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前ページ次ページT-0 目を開くと、摩訶不思議な光景が広がっていた。 まず、ぱっと目に付いたのは周りの風景。広大な大地の幾千先まで所狭しとゴミの山が積み上がっている。 網膜に入る光が極端に少ない、解りやすく言えば暗い。どうやら、今はまだ夜のようだ。 ここは明らかに自分の眠っていた部屋ではない、もはやトリステインですらないことは寝ぼけ眼のルイズにも直に解った。 しかし、なぜかルイズは慌てない。 確かに、どう反応していいのか困る事態ではあるが、不思議とルイズの心は落ち着いていた。 とりあえず、このままボーっとしていても仕方がないと考えたため、歩き出そうと一歩足を出してみる。 そして、その始めの一歩でルイズの心の落ち着きは崩壊した。 カシャン、と音がした。言うまでもなく、ルイズが一歩踏み出したところからだ。 ルイズは最初気にしなかった。周りを見て、コレだけわけのわからない――鉄のように見える――ゴミが四散しているのだ、 歩き続けていればゴミを踏んでしまう事ぐらいわかっていた。だからこの程度の雑音に心揺らされない覚悟はとっくにしていたのだった。 だが、足に何かが引っかかれば、それを見てしまうのは人の性だろう。 ルイズは足を止め、顔を俯かせて足元を覗き込み―――― 「――――――――ッ!?」 ――そして、息を止めた。冷たい汗が体中から一斉に噴き出した。 ルイズの足元には土や泥で汚く塗られ、風化したようにボロボロに朽ち果てた頭蓋骨たちが転がっていた。 「ひっ!?」 勢い良くのけぞったルイズは、その拍子に踵に引っかかった何かによって仰向けに転んだ。 背中に硬いものがちくちく当たる感触がする。そこから当たる物が何か予想したルイズは、恐る恐る首を振り向かせる。 そこにあったのも、やはり頭蓋骨だった。ただし、こちらのはルイズが圧し掛かったせいか所々欠けているものが多く、 その破片がルイズの背中をつついていたのだ。 気がつけば、ルイズは駆け出していた。 ――どこに? 自問自答する、行く当てなど無い。 それでも走らなければなれない気がした。そうしないと、この悪夢に精神がおかしくされそうだった。 走り行く中で気づく。周りに積み上がる鉄のようなゴミ山の中に、人――正確には、『人だったもの』――が多々混じっていることに。 引き千切られ、焼き焦がされ、皆絶望の顔のまま息絶えている。ひどいものでは、顔や体が一部なくなっている人もいた。 途端に吐き気が襲った。どうしようもないそれを何とか止めようと空を見上げたとき、ルイズはこの世界の真理を見た気がした。 「(――――夜なんかじゃない!)」 空はどす黒い雲で覆われていた。 暗黒の入り口と化した空を、奇妙な形の竜たちが爆音を轟かせて縦横無尽に行き交う。 そこに生き物の影は一つとして見られなかった。真っ暗な夜の砂漠のように、冷たい風がルイズの肌に吹き込む。 おぞましい惨状、ルイズは理解した。 この悪夢から逃れる術は無いと――――それは確信に近かった。 大慌てで踵を返し、再びがむしゃらに走った。もう、頭蓋骨を踏み砕こうが知ったことではない。 そのとき、視線の先に一人の人間が立っていた。距離にしておよそ10メートル。 助かった! ルイズは心の底から安堵した。誰かを見つけてこんなにうれしかったのは初めてだと思った。 人間は男だったが、そんなことはどうでもいい。考える余裕すらない。 出来る限り速く走り、息を切らした。距離にして後3メートルといったとき男が振り向く。 反射的にルイズの足は止まった。前のめりに倒れ、滑るように頭蓋骨の絨毯の上を転がる。 男は、昨日召喚したあの男だった。 無感情な鋭い目をルイズに落とし、闇を背景にして増幅させたあの威圧感をルイズに浴びせる。 それだけならまだいいだろう。ルイズもまだ、耐えれたかもしれない。 だが、彼女の繊細な意識は目の前の男の変化に、あっけなく弾け飛んだ。 男の顔は右半分の皮膚がズル剥け、銀色に光る頭蓋骨と赤く光る眼光がルイズを見つめていた。 ベッドから飛び起きた。 それはもう盛大に。木枠が軋み、床を強く衝いた。 額を拭うと、べたついた液体が手に張り付いた。寝ている間にぐっしょり汗をかいていたみたい。 「(無理無いわ。あんな悪夢、見たら誰でも絶対冷や汗かくわよ……)」 心の中でごちると、不意にあの夢が思い出されて体が震えた。風は入ってないのに、なんだか冷風を身に受けた感じだ。 それになんだか心臓がうるさい。出来れば体が落ち着くまで部屋で寝て起きたかったが、あいにくと授業を休むわけにもいかない。 大きく息を吸い、少しだけ気持ちを落ち着かせる。そして吐き出したときにはルイズの目に心が落ち着いた事を知らせる光が少ないながらにやどっていた。 ベッドから降りて服を取りにいく。 「――むぎゅっ!」 その途中、あるはずの無いところにある何か大きな壁にぶつかった。 「いた~、なんなの?」 片手で鼻っ柱を撫でるルイズはもてあますもう一方の手で黒い柱を触る。 硬くて、とても重い。自分の力なんかじゃ到底動きそうも無い。 ルイズの脳裏に次第に昨日の事が思い出されてきて、額から望まない汗がだらだらと溢れ出す。 顔を上げたくないが、ぺたぺた柱を触る腕が上に登るときつい同時に顔も上に上がってしまい―――― 「……………」 「……………」 直立不動に立ち、相変わらずの鋭い視線でルイズを見下ろしている男とばっちり目が合ってしまった。 ルイズの中で時間が停止した。厳密に言えば、錯覚なのだが。 機能停止したルイズの脳裏に、悪夢がよみがえる。 特に鮮明に映えるラストシーン。ハッピーエンドではなく、ルイズ的にバッドエンドな夢物語。 腰を下ろして目と鼻の先に移動した男の顔が、丁度ぴったりあの顔半分ただれた顔と一致してしまい、 「………………きゅぅ」 ショックのあまり、白目をむいて、ルイズは倒れてしまった。 「……え?」 ルイズの間の抜けた声が部屋に木霊した。 だが、目の前に立つ使い魔の男は依然として直立不動、無表情に鋭い視線を保っている。 なぜルイズが間抜けな声をあげているのかといえば、理由はごく単純だ。 気絶からしばらくして復活したルイズは(既に朝食はあきらめていた。間に合うわけが無い、と)とりあえず胸中でびくびくしながらも この使い魔のことを知ろうと名前を聞いてみたのだ。が、 「サイバーダインシステムズ・モデル101型 T-800」 淡々とした口調で表情一つ崩さない使い魔の答えは聞いた事も無い単語で、とてもふざけているとしか思えないような名前だった。 「なに? さいばーだうん? 101型T-800って? ……それがあんたの名前なわけ?」 「そうだ」 即座に、あくまで淡々と機械的に答える使い魔。 感情の篭っていない声は、普段のルイズなら苛立ちを感じるものがあったがこの状況と男の真面目な顔つきには それを通り越して呆れていた。 仮に偽名を使っているとしてもこんな名前は無いでしょう。と、それどころか男に対して多少なりに“ヒいていた”。 「(今時馬だって使わないわよこんな名前。だいたい、型ってなによ? 物や武器じゃあるまいし……なんでそんな数字がついてるの?)」 両腕を組み、むむ~っと頭を捻った。 こいつ、実は何かまずい魔法薬でも飲んでるんじゃないのか? とも考えたが、それにしてはロレツがはっきりしてるし、 常時やけに落ち着いた態度なのがその可能性が低い事を示している。 ルイズは今一度聞いてみた。ただし、今度の質問は問題を解くとき解らなかったら基本的なことに戻ってみるように、 もっと遡った原点回帰、というか、根本的な質問をしてみた。 「あんた、人間じゃないの?」 「ああ」 ……だめだ、こいつはやはり薬をやっている。 ルイズはため息をついた、今までさまざまなため息をついてきたこと(主に魔法の失敗)があったが、 今回は自分でも心底からの落胆の色がはっきり浮かんで見える。 せっかく、やっとの思いで成功した召喚の儀式で誕生した使い魔が、ただの……ううん、薬中毒の平民だったなんて。 ルイズはこの瞬間、自分はやはり落ちこぼれ何だと思い込んだ。 そして、全く事情を察してなさそうな使い魔に向かって、やけっぱちに言った。 「じゃあ、あんた一体何?」 使い魔は珍しく即答しなかった。 表情に変化は見られないが、どうやら返答に迷いを感じてるらしい。 少しの沈黙の後、使い魔はやや感情を込めた声で、言った。 「俺はターミネーターだ」 前ページ次ページT-0
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【ギャスケル大将軍】 【作品名】吸血鬼ハンターシリーズ(D-ダーク・ロード&D-邪王星団に登場) 【ジャンル】ラノベ 【名前】ギャスケル大将軍 【属性】貴族(吸血鬼) 【大きさ】2m超 【攻撃力】普通の吸血鬼以上怪力(数tを持ち上げ可能)で体格相応の剣を使う。 都から来た剣客も騎士も戦士も受け止められず塵になった。Dに受け止められ反撃された。 【防御力】 黒く染められた光装甲でできた甲冑装備。日の光の下で行動可能。Dの攻撃に耐えられない。 ギリス少将の攻撃を食らって行動不能になったが10分で復活。 貴族の再生能力は高出力レーザー砲で心臓を貫かれ、火薬式自動小銃で身体を裂かれ、 超音波砲で細胞をぐずぐずにされても再生する。砕けた骨がつながり、ちぎられた肉が癒着し、 破壊された眼球が網膜も水晶球も無から生み出される。 高度四万八千mから落とされ死ななかったが再生に数日かかる。その間に止めを刺された。 【素早さ】Dと互角。 Dの素早さ:移動速度は100mで5秒を切るぐらい。0.01秒で5m移動して相手に攻撃可能。 二段ジャンプ(仮名) 一瞬で大きさ3000mの巨人の胸ぐらいまでジャンプできる。 そこからの二段ジャンプで3000mまで到達可能。 マッハ3のライフル弾を剣で相手に跳ね返す。 5mの距離から散弾銃で撃たれたき、手に持った木の枝(葉っぱ付き)の一振りで弾を跳ね返した。 レーザーを剣で跳ね返す。 四方から迫ってくる雷を一瞬で切断できる。 【特殊能力】 天空から5000万ボルトの雷光を落とす。 妖気 万物の法則を狂わせ相手の五感を麻痺させる。 物質消失の法 あらゆる生命体、あらゆる物質を一切のエネルギー変換によらず消失させることができる。 最大射程は数百キロ。最大で千人単位で消すことができるがその場合行動に制限がでる。 任意発動。で所謂一瞬で消滅させたり目玉だけ空中に残しておくような消し方もできる。 効果範囲は体積で人間千人単位だから…成人男性の体積70リットルとして1000人だから70000リットル。 ttp //ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%B0%E9%87%8F%E3%81%AE%E6%AF%94%E8%BC%83_%28%E4%BD%93%E7%A9%8D%29 参照にすると一辺10 mの立方体7つ分位。 隕石を呼び寄せピンポイント爆撃。直径5kmのクレーターができる威力。(到達速度不明) 地震、洪水、新種の妖獣や怪物の出現はお手の物。山一つ動かして村を一つ潰す。(発動速度不明) 【長所】物質消失の法等の豊富な特殊能力。 【短所】Dに滅ぼされるために神祖に復活させられた。 【性格】凶暴さ、残忍さ、冷酷さは並ぶものはない。 面白半分としか考えられないやり方で領民を苛み、彼だけが解読した超古代の技術を領民たちの身で試して虐殺した。 虐殺した人々の死体に防腐処置をしてピラミッド状に積み重ねると、その高さは500年で地上3000mに達する。 別銀河から飛来したエイリアンを初戦で破って貴族の間に「ギャスケル」ありと称えられた。 貴族を調べる人々に対するアンケートでは第三位を大きく引き離して「興味ある貴族」&「会ってみたい貴族」万年二位。 200年程前、人工血液と称して近隣の貴族に毒を送り全員を毒殺。 【備考】自分と同格の貴族三人でヴァルキュアと戦ったが負けそうになった。 D-ダーク・ロード本編で逃走、D-邪王星団しょっぱなにヴァルキュアの部下の一人にやられた。 主人公Dのかませ犬。 【戦法】相手が人並みなら物質消失の法。大きかったら隕石など使ってみる。 まとめ 【名前】ギャスケル大将軍 【属性】貴族(吸血鬼) 【大きさ】2m超 【攻撃力】物質消失の法:あらゆる生命体、物質を一切の消失させる。最大射程は数百km。 【防御力】超音波砲で細胞をぐずぐずにされても再生する。 高度四万八千mから落とされ死ななかったが再生に数日かかる 【素早さ】超光速 【特殊能力】万物の法則を狂わせ相手の五感を麻痺させる。 隕石を呼び寄せピンポイントで爆撃する。直径5kmのクレーターができる 【長所】物質消失の法 【短所】主人公Dのかませ犬 レーザー対応補足 Dとセルゲイの会話中、ローランド公ってのが地中からDの足元に登場、Dは飛びのいて回避、セルゲイはその場に尻餅。 その後セルゲイに向けてローランド公がレーザー(原文ビーム、吸血鬼ハンターD読本でレーザー)発射、 セルゲイの眉間30センチのところでDが刀身突き出して跳ね返した。跳ね返したビームをローランド公はぎりぎりで回避した。 参考 吸血鬼ハンターD読本 装甲甲冑:七人の「招きびと」のひとりゼノン公ローランドがまとう甲冑 ~途中省略~ 頭部にはめ込まれた二つの電子の眼からレーザーを放つ。 モーターによって装甲そのものが旋回し、地中深くもぐりこむことも可能。 ダーク・ロード2 レンズのはずの両眼が赤いきらめきを放った。 真紅の光条は、しかし、セルゲイの眉間まで30センチのところで遮られた。 真横に突き出されたDの刀身が跳ね返したのである。 ビームは甲冑を襲い、間一髪、神速の移動に、頭部の端を溶かしただけにとどまった。 あとDは盲目状態だった。 vol.106 843格無しさん2021/02/27(土) 15 35 37.47ID /fxLEPWw 868 ギャスケル大将軍修正 【素早さ】0秒行動可能なDと戦えるので0秒行動 再考察も行う ○スネ夫>ジャイアン>よっちゃん 消去勝ち △妲己 決め手なし ○サノス 消去勝ち △ネロ・オロトチ 決め手なし △シャナ 決め手なし △ある種族の進化の極限 物質ではないので消せないかな、決め手なし △ブラックミスト 同上 △ダークザギ 決め手なし △ガイオウ 同上 ○アカギ(ポケスペ) 消去勝ち (超常時能力の壁) ○ドロッセルマイヤー ふぁきあを消して勝ち △ポケモンハンターJ 消去と石化相打ち △キング・グッダー 消去と超新星相打ち △ギド 消去と女神の閃光相打ち △蝶ヶ崎 消去は押し付けられないか 消去と死の押し付け相打ち ×宇ヶ原 射程外、血颪千重塔負け ×ロンギヌスの槍=綾波レイ・No.カトル 射程外負け ×イシュタル>ミカエル 異次元からの干渉負け ×セフィロト 無理 蝶ヶ崎蛾ヶ丸>ギド=キング・グッダー=ポケモンハンターJ=ギャスケル大将軍 ドロッセルマイヤー 868格無しさん2021/02/28(日) 15 32 30.61ID rbNRAZl7 875 843 ギャスケル大将軍がDと戦えたって話だけど、Dの攻撃を防いだとかDの行動に反応できた描写はあった? あとDの素早さは神祖の参考テンプレとか一言書いておいて欲しい 875格無しさん2021/02/28(日) 19 13 32.70ID XZHrLXa0 868 わからないので考察は取り下げます 3スレ目 727 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 07 30 10 ギャスケル将軍って最大どれくらいの大きさまで物質消去できるんだ? あと隕石落とすのにかかる時間は? 728 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 07 42 59 1000人まとめて消せるから範囲としては直径30mとかそこからかね。適当だが 隕石は完全に情報待ちだな。 775 名前:格無しさん[sage] 投稿日:2007/08/11(土) 11 07 54 727 ギャスケル将軍って最大どれくらいの大きさまで物質消去できるんだ? 体積で人間千人単位だから…成人男性の体積70リットルとして1000人だから70000リットル。 ttp //ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%B0%E9%87%8F%E3%81%AE%E6%AF%94%E8%BC%83_%28%E4%BD%93%E7%A9%8D%29 参照にすると一辺10 mの立方体7つ分でいいのかな? あと隕石落とすのにかかる時間は? 地震、洪水、新種の妖獣や怪物の出現はお手の物。山一つ動かして村を一つ潰す。 隕石を呼び寄せピンポイント爆撃。直径5kmのクレーターができる威力。 これ詳しい時間がわからないから考慮できない。テンプレから削除お願いします。 あと備考ちょっとだけ修正 【備考】自分と同格の貴族三人でヴァルキュアと戦ったが負けそうになった。 D-ダーク・ロード本編で逃走、D-邪王星団しょっぱなにヴァルキュアの部下の一人にやられた。 主人公Dのかませ犬。
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チョlココロネと続かない夏 評判のパン屋で最後に残った誉高きチョココロネが奪われて近森ととろは不機嫌になった。 次の焼きたてが並ぶ時間はしばらくかかるし、悠長に待っているひまなどない。 ほんの迷った隙だった。チョココロネ狙いだったととろ、隣に並んだ明太子パンについ気を取られ、「あ」と言う差で アイツのトングに挟まれてしまった。奪ったアイツはぞんざいな扱いでトレーにチョココロネを滑らせる。学校帰りに極上の生地を 口一杯頬張りながら味わおうと考えていた矢先だった。ラスイチのチョココロネを買って帰る男子高校生の面倒くさそうにしている 素振りをととろは心底憎んだ。食べ物と恋の恨みはなんとやら。 「激おこぷんぷん丸なんだから!くーっ」 どうせならもっとうれしそうな顔をしろと奥歯を噛み締めるもの、敵はすでに店から姿を消して、パンの甘い香りだけが漂っていた。 こんなに悔しい思いをしたのはいつ振りだろうか、思い出すにも悲しくなる。長居は無用、ここに居残るのはどんな拷問よりも辛いから、 そそくさとととろは退出した。ドアのチャイムが物悲しく聞こえた。 誰もが競って手に入れたがるものだからこそ非常に悔しい。なんだか今日一日が落ち込んでしまいそうだ。手を繋いだ男女が ととろの肩をかすってすれ違った。 「いいなっ。チョココロネは諦めるから、その幸せちょっとちょうだい!」 うらやましいというより、幸福のおすそ分けをプリーズ。ととろは日頃、学内外問わずに幸せそうなカップルを端から観察し、 恋愛小説を読むようににまにまとのぞき見する趣味があった。誰が呼んだか『カップルウォッチャーととろ』なのだ。 平常心を保つには幸せが必要だ。とろけるようなシュガーな気持ちにさせてくれ。ととろはスクールベストの裾をぎゅうっと握って、 上の空へと飛び立つ身支度を始めた。今日、何があった?今日も幸せそうな女子を見たんだ。 「そうだ。今日も後輩ちゃん、ナイスファイトだったな」 『後輩ちゃん』こと後鬼閑花、ととろより一つ下の高等部一年の恋する乙女だ。 想い人の為にアグレッシブに、行き過ぎやり過ぎ閑花ちゃんにはまだまだ手緩いと、愛情表現豊かな女子だった。 恋する後輩ちゃんと(勝手に)お相手の彼、先輩との一部始終がこれだ。 ♪ 「先輩!問題です!頭のエクササイズです!またの名をブレイン体操です!コレが解けたらIQ200超えの天才児!」 「なんかイヤな煽り文句だな」 「あなたはバスの運転手です。はじめに二人お客さんが乗りました」 「あれだろ」 「次のバス停で一人乗りました」 「使い古された問題だよな」 「次のバス停で五人乗りました。次のバス停で三人乗って二人降りました。次のバス停で四人乗って五人降りました」 「小学生のとき聞いたんだけどな」 「さて、運転手さんの好きな人は誰でしょう!」 「帰る」 「5!4!2!1!ブッブー、時間切れ!先輩、残念でしたーっ!正解は閑花ちゃんでした……って、せんぱーい!」 ♪ 「あれは効くなぁ。遠回しのふりをして実は真っ直ぐに射抜くテク。後輩ちゃんの健気さにわたしの胸が疼いちゃうよ」 ちまちまと、そして恋愛『愛』溢れる表現でスマホに記録された『ととろの観察にっき』を読み返しながら、 ととろは後鬼閑花に、そして地球上の恋する人たちにささやかなるエールを送った。 「世界中のカップルに幸多かれ!」 観察にっきの毎回最後に記す言葉だった。自分が書いたとはいえ、ととろはまたも胸が疼いていた。 書いている途中はランナーズハイの如く名文だと自惚れながら、そして読み返すとこっ恥ずかしくなるような文章なのだが、 今のととろに理性的な突っ込みをしても暖簾に腕押しなのだ。 「きっと後輩ちゃんはチョココロネのようなハートを持ってるんだ。チョココロネのように……ん?」 チョココロネのことを思い出したか、ふと、ととろは足を止めた。いや、違う。チョココロネはチョココロネだが、 最後のチョココロネを奪っていった男子高校生をコンビニの店内で発見したのだ。 レジに並ぶ彼は右手にコンビニおでん、左手に少年誌、そしてそれで隠すように黒いストッキングを持っていたのだ。 ととろの勘がぴこんと働く。頭に生やしたリボンが向きを変えた。 「チョココロネを手に入れた上にコンビニおでん。チョココロネはきっと誰かにあげる為に買ったんだ。 おでんは熱々に限るから自分で食べるんだ。名探偵ととろの推理が今日も冴えます!」 男子高校生はすっと少年誌の下に黒ストッキングをしのばせた。 アンバランスな買い物に少年の顔は羞恥のせいでいくばくか赤く見える。 「きっとお使いだね、黒ストは。自分で履くなら堂々と白昼に買うのは不自然だからね。自然に導かれる答は……」 ぎゅうっとスクールベストの裾を握ると、瞳の奥が桃色に染まる。 網膜にハートが浮かび上がり男子高校生の顔に重なった。 アイツが摘んだおでんの卵はミラーボールのように輝き、しらたきはネオンサインのように彩る。 木目の絵柄の器はジュークボックス。ナイスなナンバーで舌を揺すぶらせる。 フィーバータイムで踊って踊りまくれ!ハニーナイト! 夏はまだまだ続くんだから。 「アイツから恋する女子の香りがする!」 つまり……男子に黒ストを買わせるまでに気を許した女子がいる! カップルウォッチャー・ロックオン!!リミッター解除せよ!! 「すっごい見たい!すっごい見たいよ、アイツの桃色っぷり!アイツの彼女さんナイスファイトだよ!」 はあはあっ……。 息遣い激しく、チョココロネなどどうでもよく、会計を済ませたアイツがおでんを頬張りながらととろとすれ違う。 太もも疼き、抑えきれない興奮ゆえ、不注意にもととろはアイツの肩にぶつかった。 「ご、ごめん」 男子高校生は卵をぷっと吐き出して、面倒くさそうにととろに謝ったが、ととろ本人は申し訳なさそうな顔の裏に ニヤリと笑みを浮かべていた。 「カップルウォッチャーは突然なのよ。相手はオトナっぽい子だね。アイツに幸あれっ」 # 「天月、文句言うなよ。一つしか残ってなかったんだ」 「一つで十分さ。恋の味にも似ている」 「なんだよ、それ」 「恋は一度だけ。美しい言葉と思わないか、向田」 学校屋上で交わされる会話は聞き流すに限るが、天月音菜に限っては心に止めておいた方がいい。 向田誠一郎は前者のスタンスだったが、最近は徐々に後者に移っている気がしてきた。 澄み切った青空を背景に向田が買ってきたチョココロネをリスのようにちびちびとくわえ味わっている天月音菜は 見た目だけは名前のとおりオトナだ。制服の上から分かる位素晴らしいスタイル、冷ややかな目と泣きぼくろ、 そして左目を隠す髪はアンニュイな雰囲気を醸し出す。ただ、チョココロネの食べ方といい、向田以外の者には あまり関わろうとしないことに加え、夏服に黒ストッキングという出で立ちにより、自他ともに認める変人の立ち位置を取る やや残念なる美人だった。 「お使いご苦労。ふふ、恥ずかしかっただろ?替えのストッキングが切れていたんだ」 「こんなもん無駄買いさせて。俺は単行本派なんだ」 「向田。リアルタイムで物語を追うスリルと、まだ出会わぬ新たなる漫画家との邂逅もたまにはいいぞ。 ところで、アニメ界にはびこる『日常もの』の作品が流行る三つの理由を発見したんだが……」 「それっ、天月、黙せっ」 フリスビーのように買ってきたばかりの黒ストッキングを天月音菜に投げた向田は一緒に買った少年誌をぱらりとめくった。 屋上はよく風が通る。学内において体全体で風を感じることが出来る場所はここぐらいだろう。天月音菜は白い雲に導かれたのか、 それとも青い空気に吸い込まれたか、いつも学校の屋上にいる。下界を眺める気分は根拠のない力を得た気になる。 チョココロネを食べ終えた天月音菜は考えた。夏はいつまで続くんだろうと。四季折々の変化が五感で味わえる屋上、 変わり者だと囁かれるけど、ここにくればふっと風に流される。ちょっと変わってたって、わたしはオトナだし。 「夏が続くといいな」 「は?天月、何言ってんだ?」 「夏クールのアニメが秀作でな、嬉しい寝不足なんだ。暖色寒色を見事に組み合わせ、目の覚めるような色使いが心地良……」 チョココロネを食べてるうちは静かだったのに、これ以上ほって置くと天月音菜のアニメ語りは止まらない。 チョココロネが一つしか手に入らなかったことを向田は後悔した。 # その日の空が紅く染まる頃、公園のブランコで近森ととろはむふむふと頬を赤らめていた。 コンビニおでんのちくわをくわえ、ふーふーと笛のように吹いていた。 しかし、おでんにはまだまだ暑い。美味しく頂けるのはツクツクボウシが鳴き止む頃かなぁ、とやかましい公園の立ち木を見上げた。 「絶対突き止めてやんからねー」 まだ見ぬ魚は大きいはず。一度釣りかけた魚をみすみす逃したくないし、出来ればご賞味させて頂きたいし。 ととろは名前さえ知らぬ天月音菜に仄かな憧れを乗せて太ももを疼かせた。 「夏は続かないけど、恋の美味しい秋がもうすぐ来るよっ」 おしまい。 前:]] 次:[[
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ヨシオミは終始ニヤニヤしていた。 「いいものが見られる。ついてくればわかる。」 ヨシオミは最近なんだかテンションが高いし、自信家。 何もないといってるけど、明らかに嘘。前はこんなに上機嫌な顔を見るのは 何日もなかった。今ではもうずっと。 彼女ができたわけじゃないな。勝手に確信。ダサ坊度が抜けてない。 あとはせいぜい宝くじでも当たるかしないと、こいつの人生はかわらねえだろう。 わけもわからず俺はヨシオミにならって、テニスコートのフェンスに体を浸す。 夏は好きだ。春も秋も冬も、まあそれなりに好きだけど、7月の今思うに、 夏が一番美しい季節。木々の緑も空の青も、やたらと濃くなって、 その輪郭をはっきりさせているから、陽の熱が空気を揺らすプロセスの隅々まで 手に取るようにわかる気分だった。そしてそれは逆説的に、景色をくすませて、 世界の美しさをさらに強調してる。 スイカの塩みたいな感じ。的を射てるとは思うけど、俺もやっぱり馬鹿だ。 でもなんか、スイカ食べたくなってきたのは本当だ。季節をそうやって味わえるのが 俺が日本人たるゆえんなのかもしれないとも思う。国語の試験で、そんな文章を 読んだ。多分。 「スイカ食いたくねえ?」 「食いてえ」 じゃあコンビニにでも と言いかけたのをかぶせるヨシオミ。 「真鍋キレーだと思う?」 ドキッとした。確信を揺らがせたから余計に。 コイツも男だから、すべったことを口走っても本当は不思議でもなんでもないが、 それでもあんまり女に興味がなさそうというか、未だに興味をもたれてなさそうな オミがこんなこと言い出すのはやっぱ不意打ち。夕立が降る前に帰ろう。 それでも会話のテンポは崩れない。 「いや、やっぱキレーなんじゃない?あんま話したことないけど。」 ぶっちゃけなくてもわかってる話、俺もオミ同様、女に興味をもたれていない。 まじめに男と女の倫理というか、節度というか、そういうのを割と尊重してきたら、 「フツー」の金の使い方が馴染まなくなった。「フツー」の使い方ってのは、 金を払って、新しいコミュニケーションを買うやりかた。だからマザコンはモテない。 たまには焦るけど、無い袖は触れなかった。 真鍋は実際キレイだ。俺が万一告白されたら二つ返事するに決まってる。成績も 結構優秀だし、いつもグループの中心に、会話の面白さと可愛らしさで花を添えてる。 いい噂のネタに事欠かない。 「真鍋ノーパンなんだってよ」 全身の力が抜けた。 そりゃあずっこけたままツッコむ。 「ハァ?何ソレ?」 「だから確認に来てるんだよ。」 「ってか…オミマジウケるってソレ。誰情報だよ。」 「いや、女の盗み聞き。名前は知らない。」 「ありえねーって、ソレ。さすがに。チュウボウの妄想だろそんなん。」 オミはニヤついてる。マジか。なんだコイツ。正直今日キモイな。 「それにさ、確認ったってどうすんのよ。」 「いや、なんかのきっかけで、チラ、とかねーかなと思って。」 「アッホくせ。」 「どうせ暇だろ?付き合えよ、教室ん中いても不健康だろうよ。」 正解。クラブのチケットでもプレゼントしてやりたいよ。それにしてもそんなにまで俺ら暇だったのか。 軽く戦慄。そりゃあもし実際そうで、見えたりとかしたら相当なハッピーサプライズ。 けど、俺が期待を仕込んだ妄想を膨らますには、少々浮きすぎて、輪郭薄い。 その真鍋は自分たちから20m位はなれたところで、バドミントン中。 大体のやつは体育館でやってるけど、多分今いっぱいなんだろう。トラフィックジャムには勝てない。 スポーツのバドミントンじゃない。やんわりした弧を描いては沈み、沈んではまたエッジの 利いた弧を再び描く。リズムは何度でも途切れては、また始まる。呑気な鳥だよ。鬼だって昼寝する。 真鍋は、視界の中のひとつの物語のようにしか見えない。輪郭は今、もっともっと広い。 「じゃあそうだったら明日の昼飯おごってやるよ。」 「オーケイ。忘れんなよ」 ハイハイ。俺は膝を折ってその場にあぐらをかいた。「じゃあ当たってなかったらスイカ買ってきてよ。」 「オーケイ。」羽のシュプール描く音も、テニスボールの弾む音も、この景色によく似合ってる。 雲が速いなあ… 日常でどれだけ狭い視界で暮らしているかがよくわかる。今は目の支配できる端から端まで、 その彩を浴びることができてる。ちょっと蒸し暑いのも、それはそれで夏の重要な重低音。 景色から零れ落ちた羽が俺のテリトリーに触れる。俺を取り戻す。拾い上げると、そこに 真鍋の手があって、沿って顔を動かすと、いつもの天使の笑顔。羽は喪よりは天使に似合う。 俺は剣も持てないし、魔法も使えないモブの一人。無力なプレーヤー。 「ありがとう」 これまた素敵な魔法。彼女は元のところへ早足に戻り、何事もなく飛ぶ練習を始める。 調和してる。そのまんまじゃないか。サイコウの暇だ。俺はオミのほうをチラリとも見なかった。 遠く、鐘の音が通る。少し長めの風が生まれる。 「オイ、オミ。もう帰ろうぜ。タイムアップだよ。スイカもってこい。」 俺もオミも、気のない返事しか返さない会話。それはそれでアリっちゃアリだけども、 でもオミはそう思ってなかったみたい。 「オイ!」 多分その魔法が、俺の世界を不自然にずらした。輪郭は狭まって、砂に立つ影に導かれる。 あっという間に俺の目を奪われた。大きな世界に浸り続ける作業は強制終了。 命令もしてないのに体中に電気と液体を流し込む機関を刺激する。俺は無防備だった。 それ以上に真鍋は無防備だった。その一瞬、真鍋は、制限される高さを羽に許すどころか、 一切注意を払っていなかった。そのせいで蝋の羽はトチ狂って禁を無視。高く上りまくって、 主を危険にさらす。矛盾。コマがひとつ二つ送られた。現世の常識もしらねえほどウブ?まさか。 彼女は膝をたたんでその両手を、彼女の前側だけにあてがおうとしたのだ。 彼女が俺に向けていた背は、明らかにそのあおりを食ってる。おかげで度肝抜かれた。大穴だ。 空に舞う紙くずが光を遮って曲げる、こともされない。ディスプレイ越しのCGじゃない。 羽はトチ狂って高くひるがえり、呑気に空気に漬かることを全身で楽しむようなペースでしか、進まなかった。 その先にあったのは、彼女の生の体ひとつ。たいした面積でもない覆いだと思っていたが、それがはがれることで、 ようやく160cmは長いとわかった。柔らかな曲線は腰の辺りから膝下まで渡る。緩やかに、コワク的に。 両脚。その付け根。すらりと伸びた真ん中の境界。そしてその下に、奥に、真鍋の儚さがひそんでる。 ふいに浮かぶ笑顔。リアルに通る感覚。あの柔肌も、唇も、風と熱と冷気と、そして何者かの視線の全てを 全部吸い上げて、彼女の真んナカに流しているんだ。 網膜を持って行くのは、何も悪魔に限ったことじゃない。それどころか、いわんや。 俺のすべての視線を縛るポイントは、真鍋の瞳に吸い付いた。喜怒哀楽のない、ただ素直に、 驚いた顔。そして多分彼女の視線のすべても同じようなプロセスをたどって、俺の目に釘付けられたとわかった。 目の端で、ようやく輪郭を削られて行く白。波打つ二つの宝石。こみあげる太陽より赤い熱。 心地よく、痛く、同じ電気が俺の同じところを劈いてく。彼女のはっきりと示す矛盾。太陽に唇まで 捧げる危険を押して、天使は、その感性を選んだの? 酔いからさめて気がつけば彼女は消えた。他にも色々なものが目の前から消えてたかもしれないけど、輪郭の外。 今わかった。アダムだって木の実の一つ二つ食うさ。罪くらい甘んじて背負う。だけど俺以外の誰かが、 そんなこと言い出したらきっとぶん殴る。俺はやっぱりモブどまりだ。 「いやー、ヤベエよ。コレ。マジで。すごくね、アレww」 甘いけど苦い。そんな心は誰かと分けちゃいたいけど、少なくとも今は、何故か、オミとは気が進まなかった。 砂が低く旋回する。女の残り香。俺は祈った。できれば他人からこの景色について聞くことがない様に。 苦いけど、やっぱ甘い。俺の体は正直に、当たり前に、ちゃんと動いていたからわかる。 俺は彼女に向いてない。そんな気がする。 (end)
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「久しぶり……って言ってるんだけど、無視?」 「あ、いや、後藤さ……貴女、生きて――」 「ん? や、アンタに言ったわけじゃないんだけど」 凍りついたように動けなかった高橋が、我に返って発した言葉を、しかし彼女はただ一言で斬り捨てた。 なぜだ。 後藤真希生存の可能性については、先日の中澤と紺野による説明から理解できる。 だが高橋愛は後藤真希の弟子だったはずではないのか。 それに、声をかけたのが高橋に対してではないとすれば、必定それは、 「れいな。アンタに言ってるんだけど?」 聞きなれない声が、だが、れいなの胸の奥から郷愁を引き出した。 声は確かに聞きなれない。 彼女の容姿も肉眼でじかに見るのは初めてだ。 しかしこれは。この感覚は。 「ま、待ってください後藤さん! 一体いままでどこに、いやそれより――」 「っさいなぁ。アンタに用はないって言ってんでしょうが」 刹那、高橋に向けられたのは殺意をともなう氷の一瞥だった。 ブリザードを浴びたかのように、高橋の全身が強張るのがわかった。 "脅威"の右腕が無造作に振りあがる。 「危ないッ!」 かばうように踊り出たのは咄嗟の判断だった。 直後に、その行動は正解だったと思い知る。 高橋に向けられた"脅威"の掌を中心に景色が、空間が捻じれ、渦を巻き、放たれたのだ。 地面と平行に走るいかずちとでも表現すれば良いだろうか。 雷鳴が轟き、破壊の奔流は地面を派手に蹂躙し、余波だけで背後にあったビルを二棟倒壊させた。 無事だったのはれいなの周辺約一メートルの範囲と、余波からもまぬがれた背後の地面数十メートルだけだ。 「ふぅん。けっこー適当にやったんだけど。詠唱もないのにたいした威力ね、超能力」 "脅威"はその光景にたいした動揺も見せず、ただ自分の掌を見つめて感心したような声を上げている。 彼女の言葉に、周囲の惨状から意識をそらさざるを得なかったのはれいなも同様だった。 「詠唱」という超能力者が使うはずもない単語。 加えて、まだ超能力の威力について深く知らないかのような彼女の口調。 嫌な予感がする。 同時に、彼女が"後藤真希"の姿をした"別の誰か"であることも理解した。 「なん、や、これ……。こんなん、昔の後藤さんだってそう簡単には――」 「……高橋さん、上のハンターさんも連れてできるだけ遠くに避難してください。 アレは後藤真希さんなんかじゃない」 「後藤さんやないって、じゃあ一体」 「アレは、アレは――」 ――魔術師、です。 回答をそう濁したのは、無意識がそれを認めることを拒んだからだろう。 超能力者の彼女にとっては寝耳に水の回答ではあったのだろうが、 れいなの口調に鬼気迫るものを感じたのか、高橋は言われるまま瞬間移動で姿を消した。 先にこの機体の威力を見せたのは正解だったのかもしれない。 あの"脅威"としょせん人間の延長線上にいる超能力者では、 そもそも生物学的に規格が違いすぎる。 「お。空気読めんじゃんあのコ。改めて久しぶり、れいな。 じゃあまあ早速だけど、どんくらい腕上げたか見てあげる」 彼女はにこやかにそう言って、腰のベルトに提げた白い拵えの日本刀を一息に抜き放った。 鯉口を切る動作。鞘も持つ角度。抜き放った刀身を保持する姿勢。 その一連の動作だけで、予感がひとつひとつ確信に塗りつぶされていく。 応じるように、れいなもウェポンラックから取り出した刀を正眼に構えた。 「あ、そだ。ついでにこの身体の調子も見ておかないと」 思いついた調子で言うと、彼女は傍らにあったマンホールの蓋を念動力で目の高さまで持ち上げた。 滞空し、くるくると回転するそれを彼女は満足げに見つめる。 次いで、氷のような視線がれいなを貫いた。 ああ、やはりこの感覚は――。 「んじゃー、ピッチャー第一球、投げますッ!」 刀を握った右手を彼女が振るうと、 その動作に呼応するかのようなタイミングで中空の蓋が轟きを残して掻き消えた。 音速を超えた速度で迫る、もはや刃物と化した回転する凶器。 れいなは視認すらできないそれをこともなげに刀の柄頭で地面に叩きつけ、八極拳の震脚の要領で踏み砕く。 「お、さすが。お見事」 なぜ念動力の調子を確認するのに先ほどのような直接攻撃ではなく、 マンホールの蓋を操って投げるという間接攻撃を選択したのか。 それはおそらく彼女が、――れいなの"能力殺し(スキルキリング)"について熟知しているからだ。 「じゃ、次」 念動力による補助があるのか、彼女は瞬間移動と見まがうような速度で肉迫してくる。 柄を握る腕を顔の右横に置いた構えから、神速の一太刀が浴びせられる。 示現流、蜻蛉(とんぼ)の構えから放たれる初太刀は二の太刀要らずの一撃必殺。 超能力――否、魔力の補助を受けた彼女のそれは極意、雲耀(うんよう)の域に達している。 切先はれいなの腕、間接部に照準されていた。 防弾繊維は防刃機能までは備えていないものだ。 まともに受ければ容易に断ち斬られることは間違いない。 だが、すでにれいなは身体に染みついた足捌きで移動、刀を右肩の上に廻し、相手の初太刀を抜いている。 右肩の太刀に遠心力を加えてそのまま廻し、さらに肩を入れて返しの一撃を放つ。 柳生新陰流は三学円の太刀がひとつ、斬釘截鉄(ざんていせってつ)。 示現流を先の先を制する必殺の殺人剣とするなら、柳生新陰流は後の先を制す転(まろばし)の活人剣。 スーツによって膂力、スピードを増したれいなの斬撃を回避することは不可能。 かと言って刀で受ければ、切先の単分子層は容赦なく相手の刀を裁断するだろう。 今の一合は完全にれいなの斬釘截鉄が制したと見える。 「へぇ。上げてんじゃん、腕」 しかしそれはあくまで、――常人の域での話。 彼女は不敵にも微笑むと、れいなの斬撃を刀の側面で撃ち、流した。 パワードスーツの豪腕に振るわれたそれを、 まして必殺の一撃を外された姿勢から瞬時に流すなど、尋常ではない。 距離とスーツの膂力を考えれば、銃弾の軌道をそらすような神業だ。 しかも、この至近距離はれいなの"能力殺し"の有効範囲内。 すなわち彼女は超能力や魔力に頼らず、純粋な個人の技量と膂力でそれを成したことになる。 やはり彼女は、もはや人間などではないのだ。 「ほら、驚いてる暇なんかない、よッ!」 左右から八の字を描くような廻し撃ちが次々とれいなを襲う。 これは柳生新陰流の勢法。 彼女もこの流派の技を使いこなしている。 当然だ。れいなに最初にこの勢法を教えたのは誰あろう、――彼女自身なのだから。 れいなは常道を無視し、繰り出される撃ち込みをあえて刃部で受けにかかる。 刃部で受けさえすればそれだけで彼女の刀を裁断できるのだ。 だが、彼女はたくみに手首をひねり、先と同じように刀の側面、 鎬(しのぎ)を使ってれいなの刀身側面を撃ちすえてそれを防ぐ。 れいなの撃ち込みに対しても、同様に鎬をぶつけて斬撃は流される。 結果、二人の斬り合いはまさに"鎬を削る"の語源にふさわしい激烈な真剣勝負の様相を呈していた。 十合。二十合。 斬り結ぶたび、剣戟は無人のビル街に鳴り響く。 懐かしい。 時折浴びせられる指導的な罵声。 もう何度見たかわからない、様々な古流剣術を修めた彼女特有の変幻自在の太刀筋。 それらがあまりにも懐かしい。 やはり、そうなのだ。 たとえ後藤真希の姿をしていようと。 目の前の彼女は、まがいなく――。 「アハハッ! やば、ミキ相当愉しいかも! そろそろこういうのも混ぜていこうか!」 彼女が距離を取り、空に掌を向け、何か異国の言語を早口に紡ぐ。 網膜に表示された周囲の気温が、氷点下近くまで下がっている。 同時に湿度も異様に下がり、空気中の水分が何処かで消費されていると知る。 気がつけば、れいなを中心に巨大な氷の柱が何本も地面から生えていた。 見間違えようのない、これは"氷結"の魔術。 彼女は地を蹴り、柱を蹴り、れいなを撹乱するように周囲を跳び回りつつ、斬撃を浴びせてくる。 それらを半ば無意識に受け流し、れいなはスーツの中で涙をこぼした。 「美貴ねえ……。」 眼前で哄笑を発するヴァリアントでも人間でもない、後藤真希の姿をした彼女は、 れいなが捜し求めていた実姉、藤本美貴以外の何者でもなかった。 それを確信した瞬間、内部電源の活動限界を告げる機械的な電子音が内耳を木霊した。
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深々。 降り積もる雪は白く、軽い。 夜の闇に雪の景色は、古ぼけた街道をモノクロに染めていく。 まるで褪せた写真のように味気ない背景は、時間の止まったような感覚すら覚えさせる。 冷えて行く温度が、周囲から全ての熱量を消し去るにつれて、現世からも隔離される浮遊感が、木製の建屋に染みていく。 町は眠っている。 何もかもを知らないで、ただいつもと同じだけの自分だと思っている。 その歴史情緒溢れる一角の、垣根の向こうに孕んだ物を知らないでいる。 きっと誰もが夢にも見ないのだろう。 変わることを。 変わってしまった事を。 止まる景色の中で、積み重なる白い嵩だけが、時間の経過を知って居た。 時計の音は小さく、意識しなければそのかち、かち、とした鼓動は聞き取れなかった。 どこまでも無音に思える周囲に、自分だけが溶け込んでいない。 灯りの無い室内は暗く、窓の外は白く。 まるで現実感を感じさせないものが、網膜を叩いている。 眠気が頭の中に広がってきたのを機会に、ようやく時計を確認して見たら、そろそろ日付の変わる頃合いだった。そろそろ明日の準備を済ませて、シャワーを浴びて髪の毛を乾かし、暖かいベッドに潜らなければ。だって明日だっていつも通りに学校はあるし、機能もあまり寝ていないし、大体、肌に悪い。 そもそもあまり几帳面な性分では無いし、片付けるのなら明日でもいいのではないか。 けれど床の汚れは今のうちに拭いておかないと、この年代物の畳に引導を渡してしまうだろう。第一これ、どうすれば取れるんだろう。染み抜きとか使ってどうにかなる物なのか、ちょっと解らない。 そこまで考えて、妙に冷えた思考に驚きを覚えては見たが、こんなものか、という白けた感慨が続けて出てきてしまうのだ。中々薄情な物ではないか。 そもそも悲しんだり驚いたりする資格などあるのだろうか。今更しおらしいリアクションをしてみた所で、多分、全て遅い。でもただ一つ、弁明が許されるとすれば、別にこういった事を望んだ覚えなど一度も無かった筈なのだ。 退屈が嫌いで、飽きが溜まらないのは確かで、常に変化を求めて生きて来た。 それは貪欲と言うべき程ではあったが、だからと言って日常に安らぎを覚えない訳では、勿論無い。平凡な女子高生で有るのだ。そんな大それたことを望みはしない。 ただ、珍しい服とか、好きな歌手の新譜とか、少しばかり大人の真似事みたいな恋だとか、そういう物に憧れた程度。料理に混ぜる鷹の爪くらいの刺激があれば、きっと満足だったのではないか。 けれど目の前に在るのは、まるで劇薬だ。 鍋の中にぶちまけられたのは、胡椒や塩ではなく猛毒だ。 与えられた刺激が最後、御馳走様が南無阿弥陀仏。 妙な笑いが、口から洩れた。 ぬるりとした感触を、右手の中で握りしめる。手にしっかりと馴染む、持ちやすい柄と、園先につながる銀色の刃がきらりと光る。 畳の上に横たわる、肉色のズタ袋。 顎の下をずたずた。 腹の上をざくざく。 十七年の生活の中で、一度も見た事が無い家族の表情。 歪んだ顔。 けれど、もう動く事もない。呻く事もない。 私の眼には真っ赤に映る。 純白の窓の外。漆黒の部屋の中。 目の前だけが、深い赤。 汚れたキャンバスに、勢い任せにぶちまけた赤い絵の具。 闇の中で色が見えるわけもないのに、とてもとても鮮やかに、深紅に映る。 綺麗な、赤。 生まれて初めて綺麗と感じた赤。 だけど少し錆びたような ―――赤銅の色。 ▼ 赤銅京都 ▼ 『赤銅色』 銅と金の合金である、赤銅を思わせる色。しゃくどういろ、もしくはあかがねいろ。 黒褐色肌や、髪の毛の色の形容として用いられる。 なお、赤銅に発熱処理を加えると、青紫がかった黒色に変色する―――――――― ▼ 青。 それが私にとっての絶対であり、崇拝対象となる。 かつてシャガールの絵を視た時、私の頭は青に染められた。 優れた芸術というのは、その凄さが言葉で説明できなくても、心に響き、魂を穿つと言う。 少なくとも小学生のころ、まだ存命だった父と共に訪れた美術館で、私はその間隔を確かに味わった。 マルク・シャガールとは、とてつもなく綺麗な青色を使う画家で、私の美的センスの根底を固めたのは、まちがいなく彼なのである。 それからというもの、私の中で「青」は新しい物。特別な、新鮮な色としてインプットされた。 青は私にとって特別な色であると断言する。 逆に古臭い物は、私の眼には赤茶けて映る。 まるで錆びた鉄のような、苦くて酸っぱくて、眼に痛い色。 鳥居の赤。夕焼けの赤。日の丸の赤。イライラする。 この街は真っ赤だ。大人も、子供も、同級生も、みんなみんな真っ赤な錆びだ。 新しい風の無い、死んだ空気の香りに、いつだって胸がむせる。焼けて焦げそうになる。 そんな赤さの象徴である私の名前など、最も強い嫌悪の対象でしかない。 赤石 紅子。 ふざけた様な名前だが、れっきとした私の本名である。 生まれた瞬間に「紅く在れ」と言われているとしか思えないようなこの名前は、勿論全く好き」ではない。 この名前、近所にある稲荷の千本鳥居で出会った両親が、それにちなんで神様の加護が有るように、と名付けたそうだ。 だが自分の名前にどんな意味や願いが込められていようと、流石に首をかしげたくなるようなセンスじゃあないか。 おかげで私は「あかちゃん」等と言う不快極まりない仇名を賜り、小学生の時点で既に、名前を変えたい一心で強い結婚願望を抱いてしまうほど 捻くれた人格形成に一役買ってくれた。 そういう訳で思春期の私は、信心深い両親が嫌いで、要らん縁結びをした神様が嫌いで、ついでに古臭いこの街が大嫌いだった。 ここは四季に色づく町、古都、京都。 山河とビルが同居し、和と洋の建築が適合する風景。 現代と歴史が手を取り合って、この街の絶妙なバランスは出来ている。 住み慣れた人間でこそ有り触れたものと感じるそれは、本来とても特別な空間。 かつての都であるその町の表情は、如実に季節の色を反映する。 「忘れられた日本の姿」というものがこの街のセールスポイントであり、周知の認識でもあった。 だとしても、である。 京都と言う町に生まれた人間が、古風に育つとは限らない。 そもそもこの街が人気を持つのは、ありふれた文明社会に飽きた人が、「古い」という「新しさを求めているだけに過ぎない。 それは街の歴史を懐かしむノスタルジイなんてものではなく、やはり自分にとって非日常となる体験の刺激でしかない。 そういう刺激を好むなら、そこが京都でもタージ・マハールでも、趣味にさえ合えば、彼らは関係ないのだろう。 結局人間なんていうのは、自分の日常から脱却して、常に新しい何かを求める生き物なのだ。 それならば、人を最も苦しめて死に追いやる毒は、「退屈」であると断言できるんじゃないだろうか。 だから、田舎の人間が都会の華やかさに憧れ、都会の人間が田舎ののどかさを愛するように、 歴史の街で生まれた私が「新しさ」を求めてるのは当然の事だろう。 正直言って私は、この街の古臭い空気やはっきりしない住民、辺りに漂う、まるで夕暮れ時のような後ろ向きさに閉口している。 この新しい世紀に、この街ときたら、未だに恥の美学やら、暗喩の奥ゆかしさなんてものを有り難がっているのだから救えない。 そのくせ礼儀作法に五月蠅い旧型人間どもは、人への不満だけは一人前にコレクションしているのである。 NOと言えない日本人と言うやつが見たければ、此処にわんさか生息していると観光客に教えて差し上げたい。 成長し、十七を数えた私は、この街からしてみればエキセントリックな人間といえる。 頭を茶髪に染め、海外のブランドを好み、常に先鋭的なファッションを好む様は、年齢的に珍しくはあるまい。 学生と言う人種はことさら、これらに敏感で、私にとっては正直、居心地のいい生活環境なのである。 赤石さんはいつもお洒落だね。 新しいことはいつも赤石さんが最初に見つけて来るんだよ。 しまいには、赤石さんが眼を付けた物は流行るとまで噂されている。 私自身、そう持て囃されることが嫌ではなかったのだが、だからといって皆の中心人物に祭り上げられると言うことはなかった。 それは私が積極的に、他人との関わり合いを避け続けていたからに他ならない。 だって、いくら学生で新しい物に憧れている連中だからと言って、根っこがやはりこの街の人間。 なぁなぁで周りに合わせ、空気を読み合い、異口同音で流行の尻尾だけ追っている。 真似をしても開拓しようと言う気持ちがさっぱりありゃしない。 なにせ、あいつら根っこが古臭いのだ。
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. ジョン・エヴァンス・オードリヒ・ヴェンツェル――――本人でも噛んでしまいそうな名前だ――――は、憂いを帯びた表情で学院の廊下を歩いていた。 高い身長、整った顔立ち、優しい語り口。学院でも人気がある方ではあった。しかし最も人気を集めているのは彼自身ではなく彼の作る人形であろう。繊細で美しく、隅々まで作者の神経が行き渡ったそれは、帰省時の実家への土産、誕生日の贈り物として求められるのが常だった。まだ商売活動を正式には初めていないエヴァンスだったが、将来の成功の兆しは既に見え始めていた。 今彼は人形を作るための材料を買いに行った帰りだった。身体はそれなりに鍛えているので大きな荷物でも難なく抱えて長距離を歩くことができる。ちなみに、抱えているのは、材料だけではない。 部屋の前まで行こうと思っていたが、それより早く、目的の人物と遭遇する。 「あ……マリー」 「――――あ、エヴァンス! やっほー」 呼びかければ少女が気づいて足を止める。 もし自分が声をかけなかったら彼女はこちらに気づいただろうか。気づいたとしても、挨拶をされる程度だろうな、彼女は礼儀正しいが、自分とは親しくない。そんなことを考えながら、エヴァンスは社交的な笑みを作ってみせる。 「やあ、こんにちは。ちょうど君に会いに行こうと思っていたんだ。 ……この本、カロルス先輩に渡してくれないかな」 「えっ」 抱えていた『魔道甲冑・その特質と性能―序―』をオネッタに手渡す。人形作成に心血を注いでいるカロルスと言えど最近刊行されたばかりのこの高価な本はまだ手に入れてないだろう。魔道甲冑を元に魔人形を作成中だと聞くからこれは役に立ってくれるはずだ。自分はもう読み終わったし、どちらかというと装飾的な、少女の人形を注文されることが多いエヴァンスにとっては、もう必要のないものだった。だから、必要としている人物に所有してほしかった。 それだけではない。 本を受け取ったオネッタは頬を赤くしながら微笑んだ。今からカロルスに会えることに喜んでいるのだ。 エヴァンスはオネッタの恋を応援したかった。 「私はもう読み終わったから。返さなくて良いと、彼に伝えてほしい。 あと……この菓子も。皇都で最近流行りらしくてね。味は保証するから、話ついでに一緒に食べておいでよ」 「あ……ありがと! えっと、あの、本当にありがとなー! じゃあ、いってくる!」 「うん。いってらっしゃい」 ぶんと勢いよく一礼して、慌ただしく走っていく少女の背中に、ひらひらと手を振って見送る。 オネッタとカロルスの仲が発展するように祈りながらも、エヴァンスは心の中で泣きそうになっていた。 エヴァンスはオネッタのことが好きだ。 オネッタは覚えていないだろうが、ふたりは随分と前、歳が片手で数えられるほどの頃、一度会ったことがある。 場所はパーティ会場だ。貴族であるエヴァンスの父が開いたものだった。パーティには、親族を始め、ヴェンツェル家の所謂「お得意様」が集められていた。ヴェンツェル家はあまり位の高い貴族ではない。その地位を保っていられるのは、長く続いているという時間の保証と、細々と遺伝される魔人形師の腕のためだった。父は魔人形師ではないしエヴァンスの兄もそうであったが、エヴァンスの大叔父は優れた魔人形師で、町に住む一般人はもちろん、貴族や宮廷からよく注文を受けていた。そのためにパーティでは商売仲間やお得意様が集められ、親交を深めるとともに、魔人形師の才能を見せ始めているエヴァンスを、早いうちに紹介しておこうという狙いがあった。 幼いエヴァンスは聡く、それに気づいていた。父が、跡継ぎではない自分に才能が見えたのを喜んでいたことも、父にとって自分が将来のパトロンに過ぎないことも知っていた。 だからパーティはエヴァンスにとって息苦しくつらいものでしかなかった。彼はかわるがわる握手を求めてくる大人たちから逃れ、中庭で独り、誰にも気づかれないよう佇んでいた。 そんなときだ。オネッタと出会ったのは。 オネッタの母も優れた魔人形師だ。だからパーティに呼ばれたのだろう。汚い大人たち――――もちろんオネッタの母は違うが――――の中で、オネッタは純粋で、明るかった。パーティの目的など全く知らなかったらしいオネッタはエヴァンスの手を引いて一緒に遊んでくれた。 エヴァンスはそれが、十数年経った今でも忘れられない。 自分の恋は、叶わないだろうと思う。 オネッタがカロルスに恋をしていようがいなかろうが、結果は同じだ。何故なら自分はオネッタとは完全に違う部分がある。そしてその点について一生わかり合うことはできないだろう。 オネッタは魔人形を作ることに対して一直線だ。向上心もある。彼女の母のように優れた魔人形師になりたいと望んでいる。 だがエヴァンスは逆だ。 彼は魔人形を作るのが大嫌いだった。もちろん、作っている最中は、夢中になって、話しかけられてもわからないほどだ。良いものができれば非常に満たされた気持ちになる。そうでなければ素晴らしい魔人形を作ることはできない。作った魔人形のことは、我が子のように愛しく思う。だが同時に、強い嫌悪感と後悔、絶望に襲われるのだ。 魔人形を嫌いになったのは10歳のときだ。 エヴァンスは家の中で孤独だった。両親は自分の地位を保つためのパーティや様々な催し物の出席に忙しいし、例え時間があるときでもエヴァンスになど構いはしなかった。両親にとって大事で、愛するに値するのは自分たちの分身ともいえる跡継ぎの兄だけだ。エヴァンスに魔人形師の才があるとわかってからはその傾向が一層ひどくなり、外で乗馬などをして両親と遊ぶ兄とは違い、エヴァンスは魔人形作成に関する書物を与えられて、自室に事実上閉じ込められていた。 そんな彼にも、心の癒しはあった。 召使いのマーサだ。彼女は優しく、エヴァンスの側に両親よりも長い間いてくれた。 孤独に耐えきれず泣いてしまうエヴァンスを、例えそれが夜中であろうと、優しく抱きしめてあやしてくれた。 エヴァンスはマーサのことが両親よりも大好きだった。 そのマーサが、エヴァンスが10歳のときに、死んだ。 マーサはおかしくなっていた。かけられた言葉に対して適切な返答をしない。既に終わったはずの仕事を繰り返す。具体的に言えば、洗い終わった服を、もう一度洗濯して、乾かすなど。どう見ても異常だった。エヴァンスはそれが心配で、あるとき廊下を歩いているマーサの腕を掴んだ。ねぇどうしたの、大丈夫、と。 揺さぶった瞬間に、掴んでいたそれが、取れた。 ごとり。赤いじゅうたんの上に落ちた腕はエヴァンスの網膜に焼きついている。それは空洞だった。腕がとれたマーサはそのときに壊れた。「おやまぁエヴァンス様どうなさったのですか。可哀想に、お菓子を食べましょうね。お菓子を食べましょうね。おおおおおかおかお菓子をたたた食べ食べ食べましょしょしょしょしょお菓子お菓子お菓子エヴァンス様エヴァンス様エヴァンス様えヴぁんす様えばんスさまぁっああああアアああああ」。床に倒れ、あらぬ方向を見たまま、エヴァンスの名を繰り返したマーサの声は、エヴァンスの鼓膜から離れない。 マーサは魔人形だった。 エヴァンスが尊敬していた、優れた魔人形師である、大叔父が作ったのだった。 「ああ遂に壊れたか。長いこと持ったなぁ。お前が寂しくないように作ったのだが」 「う……嘘だ! だって、だってマーサは思考していた! 温かかった!」 「そりゃそうさ。あれは、生前ヴェンツェル家に仕えていた召使いの霊を降霊術で定着させ、アルカナで温めて人間らしく見せていただけの魔人形なんだから。なに、お前にもじきにできるようになる。才能があるんだからな」 新たな魔人形を作りながら何でもないことのようにそう言った大叔父が、エヴァンスの心にとどめをさした。 (どれだけ私が君を求めても、君が私を見ることはないだろうね、マリー。私は魔人形が嫌いなのだから…… 君は、魔人形を愛する者同士で愛し合った方が、幸せになれる) だからカロルスとオネッタの間に、自分は入っていけない。 オネッタが廊下の角を曲がり、その背中が完全に見えなくなってから、エヴァンスは振っていた手を下ろして、溜め息を吐く。 ああ――――注文が山積みだ。 早く、人形を作らなくては。 .
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10 :ファイナル ファンタズム ◆6/PgkFs4qM:2008/01/27(日) 23 50 19 ――Interlude 「私の目の前に居る貴方は誰?」 耳に残るは波のせせらぎ。辺り一面に広がる白い砂浜。 空はいつの間に夜になったのやら、深い暗黒に染まり、星すら望めないくらいに深い闇色を呈していた。 遠くを眺めても、どこまで続いているのやら分からない、延々と続く波際。 ざざぁん、ざざぁん、と潮風もなしに反復する波の彼方に、白いヤドカリを見つけた。 常人の倍以上の大きさを誇る、足長ヤドカリ……。そこに知識として有する儚さは微塵も見受けられず、どうしてかそれが妙に可笑しかった。 充分に周囲の景観を楽しんだ後、未だ口を開かぬ少年に視線を戻す。 モノクロの異常な世界に対し、平然と構える白い少年。 否、白い、というのは語弊があるかもしれない。だって、少年が白いのは髪と肌ばっかりで――それ以上に自身を塗り潰すくらいに黒い服を纏っていたのだから。そうして私を見つめる瞳だけは、この白と黒ばかりの世界で、唯一蒼く輝いていた。 「誰なの? 貴方は」 今度はゆっくりと、聞き漏らしのないよう、慎重に問い質す。 少年は答えない。 喋らない。眉ひとつ動かさない。 半ば予想していた結果ではあったが、不思議と怒りは沸いてこなかった。 言葉がなくとも解る。この子は……私に何かを伝えたいんだ。 でも何を? 言いあぐねているの? ……言うのが怖いの? 彼は口を開かない。なら――私も喋らない。 今目の前の少年に必要なのは、言葉による督促ではなく、迷いを整理するだけの時間を与えてくれる、沈黙だ。 そうして私達は貝を噤んだかのように一言も発さず、ただ時間だけが流れていった。 ずっと。ずーーっと。 「…………」 「…………」 やがて幾許かの時が過ぎ、それが少年の迷いを吹き消すに充分な価値を含んでいたのか。少年は変わらず何かを語ろうとはしなかったが、代わりにそっと私の傍へと歩み寄り、想像通りに冷たい手で私の手を掴んできた。その際に、硬い物体を手の内へと潜り込ませる感触。 ――途端、頭に何処かの風景が流れ込んできた。 「――――!」 最初に感じたものは一陣の風。 頬を擽る柔らかさが去った後、視界に飛び込んできたのは虹の光。 木々豊かで、澄み切った湖が大地を潤し、透き通った風が千の恵となって地表を撫でる。――そんな世界。 もし理想郷が真に存在するのならば、と連想せずにはいられないくらいに世界は穏やかで――――反面、生命の輝きが欠片も見出せず、虚無的だった。 視界は私の意志に関わらず動き始め、何処かの神殿の麓に辿り着いて、ようやく元の白黒だけを色調とする虚しい風景へと戻る。 「……これは?」 やはり少年は答えない。 代わりに、次いで脳内へと流れる文字の羅列。蹂躙し尽すノイズの雄叫び。 命の洗礼。楼閣の下に。母なる石。西への誘い。忘却の町。隔たれし信仰。とこしえに響く歌。誓いの雄叫び。龍王の導き。主のなき都。瑠璃色の川。流転。累家の末流。ルーヴランスという者。をとめの記憶。をかしき祖国。をかしき再会。をかしき旅立ち。戦慄き。神を名乗りて。よりしろ。猛き者たちよ。礼拝の意味。そしりを受けつつも。鍔音やむことなく。願わくば闇よ。汝の罪は。南方の伝説。名捨て人ふたり。 なにゆえにその子は。永いお別れ。楽園を求めるは。螺旋。烙印ありて。礼賛者。羅針の示すもの。群れ立つ使者は。結び目。向かい風。迎え火。歌うは誰がため。ゐぬる場所。望むはあらゆる答え。畏れよ、我を。鎖と絆。闇に炎。眦決して。決別の前。武士道とは。古代の園。選ばれし死。天使たちの抗い。『暁』。 「う……」 不覚にも吐き気が込み上げ、全身を襲う立ち眩みが頭への衝撃を物語る。反射的に頭を押さえるも、無数の傷に犯されし我が身は、既に自身の支配下の外へとあった。 だが問い質さねば気が済まない。まるで掴みようのない少年の真意を。私が選ばれた理由を。 「何……コレ……。貴方、これは歌だとでもいうの? わからないわ……。貴方はいったい、私に何を伝えたいの?」 「…………」 少年は答えず。 だが、その質問は彼を失望させるに値するものだったのか。少年は無表情から一転、暗く沈鬱した表情へと変化し、こちらに背を向ける。 制止の言葉を紡ぎたくとも、顎が死んだみたいに動いてくれない。やがて闇は光により掃われ、閃光が網膜を焼くその先には――――。 「……神?」 ――Interlude out. 「――着いた。バストゥークだ」 汗に塗れた額を手の甲で拭い、溜まった疲労を少しでも誤魔化そうと息を吐く。 ふと顔を見上げてみれば既に空は完璧に昼の様相を迎えており、厳しい徹夜明けの身もあってか、爽やかな陽の光が自身を丸ごと浄化するような不快さを感じる。 「しかし思っていたより時間が掛かっちまったな。せめて朝方には戻れると踏んでいたんだが」 「仕方ないさ。いくらチョコボを乗り換えようとも、騎乗者自身に溜まる疲労はどうにもならない。むしろこんな短時間で国家間を往復する貴方の方が奇特だと思う」 そうは言うが、急いでいたのだから出来る限りの早さを求めるのは当然であろう。 とはいえ彼女――莫耶をぞんざいに扱うことも躊躇われ、どう返したものかと逡巡していると、こちらの視線に気付いた彼女が満面の笑みを浮かべてそれに応えてきた。 「~~~~ッ」 慌てて視線を逸らすも、火照った顔は隠しようがない。 ……何だろう。何というか、彼女みたいにこう、好意を前面に押し出すタイプはちょっと慣れない。いや、例えばイリヤだってよく俺に抱きついたりして純粋に好意を示してくれたけど、彼女のは兄妹としての慕情なワケで、遠慮のない抱擁は年が離れているからこそ許される期間限定の荒技だ。だというのに、まさか自分と背丈が変わらない相手がこうも一途に慕ってくれるってのは……正直反応に困る。 「どうした? シロウ」 「い、いや、何でもないぞ……」 半年振りに再会した彼女は、かつての幼い面影は払拭され、何故だか立派なレディになっていた。 いや、確かにそれも十二分に驚嘆すべき事柄ではあったものの、それ以上に俺を困惑させたのが、成長した彼女が俺の知っている『彼女』と瓜二つであるという事実だ。 幼い頃からその兆しはあったとはいえ、端正な顔立ちはかつて心通わせた彼女を否が応でも連想させ、心強く思う反面、言いようのない寂しさを感じてしまう。同じ時を共有していない分、より一層それが顕著に感じられてしまうのだ。無論、莫耶に落ち度など全くないのだが……。 ――いかん。せっかく行方不明になっていた彼女と無事見えることができたというのに、俺は何を考えているのだろう。今は素直に彼女との再会を喜ぶべきだ。彼女に他の誰かの影を重ねるなんて、失礼でしかない。 「とにかく急ごう。釣れたての新鮮なスッポンなんだ。生きのいい内に食べさせてあげたい」 「ああ……って、スッポン、とは? これはレッドテラピンという名だが?」 「んん? スッポンを知らないのか? これは――っと、あぁ……」 予想もしなかった返答に思わず首を傾げるが、すぐさま彼女がこの世界の人間だということに思い至り、得心する。育った環境の差というか、そんなちょっとした文化の相違が何故だか不思議と可笑しくなってしまい、不覚にも面に出して噴き出してしまう。 「……そうか。くっくっ、いや、そうだったな」 「む、何故笑う。言っておくが間違えているのはシロウの方だぞ。私はそれを注意してあげたというのに……」 「いや、すまん。ふふ。なに、こっちの話さ。気を悪くしたなら謝る」 「納得いかないなー……」 そう言って頬を膨らませながら早歩きでバストゥークの門を潜る彼女。やはりその様が尚更可笑しさを込みあがらせ、彼女が背を向けているのをいいことに、気兼ねなくクスクスと笑い声をあげる。次いで彼女に置いてけぼりを食らわされないよう、小走りで機嫌の悪い莫耶を追いかけるのだった。 そして丁度バスへと通じる門を潜った時。 Ⅰ:目の前の彼女について考えた Ⅱ:先に居るであろう、カレンのことを思った Ⅲ:ふと、セイバーのことを想った 投票結果 Ⅰ:0 Ⅱ:6(over kill) Ⅲ:0
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(`・ω・´)「もし異論がなければ、これにSCP--を割り当てよう」 (´・ω・`)「そこは昨日埋まってしまった」 (´・ω・`)「えっ」 (´・ω・`)「まあ別の番号でもつけとけ。SCP-2719とかどうかな?」 (´・ω・`)「そこも埋まったが」 (´・ω・`)「呼び名が決まらないな」 (´・ω・`)「しょうがない、適当に渾名でもつけようぜ」 (´・ω・`)「なら『Di Molte Voci(伊:数多の声から)』ってどうかな」 Di Molte Voci(SCP Foundation) 登録日: 2017/02/27 Mon 00 07 06 更新日:2024/04/06 Sat 10 51 00NEW! 所要時間:約 7 分で読めます ▽タグ一覧 Communism will win Di Molte Voci SCP SCP Foundation 情報災害 面倒くさい ああ、私は財団職員の一人だ。すまないね財団アニヲタ支部の職員の諸君。 Di Molte VociはSCP Foundationに収容されているオブジェクト(SCiP)である。 …多分ここで多くの人は「ん?あれSCiPって番号で呼ばれるんじゃなかったっけ?」って思ったと思う。 このオブジェクトは、Di Molte Vociと呼ばれている。何故か?上の寸劇の通りである。 こいつに何かしら、公式な呼び名を与えようとしても、何かしらのイベントによってそれが変更されてしまう。 これはDi Molte Vociの呼び名だけではなく、他のことにも適用されるのさ。 例えば、このオブジェクトにはオブジェクトクラスも、特別収容プロトコルも存在しない。 もっと言えば、このオブジェクトは「報告書」自体が存在していない。報告書を書いても、それが後述の理由で「影響を受けてしまう」からなんだ。 ここにこのオブジェクトを収容するまでの間にあった研究者たちのやり取りの記録がある。 まあ公式なものではないんだが、そもそも「公式なもの」がないんだ。 概要 このオブジェクトは、カーニバルガラスで作られた道化師のマスク、だ。 金属光沢のある虹色に光るガラスだと思ってくれ。それで道化師のマスクができている。 このオブジェクトは、自分について言及した文章に影響を及ぼす。 といっても書いたらどこかへ連れて行かれるとか、執拗にかつて図書館であったと言及を強いられるということはまあない。 単純に、「文章の内容をランダムに他のそれと入れ替える」とか、「文章に書いてある記号が揃えられる」とか、まあそういうものだ。 でだ、このオブジェクトが影響するのは、「権威付け」された文章である、もっと言うなら「合意に基づいた」文章がアウトのようだ。 しかも参照閾値は4。どういうことかって?まず権威付けされた文章を書くだろ?それについて言及した文章を書く。これが参照閾値1だ。 それを更に参照する。参照する。そしてまた参照すると参照閾値4だ。つまりここまでの文章は影響を受けるわけだ。 310m程度近くにマスクがないなら少し弱まるようだが。 これを収容しないといけないわけだが、当然ながら「特別収容プロトコル」を制定することはできない。 決めても変えられてしまうからだ。 だから代わりに、「網膜スキャンを使って仮面をパスワードを必要としない金庫にしまう」ことにした。 そして影響を受けた文書も適切に隔離し、サイト全体にクラス-3G記憶処理を施すことにした。 どうもスクラントン博士(*1)曰く今回のDi Molte Vociのようなミーム複合体に対して 試すテストケースとして考えているようだな。 発見経緯 このオブジェクトは休暇中のエージェント・コジョがたまたまアンティークショップで発見したものだという。 他のアンティークとは名ばかりのガラクタには値札があったが、その仮面は物々交換を望んでいた。 エージェント・コジョはそのアンティークショップの老婦人に金を払う代わりにランチをおごってそれを手に入れたわけだ。 ただし、エージェント・コジョはあくまで珍しい風変わりな宮廷道化師だなとしか考えていなかった。 彼はインスタグラムに写真をあげていたのだが、そのマスクについてのいくつかの感想を彼の母に伝えようとしたとき、 異常性を見つけた。 彼はいくつかをピックアップする代わりにインスタグラムの全てのコメントを読んでしまったのだ。 その時はエージェント・コジョは疲れのせいにして、そのまま電話を切った。 その後、エージェント・コジョは職場にもマスクを持ち込んだが、そこでもやっぱりおかしいことが起きたので、 エージェント・コジョはこれを財団が収容すべきだと考えた。 後に調査をしたところ、店は閉まっていたが、エージェント・コジョに預けた老婦人、グレタ・ランザはどうも仮面の性質を知っていたようだった。 それによれば、どうやらどこかの学校で仮面を見せびらかしていたら、そこのデータベースが影響を受けたようである。 そこでグレタ・ランザはエージェント・コジョにある種預けてほっとできたのかもしれない。 グレタ・ランザは最近は近所の人も動向を知らないという。 まあ、つまりエージェント・コジョはある意味で、この仮面の取り扱いを『間違った』わけだ。 本当ならばその異常性がわかった時点で、財団に持ち込むべきではなかったんだろう。 まあ、財団エージェントとしては、異常物品を財団で収容させよう、というのは当然のことだから別に彼を責めるつもりはないがね。 実際、財団はなんとかこれを金庫に入れているわけだし、下手に外にあるよりはマシだろうさ。 余談 「SCP-2864」のナンバーのアドレスにDi Molte Vociが登録されているが、 別にこれは財団世界でもSCP-2864にされてるわけではなく、 「ジョークオブジェクトではない以上ナンバーを当てはめる必要がある」ためナンバーを一つ潰して登録しているのだろう。 実際、原文では上の『もし異論がなければ、これにSCP--を割り当てよう』の部分は、 適当な本部サイト上に登録されたSCPのナンバーが(-ARC、-D、-EX含むが情報災害系オブジェクトと-J、001提言は除く)ランダムに表示される。 この記事では再現のため、アニヲタWikiの接続者数をナンバーに置き換えて表示している。 形式がTaleそのものだが、れっきとしたオブジェクト記事である。 簡単に言えば、「正式な報告書を残すと書き換えられてしまう(情報災害)ので、研究者たちのやり取りを残してあるマスク」ということである。 上の文章も、そのやり取りの記録を見ながら喋っているとでも解釈してくれ。 CC BY-SA 3.0に基づく表示 Di Molte Voci by Communism will win http //www.scp-wiki.net/scp-2864 http //ja.scp-wiki.net/scp-2864 この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 面白いオブジェクトだね、正式な報告書にできないSCiPか -- 名無しさん (2017-02-27 06 56 11) タグに The SCP Foundation 追加お願い -- 名無しさん (2017-02-27 10 34 31) めんどくせーなwww大好きこういうの -- 名無しさん (2017-02-28 19 13 52) 元記事読んだときはこの効果のせいでチンプンカンプンだった思い出…こうして解説してくれるのが本当にありがたい -- 名無しさん (2017-02-28 19 16 47) 一部の単語が赤くなることについての解説もほしい -- 名無しさん (2017-03-07 16 19 47) 「数多の声で」ってSCP記事他にも無かったっけ? -- 名無しさん (2017-04-19 03 47 36) ↑2 元のやり取りの中でも赤くなっていて「直感はあるが、まだ確かではない。調査してみよう。- グラフ」という扱い。 -- 名無しさん (2017-04-26 19 43 19) ↑2SCP-939だな。 -- 名無しさん (2018-05-29 23 18 47) 近所の人すら老婦人の行方がわからないの怖くない? -- 名無しさん (2018-10-23 06 19 53) ディ・モールテ良いぞ!良く改変している!! -- 名無しさん (2020-02-01 00 13 37) こういうのこそGOCに任せたほうがいいんじゃないかな -- 名無しさん (2020-06-26 15 26 23) おーロードするたびにこれにSCP-○○を割り当てようの数字が変わる、面白い -- 名無しさん (2021-07-28 03 36 25) めんどくさいだけで良かったな -- 名無しさん (2023-11-22 08 56 47) 名前 コメント
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惑星や世界観について簡単にまとめておきます。 若干のネタバレを含む可能性があります。 テラ連邦 太陽系、タウ・セチなどをはじめとする16の恒星系と79の植民惑星からなり、主な文明圏は太陽系を中心としておよそ300光年の広がりがある。コニウス星系はそれよりさらに10倍も離れた場所に位置する、文字通りの辺境。 各星系はワームホール・ゲートを利用した超光速移動路によって結ばれている。 連邦制で大統領が存在する。植民に関しては星間植民事業団という組織がある様子。 連邦暦という暦を採用している。作中の会話から推測すると、ペリカン号が墜落したのは連邦暦273年11月頃(F.E.0273-11-24.0753 テラ標準時)。 作中の会話から推測すると、(連邦暦が西暦と同じく1年=365地球日だとして)作中年代は西暦2700年頃。 コニウス星系 地球から約3200光年、白鳥座α星「デネブ」から約20光年の距離にある小さな恒星系。コニウスは発見者の名前。地球から見るとデネブの背後にあるため、発見されたのは(作中の時点から)わずか数年前のことである。 主星は、作中の記述によれば、太陽とほぼ同じ質量と寿命を持つ。太陽よりもやや青みがかって白く見えることから、表面温度は太陽よりも高いかもしれない。 コニウス・ブルー(コニウスII) コニウス星系の第二惑星であり、本編の舞台となる惑星。惑星の大きさは地球とほぼ同じで、気温・酸素濃度など、人類が入植可能な最適環境を持っている奇跡の星。 惑星の98%が海に覆われている。陸らしい陸はなく、あるのは点在する島々だけ。これが主な理由となって大規模な入植は行われず、作中時点では調査目的のために少数の科学者が派遣されているのみである。 地軸がほぼ垂直で季節の変化がない。 衛星を持たないためか、地球よりも自転がわずかに速い(1日はおよそ20地球時間)。 上述した環境のためか、小規模ながらも強い低気圧が頻繁に発生する。 デネブ 参考→デネブ - Wikipedia 実在する白鳥座α星。現時点で地球からの距離は1600~7200光年と推定されているが、作中では最も一般的な説とされる3200光年を採用している。 恒星としては最大級の明るさを持つ星であるため、その寿命は太陽と比べて非常に短い。現在の推定年齢は200万年であり、あと100万年ほどで超新星爆発を起こすと推定されている。また脈動変光星であるため、活動は不安定。作中で言及されるコニウス星系の設定は、デネブの推定年齢と矛盾する。おそらくは作中の時代までに、デネブの誕生年代を再考するに足る何らかの新発見がなされたのであろう。 コニウス・ブルーから見えるデネブの明るさはおよそ-9.8等となり、昼間でも肉眼で見える。(これは地球から見た満月(-12.7等)の約15分の1、一番明るいときの金星の約100倍超の明るさである。) タウ・セチ 参考→くじら座タウ星 - Wikipedia 実在するくじら座タウ星。太陽から11.9光年の距離に存在する、太陽によく似た主系列星である。 作中においては古くから人類の入植が進められていたが、テラフォーミングが難航したため入植者は宇宙コロニーで苦しい生活を強いられていた。エミリーの生まれ故郷。 体内へのインプラント技術等も発達しており、さまざまな悪環境下でも生存可能なように人体改造が積極的に進んでいるようだ。 ワームホール・ゲート テラ連邦に属する各星系を結ぶ移動手段。相対性理論に基づく「光速の壁」を迂回できる。ただし、スケジュール外の航路を開くには数百兆クレジットという莫大な費用がかかる。 コニウス・ブルー調査隊(連邦アカデミーE97科) 現在滞在しているのは第二次調査隊である。 フェルドマン教授(天体物理学者・研究チームのリーダー) ジェレミー博士(地質学者) ラマンスキー博士(異星生物学者) エミリー(助手) この他、劇中には登場しないがあと2名ほど現地調査員がいると思われる。 また、近いうちに水生生物調査メンバーなどが補強される予定である。 主な備品としては下記のものがある。 ペリカン号 グライダー2機(シーガル、ホークモス) 気球 雪上車 宇宙船 ペリカン号 識別番号:TFFS-70922-74C 船舶形式:C型トリニティ級輸送艇(3世代前の型らしい) 所属:連邦アカデミーE97科(コニウス・ブルー調査隊) 恒星間航行能力を持つ。大気圏再突入/離陸能力の有無は不明。 地球-コニウス・ブルー間の物資輸送に使用されるほか、調査基地の気象観測・通信衛星的役割も担っている。 円筒状の船体はブリッジ、居住ブロック、推進モジュールなどいくつかのモジュールから成り立っている。少なくともブリッジと居住ブロックは通路で結ばれている。各モジュールには救命ポッドが1台ずつ搭載されている。 進行方向最前部(円筒上面)に展開されているのは、微小天体との衝突を避けるための物理保護フィールドもしくはバサード・ラムジェット用のスクープフィールドと思われる。 乗員2人で積荷を載せると空きスペースがほとんどない、という記述からして、円筒形の船体の大部分は燃料・積荷で占められているようだ。 船内では通常、与圧服なしで生活できる。 惑星コニウス・ブルー周回軌道にて宇宙艇への微小天体衝突事故が発生し、主機関を損傷したペリカン号は惑星大気圏へ落下。 与圧服 ペリカン号に搭載されている与圧服。およそ20kgとやや重いが一人で着脱可能で、宇宙空間でも大気圏内でも使用できる。単なる気密服としての機能だけでなく、各種生体センサーや老廃物リサイクル機能を備えており、搭載チップやサポートAIの管理により、着用者の健康状態を適切に維持できる。保温性能、耐衝撃性能にも優れている。 立体スキャナー 被写体を3次元のモデリングで撮影可能な高性能カメラ。 ファインダーや撮影した情報はヒューの網膜に直接投影可能。 撮影したデータは様々な情報と共にファイリングされ、図鑑として機能する。 残念な事に(?)本作では鳥以外の被写体…エミリー等は撮影できない。 グライダー グライダーといってもSF的ハイテクの塊であり、ちょっとした小型航空機とも言えなくはない性能を有している。 ナノポリマー製で翼面形状を状況に応じて複雑にコントロールできる翼を持ち、イオンスラスターで推進力を得ることができる。さらに、簡易な物理保護フィールドを使用して、ニュートン力学の常識に一見逆らうような機動も可能である。 シーガル ラマンスキー博士が持ち込み、ヒューの生命線となるグライダー。 元は低空レジャー用だったものをカスタマイズして使用している。地球製。 低空レジャー用であったため操縦者への身体的負担・機体強度を考慮されて500mの高度制限(リミッター)が掛けられていたと思われる。 ラマンスキー博士による注文(カスタマイズ?)で機体強度が上がっており、同時に高度制限も解除されていたはずだがメンテナンス時にメーカー側の手違いでリミッターが再度設定されたようである。 本来は安全を考慮しての高度制限機能であるが山越えをしている際に誤って失速、山に激突するという逆に危険な罠機能となっている。 実際、このリミッターが原因で負傷・墜落死したプレイヤーは数知れない。 まったくもって傍迷惑な手違いである。 ホークモス エミリーの使用するグライダーで、その名の通り蛾のようなシルエットをしている。 長期間にわたる極地調査用で、シーガルより様々な面で高性能になっている。 未来的かつ長期探索用らしい驚くべき機能を有しているのだが、それはゲーム内で見てのお楽しみ。 食料 携帯食 腐りもせず、栄養バランス・カロリーともに文句なしの完全食。 ただし、味はパサついていてうまくないらしい。 現地食料 天然で人類が入植可能な星であるコニウス・ブルーでは、食料調達という面でも理想的な環境にあるようだ。 鳥と人の酵素も近いのか、鳥が食するものは大抵、人も食して栄養やカロリーを体内へ消化・吸収することが可能だ(ただし微量元素が不足しているため、長期滞在時は別途補給が必要であろう)。 コニウス・ブルーの生物 鳥 地球の鳥によく似た生物。 ただし地球の渡り鳥とは違い、季節のないコニウス・ブルー独自の理由から渡りを行っているようだ。 大陸がほぼ存在しないコニウス・ブルーにおいては限られた島々でその生態系を守るしかないため、繁殖や餌、生態数上限、突発的な気候など、様々な理由から渡りを行い、島々を転々として生活している。 一つの島に定住するタイプの鳥も存在するが、上述の理由により、必ずしも永久に定住するわけでもないようだ。 そういった特殊な環境のためか、地球の鳥とは違った独自の進化や生態、知能を有している。 個々の鳥については鳥の項を参照。 竜 竜については竜の項を参照。