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登録日:2012/02/19(日) 14 31 52 更新日:2022/07/09 Sat 05 24 23NEW! 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 どう見ても大剣 ブルートザオガー 出世 剣 吸血鬼 吸血鬼は投げ捨てるもの→出世 宝具 投擲武器? 武器 灼眼のシャナ 片手剣 片手剣←なのにアニメでは両手持ち 吸血鬼(ブルートザオガー)とは、『灼眼のシャナ』に登場する宝具の一つ。 銘の由来は後述の能力から。ちなみにブルートザオガー(Blutsauger)はドイツ語でそのまま「吸血鬼」の意味。 武器系宝具で、片手持ちの大剣型。両手持ちは甘え! しかも見た目以上に重く数十キロあるが、“存在の力”を込めることで軽々と扱えるようになる性質がある。 なお、その際には刀身に血色の波紋が揺らぎ、「吸血鬼」の銘に相応しい外観となる。 宝具としての能力は、この剣に誰かが直接もしくは間接的に触れている時に、さらに存在の力を込めると、その相手に傷を付けることができる。 その傷の深さ・大きさ・数は込める“存在の力”の量に比例する。 剣としても“千変”シュドナイが「見事な切れ味」と称するほどの業物であり、 白兵戦に拮抗する実力同士の者の戦いにおいて、使い手側に一方的に優位を傾ける宝具は、 武器で直接戦うことを得意とする者にとって天敵とも言える。 もっとも、あくまで相手が触れている時に存在の力を込めねばならず、一瞬の接触では能力の発動は不可能。 技量差がありすぎる場合も、そもそも剣に触れられずに攻撃されてしまえば終わりであるため、 ある程度拮抗した実力の持ち主同士の戦いでないと、不意打ち以外には使いどころが難しい能力でもある。 元々は“愛染自”ソラトの武器だったが、物語時点で既にソラトの興味は『贄殿遮那』に移っていたため、 『贄殿遮那』が手に入った後は投げ捨てられるという酷い扱いを受ける。 その後攻防の中でシャナにより、拾って使用された後にまた投げられ、ソラトの妹の“愛染他”ティリエルにぶっ刺さった。 吸血鬼は投擲武器じゃないって! その後ソラトが再び使用し、彼の討滅後はマージョリー・ドーが回収、しかし自在師の彼女には要らなかったので、 彼女の子分である田中&佐藤に「こんな剣を持てたところで、ただの人間にはどうにもならない」 という現実を教えるために貸し与えられたが、それが理解できなかった佐藤がミサゴ祭りでの戦いで勝手に持ちだして危険な場所に突っ込んでしまったため、 彼らの手には余るとシャナに譲渡された(要らん物を押し付けたように見える?HAHAHAまさかそんな)。 その後ヴィルヘルミナ・カルメルとの戦いにおいて、 圧倒的な力でシャナと悠二を瀕死に追い込んだ彼女に対する最後の切り札としてシャナが悠二に投げ渡し、 それに答えた悠二により能力を発動、ヴィルヘルミナを倒すという大戦果を挙げた。 その後は悠二の武器として認定されたようで、クリスマスイヴにおけるザロービとの戦いで、 マージョリーにより栞として収納されてた吸血鬼を悠二が使用、投げてザロービの分身一人を貫き、 そのまま押し切って討滅する役割を果たした。つくづく投げられることに縁がある剣である。 以下大きなネタバレも含む 坂井悠二が“祭礼の蛇”の代行体になり、シャナと敵対することとなった後も悠二はこの宝具を使用することとなり、ほぼ愛用の武器状態。 あんだけたらい回しや押し付け、投げられるという苦難が続いた後での大出世を果たした。 よかったね吸血鬼。報われて。 近接戦闘を得意とするシャナにとって、悠二と戦う上で非常に厄介な武器となり、 また悠二にとっては近接戦闘で自分より技量に優れるシャナと戦う上で、非常に心強い武器となっている。 そのため最終決戦の最後まで、シャナは悠二と戦う上では徹底的に鍔迫り合いを避ける戦いを強いられることとなった。 追記・修正は吸血鬼を投げ捨ててからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] この剣、最高! -- 名無しさん (2013-08-30 20 24 09) ザナドゥ行った後も相変わらず使ってもらっている模様 -- 名無しさん (2013-11-23 23 44 50) アニメシャナでもゲームの電撃学園でも両手剣扱いになる片手剣 -- 名無しさん (2013-11-23 23 48 09) 能力初同時に血色の波紋が浮かぶってことは、製作に関わった徒の炎の色が血色だったんだろう -- 名無しさん (2015-07-06 18 54 36) 最終的に悠二がそこらの王と比べてもかなりの剛腕になったもんだからなおのこと相性が良い。竜尾で細やかなフォローも出来てたことを考えれば、近接戦闘の達人のシャナも厄介だったのも納得の相性 -- 名無しさん (2015-07-06 20 27 15) 教授って一時期ドリル作りにハマってたらしいし、これも一歩間違えていたらサブラクの剣同様にドリル化されてたのかもしれないな……。 -- 名無しさん (2015-09-27 23 03 45) 実際のところタフネス殺しの剣だよね。自分の耐久力を過信してるやつほどこいつは効果的 -- 名無しさん (2015-09-27 23 26 54) 名前 コメント
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【種別】 “紅世の徒”、通称 【初出】 X巻 【解説】 “紅世の王”。真名は“髄の楼閣”(ずいのろうかく)。炎の色は、淡い乳白色。 顕現時の姿は六本の腕を持つ空の板金鎧。性格は、口うるさく世話好きな爺さん。まだ自由だったころの“螺旋の風琴”リャナンシーや、昔のフレイムヘイズ『万条の仕手』ヴィルヘルミナやマティルダに色々と世話を焼いたこともあった。古株の“王”らしく、“棺の織手”アシズを本来の真名である“冥奥の環”と呼んでいた。 人間好きとして有名な“徒”。その理由は、人間の創り出す芸術に惚れ込んだためであった。若き日は愛用の大金槌型宝具『キングブリトン』でフレイムヘイズや同胞と戦っていたが、芸術の素晴らしさを知ってからは、芸術を極めようと古今東西の世界を渡り歩いて様々な惨禍と成果を得てきた。そのためか彼の淡い乳白色の炎は、「大理石の様」とも喩えられていた。 人間と共に作り上げた物の中には宝具も含まれており、顕現に人間の“存在の力”が必要な“徒”の立場を取り払うための自縛の水盤型宝具『カイナ』を始め、シャナ達が住んでいた『天道宮』や[仮装舞踏会]の本拠地である『星黎殿』など、様々な優れた宝具を人間と一緒に作り上げた。 昔は[仮装舞踏会]と協力関係にあったが、とある変人の絡んだ騒ぎを契機に袂を分かち、『天道宮』への隠居の道を選んだ。 『大戦』の際には亡き友人ドナートからリャナンシーへの言伝を頼む代わりに、マティルダとヴィルヘルミナを『天道宮』でブロッケン要塞まで運んでやった。 そこで『小夜啼鳥』の少女がその言伝に反応を示したことから、カヴィダが『小夜啼鳥』を予期せぬ行為へ誘う要因になるとして『天道宮』に侵入してきた[とむらいの鐘]最高幹部、『九垓天秤』の一角である隠密頭チェルノボーグによって殺害された。 その際、一応の抵抗はするものの、彼自身、元々戦いが得意ではなく、人間好きの性格から[とむらいの鐘]の企みに反発を感じており、『炎髪灼眼の討ち手』や『万条の仕手』に手を貸すにあたって、既に覚悟は決めていたようであった。カヴィダ曰く「生きるのを終わりにしていい頃合」。 また『壮挙』自体が“棺の織手”アシズが自分一人のためにやっていることを見抜いていた。 なおマティルダたちが『天道宮』を借り受けにいった際、ガヴィダは『天道宮』と『星黎殿』を迂闊に近づけてはいけないという忠告とその理由を話した。それを聞いたヴィルヘルミナは数百年後、『星黎殿』に拉致されたシャナを奪還する為に、海中に没していた『天道宮』を浮上させて『星黎殿』内部と繋がる通路が修復する距離まで『星黎殿』に接近させ、修復した通路からカムシンと『輝爍の撒き手』レベッカと共に『星黎殿』へと侵入した。 【由来・元ネタ推察】 名前の元ネタはケルト神話の鍛冶の神 ゴヴニュ(Goibniu)の呼び名の一つであるガヴィダ(Gavida)と思われる。 「髄」は物事のもっとも優れた中心、要点(神髄)、「楼閣」は重層的な建造物、いわゆる「たかどの」を表す。 真名全体で「重層建築における匠の技」という意味だと思われる。『星黎殿』や『天道宮』など、多くの大規模な宝具を作り出し、また『カイナ』の上で幾年も人間と語らい、柱一本の配置にもこだわるという、彼の芸術への入れ込みようなどの本質を表した真名である。 【コメント】 ☆X巻での伏線がXVIII巻で明らかになった。 ☆外伝漫画『Eternal song』第十一話で、「とある変人」が(案の定)ダンタリオン教授と判明した。 ☆ガヴィダが作った宝具のいくつかは、きっとフリアグネのコレクションに入ってるんだろうな。 ☆『贄殿遮那』を刀匠と共に製作した“王”とはガヴィダだろうか。 ☆↑ガヴィダと宝具作成の方向性が異なるので、恐らく違っただろうな。『贄殿遮那』は芸術品として作ったわけではないしな。あと『ES』や作中の描写見る限り、ガヴィダは東方へは行ってないんじゃないだろうか。 ☆やっぱりアニメ第3期でのヴィルヘルミナの回想の中で登場したが、CVは誰なのかエンディングでは明かされなかった。 ☆たぶん他の人が兼ね役で演じてたんだろうな。つまり“天目一個”にバッサバッサ切られた下級の“徒”と同じ扱い(笑)。この回の出演者の中ではザムエル・デマンティウスの野島昭生さんや“天目一個”の菅生隆之さんあたりが近いような気がした。DVDのオーディオコメンタリーで明かしてほしかったな。 ☆ミカロユス・キュイやヨフィエルと話が合いそうだったな。 ☆[巌楹院]のゴグマゴーグや[百鬼夜行]のギュウキやパラやゼミナやセムルヴや[宝石の一味]の“瓊樹の万葉”コヨーテやフックスやトンサーイやイナンナや[革正団]のサラカエルやドゥーグや[百鬼夜行]とも絡んでいたら面白そうだったのにな。 ☆番外編『かぐやひめのしゃな』では、大納言大伴のガヴィダとして登場している。 ☆番外編『おじょうさまのしゃな』には登場しなかった。 ☆番外編『さんじゅうしのしゃな』では、序幕で観客の一人として登場している。
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腕の良い庭師の職人の手が行き届いた池泉回遊式庭園。 琳とした空間に鹿威しの澄んだ音が響き渡る。 その池にかけられた橋の向こうで淑女が可憐な鼻歌を奏でていた。 「カモン♪ベビィ♪ドゥーザ♪ロコモーション♪」 皺一つ無い真珠のような艶やかな肌に、母性に満ちあふれた女神のような美貌。ふくよかな体つきのハリウッド女優顔負けのスタイル。 客観的にはとても195㎝の身長を誇る、長身の美丈夫の息子がいる一児の母には見えない。 「あ!」 その淑女、空条・ホリィ・ジョースターは脳裏に走った直感に思わず床の間の机の上に置かれた写真立てへ視線を向けていた。 その中に映った最愛の息子は口元に穏やかな微笑を浮かべ、凛々しい視線をこちらに向けている。 「今、承太郎ったら学校で私のこと考えてる……♪今……息子と心が通じ合った感覚があったわ♪」 そう言うとホリィは家事の手を一時休め、写真立てを大事そうに胸の中に掻き抱く。 「考えてねーよ」 「学校行ってないものね」 「残念だったな奥方」 いきなり上がった三者(?)三様の声に 「きゃあああああああ!」 と淑女は驚愕の叫びを上げた。 写真立ての中とはうって変わって最愛の息子は仏頂面でこちらを見ている。 その肩の上にはコートのような学生服を着た全身血塗れの少年が担ぎ上げられていた。 「じょ……承太郎……それにシャナちゃん……が……学校はどうしたの?そ……それにその、その人は!?血……血が滴っているわ。ま……まさか……あ……あなたがやったの?」 その質問には答えず承太郎はホリィに背を向ける。 「テメーには関係のないことだ。オレはジジイを探している……広い屋敷は探すのに苦労するぜ。茶室か?」 「え、ええ。そうだと思うわ」 確認すると承太郎は血だらけの少年を担いだまま檜の床を踏み鳴らして行ってしまった。 ホリィはその背中を心配そうにみつめる。だからシャナの視線に気づいたのはその後だった。 「な、なぁに?シャナちゃん?」 幼い外見に不相応な凛々しい顔立ちと視線だが、何分長身のホリィからすると小さいのでどうしても子供に話しかけるような口調になってしまう。 何よりその瞳に宿る色が昔の承太郎を思い起こさせたせいかもしれない。 「ごめんなさいね。新しい学校だもの。一人じゃ心細いわよね。学校には私の方から連絡を入れておくわ。今日は家でゆっくりしていて。 お昼は何が食べたい?何なら昨日みたいに外に行きましょうか?パパと承太郎も誘ってね」 ホリィの言葉を聞くだけ聞くとシャナはおもむろに口を開いた。 「他人の家族の事に口出しするのは趣味じゃないんだけど」 とまず前置きをし 「ホリィはこの件に関わらない方が良い。冷たい言い方になるけど出来る事ないと思うから。信じられないかもしれないけど、あの血だらけのヤツは私と承太郎を「殺し」にきたの。 承太郎やジョセフと同じ能力を持った人間。だから死にたくなかったら何も知ろうとしないことが得策よ。アイツもそれで何も言わなかったんだと思うし」 ホリィは黙ってシャナを見つめていた。「殺す」という言葉に驚かなかったと言えば嘘になるが目の前の圧倒的な存在感の小柄な少女は、 彼女なりに自分の事を気づかってくれているらしい。不器用だがそのやり方が承太郎と似ていたので思わず口元に優しい笑みが浮かんだ。 「ええ。解ってるわ。あの子は本当はとても優しい子だもの。今回の事だって何か理由があっての事なのよ。母親の私が信じてあげなきゃね」 「優しい、ね」 何故かシャナはその言葉に素直に同意出来ない。脳裏に見ず知らずの女生徒の為に全身血塗れになりながら花京院と闘った承太郎の姿が浮かんだ。 苦痛に耐えながら女生徒のために存在の力を削ぎ取っている姿も。 血糊はトーチで消したので今愛用の制服は新品同然になってはいるが、その傷痕はまだ生々しく残っている筈だ。 「おい」 「はい?」 中庭に設置された花壇を挟んで振り返った承太郎が鋭い眼光でホリィを見る。 「今朝はあまり顔色がよくねーぜ。元気か?」 「…………」 その言葉にホリィはまるで初恋の少女のように顔を赤らめて胸に両手を当てると、 「イエ~~イ♪ファイン!サンキュー!」 と笑顔で可愛く手の平を広げたピースサインで応えた。 「フン」 鼻を鳴らして再び背を向ける承太郎を後目に、 「ほらね♪」 と、ホリィは笑顔でシャナに向き直る。 「まぁ、そういう事にしておくわ」 「我は奥方の賢明な育て方の賜だと」 短くホリィに答えると同時に何故か上がったアラストールの声にシャナがペンダントに視線を向ける。 「あ、いや、うむ」 少し熱くなったペンダントの中で紅世の王、天壌の劫火は咳払いをして押し黙った。 「オイ!シャナ!モタモタしてんじゃあねー!後で文句垂れても聞いてやらねーぞ!」 遠くになった承太郎が振り向いて叫ぶ。 「うるさいうるさいうるさい。誰の所為だと思ってるの!」 シャナは床を鳴らして踏み切ると軽々と中庭を飛び越えた。 「だめだな、これは」 ジョセフは茶室の畳の上に寝かされた花京院を見下ろした。 「手遅れじゃ。この少年はもう助からん。あと数日のうちに死ぬ」 「死ぬ」という言葉に承太郎の視線が尖った。 「承太郎……お前のせいではない……見ろ……この少年がなぜDIOに忠誠を誓いお前を殺しに来たのか……?その理由が……」 ジョセフはいきなり花京院の前髪を手で捲り上げた。 「ここにあるッ!」 花京院の額の表面に異様な物体が蠢いていた。 弾ける寸前の木の実のような形をしているが、まるで生物のように脈動を繰り返している。 その触手らしき部分が花京院の額に埋め込まれ一部は皮膚と癒着していた。 「なんだ?この動いているクモみてーな肉片は?」 「それは彼の者の細胞からなる『肉の芽』、この小僧の脳にまで達している。 この『肉の芽』は生物の精神に影響を与えるよう脳に打ち込まれているのだ」 承太郎の問いにアラストールが答える。 「つまり「コレ」はコイツを思い通りに操る装置なのよ」 シャナが腕組みをしながら言った。 「常に脳に刺激を与え続け、自分を心酔し続けるように精神操作を行ってるの。コイツの養分を吸い取りながら動いてるから殆ど永久機関と変わらないわね。 時間をおけばおく程効果は倍増していって、最終的には自分の命令を麻薬のように追い求める奴隷の一丁上がりってわけ」 「手術で摘出しな」 シャナの説明に承太郎が短く簡潔に応える。 「それが出来たら苦労しないわ。これは脳の中の一番デリケートな部分に打ち込まれてる。 摘出する時ほんの僅かでも触手がブレたら脳は永遠にクラッシュしたまま再起動しなくなるわよ。 外科医は封絶の中じゃ動けないしね。そこまで計算して『アイツ』はこれを生み出したのよ」 「アイツ?」 思わぬシャナの言葉に承太郎の瞳が訝しく尖る。 「どういう事だ?まるで会ったみてぇな口振りだな。あの男……『DIO』のヤローによ」 承太郎の言葉にシャナは俯いて言葉を閉ざす。 「承太郎よ……こんな事があった」 シャナの代わりにアラストールが語り始めた。 「四ヶ月ほど前……我らは北米の地で、彼の者『幽血の統世王』と邂逅したのだ」 「何だと?」 アラストールの言葉に承太郎の視線がますます尖った。 追憶の欠片が脳裏に甦る。 シャナは思い出していた。 自分の受けた「屈辱」を。 それはニューヨークのスラム街で犯罪者の魂を好んで喰らう 紅世の徒を討滅した帰りの事だった。 売店でクレープを買い目元と口元を綻ばせながらジョースター邸への 帰路についていたシャナの前にその男はいきなり現れた。 まるで定められた運命であるかの如く。 人気のない路地、煌々と点る夜の街灯の下にその男は背を持たれ 両腕を組んで静かに立っていた。 心の中心に忍び込んでくるような凍りつく眼差し。黄金色の美しい頭髪。 透き通るような白い肌。男とは思えないような妖しい色気が首筋に塗られた 香油によって増幅されている。華美な装飾はないが良質な絹で仕立てられた 古代ペルシアの王族がその身に纏うような衣服を着ていた。 シャナはすぐに解った。すでにジョセフと知り合っていたので こいつが大西洋から甦った男、DIOだと。 月影に反照し官能的に光る口唇をおもむろに開くと男は静かに シャナに向かって話し始めた。 「古き友を訪ねてこの地に来たが……まさか君と逢えるとはな…… 初めまして『紅の魔術師(マジシャンズ・レッド)』……いや…… 『炎髪灼眼の討ち手』と言ったほうが良いかな……?」 その男を本当に恐ろしいと思ったのはその時だった。 その男が話しかけてくる言葉は心が安らいだ。 魔薬のように危険な甘さがあった。しかしだからこそ恐ろしかった。 「全く驚いたよ……私の配下の『幽波紋(スタンド)使い』達を始末した 魔術師が、まさか本当にこんな可愛らしいお嬢さんだったとは……」 DIOの言葉が終わる前にシャナは足裏を爆発させて跳んでいた。 刹那に身を覆った黒衣の内側から抜き出した大太刀、 贄殿遮那が空気を切り裂く空中で髪と瞳が炎髪灼眼に変わる。 「でやぁッ!」 DIOは至近距離で唸りを上げながら迫る大太刀の一閃を余裕の表情でかわす。 「性急な事だ……」 滑りながら道路に着地したシャナの黒衣の裾が舞い上がり、 真紅の髪が火の粉を撒いた。 「こいつ……『こいつがッ』!今!目の前にいるこの男がッ!」 その男はシャナが想像していたよりもずっと美しい風貌をしていた。 だが、その男の顔の裏側はどんな罪人よりもドス黒く呪われていた。 その瞳の奥はこの世のありとあらゆる邪悪を焼きつけ、 王族のように艶めかしい指は数え切れないほどの人の死と運命を弄んできた。 何年も。何年も…… 何人も。何人も…… そしてその存在が世界の歪みを増大させている。 「私の目の前にいるこの男がッ!」 「馬鹿な……」 胸元でアラストールも動揺を押し隠せないらしい。 多くの紅世の徒、例え王であったとしても自分の存在は なるべく隠そうとするのが普通だ。自由に好き勝手に行動を続けていれば すぐに自分達フレイムヘイズに居場所を察知され、残らず討滅されてしまうからだ。 『封絶』も『トーチ』もその事を回避する為に生まれた術。なのに目の前のこの男は、 自分を追っている天敵の前にあっさりとその身を現した。 「この者が……幽血の……統世王……!」 「DIOッ!!」 シャナは大刀を両手に構え、大地に屹立した。 燃え上がる灼眼は鋭くDIOを射抜いている。 「封・絶!」 その小さな口唇から勇ましい猛りが上がると共に、 シャナの足下から火線が走り道路の上に奇怪な文字列からなる紋章が描かれた。 シャナとDIOを中心として紅いドーム状の陽炎が形成される。 「『封絶』……因果孤立空間か。なかなか面白い能力を持っているね? 君達『紅世の徒』は。ひとつ……それを私に見せてくれるとうれしいのだが」 穏やかな声に心臓の凍る思いがした。 しかし同時に心の一部分がその声に強く惹かれ形を蕩かす。 刹那とはいえ心を魅入られた自分自身に凄まじい、 まさに燃えるような怒りを感じ、風に靡く黒衣にそれを纏わせた。 (この男が全ての元凶!多くの王を下僕に誣いた全ての根元!) 燃え上がる使命感にDIOを見つめる瞳が灼熱の煌めきを増し、 髪から鳳凰の羽ばたきのように火の粉が舞い上がる。 (討滅!討滅する!!) 足元のコンクリートを鋭く踏み切り、紅い弾丸のように飛び出したシャナは DIOの首筋に向けて空間に残像が映るほど高速の袈裟斬りを繰り出した。 周囲の空気を切り裂きながら星形の痣が刻まれた首筋に迫る白銀の刃。 意外。 DIOはそれをあっさりと右手で受け止めた。 戦慄の美で光る刀身が手の平の肉を音もなく切り裂き、骨に食い込む。 「っ!?」 驚愕。 全身が燃えるように猛っていてもシャナの頭の中はクールに冷め切っていた。 まさか『手で』受け取めるとは思わなかった。当然避けるものと考えていた。 その後の攻防の応酬果てに必殺の一撃を頭蓋に叩き込もうと 脳裏にもう数十手先の動きまで構築していたというのに最初の一撃で 全て計算が狂った。 速度はあったが様子見程度の撃ち込みだったので 手は切断されず中程まで食い込み刃はそこで動きを止める。 今までこんな敵はいなかった。 どの紅世の徒の中にも。王の中にも。 『贄殿遮那の一撃を真正面から素手で受け止めた相手は』 (こ、こいつバカ!?このまま刀を引き抜いたら、) 考えるのとほぼ同時に身体が動く。刀を掴んだDIOの手を支点にして 一瞬の躊躇もなくシャナは素早く柄を引いた。 だが。刀身は動かなかった。 まるで『その場で凍りついたように』動きを止めていた。 「貧弱……」 DIOの美しい口唇に絶対零度も凍り付く冷酷な微笑が浮かぶ。 貴公子の仮面に罅が入り残虐な本性がその姿を垣間見せた。 「貧弱ゥゥッ!!」 いきなり周囲に白い膨大な量の水蒸気が暴発したボイラーのように巻き起こった。 大太刀『贄殿遮那』の刀身を掴んだDIOの手から肘の辺りまでが いつのまにか超低温に冷やされた鋼のような質感に変わっていた。 その腕から発せられる冷気に周囲の全てが凍り付く。 大気が凍り大地が凍り、贄殿遮那が凍った。封絶すら凍った。 「こ、凍る!?」 冷気が刀身を伝達して柄を握るシャナの手にまで侵蝕してくる。 「『気化冷凍法』。使うのは実に100年振りだ。 『波紋使い』以外に使うこともないだろうと思っていたが」 DIOは渦巻く冷気よりも冷たい微笑を浮かべてシャナの灼眼をみつめる。 冷気が柄を越えシャナの腕にまで達し熱疲労でその皮膚が引き裂かれる瞬間、 「ムゥンッ!」 胸元のペンダントを中心にして巻き起こった柔らかな炎が 一瞬でシャナの身体を包み込んだ。冷気で柄に張り付いた皮膚を、 アラストールが『浄化の炎』で解き剥がす。 「!」 アラストールに意識がそれたDIOの手から刀身を引き抜くと、 シャナは腕の温度の上がった部分を足場にし身軽に宙返りをして距離を取った。 「ありがと。アラストール」 水滴に濡れた手を黒衣で拭い、同じく水で濡れた大刀を 構えなおしながら短くシャナは言う。 「今のが彼奴の身体を流れる幽血の一端か。油断するな。 まだどんな力を隠し持っているのか予測がつかん」 「解ってる」 シャナは短く言うと刀身に付いた水滴を一振りで全て叩き落とした。 「……ククク、100年も眠っていたので忘れていたよ。 己の力を存分に開放する事の出来るこの得も言われぬ充足感。 久しく戦いから離れていたので血が滾るというやつか?フフフ…… 凍てついた私の血も君の炎に炙られてどうやら融け始めたようだ」 DIOはその悪の華と呼ぶに相応しい美貌に邪悪な微笑を浮かべる。 「もっとくべてくれ。私の凍てついたこの心に。君の炎を。君の熱を」 そう言うとDIOは超低温の冷気に覆われた両手を前に差し出し、 緩やかに構えを執る。 その構えは華麗にて美しくそして流麗な力強さを併せ持っていた。 そしてそれに劣らぬ畏怖も。 それはシャナの両手に握られている贄殿遮那と全く同じ戦慄の美。 否、威圧感だけならそれを上回った。 「さあ!手合わせ願おうかッ!!」 そう叫ぶとDIOはいきなりアスファルトが陥没するほど 地面を強く蹴りつけ、一瞬でシャナの眼前に迫った。 「UUUUUUURYAAAAAAAAッッ!!」 周囲のガラスに罅が走るような奇声を上げながら シャナの身体に向け凍った掌で貫き手の連打を繰り出してくる。 着痩せして見えるその身体からは想像もつかない、 途轍もない怪力の籠もった強い撃ち込みだった。 だが砕く事を目的とした動作ではない、 明らかに掴む事を念頭においた撃ち方だ。 どこでもいいからシャナの身体の一部を掴み、 先程の冷気で全身を凍りつかせる為に。 「っくう!」 素早く複雑な軌道を描く精密な足捌きで身体を高速で反転させながら DIOの暴風のような撃ち込みをかわすシャナ。 だが、同時に舞い上がる黒衣の裾にまで気を配らなければならないので 避けづらい事この上ない。 「フハハハハハハハハ!!どうした!どうしたぁ!! 自慢の炎は出さんのかッ!逃げてばかりでは永遠に私には勝てんぞッ! もっと私を楽しませろッ! UREEYYYYYYYYYYYYYYYーーーーーッッ!!」 更にDIOの心理状態が微塵も読めないので次の攻撃が全く予測出来なかった。 紳士然としていたかと思うといきなり何の脈絡もなく狂戦士のような風貌に変わる。 こんな異常な心理を持つタイプには今まで遭遇した事はない。 「こ、この!誰が逃げてなんか!」 負けず嫌いの性格故に思わず声が口をついて出るが、 確かにDIOの言うとおりだった。でも攻撃は出来ない。 どんなに鋭い斬撃だったとしてもこの男は躊躇せずにまた それ掴んでそこから冷気を送り込んでくるだろう。 『浄化の炎』があるにはあるが同じ手が二度通用するとは思えない。 それに次は恐らく胸元のアラストールの方が先に凍らされる。 しかし今のままだと防戦一方なので永遠に勝機は訪れない。 時間を置けば置くほど回避によって神経がどんどん摩耗していき 最終的には僅かに生まれた隙に全連撃を一気に捻じ込まれる。 (それなら……) 決意の光が灼眼が煌めく。 (『遅かれ早かれ擦り切れるなら!』) 「はああぁっ!!」 鋭い猛りがシャナから上がる。 過負荷により神経の電気伝達がショートし目の中で火花が弾けた。 だがその甲斐はあった。 贄殿遮那の刀身が渦巻く紅蓮の炎で覆われていた。 火炎が刀身を焼き焦がし発する熱気が周囲の冷気を全て弾き飛ばす。 すぐさまに横薙ぎの一閃がDIOに向かって放たれた。 ガギュンッ!!と鋼鉄の城塞に灼熱の破城鎚でも撃ち込んだかのような 異様な音と共に重い手応えが柄を握るシャナの手に跳ね返ってくる。 「美しい……これが君の生み出す炎か。マジシャンズ!」 胴体に向けて放たれた炎刃の一撃を先程同様凍った掌で受け止めた DIOは炎に照らされた微笑でもって応える。 その手の中で冷気と熱気が音を立てながら互いに弾けた。 炎と氷の混ざり合った靄がDIOの内なる火勢を更に煽る。 かなり無理をしたがシャナのやった事は功を奏した。 受け止められはしたが今度は冷気が身体に廻ってこない。 これでようやくこちらからも攻撃出来る。 「おまえを討滅する!幽血の統世王!!」 シャナは凛々しく激しい瞳で眼前のDIOを射抜いた。 湧き上がる熱気と共にその全身が火の粉を撒く。 DIOは精神の高揚で牙が飛び出した口元に笑みを浮かべると 大刀を掴んだ手を振り払った。 怪力によって飛ばされたシャナは空中で体を返し軽やかに着地する。 「やあああァァァッッッてみろおおおォォォーーーーー!! 青ちょびた面のガキがあああァァァーーーーッッッ!!」 理性の仮面が完全に破壊されこの世のどんな暗黒よりもドス黒い 本性を剥き出しにした邪悪の化身、DIOは、 凍りついた両腕を広げ殺戮の歓喜に身を震わせながらシャナに向かって叫んだ。
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腕の良い庭師の職人の手が行き届いた池泉回遊式庭園。 琳とした空間に鹿威しの澄んだ音が響き渡る。 その池にかけられた橋の向こうで淑女が可憐な鼻歌を奏でていた。 「カモン♪ベビィ♪ドゥーザ♪ロコモーション♪」 皺一つ無い真珠のような艶やかな肌に、母性に満ちあふれた女神のような美貌。ふくよかな体つきのハリウッド女優顔負けのスタイル。 客観的にはとても195㎝の身長を誇る、長身の美丈夫の息子がいる一児の母には見えない。 「あ!」 その淑女、空条・ホリィ・ジョースターは脳裏に走った直感に思わず床の間の机の上に置かれた写真立てへ視線を向けていた。 その中に映った最愛の息子は口元に穏やかな微笑を浮かべ、凛々しい視線をこちらに向けている。 「今、承太郎ったら学校で私のこと考えてる……♪今……息子と心が通じ合った感覚があったわ♪」 そう言うとホリィは家事の手を一時休め、写真立てを大事そうに胸の中に掻き抱く。 「考えてねーよ」 「学校行ってないものね」 「残念だったな奥方」 いきなり上がった三者(?)三様の声に 「きゃあああああああ!」 と淑女は驚愕の叫びを上げた。 写真立ての中とはうって変わって最愛の息子は仏頂面でこちらを見ている。 その肩の上にはコートのような学生服を着た全身血塗れの少年が担ぎ上げられていた。 「じょ……承太郎……それにシャナちゃん……が……学校はどうしたの?そ……それにその、その人は!?血……血が滴っているわ。ま……まさか……あ……あなたがやったの?」 その質問には答えず承太郎はホリィに背を向ける。 「テメーには関係のないことだ。オレはジジイを探している……広い屋敷は探すのに苦労するぜ。茶室か?」 「え、ええ。そうだと思うわ」 確認すると承太郎は血だらけの少年を担いだまま檜の床を踏み鳴らして行ってしまった。 ホリィはその背中を心配そうにみつめる。だからシャナの視線に気づいたのはその後だった。 「な、なぁに?シャナちゃん?」 幼い外見に不相応な凛々しい顔立ちと視線だが、何分長身のホリィからすると小さいのでどうしても子供に話しかけるような口調になってしまう。 何よりその瞳に宿る色が昔の承太郎を思い起こさせたせいかもしれない。 「ごめんなさいね。新しい学校だもの。一人じゃ心細いわよね。学校には私の方から連絡を入れておくわ。今日は家でゆっくりしていて。 お昼は何が食べたい?何なら昨日みたいに外に行きましょうか?パパと承太郎も誘ってね」 ホリィの言葉を聞くだけ聞くとシャナはおもむろに口を開いた。 「他人の家族の事に口出しするのは趣味じゃないんだけど」 とまず前置きをし 「ホリィはこの件に関わらない方が良い。冷たい言い方になるけど出来る事ないと思うから。信じられないかもしれないけど、あの血だらけのヤツは私と承太郎を「殺し」にきたの。 承太郎やジョセフと同じ能力を持った人間。だから死にたくなかったら何も知ろうとしないことが得策よ。アイツもそれで何も言わなかったんだと思うし」 ホリィは黙ってシャナを見つめていた。「殺す」という言葉に驚かなかったと言えば嘘になるが目の前の圧倒的な存在感の小柄な少女は、 彼女なりに自分の事を気づかってくれているらしい。不器用だがそのやり方が承太郎と似ていたので思わず口元に優しい笑みが浮かんだ。 「ええ。解ってるわ。あの子は本当はとても優しい子だもの。今回の事だって何か理由があっての事なのよ。母親の私が信じてあげなきゃね」 「優しい、ね」 何故かシャナはその言葉に素直に同意出来ない。脳裏に見ず知らずの女生徒の為に全身血塗れになりながら花京院と闘った承太郎の姿が浮かんだ。 苦痛に耐えながら女生徒のために存在の力を削ぎ取っている姿も。 血糊はトーチで消したので今愛用の制服は新品同然になってはいるが、その傷痕はまだ生々しく残っている筈だ。 「おい」 「はい?」 中庭に設置された花壇を挟んで振り返った承太郎が鋭い眼光でホリィを見る。 「今朝はあまり顔色がよくねーぜ。元気か?」 「…………」 その言葉にホリィはまるで初恋の少女のように顔を赤らめて胸に両手を当てると、 「イエ~~イ♪ファイン!サンキュー!」 と笑顔で可愛く手の平を広げたピースサインで応えた。 「フン」 鼻を鳴らして再び背を向ける承太郎を後目に、 「ほらね♪」 と、ホリィは笑顔でシャナに向き直る。 「まぁ、そういう事にしておくわ」 「我は奥方の賢明な育て方の賜だと」 短くホリィに答えると同時に何故か上がったアラストールの声にシャナがペンダントに視線を向ける。 「あ、いや、うむ」 少し熱くなったペンダントの中で紅世の王、天壌の劫火は咳払いをして押し黙った。 「オイ!シャナ!モタモタしてんじゃあねー!後で文句垂れても聞いてやらねーぞ!」 遠くになった承太郎が振り向いて叫ぶ。 「うるさいうるさいうるさい。誰の所為だと思ってるの!」 シャナは床を鳴らして踏み切ると軽々と中庭を飛び越えた。 「だめだな、これは」 ジョセフは茶室の畳の上に寝かされた花京院を見下ろした。 「手遅れじゃ。この少年はもう助からん。あと数日のうちに死ぬ」 「死ぬ」という言葉に承太郎の視線が尖った。 「承太郎……お前のせいではない……見ろ……この少年がなぜDIOに忠誠を誓いお前を殺しに来たのか……?その理由が……」 ジョセフはいきなり花京院の前髪を手で捲り上げた。 「ここにあるッ!」 花京院の額の表面に異様な物体が蠢いていた。 弾ける寸前の木の実のような形をしているが、まるで生物のように脈動を繰り返している。 その触手らしき部分が花京院の額に埋め込まれ一部は皮膚と癒着していた。 「なんだ?この動いているクモみてーな肉片は?」 「それは彼の者の細胞からなる『肉の芽』、この小僧の脳にまで達している。 この『肉の芽』は生物の精神に影響を与えるよう脳に打ち込まれているのだ」 承太郎の問いにアラストールが答える。 「つまり「コレ」はコイツを思い通りに操る装置なのよ」 シャナが腕組みをしながら言った。 「常に脳に刺激を与え続け、自分を心酔し続けるように精神操作を行ってるの。コイツの養分を吸い取りながら動いてるから殆ど永久機関と変わらないわね。 時間をおけばおく程効果は倍増していって、最終的には自分の命令を麻薬のように追い求める奴隷の一丁上がりってわけ」 「手術で摘出しな」 シャナの説明に承太郎が短く簡潔に応える。 「それが出来たら苦労しないわ。これは脳の中の一番デリケートな部分に打ち込まれてる。 摘出する時ほんの僅かでも触手がブレたら脳は永遠にクラッシュしたまま再起動しなくなるわよ。 外科医は封絶の中じゃ動けないしね。そこまで計算して『アイツ』はこれを生み出したのよ」 「アイツ?」 思わぬシャナの言葉に承太郎の瞳が訝しく尖る。 「どういう事だ?まるで会ったみてぇな口振りだな。あの男……『DIO』のヤローによ」 承太郎の言葉にシャナは俯いて言葉を閉ざす。 「承太郎よ……こんな事があった」 シャナの代わりにアラストールが語り始めた。 「四ヶ月ほど前……我らは北米の地で、彼の者『幽血の統世王』と邂逅したのだ」 「何だと?」 アラストールの言葉に承太郎の視線がますます尖った。 追憶の欠片が脳裏に甦る。 シャナは思い出していた。 自分の受けた「屈辱」を。 それはニューヨークのスラム街で犯罪者の魂を好んで喰らう 紅世の徒を討滅した帰りの事だった。 売店でクレープを買い目元と口元を綻ばせながらジョースター邸への 帰路についていたシャナの前にその男はいきなり現れた。 まるで定められた運命であるかの如く。 人気のない路地、煌々と点る夜の街灯の下にその男は背を持たれ 両腕を組んで静かに立っていた。 心の中心に忍び込んでくるような凍りつく眼差し。黄金色の美しい頭髪。 透き通るような白い肌。男とは思えないような妖しい色気が首筋に塗られた 香油によって増幅されている。華美な装飾はないが良質な絹で仕立てられた 古代ペルシアの王族がその身に纏うような衣服を着ていた。 シャナはすぐに解った。すでにジョセフと知り合っていたので こいつが大西洋から甦った男、DIOだと。 月影に反照し官能的に光る口唇をおもむろに開くと男は静かに シャナに向かって話し始めた。 「古き友を訪ねてこの地に来たが……まさか君と逢えるとはな…… 初めまして『紅の魔術師(マジシャンズ・レッド)』……いや…… 『炎髪灼眼の討ち手』と言ったほうが良いかな……?」 その男を本当に恐ろしいと思ったのはその時だった。 その男が話しかけてくる言葉は心が安らいだ。 魔薬のように危険な甘さがあった。しかしだからこそ恐ろしかった。 「全く驚いたよ……私の配下の『幽波紋(スタンド)使い』達を始末した 魔術師が、まさか本当にこんな可愛らしいお嬢さんだったとは……」 DIOの言葉が終わる前にシャナは足裏を爆発させて跳んでいた。 刹那に身を覆った黒衣の内側から抜き出した大太刀、 贄殿遮那が空気を切り裂く空中で髪と瞳が炎髪灼眼に変わる。 「でやぁッ!」 DIOは至近距離で唸りを上げながら迫る大太刀の一閃を余裕の表情でかわす。 「性急な事だ……」 滑りながら道路に着地したシャナの黒衣の裾が舞い上がり、 真紅の髪が火の粉を撒いた。 「こいつ……『こいつがッ』!今!目の前にいるこの男がッ!」 その男はシャナが想像していたよりもずっと美しい風貌をしていた。 だが、その男の顔の裏側はどんな罪人よりもドス黒く呪われていた。 その瞳の奥はこの世のありとあらゆる邪悪を焼きつけ、 王族のように艶めかしい指は数え切れないほどの人の死と運命を弄んできた。 何年も。何年も…… 何人も。何人も…… そしてその存在が世界の歪みを増大させている。 「私の目の前にいるこの男がッ!」 「馬鹿な……」 胸元でアラストールも動揺を押し隠せないらしい。 多くの紅世の徒、例え王であったとしても自分の存在は なるべく隠そうとするのが普通だ。自由に好き勝手に行動を続けていれば すぐに自分達フレイムヘイズに居場所を察知され、残らず討滅されてしまうからだ。 『封絶』も『トーチ』もその事を回避する為に生まれた術。なのに目の前のこの男は、 自分を追っている天敵の前にあっさりとその身を現した。 「この者が……幽血の……統世王……!」 「DIOッ!!」 シャナは大刀を両手に構え、大地に屹立した。 燃え上がる灼眼は鋭くDIOを射抜いている。 「封・絶!」 その小さな口唇から勇ましい猛りが上がると共に、 シャナの足下から火線が走り道路の上に奇怪な文字列からなる紋章が描かれた。 シャナとDIOを中心として紅いドーム状の陽炎が形成される。 「『封絶』……因果孤立空間か。なかなか面白い能力を持っているね? 君達『紅世の徒』は。ひとつ……それを私に見せてくれるとうれしいのだが」 穏やかな声に心臓の凍る思いがした。 しかし同時に心の一部分がその声に強く惹かれ形を蕩かす。 刹那とはいえ心を魅入られた自分自身に凄まじい、 まさに燃えるような怒りを感じ、風に靡く黒衣にそれを纏わせた。 (この男が全ての元凶!多くの王を下僕に誣いた全ての根元!) 燃え上がる使命感にDIOを見つめる瞳が灼熱の煌めきを増し、 髪から鳳凰の羽ばたきのように火の粉が舞い上がる。 (討滅!討滅する!!) 足元のコンクリートを鋭く踏み切り、紅い弾丸のように飛び出したシャナは DIOの首筋に向けて空間に残像が映るほど高速の袈裟斬りを繰り出した。 周囲の空気を切り裂きながら星形の痣が刻まれた首筋に迫る白銀の刃。 意外。 DIOはそれをあっさりと右手で受け止めた。 戦慄の美で光る刀身が手の平の肉を音もなく切り裂き、骨に食い込む。 「っ!?」 驚愕。 全身が燃えるように猛っていてもシャナの頭の中はクールに冷め切っていた。 まさか『手で』受け取めるとは思わなかった。当然避けるものと考えていた。 その後の攻防の応酬果てに必殺の一撃を頭蓋に叩き込もうと 脳裏にもう数十手先の動きまで構築していたというのに最初の一撃で 全て計算が狂った。 速度はあったが様子見程度の撃ち込みだったので 手は切断されず中程まで食い込み刃はそこで動きを止める。 今までこんな敵はいなかった。 どの紅世の徒の中にも。王の中にも。 『贄殿遮那の一撃を真正面から素手で受け止めた相手は』 (こ、こいつバカ!?このまま刀を引き抜いたら、) 考えるのとほぼ同時に身体が動く。刀を掴んだDIOの手を支点にして 一瞬の躊躇もなくシャナは素早く柄を引いた。 だが。刀身は動かなかった。 まるで『その場で凍りついたように』動きを止めていた。 「貧弱……」 DIOの美しい口唇に絶対零度も凍り付く冷酷な微笑が浮かぶ。 貴公子の仮面に罅が入り残虐な本性がその姿を垣間見せた。 「貧弱ゥゥッ!!」 いきなり周囲に白い膨大な量の水蒸気が暴発したボイラーのように巻き起こった。 大太刀『贄殿遮那』の刀身を掴んだDIOの手から肘の辺りまでが いつのまにか超低温に冷やされた鋼のような質感に変わっていた。 その腕から発せられる冷気に周囲の全てが凍り付く。 大気が凍り大地が凍り、贄殿遮那が凍った。封絶すら凍った。 「こ、凍る!?」 冷気が刀身を伝達して柄を握るシャナの手にまで侵蝕してくる。 「『気化冷凍法』。使うのは実に100年振りだ。 『波紋使い』以外に使うこともないだろうと思っていたが」 DIOは渦巻く冷気よりも冷たい微笑を浮かべてシャナの灼眼をみつめる。 冷気が柄を越えシャナの腕にまで達し熱疲労でその皮膚が引き裂かれる瞬間、 「ムゥンッ!」 胸元のペンダントを中心にして巻き起こった柔らかな炎が 一瞬でシャナの身体を包み込んだ。冷気で柄に張り付いた皮膚を、 アラストールが『浄化の炎』で解き剥がす。 「!」 アラストールに意識がそれたDIOの手から刀身を引き抜くと、 シャナは腕の温度の上がった部分を足場にし身軽に宙返りをして距離を取った。 「ありがと。アラストール」 水滴に濡れた手を黒衣で拭い、同じく水で濡れた大刀を 構えなおしながら短くシャナは言う。 「今のが彼奴の身体を流れる幽血の一端か。油断するな。 まだどんな力を隠し持っているのか予測がつかん」 「解ってる」 シャナは短く言うと刀身に付いた水滴を一振りで全て叩き落とした。 「……ククク、100年も眠っていたので忘れていたよ。 己の力を存分に開放する事の出来るこの得も言われぬ充足感。 久しく戦いから離れていたので血が滾るというやつか?フフフ…… 凍てついた私の血も君の炎に炙られてどうやら融け始めたようだ」 DIOはその悪の華と呼ぶに相応しい美貌に邪悪な微笑を浮かべる。 「もっとくべてくれ。私の凍てついたこの心に。君の炎を。君の熱を」 そう言うとDIOは超低温の冷気に覆われた両手を前に差し出し、 緩やかに構えを執る。 その構えは華麗にて美しくそして流麗な力強さを併せ持っていた。 そしてそれに劣らぬ畏怖も。 それはシャナの両手に握られている贄殿遮那と全く同じ戦慄の美。 否、威圧感だけならそれを上回った。 「さあ!手合わせ願おうかッ!!」 そう叫ぶとDIOはいきなりアスファルトが陥没するほど 地面を強く蹴りつけ、一瞬でシャナの眼前に迫った。 「UUUUUUURYAAAAAAAAッッ!!」 周囲のガラスに罅が走るような奇声を上げながら シャナの身体に向け凍った掌で貫き手の連打を繰り出してくる。 着痩せして見えるその身体からは想像もつかない、 途轍もない怪力の籠もった強い撃ち込みだった。 だが砕く事を目的とした動作ではない、 明らかに掴む事を念頭においた撃ち方だ。 どこでもいいからシャナの身体の一部を掴み、 先程の冷気で全身を凍りつかせる為に。 「っくう!」 素早く複雑な軌道を描く精密な足捌きで身体を高速で反転させながら DIOの暴風のような撃ち込みをかわすシャナ。 だが、同時に舞い上がる黒衣の裾にまで気を配らなければならないので 避けづらい事この上ない。 「フハハハハハハハハ!!どうした!どうしたぁ!! 自慢の炎は出さんのかッ!逃げてばかりでは永遠に私には勝てんぞッ! もっと私を楽しませろッ! UREEYYYYYYYYYYYYYYYーーーーーッッ!!」 更にDIOの心理状態が微塵も読めないので次の攻撃が全く予測出来なかった。 紳士然としていたかと思うといきなり何の脈絡もなく狂戦士のような風貌に変わる。 こんな異常な心理を持つタイプには今まで遭遇した事はない。 「こ、この!誰が逃げてなんか!」 負けず嫌いの性格故に思わず声が口をついて出るが、 確かにDIOの言うとおりだった。でも攻撃は出来ない。 どんなに鋭い斬撃だったとしてもこの男は躊躇せずにまた それ掴んでそこから冷気を送り込んでくるだろう。 『浄化の炎』があるにはあるが同じ手が二度通用するとは思えない。 それに次は恐らく胸元のアラストールの方が先に凍らされる。 しかし今のままだと防戦一方なので永遠に勝機は訪れない。 時間を置けば置くほど回避によって神経がどんどん摩耗していき 最終的には僅かに生まれた隙に全連撃を一気に捻じ込まれる。 (それなら……) 決意の光が灼眼が煌めく。 (『遅かれ早かれ擦り切れるなら!』) 「はああぁっ!!」 鋭い猛りがシャナから上がる。 過負荷により神経の電気伝達がショートし目の中で火花が弾けた。 だがその甲斐はあった。 贄殿遮那の刀身が渦巻く紅蓮の炎で覆われていた。 火炎が刀身を焼き焦がし発する熱気が周囲の冷気を全て弾き飛ばす。 すぐさまに横薙ぎの一閃がDIOに向かって放たれた。 ガギュンッ!!と鋼鉄の城塞に灼熱の破城鎚でも撃ち込んだかのような 異様な音と共に重い手応えが柄を握るシャナの手に跳ね返ってくる。 「美しい……これが君の生み出す炎か。マジシャンズ!」 胴体に向けて放たれた炎刃の一撃を先程同様凍った掌で受け止めた DIOは炎に照らされた微笑でもって応える。 その手の中で冷気と熱気が音を立てながら互いに弾けた。 炎と氷の混ざり合った靄がDIOの内なる火勢を更に煽る。 かなり無理をしたがシャナのやった事は功を奏した。 受け止められはしたが今度は冷気が身体に廻ってこない。 これでようやくこちらからも攻撃出来る。 「おまえを討滅する!幽血の統世王!!」 シャナは凛々しく激しい瞳で眼前のDIOを射抜いた。 湧き上がる熱気と共にその全身が火の粉を撒く。 DIOは精神の高揚で牙が飛び出した口元に笑みを浮かべると 大刀を掴んだ手を振り払った。 怪力によって飛ばされたシャナは空中で体を返し軽やかに着地する。 「やあああァァァッッッてみろおおおォォォーーーーー!! 青ちょびた面のガキがあああァァァーーーーッッッ!!」 理性の仮面が完全に破壊されこの世のどんな暗黒よりもドス黒い 本性を剥き出しにした邪悪の化身、DIOは、 凍りついた両腕を広げ殺戮の歓喜に身を震わせながらシャナに向かって叫んだ。
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第068話:逃げ犬 作:◆E1UswHhuQc 「きゃあああ!」 「どうしたっ!」 悲鳴を聞いて、ベルガーは背後の岩陰を覗き込んだ。と、何かがぶつかってくる。 テレサ・テスタロッサだ。下着姿の彼女を抱きとめ、ベルガーは問う。 「何があった?」 「だ、誰かがこっちを覗いて――」 そこまで言って、テッサの視線の先が自身の身体に移る。下着姿。 「――き、」 「叫ぶなバカ。何でこんなところに居るのか忘れたのかテレサ・テスタロッサ」 「う……」 殺し合いのゲーム。それを思い出して、テッサが言葉無くうずくまる。 ベルガーはまだ生乾きの上着を掴み、彼女に被せた。 「あ……」 「まだ乾いちゃいないが、ハズかしいならそれ羽織っとけ」 「……ありがとうございます」 一礼するテッサに、ん、と頷き、ベルガーはデイバッグを手に取った。中に手を入れ、まだ見ていない支給品を確かめる。 取り出されたものは。 「……一つ聞くぞ、テレサ・テスタロッサ。――これは武器か?」 「ええと……仮に武器だとしても、私の知識にはないです」 取り出された黒い卵を見てのテッサの言葉に、ベルガーは溜息で返した。そして聞く。 「君の武器は?」 「まだ確かめてないです……」 「なら確かめるぞ。武器がいる。視線を感じたんだろう?」 「え、ええ」 頷くテッサの目の前で、ベルガーは生乾きの衣服を身につけた。黒い卵はポケットに入れておく。 テッサを後ろに、背後の岩陰へと回った。用心深く。 焚き火の灯りがつくる視界に、二人は共通のものを見つけた。 分厚い筋肉の鎧を持った、傷だらけの体を持つ巨漢だ。装飾がなされた、一本の棒を手にしている。 「……どう思う?」 「海兵隊に入るといいんじゃないでしょうか」 当然のように巨漢を警戒しながら、テッサのデイバッグを掴む。と、巨漢が口を開いた。厳かな声で、 「主は申された」 棒を大上段に振り上げた巨漢に、ベルガーは一言。 「……何て?」 「――汝、姦淫するなかれ」 棒が振り下ろされた。 「俺は子供に興味ないって――」 言う間にテッサを小脇に抱えて、真横に飛ぶ。充分に避けられるタイミングだ。通常ならば。 横に飛んだベルガーの視界、豪速で振り下ろされる棒が、いきなり巨大化した。 「――!」 避けられない。そう判断した時だ。 視界がブラックアウトした直後、二人の姿が消え失せ、棒――宝具『神鉄如意』が地面を撃砕した。 視界が開けた先にあったのは、知り合いの死体だった。 「ヘラード・シュバイツァー?」 どうやって危地を抜け出したのかという疑問はあった。だがそれよりも、眼前に倒れ付した男の死体に言葉を投げ掛ける。 首筋の斬撃痕と地を塗らす血液。ベルガーはシュバイツァーの手を取り、脈を見る。 「……何こんなところで死んでるんだヘラード・シュバイツァー。レーヴェンツァーン・ネイロルが泣くぞ」 呟きは夜の闇に紛れ、消え去る。 ベルガーは溜息一つで感傷を打ち消し、遺体の傍らに転がるデイバッグを手に取り、開けた。 シュバイツァーの遺した支給品は、東洋風の剣だった。 一目で業物と分かる気配の、カタナだ。柄の辺りにラベルが張ってある。 『贄殿遮那』。 「……あの、ベルガーさん」 「なんだテレサ・テスタロッサ。服が欲しいから戻りましょうとか言うなら一人で行けよ。何処だか知らんが」 「違います! いえ、服も欲しいですけど……その、その方は……」 「知り合いだ」 一言で答えてベルガーは立ち上がり、カタナを手にした。 「ちょっと手伝ってくれテレサ・テスタロッサ。このバカを埋める」 「あ……はい」 テッサは答え、辺りを見回して穴掘りに使えそうなものを探す。と。 「君の支給品は何だ? スコップだといいんだが」 「そうでした。ええと……」 言われ、自分のデイバッグを開ける。中には、 「……服で穴は掘れないな」 「……ええ」 【G-3/林の中/02:30】 【ダウゲ・ベルガー】 [状態]:平常を保とうとしている [装備]:贄殿遮那@灼眼のシャナ 黒い卵(天人の緊急避難装置)@オーフェン [道具]:デイバッグ×2(支給品一式) [思考]:シュバイツァーを埋葬する。 天人の緊急避難装置:所持者の身に危険が及ぶと、最も近い親類の所へと転移させる。 【テレサ・テスタロッサ】 [状態]:動揺 [装備]:なし [道具]:デイバッグ(支給品一式) UCAT戦闘服 [思考]:シュバイツァーの埋葬を手伝う。 【C-7/湖のほとり/1日目・02 30】 【ハックルボーン】 [状態]:健康 [装備]:宝具『神鉄如意』@灼眼のシャナ [道具]:デイパック(支給品一式) [思考]:神の導きに従って天罰を下す。 【残り102名】 ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第067話 第068話 第069話 第064話 時系列順 第081話 - 神父 第069話 第046話 テッサ 第180話 第046話 ベルガー 第180話
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【種別】 能力(?) 【初出】 I巻 【解説】 天罰神“天壌の劫火”アラストールのフレイムヘイズ『炎髪灼眼の討ち手』が身に纏う黒衣。 アラストールの翼の黒い皮膜の一部を部分的に顕現させたもので、着用者の意思に応じて変形し、サイズや形状は自由で、物に巻きつけたりするなど、ある程度動かすことも可能だった。 二代目のシャナはコート状、初代のマティルダ・サントメールはマントの形を基本の形としていた。 内部に多量の荷物を収納できる。イメージ的には、畳んだ皮膜の隙間に押し込むようにしているとのことである。手の先に一瞬だけ出して、荷物の出し入れを行うことも可能(例:『贄殿遮那』など)。 強度はそれなりに高く、銃弾やカード型宝具『レギュラー・シャープ』では小揺るぎもしなかった。シャナは専ら盾として用いており、その際には自身に何重にも『夜笠』を巻き付けたりしていた。また、マティルダは飛翔の自在法を『夜笠』に掛けて飛行したこともあった。 【コメント】 ☆アニメ版から登場・使用されていた。 ☆フレイムヘイズ『炎髪灼眼の討ち手』の神器“コキュートス”やマティルダの自在法『騎士団』と併せて格好良かったな。 ☆裸マントという新たなジャンルを作り出した。 ☆ついに商品化。品質によっては、一般用途も可能なスペックなので、密かに期待した。 ☆女性向け仕様しかないのは残念だった。 ☆値段は2万、いかない位だった・・・。 ☆坂井悠二の凱甲型宝具『莫夜凱』やフリアグネの『長衣』と、どれが防御力が高いかな。 ☆[巌楹院]のゴグマゴーグや[とむらいの鐘]のアシズがこの能力とも絡んでいたら面白そうだったのにな。 ☆むしろマティルダ仕様が欲しかった。 実寸サイズ、男性陣は参考にすべし(大きめに余裕を見ること)。 着丈 バスト ウエスト 肩幅 袖丈 Lサイズ・・・ 124 108 96 46 59 XLサイズ・・ 128 115 103 48 61
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【種別】 宝具 【初出】 VIII巻 【解説】 “壊刃”サブラクの所持していた、両手持ちの西洋風大剣型宝具。宝具としての本来の能力は不明。 ダンタリオン教授によって無断でドリルに改造され、台無しになった。この一件が原因で、サブラクは激怒して教授と袂を別った。 以降は“燐子”ドミノの中に収納される形で教授が所持しており、教授が付けた名称は『浪漫の結晶ドォーリル付き西洋風の両手剣』。 はっきりは描写されていないが、最終巻で教授やドミノと共に『揮散の大圏』によって消滅したと思われる。 【由来・元ネタ】 元ネタはラテン語や古代ギリシャ語で『ヤマアラシ』を意味するヒュストリクス(hystrix)と思われる。 【コメント】 ☆アニメ第2期では登場しなかった。 ☆シャナの『贄殿遮那』と鍔迫り合いさせたら面白かったのにな。 ☆ギヴォイチスの『スクレープ』やアレックスの剣型神器“コルタナ”やジョージの剣型神器“フラガラック”と似たり寄ったりだったな。 ☆剣型の宝具は他にソラトと坂井悠二の『吸血鬼』やフリアグネの『ラハット』がある。 ☆「ヤマアラシ」という名称から察するに、周囲の物体を長大な剣山にでもする宝具だったのだろうか? ☆剣を使い潰す戦い方をするサブラクにしては、珍しく愛着があったようだ。 ☆[巌楹院]のゴグマゴーグや[とむらいの鐘]のアシズがこの宝具に絡んでいたら面白そうだったのにな。 ☆サブラクが特別視していた事からも何かしらの強力な能力があった事が伺えるため、ある意味この宝具を台無しにした教授はシャナ達の勝利に一役買っていると言える。 ☆↑台無しにしたんじゃない!「ものすごーく超・強力でカッコよく改良してあげた」んだ! ☆もし仮に上から二番目のコメントのような能力だったとして、それを自在法『スティグマ』のあるサブラクが使うと考えたら……怖っ!
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第180話:大佐と逃がし屋の決意 作:◆Sf10UnKI5A 朝日が差し込み始めた森の中、土が盛られた場所がある。 盛り土の中央には折られた枝が立てられている。 それは、酷く簡素な墓だった。 横には黒衣を纏った男、ダウゲ・ベルガーが座り込んでいる。 そこから少し離れた木に背を預け寝息を立てるのは、テッサことテレサ・テスタロッサだ。 ――もう朝か。早いものだな。 シュバイツァーを埋葬した二人だが、道具も無しに人一人埋める穴を掘るのは、随分な大仕事だった。 途中でテッサを寝かせたのだが、果たしてそれは一体いつ頃だっただろうか。 軽い疲労を感じながら、ベルガーは呟いた。 「……仇くらいは取ってやるさ。だから成仏しろよ、へラード・シュバイツァー」 そして数分後、放送が流れる。 「――051ユージン、057ガウルン、058クルツ、063島津由乃――――では、諸君の健闘に期待する――」 死亡者と禁止エリアを紙に書き取り、この声はテッサにも聞こえていたのだろうか、と彼女を見やる。 どうやらその通りらしく、テッサは目を覚まし、――その小さな体を震えさせていた。 「そんな……ウェーバーさんが……」 「おい、どうしたテレサ。まず落ち着け。何があった?」 その一言で、テッサは――表面上だけでも――落ち着きを取り戻す。 どんな異常事態にあっても、彼女は軍人であった。 「……058番、クルツ・ウェーバー。彼は有能な軍人で、……私の部下でした」 彼女が名乗った『大佐』という肩書きをベルガーは内心疑っていたのだが、 それを抜きにしても、彼女にとってクルツという男が大切な人間だということが理解出来た。 「君も親しい人を失ったのか……」 何か考えるように少し間を置いて、ベルガーはまた口を開いた。 「聞いてくれ、テレサ・テスタロッサ」 呼びかけに、少女はうつむいていた顔を上げる。 「放送が事実ならば、この島で既に23人もの人間が死んでいる。 ということは、俺達を襲ったあの大男のような殺人者が他にもいると考えていいだろう。 ――質問だ、テレサ。君は、生きて帰りたいと思っているか?」 「と、当然です。何故そんな……」 「親しい人を見殺しにしてでも逃げる。君にその覚悟はあるのか?」 「…………」 長い沈黙が続き、そしてテッサは答えた。 「……私は、仲間を何度も失っています。私を守る、そのためだけに死んだ人もいます」 トゥアハー・デ・ダナンでの痛ましい事件を思い出し、言葉が詰まる。 しかし、またすぐに口を開いた。 「……ですが、私はただ守られるだけの人間でいたつもりはありません。 まだ生きている二人の友人と、共に帰りたい、……いいえ、絶対に帰ってみせます」 そう答える彼女の目には、強い意志の光が宿っていた。 その光が、歴戦の中で培われてきたことをベルガーは知らない。が、 ――歳の割りに良い目をしているのは、あいつと同じだな。 ヘイゼル・ミリルドルフ。この島にいないベルガーの恋人は、十五歳の時に一つの戦争の中心に立たされた。 平凡な女学生だった彼女も、自分で進む道を選び、成長していったではないか。 そのことをベルガーは思い出す。 「……自分の命を大切にしなければならない場面では、その答えは零点だ。 だが、だがな、テレサ・テスタロッサ」 言葉を一度切り、そして続ける。 「他人を救おうとする人間は、その時点で既に『強さ』を持っている。 そして、他人と自分、両方を救うことが出来た時、その人間は真の『強者』となる。 こんなふざけた島から逃げるとしたら、それを成せるのは強者だけだ。 二度は言わない、忘れるな」 「ところでテレサ。俺は昔、『逃がし屋』なんて商売をやっていてな」 ベルガーは立ち上がり、大太刀『贄殿遮那』を手に取った。 「君が友人と逃げたいと言うのなら、それに協力させてもらおう。今回限りの特別サービスで、料金はタダにしてやる」 「え? ですが……」 「この島に共に連れてこられた、たった一人の友人はもはや土の下だ。 最後の一人になるための殺し合いに参加するつもりも無いし、それならば精々他人のために働いてやるさ。 君みたいな少女を一人にするわけにもいかないしな」 「……ありがとうございます、ベルガーさん」 頭を下げるテッサに向けて、ベルガーは軽く手を振ってみせた。 【残り94人】 【G-3/林の中/06:05】 【ダウゲ・ベルガー】 [状態]:心身ともに平常 [装備]:贄殿遮那@灼眼のシャナ 黒い卵(天人の緊急避難装置)@オーフェン [道具]:デイバッグ×2(支給品一式) [思考]:テレサ・テスタロッサを護衛する。 天人の緊急避難装置:所持者の身に危険が及ぶと、最も近い親類の所へと転移させる。 【テレサ・テスタロッサ】 [状態]:心身ともに平常 [装備]:なし [道具]:デイバッグ(支給品一式) UCAT戦闘服 [思考]:宗介とかなめを探す。 2005/06/13 改行調整、口調修正 ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第179話 第180話 第181話 第204話 時系列順 第186話 第068話 テッサ 第189話 第068話 ベルガー 第189話
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【種別】 フレイムヘイズ 【初出】 I巻 【解説】 『炎髪灼眼の討ち手』(えんぱつしゃくがんのうちて)の称号を持つ、“天壌の劫火”アラストールのフレイムヘイズ。炎の色は紅蓮。神器は、黒い玉に金のリングをかけ銀の鎖で吊したペンダント型の“コキュートス”。二代目『炎髪灼眼の討ち手』(マティルダが初代)であることが、XVIII巻で判明した。 見た目は、悠二曰く「中学生も怪しい」、腰までの長い髪の、凛々しい顔立ちの少女。主人公の一人。 「シャナ」という名称は坂井悠二によって付けられたもので、御崎市に来るまでは称号である『炎髪灼眼の討ち手』を氏名代わりに使い、称号以外で区別する必要があった時は「『贄殿遮那』のフレイムヘイズ」と名乗っていた。 戦闘時には、『炎髪灼眼』という火の粉を散らし紅蓮に輝く髪と炎のように煌く瞳に変化し、『夜笠』という黒衣を纏う。また、物語本編でのシャナは、“天目一個”から手に入れた大太刀型宝具『贄殿遮那』を振るって戦闘を行っている。 フレイムヘイズとしての経歴の浅さ、アラストールの力が巨大すぎることでの感覚の掴み辛さ、自在師としての適性の無さから、自在法は当初ポヒュラーで簡単な物しか使えず、格闘戦に特化した「変わり者」のフレイムヘイズであり、本人の密かなコンプレックスになっていたが、II巻で炎そのものを顕現させることができるようになり、『零時迷子』の力を利用した深夜の鍛錬で、その力を練磨していた。後には、マージョリー・ドーを師に、自在法の鍛練を積んでいた。 甘党でメロンパンが特に大々好物。I巻で『カリカリモフモフ』式食べ方を熱弁した。赤ん坊の時、複雑らしい事情からヴィルヘルミナに拾われた。 それから12年、移動要塞『天道宮』でフレイムヘイズとなるために、あらゆる英才教育を施された『在るべくして在る者』。 『天道宮』を出てからは、東欧、香港などに滞在したようだ。その道中でゾフィー・サバリッシュから、現代のフレイムヘイズとしての在り方と、女性としての嗜みを教えられていた。また、彼女とは後々まで、手紙での交流が続いた。 『天道宮』を離れてから御崎市を訪れるまでの間に出会ったフレイムヘイズをシャナが形容した台詞に、「お喋り男に爆弾女、乱暴絵描きに弾き語り、偏執狂に肝っ玉母さん」というものがある。明らかになっているのは、「お喋り男」ことピエトロ・モンテベルディ、「爆弾女」ことレベッカ・リード、「偏執狂」ことセシリア・ロドリーゴ、「肝っ玉母さん」ことゾフィー・サバリッシュの四名。他にも「乱暴絵描き」はミカロユス・キュイだと思われるが、まだはっきりとはしていない。 来日してからは、御崎市に程近い寄木市でウコバクを討滅した後、御崎市を訪れた。 御崎市では、既にトーチとなっていた悠二のクラスメイト「平井ゆかり」に存在を割り込ませて、彼女に成りすましていた。 平井家はシャナが訪れた時点で全員トーチとなっており、時間経過とともに皆消滅してしまったのでシャナの一人暮らしとなったが、当初は坂井家に入り浸っている状況だったため、平井家は単なる寝床に過ぎなかった。しかしヴィルヘルミナ・カルメルが御崎市に到来してからは、フレイムヘイズとしての活動拠点の役目も持つようになった。 「フレイムヘイズには必要無いもの」として他者との交友はアラストール、ヴィルヘルミナなどの一部の例外を除いてほとんど無く、当初は坂井悠二に対しても「モノ」としてそこらの石ころを見るような冷たいものだったが、“狩人”フリアグネとの戦いの中で悠二が見せた意外な有能さ、自分を理解してくれた嬉しさ、「一緒に戦ってる」と実感できた戦いの中での心の結びつきから、徐々に恋愛感情を抱いていった。 生まれと育ちの特殊性から、自身の恋愛感情になかなか気付かず、吉田一美が悠二と話している時に感じる不快感の理由が自分の独占欲にあるとIII巻終盤で気付き、IV巻でそれが恋だと自覚し、VII巻終盤でそれを自分の言葉としても外に出せるようになった。 しばらくの間フレイムヘイズが恋愛感情を持つことの是非について悩んでいたが、「フレイムヘイズも人を愛する」ということをアラストールから教わり、自身の感情を胸の奥に秘めておく必要は無くなった。そして“好き”の本当の意味を理解し、XII巻では遂に吉田一美に対して宣戦布告をし、吉田一美に対等の恋のライバル兼友達と認められた。 悠二の母・千草には、そういう女の子としての相談をいろいろとしていた。 料理は壊滅的に下手。VI巻で吉田に対抗すべく、悠二やアラストールに内緒で千草に料理を教わりはじめるが、千草でさえフォローしきれないあらゆる物を「黒こげの何か」にする恐ろしい腕前だった。 VIII巻で勇気を出して悠二に手作り弁当を渡した。しかし、中身は「圧縮されたふやけたメロンパン」と「黒こげの何か」づくしの弁当だった。だが想いは悠二にちゃんと伝わったようだ。外伝『ドミサイル』では一美の協力を得て苦心しながらも、パンネンクックを作ることに成功した。 12月24日を吉田との恋の決戦の日と定めるが、その当日にザロービ、ビフロンス、更にはサブラクが相次いで襲来。“徒”たちは討滅・撃退したものの、悠二の存在がこの世から欠落してしまった。 それでもシャナ達は精神的に危うい状態になりながらも悠二の生存を信じていたが、翌月になって帰郷した悠二は“紅世の王”にして『創造神』“祭礼の蛇”と合一していた。 シャナは悲愁な想いを抱きながらも、悠二を“徒”として討滅すべく、マージョリー、ヴィルヘルミナとともに戦いに臨むが、巧みに戦力を分断された上で、彼との一対一の戦いを強いられ、宝具と実力の前に敗北。“祭礼の蛇”坂井悠二によって、アラストールごと拉致された。 『星黎殿』に幽閉されたシャナは、金の鎖型宝具により絆の繋がりを含む異能の力を封じられ、大太刀『贄殿遮那』は取り上げられた上に、アラストールの意思を表出させる神器“コキュートス”とも引き離された。一時はヘカテーによる暗殺未遂が発生したが、持ち前の機転で“祭礼の蛇”坂井悠二の介入を招いて命からがら回避するなどしていた。 かつてメリヒムに教えられた『最強の自在法』の存在と意味をヘカテーによる暗殺未遂直前に気付き、悠二に対してそれを意識しつつ、今はまだその力が足りないと思っていた。 『大命』第二段階に入り、『神門』の向こう側にある『久遠の陥穽』へ向かう“祭礼の蛇”坂井悠二(とアラストール)を、『星黎殿』から見送った。 その数日後、悠二に会いに行くと遂に決意した所に、カムシンたちの『星黎殿』侵入で起こった騒動で世話役の“燐子”に連れ出され、その途中でカムシンが放った瓦礫の弾丸が歩いていた廊下を直撃した。 シャナは、寸前で気付いて回避するが避け切れずに重傷を負った。しかし、瓦礫の下敷きになった世話役の“燐子”を隠し持っていた短剣で止めを刺して脱出。その途中で一時的に復活した“天目一個”と邂逅し、その核である大太刀『贄殿遮那』で『タルタロス』を断ち切ってもらい、異能の力と『贄殿遮那』を取り戻した。 大伽藍に到着する頃には負傷も回復し、そこでウアルと遭遇し戦闘になるが、その最中に真の『炎髪灼眼の討ち手』として目覚めた。その際に自分の力に『真紅』『飛焔』『審判』『断罪』とそれぞれ名付け、その力でウアルを容易く討滅した。 その後、ヴィルヘルミナたちと合流して、情報交換を行った後に「悠二を追う」と宣言。それに同意したレベッカやヴィルヘルミナ、カムシンらと共に、『星黎殿』至近にまで迫っていたフレイムヘイズ兵団に『神門』や盟主たちの行方に関する情報を宣告した後、『神門』へと突入した。 『詣道』内奥へ向かう途中で待ち伏せしていたサブラクをヴィルヘルミナたちに任せて単身先に進み、ついに“祭礼の蛇”神体と共に『詣道』を遡って来る坂井悠二たちと邂逅、交戦を開始した。 その最中に悠二に自身の思いを告白し、このとき「もし“祭礼の蛇”が悠二を消し去って、ただの創造神になったら、私は“天破壌砕”を躊躇わず使う」と宣言した。それでも“祭礼の蛇”坂井悠二の決意は変わらず、悠二と戦闘を続けるが“祭礼の蛇”神体の帰還を阻止することは出来ず、ヴィルヘルミナたちと合流した後に最古のフレイムヘイズたちの成れの果てたる色付く影の助力によってその場を離脱し、“祭礼の蛇”神体たちより一足早く『神門』を抜けてこの世に帰還した。 上空からフレイムヘイズ兵団の不利を見て取ると、速やかにバティンを討滅して総司令官ゾフィーの元に向かい、退却作戦『引潮』に参加した。その途中、“祭礼の蛇”による大命宣布があったが、その心を揺らすことはなかった。 『引潮』作戦の要である戦場東部の保塁で、ザムエル・デマンティウスに力を貸す形で敵軍の進出を阻止していたが、二度目の宣布で自軍が総崩れとなってしまった。 その状況で、シャナらはセンターヒルから世界の歪みについての真実を知り、生き残った討ち手達を救出して次なる戦いに備えることを決意した。 ザムエルとセンターヒルが討ち手たちを助け出す間、シャナとヴィルヘルミナ(後にセンターヒルも)がシュドナイの足止めに回るが、決定打を与えることは出来なかった。 さらにマージョリーの罠もシュドナイはたやすく打ち破り、万策尽きたかと思われたところで、戦場に高速で来襲した“ゾリャー”に乗ったキアラ・トスカナとサーレによってその場にいたヴィルヘルミナやマージョリーごと回収されて戦場から脱出した。 戦場を脱出した後は、香港を経由し、『大地の四神』説得のためニューヨークを訪れ彼ら『三神』と合流。説明と説得に言葉を尽くし、その協力を取り付けた。その後に御崎市に突入する寸前の飛行機の中で、人間の通信機器を使って全世界のフレイムヘイズたちに天罰神の契約者としての宣布を行った。 御崎市決戦では、“ゾリャー”に乗って市の南部から突入。阻もうとしたオセを『審判』と『断罪』により撃ち払い、市中央部に設営された『真宰社』に到達した。 キアラ、サーレと別れ、『真宰社』最上部にて、ヴィルヘルミナとともに“祭礼の蛇”坂井悠二、シュドナイと交戦に入った。 その攻防の合間、これまで使わずにいた宝具『コルデー』に仕込んだ『大命詩篇』の断片をヘカテーを包む『大命詩篇』の繭に打ち込もうとするが、“祭礼の蛇”坂井悠二が事前に用意しておいた『暴君』による防御機能に阻止された。 戦闘の最中、意を決した吉田一美の頼みを聞き、彼女の首にかけられた『タルタロス』の鎖を断ち切ると、『ヒラルダ』の使用によってフィレスが現れヨーハンを呼び起こして、吉田を連れ[百鬼夜行]の“燐子”に乗って戦場から離脱していった。 戦場の不確定要素が減り、シャナは悠二と再戦を開始。ついに妨害を振り切って、『コルデー』をはめたままの『真紅』の拳を『大命詩篇』の繭に突き込み、目的を果たした。そこに収められていた自在式は、破壊ではなく改変の式で、新世界に「人を喰らうこと能わず」の法則が組み込まれ、結局は“徒”たちも“祭礼の蛇”もそれを認めたため、改変されたままの形で新世界『無何有鏡』が創造された。 そして一旦戦闘を休止して河川敷に移り、カムシンの最期を見届けた後、レベッカが分捕ってきた『天道宮』に乗って新世界『無何有鏡』へ向かう討ち手達を見送った。 そして、この世界に残った“ミステス”坂井悠二と最後の戦いに挑んだ。それはどちらかといえば、互いの信念のぶつけ合いであったが、シャナがリャナンシーの復元の自在式に同調していた吉田一美に復元してもらった悠二からの手紙を彼に突きつけることで、悠二は意地を収めた。 互いの思いを確かめ合った二人は口づけを交わし、それを発動条件としていたリャナンシーの転生の自在式が起動し、坂井悠二を独立した一個の存在に作り替えた。 そしてシャナは悠二とアラストールと共に私は他の誰も愛さないを歌いながら『天梯』を通って、新世界『無何有鏡』へ旅立った。 新世界へ渡り来た後、シャナは悠二と共に「混沌期」と呼ばれる“紅世”からの大量の新来の“徒”たちによる無軌道な放埓が沈静化するまでの数ヶ月の期間で、二人して大活躍だったとセンティアはレベッカに褒めていたようだ。 新世界が創造されてから一年後の春、悠二とは別行動をとって久しぶりに『天道宮』を訪れて、ヴィルヘルミナから『両界の嗣子』ユストゥスの成長の様子を聞いた後、レベッカと新世界の外界宿の再編成について語り合った。そして悠二と合流した後、ウァラクの手引きで日本のとある古びた陸上競技場に誘き出した[マカベアの兄弟]の構成員たちに対する作戦の変更を悠二から提案され、それを承諾した。そして、とある陸上競技場で[マカベアの兄弟]の“王子”の一人ダーインを討滅した後、『真紅』で天罰神の擬似神体を顕現させた後にアラストールが天罰神の『神託』を告げて、残った“徒”たちを解放した。そして作戦終了後に、悠二から変更した作戦に対する感想を聞かれて、アラストールと共に率直な感想を告げた後で悠二を励ました。 新世界へ渡り来てから二年後、[轍]の策謀を感付いて西日本の伴添町に赴き、[轍]の調査を行う間は伴添高校に転校して「坂井シャナ」という名前で通っていた。そして、[轍]のケレブスを討滅し、悠二と共に[轍]の策謀を阻止した。 新世界へ渡り来てから数年後、外界宿『ピエトロの食堂』を経営するセンティアの仲介でベルペオルと会談し、最近噂になっている『色盗人』について話し合った。その後、悠二と合流してアメリカ合衆国にある『桃源』に突入して『色盗人』の首領バロメッツと交戦し、降伏させる。 遠い未来、“祭礼の蛇”は浅い微睡みの中で、人と“徒”の共存を説いて回る行者となった坂井悠二の隣に、シャナの存在を感じている。 【コメント】 ☆アニメ版から大活躍していた。 ☆二代目『極光の射手』キアラ・トスカナとは対照的なキャラクターだった。 ☆2011年2月10日発売の電撃文庫MAGAZINEでの作者といとうのいぢへのインタビューにて、シャナは悠二と同様に単純な抗戦と阻止の裏に何かを隠していると書いてあった。 ☆ちゃんと悠二とキスを交わして、一緒に新世界『無何有鏡』へ行く事になって本当に良かった。 ☆序盤は「好き」という感情を理解することができず、ツンデレっぽかった。しかし、理解した後はデレデレというにはあまりに過激で、悠二に向かって驀進した。流石に、この愛の強さには悠二も創造神“祭礼の蛇”も焦ったのではないかな。 ☆[巌楹院]や[とむらいの鐘]のアシズや『九垓天秤』フワワやニヌルタやソカルや[宝石の一味]のコヨーテやフックスとも絡んでいたら面白そうだったのにな。 ☆高橋弥七郎の新作『カナエの星』のヒロインの一人である一条摩芙と性格が全く異なるが、容姿は似ている。 ☆アニメ版では身長は141cm。フィギュアを見る限りでは股下比率50%以上のモデル体系。 ☆番外編『しんでれらのしゃな』では、ヒロインのシンデレラとして登場している。 ☆番外編『かぐやひめのしゃな』でも、ヒロインのなよ竹のシャナ姫として登場している。 ☆番外編『おじょうさまのしゃな』でも、ヒロインのトーテングロ家の令嬢シャナとして登場している。 ☆番外編『さんじゅうしのしゃな』でも、主人公のシャナ・ダルタニャンとして登場している。
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The prince of darkness ◆hwBWaEuSDo とある国に一人の王子さまがいました。 彼のいた国は質素ながらも美しく、民も真面目に働く素晴らしい国でした。 王さまも立派な人で、その国の平和はずっと続くかと思われていました。 しかし、それはまちがいだったのです。 ある時、王さまは殺されてしまいます。 その犯人はなんと王子さまの実の父親でした。 父親は前々から自他共に厳しかった王さまを疎ましく思っていて、犯行に及んだのです。 王さまを殺した後、父親は自らが王となり国を治めることとなります。 けれども、その政治は先代の立派な政治とは違いとてもひどい政治でした。 その内その国は、民衆はなまけだし、土地は荒れ、自分勝手なルールの横行するとても汚い国になってしまいます。 そこにかつての美しい国の面影はもはやありません。 その惨状を目にした王子さまは一つのことを決意します。 それは父への復讐でした。 @ 暗い倉庫に黒髪の青年が居る。 彼は緑色のジャケットと青いジーンズを服装でその顔立ちはとても端正だった。 青年の名は、シズ。 しん、と静まりかえった部屋の中で彼は一人佇んでいた。 「これは……どういうことだ?」 彼はしばらく黙って立っていたがその後、沈黙に耐えかねたように呟く。 しかし、いつもはその言葉に反応してくれるであろう白い犬もここにはおらず、倉庫には再び沈黙が生まれた。 (……俺は確かにあの国に向かっていた筈だ……それなのに何故だ?) その問いに答える者は当然そこにはいなかった。 (……どうやら俺は面倒なことに巻き込まれたらしいな……しかし……生き残れ、か) 困惑しながらも先程の空間で言われたことについて彼は考える。 (あの奇妙な仮面を被った男の言った『他を蹴落としてでも生き残れ』という台詞はつまり……殺し合え、ということなのだろう……全くろくでもないことを考えるな) 恐らくこれはどこかの国の富豪の開いた悪趣味な催しなのだろう、と彼は推測した。 (確かに殺し合い自体は旅をしていれば別にそれ程珍しくことでもない) だが、それらは全て生きるためのことであり、今回のような無意味な殺戮を繰り返すものではなかったと彼は思っている。 「許されることではないな……しかし……」 彼はそこで言葉を切り、一つの懸案事項に対し思考を巡らせる。 (……殺し合いを止めさせて可能な限りの多人数でここから脱出する、などということが本当に可能なのか?) シズの気掛かりはそれだった。 絶対に脱出できると考える程彼は楽天家ではなかった。 (難しいだろうな……。これ程の大舞台を準備できるような輩のことだ。何かしら手は打ってある筈だ) 「……とにかくまずは武器を手にするべきだな」 一先ずは自分の身を守る術を得るべきだと彼は考え、隣に置いてあったデイパックに手を掛けた。 デイパックを開くと多種多様なものが出てきた。 その量は明らかにデイパックの容量をオーバーしていたが、このような技術もあるのだろうと当たりをつけてシズは特に気にしなかった。 (ふむ……食料などは一通りあるか……む、これは……) 中にあるものを確認していると、彼はあるものを発見した。 それは一本の刀だった。 (……これさえあればとりあえず自分の身を守ることは出来るな) そう思い、彼は刀を以前と同じく腰に掛けた。 次に彼は名簿を取り出したが、知っている名前は特になかったのでそのままデイパックにしまった。 (さて、俺はどうするべきか……) 一通りデイパックの中身を確認し終わった彼は再び今後の動向に対して思考を巡らす。 (問題は時間制限だな。 あの男のいうことを信じるならば三日でこの場は崩壊するらしい。脱出法を見つけるのに手間取って時間切れということも十分にあり得る) それだけは避けなければ、とシズは考える。 (とはいえあの男が約束を守る保障もない。だから……一先ずは脱出方法を探そう) そう方針を決めてシズは行動を開始した ただ、シズはもう一つ方針を追加することにした。 (だが、俺は絶対に復讐を成し遂げなければならない……だから、もしも脱出が不可能な時は……俺は……殺し合いに乗ろう) @ 彼がもう少し未来から呼ばれていれば、迷わずこの地獄の椅子取りゲームを打破しようとしただろう。 だが、この場の彼はまだ父へと復讐に囚われていた。 故に彼はこのような選択をすることとなった。 血塗られた王子さまは果たしてこの場でどう動くのだろうか? 【C-4/どこかの倉庫/一日目・深夜】 【シズ@キノの旅―the beautiful world―】 【状態】健康 【装備】贄殿遮那@灼眼のシャナ 【道具】デイパック、支給品一式、不明支給品(0~2個) 【思考】 0、 生き残る。 1、 一先ずは脱出を目指す。 2、 それが不可能ならば殺し合いに乗る。 〔備考〕 ※ 参戦時期は6巻『祝福のつもり』より前です。 ※ 殺し合いをどこかの国の富豪の開いた悪趣味な催しだと考えています。 【贄殿遮那@灼眼のシャナ】 シャナが所持する大太刀型の宝具。自在法も含め、刀に直接加えられる敵意によるあらゆる力の干渉を受け付けない最高に頑丈な刀。 投下順に読む 前:たいがーころしあむ 次:明久のパーフェクトえいご教室 時系列順に読む 前:たいがーころしあむ 次:明久のパーフェクトえいご教室 シズ 次:mother