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ギルドリーヴ:傭兵稼業 アドネール占星台獲得任務:ホワイトウルフの毛皮(酒保商人:ドゥビコロワ) Lv35 索敵任務:違法薬物のプランター(イシュガルド教皇庁:神殿騎士マルスラン) Lv35 焚書任務:禁書「氷結せし者」(イシュガルド教皇庁:神殿騎士マルスラン) Lv35 要撃任務:哀れな牧童の仇(酒保商人:ドゥビコロワ) Lv35 誘導任務:はぐれ羊の誘導(酒保商人:ドゥビコロワ) Lv35 捜索任務:クスザスの植生調査(博物学者イスーダ) Lv35 要撃任務:ドラゴン族の邪悪なる眷属(アドネール占星台:占星術士エドメル) Lv35 ホワイトブリム前哨地焚書任務:「闇に羽ばたく者」(イシュガルド教皇庁:マルスラン) Lv40 要撃任務:徘徊するステゴタウルス(フォルタン家の騎兵:アルチュリュー) Lv40 要撃任務:竜の眷属スラストエイビス(フォルタン家の騎兵:アルチュリュー) Lv40 巡回任務:ホワイトブリムの街道巡回(酒保商人:ランケール) Lv40 懐柔任務:獣狩りショーの目玉(コロセウム財団:ウヴィルシング) Lv40 誘導任務:貴族の愛玩動物(イシュガルド教皇庁:マルスラン) Lv40 討伐任務:ホワイトブリムの野獣退治(酒保商人:ランケール) Lv40 聖コイナク財団の調査地索敵任務:恐怖心を貪る妖異(聖コイナク財団:文化人類学者ラムブルース) Lv45 焚書任務:禁書「噛み砕きし者」(聖コイナク財団:調査員ナジル・ドゥジル) Lv45 要撃任務:ハパリット奴隷末裔説の検証(聖コイナク財団:調査員ナジル・ドゥジル) Lv45 巡回任務:宝飾品を狙うギガース族(聖コイナク財団:文化人類学者ラムブルース) Lv45 誘導任務:取り残された学士(聖コイナク財団:文化人類学者ラムブルース) Lv45 懐柔任務:ニクス品種改良説の検証(聖コイナク財団:調査員ナジル・ドゥジル) Lv45 レッドルースター農場討伐任務:病持ちのレディバグ(レッドルースター農園:農場長アナオク) Lv1 追撃任務:果樹園の天敵(レッドルースター農園:農場長アナオク) Lv1 巡回任務:低地ラノシア街道の巡回(イエロージャケット第二陸戦隊:アンクタ陸兵) Lv1 懐柔任務:興奮状態のはぐれシープ(レッドルースター農園:獣牧士ムーグラム) Lv1 捜索任務:益虫の天敵狩り(レッドルースター農園:農場長アナオク) Lv1 獲得任務:乾燥用ウィンドスプライトの核(グレイフリート風車群:風車番頭ヴァイツアレン) Lv5 追撃任務:養分吸いのマンドラゴラ(レッドルースター農園:本草学者アレンロナ) Lv5 巡回任務:畑荒らしの獣たち(レッドルースター農園:本草学者アレンロナ) Lv5 懐柔任務:輸出用のマンドラゴラ(外洋交易船「オライオン号」:アルドスキフ船長) Lv5 捜索任務:ワイン用ブドウの収穫(レッドルースター農園:農場長アナオク) Lv5 モラビー造船廠索敵任務:群れに潜む人喰い蟹(キャンドルキープ埠頭:アルドブロダ) Lv20 巡回任務:クァール連れの海賊団(イエロージャケット第二陸戦隊:シルスケートシン陸曹) Lv20 懐柔任務:卵ドロボウのキキルン族(キャンドルキープ埠頭:アルドブロダ) Lv20 捜索任務:塩分測定用の水(博物学者イスーダ) Lv20 誘導任務:鉱石商人のゴブリン族(ナルディク&ヴィメリー社:鍛冶師メーティミンド) Lv20 索敵任務:隠れ潜む人喰い蟹(キャンドルキープ埠頭:アルドブロダ) Lv20 キャンプ・ブルーフォグ討伐任務:犯罪結社「バート商会」(銅刃団バルサム連隊:ココビ) Lv40 焚書任務:禁書「異界の炎を宿せし者」の回収(ナル・ザル教団:司祭ママネ) Lv40 要撃任務:邪眼のバロール(アマジナ鉱山社:ブランブルース) Lv40 巡回任務:補給路の安全確保(アマジナ鉱山社:ブランブルース) Lv40 誘導任務:行方知れずの番犬候補(アマジナ鉱山社:アーメンガルド) Lv40 獲得任務:新型爆薬の試料(錬金術師ギルド:エールウィン) Lv40 リトル・アラミゴ追撃任務:骸旅団の残党部隊(リトルアラミゴの住民:グリフィウド) Lv25 索敵任務:ドレイクに化ける者(銅刃団ロータス連隊:リュモモ) Lv25 焚書任務:禁書「腐汁滴らせし者」の回収(ナル・ザル教団:司祭ママネ) Lv25 懐柔任務:希少な花サボテン(隊商互助会:ツツシ) Lv25 誘導任務:孤児のベラスラベン(リトルアラミゴの住民:グリフィウド) Lv25 焚書任務:禁書「闇夜を歩きし者」の回収(ナル・ザル教団:司祭ママネ) Lv25 キャンプ・ドライボーン討伐任務:蠢く戦士たちの骸(ナル・ザル教団:助祭アイレル) Lv15 索敵任務:隊商襲撃犯のインプ(銅刃団オーキッド連隊:アーロット) Lv15 巡回任務:骸彷徨う園墓(ナル・ザル教団:助祭アイレル) Lv15 懐柔任務:荷車牽き用のゴート(隊商互助会:ツツシ) Lv15 捜索任務:土属性の偏属性クリスタル(銅刃団オーキッド連隊:アーロット) Lv15 誘導任務:グリダニアの商人(隊商互助会:ツツシ) Lv15 誘導任務:ゴブゴブ行商中止命令 コスタ・デル・ソル討伐任務:コスタ・デル・ソルの景観維持(ゲゲルジュ氏の家令:ググディ) Lv30 追撃任務:コスタ・デル・ソルの騒音対策(ゲゲルジュ氏の家令:ググディ) Lv30 焚書任務:禁書「燃えさかりし者」(メルヴァン税関公社:ペ・タージャ) Lv30 懐柔任務:我々のコリブリ(ゲゲルジュ氏の家令:ググディ) Lv30 索敵任務:冷やされたワイン(フライングシャーク:店主ディルストヴェイツ) Lv30 誘導任務:迷子のバッファロー(ゲゲルジュ氏の警護役:ヴェイスケート) Lv30 巡回任務:コスタ・デル・ソルの安全確保(ゲゲルジュ氏の家令:ググディ) Lv30 ワインポート追撃任務:襲撃犯のクァール(ワインポートの醸造家:シヅフルスク) Lv35 索敵任務:ワイン倉の侵入者(ワインポートの醸造家:シヅフルスク) Lv35 焚書任務:禁書「燃えあがりし者」(メルヴァン税関公社:ペ・タージャ) Lv35 要撃任務:ワインポートの脅威(イエロージャケット第四陸戦隊:ヤ・アラバリ陸士) Lv35 誘導任務:スパイスワインの配達人(ワインポートの醸造家:エ・バンダラ) Lv35 要撃任務:暴食のグゥーブー(イエロージャケット第四陸戦隊:ヤ・アラバリ陸士) Lv35 スコーピオン交易所討伐任務:穀物狙いの魔物退治(隊商互助会:グントラム) Lv1 追撃任務:街道荒らしのシュルー(隊商互助会:グントラム) Lv1 巡回任務:ウルダハ近郊の魔物駆除(銀冑団:近衛騎士オーベレト) Lv1 懐柔任務:新商品マーモット(隊商互助会:グントラム) Lv1 捜索任務:散乱した積荷(隊商互助会:グントラム) Lv1 獲得任務:売れ筋の鉄鉱(隊商互助会:グントラム) Lv5 追撃任務:逃げ足速いサボテンダー(銅刃団ローズ連隊:ソリタリー・エルク) Lv5 巡回任務:交易所近郊の魔物駆除(銀冑団:近衛騎士オーベレト) Lv5 懐柔任務:毒液採取用のビーク(錬金術師ギルド:エールウィン) Lv5 捜索任務:詐欺師が隠した品(銅刃団バルサム連隊:ココビ) Lv5 ホライズン討伐任務:汚染源の水棲魔物(隊商互助会:ズズティロ) Lv10 獲得任務:柔らかなペイストの粗皮(隊商互助会:ズズティロ) Lv10 追撃任務:チョコボ狙いの魔物(銅刃団ローズ連隊:チェチェザン) Lv10 索敵任務:実験体の悪霊(呪術士ギルド:ヤヤケ) Lv10 巡回任務:開拓予定地の魔物退治(銀冑団:近衛騎士オーベレト) Lv10 懐柔任務:製錬用コブラン(アマジナ鉱山社:ドラケン・スタグ) Lv10 捜索任務:古代の土器探し(史学者:ハバク・アルバク) Lv10 追撃任務:ペイスト狩り(銅刃団ローズ連隊:チェチェザン) Lv10 スウィフトパーチ入植地討伐任務:塩漬け肉を狙う獣(スウィフトパーチ入植地:リウルフ) Lv10 獲得任務:ライトニングスプライトの核(ワワラゴの網組:ブルーメル) Lv10 追撃任務:獰猛なジャッカル(イエロージャケット第三陸戦隊:フレールーフ陸兵) Lv10 索敵任務:愉快犯の成敗(イエロージャケット第三陸戦隊:フレールーフ陸兵) Lv10 巡回任務:デネベール街道巡察(イエロージャケット第三陸戦隊:フレールーフ陸兵) Lv10 懐柔任務:活きの良い保存食(外洋交易船「オライオン号」:アルドスキフ船長) Lv10 捜索任務:オムレツ用の卵(スウィフトパーチ入植地:リウルフ) Lv10 追撃任務:漁場荒らしのメガロクラブ(ワワラゴの網組:フォシリアン) Lv10 エールポート追撃任務:吸血バットの駆除(エールポートの醸造家:ミンドエイディン) Lv15 索敵任務:海賊に化けたインプ(イエロージャケット第三陸戦隊:スクリブスクーフ陸兵) Lv15 巡回任務:デネベール街道の治安維持(イエロージャケット第三陸戦隊:スクリブスクーフ陸兵) Lv15 懐柔任務:荷運びオーロックス(エールポートの醸造家:ミンドエイディン) Lv15 捜索任務:試飲用のエール(エールポートの醸造家:ミンドエイディン) Lv15 誘導任務:醸造師の麦探し(エールポートの醸造家:オ・アデブ) Lv15 誘導任務:取引帰りのメメルン バノック練兵所討伐任務:漁場の安全確保(猟師ギルド:ウジェネール) Lv1 追撃任務:択伐地の害虫駆除(園芸師ギルド:ガビノー親方) Lv1 巡回任務:害虫の定期駆除(猟師ギルド:ウジェネール) Lv1 懐柔任務:訓練用リスの捕縛(神勇隊人馬師団:ガルフリッド教官) Lv1 捜索任務:模擬戦用の長槍(神勇隊人馬師団:ガルフリッド教官) Lv1 獲得任務:訓練用の丈夫なつる(神勇隊人馬師団:ガルフリッド教官) Lv5 追撃任務:水質汚染の原因(碩老樹瞑想窟:道士アリクシ) Lv5 巡回任務:森の調和を保て(碩老樹瞑想窟:道士アリクシ) Lv5 懐柔任務:アノール調教計画(神勇隊人馬師団:モルラン) Lv5 捜索任務:堆肥袋の回収(園芸師ギルド:レオンソ) Lv5 ベントブランチ牧場討伐任務:畑荒らしの魔物退治(モーグリギフトマウンツ:牧童マルゴ) Lv10 獲得任務:チゴーの防除(鬼哭隊参番槍:隊士エイルガル) Lv10 追撃任務:牧場周辺の魔物退治(モーグリギフトマウンツ:牧童グスタバン) Lv10 索敵任務:鬼火の正体(モーグリギフトマウンツ:牧童グスタバン) Lv10 巡回任務:死霊の浄化(碩老樹瞑想窟:道士アリクシ) Lv10 懐柔任務:妖花の生態調査(園芸士ギルド:レオンソ) Lv10 捜索任務:ほだ木の観察(園芸師ギルド:レオンソ) Lv10 追撃任務:はぐれアノール退治 クォーリーミル討伐任務:密猟団の排除(鬼哭隊伍番槍:バラン) Lv20 獲得任務:ヌメヌメ若葉(クォーリーミルの住人:エドック) Lv20 獲得任務:密猟品の押収(鬼哭隊伍番槍:バラン) Lv20 追撃任務:若芽喰らいのレイヨウ(園芸師ギルド:レオンソ) Lv20 巡回任務:難民の安全確保(鬼哭隊伍番槍:バラン) Lv20 捜索任務:密猟者の罠(猟師ギルド:ウジェネール) Lv20 誘導任務:吟遊モーグリの警護(吟遊モーグリ:クパン・カプ) Lv20 懐柔任務:暴走トレントの沈静化(鬼哭隊伍番槍:バラン) Lv20 獲得任務:アンテロープのモモ肉(クォーリーミルの住人:オンブリヌ) Lv25 索敵任務:偽密猟団の撃滅(鬼哭隊伍番槍:バラン) Lv25 焚書任務:禁書「腐臭漂わせし者」の回収(碩老樹瞑想窟:道士シャルリヌ) Lv25 懐柔任務:アンテロープの生態調査(猟師ギルド:ウジェネール) Lv25 捜索任務:秘蔵の蜂蜜酒の回収(クォーリーミルの住人:アルドゥリク) Lv25 誘導任務:密猟行為の阻止(猟師ギルド:ウジェネール) Lv25 焚書任務:禁書「邪眼輝かせし者」の回収(碩老樹瞑想窟:道士シャルリヌ) Lv25 キャンプ・トランキル獲得任務:鬼哭隊の糧秣(鬼哭隊六番槍:アヴェレイ) Lv30 追撃任務:密猟者の追撃(鬼哭隊六番槍:アヴェレイ) Lv30 焚書任務:禁書「不浄なる者」の回収(碩老樹瞑想窟:アデスタン) Lv30 捜索任務:アダマンタスの卵(鬼哭隊六番槍:アヴェレイ) Lv30 誘導任務:ゴブゴブ行商護衛(とても良い行商人:ガットリクス) Lv30 捜索任務:闇市の商品没収(鬼哭隊六番槍:アヴェレイ) Lv30 ホウソーン家の山塞討伐任務:オポオポの縄張り争い(鬼哭隊四番槍:フロリモン) Lv15 獲得任務:甘露煮用の蜜蜂(酒房「バスカロンドラザーズ」:店主バスカロン) Lv15 追撃任務:蟲使いの妖異討伐(フルフラワー養蜂所:ロサ・ホウソーン) Lv15 索敵任務:葉血病感染拡大の阻止(猟師ギルド:ウジェネール) Lv15 捜索任務:シロカサダケの調達(森の住人:イサベル・ホウソーン) Lv15 誘導任務:食いしん坊のキキルン族(森の住人:ロルフ・ホウソーン) Lv15 誘導任務:迷いシルフの護送
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開幕 時の流れの中で、いつしか名を失った島…ロレンソとキリは、岸に船を付け夜闇に包まれた島に上陸した。 ロレンソ: ここが『名も無き島』か… 不思議な場所だな。 それに夜だというのに こんなにも明るい… スイキョウ: 『真なる星落とし』の儀式が 佳境に入っておるということじゃよ。 ふぉふぉふぉ。 キリ: 何やつ! @スイキョウ、現れる スイキョウ: よっしゃよっしゃ。 ロレンソ: あなたはあの時の仙人… スイキョウ: ようこの地まで来たな、ロレンソよ。 鬼哭の面を使った 星落としの儀式は最終段階に入った。 残された時間は後わずか。 急いだ方が良いじゃろうて。 ロレンソ: …あなたは 相変わらずの傍観ですか? スイキョウ: わしのような浮世を捨てた者が 直接この件に関わるのは どうかと思うからな、ふぉふぉふぉ。 キリ: …急ぎましょう、ロレンソ殿。 どこで儀式が行われているのか、 探さねばなりません。 きっとムウもそこに… ロレンソ: そうだな… では失礼させてもらいますよ、 さようなら。 スイキョウ: ふぉふぉふぉ。 随分嫌われてしもたようじゃな… @ロレンソ、去る スイキョウ: ………… そこに潜んでいるお前さん、 そろそろ出てきたらどうじゃ? サンジ: へへ、俺の気配に気付くたァ、 なかなか食えねェじいさんだね。 スイキョウ: 幕府に命ぜられて 『星落とし』の力を奪いに来たか。 ただ、もうその気は無いようじゃが? サンジ: へへ… お見通しってわけですかい。 サンジ: あんなに情熱的な 異人さん達の姿を見ちまったらねェ。 あっしみたいなドブネズミだって、 感ずる所があるってモンでさぁ。 サンジ: …こうなった以上、 戦いの顛末を見届けンのが 今のあっしにできる唯一の事だ。 最後まで、しっかり見届けやすよ。 スイキョウ: …良いものじゃな、 人の身であるという事も。 その小さき心の有りようも、 今となっては愛しく感じるわい。 スイキョウ: …ひょ? サンジ: どうしたんだい、じいさん? スイキョウ: いやいや、今また一人、 この島にたどり着いたようじゃ。 役者は揃ったというわけじゃな。 ふぉふぉふぉ。 彼の島の 名無しと人の 夕暮れは 上無き天に 糠星ぞ照る 千秋楽 神無島 西の穿ち ガモン: やはり来たか、ロレンソよ。 ロレンソ: お前はガモン! なぜここに!? ガモン: ぐふふ… わしの情報力をなめるでない。 幾つかの古文書を紐解けば、 この島の存在が書かれておるわ。 ガモン: …どうやらこの島のいずこかに 黒巫女はおるようだな? ロレンソ: 星落としの力… まだ狙っているのか? ガモン: 無論だ。 あれは変革者たる わしこそが持つべき回天の力! 変革に犠牲は付きもの! そうやって歴史は動いてきたのだ! ロレンソ: まだ、そんな事を…! …時間がない、問答は無用だ。 行くぞッ! ガモン: ぐふぅ… わ、わしの負けだというのか? 和国の新しき時代を望む このわしに正義が無いというのか? ガモン: 答えろロレンソ! わしのどこに否があるというのだ!? ロレンソ: 多くの犠牲を厭わない お前の改革とやらに正義は無い… ただそれだけの事だ。 キリ: 時間がありません… ロレンソ殿、行きましょう。 ロレンソ: ああ。 …さらばだ、ガモン。 @ロレンソ、去る ガモン: …ならばロレンソよ! わしの代わりに、お主が変革者たれ! 黒巫女を倒し、幕府を倒し、 和国に光をもたらしてくれぇーい! 南の絶え 森の抜け、海辺へ出た所で幻魔と刃を交える女剣士を目にした。女は幻魔を一刀両断すると、ゆっくりとロレンソの方を向いた… イサミ: おう、久しぶりじゃの! ロレンソではないか! ロレンソ: イサミさん… ど、どうしてこんな場所に!? イサミ: いやぁ~、それがのう。 火の国まで、あのくノ一を 負った所までは覚えとるんじゃが… 頭に血が上ってしもうてなぁ。 そこから先は記憶が曖昧なんじゃ。 イサミ: 確か、あの陰陽師を追いかけて ここに辿り着いたような覚えが… …ところでここはどこじゃ? ロレンソ: (なんという強運の持ち主なんだ…) キリ: ロレンソ殿、どうやらムウは この辺りにはいないようです。 先を急ぎま… イサミ: ! き、貴様は 鬼哭の面を盗んだくノ一! キリ: あなたは出雲神殿の… イサミ: やかましか! やかましか! やかましかぁ! ええい、今すぐにでも そっ首を叩き落してくれる! うらああ、ちぇすとォォォォーーッ! キリ: ………… @ロレンソ、イサミの攻撃を弾く ロレンソ: 待て、イサミさん! イサミ: なぜ止める!? イサミ: ふ、ふふ、そうか… おまんも裏切り者じゃったかぁ! ならば一緒に成敗してくれるわ! 喰ぅらえぇ! 天誅ぅぅーーーー! イサミ: なんということじゃ… ウチが裏切り者に負けるとは… 出雲の神さん達は… ウチを見捨てたもうたのかぁ~! ロレンソ: イサミさん… 頼むから落ち着いて聞いてくれ! もはや敵とか味方とか 言ってる場合じゃない! ロレンソ: 星落としはもうすぐ発動してしまう… 今すぐにも止めなくてはならない! そのためには キリさんの協力が必要なんだ! イサミ: ………… 神託に選ばれたおまんが そこまで言うなら仕方なか… 納得はせんが、信じてやる… キリ: …申し訳ありません。 イサミ: 勘違いするなよ! おまんを許したわけじゃなか! いずれその罪は償ってもらうきに、 覚悟しときや… イサミ: ! ロレンソ: どうしたんだ、イサミさん? イサミ: …団体さんが来おったようじゃな。 キリ: おそらく… シャダイの放った幻魔でしょう。 イサミ: ………… ここはウチに任せて おまんとくノ一は、ムウを捜せ。 ロレンソ: しかし、その傷では… イサミ: 時間が無いんじゃろうが! ウチを気遣っている場合か! 怪我してようと、 ザコ幻魔の群れごときに 遅れを取るウチではないきに! ロレンソ: 分かった… ハヅキさんも心配してるから、 早めに出雲に帰ってあげてくれよ。 …キリさん、行こう! イサミ: …くノ一! ロレンソを任せたぞ! キリ: 命に代えても。 イサミ殿もご無事で… @ロレンソ、去る イサミ: ふ、これが女の花道じゃ。 パアッと一花咲かせてやろうかの。 ハヅキ、ドウジ様、済まんな… …ちぃえええええぇぇーーーーー! 東の果て 耳の奥にいつまでも響くイサミの雄叫びに押されるように…ロレンソたちは北へ北へと走り続けた。追い風に乗って走ること数刻不意に、小柄な人影が立ち塞がった。 ミロク: …やはり会うたな、ロレンソ殿。 ロレンソ: ミロク様… やはりこの島にいらっしゃいましたか… ミロク: わしには判っておった… 黒巫女衆が抹殺された顛末も… それを知りながら、あの子を育て、 …そして星落としが起こってしまった。 ミロク: この上、さらに星が落ちるのであれば それはあの子を育てたわしの責任じゃ。 ミロク: ロレンソや… 老い先短いババたっての頼みじゃ。 ムウとの対決、譲ってはくれぬか? ロレンソ: ………… …悪いが断らせてもらいます。 あなたはムウと刺し違える気でしょう? ミロク: ! ロレンソ: 育ての親が子と争うのを 黙って見てるワケにもいきません。 それに、やはり、 ここは僕が行くのが筋でしょう。 ロレンソ: ヒミカさんとも約束したんです。 きっと、あなたを連れ戻すって。 ミロク: ………… しぇしぇ、しばらく見ぬ内に 言うようになったではにゃいか… ミロク: …ならば、その言葉に 実力が伴っているか見せてみよ! 千里眼のミロク… 本気で参るぞい! ミロク: えしぇしぇ… …まさか本気のわしに、 お前しゃんが勝ちおるとはのぅ… 今のお前しゃんになら ムウの事を任せてもよかろう… ロレンソ: …すみません。 ミロク: 謝ることはにゃい。 横槍を入れたのはわしの方じゃ。 行くがよい、ロレンソ殿。 ミロク: 行ってムウの頭に お前しゃんのゲンコツを 喰らわせてやるがいい。 わしの分も頼んだぞ。 ロレンソ: はい、任せてください! 北の極み キリ: …むっ? ロレンソ: どうした、キリさん。 キリ: この気配…… @画面、光る ロレンソ: こ、これは…!? 火焔幻魔、ヒノオロチか! キリ: しまった、罠です… ロレンソ殿、三方から囲まれました! シャダイ: ひゃっほ~ぅ、クズめらが! @シャダイ、現れる シャダイ: …まんまと麻呂の仕掛けた 『業火呪縛陣』に掛かりおったわ! このような光景を見ると 風流人の麻呂は、ついつい 一句詠んでしまいたくなる… シャダイ: 『バカどもめ 飛んで火に入る 夏の虫』 ひゃ~ほほほほうっ! キリ: シャダイ、姑息な真似を! シャダイ: おやおやおや、 裏切り者のキリではないかぇ。 何ゆえ、ムウ様を裏切ってまで、 このような凡愚についておるのやら。 キリ: 裏切ったわけではない! あの人を思うからこそ… 星落としを止めねばならないのだ! ロレンソ: キリさん… シャダイ: 低能な猿の言うことなど 麻呂にはさーっぱり理解出来ぬわ。 ムウ様の事を想っているのなら、 ムウ様の目的に協力すべきじゃろ? シャダイ: …もっとも、 鬼哭の面が手に入った以上 貴様などどうでもよいのじゃがな。 ひょーーーほほほほ。 ロレンソ: 哀れだな、シャダイよ… 自分の醜さに気づかないのか? シャダイ: ま、麻呂が醜いじゃとぅ!? ロレンソ: ああ、この陣が お前の醜さを物語っているぞ。 安全な場所に身を隠していないと 物を言うこともできないのか。 ロレンソ: 臆病者で、何の信条も持てない。 だから、ムウのような力を持つ者に 盲従することで自らの安心を得ようとする。 それがお前だ! シャダイ: き、貴様ァ… シャダイ: まあよい… 精々さえずるがいいでおじゃる。 これから業火に炙られて 焼け死ぬんじゃからなああ! うひょほほほほほ~っ! シャダイ: くきえぇぇぇっ! そ、そんな…馬鹿なぁ! 麻呂が、麻呂がァ 圧倒的に有利なはずだったのに… ロレンソ: 教えてもらおうか。 ムウはどこで儀式をしている? シャダイ: 麻呂を甘く見るでない! たとえこの命失われようとも、 ムウ様に対する忠誠が 揺るぐ事はないでおじゃる! ロレンソ: そうか… ならばその忠誠心、 見事に証明してみせるがいい! このロレンソ、 貴様のような邪悪を誅するに 一片の躊躇もないぞ! シャダイ: ひゃ、ひゃひぃぃぃ! 言います、言いますから 命だけはお助けを~っ! シャダイ: ムウ様は島の中央、 『星稜』と呼ばれる古の祭壇で 儀式を行ってまする~! ロレンソ: たいした忠誠もあったもんだ。 『星稜』… キリさん、行こう。 もう一刻の猶予もない! キリ: はい! @ロレンソ、去る シャダイ: …麻呂に背中を 見せるとは愚かなりっ! 貴様らには麻呂の全術力を込めた 超強力『怨霊招来』を食らわせてやる! ふはぁーっ、死ねぇ… メリー・ルー: メリー アルティメット スマーッシュ! @メリー、シャダイを殴る シャダイ: ぐはっ! @メリー、現れる メリー・ルー: 人のバックを狙っておいて、 自分のバックが隙だらけじゃ 世話ないデース。 メリー・ルー: ロレンソ… アナタのやり方で大切なモノ、 本当に守りきれるのか ルッキングさせてモライマース。 メリー・ルー: そして、そのジャスティスが 口先だけでないことを メリーに証明してクダサーイ。 星稜 島のほぼ中央にある、満天の星空に向かって伸びる祭壇。それはまるで天と地を結ぶ一筋の橋であった。ロレンソとキリは、とうとうその場所へと辿り着いた… ムウ: ………… ロレンソ: 何とか間に合ったようだな… 黒巫女ムウよ、 儀式を今すぐにやめるんだ! キリ: ムウ… もうやめましょう… 哀しみから生まれるのは やはり哀しみばかり… キリ: 鬼となり、世の哀しみを 一人で背負おうとするのは… もう…やめてください… ムウ: ………… 偽りの上に立つ世も、また偽り。 偽りが偽りを覆い、 まこと虚無なる今の世には、 絶えて一人の生者もおらぬ。 …うごめき、貪る影はみな屍ぞ。 ロレンソ: 確かにこの世界は 不正や悪徳に満ちている… そして、残念ながら それに身を浸してしまう 人間がいるのも事実だ。 …幕府による 黒巫女衆の悲劇の隠蔽もその一つ。 ロレンソ: もし、真実が表沙汰になっても 目を背けながら生きる人間は 幾らでもいるかもしれない。 自らの心の悪しき部分を 見つめるのは勇気がいることだから… ムウ: 我が求むるは穢れなき清浄… 仮初めの世も人も、 あさましく腐臭を放つのみ。 浄化の炎に灼きつくされ、 一握りの灰になってこそ美しい。 ロレンソ: それは違う! 僕は、この和国を旅して 多くの人々に出会った。 確かに偽りにまみれた者もいたが、 自らの真実と正義を信じて 前に進もうとする人間も数多く見てきた! ロレンソ: 全てを焼き尽くして終わりだなんて そんな単純なものではないはずだ! 僕は信じる… そういった真実の輝きに満ちた人々を! ムウ: ならば力をもって証を立てよ。 敵わぬのであれば、 全てを灰にするより他はない。 ロレンソ: 分かった… ならば見せよう… 僕の中にある真実と正義を! …鈍い光がムウの額を走った。甲高い音と共に『鬼哭の面』は二つに割れ、滑り落ちた乾いた音を立てた。 ムウ: ………… 異邦人殿… よくぞ証を立てましたね。 ロレンソ: あ、あなたが…黒巫女ムウ? ムウ: ええ…見事でした、異邦人殿。 人の真実と自らの想いを 信じ続けることが出来る強き魂、 しかと見届けさせてもらいましたよ。 ムウ: 神託を受けたのが あなたのような人でよかった。 キリ: ムウ…! ムウ: キリ… また会えるとは思わなかった。 あなたは優しい子。 最後まで私に付き合えるとは 思っていなかったから… ロレンソ: 星は…星はどうなったんだ? ムウ: ………… 星は虚空へと還りました。 ムウ: しかし再び、 生ける亡者が地に溢れる時… 夜空に輝く星たちが 哀れなる魂の欠片である事を 人々が忘れる時… ムウ: 今度こそ、星は天を下り、 全ては無へと還るでしょう… ロレンソ: ムウ!? ムウ: …さらば… 真実の輝きを持ちし異国の者… そして、我が妹キリ… もはや今生では… 会うことが…無いと信じます… ムウ: …異邦人殿… ヒミカと…ミロク様に… …どうか…伝えてください… …さようなら… …今までありがとうと… @ムウ、消える ロレンソ: ムウ… キリ: …ムウは… あの人は… どこへ消えたのでしょうか? ロレンソ: 分からない… しかし、ムウのあの素顔… 憎しみで星を落とそうとした者には とても見えなかった…。 ロレンソ: もしかしたら、 ムウは人の真実を知った上で 敢えて鬼哭の面を被ったのだろうか。 人に…その本当の輝きを教えるため… ロレンソ: もし再びムウが現れるとしたら… それは、人々がその輝きを 失った時なのだろう。 キリ: …ええ。 ロレンソ: …帰ったら、忙しくなりそうだな。 まず、ムウの残した言葉を ミロク様や、ハヅキさんや、 ドウジ様たちに伝えよう。 キリ: ………はい。 出来る限り多くの人に伝えます… 居なくなってしまった人達に 報いるためにも… ロレンソ: 和国もこれから 大変なことになりそうだ… 諸外国を牽制しつつ、 急いで星落としの混乱に 収集をつけることになるだろう。 僕にも手伝えることが あるといいんだが… ロレンソ: ………… キリさん… 僕は本国へ帰ったら 外交官を目指そうと思う。 少し時間はかかるかもしれないけど、 歩んでみたいんだ、父さんの行った道を… ロレンソ: そして、戻ってくるつもりだ… 父さんと母さんと… 僕が愛するこの和国へ。
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------------------ -------------- 梓「えぇ!? それじゃあ律先輩、『リリーちゃん』を呼んじゃったんですか!?」 数時間後、今日も練習らしい練習はたいして行わず、恒例のティータイム中にふと出た話題に梓が反応した。 唯「そうなんだ~。りっちゃんったら、急に呪文を唱え出したからびっくりしたよ~」 梓「……」 唯「ん? あずにゃん、どうしたの?」 紬「お菓子になにか入ってた?」 梓「いえ、そうじゃないんですけど…」 梓「実はこの間、クラスの友達も『リリーちゃん』を呼んだらしいんです」 澪「えぇ!?」ビクッ 紬「それで、その子がどうかしたの?」 紬の反応を受け、梓は静かに語り始めた。 梓「はい…。実は今日、その子が階段から転んで腕を骨折したんですよ」 梓「その子が言うには、転げ落ちた目の前に髪の毛の束が落ちてたらしくて…」 梓「みんなが『リリーちゃんの呪いだ』なんて言うからちょっと…」 律「ぐ…偶然だろ、アハハハハー」 梓「まぁ私もそうだと思うんですが、わざわざ自分から危険を冒すなんて律先輩もバカだなーって思って」プッ 律「なぁにいー!中野~!!」グリグリ 梓「きゃーっ!」 紬「あらあら」ウフフ 唯「でもでも! さわちゃんみたいに結婚できない呪いとかだったらどうする~?」 律「そ…それは嫌だな…マジで」 神妙な空気もそこそこに、いつもの部活動のように和気あいあいとした空気が流れ始める。 と、ふいに部室のドアが開き、一人の生徒が入室してきた。 和「楽しそうなところ悪いけれど」 唯「あっ! 和ちゃん!」 真鍋和、桜が丘高校の生徒会長である。 唯の幼馴染ではあるが、普段部室に顔を出すことはあまりなく、彼女の訪問は何かしらの用事があることを表していた。 桜彩る4月、今の時期を考えると彼女の用事は… 和「これ、〆切今日までよ」 案の定、和の手には、『講堂使用届』と書かれた紙があった。 和「今日中に出しておかないと、明後日の新歓ライブ、できなくなるわよ」 律「あちゃー、忘れてた」 澪「忘れてたじゃないだろ!!」 ゴチンッ!! 律「あいた!」 部長としての責任感が足りない、その思いを込めたげん骨が律の頭にヒットした。 更にもう1発…2発。 計3発の愛のムチを受けた律の頭には、見事な鏡餅ができていた。 和「…それじゃあ私は生徒会室にいるから、書き終わったら持ってきて」 律「あいっ…」ヒリヒリ 澪「ごめんな和」 和「いいわよ、もう慣れたし。それじゃあ私は失礼するわね」 唯「あっ!まって和ちゃん!」 唯「私たち、これからビラ配りにいくんだ~。よかったら途中まで一緒に行こうよ」 和「そうなんだ。じゃあ私生徒会に行くね」 唯「えぇ!?」 和「冗談よ冗談。それじゃあ皆、行きましょうか」 澪「律はちゃんとそれ書いとくんだぞ?」 律「あいよー」 紬「プリント出し終わったらりっちゃんも来てね。校庭にいるから」 ガチャッ…バタン! 一人となった部室は、先ほどまでの喧騒がウソであるかのように静まり返っていた。 こんなことならプリントを貰った時にすぐ書いているのだったと反省しながら、猛スピードで必要事項を書き進める。 律(意外と書くこと多いんだよなーこれ…あ~めんどくせ~…) 「 」 律「…っ!?」 その時だった。身の毛がよだつような冷たい視線が律に突き刺さった。 蛇がヌルリ…ヌルリと背中を這いまわるような錯覚を覚えるような、そんな視線。 ヌルリ… 体中に鳥肌が立ち、背筋が寒くなる。 口内が渇き、息苦しさを感じる… ヌルリ… 体が上手くいう事を聞かず、時計の秒針が動く音がやけに遅く感じられた。 全身から刺すような汗が噴き出してくる。 律「だれ…?」 辛うじて出た言葉はそれだけだった。 これ以上ヌメリとした蛇の体をまとわりつかせまいと、律はありったけの勇気を振り絞り、ぎこちなく扉の方へ顔を向ける。 …… 返事はない。 だが、木製の扉を隔てたその先には必ず誰かがいる… そう感じさせるには十分の気配がそこから発せられていた。 それは、彼女がこれまでに感じてきた、どのような気配とも異なる歪なものだった。 そこには人の温かみというものが存在していなかった。 生気が感じられなかったのだ。 生気はなく、しかし確かにそこに存在を主張している、只々冷たい気配… この只ならぬ気配の正体を確かめるべきだろうか… いや、自らの保身の為、このまま“ヤツ”が去るのをじっと待つべきか… しかし、このまま時が経てば“ヤツ“が立ち去るという保証がどこにあるのどろうか? ヌルリ… 不快な感触が再び動き出す。 それが引き金となり、律の体は動き出した。 最早感覚の無い脚に力を込め、椅子を引き立ち上がる。 体にまとわりつく蛇を振り払い、扉を睨み付ける。 意を決して扉の方へ一歩、歩き出そうとした瞬間、バァーン…という大きな音と共に、扉が開かれた。 さわ子「チョリーッス」 律「さわちゃん…」 体中の力が抜け、ガックリとうなだれる。 さわ子「あれ? りっちゃん? どうしたの? っていうかみんなは?」 律「ビラ配りにいったよ…」 さわ子「え~、なによ~。ひとがせっかく演劇部から着ぐるみ借りてきたってのに~」ブーブー 律「またそれかよ… そういえばさっき、部室の前に誰かいなかった?」 さわ子「え?誰もみてないわよ」 律「そっか…それならいいんだ」 さわ子「…どうしたの?」 律(さわちゃんな訳…ないよな。 気のせいか…?) 気が付けば、先ほどまでの視線は、息苦しさと共にどこかへ消え失せていた。 ヌルリ… 先ほどまで体にまとわりついていた蛇が、階下へと這い下りていく気がした。 ------------------ -------------- 澪「律、今日は何か元気なくないか?」 翌日の昼休み、澪はそう律を気遣った。 今日の律は休み時間にもあまり喋らず、しきりに周囲を見回しては黙って俯いていた。 律「何でもないよ。ただ、きのう夜更かししちゃってさー」 たはは、と笑いながら澪に心配させまいと嘘をつく。 律(澪には…言えないよな) 律は登校してから一日中、昨日と同じあの視線を感じ続けていた。 昨日ほどの強い気配と息づまるような空気は感じないものの、蛇がユラユラと獲物を待ちながら、遠くで舌舐めずりしている様な感じがしていた。 始めは「もしかしたら澪のファンが嫉妬して…」などとも考えたが、それではいく分納得いかない。 澪のファンクラブの子なら授業中にまで視線を感じることはないだろう。 しかし、学内に部外者が侵入しているとは考え難いが… 澪「ほんとに大丈夫か? 顔色よくないぞ?」 どちらにしろ、これ以上澪に心配させる訳にはいかない。 いつも通り、できるだけ明るく振舞おう。 律「大丈夫だって。ほら、もうすぐ授業はじまるぞ?」 澪「ああ…。律、何かあったら相談してきていいんだからな?」 律「わかってるよ。ほら、次、理科室で実験だろ? 唯たちが待ってるぞ」 これ以上澪に突っ込まれる前にと、律は教室の入り口で待つ唯と紬の元へと駆け出した。 律「わりぃ、遅くなっちまった」 もー!遅いよりっちゃーん! ------------------ -------------- 唯「あれっ? 透析チューブがないよ?」 紬「本当ね、前からとってこないと」 律「ああ、ムギはいいよ。私が取りに行くから」 紬「ほんとう?ごめんねりっちゃん」 律「いいって別に」 律(まだ…ついて来やがる。 いったい何なんだっていうんだよ…。) 棚の前まで歩き、透析チューブを手に取る。 律(あっ…落としちまった) スルリ…とチューブが指の間をすり抜け、床へと落ちた。 それを拾い上げようと屈んだ瞬間、またあの悪寒が律を襲った。 全身を蛇が這いずり回る。 反射的に、刺すような視線の元へ視線が動く。 見てはいけないと、本能が制止をかけるが、それを止めることは敵わなかった。 視線の先には、フラスコなどの実験器具が収納されてある、木製の棚。 半分近く開かれたその扉の隙間から、充血し瞳孔の開いた、凍ったような瞳がこちらを覗き込んでいた。 年期が経ち、茶味がかった包帯が顔を包み込んでおり、その隙間から覗く皮膚は焼け爛れた、赤剥けのどす黒い醜悪なものだった。 所々、焦げ付き、ボサボサとなった灰色の髪が包帯から顔をだしている。 黄味がかり、ギョロっとしたその瞳と目があった瞬間、体の内側を無数の虫が這いまわっているような感覚に襲われた。 矮小な虫たちは、耳の奥へと入り込み、喉を通って肺の周りを這い、律の体を内側から蝕んでいく。 首元には、ヌルッとした蛇の嫌な感触が走り、チロッ…チロッ…と耳元で舌舐めずりをする音が聞こえる。 目の前のモノが、律の瞳をじっと見つめながらニヤリ…と不気味に微笑んだのが包帯越しにも見て取れた。 鼻の奥に腐臭が漂う… 寒気と共に嫌な汗が噴きだした。 律「きゃああっ!!」 律は尻餅をつき、その衝撃で棚からフラスコが数個降り注いだ。 先生「大丈夫か、田井中!?」 紬「りっちゃん、血がっ!」 先生「琴吹、平沢、すぐに保健室に連れて行きなさい! 秋山は、担任の先生を!」 唯「大丈夫? りっちゃん?」 本人の意思に関わらず、律の体はガクガクと震えていた。 目線が逸れても尚、律の体は内外から蹂躙され続けていく。 律は気を失いそうになりながら、保健室へと運ばれた。 ------------------ -------------- 保健室の先生「これで大丈夫。軽い切り傷で良かったわね」 律「はい…」 保健室に運ばれた律は、養護教諭から軽い消毒と絆創膏による治療を受けていた。 切り傷自体は浅いもので、幸い明日の新歓ライブでの演奏にも影響はなさそうであった。 普段ならばすぐにでも部活へ行くよう指導するところであったが、律の様子がどう見ても不安定だったこと、 そして現在軽音部は、明日の新入生への部活紹介の為に、講堂へ使用機材を運び込んでいる最中である、 ということもあり、養護教諭は「もう少しここで安静にするように」と指示した。 律(……) 律は膝を立て、それを腕で抱え込むようにして小さく縮こまり、保健室の角で震えていた。 律は理科室で“アイツ”の姿を見てからずっと、あの悍ましい視線が自分の後を付いて来ているのを感じていた。 “アイツ”がすぐそこにいる… 蛇が四肢に纏わりつき、首元で牙をむき出しにしながら、自分が一人になるのを今か今かと待ちわびているのを感じる。 これから死ぬまでの数十年間、この恐怖に怯え続けなければならないのだろうか。 いや、自分はその寿命を待たずして、“アイツ”の手によってその人生を終えるのだろうか。 焼けただれ、腐食したあの腕に首を絞められ、息絶える自分を想像し、律は吐き気を覚えた。 律「先生…エチケット袋あります?」 養教「あるけど…大丈夫?気分悪いの?」 そう律の体調を伺いながら、養護教諭はエチケット袋を手渡した。 律はその問いには答えず、すぐさま袋に胃液を吐き出した。 そうすることで、この恐怖心が少しでも安らぐ気がした。 養教「もう大丈夫?そこの水道でうがいしてきなさい」 律「はい…」 律は養護教諭にエチケット袋を手渡し、保健室の出入り口付近にある水道で口をすすいだ。 養教「疲れてるみたいね。今日は少し休みなさい?」 ------------------ -------------- 唯「りっちゃん、大丈夫かなぁ?」 紬「もう機材も運び終わったし、様子を見にいってみる?」 梓「血が出てたんですよね? 明日のライブ、大丈夫なんでしょうか?」 講堂に機材を運び終え、唯・澪・紬・梓ら4人の話題は自然と律を心配するものになっていた。 澪「傷は多分…大丈夫だと思うけど」 梓「どうかしたんですか?」 澪「いや…あいつ、なんか様子おかしくなかったか?」 抽象的ではあるが、唯と紬の二人には、澪の言おうとしていることがよくわかった。 保健室まで律に付き添った二人であったが、道中での律の様子が異常なことは誰の目にも明らかであった。 なるほど、確かに腕には多量ともいえる血が流れて痛々しく、仮に澪が付き添っていれば患者が一人増えたかもしれない。 しかし、血の勢いに反して傷は浅く、止血さえ正確に行えば、なんてことはない傷だということも、彼女達にはわかっていた。 元来、田井中律という少女は活発で少し男勝りと言える面もあり(反面、軽音部で一番乙女らしい一面もあるが)、なんにせよその程度の切り傷などで泣いたり、ましてやその程度でわななくことは無い、というのが彼女達の見解であったし、それは決して間違ってはいなかった。 律の異常な様子自体もそうだが、もう一つ、彼女達にとって不可解なことがあった。 律が傷のことを気にする素振りを全く見せなかったことである。 仮に異常の原因が傷であったとするなら、それを無視するようなことがあるだろうか。 また律の場合、終始周りを警戒して、何かに怯えているようにも見え、その様子は何か別の原因があるのではないかと思わせるのには十分であった。 彼女達が律を気に掛けた理由もそこにあった。 唯「うん…なんていうか、何かに怯えてるみたいだった」 紬「ケガが原因じゃなさそうだったね…」 梓「そうなんですか…心配ですね。保健室に行ってみましょう」 澪「そうだな。とりあえず、様子を見てみようか」 保健室にはさわ子先生もいるし、と付け加えた。 3
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あるゆっくりできない2匹の一生 9KB ※駄文、稚拙な表現注意。 ※俺設定注意 ※賢いゆっくりは漢字もしゃべります。 人生は選べない。 人種、祖国、親、家柄、容姿、才能。何ひとつとして自由に選べるものなど存在しない。 人の多くは「もっと金持ちの家に産まれたかった。」「もっと美人に産まれたなら良かったのに。」と思いながら、自分の人生を自分なりに生きている。 そしてそれはゆっくりも同じなのだ。 これはそんな自分の境遇に不満を持つ2匹の物語。 あるゆっくりできない2匹の一生 作、長月 れいむはゆっくり出来なかった。 れいむは100円ゆっくりだ。加工所で産まれ、機械におけるランク付けで「不良品」と認定された。 そして場末のゆっくりショップに卸され、処分品コーナーで売られることになる。 値段は文字通り100円。ジュース1本すら買えない値段だ。 処分品コーナーは二畳ほどのスペースに数十匹の赤、子ゆっくりがひしめく超過密状態。 ここにはゲス化した個体やお飾りを失った個体、そしてれいむのような不良品と認定されたゆっくりが溢れている。 「おいそこのじじい、このまりささまをかうんだぜ!!そしてあまあまよこすのぜ!!」 「ぼうしのないやつはこないでね!!ゆっくりできないよ!!」 「どうしてそんにゃこというにょぉぉぉぉ!!」 「うがあああああ!!ゆっぐりでぎないぃぃぃぃぃ!!」 餌も満足に与えられていない上、この狭さなのでどのゆっくりも殺気立っている。 「ぎゃぁぁぁぁ!!おしゃにゃいでぇぇぇぇぇ!!ちゅぶれりゅうぅぅぅぅ・・・ゆべっ。」 過密状態なので時々小さな赤ゆっくりは押し潰される。しかし死体の掃除をする必要はない。 「はふっはふ。うめっ、これめっちゃうめえぇ!!」 「ぺーろぺろ。もうあまあまさんないの?」 このように死んだそばから他のゆっくりが食べてしまうからだ。ご丁寧にも餡子のしみついた床まで舐めている奴まで居る。 まさにゆっくりの地獄絵図だ。家畜のほうがまだましな生活をしている。 いくら安いとはいえ、こんなゆっくり達が売れるはずも無く、普通の客達はできるだけ目を合わせないように足早に通り過ぎていく。 元々このゆっくりたちはれみりゃやふらんの生餌用なのだ。普通の客は買わない。 そんな地獄のなか、れいむは隅っこでただ震えるしかなかった。気の弱いれいむにここは刺激が強すぎたのだ。 しかしれいむには夢があった。 いつか白馬に乗った優しい王子様が「れいむ迎えに来たよ」といって自分を攫ってくれるに違いない。 そして一生、どこかのゆっくりプレイスでれいむを可愛がってくれるのだ。 どこで覚えて来たのか知らないが、そんな妄想にふけるれいむ。 しかしその期待は無残にも裏切られることになる。 「ヒャッハー!!このれいむ下さいッ!!」 そういってれいむを買うその男は頭はモヒカン。着ているものは素肌に革ジャンで、れいむを嗜虐に満ちた目で見ている。 どう見ても虐待お兄さんだ。(もしくは北●の拳でケンシ●ウに瞬殺されるザコ) 自分の夢見ていた飼い主とは違う。 そう思うれいむだったが、商品であるれいむが飼い主を選ぶことなど出来るはずもない。 そのままそのお兄さんに売られていくれいむ。虐待用ゆっくりとしてのゆん生が始まるのだ。 こうしてれいむのゆっくりできない生活が始まった。 「ゆうぅぅぅ・・・」 腐臭漂う生ゴミの中、れいむは起き出す。虐待お兄さんにより生ゴミを捨てるコンポストを寝床として宛がわれたのだ。 「ヒャッハー!!れいむ、朝の虐待だー!!!」 朝っぱらから近所迷惑になりそうな大声で叫ぶ虐待お兄さん。 れいむの朝は虐待から始まる。使い込まれた改造ハエ叩きでお兄さんに飽きるまで叩かれるのだ。 当然拒否することなど出来ない。れいむは虐待用ゆっくり。虐待されることが仕事なのだ。 本当はシャンプーしてもらったり、ブラシで髪をとかしてもらったりして欲しいが無理なことだ。 れいむは100円ゆっくり。そのような贅沢を言える立場ではない。 そして朝食となるのだが・・・れいむはこれにもうんざりしていた。 腐りかけた生ゴミに七味トウガラシがトッピングされている。そしてデザートは自分のうんうんだ。 ちなみに七味トウガラシは体が痺れるが死なない程度に量が調節されている。 正直こんなもの食べたくないが、食べないとお兄さんに殴られるので食べなければならない。 本当はケーキさんやクッキーさんを優しいお兄さんに頭を撫でられながら食べるのが理想だがそんな事はありえない。 なぜなら自分は虐待用ゆっくりだから。 れいむは自分の境遇を呪った。 そんなある日、れいむは虐待お兄さんの考えた野外虐待プレイの帰りにとてもゆっくりしたゆっくりに出会った。 ビロードのようにきれいで艶やかな髪。 汚れひとつ無いきれいなおぼうし。 もちもちの美肌は飼い主がいつもスキンケアを怠らない証だろう。 近づいてみるとシャンプーのいい香りがした。 ああ。自分もこうだったらいいのになあ。飼い主の優しそうなお兄さんを見ながられいむはそのゆっくりとすれ違った。 てんこはゆっくり出来なかった。 てんこは高級ゆっくりだ。高級ゆっくり専門のブリーダーのもとで産まれ、高級ゆっくりとして生を受けた。 そしてある高級ゆっくりショップのVIP用販売コーナーで売られることになる。 値段はなんと100万円。中古なら外車が買える値段である。 VIP用販売コーナーでは広々としたスペースに数匹の高級希少種たちが飼育されている。 ちなみにテレビ、エアコン、ゆっくり用遊具、緊急用オレンジジュースが完備されており、外に面する壁はガラス張りになっているので店の外からもこの部屋が見えるようになっていた。 ここに居るのは皆コンクールや品評会で上位入賞したゆっくりを親にもつ由緒正しき高級ゆっくりたちだ。 「いっらっしゃいまし、おきゃくさま。さくやたちをゆっくりごらんくださいですわ。」 「ゆかりんのお帽子は今日もゆっくり素敵ね。」 「あらえーりんのお帽子こそゆっくりできるわ。」 「ゆーん。きょきょはゆっくりできるよ。」 ここのゆっくりは食べ物にも困らず、広々としたスペースに最高の環境で育っている為、皆一様にゆっくりしている。 「いじゃいよぉぉぉぉ!!ゆっくりできなぃぃぃぃぃ!!」 そんななか急に泣き出す赤れいせん。どうやら遊具で怪我をしたらしい。しかし治療の心配をする必要はない。 「べろべろばー。れいせんちゃん、なきやむですわ。」 「これぐらいの傷ならばんそうこうとオレンジジュースで十分ね。」 ゆっくりさくやとえーりんの的確な処置により泣き止む赤れいせん。そして2匹へ感謝と親愛のすーりすりを始めた。 まさにここはゆっくりたちの理想郷。下手な人間よりいい暮らしをしている。 そんな愛らしいゆっくりたちに通行人は足をとめ、自分もこんなゆっくり飼いたいなぁ、と思いをはせる。 しかしここは会員のセレブ専門の販売コーナーなのだ。普通の客では買えない。 そんな理想郷で、てんこは隅っこでただ退屈していた。ドMなてんこには刺激がなさ過ぎたのだ。 しかしてんこには夢があった。 いつかハーレーに乗ったモヒカンの虐待お兄さんが「ヒヤッハー、てんこは虐待だー!!」といって自分を攫ってくれるに違いない。 そして一生、生かさず殺さずの虐待プレイでてんこを虐めてくれるのだ。 どこで覚えて来たのか知らないがそんな妄想にふけるてんこ。 しかしその期待は無残にも裏切られることになる。 「このてんこ下さい。」 そういっててんこを買うその男は顔はイケメン。着ているものは高級ブランドで、てんこを愛情に満ちた目で見ている。 どう見ても愛でお兄さんだ。(しかもお金持ち) 自分の夢見ていた飼い主とは違う。 そう思うてんこだったが商品であるてんこが飼い主を選ぶことなど出来るはずもない。 そのままそのお兄さんに売られていくてんこ。愛玩用ゆっくりとしてのゆん生が始まるのだ。 こうしててんこのゆっくりできない生活が始まった。 「ゆうぅぅぅ・・・」 ふわふわのクッションの上で、てんこは起き出す。愛でお兄さんにより高級羽毛入りクッションを寝床として宛がわれたのだ。 「おはよう。てんこ。ブラッシングの時間だよ。」 にっこりと爽やかな笑顔でてんこに笑いかける愛でお兄さん。 てんこの朝はシャンプーとブラッシングから始まる。お兄さんは手馴れたやり方で優しくてんこの髪をシャンプーし、とかしていく。 当然拒否することなど出来ない。てんこは愛玩用ゆっくり。飼い主の愛を受けることが仕事なのだ。 本当は熱湯をかけてもらったり、ハエ叩きでバシバシ叩いて欲しいが無理なことだ。 てんこは高級ゆっくり。そのようなはしたない事を言うのはプライドが許さない。 そして朝食となるのだが・・・てんこはこれにもうんざりしていた。 最高級ゆっくりフードにチョコーレートがトッピングされている。デザートは老舗の和菓子だ。 ちなみにチョコレートと和菓子は太り過ぎないようにカロリー控えめになっている。 正直こんなもの食べたくないが食べないとお兄さんが心配するので食べなければならない。 本当は生ゴミや自分のうんうんを虐待お兄さんに「ヒヤッハー!!さあ食いやがれこのメス豚てんこ!!」となじられながら食べるのが理想だがそんな事はありえない。 なぜなら自分は愛玩用ゆっくりだから。 てんこは自分の境遇を呪った。 てんこは愛でお兄さんとの散歩の帰りに、とてもゆっくりしたゆっくりに出会った。 使い古した竹箒のようにボサボサな髪。 ボロ雑巾のようなりぼん。 ガサガサでアザだらけの肌は飼い主からいつも殴られてる証だろう。 近づいてみると生ゴミのすえた臭いがした。 ああ。自分もこうだったらいいのになあ。飼い主のモヒカンお兄さんを見ながらてんこはそのゆっくりとすれ違った。 結局この2匹は2度と会うこともなく、2匹を救う王子様や虐待お兄さんなど居るはずもなかった。 2匹はゆっくりできないまま年を取り、そしてゆっくりできないまま死んでいった。 今日の希少種 ゆっくりてんこ 希少度 A ドMなことで知られるゆっくり。タフネスはゆっくりのなかでもトップクラスで、どんな虐待をしても喜ぶので究極の虐待お兄さんキラーとも言われている。ただしマゾでない個体も存在しており、その場合善良なアリス種の上位変換のような個体になる。 ちなみにてんこの親ゆっくりはそのタイプのゆっくりで当然その子供もそうなるだろうと思われていたが、なぜか本作のような病的なまでのドMゆっくりになってしまった。 あとがき 前回は酷い超解答SSを書いてしまいすいませんでした。しばらくは推理物は書かずこんなかんじの短編を書こうと思っています。 今回のSSは少し感じを変えてみましたけどいかがだったでしょうか。れいむパートとてんこパートを交互に読んでいくとまた面白いかもしれません。ご意見、ご感想をコメントに書いていただけると励みになります。 今まで書いた作品 ふたば系ゆっくりいじめ 176 ゆっくりちるのの生態(前編) ふたば系ゆっくりいじめ 185 選ばれしゆっくり ふたば系ゆっくりいじめ 196 新種ゆっくり誕生秘話 選ばれしゆっくり番外編 ふたば系ゆっくりいじめ 208 ゆっくり見ていってね ふたば系ゆっくりいじめ 218 またにてゐ う詐欺師てゐの日々 ふたば系ゆっくりいじめ 227 VS最強のゆっくり 史上最低の戦い ふたば系ゆっくりいじめ 247 夢と現実のはざまで ふたば系ゆっくりいじめ 264 あるまりさの一生 ふたば系ゆっくりいじめ 298 ゆっくりを拾ってきた ふたば系ゆっくりいじめ 336 ゆっくり Change the World(出題編) ふたば系ゆっくりいじめ 357 ゆっくり Change the World(出題編2) ふたば系ゆっくりいじめ 391 ゆっくり Change the World(解答編) トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る てんこの飼い主は愛でお兄さんではなくて虐待して欲しいてんこを逆に愛でるということに喜びを感じるドSだったり -- 2017-01-17 15 51 57 虐待用に100万出せるセレブモヒカンは希少中の希少だな -- 2015-12-20 23 39 55 てんこはヒャッハーされたいんだねーわかるよー -- 2014-07-31 16 51 52 ザコ… -- 2014-01-25 00 12 40 ヒャッハー!からの、このれいむください(敬語)に吹いたWx -- 2012-05-25 13 11 52 「100万のてんこだってー!?ひ、ひゃっは・・・高級なてんこは愛でながら虐待・・・ちょこっとでいいからしたいなあ~ -- 2011-11-09 02 00 29 ハーレーにのったモヒカンお兄さんが王子様って…… -- 2011-08-16 12 44 26 人もゆっくりも価値観はそれぞれだな。この話はかなり極端だがw -- 2011-04-19 16 17 48 希少種優遇の俺だけど赤れいせんの泣き声にイラッときた。 あの泣き声は赤れいむとしか思えない。 -- 2011-03-29 01 28 59 100万にヒャッハーはできねえなww -- 2010-10-15 19 59 42 てんこ高え、、、、 生まれはえらべないか、、、 -- 2010-07-24 19 21 52 なるほど・・・ -- 2010-06-22 01 39 46 やっぱり、てんこちゃんへの愛情は「ヒャッハー」で表すものだよね -- 2010-06-21 11 44 21 この発想はなかった。面白かったです。 -- 2010-03-05 12 33 56
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登録日:2020/07/31 Fri 14 50 45 更新日:2024/05/02 Thu 10 04 31NEW! 所要時間:約 8 分で読めます ▽タグ一覧 TOUGH龍を継ぐ男 うまるちゃん オカルト ジム・スヌーカ スピリチュアル・サンクチュアリ タフシリーズ ネイティブ・アメリカン 催眠術 悲しき過去 格闘家 褐色肌 諜報員 『”捕食者(プレデター)・キラー”』 『ジム・スヌーカ』とは、猿にも大人気漫画タフ・シリーズに登場するキャラクター。 モデルになった人物はプロレスラーのジミー・スヌーカだと考えられる。 ●概要 第三部の龍を継ぐ男において登場した、ガルシア28号の敵の一人である。外見は筋骨隆々な褐色肌の大男。 アメリカ軍の元海兵隊・軍曹であり、アメリカ先住民族の血を引く狩の名手、独特の戦闘スタイルで敵を倒す。 軍事基地から自力で脱走したガルシア28号捕獲の為に日本に遣わされた。 ●活躍 初登場は第三部の龍を継ぐ男150話。 監禁されていた軍事基地から自力で脱走し、灘神影流まぬけトリオの所に逃げ延びたガルシア28号を捕まえる為に米軍から派遣された。 「三年前スヌーカはあのガルシアと闘っている」 3年前に、当時のガルシア28号より強かったガルシア13号と戦った経験がある。 ミドルキックの相打ちでガルシアの肋骨を三本折り(まあスヌーカも肋骨二本折れたんやけどなブヘヘヘ) そのまま流れるように背後を取って、両目を潰しながら首の骨をへし折る事で絶命させた実力者。他にもガルシア7号、ガルシア20号を殺害したらしい。 ちなみにここ色々と突っ込み所があり、 「ガ…ガルシアを殺した?」 「といってもG-28じゃない、G-13だ」 「ただ当時の戦闘能力はG-28よりもはるかに上だった」 現在ガルシア28号>3年前ガルシア13号>3年前ガルシア28号、となるんスけどそれ箔付けになってるんスかね……。 というか10年前から宮沢鬼龍と宮沢NEO坊がガルシア28号を助けるために暗躍してたはずなんスけど。 見捨てられたガルシア7号、ガルシア13号、ガルシア20号に悲しい過去っ、人生の悲哀を感じますね。 倒した獲物を解体してグッチャグッチャと食っているスヌーカの姿に、マネモブ(猿漫画スレの住人)はスヌーカの悲しき過去に期待を高めていた。 「ここもまた血と腐臭に満ちている」 毛皮を頭から被りポテチとコーラで宴を始めそうな姿のまま来日したスヌーカ。 「おい信号は赤だぞ、さっきからずっと信号無視してるぞ、白人はこの国でもやりたいほうだいか」 「ネイティブアメリカンは奴隷になることより死ぬまで闘うことを選んだ」 「そして日本人も死ぬまで闘う民族だ、本土が爆撃されても闘い続けた、そしてあの原爆二発だ」 「俺は日本人を尊敬している」 意外な常識人かつ親日派である事が分かるとマネモブからの好感度は上がったんだ。悔しいだろうがちょろいんだ。 マイクロ・チップの信号を追って廃棄されたボーリング場に入ると、NEO坊時代から髪を切ってキー坊に戻った宮沢熹一と対戦。蹴りを避けつつハイ・レベルな格闘戦を行う。 「我が名はスヌーカ、誇り高く勇気ある戦士を闘える事に喜びを感じる」 日野日出志のキャラみたいな顔付きになったスヌーカの目を見るとキー坊の動きが止まる。また催眠術っスか スヌーカが目が見えなくなった龍星の噛ませ犬になりそうな予感にマネモブは戦々恐々したのは言うまでもない。 ガルシア28号が居ない事に気付くと、壁を三角飛びして天井を突き破り逃走。一旦お開きとなった。 見知らぬ大都会では途方に暮れるかと長官から愚弄されつつも、ガルシア28号捕獲の協力者、宮沢鬼龍を紹介される。 「お前がスヌーカか、狩が得意らしいが、臆病で弱いウサギを狙って狩るのか」 「ウサギから熊…たまに高慢な人間を狩ることもある」 身内に迷惑をかける事をライフ・ワークにしている宮沢鬼龍と舌戦。 想像のバトルで互角の戦いを繰り広げ……っちゃ駄目だろうがよえーーーーっ!とマネモブが突っ込んだのは言うまでもない。 イメージ・バトルとは言え、年齢で衰えた鬼龍おじさんと互角とか大丈夫なんスかねと心配されてしまった。ついでに木場活一郎が案内役になった 灘神影流隠れ家に積まれていたタイヤに火を付けて大火事になった所に登場。下手人の木場活一郎は得意気な顔をしていた 「我らは自然の精霊と恵みを糧とし、生きとし生けるもの、全てを敬い慈しむが!」 「神をも恐れぬ人工技術によって造られたクローン人間など断じて認めないッ」 可愛い猫ちゃん(酷い目に遭いそうだったので猿空間に避難すべきとマネモブから心配された)を守護りながら闘うガルシア28号も苦戦。 ガルシア28号を守護りに飛び込んできた宮沢尊鷹だが、年齢による衰えの上に片足が義足になってしまったハンデからスヌーカに一蹴されてしまった。ついでに鬼龍から反吐が出る偽善者だと愚弄された 「ま…まさか、尊鷹を救うために戻ってきたのか、人を破壊するしか能がなかったお前にそんな人間らしい感情が芽生えたというのか」 タイヤが燃え上がる中をかっこよく練り歩いてくるガルシアに困惑、そのまま強烈な横蹴りをくらわされるとタイヤの山に叩き付けられる。 そして上からは燃え盛るタイヤが降って来たが巨大タイヤの中に入って脱出、重度の火傷を負い病院に運び込まれる事となった。 木場活一郎「まずいよドローン飛ばしてる場合じゃないよ、お…俺は放火殺人犯になっちゃうよ」 「あの患者は腹部に強い衝撃を受け臓器損傷しており、腹腔内出血と腹膜炎を併発している」 「血圧低下脈拍瀕数、意識も消失していた。またⅢ度の重症熱傷で神経まで損傷していて後遺症を残すことになる」 と大怪我を負い猿神影流コピペ病室に入れられたスヌーカだが、何と病院から脱走。医者に詰問された木場活一郎はその後姫次にボコボコにされて鬼龍の隠れ家を吐かされる事となった そしてスヌーカの出番は消失した。 しかもGKドラゴンやトダーなどのビックリ・ドッキリ・メカが登場し、ガルシア28号の自殺により全ての決着が付いてしまったので出番は絶望視されていた。 しかし、何と出番があった。次の出番は約2巻分が経ってからの16巻。 「やっと繋がった。探したぞ、日本の病院から消えてどうしてたんだ?」 「俺が傷を癒す場所は日本じゃない」 「ここはスピリチュアル・サンクチュアリ、この地の山・岩・水・木の霊的パワーを体内に取り入れる事で再生する」 病院から脱走した後はアメ・リカの山奥にある故郷に戻っていた。しかも長官の台詞からすると通信すら切っていた模様。自由人すぎるっス 火傷跡が痛ましいが負傷は完全治癒し、地元のハンターを襲う体長4m体重1tの巨大グリズリーを狩ろうとする。任務はガルシアの自殺で片が付いた事を教えられた。 そして標的の巨大グリズリーの前でいざ戦闘に入ろうとしたら…… 「スヌーカ、邪魔しないでくれる。その熊は俺の獲物だよ」 ヌッとバイソンの死体による擬態を解いた主人公・龍星が登場。この力に一番戸惑っているのは俺なんだよね。 ガルシアの心臓を移植されぐろう系主人公と化した龍星は、熊をワンパンで爆発四散させる。すごくない? 俺の能力はまだ人間には試していないんだよな、と襲いかかろうとしてくる龍星だったが…… (なにっ?) 目の前でいきなり気絶 三日三晩も高熱でうなされ死に掛けていた龍星をスヌーカは付きっ切りで看病した模様。この展開に一番戸惑っているのは読者なんだよね。 ようやく快方した龍星にスピリチュアル・サンクチュアリを案内するなど観光ガイドみたいな事をしながら、ガルシアへの恨みと悲しき過去語り。 (最初の一撃で失神、二発目で即死状態。それなのに一秒間に20発の打撃を撃ち込んだ…まるでマシンガンでの連射…銃殺刑) 軍のスパーリングでガルシアに兄を撲殺された事によりガルシアを恨んでいるとの説明っ。 命令には忠実に従うガルシアにそんな命令したアメ・リカを恨むべきなんじゃないっスか 龍星はガルシアの心臓を移植されたので、スヌーカの抹殺対象に入っているとの事な、なんだあっその理屈はっ ガルシアの心臓や目を移植されてぐろう系主人公と化した龍星と戦闘に入ったスヌーカだが、何とフィールド魔法をかける事により優勢に持ち込む。 「お前はもう私の術にかかっているぞ」 「ここは私のフィールド、木も川も空気も生きとし生けるもの全てを味方につける事ができる」 兄の怨霊や、奇妙に捩れた風景を見せ体を動かなくさせるオカルト技を披露。ほんとにスピリチュアル・サンクチュアリなんスかねここ 心臓を移植したばっかの傷口を開かせるという怪我を負わせる手術終わってからすぐに来たんスかねこいつ 更にガルシアへの恨みを口にするスヌーカに…… 「ほ…本当にお前の兄貴はガルシアを恨んでいるのか」 「ガ…ガルシアは痛みや苦しみを与えることもなく、一発で失神させ、二発目で即死させたんだろ」 「う…恨みを残すような中途半端な殺し方はしていない、勝手にお前がガルシアに恨みを持ってるだけだろ」 な、なんだあっその理屈はっ シャツに浮いた血痕がガルシアの顔になるという超常現象に怯み、顔をぶん殴られる。 スヌーカの妖術も目をつぶれば効かないという設定が明らかになる。まあ読者は大分前から分かってたんやけどな 龍星が次世代のエージェントになる事でスヌーカがお払い箱にされるという状態が高官から語られる。 「政府はこの土地に軍の施設を計画していた」 「政府の仕事に協力すればこの土地を保護し、私の一族を連邦政府承認部族として自治権を与えると約束したんだ」 「私たちはこの意図を守るため、口では言えないような薄汚い仕事をしてきたんだ。闘ってきたんだ」 かなりピンチになったスヌーカだったが、悲しい現在を語る事で奮起。 こんな辺鄙な場所に軍事基地設立して何がやりたいんスかね……というかそんな状況なのに無断で故郷に戻って療養生活って何考えてんだよえーーーーっ 木を駆け上りつつ、上空から奇襲をしかけたが強烈なハイ・キックを顔面に直撃され、顎の骨をへし折り敗北となった。 満身創痍の身ながらも立ち上がろうとするスヌーカを龍星は…… 「俺に政府の仕事をさせたいならこの土地には手を出すな。この土地はスヌーカが命にかえても守らなければならない神聖な場所」 「まずはスヌーカとの約束を履行しろ、話はそれからだ」(一番大切なものさえも守れない、そんな惨めで無様な人間にだけはなりたくないよなっ) スヌーカの顎を整骨しつつ、スヌーカの土地にこれからも手を出さないように政府を脅しを掛けた。 龍星はジム・スヌーカの一族の土地のスピリチュアル・サンクチュアリによって浄化されたと考えられる。 この後のスヌーカの消息は不明、スピリチュアル・サンクチュアリで暮らしていると考えられる。 ちなみにこの後、長岡龍星は親父の宮沢鬼龍共々、新長官の方針でアメリカ軍に狙われる事となったので約束が守られるかはかなり怪しい、スヌーカに悲しき現在っ……。 ここもまた追記と修正に満ちている △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 「ここ(故郷)は祖先から受け継いだ土地ではない、未来の子供たちから借りている土地なんだ」って精神性は本当に好き -- 名無しさん (2020-07-31 21 18 29) 普通に龍を継ぐものでは扱いがいい方ですきだった -- 名無しさん (2020-07-31 21 50 15) スピリチュアル・サンクチュアリに連れ込んで催眠術強化したらやっとガルシア28号倒せそうな感じなんだよね、スヌーカはどうするつもりだったんスかね -- 名無しさん (2020-07-31 21 55 43) 再登場したらどうせロクな事にならないから、猿空間入りのままがいいっス -- 名無しさん (2020-08-01 09 11 37) 出てきても酷い目にあうから出ないでほしいってパワポケみたいっスね -- 名無しさん (2020-08-03 14 37 41) マネモブの感想と打ち消し線が頻繁に挿入される上に無理に定型や台詞をねじ込んでいるのではっきり行って記事としては読みにくい部類に入る。まぁワシは編集できないし単に時系列に列挙するんじゃなく「人物」「作中の活躍」みたいな個別項目でまとめるぐらいしかアドバイスできんのやけどな、ブヘヘヘヘ -- 名無しさん (2020-08-04 11 17 58) 猿先生ってその気になれば普通に良いキャラ作れるんだよな… -- 名無しさん (2020-09-13 21 58 19) 名前 コメント
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スラヴィアのとある市街から程近いところにある広大なる荒野。 今ここに集うは、死徒の群れ、群れ、群れ。 荒野に今、大いなる戦の死地が地の底より現れ、怪しく瞬く燐光が死地舞台を照らし出す。 死徒の国として知られるこの国でも、陽光射し照らす間は極普通の国であるが、それは所詮偽りの姿でしかない。 この国の真の姿は宵闇の中にこそある。 生命の死後の有り様を掌る神モルテと、それが生み出した始祖にして神祖サミュラが築き上げし、死徒の王国。 この国では毎夜に渡り、高貴にして勇猛なる高階位の死徒「スラヴィア貴族」が、国土の覇権と己が名誉を賭け、自ら或いは自らの力を授けし死徒を用いて、相手側の死徒の破壊を以って競い合う。 「饗宴《デス・ゲーム》」と呼ばれるこの争乱だが、何十年かに一度というほどに稀に、生を謳歌する者が加わることがある。 それは己が力を試すためか、あるいは貴族がもたらす甘美なる死から逃れるための交換条件か、あるいはまた別の何かか。 本日の「饗宴」は、スラヴィア全土に名高く誉れ高き貴族の一人である「髑髏王」ヴェルルギュリウス伯爵と、鳴かず飛ばずの弱卒から急速に頭角を現し中堅貴族に並ぶ勢力を付けた新興貴族であり、国内外に挑発的なことに「未来王」を自称するネーヴィケリス男爵の、自慢の死徒を選りすぐり行われる団体戦。 その戦力個体数差は、髑髏王軍2に対し未来王軍500。 「団体戦」とは即ち「戦力個体数の制限を設けない」という意味であり、髑髏王も観衆もこの個体数差に何ら異を唱えるつもりは無い。 むしろ、髑髏王と髑髏王軍二名のうち一方の由来を知る者からすれば、未来王軍500の中にネーヴィケリス男爵が含まれているが「過小評価」とすら見ている。 だが、数多の聴衆の中にあって唯二人、観衆の多くと評価は似て否なる見解を示している者がいた。 「かの『髑髏王』も、いよいよもって父性とやらに目覚めたのかしら。 どこで拾ってきたかは知らないけれど、あのような者を引き入れようとはね。 よっぽど勝たせたいのね、きっと」 「まったく、アレの趣味にも困ったものね・・・まぁ、粛清の手間が省けるでしょうから、いいのだけれど」 この死徒を治める、妖しくも美しき吸血姫サミュラと、世の理を司りし11の神のひとり、死神モルテ。 彼女らは「饗宴」そのものよりも、その参加者に興味があるようだが、それを窺い知れる者は誰一人として居ない。 死地舞台の中央に、霊魂の輝きにて作り出された注目灯が灯り、「饗宴」の只中にて進行を伝える審議候《ジャッジメント》キエム・デュエトの姿を照らし出す。 「饗宴」は参加者以外の全てが観衆であり審判であるが、キエム候は「饗宴」の全てを取り仕切るために「饗宴」と共に生み出された「最古の貴族」である。 とは言うが、彼の仕事は「饗宴」の最初に集約されると言っても過言ではない。 「さて・・・」 キエム候のひとことで、本日の饗宴について喧々諤々ざわめく観客席が、沈黙に包まれる。 「今宵は、この闘技場《コロセウム》に花が咲き乱れましょう。 それは可憐なる美しき花か、それとも死徒の砕け散る身が作り出す散華か」 キエム候の前口上は、髑髏王の最高傑作にして闘技場に数多の伝説を刻んだ「赤眼のヴォーダン」に及び、観衆の多くが胸躍らせ一部の女性死徒がキエム候の身姿に心を奪われる最中の、髑髏王軍控え室。 「ニャゴさん、今日は一緒にがんばりましょうねっ!」 「あー、そーだねー・・・」 「だめですよぅ! そんなローテンションじゃ負けちゃいますよぅ! 今日はワタシのでっびゅ~戦、なんですよぅ!」 「・・・」 大はしゃぎの女子に対して、ニャゴと呼ばれた猫人男児の面持ちは沈痛なものである。 「およしなさい、ヴィルヘルミナ。 彼とて今日この試合の意味は理解しているはず。 そうだな、ニャゴ=キング殿?」 今回髑髏王軍としてエントリーされているのは、「ヴォーダンの再来」「闘技場に可憐に咲き誇る一輪の花」との前評判を恣にする髑髏王の娘ヴィルヘルミナと、彼女が本日の「饗宴」のため帰宅する道中で拾った、「小ゲート」に飲まれてスラヴィアに来たラ・ムール人ニャゴ=キングの二名。 故あって相棒の黒鎧卿共々ヴィルヘルミナの修行旅に同行するダークエルフの女戦士も数多くの武勲を持つ歴戦の猛者であるが、今回の「饗宴」に関しては髑髏王軍アドバイザーである。 「まぁ無理も無い。 生ある身で『饗宴』に参加した者など、制度上定められてはいるが、永き闘技場の歴史にあってそう多くない。 それに我々と違い彼は肉体が破壊されればそれまでの儚き身。 髑髏王の提示した『帰国の援助』のため『饗宴』に参加する、その気概は買うが」 「大丈夫だ、問題ない。 やってやる・・・やってやるさ」 今日も元気いっぱいに、「そちら側」の創作によく出る可憐な姫君が纏うものに似た艶やかなドレスを翻し、広いとはいえない控え室の中でヴォーダンの豪斧をぶんぶか振り回すヴィルヘルミナ。 それに対し、異界の旅人風の装束に左目を覆う包帯、両腕には爪牙の手甲を装備したニャゴは緊張と沈痛が入り混じる表情のまま。 「なに、ヴィルヘルミナがいかほどのものかは、君も身を以って知っていよう。 それに相手方は所詮、数が多いだけの有象無象の寄せ集めだ。 君は無理をしない程度に寄り付く分だけ排除して、残りはヴィルヘルミナに任せてしまえばいいさ」 ダークエルフの女戦士は、ニャゴの気を楽にしてやるため、そんな言葉をかける。 「ワタシ、今日はいっぱいいっぱい、がんばっちゃいますからね! でびゅ~戦ですから勝ちたいっていうのもありますが、ニャゴさんがおうちに帰れるように、ね!」 ヴィルヘルミナも、ニャゴが想像していた死徒とはまるで違う、生気溢れる表情と言葉でニャゴを元気付ける。 「・・・そうだな。 よろしく頼むよ、ヴィルヘルミナ」 「がってんだ!」 「・・・どこでそんな言葉覚えた?」 「パパが読んでいたご本です! 『向こう側』の、ビンボーハタモトノサンナンボーってヒトの話なんですけど、ワタシには難しくって、ほっとんど読めませんでしたぁ!」 「ヴィルヘルミナ、それは元気良く言うことではない」 「あうぅ・・・怒られちゃいました」 控え室の張り詰めた空気は薄らぎ、いい意味で程よく弛緩したムードに包まれる。 だがそれも、会場入りを誘導する魂魄の入室によって中断させられる。 「さて、そろそろ時間だ。 今更後戻りは出来んしさせぬが、宜しいかな、ニャゴ=キング殿?」 両手で膝を叩いて勢い良く立ち上がり、ニャゴは呼び掛けに応える。 「応ともさ! 『向こう』の言葉に曰く、『当たって砕けろ』だ!」 「砕けたら痛いですよぅ! ワタシは砕けないようにがんばりまぁす!」 「あっぶねぇ! こんなとこでぶんまわすなぁ!」 鋼の如く鍛え上げた鬼人すら一撃の下に両断するヴォーダンの豪斧をぶんぶか振り回すヴィルヘルミナをニャゴは諌め、二人はいざ戦地へと歩を進める。 美死姫の初陣 本日の闘者を出迎える、「饗宴」名物のひとつであるキエム候の闘者紹介が闘技場に響き渡る。 「可憐なるその身は、かの髑髏王渾身の新たな最高傑作! 今宵、ヴォーダン神話が再来の時を迎えるのか! 髑髏王軍、ヴィルヘルミナ!」 豪斧を高らかに掲げ、観衆の歓声に応えつつ戦地入りするヴィルヘルミナ。 「何故に訪れたのか? 何故に饗宴に到ったか? 其れは分かりかねますが・・・皆様、彼は今宵のデザートでは御座いませんのでご注意を! 髑髏王軍、ニャゴ=キング!」 どう評価したらいいものか、ナマが来るとは珍しい、アレ食っていいのか、そんな目線と食欲に晒され、やや所在なさ気なニャゴ。 その二人を待ち構えるは、種族もサイズも様々な498の死徒と、その背後に鎮座する大甲虫、そしてその上に玉座を設え二人を見下す貴族様がひとり。 「相対するは・・・恐れ多くも『未来王』、何故その名を名乗るに到ったかは存じかねますが、その豪胆さを裏付ける理由は今宵明かされるのか! 未来王軍、ネーヴィケリス男爵!」 どう聞いても罵声と怒号と野次しか聞こえてこない。 応援の言葉などひとかけらもない。 続けて未来王軍499の軍勢の紹介にキエム候が移ろうとしたところで、ネーヴィケリス男爵が唐突に叫びだす。 「観衆の皆様方、今宵、髑髏王が転落する瞬間をご覧頂くことになるだろう! この私が国内外よりよりをかけて集めたこの軍勢、いかほどの力を持つか、とくとご覧頂こうではないかァ!」 請われてもいないのに叫びだすネーヴィケリスは、これまた請われてもいないのに勝手に自軍解説を始める。 「ありゃ唯の自慢したがりだな・・・つか、何でオレ、こんなことせなあかんのだっけ・・・?」 どうでもいい自慢話が終わるまでの間、ニャゴは事の経緯を振り返ることにした。 時は、数日ほど遡る。 「それで、反省してるのかしら」 「はい、もうしません・・・」 全くもう、なんでこう昔から・・・と、幼馴染の奇行にボヤきだすメイレ。 その幼馴染、ディエルとしては、多少なりとも自分に非があるだけに黙って正座で反省するより他無い。 ラ・ムール王都マカダキ・ラ・ムール入国直後に見かけた喧嘩を見物しに、ディエルは村の年貢と幼馴染にして村長代理メイレを置き去りに足早に向かってしまった。 仔細は以前の記にてご確認頂きたい。 だが、それは性質の悪いことに「入国審査前」であり、「報告と実際の来都者に整合性が取れない」として年貢とメイレ、それと年貢担当レスミは完全に足止めを食ってしまったのだ。 袖触れ合うも他生の縁と人生初の王都での迷子を経てようやく入国門に帰ってきたディエルを待っていたのは、鬼人すら慄く憤怒の形相のメイレが繰り出す華麗なる村長代理ハイキックであったことは言うまでもなかろう。 レスミはただそれを役人スマイルで見守るのみ。 反省の態度がようやく垣間見えたとしてディエルが開放されたのは、入国門に戻ってきてから1刻後のことであった。 拷問から開放されたディエルは正座を崩して胡坐をかき、メイレに話しかける。 1刻の正座などやんちゃ坊主時代の賜物か慣れたものなので、足が痺れるようなことはない。 「で、だ。 メイレ、お前はこの後レスミさんと一緒に年貢の話があるんだろ?」 「ええ、そうよ。 貴方も一緒に・・・来たところで、役に立たないわね」 「うっせぇ! ・・・だったら、その間にもう一件の用事、済ませてきて良いか?」 「そうすれば二人とも用事が終わればすぐに村に戻れるし、いいんじゃないかしら」 もう一件の用事、ディエルはそのためだけに王都まで来たようなものだ。 その用件とは、現在ラ・ムールの統治を代行する仮王ネネ=アフ・ラ・ムール閣下へ謁見し、村へ大甲虫モドキが襲撃した時の事を再度報告すること、である。 「それじゃあ、えっと・・・これね。 アフ・ネネからの書状と、この前纏めた書簡」 「おう、サンキュー」 「その変な言葉、どうにかならないかしら。 くれぐれも、アフ・ネネの前で粗相の無いように。 頼むわよ」 砂漠の陽光よりも痛々しく突き刺さる視線が痛いのだが、そんなことを言い出そうものならまた殴られるに決まっている。 仕方なくディエルは黙って頷くのみ。 「王城に着いたら、入口の番兵に書状を見せたら通してもらえるよう手配してある、と父様は言ってたわ」 「おう、分かった。 んじゃひとっ走り行ってくるわ」 「くれぐれも、くれぐれも、粗相はしないでね。 貴方は村の代表として謁見するのだから。 いいわね?」 「わーってるっつーの」 「それと・・・また変な騒動に首を突っ込むようなら、置いていくわよ」 「・・・わかった」 メイレの視線も痛ければ、声も冷たい。 逆らったり茶化したら命が幾つあっても足りない事態になりかねない、と察したディエルはこくこく頷き、王城へ向かうことにした。 「まったく、いつまで経ってもそんなだから、放っておけないのよ」 呟くメイレの言葉は、誰の耳にも入ることは無かった。 王城は王都内部にあって一番大きな建築物である。 それだけあって、王城を目に見ながら歩けば、初めて王都に来るものでも王城には迷わず訪れることが出来る。 ディエルも其れに習い、特段迷うことなく王城へ辿り着く。 到着したディエルを見るなり、番兵が話しかけてくる。 「・・・ん? 何だ、また自称カー・マス・デバンか。 今日はオマエで3人目だ。 ほれ、とっとと行って帰ってこい」 左目のせいで盛大に誤解されたが、番兵は素性を確認するでもなくディエルを王城に招き入れる。 王城の番兵としては、この15年ずっと同じ業務を繰り返してきたわけだから、そのへんはもう慣れたものである。 (ま、誤解されちまったが・・・まぁ話をする機会はあんだろ。 どんなことやってんのか見たいし、とりあえず受けてくるか) ディエルは、軽い気持ちで試験の間へ案内する番兵の後を付いて行くのであった。 案の定、試験は失敗にて終わる。 そもそも王の証が収まる左目が開くことが大前提だが、今のディエルの左目はコロナを伴い開眼する意志を示さない限り、いかな方法を以ってしても瞼を開くことが出来ない。 それ故に、第一条件を満たせないため試験は終了、である。 また、ついでに王城が抱えているという宝剣双刀、陽光剣《ソル・エスパダ》と獅子刀《リオ・ムーク》も見せてもらう。 だが結局、所詮派手目な宝玉と塗装で誤魔化しただけの、神代の怪物を切ることなど到底適わない模造刀であることが確認できただけだ。 とはいえ、それを手にして子供のように喜ぶ事だけはしっかり忘れないディエルであった。 いそいそと包帯を巻きなおすディエルだが、そこで本当の用事を思い出す。 「あの・・・すんません」 「何だ、今更用事も無いだろう。 とっとと帰れ偽者」 「いきなりここに通されたんで、話す機会が無かっただけだよ。 オレはそもそもアフ・ネネに呼ばれてここに着たんだ。 それまで嘘だって言うんなら、この手紙持ってって確認してくれよ」 「はいはい、わかったわか・・・少し待ってろ」 封筒に押された、王家の証印に気がついたのだろう。 ディエルを王城の外へ案内していた番兵は、取り急ぎ城の奥に駆け出し、やがて大急ぎで戻ってくる。 「閣下直々にお会いになりたい、とのことだ。さっさと来い」 「へいへーい」 本物が試験に落ちるってどういう状況だろな、などとどうでもいい事を考えて気を紛らわせつつ、ディエルは番兵の後を追う。 王城の中央に位置する、空位の王座を最奥に据えた謁見の間。 重大な政務が行われているわけでもないので、部屋の規模に対し人数があまりに少なく、閑散とした印象すら受ける。 あるいは、それは本来の主が座してないからかもしれない。 「遠路遥々、ようこそ王都へ」 謁見の間におずおずと入ってきたディエルを出迎えたのは、物腰柔らかな女性の声。 現代ラ・ムール統治代行者、ネネ=アフ・ラ・ムールその人である。 「え・・・っと、その」 「畏まらなくて構いませんよ。 気を楽になさって下さい」 「は、はぁ・・・」 代行とはいえ国家元首、一介の村落民が相対して畏まるなというのは無理な話である。 ディエルも例に漏れず、思考だけが高速回転し意識が追いつかない状態である。 正直なところ、ディエルはこのときのことは緊張のあまりろくすっぽ覚えてはいなかった。 書簡を渡すこと、自分は埋まっていたと主張すること、身の証を立てずにやり過ごすことは辛うじて忘れずにいられたが、それすらも本当に出来ていたかどうか定かではない。 「此度は災難で御座いましたね。 貴方も、お友達も、村の皆様も、息災で何よりです」 そんな言葉をかけられたのを、何となく覚えているくらいであった。 その後どうやって王城から出てきたかも良く覚えていない。 一介の村落民が立ち去った後の、謁見の間。 「して、彼の結果は」 「は。 左目は疾患により閉じ左眼球形成の可能性なし、という報告は誤りの無いものに御座いました。 また、模造刀にも年相応の反応を示すのみで御座いました」 「分かりました。 ご苦労様です」 現場近くで埋まっていた彼の少年、原型すら留めぬほどに破壊された大甲虫、左目に生来の損失あり。 これだけの状況が揃い、誤りはなかろうと少なからず思っていたアフ・ネネにとって、この報告はショックであった。 「恐れながら閣下。 既に調査団を全土に派遣し15年、これだけ見つからないのであれば、そろそろ先例に倣い王自らお出ましになるのを待たれるより他無いかと」 「そうですね・・・あと戻っていない調査団は如何程おりますか?」 「は。 国内よりは全て第5次報告を受け取っております。 国外よりの第三次報告が滞っておりますのは、新天地方面のみに御座いますれば」 「分かりました。 現在王都に駐屯している調査団はそのまま待機。 活動中の各団については、現在の状況を取りまとめ至急王都へ帰還するよう伝令を。 報告を基に、各団代表と協議した上で、今後を決めることと致しましょう。 早急に手配の程、宜しくお願いします」 「畏まりまして御座います。 直ちに、仰せのままに」 カー・マス・デバン自らの名乗り上げ以外に役目を終える術を失った調査団は、そんなことは露ほどにも思うことは無く、今日もまだ見ぬ王を探し、当ての無い旅を続けている。 「ふぃぃ~、緊張したぁ~」 深く深く溜息をつき、緊張から開放され緩みきった声を上げるディエルを迎えたのは、まもなく暮れゆく夕焼けの日差しと 「締りの無い顔をしないの。 さ、帰るわよ」 わざわざ出迎えに来たメイレであった。 「何だよ、入国門のあたりで待ってりゃ良かったのに。 どうせ乗ってきた御者に乗って帰るんだから」 「・・・さっき、貴方が自分で何をしてくれたか、理解できていないようね」 「はいすいません一刻も早く入国門へ向かいましょう」 番兵が携える槍よりなお鋭いメイレの視線がディエルに突き刺さる。 二人並んで、王城を背に歩き出す。 「王城ではどんな話をしたの? ご挨拶とか、粗相の無いように出来たんでしょうね?」 「あ、あぁ・・・多分」 「多分、って何よ・・・はぁ、付いていけば良かったかしら」 「仕方ないだろ。 だって王様だぜ?」 「根が不真面目だから、いざという時にきちんと出来ないのよ」 「へいへーい・・・ったく、なんで王都に来てまで説教されなきゃあかんのだ」 「その必要があるだけのことをしたから、ではなくて?」 そんなことを話している二人の前に、大きな影が射す。 ようやく見つけたぞ小僧、そんな言葉を発した影の主は 「げ、さっきの!」 先にディエルが関わった喧騒の大元、鬼人の粗暴者であった。 先程ディエルに気圧された事がどうしても納得できず自棄酒を呷った所でのご対面だ。 「メイレ」 「な、何?」 「アイツが用があるのは俺だけだ。 お前はいいから入国門に行け」 「何言ってるの? そしたら帰れなく」 「偶には俺の言う事を黙って聞け。 嫌な予感がする。 日が落ちて1刻経っても戻ってこなかったら、御車に乗せてもらって一人で村に帰れ」 「貴方、何を言って」 「黙って聞けと言った。 いいから行け。 お前に何かあったら、俺は村長さんにどんな顔で侘びに行けばいい?」 「・・・うん」 生まれてからずっと一緒に村で育ってきたディエルの、今まで一度も見たことの無い「漢」の表情。 メイレはただ、その言葉を信じて、入国門へ向かう。 「待たせたな、デカいの。 また赤っ恥かきに来たのか?」 鬼人の男は、呷りに呷った赤ら顔を更に怒りで赤く染め、手にした得物、ヒトなぞ易々ミンチに出来そうな戦鎚を振り回し、唸りを上げる。 その時、空間が歪むのを、ディエルは感じた。 「ほらな、やっぱり。 嫌な予感がしたんだ」 ディエルと鬼人は、瞬く間に地面、否、突如発生した「小ゲート」に、抵抗する余地も暇も与えられることのないまま、一瞬で呑まれた。 突如感じる浮遊感。 ディエルとしては、降って湧いた浮遊感よりも、落ちる最中にどこからか、試練だ、試練であれば仕方ありますまい、そんな話が聞こえたことの方が、よっぽど気になっていた。 未来王、死都へ 浮遊感は、突如「引っ張られる」感覚に変わる。 流石は猫人の感覚で、何とか姿勢を制御し地に降り立つディエル。 少し離れたところで、恐らくは一緒に呑まれた鬼人だろう、土煙を上げて地面に激突するのが見えた。 「うぉえっぷ・・・何だ、今のは」 「恐れながらカー・ディエル、『小ゲート』に御座いますれば」 「今のがゲートか・・・ウチに来た『向こう側』の人たちも、あんな吐き気を味わって『こっち』に来てんのか」 「いえ、『大ゲート』は10・・・11神の御力にて、次元境界面が極めて安定的な断絶と連結を形成しておりますれば、斯様のようなことは御座いませぬ」 「・・・よくわかんねぇけど、つまり『向こう』と『こっち』を行き来するのは吐き気はないって事なんだな」 「左様に御座いますれば」 見知らぬ土地でも、小ゲートに飲み込まれても、神霊コロナはどこまでも随臣として付いてきていることに、ひとまずディエルは安堵する。 だが、場所は芳しくは無かった。 ディエルや鬼人が墜落したあたりは、今まさに「祭り」の前哨戦の最中であった。 「な、何だぁ!?」 地鳴りのような音を立てて迫り来るものを見れば、ある者は首が無く、ある者は生物としては明らかに歪な造形をしており、ある者は宙に浮ぶ甲冑である。 あんな小娘一匹に我らが討たれるなど有り得るものか、老いたり髑髏王、そんな怒号が迫ってくる。 更に厄介なことに、特段身を隠す場もない平地、多少離れたところで戦鎚振りかざす鬼人がこちらを発見するのにも時間はかからなかった様だ。 「・・・ひょっとしてここは」 「ご推察の通り、忌々しき、唾棄すべき死地、スラヴィアに御座いますれば」 嫌な予感、此処に極まれり。 そう表現するより他ないディエルであった。 そして、先ほどよりの物騒な怒号がディエルの眼前まで迫ってきた。 「・・・む? これは・・・今ここは『饗宴』の前哨戦の最中。 この時間に表に出ているということが」 「どういうことか」 「分かっておろうなァ!」 準備運動とばかりに死徒の小規模集団がディエルに迫り来る、が。 「さてっと・・・流石にこんな所で」 ディエルは左目を隠す包帯を解き 「死ぬわけには」 左目を開き、左腕を振りかぶる。 「行かないよなぁ!」 勇猛なる覇気を乗せた獅子牙《ジンガ・ブレザ》のひと薙ぎ。 有象無象の死徒では、例え群れを成そうとも耐えられるはずも無かった。 と、ここまでは良かった。 ここはスラヴィア、死徒の国。 保有兵力という意味では他国の追随を許さないだけあり、一握りの集団を潰した程度で戦況が変わるはずも無い。 「どんだけいるんだぁ!?」 先ほどの群れの何倍、何十倍という規模の集団が、先遣隊の全滅を感知し、目下の危険要素を排除するために襲ってきたのである。 迫り来るリビングメイルを解体し、遅い来るキメイラゾンビを再度分解し、乗っ取りを狙う悪霊魂魄を祓い、アンデッドヒューマンを叩きのめす。 「あっちもあっちで大変そうだが、ヨッパライにかける温情も義理もなし、放置でいいだろ」 暴力に任せて弱きを虐げ暴利を貪る者に明日を生きる資格なし、確かカー・ハグレッキもそんなようなことを言っていた気がするので問題ないだろう。 ディエルはそう結論付けて、身を隠せそうな場を探しつつ、死徒の群れのド真ん中を突っ切る。 やがて木立を見つけ、持ち前の俊敏さと椰子の木登りで鍛えた木登りテクでするすると大木に登り、太枝に腰掛け幹に背を預け一息吐く。 「・・・『小ゲート』に放り込まれて気がついたらスラヴィア、夜ド真ん中、眠ぃが寝たら確実に次起きたら俺ゾンビ、頼れるのは生身と獅子牙だけ。 これは主ラーが俺にラ・ムール史上初のゾンビ王になれっつってんのか」 「恐れながら、これも試練に御座いますれば」 「まさかと思うが、試練って言えば何でも許されると思ってないよな」 「滅相も御座いません。 ですが、今ここで憎きスラヴィア貴族共やモルテを漏らさず討ち果たし、スラヴィア全土よりこの忌々しい腐臭を振り払えば、主ラーもお喜びになるかと」 「コロナちゃん、無茶極まりない事をさらっとゴリ押そうとするのは止めようね」 気楽に会話するその足元では、死徒の群れが相変わらず危険因子を躍起になって探し回っている。 「このまま朝までやり過ごすしかないか・・・」 「モルテを討てばそれにて終いで御座います」 「オマエ一人で行って来い」 「何故にで御座いますか!?」 コロナにアンチスラヴィアスピリッツを植え付けた王をぶん殴ってやりたい気分満点のディエル。 そんなひと時の安息は、豪打の音声と倒れ行く樹木の軋みに遮られる。 「うぉあ、っとと!」 倒れゆく木から飛び降りたディエルは、「見つけたぞぉ!」と戦鎚を振り回して迫る鬼人が、 「うおりゃぁぁぁあああぁぁぁ!」 という場違いに可愛らしい怒号と共に、綺麗に頭の頂点から股間まで一直線に両断される、その一部始終を目撃した。 (今のが、前にウチに泊まりに来てたヒトが言ってた『マッコウカラタケワリ』ってやつか!!) 「さて次はアナタですね! ぐむむ・・・猫耳かぁいい・・・違う違う!」 こちらのナリを見て思うところがあるようだが、頭を振って思考をかき消しているようだ。 しかし、可愛らしいナリをして、鋼の塊のような斧を振り回し、鬼人を一刀両断した相手だ、と認識済みのディエルは、少女の一挙手一投足から目を離さない。 隙を見せれば鋼の塊をその身に叩きつけられ、形が残ればいいほうだ。 「さぁさぁ、いざじんじょ~に、しょぉ~ぶ!」 とても二本足から繰り出しているとは思えないほどの爆発的な推力による突進と、周囲の大木すらまるで意に介さず振り回される豪斧。 (あんなの受止めるなんて無理だろ!) 後にディエルは、「猫人でなかったら、この身に力無ければ間違いなく死んでいただろう」とこの時の事をを振り返ったという。 抗うことなど不可能な暴力の暴風を全速力で避け続けるディエル。 だが、ディエルは王の証持つ身とはいえ結局はヒト、活動し続けるにも限界がある。 一方の暴風の目であるところの死徒の少女は、陽光射さぬ闇にある限りいつだって全力全開。 日が昇る前にまだ刻を要する今、この差は決定的である。 意を決したディエルが左目の力を解放しようとした、その時 「お止めなさい、ヴィルヘルミナ。 知らずにスラヴィアを訪れただけのお客人に、してよい出迎えではありませんよ」 「はわわ!? で、でも『力の残滓を持つ者は残らず狩って遺恨を絶て』って!」 「貴女には、生ある身の彼が、討ち果たした貴族の力で動いているように見えるのですか?」 「じー・・・はぅあ!?」 どうやら指摘を受けた今になってようやく、ディエルがナマモノであることに気付いたらしい。 少女が先ほどまでの勢いそのままにぺこぺこと謝罪する。 「とりあえず、状況を説明してもらえると助かるのですが」 何となくだが、目の前の少女より、止めに入った長身痩躯を黒色の鎧で包んだ女性に事の仔細を確認した方が良かろうと判断したディエルは、女性に確認を求める。 とりあえず分かったこと3つ。 偶然ながらスラヴィア名物「饗宴」の前哨戦の真っ只中に落ちてしまったこと。 ヴィルヘルミナと呼ばれた少女が「単身勝負」であることを逆手に取り敵勢の裏をかき首魁を狙い討った後、ルールに則り敵勢の残党狩りに入ったこと。 残党狩りの最中に遭遇したため相見えることになってしまったこと。 つまるところ、ただの「誤解」だったわけだ。 誤解でカラタケワリの憂き目に会った鬼人は、あのまま放置しておけば腐敗するなり貴族が拾うなりするだろう、とのことなので放置しておくことにした。 無事和解を果たした三名は、今回の戦果を報告する、ということでヴィルヘルミナの家に向かうことになったのであった。 「・・・つか、人の耳もふもふして遊ぶな」 「えぇ~、いいじゃないですかぁ! もふもふで気持ちいいですよぉ! もふもふ♪ もふもふ♪」 「そっちは気持ちよくても、こっちは鬱陶しいんじゃぁ!」 死徒であるところのヴィルヘルミナとダークエルフの女戦士(今更名に意味などない、として語らなかった)は、モルテの恩寵厚い宵闇でこそ動けるが、逆にラーの力が漲る日中は活動することが基本的に適わない。 逆にごく一般的なナマモノであり夜は寝なければ活動に支障が出るディエルとは生活サイクルが真逆ではあるが、ディエルが夜更かししてヴィルヘルミナに付き合ってやってることもあり、まぁなんとかうまく道中を過ごしていた。 「そういえば、猫人さんは、お名前なんて言うんですか?」 急に問われ、ディエルは返答に窮する。 もし本名を名乗ってしまうと、今後の動向次第ではラ・ムールとスラヴィアとの間での国交問題となってしまう。 それは避けねばなるまいと思案するディエルは、昔家に泊まったとある旅人の話を思い出した。 「・・・ニャゴ=キング。 ニャゴと呼んでくれ」 シッポノハエタメタルニンジャ、という良く分からない生き物を探しに来たという旅人の話に出てくる、猫人に良く似た巨人の名前らしい。 彼は無事に捜し求めていた生き物を見つけられたのだろうか。 そんなことを考えながら、ディエルもといニャゴは美しき死徒二名と、目的地であるヴィルヘルミナの生家を目指すのであった。 特段問題無く辿り着いたヴィルヘルミナの生家に「で、っけぇなぁ・・・」と素直な感想を漏らすニャゴ。 さもありなん、ヴィルヘルミナは、スラヴィア全土に知らぬ者など居ない、髑髏王ヴェルルギュリウス伯爵のご令嬢である。 戦果の報告に異国の客人を伴い帰宅する旨を事前に聞き及んでいた伯爵は、客人の持成しを済ませ娘の帰宅を待っていた。 「さて・・・ニャゴ=キング君、と言ったかね」 「え、ええ・・・」 正直、生粋のラ・ムールっ子であるニャゴは、この多種多様にして既に人種の数を超える種数を抱えるスラヴィアの、特に夜の住人には圧倒されっぱなしである。 「ニャゴ君。 君が望むなら、私が国外へ出る手筈の用意をして差し上げよう」 「マジでか!?」 なんと太っ腹な、という一方で、何か腹積もりがあるに違いないと確信し二の句を待つニャゴ。 それを察してか、伯爵は愉快そうに表情を変え、「条件」を突きつける。 「実はな、我が娘ヴィルヘルミナが、先に君に迷惑を掛けてしまった折の前哨戦を以って、『饗宴』本戦への初の出場権を得るに至ったのだが、な・・・」 「それは、おめでとう御座います」 外様のニャゴには「饗宴」の仕組みは良く分からないが、スラヴィアの夜の民としては栄誉あることなのだということは、ヴィルヘルミナの喜色満面の表情から良く分かっている。 「ああ、ありがとう。 じゃが、ヴィルヘルミナはな、その、なんだ・・・アレ、でな」 「アレ、ですか」 そう、ヴィルヘルミナは、細身の体に恐るべき膂力を秘めた凄まじき怪物ではあるのだが、その一方、いわゆるひとつのおミソな部分については残念なことになってしまったようで、親も認めるアーパー娘なのであった。 「そうじゃ、アレじゃ! で、だ。 ニャゴ君は、まだ低級とはいえ貴族の端くれを一騎討ちで制したアレと相対し生き延びたと聞く。 そこで、だ」 「皆まで聞かなくとも、そこまで聞けば十分ッス。 娘のために一緒に『饗宴』に出ろ、ってことでしょう?」 「おお! そこまでしてくれるのかね! 私はせいぜい娘のために『饗宴』前の訓練を手伝ってはくれれば、と思っていたのだが・・・恩に着るぞ、ニャゴ君!」 (墓穴掘った!?) 頭を抱えたところでもう遅い。 その晩の内に次回『饗宴』本戦に関する通達が広まり、舞台も人も、全てが滞りなく手配されることとなった。 せいぜいニャゴに出来たのは、衣装と武具の手配依頼と、「饗宴」に参加する上での簡単な確認事項の習得くらいなものであった。 「つまりは自爆、ってことなんだよなぁ・・・」 ニャゴもといディエルは、事の顛末を振り返って、荒っぽい方向に考えすぎたことを今更改めて反省する。 「まぁ良いでは御座いませんか。 ここに集いし死徒どもを皆殺しに致しましょうぞ!」 当初は「こんな腐臭がする空気を吸っては私まで腐ってしまいますれば」などと言って口を利こうともしなかったコロナだが、どうやら開き直って「カー・ディエルを焚き付けて悲願のスラヴィア打倒」へ方向転換を図ったらしい。 無論ディエルの態度は一貫してスルーだが。 「どうしたんですか、ニャゴさん? だいじょうぶですよ、二人でがんばれば、あんなのちょちょいのちょいです!」 「ああ、そうだな。 とっとと終わらせてしまおう」 無駄に長く続くかと思われたネーヴィケリウスの演説は、499分の1を終えた時点で、死神モルテより「もういい」との鶴の一声を賜り打ち切られ、あとは死合の合図を待つばかり。 闘技場に設えられた時計が深夜の刻入りを示し、 「さぁ幕は今まさに開かれた! 今宵舞台に集いし演者達よ! 美しく! 誇らしく! 雄々しく! 舞い踊るがいい!」 キエム候のお決まりの開始の口上と会場の歓声の中、今宵の「饗宴」が、幕を開ける。 死合は、あまりにも一方的な展開であった。 ヴィルヘルミナがヴォーダンの豪斧をひと振りすれば、10や15の死徒が一斉に砕け散る。 ニャゴも負けず劣らず、前に出て手近な死徒を爪牙に隠した獅子牙で砕き、ヴィルヘルミナの討ち漏らしを手早く始末する。 「なんなんだ! なんなんだ! この私が選りすぐった精鋭が、なぜこうも容易く!」 精鋭などと嘯くが、所詮は三流貴族が金と非合法手段で寄せ集めた烏合の衆。 超一流の貴族が心血を注ぎ作り上げた最高傑作(と死徒にとって一番苦手な存在の代行者)とは、量で圧倒することも適わないほど遥かに質が違う。 「むぅ~、なんだか物足りないです! ねぇねぇニャゴさん、アレ、殺っちゃっていいんですよね?」 嬉々としてニャゴに尋ねるヴィルヘルミナが指差すのは、ネーヴィケリウスの玉座がてっぺんに据えてあるデッド・メガクロウラー。 幕が開いて15分足らず。 既に、498の有象無象は、豪斧の暴風と爪牙の旋風が奏でる輪舞曲の中で、活動不能レベルで破壊済みである。 「舐めるなよ小娘がぁぁぁぁ!」 露骨に怒りを露にするネーヴィケリウスは、デッド・メガクロウラーに突撃指示を出す。 爆音を上げて動き出すデッド・メガクロウラーだが、単身での打倒経験済みの二人にとっては何ら脅威ですらない。 「ちょいちょい、ヴィルヘルミナ、耳を貸せ」 「はいどうぞ!」 「ちっげぇよ!」 手招きして顔を寄せるよう指示するニャゴに、文字通り「耳を貸す」ため耳を引きちぎり手渡そうとするヴィルヘルミナ。 コントとしか思えない光景に、観衆からどっと笑いが起こる。 「にゃごにゃごにゃご・・・」 「ふむふむふむ・・・わっかりましたぁ!」 デッド・メガクロウラーの猛攻をのらりくらりと避けつつ、どうにかこうにかディエルは「耳を貸す」の意味をヴィルヘルミナに理解させて、作戦を共有する。 「さぁ~て、いっくぞぉ~~!」 豪斧を水平に持ち直したヴィルヘルミナは、肩車の要領でニャゴを担ぎ、膂力任せのぶん回しを始め、迫り来るデッド・メガクロウラーに突き進む。 「ふん、まさかそんなことで私の最高傑作が・・・何だとぉぉぉ!?」 唸りを上げ旋回する豪斧がデッド・メガクロウラーの脚部を前方より次々と破壊し、巨躯は前のめりにくず折れる。 「よし、第二段階!」 「がってんだ!」 猫人ならではのバランス感覚で、移動は止めながらもなおも旋回を続けるヴィルヘルミナの両腕と豪斧の柄を伝い、ニャゴは豪斧の刃の上に立つ。 「第三段階!」 「たーまやー!」 ヴィルヘルミナは豪斧の向きをニャゴごと水平から垂直やや傾き気味に傾け、豪快に蓄えた遠心力を運動エネルギーに変える、いわゆるひとつのフルスイングの要領でニャゴを天高く打ち出す。 「やりましたぁ! これがパパのご本に書いてあった『ぎゃくてんさよならまんるいほぉむらん』ですね!」 「概ね合ってるが間違ってる気がしないでもないぞぉぉぉ!」 天高く舞いながらもツッコむ事だけは忘れないニャゴの雄姿に、観客席はもはや爆笑の坩堝だ。 「は、はは・・・何をするかと思えば、唯の大道げ」 「・・・よっと。 はろー、ご機嫌如何かな、『未来王』殿」 この状況でもまだ尚玉座にしがみ付くネーヴィケリウスの眼前に、ニャゴが降り立つ。 「いやぁちょっと、貴方とお話したいことがありましてね」 ニャゴの目的は、デッド・メガクロウラーを行動不能にしつつ、この腐れ貴族と相対することにあった。 「さて・・・なぁアンタ、ドクロのおっさんから聞いたんだけどよ。 このデカブツでやりたい放題やってるんだってな?」 「だから何だと言うんだ! 金品で屍骸を集めることの何が悪い! 死んだも同然のヤツを回収して何が悪い! 貴様のようなナマモノに、スラヴィアの価値観など分からぬわ!」 「ああ、わかんねぇな」 僅かに数日だが、縁あって「本物」のスラヴィア貴族と寝食を共にした身。 外様のニャゴでも、貴族崩れと貴族の「品格」の差というもの位は簡単に見分けは付く。 「テメェの価値観がオレにわかんねぇように、オレの価値観もテメェにゃわかんねぇ。 そうだな?」 「な、何を言い出すかと思えば! そんなことは当然ではないか! 何故この『未来王』がナマモノの理解など」 「奇遇だねぇ」 ニャゴは左手の爪をネーヴィケリウスの喉元に突きつけつつ 「実はさ、オレも」 右手で左目を覆う包帯を手繰り 「未来王《カー・マス・デバン》っていうんだ」 出来た隙間から、左目で腐れ貴族を一瞥してやった。 直後、これで最後とばかりに発生した爆砕音と共に、デッド・メガクロウラーの胴体部が両断粉砕され、 「ばっかやろぉぉぉ! オレまで殺る気かぁぁぁぁぁ!?」 「あわわわわぁ!? ごめんなさぁぁぁぁい!!」 大甲虫の粉々に砕け散った甲殻と共に闘技場の宙を舞いながら、それでもなおツッコむニャゴのソウルフルな姿に、闘技場は過去最高の爆笑の渦に包まれたという。 本来髑髏王が望んでいたものとは大分違う結末ではあるが、それでもヴィルヘルミナが歴史的勝利を以ってデビュー戦を終えた、という事実は変わらない。 大爆笑と興奮に包まれた「饗宴」から一夜明け、ネーヴィケリウス天に召されるという報が大事になる前に、ニャゴもといディエルは伯爵が手配してくれていた御車に朝一番に乗り込み、スラヴィアを離れることにした。 なお、今回の勝利に際し褒章が出るらしいのだが、それについては所詮自分は外様だからと謹んで辞退し、利権を全てヴィルヘルミナに移譲しておいた。 さすがにスラヴィア土産は持って帰れない。 「ふぅ・・・これでようやく、一息吐けるか。 さて、ここからどうやって村に帰ろうかねぇ」 「何はさておき、取り急ぎこの腐臭渦巻く地よりお出になるのが先決かと」 「随分な言い草じゃないか。 え? たかが神霊の分際でさ」 「・・・な!?」 自分以外乗合が居ないはずの御車、しかもディエルとコロナの隣に、妖艶しかして絶大な神力を放つ女性が佇む。 「はじめましてかな、今代ラ・ムール王。 私の事は、名乗らずとも分かるわね?」 喉が詰まる。 息が詰まる。 本物の神力とはこれほどか、ディエルは戦慄を禁じえない。 「肩肘張らないでおくれよ。 ほんの土産代わりにイイコトしてやろうと思って、ね」 そう言った途端、ディエルの座席に穴が開き、 「またかよぉぉぉぉぉぉ!?」 残響音と共に、叫びは徐々にか細くなっていった。 『さて、これでよかったのかね。 アレ、アンタの代理じゃないのかい?』 『試練だ』 『はっはっは! アンタ昔っからソレしか言わないわねぇ!』 神の意向を余さず理解出来るヒトなど、居るはずもない。 【まえのおはなし】 【おまとめはこちら】 【つづく】 説明不足で誤解を与えてしまって申し訳ありません。コメントにて補足を -- (書いた人) 2011-08-21 23 03 10 「生ある者を殺めたことに対するペナルティ」について:今作では名も無き鬼人がヴィルヘルミナの手で唐竹割りになっておりますが、これについてはお咎めなしとしています。本稿掲載時点でマーダー・ペナルティについて言及している2作品と異なり、ディエルと鬼人はスラヴィア領民ではなく、理由はどうあれ饗宴の時間に外出しており、その上で前哨戦とは言え饗宴を実力行使にて妨害しているため、競技者により円滑な進行を護るため実力を以って排除する、という名目があるためです。 -- (書いた人) 2011-08-21 23 10 02 なお、ディエルは事後認証ではありますが「競技参加者 ニャゴ=キング」として登録されたため、饗宴内の極当然な戦闘行為と看做され、こちらもお咎めなし。都合の良過ぎる話で申し訳ないのですが、そういうことでお願いします。 -- (書いた人) 2011-08-21 23 12 43 読み進んで行くとキャラや場面が変わっていくので二作三作くらいを続けて読んだ様な濃さでした。夜から出ることはできなくても他国から来た者には大らかなスラヴィアの人達にえもいわれぬ温かさを感じました。ディルは一生試練に見舞われそうですね -- (ROM) 2013-03-10 12 27 49 確かにこれ一本に二話入っているようなというか入っているボリューム。色々登場する賑やかさだけどパパギュリウスの一挙一動が微笑ましい面白かった -- (名無しさん) 2015-02-04 00 19 04 名前 コメント すべてのコメントを見る -
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ある何の変哲も無い夜 後編 『変……身…』 まるでその言葉自体に言霊が宿っているかのように、罅割れた隙間から零れ出たシンの言葉は不思議とその場に響いた。 バックルに嵌め込まれたベルトから血管のような光が奔り、シンの神経に絡みつくように覆いつくす。 手に手にそれぞれシャベルや斧を持った男達が飛び掛るが、発光する光に弾かれていく。 まるで篝火に群がっていく虫のように、弾かれた男達の身体が燃え、炭化していく。 発光現象はほんの数秒であり、その中から出てきたのは異形の存在であった。 鉛色のボディースーツにコートのような衣装、頭部を覆うのは兜のような金属質であった。 何よりも目を引くのはその顔だ。 無貌の仮面 鉛色のそれは、瞳に類する部位も、口元に類するものも存在していなかった。 それが何よりもシンを異形のものとして見る者を震撼させる。 もっとも、この場にいる者の中にそのような正常な判断を下せる者が果たしているのかという疑問が残るが。 先ほどシンに眉間を打ち抜かれ顔中から黒い触手を生やした男が小刻みに身体を震わせると、身体中から皮膚を食い破り黒い羽が生える。 それを合図とするように、その場にいた者達が次々と身体を振動させると、身体中から同じく烏のような羽を生やす。 狭い宿の部屋が、皮膚を食い破る水音と、トマトを落としたような不快な音で埋め尽くされる。 木造の床や壁には赤黒いシミがペンキをぶちまけた様に所々に広がっていく。 正常な感覚を持つ者であれば或いは嘔吐さえしかねない地獄絵図のような光景であった。 シンの表情はその仮面からは全く伺うことが出来ない。 異形の化け物と化したモノ達が、彼らにだけ伝わる合図と共にその触手を鞭のようにしならせながらシンに向かっていく。 次々と繰り出される触手は、ベッド、タンス、椅子といった家具を紙粘土の細工か何かのように粉砕していくが、 狭い室内をシンは器用に身を翻しながらかわしていくと、窓ガラスを蹴破り空へと飛び出す。 眼下に目をやると、宿の客達と同様に異形と化したモノ達で、一面が覆い尽くされていた。 おそらく町中の人間が最早人間としての姿を保っていないであろうと大方の目途を付けながら落下していくシンの心は依然として揺るぎ等無く、 ただ、黙々と腰に下げた円盤を手にする。 グリップを握ると同時に、円盤からは幾つモノ突起が出現する。 それは、一つ一つが銃口に似ていた。 視界に、先ほどの宿屋の主らしきモノが映ったがシンは躊躇する事無く言葉を口にする。 『ドラグーン』 主の声に応えるように、円盤から生えた十もの銃口から一斉に光の矢が照射され、眼下にいるモノ達を焼き払っていく。 空中で器用に回転しながら、足場を作るべく、真下の化け物達を焼き払い、炭化した躯に着地する。 枯れ木を踏み砕いた感触に頓着せず、シンは回りを見渡す。 「これはまた……随分な数だな…」 『マスター…このフォームですと、些か持久戦には不利かと進言いたします』 「お前に言われるまでもない……」 シンは周囲をドラグーンで焼き払うと、素早くバックルにある四つのボタンの一つに指を掛ける。 黒・赤・青・金の四つのボタンの内、シンは金色のボタンを押す。 発光と共に、ジャケットの細部と、背中に二門の細長いライフルを備え付けた金色の姿に変わる。 異形のモノ達が次々と触手を伸ばしていくのを、今度は避けようともせず、すぐさまシンは無数の羽の触手によって埋め尽くされる。 しかし、触手は触れた傍から不可解な音を立てて焼け爛れていく。 肉を熱した鉄板で焼くような音と共に、依然変わらぬ様子のシンが悠々と歩みを始める。 腰に付けた筒を手にすると、その先から刀のような光の刃が現れる。 シンは、軽く肩を回すと、一歩踏み出す。 同時に、引き絞られた矢のような踏み込みと共に、一振りで纏めて五、六匹の化け物たちが光の刃で断ち切られる。 それに化け者達は怯む事も無くシンに踊りかかるが、怯みも躊躇も無いのはシンもまた同様であった。 ◇ 「これで片付いたか……」 バックルを外すと共に、金色の姿から、シンは元の姿に戻り、傍らに少女が現れる。 「マスターから著しい消耗が見受けられます。汚染の少ない場所にて休息されることを進言致します」 「ああ…確かに休みたいよ」 フウッと大きく息を吐いたシンの回りには、一面腐臭と、焼け爛れた断面から煙を上げる屍が転がっていた。 最早、服装で辛うじて生前男であったか女であったのかがわかる程度だ。 一体何匹倒したのか、数えるのも馬鹿馬鹿しいものであったが、シンは肩をゴキゴキと鳴らし、大きく伸びをする。 ここ最近ではこれほどの数を相手にした事は無かったな、とシンは白み始めた空を見上げながら思う。 その時、シンの視界に微かな物音と共に、人影が現れる。 「誰だッ!」 懐から銃を抜き放ちながら、人影に向き直る。 「ヒッ…」 銃口を向けられ、怯えたように短い悲鳴を上げたのは、シンに外国の話をねだったあの少女だった。 少女は怯えながら、おそるおそる口を開く。 「そ、その…私…怖くて……それで、隠れていて……」 自分も化け物の仲間と思われているのだろうと、幼心に察したかのように、少女は足を震わせながら口を開く。 涙を浮かべながら、痞え痞えに声をあげる少女に、銃口を向けたまま、シンは傍らに寄り添ったデスティニーに小声で話しかける。 「ティニー……奴らに擬態する能力は?」 「今のところは確認されてません」 「そうか……」 今のところ、アサキムの分身、使い魔とも言える鴉達は群れを成し、恐怖心どころか感情らしい感情を持たない。 そして、シンに対してだけであろうか、ただひたすらに好戦的であるというのがデスティニーの中のデータであった。 少女は、自分に掛けられてた疑いが晴れた事に、表情を明るくし、シンに駆け寄る。 パンッ もんどりうって倒れたのは少女であった。 その眉間には風穴があり、どろりとした脳漿が零れ出る。 今尚、硝煙を上げたままの銃を下ろしながら、シンは無感情な瞳をもって少女の死体を見下ろす。 「じゃあ、こいつが最初のケースってわけだ」 「そうですね」 デスティニーもまた、一切驚きの表情も浮かべずに少女を見下ろす。 それは、主の判断が正しく、自分のデータにない事にシンが気付いていたからというわけではなかった。 それは彼女にとっては瑣末な事である。 言ってしまえば、シンが勘違いしていただけで、この少女は本当にただのいたいけな人間の少女であっても構わなかった。 シンが誤って無辜の少女を撃ち殺していようがどうでも良かった。 シンの下した判断である、それがデスティニーの全てであり、白か黒かという問いかけでさえ下らない問いであった。 ◇ 「酷い……酷いよ……」 無感情な幼い声が倒れた少女の口から漏れ出る。 シンもデスティニーもそれを黙って見遣る。 少女はゆっくりと立ち上がると、かぱりと小さな口を開く。 シンには聞き取れないが、喉の震えから少女「らしきモノ」が何かを叫んでいるのがわかった。 そして、その声に呼応するように、周囲から何かを引き摺るような音が次々と響く。 それはシンが先ほど片付けた化け物達の死体であった。 「オイオイ……マジかよ」 言葉とは裏腹に、シンは平坦な声で、しかしどこかうんざりしたように声をあげる。 宿からも、その音は響いてくる。 下半身が無くなり、這って出てくるもの、逆に上半身が無く下半身だけで歩いてくるものと様々な有り様に、シンは微かに眉を顰める。 デスティニーは、僅かに瞳を細め、少女と、再び動き出したもの達を見比べる。 「マスター…」 「何だ」 「どうやら、今までとは異なり……一体の母体……いわば女王が統括するというシステムに変わっているようです」 「なるほど……それを殺さない限り甦ってくるっていうオチか」 「確証はございませんが」 そう囁き合うシンとデスティニーの背後に音も無く化け物が忍び寄る。 振り下ろされた触手を、シンとデスティニーは横跳びにかわすと、すぐさまシンはデスティニーに視線を向ける。 「なら話は早い…」 「ハイ」 主の意を汲んだデスティニーは即座に粒子化し、自身に追い討ちのように振り下ろされた触手が触れる前にシンの身体を包み込む。 バックルにデッキを嵌め込むと、赤いボタンに手を掛ける。 赤い光と共に、先ほどとは異なり、シンプルなフォルムの赤い姿に変わる。 横薙ぎに払われた触手をシンは素早く蹴り払うと、触手はシンの脚部に出現した光の刃によって切り裂かれる。 「咄嗟とはいえ……嫌なフォームになっちまったな…」 赤い戦士に変貌したシンは、無貌の仮面の下から心底嫌そうな声をあげる。 そう独りごちるシンに、再度化け者達は次々とシンに襲い掛かる。 シンは赤銅色の脚部、手甲からそれぞれ紅い刃を抜き放ち、舞踏を舞うように切り裂いていく。 先程までのやり取りと同様に、一方的な展開が続く。 しかし、確実に異なる点があった。 「クッ…」 数十度目のやり取りの後に、赤銅の戦士がよろめく。 そう、確実に異なるのはシン自身の体力には限界があるという点であった。 そして、それを従者であり、奴隷であり、兵士であり、傀儡達に自らを守らせながら、女王である少女は見て取った。 初めて、少女の表情に変化が現れる。 それは紛れもない『笑み』であった。 しかし、シンはその笑みの意味するところに、ふとした違和感を覚えた。 それは、一見すると、優越に浸った勝者の笑みのようであったが、シンの中の長き時を修羅場の中で過ごしてきた嗅覚が何かを告げていた。 その違和感が何かを考えながら、更に幾度目かの攻防の後に遂にその時は来た。 「ハッ…ハァッ…」 荒い息を立てながら、遂にシンは膝を付く。 『マスターッ』 珍しく、狼狽したデスティニーの声がバックルから漏れるのを、女王は聞き逃さなかった。 その幼い外見には不釣合いな笑みが浮かぶ。 シンは仮面の下から、その笑みをジッと睨み付ける。 女王が、喉を震わせると、突如としてシンの眼前で、身体が欠損した無数の異形のモノ達が集まっていく。 その光景は、互いを補い合うようであり、もしくは貪り食うようでもある。 そうして異形のゲテモノ達は不愉快な水音を立てて纏わり合い、肥大化していく。 町中の人間の集合体とでも言うべき巨体は優に高層ビルの如くである。 少女はその巨人の肩にちょこんと乗りながら、少女の人差し指程度の大きさのシンを見下ろす。 「やっぱりね……」 シンは仮面の下で呟く。 ◇ 女王は、抑え切れない感情に身を委ねていた。 彼女の創造主から植え付けられたこの『感情』というもののおかげで、自分は同属の中から一つ抜きん出た上位固体となる事が出来た。 感情を持つが故に、心理を読み取り、また同属が寄り代とした人間達の脳に電気信号を送る事で意のままに操る事が出来る。 だが、一方でその感情故に、理解の出来ない衝動を抱いた。 眼下にいる、主によって殺す事を命じられた対象の戦力が自身の演算能力を上回りつつある事への衝動。 その衝動が理解出来ない内にようやく対象の戦力に翳りが見えたことに、彼女は抑えきれない顔面の筋肉の動きを覚えた。 それが『笑み』と呼ばれる筋肉の運動だとは知らなかった。 そんな彼女の眼下で、赤銅の戦士は膝を付いたまま、ベルトのバックルに手を掛けていた。 ◇ 「予想通り、一気にケリを付けに来たわけだ……そりゃあそうだよな、さっさと終わらせたいよな……しんどい事は。くどいくらい繰り返してりゃあうんざりしてくるよな。終わってくれって、焦るよな………終わりが見えたらさ……笑うよな」 語りかけるように、一人シンは呟く。 ゆっくりと指をバックルの青いボタンに掛け、力強く押し込む。 「ようやく終わるって安心するもんなぁッ!!」 発光現象と共に現れたのは、血生臭さの漂っていた他の形態とは異なった清浄な空気を纏った青。 海のように深く、空のように澄み切った青い戦士。 そして、その手には、シンの身長程もあるという強大であり、巨大な鉄槌のような兵器が鎮座していた。 それを、軽々と両手で構えると、鉄槌の側面が開き、巨大な砲門と化す。 青白い光が辺りの空間すら歪め、急速に集束を始める。 「ゲテモノには過ぎた見世物だ!!感謝して死ね!!」 女王は、自身の眼下で起きている現象を理解出来ぬままに、巨大な僕に命ずる。 しかし、振り下ろされた大木のような触手も、巨体も、町の家々も、そして女王も、全てを光が呑み込んでいく。 自身が蒸発していく音を聞き取りながら、女王は最後にようやく自分の中の感情に合致した名前を検索し終える。 「コレが……キョウフ……」 ◇ 網膜を焼き尽くすような光の奔流の後には、最早何も残っていなかった。 シンは鉄槌を傍らに置くと、バックルを外す。 傍らに現れた少女に目もくれることなく、静かに、深く溜息を吐く。 それは、最後の最後に、あのような汚らわしいゲテモノ達に『彼女』の力を使った事についての自分自身への自己嫌悪からの溜息であった。 デスティニーは、何も言わずに、静かに佇むシンの横顔を見つめる。 暫らく、瞑目していたシンは、何かを振り切るように顔を上げる。 「デスティニー……」 「ハイ」 「使えるベッドを見つけたら少し寝るぞ……」 「かしこまりました」 残骸ばかりが目立つ街並みを見渡しながら、シンはもう一度大きく溜息を吐いた。 ~FIN~ 前へ 次へ 一覧へ
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夜が明けた。 崩れ落ちた校舎。 未だ炎上する倉庫群。 各所に転がるメサイアの無惨な骸。 目の前に広がる惨状を前に、皆がため息をつく暇さえ与えられなかった。 「都築、宗像、メサイアのセンサーで生存者を捜せ!」 残骸の中に横転していた演習用の野戦指揮車から引っ張り出した通信装置を手に指示を飛ばすのは長野教官だ。 その横では、美奈代達が、その野戦指揮車を、高機動車に結びつけたワイヤーで引っ張って元に戻そうと悪戦苦闘していた。 全員、顔や制服はすすで汚れ、あの事件以降、水の一滴も飲んでいない。 「敵の再襲来は!?」 「あったら終わりだ。考えるな!」 「“雛鎧(すうがい)”はどうしたんです!」 「再組み立てをやっている人手がない!大体、トレーナー騎で戦闘が出来るわけないだろうが!つべこべ言わずにさっさと生存者を捜せっ!」 怒鳴るだけ怒鳴ると、長野大尉は通信を切った。 あちこちに指示を出し続けていたので、張り付くような喉の痛みに、少しだけ顔をしかめた。 強い日差しが焼けたアスファルトに照り返す。 ―――せめて水がほしいな。 長野大尉はそう思うが、戦闘でライフラインは完全に破壊されている。 おかげで飲み水どころか、負傷兵の医療用の水も不足している有様ではどうしようもない。 「―――ご苦労。引き続き、生存者の発見・保護に全力をあげてくれ」 警備隊の生き残りから報告を受けていた二宮が、長野に振り返った。 「さっき、岩見教官の上半身が見つかった。これで校長以下、昨晩、施設内にいた教職員の1割が―――」 二宮は言い淀んだ後、 「“戦死”した」 そう、言った。 「―――生徒達は?」 長野は、近くに転がっていた燃えさしを拾うと、口にくわえたタバコに火を付けた。 煙の向こうに転がる“幻龍(げんりゅう)”達には、未だ誰も手を付けていない。 生存者を捜す手でさえ足りない中だ。 例え騎士だろうと何だろうと、確実に死んでいる死体一つを引っ張り出すなら、まだ生きているかも知れない場所に埋まっている不明者捜索にこそ人員を割くべきなのだ。 「犠牲は思ったより少ない」 二宮が視線を向けた先。 瓦礫の間をゆっくりと進む二騎のメサイア達からは何の報告もない。 装備がないため、メサイアとのデータリンクが出来なければ、二宮達といえど待つしかない。 「行方不明の連中も、瓦礫の下で頑張ってくれていることを祈りたいが―――」 「現在、生存が確認されている生徒達は―――」 長野大尉は近くの瓦礫に腰を下ろした。 せーのっ! せーのっ! 指揮車をひっくり返そうと躍起になってワイヤーを引っ張る女子生徒達の声が、高機動車のエンジン音に負けじと響く。 「―――約8割程度にとどまります」 「よく生き残ったものだ」 「染谷も、無事だったんですね?」 「ああ。MES(マジック・エジェクト・システム)を上手く使った結果だ。コクピットブロックごと回収されている」 「さすがですな」 「ああ……救援部隊がもうすぐ来る」 「助かります」 二宮は、長野のポケットからタバコを抜き取った。 ―――1時間後。 上空をTAC(タクティカル・エア・カーゴ)が盛んに行き来する。 地上では、重機が動き出し、赤十字の天幕が張られ、衛生兵達が駆け回る。 「災難と言えば、これ以上の言葉はないわ」 二宮にそう言ったのは、彼女とほぼ同年代の女性。 高い背と切れ長の目、寸分の隙もなく着こなされた軍服と徽章の列が、どういう性格で、どういう経歴の女性かを物語る。 肩章は中佐。 胸には艦長を示すドルフィンマークが輝いている。 “鈴谷(すずや)”艦長、平野美夜(ひらの・みや)中佐だ。 「ニュース速報で富士学校で大規模爆発事故っていうじゃない?びっくりしたわよ」 「何してたのよ」 「嫁が数ヶ月ぶりに帰ってきたってのに、接待で飲んで帰ってきた旦那ぶん殴っていた」 「ご愁傷様」 「……もう離婚してやりたいけど」 「お金?」 「子供っていったら、どうする?」 「はぁっ!?」 「うそよ―――で?」 「敵の奇襲を受け、為す術もなく“幻龍(げんりゅう)”4騎を喪失。訓練校は壊滅」 美夜は横たわる“幻龍改(げんりゅうかい)”の残骸を見た。 コクピットハッチが吹き飛び、中から煙が出ている。 「人的犠牲は最小限度―――不幸中の幸いよ」 「“幻龍(げんりゅう)”の全騎喪失は痛いわよ」 「安心なさい」 美夜は瓦礫の中を縫うように歩き出した。 「真理に責任負わせようなんて、誰も考えていないから」 「……イヤミ?」 「ん?」 「私達が“雛鎧(すうがい)”を動かすことも出来ず、みすみす指をくわえて“幻龍(げんりゅう)”の全滅を見ているしかなかったこと」 「まさか!」 美夜は肩をすくめた。 「真理からの報告の通りだったことは、すでに司令部も承知しているわ」 「一騎でも動いてくれれば、みすみす犠牲は出さなかったわよ」 二宮はそう言うのが精一杯だ。 命がけでハンガーに飛び込んでみたら、“雛鎧(すうがい)”はエネルギーバイパス周りの整備のため、主骨格(マスターフレーム)から主要部品がほとんど外されていた。 つまり、“雛鎧(すうがい)”はメサイアとしてどころか、機械としてすら動かなかったのだ。それを知った二宮が、皆をすぐにシェルターへ退避させたのは、教官として妥当な判断だった。 もしかしたら、敵が“雛鎧(すうがい)”を“メサイアの残骸”と誤認して攻撃しなかったおかげで、“雛鎧(すうがい)”は無事だったかもしれないことも含めて、二宮はなにやら複雑な思いで美夜の後を歩く。 その耳に聞き慣れたディーゼルエンジンの音が聞こえ出した。 指揮車がようやく動けるようになったらしい。 二宮達の横を、ジープに乗った美奈代達がすれ違う。 二人に気づいて敬礼する顔が浮かないのは、なにも自分達の母校が破壊されたせいだけではない。 彼女たちの次の任務だ。 死体の回収作業。 自分で命じておいてなんだが、年頃の女の子達が喜ぶ仕事ではない。 美晴あたりが吐きまくるか、失神することは覚悟の上だ。 「……それと」 目的地に到着した美夜が足を止めた。 「……司令部も、“あいつ”にはかなり興味があるみたいね」 そこは、あの“鳳龍”達が入ってたハンガー。 ハンガーの床にころがされている“それ”は、“鈴谷(すずや)”から降ろされたベルゲ騎達によって、大型のベースキャリアに移動されつつあった。 昨晩、撃破された魔族軍のメサイアだ。 二宮にも、たかが訓練校が奇襲攻撃を受けたからといって、どうして飛行艦を司令部が差し向けるなんて大盤振る舞いに出たのか、それだけでもう察しがついていた。 おそらく、魔族軍のメサイアと聞いただけで、開発局から相当な圧力が加わったのは確かだろう。 「魔族軍のメサイアってヤツかしら?」 「近衛開発局は、全力を挙げてこいつの解析にかかる。そのために彼女も送られてきた」 「彼女?」 「―――お気の毒様」 日付が変わる頃、雨が降り出した。 静かに降り続ける雨音を聞きながら、美奈代達は焼け跡から見つけだした毛布にくるまっていた。 「きっと、涙雨ですね」 教室の一角、雨風が入らない程度の中、誰かのそんな呟く声が聞こえた。 祷子か美晴、どちらの声かわからない。 「そう、だな」 美奈代は小さく頷いた。 染谷が生きていたと聞いたときは、涙が出るほど嬉しかった。 その安堵感があったものの、体がこの異常事態に反応して、興奮して眠れない。 建物の残骸に雨が当たる音に回収作業が続く音が混じる。 ザッザッ。 不意に、軍靴が2つ、壁の向こうを歩いていく音が聞こえた。 「気を付けろ」 声がした。 「下手に扱うとワタがこぼれるぞ」 「……ああ」 二人が何を運んでいるか。それでわかった。 「重いな」 「ああ」 美奈代は頭まで毛布を被ると、無理矢理目を閉じた。 デートもなにもない。 あるのは地獄だけだ。 どんな夢を見たのか。 夢を見たのかさえはっきりしない中、結局、美奈代は朝を迎えた。 講堂で食事の配給が始まるぞ! そのメガホンでの声に誘われるように目を覚ました美奈代達は、他の多くの生き残った者達がそうだったように、無言で講堂に向かった。 雨は止んでいた。 途中、死体袋の山の横を通る。 気温が低いので腐臭はしない。ただ、自分達が血の臭いに鈍感になっていることに気づかないだけかもしれないが、心の中には、はっきりと違和感も恐怖も、なくなっていた。 天井が半壊した講堂に入ると、整備兵や警備兵達が配給にありついていた。 皆、憔悴しきった顔で、手の中の一時の暖かさにすがっていた。 美奈代達も、列に並んでようやく配給にありついた。 列に並ぶ数の少なさが、犠牲者の数を教えてくれる。 食事はポタージュに非常用の乾燥米をかけただけのもの。 それでも、口に広がる暖かさとポタージュの甘さが、何より有り難い。 その後、指示を求めて二宮の姿を探した。 見つかったのは、瓦礫の影で誰かと立ち話をする後ろ姿。 立ち話が終わってからと思い、美奈代は物音を立てないように慎重に二宮に近づいた。 「つまり」 二宮は苛立った声をあげた。 「ここは意図的に狙われた、というのですか?後藤中佐」 そっとのぞいた美奈代は、すぐに顔を引っ込めた。 二宮の話す相手は、黒服だ。 黒服―――近衛左翼大隊、魔導師や魔法騎士によって編成される特別部隊の関係者。 一般的に言って、下手に関わるべき相手ではない。 単なる教官に過ぎないはずの二宮が、なぜ黒服相手に、こんな所で話しているのか、美奈代は気にはなるが、あえて話を聞くつもりもなかった。 だが、耳にどうして入ってきてしまう。 「まぁ、そうなっちゃうねぇ」 「何故です?」 「一般の騎士が知っていいこっちゃないけど」 「……」 「まぁ、二宮中佐は今の立場もあるし……この地下にね?」 やる気があるのか疑わしい声が言った。 「門(ゲート)があるんだそうで」 「門(ゲート)?」 「アフリカや南米で暴れた連中が閉じこめられていたトンネルみたいなもんだそうで」 「この地下に?」 「そう。連中、それを復活させようって、動いてるんだわ」 「この施設を吹き飛ばし、その―――門(ゲート)とやらを解放……トンネルってことは、アフリカとここをつなげようとした?」 「もしくは、この地下にも仲間が眠っているのかもしれないねぇ」 「……」 アフリカで暴れる無数の妖魔達。 それが自分達の足下に巣くっていると言われ、美奈代は足下が急に不安になった。 「まぁ、ここの襲撃が失敗したから?しばらくは大丈夫でしょう」 「本当に、その確認だけで、ここに来たんですか?」 「おろ?」 「本当は、後藤中佐がここにいらしたのは、“あの騎”の安否確認では?」 「ははっ。こりゃ鋭い」 「この中では、祷子ちゃんの騎体が一番貴重だからね」 「本当なら、風間が搭乗して敵と交戦。その戦闘データが収集出来れば最高だったんでは?」 「ご名答っ!」 ……風間? あのぼんくらちゃんがなんだと言うんだ? 美奈代は耳を澄まして二人の会話に聞き入ろうとした。 だが――― 「とりあえず、ハンガー行きましょうや。あの安否、目で確認してこいってうるさくて」 「御苦労様です」 肝心の二人が遠ざかってしまう。 美奈代は肩をすくめて、その場を立ち去った。 それから1時間ほど後。 「お勉強は終わった」 二宮の声が響く教室が、普段とは違う。 崩れ落ちた校舎の隅。復旧作業の邪魔にならない所に、かろうじて無事だった椅子と机を見つけてきて並べているだけ。 それが、今の美奈代達の“教室”だ。 凡そ帝国最強兵器を駆る騎士の養成施設の有りようではない。 すでに美奈代達の服も、今着ている作業服だけで、本来の軍服は、その私物の一切と同様、宿舎と共に灰。 ここには、テキストもなにもない。 あるのは、瓦礫と死体の山だけだ。 そんな中、二宮は複雑そうな顔で言った。 「魔族軍がこんなところを叩いてくるとは、正直、予想さえしていなかった」 教壇に立つのは二宮と長野。 椅子に座って話を聞くのは、あのハンガーにいた連中だけ。 「すでに訓練校(ここ)には、貴様等に与えることの出来るものは何もない。本当なら」 二宮は少しだけ疲れたという顔になった。 「貴様等には、アフリカに行ってもらう」 「え?」 「最早、この学校にいても仕方ない。そのうえ、アフリカでの作戦行動は予定通りに実施するように司令部から通達が出ている。該当する生徒で戦死・負傷者はいない。使用騎体は司令部が都合してくれるということだし、何とかなるだろう」 「派遣部隊の出発は確か」 「出発まではまだ若干の日時がある。それまではこの富士学校の片づけだ。 泉。何かあるか?」 「い、いえ!」 「教官―――質問」 突然、二宮に声をかけられ、とまどう美奈代の横で、都築が手を挙げた。 「根城っていうか基地はどこです?どこに移動するんですか?それともここで?」 「都築。いい質問だ。根城はここじゃない」 「どこへですか?」 「“鈴谷(すずや)”だ」
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(パターン1) 「あっあんなの聞いてないぞ!」 大きな屋敷の中、余りにも不審人物といった黒装束に目出し帽の三人組が、僅かな光源となる燭台の下で震えていた。 彼らはいわゆる暗殺者……幾分か精度が劣るので鉄砲玉といった存在だった。与えられた仕事は酷く単純で、この館の主を殺すこと。 その人物が持つ権利が組織の運営上で邪魔になると言う理由なのだが、そんな事に興味は無い。 問題はどれだけスマートに、確実に殺して賃金を貰うかという一点に過ぎないのだから。 「そうだ! 護衛はガキと小さいトカゲだけだって言われたのによ!」 この仕事を行うのに重要になってくるのは護衛、つまり殺しを邪魔する存在だ。 その有無、量、質は全て調べつくした。その結果として得られた結果は「少女と不思議なトカゲ」だけ。 余りにも貧弱、余りにも容易い仕事のはずだった。それが…… 「なんだ……あの化け物どもはぁああ!?」 そう、自分達の行く手を阻んだのはまさに化け物。 壁に並んでいた鎧が頭部を取り落として歩いていた。 何気ない絵画が笑いながら空を舞っている 腐臭を放つ亜人の死体が剣を振り上げて迫ってきた。 まさしく悪夢。想像し難い非現実ではなく、目が捉える現実こそが真に奇異なる。 「まあ、落ち着こう。今のはたぶん幻影や無機物操作の応用だ。 幻影はこっちに触れないし、無機物操作じゃ動きはたかが知れてる。 あんな連中は無視して、さっさと仕事を済ませないと……」 暗殺者の一人が冷静に状況を分析し、仲間たちの落ち着きを取り戻そうと試みた。 しかし所詮それは自分が知りうる知識の中でのこと。真実はそんなところにはないのだ。 もちろん目の前の異形を打ち砕くような力があるのならば、原理は何の問題にもならない。 だが彼らにはソレが無かった。 「カシャン……カシャン……」 ゆっくりと近づいてくる金属音に誰もが大なり小なり、ビクリと体を震わせた。 だが相手は唯の木偶人形。注意すれば容易くやり過ごせる。そう思っていのたのだが……音が変わった。 「ガシャンガシャンガシャン」 ゆっくり一回ごとに区切られた音は連続したものに…… 「ダンッ! バタン!! ガガガガガ」 不規則な変音は木で出来た床が、高速で強打されたされる事で発生した音。 急な変化や大きな音は人間に根源的に恐怖を与える。神経の相応な反応なのだが、実感するほうは堪らない。 音の理由を考えれば……何かが高速で移動している。 「あっ! あぁああああ!!」 気がついたときは既に遅い。彼らは複数の異形に完全に囲まれていたのだ。 恐怖が先行し誰もが動けない中、一斉に振り上げられた剣が振り下ろされて……何かが断たれる音がした。 「終わり……大した事ねぇぜ」 暗殺者たちが見舞われた恐怖と終焉を見ている者がいた。 チューブトップ、タイトなミニスカートには二重にベルトを巻き、その上からゆったりとした作りの紅いコートを着ている。 小さな桃色の髪の少女は手に嵌めた手袋型デバイス ディアディアンクを光らせ、いくつかの魔法陣を従えて、シモベたちの挙げた成果に満足そうに嗤う。 「やっぱ多量に展開、高速で囲んで袋叩きにするのは、間違った戦略じゃなかったな?」 『あんまり印象がよくないけど……有効なのは確かですね?』 「キュク~」 盛大に嘲笑を作っているのは、胸に輝くオカルトグッズ・千年リングに宿る魂 バクラ。 犠牲者に僅かにも申し無さそうに補足するのは、体の持ち主であるキャロ・ル・ルシエ。 そして事態が解っているのか解らないのが、白銀の幼竜がフリードリッヒ。 間違いなく暗殺者たちが仕入れた情報人に有った護衛だ。 「はん! 他人様のご意見など知った事か! オレ様達はオレ様達の好きなようにやる! だろう? 相棒」 一人多いがバクラは肉眼で捉えることができないのだから仕方が無い。 そして魔道師である可能性の失念、更に特殊な術式による死霊制御まで加わるとなれば、鉄砲玉風情に勝ち目は無かった。 「はい!……でもあんまり他の人に迷惑をかけるのもダメ!……だと思うんですけど」 『はいはい、あいも変わらずヌルイな。まっ……ソレこそが……』 「? 何か言いましたか?」 『何でもねえよ。とりあえず雇い主様に報告といこうぜ?』 そう、これは仕事だ。多くの人を用いた物々しい警備を好かない金持ちが募集した護衛の仕事。 では仕事をする理由とは何か? お金を得て……生きていく為に。と言う事で…… 『キャロとバクラはこんな風に日々を生きています』 (パターン2) キャロは古びた部屋を掃除していた。ソレは熱心に。真心を君に!って程に。 ハタキで丁寧に埃を落とし、箒によってゴミを取り、雑巾で拭き掃除。 他にも色々とした小技を挟みつつ、それはもうやる気満々。ランランル~である? 『なぁ……相棒』 「なんですか? バクラさん」 片や全くやる気が無い人が一人。荒事とトラブルとハプニングと盗みをこよなく愛するエジプトの盗賊は酷く退屈していた。 キャロだけが見ることが出来るビジョンの中で、その体をグデ~と仰向けに寝そべらせていたりする。 『退屈だ……』 「キュクゥ~」 それに賛同するフリードリヒも外を飛び回りたいと羽をバタバタ。だがそれも「埃が飛ぶ!」とキャロに怒られて中断。 「そうですか? 私は楽しいですよ?」 憧れていた普通なこと。それが一時のものであろうとも、キャロは確かに安らぎを感じていた。 「キャロちゃん、ご苦労様。ちょっと休憩にしましょう」 「はい、お婆ちゃん」 部屋の掃除を終えたころに顔を出すのは、腰が見事に曲がり、白髪と顔に刻む無数の皺が生きた年数を語る老婆だった。 彼女こそこの『仕事の依頼人』である。 「本当に助かってるわ、こんなにお掃除できたの何年ぶりかしら?」 二人はキャロが掃除をして、見違えるようになったダイニングで、テーブルを囲んでいた。 テーブルの上にはティーセット、これまた灰塗れになって掃除したオーブンで焼かれたクッキーが並んでいる。 そう、老婆から貰った仕事は家の大掃除。平和で平穏な仕事。故にバクラは退屈そうだったのだ。 今は亡き主人と独り立ちした子供達との思い出が詰まっているという屋敷を手放したくはない。 だが老いた自分だけでは掃除も整備も手が回らないし、人を雇って如何にかしてもらうほど金銭的余裕も無かった。 「私もお掃除なんて随分してなかったから不安だったけど……何だか楽しくて」 はにかんだようにキャロは眼前に置かれたティーカップに口をつける。 味はまあ……普通。危ない仕事をしていると飲ませてもらえる高そうな品と比べれば。 だがそれら高級品には無い人の温もりがキャロに数段美味しく感じさせた。 「……老いぼれがこんな町外れの大きな家に一人で住んでいるのも大変だけど、貴女も色々と大変ね~小さいのに」 「イエ! 意外と楽しくやってますよ、大変な事もありますけど。フリードも居てくれるし……」 「キャウ~」 心配そうな老婆の言葉をキャロは僅かに困ったような笑顔で答えた。 本当はバクラの存在も誇りたいところだが、老婆には見えないはずだしその存在を明かしては居ない。 余計な心配や誤解を生み仕事が円滑に進まない可能性があるからだ。しかし老婆は不意にキャロの背後へと視線をズラして聞いた。 「後ろに居る彼はキャロちゃんの良い人かい?」 「えっ?」 『この婆さん……見えてやがるのか!?』 二人と一匹のうちを走り抜ける驚愕、一匹は実際解っているのかは謎。何せ変わらないペースでクッキーを食べているから。 「ふふ、年をとってくると見えなきゃいけないものは見えなくなるけど、見えなくても良い物は意外と目に入るのさ。 もしかしたら私もそっち側のお迎えが近いのかもしれないね?」 カラカラとボケた風に嗤う老婆を見て、キャロはなぜか『そういうものなのだ』と納得してしまった。 なんだかこの老婆にはそんな不思議な魅力があり、『自分もこんな風に年をとりたい』なんて未だ10にも満たないキャロは考える。 バクラはと言えば…… 『こんな気味の悪い奴をお迎えしたくねえな』 ……取り付く島も無い。 「さて! 次は屋根を直しますよ!!」 「お願いね~私はしっかり夕飯の準備しておくよ?」 「はい! あとはふかふかのベッドと……暖かいシャワーも」 契約の内容は至って簡単。 キャロが掃除から屋根の修繕まで魔法とか駆使して行う代わりに、老婆は三時のオヤツと夕飯、ベッドとシャワーと次の日の朝食を提供する。 現金では支払えない老婆が提示した苦肉の策なのだが、キャロとしてはそういう方が非常に嬉しい。 幾ら金での報酬を貰おうとも、その金ではきっと買えないだろうとっても大事な物。 それは……人の温もり。 (パターン3) 「バクラさん、世界には不思議な仕事がありますね。なんと『コレ』を配るだけでいいそうですよ!?」 キャロは寒いで白い息を吐きながら、かなり大きな都市の街角に立っていた。 支給されたカラフルな会社のロゴ入りジャンバーを着て、手に持っているのは……同様に会社のCM用ティッシュだ。 その傍らには綺麗にモールを巻かれ、宴会でしか見ないようなトンガリの派手な帽子を被ったフリード。 いわゆるティッシュ配りのお仕事。 「よろしくお願いしま~す」 『相棒……少しは仕事を選べ』 粉雪が僅かに舞い散る寒さの中で、キャロは何時も通りの可愛らしい微笑。 電車の到着と連動するように勢いを増す人の群れにティッシュを差し出す。 その様子に心底呆れたような、微妙な表情をバクラは浮かべる。 別に金が無いわけではないのだ。その気になれば今すぐちょっと高そうな喫茶店に入って、十時のオヤツに洒落込むことも可能だ。 だと言うのに…… 「お願いしま~す、マイフルで~す」 『もっと派手な仕事をしようぜ、相棒。美術館から絵を盗むとか……』 「う~ん、この前に見た絵はちょっと欲しかったですけど……って! 違います、今はこのお仕事が大事! 全部に全身全霊、一生懸命やるからお給金が貰えるんです!」 なんだかよく解らん勤労の精神に目覚めてしまったような相棒にバクラは二度目のタメ息。 『ほっとけばそのうち自由気侭に戻るだろう』今まで一度だってハズレたことが無い認識だが、恐らく今回もハズレはしないだろう。 故にしばらく捨て置く事にしたのだが…… 「……中々受け取って貰えません」 「キュウゥ……」 一時間ほど経った位だろうか? キャロが『クスンッ』と鼻を鳴らして呟いた。 確かに誰でも経験が有ると思うが、人が歩いている時にいきなり目の前に何かを差し出されると……正直、邪魔である。 まあ、ティッシュだから少々マシな方でビラだけなんて場合は……目も当てられない。 『じゃあ、やめようぜ~』 「ダメです!」 コレ幸いと離脱を提唱するバクラだが、キャロの意思は固い。 フリードは……寒くて溜まらないのか? 珍しく自分からバッグに潜り込んでいる。 「これ全部配り終わらないとお金がもらえません……」 『なあ、別に金に困ってるわけじゃねえんだぜ?』 「でも、稼げるならなんでもやります。また……バクラさんに迷惑をかけられません」 冷えてきた自分の小さな手に息を吐きかけながら、キャロが告げた言葉に思わずバクラは目が点になる。 基本的にこの旅の一行内で一番お金がかかるのはキャロだ。育ち盛りの女の子であり、他の幼竜や魂と比べるのもバカらしい。 故にバクラはキャロが自身の為に頑張っているのだと思っていた。それが何故にして幾ら貧乏生活でも死ぬことが無い自分の為だと? 『あのな? 相棒、お前はオレ様の事なんて心配する必要はねぇんだ。 こちとら千年リングに魂を宿すだけの存在。病気にもならねえし、死にもしない』 「でも……」 『相棒は相棒のやりたい事をすれば良いんだ。オレ様が……なんでも叶えてやるからよ』 そう言うと無言で体の所有権を奪取したバクラが手近な通行人を捕まえた。 ティッシュを『手渡す』のではなく、なぜか通行人を捕まえる。 「持ってけ」 お願いではなくて命令。いきなり美少女にネクタイを掴まれ、大量のティッシュを押し付けられたサラリーマンは目を白黒させている。 そんな裏技を数回繰り返せば、ダンボールに詰まっていたティッシュはカラ。そんな様子に思わずキャロは笑い出した。 『なるほど……そんな方法があったんですね~』などと考えているのだが、確実にルール違反です。 「さて、仕事終了。サテンで暖かいコーヒーでも飲もうぜ」 『私は紅茶の方が…「キュクル~」…フリードはホットケーキね?』 追伸……確かにノルマは達成したので給金はもらえたが、何故か仕事自体をクビになった。 何か問題があっただろうか?と一行は首をかしげることになる。 前へ 目次へ 次へ
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ばねあしジャックと人形の家 ◆faoWBgi.Rg ◆◆◆◆ Jack be nimble, (さあさあ ジャック) Jack be quick, (いそいで ジャック) Jack jump over (ろうそくたてを) The candle stick. (とびこえろ) ◆◆◆◆ 小さな机と破れたソファが一つずつ。 曇りかけた、古い鏡台が一つ。 貧相な棚が一つ。 棚の中に放り込まれた、前の住人が置いて行ったらしい、くたびれた聖書が一冊。 さして広いとは言えない部屋にあるのは、せいぜいそれきりであった。 あとは――片隅にあつらえられた、畳敷きのスペースの上に、行儀よく膝を揃えて座る人形が一体。 或いは、少女が一人、と言い換えてもいい。 零れるようなブロンドの髪も、濡れた宝石のような瞳も、真っ白い肌も、彼女が腰を下ろした一角には、まるで見合っていない。浮いている。 ――本当に、置物みたいに座っていやがる。 己がマスター、ララの横顔を眺めて、サーヴァント・アサシンことウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイドは、そんなふうに考えた。 怪人「バネ足ジャック」としての仮装を解いた姿で、アサシンは、机のそばの古びたソファに窮屈な長い両脚を広げてもたれかかり、片手には空っぽのワイングラスを弄んでいる。 市民劇場の裏手にある、くたびれた通りの色に同化したような、安アパートの一室。 ララに住居としてあてがわれたのは、舞台へ上がる歌姫のイメージにおよそ似つかわしくない、そのような場所であった。 ララはそれへ不満を唱えるでもなく――生身の人間と同じ衣食住を必要としない、ということもあるのだろうが――、むしろ、どこか愛おしんでいるような風ですらあり、アサシンはと言えば、下手に人目につきそうな場所よりはこちらの方がマシだろうと、彼なりの実践的な観点から、この狭苦しい居城(生前の彼の屋敷からすれば、掌の上の小箱のような!)を肯定していた。 ソファのスプリングの鳴らすギシ、という音が、低く響く。 顔を歪め、足を投げ出し、乱暴に背を沈めたアサシンは、一晩の間変わらないララのポオズを見つめる。 ――眠る前に、歌はいかが。 昨晩、聖杯戦争の裁定者たるルーラーからの通達があった後、二人きりの部屋でそう言って来たマスターに対し、彼は半ば呆れながら、サーヴァントに睡眠は必要ないことを告げた。 そして気がついた、マスターにも、ララにも、それは必要がないということに。 「グゾルが眠るときには、いつも歌を歌ってあげたのよ」 どこか寂しそうな顔のまま、ララは、この朝まで、同じ姿勢でそこへ座っていた。それはまるで、子供の寝床にあつらえられた御守りのようにも見える。 アサシンは、遠い、彼にとっては、生きていた時すらあまりに遠かった、幼い日の記憶をふとよぎらせる。 顔だけがぽっかりと抜け落ちている、ドレスを着た女性の――死んだ母の肖像。 一人きりの夜に、もぐりこんだベッド。 眠りが恐ろしく、寂しく、得体の知れぬ悪夢を幾つも見たこと。 子守唄を歌うことができても、人形は、眠ることはない。夢を見ることもないのだろう。どれほど長い夜を、どれだけの数、過ごしてきたのか。 見た目こそ少女であっても、彼女は、アサシンが生前に人として生きた時間より、はるかに多くの時間をその矛盾した身に降り積もらせてきたのだ。「変わってゆく」人間に寄り添い、歌いながら。 窓の外で、小さく鳥の啼く声が響いた。 見つめるアサシンの前で、ララが、すうと顔を上げる。アサシンを見る。 「……もう、始まってるのね」 ――朝は、同じように来るのに。 その瞳にあるのは、迷いと、当惑と、そればかりでない何かが入り混じった、不思議な光であった。 「私、何も決められなくて。付き合わせちゃって、ごめんなさい」 主従としてまともに向き合ってから、幾度となく呟いた謝罪の言葉を、ララはまた、アサシンへ向かって呟く。 アサシンは、ふん、と鼻を鳴らす。 「言ったはずだろう。オレは暇潰しをしてるだけだ。 たいがいの遊びはやってきたが、人形との付き合いってのは、さすがに経験がないからな」 なかなか愉快なものだ、と顔に張り付いた悪辣な笑みに乗せて言う彼に、ララは怒るでもなく、ありがとう、と返した。 調子が狂う。舌打ち混じりに顔を背けながら、今後の方針に水を向ける。 「目下のところ、どうするか…だな。 前にも言った通り、癪な話だが、オレは大して強くない。“三騎士”の連中は言わずもがな、他の奴らと小細工なしに正面からやり合って勝てる――今のオレたちの方針からすると、生き残れる、と言った方がいいか――可能性は、低い」 ララは、静かにうなずく。聖杯戦争の知識は、当然ララも得ていた。アサシンのクラスは、そもそも強大な戦闘能力を誇るクラスではないのだ。 「だが、やりようはある」 アサシンはテーブルにグラスを置き、虚ろな双眸を宿した仮面をトランクから取り出して、目の前に掲げた。 怪人たるバネ足ジャックにとって、通常は悪手と言える「早期から姿を晒すこと」は、必ずしもマイナスにならない。 目覚めたララに呼ばれずにいた間、彼はこの街の夜を怪人として跳び回っていた。 それは当初は、隷属者として呼び出されたことへの反発であり、好きにやってやるという意思表示だったのだが――結果として、「バネ足ジャック」ならぬ「火吹き男」の噂の流布のみならず、この街の大まかな地理を頭に入れ、ロンドンと異なる建物や地形に対する、バネ足の具合も確かめることができた。 加えて、アサシンは、「バネ足ジャック」としての気配を消して民衆(NPC)に同化できる。 それを利用して、表向きララの「伯父」であり「マネージャー」のような立場の人物として、劇場の関係者へも顔を見せておいた。 マスター周辺を動き回るのに不審がられない、それなりの役柄というものはあった方がいい。 幸い、この造られた街には、人種も装いも種々雑多なNPCが多く配置されていると見えて、金髪に碧眼、痩身大躯なアサシンの姿も、さほど目立たずに済んでいるようだった。 アサシンは、その間に得た情報を、ララに伝える。 「昨晩、劇場に来る客から、おかしな噂をいくつか聞いた。 ひとつは、『チェーンソー男』とかいう化物」 機械式の回転鋸を振り回し、人を襲う異形の巨漢。唐突に現れ、唐突に空を飛んで消える怪物。そして、不思議と顔の印象が記憶に残らないという。噂では、それは「少女」と戦っているのだとも。 「もう一つ。街で目撃された、これも大男だ。『包帯男』とか言われていたがな」 ボロボロのコートと帽子、腐臭を纏った巨漢が、平然と、「当たり前のもののように」街のただ中に存在していた。そしてこれも、「少女」と共にいたという。 「『チェーンソー男』に、『包帯男』……」 ララが反復する。 バネ足と異なる、二つの怪人の噂。或いはそれら二つは同じものなのかもしれない。いずれにせよ。 「断言はできないが、参加者とサーヴァントに関わる何かだろうよ。 すでに動き出してる連中がいた、と見るべきか。 そして少なくとも、今日以降は否応なしに動き出す奴らが増える。……あんな通達があった後だしな」 アサシンは、ララが握りしめている手紙と写真とに目をやる。 それは、昨日の夜、ララの元へ直々の通達に現れたルーラーが、残して行ったものだった。 どこかおどけたような予選通過の告知や、ささやかな資金の同封、諸連絡……それらの中でも、参加者の一人「フェイト・テスタロッサ」の捕獲を示唆する文言は、特に目を引いた。 写真の中、幼さを多分に残した少女の面立ちを見ながら、開始以前、或いは早々に「やらかした」のだろうと二人は話し合った。少なくとも、ルーラーに目をつけられる何かが、その少女にあったことは間違いない。 捕獲の礼は、「令呪一画の贈与」によってなされるという。この街で何を成すにせよ、それは魅力的な褒賞であったが、今は釣られて動くべきではない、アサシンはララへとそう告げた。 ララは、この聖杯戦争において最初の贄と定められてしまった、見知らぬ少女のことを気にしているようだ。アサシンとて、内心では、自分の姪ほどに見える、写真の少女が気にならないわけではない。 しかし、アサシンはララに下手を踏ませるつもりはなかった。 己の意思で、この不思議な矛盾をはらんだ人形の少女が、新たな願いを見つけるまで付き合うと、決めた以上は。 未だ、ララは何をなすべきかに迷っている。決めかねている。 ただ、少なくともあの劇場で「歌う」ことは、彼女にとって大きな意味を持っているらしい。 彼女を生みだした人間から厭われ、傷つけられ、「怪物」と恐れられ、自身もまた「怪物」として振舞い――――その中でたった一人見つけた愛する者のために、すがるように歌い続けて生を燃やした彼女にとって、不特定多数の人間たちに向けて歌を歌うことが、たとい用意されたNPCといえ、いやむしろそれだからこそ、自分の中の新たな「何か」を手探るきっかけになっているのは確かだった。 だから、今はまだ、渦中へと飛び込ませるわけにはいかない。 ララは夜の舞台の時以外、この目立たぬ住居から出ないことをアサシンと約束した。あくまで、他の陣営が動き出すのを待ち、アサシンが情報を収集し、備える。 ――そうだ。跳び回るのは自分だけでいい。 ――日中は街に紛れ、必要ならば、夜は「怪人」となって。 ――かつて一度忘れ去られた、滑稽で悪辣なバネ足の道化として。 ソファの背へ差し始めた、窓から昇る日の光に目をやると、アサシンは大きなトランクを片手に、ゆっくりと立ち上がった。 見上げるララ。その、不思議な光をたたえた瞳を、アサシンは今一度、見つめ返した。 「何かあったら、すぐに令呪を使え。 ……街の端にいようが、月の向こうにいようが、すっ跳んで来てやる」 そう言って背を向け、戸口へ向かったアサシンへ、言葉が投げかけられる。 「貴方にも」 アサシンは、足を止めた。 「今晩は……貴方にも、ちゃんと歌を聴いてほしい。 だから、帰ってきて」 背を向けたまま、アサシンは――ウォルターは、バネ足ジャックは、少し黙った後、ぞんざいに後ろ手を振ってこたえながら、部屋を出て行く。 バタリ、と戸の締まる音。 そうして、さして広いと言えない部屋には、再び顔を落とした人形が一体。 或いは少女が一人きり、残された。 【D-3/市民劇場裏、アパートメント/1日目 早朝】 【ララ@D.Gray-man】 [状態] 健康 [令呪]残り三画(イノセンスの埋め込まれた胸元に、十字架とその中心に飾られた花の形で) [装備] なし [道具] なし [所持金] 劇場での給金(ある程度のまとまった額。ほとんど手つかず)、QUOカード5,000円分 [思考・状況] 基本行動方針:やりたいことを見つける。グゾルにまた会いたい…? 1. 今は歌いたい。 2. アサシン(ウォルター)に歌を聴かせたい。 3. フェイト・テスタロッサが気になる。 [備考] ※「フェイト・テスタロッサ」の名前および顔、捕獲ミッションを確認しました。 ※「バーサーカー(チェーンソー男)」及び「バーサーカー(ジェノサイド)」の噂をアサシン経由で聴取しました。 【D-3/市民劇場裏手の通り/1日目 早朝】 【アサシン(ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド)@黒博物館スプリンガルド】 [状態] 健康、スキル「阻まれた顔貌」発現中 [装備] バネ足ジャック(バラした状態でトランクに入っていますが、あくまで生前のイメージの具現であって、装着を念ずれば即座にバネ足ジャックに「戻れ」ます) [道具] なし [所持金]一般人として動き回るに不自由のない程度の金額 [思考・状況] 基本行動方針:マスター(ララ)のやりたいことに付き合う。 1. 街で情報収集をしながら、他の組の出方を見る。 2. 夜までには帰ってきて、ララの歌を聴く。 3. 『チェーンソー男』『包帯男』に興味。 [備考] ※「フェイト・テスタロッサ」の名前および顔、捕獲ミッションを確認しました。 ※「バーサーカー(チェーンソー男)」及び「バーサーカー(ジェノサイド)」の噂を聴取しました。サーヴァントに関連する何かであろうと見当をつけています。 ※街の地理を、おおむね把握しました。 ※劇場の関係者には、ララの「伯父」であると言ってあります。 BACK NEXT 001 惑いのダッチアイリス 投下順 003 目覚め/wake up girls! 時系列順 BACK 登場キャラ NEXT 000 前夜祭 ララ 027 尊いもの 000 前夜祭 アサシン(ウォルター・デ・ラ・ボア・ストレイド) 017 機械式呪言遊戯 -006 ララ&アサシン