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真夏のある日のこと。 SOS団の活動もない休日の午後、エアコンの不調により、うだるような暑さに耐えかねた涼宮ハルヒは、涼を求めて酷暑日の街を彷徨っていた。 「涼み処の定番、図書館はやっぱり人でいっぱいだったか……」 街中で配られていた、どこかのマンションの広告が入った団扇で扇ぎながら、街中を歩く。 「そもそもSOS団団長たるあたしが、人と同じ発想で涼を求めててどうすんのよ……」 さすがのハルヒも、この暑さに思考が常人並みに変化していた。 「あぢぃ……」 コンビニエンスストアでは、ごく短時間しか留まれない。北口駅前のショッピングセンターでは、時間は潰せるが座る場所がない。 「あ゛~……もうこうなったら、環状線にでも乗りに行くか!?」 その路線は最寄りの駅からさほど遠くはないにしても、別に鉄ちゃんではないハルヒにとって、ただ列車に乗っているだけという行為は、到底耐えられる代物ではない。 「雪でも降って涼しくならないかな……雪……ゆき……ユキ……有希……?」 「呼んだ?」 「うひゃあぁぁっ!?」 唐突に背後から掛けられた、見知った人の声に、ハルヒは飛び上がった。 「有希!? いきなり声掛けるからびっくりしたじゃない!」 振り返った先に居た文芸部部長、そしてSOS団員の長門有希は、珍しいことに私服だった。あまりの暑さに、制服ではもたないと判断したらしい。 「……いや、あの、有希……? 私服なのはいいことだし、今日は凄く暑いってことも分かるわよ? だけど……」 確かに、有希の服装は、理に適っていた。実に夏らしい。 「その格好じゃ、どう見ても男の子よ――――――――――――!!」 Tシャツ、短パン、サンダルに麦藁帽子。体格と相まって、可愛らしい小学生の男の子にしか見えなかった。知り合い以外に、この姿を見て「女子高生」と思う者は居ないだろう。 「この服装は、知り合いに『似合うし、機能的だから』と薦められた」 「確かに、これ以上ないくらいに似合ってるけど、似合う方向性が違うというか、何というか……」 「……?」 「……ま、いっか。それにしても、あんたと街中でばったり会うなんて、珍しいこともあるものね。てっきり図書館か本屋に入り浸ってるかと思ったのに」 とはいえ、海で遊んできた、という格好でもないわね、とハルヒは有希の姿を観察しながら言った。 「朝から図書館に居たが、人が多くなってきたので帰るところ」 「ああ、そういうこと。あたしもさっき涼みに行ってきたんだけど、人だらけで、あれじゃ落ち着いて読書なんてできないわね」 「涼みに?」 「うちのエアコンがぶっ壊れちゃってさ~、涼しい場所を求めて、このクソ暑い中を彷徨ってんのよ」 「……そう」 有希はハルヒに真っ直ぐな瞳を向け、 「それなら、うちに来るといい」 「え、マジ!?」 こくりと、無言でうなずいた。 ………… ……… …… … 「お邪魔しま~す!」 高級マンションだけあって、断熱がきちんとされている有希の部屋は、朝から無人で空調を効かせていなかったにもかかわらず、ひんやりとしていた。 「いや~~生き返るぅ~~~~」 「……飲んで」 有希はエアコンのスイッチを入れた後、冷蔵庫からキンキンに冷えた杜仲茶を出してきた。 「……ぷっは~! くぅ~~~~~~っ!!」 グラス一杯分を一気に飲み干したハルヒは、珍しく定時で上がったサラリーマンがビアガーデンで生中を飲み干したがごとき喜びの雄叫びを挙げると、そのままお替りを要求した。 「うまい! もう一杯!!」 「どうぞ」 こうして何杯か同じやり取りを繰り返した頃には、エアコンも効いてきた。 ハルヒは寝転んで全身からフローリングの冷たさを享受し、有希は借りてきた本の世界に旅立っていた。 エアコンの音をBGMに、ページをめくる音と、時折グラスの中で溶けた氷が立てる音だけが響く。 (暑い時には、何もない部屋っていうのも、いいものね……) やがてすっかり体力を回復したハルヒは、何となく、読書する有希を観察していた。 「……そっか。座椅子、買ったんだ」 孤島で合宿したときは、彼女は船の中で正座して読書していた。しかし今は、コタツの向かい側で、回転できる座椅子に座って読書している。 「……通販生活」 「買い過ぎには注意しなさいよ?」 「…………………………………………………………………………………………善処する」 「今の間は何よ、今の間は!?」 「気にしないで」 「気になるわよ!」 「…………」 「微妙な表情で見詰めるんじゃありません!」 「…………」 「しょぼーんってしてもだめ!」 「…………」 「こらー! 本で顔を隠すなー!!」 第三者がこのやり取りを目撃しても、有希の表情が変化しているとは思えないだろう。それだけ微細な表情の変化でも、ハルヒはきちんと見分けていた。 そんなやり取りもあった後、また落ち着きを取り戻した空間。ハルヒが一つ伸びをしたとき、それは起こった。 「ん? どうしたの、有希?」 有希の体が、不意にピクリと動いた。 「……足」 「足? ……ああ、当たっちゃったか」 ハルヒが伸びをしたとき、ちょうど前方に投げ出されていた有希の足の裏に、ハルヒのつま先が触れていた。 「を? ひょっとして有希は、足が弱いのかな?」 ちょんちょん、とハルヒがつま先で有希の足の裏をつつくと、その度に有希の体がピクリピクリと反応した。 「うりうり~」 ちょっと面白くなってきたハルヒは、次第に有希への攻めを強くした。 「……っ、うっ!」 「あ……」 一際大きく有希の体が跳ねた拍子に、彼女は膝をコタツにしたたかに打ち付けた。 「……………………………………………………………………………………………………」 「ごめん、ごめんってば! そんな涙目で、訴えかける視線を向けないでよ……」 ハルヒが必死に弁解するが、有希はハルヒにだけ分かる微妙な視線を送り続けていた。 やがてハルヒがいっぱいいっぱいになったところで、不意に有希は視線を逸らし、明後日の方向に視線を向けた。 「え……!?」 それで勝負はついていた。 ハルヒが自分の置かれた状況を把握したときには、背後に回った有希に床に倒され、脚を極められていた。 逸らした視線の先をハルヒが釣られて追いかけている間に、有希は超高速で移動していた。 「くっ、やるわね、有希! 今の技は、完全にやられたわ。でも、まだ負けないわよ!」 極められた技を外そうともがくハルヒに、有希は冷静に宣言した。 「あなたはもう、昇天している」 握り締め、中指の第二関節を突き出した有希の拳に、打撃が来るものとガードを固めたハルヒは、 「ひぎいっ!?」 悶絶していた。 「ちょ、ちょっと、有希! やめ……」 有希は構わず、固めた拳をハルヒの足の裏に突き立てて抉った。 「んのおぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!?」 「ここは胃」 さらに有希は、拳を捻じりながら滑らせた。 「あおおおおぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!」 「ここは子宮」 有希の責め苦は続く。 「これは足の裏にある各臓器の反射区を刺激するマッサージ」 「足裏マッサージでしょ! 知ってるわよ! すんごく痛いんだから!」 「特に痛い所が、何らかのダメージを受けている部位」 「分かったから、離してよ!」 有希は無言でうなずき、掴んでいたハルヒの足を離すと、反対側の足を掴んだ。 「ちょっと、離してって言ってるでしょ!?」 「人体はバランス。片方だけの施術ではバランスを崩し、かえって悪影響を及ぼす」 有希はハルヒの足の指を強くしごいた。 「んぎひぃっ!?」 「じっくり丹念に凝りをほぐす」 「い、いやあっ! 痛いのいやぁっ!!」 ハルヒは涙目で、首を左右にフルフルと振りながら、イヤイヤをしている。 「にょああぁぁぁぁぁぁっっっ!!」 有希の拳が、無慈悲にハルヒの足裏に突き立てられた。 ………… ……… …… … 「ひゅーっ、ひゅーっ……」 じっくり丹念に足裏の凝りをほぐされたハルヒは、もはや虫の息だった。瞳孔が開いている。 「全体をほぐし終わった」 「も、もう勘弁して……お願いだからあっ……」 普段のハルヒからは信じられないような、情けない声で有希に懇願する。 有希は静かに、ハルヒの足を開放した。 「た、助かった…………」 有希はそのまま台所に消えると、湯気の立つタオルを持って帰ってきた。 「仕上げ」 「あー……蒸しタオル、気持ちいい……」 地獄から一転、今度は極楽を味わうハルヒ。恍惚とした表情で有希に身を任せる。 ハルヒの足を蒸しタオルでくるんだまま、有希は静かに告げた。 「あなたが特に弱っているところは分かった」 有希の言葉に、ハルヒは最も痛かった部分を思い出して、赤面した。 「恥ずかしがることはない。女性にはありがちなこと」 「やだ、そんなこと言わないで……」 ハルヒは両手で顔を隠している。 「最後に、そこを……集中的に施術する」 有希の言葉に、ハルヒは今度は顔を青くした。 「ちょ、有希、やめて! 後生だから!」 「あなたが特に弱っているところは……」 有希は親指を立てた。 「いやぁぁぁぁ!! ソコだけは! ソコだけはー!」 ハルヒは両手で顔を隠したままイヤイヤしている。 「肛門」 有希の指が、ハルヒの足裏に深々と突き立てられた。 「アッ――――――――――――――――――――!!」 ハルヒの悲鳴が部屋中に響き渡った。しかし、悲鳴はすぐにかき消された。 「このマンションの防音は完璧」 「……どうしたの?」 有希はハルヒに声を掛けた。 返事がない。ただのしかばねのようだ。
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―――― 二日目 2 ―― それにしても台湾に着てからのハルヒの機嫌というのは不安定である。いつもなら とても機嫌がよく俺たちに迷惑事を振り掛けるか完璧にメランコリーで話しかけても うっさいわね。バカ。アホ。マヌケ面。と言われるかの二つに一つのはずである。そ のはずがどうだろう。台北101では急に女の子になってみたり、かと思えばいつも のように傍若無人っぷりを遺憾なく発揮してみたりと忙しい。まったく修学旅行って いうのはこれほどまでも人を変えるとはね?クラスに一人はいるんじゃないのか?ソ コ!いないのか? ホテルを出発して一時間が経とうとしている。今、俺とハルヒは繁華街の中にいる。 俺とハルヒは土産物屋や服やに立ち寄り妹へのお土産や朝比奈さんへのお土産となる チャイナ服などを物色していた。 「ねぇ、キョン?これなんかみくるちゃんにぴったりじゃない?」 と、ハルヒが差し出したのは背中がパックリと開いた真っ赤なチャイナドレスであ った。うん、悔しいがこれを着た朝比奈さんを見てみたいな。 「こら!エロキョン!変なこと考えてるでしょ」 最近思うんだが俺は思ったことが顔に出やすいタイプなのかね?誰か教えてくれ。 結局お土産は荷物になるから最後ということで、俺とハルヒは再び町へ出た。台北 の市街地は中心地は東京と比べても見劣りしないほど近代的であったが、少し路地へ 入ると中国文化の香り漂う趣深い町並みが並んでいた。テレビのブラウン管を通して しか見たことのないような屋台が立ち並び、そこで生活する人々の活気がひしひしと 伝わってくる。まさかこれほどすばらしい街だとは思いもしなかったぞ。いつかSO S団のみんな、朝比奈さんを連れてもう一度来るのも悪くないかもしれないな。 出発してからというもののハルヒは修学旅行を楽しむ普通の女子高生を続けている。 本来であれば普通というものを一番嫌うハルヒであるから考えられないことであり、 俺自身も驚くべきことであった。そんなことを考えながら街を歩いているとおもむろ にハルヒが口を開いた。 「ねぇ。キョン?台北101に行きましょう」 ハルヒの口から放たれた言葉は思いもよらないものだった。 「台北101?昨日も行ったじゃないか。あそこになんか不思議はないぞ?」 「うるさいわね!団長に黙ってついてくればいいのよ!」 「なぁ、ハルヒ。修学旅行に来てからのお前、なんかおかしいぞ?」 「おかしいって何がよ?」 「わからんがいつものお前でないことだけは確かだ。」 「こっのバカキョン!!アンタはどこまで鈍感なのよ!」 「ハルヒ、言ってることがめちゃくちゃだぞ?」 「うるさいうるさいうるさ――――い!あんたはねぇ、あたしのことをぜんぜんわかっ てない!キョン!耳の穴かっぽじってよく聞きなさいよ!あたしはねぇ、アンタのこと がs・・・・!!」 そのとき、世界が崩れた。 しばらくの間、俺は目を開けることができなかった。世界が『崩れた』瞬間、俺は無 意識にハルヒを抱きしめていた。目を開けると怯えたハルヒが俺の腕の中にいた。あた りに目を配ると周りにあったはずの屋台や店がなくなり代わりに瓦礫の山があった。こ のとき初めて地震に遭ったという事を理解した。修学旅行先でまさか地震に遭うとはな。 これもハルヒの力か? 「ハルヒ、怪我はないか?立てるか?」 俺はハルヒの手をとり立ち上がろうとした。 「ほら掴まれy・・・!」 足が震えて立てなかった。情けないね。自分の足に拳で渇を入れ俺は何とか立ち上が る。ハルヒに手を差し伸べる。ハルヒは俺の手につかまるが足が震えて立ち上がること ができない。俺は震えるハルヒを抱きしめた。 「キョン・・・」 弱々しいハルヒの声。・・・みんなはどうなったんだ? 「ハルヒ!みんなを探さないと!立てるか?」 「立てるわけないじゃない・・・・。おぶりなさい!団長命令よ!」 震える声を絞り出すハルヒ。俺はハルヒをおぶり、ホテルへ向かうことにした。台北 の街はあちこちで建物が崩れ人々が救助活動に奔走している。谷口や国木田、阪中はど うなったのだろうか。早くみんなに会いたい。 どれほど歩いただろうか。日は暮れ、灯の消えた街は不気味だった。あちこちから人 のすすり泣く声や悲鳴、安否の取れない家族を呼ぶ叫び声などが飛び交っている。昨日 台北101から眺めた街とはとても思えない。あれほど美しかった街は 「キョン!ちょっと?まだホテルに着かないの?」 「・・・・・。すまん。実はな、ここがどこだかわからない。」 「えぇ?キョン!道に迷ったっていうの?」 「認めたくないがそのとおりだ。」 「まったく使えないわねぇ。」 俺の背中でずっと寝てたお前に言われたくはないんだがな。ハルヒは俺の背中から飛 び降りると俺をズバッと指差し、 「ちゃんとあたしのことを守りなさい!わかったわね!」 と言い放った。いつものハルヒに戻ったようだ。 「わかったよ。ハルヒ。」 「わかったならホテルに向けて出発するわよ!」 こうして冒頭に戻るわけであるが、いつまで歩いてもホテルに着きそうもないのはな いのはなぜだろうね。やっぱり暗いからか?とりあえずホテルに着かなきゃにっちもさ っちもいかないんだがな。 「ちょっと!キョン!ここどこなのよ!」 わかっていたらさっさとホテルについているんだがな。それにしても地震というもの はひどいものである。建物をなぎ倒し人の命を奪っていく。まったく人間というのは非 力なもんだね。 腕時計をみると時刻はすでに午後10時をまわっていた。月の見えない真っ暗な空が 閉鎖空間をイメージさせる。いっそのことここが閉鎖空間であったらどれだけ気持ちが 楽だったであろうか。ハルヒにキスするだけで・・・、いや楽でもないか。それはそれ で気疲れしてしまう。 「ねぇ。世界の終わりって今みたいなものなのかな?」 ハルヒが口を開いた。 「さぁな。そのころは俺たちは生きちゃぁいないさ。」 「でもね、あたしが何かしようとするたびにこの世界を壊しているような気がするの。」 「・・・・。」 「もし、わたしがSOS団なんて作らなければ、あたしやキョン、有希や古泉君、みくる ちゃんがもっと楽しく暮らすことのできた、『壊れていない』世界があったのかもしれな い。そう考えただけで・・・」 「それは違うんじゃないか?ハルヒ。俺は今、ハルヒとこうしている世界が『壊れていな い』世界だと思っている。それは長門や朝比奈さん、古泉も同じだと思うがな。」 「でも・・・。もし・・・」 「『もし』は無しだ、ハルヒ。俺からしてみたらお前のいない世界こそが『壊れた』世界 なんだ。」 俺はそのことを去年の12月に思い知らされているからな。 「ハルヒの世界もそうだろ?俺や有希、朝比奈さん、古泉がいない世界なんて考えられる か?」 そこまで言って気がついた。ハルヒは涙を流していた。 二日目3
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おいおい、何なんだこれは…………… やれやれ、非常識な事に慣れたとは言えこれはパニックになるぞ。 俺は額に手をやり、ため息をついた。 朝、今日は妹のうるさい攻撃が無いなと思い。 やっとあいつも大人しくなったかと思って体を起こすと、毎朝見慣れている俺の部屋ではなかった。 かといって閉鎖空間っぽい雰囲気の学校に飛ばされたわけでもなく、 時間を越えたわけでもないし、別世界に行ったわけでもなさそうだった。 上の3つはまぁ、俺の希望的観測であるだけな訳だが。 目の前には見る限り生活感のない殺風景な部屋、俺が知る限りでは長門の部屋以外には考えられなかった。 なんで俺がこう皮肉臭く言っているのかというのであれば、体がどうもその部屋の主の姿になっているようだったからだ。 そう、俺は長門になってしまったらしい。 俺が長門になっているなら、俺はどうなっている。 そう思った俺は、学校に登校することにした。 どうやら長門は制服のまま寝ていたようで、着替える手間がかからなくてありがたかった。 学校に着いた俺はすぐさま、俺がいるはずの自分のクラスへ足を向けた。 教室をのぞくと、その席は空席のままだった。 教室で話しているやつを捕まえて、聞いてみたが 「まだ来ていない」との事だ。 ついでにハルヒも来ていないかと聞いたが、同様の返事が返ってきた。 とりあえず、この状況を打破したい俺は教室から背を向け。 その足をいけ好かない笑顔の超能力者のいるクラスへ向けた。 1年9組に足を運んだ俺は、古泉がいるかと教室の入り口側に立っていたやつに聞いた。 「あー、古泉君?いるよ、ちょっと待っててね」 そういうとそいつは、古泉くーん女の子が呼んでるよーと叫びながら 古泉の場所へ向かっていった。 目の前に来た人物は、いつものへつら笑いをせず無表情のままであった。 それをみて俺はこの非常識な現象をあと3回見るのであろうなと盛大にため息をついた。 「お前は長門か」 「……………」 しばし沈黙の後、ある意味もう見ることのできないであろう 無表情の古泉はこくんと頷きこう言った。 「…………そう」 「とりあえず、昼に部室に行こう ほかのやつらもどうなっているかわからないしな」 「……………」 古泉の姿をした長門は、もう一度頷きおそらく古泉の席であろう場所へ戻っていった。 それを見届けた俺も長門の教室へ行き、教えてもらった席へ座り一通り授業を受けた。 幸か不幸か、普段から無口な長門の振りをしたまま授業を受けるのはそう難しくなかった。 授業の合間の休憩時間にもクラスメートから話しかけられる事は皆無だ。 休憩時間中に自分のクラスに行きたい衝動に駆られたが。 時間が短いこの時間ではやれる事も少ないので、昼休みまで俺はじっと我慢をした。 4時間目のチャイムが鳴り終わったあと、席を立ってすぐさま部室へと足を向けた。 長門ととりあえず話をするためだ。 まぁ他のメンツにも異常が起こっているなら、部室へ来るだろうと思ったのもあるわけだが。 部室を開けようとドアノブに手を触れようとした時こちらに向かって走ってくる人物がいた。 朝比奈さんだが、何かが違う。 「有希~~~~~!大変よ大変!!」 大変と言いつつもその目はキラキラと輝いている、この顔をする人物を知っている。 「あたし、みくるちゃんになっちゃったみたい!! もしかして、有希も違う誰かになったりしているの!?」 息を弾ませながら、こちらを見る。 たしかに、朝比奈さんはこんなハイテンションにならないからな。 こんな朝比奈さんを見るのも、おもしろいがそれではダメだ。 俺の朝比奈さんはおっとりしてて、ちょっとドジで、ほんわかとした笑顔を振りまいてくれる朝比奈さんじゃないといかん。 ハルヒ……………、お前は朝比奈さんになったんだな。 「って、キョン~~~~~!?」 朝比奈さんの姿で絶叫した声は、外で歩いている人物がビックリするほどの大きなものだった。 「なんでこうなっちゃったのかしらね!!」 「キョンと私と有希が入れ替わったって事は、古泉君とみくるちゃんも変わったかもしれないわね!」 「そうだ!みくるちゃんの格好だし、コスプレしてみようかしら!」 etc、etc……… 弾丸のように朝比奈さんの声で、俺の耳に入ってくる。 長門は姿が変わっても、部屋の隅で本を読んでいる。 古泉の姿でやられるのは、不気味とも思えた。 やれやれとため息をついていると、ガチャと扉が開いた。 入ってきたのは妙におどおどしてなみだ目のハルヒと、いけ好かない笑顔をしている俺だった。 「ふぇぇ………、一体どうなっているんでしょう」 泣きそうなハルヒ、いや朝比奈さんか。 一生で見られるか見られないか判らないような珍しい光景を今日一日で一生分見たような気がしてきた。 「いやはや、これは5人が入れ替わってしまったみたいですね」 俺の姿をした、古泉は笑顔を崩さずにそう言った。 どうでもいいが、俺の顔でそんな顔をすると気持ち悪いからやめてくれ。 「おやおや、と言われてましても困りましたね」 「そんな事どうでもいいじゃない!! いまはどうやって元に戻るのかが大事よ! みくるちゃんの体もいいけど、やっぱ自分の体が一番だしね!」 と会話しているところに、ハルヒが大きな声でみんなを制す。 「おい、これは一体どういうことなんだ」 俺は小声で古泉に話しかける。 「さぁ、僕にはわかりかねますが。 おそらく何か外因的な要素の所為で入れ替わってしまったんだと思います」 俺はその外因的な何かが何なのかと聞いているんだが。 「詳しい事はわかりません、涼宮さんが願ってしまってこうなったのかもしれませんし。 精神を入れかえてしまって、涼宮さんの能力を無効化してしまおうと情報思念体の急進派が行ったことかもしれません」 俺は本を読んでいる、長門の方に体を向けた。 「お前はこの現象はどうなのか説明できるか?」 「……原因不明。 情報思念体とコンタクトも取れない」 じゃあ俺が取れるってか? 「おそらくそれも不可能………。 長門有希としての個体能力は、一般人並になっている。 そのため情報思念体としての能力は使えない」 「なるほど、長門さんの精神を別の固体に入れることで能力を封印させているわけですね」 古泉がそれに返答をする。 長門なら何とかしてくれると思っていたんだが、この分だと古泉の超能力にも朝比奈さんの力も使えないんだろう。 その事実に俺は愕然とした。 「何こそこそ話してんの!! とりあえず、ここでグダグダやっていても仕方ないし放課後にもう一回集合しましょ!! じゃあ授業終わったら、みんなここに集合ね!」 わくわくした様子のハルヒがそう言って、みんな部室を後にした。 とりあえず午後の授業を受けて、今後のことを相談するんだそうだ。
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太陽がサボっているせいなのか、4月も近いというのに真冬並みに冷え込んでいた。 俺が外出という選択肢を排除し、家でぬくぬくと快適に過ごそうと決めたまさにその瞬間に携帯がうるさく鳴り出した。 携帯に表示されていた名前はやはりあいつだった。 「もしも・・・」 「今からあたしんちまで来なさい!!大至急よ!!5秒で来なかったら死刑だからねっ!!」 やれやれ、ったくあいつはいつも勝手だな。 悪態をつきながらも、せっせと出かける準備をする。 さてと、行くか。・・・って、おい。 俺はハルヒの家の場所なんか知らんぞ。しょうがない、ハルヒにかけ直すか。 と、携帯を手に取ったときに家のチャイムの音がした。 「キョンく~ん、ユキちゃん来てるよ~」 妹が満面の笑みを浮かべて俺の部屋に入ってきた。 「どこ行くの~?ユキちゃんと二人ぃ~?エヘヘ~」 こいつは何か勘違いをしとるな。 「俺はハルヒの家に行くんだ。長門もおそらく呼ばれたんだろうよ」 「ハルにゃんのとこ?あたしも行くっ!」 「お前はおとなしく待っていなさい!」 「ぷ~!いいも~んだっ!シャミ~遊ぼ~」 やれやれ、いちいち疲れるな。 おっと、長門を待たせてるんだったな。 玄関を出るとやはりそこにはいつもの制服姿の長門がいた。 「長門、何か用か?」 「涼宮ハルヒに呼ばれた」 「そうか、お前もか。でもここはハルヒの家じゃないぞ?」 「知っている」 「じゃあなんで・・・」 「あなたは涼宮ハルヒの家を知らない。だから私が迎えに来た」 「長門・・・、いつも悪いな」 「いい」 さすがは長門だ、何でもお見通しだな。しかしまた迷惑かけちまったな。今度美味いカレーでも奢ってやろう。 それから長門の案内でハルヒの家に向かった。 「そういや長門、ハルヒの奴なんか言ってたか?」 「何も」 「そうか」 やはりハルヒはハルヒか。 「でも、ひどくあわてている様子だった。」 そうだったか?俺には怒鳴っているだけにしか聞こえんかったがな。 それにしてもあのハルヒがあわてるだって?一体なんだってんだ? これがハルヒの家か。結構でかいな。意外とあいつもお嬢様だったりするのか? ハルヒの家に着くとそこには見知った二人がいた。 「おや、あなた方も呼ばれていたのですか。いや、やはりと言うべきでしょうね。フフっ」 笑顔の気持ち悪い奴だ。その笑い方、こいつ事情を知ってやがるな。 「あ、キョン君、長門さんもこんにちは~」 にこっ。 あぁ、朝比奈さんの笑顔を見てると暑さなんて吹っ飛びそうだ。 挨拶もそこそこにして、いよいよチャイムを鳴らす。 さぁ、何が出るんだ?鬼か?蛇か?何でも来い! 数秒後、ドアが壊れていないか心配になるほどの轟音とともにハルヒが姿を現した。 泣き喚いている赤ん坊を抱いて。 「みんな、よく来てくれたわね!あたし1人じゃ手に負えなくってさ。」 「あ~、ハルヒ。お前に子供がいたのには驚いたが、いじめるのはよくないぞ、そんなに泣かせて。」 「このバカキョン!あたしの子供なわけないでしょうがっ!親戚の子供を預かってるだけよ。」 ハルヒの話を聞くに、親戚の子供を預かっているのだが、ハルヒの両親も出かけなくてはならなくなったらしく 1人で面倒を見ることに限界を感じたらしい。 「しょうがないじゃない。子供育てたことなんてないんだからさ。」 そりゃそうだ。俺だってこんな状況になったら、とにかく応援部隊を呼ぶだろうよ。 「とにかく入って。すんごい寒いし。」 そういって俺たちはハルヒの部屋に向かった。 「え~っと、まずは自己紹介ね!」 部屋に着くなり自己紹介をしだした。まずは泣き止ませることが先だろうが。 「この子は平野綾ちゃん!まだ1歳にもなってないわ。生後6ヶ月とか7ヶ月とか……まぁそのへんね。」 「みんな!よろしくねっ!」 「ふぎゃあぁぁぁぁぁ~!!」 なにがよろしくねっ、だ。ものすごい勢いで泣き続けてるぞ。 「しかし呼ばれたはいいが、俺には何も出来そうにないぞ。」 「ほ~ら綾ちゃん、あのまぬけ面を見なさい!きっと楽しい気分になって泣くことなんて忘れるわっ!」 お前はそのために俺を呼んだのか。ハルヒの思惑とは裏腹に、赤ん坊は一向に泣き止む気配は無い。 「おっかしいわね~。これで泣き止むと思ったのに。」 おかしいのはお前の頭のほうだろ。 「とにかく色々試してみましょう!まずは古泉君っ!まかせたわ!」 こいつはもしかして楽しんでるんじゃないか? 「分かりました。僕に考えがあります。」 ほう、余計な知識は豊富なこいつのことだ。きっと赤ん坊を泣き止ます方法も知っているんだろうよ。 ゴソゴソ、古泉は鞄の中からスプーンを1つ取り出し、赤ん坊の前に置いた。 まさかな。というかこいつは常時スプーンを携帯しているのか?それともやはり事情を知ってて準備してきたのか。 「綾さん。このスプーンをよ~く見ていてくださいね。」 ふぅ~っと、ひとつ大きなため息をついた後、カッ!と目を見開かせて 「ではいきます!マッ…『ふぎゃあぁぁぁぁぁ~!!』」 何も出来ずに拒否反応を見せられ、さすがの古泉もかなりヘコんだようだ。今のは同情してやろう。南無。 「古泉君じゃダメみたいね。う~ん……、そうだわ!赤ちゃんと言えばやっぱりおっぱいよね!」 朝比奈さんが本能的に体をビクッと震わせた。俺にもこいつが何したいのか手に取るように分かるぜ。 「みくるちゃん!あなたが一番母乳出そうね。さぁっ!脱ぎなさ~い!!」 「ふぇ!?い、いい嫌です~!うぅ~。」 「ほらほら、さっさと脱ぐの!綾ちゃん待ってるじゃないの。」 「で、でも~!私まだおっぱいなんて出ません~。そ、それに……」 チラっとこちらの方を見る朝比奈さん。そりゃそうだ。この状態じゃあいくらなんでもな。 「古泉、早く出……『出てけぇ!!』」 せっかく穏便に出て行こうとしたのにハルヒに蹴飛ばされるようにして部屋から追い出された。 「さぁみくるちゃん。邪魔者はいなくなったわ。」 「う、うぅ~」 あぁ~、今頃朝比奈さんは授乳で悪戦苦闘しているのだろうな。そんなことを想像していた。 「あ、……ん!あ、赤ちゃんって、ふぁ…吸うの…強いですぅ~。」 どうして俺は録音機材を持ってきてないんだろう?人間てのは無力だな…。 「入っていいわよ。」 赤ん坊は泣き止んではいたが、いつまた泣きだしてもおかしくない顔をしていた。 もっとも朝比奈さんは顔を真っ赤にしながら泣いていたが。 この子が女の子で良かった。男だったらいくら赤ん坊でも許すことは出来んだろう。 「う~ん、一応泣き止んではくれたけど、まだ何か足りないわね。」 確かにこのままでは泣きだすのも時間の問題だろう。 「有希、とりあえず何かしてみてちょうだい。」 コク、と長門式うなずきをした後、長門は赤ん坊を凝視し始めた。 じー…… おい、そんなに睨んでやるな。状況が悪化する。 「まかせて」 そう短く答えると、驚くべきことに、長門は赤ん坊のおしめを変えたり、ミルクを作ったり さらには赤ん坊を優しく抱きかかえ、子守歌まで歌いだした。 「もう大丈夫」 赤ん坊はすっかり気持ちよさそうに眠ってしまった。 「長門よ、一体どこで子守術なんぞ習得したんだ?」 「図書館の雑誌に書いてあった」 雑誌?長門は雑誌なんかも読むのか。すると続けて言った。 「ひよこクラブ」 その後、赤ん坊もすっかり落ち着いたところで、みんなは解散することになった。 俺を除いてだが。 「なぁハルヒ。なんで俺だけ残らにゃならんのだ?」 「うるさいわねぇ!男がそんな小さいこと言わないの。」 「へいへい」 ハッキリ言って俺が残る理由が分からなかった。 ハルヒもまた赤ん坊とタイマンになるのは心細かったのか? だとしても俺なんかより長門を残せばいいだろうに。 俺なんか残ったってなんの役にも立たんぞ。 「ミルクとか他は有希が用意してくれたからなんとかなるわ。 後はうちの親が帰ってくるのを待つだけね」 しばらくすると赤ん坊は起き出してまたぐずり始めたが そこは秀才なハルヒである。長門がどうあやしていたかをちゃんと見ていたようだ。 気がつけば、すっかり日も暮れて夜になっていた。 赤ん坊にミルクをやると同時に俺の夕飯まで用意してくれた。 それはもう絶品だったね。 「さて、ミルクもあげたし。そろそろお風呂に入れないと」 俺は風呂と言う単語聞き、あからさまに反応してしまっていたらしい 「キョン~、もしのぞきでもしたら即刻死刑なんだからね!!」 「わかったわかった。のぞかないでやるからさっさと入って来い」 ハルヒはもう一度俺に釘を刺してから風呂場へ向かった。 俺はハルヒが風呂に入っている間、健全な男子高校生なら 仕方がないであろう、ハルヒの入浴姿を想像しながら悶々としていた。 ハルヒは自分の部屋で休んでろと言ったので、俺は今ハルヒの部屋にいる。 さっきみんなでいたときは気づかなかったが、いい匂いがするな。 俺は疲れた体を休ませるべく、吸い込まれるようにハルヒのベッドに横になった。 これまたとんでもなくいい匂いだった。 ガチャ、とドアが開き、風呂上りのハルヒが赤ん坊を抱いて部屋にやってきた。 俺は風呂上りのハルヒの姿を見て、さらに興奮してしまっていた。 「あんたも入ってきたら?」 「あぁ、そうさせてもらう」 そして俺は風呂に入った。まず俺は髪から洗った。 涼宮家のシャンプーはやや高級な品なのだろう。 スーパーでは見たことのないものだった。 そして体を洗う。最初は左手から洗い、左足、右手、右足と洗っていく。 まず四肢を洗い終えてから体を洗うのが俺流だ。 「それにしてもボディーソープも高いやつなんだろうな」 そんな独り言をしてしまうほどいい匂いだった。 そして涼宮家の風呂を一通り満喫した俺は、風呂を後にした。 ふぅ~、気持ちよかった。 俺は体をタオルで拭きながらさっさと自分の服を着ようとした。 のだが、無い。服がなくなっている! 「なんで俺の服がないんだ?」 思わず自分に聞いてみても答えは返ってくるはずもなく 俺は途方にくれた。 俺は確かにここに置いといたはずだ。なくなってるということは ん?まさかハルヒが?まさかもなにもこんなことをする奴はハルヒしかいないだろう。 フヒヒ、こんなイタズラをするハルヒには俺がもっとすごい悪戯をしてやるぜ。 俺は素っ裸の状態でハルヒの部屋に向かった。 それにしても他人の家で素っ裸で行動するのは落ち着かないな。 ハルヒの部屋に着いた。 ハルヒよ、悲鳴をあげてももう遅いぞ。 悪いのは全部お前なんだからな。 さぁ、覚悟は出来てるんだろうな! ガチャ、とドアを開けると そこには赤ん坊と寄り添って気持ちよさそうに寝ているハルヒがいた。 ハルヒの横には俺の服が置いてあった。 イタズラしたはいいが、疲れが溜まって眠ってしまったのだろう。 俺はハルヒと赤ん坊に毛布をかけてやり、ハルヒの隣に横になって寝た。 翌朝 「ん~っ!よく寝た!」 あたしいつの間に寝ちゃったんだろ? あ!キョ、キョンの服隠したまんまだった!! ど、どうしよ~。キョン怒ってるかな? そんなことを考えていると、横からイビキが聞こえてくる。 キョンいつの間に?あ、この毛布キョンが…。ありがとね、キョン。 「……ん?………ッイヤアァァァァァ!!」 「うお!?なんだ!どうしたハルヒ!?」 「あんた何で素っ裸なのよおッ!!」 終わり
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11月も後半に突入し、日に日に冬らしさが増えてくる。 最近は部活から帰る時点ですでに真っ暗だ。 「今日は転校生が来たぞー」 岡部は教室に入ってくるなり、そう言った。 教室がざわつく。 お前らは小学生か?と突っ込みつつ俺も少しそわそわする。 「すっごい綺麗な女の子だと良いなー」 谷口、だとしたらお前には振り向かないぞ。 「入ってくれ。」 岡部の掛け声と共に、男子が入ってきた。 男子のため息と、女子の囁きが聞こえる。 入ってきた奴は古泉ほどではないものの、なかなかのイケメンだった。 「よし、じゃあ自己紹介をしてくれ。」 「こんにちは、春日清(きよ)です。」 春日とか言う男は澄んだ、綺麗な声で自己紹介を始める。 「趣味は本を読むこと、特にSFが大好きです。宇宙人、未来人、超能力者などに興味があります。」 …え? その時、ハルヒがガバッと立ち上がった。 「ねぇ、春日君。だったらSOS団に入団しない?」 「涼宮、勧誘は後で良い。んーとじゃぁ春日、うるさい奴だが、涼宮の隣に座ってくれ。」 「よろしく、春日君。」 後ろを振り向くと、ハルヒが春日に挨拶をしている。 「こちらこそ。よろしくお願いします。涼宮さんといいましたっけ?」 「そうよ、涼宮ハルヒ。SOS団の団長よ。」 俺はこいつらの会話を聞きながら、何でこんな微妙な時期に転校してきたのか、疑問に思っていた。まるで朝倉の時のようだ。嫌な記憶がよみがえる。 …後で部室に行けばあいつらが教えてくれるだろう。 授業中、春日とハルヒはずっと超能力者、未来人や宇宙人がいるかどうかについて話し合っていた。ったく、春日は転校生なんだからそんなにしょっぱなから先生に悪印象を与えてどうするんだよ? 途中休みになると、ハルヒは春日に俺を紹介した。 「こいつはキョン、SOS団の雑用係。」 あぁ、雑用係とわざわざつけられたのが気に食わないがよろしく。 「キョン君か、よろしく。」 キョンで良い、なんかくすぐったいからな。俺も春日でいいか? 「どうぞ、むしろ僕もその方が気が楽だよ。」 「さぁ、春日君!校舎の案内するからついてらっしゃい!」 そう言い走り始めるハルヒの後を、春日は微笑を浮かべてついていった。 さてと、俺は部室に行くか。 「来ると思っていましたよ。」 なら話は早い、春日、あいつは誰だ? 「彼は涼宮さんが生み出したものですよ。」 何のためにだ?話が合う友達が欲しかったのか? 「いえ、違います。」 じゃぁ何だよ。 「こればかりはあなた自身で気付いてください。一つ、私からヒントのような質問です。あなたは彼と涼宮さんが仲良くしているのを見て、何か感じますか?」 あいつらが仲良くしてるのを見て…なんとなくハルヒを取られた気がしてイライラする。しかし、何故ハルヒを取られた気がするのかも、それでイライラするのかもわからん。 「素直じゃないですね…」 「さらに鈍感。」 うぉ!長門、居たのか。 「居た、最初から。」 そ、そうか… 「おや、そろそろ次の授業ですね。では、私は行きます。」 じゃぁな。 「あなたは?」 もう少し後で行くよ。 そう言ったが、あまり授業に出る気は無かった。 あの二人が仲良くしてるせいでうるさくて、どうせ集中なんか出来ないしな。 「キョーーーーーン!」 ったく、何だよ。 あれ?ハルヒ? 「あんたなんで授業サボってたの?」 あ、いや、何でもない、ただ単にだ。 「そう。」 いつの間にか周りを見回すと、俺以外全員が揃っている。 「さて、今日は新団員を紹介するわよ!」 って、春日?!お前入るのか?! 「うん、楽しそうだしね。」 お前、本当に自分の意思か?ハルヒに強制させられていないか? 「えーと、キョンは放って置いて紹介よ!これが春日君、私たちの同じ1年生よ。今日転校してきて、未来人、宇宙人、超能力者とかに興味があるみたい。ってことで今日から団員だから、皆も自己紹介してね。じゃ、みくるちゃん。」 「あぁ、え?私からですかぁ?えぇと、朝比奈みくると言います。唯一の2年生です。一般的にはお茶汲みをやっています。よろしくおねがいします。」 「美しい方ですね、よろしくお願いします。」 「あ、ありがとうございます。」 「じゃぁ、次は有希!」 「長門有希、趣味は読書。よろしく。」 「私たちはもう自己紹介したから、最後は古泉君!」 「こんにちは、あなたの噂は彼や涼宮さんから聞いています。私は古泉一樹で、SOS団の副団長を務めさせて頂いています。」 「みなさん、よろしくお願いします。」 「新団員も入ってきたことだし、みんな気合入れてね!」 そこから一週間、春日は毎日部室に来て、俺達と打ち解けていった。 しかし、俺のイライラは溜まる一方だった。 何故か、春日と一緒にいるときにハルヒが笑顔になるのを見ていると嫌になる。 クソッ、俺が閉鎖空間発生させたいぐらいだぜ… だが、この気持ちがなんなのかが分からない。 今は金曜日の放課後で、今部室には長門、朝比奈さんと俺しか居ない。 「あのー…キョン君、どうしたんですか?最近イライラしているようですが。」 あぁ、朝比奈さん。気にしないで下さい。 「どうしたんですか?私の力になれることなら…」 そこで、俺は一部始終を話してみた。 朝比奈さんは俺の話を何も言わずに聞き、静かに頷くと 「キョン君は涼宮さんのことが好きだから、春日君に嫉妬してるんですよ。」 えーと…俺がハルヒを好き?春日に嫉妬? 確かに、もしかしたらこの感情は好き、それにこのイライラは嫉妬なのかもしれない。 だとしたらつじつまは合う。 そう…ですね。そうかもしれません。 「キョン君、気付いてよかったですね。じゃぁ、涼宮さんにアタックしてみてください。」 え、でもあいつは春日が… 「ここからは僕が説明しましょう。」 ん?古泉? 「今少しドアの外で聞いてしまいました。春日君は涼宮さんが、あなたに嫉妬をさせるために作り出したものです。」 相変わらずハルヒってすごいな… 「そこじゃないですよ、つまり嫉妬をして欲しいということは」 ということは? 「あなたはここまで来ても鈍感なんですか…?」 …何だ? 朝比奈さんまでそんな軽蔑した目で見ないで下さい…。 長門、お前もだ。 「ならいいです、明日は不思議探索があります。多分何かが起こるので、ちゃんと心の準備を。」 何が起こるんだ?何のための心の準備だ? 「「「…」」」 「よし、みんないるわね!明日は土曜日だから不思議探索をするわ!午前は団長の私用があるから、いつもの場所に1時集合ね!春日君は初めてだから、説明するわね。」 そういうとハルヒは不思議探索について説明を始めたが、ほとんど俺の耳には入っていなかった。 「キョン!遅いわよ!初めての春日君でもあんたより早いわよ!」 おい、春日、お前何故時間より早く来る事を知っている? 「いえ、ただ単に集合時間より早めにくるべきかな、と思ったので。」 …こいつとハルヒを取り合って勝てる自信がない。 「じゃぁいつもの喫茶店に移動!」 おいおい、神様はどんなにひどいんだよ。 午後のペアは 俺と古泉 長門と朝比奈さん ハルヒと春日だった。 俺の怒りのマグマが心の中でブクブクいっている。 「やったー春日君と同じね!私がこの町の良いところ教えてあげるわ!」 ……… 「ありがとう、涼宮さん。」 ……… 何だよ何だよ、ケッ、両方とも微笑みやがってさぁ。 「大丈夫?性格に悪化が見られる。」 あぁ、長門。気にするな。 「じゃぁ出発!春日君、早く行きましょう!」 ハルヒが春日の手を引っ張る。 一瞬怒りで脳味噌が吹っ飛んでいくかと思った。 いつも春日が来る前はハルヒにやられていたが、端から見るとこんなにもカップルに見えるのか…。 「私たちも行きましょうか。」 るせぇな、どこに行くんだよ。 「あなたの好きなところで良いですよ。」 じゃぁ、あいつらをつけるぞ。 「いつからストーカーになったんですか?」 モラルとかルールとか、正直そんなものは今どうでも良い。 俺は、ハルヒを春日に何があっても絶対に取られたくない。 …ここまで俺がハルヒを好きだとは思わなかったぜ。 「気付いて良かったじゃないですか。しかし、男の嫉妬は醜いですよ?」 放っとけ。 ハルヒと春日は、仲良く喋りながらいろいろな場所を回っていった。 大したことはしていないが、俺にしたら二人が傍にいるだけで嫌になる。 そして暗くなり始め、そろそろ集合場所に戻るかと思っていると、春日が何かを言い出した。 俺達の位置からは何を言っているのかは聞こえない。 ハルヒはその言葉に頷き、春日の後をついていった。 「どうぞ。」 古泉が俺にケータイを少し小さくしたような機械を手渡す。 これは何だ? 「長門さんがさっき仕掛けておいた盗聴器の受信機です。」 そういえばさっき長門とハルヒ達がすれ違ったような… 何故仕掛けたのかが気になるが、まぁここは感謝してせっかくだから使おう。 俺今完全なる犯罪者だな… 『ねぇ、春日君、こっちに何があるの?』 『まぁまぁ、僕についてきて下さい。』 二人はテクテクと人気のないほうに歩いていく。 俺達はコソコソとその後をつけて行く。 すると、春日はハルヒを人気のない公園に連れ込んだ。 「これは、もしかして、彼は涼宮さんに告白する気では…」 なぁんだぁってぇぇぇ?! 春日がハルヒに好意があるのは知っていたが、さすがにこんなに早く告白するとは思わなかった。 やばい、ハルヒは中学時代、どんな男に告白されても、その場でふったことは無いらしい。 つまり、春日がハルヒに告白したとしたら、どんなに短時間だとしてもあの二人は恋人関係になるわけである。 しかも、ハルヒもあまり春日を嫌っていないようだ。 ということは本気で付き合いだすかもしれないという事か?! 『どうしたのよ、春日君。こんなところに連れ込んで。』 『俺…ハルヒのことが好きだ!付き合ってくれ!』 『え…』 俺が飛び出そうとすると、古泉に抑えられた。 「後少し待ってください。」 『え、そんな、春日君?』 『僕は本気です。』 『ちょ、春日君、キャッ!』 するとその時、春日がハルヒをベンチに押し倒したのだ。 一瞬、古泉の腕の力が抜けた。 俺はそのまま、ハルヒと春日の前に出て行く。 おい、春日、何やってるんだよ? 春日がこっちを振り向く。 「キョ、キョン?」 「何って、涼宮さんに告白してるんだよ。」 「違うの、キョン、これは…」 そのことじゃない、何故お前はすでにハルヒを襲おうとしてるんだ? 「涼宮さんは告白は断らない主義だそうなのでね。」 だからと言ってお前何故服を脱がそうとしてるんだよ… 俺は黙々と春日に近付き、 ドスッと春日を殴った。 「キョン?!」 「何するんだ!」 女を襲ってる奴を殴って何が悪い? 「別に僕が涼宮さんに何をしようと僕の勝手だろう?」 違う。 俺はな、ハルヒが好きなんだ。 「…え?キョン?!」 最初お前が転校してきた時、俺は自分がハルヒを好きだとは思っていなかった。 だが、お前らが仲良くしているうちに俺は自分がハルヒを好きだって気が付いたんだ。 「キョン…」 「そんなこと言ったって…僕だって涼宮さんのことが好きなんだよ?」 あぁ、だろうな。でも俺だって好きなんだよ。 おいハルヒ、お前は俺と春日、どっちを選ぶんだ? 「…キョン、ごめんね。」 え…。 「春日君もごめん。」 どっちも振るのか? 「うぅん、キョンにはやきもち妬かせてごめんね?後、春日君、気持ちに答えられなくて、ごめん。」 「涼宮さんは、キョンを選ぶのかい?」 「ごめんね、春日君。春日君はすっごく優しいし、頼りにもなるし、趣味も合う。頼りにならなくて、気も利かなくて、ヘタレなキョンとは大違い。だけど…何故か分からないけど…私はキョンが好きなの。ごめんね。」 すると、ハルヒがいきなり倒れた。 お、おい?!ハルヒ?! 「大丈夫、安心して。私がやったこと。」 長門?! 「キョン、君と争えて良かったよ。」 春日の影が薄くなっていく。 おいおい、どうなってるんだよ? 「春日君は涼宮さんがあなたにやきもちを妬かせる為に作ったもの。あなたがやきもちを妬き、告白した今、用はない。」 「だから、彼は消えるんですよ。」 …春日、お前、意外と良い奴だったな。 「君もだよ、キョン。じゃぁ」 「「またいつか、どこかで」」 「キョーン、一緒に帰ろ♪」 ということで、あの日の告白以来、俺とハルヒは付き合うことになった。 春日のことを長門に聞いてみると、一言 「情報操作は得意。」 と言われてしまった。 つまり、多分みんなの記憶から消したんだろうな。 だが、俺は春日のことを忘れるつもりはない。 もしかしたら、あいつとは、良い友達になれたかもな。 しかし、ハルヒが今、俺の隣で笑っているのは春日のおかげだ。 「何考えてるの?」 いや、別に。お前のこと考えてたんだ。 と適当にごまかす。 「もう、キョンったら」 そういうハルヒの顔は、うっすらと紅色に染まっていた。
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特別前日に何かをしたというわけではないのに朝が辛いというのは冬場ではデフォであり、 高校生になった息子もそれは例外ではないようだ。 「あんた達、さっさとご飯食べないと遅刻するわよ!」 …前言撤回だ。 我が妻、ハルヒにとっては今が冬場の辛い朝だろが何だろうが関係ないようだ。 「なんで母さんは朝からそんなに元気なんだよ…」 息子よ、それは俺も同棲を始めた頃から思っていたが、今そうやってハルヒに絡むと… 「何言ってんの! あんた達が弱すぎるのよ。それにそんなこと言ってる暇があるなら とっととご飯を胃袋に詰め込みなさい」 ご愁傷様だな。 後、あんた達って俺も入ってるんだな。 「ちょっとキョン、あんたもボーっとしてないでさっさとしなさい! 親が息子に負けてどうすんの」 へいへい分かりましたよ。 「じゃあ、言ってきま~す」 「あ、コラ待ちなさい!」 残念だな息子よ。 本日の脱出ミッションも失敗したようだな。 「や、止めてくれ。何時も言ってるだろ母さん。俺はもう高校生だ。だから、それはもう駄目だって」 「何言ってんのよ。高校生になろうが大学生になろうとあんたはあたしの子供なの。 だからこれはあんたの義務でもあるのよ!」 世界の何処にそんな義務があるのかね? 「やれやれ、とっととしてくれ…」 おい、それは俺の口癖だ。 俺のアイデンティティーだ。 勝手に使うのはゆるさんぞ。 「誰かさんと違って素直でよろしい… チュッ。はいっ、じゃあしっかり勉強してくるのよ!」 一言多かったですよハルヒさん。 「へいへい」 お、そろそろ俺も行かんとな。 リアルに遅刻しそうだ。 「じゃあハルヒ、俺も行ってくるよ」 「…………」 勘違いしないでいただきたい。 この三点リーダは万能宇宙人のものではない。 傍若無人ハイスペック奥様涼宮ハルヒのものである。 もとい、涼宮ではなかったな。 では何故そのハルヒがこんなに大量の三点リーダを発してるのかと言うと、 毎朝俺に課せられた義務が施行されるのを待っているからだ。 いや、義務でもあるが世界中で唯一俺に与えられた権利と言ったほうがいいな。 …しかし、何時ものことながら、こうして黙って俺を待っている時のハルヒは可愛いな。 もう、そこそこいい歳になるはずなんだがな… って早くしないと遅刻するっての! 「ハルヒ… チュッ。…そんじゃ行ってくるよ」 「…素直でよろしい。じゃあ、しっかり働いてらっしゃい!」
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(この話は長編・「Another Story」の設定を遵守しています) 秋…。盛大な十五夜の団子パーティから1ヶ月が経ち、 ようやく持って夏は列島から去っていったらしかった。 確かに熱くてかなわなかったが、この身体ごとどっかに持って行かれそうになる 冷たさを含んだ風はどうにも苦手だ。矛盾してるねぇ。 深い緑はすっかり赤、あるいは黄色に変わって、 この通学路も売れない画家の絵くらいには様になってるんじゃないかって風情がある。 今日も健気にその絵の中の通行人Aと化している俺だったが、 まぁ、なんだろうね。しばらくは何にもなかったし、まさにそれがゆえ、 そろそろ何かしら発生しなければおかしいのではと考えてしまうのは もはや職業病、いや、団員病か?そんなものがあればの話だが…。 教室では文化祭の話もちらほら出始めているが、 なんせやる気のないうちのクラスのこと、本格的に動き出すのはもうちょっと 先のことじゃないかね…などと思いつつ、俺は40過ぎの中堅サラリーマンよろしく よっこいしょといつもの席に腰を下ろす。 窓を開ければ涼しい風が吹いてくるので、もうノートを団扇代わりにする必要もない。 1週間後は中間テストだったが、一瞬思い当たった直後に俺はそのことについての思考を放棄した。 「ねぇねぇ、文化祭でうちのクラスは何をやるのかしら?」 後ろの女、涼宮ハルヒは、シャーペン攻撃と同時に俺の後頭部に言葉を投げた。 「さぁな、このクラスのことだ、出来上がるものもたかが知れてるんじゃないか」 まぁ、うちのクラスに限らず、しょぼい公立高校の文化祭の出しもののアベレージなど、 わざわざここで行数を裂いて語るまでもないね。 だが…このクラスがもし全く無気力なままに文化祭を向かえようとしたら、 それはそれで困った事態になるような予感もしているんだ。 きっと失望したハルヒは、次の瞬間「私たちで何か出し物をすればいいのよ!」とか 言い出すに決まって… 「SOS団でも何かやらない手はないわよね!」 俺がモノローグを終えるまでもなくハルヒは予測を見事に実行してくれた。 もしこの世にハルヒダービーなるものがあれば大賭けの大儲けできるだろうね。 そんなもんが存在した日にはこの世の終わりもいよいよ近いだろうが。 ってなわけで放課後だ。 俺は古泉とまわり将棋をしていた。 おおむね俺が勝っていて、これはまぁいつものことなので特筆すべき点もない。 朝比奈さんは最近紅茶に凝りだしたようで、かつて湯飲みを満たしていた 緑色の液体は、この山の木々と連動するかのように、今は朱色になっていた。 俺としては、今までどおり緑茶であった方がよかったのだが…。 長門は季節が秋になったことに伴って…なのかは分からないが、 読書の秋と脳内プログラムの一行目にコードが書いてあるかのごとく、 普段の倍近い量の(これは俺の感覚測でしかないが)ページを繰っていた。 で、団長様であるが、放課からかれこれ1時間ほど姿を見せない。 同じクラスではあるものの、一緒に部室に行く、なんて 鳥肌の立つ行動をすることは滅多になく、大抵はどちらかが掃除当番だったり、 何かしら思いつきの準備に奔走していたり…まぁそのどっちかの理由で、 俺とハルヒが同時にここの扉をくぐることは少ないのだった。うん。そうなんだよ。 ハルヒが扉を開ける時は、大抵威勢よくバーンと音響がするが、 驚くべき事にかちゃりとノブがひねられ、しずしずと歩を進めてきた。 いや、別に落ち込んだ様子があるわけではない…ように見える。 「さて、今日も部室の掃除をしなくちゃ」 第一声。誰の?分からないか?まぁ無理もないか…。 俺は驚きの連続で、それは他の団員も同じらしかった。 古泉は微笑顔がこころなしか強張っている気がしたし、 朝比奈さんはきょとんとして大きな愛らしい瞳をぱちくりしていたし、 長門ですら先ほどの倍速読書を通常ペースくらいには速度を落として、 目の端でどこかおかしいこの人物を見ているようだった。 さて、無意味に引っ張りすぎたね。そう、つまり、ハルヒが入ってきて早々に 箒片手に掃除を始めやがった。部室の。なぜだ?今まで一度でもそんなことがあったか? 「ふんふんふーん、ふふふふふん♪」 にこやかに笑いながらハミング…しているこいつの行為は、 普段なら朝比奈さんの通常業務で、それはすなわちハルヒは決して自分ではやらないことであり、 簡単に言ってしまえば雑用だった。時によっては俺の役目でもある。 「ハルヒ…?」 俺は上ずった声を抑えられず言った。まぁしょうがないと思う。 「なぁにキョン?私はいま掃除中なの。用件ならあとにしてくれるかしら」 言うなりそのままさっさかとチリトリからゴミ箱へ埃やら何やらを移し、 今度ははたきを持ち出して部室内の壁をぽこぽこやり始めた。 …何だ?急に潔癖症にでもなったのか?ハルヒが掃除?天変地異か? などと考えるのはさすがにオーバーかもしれないが、それは俺が今まで体験してきた 事柄をふまえての事であって、そういう時は大体こうやって日常に対するささくれのような 出来事が、不意に俺たちの前に去来してくるのであった。 これもそうなのか? 「おっはなに水をーあっげまっしょう~」 掃除が終わると今度は花の水を変えるべく花瓶を持って部室から出て行きやがった。 これはどうなっているのか。俺はすぐさま向かいの人物に対しこう言った。 「今度は何だ?」 「僕が訊きたいくらいですよ」 古泉は未だ強張った微笑フェイスのまま言った。こいつなりに気持ち悪さを感じたのだろうか。 他の2人を見ると、朝比奈さんはふるふると首を振り、長門は最早 倍速読書に戻っていて、長門的には大したことではないらしかったが、 いや真っ当な感性を持つことを自負している俺としてはどうにもむず痒いぞこれは。 またどこかしおらしくハルヒは戻ってきて、花瓶を長門のテーブル脇にそっと置くと、 上機嫌のまま団長机に腰掛けた。のだが…。 「みくるちゃん、お茶くださる?」 この言葉に朝比奈さんは数秒反応できず、なぜって、ハルヒは何かシニカルな調子で こういう口調をとることはあっても、決してどこかの有名私立校のお嬢様よろしく微笑みかけて 湯飲みをさし出したりはしないだろうから…だ。 明らかにおかしい。どこかバグッたかショートしたか、何かの設定がいじられたか… とにかくそのようなことがあったとしか思えない。 さらに極めつけは、 「ねぇキョン、今度の休日に一緒に買い物に行きません?」 などと俺の皮膚が分離して脱皮できてしまいそうなことを言い出した。 「…お前、風邪か?」 口をついて出たのはそれだった。うん、きっとそうだ。 こいつは普段風邪なんてものとは無縁の生活を、そうだな、何年も送っていただろうから、 そのツケが今このときに回ってきて、それには季節はずれの花粉症やら何やらも混入されていて、 えーとつまり… 「熱があるんじゃないか?」 俺はハルヒの額に手をあて、残った方の手で自分の額を押さえた。 平熱。俺自身がインフルエンザにでもかかっていない限りこいつはいたって普通である。 俺は今自分なりに普通モードの思考形態を維持しているはずだから、やはりこいつは健康体のはずだ。 「何するんですか?私は何ともありません!離してください!」 ハルヒは少し腹を立てたようだったが、それがまた奇妙だった。 行動で表すのははばかられるから、大人しく首だけ横向けてつんとしているような…。 なんだか元のハルヒがどんなであったか一瞬忘れそうになったが、 部活を作ると言い出したときのあの表情を思い出して俺は何とか自分をつなぎ止めた。 「それで、買い物には付き合ってくれるんですか?」 …えーと、俺は何て言ったんだっけ? 例えばこれが小説だったとして、いきなりこのように人物設定が変えられてしまったら、君は想像がつくだろうか。 いや、俺は当事者である以上想像どころか現状を鵜呑みにしなきゃならんわけだが…。 そんなわけで俺はなぜいつもの待ち合わせ場所に一人でいるんだろうね。 15分前。待ち合わせ場所に着く時には俺はいつだって最後で、 それは誰かの謀略でしかなく、それがハルヒによるものであれば俺は両手を上向けて いつもの言葉を言うしかないのだが、今日のこのシチュエーションは一体どういうことであろうか。 のっけからぶったまげる事うけあいなセリフをハルヒは言った。 「遅れてごめんなさい!待ちましたか?」 小首を傾げてこっちを上目遣いでうかがっていやがる! 「ちょっと待ってくれ」 俺は近くの公衆トイレに向かい、自分が見たこともないような複雑な表情、 というより、取るべき表情を選びすぎた結果全部足して平均を取ったような、 何だか分けのわからん表情をしているのをみて、顔を洗って頬をぴしゃりと叩いた。 さし当たっての処置として、俺はこいつ、隣りで端整な表情を前に向けている女を別人として扱う事にした。 そうだ、俺はふとした事で知り合った女性と今日この日だけ買い物に付き合って、 その後は笑ってバイバイ、あぁ楽しかったねと無事ウィークデーに復帰するわけである。 学校でならまだ他の団員がいるわけだし、こんな切り替えをせずとも何とかなる…というかなってくれ。 「前から買いたかった服があって…貯金してたんです」 とこのどこかの国の住人さんは言った。 ん?いや、どこかの町に住む少女は言ったんだよ。うん。 買い物場所は待ち合わせの駅に唯一あるデパートの女性服売り場だったが、 こいつのチョイスを見た俺は思わずギクリとしてあたりをキョロキョロしてしまった。 今のうちに言っておこう。今日の俺は自意識などとうにわやになっていた。と。 これは明らかに朝比奈さんの守備範囲だろう。 お嬢様風というか、どこかのパレスガーデンを歩いてそうというか、 日傘もオプションでつけたら素敵ですね…みたいな。まぁ…そんなの…だ。 眩暈がした。何にかは俺には分からないぜ。 今日一日こいつはこの格好で街を歩くつもりなのか…。 「楽しいですね、ふふ」 悪い予感ばっかり当たるのは何故だろう。分かった人はここに特電をかけてくれ。 ちなみにイタズラ電話やら出前と間違えてかけたなんてのは勘弁だぜ。 これは第三者から見たら、というか、俺から見たって何の変哲もないデートであった。 ちょっと待て、これはないだろう、以前の問題だ。 どこぞの三流作家でもこんなベタな展開には飽き飽きだろうが。 「お前、正気なのか?」 「何がですか?」 「っていうか何で俺だけ呼ぶんだよ」 「だって、いつも5人だったでしょう?たまにはいいかなと思って…」 そんな可憐になるな。うつむいてしゅんとするな。映像担当の人が困るだろ。 いやそんなことはどうでもいいんだ。 「お前昨日の記憶あるか?」 「昨日?」 時間は昼になっていて場所はレストランになっていた。 今のところお馴染みの喫茶店の出番はないらしく、マスターの顔を拝むのはしばらくおあずけかもしれん。 「そう。特に昼以降のだ。」 こいつが普通だったのは昨日の授業中までだと思うが、 昼休み以降は会話した覚えもなかったので、そこから先は普通だったか疑問である。 「そうですね…昨日は、お花に水をあげて、掃除をして…」 言葉だけ切り取ればそのまんま朝比奈さんな文面だったが、声の主は間違いなくハルヒで、 見ていると混乱した挙げ句思考に支障をきたしそうだったので俺は片手をテーブルにおいて 頭を抱えるように視界をさえぎった。 「その前は…図書室に行っていました」 あの1時間か。それで?何でまた図書室なんかに行ったんだ?らしくないな。 「えぇっと…ファンタジーの資料というか、物語を集めに…」 まさか文化祭の出し物の準備じゃないだろうな…。 「そうですよ?クラスでやるものを提案しようと思って」 どうやらキャラクターまで変わってしまったらしい。 きっと今のこいつなら道端に落ちてる1円玉ですら拾って交番に届けるだろうし、 もちろん老人や妊婦がいたら席を譲り、もしかしたらタバコの吸い殻とか空き缶ですらちゃんと クズカゴにいれるかもしれない…。 「その時に、何かおかしな物はなかったか?」 「おかしな物?」 だからきょとんとするな。そしてそれを見るな俺よ。 これはよくあるヒーロー物の悪の組織が俺をたぶらかすために仕組んだ演技だと思え! 内なる波をなんとかいなしながら俺は質問を続ける。 「そうだ。例えば本のひとつから妙な感じがした、とか、 司書のおばちゃんの視線が何か不自然だった、とか」 「そんなことないですよ?本は綺麗でしたし、おばさんはいい人でした」 …見当がつかん。所詮俺ひとりで解決するのは無理なのか。 その後の俺は混乱するだけで一日を終え、帰ってきて 今までのSOS団市内探索のどの回より疲労していた。あいつは誰だ。 ベッドに突っ伏してそれらしく唸っていると、かちゃりと扉が開いて妹が顔を出した。 「お兄ちゃーん、ノリ持ってなーい?」 俺はそのまま机の方を指差して、後は何も言わなかった。 …えーっと、涼宮ハルヒはSOS団団長でフランクかつハイテンションのヒステリック…。 などと特徴を脳内で箇条書きにしているうちに俺は眠ってしまった。 何となく、俺はこの問題に関しては誰の助けも借りたくなかった。 どうも問題はハルヒの性格ダイアルが反対方向に回ってしまったことのみらしく、 それで他に問題が起きるとも思えず、むしろ迷惑自体は地球全体で見れば減っているはずだ。 だが戻さないわけにはもちろんいかない。ハルヒがこのままだったら俺は一週間もしない内に発狂する。 二時限目だった。数学の吉崎がねちっこく新しい公式を説明していた。なんのこっちゃ。 「やれやれ」 我ながら今日のこのセリフには覇気がなかった。いや覇気というのか分からんけどもだ。 転機となったのは昼休みの国木田のこのセリフだった。 「昨日の涼宮さん、何か変じゃなかった?」 いや今日も順調に変だぞ。大好評継続中だ。なんて授業中じゃ分からんか。 というか変なのは年中そうなのであって、今回は変なのが普通になったから変なわけで…。 「そういや今日も何となく大人しいな」 谷口が唐揚げを口に含みながら言った。 「うん、何か昨日の昼休みの初め、ぼーっと空を見上げてたんだ」 国木田が答えた。別に窓の外を見てるのは珍しいことじゃない。 「でもね、何だかそこに何か見えてるような視線だったなぁ」 「涼宮が普通の人間には見えないものを見てるのはいつもの事だろ」 谷口が言い飽きたと言わんばかりに返す。 「どのへんを見ていたか分かるか?大体でいいんだが」 俺は国木田に訊いて、国木田は窓から右、校庭の先には街並みが広がっているだけの方向を指差した。 すぐさま窓に近付いてそっちの方を見てみたが、もちろん何もない。 「そりゃそーだろ。キョン、お前は普通の人間なんじゃないのか?」 もちろんさ、谷口のこの言葉に含みなんかなく、文字通りの意味だろうが、 俺はいつだって面接で言ったら即不採用になりそうな妙な経歴はない。 さて、俺は部室で悶々としていた。 ここで何も思い浮かばないようなら通例に則って古泉、または長門あたりに助けてもらうことになりそうだが。 「お困りでしたら、相談相手になりますよ」 という古泉の申し出を俺は「まだいい」と言って断った。 長門はその時だけこちらを見ていたが、それを聞くとすぐに倍速読書に戻った。 せめてあと1日粘ってみよう。自分でも何故こんなに頑固になっているのかは分からない。 そういう時だってあるもんだ。思春期のせいにでもしとけ。 ハルヒは今日も掃除と水替え、さらには朝比奈さんの仕事を奪ってお茶汲みまでおっぱじめた。 「あの…それは私が…」との朝比奈メイドの言葉に、ハルヒは 「いいんです。いつもやってもらっていますから、たまには私が」と、 歯が20本総出で緩んで外れてしまいそうなことを言い、ついでに 「キョン、今日も付き合ってほしいところがあるの」 と言って俺を完全にノックアウトした。 俺だってもううんざりな心持ちさ。 いっそ俺も呆我してしまえればよかったが…まだくたばるには早い。 ハルヒが俺を誘ったのは、自宅からさほど遠くない小さな公園だった。 「私ね、たまに不安になるのよ」 「何が?」 半ば投げやりに俺は言った。例によってハルヒの方は見ない。 「SOS団の皆は私のことをどう思ってるのか」 これには虚を衝かれた。突然そこに戻るんだな。 「だって、私が作った団体だもの…。毎日が楽しくなればいいと思って」 今のこいつの脳内でどういう経緯と設定があったのかは知らないが、 少なくともどうやってかハルヒが団員を集めた事には変わりないらしい。 「だから古泉君や有希、みくるちゃんが退屈してないか、たまに不安になる」 退屈とはむしろ逆の方へ向かう事しばしなのでそのへん心配はないが、 これは果たしてこのハルヒ限定のことだろうかと、ふと俺は思った。 「ある日突然、皆がいなくなってしまうんじゃないかって、時々思う」 気付けばハルヒの方を向いてしまっていた。が、別人だと思う必要はないように感じられた。 あの七夕の日の、どこか物憂げなハルヒがそこにいて、一時的に人格が変わっていようが、 そういったごく稀に見せる部分は共通項としてこいつの中に存在しているらしかった。 「だから、そんな時にふっと窓の外を見たりして…」 ハルヒはくすっと笑って、どうやら別人格モードに入りそうだったので俺は再び前を向いた。 「あ。あのな、ハルヒ」 「なに?」 視線を感じたがそれには応じない。 「そんな心配は全くの思い過ごしなんだ。俺は、いや、お前以外のSOS団団員は、 この団に入ってよかったと思ってるし、そうでなかったらきっとこの日常はありふれた つまらないものになっていたとも思ってるぜ」 「…。」 ハルヒはまだこっちを見ているようだった。何かを言いそうにはないので、俺は続ける。 「だからな、そんな事は取るに足らない。お前はこれからも団長でいればいいし、 思いついたことをどんどんやってくれれば、それで俺たちは楽しいんだよ」 このハルヒが実行する思いつきは果たしてどんな物になるのだろうと思いつつ、 しかしそれに対し自分で答える間を与えず、ハルヒは言った。 「そっかぁ…。そうだよね」 「あぁ、気にしなくていい、お前が憂鬱だと皆が元気じゃなくなるぜ」 「ありがとう、キョン」 ハルヒはぼーっと空を見上げた。もう夜だった。 曇りらしかったが、切れ間に星が見え、輝きを返す。 ―その時だった。 ハルヒが急に動かなくなり、一瞬目に暗闇が落ちた…と思いきや、また輝いて、気を失った。 「ハルヒ!」 俺は頬を叩いた。いきなりどうしたんだ?? 「ハルヒ!しっかりしろ!」 「…」 「ハルヒ?」 「…ん?」 「大丈夫か?」 「…キョン」 「あぁ、俺だ。大丈夫か?お前…」 「何やってんのよ」 「何ってお前…」 バシッ! ある種王道、と呼べなくもない展開である。 なぜなら、俺はハルヒが倒れた拍子にこいつを抱き起こしており、 それで何故叩かれたかというと、もちろんさっきまでのこいつならそんなことはしないはずで、 つまり端的に言ってしまえば…戻ったのだ。こいつは。 何でだろう? 「あんた、あたしになにしてたのよ!」 「何って、何もしてない」 俺は断固として言った。ハルヒに何かしてひっぱたかれるくらいなら、 いっそ朝比奈さんを抱きしめてアイラブユーとでも言った後にこいつに 絞首刑にされるほうを俺は選ぶね。 「そもそも、あたし何でこんなところにあんたと二人でいるのよ!」 お前が誘ったんだ、と言うと今度は平手がグーに変わりそうだったので、 「お前が俺の家で文化祭の計画を練るって言った帰りに、お前は失神した」 と言ったが、こいつは簡単には信じず、 「あたしが失神?何でよ、そんな経験今まで一回もないわよ」 だが起きてしまったんだ。と結果論でまとめようとした俺に、 「じゃぁすぐさまあんたん家で文化祭の企画を考えるわよ! っていうか何であんただけなわけ?今からでもみくるちゃんと古泉君と 有希を呼びなさい!」 まず命令すんのかよとわざわざ言ったりせず、 俺は携帯を取り出してプッシュを開始する。 そうして見事に、文化祭企画会議第一回が開催されることに…なってしまった。 「涼宮ハルヒはこの星系から7つ離れた空間に位置する意識体の発信した念波を受け取った」 …長門の説明である。 普通の人間であればもちろん受信できないし、現時点で地上のいかなる技術力をもってしても、 それを確認できる距離にはないそうだ…。 相変わらずデタラメだな。俺が傍観者なら笑い飛ばしているところだ。 だが長門はいつだって真実しか言わないのである。 少なくとも長門が嘘を言った事はこれまでにない、はずである。 その念波によってハルヒはあの性格になっちまい、 さっきの星の方角にあった逆の波動によって元に戻った、と、 何とも後付け設定的匂いのプンプンする解説だぜ。 これが古泉のものだったら俺は脳に止める事を拒否していたかもしれん。 ちなみに波動はピンポイントなもので、今後地球に命中する確率は天文学的数値らしい。 ふと俺はさっきまでのハルヒを思い出し、外に鳥肌、内に吐き気を感じ、 すぐさま休日の出来事も一緒にフォルダごとごみ箱に捨ててしまった。 ハルヒは5人で入るには狭すぎる俺の部屋で、ベッドの上で仁王立ちして計画をぶち上げた。 …それはまぁ置いておくとして、こんな事件はいい加減マンネリではないのかね? などと考えつつSOS団員達を睥睨して、溜息。 それでも感情は裏腹だな、と気付いてしまった事は、俺の胸の家だけに秘めておこう。 ごみ箱に入れただけで完全に消去してはいない、あのハルヒの記憶と一緒に。 終了
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キョン「ただいまー」 ハルヒ「足りたでしょ?」 キョン「あぁ。すき焼き肉1パック498だった。」 ハルヒ「広告に書いてあったでしょ?ちゃんと見なさいよね?」 キョン「いっちょ前に主婦じゃねぇか…ハルヒ。」 ハルヒ「ふふん♪」 キョン「なぁハルヒ、久しぶりに朝比奈さんたちも招待しないか?」 ハルヒ「いいわね~っ!じゃお肉足りないからもっかい買って来て~。はい1000円。」 キョン「…………」 俺はハルヒに渡された1000円を握り締め、近くのスーパーへいわゆるおつかいに来ている。 しかし二度目のご来店となるとさすがに恥ずかしいな。 俺は先程と同じ段取りでカゴにすき焼き肉を二つ放り込む。 「さて、」 お会計を済まそうとさっさとレジへ進もうとしたその時、何やら見たことのある二人がカートお押しながら仲良く並んでショッピングを楽しんでいた。 古泉とみくるさん夫妻だ。 全く…そのままジャスコかなんかのCMに出ればいいってくらいの美男美女だ。 どうせ後で呼ぶのもあれだしな、今声をかけておこう。 買い物カゴを持ったまま不審者の様に古泉たちの後を追い、声をかけた 「おい古泉。」 「なんでs…」 恐る恐る振り向いた二人の顔が俺を見た途端にいつものニヤケハンサム面と天使の微笑みに変わった。 「キョンくん!!」 声をかけた古泉よりも真っ先に返ってきたのはみくるさんのエンジェルボイスだった。 「おやおや、奇遇ですね。ハルヒさんはどうしました?」 「いや、ハルヒに頼まれた使いなんだ。」 このニヤケハンサム面を拝むのも何年ぶりだろう。 いやしかしまさかこいつが俺の中の永遠のアイドル(旧)朝比奈さんをモノにするとはっ!! こいつめっ…!こいつめっ…! などと考えてる場合じゃないな…。 早いとこ伝えておこう。 俺が事の説明を話しているとみくるさんは目を輝かせて 「いいですね~♪」 と言って古泉に同意を求める様な仕草をした。 「では僕たちも材料を買いましょうか。」 快く古泉は頷いた。 「肉はもうこれで十分だからな。あとは適当に野菜とかで良いんじゃないか?」 「そうですか。では、ビールとおつまみを見に行きましょうか。」 「だな。」 「じゃあ私はお野菜見てきますね♪」 そしてみくるさんは頭の上に「♪」でも出てきそうなくらいの足取りで青果コーナーへと向かった。 さすがにビールとおつまみ代を古泉…いやみくるさんに出さす訳にはいかないな。 少々痛いが乏しい俺のポケットマネーで賄うとしよう。 古泉と飲むのも成人して以来か… 酒やつまみを適当にカゴに放り込みながら古泉に話しかけた。 「なぁ古泉…」 「何ですか?」 「お前、成人式以来長門に会ったか?」 「いいえ。しかし毎年年賀状は送ってくれますし、さほど心配もしてなかったのですが…。」 そう、長門は毎年あのパソコンでうった様な文字で年賀状を送っては来るものの…それ以外に長門と連絡を取ることが無かった。 しかし年に一度の生存確認で大概俺とハルヒは安心していた。 何てったってあの長門だ。 今になっては「元」宇宙人だが。 今から約7年前、高校を卒業して1年たち、卒業後もしばらくは行われていたSOS団の活動も治まって、俺とハルヒは社会に程々に順応していた。 ハルヒくらいの頭なら大学へ行ってもおかしくないが… ある日突然「キョンっ、一緒に暮らすわよっ!」な~んて言われた日にゃ俺もびっくりしたね~。 なんせあの不思議大好き野郎と暮らすんだからそりゃもう高校時代より疲れる生活が待っていること請合いなので俺も断ったんだがな…。 俺の安月給じゃ生活できんぞってな。 ところがあのハルヒは、「あたしも出すわよ、生活費くらい。」 最初自分の耳を疑ったがその後にまた俺の心の朝日新聞の一面を飾る様な一言がハルヒの口から言い放たれた。 「好きなのよ…あんたのことっ!!」 なんて強引な告白の仕方があるだろうか? それからと言うものハルヒは気が強い普通な女の子となってしまったのである。 その時の古泉曰く、徐々にハルヒの世界を変える力は失われていっているらしかった。 「そうなれば僕の能力も無くなり、朝比奈さんや長門さんたちそれぞれの役目も終わります。」 両手を拡げそう言った後、俺は気付いた。 ハルヒを見守る必要が無いなら古泉を除いた二人はどうなるんだ? 古泉は元は普通の人間、まぁ朝比奈さんもそうだが、そうなると朝比奈さんは未来に帰り、長門は消えてしまうんじゃ… 「鋭いですね…」 ニヤケた面が真顔になった。 古泉と意見が合ったりするのは年に数えるくらいだが… 珍しい事もあるもんだな。 「おや、僕はただハードな青春を共にした仲間と離れたくないだけですよ。」 「あとどれくらいで無くなるんだ…?」 「保って2日といったところでしょうか?」 「行くか…!急いだ方がいいだろう?」 「わかりました。」 「僕は朝比奈さんに話をつけてきます。長門さんを頼みました…!」 「わかった!!」 急いで走って着いたあのマンション… 卒業した後も長門宅には行ってたからな、自宅はここで間いない! 急いでベルをならした。 ……………………… 出ない!?まさか…! 「長門!」 珍しく長門がエントランスから直接鍵を開けにきた。 少し目が潤んだ様に見えるのは気のせいか。 そしてゆっくりとエントランスのドアが開けられた。 「長門っ!話がある!!」 「………(コクン)」 「あのな、長門…」 「私もあなた達に話があったところ。」 「涼宮ハルヒの能力があと26時間42分8秒で失われる。だからお別れを言おうとした。」 「その事なんだがなぁ長門、俺はそうはさせないぞ…。」 「……。」 「いつだったか俺言ったよな?お前がもし情報なんとかに消される様なことがあったらハルヒに全部話して何としてでも見つけ出すって!」 「以前は私のバグが原因。でも今は任務が終わった。だから情報統合思念体は」 「長門っ!!」 俺が叫んだせいで長門が少し驚いた顔をした。 くそっ写メ撮っとくんだったぜ… 「結局はその親玉に消されるんだろ?そんなの俺は認めないぞ!!」 熱くなり過ぎたか、俺は長門の腕をつかんでいた。 その時、長門の頬をわずかな水分が滴った。 「だからな、長門。今からハルヒに全部話そうと思うんだ…。」 「…そう。」 俺は長門の腕を掴んだままハルヒの待つ自宅へと走った。 そしてマンションの前に着くと先に古泉と朝比奈さんが居た。 あとから聞いた話しによると、朝比奈さんは判りやすく荷物をまとめて準備していたという。 なるほど、この時すでに……っ!!! 「キョンくん、……ぅぇっありがとう~…!!グスン…。」 古泉の隣りの朝比奈さんの顔は涙でぐしゃぐしゃだった。 「では、行きましょうか。」 「おう。」 「ハルヒ!」 「なっ…何!?みんな揃って…!?」 いやぁ~あの時のハルヒの顔も見物だったね。 なんせみんな血相変えて走り込んで来たんだからな。 「いいですか涼宮さん、これから僕らが話す事は全て事実です。」 それから小一時間今まであった出来事を洗いざらい吐いてやった。 長門が宇宙人、朝比奈さんが未来人、古泉が超能力者でお前はとんでもない力を持っているという話。3人の役割、そして役目を終えた長門や朝比奈さんがいなくなると言う事を。 「有希を消しちゃうなんて許しがたいことだわっ。それにみくるちゃんも!団長の許可無しに未来へ帰っちゃうなんて駄目じゃない?!」 ハルヒの言葉を聞いた朝比奈さんはさらに涙の量を増やし 「涼宮さぁ~ん……」 声を荒げて泣き出した。 そしてハルヒから 「で、有希やみくるちゃんはほんとにそれでいいのね?」 と確認されると長門と朝比奈さんは頷いた。 やっぱり団長は頼りになるなと実感させられたときであった。 「有希、その能力はどうやって使うの??」 「心の中で、今まであなたが思っていた通りの私達を想像すればいい。私も協力する。」 そう言ってハルヒと長門は目を瞑り、念じ始めた。 しばらく瞑想していたハルヒと長門に割って入る様で悪いが俺は万能宇宙人である長門に最後の疑問を聞いてみた。 「すまんが長門、この後の歴史はどうなるんだ?」 「情報の操作は得意。今はそれも含め涼宮ハルヒに協力している。」 「そうか。そうだったな。」 「そう。」 それからややあって、長門は一言だけ俺に告げた。 「終わった。」 その場にいる全員の肩の荷が降り、朝比奈さん達はペタンと腰を下ろし、また泣き出した。 ハルヒは笑顔で俺に言った。 「こんな面白いこと黙ってたなんて信じられないわ!!今夜はみんなでキョンに説教よ!!」 その後俺とハルヒが住むマンションで「すき焼きを大いにた盛り上げるための涼宮ハルヒのキョンを説教する会」が行われた。 ハルヒが消えちまった後の鍋もうまかったがあの時のすき焼きも申し分ないくらいうまかったな。 前置きが長くなったがその後普通の女の子になった長門を成人式の日以来見ていない。 出るか不安だったが長門の携帯に何年ぶりかに電話をかけてみる。 ……………… 「…もしもし。」 「長門か?」 「…。」 恐らく受話器の向こうで頷いたのだろう。 「久しぶりだな。」 「…。」 あの、長門さん?受話器の向こうの頷きは俺には見えないから少しはしゃべってくれよな。 「…わかった。」 「変わらないな。」 「…そう。」 「今日俺んちにみんなを呼んでまたすき焼きでもしようと思うんだが。」 「くるか?」 「……行く。」 「そうか。ならもう古泉と朝比…みくるさんは来てるからな、待ってるぞ。」 「わかった。」 そう言って長門は電話を切った。 長門の家からここまでは電車で一駅、さほど来るのに時間はかからないだろう。 ハルヒとみくるさんも仲良くすき焼きの準備を…… 「みくるちゃぁん!折角だから裸にエプロンやってみない!?」 「ふぇ~~!!」 ハルヒ!人妻バージョンのみくるさんも見てみたいのは山々だが夫の前だ!!自重せい! おい、古泉、ニヤけてないでお前もなんか言え! 「変わらないのはあなたもハルヒさんも一緒ですね。」 とチラシのモデルから雑誌のファッションモデルに進化したスマイルで俺に言った。 しかたないな…。 「やめろ!ハルヒ!!一昔流行ったしゃぶしゃぶじゃ無いんだぞ!」 懐かしいな…まさか今になってこのやりとりをするとは。 「しゃぶしゃぶ?今はすき焼きを作ってるのよ??」 「わかってる!これ以上言わせるな!!」 古泉夫妻がそれをみて笑っていた。 古泉、後で覚えておけ。 「それは恐ろしいですね。」 こいついつの間にビール一本空けやがったっ! 「一樹くんは酔ったら手強いですよ?」 みくるさん、それはどう手強いんですか? 「ふふ♪禁則事項です♪」 人妻最高!……っ!? 「キョン?何鼻の穴膨らましてんの!?」 油断した…ハルヒを止めていた途中だった… ―ピンポーン― するとチャイムが鳴った。 きっと長門だろう。 インターホンのモニターを覗き込む。 ……………誰だ? モニターの向こうには髪は肩まであり、 背は高くないもののスラッとしてて清楚な感じの女性が立っていた。 「なぁハルヒ、知り合いか?」 「有希じゃないの―??」 準備していたハルヒはエプロンで手を拭き、いそいそとモニターに目を向けた。 「すいませんどなたですか―?」 「…長門有希………………です。」 『ぇえ―っ?!!!!』 一同は驚きの声をあげ、俺を挟み込むかの様にモニターを我先にと覗いた。 みくるさん、肉の塊が…そして古泉、顔近いぞ。 「今開けるわね!!」 鍵を開け、進化した長門をリビングに招待する。 しかしこうも変わっちまうとちょっと畏まってしまうな。 「変わったな、長門。」 「そう?」 「背も少し高くなったんじゃないか?」 「あれから…少し伸びた…わ。」 伸びた…わ って…。 少し無理してるな、ここでは普通の長門でいいんだぞ? 「そう。」 「人ってのはこうも変わっちゃうもんなのね―。」 ハルヒは長門を珍しいものを見る様な目で長門を見つめる。 無理も無いがな…。 あの時は制服しか着てなかったし、今はan〇nにでも乗ってそうなくらいの美人だ。 「あれから何か変わった事はあったか?」 「特には。強いて言えば制服が入らなくなった。」 今のは長門なりのジョークだろう。古泉も相当ウケている。 「フフフ………ケラケラケラwwwwww」 ウケすぎだろ!いかん、こいつ完全に逝っちまってる。 「しかし突然そんなに変わられるとさすがの俺も驚いたな。」 「対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェイズに基本的な身体の成長は無かった。 あの時の情報改竄によりあなた達と同じ有機生命体になったことにより、今までの反動が訪れた。」 「よくわからんが人間になって遅れた分一気に成長したってことか?」 「そう。」 久々に長門の顔を見たが前の幼かった長門とは一転、ハルヒやみくるさんが居なければ確実に心魅かれていただろうね。 「ところで長門…前みたいに金に自由は利かないだろう?仕事とかしてるのか?」 元宇宙人に超現実的な質問をしてみる。 古泉は元機関とやらの誼で何かの研究をしているらしい。 かという俺はハルヒの紹介で夫婦揃ってA〇ショップの店員だ。 携帯ショップの何が悪い! 言っとくがハルヒのユニフォームの似合いようははんそk…話が脱線したな。 「ファッションデザイナー。」 !? 「有希―!すごいじゃない!?」 「長門さん昔から多才でしたもんね~♪」 「マッガーレ」 「こら古泉!スプーンを力ずくで曲げるな!! しかし長門、専門学校とか行ってたっけ?」 今日日学生のバイト代で行ける学校なんてどっかのお笑い芸人養成所くらいだ。 「親玉から仕送りみたいなのがあったのか?」 「定期的に。その一部を蓄えていた。」 「そんなとこまでしっかりしてたんだな。」 そんな話をしながらビールをちびちびやっていた。 すると長門はハルヒ達のいるキッチンへと向かって行き 「手伝う。」 と一言言い、下準備を始めた。 あの時からようやく人並みの生活をできる様になったのか。 そういや表情に乏しく、この俺の眼力でようやく変化したのが伺えたあの長門だが、今は誰が見ても分かるだろう。 楽しそうだった。 笑いながら作業する美女3人を見ていると心から幸せだと思うね、うん。 「はたしていつまで続きますかね、永遠にこの状態だといいのですが…。」 いきなりマジに戻るな!空気読め!顔を近付けるな!酒臭い!! 「……。今我々はその長門さんの元親玉、情報統合思念体について研究しています。みくるさんにも手伝ってもらってね。」 「何?!完全に情報を操作したわけじゃ無かったのか?!しかもみくるさんまでそのいかがわしい仕事を…」 「えぇ。いくら前の長門さんでも何億年前の情報から操作するのは無理だったと思われます。」 「で、何かまずい事でもあったか?」 「もしあなたが大事にしていた息子をさらわれて、もうあなたのもとに戻らないと分かった時、あなたならどうします?」 「一生さらった奴をゆるさねぇな。」 「そうです。」 まさか…………。 情報なんとかがそんな子供思いのお父さんだったとはな。 「ということは、結果長門は情報思念体から千切られて無理やり人間にされちまったようなもんか…。」 「本人の意思もありましたし、無理やりという表現は正しくないですが。まぁそんなところです。」 そうだな、俺が長門の親ならあんな可愛い娘をさらった奴に制裁をくわえる。 「しかし今のところ、何の動きもありません。安心してもいいでしょう。」 「そうかい。ま、長門の親以上に怖いのがうちのハルヒなわけだが。」 なんだがまた俺だけ2Gくらいの圧力がかかったくらい体が重くなった。 飲み直すぞ、古泉。 「はいw」 「できたわっ♪」 そうこうしてるうちにすき焼きが出来上がったみたいだな。 ん~いい匂いだ。 さっきのことは一旦忘れて、今日はみんなの再会を祝してSOS団すき焼きパーティーだ。 そうだ、今度また不思議探ししないか? 駅前とかじゃなくどっかの温泉とかな…。 ん、うまい!!! 涼宮ハルヒのすき焼 ―完―
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俺が朝目覚めると、目の前にハルヒの寝顔があった。 一瞬戸惑ったが、昨日のことを思い出す。 ちなみに俺達は付き合っていたのだが、こういうことをしたのは今回が初めてだ。 俺もまぁしたくないわけではなかったのだが、ハルヒに拒否されるかと思うと怖くて出来なかったんだ。しかし、昨日ハルヒが俺のことを挑発してきて、ついに俺の理性がぶちぎれてしまったわけだ。 そう、俺とハルヒはその何と言うかまぁそういうことをしてしまったわけだ。 ハルヒは中学時代に付き合いまくってたにも関わらず初めてだった様だ。まぁ、俺もそうだったがな。 そんなことを思いながらハルヒの寝顔を見る。 やっぱりきれいだ。俺の自慢の彼女だもんな。 時計を確認すると、そろそろおきたほうが良い時間のようだ。今日は学校もあるしな。さぼろうかと思ったが、ハルヒと二人でさぼったら古泉たちに何を言われるか分からん。 さて、ハルヒを起こすか。 俺が起こすと、ハルヒは比較的寝起きが良いようで、スッと起きた。 「おはよう」 あぁ、おはよう。体、大丈夫か? 「あ、うん///大丈夫そう。ちょっとスースーするけど…」 学校行けそうか? 「大丈夫」 そうか、じゃ早く準備して行くぞ。 「キョン、おはようのキスして。」 あぁあぁ、わかりましたよ。 チュッと軽いキスを落とす。 「ねぇ、もっとやってよぉ」 仕方ねぇな・・・学校前だぞ? 俺たちはさっきより濃厚なキスをした。 「ぷはぁ・・・キョン、朝から激しすぎよ。」 すまん、お前が可愛すぎだからだ。 「もう///」 すると、俺はあるいたずらを思いついた。 おいハルヒ、お前今日俺のいう事聞いてくれるか? ちなみにこういうとき、ハルヒは大抵俺のいう事を聞いてくれる。付き合う以前はともかく、こいつから告白してきたし、ハルヒは俺と二人っきりの時は比較的素直だ。 「何?キョン」 これ挿れて学校行ってくれないか? 「え、これって…」 俺達は昨日、初夜だとは思えないほど激しいプレイをし、道具なども使ったわけだ。 俺の手に握られていたのは、昨日ハルヒの前戯に使ったバイブだった。 「でも…」 いいだろ? 「ばれちゃわないかな?」 大丈夫だよ、お前もスリルは大好きだろ? ほら入れるぞ。 「あ・・・ん」 ハルヒの中にバイブを入れる。 「ん・・・あぁん・・・」 おいハルヒ、もう感じてるのか?一日持たないぞ? 俺の中で何かのサディズムが目覚めてしまったようだ。 まぁ、付き合う以前は散々尻に敷かれていたし大丈夫だろう。 何やかんやあったが、俺達は無事に学校に時間通りについた。何とか一緒に来たこともばれなかったようだ。 そして ハルヒの膣には今バイブが挿入されている。 授業は始まったが、ハルヒは真っ赤な顔をしたままずっと下を向いたままだ。 かくいう俺はチラチラと後ろを確認している。 すると、ハルヒが俺をつついて小さな声で言ってきた。 「キ、キョンー…あ・・・はぁ・・・もう無理っぽいよぉ・・・」 確かに、もうハルヒの秘部から出たと思わしき匂いが充満し始めている。このままじゃばれてしまうかもしれない。 じゃぁ、この授業が終わるまで我慢できるか? 「が、頑張ってみるわ・・・」 休み時間になった瞬間、ハルヒが話しかけてきた。 「キョンー・・・早く抜いてぇ・・・もう無理だよぉ」 そうかそうか、よく我慢したな。 ほら、立て。保健室行くぞ。 ハルヒは立とうとしたが、その瞬間にしゃがみこんでしまった。 「キョン、立てないよぉ、足に力が入らない・・・」 仕方がない、俺はハルヒをお姫様抱っこして保健室に行った。 すると、ちょうど良いことに保健の先生は居なかった。 ほら、ハルヒ、寝転がれ。抜いてやるから。 「ありがと・・・キョン。」 ハルヒは顔を真っ赤にしていて、相当感じているようだ。 俺はハルヒをベッドに寝かせ、先生が来てもばれないようにベッドの周りのカーテンを閉める。 ハルヒ、足を開けろ。 グチョ、ヌチャ いやらしい音を立てながら、ハルヒが股を開く。 俺はパンツの上から、軽くハルヒの秘部を撫でる。 「あ・・・」 ビチョビチョじゃないか、むしろ洪水だ。感じてるのか?ハルヒ。 「ん・・・もう、キョンのせいなんだから。」 俺はハルヒのパンツをずらし、バイブを抜いた。 抜いたあとにハルヒのハルヒの穴を見ていると、何かを求めているようにヒクヒクしている。 「キョン、そんな見ないで・・・」 そうか。 俺はそういうとハルヒのパンツを元に戻した。 正直俺も今すぐにでも押し倒したかったし、俺の息子もかなり大きくなって居た。それにハルヒも感じていて、もっとして欲しいようだ。だが、あえて裏切ってみる。 「え・・・?キョン、もっとしてくれないの?」 何言ってるんだ、ここは学校だぞ?家まで我慢できたらやってやるよ。 「えー・・・」 やれやれ、これからあと学校が終わるまで、俺もハルヒも耐えられるかな・・・ っていうか初めてなのに二人ともやりすぎだろw
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涼宮ハルヒの赤面 ハルヒの憂鬱に付き合ったせいで、俺の方が憂鬱になった、 世界を再構築どったらこったらの事件から大分月日が経ってる訳だが、こんな事は初めてだ。 「涼宮は風邪で今日は休みだ」 担任の岡部の無駄な話を聞き流していた俺の便利な耳はその部分をクローズアップした様に聞き取りやがった。 ハルヒが休むのは特に珍しい訳では無いが風邪と言う事に引っ掛かる。 ウイルスですらハルヒを避けて通りそうなモノだからな。 ケ ハルヒが居ない一日と言うのは何とも平和で退屈だった。 改めてハルヒは俺の平凡な生活に深く踏み込んでいたのかが分かる。 ……って俺は何考えてんだ。 今日は自己中な団長様も居ないようだから、部室に顔を出す必要も無いだろう。 そう思い、俺は珍しく朝比奈さんの声を聞きたいとも思わず、下駄箱に向かった。 俺を待ち受けていたのは他の人にはわくわくする出来事なのかも知れないが、俺にとっては結構な懸案事項だ。 それは何かって言うと、手紙なのだが、差出人不明の手紙に俺は良い思い出がない。 まぁそんな事を言っても、この手紙は直ぐに懸案事項から外れた。 何故か、なんてのはこの字を見てもらえば分かるだろう。 俺はこんな機械のような字を書く奴は一人しか知らない。 長門だ。 コ 俺は走った。今日は不幸にも、さすがにあの坂に嫌気が差したのか、 自転車様のチェーンが切れたので、自転車は無い。 手紙の内容は 『いつもの公園で待ってる』 時間が書いていないから、急がなくて良いのではないか?と思う奴も居ることと思うが、長門を知ってる奴から言わせてもらうと、時間が書いていないと言うことは、あいつは俺がいつ来ても良いようにずっとあの公園に居る、と言う事だ。 いくら長門がなんたらヒューマノイド・インターフェースだって一人公園で待つのが楽しい訳が無い。 公園に着いてまず見る所は決まっていて、やはり、そこにベンチと一体化し、本を読んでいる長門を見つけた。 どっちかと言ったら宇宙人より忍者の方がしっくりする。 そんな事を考えながら、俺は長門の隣に腰を下ろした。 やはり、長門は制服姿だ。 「よう」 長門は視線をこちらへ向け、本にまた戻す。 「大分待ったか?」 ……少し間を置いてうなずく。 「もしかして学校をサボったとか」 うなずく。 「……すまんかったな。早く気づかなくて。」 朝から待っていたと言う事は大体6時間以上待っていた事になる。 「いい」 長門は読んでいた本を閉じ、視線をこちらへ向けて言った。 「……んで? 何の用だ?」 「これ」 すると長門はどこからか、何かの紙とリンゴを取り出して、俺に渡す。 「? 何だ?」 「りんご【林檎】バラ科の落葉高木。ヨーロッパで古くから果樹として栽培され……」 「んなこたぁ知ってるが……」 「なら良い。」 おいおい、俺がここに来た理由がリンゴってどういう事だ? 「おい、長門……」 俺がリンゴから視線を戻すと……長門は既に居なかった。 虚しいから俺を一人残さないでくれよ。 取り敢えず俺はリンゴと一緒に手渡された紙を広げた。 内容はこれまたワープロの様な綺麗な字でどこかの住所が記されている。 そして紙の最後には一言。 【涼宮ハルヒ宅】 ……やってくれるな。 しっかし……はぁ……まぁ良い。 ハルヒのやることなすことにツッコミを入れてうんざりする気分になるのは俺だけの役割だ。 そういう事になっていると、いつだかは忘れたが、自覚したのだ。 俺は長門からもらった意外に冷えているリンゴを持ち直し、紙に書いてある住所を目指して歩き始めた。 あいつがリンゴ好きである事を祈りながら。 サ ハルヒはどうやらリンゴがお好きな様だ。 着いた先は鶴屋さんの家には及ばないかも知れないが、相当な大きさの家だった。 まさにハルヒらしいね。 そんな事を考えながら俺は玄関に付いているインターホンを押した。 『……はい、どちらさま』 明らかに不機嫌そうな声が聞こえてくる。 少し鼻声のようだから、この声の主はハルヒか。 「いくら風邪の時でも、もう少し客に対しての態度を考えたらどうだ?」 まぁ、考えろと行った所で聞かないのは分かってるがな。 実際、俺も人に言えた立場じゃない。 『う、うっさいわね!! ってその声、あんたキョン!?』 「あぁ」 『え、あ、う、うそ!?ちょ、ちょっと待ってなさいよ!?』 ドタバタと漫画の様な音を残してインターホンは切れた。 ……ガチャ、と音をたて玄関の扉が開く。 「な、何しに来たのよ?」 「見舞いにだが、まぁ、結構元気っぽいな」 安心した……って、何で心配してんだ、俺? 「そ、そうね、私、風邪は直ぐ治るから。アンタの顔を見たら治らないかもだけどね」 ……どうやら具合いはほぼ完璧らしいな。 「そうかい。んじゃ、完治する邪魔しちゃ悪ぃな。これ渡して帰るわ」 俺は長門に渡されたリンゴをハルヒに渡す。 まぁ、長門からのリンゴの使い方は俺の想像力じゃ、これくらいしか思いつかない。 「じゃあな。夏風邪は油断しない方が良いぞ」 俺は踵を返して帰ろうとした。 「待って」 その言葉は俺のシャツの裾を掴んでいるかの様に俺を引き止める。 「……何だよ?」 俺がそう言葉を発すると、裾を引く力が強まった……気がする。 「……団長命令よ」 ……素直じゃないな。 まぁ俺が言えた事でも無いか。 「……俺は腹が減ってる。」 そう言って、俺はさらに強まった、裾を引く力の源……ハルヒの手の手首を握った。 すると、ビクッ、と手が震え、急に裾が解放された。 俺はハルヒの手を離し、振り返った。「そうだな、リンゴでも食べさせてもらうか」 俺が振り返った瞬間のハルヒは若干涙目だったが、直ぐ様いつもの顔に戻り、こう言った。 「ば、バカじゃないの!? 部下が団長に食べさせて貰おう何て甘い考えは捨てなさい!!」 あー、はいはい。分かりましたよ。 やれやれだ、と一度は封印しようとした口癖を、俺が心の中で呟いていると、ハルヒは熱が出てきたのかほんのり顔を赤くさせ、言った。 「あんたが私に食べさせるの」 シ ……と言うわけで、ベッドの上で横になっているわがままな団長様の横で俺はリンゴを切っている訳だが。 緊張する。 なんだかんだ言ってもハルヒは女の子で俺は年頃の男の子なのだ。 しかもハルヒは全校生徒でもトップクラスの美女だ。俺も認める。 普段アジト……文学部室で二人きりになる事が有っても、ハルヒの家で、しかも両親は今出掛けていて……何てなった日には緊張しない奴は居ないだろう。 いや、居るのだろうが、そいつは余程女に慣れているか、女に興味がないか。 生憎、俺はどちらにも当てはまらない。 もしかしたら、古泉あたりなら緊張はしないのかも知れない。 「ほれ」 俺は切り分け、皮を剥いたリンゴを、横になっているハルヒに手渡……そうとした。 結果、リンゴはハルヒの手に渡っていない。 何故か? ハルヒが口を開けていたからだ。黙って、顔を赤くして。 ……あーん…………か………? 一度にここまで三点リーダを使ったのは初めてかもしれない。 俺が固まっている間もハルヒはさらに顔を赤くして口を開けているので、俺は意を決して、ハルヒの口許にリンゴを近付けた。 さっき散々『ハルヒは顔を赤くして……』と言っていたが、スマン。 俺が言える立場じゃないな。 「……あ~ん」 ハルヒに聞こえない様に、普段は出した事が無いほどの小さい声で言ってみた。 一瞬、このリンゴの様に真っ赤なハルヒが震えた様に見えたが、気のせいだと信じたい。 そしてハルヒは、シャクッ、と気持ちの良い音を鳴らし、リンゴを半分口に入れる。 そして少ししてまた開けたハルヒの口に残りの半分を放り込んだ。 もう一切れハルヒの口にもって行こうかと思ったが暫くしてもハルヒは口を開けないので、俺は自分で剥いたリンゴを口に入れる。 うむ、うまい。 俺が自分で剥いたリンゴを暫く味わっていると、突然ハルヒが話出した。 「……前に」 「何?」 いきなり喋り出すので思わず聞き返してしまった。 するとハルヒは『黙って聞いてなさい、バカキョン』と、言っている様な視線(……もしかしたら本当に言っていたのかも知れない)を俺に向け、続けた。 「……結構前に、悪夢を見たって言ったの、覚えてる?」 「あぁ」 あの事件は忘れられる方がおかしい。 ハルヒ、あまり引っ張り出すな。 「その夢ね……内容は……」 やめろ、ハルヒ。言わなくて良い。 「内容は……良いわ」 どうやら俺の意思が伝わった様だ。 「その夢ね、本当は悪夢じゃなかったの」 ……は?悪夢じゃないって?どういう事だ? あれはお前にとって悪夢じゃないのか? ……もしかして、違う夢の事を話しているのか? 「その夢にはあんたも出てきてて……今みたいに二人きりだった」 いや、間違い無い。 あの閉鎖空間と現実世界が入れ替わりそうになった時の事だ。 「その夢の最後……あんた、何したと思う?」 それは…… 俺が戸惑ってあたふたしていると、急にハルヒの顔が近付いて来た。 おい、ハルヒ。顔がちか…… 「……こうしたのよ」 ハルヒの顔が俺の目の前に有った。 俺の唇には柔らかい……ハルヒの唇が重なっていた。 実際には数秒、長くて10秒そこらの出来事のはずだが、俺には何時間にも、何日にも、何ヵ月にも、何年にも感じられた。 だが、もし実際にその年月が経っていたとしても俺は一つの事をずっと思っていただろう、『離したくない』と。 唇を離したハルヒは次に抱きついて来た。強く。 「好き」 とただ一言を言って。 俺はその時、驚いてはいたが、意外に冷静だった。 おそらく、俺は無意識の内に自分の思いに気付いていたのだろう。 おそらく、俺は無意識の内にこういう事を考えていたのだろう。 おそらく、俺は無意識の内に自分の思いを整理し、もしも、こういう事が起きた時のために答えを用意していたのだ。 だから、俺は用意していた答えを口に出して言うだけだった。 ……言うだけ、じゃないな、行動も伴わせた。 「俺も……好きだ」 そしてハルヒを抱き返す。 ……このときばかりは 『世界一幸せな時は?』 こんな質問をされて、 『好きな食べ物を久し振りに食べた時』 とか答えている奴の気が知れないと思ったね。 ソ ――翌日、ハルヒは風邪が完治したようで、いつもの極上の笑顔を浮かべていた。 俺は若干の風邪気味。 理由は言わずもがな。察してくれ。 まぁ、今日は金曜で明日は土曜で休み。 大した問題では無い。 明日はゆっくり寝て……ん? 「キョン!!」 突然暗くなったと思ったら目の前にハルヒが立っていた 「明日の探索は……わ、私達二人でやるわよ!! あ、あんまり多すぎるとあっちも警戒すると思うから!!」 ハルヒの顔は若干赤い。 まぁ、俺も赤いのだろうが。 何故赤くなってるのか? まぁ、要するにだ……明日は二人きりって事で、で、デートとも言えるって事だろう。 「後、今日のSOS団の活動は休み!! み、みくるちゃんや、古泉くん、有希にも伝えておいてね!」 そう言ってハルヒは俺の後ろの席に座り、小声で、話しかけてきた。 「……ボソボソ」 ――放課後、俺は軽快な足取りで部室へ向かっていた。 今日は休みだと言う事と、明日の探索は休み(・・)と言う事を皆に伝えるために。 部室の扉をノックする前に一つ、懸案事項が有った。 宇宙人、未来人、超能力者は心を読めないのか? ……まぁ、どっちでも良いさ。 俺はさっさと伝えて、裏門で待ってるハルヒの所へ行かなければならないのだから。