを手から外してアーサーに渡す。 「ほい、相方君はなーおりましたよ、っと」 「……!」 慌てるあまり引っ手繰るようにして、アーサーはロッギーを受け取る。矯めつ眇めつして完全に直っているコトを確かめると、片手に嵌めて大きく息をついた。 『……ああー、やれやれ。酷い目にあったよ』 言葉を発したのは、ロッギーの方。既に接し方のわかっている京とアンは、互いに目配せをすると話の口火を切る。 「生還おめでとう……と、喜んでばかりもいられないけれどね」 「ええ、ハヅル様と長久様は危険を脱しましたが、紅様は未だ予断を許さない状況です。ロッギー様、そちらは大丈夫でしょうか?」 『……正直不安で仕方がないよ。蒼介はいなくなっちゃったし、ベニー姉さんはまだ危ないし……』 今にして思えば、と続ける。 『ブラウって人が来た時、ハヅルを襲ったのがベニー姉さんに縁のある人……蒼介なんだけど、その人だって言ったんだ。その時アーサーが感じた嫌な予感って、このコトだったのかな』 「……かもしれません。ですが、起きてしまった以上、そのコトを悔いても解決にはつながりません。まずは、紅様のご無事を祈りましょう」 真面目て融通の利かないところもあるが、アンはアンで紅を案じている。それを理解しているからこそ、誰も何も言わない。少しの静寂を破ったのは、茉理に目で促された雨里だった。 「……えぇと、編集長?」 「はい?」 ――――少しの時間をかけて、雨里はここに至るまでの状況を簡単に説明した。自分が二重人格の片方であり、表の雨里はそれを知らないコトや、こうなる以前に理人と何度か行動した経験があるコト、茉理がここにいる理由、そして自分達がこの件に協力する気であるコト。 「まあ、私は表の雨里の関係もありますから、編集長がダメと言えば手を引きます」 「けーど、僕と茉理ちゃんは最後まで付き合いますよ。……正直、『連中』には借りがあるんでね」 珍しく怒気を孕んだ低い声で、理人が意思表明をする。茉理もそれに倣い、こくりと頷くコトで肯定を現した。 「……私も、同じ」 「そう……そうね……」 どうしたものか、と思案する京の服の裾を、アーサーが引っ張る。 「? どうしたの、アーサーちゃん」 『あぁ……いや、その、アンさん、京姉さん。少しだけ』 『……助けに来てくれて、ありがとう』 運命交差点・繋 (二つの道が重なる) (次なる運命は、何か)
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人間交差点 ◆NXWWzEezZM 荒井紀香は迷子になっていた。 自分がどこを歩いているのか、自分がどの方角へと向かっているのか。 そんな事は知らない、本人が知らないのだから当然他の誰にも分からない。 二朱公人を捕まえる、ただそれだけのために歩いていた紀香だったが迷子になっていた。 彼女の悪運の強さからして、迷子になろうが視界が霧で覆われようが、最終的には上手いこと目的を果たしていそうなものだが、今回ばかりはそうはいかなかったようで。 つまりは、彼女は今、二朱達の行く先とは正反対の方向に進んでいた。 「ふふふ~ん、これだけ歩いたのにまだ二朱君に会わないです。 さてはあの女に崖から突き落とされたかもです。 ぬけがけは絶対に許さないです、もしそうなら二朱君の仇をとるしかないです」 そんな斜め遥か上まで飛躍した発想を彼女は展開させる。 そもそも、この周辺に崖などは存在しない。 会わない会わないと嘆く彼女だが、そもそも彼女は今どこを歩いているのか。 少し時間を遡ってみよう。 ◆ ◆ ◆ イタチによる謎の大爆発に巻き込まれ、火の玉のようになりながら上空を飛んでいった紀香。 その途中で二朱を見つけたまでは良かったが、そのまま紀香はさらに遠くまで吹っ飛んでいく。 二朱達が居たところを大きく通り過ぎて、ようやく着地したのがエリアD-5の南東部。 そこから直感で南西の方向に進んできたつもりだったが、いつの間にやら彼女は真南の方角へと歩を進めていた。 それにしてもこのイタチ飛ばしすぎである、そう思う者も居るだろう。 紀香が目にしたメイド、夏目准が連れてこられた時代のイタチの人形だったなら、ここまでの力は無かったかもしれない。 しかしこのイタチはそれ以前の年代から持ってこられたらしく、小規模な超常現象の一つや二つは軽くおこしてしまう程の力を持っていたようであった。 閑話休題。 そんなこんなでエリア一つ分くらいの距離を丸々吹っ飛ばされた紀香だったが、その移動の壮絶さに対して本人の身体へのダメージはそこまで深刻ではないようである。 着陸して少しの間は戸惑っていたが、すぐに目的を思い出して二朱が居たとおぼしき方向へと歩き出す。 目標はおおまかに見積もって北西の方角、ここまでは良かったのだが、歩いている途中で段々と西よりへと傾いていき、何時の間にやらエリアC-5の森の中を邁進していた。 ◆ ◆ ◆ と、紀香が今も前進を続けている経緯にはこんな流れが背景にあった。 一度夢中になった彼女はそう簡単には止まらない、挫けない。 定時放送? なんですかそれおいしいですか? 愛しのダーリンが腹黒メイドをときめかせている間にも、彼女はまた一歩進んでいく。 雲行き怪しい三角関係の行方は、如何に───? 【C-5/森/1日目/朝】 【荒井紀香@パワプロクンポケット2】 [状態] 全身のところどころに軽い火傷、体力消耗(小) [装備] なし [参戦時期] 紀香ルート・2年目クリスマス [道具] 支給品一式、呪いの人形、ランダム支給品0~1個 [思考] 基本 二朱くんに会う 1 二朱君の見えた方向(西)に進む 2 二朱君との愛の営みを邪魔するひとは容赦しないです 3 あの女(夏目准)が二朱君を手にかけていたら仇をとる [備考] ※ 進む方向が間違っていることに気付いていません。 ※ 第一回放送に気付いていません。 さて、知らぬ間に敵を増やしていた准と二朱は、さらを追って東へと進んでいた。 二人は気を紛らわせるために世間話に花を咲かせていたが、バトルロワイアルの主催、亀田の部下による定時放送が始まると空気が変わる。 禁止エリアの発表、そして、これまでの6時間で命を失った者達の公表。 それは、この場が殺し合いの場であることを再認識させるには十分過ぎた。 たったの6時間で18人もの人間が死んでいるのだ、これを異常と呼ばずして何と呼べばいいだろう。 准は平静を装って禁止エリアについてメモを取っている。 二朱は神妙な顔つきで放送に聞き入っている。 全ての放送が終わると、准はデイパックから名簿を取り出す。 それに見入っていたかと思えば、しばらくすると今後は名簿にチェックを入れている。 放送が始まってからの間、ここまで二人は沈黙を続けていたが、頃合いを計って二朱は准に話をかける。 「准ちゃん、今は何をしているんだい?」 「名簿の中の、亡くなった方の名前に印をつけておこうかなって」 「……さっきの彼の他に知り合いは居なかったかい?」 「うん。私の知り合いはみんなそんなにやわじゃないから」 「そうか、良かった」 嘘だ、少なくとも准の知っている人物が二人放送で呼ばれている。 さっきの彼というのは先程目撃してしまったピエロである。 もう一人は、ジャジメントスーパー支店長の太田である。 しかし親しくないどころか寧ろ敵対関係にあるので、死んでしまった事は悲しいがそれほど引きずる事ではない。 何故嘘をついたのかというと、単純にそこまで気が回っていなかった、ただそれだけの理由だった。 「ところで准ちゃん、一回放送を聞いただけで全員の名前を覚えていたのか?」 「うん、これくらい喫茶店で注文をとるのと同じ要領でやれば朝飯前です」 「へぇ、凄いもんだな」 「もっと褒めてくれたっていいんですよ?」 「ああ、本当に感心するよ。大したもんだ」 「二朱さん本当にそう思ってる~? ま、いいや。メモも終わったしそろそろ行きましょうか」 「ああ、早く彼女を助けてあげないとな」 (維織さんが来てなくて、本当に、良かった……) ◆ ◆ ◆ ところ変わってまたあるところ。 男と女と何ともいえないものという奇妙な集団もまた、目的に向かって歩を進めていた。 少し歩いたところで、空から得体の知れない声が聞こえだす。 「おい、ほるひすとやら、歩く速度を落としてくれ。 亀田の言っていた事が正しければ、これから聞こえるであろう放送を聞き逃すわけにはいかない。 私がメモを取るから、お前は周りに警戒だけしていてくれればいい」 「わかったよ」 指示を出したのは神条紫杏、応えたのはほるひす。 そのほるひすに東が担がれる格好となっている。 ───我輩の名前はチバヤシ、チバヤシ公爵であ~る! 勘のいいものは気づいたかも知れんが─── やがて始まる放送、禁止エリア、死亡者と相次いで告げられる重要事項を、神条は正確かつ迅速にメモに残していく。 途中で字が雑になったりしたものの、なんとか禁止エリアと死者全員の名前を記録することに成功する。 その後、名簿が配布されたことを確認すると、メモに残した名前と名簿のそれを照らし合わす。 彼女の知り合いの名前もいくつかある、その中で死亡した者もいた。 (野球部の中心選手が命を落とすとは、惜しい事になったものだ。 だが仕方が無い、ここは油断を晒せばそれが文字通り命取りになる世界。 開始早々に命を落とす者というのはそういう者、あるいはツイていなかった者。 そういう人間は早かれ遅かれいずれ命を落とすだろう。 まあ、かという私もまだまだ甘いものだがな) 彼女が歩きながらそんな事を思案していると、ふと何かにぶつかる。 どうやらそれはほるひすの身体のようである、妙に冷たくてあまり気持のよいものではない。 そして、そのほるひすの眼前には、 「どいてもらえませんか? いや、どいて下さい」 ほるひすや東と甲子を引き裂く要因となり、神条と同じ高校に通う、芳槻さらの姿がそこにはあった。 ◇ ◇ ◇ 「どうする? ねえどうする?」 ほるひすは神条に問いかける。 「生憎銃を持った相手に刃向かうなどという危険を犯すつもりはない。 どいて欲しいと言うのならどいてやれ」 「おっけー」 さらと対峙していたほるひすがあっさりとさらの正面から居なくなり、さらの目の前から障害物がなくなる。 さらは軽く舌打ちをしながら、空けられた道を通り過ぎていく。 ほるひすは動かない、神条に至っては振り返ろうともしない。 ただそれだけの事でさらの精神は刺激され、さらの心の中のスイッチが後押しされてしまう。 ズガガガガガガガッ─── 「芳槻さん──ッ!」 その銃声に一番に反応したのは、ほるひすに担がれている東だった。 彼はほるひすの腕の中から抜け出してさらの下に向かおうとしたが、重傷を負っている上にほるひすが予想以上にガッシリと東を抱えていたために、ほるひすから離れることすらままならない。 「止めろ東、じっとしていろ!」 そんな東を制しようとする神条、ほるひすは無言で東を抱えたままである。 その間に、さらは機関銃を持って走り去っていく。 東は追う事を諦める、神条はさらをただ見つめているのみ。 結果として、さらを追う者は誰一人として居ない。 それでも、それでもさらは逃げるように駆けて行く。 ◆ ◆ ◆ 同じ高校に通う自治会長の神条紫杏。 彼女は、私の事などまるで関心が無いかのように見えた。 いや、実際彼女は私には関心など無いのだろう、私なんて信用に値しないと考えているに違いない。 東さんだってそうだろう、私が甲子君と一緒に居ない事で、私が甲子君を殺したと思っているに違いない。 当然だ、私なんて暗くて可愛げも無い危険な女だ。 神条さん、東さん、誰も私に障ろうとしなかった、関わろうとしなかった。 別にいい、一人で居るのには慣れている。 慣れている、そう、慣れている───はずなのにっ。 ちっぽけな自分が孤独の恐怖に押し潰されそうなのが感じられる。 会いたい、お父さんに、十波君に─── 帰りたい、元の世界に─── でもどうやって? 脱出? そんなの私一人じゃ出来っこない。 じゃあ、皆を殺して───? 十波君はどうするの? どうして今私は泣いているんだろう? これが『絶望』なのかな? 十波君と帰りたいのに、二人の参加者が優勝者にはなれない。 ああ、私にはどうにも出来ないのかな? 自分の無力さが心底恨めしい。 もう考えるのも疲れてしまった、早く学校に行って少し休もう。 今は何も考えたくない。 危ないと思ったら殺す、怪しいと思ったら殺す。 誰が私を責められるだろうか、元よりここは殺し合いの場。 こうすることが自然で、『普通』なんだ。 それが普通の、ごく普通の女の子が出した結論だった。 【E-3/林/一日目/朝】 【芳槻さら@パワプロクンポケット10】 [状態] 左頬・右目周辺に痣、顔面を中心に激痛、足に痛み(中)、精神的疲労(大)、肉体的疲労(大)、所々に擦り傷 [装備] 機関銃(残弾中程度) [道具] 支給品一式、サイボーグ同盟お手製時限爆弾、スペツナズ・ナイフ [思考・状況] 1:……疲れた。 2:学校へと向かう。 3:……二人は、どう思うだろうか? 4:十波君のことは信じられる? [備考] ※ 第一回放送の内容をどこまで把握しているかは、後続の書き手さんにお任せします。 ただし、メモなどには記録していないようです。 ◆ ◆ ◆ さらの姿が見えなくなったのを確認して、神条達は再び歩き出していた。 東の怪我の具合も芳しくない、一刻も早く病院に向かいたいところだが、ほるひす一人だけならまだしも、神条にはそこまで体力はない。 歩くペースとしては早い方だが、それでも刻一刻と時は過ぎていく。 そんな時だった、彼らは同じく道を歩いていた二人の男女に鉢合わせる。 二人は、誰かを追って歩いているという。 「俺の名前は二朱公人だ、モグラーズで野球をやっている。 んで、こっちの彼女は夏目准」 そう名乗ると二人は軽く会釈をしてくる。 あっさり名乗りだすとは迂闊な連中だ、まあ嫌いじゃない。 「私は神条紫杏だ。こっちの二人は……」 「ほるひすだよ」 「東優だ、よろしく頼む……ウッ……」 「東、お前は安静にしていろと言っただろう、無理をするな。 で、話を戻そうか。 二朱と言ったか、貴方は人を追っていると言うが、その相手はもしかして芳槻さらという少女ではないか?」 単刀直入に話題に入る、グズグズしている時間はない。 彼らを無視して病院を目指しても良かったが、何らかの情報が得られるなら得ておきたかった。 「ああ、そうだ」 「目的は何だ? 彼女の首を掻きに行くのか?」 「なっ、そんな事をする訳ないだろ! 彼女は道を踏み外そうとしている、だから俺達は彼女を止めに行く。 それだけだ」 「ほう……、だが悪い事は言わん、止めておけ。 正常な判断が出来なくなった者は何をしでかすか分からん。 彼女は今かなり錯乱している、説得空しく二人まとめてズガン、じゃあまりにも報われないだろう?」 そうだ、これでいい。 忠告をする事によって、今のところは敵意が無いように見せられる。 頭の回る相手ならば見破られるかもしれないが。 「君達は彼女が向かっていった方向からやって来てたね。 彼女に会ったのかい?」 「ああ、背後から銃で狙われもした、幸いにも当たりはしなかったがな」 「だったら尚更だ。 これ以上犠牲を出してはいけないし、彼女に罪を犯させてもいけない。 これは俺達二人の考えだ、そうだろ准ちゃん?」 「うん、彼女には助けが必要だから、私達が……」 彼らは理想に囚われている。私はそう判断する。 理想に溺れて死ぬのは勝手だが、それを掬い上げようとして自らの身を沈めるのは御免だ。 「ふん、そこまで言うのなら止めはしない。 だが、決して警戒は怠るな。油断を見せたら命は無いものだと思え」 「ああ、注意しておこう。 最後に聞きたいことがある、君達は殺し合いに乗っているのか?」 「いや、そう易々と亀田に踊らされて人を殺すような真似はしないさ」 「そうか、君達も道を踏み外すさないようにな」 「ああ、その忠告はありがたく受け取っておこう」 結局彼らから有益な情報は殆ど得られなかった。 彼らはさらを追い、私達はそれとは別方向にある病院に向かっている。 病院まではまだ距離がある、その間に、自分がこのバトルロワイアルでどう動くべきか、再考すべき時が来ている。 漠然とだが、そんな気がした。 【D-4/草原/一日目/朝/】 【東優@パワプロクンポケット7表】 [状態]頬に小さな傷、甲子がやや心配、左腕重傷、傷心 [装備なし] [道具]詳細名簿、支給品一式 [思考] 1:平山、甲子の死を悲しむ 2:病院へ向かい、その後レッドと合流 3:野丸をどうにかしたい 【ほるひす@パワプロクンポケット6表】 [状態]表面が焦げてる [装備なし] [道具]支給品一式、不明支給品0~2 [思考] 1:こうし…… 2:びょーいんへむかう 【神条紫杏@パワプロクンポケット10】 [状態]健康 [装備]コルトガバメント(7/7) [道具]なし [思考] 1:平山の言葉を伝える 2:東を病院まで連れて行く 3:出来ることならカズと朱里、十波には死んでほしくない。が、必要とあらば…… [備考] ※ この殺し合いをジャジメントによる自分に対する訓練か何かだと勘違いしています ※ 芳槻さらを危険人物と認識しました。 ※ 島岡の荷物は、島岡を殺害した者に持ち去られただろうと判断しました。 ◆ ◆ ◆ 「二朱さ~ん、カッコよかったよー。 ちょっとときめいちゃった♥」 「えっ、そうかな? 照れるなぁ~」 (扱いやすいわね……) 二朱の勘違いは一体どこまで広がっていくのか? 二朱選手の次回の活躍にご期待ください! 【D-3/路上/一日目/朝】 【二朱公人@パワプロクンポケット2】 [状態] 健康 [装備] ナイフ [道具] 支給品一式、スパナ、拡声器、不明支給品0~2 [思考・状況] 1:東へと向かって芳槻と会う 2:准ちゃんと一緒に行動、彼女を守る 3:みんなで協力して亀田を打倒する ※備考 このバトルロワイアルを夢だと思っています。 【夏目准@パワプロクンポケット9】 [状態] 腹部に刺傷(立ち上がれる程度には回復) [装備] なし [道具] 支給品一式、ランダム支給品0~2個 [思考] 1:東へと向かってさらと会う。 2:二朱を絶対に信じぬく(第一印象は好印象) 3:九条さんに会いたい 4:さらを助けてあげたい 投下順に読む 058 再会、そして再出発← 戻る →060 決意の朝に 時系列順に読む 058 再会、そして再出発← 戻る →060 決意の朝に 前へ キャラ追跡表 次へ 052 華麗なるかな二流 東優 066 焦燥 027 炎上からの脱出 荒井紀香 071 嫉みと妬み 052 華麗なるかな二流 神条紫杏 066 焦燥 042 もう戻れない世界 夏目准 083 揺れる思いは万華鏡 042 もう戻れない世界 二朱公人 083 揺れる思いは万華鏡 052 華麗なるかな二流 ほるひす 066 焦燥 042 もう戻れない世界 芳槻さら 069 愛と名付けた囲いの中で
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ボクはスクランブル交差点 作詞:つまだ 作曲:みそ そんなに背負ってどうしたの? 苦しいだろう 顔に出てるよ 責任 プライド 周りの目 眉間にシワを作っちゃって そんなに焦ってどうしたの? 切ないだろう 心読めるよ 慈愛や安らぎ 安定感 望んじゃダメと思いこんで 重いなら おろせばいい 君を責めたり 誰もしない その手の鞄に詰め込むべきは 愛と平和と少しのゆとり それだけ入れれば十分だ 一人一人が違うのは 当たり前のことなんだよ でも皆それもわからずに 当たり前のように 難しいかもしれないよ 拒まれるかもしれないよ でもね いいんだ 人なんだから 音源 ボクはスクランブル交差点はただいま管理人の手元にありません。持っている方くださいな。
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このページはこちらに移転しました ボクはスクランブル交差点 作詞:つまだ 作曲:みそ そんなに背負ってどうしたの? 苦しいだろう 顔に出てるよ 責任 プライド 周りの目 眉間にシワを作っちゃって そんなに焦ってどうしたの? 切ないだろう 心読めるよ 慈愛や安らぎ 安定感 望んじゃダメと思いこんで 重いなら おろせばいい 君を責めたり 誰もしない その手の鞄に詰め込むべきは 愛と平和と少しのゆとり それだけ入れれば十分だ 一人一人が違うのは 当たり前のことなんだよ でも皆それもわからずに 当たり前のように 難しいかもしれないよ 拒まれるかもしれないよ でもね いいんだ 人なんだから 音源 ボクはスクランブル交差点はただいま管理人の手元にありません。持っている方くださいな。 (このページは旧wikiから転載されました)
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京とアンがアーサーに付き添って救急車に乗り、その場を離れてからしばらく。 誰もいなくなった情報屋に、人影が入り込む。 「あーららら……こーりゃまたひーどい有様だねぇ」 奇妙に間延びした口調の男……赤銅 理人。いかせのごれ各地を放浪する変人であり、触れた物質に任意あるいは無作為に能力を付与する、という厄介極まりない特殊能力を備えており、アースセイバー・ホウオウグループの双方から「ハーメルン」のコードで登録されている要注意人物でもある。 そんな理人が此処にやって来たのは、全くの偶然からだった。いつもの如く気ままに歩いていた彼は、少し前にこの情報屋の前を通り過ぎたのだが、視界から消えて程なく銃声と騒音が聞こえたのだ。何が起きたのかと様子を伺っていると、研究者風の男が赤い髪の少年を連れ、何事か言いながら理人とは反対の方向へ消えて行ったのだ。 緊急事態と飛び出しかけたところに、今度は別の女性二人が現れ、救急車で運ばれた何人かに付き添って去って行った。 人の気配が消えたところで、ようやく理人は姿を現し、情報屋の中に入り込んだのだが、 「……うーわー、なーんだこりゃ。まーさに惨状だ」 そこら中に血痕と弾痕が残り、家具や調度品が破壊され、ひっくり返され、まさに惨状としか形容のしようがない有様だった。理人はこの情報屋に来たことはないが、さすがに襲撃があっただろうことは一目瞭然だった。 と、 「ん?」 足元に何かを見つけた。拾い上げてみると、それは無残にもズタズタにされたパペットだった。腹話術か何かに使うモノらしいが、そんなモノがなぜ情報屋にあるのか? 「……なーんだこりゃ」 興味をなくして放り捨てそうになったが、寸前で思いとどまった。あることを思い付いたからだ。 「おーぉっと、そうだ。コイツに聞いてみよーかね」 言うや、理人は背負っていたナップサックから器用に一本の針を取り出し、パペットに突き刺す。瞬間、針が凄まじい速度で縦横無尽に動き、数秒後にはパペットが元通りに修復されていた。そのパペットを手に嵌め、理人は反対の手でヘッドホンをつける。 「さーて……まーずは、君の名前を教えてもらおうかーね」 パペットは何も反応を返さなかったが、理人はまるで返事が聞こえたかのように頷く。 「ふーむふむ、ロッギー君ね。でーはロッギー君、ここで何が起ーきたのかね?」 今度は数十秒、沈黙が流れる。それを破ったのは、やはり理人の声だった。 「……あわー、そーりゃ大事だー」 口調は全然そうとは聞こえないが、ロッギーから事態のあらましを「聞いた」理人は内心、かなり慌てていた。 ロッギーの「言った」ことが正しければ、ここを襲ったのはUHラボの関係者、しかもかなり危険な部類だ。あの施設の危なさは理人自身もよく知っていたが、まさかここに来て関わりが出来るとは思わなかった。 「やーれやれ、どーしたもーのかね? こーこまで関わって放り出ーすわけにもいかんし」 何だかんだ言って、一度首を突っ込むと放っておけないのがこの男の性格である。幸いと言うか、何が起きてもとりあえず対処できるだけの用意はしてあるし、なければないで現地調達が利く。 「とーりあえずは、あの救急車ーを追いかけてみーるかね」 言って、ロッギーを手に嵌めたまま外に出る理人。 「その件、私も咬ませてもらうけど、いいわね」 そんな彼の前に、一人の女性が現れていた。夜闇の中でもなお黒い長髪と、瞳。片手で眼鏡を弄ぶ、Gパン姿の彼女。 普段ツバメのアシスタントに奔走している、昼間の姿はどこにもない。彼女を、理人は知っていた。 「おんやー……久しぶりだーね、雨里さん」 「フフ……そうね、何年ぶりかしら?」 女性―――絵本作家・一之瀬ツバメのアシスタントたる夜見 雨里は、不敵に笑ってその挨拶を受けた。 「しかーし、相変わらず表と裏の激しいことで」 「前に言ったでしょ? 私はあくまで私、あの子はあの子。違って当然よ」 言い含めるようにはっきりと述べる雨里に対し、理人は表面上は変わらず受け答える。 「はーいはい。まーそれより、状況は把握しーてます?」 「大よそはね。それより、行くなら急いだ方がいいんじゃない? この子もいるし」 「へ?」 言われて雨里の横を見ると、まるで色が抜けたかのような白い髪とリボンが印象的な、無表情の少女が佇んでいた。 「こーの子は?」 「ポリトワルサーカスの団員よ。何だか迷子になったみたいで……送ろうにも時間が遅いから、ひとまずここに預けようと思って」 「何でそーんな結論に……そーりゃ、三鷹先生はたーまにここに来ーますから、顔が多少利ーくのはわかりまーすけど」 「すぐに頼れるのがここだったのよ。……ま、こんな状況では無理みたいだし、状況知ってからこの子も何だかやる気みたいだし」 「時間僅少。拙速推奨」 その少女が、抑揚のない口調で「行くなら急げ」と急かす。言われた雨里は会話を打ち切り、 「……そうね。理人、こっちへ」 「んー」 右手で少女の、左手で理人の手を取る。 「病院の近くまで跳んで、そこからは普通にいくわよ。夜とは言え、一般人に見られたらコトよ」 二人が頷いた直後、彼女らの姿は文字通り掻き消えていた。 運命交差点・推 (交錯する事象) (未だ見えぬ一線) (次なる運命は、いかに)