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俺が朝目覚めると、目の前にハルヒの寝顔があった。 一瞬戸惑ったが、昨日のことを思い出す。 ちなみに俺達は付き合っていたのだが、こういうことをしたのは今回が初めてだ。 俺もまぁしたくないわけではなかったのだが、ハルヒに拒否されるかと思うと怖くて出来なかったんだ。しかし、昨日ハルヒが俺のことを挑発してきて、ついに俺の理性がぶちぎれてしまったわけだ。 そう、俺とハルヒはその何と言うかまぁそういうことをしてしまったわけだ。 ハルヒは中学時代に付き合いまくってたにも関わらず初めてだった様だ。まぁ、俺もそうだったがな。 そんなことを思いながらハルヒの寝顔を見る。 やっぱりきれいだ。俺の自慢の彼女だもんな。 時計を確認すると、そろそろおきたほうが良い時間のようだ。今日は学校もあるしな。さぼろうかと思ったが、ハルヒと二人でさぼったら古泉たちに何を言われるか分からん。 さて、ハルヒを起こすか。 俺が起こすと、ハルヒは比較的寝起きが良いようで、スッと起きた。 「おはよう」 あぁ、おはよう。体、大丈夫か? 「あ、うん///大丈夫そう。ちょっとスースーするけど…」 学校行けそうか? 「大丈夫」 そうか、じゃ早く準備して行くぞ。 「キョン、おはようのキスして。」 あぁあぁ、わかりましたよ。 チュッと軽いキスを落とす。 「ねぇ、もっとやってよぉ」 仕方ねぇな・・・学校前だぞ? 俺たちはさっきより濃厚なキスをした。 「ぷはぁ・・・キョン、朝から激しすぎよ。」 すまん、お前が可愛すぎだからだ。 「もう///」 すると、俺はあるいたずらを思いついた。 おいハルヒ、お前今日俺のいう事聞いてくれるか? ちなみにこういうとき、ハルヒは大抵俺のいう事を聞いてくれる。付き合う以前はともかく、こいつから告白してきたし、ハルヒは俺と二人っきりの時は比較的素直だ。 「何?キョン」 これ挿れて学校行ってくれないか? 「え、これって…」 俺達は昨日、初夜だとは思えないほど激しいプレイをし、道具なども使ったわけだ。 俺の手に握られていたのは、昨日ハルヒの前戯に使ったバイブだった。 「でも…」 いいだろ? 「ばれちゃわないかな?」 大丈夫だよ、お前もスリルは大好きだろ? ほら入れるぞ。 「あ・・・ん」 ハルヒの中にバイブを入れる。 「ん・・・あぁん・・・」 おいハルヒ、もう感じてるのか?一日持たないぞ? 俺の中で何かのサディズムが目覚めてしまったようだ。 まぁ、付き合う以前は散々尻に敷かれていたし大丈夫だろう。 何やかんやあったが、俺達は無事に学校に時間通りについた。何とか一緒に来たこともばれなかったようだ。 そして ハルヒの膣には今バイブが挿入されている。 授業は始まったが、ハルヒは真っ赤な顔をしたままずっと下を向いたままだ。 かくいう俺はチラチラと後ろを確認している。 すると、ハルヒが俺をつついて小さな声で言ってきた。 「キ、キョンー…あ・・・はぁ・・・もう無理っぽいよぉ・・・」 確かに、もうハルヒの秘部から出たと思わしき匂いが充満し始めている。このままじゃばれてしまうかもしれない。 じゃぁ、この授業が終わるまで我慢できるか? 「が、頑張ってみるわ・・・」 休み時間になった瞬間、ハルヒが話しかけてきた。 「キョンー・・・早く抜いてぇ・・・もう無理だよぉ」 そうかそうか、よく我慢したな。 ほら、立て。保健室行くぞ。 ハルヒは立とうとしたが、その瞬間にしゃがみこんでしまった。 「キョン、立てないよぉ、足に力が入らない・・・」 仕方がない、俺はハルヒをお姫様抱っこして保健室に行った。 すると、ちょうど良いことに保健の先生は居なかった。 ほら、ハルヒ、寝転がれ。抜いてやるから。 「ありがと・・・キョン。」 ハルヒは顔を真っ赤にしていて、相当感じているようだ。 俺はハルヒをベッドに寝かせ、先生が来てもばれないようにベッドの周りのカーテンを閉める。 ハルヒ、足を開けろ。 グチョ、ヌチャ いやらしい音を立てながら、ハルヒが股を開く。 俺はパンツの上から、軽くハルヒの秘部を撫でる。 「あ・・・」 ビチョビチョじゃないか、むしろ洪水だ。感じてるのか?ハルヒ。 「ん・・・もう、キョンのせいなんだから。」 俺はハルヒのパンツをずらし、バイブを抜いた。 抜いたあとにハルヒのハルヒの穴を見ていると、何かを求めているようにヒクヒクしている。 「キョン、そんな見ないで・・・」 そうか。 俺はそういうとハルヒのパンツを元に戻した。 正直俺も今すぐにでも押し倒したかったし、俺の息子もかなり大きくなって居た。それにハルヒも感じていて、もっとして欲しいようだ。だが、あえて裏切ってみる。 「え・・・?キョン、もっとしてくれないの?」 何言ってるんだ、ここは学校だぞ?家まで我慢できたらやってやるよ。 「えー・・・」 やれやれ、これからあと学校が終わるまで、俺もハルヒも耐えられるかな・・・ っていうか初めてなのに二人ともやりすぎだろw
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基本情報表紙 タイトル色 その他 目次 裏表紙のあらすじ 出版社からのあらすじ 内容 あらすじ「ライブアライブ」 「朝比奈ミクルの冒険 Episode 00」 「ヒトメボレLOVER」 「猫はどこに行った?」 「朝比奈みくるの憂鬱」 挿絵口絵 挿絵 登場人物 後に繋がる伏線「朝比奈みくるの憂鬱」(伏線) 刊行順 基本情報 涼宮ハルヒシリーズ第6巻。2005年4月1日初版発行。 表紙 通常カバー…涼宮ハルヒ 期間限定パノラマカバー…生徒会長、喜緑江美里 タイトル色 通常カバー…赤 期間限定パノラマカバー…水色 その他 本編…293ページ 形式…短編集 目次 ライブアライブ…P.5 朝比奈ミクルの冒険 Episode00…P.52 ヒトメボレLOVER…P.95 猫はどこに行った?…P.187 朝比奈みくるの憂鬱…P.242 あとがき…P.298 裏表紙のあらすじ 幻にしておきたかった自主映画だとか突然のヒトメボレ告白、雪山で上演された古泉渾身の推理劇や、 朝比奈さんとの秘密のデートSOS団を巻き込んで起こる面白イベントを気持ちいいくらいに楽しんでいる涼宮ハルヒが 動揺なぞしてる姿は想像できないだろうが、分かさのハプニングであいつが心を揺らめかせていたのは確かなことで、 それは俺だけが知っているハルヒの顔だったのかもな……。 お待ちかね「涼宮ハルヒ」シリーズ第6弾! 出版社からのあらすじ 文化祭でしでかしたあの出来事が原因で唯我独尊直情径行な涼宮ハルヒが動揺するというのは、まあひとことで言えば感慨深い。 まだまだコイツには俺でも知らない一面があるということか――。大人気シリーズ第6弾! 内容 短中編集。収録されている「朝比奈みくるの憂鬱」は、第7巻『陰謀』直前のストーリーであり、重要なストーリーでもある。 「ライブアライブ」、「朝比奈ミクルの冒険 Episode 00」はアニメ化された。 あらすじ ※ネタバレ記述があるので、原作未読の場合は注意。 「ライブアライブ」 +... 文化祭当日。映画編集で徹夜明けのキョンは、ゆっくり座っていればいいからと体育館でのステージ発表団体を見に行く。 だが、体育館のステージに現れた人物は意外な人物だった。そこに現れたのは…… 「朝比奈ミクルの冒険 Episode 00」 +... 第2巻『溜息』で撮影・作成した映画を文化祭で公開した作品。 「ヒトメボレLOVER」 +... 12月のある日、キョンの家の電話が鳴る。 声の主は中学のクラスメイトであった中河。その用件は、ある人物を見た瞬間、光り輝くオーラのようなものを纏っていたらしい…… 「猫はどこに行った?」 +... 夏に孤島の別荘で行われた推理ゲーム、そのウィンターバージョンが冬休み旅行の2日目、宿泊先である鶴屋邸別荘にて始まろうとしていた。 そのキーアイテムとしてシャミセンも連れてこられていたのだが…… 「朝比奈みくるの憂鬱」 +... 年が明けて1月。いつもの習慣で文芸部室の扉をノックするキョン。しかし反応はなかった。 長門がいるのかと思い、キョンはドアを開けるが、そこには朝比奈みくるがいた。だが、どこか様子がおかしい。 みくるは今度の日曜日、デパートでお茶の葉を買いたいと言ってキョンを誘うが、2人だけで行きたいと言う…… 挿絵 口絵 涼宮ハルヒ、キョン、長門有希(ヒトメボレLOVER) ⇒ 朝比奈みくる、鶴屋さん(ライブアライブ) ⇒ 朝比奈みくる(朝比奈みくるの憂鬱) ⇒ 長門有希、朝比奈みくる ⇒ 挿絵 「ライブアライブ」 P.27…涼宮ハルヒ、長門有希 ⇒ P.45…涼宮ハルヒ、キョン ⇒ 「朝比奈ミクルの冒険 Episode 00」 P.63…朝比奈みくる(ミクル)、長門有希(ユキ) ⇒ P.73…朝比奈みくる(ミクル)、古泉一樹(イツキ) ⇒ P.87…朝比奈みくる(ミクル)、長門有希(ユキ)、シャミセン ⇒ 「ヒトメボレLOVER」 P.101…キョン、キョンの妹、シャミセン ⇒ P.131…涼宮ハルヒ、キョン ⇒ P.147…涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、長門有希 ⇒ P.175…長門有希 ⇒ 「猫はどこに行った?」 P.205…朝比奈みくる、長門有希、鶴屋さん ⇒ P.217…新川、森園生 ⇒ P.225…涼宮ハルヒ、鶴屋さん ⇒ 「朝比奈みくるの憂鬱」 P.245…朝比奈みくる ⇒ P.291…朝比奈みくる ⇒ 登場人物 涼宮ハルヒ キョン 長門有希 朝比奈みくる 古泉一樹 鶴屋さん 谷口 国木田 キョンの妹 中河 新川 森園生 多丸圭一 多丸裕 シャミセン シャミツー ハカセくん 後に繋がる伏線 「朝比奈みくるの憂鬱」(伏線) みくるの「あたしたちの未来を望まない人たち」という存在 ⇒ 第7巻『陰謀』、第9巻『分裂』にて半分回収 キョンが古泉に聞いた「『機関』以外の別組織」 ⇒ 第7巻『陰謀』、第9巻『分裂』にて回収 刊行順 <第5巻『涼宮ハルヒの暴走』|第7巻『涼宮ハルヒの陰謀』>
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涼宮ハルヒ!!(長門有希ちゃんの消失第3話) スタッフ 脚本:待田堂子 絵コンテ:島津裕行 演出:羽多野浩平 作画監督:古澤貴文 作画監督補佐:松本文男、鵜飼一幸、今西亨 原作収録巻 第2巻(p5~P60)Epiloge8 涼宮ハルヒ(P1~3除く) Epiloge9 不法侵入 Epiloge10 ガールズトーク(P61~P64除く) BD/DVD収録巻 第2巻収録予定 概要 サブタイトルの元ネタは「Epiloge8の涼宮ハルヒ」より 原作の第8話から第10話をアニメ化。 ただし、ハルヒから別れたシーンより、漫画から追加シーンとして部室の片付けや、その帰り道の買い物での朝倉と長門のハルヒなどについての会話、廣田神社とみられる神社への和服姿での初詣など追加シーンがある また原作のカラーページに相当する(1-3ページ)分や、Episode10の最後は次回のネタフリなためカットされたのかもしれない。 今回古泉初登場なのは原作通り。 体育教師の森園生は出番が1,2話で原作にある出番をカットされたものの、今回の原作にある出番でようやく登場。森園生役の声優は、涼宮ハルヒちゃんの憂鬱や涼宮ハルヒちゃんの麻雀まで演じていた声優の大前茜が引退したため、小見川千明が継いで担当している。 なお、小見川千明は長門有希ちゃんの消失と共通の音響監督が担当したネギま!での大前茜の役も引き継いでいる。 パロディ等(涼宮ハルヒちゃんの憂鬱や涼宮ハルヒの憂鬱絡みも含む) 部室にXmasの文字(涼宮ハルヒの消失では外から鏡文字、長門有希ちゃんの消失では中からだと鏡文字とで逆) 今回も第2話に引き続き、『涼宮ハルヒの憂鬱第1期シリーズで使われた「おいおい」』のアレンジバージョンが使われている。(憂鬱I、憂鬱II、射手座の日、サムデイインザレイン)さらに第3話では、第1期シリーズで使われた「やれやれおいおい」のアレンジバージョンが使われている。(憂鬱II、退屈、ミステリックサイン、孤島前編) 放送版とBD/DVD版との違い キャスト・スタッフ(詳細) キャスト 長門有希:茅原実里 キョン:杉田智和 涼宮ハルヒ:平野綾 朝倉涼子:桑谷夏子 朝比奈みくる:後藤邑子 鶴屋さん:松岡由貴 古泉一樹:小野大輔 森園生:小見川千明 女性店員;幸田夢波 野球部キャプテン:金光宣明 野球部員A:西山宏太郎 野球部員B:駒田航 スタッフ 脚本:待田堂子 絵コンテ:島津裕行 演出:羽多野浩平 作画監督:古澤貴文 作画監督補佐:松本文男、鵜飼一幸、今西亨 ゲスト衣装デザイン:今西亨 動画検査:堤章江、Fan Ru Jun 美術設定補佐:上津康義 美術監督補佐:石田喬子 色指定検査:琴吹名人 特殊効果:小森靖彦 スプリクト制作:志村豪 2Dグラフィックス:野崎崇志 CGディレクター:畑山勇太 CGデザイナー:渡辺雄斗 CGプロデューサー:青谷崇司 マネジメントCGプロデューサー:畑秀明 CG制作進行:加藤彩乃 制作デスク:海上千晶 設定制作:松井明穂 制作進行:石田里志 制作協力:A.C.G.T 協力:フォントワークス 原画 安藤正浩 今井恵 小倉恭平 佐藤晴香 横山悦子 Heo Gi Dong Kim Ye Jin 古澤貴文 星山企画Jang Chan Ho Hwang In Beom 第二原画 足利真美恵 齋藤和広 佐伯路子 陣内美帆 田中立子 堤章江 橋本久美 C2C スタジオアド 星山企画Heo Jae Hye 動画 杉田真理 中島順 常州卡佳劫漫有限公司Cao Xiang Hu Dan Huang Bing Zhi Luo Dan Yang Ke Hu He Wang Wang Chao Chen Xia スタジオ九魔 仕上げ 常州卡佳劫漫有限公司Tamaru Masahiko Zhang Li Xin Chen Juan Xu Yan Hon Oh Young Ran スタジオ九魔 背景 ムクオスタジオ井上慎太郎 真喜屋実義 中根崇仁 一瀬あかね 村田裕斗 大門友花里 中村沙和子 SAKO 撮影 T2スタジオ佐藤陽一郎 長谷川大介 渡部達也 ダン シャオ フイ (ポストプロダクションなどは省略) 放送日程 東京MXテレビ:2015年4月17日25時40分-26時10分 BS11:2015年4月18日27時00分-27時30分 AT-X:2015年4月18日22時30分-23時00分 チバテレビ:2015年4月20日24時00分-24時30分 tvk:2015年4月20日24時00分-24時30分 テレ玉:2015年4月20日24時30分-25時00分 サンテレビ:2015年4月20日24時30分-25時00分 TVQ九州放送:2015年4月20日26時35分-27時05分 信越放送:2015年4月21日25時56分-26時26分(特番のため1分押し) 岐阜放送;2015年4月22日24時00分-24時30分 三重テレビ放送:2015年4月23日25時20分-25時50分 dアニメストア:2015年4月23日12時00分-1週間配信 RAKUTEN SHOWTIME:2015年4月24日12時00分-1週間配信 アニメパス:2015年4月30日12時00分-1週間配信 ニコニコ動画:2015年5月7日12時00分-12時30分 BD/DVDチャプター 使用サントラ 0 00~0 23 SE? 0 24~1 53 OP 1 54~1 56 SE 1 57~4 13 『やれやれおいおいアレンジ』 4 14~4 36 SE 4 37~5 54 『?』 5 55~7 16 SE 7 17~9 13 『?』 9 14~9 45 SE 9 46~11 49 『亡き少女の為のパヴァーヌ』(モーリス・ルブラン) 11 50~12 41 SE 12 42~15 15 『?』 15 16~16 21 SE 16 22~18 11 『?』 18 12~19 08 SE 19 09~21 05 『おいおい、アレンジ』 21 06~21 45 SE 21 46~22 34 『?』 22 35~24 04 ED 24 05~24 10 次回予告(SEなし) 一覧 話数 サブタイトル 第1話 大切な人 第2話 もろびとこぞりて 第3話 涼宮ハルヒ!! 第4話 Be my Valentine
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「あのね、涼宮さんに聞きたいことがあるのね」 「何?」 放課後の教室で、文芸部室に向かおうとしていた俺とハルヒに話しかけてきたのは阪中だ。もちろん返事をしたのはハルヒだ。俺はこんなにそっけない返事はしない、だろう。 「キョンくんにも聞いてほしいのね。相談何だけど…」 阪中の話によると、阪中は面識のあまりない隣のクラスの男子生徒から告白されたらしい。しかし阪中はその男子生徒の事を良く思ってなく断りたいのだが、どう断ったら良いのかわからない。 そこで、中学時代に数々の男をフッてきたハルヒに聞いてみようと考えたらしい。俺は完全にオマケだ。 「でね、明日の放課後にもう一度気持ちを伝えるから、そのときに返事を聞かせてくれって言われたのね」 「そんなの興味ない、の一言で終わりじゃない! 何でそんな簡単なこと言えないのかしら」 「おいおいハルヒ、阪中は普通の女子生徒だぞ? もう少し阪中らしい断り方考えたらどうなんだ?」 「何よ、あたしが普通じゃないみたいな言い方はやめてくれる? それにあたしに相談してきたって事はあたしの流儀を聞きにきたって事よ! あたしのやりかたを言って文句あるの?」 「そうか。それはお前が正しい。だけどそれを押し付けるのはやめろ」 「喧嘩しないでほしいのね」 坂中の言葉で言い争いをやめた俺たちは真剣に協議をし始めた。 ハルヒの席を囲むように座っている。ハルヒと俺はいつもの席で阪中はハルヒの隣にイスを引き寄せて座っている。人が少なくなったので段々と声が大きくなってくる。 「じゃあキョン連れてって『コイツ私の彼氏なの~彼氏いるからむりなのね~』とか言わせて見ようかしら。」 「断じて断る。もっと普通なのはないのか?」 恋愛経験に乏しい俺にはアドバイスができるはずが無く、ハルヒの言った案を通すか通さないか役人的な仕事に専念していた。 ハルヒは非常に非現実的なアイディアばかりだすので俺は却下をくりかえした。阪中は自分の事なのに困った感じはなく、むしろ楽しげだった。 俺は今さらだが阪中は何故ハルヒに相談したんだろうと考えた。坂中の話しぶり、と言うか聞きぶりはハルヒに相談している形を取ってハルヒの過去の恋愛の体験談を聞きだしている感じだった。 不穏なことが起きなければいいのだが、と考えたが阪中なら平気だろうとスルーした。 そういえばルソーの一件以来阪中はハルヒに懐いてる。俺としてはハルヒが学校に溶け込んでる証拠のような気がして少し嬉しく思ってたりもする。 そんな事もあって俺はハルヒのためにも真剣に考えてやろうと思っていた。 「あーもう! 何で却下するのよ!」 「もう少し阪中の事を考えてやれ」 「これ以上はムリよ!!」 「じゃあ涼宮さんが言ってたようにキョンくん連れて行って恋人って言って見ようかななのね」 「こいつの言った意見ではそれが一番マトモなようだが、それは今後に関わるぞ?」 そう、俺の事を恋人と言い切ってしまえば翌日から男子生徒から始まり、少なくともこのクラスと隣のクラスの大半に知られてしまうだろう。 しかも、相手の男子生徒の事を考えると『あれは告白を断るため』とは言えない。 「わたしはいいのね。キョンくんがよければ」 俺が今後の事を考えていると、 「やっぱりキョンくんはわたしじゃ嫌なのね」 とか言われたので咄嗟に、 「嫌じゃあないし噂になるのはこいつのせいで不覚にもなれてしまっているんだ。」 何て口走ってしまう俺はどれだけお調子者なんだろう。ハルヒに助けを求める視線を出すとハルヒは少し不機嫌そうな表情で言った。 「噂になるのは恋愛禁止を掲げているSOS団としては困る事態だわ! 故に却下ね!!」 「じゃあどうするのね」 阪中は困ったように言った。でも俺には多少楽しそうに見える。これだけ考えた挙句振り出しなのだから俺もハルヒもどうしようもなくなっている。 「なぁ、理由なんて言わないで『ごめんなさい』とかだけじゃあダメなのか?何か聞かれても『ごめんなさい』で通ると思うぞ?」 恋愛経験ない俺が口出すのもどうかと思ったが素人の意見も取り入れた方がいいかも知れないと思った俺はそういった。 以外にもこれはシンプルでいいと言う事になってその方針で話を進めていた。ハルヒも阪中も良く考えれば簡単なことなのに思いつかなかったのはきっと2人が生まれつき変わった人間だからだろう。 「じゃあキョンくんと涼宮さんにちょっと実演してほしいのね」 まあ俺はそんな事を言われるとは思わなかったんで驚愕の表情をしていたと思うね。ハルヒほどじゃあないが。 ハルヒは顔を真っ赤にして口をパクパクしている。お前は金魚か? 「いいわ、やりましょう!」 何を言っているハルヒ! ここにはすでに阪中とハルヒしか居ないとはいえ恥ずかしすぎる! 「あたしはフラれるのは嫌いだからあんたフラれる役ね!」 こうなったらハルヒはとまらない。ムダに逆らうと後が恐いし実演が困難になる。覚悟を決めるしかない。 「しょうがない。じゃあ言うぞ?」と俺は恥ずかしいので視線を落とす。 「ハルヒ、好きだ。付き合って欲しい」 ああ、何でこんなに恥ずかしいんだろう。思ったより全然恥ずかしかったな。それより返事はまだなのか? 視線を上げてハルヒを見ると顔を真っ赤にしている。俺は余計に恥ずかしくなってきた。 「涼宮さん、返事しないとダメなのね。返事が聞きたいのね」 ハルヒはハッと我に返って、 「いいわ! 付き合いましょう!」 とか言いやがった。俺が断らなければダメだろ、と言うと咄嗟にでちゃったなんて言い訳してる。 「涼宮さんにキョンくんをフるのはムリそうなのね。ウソでもフれないのね」 「そんなことないわよ! 中学時代にふった事ないから咄嗟に……」 やめろハルヒ! ごまかしてると思われるぞ、と言おうとしたが言えなかった。阪中の言葉に遮られたからだ。 「じゃあ今度は涼宮さんがキョンくんに告白してみてほしいのね」 ハルヒは俺の顔を見て、少し考えてから言った。 「いいわ! よく聞きなさいキョン! あたしはアンタが好きよ! 付き合いなさい!!」 俺はハルヒの勢いに少し焦って思わず、『廊下に響くぞ、他の人に聞かれたらどうする!』と思って廊下の方に目をやると、廊下側に座っている阪中という女の子の期待に満ちた表情で我に返った。 とりあえず任務を完了しなければ、と一呼吸置いた。そしてやはり視線を落として言った。 「すまんがハルヒ、俺はお前とは付き合えない」 「何でよ!」 「すまん…」 「団長命令よ!!」 「すまん…」 「あたしの事嫌いなの?」 俺は一瞬狼狽した。ハルヒの声が少し悲しそうで、演技には思えなく視線をあげた。そこには悲しい顔をしたハルヒがいた。だけど、阪中に目をやると未だに期待に満ちた表情をしていたのでハルヒは気にしないことにした。 「嫌いじゃあない。だけど、すまん。」 「じゃあ、なんでよ…」 ハルヒの声は消え入りそうだった。見ればほんのり涙目だ。ハルヒの表情は呆然としている。なんだか演技とはいえ、心が痛んだ。 「もういいだろう阪中。こんな感じでいいのか? というよりはこんな感じでいいんじゃないか?」 「ありがとうなのね。でも、涼宮さんの悲しそうな顔を見てたら何だか断れる自信なくなったのね。だから明日の朝手紙で断る事にするのね」 たしかに阪中の期待の表情が無ければ俺は断り切れなかっただろう。それほどハルヒの悲しそうな表情は切なげで、守ってやりたくなってしまった。 未だに呆然としているハルヒに目をやった。俺は、もう演技は終わったんだぞ、と言った。 「涼宮さんはキョンくんに演技でもそんなこと言われて、割り切ってるハズなのにショックだったのね。だから反対の事を言ってあげれば元にもどるのね」 そういい残して阪中はさっさと帰ってしまった。俺は、最初から手紙にすればいいのにとか、こんな状態のハルヒをおいて返るなんて、とかいろいろ阪中の批判を思い浮かべたが阪中は本当に困ってたんだろうという結論に着いた。 きっと阪中は手紙じゃあ失礼だと思ったのだろう。そして、今のハルヒには阪中はいないほうがいいと判断したんだろう。そう思うことにする それからハルヒは呆然として、俺はハルヒを置いていくわけにもいかずにハルヒの前の席に座ったまま過ごした。 そうしてハルヒが回復するまで待とうと思ったが、夕日が落ちてきた頃にはとりあえず家まで送ってやろうと決心した。 「ハルヒ、かえるぞ」 コクリとうなずき立ち上がるが、動こうとしない。俺はいつもと立場が逆だとは思いながらもハルヒの手を取って引っ張った。 俺はハルヒに何て言えばいいんだろうとか、そういえば今日のSOS団はどうなってるんだろうとか考えながらハルヒの家の近くまで送った。長門並みの無言が続いた。 ハルヒの家の近くまで来て、こんな状態でハルヒを家に帰していいのか考えた。頭の中で阪中のセリフが蘇る。 『涼宮さんはキョンくんに演技でもそんなこと言われて割り切ってるハズなのにショックだったのね。だから反対の事を言ってあげれば元にもどるのね』 どうしたらいいのか分からなかったのでとりあえずハルヒの家の近くの公園に連れて行く。ベンチに座らせ、俺も隣に座る。とりあえずあれは演技であることを強調しようと思う。うまく言えるかな。 「ハルヒ、そろそろちゃんと目を覚ませ!」 ハルヒは多少意識が回復したように見えた。今度はハルヒは悲しそうな表情を浮かべている。俺を見て、視線を落として、もう一度俺を見てから消えるような声で言った。 「キョンはわたしが嫌いなの?」 俺は戸惑った。そんな事を言われるとは想像もしていなかった。あれは演技だから気にするな、と言おうとしていたのに言えなかった。 いや、会話の流れを考えるなら十分普通のセリフだし、言わなければならないのだが何故か口にできない。 「ハルヒ、俺がハルヒの事の事を嫌いなわけがないじゃないか。いつも一緒にいて、そんな事もわからないのか?」 「でも、好きじゃないんでしょ? あたしはキョンにとってはその他大勢。あの球場の5万人の観衆と一緒。同じ場所にいるけど深く関わることはない。」 小学生の時の話か。どうしようか迷ってあることを決心した。告白だ。 「ハルヒ、一度しか言わないから良く聞け。俺はお前の事が好きなんだ。さっきの演技とは違って今度は俺の本心だ。」 「ウソよ!」 ハルヒは急に叫んだ。 「だってあたしはあんたに好きって言われたときは演技だってわかってても断れなかった。そのときに気付いた。あたしはアンタが好きって。 でもあんたはアッサリあたしをふったじゃない。気付いたのよ。キョンはあたしの事を好きではないって。本当に好きだったら言えないハズだって。」 返す言葉もない。古泉なら何て言うだろう。いや、変な言葉でも俺は自分の言葉で言わなければいけないんだろうなと考えた。 「もう一度だけ言うぞ? 俺はハルヒが好きなんだ。」 と言ってからさらに続けた。 「俺も心が痛んださ。でも、演技だってわかってたから堪えることができた。きっと俺はハルヒの事を好きだと自覚していた分だけ心の準備ができていたんだろう。 でも、それでも心が痛んだ。ハルヒの気持ちも痛いほどわかる。ハルヒが俺の事をどれだけ好きかも伝わった。… …だからハルヒ、お前がそれだけ好きになった人の言う事を信じてくれないか?」 ハルヒは無言でこっちを見た。でも何故だかさっきまでの焦燥感や不安感はなかった。気がつけばハルヒは俺の手を握っている。 「ありがと。キョンのいう事だから信じる。」 「そうかい。」 俺はやっとの事でぎこちない微笑みをハルヒに向けた。そっとハルヒの両頬に手のひらを当て、ハルヒの顔に近づいて目をつぶり、キスをした。 ゆっくりと、甘いキスをしながら両手をハルヒの背中において抱きしめた。 そしてゆっくりとハルヒを放してから見たハルヒの顔は学校帰りの顔とは違って嬉しそうな表情をしていた。その中には安堵の表情も読み取れた。 「帰ろう。ハルヒと過ごす時間はいっぱいあるんだからゆっくり楽しんでいこう。」 そういってハルヒを家の前まで送っていった。 翌日の朝になって阪中の事を思い出しうまくやったか気にもなったが俺にはハルヒの方が気になったので阪中には悪いが気にしない事にした。 そして、教室でハルヒを確認して軽い挨拶をして、じゃあ、あらためて今日からよろしく伝えた。 俺とハルヒの関係は誰にも言わない事にした。 しかし言わなくても誰もが気付いている。 そして、交際を始めてからもハルヒと俺はいつでもどこでも変わらない事に気付いた俺は、谷口とかの言う俺とハルヒの関係は昔から付き合っているようなものなんだなと気付いた。 俺はあれから毎日部活の後にハルヒを送っていき、あの公園で話して、最後にキスをして帰るという日課が追加された。 そのことに幸せを感じながら日々を送っていく。
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涼宮ハルヒの明日の続編です。 「……と言う小説を執筆する予定。許可を」 って、おぉい!!!ちょっと待ってくれ、長門!! なんで俺が死ななきゃならんのか、きちんと詳しく事細かに説明してくれ!! 「…物語の展開上の必然。 あなたが死んでくれた方が読者の共感を呼び易く、好都合」 俺が死んでくれた方が好都合ってドサクサに紛れて 結構、酷い事を言っちゃってますよ、長門さん…。 「…そう」 『…そう』じゃねぇ!!しかも、なんで皆の名前は若干、変わってるのに 俺だけ『キョン』のまんまなんだよ…ハルヒはハルヒで… 「ちょっとこれ、何なのよ!?有希!! 別にキョンがどうなろうとそこは構わないとして…」 いやいやいや、ハルヒ!どうでもよくはないだろ?そこは!! 「なんで私とキョンなんかがこんなちょ、ちょっと… 微妙な、変な感じの関係になっちゃってんのよ!?」 「…大丈夫。問題は無い。皆、認知しているから」 何を!? 長門は不思議そうに首を傾げている。 「…駄目?」 「駄目っ!!」 俺とハルヒ、2人同時に駄目出しを受けて却下された為だろうか、 長門が少しいじけているように見えるのは気のせいか。 長門が椅子に座る瞬間に 「…有機生命体の死の概念が理解出来ない」 と、ぽつりと呟いた台詞が耳を離れない… 怖いよ…長門、お前が言うと冗談に聞こえないから…。 そう、俺達は次の文芸部の会誌に載せる作品作りの為、 文芸部員として、冬休みを返上して『編集長・涼宮ハルヒ』のもと、 それぞれの作品の企画作りを遂行している。 例のごとく、それぞれの課題をくじ引きで決めたのだが、 今回の長門は多くは甘酸っぱさとほろ苦さをふんだんてんこ盛りに兼ね備えた 青春群像劇ものを引き当てたのだが…長門にとっては苦手なジャンルなのだろう、 何故、あんなストーリーになっちまったのかは俺には理解しかねる。 「長門さんの作品、そんなに悪いようには思えませんが…」 古泉はニヤニヤしながら俺の顔を見ている。何だよ? 「そういうお前はどうなんだ?古泉。ちったぁマシな作品は出来そうなのか?」 「えぇ、去年のあなたの恋愛小説には負けられませんからね」 そりゃ嫌みか? 「推理小説ですからね、トリックの発想次第なのですが…」 そりゃ理系のお前さんらしい実に論理的な作品になりそうだ。 朝比奈さんは受験の為、今回の企画作りには参加していないのだが、 1年前からハマっていたのか、もうすでに童話の作品を書き溜めているらしく、 「自信作を置いておきますので皆さんで読んでみて下さ~い♪」 と、机の上にアルプス山脈の如く、積み上げていった。 しかも、イラスト付きらしい。 「さすが我がSOS団のマスコットキャラ。萌えツボを心得た仕上がりだわ」 と、編集長は妙な唸り声を上げている。 その唸り声を上げている当の編集長、ハルヒは 当初の割り振りでは社会悪に迫るノンフィクション作品だったのだが、 電波なSFものになったり、悪の秘密結社と闘うヒーローものになったり、 いつも書く度に脱線していってる。ハルヒ曰く、 「これくらい飛んでる設定の方が面白いじゃない!!」 と言う意見らしい。 俺はと言うと、今年もどうやら恋愛小説を書かなければいけないみたいだ… しかし、何も思い浮かばん!!そして、眠い!! これはピンチだ…恋愛ものなんて去年でほとんど出尽くした感がある…。 それこそ、健全健康たる男子高校生が日夜、頭に浮かんでは消える 妄想をそのまま書くという手もあるが、そんな事をした日にゃ 二度とこの学校には顔を出せなくなる。 そして、恐らく学校中の女性と口を聞くどころか 相手にもしてもらえなくなるだろう。 そうなっちまったら俺の高校生活はまさに閉鎖空間だ。 その時、携帯が震えた。メールみたいだ。 From:佐々木 タイトル:無題 本文:やぁ、キョン。今夜、時間はあるかい? まぁ、キョンは頼み事を断れない性格だから きっとOKしてくれるんだろうけどさ。 場所はいつもの公園に8時だ。 もし、涼宮さんと何か用事があるのなら 僕に遠慮はしないでくれたまえ。 断ってもらっても構わないよ。 ハルヒ?別に今日はこの後、用事も無いし、まぁ佐々木だから別に良いだろ… 俺は軽くOKの返事を出した。 「ちょっとキョン!!あんた、企画もろくに出さないで 何、携帯いじってサボってんのよ!?」 編集長の怒鳴り声が耳をつんざく。 「いや、サボってる訳じゃなくてな、 今年も恋愛もので正直、何のアイデアも思い浮かばないんだよ… そんなに経験豊富という訳でもないしな」 ハルヒが俺の顔をジッと睨みつけてきている。 何をそんなにジッと見ているんだ?俺の顔に何か付いてるのか? 「本当にそうだとしたらあんた、寂しい青春送ってんのね」 放っといてくれ。 「そういうハルヒは何かアイデア浮かんだのか?」 「私はノーベル文学賞も狙えるくらいの現代社会の暗部にメスを入れた 一大スペクタクルな社会派傑作になる予定よ!!」 「予定って事はハルヒもまだ何も思い浮かんでないんだな?」 グッと唇を尖らせたハルヒの顔を見て、つい悪戯心が芽生えて、 皮肉たっぷりに溜息をついてやった。 「まぁ、編集長には期待してるよ」 「フンッ!!」 ハルヒはそっぽを向いた。 「ところでキョン、今夜、暇?」 ハルヒは腕を組んで見下ろしている。 「どうした?」 「どうしたもこうしたもないでしょ!?あんたが何も思い浮かばないって言うから 本屋にでも回って団長としてネタ探しに付き合ってあげんのよ!! 何か資料かヒントでもあったら参考になるでしょ!?」 古泉はニヤニヤと笑っている。何がおかしいんだ? 「い、いや、今夜はちょっと…」 そう断ると、その瞬間ハルヒの顔に暗い影が差した。 古泉にも強い視線を投げ掛けられた気がする。 でもな、ちょっと待ってくれ。今回はちゃんと先約があるんだ。 確かにハルヒのご機嫌を損ねると世界がとんでもない事態に巻き込まれる という事はこれまでの色々な騒動のお陰で十二分に承知しているつもりだ。 だが、それでハルヒの全てを優先する訳にはいくまい。 佐々木にも一度OKを出してやっぱダメと言うのはあまりにも身勝手な行為だ。 ハルヒを守る為に他の誰かを傷つけるというのはそれは人として違うだろう? 要は順番、順序の問題だ。 「まぁ、明日なら大丈夫だけどハルヒはどうだ?」 「あんた、自分の都合に合わせて私に命令する気!?」 ハルヒはいつも俺にそうしてるじゃないか… 「じゃあ、明日でも良いわよ!!その代わり、ろくなアイデア出ないようなら 正月返上で合宿するからね!!」 何でだよ… 結局、その日は何も思い浮かぶ事なく、長門の本日終了の合図で解散となった。 冬は陽が落ちるのが早い。 暗い坂道を4人でトボトボと歩いていた。 そういや、佐々木の用事って何なんだろうな? しばらく音沙汰なかったと思ったら突然、メール寄越したり、 また何か厄介な問題を引っ張って来るんじゃなかろうな… 古泉は俺に何か言いたげな顔をしているが…何だよ? 「では、僕らはこのへんで」 古泉と長門は去って行った。 ハルヒと2人でボーッと道を歩いている。 今日のハルヒは大人しい。 と言うか、さっきから一言も口を聞いていない。 「どうした?」 ハルヒの顔を見ようとしても日が沈んで暗いのと 髪の毛で顔が隠れていてよく見えない。 「…何が?」 「今日は随分と大人しいじゃないか?」 「うっさいわね…別に良いでしょ」 「…そうか」 気まずい沈黙が流れる。 「…私、帰る」 ハルヒはそう言うといつもと違う道を曲がっていった。 理由は分からんが多分、閉鎖空間発生なんだろうな。お疲れ、古泉…。 一度家に帰って夕飯を食べてから行こうかどうか迷う微妙な時間だった。 今日は雪で路面が凍っていたので自転車には乗ってきていない。 まぁ、飯は後で良いか。 そんな事を考えながら1人で歩くと白い息が身も心も冷やしていく。 そう言えば、1人で歩いたのって久し振りな気がする。 いつもハルヒやSOS団の誰かと一緒にいた。 SOS団の仲間と過ごした時間の濃密さを感じる。 少し早いかと思いつつ、佐々木と俺の家のちょうど中間に位置する 公園へと辿り着いた。 中学生の頃はよくここで色々な取り留めの無い話をしながら時間を潰していた。 「キョン!」 30分前だと言うのに佐々木はもう公園のベンチに座っていた。 「早いな、お前、いつからここにいたんだ?風邪引くぞ」 「くっくっ、大した時間ではないさ。僕に無用な気遣いはしないでくれたまえ」 「今日は1人か?」 あのやたらムカつく未来人や敵意むき出しの超能力者、 会話不能な幽霊みたいな宇宙人がいたらうんざりする所だ。 「おや?僕一人ではご不満かい?」 「いや、むしろお前だけの方が良い」 佐々木はニッコリと笑った。 「まるでプロポーズでも受けるみたいではないか?」 「馬鹿、からかうな」 それから佐々木と他愛の無い話をした。 別になんて事はない、お互いに期末テストはどうだっただの クリスマスはどうしただの、今日はこんな事をやってあんな事があった、 中学時代の想い出、大した話はない、 久し振りにあった旧友と昔に戻ったようなリラックスした笑い話をしていた。 ふと会話が途切れた瞬間に切り出してみた。 「今日はどうした?」 いつも強く俺を見据えて来る佐々木が珍しく俺から目を逸らした。 「さて、どうしたんだろうね、僕は」 俺達はこんな真冬の公園で禅問答をしにきたのか? 「これを気紛れとでも言うのだろうか?久し振りにキョンと話をしたくなったのさ」 「まぁ、そりゃ別に構わんが…悩みやストレスがあるなら 抱えずにどっかに出した方が精神衛生上よろしいと昔、言ってたのはお前だぞ」 「キョンは鈍感な割には時々、一周遅れで核心を突いてくるから面白い」 佐々木はサバサバしているようで意外と一人で悩みを抱えるタイプだからな… 「ところでキョンには悩みなんてものはないのかい?」 俺?俺にはそうだな…まぁ、色々とあるっちゃあるが… とりあえず目先のものとしては、 「恋愛小説のアイデアが思い浮かばない」 なんて佐々木に相談しても仕方が無いな…こいつもハルヒ同様、 『恋愛感情なんてものは精神病の一種』主義者だからな。 「くっくっ…なんだい?それは。君は時々、突拍子も無い事を言い出すから 本当にいつも予想の範疇を超えているよ」 やっぱり言うんじゃなかった…俺は日記にポエム書いてる夢見る乙女かよ。 「まぁ、聞いてくれたまえ。橘京子って覚えているかい?」 あぁ、あの佐々木の傍にいる面倒臭そうな超能力者だな。 「彼女がね、ここ最近、以前にも増して煩くってね。 涼宮さんの持つ世界を改変させる力は本来、僕が持つべきものだ、 世界をあるべき姿にしなければならないと、こう僕の耳元で急き立てるのさ」 「あぁ」 「僕としては正直、そんなものはどうでも良い瑣末な事柄と認識しているのだが、 彼女は僕のそういう姿勢や態度も含めて色々とご不満があるらしい」 ハルヒみたいな力を手に入れたらそれはそれで 周りの人間も色々と大変なんだがな…。 「そして、キョン、君にもね」 「俺?」 「橘さんにとってキョンは涼宮さん側についてる人間としての敵、そして女の敵らしい」 女の敵って…俺は女性にそんな酷い事をした覚えはないのだが… 「くっくっ、呆れているのかい?僕も驚いたがね。 キョンにはそんな女の敵だなんて言われるような記憶も自覚もないという表情だね」 当たり前だ、まともに会話もした事のないような女に あんたは女の敵だと言われてもこちらとしてはリアクションの取りようもない。 「まぁ、キョンが女性をそんな手篭めに出来るような技術と精神構造を 持ち合わせているような人間ではないと言う事は僕もよく理解しているつもりだがね」 褒められてんのか、けなされてんのか、よく分からん… 「橘さんは僕に世界を自分の思い通りに変えたくはないのかと散々、講釈してくる。 それは僕だって世界に不満が無い訳ではない。人並みの欲望はあるつもりだ。 しかし、だからと言ってそれとこれとは別の話だ。 キョンの意思に反してまで君を巻き込むのは僕の意図する所ではないからね」 俺の意思? 「その力を得る為にはキョン、君の協力も必要なんだとさ」 協力っつってもなぁ… 「だから、橘さんは僕にキョンの意思を確かめてきてくれと、こう頼んできた訳さ」 「俺の意思を確かめるってどういう意味だ?大体、佐々木。 よくそんな面倒な話に付き合ってるな、以前のお前なら考えられん」 佐々木は少し含みのある微笑を向けてきた。 「僕にも少々、興味深い事柄だったものでね」 「で、その俺の意思を確かめたら大人しくなってくれるのか?」 「どうかな?それは未確認だった」 やれやれ… 「で、その橘さんとやらはこの地球の半分を埋め尽くす全人類の 半分を占める女の敵であるこの俺に一体全体、何をして欲しいんだ?」 佐々木は微笑を崩さずにジッとこちらを見据えている。 「僕とキョンに恋仲になって欲しいんだとさ」 は??? 「まぁ、所謂、恋愛関係というやつだね。驚いたかい?」 いやいやいや…何を言い出すんだ、こいつは。 あの面倒なとんちき超能力者、佐々木に何か吹き込むにせよ、勘違いも甚だしいぞ。 「くっくっ、鳩がバズーカ砲喰らったみたいな顔をしているね」 バズーカどころか大陸間弾頭ミサイルが顔面に直撃したような威力だ… 要は俺と佐々木に、その、なんだ…付き合えって言ってる訳だろ? そんな事、これまで考えもしなかった…。 大体、そんな事になってハルヒが何と言うか……いや、ハルヒは関係ないだろ! いや、関係あるのか?やばい…混乱してきた…頭の中がパニックで暴発しそうだ… 「お前は以前、『恋愛なんて精神病だ』なんて言ってなかったか?」 「くっくっ、ねぇキョン」 「…何だ?」 「今日、涼宮さんは非常に不機嫌ではなかったかい?」 な、なんで知ってるんだ!? 「やはり正解だね」 佐々木はパズルを解いた子供のような笑顔で笑っている。 「キョンは鈍感ではあるけど、その反面、素直で誠実だからね」 佐々木は自分の鼻を人差し指で差している。 「鼻の膨らみを見ればキョンが何を考えてるのかおおよその見当は付くのさ、 しばらく付き合えばね。 キョンは嘘はつけない、ついてもすぐにバレてしまうタイプなのだよ」 そ、そうだったのか…これからは気を付けよう…。 「くっくっ、涼宮さんも苦労している事だろう。なんせ相手は鈍いを通り越して、 ただ何も考えちゃいないだけなんだからさ」 どういう意味だ?ともかく、また一つデッカい悩みが増えちまった… 「それとね…『恋愛なんて精神病』って言葉には様々な意味合いが込められているのさ」 そんな雁字搦めの糸のパズルみたいな謎解きを一気に俺に与えないでくれ… 問題は一つずつしか解決出来ない性分なんだ…。 「今日の僕からの話はまぁ、そんな所さ。あぁ、あと返事はいつでも構わないよ。 取り急ぐ問題でもないしね、じっくり考えてくれたまえ」 佐々木は立ち上がりながら俺に笑いかけている。 「あとさっきキョンが言ってた恋愛小説、僕の事でも書けば良いのではないのかい?」 そう言いながら佐々木はくるりと背を向けて灯りも暗い夜の公園を歩き出した。 佐々木を家まで送っていくまでの道すがら、結局、大した会話もなかった。 帰宅しても夕飯を食べる気力すら起きない…どうせ飯も喉を通らないだろう。 ベッドに突っ伏して佐々木の言葉を思い出していた。 あいつはいつから俺にそんな感情を抱いていたんだ? つい最近になってか?いや、中学の頃からずっとだったんだろうか? 「キョンく~ん♪」 なんだ?我が妹よ、はさみでも借りに来たのか? あと、お兄ちゃんの部屋に入る前にはちゃんとノックをしなさい! 部屋の中で何やってるか分かんないでしょうが!? トラウマになって兄妹仲が壊れちゃうかもしれないぞ!! 「キョンくん、恋煩い?」 なんでそんな一発で核心を突いてくるんだよ… 「キョンくんがご飯食べないのなんて珍しいもんね、何だったら私が相談に乗るよ♪」 小学生に恋愛相談、持ちかけてもな… 「大丈夫、ちょっと風邪気味なだけだ」 妹は首を傾げている。 「ふ~ん…やっぱり恋煩いなんだね♪」 あ、しまった…鼻か… 「パパとママには風邪って事にしといたげるよ♪高校生!」 やれやれ… そうだ。ここはとりあえず明日、誰かに相談しよう、そうしよう。 「おや?珍しいですね?それで僕に相談事とは何でしょうか?」 真っ先にこの古泉の顔しか思い浮かばなかった俺の人間関係はどうなんだろうか? 谷口は論外、国木田という手もあるが、問題は恋愛の話だけじゃないからな。 それに不本意だが、古泉は無駄にモテる、女の扱いには慣れていそうだ。 良い答えを出してくれそうな気がする。 冬休みの学校は静かで昼時と言えども誰もいない。 「昨日は大変だったのか?」 昨日のハルヒはえらい不機嫌だったからな。 「いえ、それほどではありませんでしたよ」 そうか、そりゃ良かった。 「ところで古泉…」 「色恋沙汰ですか…」 まだ何も言ってないぞ!! 「まぁ、付き合いも長くなってきましたからね、大体分かりますよ」 これも鼻か?俺の鼻は一体、どうなってるんだ? 俺は事の顛末を古泉に語った。古泉は意味ありげに頷いている。 「それは……実に複雑且つ、重大な問題ですね」 そうなんだよ…俺にとっちゃ世界中の知恵の輪を全て絡み合わせたような問題だ。 「…あなたはどうしたいんですか?」 え?俺? 「機関の人間としての僕は涼宮さんを選んでもらいたいとは思います。 勿論、同じSOS団の仲間としてもね。 しかし、あなたの友人としての僕はそこまで強制したくはありません。 あなたの想いまで無理矢理、ねじ曲げたりはしたくありませんから。 あなたがどちらを選ぶか、そう、どちらに女性としての魅力を感じるか、 問題はそこですね。 自分の想いに素直になるしかありませんし、逃げる事も出来ません。 あなた自身が答えを出すしかないでしょう」 古泉に相談料として自販機でコーヒーを奢っていると テンションの高い声が降り掛かってきた。 「おんや~!お二人さん、何やってんだい!?冬休みにまでラブラブっさね!」 変な誤解をされるような事を大声で言わないで下さい、鶴屋さん…。 「SOS団の合宿ですね♪お二人でお昼ですか~?」 あなたのそのプリティーなオーラは霜の降りた中庭も 全て溶かしてたんぽぽ咲かせちゃいますよ、朝比奈さん♪ 「それでは僕はこのへんで」 古泉は軽く会釈をして一人、部室棟へと向かっていった。 「朝比奈さんと鶴屋さんは今日はどうなさったんですか?」 「今日はクラスメイトの皆で集まって受験のお勉強してたんです♪」 鶴屋さんが俺の肩に手を掛けてきた。 「ハッハ~ン…キョン君、恋の悩みだね!」 またか!?鼻!! 「とうとう付き合う事になったのかい!?それともこれから告白!? どっちからにょろ!?告白するの!?したの!?されたの!?」 滅茶苦茶、興味本位ですね…鶴屋さん。 「やっぱりそこは男の子からですよね~♪」 いいえ、女性からでした。 そうだ、女性ならではの視点から、というのもあるな…相談してみるか。 二人に相談すると、さっきまでハイテンションとは打って変わり、 予想以上に複雑な物凄く重~い空気になった…。 何なんだ、これは一体? 「キョン君、それは酷いっさ…重過ぎるにょろ… 受験勉強に悪影響っさ…大学受験に失敗したらキョンくんのせいにょろよ?」 こんなに沈んだ鶴屋さんは初めてだ…。 「涼宮さんも佐々木さんも可哀想…キョンくんがこれまでずっと はっきりしない態度のままでいたからどちらかが傷つく事態になったんです。 2人とも純粋な想いなのに…キョンくん、最低です…」 俺も悩んでるんだが…女性の視点からすると俺の自業自得なのか? まさか朝比奈さんに最低とまで言われるとは…またちょっと泣きそうだ…。 「ともかく…もうこれは覚悟決めるしかないっさ」 「そうですね、曖昧なままだとまた同じような事が起こるでしょうし、 キョンくんの為にもならないですからね」 朝比奈さんと鶴屋さん、2人の眼光が野獣のように鋭く光っている。 「さぁ、キョンくんはどちらを選ぶにょろ…?」 「お二人のうちのどちらをキョンくんは選ぶんですか?」 あ…いや…その… 「どっち!!」 2人の叫び声が最後の審判を求めてきた。 ちゃんと答えははっきりさせますと、何とか2人の追及の逃れて、 部室に戻ると朝までは特に変わりのなかったハルヒは 昼休みを挟んで全く別人のように思いっきり俺を睨み据えて 噛み付いてきそうな勢いで座っていた。 「どうしたんだ?ハルヒ」 ハルヒは無言のまま、ダークでヘヴィーな邪悪の化身のようなオーラをまき散らしている。 何だ?俺、何かしたか?とりあえずここはあまり話し掛けない方が良さそうだが…。 「すみません…ちょっと急なバイトが入ってしまったようで」 古泉は俺をチラッと見るとそのまま部室をあとにした。 長門は淡々と小説を書いている。 ほとんど、このダークハルヒと二人っきりの空間に取り残されているようなもんだ…。 気まずい…こんな空気の中で小説を書くなんざ、とてもじゃないが無理だ… クリエイティヴなアイデアが思い浮かぶ空間とは思えない…。 その時、ハルヒがおもむろに立ち上がった。部室を出て行くようだ。 「おい、ハルヒ。どこ行くんだ?」 無神経に声を掛けた俺の失敗だった。 ハルヒは足を止め、恐ろしくドスの利いた低い声で 「…どこに行こうが私の勝手でしょうが」 と、睨みつけてきた。 メデューサに睨まれた俺はその場で石になった。 部室の扉が吹っ飛んで壊れそうな勢いで閉まった。 長門がこちらを見つめている。 「…行って」 追い掛けろって事か? 長門は無言で首を縦に振った。 追い掛けろってな…核弾頭の嵐の中に素っ裸で飛び込むようなもんだぞ…。 「…早く」 やれやれ…分かったよ…。 「おい!ハルヒ!」 ハルヒは走るのも速ければ歩くのも速い。 ハルヒの肩を掴むとようやく立ち止まってくれた。 「おい、ハルヒ。お前さっきから急にどうしたんだよ?」 「…離して」 ハルヒは振り返りもせずに答えた。 「いや、離せって、ハルヒ。いきなり理由もなく、どうしたんだ?体調でも…」 「…さっき、お昼ご飯買いに外に出た時に校門で橘さんって人と会った」 げ!? 「あの佐々木さんの知り合いでしょ?全部聞いた…」 「いや、だから、あれはだな……」 えぇ~っと…何をどこからどこまで話せば良いんだ? その時、ハルヒは肩に置いてある俺の手を取った。 殴られるか!?と、身構えると意外にもハルヒは俺の手をそっと下ろした。 「…ううん、大丈夫。キョンは何も言わなくても良いの…」 そういうハルヒの細い肩は震えていた。 「どうしちゃったんだろう?さっきから変だよね、私…。 …佐々木さんとキョンは昔からの付き合いでお互いに凄く分かり合ってるから …ひょっとして私、それが悔しいのかな?でもちょっと寂しかったり、悲しかったり… 自分でも怒りたいのか、泣きたいのか、よく分かんないの……」 ハルヒは俯いたまま、聞いた事もないような、か細い声を出している。 「…ごめんね、キョン。訳の分からない事ばかり言っちゃって」 そう言いながらハルヒは振り向き、俺にいつもの太陽のような笑顔を向けてきた。 「佐々木さんとキョンならお似合いだと思うわ! だから、あんたの勝手で好きなようにどこへなりとも行きなさい!! いつもみたいにボーッとしてたら捨てられちゃうわよ!」 ハルヒはそう言い残すとどこかへ走り去って行った… SOS団の皆で楽しい事をしている時に見せるような いつものハルヒの満面の笑みが余計に俺の心に突き刺さった――― もう答えは決まっていたのかもしれない… 自分の中ではもう分かっていた事なのに友達以上恋人未満の楽な関係に満足していた。 ハルヒに対しても…佐々木に対しても… 「やぁ、キョン」 佐々木は冬休みだからだろう、連絡するとすぐに出てきた。 駅前は師走の忙しさに賑わっている。 「ひょっとして昨日の答えかい?キョンにしては珍しく問題を解くのが早いね」 あぁ、難解極まり無い大問題だったけどな。 「まぁ、僕もあれから色々考えたのさ。他人の意見を鵜呑みにして 自らの考察を怠るのは進歩を止めると言う事に繋がるからね」 考察の結果はどんなもんが出たんだ? 「きっと僕はね、嫉妬していたのさ、涼宮さんにね」 嫉妬? 「僕の中学時代はね、キョン、君との時代だと言っても過言ではない。 それほど君とは長く濃密な時間を過ごしてきたからね」 まぁ、それは俺もそうだからな。 「しかし、その時間はあくまで過去のものにしか過ぎないのさ。 人は想い出に浸るだけでは進歩はない。常に今を生き、未来へと歩を進めなければね」 佐々木の髪が風で舞い上がる。 「キョンにとって、僕との時間が過去とするならば、現在は涼宮さんとの時間。 そして現在は必然的に未来へと繋がっている。僕との時間は未来に繋がる事はない。 だからこそ僕は涼宮さんに嫉妬したのさ。そして不本意ながらも橘さんに促され、 涼宮さんの力も含めて、キョン、君を取り戻したい、君の傍にいたいと考えた。 君と僕との時間を過去のものではなく、未来へと繋がる現在の時間として 2人で動かしたいと考えた。 それを恋愛感情と呼ぶべきかどうかは、すまない、まだ考察不足だ。 差し当たってはキョン、君の意見も伺いたい所ではあるがまずは僕の結論から。 やはり僕は君と……」 私は一人、屋上で泣いた。 もうキョンはSOS団には戻って来ないだろう…… こういう時に限って楽しかった想い出ばかりが頭をよぎる…… もうちょっとだけで良いからキョンと一緒にいたかった…… そう思うとまた涙が勝手に溢れ出てきた。 冷たい冬の風に煽られて髪は乱れた。 屋上で泣いていたのはどれくらいの時間なのだろう? キョンを忘れる時間はどれくらいの時間なのだろう? いや、きっと無理だ…どんな形であれ、彼はもう私にとって一番大切な人になっている。 決して彼を忘れる事なんて出来ない… だから、私は何があってもずっとあなたを好きで居続ける… ありがとう、キョン――― 屋上で心を落ち着かせてから部室に戻るとみくるちゃんと古泉君がいた。 うん、よしよし、有希も筆が進んでいるようね。 さっ!どんどん書きましょう!キョン一人分くらい私がどうにかするわ! 今なら物凄い閃きがガンガン湧いてきそうな気がするのよね! 天才的な文学的才能が目覚めたのかしら! 時間たっぷりまで書き上げ、いつものように有希の本を閉じる音を 終了の合図に本日解散!! さっ!今日はもう暗いから皆で帰りましょう! 「あんた、ここで何やってんのよ!?なんでこんな所にいんのよ!?」 入り口の前で立ち尽くしている俺を見たハルヒは埴輪のような顔をして 呆気に取られ驚いていたかと思うと今度は俺に向かって叫んでいる…鼓膜破けるわ… 「何って?会誌に載せる小説の企画を考えなきゃならんだろ?」 ハルヒは顔を歪めて怒鳴り散らしてきた。 「そういう事聞いてんじゃないわよ!? なんであんたがここにいんのかって聞いてんの!?」 あぁ~…もうだからそんな大声出さんでも聞こえてるって…。 「ハルヒがさっき言ったんだろ?勝手にどこへなりとも俺の好きな所へ行けって。 だからここにいるんだよ」 ハルヒは笑ってるのか怒ってるのか顔を歪めているが、 奥の長門といつの間にか部室にいる朝比奈さんと古泉はしたり顔でこちらを見ている。 「佐々木さんは!?」 「あぁ~…佐々木とはどんな形であれ他人に無理強いさせられるような 関係じゃないからな、断ってきた。 と言うか正確には断ろうとして呼び出したんだがな、向こうから 『やはり僕は君とだけはこんな無理強いするような形での関係はごめんだ』と断られた。 告白されて答えも伝えないうちにフラれるなんて、きっとこれはトラウマになるぞ…」 ハルヒはジーッと俺の顔を睨んでいたかと思うと納得したように頷いている。 「どうやら嘘はついていないようね…」 また鼻か…ハルヒまで分かってるとは…一度、俺の鼻がどうなってるのか誰かに聞こう… 「さっ!ハルヒ、行くぞ。」 俺はハルヒの手を取った。ハルヒはびっくりしながらも嬉しそうに笑っている。 「い、行くってどこへ!?」 おいおい、もう忘れたのかよ…。 「昨日、約束しただろ?放課後、一緒に恋愛小説のネタを探しに行こうって!!」 お前とならもっと面白い小説の続きが書けそうだよ―――― The End
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ゆっくりと扉を開けて俺たちは部室に戻ってきた 中ではそれぞれがそれぞれの指定席に座り、…朝比奈さんは立っているのが指定に近い感じがするのだが いつもどおりの、古泉は微笑、長門は無表情、朝比奈さんは怯えた表情をしていた …あれ?いつもどおりじゃない人間が一人いるな、たまになら見るが、朝比奈さんは何に怯えているんだ? …あぁそうか、そうだよな 朝比奈さんは俺にキスしたんだった そりゃ、ハルヒに何されるかわかったもんじゃない ま、予想どおりといったところだろうか、ハルヒが朝比奈さんの方を向いて話し掛けた 「みくるちゃん」 それは普段のハルヒからは想像しがたい優しい声だった まるで母親が自分の子供をあやすような それでも朝比奈さんはびくっとしていたがな 「ありがとう、ね」 いったい、何がありがとうなんだ? 誰か俺に説明してくれ …あとで古泉にでも聞くか それを受けた朝比奈さんは溢れんばかりの満面の笑みで元気よく 「はい!」 とだけ言った そのあとだが、恐らく今回は大体を知っていたであろう未来人・朝比奈さんが持っていたバスタオルで体を拭いたあとハルヒは朝比奈さんの、俺は古泉の持ってきていた着替えに着替え、団活を開始した この準備の良さをみると、古泉も知ってやがったな 八つ当りとは言わないが、いつもどおり、俺は古泉とのボードゲームに連勝し、長門は本を読みふけ、朝比奈さんは給仕にいそしみ、ハルヒはネットサーフィンに興じている 対戦中、何度かハルヒと目が合ったのは心にしまっておこう やはり、いつもどおり長門が本を閉じる音で部活が終わる なんかいつもどおりの一日だったな、確かに世界は急に色を変えないよな それが変わっていたら8割方ハルヒのせいだ 部室をでたあとハルヒが手を握ってきた 俺は少し慌てたがもう3人とも知っているんだろうな、と考えそのままにした 5人で歩く帰り道、いつもは先頭にいるハルヒは一番後ろの俺の横で少しはにかみながら歩いている 代わりに先頭を行くのはハードカバーを文庫本に持ちかえ、それを読みながら歩いている長門で、その後ろで古泉と朝比奈さんが談笑しながら歩いている 幸いにも雨は止み、控えめに赤い太陽が顔を出している 横を見れば顔を朱に染めたハルヒがちゃんといる 俺はハルヒに耳打ちしていた 「そっと抜け出さないか?二人で」 ハルヒは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに100Wの笑顔に戻すと大きく頷いた 長門にはバレていただろうが、いやもしかしたら全員にバレていたかもしれない 前の3人に気付かれないよう、こっそり脇道にそれた そのまま歩いて辿り着いたのは、この春休みに思い出深い、花見と、ハルヒの告白と…長門のマンションの近くの公園 桜達は、すでに花びらを落とし、早くも来たるべき夏に向けて準備をしていた しかし、抜け出してきたのはいいが、いったい何をしたらいいんだろうな とりあえず、ラブラブしたらいいんだろうが、そんな経験がない俺には何をもってラブラブというのかわからん 「おっ!キョン君にハルにゃんじゃないかっ!!」 突如後ろから聞き慣れた元気な声が聞こえる 振りむけばやはりというか鶴屋さんだった 「手なんかつないじゃって、ラブラブだね!お姉さん少し羨ましいにょろよ?」 ハルヒは照れている 顔が真っ赤だ 恐らく、冷静に観察してる俺も真っ赤だろう 「ええ、付き合うことになったんです」 それでも俺は某3倍早いMSのように赤いであろう顔に押さえ込まれないよう、できるだけ冷静を保って言葉を出す しかし、それも無駄な努力だったようで鶴屋さんは腹を抱えて大笑いしていた 「あっはっはっは!…そんな真っ赤な顔で…ぷぷ…真面目に言われてもねぇ…はっはっは…まぁ末長くお幸せに!これは鶴にゃんからの贈り物っさ!」 鶴屋さんはそう言って何かを俺の手に握らせる 「ハルにゃんを泣かせたらあたしが承知しないよ~!」 走りさりながら手を振る鶴屋さんを見送ったあと俺は手の中のものを確認した それを見た俺は苦笑する以外に選択肢はなく、覗き込んできたハルヒは顔をさらに赤くしていた 鶴屋さんはなぜ、こんなものを持ち歩いてあるのだろうか 俺はその0.03㎜の贈り物を使う日がいつ来るか考えていた
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いつものようにSOS団アジト唯一のドアはまるでSAT隊員に突入されるような勢いで開け放たれた。 もちろん蹴破ったのは我が団長様であり、他の団員はそんなことしないのである。 ハルヒはなにやら不機嫌な様子で団長席にあぐらをかいて座り、朝比奈さんに 「お茶!」 と、企業の上司が部下に使うような言葉遣いで命令を下した。 おおかた不機嫌なのは今日がやけに寒いからか、雨だからだろう。 それでも俺はこのピリピリした空気の緩和剤となるべく、ハルヒに声をかけた。 「おいハルヒ、今日はやけに不機嫌じゃないか、なにかあったのか?」 ハルヒは俺をキッと睨み、つばが飛んでくるような大声で 「外見なさい外!」 俺はこの雨は朝からだったので別段気にしていないが、 頭の中が年中からっ晴れはこの女には癪なことなのかもしれん。 「雨だな」 当然の感想なわけだが、ハルヒはなにやら呆れたようだ。 ふぃーっとため息をついて、こっちをジト目で見てくる。 「アンタねぇ、今朝の天気予報見てないわけ?」 「俺は朝はテレビ見ない派なんだ」 「じゃああたしが代わりに教えて上げるわ、今日はね、雪だって予報で言ってたのよ!」 「ほお」 俺の反応が乏しかったのかハルヒはさらにがなる。 「しーかーもー、朝から雪だって言ってたの!」 「それで不機嫌だと」 「そうよ! ここだと雪なんてなかなか降らないじゃない」 「確かにな」 もともと雪がふるような地域でもないし、仕方ないと思うのだが。 「雪が積もったらみくるちゃんを芯にして雪だるまつくろうと思ってたのにぃ!」 朝比奈さんが小さく悲鳴を上げた。 おいおい、そりゃ可哀そうだろう。風邪はひいちまうぞ。 「厚着してほっかいろ装備させればひかないわ、それにアンタも見たいと思わないわけ?」 朝比奈さんの雪だるま姿ねぇ……きっと愛らしいだろうな。うん。 「黙ってるってことはイエスね。あー、雪降らないかなぁ」 「どうだろうな、そのパソコンで見ればいいじゃねぇか、もしかしたら今日の夜降るかも知れんぞ」 「そうね!」 そう言ってハルヒはパソコンをつけた。 だがこの時間になっても振らないのだから半ば諦めていたらしい。 十分ほどしてスピーカーから音が流れた。 なんだか懐かしいの見てるなハルヒよ。開国してくださいよぉなんてもう何年前だ? クスクス笑うハルヒの面を横目に、俺と古泉はいつものようにボードゲームに興じた。 今日は人生ゲームのデラックスなやつで、俺は8人もの子供を抱える大家族になってしまった。 ただマス目に大不況到来だとかブラックマンデーだとかあるのはどうなんだ。 リアル過ぎではないだろうか。 結果は俺の勝ちだった。 古泉は最後の最後でテロに遭遇し、全財産の80パーセントを失ってしまった。 「テロに合わなけりゃお前の勝ちだったな」 「まったくです。次は勝たせていただきますよ」 「それは楽しみだな」 なんてちょっと小粋な会話を楽しんでいた俺達だったが、長門の本を閉じる音がした。 お、もうそんな時間なのか。 確かに時計をみるともう帰宅時間、といった頃合だ。 相変わらず精確だな長門は。原子時計でも内蔵してるんじゃないのか? 俺はイスから立ち上がって、コートを取ろうとしたときだ。 液晶とにらめっこしていたはずのハルヒが嬌声を上げた。 「雪が降ってるわ!」 振り返って窓の外を見ると、白い点々がフラフラと落ちていくのが見える。 だがさっきまで雨だったから、 地面に落ちた時点で溶けてしまいさぞかしグラウンドはぐちゃぐちゃだろうと思ったら、だ。 なんとグラウンドはまったく濡れていなかった。 雪がうすく積もり始め、茶色い地面がやや白がかっているではないか。 これは………と、古泉を見るとにやにやしている。 またハルヒの超能力が発動したらしいな。 まったくもって便利な能力だよ。なにせ天気まで変えちまうんだからな。 「明日は積もってるわね! みくるちゃん楽しみにしててよねっ!」 「は、はぁ~ぃ…」 力なく返事をする朝比奈さん。ご愁傷様だ。 「楽しみねー、キョン」 不意にハルヒが話しかけてきた。 と、おいおい長門に朝比奈さんに古泉よ、なぜ部屋を無言で出て行く。ちょっと待て。 しかしハルヒに返事をしなければならないので俺は止められなかった。なんてこった。 「ん? ああそうだな」 あーあ、これでハルヒと二人っきりだよ。 「アンタ雪合戦ってしたことある?」 雪合戦ねぇ……おもえば無いかも知れない。寒いのは好きじゃないんだよな。 「つっまんないわねー、雪といったら雪合戦でしょう! 石詰めたりして」 「それは危ないだろう……」 なんだコイツは。そんな危険なことやってたのかよ。 「冗談よ」 にっこりと笑うハルヒ。ちょっと可愛いな、なんて思ってしまった自分が憎い。 きっと明日の雪合戦では石入りのやつを投げてくるに違いないね。 「ならいいがな。さ、帰ろうぜ、みんな先に帰っちまったし」 「うんっ」 なんだ? やけに機嫌が良い。なんだか嫌な予感がするぞ? それとも雪が降ったのがそんなに嬉しいのか? 部室の明かりを落とし、戸締りを確認してから俺達は学校をあとにした。 雪は光を吸収するのか、この時間にしては道が暗い。 電灯がポツン、ポツンとあるだけで、その光景は神秘的でもあり不気味でもある。 遠くに見える街の光が、今日はいつもより美しく見えた。 隣を歩くハルヒは寒さですこし鼻を赤くしながら、雪を手のひらに積もらせたりしている。 高校生には見えないね。妹を思い出させるような無邪気ぶりだ。 「雪って冷たいわねー」 当たり前だろう氷なんだから。 「アンタってロマンとかそういうの持ってないわけ?」 アヒル口になるハルヒ。 「あいにくそういった感覚は持ち合わせてないんだ」 はぁ~、と大げさにため息をつくと、突然ハルヒは俺の手を握ってきた。 なんだなんだ? 俺の手で暖を取ろうって作戦か? そんな脳とは裏腹に素直にビートが早くなる俺の心臓。おいハルヒ、なんか喋れよ。 「あ、あんたにロマンってのを教えてやってんのよ」 街灯に一瞬照らされたハルヒの顔は真っ赤だった。 きっと寒さのせいだろう。いやそうに違いない。だが俺の顔まで赤くなるのはどういうわけだ。 恥ずかしさをまぎらわすために、俺はわざとそっけなく返事をした。 「ふーん」 いかん。ちょっと声が上ずった。余計に恥ずかしいぞ。 と、ハルヒが足を止めた。 「どうした?」 ハルヒは不安そうな顔でこっちを見上げる。 大きな目がいつもより潤んでいる気がする。 「アンタ…あたしと手を繋ぐのイヤ?」 そんな健気な声を出すんじゃないハルヒ! 思わず可愛いなお前、なんて言いそうになっちまったじゃないか。 「そ、そんなわけあるか!」 「じゃあ、嬉しい?」 「うっ……嬉しいに、決まってる…ぞ」 これじゃあクレヨンしんちゃんじゃないか。なんてかっこ悪いんだ俺よ。 途端ににっこり笑うハルヒ。 「これがロマンってやつよ!」 なんだよさっきのは嘘かよ。こいつの演技はどこまで徹底してるんだ…… 女優にでもなったらいい。可愛いし人気でるだろうに。 だけどこのままやられっぱなしなのは癪に障る。ここは反撃を繰り出してもいい場面だ。 「ロマンか……だけどなハルヒ」 「なによ?」 「俺はおまえと一緒に歩けるだけでロマンを感じてるよ」 ボン、ってな音が聞こえそうなくらい一瞬で顔を赤くするハルヒ。 これは面白い。 「そ、そ、そ、そうよ、あたしみたいな美少女と帰宅できるなんて、あんたは幸せ者だわ!」 噛みまくりどもりまくりのハルヒ。 「そうだな。俺は世界一の幸せ者だよ」 「あ、あたしも……だよ」 「ん? なんだ?」 「なんでもなーい!! 寒いから明日に備えて早く帰るわよ! 風邪引かないためにね!」 そういってハルヒは俺の手を握ったまま走り出した。 余計寒いぞ。 まぁ、幸せな気持ちなのは本心だから、嬉しかったりする俺がいるんだがね。
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ぽかぽかした陽気が気持ち良く感じられる春のある日。目の前をひらひら飛んでいる蝶々をボンヤリ眺めながら、おれはいつもの駅前で一人、ハルヒを待っている。二人で映画館に行くためだ。 なぜこんなことになっているか…それを今から説明しよう。 1週間と1日前、いつものように長門が本を読みふけっている横で、朝比奈さんが入れてくださったありがたーいお茶を飲みながら古泉とオセロをやっている時だ。 ハルヒが目をアンドロメダ銀河みたいにキラキラ輝かせて文芸部室-今現在、SOS団の活動場所になっているわけだが-に飛び込んできやがった。 「みんな!揃ってるわね!明日は町内探索に行くわよ!」 そりゃまた急だなお前は… 「なんだか明日は何かが起こりそうな予感がするのよね!だから明日!朝九時に北口駅前に集合ね!遅れないように。最後に遅れて来たら罰金だから!」 ハルヒはそう言い放った。最後の一文はどうやらおれに向かって言っているらしい。おれとしてはありがたくないのだがいつもそうなっているのだから仕方がない。改善しようとも思わないがな。なぜならそれがおれの日常になっていたからだ。その日、それ以外はいつも通りに一日が過ぎた。 で、その次の日。 おれは集合時間の5分前に着いたのだが、そこにはいつものようにおれ以外のSOS団が全員いた。ハルヒはプンスカ怒って 「遅い!あたしが来た時にはもう3人ともいたのよ?!団長を待たせるなんてどういうつもり?罰金!!」 そう言ってハルヒは喫茶店に向かい、おれ達もそれに従った。そうしてこの日の喫茶店がおれの奢りになったところまではいつも通りだ。 ハルヒはいつものようにアイスティーを飲みほすと爪楊枝に色を付け、くじ引きを行なった。結果はこうだ。 おれとハルヒの組 長門と朝比奈さんと古泉の組 なんとまぁ。 まさか宇宙人と未来人と超能力者が一組になるとはな…万国ビックリショーにでも出たらどうだ? なんてことを考えながらふと古泉を見ると何やらいつも以上にニヤニヤしている。…何が言いたいんだお前は その後おれ達は北、長門達は南に分かれることになった。 昨日あれほど楽しそうにしてたんだから行くあてがあるのかと思いきや、そうでもないらしく、おれ達はそこらへんをハルヒの思いつくままにブラついた。 そこで気がついたのだが、その日、ハルヒはいつも以上によく喋る。とても楽しそうなのでおれも釣られて喋ってしまう。ハルヒとこれほど喋ったの久しぶりだな。 しかし、なかなか不思議が見つからず、少々ハルヒの口数が少なくなってきた頃、それは起こった。 バイクが突っ込んできやがった-いわゆるヤンキーというやつだ-そいつがよそ見をしながら走っていたせいか、はたまたハルヒが木の影に入っていたからか、ハルヒがおれの方を向いて歩いていたからかはわからんがそいつはハルヒにまったく気付かず、ハルヒもバイクがこっちに向かっているとは気づいていないようだった。 「危ねぇ!!」 おれは気がつくとハルヒの腕を掴んで力まかせに引っ張っていた。 間一髪だ。もう少し遅れていたら…考えたくもないな。ヤンキーは振り返りもせずどっかに行ってしまった。しかし今はそんなことはどうでも良かった。おれはハルヒが助かったことに安堵を感じていて、ハルヒを抱きしめる形で道にへたり込んでいたことに気づくのに数秒かかったようだ。周りに人がいなかったのは幸いだったな。 俺達は立ち上がり、ハルヒにケガがないことを確かめた後、しばらく黙って歩いていたが、ベンチを見つけたハルヒが 「座りましょ。話したいことがあるから。」 そう言って二人で並んでベンチに座ることにした。 少しの沈黙の後、ハルヒが切り出す。 「あたし、あんたのことただの友達だと思ってた…だけどさっき助けられた時に気づいたわ。それはただの思い込みだったってことにね。ホントはあたし、あんたのことが好きだった…ただ気付かないふりをしてただけ。さっきので自分の気持ちがハッキリしたわ…あたしはキョンのことが好きなんだって。…あんたはどう?」 おれはうなだれた。 …なんてこった。我ながら情けないぜ。ハルヒに言われるまで自分の気持ちに気づけなかったとは…。 いつからだろうか、おれもハルヒが好きになっていた。 しかし付き合いたいという告白は男の方からするものだと思っていたのでおれから言うことにした。 「おれもハルヒが好きだ。お前に言われて初めて気付いたよ。…付き合ってくれ。おれがお前を守ってみせる、絶対に幸せにするから」 ハルヒは本当に嬉しそうな顔で頷いた。 ちょうど昼時になっていたのでおれ達は長門達と合流し、付き合うことになったと公言すると、古泉はわかっていたとでも言いたげなニヤケ顔で 「おめでとうございます」 とだけ言い、 朝比奈さんは少し涙目になりながら 「本当におめでとうございます!やっぱり涼宮さんにはキョン君がお似合いですね」 と言ってくれて、 長門は 「…そう」 とだけ言った。 その間ハルヒはというとおれの横に立っていただけで何も言わなかったが、どこか嬉しそうに見える。 その日はそれで解散することになった。 ところがそれからのハルヒの態度はいつもと変わらず、いつものように何日かが過ぎた。 まあそれでもいいんじゃないかとも思ったがやはり自分から告白した手前、何かしらのアクションを起こさなければと思ったおれは金曜日-つまり昨日だが-明日映画にでも行かないかと誘った。そこでおれはハルヒが昔、付き合ってフッた男について「どいつもこいつも…映画館・遊園地・スポーツ観戦…それしかないわけ?」みたいなことを不満そうに言っていたのを思い出し、失言かと思ったら以外にも 「いいわよ。」 とあっさり承諾してくれた。どうやらおれと一緒ならどこでもいいらしい…いや、そう思いたいね。 そういう訳で今こうしてここにいるわけだが…なぜおれが先に来ているのかって?答は簡単だ。男が待ち合わせに遅刻するなんてカッコ悪いことができるか?少なくともおれはできないね。だからおれは待ち合わせ時間の30分前からここにいるってわけだ。 そうこうしてるうちにハルヒが駅から出てきた。行くところは決まっていたので今日はさっそく映画館に向かうことにした。しかし、彼女と映画館に行く日が来ようとはな…しかもそれがハルヒだなんて1ヶ月前のおれは想像もしなかったよ。 話をしながら少し行くと映画館が見えて来たところで信号にひっかかった。いつもなら恨めしく思うところだが、今日は許してやろう。少し尿意を催したおれは信号が青に変わった瞬間、 「スマン、先にトイレに行ってくる」 と、ハルヒの方を向きながら走り出した。 バンッ 一瞬、何かが起こり、視界が真っ暗になった。 なんだ?何が起きた?う…全身が痛てぇ… 「キョン!キョン!」 その呼び声に再び目を開けたときには目の前にハルヒの泣き顔があり、おれは仰向けに倒れ、全身から血が流れていた。 そう、車にハネられたのだ。 「キョン!大丈夫?今救急車呼んだから!」 しかし、もう死を間近に感じていたおれは無駄であることがわかっていた。 「ハルヒ…すまねぇ…もう…無理そうだ…」 「なんでそんなこと言うの?!あたしを絶対幸せにしてくれるんじゃなかったの?!あたしを置いて死なないでよ!バカキョン!」 ハルヒはそう言いながら大粒の涙を流していた。 息絶える寸前だったおれは震える手でハルヒの手を握り、最後の一言を言うために言葉を絞り出した。 「ハルヒ…」 「な、何?」 「愛し…てる…ぞ…」 そう言っておれは意識を失った。 それからどれくらいたっただろうか…数分だったような気もするし、何年もたったような気もする。 おれは目を覚ました。そこはどうやら病院の一室のベッドの上らしかった。 なんだ?どうなってる?おれは確か車にハネられて死んだはずじゃなかったか?そう、確かにおれは死んだ。その感覚を今でも覚えいる。ならなぜおれは生きている? …わからん。とにかく今確かなことはおれが生きているってことだけだ。 何か少し体が重いと思ったらハルヒがおれの身体に頭を乗せて寝ていた。どうやら泣き寝入りをしたようで涙の跡が一筋、頬に残っている。 「…ハルヒ」 起き上がりながらそう言ってハルヒを起こした。 「…ぇ…うそ…キョン…生きてるの?…あぁ…良かった…あんたが死んだ時は…どうしようかと思ったわ…もう、あたし…」 そう言って泣きつくハルヒをおれは何も言わず抱きしめた。おれの目からも涙が溢れる。ああ…おれはまたハルヒに会えたんだ…生きているんだ…。おれ達はそのことを確かめあうように強く、しかし優しく抱きしめあっていた。 どれくらいの時間がたっただろうか…暫くハルヒとおれはそうしていた。時が永遠に止まればいいのにと強く思った。 それからハルヒはひとしきり泣き、すっかり安心したのかスースー寝息をたててまた寝てしまった。恐らくずっとおれの側にいて泣いていたんだろう…精神的疲労がたまっていたに違いない。おれはつい髪の毛を撫でた。肩にまで届くか届かないかという長さでとてもサラサラだ…よく似合っている。おれはその天使のような寝顔を見ながらこれ以上ない愛おしさを感じていた。おれにとってかけがえのない存在。そんな事を考えながら…。 その時、ハルヒが寝たのを見計らったかのように古泉と朝比奈さんと長門が入ってきた。 朝比奈さんも泣いていて、しゃくりあげながら何か言おうとしたみたいだが結局何も言わなかった。いや、言えなかったのだろう。 「いやあ…しかし驚きましたよ。まさかあなたが生きかえるとはね。」 おい古泉、なんでおれは生きてる?ハルヒがやったのか? 「おそらく。お気づきの通り、ここは機関の病院です。ここの医師達は世界でもトップレベル。その医師達が様々な検査の結果、あなたは確かに死んだと断言したんです。しかし今こうして生きている。これは涼宮さんが起こした奇跡、としか言いようがありませんね。もちろん、涼宮さんの能力でできることを奇跡と呼ぶならですが。」 やはりか。 「そうです、あなたは涼宮さんの力によって生きかえったんです。涼宮さんが最も必要な存在として。しかし、今回は世界が作り変えられることはなかった。本来なら考えられないことです。しかしそうなってくれなくて幸いでした。僕もあなたにまた会うことができたのですから。」 そう言って古泉はいつものスマイル顔になった。 続けて長門に聞いてみた。どのくらいの間おれは死んでいたんだ? 「あなたは7時間32分19秒前に生命活動を停止した。しかし3時間10分25秒前、涼宮ハルヒの環境情報改変能力によって再び生命活動を再開した。」 それだけ言って長門は黙り込んだ。 あれからまだ1日もたっていないのか…大変な1日だなまったく。おれも疲れを感じたので古泉達にそのことを伝え、眠りに着いた。 それから何日か入院した後、おれは何事もなかったかのように退院し、また普段通り学校に通うことになった。 今回は世界が作り変えられることがなかったが、おれが思うに…ハルヒにとって何にも替えられない存在がおれだったとしても、長門や古泉や朝比奈さんや鶴屋さん、その他いろいろを含めてこの世界全てが大切な存在になっているんじゃないだろうか。心の奥底ではそう思っていたのかもしれない…例え無意識であったとしても。 だからおれ達は元のままここにいるんじゃないだろうか。 そしてこれからも以前と同じように生きていくだろう。ただ一つ、おれとハルヒが付き合いながらという点を除いてな。 -Fin-
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ハルヒのおかげかそうでないのか、俺は無事進級できたわけだ いや、ハルヒがやけにうれしそうに俺に勉強を教えてくれたおかげなのかもな 三月のホワイトデーという難関も無事に突破し、春休みの半分以上はSOS団活動で 終わった。 新学期、幸か不幸か俺はまたハルヒと同じクラスになり、席も相変わらずだ まあ他の面子にはあまり変わりが無く、俺も少しほっとしたわけだ 俺たちは今二年生なわけで当然、新入生も入ってきた 俺は新入生を見て、俺もあんな初々しかったのかな、などと感慨にふけり でも実際は一年しか経っていないわけで、新入生とあまり変わっていないのだと思う ハルヒは新入生の調査で忙しいらしく、新学期が始まって一週間はまともに部室には来なかった またとんでも属性の人を連れてこないのか若干ひやひやしてたが そんなことはなく結局ハルヒは誰も連れてくることはなかった もし仮にハルヒがまた変なやつを連れてきても、俺は甘んじてそれを受け入れるがな そしてSOS団のメンバーに変わりはなく、この五人で活動している 活動と言っても、特に何もしてないのだが 今は五月、一年生が学校に慣れてきて少々うるさい時期である 俺はそんなことは気にせず、いつもどおりの生活を送っていた ちょっと刺激が足りない気がするが、ナイフを持った女子に追い掛け回されたり でかい虫に追いかけられたり、そんなことはもう勘弁してもらいたいからな 今に、ハルヒがまたドアを破るように開け厄介ごとを持って来るさ 今の俺にはそれくらいがちょうどいいのさ しかしここ最近ハルヒの様子がおかしい おかしいと言っても何がおかしいのかよくわからない 授業中は俺を突いてくるし、休み時間になると教室からいなくなる 行動自体はなんら普段と変わりないのだが、おかしい そのことに気づいてから一週間が経ち、俺は少し心配していた 他の団員は気づいてないのだろうかと思い、あまり気が進まんが古泉あたりに聞いてみよう 「なあ古泉」 「なんですか」 「ここ最近ハルヒの様子がおかしくないか?」 「おかしいとは、どのようにおかしいんですか?」 「いやうまく説明できないんだが、なんとなくな」 「また何か良からぬ企画を練ってるんじゃないですか?」 「まあそういうことならいいんだが、なんか違う気がするんだよ」 「しかし僕から見た限りいつもの涼宮さんに見受けられましたけど」 「俺の勘違いならそれでいいんだ」 「あなたにしては珍しく涼宮さんの心配ですか?ですが機関からも何も報告は来てませんし 特に何もないと思いますよ」 「そうか」 俺の勘違いなのか?だがまだ疑念は拭えない 手っ取り早く長門に聞くとするか、あいつならずばり答えてくれるだろうし 「長門」 「なに」 「ここ最近ハルヒの様子がおかしくないか?」 「……質問の意図が理解しかねる」 「だからなんていうか、最近どことなくいつもと違くないか?」 「涼宮ハルヒからは異常は感知していない」 「そうか」 長門がこう言うんだからそうだとは思うんだが 多分同じ答えが返ってくるだろうけど、朝比奈さんにも聞いてみるか 「朝比奈さん」 「なんでしょう」 「最近ハルヒを見てて、なにか様子がおかしいと感じませんでしたか?」 「え?特に何もおかしいところはなかったと思いますよ。涼宮さんと何かあったんですか?」 「あ、いえ何もないですよ。俺の勘違いでしょう」 「ふふっ変なキョン君」 期待はしてなかったが同じ答えが返ってきたか 三人とも何も感じないのか?俺にはなんか無理に明るく振舞ってるように見えるんだが 直接聞いてみるか 次の日 掃除を終わらせた俺はいつものように部室に行った 珍しいこともあるもんだ、部室にはハルヒしかいなかった 「あれ?ハルヒだけか」 「あたしだけじゃ不都合があるって言うの?」 「いやむしろ好都合だ」 「へ?」 「いや、それより他の連中はどうしたんだ」 「え?ああ有希はコンピ研に行って、みくるちゃんは進路相談、古泉君はなんか急にバイトとか言って帰ってわ。みんな怠けすぎよ、SOS団を第一に考えるべきだわ」 今更、SOS団が最優先事項になったのは初耳だがあえてつっこまないでおこう 「そうか」 「そうよ。そこんところ今度みんなに教えないとだめね」 「ああ、そうしてくれ」 「……あんた、今日はやけに素直じゃない頭でも打ったの?」 「どこも打ってないし、どこもおかしくなってない」 「そう。変な日もあるわね」 と言いパソコンをいじり始めた 「じゃあ帰ろうぜ。みんな時間かかるみたいだしさ」 「あんたまでサボろうとしてるわけ、そんなの認めるわけないじゃない」 「頼むよ。今日だけ、な?」 両手を合わせ頼んでみる 「…仕方ないわね。今日だけよ、そのかわり帰りに何かおごりなさいよ」 「はいはい」 ハルヒは部室のドアに張り紙をして、俺たちは帰ることになったのだが どう切り出せばいいんだ?『悩みでもあるのか?』こんな直接聞くのもおかしいよな でも聞かないでイライラするより聞いたほうがいいだろう 帰り道 坂を下りながら 「なあハルヒ」 「なによ」 「最近悩み事でもあるのか?」 いきなり立ち止まりやがった、またゆっくりと歩き出し 「何でそんなふうに思ったの?」 「なんとなくだが、ここ最近ハルヒと接してて違和感を覚えてな、いつも通りと言われればそうなんだが、なんか引っかかってな」 「……」 この三点リーダはハルヒのだ。俺はさらに続ける 「なんか、無理に元気出して振舞ってるように見えたんだ。いや俺の勘違いならそれでいいんだ」 「……」 否定も肯定もないハルヒを見るのは初めてだが、やっぱりなにかあるんじゃねーか 「悩みがあるなら話してみろよ。話ならいくらでも聞いてやるぞ」 「……」 「無理に聞こうなんて思ってない、ハルヒが話したくないならそれでいい。男の俺に話しづらい事なら朝比奈さんや長門にでも話してみろよ」 「……」 「俺はいつでも話し聞いてやるから、俺に話して解決するかわかんねーけど、誰かに話したら少しでも気が楽になる事だってあるんだ」 「……」 「あんまり一人で抱え込むんじゃねーぞ。らしくないハルヒを見てるのはつらいんだ」 「……」 その後、俺たちは一言もしゃべらないまま坂を下りた 坂がおわった所でハルヒがようやく話してきた 「いつ気づいたの?」 「一週間か十日ぐらい前かな」 「そう」 「あたしこっちだから」 「あれ?奢らなくていいのか」 「今日は帰るわ」 「そうか」 「じゃあね」 そう言って歩いて帰っていった そのときのハルヒの後姿はとても小さく見えた そのまますっきりしないまま家に着き夕飯を食べ、俺にまとわりついてくる妹をスルーし、部屋に着いた なんだか落ち着かん。何なんだこの感じは? しかしこれ以上考えてもどうにもならん。話したくなったら話してくれるさ そう思い、いつもより早くベッドに入った 明日は土曜日、不思議探索があるしな 深夜、俺もようやく眠りに入った頃に、電話があった 誰なんだこんな夜中に 着信 涼宮ハルヒ いつもならあまり驚かない電話なんだが、昨日あんなこと言っちまったし 眠い目をこすりながらなるべく平静を装いながら電話に出た 「もしもし」 「起きてた?」 寝てたに決まってんじゃねーか何時だと思ってんだ、なんて言えるはずもなく 「ああ、なんとなく寝付けなくてな。どうしたんだ?こんな時間に」 「うん。その今日の帰りのことなんだけど」 「なんだそのことか、やっぱりなんか悩んでるのか?」 「そのことなんだけど、明日キョンの家に行っていい?」 おかしすぎる、こんなふうに言われるなんて数えるほどしかないぞ。いや、なかったか 「俺はかまわんが明日は不思議探索じゃなかったか?」 「そうだったんだけど明日は中止にするわ。ほかのみんなにはあたしから連絡しとくから」 「そっか」 「じゃあおやすみ」 「ああ」 話が終わり、携帯で時間を見てみた。2時15分 ハルヒはこんな時間まで起きてて、電話してきたのか そういや何時に来るか聞いてなかったな、こんな時間まで起きてたんだ朝来ることはないだろう 話の内容が気になるがさすがに眠い、もう一眠りするか 翌朝 朝起きる気はこれっぽちもなかったが、いつも通り妹に起こされてしまった 「キョン君おきて、ハルにゃんが来てるよ」 「なに?今何時だ」 「8時だよ」 いくらなんでも早すぎんだろ 「ハルヒは今どこにいるんだ?」 「居間で待ってもらってるよ。早く起きてきてね」 なんだって?これはマズイ。色々とヤバイ。何がマズイかよくわからんが 俺は急いで服を着替えて、寝癖を直さないまま居間に向かった 幸運なことにそこには親の姿はなく、とてもほっとした 動揺を悟られぬように 「よう、ハルヒ」 「おはよう」 食卓テーブルに座りながら、お茶を飲んでるハルヒがいた 妹はニコニコしながら俺とハルヒを交互に見ている、何が面白いんだおまえは 「来るの早かったな」 「ごめんね。早く起きちゃったから」 初めて聞いたぞそんなセリフ、まさかここはもうすでに違う世界とか ちょっと前の俺ならそんなことも疑うが、昨日のハルヒの様子からしてそうではないだろう 「いや、いいんだ」 こう言うのが精一杯である 「それより他のみんなにはもう連絡したのか?」 「もうしたわ。7時くらいに」 よく起きてたな、まあみんなは不思議探索あると思ってんだし起きてるか それよりここにハルヒをおいとくわけにもいかんな 「ハルヒ、俺の部屋に行っててくれないか」 「わかったわ。じゃあ先に行ってるね」 「ああ」 ハルヒについていこうとする妹を捕まえ、今日は俺の部屋に入るなと何度も言い聞かせていた 「むぅ~わかったよ。キョン君のイジワル」 何とでも言ってくれ 俺は手早く寝癖を直し、パンを食べ、部屋に戻った ノックしたほうがいいよな 「どうぞ」 床に正座で座り、窓の外を見ているハルヒがいた。何を見てるんだ? 「おそかったわね」 「そうか?」 「そうよ」 ハルヒの向かいに座り、テーブルの上に手を置き 「で、どうしたんだ?」 「昨日あんた言ってくれたでしょ?悩みがあるなら聞いてくれるって。本当は話す気なんかなかった。あんたに話してもどうしようもないことだから。でも、もうちょっと疲れたみたい、あんたに頼るなんて。」 「……」 「昨日の帰りに何も言わなかったのは、ビックリしたからなの。何で気づいたの?どこでばれたの?そう思って何も言えなかった。でも嬉しかったの。こういう時だからこそいつも通り明るく振舞おうとしてた。実際いつも通りにしてたと思うわ。でもキョンは気付いてくれた。それが嬉しかったの」 「……」 「だから話そうと思って来たの、あんたは今から言うことを黙って聞いてほしい。聞くだけでいい解決してほしいなんて思わないから」 「わかった。遠慮なく言ってくれ」 「うちの親、離婚しそうなの」 ……それは悩むよな。そうか。 「二週間ぐらい前からなんかギクシャクしてたの。夫婦喧嘩なら今まで何回も見てきたけど今回はなんか違ったわ。その何日か後に家に帰ったら怒鳴り声が聞こえたの」 「お母さんがよく怒鳴ってるのは聞くけど、今回は二人そろってデカイ声出して喧嘩してた『おまえは何もわかってない』『あんたこそ何考えてるのかしら』そんなことを言ってたわいつもなら親父がすぐ謝るんだけど、今回それはなかったわ」 「夜になったらまた喧嘩しだすし、あたしも止めるんだけど、うまくいかなくて」 「喧嘩の原因を二人に聞いても、『母さんに聞いてくれ』『お父さんに聞いたら』なんて事しか言わないの。訳わかんないわよ」 「それで一昨日、お母さんが独り言みたいに『離婚しようかしら』なんて言うのよ。今までそんな事聞いた事ないからひどく悩んだの。ここ最近まともに寝てないし。昨日も」 「……そうか」 なんて言ってやればいいかわからない。今に仲直りするさ、こんな無責任な事言えんし また俺はこんな事しか言えないのか。情けない 「そうよ」 おもむろにハルヒは立ち上がり、俺の横に座って俺の肩をつかみながら 「どうすればいいの?」 そう言って俺の肩を前後にゆすり始めた 涙を流しながら 「ねえ、教えてよ。どうすればいいのよ。教えなさいよ」 俺は下を向いて俯くことしか出来なかった 「どうっうぅすればっいいっの?」 ハルヒは俺の肩から手を離し、俺の胸で泣き始めた。ハルヒの手は俺の背中に回され俺の背中に爪を立ててしがみついている 「うっうっうっ」 声をあまり上げずに苦しみながら泣いているハルヒを見て、俺もとても苦しかった ハルヒにロックされてない右手でハルヒの頭をそっと撫ぜてやる これくらいしか出来なくてごめんな 何十分そうしていただろうか、背中にまわされた手の力が弱くなってる事に気がついた 泣き声も出していない。ハルヒの手をそっと離し顔を見てみる 寝てる 涙のあとがくっきりついた顔で寝てる。とても安心した顔で 寝てないって言ってたもんな。出来るだけ衝撃を与えないようにしてハルヒを抱き上げて俺のベットに寝させた ハルヒを抱き上げてみてとても軽い事に気付いた。やっぱ女の子なんだよな ハルヒは体を丸め、こちらを向きながら寝ている これ以上ハルヒの寝顔を盗み見する趣味はないので、俺は自分の部屋を出て居間に向かった 連絡しときたい相手もいたしな。トイレに入り携帯を見てみる 着信あり 12件 やはりな。その内1件は朝比奈さん、残りは古泉 気持ちはわかるんだがちょっとかけすぎじゃないか 俺は着信履歴の三分の一以上を占めてる古泉の名を見て、気分が悪くなった でも、かけてやるか 便器に座ったまま、古泉に電話した 「お待ちしてました」 おい、ワンコールで出るなよ。 「おまえに待たれてもうれしくないな」 「まあそう言わないでくださいよ。今朝、涼宮さんから電話がありまして、いきなり今日は中止だから、と言われまして。いつもならただの気まぐれだろうと思うんですけど、どこか様子がおかしかったものですから。あなたに連絡してみたんですけど」 「出なかった、か」 「そこで機関に連絡して、涼宮さんの事について色々調べさせてもらいました」 「あまりいい趣味とは言えんな」 「申し訳ございません。何分、あまりいい事態が起こってるとは思えなかったものですから。今涼宮さんはそちらにいらっしゃるんですよね?」 「俺の部屋で寝てる」 「そうですか」 「おまえはどこまで知ってるんだ?」 「ええ、涼宮さんのご両親の仲が最近あまりよくないことしかわかりませんでした」 「そうか。それで今大変なのか?閉鎖空間だかは」 「いえ、閉鎖空間は発生してませんよ」 「なんだと?」 あんなに不安げにしてたのにどうしてだ? 「あなたがこちらの心配をしてくれるのはうれしいですが、やはり何かあったんですか?」 「いや大丈夫だ。ハルヒが起きたら家まで送っていくよ」 「わかりました。少々心配したんですけどあなたがご一緒してるなら大丈夫そうですね。何かありましたら連絡ください」 「ああ」 「それとあんなに電話して申し訳ありませんでした。それではまた」 とは言ったものの、どうするべきか 古泉はあまり状況把握が出来てないみたいだし、あいつらしくない 朝比奈さんには今日あった事を伏せて電話しておいた。俺に話してくれたんだ、あまりベラベラしゃべるのはよくないよな 時計を見ると、もう4時を過ぎていた そろそろ起きてるかな、そう思い部屋に戻った まだ寝てるか、俺はベットによしかかり何か言ってやれることはないのか、必死に考えていた でも他人が夫婦仲に入って、何か言うのもなあ 「はぁ」 何も思い浮かばん。これ以上考えても駄目だな 俺はいつも通り振舞うしかないな。ハルヒに余計な心配かけたくないし それしかないな 色々と考えていたが『ガバッ』と音が聞こえるような勢いでハルヒが起きた 「ようやくお目覚めか」 ハルヒは俺を一瞥し周りをきょろきょろ見て 「あれ?あたし寝ちゃったの?」 「ああ、起こすのもかわいそうなくらいぐっすりな」 「そっか」 急に顔を真っ赤にして、俺から視線をはずした 「今何時?」 「8時ちょい過ぎだ」 「なんですって?……あたし何時間寝てたの?」 「8、9時間ぐらいじゃなのか?」 「そ、そんなに寝てたの?」 「ああ」 それから俺の方に向き直り、何かを決意したのか話し始めた 「今日は話を聞いてくれてありがとう」 なんと?聞いたことないぞそんな言葉 「あんたの言った通りね、全部話したらスッキリしたわ。もう涙が出ない位泣いたし」 「さっきはあんたに話しを聞いてくれるだけでいい、なんて言っといてあんなことしてごめ「そういえば他のみんなも心配してたぞ、いきなり不思議探索が中止になったから」 ハルヒが何を言おうとしてるかわかったから、わざと割り込ませた これが今俺に出来ることさ、これ以上ハルヒの口からそんなこと言わせたくないからな 「……そっか」 「他のみんなには何も言ってないから心配すんな」 「うん」 それからしばらくの沈黙が続いた 「あーなんか久々に寝た気がするわ。スッキリしたらお腹へってきちゃった、今日何も食べてない もの。そろそろ家に帰るわ」 「そうか。じゃあ送ってくよ」 「いいわよ、そんなことしなくて。一人で帰れるわ」 「駄目だ」 「何が駄目なのよ、でもどうしてもって言うなら許可するわ」 「じゃあどうしてもだ」 「仕方ないわね、じゃあお願いするわ」 少し元気が出たみたいだな それから家を出て、自転車で二人乗りしてハルヒの家へ向かった 最初の方、後ろに乗っているハルヒはどこも掴まないで黙って後ろに乗っていた 途中から俺の腰に手を回し、頭を背中に預けて、黙って乗っていた 俺はひたすらペダルを漕ぎ続けた 俺とハルヒは自転車に乗ってから、一言も話さなかった 30分ほど走っただろうか、ようやくハルヒが口を開いた 「この辺でいいわ。止めて」 「ああ」 「じゃあね」 そう言って走って帰っていった 帰り道、ハルヒは後ろに乗っていないのに足が重く、家まで1時間かかった 少し疲れたかな 家についてベットに倒れこむようにして横になり、テレビをつけた もう12時か、そろそろ寝るか そう思い寝ようとしたら、また電話があった ハルヒからだった 「キョン、ちょっと聞いてよ」 随分うれしそうな声だな、いい事でもあったのか 「なんだ?何があったんだ」 「さっき家に着いたら、二人して抱き合ってるのよ。意味わかんないわよ」 「それでね、仲直りしたの?って聞いたのよ。そしたら二人して『喧嘩なんかしてたっけ』なんて言うのよ」 「こんなに悩んだあたしがバカみたいじゃない。でね、どうしても喧嘩の理由が知りたいからしつこく聞いてみたの。そしたら、あたしの進路のことで揉めてたみたいなの」 「進路?」 「そうよ。大学に行かせるだの、なんだのって揉めてたみたいなんだけど、あたしの好きにさせる事で決着がついたみたい。あたしそれを聞いてイライラを通り越して、あきれたわ」 「でも今後こんなことはごめんだから、二人に正座させて今まで説教してたわけ」 俺はハルヒが親に説教してる姿を想像して笑ってしまった。いや親は見たことないけど 「何笑ってんのよ。笑い事じゃないのよ」 「ああ、すまん。それよりおまえは親にまで説教するのか?」 「当たり前じゃない。そんなことに親も子供も関係ないわ」 「おまえらしいな。でもよかったじゃないか、仲直りしてくれて」 「そうね、安心したわ。それより明日、あんた暇?」 「おまえが俺の予定をきくなんて珍しいこともあったもんだな」 「そんなことはどうでもいいじゃない、どっちなのよ。暇なの?」 「暇だが」 「それならもっと素直にはじめから言いなさいよ」 「おまえにだけは、言われたくないね。それで明日なんかあるのか?」 「明日の昼12時にいつもの待ち合わせ場所に来て。じゃあおやすみ」 切りやがった、俺はまだハイもイイエも言っていない気がするのだが しかし今日は何も文句はないね、良かったじゃないか いつも通りのハルヒに戻って 俺は心底安心していた 「はぁよかった」 次の日 いつもより遅く起き、適当に身支度を済ませ家を出た 15分前には着くだろう、俺にとってはいつもより早めだ なんとなく早く出たんだ、そこに深い意味などない 到着 そこにはハルヒしかいなかった、まあ予想はしていたが 「遅い、でも今日は罰金は無し」 「というか遅刻はしてないんだがな」 「いいからここに座んなさい」 そう言ってハルヒが座ってるベンチに座った 「今日は何なんだ?」 「昨日の話しに決まってんじゃない」 「もうあの話は終わったんじゃないのか?」 「詳しいことは全然話してないわ」 それからハルヒは昨日の出来事を話し始めた ハルヒは怒りながら笑い、笑いながら怒り、などととても器用なことをしながら話していた 俺は適当に相槌を打っているだけで話は頭に入ってこなかった とても安心していた、良かった元に戻って、今日はいつもよりさらに元気じゃないか だが、ここで一生の不覚をしでかしてしまった ハルヒは話を急にやめ、俺の顔を覗き込むようにして 「何で泣いてんの?」 「へ?」 驚いたことに俺の目からは涙が出ていたのである 「どうしたの?だいじょうぶ?」 「あ、ああ大丈夫だ」 目を軽くこすりながら、何で泣いてんだ俺、と思っていた 「どっか痛いの?」 「いやそういうんじゃない」 「でも、もう大丈夫なんだよね?」 「ああ」 少し話が途切れ、俺は恥ずかしいことを口にしていた 「たぶんな、たぶん安心したんだ。今日のハルヒを見て安心したんだ」 「え?」 「いつもの元気なハルヒが見れて、安心したんだ」 「そう、なの?」 「ああ、たぶんな」 「俺は昨日おまえに何も言ってやれなかった。おまえが苦しんでるのに気の利いたこと何も言えなかった。本当情けねーよ。昨日はごめんな」 「あんたバカじゃないの?」 「は?」 「あたしがあんたに話してどれだけ元気が出たと思ってんのよ。もしあんたに話してないで一人で抱え込んでたら、なんて考えるだけでぞっとするわ。あんたは黙って話しを聞いてくれた、真剣に、いつもなら変につっこむけど、そんなことなかったでしょ?」 「ああ」 「だからあたしに謝らないで。わかった?」 「わかった」 「よろしい」 「キョンにこの事、相談しなくてもこの問題は解決したと思うの。でもね今はあんたに話してよかったと思ってるの」 「どうしてだ?」 「わかんないの?」 「わからんからきくんだろうが」 「はぁ本当にあんたってあれよね」 「あれってなんだ?」 「教えるわけ無いでしょ」 そう言って勢いよく立ち上がり 「でも、あたし、とても大切なことに気付いたから、今回は辛かったけど、良かったわ」 「何に気付いたって?」 「だーかーら、教えるわけ無いでしょ」 俺の手を取り走り始めた。俺の好きな笑顔で やれやれ ハルヒが気付いた事は結局わからなかったが 今回、俺が気付いた事とハルヒが気付いたことが、同じであると 俺はそう願いたい
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「キョンくーん、ハルにゃんが来てるよー」 日曜日の朝っぱらから妹に叩き起こされる。いい天気みたいだな。 いてっ、痛い痛い、わかった。起きるから。いてっ、起きるって。 慌てて準備をして下に降りると、ハルヒはリビングでくつろいでいた。 「あんた、何で寝てんのよ」 「用事がなかったら日曜日なんだから、そりゃ普通寝てるだろ」 「普通は起きてるわ。こんないい天気なのに。あんたが変なのよ」 たとえ俺が変だったとしても、こいつだけには絶対変とか言われたくねぇ。 「で、今日はどうしたんだ。お前が来るなんて聞いてないぞ」 「んー、今日はなんかキョンが用事あるらしくって、暇だから遊びに来たのよ」 今のを聞いて何をわけのわからないことを、と思った人間は間違いなく正常だ。なら俺は何だ?変人か? そうだな、わかりやすく説明すると、この涼宮ハルヒは異世界からやってきた涼宮ハルヒなのだ。 『涼宮ハルヒの交流』 ―エピローグ― もうあれから数ヶ月が過ぎ、俺たちは基本的には落ち着いた日々を過ごしていた。 あの日、異世界から『俺』とこの涼宮ハルヒが、初めてやってきた日、病室はとんでもない混沌状態だった。 俺たちの方のハルヒが病室に帰ってきて、この二人の存在がばれそうになった瞬間、俺は諦めて目を瞑った。 その後、ハルヒの声に目を開けると、二人の姿は消えていて、ハルヒは何も見ていないようだった。 一瞬、今までのことは全部夢なんじゃないかとも思ったが、周りの連中の顔色からそうでないことは明らかだった。 後で古泉に確認したところ、二人はドアが開いた瞬間にふっ、と消えていったそうだ。 そういうわけで、なんとかその日は乗り切ったのだが、なぜかこいつは度々こっちに遊びに来るようになった。 ハルヒにだけは絶対にばれないようにと頼みこんだのだが、こいつはわかっているのかいないのか。 ちなみにこっちのハルヒとこのハルヒの違いは、顔を見ればなんとなくわかるようになった。 俺の部屋にハルヒを連れて行き、尋ねる。 「で、どうしてお前はちょこちょここっちの世界に来るんだ?向こうで遊べよ」 「せっかく来れるんだからその方がおもしろいでしょ、なんとなく」 別にどっちもたいして変わりゃしないだろ。 「それとな、お前らわざわざこっちの世界にデートするために来るのはやめてくれ。 こないだ鶴屋さんに見られてたらしく、やたらとにょろにょろ言われて大変だったんだぜ」 ハルヒはしたり顔になる。 「こっちの世界ならなにやってもあんたたちのせいにできるし、人目を気にしなくてすむのよ。 あ、犯罪行為とかは今のところするつもりないから安心していいわよ」 くそっ、お前らが町でめちゃくちゃするせいで俺らが学校でバカップル扱いされてるっていうのに。 何度かその様子が谷口と国木田にまで目撃されて、かなり冷やかされちまったんだぜ? いや、まぁこっちの俺たちの学校の様子に原因がないとも言えないが。 「で、あんた今日は暇なのよね?ホントに?」 だからさっき用事はないって、……あ! 「やべっ、忘れてた。もう少ししたらハルヒが来る」 「あんた何やってんのよ。あたしが来てなかったらまだあんた寝てるわよ。せいぜいあたしに感謝しなさい」 言ってることが当たっているだけに何も反論できん。 「それにしてもどうしようかな。有希のところにでも行こうかしら。それともみくるちゃんで遊ぼうかな」 みくるちゃんで、ってなんだよ、で、って。 「帰ればいいだろ。向こうのSOS団で遊べよ」 「そんなこと言ったって、こっちの有希とじゃないとできない話とかもあるのよ。 あたしのところの有希とは、お互いまだ秘密が守られてるっていう暗黙の了解があるし。 それをわざわざ自分から崩すなんて無粋なことしたくないし」 いや、お前から粋なんて感じたことはないから安心しろ。 「どっちにしろ早く行かないとまずいんじゃないのか?お前は長門の家までワープで行くのか?」 「そんなことできるわけないでしょ。もちろん徒歩よ」 「だったら早くしないと、もうハルヒが来るぞ」 「そうね、じゃあ有希のところに行くわ。またね」 「ああ、それじゃ……ってやっぱ待て。時間がまずい。行くな。最悪玄関でハルヒと鉢合わせになる」 「じゃあどうすんのよ。……あ!三人で遊ぶってのはどう?楽しそうじゃない?」 「却下だ却下。考える間でもない」 全然楽しそうじゃない。間違いなく俺の負担が数倍になってしまう。 「……とりあえず帰ってくれないか」 「嫌よ。それ結構疲れるのよ。って言ったでしょ」 だから疲れるんならいちいちこっちに来るなよ。 「……わかった。なんとかしてみる」 仕方なく携帯電話に手を伸ばす。 なかなかでないな……。コール音が8回程度のところでやっと声が聞こえる。 『……もしもし、どうかしましたか?』 「都合悪いのか?ならやめとくが」 『結構ですよ。それよりご用件は?』 「ああ、すまんな。今ハルヒがどのあたりにいるかわかるか?」 『先ほど家を出たようですから、……あなたの家まであと3分といったところでしょうか?』 3分?ってもうすぐそこじゃねぇか。 「今向こうのハルヒが俺のところに来ていて困ってるんだ。なんとか長門の家まで運べないか? なんか帰りたくないってわがまま言ってて困ってんだ」 『……それは困りましたね。5分もあればそちらにタクシーを寄越せますけど』「くそっ、無理だ。他に何か――」 ピンポーン。 ああ、間に合わなかった。何が3分だよ。1分もなかったじゃねぇかよ。 「……どうやらもうハルヒが来ちまったようだ。お前3分って言わなかったか?まぁいい。これからどうす――」 『ご武運を』 プツッ。 ってまじかよ。あいつ切りやがった。信じられねぇ。 下で妹が何か言ってるのが微かに聞こえる。 「とりあえずどこかに隠れるか、帰るかどちらかにしてくれ」 「そうね。おもしろそうだからちょっと隠れてみるわ」 おもしろそうとかで行動するのはまじで勘弁してくれ。 「キョンくーん。なんかまたハルにゃん来たみたいだよー。なんでー?」 いや、妹よ。お前は知らなくていいんだ。 「とりあえず待っててもらうように言っててくれ。準備ができたら行くから」 くそっ、どうすりゃいいんだ? 長門に頼むか?しかし、長門はハルヒには力が使えないって言ってたな。 ピンポーン。 「はーい」 誰か来たのか?また妹が相手をしているようだが。 しばらくすると再び妹が部屋に来た。 「みくるちゃんが来たよー。それでね、『10分間涼宮さんを連れだします』って伝えてって言ってたよー」 どういうことだ?でも朝比奈さんナイスだ。助かりました。 このチャンスに、再び携帯電話を手にとる。……今回も長いな。何かやってんのか? 『……もしもし、どうにかなりそうですか?』 なりそうですか?じゃねぇよこのヤロー。 「説明は面倒だ。時間がない。とりあえず家にタクシーを頼む。5分あればなんとかなるんだろ?頼む」 『わかりました。すぐに新川さんを向かわせます』 「サンキュー、よろしくな」 電話を置いてハルヒに話しかける。 「とりあえずなんとかなったぞ。5分で古泉からタクシーが来る」 「あたしもう来たんじゃないの?どうして助かったの?」 「事情はよくわからんが朝比奈さんに助けられたようだ。どうしてわかったんだろうな」 「みくるちゃん?……なるほどね。たぶんあんた後でみくるちゃんに連絡することになるわ」 なんだって?どういう意味だ? 「そのうちわかるわ」 そう言ってニンマリ笑う。 「まぁわかるんならいいさ。それより長門の家に行くんだよな?なら連絡するが?」 「あ、そうね。やっぱいきなり押し掛けるのは人としてどうかと思うしね」 お前は何を言ってるんだ?お前は今何をやってるかわかってないのか?それとも俺ならいいってのか? 「……じゃあ連絡するぞ」 長門の携帯に電話をかける。 『何?』 って早っ!コール音なしかよ。 「あ、いや、今俺のところに異世界のハルヒがいきなり遊びに来たんだが、俺はハルヒと約束があるんだ。 で、この異世界ハルヒがお前と遊びたいみたいなこと言ってるんだが、どうだ?」 『いい』 「迷惑ならそう言えばいいんだぞ。お前もせっかくの休日だろ?いいのか?」 『問題ない』 「……わかった。ありがとよ。じゃあもう少ししたらここを出ると思う。よろしくな」 『だいじょうぶ。……私も楽しみ』 「そっか、ならいい。じゃあまたな」 『また』 ふうっ、と、電話を置いて一息つく。 「だいじょうぶみたいだ。長門も楽しみだってさ」 「そう、それは良かったわ」 「それにしても、お前長門に変なこととか教えるなよ」 「変なことって何よ。あたしは人間として当然のことを有希に教えてあげてるだけよ」 俺はお前に人間として当然のことを教えたい。 ピンポーン。 三たびチャイムが鳴らされる。 今度は妹がすぐにやってくる。 「キョンくんタクシー来たよー。ってあれー、どうしてハルにゃんがいるのー?」 頼むから気にしないでくれ、妹よ。 タクシーで長門の家に向かうハルヒを見送った後玄関先で待っていると、すぐにハルヒと朝比奈さんが現れた。 「あんた、こんなとこで何やってんの?」 「何って、お前を待ってたに決まってるだろ?」 「そ、そう。わざわざ出てこなくても中にいればいいのに」 ちょっと照れてるみたいだ。 「それじゃあ、私は帰りますねぇ」 「あ、朝比奈さん。わざわざありがとうございます」 すると、朝比奈さんは近づいてきて、俺の耳元でささやく。 「私は実は少し未来から来ました。後で私に伝えておいてください」 あっ!なるほど。さっきハルヒが言ってたのはそういうことか。 「今日の午前10時にキョンくんの家に行って、涼宮さんを10分ほど連れだすように伝えてくださいね」 「わかりました。後でやっておきます。今日はありがとうございます。助かりました」 「お願いね」 そういって極上の笑顔を浮かべると、少し手を振り、朝比奈さんは去って行こうとして再び戻ってきた。 「あの……今日はちょっと都合が悪いの。できたら連絡は明日以降にしてもらってもいいですかぁ?」 「はあ、構いませんけど。用事でもあるんですか?」 「えぇっと、この時間の私は今は古いず……あっ!な、なんでもないですぅっ。禁則事項ですっ。それじゃあ」 そう言うと、朝比奈さんは大慌てで走って行った。 何だって?古いず……?古いず、古いず。まさかその後には『み』が来るんじゃないでしょうね? そんなばかな。いくらみくるだからってそこに『み』は来ませんよね? 「あんた、何やってんの?みくるちゃんなんだって?」 「あ、ああ。いや、ちょっと頼まれごとをしただけだ。気にするな」 「……まぁいいわ。中に入りましょ。お茶でも煎れてあげるわ」 「ああ、そうだな。サンキュ」 こんな感じで、ドタバタしながらも異世界との交流はまだ続いている。 『涼宮ハルヒの交流』 ―完― エピローグおまけへ