約 3,012,881 件
https://w.atwiki.jp/thvision/pages/1475.html
《永遠の巫女》 PR.080 Command <PRカード> NODE(6)/COST(1) 効果範囲:目標を取らず、複数のカードに及ぶ効果 発動期間:持続 【デッキ1枚制限】 抵抗(3) 目標の〔あなたの冥界にある「博麗 霊夢」1枚〕を手札に加える。その後、ターン終了時まで、〔あなたの場のキャラクター全て〕は以下の効果を得る。 「【(自動α): 〔このキャラクター〕はダメージを受けない。】 【(自動α): 〔このキャラクター〕は、〔他のカード〕の効果の対象にならない。】」 「博麗神社の巫女として…」 Illustration:カズ コメント 「博麗 霊夢」専用の秘密結社。 回収後、自分の場のキャラクターに強力なカード耐性を与える。 主な効果は「博麗 霊夢」の回収。博麗 霊夢/9弾などは手札にあってこそ真価を発揮するカードなので、このカードで回収しよう。 ただし、この効果だけでは抵抗が付いただけで秘密結社の劣化になってしまう。このカードを使う場合、後者の効果を狙う必要があるだろう。 「博麗 霊夢」を回収した場合、自分の場のキャラクターは1ターンの間ほぼ無敵となる。そのカード耐性は神の加護すら上回る。 非常に強力な効果なので、「博麗 霊夢」の回収はオマケと考えて運用したい。 関連 スターターデッキ妖 プロモーションカード 博麗 霊夢/1弾 博麗 霊夢/5弾 博麗 霊夢/9弾 博麗 霊夢/13弾 博麗 霊夢/PR 符ノ壱“博麗 霊夢” 符ノ弐“博麗 霊夢”
https://w.atwiki.jp/gundamfamily/pages/1676.html
18 名前:通常の名無しさんの3倍 :2009/01/16(金) 20 37 42 ID ??? 1000 :通常の名無しさんの3倍:2009/01/16(金) 19 02 52 ID ??? 1000逝くとコウの永遠チェリー決定 前スレより。 アムロ「まさかここまでとはな…」 シーブック「僕も十年の呪いが…」 ロラン「ノーコメントです」 コウ「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおっ!!」 19 名前:通常の名無しさんの3倍 :2009/01/16(金) 20 55 49 ID ??? 18 モニク「永久チェリー?シーマに好かれてるだけいいじゃないのさ……ヒック」 シーマ「あ、あたしは別にコウが傍に居てくれれば、それで良いからねぇ……//」 フェルト「乙女ですね……」←ミルク ハマーン「言動に似合わず……しかも家庭的ときた。流石リーダー」 シーマ「いつの間にリーダーに……まぁ、良いけどね」 モニク「私なんて…ヒック、グイッ」 フェルト「お、落ち着いて下さい…」 ラル「お嬢さん。人には誰しも浴びるように飲み、嫌な事を洗い流したい時があるのだ」 ハモン「あの子は今ね。死なない程度に好きにさせてあげなさい」 フェルト「は、はい……(大丈夫かな……」 モニク「一生縁がない、だってさ……あははっ!笑えるわね!」 ハマーン「お、落ち着け……酒が入ると感情の起伏が激しいな、こいつ…」 モニク「笑いなさいよ!超鈍感男を好いてる、馬鹿な私を!!」 シーマ「誰も笑いなんてしないよ!明日は我が身だからねぇ……」 モニク「う……うぅ~~……」 フェルト「……寝ちゃいました」 ハマーン「……今は忘れろ、忘れるんだ……」 シーマ「……うん…よろしく頼むよ…」 フェルト「あれ?誰に電話ですか?」 シーマ「ちょっと野暮用さね」 エルヴィン「んしょ。やれやれ…おぶるのは僕なんだから…」 ハマーン「がんばれ、少年」 モニク「ぅ~~…マイ~~……」 次の日 モニク「ん…朝か……頭痛い……何が有ったか思い出せない……ま、良いか」 エルヴィン「(どうやら成功したみたいだ。よかった」 クロノクル「……はい、そうですか…いえ、こちらも迷惑をおかけしてますし…はい。では又……」 シャクティ「どうでした?」 クロノクル「上手く記憶を消せたみたいだ。エンジェル・ハイロゥ…まだまだ広く使えるな」 22 名前:通常の名無しさんの3倍 :2009/01/16(金) 22 05 02 ID ??? 18 シャギア「これ以上失うものなど、もう無いから~♪ どこまでも逃げ続け、取り戻せ青春を~♪ この家にいつかは魂帰るだろう~♪ このカラダ薔薇薔薇に、たとえ砕け散っても~♪」 オルバ「シーマ嬢に捕獲されていくコウの姿を謳った、永遠の童貞だよ」 シャギア「ボルテッカァァー」
https://w.atwiki.jp/akatonbowiki/pages/4417.html
このページはこちらに移転しました 永遠のつばさ 作詞/119スレ385 失われた情熱を取り戻せ! 今、走り出す俺たちの未来! 孤独から逃げ出すわけじゃなく、 燃え上がる太陽!俺たちのハート・・ 光放つ輝きはニセモノじゃない! 今、積み上げる俺たちの・・・! 死の苦しみが襲ってきたとしても、 忘れない宝物!俺たちの命・・・
https://w.atwiki.jp/3dspxz/pages/149.html
シナリオ攻略 第14話 『永遠の好敵手』 勝利条件 敵の全滅 敗北条件 味方の全滅 初期配置・増援 初期 初期味方 ユーリ エステル,ハーケン 神夜,リュウ ケン,春麗 モリガン,フランク レイレイ,ジェミニ エリカ,クルト リエラ,ゼファー リーンベル 初期敵 シールダー,メットールC-15×5 (1列目と2列目の小屋の間を半分以上進むと登場) 敵増援 プレリュード,ハンマーゴーレム×6,アウトブレーカー×4,フェイドゥム(球状・青)×4,フェイドゥム(角柱・赤)×5,メットールC-15×3,ブランシェ×4,ジョルヌ×2 敵データ 初期 ユニット名 LV HP 移動範囲 攻撃範囲 必殺技有無 複数技有無 基本経験値 獲得アイテム ユニット数 備考 シールダー 21 61805 6 4 有、範囲4 有、範囲3対象4 青銅の鎧 1 50%の確率で反撃でEPを消費しない,HP30%以下で50%の確率でDEF15%アップ,通常は崩し、必殺技は気絶の追加効果 メットールC-15 18 5508 4 1 5 敵増援 ユニット名 LV HP 移動範囲 攻撃範囲 必殺技有無 複数技有無 基本経験値 獲得アイテム ユニット数 備考 プレリュード 21 65058 6 2 有、範囲4 有、範囲4対象4 ドラグーン 1 毒無効,反撃でEPを消費しない,50%の確率で崩し 気絶無効,HP50%以下で50%の確率で全パラメータ10%アップ,通常は崩し、必殺・複数技は気絶の追加効果 ハンマーゴーレム 19 10902 4 1 6 通常は崩しの追加効果 アウトブレーカー 20 23292 飛行5 2 有、範囲2対象4 4 通常は崩し、複数技は気絶の追加効果 フェイドゥム(球状・青) 18 7627 飛行5 2 4 フェイドゥム(角柱・赤) 18 6356 飛行5 2 5 メットールC-15 18 5508 4 1 3 ブランシェ 19 10030 5 1 4 ジョルヌ 20 9863 5 2 2 通常は崩しの追加効果 イベント・敵撤退情報等 取得アイテム アイテム名 入手場所 デビルスター 右端 トリート 左端 薬品携帯用大型ポーチ シールダー前 攻略アドバイス 破壊可能なオブジェにアイテムは隠されていなかった。 『戦場のヴァルキュリア』のランドグリーズ城が舞台のマップ。 メンバーが二手に分かれているのでソロユニットもヴァシュロン、リンドウ、ワルキューレ、ねねことこの話で加わるフレン、デビロットとなっている。 増援は左の壁側と正面に出現するがマップを進まないと現れないので態勢を整えてからしてもよい。 ボスのシールダーに毒が効くので、ゼファー&リーンベルのサポートアタックなどを利用すると楽。 戦闘前会話 敵ユニット名:味方ユニット名 隣接シナリオ 第13話 『ワルキューレたちの冒険』 第15話 『ゲイングランド・システム』
https://w.atwiki.jp/kodamasuru/pages/198.html
永遠の誓い Q01-085/R RRR カード名:《永遠の誓い》(エイエンノチカイ) LPリミット:60 イベントアイコン:SPEED END:- 【相手のLPが自分より20%以上高い時】あなたは自分のLPを5%アップし、相手の場にあるサポートを3枚まで選び、アルバムに置く。 祐一「おまえを全ての災厄から守り、二度とおまえから、離れない」 条件が難しい、サポート破壊。 最速でも相手が80%でないと使えないため、果たして、その時点で3枚サポートをアルバムに送る事に意味があるのかが疑問である。 サインカードが存在する。 何故か、公式サイトのカードリストには「永遠の誓い――」となっている。 参考画像 http //s.ameblo.jp/emo-0216/entry-10661025544.html
https://w.atwiki.jp/magamorg/pages/8910.html
永遠の勇者 SR 光/闇 コスト9 13500 ロスト・クルセイダー ■マナゾーンに置くとき、このカードはタップしておく。 ■マナ進化GV―多色クリーチャーを3体自分のマナゾーンから選び、このクリーチャーをその上に重ねつつバトルゾーンに出す。 ■メテオバーン―このクリーチャーが攻撃するとき、このクリーチャーの下のカードを好きな数選び、墓地に置いてもよい。そうした場合、自分の山札から墓地に置いたカードの枚数だけ多色呪文をコストを支払わずに唱えてもよい。その後山札をシャッフルする。 ■このクリーチャーがバトルゾーンから離れる時、代わりに場の自分の多色クリーチャーをこのカードの下に置いてもよい。 ■T・ブレイカー(このクリーチャーはシールドを3枚ブレイクする) 5色の力が集うとき、真の力が呼びさまされる! 作者:(yya) 評価 はじめまして~。とりあえず、オリカ作成時はテンプレートに直接書き込むのではなく『新しいページ』で、作ってください。 カードの方ですが除去耐性のコストがメテオバーンの次弾補充に繋がっていて、おもしろいと思います。まぁ、このメテオバーンなら進化時にある3枚だけでも、事足りる性能ですが -- 紅鬼 (2011-01-05 21 47 18) yyaさんはじめまして。早速ですが、 3つ目の項目少しおかしくないですか? -- たも (2011-01-06 00 46 09) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/dmorika/pages/3368.html
《灯火の輪廻ルーカナーラ》 灯火の輪廻ルーカナーラ C 火文明 (2) クリーチャー:アートマン 2000 回帰-このクリーチャーを「リンネ」能力によってバトルゾーンに出した時、このクリーチャーを裏向きにして自分の山札の一番上に置いてもよい。そうした場合、自分の墓地から進化ではないアートマンを1体タップしてバトルゾーンに出す。 作成者:エウブレウス コメント:新能力「回帰」を持つ単色Cサイクルの火担当。 収録セット DMO-28 「輪廻編 第4弾 天元解脱(マスター・ワールド)」 参考 回帰??
https://w.atwiki.jp/kimo-sisters/pages/168.html
735 :永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM :2007/10/30(火) 12 36 40 ID d/Dwn6Zq ※※※ 雨が似合う。 僕にとっての姉は、そういう人だ。 勿論、憂鬱な雰囲気を連想するとかではなく、落ち着いた幽玄な空気を纏っている様が雨の持つ独特な 世界観と合致するという意味で。 姉のいる和室――障子張りの窓から見える暗い空は、だから憂鬱には見えない。 静かな風景は、僕にとっては好ましく、美しく映えるのだ。そして姉は、それに近似した雰囲気を持っ ている。 「しろ姉さんは、着物を着たら似合いそうだよね」 姉のいる和室。 僕はそこに在る独特な空気を纏った姉にそんな事を云ってみる。 「ん?」 と云ってこちらを向いた肉親は、幽邃な瞳を細めて、口元をオメガみたいに歪めて見せた。 「クロは私の着物姿が見たいの?」 硯と筆を傍らに、姉は微笑む。 「似合うかな、と思っただけだよ。ここ、和室だしさ。しろ姉さん、そういうの好きだろう?」 若い女性にしては珍しく着付けも出来るのだし。 「ん・・・」 姉は瞳を閉じて、幽かに頷く。 「確かに和装は嫌いじゃない。寧ろ好ましいと思うわ。けれど、現在の洋服に比べれば合理性で劣る。 兎角、手間がかかることが問題ね。だから特別着る気は無いのだけれど――」 開眼し、瞳だけで僕を見る。 「クロがそう望むなら、これからは和装にしても良いわ。着物も何着か持っているし」 「胴衣もあるしね」 「あんなものでは外には出られない」 そう云って姉は笑った。 (袴姿、綺麗なんだけどな) 僕は肩を竦めた。 会話が途切れると、姉は作業を再開する。 大きな色紙に筆を走らせ、 『蠢 如 木 鶏』 シュントシテモッケイノゴトシ。 相変わらずの達筆でそう記す。 「達生篇?」 「聊斎志異」 「ああ――促織か」 姉は頷きながら筆を置く。 「今度は誰に頼まれたのさ?」 「同門の後輩。自宅の道場に飾るそうよ」 満足いくものが書けたのか、姉の表情は明るい。 書画の道に通ずるみっつ上の肉親は、知己やその縁故筋から一筆頼まれることが多い。今回の色紙も そのひとつだろうとは聞くまでも無く分かった。 「クロ、私はこれを届けに往ってくるけど、貴方は今日はどうするの?」 「ん~?特に予定は無いなぁ。部屋で本でも読もうかな、と」 「そう」 姉は少し考えるような仕草で頷いて、 「出来るだけ早く帰ってくるから、そうしたらお話でもしましょう?」 柔らかく微笑む。対する僕は僕は首を捻る。 「しろ姉さん」 「何?」 「同門の後輩って、女の人?」 「・・・・・・」 姉の動きが止まった。 こういう場合、大抵姉は「一緒に来る?」と僕を誘う。 それが無い時は共通する条件があるのだが・・・。 (それが何かは敢えて云うまい) 僕が黙視していると、姉は顔を左右する。 736 :永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM :2007/10/30(火) 12 39 11 ID d/Dwn6Zq 「・・・違うのよ。あの娘は武芸一本やりで男嫌いなところがあるから、クロを連れ往っても仕方ない と判断しただけ。他意はない」 何がどう違うのかはわからないが、姉に同行を求める意思が無いなら突付いても仕方ない。 彼女の通っていた道場は基本的に男子禁制の場所だったから、聞くまでも無く対象は女性だろうと思っ ていたけど。 筋道立てて僕を連れて行かない理由を話す肉親の姿は、なんだか悪戯を見つかった子供の云い訳みたい に感じらて、微笑ましかった。 と、ポケットに入れていたケータイが鳴った。 「ごめん姉さん、ちょっと外すね」 和室を出て、自分の部屋へ。 歩きながら画面を見ると―― 「絵里ちゃん?」 五代絵里。 意外な人物の名があった。 この間の五代邸来訪の際にアドレスの交換はしたのだけれど、連絡は一度も取っていなかった相手だ。 何にせよかかって来た事は事実。僕はケータイを耳に当てる。 「もしもし」 「あ・・・五代、です。くろさん、ですよね?」 電波越しの甘い声。 それは紛うことなく五代絵里のそれであった。 「うん。そうだよ。絵里ちゃんだよね」 「はい。絵里です。突然お電話しちゃいましたけど、今、大丈夫でしたか?」 「うん。大丈夫だよ。暇を持て余していたところ」 「良かった・・・」 ホッとしたような声。 如才無いと云うのではなく、本当にこちらに気を砕いているのだろう。そう感じられる声と気配。 「急に電話をしたので、迷惑になってないか不安だったんですが・・・」 「いやいや。電話くらいで迷惑とか思わないから気にしなくて良いよ。それで、どうしたの?」 「はい。え、と・・・」 沈黙。 それは多分、逡巡。 何か云い難い事なのだろうか。 「この間の・・・くろさんの・・・・絵のことです」 「絵?僕の描いた?」 「はい」 返事の声は強い。 「――この間、私が何回も見たいって云ってしまったたじゃないですか。あの時はしろさんも褒めるく らいの絵ですし、どうしても見たかったんですが、今になって思うと随分失礼なことを云ってしまった と。それでお詫びの電話をしようと思ったんです」 「ああ・・・」 僕は頭を掻いた。 「そのことは別に良いよ。と、云うか、描いたんだよね、一枚」 「え・・・っ」 驚いたような、それでいてどこか高揚感を感じさせる気配が届く。 「こないだ云ったように、僕の絵は大したことは無い。それを判って貰うには実物を見てもらうのが一 番良いかなと思ってね」 百聞は一見に如かず。 そう考えて描いてみたものの、五代邸を訪れる理由も無く部屋の隅に放置されていたのだが。 「あ・・・あのぅ・・・」 「ん?」 「やっぱり見たいって云ったら、クロさんは怒りますか・・・・?」 その言葉を聞いて、僕は噴出してしまった。 「素直だね、絵里ちゃんは」 「あぅ。ごめんなさい」 「いや、いいよ。あんなものいつまでも部屋にあっても邪魔なだけだし。絵里ちゃんが見たいなら好き なだけ見ると良いよ」 用が済んだらさっさと処分できるのだ。 「絵里ちゃんのトコって日曜も部活あるの?あいてる日があればその日にでも見せるけど?」 「あ、あのっ、それじゃあ、今日とかはダメですか?」 737 :永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM :2007/10/30(火) 12 41 45 ID d/Dwn6Zq 「今日?」 僕は外を見る。雨は相変わらず降っている。 「僕は平気だけど」 「それなら、私が伺います。それで大丈夫ですか?」 「ん~。いや。僕がそっちに往くよ」 「でも、外は雨です。元元無茶を云ったのは私の方ですし、御足労願うわけにも・・・」 「良いんだよ」 僕は外を見たまま目を細める。 「雨の日に外を歩くの、好きなんだ」 これは気遣いとかじゃなく、本当のこと。 「だから絵里ちゃんの都合の良い時間にそっちに往くよ。いつなら大丈夫?」 「くろさん・・・有難う御座います」 私はいつでも大丈夫です。 絵里ちゃんは嬉しそうにそう云った。 多分、受話器の向こう側には笑顔があるのだろう。そこまで歓迎されるのは嬉しいのだが、これが暫く 後には失望に変わると思うと少し気が重い。けれどずっと期待されるよりはマシだろう。 じゃあ今から往くね。 そう云おうとした瞬間。 「――え?」 僕の掌から、ケータイが消えていた。 「では、これから伺わせて貰うわね」 「ね、姉さん!?」 いつの間にそこにいたのか。 僕のケータイを耳に当てた姉が、絵里ちゃんにそう返していた。 「しろさん、いらっしゃったんですか?」 絵里ちゃんも突然返事をよこした人物に驚いている。 「ええ勿論。私はいつでもクロの傍にいる。――じゃあ、すぐに往くから」 姉はそう云って通話を終了させた。 「しろ姉さん」 僕が口を開きかけると、姉はそれを無視してどこかへ電話をかける。 慣れた手つきだ。知人の類だろうか。 「生駒(いこま)。私だ。突然で悪いけど、今日はそちらにいけなくなった。・・・ええ。ええ。 そう。緊急の用事。絶対に外せない懸案だ。ええ。色紙自体は書き上がっているから、近日中に 渡せると思う。ええ。それじゃあ」 ピッ。という、電源を切る音。 状況が飲み込めずに見ていると、姉はこちらを向いて、 「どういうことか説明してくれるかしら」 なんて云って微笑んだ。 いや、それは僕の科白だろうに。 「ふぅん」 説明を受けた姉はそっぽを向いたまま、そんなふうに呟いた。 憮然とした顔をしている。何か気に触ったのだろうか? 「しろ姉さん、何でそんなに機嫌悪いのさ?」 「別に悪くない」 けんもほろろだ。 元来、鳴尾しろと云う女性は感情の抑制が上手く、その行動形式は合理的で無駄が無い。形而上、形而 下問わず、巧みな取捨選択と遮断能力が具備されており、表情の変化も社交辞令を除けば、ほぼ無い人 物だ。だからこんなふうに“拗ねる”事は珍しいのだが―― 「クロが私以外のために絵を描くなんて・・・」 などとぶつぶつ云っている。 何で絵を描くと不機嫌になるのか理解できないが、触れないほうがいい気もする。藪を突付いて蛇を出 す趣味は僕には無い。 雨降る道を傘さして歩く。 使用される雨具は一つだけ。 僕と姉は同じ傘を使い、それ故だろう、姉は僕の身体にぴったりとくっついて離れない。 濡れては困るものを運搬しているのだから傘は2つあったほうが良いに決まっているが、 「傘を2つも出す必要は無いでしょう。1つで充分」 なんて云い切られてしまえば、惰弱な弟としては抗う術も無い。 738 :永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM :2007/10/30(火) 12 44 20 ID d/Dwn6Zq (これって、相合傘になるんだよなぁ・・・) ツンと澄ました顔をする実姉の横顔を見ながら心で呟いた。 姉の腕は僕の片腕にしっかりと巻きついて、離れる気配も無く、照れている様子も無い。 (姉弟なんだから当たり前か) 意識する僕のほうがどうかしているのだろう。 姉の態度も雰囲気も、“これが当然”と云わんばかりのもので、自然体である。 姉は凛とした美人だ。 当然人目を惹く。 それはこの場合、僕に衆目が集まることと同義であって・・・。 「・・・しろ姉さん」 「・・・何」 今だ機嫌は悪そうだ。 「その・・・手、離さない?」 それでも怯まず提案してみると。 ぎゅっと。 姉は殊更力を込めた。 何も云わない。 こちらも向かない。 気配と態度のみでの拒絶だった。 もう一度問うてみた所で、返ってくるのは峻拒だけだろう。 姉はこうと決めたら我を曲げない。 そして僕には捻じ曲げる力も術もないのだ。 (我慢するしかないのかなぁ) 吐息をひとつ。 尤も姉にこうされているのは別段嫌ではない。余人の視線が嫌いなだけだ。 (だけど声を掛けられるわけでもないし) 耐えられなくは無い。 僕は自分にそう云い聞かせた。 ※※※ 僕の住む街は海と山に挟まれた一応の大都市である。 地形的には坂が多く、台地や丘も多い。 海沿いには、大きな公園があって、カップルなんかの定番のデートスポットになっている。 山のほうに目を転じれば、そこには大きな神宮がある。 神破(みわ)神宮と云うのが一般的な名称で、『陰影』を神様として祀っている。 一応は無格社だけど、その権勢はかなり大きいのだと聞いたことがある。 神宮そのものは山4つに及ぶ巨大な敷地を持っていて、宮内は内宮(ないくう)、外宮(けくう)に別 れており、更にその中には上社と下社があるらしい。 内宮に務めるものは神破の血縁の人間に限り、外部からきた人間は外宮に務める。 その外宮には大きな道場があって、武技や作法を教えてくれる。内宮にも類似した施設はあるみたいだ けど、そちらで学べるのは神破の縁故だけだと云う話。 姉はその外宮の道場、神迎(しんけい)流・練舞館(れんむかん)の所属で、奥許しを受けている。 その為だろう、嘗ては外宮の禰宜さんから、神人にならないかと勧められたらしい。 けれど、歴史研究の夢のためにそれを断った。 その神破山を囲むように、街には大小の丘があって、そちらには教会その他の宗教施設がある。 海に近い丘の上には大きな管風琴のある教会があるし、他の丘には私設の大きな図書館があったり、寺 院や魔女のお屋敷や、古い塔なんかもある。 塔は街中にも一つあるけど、こちらは繁華街の一部で、タワーと表記したほうが正しいだろうか。街の 名を冠するそのタワーは展望台兼デパート兼ホテルになっていて、特に頂上近くの上層階にあるレスト ランは、料理も眺めも良質である。 街の中にもある程度の区切りがあって、特に雪見台(ゆきみだい)と呼ばれる地域はお金持ちや名族な んかが多く住んでいる。 雪見の中にも序列その他があるみたいだけど、「外」に住んでいる僕には関係のない話。 五代絵里の住む家屋は、その雪見の中にあった。 相対的に見て、そこそこの大きさの門の前へやって来る。 739 :永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM :2007/10/30(火) 12 46 39 ID d/Dwn6Zq 姉とは相変わらずの相合傘。 勿論、手もしっかりと繋がれている。 そろそろ五代邸に着くのだし、離した方が良い。 道中、そう提案したけれど、返ってきたのは矢張り無言の拒絶だけであった。 「クロ」 呼び鈴に手を伸ばしかけた僕を姉が呼び止める。 その顔は正面を向いており、僕を見てはいない。 「この間も云ったけれど、女の子の名を気安く呼んでは駄目よ?たとえ相手が年下であったとしても、 自らが望んだとしても、名前で呼ぶなんて絶対に駄目」 凛とした、真剣な瞳だ。 雨の良く似合う自慢の肉親は、心底僕にそう戒めているのだとわかった。 「絵・・・、じゃなくて、五代さんがそう望んでも?」 「ええ、勿論」 「・・・・」 姉の云うことは古風だけど正論なのだろう。 けれど、と僕は思う。 ケースバイケース。 人それぞれのような気がする。 五代絵里とはそれほど話していないけれど、彼女は名前で呼んであげるほうが打ち解けてくれるタイプ のように感じられた。 姉にそれを説明して、果たして納得してくれるだろうか? 「それでも礼儀を守るほうが大切」 そんな風に首を左右する気がする。 (打ち解けることなんて、しろ姉さんにとっては、二の次・三の次なんだろうしなあ・・・) 堅さと、そして美しさが直結した人なのだから。 それが、鳴尾しろと云う世界。 鳴尾しろと呼ばれる風景。 雨霞の中に溶け込んで、それでも尚、存在感を放つ巌のような在り方。 畢竟するに、自然体。 僕とは違う。 (そう――違うんだ) 僕は僕らしくあれば良し。 (あとで怒られそうな気がするけどね) 苦笑をしながら、呼び鈴に手を伸ばす。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 小さい頃。 私は、絵が嫌いだった。 画家を目指した父は、夢破れて後、それでも絵画に拘泥を続けた。 絵。 絵。 絵。 絵。 来る日も。 来る日も。 来る日も。 来る日も。 時に自ら筆を取り。 時に夢成した人の賞翫をし。 喜び、落ち込み、心惑わされて。 家よりも。 友よりも。 なによりも絵に魅入られ。 自らの娘に、見知らぬ人物の見知らぬ作品を語り続ける。 そんな環境が嫌だったのか。 それともそんな父をみるのが嫌だったのか。 どちらかなんて、今もわかっていないけれど。 740 :永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM :2007/10/30(火) 12 49 17 ID d/Dwn6Zq 多分、五代絵里と云う人格は、絵と、それに付随する世界を憎んでいたのだろう。 “その日”も、絵に囲まれた退屈な一日だった。 父の勤務する芸大の展覧会。 そこの学生や教員、そしてその縁故のプロやアマの、文字通り玉石混交の宴。 無感動な私はその中にいた。 ある人がある絵を褒め。 ある人がある絵を批評する。 感嘆する者。 付き合いで居るだけの者。 暇つぶしに来た者。 自分の絵の評価を遠巻きに気にしている者。 様様な人。 様様な顔。 そして、絵。 その空間も、私にとっては退屈でしかなかった。 来客・知人の挨拶に追われる父から離れ、一人で鑑賞して廻る。 否。 その時の私は、多くの絵や人人を視界に入れながら、唯会場を歩いていただけだった。 他人ばかりの街並みを独りで歩く時のように。 背景を気にすることも無く。 風景を目にすることも無い。 右から左。 後ろから前へと。 画廊は唯の通り道でしかなく。 私はそこに居るだけでしかない。 だから、“そこ”で足を止めたのも、偶然か気まぐれに属するものだったのだと思う。 『不滅のクロ』 それが、その絵の題名だった。 「なに、これ・・・・」 黒。 一面の黒。 大きな額の中には、真っ黒な何かがあった。 白が無い。 いや、一部はある。 だけど、それは明らかなマイノリティ。 真っ黒な四角のなかに、無数の白線が抱かれるように、軋むようにあるだけだった。 普通、白い世界に赤や青や黄色があって、風景を。人を形作ると云うのに。 四角い世界は黒く塗りつぶされ、残った白が“線”となる。 (これ・・・逆だ) 『白』に色を塗るのではなく。 『白』を残すことで世界を表現しているんだ。 「・・・・」 私は見入っていた。 唯、逆転させるだけ。 それならば特に目を引かなかっただろう。 私の“無関心”に飲み込まれ、虚無の中に消えるだけ。 けれど。 けれどこの絵には、人を惹きつける魅力があった。 華―― そう呼ぶには少し違和感があるけれど。 不思議な何かが絵の向こう側にあるのだ。 それは私だけではないようだ。 漆黒の周囲には、街灯に集る羽虫のように、多くの人が立ち止まる。 741 :永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM :2007/10/30(火) 12 52 06 ID d/Dwn6Zq それで気づいた。 (この絵、良い出来なんだ・・・) 往き交う人人なんて気にしてなかったけど。 視界を広げれば、黒い世界に目を向けている者のなんと多いことか。 大多数の支持がイコールで良作ではない。 けれど、良いものは多くの人に響く。 それもまた、事実。 黒の前にいる人人は、皆感嘆の相好を浮かべていた。 だから。 だから、唯独り。感心でも関心でもない表情で『不滅のクロ』を見つめるその少女は異質だったのだろ う。 凛然とした――姿そのものが荘厳な風景画の様な女性。 知性と、意志の強さを感じさせる瞳。 静かで、でも力強い空気を纏った、随分と大人びた少女。 「――――」 私は、そちらにも見蕩れた。 容姿ではなく。 “在り方”として美しい。 唯、そこに在る。 それだけで魅力を感じさせる女性だったから。 「あの・・・」 どうしてだろう。 私はその女性に声を掛けていた。 「何か?」 女性は優美に私を見つめる。 「この絵、どうですか?」 私が描いたわけでもないのに。そんなことを尋ねていた。 「ん・・・」 女性は微笑すると、『不滅のクロ』に目を遣った。 「まあまあ、かな。モチーフが良かったからかもしれないけれど」 「モチーフ?」 「ええ。題材。気持ちを乗せるなら、それが一番大切」 女性はこちらを向かない。微笑したまま、黒い絵画を見つめている。 「・・・これって、カップルですよね?」 黒の中の白は、一組の男女のように。 「カップル?そう。そう見えるの」 くすくすと女性は笑う。 嬉しそうにも見え、滑稽さを嘲笑うかのようにも見える。心底の読めない笑みだ。 私は頷きながら話題を変える。唐突にすぎるかな、と自分でも思うけど。 「これって、なんで2色なんでしょうか?」 この絵画には、白か黒しか無い。 意匠としてそうである、と云われてしまえばそれだけなのだろうけど、この絵には何か、それ以上の意 図を感じる。 「陰陽、光陰は総ての基礎。別に不思議は無いわ」 「でも」 私は首を傾げる。 「多くの色って、必要じゃありませんか?表現の都合上」 「そう云う場合もあるというだけの話。“この世界”はね、これで充分。――しろに必要なのはクロ だけで。クロに必要なのは、しろのみ。それで良い」 他はいらない。女性はそう結んだ。 「2色なのに、世界を表現できるんですね」 「2色だから、世界を表現できる」 女性は首を振る。 「では作者は、2色で世界を表せたってことでしょうか?」 「或は、描き手の心象には、2色しかないのかもしれない」 不思議な表情で女性は瞳を伏せた。 刹那。 「至路」 連れがいたのだろうか。 一間程離れた距離から誰かが女性を呼ぶ。 742 :永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM :2007/10/30(火) 12 54 37 ID d/Dwn6Zq (しろっていう名前なのか) 女性は自らの名前を呼んだであろう人物に歩み寄った。 「ああ、朝歌先輩。どうでした?ここは」 「抽象的な概念は、私には向かない」 「そうでしょうね。この絵はどうです?」 「Rorschach test」 「まあ、間違いではありません」 女性はそう云って笑ってから、先輩と呼んだ人物を巡回路の向こうへ促した。 「じゃあ、私は往くわね」 そして、こちらに振り返る。 「貴女には、この絵はどう見えるのかしらね」 「・・・・私には、女性が男性を抱きしめているように見えます」 「抱きしめる、か。なるほどね」 しろと呼ばれた女性は僅かに頷いたようだった。 「貴女の数だけ、答えはあるのだと思う。作者が何を描いたとしてもね」 女性は手を振って、その場から歩き去った。 「・・・・」 私は『不滅のクロ』を見つめる。 漆黒に蝕まれ、捩れた白い線の集合のみで描き込まれた抽象画。 そこには多分、理解を超えた魅力が具備されているのだろう。 (もしかしたら) 「絵って、凄いものなのかも」 初めてそう思えた。 詩と絵画は自らが心を向けなければ響いてこないもの。 父はそう云った事がある。 私はその時、その意味がわかったのだと思う。 「他の絵も、見る気になれば見えてくるものなのかな?」 そう思うと、無味無感想な背景でしかなかった展示物が途端に色付いて見えた。 目に入るものはこんなに華やかだったのか。 あの絵も。 その絵も。 まるで違うもののように見える。 (凄い・・・。絵って凄い・・・!) その時、私は素直に感動したのだと思う。 そのきっかけをくれた女性はもう見えない。 だから、津梁となった黒の絵画を見上げる。 「・・・・・」 綺麗な絵。 そう思っていたけれど。 周囲から抜きん出ているその漆黒は、魅力だけではない、『妖気』のようなものを纏っている様に見え た。 女性が男性を抱きしめている。 私はさっきそう云ったけど。 改めてみた暗黒の世界は。 女性が男性の首を絞めているようにも見えたのだ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 目の前には、小動物を連想させる小柄な少女。 真横には、物心つく前から共に在る実姉。 ここは五代邸の応接室。 以前にも来た、あの場所だ。 違いと云えば五代先生の姿が無く、代わりに姉が居ることと他人の絵ではなく、自分の絵を持って来た ことだろうか。 甘い声と愛くるしい容姿を持った年下の少女は爛爛とした瞳を僕と僕の荷物に向けている。 対して真横の姉は醒めた瞳でどこかを見ていた。それなのに、身体は押競饅頭みたいにぴったりと僕に くっついて、ぐいぐいと押して来ている。 (今回もこうか) なんて僕は思う。 743 :永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM :2007/10/30(火) 12 57 24 ID d/Dwn6Zq 姉はこういった席で数人がけの椅子やソファに座ると、意識的か無意識的か、こうやってくっついて来 ることが多い。動きに対して表情は凛としたそれなので、妙にアンバランスだ。 絵里ちゃんは目の前の姉弟を不審に思わないのだろうか。 一つの傘で手を繋いで遣って来て、ピッタリとくっついて座る―― 僕が第三者であれば「ドン引き」しているであろう光景なのに、何も云わない。 それどころかその片割れにして主原因の鳴尾しろと款談している。 「私、ずっと兄弟に憧れてたんです。だから、しろさんとくろさんが凄く羨ましくて」 私の兄弟の理想像なんです。 真っ直ぐな瞳でニコリと笑う。 外連の無い純白な笑顔。 思ったことを素直に外に出せることが、五代絵里と云う少女の魅力であり、本質。 瞬時に推考を練り、フィルタを掛けて言葉を外に出す姉や、内に籠もったまま周囲に流される僕とはま ったくタイプの違う人間だ。 五代絵里の言葉に、鳴尾しろは「ええ」、「そう」、「ありがとう」、と、優美な笑顔で応じている。 それは、社交辞令に作り笑いで返すのと似た感覚。 けれども普段の姉は、心の底から褒められようとも「貴方の評価に興味は無い」とバッサリ斬り捨てる 人なので、これでも気を使っている方だと云える。 次いで、対面に坐す少女の“純粋”は、姉の外観にも到達する。 「しろさんって、とてもお綺麗です」 憧憬でも阿諛でもない。 先程の瞳と同じ。 唯、そこにあるものを認める言葉。 それを鳴尾クロの実姉にぶつける。 対する姉は矢張り変わらず。 心動かされる事も無く、 「光栄ね」 と、薄く笑った。 「くろさんはどうですか?しろさんのことを、お綺麗だと思いませんか?」 「ん?」 諦観していた僕は急に水を向けられて、少し驚く。 「うん。しろ姉さんは綺麗だよ」 特に考えることも無い。思ったことを口にした。 したら―― 「な、ななな、な・・・急に何を云うの・・・っ。綺麗なんて身内に云われても、す、少し、も・・・ 嬉しくないんだからね・・・・!!」 茹蛸が隣に発生していた。 「急にも何も、普通の会話の流れだったじゃないか」 「ち、違う。そうじゃなくて、そうだけど、夜討ち朝駆けには、慣れているけど、急には対処出来ない っていうか、とにかく違うのよ」 支離滅裂だ。姉はどうしたのだろう? 「しろ姉さん、どうしたのさ?」 間近にある肉親の顔を覗きこむ。 すると。 「な、何でそんな近くに顔を寄せているのよ・・・~~~~~」 異なことを云う。 くっついて座ったのはそちらではないのか? 「わ、わかったわ。御小遣いが欲しいのね。はじめからそう云えば良いのに」 赤い顔でプイとそっぽを向く。 唐突すぎてついていけない。 「小遣いの無心なんてしてないんだけど」 僕の顔には?マークしか浮かばない。 首を捻りながら対面に顔を戻すと、五代絵里がくすくすと笑っていた。 「しろさんとくろさんって、本当に仲が良いんですね。素敵です」 「いや、確かに仲は良いけどさ・・・」 この状況は何なんだ? 再びの傾首。 「平静、平常心、平城京・・・」 あちらを向いたままの姉はぶつぶつと何かよくわからないことを呟いている。 「ん~と、しろ姉さんが壊れたみたいなんで、僕の用件・・・って云うか、本題を済ませておくね」 744 :永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM :2007/10/30(火) 13 00 47 ID d/Dwn6Zq はい、と包みを渡す。 その中には勿論、鳴尾クロと云う人間の『弱さ』が仕舞われている。 「は、拝見します・・・・!」 包みを受け取った絵里ちゃんは、ワクワクを隠せない様子で微笑んだ。 この笑顔が今から引きつった作り笑いに変わるのか。 そう思うと少し辛い。 包みを解く五代絵里の動きがスローに見える。 こういった時間は刹那であっても長く感じるものだ。 書き殴りの水彩画は、すぐに他家の空気に晒される。 絵の閲覧を望んだ美術部員は、愛くるしい笑顔を消していた。 無。 そこに表情は無く。 目の前の四角い弱さに心が移ろう。 「・・・・・・」 彼女は無言。 「・・・・・・」 僕も沈黙。 「和同開珎、万年通宝、筑波万博・・・」 一人だけぶつぶつ。 五代絵里は動かなかった。 カチカチと時計の針の進む音と、誰かの呟きだけが時の流れを教えていたけれど、小動物のような少女 は、置物のように――否、目の前の弱さに魂を吸い取られたかのように、微動だにしなかった。 (褒め言葉でも捜しているのかな・・・・?) どうかな、なんて聞く気は僕には無い。 あまり良い出来でなかったことは描いた本人が良くわかっている。 だから、唯静かに。 目の前の少女の言葉を待った。 「・・・・っ・・・・っ・・・・・」 変化があったのは少女の手。 少しずつ、だけど確実に、彼女の手は震えていた。 「・・・絵里ちゃん?」 たまらず声を掛ける。 「――え?」 泣いていた。 表情が変わらぬまま、少女はポロポロと大きな涙を流していたのだ。 「な、何で泣くのさ!?」 「ぅ・・・・っぐ・・・」 驚く僕と、首を振る少女。 「違、うんです。この絵・・・見ていたら、・・・感動して・・・」 「え?その絵で?」 「は、はい・・・」 五代絵里は涙を拭う。 「綺麗な景色を見ていると、心が震えて、涙がでるでしょう?・・・・それと、同じなんです。この絵 が、凄く綺麗で・・・それで・・・それで・・・」 「・・・・」 綺麗? 僕の絵が綺麗? そんなこともあるものか。 蓼食う虫も好き好きだろうが、また首を捻る。 「幻想的で、凄く深くて、私、上手く言葉に出来ないですけど、唯、涙ばかりが溢れてきて・・・」 「・・・・」 飾らないことが彼女の本質。 ならば、少なくとも気に入って貰えたということだろうか。 「え~と、取り敢えず御気に召したみたいで良かったよ」 僕はホッと一息を吐き、苦笑い。 「取り敢えずなんてとんでもない!凄く、気に入りました・・・・!」 感受性が豊かな娘なのだろう。これくらいでも喜んでくれるのか。 「あ、あの・・・くろさんっ・・・!」 絵里ちゃんは身を乗り出す。 「こ、この絵、どうかされる予定はありますか・・・?」 745 :永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM :2007/10/30(火) 13 03 02 ID d/Dwn6Zq 「ん?どうかって、何?」 「その、誰かに差し上げるとか、手放したくないとか、そう云う、の、です・・・!」 今だ涙ぐんでいるのか。喋り方がぎこちない。 僕は頭を掻く。 予定なんてあろうはずもない。 見せるだけ見せたら、さっさと処分するつもりだったのだから。 「もし、もしも、予定が無いのでしたら、この絵を、わ、私に――」 「ごめんなさいね」 凛。 そう評すべき声が響く。 「悪いのだけれど、その絵は私が貰うことになっているの」 振り向いた先には、いつも通りの姉が在った。 先程の茹蛸ではない。 玲瓏な巌のような姿の実姉がそこに居た。 「しろ、さん」 姉は雅に微笑んで、五代絵里の掌中から絵を取り上げる。 「しろ姉さん、一体どう云う――」 つもりなのか。 云いかけて僕の動きは止まる。 唯微笑んでいるだけ。 それだけなのに、姉からは云い知れぬ何かが滲んで見えた。 異論は許さない。 そんな気配に僕は支配されて、沈黙した。 「本当にごめんなさいね。クロは――クロの絵は私のものなの。貴女には、渡せない」 「・・・・あ」 五代絵里は引きつった笑顔をつくる。 それは、僕が予想したそれではなくて、大切な玩具を取り上げられた子供が気丈に我慢するかのような 表情だった。 「そ、そうだったんですか。すみません、厚かましい事を云ってしまって・・・」 身を乗り出していた五代絵里は力なく腰を下ろす。 (なんだか可哀想だな・・・・) 弱った小動物みたいに、凄く儚く、小さく見える。 (このままじゃ可哀想だしな) 僕は少女に目をやった。 「あのさ、絵里ちゃん」 もう一度くらいなら。 「今度は君のために、一枚描こうと思うんだけど」 746 :永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM :2007/10/30(火) 13 05 47 ID d/Dwn6Zq ※※※ 「うわ、寒いな・・・」 肩を丸め、両手に息を吐きかける。 街の夜はかなり冷え込んでいる。 僕が居るのは『困り果てる両面宿儺』像の前。時刻は6時を少し廻ったあたり。 駅ビルとバスターミナルの間にあるこの像は、多くの人の待ち合わせに使われている。 ここに居るということは、僕も他の人人と同じ。 待ち人がある。 と、云っても、呼ばれたのは僕だ。 姉は門限に厳しい。 だから普段はこんな時間に外には出ないのだが。 数時間前の五代邸。 あれ以来、姉はずっと機嫌が悪くて、一言も口をきいてくれない。 何が逆鱗に触れたのかはわからないけど、酷く不機嫌だった。 (絵里ちゃん、って、名前で呼んだことを怒っているのかな?) それとも他に何かあるのか。僕にはわからなかった。 姉はいつも的確だ。 だから僕に非がある可能性が高い。 けれどよくわかっていないことで頭を下げるのは失礼だろう。 だからそれを考える時間が欲しかった。 知己から外食の誘いがあったのは、ちょうどそんな時。 それでここにいる。 「少し早かったかな」 待ち合わせは6時半。まだ20分はある。普段なら待つことは苦にしないけれど、こう寒いと少し堪え る。 (コーヒーでも買ってこようかな) そう思った瞬間。 ふわりと。 暖かくて柔らかい何かが僕に纏わりついた。 「早いですね、クロくん」 綺麗な声。 それは、待ち人のもの。 「あ、甘粕(あまかす)先輩」 「他人行儀名呼び方は駄目ですよ?」 そんなふうに云いながら、優しい笑顔の美人が僕に抱きついていた。 甘粕櫻子(あまかす さくらこ)。 姉と同じ大学に通う人物で、古い知り合い。 特徴は表情で、いつもにこやかに笑っているので、その瞳を見たことが無い事。 怒るときも困るときも、ニコ目のままである。 彼女は美人で名高い甘粕6人姉妹の4女で、残りの姉妹5人もその瞳は見えない。 半数がニコ目で、残り半分が眠ったかのように閉じた目をしているためだ。 母性本能豊かな人で、スタイルも良い。知人曰く、「無駄にいやらしい体つき」。それを裏付けるかの ように、見た目も感触も“むちむち”している。 そして。 そして、かつて僕に告白した相手だ。 告白と云っても、男女の間のそれではない。 あの日あの時、この人はこう云ったのだ。 「――私の弟になってくれませんか?」と。
https://w.atwiki.jp/meteor089/pages/319.html
18 永遠の光 前へ 戻る 「ククールよ、ワシやおぬしのような男前は何を着ても似合うもんじゃ!ほれ、着てみぃ!」 「おっさん……ククールはともかく、おっさんは男前に入らないでがすよ……」 「何を言っとるんじゃ!ワシはこれでも『トロデーン美男子コンテスト』で、 第5回から現在に至るまで連続優勝を果たしておるのだぞっ!!」 「そのコンテスト、怪しいでがす!きっと審査員もおっさん自身に決まってるでがすよ!!」 「……あんたら、人の結婚式にまで来てケンカすんなよ……」 オレはため息混じりに、前でギャーギャー騒いでるトロデ王とヤンガスに言ったんだ。 ほんと、相変わらずだよ……この二人は、さ。 狭い部屋に一つだけある小窓からは、春特有の薄ぼんやりした太陽の光が差し込んでいて、 部屋の中を白く照らしている。 ほんのり暖かい部屋の空気の中で、オレは上着を脱いで、壁に寄りかかっていた。 「お前さんもつべこべ言ってないで、さっさと着替えちまいな!せっかくここの騎士団が用意してくれたんだからさ!」 そう言いながらドニの町からやって来たセイラが、オレの前に大きな木の箱をドン、と置いた。 その箱から視線を逸らし、オレは窓際の衣装掛けにぶら下がっているタキシードをちらっと見たんだ。 「普通、新郎ってさ……タキシードとか着るんじゃねーのかよ」 「お前さんは一応、騎士の端くれだろ?騎士の正装は騎士の服、って決まってんだよ! ……それとも、結婚式用の衣装をせっかく作ってもらったから、もったいないと思ってんのかい?」 「いや……あれは作ってもらったというか、勝手に作られてたっていう方が近いんだけどさ……」 オレはセイラに勧められるままに箱の蓋を開けた。 中には新品の聖堂騎士団の服が一式、綺麗に畳まれて入っている。 それは、オレがここにいた頃には着たことが無かった青い騎士の服……だった。 「王様からもサッシュと勲章を貰ったんだから……付けなきゃ損だよ。さっさと着替えちまいな!」 「そうじゃぞ!おぬしのためにわざわざ新しい称号まで考えて、勲章を作ったのだぞ! 早よ着替えて、勲章も付けるがよいぞ!」 「へいへい、判りましたよ。……で、新しい称号って何だ?」 着ていた服を脱ぎながらオレが尋ねると、トロデ王は偉そうに胸を張って答えた。 「モテモテじゃったおぬしが結婚するのだからな……その名もズバリ!『年貢の納め時騎士』じゃっ!!!」 「……有難みがねーな」 オレは何だかバカバカしくなり、トロデ王に背を向けた。 で、さっさと着替えることにしたんだ。 胴着とズボンを身に付けて胴着を押さえるようにしてサッシュベルトを巻いていく。 そして上着を着て、近くにあった椅子に腰掛けてブーツを履いた。 「ほら、ゲートルも新しいのに替えるんだよ!」 オレはセイラから真新しいゲートルを受け取り、ボタンを外してブーツの上から付けながら、ヤンガスに話しかけた。 「そう言えば……ヤンガス、この先の海岸に船が着岸してたけど、あれってゲルダのだよな。 お前、あの船でここまで来たのか?」 そうヤンガスに問いかけると、ヤンガスは少し照れくさそうに頭を掻きながら、答えた。 「まぁ……そういうことでがすよ。待っててくれるってんで、帰りも世話になろうと思ってるんでがすが……」 「へぇ……。じゃあお前、まだゲルダのところにいるんだ」 「ははは……ゲルダは盗みの腕がピカイチなのは間違いねぇんでがすが、 何せ魔物と戦う能力はこれっぽっちも持ち合わせてないもんで、アッシが手伝っているんでがすよ。 いわゆる……腐れ縁ってやつでがすかね?」 「そりゃお前が言うことじゃなく、ゲルダのセリフだと思うぜ?」 皮肉っぽく笑うオレの言葉を聞いて、ヤンガスは呆れたようにオレを見て言った。 「……結婚しようとしまいと、やっぱり相変わらずでがすよ、ククールは……」 「ほら、無駄口叩いてないで、剣も付けて!」 そう言ってセイラから手渡された剣は、オレのレイピアじゃなかった。 鞘や柄に、丁寧な彫刻の装飾が施された高価そうな騎士用の剣だ。 ……これ、どっかで見たような記憶があるんだよなぁ。 「これ……何だよ」 「騎士団の服と一緒に騎士団の人が持って来たんだよ。お前さんが付けろ、ってことだろ?」 鞘をよく見てみると、何か文字が彫ってある。 ――親愛なる神の御子、マルチェロヘ 己の人生は己の身のものだけにあらず。仲間と共のものなり。 聖堂騎士団団長就任の祝として マイエラ修道院院長 P.オディロ 「こういうところには、ダジャレは使わないんだよな……オディロ院長はさ……」 オレは独り言のように呟きながら、ソードベルトを腰に付けてその剣を差し込んだ。 ――何でわざわざ、こんなものまでオレに寄越すかなぁ……。 セイラに左胸に勲章を付けてもらい、右の肩からサッシュを掛けた。 白い手袋を胸ポケットに入れて、着替えが終わり、オレは「どうだ?」と 両腕を広げながらトロデ王とヤンガスの前に歩いていった。 「……おお!見ちがえたぞ!まるでどこかの青年貴族のようじゃ……。やっぱり男前は違うのぉ!」 「ほんとでがす!さすがククールは顔とイカサマだけが取り柄の男でがすよ!!」 「……褒めてねーだろうよ、それじゃ!」 オレが怒鳴ると、ヤンガスは「さっきの仕返しでがすよ!」とニンマリ笑ってやがる。 「さて、ワシらはゼシカの様子でも見にいこうかのぉ……。ゼシカの花嫁姿なら、さぞかし美しかろう!」 「そうした方がよさそうでがすな。兄貴や馬……いやミーティア姫様は、 ゼシカの部屋にいるらしいんで、交代してくるでがすよ!」 そう言いながら二人は部屋のドアを開けて出て行った。 「じゃあオレも……」 オレが二人の後を追って部屋を出ようとすると、後ろからセイラが襟首を掴んで引き止めた。 「お前さんはまだゼシカちゃんに会えないっつってんだろ!」 「オレだって見たいぜ?ゼシカの花嫁姿……」 「後で十分見られるだろうさ!結婚式も始まってないのに、 花嫁に堂々と会いにいく花婿なんてどこの世界にいるんだい!?」 セイラはオレを大声で窘めながら、引っ張られたせいでひん曲がったオレの襟元を直している。 「……ったく、お前さんは変わんないねぇ。せっかく幸せ掴んだと思ったら、 まだガキのまんまだよ!これじゃあゼシカちゃん苦労するね!」 オレは何だか恥ずかしくなって、プイと横を向いた。 「……余計なお世話だよ」 「でも……あたしはさ、本当にホッとしたんだよ。お前さんが結婚するって聞いてさ……。 あんな泣き虫でチビだったククールが、やっと地に足つけて過ごせる場所が出来たんだなぁ……って思ってさ」 セイラは襟元から手を離し、オレの胸をポン、と叩いた。 「幸せになるんだよ。……ならなきゃダメだよ」 その時、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。 「ククール……いる?」 ――エイトの声だ。 オレが「ああ、入れよ」と言うと、エイトがドアを開けて入って来て、続いてミーティア姫様もやって来た。 エイトは見慣れた旅の服じゃなく、王族独特の薄手の布で出来た服を着て、マントまでしている。 二人はオレに歩み寄り、セイラに軽く会釈した。 「久しぶりだね!今日はおめでとう! 」 エイトはニコニコしながらオレの手を取って、ぎゅっと握り締めながら言った。 「ゼシカ、とっても綺麗になってたよ!」 「オレも見たくて堪んないんだけどな」 オレの言葉に、エイトの隣にいるミーティア姫様は、ふふ、と微笑んでいる。 「それは後のお楽しみ……ですわね。元々ゼシカさんは可愛くって魅力的な女の子でしたけど、 すっかり女性らしくなってましたわ!……ククールさんのおかげ、かしらね?」 その話を聞いて、セイラがオレをからかうように、ヒューと口笛を吹いている。 オレは咳払いを一つして、エイトの顔を見た。 旅をしている時はいかにも兵士らしく日に焼けて勇ましい顔をしていたのに、今じゃ少し色白になり、 王族としての風格も見えるようになっていたんだ。 「王様になるために勉強してる、とか言ってたよな?どんな勉強してんだ?」 オレが尋ねると、エイトは少し首を傾げ、上目遣いで話し始めた。 「トロデーン法典とか、歴代の国王陛下たちが書いた書物を毎日読んだりとか……。 あと、国王陛下からお話を聞いたり、学者の先生から講義を受けたり……って感じかなぁ?」 「うわぁ……絶対オレには出来ねーな!」 オレの言葉に、後ろからセイラが笑いながら突っ込んでくる。 「誰もお前さんになんか、王様になって欲しいなんて思ってないから安心しな!」 エイトもミーティア姫様も、セイラと一緒になって笑っている。 少ししてエイトは笑うのを止め、少し真剣な面持ちでオレの全身を見回した。 「似合うね……その服」 「そうかな?ま、オレなら何でも似合うだろうよ」 「相変わらずだねぇ、ククールは!……あ、そう言えばね、中庭で女の人が三人大泣きしながら 『ククールのバカ!』とか叫んでたんだけど……あれってククールの知り合いかなぁ?」 オレの後ろで、オレが着ていた服を片付けながらセイラが言った。 「ああ、そりゃうちの町のバニーガールたちだね。お前が結婚するってんで、そりゃあショックみたいだよ。 ……ほんとにお前さんは『年貢の納め時騎士』だね!トロデーンの王様はいいとこ突いてるよ!」 セイラの話に、またエイトとミーティア姫様は笑い始めている。……何だよ、まったく……。 するとその時、ドアをノックする音と共に、ワイン色のドレスを着て、 いつも以上に気合いの入った化粧をしたゼシカの母さんが部屋へ入って来た。 「失礼しますわね……まぁ、ククールさん!まるでどこかの国の王子様みたいですわ!! 素敵ねぇ!……あ、そうそう、そろそろお時間ですの。 列席者の皆様は、聖堂のお席に付いて頂いてよろしいかしら?」 ゼシカの母さんに答えるようにエイトは頷いた。 「判りました。じゃあ、僕らは先に行ってるよ。セイラさんも行きましょう」 「そうですね。……ククール、しっかり頑張るんだよ!」 三人が出て行って一人きりで部屋にいると、部屋の外からバタバタと走ってくる音が聞こえて来た。 そしてノックもなしにバン!とドアがいきなり開いたんだ。 「おーい、ククール!」 ――ポルクとマルクだ……。 オレは二人へ歩み寄り、ポルクの両方の頬を思いっきり引っ張ってやった。 「……呼び捨てにするなと何回言ったら解るんだ?『ククールさん』と呼べ!!『ククールさん』と!」 「わーかったよ!痛ぇよ!離せってば!!」 オレが手を離すと、ポルクは頬を押さえて顔を歪めている。 ポルクの隣にいるマルクは、いつものように指を咥えながらオレを見て、ゆっくりと話し始めた。 「えっとね……もう時間だから、ククールさんも聖堂の方に来て欲しいんだってさ」 「判ったよ。……今日はお前ら、何かやるんだよな?」 ポルクとマルクはプレスのよく効いた白いシャツに、黒の蝶ネクタイをしている。 それに黒い半ズボン、三つ折ソックスにエナメルの靴、という格好は、 いつものやんちゃな二人を、少し利口な子供に見せていた。 「ゼシカ姉ちゃんのベールを持つんだよ!……じゃ、オレたちも行こうぜ、マルク!」 ポルクが大声で言い、二人で部屋を出ようとした時、オレはふとある考えが浮かんだんだ。 「……ちょっと待て。そう言えばお前ら、オレの子分になったんだよなぁ?オレの頼みごと、聞いてくれないか?」 エイトとミーティア姫様が結婚したあの日の帰り、リーザス塔へこの弱虫の代わりにいった代償として、 オレはこいつらを「子分」とすることにしたのさ。 ま、二人はあんまり納得してないみたいだけどな。 「何言ってんだ?もう時間がないんだよ!」 反論するポルクの両頬を、オレはもう一度思いっきり引っ張った。 「……聞けるよなぁ?子分だもんなぁ……」 「い、痛ってーって!!判ったよ!何だよ!」 オレはポルクの頬を離すと、二人に用件を耳打ちした。 オレが「頼んだぞ」と言うと、二人はしぶしぶ「……はーい」と行って、部屋を出て行った。 オレは胸ポケットから白い手袋を取り出し、左手に持って部屋を出た。 廊下を通って聖堂の横にある入り口から中に入ると、列席者はみんなオレが入ってくるのをじっと見ている。 ゆっくりと歩き、祭壇の前へ近づいたところで、ふと立ち止まった。 祭壇を見上げると……そこには神父として、マルチェロがいた。 マルチェロは騎士の服は着ておらず、黒地の法衣を着ている。 腰には……剣は無かった。 そうだよな、オレが今、こいつの剣を身に付けてんだから。 オレとゼシカが三角谷に行ったあの日から数日後、マルチェロはこの修道院へと戻って来たらしい。 そしてすぐに聖堂騎士団の連中に付き添われて、ニノ法王の元へ出頭した、ということらしいぜ。 法王から言い渡されたマルチェロへの処罰の内容は、 「騎士としての活動を今後一切禁止。一聖職者として、 前法王殺害の罪を贖罪し続け、冥福を祈ることだけに一生を捧げよ」 というもので、実刑では無かったんだよ。 まさにトロデ王が嘆願した、「寛大な措置」だったってことだよな……。 ま、ニノ法王が大司教時代にマルチェロを利用しようとしたことが、 ゴルド崩壊の原因を作ったようなモンだから、法王だってマルチェロを強く攻める訳にもいかないだろうしなぁ。 祭壇にいるマルチェロは、オレの視線に気づいたらしく、オレの方をちらっと見た。 「緊張すんなよ、兄貴」 オレが小声で話しかけると、ヤツは声を出さずに、口の動きだけで返事をした。 ――だ ・ ま ・ れ オレは苦笑いして、「はいはい」と軽口を叩くように返事をして、 赤い絨毯の敷かれたヴァージンロードの途中まで行き、歩みを止めた。 すると、聖堂にパイプオルガンの音色が鳴り響いてきたんだ。 その後に重々しい扉の開く音がして、扉が開き切ると、外から射す光の中に花嫁姿のゼシカがいた。 父親役の代わりとして、トロデ王がセシカと手を繋いでいる。 二人がこちらに近づいてくると、次第にゼシカの姿がはっきりと見えて来た。 レースの縁取りが付いたベールの中に見える、伏目がちなゼシカの顔は、いつも以上に綺麗に見えた。 オレはそんなゼシカを見て、思わず顔が緩んじまったよ。 髪をゆるやかに上へ纏め上げているので、ゼシカの細い首筋が露になっている。 ドレスに刺繍された銀色の糸が、聖堂の中を点す蝋燭に反射して、キラキラと光っていた。 ゼシカの後ろでは、ポルクとマルクが緊張で顔を強張らせながらベールを持ってて、何だか滑稽な感じがしたな。 サテンレース地のドレスの裾をゆらゆらと揺らしながらゼシカがオレのところまで来ると、 ゼシカはトロデ王と手を離し、オレと腕を組んだ。 そして二人でゆっくりと祭壇へ向かい歩いて行ったんだ。 マルチェロは、オレたちが祭壇の前に立ったことを確認すると、 聖書を開いて神の言葉を告げ、オレたちに永遠の愛を誓わせる。 それが済むと、オレは祭壇に用意されていた結婚指輪をゼシカの左手の薬指にはめた。 ゼシカがさ、結婚指輪はオレの聖堂騎士団の指輪がいい、って言ったんだよ。 オレもゼシカの母さんも、もっといい指輪がいいだろうって言ったんだけどさ……。 ゼシカが「初めてククールと会った時には貰う気がしなかったけど、今は貰いたい気持ちになったから……」 と言って聞かなかったんで、結局ゼシカの言う通りにしたって訳さ。 その後、ゼシカのベールを上げて誓いのキスを交わし、式が終了した。 マルチェロは聖書をぱたんと閉じ、無表情なままでオレを見て、また口の動きだけで話をした。 ――お ・ め ・ で ・ と ・ う オレは思わず肩をすくめて、マルチェロへ軽く会釈した。 オレたちは祭壇に背を向けて、聖堂の扉へと向かって歩いて行ったんだ。 外へ出ると、リーザス村の人たちやドニの町の人たちが、歓声を上げながら、 たくさんの量のライスシャワーを掛けてくる。 そして聖堂の鐘が鳴り始め、空高く響き渡っていった――。 式の後、修道院の中庭で宴が開かれたんだ。 オレとゼシカは、ワインを片手に中庭の中央にある大きなテーブルの脇に立って、 みんなから代わる代わる祝いの言葉を掛けられていた。 中庭には、ここだけを照らし出すかのように光が差し込んで来ていて、すべての人の顔が輝いて見えたな。 ドニの町の踊り子たちが歌って踊って、リーザス村の男たちが鼻の下を伸ばしながら囃し立てて……。 エイトやミーティア姫様、それにヤンガスとトロデ王も、酒を飲んで、顔を赤くしながら笑い合っている。 修道院の連中もさ、マルチェロの法王就任祝いの時のように大酒を飲んでいたんだ。 でも……その中に、マルチェロはいなかった。 「……いない、か」 オレが思わず呟くと、ゼシカがオレの顔を覗き込んできた。 「探してるんでしょ。マルチェロのこと」 ゼシカはふざけたような口調で、笑いながら言った。 「あの融通の利かない人のことだもの、『罪人である自分には、このような華やかな場はふさわしくない』とか言って、 一人で修道院の中にいるに決まってるわよ」 「まぁ……そうだろうけど……あいつ、オレのこの服だけじゃなく、自分の剣までオレに用意してたんだよ。 それがどういう意味なのか、さっぱり解んなくってさ」 オレが大きくため息をつきながら言うと、ゼシカは微笑みながら話し出した。 「複雑な意味なんか無いんじゃない?ククールにただ着て欲しかっただけ、 ただ剣を持ってて欲しかっただけ、だと思うわよ。 だってあの人……もう騎士にはなれないんでしょ?」 「まぁな……」 「自分が大切にしてきたものを、誰かに引き継いで欲しかったんじゃないかなぁ?それだけよ」 ゼシカが話し終えると、突然中庭を突風が吹きぬけて来てさ、それと一緒に何処からともなく、 桜の花弁がたくさん舞い散って来たんだよ。 中庭にいるみんなは、突風に煽られて、目を閉じながら驚きの声を上げている。 しばらくして突風が収まると、桜の花弁は空中を舞う力を失って、ゆっくりと地面に降り積もるように落下していった。 そんな花弁の舞い落ちる様子を見て、ゼシカは「綺麗……」と言って見とれていた。 確かに……本当に綺麗だったんだ。 優しい日差しの中を、白い花弁がそれぞれにいろいろな道筋を描いて地面へと辿り着く光景は…… もし本当にあるとしたら、「天国」ってこんなかんじなんじゃないかなぁ?と思えるくらいだった。 「……綺麗だな。空から差し込んでくる光も……ここってこんなに綺麗な場所だったかな?」 オレがいた頃は、ここは灰色に澱んだ世界としか思えなかったんだけどなぁ。 うんざりするような、深い泥沼の中のような……さ。 それなのに今は、ここを本当に美しい場所だと思えているんだよ。 ――何だろうな、この違いは……。 ぼーっと花弁を見ているオレに、ゼシカがにっこり微笑んで、オレに言った。 「きっと、ククールが変わったのよ」 「オレが?」 「私もね、呪いの杖から解き放たれた後、リブルアーチで朝日を見てたら、 今までと全然違ってものすごーく世界が綺麗に見えたのよ。 で、いつの間に世界は変わってたんだろう……って言ったら、一緒に朝日を見ていたおばあちゃんに、 『世界なんてそう変わらない。変わったのはあんただ』って言われたことがあるの。 だから……ククールも変わったのよ、きっと」 「そういう……モンかなぁ」 「そういうモンです!」 オレはふと空を見上げた。 太陽は薄雲に隠れながらも、柔らかな光をオレたちに与え続けている。 そっと瞳を閉じてみた。 そしてオレは、思わず神様に祈っちまったんだよな。 ――神様。オレはあんたが本当にいる存在だなんて、信じたことはほとんど無かったけど、 今日はあんたに祈らずにはいられないよ。 ――どうぞ、この美しい光が、永遠にみんなの中で続きますように。 そして、この光がマルチェロの心にも届きますように……。 その時、中庭の芝生をオレの方へ向かって駆けて来る音が聞こえてきたんだ。 目を開けて正面を見ると、ポルクがオレに向かって走り寄って来ていた。 ポルクはオレの前で立ち止まると、オレを指差して、言った。 「おい!さっきのお前の頼みごと、ちゃんと伝えて来たからな!」 オレは焦って、ゼシカに聞こえないように小声でポルクに耳打ちする。 「……バカ!ゼシカのいる前で言うなって言ってんだろ!」 「えっ!でも、報告しないとって思って……」 オレとポルクがひそひそと話している後ろで、殺気立つ気配が感じられる……。 「ポルク……一体何のこと?私に何を隠しているの?」 少しドスが効いたゼシカの声に、オレは怖くて後ろを振り返れなかったね……。 ポルクはゼシカの顔を見て「ひっ……」と一声叫び、蛇に睨まれた蛙のように、体を硬直させて動けなくなってたんだ。 「言いなさい、ポルク!」 ゼシカの声に、次第に怒りが混じってきている。 体をカチンカチンにしたままで、ポルクはしどろもどろになりながら、ゼシカに答え始めた。 「け、結婚式の、ま、前に、ク、ククールに……」 「ククールに……何?」 「な、中庭で泣いてるバニーガールたちに……『結婚しても必ず会いに行くから、待ってろ』って…… 伝えてくれって言われたんだ……」 ポルクの言葉を聞いて、ゼシカの声が急に低音になった。 「……ふーん……。私と結婚したっていうのに、まだそんなことしてるんだ……。 あんた、本当はまだ全然変わってないみたいね……」 オレが必死の思いで後ろを振り返ると、呪いの杖で呪われていた時よりも 数倍怖い顔をしたをしたゼシカが立っている。 シュウ……という音を立てながら、ゼシカの手からは火花が迸り始めていた。 ……これって絶対、メラゾーマを唱えるつもり……だよな……。 「ゼ、ゼシカさん……ストップ……」 オレは顔を引きつらせて、思わず後ずさりした。 ――ああ、神様……もう一つお願いごとがあります。どうかこのゼシカの怒りを抑えてください……。 前へ 戻る
https://w.atwiki.jp/11072/pages/32.html
永遠の15歳先生 プロフィール 作品リスト 関連リンク