約 14,405 件
https://w.atwiki.jp/orirowaz/pages/395.html
山折村商店街の南口アーケード街。 交通の要所に店舗を構え、普段は観光客で賑わっている浅野雑貨店――その裏手には、一軒の寂れた商店がある。 店主の高齢化に伴って数年前に畳まれたこの商店は、 今では浅野雑貨店がダミー施設だと近隣にバレないよう、研究所によって土地ごと買い取られたいわゆる緩衝エリアだ。 そんなゾンビもいない商店に踏み入り、彫像のように不動を貫いている迷彩服の男がいる。 研究所が独自に保有する戦力ではなく、国家から送り込まれてきた秘密特殊部隊だ。 雑貨店から持ち出された土まみれの武器が乱雑に詰め込まれた店内で、ガーゴイルのように片膝を立てて鎮座する。 動かざること岩のごとし。 仮に何も知らない者が屋内を覗いたとして、背景と見紛うほどに動かない三樹康に気付くことはない。 視界の隅に映った迷彩柄を認知した瞬間には、その違和感は額に開けられた穴から命と共に流れ出しているだろう。 そんな傍から見ればターゲットの到来を静かに待ちわびているような佇まいだが、彼の行動は作戦待機ではなく休息だ。 だらけた姿勢ではなく、訪問者を直ちに撃ち抜ける姿勢を維持して休息を取っている。 脳への負担を最小限に抑えるため、眼を閉じ視覚より侵入する情報を完全遮断。 複雑な思考も遠ざけ、集音機から拾われる音だけで周囲を探察する。 結論として、不幸な訪問者が訪れることはなかった。 そうして、小一時間ほど経過しただろうか。 ―――いるな。 側から見れば眠っていたかのような三樹康の、その目がゆっくりと開いた。 科学の粋を集めた防護服の集音機能が、空気を伝う僅かな振動を捉えたのだ。 ―――獲物だ。 風の音を縫って運ばれてくる人の声と足音。 あらゆる生物がゾンビと化したこの村で、会話の声は予想以上に透る。 地震によって隆起した地面は、歩行する本人は気をつけているつもりでも、思わぬ物音を響かせる。 動くには十分な理由だ。 テロの元凶を征伐して数時間。 脳震盪によるダメージも、背中の強打によるダメージも、これしきの小休止で消えることはないが、状態は安定している。 それ以外の部分――僅かながら蓄積していた疲労に関しては解消されている。 死神がその細長い目をゆっくりと開き、新たな惨劇を求めて立ち上がる。 ◆ 『けーすけ、泣いてたの?』 『泣いてなんかねーやい! 目にムシが入っただけだっての!』 『さっき春ちゃんにいじめられてたのに!』 『そんなんじゃねーよ! おれのじーちゃんは村長だぞ! 村の親分なんだぞ! 親分はエラくて、絶対泣かないんだ! いざというときにみんなを守らないとだからな!』 『もー、じゃーいいもーん。 けーすけが泣きそうなときはねーえ、わたしがおててをぎゅっとしてあげる!』 『あ、や、やめ。恥ずかしいだろ』 『やーめなーいもーん! けーすけがみんなを守るんだよね。 だったら、けーすけは光お姉ちゃんが守ってあげる!』 『いいよ、そんなカッコ悪いよ!』 『お姉ちゃんの言うことを聞きなさーい! ふふっ、ぎゅーっ!』 『やあっ……、あああ~~っ……』 ■ 『ねえ、圭ちゃん。圭ちゃんは本当に、本当に八柳くんがやったと思う?』 『それ以外ありえないだろ! 証拠だって出てるし目撃者も複数いる。そうでもなけりゃ俺だって信じなかったよ。 素直に謝るなら、――ほんの少しでも反省するなら、おじさんやおばさんに俺も一緒に頭を下げたさ! 俺じゃない、俺は何もしてないって! なんだよそれ!』 『私は、私は……うん、そうだね。 現実感がまるでないんだ。珠が記憶を失って、哉太くんが犯人で、それは確かなはずなのに。 泣いて、泣いて、一生分かもしれない涙を流したら。 なんだか、何もかもが蜃気楼のような、まぼろしだったんじゃないかって思えてるの』 『光。今のお前は傷付きすぎて、その優しいまぼろしにすがってるだけだ。 あいつのことは忘れろ。考えるな』 『優しいまぼろし……。うん、そうなのかもしれない。 けれど、全部蓋をしちゃっていいのかな? 肝心の珠が、事件のことはまだ何も話していないんだし……』 『珠はそれだけ傷ついたってことだろが。 ここであのバカに甘い顔すればどうなる? それこそ、閻魔のヤローと同類に成り下がるだろ。 お前らが許しても、俺は向こうが頭下げるまで絶対許さねえ!』 『そう……そうだね。たぶんきっと、それが正しい。 でもね、圭ちゃんだって、本当に辛かったなら、無理しなくていいんだよ?』 『無理してるだって? 俺がそうだって言うのか?』 『だって圭ちゃん、つらいときはいつも自分を奮い立たせようとするから』 『…………』 『私ね、怖いんだ。 当たり前だったものが消えてなくなる。 人も、景色も、思い出も、変わってく。 でもね、それでも、変わらない物はあるよ』 『光……』 『ね、そうだ。手つなご』 『あ、ちょっと、引っ張るなって』 『ふふっ、離してあげないもん。 ――みんなが自分の道を歩んでいったとしても、私は圭ちゃんのそばにいたい。 何があろうとも、何がどう変わろうとも、私はずっとあなたの隣にいる。 だから、ね……』 『だ、ダメだ光!』 『どうして?』 『そこから先は、俺から言う! 俺から言わなきゃダメだろ!』 ■ 発展の波は山折村にも押し寄せ、幼い頃の記憶を置き去りにするがごとく変わっていく。 村が変われば、友との関係も変わる。 道を分かつ友が現れる。 それはかつて哉太と決別した時に思い知らされたことだ。 それでも今朝、哉太と会って圭介は確かに救われる思いがした。 またやり直せるんじゃないか。 どうしようもないくらいに決裂したと思っていたけれど、それは思い込みだったんじゃないか、と。 幼馴染の少女の死に様がチラついて離れない。 死して一つの命が終わりを迎えたとき、最も鮮烈で美しい思い出が遺された者の身に焼き付けられると聞いたことがある。 幼馴染が全員そろうことはこの先、もう二度とない。 淡い期待は、彼女の死によって粉々に打ち砕かれた。 哉太の事件のとき、圭介は食事が喉を通らないほどに憔悴した。 そのときは光が、最も辛いはずの立場にいる光が、手を取ってくれたのを覚えている。 打ち砕かれた平穏と、消えてなくなりそうだった親分としての自信を、光が修復してくれた。 今は望むべくもない。 光は本能に突き動かされるだけの、特別な、ただのゾンビ。 圭介は一人ですべてを背負わなくてはならない。 そのはずなのに。 日野光が、山折圭介の手を取る。 そのような指示はしていないはずなのに、在りし日の記憶通りに、そのしなやかな手で圭介の右掌を包み込む。 (まさか、正気を……) 取り戻したのか。 そう言おうとして、その底冷えのする冷たさに背筋が凍り付く。 光は決して正気を取り戻してはいない。 未だゾンビのままで、女王は生きている。 落胆する。そして、けれども、安心してしまった。 今正気を取り戻したとして、何を言えばいいのか。 村を襲う特殊部隊を殺してやったと胸を張ればいいのか。 自分たちの故郷が踏み躙られてしまったことを嘆き悲しめばいいのか。 ―――それとも。 みかげの死を目の当たりにしてから、ゴリラ女と戦っていた時には考えずに済んでいた恐怖が再び心を蝕んでいく。 それまでよりも、より速く、より深く心を蝕んでいく。 母は無事だ。村で虐殺に勤しんでいたクソヒーローはこの手で誅することができた。 哉太もうさ公も、多少やつれてはいたが無事だった。 ゴリラ女と出会って絶体絶命の危機だったにもかかわらず、自分も光も生き延びた。 生物兵器の軍団すら返り討ちにしてやった。 もしかすると、大丈夫なんじゃないか? 親しい村のみんなは、どうにかこうにか生き延びてるんじゃないか? そんな淡い期待は地に晒されたみかげの骸が打ち砕いた。 『だが次期村長を名乗った以上、手を汚すのを躊躇うな。でなければ上月みかげのようにまた、失うことになるぞ』 幻影の言葉が反響する。 失う。一体誰を? 先を行く碧の後ろ姿を目に入れ、咄嗟に目を逸らした。 それとも、諒吾なのか。珠なのか。哉太なのか。それとも……。 その横顔を見ることができなくなる。 目に映った瞬間に、その顔が崩れ落ちて、骨だけになってしまうのではないか? 悪夢のような幻影が思考を覆う。 けれど、そんな弱気を知ってか知らずか。 光は圭介の掌を包み込んでくる。 冷たいぬくもり。 不安を霧散してくれたはずのぬくもりが、今や恐怖の源泉になっているようで。 では光の手を振り払うのか? (それもダメだ……!) そうするが最後、二度とその手をとることはできなくなる気がする。 恐怖を忘れたかった。自分を奮い立たせられるものが欲しかった。 その昏い願望が届いたのか。 ゾンビとなった六紋兵衛がとある一方向に向き直る。 生物兵器の集団を見つけたときと同じ仕草だ。 浸食する恐怖を使命感と怒りで塗りつぶし、圭介は心を奮い立たせた。 ◆ サバイバルナイフに斬馬刀、青龍刀に薙刀、弓矢に防刃チョッキ。 浅野雑貨店から移動させた武器は数多いが、三樹康個人にとっては相性の悪い武器が大半だ。 防具に至っては一切不要。持ち歩いても嵩張るだけ。 高火力の銃器もなかったわけではないのだが……。 ―――機関銃本体があっても弾がないのは片手落ちだろ。ちゃんと隅々まで探しとけっての。 レミントンM700とて4キロ弱はある。 どこぞの国民的アニメで出てくるような四次元ポケットなど存在しない以上、使えない武器をじゃらじゃら持ち歩くのは得策ではない。 ―――ま、こいつは使えるだろ。 ガラクタの山から掘り出したのはスモーク弾。 敵の視界を覆い隠すほか、味方への信号弾としても使用される武器。端的に言えば煙幕だ。 それと、一部異能への対策のための厚めのシーツも忘れない。 ―――さて、ここで待ち伏せてもいいんだがね……。 天から情報を得ていなければそうしただろう。 だが、わずかな思考の後、その選択を放棄した。 酸の異能者、哀野雪菜が高い確率で混じっている。 血が転じた酸は非常に強力で、わずかな飛沫でも寝袋に大きな穴を開け、石畳や鉄すら溶かすとのこと。 さらに銃創を酸で強引に塞ぎ、出血を瞬く間に抑えるというのは乃木平天からの情報だ。 痛みにもほとんど怯まなかったのは、極限状態に追い込まれてエンドルフィンあたりが過剰に分泌されているのか、それとも異能の副産物か。 強酸というが、どれほどの強さなのか、上限は不明。 射程範囲ギリギリからの銃撃では、心臓や脳に届く前に銃弾が溶かされる可能性も考慮しなければならない。 確実に処理するなら、点や線よりも面、瓦礫などによる圧殺が望ましい。 とはいえ、ここで虎の子のウィンチェスターマグナムを消費するのは、牛刀を以って鶏を割くようなものでもある。 初撃のターゲットとしては適さない。 ―――小田巻と互角にやり合うボウズもいるっつう話だ、初撃を外せば取り逃すだろうな。 そんな人物が天を追跡しているなら、最大限の警戒網を敷いていると考えて然るべき。 偶然出会った人間を分かりやすい囮として運用しているか、突発的に銃撃されても対応できるだけの対策をしているか。 手段は不明だが、出会い頭の邂逅や待ち伏せは通用しない前提で考えるべきだ。 たとえば、標的が金属鍋でもかぶっていれば、それだけでヘッドショットの成功率は半減する。 H K SFP9で、スペック上の射程範囲外から金属を貫くのは厳しい。 対して、天から仕入れた情報によれば、相手の武器はデザートイーグル.41マグナム。 スペック上の射程も長く、防護服を貫きうる規格である。 撃ち合いは相手に分があるだろう。 レミントンから持ち替えをおこなう際の秒の空白もまた、命取りとなりうる。 ―――裏から回って背後を取るとするか。 周辺で銃撃戦に移行して、万が一この武器捨て場に篭城されても面倒だ。 三樹康個人とは取り合わせの悪い武器防具も、異能との併せ技で悪用される可能性は捨てきれない。 商店街南口からアーケード街に入り、東口へ移動、背後からショットを決めることを選択。 方針が決まれば行動は素早く。 音もなく商店を脱し、作戦行動に移った。 第一目的地は今いるブロックの対角側の地点だ。 移動時間にして約一分弱。 移動距離で表せば百メートル強。 僅かな時間、僅かな距離。 けれども、新たな勢力が入り込むには十分な隙間であった。 ■ 南口から最初の角を曲がり、まっすぐ進んで東出口を目指す。 予定通りにルートを進行していたそのとき、集音器が北西方向より新たな勢力の訪れを告げる。 ―――なんだ? ざ、ざ、ざ、ざ、と鳴り響くそれは、規律に満ちた複数の跫音。 北西方向、北アーケード街のほうから向かってくるそれは、素人集団の散発的なものではなく、完全に統率されたものである。 ―――どこぞの一個小隊でも突入してきたのかね? 冗談のような思考を速やかに振り払い、警戒レベルを一段引き上げる。 天はすでに研究所に向かった。 真珠は村人の利用こそ許可されているが、ターゲットの性質上、こんな堂々と商店街を闊歩することはあり得ない。 他の同僚はそもそも村人をゾロゾロと引き連れること自体があり得ないだろう。 ―――複数の正常感染者が固まってんのか、疑似的に軍を作り出す異能か、ゾンビや感染者を操作する異能か。 ―――蓄音機や電話機よろしく、音そのものを操作する異能って線もあるな。 存在を隠さないのはこの期に及んで警戒心が薄いのか、それともそれだけ異能と地力に自信があるのか。 後者と捉えて対処すべきであろう。 ―――やむを得んね。ターゲットは変更だ。 当初のターゲットと新たな訪問者、意図せず挟み撃ちのような形になったが、そこは柔軟に捌いてこそである。 判断は迷わない。商店を背に両手で銃を構え、新たなターゲットの現れを待つ。 天井を覆うアーケードで屈折した陽光は、本来の影とは別に北から南へと地面に薄い人影を形作る。 それを目印に、角からぬっと姿を現したその影の主に、鉛弾を一発、二発と打ち込むべく、腕を伸ばし。 「……なんでアンタがここに?」 網膜に映し出された、いるはずのない同僚の姿。 横合いから確かに捉えた防護服のほつれ。 想像上の警笛が非常ベルのごとく、頭蓋に鳴り響く。 「制圧しろ、ゴリラ女!」 風雅のすぐ後ろから現れた二人のうち、少年のほうが三樹康の疑問に応答した。 山折圭介。村内の若者の中心的存在だ。 もっとも、事前によさげなターゲットを品定めしていた広川と違って、三樹康は一村人の顔や名前までわざわざ覚えはしない。 エラそうなガキを頭と瞬時に見立て、その心臓を撃ち抜くべく発砲するが……。 銃弾は圭介の心臓を貫通することなく、からんと地面に落下する。 「キャラ違ぇだろ……!」 風雅がその身を以って少年を守ったのだ。 H K SFP9による射撃では防護服を貫けない。 特殊部隊に対する最強の防壁である。 ならばとH K SFP9からレミントンM700への持ち替えを思案し……。 すぐにその思案をゴミ箱に叩きつけ、転がるようにその場を飛び退いた。 ―――足音はもっと多かった。こいつらだけのはずがねえよな。 パシュン、パシュンという乾いた音と共に石畳を覆う砂利が跳ねる。 あのまま狙撃銃を構えていれば、発射の瞬間に銃弾が防護服に命中し、狙撃銃の銃口をずらされていた。 そして、虎の子の一発を無駄撃ちしていただろう。 射手は拳銃を構えた青髪の女。SPのごとく、堂にハマった姿勢で銃口を向けている。 ―――ブルーバード……! ハヤブサⅢのパートナーとして現地入りしているという不確定情報は耳に入れていた。 銃をメインウェポンとし、出どころ不明の怪情報ではあるが某国際諜報機関最強との異名を持つエージェント。 実のところ、三樹康はブルーバードの顔など知らないが、そういう前提で対峙すべき相手だ。 ―――こんな機密情報の塊をハヤブサIIIが対処してないとは思えないが、合流してなかったのかね? 三樹康が花子との戦いの最中にホテルを倒壊させたことで、彼女は解放された。 そんな事情を三樹康は知る由もない。 商店街が狙撃手の縄張りとなったことで、以降花子も近寄ろうにも近寄れなくなったという事情を汲み取る術もないだろう。 ―――で? まだ打ち止めじゃないよな。最低あと一人いるだろ。 風雅の左肩、防護服に開いていた穴を三樹康は見逃していない。 ブルーバードの銃では防護服は貫けない。 「おいおいマセガキ君よ、その歳でもう女侍らせて戦力貢がせてんのかい? いっぱいいるんなら、一人くらい俺にも紹介してくれよ」 「ざけんなよ、村人を皆殺しに来たお前らに話すことなんざ一つもねえよ。 それともなにか。こっちのゴリラ女が俺の恋人だっつったら、アンタはこいつを優先して狙ってくれるか?」 「そいつが恋人は無理がありすぎんだろ、お前の倍くらい生きてんだぜ? さすがに犯罪だわ。 ま、周りのゾンビ女たちはともかくだ、お前の名前くらいは教えてくれたっていいだろ?」 「おとといきやがれっつーの!」 いつでも銃を撃てる姿勢で、けれども軽薄に敵との対話を試みる。 一方で圭介は拒否以上のなにものでもない態度ながら、会話には乗る。 こいつがみかげを殺したんじゃないのか。 そのとおりだと答えられれば、絶対に頭に血を昇らせてしまうだろう。 そんな思考のぐらつきを見透かされないように、軽口に乗って虚勢を張る。 (どちらにしろ、無事に帰すつもりはないんだ) ならばと、この空白の時間を圭介は刺客を配するための時間稼ぎに。 そして三樹康はその刺客を敢えて誘うために。 三樹康の目には、アーケード通りの先や物陰に不審な人影は一切映らない。 風雅の後ろで視認しにくいが、圭介がほかの正常感染者と連絡を取っているような素振りも一切ない。 背後に回れるほどの時間は経っていないはずだ。 ―――なら、頭上だな。 圭介の視線が三樹康からわずかに逸れた。 三樹康が先ほどまで背にしていた商店の上階から、一つの影が手にした刀を突き立てるように急降下する。 同時に、ブルーバードからの援護射撃が三樹康を襲う。 防護服は貫かない射撃とはいえ、機動力を削ぐには十分すぎる威力の射撃である。 銃弾回避の姿勢から続けざま、全身をばねのようにしならせて、地面を一転、二転、三回転。 鉛玉はぱす、ぱす、ぱすと割れた石畳にさらなるヒビをいれる。 斬撃はヒュン、ヒュン、ヒュンと空をきる。 伏兵の存在に気付いていたからこそ、敵の攻撃と自身の回避のタイミングを合わせるだけでよかったが、なかなかヒヤリとさせてくれる。 お返しとばかりに銃口を襲撃者に向け、一引き。 だが敵もさるもの。バックステップをしながら、もう一振りの刀の棟で弾丸をガード。 片手持ちの刀で弾丸を弾くなど、腕を持っていかれそうなものだが、ゾンビと化してリミッターの外れた腕力ならば問題ないらしい。 ―――思ったよりも戦力が多いもんだ。 三樹康は薄ら笑いを表に出しながら、内心困惑する。 伏兵がいるとは確信していたが、それは剣士ではなく狙撃手。 風雅の防護服の穴は刀で斬り裂かれた跡ではない。 穴を開けたヤツがまだ別にいるのだ。 「手荒な歓迎ありがとよ。 お名前を教えてくれねえならお前のことはマセガキかホスト野郎って呼ぶしかないが……。 いや、しかしまた、早々たるメンツだねこりゃ」 村王と王妃。そんな二人を守る親衛隊のように、精鋭の女ゾンビたちがずらりと並ぶ。 SSOGナンバー2の暴力装置に、諜報組織自称最強の銃使い。 まさに夢のコラボレーション。 無名の女剣士も手練れな上に、少年の武器は破格の威力、謎の狙撃手のオマケ付き。 大田原でさえ正面突破は望み薄。 「そっちの二人が顔を合わせる機会なんざ、G7のサミットくらいじゃないか? あとironwood、任務の二重受託は隊規違反だぞ? ……まっ、ゾンビになりゃ聞こえてねえか」 「そこんとこは安心しなよ、コイツだけじゃなくて、アンタもこれからその一員になるんだからさ。 ってか、この青髪女のこと知ってんだな。やっぱ関係者だったのか」 「おいおいそいつは俺らとは関係ねえぜ。 コードネーム:ブルーバード。国連様の下部組織の、特殊工作員さ。 国際条約破ってるようなヤバい研究してる研究所に忍び込んで、 事故に見せかけて研究成果をぶっ壊したりするのがお仕事だ。 うちらと出会えば殺し合いが始まる仲だが、なんでこの村にいんのかねえ?」 三樹康の言葉に、圭介が遙をギッとにらみつける。 だが、それ以上は自制する。挑発だということくらいは分かる。 ―――ま、今のでキレて駒の頭をブチ抜くようなアホじゃあないか。 いきり立って駒を一つ切り捨ててくれるなら儲けもの。 その程度の安い挑発でしかなく、焚き付けでしかない。 別にブルーバードが本当にそんな仕事をしているのかも定かではないのだ。 「うちの隊員を要人警護に使うのはそれはそれはお高いぞ? ブルーバードまで警備につけるとなりゃ、8ケタは固いぜ? 戦力だけじゃなくて金もむしり取っておくかい? それとも、お前の保険金で代わりに支払っといてやろうか?」 「はっ、村をこれだけ荒らしてるんだ、10割補償くらい効くだろ」 「欲張りすぎだっつーの」 言葉をかわしながら、三樹康は風雅の後ろに身を姿を隠した圭介の出方を伺う。 未だ狙撃手が姿を現すことはない。さすがに剣士の不意打ちを凌いだ今で動くことはないか。 同僚も剣士も銃士も突出して飛び込んでくることはなく、にじり寄って距離を詰めてくる。 圭介がゾンビたちと共にじりじりとにじり寄る。 三樹康も相手の歩に合わせて、じりじりと後ずさる。 安易にユニットを動かせば、空けた穴から銃弾が撃ち込まれる。 安易に撃てば碧、遥、風雅からの三方袋叩き。 牽制合戦。 その打破に必要なのは、新たな変数の代入であろう。 それこそが確実にいるはずの狙撃手であり、その狙撃を成功させるために一斉に襲撃が始まる。そう三樹康は予測する。 一歩下がる。一歩進む。二歩進む。二歩下がる。三歩下がる。 圭介の注意が逸れた気配を三樹康は見逃さなかった。 横目でその方向に注意を向ければ……。 ―――なんだ、ゴミ箱と自販機じゃ……。自販機……!? その脅威度の高さに気付いた三樹康に対し、遥が威嚇射撃をおこない、牽制する。 防護服を貫かないことと、当たれば致命的な隙は免れないことは両立する事象だ。 牽制としては十分であろう。 それに乗じて風雅が手にしたものこそが自動販売機。言い換えるならば、500kgを超える巨大な鉄塊だ。 金属が擦り切れるような音を出しながら、風雅は自販機を抱えて持ち上げた。 「おいおい冗談だろ? ironwood、そんな装備で大丈夫か?」 「問題ねえよ! さあお前ら、あいつを捕らえろっ!」 「いやあ、自販機で殴られたら死ぬだろ!」 自販機を盾に、まさにブルドーザーのごとく風雅が迫りくる。 直撃すれば、防護服を身に着けていようがいまいが地面ごと均されてしまうだろう。 「っしゃぁねぇな!」 三樹康は手早くH K SFP9をホルダーに仕舞って、代わりにスプレーのような缶を取り出した。 ピンを抜き、放物線を描くように放り投げる。 その軌道は風雅を飛び越え、圭介に達するものだ。 「打ち落とせ!」 圭介はそれを爆弾と認識、主の警護を最優先に命令する。 命令を受けた風雅は自販機を持ち上げて高く飛び上がり、バレーボールのスパイクのように物体を地面に叩き落した。 自販機の中のジュースやコーヒーが内部でぶつかっているのか、金属の耳障りな異音が鳴り響く。 だが命令の遂行には問題ない。 缶は無事、地面に叩き落され、破裂し。 「なんだ、毒ガス!?」 ―――スモーク弾だよ。仕切り直しだ。 ■ 爆発に替わって噴き出されるのは、いかにも身体に悪そうな濃い紫煙だ。 SSOGにとってはなじみ深い訓練用カラーであり、猛毒を意味するわけではないのだが、一般に出回るものでもない。 知識がなければ飛び込むのは躊躇するカラーであろう。 美羽風雅という難攻不落の要塞に守られた指揮官を撃ち抜くという難題ミッション。 出し抜くアテはあるが、そのための時間が必要だ。 稼いだ数秒で素早く弾丸を補填し、紫煙の奥に目をやれば。 紫の中から現れる赤。 すさまじいスピードを伴った巨大な物体が三樹康目がけて飛び込んでくる。 「ぉぉぉおおおっっっ!!」 当たれば当然即死は免れないそれを、すんでのところで回避。 赤の正体は風雅の持っていた自販機だ。 サイボーグの腕力にモノを言わせ、投げ槍のように一直線に投げつけてきたのだ。 自販機は地面に衝突したかと思えば一回二回とひしゃげながらバウンドしてようやく止まり、 中でアルミ缶でも潰れたのか、あるいはビンでも割れたのか、盛大な音と共に色とりどりの液体が地面に広がっていった。 「ガキの癇癪じゃねえんだぞ!? 適当な方向に投げやがって!」 数年前、自力で歩けるようになった娘がそこらのものをポイポイ投げていたのは記憶に新しい。 眉をしかめはするがかわいいものだった。 キャッチしてやさしく投げ返してやると、キャッキャと喜んだものだ。 いい歳した女が鉄塊やら巨大モニュメントをポイポイと投げてくるのはとてもかわいいものではない。 キャッチなんてできないし持ち上げるだけでも血管が切れるほどの負担がかかるだろう。 空調の室外機。定食屋の電子看板。カーネル像よろしく、山尾リンバを象ったご当地店頭人形。 自動販売機よりは小さいものの、直撃はご法度な大型の物体がぞくぞく飛んでくる。 リンバ像を目と鼻の先でかわせば、先に投げていた自動販売機に衝突してダメ押しのようにどデカい音を立てた。 「ヲヲヲオオオ……」 「グオオオォォ……」 ―――ああ、狙いはそっちね……! ―――ゾンビを取りつかせて身動きを封じようってハラか! ガシャンガシャンとでかい音を立てれば、当然ゾンビが反応して集まってくる。 今や圭介のゾンビ軍団は烏合の衆ではない。 美羽風雅にブルーバードというエース級の精鋭が所属している。 ゾンビの集団ごときに遅れを取るSSOGではないが、雑兵にまとわりつかれながらエース級を相手にするのは不味いだろう。 ……ただし、準備と情報があれば対処は可能だ。 ジリリリリリリリリ!!! 集まりかけたゾンビは明後日の方向へ向かい去っていく。 三樹康は浅野雅のスマホに素早くアラームをセットし、はるか遠くへ全力投擲したのだ。 圭介から見て、ゾンビたちは遠距離かつ目視外で数も不明、そして三樹康の位置も煙の向こうとなれば、 異能の補助があってもゾンビたちを手足のように操ることはできない。 雑兵を足止めにする作戦は不発となった。 ただし、その僅か数秒だけは、三樹康の妨害を受けることはない。 煙を抜けた途端に銃撃を受ける心配はない。 人道さえ無視すれば、有毒性は判別可能だ。 圭介にとって、遥は村に仇なす不審者。 使いつぶすことに躊躇はない。 遥が紫のガスの真っただ中で深呼吸をおこない、それで生命反応は奪われていない。 炭鉱のカナリアのように、ゾンビを汚染のバーターとして利用する。 追跡は可能。 風雅を先頭に紫煙を抜けて、圭介は三樹康と再び相対した。 内心、確信する。 (俺の勝ちだ……!) 環境がそろった。 その根拠こそ、特殊部隊にも通用する、不可視の弾丸という切り札だ。 今、紫煙の向こうに六紋兵衛を待機させている。 湯川邸で取り逃がしたゴリマッチョの特殊部隊は、不可視の弾丸というギミックに気付いたがために、狙撃にしくじった。 そこで初見殺しを徹底するために、六紋兵衛だけは場に出さずにいたが、しかし配備する場所も銃撃のタイミングも決めかねていた。 相手側から煙幕という非常に都合のいい環境を作り上げてくれたのだ。 利用しない手はないだろう。 いかに特殊部隊といえども、情報がなければ回避は不可能。 それは、手駒にしたゴリラ女が物語っていることだ。 噴き出しそうになる汗を抑え、瞬きも忘れて虹彩を絞る。 これは村の王からの勅命だ。 侵略者どもよ、その身をすべて山折に捧げよ。 そのような勅命を乗せた弾丸が兵から侵略者へと放たれ。 「よう、そこにいたのかい……!」 「……バカな!」 成田三樹康は不可視を回避した。 銃声とともに煙がわずかにゆらぐ、それが銃弾の通り道。 風に覆い隠されようとも、そのゆらぎの跡は忘れない。 未だ先の見えない煙の向こうへ、三樹康は込められた銃弾すべてを惜しまずに撃ち込んだ。 どさりと鈍い音がした。 大きく、柔らかくて重いものが地面へと崩れ落ちた。 同時に、金属製の比較的軽い何かが地面に落ち、アーケード街の通りにからんからんと小気味いい音を響かせる。 未だ煙の向こうは不可視のエリア、だが圭介は必殺の切り札を失ったことを自覚する。 切り札とは成功させてしかるべきだ。 成功させることで、兵士は勢いに乗り、自軍の士気は最高潮に達する。 逆にしくじれば、士気は急落する。 奇襲を受けた兵たちが浮足立つかのように、ゾンビ兵たちは硬直してしまった。 実際にゾンビ兵が浮足立ったわけではない。 端的に言えば、圭介が次の手を打てていないのだ。 圭介自身が思考の狭間に陥ってしまったから。 思考を立て直すのに時間を要したから。 戦力上はいまだ圭介有利な盤面であるにも関わらず、とっさに次の手を打てない。 素人指揮官の弱点である。 「殺気を読めば、あれくらいかわすのはワケないんだぜ?」 ―――まっ、半分くらいはウソだけどな。 圭介にプレッシャーをプレゼントする。 あくまでプレッシャーであり、半分くらいはハッタリだ。 三樹康は残念ながら、死角から放たれた銃弾を殺気だけで捉える才覚を持ち合わせていない。 それができる人間がいないとは思わないが、そんなのは一握りの天才か人類の突然変異種のようなものであろう。 だが、SSOGは一つの部隊である。 命の分け目を属人的な個人技能に依存させるのはよろしくない。 命を扱う組織である以上、言葉にできない直感を言語化・収集し、才なき者にも扱えるように訓練に取り入れ、死亡率を減らす試みは当然おこなう。 殺気を読むとは、敵の仕草を洞察力を駆使して分析し、敵が仕掛けてくるタイミングを効果的に測る技術。 五感を超えた第六感として突如湧いてくるものではなく、シミュレーションと実践訓練の末に再現可能な技術だ。 逆手に取ってくる玄人は当然ながら存在する。 たとえばハヤブサIII。 三樹康の眼を自身に釘付けにする理由を用意し、これを囮に罠への誘導と野生児の奇襲を成功させた。 だが、山折圭介は経験豊富なエージェントではない。今日戦場に出た、ただの村人だ。 風雅という巨大戦力を自身の守りに使う時点で実戦慣れしていない。 素人が、特殊部隊のサイボーグという強力な戦力を得てしまえば、慢心が生まれないはずがない。 何より、美羽風雅が敗れているという時点で山折圭介の一挙一動を注視しない理由がない。 要するに、不可視の弾丸は、真の撃ち手である山折圭介を注視すれば気付ける。 山折圭介が自らの意志を以って弾丸を撃たせたとき、それは不可視ではなくなるレトリック。 ―――さて、尻込みするか、やぶれかぶれで向かってくるか……。 敵が浮足立ったその空白の時間を使い、マガジンに素早く全弾リロード。 ようやく圭介の中に危機感が首をもたげてきたか。 「全力で潰せ!」 自身もダネルMGLを構え、三樹康を手駒にする方針から全力で排除する方針に転換。 「おお、怖え怖え」 三樹康は踵を返して走り去る。 踵を返してとは言っても、ほぼ身体は圭介たちの方を向けたバック走のような走り方だ。 追うべきか追わざるべきか、圭介に判断の迷いが生じるが……。 獲物を諦めていない、ねっとりとした視線をマスクの向こうに見て、全身の毛が逆立つ。 「逃がすな、絶対に逃がすな!」 逡巡は5秒。 仮に見失えば、三樹康は圭介を必ず付け狙う。 暗闇の中で獲物を付け狙う蛇のような、不可視の暗殺者となる。 不可視の弾丸で狙う側が、狙われる側に落ちるのだ。 絶対に逃がしてはならない。 すでに三樹康は東出口を抜けている。 アーケード街を東に抜けた先は、狭い路地の入り組んだ古民家群。 路地裏に逃げられる前に、美羽風雅の膂力で葬るか、身動きを封じてダネルMGLの一撃で吹き飛ばすべきだ。 風雅に全速力で三樹康を追う勅命を下した。 風雅が速度をトップスピードへと引き上げるために大きく踏み込む。 自身の身を疾風と化し、人ではなく小型車のようなプレッシャーを以って距離を詰めるのだ。 その爆発的な脚力で地を蹴ったその瞬間。何かが壊れる音がした。 「……は?」 思わず声を漏らしてしまったのは仕方のないことだろう。 自分を守る鉄壁の盾。最強の特殊部隊ゾンビが小石にでもつまずいたかのように突如崩れ落ちたのだから。 村に仇なす者たちを元より使いつぶすつもりで乱雑に扱っていた。休ませるという発想がなかった。 ゾンビの肉体的な負担は異能で感じ取れても、機械の仕様は想定の領域外だ。 超人的な出力の反動として、定期的にメンテナンスと排熱をおこなわなければ、システムダウンするということなど知る由もなかった。 「こんな田舎村じゃ実感ないかもしれねえが、外じゃ働き方改革ってのが提唱されてんだよ。 ちゃんと休み取らせないと、肝心なところでガタが来るんだってよ。 自販機なんて装備して大丈夫かって言ってやったろ?」 前向きで後ろに逃げていたはずの三樹康は、いつの間にか片膝をつけて狙撃の構えへと移行していた。 行動が速い、まるでこうなることが分かっていたかのように。 ほかのゾンビに命令を出すより、ダネルMGLの引き金を引くより、三樹康の指が引かれるほうが早い。 温存していた一発だが、その使い時はあやまたない。 流れるような一連の所作に一切のムダはなく、圭介のアクションは間に合わず。 轟音と共に射出され、高速回転しながら空気を引き裂き突き進む弾丸は、 美羽風雅のコアをたやすく貫通し、その中心に二度と塞がらぬ穴を開けた。 サイボーグの巨体がどさりと崩れ落ちる。 「いやあ、こんなレアモノ、撃ち抜ける機会なんざはないぜ。スコア5000点クラスだな」 愉悦に満ちた声だった。喜色しかなかった。 「悪いが、自己防衛の範疇、ってことで許してくれよ? ま、もう聞こえてねえわな。あ~、幹部候補殿には……あとで謝っときゃいいか」 仮にも部隊の仲間のはず。 なのにそこに一切の惜別の言葉がない。 圭介を守る盾が一つ失われた。 それだけでも激震が走るが、厄はそこで終わらない。 隣にいた光までぐらりと膝をついた。 サイボーグを防護服ごと貫通した弾丸は、安全地帯であったはずの真後ろにまで到達する。 勢いを落としながらも空間を穿ち、その先にいた光の肩を突き破っていた。 「な……何だよこれ……」 「なんだよって、ニチアサ見ないのかい? 群れて出てきた再生怪人が弱体化してるのはお約束だろが」 三樹康は難易度の高い二枚ぶち抜きを成功させてご満悦だ。 そういうことじゃない、という反論の言葉は出ず。 一瞬で起こされた惨状を前にただ呆然と呟く圭介。 「ああ悪い、隣のコのほうことを言ってんのな。 まあ俺らは公務員だ。賠償は生き残ってから国に請求してくれよ。 嬢一人分呼んだくらいのカネなら余裕でむしり取れるだろ。 次はもっとかわいい子を呼べばいいって」 「……あ?」 「ああ、悪い悪い、ちょっと声色が浮かれてたわ。でも仕方ないだろ? 弾一発で的一つに当てるより、的二つに当てられるほうが気持ちいいんだから、そこは勘弁してくれよ」 圭介の思考が沸騰した。 「うおおおおおおっっッッ!」 手にしたダネルMGLの引き金を引く。 グレネード弾が発射され、着弾点に破壊をまき散らすが……。 「怪我した素人が、ロクに狙いも付けずに撃ったもんがそうそう当たるもんかよ」 三樹康よりもはるか手前に榴弾は着弾。それも方向自体がずれている。 ただ土煙がもうもうと上がっただけだ。 ―――にしても、青いねえ。 この局地戦において、風雅の真後ろという一番安全な場所を割り当てた時点で、圭介との関係性などとうに推測している。 連鎖や二重命中のほうが実際に気持ちいいのはそうだが、普通はわざわざ言ったりはしない。 圭介の腰が引けて、逃げ一辺倒になられると面倒なのだ。 それに戦力面で言えばまだ圭介のほうが上だという事情もある。 チンピラや反社そのもののような安い挑発だった自覚はあるが、圭介が乗ってくる勝算もそれなりにあった。 三樹康とて、妻の香菜や娘の三香を淫売呼ばわりされた挙句、ゲーム感覚で撃ちましたと言われればキレる。 ここでキレなければ彼氏の資格はないだろう。 鉄壁の盾を失って、感情のままにその身をさらけ出した、隙だらけのターゲット。 弾の切れた狙撃銃からはとっくに持ち替え済みだ。 「後でちゃんとナイフをプレゼントしといてやるから、安心して逝っとけ」 「――――!!」 続けざまに発射された弾丸は圭介の額に吸い込まれるように突き進み。 引き金を引くミリ秒前に横合いから突き出された刀によって打ち払われた。 圭介への追撃は、遥の手にある銃口の向きを目視し、取りやめた。 「~~~♪」 三樹康がそのファインプレーに口笛を吹く。 銃弾弾きは厄介だが、それだけで浮足立つこともない。 なにせ、日本で最も銃弾を斬り捨てられたことがあるのは成田三樹康その人である。 普段の訓練相手は大田原源一郎やオオサキ=ヴァン=ユンといった上澄みも上澄み。 何百発の訓練用ゴム弾を斬り捨てられたことか。 銃弾弾きの極意は人間離れした動体視力でも銃弾よりも速く動ける超人的な身体能力でもない。 銃口の向きから照準を割り出せる演算力と、引き金を引く瞬間を見極める洞察力である。 一瞬のうちにおこなわれるバントがその正体であり、プロテニスプレイヤーやメジャーリーガーならば再現可能な技術だ。 なお、薩摩クラスのエイムであれば、大田原クラスの達人であっても照準を割り出すのは困難であるため、素人相手に披露するのは非常に危険な技術でもある。 一定レベルの射手だからこそ通用する技だ。 原理が分かっているなら過度に恐れる必要はない。 「助かった、碧!」 「ところでお前、実は正常感染者だってことはないよな?」 三樹康がそう疑うのも無理はない。 碧の動きのすべてが圭介の指示とは思えないほどに、動きに柔軟性がある。 生前という言い方は正確には誤りだが、圭介の異能がこなれればこなれるほど、そして元の関係が深ければ深いほど。 その動きは生前の動きに近くなるのか、あるいは圭介の感情をうまく解釈して動いてくれるのか、動きがよくなる傾向がある。 だが三樹康の言葉には圭介は耳を貸さない、答える必要もない。 圭介は、碧は、即座に追撃の構えに移行する。 ナイフで日本刀とやり合う覚悟は三樹康にはない。 やれと言われればやるが、この装備で自ら日本刀相手にインファイトをおこなうのは、村に送り込まれたメンバーの中では大田原くらいだろう。 日本刀の先っぽでも防護服にかすればそれでアウトな以上、達人クラス相手に超接近戦は避けたい。 「畳みかけろっ!」 圭介の指示のもと、浅葱碧が二刀を構えて三樹康に迫る。 遥は光の前で人間の盾となりながら、遠距離から三樹康を狙う。 正面からの銃弾は打ち払い、刀をかわそうと左右にブレればそこを銃撃が狙い撃つ布陣である。 個の強さでは美羽風雅が頭一つ抜けているが、技ならば碧が随一だ。 同じ道場に通い、同じ流派を学び、そしてその剣術を何度も見せてもらったこともある。 圭介は碧ができることを知っている。 三樹康に俊足で迫るその走法は、縮地法と呼ばれるものだ。 ゾンビと化したことでそのリミッターは外れ、ロードバイク並みの速度を維持することが可能となる。 並みの狙撃手ならばその速さに対応しきれず、鎧袖一触。瞬く間に首を飛ばされているだろう。 だが、三樹康は並みではない。超一流の狙撃手だ。 銃撃一発。 ただそれだけで、ギィィィンと鼓膜を鋭く刺すような響音があたりを震わせ、碧の速度がMAXからゼロへとリセットされる。 縮地術は前傾姿勢からの踏み込み技術。 初速をMAXにして、敵が己を認識する前に距離を詰める技術だ。 だが、宙を浮いて移動しているわけではない。頭や心臓は身体のブレで上下左右にそらすことはできても、軸足だけは即座には動かせない。 そこを狙い撃てば踏み込みは崩れる。 弾かれようが避けられようが、速度を殺すことは難しくない。 「くそ、まだだ!」 敵が銃持ちならば、対抗の技術が八柳流にはある。 激突するかのような勢いで古民家群のブロック塀に向かって突き進んだ碧は、 その脚力でブロック塀を蹴り付け、宙へと踊り出る。 「おいおい、俺は一発芸大会の会場にでも迷い込んじまったのかよ?」 地面の隆起や地割れをものともせず、ブロック壁を蹴るたびに速度を上げていく碧。 走者本人が二次元から三次元へと変幻自在の軌道を取ることで、被弾を限りなくゼロに近づける狙撃手殺しの技。 「ハハッ、生きがいいねえ。こりゃあ狩りがいがあるってもんだ」 明確な脅威を前に三樹康は嗤う。 それは銃という武器への絶対の信頼だ。 人間が銃弾より早く動くなど、生命の造りとして不可能だ。 ゾンビと化して肉体のリミッターが外れたところで、決して覆らない、絶対の真理である。 「二発だな」 八柳流が誇る銃兵への特攻奥義。 それを撃ち破るのに必要な弾丸の数を三樹康は試算し、宣言し。 そして二発の銃声が響いた直後、碧は競技に失敗したかのようにぼとりと地面に落ちていた。 二発目の銃弾を弾いた刀の一本がすっぽ抜け、おかしな姿勢で落ちたせいで腕の一本が曲がっている。 銃兵に対策するために編み出された技を、三樹康は宣言通り二発で容易く撃ち破った。 圭介の全身からぶわっと汗が噴き出した。 本体を直接狙おうとすればするほど、変幻自在に飛び回る術者に翻弄される。それが猿八艘の意図する絡繰りだ。 だが、人間は空中で方向を変えられるようにできてはいない。 そしてこの手の曲技は精密無比なバランスの上に成り立つものだ。 次に踏み込む位置は分かっているのだから、本体の派手な動きは一切無視して、着地に合わせて銃弾をぶち込めばいい。 足を撃ち抜かれるか姿勢を崩すかの二択を強制的に突き付ける。 それだけで、中空の舞いは打ち止めとなる。 さらなるスピードと勘を備えて縦横無尽に飛び回るクマカイには及ばない。 実際に戦場を渡り歩き、さらに洗練された動きで迫りくるオオサキにも及ばない。 木更津組をはじめとした村の歪みたちには効果覿面であれども、絡繰りが割れれば対処可能な初見殺し。故に一発芸。 碧の手からすっぽ抜けた日本刀は、たまたま民家の庭でゾンビとなって白目を剥いていたアナグマに突き刺さり、血飛沫を散らしている。 そして碧自身は着地に失敗し、最初に地面に接した右腕からは乾いた音が鳴り響く。 「あーあ、かわいそうに。無垢な動物を巻き込んじまった」 心の奥底で二連鎖成功の華やかなチェイン音を鳴り響かせながら、心にもない哀れみを述べる。 まだ碧と三樹康の間に距離はある。健常であっても詰められる距離ではない。 遥の援護もいつの間にか飛んでこなくなっている。 なぜと関心を移せば、カチカチとむなしく空の銃のトリガを引いていた。 銃撃回数を三樹康は数えていたが、圭介は数えていなかった。 自分が手にしていない銃の残り弾数だ。 指揮の初心者がそこまで気をまわせるはずもない。 目の前の対処に手いっぱいで、兵衛が銃撃されてからは、頭の中からすっぽ抜けた。肝心な場面で弾倉が尽きていた。 どれだけ強力な軍団を編成しても、この軍団は個人の思惑を超えることはない。 自分の思う通りに動かせる部隊というのは、すべて圭介が責任を負い、勝敗は圭介に帰結する部隊である。 それを指摘してくれる同行者も、指南してくれる経験者も、導いてくれる大人も、圭介にはいない。 あるいは碧を巻き込むことを厭わずにダネルMGLの狙いを付けていれば、消耗はもう少し少なかったかもしれない。 もっと根本的な戦略ミスを詰めるならば、銃火器に熟達している遥にダネルMGLを持たせて撃たせていれば、碧ごと三樹康を巻き込む目もあっただろう。 一騎当千の強力な駒を手に入れたことによる慢心。 知己を巻き込む覚悟の欠如。 顔なじみを使いつぶすことへの恐怖。 遥への不信感。 遥に知己を巻き込ませる指示を出すことへの生理的な嫌悪。 すべてを総合した結果の圭介の判断ミスであり、 そして身内への情の厚さを見抜いて小さな判断ミスを誘発させ続けた三樹康の着眼。 視線が黒い銃口に吸い込まれる。 捕食者の眼が圭介を射抜く。 (くそ、こんなところで死ぬのか?) 俎上の鯉。袋の鼠。 感覚が鈍い。時が止まったように動けない。 (まだ、何も為してないのに。光を取り戻してないのに……!) マスクの向こうに愉悦に満ちた目が映る。 何もしなければ、このまま額と心臓を撃ち抜かれて死ぬだろう。 (ダメだ、死ねない、死にたくない……! このまま死んだら、俺はなんのために……!) 脳に負荷をかけ、ウイルスの影響を強めることで異能はより強くなる。 死の危険、強い感情、著しい興奮、事態の理解。 正負いずれがきっかけであれども、ウイルスが活性化すれば異能は徐々に開花する。 範囲、精度、そして再現度。 圭介の異能はゾンビを操り従える能力だ。 ゾンビの数が減るほど精度は高くなり、一体に限れば人間の真似事をさせることすら可能になる。 村王の命令は絶対だ。 誰だろうと、その命令には逆らえない。 村王は死にたくないと仰せだ。 すべての村民はその命令に従って、村王を守らなければならない。 ◆ 「ぁん?」 幾度となく聞いた、火花散る音が響き渡る。 その結末を目にして、三樹康がわずかに声を漏らした。 「……ったく、往生際が悪いもんだ。 素直に死んどいたほうが楽だったんじゃないのかねえ? ま、俺に言わせりゃ愛しの彼女を戦場に連れ回してる時点で手遅れだけどな」 事故、人質、誤射、機動力の低下、危険人物との遭遇の増加。 その他もろもろのリスクを増加させてまで恋人のゾンビを同行させるのは、それを上回るリターンがあるからにほかならない。 安心感か、不安の払拭か、使命感か、それは分からないが。 決して、彼女の安全安心を主眼に置いた行動ではない。 仮に香菜や三香がゾンビになり、自身が圭介と同じ異能を得たとして、三樹康は絶対に妻子と連れ立って歩くことはない。 三樹康は指輪こそはめているが、入籍はおこなっていない。 戸籍上は妻とも娘とも他人である。 SSOGである三樹康の存在そのものが、愛する妻子の最大のリスクだからだ。 SSOGの敵は、SSOGの名を聞いて手出しを控えるような生ぬるい相手ではない。 圭介の場合も同じ。 圭介の存在そのものが彼女らの最大のリスクであった。 あるいは彼女に母親のような役割でも求めていたのか。 いずれにせよ、何もかも、もう手遅れだ。 結論として、山折圭介には銃弾が当たらなかった。 そして山折圭介はブルーバードに抱えられたまま、無様に逃げ出したのだ。 エージェントとしての肉体に疲労を感じないゾンビの体質であれば、若者一人抱えて走り去ることは可能である。 死屍累々の現場を後に、曲がり角の先へと圭介とブルーバードは消えていった。 追うことは難しくないだろう。 たとえゾンビとなって感覚を失っても、人ひとり抱えて走るのと数キロの武器を抱えて走るのとでは身体にかかる負担が違う。 「まわりのやつに合流されたら面倒だが……しゃあねえなあ。 と、その前に」 「う、う、うぁぁああ……」 「アンタ本当にゾンビだったのかい。 悪いが、今は時間が惜しくてな。ナイフよりはこっちのが早いんで」 風雅の銃も回収できる。どうせたいして使っていないだろう。 運命の果てを嘆き悲しむような声に一切の憐憫を抱かず。 この場で唯一息のあった赤髪の少女に銃口を向けて。 ◆ 「えっ……」 二つの衝撃が圭介の身を伝っていった。 自分の身が押し出されたような衝撃に、地面に激突する衝撃の二つ。 圭介の急所を銃弾が貫通することはなかった。 圭介が命を散らすことはなかった。 死にたくないという本能に基づく強い感情と、より精密さを増した異能が合わさって。 王の命令のとおりに、ゾンビが身を呈して圭介の身を守った。 生気のない目。光のない目。 けれども此度の行動だけは本来の日野光と一切の相違はない。 村の仲間たちを守ろうとする親分が圭介である。 そして光は、彼が弱音を吐いた時、彼を優しく守るのだ。 ガキ大将、親分、村長。 一介の勢力の頂点に立つ孤独を理解し、支えきり、身を呈して守るのが彼女の誓い。 ゾンビであっても、人間であっても、そこは変わらなかった。 それゆえの結果。 頭と胸。 上月みかげとまったく同じ場所に、山折村の王妃は2輪の赤い花を咲かせた。 圭介の手を光が取ることは、もう、ない。 その目に光が戻ることも、もう、ない。 日野光の命が断たれたことで、半ば無意識に出した命令は最も近くにいるゾンビ、遥が引き継いだ。 圭介は目の前の光景を信じられず、一度出した命令が撤回されることもなく。 みかげのように別れの言葉を告げることすら許されず、力無く倒れ伏した光の身体はどんどんと遠く小さくなっていく。 ◆ 人形のようにぱくぱくと口を開閉し、何も考えられない。 何も起こらなければ、遥に抱えられたまま、何も考えられないままに遠ざかっていたのだろうが。 幸か不幸か、そこにさらなる契機が訪れる。 それは断末魔。 三人目の顔なじみの死を意味する死神の足音。 浅葱碧の頭に黒い鉛弾が撃ち込まれ、三つ目の花が咲きほこった音である。 圭介の思考は、真っ黒に塗りつぶされた。 【美羽 風雅 死亡】 ※E-5 六紋兵衛の近くにライフル銃(残弾1/5)が転がっています。 ※E-6 浅葱碧の近くに打刀×2、木刀が転がっています。 【E-5・F-6境界部付近/古民家群/一日目・日中】 【成田 三樹康】 [状態]:軽い脳震盪、背中にダメージ [道具]:防護服、拳銃2丁(H K SFP9)、サバイバルナイフ2丁、双眼鏡、レミントンM700 [方針] 基本.女王感染者の抹殺。その過程で“狩り”を楽しむ。 1.山折圭介とブルーバードを追って殺害する。 2.「酸を使う感染者(哀野雪菜)」を警戒。 3.ハヤブサⅢを排除したい。 4.「氷使いの感染者(氷月海衣)」に興味。 5.都合がつけば乃木平天の集敵策に乗る 6.小田巻真理が指定の場所に現れれば狩る [備考] ※乃木平天と情報の交換を行いました。手話による言葉にしていない会話があるかもしれません。 ※ハヤブサⅢの異能を視覚強化とほぼ断定しています。 【E-5~F-6のいずれか/古民家群西部付近 or 商店街東口付近/一日目・日中】 ※どの方向に逃げたのかは後続の書き手様にお任せします 【山折 圭介】 [状態]:鼻骨骨折(処置済み)、右手の甲骨折(処置済み)、全身にダメージ(中)、放心 [道具]:懐中電灯、ダネルMGL(3/6)+予備弾5発、サバイバルナイフ、上月みかげのお守り [方針] 基本.VHを解決して……? 1.??? 2.??? 3.??? [備考] ※異能によって操った青葉遥(ゾンビ)を引き連れています。 ※青葉遥(ゾンビ)は銃火器などを所持しています。銃の種類及び他の所有物については後続の書き手様にお任せします。 ※学校には日野珠と湯川諒吾のゾンビがいると思い込んでいます。 103.研究所へ 投下順で読む 105.いのり、めぐる 時系列順で読む 昼月堕ち、羽朽ちる碧い鳥 山折 圭介 炎 対感染者殲滅構想「OPERATION TD」 成田 三樹康
https://w.atwiki.jp/onjtrpg/pages/552.html
シノビガミ「青春祭」連絡スレ (open2ch.net) [メイン] GM ではシノビガミセッション『青春祭』始めていきます! よろしくお願いします~ [メイン] 小狐丸 沙耶 よろしくお願いします! [メイン] 朝霧アサギ よろしくお願いしまーす [メイン] 伏見 圭介 よろしくお願いします [メイン] 森井 丈 よろしくお願いします [メイン] GM ここは私立盾節学園、なんやかんやあってシノビと一般生徒がどちらも在籍している学園である。 今日は文化祭『青春祭』の当日! [メイン] GM 表向きの開会式が終わった後、捌けていく一般生徒達をよそにシノビの学園生達は彼らだけが知っている秘密の体育館へと赴くのであった…… [メイン] GM 『青春祭』クライマックスにしてメインイベントである『青春闘争』そのメンバーの紹介が今、始まろうとしている…… [メイン] 司会の人 『えー……レディース&ジェントルメーン! お待たせしました!今から、今年の青春闘争の参加メンバーを紹介するぞー!』 [メイン] ドンクライ(泣くのはおよし)・ゴリラ 「うおおおー!」 [メイン] 女子生徒 「青春だー!」 [メイン] GM そんな感じでpc1から順番に紹介していきますンゴね [メイン] 司会の人 「選出理由はえー……くじ引きで当たりを引いたから! 今年のミラクル枠です! 森井 丈!」 [メイン] GM [メイン] 司会の人 「意気込みはどうですか!」 [メイン] 森井 丈 「経緯はともかく参加することになったからね、もちろん優勝を目指しますよ」 [メイン] 司会の人 「おおー凜々しいぞ! 頑張れミラクルアタック!」 [メイン] 司会の人 「続きまして、選出理由は『盾節学園人気ランキング』で同率1位! 青春闘争勝利で名実ともにナンバーワンになるか! 朝霧アサギ!」 [メイン] 朝霧アサギ 「アタシが!主人公の!アサギよ!」 [メイン] 朝霧アサギ 「よくわかんないけどアタシが主人公なんだからアタシが勝つのよ!みんな、応援よろしく~~~~~~」 [メイン] 司会の人 「うおお! これは主人公パワーをひしひしと感じますね! つかみ取れ主役の座!」 [メイン] 司会の人 「選出理由は『青春闘争で戦ってほしい生徒ランキング』で同率1位! 生徒達の期待に応えられるか伏見 圭介!」 [メイン] 伏見 圭介 「皆からの高い評価、実に嬉しく思う! その期待に応えるべく、あの武田頼奈を打ち倒す事をここに誓う!」 [メイン] 伏見 圭介 「この僕の類稀な用兵術によってね!」 [メイン] 七瀬 薫 (・・・用兵術取ってませんけどね) [メイン] 司会の人 「これは二人の友情……?パワーが楽しみですね! 友情、努力、勝利! これ鉄則!」 [メイン] 司会の人 「選出理由は前回の学内テストでのダントツ1位! 盾節の天才は戦闘も思うがままに操るのか小狐丸 紗耶!」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「お疲れ様です。生徒会役員の小狐丸です。まずは選出いただき感謝します」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「やるからには小狐丸の名に恥じない様、徹底的に、『向こう30年は小狐丸家に手は出せないな』と思わせる様な勝ち方をしたいと思います。どうぞよろしくお願いします」 [メイン] 司会の人 「……丁寧な口調だけどなんか大分怖いぞー!」 [メイン] 司会の人 「続きまして……選出理由は『盾節学園人気ランキング』での同率1位! 朝霧アサギとはバチバチのライバルになるのか?! 学園に咲いた一輪の花『盾節の向日葵』 氷川なずな!」 [メイン] GM 彼女の名前が呼ばれた瞬間、一部の男子生徒がワッと湧き声援を送ります。 [メイン] 男子生徒 「うおおお!」 [メイン] 校長先生 「なずなちゃーん!」 [メイン] 氷川 なずな 「ライバルだなんてそんなそんな……で、でも応援してくださるみなさんのためになずな、頑張ります!」 [メイン] 司会の人 「これは同性に嫌われそうだー!」 [メイン] 司会の人 「そしてラスト! 盾節の狂犬、一匹狼、そんなあだ名で収まらなかった彼はこの青春闘争でどんな姿を見せるのか『戦闘狂』武田頼奈!」 [メイン] GM 名前が呼ばれると、一人の男子生徒が体育館の扉をぶち破り入場してきます。 [メイン] 武田 頼奈 「フハハ! 待ちくたびれたぞ! 俺を楽しませてくれる強者はどこだ!」 [メイン] 武田 頼奈 頼奈はpc達やなずなをぐるっと見回します [メイン] 司会の人 「……あのー、武田さん。今日はメンバー紹介だけで本番は2日後の閉会式の時なんだけど」 [メイン] 武田 頼奈 「……なんだ。まだ今日は闘いの当日ではないのか。つまらん。当日になったら呼んでくれ」 [メイン] 朝霧アサギ 「アタシからも言わせて貰うわよ!悪いけど武田とかいう奴はアタシの眼中にないわ!」 [メイン] 朝霧アサギ 「なずな!人気は同率だったようだけど、今回勝つのはアタシよ!同じ舞台に立ったからには必ず決着付けてあげるわ!」 [メイン] 氷川 なずな 「う……な、なずななんかがアサギさんと同率なんて本当に恐れ多いのですが」 「それでも、せっかく選んでいただいたのですから胸を借りるつもりで……が、頑張ります!」 [メイン] 氷川 なずな 「……正々堂々戦いましょう!」 [メイン] 朝霧アサギ 「言うじゃない。それでこそ勝つ甲斐があるというものよ。その時を楽しみにしておくわ」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「武田さん、生徒会を代表して申し上げますが、扉壊すのやめてください」 [メイン] 武田 頼奈 「ん? ……知らんな。叩いただけで壊れる脆い扉が悪い」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「いえ、どうみても蹴破ってました。残念ですがこのままでは請求書が武田さん宛に届く事になってしまいますね…」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「そこでどうでしょう、伏見さんと戦って順位が上ならチャラにするというのは、お二人の戦いで青春祭が盛り上がれば我々にとってもメリットになりますから」 [メイン] 伏見 圭介 「僕がダシにされるのは気に食わないが、まあいいだろう。勝つのはこの僕だとさっき宣言したからね」 [メイン] 伏見 圭介 「首を洗って二日後を待つがいい、武田頼奈!」 [メイン] 武田 頼奈 「フハハ! 面白いことを言うな。そもそも誰に何を言われるまでもなく俺は全てを叩きのめし勝つつもりだ! そこにお前の意思を入れる隙間はない」 [メイン] 武田 頼奈 「金ならこの前の依頼でもらったものをくれてやるぞ! 肉以外はいらんからな!」 [メイン] 武田 頼奈 「……伏見か。お前のことは知っているぞ! 大層強いそうじゃないか! フハハハハ! いいぞいいぞ! たぎってくる。……『闘争』実に楽しみだ! あのメガネの言葉など関係なく、貴様を叩き潰してやろう!」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「あのメガネじゃないです、戦う相手の名前くらい覚えてください、小狐丸沙耶です」 [メイン] 武田 頼奈 「小狐丸……か。今は覚えたが俺は弱者に興味はない。俺が忘れないようお前の闘志を二日後には見せてくれよ! フハハ!」 [メイン] 武田 頼奈 笑ってます [メイン] 小狐丸 沙耶 「キレそう…、ボコボコにしてやってくださいよ伏見さん」 [メイン] 伏見 圭介 「任せておきたまえ!二度と高笑いができないくらいコテンパンにしてやるさ、ハハハ!」 [メイン] 七瀬 薫 (これ武田からのヘイト向けられてない? 大丈夫だろうか…) [メイン] 司会の人 「……さて、なんか既に色々あったけど改めて今回の『青春闘争』のルールを説明するぞー! 」 [メイン] GM ここでハンドアウト『青春闘争』を公開します [メイン] GM ハンドアウト『青春闘争』 青春は争いだ! 青春祭最終日(クライマックスフェイズ)にシノビを集めて秘密裏に行われる、学園内から選ばれた6人のシノビによる模擬戦の名称。 人気や実力、運によって選ばれた生徒が繰り広げる激闘は学園内外からの人気も高く様々な流派のシノビも見に来ているとか来ていないとか このハンドアウトには3つの情報がある。 ①このハンドアウトの【秘密】には感情による情報共有が発生しない(受け渡しは可能) ②このハンドアウトの【秘密】はクライマックス戦闘開始前に公開情報になる ③このハンドアウトの秘密に対して1サイクル目の最後に『氷川 なずな』が、2サイクル目の最後に『武田 頼奈』が情報判定を行う。 [メイン] GM 以上です! [メイン] 司会の人 「そしてこの『青春闘争』に勝利した輝かしい生徒には優勝の栄光と共に商品が授与されるぞー!」 [メイン] GM 続いてプライズ『盾節おめでとうメダル』の情報を公開します [メイン] 盾節おめでとうメダル 青春闘争の勝者に贈られる校長先生手作りのメダル。クライマックスフェイズの勝者は戦果としてこれを選択することが出来る。(受け渡し不可) 青春の果てに掴んだものには価値があるため、これを手にしたキャラクターは3点分の功績点を得る。 このプライズに秘密はない [メイン] 校長先生 「みんな頑張ってね」 [メイン] 司会の人 「ではみなさん、良い文化祭を! 良い青春を!」 [メイン] GM そんな感じで導入を終わりますンゴ メインフェイズで調べられる対象はpc4人の他に 氷川なずな (気まぐれ・感情の欠落(殺意)持ち) 秘密 ○ 感情 ○ 居所 ○ 武田頼奈 (気まぐれ・感情の欠落(共感)持ち) 秘密 ○ 感情 ○ 居所 ○ 青春闘争 秘密 ○ 感情 × 居所 × があります [メイン] 氷川 なずな ハンドアウト『氷川なずな』 青春祭のメインイベント『青春闘争』に参加するメンバーの一人で、学園内では『楯節の向日葵』と呼ばれている高校一年生の女子。(ハグレモノのシノビ) 可愛らしい外見と柔和な笑顔で人気が高く、学園人気ランキングで同率1位を獲得したため『青春闘争』に参加することになった。 あなたの使命は『青春祭を楽しむこと』だ。 [メイン] 武田 頼奈 ハンドアウト『武田頼奈』 青春祭のメインイベント『青春闘争』に参加するメンバーの一人で、学園内では『盾節の戦闘狂』と呼ばれている高校二年生の男子。(隠忍の血統のシノビ) 激情的な性格と他の何よりも戦闘を望み戦い続ける姿から、青春闘争で戦ってほしい生徒ランキングで同率1位を獲得したため『青春闘争』に参加することになった。 あなたの使命は『青春祭を楽しむこと』だ。 [メイン] GM 以上です!サイクル数は2! 不明点とかありますでしょうか? [メイン] 森井 丈 ないです [メイン] 伏見 圭介 ないです [メイン] 朝霧アサギ 大丈夫です [メイン] 小狐丸 沙耶 ないです [メイン] GM では早速メインフェイズを始めていきます! 順番の希望のある方は言って頂いて、なければ1d100をオネシャス!(小さい数字から順番にします) [メイン] 小狐丸 沙耶 [メイン] 森井 丈 1d100 (1D100) > 33 [メイン] 小狐丸 沙耶 1d100 (1D100) > 87 [メイン] 伏見 圭介 1d100 (1D100) > 33 [メイン] 朝霧アサギ 感情結びに行きたいから先に行きたいなー [メイン] GM では最初がアサギネキで最後が小狐丸ネキなのは確定で……残りの二人は同数なのでもう一度1d100をオネシャス! [メイン] 伏見 圭介 1d100 (1D100) > 32 [メイン] 森井 丈 1d100 (1D100) > 27 [メイン] GM アサギ→森井→伏見→小狐丸でいきます! [メイン] GM では最初はアサギネキから! シーン表は学校シーン表をちょっとだけ変えた文化祭シーン表があるので2d6をオネシャス! [メイン] 朝霧アサギ シーン表の前に誰を登場させたいか、かな? [メイン] GM あ、そうですンゴね。最初に何をしたいかと誰を出すかですです。 申し訳ない [メイン] 朝霧アサギ さて、じゃあさっき言った通り感情結びに行きたいんだが 伏見クンどうだい? [メイン] 伏見 圭介 出ます出ます [メイン] 朝霧アサギ じゃあ二人で [メイン] 朝霧アサギ 2d6 (2D6) > 11[5,6] > 11 [メイン] GM 11:特別教室。生徒が自主制作したらしい謎の映像が流れている。 [メイン] ドンクライ(泣くのはおよし)・ゴリラ 「やっぱり2番に強打者を置くのはなんというか……侘び寂びがないですよね。時代は川相を求めています」 [メイン] 朝霧アサギ 出たなゴリラ [メイン] ドンクライ(泣くのはおよし)・ゴリラ 映像で二番打者の重要性について語っています [メイン] 朝霧アサギ この場に伏見を呼び出したことにしていいですか [メイン] 朝霧アサギ この部屋の隅の方を使って秘密の会話をするということで [メイン] 伏見 圭介 ええよ [メイン] 朝霧アサギ 伏見が着いたところからで [メイン] 朝霧アサギ 「来たわね。伏見…でよかったわよね」 [メイン] 伏見 圭介 「改めて自己紹介しておこう、伏見圭介だ。 さて、なんの用かな?」 [メイン] 朝霧アサギ 「じゃあ一応アタシも、朝霧アサギよ」 [メイン] 朝霧アサギ 「選手紹介の時に見てたけど、アンタ、あの武田とやらとやりあう予定よね?」 [メイン] 伏見 圭介 「無論だ!あいつを倒して盾節NO.1の実績を得たいからね。」 [メイン] 朝霧アサギ 「そうよね。そして、アタシもなずなっていう倒したい相手がいる。最後まで…は無理かもしれないけど、しばらくの間、アタシたちは協力出来るんじゃないかしら?」 [メイン] 伏見 圭介 「そういえば開会式後に小競り合いをしていたね。いいだろう、こちらとしても悪い話ではない」 [メイン] 伏見 圭介 「お互いのライバルを倒すまで、共闘と行こうじゃないか」 [メイン] 朝霧アサギ 「話が分かるじゃない。そっちが協力してくれるならアタシも協力を惜しまないわ。アタシにはこの人気で培った広い人脈がある。この人脈をアンタが使えるようにすればアンタにも損はないはずよ」 [メイン] 朝霧アサギ 人脈で判定したいです [メイン] GM どうぞ~! [メイン] 朝霧アサギ SG =5 (SG@12#2 =5) > 4[1,3] > 4 > 失敗 [メイン] 朝霧アサギ 嘘やん [メイン] 伏見 圭介 草 [メイン] GM なんてことだ……なんてことだ…… [メイン] 森井 丈 人脈無かったか [メイン] 朝霧アサギ 神通丸………………………………………使い………… [メイン] 朝霧アサギ ます! [メイン] GM うおおおお!振り直しどうぞ! [メイン] system [ 朝霧アサギ ] 忍具 2 → 1 [メイン] 朝霧アサギ うおおおおおおおおお [メイン] 朝霧アサギ SG =5 (SG@12#2 =5) > 11[5,6] > 11 > 成功 [メイン] GM やったぜ [メイン] 朝霧アサギ 成し遂げたぜ [メイン] 朝霧アサギ 人脈があることが証明された [メイン] GM 流石ランキング1位 [メイン] GM それではお二人ともetをオネシャス! [メイン] 伏見 圭介 ET 感情表(3) > 愛情(プラス)/妬み(マイナス) [メイン] 朝霧アサギ ET 感情表(4) > 忠誠(プラス)/侮蔑(マイナス) [メイン] 朝霧アサギ プラス 忠誠ですね 頼れる人~という印象 [メイン] 伏見 圭介 相手の人気を羨むなんて可愛いじゃあないか。まあ、僕も似たようなものだけどね。愛情! [メイン] 朝霧アサギ 「それじゃ、よろしく。頼りにしてるよ」と握手の為に手を出します [メイン] 伏見 圭介 「こちらこそ、助け船くらいなら出してあげるよ」握り返します [メイン] 朝霧アサギ 握手したまま不敵な笑みを浮かべて終わり シーン終了で [メイン] GM 了解です! [メイン] GM では本日も再開していきます~ 1サイクル目の森井ニキからどうぞ! [メイン] 森井 丈 言うても何しよ [メイン] 森井 丈 青春闘争調べるか [メイン] GM 了解ですンゴ! 出したい人はおりますやろか? [メイン] 森井 丈 いないです [メイン] GM では2d6をオネシャス! [メイン] 森井 丈 2d6 (2D6) > 5[2,3] > 5 [メイン] GM 5:祭りの最中でも校舎の屋上では静かに風が靡いている。 [メイン] 森井 丈 「(他の参加者キャラ濃かったな)」 [メイン] 森井 丈 「(俺は…どうしようか、毎日毎日修行修行修行、一般人より強いって言ってもだから何か優位に立てるわけでもないし、同族の中じゃ別に何か秀でてるわけでもないし、これに出られたのもたまたまだろ?こんなもんやってる意味あんのかな)」 [メイン] 森井 丈 じゃあとりあえず荒行やりまーす [メイン] GM どうぞ! [メイン] 森井 丈 SG (SG@12#4 =5) > 9[4,5] > 9 > 成功 [メイン] GM やったぜ [メイン] 森井 丈 忘却だ。これしかない。ところでこれ戦国変調受けられるんですかね [メイン] GM うーん……多分梟雄や一部の古流忍法以外では現代で戦国変調はでてこなさそうな気がするので、申し訳ないのですがナシでお願いしますンゴ [メイン] 森井 丈 では忘却受けます [メイン] GM 了解です~ [メイン] 森井 丈 「(見せ場の一つも無しにやられてさ、お前が自分の人生削ってやってることはこんなもんだなんて突きつけられたらちょっと簡単には立ち直れないよな)」 [メイン] 森井 丈 どうやって調べる?どうやって調べよう…記憶術でなんかこう…あんまり注意を払ってなかったけど実は情報を目にしたり聞いたりしてたんだよってことで情報判定 [メイン] GM 114514! 判定どうぞ~ [メイン] 森井 丈 SG (SG@12#2 =5) > 6[1,5] > 6 > 成功 [メイン] GM 成功! では森井ニキに『青春闘争』の秘密を送ります~ [メイン] 森井 丈 確認しました [メイン] 森井 丈 シーン終了です [メイン] GM 了解です~! では続いて伏見ニキオネシャス! [メイン] 七瀬 薫 従者で武田くんと感情結びたいです [メイン] GM 114514! 出したい人は頼奈以外におりますやろか [メイン] 七瀬 薫 伏見を隅っこに出します [メイン] 朝霧アサギ 根は使う?感情修正しに出ようか? [メイン] 七瀬 薫 オナシャス! [メイン] 朝霧アサギ 出まーす [メイン] GM 了解です~ では2d6をオネシャス! [メイン] 七瀬 薫 2d6 (2D6) > 5[2,3] > 5 [メイン] GM 5:祭りの最中でも校舎の屋上では静かに風が靡いている。 [メイン] GM 学生は屋上が好きだってはっきりわかんだね [メイン] 七瀬 薫 それじゃ武田くんと2人揃ったところからで [メイン] 七瀬 薫 「武田くん、わざわざ屋上まで呼び出して悪かったわね」 [メイン] 武田 頼奈 「別にかまわんぞ! ずっと室内にいると体が腐ってしまうからな!」 [メイン] 武田 頼奈 「……ところでお前は誰だ」 [メイン] 七瀬 薫 「七瀬薫よ。伏見くんの補佐役ってところかな」 [メイン] 七瀬 薫 「それで単刀直入に言うけど、二日後の青春闘争、伏見くんに勝ちを譲ってくれないかな。」 [メイン] 武田 頼奈 「……何を言ってるのかさっぱりわからんな。せっかく久しぶりに血肉湧き躍る闘争が楽しめそうだというのに、それを自分でしらけさせる阿呆がどこにいる」 「そもそも、お前は補佐のくせに伏見の勝利を信じていないのか」 [メイン] 七瀬 薫 「…今回は絶対に負けられないのよ。」 「伏見くんは比良坂機関にも敵がいてね。もしここで功績を上げられないと、敵につけこまれて、最悪排除されかねないわ」 [メイン] 七瀬 薫 「だから武田くん、負けてくれないかしら。この通りよ…」 [メイン] 七瀬 薫 と感情に訴えかけます。くノ一の術で感情判定したいです [メイン] GM どうぞ~! [メイン] 七瀬 薫 SG#2 =5 (SG@12#2 =5) > 7[1,6] > 7 > 成功 [メイン] 七瀬 薫 ヨシ! [メイン] GM 成功! ではetを振りますンゴね [メイン] 七瀬 薫 et 感情表(1) > 共感(プラス)/不信(マイナス) [メイン] 武田 頼奈 et 感情表(2) > 友情(プラス)/怒り(マイナス) [メイン] 武田 頼奈 そしてきまぐれ! [メイン] 武田 頼奈 choice 友情 怒り (choice 友情 怒り) > 友情 [メイン] 七瀬 薫 噂通りの脳筋かと思ったが、中々弁も立つようだな。不信取ります [メイン] 武田 頼奈 ひどe [メイン] 七瀬 薫 しょうがないね [メイン] 武田 頼奈 「……なるほど。伏見を取り巻く状況は分かった。貴様の思いも。そこに対して不条理さを感じないと言ったら嘘になる」 「が……それと俺の闘争は話が別だ! そこに同情して手加減してやる義理も、心も俺にはない!」 [メイン] 武田 頼奈 「どうにかしたいというなら全力でかかってこい! 伏見もお前も! それを叩き潰すことこそ最高に高ぶるのだ!」 戦闘狂である自分に恐れず番外戦術をしかけてきた薫ネキにある意味親近感を感じて友情! [メイン] 七瀬 薫 「…まあしょうがないわね。当日はお互いに全力を尽くしましょう」 [メイン] 七瀬 薫 (交渉には失敗したが、心に隙は生まれたはず。そこにつけ入れれば勝機はあるか…) [メイン] 伏見 圭介 で、エキストラ生やして【根】を使いたいです [メイン] GM どうぞどうぞ~ [メイン] 朝霧アサギ 隅っこの方から感情修正飛ばします~ [メイン] 伏見 圭介 ありがとナス! [メイン] 伏見 圭介 SG+1#2 =5 (SG+1@12#2 =5) > 5[1,4]+1 > 6 > 成功 [メイン] GM 成功! なんかRPとかありますかね? [メイン] 伏見 圭介 じゃあちょっとだけやります [メイン] 伏見 圭介 「おい、そこの君!」 [メイン] 一般下忍 「なんすか?」 [メイン] 伏見 圭介 「僕の仲間になれ」 [メイン] 伏見 圭介 頭を両手で掴み、洗脳を施します [メイン] 一般下忍 「ア…ガ…」 [メイン] 一般下忍 「…伏見様、何なりとお申し付けください。」 [メイン] 一般下忍 シーン終了します [メイン] GM ホラーやろこれ…… 続いて小狐丸ネキオネシャス! [メイン] 小狐丸 沙耶 森井、青春闘争の秘密くれよ… [メイン] 森井 丈 どうすっかなぁ [メイン] 小狐丸 沙耶 欲しい秘密はなんだ! [メイン] 森井 丈 欲しい秘密はなんだ?何が欲しいんだ? [メイン] 森井 丈 忍具で手を打とう [メイン] 小狐丸 沙耶 嫌どす… [メイン] 森井 丈 あんまり欲しい秘密が無いのでそっちもな…今のところ秘密では動きません [メイン] 小狐丸 沙耶 うーんどうしよ [メイン] 小狐丸 沙耶 朝霧さんと伏見さん青春闘争の秘密あげるから後でなんかくれない? [メイン] 伏見 圭介 秘密でも良いです? [メイン] 小狐丸 沙耶 いいよ! [メイン] 小狐丸 沙耶 青春闘争の秘密を見てワイの気が変わる前に約束しようぜ… [メイン] 伏見 圭介 約束しましょう [メイン] 朝霧アサギ これはワイはどうすればいいんや ワイと伏見出せる秘密同じなんだがどっちかしか取引してくれない? [メイン] 小狐丸 沙耶 伏見さんと別の秘密くれるならもちろん渡しまっせ [メイン] 朝霧アサギ ではでは次ラウンドは子狐丸ネキ以外の秘密を調べて渡すことを約束しましょう [メイン] 小狐丸 沙耶 しゃおら!じゃあとりあえず3人で行きやすか [メイン] 朝霧アサギ 出ます出ます [メイン] 伏見 圭介 出ます [メイン] GM 了解です! では2d6をオネシャス! [メイン] 小狐丸 沙耶 2d6 (2D6) > 5[1,4] > 5 [メイン] GM 5:祭りの最中でも校舎の屋上では静かに風が靡いている。 [メイン] GM 屋上くん三連発 [メイン] 小狐丸 沙耶 では屋上にいる所に突撃しますか [メイン] 小狐丸 沙耶 [メイン] 小狐丸 沙耶 「どうもお二人とも、こんな所で何の話し合いですか?」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「おっと、そういえばちゃんとした挨拶がまだでしたね、2年の小狐丸です。以後お見知り置きを」 [メイン] 伏見 圭介 「たしか、前回の学力テスト1位だった子だね。僕は2年の伏見圭介だ。よろしくね」 [メイン] 朝霧アサギ 「子狐丸…確かに選手紹介の時にいたやつね、覚えてるわ。アタシはアサギよ。よろしく」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「こちらこそよろしくお願いします。」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「しかし早速2人で青春闘争の相談ですか?動きが素早い様で感心します」 [メイン] 朝霧アサギ 「アタシが求めるのは勝利よ。その為なら手間は惜しまないわ」 [メイン] 伏見 圭介 「僕もこの青春闘争は勝ちたいからね。早く動くに越したことはないさ」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「その通り、情報戦も闘いの内ですからね。というのも情報交換をと思い出場者を探していたんです」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「実は出し物の見回りをしていたらとある噂を耳にしましてね」伝達術で判定! [メイン] GM どうぞ~! [メイン] 小狐丸 沙耶 SG =5 (SG@12#2 =5) > 11[5,6] > 11 > 成功 [メイン] GM 成功! では『青春闘争』の【秘密】を送ります~ [メイン] 小狐丸 沙耶 確認しました! [メイン] 小狐丸 沙耶 「早速で悪いんですが、お二人でジャンケンしてもらってもいいですか?」 [メイン] 小狐丸 沙耶 2人とも2d6振って! [メイン] 朝霧アサギ なんだなんだ [メイン] 朝霧アサギ 2d6 (2D6) > 4[1,3] > 4 [メイン] 朝霧アサギ よわ [メイン] 伏見 圭介 2d6 (2D6) > 11[5,6] > 11 [メイン] 朝霧アサギ 「負けた…」 [メイン] 伏見 圭介 「よし、勝ったぞ!」 [メイン] 朝霧アサギ 「それで?このジャンケンに何の意味が?」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「運も実力の内ってことです。伏見さんおめでとうございます、貴方は3番目ですよ」 [メイン] 小狐丸 沙耶 という事で伏見さん→朝霧さんの順に受け渡します [メイン] GM 了解です~ では処理上は伏見ニキ→アサギネキに渡したということで【秘密】自体は公開情報にしちゃいますね [メイン] GM 『青春闘争』の【秘密】 今年の青春闘争には比良坂機関が協賛しており、彼らは直接的な戦闘力だけではなく情報力もシノビには大事だと学校側に説いた。 その言葉に感銘を受けた青春祭の実行委員達は今回の【青春闘争】自体に秘密を仕掛け、それを見破ったものにはボーナスアイテムを与えることにした。 そのことの自体を明かすのは【青春闘争】開始直前だが、それも良いスパイスだろう。 青春は秘め事だ! この秘密がクライマックスフェイズ直前に公開情報になる際、『青春闘争』の【秘密】を持っているキャラクターは、【秘密】を取得するのが早かった順にプライズ【赤の鉢巻】【青の鉢巻】【白の鉢巻】、忍具【お金】【魔素】の中から好きなものを一つ選んで入手することが出来る。(在庫は全部1つ) [メイン] GM 順番は 1 森井ニキ 2 小狐丸ネキ 3 伏見ニキ 4 アサギネキ となります。 続いてプライズの説明をしますね~ [メイン] GM プライズ 『赤の鉢巻』 比良坂機関が用意した赤色の鉢巻。持つと力が沸いてくるような気がする。 このプライズに秘密はない ~効果~ このプライズの所持者が生命力を失ったときに使用出来る。(消費は不可)その生命力の減少を1点だけ軽減させることが出来る。(減少するダメージの種類は所持者が決定する)この効果は1回のセッションで1度だけ使用出来る。 [メイン] GM プライズ 『青の鉢巻』 比良坂機関が用意した青色の鉢巻。持つと心が穏やかになるような気がする。 このプライズに秘密はない ~効果~ いつでも使用出来る(自身の生命力が0になった直後でも可)。自分の【生命力】1点か変調1つを回復する。この効果は1回のセッションで1度だけ使用出来る [メイン] GM プライズ 『白の鉢巻』 比良坂機関が用意した白の鉢巻。持つと悪い気が祓われるような気がする。 このプライズに秘密はない ~効果~ 誰かが判定のサイコロを振り、スペシャルかファンブルになったときに使用出来る。その判定のサイコロを振り直す。この効果は1回のセッションで1度だけ使用出来る。 [メイン] GM 以上です! [メイン] 伏見 圭介 ここで草の【彷徨】使いたいです [メイン] GM どうぞ! [メイン] 一般下忍 SG#2 =5 (SG@12#2 =5) > 6[1,5] > 6 > 成功 [メイン] GM 成功! 一般下忍君! シーンに出てくるんda! [メイン] 一般下忍 「お呼びでしょうか伏見様」 [メイン] 伏見 圭介 「ああ、お前にもこの情報を渡そうと思ってな」草に青春闘争の秘密渡します [メイン] GM 了解です! これで5番目は一般下忍君になりました! [メイン] 小狐丸 沙耶 NPC可哀想 [メイン] 氷川 なずな もうなにもない…… [メイン] 一般下忍 すまんな [メイン] 校長先生 これもまたシノビだね [メイン] 朝霧アサギ 相対的になずな弱体化にも繋がるし、これはナイスアクション、素晴らしい [メイン] 小狐丸 沙耶 「うわっ、なんか出てきた」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「…洗脳は感心しませんよ?」 [メイン] 伏見 圭介 「何を馬鹿な事を…この僕がそんなのする訳ないじゃないか。なぁ?」 [メイン] 一般下忍 「はい。私は洗脳等されておらず、自分の意志で伏見様に付き従っております」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「言わされてませんか?」 [メイン] 一般下忍 「…ゥ…グゥ……」 [メイン] 朝霧アサギ 「別にどっちでも良いじゃない。アタシ達にとって有用ならね」 [メイン] 伏見 圭介 「そうだそうだ!」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「…青春闘争が終わり次第洗脳は解いてくださいよ、分かれば見なかった事にします」 [メイン] 伏見 圭介 「…分かったよ。まあこの忍術も長続きするもんじゃないしね」 [メイン] 朝霧アサギ 「それはともかく、貰った情報は有用だったわ。後でお返しを用意しなきゃね。それと、本番でもアタシ達と手を組むってことでいいのかしら?」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「ないですね、そちら側に入る余地があるとは思いませんし、仮に組んだとしても仲間内での戦いになったら私が最初に切られるんじゃないでしょうか」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「ただ情報はもちろん受け取りますよ、こちらも対価を期待して渡した訳ですからね」 [メイン] 朝霧アサギ 「そ。じゃあ情報だけのギブアンドテイクってことね。それでも構わないわ」 [メイン] 伏見 圭介 「後腐れない方が迷いも出ないしね。僕もそれで構わないよ」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「仮に組むにしても他の人に相談しますよ、ちょうど良さそうな方もいますし、では」 [メイン] 小狐丸 沙耶 その場から去ります、シーン終わりで 長くなって申し訳ない [メイン] GM 全然大丈夫ですやで~ 大事な所ですンゴ [メイン] GM では本日も始めていきます~ 1サイクル目のpc達の手番が終わったので最後に『青春闘争』に対してなずなが判定するのですが……一応ファンブルとかするかもしれんしやっときます! [メイン] 氷川 なずな 第六感で判定! [メイン] 氷川 なずな [メイン] 氷川 なずな あ、間違えました…… [メイン] 氷川 なずな SG#2 =5 (SG@12#2 =5) > 7[1,6] > 7 > 成功 [メイン] 氷川 なずな 「……多分乗り遅れましたね」 終わり! [メイン] GM なずなに哀愁が漂ったところで2サイクル目にいきます~ 順番の希望があれば言って頂いて、なければ1d100をオネシャス! [メイン] 小狐丸 沙耶 最後がええわね [メイン] 伏見 圭介 1d100 (1D100) > 91 [メイン] 森井 丈 私も最後がいいですね [メイン] 朝霧アサギ もうあんまやることないしそのまま振るか [メイン] 朝霧アサギ 1d100 (1D100) > 60 [メイン] 小狐丸 沙耶 バトろうぜ… [メイン] GM ほいでは森井ニキと小狐丸ネキで1d100バトルオネシャス! 高い方が最後で! [メイン] 森井 丈 1d100 (1D100) > 15 [メイン] 小狐丸 沙耶 1d100 (1D100) > 75 [メイン] 小狐丸 沙耶 やったぜ [メイン] GM アサギ→伏見→森井→小狐丸 でええかな? [メイン] 朝霧アサギ おっけーでーす [メイン] 伏見 圭介 おk [メイン] 小狐丸 沙耶 大丈夫やで [メイン] 森井 丈 はい [メイン] GM では2サイクル目!アサギネキからオネシャス! [メイン] 朝霧アサギ 秘密抜きに行きます [メイン] 朝霧アサギ 伏見クン感情修正しに出てきてくれる? [メイン] 伏見 圭介 出ます出ます [メイン] 朝霧アサギ 対象の秘密は…森井クンので 本人は出しません [メイン] 小狐丸 沙耶 ワイにもクレメンス [メイン] 朝霧アサギ あー抜いてすぐ渡すなら出てもらった方がいいか [メイン] 朝霧アサギ じゃあ三人で [メイン] 朝霧アサギ 2d6 シーン表 (2D6) > 5[2,3] > 5 [メイン] 朝霧アサギ またかよ [メイン] 森井 丈 迫真屋上部 [メイン] 小狐丸 沙耶 こいつらずっと屋上にいんな [メイン] 伏見 圭介 屋上ばっかじゃねぇか [メイン] GM まずうちさあ屋上しかないんだけど…… [メイン] GM 5:祭りの最中でも校舎の屋上では静かに風が靡いている。 [メイン] 朝霧アサギ じゃあ屋上で佇んでます [メイン] 朝霧アサギ 「さてそろそろアタシも情報集めにいかないとね。とはいってももう既に動いてもらってるんだけど」 [メイン] 朝霧アサギ もうすぐに判定や 人脈で判定したいです [メイン] GM 了解です~どうぞ! [メイン] 伏見 圭介 感情修正します [メイン] 朝霧アサギ 修正サンガツ [メイン] 朝霧アサギ SG =4 (SG@12#2 =4) > 10[5,5] > 10 > 成功 [メイン] 朝霧アサギ ゴリティカルで成功 [メイン] GM 成功! では森井ニキの秘密をアサギネキと伏見ニキに送りますね…… [メイン] 朝霧アサギ そのまま小狐丸ネキにも送っちゃってください [メイン] GM 了解です~ [メイン] 朝霧アサギ なので全体公開かな? [メイン] 小狐丸 沙耶 やったぜ [メイン] GM おおそうですンゴね 全体公開します! [メイン] 朝霧アサギ このアサギ、約束は違えん [メイン] 伏見 圭介 偉い [メイン] 小狐丸 沙耶 アサギ様〜 [メイン] GM 森井 丈の【秘密】 あなたは、氷川なずなに対して好意を抱いている。 どこにでもいるような学園生である自分と彼女はどう考えても釣り合わず、このまま大した関わりもなく終わる叶わぬ恋だと思っていたが、そんなときに『青春闘争』に参加出来る当たりくじを引いた。 これは一世一代のチャンスだ。死に物狂いで彼女に良いところを見せ、告白しよう。そのために『青春闘争』の勝者になるのはもちろん、自分の決め技を彼女に間近で見てもらわなければ。 目指せバトルと恋の、絶対勝利。 あなたの本当の【使命】は『氷川なずなを自身の手で倒し、青春闘争で勝利すること』である。 また、あなたは青春闘争に勝利できなかった場合も自身の手で氷川なずなを倒していた場合、1点の功績点を得る。 [メイン] 朝霧アサギ ほーう [メイン] GM 以上です! この自分の手で倒すと言うところに少し補足をしますンゴね [メイン] 森井 丈 殺す殺す殺す [メイン] 伏見 圭介 ヒェッ… [メイン] 小狐丸 沙耶 ほんとに恋してんのかおめー [メイン] GM 自分の手で倒すということについて ・自身の攻撃忍法・奥義(クリティカルヒット・範囲攻撃)で脱落させた場合はok ・自身のサポート忍法・装備忍法の効果によって脱落させた場合もok(髪芝居・返し技・刃隠等) ・自身が相手に与えた変調によって脱落させた場合のもok(猛毒・火達磨等)ただし、その変調を他のプレイヤーも与え、重複していた場合どちらの変調処理を先にするかを1d100のダイスバトルで決める。(高い数値の方が勝ち) ・自身が誘導等によって戦場を変更し、そのダメージで脱落させた場合もok。ただしこちらも変調と処理が重複した場合(高所・火達磨等)どちらのダメージを先に処理するかはダイスバトルで決める。 ※基本的に処理が重複しそうな時はダイスバトル ・他キャラクターの攻撃に対する対象の回避判定を【判定妨害】等で失敗にしても自身の攻撃で倒した事にはならない。 ・同じプロット内の処理中でも他pcの攻撃や変調、戦場の効果等で対象の生命力が0になった時点で『自身の攻撃で倒す』の達成は不可能とするのでプロット内の順番が重要だったりするかもしれない。(対象が不死身等を使用した場合を除く) [メイン] GM 結局殺す殺す殺すで概ねあってますねぇ! [メイン] 朝霧アサギ 「良い情報ね。良くやってくれたわ、アサギ・シュバルツ・ネイチャー」電話で情報を受けとりました [メイン] 朝霧アサギ 「さて……森井クン、こんなこと考えてたみたいよ」と言って振り向いた先に小狐丸クンと伏見クンが [メイン] 伏見 圭介 「なるほど。好きな人にいい所を見せたい、か」 「気持ちはよく分かるよ。僕も父さんの前では良い恰好をしたいからね」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「いやまぁ…これが青春って奴なんでしょうね…」 [メイン] 朝霧アサギ 「まぁ彼の気持ちはわかったわけよ。理解はちょっと出来ないかもしれないけど」 [メイン] 朝霧アサギ 「それで……子狐丸、この情報を得た上で、アタシと手を組まないかしら?アンタとアタシだけで、お互い目標を達成するまでの不可侵、どうかしら?これも断られたらもう誘わないわ」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「その条件でしたらお受けします、そちらの戦いには手出し無用です」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「ただし、『両者の目的が達成されるまで』ですからね、それ以降は正々堂々戦いましょう」 [メイン] 朝霧アサギ 「もちろんよ。それで充分だわ。それじゃそういうことで」 [メイン] 朝霧アサギ 「さて、本番まであと少しね」 [メイン] 朝霧アサギ シーン終了します [メイン] GM 了解です! 続いて伏見ニキどうぞ~ [メイン] 伏見 圭介 武田くんの秘密探ります [メイン] 朝霧アサギ 修正しに行きます [メイン] 小狐丸 沙耶 俺にも秘密分けてくれよ〜(秘密乞食) [メイン] 伏見 圭介 ありがとナス! 従者枠で七瀬さんも出します [メイン] 伏見 圭介 114514 [メイン] GM 了解です~ 出るのはアサギネキと小狐丸ネキと配下ちゃんでええかな?武田は出します? [メイン] 伏見 圭介 武田くんは出しません [メイン] GM 分かりましたやで! では2d6オネシャス! [メイン] 伏見 圭介 2d6 (2D6) > 8[2,6] > 8 [メイン] 小狐丸 沙耶 屋上から脱したな [メイン] GM さようなら屋上君…… [メイン] GM 8:学食のカフェテリア。文化祭限定でスイーツが売られている。 [メイン] 伏見 圭介 ではスイーツを堪能している一般下忍2に聞き込みを行います。調査術で判定したいです [メイン] GM 了解です! どうぞ~ [メイン] 伏見 圭介 修正くださーい [メイン] 朝霧アサギ 修正送りまーす [メイン] 伏見 圭介 SG+1#2 =5 (SG+1@12#2 =5) > 10[4,6]+1 > 11 > 成功 [メイン] GM 成功! この時点で小狐丸ネキにも送ります? [メイン] 伏見 圭介 送ります。 ワイが送らなくてもアサギネキ経由で渡っちゃいそうやし [メイン] GM 了解です では三人に武田の秘密を送りますね~ [メイン] 小狐丸 沙耶 それでこそ″漢″や [メイン] 伏見 圭介 確認しました [メイン] 小狐丸 沙耶 確認しました [メイン] 朝霧アサギ 確認しました [メイン] 伏見 圭介 「成程そうだったのか…。有益な情報感謝するよ」 [メイン] 一般下忍2 「ッス!お役に立てて光栄ッス!」 [メイン] 伏見 圭介 「ではお礼として…」 [メイン] 伏見 圭介 洗脳します。【根】を使いたいです [メイン] GM 判定どうぞ~ [メイン] 伏見 圭介 SG#2 =5 (SG@12#2 =5) > 3[1,2] > 3 > 失敗 [メイン] 伏見 圭介 神通丸使います [メイン] GM 振り直しどうぞ! [メイン] system [ 伏見 圭介 ] 忍具 2 → 1 [メイン] 伏見 圭介 SG#2 =5 (SG@12#2 =5) > 8[4,4] > 8 > 成功 [メイン] GM 成功! [メイン] 伏見 圭介 ヨシ! [メイン] 伏見 圭介 で、七瀬さん対象に【しもべの訓練】します [メイン] GM 了解です! 生命力増やす感じですかね? [メイン] 伏見 圭介 そうですね 生命力増やします [メイン] GM 配下ちゃんパワーアップ! [メイン] system [ 七瀬 薫 ] 生命力 2 → 3 [メイン] 伏見 圭介 ちょっとRP挟みます [メイン] GM どうぞどうぞ! RPはなんぼあってもええですからね~ [メイン] 七瀬 薫 ありがとナス! [メイン] 七瀬 薫 「伏見くん。例の装備、用意ができたよ」 [メイン] 伏見 圭介 「ご苦労。当日まで休んでいていいぞ」 [メイン] 七瀬 薫 「…本当に使うの? 比良坂のお偉いさんも見学に来ると思うし、止めた方が…」 [メイン] 伏見 圭介 「僕はアイツに勝たなきゃいけない。その為ならどんな事でもするさ。」 「それにバレても怒られるだけだろうしね。ハハハ!」 [メイン] 七瀬 薫 (…これで結果がでなかったら終わりとか、考えないのだろうか……) [メイン] 伏見 圭介 シーン〆ます [メイン] GM 了解です! では続いて森井ニキどうぞ~ [メイン] 森井 丈 なずなさんの秘密抜こうと思うんですが狐さん武田君の秘密と交換しない? [メイン] 小狐丸 沙耶 すまんちょっと抜けてた、ええぞ [メイン] 森井 丈 じゃあ2人でなずなさんの秘密抜きます [メイン] GM 了解です! なずなは出します? [メイン] 森井 丈 だー--------……さない [メイン] 氷川 なずな シュン…… [メイン] GM では2d6オネシャス! [メイン] 森井 丈 2d6 (2D6) > 4[1,3] > 4 [メイン] GM 4:体育館では生徒達がライブを行っていた。聞いたことがないロックな曲が流れている。 [メイン] 森井 丈 とりあえず荒行から [メイン] GM どうぞ! [メイン] 森井 丈 SG (SG@12#4 =5) > 3[1,2] > 3 > ファンブル [メイン] 小狐丸 沙耶 かわいそう [メイン] 森井 丈 神通丸使います。秘密が抜けなくとも荒行だけは成功させたい [メイン] GM マズいですよ! [メイン] GM 振り直しどうぞ! [メイン] 森井 丈 SG (SG@12#4 =5) > 4[2,2] > 4 > ファンブル [メイン] 小狐丸 沙耶 えぇ… [メイン] 森井 丈 クソが!火力落ちたね、落ちましたね、ええ [メイン] GM なんてことだ……なんてことだ…… [メイン] 森井 丈 FT ファンブル表(4) > 油断した! 術の制御に失敗し、好きな【生命力】を1点失う。 [メイン] 小狐丸 沙耶 うわぁ… [メイン] GM おお、もう…… [メイン] system [ 森井 丈 ] 忍具 2 → 1 [メイン] system [ 森井 丈 ] 追加生命力 2 → 1 [メイン] 森井 丈 「っ痛あぁぁ、…そうか、こんなもんか」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「…大丈夫ですか?」 [メイン] 森井 丈 「あっ……こ、こ……子狐さん?ちょっと大丈夫じゃないかもしれない」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「小狐丸です。まだ青春闘争も始まってないのに怪我してどうするんですか」 [メイン] 森井 丈 「あぁ、うん、怪我ね……それは別にどうでもいいんだけど……いややっぱりどうでも良くないな」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「全く、少しは選ばれた自覚持ってくださいよ、少なくとも周りは貴方の事をただ運の良い人とは思ってませんからね」 [メイン] 森井 丈 「そうかぁ、実力のある人って用心深いんだな」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「十分な警戒対象に当たるだけですよ、少なくとも私は青春闘争に出る中で3番目くらいには怖いなぁって思ってます」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「あと警戒されるって事は対策も練られるって事ですからね、強者の自覚を持って対策される前提で闘いに挑まないと氷川さんにも勝てないと思います」 [メイン] 森井 丈 「強者の自覚ねぇ…」 はぇ~強者には対策しないといけないんすねぇ、お前なずなのこといつもチラチラ見てただろ。対策練れよ。記憶術で判定 [メイン] GM 草 どうぞ! [メイン] 森井 丈 SG (SG@12#2 =5) > 7[1,6] > 7 > 成功 [メイン] GM 成功! とりあえず森井ニキだけに送ります? [メイン] 森井 丈 はい [メイン] GM 了解です! [メイン] 森井 丈 確認しました。じゃあ交換しよっか、その後強者の対策を練りましたって感じで [メイン] 小狐丸 沙耶 やったー!こっちも渡します [メイン] GM ではなずなの秘密を小狐丸ネキに。武田の情報は公開情報ですンゴね [メイン] GM 武田頼奈の【秘密】 あなたは表も裏もない戦闘狂である。 常に体が、心が血湧き肉躍る闘争を求めている。 そんなあなたに今回の『青春闘争』は願ってもいない舞台だろう。準備を整え、万全の状態で楽しまなくては。 あなたの本当の【使命】は『青春闘争で一人でも多くのキャラクターを倒し、勝者になること』である。 またあなたは戦闘に重きを置いた結果、奥義に一つ【強み】がついているが、その情報を上手く隠すことが出来ていない。あなたの奥義は【不死身/目覚め/流し/回数制限】である。(この情報を持っていても奥義破りを行うことはできない) [メイン] GM 以上です! [メイン] 小狐丸 沙耶 確認しました [メイン] 森井 丈 「痛いなぁ、痛い……」 特に言うこと無ければこのまま終わろうと思います [メイン] 小狐丸 沙耶 「(いたそう)」 [メイン] 森井 丈 終わり [メイン] GM 了解です! ではラストの小狐丸ネキ! [メイン] 小狐丸 沙耶 どうしよっかな [メイン] 小狐丸 沙耶 伏見くんの秘密探りますか [メイン] GM 了解です! 誰を出しますでしょうか? [メイン] 小狐丸 沙耶 ほななずな出したろか [メイン] 氷川 なずな あなたが女神か [メイン] 小狐丸 沙耶 特にプランは無い 2人で [メイン] GM 了解です! では2d6をオネシャス! [メイン] 小狐丸 沙耶 2d6 (2D6) > 10[4,6] > 10 [メイン] GM 10:校舎と校舎を繋ぐ渡り廊下。珍しくこんな所にも人が多い。 [メイン] 小狐丸 沙耶 「あっ、氷川さんどうも」ちょっと顔馴染み的な感じで [メイン] 氷川 なずな 「あ、小狐丸先輩。こんにちは」 ぺこりと頭を下げます [メイン] 小狐丸 沙耶 「どこか一緒に店でも入りませんか、丁度自由時間なんです」 [メイン] 氷川 なずな 「え、いいんですか? なずな、休憩時間になったのはいいんですが回ってくれる人がいなくて……嬉しいです!」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「ええ、ではそこの兵糧丸喫茶でも行きましょうか」 [メイン] 氷川 なずな 「……良きお名前のお店ですね!」 ついてイクゾー [メイン] 小狐丸 沙耶 「ではコーヒー2つで、あと例のやつもお願いします」店員に探らせてた感じで自然と情報を受け取りましょう…何も思いつかんから人脈で [メイン] GM どうぞ~! [メイン] 小狐丸 沙耶 SG =6 (SG@12#2 =6) > 2[1,1] > 2 > ファンブル [メイン] GM 草 [メイン] 小狐丸 沙耶 わァ… [メイン] 小狐丸 沙耶 メインファンブルって久しぶりだわ… [メイン] GM ふぁ、ファンブル表をどうぞ…… [メイン] 小狐丸 沙耶 1d6 (1D6) > 3 [メイン] GM 秘密が漏れます漏れます [メイン] 小狐丸 沙耶 うわあ! [メイン] 朝霧アサギ やったぜ [メイン] 小狐丸 沙耶 これ全部か…痛いな [メイン] GM 小狐丸ネキの持ってて公開情報になってないのは 自分の秘密の他だとなずなの秘密だけですかね [メイン] 小狐丸 沙耶 いうて1つだけか公開されてへんの [メイン] 森井 丈 狐さんの秘密もらいまーす [メイン] 伏見 圭介 本人の秘密も選べるんすね~ 子狐丸ネキの秘密もらいます [メイン] 朝霧アサギ こっちはなずなの秘密もらいます [メイン] GM 了解です~ それでは森井ニキと伏見ニキに小狐丸ネキの秘密を アサギネキになずなの秘密を送ります~ [メイン] 小狐丸 沙耶 情報強者になってると思ったら一気に弱者になりましたねぇ [メイン] GM すみません…感情共有が抜けていたので二つとも全体公開になります! [メイン] GM まず小狐丸ネキから [メイン] GM 小狐丸 沙耶の【秘密】 あなたは武田頼奈に対して嫌悪感を抱いている。 真面目に勉強や生徒会活動に取り組むあなたにとって常に騒がしく、もめ事を起こしまくる頼奈はストレスの源であり、どうにか大人しく学校生活を送ってもらいたい最大の対象である。 更に困ったことにその破天荒な性格に謎のカリスマ性を感じたのか追っかけになったり、彼の真似事をする生徒する生徒まで出る始末。このままでは、盾節学園が戦闘狂いの学園になってしまう。 こうなったら、今回選ばれた『青春闘争』で彼を完膚なきまでに叩き潰し、真面目に学園生活を送る大切さを生徒達に伝えなければ。 自分が求める結果はただ一つ。絶対勝利。 あなたの本当の【使命】は『武田頼奈を自身の手で倒し、青春闘争で勝利すること』である。 またあなたは青春闘争に勝利できなかった場合も、自身の手で武田頼奈を倒していた場合、1点の功績点を得る。 [メイン] GM 以上です! [メイン] GM 続いてなずなの秘密 [メイン] GM 氷川なずなの【秘密】 実はあなたは戦闘狂である。 血とプライドと拳のぶつかり合いを何よりも好んでいたが、このままでは修羅の道を突き進んでしまうと心配した両親から頼むからお淑やかに生活してくれと懇願され、盾節学園への入学と同時に猫を被ることになった。 両親の願いも、周りの目も裏切るの忍びなくてここまできてしまったがそろそろ我慢の限界だ。 そんな時に丁度、『青春闘争』のメンバーに選ばれた。 全てをさらけ出すならここしかない。今こそ魂のひりつく闘いを。 あなたの本当の【使命】は『青春闘争で一人でも多くのキャラクターを倒し、勝者になること』である またあなたは戦闘に重きを置いた結果、奥義に一つ【強み】がついているが、その情報を上手く隠すことが出来ていない。あなたの奥義は【絶対防御/返し/流し/発動条件】である。(この情報を持っていても奥義破りを行うことはできない) [メイン] 氷川 なずな 「あ、あの! 小狐丸さん!」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「はい…?」 [メイン] 氷川 なずな 「な、なずなの『あれ』わかってるんですよね……?」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「もちろん、闘う相手の事ですから」 [メイン] 氷川 なずな 「もう少しだけ、学園の人達には黙っていてもらえませんか……? ちゃんと自分の口で言いたいんです」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「元より言うつもりはありませんよ、戦闘好きなんてこの学園には沢山いるじゃないですか」 [メイン] 小狐丸 沙耶 ファンブルになって拡散されるのはしらん! [メイン] 氷川 なずな 「あ、ありがとうございます! 感謝です!……それでは、当日は正々堂々良き勝負を」 そう言って手を差し出してきたなずなの目は普段と少し違う気がします [メイン] 小狐丸 沙耶 「…えぇ、正々堂々闘いましょう、悔いなき決着を」こちらも握手を [メイン] 小狐丸 沙耶 「(うーん厄介、警戒対象が増えましたね)」 [メイン] 小狐丸 沙耶 「(しかし伏見さんの刺客か…やられましたね。お返しはさせて貰いますよ)」 [メイン] 小狐丸 沙耶 何もなければシーン終わり! [メイン] 氷川 なずな 気合いをいれるためにコーヒーを一気飲みだけしておこう! 「……苦い」 [メイン] GM それでは2サイクル目が終わり……一応武田が『青春闘争』に情報判定をします [メイン] 武田 頼奈 怪力で校舎の一部を持ち上げて秘密を暴く! [メイン] 武田 頼奈 SG (SG@12#2 =5) > 8[3,5] > 8 > 成功 [メイン] 武田 頼奈 「……フハハ! 俺にモノは必要ない!」 [メイン] GM 終わり! [メイン] GM ではそのままクライマックスフェイズへ……
https://w.atwiki.jp/orirowaz/pages/418.html
これは、とある少女の前日譚(プロローグ)。 折れた街灯に照らされるのは死肉を貪る亡者。 鳴り響く音楽は呻き声と悲鳴、咀嚼音の入り混じったハーモニー。 地獄と化した深夜の住宅街を少女は一人、息を切らせながら駆け抜ける。 「……くっ……つぅ……!」 苦悶の声が漏れる。乱雑に包帯が巻かれた左腕に今一度強烈な痛みが走り、思わず足が止まる。 立ち止まって破裂しそうな肺を落ち着かせながら、少女は右手に持つ救急箱に目を向ける。 早く彼の元へと急がなきゃ。でないと私の家族みたいに手遅れになる。 思い返されるのはほんの僅か十数分前の出来事。 大地震が起こった後、幼馴染の恋人の無事を互いに喜んだのも束の間、 避難所の学校へと向かう最中、彼の容体が急変。強がる彼を物陰で休ませて救急箱を取りに自宅に戻った。 しかし、そこにあったのは――。 「二人共……?。何を……しているの……?」 月明り以外の光源のないリビングで、妹と父親が母親を貪り食っていた。 声に二人が振り向く。薄闇の中で濁った四つの瞳が少女(えもの)へと向けられる。 少女が後退り、逃げ出そうとするも間に合わず。二体のゾンビはかつての家族へと襲い掛かった。 「づ…ああああああッ!!」 思わず身構えた左腕に妹が齧り付き、肉が食い千切られる。 血が湧き水のように流れ出す。白い腕が歯形に抉り取られ、ピンク色の筋肉の隙間から白い何かが露わになる。 姉の肉を咀嚼する妹。次いで父が歯を剥いて愛娘へと迫る。 迫りくる死。少女の脳裏を過るのは今まで生きてきた僅か十八年の記憶。 両親との思い出。妹との思い出。幼馴染の親友たちとの思い出。 そして、強がりで威張りんぼな、大切な彼の顔。 瞬間、自分の中で『何か』が生まれたような直感。それに従い、襲い来る二人の家族に命じる。 『止まって!』 そうして少女は窮地を脱した。二人の家族は今、鍵をかけた両親の寝室に閉じ込めておいた。 じくじくと痛む左腕の肉が蠢くような感触がする。同時になぜか思い浮かぶのはもう一人の幼馴染の少年。 ノイズ交じりの放送が事実だとしたら、誰も彼も――。 不安が不安を呼び、少女の心の中に暗雲が立ち込める。 「……急がなきゃ……!」 少女の目に映るのは強い光。それを追うために少女は夜の街を駆け、『最悪』を目の当たりにする。 「う……そ……!?」 呆然と少女は絶望の言葉を呟く。右手から救急箱が落ち、地べたに医療物資をまき散らした。。 物陰で休ませていた最愛の恋人。意地っ張りで、誰よりも優しい幼馴染の男の子。 目の前の彼が浮かべる表情は快活な笑顔ではなく虚ろな表情に。 きらきらと星のように輝いていた眼差しは白濁した瞳に。 少女の家族と同じように、恋人は食屍鬼(ゾンビ)になっていた。 だが、無防備になった少女を少年が襲う気配は微塵もない。 「……………」 「………え?」 生ける屍と化した少年がか細い声で何かを呟く。 少女は正気を取り戻して聞き返すが、返ってくる言葉は意味のない呻き声だけ。 ふと、少女の頭にノイズ交じりの放送の内容が蘇る。 『……ウイルスには全ての大本となる女王ウイルスが存在する。 女王は1人にしか感染せず、周囲のウイルスを活性化させ増殖を促す役割を持っている……。 これを消滅させれば……自然と全てのウイルスは沈静化して死滅する。 正気を失い怪物となった住民も……多少の後遺症は残るだろうが…………適切な処置を受ければいずれ元に戻るはずだ……』 まだ、希望はある。女王ウイルスをどうにかすれば、恋人とまた笑い合える日々が戻る。 少女の胸に決意の炎が灯る。身体の奥底から力が沸き上がってくる。 恋人の笑顔を思い浮かべながら、『異能』を発動させる。 少女の差し出した手に少年の手が重ねられる。 「圭ちゃん。私が貴方を絶対に助ける。だからついてきて」 ◆ 暮れの日と夜闇が混じり合い、空のキャンパスを相反する色彩で染め上げる黄昏どき。 神道において人の世が神域へと繫がる端境は時間と空間の両方にあるとされており、黄昏は時間に該当する。 空間も同様。御霊代を擁する神奈備や神社を取り囲む鎮守の森などヒトと自然が曖昧な場所が神域へ誘う端境とされている。 時間と空間。両方の端境にある山折村。コンクリートで塗装された道に映されるのは、手を繋いだ二人の少年少女。 「づぅ……何だ、これ……?」 「……圭ちゃん、本当に大丈夫?」 『あの子』が待つと言われている山折総合診療所に向かう途中、少年――山折圭介は突き刺すような頭痛に顔を顰める。 その様子を感じ取り、圭介の恋人である少女――日野光は足を止め、片手で頭を抑える彼を心配そうに見やる。 自分を見つめる恋人に「大丈夫だ。心配すんな」と声をかけようとして彼女の顔を見た瞬間、言葉を失う。 胸元まで伸びたふんわりとしたセミロングの黒髪。 垢抜けていないが思わず見惚れてしまうしまうような愛らしい顔。 そして、闇夜の中でも輝く『金色の瞳』。 姿も、声も、繋いだ手の温かさも圭介の心は目の前の『ナニカ』が日野光だと告げている。 しかし、山折圭介の中の何かが否定している。 『やっぱり、気づいちゃうか』 光の穏やかなソプラノボイスから一〇歳ほどの感情の読み取れない幼い少女の甲高い声に変化する。 圭介の心情を読み取ったのか。目の前の『光』は気遣わしげな顔からどこか諦めたような表情に変わった。 そして、目の前の少女は圭介から顔を逸らすと、彼の手を引いて診療所までの道を歩き始める。 「な……何なんだよ……!?夢……?まだ俺は夢の中に……ぐぅ……!!」 再び起こる激しい頭痛。ズキズキと脳を搔き回されるような激痛に圭介は額を押さえ、目を閉じる。 何が何だかわからない。どこからが夢でどこからが現実なのか。そもそもつい先ほど見ていた夢すらもおかしい。 同年代の哉太とは幼い頃から幾度となく喧嘩をし、その度に光に「喧嘩両成敗」と仲裁されてきた。 だけども、自分は一度も光に暴力を振るったことはないし、哉太を病院送りになるまで怪我させたことはない。 まるで自分の記憶を元に作られた物語。山折圭介という人間の人格を貶めるための二次創作ようだった。 痛みがほんの少しだけ和らぎ、目を開ける。 霞む視界に霞む視界に映る地面は罅割れたコンクリート製の道路ではなく、白いリノリウム――山折高校の床。 「は……?え……?」 困惑が脳を支配し、周りを見渡す。 白い石膏ボードの壁。 画鋲で張り付けられたオープンキャンパス案内のポスター。 真新しい窓に映る夕暮れの空。 そして、圭介の手を引くどす黒い靄に包まれた薄汚れた小さな手。 彼の手を引き、診療所までの道のりを先導していた存在。それは圭介が愛する日野光ではなく。 「――――ひっ!」 か細い悲鳴が喉の奥から漏れ、少年の表情が強張る。 黒い手を振り払おうとする。しかし黒い靄が腕に纏わりつき、脱力したように力が奪われ、腕の力が抜ける。 くすくすくすくす。 圭介の腕に纏わりついた黒い靄と少女らしき存在から溢れ出す黒い靄。その両方からくすくす笑いが校舎の廊下に響き渡る。 カチカチと圭介の頭の歯車が逆巻きに巻き戻る。違和感を鍵に封じられた記憶の扉が開かれた。 『お前の願いはオレに届いた』 『ざまぁみろ、哉太』 『てめえの不幸に酔いしれて悲劇の王子気取るんじゃねえクソガキ!!』 『別れましょう』 『裏切者は、許さない』 「あ、ああ、ああああ………!!」 思い出した。思い出して、しまった。 魔王から与えられた力で『山折圭介』という人間が積み上げてきたものを全て否定したことを。 自らの所業で。自らの業で。全てを失ったことを。 沸き上がる自らの存在否定。もう片方の手で首に爪を立て、ガリガリと掻く。 痒い。痒い。痒い。痒い。痒い。痒い。痒い。痒い。 首だけじゃない。舌の先も痒い。早く。早く噛み千切ってしまわなければ。 くすくすくすくす。 圭介への福音のように。少女の身体から、腕に纏わりついた黒い靄から忍び笑いが漏れる。 衝動と『ナニカ』からのせせら笑いに少年は誘われ、そして―――。 『少し黙って』 少女の言葉にピタリと闇からの笑い声は止まる。 同時に圭介の中から沸き上がってきた自殺衝動も何かの力で無理やり沈静化させられた。 そのまま影法師の少女は困惑と自責の念を残したままの圭介の手を引いて廊下を歩き続ける。 『アナタが無辜の人々を使い捨て、たくさんの友達を切り捨てた『裏切者』には変わらない。 だけど、使い方を間違っていたとしてもたった一人の大切な人のために力を使っていたのを知っている。 それに、わたしの故郷――地球にとっては異世界かな?そこの侵略者である『余所者』の魔王に心を付け込まれた。 力を与えると同時に人格を捻じ曲げて、願いを叶えた後で正気に戻し、肉体から依代の魂を追い出す。 それが奴の手法。あのまま魔王が討伐されなかったら、アナタはいつか最悪の結末を迎えていた。 だから、わたしと『彼女』は魔王がアナタに興味をなくすため……願いを持てなくするために徹底的に追い込む必要があった。 ……結論。山折圭介……アナタには情状酌量の余地がある。それに、わたしも『彼女』もやり過ぎた事に罪悪感を感じている』 圭介に背を向けながら語られる言葉の雰囲気は幼さを感じさせながらも穏やかかつ厳格。 どことなく知り合いの女王気取りを思わせる口調だが、最後だけは彼女が決して口にしないような懺悔を述べていた。 一呼吸置いた後、影法師の少女は再び言葉を紡ぐ。 『……アナタを想う「彼女」の魂は完全に消滅した。こちらの世界に干渉することは普通なら二度とできない。 普通なら、ね。だから普通じゃない方法を使って彼女を呼び出して、こちらから会いに行く』 少女の言葉に困惑しながらも、圭介はもう一度辺りを見渡す。 茜色に照らされる白い壁。カツカツと二つの足音が響く廊下。木材とプラスチックが混じったような校舎独特の匂い。 圭介の五感全てが少女に手を引かれながら歩いている場所が山折高校だと告げている。 自責の念に苛まれながらも困惑を隠せない圭介の様子など気にも止めず、少女は言葉を続ける。 『わたしが元々持っていた力――思いや記憶を元に異界として具現化させ、願いを叶えるための過程を作り出すもの。 願いを叶えるためにはこの中で自分で行動しなきゃいけない。ホラー映画に出てくる謎の異空間みたいなものだと思って欲しい。 でも、今のわたしの力は大部分が失われている。不完全でも何とか疑似再現できた「これ」は表面を真似ただけのハリボテ。 ただ、お散歩するための空間にしかならない。だけど『異世界』だから現実を無視してこちらには無理やり呼び出せる。 魔王が持っていた死体を疑似蘇生する死霊術。それを応用する。 亡骸になった『彼女』の脳から生前の人格と記憶の情報を得て、消滅した魂を魔王の死霊術で強制的に『彼女』を蘇生する。 でも、生命活動が停止した器に魂を映してもそれは死体に変わりない。所謂ゾンビになってしまう。 魔王は個性を奪った上で魔力を流し込んで兵士に仕立てあげてたけど、魔力を失ったわたしにはそこまで。 だから、わたしは魂を蘇生させるだけに留めた。脳が死んでいる以上、魂を宿しても食欲だけで動くゾンビにしかならない』 そこまで言うと不意に影法師の少女は足を止める。 地球の法則が成立しないような事象の数々。情報の波に晒された圭介は困惑一色であった。 少女が繋いでいた手を放し、彼女のすぐ隣を指差す。何も理解できぬまま圭介は指し示した方向へと顔を向けた。 「……ここは、俺のクラスの教室……?」 『うん。蘇生した人間の魂は元の身体へと向かう習性がある。わたしが「彼女」の遺体に乗り移って動かしていたのはそのため。 だけど「彼女」はアナタに合わせる顔がないらしい。遠目でこちらを伺っていただけで接触する気配はなかった。 だから、魔王の力とわたしの力を使って仮初の肉体と存在できる場所を作ってあげた。 この異界の中に限り、彼女は生きていた頃と同じ姿に戻ることができる。 ……魔王みたいな事をしなくちゃいけなかったのは業腹だけど、わたしの好き嫌いで決めていちゃ誰も救われない』 「魔王」という言葉に心底の嫌悪感を露わにして少女は話を終え、教室のドアの取っ手に黒い小さな手を当てる 「ちょ……ちょっと待ってくれよ。お前の話、突飛過ぎて何も分からねえよ! お前は一体何者なんだ?俺をどうするつもりなんだ?!」 『どうもしない。少なくとも今はアナタの敵ではないよ、山折圭介』 困惑と恐怖が入り混じった表情を浮かべながら、眼前の幼い少女に問い掛ける圭介。 そんな彼の様子に少女はぶっきらぼうだが、少しだけ優しさを感じさせる声で答える。 「だったら、お前が何度も繰り返している「彼女」って誰のことなんだ?!」 『………「彼女」はアナタが良く知る人物。その子は、この扉の先にいる』 ぼかされた様な答えに少年は不安を感じ、影法師の少女への不信感と恐怖を募らせる。 圭介が口を挟む前に影法師の少女は取っ手を引いて教室の扉を開いた。 誰もいない校舎の中にガラガラと音が鳴り響く。そのまま少女は遠慮なしに教室の中へと足を進めた。 影の少女に続くように圭介も恐る恐る教室へと足を運ぶ。 夕日に照らされる誰もいない筈の教室。教壇と三十の机が立ち並ぶ小さな空間。 その中心にある机に座るのは、顔を俯かせた高校生くらいの一人の少女。 圭介と実体を持った影法師。二人の存在に気付くと少女はゆっくりと顔を上げる。 愛らしい柔らかな笑みを浮かべていた顔――その面影は見る影もなく、やつれ切っている。 大きく見開かれた綺麗な瞳――暗く淀み、頬には涙の跡がくっきりと残っている。 「な……え……?」 「う……そ………?」 山折圭介は/■■■は、その顔を知っている。 誰よりも大切に思っていた彼女/彼。激情に任せて裏切り、絆を自ら断ち切った二人。 「圭……ちゃん……?」 圭介が言葉を発する前に、少女――日野光が先に口を開いた。 ◆ ……あんな別れ方をした以上、そう簡単に元鞘に戻るわけないか。何となく想像はできていたよ。 でも二人共、気持ちは分からなくもないと思うけど、再会直後のあのやり取りは酷いと思う。 山折圭介。戸惑いながら一歩歩み寄った日野光に対して怯えた顔で「日野……」って返すのはちょっとないかな。 もう一度言うけど気持ちは分からなくもない。でも、本心では彼女との関係を元に戻したいんでしょう? 心が弱っている今、酷だとは思うけれどアナタ自身も踏み出さなきゃ何も変わらない。 日野光。脳から記憶を読み取ったからアナタの事情も、アナタの気持ちもわたしに伝わっている。 関係修復のために自ら歩み寄ったことは評価できる。でもね、怯えられたからと言って引き下がるのはまずいと思う。 彼を同じように追い込んだ以上、わたしが言う資格はないと思うけど、弁明する前に謝らなくちゃ。 …………これ以上待っていても埒が明かない。先にわたしが山折圭介にアナタの事情を説明するね。 少し待って?だったらアナタ自身で彼に話す?無理でしょ。今のアナタの精神状態じゃ、お茶を濁すのが精一杯な筈。 山折圭介。今から話す内容は聞くアナタにとっても罪を他人(わたし)に話される日野光にとっても辛いと思う。 それでも山折圭介は知らなきゃいけないし、日野光は死者として山折圭介に色々なものを託さなきゃいけない。 じゃあ、話を始めるね。 まずは前提から話そう。何故わたしが日野光の事情を知っていたか。 それは山折神社の封印が解かれて最初に出会ったものが、肉体から離れて彷徨っていた日野光の霊魂だったから。 そこで彼女の霊魂から事情を聞いた。まさかその最中に幼馴染二人の喧嘩が始まって彼女が止めに走ったのは予想外だったけどね。 別に怒ってはいないよ。こっちが話を聞くためにを呼び止めたんだし、事情は人それぞれだ。 ……話を戻そう。日野光はわたしに今の山折村の惨状や異能、未来人類発展研究所について教えて。 まるで予め全て知っているかのようで、つい十数時間前に巻き込まれた人間とは思えない情報量だったんだ。 理由をすぐに問いただした。わたしの想像では日野光の両親が研究所に関わっているんじゃないかっ思ってた。 でも、推測は違っていた。帰ってきた答えはあまりにも荒唐無稽。でもそうじゃなきゃ説明がつかない。 日野光はアナタがゾンビに変わる筈の6月19日午前0時13分7秒から何度も2日間を繰り返してきた。 所謂並行世界の記憶をリレーしながら、並行世界を渡り歩いて、今の世界へと辿り着いた。 渡り歩いていたどの世界でも日野光が女王感染者で、アナタはゾンビ。二人揃って正常感染者になる世界はなかった。 ◆ 「死……ねェ!!死ね!!死ね!!死んでしまえええええええええ!!!!!!」 燃え盛る古民家群。炎熱地獄の中で、少女はナイフを幾度となく振り下ろす。 彼女の眼下には白髪交じりのぼうぼう頭の老人――満足そうな表情で息絶えている六紋兵衛。 『人狩り』となった彼の最初の犠牲者は帰省してきた幼馴染の少年――八柳哉太のゾンビ。 次いでゾンビ化した親友の上月みかげ、正常感染者になっていた湯川諒吾も殺された事を知った。 「ぅああああああああああああああああああああッ!!!!」 絶叫。六紋の死体には数多の刺傷が刻まれ、光の行為は老人の死を冒涜する以外の意味を持たない。 それを理解していても尚、光の身体は止まらない。止める気すらもない。 理由は数メートル先。そこには頭を撃ち抜かれ、風穴からピンクの脳を零れさせた少年――山折圭介の骸。 「ひ……光姉ちゃん!もう止めろよ!!そいつはもう死んでいるんだぞ!!」 「五月蠅い!!離せェ!!」 光の狂乱を見兼ね、スパイキーヘアの少年、九条和雄が腕を掴むも振り払い、彼の矮躯を突き飛ばす。 痛みに呻く彼の様子など気にせず、再び六紋老人への復讐を続けるべく刃を振り下ろそうとする。 しかし、光の腕が振り下ろされることはなかった。誰かにナイフを持つ手を掴まれ、そのまま頬に衝撃が走る。 「え……雨流、くん……?」 「正気に戻れよ、光さん。リーダーのアンタが取り乱してどうするんだ」 目の前には腰に日本刀を携えた中性的な少年、暮村雨流。見兼ねた彼が光の頬を張り、正気を取り戻させたのだ。 恋人を失い、呆然と涙を流す光。そんな彼女を包み込むように抱きしめるのは雨流の姉、暮村沙羅良。 慈しむような抱擁。喪失感や無力感を自覚し、光は彼女の胸で子供のように泣きじゃくった。 「ありがとう、沙羅良さん。それからごめんね、皆。取り乱しちゃって」 未だ燃え盛る古民家群をバックに光は仲間達三人に頭を下げる。 沙羅良と和雄は気丈に振舞う光を心配そうな目で見やり、雨流は腕を組んで醜態を晒した光に鋭い視線を投げかけている。 「これから、診療所に向かおうと思うの。そこにVH解決のための糸口があると思う」 「アンタの言ってたイベントが光として可視化される異能。そいつが診療所を指し示していたのか?」 光の提案に雨流は鋭い視線を向けたまま問いかける。沙羅良と和雄は納得していたが、雨流には引っかかるところがあったらしい。 その問いに首肯する。雨流は何かを考えこむかのように少しの間だけ考え込んだ後、再び口を開いた。 「……光さん。VHが起こる前、泊まる所がなかったオレと姉ちゃんを家に泊めてくれたよな。 アンタの善性は信頼できる。でも、今のアンタはどこか危うい感じがするんだ」 「ちょっと、雨流くん。光さんはさっき恋人を失ったばかりなのよ。そんな言い方――」 「姉ちゃん悪い。だからこそ言わなきゃいけないんだ」 弟の不遜な言い方を姉は咎めるために口を挟もうとするが、彼の言葉がそれを制する。 姉思いの弟は、光の目をまっすぐ見据えて言葉を紡ぐ。 「オレ達三人はこれからも変わらずアンタについていくつもりだ。 でも従属するってわけじゃない。さっきみたいな事があったらオレは力ずくでもアンタを止める」 診療所へと続く一本道。光を先頭に暮村姉弟と九条和雄は夜闇の中を進む。 暮村雨流は危惧していた。光は自分達に何かを隠しており、最後には自分達を裏切るのではないかと。 その推察は間違ってはいない。気丈に振舞ってみせていたのは、どす黒い感情を覆い隠すためのもの。 圭介が殺され絶望に沈む中、『HE-028-A』は希望を見出し、光は己の余分を切り捨てる覚悟を決めた。 『転生保証 (クリア・ボーナス)』。診療所の一室でゾンビ化した山路フジが得るはずだった異能。 つい一週間前のボランティア活動でフジと知り合い、彼女からの信頼を得ていた。 光の異能であれば『転生保証』の再現が可能。それを知ったのも進化した彼女の異能の力。 今は亡き東大の異能。彼と最初に遭遇したお陰で自身の異能について知ることができた。 ――――――――――――――――――――――――――――――――― 村人よ我に捧げよ(ゾンビ・ザ・ヴィレッジクイーン) 現在生存しているゾンビが得るはずだった異能を再現する異能。 ゾンビ化前の人間の人物像を知っていなければ異能を再現できない。 支配する異能はゾンビ化する前の人間からの好感度が高いほど再現度が高くなる。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――― ◆ 日野光にとっての最初の幕引きは48時間の時間切れ。爆撃でゾンビ諸共山折村は焼き尽くされて終わった。 でも、日野光は斉藤拓臣の異能で資材管理棟まで避難して終わりを乗り切って生き延びたんだ。 ……三人の仲間は診療所で待ち構えていた特殊部隊に皆殺しにされたよ。分かりやすいスケープゴートとして使い潰された。 診療所で日野光がやりたかった事は、異能の持ち主である山路フジの安全確保。それは、地下研究室の一室に隔離された。 目的を達成した女王感染者は、60時間後に再現される山路フジの異能に祈りを込めた。 『次こそ山折圭介を生き残らせたい。もう一度チャンスが欲しい』ってね。 日野光はこの時、空腹とストレスで脳が回っていなかった。それ故に願い事に具体性がかけてしまっていた。 ……それが、日野光の最大の過ちで彼女にとっての無間地獄の始まり。 日野光の異能はあくまで再現。完全に再現するには山折圭介や日野珠くらい関係性が深くなければいけない。 山路フジとそこまで親しくない以上、『理想の世界へと作り変える』だなんて大それた事は実現不可能だった。 60時間後、日野光はアナタがゾンビ化した時間――6月19日午前0時13分7秒へと記憶を持ったまま巻き戻らされた。 その時、彼女は絶望した。でも、前の記憶があるんだから今度こそうまくやれる筈って自らを奮い立たせた。 だけど、またしても彼女の思い通りにはならなかった。 正常感染者と化した山折村の住民も、現れた特殊部隊も、挙句の果てには地下研究所の場所すらも変わっていた。 それでも諦めきれずに必死で彼女は足搔いた。でも、山折圭介の死は変えられず、自らが女王感染者であることも変わらなかった。 48時間を繰り返す間に、日野光は幾度となく山折圭介の死を目撃し、時には志半ばで日野光自身が死ぬこともあった。 日野光は死んだとしても劣化コピーした『転生保証』から逃れられることはできなかった。 50回目を超えた辺りでもう日野光の心は擦り切れ、ただ当初の目的を達成するために手段を選ばなくなっていったんだ。 157回目のリトライ――前の周回で漸く日野光が山折圭介と共に無間地獄を乗り越えられる最大のチャンスが訪れた。 一週間前に山折村に赴任してきた教師、未名崎錬。彼が女王ウイルスを無効化できる手段を発見した。 青葉遥の右手に宿る異能『細菌殺し(ウイルスブレイカー)』。 この異能で日野光の『HE-028-A』を沈静化させれば、VHが収束する。日野光は山折圭介との明日を迎えられるはずだった。 ……日野光が女王感染者だと言うことは山折村を封鎖した特殊部隊員達にも伝わっていた。 後はアナタの思っている通り。特殊部隊員――五十嵐藤枝の襲撃から日野光を庇って山折圭介が死んだ。 その瞬間、ただでさえガタガタだった日野光の精神が限界を迎え、壊れた。 膨大なストレスで自我が芽生え始めた『HE-028-A』が覚醒。もう取り返しのつかない『第二段階』になってしまったんだ。 ◆ かつて山折村の経済を支えていた商店街。辺り一帯に散在するのは地震によって倒壊した建物だけではない。 若い女の死体。幼い子供の死体。壮年の男の死体。老若男女問わず多種多様な屍が肉片を散らしながら転がっていた。 転がる死体の中心にいるのは三メートル程の巨大な餓鬼――かつて黒之江和真と呼ばれていた地獄の使者が一人。 餓鬼道に堕ちた好青年は共に戦っていた浅黒い肌の少女――ホアンを一心不乱に食らい続けている。 餓鬼畜生が食事を続ける先には長い青髪の美女の死体。右手と下半身がすっぱりと切り取られている。 そのすぐ傍には同様に引き千切られた斑模様の防護服。中には特殊部隊員の血肉が詰まっている。 それらの更に向こう側。死体の山が築かれているその先には二人の生者。 一人は白い骨を全身に身に纏う赤髪の少女――浅葱碧。 身体の所々が欠け、溶かされたその姿は満身創痍。罅割れた骨剣を杖代わりにして立っている有様。 もう一人は光を放つ宝聖剣ランファルトを片手に持つ女王。その名は――。 「くひっ」 ――日野光。 「――――――」 たった一人生き残った赤髪の剣士。喉は焼かれ、内臓をいくつか潰され、意識を保つのがやっとの状態。 それでも、碧の目から闘志が消えることはない。やっとの思いで剣を持ち上げ、半ば砕けた足で水月へ踏み込まんとする。 しかし、奇跡が起きることはない。 振り下ろされた骨剣は聖剣によって砕かれ、剣の形を失う。 間を置かずに聖剣が碧の腹部へと突き刺さった。 刺さった聖剣を抜こうと、赤髪の少女は指の欠けた両手で忌まわしき聖剣の刀身に手をかける。 「厄(や)け、ランファルト」 たった一言の詠唱。高熱を帯びた聖なる光が剣士を細胞ごと焼き尽くした。 後に残るのは塵芥。浅葱碧の生きた証は風に吹かれて跡形もなく消し飛んだ。 生者の蹂躙を終えた後、日野光は最後の仕上げをすることにした。 彼女の視線の先には、自身の肉体から弾き出された元の宿主である『日野光』。 腰を抜かし、恐怖に震える日野光(ぼうれい)へと日野光(じょうおう)が一歩一歩と迫る。 逃げ出したところで最早意味はない。ただ数秒だけ寿命が延びるだけ。 そして最後の一歩が踏み出される。亡霊の目の前に映るのは女王の醜悪な笑顔。 剣を振り下ろされ、そして――――。 運命のターニングポイント。6月19日午前0時13分7秒へと巻き戻り、記憶を受け継いだ直後に日野光はゾンビとなった。 ◆ ――ここまでが日野光の顛末。彼女が全てに絶望したところで劣化『転生保証』が終わり、今の時間軸に至った。 158回目の今、ようやく彼女は地獄から解放されたんだ。……少しだけ待って。話していたわたしも辛くなってきた。 …………話を再開するよ。彼女曰く、今回の正常感染者は一人を除いてどこの時間軸にも現れてなかったんだって。 その一人は誰かって。…………神楽の末裔。一度として挫折を経験していないお子様。 精神を支える土台がしっかりしているから我が強く見えるだけ。土台が崩れれば一気に崩壊するタイプっぽい。 ……前例があるんだよ。鴨出真麻。我欲でわたしの友達が立てた小さな祠を壊した痴れ者。 ……話を脱線させるのはわたしの悪い癖。反省しなきゃ。 アナタが魔王に乗っ取られた直後、彼女の狼狽は酷いものだった。 よりにもよって一番大切な存在が女王感染者だと思い込んでいたんだよ。 あまりにも酷いから、魔王の仕業だって教えたよ。そこから先は察しが付くでしょ。 『転生保証』から解放された時のように逃げ場を全て断って、絶望させること。 アナタにあそこまで怒りをぶつけたのは、かつての自分の所業を思い出したからなんだ。 「別れる」って口に出したとき、日野光はアナタと同じくらい苦しかったんだと思う。 だって正気を失わずに地獄巡りをしてきたのは、アナタへの想いが支えになっていたんだから。 ――悪いお知らせ。ついさっき女王感染者が自我に目覚めて宿主を乗っ取り始めた。 わたしが魔王の力を取り込んでいた時、宿主に気付かれないよう、下品な笑い声をあげていたよ。 でも、まだ時間はある。アナタの友達の集団の中には、何らかのきっかけで九条和雄にそっくりな力に目覚めた子がいる。 その子ともう一人。あの集団の中には女王感染者の運命測定から逃れられた子がいる。 ……空気読めなくてごめん。そんな事言ってる場合じゃなかったよね。 ……この世界を維持できるのは今のわたしじゃあと僅か。わたしは一足先に出ていく。 日野光。 山折圭介。 月並みな言葉しか言えないけど、残された時間を大切にね。 ◆ 徐々に空が夜闇に染まっていく。 この空間が漆黒に染まった時、山折圭介は生者として現世に残り、日野光は死者として黄泉へと旅立つ。 二人並んで、ガラスをに寄りかかる。床に置いた少年の手に少女の手が重ねられた。 二人で過ごす時間はこれが最期。別れの言葉も慰めの言葉も思い浮かばず、沈黙だけが夕暮れの教室を支配する。 「……俺達のファーストキスは、事故……だったよな」 「…………そうだね」 漸く絞れ出せた言葉は、何の変哲もない日常の思い出。 そこからぽつぽつと二人は会話を続ける。 「去年の郷土史のレポート……山の生態系を調べようって、二人で山の探索をしたよね」 「ああ。あの時は俺、完全に小学生に戻っていたな」 「…………野生返り?」 「そうかも。レポート用の写真撮ってるお前をほっぽいてカブトとかクワガタ追ってた」 「それで、二人して迷っちゃっんだよね」 「暗くなってきてさ。俺、本気で野宿を考えてたよ」 「最終的に猟友会の嵐山先生に助けられたんだよね。その後二人して滅茶苦茶怒られたけど」 「まあ、遭難しかけた甲斐があってできたレポートもそれなりの出来に仕上がっていたよな」 「…………今年のゴールデンウイーク、二人で沖縄旅行に行ったよね」 「…………だな」 「計画を立てたのは去年の冬頃で、二人でバイトして旅行費貯めたよね」 「俺は岡山林業で木材運び、光はモクドナルドでだっけ。学校に許可貰って放課後とか土曜とか二人で働いたよな」 「でも、結局お金が足りなくなって、両親に援助してもらったんだよね」 「大人の財力って奴を見せつけられたな」 ありふれた日常の会話。何も起こらなければ、この思い出は甘酸っぱい青春の一部となる筈だった。 だけど、二人が揃って大人になることはない。日常を失った今、アルバムは遺品へと変わる。 もうじき夜が来る。胡蝶の夢は現実に押しのけられ、二人の時間に終わりが近づく。 語る言葉が付き、包み込む夜に静寂が満ちる。 不意に、圭介の胸に光の頭が押し付けられる。 「圭ちゃんが何度も死んだ事も、私が死んだ事も、何もかも全部夢だったら良かったのにね」 「光…………」 身体にすっぽりと収まる小さな想い人の身体をそっと抱きしめる。 別れの時が近づく。慰める言葉も送る言葉も何も思いつかない。 「…………やっぱり、やだ」 大切な少女の絞り出すような声。声が詰まり、少年は強く抱きしめる 「やっぱりやだ……やだよぅ……!死にたくない……死にたくない………!!」 「光………!!」 堰を切ったように溢れ出す光の涙が、圭介の服を濡らす。 「まだ死にたくない……!!圭ちゃんと一緒にいたい……!!ずっとずっと一緒に……うううううううううう………!!」 「ごめん………ごめん光……!!俺、お前を守り切れなくて……お前を悲しませて……!!」 おっとりしていてしっかり者。だけど少しだけ嫉妬深い普通の女の子。 威張りんぼで頑固者。だけど正義感の強い普通の男の子。 現世と幽世。二人の世界はもう交わることはない。 暗闇が近づく中、二人は抱き合って子供のように泣き喚く。 別れの言葉も残さず。爽やかとは程遠く、みっともなく。 泣いて、泣いて、泣いて、泣いて。 ―――胡蝶の夢が終わり、現実が訪れる。 ◆ 夢が終わり、吹いた水無月の夜風が座り込んでいた少年の身体を撫でる。 少年の目の前には目的地であった診療所。想い人の面影は影も形もなくなっていた。 「光……」 想い人の名を呟く。彼女との邂逅は夢に過ぎなかったのか。 違う。彼女のぬくもりがまだ残っている。彼女の声も覚えている。 不意に視線を落とすと、地面にはロケットペンダント。 幸運を呼び込み、運命を切り開くという意味が込められたアイテム。 沖縄旅行で圭介が光にプレゼントした御守り。手に取り、ペンダントの扉を開く。 圭介と光のツーショット。扉の向こうで満面の笑みで少年を見つめている。 「あぁ……ああああああ………!」 掌にぼつぽつと大粒の涙が零れ落ちる。 憎悪で誤魔化していた深い悲しみが胸を突き刺す。 幸せだったあの頃はもう二度と戻ってこない。 『…………悪いお知らせがある』 背後から聞こえるのは光を失った圭介を追い詰めて壊した祟り神。 振り返ることなく悲しみに暮れる少年の反応を待たずに淡々と告げる。 『魔王アルシェルとわたしの干渉。そして、暴対なストレスがアナタの脳に与えられた。 それによって、アナタの『HE-028』ウイルスは48時間を待たずに脳に定着した。 端的に言うと、人類にとってアナタは女王ウイルスと変わらないくらい危険な存在になった』 祟り神は座り込む少年の目の前まで近づき、目線を合わせるために腰を下ろす。 ゆっくりと圭介は顔を上げ、封印されていた祟り神を見つめ返す。 『山折圭介。アナタはこれからどうするの? 憎悪に任せて友達を裏切るなら、わたしはアナタの身体を抜け出す。元あった異能は残しておくから好きにすると良い。 衝動に任せて自殺したいのなら、今ここでわたしがアナタの魂を殺してわたしの着ぐるみにしてあげる。 何もかも嫌になって逃避したいのなら、わたしの力で異能と記憶を奪ってゾンビにしてあげる』 少女の姿に似つかわしくない厳かな声色。 目の前の存在が人間とはかけ離れた途方もない存在なのだと、改めて認識させられる。 圭介の返答をじっと待つ黒い影法師。彼女に対し、口を開く 「一つ、良いか?」 『どうぞ』 「最初、光は俺だけじゃなくって他の奴らも、哉太やみかげ達も助けようとしたんだよな』 『うん。助けられなかったをずっと後悔していて、受け継いだ記憶で何度も助けようとしていた』 「そっか」 思い出と変わった大切な恋人。彼女はずっと強がり続け、守ろうと足搔き続けていた。 答えは得た。涙を拭い、握りしめた光の遺品をつける。そして黒い靄のかかった幼神の顔を見据えた。 「VHが起きてから、俺はずっと罪を犯し続けていた。それでも、光と笑い合えるならって自分の心に嘘つき続けていた。 全部失って漸く気付いたんだ。結局中途半端だって。俺に、悪役は向いていないんだって。 もう次期村長なんて名乗る資格もないし、あいつらリーダーなんて口が裂けても言えない。 足搔くよ。光みたいに。もう何もかも手遅れだけど、最後くらいはヒーローの真似事をしてみせるさ」 『―――そう』 圭介の答えを聞き、祟り神はゆっくりと頷く。 少女は圭介の手を取ると、彼の掌に何かを置いた。 訝し気に少年は掌を見ると、そこには文字がところどころ途切れ、無理やり繋ぎ合わせた木製のプレート。 『山折圭介』と書かれたそれは、少年が虎尾茶子との戦闘の中、踏み砕いた上月みかげの御守り。 『これ、今のアナタに必要なものでしょ。魔王に乗っ取られていた時、背を向けたあの子達は泣いてたよ』 「あいつら………」 『もう壊さないでね』 その言葉の後祟り神は立ち上がり、圭介にも立つように視線で促す。 催促に従い、少年も立ち上がる。自然に少女の頭を見下ろす形となった。 不意に沸き上がる疑問。小康を得た今、祟り神へと問いかける。 「なあ、今更だけどアンタって一体何者なんだ?」 問いに歩き始めようとした少女の動きが止まる。 「地雷だったか」と思い直し、謝罪する前に少女が口を開く。 『―――かつて山折村には時空の裂け目から現れた小さな幼子がいた。 白い髪に金色の瞳の物心がついたばかりの女の子。異空間を彷徨う中でたった三文字の名前すら失ってしまった。 そんな彼女は剣舞を舞う陰陽師と巫女に拾われ、育てられた。彼らは幼子を愛し、幼子も彼らを愛した。 名無しの幼子には巫女が名前を付けられた。白くてふわふわな兎と共に現れたから、その名前を。 …………かつての名前が、転生した私の友達に着けられたっていうのは何だか奇妙な縁を感じたよ。 でも、そんな幸せな日々はそう長くは続かなかった。 白い髪。金色の瞳。奇異な姿から噂を聞きつけた飛騨の役人がその幼子を「八尾比丘尼」と呼んで、留学という名目で拐かした。 不老不死の肉。万病の妙薬。そんな事をほざいて泣き叫ぶ幼子を生きたまま解体した』 そこまで言うと、幼神は口を閉ざした。 意識を彼女に間借りさせているからだろうか。どす黒い感情が渦巻いているのを感じる。 「人間を、憎んでいるのか?」 『当たり前だよ。身体をバラバラにされたんだから。 安心して。憎悪に身を任せる様な真似はしない。そんな事をしたら春陽に合わせる顔がない』 言い放つと、コホンと咳払いし、たった一人のオーディエンスが耳を傾けている事を確認し、話を続ける。 『憎悪と嫌悪は同じ意味じゃない。憎悪は相手の存在を認めているから生まれるんだ。まだ改善の余地はある。 人間を憎んでいるわたしでも今生きている人間で明確に好意を持っている存在がいるんだ。 魔王に立ち向かったあの七人。無事を確認にいったら逃げられちゃった。原因は想像がついている。 わたしに纏わりついている黒い靄は山折村が長年蓄積され、凝縮された厄の塊。 話を戻すよ。嫌悪はその存在に対しての徹底的な拒絶。和解の余地はない。 ……わたしは山折村の存在自体が許せない。わたしだけを存在を存続させるための歯車に変えたのはまだ許せる。 でも、それだけじゃない。わたしが眠りについてから何世紀も、過ちを犯し続けている……!』 少女の口から吐き出されるのは矮躯に似つかわしくない憤怒。 彼女と同調している圭介さえもその黒い感情に呑まれそうになる。 「ちょ……ちょっと、落ち着けよ。ええと、神様?」 『……好きに呼ぶと良い』 そうぼやき、幼神は圭介に背を向けて歩き出す。 少年もそれに続こうと足を進めるが、少女はピタリと足を止める。 「神様……?」 『そうだ、わたしの正体を言ってなかったね』 足を止めた少女は振り返り、圭介の顔を見上げる。 変人として有名な圭介の犬猿の仲である女性を思い出させるようなマイペースな立ち振る舞い。 その危うさに辟易しながらも、彼女の言葉を待つ。 『山折村の歴史の闇に葬られた禁忌の存在『隠山祈』。わたしはそれに紐づけられ同一視されていた存在。 封印が緩む水無月の末に鳥獣慰霊祭でわたしを祟り神として役割を押し付けられて自我を封じられてきた。 でも、今は違う。嘗ての信仰で解放され、一時的に自我を取り戻したんだ。 遅くなったけど自己紹介。わたしは異世界で魔王アルシェルが浚った女神との間に生まれた娘。 お母さんの使い魔である白兎に導かれてこの世界にやってきた漂流者 異界への扉を生身で渡ると色んなものを失う。わたしは自分の名前を。この村に召喚された聖剣は、殺し損ねた魔王の娘の名前を』 『わたしの願いは山折村という概念を願望器を以て終わらせること。そうして未だ山折村に縛り付けられているいのりと春陽を解放する。 山折圭介。魔王から奪った器は自分で使うことができない。それにアナタにリソースを裂いている以上、戦う力もない。 戦闘はアナタ頼みだけど、奪い取った知識とこの地で得た存在へ干渉する力があるから、女王ウイルスへの対処はある程度可能。 取引だ。女王ウイルスによる厄災を止めるから、アナタはわたしの願いを叶えて』 【E-1/診療所前/一日目・夕方】 【山折 圭介】 [状態]:『魔王の娘(???)』共生、異能『魔王』発現、虎尾茶子、八柳哉太、天原創に対する抵抗弱化(大)、虎尾茶子、八柳哉太、天原創、天宝寺アニカ、哀野雪菜、犬山うさぎ、リンへの好意(特大)、人間への憎悪(極大)、山折村への嫌悪感(絶大)、深い悲しみ(特大)、魔王の娘への信頼(大)、山折圭介への信頼(小)、決意 [道具]:魔王の娘(???)、日野光のロケットペンダント、上月みかげの御守り [方針]基本.厄災を収束させる。 1.光……。 2.『神様』と共に女王感染者を止める。 3.『神様』の願いについては一旦保留。 4.『女王ウイルスが「第二段階」になる前に機能を停止させる。最悪、女王感染者ごと女王ウイルスを抹殺する』 5.『全て終わったら山折圭介に「山折村の終焉」を願わせていのりや春陽達を呪縛から解き放つ』 [備考] ※もう一方の『隠山祈』の正体が魔王アルシェルと女神との間に生まれた娘であることを理解しました。以下、『魔王の娘』と表記されます。 ※『魔王の娘』の真名は彼女自身にも分かりません。 ※魔王の魂は完全消滅し、願望機の機能を含む残された力は『魔王の娘』の呪詛により異能『魔王』へと変化し、その特性を引き継ぎました。 ※魔術の力は異能『魔王』に紐づけされました。願望機の権能は時間と共に本来の機能を取り戻します。 ※魔王から烏宿暁彦だった頃の記憶を読み取り、彼の記憶と現代科学の知識を得ました。 ※戦士(ジャガーマン)を生み出す技能は消滅し、死者の魂を一時的に蘇らせる力に変化しました。 ※山折圭介の『HE-028』は脳に定着し、『HE-028-B』に変化しました。 ※『魔王の娘』は実体を持った影響で物理干渉が可能になりました。 ―――魔王(■■■)は、絶対禁忌たるイヌヤマイノリに取り込まれて真なる厄災と化さん。 ―――厄災は鬼(オーク)の大戦士と共にイヌヤマの地を女王(かみ)に献ずるであろう。 120.墓標を背に、今一度運命の決断を 投下順で読む 122.第三回定例会議 時系列順で読む Anti-Demon King Destruction Operation「段階弐:杠葉」 山折 圭介 女王覚醒
https://w.atwiki.jp/orirowaz/pages/131.html
【名前】朝顔 茜(あさがお あかね) 【性別】女 【年齢】17 【職業】学生 【外見】活発的なボブカット少女 【性格】表裏のない天真爛漫、喜怒哀楽が顔に出て分かりやすい。 【異能】 『燦然世界(さんぜんせかい)』 手で触れた部分を起点に超分子振動(マイクロウェーブ)を発生させる能力。ただし彼女はそこまで頭が良い訳では無いので、炎を起こすぐらいの用途にしか使用できない。 【詳細】 とある投資家の不倫相手が堕胎も出来ず仕方なく出産しポストへ捨てられた捨て子。山折村の老夫婦に拾われ容姿として育てられた彼女は老夫婦の優しさの元ですくすくと自由に育っていった。 勉学こそ優れないものの、学校ではクラスで有名なムードメーカーとして知られており、あるクラスメイトいわく「友達作りが得意」。 同じクラスである氷月 海衣と友達になりたくて度々誘っているが断られてばかりだが、めげずに何度もアタックを敢行している。 + 執筆用人称情報 一人称 私 To 嶽草 優夜 優夜 あいつ 氷月 海衣 氷月さん 海衣ちゃん 上月 みかげ 上月さん 山折 圭介 山折くん スヴィア・リーデンベルグ スヴィア先生 先生 天原 創 天原くん 君 薩摩 圭介 薩摩さん 日野 珠 珠ちゃん 田中 花子 花子さん 与田 四郎 与田さん 先生 From 小田巻 真理 貴女 あなた あの女生徒 上月 みかげ 朝顔さん 日野 珠 茜さん 薩摩 圭介 お前 田中 花子 茜ちゃん アナタ 与田 四郎 朝顔さん 氷月 海衣 朝顔さん 茜ちゃん 茜 独眼熊 あの女 神楽 春姫 朝顔家の養い子 山折 圭介 茜
https://w.atwiki.jp/flower_companyz/pages/12.html
01/10 クラブチッタ川崎 「ロックンロールお年玉」 w:Theピーズ/遠藤賢司 カレーライス(竹安堅一g、グレートマエカワb、森信行ds)/騒音寺/夜のストレンジャーズ/他 01/16 仙台enn ワンマン 01/31 高松DIME ワンマン 02/01 心斎橋クラブクアトロ ワンマン 02/04 下北沢シェルター ワンマン 02/11 長崎DRUM Be-7 ワンマン 02/13 福岡DRUM-SON ワンマン 02/14 広島ナミキジャンクション ワンマン 02/20 北谷ソルト&ペッパー 「たましいによろしく in 沖縄」 w:うつみようこ/All Japan Goith/他 02/21 那覇桜坂セントラル 「たましいによろしく in 沖縄」 w:うつみようこ/Bleach,Shaolong To Sky/他 02/24 高円寺HIGH 「SET YOU FREE VOL.237」 w:ホフディラン 03/05 仙台CLUB JUNK BOX 「SION vs フラワーカンパニーズ」 w:SION 03/06 いわきSONIC ワンマン 03/12 Shibuya O-EAST 「~フラカン和義の300万ボルト ~ スペシャルゲストあり 」 w:斉藤和義 03/14 豊橋ell.knot w:Theピーズ 03/15 静岡SUNASH 「稲川1丁目ブルースナイトvol.3」 w:Theピーズ/MAMORU THE DAViES 03/22 松江ハイドロリアクション 「たましいによろしく〜帰ってきた松江ダイナマイト〜」 ワンマン 03/31 恵比寿リキッドルーム 「JUICE 10th Anniversary Events “ハレチカSpecial” 」 w:おとぎ話 / tobaccojuice [DJ]タシロック / 林拓一朗 / 高橋駿祐 04/05 盛岡club change ワンマン 04/18 金沢AZ ワンマン 04/19 BIGCAT 「CAPITAL RADIO 09」 w:Theピーズ/TOMOVSKY 04/22 名古屋E.L.L 「フラカン20周年ライブ・イヴ」 ワンマン 04/23 京都磔磔 「フラカン生誕20周年記念日祭」 ワンマン 04/29 恵比寿リキッドルーム 「たましいによろしく ~鈴木圭介三十代の爆走 最後の日~」 ワンマン 05/09 Naked Loft 「鈴木圭介新宿独演会」 ★鈴木圭介ソロ 05/14 下北沢シェルター 「大安おばけナイター」 w:キャプテンストライダム 05/16 岡山CRAZYMAMA 2nd Room w:怒髪天 05/17 米子ベリエ w:PAN 他 05/19 鹿児島SRホール 「ライブツアー たましいによろしく」 ワンマン 05/21 熊本DRUM Be-9 「KKT ROCKET COMPLEX × FMK RADIO BUSTERES Presents」 w:杉本恭一/鮫 05/23 大分TOPS 「ライブツアー たましいによろしく」 ワンマン 05/24 角島大浜キャンプ場野外ステージ 「つのしまJAMMIN 2009」 05/29 下北沢CITY COUNTRY CITY 「Barグレート 2009年・初夏」 05/30 神戸元町BO TAMBOURINE CAFE 「友部正人×鈴木圭介ライブ」 ★鈴木圭介ソロ w:友部正人 05/31 月の庭 「友部正人×鈴木圭介ライブ」 ★鈴木圭介ソロ w:友部正人 06/01 鶴舞K・Dハポン 「鈴木圭介新宿独演会」 ★鈴木圭介ソロ 06/15 下北沢CLUB Que 「「APPOLO15 PROJECT Vol.15」」 w:堂島孝平 06/20 帯広メガストーン 「拳参.vol.20 」 w:Theピーズ 06/21 札幌コロニー 「拳参.vol.20 」 w:Theピーズ 06/27 郡山♯9 w:ニューロティカ 06/28 秋田ライブスポット2000 w:ニューロティカ 07/02 名古屋クラブクアトロ 「NAGOYA CLUB QUATTRO 20th ANNIVERSARY SPECIAL」 w:ニューロティカ/SCOOBIE DO 07/04 第一楽器わんわん 植田店 「わんわんでわんまん」 ワンマン 07/05 滋賀B-FLAT w:GELUGUGU/GOLLBETTY 07/07 Shangri-La 07/11 長野ジャンクボックス 「フラワーカンパニーズ VS the NEATBEATS」 w:the NEAT BEATS 07/12 新潟ジャンクボックスmini 「フラワーカンパニーズ VS the NEATBEATS」 w:the NEAT BEATS 07/18 つがる地球村円形劇場 「AOMORI ROCK FES 09 夏の魔物」 07/19 八戸ROXX 「フラワーカンパニーズ VS the NEATBEATS」 w:the NEAT BEATS 07/30 duo music exchange 「フォークの爆発」 08/01 国営ひたち海浜公園 「ROCK IN JAPAN FES 2009」 08/17 名古屋 ell.FITS ALL 「フォークの爆発」 08/19 京都 拾得 「フォークの爆発」 08/20 兵庫 ウィンターランド 「フォークの爆発」 08/28 山中湖交流プラザきらら 「SWEET LOVE SHOWER 2009」 09/05 泉大津フェニックス 「OTODAMA 09」 09/20 桜島多目的広場野外ステージ 「volcano SAKURAJIMA 」 w:GO!GO!7188 / THE BACK HORN /POLYSICS/ SCOOBIE DO /曽我部恵一BAND 09/22 長崎 DRUM Be-7 SCOOBIE DO TOUR 「Funk-a-lismo! Vol.5」 w:SCOOBIE DO 09/23 大分 T.O.P.S SCOOBIE DO TOUR 「Funk-a-lismo! Vol.5」 w:SCOOBIE DO 09/25 松山SALON KITTY SCOOBIE DO TOUR 「Funk-a-lismo! Vol.5」 w:SCOOBIE DO 10/17 日比谷野外音楽堂 「20年だヨ!全員集合」 ワンマン
https://w.atwiki.jp/dh_bl2/pages/59.html
4ターン目終了時点 山佐スイレン 恋人:0人 自由創作:3P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 1 1 5 3 5 1 6 95 × 所持品 勝負下着、膝掛け、トランペット、フィッシングツール、教員免許、フラッシュメモリ、缶詰、裁縫セット、アーミーナイフ、革手袋、ステンレス製じょうろ、ダーツセット、万華鏡、頭蓋骨、浮き輪 状態 恋人 鬼塚 隆志、秋月草紙、 ロールシャッハ 恋人:0人 自由創作:2P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 1 4 2 6 5 3 1 65 × 所持品 覆面、さいころ 状態 恋人 ンニュー フホーシ 恋人:1人 自由創作:0P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 1 5 4 2 4 3 3 70 × 所持品 工具セット、整髪料、お守り、DSi、懐中電灯、双眼鏡、コンビニに買える程度のもの、小麦 状態 死亡無効、傷心 恋人 山井 寂 黒鐘 銀 恋人:0人 自由創作:3P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 3 1 5 5 5 1 1 15 × 所持品 黒縁眼鏡、車椅子、煙草、コンドーム、コンドーム済、星座盤 状態 弟子、肉便器 恋人 真野 二郎 恋人:0人 自由創作:0P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 2 3 3 3 5 1 5 80 × 所持品 ナイフ、洋服(多)星座盤、星肉と醤油、サバイバルナイフ 状態 恋人 楸田 明彦 恋人:0人 自由創作:0P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 2 3 4 2 5 3 2 90 × 所持品 包丁、飲みかけの焼酎、携帯電話、ボトルメール(宝の地図) 状態 恋人 夕霧 紅蓮 恋人:0人 自由創作:3P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 1 4 2 4 5 1 1 90 × 所持品 三色ペン、コンドーム(使用済)、ギター、コンビニに買える程度のもの、地球の歩き方(ルイリーク)、サンオイル、十徳ナイフ、鯨王丸、糸鋸 状態 足負傷 恋人 谺 岳彦、新井刀魔 新井刀魔 恋人:0人 自由創作:5P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 1 3 4 1 5 1 6 80 × 所持品 状態 ヤンデレ 恋人 孔法大師 空海 恋人:0人 自由創作:2P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 1 5 4 1 5 4 1 80 × 所持品 習字道具、ノート(5)弟子,西洋甲冑×2,白馬,携帯ストラップ,紙飛行機、風呂敷、マヨネーズ(未開封)、包帯、ビニール袋(多)、コッヘル、ドラム缶、傘、写真、魚網、魚肉 状態 恋人 瓜戒 学、Say Yah、 ×鬼塚 隆志 恋人:0人 自由創作:0P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 4 2 4 5 5 0 1 80 ○ 所持品 状態 恋人 秋月草紙 恋人:0人 自由創作:0P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 5 5 1 2 5 1 2 70 × 所持品 状態 恋人 天条院佐吉 恋人:0人 自由創作:0P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 1 4 5 2 5 3 1 80 × 所持品 十徳ナイフ、拳銃、ガムテープ 状態 傷心 恋人 エドワード・スイガラ 恋人:0人 自由創作:2P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 1 5 5 1 5 3 1 40 ○ 所持品 フラッシュメモリ、折り紙セット、虫眼鏡、携帯電話 状態 恋人 半魚人 恋人:0人 自由創作:0P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 1 3 1 5 5 1 6 100 × 所持品 万華鏡、蝋燭、グランドピアノ×2 状態 弟子、4ターン目の体力がすげー 恋人 フグ田マスオ 恋人:0人 自由創作:0P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 1 3 1 3 5 3 5 75 ○ 所持品 精神安定剤、洋服 状態 弟子 恋人 ルイス・ファン・ルイリーク 恋人:0人 自由創作:0P 満 知 器 体 姿 精 F 発 心 1 4 3 2 5 4 2 100 × 所持品 ロケットペンダント、日傘 状態 恋人
https://w.atwiki.jp/orirowaz/pages/321.html
スヴィアを少し離れた林に隠れさせ、天原創は来訪者の接近を待っていた。 茂みに伏せって呼吸を抑えて気配を殺す。 異常聴覚と思しきスヴィアの異能によって何者かの接近をいち早く知れたのは大きなアドバンテージだった。 視界の悪い夜の籔林で待ち伏せれば、確実に先手が取れる。 創はこの齢にして最前線で働く一流のエージェントだ。 完全に気配を遮断して物陰に隠れた創を発見するなどプロでも難しいだろう。 この状況なら、創は例え特殊部隊の精鋭が相手でも後れを取らない自信がある。 草木を踏みしめる足音が近付いてきた。 ここまでくれば異能に目覚めていない創の耳でもはっきりと聞こえる。 草木をかき分ける足音は、一直線に創に向かってきているようだ。 偶然にしては迷いがなさすぎる。 創の気配遮断を見破れる相当な手練れか、いや、それにしては挙動が軽すぎる。 よもやスヴィアのような索敵に向いた異能持ちか、サーマルビジョンや暗視ゴーグルのような装備でもしているのか。 ともかく、このまま相手に主導権を握らせるのはマズい。 そう判断した創は、手遅れになる前に茂みから飛び出した。 「あっ創くんだ!」 だが、それを出迎えたのは、同級生である日野珠だった。 創は飛び掛かろうとした動きに急ブレーキをかけ、少女の目の前で制止する。 「ひ、日野さん…………!?」 「やだなー、いつも珠って呼んでって言ってるじゃん。この狭い村だとお姉ちゃんとわからなくなっちゃうからね」 「そ、そう言われても」 先ほどまでの剣呑さはどこへやら。 少年は何やら照れくさそうにもじもじと身をよじっている。 そんな創の胸に少女の手がそっと置かれた。 「けど、よかった……変になってない知り合いに逢えた」 そう言って、少女は心底安心したように息を吐いた。 切らせた息を整えながら、向けられる人懐っこい笑顔に少年はドギマギした。 「来訪者はキミだったんだね。日野くん」 異能によって遠くからそのやり取りを聞き取ったのか。 現れた人物に危険がない事を確認して身を隠していたスヴィアも姿を現した。 「あっ。そっちはスヴィア先生だったんですね」 「? 『そっち』?」 不可解な言動に首を傾げる。 まるで遠く離れていたスヴィアの存在に気づいていたような言い草である。 「それで、た、珠さんはどうしてここに?」 「えっとね……学校の避難所にいたんだけど、お父さんやお母さん、周りのみんなが変になって、それで……」 怖くなって逃げてきた。と言う話だ。 状況を察していた創やスヴィアは、一早く人の集まる場所からは退避していたが、やはり学校はゾンビの巣窟になっているようである。 だが、創が聞きたかったのはそこではない。 「どうして僕たちがここにいると分かったのかな?」 改めて問い直す。 周囲に目印になるような建物がある訳ではない。むしろ目立たないよう創がこの場所を選んだ。 身を隠していた創に向かって一直線にやって来たのだ、偶然にしては出来すぎている。 「光みたいなのが見えて、そこに創くんたちがいたんだよ」 「光?」 そう言われても、心当たりがなかった。 当然ながら電気で位置を知らせるようなヘマはしていない。 スヴィアも同じなのか怪訝そうな表情をしている。 その反応に、不思議そうな顔をした珠が首を傾げながら地面を指す。 「え、だって、そことかも光ってるよね?」 二人が指された方向を見る。 だが、そこには当然、光るようなものは何もなかった。 「た、珠さん。この辺かな?」 「う、うん」 念のため創が示されたポイントに向かう。 軽く土を払って地面を調べた。 すると、なんと埋められていた銃を発見した。 「何でこんなところに…………」 疑問の声を上げながらも、銃を拾い上げる。 すると。 「あっ。光が消えた」 それを拾った瞬間、彼女に見えていた光は消えたようだ。 手にした銃をしまいながら創は珠ではなくスヴィアへと視線を向ける。 「どう思います? 先生」 「そうだねぇ……ボクの聴覚と同じくウイルスの適合によって得た力だとは思うが。失せ物探し、いや隠れた物を探す異能か……?」 「いや……それじゃ隠れる前の僕らを捕えてこちらに向かってきたことに説明がつかない。見ているのはそれよりもっと別の……」 「ん? ん? 何の話をしてるの?」 次々と話を進める二人に当人である珠は置いてきぼりである。 それに気づいた二人は、ひとまずエージェントと研究員と言う素性はボカして簡単な説明をした。 「うーん…………つまり、この光って私だけに見えていて創くんや先生には見えないって事、かな?」 「ああ、それがキミの『異能』だろう」 『何か』を光としてとらえる異能。 今わかるのはそれだけである。 「じゃあ、光を追いかけて行けばいいことがあるってことだよね!」 「いや、そうとは限らないよ。その光と言うのが何を意味しているのか詳細が分からないのだから妄信するのは早い」 「えぇ、創くんロマンがないよぉ」 夢見がちな中学生と違ってエージェントは慎重で現実的だ。 「いや、天原少年の言う通りだ。仮にキミの異能が隠れた物を光として視覚化できる能力だとしても、隠れた先にあるのが幸運とは限らない。 ボクも不用意に触れるのはお勧めしないな」 「うぅ。はぁ~い」 不満そうだが、ひとまずの納得をした。 流石に教師に窘められては、珠としても納得せざるをえない。 「あっ」 だが、そこで球が何かに気づいたように声を上げた。 同時にスヴィアも背後を振り向く。 「あっちの方にも光が見えるよ」 「確かに、2人分の足音が聞こえるね」 創も同じ方向に注意を向けるも何も見えないし、何も聞こえない。 広がるのは夜の闇と静寂ばかりである。 「まったく、自信無くすなぁ……」 創はエージェントとしてはかなりのエリートだ。 そんな彼が、この中で探索能力が一番劣っていると言うのはなかなかにキツイ状況である。 もっとも損得の天秤にかければ、味方に探索能力持ちがいるという状況は悪くないのだが。 「誰かがいるって事だよね? それじゃあ迎えに行きましょう!」 「待ちたまえ。言っただろう、その光が指し示すのが必ずしもいいモノとは限らない、と」 「うっ。そう、でした」 駆け出そうとする珠をスヴィアが制止する。 「それでどうする天原少年。足音はこちらに向かっているわけではなさそうだ、隠れていればやり過ごすこともできると思うが」 スヴィアは創に判断を委ねた。 研究員であるスヴィアよりもエージェントである創の方がこう言った場面の判断は適切だろう。 創は僅かに思案し、決断を下した。 「……こちらから接触しましょう」 スルーすることはできる。 だが、創は接触を決断した。 「一応、理由を聞こう」 「足並みをそろえた2人組という事はゾンビである可能性はないでしょう。 複数名で行動を共にしている時点で無差別に女王感染者を狙う輩という訳でもなさそうだ。被災者である可能性は高い。 一番リスクがある可能性は送り込まれた特殊部隊が連携して動いている場合ですが、その場合とっくに僕らは発見されているはずだ」 「なるほど。一理ある。だが、危険人物ではないにしてもわざわざこちらから接触する理由はあるのかい?」 問われ、創が言葉を切る。 そして視線を向けたのは珠だった。 「ひ……珠さん。光はどちらに進んでいます?」 「えっと、あっちからあっちかな。あっ……!」 そう言って珠は指で空をなぞる。 そこまでやって彼女も気づいたようだ。 「進行方向にあるのは避難所である学校です。なら止めた方がいい」 今の学校はゾンビの巣窟である。 放っておいて餌食になったのでは流石に寝覚めが悪い。 ただの被災者が向かっているのであれば速めに制止したほうがいいだろう。 「了解した。キミの判断に従おう」 ■ 「みか姉!」 「珠ちゃん!?」 懐いた猫みたいに飛び込んで来た珠を受け止めその頭をよしよしと撫でる。 創たちが接触した先に居たのは二人の少女だった。 上月みかげと朝顔茜。創の推察通り、危険人物ではなかったようである。 「よかったよ、みか姉」 「うん。珠ちゃんも無事でよかった」 珠にとってみかげは姉の親友である、普段からよく可愛がってくれる大事な姉貴分だ。 みかげにとっても球は子供の頃から付き合いのある可愛い妹分である。 少女たちが再会を喜び合うその横で茜はスヴィアと創と向き合っていた。 「えっと、確かスヴィア先生と、君は……中等部の転校生だよね?」 スヴィアは先週新任したばかりの教師だが、珍しい外人教師でありイメージと見た目のギャップもあり更にボクッ子、属性モリモリで印象に残っている。 4月に転校してきたばかりの創の顔までは流石に高等部の校舎が違う事もありはっきりとは覚えていないが。 狭い村だ、中等部に二人の転校生が来たという噂くらいは聞いている。 「ええ。天原創です。よろしくお願いします」 「私は朝顔茜。よろしくね天原くん。けど……握手はごめん」 握手を拒否られ微妙に創の思春期がショックを受ける。 その様子を見て、慌てたように茜が手を振る。 「あっ。ごめんごめん。そうじゃなくて」 握手の代わりに手を前に伸ばす。 そして掌を上に向けたうーんと力を籠める すると一瞬、掌から炎が噴出した。 「なんか、手から炎が出るようになっちゃって。まだそんなにうまくコントロールできなくって。握手してるときに出たらヤバいじゃん?」 「ああ……そういう事ですか」 少年はほっと胸をなでおろす。 「なんなんでしょうねこれ?」 「異能だね」 答えを期待したわけではない茜の呟きに、スヴィアが答える。 そしてウイルスに適応した人間は異能に目覚める可能性がある、と茜も簡単な説明を受けた。 「そっか。異能……異能かぁ…………」 漫画の世界の話だが、まあ実際炎が出てるんだから納得するしかない。 「ボクの見た所、単純に炎を出す能力という訳ではなさそうだが、詳しく調べてあげたい所だがその辺は後だね」 「そうですね。朝顔さんたちは避難所である学校に向かっていたようですが」 「ええ。そうなの。探してる人がいるから、みんなが集まってるだろうと思って」 「だったらやめておいた方がいいですね。あそこは既にゾンビの巣窟になっています、近づかない方がいい」 創の説明に、大きく反応したのはみかげだった。 「そんな! じゃあ圭介君は無事なんですか!?」 「圭介? 村長の息子さんの?」 「ええ、そうよ!! 決まってるでしょ!?」 創に食って掛かる勢いのみかげに僅かに気圧されながら。傍らの珠がなだめる。 「お、落ち着いてよ、みか姉」 「あっ……ごめんなさい。取り乱してしまって。けど恋人である圭介君が心配で」 「…………え?」 突然飛び出した言葉が理解できず、思わず珠は聞き返していた。 「何言ってるの…………みか姉?」 「ん? どうしたの珠ちゃん?」 何を疑問に思っているのかわからないと言うように、みかげは心底不思議そうに首を傾げた。 そこにあるのはいつも通りの優しい笑顔である。 それが、珠にはどこか不気味なものに見えた。 「今、圭介兄ぃが恋人って…………」 「? 珠ちゃんも知ってるでしょう? 『去年、圭介君が私に告白してきてくれたんじゃない』」 「そう…………だったね!」 その言葉で珠の迷いは一瞬で晴れた。 二人が恋人同士なのは当たり前の事なのに何を不気味に思っていたのか。 「それで圭介君は無事なの?」 「わからないけど、圭介兄ぃは避難所にはいないよ。多分まだ家の周りにいるんじゃないかな?」 「……そうなのね、ならこうしてはいられないわ。圭介君の家に向かいましょう」 「うん、そうだね」 「もちろん、私も付き合うよ」 恋人の下に向かおうと言う少女の決意に、俄かに周囲の少女たちも沸き立つ。 少女の想い出に共感し、彼女の恋を応援していた。 だが、ただ一人、みかげの想い出に踊らされていなかった者がいた。 「待ってください。方針はもう少し慎重に決めるべきです」 圭介第一の方針を掲げるみかげに、創が異を唱える。 天原創に宿った異能は「異能を無効化」する右手だった。 異能に対するカウンター。他者の異能が無ければ存在しえない力である。 いくら天才エージェントとは言え己が異能を自覚するにはまだピースが足りなかった。 だが、自覚はなくともその力が宿った以上発動はする。 みかげの異能は言葉によって相手の認識に作用する異能である。 対象全体に作用する以上、その右手に触れて無効化される。 故に、この場において創だけがその影響下から逃れていた。 だが、外様である創は調査によってある程度の人間関係は把握しているが、残念ながら体感としてまではその関係を把握していない。 圭介の女関係も情報として把握しているが、まあそういう事もあるだろう、と言う程度の認識しか持てなかった。 彼女の話す内容がいかにありえない話なのかを指摘する役割を担うに至っていない。 「恋人を心配する気持ちはわかります。けれどこう言っては何ですが、圭介さんが適合してるとも限らない。 そんな不確かな方針よりも根本的解決に向けて動くべきだ。それこそがゾンビとなった人や他の感染者を救うことになる」 人間関係の齟齬よりも、エージェントが気にするのは今後の方針だ。 女王暗殺は最終手段としても、もっと別の解決方法がないかを検討し、その材料を集めるために動くべきである。 そう冷静なエージェントとしての意見を情に流されず貫き通した。 だが。 「天原くん………それは少し冷たんじゃないかなぁ?」 「そうだよ創くん。そんな意地悪はいっけないんだよ」 「うっ」 周囲は違う。 少女たちは感情に流され、みかげの意に沿うよう彼女を盛り立てる。 上月みかげの異能。 それは自らが語った想い出を周囲に信じさせる力である。 この能力の真に恐ろしい点は、その「共感性」にあった。 他人の知らない想い出話を語られる事程つまらないものはないだろう。 だが、この異能は違う。 強制的に語られた想い出の当事者としての感情を共感させられるのだ。 まるで彼らの行く末を見守ってきた親しい友人の様に。 あるいは恋物語の映画を見ている観客のように。 感情移入を強制されるのだ。 自覚なく恋を振りまく宣教師。 それが、今の上月みかげという少女である。 創からすればこの状況はやりづらい事この上ない。 女三人寄れば姦しいと言うが、屈強な敵兵士に囲まれている方がまだやりやすい。 理屈ではなく感情でこられると正直手の打ちようがない。 それが集団の多数を占めるのだからどうしようもない。 創は助けを求めるようにスヴィアに視線を向ける。 だが、その期待はあっけなく裏切られた。 「いいじゃないか天原少年。ボクも彼女たちが出会えるように力添えしたいな」 帰って来た回答は想定外のモノだった。 スヴィアは思慮深く聡明な人間である。 そんな彼女までが感情論に乗っかるというのは流石に少しおかしい。 もっとも創とてスヴィアの人となりの全てがわかっているわけではない。 スヴィアが恋バナに感化された可能性は否定しきれないが、やはり違和感はぬぐいきれない。 なにより、創が感じている違和感は会話の主導権をみかげが握っている事である。 こう言っては何だが、彼女にそこまでの統率力や求心力があるようには見えなかった。 教師であるスヴィアまでもが彼女の言動に従っているのは流石におかしい。 (まさか洗脳の類か? それとも心情を共感させる異能? いや異能による強制的なモノならば僕にも同じ症状が現れているはずだ。 だとするなら同性のみに作用する、などの条件があるのか?) 少なくとも悪意的な思惑は今のところ感じられない。 だからこそ厄介とも言えるが。 ゾンビや特殊部隊が迫っている中で、色恋沙汰を話の中心に据えられてはそのうち立ち行かなくなる。 己の異能に本人が自覚的であるとは限らない。 当の創本人も己の異能を未だに自覚していない。 そして仮に無自覚であるのならこれが一番マズい。 素人に銃を持たせても、碌なことにならない事を創は多くの経験から知っている。 (現在どんな状況にあるのかをスヴィアに直接訪ねるか? だがマインドコントロール下にあるなら下手に触れるのは危険か) 異能の影響だなんてのは創の考えすぎで、本当に全員が彼女の心情に寄り添っただけの可能性もある。 まあ、それはそれで困るのだが、それが一番平和的だ。 (…………ひとまずは様子見か。判断材料が足りない) 答えが出ず、ひとまず保留とした。 最年少でエージェントの資格を得た天才も、年頃の女の子は分からないことだらけだ。 この判断が、どう影響するのか。 さしもの天才エージェントにも分からなかった。 ■ 結局、一同は高級住宅街に向かう事となった。 女子の団結力に説得も叶わず、なすすべなく創が折れた。 方針が決まってしまった以上は、文句を言っても仕方がない。 集団の先頭を創が務め安全な道筋を模索。 殿を教師でありレーダー役のスヴィアが務め、女学生3人を守るような形で隊列を組んで進んでいた。 非戦闘員を4人抱えて戦闘要員が創1人と言う状況で交戦は厳しい。 攻撃的な異能を持っている茜もいるが、さすがに彼女を戦力として数えるのは難しいだろう。 この状況では回避の一手だ。 幸い、珠とスヴィアの異能があれば索敵は万全である。 ゾンビや他の生存者を避け整備された順路ではなく藪道を進む。 そんな状況にもかかわらず少女たちは恋バナに花を咲かせていた。 みかげの影響によるものなのか、それとも女子中高生の生態なのか。 初心な少年には判断がつかなかった。 「ところで珠ちゃん、どうして圭介君は一緒じゃなかったの?」 歩きながら珠にみかげが問う。 珠とその家族が避難しているのに、何故圭介は家に残っているのか。 少なくとも圭介は家にいるかもと言えるだけの根拠があるからには、何らかのやり取りはあったはずだ。 「圭介兄ぃはお姉ちゃんと一緒にいると思うよ? お姉ちゃんが圭介兄ぃが心配だから様子を見に行くって、だから私達には先に避難所に行ってて、って……あれ…………?」 そこまで言って、珠は自分の言動に首をかしげる。 何故、家族を置いてまで圭介の様子を見に行く姉に違和感を覚えなかったのだろう。 圭介の所に行くと言った姉を何故当たり前のように受け入れたのか。 「そう……なんだ。光ちゃんと」 みかげはどこか暗い声でつぶやく。 その闇は、彼女にとっても無意識なのだろう。 だが、すぐさまその闇を振り払うような笑顔を見せた。 「大事な『幼馴染』だもんね、心配なのも当たり前だよ」 「う、うん。そうだよね」 胸の底にざわつきを覚えながら。 納得に足る理由を提供され、珠もこれに同意する。 「けど焼けちゃうなぁ……恋人の私を差し置いて心配されちゃって」 「お、お家が近いからだよ。圭介兄ぃが一番好きなのはみか姉に決まってるもん。私だって応援してるんだから!」 「そうですよね。『私たちが結ばれた時に珠ちゃんも祝福してくれたもんね』」 「うんうん! 告白前に圭介兄ぃから相談を受けていたからね、二人が結ばれて私も嬉しかったよ」 僅かなノイズ。 確かに珠は圭介やみかげの妹分として両方に可愛がられている。 だが、みかげに告白するのに、実の妹ならまだしも、その友人の妹に相談などするだろうか? いや。している以上するのだろう。そう納得するしかない。 「圭介兄ぃ普段はおーぼーなのにヘタレな所があるからねー。どうせ好き同士なのにイジイジしてるんだから」 「ふふっ。そんな圭介君も可愛らしいです」 「こっちは大変だよぉ。くっついてからもいつも家でも圭介兄ぃばっか聞かされて…………………………家、でも?」 珠の脳裏にノイズの様に圭介との惚気を自宅で語る誰かの姿が映った。 みかげは自宅に遊びに来ることも少なくない。 その時に聞かされた? いや、もっと日常的な、当たり前の風景で。 「……あれ? あれれ?」 珠が混乱したように頭を抱える。 何か、致命的な矛盾があるように。 「どうしたの珠ちゃん?」 己が少女の苦しみの元凶とも知らず、みかげは本気でその身を慮っていた。 それこそが彼女の歪み。 精神を崩壊させた彼女は、想い出をゼロから創造するのではなく日野光と言う少女が居た場所に自分を置き換える事で己が願いを実現した。 それ故に矛盾が生じる。 他人や友人程度の関係性であれば、その矛盾も『解釈の余地』で有耶無耶に誤魔化せただろう。 だが、珠は光の実の妹だ。産まれてからずっと一緒にいた仲良し姉妹である。 その存在を塗り替えられては、あまりにも整合性が取れない。 許容量を超えた処理を要求された脳が悲鳴を上げ、珠が目眩を起こしたようにふら付いた。 「日野さん!?」 だが、地面に倒れようとする直前、先頭を歩いていた創が咄嗟に振り返りその体を支えた。 頭を打たないように右手を添えて、抱きしめるような体制で引き寄せる。 「あ…………ありがと。創くん」 「あ、う、うん。無事でよかった、です」 体が密着してしまっていることに戸惑う創を余所に、珠は気にした風でもなくあっさりと離れた。 それよりも、別の何かに気を取られているような様子である。 「本当に大丈夫ですか? 珠ちゃん」 「あっ……うん。ちょっと目眩がしただけ」 みかげに心配の声をかけられ、珠は僅かに視線を逸らす。 彼女らしからぬ表情で何か考え事をするように押し黙ってしまった。 (いつも通り優しいみか姉だよね。だけど……) 盗み見るようにみかげの様子を窺う。 少なくとも珠の見る限りおかしなところはない。 だけど言ってる事がなにかおかしい。 創の右手に宿る異能によって珠の認識は正常に戻っていた。 だが認識が元に戻っただけで、記憶がなくなったわけではない。 みかげの言動は覚えている。 考える。 圭介と恋人であると言ったみかげの真意を。 嘘をいっている風には見えない。 と言うより、珠にそんな嘘をついても意味がない。 だからこそ、よくわからない。 (圭介兄ぃがみか姉にも手を出して、二股してる? いやいや。お姉ちゃん大好きな圭介兄ぃが、そんな事をするとは思えないよね) だいたい圭介にそんな甲斐性はない。 何よりみかげは姉の親友だ。2人が結ばれた時に、誰よりも祝福してくれたのは他ならぬみかげである。 そんなみかげが略奪愛のような事をするとは珠にはとても思えなかった。 (大好きな人がいても他の子に手を出したりする? 男の子ってそういうモノなのかなぁ?) 清子ちゃんがそんなことを言っていた気もする。 正直、珠には男女の機微などまってくもって分からない。 男の子と女の子、それを分けて考える必要すらよくわかっていない。 子供なのだ。 それでも、これがかなりデリケートな話であることは珠にだってなんとなくだけど分かる。 みかげに直接どういう事なのか問いただすのが一番手っ取り早いのだろうけど。 さしもの彼女にもそれは躊躇われた。 彼女の猪突猛進さもこの手の話題には発揮されないようだ。 まずは誰かに相談すべきだろうか。 大人であるスヴィアか、姉たちと同年代の茜か、それとも創に男の子としての意見を聞くか。 迷いながら4人を見る。 すると、それぞれに大きさの違う光が見えた。 特にみかげから見える光は一際大きな光だった。 思わず不安を感じてしまうくらいに。 この光は何なんだろう? 異能によるものとは聞いたが、結局その結論は出ていない。 今見えているのは、それぞれに話しかけた場合の「何か」なのだろうか。 大きければそれだけいいことがある? けれど創もスヴィアも、まだよくわからないのに決めつけるなって言ってた。 (どうしよう?) 光に惑う迷い猫のように、珠は思い悩んでいた。 【D-7/道外れ/1日目・黎明】 【天原 創】 [状態] 健康 [道具] ???、デザートイーグル.41マグナム(8/8) [方針] 基本.この状況、どうするべきか 1.ひとまず少女たちを安全なルートで先導する 2.みかげの異能に関する疑惑と対応は保留。 3.女王感染者を殺せばバイオハザードは終わる、だが……? 【日野 珠】 [状態]:健康 [道具]:なし [方針] 基本.創くんたちについて行く。 1.みかげの言動の齟齬について誰かに相談する?orみかげに直接聞く? 【上月 みかげ】 [状態]:健康、現実逃避による記憶の改竄 [道具]:??? [方針] 基本.圭介君圭介君圭介君圭介君圭介君 1.圭介君に逢うため高級住宅街の方に行く。 2.私と圭介君は恋人…♪ ※自分と山折圭介が恋人であるという妄想を現実として認識しています。 【朝顔 茜】 [状態]:健康 [道具]:??? [方針] 基本.自分にできることをしたい。 1.上月みかげと圭介を再開させる。 2.優夜、氷月さんは何処? 3.あの人(小田巻)のことは今は諦めるけど、また会ったら止めたい ※能力に自覚を持ちましたが、任意で発動できるかは曖昧です ※『去年山折圭介が上月みかげに告白して二人は恋人になった』想い出を真実の出来事として刻みました。 【スヴィア・リーデンベルグ】 [状態]:健康 [道具]:??? [方針] 基本.もしこれがあの研究所絡みだったら、元々所属してた責任もあって何とか止めたい。 1.それはそれとしてみかげと恋人を出会わせてあげたい ※『去年山折圭介が上月みかげに告白して二人は恋人になった』想い出を真実の出来事として刻みました。 035.Losers 投下順で読む 037.Behavior observation 034.豪華客船潜入作戦 時系列順で読む 匣の奥底に見えるもの 天原 創 心という名の不可解 スヴィア・リーデンベルグ 日野 珠 偽りの記憶は時に真実よりも甘美で 上月 みかげ 朝顔 茜
https://w.atwiki.jp/orirowaz/pages/437.html
大地を揺るがす鬼の咆哮が轟く。纏う深淵が散弾の如く撒き散らされる。 山折圭介と八柳哉太。得物を剣とする二人の若者は襲い来る死の脅威に果敢に立ち向かう。 哉太は卓越した技量にて攻撃を捌き、圭介は魔聖剣の光の魔術で猛撃を凌ぎ続ける。 そして、赤鬼こと大田原源一郎の討伐戦線に存在するのは二人の若者だけではない。 「ブモオオオオオオオオオオオオオオ!!」 鬼の雄叫びと負けず劣らずの迫力で咆哮するのは馬ほどの巨体を持つ白猪のウリヨーー伊吹山神の使徒。 身体を覆うのは魔力を帯びた白吹雪。哉太と圭介の攻撃の合間を縫って、ウリヨは鬼へと突進する。 聖なる氷雪は鬼の纏う瘴気を凍てつかせ、一時的に防御性能と自動攻撃を劣化させる。 攻撃速度が鈍る最強。生じた隙を二人の剣士が見逃すはずもない。 厄と剛拳による遠近両対応の反撃を掻い潜った瞬間、体勢を戻す刹那の空白の間に繰り出されるのは二つの斬撃。 魔聖剣の切っ先からの炸裂光が大田原の右足の腱を貫き、聖刀の鋭い斬撃が左足の腱を真一文字に切り裂いた。 どちらの傷も再生し始めるが、その速度は先程と比較すると各段に遅くなっている。 完全な転倒の前に巨人は何とか踏み留まるも、明確な行動遅延(ディレイ)が発生する。 主の危機に纏われた厄は対敵3つに対し、自動追尾攻撃を放つ。 だが、歴戦の勇士は既に行動パターンを把握しており、危機を察知すると同時に各々の手段で対処する。 体勢を完全に戻される前、地獄を潜り抜けたのはウリヨ。 倭建命に不覚を取ったように大田原もウリヨの神威を受け、ダメージと共に幾度目かの能力低下(デハブ)を受けた。 立ち向かう三者の中で最も戦闘に貢献しているのは二人の若者ではなく、新たに戦線へと加わった白猪。 佇まいは歴戦の強者を思わせ、彼女自身が圭介と哉太に合わせているようにすら思えてしまう。 このまま状況が続けば何れ刃が赤鬼の首へ届く。二人の剣士は確信する。 そして、次なる一手を打とうとした瞬間ーーー。 「カナタあああああッ!!」 望まぬ救援が訪れる。 「バ…馬鹿野郎ッ!来るんじゃねえアニカァ!!!」 「---ッ!」 鬼との戦闘区域に入る直前、哉太が声を張り上げて闖入者ーー天宝寺アニカの足を止める。 女王から逃げおおせた先。そこには想い人がいた。あらゆる負の感情に支配される中、見出した希望。 普段の聡明さは過酷な状況で剥がれ落ち、今のアニカの精神は年相応の少女のもの。再び失態を繰り返してしまった。 先程の地獄では相性もあり、春姫の助けになることができた。しかし次なる地獄は彼女の特異性など意味を為さない暴虐地獄。 現状を理解すると探偵少女は歯噛みし、後ろに後ずさる。 ほんの数秒にも満たない空白。それが致命的となった。 ーーずるり。 「ーーーーえ?」 アニカの背後で闇が脈動する。異変に気付き、探偵少女は振り返る。 眼前に映るのは身の丈を優に超える暗黒。出現先はアニカの背後ーーいつの間に開いていた黒く淀んだ孔。 突然の出来事に明晰な頭脳は働かず、頼みの異能も意味をなさず。 何一つ理解が及ばぬまま、天宝寺アニカは闇に呑まれた。 「アニ……カ……?」 パートナーの少女から注意を逸らしたのは僅か数秒。ほんの少し、藻を離した瞬間、前兆なく顕れた厄が天才探偵を吞み込んだ。 数時間前、目の前で魔王に串刺しにされた時のように。 十数分前、黒槍にうさぎが射抜かれた時のように。 "守護る。絶対に死なせない。" その誓いは運命に踏み躙られ、八柳哉太は過ちを繰り返した。 死闘の真っ只中にも関らず、アニカを呑み込んだ闇の孔を見つめ、呆然と立ち尽くす若武者。 「馬鹿野郎ッ!!!突っ立ってる場合かッ!!!」 友の異変に気付いた圭介の怒号が飛ぶ。その声で漸く現実へと引き戻される。 だが時すでに遅し。生じた空白を地獄の門番が見過ごすはずもなくーー。 「■■■■■ーーーーーー!!!」 天を衝く暗黒の咆哮。棒立ちになった少年へと肉薄する赤鬼。 哉太の視界に映るのはスローモーションでこちらに向かう巨人とその背後で魔聖剣を手に疾走する圭介と白猪。 反応しようにも脳の処理速度が追いつかない。咄嗟の回避も聖刀の防御も間に合わずーーー。 「ーーーーガッ!!!!」 赤黒い鉄槌が哉太の内臓を骨ごと砕く。少年の口から血と肉が零れ落ち、胴に食い込んだ剛拳を濡らす。 コンマ一秒地面を離れた後、少年の身体は凄まじい速さで打ち出され、吹き飛んでいく。 ◆ 「く……畜生……!」 「おや、随分と早いお帰りだね。流石隠山血筋の元祖兼量産型「巣食うもの」のオリジンといったところか」 月影の下で再び対峙する古の巫女と黒の女王。現在、春姫の身体の主導権を握るのは副人格と化したいのり。 史上災厄の呪いを祓うため狩人や退魔師が生み出した対抗策は皮肉にも人類の味方となったいのりを封じ込めた。 しかし、呪いにとして最上位に位置する彼女の完全な除霊には至らず。肉体に入り込みいのりを喰らわんととした呪厄を逆に取り込み、呪縛を解く糧としたのだ。 解呪の中でもいのりは春姫と五感を共有しており、現状も既に把握していた。 女王の非道も。想い人の苦悩も。己の存在が抹消された後の山折村のことも。そしてーー。 (春姫………) たった数分で未来の可能性全てを断ち切られた、自分を完膚なきまで救い出してくれた威張りん坊のお姫様の絶望も。 『反魂』と『魂縛り』を解いた瞬間、いのりは春姫に断りも入れず強制的に人格交換を行った。 入れ替えを行う瞬間にいのりの魂は春姫とすれ違った。その時、怪異の巫女は異変に気づく。 天照神を彷彿させる煌々と輝きを放つ春姫の気高い魂。その輝きは失われ、黒く塗りつぶされていた。 そして現在。 『肉体変化』を使用して流れ続ける血液と露出した骨肉を変換。切断面を皮膚で覆い、両腕の止血を行う。 しかし腕を再生させるまでには至らない。かつて取り憑いた隻眼のヒグマとは違い、宿主には失われた肉を補充できる余剰栄養素(リソース)は存在しない。 失血も酷く、『肉体変化』と『身体強化』の併用をしなねればそのまま意識が闇へと引き摺り込まれかねない。 だが、絶望的な状況に置かれても尚、いのりの心は折れていない。 『そなたの事情、全て知った。恨み捨てられず、なおそなたが神楽の断罪を望むのなら、我が魂くれてやる』 ーーー光を見た。 呪いあれと憎悪した神楽春姫(ひかり)が誰一人として見向きもしなかった不浄(いのり)の手を取った。 かつての想いを取り戻すことができた。理由はそれだけで十分。 予言だろうと運命のありがたいお導きであろうとも、もう二度と厄災になど堕ちてなるものか。 「べらべらと……随分、楽しそうにご高説を垂れちゃって……。冥土の土産……とでもほざくつもりかしら……?」 「うーん。そんなつもりじゃないんだけどなぁ」 途切れ途切れながらも挑発めいたいのりの言葉をぶつけられ、女王は拗ねた子供のように唇を尖らせる。 この場において既に順位は決定された。俎板の鯉はこちらで数メートル先の少女が板前。 だがあろうことか女王は春姫といのりに興味を示した。春姫には暴虐の限りを尽くす反面、いのりにはいらぬことまで愉しそうに話し出す始末。 女王に何の意図があるのか理解できないが、付け入る隙があるとすれば春姫と入れ替わっている今しかない。 どうにかして活路を見出して女王の魔の手から逃れる。そして『奥の手』を使って春姫をーーー。 「だったら……わたし達以外にも……お前の下らない一人芝居を……聞いてくれる観客がいたの……かしら?」 「お、今の回答はいい線を言ってる。花丸をあげよう」 何気なしに吐いた挑発に「やるぅ」と言い、気分良さげに笑う少女の姿をした精神的異形種。 はぐらかされるか嘲笑われるかのどちらかという予想が外れ、いのりはポカンと口を開く。 呆然とするいのりの顔をにやにやと見下すように笑い、女王は人差し指を立てて上を差した。 「お月様が……見ているなんて……言うつもりかしら……?」 「おや、メルヘンはお嫌い?まあ違うんだけどね。正解は上空でこちらを常に監視しているドローンさ。SSOG製のね。 まあ、外がどうなっているのか分からないけど、私達の会話を盗聴しているのなら事実確認を急いでいるんじゃないかな」 自らの情報を敵である存在に知らしめて何の意味がある。危険性が知れ渡った以上、すぐにでも空襲で山折村諸共焼き尽くされる可能性に考えが至らないのか。 腕なし巫女の疑問を感じ取ったのか、女王は間髪入れずに言葉を紡ぐ。 「『隠山祈』を解き放った目的は生みの親への反意の誇示。それと私考案のZ計画ーー即ち人類救済のためだ。 その第一歩として私の子機をを各地にばら撒くことから始めてみたのだよ」 先程の軽薄な態度から一転。怒りと決意に満ちた黄金の瞳がいのりを射抜く。 彼女が語った人類救済計画は一部であって全貌は掴めていない。だがその一部だけでも杜撰で稚拙であることが素人目でも分かる。 立案した計画を自分ならば本気で成し遂げられると目の前の異形は信じ切っているのだ。 それを為せる力を手に入れるまであと僅か。 「妄執……ね」 「好きに呼べばいいさ。動き始めた時計が止まることなんてないのだから。 さて、雑談はこれくらいにしよう」 女王の演説が終わる。それと同時にいのりの足元から厄が顕現する。 ずるり、ずるりと形を持った淀みが足から這い上がってくる。 最上位の怪異すら支配しきれない暗黒が浸食し始める。 「しばしの別れの前に教えてあげよう。 解き放った59の『隠山祈』には私のエッセンスが仕込んであるが、私が志半ばで倒れたとしてもHE-027-Aは死滅することはない。 それぞれ別の人格を持って行動を起こすだろう。でも彼らに対する絶対命令権は私が持っているからから特に問題はないだろう。 だけど、万が一に私が死んだら計画が頓挫し、人類救済はなされないだろう。 そのために、私を継ぐバックアップを作ることにしたんだ」 「神楽春姫と隠山祈。君達は最悪の的であると同時に最高の素体だ。 特に進化を果たした神楽春姫の異能には目を見張るものがある。それこそ『日野珠』とは比較にならないくらい程にはね。 ではそろそろお暇するとしよう。全てが終わった後ーーーハッピーエンドのその先でまた会おう」 闇が脈動する。黒の空間が蠢き、悍ましき世界に形を変えていく。 地獄に巣食うのは数多の厄。山折村の歴史の中で生み出された『隠山祈』。 暗黒を掻き分けながら、女は進む。彼女こそが蠢く厄の原点たる怪異、隠山いのり。 彼女が押し込められた牢獄は神楽春姫の天性の肉体。 いのりにも宿主たる春姫にも既に肉体の主導権はない。 爪先から頭まで。細胞一つ一つに至るまで女王の支配下に置かれた厄に侵されしまった。 それでもま原初の巫女は前へ進み続ける。光を得た今、もう二度と堕ちることはない。 掻き分け、掻き分け、進んだ先。そこに彼女を救い出した光があった。 「ーーー春姫ッ!!」 山折の女王ーーー神楽春姫ははただ一人、闇の中でへたり込んでいた。。 彼女に纏わりつく闇を払いのけ、いのりは手を伸ばす。 「春姫ッ!手を取って!わたしが貴女をーーー」 「……………」 差し出した手は取られず、いのりの願いは闇の中で空しく響く。 掻き分けた闇が閉ざされ始める。いのりは両手に力を籠め、形なき厄を無理やりこじ開ける。 手が取られないのならばこっちから掴んでやるまでだ。今度は春姫のすぐ傍に立ち、だらんと下がった彼女の美しい手を取る。 「春姫……ここから出よう。脱出手段はあるから。だから立って」 「…………無理……だ……」 「春……姫……?」 神楽春姫という人間が発したとは思えない、力なくか細い声が木霊する。 握りしめた手には何一つ力が入っておらず、枝垂れ柳のように垂れ下がるばかり。 気遣わし気な表情を浮かべるいのりへと、春姫はゆっくりと顔を上げる。 黒曜石のような瞳は光を失い、浮かぶ表情はかつての面影など見当たらない程弱々しい。 「もう……妾は……立てぬのだ……」 度重なる非道の前に、春姫の心は折れていた。 金剛石を思わせる強靭な精神は粉砕され、欠片すら残っていない。 矜持も大義も想いも何もかも。全てが砕かれた。 愛した穢れ無き山折村が偶像に過ぎず。敬愛した祖先は悪逆の使徒だと知らされた。 今の春姫に残ってるものは、何もない。 静まり返る中、周囲を漂う闇が再び脈打ち、いのりと春姫を喰らわんと覆い始める。 いのりの顔に焦燥が浮かび、春姫に肩を貸して無理やり立たせる。 「まずい……!悪いけど無理やりにでも連れて行くよ!」 「…………」 春姫の反応を待たず、閉ざされ始めた闇を抜けて歩き出す。 二人の視界に広がるのは暗黒。一筋の光明すらない道なき道を行く。 纏わりつく闇を振るいながら、必死に歩き続ける。 いのりが足を動かす中、為すがままにされていた春姫が口を開く。 「もう……妾のことは良い……。そなただけで逃げ延びてくれ……」 「そんな……ことっ……できるわけないでしょう……!私と貴女は一蓮托生……!全てが終わった後、貴女が私を裁くんでしょう……!?」 「最早……妾にはそのような資格などありはせぬ……。妾は、神楽一族は……存在そのものが不浄だったのだ……」 「…………」 暗黒を進む中、消え入りそうな声の独白は続く。 「妾の一族は……屍を築き上げ、その血肉で繁栄を謳歌していたのだ……。 始祖神楽春陽も一族の悪逆に、妾の醜態に嘆いておられよう……。 白兎の言の葉の通り……妾は無知陋劣な畜生に過ぎなかったのだ……。 妾は民を誰一人として導いてはおらぬ……。己が欲のまま血肉を食らう餓鬼畜生と同類ぞ……。 もう良い……。もう良いのだいのり……。妾は女王などではない……。妾が厄に喰らわれている間に逃げおおせれば……」 「ーーーーーーッ!!」 言葉の途中でいのりの肩から春姫がずり落ちる。死人のような春姫の瞳が僅かに見開かれる。 ペタンと腰を抜かす春姫の前には同じくしゃがみ込んだ怒りを滲ませたいのりの潤んだ瞳。 瞬間、春姫の頬に衝撃が走る。頬を張られ、春姫の顔に驚愕の色が浮かぶ。 混乱の最中にいる春姫の様子などお構いなしに胸倉を掴まれ、下手人たるいのりと無理やり顔を突き合わされる。 「ーーーーアンタ、それ以上下らない妄言を吐いたら許さないからね……!!」 「いの……り……?」 「あの糞ったれの女王に封じ込められている間色々事情は聴いたよ!山折村が腐り果ていて、神楽一族も同じくらい腐っているってこともね……!」 「ならばーーー」 「でも!今の神楽が――アンタがそいつらと同類なはずないでしょ!! 確かにアンタは春陽様と同じくらい威張りんぼで、子供みたいに我儘だけど誰より気高く優しかった!! 祟り神と化したわたしに道を指し示してくれたんだよッ!!」 「でも……妾は……」 「それに、私に殺された綺麗な女の子も貴女に希望を見出して託してくれていた!! 私が乗っ取っていた一色洋子も、貴女とお話ししているときはとっても楽しそうだった!! 私を食い殺そうとしていたヒグマも、貴女のお陰で大切なものを取り戻して天国に行った!! 女王に乗っ取られた日野珠だって!貴女は友達と一緒に助けようと足搔いていた!!」 「…………」 いのりの怒号が続く中、春姫は俯いて何も言葉を発さない。 ずるり。暗黒の中、数多の『隠山祈』が二人の巫女を捕捉し、にじり寄ってくる。 「終わりはどうあれ、みんな貴女に導かれたんだ!私も貴女に光を見出したんだ!! 山折村が糞ったれでも!アンタは誇り高く生き続けていたんだよ!!それを投げ捨てるんじゃないわよ!!」 にじり寄った闇が二人を喰らわんと覆い隠す。 その様子にすら気づくことなく、いのりは涙を流しながら春姫へと向き合う。 「アンタが女王じゃないって言うんならわたしが言ってやる!! 何があろうとアンタはあの細菌女なんかとは比べ物になんかならないくらい女王なんだよ!! 山折村を守ってきた、神楽一族の女王!!春陽様と同じくらい最高の王なんだ!! 世界がアンタを否定しても、わたしは一人でも叫び続けてやる!!」 闇が接近し、二人へと降りかかる。 「ーーー女王は神楽春姫ただ一人だけだ!!!」 ーー瞬間、混沌とした暗黒が二人の巫女を呑み込んだ。 蠢き、二人の美姫を咀嚼するように脈動を繰り返す。 数多の『隠山祈』が死肉漁りを待つかのように、スライム状の厄に集まりだす。 そしてーーー。 「ーーー不敬ぞ」 闇夜に響き渡る凛とした声。蠢く闇の動きが一瞬止まる。 同時に辺りを照らすのは内部から溢れ出す光明。 内側から差し込む光が闇に穴を開け、黒一色の空間に光が灯る。 「隠山の地にーーー山折村にも黄昏が来ようとも、神楽一族の血筋が絶えようとも、継がれた意志は決して途絶えぬ」 隙間から光が漏れ、膨れ上がる穢れの塊。 這い寄ってきた混沌は威光に慄き、ずるりと一歩下がる。 「退け、忌まわしき厄災共よ。妾はーーー神楽春姫は女王である!!」 膨れ上がった暗黒が四散し、一帯に光が満ち溢れる。 周囲を取り囲んでいた数多の『隠山祈』は神威の光を受け、塵と化す。 太陽の如く照らすのは、女王ーー神楽春姫。 その目には以前とは比べ物にならぬ程強い意志が宿り、彼女から発せられる魂の輝きはまさしく日の光。 「やっぱり……春陽様の子孫はーーー神楽春姫はそうじゃなくっちゃ……。」 女王の傍らには、始祖神楽春陽の想い人、隠山いのり。目尻に涙を浮かべ、心から嬉しそうな笑顔を浮かべていた。 彼女の呟きなど知らぬと傲慢な仕草で背を向け、天を見上げる。 「―――逝くぞ、我が王道へ」 「ーーーうんっ」 ◆ 「馬鹿……野郎……!!」 瘴気蠢く戦場の外れ。圭介は赤鬼への対応を出自不明の白猪に任せ、戦線を一時離脱していた。 その理由は圭介が必死の形相で引き摺って、安全圏へと移動させようとしている彼の友ーー八柳哉太。 哉太の下半身は文字通りプレスされ、ギリギリ原型を留めている悲惨そのものの状態。 哉太の異能は『肉体再生(アンデッド)』。急所さえ無事であれば死ぬことはない、圭介とは真逆の個人で完結した異能。 不幸中の幸いか、心臓と脳は無事なのか、明らかな致命傷なのにも関らず、虫の息ながらも哉太は生きていた。 意識は混濁しているらしく、時折思い出したかのように咳き込んで、口からちと肉片を吐き出す。 (こいつはもう……戦線復帰は無理かもしれねえな。あの一撃は間違いなく一発アウトな奴な気がしたが、死ななかっただけマシか) 圭介の眼下で身を横たえる哉太。潰された内臓は徐々に再生をし始めている。何とか生きている証拠だ。 即死に至らなかった要因は異能の賜物か、それともインパクトの瞬間をギリギリのところで避けようとして失敗したからか。 それとも、食欲に塗れた赤鬼が哉太の再生を目撃し、じっくりと喰らうために手加減でもしたのか。 「……ダメだ。どうしても悪い方へと考えちまう」 軽く頭を振って負の坩堝に陥りそうな頭を何とか落ち着ける。 圭介としても哉太を責める気はさらさらない。 目の前で彼を支えてきた幼い友人が闇に飲み込まれたのだ。 圭介自身も数時間前、誰よりも大切な恋人が目の前で殺された時、哉太と同じく何もできなかった身だ。 「哉太……。悪いけどこれ借りてくぞ」 戦線離脱が決定づけられた友人に断りを、手に握り締められている打刀を無理やり引き剥がしてベルトに差す。 万が一にも魔聖剣が手から離れた時のためのスペア。持ったところで大した意味がないのかもしれないが、ないよりはマシだろう。 向かう先は白猪の大氷雨と瘴気が飛び交う戦場。一人欠いた事で優勢だった戦況が拮抗へと戻り、今以上の苦戦を強いられるだろう。 魔聖剣から溢れ出す魔力を脚力に回した瞬間ーーー。 「クソお邪魔しますッ!!」 「ーーーーッ!!」 ーーーズドン、地を揺るがす音を立て土埃を撒き散らす空からの落とし物。目の前に突如として現れた物体に圭介は警戒し、魔聖剣を手に身構える。 土埃が夜風に吹かれ、闖入者はその正体を露にする。 纏う瘴気は現在戦闘中の赤鬼と同等のもの。動きやすい服を身に纏った小柄な体と手に構えるのは煌々と光を放つ二振りの木刀。 そして、闇夜でも光を失わないその双眸は、女王の証である黄金。彼女の名はーー。 「珠……!」 「さっきぶりだね、圭介兄ぃ♪」 彗星の如く現れたのは日野珠ーー否、彼女の皮を被った女王は義兄となる筈だった少年に人懐っこい笑みを向けた。 圭介を導いた祟り神曰く、女王ウイルスが第二段階になった時点で全て終わり。殺すしかないらしい。 珠の周囲を漂うのは戦鬼が纏うものと同じ禍々しい黒い霧。そしてこちらを愉しげに見やる黄金の輝きを放つ双眸。即ち。 (もう手遅れってことかよ……!) 圭介と春姫は間に合わず、殺す以外選択がないことを意味していた。 自分の無力を噛みしめる。覚悟を決め、家族同然の少女へと剣を向けるがーーー。 『圭介兄ぃ。お姉ちゃんのことをよろしくね』 在りし日の珠の顔が浮かぶ。光と恋人同士になったと報告した時の心から嬉しそうな笑顔が、女王の作り物めいた笑顔と重なる。 光を失い、黒い感情に支配されていた時とは違う。今の圭介は子分を守護るガキ大将であり、切り捨てる覚悟などできる筈もない。 悲痛に顔を歪ませ、剣を構えたまま硬直する。圭介の醜態に珠(じょおう)は穏やかな笑みを浮かべて歩み寄りーー。 「邪魔」 轟、と珠の周囲に暴風が吹き荒れる。剣を構えただけだった圭介は成す術もなく吹き飛ばされ、十数メートル程地面を転がる。 急いで立ち上がり、魔術を行使した珠へと視線を向ける。赤鬼と魔猪の戦闘をバックに女王は一歩一歩と悠々と歩みを進める。 確実に来るであろう攻撃に備え、剣を正眼に構える。しかし、珠の足は途中で止まり、黄金の眼差しは足元を見つめる。 彼女の視線の先にあるのは、異能の力でギリギリ命を繋いでるだけの八柳哉太。 「おや、丁度良い所に無限食材があるじゃないか。我が傀儡の餌に相応しい」 「てめーー」 仲間想いのガキ大将の頭に血が昇る。衝動に突き動かされるまま、魔力ブーストで肉体強化を施し、一直線に女王へと向かう。 狙いは木刀を持つ細腕。珠が重傷を負うのは間違いないが即死はせず、上手く事が運べば無力化できる可能性がある。 憎むべきは女王であり、断じて珠ではない。怒りに我を忘れても尚、次期村長は最善を目指せる可能性に賭けていた。 だが、淡い希望などこの地獄では何一つ救いを齎さず、只食い潰される運命にある。突け入る隙を見逃すほど、女王は甘くない。 光の魔力を帯びた魔剣が振り下ろされる。人体など容易く両断する一刀は女王に届くことなく、右の聖木刀にて阻まれる。 鍔迫り合いはほんの一瞬。魔剣は聖木刀の刀身を滑り、振り下ろされた勢いのまま地面に激突した。 轟音が轟き、生じた衝撃が地面にひび割れを作る。 受け流された大振りの攻撃。地に降ろされた切っ先。無防備になった圭介を女王は見過ごすことはない。 圭介が剣を持ち上げる寸前、側面に二振りの木刀が叩きつけられる。 闇に反響する木と鉄の混合二重奏。 魔聖剣と聖木刀。それぞれの強度と特質は相似。違いを分けるのは担い手。 山折圭介は同世代と比較すると強靭な肉体を持つが、異能は他者に依存し、身体能力も魔力強化がなければ一般の域を出ない。 日野珠は肉体も身体能力も発達途上。しかし、彼女に寄生するHE-028-Zの異能により彼女を構成する全ての要素が限界を超えて上昇している。 担い手の差は歴然。即ちこれから起こる結果も必然。 ーーーガキン 「ーーーなっ……!!?」 魔聖剣が、折れる。 魔力と異能の二重強化がなされた剛腕の一刀が刀剣の急所ーー樋(フラー)に驚異的な力が加わり、両断された。 驚愕と絶望が圭介の心中を満たす。停止した思考を呼び覚ますかのように、女王の木刀が振り上げられる。 「ぐ……ァ……!!」 ーーべきりと枯れ木が折れるような音が木霊する。 伸ばされた圭介の両腕に木刀の重単撃が落ち、前腕に衝撃が走る。 激痛が少年の脳を焼き、思わず手に持った魔聖剣を地面に落としてしまう。 しかし、切断には至ることはない。 「成程。皮膚表面に極薄で高密度の魔力バリアを貼っていたのか。刃が通らない訳だ」 「づ……うぅ……!!」 痛みに呻く圭介を他所に珠の皮を被ったナニカはうんうんと納得したように頷いている。 焦燥が圭介の頭の中を駆け巡るが、肉体は思考と切り離されたかのように動いてくれない。 激痛のあまり座り込む敗者を見下ろす女王の目はどこまでも無機質で冷たい。 「そら、飛んでいけッ」 「ゴッ……!!」 圭介の胴に炸裂する珠の鋭い蹴り。少年は血を吐き出して後方へと場される。 飛ばされた数メートル先。折れた腕で体を起こして何とか立ち上がった。 目に映る光景は必然の結果。 「さあ、ディナーの時間だよ。お遊びを早く終わらせたまえ、我が戦鬼」 珠の小さな手が未だ動けない哉太の襟首に指を食い込ませて掴む。 内臓を露出させ、ぐったりと動かない若武者はかつての妹分の為すがままにされている。 同時に女王の背後でーー赤鬼と白猪の戦場で爆発音が鳴り響く。 宙に打ち上げられたのは白点ーー圭介達と共闘してくれていた白猪。 「やめろ、珠……!!やめてくれ……!!さっさと起きろ、哉太……!!」 「ほーら、御馳走だ。再生するから心臓と頭は食べちゃダメだぞ☆」 圭介の叫びも空しく、半ば肉袋と化した哉太の巨体は赤鬼の方へと放り投げられた。 宙を舞う剣道少年から脇差と淡い光を放つ御守りが地面に落下する。 僅かな沈黙の後、夜闇に響き渡る骨を砕く音、肉を咀嚼する音、血を啜る音……赤鬼の食事の音が鳴り響く。 「くひっ」 月光に照らされる珠の見るも悍ましい笑顔。 手には己が力で調伏した宝聖剣の複製ーー二振りの聖木刀ランファルト。 飢えた鬼(オーク)が下賜された肉を喰らい、咀嚼する。 役者はいくつもかけているが、移る光景は地獄絵図。 それは祟り神の語った圭介の恋人ーー日野光の見た破滅の未来そのもの。 膝から崩れ落ちた圭介の目はどこまでも虚ろ。 ありあまる絶望が両腕の激痛を忘却させ、精神は恐ろしいほどに凪いでいる。 にじり寄り、迫るのは村王を裁く罪深き断罪者。寿命は残り十数メートル。 間もなく圭介は祟り神の語った浅葱碧と同じ末路を辿るだろう。 「…………ごめんな、珠。お前の姉ちゃん、守れなかった」 痛みを忘れ、胸のロケットペンダントを握りしめる。 そしてーーー。 『圭介ッ!!後ろに跳べッ!!!』 不意に聞こえてくる女の張り裂けんばかりの声。 反射的に顔を上げ、声に導かれるまま全力で後ろへ跳ぶ。 「…………?」 突如飛び跳ねた俎板の鯉に女王は怪訝な表情を浮かべた。 今更命が惜しくなったのか?それとも厄に侵した神楽春姫との合流でも目指すつもりか? 圭介の突飛な行動に首を傾げる。だが、その答え合わせは直後に訪れた。 「ぐぎゃあああああああああああああああああああッ!!!」 「んなッ……何だ突然……!?」 女王の顔に初めて驚愕が浮かぶ。 圭介は見ていた。女王の足元に淡い光を放つ魔法陣が現れ、地面から大口を開けた双角の巨龍が翼をはためかせ、天へと飛び立っていく。 女王は大口に呑まれ、龍と共に天高く登っていく。 あまりにも現実離れした光景に圭介はあんぐりと口を開け、激痛も絶望も忘れて固まっていた。 ◆ 「く……この……!ドラゴンと言い、さっきの畜生共と言い、一体何なんだ……!?」 龍の口の中。女聖木刀と強化された珠の脚力で龍の驚異的な抗菌力による噛砕を防ぎながら、女王は忌々し気に言葉を吐く。 運命視により予知した未来。宿主の覚醒から真実へと到達しうる智者との邂逅、そして浄化装置ランファルトを手にするまでは予定調和であった。 だが、異空間で死せる筈だった賢者(アニカ)は、虚空を掴んだかと思えば光を放ち、まんまと逃げおおせた。 そして、消化試合に過ぎない筈だった怪異との小競り合いも、突如として現れた畜生共のせいで余計な時間を食った。 ーーー現れた獣達には運命の光が見えなかった。 「だったら、力ずくで運命を切り開けばいい……!そうすれば元通りだ……!」 イレギュラーが起ころうとも関係ない。、前の世界線で憎悪に溺れた隠山祈のオリジンを日野光の肉体で取り込んだ時のようにすれば問題ない。 女王発案の人類救済プランを魂に流し込んで存在意義(エゴ)を塗りつぶし、支配下に置いたランファルト。 龍の上顎を防いでいる二振りの聖木刀に魔力が迸る。魔力を解放するその刹那。 女王の視界に映るブラックホールを思わせる龍の呼吸気管。 そこからてちてちと小さな足音を立てて駆けあがってくるのは脇差を加えた白兎。 迫る力なき獣。当然、他の獣達と同じように運命の光は見えない。 蹴とばそうと身をよじって足を動かそうとしても龍の咬筋がそれを許さず、肉体が強化された女王すらすり潰す力が籠められ、動きを封じられる。 訪れる窮鼠ーー否、窮兎の牙に備え、全身に魔力を漲らせる。 兎が飛ぶ。少女の目の前に映る脇差には、紐で括りつけられた二つの金襴袋ーーー女王は知る由もないが、哉太とアニカが持っていた白兎の御守り。 白兎(ボーバルバニー)の牙が迫る。愛しき主を殺された獣の牙が突き立てられる先はーー。 「そこは……ガッ!!」 対物ライフルすら防ぐ皮膚を貫き、刃を通した先は珠の細首ーーー願望義が埋まる場所。 突き立てられた刃ごと白兎を葬り去ろうと魔力を放出する。だが白兎は疎か、刀身に括られた御守りすら揺れない。 御守りが光の粒子と変換され、願望器に吸い取られていく。 「嘘だろ……!?」 願望器が願いを叶えた。 突き立てらえた脇差を伝い、日野珠の肉体から抽出される。 現れたのは白い小さな光球。それは形を変えながら、天へ向かい動き出す。 飛び立つ直前、白兎は器用に身体を動かして脇差を願望器へと放り込む。 輝きを放つ光球。そして再び訪れる身体の異変。身体の中の『何か』が光に呼応する感覚が女王の魂を揺さぶる。 吸い込まれた脇差が、光の粒子に変わり雲散する。それと同時に願望器は夜空へと飛び立った。 「何をしてくれたんだ……!」 女王の幼い顔に明確な怒りが浮かぶ。せめてもの腹いせに蹴とばそうと体制を崩れるのにも構わず足を動かす。 しかし女王の拙い蹴りは空を切る。憎悪を滲ませる女王など見向きもせずに、白兎は口の洞窟を昇って難なく脱出を果たした。 ◆ 「俺は一体……何を見せられているんだ……?」 口をあんぐりと開けて座り込む圭介。見上げた空には双角の龍が翼をはためかせて雄叫びをあげていた。 VHが発生して以降、あらゆる超常を目の当たりにした圭介でも目の前で起きたイベントには目を丸くせざるを得なかった。 しばらく呆然としていたが、空から突如白い塊が圭介の元へ落ちてくる。 数秒後、固まる圭介の前で見事な着地を披露する白い毛玉。その正体は。 「白……兎……」 『ーーーすまない、君達には苦労を掛けた』 漸く言葉を発した圭介に向かい、白兎はぺこりと頭を下げて謝罪した。 「お、おお……」と何とか返事をした少年に首に時計を掛けた小さな獣の真紅の双眸が彼を見上げる。 『これでしばらく女王は君にも、君の友達にも手出しは出せない筈だ』 「友達……!か、哉太は……!哉太はどうなって……!!」 白兎の発したと思われる言葉で妹分の珠ーーの殻を纏った女王に放り投げられ、今も尚貪られているであろう親友の事が頭に過ぎる。 焦燥に駆られて捲し立てる圭介の瞳を英知と慈愛に満ちた瞳で白兎は見つめる。 『安心してくれ。彼はまだ生きている。それに、私の仲間が必ず助けてくれる』 「仲間……?」 脳裏に過ぎるのは突如現れた牛頭の巨人と魔力を帯びた氷雪を操る白猪。 だが、牛の巨人は腕力で潰され、白猪はつい先ほど鬼が起こした黒の爆発によって死んだはずだ。 疑問を口にしようとした圭介に割り込むように、白兎が言葉を紡ぐ。 『私の仲間はまだいるんだ。それに、彼らはそう易々と殺されるほどやわじゃない』 言葉が終わると同時に、地を蹴る蹄の音と甲高い猿叫、猪らしき雄叫びが轟く。 圭介と白兎の数十メートル先。赤鬼が哉太を一心不乱に食らい続けている場所に現れたのは三頭の獣。 全身血塗れの一角獣とそれに跨る如意棒を構えた赤猿。そして、赤鬼に殺されたはずの白猪。 誰もが皆全身に傷を負い、地球上の生物であれば致命傷となる傷を負っている。 その状態でも尚、地獄の番人へと立ち向かっていく。 「GIIIIAAAAAAAAAAAAAA!!!」 哉太を捕食したことでほんの僅かだけ理性を取り戻したのか。何とか人の言葉らしき轟きを上げ、赤鬼が暴れまわる。 山折村にて、何度目かもわからぬ血風が吹き荒れる。血肉が飛び交い、断末魔とも雄叫びとも取れぬ叫びが轟く。 その最中、赤鬼の手から何かが明後日の方に放り投げられる。それは間違いなくーーー。 「哉太……!」 両腕の激痛など気にせず、友の元へと駆け寄ろうと立ち上がる。 だが、圭介が走り出す前に哉太の元によろよろと歩み寄る一頭の獣ーー遠目からでも分かる、死にかけの羊。 彼(または彼女)は、口で哉太の身体を掴むとそのままよろよろと三頭の獣と赤鬼が死闘を繰り広げる危険地帯から離脱する。 そのまま圭介の近くーーとはいっても数メートル先だがーーまで移動し、哉太に覆いかぶさるように倒れ伏す。 白兎は光の粒子になることはなく死した羊にしばし黙禱を捧げた後、戦場に背を向けて動き出す。 全てを失ったような哀愁漂うその後ろ姿に、圭介はかつての自分を重ねてしまい、思わず声をかける。 「どこに、いくつもりなんだ……?」 『…………厄災(パンドラ)の底に眠る、最後の希望を求めに』 返ってきたのは抽象的過ぎて理解できない言葉。 そのまま力なき白い獣は歩みを進め、数メートル先ーー金髪の少女が吞み込まれた闇が蠢く孔の前で立ち止まる。 飛び込む直前、彼女は圭介の方へと顔を向ける。 『ーーー彼女を……春姫の事を頼んだ』 その言葉を残し、時計兎は淀みの中へと飛び込んでいく。 白兎が視界から消えるタイミングを見計らったかのように、圭介の背後から聞こえる不規則なリズムを刻む土を踏む音と荒い息遣い。 理由が分からない胸騒ぎがする。訳の分からない焦燥に駆られながら、圭介は背後を振り返る。 そこにいたのはかつて犬猿の仲にあったガキ大将の幼馴染。ふてぶてしい態度を隠さぬまま、厳かに悠々と圭介へと向かってくる。 「ーーーーッ!」 言葉を失う。 凛とした雰囲気はそのままだが、歩みは村に蔓延っていたゾンビと変わらない程頼りなく、襲い。 それもその筈。両腕は鋭利な刃物ですっぱりと斬られたように肘から下は失われ、全身はかつての面影が見当たらない程腐り果て、腐臭を放っていた。 見るも無残な状態にあっても尚、彼女の美しい双眸から光が失われることはない。 圭介の眼前で『彼女』は足を止める。 悲痛に顔を歪める圭介を夜空の瞳が見据えた。 「は……春……!?」 「……許せ、不覚を……取った……」 ◆ 春姫の身体はいのりを伴い、闇の中を浮上していく。頂点ーー脳に到達まであと僅か。 春姫の放つ天照の光は、身体の隅々まで侵した山折の厄ーー『隠山祈』を浄化し、塵芥へと変えていく。 天へと浮上する途中で目に入るのは、木漏れ日のように淡い光が漏れる亀裂。 ここはいのりと女王の戦闘時、聖木刀の斬撃により生まれた傷跡。悪夢の始まりの証。 そこで、再臨した女王は飛翔を止め、傍らの祈りへと向き直る。 「春姫……?」 「……いのり、ここでそなたとはお別れだ。」 「え……?」 唐突に告げられた別れにいのりは驚愕する。 堕ちた己を叱咤し、女王としての矜持を取り戻させた彼女に向き直り、彼女の瞳を見つめる。 ほんの少し前の自分ならば、そのような真似などするはずもなかったであろうな、と僅かに苦笑する。 「ここから先は妾一人で逝く。女王の王道に、同伴は許さぬ」 「そんな……貴女一人じゃどうにも……!それに春姫はいつ死ぬかもわからないくらい重症なんだよ……!わたしがいなくなったら、もしかするとそのまま……!」 「…………」 「大丈夫だよ……!わたしには貴女の身体を元に戻せる奥の手があるから……!それでアナタは元通りになって……!」 「いのり」 「ーーーーッ!」 縋るように喚き散らすいのりの目をじっと見つめる。ほぞを固め、既に自分の辿る末路は悟っている。 頬を張ろうとしたいのりだが、春姫の目を見た途端、振り上げられた腕は力なく降ろされた。 恐らく、春姫の祖先ーー神楽春陽も道を誤った時はこのように諭されたのだろうか。 春姫の覚悟を感じ取り、もう自分では彼女の意志を変えられないと悟り、春姫へと背を向ける。 亀裂の方へと飛び立つ直前、春姫の手がいのりの背に触れる。 「待て、いのり」 「……どうしたの?」 唐突の『待った』に振り返り、怪訝な表情を浮かべて春姫を見やる。 山折の女王は穏やかな顔で原初の巫女を見つめ返す。 一呼吸置いた後、春姫の手に光が集まる。そして集った光は春姫の手からいのりの身体に流れ込んでいく。 いのりに変化が起こる。怪異そのものとして機能していた仮初の身体が別の何かに変わっていく感覚が伝わる。 それはとても心地よく、温かい。 「これは……?」 「……餞別だ。これより汝は妾と同じく、死地へと向かうのであろう」 「……うん」 「……沙汰を言い渡す。隠山いのりよ、汝は己が命を以って妾のーー神楽春姫の友を救え」 「ーーーうん」 裁定を終えた後、今度こそいのりは光が差し込む方へと向かっていく。 春姫の身体を脱出する直前、原初の巫女は最後の女王へと向き直る。 「ーーー私を見つけてくれてありがとう!貴女は春陽と同じくらいカッコいい人だったよ!」 いのりと別れ、春姫は一人、天へと昇っていく。 思い浮かぶのは山折の地で生きた19年の人生。 "春ちゃん。友達を大事にしなよ。一生の宝だ。" 遠い昔に聞いたような、力強い声が過ぎる。 かつては女王はただ一人。王道を共にするものはなしと豪語していた。 それは過ちであった。傍には必ず誰かがいて、春姫を見守り、支えてくれていた。 全ては手遅れになってしまったけど、最期にそれに気づけて本当に良かった。 『ーー待ってくれ』 身体の支配権を取り戻すまであと僅かというところで聞こえてくる厳かな女の声。 浮上を止め、声の方へと顔を向ける。そこに佇んでいたのは白兎。己の傲慢と無知を見抜き、沙汰を下した張本人。 春姫と白兎。漆黒と真紅が交差する。 白兎の目を見れば分かる。白き神獣が再び自分の元に現れたのは春姫を裁くためではない。彼女は間違いなくーー。 『ーーーすまなかった』 「なぜ頭を下げる」 『君に貸した力ーーー因果歪曲の力を取り上げたせいで君の身体と魂が女王に蹂躙されてしまった』 「……構わぬ。それは妾が汝の言う通り無知陋劣な愚物であっただけの話よ。 それに、汝の力添えがあったところで、結果は変わらぬ。寧ろ女王はその力を簒奪し、更に力を蓄えることになっていたであろう」 それは女王の力を身をもって知った春姫だからこそ分かる歴然たる事実。 死を遍く愚かな女王は泥船に乗った女王を闇底へと叩き落とし、その事実を突きつけた。 『山折の地は己が罪への贖いに露と消えるであろう。されど想いは継がれていく』 女王の王道は袋小路で途絶え、朝を迎えることなく消えてゆく。されど必ず夜明けは来る。 曙を迎えた者が原初の想いを継いで、命を繋げていく。 言葉を終えた後、最期の女王は天へと浮上していく。 神の御子たる白き獣も浮上し、女王とすれ違う。 決して交差することのない道。その最中ですれ違っただけの仲。 しかし、胸に抱く想いに何の違いがあろうか。 『さよなら、女王。どうか君の王道に安らぎあれ』 「さらばだ、神獣。汝の旅の行く末に幸あれ」 ◆ 村王と女王。山折村の救済を目指した二人は互いに大敗を喫し、逃げおおせた先で再会を果たす。 圭介は両腕を折られ、頼みの綱の魔聖剣は聖木刀によって砕かれた。 春姫は聖木刀委より両腕を断ち切られ、厄により全身が汚染され続けている。 圭介は精神が死にかけ、春姫は身体が死にかけている。 「春……」 「そう情けない顔をするな……。汝は皆を支える「リーダー」なのであろう……?」 傲岸不遜な春姫の口から発せられたとは思えない弱々しい言葉が圭介の死にかけの精神を揺さぶる。 別れたのはたった十数分前。その間に何が変わったのか。こんな、慈愛に満ちた顔をする人間ではなかった筈だ。 ふ、と腐れ縁の幼馴染は圭介に笑い掛ける。 「頼みがある」 「……何でも、言ってくれ」 「そなたの腰に添えてある刀で、妾の心臓を突いてくれ」 「なっ……!」 余りの衝撃に言葉を失う。VHで圭介はたくさんの物を失った。 それは故郷であり、友であり、家族であり、恋人でもある。そして再び大切なものを失おうとしている。 「女王は妾の異能と肉体を奪おうとしておる。妾の身体で、友が殺されるのには耐えられん。 両腕を負傷した汝には酷であるだろうが……頼む」 「でも……」 「頼む」 子供を諭すような春姫の瞳。弟を見る様な目で見つめられ、圭介は言葉を詰まらせた。 迷っている時間はない。先程の珠ーー女王との戦闘でそれを思い知らされた。 腕に走る激痛を堪えながら、腰から哉太の打刀を抜く。 切っ先を春姫の胸に向ける。手が震えるのは激痛のためか、それとも圭介の心が拒絶しているためなのか。 そしてーー。 「ーーーッ!」 「か……ふっ……」 鮮血が刃を伝う。徐々に腐れ縁の幼馴染から力が抜けていく。 春姫の最期に、いがみ合っていた幼馴染の末路に、圭介は目を逸らさない。逸らすことなど、許されない。 ーーーカッ。 異変が起こる。春姫の身体が光を放ち、心臓から零れ落ちた血が、打刀に浸透していく。 瞬く間に打刀の刃は輝くような深紅に染まる。霊感も魔力もない圭介でも、刀に力が宿っていくのが分かる。 覚醒した『全ての始祖たる巫女(オリジン・メイデン)』により目覚めた力の発現。 それは己の生命力を物体に宿す秘伝。犬山はすみが得ていた異能『生命転換/神聖付与』の未来の姿。 厄に対する絶対兵器ーー聖刀神楽、生誕。 命が尽きていく最中、圭介を見つめる春姫の口が開かれる。 「………圭介」 「…………」 「そなたと過ごした日々、悪いものではなかったぞ」 花の咲くような、愛らしい少女の笑顔。神楽春姫には似つかわしくない、優しい微笑み。 最初で最後、初めて圭介の名を呼んだ。 黒曜石の光沢が完全に消える。胸に刃が突き立った身体は、村王の方へと枝垂れかかってくる。 山折村の女王、此処に眠る。 ◆ NEXT→山折の祈り
https://w.atwiki.jp/orirowaz/pages/109.html
【名前】日野 光(ひの ひかり) 【性別】女 【年齢】18 【職業】学生 【外見】美人ではないが誰からも愛される可愛らしい顔、ふんわりセミロング、巨乳 【性格】世話焼き、おっとりしているが根はしっかり者 【詳細】 山折 圭介の恋人。 ガキ大将である圭介を叱れる唯一の存在。 村の生まれではなく5歳の時に親の都合で山折村に引っ越してきた。 村長である山折家の近くに引っ越してきたため色々と交流が深く、圭介とじれったい関係を続けていたが昨年正式に恋人関係になった。 学校内ではみんなのお姉さんとして下級生にも慕われている。 本編ではゾンビとなっているため投票非対象キャラである。 ※投票非対象キャラ
https://w.atwiki.jp/eiketsu-taisen/pages/1055.html
開幕で味方に頼国がいるとセリフが変わるらしい? - 名無しさん (2023-07-04 01 33 17)