約 2,050 件
https://w.atwiki.jp/komyu/pages/331.html
ここから3~4話くらいが物語のちょうど中間です。 第十話 戦火 一、 蔵田の露出した拳の骨は何とか稲見が悪魔を使って応急処置したおかげで塞がった。しかし、それでもまだ痛みは完全に収まってないらしく、利き手で殴る事は暫くは無理そうだった。 相変わらずの風間の荒い運転で下台区に着くには数十分程度しか掛からなかったが、その繁華街だった所に入った途端に視界全体に、聞くだけでも目を瞑る程の惨状が自分の瞳にはっきりと映った。その跡形の無さはオトゥームがしでかした事は救いようがあったが、それでも全身を紅く染めながら倒れる人々を見ると瞼を閉じざるを得なかった。 生きている人間も確かに居た。しかし、彼らは鬼原組と天羽教団に別れて戦い、戦火の勢いを更に激しく燃え上がらせた。だが、どちら側にも悪魔を召喚できる者とそれが出来ない者がいて、出来る者と出来ない者同士では互いに傷を付けながら、敵を殺し――そして殺されていったが、召喚できる者と召喚できない者との対決では弱肉強食を短直に形に表したかの様にあっさりと終わっていた。彼らが召喚する強力な悪魔が――それを召喚できない者を、鹿を捕えるライオンの如くむさぼり食っていた。 「やっぱりか――」 「何がやっぱりなんですか?」 「俺が昼の辺りに話した事を覚えているか?二つの集団が戦っていたという話を――」 「じゃあ、その二つの集団っていうのはやっぱり鬼原組と天羽教会の事か――つまり、鬼原組は天羽教会の企みを阻止する為に戦っていたってことなんだな」 しかし、坂東彰人はともかく、彼の父親である坂東白鴎は果たして信頼に値する人物なのか?確かに僕たちは鬼原組にかなり助けられているが、飽くまでも彰人派にしか助けられてない。しかも、大きな勢力を持っていると思われる白鴎派は天羽教会に博文の身柄を引き渡すという余りに不可解で、僕達からすれば首を傾げざるを得ない行動を取った。恐らく僕たちは白鴎という男に踊らされ―― いや、もしかしたら鷺月京谷に踊らされているのではないのか?なにせ、ほら、今でも狂気を演出する単調なフルートの音が耳に響くからだ―― ――お前はお前である事に後悔しているのだろう? この恐ろしい嘲笑った声は誰が呟いた!?何処から出た!? 「おい!どうした葉月!」 蔵田の一言で僕はふと気がついた。どうやら、僕はかなり身体と唇が震えていたらしい。弄ばれていたのだろうか、嘲笑う声に―― ――さぁ、思い出せ。葉月彰二 あの暗黒の魔術師と、のっぺらぼうの黒い3本足の異様な姿をした神に嘲笑われている――単調なフルートが響き渡る音楽堂にて ――◇―― 戦火を潜りぬけながら下台カラムへと通じる大通りに出ると、鬼原組でも天羽教会とも思えない二人の人影が、珍しい悪魔を使って天羽教会の兵士を次々と倒していく光景が見えた。思わず車を止めた風間はじっくりと前を見つめた。 「ちっ――最近、異様に視力が落ちやがったな。どんな奴が天羽教会の野郎共を倒しているか見てくれよ」 言われなくともそうしていた。目を凝らしてじっくり戦火の中に映る人影を見つめるとその姿が白河と淳子だという事がみとめられた。その事を風間に報告すると彼はびっくりしたかの様に車を淳子と白河の近くまで走らせた。 「あら、風間さんじゃない。今日はよく会うわね――」 「よく会うわねじゃねぇよ――んで、なんでんなとこに淳子ちゃんがいるんだ?若の所に居たんじゃねぇのか」 「あら?私の悪魔の能力を知っているおじさんなら別に私が普通に戦えていてもおかしくないと思うんだけど」 「だから俺は20代だっての――んで、若は今何処に居るんだ?」 「もう中に入って行ったらしいわよ。彰人は一度暴れると私が止めるまで手がつけられなくなるから――多分、真ん中辺りまで居るんじゃないかしら。組織のリーダー的存在は大体高い所にいるのは目に見えているからね。だって、そうしないとリーダーから殺されるわ」 「もうこんなに行ったのか――んじゃあ、もう心配はねぇな。後は全部、若に任せて俺達はずらか――」 その途端に風間は淳子に頬を勢いよく殴られ、その大きい音に僕は思わず肩目を瞑った。彼が両目を瞑りながら頬を抑えている間に淳子は車の窓を通り越して、口元を彼の耳に近付け「あんた達も一緒に行くの」と甘い声で言い寄る――風間は舌打ちをしたが、潔く扉を開けて淳子と白河を乗せた。 二、 しかし、違う意味で問題だったのが、相変わらずの無口な白河だった。僕達――いや、蔵田は確かにオトゥームを倒したが、それでも白河が口を開いてくれるという保証は無い。というのは、白河の心情に『他者を自分と同じ目に会わせたくない』と考察できる余地があるからだ。 寒かった日の火事――紅い髪の女――これらが一体何を現すのかは明確ではないが、常に白河を監視できる程に強大な者だというのは明らかだった。だとしたら、この悪夢の真実に近づくのは自ら身を滅ぼす――つまり、"自滅"と同じ意味を指しているのではないのか?僕は明らかにそれを恐れている。蔵田も、稲見も――そして羽嶋も同じ事を考え、それを恐れているのではないのか? 今日も冬――そして、寒い――これからこの戦火をも恐れる程、恐ろしい事が起こりそうだ―― ――◇―― 風間は激しい戦火の中、大通りを車で駆け抜けていた。まるでスポーツカーを連想させる程のスピードだ。悪魔同士の激しい戦いによって殆どの建物が崩れ、道を妨げる様に倒れるが、風間はその度に容易に瓦礫を避けた。余程自身があるのだろうか、風間は笑みを浮かべながら運転している。 しかし、こちらの向かっている先は敵の本拠地である下台カラムだ。追っ手のバイクが沢山こちらに迫ってきた。流石にバイクの出力やスピードには敵わなく、彼らは車を囲みだした。 「民間人に告ぐ!今すぐ降伏せよ!さもなくば蜂の巣にする!」 「誰が民間人だよっ!」 自分を民間人呼ばわりされたのに憤慨したのか、風間は「おい、回すぞ。捕まっとけ」と言った傍で、直ぐに急ブレーキを踏みながらハンドルを回し――つまりスピンをした。すぐに頭を伏せておいたので全員怪我をせずに済んだが、もし少しでも運が悪ければかなり酷い様になっていただろう。風間がもう一度、エンジンを踏んだ所で窓から後ろを見渡すと辺りを囲んでいるバイク兵たちは全員、倒されていた。 もしかしたら、僕たちは風間に命を預けている所か、彼によって命の危機に晒されているのではないのか?それを思わせる程に危険で荒い運転だ。 新たな命の危機が迫ってきたのはその時だった。後ろから大型の丈夫なトラックが一台こちらに向かって走り込んできた。こちらの車も大人一人分の高さはあったが、こちらに向かってくるトラックはそれの2倍以上はある。しかも最高速度までもこちらを上回るのだ。こればかりはスピンで弾き飛ばせない。 「おい!あのポンコツトラックにライフルの火を吹かせろ!」 と、風間が言うが、それは無理だと言っておこう。何故なら誰もライフルなんて持っていないからである。それを聞いた風間は舌打ちした後に「今から一斉に車から出るぞ!」と叫ぶが、その途端に白河は「その必要はねぇ」と言い、彼が何をするかと思うと、彼は静かな声で「スサノオ」と呟いた。すると、こちらを追ってくるトラックの前に大きな剣を持った、がっちりとした体格の人型の悪魔が召喚された。 その悪魔が彼の言った"スサノオ"であることは一目で分かった。その悪魔は迫ってくるトラックを片手で受け止め、すると、スサノオはもう片方の手に持っていた大剣をまるで棒でも振ったかの様に軽く振り、トラックの底の部分をばっさりと切断させた。トラックが動かなくなったのを確認するとスサノオは小さな結晶になって砕け散り、白河の元へと還った。 その圧倒的な光景を見た癒依は半ば唖然としていた。いや、前からそうだった。彼女はこれまでのこの世界での戦いの様子をさっきまで見た事が無かったのだ。唖然とするのも仕方のない事ではない。風間でさえも「ったく――えらい奴と知り合ったなぁ、淳子ちゃん」と言ったが、淳子はそれに対しては一度も返事をしなかった。 トラックを振り切った後は殆ど追っ手が来なかったが、それでも正面から下台カラムに突撃するのは明らかに無謀だったので、下台カラムの裏に回ってそこにある地下の駐車場の中に入ろうと試みた。最初はそこにも天羽教会の兵士がいるのではないかと不安だったが実際に確かめてみると、幸運にもそこには誰も居なかった。なので、車を地下一階の駐車場にあるエレベーターの付近に止めた。 その時、風間は「さぁ、行くぞ」と呟く――ああ、これからが本腰だ。その黒幕となる人物にも会って全てを終わらせよう。これで僕たちの悪夢は終わるんだ。 三、 注意深く辺りを見渡してからエレベーターの上の電子パネルを見上げると、そのエレベーターは地下三階から三階まで繋がっていた。下台カラムの名前こそは有名なので何度も聞いたが、肝心の詳細についてはすっかり忘れた――と思うと、羽嶋が「この建物は70階もあるが――何回、エレベーターに乗ればそこへ上がれるんだろうな」と呟いたのが聞こえた。70階――そんなに階層があるのに沢山の敵と戦うと思うと気が遠退く――だが、羽嶋浩二の父親である博文を救うのには何としてでも隅々まで探すしかないのだ。 僕は果てしない気分になりながらも、ただじっとエレベーターのボタンを押した。 ――◇―― 下台カラムの三階に一人の男が、強い腐臭が支配する廊下をじっと睨み回しながら歩いている姿が見えた。 「全く、坂東彰人め――これでは奴を探すのが難しくなるだろう」 常に不機嫌そうな表情をした彼は勝手に独り言を呟いた後に、無線機が鳴りだしたのに気づき、それを取りだした。 「お前か――今の状況はどうだ?」 「ああ、大丈夫だ。もう、あいつらに騒ぎを起こす準備はできた」 「そうか。グラーキとオトゥームは倒されたようだが、イタクァが倒されない限りは全て"鷺月"の思い通りだ。なにせ、イタクァはどの獣よりも遥かに獰猛で危険で、怨霊さえも驚愕する程の執着力がある。肝心の力――あいつが地球全体を、"生命が一切感じられない吹雪の世界"にしようと思えればすぐにそうできる。そうしないのは、異形の神に動きを封じられているだけだ」 「だが、本当にここに待機していていいのか?俺はまだ死ぬ訳にはいかない」 「心配するな。なにせ奴は――"坂東白鴎"は――旧支配者の力を持てる資格を持つ男なんだからな。鷺月京谷は強大な力を持っているが故に、興味が無い物は徹底的に破壊するが、興味がある物は価値がある限り弄んでおく――そういう性格だ。だから奴は危険すぎるんだ」 「鷺月京谷か――奴とあの"赤髪の女"はグルなんだろう?だったら、俺がそっちに行きたかった。あの女とは是非、もう一度ご挨拶したい」 「赤髪の女――いるかもしれないな。だが、あの女は唯一、鷺月を弄ぶ事ができる存在だ。その力の量を分かってて言っているのだろうな」 「さぁな――まぁ、俺はここら辺で切るぞ。"春山"」 「ところで、“3年前の火傷”はどうだ?――って、もう切られたか」 無線が切られた所で彼は無線機をしまうが、春山がまた僕たちと出くわしたのはその時だった。彼が通りすがろうとしたエレベーターが突然開き、ビックリした春山は思わずこちらに目を向けた。いや、こちらというより――明らかに坂東淳子の方を向いていた。そう、身体をビクビクと震わせながら―― 「ばんどう――じゅんこ――」 「あら――久しぶりじゃない――借金返せ」 淳子は上着として着ていたコートを脱ぎ捨てた後、シャツの後ろに掛けた刀を取り出し、そして刀を前法に持ってきた時に鞘から刀を抜いて――いつの間にか、叫びながら逃げ惑っていた春山の後を追いかけた。風間も淳子が脱ぎ捨てたコートを拾い上げた後に「おい、落ち着けよ!淳子ちゃん!」と叫びながら彼女を追いかけた―― 後を取り残された僕たちは茫然とこの場を立ち尽くすだけだった。 「えっ?春山と淳子先輩って借金での関係だったんですか?」 「――のようだな」 何か深い訳があるのかと思っていたのだから、僕はがっかりした気分になった。白河は僕がそうなった理由について余り理解できないようだった。とりあえず、ほんの少しの間話しあった結果、僕たちだけでも先へ進む事になった。 ――◇―― 各階を隅々まで探し回りながら俺達は遂に40階まで辿りついた。始めは居た、約百人の舎弟も遂に十人を切った所だ。出来る事なら――これ以上、厄介な事に会いたくは無かったが――奴に弄ばれた運命はそれを許さなかったようだ。 正面からの向かい風と共に俺の舎弟はその風から出た斬撃によって、全員切り殺された。その風の次のターゲットが自分だという事を察知すると、俺は素早く鞘から刀を抜いて、風を日本刀で受け止めた。そんな事ができた理由は他でもない、俺の舎弟を切り殺した風の正体は"中田忠義"だったからだ。 「今日はやけに会いますね――坂東彰人」 「ああ、だが最悪な再会もこれで最後だ。中田忠義!お前の首を必ず刎ねてやる!」 月の様に静かな怒りと悪魔の様に狡猾な笑いが刃を交える―― まとめ ヒントが出た謎 淳子と春山の関係(春山の再登場場面) 新しく出た謎 嘲笑う声と狂気のフルートの主(下台区突入時) 3年前の火傷(無線での会話) 第十一話 忠義 (マジグロ注意) part.1 中田忠義――奴は天羽教会の連中の中で最も狡猾で最も強い男だ。というのは、奴は並外れた運動神経を持ち、10mの銃弾を後ろから撃たれてもすぐに避けられる男だからだ。おまけに、奴は疾風の様な速さと身のこなしで二本のブレードを操れる。まず、並の地球上の兵士や夢見る者では、奴の殺人的要求を満たす為だけのエサにしかならないだろう。だったら、それを上回る戦闘技術でこっちも奴に対応するしかない。どうやら、ここに行くまで体力を温存する為に戦闘をなるべく控えたという俺の判断は正しかったようだ。というのは、勿論ここで俺が中田忠義と遭遇したからである。 さて、今の俺のパフォーマンスは最高――とまでは行かないが、いつもの9割程度は発揮できる筈だ。その9割のパフォーマンスの中で俺ができる事――それはもう、刀で中田とまともにやりあうか、悪魔を召喚して戦うかのどちらかだ。前者については、スタミナについては俺の方が上だというのは目に見えていたが、身のこなしやスピードは圧倒的に向こうが上回るだろう。 だが、悪魔を召喚して戦う方法――これは前者よりも大きくリスクを伴う選択だ。俺の悪魔の名前は"ツクヨミ"――日本神話で月に当たる神だ。ツクヨミの持っている固有の能力――それは"視界に入っている物体を斬る"ということだ。だが、一見万能そうに見えるその能力にも欠点がある。それは異様に体力を消耗するということだが、いま残っている体力でも精々五回が限度だろう。それ以上やれば、確実に動けなくなるか気を失ってしまう。だが、それよりも更に恐ろしい事があって、俺がこの選択に計りしれない程のリスクを感じたのも恐らくはそれが原因だろう。というのは、いままでずっと刃だけで勝負していたから、俺が中田の持つ悪魔がどんな者であるかを知らないからだ。 だが、一つだけ言える事がある。それは、奴の性格上、俺が悪魔を召喚すれば向こうも確実に悪魔を召喚してくるだろう、ということだ。もしかしたら、どこかで情報が漏れて俺の悪魔の能力が中田に気付かれているかもしれない。そうなれば、俺は明らかに不利な状況の中にある。 しかも、奴から逃げる事は不可能だというのは目に見えていて、俺も奴に対する因縁としてここから逃げる訳にはいかない。おまけに舎弟は全滅か、まさに背水の陣、だな。いいだろう、まずは俺のこの刃でお前のその狡猾な刃を断ってやろうじゃないか。 俺が刀を中田の方へ構えると、奴は俺の言いたい事が分かったかの様に、二つのブレードを俺の方へ構えた。不敵な笑みを浮かべながら ―― ――◇―― 地下駐車場からここまで登った時に使ったエレベーターの向こう側にあるエレベーターに、僕たちは乗り、そこから三十階まで辿りついた。そこへ辿り着くと、あの酷かった腐臭は3階の時よりも酷くは無かった。が、収まらない腐臭に僕は気絶するかと思った。 次のエレベーターは辺りを探しても見付からなかったので、それを見つけ出す為にこの階の案内板を探したが、どうやらそれは天羽教会の兵士に本当の意味で粉々に粉砕されたようだった。というのは、壁の傍に透明の一つ一つがとても小さい粒が大量に散らばっていたからである。その透明色とやや硬めの材質から、その粒の正体がガラスだというのが分かった。所々に黒い粒も混じっているが、それはガラスの案内板に使われた塗料だとすれば説明が付く。 ということは、次のエレベーターを探すのには少し手間がかかりそうだ。こればかりは流石に勘を頼りにするしかない。 ――◇―― ただ、道に沿って鼻を手で覆いながら歩いていると羽嶋はある一つのイタリア料理店の跡の前で立ち止まった。どうしたのだろうか、と思い僕もそこで立ち止まると彼は呟いた。 「このレストランはよく家族と一緒に行った事がある――」 part.2 辺りの空気が一変したのはその時だった。というのは、急に沢山の人が現れて、楽しく喋りながらあちらこちらを歩いている光景が視界全体に広がったのだ。しかし、そんな雰囲気に場違いとも言える程、服を汚した僕たちに少しも眼が行ってないのを感じるとそれはヴィジョン(幻覚)だというのを理解した。 そう確認した後、前方を見渡すと羽嶋と似ている顔をした小学生くらいの子供の姿が見える――そう気付いた時は目を疑ったが、その男の子の傍に居る二人の大人が彼の父親である博文と母親であることから、これは羽嶋の少年時代を映したものだと推測した。 彼らの会話だけが何かを思い出させるかのように僕たちの耳に響く―― 「今日もここで夜ごはん食べるの?」 「ああ、そうだ。孝治も好きだろう?外で食べる時は基本的に此処にしようと決めていたからね」 「へぇ、そうだったのか――」 「ふふふ――気に入ってくれてありがとう。お母さんの友達が開いたレストランだからおいしく食べてね」 「うん――」 博文や母親の穏やかで優しい性格は相変わらずだったが、羽嶋浩二の喋り方やいつもの表情は現在と違う表情の様だった。今の羽嶋が冷静なのに対し、この羽嶋はとても穏やかな表情で、おっとりとしていた。それに、口調もそれを思わせる――ふと、羽嶋の方を振り向くと、彼は汗を流していた。行っておくが、彼は下台カラムに入ってから少しも走ってないし、僕たちも含めて少しも敵と接触しなかったので戦ってなかった。しかも、今の季節は冬だ。なのに彼が汗を掻くのはおかしい。彼は明らかに何かに動揺しているようだった。 と、それに呼応するように少年時代の羽嶋が少し暗い表情をしたのはそれからだ。 「じつは俺――また告白されたんだけど、振っちゃったんだ。告白される度に僕は悩んで、それで振って、明日から話しかけられなくなって――そうやって友達が減るんだったら学校に行きたくない――」 「孝治――」 「お前の気持ちは父さんも分かるよ。だから私は孝治にアドバイスできる――昔の父さんの様に本当に、本当に好きな人を探し出しなさい。そうすればいい」 「そうか――じゃあ、それで試してみるよ」 幻覚が消え去ったのはその時だ。よくみると、彼は困惑した様子で頭を押さえていた。彼に話しかけようとすると、彼は「いや、もう大丈夫だ――何か忘れている気がしただけだ」と言い、額の汗を拭きとる――しかし、蔵田はあの幻覚の内容に気になったのか、彼にそのことを問いかけた。すると、羽嶋はこれから話す内容を整理してからゆっくりと口を開く。 「今まで黙っていたが、俺は女子から沢山の告白を受けていた。というのは小学生までだな。自分で言うのも気が引けるが、恐らくは顔とあの性格がその理由だろう。だが、俺はどうしても告白を受けた女子と友達の関係を保っていきたかった。だから、俺は告白される度にその女子を不器用なやり口で振ったが、その日以降は振った女子は話しかけてこない。俺はその女子を見る度に罪悪感が心に湧き出た。 そこで親父からあのアドバイスを貰い、好きな女子を苦労して探し出して、告白して、それで俺は学校で罪悪感が湧き出る事は無くなったが――卒業文集を見た後から、俺はこんな口調になったのだろうな。女子の卒業文は殆どが遠回しに、本気で羽嶋が好きだ、みたいな事が書いてあった。俺は自分があの性格であった故に、物凄い罪悪感が生まれたのだろうな――もう、見るに耐えなかった。なので、俺は付き合ってた女子とも別れて、二度とあんな罪悪感を湧きださない為にこんな変人とも思われる口調にした。そしたら、告白は二度と来なくなったし、誰とでも友達の関係を保てた。だが―― でも――実際は今でも後悔してるよ。それに、俺もあんな喋り方は全然好きじゃないんだ。あんな喋り方をしていると知った途端の俺の親は凄く悲しそうだった。でも、いつもこの口調で話すと、またあの罪悪感が生まれるから――」 彼の口から出るとは思わない口調で喋った時に、僕は目を丸くした。というのは、初めて出会った時から、彼の口調には何らかの不器用さを感じていたが、そこまでの理由があるとは思わなかったからだ。話を終えた羽嶋は「ありがとう。俺も少し気が軽くなった」と、いつもの口調で呟いた。 ――ここまでして僕らを弄ぶのは一体誰なのだろうか?彼女の悲しい顔を見てから、良い様に踊らされている気がする―― part.3 俺が中田と刃を交えてから十分経ったころだろうか――互いにまだ傷が一つもついてなかった。だが、現状は俺の方が圧倒的に有利だ。その決定的な理由としてはスタミナがどれだけ残っているか、という点だが――というのは、もちろん俺と中田の元々のスタミナの差にもあった。だが――俺と奴の最大の相違点は、その戦い方だ。奴は常人では目にも止まらない速さで動き、かつ、身こなしも完璧だが――それを常に使いこなした戦い方で長い間、体力が持てる筈がない。それに対して俺は、なるべく動かずに奴から来るのを待った。その結果がこれだ。奴の息は確実に上がっていた。 奴も今になってそれに気付いたようだが、もう遅い。お前はもう俺に勝てない―― 「ここで私を逃しても良いのですか?」 その一言で俺の中にあった余裕は完全に消えた。目が丸くなった俺を見て、今度は中田が笑みを浮かべながら俺を弄ぶように口を開き出す―― 「『今は俺の方が有利だ』あなたはそう考えて、余裕な笑みを浮かべていたのでしょう?確かにそうだ。今の状況は貴方の方が圧倒的に有利――つまり、貴方はまだ体力の方は大丈夫なのでしょう?しかし、私は疲れていても貴方から逃げ切れる余裕は有ります。 もう一度言いましょうか――ここで"坂東彰人の女を殺した"私を逃してもいいのですか?」 その途端に俺の中の全てが爆発しそうだった――駄目だ!奴の口車に乗せられたら俺は圧倒的に不利に追い込まれる!中田忠義は、その狡猾な口で他人を踊らす名人だ。奴の言葉を聞くな! 「あなたは過去に天羽教会の交渉人である私と何度も戦い、互いに引き分けになった。しかし、その戦いの中に一回だけ――ただ一回だけ、貴方が私によって殺された筈の戦いがあった。それは、私が完全にあなたの懐を突く事ができた時ですかね。その時に貴方の愛人にも近しい女が庇い、その女は内臓ごと切り裂かれて命を落とした。 いやいや、あの時の私は危うく笑いをこぼす所でしたよ。だって、二人っきりの時に貴方が「お前の事は俺が守ってやる」とあの女に誓ったのに、その女に命を守られて、挙句の果てには彼女を亡くした――なんて面白いジョークなんでしょうかね。 つまりは私の言いたい事――分かりましたか?貴方は結局、それ程の力でしかないという事ですよ!すぐに崩れ去る愛しか持てないという点も含めてですかね!」 「そのふざけた口も大概にしろ!」 その怒鳴り声と共に遂に俺は全ての冷静さを全て失った。俺は夜を現す黒い衣と、満月の様に丸くて明るい仮面を着けた神――ツクヨミを召喚し、その視界に映える中田を刀で斬り伏せようとしたが、それすらも中田に避けられた。実際に両断されたのは、大理石でできた壁だ。 「それがあなたの全力ですか!?確かにそれでは、貴方は私に勝てない訳ですね!」 最早、怒りがこれ以上暴発する気配もなかった。俺は中田からある程度の距離を置いた後に、視界の下の方を斬り、それが避けられたのを悟るとすぐに奴の方へ向って斜めに刀を振った。すると、見事に奴の両足がブレードと共に斬り落とされた。 「くっ――!まさか、貴方の悪魔がここまでの能力を持っていたとは――!」 「俺はこれでも鬼原組の若頭の役割を背負っている輩だ。踊らせる事ができたつもりが残念だったな――!」 この階に俺と中田以外の人間が入ってきたのはその時だった。それは、この廊下に姿を現した途端に驚きながらこちらに掛け付けた六人組の青年だ。こいつらは白河と、姉貴に俺を探す様に言われたガキ共か――いや、癒依も居るぞ。ということは、奴らはオトゥームを倒す事ができたという訳か―― ――◇―― その時に中田はまるで狂ったかのように大爆笑した。その笑いはまるでこちらに吐き気や恐怖すらを与えさせる程だ。すると彼は最早、別人のものとしか思えないほど枯れ、そして大きな声で喋り出した。 「バッドタイミングで来てしまいましたね――いいでしょう!あの人からは口止めされてますが、私は言いましょう!創造神ですらも驚愕する程の恐ろしさを持ったあの人の掟を破って、言ってやろうじゃありませんか!何を言ってやろうかって!?そりゃ、決まってるじゃないか!わたしがなんで、坂東彰人が女に誓った事を知っているかっていう事だよ!」 part.4 「いいか!あの男はなぁ!空間や時間、そして次元の本質などを全て理解しきっているから、どの空間!時間!次元!にも同時に存在出来るんだよ!その事が一体何を現しているかは知っているだろうなッ!?つまりはあの男にとって、見ず知らずの者の行動を探知するなんて、簡単だってことなんだよ!どうして、そんな事ができるかって!?愚問だなァ!?ああ!教えてやるさ!それはなぁ、あの男――"鷺月京谷"の悪魔こそが、かの恐るべき邪神である"ナイアルラトホテップ"だからだよ!おい!?聞いているのかッ!?わたしは勇気を出して、あの男の事を喋ってやったんだぞ! だがこれはまだいい!ナイアルラトホテップがゆいいつ恐れる炎の旧支配者の筆頭である"クトゥグア"の事は知っているか?そういえば、あいつは紅い髪の女に宿って鷺月京谷に接触してたっけ!確か、そいつの名はなぁ――しっ、しまった!壁の中から沢山のネズミの足音がする!いいか!これからのわたしの有様を絶対に見るなッ!わたしはもうすぐ"壁の中のねずみ"に貪り食われる!絶対に私を見るんじゃないぞ! だがこれだけは教えてやる!鷺月京谷は23つのフルートを持って最上階の" 音楽堂"に絶対に居る!これだけは絶対に確かだ!イアッッッッッ!ナイアルラトホテップ!イアッッッッッッッ!アスモデウス!」 狂った様に中田が口を開いた果てに、急に辺りの大理石の壁がなんらかの力で全て砕かれ、骨組みの部分が剥き出しになった。と同時に、その中から無数のグレー色の異様な悪臭を運ぶ何かが中田の方へ凄い速さで這い寄ってくるのが見えた。それの正体について分かった時に僕は思わず声を上げた。そう、這い寄るグレー色の影の正体は大量のねずみだ。そのねずみは汚物塗れで、かわいらしいと感じる所は何もなかった。更には、このねずみの一匹一匹から、今までに見たどの悪魔よりも禍々しい気配を感じ――そして、圧倒的な恐怖を感じた。ねずみは中田の全身に飛びかかった途端に、彼をライオンの様に貪り食った。それが数え切れないほど彼の全身に飛びかかり――彼はねずみから必死にもがきながら金切り声をあげた。ねずみたちが去っていった頃に、そこに残っていたのは、半分の身体を失った中田の姿だ。僕はその姿を見て、何度も吐きそうになったし、鼻を突く様な悪臭と共に気を失いそうにもなった。 これが鷺月京谷に関わった者の末路なのか――?こんなの嫌だ。こんなに酷い死に様を晒す位なら、ここから飛び降りて死んだ方がまだマシだと思った。そこで、白河が一人だけ、悪臭が漂う中田の屍に近づいた。 「どうして、てめぇらはあいつの有様を最後まで見届けた。せっかく、敵が警告してやったのにおまえらはそれを無視したんだ。もし見なかったら、お前らは恐怖せずに済んだ筈だ。 ――いいか、これが最後の警告だ。もし、俺の過去を教えて欲しければ、俺と一緒にこの先のエレベーターに乗れ。だが、これ以上呪われた運命にあいたくなければ、悪い事は言わねぇ。今すぐ引き返せ」 僕はどうすればいいのだろうか?ここで下手な選択をすれば間違いなく、呪われた運命に一生憑かれるだろう。こういう時に自分の非力さを呪うものだ。その悩みの時に一人だけ前に出た者が居た。それは、蔵田だった。 「俺はもう友達が酷い目に会う所を見たくねぇんだ。だから、俺は白河と一緒にその元凶を叩きのめしに行くぜ」 僕は彼のその勇気に感服した。よく、あんな判断が出せたものだと――羽嶋と稲見も向こうへ行く中で、僕はふと藍香や博文の事を考えた。もし、ここで彼らを連れ戻さなかったら僕は一生後悔する毎日を過ごすだろう。あの話が本当だとすれば、恐らく帰った後も僕は呪われた生涯を送る事に――だったら前へ進もう。恐怖に立ち向かう為に―― 僕たちが前へ進んだ途端に、彰人に呼び止められた。 「俺は癒依と一緒にここで姉貴と風間を待っている。大丈夫だ、俺なら心配は無い。それに白河の話なら既に聞いたからな。最初から、あいつと同じ気持ちでいたつもりだ。俺だって悔いは残したくないからな」 そういえば、彰人はやけに何かに後悔しているようだった。それが何を示すのかは分からないが―― To Be Continued... まとめ ヒントが出た謎 鷺月京谷について 紅い髪の女に着いて 新しく出来た謎 幻覚を見せたのは誰か? 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/cielenica/pages/36.html
「誰かを助けられる自分じゃないといけないんだ。 弱いままだと、より多くのものを取りこぼしてしまうから。だから強くなりたい、どこまでだって」 詳細 「クリフォス・レーベンスレイブ・アトン」(Qliphoths Lebensleib Athon) 愛称:クリス(Qliths) 年齢:14歳 出身:第51管理世界「アリアニコ」/灰巌大陸(ユースタリ)西方「聖聯(せいれん)教会」本部 デバイス:アグノスティシュ(Agnostisch)、ゼーレンクロイツ(Seelenkreuz) + デバイス詳細 アグノスティシュ(Agnostisch) 分類:ストレージデバイス→インテリジェントデバイス マスコットネームは「アグノス(Agnos)」。静謐な銀の錦杖であり、クリスはこれによって様々な魔法を行使する。 後述するサクラメントはミッドチルダから見てもブラックボックスの多い魔法体系なため、デバイス側のサポートが難しいという理由で自律意志を持たないものが愛機となった。しかし技術の解析が進んでいき、サクラメントの内容8割が解読されたことに応じて大規模な改良が行なわれ、自律意志のある「魔法使いの杖」として生まれ変わることになる。AIとしては中性的だが一応男性人格。 スタンバイモードは二対の銀の腕輪。デバイスモードは上述の通り錦杖で、特に目立った飾りもない。 大規模な改良後はスタンバイモードにそれぞれ黄と紫の宝玉が嵌め込まれた姿、デバイスモードはそれらを散りばめるように飾り、その他さまざまな装飾を加えて変更した物になった。宝玉の色はクリス自身がイメージする「善と悪の象徴」でもある。 ゼーレンクロイツ(Seelenkreuz) 分類:アームドデバイス 焼け落ちた聖聯教会から見つけた、唯一無事だった「聖遺物」。魂十字(こんじゅうじ)。クリスの切り札。 四方と中心に宝石があしらわれた金色の十字架であり、上から時計回りに赤(火)、橙(土)、青(水)、緑(風)、そして中心に白(空)と、四大元素及びエーテルを指した配色となっている。クリスからすれば「見た目も中身も豪奢」。 所謂魔力タンクであり、普段はルートアビリティを使うために必要な魔力がクリスによって貯蔵されている。掌大サイズでありながら大規模魔法を何発も撃てるほどの貯蔵量を誇るが、その仕組みは未だ分かっていない。 「聖遺物」として長らく保管されてきたことから、ロストロギアの一端ではとも。分類はあくまでも便宜上のものである。 魔力光:金色(血筋や経験に誇りを持つ。黄の要素「優しく、礼儀正しい」もあり) 魔法術式:サクラメント(ミッド混合ハイブリッド) 「サクラメント(Sakrament)」 レーベンスレイブ兄妹が扱う、「聖聯教会」内で構築された独自の術式フォーマット。概念として「神聖」にまつわる気配を帯びた魔法体系で、仇なす敵を"浄化"するという方向性で殲滅するロジックが取られている。 魔法陣の形状は六枚の花弁にも似る模様を円形で囲ったものに、更に円形テンプレートが繋いでひし形となるように四つ囲ったものが二つ、各々線で繋げて重ねたように広げているもの。内側の円形は小型であり、逆に外側はやや大き目であると、かなり複雑。 このような術式となっているのは、血統を続かせるうえで独自の改良を繰り返していったからではと考察がされていた。少なくともベルカ式のそれよりも難解なことは確かで、スペキュロにも「興味深い」と評されている。 ルートアビリティ:聖なる審判(ハイリグス・ウルタイル) + 詳細 芳しき腐臭を切り裂いて 黄金の天より来たる御遣い 汝が罪、我が審判に委ね罰されよ ベルカ戦争にてミッドチルダ陣営に所属していた魔導師の少年。 末端につれてウェーブがかかる金髪と、左右共に色が違うオッドアイ(左:緑、右:青)の美少年。オッドアイは「聖者の印」として尊ばれてきた聖王一族の色彩と同じく、「殉教の約定」と謳われてきた色彩(あかし)である。 「聖聯教会」の司祭の息子であり、魂底咲火(ルートアビリティ)「聖なる審判(ハイリグス・ウルタイル)」を保有する。これは対象者の「罪」の重さに応じて「罰」を決めるというもので、レーベンスレイブ家という血統の中で引き継がれてきた魔法。クリフォスがこれを発現できると発覚したため、何事もなければ父の跡を継いで司祭になる予定であった。 しかし戦乱に巻き込まれて教会が焼き討ちに遭い、両親や信者たちを喪ったことで妹ともども天涯孤独の身に落とされる。その後は幼いながらに寄り添って生きてきたが限界によって倒れ、「彼ら」に発見されたのち生き延びた。そこで案内された施設にて、ヒビキを初めとする子供たちと出会うことになる。 「聖聯教会」には多くの聖遺物が管理されていて、クリフォスも父からの伝聞としてその存在をある程度は聞いていた。彼の持つペンダント型の魔導補正装置(=ブーストデバイス)も聖遺物として厳重に保管されてきたもので、あの日の焼け討ちの中で唯一無事だと確認できた代物でもある。 「はじまりの子供たち」の中では一番最後にデジタライズされた人物。イーダフェルトにおける「理」や「均衡」、及びそれらのバランスをとる上で重大な【秩序/混沌】を担当している。天使・悪魔モチーフのフィルギャの祖となるためにデザインがされたため、そういう意味では彼の創世と破滅は必然としたイベントでもあった。 + 本編では 「傲慢不遜、大いに結構。俺(僕)は生贄(えいゆう)を捨てて、本当の生を皆と歩んでみせる」 その正体は地球へと飛来したロストロギア『イーダフェルト』に保存された、古代にて創世と破滅をもたらし七代魔王の一座として封じられてきたフィルギャ(デジモン)「ルーチェモン」の人間時代。 役割として【秩序/混沌】、イーダフェルトの初動を務め、最終的に覚醒した十闘士――かつての同胞にして友人だった者たちの手で滅されて排斥されることを確定づけられた、神話の一端。教訓となるべく捧げられた舞台装置。 フロンティア軸のラストボス。彼の目的は咒針礼装を経由して装者たちから人間性を奪い、かつての仲間を人間に戻すこと。 そして、この"詰み切った世界"を自分の手で終わらせることにあり、その助力としてロイヤルナイツの二騎を奪取した。 装者たちについては特に大した感慨もなく計画のコマだと思っていたものの、ヒビキの憧れを体現するような拓也の存在に気付いたことで彼らの人間性を奪うことを惜しいと感じてはいた。しかし何千何万年と煮詰められた衝動が止まることはなく、その上で結果的に「お前はもう一度、ただ名前を呼んでもらいたいだけ」という願いを指摘されたことで発狂。奪われた者として、今度は奪うものに成り果てたことの哀切を絶叫しながらも最終段階まで計画を進めようとして敗北した。 その後は消滅を望むのみだったものの、かつての仲間たちの声によってそれすら叶わないことを悟り涙を流す。その後は決められたシステム通りにイーダフェルトの「底」へと堕ち、悪態を吐きながらも彼らの旅路を祝福して消え去っていった。 ヒビキとは親友関係にあった。その絆は最後の最後で敗れた際、助けを求めた相手として名前を咽ぶほどに強い。 ラグナロク起動時、レーヴァテインの緊急停止装置「エルダリィキル」の一つを承認できる権限を持っている。 + 書きかけ 「ノルン・レーベンスレイブ・アトン」(Norn Lebensleib Athon) 愛称:ノルン(Norn) 年齢:12歳 魔力光:銀色(白の要素「天才肌で、リーダー気質。時々天然が入る」を含む) ⇒【輝樹母体】イグドラシル ストレートなショートヘアの金髪と、兄同様にオッドアイを持つ美少女。違いとして色彩が反転している(左:青、右:緑)。 クリフォスの妹で、幼いながらも信心深く丁寧な性格。とはいえまだまだ子供らしく兄に甘えることがある。 「燈籠宮韻」(Tōrōgū Hibiki) 愛称:ヒビキ(Hibiki) 年齢:14歳 ⇒【火霊】エンシェントグレイモン/アグニモン 「ウィルベル・フリューゲト」(Willbel Flüged) 愛称:ウィル(Will) 年齢:16歳 ⇒【光霊】エンシェントガルルモン/ヴォルフモン 「スピーレン・フリューゲト」(Speren Flüged) 愛称:スピーレン(Speren) 年齢:18歳 ⇒【闇霊】エンシェントスフィンクモン/レーベモン 「セルグアー・ゲーンル」(Selgeua Geenru) 愛称:スーニャ(Snya) 年齢:11歳 ⇒【氷霊】エンシェントメガテリウモン/チャックモン 「ミュージェニ・リブリヒ」(Musienie Rivlich) 愛称:ミューズ(Muse) 年齢:17歳 ⇒【風霊】エンシェントイリスモン/フェアリモン 「ギブロトレゴ・クンバース」(Giblotrego Knbas) 愛称:トレゴ(Trego) 年齢:18歳 ⇒【雷霊】エンシェントビートモン/ブリッツモン 「アルクハ=ラド」(Arkha Lad) 愛称:アルクハ(Arkha) 年齢:13歳 ⇒【土霊】エンシェントボルケーモン/グロットモン 「スビタニ・ネヲンス」(Sbitani Newons) 愛称:スビタニ(Sbitani) 年齢:18歳 ⇒【木霊】エンシェントトロイアモン/アルボルモン 「メーイル・スーク」(Meile Serc) 愛称:メーイル(Meile) 年齢:17歳 ⇒【水霊】エンシェントマーメイモン/ラーナモン 「スペキュロ・バールォックエン」(Zspequlo Baluoqen) 愛称:スペキュロ(Zspequlo) 年齢:19歳 ⇒【鋼霊】エンシェントワイズモン/メルキューレモン
https://w.atwiki.jp/ranobesaikyou/pages/653.html
. 【作品名】クチュクチュバーン 【名前】集合体 【属性】不定形の超巨大な集合体 【大きさ】超巨大。最終的には下手すると太陽と地球の距離よりもデカくなっている。 【攻撃力】同化。飲み込んだ相手を無機質でも有機物でも四次元でも、太陽でも同化する 同化するとその分大きくなるようだ 【防御力】大きさ相応以上。同化するので太陽を食っても大丈夫。 【素早さ】大きさ相応以上。空を食える程度のサイズの時に どうやったのか知らないが(体を伸ばした?)、短時間で4つの太陽を飲み込んだ 【特殊能力】まともな物理法則に従っていない あらゆる生き物を即死させる腐臭を放つ集合体とも同化しているが、 その力を利用できるのかはよく分からない 【長所】ナンセンスなほどの同化能力。四次元と(詳細不明)すら同化した。 【短所】遠距離攻撃がない 【備考】全てと同化すると、しばらくして(長さは不明)自滅するので 最後の一人と同化していない状態でエントリー 21スレ目 海の集合体と交代で番外へ 20スレ目 977 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/09/02(土) 18 33 53 ID Ukht+b9D クチュクチュバーン借り直しました、なかなか考察が難しい 集合体の特徴 形は太陽系のコロナのように不定形 大きさ 空を覆いつくしていた雲や4つの太陽、そして大地までも同化した 4つの太陽は、オリジナルの太陽とは別に存在し、オリジナルの方は同化していない 4つの太陽は地平線に集まっており、ぶつかり合っては激しい閃光を放つ 最終的に残された台地は数キロ未満であとは集合体が占めている ↓ 最終的な大きさは地球+大気圏くらいか しかし、 シマウマ男を飲み込んだあとも(目は未消化)、集合体同士で合体している 果たして、大きさをどうするべきか? スピード 不明、大きさ相応にゆっくり動く 特徴 どんな大きさのものでも触れれば瞬時にして取り込む 生物、無機質、電波、四次元などなんでも飲み込む 接触だけでなく吸い込むことで同化できるらしい 観察以外何もしない、と言うような強い意思が無い限り、 意思のある存在は自分から集合体の方に突っ込んでしまっている (もはや、無機物や腐敗物と区別できないようなものも突っ込んでいる) 集合体が存在しているという事実が突っ込みを誘発しているっぽい よって、光速云々はあまり関係が無い 978 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/09/02(土) 19 19 42 ID 60t1lEHy なんでも喰うって攻撃とかはくらってないの? 986 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/09/02(土) 23 42 43 ID Ukht+b9D 978 食らってない。みんな衝動の駆られて同化されてるし。 その前の度重なるカオスと核ミサイル乱射のせいでまともな兵器が残っていない。 あと、集合体同士の合体時に核融合に近いことがおきているらしい。 19スレ目 626 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/10(木) 22 00 46 ID ggs34Zv0 四次元食えるって事は三次元の物は大体食えるって事でいいのかな? 627 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/10(木) 22 03 41 ID 8od+MVj4 FFの空間切断には効くのかな? まぁ効いてもどうやったら死ぬのかわからんが 628 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/10(木) 22 06 31 ID wn+oAf/Z 不思議パウワで恒星破壊より大幅に強ければ倒せるんじゃね? 629 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/10(木) 22 11 15 ID ggs34Zv0 その他の質問 1、最後の(ry の状態(エントリー時)ってどのくらいの大きさ? 太陽四つぶん? 2、空から食い始めて最初の太陽を飲み込んだ時間は八分以下? (太陽から地球まで光が届くのに八分かかるので、八分以内に食ったなら食う速度が 超光速になる……よね?) もしくは四つの太陽を食った時間をできるだけ詳細に 3、最後の一人って何? 4、その他物理法則の超越例(無理ならいいけど) 630 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/10(木) 22 54 24 ID x8PPr2sA 図書館で必要なことだけメモって来たのだけなのて、 うかつなことは話せないが、覚えている範囲で。 こんなことなら本ごと借りて来ればよかった。 1. 他の集合体との合体前に日本の全てのもの(シマウマ男除く)存在と同化、 ただし、日本よりも小さい。(大陸や海から他の集合体が日本に集まってきているので) 他の集合体と合体してから4つの太陽飲み込んだので、その後のサイズは不明。 便宜的に太陽4つ分で良いかと。そうしないと、ますます意味不明キャラになるんで。 で、伸びた時は1億5000万kmくらいにすると。 2. 不明。最低値をとっとくのが無難かと。 日没までの時間=12時間に1億5000万kmを4回往復? 3. 最後の人間、キメラ化してるが能力は平凡。集合体を観察することに決めたので、 一番最後に飲まれた。同化後も、観察の役割が認められ目玉だけ分離していた。 4. 全ての人間を飲み込んだ後に自爆し、無意味極まりない輪廻システムを創出する 集合体自体も世界が狂ったために生まれた存在 他の世界の狂いとして人間の体がデタラメな形態へと変化(キメラはまだマシ)、 太陽が4つになる。水が宙を漂う。空の色が無茶苦茶になるなど 世界の狂いは宇宙の各地でランダムに起きるものらしい 631 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/10(木) 23 01 22 ID zQ3sm755 太陽や空食ってる時も、男が飢え死にしてないので、 どういう意味? 632 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/11(金) 00 07 05 ID g/I2v+83 630 12億キロを12時間で、時速1億km 直して秒速2万7778km 約マッハ8万、光速の9パーセント はやっ 685 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/12(土) 17 59 32 ID t5SWKyLA 集合体考察。光速の九%の速さででかくなるんだよな。 四次元も吸収出来ると。 ルーファ>カーリー>レディ・ロン>ジーク>ガンバスター セイバー>アザトート>ファントム・ガイア>ブラスティー=SSBゼラ トモル・オーガン>ジャスミン・クーア>クルスディア>デュグラディグドゥ ガ>TA-29=ソードブレイカー>ミリィ ○ミリィ 数字がはっきりしてるこっちの方が速い。飲みこんで勝ち。 ○ソドブレ 同上 ○TA 同上 ○ガ 同重 ○ディグラ 同上 ○クルス 同上 ○ジャス 同上。 ○トモル 同上 ○SSB 同上 ○ブラスティー 同上 ○ファントム 四次元も飲みこめるなら精神体も飲みこめるんじゃないの、勝ち。 ○アザトート 四次元も(ryブラックホールごとの見こめるんじゃないの、勝ち。 ○セイバー 倒されない、勝てる。 △ガンバス 倒されない、倒せないか。 ○ジーク 倒されない、勝てる。 ○れdぃ 飲み込んで勝ちと。 ○カーリー 相手が積極的に接触してくれるから、勝てる。 ○ルーファ 四次元も(ryなら精神体も飲みこめるんじゃないの、勝ち。 686 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/12(土) 18 03 37 ID t5SWKyLA 続いて。 ラジェンドラ>グラオーグラマーン>メフィスト>ジャグヘッド>マイロー 姫城玲>ストーカー>ヴァルキュア>竜機神>戦天使 バルンガ=ヴァイブ ○ヴァイブ 四次元も(ryなら吸い込めるんだろう、勝ち。 ○バルンガ 相手よりでかく鳴れる勝ち。 ?戦 詳しい人お願い ?竜 詳しい人お願い ×ヴァルキュ 飲みこむ前にアカシア記録層さ負けか。 ○ストーカー 飲み込んで勝ちだろう。 ×姫 弥勒負けか。 ○~△マイロー 吸い込んで勝ちかな?負けは無いが。 ○~△ジャグヘ 吸い込んで勝ちかな?負けは無いが。 ?メフィ 詳しい人お願い。 ○グラオー 接触できないが、惑星取りこみ勝ち。 ○ラフェン 自滅してくれて勝ち。 687 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/12(土) 18 17 41 ID 3zKuP5hS 数字がはっきりしてる~って言ってるけどそこらへんの連中にはちゃんと速度だされてるの多いぞ テンプレちゃんと読み返せ 688 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/12(土) 18 28 04 ID /f1Tz7XF ブラスティー~ミリィの間は、もっと分け分けになると思うが。 まあ、上で少し勝ち分がとれるから問題無いのか? 689 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/12(土) 18 35 22 ID 3zKuP5hS というか光速の九%ででかくなるんじゃなくて光速の九%で移動できるんだろ? 690 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/12(土) 18 35 22 ID pPt7ZHaZ ブラスティーは10倍以上早いしな。99.998%だっけか? 691 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/12(土) 18 39 58 ID PPi7jzNB てか半分くらいは数字きちんと出ているし 光速の9%より上がほとんどだと思うが 692 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/12(土) 18 43 24 ID St4N9g12 集合体はあくまで「相手を吸収してでかくなる」んだよな? 竜機神・戦天使 遠距離から攻撃されて負けだろう。接触しても異相空間に逃げられる。 マイロー この場合結晶化と吸収とどっちを優先するんだ? 集合体が命あるものなら、反応差で負けてるので負け。 ジャグ これってユイが召喚主扱い――ではないよな? ってかそもそも単体でいけるだろこれ。 半径二百メートル消失攻撃の超光速連打で負けるだろうな。 693 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/12(土) 18 45 01 ID 3zKuP5hS ジャグヘッドは自立行動が出来ないのでユイがいないとどうしようもない 695 名前:イラストに騙された名無しさん[sage] 投稿日:2006/08/12(土) 19 06 31 ID Oic/acUc 693 ただまあユイが死んでも最後の思考を読み取って自律稼動するから問題はない。 .
https://w.atwiki.jp/student_rowa/pages/97.html
生きろ ともちゃん ◆xXon72.MI. 滝野智は、無学寺を出た後ひたすらに森の中を走った。 「うわーん、うわーん!」 手にはフライパンを握りしめ、目からは涙を流し、声を上げて泣きながら、 それでも力の限り走った。 しかし、元々体力のある方ではない智が、そんな状態で走り続けられる時間はそれほど長くはなく、徐々に息が切れ、足取りも重たくなってきた。 「はー、はー、はー」 それでも、体力の続く限りは走ろうと足を動かし続けた智だったが、 体力の限界が訪れるよりも前に、何かに躓いて転んでしまった。 「ぬわー!」 智の持っていたフライパンが智の手から放り出され、近くの木に当たってカンと音を立てた。 「うぅ……、痛いよー」 幸い、智の転んだ場所は、落ち葉や枯れ草が敷き詰められている状態で、 大した怪我はせずに済んだが、先ほど無学寺で打ったところと同じ場所を 地面に打ちつけてしまい、智はその痛みに閉口した。 「くぅぅ……、あいつは!?」 そのまま地面に顔を伏せ、泣き出したい気持ちを堪え、智は辺りを見回した。 どうやら、あの金髪──三橋貴志は、追いかけてきてはいないようだ。 「はぁ…はぁ…、ここは?」 三橋の追跡がないことを確認し、周りを見る余裕が出てきた智は辺りを見渡して、 今、自分がいる場所に見覚えがあることに気がついた。 無学寺にたどり着く前、首から血を流した少年の死体を発見した場所だ。 どうやら、夢中で走っているうちに、戻ってきてしまったらしい。 (ん?ってことは) そこで智は自分が躓いたものの正体に思い当たり、今まで周りを見渡すために、やや上に向いていた視線を恐る恐る下へと向けた。 そこには、智が思った通り、首から血を流している少年──田中良の死体が転がっていた。 智は今、これに躓いて転んでしまったのだ 正座のような姿勢でうずくまっていたその少年の死体は、 智が躓いたせいで、姿勢はそのままに横倒しになり、智の方へ後頭部を向けていた。 (…………っ!!) それを見た智の体に、ザァッと鳥肌が立った。 『皆さん、こんにちは』 「うわ!」 ちょうどその時、この島で最初の放送が流れ始め、驚いた智は悲鳴を上げた。 『担任の坂持でーす。ちょうど、今、正午になりましたー。 みんな、元気にやってるかあ? 』 「ビッ、ビックリしたー」 それが放送だと理解すると、智はひとまずホッと胸をなでおろした。 その間にも放送は進み、まずは禁止エリアの発表となった。 『えー、オホン。それじゃあ禁止エリアについてでーす』 (え?禁止エリアってなんだっけ?) 智は禁止エリアのことを、この瞬間まで忘れてしまっていたが、 言われてやっと、最初の教室で言われたことを思い出した。 (そ、そうだ!そのエリアを出ないと首輪が爆発するってゆー) 『今からエリアと時間を言いまーす。 地図出してチェックしろよー』 禁止エリアのことは思い出した智だったが、今、智の手元には地図が無い。 (え!?チェックしろって言われても) 地図が無ければ、チェックのしようがない。 しかし、その間にも放送は着々と進んでいく。 智が慌てて周りをキョロキョロと見回すと、先ほど躓いた少年の死体の傍に放置されているデイバッグが目に入った。 おそらく、死んでいる少年のものだったのだろう。 『まず、今から一時間後、午後一時な』 「まっ、待って!」 一瞬躊躇した智だったが、放送は待ってくれない。 最早、迷っている場合ではなかった。 智は、そのデイバッグを掴むと一気にひっくり返し、中身を辺りにぶちまけた。 「地図、地図…あった!」 『一時にE-9 一時までにはこのエリアから出ること、わかったかー?』 智が地図を拾い上げるのと、最初の禁止エリアが発表されるのは、ほぼ同時だった。 「E-9!」 ひっくり返したデイバッグの中身には筆記用具も含まれていたが、それを拾うのは間に合わず、 智は地図のE-9部分を爪でガリガリと引っ掻いた。 「セ、セーフ」 後の禁止エリアも、智は同じ様にして間に合わせのチェックを済ませた。 死亡者の発表は、春日歩の部分以外聞き流した。 春日歩──大阪の本名だ。 歩のことを、智が付けた大阪という愛称で呼ぶようになってから2年以上が経過しており、 智は大阪の本名など忘れかけていたが、名簿もあるし、いくら何でも間違えたりはしない。 (大阪……) 放送が始まったのをキッカケに泣き止んでいた智だったが、 放送が終わると大阪のことを思い出し、再び涙が出てきた。 「うぅ…大阪ぁ……」 智は、1年生の時に転校してきた大阪とは何かと絡むことが多く、 修学旅行では、同じ班で西表島に行ったりダイビングを楽しんだりしたし、 最近は、よく一緒に受験勉強をしていた。 そんな彼女が、もう帰らぬ人になったなんて……。 大阪が撃たれるところを直接見ていた智だが、それでも信じられなかった。 ただ、とんでもない事になってしまったということだけは、智も理解できた。 「はぁ、帰りたいよー」 智は、よく突飛な事をやらかす子だったが、それはあくまで日常生活の中での話であり、 非日常的な環境で力を発揮できるタイプではない。 智はとうとう、現実逃避をし始めた。 「また、カラオケ行きたいな。よみのヘタな歌、聞いて……」 そんな智の頭に浮かんできたのは、この島にはいない、 小学校以来ずっと同じクラスの水原暦の顔だった。 よみの部屋行って、よみをからかって、よみと遊んで、よみの背中にセミくっつけて、 よみと……。 そんなことを考えていた智を現実に引き戻したのは、突然聞こえてきた銃声だった。 「ひぃ!?」 銃声は1回だけでなく、何回も立て続けに聞こえてきて、 しかも、その銃声が1種類ではないことは、智にも分かった。 何者かが、銃撃戦を繰り広げているのだろう。 音は、それほど近くからではないが、あまり遠くでもなさそうだった。 (三橋か!?) 現実に引き戻された智は、まず銃声と三橋を結びつけて考え、銃撃戦を行っている者の一人が、大阪を撃った三橋かも知れないと思った。 今聞こえてきた音が、大阪を撃った銃と同じものかどうかなんて分からなかったが、 ここからそれほど離れた場所でなく、銃を持っている者となれば、可能性は高いだろう。 そう考えた智は、急いで先ほどばらまいた少年の支給品を確認し始めた。 (武器は、無いか……) 何か武器があれば、そのまま銃声の方へ走って行って大阪の仇を打ってやろうかと思った智だったが、残念ながら武器になりそうな物は無かった。 武器も無しに、銃を持った相手に向かって行くのは自殺行為だ。 大阪のおかげで助かったこの命を、無駄にするわけにはいかない。 仕方なく、智は地面に散らばった支給品を確認しながらデイバッグに戻していった。 (水や食い物も無いんだな) このデイバッグには、無学寺で大阪や三橋と確認したような基本的な支給品は揃っていたが、食料や水は入っていなかった。おそらく、少年を殺した者が持ち去ったのだろう。 一通り、地面に散らばった支給品の回収を終えると、智は拾った筆記用具で地図にちゃんとしたチェックを入れた。 (それにしても、まさかよみの顔が見たいと思う日が来るとはね) 銃声で我に返る前に考えていたことを思い出し、智は「はは……」と、力なく笑った。 普段でも、智の方から暦に会いに行ったりはするが、こんなに強烈に暦に会いたいと思ったことはない。 「痛たたた!」 支給品を整理しながら心も整理をして、少し落ち着いてきていた智だったが、 心が落ち着いて来ると、今度は左半身に負った打ち身がズキズキと痛みだした。 どうやら、少し熱を持っているようだ。 「うー、痛いよー」 しばらく痛む部分を押さえていたが、このまま放っておいても、痛みは引きそうにない。 とにかく、手当てができる所はないかと、先ほどデイバッグに入れた地図を取り出した。 (そういえば、ここって、どこだ?) そこで智は、今、自分がいる場所が分からないことに気づき、コンパスも取り出して、 地図と、コンパスと、辺りの風景を見比べた。 無学寺から出て、どれだけ走ったのか分からないが、西に山が見え、周りに道などが無いことから、ここは地図で言うとE-7かF-7だろうと予想できた。 (あ、南の方に診療所があるじゃん) 地図によると、島の南側にある氷川村に診療所があるようだ。 今いる場所が智の思う通りなら、ここから南下すれば、その診療所にたどり着くはずだ。 大阪の仇は何としても打ちたいが、武器になる物がフライパンくらいしか手元にないのでは、 銃を持つ三橋に立ち向かうのは無理というものだ。 それなら、まずは怪我の手当てがしたい。 地図の縮尺が分からないので、距離も分からないが、 ともかく智は、氷川村の診療所に行くことにした。 「大阪、私、絶対生き残って仇取るからな!」 最後に、智は銃声のした方を振り返って呟くと、 それとは反対方向の氷川村に向かって歩き出した。 「痛いよー」 打ち身が痛む場所を手で押さえながら、トボトボと歩いた。 そうして智が立ち去ったその場には、横倒しになった田中良少年の死体だけが残された。 【F-7/林の中/1日目 日中】 【滝野智@あずまんが大王】 【状態】 左半身に打ち身 精神的動揺 【装備】 フライパン 【所持品】 デイバッグ 支給品一式(水と食料は無し) 【思考・行動】 基本:三橋のことが許せない。 1 大阪、ごめん、ごめん……! 2 三橋、絶対に許さない 3 打ち身が痛む。手当てをしたい 4 大阪の仇を討つために、何か武器が欲しい 51:世界がいないということ 投下順で読む 53:<ある鴉の死と、その死骸の放つ腐臭にまつわる幾つかの断章 前編> 51:世界がいないということ 時系列順で読む 55:鏡夜の追跡 ▲
https://w.atwiki.jp/tsundereidayon/pages/476.html
それを何と呼べばいいのだろうか。 湿った風に威圧が混ざり、心がざわめく。その場を離れたいのに体は動かない。 『畏怖』 これ以上の説明のしようがない。恐怖ではない。本能が知っている。 … ぬちゃ…ひた…ぬちゃ…ひた… … 俺はどうなるんだろうか。 …… ことの始まりは日常的な『非日常』の中で起きたんだ。 「ちょ、おま、それ、だめーーー」俺は座敷ムスメを必死でとめようとした。 だが一足遅く、座敷ムスメは俺を振り返り、にやりと笑うとマウスをクリックした。 お気に入りフォルダにザックリ詰められた俺の虹コレクションがずらりと展開される。 「あふ、もう、死にたい…」俺の日常は、この座敷ムスメに出会ってから大きく変わった。 「…へ…(微笑)」冷たい目線が俺の胸をえぐる。いや、いっそ本当にえぐっていただきたい。 こいつはいつもこうだ。死んだじいちゃんは座敷ワラシとかは守り神だから大切にしろとかいっていたけど、こいつは疫病神の類じゃないかと疑うくらい嫌がらせする。 この前なんか、俺が072のフィニッシュのタイミングを見計らって、HGのポスターを目の前に広げやがった。もう、俺の心は「フォー」でしたよ。 そんな毎日を送る俺だが、その日は特にひどかった。 へこんでいる俺を尻目にやつは更に追い討ちをかけていたのだ。 俺はやつの行動に気づいて悲鳴に近い声を上げる。「や、やめてぇえええええーーーー」 ぽちっ。 マウスをクリックする音がコミカルに響いた。俺の2Gに近い虹コレクションはあっという間に削除された。 「も、もういやだーーーーー」俺は叫び声を上げてアパートを飛び出した。 どこをどういったんだろう。俺はさ迷い、いつの間にか暗い森にいた。 い、いや、本当に何でこんなところにいるんだろう。とりあえず、冷静になった俺は森を出なきゃと思った。 方角もわからないが、とにかく歩いた。程なくして社が見えた。 「…神社?」だれかいるかな、と期待を込め足を運んだ。日が落ち始めていたので、小走りに境内に入った。 そこには確かに神社だった。古びて色のはげた鳥居にぽつんと小さな御堂(?)があった。 「だれかいませんかー?……いませんよぉお」反応が無いので自分で言葉を返す。 むなしかった。 っぽ、ぽつっ、ぽつっ…。 と水滴が落ちたかと思うとざぁっと雨が急に降り出した。 しょうがないので、俺は古びた扉を、ぎぃっと押し開き中に入って、雨宿りさせてもらうことにした。 「やまねぇえなぁ」俺はきっとずいぶん歩いたんだろう。家を出たのは昼ぐらいだったのに、今は日が落ちかけているのだから。 無性に眠たかった。やまない雨にうんざりしていた俺はいつの間にかうたた寝をしていた。 気がついたら日は完璧に落ちていた。 雨はまだ、降っている。俺は無性に後悔していた。だがいまさら夜の森を行くつもりはない。ポケットからライターを取り出し火をともした。 夜のお堂は薄気味悪い。ライターの揺らめく火に俺の影が踊る。 「あっち!!」ライターの点火部が熱されて熱かった。俺は仕方なく燭台がないか探すことにした。 と、すぐ見つかった。小さな祠の前に二つの燭台があり、幸いにもろうそくがまだ残っていた。 早速、火をつけた。明るさにほっとする。 まぁ、つかの間の安堵だったんだがな…。 「は」と目が覚めた。 俺は不覚にもまた寝ていたらしい。だが、先ほどと何か雰囲気が違う。 重苦しさ、息苦しさに包まれる。 燭台にはまだ火はともり、影がゆらゆらと揺らめいている。そして違和感に気がついた。 祠の扉が開かれている。そして、ぶあっと何か黒い影が飛び出した。 それは俺の背後にべちゃっという音を立てて落ちた。 それを何と呼べばいいのだろうか。 湿った風に威圧が混ざり、心がざわめく。その場を離れたいのに体は動かない。 『畏怖』 これ以上の説明のしようがない。恐怖ではない。本能が知っている。 … ぬちゃ…ひた…ぬちゃ…ひた… … 振り向くのが恐ろしい。そして… 「ねぇえ? こんなところで何をしているの」甘い、甘い声が耳に届く。 ひた…ぬちゃ…ひた…ぬちゃ… 俺のすぐ後ろでささく声に混じってなにか、不安を呼び覚ます音がなる。 白い指が俺の頬をなでる。 「硬くならないでいいのよ。でもここは…」もう片方の白い指が俺の腰をまさぐる。 ず、ず、にちゃっ… 何の音だろう? ふわりと甘い香のにおいが鼻腔をくすぐった。 「あ、あなたは…だれ?」やっとのことで声を絞り出す。 「あら、私のお家に無断ではいってそんなこというのね」いいながらも俺の体を這う指は止まらない。 はっきり言おう。すごく気持ちがいい。このまま身をゆだねてしまいたかった。だが。 ぬちゃ…にちゃ…ぬちゃっ… この音が俺の理性に警告を発している。早くにげろと。 「か、勝手にはいって申し訳ありませんでした。もう、出て行きますから…」 「話をするときは人の目を見て話す」と何者かは俺をぐいっと振り返らせた。 そこには袴を着た巫女がいた。長い黒髪。白と朱の巫女衣装。 だが…。きれいな形のふじ額にはウジが湧き、頬はこけ、白い首は半分が腐り落ちていた。 「うっ」俺は口元を押さえた。生前はさぞ美しかったと思えるだけにその姿には例えようもない恐ろしさがある。 「あなたの精気がほしい」そいつはそういった。 じりじりと顔を近づける。この距離になると甘い香のにおいに混じって腐臭が漂う。 朽ちかけた女は俺のズボンをおろし、俺のイチモツに顔を近づけた。 「あら、もう、こんなにして」さっきの愛撫で俺のそれは怒張していた。そして畏怖に支配された今もそれは不思議なことに張り詰めていた。 「あ、あむ…ん」じゅぷ、じゅぷ…と女の頭が上下に振幅する。得も知れぬ快感が俺を支配する。もう俺は果てそうだった。 「も…う、だ…め」息も絶え絶えに俺は、果てた後どうなるかを考えていた。 そして… 「そこまでじゃ!!」ぴんと張り詰めた声が甘い空気を切り裂いた。 扉の先に小さな黒い影が仁王立ちしていた。 「なぁに、いまいいところなの…に!?」ごんとすごい音をたてて朽ちた女に黒い影がぶち当たった。あまりの勢いに女は横倒れになる。 「あ。」俺のイチモツ君は解放され、それと同時に発射した。白い液体が空を飛ぶのがスローモーションで見えた。 「早く、にげるぞ」黒い影が俺の手をつかみお堂の外に連れ出した。 「ま、まちなさ…」声は見る見る遠ざかる。 俺はもうなにがなんだかわからなかった。 「ここまでくれば大丈夫じゃろ」程よく開けた場所に出た。空には月が煌々と照る。 影は、座敷ムスメだった。「愚か者め。不用意に土地神になぞ、つけこまれおって」 「助けにきてくれたのか」「ち、ちが、たまたま外を散歩してたら通りかかっただけじゃ。お前みたいなエロ坊主なぞ知るか」 「そうか。ところであれはなんだったんだ」「うむ。あれはここら一帯を守護する土地神だったのだが、あまりの淫乱さに封印されたのじゃ」 「目覚めたてじゃったから、良かったがそうでなければ…ええい。考えるだけで恐ろし…い!?」言いかけて座敷ムスメが凍りついた。 「どうした?」「い、いかん、はよう逃げんと」「え」振り向くと黒髪を振り乱した巫女が、遠くに見えた。どんどん近づいてくる。 「うあ、はやっ」座敷ムスメは俺を置いて走り出していた。朽ちた体とは思えぬほどの力強さが傍目からも判る。 「は、はやい、はやいよ。けどこういう時こそ焦ったらまけなのよね」「いいから、早く来い!!」俺の軽口を、きっと睨み座敷ムスメはさらに加速した。 俺も必死で走る。「…さ…い。ま…さ…い。まちなさーい」どんどん声が近づいてくる。 俺は振り返って驚いた。後ろを追いかけてくるのは絶世の美女だった。着物からはみ出た巨乳がたぷんたぷん揺れている。形相はしかし、鬼のようだった。 「ひ、ひぃ。なんかいきかえってるーーーー」「あ、さてはさっき果てたお前の精気をすすったな!! がんばるんじゃ、あと少しで森を出れる」 そしてなんとか森をでることができた。 森の向こうで悔しがる土地神の姿が見えた。 「何で追ってこないんだ?」「霊は何かに執着し、その…何かから力を得るもの…がある。やつももっと…ち…からがあれば…追ってこれたかも…しれんが」 座敷ムスメが苦しそうに答えた。…苦しそう? 「お、おい、どうした」「う…む。家から…離れすぎた…時間切れじゃ…」すぅっと姿が薄れ始めている。 「おい、座敷ムスメ!!」「ぬ、まえから…言おうと…思ったが…わしは、おまえの…」 「おまえの!?」「ふ…なんでも…な…」言い終えず、娘は腕の中ですぅっと消えた。 「座敷むすめーーーーーーーー」 あいつとの様々な思い出が脳裏をよぎる。ひたすらいじめられた記憶しかないが、それでも悲しかった。 俺は後悔を胸に帰路についた。 家に着き、いすに座る。ここはあいつの特等席だったな。 「おれ、座敷ムスメの事好きだったんだな」心の中の思いを口にした。 と、ガタンン!!! と大きな音がひびいた。驚きながら、振り向くと。 「お、お前!?」顔を真っ赤にした座敷ムスメがいた。 「な、な、な、なにを口走ってるんだおぬしは!この変態、ロリコン、ペド野ろ…ぎゅむ」俺は口汚くののしる座敷ムスメを思いっきり抱きしめた。 「よかった、本当によかった」涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら喜んだ。 「ぐ、ぐ、くるしい」ぐっと俺を突き放し、座敷ムスメは俺の涙顔をみつめた。 「…む。むぅ。わしも…お前が無事で…その…良かったぞ」と一言残すと、ぱっと消えた。 それから、2、3日は姿を見せなかったんだが…。 「ちょ、おま、それ、だめーーー」とまた俺の悲鳴を上げる毎日は続いている。 -了-
https://w.atwiki.jp/lastwhite_eden/pages/33.html
※キャラクター・マヤ連合中央議会に限り50音順 秋吉卓幸(あきよし たくゆき) 『蠍の記』の使い手に報告書を持ってきた 雑誌のモデルをそのまま模したようなパーマのかかった髪に、ヘラヘラと卑屈な笑みを浮かべる美形の優男 カマシ 最初はカマセーヌという名前だったが、ニワトリ氏がフランスっぽくって生意気と感じたために名前を変えられた どうみても名前の元ネタは噛まし犬 その名の通りVer3.2で登場したが、すぐに『蠍の記の使い手』に蹴り殺された №10014から4桁になるまで処理対象解除を特別に待ってもらっていた 時々「サ行 S+母音」が「SY+母音」になる 口癖は「うひひ」で、一人称はあちき 頭に安全第一と書かれたヘルメット、逆三角形の目で猫背 キャロロ ゲバルト班の班員 主従逆転・生命力抜群!な女の子 趣味は飛び降り自殺ごっこ、特技は生き物と仲良くなること ペドロリスに初めて会ったときレ●プされたが終始笑っていたという気狂い 蜥蝪(ネッシー)討伐の際、脳みそを半分かじられて以来ものすごい言動がおかしい 増援で派遣され訪れた御六島で、メザロアに首を斬られ即死・・・と思われたがミミンゾたんのおかげで生きていた しかしレンコ救出の際奴隷であるアリアリに発見され、はるかかなたに投げ飛ばされた ちなみにアリアリの人間投げ最高記録・2600km飛ばされた 行方は不明 元処理対象№.166 ギョスクイ ゲバルト班の班員 無理しすぎる節がある真面目な性格。童貞。 趣味はバンド、特技はベースギター すかーとめくりまくりすてぃ(スカメリ?)というバンドの人気者らしい 作詞とベース担当? 班長であるゲバルトに命を救われたことがあるらしくゲバルトを慕っている 増援で訪れた御六島でクリス・カヌに強打され死んだ… と思われたがその御六島での記憶を失った状態で再び現れた 中央議会に所属する兄がいる 名前の元ネタは金魚すくい 元処理対象№.104 ギョスクイの兄 よくわからないが面倒な人のようである ゲバルト 『勃起骸骨(スカルペニス)』の通り名を持つ 特和隊に所属している ゲバルト班・班長 蠍の記の使い手から引かれていたり、ハナヴィーに「あのおっさん(ゲバルト)とつるむのはやめたほうがいい」 と言われていたり…あの二人から引かれるとは、なかなかヤバいおっさん 処理対象の処理はしているが、確認/報告などの後処理は一切しない それどころか拷問や強姦を行っている問題児 リストファンナから注意を受けているが守る気は一切ない ゴリグロ 『蛆の這う死面(ネクロフェイス)』の通り名を持つ 特和隊に所属しており、そのマークを自らの頭?に突き刺している 黒く変色していることと通り名、腐臭からして生きながら腐っている人型、ゾンビの類なのかもしれない "鶴の記(バクアスラ)"を所持している ラヴィーズの迎えに勝手に上がった藤宮真崎をその"奇跡"で殺害した シグレ 『無限の眼(マヤサイト)』の二つ名?をもつ レンコの義理の父親 娘であるレンコを大切に思っているようだ 『蠍の記』の使い手 通り名『嫉妬の死塊(ジェラス・レギオン)』 候補は阿久津亮太・星口純・柳田霧子・佐井本与五郎の4人 御六島の事故で正体が明らかになると思われたが全員生きており特定は出来ていない マヤ連合の中ではトップクラスの実力を持っている感じ 知性・造形・身力何一つまともでない人間は無価値な人間だと思っている 生命を放棄した死者の姿を美しいと思い、中央議会の成員だろうと無価値だと思う人間を殺してきた このためか、中央議会の中では挨拶をしないと酷いことになるとの噂が立っている 一時殺人が趣味になったが、最近は死者の姿に裏切られることが多くなりあまりやっていない 思いを馳せている「あの人」がいる おそらくクリス・カヌのこと チャミグリン 便所スッポンに憑いてる憑依霊 元ネタはチャー○ーグ○ーン キャロロの首が斬られた時から行方不明 元処理対象№.499 デネボス かつてのガブルギルドの統治者で、ガブルギルドを含む3つの統治地域が中心となりマヤ連合の基が作られた 帝国とマヤとの関係を壊した張本人である 聖地と聖書・神奥百科事典の奪還に躍起になった マヤ連合中央議会元老院・初代元老 ドデモイ ゲバルト班の班員 趣味は筋肉!特技も筋肉!座右の銘?もちろん筋肉です 頭が陥没している素っ裸の筋肉男。コスプレしないように! 頭が陥没しているのは蜥蝪(ネッシー)討伐の際にデカイ尾っぽで頭を叩かれたせい 貧相な男ならペチャンコになっているところだがドデモイは筋肉のおかげで頭陥没のみで無事!(しかしその時から少し狂ったらしい) 「衣服なんてものはね、筋肉に自信のない人がつけるものなのですよ?」 「200キロ以下の男は筋肉に対する冒涜として制裁いたしますよ?」 派遣され訪れた御六島で、クリス・カヌにより頭を強打され死亡・・・しておらず、頭がさらにめり込んだ しかしその後メザロアに殴られて死亡 名前の元ネタは「どうでもいい」 元処理対象№130 ハナヴィー 金髪セミロング、ゴスロリファッションで左目に目の模様の眼帯 両腕が機械?に改造されている そして手コキ用アームがあるらしく、腕は付け替え可能だと思われる かなり口が汚く、罵る時は英語 趣味はバンドときゃわいい童貞逆レイプ(累計5000人) 特技はスーパーハナヴィー騎乗ファックとシング・ア・ソング 必殺・音速腰振りマ●コピストンは童貞を5秒でイかせることができるらしい ギョスクイと同じバンドでボーカルと作曲を担当 作曲センスはあるが作詞センスはない カヌと隆に奇襲をかけた一団の中でも格が違うようだ 何気に胸が大きい 元処理対象№38 藤宮真崎(ふじみや まさき) リムジンの運転手 勝手にラヴィーズの迎えに上がったことにより、ゴリグロの"奇跡"で自ら放った銃弾を跳ね返され殺された ペドロリス ゲバルト班の副班長 特技はピアノ、趣味は女を犯すこと。しかしペド・ロリコンということでもないらしい・・・ 今まで1000人以上の女を犯してきた ゲバルト班長のような強くてかっこいい強姦魔になることが夢 増援で訪れた御六島でメザロアに自身の技である『突指』で吹き飛ばされて生死不明、恐らく死亡 元処理対象№.69 無限の命(マヤ・マスター) 現・無限の命(マヤ・マスター) 中央議会元老院の現・元老? ミミンゾ ミミンゾたんははんぱねーのねん キャロロに寄生しているとしか言いようがない有能なミミズ 自らの体を使って包丁まで作った ちなみにキャロロに寄生しているミミンゾはメス、ミミズ界の美女とのこと キャロロとともにアリアリに投げ飛ばされ行方不明 元処理対象№.610? メギド 『救世の勇者(ブレブメシア)』メギドと呼ばれる 最終戦争においてマヤ連合を率いた そして帝国の各地を占拠し、帝国を滅ぼした また、沈める前には奴隷騎士団団長のメザロアと7日7晩休みなく戦い続けることが出来たほどの実力の持ち主 戦争終結後にマヤ連合の地へと帰還したメギドは、マヤ連合の人間を殺し始めた そしてマヤ連合の人口が半減したあたりで忽然と姿を消した マヤ連合内では英雄とされているが、生死不明の処理対象でもある ラヴィーズ 元処理対象№.1666 あまりの美しさに元老たちの寵愛を一身に受けている、と噂されるほど美しい 銀髪赤目の長髪ツインテールで、その美しさは一目見た人間の心を動かすほどで、不思議な存在感を持っている 一言で言い表すなら『神々よりも気高く、世界よりも美しい』 電車に乗った際は、そのあまりの美しさに見惚れて一般市民が駅までついて来たほど 元老たちの弱みを握る代わりに肉棒を握って頂点に近い場所まで上り詰めたと噂されている そのため、『おしゃぶり姫(フェラチオ)』と連合内であだ名がつけられた もちろん本人には内緒 (公式の日記コメントで禁句に引っかかり、一部伏字にされた) 特和隊に所属しているが大して強くないらしい そして、仕事をすることがほとんどない 自分を中心に世界が動いていると考えている節がある様子 クレタ島が気に入った際は、島民に退いてもらい島を頂くなど、かなり高慢・我儘であることが窺える 口元を覆い隠す羽扇子を持っている 奴隷騎士団と顔見知りのような発言や、王の話題になると分かりやすいぐらい興味を示すなど、なにかと意味深である 一人称はラヴィ ウィスパーボイス 『特別な何か』で他人の恐怖や混乱等のネガティブな感情を消すことが出来る ちなみにニワトリ氏のお気に入りキャラである リストファンナ 主管部に所属しており、真崎によると美人らしい 現場上がりで腕が立つ人。若いのに主管部の中では優秀 蠍の記の使い手曰く〝正規のルートを通さず独断で特和隊に頼み事〟なんてことを仕出かすのは彼女くらいとの事 増援で御六島へ渡る成員を募ったのも彼女 レンコ ゲバルト班の班員 かなりの巨乳。処女。元処理対象№.98。 フルネーム「江利川 恋子」 東京都民啓町5-4-44 第2鈴花コーポ301号に住んでいる(特典はがきより) 趣味はラブホで男を拷問すること、特技は料理と嘘泣き 国彦に拉致され処女喪失・・・はせずに、趣味の拷問を楽しんでいた 華麗な拷問を追及する拷問職人 増援で派遣され訪れた御六島でカヌら奴隷騎士団に捕まるが、隆の判断により解放された その後隆たちの通う民啓学園に転校した ちなみに、中央議会内でTOP3に入るほどの人気がある (第2回人気投票からギョスクイ談。「友人からもよく〝紹介しろ〟と言われる」らしい) DEVIL泰三 『鋼腕(アイアンマン)』の通り名を持つ 元処理対象№70 人にすら見えないがれっきとした日本人 身長は3メートルあり、異様に大きい目を持つ 他の成員と揉め事を起こしており、返り血が特徴的である
https://w.atwiki.jp/vip_witches/pages/849.html
アレハ誰ダ 五話 俺は海辺に胡坐を掻きながら、視界いっぱいに広がる青い絨毯を眺めていた。 水平線にて空と交わり、寄せては返す永久を繰り返し、組めど尽きせぬ水また水。 一陣の風が彼方より吹き流れ、潮臭さを掬って俺の顔面にぶつかる。 それは、生命の母の息吹だった。 (こんな風に、海を眺めるのは久しぶりだな) 俺がいた地球の海は、見るも痛ましく汚れ切っていた。 人間達が、デーモンやデビルマンを葬るために放った核ミサイルや、様々な化学兵器。 そして、人知及ばぬ超能力同士の激突。 海の偉大なる自浄作用さえ超えて蔓延した毒素は、海中に住んでいた無数の生物の命を、根こそぎ奪ってしまった。 ただ腐臭が漂うだけのどす黒い水溜りを、わざわざ眺めたいと思う物好きはいない。 それでも、少し高く空を飛べば、嫌でも目に入って来るのだ。 その度に、あのなつかしき日々は、もう永久に戻らないのだと思い知らされる。 「……と、焼けたか」 ひく、と俺が鼻を動かすと、潮風を受けてもなお香る、焼けた魚の匂いがした。 俺の目の前で、炎が薪を喰らって燃え盛る。 その周囲では、六尾の魚が仲良く木の枝を口に突っ込まれ、火炙りの刑を受けていた。 魚獲りなど、そう難しいことではない。 ただ少し沖まで飛んで行って、氷の槍を水面に突き刺すだけだ。 火も、例えば念動力で分子の運動を激しくしてやれば簡単に点く。 俺は火を囲んでいる枝を一本手に取ると、そこに刺さっている魚を、尾鰭から丸かじりにした。 一口で半分、二口で頭まで。 脂の旨味と、内臓のほろ苦さが口中に広がる。 前の世界で何を食べて生きていたのか、俺は思い出そうとして、できなかった。 もしかしたら、何も食べていなかったのかも知れない。 戦い以外のことは、よく覚えていなかった。 二尾、三尾、四尾と次々胃の中に収めていく。足りなければ、また獲ってくればいい。 その時、 「もう、こんな所にいたの!」 突然、背中にぶち当てられた声に、俺は驚きもしなかった。 五分も前から、ぞろぞろと大人数を引き連れて近付いてくるミーナの気配を感じ取っていたのだ。 俺は空いた枝を炎の中に放り込むと、蠅が止まりそうなほど緩慢な動きで首を後ろにねじ曲げた。 そこには、怒り心頭といった表情のミーナと、その背後に知った顔、知らない顔の群れが立っている。 その中に、数日前の夜、俺が尋問した少女がいた。 名前は確か、サーニャ・V・リトヴャクだ。 彼女は俺と目が合うと、隣に立っている灰色の髪の少女の後ろに隠れた。 俺は無感動に視線を切り、ミーナに戻す。 「何処にいようと、俺の勝手だ」 「今朝は、貴方のことをみんなに挨拶するって言ったでしょう!」 俺は顔を顰めた。 そういえば昨日、医務室でそんなことを言われた気がする。 脳の片隅に、転がっているだけだが……… 「出る、とは言わなかった筈だぞ」 焚き火に向かって、魔法使いの杖のように指を振る。 燃え盛っていた炎が一瞬にして消え、焼け焦げた薪に霜が降りた。 「それに、挨拶ってのはこれから仲良くする奴らがやるもんだ。そっちは知らないが、こっちにそのつもりはない」 ざわ、と場の空気が揺れる。 ミーナが俺のことをどう説明したにせよ、ここまで突き放された態度を取られるとは思っていなかっただろう。 湧き立つ怒り、不信、不快感が、空気を伝って俺の肌を引っ掻いた。 「あ、あのっ!」 群の中から、少女が一人、前に出て来る。宮藤芳佳だ。 手は後ろに、幼さの残る顔には慙愧の念。 「えっと、俺さん……でしたよね? 昨日は、本当にすみませんでした!」 昨日に引き続き、平謝りである。 さては、俺の不機嫌の理由が、自分の失態にあると思っているのか。 粥を浴びせられたからといって、つまらない怒りを持続させる俺ではない。 問題は、まったく別の所にあるのだ。 「こんな奴に謝る必要など無いぞ、宮藤」 群の中から上がった声に、芳佳が振り返る。 肩を怒らせて現れたのは、焦げ茶の髪を短いツインテールにした女だった。 瞳に宿る輝きは強く、俺に向けて敵意を矢のように飛ばしてくる。 別段、怖くもなんともない。 兎に睨まれて、それを恐れる獅子などこの世にはいない。 のしのしと大股で歩み寄って来る女を、俺はただ眺めていた。 「貴様、サーニャを襲ったそうだな」 何か、下品な誤解を招きそうな言い方だな、と俺は思った。 今さら、誰にどう思われようと知ったことではないが。 「ミーナが何と言おうと、私は仲間に手を出した奴を許すつもりはない。痛い目を見ない内に消えろ」 ほう、と俺は心の中で感嘆の声を上げた。 ミーナの口から、俺の正体は知らされている筈である。 俺が氷を操る魔物だと、知っている筈である。 その上で……この真正面から、痛い目を見ない内に消えろ、と俺に言うのだ。 腕に覚えがあるにしろ、単なる虚勢にしろ、俺にとって好ましい真っ直ぐさだった。 人間でなければ、もっと良かったのだが。 「あんた、名前は?」 俺は立ち上がりながら尋ねた。 「……ゲルトルート・バルクホルンだ」 「安心しろ、バルクホルン。俺はもう、あんたとその仲間を襲わない」 少なくとも、借りを返すまでは、と小声で付け加える。 俺は、目だけでちらりと芳佳の方を見た。彼女もこちらを見ているが、視線に気づいた様子はない。 「基地の建物の中にも入らない。もし入った時は、俺を撃てばいい」 幸い、野宿には慣れている。 汚染され尽くした別の地球に比べれば……いや、比べるのも失礼というものだ。 「ええっ、そんな! せっかく私が部屋に案内してあげようって思ってたのに!」 芳佳が場違いな悲鳴を上げる。 隣にいた少女が、「芳佳ちゃん、今はちょっと…」っとセーラー服の裾を引っ張った。 部屋まで用意されていたことに、俺は少しく驚いたが、要は目の届く場所に置いておきたいのだろう。 ただでさえ恩という鎖を首に巻かれているのに、その上、犬小屋に押し込まれては堪らない。 第一、人のにおいと気配に囲まれて、どうやって安眠しろというのか。 「俺はあんたらには近寄らないし、その内出ていく。ここらの土地を貸してもらうかわりに、ネウロイも倒してやる。悪くない条件だろ」 俺は全員の顔を見渡して言った。 彼女達は、期間限定ではあるが強力な兵器が手に入り、俺はじっくりと休養・情報収集が出来る。 しかもこの契約で、働くのは俺だけであり、彼女達は俺の存在を黙認するだけでいいのだ。 文句が出るとすれば、それは俺の口からの筈だ。 「だが……っ!」 それでもなお言い募ろうとするバルクホルンを、ミーナが片手を上げて制した。 悲しげに眦を下げ、俺と向かい合う。 「私は、これから一緒に戦っていく仲間として、貴方を迎えたいの。……自分を撃てなんて、言わないで」 その言葉を聞いて、俺は………何故だが、妙に腹が立った。 ミーナに飛びかかって、彼女の口を引き裂く自分を幻視した。 理由は、すぐに分かった。俺は苦々しく顔を歪めた。 (嬉しい、なんて思ったのか。俺は) ――――私は、これから一緒に戦っていく仲間として、貴方を迎えたいの。 耳の中でリピートされる声に、胸が高鳴る。 甘い響き。だが、その甘さが、俺には毒だった。 溺れれば、命さえ失いかねない毒だった。 (……馬鹿め、期待なんてするな。ただの言葉だぞ) 俺は首を横に振り、ミーナの声を頭の中から追い出した。 余韻を振り切るように軽く地面を蹴り、近くに生えていた木の枝の上に乗る。 大して太くもない枝は、揺れもせず、かさりとも音を立てなかった。 対空砲のように追いかけて来る幾つもの視線を振り返ることなく、俺は再び跳んだ。 やはり、枝は少しも揺れなかった。 「この世界に、俺の仲間はいない。一人もな」 「感じ悪いなー、あの俺って奴」 廊下に、シャーロット・E・イェーガー…通称シャーリーの辺り憚らぬ声が響く。 俺本人がその場におらず、またそれが聞く者達の総意であれば、誰も気を悪くすることはないだろう。 特に、サーニャと仲の良いエイラ・イルマタル・ユーティライネンは、鼻息も荒くシャーリーに同意した。 「感じ悪いどころか! アイツ、助けに行ったサーニャに襲いかかったんだろ! 何でぶった斬ってやらなかったんだ、少佐!?」 美緒がやらないのなら、自分がやってやるとばかりに、エイラが怒鳴り声を上げる。 「斬られそうになったのはこっちだ。あいつが手負いでなかったら、今頃私は墓の下だったろうな。はっはっはっ」 首筋に寒気が貼り付きそうなことを、美緒が豪気な笑いに乗せて言う。 「少佐にまで手を出すなんて……中佐は、本気であんな奴と肩を並べて戦えとおっしゃいますの!?」 美緒を慕うペリーヌが、目の前に俺がいれば噛み付きそうな顔で吠える。 ミーナは深く溜息をついた。 「敵に回すよりは、ずっといいわ。貴方達も見たでしょう? 彼の力を」 ペリーヌもシャーリーも、閉口するしかなかった。 小型のネウロイ十四機を軽々と蹴散らし、大型のネウロイ三機をまるで蠅のように容易く撃墜した蛾男。 それがが俺の変身した姿であることは、既にミーナの口から全員に語られていた。 しかも、その時の彼は全身に火傷を負った状態だったという。 そんな俺の、全快の状態と戦う。 果たして、苦戦、で済むかどうか。 途端に、沈黙が舞い落ちる。 ネウロイとは、何度も戦った。死を覚悟したことも数知れない。 だが、俺はネウロイではない。異世界―――眉唾ものだが―――より現れた、まったく別の異形である。 口では強気を吐き出しても、心には恐怖が泥濘のように纏わりつく。 心の底では、俺が敵対を選択しなかったことを、俺が自分達から離れて暮らすと宣言したことを、誰もが喜んだのだ。 彼に食ってかかったゲルトルートも、彼が文字通り消えてくれることを望んでいた。 豪気に笑う美緒も、それは殺されかけた恐怖を隠すために。 彼を仲間と呼んだミーナでさえ、無意識に。 ………小さな拳を握り固め、何事か決心した顔の宮藤芳佳を除けば、だが。 アレハ誰ダ 七話
https://w.atwiki.jp/deruze/pages/130.html
ディア・ハンター ―――人間が、一番怖い ◆ 『B-2地区』 アメリカ北東部の街、サイレントヒルの北部、市街図上ではそう呼称されるエリアには、 一見、何の変哲もないアメリカ北東部の典型的な田舎町の風景が広がっている。 広い車道に、歩道の並木、立ち並ぶ控えめな装飾の、歴史のありそうな民家群… 本当に何の変哲もない。 しかし、ここはサイレントヒルだ。呪われた街だ。 目を凝らせ、耳を澄ませろ、臭いを嗅ぎつけろ… そうすれば見えて来る筈だ、聞こえて来る筈だ、臭って来る筈だ… この街の異常が、呪いが、怪奇が、確かに感じられる筈だ。 見ろ、そして感じろ、街全体を覆う、この白く濁った霧を。 聞け、そして感じろ、この街の生者の生活の喪失を、生ける死者の徘徊を、魑魅魍魎の跳梁跋扈を。 嗅げ、そして感じろ、この街に満ちた陰性の臭いを、腐臭を、そして血臭いを… 見るがいい…車も人通りも絶えたアスファルトの上を徘徊する、生きる死者の群れ達を… 『ゾンビ』 そう呼称される、死にながら、腐りながらも未だ動く事と喰らう事を止めぬ亡者達。 T-ウイルス、神を畏れぬ愚か者どもが造り出した恐るべき悪疫の犠牲者達は、 『死の勝利』、『死の舞踏』、はたまた中世のペスト渦の忌わしき伝説にある様な、 死者が墓場から復活する生き地獄の様相を呈していた。 この街、サイレントヒルには、あらゆる死の気配が満ちている。 その、端的な現れが、この死者の群れと言えよう。 しかし、こんな死に満ちた街にも、人間と言うモノは居るモノである。 その証拠に、白い霧を引き裂いて、銃弾が徘徊する、あるゾンビの頭部を貫いた。 7人ほどで固まって徘徊していたゾンビ群の内、先頭を歩く一体であったが、 T-ウイルス起源のゾンビが活動を続ける上で必要不可欠な頭部を、 強力なライフル弾で撃ちぬかれ、脳漿をまき散らしながら地面に倒れ伏した。 『同行』してた個体が破壊された為か、あるいは銃声を聞いた為か、 知性を感じさせない白濁した瞳で周囲を見渡す。 T-ウイルスの影響で著しく知能の低下したゾンビ達は、 狙撃された事に対し、伏せる、遮蔽物に隠れる、などと言った行動を取る事は無い。 故に、 タァーン、タァーン、タァーン… 次々と、続けさまに霧を裂いて飛んで来る銃弾の餌食になった。 ゾンビの群れに撃ちこまれた銃弾は合計7発。いずれもライフル弾。 濃霧の為か、あるいは狙撃手の技量の為か、全弾命中した訳ではなく、 2発は完全に外れ、2発は頭部を外れた為に致命傷にならなかった。 生き残ったゾンビ達は、一足先に自由になった嘗ての同類の死骸に喰らい付き、 終ぞ、自分達を見つめる狙撃手の目線に気がつく事は無かった。 ◆ 死者達が、見えざる狙撃者から攻撃を受けていた場所から、 おおよそ50メートルほど離れた民家の三階。 そこの窓から、細い金属の棒が突き出している。 周囲に臭う硝煙の臭いから、それが容易にライフルの銃口であるのが知れる。 部屋の中には、ライフルを構えた一人の少女が居た。 長い髪をポニーテールにした、凛々しい顔立ちの少女である。 このサイレントヒルに呼ばれた少女、園崎魅音と、瓜二つの容貌であったが、 果たして、彼女は園崎魅音と血を分けた、たった一人の双子の『妹』、 園崎詩音に他ならない。 詩音は、自身で狙撃したゾンビ達の様子をライフルスコープ越しにしばらく観察していたが、 スコープから目を離すと、ライフルの機関部右側に空いた給弾口より、 .30-30Winchester弾を押しこみ装弾する。 ――ウィンチェスターライフルModel.1894 西部劇でお馴染みの傑作レバーアクションライフル、 『ウィンチェスターライフルModel.1873』を、 銃器産業の天才的技術者、ジョン=ブラウニング(ブローニングとも)が改良した、 レバーアクションライフルの決定版とでも言うべき名銃である。 『.30-30Winchester弾』といったライフル弾を使用し、 時勢故に軍用ライフルの座こそ後続のボルトアクションに明け渡したものの、 外見の独特の美しさもあって、狩猟用ライフルとしては現在も世界中で愛用されているモデルだ。 詩音の手の中にある物も恐らくは猟銃として使われていた物であり、 彼女のが今いる部屋には、この銃で仕留めたのか、幾つもの動物の剥製が誇らしげに飾ってある。 ウィンチェスターライフルの方も、仕留めた獲物と一緒に写った、 この部屋の本来の主と思しき人物の写真と一緒に飾ってあった物だ。 最後の弾丸を押しこみ、レバーをカシャンと起こすと、 初弾が薬室に装填され、撃鉄が起こる。 後は引き金を引くだけで、初弾が発射される状態である。 ライフルを一旦、足元に立てる。 ライフルの隣には、ソードオフ(散弾銃の銃身と銃床を切り詰める違法改造)された、 レミントン M870ショットガンが壁に立て掛けられている。 アメリカでは軍用・警察用から狩猟用・護身用まで幅広く使われている一般的な散弾銃であり、 日本へも主に狩猟用散弾銃として輸入されている代物だ。 ウィンチェスターライフルと一緒に飾られていた物を、 詩音が、部屋にあった日曜大工用具の鋸でソードオフしたのである。 傍らの机に置かれていた頑丈な厚手のトレンチコートを羽織り、 『.30-30Winchester弾』の装填された弾帯ベルトを二つ、襷掛けにし、 さらに、12ゲージショットシェルを装填された弾帯ベルトを腰にコートの上から取り付ける。 トレンチコートの下にあった、中に予備の弾丸とハンティングナイフ、 携帯ラジオと栄養ドリンクが押し込まれたショルダーバッグを肩から掛けようとして、 一旦手を止め、バッグの中からある物を取りだす。 それは、二枚の古ぼけた羊皮紙であった。 一枚目には、血の様に赤い文字で、以下の様な文面が書かれていた。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ル ー ル 1. 殺 せ この街から生きて帰りたいのなら、皆殺して最後の一人になること。 2. サ イ レ ン で 世 界 は 裏 返 る 生き残りたいならサイレンを聞き逃さないこと。何が起きるかはお楽しみ。 3. 鬼 の 追 加 一定時間毎に鬼を追加します。 4. ご 褒 美 最後の一人にはご褒美が用意してあります。頑張って殺してください。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― そして二枚目には、自身の名を含んだ、 都合45人分の名前が、濁った白のインクで書かれている。 そこには、自身の血を分けた双子の『妹』の名を含む、 雛見沢村の『親しい住人達』の名前もあった。 『ジェイムス・サンダーランド』、『ヨーコ・スズキ』、『ブラッド・ヴィッカーズ』の名前の上には、 血の様な赤い線が引かれている。 この線は、詩音が引いた物ではない。 『ジェイムス・サンダーランド』、『ヨーコ・スズキ』の物は、詩音がこの羊皮紙を見つけた時には、 すでに赤い線は引かれていたが、『ブラッド・ヴィッカーズ』のそれは、 彼女が見ている正にその前で、血がにじむ様にひとりでに引かれた物であった。 この不可思議な名簿と、 一枚目に書かれた『この街から生きて帰りたいのなら、皆殺して最後の一人になること』、 そして『最後の一人にはご褒美が用意してあります。頑張って殺してください』という、 三つの要素が意味する事は… 羊皮紙をバッグの中に押し込むと、 バッグを肩から掛け、スリングを取り付けたレミントンをバッグと反対側の肩に掛ける。 ヘッドライトを頭に取り付け、ライフルを両手で抱えながら、彼女は言った。 「待っててね悟史君…すぐに会えるから」 殺すべき人々の中には、血を分けたたった一人の双子のかたわれもいるが、 どうせ『一度殺す』のも『二度殺す』のも同じだ。 愛しい北条悟史の為の犠牲になってもらうとしよう。 「クケケケ」 「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ……」 奇声を上げる詩音の表情は、もはや人のそれではない。 鬼だ…一匹の鬼女が此処に居る。 ―――サア、狩リノ時間ダ 部屋の扉を開けると、階段を下りて、 彼女は霧の街へと繰り出す。 全ては愛しいあの人の為に。 彼女は狩りに旅立った。 【B-2 市街地 / 一日目 夜】 【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に】 [状態]: 健康、L5 [装備]:ウィンチェスターM1894スコープ付き(残弾7/7)、レミントン M870ソードオフVer(残弾6/6)、 ショルダーバッグ、ヘッドライト、トレンチコート、弾帯×3 [道具]:羊皮紙の名簿、ハンティングナイフ、30-30Winchester弾(50/50)、 12ゲージショットシェル(50/50)、携帯ラジオ、栄養ドリンク [思考・状況] 基本行動方針:名簿の人間を皆殺しにし、北条悟史を生き返らせる 1:獲物を探す 【備考】 ※目明し編ラストより参戦 【アイテム情報】 ウィンチェスターM1894@現実 西部劇で著名なレバーアクションライフルの名銃シリーズの1894年版モデル。 装弾数は7発、『.30-30Winchester弾』を使用する。スコープ付き。 レミントン M870@現実 レミントン社の代表的なポンプアクション式散弾銃。 様々なバージョンが存在するが、これは6発装填の狩猟用タイプ。 ソードオフ済みであり、バレルとストックが短い。 栄養ドリンク@サイレントヒルシリーズ サイレントヒルシリーズお馴染みの回復アイテム。 体力をわずかに回復する。 back 目次へ next Close Encounters of the Third Kind 時系列順・目次 怪物と縄の巫女さまの童話。 探し人 投下順・目次 見つからない back キャラ追跡表 next ― 園崎詩音 魔弾の射手
https://w.atwiki.jp/oreqsw/pages/866.html
俺は海辺に胡坐を掻きながら、視界いっぱいに広がる青い絨毯を眺めていた。 水平線にて空と交わり、寄せては返す永久を繰り返し、組めど尽きせぬ水また水。 一陣の風が彼方より吹き流れ、潮臭さを掬って俺の顔面にぶつかる。 それは、生命の母の息吹だった。 (こんな風に、海を眺めるのは久しぶりだな) 俺がいた地球の海は、見るも痛ましく汚れ切っていた。 人間達が、デーモンやデビルマンを葬るために放った核ミサイルや、様々な化学兵器。 そして、人知及ばぬ超能力同士の激突。 海の偉大なる自浄作用さえ超えて蔓延した毒素は、海中に住んでいた無数の生物の命を、根こそぎ奪ってしまった。 ただ腐臭が漂うだけのどす黒い水溜りを、わざわざ眺めたいと思う物好きはいない。 それでも、少し高く空を飛べば、嫌でも目に入って来るのだ。 その度に、あのなつかしき日々は、もう永久に戻らないのだと思い知らされる。 「……と、焼けたか」 ひく、と俺が鼻を動かすと、潮風を受けてもなお香る、焼けた魚の匂いがした。 俺の目の前で、炎が薪を喰らって燃え盛る。 その周囲では、六尾の魚が仲良く木の枝を口に突っ込まれ、火炙りの刑を受けていた。 魚獲りなど、そう難しいことではない。 ただ少し沖まで飛んで行って、氷の槍を水面に突き刺すだけだ。 火も、例えば念動力で分子の運動を激しくしてやれば簡単に点く。 俺は火を囲んでいる枝を一本手に取ると、そこに刺さっている魚を、尾鰭から丸かじりにした。 一口で半分、二口で頭まで。 脂の旨味と、内臓のほろ苦さが口中に広がる。 前の世界で何を食べて生きていたのか、俺は思い出そうとして、できなかった。 もしかしたら、何も食べていなかったのかも知れない。 戦い以外のことは、よく覚えていなかった。 二尾、三尾、四尾と次々胃の中に収めていく。足りなければ、また獲ってくればいい。 その時、 「もう、こんな所にいたの!」 突然、背中にぶち当てられた声に、俺は驚きもしなかった。 五分も前から、ぞろぞろと大人数を引き連れて近付いてくるミーナの気配を感じ取っていたのだ。 俺は空いた枝を炎の中に放り込むと、蠅が止まりそうなほど緩慢な動きで首を後ろにねじ曲げた。 そこには、怒り心頭といった表情のミーナと、その背後に知った顔、知らない顔の群れが立っている。 その中に、数日前の夜、俺が尋問した少女がいた。 名前は確か、サーニャ・V・リトヴャクだ。 彼女は俺と目が合うと、隣に立っている灰色の髪の少女の後ろに隠れた。 俺は無感動に視線を切り、ミーナに戻す。 「何処にいようと、俺の勝手だ」 「今朝は、貴方のことをみんなに挨拶するって言ったでしょう!」 俺は顔を顰めた。 そういえば昨日、医務室でそんなことを言われた気がする。 脳の片隅に、転がっているだけだが……… 「出る、とは言わなかった筈だぞ」 焚き火に向かって、魔法使いの杖のように指を振る。 燃え盛っていた炎が一瞬にして消え、焼け焦げた薪に霜が降りた。 「それに、挨拶ってのはこれから仲良くする奴らがやるもんだ。そっちは知らないが、こっちにそのつもりはない」 ざわ、と場の空気が揺れる。 ミーナが俺のことをどう説明したにせよ、ここまで突き放された態度を取られるとは思っていなかっただろう。 湧き立つ怒り、不信、不快感が、空気を伝って俺の肌を引っ掻いた。 「あ、あのっ!」 群の中から、少女が一人、前に出て来る。宮藤芳佳だ。 手は後ろに、幼さの残る顔には慙愧の念。 「えっと、俺さん……でしたよね? 昨日は、本当にすみませんでした!」 昨日に引き続き、平謝りである。 さては、俺の不機嫌の理由が、自分の失態にあると思っているのか。 粥を浴びせられたからといって、つまらない怒りを持続させる俺ではない。 問題は、まったく別の所にあるのだ。 「こんな奴に謝る必要など無いぞ、宮藤」 群の中から上がった声に、芳佳が振り返る。 肩を怒らせて現れたのは、焦げ茶の髪を短いツインテールにした女だった。 瞳に宿る輝きは強く、俺に向けて敵意を矢のように飛ばしてくる。 別段、怖くもなんともない。 兎に睨まれて、それを恐れる獅子などこの世にはいない。 のしのしと大股で歩み寄って来る女を、俺はただ眺めていた。 「貴様、サーニャを襲ったそうだな」 何か、下品な誤解を招きそうな言い方だな、と俺は思った。 今さら、誰にどう思われようと知ったことではないが。 「ミーナが何と言おうと、私は仲間に手を出した奴を許すつもりはない。痛い目を見ない内に消えろ」 ほう、と俺は心の中で感嘆の声を上げた。 ミーナの口から、俺の正体は知らされている筈である。 俺が氷を操る魔物だと、知っている筈である。 その上で……この真正面から、痛い目を見ない内に消えろ、と俺に言うのだ。 腕に覚えがあるにしろ、単なる虚勢にしろ、俺にとって好ましい真っ直ぐさだった。 人間でなければ、もっと良かったのだが。 「あんた、名前は?」 俺は立ち上がりながら尋ねた。 「……ゲルトルート・バルクホルンだ」 「安心しろ、バルクホルン。俺はもう、あんたとその仲間を襲わない」 少なくとも、借りを返すまでは、と小声で付け加える。 俺は、目だけでちらりと芳佳の方を見た。彼女もこちらを見ているが、視線に気づいた様子はない。 「基地の建物の中にも入らない。もし入った時は、俺を撃てばいい」 幸い、野宿には慣れている。 汚染され尽くした別の地球に比べれば……いや、比べるのも失礼というものだ。 「ええっ、そんな! せっかく私が部屋に案内してあげようって思ってたのに!」 芳佳が場違いな悲鳴を上げる。 隣にいた少女が、「芳佳ちゃん、今はちょっと…」っとセーラー服の裾を引っ張った。 部屋まで用意されていたことに、俺は少しく驚いたが、要は目の届く場所に置いておきたいのだろう。 ただでさえ恩という鎖を首に巻かれているのに、その上、犬小屋に押し込まれては堪らない。 第一、人のにおいと気配に囲まれて、どうやって安眠しろというのか。 「俺はあんたらには近寄らないし、その内出ていく。ここらの土地を貸してもらうかわりに、ネウロイも倒してやる。悪くない条件だろ」 俺は全員の顔を見渡して言った。 彼女達は、期間限定ではあるが強力な兵器が手に入り、俺はじっくりと休養・情報収集が出来る。 しかもこの契約で、働くのは俺だけであり、彼女達は俺の存在を黙認するだけでいいのだ。 文句が出るとすれば、それは俺の口からの筈だ。 「だが……っ!」 それでもなお言い募ろうとするバルクホルンを、ミーナが片手を上げて制した。 悲しげに眦を下げ、俺と向かい合う。 「私は、これから一緒に戦っていく仲間として、貴方を迎えたいの。……自分を撃てなんて、言わないで」 その言葉を聞いて、俺は………何故だが、妙に腹が立った。 ミーナに飛びかかって、彼女の口を引き裂く自分を幻視した。 理由は、すぐに分かった。俺は苦々しく顔を歪めた。 (嬉しい、なんて思ったのか。俺は) ――――私は、これから一緒に戦っていく仲間として、貴方を迎えたいの。 耳の中でリピートされる声に、胸が高鳴る。 甘い響き。だが、その甘さが、俺には毒だった。 溺れれば、命さえ失いかねない毒だった。 (……馬鹿め、期待なんてするな。ただの言葉だぞ) 俺は首を横に振り、ミーナの声を頭の中から追い出した。 余韻を振り切るように軽く地面を蹴り、近くに生えていた木の枝の上に乗る。 大して太くもない枝は、揺れもせず、かさりとも音を立てなかった。 対空砲のように追いかけて来る幾つもの視線を振り返ることなく、俺は再び跳んだ。 やはり、枝は少しも揺れなかった。 「この世界に、俺の仲間はいない。一人もな」 「感じ悪いなー、あの俺って奴」 廊下に、シャーロット・E・イェーガー…通称シャーリーの辺り憚らぬ声が響く。 俺本人がその場におらず、またそれが聞く者達の総意であれば、誰も気を悪くすることはないだろう。 特に、サーニャと仲の良いエイラ・イルマタル・ユーティライネンは、鼻息も荒くシャーリーに同意した。 「感じ悪いどころか! アイツ、助けに行ったサーニャに襲いかかったんだろ! 何でぶった斬ってやらなかったんだ、少佐!?」 美緒がやらないのなら、自分がやってやるとばかりに、エイラが怒鳴り声を上げる。 「斬られそうになったのはこっちだ。あいつが手負いでなかったら、今頃私は墓の下だったろうな。はっはっはっ」 首筋に寒気が貼り付きそうなことを、美緒が豪気な笑いに乗せて言う。 「少佐にまで手を出すなんて……中佐は、本気であんな奴と肩を並べて戦えとおっしゃいますの!?」 美緒を慕うペリーヌが、目の前に俺がいれば噛み付きそうな顔で吠える。 ミーナは深く溜息をついた。 「敵に回すよりは、ずっといいわ。貴方達も見たでしょう? 彼の力を」 ペリーヌもシャーリーも、閉口するしかなかった。 小型のネウロイ十四機を軽々と蹴散らし、大型のネウロイ三機をまるで蠅のように容易く撃墜した蛾男。 それがが俺の変身した姿であることは、既にミーナの口から全員に語られていた。 しかも、その時の彼は全身に火傷を負った状態だったという。 そんな俺の、全快の状態と戦う。 果たして、苦戦、で済むかどうか。 途端に、沈黙が舞い落ちる。 ネウロイとは、何度も戦った。死を覚悟したことも数知れない。 だが、俺はネウロイではない。異世界―――眉唾ものだが―――より現れた、まったく別の異形である。 口では強気を吐き出しても、心には恐怖が泥濘のように纏わりつく。 心の底では、俺が敵対を選択しなかったことを、俺が自分達から離れて暮らすと宣言したことを、誰もが喜んだのだ。 彼に食ってかかったゲルトルートも、彼が文字通り消えてくれることを望んでいた。 豪気に笑う美緒も、それは殺されかけた恐怖を隠すために。 彼を仲間と呼んだミーナでさえ、無意識に。 ………小さな拳を握り固め、何事か決心した顔の宮藤芳佳を除けば、だが。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau9/pages/2239.html
注意書き タイトル通りのゆっくりが登場します。 粘液が登場します。 人間の死者が結構大量にでます。 「なめくじれいむ」の外伝的お話であり、読んでないと意味がわからないと思います。 「ゆっ…ゅち……りぇき……にゃ…よ!」 青年はお皿の上に残ったなめくじ霊夢の残りかすを台所のくず籠に捨てた。 2つの小さな目玉とその残りカスがくず籠の底に落ち青年の復讐は終わった。 暗くジメジメとした腐臭が漂うくず籠の底で1匹のなめくじ霊夢が目を覚ます。 その霊夢は片目を失い、体の右半分と大半の水分を失い、満足に動く事も出来ない状態だった。 しかし霊夢は生きていた。くず籠の底で細菌や空気中の水分を吸収しながら体を再構築していた。 数週間後 霊夢は失った片目以外完璧に元の姿を取り戻していた。 「これでゆっきゅりできりゅりょ!」 霊夢は意気揚々とくず籠の下を探索した。 そこでもう1匹のなめくじ霊夢と出会う。 「ゆっきゅりちていっちぇにぇ!!」 その霊夢も自分と同じ様に片目を失っていた。 聞けば白い粉を浴びてゆっくり出来なくなったという所まで同じだった。 「ゆー、れーみゅとっちぇみょきゃわいちょうりゃよ!」 霊夢には霊夢の味わった苦痛が手に取るように判った。 霊夢は霊夢に近づき慰めるように頬擦りをした。 「ちゅ~り、ちゅ~り」 「ゆっ!ちょっちぇもきみょちぇいいよ!!」 もう1匹の霊夢も霊夢の動きにあわせて頬擦りのお返しをする。 次第に2匹の頬は高揚して赤みを帯びていく、2匹を包んでいる粘膜は絡み合う様にまざり、 頬擦りをしている間、粘液は次々に分泌された。 「ちゅ!ちゅ!ちゅ!ちゅっきりー!!!」 絶頂に達した2匹は体を大きく震わせ粘液を飛びちらせながら獣のように叫んだ。 二人の絡み合った粘膜の中には沈殿物のような小さな粒が無数に生まれる。 その小さな粒は直ぐに大きくなり、ただの球体ではないその形をはっきりと現した。 無数に生まれた小さな粒、その粒一つ一つが小さな小さななめくじ霊夢であり、2匹のなめくじ霊夢の子供たちだった。 「れーみゅのあかちゃん、ちょっちぇみょゆっきゅりちちぇいりゅにぇ!!」 「れーみゅのあかちゃんみょだよ!!ちょっちぇみょゆっきゅりりゃよ!!」 お互いのまとう粘液の中に居る自分達の赤ちゃんを見て2匹は喜びの声を上げる。 「ゆっきゅりー!!!」 総勢、300匹近くにも及ぶなめくじ霊夢の大合唱である。 なめくじ霊夢の子供は親である2匹のなめくじ霊夢の粘液の中で育った。 2匹は子供達の分まで大量の食事を取り子供の成長を待った。 2匹のなめくじ霊夢が次に求めたのは、自分達に酷い事をしたあの青年への復讐だった。 だが、今のままでは青年に対抗する手段がない。霊夢達は考えた。 青年に復讐するには、自分達を潰そうとしたゆっくり出来ない物に対抗する力と、 あの謎の白い粉に耐えうる体を手に入れる必要があると。 対抗する力は思いのほか簡単に見つかった。 それは自分達の中身に他ならない、中身を吐く事は霊夢達にとって死につながる行為であったが、 吐き出された中身はどんな物質でも溶かす強力な酸となる、酸性とアルカリ性を併せ持ちいかなる物質も溶かす最強の酸、 その酸に触れれば例え人間であろうとも溶かされてしまうだろう。 なめくじ霊夢は、中身を少量吐き出し、自身が纏う粘液に混ぜ、その粘液を人間の体に付着させるという攻撃手段を手に入れた。 「これりぇゆっきゅりちんりぇもりゃえりゅにぇ!」 次に霊夢達は白い粉に耐えられ方法を探してくず籠の底を彷徨った。 そこで見つけたのは青年が揚げ物を調理した時に出た油を吸った紙である。 霊夢は何気なくその紙を口にした。 それを口にした霊夢の粘液に変化が起こる。 水性だった粘液は油性に変化し白い粉により水分を奪われる事はなくなった。 しかし、この事実に霊夢自身は気づいていない。 ただ、その油を含んだものは霊夢達にとってとても美味しい物であり、 油性になった粘液はテラテラと輝きとても美しいものだった。 すべてのなめくじ霊夢が油性になった頃、既に霊夢達は白い粉の脅威を忘れていた。 そして思い出した様に青年への復讐を決行することとなる。 「みんにゃ!ゆっきゅりいきゅよ!!!」 2匹のなめくじ霊夢が先頭に立ち、子供達がその後に続く。 子供達は既に親でる2匹と変わらない大きさに成長しておりくず籠の底は、なめくじ霊夢に覆い尽くされていた。 霊夢達が行動を起こしたのは、深夜青年が寝静まってからである。 まず最初に1匹の霊夢が偵察としてくず籠の外にでて状況を確認する。 「ゆっきゅりできりゅよ!」 合図と共にすべてのなめくじ霊夢が外にでる。 霊夢達は青年を探した。一軒やとは言え青年が一人で暮らしている家でそれ程大きくはない。 10分ほどで布団で寝ている青年を発見し、2時間後にはなめくじ霊夢全員が集合した。 「にゃぎゃにぇんにょうりゃみ!きょきょりぇはらきゃきぇちぇもりゃうよ!」 青年が起きないよう静かにそっと言い放ち臨戦態勢へと移る。 口から少量の中身を吐き出し、それを薄く地面に延ばした後、その上を転がり体を覆う粘液に馴染ませる。 準備のできた霊夢から青年の寝ている布団に潜り込み青年の体へとまとわり付く。 霊夢の粘液に触れた青年の体は一瞬で皮膚を溶かされ筋繊維を破壊された。 青年が体中がヒリヒリする感覚に目を覚ます頃には全身の皮膚が溶かされ筋肉がむき出しになり、 肉の薄いところでは骨が露になっていた。 目を覚ました青年は悲鳴を上げて助けを求めようとしたが、首には2匹のなめくじ霊夢がまとわり付いていた。 2匹によって喉は溶かされ骨だけになっていており、同様に両手両足の腱も溶かされ身動きをとる事も出来なかった。 「ゆっきゅりちんりぇいっちぇにぇ!!!」 薄れ行く意識の中で青年の目に最後に映ったのは隻眼の二匹のなめくじ霊夢の姿であった。 復讐を果たしたなめくじ霊夢達は宴を開き勝利の美酒に酔いしれた。 死んだ青年の肉体はご馳走となり、滴り落ちる血液は極上の美酒となった。 そして戦いで高揚した霊夢達は夜が明けるまで頬擦りをしていた。 翌朝 なめくじ霊夢は総勢5万匹に達していた。とは言えまだその大半は子供である。 しかし、青年一人では5万匹ものなめくじ霊夢の食欲を満たす事はできない。 親である300匹の霊夢達は食べ物を求めて青年の家を出た。 その後、人間の暮らす地域では、寝ている人間が突如白骨化して見つかる事件が相次いだ。 それらは全てなめくじ霊夢によるものである。 油性の粘液を手に入れた事により、なめくじ霊夢が好んで食べる物は変わった。 それまでは水分を多く含む植物の葉が主な食料だったが、 油性の粘液を保つために脂肪を多く含むものを求めるようになったのだ。 なめくじ霊夢にとって人間は脂肪分豊富な餌となった。 人間がなめくじ霊夢の脅威に気づいたのは既に数百万人の被害を出した後だった。 人間達は急いでなめくじ霊夢を駆除し始めた。所詮小さななめくじであり捕まえる事はそう難しくはない。 だが迂闊に潰そうものなら漏れ出した中身により甚大な被害を被る。 粘液に覆われたなめくじ霊夢を捉える為に専用の道具が開発された。 粘液で滑らず、酸にも耐えられる物質で作られたゴミ拾いに使う火ハサミの様な道具である。 この道具でなめくじ霊夢を捕まえ火をつけて燃やす。油性の粘液が燃え尽きる頃にはなめくじ霊夢は消し炭となっている。 しかし、いくら駆除しようとなめくじ霊夢による被害はなくならなかった。 なめくじ霊夢は人の目に付かない場所に潜むようになりより発見しにくくなった。 更になめくじ霊夢の子供は人の目では小さすぎて発見するのは難しい。 どんなに対策をしても何処からとも無く家の中に進入し寝込みを襲われる。 なめくじ霊夢の中には人間を恐れ森の中に逃げ延びるものも居る。 森に逃げ延びたとは言え、人間に被害をもたらさなくなった訳ではない。 遊びに夢中になっている子供達が、かゆみに似た痛みに気づくと、そこには大抵なめくじ霊夢が這っている。 粘液の酸が弱いときであれば火傷をする程度の傷で済むが、直前に粘液に中身を混ぜていた場合、元に戻らない程の傷がつく。 なめくじ霊夢の脅威をしらずに握りつぶそうものなら指の1~2本は溶かされてしまう。 「む~ちゃ♪む~ちゃ♪ちあわちぇー!!」 血肉を剥き出しにして横たわる人間の死体に何匹ものなめくじ霊夢が群がり、 それを囲むように同じ服を着た数人の人間が捕獲用の火バサミを構えている。 その後ろでは一人の女性がすすり泣いていた。 「ゆっ?……わーい♪おちょらをちょんちぇるみちゃい♪」 火バサミを持った人間は、なめくじ霊夢を一匹ずつ捕まえ、専用の容器の中に入れていく。 「ゆゆ?みんにゃどこにいっちゃにょ?」 最後の1匹となったなめくじ霊夢がようやく自分達を捕まえる人間の存在に気づく。 だが、臨戦態勢に入る前に火バサミによって捉えられてしまった。 「ゆー!はなちぇ!ゆっきゅりはなちぇー!!ゆぷぷぷっ!!」 捕らえられたなめくじ霊夢は唾を吐く様に中身を吐き出して攻撃する。 しかし吐き出された中身は人間にまで届く事はなく地面へと落ちる。 この日10万匹のなめくじ霊夢が死に、300万匹のなめくじ霊夢が生まれた。 人間となめくじ霊夢の戦いはまだ始まったばかりである。 つづく 作者:なめくじ大好きあき 参考資料: http //www.youtube.com/watch?v=GSW9kWIRCOQ http //www.youtube.com/watch?v=ZQYDkwGYqDk http //www.youtube.com/watch?v=PAbHqcPtTk8 http //www.nicovideo.jp/watch/sm298847 http //www.nicovideo.jp/watch/sm77537 http //www.nicovideo.jp/watch/sm4821248